○杉江
政府委員 まず私から、その点について少し具体的に申し上げたいのですが、なぜ上級
学校進学者がふえたかといいます点については、いろいろな原因があると思いますけれ
ども、私は、何といっても戦後の
学校教育制度が非常に民主化されて、あらゆる者が上級の
学校に進みやすくなったという点が
一つあろうと思います。具体的に言いますならば、戦前において
大学へ進む者は、やはり一定のコースを通らなければ非常に
大学へ進み得なかった。しかし今度は、
高等学校を出ればすぐに
大学へ進めるというような制度になったわけであります。
大学についてそうですし、また中
学校はもちろん
義務教育化されたわけですが、
高等学校への進学については、
高等学校制度の
改正によってそれが非常に進みやすくなった、
学校もふえたというようなことが、こういった上級進学者をふやした
一つの大きな原因である。それから、全般的に、戦前に比べれば比較的に、経済的な
発展において国民の多くが
学校へ出しやすくなったということもあろうと思います。それからなお、女子の進学という点が、戦前と比べて著しい顕著な差をもってふえてきている。女子の進学の門戸が開放されたという点も、やはりこの進学率を高める大きな原因だと思います。それからなお、根本的に言いますならば、
日本の社会においてはなお依然として学歴が尊重され、社会における待遇、身分等が学歴によって大きく影響をこうむっておる。そういうような社会の現実が、余裕があるならば、行けるものならばできるだけ高い教育を受けたいという意欲を高めておるように思うのであります。まだいろいろあるかと思いますけれ
ども、進学率を高めておる原因として、私は以上のようなことを
考えております。
この進学
希望が著しくふえたという現実に対してどう対処するかということ、これは非常にむずかしい問題でありますけれ
ども、私は、まず第一に、やはりそういった国民の大きな
希望に即して
学校を
拡充していくということが、いままでにとられた方法でありますし、今後もそういうふうな基本線はやはり必要だと思います。あらゆる段階における
学校を
拡充していくということは、これは世界の動向でもありますし、
日本においては、戦後非常な努力が払われてきましたけれ
ども、なおこういった点の努力も必要だと思います。特に急増期間中においては、そういう努力が一そう必要になってくると思います。
しかし、
日本の教育の普及というのは、世界有数の段階にすでに達しております。だから、単に量的にふやすということだけではいけないので、やはり同時に質を確保するという配慮を十分
考えていかなくてはなりません。ことに高等教育の段階においては、質の低下を来たすようなことについてはきわめて慎重ならざるを得ないと思います。そういった
意味において、高等教育における量的な拡大については、その必要は現在でもあるのでありますけれ
ども、また一方制約もある。そういうふうな中で、やはり入学試験競争の激化ということは、ある程度やむを得ない姿となってあらわれてくるわけであります。それについては、私はいろいろな形でその問題の解決がはかられなければならぬと思います。たとえばその
一つは、能力に応じて
学校を選ぶというふうな
学校の指導も必要であると思います。また、親の
学校教育に対する
考え方も、できるだけ妥当なものにするように導くような配慮も必要だと思います。それからなお、入学試験方法については、やはりまじめに勉強しておれば少なくとも受かりやすいというような、問題の提出のしかた、その方法等についていろいろ改善を加えていく必要があろうと思います。
文部省においても、そういった点の努力はいたしておるつもりでございます。ただ、先ほど政務次官が申されたように、この問題は非常に根が深く、その解決についてはなかなかむずかしい面があって、抜本的な解決を一挙にはかるということは非常にむずかしいのでありますが、いろいろな面からこの改善に十分努力してまいりたいと思います。