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1965-02-16 第48回国会 衆議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年二月十六日(火曜日)    午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 加藤 精三君    理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君    理事 小金 義照君 理事 小島 徹三君    理事 田村 良平君 理事 坂本 泰良君    理事 細迫 兼光君 理事 横山 利秋君       四宮 久吉君    中垣 國男君       森下 元晴君    井伊 誠一君       片島  港君    神近 市子君       長谷川正三君    藤田 高敏君  出席国務大臣         法 務 大 臣 高橋  等君  出席政府委員         検     事         (大臣官房司法         法制調査部長) 鹽野 宜慶君         法務事務官         (人権擁護局         長)      鈴木信次郎君  委員外出席者         自治事務官         (行政局行政課         長)      倉橋 義長君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局         長)      寺田 治郎君         判     事         (最高裁判所事         務総局人事局         長)      守田  直君         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 二月十六日  委員草野一郎平君及び山本幸一辞任につき、  その補欠として藤枝泉介君及び藤田高敏君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員藤田高敏辞任につき、その補欠として山  本幸一君が議長の指名委員に選任された。 同日  理事唐澤俊樹君同日理事辞任につき、その補欠  として田村良平君が理事に当選した。     ————————————— 二月十二日  訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律  案(内閣提出第六四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一二号)  訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律  案(内閣提出第六四号)  法務行政検察行政及び人権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 加藤精三

    加藤委員長 これより会議を開きます。  この際、おはかりいたします。  理事唐澤俊樹君より理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 加藤精三

    加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。  ただいまの辞任に伴う理事補欠選任につきましては、先例により委員長において指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 加藤精三

    加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、田村良平君を理事指名いたします。      ————◇—————
  5. 加藤精三

    加藤委員長 次に、訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案議題といたします。
  6. 加藤精三

  7. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案についてその趣旨説明いたします。改正の第一は、訴訟費用等臨時措置法規定による執行吏手数料及び書記料の額を増加しようとする点であります。  御承知のとおり、執行吏手数料及び立てかえ金については、執達吏手数料規則にその規定があるのでありますが、現在、その額については、訴訟費用等臨時措置法の定めるところによることとなっております。現行の額は、昭和三十八年四月二十日から施行された同法の改正規定によって定められているものでありますが、その後の経済事情推移等にかんがみますと、なお低きに失するものと考えられますので、このたび、一般勤労者の所得の増加その他諸般の事情を参酌し、差し押さえ、競売等についての手数料及び立てかえ金中の書記料について増額を行なおうとするものであります。今回改定しようとする各個の手数料中若干のものにつきましては、その行為の実情を考慮して、やや高率の増額をはかることとしておりますが、今回の改正によりまして、執行吏手数料等収入は、全体として約三割五分程度増加するものと見込まれるのであります。  改正の第二は、一般公務員に準じて、執行吏の受ける恩給年額増額しようとする点であります。執行吏は、一般公務員の場合と同様に恩給を受けることになっておりますが、政府におきましては、最近の経済情勢にかんがみ、退職公務員恩給年額について所要の是正を行なう等の必要を認め、その恩給年額の計算の基礎となる仮定俸給年額を、現行の額にその二割に相当する額を加えた額に改定する等の措置を講ずることとし、恩給法等の一部を改正する法律案を今国会に別途提出いたしておりますことは、御承知のとおりでありまして、執行吏恩給につきましても、これに準じて、その年額を引き上げる等所要措置を講ずる必要があると考えられます。そこで、昭和三十六年九月三十日以前に給与事由の生じた執行吏恩給について、その年額を、一般公務員恩給についての現行仮定俸給年額に見合って定められている十二万八千円にその二割に相当する額を加えた額である十五万三千六百円を俸給年額とみなして算出した額に改定することとするほか、一般公務員恩給の場合と同趣旨措置を講じようとするものであります。  以上が訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  8. 加藤精三

    加藤委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に行なうことといたします。      ————◇—————
  9. 加藤精三

    加藤委員長 次に、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。横山利秋君。
  10. 横山利秋

    横山委員 大臣お急ぎのようでありますから、大まかに大臣にただしたい点を一、二だけ申し上げて、お帰りを願うことにいたします。  この裁判所職員定員法の一部を改正する法律案は、要するに簡易裁判所判事の人数を十六人増加するという簡単な法律案でありますが、この提案理由の中に、ほかの文章にもほとんど例のない文字が入っておるわけであります。それは「人員充足見通し等を考慮した上、」ということであります。「人員充足見通し等を考慮した上、」というのは、本委員会で累次にわたって裁判所職員あるいは法務省職員について議論いたしますときに、話題の中心になっておるわけであります。要するに数ばかりふやしても人が来ないじゃないか、なぜ来ない、給料が安いからだろう、そういう堂々めぐりを尽くしておるわけであります。現に簡易裁判所判事は、現定員七百十五名のうち、現在員が六百九十九名、欠員が十六名となっておる。まことに妙なことに欠員が十六名ちょうどある。そこへ定員を十六名ふやすということだ。そうすると、十六名必要ならば何も欠員を埋めたらいいじゃないか、三十二名がどうしても必要だということらしい。それなら、いまですら十六名足らぬのに、三十二名をふやす人員充足見通しが一体あるのか、まことにみみっちい話でありますけれども、これが現状なんです。これは推して知るべしでありまして、法務省から出されました参考資料を見ますと、高裁で判事十六名欠、地裁で判事十一名欠、判事補六名欠、家裁で判事十三名欠、判事補六名欠、簡裁でいま申しましたように十六名欠、裁判所定員は残らず欠員じゃないか。何でこんなことが放置されておるのか。本委員会附帯決議をもって、このような欠員に至る事情というものをとくと考慮して、ひとつ給与の是正なり、あるいは資格は持っておっても現職をやっておらぬ人がだいぶおるではないか、法務省の中で裁判官資格を持っておりながらそろばんはじいたり、予算をはじく必要はない。足らぬなら、そうした人たち現職へ回ってもらえ、こういって強く附帯決議もしてある。それが十分できないくせに、欠員十六名も放置しておいて、もう十六名をふやすという真意は一体何か。私は政府側立場に立って質問をしておるのでありますが、私ども立場立てば、裁判仕事がずっと順延をしておって、いまでもずいぶん足りない。もっと能率的な裁判をやるためには、十六名はおろか、百六十名でも足りないと思っておる。こういうような堂々めぐりの中で、こんなみみっちい法律案を出して、しかも理由説明書の中で大臣もお読みになっておるのですが、「人員充足見通し等を考慮した上、」という情けない文章を出しておいて、てん然としておってもらっては困る。これが私の言い分であります。大臣の御所見を伺いたい。
  11. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 一応実情につきまして裁判所のほうから説明させまして、それからなおお答えいたしたいと思います。
  12. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 ただいま横山委員からお話のございました点、まことにごもっともの点ばかりでございます。いまお話もございましたように、前々からこの委員会でもそのお話は承っておるところでございまして、私どもとしても十分その点を自覚いたしまして、いういろ努力もしてまいったわけでございます。特に御承知のとおり、先般内閣に設けられました臨時司法制度調査会は、いろいろな問題点のうち、いまお話しの裁判官検察官——当面裁判官でございますが、裁判官をいかにして充実し、また質をよくするかということが非常に重要な問題点一つとして取り上げられておったわけでございます。そういたしまして、その結論といたしましても、裁判官増員する必要がある。しかしながら、訴訟の適正迅速をはかるためには、裁判官増員ということがいわば一番最初に出てくる問題、というよりは、むしろいろいろな方法をあわせとりながら裁判官増員をもはかるべきである、こういう結論になったように承っておるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、増員をはかりますとともに、さらに他の方法についても、運用上のものは私どもでできる限りいたしたいと考えておりますし、また、立法を要するものは法務省にお願いたしまして、いずれ国会で御審議をいただく、かような手はずになると考えるわけでございます。  なお、増員の点につきまして充員の問題でございますが、この点につきましても、臨時司法制度調査会ではいろいろ意見が出たわけでございます。そうしていまお話のございました給与待遇がよくないということが非常に大きな原因の一つであるということはもとよりでございますけれども、しかし、いま裁判官に対して希望者が少ないということは、単にそれだけではないので、もっといろいろな問題があるのじゃないか、たとえば待遇といいますと、すぐ、給与報酬ということになりますけれども、そういうことばかりではなしに、まず執務環境をよくするのだというようなことも非常に重要な要素であるということで、いま御審議いただいております予算では、特に研究調査と俗に私ども呼んでおりますが、執務環境整備のために一億八千万というような予算を計上いたしていただきまして、こういうことで環境をよくしていくということが、一つには裁判官希望者もふやし、また裁判所執務もよくなる、こういうような方法もとられておるわけでございます。なお、先般の給与改定裁判官待遇をかなり上げていただきましたことも、これに関連いたすわけでございます。さらには、ただいま法制審議会等司法試験改正が論議されておるようでございますが、そういうようないろいろな方法裁判官に少しでも優秀な人を多く採れるようにする、こういう方法がだんだんとられてまいりますれば、ここ数年、すなわち、臨時司法制度調査会意見が逐次実現いたしてまいります段階では、裁判官希望者も次第にふえてまいり、充員も可能になってまいるのじゃないかと考えております。さしあたり本年度といたしましては、先般大竹委員の御質問に対して説明申し上げましたとおり、現在の欠員に加えて簡易裁判所判事十六人程度であれば充員見通しが十分ある、こういうことで一応十六人ということで妥結いたしたような次第でございます。将来はますますそういう方向に進むことと考えておるわけでございます。
  13. 横山利秋

    横山委員 だんだんよくなるからだんだん充足するだろう、ものはだんだんですけれども、これは委員会で毎期毎期だんだんという話をされる。まだいつかの話のようにとんとんとよくなるというならいいけれども、だんだんよくなるというのでは、だんだん公務員給与も上がれば、だんだん物価も上がっていくのですから、ちっともこちらだけはよくならないのですよ。いま訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案提案理由説明書大臣も自分でお読みになって、この根本問題はわかっておると思うのですよ。執行吏国家公務員ですね。ところが、執行吏収入は、国家からもらうよりもよそからもらうほうが多い。そうでしょう。だからいろいろな問題が常に絶えぬ。何も裁判官欠員状況のみならず、執行吏だってあらゆる問題が、法務省関係裁判所関係、いろいろな問題がめぐり回っていけば、それは給料だけじゃないでしょう。建物を建てるのもいいでしょう。いろいろな独特な環境整備をするのもいいでしょうが、そういうものがすべてうまくいっていないから沈滞ぎみがある、欠員がある。そうして執行吏は、他に報酬を求めるにきゅうきゅうとする。こういうことになっていくと思う。ですから、この定員充足を何とかしなければならぬ。ネコよ、しやくしょ、太鼓をたたいてやったところ、いやしくも提案理由の中に「人員充足見通し等を考慮した上、」ということは、なかなか集まらないから、さしあたり十六人だ、集まるものならもっと多くしたい、こういう意味でしょう。あなた方も、大臣がこういうことをお読みになるというのは、まことに情けない話だと思うけれども、本来ならば十六人じゃ困るのです。わかっているはずです。それを、人が集まらないから、かれこれ勘案して十六人ぐらいなら集まるだろう。欠員が十六人、さらに十六人で三十二名、そうですね。そのぐらいなら、給料が安くても来ると思うから、すみませんが皆さん何とか賛成してくれと、こういうことじゃないですか。情けないですね。こういう提案理由をお読みになる大臣の心境を伺いたい。
  14. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 まことに御理解のある御意見をいただきまして、感謝を申し上げます。  御承知のように、近年、法曹の中で裁判官検察陣から民間の弁護士等に抜けていく人が非常に多いことは事実であります。これは御指摘のように、収入とかあるいはその他の待遇の問題にももちろん関係があると思いまして、このたびの給与改定にあたりましても鋭意増額をはかりますとともに、その他の待遇につきまして、たとえば執務室の問題であるとか、あるいはまた、まだ不十分ではありますが、宿舎の問題等につきましても、こまかい配意を逐次重ねてまいっておるのであります。しかし、御指摘のように十分でないことはまことに残念でございます。それとともに、司法制度調査会でも答申の出ておりますように、とにかく法曹人口が少ないのだ。何とかして法曹給源をふやしたい。そういうためにはこの司法試験制度につきまして改正をいたしたいと考えて、目下準備中でございます。ただいま法制審議会で議をまとめておりますが、来週ごろになりますれば正式に提案の運びにいたしたい、こういうように考えて進めておるようなわけでございます。そうした、法曹へ入りたくてよそのほうへ流れていく給源をできるだけ確保するという方面につきましても、努力をいたしてみたいと思います。これはいずれ、いろいろな御意見があろうと思いますが、法案が出ました際に御審議をお願いいたしたい。御指摘の点はまことに情けない状況であることは、そのとおりでございます。  以上お答えいたします。
  15. 横山利秋

    横山委員 大臣、私はいま簡易裁判所の問題だけ、判事の問題だけ言っているわけではないのですよ。先ほど並べたてられました欠員状況を、これは裁判官ですけれども、ほかの法務省並びに裁判所職員についても、他の省に類例がないくらいの状況なんですね。私ども、いつの委員会でもこんな同じことばかり言っているのは、全く情けない話だと思うのです。質問する私どもも情けなければ、あなたのほうもまことに情けない話だろうと思うのですね。今度は簡裁判事の十六名の増員合計三十二名の欠員を埋めることになるのですが、裁判所にお伺いいたしますが、いまの大臣の話を聞いても、やはりだんだんというような話なんですが、少なくとも欠員充足するために全力をあげられるのか、充足見通しはしっかりできるのか、これについて大臣に聞いてもらいたいことはないのか、ここではっきり伺いたい。
  16. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 ただいまお尋ねの点は、私どもといたしましては、現在の欠員と今度増員していただきます十六人につきましては、はっきりした充員見通しを持っておるわけでございます。ただ、今後とも裁判所のほうに、修習生なり弁護士からおいでいただくことにつきましては、各方面の御理解を得て御協力をお願いしたい、かように考えておるわけでございます。
  17. 横山利秋

    横山委員 きょういただきました四十年度増加要求人員表を見ますと、臨司意見実現のために四百十五名、借地借家法改正で五十五、交通事件処理に百四、一般少年保護事件処理百六十一、機構維持四百五十一、その他八十九、合計千二百七十五の四十年度予算要求が出ているのですね。これを見まして、私は、一体どうなったのか。これだけ予算要求をなさるというのは妥当な予算要求だと思うけれども、一体これはどうなったんだ。最高裁というのは腕の立つお役人はいないんかな。一体、紙だけ出して、よろしくお願いしますと、こう言ったのかしらんという気がいたしますが、まず第一に四百十五名と、あとは大体わかるのですが、機構維持の四百五十一というのはどういう内容のものか、それから千二百七十五名の交渉経緯、結果、これをひとつ伺います。
  18. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 御説明申し上げます。  このお手元に差し上げました要求人員表の中のまず臨司意見実現の項でございますが、これは三つばかりに分かれるわけでございます。その一つは、結局すべては訴訟適正迅速化ではございますが、その中でも、端的に訴訟の促進をはかるという意味要求いたしましたのが、簡裁判事の九十人と、これに見合います書記官の二百七十人ということでございます。それから、その次に調査官というのが四十一人となっておりますが、これは臨時司法制度調査会で、高等裁判所にはいわゆる有資格調査官を置くことにしてはどうか。つまり現在は、一部無資格調査官はございますが、これは特殊事件に当たる調査官はございますが、もう少し広い範囲で、法曹資格を持った調査官を置くことにしてはどうかというような提案がされておりますので、その関係で二十七人の調査官要求をしたわけでございます。それからなお、その残りの十四人と申しますのは、これはやはり臨時司法制度調査会で、地方裁判所特殊事件調査官、すなわち工業所有権でありますとか、租税事件でありますとか、そういう特殊事件調査官を置くことにしてはどうかという提案が出ておりますので、その関係で十四人の調査官要求をしたわけでございます。それが合計四十一人でございます。事務官は、それに伴いますものでございます。  それから教官九人とございますのは、これは司法研修所の拡充を見通しての要求でございます。  それからあとお尋ねのございました機構維持関係でございますが、これは主として行二の職員でございます。その行二の職員につきましては、これもまた大体二つに分かれるわけでございますが、一つは、現在の既設の庁舎におきまして、現在それぞれ行二の方に働いていただいておるわけでございますが、これをもっと増員して、いわばもっとゆっくりして、そして十分手の回る仕事をしていただきたいということで要求いたしました数が大部分でございます。そのほかに、新営庁舎というものがあるわけでございますが、この新営庁舎では、たとえばいままで電話が入っていなかったのが今度電話が入るとか、あるいはボイラーがなかったものが今度ボイラーが入るとかというようなことで、新たに必要になってくる関係で、これはきわめてわずかの四十人程度でございますが、そういう数でございます。その二つ理由要求したわけでございます。  それから、この要求政府案がまとまりますまでの折衝の経過ということでございますが、この点につきましては、ただいまたいへんおしかりを受けまして、また私ども毎度のように裁判所予算要求がへたであるという御批判を受け、また予算の取り方がまずいというようなおしかりを受けておるわけでございまして、私どもとしては、全力をあげて大蔵省と折衝したつもりでございますけれども、結局はこういうような結論になったわけでございます。これはまことに言いわけがましいことでございますが、この当初に要求いたしました当時は、これは一応国家の何と申しますか、財政規模とかそういうこととは一応離れまして、裁判所としては、これだけあれば理想的に運営ができるという趣旨でこの要求を組んだわけでございます。ところが、その後におきまして、たしか九月の上旬であったと記憶いたしておりますが、内閣のほうで、四十年度においては、定員増加は原則として行なわないという閣議の決定が行なわれ、それが裁判所にも通知があったわけでございます。協力を求められたわけでございます。これまた国家財政その他からして、政府のほうでそういうふうにお考えになるということも一応ごもっともなことで、ただ私どもとしては、少くとも裁判の現場に関します限りは、それの当然の適用を受けるものではないと考えておるわけではございますが、しかしながら、先ほど来いろいろお話のございました欠員をもかかえておる状況といたしましては、まず欠員充足全力を注ぐのが第一であって、その上の要求のほうはいわばその次になるということも、現在の全般の情勢から見てやむを得ないのではないかというようなところで、先ほど来御指摘のありましたような結論になったというわけでございます。
  19. 横山利秋

    横山委員 千二百七十五名要求して、簡易裁判所判事が十六名認められた、こういうわけですか。
  20. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 さようでございます。
  21. 横山利秋

    横山委員 さようでございますと簡単に出られると、こっちが二の句が継げぬような気がいたすわけでありますが、それでいいんですかね。機構維持ということばが使ってあって、それで維持するためには四百五十一名要る。それがゼロである。それじゃ維持できないということに反語としてなるわけですね。  委員長、これはひとつ委員長にも、議事の取りまとめ方ばかりでなく、しかと心得ていただきたいと思う。どんなに法務委員会でこの種の法案質疑応答をしてもさっぱり効果がないということです。千二百七十五名、少なくともこれは大山とは言えぬですよ。千二百七十五名要求して十六名認められた、しかもこういうことは、あなたがここに御就任なさる前、毎度の委員会——もうきょうはやさしいですな、寺田さんもいつものことだという顔をしていらっしゃる。いつもいつも耳にたこのできるほどわあわあ言って鞭撻督励をして、結局千二百七十五名が十六名です。これはわが法務委員会の権威にかかわることだと思いますが、委員長所見をひとつこの際伺いたいと思います。
  22. 加藤精三

    加藤委員長 委員長として、十分調査の上、御回答いたしたいと思います。
  23. 横山利秋

    横山委員 調査の上といっても、委員長とやり合うのがあれではないのですが、こんなにはっきりわかっておるのですよ、千二百七十五名要求して十六名しかいかぬとなった。これはもう欠員は一ぱいある、欠員があるなら埋めりゃいいじゃないかという議論が起こる、なぜそんな議論が起こるか、なぜ欠員が起こるかということが、いまお話のあったように給料も安い、環境設備も悪いということなんですが、私は本委員会の権威にもかかわることであるから、この際、本委員会としても、この問題について附帯決議はもう何べんも出ておるのです。それにもかかわらず、附帯決議が何ら覆行されていないということを、委員長たる職務においてとくとお考え願いたいと思いますが、御所見を重ねて伺いたいと思います。
  24. 加藤精三

    加藤委員長 横山委員の御発言の中には非常にごもっともな点もありますので、理事会等にはかりまして、よく取扱いを研究したいと思います。
  25. 横山利秋

    横山委員 それでは、後刻本委員会の権威をどうするかということについて、理事会でひとつ御相談願うことにいたします。  もう少し進んでこまかくなるわけでありますが、この間、いろいろ資料を御要望したわけであります。その中で二月一日に横浜地方裁判所の汽かん士が汽かんの前で死んだが、これはどういうことなのかということについて御調査をお願いしておいたのですが、これだけ一つ資料が出ておらぬわけですが、口頭でございますが、御説明願いたいと思います。
  26. 守田直

    ○守田最高裁判所長官代理者 お尋ねの件でございますが、本年の二月一日午前六時二十分ごろ、横浜地裁の技官、ボイラーマンでございますが、中沢貫一というボイラーマンが、ボイラー室の入り口付近で昏倒したのを助手が発見いたしまして、救急措置をとり入院させましたが、同日午前六時五十分ごろ脳卒中で死亡した事実がございます。  同人は七十二才の同齢で、昭和二十五年九月十六日に採用されております。採用後二、三年いたしまして、要するに昭和二十七年ごろから定期健康診断のつど高血圧、そういう診断を受けまして、自後静養するようにというように注意を受けておったわけでございますが、その後一向この血圧が下がりませんので、四、五年前からもう退職を何回か勧奨したわけでございますが、本人としてはがんとしてやはり勤務をするということを主張してきたものでございます。  ボイラー室の勤務はどういうふうになっておるかと申しますと、横浜地裁の報告によりますというと、この横浜地裁のボイラー室は横浜地裁と横浜地方検察庁と二つの共用になっておるわけでございます。そこでこの仕事を、このボイラーマンとさらに助手として裁判所職員が一名、それから検察庁の職員二名、合計四名が担当しておったわけでございます。ところが、御承知のようにボイラーマンとしては、免許が要るわけでございます。その免許を持っておるのは、このなくなりましたボイラーマンだけでございまして、その結果、血圧も高いということで、もっぱら監督の仕事をさせまして、実際の仕事はこの助手がやっておったという状況にあったようでございます。当日も作業開始前のできごとでありまして、これがはたして公務災害に該当するかどうかというようなことにつきましては、目下横浜地方裁判所におきまして調査中でございます。  以上が、大体判明している点でございます。
  27. 横山利秋

    横山委員 一体そのボイラーというのは、労働職の中でも重労働職ですね。七十二歳のおじいさん、私はおじいさんの心理はわかるけれども裁判所というところは、七十二歳のおじいさんに重労働のボイラーマンをやらせておいて、ボイラーの前で倒れるというみっともないことをやらせるような人事管理をなさるわけですよ。もしもそういうおじいさんが生活上働きたい、どうしてもしばらくやらしてくれということについて了とする人情論があったら、そういうボイラーマンをやらせるようなことでなくして、適当な方法があるはずでしょう。監督だから、見ておれ、それでほかの人間がやれということが平然として行なわれるとしても、これもおかしい。監督であれば監督であるように、やり方が悪かったら、危険があったら、ちゃんと見なければなりませんよ。監督であっても、すわっているわけにいきますまい。しかもそんな、最後に業務上死傷事故であるかどうか、目下調査中、冷談な話だと私は思いますね。私はいまのお年寄りのことをここで議論をするわけじゃないのですけれども、これは最高裁の人事管理についての一つの例じゃないか、こういうふうに私は思うのであります。当然あたりまえですよ、業務上災害事故というのは。いかがですか。
  28. 守田直

    ○守田最高裁判所長官代理者 七十二歳の高齢者をボイラーマンに使っておったということにつきましては、一見、外部から見ますと非常に奇異に感じられることと思います。最高裁判所といたしましても、やはり相当の年輩の人にこういう仕事をさせることを決して好ましいと思っているわけではございません。そういう関係から、大体四、五年前から、ひとつやめてもらいまして、勧奨退職にいたしますと相当の退職金も参りますので、勧奨退職をしてもらいまして……
  29. 横山利秋

    横山委員 ほかの仕事をしてもらえばいいじゃないか。
  30. 守田直

    ○守田最高裁判所長官代理者 いや、七十二歳ではボイラーマン以外、ほかの仕事はできません。それで、ほかの元気な職員を三名づけまして、もっぱらその三人に仕事をさせて、監督をさせておったという状況だったわけでございます。ですから人情論に即して、とにかくやめさせるのはかわいそうだという面が働き過ぎた感があったかもわかりません。これ自体は私どもとしては十分——それまで知らなかったわけでございますが、こういう事態ができて、初めてそのことがわかったわけでございますが、もっと早くやはり十分手当てをして、ボイラーマンとして適当な人を雇用すべきであったということを、いま反省しているわけでございます。
  31. 横山利秋

    横山委員 業務上災害事故を適用しますか。
  32. 守田直

    ○守田最高裁判所長官代理者 それは、業務上災害かどうかといいますことは、公務とその死亡との間に相当因果関係がなければならぬわけでございます。
  33. 横山利秋

    横山委員 ありますよ。
  34. 守田直

    ○守田最高裁判所長官代理者 あるかどうかといいますことは、これはわれわれしろうとだけではなくして、十分、医者などのデータに基づきまして判断を受けまして、その上でなすべきことでございます。したがいまして、私どもとしましては、現在手元にそういう資料がございませんので、ここですぐに公務災害になるかどうかということの判定を申し上げることはできかねるわけでございます。あるいはなるかもわかりません。
  35. 横山利秋

    横山委員 あなたの言うことをそのまま返して恐縮ですけれども、こんなことなら早く首切ればよかった、そういうことになるじゃないか。人情をかけたのは悪かった、早く首切ればよかった、災害補償になるかならぬかわからぬ、わしの知らぬことだ、簡単に言えばそういうことになりますね。それではかわいそうじゃありませんか。私は、この七十二歳のおじいさんがボイラーをやっておって、ボイラーの前で倒れたということを聞いただけで、もうこれは何ということだ、気の毒なことだという気がするのですよ。それは一般的な人情ですよ。だから、そのボイラーの前で倒れたら何とかしてやりたいと思うというのが普通のことばだと思うのです。そうして、きょうは伺って御返事をいただきたかった気持ちは、まあ七十二歳だから本人も生活に困っておるから、できたならばよそに就職を、裁判所内で小使さんなり何なりにするとか、何か方法があったものと反省をしておりますと言うならわかりますが、何とか首切ればよかったでは承知できませんよ。  それから、業務災害事故になるかならぬか私にはわかりませんではいかぬ。何とかさせてやりたいと思いますということがあってしかるべきじゃありませんか。そんなつもりで聞いたわけじゃありませんけれども、あなたの御発言として、人情厚き最高裁判所の人事局長さんとして、何とかひとつ人情あふれる最終的答弁をいただきたい。
  36. 守田直

    ○守田最高裁判所長官代理者 ただいま横山委員の御指摘になりました点、気持ちにおきましては全く同感でございますが、ただ気持ちだけでは処理できない面もございますので、申しておるわけでございます。
  37. 横山利秋

    横山委員 気持ちだけではどうにもならぬということが最後のお答えですか。承知しませんよ。何とかしましょう、努力をいたしますという御返事をいただかなければ承知しません。
  38. 守田直

    ○守田最高裁判所長官代理者 お気持ちは十分わかりますし、私どももその点につきましては深い同情の気持ちを持っておるわけでございます。しかしながら、ただいま申し上げましたような事情もございますので、ここで公の席上におきまして最後の結論を申し上げる段階ではないということを申し上げておるわけでございます。それが不人情に聞こえるとおっしゃるかもわかりませんけれども、そうでなくて、われわれとしては十分同情しております。しかし、それが公務に基因するかどうかということは、やはり科学的な医師の判断等を待ちました上できめていきたいというふうに申し上げておるわけでございます。
  39. 横山利秋

    横山委員 不人情きわまる。これはもう、こういうのが最高裁の人事行政であるとするならば、さっきからるる申し上げておるように、欠員になるのは無理ないですよ。給料は安いし、年とってまでもボイラーの前で働かされるし、死んだら、それはおれの知らぬことだ、ほかの人がきめてくれる、こういうことでどうして一生懸命働く気になりますか。私だって、あなたが最終的権限を持っておる人だとは思いませんよ。あなたがきめるんじゃない、あなたがきめるんじゃないけれども、あなたとしては人事の責任者として努力をしておりますというくらいのことを言えたっていいじゃないか。私は知りません、私の権限じゃありませんから何ともなりません。気持ちはわかるけれども、私の権限じゃない。それじゃあなた人情が通りませんよ。私がさっきからいろいろ申し上げておりますのは、どうして人が集まらぬだろう、何となく最高裁に働くということは冷たい感じがする。あたたかみがない。そして働いている人たちからはいろいろ苦情が私のところへも殺到している。私は最高裁の内部事情はそんなに詳しくは知らぬけれども、それでも仕事仕事だけに、理屈で割り切るところだけに、雰囲気が冷たいという感じがするわけですよ。しかも給料は安い。だから多少のことくらいは役職にある人たち努力をして、何とかしてやるという気持がなくちゃ集まりっこないじゃないですか。これだけ申し上げれば、私の言いたいことが身にしみておわかりだと思いますから、もう申しません。  その次に、この間資料を要求しました腱鞘炎の問題ですね、あなたのほうから出ましたあれによりますと、腱鞘の炎症の総称であって、慢性と急性がある。激しい搏動性疼痛、局所の腫脹、熱感、運動制限、圧痛がある。原因は、慢性のものには結核性のものが多く、まれには淋菌性のものがあり、急性のものにはブドウ状菌、連鎖球菌等の化膿菌によるもの、腱鞘のある部位を酷使するために極度の疲労が残り腱鞘に炎症を来たすものがある。こういうものだそうですが、罹病状況を見ますと、現在腱鞘炎で病休している者なし。ただし、腱鞘炎に罹患しているとして公務災害補償の請求がなされているケースがタイピストで三件ある。こう書いてある。これについて、役所としては、この腱鞘炎について、タイピスト三件あるといわれておるのでありますが、私の手元にも、たとえば東京地方で、刑事関係で、速記官が二人、それから民事関係で同じく速記官が三人、私の手元へも報告が来ておるわけだ。あなたのいう三人のタイピスト以外に、この裁判所系統で腱鞘炎が出ることが、何か関係があるのかどうかということを、オーソドックスに調査なさったことがありますか。
  40. 守田直

    ○守田最高裁判所長官代理者 お尋ねの件でございますが、従来、職員組合のほうから、腱鞘炎といったようなことで、いろいろ職業病につきまして意見の開陳があったわけでございます。本来、腱鞘炎と申しますのは、IBMのキーパンチャー、これにつきまして、それを契機としてクローズアップされてきた病気のようでございますが、昭和三十七年に在京の速記官全員に対しまして労働衛生科学の専門医師に依頼いたしまして、種々の器具を利用して検査を実施したことがございます。この検査は、当時といたしましては全国で、事業所では十二カ所くらいしかやっていなかったようでございますが、その検査をやりました結果は、治療を要しないが若干事務量に配慮する必要があるものが五%くらい発見されたのでございます。組合の主張といたしましては、少し大げさではなかったか、質量ともにそういったような状況は見出されなかったわけでございます。この検査をその後も定期的に実施すればよいわけでございますが、この専門医師がきわめて限られておりまして、検査いたしまして、その結果が判明するまでに半年以上もかかる。そしてその医師は非常に多忙であります関係から、なかなか毎年毎年やるというようなことが困難である。そこで私どもといたしましては、速記官につきまして、この腱鞘炎とか、そういったものは多分に神経性的な要素があるようでございますので、ここ三、四年前から、速記官になるには書記官研修所の速記官養成部に入るわけになりますが、その入所にあたりまして、そういった適性検査をいたしまして、そういった素質のある人をなるべく入れないような方向でやっておるような状況でございます。
  41. 横山利秋

    横山委員 あなたのほうからは、三人のタイピストから請求がなされておるというケースだというお話ですが、私の手元には、東京地裁で、医者から腱鞘炎と診断され、現在仕事をしていない人が五人あるという報告が来ているわけですけれども、あなたのほうの腱鞘炎に対する取り組み方が少し足りないのじゃないか。あなたは、いまはしなくも、組合は少し大げさ過ぎると言ったのですが、これは病気の問題ですからね、組合がこう言つた、だれがこう言ったという問題の以前に、現に仕事をしていない人が五人ある。腱鞘炎が、キーパンチャーを含めて、いろいろな人たちの間に新しい近代病として発展をしておるということについて、もっとオーソドックスにかまえる必要があるんじゃないかと私は思うわけであります。あらためて、この東京地裁の五人の人がお医者から腱鞘炎と診断されて仕事をしていないということは、一体間違いなのか、私の調査は事実と反するのかどうかということをひとつ伺いたいと思うのです。  ただ、委員長、私の質問は実は細部にわたってずいぶん多いのであります。これをやりますと、きょう一日かかりますので、きょうあと質問の方が三人ばかりいらっしゃいますものですから、一応私の質問はこれで中断しまして、同僚諸君のために私は後日に延ばしたいと思います。御了承願います。
  42. 加藤精三

    加藤委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  43. 加藤精三

    加藤委員長 速記を始めて。  神近市子君。
  44. 神近市子

    ○神近委員 横山さんの質問に多少関連してきますけれども、この資料に出ておりますように、法務官が非常に給料が低い。それで希望する人が非常に少ないというようなことがいま話題になっていたようですけれども、それに関連しましてちょっと御質問申し上げたいと思うのです。  いま出ておりますこの資料の「裁判所職員定員法の一部を改正する法律案参考資料」の中の三ページ、その中に再審の問題が民事と刑事と出ておるのです。これは私の記憶するところによりますと、再審は百六、七十件年に出ているはずですけれども、非常にそれが少ない。民事のほうが、三十六年には十五件、それから三十七年には十九件、三十八年にやっと二十三件になっている。これは百数十件出ているうちで、たったこのくらいしか再審が行なわれないというのは、やはり手不足というか、そういう意味から出てきているかということが一点。それからもう一つは、民事のほうは十五件、十九件、二十三件となっていますけれども、刑事のほうは、三十六年に四件、三十七年が八件、それから三十八年が十一件、非常に格差があるのはこれはどういうところからきているか。その再審の許可が非常に少ないということ。それから民事と刑事がこういうふうに開くというのはどういうようなところに原因があるかということ。
  45. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 いま神近先生のお尋ねの点は、この御指摘の三ページは簡易裁判所だけのものでございます。それで地方裁判所の件数は、その次の四ページのところにございます。その四ページのところで、民事では三十八年は五十八件というような数字が出ております。刑事は三十八年にはないようでございますが、なおそのほかに高等裁判所等にも出る場合もあり得るわけであります。それから、その合計数が百何件になるかというと、ちょっとそれはならないようでございますが、私どもの統計ではさようになっているわけでございます。  それから、民事と刑事とどうしてこう差があるかという点は、これはちょっと私も必ずしも即答いたしかねるわけでございますが、やはり刑事のほうでございますと、判決が終わりますれば、それでまあ大体、何と申しますか、一応処分がきまったような形になる。民事のほうは、何といいましてもお互い同士の争いでございますから、いつまでも争いが蒸し返されるというような面もあるのじゃないかと思いますが、これは実は正確にどういう原因でということはちょっと申し上げかねるわけでございます。  それからこの件数は、これは要するに再審を申し立てた件数でございまして、再審の開始の件数はこの数とは違うわけでございます。これはまた別個にあるわけでございまして、お話の再審が受け入れられたというわけではないのでありまして、これはただ再審が出てきた件数、こういうことでございます。
  46. 神近市子

    ○神近委員 これは再審が出てきて、これを扱ったという数字ですか。
  47. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 そのとおりでございます。出てきて扱ったという数字でございます。
  48. 神近市子

    ○神近委員 扱ったという件数だけで、これが最終的な判決が出るというケースはどのくらいこの中にあるのですか。
  49. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 これは実は、そもそもこういう表をつくりました趣旨から申し上げますと、今度の法案裁判官増員していただく。増員していただくのには事務量がどのくらいあるだろう、件数がふえているのか、減っているのかという観点から資料を作成して、法務省のほうに出していただきましたので、そういう点でおよそ扱った件数がどのくらい、そういう面からこの表ができておるわけでございます。いま神近先生のお話は、むしろそれでどの程度再審が実際に通るものかという実質のほうの御質問だと思いますが、そうなりますと、これは直接この法案の面の関係でございませんでしたので、ここに出ておらないわけでございますが、その数字はいま手元に持っておりませんけれども、きわめてわずかの数、再審のいれられます数は非常に少数であるというふうに申し上げられると思います。
  50. 神近市子

    ○神近委員 再審を申し立てる件数は、いまちょっと的確な数は言えませんけれども、年間百七十件以上あるというふうに私は記憶しております。それをたった三件とか五件とか十一件とかいう程度をやるということ、それは刑事のことがおもですけれども、それでその判決が一件か二件しかできないというようなことは、私はどうも納得ができない。そういうようなことは手不足でやれないのですか、徹底的な手不足でやれないのですか、それとも前の判決がもしこの新しい判決によって、ミスであったということになると、皆さんの官僚仲間の先輩であるとかあるいは後輩であるとかいうような人たちのミスになるという点が考慮されるのですか。どうもそこのところが——いま、吉田石松という人の再審の問題、松川事件というようなものの再審の問題で、法務関係のものでは非常にその点が問題にされているのですけれども、その点、どうしてそういうふうに再審を取り上げないのか。それから判決が非常に時間がかかって、ものによっては何十年とかかって、そしてそれが無罪になるというようなことが非常に少ないというようなことは、何とも私ども裁判というものに割り切れない気持ちがするんですけれども、それは一体どういうふうに——まあ仲間が判決をしたので、それをやり直すということに遠慮があるのか、あるいは仲間がたとえばもし誤判をやったというときには、あなた方の点数が落ちますかどうか、その点を伺いたいと思います。
  51. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 先ほどの私の説明がやや不十分でございましたために、誤解を招いたかと存じますが、たとえばここで三十八年度に刑事の簡易裁判所では十一件の再審が出た、それの判決が一件か二件しかやらない、こういう趣旨では実はなかったのであります。この再審の申し立てがございますれば、むろんその事件をいずれかの裁判官に割り当てまして、そうしてその裁判官が真剣にその事件に取り組んで審理を進めてまいるということは、これは一般の事件と同様でございまして、特に簡易裁判所等におきましては、そう著しく事件が渋滞しておるというわけでもございませんから、再審につきましてもかなりな速度で審理が行なわれていっているということは、これはそのとおりなんでございます。先ほど申しましたのは、その結果、いわば前の判決が間違っておったという、そういう結論が出て、いわば再審を認める、何といいますか、前の判決はやり直さなきゃいかぬという、そういう結論に達するケースというものはかなり少ないということでございまして、たとえばこの十一件の再審の申し立てにつきましても、これはあくまで全部の事件がほとんど既済になっておりまして、未済で残っておりますのは三件程度でございます。そういう意味処理としては進んでおるわけでございます。そこで問題は、それじゃなぜその再審の事件が申し立てが立たないか、つまりその再審が認められて前の判決が間違っておったという結論が出るケースが少ないのはなぜかというお尋ねの点でございますが、これは何と申しましても、私どもの口から申し上げるのは、あるいはいかがかと思いますが、ともかく裁判所で三回、一番丁寧にやります場合は一審、二審、三審と、三審まで重ねて慎重な裁判をやって、それで終わったもの、それが再審に出てくるわけでございますが、普通の場合には、かりに簡易裁判所で間違っておっても地方裁判所で取り消される、あるいは高等裁判所で是正される、あるいは最高裁判所で破れるということで、つまりそこにいきますまでにだいぶ解決するわけでございまして、それでなお最高裁判所までいって、あるいは事件の起こりました地方の高等裁判所までいって、それで事件が確定しました後に起こってくる問題でございますから、それが通らないという点が多いということは、むしろ自然ではないかと思います。そういう場合において、これは世界各国どこの立法でもそうでございますが、再審というものには相当厳格な法律上の要件があるわけでございます。たとえば民事訴訟法でまいりましても、判決の証拠となった文書その他の物件が偽造であった場合、つまり証拠になったものが偽造であった。しかもその証拠で判断した。それが偽造だったということがわかっただけでなくて、それがもう一度あとの判決で、やはり偽造であったということにはっきりなった上ではじめて再審が認め誇るというような、いろいろ要件が非常にやかましくついておるわけでございます。これは世界各国の立法でいずれもそうなっておるわけでございまして、なぜそうなっておるかといいますと、これはやはり、判決がそうやたらにひっくり返ったのでは安心して生活ができないということで、各国の立法でそうなっておるわけでございます。そうでございますから、自然、再審事件を調べましても、こういう要件に当たるという場合が非常に限られている。したがって、なかなか再審が通りにくい、こういうことになるわけであります。したがって、もっと再審が通るようにするためには、たとえば法律改正しまして、法律の要件をゆるやかにすればよいわけでございますが、しかし、こういうことも全体の問題として、はたして立法例等からいってどうであろうかということが問題になるわけでありまして、そういう点は、今後は立法問題であろうと思いますが、現在の法律のもとではかようなことにならざるを得ない。決して、裁判官がお互い同士にかばい合って、前のミスを出すまいということでやっているということでは毛頭ない、私どもとしてはかように信じておるわけでございます。
  52. 加藤精三

    加藤委員長 神近先生、関連質問でございますから。それから、きょう社会党のほうから特別緊急質問者があらわれておりますので、この程度にしていただければありがたいと思います。
  53. 神近市子

    ○神近委員 それでは、予算委員会でちょっとお尋ねするつもりでございますし、そういう緊急質問があるそうですから、これで……。
  54. 加藤精三

    加藤委員長 大竹太郎君。
  55. 大竹太郎

    大竹委員 それでは、この聞いただいた資料についてまず一、二点お伺いしたいのでありますが、ここに各簡易裁判所、地方裁判所の平均審理期間という表が出ております。まことにしろうとくさい質問で恐縮でありますが、この審理期間の始まりと終わりは——終わりは判決があった日だ旧ろうと思いますが、始まりは一体どこに置いてあるのでしょうか。
  56. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 ここに出ております表はいずれも一審事件でございますから、訴状の出ました日からでございます。
  57. 大竹太郎

    大竹委員 それなら、新しい資料の控訴事件のほうは、控訴状が出た日からと、そう解釈してよろしゅうございますか。
  58. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 御説のとおりでございます。
  59. 大竹太郎

    大竹委員 次に、この資料の中の件数の点でございますが、三ページの民事、刑事ともにその他という欄がございますが、簡易裁判所合計の件数がふえておるのは、このその他の件数がふえているためのように思うのですが、このその他というのは一体何が入っておりますか。
  60. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 簡易裁判所でまいりますと、ここに出ておりませんものは、たとえば即決和解の申し立てでございますとか、あるいは督促手続すなわち支払い命令でございますとか、それから公示催告でございますとか、あるいは簡易裁判所仮処分、過料事件、かようなものが民事事件としてはその他の事件の中に含まっておるわけでございます。
  61. 大竹太郎

    大竹委員 それで、この五ページの簡易裁判所の平均審理期間についてでありますが、簡易裁判所は、たとえば三十八年度を見ますと、民事のほうは五・七カ月、刑事のほうは三・六ということで、前年度に比べますと、刑事のほうは大体三・六で同じことでありますが、民事のほうは〇・三だけ三十八年度のほうが日数を食っているということになるのであります。そこで、この審理の促進という問題とこれを関連いたして考えてみますと、私ども多少事件を扱った経験からいたしましても、平均として三・六ということは、必ずしもそうかかっているとも思わないのでありますが、これは一体どういうものを標準にして、三・六は大体かかるんだということを、お聞きしてもなかなかむずかしいと思うのでありますが、こういう点については、裁判所としてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  62. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 確かに私どもの感じからいたしましても、三・六月というものが非常におそいとは思わないわけでございますが、ただ、戦前の統計を見ますと、戦前の区裁判所の平均審理期間は一カ月ないし一カ月半程度になるわけであります。しかしながら、戦前は起訴状一本主義でございませんので、最初から記録が全部まいりますから、第一回の審理で、判事がこれを全部読んでいって、それで法廷でそのとおりといえば、極端な場合にはその席で言い渡す。せいぜい一週間ぐらいで言い渡すという事件が非常に多かったのでありますが、現在は起訴状一本主義でございまして、証拠能力等の制限もございますので、直接審理主義の程度が強化されても、その点は戦前並みにはいかないと思いますけれども、戦前が一カ月なら、せめて二カ月ぐらいまでに短縮したい、その辺まではいくんじゃないかということは、私どもとしては希望として持っておるわけであります。
  63. 大竹太郎

    大竹委員 裁判所のほうでは、やはり起訴状が出てから期間を問題にされる。これはもっともでありますが、一般の被告人の立場に立ちますと、極端にいえば、警察に調べられたときからがいわゆる事件として問題になるのだろうと思いますが、いまのようなお話で、検察庁の手に移ってから判決までの期間というようなものは——これはもちろんなかなかむずかしいでありましょうが、戦前のお話等もありましたが、それはどうなっておりますか。
  64. 鹽野宜慶

    ○鹽野政府委員 ただいま、検察庁の処理期間プラス裁判所の審理期間はどういうことになるかという御質問でございますが、ただいま検察庁の処理期間の統計をちょっと用意しておりませんので、いずれまた御説明申し上げたいと思います。ただ、御承知のとおり検察庁の処理期間は、身柄拘束事件でございますと勾留二十日に限られておりますので、その前の逮捕期間を入れましても二十三日、逮捕から二十三日以内に起訴するというたてまえでございますので、身柄事件につきましては、この平均審理期間に二十日ばかりを加えるということになると思います。ただ、事件の中には、御承知のとおり告訴事件などで、民事関係のいろいろ複雑な内容を含みました告訴事件がございますので、そういうものにつきましては、検察庁の取り調べ処理の期間が一年をこえているというものもごくわずかはございます。しかし、そういうものは特別の事件だけでございます。
  65. 大竹太郎

    大竹委員 それで、新たに出していただきましたこの資料との関連でちょっとお聞きしたいのですが、これを見ますと、いずれも民事は地方裁判所、刑事は高等裁判所ということになるのでありましょうが、いずれも三十七年より三十八年が審理期間が長くなっておるのであります。それで第一審のこれと比べますと、刑事のほうは大体二カ月、それから民事のほうはちょうど倍以上かかっておるのでありまして、この関係はちょっとわからないのでありますが、この点について御説明を願いたい。
  66. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 確かにいま大竹委員お話しの点、ちょっと資料が見にくい点があるかと思いますが、この控訴事件の審理期間がやや長期化いたすということは、特に民事の場合にはある程度やむを得ないことではないかと考えるわけでございます。と申しますのは、まず簡易裁判所に一審にまいります事件は、原則としては非常に簡単な事件が多いわけでございますし、また、訴え提起後何らか話がついて既済になる事件というものが相当たくさんあるわけでございます。そういうところがこの平均審理期間が五カ月程度でとどまっておる有力な原因でございまして、簡易裁判所でも、真剣に争います事件になりますと、やはり一年近くかかるという事件がかなりあるわけでございます。しかも控訴されてまいりますのは、実はそれらの中のさらにむずかしい事件でございますし、そしてこれは法律問題あるいは事実認定がむずかしいということばかりでなしに、非常に争いがこじれておって、とことんまで争おうという気持ちの強い事件が自然控訴になってまいりますので、そういう関係で特に民事事件では一審の事件より控訴事件のほうが長くかかるということになるわけでございます。ただ、しかしながら、それも簡易裁判所の一審と地方裁判所の控訴を比較して長くかかるということでございますが、今度刑事事件のほうになりますと、刑事事件は御承知のとおり事後審でございますから、控訴審は一般的にそれほど長くかかるわけではございませんが、あとで提出いたしました控訴事件の平均審理期間の表をごらんいただきますときには、これは実は民事は控訴審が地方裁判所でございますから、したがって、民事の控訴審の審理期間と、当初差し出しまた参考資料の第六表の個々の審理期間とを比較していただきますれば、あたかも地方裁判所の一審と控訴との比較になるわけでございますけれども、刑事のほうは、控訴審が高等裁判所でございまして、高等裁判所一般的な審理期間は、実は今度の法案に直接関係がないということで出ておらないわけでございますが、御要望がございますればあとで提出いたしたいと思います。そうなりまして、刑事の場合には、御承知のとおり、簡易裁判所の一審事件も地方裁判所の一審事件もいずれも高等裁判所で控訴審として審理されますが、この二つを比較いたしますれば、どちらかといえば簡裁からきた控訴事件のほうがやや早く終わっておる。しかもいずれも事後審の控訴審でございますから、そんなに差がない、どちらかといえば簡裁からきた場合がやや早く終わっておる、こういうような関係になっておるわけでございます。
  67. 大竹太郎

    大竹委員 民事のかかる理由もある程度わかるわけでございますが、ただ、ここで私の乏しい経験から申しますと、民事の、ことにむずかしい事件等で長くかかるということは、とかく判事さんのほうで判決をしたがらぬで、いいかげん和解させたいということで、すっぽかしておるから長くかかるのじゃないですか、どうですか。
  68. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 私も非常に乏しい経験でございますので、その経験だけから言うわけでございますけれども、これは現在の民事訴訟の中には相当程度に、結局和解をしたほうがいい事件があることは事実でございます。と申しますのは、これはあるいは表現が妥当でないかもしれませんが、国民一般法律生活というものが高度でございませんために、したがって、この法律的な処理、そもそも契約を結ぶときに法律家に相談して法律的に処理するという頭がございませんし、いわんや、書類をつくるというような気持ちが非常に乏しいわけでございます。そうして、ことに裁判所へ出てまいりますまでに相当いろいろな人の手にかかって、すったもんだした事件が出てまいりますと、それをすぱっと割り切ってきめることが、かえって一般の紛争解決に十分でない事件も相当あるわけでございます。そういうところから和解を勧告するというケースがかなり多いわけでございますけれども、しかし御指摘のように、判決するのはいやだ、めんどうくさいから和解をするということがもしあるとすれば、さようなことは絶対に許せないことで、私どもとしては、さようなことのないように信じておりますし、そういうように一般に心がけて申し伝えておるというような状況でございます。
  69. 大竹太郎

    大竹委員 質問は終わりました。
  70. 加藤精三

    加藤委員長 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。      ————◇—————
  71. 加藤精三

    加藤委員長 次に、法務行政検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。藤田高敏君。
  72. 藤田高敏

    藤田(高)委員 昨年の十二月十七日、この法務委員会において坂本委員が愛媛の学力テストに関連をして質問をされておりますが、この質問の内容は、昨年の六月の二十三日、愛媛県の松山市の某小学校において、児童生徒が当然学力テストを受けなければならないにもかかわらず、学校側の取り扱いの、いわば意図的と申しますか、取り扱いが非常にまずかったために、学力テストを受けることができなかった。これは明らかに児童生徒に対する人権の侵害であるということで、母親が昨年の九月七日、松山の地方法務局に人権侵害として問題を提起しておるわけであります。このことについて昨年の十二月十七日の議事録を一読してみますと、鈴木説明員は、詳しい内容は省略しますが、いわゆる福角という児童生徒が定木、コンパスを忘れたので、ぼくは家に取りに帰りますと言ったので、八時五十分くらいまでに、授業が始まるまでに帰ってくるようにと、半ば福角自身がものを忘れたので、自主的に取りに帰ったというような御答弁をされておるわけであります。私自身愛媛の出身でございまして、この問題についてはやや詳しくその実態を調査してきておるところでありますが、そのこと自体が事実と反しておるわけです。私ども調査をしておる限りにおいては、鈴木説明員が言っておることと違っておるわけであります。しかし、そのことは一応留保いたしまして、この議事録からいっても、帰ったことは事実でありますから、受け持ちの先生なり担当の先生がそのことを知っておるのであるから、授業が始まったときに、その福角という児童生徒が来ていなければ、これはどうしたことだろうかという点検が、これは教師の責任義務として当然正確に行なわれなければならぬ。そのことについて人権擁護局として、法務局として、その間の具体的事実についてどのような調査をなさったか、これをまずお尋ねしたいと思います。
  73. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 ただいま御指摘の点でありますが、前回大体事件の経過を御説明いたしまして、ただいまの点につきましては、相手方であるところの酒井教諭が当日、ただいま御指摘のように言ったというふうに供述しており、申告の事実を全面的に否認しておる。そこでその場に居合わせた生徒全員につきまして調査いたしましたが、酒井教諭が福角力に忘れものを取りに帰らせた際の問題について明確に記憶している者がなく、福角力の述べているように、酒井教諭が同人に対し十時半までに学校に来なくてもいいと言った事実をまだ認定することはできない、こういうふうにお答えしたつもりであります。  なお、問題の点については、引き続き調査中であるというふうにお答えいたしたつもりでございますが、実際その後引き続き調査を継続しておるわけでございます。そして本年の一月二十二日になりまして、所轄の松山地方法務局長から本件に関する調査の経過につきまして、さらに報告があったのでございます。当局におきまして、事案をさらに綿密に検討する必要を感じましたので、現在一件記録を取り寄せまして詳細に検討中でありまして、したがいまして最終的な結論はまだ出していないわけでございます。
  74. 藤田高敏

    藤田(高)委員 質問の順序は若干前後いたしますけれども、いまの御答弁によりますと、一月二十二日付の報告によってもまだ調査中、こういうことでありますが、これはすでに御承知かと思いますけれども、この人権侵害についての事案は一月の十九日にすでに人件侵害問題としては心証を得ることはできたけれども、物証を得ることができなかった。したがって人権侵害問題として取り扱うことができない、いわゆる人権問題として非該当だという結論が出ておるわけなんです。しかもそれが一月十九日の新聞に、こういう形で出ておるわけなんですね。今日の段階では二月の十何日ですから、すでに二十数日、かれこれ一カ月近くの時間的な経過を経ておるわけですが、全くその点、こういう重大な人権問題についての出先と本省との関係というのは非常に不備ではないかと私は思うのです。その間の事情をひとつ明らかにしてください。
  75. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 この事件につきましては、現地だけで最終結論を出すという取り扱いにはいたしておりませんので、松山の事件でございますと、松山の地方法務局から直接これを監督いたします高松の法務局を通じまして、当局に処理についての意見をつけて上申し、当局でこれを検討した上で結論を出す、こういう処理の手続になっております。ただいま御指摘の新聞記事がどういう経過から出たのか、私ども承知いたしておりませんが、もしそういうふうに出ておるといたしますと、さらにその点についても、はたしてどういう経過で出たのか、あるいは新聞記者が直接認定したのか、その辺のところはさらに調査いたしてみたいと思っております。
  76. 藤田高敏

    藤田(高)委員 たいへん質問の順序が派生的になりますが、私は、和田人権擁護課長という人は、これはどこの方か知りませんけれども、法務局の方だろうと思うのです。和田人権擁護課長の話という形で——この問題は片一方のテストを受けさせてもらえなかった母親の側から、子供の人権が侵害されたという問題を提起した、ところがその受け持ちの先生と学校当局は、そういうことを提訴すること自身が教師の人権を侵害したという形で報復的に問題を提起しておる二つの問題ですが、「双方の証言のもとに情報集めに力をそそいだが、人権侵害の事実は非該当という決定だが、文字どおりその事実がなかったということでなく、積極的に立証する事実が双方になかったということだ。」、こういう形で、この非該当という結論がもうすでに一カ月前に出ておるのですよ。これは少なくとも地方新聞あるいは共同通信を通じて出ておるわけですから、これは報道機関としても、少なくとも法務局の和田人権擁護課長という人の談話を出すくらいですから、これは知らないと言えないでしょう。
  77. 加藤精三

    加藤委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  78. 加藤精三

    加藤委員長 速記を始めて。
  79. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それでは質問の技術的な良否はお許しをいただきたい面もあろうと思う。しかし私は、あえてこういうことをお尋ねしたのは、いま擁護局のお答えによると、まだ結論が出ていない、検討中だ、こうおっしゃるのです。ところが、現地では、もう新聞記事は抜きにしても、すでに人権侵害をされたという母親に一月十八日に松山の人権擁護課から呼び出しがあって、はがきが来て、そして自分の子供に対しての人権侵害ではありませんという言い渡しがなされておるのです。そういう具体的事実があるわけです。私はそういう具体的事実を具体的に確かめてきて、なおかつここは結論は出てないとおっしゃるから、法務局の関係の課長さんでさえ、こういう談話を発表しておるじゃないですか、こういう前提に立ってお尋ねをしておるわけですから、決して私自身は……
  80. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 松山地方法務局の人権擁護課長が和田何がしという方であるかどうか、いままでは記録を持っていませんでしたが、ただいま記録を見ますと、そのとおりに出ておりますから、その人が人権擁護課長であることは間違いでないと思います。  それから、新聞に非該当と課長が発表しておるではないかという御指摘の点でございますが、愛媛新聞にそのような記事が載っているということは、これまた客観的な事実でございますが、私のほうにそういう報告、松山の地方法務局でそういう最終的な結論を出したという報告は入っておりません。何らかの間違い、あるいは新聞記事が間違いが多いというふうなことは私は決して申しませんが、私ども直接経験いたしますところでも、新聞社から、夜中に電話をかけてまいりまして、いろいろ問題について聞かれまして、それに対して答えましたことが、そのまま正確に出ないということもたまに経験するところでございまして、あるいはそういったことばの行き違いがその辺にあったのではないかと、これは想像するわけでございます。新聞に出たことでございますから、はたしてそのようなことであるかないか、これは至急現地に照会してみたいと思います。  それから、さらに手続のことにつきまして、本う少し先ほどの御説明に付加させていただきますと、一応現地で調査を終了いたしますと、現地としての意見をつけて、先ほど申しましたように、高松の法務局、さらに人権擁護局に書類を回してくるわけでございます。その報告書だけで私どもで不十分だと考えます場合には、記録全部を取り寄せまして、そして内容を詳細に検討し、必要があればさらに補充調査を命じ、また場合によりましては私のほうから直接係官が出向いて、不十分な点は調査するということもあるわけでございます。  この事件につきましては、問題の点、御指摘の点につきまして、なお事実認定について疑問がありますので、さらに現在検討中という段階でございます。
  81. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それでは、私どものほうとしては、新聞記事の云々はともかくとしまして、現実にその申請をした母親が松山の人権擁護課に出頭といいますか、呼び出しを受けて、あなたの人権を侵害として提訴された問題は非該当ですぞ、これは該当しません、こういう結論を本人に出しておるのですが、このことについてはどうでしょう。
  82. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 その点につきましても、現在までに報告を受けておりませんので、はたしてそういう事実があったかないか、私どもとしては現在お答えする段階に達していないわけでございますが、もしあるといたしますと、これは相当問題になる点かと思いますから、これまた至急調査してみたいと考えております。
  83. 藤田高敏

    藤田(高)委員 当局の基本的な態度は理解できます。  そこで、これは非常に大事な問題ですから、手続関係をもう一度お尋ねしますが、最終的に人権侵害問題であるかないか、その当否、確認は最終的にどういう手続機関を経て、最終的にはきめられるのか、もう一度お尋ねしておきたいと思います。
  84. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 事件の種類によりまして、手続は少し違っておりまして、一般の事件につきましては、所轄の地方法務局で調査を終了いたしますと、その結果を管区の法務局に意見をつけて報告する。管区の法務局で最終的に決定するわけでありますけれども、具体的に内部の手続規程がございまして、重要な事件、特に国会で問題にされましたような事件につきましては、管区限りで処理せずに、事件の調査の結果、これに対する担当地方法務局、さらに管区法務局の意見をつけて人権擁護局に報告いたします。人権擁護局でさらにこれを検討いたしまして、最終決定をする、このような手続になっております。
  85. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それでは念のためにお尋ねしておきますが、最終的な決定は、今回の福角力の人権侵害の問題については、国会でも論議されておることでありますので、最終的に人権擁護局で最終的な結論を出す、このように了解してよろしゅうございますね。
  86. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 そのとおりでございます。
  87. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それでは、私はそのこと自身について、手続上の関係はもう質問を省略、留保いたしますが、少なくともこの問題は非常に重要な問題でありまして、全国的にもこの学力調査に関連をする児童の人権問題としては非常に異例なケースだろうと思うのです。そういう意味で当局の人権擁護局長から御合弁のございましたような形で、最終的には人権擁護局でその結論を出し、出先の機関でいまやっておる処置について足らざるものについては、さらに再調査ないしは補充調査をやる、こういう御答弁でありましたので、そのことを了として質問事項を次に譲りたいと思います。  それでは、今日段階までに当局に報告のきておる——どもとしては一月の十八日にそういう結論が、一応のこれは間違った結論らしいのですけれども、一月の十八日に母親が呼び出されて非該当だということの報告さえ受けておるわけであります。したがって、もうこれは中央にもそういった報告書がきてしかるべきだと思うわけであります。そういう前提でいきますならば、福角という児童が一たん学校に行った。しかし物を忘れて帰った。そうしてテストを受けようとするときにおらなかったというときに、少なくとも一たん学校に来ておったわけですから、かばんを自分の席へ置いておるわけなんですね。かばんがあるわけです。このかばんの取り扱いについて学校はどういう処置をしておるか、したか。この点について当局はどういう調査をなさっておるか、お聞かせを願いたいと思います。
  88. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 本件のいわば中心の問題になりますその子供が三角定木等の忘れものをしたので、取りに帰ると言った場合に、本人のほうでは、午前十時半までに帰ればよいということを言われたと言っております。それに対して酒井教諭は、午前八時五十分までに来るように言ったというふうに言っておりまして、そこに食い違いがあるわけでございます。どちらが正しいかという事実認定は、いろいろな角度からなすべきであろうかと思いますが、ただいま御指摘のかばんがどうであったかというふうな点、まさにこれもいわば争点をどう認定するかという点についての一つの資料、そういった点につきまして現在検討中でございます。
  89. 藤田高敏

    藤田(高)委員 この事実認定の問題は、検討中ということの御答弁は私ははなはだあいまいだと思う。むしろこのことは、今度の問題のある意味におけるキーポイントになると思うのですよ。もうすでに問題を提起されてから三カ月も四カ月にもなるわけてすから、この問題について調査をなさる当局としては、その福角という少年が学校へ行っておった、そうして二時間帰ってこなかった、しかしかばんは置いてあるわけですから、そのかばんがあったかなかったかという調査を、その処理をどうしたかということは、これは調査される場合に一番重点的にやらなければいかぬ問題だと思う。そのことについて検討中だというのは私には理解できないのです。これはもうすでに調査をしたかどうかということになろうかと思うのです。  質問の時間を合理的にするために、私どもの調べておる範囲を申し上げますが、遺憾ながら、この問題が提起をされて一月十八日に出先機関の行き過ぎた結論が出るまでの間、このかばんの取り扱いについては何ら調査をしていない、これはどういうことなのか。もし調査してないとすれば、いま局長さんの御答弁にありましたように、補充調査、さらに人権侵害問題に対する調査を的確に行なうという意味で、かばんがあったのかなかったのか、隠したというような事実はなかったかどうか、あるいはこの問題の処理についてどうなったのかということを調査される御意思があるかどうか、これは当然調査すべきだと思うのですが、どうですか。
  90. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 一定の問題につきまして、当事者の主張あるいは証言が食い違います場合に、どのようにして真実を認定するか、これは関係者の言うこと、もしその際立ち会い人等があればその人の証言等が重要な証言になります。さらにいろいろな状況を総合して判定する必要があろうかと思います。ただいま御指摘のかばんの点もまさにその一つであります。相当時間がたっているのにまだ検討中とはいささかおそいではないかというおしかりでございますが、先ほども申しましたように、私のほうで、現地からの調査の経過につきまして報告を受けましたのが一月二十二日、その報告書を検討いたしました結果、さらに検討を要する点があるということを感じまして、記録全部の取り寄せを現地に命じまして、その記録が参りましたのがつい最近でございます。したがいまして、ただいま全記録について問題の点、さらに問題の点に関する周辺のいろいろな状況を検討中でございまして、結論を出すのにはいましばらくの御猶予をお願いいたしたい、かように存じております。
  91. 加藤精三

    加藤委員長 いま調査中だからしばらく時間をというのですから……。
  92. 藤田高敏

    藤田(高)委員 かばんだけじゃなしに、他にも二、三点問題がありますから、それではいま言われた趣旨に沿って御検討を願いたいと思います。  それともう一点は、これまたこの問題の中心点になろうかと思うのですが、福角という少年が家へ帰ったわけですね。そこで母親がおって、定木とコンパスを持たせて家を出させたわけです。ところが、その少年は家の門の近くでうずくまって遊んでおるのですね。それで母親がどうしたのかといって尋ねてみると、先生が、テストが終わるまで来なくてもいいのだ、こういうふうに言ったと言って泣き出したわけです。母親が、そんなことではいかぬ、学校へ行きなさいということで、子供をいさめて学校へやっておるのですね。ところが、学校の報告あるいは出先機関で調べた範囲の調書を私どものほうでいろいろ調べてみますと、母親がおらなかった、こういう報告になっております。このことについては、いまあなたの手元にきておる報告書の中には、母親が学力テストを受けた六月の二十三日、おったのかおらなかったのか、もしおらなかったとしたら、何月何日の何時に母親がおらなかったのか、そういう点、報告書の出ておる内容に沿って御答弁をいただきたいと思います。
  93. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 ただいま御指摘の点もやはり問題になります。一体十時半までに来ればいいと言ったのか、それとも八時五十分までに来いと言ったか、食い違いの点を認定するやはり一つ状況であろうかと存じます。したがいまして、一つ状況だけで結論を出すというわけにもまいりませんので、先ほど御指摘の点、ただいま御指摘の点、その他いろいろ状況がございますので、こういった状況を総合いたしまして結論を出したい、かように考えておりますから、これまたいましばらくの御猶予を願いたいと思います。
  94. 藤田高敏

    藤田(高)委員 事務的にお尋ねします。いま私が指摘したかばんの問題と母親がおったかおらなかったか、そのことについては報告書には出てきてないのですね。いまあなたの手元にある報告書にはそのことについての報告はなされてないのですか。
  95. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 報告書には、ただいま御指摘の点その他いろいろの点について触れてありますが、結論を出すのには、やはり事実認定——どもも相当長期間裁判に携わっておったのでありますけれども一つの事実だけで結論を出すというふうにもまいりませんので、やはりいろいろな報告を総合いたしませんと、どうも特にこういうふうに争いのある点についての結論は出せないのではないか。したがいまして、御指摘の点その他いろいろな点を総合して検討いたしたい、かように考えます。
  96. 藤田高敏

    藤田(高)委員 結論をお出しになるまでは総合的なそういう判断材料を検討されて出されるということは当然であります。しかし、母親がおったかおらなかったか、あるいはかばんの処理についてどうしたかという、その報告はどういう形できておるのか、いまあなたの手持ちの報告書の中には、そのことは載ってないのかどうか、そのことはお答えできるでしょう。これは最終的な結論をどうするかということはいましばらくの時間を与えるわけですから、よく慎重にやっていただいてけっこうですから、その報告はどういうふうに出てきておるかということをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  97. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 いろいろな状況が問題になるのであり、また非常にこまかくなりまして、そのこと一々を当委員会で御説明申し上げるというのは、私としてはこの際は差し控えさしていただきたい。最終的になお十分に検討いたしまして、そのときにその結論を出すにつきましての内容、これをできるだけ御納得のいきますように御説明さしていただきたい、かように考えております。
  98. 加藤精三

    加藤委員長 藤田さん、その辺でどうですか。
  99. 藤田高敏

    藤田(高)委員 委員長が議事進行を含めて言われようとするお気持ちは私もわかるような気がするわけです。そこで議事進行に協力をする意味において、最終的にはこの質問は留保いたしたいと思います。留保さしていただきますが、しかし、私ども現地でいろいろ調査をしてきた範囲では、おそらく局長の手元にいまお持ちの報告書の中に載っておる報告事項と、私が調べてきておるものとの間にはかなりな違いがある。しかし、そのことを一つ一つやっておると時間が足りませんから、要望として、あるいは私どもの調べた問題点を提起して、最終結論をお出しになる大切な判断材料にしてもらいたい。委員長、これはいいでしょう。  その点は、まず第一に、いま言ったカバンの問題そうして母親の問題、おったかどうか、いなかったのかどうか、この点、それから第三点は、校区のPTAから出先の法務局に対して、学校側が、いわば一部のPTAの役員と相談をして、この問題について口封じをしたようなことがあるわけであります。こういうこともやはりこの問題を調査する一つの重要な問題点でありますから、当然法務局に陳述書が出されておるわけですね。そういうことについても調査すべきだと思いますが、私ども調査しておる限りでは、今日段階までは何ら触れておりません。この点についても御調査を願いたい。  第二点は、当日六年生の学力テストのときには、定木、コンパスは不要であったということを、これまた陳述書として、法務局へ松山市内の六年生のある教員が出しておるわけであります。これまた非常に重要な問題点であります。一番問題になっておる定木、コンパスを取りに帰らせた。ところが、当日の学力テストには定木とコンパスは要らなかった、こういう事実があるわけです。それについて陳述書を出しておるにもかかわらず、このことについても出先の人権擁護課が調査をしていないわけであります。この点についても御調査を願いたい。  第三点は、教師や子供を法務局に出頭をさせて、いろいろ調査をしておるわけですが、これは、私は人権侵害がさらに人権侵害を起こしておる重大問題として非常に遺憾に思うわけですけれども、学校側にいささか不利になると思われるような証言をした子供に対して教員が不当な圧力を加えつつあるとうい事実、このことについても新たな事実問題として御調査を願いたいと思うのです。  こういうことについて、人権擁護局として当然これは最終結論を出すまでに調査されるべきものであろうと思いますが、御調査の用意があるかどうか、これをお尋ねしておきたいと思います。
  100. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 ただいま御指摘の点、その他あらゆる必要な点につきまして調査をいたしました上で、慎重に結論を出したいと考えております。
  101. 細迫兼光

    細迫委員 関連。子供の成績表をひとつ取り寄せられる必要がある。この問題は、成績の悪い子供にはテストを受けさせなかったという疑いが濃厚な事件ですから、成績がどうだったかという成績表をひとつお取り寄せの必要があると思います。これを要求します。
  102. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 子供の成績表を提出せよという御要望でございますが、これはやはり子供それ自身の人権にも関係することでありますし、成績表そのままを直接お出しするということは、はたしていかがなものか、抽象的な表現をもってかえることができれば、そのほうがむしろ適当なのではなかろうかというふうに考えますが、なお十分に考えてみたいと思います。
  103. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は新人議員であまり経験がありませんけれども、私なりに委員長の顔色も見ながら、議事進行に協力を申し上げておるつもりです。そこはひとつ御配慮いただいて、いましばらくの時間を与えていただきたいと思います。  そこで、この問題については、私質問をしたいことはま十件ばかりありますが、いまの非常に誠意ある調査をさらにやろうという局長の御答弁を了として、こまかい質問は省略をいたしますが、この問題に関連をして最後に一つ、昨年法務委員会で坂本委員質問をいたしておりますが、今度は出先の役人というか、官僚というか、そういう調査官だけでこの問題を調査しておるのです。そうして人権擁護委員には調査にもタッチさせなければ、審査にもタッチさせていないと思うのです。これは昨年の十二月十七日の坂本委員質問については、人権擁護委員執務規程の七条云云によって、いわば単数で調査をするのだという意味のことを御答弁になっておる。私は、先ほど来から非常にこの問題のキーポイントになるような点が、今日段階で、私どもが調べた範囲でも相当多数落ちておる。そういう問題点をぼかした形でこの人権侵害問題の結論を出すということ自体が、人権擁護局の存在と権威を失墜することになると思います。そういう点からいっても、少なくともこの種の問題は出先機関の官僚だけでやるのではなくて、人権擁護委員を加えた形の調査、審査をされることが当然だと思うわけでありますが、その点についての御用意があるかどうか。これは昨年から約二カ月を経過した事実行為の中から私はそのように思うわけであります。その点についての御見解をお聞かせ願いたい。
  104. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 人権侵犯事件の調査につきましては、人権擁護局関係、すなわち中央では法務省人権擁護局、出先といたしましては法務局の人権擁護部、地方法務局の人権擁護課の職員がこれを調査するという方法と、もう一つは、法務大臣から委嘱されました人権擁護委員が、やはり侵犯事件と認定されました場合には調査されるという二つ方法、あるいは事件によりましては、人権擁護委員と法務局関係職員の共同調査ということもやっておるわけでございます。したがいまして、この事件につきましても、人権擁護委員調査されるということも考えられるわけでありますけれども、前回御指摘人権擁護委員の方は、これまたただいま御指摘のように、人権擁護委員執務規程第七条によりまして、この事件の調査をかりに担当されました場合、もちろん不公平な扱いをされようというふうなことは私ども毛頭考えませんが、その委員の現在おられます地位から、何しろこの事件というものは相手方があるのでございまして、相手方の立場から考えますと、どうも不公平というふうに疑われるという心配があるので、この事件につきまして、前回御指摘人権擁護委員の御調査は御遠慮願った、こういうわけであります。  それでは、今後人権擁護委員を入れて調査するつもりはないかという御質問だろうと思うわけでありますけれども、事案は、すでに第一線から中央まで上がってきておるわけでありますから、もしさらに再調査の必要があるとすれば、これは管区の高松法務局あるいは私どものほうで直接調査をするというのが適当ではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  105. 藤田高敏

    藤田(高)委員 その場合には、人権擁護委員を加えて御調査なさるつもりなのかどうか。
  106. 加藤精三

    加藤委員長 当局の答弁の中にいまあったのですがね、すでにそういう答えは。まあいいでしょう。
  107. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 先ほどもお答えいたしましたとおり、この事件につきましては、必要があれば高松法務局の人権擁護部あるいは法務省人権擁護局職員で直接調査するのが適当であろう、かように考えます。
  108. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私も地方議会で十三年ばかりやってきましたけれども委員長のほうから水をこうさされる委員会には初めてなんで、ちょっとあけすけにいうてとまどうておるのですけれども委員長さんは特別な他意があってああいうふうに水をさされておるのじゃないと思いますので、私もそういう意味理解をいたしますが、なお続いて質問すべき事柄につきましては保留をさせていただきます。  時間の関係もございますので、そのものずばりで、自治省の行政課長さんがお見えでありますのでお尋ねしますが、この問題に直接関連をするわけですが、昨年の九月の一日、本院の地方行政委員会で問題になりました、愛媛県議会が地方自治法百条の規定に基づいて、岡本議員の発言問題を調査特別委員会を設置して、そうして証人喚問の対象にしておるわけです。この経過はもう自治省としては当然御承知だという前提に立って私質問をいたしますが、議員が県議会の中で発言をしたことが、いま県議会の告発という形で検察庁に送られておる。これは明らかに憲法五十一条の精神にも私は反すると思うのです。その後自治省としても、この問題はこれまた異例なケースでありますから、当局としても十分御検討をなされておると思いますが、この愛媛県議会のいま起こっておるこの問題が自治法の百条違反である、違法性の特別委員会を設置しておるというふうに、われわれはその後さらに権威ある学者の意見等を含めて考えておるわけですが、その点当局はその後どういう見解を持たれておるか、お聞かせを願いたい。
  109. 倉橋義長

    ○倉橋説明員 この百条の調査権につきましては、団体の事務、いわゆる公共事務について百条の調査権を行使できるというふうに解釈をいたしております。そこで問題の学力テストでございますが、学力テストに関します事務が府県の公共事務なのか、それとも市町村の公共事務なのかという問題に相なろうかと思います。そこで、通例におきましては、学力テストを実施するということにつきましては、これは地方教育行政の組織及び運営に関する法律というのがございまして、これによるわけでございますが、この市町村の段階でいたしますテストにつきましては、五十四条が根拠だというふうに私ども承っております。さらに四十八条におきまして、都道府県の権限といたしまして「必要な指導、助言又は援助を行う」というのが、都道府県の公共事務といたしまして規定をされておるわけでございます。したがいまして、この問題の点におきましては、特別調査委員会が四十八条の関係においての範囲内になるのかどうか、そういう点が問題であろうかと存ずるわけでございます。
  110. 藤田高敏

    藤田(高)委員 非常に問題点としては、御答弁は明確だと思う。そこでお尋ねをいたしますが、これは昨年の九月一日の地方行政委員会における湯山委員質問でも明確でありますように、この愛媛県議会における調査特別委員会の設置の目的ですね。これはもう間違いなくひとつ確認をして、そうして御答弁を願いたいのですが、調査特別委員会設置の目的にはこう書いてあるのです。「昭和三十九年度文部省学力調査時における」松山市素鷲小学校並びに北吉井小学校の「教育事務に関する調査を行うことを目的とする」こういうことに設置目的は明らかになっております。そうして付議事件としては、「両校における学力調査事務のうち、県会で指摘された具体例について不正事実の有無」と、こうなっておる。ですから、いま課長さんが御答弁になられた地方教育行政法の四十八条をもしこの法的根拠に引用されるとすれば、これは少なくとも県の教育事務に関連しての両校の教育事務という、県の教育事務に関連してというような意味のことがこの設置目的あるいは付議事件の中になければ、これは調査の対象にはならぬと思うのですが、その点ではどうでしょう。
  111. 倉橋義長

    ○倉橋説明員 先ほど申しましたように、この百条の調査権におきまして、都道府県の関係において、市町村の学力テストに関する事務の適正な処理をはかるために、町村に対しまして行ないます指導、助言または援助に関して適法に調査ができるということでありまして、具体的な問題におきましては、その調査が結局その中に当たるかどうがという具体的な事実の問題があろうかと存ずるわけでございます。したがいまして、その判断は、この付議事件の件名とか、それから調査の実態等事実関係に照らして下すべきもの、こういうふうに考えております。
  112. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それではお尋ねしますが、地方自治法の百条に基づいて設置をされる調査特別委員会というものは、議会で議決された範囲外のことまで調査ができるというふうに解釈するわけですか。私はそういうことはできないと思うのですが、その点の見解どうです。
  113. 倉橋義長

    ○倉橋説明員 議会でございますから、そこは議会の設置の目的なり設置の内容なり、あるいはそこで件名等もございます。さらにその設置されました調査の実態、そういうことを総合的に含めて事実の判断を下してまいる、こういうふうに考えております。
  114. 藤田高敏

    藤田(高)委員 地方教育行政法の四十八条というのは、先ほどの御指摘のように、市町村の教育事務に関する指導、助言の権限を県の教育委員会がすることができるということなんですね。しかし、このことはあくまでも、こういう指導、助言をやるという場合であれば、県の教育事務に関するということが、特別委員会を設置する場合にその設置目的なりあるいは調査をする範囲の中に具体的に明記されなければ、これは調査目的には反すると思うんですよ。そういう運用の問題で、調査の範囲が自由自在になるような性格のものであってはならぬと思うのですが、その点についての見解はどうでしょう。
  115. 倉橋義長

    ○倉橋説明員 御質問でございますが、適法に設置をいたしまして、適法な活動でありますためには、いま申しましたように県の事務の範囲内でなければならないわけでございます。したがいまして、その表現等におきましても、そういうような趣旨であるかどうか、それから審議の実態がそういうような趣旨であるかどうかということによりまして、その事実をもとにいたしまして判断をしなければならない、こういうことを申しておるわけでございます。
  116. 藤田高敏

    藤田(高)委員 この問題は、昨年の九月一日に具体的に地方行政委員会に提起をして、そうして佐久間局長も出られて、非常に異例なケースだった。そして吉武自治大臣も出られておるところで質問をしておる問題です。私どもとしては、この種の問題で地方議会の議員が告発される、あるいは調査権の乱用という形で議員の発言、自由の発言というものがセーブされるような議会行為というものは好ましくない。したがって、自治省としては、この自治法の二百何条でしたか、ちょっと忘れましたが、二百四十何条の、自治大臣としての助言、勧告という、こういう行政上の措置を含めて調査もされて、そしてこういった争いというものは好ましくないじゃないか、そういう意味の助言をされる必要が望ましいというふうに私どもも訴えてきたところなんです。ですから、自治省としても、これがきょう初めて問題を提起したわけじゃないのですから、もうかれこれ四カ月近く日時もたっておるのですが、自治省としては総合的に、愛媛県議会のやったことは合法的なものであると判断をされておるのかどうか。それとも、合法的といわぬまでも、こういう争いというものは好ましくないから、何らかの形で自治体に対しても話し合いというか、助言というか、そういう相談をして、たとえばいま告発されておるような問題について取り下げをするような、そういうことを含めての御検討をなさるおつもりはないかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  117. 倉橋義長

    ○倉橋説明員 先ほど来申しておりますように、法律の解釈といたしますれば、公共事務に関する限り特別委員会を設置することができるわけでございまして、そこで、この地方教育行政の組織及び運営に関する法律の四十八条の一項に基づくものでございますれば、できるわけでございます。その実態につきましてては……
  118. 藤田高敏

    藤田(高)委員 そんな仮定はいかぬです、四十八条というものは出ていないのですから。
  119. 倉橋義長

    ○倉橋説明員 ですから、その運営におきましては、府県の事務としていたします場合には、四十八条の一項に関する限り、付議事件でございますとか、先ほど申しましたような調査の実態等を総合的に、この事実の上におきまして適法かどうかというふうにきめるべきものだと私どもは考えておるのであります。さらに現段階におきましては、この問題は権限ある機関におきまして現在取り扱われておるわけでございまして、私どもといたしましては、それがどうなるかという判断につきましては申し上げかねるわけでございます。
  120. 加藤精三

    加藤委員長 藤田さん、さっき十分とおっしゃったけれども、だいぶ時間が経過していますが……
  121. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それでは、委員長のある意味における善処も含めまして、私自身この問題についてもなお要望もありますし、具体的なその後の経過から判断をして自治省自身の御見解を承りたいこともたくさんあるわけでありますが、時間の関係上これでこの質問を終わりたいと思います。ただ、自治省としては、問題を提起されてかなり時間も経過しておるわけですから、できるだけ地方自治体において、この種の問題が変則的な形でいわゆる拡大するといいますか、曲がった形で発展していく、不均等な発展をしていくことを黙認をするのではなくて、やはり正常な、健全な地方自治の発展と運営という立場から、やり方についてはあれこれ申しませんが、適切な指導、助言があってしかるべきじゃないか。そういう点はどうか。この質問者の意図をくんでもらって、そうして今後ともそういった面に行政上の適切な措置がとられることを要望しておきたいと思います。
  122. 加藤精三

    加藤委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。  次会は、来たる十八日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十五分散会