○志賀
委員 実は先日大阪でタクシーに乗っておりましたら、タクシーの労働者が——全自交という労働組合ですけれ
ども、客席のところにビラをぶら下げておりまして、われわれから百二十億円の
罰金が取られる——いまの
局長のお話では、これがまた二十数億増加する予定であると言われております。ことしの一般会計予算が三兆六千五百億でございますから、およそ三百分の一はこれで負担する、政府のほうではもうそれだけ取れるものとして予算に計上している。しかも一番悪質な者を今度の
刑法の一部
改正によって処罰すれば、これに対する警鐘になり、若干は防止の役割をする。しかも政府のほうは一般会計予算の三百分の一もこれでまかなっていくという非常にここは矛盾した現象が出ております。これまで当
委員会において、
刑法の一部
改正の問題としては非常に多くの方々から、またかなりの時間をかけて今日まで質問が行なわれたのであります。これは自民党のほうにも出されたと思いますが、
交通事故をなくす会の海野晋吉会長及び全日本交通運輸労働組合協議会
議長堀井利勝氏の名前でもって、「
刑法一部
改正に対する反対申入書」というのが各党の法務
委員に配られた。私のところにも昨日一部届けられたのでありますが、ただいまの本年度予算から見て百三十五億ないし百四十五億もの予算ということになると、これは三百分の一の予算を初めから当てにしてかかっている。タクシー労働者その他の交通労働者の人口、これは決して有業人口の三百分の一ということになりませんので、これと比較すると、実にこれは重大な問題が含まれている。ただいまの予算の面と、これを
改正しようとする
趣旨とまるっきりそこで逆になっておる。政府自身が一方ではこれを少しでも防止しよう、警鐘を与えよう、こう言いながら、頭から予算の面ではそういうことを考えている。これは矛盾もはなはだしいことでありますが、それについていま申し上げました反対申入書の中で、これまでも言われていること、これは1・2・3とありますが、「著しい
自動車の生産増と普及により交通量がその許容量の限界を越え、劣悪な道路や不適性な道路標識等、交通安全の為の諸設備が不充分である事、」これが激増の原因である。このことはもちろん
刑事局長も今日までの答弁の中でお認めになっている。これが一番大きい
理由であります。第二に「交通企業者が安全輸送を配慮しないで営利第一主義をとり、交通労働者にはノルマ歩合制賃金や長時間労働を押しつけ、余りにも苛酷な労働条件の下で労働させている事、」これについては、私はタクシーの
運転手を若干調べてみました。そうしますと、かつて参議院の法務
委員会もあわせてここで問題になったことでありますが、それは人権擁護局の協力も得て調査したことがだいぶ前にあります。仮眠所さえない、それで仮眠所のことはやや普及してまいりましたが、最近では食堂もなければふろもない。したがって、タクシー労働者は手入れに油類を使いますから、それで仮眠所で寝るふとんがべとべとになっている。これは名前をあげてもよろしゅうございますが、杉並区の三幸交通というタクシー会社と八王子市の旭交通という、これも小さい会社でありますが、そこの社長なんかは、労働組合との交渉で、
法律なんか守るところがあったらお目にかかりたい、こういうことを団体交渉の席上なんかで公言する。さらに千住の内山観光という観光バスの会社では、五千円の賃上げをして、ロックアウトで七千五百円の賃上げを実現している。ここで特に法務省に御注意願いたいことは、このロックアウトのときに、この内山観光というバス会社の車を修理するという名目で小菅刑務所の修理所に観光バスを全部入れてしまった。何のことはない、法務省がこういう不当なことをやるのに協力している。これは政務次官御存じないでしょう。こんなばかなことが行なわれているのです。めちゃくちゃなことをやるのに対して、法務省の管轄下にある刑務所がこれに協力するというようなばかげたことをやっておきながら、
刑法一部
改正について幾らもっともらしい
理由をつけられたところで、東京のタクシー労働者は納得しますか。この問題で法務省の真意を疑う、こういうことになっております。こういうこともあるのだから、この内山観光とどういう
理由で修理契約を結んだか、ひとつお調べ願いたいと思います。あとで報告を願います。こういうむちゃくちゃなことが行なわれているのです。千住の内山観光というバス会社でバスを半年ぐらい全部小菅刑務所に入れてロックアウトの
理由にしている。普通の修理会社だったら、そこへ交渉にいけるが、御
承知のとおり刑務所の修理工場というものは高いへいの中にありますので、そこへ乗り込んでいって労働者が向こうの労働者と交渉することもできない、こういうめちゃくちゃをやっているのです。法理論のことはいままで多くの
委員から質問が出ましたから、私はこういう具体的な事実をもって伺うのです。
なお、三多摩地域のタクシー業者は協定を結んで、自分の会社の
運転手が他の会社へ移ることを禁止し、これに
違反した場合には十万円の
違反の
罰金を取られるのです。しかも
違反した労働者は、結局それを負担させられることになる。三多摩に居住し、そこのタクシー会社につとめているような者は、このために全く生活の方途を失うというようなことになる。一体
法律上こんな十万円を取るというようなことが許されているのかどうか。こういう条件の中で働かされる。第一に反対申入書で言われた道路事情、危険防止のいろいろな施設、こういうものがない中で、タクシーの
運転手
がいろいろな
事故を起こしたときに、法務省
自体が
関係していることで、政府
自体がこういう予算を組んでいることで、こういうものがみな納得させることができますか。労働基準監督署なんて来てくれたことはない。業者と一ぱいやって、自分たちのことを見てくれたことがないというのが、東京のタクシー業者の、ことに零細業の従業員の場合の充満した不平であります。こういう状態に置かれております。
しかも今度の法案の
提案理由として、決して悪質重大犯というばかりでなくて、「最近の交通事犯が数に於て激増し」こういう前書きがついております。決して
局長の言われるように重大事犯のことばかりではありません、例にあげられているのは。「質的には高度の社会的非難に価する悪質重大事犯が続出している現状に鑑み」ということの前にいまの文句がある。そうしますと、今度は刑を加重するというようなことになりますこの法案が通りますと、結局は全体の
業務上の
過失致死傷の場合なんかにどうしてもいろいろと量刑上の不合理が出てくる。
改正刑法準備草案の中にあるものの一部をこういうふうに入れられますと、どうしてもいまの法
体系というものは狂ってくる、こういう点も十分考慮されなければいけないのであります。これまで伺っていても、東京に
自動車が十六台しかない、あるいは四十四台しかないときにできたもので現状に合わないと言われる。では、
自動車の量がふえた現状において、それに相応する道路事情も考慮されているか。ただあなたは
自動車の数の比較だけで言われている。そういうお考えでは、ことに法務省の管轄下でロックアウトに事実上協力するというようなことが出てくる。これで一体この法案が通ってうまく
運用されるものかどうか、その点について御自信がありますか、
局長にまず伺います。