○村山(喜)
委員 今回提案されました
建設省設置法の一部を改正する
法律案について、社会党を代表いたしまして、反対の討論を行ないたいと思います。
第一点は、行政事務の分配についての問題でございますが、
日本国憲法における
地方自治の本旨の要求のもとに、従前の中央集権的官治行政が排除されて、
地方分権的自治行政をたてまえとすることになったわけでございますが、公選の知事及び
地方公共団体、行財政能力への過度の不信感と、自己の権力を拡張せんとする官僚のセクショナリズムが、各省庁とも競って
地方支分部局を乱設し、また、国の事務の委譲は容易に行なわれずに、かえって従前よりも増加する
傾向に今日なっております。そこで
地方自治法第百五十六条及び国家行政組織法第九条の規定が設けられて、国会の承認、
法律によるべきものとして
地方支分部局を仰制する措置がとられておるのであります。しかるに、その後におきましても、
地方支部局の整理は遅々として進まず、最近におきましては、旧憲法下の制度への復帰を示唆するような
傾向さえも見られるという
状態であります。臨時行政
調査会が行政改革の意見として示しました方向というものは、御
承知のように、国と
地方公共団体との間の事務配分の原理を確立し、これに基づいて、現在の国の事務とされているもののうち絶対に国に留保をすべきものを除きまして、その他はできるだけ
地方公共団体に委譲をし、その結果、
地方史部局はできるだけ廃止し、または
地方公共団体に統合すべきであることを示すに至っておるのであります。しかるに
政府は、この勧告を尊重すると称しながらも、根本的な改革の前に、官僚の攻勢の前に既成事実をつくり上げ、
地方支分部局の強化に乗り出し、国の総合的
地方官庁化への方向を許容するに至っておるものであります。すなわち、今日まで困難、複雑、高度の技術、
一つの
地方公共団体以上の地域にわたって国土総合開発上大規模な
工事について現業官庁としてその任務を全うしてまいりました
地方建設局を行政官庁化して、議会のコントロールが直接に及ばないところにおいて
地方公共団体を管理、監督し、規制しようとしているのであります。補助金行政にかかるものが、
全国知事会等の
要望によりまして、ここに修正をされることになりましたことは、二重行政の弊害を少なくし、誤りを少なくすることにおいて国民の期待に一応沿い得るものであるといたしましても、基本的には、現在の
政府が行政事務の再配分等について、ことしの秋を目ざしまして検討が加えられ、国民のための行政にすべく前進を始めているときに、朝令暮改のそしりを招くようなこの種設置法の改正については、慎重に対処すべきであるという立場から、まず反対をせざるを得ないのであります。
第二の問題点は、二重行政の問題であります。
地方建設局の業務内容が現在の十一項目から三十二項目にわたって拡張され、省の所掌事務の分担業務の増加がなされましたが、事務委譲に伴う権限と
責任が根本的に改正をされておりませんので、行政組織法上の対外的な権限と
責任が、国民の前に示されるに至っていないのであります。すなわち、行政組織における内部的な権限が、人民の権利義務に関連をする行政組織の対外的な権限たる性質を持つという行政法上からの問題において、上級機関たる本省と下級機関たる
地建とが、今後の規程、訓令、通達等によって基準が設定をされることに相なるわけでありますけれども、内容は今後において検討をされるという形になっておる
状態でありまして、第三次的な事務配分がいたずらに現在の
法律の上において列挙されているにすぎないで、最終的の権限は本省に属するという職務と権限内容の不明確さを現実においては露呈しておるわけであります。こういう立場から、管理、監督の強化が所管行政に関する監察事務等とともに広範に行なわれ、いたずらに
責任を持たない権限の拡大行使がなされるおそれが派生する。しかも本省とだぶついてなされる可能性が生まれる危険性があるわけであります。こういうような意味において、二重行政の弊を十分に阻止していかなければならないというたてまえから、この問題については残念ながら賛成をすることができない現状でございます。
第三の問題点は、事務員と労働量の強化に対応できないという問題であります。第一義的に新規に委譲する事務内容を
調査した場合に、補助金事務を除いたとしても、届け出書類関係、登録、試験、
計画立案、金額の少ない国の事業の執行、案の作成、付帯
工事、簡易な許可、代執行、強制徴収、
工事施行命令、軽易な監督、報告、受理、協議、監督、
調査、軽易な勧告、
計画の承認等、雑多な軽易のものについて、行政の業務量が大幅に増加するとともに、公共事業費の増大、特に
建設省関係の予算は、長期
計画のもとにおいて、治水をはじめ
道路あるいは都市施設、さらに住宅等、予算は本年度一五・二%の増加率を示しておるわけであります。事業量においては五千二百五十四億に増大をしておるのでありますが、それにもかかわらず、定員が一名も増員をされないという形で施行されようとしております。しかも新河川法の施行に伴いまして、一級水系については従来都道府県知事が行なっていた河川管理業務が大幅に
地建に移管をされ、新
道路法に基づいて旧二級
国道の管理権を一般
国道として国に取り上げ、意欲的に新たに住宅、宅地
対策、下水道
整備等を進めるという方向をとりながらも、定員の純増が一名もないという
状態であります。直営事業を請負事業に転化し、職員の再配置
計画をつくる中で、労働組合の
諸君との間において十分な話し合いが行なわれず、そのために職員は不安感と不信感を
当局に持ち、
当局は管理運営事項の問題として、事務委譲は行政職(二)の
諸君の問題とは関係がないという立場を主張するのみで、国会から話し合いを求められて、本省段階では一応の説明がなされましたが、
地建や事業所段階では何ら納得する説明等が行なわれていないのであります。労使関係は、他の省庁に見られないような不幸な存在が、今日においても是正されていないという状況にございます。この問題は長い年月の間に蓄積されるものでありますし、
当局の労務管理政策には十分の
責任があるといわざるを得ないのであります。省内におきます行政職のみが先行して、技官を中心とする内部の心からの支持が得られず、職員団体からは猛烈な反対を受ける法改正の結果は、その実施の段階において困難な問題に直面するであろうということは、十分に予想できるわけでございます。
最後に、過去三回にわたりまして廃案のうき目にあいましたこの法案が、新しい行政への需要に対応いたしまして若干の追加がなされて、他は廃案になったそのままの案が
政府案として提出されましたが、この間において与党からさえも一部修正をされるという姿の中で可決をされようといたしております。
以上のような立場から見ましたときに、この
建設省設置法につきましては、残念ながら賛成をするわけにはまいりませんので、以上の理由によりまして、
日本社会党は反対の立場を明らかにして討論を終わりたいと思います。(拍手)