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1965-05-17 第48回国会 衆議院 文教委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年五月十七日(月曜日)     午前十時二十五分開議  出席委員    委員長 渡海元三郎君    理事 小澤佐重喜君 理事 坂田 道太君    理事 南  好雄君 理事 三木 喜夫君    理事 山中 吾郎君       大石 八治君    熊谷 義雄君       谷川 和穗君    床次 徳二君       中村庸一郎君    橋本龍太郎君       松山千惠子君    川崎 寛治君       長谷川正三君    鈴木  一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         文部政務次官  押谷 富三君         文部事務官         (大臣官房長) 西田  剛君         文部事務官         (大学学術局         長)      杉江  清君         文部事務官         (調査局長)  天城  勲君         文部事務官         (管理局長)  齋藤  正君         建設事務官         (都市局長)  鮎川 幸雄君  委員外出席者         建 設 技 官         (都市局区画整         理課長)    葛生 新一君         専  門  員 田中  彰君     ――――――――――――― 五月十五日  委員松山千惠子辞任につき、その補欠として  南條徳男君が議長指名委員に選任された。 同日  委員南條徳男辞任につき、その補欠として松  山千恵子君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月十二日  義務教育における習字教育振興に関する請願  (荒木萬壽夫紹介)(第三八七二号)  同(大坪保雄紹介)(第三八七三号)  同(園田直紹介)(第三九三三号)  同外一件(田中彰治紹介)(第三九三四号)  同(増田甲子七君紹介)(第三九三五号)  同(長谷川正三紹介)(第三九九五号)  同(中村庸一郎紹介)(第四一二一号)  同(穗積七郎紹介)(第四一二二号)  学校警備員設置に関する法律案成立促進に関  する請願高橋重信紹介)(第三八七四号)  戦傷病者の子女の育英資金等に関する請願外一  件(小川半次紹介)(第三八八九号)  高等学校学級編制等教育条件向上に関する請  願(唐澤俊樹紹介)(第四〇三五号)  同(井出一太郎紹介)(第四〇三六号)  同(小川平二紹介)(第四〇三七号)  同(吉川久衛紹介)(第四〇三八号)  同(倉石忠雄紹介)(第四〇三九号)  同(小坂善太郎紹介)(第四〇四〇号)  同(下平正一紹介)(第四〇四一号)  同(中澤茂一紹介)(第四〇四二号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第四〇四三号)  同(原茂紹介)(第四〇四四号)  同(松平忠久紹介)(第四〇四五号) 同月十三日  義務教育における習字教育振興に関する請願  (加藤清二紹介)(第四一八一号)  同(渡海元三郎紹介)(第四一八二号)  同(中垣國男紹介)(第四二四六号)  同(前尾繁三郎紹介)(第四二四七号)  同(中曽根康弘紹介)(第四二七二号)  同外一件(田中正巳紹介)(第四三二六号)  同(重盛寿治紹介)(第四三九〇号)  義務教育学校管理下における児童生徒の  学業災害補償に関する請願福永健司紹介)  (第四二七三号)  高等学校学級編制等教育条件向上に関する請  願(増田甲子七君紹介)(第四四二九号) 同月十四日  義務教育における習字教育振興に関する請願  (高橋重信紹介)(第四四五五号)  同(石田博英紹介)(第四五二二号)  同(落合寛茂紹介)(第四五二三号)  同(横路節雄紹介)(第四五二四号) 同月十五日  義務教育における習字教育振興に関する請願  (宇野宗佑紹介)(第四六六七号)  同外二件(中垣國男君外一名紹介)(第四六六  八号)  同(藤枝泉介紹介)(第四六六九号)  同(鈴木善幸紹介)(第四七九六号)  同(三木喜夫紹介)(第四九一八号)  養護教諭を各学校に必置等に関する請願外一件  (有馬輝武紹介)(第四七九二号)  同外二件(川崎寛治紹介)(第四七九三号)  同外一件(兒玉末男紹介)(第四七九四号)  同外二件(村山喜一紹介)(第四七九五号)  学校警備員設置に関する法律案成立促進に関  する請願外三件(大原亨紹介)(第四九一七  号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月十三日  義務教育管理下における児童生徒学業災害  補償に関する陳情書外六件  (第三四三号)  学校警備員設置に関する法律案成立促進に  関する陳情書他三件  (第三四四号)  同外二件  (第四三六号)  国立三重大学工学部設置に関する陳情書  (第三四五号)  私立高等学校振興に関する陳情書  (第三四六号)  公立高等学校設置適正配置及び教職員定数  の標準等に関する法律の一部改正に関する陳情  書外一件  (第三四七号)  義務教育職員給与費実員実額負担に関する陳  情書(第三四八  号)  へき地校及び小規模学校教職員定数の算定に関  する陳情書(第三四  九号)  へき地校及び小規模学校教職員定数の配当及び  給与費等国庫負担に関する陳情書  (第三五〇号)  ユネスコ第十五回総会を京都に誘致に関する陳  情書  (第三五一号)  義務教育施設整備促進に関する陳情書外一件  (第四一五  号) 同月十四日  公立高等学校設置適正配置及び教職員定数  の標準等に関する法律改正に関する陳情書  (第四八四号)  隔遠地域の小、中学校勤務職員待遇改善に関  する陳情書  (第四八五号)  私学助成法制化促進に関する陳情書  (第五一三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  文教行政基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 渡海元三郎

    ○渡海委員長 これより会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。山中吾郎君。
  3. 山中吾郎

    山中(吾)委員 すでに会期があときょうを含んで三日であります。会期延長その他は見通しはつかないままでありますけれども、一応会期延長はないものとして、きょう、あす、あさってのうちに、議員立法数個提案をしておりますし、その他懸案事項もありますので、それについての処理をしてこの国会委員会は終わらなければならぬと思います。ところが大臣は、きょうも午後国会関係のない仕事で御出張のようであります。明日は参議院の文教委員会その他の関係でまた御出席願えるかどうかも保障しがたいという状況である。あさっての一日は、これは万難を排してほかの日程ははぶいても、大臣はやはり責任を持って国会に御出席をなさって、それについての明確な御意見も発表されるべきであるし、その辺の日程は十分に国会中心にお考え願わなければならぬと思うので、大体会期末にはいろいろ他の出張その他については配慮を願って、国会中心にお考えになるのが常識であると私は考えますから、その点十分御配慮願って、国会審議支障のないように御配意願いたい。これを申し上げておきますが、その点は大臣、よろしゅうございますか。
  4. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまお話しのとおり、会期末、余日幾ばくもないときでございますから、特に国会の御審議を尊重いたしまして行動をいたしたい。これはかねがね私の念願でございますので、その点からいって、きめておりますほかのことがありましても、支障がございますれば、これは取りやめることにいたします。
  5. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それでは私の質問に入りたいと思います。  現在、東京都市の問題を含んで、今後の東京都内にある大学あり方をどうするかということもあわせて、筑波山ろく学園研究都市建設するという、ある意味においては政治の中における非常に重要な問題が懸案としてあるわけでありますが、これについて閣議決定をされておるということを聞いておりますけれども、どの程度に閣議決定がされておるのか、この点の真相を明らかにしていただきたいと思います。
  6. 愛知揆一

    愛知国務大臣 研究学園都市建設につきましては、閣議決定あるいは閣議了解をいたしておりますが、それは概略は四十年度から始めて向こう十カ年間で完成することを目標にするということで、関係閣僚懇談会あるいは対策本部等といったようなものを設置することになって、現に進行中でありますが、これは建設省あるいは首都圏整備委員会が主役でございますから、そのほうの政府委員から詳しく御答弁を願ったほうが適当かと思います。
  7. 山中吾郎

    山中(吾)委員 要点だけでいいです、大臣時間がありませんから。
  8. 鮎川幸雄

    鮎川政府委員 ただいま大臣からお話があったとおりでございますが、研究学園都市に関する閣議決定で特に主要な点が二、三行なわれておるわけであります。一つは、三十八年の九月十日に、研究学園都市建設地筑波地区とする。それから研究学園都市計画規模は、おおむね四千ヘクタールを予定する、それから研究学園都市用地の取得、造成は日本住宅公団に行なわせる、これが三十八年九月の十日の閣議了解事項でございます。その後、首都圏整備委員会中心といたしまして建設省、科学技術庁、文部省、農林省、その他日本住宅公団などの関係の間におきましていろいろこの開発に関しまして検討いたしました。その後検討の結果、三十九年十二月十八日に閣議了解が得られるのでございますが、その主要な内要は、先ほど大臣からお話がございましたように、新都市建設は四十年より着手、おおむね十カ年で完成をする、それから新都市建設にあたっては、十分な都市施設を整備するとともに、移転機関等施設整備についてはその充実をはかる、それから用地を提供することによって生活基礎を失う者には、適切な生活再建の措置を行なう、それから総理府研究学園都市建設推進本部を設け、新都市建設に関する連絡、調整及び推進に当たらしめる、こういうような閣議了解が三十九年の十二月に行なわれて、それに基づいて仕事を進めておるという状況でございます。
  9. 山中吾郎

    山中(吾)委員 これは正式の閣議決定でありますか。
  10. 鮎川幸雄

    鮎川政府委員 三十九年十二月十八日の閣議了解でございます。
  11. 山中吾郎

    山中(吾)委員 大臣にお聞きしますが、了解決定とはだいぶ違うのですか。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 了解決定は違いますけれども、この了解ということは、実質的には決定と何ら変わりはございません。ただ、いまも説明がありましたように、総理府研究学園都市建設推進本部が設けられたわけでありますが、それらで事務的にさらにこまかく検討を進めまして、そして書類をもって閣議決定ということになるのが、こういう場合の通例の運び方であります。そういう点から申しましても、これはいわゆる閣議決定と御理解くださって一向差しつかえがない重大な決定でございます。
  13. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それでは私の質問中心に単刀直入に入って、大臣にお聞きいたしたいと思います。局長その他については、大臣がいなくなってからにいたします。この研究学園都市建設にからんで、教育機関関係において東京教育大学東京大学外国語大学等移転することを予定をしておると聞いておりますが、その点について、単に移転というふうな考え方でなくて、文教政策の前向きの発展という姿の中で、一つビジョンを持って文教行政としては考えなければならぬと思うのですが、この点については過密都市の解消という消極的な立場でなくて、文部大臣としては、この機会日本大学あり方も含んで一つビジョンを持って推進しなければならぬと思いますし、そういう点については一つの決意をお持ちになっておられると思いますが、そういう意味においての文部省も見解をお聞きしておきたいと思います。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この問題は、そもそも数年前からいろいろの考え方があったわけでありますが、私は率直に言って最初発想東京都の過密人口対策ということで、直接都市の中にあることが決定的な必要性でない企業とか官庁とか国立学校とかいうものの集団移転という発想があったことは問題違いない事実であると思います。しかし今日におきましては、私ども考え方としては、御承知かと思いますけれども国立研究所についてはおおむね三十五を予定しておるわけでございます。それから一つ国立大学をできるならばここに設置したいということについては、常識的というか俗語を使って申しますれば、これは東京都から過密都市だから追い出すんだというような考え方では全然ございませんで、この機会にりっぱな研究学園都市建設を雄大な構想で進める。その中心にふさわしいりっぱな大学一つつくりたい、こういう発想でいくことが適当であろう。しかし、全然新しく空につくるよりは、できるならば現に都内にあるところの、歴史伝統もあるところのりっぱな大学をこの際母体にして、そしてより充実したものを、実質的には新設するくらいの気持ち移転拡充をはかりたい、現在の私どものかまえ方としては、そういう考え方で実施をしてまいりたい、かように考えておりますが、しかし同時に考えなければならないのは、事は研究所等と違いまして国立大学であります。大学であるということは非常に大きな問題であると思うのであります。これは大学側の積極的な協力と理解なくしては実行ができない筋合いの問題である、かように考えております。
  15. 山中吾郎

    山中(吾)委員 大体妥当な御意見をお聞きしたわけなんですが、いま具体的にそういう筑波山ろくの問題にからんで自主的に真剣に論議をしておる大学東京教育大学であります。東京教育大学敷地が非常に現在狭い。しかし、長い歴史があるので、その歴史の上に、あそこで学部を設定その他をすることによって大学の目的を果たす条件は十分備わっておるけれども敷地関係その他において条件というものが欠けるために発展性を持たないで現在にある。そういうことの中で学内においても真剣に論議をされておるようであります。そういうことを考えますと、今度筑波山ろく学園都市建設するというときにやはり具体的に真剣に取り組んで話をする条件はどうも東京教育大学にあるように思います。そこでこの大学のことについて大臣の御意見をお聞きしておきたいと思うのですが、この点については予算委員会分科会におきましても、大臣は私の質問に対して、学内から理想的な案を出してもらえば、それを真剣に検討して、そして単に移転ということでなくて、前進の姿において検討いたしたいという御答弁もございました。そういうことを含んでもう少し具体的に大臣の御意見をお聞きしておきたいと思うわけであります。  それは、一つはあの教育大学筑波山ろくに持っていく場合については、特色のある総合大学として発展をせしめるという基本的方針をお持ちになって処理をされるかどうか、それをお聞きしておきたいと思います。
  16. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は前にも申し上げましたように、それからきょうも申しましたように、かりに東京教育大学研究学園都市において拡充ということを考える場合においても、これは大学の自主的な立場においての積極的な考え方がなければ、文部省大学に対しまして強制的に圧力を加えるというようなやり方はとるべき手段でない、そういうふうにかたく私は考えておるわけでございます。そこで一方において、前々から、たとえば東京教育大学とかあるいはその他一、二の大学がここに移駐することはどうであろうかというようなことが話にも出ておったようであります。それから教育大学の内部においても非常な反対の方もあるようですし、あるいはまた前向きに取り上げてもいいではないかということの御意見もあるように漏れ承っておるわけでございますが、私としては、もし研究学園都市教育大学が行かれるというような気持ちがあられるならば、その際に大学側としてはどういう条件といいますか、どういう規模考えられるかということを、もし御意見があれば公式であろうが、非公式であろうが、ひとつ遠慮なくお出しいただきたい、こういうふうな気持ちでおるわけでございます。まあきわめて非公式なものかと思いますけれども、若干の御希望のような項目は私も拝見したことがございます。これらの御要望の点は十分検討して、できる限りはその御希望に沿うような考え方で前進したい。そのことがいまお尋ねがございましたように、それは総合大学としての形態において取り上げるのかどうかという話でございますが、私はそういう取り上げ方でかまわない、そのほうがいいのではないのかというふうな考えも含めて今後研究をするといいますか、相協力したい。もしそういうことが公式の意見として出てくるような場合がございますれば、文部省としても前向きに全面的な御協力をして、そういったような考え方ができる限り可能なように、これは関係各省庁あるいは都市計画の問題、用地の問題、その他いろいろ関連することがございましょうから、文部省だけでどんな案が出てきてもそれを一〇〇%実施するというようなことは、私としても言い得ませんけれども文部省姿勢としては、東京教育大学にもしさような御意見があるならば、できるだけ大学側の御意見が成就するようなそういう姿勢で取り組んでいきたい、かように考えております。
  17. 山中吾郎

    山中(吾)委員 総合大学でもかまわないというおことばを使われて、非常に消極的な表現をされましたけれども総合大学に持っていかなければならないと私は思っておるわけであります。これは百年の教育者養成伝統の中に東京教育大学は現在あるわけでありますが、戦後の学校教育法に基づいて大学性格一つなんであります。学術研究人間形成を含んで、学校教育法に規定された大学に基づいての大学である。しかし長い歴史の中に刻み込まれたいわゆる教育者養成するという伝統は永遠に続くと思います。私は学校生命体だと考えておる。その中にさらにユニークな、第一級の総合大学に持っていくことによって、いま一番日本文教政策の欠陥であるところの、教授者研究者、ほんとうの意味教育者養成というものがない——東京大学その他の大学については、実業界であるとか一般の方面人材を出すという伝統の中であの総合大学がある。そういう意味において、教育者を輩出せしむるという伝統の中に、あの教育大学総合大学として、特色のある大学として発展して初めて——現在の大学急増対策にしても、高等学校問題にしても、教授者が不足である、あるいは高等学校教育水準が低いというのは、これは施設、設備よりも、私はその教師の資質が低いからだと思っているので、そういう方面にもっと積極的に総合大学として特色のある歴史を生かすような大学に持っていくべきだという確信のもとに、お考え願うべきであると思うのです。いま差しつかえないというおことばを使われたのですが、それでは大臣、消極的な過密都市の疎開のためにという意味と同じように聞こえるのですが、これはいかがですか。
  18. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは私の申しましたことを全般をお聞き取りいただけば、おのずから私の考えはおわかりいただけると思います。  それともう一つは、先ほど来申しておりますように、全然新しい大学を開設するという場合でございますれば、いろいろ考え方手段、方法もおのずから別になると思いますし、それからまず文部省としてこう考え、これを法律案で御提案、御審議願うという順序になると思いますけれども、現にりっぱなものがある、そうしてこの移転ということをかりに考えられる場合に、その機会においてさらに充実し、りっぱなものにしようという場合には、これはかりに東京教育大学に例をとれば、やはり東京教育大学御自身がどういうお考えをお持ちになるかということが、順序としてまず最初じゃなかろうか、私はこういうふうに考えるのです。したがって、その御提案や御希望が出る案というものが、総合大学のようなものであっても、私どもとしては受け入れる用意がございます、研究の対象にいたしましようということを申し上げているわけでございますから、その辺のところは誤解のないようにお願いいたしたいと思います。
  19. 山中吾郎

    山中(吾)委員 大学から自主的なビジョンが出ることを期待し、それに対して協力する、ある意味においては非常に民主的であってけっこうでございますが、責任回避意味に私はちょっと感じたものですから、その点をお聞きしたわけです。  ただそういうふうな大学移転する機会に、あるいは文部省がある意味において統制を強化するのじゃないかというふうな、戦後における行政教育界不信感というものがまだ残存していると思います。そういうことについてこの機会に、いま大臣が言われた思想そのものが、大学自主性を尊重するという意味からあらわれた表現であろうと私は思いますので、なおその点を確認しておきたいので、消極的な意味でなくして、大学というものの自主性を尊重するということと、それからそういう歴史を持っておる大学は、国の予算か傾注すればするほど発展をする条件があるので、大いにそれに積極的に、大学自主性を尊重しながら、総合大学に向かって責任を持って協力する。しかし、そういうことが国家統制を加えるという意味じゃ絶対ないのだ、こういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  20. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そのとおりでけっこうでございます。
  21. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それではもっと具体的に私の私見も加えて、大臣の御意見をお聞きしたいと思うのですが、あそこには、たとえば昔から、旧制中学校教員養成するという性格を持った時代から、図画、手工という方面の先生を養成するために長い歴史があるわけです。そういうふうな伝統の中で、上野の芸術大学と違った芸術学部という学部新設ということも歴史の上から自然に発展をし、またそれをつくることによって内容の充実した研究ができるというふうに私は考えるわけです。あるいはまた体育という関係で現在すでに体育学部ができておる。これも伝統からあらわれたつの新しいユニークな学部だと思うわけであり出すし、さらに体育関係を含んで教育心理学の必要が関連をしてくるわけでありますけれども養護教員あるいは学校衛生その他を含んで医学的な基礎の上にあそこに特別の学問研究が必要であり、それからまた一つ特色のある社会的な人材を出すという必要があるし、条件がある。したがって、それに基づいた医学部設置、そういう伝統に基づいて法学部、経済学部医学部芸術下部というものが他の大学のまねでなくて、あそこの長い教育条件の中から発展する姿で学部新設というようなものが望ましいと思うのでありますが、ああいう広大な地域に参りまして、そして総合的な大学考えるときに、博士コースを前提とした完成された大学院並びにそういう長い歴史の中から発展をした学問研究の新学部設置については、終着駅として大臣は妥当だとお考えになりますか。もし大学からそういうふうな一つ構想が出た場合には十分に検討し、協力する、こういうお考えでありますか、どうお考えになりますか。
  22. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この問題については、率直に申しますと、少し御質問が早急に過ぎるような感じがいたすわけでございまして、私は、ここでいずれもオーケーオーケーと申し上げれば、それはかえって無責任になると思います。慎重に、そしてまた相当時間をかけて、各方面の御意見も、いよいよ文部省の態度を決定するという場合には、慎重な扱い方をしていかなければならないと思い学院、博士課程をやるか、いたします、こう言えば、この場では非常に歯切れがよくなりますけれども、私としては責任上そこまでは申すことはできません。しかし先ほど来考え方を申し上げておるのでありまして、そういうりっぱな総合大学をつくり上げたい。それも東京教育大学がかりに筑波地区においてということでございますならば、この機会伝統歴史のある東京教育大学というものを中心として、そしてそれにりっぱな肉づけをして、研究学園都市にふさわしいような新構想総合大学ということが望ましいなというようなことは、現在の私の心境としては考えております。
  23. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私終着駅をお聞きしておるのです。だから、文部省の方針としては、こういう過密都市の解消という最大の政治的な課題を含んで、この機会教育水準を高めるという一つ立場文部大臣がおられるはずであるから、こういう機会を善用してああいう筑波山ろくのような広大な地域に一つ大学を移すという場合については、当然終着駅としてのビジョンはお持ちになるべきである、そういう意味において御質問申し上げているわけなんで、来年の問題ではもちろんございません。あの研究都市建設も十カ年計画という構想のもとに出ておるわけでありますから、一つの国家財政の関係もあるでありましょうし、一定の時間の必要なこともわかりますけれども、少なくとも東京大学に対する特別の特色のあるものに——第二東京大学というふうなことばは別にして、そういう特色のある、伝統のある総合大学を終着駅に考えておるかどうか。これはお答えにならなければ、私はただ出ていけということにしかならないと思うのです。旧制大学が各ブロックに一つずつありますが、関東地区というのは、すでに東京都だけで一千万の人口がある。だから伝統と特質を持った別な意味におけるそういう総合大学が終着駅として二つあってしかるべきであるということが言えるので、その終着駅としての大臣の見解を私はお聞きしておるので、早急にいまどうだとは言いません。しかし大臣として、大学行政あり方の中でそういう方向について明確に御意見をお述べになることは一向差しつかえないのじゃないですか、それはいかがですか。
  24. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはきょうにいたしましても、前の予算委員会の場合におきましても私の申し上げていることで十分私はお答えになっていると思いますし、私のビジョンも出しているつもりなんであります。私としてもりっぱなものがほしい、過密都市から追い出すものじゃない、それから大学自主性をできるだけ尊重したい、したがって大学側にも、かりに移転に応ずるとすれば、ごうごうという御希望もあるに違いない、そういうことも大いに私どもも勉強させていただきたい、できるだけ、なし得る限りの努力をもってそういう線に沿いたい、こう申し上げておるのですから、私としては十二分にお答えしているつもりです。
  25. 山中吾郎

    山中(吾)委員 十二分にお答え願っていても、その中身が十二分に私耳に入らぬものですから。要するに、いまあそこの教育大学には、三学部博士コース大学院があるわけです。これは修士課程なんです。そこであの大学はいわゆる博士コースを前提とした大学院を終着駅としてお考えになっているかということ、やはりそれくらいは明確にしないと、十二分にお答え願ったように私は思わないのです。全国各県に一つずつ大学がございます。それをいわゆる大学大学に持っていくのか、あるいは複合大学で修士課程において一つの終着駅を考えておられるのか、大学院を持たない大学として考えるかという、文部省日本大学制度の終着駅は実は明確にされていない。されていないから、こういう一つの具体的ケースの出たときには、お聞きしなければならぬと思うのです。具体的な問題といいますけれども、その程度のことは一つ行政の識見としてお答え願うべきはずのものだと私は思うのです。だから修士課程というものを前提にした大学院をお考えになっておられるか、博士課程を前提としてこの大学考えていくということは、これは具体的な識見、あって、答えられない問題ではないと思うのでが、そうじゃないですか。
  26. 愛知揆一

    愛知国務大臣 従来の文部省考え方からすれば、これはお答えができない範疇に入るわけです。そこで私は研究学園都市というような国家的な、大きくいえば政治的な大事業とでも言えるかもしれません、ここに一つのりっぱな大学をつくるということになれば、また私はそうしたいと思っておりますが、そうなれば従来の事務的な考え方その他をこえた一つの新しい発想を、私はそのすべての国立大学博士課程大学院をつくるのかつくらぬのか、終局点はどこかとおっしゃることに対しては、十分な検討をした上でなければお答えができません。これは非常に大きな問題で、にわかにこれはお答えができないと思います。しかしお話のように研究学園都市、ここにどういう大学をつくるかということについては、それなりの私は積極的なビジョンを持っていい、これは従来の文部省的な考え方から切り離して発想するところに意味があるのである、こういうふうに私は考える。ですからどうしても博士課程大学院が望ましいということであれば、そういう線で考えることは一向差しつかえない、私はこういうふうに考えます。
  27. 山中吾郎

    山中(吾)委員 もう少し明確な識見が大臣としてはお出しになるべきだと思うのですが、現実に博士課程の方向に前進をしておって、もうあらゆる条件が進行しつつある具体的な大学に対して遠慮深過ぎると思うのです。これは事務当局さえ考えていることだと思うのですが、大臣はそれだけ責任を持っておられるかもしれないけれども総合大学というビジョンの中には、博士コースの士学院を終着駅として十分考えているのだと、それは当然じゃないですか。いまお答えになっても何も問題点はないと思うのですが、ぼくも具体的に質問したものですから、それは明確にしてもらわないと、博士コースというものを前提とした大学をおつくりにならないと言ったって、現実に進行しているんですよ。そしてあそこは修士課程で終わりにするなんという方針を聞いたこともないし、現実に進行しているんじゃないですか。敷地が狭いからどうにもならないというだけで押えられてきておるだけなんで、教授陣その他いろいろの点からいって、長い歴史の中に十分な条件が備わってきておるわけなんで、終着駅というものについて総合大学へ必らず持っていくというぐらいのことは、大臣、言えないはずはないじゃないですか。
  28. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはどういうのでしょうか、考え方は全く同じだと思うのですが、私から言わせれば終着駅じゃないのです。むしろこの問題の取り上げ方としては、いよいよそういう方向に向かえば、もちろん博士課程大学院ということを前提にした企画と着手があってしかるべきだ。終着駅じゃないので、むしろ私は出発点だと思っています。そのぐらいの考え方でいかなければならない。私はかように考えております。
  29. 山中吾郎

    山中(吾)委員 出発点を総合大学とお考えになっておられるというのですから、私の申し上げることはもうこれ以上何もないので、安心をいたして次に移りたいと思います。  なお、あの地域が非常に狭いために、施設設備が非常に貧弱なままにあるわけですが、理想的な教育環境、学問研究環境に移るについては、現在の施設設備その他については当然重点的に御検討願えるはずだと思いますし、また一つ学校が先鞭をつけていくということで、その大学は移ってよかった、学問研究立場においても、学生、生徒、教授の生活環境その他からいっても、これはよかったという感じを与えて初めて閣議決定の方針も実現できると思うので、その点は十分配慮願えると思いますが、いかがなものでしょう。
  30. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点も十分配慮しなければならないと思います。これらの点については、先ほど来申し上げておりますように、推進本部でこれからいろいろ計画として青写真をつくるというようなことがだんだん始まってまいると思いますが、そういう場合に、研究都市内部における都市計画において、大学側としてはどういうことを考えていかなければならないか、あるいは都市以外については、たとえば道路なりあるいは住宅を都市以外につくるとすれば、どういう点の配慮が必要であるかというようなことは、当然慎重、綿密に計画されなければならない、かように考えております。  なお、先ほど申しましたところをさらに補足いたしますと、私は大学あり方についての発想とか計画は出発点からはっきりさせていかなければならない、そういう意味で申し上げたのでありますから、たとえば四十一年度から大学院を開設するというふうにはお考えにならないようにしていただきたいと思います。発想としてまず長期計画をきめることが必要である、そのときは大学院という問題が当然発想の第一段階に位置づけられなければ、どういう性格大学をつくるかということがはっきりしないわけですから、そういう意味で出発点であるということを申し上げたわけです。これは念のために補足させていただきます。
  31. 山中吾郎

    山中(吾)委員 現実に建設計画というものがなければ実現できないわけでありますから、いまの大臣の御答弁でけっこうだと思います。ただ、その場合にどうなんですか。実際に方針を決定されて、実施の責任を持つ場合の方法には、省議決定で進めるという場合もあるでしょうし、それから閣議決定でほんとうに責任を持っていくという行き方もあるでしょう。こういう問題は、地元の受け入れ態勢とか、あるいは土地価格の問題であるとか、内外ともにいろいろな意味における抵抗もあるし、相当な政治力も必要であると思います。そういういろいろな方法があると思いますが、そういう場合に、一応そういう方針が実際に保証されるという手続はどういう手続によるものなんですか。
  32. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはもう実に広範にわたると思います。したがって各省庁の連絡を緊密にし、現在でも推進本部にはたしか部会を相当置いておるはずでございますが、これは実に広範な一つの新しい総合的な地域社会をクリエートするわけでありますから、たいへんな事業で、手続もたいへんであろうし、抵抗もたいへんであろうと予測せざるを得ないし、どういうトラブルが起こるかわからない。これは十分に初めから配慮してかからなければならないと思います。  ところで、いまのお尋ねの中の要点は、文部省としてはどうするのかというお尋ねだと思いますが、これは関係各省庁と連絡をよくし、所望の地域がまず手に入り、どういうところのどういうロケーションで大学のキャンパスを設けるか、すでに相当の研究もそのために進んでおるようでございますけれども、さらにそこを使ってくださる大学がきまらなければ、大学側の御意向も、先ほど来申しておりますように、いろいろとこれから白紙に絵がかける状態にあるわけでございますから、十分自主的な積極的な御意向を盛り込んでいきたいと考えております。  それからどこどこ大学をこの際取り上げることを閣議決定にするのか、法律にするのかというようなお尋ねが入っておると思いますが、これは大体の話がまとまりますれば、場合によれば閣議決定ではっきりすることも必要でございましょうし、あるいは手続の問題とすれば、これは将来法律案として国会に御審議を願うことになると思います。それから相当膨大な予算を伴いますから、予算を通して、もちろん閣議決定であり、国会の御審議を願うことになる、かような順序になろうかと思います。
  33. 山中吾郎

    山中(吾)委員 次に移りたいと思いますが、現在AAグループといいますか、アジア、アフリカその他の後進地域の留学生というものが日本に留学をして、先進国としての日本からいろいろ勉強して帰りたいという学生が非常に多いように思うわけであります。そういうことを考えてみますと、日本のAAグループに対する教育的責任というものも相当重視して考えるべきだと私は日ごろ思っております。そういうことを考えたときにああいう筑波山ろくのような地域に学園都市建設する場合には、あの地域に留学生が喜んで勉強できるというふうな施設考えてやるということは、やはりこういう機会文部大臣としては考えるべき一つの課題ではないか。国際学生センターをつくってやる、そうしてあそこに移った大学の中で学問研究の便宜を十分に与えて帰してやる、そこに完備された留学生の寮というか、そういうものをつくって、あそこに移った大学と結びついて国際的な規模における構想を持つ千載一遇の機会ではないかというふうに思うのですが、そういうふうな着想は十分検討さるべきだと私は思いますが、いかがでしょう。
  34. 愛知揆一

    愛知国務大臣 着想としてはまことに御同感でございます。ただ、いまのところは、一体この大学をどういうふうにしていったらいいであろうか、あるいは先ほど申しましたように、三十五の国立研究機関をどういう順序方法で移したらいいかということで、それだけでもたいへんな問題でございますので、いままでのところ具体的にまだ大学の内容についての、先ほどからるる申し上げておりますように検討に入っておる時期ではございませんので、将来これの計画の進め方と相関連して、私は発想としては御同感でございますから、そういう方向もぜひ考えの対象にしていきたいと思います。
  35. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そういう点で御検討願いたいと思います。いま私申し上げたのは、向こうに移った国立大学は、いずれにあっても、その大学学部の中に外国留学生を収容するという定員を最初から前提として、大学の内容の中で向こうに移った場合には考えていく。その中に国際的な性格を持った新しい特質を持った総合大学というふうなことを考えられるのに一番いい機会ではないか、こういう意味で申し上げて、大学機構以外に、別の独立した国際センターとかいうことならば、これは次の次の問題になる、そういう意味でありますから、御検討願っておきたいと思うのです。  次に、具体的に何こうに移るというふうなことは、そこの学生並びに教授、研究者にとっては、生活条件の変化という意味において、非常に影響の大きい事件だと思うのです。そういうことを考えれば、筑波山ろくを見ますと、現在まだ交通機関が十分に発達をしていないという関係から、向こうに行った場合には、この都内に住んでおる学者の諸君は、生活的に非常に不利になる、あるいは研究の便宜が非常に薄くなるというふうなことから、非常に危惧の念をいだいておるようでありますが、それは当然だと思います。したがってそういう点については、向こうに移る人については、そういう研究の便宜、住宅の便宜を十分与えてやるとかいう考慮は、当然こういう計画の中に最初に織り込んでおく必要があると思いますし、またこちらから通勤するということを前提とする場合には、交通機関その他については十分の検討をしてやるということを考える必要があると思うので、これは次の問題のようにも考えられるけれども、実際問題として移す場合には最初考えるべき問題ではないかと考えるのですが、この点について実施をされる段階に十分配慮を願うべき問題としてお考え願えるのかどうか、これも大臣に直接お聞きしておきたい。
  36. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはもとよりきわめて当然なことでありまして、現在、たとえば東京教育大学学内においてもいろいろの御論議が、非常に激越な反対論者もおられるようでございますが、それらのよってくるところは何であるか、私もよくわかりません。しかし一般的に移転というようなことが、相当いろいろの意味で危惧の念を持たれるということは当然のことだと思います。それから一方、研究学園都市をりっぱにつくり上げるということから言いますならば、先ほど来るる申し上げていますように、国立機関のほかにも相当の移転考えていることですし、住宅なりその他の配慮というものは、都市計画としても当然取り上げなければならぬことでありますから、所要の施設ができるに伴って、そこに勤務される学者、研究者の方々に安んじて仕事がしていただけるような配慮は十分にしなければいけない、それがむしろ前提であるという御趣旨はまことにごもっとも、御同感でございます。そしてそれらの点については私からお答えいたしますよりも、建設省なりあるいは首都圏整備委員会なりあるいは総理府なりその他から機会を得て直接お聞き取りを願いたいと思います。  それからもう一つは、これは私もそういった点はしろうと考えでありますけれども、現在を前提にしてものを考えるのは、私は間違いだと考えます。たとえば東京とこの学園都市に予定されている地域との間の交通の問題一つ取り上げてみましても、キロ数その他から見ますれば、私はこれが完成し、あるいは完成の途上にいったころには、もうきわめて短時間で東京都内からも往復ができるようなことになるのではなかろうか、かように考えますので、そういう点も考え合わせて、通勤とか住宅とかいう点についてもかなり幅のある、楽な考え方も同時にできるのではなかろうかというようにも私は思っておりますが、いずれにいたしましても、これは今後の研究課題であり、関係の主務官庁その他と十分相談をしなければ、確たるお答えもできないわけであります。
  37. 山中吾郎

    山中(吾)委員 これは建設省にお聞きしたいのですが、いま大臣、ほかにまた用事があるから残してあるわけで、あとで局長にお聞きしますから、もう少し残っておってください。  いま大臣の言われたとおりでありまして、世界の何か都市計画の専門家に聞くと、百キロ以内は一つ都市の概念で考えるべきだというところまでいっておるというから、あそこは六十キロだそうで、その点は都市計画立場から順序を間違いなく進められれば解決できると思いますが、生活条件を一時低下させないように実施をする場合にその順序をまず考えてほしい。そういうことは、文部省のほうからそういう責任者に対して、教育を高めるために、あるいは大学移転なら移転という場合に、支障のないように要望する事項として重大であるという意味においてお聞きしたわけなんです。  次に、いまの一千万の人口ということの中で、学生、生徒が毎年何十万とこの都内に入ってくるために、どうにもならないということが一つの問題なのだし、そのために教育環境も非常な欠点が出てきておる。学生、生徒生活費に追われてアルバイトもほとんどしておるという姿の中で、総合的に検討されて、学園都市建設が出ておると思う。そうしますと、こういう計画を一方において推進していくならば、一方、文部省のほうにおいてこの過密都市を助成するような大学の定員増を認めるとか、都内にある大学の設備の拡充、増設をいまのようにやるならば、私はその行政に統一性がないと思う。一たん国立大学移転するというふうな決意をされるならば、少なくとも都内大学拡充はもう停止をするとか、そういうふうな一方の決意を含んでやるべきだと思うのですが、ある大学を外に出しておいて、既設の都内大学をまた一方において、だんだんと教育環境も悪くすることになる拡充を認めていくということでは、これは筋が通らない。そういう意味において、既存の都内にある大学の設備その他についての増設は押えてやるというくらいのお考えが明確になされなければ、これは一つ一つの問題も解決はしないのではないかと思うのですが、これはどうですか。
  38. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは考え方としては私はそのとおりだと思います。現に、四十年度における国立大学拡充計画につきましても、いわゆる地方にあるところの国立大学の充実ということに重点を置いたということもその一つのあらわれであります。ただしかし実際問題として申しますれば、現在大学の学生数はおおむね約百万、そのうちの半分近くは東京である。その東京に一人も増員を認めない、そしてたとえば教育大学の一校だけ研究学園都市にいく。都内大学には一人も認めない。それは実際の行政からいって実現できないことである。しかし考え方は、ものの重点、比重の置き方、政策の重点は御趣旨のようなところに置くのが当然でございます。しかし来年度は現在東京にあるところの国公私立大学の定員の増員は一人も認めるべからずとおっしゃっても、私は、よろしゅうございますとは申せません。
  39. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それは、少しつっけんどんなお答えをされておるようですが、そうではなくて、東京大学であっても、一橋大学であっても、増員とか新しく研究機関を設置するのは、その拡大として筑波山ろく設置する、これはわかる。しかしそういうわけにもいかないというようなことはおかしいんじゃないですか。大学の拡張の姿によって郊外に設置をするというならわかるのですよ。しかも、それが閣議決定研究学園都市筑波山ろく決定したならば、そこに持っていく新しい設備というものならば——一つ大学全部移転は別にしても、それくらいの指導が統一されてなければできないんじゃないですか。いまの大臣のお答えなら、結局同じだということになるでしょう。そうじゃないですか。
  40. 愛知揆一

    愛知国務大臣 どうもつっけんどんだと言われておしかりを受けますけれども考え方や政策としてはそうあるべきである、御趣旨のとおりだと考えるのです。ただ、それだからといって、来年度以降国公私立について東京都内のものは何も拡充ということは絶対にやらないのだ、こういうのは言い過ぎであり、実情からいってそうもまいりませんということを率直に申し上げただけで、この点はおわかりいただけると思います。
  41. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それくらいのところは言い過ぎるくらい言っておいてもいいんじゃないかと私は思うのですがね。おそらく同じことになる。東京都内における私学関係だと、それはうんと抵抗がありますよ。あるけれども、とにかく現在の東京都の外になら、同じ大学発展の設備であっても何にしても認めるというぐらいのことはできるんじゃないか。これは、首都圏整備委員会のほうでも、人口増になるような要素の学校その他については制限をするということを、法律ですでに数年前に定めてあるくらいで、私はその法律をつくるときに建設委員会に席があって、教育関係について質問をしたり論議をした覚えがある。そういう段階にきておるわけですから、言い過ぎていいんじゃないかと思うのです。大臣はずいぶん御遠慮なさっておるようだけれども大臣の一言一句が少なくともいい意味において影響を与えるならば、言い過ぎていいんじゃないかと思う。おそらく東京都内において定員増その他をする場合については、ずいぶん無理ないき方しかできないはずで、大学経営者としてもそのことを考えているんじゃないか。大臣がそう言われても、そのとおりとむしろ受け入れる条件になっておると私は思うのですが、この点については、少なくともいままでと違った前進した方針をお出しにならなければ、実際問題としては大学まかせで、そっちが案を持ってこなければ、こっちは別にどうというわけじゃないという態度と同じになってしまうんじゃないかと思うのですが、それはどうです。もう少し一歩前進して御意見を出されてもいいんじゃないですか。
  42. 愛知揆一

    愛知国務大臣 お考えは、先ほど申しておりますように、私は趣旨としては御同感なんであります。ただ何べんもくどいようでございますけれども、たとえば来年度を考えてみた場合にも、どうしても、東京都内に国公立を通じて一つも何もしないということを言い切ることは無理だと思います。もしそれを言い切る必要があるならば、相当時間をお与えいただいて、来年度のいろいろの計画を検討いたしました上で、これこれは拡充をいたしますということをお答えいたしたいと思います。これは私は正直に、責任があることでありますだけに、そういう点に具体的に切り込んで、いまの時期に不用意に、資料もなしにお答えすることは、私の責任上できません。
  43. 山中吾郎

    山中(吾)委員 国公私立まで入ったものでから——国立くらいは抑制する方針をとるということは、これは大臣言えるだろうと思うのですが、私立ということになると、いろいろ問題が出るでしょう。少なくともそういう御検討をお願いして、次の機会にさらに質問いたしたいと思います。  それから、これも具体的で大臣は答えにくい——ある大学が疎開をいたしたときに、大学関係の特別会計法によって、その大学移転をすると、その敷地は財源にすることができるという法改正が昨年できたわけであります。そういうことについて、私一つの心配があるわけです。一つ大学移転をすると、残りの敷地はこま切れに民間に売って、あるいは都市計画立場からいって思わしくない使用のしかたというものが財源ほしさにいろいろ出てくるのではないか、そういう危険をあの法改正の中に含んでおるように思います。したがって、たとえば教育大学移転をする場合に、あの地域をさらに都市計画の体制をくずすような使用のしかたを、財源ほしさでやるというふうなことでは、私は全体としての日本の政治が後退すると思うので、そういうのでなくて、あの伝統というものを生かすような使い方が当然考えられるべきものである。これはどの大学でも同じだと思います。むしろ世界的に緑地地帯の一番少ない都市として、最も不完全な東京都だといわれておるわけでありますから、その点は十分に配慮すべき問題ではないか。この点はいかがでしょう。
  44. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これもお考えのとおり、そういう方向が私は正しい行き方であると考えます。先ほどお話がありましたように、特別会計法の趣旨は、たとえばかえ地のあとを財源として確保するためにということが重点であるのではなくて、そういうこともでき得るようにするということでありますし、それから今回のこの研究学園都市東京都内との関係においては、こういうりっぱな都市計画をやりたいということは、同時にまた過密都市対策でもあるわけなんでありますから、そのあとを民間に払い下げて、そこに雑多な家や商店や工場が建つということでは、これはもうこういったような構想というものはそこからしてくずれるわけでございますから、これは政府の考え方もいまの御趣旨の線に同じであるというふうにお考えいただいて間違いないと思います。
  45. 山中吾郎

    山中(吾)委員 あまり時間がないので、汽車に乗りおくれぬように責任を持って質問を終わりますが、あそこには付属小学校、中学校高等学校があるわけです。そしてその学校は地域社会の施設であって、大学を移したからといって付属の小学校を移すと、PTAその他でたいへんな問題になると思います。そういう無謀な行政はできないと思うのです。小学校、中学校は地域の問題ですから、そして長い歴史があって、鳩山一郎以下みんなあの辺の卒業生なんで、たいへんな問題だと思う。これは残るべきものだと思う。付属研究機関として、やはり教育者養成という伝統があるのですから、どんなに発展しようが、それは結びついてくるんだ。そういう意味において、かりに筑波山ろくに本体が移っても、何らかの関係においてあの地域については教育的な結びつきは切れないんだ、そういうふうなことも十分に御検討願って、具体的に可能ないろいろの方法を御検討願う必要がある。これは局長においてもその点はよく御検討願っておかないと、思わざるところでとんざするものが出ると思うので、この点も大臣に御要望しておきたいと思います。  私の質問はきょうはこれで終わりますが、整理しておきたいと思うのです。要するに一つ大学移転をするということは非常にむずかしい問題なので、学内が喜んで一致するということもなかなか至難だと思うのですが、しかし一つの理想というものを前提としてお互いに協力——すべき問題の場合には協力せねばならぬと思うので御質問しておるわけですが、総合大学という一つビジョンというものが大学から出れば、十分に検討するということを大臣は言われておる。具体的にそういうものが出れば、ひとつ国の責任において日本教育水準を高め、研究水準を高めるという立場において最大限の協力をお願いをいたしたいと思いますし、さらに実際に実施する場合には、途中で未完成のままにしり切れトンボになるといことのないように責任を十分に明確にして、そして実施をされるという二つだけは明確にしておきたいと思うのです。その点について大臣の御答弁を願って、きょうは私の大臣に対する質問は終わります。あと残った人にもう少し詳しくお聞きしたい点があるので、大臣からひとつ……。
  46. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまの集約した御質問、御意見でございますが、大筋においては私けっこうな御提案だと思います。要するに研究学園都市をりっぱなものにしたい。したがってまたそこにできる大学はりっぱな総合大学でありたい、総合大学といえばそういうことでありますけれども大学院問題を含めて、きょうの再々の御質問に対して、私はビジョンとしてそういうかまえ方でい出たい、こういうふうに思っておりますが、何ぶんにも現に、たとえていえば、東京教育大学からも正式の御提案というか、御相談もない状況でもございますし、私どもとしては押しつけて強制的に移転をしてもらいたいというような態度はすべきでないと思いますから、そういう点がまだ軌道に乗っていない間に、こまかい点にわたりましていろいろと申し上げるのもいかがかと思います。しかしここに一つのりっぱな総合大学をつくりたい、そうすることによって研究学園都市を意義あらしめたいという考え方については、私は政府部内相協力してその目的に邁進したい、これが第一。  それからその次に、かりに東京教育大学にしろ、あるいは他の大学にしろ、そういうふうな御希望を持ってこられました場合、建設的に、積極的に御協力がいただけるという見通しがつきますれば、それに対して私どもとしては全力をあげて御協力をいたしたい。ただこれには財政当局その他の関係もございますから、その間にはいろいろの紆余曲折もありましょう。しかし文部省としては、あくまで全力をあげて御協力をするという姿勢で、誠意を尽くしていきたい。これが私の集約した結論でございます。どうぞ御協力をお願いいたしたいと思います。
  47. 山中吾郎

    山中(吾)委員 建設省局長にお聞きしたい。最近の都市あり方について、私はしろうとですが、この間磯村教授から聞いたのですけれども都市の形態にいろいろの型があるそうで、そのうちのエキメノポリス型とかいいましたが、何かいままでのように衛星都市というふうな思想でなくて、機能を分担をして、一定の都市に職場と住居が建設されて、ぽつんぽつんと衛星的にできるというふうなのはもう古いのだ、そうでなくて、職場と住居というものは分化するということは当然の前提として都市計画がなされるべきだ、そういう時代にきておるというお話、私もそういうふうなことが近代化の中において出てくる自然の姿だと実は思っておるわけなんです。たとえばいま筑波問題を持ってくると、筑波山ろく学校とか研究機関とか、いわゆる職場という機関を集中的につくる。ところが住宅は自動車その他によって、五十キロ以内ならば、道路さえりっぱになれば、一時間ぐらいで研究員も学生にしても通えるわけです。そういうわけで、筑波山ろくのこの都市を開発するということは、同時にそこにあらゆる住局地と職場というものを一つになるように建設することと必ずしも考える必要はないので、都心部と筑波の山ろくの中間に、いわゆる住宅地があって、筑波山ろく研究その他の機関が集中されて通勤の姿においてあそこに一つ研究学園都市ができるという、そういう構想でしかるべきじゃないかという話を聞いたのですが、現在建設省考えておる筑波山ろく都市計画というものはどういう思想で出発をされておるのか、それによって、たとえば文部省がある大学移転する場合についての計画の立て方も違ってくると思うので、それをお聞きしたいと思います。
  48. 鮎川幸雄

    鮎川政府委員 ただいま筑波山ろくにおける都市計画的な、特に住宅と職場に関する基本的な考え方はどうかというお話だと思いますが、この問題は非常にむずかしい問題の一つであるかと思いますが、この筑波付近におきまする研究学園都市建設の問題は、申し上げるまでもなく大都市におけるいわゆる過密対策の一環としても考えられておる問題であります。また、学校あるいは研究機関自体のいろいろの問題があるかと思いますが、それらのものを含めてこの対策が行なわれておるわけでございます。  大都市問題に対する考え方としましては、一つには大都市における人口、産業の集中をできるだけ防ぎませんと、なかなか大都市自体の問題は解決できないわけでありまして、このためには、すでに御承知のとおり全国的な見地に立って新産業都市あるいは工業整備特別地域の整備、こういうような国家的な基本的な立場からの施策が行なわれておりまして、それによって人口、産業の集中をできるだけ抑制しようという考え方が基本にあるわけでございます。なお、そういう全国的な考え方のほかに、大都市自体の問題として、この大都市におけるいろいろな過密化の問題を解消いたしますためには、都市における人口、産業、特に工場あるいは研究学園都市など、必ずしも大都市になくても十分な機能を果たし、それぞれの目的を果たすためには、これをある地域において分散疎開いたしまして、それぞれの目的を果たしてもらう、こういう考え方があるわけでございます。この研究学園都市というものは、そういう考え方から出発しておるというように考えられております。  なお、この場合、いま御指摘の点は、大都市から分散をさして、通勤できるようなところに考えておるのか、あるいは住宅及び施設等も含めてこれを分散させるというように考えておるかというお話であるかと思いますが、この点は、後者のほうに考えておるわけでありまして、研究学園都市として必要な学校その他研究施設等を疎開いたしますとともに、それに必要な住宅等もあわせてこれを建設をいたして、特にまとまった一つ都市建設するということが基本的な考え方でございます。ただしかしながら、そうかといって、全部大都市から無関係になってしまうかという点は、これは必ずしもそうは言い得ないわけでございまして、ただいま十カ年計画の案をいろいろ関係方面において検討をされておるわけでございますが、この検討の中の一環として都市間の交通連絡をどういうようにするかというような道路の建設あるいはバスの問題あるいは鉄道軌道の建設その他いろいろな諸施設をどうするかという点ももちろんあわせて研究をされておるという状況でございます。
  49. 山中吾郎

    山中(吾)委員 ぼくもしろうとでわからないのだが、一つ稠密中心部があって、その周辺に衛星都市をつくっていく、メトロポリス型とかいうのだそうですね、そこへ什器も何もみな持っていく。分散をするだけだ。そうじゃなくて機能的に分散をして、研究機関その他をそこに集めるが、住宅は別途に考える、職場と住宅を分化するという建設のしかたもある、それでどちらかお聞きしたのだが、要するに今度の場合は中都市建設するという思想なわけですか。
  50. 鮎川幸雄

    鮎川政府委員 そのとおりでございます。
  51. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それではそのどちらを構想すべきか、いまの建設省構想は欠点があるかどうかということは、学者その他の論議で次にいろいろ論議されると思いますが、これは私は言いません。もしそれを前提とすると、この地域に住んでおる研究者筑波山ろく学校移転した場合、生活が急に向こうに移るということは非常に不便になるし、犠牲が多い。したがってそれを前提とする場合については、高速自動車道路とか、あの地域の建設で一番最初にこの中心部との間にそういう道路というものを考えるべきだと思うのですが、いかがですか。オリンピックの場合はあらゆる努力を払って道路をつくったけれども、こういう教育、文化を推進するときはあと回しにするなんという考えは私はどうも受け取れないのだが、建設省考えはどうですか。
  52. 鮎川幸雄

    鮎川政府委員 独立したまとまった都市をつくるために研究機関や大学その他の研究活動が十分にできる機能を持つ都市でありますとともに、その都市自体が、その他消費、娯楽、教育、医療、厚生等の面において十分な都市的な機能を果たすまとまったものをつくるということが一つ考えでございますが、それとあわせまして、先ほど御指摘ございました都市間交通と申しますか、そういう交通をどういうふうにするか、それを最初考えるべきではないかという点でございますがこれは私どももただいまそういう点、どういう道路を建設すべきかという点をあわせて検討いたしておるわけでございまして、ただこの道路建設というものは研究学園都市自体の問題ではなく、特に茨城県あるいは東北全体に関係する道路網の整備等の問題もございますので、そういう点も含めまして、この研究学園都市における道路整備をどうするかという点をいろいろな面から検討をいたしておるわけでございます。
  53. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そうすると国土縦貫道路ですか、法律に基づいていま名神道路のような、あの道路の予定線は筑波山ろくを通りますか。
  54. 鮎川幸雄

    鮎川政府委員 名神高速道路は東京−名古屋あるいは名古屋−東京、そういう方面の主たる地域を通るわけでございますが、そういう性格のものというようなお話かと思いますが、そういう自動車専用道路のようなものを考えるかどうかについては、いろいろと諸般の情勢をあわせて検討しておるということでございます。
  55. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私はその縦貫道路の審議委員をしておる者ですが、東京から青森に至る予定線はすでに建設省で想定されております。その予定線が筑波山ろくを通るということがちょうど一致しておれば、そこを先に着手するというふうなことで政治的に進めることもできると思うのでお聞きしたわけですが、その予定線が筑波山ろくを通っておるかどうかは御存じないわけですか。
  56. 鮎川幸雄

    鮎川政府委員 東北縦貫自動車道の予定路線は、その地域とはいまのところ関係ございません。その地域自体の道路整備をどうするかという点で研究いたしておるわけであります。国道の線とか、その他それにあわせましていろいろ自動車交通量の増大等を含めましてどうするかという点で検討しておるわけでございます。
  57. 山中吾郎

    山中(吾)委員 いま局長から直接お答えは願えないと思いますけれども国立大学を三十幾つと私立大学を幾つ、研究機関をどうだということで、四千億円の構想のもとに筑波山ろく研究学園都市建設があるようでありますから、当然そこに自動車専用道路ぐらいは、その中に計画が入らなければ、全体の構想の中で私はつじつまが合わないように思うのです。少なくとも最初にその道路網の整備というものを計画の中に織り込んでもらう必要があるし、その計画を速急に、そういう実施の前にお立て願いたいと思うのですが、そういう線についての発表は、少なくともある大学移転に着手というようなことと同時にそういう計画は発表できますか。
  58. 鮎川幸雄

    鮎川政府委員 これは都市局自体の問題だけでこざいませんので、責任をもってお答えはできないわけでございますが、先ほどから申し上げますとおり、その必要性については十分関係者と検討いたしておる状況でございます。ただこの道路整備その他も、先ほど申し上げましたように、この研究学園都市自体が将来十カ年にわたって用地を取得し、敷地を整備し、いろいろな施設建設していく段階でございまして、建設費自体の進捗状況等もあるわけでありますが、そういう点もあわせ、さらに道路全体の問題等も検討してやっておるわけでございますが、これに伴う財源問題等もあるわけでございます。したがいまして、そういう点をからみ合わせまして十分検討された後、しかるべき時期に発表されると思います。
  59. 山中吾郎

    山中(吾)委員 その計画の中で優先的に、最初にそういう道路整備というものを計画に織り込まれることを要望したいと思うので、ひとつ内部で論議をしていただきたいと思います。  それからああいう大学その他が移転をいたしますと、都内におる学生などは六、七割はアルバイトをしておるけですが、ああいう地域においてアルバイトの場所、施設をつくってやるくらいのことがないと、おそらく育英資金をあこそに移った者には九割九分出してやるという育英会の方針が出ればまた別ですが、これはなかなかできないのではないかと思うので、そういうふうな地域内におけるアルバイト施設だとか、あるいは全寮、希望者はほとんど全部収容できるような寄宿舎をつくってやるとか、そういう住宅関係というのはどこでやるのですか。
  60. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 まだ大学が正式に意思決定をしておりませんので、表立って言うことはできませんけれども、一面私ども推進本部なり首都圏との関係では、いろいろなものを過去一、二年想定をいたしまして、そうして検討の材料を出しておるわけであります。その中には御指摘のように、新たな土地に大学移転するわけでございますから、学生にいたしましても、教職員にいたしましても、従来のような比率の住居なりないしは学寮の比率ではこれはだめだということで、例外的に通うような人がある部分は除きまして、学生につきましては大幅に学寮に収容する必要があるのではないかというような資料は一応出しておるわけでございます。これはもちろん正式な問題といたしましては今後の検討の問題でございますけれども考え方としては、むしろ学生の生活環境を整備するというので、むしろそういう面で負担の軽減をはかるということを主にして考えるべきだ、かように思っておるわけでございます。
  61. 山中吾郎

    山中(吾)委員 これはこれからの問題で決定されることを前提としての話だけれども、いまのお話では、向こうにもし移転をすれば、道路を整備しなければ全部この辺からは通えなくなるわけです。そうすると学生でここら辺で下宿をしているとか、あるいは間借りをしているという者は、向こうに移って収容できる設備というものはもう最初から計画の中にはうり込んでおるということですか。
  62. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 私どもはそういうふうに実現したいと思って資料を整備している段階でございます。
  63. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そういう計画は少なくとも最初から立ててやっていただかないと実は実現できないと思いますね。  それから、これは大学局長にお尋ねします。いま大臣とだけ話しておったわけですが、いわゆる大学局のほうでは、もっと具体的にはある程度の方針をきめて、実践的な考えを一応持っておると思うのですが、大臣が言っておる以外に何かつけ加えることがあったら言っておいてください。
  64. 杉江清

    ○杉江政府委員 特に具体的な計画を私どものほうで固めているということはございません。まだその時期ではないと思っております。ただ管理局のほうでいろいろ施設関係のことを一応でもやはり計画する必要があるわけであります。そのときにまあ先ほどのような大臣のお考えを含んで、できるだけ将来のビジョンとしては大きい土地も用意し、いろいろな学部も置けるような配慮をして、一応の計画をして折衝の資料にしている、こういうことでございます。
  65. 山中吾郎

    山中(吾)委員 何坪くらい予定しているのですか。
  66. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 文部省関係のこの研究学園都市における団地は三つございまして、いわゆる国立大学中心といたしますもの七十八万坪というものが一つ、それから私立大学の団地として六十一万坪、それから非常に大規模国立大学研究所といたしまして別に七十万坪という、三カ所の団地を予定して折衝しているわけでございます。この七十八万坪の中に、まあかりに東京教育大学がおきめになるならば、そこで将来における拡充発展の要素を見、しかも従来のものよりはできるだけこの際に充実した施設をつくるということで、これから作業を進めてまいりたいと思うわけでございます。   〔委員長退席、坂田(道)委員長代理着席〕 これはまだいろいろな前提のあることでございますけれども、作業としてはそういうことをやっておるわけでございます。  なお、この中にはすでに科学博物館の自然教育センターというようなものが意思決定をして、むしろできるだけ早く移りたいというようなものもございますので、そういうものとのからみ合いがどうなるかということでございますが、従来の大学敷地にしてみれば、相当大きなものを予定して、この中に施設を点存せしめるという考え方でございます。
  67. 山中吾郎

    山中(吾)委員 かりに四十一年度から何か着手かあるいは実行に移すようなことを前提とする場合には、文部省ではいつごろまでにその方針を決定しておく必要があるのですか。あるいは四十二年ということになれば、またその方針が変わるかどうかということも含んで、大体四十一年度、結局来年度予算の中で何らかの形でこの芽を出すというふうな姿の中で進めていく場合には、具体的な方針というものはいつまでにきめるのですか。六月の末ごろですか。
  68. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 その点につきましては、実は私の局限りの問題ではございません。それからまあ現在、本年にかけては相当の部分を住宅公団で買収にかかるわけでございますが、これをどういう時期に、大学が移るということがきまった場合にあとの年次計画を立てていくかということは、まだ未定の問題でございます。ただおそらく、いつ着手するかということに関係なく、これはちょっと私の守備範囲を越えますけれども懸案となっております大学自体の拡充という問題がございまするから、私どもとしてはできるだけ早く大学の御意思を承ったほうが仕事がやりやすいというふうには考えております。
  69. 山中吾郎

    山中(吾)委員 来年度というものは、大学のほうから統一されて一つ意見が出て、それに基づいて文部省が一定のある程度の予算が必要な場合に大蔵と折衝されるのだが、そういうものが出ない限りについては、四十二年度まで待つというふうな方針でおられるわけですね。どういうことですか。
  70. 杉江清

    ○杉江政府委員 四十一年度にまず何をやるかしいうことについての文部省の方針は、大体概算要求によってきまるわけでございます。この概算要求の編成は八月にいたします。だから四十一年度に、いまの移転の基本的な大学の意思決定がなされれば、それに応じていろいろなことも考えていくわけであります。もちろん現実に筑波山ろく施設をするというふうな時期はあとになると思います。しかし、土地購入等も具体的に進められるわけでありますし、またその移転ということの基本的な意思決定がなされれば、将来の拡張を見通して大学拡充整備を現段階においてはこういうふうな範囲において行なう、あるいはこういう点についてはこれを将来の拡充を見通してしばらく保留するとか、そういうふうなことが、まあ大きな予算にはおそらくならないと思いますけれども、ある程度芽を出すという問題は八月の概算要求にも起こってまいるものと思うのであります。そういうふうな意思決定がなされないと、すべてがペンディングになってしまう。私どもとしては明年度予算に何らかの意味で顔を出すとか、あるいはそれを含んでの措置をするということは非常に困難になってくるという現実的な問題がございます。
  71. 山中吾郎

    山中(吾)委員 大体のことはのみ込んだわけですが、大学ビジョンというものが一応大学から出される、文部省はそれを検討して、一応こういう一つ構想で出発をするということについてきまれば、今度は来年度土地購入なら土地購入という段階が出る。移転なんというものはあとですね。そういう順序になると思うのですが、その場合、これは実現できるかどうかわからないけれども移転のあとにおけるいわゆる大学あり方というものが、一応文部省大学との間に意見が一致した場合に、それを将来に向かって保障するという手続は省議決定ということになるのか、どういうことなんですか。土地購入予算を出す場合については、大蔵省とやはりそういう全体計画というものの話が出なければやはり予算計上もされないわけですね。したがってそういう場合には、移転をしたあとどういうふうな構想でこの大学建設するんだ、年次的な計画まではいかなくても、終着駅は——まあ出発点であると同時に終着駅のビジョンにもなると思うのだけれども、そういうものがなければ、土地購入予算というものも計上されないと思うのですね。そうでしょう。そこで六月ごろまでにそういう具体的な話が出た、八月の最初の要求についてまず土地購入費というものを計上しようというところまで行くについて、その大学ビジョンというか何というか、そういうものは一応省議決定という方針に明確にして予算要求になるのか、一応大学と、あるいは文部省の事務当局と話をしただけで、それで行こうというので来年度土地購入という予算を計上して頭を出すということだけになるのか、どっちですか。
  72. 杉江清

    ○杉江政府委員 将来のビジョンをこの八月、具体的にいって明年度の概算要求までに大学の意思がまとまるとして、そしてその際に将来の大学ビジョンまでも一挙に確定する、具体性を持ってそれを一挙に確定するということは、私は実際問題としてはかなり困難な問題だと思います。ただしかし、たとえば土地購入をするにいたしましても、たとえば現在の規模だけで移るとしたら七十八万坪と想定している、そんな大きな面積は必要なくなるわけです。だから、たとえば土地を何坪購入するかというようなことは、おそらく移転決定すれば四十一年度予算でそれはきめざるを得ないと思うのです。そういった関連において大学規模というものは将来は大体この程度まで拡張し得る余地を持って土地購入をするという線が出るわけでございます。そういったことを通じて次第に具体性を持ってくると思います。ただ、具体的にはそうでございますが、たとえば総合大学の将来の夢をどうするかということのある程度の見通しは、私は文部省としても持たざるを得ないし、まだそういう具体性を十分には持ち得ないけれども、大体のところの考え方はやはり省議できめるということになってまいると思います。その辺、そのときのいろいろな状況によっていろいろな形が考えられると思いますけれども、土地購入費ということで一部具体的に将来のビジョンを固めざるを得ないということ、あるいは将来のビジョンということを離れてもある程度文部省で意思統一をする必要が出てくるんじゃないか。その場合において文部省の正式の意思決定をするということになろうと思います。
  73. 山中吾郎

    山中(吾)委員 質問を終わりますが、要するに具体的に土地を購入する場合には全体計画として購入するのですから、将来学園都市建設するという方針さえあれば、どの大学が行こうが行くまいが、土地の購入を先にしないと価格が上がるし、それは一つの行き方は別にあるとは思うのです。しかし具体的に一つ大学移転に結びついて予算要求ということになってくるならば、将来に一つの保障というものを前提としないと文部省の行き方に信頼できないというのじゃ、これはまとまらないと思うものですから、そういう点を明確にしておく必要があると思ってお聞きしたわけなんです。将来に対する一つの保障というものが、少なくとも文部省あり方の中で大学の人々に信頼のできるような姿で出てくることに努力してもらう必要があるのだろうと思いますし、それから大体の方向については、いまのような政治的な答弁以外に、もっと具体的に中身まで入って論議をしていくという必要は、やはり予算要求というふうな姿の前に私はなければならぬと思うし、これは世紀の大事業だろうと思うので、それは事務当局で十分検討して真剣に取り組んでやってもらいたいと思います。なおいろいろと質疑の中でまた御質問いたしたいと思いますから、前向きで、とにかく前進の方向でこの問題を処理するように要望いたしまして、私の質問を終わります。
  74. 坂田道太

    ○坂田(道)委員長代理 川崎寛治君。
  75. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 大臣おられませんので次官にお尋ねしたいと思いますが、先般国立学校設置法の審議の際に、大学急増の問題についてもいろいろと質疑が行なわれたわけでありますが、急増計画におけるいろいろの食い違いとか、あるいは財政的に措置できなかったいろいろな問題についても質問をいたしたわけであります。文部省側の答弁としては、決して十分、今日の大学急増についての対応できる計画というのが明確に示されてはいないわけでありますけれども、いずれにいたしましても、四十一年度が一番急増期としては大きな社会問題になっているわけであります。そこで先般中教審から、大学入試制度の改善ということで答申案が出され、それについてのいろいろの施策が行なわれているわけでありますけれども、現在のこの大学急増期にあたって大学入試制度を抜本的に改善をしていくにはどうしたらいいのか、その基本方針を次官にお尋ねしたいと思います。
  76. 押谷富三

    ○押谷政府委員 御質疑の内容はきわめて重大なことでありまして、文部省におきましても能研の関係あるいは各大学の入試の実施状況その他を考えましてそれぞれ研究をしなければならぬ、多角的な研究の余地はあると思うのでありますが、目下この問題につきましては慎重に研究をいたしたい、検討をいたしたいと存じている段階にあるのであります。
  77. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そういういいかげんな答弁をされては困ると思うんですね。いま次官は、能研の問題を言われましたが、能研の問題は後ほど具体的にお尋ねいたしますけれども、目下慎重に検討されておるという検討の段階ではないと思うのです。四十一年度、来年度にもう差し迫っている問題でありますから、ここ数年来、本委員会においてはこの問題を質疑をしているわけであります。また私も、昨年、ことしと引き続いて文教委員をいたしておりますが、灘尾文部大臣の際にも、あるいは愛知文部大臣になりましてからも、この問題については繰り返しやっている点であります。ただ慎重に検討しておりますということでは、それは本会議答弁はそれでもごまかせるかもしれません。しかし委員会としては納得できません。
  78. 押谷富三

    ○押谷政府委員 御承知のように、従来から大学の入試関係につきましてはいろいろ問題はありますが、抜本的な対策はどうかというお尋ねにつきましては、いまだお答えを申し上げる段階に達しておりませんので、文部省としては鋭意研究をしている、そして欠けてあるところは大いに研究の結果是正をし、またいまの入試制度につきましても、改むべきは大いは収めなければならぬ、こういう前向きな考えを持ちまして研究をいたしておる、抜本的な方針はいまだ出ておりません。
  79. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それじゃお尋ねしますけれども、中教審から出されました大学入試制度の改善の中で、いろいろと答申が行なわれているわけです。その答申の中身というものも、いま次官の言われる抜本的な点については、社会の構成とか明治以来の歴史的な背景とかいうものがあってなかなか困難だというわけですね。それならば、その抜本的な点の一つの一番大きなポイントについてお尋ねしたいと思うのですけれども、今日、大学だけではなくて、高等学校あるいは中学校、さらには小学校、そして幼稚園にまで、試験が子供の上にのしかかってきているわけです。そうした試験地獄というのはなぜ生まれてきたのか。その根本的な点について、文部省としてはどういうふうに考えられ、その点をどういうふうに打開をしていこうとするのか、まず、その基本的な点についてお尋ねしたいと思います。
  80. 杉江清

    ○杉江政府委員 まず私から、その点について少し具体的に申し上げたいのですが、なぜ上級学校進学者がふえたかといいます点については、いろいろな原因があると思いますけれども、私は、何といっても戦後の学校教育制度が非常に民主化されて、あらゆる者が上級の学校に進みやすくなったという点が一つあろうと思います。具体的に言いますならば、戦前において大学へ進む者は、やはり一定のコースを通らなければ非常に大学へ進み得なかった。しかし今度は、高等学校を出ればすぐに大学へ進めるというような制度になったわけであります。大学についてそうですし、また中学校はもちろん義務教育化されたわけですが、高等学校への進学については、高等学校制度の改正によってそれが非常に進みやすくなった、学校もふえたというようなことが、こういった上級進学者をふやした一つの大きな原因である。それから、全般的に、戦前に比べれば比較的に、経済的な発展において国民の多くが学校へ出しやすくなったということもあろうと思います。それからなお、女子の進学という点が、戦前と比べて著しい顕著な差をもってふえてきている。女子の進学の門戸が開放されたという点も、やはりこの進学率を高める大きな原因だと思います。それからなお、根本的に言いますならば、日本の社会においてはなお依然として学歴が尊重され、社会における待遇、身分等が学歴によって大きく影響をこうむっておる。そういうような社会の現実が、余裕があるならば、行けるものならばできるだけ高い教育を受けたいという意欲を高めておるように思うのであります。まだいろいろあるかと思いますけれども、進学率を高めておる原因として、私は以上のようなことを考えております。  この進学希望が著しくふえたという現実に対してどう対処するかということ、これは非常にむずかしい問題でありますけれども、私は、まず第一に、やはりそういった国民の大きな希望に即して学校拡充していくということが、いままでにとられた方法でありますし、今後もそういうふうな基本線はやはり必要だと思います。あらゆる段階における学校拡充していくということは、これは世界の動向でもありますし、日本においては、戦後非常な努力が払われてきましたけれども、なおこういった点の努力も必要だと思います。特に急増期間中においては、そういう努力が一そう必要になってくると思います。  しかし、日本の教育の普及というのは、世界有数の段階にすでに達しております。だから、単に量的にふやすということだけではいけないので、やはり同時に質を確保するという配慮を十分考えていかなくてはなりません。ことに高等教育の段階においては、質の低下を来たすようなことについてはきわめて慎重ならざるを得ないと思います。そういった意味において、高等教育における量的な拡大については、その必要は現在でもあるのでありますけれども、また一方制約もある。そういうふうな中で、やはり入学試験競争の激化ということは、ある程度やむを得ない姿となってあらわれてくるわけであります。それについては、私はいろいろな形でその問題の解決がはかられなければならぬと思います。たとえばその一つは、能力に応じて学校を選ぶというふうな学校の指導も必要であると思います。また、親の学校教育に対する考え方も、できるだけ妥当なものにするように導くような配慮も必要だと思います。それからなお、入学試験方法については、やはりまじめに勉強しておれば少なくとも受かりやすいというような、問題の提出のしかた、その方法等についていろいろ改善を加えていく必要があろうと思います。文部省においても、そういった点の努力はいたしておるつもりでございます。ただ、先ほど政務次官が申されたように、この問題は非常に根が深く、その解決についてはなかなかむずかしい面があって、抜本的な解決を一挙にはかるということは非常にむずかしいのでありますが、いろいろな面からこの改善に十分努力してまいりたいと思います。
  81. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 いま答弁されたのが抜本的改善の方向ですか。
  82. 杉江清

    ○杉江政府委員 それに関連もあると思いますが、私は、いま申し上げたような点すべてを含んで抜本的な解決をはかることになると、そういうふうに申し上げる勇気はございません。
  83. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 これは中教審の答申においても、いま局長の言われたような方向というのは、技術的な改善の方向だということを明確に言っているのですね。そうしますと、抜本的な改善の方向というのは、方向として出されていなくて、それでいて、技術的なそういう改善を重ねていけば、それが抜本的な改善の方向にいくのですかどうですか。
  84. 杉江清

    ○杉江政府委員 抜本的な解決方法についても十分検討しなければならないと考えておりますけれども、少なくとも私どものやり得ることは、私は、以上申し上げたような点を総合的に進めていくことじゃないかと考えております。
  85. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、先ほど局長の言われました学歴偏重という社会の底にあります一番大きな問題、その学歴偏重の社会構造を変えていくということも、いま言われたようなことを積み重ねていけば変えられるわけですか。
  86. 杉江清

    ○杉江政府委員 私は、こういうことを含めての抜本的な解決は、これは単に文教政策の問題だけじゃない、もっと広い見地で解決すべき政治の問題だと思います。そういう意味において、その問題の解決を私どもで真正面から取り組むということはむずかしい。そういう点を含んで、教育の面でそれを取り上げる範囲において取り上げていくというのが私ども立場だろうと考えております。
  87. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、教育の面の技術的なことを言われましたので、ひとつ政治の面の根本的な方針を次官にお伺いしたい。
  88. 押谷富三

    ○押谷政府委員 お尋ねの基本的な問題は、やはり試験地獄に対する対処、それからくる入試の抜本的な対策、大体こう私は解釈をいたしておるのでありますが、学歴偏重その他の関係は、単に教育だけではなくて、いろいろ社会の諸情勢に関連を持っているのでありますから、大きく総合的な研究をし、判断をせなければならぬと考えております。また、入試の制度につきまして、試験地獄解消というこの点に立っての考え方におきましても、諸外国の入試制度を取り上げましてもなかなかたいへんむずかしくなっております。日本の入学試験制度が長い間今日の制度を行なってきました一つ伝統歴史を持っておりまするので、たとえばヨーロッパ方式をそのまま用いるというわけにもいきませんし、といって、これを楽々入学をさして、そしてこなし得ない課程をしいて、その修学段階においてたくさんな落第生を出すというこの考え方につきましても、いろいろと考慮をせなければならぬ段階にあります。また能研の試験ということもひとつ考えてみなければならぬ。いろいろ総合的な考え研究をし、その総合的な研究の結果を待ちまして、入試全体の抜本的な対策を立てなければなりませんので、直ちに今日の時点において、抜本的な方策はこれでございますと、こうお答えすることができませんことはたいへん申しわけないのでありますが、自体非常に困難な問題である、かつ重大な問題でありますから、時をおかしいただきたい、かように考えている次第であります。
  89. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 昨年の灘尾文部大臣の際にもいまと同じ答弁なんです。一歩も前進していないわけです。長年自民党の皆さん方が与党として政府を構成してやってきておられる。ところがいつまでたってもただ時間をかせということで、しかも技術的な改善だと言いながら進めていない。そのことは何十万、何百万という子供を通して教育の内容がある方向に進められていくわけなんですね。そういう制度そのものが内容を縛っていくわけです。そうしますと、抜本的な方向というのは出されないままに、技術的なそういう改善のしかたで、しかも方向としては大きく変えていく、こういうことになるから影響が大きいと思うのです。結局、そうしますと、今日の自由民主党政府のもとにおいては、昨年の大臣のときもそうでありましたし、いまの次官の答弁もそうでありますし、そこには何らの前進あるいは方向の明確化というものはされていないわけですから、そういたしますと、結局今日の政府のもとにおいては、そういうことはたいへん困難な問題だ、こういうふうに見てよろしいですか。
  90. 押谷富三

    ○押谷政府委員 決して困難であるとか、あるいは非常に長くかかってなし得ないかもしれないとかいうような一つの将来の見通しを申し上げることはこの際できませんが、同時にまた、さようなことはないと存じております。必ずやらなければならぬ問題であります。しかしこの問題は、御承知のように、非常に総合的ないろいろな事情を研究をし、判断をして、そうして抜本的な方策を立てなければならぬのでありますから、昨年から今日まで進んでおらないと、こうおっしゃることもごもっともでありますが、なかなか困難な問題ですから、多岐にわたっての研究は進めてはおるのでありますが、いまだお答えを申し上げる段階に達しておらない今日の時点であります、こう申し上げたいのであります。
  91. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 根本的な問題を質疑し合っても、もういまの次官の答弁で、大体そこもわかってまいったわけであります。  もう少し、具体的な、先ほど次官も言われました能研の問題について少し入ってみたいと思うのです。三月の十二日に愛知文部大臣が、大学の入学試験に能研テストを来年度から活用したいということを言っておられるわけでありますが、そういう方向にまで発展をしてきた根本の理由は何ですか。
  92. 天城勲

    ○天城政府委員 能研の御趣旨につきましては、すでに中教審の答申に基づいて始めております事情を御了解いただけると思いますが、入学選抜の問題は、教育上のたいへん大きな問題でございまして、いままで御質疑をいただきましたような背景がございます。その中で、やはり何と申しましても、技術的に解決すべき点が一つ大きな問題なのでございまして、中教審もその点は指摘しておるわけでございます。能研がそういうたてまえからいろいろな研究を進めてまいりまして、現在二回トライアルなテストを実施いたしましたし、その結果は、大学の追跡調査にも付してきておりますので、だんだん専門的な面からその関係は御理解も得てきておりますので、一つの入学試験改善の技術的な方法として能研の考えておるようなことを取り入れられるのじゃないかというような考え方がございます。そういう意味で、文部大臣が将来の問題として、能研テストの活用について触れられたものと思うのでございます。
  93. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 能研テストが大学入学試験に適用されてしかるべきだという、客観的な信頼度であるとか、あるいはこれだけ十分にもう試験段階は過ぎたのだというふうないまの答弁じゃないのですね。その点どうですか。もう完全に自信を持って言えるのですか。
  94. 天城勲

    ○天城政府委員 たいへんむずかしい御質問なのでございますけれども、能研でやっておりますいろいろな研究やテストの実例につきまして、もうこれで一〇〇%自信が持てるというような段階は、率直に申しまして、いつくるか私たちもなかなか見当がつかない問題でございます。要するに、こういう人間の学力ですとか、あるいは大学における教育を受ける能力の測定ですとかいう問題は、少しでもベターな方向ということに持っていかざるを得ないのでございまして、しかも相当長い期間の積み上げを経ていかなければならないと結論的には思っておるのです。現在までの研究では、ある程度そういう方向に向いているということが現在の段階では申し上げられるかもしれませんけれども、すべて一〇〇%自信があるかという点になりますと、これはなお研究するということを申し上げなければならぬと思います。
  95. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 国立教育研究所長を会長にしております大学入試方法改善に関する会議というのがあるそうですが、これはいまどういう結論を出しているのですか。
  96. 杉江清

    ○杉江政府委員 大学入試方法改善に関する会議においては、四十一年度の試験方法について近く成案を得ることになろうと思いますが、四十一年度において能研の結果を一般的に利用するというような方針はおそらく出てまいらないであろう、かように考えております。
  97. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 いや私がお尋ねしているのは、大学入試方法改善に関する会議がいまの能研の問題も含めて大学入学選抜を改善するにはこういった方向がいいんじゃないかという何らかの検討をしてきていると思うのです。だからそういう検討をしてきている方向というのはどういう方向を出しているのか、こういうことです。その中で能研の問題はいま言われたようなことになるのか、こういうことになりますね。
  98. 杉江清

    ○杉江政府委員 そこではいままでの御議論からいえばかなり技術的な検討をいたしておるといってもいいかと思います。それで具体的には、今度高等学校の教育課程が変わりますが、それに応じて大学の入学試験の問題の範囲はどのようにすることが適当であるか、それから入学者の選抜の方法として高等学校から提出する調査書、それはどのような形式のものが最も適当であるか、それから入学試験期日の問題、そういうふうな非常に具体的な問題についての論議が主としていままで行なわれております。
  99. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 いまの局長答弁では、今日社会問題にまでなっておる大学入学試験についての改善の方法というのは残念ながらわからぬのですよ。もう少しわかるように説明してくれませんか。こうだから改善する方向になるだろうということをこの会議はいま進めておるという、中間段階にしろ最終段階にしろ、その会議の集約の方向をひとつ示してほしい。
  100. 杉江清

    ○杉江政府委員 入学試験の競争の激化を防ぐにはどうしたらいいかという問題を根本的に掘り下げて検討しておるという作業はいま現実にはまだ行なわれておりません。この会議ではいろいろそういう問題は常に出ますけれども、それについてまだ一定の方向で何か具体的な審議が行なわれているということではございません。ただその具体的な入試方法を通じてできるだけ現実の事態を改善しようとする配慮で審議が行なわれております。たとえば入学者の選抜においては、学力も重要な要素だけれども、学力だけできめてしまうのはどうか、やはり高等学校からの内申書も相当これを重視してもいいのではないか、そういうことは一つの当面する問題の解決に役立つ基本的な問題だと思いますが、そういうふうな点については、ひとつ内申書をいままでよりも重視する方向でやることが適当だ、こういうような方法でいま御意見がまとまりつつあるわけなんであります。そういうことで、じゃ具体的にどういうような内申書の書き方にしたらどうか、そういうこともいま考えられておるわけでございます。それからいま一つの問題点として戦前に行なわれたような、たとえは推薦というような方法を加味することがいいかどうかというような問題、こういう問題もまだにわかにそれを全面的にそういう方法を活用するということはなかなかむずかしい事情にあるだろうけれども、可能なところではそういうことも考えていいのではなかろうか、こういうふうな論議も行なわれておるわけでございます。大体現状はそういうことでございます。
  101. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そうしますと、大学入試に能研を活用することがよろしいという結論は、そこでは出ているのですか。
  102. 杉江清

    ○杉江政府委員 まだ入試方法改善に関する会議ではそこまでいっておりません。これはこの研究結果は十分尊重していきたいという気持ちですが、現実にそれを何か試験の一部にするとか、そういうところまで至っておりません。
  103. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そうしますと、ただいま申しました大学入試方法改善に関する会議というのは、これはどういう性格会議ですか。
  104. 杉江清

    ○杉江政府委員 入学試験方法を改善するという、その名前どおりの性格だと思いますけれども、ただ、実際問題としていま私が申し上げたように、問題の取り上げ方は、いままでの御意見からいいますならば、まだ技術的ないろいろな諸問題を検討しておる。そして、それはもちろん基本的な解決に関連する部面が多い。しかし、そういうふうな具体的な問題の解決を通じて徐々に改善していこう、こういうふうなことで審議が行なわれておると申し上げてよろしいかと思います。
  105. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 私がお尋ねしておるのは、文部大臣との関係はどうなるかということなんですね。この会議文部大臣が諮問しておるわけでしょう、あるいは尋ねているわけです。いまの能研の結論は出ておらぬわけですね。ところが、文部大臣は四十一年度には活用したいと言っておるのです。そうしますと、何のための会議ですか。これは結局文部省関係するいろいろな審議会とかあるいは何とか会議というのがあります。しかし結局結論が出ていないものが、文部省からはどんどん方針が出てくるという、これはどういうことになるのですか。そうしたら、少しも民主的じゃないじゃないですか。何のためにこういう会議を置いているのですか。私はそこをお尋ねしておるのです。
  106. 杉江清

    ○杉江政府委員 大臣が四十一年度から代用したいというようなことをもし申し上げたといたしますならば、それは能研というものをできるだけ活用して、入試方法の改善に寄与したい、そしてそれをなるべく早い機会にやりたいという大臣の大局的判断の御発言だと思います。現実に四十一年度はどうするかということは、この入試方法会議の答申を待って、大体その線によって文部省としても方針をきめることになろうと私は考えております。
  107. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そうすると、この会議は、客観性があるのですか。そして委員はどういう形で選ばれているのですか。いまそういう局長答弁を聞きますと、結局この会議なんかあってもなくても同じだということですよ。文部省の役人の諸君がいろいろな方針をきめる、それを大局的な立場から大臣から出せばそれでいいのだ、そういうことになれば、何のために客観的にあるいは民主的な手続を経ていろいろ検討していくか、そういうことは必要ないじゃないですか。いまの能研の問題の取り扱いについてそういうことがいえませんか。
  108. 杉江清

    ○杉江政府委員 私が先ほど申し上げましたのは、大臣が明年度すぐに具体的にそれを何か試験の一部に代用するというような形にするということをお考えになっての御発言ではおそらくないんじゃないか。能研というものを活用したいというそういったお気持ちから、できることならばそのような点は十分考えていきたい、こういうふうな御趣旨で御発言になったものと私は考えております。  具体的に四十一年度はどうするかということは、私先ほど申し上げましたように、いまのところすぐに試験の一部にこれを代用させるというような方向では審議されておりません。そして、おそらくそういうふうな方向で答申が出、それを大臣が一応受けて、四十一年度の具体的な入試方法についての文部省の方針を御決定になるものと私は考えております。
  109. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 教育の問題というものは、これはなべかまをつくるように材料を集めて一つの型にはめたらそういう均質の材質のものができるというふうなものじゃなくて、教育というものは時間がかかるのです。ですから、それだけに長い将来を見通すと同時に、その問題を適用していくかどうかということについては慎重な検討が必要なんです。そのためにいろいろの機関が研究をされ、検討されやっているわけです。そういうところで慎重に検討しているものの結果が出ない前に、文部大臣のほうから積極的にそういう方向を打ち出してくるということになりますと、今日教育のあり方自体についてもいろいろと問題が出ているわけです。教科書の検定の問題についても、先般の当委員会でいろいろとお尋ねもしたわけです。あるいは期待される人間像の問題についてもいろいろと批判があって、中教審のほうでも非常に慎重な態度で対処をしなければならぬだろう、こういうことがいわれているわけです。そういう中で結論も出ないものを、つまり高い政治的な立場だといいながらも、それが打ち出されてくるということは、結局この国立教育研究所長は文部大臣の管轄下にあるわけですね。そうしたらその意思に沿うように作業を進めます。それではほんとうに長い教育の問題を、つまり国民みんなの協力を得ながら発展させていくという方向には私は参らぬのじゃないか、こう思うわけです。ですからその点、当然次官も、この大学入試制度というきわめて大きな社会問題にまで発展をしておる問題だし、また次官も言われましたとおりに、能研テストというものをそういう改善の中の一つのモーメントにしよう、こういうことで取り扱ってきておるんだと言われるのですから、その点は当然に大臣からも十分な御相談もあったことだと思うのです。本日は大臣にお尋ねできると思っておりましたが、何かどこかへ行かれるということで大臣に対する直接のお尋ねができぬわけですけれども、しかしその点については、つまり高度の政治の問題もあるわけですから、十分打ち合わせがあったと思うのですが、次官、いかがですか。
  110. 押谷富三

    ○押谷政府委員 能研テストの活用についての御質疑でありますが、大臣が申し上げました過去における御答弁の内容についてあるいは多少食い違いがあるかもわかりませんけれども、私の考えとしては、能研テストの活用というものは、やはり能研テストの価値判断に大きなウエートがかかっていると思うのでありまして、能研テストが非常に権威のあるものであり、価値の高いものであるという一般の評価がされた場合に、各大学でもこれを大きく活用をするという方向が出てまいりまして、初めて能研テストの活用というものが実現できるのでありますが、能研のテストも能研の人々によっていろいろ努力をされ、非常に研究をしていらっしゃる段階にあると思いまして、今日の時点におきまして非常に権威のあるもので、すべての大学がこれを活用してこの能研のテストの価値判断が十分に尊重される段階に達しておるかどうかということにつきまして、私自身は疑問を持っておるのであります。したがいまして能研テストについてはまだまだ努力を願い、その価値判断を十分に世間にも知らし、みずからも高く評価されるような状態に、高次元に持っていく必要があるのではないかと考えておりまして、そういう事態に達したときに初めて能研テストが大学入試に大きく活用されるということになるのではないかと思いますが、いま大学局長からもお答えをいたしておりましたとおり、今日の時点におきまして直ちに能研テストに全部がたよるという程度に価値判断はされておらぬのではないかと遺憾ながら私、判断をいたしておりますので、こういう段階においていま研究検討をしているという事態にあります。
  111. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは大学側で来年度はこれを大いに活用してみようというのはどこどこありますか。そしてそれを文部省と打ち合わせしているところですね。こういうふうに利用してみたい、そのための特別の委員会設置してやっておるというふうな大学
  112. 天城勲

    ○天城政府委員 おわかりのことと思いますのでくどく申し上げるのもいかがかと思っておりましたけれども、入学試験の現在の制度の決定のしかたは、終局的には各大学できめております。したがいまして、いろいろな機関で現在の制度は少なくともよろしくないという御認識を皆さんお持ちのようでございますので、たとえば国大協におきましても常置委員会を設けて入学制度の検討をしておられますが、そこでも能研は一つの方法として取り上げられております。また大学基準協会でも同じような立場から検討をしておられます。私立大学関係のほうでもそれぞれやっておられます。そういうわけで、どうやってこれを検討していくかということになりますと、結論は現在の制度が必ずしも望ましくないならばかわる制度は何か、かわる制度は、どうやってそれがいいかということをきめるか、それは若干実験の過程を経なければならない問題だと思います。これを実験するということは非常にむずかしい問題でございますけれども、特に大学側におきましては、一応理論的なあるいは客観的なデータが出ませんとすぐこの問題はいいということだけも言えないと思います。したがいまして現在能研のテストの結果は各大学で追跡調査をやっておられますが、その追跡調査状況でございますけれども、これは技術的なことを申し上げて恐縮でございますが、入学者の選抜の判断の材料は、現在はいわゆる一回限りの入学試験ということが中心でございますけれども、やはり少なくとも三年間の高等学校の長い評価というものは十分尊重すべきではないか。それから学力だけでなく、大学入学後の大学教育を受ける能力をやはり基本的に検証する必要があるのではないかということが問題点でございます。技術的な点から申しますと、これも御理解いただけると思いますが、昭和二十二年から二十九年まで行ないました進学適性検査の結果というものが、教育研究所で長い追跡調査をいたしまして、入学試験、それから進学適性検査、高等学校の成績というのもと入学後の成績というものの相関関係をずっと調べてきておりまして、必ずしも入学試験だけで合否の判断をすることについてはかなり危険があるという意見も出ておるわけでございます。したがいまして、現在大学ではこの追跡調査の結果をいろいろな方面から多角的に検討いたしておりますが、同時に現実には高等学校の教育課程が入学試験という現象によってかなり撹乱されておるということから、高等学校長側から……。(川崎(寛)委員質問に対して答えてください、時間がないから。」と呼ぶ)入学試験の方法としての統一ということがいろいろ出ております。それらのいろいろな角度から検討しておりまして、幾つかの学校からは、研究が進んだところからはそれを取り上げるという態度が出ております。本年東邦大学では、能研テストと従来の大学のやり方との結果から、明年度はこれを入学試験の有力な資料に使うということを教授会で決定されております。それから国際基督教大学におきましても、本年度特に受験の結果を受験者に要求しまして入学選抜資料に使われております。その他明年からこれを何らかの形で検討しようとして御連絡のある大学がいまのところ五、六校ございますが、まだ最終決定はいたしておりません。
  113. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 いまの東邦大学とか国際基督教大学とか、それらにしてもコンクリートな態度じゃなくて、研究してみようという程度のところなんですね。完全に来年活用しようとかそこまでいっていないと思うのです。しかもあと五、六校あるというわけですが、これらの大学もおそらく参加しているでありましょう大学基準協会等においては、きわめて慎重な意見が出されてきているし、適当でないとまで出しているわけです。そうしますと、ごくわずかな一つ、二つの検討してみようかというところをつかまえて、多数の、たいへんたくさんの大学がこれに対して関心を示し、あるいはやろうとしておるんだ、しかもいま大学の入学改善の一つの方向として出されております方向をいろいろと見てまいりますと、たとえば能研テストを受けなければその大学の入学試験が受けられないんだというふうな方向まで指導されようとする。それは非常に行き過ぎだと思うのです。先ほど調査局長大学の選抜権は大学側にあるんだ、こういうことを言ったわけですが、この大学基準協会の中間報告を見てみても明らかに言っているわけです。時間がありませんので、じっくり質疑をするわけにいきませんが、この中で大学基準協会の能研テストに対する態度というのははっきりしているわけです。結論だけ言いますならば、現段階においては能研テストを大学入学試験の全部または一部にかえることは妥当ではないという結論をこの大学基準協会は出しておるわけです。先ほど、大学局長も、選抜に関する会議のほうもまだ結論は出していないと言っておるわけですね。その中で、結局これを適用さしていこうということになれば、そこの入学試験を受けるためには、能研テストを受けなければならないという義務づけがなされてくる。そういう方向で大学の自治自体も縛られてくるわけですから、大学基準協会の、この中間報告の中でも、統一的、画一的試験を行なうことは全く不適当であり、大学自治の原則にかんがみて、入学試験についてもあくまで個々の大学自主性が尊重される必要があるのだ、こういうふうにいっておるわけです。ですから、そういう方向からしますならば、文部省が進めておる、指導しようとしておる方向は、きわめて危険だ。教育の中央集権化あるいは大学の自治を破壊していく、そういう方向について入学試験制度の改善という美名に隠れて、大学管理制度の復活を進めていく、その方向に路線としては進められておる。これは教科書検定でもそうです。検定と検閲の見きわめというものがきわめてわからなくなってきておる。なぜ、せとぎわ作戦に近いようなそういう無理をするのか。百九十六の大学が構成をしております基準協会のそういう態度、あるいは東大が当面は能研テストを入学試験に適用するのは不適当だ、こういう態度を出しておる。そういう中で、なぜそういう無理をしようとするのか。しかもそれを行政指導で進めていくわけです。この点について、次官に。
  114. 天城勲

    ○天城政府委員 ちょっと私からその前に補足させていただきます。先ほどのお話決定した大学を申し上げたので、これは実際に使っておるわけでございます。それから若干世間で誤解があるのではないかと思いますので申し上げたいと思いますが、入学試験制度を能研テストで全部かえてしまうという考え方は、これはもちろん能研がそういうことをする機関でもございません。その点は御了知と思うのでございますが、しばしばそういう御意見をわれわれ耳にいたしております。それで統一的試験、画一的試験を全部やるということは、これはよく私聞くのですが、お話を聞きますとそういう前提で議論されておりますが、そういうことはございません。これは何度も申し上げておりますように、私この機会に皆さまに御理解いただきたいと思っておるのでございます。それから、大学がどうやって問題を取り上げるかということになりますと、結局、現在のところは追跡調査以外に方法はない。大学としては客観的なデータを得るということは追跡調査以外にはないのでございます。ですから、追跡調査のために御協力願いたいということを申し上げておるわけであります。必要なデータがなければ何にも前進しないことになりますから、その点を申し上げておるのでございまして、最終的には大学でおきめになる。その場合に、高等学校の試験とか、あるいは大学の試験とか、実技とか、能研のテストをどのように組み合わせてお使いになるかということは、それぞれ大学で御研究をいただきたいことでございますし、現に研究されておる大学もございますので、その点はひとつ十分御理解いただきたいと思います。  それから、なぜというお話しでございますけれども、いろいろなほかの問題をちょっと別といたしまして、御質問にもございましたように、入学試験問題は、これはまさに焦眉の問題だと思います。研究は少しでも進めなければなかなか結論が出ませんので、そういう意味で具体的な提案としてはこういう方法が一つあるから、それの活用について御研究願いたいということを大学にお願いしているわけでございます。
  115. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 私は、実は一時から私自身の責任のある会議がありますので、たいへん時間が詰まっておるのです。そこで、あとはもうはしょってお尋ねしたいと思いますけれども文部省と能研の関係というのはどうなっておるのですか。
  116. 天城勲

    ○天城政府委員 これも中教審の御答申及び設立趣意書にございますとおり、本来この問題は、高等学校大学側が学生の受け渡しということで一番関心を持つべき問題であるし、能研の組織も両者で構成したらよいじゃないか、そういうことで出発したのでございますけれども行政上の非常に大きな問題になるということで、大学側高等学校側それに行政側という意味文部省及び教育委員会関係が参加して、この能研の組織をつくったわけでございます。
  117. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 民間の財団法人の能研がやることを文部省が一生懸命推し進める、さらには県の教育委員会が、下部のほうにおいてはおそらく県の教育委員会の教育長等が県の支部長でやっていく、しかも県の教育委員会の職員が勤務時間中にこの能研のいろいろなことをやる、こういうことになりますと、民間の団体でやるんだといったその設立の趣旨というのはどこかへ吹っ飛んでしまって、きわめてあいまいな関係で、あいまいというよりも不即不離の一体の関係で、むしろ文部省の手先になってどんどん進めていく、こういうことになっているんじゃないかと思います。だから客観的な研究機関として、調査機関としてやっていくのではなくて、文部省の進めようとすることを、そのまま意思を体してやっていく実施機関としての役割りを果たしているんじゃないか、その点どうですか。けじめはきちっとつきますか。
  118. 天城勲

    ○天城政府委員 これは能研に地方の支部を通じて高等学校側の御協力を得たいということは、先ほどもちょっと申し上げましたように、この研究所は机上の研究だけではございませんで、大学側協力しましてテストを実施して、それを追跡調査しなければ研究にならないのでございます。したがって、使う前に受験者にこれを受験していただいて、その結果が大学にいって追跡という過程を通らなければ研究にならないのでございます。そのために高等学校側の非常に強い御希望で、改善策として御協力を願っておる、こういうわけでございます。
  119. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 追跡調査についてもお尋ねしたいと思います。  これは各大学ではおそらく学長が受けて事務官が処理をする、こういう程度だと思うのです。どうですか、権威がありますか。
  120. 天城勲

    ○天城政府委員 これは大学の御希望と、それからやる意思のある大学にお願いして、現在四十大学ほどお願いしておりますが、追跡調査のやり方はいろいろございまして、第一段階の入学試験と能研との相関の方法論がきまれば、かなり事務的にできるわけであります。高等学校の内申書との相関とか、あるいは入学後の成績とか、だんだん複雑になってまいりますれば、大学関係協力を得なければならぬ点もございます。大学のやり方がいろいろ違いまして、専門の先生に非常に御熱心に指導していただいておるところもございますし、学生部でかなりこの方面に専門の能力のある方がおられるところは、そういうことでやっておりますので、問題の取り上げ方によってあるところは事務局、あるところはもう少し内部の専門家の御協力というようないろいろのやり方がございます。
  121. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 いろいろなやり方があるようでの大学においても、委員会等も設けられず、事務官だけで処理をされている事実を知っているのです。その大学の教授にアンケートを出して、アンケートがきたうちの何人かには五百円手当が渡っている、そういうふうな処理のしかたで行なわれている今日のこの追跡調査というのは、そこから一つ結論を出して、また進めていこうということについては、たいへん危険があるんじゃないか、こういうふうに思うわけです。どうでしょう。
  122. 天城勲

    ○天城政府委員 ですから、大学の追跡調査の御協力をいろいろお願いしているわけでございまして、大学入学の選抜制度が現在のままではよくないという御認識を大学側で強めれば強めるほど、何らかの改善策の一つの方法として研究に入ろうということが、いまのいろいろな大学の追跡調査の態度にあらわれてくると思います。大学側の御協力というものが実はこの入学試験制度を改善するポイントであると私たち考えておるわけでございます。
  123. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そうしますと、文部省が今年度能研に出した補助金は一千万でしたね。昨年が六百万。そうすると、能研本部の能力開発研究所自体の予算というものはどうなっているのか。それからこの開発研究所に対する補助の一千万の算定基礎というものは、どこからきておるのか。
  124. 天城勲

    ○天城政府委員 能研の経費全体でございますけれども、これは受験料収入で運営していくというのが基本的な考え方でございますが、研究をいたします面につきましては国から補助をしようという形で出発いたしました。したがって、一千万円の本年度の研究費でございますが、能研の基礎研究あるいは追跡調査、あるいは追跡調査の結果処理というような面につきまして一千万円の研究費を出したわけでございます。
  125. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それは算定基礎の説明になっておらぬわけですけれども、その追跡調査費用として一千万円出したわけですね。追跡調査結果処理費、それから問題作成のための基礎研究費等、かなりこまかくあるのでございますが、あと、職員の研究、旅費ですとか、あるいは報告書の作成費とか、あるいは研究基礎図書の購入費というものに分かれております。
  126. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 四十幾つの各大学調査費として流されておるのは十一、二万程度だと思うのです。その十一、二万の調査費がどういうふうに使われておるか、把握しておられますか。
  127. 天城勲

    ○天城政府委員 これは追跡調査に御協力いただいた方々に対する謝金という形式でございます。
  128. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それで、県の教育委員会の職員が勤務時間中に能研の、つまり民間団体の能研の事務をやる、あるいは学校、現場の教師であるとか、あるいは事務職員であるとか、こういう人たちが時間中に能研の仕事をすることは違法だと思うのですが、いかがですか。
  129. 天城勲

    ○天城政府委員 これは能研から能研の仕事をお願いするにつきまして委嘱いたしまして、県の何と申しますか、任命関係のところで了解を得た上で委託事務をお願いしているわけでございます。
  130. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そういうことを聞いておるんじゃないです。委託事務は文部省のことじゃないですね。能研の仕事です。民間の財団法人の、つまり受験料を取ってやっておる民間の能研の仕事を、県の教育委員会の職員があるいは学校の現場の職員が時間中にそのことを取り扱うということがどうかということです。
  131. 天城勲

    ○天城政府委員 理論的に申しますと、能研という財団法人の支部の役職員という形で委託をお願いしておるわけでございまして、現場のお仕事は、学校でいろいろなテストに生徒の進学指導上御協力願っているのと同じような意味で、学校では進学指導の一つの方法として御参加になっております。また実際のテストを行なう場合にも、授業や勤務に差しつかえないように土曜日の午後とか日曜日に実際のテストを行なっておるように配慮いたしておるのであります。
  132. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 いや、県の教育委員会の職員はウイークデーに説明会を開いて、そしてウイークデーに学校現場から呼んでやっておるわけです。そうしますと、そのことは、土曜日の午後だとか日曜日だとか言われたわけですけれども、そうじゃなくてウイークデーに県の職員が出張をして、学校現場の職員を呼んで説明会をやる。民間団体の財団法人の仕事をやるわけですね。その根拠を一つ示してほしいのです。
  133. 天城勲

    ○天城政府委員 制度的な根拠規定をいまちょっと私覚えておりませんが、地方公務員職員の兼職が認められませんから、任命権者によって、その限りにおいて認められる範囲内で能研の支部の仕事を委嘱しているわけでございます。
  134. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 いや、兼職が認められるという、そういうことじゃないのですよ。それならかってに——これは文部省プロ。八丁の仕事としておろすのはぐあいが悪いなと思ったら、民間の財団法人をつくって、そういうものの下のやつをどんどんかってにやらせれば進められますよ。そうじゃないのです。もっと明確に、これは職務、勤務についての違法だと私は思うのです。その旅費関係なんかどうなっていますか。
  135. 天城勲

    ○天城政府委員 能研の支部の活動に必要な経費は、支部事務費、それから会場の謝金あるいは説明会の旅費等は、能研の本部から支部に支払いいたしております。
  136. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 ウイークデーの勤務時間中に教育委員会の職員とか、あるいは現場の教師、職員が、その説明会に出たりする、そういうことはただ兼職を教育委員会が認めればいいんだ、そういうふうなことでかってにやられているのですか。
  137. 天城勲

    ○天城政府委員 あるいは先生の御質問の趣旨を私が誤解しているかもしれませんが、任命権者の許可を得た兼職を得まして、その範囲内で支部の職員として行動を願っているわけでございまして、必要な経費も能研の本部からお支払いしているという考え方で、違法という問題について、私もいまこれが違法だというふうにはちょっと考えないでおるのでございますが、あるいは私の了解が不十分でございますか、あるいは事実関係を十分理解していない点から来ているのかもしれませんけれども、私はいまそう考えております。
  138. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 この点は明確に答弁がなされておりますから、ひとつ保留しておきたいと思います。そういう、いいからやれというかってなことじゃいけないと思うのです。やはりその点は明確にしておかなければいけないことですし、私は、そういう勤務時間中にやることは違法だ、こういうふうに思います。  次に、もう時間がたいへんあれですので、もう一ぺん全体的な問題に返りたいと思うのですが、先ほど触れました大学基準協会の中間報告を見てみましても、統一テストを何らかの形で大学の入学試験に使う場合には、こういうふうに言っているわけですね。「現在のいわゆる受験準備に多くのへい害のあることは否定し得ないが、能研テストの結果を大学入学の合否に影響をもたせる場合には、新たに能研テストを対象とした受験準備が盛行することが必至ではないか。」こういうことをこの中間報告て言っておるわけです。そういう意味では学力テストというものが、ことしから大きく変わっていった、社会的な批判もそうであったと思うのです。であるならば、あるいは昭和二十三年から二十九年にかけて行なわれてまいりました進学適性検査も、そういうことでこれはやめたらいい、そういう意味ではこの能研テストを大学入学試験の合否に影響を持たせていく、愛知文部大臣が出したようなそういう方法で強引に推し進めていく、こういうことになれば、さらに重い負担をかけていくということが、もういままでの過去の歴史からして明確だと思うのです。そういうときになおかつ四十一年度から実施させるように、あるいは活用させるように強力に指導するつもりなのか、もっと客観的な結果が出るまで待つつもりなのか、その点いかがですか。
  139. 押谷富三

    ○押谷政府委員 大学の入試の実施につきましては、先ほどお話のありましたごとく、あくまでもそれぞれ当該大学自主性に待たなければなりません。これは文部省としても絶対に守らなければならない基本線だと存じております。したがって、その大学の入試にあたって、この能研のテストをどう使うか、どう活用するかということも、これも文部省としてはしいるものではありません。あくまでも当該大学自主性に待たなければならないと思っております。ただ、能研を活用するかどうかということは、私の考えでは、能研のテスト自体が非常に高い価値のあるものであるという価値判断をされた場合に、自主的にそれぞれの大学が使うであろうと思いますが、せっかく大学入試の改善の一方向として能研というものが出された以上は、これに対して十分に各方面協力を得、そして能研の価値が上がるように、また価値が上がればそれぞれ自主的にこれを活用されるように、こういう方向になることも非常に期待をいたしておるのでありまして、したがいまして能研につきましての各調査研究について、それぞれの各方面関係者の協力を得たいと存じておるのでありまして、こういう協力を得、ますますりっぱな成果をあげ、価値判断が高く評価される場合において、初めて大学の入試の改善の一助にもなるのではないか、こういうような考えを持っておるのでありまして、そこで能研についてのテストを各大学にしいるとか、あるいはそれを能研につきまして政府が積極的に活用をされるように指導をするとかいう考えは、持っておらぬと思っております。
  140. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 終わります。
  141. 坂田道太

    ○坂田(道)委員長代理 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時十九分散会