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田中国務大臣 国民金融公庫法の改正をお願いをしまして二十億円の特別ワクを設けたいということは、これは答申にもございまして、答申の趣旨もしんしゃくしてこういう
法律改正をお願いしているのですが、これはいまもうその
法律が具体化されておられるような
認識でありますが、これはまだ通らないのです。何回も何回も御審議をお願いしておるのでございますが、衆議院を通っても参議院で通らないとかということで、もう
昭和三十七年度の予算、三十八年、九年と三カ年間お願いしまして、現在まだ参議院大蔵
委員会に付託審議中でございます。でございますから、これとあわせてこの施策を行なう。
それからもう
一つ、この問題は、
政府も自民党もこれをただ通すんだ、あなた方野党の方は反対だ、ただそういう考えではなく、ほんとうにこの
法律案というのは悪いのかどうか、これは私はもう少し静かに考えていただきたい。私は、きのうもおとといもずっと社会党の皆さんの御
質問を聞いておりますが、かつての
地主と
小作との関係を引用せられて、農民が非常に汗した
土地であるし、しかも
地主は搾取をしておったのだから、これを
開放すのはあたりまえだ、こういう認定のもとに立っておる。私は、
農地の
開放というものは重大なことであり、必要なことであった、戦後の今日あるところの大きな成果をもたらした根源である、こうさえ
評価をしておるのであります。ですが、ここにひとつ、私は理論的に申し上げますからよくお聞き取りいただきたいと思いますのは、自作農をつくろう、こういうことでこの制度が採用せられたわけです。ですから、自作農以外にこれを
転用する、こういうふうな場合は、これは
地主に返すというような先取特権とか売り戻しの制度をつくっておけば、こういう問題は起きなかったと思うのです。ところが、自作農をつくるために、当時の
価格でもってこれを
地主から買い上げて与えた、こういうことでありますが、その後いろいろな問題がございましたが、二十九年の
法律改正によりまして
転売を許したわけです。許しましたから、そこに三百五十円とか四百円で反当たり買ったものが何十万円、何百万円、何千万円になったという
一つの現象が起こったわけです。そういうときにお互いに選挙したときのスローガンは、明らかにこの間の事情をあらわしておるのです。やがて自民党はこの
農地被
買収者に対して何らかの措置をしなければならぬだろう、そのときに
転売をした差益金を徴収するか、もしくはいま国が持っておる未利用の
土地を売り払ってその代金で返すというようなことになるだろう、
土地は取り上げられる、こういうスローガンでやったことがある。そういう時代においてそういう方法で
地主報償が行なわれたとしたら、これは問題があります。そうじゃない。自作農というものができて、自作農以外の用途に
転用された人に対しても、そのまま既得権として恩典は認めておるのです。ですから、全然別な
立場で
農地被
買収者というものの処遇を考えるときには、私は、もっと
感情を離れて、すなおな気持で本件に対処すべきだと思う。こんなことを申し上げるのはどうかと思いますが、西ドイツあたりでも、今日あるために、国家のためや公共のために
犠牲になったものにまず一切の施策を行なう、こういうことをやっているところもあるのでありますから、
農地被
買収者というものに措置することによって
農地が取り上げられるとか、
転売された人の差益が徴収されるとか、そういうのであれば問題でありますが、そうではなく、
農地被
買収者の
犠牲に対して何らかの措置をしよう、しかも戦後二十年たっておる今日やろうということならば、やはり
評価を十分していただいて考えなければならぬ。
もう
一つ、私は最後にあなたにも申し上げる。私は新潟ですが、新潟は
小作争議の非常に激しいところでありました。現在でも底流に非常にいやな対立があります。まじめに私は申し上げますが、これは新潟県だけでなく、どこにもあるのです。かつて持っておった
地主が零落した。今度
小作が持っておるものをそのまま耕しておるなら問題がない。そうではない。道路ができるので坪五千円とか一万円とかで何百万円の
補償費をもらう。そこに非常にいやな
感情の対立がある。ですから、いまはもう昔のような観念でなく、
小作と
地主の対立するような要素は
一つもないにもかかわらず、
農地開放を理由として新しい対立があるのです。嫁をやらぬ、われわれは婿をあそこからもらわない、こういう大きな仕事をやった陰にあるものには、きめこまかな施策を必要とする。これが責任政党の
立場、責任政治の
立場では、こういうものにはきめこまかくやる。あなた方もよくきめこまかくやれと言うでしょう。ですから、こういう事態を十分
認識するときに、とにかくピリオドを打つためにも、有終の美をなさしめるためにも、何らかの処置を必要とする。その何らかの処置の中で、賞状でいいじゃないか、勲章やれとか、お花を届けろとか、いろいろ
考え方はありますが、
評価はいま御審議願っておるものが非常によろしい、こういうことになったわけでございますから、その事実をひとつ皆さまに、みんな
評価をしておられるわけですから、
政府がただ単に追加払いというような
立場に立ってやったのではなく、より高い
立場で有終の美をなさしめたい、そういう
考え方のことをひとつ理解していただきたい。何も浪曲調だけで申し上げておるわけではないのでありますから、御了承願いたいと思います。