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1965-03-18 第48回国会 衆議院 農林水産委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月十八日(木曜日)     午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 濱地 文平君    理事 仮谷 忠男君 理事 坂田 英一君    理事 谷垣 專一君 理事 本名  武君    理事 赤路 友藏君 理事 東海林 稔君    理事 芳賀  貢君       池田 清志君    金子 岩三君       亀岡 高夫君    吉川 久衛君       小枝 一雄君    笹山茂太郎君       田口長治郎君    田邉 國男君       高見 三郎君    中川 一郎君       中山 榮一君    丹羽 兵助君       細田 吉藏君    松田 鐵藏君       山中 貞則君    兒玉 末男君       千葉 七郎君    松井  誠君       松浦 定義君    湯山  勇君       小平  忠君    中村 時雄君       林  百郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         外務事務官         (移住局長心         得)      山下 重明君         農林政務次官  舘林三喜男君         農林事務官         (農政局長)  昌谷  孝君         農林事務官         (農地局長)  丹羽雅次郎君  委員外出席者         参  考  人         (海外移住事業         団理事長)   広岡 謙二君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  農地管理事業団法案内閣提出第九九号)  八郎潟新農村建設事業団法案内閣提出第九八  号)  農林水産業振興に関する件(農業者海外移  住問題)      ————◇—————
  2. 濱地文平

    濱地委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求の件につきましておはかりいたします。  農業者海外移住に関する問題について、本日.海外移住事業団理事長広岡謙二君の出頭を求め、その御意見を承ることにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 濱地文平

    濱地委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。      ————◇—————
  4. 濱地文平

    濱地委員長 農地管理下業団法案を議題とし、提案理由説明を聴取いたします。舘林農業林政務次官。     —————————————
  5. 舘林三喜男

    ○舘林(三)政府委員 農地管理事業団法案につきまして、その提案理由及びおもな内容を御説明申し上げます。  農業と他産業との間の生産性格差及び従事者生活水準格差を是正することは、農業基本法に掲げられたわが国農政基本的目標でありますが、必ずしもその是正が進みっつあるとはいいがたい状況にあり、他方、開放経済体制のもとにおいて生産性の高い農業経営育成が急務となっているのであります。  このような農業を取り巻く内外情勢に対応し、他産業従事者に劣らない所得をあげ得るような農業経営育成するためには、自立経営育成及び協業の助長に関する諸施策を強化し、特に、自立経営を指向して農業経営改善しようとする農家及びこれに準ずる効率的な協業経営農地取得促進することが肝要と考えられるのであります。  しかるに、近年における経営耕地規模別農家戸数の推移を見ますと、経営規模の大きい農家増加傾向は微弱でありまして、また、農地についての権利移動は、現在年間七万町歩程度に達し、農業就業人口減少等を契機として増加を続けておりますが、その内容においては、必ずしも経営規模拡大方向に沿って移動が行なわれているとはいいがたいのであります。  そこで、以上のような情勢に対処し、農業生活の本拠を置き、農業によって自立しようとする農家生産性の高い農業経営の基礎を確立し得るよう農業経営規模拡大促進するためには、これらの農地移動をそのまま放置することなく、このような農家経営規模拡大に役立つように方向づけを行なうことが必要であり、このため農地取得あっせん売買その他農地移動円滑化に必要な業務を行なう公的機関設立する必要があるのであります。  このような観点から、農地等権利取得農業経営規模拡大等農地保有合理化に資するよう適正円滑に行なわれることを促進するために必要な業務を行なう機関として、農地管理事業団設立することとしたものでありまして、この法律案は、農地管理事業団組織業務財務等に関し所要事項を定めたものであります。  以上がこの法律案提案する理由でありますが、以下法律案のおもな内容について御説明申し上げます。  第一に、農地管理事業団組織等につきましては、全額政府出資法人とし、当初の資本金を一億円とし、政府は必要に応じ追加出資をすることができることとしておりますほか、役員定数任免等につき所要規定を設けております。  第二に、事業団業務に関する規定であります。  まず、業務範囲につきましては、農地採草放牧地及びこれらの土地付帯施設について、売買または交換あっせん取得に必要な資金貸し付け、これらの買い入れ交換及び売り渡し、これらの借り受け及び貸し付け並びに信託引き受け業務を行なうこととしております。  次に、事業団は、農林大臣指定した業務実施地域内にある農地等について業務を行なうものとしておりまして、この業務実施地域は、都道府県知事関係市町村に協議の上申し出た場合、土地農業土利用高度化をはかることが相当と認められる農業地域農業構造改善をはかるため農地等権利取得を適正円滑にすることが特に必要な地域指定することとしております。  次に、事業団業務執行方針につきましては、自立経営になることを目標として農業経営改善しようとする農家及びこれに準じて農業経営改善をしようとする農業生産法人農地等取得促進するように業務を行なわなければならないも一のとしております。  以上のほか、事業団業務運営方法につきましては、貸し付け金及び売り渡し対価償還条件は、年利三分、償還期間三十年以内の年賦償還とし、一定の場合における一時償還及び償還猶予に関する規定を設け、また農地等を売り渡す場合は一定基準により買い戻しの特約をつけ、売り渡し農地耕作をやめた等の場合には買い戻しを行なうこととしたほか、農地等信託引き受けについての信託法特例金融機関及び地方公共団体に対する業務委託等に関する規定を設けております。  第三に、事業団財務及び会計につきまして、予算事業計画等についての農林大臣認可借り入れ金交付金交付等について所要規定を設け、また、事業団は、農林大臣監督することとし、監督命令報告及び検査に関する規定を置いております。  その他の規定といたしましては、まず、事業団は、業務実施地域内の農地等所有者がその農地等所有権を移転し、または賃借権等を設定しようとするときは、あらかじめ通知を受けるものとし、自立経営になることを目標として経営改善をしようとする農家等にその農地等を譲り渡すようあっせんをし、または事業団がこれを買い入れる等の申し出をするものとしております。  次に、税制上の特例といたしまして、事業団農地等を譲り渡した者については、租税特別措置法の定めるところにより、譲渡所得についての所得税を軽減することとし、また事業団あっせん融資事業ほからの売り渡し等により農地等を得した者等に対する登録税及び不動産取得税を軽減することとしております。  また、事業団業務に関連して農地法特例を設けることとしておりまして、事業団買い入れ売り渡し及び借り受け貸し付けについては許可を不要とし、事業団農地等を借り受け、これを貸し付けた場合について、小作地所有制限を適用せず、更新拒否等について許可を不要とする等の措置を講ずることとしております。  以上のほか、附則におきまして事業団設立に関し必要な手続規定を設けております。  なお、本法律案提出に関連して必要となる予算措置等につきましては、昭和四十年度予算におきまして事業団に対する出資金一億円及び交付金等三億円を予定するとともに、昭和四十年度において事業団資金運用部から二十億円の借り入れを行なうことを予定しております。  以上がこの法律案提案理由及びおもな内容であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
  6. 濱地文平

    濱地委員長 引き続き補足説明を聴取いたします。丹羽農地局長
  7. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 農地管理事業団法案につきまして、補足して御説明申し上げます。  この法律案は、提案理由説明にありましたとおり、最近における農業を取り巻く内外情勢に対応し、また、農業経営及び農地移動状況等農業の動向にかんがみ、農地等にかかる権利取得農業経営規模拡大、その他農地保有合理化に資するよう適正円滑に行なわれることを促進することを目途として、その促進に必要な業務を行なう機関として農地管理事業団設立し、その組織業務等について所要規定を設ける必要があるため、提案いたしたものであります。  法律案の構成といたしましては、第一に農地管理事業団資本金等総則的な事項について規定し、第二にその役員及び職員について規定し、第三に業務範囲業務実施地域その他業務に関する規定を置き、第四に財務及び会計について規定しておりますほか、監督各種特例措置罰則設立手続等に関する規定を設けております。  以下、その内容について若干補足して説明させていただきます。  第一章、目的法人格事務所、資本金等総則に関する規定であります。  まず、第一条においては、農地管理事業団は、農地等にかかる権利取得農業経営規模拡大、その他農地保有合理化に資することとなるように適正円滑に行なわれることを促進するため、その促進に必要な業務を行なうことにより、農業構造改善に寄与することを目的とすることを規定しております。  また、第五条においては、事業団資本金はその全額政府が出資するものとし、当初の資本金は一億円とし、その後必要に応じ追加出資をすることができるものとしております。  第二章は、役員及び職員に関する規定であります。  役員定数は、理事長一名、理事三名以内、監事一名でありまして、理事長及び監事農林大臣が任命し、理事理事長農林大臣認可を受けて任命することとしており、いずれも任期は三年といたしております。その他役員の職務及び権限、欠格条項解任等に関する規定を設けております。  第三章は、業務に関する規定であります。  まず、第二十条第一項は、事業団業務範囲を、農地採草放牧地または付帯施設売買または交換あっせん、これら農地等取得に必要な資金貸し付け農地等の買り入れ、交換及び売り渡し農地等の借り受け及び借り受けた農地等貸し付け農地等貸し付けによる運用目的とする信託または売り渡し目的とする信託引き受け並びにこれらの業務に付随する業務と定めております。これらの業務の対象となる農地または採草放牧地とは、第二条に規定されておりますように、濃地法規定する農地または採草放牧地であり、また付帯施設とは、第二条に規定されているとおり、農地または採草放牧地農業上の利用に必要な土地立木等でありますが、付帯施設については、農地または採草放牧地について業務を行なう場合にこれとあわせて業務を行なうこととしております。  次に、第二十一条から第二十五条までは、業務実施地域に関する規定であります。  そのうち、業務実施地域指定について定めたものが第二十二条の規定でありまして、指定は、農林大臣都道府県知事申し出に基づいて行なうこととしており、都道府県知事は、申し出前に、関係市町村に協議し、また都道府県農業会議意見を聞かなければならないものとしております。業務実施地域指定基準は第二十二条第三項に規定されておりまして、国土資源の総合的な利別見地から見て、その区域内における土地農業上の利用高度化をはかることが相当と認められる農業地域で、その区域内における農地保有合理化等農業構造改善をはかるため、その区域内にある農地等についての権利取得を適正円滑にすることが特に必要と認められる地域について指定することとしております。なお、指定は告示をもってすることとしております。  また、第二十三条は業務実施地域区域変更規定でありまして、変更手続及び基準は、指定の場合に準ずることとしております。  次に、第二十六条は業務執行方針を定めたものでありまして、事業団は、農業を営む個人または農業生産法人でその農業経営農業基本法第十、五条に規定する自立経営またはこれに準ずる協業経営にすることを目標として農業経営改善するため農地等取得し、または借り受けようとする者の、農地等取得または借り受けを促進するよう業務を行なわなければならないことを規定しております。  次に、第二十七条から第二十九条までは、貸し付け金償還条件に関する規定であり、第三十条は農地等売り渡し対価支払い条件に関する規定でありますが、実質的におおむね同様な内容を定めております。  すなわち、貸し付け金または売り渡し対価償還条件は、年利三分、償還期間三十年の元利均等年賦償還によるものとし、借り受け人等は繰り上げ償還ができることとするほか、一定事由に該当する場合は事業団は一時償還の請求をすることができるものとし、災害その他やむを得ない理由がある場合は償還猶予をすることができるものとしております。これらの規定のうち、一時償還事由としては、貸し付け金により取得した農地等または売り渡しを受けた農地等耕作をやめた場合、貸し付け金貸し付けまたは農地等売り渡しを受けた者またはその一般承継人一定限度以上経営規模を縮少した場合等を定めております。  次に、第三十一条は、買い戻し権に関する規定でありまして、事業団は、農地等売り渡しをする場合は、農林省令で定める基準に従い、買い戻しの特約をつけなければならないものとし、売り渡し農地等の全部または一定割合以上の部分についての耕作をやめた場合、または右に述べました貸し付け金等の一時償還事由と同様な経営規模の縮少があった場合には、買い戻しをすることといたしております。  次に、第三十二条から第三十五条までは、農地管理事業団の行なう農地信託業務について、この業務の性格上必要な信託法特例を設けたものであります。  次に、第三十六条は業務委託に関する規定でありまして、事業団は、資金貸し付け業務農地等買い入れ売り渡し、侍り受け、貸し付け等にかかる対価支払い及び徴収の業務の一部を金融機関に、信託にかかる事務を除くその他の業務の一部を地方公共団体委託することができることとしております。  また、第三十七条において、事業団業務実施方法を定めた業務方法書について農林大臣認可を受けさせることとし、その変更のときも同様に認可を要することを規定しております。  第四章は、財務及び会計に関する規定でありまして、第三十九条において、事業計画予算及び資金計画について農林大臣認可を、受けなければならないものとしているほか、第四十条以下において、財務諸表に関する農林大臣の承認、損益の処理方法借り入れ金及び債券の発行並びにこれらに対する政府の保証、政府からの交付金交付余裕金運用方法等について定めております。  第五章は、監督に関する規定でありまして、事業団農林大臣監督するものとし、監督上必要な命令並びに報告及び検査について定めております。  第六章は、雑則と題して各種規定を置いておりますが、これらのうち、第五十三条においては、事業団農地または採草放牧地売り渡し個人については、租税特別措置法の定めるところにより、譲渡所得にかかる所得税を軽減する旨を規定しております。  次に、第五十四条は、業務実施地域内の農地等所有者は、その農地等所有権を移転し、または賃借権等を設定しようとするときは、あらかじめ、農地等の所在の場所その他の事項事業団に通知しなければならないものとし、事業団は、必要があると認めるときは、自立経営になることを目標として農業経営改善しようとする者等にその農地等を譲り渡すようあっせんを行ないたい旨を申し出、または事業団がその農地等買い入れもしくは借り受けたい旨を申し出ることを規定しております。  第七章は、罰則に関する規定であります。  附則におきましては、まず、第二条から第五条までに事業団設立手続について規定し、第六条から第八条まで所要経過規定を設けております。  附則第九条は、農地管理事業団業務に関連して農地法特例を設けるための農地法の一部を改正する規定であります。その内容は、第一に、事業団農地等買い入れ交換及び売り渡し、借り受け及び貸し付け並びに信託引き受けを行なうことに伴う農地等に関する権利移動については、農地法第三条の許可を不要とし、第二に、事業団が借り受けた農等地及び事業団が所有して一時貸し付けをし、または信託財産として管理している農地等については、農地法第六条の小作地所有制限を適用しないこととし、第三に、事業団が借り受け、貸し付けている農地等及び事業団貸し付けている信託財産たる農地等について、その農地等の借り受け期間または信託期間の満了に際して賃貸借を終了させるため更新拒否等をする場合は、農地法第二十条の許可を不要とすることとしております。  附則第十一条から第十六条までは、税法の改正でありまして、農地管理事業団について所要免税措置を講ずるとともに、事業団あっせん及び融資を受け、または事業団から売り渡しを受けて農地等取得した者で一定基準に該当する者並びに事業団あっせんによる交換または事業団との交換により農地等取得した者について、その取得にかかる登録税及び不動産取得税を軽減するための改正を行なうこととしております。  以上のほか、関係法律について所要改正を行なうこととしております。  以上をもちまして、農地管理事業団法案についての補足説明を終わります。
  8. 濱地文平

    濱地委員長 本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  9. 濱地文平

    濱地委員長 農林水藻業振興に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、これを許します。松浦定義君。
  10. 松浦定義

    松浦(定)委員 私は、本日は、海外移住の問題について、特に外務省農林省、さらに一作々年から設置されました海外移住事業団、こうした三者の中における今日までのいろいろの事情等についてお伺いすると同時に、今後この海外移住問題をどのように政府として進めようとするのか、そういう問題についてお尋ねをいたしたいと思うわけであります。実は、この海外移住の問題は非常に広範な問題をかかえておるのでありまして、特に通産省に関係する問題もたくさんあるわけでありますが、きょうは特に農業問題、農業者移住中心とした質問をいたしたいと思いますので、全体の問題につきましては、また適当な機会にお尋ねしたいと思うわけであります。  まず最初に、海外移住戦前においても相当努力されておったことは、いろいろの書類によって私ども承知をいたしておるわけでありますが、とりあえず戦前、戦後を通じまして、この海外移住問題につきまして、どのような形で進められておったのか、そういういわば歴史的な問題について、一応外務省海外移住局並び農林省、さらに移住事業団等から御説明願いたいと思います。
  11. 山下重明

    山下政府委員 海外移住につきまして、戦前と戦後を通じまして簡単に申し上げますと、一番最初に、戦前移住ハワイあたりから発足しまして、その後、大体北米、そのあとで中南米にずっと進みまして、一応移民が非常に盛んになっていったのでありますが、その後、戦争の前に、一町満州東南アジア方面に非常に国策として推進されまして、大体戦前、一九四五年までの数字で見ますと、北米に大体四十数万、それから中南米に二十五万、東南アジアに八千、それから満州に大体二十七万、計百万くらいの人が移住されたような状況であります。その後、戦後東南アジア満州方面からの人はみな引き揚げてきまして、昭和二十七年に移住が再開されましてから現在までに、大体十三万名移住者海外へ出ておられますけれども、そのうちの大体半数が北米へ出られまして、南米方面に戦後移住者として、出られた人は大体五万七千名という形になっております。そうして、この中南米方方面に出られた五万七千名のうち、ほとんど大部分、五万六千名という人が農業関係者として、移住されておりまして、そのほか、七百名くらいの方がいろいろの技術を持った技術移住という形で出ておられます。  大体簡単に説明いたしますと、いまのような状態であります。
  12. 昌谷孝

    昌谷政府委員 戦前戦後を通じましての農業移住を含めましての総体の姿は、大体外務省山下さんからお話しのとおりであります。  御承知のように、戦前につきまして、特に農林省が政策的な意味で力点を置いておりましたのは、満州中心としたアジアの移住が主であります。もちろん、南米等についても、現に定着をして花が咲いておりますコチアのような歴史を持ったところも、その間生まれてきたわけであります。それからカリフォルニアあるいはハワイ等におきましての実績も御承知のとおりでございます。政策的な意味合いでは、おそらく満州移住をもって一番重点を注いだものというふうに考えております。その際のやり方その他につきましては、すでに御承知と思いますので、あれですが、戦後につきましては、再開以来、いまのお話にもありましたように、主として南米中心とした農業業移住というものが、移住全体の中でも非常に大きな地位を占めておりまして、農林省といたしましても、その移住の希望をなされる方々の募集、あるいは訓練、あるいはそれ以前の啓蒙といったような点に力を注ぎますとともに、また現地での営農についての技術的なお手伝いをして、今日に至っております。  なお、そういった移住を農協のような農業者組織を通じて啓発、あるいは組織的な移住者の送り出しといったようなことを目的といたしまして、農業協同組合一環として拓植を専門にやっております全国拓植農業協同組合連合会が発足をいたしております。現在二十七県ほどにその県の連合会がございます。そういった農業協同組合組織並びに全国中央会等を通じます啓発組織、それらを通じまして、海外移住事業団が主として業務を担当しておられます、あるいは現地での営農定着といったことにつながる国内面での協力、そういったことに重点を置いてやってまいっておる次第でございます。  私どもといたしましては、移住ということが出た先での営農の確立という点で、出ていく方の将来の明るい展望を持つ、あるいは国際的な協力あるいは技術協力というような点での啓蒙を持ちますとともに、国内農村での問題といたしましは、やはり新農村建設事業以来、特にそういった村の構造改善、広い意味での構造改善一環としての海外移住ということに、特にその重要性を感じ、そういった点から、単に移住という見地だけでなく、広く村の構造改善という見地から、一つの新しい転身の方向ということで移住の価値というものの啓蒙なり指導なりを、一つ重点として展開をしておるような次第でございます。
  13. 松浦定義

    松浦(定)委員 いま外務省農林省の立場から、いろいろ経過の御説明があったわけでありますが、いまちょっとお話を聞きましても、戦前では約百万人、戦後で十三万何がしが移住しているというお話でありますが、現在における国外におる移住者といいますか、そういうものは総計でどのくらいになりますか。
  14. 山下重明

    山下政府委員 現在海外における移住者といたしますと、正確な数字は、戸籍も何も海外にはありませんので、把握ができませんが、ブラジに大体五十数万、ハワイ、北米にやはり五十万、その他は全部で数万で、やはり百十万前後ではないかと推定しております。
  15. 松浦定義

    松浦(定)委員 戦前のような状態のときですら百万行っておる。戦後日本の状態がこういう形になったというときにおいて十三万内外で、現在前後総括いたしまして百十万程度だ、こういうことになりますと、いまの日本の状態というものは——戦前の場合は満州や各方面にいろいろ考え方があって進出したものがあるわけです。しかし、現在はそういう意味でなくして、先ほどちょっと局長からお話がありましたように、低開発国援助といったようなことから、技術援助等で、日本の技術は相当高く買われておる。そういうことで、特別な人は特別の地域に行って相当効果をあげている人もあるかもしれぬけれども、そうでなしに、やはり現在の日本では、終戦後特にこの狭い国で、いろいろ産業の問題の中で苦しい生活をしておる。だから、この海外移住というものについて、ぜひ行きたい、やらなければならぬという結果でありながら、このような状態ということについては、何かそこに理由があるのではないかという、私どもから見れば不審の点が多いわけであります。時間の関係がございますから、そういうこまかい点に触れることは別といたしましても、やはり何としても私は納得できないのは、戦前よりも戦後の海外移住問題がこのような状態であるということについては、私は、いまの社会情勢からいって、これは全く納得できない。確かにこれには、私どもの聞く範囲におきましても、いまお話がありましたように、農林省農林省として、農業問題を中心として技術者を含めて、海外移住に対して、広くそれぞれの地帯において諸外国の方針に沿って、技術拡大なりあるいは生活中心を打ち立てるということで、いろいろ、やっておる。しかし、主として外務省がこれを担当になっているということになりますと、むろん外国に行くのでありますから、農林省が直接自分かってにやるわけにはまいらぬということで、外務省の所管になっていることについては、これは認めざるを得ないと思います。しかし、外務省の所管なるがゆえに、非常に幅が広い、そういうことで十分な対策ができないということで、その不振の原因になっているのではないかということは、当然私どもとして考えなくてはならないことだと思うわけであります。そういう現状が最近問題になりまして、外務省農林省の協議の上で、海外移住事業団というものを特別につくられた。その事業団内容につきましていろいろあとからもお尋ねしますけれども、やはり何としても主管庁が外務省である。あるいは農林省が陰ではやってくれるけれども、表面に立てない。海外移住事業団業務分担というものが、そういう意味で事業の面と混同してしまっておって、いわばなわ張り争い的なものがあって、これが不振の原因をなしておったということはないかどうか。最近機構の整備等もやられたという話を聞いておりますが、今日の状態で、将来目的を完遂するに十分な機構の体制ができたかどうか、こういう点について承っておきたいと思います。
  16. 昌谷孝

    昌谷政府委員 御承知のように、戦後移住が再開せられましてからの実績的な傾向は、先ほど申し上げたとおりであります。何さま戦前と比較いたしまして、先生御指摘のように、ある意味では移住が盛んになってもしかるべしと思われるような要素ももちろんございますが、しかし、他面、国際的な環境もそうでございましたし、また国内的な労働力需給関係から申しましても、そういった移住というものが、必ずしも戦前と比較しても盛んになるとばかりは、言いかねるいろいろの要素もあるわけであります。特にここ一、二年と申しますものは、農村の兼業化が非常に進んでおるということの御指摘を受けておりますけれども、そのことは逆に印せば、移住ということにむしろ踏み切るほどのことがない雇用の機会が国内にあるということの反面でもあろうかと思います。そのようなことで、必ずしも移住にプラスの環境ばかりが整っておるというふうにも私どもは考えるわけにまいらないのではないかと思います。ただ、先ほど申しましたように、農村構造改善といったような事柄の必要性あるいは要請が、二面で非常に強く出ておりますので、そういう着眼点から申しますれば、確かに、この際、移住というようなことを志される方々に対して手厚い手を伸ばすことによって、双方に適する施策が充実される必要があろうかと思います。  行政組織の問題でございますが、実は御承知のように、移住につきましては 非常に御熱心なことがかえって災いをいたしまして、ざっくばらんに申せば、船頭が多過ぎたというきらいがございました。農林省外務省の間におきましても、熱心のあまり、いろいろと談論の一致しない点が過去にあったように聞いております。それらの経過を経まして、御承知のように、二、三年来、事務の調整あるいは実施事務事業団をつくって一元的にやっていただくというような機構の整備が行なわれたわけであります。そういう意味で、私どもは、現在の組織機構が、過去の経験にかんがみまして、今後移住を一元的に強力に進めるために、非常に有用であり、かつ、われわれも非常にやりよくなったというふうに実感をいたしておる次第であります。  ただ、一面反省しなければなりません点は、先ほどお説にもありましたように、事業団ができ、行政機構的には非常に安定をいたしましたことが、反面、農林行政の中で、移住というものを何か軽く見るというふうに受け取られたのでは、これははなはだ申しわけないことだと思います。特に府県の農林部あるいは市町村の農業関係をやっていらっしゃる方々が、移住の仕事を何か自分の仕事でないというふうに考え始めるという風潮が、もしこういった行政機構のために出てまいるとすれば、これはたいへんマイナスだと思います。私どもとしては、私どもの真意心がそうでないということを、機会あるごとに府県の農林関係の担当の方々によくおわかり願うように話を繰り返しております。予算等の措置を通じましても、そういった面で、移住構造改善あるいは労働力調整の一環として組み入れてやっていただくということで、機会あるごとに、そういった機構が円滑になったことの反面が、人ごとのようになってしまってはたいへんでございますから、そういうことのないように十分戒心をいたしておる。その意味で今後軌道に乗ってまいれば、現在の機構は、過去の経験から見て、その欠点を補って十分強力にやっていけるというふうに考えております。
  17. 松浦定義

    松浦(定)委員 農林省が農民の移住問題をいま御説明のようにお考えになることは、私は当然だと思うのです。私のお聞きしているのは、やはり海外移住ということになれば、先ほど言ったように、主管庁が外務省であるから、外務省の立場でこの点をどういうふうにお考になっておるのか。たとえばいま農林省から御答弁になりましたことと同じような考え方でやっておるかどうかということについてお聞きをしたわけであります。いままでのやり方でありますと、そういうふうに考えておられないのではないか。そういう点が問題になって今日の不振というものがあった。しかし、いまお話しのように、業務執行なりあるいは人事、給与その他の機構が整備をしたから、これらはひとつやるんだ、私はこういうふうに答弁されるものと思っておりますが、しかし、私は、単なるここで答弁するための答弁ではいけない思うのです。いま申し上げましたように、実質的に戦前と戦後とこういう附きがある。いま局長お話でありますと、兼業農家が非常にふえたということから、なかなか行き手がないのだということであります。しかし、私は今日の日本の農業の状態一つ考えましても、決してそういうものではないと思うのです。そういう中からなお海外にひとつ出てやろうというような空気をつくることがまた必要でなかろうか。そういうことをやらないでおると、不況の場合になったらどっと行かなければならぬ。極端に言いますと、海外移住というものは、日本が非常に不況である、あるいは農村がたとえば昨年の北海道のように大冷害、大災があったようなときに、どうにもならないからやるの、だといったようなことをむしろ好んでおる、そのことが卒業の発展だというようにお考えになったら、私はたいへんだと思う。努力をされても行かないで、行った以上に国内において効果があがるというなら、これは納得できますけれども、他産業へ行ったって——現在農民にしても、他の中小企業の人だって満足していないのです。せめてこういうような機構があるなら、組織があるなら、この機関を通じて何とかしたいということは、現にだれも考えておることなのです。いま言われましたように、すでに海外に出た百十万の中には、りっぱにやっておられる人がある。しかし、中には苦労してやっておられる人もあるようであります。しかし、総括的に、やはり努力されておる人の実態を国内でもって何らかの形で知らしめて、それに対して同調者なりあるいは行く人が、十分納得をして行くようにしなければならぬ。不況の事態が来たらどっさりと何でも難民のような形でやるということでは困る。この海外移住目的というものはそこにはないと私は思いますので、外務省といたしましても、いま局長がお話しになりましたように、将来に向かって、今回の人事機構並びにその他の機関の整備はさらに一そう発展をする、あるいは努力をするというお考えであるのか、あるいはまた極端に言えば、農業移住なんというものは、この際あまり希望者もないのだから、あまり重要視しない、切るわけにもいかないけれども、まあまあということでやろうか、そういったような消極的な意見でないかとさえ疑われる面があるわけでありますが、こういう点について外務省当局の御意見を承っておきたいと思います。   〔濱地委員長退席、坂田(英)委員長代理着席〕
  18. 山下重明

    山下政府委員 外務省といたしましても、農政局長の言われましたように、現在何とか農村方面からも海外に大いに活躍されてくださるような人が出るように、都道府県並びに市町村段階まで大いにPRをしていこうということで、努力いたしておりまして、決して農村農業関係の方はもう必要ないというようなことを考えておるわけではなく、今後ともますます農業関係の方も活躍していただいて、農業関係のほうもだんだん、あるいは技術的な面を含めた農業経営なり何なり、そういう方向に転換されていくのではないかと思います。農業のほうの関係も、南米方面は広大なる地域がまだまだ日本人の活躍を期待しておりますので、推進していきたいと考えておるわけであります。
  19. 松浦定義

    松浦(定)委員 そこで、きょうわざわざ海外移住事業団理事長広岡さんがおいでになっておりますから、いま農林省外務省お話しになりましたような形でいけば、事業団の成果は相当上がっておらなければならぬと私は思いますし、いろいろ事情があって今日まで上がらないとしても、これからはさらに発展しなければならぬ、こう思うのですが、この事業団の設置以来、ここ二、三年ですか、その間の経過、さらにまた今後の方針等について、ひとつ承りたいと思います。
  20. 広岡謙二

    広岡参考人 事業団は実務機関でございますので、その立場から簡単に御説明をいたしたいと存じます。  御承知のように、一昨年の七月十五日を期しまして海外移住事業団というものが新たに発足いたしまして、その後約一年と八ヵ月ほど経過をいたしました。発足いたしましてから、事業研の内部の体制をまず確立することが急務であるということで努力をいたしました。また、移住審議会の事業団をつくるにあたって、の答申に、移住振興に必要な業務を国の内外を通じて一貫して効率的に行なうという趣旨も盛り込まれておりますので、私どもといたしましては、外務省の御方針でもありまするし、各都道府県に本部の第一線の窓口となるべき実務機関をつくるということで、昨年の七月一日から各都道府県に事業団の地方事務所を設置いたしました。また、従来外務省の所管に属しておりました横浜と神戸におきまする移住あっせん所を当団に移管いたしまして、それぞれ移住センターという看板でもって引き継いでおるのでございます。先ほどからお話のございましたように、地方事務所をつくりましても、わずかの人員とわずかな予算でもっては十分な啓発、相談にも応じかねる実情でございますので、どうしてもこれらの点につきましては、各都道府県また末端の市町村に至るまでの御協力を願わなければ実効をあげるわけには相なりません。また、従来ございました海外協会、また家族会というものがございますが、あるいは農協その他の協力機関、あげて密接に連絡しつつ、その御強力を願うという体制をとらなければならぬと存じまして、この点につきましては、外務省なり、また農林省に対しましても、私ども実務を担当いたします面から、率直に御連絡なり希望を申し上げまして、その体制を今後とも一そうに強めてまいらなければならぬ、こう考えておる次第でございます。  外におきましては、事業団になりまして各移住地を引き継いだわけで、ございますが、つぶさに個個の移住地を見まして、この際に一応再検討を加えなければならぬ面もあるようでございます。これは特に受け入れ国におきまする時代の流れと申しますか、その国の経済発展の過程における現状等から見ましても、この際、検討を加える面がかなりあるやに思うのであります。現在移住者が非常に減っておりますので、この機会になるべく早くその再検討をしまして、受け入れの体制を堅実に固めてまいりたい、こういうように今日までやってきたわけでございます。今後もそういう面から関係各省、関係機関の御協力を得つつ移住振興に、私ども職員をあげて、しかも情熱を持って、堅実な発展に努力したい、こう考えておる次第でございます。
  21. 松浦定義

    松浦(定)委員 お話を聞いておりますと、非常によくやっておられるようにも聞こえますし、あるいは現実にそれぞれ事業団が仕事をしておる点については、非常にむずかしい、再検討しなければならぬ。むろん、国内でございませんので、そういう点については確かに一〇〇%何でも成功するということではないと私は思います。しかし、国外であるだけに、そういう不成功といいますか、不十分な点があってはならないと思うのです。国内でありますならば、多少不十分な点がありましても、それはいろいろ手配ができますけれども、国外であるだけに、できないと同時に、やはり移住された者に対する迷惑と申しますか、困惑も非常に最大でございます。同時に、国際的信用というものものも考えなければならない。ですから、先ほどお話がございました、外務省農林省その他の関係との調整が十分でなかった。ようやくにしてここ一、二年の間にできて、そして事業団というものが直接実務を担当することになった。しかし、担当はしたけれども、その整備に一、二年はかかってしまった、そういうことでございまして、私は何ら効果が上がっていないじゃないかということさえ極論したいわけであります。しかし、これからやろうという熱意がおありになるような御説明ですから、この点については、私は、過去は参考として、大いに将来を期していただきたい、こういうふうに思うわけであります。  率直にお尋ねいたしますが、たとえば昨年私どもが聞いたところによりますと、昨年度の移住の希望者といいますか、そういうものはようやく一千人に到達した、こういうふうな非常に少ない数である。この一千百何名かであるようでありますが、この中には農業者もありますし、あるいはいろいろな技術者もおるわけでありますが、そういうような程度の移住でもって、当事業団が相当多くの人をかかえてやっておられるのでありますけれども、これに対しては、先ほどのお話にございましたように、国内においても農業は他産業へ、あるいはいろいろ兼業をやっておる、あるいはその他については、海外へ行くという人が出てこなかったためにそういう結果だった、こういうふうにおっしゃいますが、何かそこに原因があったのかどうか。事業団としても、いまいろいろお話しのように、各府県におきましてそれぞれの出張所を設けて、十分調査をしておられるはずでありますから、この点について、今後の参考のために、昨年不振であった原因について、率直にお答え願いたいと思います。
  22. 広岡謙二

    広岡参考人 不振の、原因につきましては、先ほど外務省農林省の方からも御説明のあったことが、最大の原因であろうと思います。特に三十九年度は千百台でございます。一番底だと思うのであります。これはいま申しますような外部的ないろいろな原因があったことは、もちろんと思います。けれども、私ども事業団の立場において反省すべき点から申しますと、先ほど申しましたように、地方事務所を海外協会から切りかえまして、昨年の七月に新発足いたしたのでございますが、その間に、啓発、宣伝、相談等が若干各地方において十分じゃなかったのじゃないかということを反省いたします。あるいは機構の大きい切りかえに臨みましたので、各地方とも落ちつかなかったという点もかなりあったのじゃないかと思うのであります。これは事業団といたしまして反省すべき点でございますが、私は、将来の見通しといたしましては、大きい立場からの海外移住の利点であるとか、その持つ意味というようなものは別といたしまして、現実の問題といたしまして、一般潜在移住希望者の中にも、かなりいろいろな措置を講ずることによって、これを顕在化する余地がまだあるのじゃないかと思います。また、最近の傾向といたしましては、若い学生を含めた青年層に、海外に目を向け、海外進出を理想とする機運が少なからず醸成されつつある。これはまた昨年度の移住の送出の実績から徴しましても、家族と単身青年の渡航の割合を見てみますと、単独で向こうへ渡ろうとする青年の数がかなりウエートを高めてきているという点にも、この傾向をある程度見ることができると思うのでございます。また、事業団でもって、全国的に海外思想の高揚という面から、教育の面で見てみますると、各農業高校を中心にしまして、その教育内容に、海外に対する関心を高める、その中の問題として海外移住を取り上げるというような傾向が、これまたじみちに出てまいっております。  そういう傾向も見受けられるのでございますが、一方現実の問題といたしましては、御承知のように、岩手県知事の熱心なる唱道によりまして、パラグアイ国に東北村を建設して、国内開拓をやった人の中から向こうの移住地に送出することのほうが望ましいのじゃないかということから、この問題がかなり具体的を進められつつございます。また最近、高知県におきましても、パラグアイ国に家族として移住させようというような傾向も出てきておりまして、そういうことを客観的に考えてみますと、おそらく私は、この一、二年というものが底であって、やはり国の内外事情等にかんがみまして、だんだん海外にを向け、海外に発展しようとする傾向が強くなるのじゃないかというように判断をいたしておるのであります。
  23. 松浦定義

    松浦(定)委員 時間がありませんから、ひとつできるだけ簡単にお願いしたいと思うのですが、いま私がお尋ねしていますのは、昨年は一千百名だ、一昨年は一千三百名だ、こういう状態でいいかどうかということでありまして、いまのお話でありますと、各府県にそういう希望者が相当あるから、これからは伸びるだろう、こういうことでありますが、これは私ひとつ十分検討していただかなければならぬと思うわけであります。  そこで、海外移住事業団の本年度の総予算は何ぼでありますか、それを承りたいと思います。
  24. 広岡謙二

    広岡参考人 本年度の予算は、交付金出資金借り入れ金を総計いたしまして十五億二千九丁目刀でございます。
  25. 松浦定義

    松浦(定)委員 これは事業団だけの予算でございまして、農林省あるいは外務省、通産省、建設省その他を合わせますと、私は相当ばく大な予算になると思います。各省の関係予算がわかりましたら、ひとつ総括でよろしゅうございますから、お聞かせを願いたいと思います。
  26. 昌谷孝

    昌谷政府委員 各省に関連いたします予算は別といたしまして、私どものほうで移住を援護し、あるいは啓発するPR等その他で移住関係に組んでおります予算は、拓植基金への補助金その他合わせまして約一億でございます。
  27. 山下重明

    山下政府委員 外務省関係予算としては、事業団に出す交付金のほかに、渡航費、それから渡航される前に支度金とか食糧費、渡航後の保護謝金、またこれは移住される方だけではありませんけれども現地で困られた人を国の費用で帰す国援費、それから都道府県に対する補助金の関係、それからアメリカに短期農民を出しております関係で、これらを含めて二億三千六百万つけております。
  28. 松浦定義

    松浦(定)委員 そのほか、通産省、建設省といったような、やはり移住中心とする予算がそれぞれあると思うのです。しかし、いまお話を聞きますと、この総額を全部合わせましても、私どもが一応聞いている予算とはちょっと食い違いがあるようですが、いずれにいたしましても、この予算に見合った現在の成果といいますか、実績があがっていないことは明らかであります。しかし、いろいろお話しのように、将来の成果に期待するということになれば、これは別でありますけれども、先ほどからお話がありましたように、今日この移住問題に対して各省それぞれの立場でおやりになっておる。ざっとこれを見てまいりましても、どちらかというと、驚くべきというくらい、多くのあれがあるわけです。外務省はいまお話しになりましたように、海外技術協力事業団海外移住事業団海外研究センターあるいは海外学生調査派遣といったようなものを扱っておられる。通産省はもっと大きく、海外技術協力事業団は共管でありますし、あるいは海外企業技術協力斡旋本部、プラント協会、海外電気通信協力会、中央破修センター、海外電力調査会あるいは海外元本市船の派遣費輝々、農林省はいまお話しのように、海外全拓連とか国際農友会等に対するいろいろの事業をやっておられる。建設省は海外開発骨年隊、あるいは内閣に平和部隊といったような、非常に多くの機関を各省が持っておられるのであります。私どもは、先ほどから言っておりますように、このようにして窓口は別々にしておりますけれども、実際中耳はもう同じだと思うのです。そういうものが、極端に言えば、縄張り争い的な形でやっておられることによって、予算の獲得には非常にいいかもしれぬ、いい材料になるかもしれぬが、この予算に見合う効果というものはあがっておらないのじゃないか、そういうことを私は申し上げたいわけであります。しかし、先ほど私は、農業移住の問題について重点的にというふうに前提を置いておりますし、時間の関係がございますから、これは総体的に及べば十分意を尽くしませんので、この問題については、後刻特にまた時間を設けて、通産省等もおいでを願って、総体的の問題で十分ひとつ検討を進めてまいりたい、こういうふうに思っております。  先ほどお話になりましたように、特に事業団をつくる場合においては、やはりつくった事業団をほんとうに仕事ができるようにしなければいかぬ。先ほど政務次官から趣旨の御説明がなりました今度の農地管理事業団、あるいはまたいま問題になっております八郎潟にしても一翼業団、あるいはまた砂糖においても今度は事業団、何でもかんでも全部事業団になるわけでありますが、これは私は、政府がやれないからそういうふうにやらせるということは一応考えられますけれども、この事業団ができますことによって、政府は責任回避をしてしまう。しかし、あるいは責任回避はするけれども中心の問題について干渉するのではないか。こういうことで、この無業団の性格については、非常に心配な点があるわけであります。事業団ができれば全く民主的だということで、大いにその事業が発展するということなら、それはいいわけです。いろいろな階層が協力するというならいいですけれども、なかなか協力しようとしてもできないような問題については、政府当局が握ってておる。こういうことで、これからの事業団の設置については、事のよし悪しは別にして、政府がどれだけそれに対して協力をするか、干渉するほうが強くて、協力する血が少ないのでないか、この移住事業団の今日の成果からいたしましても、私はそういう考え方を持たざるを得ないわけであります。どうぞそういう点につきましては、今後十分ひとつ私どもとしても検討してまいりたいと思いますし、各省におかれましても、できれは、やはり一本化をいたしまして、真に海外移住の成果があがるようにしていただきたい、このように、実は考えておるわけでありますが、この点について、外務省は当然でございますが、特に農林政務次官の御所見を承っておきたいと思います。
  29. 舘林三喜男

    ○舘林(三)政府委員 ちょうど昭和三十五年に八千三百六十人の人が移住しておりまして、その後昭和三十九年には一千百人という急激な低下をした原因につきましては、いろいろ内部の機構上の問題等もあっただろうと思うのです。しかし、昭和三十五年と申しますると、日本の経済の最盛期でございまして、そんな意味農村の労働力が商工業に集中されたということが、私は大きな、原因だったと思う。しかし、今日、いま松浦委員がおっしゃいましたように、潜在的な移住希望者というものは私は多いと思うのです。ことに北海道の冷害等を中心といたしましても、PRさえよくいきましたら、また募集の時期等がよくいきましたら、もっと希望者も出てきやしないかと私は思っております。  さような意味から申しますと、先ほど広岡理事長からおっしゃいましたように、三十九年はわずかに千百名にとどまったのでございますけれども、私は、これが底であって、これから先は伸ぶべき状態にある条件が整っておるという感じがいたすわけであります。そのためには、せっかく一昨年から事業団が発足したわけでありまして、やはり何と申しましても、各省のなわ張り争いをなくしようということで、事業団をつくったわけでございますから、各省といたしましては、全力をあげて責任を持って事業団を盛り立てるということが、私たちの責任だと思う。決して私は予算が少ないから伸びなかったというふうには考えておりません。先ほども各局長から御説明いたしました点から考えますると、非常に予算が少ないじゃないかというお気持ちがあるかわかりませんが、もしも、これは国民の心理から申しましても、もっと移民の希望者がふえましたならば、それに応じまして予算を追加することは自由にできると思うのです。そんな意味で、出題は、事業団中心として各省がどうして結束するか、松浦委員のおっしゃいましたように、干渉じゃなくて、どうして各省が協力するかという、この一点にかかっておるわけでありまして、今後、松浦委員の御趣旨を体しまして、十分御期待に沿うようにやってみたいと思います。
  30. 山下重明

    山下政府委員 私ども事業団が仕事をやっていただきます上において、各省とも十分検討してやってまいりたいと思っております。特に最近開きました移住審議会におきましても、各省の関係等の連絡をよくとっていかなければ、今後の移住は推進できないということをはっきり指摘されておりますし、大いに各省間の打ち合わせを密にしてやっていきたいと考えております。
  31. 松浦定義

    松浦(定)委員 関係省の御決意のほどがわかりましたので、これからひとつ重点的に、先ほど申し上げました農業移住の現状並びに今後の進め方等について、二、三お伺いをいたしたいと思うわけであります。  いま政務次官は、特に将来の農業移住の発展のためには、たとえば北海道の冷害等によって相当の希望者があるのではないかという御配慮の御説明がございました。むろん、これについては、そういう希望があるわけでありますが、しかし、私は、ただ冷害があったから、災害があったからということでなしに、やはり海外移住というものの目的を十分ひとつ、行く、なしにかかわらず、農民なり関係者が常時これを知っておく必要がある。特に先ほどお話のありましたように、市町村その他関係のものといろいろ協議をしておるとか、あるいは連絡をしておるとか、検討しておるとかいうお話でございますけれども、私ども承知しておる範囲内では、そういうものはやってはおられるかもしれないけれども、なかなか表面に何らあらわれていないのであります。ただそういう一片の通達が出ているということだけでは、私は先ほど申し上げましたように、これは予算を消化する程度になってしまうという危険性もあるわけでありますから、こういう点はひとつ十分、これからの浸透のしかたについて御検討願いたいと思います。  たとえば事業団は、内外の人員を全部合わせますと四百七十五名くらいあるようであります。しかし、これだけのたくさんの人員を持っておって、そうしていまのように年に千人やあるいは千二百人移住者がありましたからといって、どこへ行ってこれを説明しても、それは納得するものじゃないと思うのです。それはいろいろ事情がございますから、これ以上そのについては申し上げませんけれども、そういうことを事業団にやらしておく外務省の意向というものも、私は実はわからないわけであります。よく大蔵大臣はこんなところにそんなに予算をつけたなとさえ疑われる面があるわけでありまして、これはいろいろ事情があろうと思いますが、移住審議会の答申等の趣旨にも反しておると思うので、そういう点はこれから十分御検討を願うようにしていただきたいと思います。  そこで、農業移住問題について、何が一番原因があるかといえば、これは何としても貿易の自由化であります。貿易の自由化によってこういうような結果を余儀なくされたといっても、私は過言ではないと思うのです。したがって、貿易の自由化によって受ける悪影響によって、国内において自立しようとしてもできない状態に多くの農民が置かれておる。これは今度問題になりまする酪農振興内容についてもそうであります。あるいは農地管理事業団内容についてもそうであります。たとえば八郎潟の干拓を大いに金をかけてやりますけれども、ここへ入って自立しようとする者がどういう結果になるかということについては、あまり政府としても自信はなかろうと思うのです。これはやはり昭和三十年にできました北海道のあの根釧パイロットの審議のときにも、私ども申し上げたのです。一戸五百万もかけて、これが成功するかしないか、政府当局は、世銀の金を借りてやるの、だからいいのだ、これをやらなければ世銀の金を使えないからというような極論まで出ておって、この結果が今日どうであるかということについては、十分皆さんも御承知のとおりであります。そういうような形であるにかかわらず、自由化というものによって、これからの農業がどうなるかということになりますと、私は、これはたいへんなことになるのではないかと思うのであります。たとえばそういう犠牲者が農民の中には多くあるわけであります。いまここでそれをとやかく申し上げるわけでありませんけれども、そういう非常に困っておる農家を一番早く救うのは何かといえば、やはり私は、一つの方法として海外移住であると思うわけであります。その海外移住がいまお話のようなことでありますと、農民は自信を持って行くという気にもならないし、あるいはまたやるにしても、そんな自身のないことで、その勧誘というか、募集はできないと思うわけであります。この際、ひとつ制度その他をだいぶ強化するとお話しになりますから、もう少し実質的に根をおろした海外移住ということをやっていただきたい。いま政府が一番心配しておる、たとえば今度の農地管理事業団でも、前向きではると言いながらも、離農する人の対策というものは何もない。先般の本会議の質問におきましても、初めて聞いた議員の人でも、これではいかぬとさえ感じておられるのでないかと私は思うわけであります。たとえばそういう海外移住に行こうという人に対しては、こういう道が開けておるのだということをここで十分説明ができる勇気があってもいいんじゃないか。あるいは一例として申し上げますならば、北海道の冷害で昨年は非常に困っておる。今年もまた冷害だと言っておるのです。先般の治山治水の一部改正のときに、気象庁の係官が来て、今年も冷害ですとはっきり言っておる。国会の中で冷害だと育ったら、政府はすみやかにその対策をしなければならぬと私は思うのです。しかし、政府のほうでは、またよもやそんなことにはならぬだろう、なったらなったときだというふうに考えておられたら、私はたいへんだと思うわけでありまして、現にあるわけであります。特に北海道におきましては、これは全国的にそうでありますけれども、開拓者の実情というもは、まことに見るに忍びない。与野党ともにだれもがこの問題の対策については十分検討されておるわけであります。先般私のところに、これは道議会も議決をして、知事がこの採択をしてきた内容でありますが、北海道では二万三千戸の開拓者があるけれども、その中で離農を希望する者が約六千戸ある。その六千戸のうちの大半がやはり海外移住をやりたい。せっかく二十何年間体験をした農業を捨てたくない。農業を捨てて都市へ行っても、われわれとしては非常に生活が不安だ、できれば海外へ行きたいということを、今度道議会を通じて、知事がそれを責任を持って中央に反映せしめようとしておる実情があるわけであります。たとえば事業団にしても、北海道には六名の事務員を持っておりますから、そういうことはおわかりになっておると思います。あるいは知事だって、そのことについては、冷害の中で、口では言っているか言っていないかわかりませんけれども、私は、わかるはずだと思いますが、こういうのがあるにかかわらず、そういう対策を取り上げようとしない。離農対策ということをやると、前に池田さんが言っておりました六割削減ということで、首切りに通ずるといったような指摘をされるのでないかという、ただことばの上だけでおびえて、政府当局、あるいは北海道にいたしましても道知事は、そういう点について前向きの論議を進めない。来年なら、あるいはその次の年ならこいうことでは、非常に困るわけであります。こういう点について、たとえば北海道の実情、これは東北にもありますし、全国各地にありますが、とりあえず何千戸という集団的な離農を希望している者に対して、いまのところでは、政府にはその対策がない。それは確かに離農対策という意味で助成成金を出すという制度もございます。しかし、その程度ではどうにもならない現状でありますから、この際、先ほど政務次官もお話しになりましたように、何とか海外移住の制度の中で、そういうものを生かしてやるという御決意があるかどうか、政務次官からお答えを願いたいと思います。
  32. 舘林三喜男

    ○舘林(三)政府委員 去年の北海道の冷害に関連いたしまして、たくさんの離農希望者があることは、私も承知しておるのであります。ただ、いままで海外移住がふるわなかった大きな原因は、やはり国民心理というものがあるのではないかと思うわけでございます。国内農業を離れて商工業に行きたい、しかし、商工業も行き詰まってなかなかないから、いわば移民というより、棄民とか難民とかいうかっこうで行かれたのが、失礼でございますけれども、あったような感じがいたします。しかし、先ほど理事長の御説明にもありましたように、ここ数年国は非常に優秀な青年が海外移住を希望されておるというような、けっこうな芽ばえもございますので、とにかく行き詰まったから海外に行くという意味じゃなくて、やはり国民的な人口の適正な配分と申しますか、さような立場から、ほんとうに海外で活躍をする希望の人にどんどんやらせるという体制を整えなければならぬと思っているわけであります。さような立場から、いま松浦委員からお話がありましたが、北海道にそれだけの希望者があるなら、やはり事業団とか、あるいは北海道庁、あるいは外務省農林省等が現場に行きまして、座談会等も開きまして、ほんとうにさような希望者をまとめ上げるというような一つの行政措置も必要だと思っております。そういう点につきましては、十分に考慮いたしたいと思います。   〔坂田(英)委員長代理退席、仮谷委員長代理着席〕  なお、離農全体につきましての問題でございますが、先般の本会議農林大臣から御説明したとおりでございまして、昭和四十一年度におきましては、農地管理事業団の進展に応じまして、必ず根本的な離農円滑化の対策を講ずるつもりでございますので、何々相まって必ずよくいくのではないかと私は確信しておるのでございます。
  33. 松浦定義

    松浦(定)委員 いま政務次官の御答弁で大体大要はわかったわけでありますが、いままでの事業団のやり方は、二名ないし五名程度の駐在員といいますか、そういう者を置かれまして、それぞれの希望者を募っておられるようでありますが、やはり一町村に一人や一地域に何人というような、そういう人の意見をまとめておるということだけでは、なかなか成果はあがらない。たとえばいま政務次官がお話になりましたように、政府中心になって、府県知事あるいは市町村長、農業団体、そういう人に呼びかける機会をつくって、その中でこれをまとめていくことが大事である。行く人は、そういう中で行かなければ不安で行けないわけであります。でありますから、北海道におきましても、道議会、知事が今後どういう動きをしてくるかはいまわかりませんけれども、いままでの段階では、全然それを取り上げようとしていない。これだけ多くの希望者があるにもかかわらず、離農対策については何らそれがない。それはないはずです。政府においても、この事業団がつくられても、それに触れないということでありますから、府県においてそれを取り上げることは行き過ぎますので、できないわけであります。そういう点で、別な方法でということになれば、こうした問題を率直に府県知事に政府は督励をして、府県知事がその中心になって、市町村長あるいは農業団体その他青年、婦人等に集まってもらう機会をつくりながら、これをまとめていく。それでも希望者がなければ、私はまあいいと思うわけであります。いま希望者はあるけれども、それをやる方法がないというところに、行政官庁と県知事との食い違いが相当あるわけでありますから、この歯車をどこかで合わせていただく。そして軌道に乗せてやってみる。それで現在の行き詰まった農業というものを打開する。しかも政府は自立農家育成するというのでありますから、その陰には、内地の水田におきましても、一戸の自立農家に対しては、やはり三戸、四戸という離農者が出てくるわけであります。あるいは兼業者も出てくるわけであります。北海道においても、三戸ないし四戸が離農しなければ、北海道としての適正規模の自立農家はできないのでありますから、そのことを考えるのが先であります。自立農家として立っていこうという、そういう対象になる人は、いまでもレベル以上の人でありますから、一年や二年その対策がおくれても、何ら法例上批判すべきものはないと思うけれども、離農していく人に対しては何ら対策がない。これは逆=であろうと私は思うのです。私がこんなに離農対策とかいうことを申し上げますと、むしろこれは逆ではないかという批判をそれぞれの人から受ける場合もあるかもしれないけれども、事ここに至りましては、農村とか、そういう人たちのことを考えている者の、人といたしましては、これは黙っておるわけにいかない。だから、この機会にひとつ転換をしてもらって、先ほどから問題になっておりますように、とにかく各省が一本になる。さらにまた、この問題の浸透については政府が責任を持ってやる。そしていよいよ行く段階になれば、たとえば理事長が先ほどお話しになりましたように、岩手県の千田知事——これは参議院議員をやった人であります。私ども一諸に参議院におったことがありますから、よくわかっております。岩手の知は、現地土地を買ってそういう人を入れていこうということですが、その結果がどうあろうと、その決意は買ってよろしいと思うのです。たとえば北海道のような広範なところでそういう体験を持っておる農家が行こうというのですから、むしろ私は技術者として歓迎される離農者であると思うのです。そういう人に対して町村知事はまだ何ら手を打っていない。非常に批判を受けるのではないかという心配をしておるようであります。そのことを政府当局に払拭してもらう、本日各省とも意見を一致していただいて、直ちに明日からその活動を開始してもらう、そういう御決意があるかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  34. 舘林三喜男

    ○舘林(三)政府委員 松浦委員からまことに適切なお申し出がありましたから、いかがでございましょうか、さっそく北海道の知事とも連絡をとりまして、事業団農林省外務省関係当局、緒になりまして、国会で懇談会でも開きまして、なるべく希望者の発掘——発掘と言っては失礼でありますけれども、希望者の結集というようなことにつきまして、適切な措置をとりたいと考えております
  35. 山下重明

    山下政府委員 外務省としても、いま農林政務次官が言われましたことについて、全く同感でありますので、大いにわれわれも出かけまして、現地の人々が移住できるようにいたしたいと存じます。
  36. 松浦定義

    松浦(定)委員 まだ私に与えられた時間はたくさんありますけれども、あまりにも理解がよくて、私の考えておる以上にとまではいかなくても、大体それに近い御決意のほどがわかりましたので、大体私は本日の質問はこれで終わりたいとと思いますが、いま政務次官がおっしゃいましたのは、私は単なる舘林曲農業林政務次官の意見として聞いておるわけではないのです。やはり赤城農林大臣意見として聞いておるわけであります。本日は出席ができないということでありますから、時間の都合上、私は国会運営に協力をして、政務次官にかわって御発言を願うということでありますから、十分ひとつ大臣にその由をお伝え願いまして、先ほどお話しになりましたように、知事その他関係者を国会なり——適当な時期に方法を講じていただくことはおまかせするといたしましても、われわれ与野党がそれに参加をいたしまして、十分検討する機会を持っていただきたい、このことをお願いいたしたいと思います。  なお、移住局長心得の山下さんにお願いいたしますが、白幡局、長が今度退任になるようであります。白幡局長は長い間やっておられますし、その片腕としてやっておられる山下さんでありますから局長の意見として聞いておいてもいいのでありますが、むしろ私は、やはり少なくともこの席に、外務大臣というわけにはまいりませんから、外務改称次官くらいと思ったのですが、予算関係でお忙しいようですから、白幡局長にかわって山下心得に御答弁願ったわけであります。この点もひとついまの農林政務次官の御決意と同じような方向をとっていただきたいと思うわけであります。それは特に通産省、建設省あるいは内閣、先  ほど申し上げました海外移住関係のある関係省、これらの各省がやはり一致をしていただかないと、おれは開いておらぬということでは困りますので、十分この点だけは伝えていただきまして、適当な機会にまたお尋ねするような機会を持ちたいと思います。その機会には、知らなかったということではなしに、いろいろ御決意のほどを伺うことができるように御協力いただきたいと思います。
  37. 仮谷忠男

    ○仮谷委員長代理 これにて松浦君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  38. 仮谷忠男

    ○仮谷委員長代理 次に、八郎潟新農村建設事業団法案を議題とし、質疑を行ないます。東海林稔君。
  39. 東海林稔

    ○東海林委員 私は、実は八郎潟につきましては、昨年の夏、二日ばかり現地を見せていただき、さらに農林省の出先並びに秋田県知事にもいろいろと話を承ってまいったわけであります。当時私が受けました感想といたしましては、海面よりも一低い、あの一万五千町歩にも及ぶ広大な干拓を実現したという農業土木の技術につきましては、大いに敬意を表してきたわけですが、当時も農林省の出先なり県当局等の話を聞きましても、あの三百数十億という多額の国帑を費やしてやった事業が、ほんとうにどうしたらりっぱな効果が発揚できるかというような点について、はっきりした話を承ることができませんでした。また、昨日、一昨日の質疑の中から御答弁を伺っても、そういう点でどうもはっきり理解ができない点があるわけです。見解の相違の点は別といたしまして、そういう私の理解できなかったような点を若干お尋ねすると同時に、いままで質疑になかったような点だけをお尋ねいたしたいと思います。時間の制約がございますから、なるべく私も簡単に質問いたしますから、直歳に御答弁をお願いしたいと思います。  まず第一にお尋ねしたいのは、国が漁業補償をやってしまった水面のうちで、相当な面積が干拓されずに残っている部分があるはずでございます、が、これをどういうふうに今後活用することになっているのか、まず、その点をお伺いいたしますと同時に、今度、われわれは反対でありますが、政府がつくろうという事業団は、この水面の清川ということについて関係があるのかないのか、その点もあわせてお尋ねいたします。
  40. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 お答えいたします。  八郎潟に調整池として約二千ヘクタールに近い水面が残っております。この水面を漁業用に使いたいという問題が一つございます。漁業の使い方の問題につきましては、秋田県とよく相談して、支障のない限り使う方向で考えたいと思います。なお、秋…県といたしましては、八郎潟の南の水面及び船越水道地帯に新しい工業地帯の造成を将来考えていき一たいという立場で、この水利用の点ともからめて秋田県としては検討中でありますが、これは具体化になります過程において相談してきめたいと思います。
  41. 東海林稔

    ○東海林委員 その漁業面に活用したいという場合に、入植者との関連、だれに使わせるかという点と、それから事業団がそのことに関連を持つのか持たぬのか、その点をお尋ねします。
  42. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 公有水面は全部買収いたしておるわけでございますから、新しく漁業に使うとすれば、新しく漁業権の設定をやるわけであります。どういう人に漁業権を認めるか、これは水産行政の立場とからみまして、漁業権者をこれから新しく定めてまいる、こういうことであります。事業団は、この水面を何か利用することは、目下のところ考えておりません。
  43. 東海林稔

    ○東海林委員 次に、基本的な問題で、きのうもいろいろ議論があった、例の新しい村づくりをやる、これはパイロット的なものとして役立つ、こういうことでございました。その問題は、非常に基本的な問題でございますので、その点は局長だけでなしに、大臣にもぜひ御見解を承りたいと思うのですが、これは私はいつも問題にするのですが、基本法との関連です。基本法の中では、構造面で自立農家育成と、協業ということを補完的考えておられる。この間の農業白書の質問の際に、私は、むしろ共同経営なり協業というものを中心に考えてはどうかという御質問をしたのに対して、大臣は、協業は補完的ということではないけれども、自立農家協業と両方やっていくのだ、農地管川事業団はこの自立農家育成といことを考えているのだから、こういうことでございました。ところが、この一が数千町歩という新しくでき上がる農地について、模範的な近代的な農業経営をやらせる、同時に新しい村づくりをするのだ、そういう際に、基本法が目ざしている新しい農業なり新しい村づくりということの関連が、断ち切られている点が非常に理解に苦しむのです。きのうの説明によると、この中では、六十町歩を一つのブロックとして、五ヘクタールずつにして十二戸の農家を入れるのだ、こういうことでございます。その話の中には、自立農家という観点が全然入っていないのです。そういう点で、全国的な今後の新しい農業経営なり村づくりの模範にするのだという点と、いままで自民党政府がいわれてきたことの一番重要なものとの間に、何ら関連がない。むしろわれわれの主張としては、共同経営を推進するということならば話がわかるのだが、それは一体どういうふうに理解していいのか。これは非常に大事な問題でございますので、まず、大臣からお伺いしたいと思います。
  44. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 大体とりあえず五町歩ぐらいに判って、その五町歩を六十町くらいのものに協業料紙を進めていったほうがいいのではないか、こういうように申し上げておるわけであります。そこで、そういうことになると、自立経営というような観念とは離れてしまって、そういうものを拾ててしまっているじゃないかというような御質問でありますが、私は、自立経営規定のしかたにもよりますが、自立経営は、経営規模が相当面積があるということが一つ自立経営の要素だと思います。もう一つは、所得面から見まして、いまでいえば年収六十万円以上、もう少したてば八十万円ぐらい、そういう所得を得られるような農家、こういうものを自立経営農家というふうに規定しておるのでございますが、そういう観点から、八郎潟におきましても、大体五町歩程度の耕地を、所有する、経営するということが、これが自立経営農家としての資格といいますか、適当であろうかどうかというような観点から、五町歩ぐらいの割り当てといいますか、そういうふうにしておる点から考えますならば、やはり自立経営一つの単位としてのモデルというようなことになろうと思います。しこうして、その単位に基づいて、それを生かしていくといいますか、効率的にしていくという意味におきまして、その単位において協業をやっていく。これが全体的の完全協業になりますかどうかということにつきましては、これは問題があろうかと思います。いろいろ自発的な、自主的な意向もあろうと思いますが、作業の点におきましては、大型機械を入れて当然協業をしていく、こういうことでなければ効率的なものにならないと思います。でございますので、協業の面から見て、もう自立経営のモデルとしての意議は失ったのではないかというふうにとられるかと思いますが、私は、やはり一つ経営面積の単位をそういうふうに置くことによりまして、それをどういうふうに効率的に経営していくかということから見ますならば、あえて自立経営の観念というものを全然捨て去ったということではない、まあ機能の面において協業というふうな面を、見ていったらいいんじゃないか、こういうふうに考えます。
  45. 東海林稔

    ○東海林委員 きのうの局員との質疑を大臣聞かれておらなかったから、いまのようなお話が出るかと思うのですが、きのうは栗林君の質疑に対して、大体六十町歩というものを一つの単位として、いわゆる協業を考えて、そこで大型機械を入れた一つつの経営をやりたいのだ。しかし、たまたま——これはあとでもう少聞きたいと思いますが、十二戸を入れるから、五町歩、こういうことなんです。しかもそれは単に作業的な協業だけでなしに、できれば完全協業のほうまで目標を定めて指呼していきたいと、そこまで言っておられるのです。経営は六十町歩という一つの団地を模範的にやるというような趣旨に私は聞いたのですが、いまの大臣の話を聞くと、やはり五町歩の農家というものを一つ経営中心に考えておられる。私が非常に意地悪な質問をしたから、そういう答弁になったのかと思うのですが、そこらが私は非常に納得ができないのです。したがって、もし従来のような自民党の農政の立場から言うならば、私は、この一万数千町歩の活用を考える場合に、むしろ周辺の既存農家地域も相当広く取り入れて、それを一括したほんとうの意味での構造改善計画というものが地域全体として立てば、きのういろいろと議論がありましたように、近郊農民と入植者との上不均衡という問題も片づくはずであるし、また、われわれは必ずしも賛成はしないけれども、従来の基本法に基づく、あるべき近代農業の姿とか、あるべき新農村というようなもの形を何とか——非常にむずかしい大きい仕事にはなりますけれども、そういうものができるんじゃないか、こういう考えを持つのですが、そういう構想での検討というものはやられたことがあるかないかということをまずお聞きしたいと思います。これは局長でけっこうです。
  46. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 昨日もいろいろ申し上げましたが、ます最初お話から申させていただきますと、六十ヘクタールの土地を十二戸の人に配分いたしまして、相寄って協業で大型機械体系をやりたいというふうに考えておるわけでございまして、したがいまして、昨日も申したとおり、六十ヘクタールを一つ法人に売ったらどうかという柳意見に対しては、法人経営というものは、自発的にできるべきものであるから、やはり個々の農家が集まる形において自発的に生まれるものは奨励をいたしたいし、そういうふうに考えていきたい、そういうふうに申し上げたつもりでございます。  それから、周辺の農家を含めてあそこに折農村をつくる立場で検討したかということでございますが、やはりあの中では、周辺の干拓地等は周辺の農家重点的に配分いたしておりますが、あの中央干拓地は、そこに新しい農村をつくりたいという立場で、中央干拓地はそれだけに着目していろいろ一画を立てた次第でございます。
  47. 東海林稔

    ○東海林委員 そうすると、いま私が申したような総合的な構造改善事業というような観点で、広い計画をやるというようなことは検討したことはないという御返答ですか。時間ありませんから、そこを直蔵にお答え願いたい。
  48. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 御質問の御趣旨がちょっとわかりかねたわけでございますが、中央の干拓地を同辺の町村を含めて、秋田県のあの地帯全体に対して構造改善的に検討したかという御質問でございますれば、そういうふうには考えたことはございません。
  49. 東海林稔

    ○東海林委員 そこで、きのう六十町歩というものを経営一つの単位に考えたという点は、不明確な点があったが、現在の段階において大型機械を導入して能率的にやるにはその程度だ、こういうことで一応わかるような気がするのです。そこで、その五ヘクタールの問題ですね。これも私は、やはりいままで皆さんがしばしば言われてきた今後の大体の自立農家規模としては、一応地域的な差はあるが、平均的には二ヘクタール半程度のことを考えて、そういうものを目標として今後育成していくのだ、こういうことをおっしゃっておる。これがモデル的なものと考えるならば、やはりその目標に合うような形において、一戸当たりの面積というものは考えられてしかるべきじゃないか、こう思うわけです。その五ヘクタールというものが出たのは、五ヘクタールがなければ農家の経済がここでは成り立たないというような観点を重点として出てきたのか、それとも六十町歩に大型機械を入れてやる場合に、それに必要とする労力が十二戸、一戸当たりかりに二人として二十四人、あるいは二人半として三十人という人間が要るのだ、そういう点から出てきたのか、どういうところからこの五ヘクタールというものが出てきたかのかという点。それからいままで二ヘクタール半ということをしばしば言われておったこととの関連において、これをどういうふうに理解したらいいのか。これはまた基本的な問題でございますので、こまかいことは局長から説明していただくが、大臣に御見解があれば大臣からも承りたい。
  50. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 二町五反というのも一応のめどでございまして、この間本会議等においての御質問もありましたように、時代の進むに従いまして、必ずしも二町五反というものは固定したものではないと私は思っております。一応は平均二町五反でございますが、ここの八郎潟の場合におきましては、土地がもう集団化しておる。初めから集団化しておる。こういうのは二町五反以上の五町歩というものをとってよかろうという二つの標準だと思います。それから、単作といいますか、大体稲作だけれども、そういう経営でやっていこう、こういうことから考えますと、稲作が主でありますから、そういう採算上、収益上の観点から見て、五町歩あたりでないと適当に考えられないのではないかという、こういう計算をしたと私は聞いております。そういう二つの点から、五町歩というように大体標準をとった、こういうふうに了解しております。
  51. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 技術的に五年町歩をどういう角度からきめていったかという御質問でございますが、いま大臣がお答えになりましたとおり、一つは、作業機械の能率の角度からと、それに要する労働力との関係から申しまして、六ヘクタールにあまりたくさんの労働力をかかえた人間がおっては、機械とのバランス、労働とのバランス上適当でない。それから一方、それを構成する個々の農家所得というものをやはりある一度の水準に速しさせたいという立場から、両方勘案いたしてまいりますと、営農研究会でもございましたとおり、六十ヘクタールを六ないし七でやれば機械の能率もよりベターであるという御意見もあるわけでございますが、一応現段階の秋田県の周辺の水準、当面の諸情勢等を考えますと、六十ヘクタールを十二戸で考えても、われわれが考えております所得目標も十分達成できそうであるし、かつ、機械の能率もそうむだがない、そういう立場から、六十ヘクタールを十二戸で当面考えてまいる、かように存じております。
  52. 東海林稔

    ○東海林委員 そういたしますと、あの地帯においては、既存の水稲単作農家においては、やはり将来は五ヘクタール程度まで持っていかなければ、農家としては自立できないというようなことになるわけですが、そこらとの関連はどういうふうに理解したらいいのですか。
  53. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 言うまでもなく、土地と労働と資本で農業というものは営まれるわけでございますから、土地が大きいほど所得なり生産なりは多いと思います。したがって、二町五反というものも、二町五反が絶対に理想なのだという意味ではなくて、現在の日本の情勢その他から考えて、当面の行政目標として進めるところは、水田地帯において二町五反程度を目標にして進める。それより大きいほうがいいということは、当初から考えておったところでございます。と同時に、そういうもの、だけをつくるのではなくて、協業の助長ということも基本法以来やっておるわけであります。同じ協業をいたすにも、構成する人間の規模が大きいほど、協業体としては理想でございます。したがって、ここで新しく白紙の上でつくるところは、五町以上の農家を集めて、協業作業というものを前提にものを考えていきたい。その秋田県の周辺地帯においても、五町に相当するかというと、私は五町のほうがベターだと思います。ただ、周辺のいろいろの情勢から考えまして、八郎潟のような白紙地帯と違いますから、一挙に五町という政策目標を置いても、実行性の問題もいろいろございますので、それを極力大きくするという立場で周辺地帯の農村では考えていくべきものと、かように存じております。
  54. 東海林稔

    ○東海林委員 そういたしますと、きのういろいろ質問があった増反ということについて、周辺の農地を与えると同時に、一部は中央の、干拓地からも与える、こういうことがあったわけですが、少なくとも増反を考えるという場合には、きっぱり五ヘクタールにいかなくても、ややそれに近いということを一応の目標として増反を考える、こういうふうに理解していいですか。
  55. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 現に周辺干拓地は、大体地区によって違いますが、二町程度に達するように、在来の所有地との差額をなるべく分けるというたてまえで、周辺干拓地におきまして考えております。それで、在来の土地と周辺の、干拓地で増反でもらったものを合わせれば二町に近づくようにやりたい。ただ、希望者が多いので、多少がまんをしていただいて、二町に達しておりませんけれども、そういう考え方で周辺はやっております。中央におきましては白紙でございます。これからつくるのですから、理想的に考えてまいりたい。それから中央に増反を振り当てる場合にも、前回も申しましたとおり、周辺におけるような形でなく、やはり五町、六十ヘクタールが作業形態としてうまく使えるように増反を考えたいと思います。
  56. 東海林稔

    ○東海林委員 いまの答弁、非常に不満だけれども、そこにこだわっていると時間がありませんから、次に進みます。  そこで、もう一つ伺いたいのは、ただいまの御答弁の中でも、大体水稲の単作——きのう酪農のことも考えたが、酪農はなかなかいかない。大体水稲単作ということであります。水稲単作でしかも一大型機械で協業でやるとなれば、大体一年のうち、作業日数は何日くらいになりますか。——作業日数はわからなくてもいいのですが、私が聞きたいことは、作業日数がごく少なくて済むのです。あとの日を一体どうしてそこに入った人に働かせるか、このことについてはっきりした話がきのうからちっともないのです。その点が、いまの話からいっても、私は理解に苦しむから、作業日数は何日と言わなくてもいいですが、作業日数が百何十日もあるわけないでしょう。三百六十五日の大半は遊んで暮らさなければならないような結果に、いままでの答弁からいえばなるのですが、その点どういうふうに考えておられるか、はっきりしてもらいたい。
  57. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 確かに御指摘の問題がございます。したがって、そういう角度から、六十ヘクタールを五、六戸というものを私どもはとっておらないわけでありまして、当面六十ヘクタールを十二戸でやって、それからその労働時間とのかね合いにおきまして、いろいろ算定をいたしまして五、六戸にいたします。そこで問題は、御指摘のとおり、労働時間が、大型機械によりまして、一般の手植えに対しまして数十分の一に相なります。そこで、この労働時間の消化をどうするかということにつきまして、これは当初はいろいろな作業がございます。路上の整備が不十分である、あるいは機械の整備の問題でございます。行く行くの問題としては、何としても酪農の問題を考えていく必要があろうか、かように考えております。
  58. 東海林稔

    ○東海林委員 そうすると、当初はいろいろと道路工事だとか、あるいは新農村建設のためのいろいろの土方工事などがあるから、そういうもので働いていって、そうしてある程度そういうものが安定した後は、酪農というものが経営の中に入ってくるの、だ、こういうことですか。
  59. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 酪農なりその他の労働を消化する営農の作目をどうしても入れていくことは、本気に検討を要する問題である、かように考えております。
  60. 東海林稔

    ○東海林委員 きのういろいろありました。たとえば入植者がいろいろと借金を返していく場合の指導というようなことにも関連するのですが、そういう計画がきわめて私はずさんだと思うのです。法案を審議する際に、いろいろきのう質問の中でも、未定の、今後検討しなければならぬという面がたくさん出てきたのです。こんな段階では、法案を審議するのはおかしいという感じさえ私は持つのですが、そういう点がきわめてまだ準備不足という感じがするのです。これは大臣に特に御留意を願って——何か、一応はこうやっておば何とかなるだろう——確かに、百ヘクタールあの地帯でやれば、経済的なそろばんの上では農家経営が成り立つような大ざっぱな見当はつきます。しかし、水稲単作で一年間を通じて農業して有効に自家労力が活用される、こういうふうには考えないのです。さっき大臣は、自立農家か言われましたが、自立農家発展の中には、自分のうちの労力は農業にフルに活用できるということが条件になっているのです。そういう観点がここには入っていないのです。そういう点で、さっきちょっと皮肉な質問をしたわけですが、そういう点十分お考えおきを願いたいと思うわけです。  それから次に、ひとつ具体的な問題として伺いたいのですが、今後は事業団に移っていくと、いままでの国営事業所というようなものが、今度は人が要らなくなる、こういうことになるわけですが、相当多数の人たちが働いておるわけですが、この人たちの今後の処遇といいますか、これはどういうふうに考えておられるか、その点はっきりしておいていただきたい。
  61. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 御承知のとおり、国営事業が終わりますと、その人は要らなくなる、その事業所は要らなくなるというのは、他の一般国営地帯でも同じ現象でございます。ただ、八郎潟は非常に大きな事業所でございまして、たくさんの人ををかえております。しかし、いま私どもといたしましては、山陰におきます中海の干拓事業、それから四十年度から、長崎県におきます大干拓が着工の手続なっておるわけでございまして、この仕事は膨大な事業でございますから、これらの人々はそちらのほうに転換をしていく、機械も同様に転換をいたしつつあるわけであります。そういう干拓事業のほうに転換をさせる、こういうことでございます。
  62. 東海林稔

    ○東海林委員 そうすると、いまの御答弁は、この事業は、国営事業として終わることによって人員整理というような問題は起きない、こういうふうに即解していいのですか。それからなおあわせて、かりに他に転用するような場合においても、十分当人たちの意向を尊重してやるというような考えがあるかないか、そこもひとつお答え願いたい。
  63. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 二つ問題ございまして、ここに事業団ができまして、やや系統的に同じような仕事をやりますから、現地で仕事をやりたいという人は事業団に吸収する余地がございます。それから干拓も専門家が非常にそろっておりますので、中海その他に転用する。そこで、その過程におきまして、つとめ先の問題は十分相談してやりたい。それからなお、人口の削減という問題は起こさぬようにするつもりでございます。
  64. 東海林稔

    ○東海林委員 いまの問題に関連して、従来の事業所の人間を、本人の意志に反して事業団のほうに繰り入れるというような考えはあるのですか、ないのですか。
  65. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 本人の意思に反して事業団に繰り入れるということは考えておりません。
  66. 東海林稔

    ○東海林委員 次に、法案の内容的なことで一、二伺いたいのですが、第二十三条、この事業団が入植者に土地を売る、あるいは増反打に土地を売る場合ですが、「その者の受ける利益を限度として、」という表現になっておるのですが、これは具体的にどういうふうに解釈したらいいのか、はっきりしてもらいたい。
  67. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 事業団がやります事業は、国の補助と財投でやりまして、財投部分は、あとで延べ払いで負担金として払っていただくわけであります。土地改良事業におきますところの農民負担金、土地改良法におきましても、その者の受ける利益を限度として負担金を徴収する規定に相なっております。考え方といたしましては、据え置き期間その他を置きまして、そして利益が発生し得る段階におきまして、その度合いに見合って負担金を取るという趣旨でございます。
  68. 東海林稔

    ○東海林委員 そうすると、これは徴収の方法と同時に、額についてもこの趣旨を理解していいのですか。いまの答弁では徴収の時期とかそういうことのみで、額についての説明がなかったのですが……。
  69. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 この規定は額について働いている規定でございます。
  70. 東海林稔

    ○東海林委員 そういうふうに理解できるのですが、そうすると、簡単に言えば、中に入った入植者なり増反者が、それでもって十分償還をやっていけるような利益の範囲内で、これは取る、こういうことで、きのういろいろ指摘がありましたようりに、収量がなかなか予定どおりないというようなことで、実際農家経済が苦しいというような場合には、額なり徴収方法について、そういう点を勘案して土民の能力の範囲で取る、こういうふうに理解していいわけですか。
  71. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 二つ問題があるかと存じます。法律のたてまえとしては、額的にも取り方は受益の限度の中から取るように、たとえば据え置き期間なり延べ払いの毎年の支払い額がきまるように延べ払いを定めていくという問題、それから運用の問題といたしましては、そういうふうにして定められたものが、現実に害その他で取れないという場合におきましては、徴収猶予とか繰り延べ、運用の問題が別途生じてまいるわけであります。現に各土地改良事業にはそれをやっておるわけであります。
  72. 東海林稔

    ○東海林委員 ともかく農民に無理なく払える範囲で、こういうふうに理解したいと思います。  それから第三十三条ですが、そこに「新農村建設債券を発行することができる。」ということになっておるわけですが、この構想を具体的にもう少し説明していただきたいと思います。
  73. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 お答えいたします。  今回国会に提出いたしました事業団法案につきましては、農林省所管のみならず、全部の事業団関係法案につきまして、三十三条と同様の規定が全部設けられました。その趣旨は、資金運用部に、資金運用法律で債券を発行する規定法律上与えられたものに資金運用部資金は貸すという規定がございます。そこで、この法律関係を明確にするために、能力としてはこの事業団は債券発行権がある事業団であるということを明示する意味におきまして、この規定は、資金運用部の対象とする事業団には全部入れたわけでございます。実際の問題といたしましては、発動することは考えておりません。
  74. 東海林稔

    ○東海林委員 いまの点は、非常にはっきりした答弁で、満足です。  次に、四十七条関係ですが、事業団の存続ですね。これは解放は別に法律で定めるということになっておるのですが、どういう時期にきたらこれが事業団の解散になるのか、大体いまのところ、どの程度のところに年限を見込んでおるか、その点をひとつはっきりしておきたい。
  75. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 四十二年から入植をいたしまして、大体六年くらいかかるわけでありますから、四十八、九年までは入植が継続いたすわけであります。それから入ったあとのアフターケアの問題等がございまして、それから見届ける必要があると考えております。私どもその時期が確定的には申せませんが、少なくとも昭和五十年くらいまでは存続はどうしても要する事業団である、かように一応いまの段階では考えております。
  76. 東海林稔

    ○東海林委員 さっき経営形態のところで聞き忘れた点があるので、もう一つ聞きたいのですが、さっき、さしあたっては水稲単作でいくが、将来は酪農でひとついきたい、こういうことの、お話がございましたが、それと問題、あそこの池の利用についてもできれば考えたいというようなこともあると思います。もう一つは、農村工業というのですか、そういういう点は計画として将来の考え方の中に入っておるかどうか、そういう点をひとつお活を願いたい。
  77. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 事業団法ができますと、基本計画を立て、それからいろいろな実施計画を立ててまいるわけでございますが、現在のところ、農村工業の問題をもう少し検討してみる必要があるということを営農部会で御注意をいただいております。具体的にまだ私ども案としては固めておりません。
  78. 東海林稔

    ○東海林委員 私はここで希望したいことは、さっきと少しダブる点がありますか、いずれにしても、新しい農業経営なり新しい農村経営のモデル的な役割りを果たすという以上は、ほんとうにこの農業の中で食っていけるような杉をぜひやってもらいたい、こう思うのです。それで、かりに工業を取り入れる場合においても、これはやはり協業体なら協業体の内部で取り入れて、よその工場に賃取りに行くというような形はぜひ逝けていただきたい。そうなりますと、また兼業農家のモデルをつくるような形になると思うのです。そういうことはぜひひとつなさらぬように、少なくとも自分たちの経営の内部にそういうものを考える場合には考えていただきたい、このことを特に御注文申したいと思います。  まだいろいろほんとうはこまかく聞きたい点もありますが、時間がありませんから終わりたいと思いますが、先ほど申しましたように、非常にまだ未定な事項が多いので、実は私どもこの法案に対する態度決定に非常に困るわけなんです。事業団の問題、新設必要ないじゃないかという点は、これは意見の相違ですから、何べんやりましてもしょうがないと思いますか、いずれにしても、せっかくあれだけの大事業をやったのですから、ほんとうにこれが有効に活用されて、国民から見ても納得できるような形に、ぜひひとつ事業を遂行する上においていろいろとわれわれが申し上げたような点も参考にしていただいて、今後さらに固まっていない点は固めていただきたい。このことを強く御要望申し上げまして、私の質問を終わります。
  79. 仮谷忠男

    ○仮谷委員長代理 本案に対する質疑はこれにて全部終局いたしました。  次会は来たる二十三日開会することとし、本日はこれをもって散会いたします。    午後、零時、五十人分散会