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1965-03-16 第48回国会 衆議院 法務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月十六日(火曜日)     午前十時五十七分開議  出席委員    委員長 加藤 精三君    理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君    理事 小金 義照君 理事 小島 徹三君    理事 田村 良平君 理事 細迫 兼光君    理事 横山 利秋君       小渕 恵三君    大石 八治君       唐澤 俊樹君    佐藤 孝行君       四宮 久吉君    中垣 國男君       濱野 清吾君    井伊 誠一君       長谷川正三君    竹本 孫一君       志賀 義雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 高橋  等君  出席政府委員         検     事         (大臣官房司法         法制調査部長) 鹽野 宜慶君         検     事         (民事局長)  新谷 正夫君         法務事務官         (入国管理局         長)      八木 正男君  委員外出席者         議     員 竹本 孫一君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局         長)      寺田 治郎君         判     事         (最高裁判所事         務総局民事局         長)      菅野 啓藏君         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 三月十六日  委員羽田武嗣郎君、馬場元治君、前尾繁三郎君  及び西村榮一辞任につき、その補欠として佐  藤孝行君、大石八治君、小渕恵三君及び竹本孫  一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員小渕恵三君、大石八治君、佐藤孝行君及び  竹本孫一辞任につき、その補欠として前尾繁  三郎君、馬場元治君、羽田武嗣郎君及び西村榮  一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月十五日  会社更生法の一部を改正する法律案春日一幸  君外一名提出衆法第一一号) 同日     —————————————  改正刑法準備草案第三百六十七条に関する請願  (只松祐治紹介)(第一四二六号)  同(中村梅吉紹介)(第一四二七号)  同(河野密紹介)(第一四三六号)  同(中村梅吉紹介)(第一四四六号)  同(岡崎英城紹介)(第一四五一号)  同(中村梅吉紹介)(第一四五二号)  同外二件(鯨岡兵輔紹介)(第一四六八号)  同(天野公義紹介)(第一四七五号)  同(押谷富三紹介)(第一四七六号)  同(壽原正一紹介)(第一六五六号)  同(古川丈吉紹介)(第一六六〇号)  同(大泉寛三君紹介)(第一六六一号)  同(岡崎英城紹介)(第一六六二号)  同(和爾俊二郎紹介)(第一六六三号)  同(岡崎英城紹介)(第一六七六号)  同(田中榮一紹介)(第一六七七号)  同(椎熊三郎紹介)(第一六九五号)  同(進藤一馬紹介)(第一六九六号)  同(砂原格紹介)(第一六九七号)  同(成田知巳紹介)(第一六九八号)  同(福田繁芳紹介)(第一六九九号)  同(福田一紹介)(第一七〇〇号)  同(上村千一郎紹介)(第一七五三号)  同外一件(大平正芳紹介)(第一七五四号)  同(椎熊三郎紹介)(第一七五五号)  同外一件(山口シヅエ紹介)(第一七五六号)  宇都宮地方家庭裁判所大田原支部庁舎新築等  に関する請願戸叶里子紹介)(第一四三七号)  同(高瀬傳君外四名紹介)(第一四五三号)  東京都伊豆七島地域不動産登記に関する請願  (菊池義郎紹介)(第一四六七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所法の一部を改正する法律案内閣提出第  一一七号)(予)  会社更生法の一部を改正する法律案春日一幸  君外一名提出衆法第一一号)  訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律  案(内閣提出第六四号)  法務行政に関する件      ————◇—————
  2. 加藤精三

    加藤委員長 これより会議を開きます。  去る十日予備付託となりました裁判所法の一部を改正する法律案議題といたします。
  3. 加藤精三

  4. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 裁判所法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。  改正の第一は、裁判所書記官補を廃止しようとする点であります。御承知のとおり、裁判所書記官補は、昭和二十四年七月一日から施行された裁判所法等の一部を改正する法律によって、新たに裁判所書記官が設けられたことに伴い、その事務補助する職として設けられたものであります。なおその際、当時における裁判所書記官不足に対処するため、当分の間、最高裁判所の定めるところにより、裁判所書記官補裁判所書記官職務を行なわせることができることとする措置がとられましたことも御承知のとおりであります。しかし、その後裁判所当局の努力により、裁判所書記官養成機関が整備されるに伴いまして、裁判所書記官はその員数、質とも充実するに至りました。これに従って、裁判所書記官及びこれを補助する裁判所書記官補事務の処理の状況も次第に変化してまいり、現に裁判所職員裁判所書記官補に任ぜられている者はきわめて少数にすぎないものとなっております。このようにして現在では、もつばら裁判所書記官事務補助をすることを職務内容とする特別の職を存置することは、その必要性がなく、また、実情に適しないこととなりましたので、この際、裁判所書記官補制度を廃止することとし、裁判所法について所要改正を行なうとともに、関係法律について必要な整理を行なうことといたしました。  改正の第二は、最高裁判所最高裁判所庁舎営審議会を置こうとする点であります。現在、最高裁判所当局におきましては、最高裁判所庁舎を新営する計画を有しているのでありますが、何ぶんにも、その庁舎は、わが国司法の象徴ともなるべきものであることにかんがみ、その新営に関する基本的方針を決定するにあたっては、広く各界の英知を集めて、この問題についての検討に万全を期する必要があるものと考えられますので、この際、最高裁判所に、その諮問に応じて最高裁判所庁舎の新営に関する重要事項調査審議するための機関として、最高裁判所庁舎営審議会を置くこととし、裁判所法について所要改正を行なうことといたしました。なお、この審議会の置かれる期間は一年間とすることとしております。  以上が裁判所法の一部を改正する法律案趣旨であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いいたします。      ————◇—————
  5. 加藤精三

    加藤委員長 次に、会社更生法の一部を改正する法律案議題といたします。
  6. 加藤精三

    加藤委員長 提出者より提案理由説明を求めます。竹本孫一君。
  7. 竹本孫一

    竹本議員 会社更生法の一部を改正する法律案提案するにつきまして、その理由を御説明いたします。  最近、御承知のように証券取引の第一部上場の銘柄である有名会社にして、会社更生法適用を受けるものが続出いたしまして、これが経済上はもとより、広く社会上の問題として、大きな波紋を投げかけております。その理由は、申すまでもなく、その会社が多数の下請中小企業発注契約等を結んでおり、その会社倒産によって、多数の下請企業連鎖倒産、もしくは大きな被害をもたらしているからであります。すでに政府も、本国会における答弁におきまして、また閣議の審議過程におきまして、現行会社更生法に不備な点があるから、これをすみやかに改正すべきであるとの正式の見解を表明されております。したがって、近い将来に政府提出現行法改正案国会に出されるものとは期待いたしておりますが、今や法の改正は急を要しております。三月六日に同法の適用を申請しました某大特殊鋼の事例のごとくに、下請関係納入品関係中小企業連鎖倒産はすでに現実に発生しておりますし、今後続出のおそれもあります。これらの被害に対しまして融資上の救済措置はもちろん必要でありますけれども会社更生法の運用上の問題としまして、これらの下請関係債権について適正なる保護措置をすみやかにとる必要があります。この点こそ、現行法最大欠陥であるからであります。  次に改正の要旨を簡単に御説明申し上げます。  現行法におきましては、その第百二条におきまして、会社に対して更生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権はこれを更生債権と規定しております。それと同時にその中には、更生手続開始前六ヵ月間の、会社使用人給料、並びに更生手続前の原因に基づいて生じた会社使用人の預かり金及び身許保証金等返済請求権をも含むことを、同法の第百十九条において規定いたしております。  今回、私ども改正提案する点は、第一に、この共益債権のなかに、下請事業者従業員生活擁護に資するため、一定範囲下請代金をも含めるという点であります。第二は、会社使用人退職手当として、従来から共益債権に入るものと認められている範囲を、生活擁護の見地にたって、拡大するという点であります。  第一の改正点は、下請代金支払遅延等防止法に規定する下請事業者が親事業から支払いを受けるべき同法規定下請代金であって、その支払い時期が更生手続開始前三カ月以内であるものを共益債権として認める点であります。現在、下請代金支払遅延等防止法によりまして親事業者下請事業者に対する取引公正化と、下請事業者保護が一応はかられているのでありますから、国の法律として、会社更生法におきましても、同様に下請代金保護に当たるのは当然なのであります。この改正によりまして、下請事業者である中小企業者、並びにそこで働いている従業員の賃金が正当に保護されるのでありまして、この改正はぜひとも必要なものと考えるのであります。  第二の改正点は、更生手続開始前の原因に基づいて生じた会社使用人退職手当について、その一部を共益債権として請求することができるようにした点であります。すなわち、会社使用人更生手続開始前に退職したときは、その退職手当の額を共益債権として請求することができるようにいたしました。たゞこの場合におきましても、その額が退職当時の給料月額の六倍に相当する額をこえるときは、そのこえる額を除くことにいたしました。次に会社使用人更生手続開始後引き続き会社使用人であった者が退職した場合において、その者の受け得る更生手続開始後の会社における在職期間にかかる退職手当の額が、退職当時の給料月額の六倍に相当する額に満たないときは、その不足額に相当する額を、更生手続開始前の会社における在職期間にかかる退職手当の額のうちから、共益債権として請求できることにいたしたわけであります。  右の改正は、いずれも退職当時より六ヵ月の生活を保障するに足る退職手当共益債権として確保せんとするものでありまして、これも本法第百十九条後段に規定いたしております使用人の権利の確保の精神と一貫する当然の措置であると信じます。  なお、この二つの改正案は、いずれも公布の日から、周知期間として一ヵ月間を置いて施行するものとし、また経過規定といたしましては、この改正案の施行前にすでに更生手続を開始している会社には適用しないことといたしたいと思います。  このように現行法改正提案する点は、いずれも現下一番大切であります中小企業対策、並びに労働者生活擁護対策として緊急必要なる措置でございますから、何とぞ本案を慎重審議の上、御賛成をいただくことを希望して、私の提案理由説明といたします。
  8. 加藤精三

    加藤委員長 これにて両案に対する提案理由説明は終わりました。質疑は後日に譲ります。      ————◇—————
  9. 加藤精三

    加藤委員長 訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。横山利秋君。
  10. 横山利秋

    横山委員 大臣が参議院に行かれるそうでありますから、締めくくり的な意味におきまして、大臣に御意見を承るよりも、むしろ本委員会審議経過を含めて、厳重にひとつ注意を喚起したいと思います。  われわれが本委員会におきまして、この法案を審査をいたしました際、与野党を問わず、現在の執行吏制度がきわめて不十分きわまるものであるという指摘共通にいたしました。その共通の論点になっています点は、第一に手数料制度であります。公務員である執行吏国家から俸給は受けぬ、そして逆に手数料によって債権者から事実上の収入を受けているということは、何としても不正事件発生の温床になるという観点であります。第二番目には、債権者が自由にそれを選べる、選べるから自由職業的性格になっておる。したがって、それによって人員が少ない、あるいは偏在する、勤務地が固定化する、研修が困難である、国家補助がほとんどないという第二の点から生ずるさまざまな問題がある。第三番目には、裁判所監督行政が事実上困難であり、実際もやってない。したがって、あとになって問題が起こって騒いで注意をするだけであって、この国家公務員である執行吏についての監督行政はなっておらぬ。第四番目には、債権者立ち会い人競売ブローカー等結びつきはもう堂々たるものである、こういう指摘共通観点であったわけであります。  政府側はそれに対して事実をほとんど認めました。そしてその苦心のほどはわかりましたけれども、しかし、問題の解決については、将来執行官制度実現について真摯な研究をなるべくすみやかにすることと言いましたけれども、結局は三年以内にはほとんどだめだろうという消極的な意見であります。暫定措置として、このあと提案をいたします附帯決議の中にございますような、執行吏代理等に対する処遇の改善、つまりこのことは国家公務員災害補償法準用でありますが、そのほかに執行吏役場施設その他の環境改善執行吏に対する研修実施指導及び監督充実競売実施方法改善等について忌憚のない私ども意見を開陳し、政府側から善処する旨の答弁がありました。  しかし、このような真摯な質疑応答が本委員会で繰り広げられたことは今回が初めてではないのであります。本委員会はすでに本問題について再三再四附帯決議を満場一致しておるのであります。顧みれば、七十年になんなんとするこの基礎法ができましてから根本的な改善は何らいたされておらぬ。しかも、今回もまた過ぐる委員会附帯決議の際に行なわれました質疑応答を繰り返したにすぎないのであります。したがいまして、われわれはこの質疑を終結するに際しまして、この執行吏制度についてきわめて強硬なる決議を付すべきであるという与党側からの意見すらあったわけであります。私は、例によって例のごとく本委員会附帯決議をすることについて、実は自分も強硬附帯決議の一人でありますけれども、じくじたる気持ちを感ぜざるを得ないのであります。同じことをまたやって、また次の機会にまだかまだかといって、また附帯決議をする、こういうことはもうやめなければならぬ。責任を持って政府がすみやかに暫定措置なりあるいは執行官制度のほうへの根本的改善なりについて、これは短時間のうちにやってもらわなければならぬのであります。それがなければ、何回附帯決議をいたしましたところで同じことであります。私はその意味におきまして、法務大臣はお忙しいらしくて、この熱心な質疑応答にあまり御出席なさらなかったので、この痛烈な質疑応答について、はだに感じて気持ちがわかっていないのではないかという心配をいたしますので、いささか前に戻りまして総括的な経過を申し上げて、大臣の本法案に対するわれわれの意見についての所見を伺いたいと思います。
  11. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 本法案審議にあたりまして、予算委員会等が開かれておりまして、私の意に反して十分出席ができなかったことをまず遺憾の意を表さしていただきたいと思います。  ただ、出ましたときに、いまの問題につきましても、いろいろと私自身御意見を承ったのでございますが、現在、執行吏制度改正根本といいますか、執行吏官吏とするという方向の検討を続けておることはお答え申し上げたとおりでございます。しかし、いろんなむずかしい問題がありますために、つい実施に至るまでの段階に至っておりませんが、ただいま御指摘になりました件につきましては十分われわれもわかっております。裁判所とも連絡をとりまして、できるだけすみやかな解決をはかりたい、こういう念願でございますので、事情おくみとりの上、御了承をお願いいたしたいと思います。
  12. 横山利秋

    横山委員 では、一つずつ確認的な意味で御質問いたしますが、大臣でなくてもけっこうであります。  執行吏代理が、執行吏全的代理として国家権力を発動するにもかかわらず、精神的並びに肉体的障害を受けた際において、国家公務員災害補償法準用がないという点を指摘し、善処する旨の答弁がございましたが、間違いございませんね。
  13. 鹽野宜慶

    ○鹽野政府委員 執行吏代理につきまして御指摘のような問題があることはそのとおりでございます。これに対する手当てといたしまして、国家公務員災害補償法準用ということが考えられるのでございますが、これは国家公務員についての災害補償でございますので、そのままの形ですぐこれを持ってこられるのかどうかということについてはなお検討を要する点があると思います。しかしながら、こういう問題につきまして何らかの手当てをし、執行吏代理が安心して働けるというふうな体制をつくり上げるということはきわめて重要なことであると存じますので、この点につきましては積極的に検討を進めたいというふうに考えております。
  14. 横山利秋

    横山委員 執行吏代理とおっしゃいましたが、執行吏代理等とわれわれは言っておりますから、ひとつ頭にとめておいてください。  第二番目には、これは参考人を招致いたしまして調査をいたしました際に強く希望しておった問題でございますが、執行吏役場がきわめて穴ぐらのようなところであって、陰惨なところである。しかも、私が検討いたしましたところ、わずか十坪かそこらの狭い部屋で競売をする。したがってしろうとは入れない、こういうしかけになっている。入り口が狭い、こういう執行吏役場施設その他の環境改善を強く要望されておりましたが、この件について政府意見を伺います。
  15. 菅野啓藏

    菅野最高裁判所長官代理者 執行吏役場競売場等設備が不十分であることは私どももよく承知しております。将来、裁判所庁舎を新営いたします際などにおきましては、もちろん執行吏役場競売場設備につきまして積極的に改善していきたいつもりでございます。
  16. 横山利秋

    横山委員 これはすみやかにできることでございますから、特に要望しておきます。  三つ目に、執行吏に対する研修実施指導及び監督充実でございますが、これは政府委員も不十分きわまるものであることをすでにお認めになっておる次第であります。私の調査するところによりますと、執行吏の中の汚職が非常に議論されておるのでありますが、執行吏全般がそうであるとは思いません。一部の執行吏及びそれに関与する人々に対する問題が全般のようになっておることは遺憾であります。しかし、それにしましても執行吏に対する研修政府の手によって全然なされておらないということは強く指摘しなければなりませんし、監督につきましても、裁判官合議制度で、一人が責任を持って執行吏についての監督指導をしていないという行政上の欠陥も強く指摘してきたところであります。今後どういうふうにこの問題をなさるか、ひとつ意見を聞いておきたいと思います。
  17. 菅野啓藏

    菅野最高裁判所長官代理者 まず監督の点についてお答えを申し上げます。  ただいまの監督関係法律制度というものが不十分でありますことは前回もお答え申し上げたとおりでございますので、これにつきまして監督現実に十分に行なわれるような規則等改正を行ないたい、こういうふうに考えております。  それから研修制度につきましても、遺憾ながら本年度の予算研修に関する予算が認められませんでしたけれども書記官研修所において行なっております裁判官以外の裁判所職員に対する研修予算範囲内において、実行上これができるかどうかということについてただいま検討中でございますので、もしこれが可能であるということになれば、本年度からもさっそく執行吏研修実現できると思っております。
  18. 横山利秋

    横山委員 四番目に、競売実施方法改善でありますが、手元にあります執行吏にからむ贈収賄事件をずっと見てみますと、ほとんどが競売によって起こった贈収賄事件ばかりであります。執行吏競売ブローカー及びその関係者と、ほとんどの贈収賄競売によって起こっておる問題であります。これは競売制度競売方法根本的問題があるということを痛感せざるを得ません。この実施方法改善について御意見を伺いたいと思います。
  19. 菅野啓藏

    菅野最高裁判所長官代理者 競売方法についての改善につきましては、基本的には法律改正を伴うことの問題であろうと思いますので、私どもから直接お答えを申し上げかねますが、しかし、現行制度のもとにおきましても、先ほど申し上げました執行吏に対する監督を厳重にいたします等の方法によりまして、競売における世間からの疑惑というようなものが起きないように十分に努力いたすつもりでございます。
  20. 横山利秋

    横山委員 最後に、大臣にお伺いしたいのでありますが、要するに今回の、これをわれわれはびほう策と言っておるのでありますが、弁護士会はまっこうから反対をいたしました。そして執行吏を代表する会長はこの法案賛成をいたしましたが、それでは一体根本的に諸君はどうあればいいのかという点については、後刻全国の会合で将来あるべき執行吏の姿について答申をする、こう言明をいたしました。政府と私ども質疑応答の中から、政府執行官制度について原則として踏み切っておる、こういう答弁であります。しかしながら、この執行官制度についても、率直にいってわれわれはいろいろな難点があるということは質疑応答過程において明らかにしたところであります。難点がある、問題があるからこそ数十年をけみしてなお解決をしない点であります。ただ、われわれとしては、いろいろなそういう問題があっても、根本的に理論的矛盾なりあるいは二重性格のある今日の現状はなおざりにできないのであるから、難点があってもこれに踏み切るべきであるという観点に立って、すみやかにその研究を推進をすべき旨われわれとしては考えておる次第であります。法務大臣は、率直にいって歴代一期でさよならでありまして、また担当をしていらっしゃるお役人の皆さんも、こんなに長年かかった問題をおれのときにどろをかぶるのはいやだという気持ちが私はおありになるだろうと思います。そんなことではいつまでたっても同じでありますから、大臣の御在任中にぜひともこの問題について根本的解決をする決意をひとつ持っていただきたいと思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  21. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 執行官制度につきましては、ただいま御指摘のようにほんとうにむずかしい問題がいろいろあるのでございます。また、執行官自体を、要するに執行吏官吏制度にしました場合に、はたして人員の充足ができるかどうか、これは給料その他にもよるのですが、考えられることはいろいろなことで研究を重ねておるのでございますが、委員会の御要望もあり、われわれとしましても御指摘の点はごもっともだということはよくわかっておりますので、前向きの姿勢でこの問題と取っ組んでいく、こういうことで実は法務省も裁判所も努力いたしております。要するに実現に向かってスピードを上げて努力する、こういうことにいたしたいと思いますので、御了承願っておきたいと思います。
  22. 加藤精三

    加藤委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  23. 加藤精三

    加藤委員長 これより討論に入る順序でありますが、別に討論の申し出もございませんので、直ちに採決いたします。  訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  24. 加藤精三

    加藤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  25. 加藤精三

    加藤委員長 本案に対し、自由民主党及び日本社会党共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、本動議について提出者趣旨弁明を求めます。横山利秋君。
  26. 横山利秋

    横山委員 朗読をもって提案説明にかえます。    訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案) 一 現行執行吏制度は、執行吏公務員ではありながら、債権者等の受任者として裁判の執行事務等を処理することにより収入を得るという二重的性格の故に、実際上多くの問題発生の危険性をはらみ、これが汚職その他の不正事件発生の温床となっていることは過去幾多の実例の示すところである。   したがって、執行吏制度を現状のままで放置することは絶対に許されないところであり、速かに根本的改善を加えることの必要性は夙くより識者の指摘しているところであり、本委員会においても附帯決議等により再三これを要望している所以である。 二 しかるに政府は、執行吏制度根本的改善の必要を認めながらその作業について熱意を示さず、今回の改正案も一時をび縫するための糊塗策にすぎず到底叙上の問題の解決に役立つものではない。 三 よって政府は、速かに執行吏制度根本的改善について最善の努力を致すと同時に、執行官制度実現について特別の研究を試みるとともに、これが実現までの暫定的措置として、執行吏代理等に対する処遇の改善執行吏役場施設その他の環境改善執行吏に対する研修実施指導および監督充実競売実施方法改善等を早急に実行に移す等格段の努力を致すべきことを要望する。  右決議する。  説明は先ほどの質疑で明らかでありますから、省略いたします。
  27. 加藤精三

    加藤委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  本動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  28. 加藤精三

    加藤委員長 起立総員。よって、本動議は可決されました。  ただいま可決されました附帯決議について政府の所信を求めます。高橋法務大臣
  29. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 政府といたしましては、ただいま決議になりました附帯決議趣旨を尊重いたしまして、これが実現に努力をいたしたいと存じます。
  30. 加藤精三

    加藤委員長 次に、おはかりいたします。  ただいま可決せられました本案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 加藤精三

    加藤委員長 御異議なしと認めます。よってそのように決しました。   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  32. 加藤精三

    加藤委員長 次に法務行政に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。長谷川正三君。
  33. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 私は、現在政府によって進められております日韓会談に関連いたしまして、在日朝鮮人の方々の法的地位について、法務大臣並びに関係各位に御質問を申し上げたいと思います。  御承知のように、日韓会談は始められましてからすでに十年以上を経過いたしておりまして、日本の国内におきましてもこれについて始終議論があり、韓国の内部におきましてもいろいろ議論があると聞いておりますし、朝鮮全体から見ますと、なお一そういろいろ問題があるわけでございますが、本日はこの法務委員会におきまして、これらの進行と関連しまして、特に法的地位の問題について伺いたいと思うわけであります。  長い経過がございますので、すでに政府側からもいろいろな形での報告も出されておりますし、また、新聞等におきましてもいろいろ報道がなされております。こういう中で今日在日朝鮮人の方々も、また日本と朝鮮の親善友好ということを心から願う日本国民の立場からも、いろいろと疑問なり心配なりが生じておるわけであります。したがいまして、これから御質問を申し上げるわけですが、特にはなはだ恐縮でございますが、私は法律の専門家でございません。目下鋭意勉強中でございますが、質問にあるいは若干稚拙な点があろうかと思いますけれども、親切にわかりやすく御答弁、御解明をいただきますように特にお願いを申し上げておく次第であります。  そこで外務省から出されている資料を拝見しますと、この法的地位につきましては、一九六一年、すなわち昭和三十六年の十月二十日から再開された第六次日韓会談の中で、翌年の六二年十月五日以降、予備折衝の下部機構として法的地位関係会合を開いて、ずっと討議を続けた結果、一九六四年すなわち昭和三十九年、昨年の三月十日までに五十二回にわたる会合を開いた。そして在日韓国人の法的地位の問題の討議を継続して、昨年の一月の末には日本側から協定草案を提示した。そしていまやその討議は協定条文の作成の段階に入っておる、こういうふうにいわれておるのであります。さらにまた、最近新聞の報ずるところによりますと、今次の第七次日韓会談におきましては、在日韓国人の法的地位に関する委員会において、事務レベルによる交渉を十数回続けて、非常に煮詰まっておる、こういうふうに承っておるわけでありますけれども、まずたいへん素朴な質問で恐縮ですが、外交折衝でありましても、法的地位の問題等につきましては、当然法務省が直接、間接この交渉にはタッチせられておると思うのでありますが、具体的にはどういう形でこの交渉に参加せられているのか、それを前提として承っておきたい。
  34. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 具体的にどういう形というのは、どういう意味なんでございますか。
  35. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 たとえばその委員会に正式委員として、政府代表として法務省関係からはこういう人がこういうふうに出ておる、そういうことです。
  36. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 法務省からは入管局長及び民事局長がこれに参加をいたしております。
  37. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 わかりました。そこで法的地位問題につきまして、日本政府として、特に法務当局としては基本的な方針がおありだと思うのですが、非常に原則的な方針と申しますか、そういったものはどういうことですか。
  38. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 在日韓国人については、終戦前日本へ日本人としてまいりまして、そしてそれぞれ生活の基盤をつくった人でございます。この人々が平和条約の発効のために、日本人としての地位をみずからの意思に基づかないでなくしたわけでございます。そして日本人として受けておりましたいろいろの点を喪失をする。要するに日本人としての地位をなくしたということでございますので、この日韓会談の法的地位をきめます場合には、そうしたことを考慮に入れまして、安定した永住権といいますか、そうしたものを与えるように考えていきたい、こういうことが根本的に申し上げられるのではないかと存じます。
  39. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 ただいまのお話で、在日韓国人については、みずからの意思に基づかず、平和条約によって日本人としていろいろ受けていた事項について喪失をしたので、特にこの点を配慮して安定した永住権を与えたいというのが一番原則的、基本的な考え方である、こういうふうに仰せられたのです。その場合、いまお使いになりました在日韓国人という意味は、朝鮮の方で日本人になっておられた方すべてを指してそういうふうにお呼びになったのか、あるいは現在ある大韓民国、その国籍を名乗るといいますか、そういう在日朝鮮人の方のうちの一部をさしておっしゃっているのか。これはおそらく従来日本人とされておった在日朝鮮人の方すべての意味だと思うのですが、そう解釈してよろしゅうございますか。
  40. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 なかなかむずかしいのでございまするが、いま交渉になっております日韓交渉の御質問でございます。そこで韓国人ということばを特に使わしていただいたわけですが、この交渉ができますると、一定の期間自由に、自分は韓国人だということをきめることができる。そういう意味では、非常に幅の広い考え方もあるのでございますが、いま朝鮮人の中で、韓国人であり、また韓国人であるであろうという人についての交渉をやっているわけでございます。そういう意味お答えを申し上げたようなわけでございます。
  41. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 わかりました。一応韓国人というのは、したがって端的に言いますと、在日朝鮮人の方全部をひっくるめた意味で使っておるのではないと確認してよろしいですか。ということは、そうでないほうを何か否定するという意味でもないようですけれども、一応そういう意味で使っているというふうに解釈してよろしゅうございますか。
  42. 高橋等

    高橋(等)国務大務 これは御質問の過程でいろいろと出てくるのじゃないかと思いまするが、いまお答えいたしておりますのは、いま申し上げたとおりでございます。
  43. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 聞くところによりますと、つい最近、李東元韓国外相が、アメリカ訪問の途中日本に寄られ、また帰りにもお寄りになりまして、この法的地位問題について、今月中に仮調印を目ざして進行しておるというようなことをも報道されておりますが、そのくらい煮詰まっておる現状ですが、どうです。
  44. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 双方非常な熱意で、いま申しましたような線で話し合いを進めておるのでございまするが、何ぶんにも法的地位の問題は相当長い期間にわたる身分をきめる問題でございます。そこで、いろいろな点でまだ合意に達しない点が実はあります。また、これは合意に大体達するかなと思っておりますと、また同じ問題で何かほかの要素が出てくるとかいうようなことで、双方打開に非常な熱意を持ってやっておりますが、基本的には、いま申したような安定した永住権ということについては、気持ちが一致しているのであります。まだ問題が相当残っておるように御承知を願っておきたいと思います。
  45. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 それでは、現在までの進行の中で、問題点、もあり、合意に達しているような点もあり、また合意に達しそうになった問題が、またその後ひっくり返って困難に逢着しているというような問題もあるというお話でございます。いろいろこういう国際関係のことでありますから、むずかしい点は多々あろうと思いますし、日韓会談そのものにも、昌頭申し上げたとおり、なお賛否いろいろな議論もあるわけですが、とにかく進行しているということでありますから、具体的に少しお伺いしたいと思うのです。  特に、いま安定した永住権という問題をおっしゃったわけですが、この永住権問題について、もう少し具体的に日本側の主張、韓国側の主張、合意している点、合意に達しない点について、お伺いしたいと思います。
  46. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 せっかくの御質問でございますので、本意としては、お答えできればいたしたいのでございますが何分にも、御承知のようにただいま折衝中の問題なのでございます。この内容につきましていまお話を申し上げるわけには実はまいらないのでございます。その点は御了承願っておきたい。
  47. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 外交折衝の問題でありますから、いまおっしゃることについても私も十分理解のできる点もございます。しかしながら、昌頭に申し上げたとおり、長い期間にあたっておりますし、これについてはすでに正式の文書と申しますか、報告書でも報道されておるような点もございますし、また、新聞等ではかなり具体的な報道をなされておりまして、これらについて国民としては非常に心配もあるし、疑問もあるし伺いたい点もあると思いますので、おっしゃる意味はわかるのでございますが、差しつかえない範囲で、たとえば、いまの報道等をもとにして具体的にお伺いしますから、国民の疑義に対して、秘密外交でもないと思いますので、ある程度差しつかえない範囲のことはひとつお答え願いたいと思うわけでございます。  具体的には、この永住権付与の範囲と申しますか、特に始点時期というのですか、何月何日以前にいた者については認める認めないという点がまず問題になろうと思います。いま煮詰まった段階でこうなってきているということは、やはり微妙な段階で、今後の折衝に差しつかえがあるということであれば、その微妙なところはともかくとして、少なくとも新聞等で再三報道されていることでありますから、大かたこういう意見とこういう意見が問題点である。そういう点は差しつかえたいのじゃないかと思う。結論を伺っているのではございません。ぜひお答え願いたい。
  48. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 これらの具体的な問題につきましても、いま申し上げることは適当でないと考えますので、どうぞ御容赦願いたいと思うのであります。
  49. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 私はいろいろな資料を調べてみますと、いまの始期の点で、一九四五年九月二日とするというのが日本側の主張であり、韓国側では一九四五年の八月九日という意見があるというようなことが報道されておりますが、この点はいかがですか。
  50. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 これらの問題を含めて、いま話し合いをいたしているところでございます。
  51. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 できれば、先ほど申し上げたとおり、これは国民も非常に注視しておりますし、また今日の微妙な国際情勢、アジア情勢から見まして、全世界の注視を浴びている問題でもあります。それだけに微妙といえば微妙でもありましょうが、民主国家の外交でありますから、心配点については、その対立点なり主張点というものは、なるべくそのつど国民の前にある程度明らかにする、少なくともこの国会の法務委員会の中ではある程度のことはおっしゃっていただくのが私は筋じゃないかと思う。それが何か日韓両方の交渉の上に重大な障害になるようなことであれば別ですけれども、堂々とお互いに国を代表して交渉し合っておる際に、われわれのほうはこういう主張をしておるのだ、向こうはこういう主張をしておるのだ、できればその見通しについてまでくらいおっしゃっていただくのが当然だと思うのですが、いかがでしょうか。
  52. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 いま申し上げましたように九月二日とか八月十五日とかいうようなことを含めて話を進めておる、こういうことを申し上げたのでありますが、何分にもいま交渉をしておる最中の問題でございますので、これを公表いたすということは適当でない、こういう考えを私はいたしておりますので、御容赦を願いたいと思います。(「秘密主義だ」と呼ぶ者あり)秘密主義と言われるが、これは交渉過程におきましてはやむを得ないことと御了承願いたいと思います。
  53. 加藤精三

    加藤委員長 どうですか、同じことを繰り返して……。
  54. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 千日手みたいになってはいけませんからあれですが、御配慮はわかりますけれども、これもやはり大臣としての政治的判断でこの程度のことは当然いままで言われておるし、報道されておる。こういう主張、こういう問題点があるのだということで、むしろ国民にも早くわかりやすく解説をしていただくということが、常識的に考えても当然そうであろうと思うのですが、これは始期の点については、私の御質問申し上げたことについて、そういう点も含めてということですから、日本側はこういう主張をしておるのだ、向こう側はこういう主張をしておるのだということも、さっき申し上げたこと自体も否定されてないようで、そういうような内容も含めて話し合いをしておるのだということなんで、そういうふうに了解して、一応この点はこれ以上追及はやめて次の問題に移りたいと思います。
  55. 加藤精三

    加藤委員長 ちょっと委員長から申し上げますが、ただいま参議院法務委員会から、参議院法務委員会が開会になって、本日は裁判所法の一部改正案提案理由を聴取いたすことになっておるので、その提案理由大臣が御説明になる間だけ大臣の身柄を参議院のほうにお貸ししてほしいということでございますので、その間は政府委員から御説明申し上げることにいたしますから、どうぞ御了承願います。
  56. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 それでは具体的に問題を先に進めてみたいと思いますが、始期の点は一応それでやめまして、子孫の永住権の問題、これは相当大きな議論のあるところではないか。これについてお差しつかえない範囲で、さっき私が申し上げたように、こういう主張とこういう主張が食い違っておって、こういう点に問題点があるのだというような程度のことは、いやしくも国民を代表して法務委員会審議をしておるこの席で、そういうことまでおっしゃれないということだと、どうにもならぬと思うのですが、ひとつお願いをしたいと思います。
  57. 八木正男

    ○八木政府委員 私も実は今度の日韓交渉に、突然参りまして、まだ二、三カ月で非常に……。  率直に申しますと、韓国人と申しますか、在日朝鮮人の一番大きい関心は、自分たちは日本に生活の根をおろしているので、できるだけ日本に居続けたい、自分一代のみならず、子々孫々に至るまで日本に居残りたいという気が非常に強いわけであります。これはいわゆる南鮮の韓国系とそうでないもの、北鮮系なりあるいは中立的な連中とを問わず、共通した非常に強い希望でございます。ところが、われわれの立場から今度はそういう人たちの永住という問題を取り上げることになりますが、永住というのは入管令に規定してございます外国人の永住ということについては、取得するための前提要件であるとか、それからたとえ取得した後でも一定の事由によって、たとえば犯罪などを犯しますとそれが取り消されるという非常に厳重な条件がございます。これは御承知のとおり日本は非常に狭い国土で、そこに大ぜいの人間がひしめいているものですから、できるだけ外国人は、日本が必要とする者あるいは日本が利益を受ける者以外はなるべく日本には住まわせたくないというのが、根本的な法律の思想になっておるようであります。したがいまして、入管令の規定は非常に厳重でございまして、いろいろな退去強制の事由が非常にございます。ですから、永住を認められた外国人であっても、いろいろな点で入管令にひっかかると退去になります。朝鮮の人たちもその点が非常に頭にあるものでありますから、今度の協定で絶対に日本から退去をさせられることがない保障をつけてもらいたいというのが、韓国政府というよりも、むしろ在日韓国人の非常に強い要望のようでございます。ただ問題は、日本にはいま六十万前後といわれている朝鮮人がおるわけでございますが、日本で交渉をやっておりますと、この人たちの法的地位の協定に対する関心というのが非常に強いことは当然でございますが、ただ韓国の政府の立場から申しますと、自分の本国にいる人間ではなくて、日本に住んでいる同胞ということになりますので、その辺に在日朝鮮人、韓国人を含めてそういう人たちは、韓国側の要求というものに対してあらゆる機会をとらえて支援すると申しますか、激励すると申しますか、われわれに対する韓国側の提案を非常に強く支持しておる。  ことしの一月の半ばから会談を何回か重ねましたけれども、日本側の立場というのは、端的に申しますと、この朝鮮の人たちというのは、本来必ずしも本人が自分の意思で日本に来た人ばかりではない、むしろそういう人は少ないので、来ざるを得なかった人のほうが多い。しかも普通ならば、先ほども大臣が申しましたように、終戦と同時に、もし日本にいたければ日本の国籍を取るという機会を与えられたはずでございますが、今度の平和条約では全然そういう規定がございませんので、平和条約発効の日に自動的に日本の国籍を失うということになったわけでございます。そういう立場を考慮いたしまして、しかも平和条約まではとも一かく日本人であったわけでございますので、なるべく日本に安心していられるようにしてあげたい。ただ同時に、彼らは平和条約発効以後外国人でございますから、外国人が日本に永住するためにはやはり入管令の適用を当然受けることになります。  そこで、そういった両方の矛盾をいかにして調整するかという点から考えられて、いろいろ過去十年余の交渉の間に常に取り上げられた問題の一つが退去強制事由という議論であったわけでございます。そしてこの一定の退去強制事由に当たる者でなければ退去をさせられないという一種の保障を与えるということで過去十年以上交渉を続けてまいりましだ。現在も目下この退去強制事由の論争中であります。これは先ほど大臣も申しましたように、非常に微妙な段階、と申しますのは、ざっくばらんに申しますと、韓国の人というのけ非常に交渉がじょうずでございまして、私どもいままでたびたびそういった経験をしまして、一回大体話がついたと思うと、また今度別のことを言い出して次にひっかけて、初めに了解したことがまたもとに戻るというようなことがたびたびございましたので、現在どういう点でどんな条件で話をしているということの説明は、ちょっとしばらくごかんべんを願いたいと思います。ただ、この退去強制事由の論議と申しますのは、もっと具体的に申しますと、出入国管理令の二十四条に、外国人が退去を要求される事由が十幾つ列挙してございます。その中には非常に簡単なといいますか、軽い罪状での在留取り消しもございますけれども、そういうものをなるべく減らして、簡単なことでは——端的に申しますと、たとえばどろぼうして執公猶予になった、執行猶予にならないまでも、非常に軽い刑を受けたというような人間まで、それを理由に退去させるというのはあまりに酷だというような点から、一定の重大な点だけに、違反事件だけに、退去の事由をしぼっておるというのが退去強制の事由でございます。
  58. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 率直にお話しをいただいてたいへんありがたいと思いますが、いまのような調子でひとつ今後もやっていただきたいと思います。  実は次にお伺いしようと思っている点、退去の問題までお触れになっているわけですが、ちょっとその前に戻りまして、冒頭私の質問のときに申し上げた子孫の問題ですね。これについて大まかにいって、日本側の主張と韓国側の主張とではどういうふうに対立しておるのか。これは微妙な点はよろしゅうございますが、いまのお話の程度に、まあ一般論式に話す程度でけっこうでございますが、こういう考え方とこういう考え方があって、こういう点に一つの幅が残っているんだというような言い方でいいと思うのですが、なるべく御親切にひとつ……。
  59. 八木正男

    ○八木政府委員 この点は、韓国側の希望と申しますのは、先ほどちょっと申しましたように、極端なことをいいますと、未来永劫、子々孫々に至るまで親と同じように非常に保護された、めったなことでは退去を要求されないような立場で子々孫々に至るまで日本に永住するような保障をこの協定でつけてもらいたい。私どもの考えておりますのは、われわれが在日朝鮮人の法的地位というものに特別な考慮を払う直接の理由として、この人たちがかつて日本人であった、しかも戦争中日本におっていろいろな意味で非常に苦労を重ねられた、そういった点をもとに考えますと、結局、さっきちょっと大臣お答えの中にございましたけれども、開始時期の点等ございますけれども、要するにばく然と申せば、終戦当時から引き続いて、それ以前から引き続いていまだに住んでおる朝鮮人、この人たちにそういった待遇を与える、それがわれわれの根本的な気持ちでございます。実は問題が非常に複雑になっておりますのは、法的地位の協定が最初に始まったのは、私、以前のことは詳しく存じませんけれども、大体聞いておりますと、平和条約の発効直前だそうでございます。ですから、言いかえますと、平和条約発効の当時にこの協定をすぐつくるつもりで話が始まっておったわけであります。そのころの感じから申しますと、ちょうど平和条約が発効して、そこで日本人の国籍を失ってしまった人たちのためという気持ちから話が始まったんですから、われわれの持っております感じでは、終戦直後からずっと平和条約のころまで引き続いて住んでおった朝鮮人、それを対象に考えております。その子孫ということになりますと、われわれの考えはまた少し違います。というのは、その子供は日本で生まれたときから外国人として生まれております。親のように、途中で日本へ渡ってきて、戦争中ずっとおって、戦後までおったという朝鮮人とだいぶ性質が違いますので、われわれは、その人たちに生まれた子供というのは、日本で生まれた普通の外国人とあまり違わないじゃないか。外国人に与える普通の、一般永住権と俗に言っておりますが、出入管令で規定された外国人に与えられる永住権でございますか、それをその子供に与えることはまあいいだろう。しかし、親と同じような保護を子供に与える必要はないであろうというのが日本側の根本的な気持ちでございまして、この点はいまだに全然妥協ができておりません。
  60. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 特に離散した家族とか、配偶者に対する問題については、どういうふうにお考えですか。
  61. 八木正男

    ○八木政府委員 これは実は正直に申しまして、まだ現在まで一度も議論に出ておりません。先ほどちょっと触れましたように、法的地位の協定というのは、最初に始まった時期がちょうど平和条約の発効当時でございますから、大体、そのころの感覚で申しますと、いまから十二、三年前でございますから、御存じのようにその後たくさんの、いまお話のありましたような者を含めた、いわゆる離散家族式の者がたくさん密入国して入ってきております。ところが、この協定の始まった当座の状況では、まだアメリカ連合軍の占領が終わって平和条約が発効したという前後の時代でございますので、そういう密入国の問題はほとんどなかったわけであります。ところが、その点で法的地位の協定というものは、戦後に、現在までの間に入ってきたそういった人たちの問題というものを正面から扱っておりません。ですから、私ども議論していない理由は、それはこの協定に規定される範囲外の問題だというふうにわれわれは了解しております。いままでのところ、その問題を議論するようにという指令もわれわれはちょうだいしておりませんし、先方も一度も持ち出しておりません。しかし、これは非常に大きな問題であることは当然でございまして、いずれ、この協定と同時に議論されるかどうか存じませんけれども、当然日本政府としては処理しなければならぬ問題であることは言うまでもございません。
  62. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 私、何かで拝見したところによると、日本では、そういう場合に、配偶者であるとか親であるとか、子供であるとかいう程度の範囲、これは当然許すというのが日本の考えであるような報道を見たような記憶があるのですが、いまのお話ですと、交渉の上ではまだ議論にのぼっておらないということですが、原則的にはそういうようなお考えがあるのかないのか、それを承りたい。
  63. 八木正男

    ○八木政府委員 これは協定と全然関係ないたてまえでございますので、実際上のわれわれの日常扱っている立場からお答え申し上げます。  実はこの密航者が非常にたくさんおりまして、その中には、単なる出かせぎ的な者もおりますけれども、ただいまお話しのような離散家族のような者が非常にたくさんございます。この人たちは、その本人が自首したり、ないしは発覚して逮捕されたりした場合に、そのケースは当然私どものところに裁決の場合に上がってまいります。それを見ておりますと、まことに気の毒なケースが非常に多いわけであります。ところが、そういう人たちに対して、現在まだ協定ができておりませんので、入国を許可するということが全然問題になりませんので、一応そういう場合、審査しまして、なるべく人道的な見地から特別に在留を許可する。われわれは特在と称しておりますが、そういうものをできるだけ活用して、離散家族は日本の家族と一緒におられるようなふうにできるだけ努力してやっている。これがわれわれの根本方針でございます。ただ非常にむずかしいのは、この人たちの申し立てているのがほんとうかどうかという点でよく問題がございます。たとえば、自分は赤ん坊のときに母親に連れられて朝鮮へ帰った、そのころおやじとほかの兄弟は日本に残っておった、朝鮮に行ってから動乱があって母親はその後行くえ不明になった、自分は親戚に育てられたけれども、だれも身寄りがなくなったから日本に密航してきた。こういうことで、ほとんど半分以上はそういうのが多いのでございますが、実際にそうかというと、必ずしもそうではございませんで、向こうの戸籍なんかがあまりはっきりしていない点もございますけれども、行くえ不明といっても、調べてみると、ほんとうはぴんぴんしているとか、あるいは身寄りがないといっても大きなきょうだいがおるとか、あるいはおやじさんは確かに日本にはおるけれども、それにはまた別に日本人の二号みたいな者を持ったりして、その間にも子供が何人もいる。ひどいのはその奥さんから、この子供は何とか追い返してもらいたい、家庭の平和を乱すから引き取らないようにしてくれというようなことを裏から陳情がありましたり、種々雑多でございます。しかし、われわれとしては、できるだけ手を尽くして事情を明らかにしまして、確かに気の毒だというような場合には、できるだけそういう人たちに特別在留を許可するという方向で進んでおります。
  64. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 この離散家族問題はいろいろむずかしい問題もあるようですが、一口にいえば人道的立場に立って解決するという方向で現在処理しつつある。ただし、協定の問題としてはまだ上がっていない。詰めるとそういうふうに要約してよろしいかと思いますが、よろしいですか。
  65. 八木正男

    ○八木政府委員 大体そういうことでございます。
  66. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 次に永住権の問題について、やはり在日朝鮮人の方の関心が非常にあると私は思いますし、われわれもこれはどうなるかということを疑問に思っておる点の一つは、付与する場合、もし協定ができて永住権を付与するという場合に、手続方法、それについてはどういうふうにお考えになっておりますか。たとえばだれが証明をしてどういうふうに手続をするのか。これはいま日韓会談の中では当然韓国政府がこの証明をするといいますか、そういうことになるのですか。その辺、ひとつ明らかにしていただきたい。
  67. 八木正男

    ○八木政府委員 入管令のたてまえから申しまして、外国人が永住を申請する場合には、もちろんその国籍を明らかにしなければならぬわけでございます。国籍を明らかにするものは、普通には旅券でございます。しかし、必ずしも旅券だけではないと思いますし、具体的に今度協定ができたあとで、日本におる韓国人、この六十万前後といわれておる人たちのうちで韓国の国籍を取る人が何人おるか、私全然存じませんけれども、そういう人たちがどういう方法で韓国の国籍を持っておるということをわれわれに対して証明するかと申しますと、韓国の旅券を持っておればよろしゅうございます。それから旅券がなくても、もちろん協定ができれば当然国交が回復しますから、韓国の大使館ができるわけでございます。その韓国の大使館から本人が国籍の証明をもらってくるということも考えられると思います。どういう文書を持ってくるかは先方の都合と申しますか、先方がどういう書類を持ってくるか、こちらが判定をいたしまして、こちらがその国籍をその文書によって確認できれば、それによって処理するということになるわけでございます。
  68. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 それから、これもやはりいろいろ報道によりまして伺いますと、もし協定ができた場合に、手続期間ということが非常に問題になると思いますが、これについてはどういう話し合いが行なわれておりますか。
  69. 八木正男

    ○八木政府委員 これも実は正直なところを申すとはっきりきまっておりません。目下議論をしております。ただ、先ほど申しましたように非常に数が多いものですから、そう短期間に全部の人が登録を完了するかどうか疑問でございますので、一応ある程度の申請の期間というものをきめることは必要だろうという、この点はわれわれも認めております。ただそれを一般に五年ということがしきりに伝えられておりまして、そういう議論も出ております。そうなるかもしれませんけれども、目下のところ、まだ五年なら五年というふうにはっきりお互いがきめたところまではいっておりません。
  70. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 そこでもいろいろな大きい問題があるのですが、それはまた後ほど伺うとしまして、一応日韓会談の路線に従って質問をしていきたいと思います。  先ほど私の質問に対する御答弁の中でちょっと触れられました強制退去の問題ですね。これについてやはり両国では意見の食い違いがあるのではないかと思われるのですが、特に在日朝鮮人の方からいうと、一般的な管理令によるものによって適用されると非常に不安定になる、こういったような気持ちもあるようだというお話もあったように承ったのですが、この点についてもう少し詳しく、差しつかえのない範囲で、どういう主張が双方からなされておるのか伺いたいと思います。
  71. 八木正男

    ○八木政府委員 先ほど申しました退去強制でございますが、出入国管理令の二十四条の四項というのがございまして、そこに「本邦に在留する外国人で左に掲げる者の一に該当するもの」これに対して退去の強制ができるというふうに書いてございます。そこの「左に掲げる者の一」というのはイロハニ……とずっと続いておりまして、ヨまでですから十五くらい事由があげられております。その内容は、たとえばイというのは、旅券に記載された在留資格の変更を受けないで、要するに資格の変更を受けないでかってなことをやっている者、たとえば観光査証をもらってやってきて日本で商売をするというような場合、その査証の有効の期間が過ぎてもまだ残っている、いわゆる不法残留でございますけれども、そういうのがずっとございます。しかし、そういう理由だけでこの朝鮮の人たちの永住を取り消すというのはあまりに酷だというので、この退去強制の事由の十五もあるうちをだんだんしぼって研究してまいりまして結局——私は、はなはだこういうことを申し上げたくないのですけれども、やはりまだ交渉中のものでございますから、具体的にどういうことということは申し上げられないのでございますが、大体日本の社会に害を与え、重大な犯罪を行なった、そういう者は、幾ら気の毒な事態にある韓国人といえども、日本の社会に非常に大きな害を及ぼし、あるいは日本の国家に非常に迷惑をかけるというような人はいてもらっては困る、韓国側もそれはもちろん認めておるわけであります。それでは具体的にどういうことにするかということになりますと、やはり交渉のかけ引きになりますもので、いろいろ取り組んでやっておる最中でございますので、具体的な個々の内容についてはひとつ御容赦願いたいと思います。
  72. 加藤精三

    加藤委員長 長谷川正三委員に申し上げますが、大臣からのいろいろなお話もありましたし、それから政府委員も非常に誠意を持ってお話ししているようでございますし、この辺でひとつ何とかあれされたらどうでしょうか。
  73. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 委員長の御心配がどこにあるのか、何か外交折衝上重要なことを引き出してやってもらうのはどうとか、こういうことを御心配なさっているのか、あるいはそうでなくて、ただ時間を急がれておるのか、そういうところがわからないのです。これは非常に重要な問題です。日本と朝鮮の関係は、一般の外国人とは違って、さっき大臣も入管局長も述べておるように、また委員長も御承知のように、明治以降特殊な事情にある日本と朝鮮の関係でございまして、この点については、われわれ日本人としてもきわめて重大な関心を持ち、慎重に処置しなければならない問題だと思います。しかも私は、いま意見を差しはさまずに事実だけを一応お聞きをして、その上に立って今後意見を含めてなおただしていきたい、こういうように考えておりますので、今日はこの程度でやめろというならやめてもいいですけれども、ずっとやらしていただけるというならば、そういう形でずっと続けたいと思います。簡単にもういいかげんで済ますというわけにはまいらないと思いますので、ひとつ……。
  74. 加藤精三

    加藤委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  75. 加藤精三

    加藤委員長 速記を始めて。
  76. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 わかりました。委員長のおっしゃることは、常識的に当然われわれも心得なければならないことなので、私もある程度までいくことにして、ここから先はちょっと申しかねるといって大体問題の所在を示された程度でございますが、それに対して日本がどうするつもりなんだ、向こうはどうなんだというところまで突っ込まずに次々と移ってきておるつもりでございます。したがって、委員長のお気持ちを十分くんだ上で良識のある質問のしかたをしているつもりであります。いまの強制退去の問題については、十五項目あるうちの何項目かにしぼられる、そのうちの最重点はどことどこだということを私は聞きたいのですが、質問の発展の段階であるいは私ども意見を述べて、それに対する討論のような形の中ではさらに突っ込む場合もあるかもしれませんが、いまの段階では、この問題については一応先に進ましていただきます。委員長のおっしゃったような意向をくみまして、とりあえず数項目にしぼられてきておるようだし、特に日本に対して重大な被害を与えるとか、犯罪を犯したとかいうものに限る方向で、これについては韓国側も異議はなく、ただ具体的に詳細な問題になるとまだ話がついていない面が残っておる、こういうように大ざっぱに受け取りまして、実は私のいままで手に入れた情報でも、もうちょっと具体的なものもあるのですけれども、それに入って御質問することを遠慮申し上げて、先に進みますから、ひとつ進めさしていただきたいと思います。  それから冒頭に大臣のお話もありましたとおり、意思を反映するいとまなく、平和条約によって一ぺんに国籍を失い、外国人となった。それによって、いままで当然受けておったいろいろな処遇の問題について、これを喪失するということがありますので、その点について、やはり安定した永住という意味は、処遇の点でもできるだけ配慮をしたいというお気持ちがにじみ出ていたように思うのですけれども、永住の問題とあわせてもうちょっと具体的に伺いたいと思うのです。  処遇の問題としましては、原則的に、日本に住んでおる間に、社会的な諸活動について日本人と大きな差をつけるお考えか、むしろ、原則的にはなるべくそういう差がないようにしたいというお考えか、その点についてお尋ねいたします。
  77. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 処遇の点につきましては、まだ話がそんなに深く入っておらないようです。厚生省あるいは文部省あたりが主体となっていろいろとやっておられるということなんですが、大体日本人と同じような処遇をするということは考えておらないということを御了承願いたいと思います。
  78. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 いまお話しのように、この処遇問題は、法務省関係だけでなく、特に厚生省あるいは文部省、こういった関係がむしろ相当強い問題だと思いますので、場合によっては、これは文教委員会なり社会労働委員会のほうでお尋ねするほうが適切かもしれませんが、社会的、経済的な活動において原則的に日本人とあまり違わない待遇を与えるという考えでおるのではないのですか。いままではそれと反対の御答弁だったと思うのです。
  79. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 社会保障関係その他についてお答えをしたわけでございます。
  80. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 では、社会保障の点はひとまずおきまして、日本における社会的、経済的な諸活動についての法律的な権限といいますか、自由といいますか、そういう点についてはどうお考えになっておりますか。
  81. 八木正男

    ○八木政府委員 私、御質問を取り違えておったら失礼いたしますが、私の聞いておるところによりますと、これは居留民団系と総連系とを問わないようですが、日本で事業をやっておる朝鮮の人たちがいま一番困るというか、苦労しておるのは金融なのだそうです。これは何も朝鮮人に限らず日本人でも困っているでしょうけれども、彼らはよくわれわれのところに来て陳情していくときに言うのでありますが、銀行なんか朝鮮人というとなかなか融資をしてくれない。ことに永住権を持っているかどうかということが銀行にとっては非常に関心事なので、自分だちのように地位の不安定な外国人だと金融なんかをよくやってくれないから、そういう点をひとつ考えてもらいたいということを居留民団長などが代表してたびたび陳情に参ります。ところが、日本の法律の中には、外国人が日本で経済活動をする場合に、外国人であるがゆえに制限をするということはほとんどないようでございます。たとえばパイロット、水先案内人であるとか、鉱山の所有権とか、そういったごく特殊なものは法律上外国人はとれないわけですが、それ以外の普通の経済活動については、外国人と日本人の間に何ら差別はないわけであります。これは韓国代表部の連中のように、その辺の区別がわかる連中は全然問題にもしていないのでありますが、ただ、日本にいてそういう事業活動をやっておる朝鮮の人たちが、協定の上で何か朝鮮人に対しては特別に銀行の融資を寛大にするとか、そういうことを書いてもらえれば自分たちは非常に助かるというので、そういう意味の陳情がわれわれのところにも参りますし、韓国代表部へもきておるようであります。しかし、これは全然法的地位と関係がない問題でございますので、われわれも取り上げたことがございませんし、また取り上げたくても取り上げようがないという実情でございます。
  82. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 大体わかりました。あと、教育問題につきましては、ここでお伺いするのもちょっと筋がどうかと思いますから省略しまして、財産の搬出問題というのですか、この問題についてお伺いしたいと思うのです。これについては、いま財産、それから現金、こういうところが問題だと思いますが、どのような状態に話し合いが進んでおるか、お伺いいたしたいと思います。
  83. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 財産の搬出問題についても、いま話し合いをしておる最中でございまして、まだ意見が一致をいたすところまでいっておりません。
  84. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 どうも大臣答弁をされると煙幕みたいになってしまってあれなんですが、いろいろ報道されていますね。たとえば現金の場合五千ドルと一万ドルとの対立になっているということは御承知のとおりです。それから搬出問題については、原則的に全財産持っていってよろしいということで、これは意見が一致しているというふうに聞いておりますが、その辺はもう報道もされていることですから、差しつかえなかったら、ひとつ大かたこうなっているけれども、こういう点が問題が残っていますという程度のことはお答えいただいていいと思うのです。
  85. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 財産の搬出問題等はまだ議題に十分なっておらないのであります。一万ドルとか五千ドルとかおっしゃいましたが、そういうような点も含めてこれから話をしていく、こういうことでございます。
  86. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 それでは、財産問題はまだいろいろそういう説はあるけれども煮詰まっていないということで、これ以上お伺いすることは一応本日はやめます。  次に国籍問題ですね。これはやはり一番重大な問題になると思うのですが、これは韓国側は、おそらく在日朝鮮人を全部韓国人ということできちっとその国籍に入れるというような主張をしているのではないか、そういうふうに伺っておりますが、日本はどういうふうにお考えになっているのか、この国籍問題についての状況をひとつお聞きしたい。
  87. 加藤精三

    加藤委員長 長谷川委員に申し上げますが、それはすでに質疑応答があった事項なんじゃございませんか。
  88. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 韓国籍を得られるかどうか、あるいはどういうようにするかというようなことは、まだこの議題の話には全然なっておりません。また、これはどういうふうになるのか、まだ先行きの見通しも持っておらないわけでございます。(「そんなことはないよ」と呼ぶ者あり)私はほんとうのことを申し上げておるのであります。国会でそんなあやふやな、いまのように、そういう話は出ておらないのだということは断定的に申し上げておることですから、その点におきましては私責任を負います。
  89. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 いまのお話は、特に法務大臣がぬけぬけとうそを言うということでは日本の国はひっくり返りますから、そんなことはないと思うのですが、ということは法務大臣大臣になられ、第七次会談の中で最終的に煮詰める段階で、たとえば条文的にまだこれは議題になっていないということかもしれませんけれども、この十何年かの間の交渉の経過では、こういうことはさんざん言ったり聞いたり話題になったはずだと思うのです。ですから、いまの煮詰まった微妙なところがもしおっしゃれないなら、これは一歩譲りましても、やはり先ほどから入管局長から親切に答弁していただいておりますように、原則的にはこういう主張、こういう主張があって、こうなってきている。だが、いまのところこれから先はちょっと言えないのだという程度のことは御答弁いただいていいと思うのですが、ぜひひとつお願いしたい。
  90. 加藤精三

    加藤委員長 長谷川委員に申し上げますが、すでにぎりぎりのところまでは申し上げているようですから、あんまりしつこくおっしゃって政府委員を苦しめないように……。
  91. 八木正男

    ○八木政府委員 私、前任者から申し送りを受けました中にございましたのですが、いつですか、二、三年前のことだろうと思います。その当時韓国側は、在日朝鮮人はみんな韓国人だというたてまえを非常に強くとっていた時代があったようでございます。その当時の法的地位の委員会で向こう側が主張した案文として、在日朝鮮人は大韓民国国民であるという一条があったようであります。日本としては、それは日本の政策と申しますか、考え方と全然違うものですから、そう書いてはおかしい、ここは日本におる大韓民国国民はというならばいいと言ったそうです。そうすると条文は、日本におる大韓民国国民は大韓民国国民であるという条文になります。そこでさすがに韓国も、そういう条文では書いてもしかたがないというのでやめたそうであります。それは二、三年前のことでありますが、今度の会議中には向こうはそういうことの規定の条文は全然出しておりません。私どものほうもそういうことを規定するつもりはございません。
  92. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 その点でいまの程度はわかりました。そこでちょっと先に戻るのですが、一般外国人の財産取得の問題ですが、いまごく特定の指定されたもの以外についてはほとんど制限がないというお話がございました。したがって、今回の交渉の中で特にこれについて、それとは別に制限を設けるというようなお考えはあるのかないのか、ちょっと念のために伺っておきます。
  93. 横山利秋

    横山委員 議事進行。委員長に申し上げますが、われわれ国会議員としては質問する権利を常に自由に保持しております。それに対して政府側答弁をするかしないかについては、ある程度政府側には自由裁量権はないとは言いません。けれども一言一言委員長委員の質問に対して制肘されるということは、委員長が一体いかなる立場であろうかということをわれわれは疑う。われわれは政府側の代表者として委員長をいただいておるわけではない。委員長はむしろ政府側の自由裁量権といわれるようなことを制限をして、なるべく本院の審議を円滑にされるように、政府側答弁を渋ったならば、それを促進してこそ委員長であって、本院の委員長であるにかかわりませず、政府側に一々味方して本委員会審議を渋滞させるということは言語道断であります。委員長の十分なる御反省をお願いします。
  94. 加藤精三

    加藤委員長 横山委員に申し上げますが、議事には本日の予定にたくさんの質問者がございまして、そういう関係から議事が円滑にすらすらといくようにしたいのでございます。それには同一の質問を二回もおやりになるということは——私は不敏なりといえども、質問の内容だけはがっちり理解して、そうして議事の運営をしているつもりなんです。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  95. 加藤精三

    加藤委員長 速記を始めて。
  96. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 私の質問のしかたがうまくないために、同じ質問をしたというふうに、あるいは受け取られておれば申しわけない。ですから冒頭に、表現等で稚拙な点があったらお許し願いたいと申し上げたわけです。しかし、同じ質問を繰り返してはいないつもりです。わからないことがあるので。さらに伺っておるので、決して議事を何か戦術的に引き延ばすために、聞かでもいいことを聞いているというようなことでは毛頭ないのでありまして、私の伺いたいことは、伺っていることの十倍以上もあるのですが、それを十分の一下に圧縮して、しかも突っ込みたいところも突っ込まずに、委員長の配慮も心に体しながら、やっているつもりでありますから御了承願います。  ただいま質問申し上げた在日朝鮮人については、財産取得権について特に一般と違うような制限をする意思があるか、何かそういうような政令が出るというようなことでだいぶ心配をした向きも過去にあったやに聞いておりますので、この点についてひとつ明快な御答弁をいただきたいと思います。
  97. 八木正男

    ○八木政府委員 われわれの立場は、韓国民も普通の外国人には変わりないと申しますか、外国人でありますから、普通の外国人に対して認められている経済活動と別の制限を朝鮮の人に加えるという気は毛頭ございません。ただそういう条文として別に議論したこともございませんけれども、もしあるとすれば、将来向こうがそういう条文の規定を要求したとしましても、われわれとして考えられることは、朝鮮の人がほかの外国人に比べて経済活動の上で制限を受けるということは全然考えておりません。
  98. 加藤精三

    加藤委員長 きょうはずいぶんたくさん質問者がございますので、なるべく短くお願いいたしたいと思います。
  99. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 さっき申し上げたとおり十分の一くらいに圧縮しまして、日韓会談の法的地位問題に関連する事項について御質問申し上げてきたのですが、そこでもう一つ、非常に重要な問題であり、私どもの心配をしておる問題は、三月七日付の朝日が社説でも指摘しておるのでございますが、それは「在日韓国人と永住権の限界」という見出しで出ておりまして、この中でこういうことを言っておるのです。「これに関連して重要なことは、在日韓国人に与える処遇と北朝鮮系朝鮮人との関係である。韓国系と北朝鮮系の比率は必ずしも明確ではないが、いずれにしても相当数の北朝鮮支持者が在住することは事実であり、北朝鮮系の朝鮮人にどういう処遇をするかということは、韓国側がかりに関知しない問題だとしても、日本政府としては十分な対策を用意する必要がある。」こういうことを書いております。これは非常に私どもも重大な関心を持つ点でありますし、朝鮮の友人の方々も非常に心配をしておられるところであります。この点について、おそらく日韓会談の中で韓国側としてはそういう問題についてはいろいろ注文をつけられるのじゃないかと思いますが、日本政府側としては、これらについて一応日韓交渉の中ではいわゆる韓国人という表現によってなされておりますが、在日朝鮮人の方々の中にそれからはみ出す部分が相当あるとすると、その方々についてはどういうふうにお考えになっているか、また、この日韓会談がもしかりにまとまると、それを機会に韓国籍を強制するというような事態が出てきはしないか、あるいはこれによって韓国側に非常な差別待遇が出るというようなことが、非常に在日朝鮮人の方々の間に不安を起こしたり、日本国民の間にも非常な心配が起こっておる。こういう点がございますので、これに対しましてひとつ政府側の基本的な態度を明快にお聞かせいただきたいと思います。
  100. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 協定によりまして、将来日韓会談ができましたあとで、韓国籍を取得しない人が残ってくるだろうということは、もちろん想像されるところであります。こうした朝鮮人を、やはり先ほど申しましたような特殊の事情によって日本人としてやってきた者が、平和条約発効によって、自己の意思にかかわらないでその地位がなくなったというようなことを十分考慮に入れまして、処遇の問題を、居住権その他の問題を考えていく、その考えの根本にはそうしたことをやはり念頭に置いて考えていく、こういうつもりでございます。ただ、この日韓会談ができまして法的地位の問題がきまりましたあとで、この問題は検討すべき問題である。いまそれと切り離してとやかくいうことではない。ただ、いま申し上げましたような基本態度でこの問題も善処したい、こういうつもりでおるわけでございます。
  101. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 委員長の御心配にも御協力申し上げて、本日の質問は一応終わりたいと思いますが、いま法務大臣からは、日韓交渉は交渉として進める、それからはみ出す部分の問題については、やはり大前提としてのいわゆる特殊な事情というものを十分考慮して、公正な立場でお考えになるというふうな御答弁だったと思いますので、一応それを信頼し、ぜひその点については今後——私どもは率直に申し上げますと、いまそうおっしゃっても、韓国と、朝鮮の半分の部分と先にこういう問題を協定することによって、残された部分が不当な圧迫を受けたり、将来にいろいろな禍根を残す。そういう意味で日韓会談そのものにもわれわれは疑問を持っておるわけでありますけれども、いまの御答弁によって、少なくともその問題については心配がないのだ、こういうふうにおっしゃっているように受け取りましたので、一応答弁はおくとしまして、本日の質問はこの程程にとどめます。
  102. 加藤精三

  103. 横山利秋

    横山委員 先般といいましても、前大臣の賀屋法務大臣に私が本件に関して質問をいたしたことがあります。それを引用いたします。私は、「日本政府として基本的には、南であろうと北であろうと、いろいろな利益供与について差別はしない、こういうのが日本政府の基本的立場と理解してよろしゅうございますか。」賀屋国務大臣「それは人道的考慮に基づきまして、在日朝鮮人の生活その他を考える立場におきまして基本的に変わりはないのです。」こういう答弁であります。この考え方についてはあなたも変わりはないでしょうね。
  104. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 それは、お聞きして失札なんですが、法的地位に関する今後の協定に関して、並びにそのあと始末についての問題の御質問と承って御答弁してよろしゅうございますか。
  105. 横山利秋

    横山委員 そのとおりです。
  106. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 協定のある外国人と、ない外国人の間では形式的にもいろんな差別がある、これはやむを得ないことだと思うのです。   〔委員長退席、田村(良)委員長代理着席〕 また、一方は強制送還できるが、一方は受け取らない、こういうような違いも現実にはあるわけですね。まあそのようないろいろな問題があるのでございますが、根本的には賀屋さんが答えましたようなことを基本的な考えの中へ入れておる、こういうように御了承願ってけっこうです。
  107. 横山利秋

    横山委員 私があなたのお気持ちをお伺いしたいのは、要するに韓国側と交渉していらっしゃるときに、常に在日朝鮮人六十万がどういう結果になるか、もっと端的にいえば、朝鮮人民共和国の国籍を希望しておる人々についての配慮が常にあるか。もしその配慮が全然抜きで、韓国と交渉しているんだから、そちらはどうなってもいいとは言わぬけれども、それによって生ずるであろうトラブル、私は国民の立場から、国内政策の立場からむしろ心配しておるのでありますが、その配慮というものは常に大臣の脳裏にあるかどうかということをお聞きしておる。
  108. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 これは最終的には、前委員お答えしましたように、日韓交渉がまとまれば、まとまったあとで考慮を至急にきめなければいけない問題でありますが、やはりこうした問題につきましては、絶えず私は考えておりますということを申し上げておきます。
  109. 横山利秋

    横山委員 それでは時間がございませんので、ずいぶんこの問題でお伺いしたいことがありますけれども、割愛をして後日に譲りまして、司法試験法の問題について政府の態度がきまったそうでありますから、念のために伺います。新聞で承知するところによりますと、政府は今国会に司法試験法の一部を改正する法律案提案することを断念したと伝えられますが、いかがでございますか。
  110. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 司法試験制度改善については現在も法務省でいろいろと検討をいたしております。今国会にぜひ司法試験法の一部を改正する法律案提出して御審議を仰ぎたいという非常な熱意を実は持っておるのでございます。この細目につきましては、これは具体的な内容がきまりまして、また法案でも出ますればあらためてお話をいたすことになり、御説明申し上げるわけでございますが、その骨子は、臨時司法制度調査会の意見及び法務大臣の諮問に対しまする法制審議会の答申を骨子といたしております。ただ御承知のように、この問題につきましては各方面でいろいろな実は資否両論があることも十分に承知をいたしております。そういう意味でいま各方面の理解を深めるためにいろいろと努力をいたしておる最中でございます。ある一定の目安が立つまでは法務省が独走するという形は私は避けていきたいというつもりでおりますが、法案を出したいという非常な熱意を持っておるということを申し上げておきます。
  111. 横山利秋

    横山委員 国会の初めのころならばそれも了承できるのですが、もう三月の半ば、予算が通過すれば参議院選挙、こういう条件下にあります。したがいまして、形式的にとにかくこの国会へは出しておきたいということなのか、それとも、まあ新聞の伝うるところが誤報ではないと思いますが一政府提出法案の期限というものはもう原則的には終わっているわけでありますが、延期願いを出しておるかどうか知りませんけれども、新聞の伝うるところでは、今国会提出することは断念したと伝えられておるのはいかがですか。
  112. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 この受験者等のいろいろな関係が長期にわたって無用な不安動揺を起こすかと思います。これは法律ができましても、数カ年間は施行が延びるわけでございます。というようないろいろな点を考えまして、法案提案をいたしまして、とにかく御審議をお願いしたい、こういうつもりでいま準備を進めております。しかし、いま申し上げますように、各方面との意見の調整を要する点がまだ残っております。この点についていまいろいろと努力を続けておることを申し上げておきます。
  113. 横山利秋

    横山委員 まだことばがはっきりしませんけれども、出すのか出さないのか。私どもは断念をしたということに承知をしておるのですが、どうですか。出すのですか、出さないのですか。
  114. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 これはぜひ出したいという法務省の考えでございます。
  115. 横山利秋

    横山委員 そこで各方面のあなたのおっしゃるいろいろな意見の中で、非常な反対論がありますのは、そもそも試験制度については戦前と戦後とは非常に違う。そうして戦後は司法研修所における研修制度に統一して判事、検事、弁護士等の素質を高めるように努力をしてきた。それがわが国司法制度の根幹をなしておる。これはその根幹をゆすぶるものだという主張について、あなたはどういうふうに反駁をしておるのですか。
  116. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 いろいろな意見がございます。その中には誤解もあると思います。そうした誤解につきましては十分これを解くように努力をしておるのでありますが、御承知のように二年間にわたりまして臨時司法制度調査会において有識者が集まってきめたわけでございます。しかもこれは法曹の一つの行き方として重要な部分を占めておる決定だと私は思うのであります。さらに法制審議会におきましても、いろいろ多数の人々で議論をしてきまったことでございます。そういう意味からいきますと、いま各方面でいろいろな御意見もあるでございましょう。ただ、その御意見につきましても、十分にこちらの考え方を申し上げるという努力はいたしております。いま申し上げましたようなことで、これはぜひ提案をいたしたい、こういう考えでおるわけであります。
  117. 横山利秋

    横山委員 実際問題としては、弁護士が足らぬ、あるいは裁判官が足らぬということについては、われわれもよく承知をしておる。しかしながら、この研修をするワクというものは、司法研修所の収容能力という限界があることは皆さん御承知のとおりであります。その収容能力の限界をそのままにしておいて、天下りのやれ弁護士を、あるいは裁判官を、ということはおかしなことだ。現実認識から遊離しておる。むしろ、いまやるべきことは、司法研修所の収容能力をふやして、そして優秀な人材というものをどんどんと世に送るべきであるという議論が、私は説得力があると思うがいかがですか。
  118. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 司法試験法が通過をいたしました場合に、二年間の猶予期間がございます。御指摘のような点につきましても十分整備をせねばならぬ、こういう考えでおるわけであります。
  119. 横山利秋

    横山委員 ちょっといま聞き落としましたが、司法研修所の収容能力が実は底をついているという点についてはどうなんですか。
  120. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 収容能力というと、どういうことなんでしょうか。
  121. 横山利秋

    横山委員 司法研修所の建物、先生、卒業生の数字、そういう意味であります。
  122. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 いま申し上げましたように、建物その他の問題は二ヵ年間に整備をしなきゃならぬと考えます。それとともに、ただいまもお話しのように、裁判官あるいは検察方面の検事といいますか、人員不足しておりますために、しばしばこの委員会におきましても裁判の遅延というようなことについて御指摘を受けておる。どうしてもこうしたものを充実さしていきまして、これは量だけの問題ではないと思いますが、とにかく充実さして、そうしていまの裁判の進行その他につきましても十分御期待に沿うようにやりたいという趣旨でございます。
  123. 横山利秋

    横山委員 簡易裁判所の事物管轄を変更するという方法についてもごうごうたる問題が起こっておるわけであります。こういう安易なやり方については感心をしないという声は非常に強いのですが、法務大臣はどういうふうにお考えになるのですか。
  124. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 安易なやり方だと御意見をお述べになりましたが、反論して恐縮ですが、先ほど来申しますように、これは二ヵ年間にわたります臨時司法制度調査会の多数の日本の有識者によって述べられた、決定された意見でございます。政府に答申された意見なんです。また法制審議会におきましても、やはり真剣な討議を経てきまったものでありまして、決して安易な考えでやるというようなことではないように御承知を願いたい。私もそう理解しております。
  125. 横山利秋

    横山委員 答申は非常に慎重な書き方をしておりまして、多数意見だとか、そういうふうな書き方をしておるのでありますから、満場一致でこれがきまったような、天の声のような大臣のお話のしかたは私はどうも納得できない。あわせてお伺いしますけれども、たとえば工業所有権に関する裁判の管轄を東京地裁だけでやる、そうして全国の管轄をなくしてしまうというようなことですが、実際問題として、こういう工業所有権のような特殊な問題についての紛争を簡易化するのであるか、複雑化するものであるかという判断については、私は大いに異論がある。いかがですか。
  126. 鹽野宜慶

    ○鹽野政府委員 工業所有権の管轄の問題について御指摘がございました。これも御指摘のとおり臨時司法制度調査会で意見提出されている問題でございます。この点につきましても、法務省といたしましては、できるだけ早く結論を得たいということで努力いたしております。ただ、ただいま御指摘のように東京だけに集中するのがいいのか、もう少しある程度幅を持たせて集めるのがいいのかという問題もございます。それから集中するといたしましても、競合管轄という形で、地方でも裁判できるし、必要があれば都会地に集めるというふうな方法も考えられますので、そういう点についてただいま検討いたしておる次第でございます。
  127. 横山利秋

    横山委員 委員長から御注意がありましたから最後にお伺いいたしますが、この問題について大臣なり関係者の御意見をゆっくり伺いたいと思うのでありますが、少なくとも国会もいまや三月の中旬、商法その他重要な案件が、最後の段階になって、なおかつこの懸案の法律提出できないということについては、国会側のわれわれとしても、法案についての十分な審査について責任が持てないということを申し上げるよりしかたがないと思う。大臣が出したいという気持ちはわからないではありませんけれども、いますぐ大臣がおっしゃるようにこの問題についての調整が済んで、そうして提案をされるという見通しはなさそうでありますけれども、そうだといたしますならば、国会会期末にこれらの法案を上程をなさって、われわれに審議責任を転嫁されるというようなことはいかがなものでありますか。もしそうでありますならば、この国会をお見送りになって——ただ政府責任法案提出するだけに全力をあげて、継続審査になり、廃案になるということはあまり芳しいことではなかろう。この際ひとつ十分に調整を済みますまでは、急いだり何かなさらないように、またかりに国会提案をされたとしても、われわれに十分な審査の時間を与えて、それを強行したりなんかするということは絶対避けるべきだと考えますが、御所見を伺いたい。
  128. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 いろいろその点も実は考えております。御意見は十分承っておきます。
  129. 田村良平

    ○田村委員長代理 本日の議事はこの程度にとどめまして、次会は公報をもつてお知らせいたします。本日はこれにて散会いたします。   午後一時八分散会