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1965-05-13 第48回国会 衆議院 内閣委員会 第44号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年五月十三日(木曜日)     午前十一時二十九分開議  出席委員    委員長 河本 敏夫君    理事 荒舩清十郎君 理事 伊能繁次郎君    理事 佐々木義武君 理事 永山 忠則君    理事 八田 貞義君 理事 田口 誠治君    理事 村山 喜一君 理事 山内  広君       井原 岸高君    池田 清志君       上林山榮吉君    亀岡 高夫君       高瀬  傳君    辻  寛一君       綱島 正興君    中川 一郎君       中村 寅太君    二階堂 進君       野呂 恭一君    藤尾 正行君       湊  徹郎君    渡辺 栄一君      茜ケ久保重光君    稻村 隆一君       大出  俊君    大原  亨君       川俣 清音君    兒玉 末男君       只松 祐治君    中村 高一君       楢崎弥之助君   米内山義一郎君       伊藤卯四郎君    受田 新吉君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         内閣法制局参事         官         (第四部長)  田中 康民君         総理府総務長官 臼井 莊一君         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房臨時農地等         被買収者問題調         査室長)    八塚 陽介君         厚生事務官         (援護局長)  鈴村 信吾君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      赤羽  桂君         農林事務官         (農地局管理部         長)      石田  朗君         建設事務官         (計画局参事官)大津留 温君         専  門  員 茨木 純一君     ――――――――――――― 五月十三日  委員亀岡高夫君茜ケ久保重光君、大出俊君及  び中村高一君辞任につき、その補欠として渡辺  栄一君、兒玉末男君、川俣清音君及び米内山義  一郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員児玉末男辞任につき、その補欠として只  松祐治君が議長指名委員に選任された。 同日  委員渡辺栄一君、川俣清音君、只松祐治君及び  米内山義一郎辞任につき、その補欠として亀  岡高夫君、大出俊君、茜ケ久保重光君及び中村  高一君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月十二日  旧軍人等恩給に関する請願岡崎英城君紹  介)(第三八四三号)  同外十四件(二階堂進紹介)(第三八四四  号)  同(増田甲子七君紹介)(第三八四五号)  同(森下元晴君紹介)(第三八四六号)  同外十六件(岩動道行紹介)(第三八九一  号)  同(山崎巖紹介)(第三八九二号)  同(安藤覺紹介)(第三九二二号)  同外二件(金子一平紹介)(第三九二三号)  同外二件(園田直紹介)(第三九二四号)  同外三件(野田卯一紹介)(第三九二五号)  同外二件(渡辺栄一紹介)(第三九二六号)  同(増田甲子七君紹介)(第三九二七号)  同(加藤高藏君紹介)(第三九七七号)  同外二件(小平久雄紹介)(第三九七八号)  同外三件(高瀬傳紹介)(第三九七九号)  同(森山欽司紹介)(第三九八〇号)  同(亘四郎紹介)(第三九八一号)  同外十一件(谷川和穗紹介)(第四一一五  号)  国立大学教官待遇改善に関する請願高橋重  信君紹介)(第三八四七号)  同外四件(池田正之輔君外一名紹介)(第三九  七二号)  同外四件(小山省二紹介)(第三九七三号)  同(志賀健次郎紹介)(第三九七四号)  同外十一件(田中榮一紹介)(第三九七五  号)  同(和爾俊二郎紹介)(第三九七六号)  公務員の賃金及び労働条件改善等に関する請願  外十二件(堂森芳夫紹介)(第三八四八号)  同(松平忠久紹介)(第三八四九号)  同外五件(稻村隆一君紹介)(第三九八二号)  同外二件(野間千代三君紹介)(第四一一六号)  国家公務員に対する寒冷地手当改定に関する  請願島口重次郎君外二名紹介)(第三八五〇号)  同(森田重次郎君外三名紹介)(第三八五一  号)  同外二十一件(堂森芳夫紹介)(第三八六三  号)  同(島口重次郎君外二名紹介)(第三八九三  号)  同外三十八件(堂森芳夫紹介)(第三九〇五  号)  同(森田重次郎君外三名紹介)(第三九一三  号)  同(島口重次郎君外二名紹介)(第三九四九  号)  同(島口重次郎君外二名紹介)(第四〇九〇  号)  国家公務員に対する寒冷地手当改定に関する  清瀬安宅常彦紹介)(第三八五二号)  同外一件(黒金泰美紹介)(第三八五三号)  同(華山親義紹介)(第三八五四号)  同(安宅常彦紹介)(第三八九四号)  同(華山親義紹介)(第三八九五号)  同(黒金泰美紹介)(第三九一四号)  同(安宅常彦紹介)(第三九五〇号)  同外三件(黒金泰美紹介)(第三九五一号)  同(華山親義紹介)(第三九五二号)  同(安宅常彦紹介)(第四〇九一号)  同(華山親義紹介)(第四〇九二号)  国家公務員に対する寒冷地手当改定に関する  請願吉村吉雄紹介)(第三八五五号)  同(吉村吉雄紹介)(第三八九六号)  同(野口忠夫紹介)(第三九五三号)  同(吉村吉椎紹介)(第三九五四号)  同(吉村吉雄紹介)(第四〇九三号)  国家公務員に対する寒冷地手当改定に関する  請願戸叶里子紹介)(第三八五六号)  同(戸叶里子紹介)(第三八九七号)  同(戸叶里子紹介)(第三九五五号)  同(戸叶里子紹介)(第四〇九四号)  同(武藤山治紹介)(第四〇九五号)  国家公務員に対する寒冷地手当改定に関する  請願石田宥全君紹介)(第三八五七号)  同(稻村隆一君紹介)(第三八五八号)  同(小林進紹介)(第三八五九号)  同(松井誠紹介)(第三八六〇号)  同(石田宥全君紹介)(第三八九八号)  同(稻村隆一君紹介)(第三八九九号)  同(小林進紹介)(第三九〇〇号)  同(松井誠紹介)(第三九〇一号)  同(石田宥全君紹介)(第三九五六号)  同(稻村隆一君紹介)(第二九五七号)  同(小林進紹介)(第三九五八号)  同(松井誠紹介)(第三九五九号)  同(石田宥全君紹介)(第四〇九六号)  同(稻村隆一君紹介)(第四〇九七号)  同(小林進紹介)(第四〇九八号)  同外三件(松井誠紹介)(第四〇九九号)  国家公務員に対する寒冷地手当改定に関する  請願下平正一紹介)(第三八六一号)  同(下平正一紹介)(第三九〇二号)  同(原茂紹介)(第三九〇三号)  同(下平正一紹介)(第三九六〇号)  同(原茂紹介)(第三九六一号)  同(下平正一紹介)(第四一〇〇号)  同(原茂紹介)(第四一〇一号)  国家公務員に対する寒冷地手当改定に関する  請願金丸徳重紹介)(第三八六二号)  同(金丸徳重紹介)(第三九〇四号)  同(金丸徳重紹介)(第三九六二号)  同(金丸徳重紹介)(第四一〇二号)  国家公務員に対する寒冷地手当改定に関する  請願外一件(有田喜一紹介)(第三八六四  号)  同外一件(小島徹三紹介)(第三八六五号)  同(三木喜夫紹介)(第三八六六号)  同(三木喜夫紹介)(第三九〇六号)  同(有田喜一紹介)(第三九一六号)  同(清瀬一郎紹介)(第三九一七号)  同(小島徹三紹介)(第三九一八号)  同(河本敏夫紹介)(第三九一九号)  同外二件(有田喜一紹介)(第三九六五号)  同外二件(小島徹三紹介)(第三九六六号)  同(三木喜夫紹介)(第三九六七号)  同(三木喜夫紹介)(第四一〇五号)  国家公務員に対する寒冷地手当改定に関する  請願外四件(古井喜實紹介)(第三八六七  号)  同(古井喜實紹介)(第三九一五号)  同外十四件(古井喜實紹介)(第三九六四  号)  国家公務員に対する寒冷地手当改定に関する  請願外二件(宇野宗佑紹介)(第三八六八  号)  同外一件(草野一郎平紹介)(第三八六九  号)  同(西村関一紹介)(第三八七〇号)  同(西村関一紹介)(第三九〇七号)  同(宇野宗佑紹介)(第三九二〇号)  同(草野一郎平紹介)(第三九二一号)  同外九件(宇野宗佑紹介)(第三九六八号)  同外四件(草野一郎平紹介)(第三九六九  号)  同(西村関一紹介)(第三九七〇号)  同外一件(西村関一紹介)(第四一〇六号)  傷病恩給等の不均衡是正に関する請願外一件  (小川半次紹介)(第三八八八号)  同(増田甲子七君紹介)(第三九二八号)  同(青木正紹介)(第三九二九号)  同外一件(小川半次紹介)(第三九七一号)  同外一件(草野一郎平紹介)(第四一一二  号)  同外一件(砂田重民紹介)(第四一一三号)  同外一件(濱田幸雄紹介)(第四一一四号)  平和の日制定に関する請願園田直紹介)(  第三九三〇号)  同(増田甲子七君紹介)(第三九三一号)  同(唐澤俊樹紹介)(第四一一〇号)  同(菅町和太郎君紹介)(第四一一一号)  国家公務員に対する寒冷地手当改定に関する  請願外十五件(堂森芳夫紹介)(第三九六三  号)  同外八件(植木庚子郎君紹介)(第四一〇三  号)  建設省設置法の一部を改正する法律案反対に関  する請願稻村隆一君紹介)(第三九八三号)  国家公務員に対する寒冷地手当改定に関する  請願外二十二件(堂森芳夫紹介)(第四一〇  四号)  大阪府能勢町、東能勢村の寒冷地給級地指定に  関する請願森本靖紹介)(第四一〇七号)  同(野原覺紹介)(第四一〇八号)  同(阪上安太郎紹介)(第四一〇九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農地買収者等に対する給付金支給に関する  法律案内閣提出第七七号)      ――――◇―――――
  2. 河本敏夫

    河本委員長 これより会議を開きます。  農地買収者等に対する給付金支給に関する法律案を議題とし、審査を進めます。  前回に引き続き、質疑を行ないます。兒玉末男君。
  3. 兒玉末男

    兒玉委員 臼井長官にお伺いしたいのでありますが、すでにこの法案につきましては相当長時間にわたり質問がなされておりますが、私きょう初めて農林水産立場から、昨日の連合審査会でついに質問の機会を得ませんでしたので、ここに出席してお尋ねしたいのであります。  まず第一に、私はどうしても不可解に思いますことは、この法案名称は、農地買収者等に対する給付金支給に関する法律案ということで題名がつけられておりますが、政府からいただきましたところの提案説明を見てまいりますと、明らかにこれは非常に不可解な表現でありますけれども、「農地改革における農地買収行の貢献を多とするとともに、その受けた心理的影響をも考慮して、これらの人々に対する報償を実施することが適切であると考え、この法律案を提案することとした次第であります。」、こういうふうに説明をいたしております。ところが、この法案内容には報償ということに関する表現は全然とってないわけですが、少なくとも法律案が提案された以上、その説明の中に報償ということがあるにかかわらず、給付という形で表現されていることは、私は明らかにごまかしではないかと思うのですが、この辺の根拠について、長官見解を明らかにしていただきたいと考えます。
  4. 八塚陽介

    八塚政府委員 この第一条につきましては、例のこの前にございます引揚者給付金に関する法律の例にならっただけでございます。
  5. 兒玉末男

    兒玉委員 例ということを言われますけれども、少なくともこの法案そのものは、非常に法的な根拠が薄いと私は思うわけであります。というのは、先般来質問の中でもその点がなかなか明確にされておらぬわけでありますが、長官にお伺いしたいことは、このような名称はどうであろうとせよ、こういうふうな給付金支給しなければいけない法的な根拠というものは、それでは一体何か、この点を明らかにしていただきたい。
  6. 臼井莊一

    臼井政府委員 これはすでに御承知のように、農地の被買収者に対しましては、買い上げの値段においても、また、手続においても、合法的であるという最高裁判決もございまするし、したがいまして、政府が義務としてこれを報償しようというのではございませんで、大きく申せば、高度の政治的判断と申しますか、たびたび申し上げましたように、旧地主農地開放によって農村の民主化に貢献し、また非常な心理的影響を受けた、これに対するねぎらいという意味で今回することになりました、したがって、法案の中には報償という字句はございませんが、補償ということではないかということをよく言われるのでありまして、しいてそういうことばで表現すれば報償である、こういう意味において趣旨の説明においてそれを申し上げておるわけであります。
  7. 兒玉末男

    兒玉委員 私はどうしても不可解に考えることは、確かに今回の旧地主に支払われる給付金の一千四百五十六億という金は、国家予算の中に占める比率からいえばそんなに大きい比率ではないにいたしましても、少なくとも国民の納めた税金をいずれの分野に対して使用するにかかわらず、やはりそこには法的な根拠大我名分というものが明らかにされなければならないと私は考えます。昨日の三名の参考人意見開陳の中においても、その正当性ということを主張する人は一人もなかったと私は考えますししかもまた、その不合理性ということのウエートは、非常に荷かったと考えるわけでありますが、ただいま長官お答えになりましたところの、特に問題のポイントである心理的影響政治的配慮によってこの法案を出しておるということをお答えになりましたが、一体心理的影響というものの内容は、具体的に分析するならば、どういうことが心理的影響であるのか、この点ひとつもう少し突っ込んだ説明をいただきたいと思います。
  8. 臼井莊一

    臼井政府委員 一つは、私有財産制という立場において憲法でも保障されている財産権に属する、また財産である農地を強制買収せられた。しかもこれにつきましては、その後の経済変動によりまして、従来の旧地主経済的に非常に困難に当面した者も非常にあります。したがいまして、これらの心理的影響というものを非常に受けた。そのほか、しいて推察いたしますと、よい悪いという問題ではなくて、やはり旧地主小作の間には感情的な疎隔も従来ありました。したがいまして、第一次大戦後小作争議というものが起こりました。これはひとり感情ばかりではありませんで、いろいろ小作料等の問題、耕作権等の問題にからんででありますけれども、いずれにしてもそういう感情疎隔があったところへ、これが逆転をして、むしろ小作のほうが有利な立場に立ったというような人もあります。そこで感情がよけい疎隔をして、旧地主が非常な心理的影響を受けた、こういうこと等もあるわけでございます。  もう一つは、私どものほうでは今度の法案については、それによってではありませんけれども、戦後の急激な物価上昇、いわゆるインフレ的な物価上昇によって影響せられたということも申し述べているわけでございまして、それらを非常な心理的影響を受けた、こういうふうに私ども判断をし、解釈をいたしているわけであります。
  9. 兒玉末男

    兒玉委員 肝心の農林大臣が見えておりませんが、地主小作、特に農地改革によって行なわれました農地開放の歴史的な評価というものとその認識というものの本質的な問題をえぐっていかなければ、この問題の根本的な解明はできないと思うのですが、特にいま長官が申されましたことは、あまりにも地主側の肩だけを持ち過ぎるような感を私は抱くわけであります。同時に、また戦後の経済的な諸変動によって、農地開放した地主さんだけがあたかも決定的な打撃を受けたように認識をされておられるようでございますけれども総理府から発行されましたこの法律に関連する参考資料を見てまいりましても、いま長官が御答弁になっているような情勢には決してないのじゃないかというふうに、私は判断するわけです。特に農地改革のもたらした歴史的な恩義と評価については、この際私は農林大臣にさらに突っ込んだ立場からお伺いして、問題の本質を浮き彫りにしていきたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、戦前のいわゆる政府のこの重要事項年表によりましても、小作争議が大正十年の千六百八十件を契機としまして、昭和六年、昭和十年と非常に急上昇しながら地主小作の闘争というものが深刻化しております。このことは、過去の地主生産農民である小作人をいかに搾取してきたか、その搾取の度合いがいかに強かったかということを歴史的な事実として指摘されるのではなかろうか。そのように考えてまいりますと、やはり戦前において地主は相当の不当な所得を得て、あの終戦という改革を迎えたのではなかろうかと思うわけです。しかも昭和二十八年十二月二十三日の最高裁大法廷における判決内容を読んでみましても、実にこれは公平であり、しかもこの補償等もきわめて妥当な価格が出されたということで、この最高裁判決が出されておると思うのでありますが、そういうような過去の歴史からこの戦後における過程、また最高裁における判例等から判断いたしましても、いま長官答弁された事実は、多小その考え方が片香り過ぎているように思うのですが、これらのことについてどういうふうにお考えになりますか、お伺いしたいと思います。
  10. 臼井莊一

    臼井政府委員 これは心理的影響を受けたということにつきましては、個々の人間が受けるわけでありますから、その人の性格なりものの考え方によることでもありますし、他の第三者からの客観的な情勢ばかりで判断できない要素が多分にあると思うのであります。しかし、私ども別にいわゆる旧地主というような立場でない者から見ましても、非常な心理的打撃を受けたということは、これはもう想像にかたくないし、当時すでにそれがために首をくくって死んだというような者まで出たわけでありまして、したがいまして、これに対しましては、私ども今日のように経済が成長してきたときにおいて、これをねぎらうということは必然のことである、かように考えるわけであります。
  11. 兒玉末男

    兒玉委員 先ほども私が指摘しましたとおり、地主だけが保護されるということについて、少なくともこの農地改革において、百七十六万世帯地主から百八十万ヘクタールの農地が、四百七十四万八千世帯という比較にならない多数のいわゆる耕作農民にこれが売り渡されたわけでありますが、日本の戦後のあの貧困の状態の中から、特に最も重要な食生活のささえとなってきたこの多数のかつていじめられてきた小作農民立場ということを無視して、今日の日本経済の発展はあり得ない。こういうことを考えてみます場合に、しかもまたこの百七十数万世帯地主というのは、ほとんど自主的な耕作に携わっておらない、こういう客観的な事実なり、あるいはまた先般の本会議等における質問の中でも明らかにされてまいりましたが、地主だけが不当な犠牲者であるという認識は、私はどうしても理解できないのであります。この三倍近くの小作農民が、戦前、戦後を通じて非常な犠牲を強要された事実を、長官、それではどのように理解されるのか、この点ひとつ御見解を承りたい。
  12. 臼井莊一

    臼井政府委員 従来の小作人が非常に過去において苦しい思いをされて困難をきわめていたということも、私どもよく承知いたしておりますし、それによってのいろいろの悲劇というようなことも、あらゆる面で劇になったり小説になったりもされておるわけでございまして、したがいまして、なお譲渡を受けた後においても、旧小作人というような方々が非常に経済の復興に協力をされた、食糧増産に寄与された、こういうことは、私ども十分認めるのでありますが、しかし、生産の増強になって、新地主協力的態勢になったのは、やはり農地開放によることであって、その耕作地を御自分のほんとうの土地として、これに土地に対する愛情を持ってやり得る立場になり得たからでありまして、それにはやはり農地開放、こういうことでありますが、一方、きのうもいろいろ地主になられた原因についての実例もあげられましたが、多くの地主の中にはいろいろのあれはあると思いますけれども、しかし、全体として見た場合には、いま申し上げたような農地改革協力をされて、法律によったとはいいながら、これがわずか三年という短い間に、約二百万町歩、また、戸数にいたしまして四百五十万ぐらいの自作農ができたという、こういう非常に成果をあげたのも、御不満の方はもちろんたくさんあったにしても、結果的にはこれに協力せられたわけでございます。しかも、その後、これが農地転用ができなかったのが、昭和二十七年から、法律改正せられて、農地転用できる、したがって、目の前で、経済変動によって、数百倍から数千倍の値段でこれが転売されるという状況を見て、旧地主が非常な心理的な打撃を受けたということは、これはもう想像にかたくないわけでございまして、その転用を許したことの是非善悪は別といたしまして、旧地主に対してこれが非常な心理的打撃を与えた、こういうことは当然考えられることと信ずる次第であります。
  13. 兒玉末男

    兒玉委員 少なくともいま長官の最後のほうにおける答弁は、ちょっと私は的をはずれておると思います。というのは、それでは一体百八十万ヘクタールの開放農地のうちにどれだけ、そんなに百倍から数百倍という価格転売されたのか、その面積と件数をひとつ明らかにしていただきたい。
  14. 八塚陽介

    八塚政府委員 ただいま問題になっておりますところは、創設農地についてだと存じます。創設農地についてだけ転用転売をつかまえた統計はないわけでございますが、全体として農地法に基づきます転用面積は、二十八年から三十七作までの間についてわかっておるわけでございます。したがいまして、それを一応創設農地一般農地との比率で計算するといたしますと、創設農地転用面積は、二十八年から三十七年までの十年間で、四千八百町歩ということに一応推定されるわけでございます。
  15. 兒玉末男

    兒玉委員 私はあまりそういう内容の点については触れたくないのでありますけれども、そういうふうな全体の百八十万町歩の中において、特に農地法に基づく農地転用面積はわずかに四千数百町歩、こういうことでございますならば、長官が竹に力説をされ、また今日まで政府当局答弁の中において、心理的影響ウエートが、常に多数をこの転売面積が占めて、そのことが旧地主に決定的なショックを与えたかのような印象を非常に深めておるわけであります。これらのことについては、むしろ私は転売そのことと同時に、今日までの日本土地政策、こういうことについて全く放置されて、無策状態の中においてこのように不当な地価のつり上げがされ、今度の建設省設置法の一部改正によって初めて宅地部が設置される等、政府自身無策によってこのような常識はずれ転売がなされたし、都市計画にしても、宅地政策にしても、もう少し政府当局が本腰を入れていくならば、せっかくの農地開放によって得た農地というものが、もう少し農地本来の目的で使用されてきたのじゃなかろうか。こういう政府みずからの姿勢なり責任というものを全然正さずして、いたずらに転売したことがいけないのだ、そのことが旧地主に大きなショックを与えたのだということは、政府みずからが招いた無策と私は指摘をせざるを得ないわけですが、それらの点についての見解を承りたいと思います。
  16. 臼井莊一

    臼井政府委員 二十七年に転売を許すようにしたということは、急速な経済変動によって住宅なり工場敷地が必要になったから、当時の状況としてはこれもやむを得なかったかもしれませんが、しかし、これに対しての何らかの制限を加えるということとをしなかったことについての批判は、いろいろあると存じます。しかしながら、それはそれとして、国会においてそういう法律を決定したことでもありますし、その当否は別といたしましても、そういう変動によって心理的影響を受けたということについては変わりはないわけでございます。  なお工藤調査会の報告によりましても、「解放した農地転売転用については、その後の経済情勢の推移のために、大都市近郊等にその事例が多いが、これについては農地買収価格と比較して開きが大きすぎるのでかなり不満がある。」こういうことで、心理的影響を受けたということについての報告もあるわけでございます。ことにこれは一部じゃないかというようなお考えがございますかもしれませんが、最近は大都市ばかりでございませんで、地方の開発のために、地方の小中都市においても工場なども誘致せられて、その影響が非常に広範に広がっておりますし、今後もますますそういう傾向にありますので、一そうその心理的影響を受ける者が広がっていく状態にある、かように考える次第であります。
  17. 兒玉末男

    兒玉委員 長官のいまの答弁は、答申に基づくということを背景とされておられます。この点、私もあとで多少反論したいと思いますが、いずれにいたしましても、あの革命的な農地改革によって長い間の封建制のもとから立ち直り、画期的農地制度ができたにもかかわらず、いまこのようないびつな形において政府が旧地主報償しなければいけないという、その客観的な背景は、まさに政府無策の中から生じた不当な転売にあるのである。こういうふうな因果関係になっているということを考えますときに、この報償というものがなおさら不可解にならざるを得ない。  いま建設省の計画局の参事官が参りましたが、これからもさらにそういうふうな傾向があるということを政府はいまみずから指摘されましたが、特に建設省としては、これらの宅地なり農地等が不当に天井知らずに転売されている状態に対して、いま少し長期の土地利用区分なりあるいは都市計画について積極的な手を打つべきであったにもかかわらず、戦後二十年、ようやく今回宅地部を設けて特に宅地造成等に対するいわゆる監視をするようになったわけでありますが、いま長官答弁ときわめて重大な関係があります今後の都市計画なり土地利用区分等について、どういうふうなお考えを持っているか、お伺いしたいと存じます。
  18. 大津留温

    ○大津留説明員 お説のとおり、都市計画と申しますか、都市近郊における土地の利用計画、この地域は住宅を建てさせる、この地域は商業地域、この地域は工場、この地域は農村というような土地の利用区分を確立いたしますことが、今後の地価対策の一つの前提といいますか、必要な基盤だと考えます。そこで、現行の都市計画におきましても、御承知のとおり用途地域指定というのがございまして、住居地域、工場地域というものをきめておるわけでございます。さらにこれを都市の発展の実態にあわせまして、より一そうきめのこまかい用途計画、利用計画というものを定めていく必要が、今後ますます生じてまいると考えます。そういう方向におきまして、現在私どもも宅地審議会におきましていろいろ御研究をお願いしておる、こういう状況でございます。
  19. 兒玉末男

    兒玉委員 いまの参事官の答弁、全く事務的な答弁であって、全然答弁になっていないと思いますが、いずれにいたしましても、問題は政府土地政策あるいは住宅政策の無策がもたらした結果であるということは、私ははっきり指摘できると思います。  せっかく大蔵大臣もおいででございますので、大蔵大臣にもいろいろとお伺いをしたいと思うのです。私は昨日の答弁をいろいろお聞きいたしましたが、例の浪花節調で、全くどこに骨があるのかわからないような御答弁であったわけであります。農地改革がもたらしました結果として、先ほど来長官がいろいろと御答弁になりましたが、最高裁判決なり――あるいはまたこの政府資料にございます三十七年五月二十二日の農地買収者問題調査会の会長から池田総理大臣に対する答申の中において、結論的にいえることは、報償の必要はない。特に「生活上又は生業上困難な状況にある者に対し、生業資金の貸付の措置を講ずる。その子弟を進学させるのに困難な状況にある者に対し、育英その他の制度の運用において配慮を加える。」、こういうふうな答申に基づきまして、先般、三十七年でありましたか、旧地主に対する二十億円の生業資金の貸し付けということで、わざわざ金融公庫法の改正までいたして予算の裏づけをしたにかかわらず、なぜこの期に及んで非常に筋道の通らない、心理的影響などというきわめて抽象的な表現でもって一千四百五十六億も金を出さなければいけないのか。この点特に台所を預かる大蔵大臣として、どうも趣旨が一貫しない。今度の国会に急にこういうふうな法律案を出される経過について、どうしても私は理解に苦しむのですが、その辺の経過について明らかにしていただきたいと思うのです。
  20. 田中角榮

    田中国務大臣 大蔵大臣は国民の税金を預かっておるのでありますから、これが効率投資ということに対して十分な配慮をしなければならないことは当然でございます。しかし、これは出さないだけであって、必要なときも出さないということであれば大蔵大臣は要らないわけでございまして、やはり国民の将来を考えて必要なものは、出したくなくとも出さなければいかぬ、こういうところに大蔵大臣のむずかしさがございます。そういう意味でいろいろ長いこと検討をした結果、最終的に本法案を提出をして御審議をいただくことになったのでありまして、あなたがいまるる述べられておりますようなことを十数年間にわたっていろいろの道を経ながらいろいろ研究されて、最終的にこの法案になったわけでございますから、しいていえば高度の政治判断に基づく施策、こう考えて間違いはないと思います。  私がきのうるる申し述べたことが、どうも浪花節的だ、浪曲調だ、こういうことを言われましたが、政治というものは、理屈ばかり言っておってもあたたかい政治はできるものじゃありません。これはやはり国民や公共やわれわれのために貢献をした人の事実を十分把握して、これに対して顕彰をし、功績に対して報いるということも、おろそかにできるものではありません。そうしなければ、だれが一体公共のために、国のために働くのでありましょう。こういうことに対してけじめをつけるということも、政治の重要な命題の一つである。こういうことをひとつ十分認識をしていただきたい。そういう意味で、私たちは長いことを検討いたしまして、農地改革というものが戦後の画期的な事業であったし、その画期的な事業が円滑に行なわれた結果、今日のわれわれの生活もあるのだ。農村の民主化だけでなく、日本全体の民主化も行なわれた。その意義というものを過小評価するわけにはまいりません。また、政府がるる申し述べておりますように、最高裁判決というものを無視して再補償をしようという考えではないのであります。再補償という考えではなく、最高裁判決はそのまま認めておりますが、農地開放というものの画期的なあの状態を見まして、正当なる補償をして買い上げたものではありますが、しかし、現在考えるときに、この功績やまた及ぼした影響等を評価をして、そして当時の被買収者が心理的に大きな影響、また経済的に受けた傷というようなものに対して、国家が今日の状態において一般会計の中で何ぶんかの支出を行なって報償をするということがよくないことだという観念は、この本件に対する認識そのものが違うわけでございます。私は、やはり国家のため、公共のため、われわれのために先べんをつけて功績を残した者に対して、何がしかの報償をするということは、政治の上で不必要だと考えておらないのであります。政府は必要であるという認識に立ってお願いをしておるわけであります。どういう根拠で支払うのかということは、これはいま御審議を願っておるものが法律になれば、その法律根拠として支給するわけでございます。
  21. 兒玉末男

    兒玉委員 大蔵大臣のいまの答弁は、少し勇み足じゃないかと私は思います。やはり法律を制定するには、それにはそれなりの歴史的な過程なり、それなりの背景というものがなければ、必要はないと思います。でありますから、いずれにいたしましても、三年前の国会におきまして相当論議をされましたが、二十億円の国民金融公庫法の中においてワクを拡大して、実際困っておるこの旧地主の子弟なり、あるいは生活の困窮な人に生業資金の貸し付けをするということで、特に二十億円のワクを拡大するという決定をなされたわけであります。そのことについて大臣は何も答弁されておりませんが、そういう過程というものをもう少し話していただきたいと思うのです。
  22. 田中角榮

    田中国務大臣 国民金融公庫法の改正をお願いをしまして二十億円の特別ワクを設けたいということは、これは答申にもございまして、答申の趣旨もしんしゃくしてこういう法律改正をお願いしているのですが、これはいまもうその法律が具体化されておられるような認識でありますが、これはまだ通らないのです。何回も何回も御審議をお願いしておるのでございますが、衆議院を通っても参議院で通らないとかということで、もう昭和三十七年度の予算、三十八年、九年と三カ年間お願いしまして、現在まだ参議院大蔵委員会に付託審議中でございます。でございますから、これとあわせてこの施策を行なう。  それからもう一つ、この問題は、政府も自民党もこれをただ通すんだ、あなた方野党の方は反対だ、ただそういう考えではなく、ほんとうにこの法律案というのは悪いのかどうか、これは私はもう少し静かに考えていただきたい。私は、きのうもおとといもずっと社会党の皆さんの御質問を聞いておりますが、かつての地主小作との関係を引用せられて、農民が非常に汗した土地であるし、しかも地主は搾取をしておったのだから、これを開放すのはあたりまえだ、こういう認定のもとに立っておる。私は、農地開放というものは重大なことであり、必要なことであった、戦後の今日あるところの大きな成果をもたらした根源である、こうさえ評価をしておるのであります。ですが、ここにひとつ、私は理論的に申し上げますからよくお聞き取りいただきたいと思いますのは、自作農をつくろう、こういうことでこの制度が採用せられたわけです。ですから、自作農以外にこれを転用する、こういうふうな場合は、これは地主に返すというような先取特権とか売り戻しの制度をつくっておけば、こういう問題は起きなかったと思うのです。ところが、自作農をつくるために、当時の価格でもってこれを地主から買い上げて与えた、こういうことでありますが、その後いろいろな問題がございましたが、二十九年の法律改正によりまして転売を許したわけです。許しましたから、そこに三百五十円とか四百円で反当たり買ったものが何十万円、何百万円、何千万円になったという一つの現象が起こったわけです。そういうときにお互いに選挙したときのスローガンは、明らかにこの間の事情をあらわしておるのです。やがて自民党はこの農地買収者に対して何らかの措置をしなければならぬだろう、そのときに転売をした差益金を徴収するか、もしくはいま国が持っておる未利用の土地を売り払ってその代金で返すというようなことになるだろう、土地は取り上げられる、こういうスローガンでやったことがある。そういう時代においてそういう方法で地主報償が行なわれたとしたら、これは問題があります。そうじゃない。自作農というものができて、自作農以外の用途に転用された人に対しても、そのまま既得権として恩典は認めておるのです。ですから、全然別な立場農地買収者というものの処遇を考えるときには、私は、もっと感情を離れて、すなおな気持で本件に対処すべきだと思う。こんなことを申し上げるのはどうかと思いますが、西ドイツあたりでも、今日あるために、国家のためや公共のために犠牲になったものにまず一切の施策を行なう、こういうことをやっているところもあるのでありますから、農地買収者というものに措置することによって農地が取り上げられるとか、転売された人の差益が徴収されるとか、そういうのであれば問題でありますが、そうではなく、農地買収者犠牲に対して何らかの措置をしよう、しかも戦後二十年たっておる今日やろうということならば、やはり評価を十分していただいて考えなければならぬ。  もう一つ、私は最後にあなたにも申し上げる。私は新潟ですが、新潟は小作争議の非常に激しいところでありました。現在でも底流に非常にいやな対立があります。まじめに私は申し上げますが、これは新潟県だけでなく、どこにもあるのです。かつて持っておった地主が零落した。今度小作が持っておるものをそのまま耕しておるなら問題がない。そうではない。道路ができるので坪五千円とか一万円とかで何百万円の補償費をもらう。そこに非常にいやな感情の対立がある。ですから、いまはもう昔のような観念でなく、小作地主の対立するような要素は一つもないにもかかわらず、農地開放を理由として新しい対立があるのです。嫁をやらぬ、われわれは婿をあそこからもらわない、こういう大きな仕事をやった陰にあるものには、きめこまかな施策を必要とする。これが責任政党の立場、責任政治の立場では、こういうものにはきめこまかくやる。あなた方もよくきめこまかくやれと言うでしょう。ですから、こういう事態を十分認識するときに、とにかくピリオドを打つためにも、有終の美をなさしめるためにも、何らかの処置を必要とする。その何らかの処置の中で、賞状でいいじゃないか、勲章やれとか、お花を届けろとか、いろいろ考え方はありますが、評価はいま御審議願っておるものが非常によろしい、こういうことになったわけでございますから、その事実をひとつ皆さまに、みんな評価をしておられるわけですから、政府がただ単に追加払いというような立場に立ってやったのではなく、より高い立場で有終の美をなさしめたい、そういう考え方のことをひとつ理解していただきたい。何も浪曲調だけで申し上げておるわけではないのでありますから、御了承願いたいと思います。
  23. 兒玉末男

    兒玉委員 なかなか理解が、私の頭が悪いものですからよくわかりませんが、いずれにいたしましても、この前自民党の大幹部の方も指摘されておりましたが、せっかく大蔵大臣、あなたのそういうふうなほんとうに血の通った思いが、はたしてかつての地主にこの千四百五十六億の金がどういう形においてそれではこれが手に渡るだろうかということについて、私は相当慎重な配慮を必要とすると思うわけです。というのは、私の友だちなりあるいは隣近所にも、十町歩程度の地主であって、しかも過去十数年間、それこそ一部の議員さんたちが、あるいはそういう関係者が、少なくとも一反当たり十万程度の報償はするんだ、補償するんだ、こういうことを機会あるごとというのはとにかく、選挙が近づくと、そういうことをえさにして、私の知っている中でも、相当の資金をこの運動資金として出しておる事実を私は知っております。せっかく大蔵大臣いままで長々説明されましたが、あなたのそういう行為が、それではかつてのこういう被買収者に対して、実際にこれは確実に行き渡るという保証をあなたは持たれるかどうか。しかも所管長官総理府長官なんです。ところが、農地関係のこういうことに携わったのは農林省だ、こういう点等から考えてみます場合に、この被買収問題については農林省お手上げで、結局総務長官が一人で罪をかぶる結果になったわけですが、こういう貴重な千四百五十六億という金が、はたしてまともにいくという確信をお持ちかどうか。しかも、過去におけるこういう運動に対して、私はいろいろなうわさを聞いております。というのは、運動資金として集めた金が、途中でうやむやに消えてしまった。そして非常に不当な利得を得たという事実等も聞いておりますが、これらの点に関して、少なくとも千四百五十六億という貴重な国民の血税でありますから、その行くえについて、大臣としては今後の作業をどういう形において責任を持って進めていかれるという御所存か、この点お伺いしたいと思います。
  24. 田中角榮

    田中国務大臣 農地買収者同盟というようなものがどういうことをしたか、私はつまびらかにいたしておりません。しかも風説には、また御質問の一部にもございましたが、こういうもののこういう運動に対して、課徴金でありますか、分担金でありますか、出さないものは将来報償が行なわれてももらえないんだというようなことが一部にあったそうでありますが、こういうことは非常によろしくない動きであって、私はそういうものは関知いたしておりませんし、そういう動きと本件とは無関係であるということだけは、ひとつここで明らかにいたしておきます。また、その人たちがどういうことを言っても、この報償が実施せられる場合には、同盟に入っておるとか入っておらないとか、また分担金を出したとか出さないとか、そういうことは全く無関係でありまして、これは農地買収者に正当に支払われるべき報償金、こういうことでございますから、本件の問題とは関係ございません。しかも、どういうふうにして配るかということでありますが、そこに大蔵省としては間違ってよそへ金が行くような状態では絶対に払いません。これは厳重に監査をいたしまして、これは絶対に受給者である、間違いはない、こういう認定がつかなければ、私のほうでもって交付公債を差し上げるというようなことはいたしません。ですから、農地買収者同盟にこれを預けて、適当に配りなさいとか、県や市町村に出したものは全部やるとか、そういう支出は絶対にいたしません。そこは大蔵省でございますから、国民の税金を預かるためには、国民にすべてガラス張りで、後世にわたっても信用を得るような確実な方法でなければ交付しないということでありますから、御心配いただいてありがとうございますが、そういう心配はありません。
  25. 河本敏夫

    河本委員長 兒玉君に申し上げます。あとの質問者の都合がありますから、結論をお急ぎ願います。
  26. 兒玉末男

    兒玉委員 農林大臣がきのうから要求しておってさっき来られたわけですが、これは一番問題の本質でありますので、先ほど大蔵大臣の農地開放に対する認識と私は多少見解が違いますので、この際主管大臣である農林大臣が来られましたので、お伺いしたいと存じます。  農林大臣は、今回のこの給付金法案について、私は先ほど来心理的影響ということの分析をいろいろ追及したわけですが、結局地主が相当な犠牲において開放した農地が不当に転売されたとか、あるいはまたこの開放によって相当多数の耕作農民に非常にしあわせをもたらしたとか、いろいろ言われておりますが、少なくとも私は昭和二十一年の自作農創設特別措置法ができて、そうして農地改革というものが、これは私は歴史の必然性といいますか、あのかつてない第二次大戦の終結を契機としまして、かつての植民地である満州なり朝鮮、台湾、樺太、こういう地域から多数の同胞が帰ってくるという情勢の中において、どのようにいたしましても過去における地主小作人、こういうような状態の中において、この改革は不要であったかどうか、この点について、その評価について農林大臣はどういうふうに御理解いただけるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  27. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 この農地改革というものは、再々申し上げておりますように、高く評価しておるのでございます。というのは、これが日本の当時からありまして、いまもそうなっております民主化ですか、民主化に相当貢献しておる。もう一つは荒廃した戦争中の農業を再建した。ことに食糧につきましては、一億飢餓におちいらんとするような状態でありましたが、この土地開放によりまして耕作者がその土地を所有した。こういうことで、自分の土地耕作ができるという意気込みから食糧の増産等にも相当寄与したために、一億国民の飢餓を救っていった、こういうようなこともありますので、この農地改革は相当の貢献をなした、こういうように認識しております。
  28. 兒玉末男

    兒玉委員 私は、いま大臣の答弁に明らかなとおり、やはりこの農地改革がもたらした意義というものはきわめて重大だと思うのですが、少なくとも農地というものは、実際に農地耕作する人がほんとうの利権を持つべきであって、自分では実際に農業に従事しないで、これを小作人につくらしてそれで気がねをしておる、こういう形において農業の発展はない。いま大臣の答弁にも明らかなとおり、当時における四百七十八万八千世帯が一応農地改革によって自作農としての立ち上がりをしたわけですが、この及ぼした影響というもの、この功績というものは、私はかつての地主が果たしてきた役割りより、より大きなものを持つものではなかろうかと考えるわけですが、この点についての比較について、農林大臣はどのような反論をされるのか、お聞かせをいただきたい。
  29. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これは日本に貢献したということに対して、かつての地主とその後の耕作者とを比較するというような比較が無理だと思います。比較の対象になりません。地主地主としてのそのときの存在理由はあったと思います。しかし、民主化してからは、地主ということではなくて、やはり耕作者として、農民としての寄与、こういう面で立ち直るといいますか、そういう面でございますので、かつての地主の寄与とかあるいはその後の状況と比較の対象にするのはいかがと思いますが、先ほど申し上げましたように、この改革というものは、日本のためにも、日本の国民のためにも非常に意義のある貢献をした、こういうふうに申し上げておるのであります。
  30. 兒玉末男

    兒玉委員 そうでありますならば、先ほど来いろいろ御質問しましたが、とにかく戦後の日本経済再建なり発展に寄与したのは、必ずしも地主だけが貢献したものではないということは、農林大臣自身もいまお認めになったとおりであります。そういうふうなこの二十年間の歴史の歩みというものを見てまいりますならば、あえて地主のほうだけにこういうような報償金なり給付金を与えなければいけないという根拠というものは、あらゆる角度から検討しましても、どうしても納得ができない。そのことについて特に私は農林大臣にも御質問したいことは、いままで政府の資料によりましても、とにかくそういうふうな最高裁判決をまつまでもなく、農地買収者等に対する被買収者問題調査会の答申、あるいは総理府に設けられました調査室の統計等から判断いたしましても、特にかつての地主であった人たちの生活状態にいたしましても、決して一般世帯よりも下ではないわけであります。しかも、むしろより上位にランクされておりますし、同時にまた収入別の十万、二十万、三十万、四十万、こういう統計等からいたしましても、かつての被買収者の場合においては、その所得において四十万円以上の所得者が全体の六八%、ところが一般の場合においては六〇%という低位にあるわけでありますし、しかもこの総理府の各統計等によりましても、これの妥当性につきましては、ほとんど六〇%以上こういう報償の必要性がないということがはっきり世論調査の結果にも出ておりますし、加えまして、この工藤調査会長の答申の結語としても、いわゆるこれらの点について、被買収者に対して巨額の金額を交付することは、諸般の情勢上適当でないとする意見が多かったという結論等から判断いたしましても、私は、特に農林大臣として、今日日本の置かれている農業政策というものが、特に農業構造改善事業等におきましても、まさに行き詰まりの状態にあるのではないかと考えるわけであります。そういう時点に立って、千四百五十六億という金がほんとうに前向きの姿勢で使われるとするならば、より多くの農民の今後の生活の安定と農業政策の向上に役立つものだと考えるわけでございますが、これらの答申の内容なりまた調査室の世論調査の結果等から推しましても、この給付金が妥当であるかどうかというふうに判断いたします前に、大臣としてはどのようにお考えになるか、御見解を承りたいと存じます。
  31. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私は、再々申し上げておりますように、このたびの措置、報償金を出す措置というものは、農政プロパーではございません。農政と離れた別個の立場からこういう金を出すということでございますので、これは農政面から考えたものではないというふうに私は理解しております。でありますので、農業面から申し上げますならば、やはり農地改革の基礎に立って、そうして農業を推進していかなければならない。最近でいいますならば、農業基本法の線に沿うてやっていかなければならない。でありますから、私は、農地改革によって推進すべきことをしなかった面が二つある。一つは、土地改良をする、基盤を整備することであります。農地改革をして、国が一たん所有して管理しておったのですから、そういうときに思い切って土地基盤を整備しておくべきであった。しかし、そういう整備をしておきませんから、その後におきましてこの土地の整備、基盤の整備を行なっておるような状況でございます。これは農政でございます。それからもう一つは、日本土地の経営の零細性であります。農地改革によって耕作権が所有権に移ったというだけでは、ほんとうの意味はなさない。この再配分といいますか、ほんとうは経営規模が大きくなるように日本農地改革がさらに進めておられなかったことが欠点だ、こういうように考えます。そういう意味のことを、いまからでもおそくないからやろう、私はこういうふうに考え、土地基盤の整備はいままでも着々やってきましたが、さらに強化する。あるいは日本の零細農の経営というものを、零細農から脱却するような方途を講じていきたい、こういうことが私は農政だと思います。でございますが、この報償金の交付ということは、農政とは別個の意味でいたしておりますので、私はこの点は農政として論ぜられては困ると思います。  そこで、しからばそういう金があるならば、もっと農業に、農政に使ったらいいじゃないか、これは一応ごもっともでございます。しかし、この金があるから農政のほうの金は出さないということだったら、これはゆゆしき問題でございますから、私はこういうことに反対せざるを得ない。しかし、これは農政と離れた金である。農政のほうには農政として十分の裏づけをしていく、またいかせなければならぬ、これは財政当局とも先ほど申し上げましたように話し合いをしております。それあるがために農政のほうの金を出さないということであったら、私は承知できませんけれども、そうでない、農政は農政として日本の農業を推進していくしかるべき財政の裏づけをする、こういうことでありますならば、農業政策とは別個の意味におきまして報償金を出すということにつきましては、私は賛意を表しております。
  32. 河本敏夫

    河本委員長 兒玉君に重ねて申し上げますが、先ほどの理事会の打ち合わせで、本会議開会までに社会党の三人の質疑を終えることになっております。結論をお急ぎ願いたいと思います。
  33. 兒玉末男

    兒玉委員 それでは委員長からそういう御注意がありましたので、あと二、三お伺いしたいと思いますが、先ほど長官答弁の中に非常に注意すべき発言があったと思うのです。それは今後農地転売がなされて、先ほど来再三答えておるように、非常に心理的影響をさらに拡大するように、かつての開放農地が無制限に転売されていく傾向にある。この点、私はやはり国の施策として、今後、農地は本来の農業の用に供さるべきものが、農業をするよりもやはり工業用地なりあるいは団地等に転売したほうが得だ、こういう思想が非常に今日農民の中に蔓延しているわけです。そういうときにおいて、特に農林大臣としてはこういうふうな被買収者問題を含めて、さらにそのような心理的影響を拡大する状況にあるということについて、ある程度今後の農地の利用区分等について長期の見通しと計画を立てる必要があると思いますが、この点についてどうお考えになりますか。特に転売等についてある程度の規制を考えていかなければ、今後の日本農業に重大な影響を及ぼそうかと思いますが、これらの点等についての見解を承りたいと思います。
  34. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御承知のように、農地法のできる前におきましては、農業に精進ある目的で開放された土地をほかのほうに転売するというような場合には、政府が売買権を持って政府がまた買い戻しておったわけでございます。ところが、農地法ができましてその制度がなくなりましたが、農地転売につきましては許可制をしき、あるいはまた農地の移動についても一々許可を得るということによりまして、その目的の一部分は達成したのであります。しかし、私はいま修正案を出すというわけにはまいりませんが、私の個人的な意見を申しますならば、地主心理的影響というものがある。心理的影響を緩和するということならば、転売する場合に旧地主に申し出て、私はほかへ売りたいのでございますが、あなたお買いになりませんか、すなわち地主の先買い権――これは地主から耕作人は買ったものではございません。国が一たん買って国から買ったものでございますけれども、旧所有者というものはあるものでございます。そこでほんとうは地主の心理的気持ちを緩和するということならば、いま修正案を出す気持ちはございませんけれども、私の私見を申し上げますならば、一応地主に対して、私はほかへ売るのでございますがお買いになりませんか――政府としても、そういう場合には旧地主に対していまの土地取得資金の融資でも幾らでもあります。そういうことについて旧地主が必要とあるならば――旧地主も、問題が起きているのは二反、三反という零細な旧地主が多いのですから、それで旧地主土地がほしいのです。でありますから、旧地主土地の先買い権を与えて、そうして申し出をさせて、そうして買うなら買ってもらう、買わないならほかの人へ売る、こういうような制度を併用すれば、これは転売の場合等におきます心理的緩和は非常にできるじゃないか。これは私見でございますが、修正案ではございません。そういうような気持ちも、私は持っておるのでございます。しかし、転売等につきましていろいろございますが、これにつきましては、やはりある程度の土地計画といいますか、農業地帯は農業地帯、あるいは工業地帯は工業地帯、住宅地帯は住宅地帯という一つ土地計画というものをさらに進めていかなくちゃならぬと、私は思います。そういう線に沿いまして、いまの農地法に行なわれておるところの制度等を活用する、あるいは農地法をときによっては改正していく、こういうことによりまして土地を最も有効に使っていく、こういうことが必要である、こう思います。
  35. 兒玉末男

    兒玉委員 私は、いまの大臣の答弁について多少疑問を持ちますが、いずれにいたしましても、この法案を出した意図というものが、そのような不要な――不要とは言いませんが、国の土地利用区分等による無策がもたらし、しかも土地の暴騰について何ら抑制の手を打ってこなかったというところにも一つの大きな原因があろうかと思うのですが、この際特に大蔵大臣にお聞きしたいことは、そういうふうな農地転用、流用等によって不当な、というとこれは言い方が足らないかと思いますが、せっかく開放された農地が、そういうふうな情勢の変化に伴って、何というのですか、巨大な利益を一部の人が得るということは、今後の農業政策上の重大な問題であろうかと思いますが、今後の土地価格の抑制という面等から、特に大蔵当局としては、今後の公営住宅の建設なり地方交付税の交付等についても重大な関連を持つ問題でございますが、このような土地の流動と、それから暴騰に対する措置について、これに関連する問題としてどういうふうにお考えになっているか、お聞かせいただきたいと思います。
  36. 田中角榮

    田中国務大臣 開放農地が他に転用されるということについて、土地政策上というよりも、農地政策上制限をしてはどうかという問題、よくわかります。わかりますが、現在の開放農地を他に転用して不当にもうける、これを抑制する手段というのは、いまの税法によって売買利益に対しては課税をする、これ以外にはないわけであります。これは先ほど申し上げたように、これはほんとうに一番初めに自作農をつくるためにこれを開放したのですから、農地以外に転用する場合には、これを旧地主に返すとか、国にまたこれを渡すとか、そうでなければ差益は徴収するとか、当時そういうふうに制度があれば今日のようにはならないわけでありますが、いま既得権でありますから、これに対して特別な税率をもって差益金を徴収するというのは、現在の憲法上できません、これは既得権でありますから。これはさんざん検討してみたのです。みたのですが、そういうことはできない。もう土地を自分の物にしてしまったわけでありますから、だからいまのいろいろな調整は、農地としてこれを残すためにどうするか、こういう農地の問題としてのこれからのいろいろな問題がございます。  一般的な土地問題、これはまあなかなかむずかしい問題でございます。ございますが、土地というものに対しては、人口計画、土地計画、国土計画、こういうものを出たとこ勝負ではなくて、明らかにこれから人口は十年たったら一体どうなるのか、日本土地というものはいまどうあって、工業的に使うもののパーセンテージがどの程度全産業の中に上がるのか、こういう計画等をつくりませんと、東京や大阪等に、これから十年の後に全人口の五割が過度に集中する、こういう状態ではどうにもならないわけであります。いまや新しい意味の国土計画、人口計画、それに産業計画を合わせる、こういう徹底した土地計画を立てる必要がある、私はこういう考え方でございます。
  37. 兒玉末男

    兒玉委員 最後に、いままでの答弁を聞きましても、いずれにしてもこの法案のよって立つところは、われわれはどうしても納得できない。同時に、最後に農林大臣に要望したいことは、これだけの金が、いずれはどうせ旧地主といえども農業を経営しているわけです。もう少し国家的な見地から、千四百、五十六億の金が利用できるように、いま少し農林大臣もひとつ腰を据えて大蔵大臣にぶっかかるべきだ。ただ御無理ごもっともだという低姿勢では、せっかくの赤城農政が泣くと思うのです。しかもこの法案というものは、からだだけは前に向いているけれども、エンジンのギアはバックにしてうしろを向くような法案であり、全国民は納得できないし、この千四百五十六億の金は、決して農業政策の前進には役立たない、こういう立場から強く反対の意思を表明いたしまして、私の質問を終わります。
  38. 河本敏夫

  39. 米内山義一郎

    ○米内山委員 まず、官房長官にお伺いします。  この化けものみたいな法律案が出まして、聞けば聞くほどわからなくなるわけです。なぜかと申しますと、この法律には根拠が不明なわけです。足がない。さらにこの法律の効果というものが一向明らかじゃない。いわば幽霊みたいなものを中心に論議するから、あなた方が答弁すればするほど欠陥が出てくる。そこで、まともなことを答えるには、むずかしいことばを必要としない。いいかげんなことをごまかそうとするから、くどいことばで長々と言わなければならぬ。ですから、この法律の目的を、国民がわかるように一口に言ってください。
  40. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 一口にと言われるとなかなかむずかしいのでありますが、米内山さんがおっしゃるように一口に申し上げますと、よいことをした人にはほうびを上げようということになると思います。御承知のように、戦後のいわゆる日本農地改革の成功は、これは資本主義の国と共産主義の国とを問わず、ひとしく称賛をしておるわけです。これは皆さんの御協力も大いにあずかって力があったと思うのでありますが、そういうりっぱな仕事がなし遂げられたのは、何と申しましても関係者の御協力にまつところが多い。したがって、当時買収されました土地を譲り受けましたいわゆる自作農創設者、これらの方々も、当時の改革協力せられたいわゆる旧地主といいましょうか、被買収者に対しては、心から好悪と感謝を持っておると思います。そういう意味で、一口に申せば、いいことをした者にはごほうびを上げようということになると考えます。それが報償であるというゆえんであると思います。その点が、御承知のように、今回の法案の趣旨説明をいたしました――総務長官からされたと思いまするが、その中にもこの点が強調せられ、かつまたこの農地改革というものに対する当時の被買収者の心理的な影響等も勘案されて、そこで今回こういうような報償法案といわれるような法案が必要になったゆえんである、かようにわれわれは理解いたしておるわけであります。
  41. 米内山義一郎

    ○米内山委員 それじゃお聞きします。  もう答弁がくどくなったです。ぼくは別に共産主義、資本主義を聞いたのじゃない。いわばこれは一口にほうび法律だということです。功労に対する手形、それじゃ賞勲局か恩給局でやればいいじゃないですか。しかも、農業に対する功労というなら、これは農林大臣にも関係があるが、一体政策を分類するとき、これは社会政策なのか、経済政策なのか、あるいは文教政策だが、防衛政策だか、こう分類してくれれば国民もわかりやすいが、常識的に分類するとどっちになりますか。
  42. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 政治の一半は、御承知のように、化学方程式のH2Oが水であるというようなわけにはまいらぬのでありまして、その中にはいろいろな要素が含まれておりますから、米内山さんがおっしゃるように、ある意味においては社会政策的な意味もあるだろうし、ある意味においては善行に対する褒賞的な考え方もあるだろうし、社会的な変化に伴ってそれらの措置が行なわれることは、やはり政治の要諦であろうと思います。単にいわゆるH2O式のだけでは解決のできないところに政治のうまみがあり、これは政治の大道であることは、ひとつ先生のほうでも御了解願えるだろうと思うのです。
  43. 米内山義一郎

    ○米内山委員 そういう政治の要諦だとすれば、わが国にも外国にもそういう例があるはずだが、われわれは寡聞にして知らない。一人二人や何かの功労者のこういう大がかりな褒賞というものは聞くことはあるが、一つの戦後の革命的な法律に基づいて行なわれたことについて報償を行なう、しかも二十年過ぎてから報償を行なうなんという事例は、わが国の政治の上歴史の上に例があるだろうか、ひとつ聞いておきたい。
  44. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 おっしゃるように、この法案はきのうきょう出したものではありません。数年前から政府はその意図を持って国会におはかりをいたしたのでありまするが、残念ながら今日までなお実現を見ておらない。  そこで各国の例でありまするが、もちろんこれは政治のあり方の違いもあります。御承知のように、欧米諸国は合理主義の政治が行なわれておる。日本は大隈侯ではありませんが、東西文明の接点に立って王道政治をやろう、こういう考え方がありますので、そこには違った考え方のもとに行なわれることは、あえて政治の要諦から考えて、これは東洋的でもある、かように御理解願ってけっこうだと思います。
  45. 米内山義一郎

    ○米内山委員 そのことばは全然納得いきません。しかし、こんなことにこだわっているわけにいきませんから、次の段階に進みましょう。  この一千五百億という金は、少ない金じゃないわけです。こういう金を使ってどういう効果が発生するか。同時に、逆に聞いてみましょう、やらなければどういう混乱が起きるのか。これは両面から聞いてみないとわからない。これは官房長官に……。
  46. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 金額の大小の問題は、所管の関係から大蔵大臣あるいは農林大臣等から御答弁がありましたろうから、私は数字の大小についてはお答え申し上げませんが、ただ御理解願いたいのは、いわゆる心理的影響、こういうものによって、お互いが政治のありがたさがわかる、いわゆる社会のある意味におけるそうしたあたたかい感情、こういうものが理解せられるということになれば、私はやはり大きな効果をあげ得るものであろうと思うのです。御承知のように、これは先ほど申し上げましたが、買収されました土地を受けましたいわゆる自作農創設者、昔でいうところの小作人といわれる方々が、こういう点についてはやはり政府が考えてほしいという気持ちがあるゆえんのものも、政治には涙あり温情ありというところにやはり政治の値打ちがあると考えて、そういう意味での効果は十分にあげ得ると考えております。
  47. 米内山義一郎

    ○米内山委員 涙は特定の者にだけ注ぐべきではない。もっと涙を雨よりも多く注がなければならない階層が今日拡大しておるんじゃないか。地主に限って雨を降らせるという自民党政治というものは、国民のだれから考えてもおかしい。  それからこれは大蔵大臣、きのうあなたはもやもやをなくすためにと言ったが、もやもやというのは、いま官房長官が言ったようなことですか。
  48. 田中角榮

    田中国務大臣 この法律案は、提案理由の説明にあるとおりの理由によって提出をして御審議をいただいておるわけでありますが、いろいろ御質問がありますので、この法律を提案した効果その他評価の面から考えますと、いろいろなことがございます。そのいろいろの中にあげたのが、もやもやがありますから、そのもやもやをなくすことにも大いに効果があります、こう申し上げた。しかし、これは笑いごとじゃない。まじめにお考えいただきたいのは、ここにちょうど松井さんもおりますが、土地問題というのはどこでもたいへんなことであります。が、一国の運命をかけての農地開放ということをやったわけであります。しかも小作争議の問題――土地問題に対しては長い闘争の歴史がある。それがなかなか実現しなかった。しかも敗戦というあの環境の中で、思い切って、占領軍のメモではありましたが、結果的には地主諸君の大乗的見地に立った協力によって、今日の成果を得たことは事実であります。ですが、その最終問題としてピリオドを打つという場合に、この間に対しては何もないのかということをひとつ考えていただきたい。あります。これはどこにもあるのです。それは先ほど御質問もございましたが、自作農という一つの大きな命題のために、地主諸君もこういうものに応じたわけなんです。ところが、それが自作農以外、農地以外に転用される。都市周辺は何百倍、何千倍、こういう金にもなる。それに対して特別な制限もない。ですから、当然その差益というものは徴収して何らかの処置をすべきだとか、追加払いをすべきだとか、いろいろな議論があった。ですから、これは人間、生きとし生ける者の社会にはあるのです。お互いが何か納得しない。法律的にはちゃんと適法である。しかし、何かもやもやしている。これは事実あります。ですから、農地開放というような大きなものの陰にあるのです。とにかくそれはあたりまえだ、かつてさんざん搾取したんだから当然だ、こういうような、小作地主になって、そういう感じ……。とにかく自分達が自作農のためにやったところに非常に大きな公団のビルが建って、毎日酒飲んで歩いている、こういうことで、テレビにも一つそういう物語が出ておりました。そういうことが事実あるのです。そういうことが何にもないように考えることは、独断であります。これは事実あります。ですから、これだけ大きな事業をなし遂げられて有終の美をなすということであれば、こういう処置でもって有終の美をなしたいということでありますが、私は、そうしたもやもやに対してもこれでもってとにかく終止符を打ってもらたい。政治の上では、そういうことを考えなければならない。事実そのとおりであります。ですから、私がただもやもやと言ったのは、これは言えばわかることであって、そういうことを事こまかにいまの時期において赤裸々に人の前に出していい問題ではありませんが、とにかくもやもやがある、そういうものをなくする効果もあります。こういうことを申し上げたのでございまして、そういうことは、政府がやらなければならぬ仕事なんです。民生の安定、国民福祉の向上のためにこそこういう施策は必要なのでありますから、これはやらぬでいいということは認識の違うのであって、あなた方も政府立場になれば、もっとやろうということになります。
  49. 米内山義一郎

    ○米内山委員 答弁者に申し上げますが、こっちはなるたけ時間を節約して簡潔に質問するが、十倍も長く答弁する、それでは時間がなくなります。もっと簡潔に――日本には俳句という便利なものもあるので、よけいなことは言わないでもいい。  これは実は官房長官にも申し上げておきたいが、この化けもの法律根拠不明の法律は、理を尽くして法律にするならば別ですが、理を尽くさない前に強行採決などということになると、これはたいへんだと思う。われわれは知っております。議会政治というものはどういうものか、これは多数決できめるべきものだが、ただし条件がある。理が五分と五分の場合は多数決でもいい。理のないものが数だけをたよってやるということは、会政治の否定になります。しかも、現在は日本の民主主義、議会政治の危機ではないのですか。自民党は多数の上にあぐらをかく。いまの制度では多数が権力を持つにきまっておる。東京都のあれをごらんなさい。都政の中の自民党首脳部は、いる場所を刑務所に変えておるじゃありませんか。一事が万事なんです。  そこで、さっき大蔵大臣も言ったが、理論を通して、理を尽くしてやりましょうというから、もっとわかりやすく答弁していただきたい。いいですか、ぼくはきのうからあなたの答弁を聞いていますと、何かウグイスの谷渡りを聞いておるようだ。浪花節という人もあるけれども、国会ではそういう答弁は通用しない、私はそう思う。特に大蔵大臣というものは、閣僚の中でも重大なんです。金の取り方と使い方をきめるものでしょう。しかもその際に、きのうは、わが国はこういう報償もできるようになったというふうに、一千五百億という金はあたかも大金でないような印象をわれわれに与えている。しかも根拠不明のもやもやを払うというならば、政治というものは――あなたはさっき高度の政治性とおっしゃったが、これは、きょうよくなければだめだ。あしたはもっとよくならなければいけないんだ。きょうはどうかこうか済めばあすはどうなってもいいというのは、高度の政治性ではない。ここで、さらにもう一つ、特に財政担当の大臣にぼくが申し上げておきたいことは、ものには順序があるということ、どんな正しいことでも、順序を間違うと悪い政治になるのです。結果的に悪くなる。あなたはこの順序を間違えておる。もやもやを直すならば、東京のスモッグを直しなさい。一千万近い人間の肉体をおさかれて、住むにたえない首都になっておる。宮城周辺の松まで色を変えておる。一千五百億をかけたら、これを退治するめどがつくのではないですか。どっちに緊急の度があるか。希硫酸をつくるとき、水に硫酸をまぜるか、硫酸に水を注ぐかで結果が違う。あなたはそういうことを考えて答弁なさっておるかどうか、ぼくは疑問なんです。そういう観点に立って私は質問を続けていきますけれども、大蔵大臣、この一千五百億という金は、いまの三兆になったか何か知らぬが、昔の算術から見れば天文学的な数字であるが、大きい金ですか、小さい金ですか。
  50. 田中角榮

    田中国務大臣 これはまさに大きい金であります。国民の税金には、一円でも大きい金、小さい金の区別はありません。一銭でも一厘でも重大に考えております。
  51. 米内山義一郎

    ○米内山委員 農林大臣にお伺いいたします。  この金はプロパーの農政ではないとおっしゃった、全くそのとおり。だが、私は不本意であるが、これを出すからといって農林予算は削られないから、しぶしぶ同意しているというような御答弁だったと思う。そうだとすれば、あなたは予算をとればいいという属僚にすぎないのだ。大局的な見地に立って農業政策を進めるに、一体あなたは十分だと思っていますか。われわれの見解では、現在の赤城農政、佐藤内閣には農業政策なしと言ってもいい。(「大いにある。」と呼ぶ者あり)ではお聞きしましょう。われわれは、いま村へ行けば農民から聞かれるのは何かというと、何をやればいいかということを聞かれる。酪農をやろうと思って牛を飼えば、転落しようとしている。鶏飼えば、卵安く、えさが高い。豚を飼えばブタをつかむという状態です。あなた方は構造改善だ、選択的拡大だと農民のわからないことばを使うが、では農民のこういう質問、願いに答えてください。いまの農民は何をやれば経営ができるか、簡単に教えてください。
  52. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 牛を飼えばだめだ、鶏を飼えばだめだ、これは批判家の言っていることです。実際にやっている人は、ちゃんと自分のやることをやっています。そのやっていることをよくしようとしてわれわれが骨を折っているのです。農民の生活からいっても、戦前といま、地主農地開放する時代の農業と農民といまの時代と比較してごらんなさい。これで農政ないと言えますか。また、日本で農政が一番大事なんです。あなた方が心配している以上に、責任者としての私どもは農業に対して重点的に心配しています。ですが、農業というものは一日でよくなるものじゃございません。よくなるものではございませんが、これを長い目で見ますならば、土地の改良におきましても、あるいは農業の経営におきましても、それは他産業と比較してそれほどにいっていないということは言えます。しかし、農業自体から言いましたらば、相当進んでいる。それは見違えるようにいっています。しかし、それだからいいと私は思っておりません。まだまだやらなければならない。でございますから、農業に対してもそういう財政措置は講じていかなければならないと思います。しかし、私は、農林大臣だけではございません、国務大臣でありますから、農業だけの予算を取ればいいというわけにはいきません。農業の予算は取らなければなりませんが、ほかの政策につきましても、私はその政策に協調すべきものについては協調していくという態度でおります。
  53. 米内山義一郎

    ○米内山委員 ものは比べようということであります。昔の農業といまの農業と比べてあなたは満足なさっていられるかもしれないが、他産業との問題、それから農村はいま若い者がいなくなり、嫁さえいない。しかも子供の教育にも困難し、病めば薬代、入院費に困っている。人間の最小限度の願いは何だと思っていますか。子供の教育ができ、病みわずらいの心配がない、せめて六十こえたら重い労働から解放されたいというのは、金持ちになりたい、報償もらいたいという願いよりも、最もつつましい最小限度の願いだ。こういう観点に立ったとき、あなたの農政は、この農民の最小限度の要請にこたえていると思うか。(「十分こたえている。」と呼ぶ者あり)逆です。嫁さえない村です。しかも一たん隠居になった人がもう一度現役に返らなければならぬこの農村の実情を、統計だけから見て、いわばいまはやりのマクロに見れば、農業はいい、こういうことだが、一つのものを虫めがねで見ようが、顕微鏡を逆にしようが、農村は農村なんだ、ごまかしを言いなさるなよ。農村の実態に即して、もっと農業政策というものを重要視しなければいかぬ。  では、一つ一つ指摘しましょう。大蔵大臣も聞いていただきたい。農林予算というものは、ある部門においてはむだも多い。少ない金でも効果のあるものが、大蔵官僚のもの知らずのために削られて、いかに現場がおくれているかという事実を私は申し上げてみたい。これはあとで詳しく議論しますが、いま冷害でしょう。これはたいへんなことでしょう。百万トンくらい減ることは明らかだ。こういう稲の冷害防止のために、一体どれだけの金を国が注いで、どれだけの効果をあげたかということを調べてごらんなさい。まるきりやらなかったと同じだ。去年北海道の冷害があったから、北海道には九千六百万ばかりの施設をつくったから、その部分だけふくれていますが、冷害というのは自然現象であるが、そういう意味でひとつの政治冷害なんです。大臣は、こういう点でいまの冷害問題一つをとらまえてみて、農林省のこれまでのあれが、予算の上でも努力の上でも十分であったと言える根拠があったら、ひとつ御答弁願いたい。
  54. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御承知でございましょう、あなたのほうのくにの昭和二年、三年ごろの東北の冷害、東北冷害で、食べるものがなくて汽車から弁当を投げたのを子供らが拾って食べたという、こういう例があったでしょう。こういう冷害でひどかった。こういう冷害がいま少なくなってきたんですよ。品種の改良もできてくる。それから早く植え早く収穫する、その他農業技術、それから社会のいろいろな制度、そういう点から、東北には冷害がもうなくなったというくらいまでに農政というものは進んでいるのです。北海道には残念ながら去年ありました。ことしは全国的に冷害の様相はあります。様相はありますが、昭和二、三年、あのころの農業恐慌の時代、あの時代の東北の冷害などと比較しましたならば、農業がどれくらい進んできたか、また進んだ政策を行なってきたか。土地改良なども、冷害を克服する大きな原因でございます。こういう点においても、東北などにおいて相当な土地改良ができておる。それから農村が教育したいという点、教育などについても、いま高等学校に入っている人がどれくらい前より多くなっているか。高等学校などにはほとんど入っています。そういう就学の状況などを見ましても、決して農業を拾てておるわけではございません。しかし、先ほども言いますように、あなたが指摘していますように、それで満足しているのじゃありません。満足しているどころか、これが農業にもっと力を入れなくちゃならぬ。しかし、なかなか農業というものは一年でそうすぐよくなるというわけにはまいりませんから、時日をかしてもらわなくちゃなりませんけれども、決して満足はしておりません。御趣旨に沿うように、私も大いにやらなくちゃならぬ、こう考えております。
  55. 米内山義一郎

    ○米内山委員 いや、それは農業というものは早く片づかないということは、私も知っています。それだけに手抜きができないということです。そういう意味です。私は、それは昭和に入ってから、あるいは戦後農業技術の発展したことも、生産力の大きくなったことも、評価しています。知っています。ただ、別な現象で、農業はこの程度のことでは耐え切れない状態になっている。これは大臣もおわかりのことと思います。ですから、政治というものは、もう一つ問題がある。どうならばなれということじゃもちろんだめでしょう。早くなければならない、よくなければならない。よくなければならない、早くなければならないというのは、高度の政治性というものです。よそが忙しいからといって、これを手抜きをするような農政はだめです。しかも、なぜ私はこの農地報償法の問題でこの問題に言及するかと申しますと、この法案は、国民の圧倒的多数は割り切れないものがあると思う。中でも農民はこの法律に対して理解困難だと思う。なぜかというと、農民は国に要求しているもっとスズメの涙ほど小さいものがいれられていないんです。しかもこれはきょうから明日の問題です。十何年前のためにこういう天文学的――農村から見ると、これは天文学的な数字です。青森県の予算から見ると、四年分ある。これをこう簡単なことに使われるということに対して、農民は容易ならざる抵抗を示す。私は、そういう意味でこの問題はあやまちがあると思う。しかも対価が安いというなら、補償すればいい。気の毒料みたいなことに金を出すということはおかしいじゃないですか。  農林大臣にお聞きしますが、地主農地改革協力したようなお話をしますが、結果的にはそういうことになっています。では、農地改革以来、農地改革に反対して訴訟をやった件数は何万件ありますか。最高裁判決があったから引き潮のように引いてしまったが、現にまだあの当時の農地改革で大山地主や山林会社が訴訟を継続中じゃないですか。当然あの法律において農耕地として収用されるべきものが、金にまかせて弁護士を頼んで、地裁から高裁、最高裁まで争っているうちに、十何年経過した。この事務は、国の地方県知事に対する委託事務で、その経費は国が負担しなければならない。ところが、この経費は減らす一方でしょう。地方財政はやることはできないから、示談示談というふうにしてじだんだ踏んでいる。こういうふうな実態をあなた方は考えないで、地主協力したなどということは、地主を理解しないものなんです。地主協力的でしたよ。協力的な地主もある。いま補償をほしがっているのは、村長にもなれないブローカーみたいなのだけが地主会に寄生している。そうではない清潔な人たちは、農地改革に感謝しているのだ。これで救われているのです。考えてごらんなさい。人間のしあわせというものは、物を持っただけじゃないんだ。生産労働を忘れて寄生虫のような地主生活は、地主層の子孫を不幸にしている。農地改革によって生産労働に目ざめた人たちは、社会党へ入って、県会議員になっている人もある。何も農地改革地主全体を不幸にしているものじゃない。分けなさい。  それからもう一つ、どういうときにショックが起きたかというと、転売が許されたときだと言いますが、これはかなりあとでしょう。しかも、これは全部じゃない。村へ行ってごらんなさい。挙家離村というが、部落がなくなるような土地がある。ここでは転売も値上がりもない。こういう地主さんは、小作人であった農民が没落するのに涙を流している。都市近傍の地説さんは、十何年たってから、あの土地が坪何万円に売れたといって腹が立つかもしれないが、こういう考え方は高度な考え方といわれますか。隣が蔵を建てると腹が立つというのは、昔の地主根性だ。こういう低級な思想で、これを国があげて報償するなんということは、ほんとうの意味農地改革協力し、そうしてその後の農業発展の成果を喜んでいる旧地主の諸君に対しては、失敬に当たるとさえ私は思う。こういう観点に対して大蔵大臣、農地問題や地主小作関係にずいぶん詳しいようだが、あなたの地方の地主さんはどういう心境でおられるか、ひとつ聞かしてもらいたい。
  56. 田中角榮

    田中国務大臣 たいへん長いこと御説は十分拝承いたしました。旧地主小作との間にはいろいろな問題もあります。ありますが、私たちは、こういう措置をすることによって、この農地開放という大事業に終止符を打ちたい、全く名実ともに終止符を打ちたい、こう考えております。地主の皆さんも、政府がおそまきながらもこの大事業に対して協力をした地主に対して何らかの報償をやろうということで、非常に安穏な気持ちになっておられると思います。やはりいいことをしておけば、人もこれを顕彰するのだ、こういう多小安穏な気持ちでおられるのではないかと考えられます。
  57. 河本敏夫

    河本委員長 米内山君に重ねて申し上げますが、だいぶん時間も経過いたしましたので、結論をお急ぎ願いたいと思います。
  58. 米内山義一郎

    ○米内山委員 たったそれだけですか、この法律意味は。
  59. 田中角榮

    田中国務大臣 るる申し述べれば長過ぎると言われますし、御質問に簡単に答えればそれだけですか、それだけじゃないのです。もうきょうもきのうもおとといも、ずっと御質問に答えておるのですから、そんな端的な理由で本法案を提出したのじゃありません。
  60. 河本敏夫

    河本委員長 米内山君、先ほどの理事会の打ち合わせで、あともう一人本会議までに質疑をせられる予定になっておりますから、結論をお急ぎ願いたいと思います。
  61. 米内山義一郎

    ○米内山委員 たったそれだけかというのは、長く聞きたいという意味じゃない。あとあるならもっと聞きたいということですが、大蔵大臣、あなたが財政支出を決裁するとき、これだけの金を出せば、これだけの効果があがるということは、これは村長さんでも考えることだが、この支出によって起こる効果というものをどういうふうな意味で、何と比べてどの程度か。何ゆえにこれを十年も延ばしたかということ、前からの事実をやるということは、緊急性がないということと理解してもいいわけです。何のショックでいまここに一千五百億に近い国民の負担を伴うあれをやったか。その効果はどうか。どういうふうな観点に立ってやったのか。
  62. 田中角榮

    田中国務大臣 もうるる申し述べておりますとおり、国民の税金を預かっておるのでありますから、これがただ易々諾々として本法律案に簡単に賛成したのじゃありません。長いこと、これよりもなお他に投資をすることがより国民的なプラスではないかとか、いろいろな経過を経て、そうして最終的に内閣として御審議の法案をきめたわけでございます。これはもう内閣は連帯して国会に責任を負っておるのでございまして、最終的にはこういう必要性がある、こういう内閣全体としての決定によって提出したわけでございます。  その効果というのは、もうるる申し述べておりますように、国の中に、こういう大きな大事業をしたことに対して顕彰するといいますか、報償する、こういう必要性を感じたわけでございますし、そうすることによってこの大事業に有終の美を飾る、こういうことは、これは国として考えても効果あり、こう認定すべきであります。
  63. 米内山義一郎

    ○米内山委員 ぼつぼつ結論をつけますが、大体そういう考え方はわからぬことでもないが、一つわかっても、もっとわからないことがある。地主だけが戦後の農業建設や国の経済に貢献したのかということは、これは第一問題点です。少数が大事か、多数の犠牲が尊ばれなければならないかということです。こういう報償などをやるならば、公正にやらないと逆効果が生ずるものです。かわいい子供にだけ賞品をくれて、かわいくない者は、できても落第させるというようなことは、あり得ない。いままでこういうことがある。いわゆる終戦直後のやみ値と強制供出価格の差の犠牲が論及されましたが、まだまだ多いんですよ。特に額に汗している農民階級に多い。戦争中徴兵保険というのがあった。これは満期になっても三百円か五百円しか取れない。娘が嫁に行くときのたんす、長もちという意味で、一日七十銭か八十銭の手内職で一カ月三円くらいの掛け金を十年かけて戦争になった。五百円受け取ったら座ぶとん一枚買えないという犠牲も、農民の中にはある。こういう人たちはどうしておる。別に国家に要求していないでしょう。ただ、こういうことをやりますと、眠っている子を起こすような結果になるのではないか。この問題は、理を尽くさない前に強行採決などやるということは、政治的に問題がある。その次には一波が万波を呼ぶ。日本経済財政にさえ及ぼしかねない心配があるんです。いまの自民党政府としては、この種の戦争犠牲者というか、敗戦後の経済建設の協力犠牲者に対して、あともっと重大なものがあってもやるつもりなのか、やらないつもりなのか、この点をひとつ官房長官、はっきりしてください。
  64. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 これに関連してほかの問題も今後扱うのかというお話でありますが、政府としてはその問題については考えておりません。
  65. 米内山義一郎

    ○米内山委員 自民党としてはどうでしょう。
  66. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 私は、政府のほうの官房長官でありますから、党のほうのことは答弁の限りでありません。
  67. 米内山義一郎

    ○米内山委員 それじゃ、これは五月七日の青森県の東奥日報という新聞記事ですが、五月五日に、青森県におきまして在外財産補償を要求する引き揚げ者の大会があった。ここにはこう書いてある。「引揚者団体連合会長の川島自民党副総裁はつごうにより来青できなかったが、代わって荒舩自民党副総務会長はじめ、大浜早大総長、秋田大助代議士(在外財産問題審議会委員)、全国引揚者団体常任理事」その他が出席し、また県内からは森田、田澤、熊谷、竹内の各代議士が出席した。そうしてこういう決議をしている。一つ、「内閣在外財産問題審議会は八月までに答申することを要求する」「一月三十日の東京高裁の判決(国家に補償義務あり、しかし法律がないから補償はできない)を尊重してすみやかに補償法制定を政府に要求する」、こういうふうなことを、政府与党が要求する側と通謀――じゃない、扇動しながらやっているんじゃないか。こういう事態に対して、自民党の内閣として一体どういう責任を持つんですか。
  68. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 ちょっと米内山さんに御理解願いたいのは、この法案は戦後処理の法案でないということは、総理大臣が衆参両院の本会議において明確に答弁をしております。戦後処理ではありません。戦後処理の問題ではなくして、農地改革という問題に関する報償、一種の報償法案であって、いわゆる戦後処理の法案ではない。したがって、いまおっしゃったことは、御質問の趣旨は、この法案をもって戦後処理の一つであるというお考え方のもとに御質問のようでありまするが、政府としては、この法案は戦後処理の問題ではない。明らかに土地改良問題から出てきたところの報償法案である。いま在外財産の問題が出ましたが、御承知のように審議会ができておりますので、したがって、この問題については、いまは答弁の限りではありません。要するに、この法案が戦後処理法案でないということをひとつ御理解願わないと、いわゆるこの御質問の趣旨とは食い違った答弁にもなりますので、その点だけは明確にしておきたいと思います。
  69. 米内山義一郎

    ○米内山委員 さっきの答弁だと、やらなければならなければやるというようなこともあったりしていますが、そこで大蔵大臣、いまの物価高の基本的な要因は一種のインフレだと思いますが、そうじゃないでしょうか。
  70. 田中角榮

    田中国務大臣 どういうことですか。よくわかりませんから、もう一ぺん……。
  71. 米内山義一郎

    ○米内山委員 あなた、聞いてないな。(田中国務大臣「いや、聞いています」と呼ぶ)あなたはとにかく自民党内でも非常に将来性のある若い大臣だから、もっとまじめな態度で答弁していただきたい。口先だけのまじめではだめですよ。やはり高度な政治性というものは、口だけから出るんじゃないんだ。われわれが質問しているとき、考えているのかどうか知らぬが、その態度もけしからぬし、その態度もおかしいんだ。議員の質問を、答弁に来ていて聞かないで、あのとおりびっくりしたような顔をするのはおかしい。もっとしっかりしてください。いままでこういうふうな……。
  72. 田中角榮

    田中国務大臣 私が聞いておらなかったのではないのです。速記録を見ていただけばよくわかると思いますが、あなたの御発言のほうが少し明確を欠いております。この法律案はインフレというものを要因にして出したのかという質問かと思いましたが、あなたはそういう前提がない。だから、全くいまはインフレですかと、中核のない発言でありますから、私は再度の御発言を求めたので、私が変なかっこうをしておったのではありませんから……。
  73. 米内山義一郎

    ○米内山委員 いま一番問題なのは物価高です。物価高の原因をなしているのはインフレだ、そうではないか。これはどういうわけで聞くかというと、こういうふうに放漫な、出さなければ出さなくても済むかもしれない、延ばせば延ばしてもいいものを、もっと緊急なものもないわけではないのに、こんな安易な財政というものをやるならば、物価高を押えるために、国民生活を安定するための財政というものに、われわれは心配を抱かざるを得ない、そういう観点でお聞きしたのです。その点に対してお答えを願いたい。
  74. 田中角榮

    田中国務大臣 明確に申し上げますと、このような財政支出を行なうということはインフレ要因にならないか、こういうお考えで御質問のようでございますが、この法案が通った場合でも、十カ年間に均等償還をするわけでございますし、これが譲渡等禁止されております。ですから、その年度における分だけが現金化される、こういうことであります。しかも、この額だけ公債で金を集めるというのではなく、その年度の経常収入の中から分割して支払われるということでありますから、理論的にも、実際的にも、本法が通過をしたことによってインフレ要因になるというふうには考えられないわけであります。  第二の問題の、とにかく物価を押えなければならないという一般的な考えの中で、放慢財政式なものはどうか、こういうことが第二の質問だと思いますが、私も、二四%対前年度比増額をされた予算に対して、一七%、一四%、一二%と、こういうふうにだんだんと対前年度比一般会計の伸びも押えてまいっておりますし、とにかく物価問題にはまつ正面から取り組まなければならない内閣でありますから、物価の問題、インフレ要因になるというようなことがあれば、非常に厳密な考え方でこれに対処しております。この法律案は、インフレ要因、インフレ的なものではないという考え方でございます。
  75. 米内山義一郎

    ○米内山委員 これでやめます。先ほどから少し乱暴な質問をしましたが、まあ結論的にはほうび法律、そうして農地買収開放ではなくて――対価が低いのではないが、後段にその転売が許されるようになってからの地主の受けたショック料、そのための一千五百億ということしか説明がない。そうして一千五百億に対する経済的な効果というものは、何ら算定の基準も示されない。ただもやもやした中に一千五百億を出す法律案だと理解します。こういう法律案には国民は反対であろうと私は思います。  これで私の質疑を打ち切ります。
  76. 河本敏夫

    河本委員長 本会議散会後再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後一時三十一分休憩      ――――◇―――――    午後四時三十二分開議
  77. 河本敏夫

    河本委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  質疑を続行いたします。只松祐治君。
  78. 只松祐治

    ○只松委員 厚生省関係から御質問をいたそうと思っておりましたが、担当官がお見えでないようでございますから、あとにする予定の農林省関係の予算について若干お伺いしたいと思います。  本年度の予算は三兆六千億に及んでおりますが、その中で農林省の予算は幾らになっておりますか。直接は三千三百億、総合いたしましても三千六百億、こういうことになっておりまして、いわゆる一〇%内外、こういうことであるわけでございますが、まあ間違いはございませんかといえば、そのとおりだと思いますが、間違いございませんか。
  79. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 間違いございません。三千七百億で、約一〇%でございます。
  80. 只松祐治

    ○只松委員 そういたしますと、いままでほとんどの委員がそういう面について御質問があったわけでございますが、今度提案されております本法案に要します費用というのは、この本年度農林省予算の何%に相当いたしますか。
  81. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 事務当局をして計算させます。
  82. 八塚陽介

    八塚政府委員 十年間で千四百五十六億、単年度で百五十億でございます。先ほど農林大臣お答えになりました農林省予算は単年度であると存じますので、三千七百億分の百五十億、約四%ということになろうかと思います。
  83. 只松祐治

    ○只松委員 本年度予算に対しては何%になりますか。
  84. 八塚陽介

    八塚政府委員 本年度は、私どものほうの千四百五十六億は計上されておりません。これは全予算に対してでございますか。
  85. 只松祐治

    ○只松委員 そうです。
  86. 八塚陽介

    八塚政府委員 そういたしますと、約〇・四%ということになろうと思います。非常に大ざっぱでございますが、農林省三千七百億、全予算三兆四千億でございますか五千億でございますから………。
  87. 只松祐治

    ○只松委員 農林省予算に対して何%……。
  88. 八塚陽介

    八塚政府委員 農林省予算は、ただいま申しましたように、本年度はわがほうといいますか、被買収者問題に対します予算は四億八千万でございます。これはつまり被買収者に対する給付金ではございません。給付金は、この国会でこの法案が成立いたしますと、実際に第一年度の償還にかかるのが四十一年度でございますから、本年度は給付金の予算はございません。
  89. 只松祐治

    ○只松委員 単年度にいたしまして四・五%、本年度の予算に引き直すと、四〇%をこすことに一千四百五十億というのはなるわけなんです。こういうふうな膨大な予算、これは農林省関係の予算をごらんになると、これはあなたたちは専門家だからおわかりでございますが、たとえば被害という意味から、たとえば鉱害というようなもの、鉱害も、これは国のために石炭を掘るわけなんです。石炭を掘って、農地が陥没したりする、こういうことのために鉱害というのがあるわけです。この予算は幾らになっておるか。十六億くらいなものでしょう。幾らですか。
  90. 石田朗

    石田説明員 いま調べましてお答え申し上げます。――鉱害復旧事業費は、四十年度におきまして二十六億三千万円でございます。
  91. 只松祐治

    ○只松委員 いまお答えのとおり、わずかな額でございます。単年度百五十億の農地補償を通ればするということになるのですが、あとでこれがどういう被害に対する補償であるかということも、私は、戦争被害としていろいろお尋ねをしたいと思うのですけれども農地関係の被害ということにいま一点焦点を合わしてしぼりましても、これは鉱害というのは、北九州へ行ってごらんなさい。遠賀郡からずっと――私も生まれそのものが九州なわけなんでございますが、もともと北九州は非常な美田だったのですけれども、この美田が、炭鉱で下を掘って、特に戦時中、戦後の乱掘のために陥没する。そうして美田というものが、一望千里アシがはえております。たんぼではなくなってしまっておりますが、これに対する十分な補償というものは、いままで行なわれておりません。いまの予算案を見ましても、これはわずかなものでございます。年々北九州なり福岡県から鉱害復旧のためにどれだけ激しい陳情団が参っておるかということは、御承知のとおりだと思うのです。この鉱害復旧はこれで十分だ、こういうふうにお思いになっているわけですか、どうです。
  92. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 予算で適当に土地改良をやっておりますし、いままでの要求には満ちておるといいますか、地元からの要求にはこたえておるようであります。
  93. 只松祐治

    ○只松委員 いま地元からの要求には十分こたえておる――十分ということばは使われませんが、こたえておるということです。十分であるかちょっとこたえておるか、こたえるにもいろいろあるわけなんです。試験の答案だって、百点の満足な答案もあれば、十点の答案もあるわけなんです。ただこたえておるではどうしようもない。私も福岡の出身で、北九州市長も私の友人ですから、そういう事情もよく知っております。したがって、こたえておるということでは答弁にはならないと思うのです。十分にこたえておるかどうか。どうです。私は、十分にはこたえておらないと思うのです。これで十分といえば、北九州の農民はえらいことおこってしまうと思うのですが、これは十分ですか。
  94. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 何でも十分というわけにはいきません。たいてい不十分でございます。不十分でございますが、予算は、地元の要求といいますか、要望にこたえまして、どことどこと土地改良してくれ、こういうような鉱害による土地改良の希望がありますので、それに見合って大体予算を計上しておる。でございますから、十分ではございませんが、見合った予算であると思います。
  95. 只松祐治

    ○只松委員 十分であると答えられようはずがございません。あれも少し金さえかければ、それこそ美田に還元することが十分にできるわけなんです。あるいは美田に還元できなくても、これは住宅なんかに幾らだって使える。これがそのままに放置されておりますから、北九州の沿線は見渡す限りの、ハスのたんぼになっておるのはまだいいほうでございまして、ハス田ではなくて、そのまま放置してアシの原になってしまっておる。日本の国土が、鉱害のためとはいえ、こうやって放置されておる。これを復旧すれば、復旧する費用をつぎ込めば、方法があるわけなんです。こういうものを放置しておいて、あなたたちは別に必要でもない一あなたたちは必要といってやっておられるのかしれぬけれども、われわれ日本国民から見れば必要でない農地報償というような、一度最高裁で明確な判決まで下っておるものに、どろぼうに追い銭ということはたいへん失礼な言い方でございますけれども報償的なお金を出そう、こういうことであるわけなんですが、これは全く本末転倒もはなはだしいと私は思うのです。どうです、農林大臣として、こういう不急不要のものではなくて、北九州の鉱害で美田がもうアシの原になっておる、こういうものを取り急ぎ水田化する、あるいは住宅難のおりからこれを住宅地に転用する、こういうことも十二分に、一千億からの膨大な金をかければこれはいつでもそういうことになるわけなんですが、これは必要だとお考えになりませんか、どうです。
  96. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 一つの例を引かれましたが、私は再々申し上げておりますように、この報償という問題は、農政として取り扱っておるのではないのでございます。国の別途の考え方からこういう金を出そう、出すのが至当だ、こういうことでやっておるのでございます。でございますから、農政は農政として、たとえばいまの鉱害なら鉱害に対しましては、もっと要求がありますならばそれに沿うだけの予算もつけますし、そういうような態度で農政は農政として進めていくことに変わりはありません。これも十分だとは私は考えておりません。
  97. 只松祐治

    ○只松委員 いま農林大臣のほうから、農政ではなくて国全体の立場からと、こういうお話があったわけでございますが、それでは話を私はそっちに進めてみたいと思うのです。  いまおっしゃった意味は、おそらく広範な意味の戦争被害、直接の被害というよりも、戦争による社会構造の変化に伴って、そしてこの被害を補償する、こういう意味だと私は思うのです。そうすると、援護局長、総務長官でもけっこうでございますが、戦争被害というものは一体どういうものがあるか、日本国民が受けた戦争の被害についてここでお話を承りたい。
  98. 臼井莊一

    臼井政府委員 戦争被害というと非常に広範囲になるわけでありますが、その中でも一番目立っておりますものは、応召軍人の戦死、戦傷、またその家族の受けた痛手、あるいはまた海外にあって引き揚げてきた方々、それからそのほか内地におきまして戦争に協力のために軍人に準じていろいろ働かれた方々、さらにそのほか戦災による死傷者の方もあります。あるいはまた原爆による被害者の方もあります。さらには範囲をもっと広げれば、疎開とかあるいは爆撃によって損傷を受けられた方々、非常に広範囲にわたるわけであります。
  99. 只松祐治

    ○只松委員 いま戦争の被害あるいは戦争により受けた損害のきわめて顕著なものの中の一部のお話をされました。しかし、いまあげられたようなものは、今次太平洋戦争による直接の被害、あるいはこういう社会構造の変化、農地改革のようにこの戦争に伴って生じてまいりました社会変革の結果できた犠牲者、そういうもののごく一部だと思うのです。たとえば非常に小さい、あるいは無形的な例から話をしますならば、この戦争で結婚の当事者をなくしまして婚期を逸していまなお結婚できない人々、こういう人々は半ば女性としての人生を喪失した。あるいはこういう話を出すともの笑いというようなことをおっしゃるかもしれませんけれども、その当事者である年齢の女性たちにとっては、これは非常に深刻な問題であるわけです。これは何ら目に見えておりません。しかし、そのことによって女性の一生というものをなくしております。こういういわば無形的な被害をはじめ、私も予備学年から大東亜戦争に持っていかれたのですが、私の友達もたくさん死にました。私は持っていかれたけれども、その間学業中途で大学卒業証書もおかでもらっておらない。もし官庁や何かに就職するとするなら、私は大学三年まで行っておって専門学校の取り扱いしか受けないのです。こういうものは、非常な無形の被害なんです。こういうことから始まりまして、いまおっしゃいました原爆の被災あるいは企業合同による被害、あるいは直接の戦災、あるいは家の立ちのきあるいは徴用、また問題になっておりますこういう農地の――私たちから見れば転用でございますけれども地主さんから見れば取り上げられた、こういう物的なものだけでなくて、私たちがこの世の中におって生存しておるその生命さえも奪われたり、あるいは大きく人血航路をくずされておる、こういうことが山ほどあるわけなんです。そういたしますと、政治というものは、ただ単に一部の者に、あるいは強い者に何らかの報償を与えたり、あるいは恩賞を与えたりすべきでないことは、もちろん言うまでもないわけでございます。しかし、この農地報償法案というものは、私たちがどんな角度から見ましても、全く特定の一部の者に恩恵を与えておる。しかもたびたび引例されておりますように、それは合法的であり、一ぺん国家が買収したものである、こういう最高裁の判例が出ている。一ぺんそれに該当する費用まで支払われておる。それが二十年たった今日、こらやって再び報償金を出そう、こういう形をとられておるわけなんですが、これはたいへんに政治の邪道だと私は思うのです。その内容に入る前に、総務長官として、そういう政治というものが一体あっていいのかどうか、こういうことについてひとつお伺いをいたしたいと思います。  それから大蔵大臣もせっかくお見えになりましたから、いままでそういう中で直接戦争犠牲者に払われた、あるいは農地報償のように、こうやって戦争の犠牲になったために支払われた費用というものは、幾らか、あるいは今後どれだけ支払われるか、あるいは、これは推定になりますけれども、私たちがこうやって学生から兵隊にとられた、こういうものが――私たちは一銭の恩恵にもあずかっておりませんが、私はこれまで補償しろとは申しませんけれども、こういう徴用や家の立ちのきや企業合同や、そういうことによって将来を誤ったり、あるいは生業を失った、こういう者まで補償しなければならぬとするならば、何百兆、何千兆の費用だと思うのです。そういうものが全部この農地報償のように支払われるとするならば、どれだけの費用が要るか、ひとつお答えをいただきたい。
  100. 臼井莊一

    臼井政府委員 先般のような世界大戦ともいわれるその一部である太平洋戦争では、これはもう非常な広範囲の犠牲者が出たことは周知のとおりなんです。したがいまして、多くの気の毒な方々がたくさんあられる。お互いさまどなたでも大なり小なりの犠牲、また苦しみというものを受けておるわけであります。しかし、今度の報償は、戦争の直接の犠牲によるいわゆる戦後処理というようなものとは違うのでありまして、それには大蔵大臣に御質問になったように、それぞれできる範囲内のことは、財政上のことも勘案してやっておるわけなんであります。しかし、この問題は、毎回申し上げておりますように、農地改革を遂行したことによって農村の民主化または日本の国内の民主化が非常にできて、ひいては食糧の増産となり、戦後のあの食糧危機も突破して今日の日本経済復興、経済成長の基をなした。それが一つ農地開放というものが短期間に、しかもこのような大きな改革ができたことであり、結果的にはこれに協力した旧地主の諸君に対してその功績をねぎらい、また心理的な強い影響を受けたことに対してねぎらおうということでございまして、したがって、いわゆる戦争中の犠牲者に対する手当てというものとはまた全然別個のものであるということを申し上げておきたいと思います。
  101. 田中角榮

    田中国務大臣 大体どのような戦争被害を受けたかという問題に対しては、国民全部が大なり小なり戦争の被害を受けておる、こう申し上げておきます。  それから、この法案は戦争被害とか戦後処理というものとは全然別な、一つの高度な政策的な処置であるということをひとつ明らかにしておきます。  それから、戦時関係でもって一体何をしたかということでございますが、戦傷病者戦没者遺族等援護法、末帰還者留守家族等援護法、引揚者給付金支給法、南方同胞援護会法、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律、連合国財産の返還等に伴う損失の処理等に関する法律、未帰還者に関する特別措置法、北方地域旧漁業権者等に対する特別措置に関する法律、戦没者等の妻に対する特別給付金支給法、戦傷病者特別援護法等々、いろいろなものがございます。金額の中で一番大きいものは引揚者の約五百億、妻に対する給付金約八百億余だと思いますが、こういうものがございます。数字がこまかく必要であれば、後ほど調べて申し上げます。
  102. 河本敏夫

    河本委員長 只松君に申し上げます。時間がだいぶ経過いたしておりますので、結論をお急ぎ願いたいと思います。
  103. 只松祐治

    ○只松委員 経過していない。まだ三十分たっていないよ。
  104. 河本敏夫

    河本委員長 只松君の質疑の時間につきましては、ごく簡単にやるという理事間の打ち合わせでございますので、簡単に願います。
  105. 只松祐治

    ○只松委員 いまお伺いいたしておりますと、何か戦争被害は戦争被害で、農地報償はそういうものとは全然別個に、何か近ごろ起きた政治的問題である、こういうふうに御答弁になっておりますけれども、これは私はたいへんな、心意では思い違いかもしれませんし、考え違いじゃないかと思います。いまちょっと話がありましたように、これは占領軍のメモランダムから発した占領政策の終戦処理の一還として起こってきたわけであります。これは太平洋戦争に伴う一連のものとして生じてきたことは、事実なのです。今日起こっておりますからこういうことが言えるわけでございますけれども、その本質と申しますか、よって立つ基盤というものは、やはり大東亜戦争によって、もしあなたたちがおっしゃる意味地主さん方が被害を受けたというふうにお考えになるならば、広義の意味の戦争による被害をお受けになった、こういうように私は考えるべきだろうと思う。何かこれが全然太平洋戦争と関係がなくて、別個なモメントあるいは力によってなされたとするならば、私もきのうあたりの連合審査会なんかの各大臣の答弁を聞いておりますけれども、いわゆる占領政策じゃなくて、農民運動なりあるいは社会主義運動なり、われわれの力の中からできたものなら、この農地開放というものは別個の形をとっておっただろうと思うのです。そうでなくて、こういう形になったのは、やはり太平洋戦争の終戦処理の一環として出てきたから、そこで皆さん方がいろいろなことを考えておられる、こういうことが皆さん方の理論的な正当な理論づけだろうと思うのです。そうでなくて、いまおっしゃっているように全然別個なものだ、こういうふうに御答弁なさるならば、これはまた全然別な角度からこの論議をしなければならぬと私は思うのですが、どうです。私はやはり広義の大東亜戦争の終戦処理の一環からこの問題が起こってきておるというふうに皆さん方が理論的におっしゃるのが正しいと思いますが、いかがですか。
  106. 田中角榮

    田中国務大臣 私の発言が端的過ぎたかもわかりませんから、申し上げておきます。  この措置は直接戦争被害というものと関係はございません、こう申し上げれば非常によかったのですが、あまり長い御質問をずっと二、三日来受けておりますので、ちょっと混乱がありましたから、訂正をいたします。
  107. 只松祐治

    ○只松委員 そのとおりだと思います。そういたしますと、私が先ほど御質問をいたしましたように、いわゆる間接であれ、あるいは直接であれ、戦後であれ、大東亜戦争の前いろいろな事変がございました、そういうときであれ、たとえばさっきから申しますように、家を立ちのいて全然家屋敷もなくなってしまった、こういう人もたくさんおられるわけです。強制疎開というようなこともございます。あるいは企業合併によって、せっかくいままで営んでおった米屋さんや八百屋さんなんか、そういうのをやめさせられてしまった。もうその権利も何もなくなってしまって、そのあとの子供の人や何かが生活に困っておる、こういう人たちのものも、類似のものもいろいろあるわけでございます。したがって、この農地報償だけが、しかも一定限度の、当時十分であったか不十分であったかは論議の分かれるところといたしまして、とにかく裁判所においても認める範囲においてこの補償が行なわれておった。ところが一方にはこういう立ちのきやあるいは企業合同や徴用、そういうものには補償報償というものは今日まで何一つ行なわれておらないわけなんですが、こういうことに関してはどういうふうにお考えでございますか。この農地報償というものが、万々が一にでも片づけば、あとこういうものもすべて、大東亜戦争によって受けた被害というものを時の政府というものが償っていく、こういうふうにお考えでございますか、どうですか。
  108. 臼井莊一

    臼井政府委員 これはいま申し上げましたように、戦争による直接の被害、犠牲、これに対しての手当てではございませんで、全然別個のものであります。もちろん二十五年にはマッカーサーからもポツダム政令が出ておりますし、戦後に起こった事態ではありますけれども、しかし、農地改革三法というようなことにつきましては、これはもうマッカーサーの指令がある前からやりつつあることでありましたが、ただこれを短期間に大量にやったということについては、確かにお説のような点があるのでございます。そこで戦争の被害となりますと、先刻来申し上げておりますように、これはもう当時戦争していた者、日本の領地にいた者は、大なり小なり被害をみな受けておるわけでございます。したがいまして、これを全部補償するというようなことは、とうてい日本経済力でできない。そこで当時の法律によって、たとえば恩給というようなものとか、あるいは新しい法律をつくって援護をするとか、そういう特にこれは考えなくちゃならぬというものに対しては、ただいま大臣からお話のございましたように、法律もつくり、それぞれ手当てもいたしているわけでございます。そこで、今後といえども、戦時中のこういう災害に対して全部をどうするというわけにいきません。たとえば引き揚げ者にいたしましても、五百億の給付金をお出ししまして一応政府としては片づけておるのでありますけれども、しかし、世上いろいろな議論もありまするので、そこでただいま在外財産問題審議会におきましてこれを審議をいたしておるようなわけでございまして、今後そういう犠牲に対して全部をどうするというわけには――その点はお互いさまに、私どもも疎開を食ったり戦災で家を焼かれたりしたのですが、しかし、戦争中は命さえ捨てようという決心をしたのですから、それはもうあきらめようでありますが、それでは旧地主の人もそう覚悟をきめてもらえばいいじゃないかといっても、そこはやはり人間の弱さであって、戦争が終わってやれやれと思ったとたんに、命から二番目に大事にしている耕地というものを強制的に買収された。そこでまた、その目の前でその耕地として売ったものが、宅地やあるいは工場敷地として数百倍、数千倍で転売される。そういうようなことから、心理的な非常な打撃も受けたし、さっき申し上げたような功績もあるので、高度の政治性にかんがみて、これを特に報償して長い間の問題を解決しよう、こういうことでございます。
  109. 只松祐治

    ○只松委員 人情論をお聞きしておるのではないのでありまして、人情論なら、現在日本の社会にはもっとお困りになっておる人々がたくさんおられるわけです。そういう面の費用というものは、社会保障の面から膨大な要求が出されておるわけであります。そういうことを言っておるのではないのです。私は、戦争の広範な被害の中の一つとして、これだけにすれば片手落ちじゃないかということ、したがって、これが片づきますと、通るということになりますと、当然に引き揚げ者の人たちも運動を起こすでありましょうし、あるいはいろいろな形の戦争犠牲者という形で問題が提起されてくるだろうと私は思う。そういうものを今後大なり小なり――と言って小のほうを、いろいろこまかいあるいはさっき言ったような無形のようなもの、これは極端な例で出したわけでありますけれども、こういうものまでしようというと、なかなか際限がありません。立ちのいた者、立ちのきが明確になった者、あるいは企業合同をやった者、あるいは広島の原爆で被害を受けた者、そういう極端なものは、皆さん方時の政府において順次補償していくという、こういうことをお考えになっておりますか。具体的に何かあったら、お知らせをいただきたい。
  110. 臼井莊一

    臼井政府委員 これは昨日も、大蔵大臣もお答え申し上げましたように、そういう事例を引いて、他に及ぼすということはしない、こういうことを申し上げております。ただ在外財産の問題につきましては、ただいま申し上げましたように、政府としては一応片づいたとしておる問題でありますけれども、さらに審議会でこれを審議いたしましてその結果を見る、こういうことになっております。
  111. 只松祐治

    ○只松委員 いましないということでございますが、それでは御承知のように、さっきから言っておりますように、これは一度買い上げてその対価が支払われております。その対価の高い安いは別として、最高裁判決を下しておるように、合法的に支払われておる。それをまたこうやって運動があるとお支払いになっておるわけですね。いまはしない、こうおっしゃっておりますけれども、まあ法は不遡及ということで、これに対する追加払いじゃございませんし、直接の遡及という形でございませんけれども、事実上の遡及した形の予算法案なんですよ。これが出されておるわけなんですよ。だから、そういう意味で、私たち社会党は、違法であるとか、憲法違反であるとかいうことを言っておるわけなんですが、いまはしないとおっしゃっておりますけれども、このやり方から見れば、地主の人たちは、その直後はこういうことがあったのじゃございませんで、いまいろいろな質問がありましたように、何年かたった後にこういう運動があって、だんだん政治的に広がってきて今日にきておるわけですから、今後、やはり私はそういうものが起こらないとは断言できませんし、その場合でも、あなたたちは絶対にしない、こういうように断言なさいますか。それで、いま言いましたついでにちょっと聞いておきますが、法は不遡及でありますし、予算も広範な意味法律の一種でございますけれども、こういうものを遡及をして事実上予算を施行する、こういうことを今後もお行ないになりますかどうか、このあとのほうは大蔵大臣からひとつ……。
  112. 臼井莊一

    臼井政府委員 この点は、繰り返して申し上げておりますように、他の事例等に対してはしない。この問題は最近になって突然起こった問題ではございませんで、御承知のように、すでに農地開放当時からこれに対する反対がありまして、そして提訴をいたしましたものも相当な数にのぼっております。ただ、これが違法ではないという最高裁の二十八年の判決によりまして、その合法性ということについては決定いたしたのでありますけれども、やはり当時からその心理的影響というものもやはり引き続いておる。こういうことで、長い間の問題を今日片づけよう、こういうことでございます。
  113. 田中角榮

    田中国務大臣 本件が成立すれば、かつての合法的に支払われた農地買収代金に対する追加補償、追加払いだというようなお考えで、遡及する、こういうふうに論断しておられますが、そういうものじゃございません。これはもう十分御承知の上で質問されておるのだと思いますので、事情はひとつ了解していただきたいと思います。  それからこういうものが通った場合、戦時補償といいますか、戦後補償といいますか、そういうものに波及しないという一体確約があるかということでありますが、これはそうするつもりはないのでございますから、いまありません、こう申し上げるのが正しいと思うわけであります。いずれにしましても、もう戦後二十年でございますから、ここらでひとつ線を引きたい。私は、自分の代で未亡人加給と俗に言われるものをやりましたから、ここらでひとつ線が引けないかなとほんとうに思っておりました。その後傷痍軍人会館というものにも補助金を出しましたが、ここらでいいところだ、こう私は財政当局者として考えておりますから、すなおに申し上げておるわけでございます。
  114. 河本敏夫

    河本委員長 只松君に申し上げます。あとの質問行がだいぶつかえておりますから、結論をお急ぎ願いたいと思います。
  115. 只松祐治

    ○只松委員 だいぶ時間があれでございますから、最後にいたしますが、あまりあげ足をとった質問もどうかと思いますが、この問題が起こって直後から、報償の問題についていろいろ意見が出ておった、要求が出ておった、こうおっしゃいます、ぼくはそんなことは、混乱状態でほとんどなかったと思いますし、それからその後にきましても、あなたたちが一億円からかけてやった政府の調査によりましても、あまり欲しないということのほうが多く出てきているじゃありませんか。世論調査をあなた方がたっとんだり、あるいは民主政治の基礎は世論を重んじることにあるということは御存じのとおりでありますが、これを見たって、あなたたちがみずからつくったものは、それほど関心がない人も多いし、それほど欲しないということをだいぶ出しているじゃありませんか。これはだいぶ後になって、三十七年に出たものですから、その直後なんかありはしないのですよ。そういういわゆる詭弁と申しますか、あなたたちが政治的になしておる、あるいは地上の全く一部のグループのなしておることを、そういうふうに答弁すべきではないと思います。だから、この問題がこうやって荒れておるのは、ただ単に地主に対して支払うのがけしからぬ、こういうことじゃなくして、やはりこういう作為的なものがあるところに、本問題がこうやって難航するというゆえんもあるわけでございますから、もっとこういう面に対してはすなおに御答弁いただくとともに、御答弁だけではなくて、やはりすなおに考えて、地主のこういう点はこうだ、裕福な人もあるけれども困っている人はこうだとか、もっとすなおな態度で――こういう最終段階になってきてそんなことを言えるかという気持ちもあるかもしれませんが、私なんか初めてきて、決して最終ではなくて、初めて御質問申し上げて、しかも三、四十分ということで、時間ももうございませんからこれでやめますけれども、もっとこういう問題に対してはすなおな気持ちで取り組んでもらいたいと思いますし、そういう御答弁を最後にお願いいたしまして、私は終わりたいと思います。
  116. 臼井莊一

    臼井政府委員 ただいま御質問の中で、これを旧地主が欲しないというような意見があるということでございましたが、この調査につきましては、総理府でも世上いろいろな議論がありますので、昭和三十八年に、工藤調査会の調査でいたしておりませんほかの面についても、すなわち世論とかあるいは生活状況調査、これは工藤調査会でやったのですが、被買収打の実態調査及びその他基本問題について調査いたしました結果、過半数というものが、すべきである、あるいはしてもよろしい、こういう結果に出たわけであります。この調査は、旧地主ばかりにやったのでございませんで、そのほかの人もあわせて一緒に調査をいたしましたから、その関係のない人は欲してないというようなあるいは考えが当然あったかもしれませんし、大ぜいの中でありますから、旧地主も、自分は国家に対して御奉仕したつもりであきらめた方もあるかもしれませんけれども、調査の結果がいまのような御質問のあれには出ておりませんので、その点もあわせてお答え申し上げたいと思います。
  117. 河本敏夫

  118. 川俣清音

    川俣委員 質疑をする前に委員長に警告をしておきたい。それは昨日の合同審査ですが、なぜ合同審査が行なわれたかというと、農林委員会がたくさんの法案を背負っておりますので、自民党の国対からも早く上げてくれという、それに対して農地問題も起こっておることだからして、そういう問題も質疑をしなければならないという要請が出ておったのでありますけれども委員会法案を主として審議をしよう、内閣委員会にかかっておる農地補償の問題については、今回審査の際に十分質疑をしてほしいということで、農林省関係の法案を上げてきたわけです。それにかかわらず、時間の約束があるということで打ち切られますならば、これからも農林省関係の法案にも影響することを、委員長十分御承知でなければならぬと思うのでございます。その点を――私、決して瞬間を私だけによこせという意味ではございません。合同審査の場合は、そういう意味で合同審査を行なったのでありますから、あれは合同審査委員長でありますけれども、農林委員会の意向もくんでおやりにならないというと、他に波及するということだけは警告をしておきたいと存じます。  それで質疑をいたします。第一に総務長官にお尋ねをいたしたいのでございますが、前の野田総務長官は、まだこの法案の準備も了しておりません前に、何らかの報償の制度をつくらなければならないという時代の答弁でございますが、報償というのは補償ではないので、したがって十分吟味して報償の目的を達成するのだという御答弁がございまして、さらに私は追及いたしまして、一度報償を行なえば再び報償なんというものはやらないのであろうということをお尋ねしたところが、そのとおりである、もしも一回報償したようなところには再び報償は繰り返さないのだ、こういう御説明でございました。実は当時町田君は、前に農林省で旧自作農創設特別措置法で報償が行なわれたということを御存じなかったようでございました。それであとで行なわれたのだという質問をいたしましたところ、そういうことは私はないと思うけれども、もしもあればあらためて法律ができましょうから、そのときにはそういう点は除くのであるという答弁をしておられます。もしもそういうことがあればという限定です。ないということを意識されておったと思いますけれども、もしもあればそういうのは除くのが報償意味だ、こういうふうに説明され、いずれ法案が出たときに十分審議してほしいが、そういうものは法案から除く方針であるということを説明されておりますが、その点は除かれておりますか。この法案では、私の知る限りでは除かれておりません。
  119. 臼井莊一

    臼井政府委員 当時野田前長官がどういうお答えを申し上げたか私知りませんが、あるいは先生がそうおっしゃるのですから、そういうことを申し上げたことはあるのだと思うのでありますけれども、しかし、あの前回買収補償をいたしました際に、あわせて報償をした。これは反当二百二十円ぐらいでしたか、そういう報償も加えた、これは事実でございます。ただそのときの意味は、値段が特に安かったからということでもなくて、とにかくさらに農地改革を迅速に促進する上において、旧地主の方に至急賛成してもらって、どんどんこの改革を進行したい、円滑に実施ができるために、そういう意味においての奨励金といいますか、そういう意味報償というものを出したことは事実でございます。今度のは、そういう意味でございませんで、これを改革を促進するというのでなくて、もう改革の済んだあとの、先ほど申し上げたような心理的影響とか、その功績を多としてということでございますので、性格が違う、こういうことでございます。
  120. 川俣清音

    川俣委員 当時の説明を、記録をごらんになればわかりますが、報償というのは政府の恩恵的処置だ、恩恵的処置というのは二度も三度もやるべきものではないのだ、こういう意味での報償だ、こういう説明が行なわれておるわけですね。いま総務長官の言われるように、これもいわゆる補償ではなくて報償だというのは、当時初めて報償金という名前を使われた報償が行なわれたわけで、これも恩恵だという意味でございましょう。恩恵を二度も三度もやることは必要ないのだというのが、かつての答弁であったわけです。したがって、そういうことがもしもあれば、それから除くのが至当だという説明が行なわれたのですから、それを除いておりますかどうかとお尋ねをしている。(「除いておりません。」と呼ぶ者あり)除いていない。そのとおりです。どこから見ても、法案の中には除いておらないようでございます。そこで、それでは政府答弁することは、ときどきによって変わるということになると、これは信頼できないということになります。それは野田総務長官……(「だめだ。」と呼ぶ者あり)だめだとおっしゃるけれども政府が任命した長官です。来年になって臼井君は、いやあれはだめなんだと言ったのでは、これは全く国会というものを冒涜する行為です。私らは一応、臼井さんがどうであろうとも、総務長官として信頼をしてお尋ねをしている。りっぱかりっぱでないか別ですよ。その任にあるということなんです。その任にある人に対する質疑を行なっている。野田君だって、私は友だちだから、りっぱだと思いますよ。りっぱだ、りっぱでないではなくて、そういう方針で進むと言ったからには、内閣がかわっても、やはり自民党内閣ですから、内閣がかわって非常に大きな政治変革でもあったならば、これは別問題ですが、今後出てくる法律の中には、それを十分加味した法律案が出てきますから、その中で十分審議してほしいという答弁さえしておられるのですから、これは前の答弁と非常に違ってきているというふうにお考えになりませんか、総務長官
  121. 臼井莊一

    臼井政府委員 私も前長官の速記録等も一通りずっと調べたのでありますが、いま仰せのような発言は、私の調査が不十分だからかとも思うのでありますが、出ていないのであります。しかし、それがそうといたしましても、いま申し上げたように、この前のときには報償だということを法律の中にもちゃんと字句でうたってありまして、そして要するに円滑にいくためにプラスアルファをつけた、こういうことで、円滑にいくためにやったわけです。今度は、そういう円滑に農地改革をやるためにやるというのではなくて、これはむしろアフターケアのほうです。そこで、そういう意味でのことでありますので、それは非常に違うのでございます。ですから、今度の法案の中には、報償というような字句も入っていない。それから野田長官の除いているといえば、今度の法案の中には報償という字句は除いてある。これは少し詭弁であるかもしれませんが、そういうわけで、非常に意味が違うということで御了承願いたいと思います。
  122. 川俣清音

    川俣委員 意味が違うであろうが何であろうが、アフターケアということになりますると、さらに進んで総務長官並びに大蔵大臣にも続いてお尋ねしなければならぬと思いまするが、総務長官、御存じのように公共事業の土地買収ですが、これは任意に土地買収に応じた場合もございますが、土地収用法等の施行に基づいて強制買い上げをしたのがございます。この土地収用法は、御承知のとおり、特価主義をとっております。特価とは何か。これは紛争に入ったのでございますが、羽鳥ダムの例に入るわけですが、時価とは何か。売買実例だ。多数の売買実例をもって時価とする、こういうことです。当時売買実例はございましたが、少ないので農地開放価格を売買価格としてとっておったことは事実でございます。いまお調べになってもわかりますが、これは売買価格です。当時はこれを時価なりとして算定をした。もしもこれがアフターケアとしてこれを修正しなければならぬ、あるいはアフターケアとしてしなければならぬということになりますと、どんなことが起こるか。羽鳥ダムに行ってごらんなさい。お盆に行きますと、かつて地下に埋没した自分の先祖を祭るための行事をやっているじゃないですか。ところが、花を投げたりすることを監視し、とめられたりしておりながらも、なおやっている。祖先の墳墓に対して敬意を払っている。これは日本の美風だと言われている。それは何だといえば、墓地まで埋没したんですよ。それに対する補償が、いまの農地改革と同じ価格補償されている。(「それはきのう済んだ」と呼ぶ者あり)済んだというが、アフターケアというのだから……。これは時価というのは妥当なものだということで、単に旧地主だけではなくて、旧地主もおりましょうし、旧地主以外の者もおりましょうけれども、同様な措置がとられている。ほんとうに心理的な影響を問題にされるならば、こういうことも大蔵大臣、これこそほんとうに心理的影響です。毎年行ってごらんなさい。かつての墳墓の地に対して、これほど愛郷の念を持ってそういう行為が行なわれているわけです。それほど無理に――それは公共事業だということです。しかもそれは反対が起きたときに、某暴力団体が来まして、われわれをけ散らしたくらいの収奪です。私なども、何も暴力をふるったわけではないけれども、暴力団が来ているから身辺が危ういということで検束されて、留置されたのです。身辺保護と称して行動を停止されたようなぐあいです。これは多目的ダムです。あるいは国道であれ、その他鉄道であれ、みな土地収用法をかけて――任意に売り払ったのは別ですけれども土地収用法をかけた。強制収用された。これは時価主義だ。その時価の根拠がどうなっているかというと、当時は、農地補償価格と同じ価格が時価であるという算定を受けておる。もしもこれに報償をしなければならぬということになりますれば、農政に寄与した者もありましょうが、それと同じように公共事業に協力した者に対しても同じような考え方をすることが、大蔵大臣に言わせればきめこまかなやり方だということになりますが、きめこまかというのは、そこ主でいかなければきめこまかだとは言われない。一方にきめこまかというのは、これは偏したやり方だと言わなければならない。国の予算を使う上に偏してはならないと思いますが、大蔵大臣はいかようにお考えになっておりますか。
  123. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどからるる申し述べておりますように、歴史的な大事業ということであります。そうなりますと、同じく土地を同じような価格で公共の川に供したものというのと一体どう区別するか、なかなかむずかしい問題ではありますが、この問題を目標にして幾らか御答弁は申し上げてあります。きのう申し上げたわけでありますが、すべての公共のために使われたというようなものは、安かったという感じは残りますが、しかし、それはどうしても補償してもらいたいという場合でも、国に対してだけでございます。公共の用に供されたその結果は、国民大多数が使っておるのでありまして、特定の人の利益というものがはかられたわけではないのであります。ところが、農地の場合は、これは釈迦に説法ですけれども、あなたは長いその道の権威でありますから、私が言わなくてもおわかりだろうと思いますが、自分の目の前で三百円とか二百五十円とか、こういう価格でかつての小作地主になった。そのままで自作農を続けておられるならば、私はたんぼが一反歩二百五十円のものが二十五万円になろうが、十五万円になろうが、十万円になろうが、売っておりませんから収益は変わらないということで問題はない。ところが、実際にこれを法律改正をしまして、他に転売をしてもいい、こういう問題が起きてまいりました。ですから、二百円、三百円で売って、しかもそれが相当長期にわたったので、金をもらったかもらわぬかわからない、こういう状態地主と、国から払い下げを受けたために住宅公団などに光って堂々と生活をしている。この間に非常にいろいろなおもしろくない問題があるということは、事実であります。ですから、昔の地主小作というように因果関係があって対立しなければならないという要素は、一つも現実的にないのです。ないのですが、農地開放の問題については、地主小作との間に問題があります。そういうような事実がありますので、一時はこれに転売した場合、自作農のために払い下げを受けたのだから、国が買い戻すか、もしくは売り払った地主が先買い権を持つか、そうでなければ、自由に売買せしめる場合には利得に対して相当高い税金をかけて、これを財源にして何かしたらどうかという時代がございました。そういうふうな農民の間にもいろいろな問題がありますから、こういうような問題について、あれほどの大事業を行なって歴史的効果があったこの大事業の有終の美をなさしめるためにも、政府は高い立場で何らかの処置を必要とする、それが今回の報償法案になったということでありますから、公共の用に立った者にということを言いますと、これは戦傷した者にも何かしてやれ、戦死した人の奥さんにも何かしてやれ、傷痍軍人にも何かしてやれ、こういう論法でいくと、最後には大なり小なり苦労をしたわれわれにも何かするのか、こういうことになりますが、ものには限度がある、際限がある、そういう際限論から考えましても、際限一ぱいにこうすることによって有終の美をなしたい、これは湖底に沈んだ村に対する問題とニュアンスが違う。
  124. 井原岸高

    ○井原委員 議事……(議場騒然、聴取不能)
  125. 河本敏夫

    河本委員長 この際、質疑打ち切り……(議場騒然、聴取不能)動機は成立いたしました。     ―――――――――――――
  126. 河本敏夫

    河本委員長 次に、修正案が……(議場騒然、聴取不能)説明を求めます。     ―――――――――――――  農地買収者等に対する給付金支給に関する法律案に対する修正案   〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――   〔議場騒然、聴取不能〕
  127. 河本敏夫

    河本委員長 修正案について採決いたします。……(議場騒然、聴取不能)修正案は可決されました。  次に、修正部分を除く原案について採決いたします。……(議場騒然、聴取不能)起立多数。よって、修正部分を除いて原案は可決されました。  この際、委員会報告書の……(議場騒然、聴取不能)委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  128. 河本敏夫

    河本委員長 御異議なしと認め……(議場騒然、聴取不能)   〔報告書は附録に掲載〕
  129. 河本敏夫

    河本委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十六分散会