運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1965-04-30 第48回国会 衆議院 内閣委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月三十日(金曜日)     午前十時五十分開議  出席委員    委員長 河本 敏夫君    理事 荒舩清十郎君 理事 伊能繁次郎君    理事 佐々木義武君 理事 永山 忠則君    理事 八田 貞義君 理事 田口 誠治君    理事 村山 喜一君 理事 山内  広君       天野 公義君    井原 岸高君       岩動 道行君    池田 清志君       亀岡 高夫君    高瀬  傳君       塚田  徹君    辻  寛一君       綱島 正興君    二階堂 進君       野呂 恭一君    藤尾 正行君       湊  徹郎君    山本 幸雄君      茜ケ久保重光君    大出  俊君       大原  亨君    滝井 義高君       中村 高一君    楢崎弥之助君       麻生 良方君    伊藤卯四郎君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 神田  博君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         総理府総務長官 臼井 莊一君         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房臨時農地等         被買収者問題調         査室長)    八塚 陽介君         厚生政務次官  徳永 正利君         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      若松 栄一君         厚 生 技 官         (環境衛生局         長)      舘林 宣夫君         厚 生 技 官         (医務局長)  尾崎 嘉篤君         厚生事務官         (薬務局長)  熊崎 正夫君         厚生事務官         (国立公園局         長)      今村  讓君         厚生事務官         (社会局長)  牛丸 義留君         厚生事務官         (児童家庭局         長)      竹下 精紀君         厚生事務官         (保険局長)  小山進次郎君  委員外出席者         専  門  員 茨木 純一君     ————————————— 四月三十日  委員天野公義君、稻村隆一君及び受田新吉君辞  任につき、その補欠として山本幸雄君、滝井義  高君及び麻生良方君が議長指名委員選任  された。 同日  委員山本幸雄君、滝井義高君及び麻生良方君辞  任につき、その補欠として天野公義君、稻村隆  一君及び受田新吉君が議長指名委員選任  された。     ————————————— 四月二十八日  行政監理委員会設置法案内閣提出第一三〇  号)  (参議院送付) は委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  厚生省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第七五号)  農地買収者等に対する給付金の支給に関する  法律案内閣提出第七七号)      ————◇—————
  2. 河本敏夫

    河本委員長 これより会議を開きます。  厚生省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。大原亨君。
  3. 大原亨

    大原委員 厚生省設置法改正案は、提案の理由にもありますように、相当広範な所管がえやあるいは新しい機構設置でありますが、厚生行政のこれらに関係する基本姿勢につきまして質問いたしたいと思うのです。いろいろと機構をつくりましても、やはり当面の問題、特に医療問題等に対する適確な処置がなければ、これは決して国民が納得できる税金の使い方ではない、こういう観点で逐次ひとつ質問を続けてまいりたいと思います。  質問に入ります前に、厚生省綱紀粛正の問題ですが、設置法をやる際には、私はぜひともその問題はどの省においても取り上げるべきであると思うのですが、御承知のように、前回の参議院選挙では、厚生省では相当選挙違反の人が出たはずであります。候補者自体がひっかかったような事態もあるわけであります。この問題は、やはり官僚機構を通じて、行政機構を通じて選挙運動をいろいろやるという、そういう問題は、これは組合運動云々の問題とはまた違って、国民税金なりあるいは国家機構を通じて、国家権限地位を利用してやる問題でございますから、この問題はきわめて厳密に考えらるべき問題であることは、学識経験者や世論の一致するところであります。厚生省権限地位等を利用して資金活動選挙活動をやるというふうなことについては、姿勢を正すべきである、こういうふうに考えますけれども、他の者の問題はともかくといたしまして、厚生省に関する綱紀粛正の問題につきまして、御答弁をいただきたいと思うのです。特にこの医療法の問題につきましては、ことしの一月九日、十日にかけまして、職権告示の問題がございましたが、とかくの批判事務次官その他にあったはずであります。これはどうもその動向は選挙対策においがする、こういうふうなことがあったはずであります。そういうことは、李下に冠を正さずでありますから、ぴしっとしてもらわなければいかぬというふうに考えるのであります。その点につきまして、地位を利用しての資金上あるいは選挙対策上のそういう問題につきまして、綱紀を粛正してもらいたい。これに対する国民批判意見に対しまする厚生大臣の所信を、最初に明らかにしてもらいたいと思います。
  4. 神田博

    神田国務大臣 ただいま大原委員より綱紀粛正の問題についての御所見を承ったわけでございます。この前の参議院の改選にあたりまして、厚生省におられた方が立候補されて、そして選挙違反があった。しかもこの方に関連いたしまして、厚生省の内部あるいは都道府県等の一部にわたって関連した選挙違反ができましたことは、お話のとおりでございまして、これは私もまことに遺憾千万のことと考えております。公務員奉仕者として、一部の者にそういうことをやるという問題よりも、公務員中立性から考えまして、そういう選挙運動等はなすべきことではないということは、申し上げるまでもなく明らかなことでございます。そこで、そのような事件が起きたわけでございますから、これはまことに遺憾千万である。しこうして、このことは、そういう経過から考えましても、今後再び繰り返すことのないように十分留意いたしまして、部下を監督いたしましてまいりたい、かように私考えております。  なおまた、いま医療費の改定にあたりまして、一部の高級官僚がそういうふうなことがあったようにお話しでございましたが、この点につきましては、私まだその事実をつまびらかにいたしておりません。いずれにいたしましても、そういう疑いを持たれるというようなことは、好ましくないことでございます。世評があればもとよりでございますが、世評のあろうとなかろうとにかかわらず戒めまして、官吏の本分を尽くして奉仕者としての職責を全うするように十分戒めてまいりたい、かように考えております。
  5. 大原亨

    大原委員 これはいろいろな全国会議その他等に厚生省身分地方事務官どもあるわけですから、十分に国の直接の機構あるいは都道府県関係者に対しまして、機会を求めて、ひとつその点の徹底を期してもらいたい。その点につきまして御答弁願います。
  6. 神田博

    神田国務大臣 大原委員から重ねての御注意でございます。先ほど来私の申し上げておりますとおり、これは官吏としてそういうことはすべきじゃないということについては、厳重に私は取り締まりと申しましょうか、注意いたしまして、再びこのような事実と申しましょうか、そしりを受けるようなことのないように、ひとつ気をつけてまいりたい、かように考えます。
  7. 大原亨

    大原委員 機会を設けて十分注意するという御答弁でございますが、あと逐次質問いたしますが、官房長官出席がおくれておるようですから、厚生大臣に対しまして質問を続けてまいります。  ただ、いまの問題に関係をいたしまして、世上では職権告示厚生大臣の勇み足は、どうもやはり選挙対策とは言わぬけれども、そういうにおいがあるのではないかということもいわれておるわけです。このことにつきましては、あえて答弁は求めませんけれども、そういう点については、事このような重大なる問題につきましては、少なくともそういう疑惑が発生しないようにしないと、軌道に乗るべきものが軌道をはずれるということが十分あり得るわけでございますから、これは私はあえて答弁を求めませんが、厚生大臣に、その点につきましてはそういう問題もあるという点につきまして、十分御留意をいただきたい。というのは、そういうことになりますと、結局支払い側立場に立ちましても、あるいは医師会医師団体立場に立ちましても、これはとるところでないのであります。国民の健康と命を守るという社会保障の非常に大きな重要な柱である医療保障の問題の処理につきましては、とるところでないわけであります。そういううわさすらも出るということにつきましては、厚生大臣として、政治家として自粛をしなければ、信頼を失墜させるのではないか。これは従来からいわれておった問題でございますので、私はこの問題につきましてはひとつ指摘をしておきます。  質問に入るわけですが、予算委員会その他あらゆる機会に私ども質問をいたしてまいりましたが、今日までの混乱は、保険行政ルールが、つまり国民共通の土俵が事実上崩壊状態におちいった。これは中央医療協の問題その他であります。この問題については、政府はしばしば支払い側その他と了解事項を取りつけて問題を提起いたしておりますが、なお解決していない。それから、私どもが第二の問題としてこの問題を通じまして指摘をいたしました点は、健康保険三法その他を通じまして、医療保障の非常に大きな後退をもたらしたものではないか、こういうルールの問題と医療保障後退の問題につきまして、私どもが鼓を鳴らして政府を追及をいたしてきたわけです。私はこの問題を踏まえまして、これからの具体的な問題を議論をいたしてまいりたいと思うのです。今回の東京地裁位野木決定によります職権告示違法性指摘をいたしました効力停止決定というものが、第三者に及ぶかどうかという問題を今日まで議論をいたしてまいりましたが、遺憾ながら議論といたしましては十分納得ができなかった。厚生大臣とそれから法制局長官法務省との間において、私があと議事録を調べてみますと、意見の違いがあるのではないか。この点についてはいろいろと世上流布されておるけれども統一見解を求めるべきだ。厚生大臣はあるときには、第三者とは当事者以外の国民のことをいうのだというふうに受け取れる、はっきりした御答弁議事録に載っておるのであります。この点につきまして、行政事件訴訟法の三十二条が第二項におきまして準用いたしておりますが、決定は第一項の判決と同じように当事者以外の第三者に及ぶのだ、効力が及ぶのだというふうな法律をつくっておるわけでございますが、その点に対しまして、ひとつ最初統一見解政府のほうから明らかにしてもらいたい。これは正確を期するために厚生大臣からといいたいところですけれども政府委員答弁をされて、そして厚生大臣が御答弁になってもけっこうです。この点は私は慎重にやりたい。というのは、五月一日から新旧二つ料金国民の間に存在するという事態が起きまして、時間が過ぎるに従ってこの混乱は助長され、矛盾は拡大をする、そういう現実の場面に逢着をいたしておりますから、その統一見解を私はこの際承っておきたい。私が納得できなければ、関係者法制局長官法務省出席を要求いたしたいと思います。
  8. 小山進次郎

    小山政府委員 ただいま大原先生からお話しになった点は、予算委員会でも、大臣がそのことを、表現のややあいまいであったところを訂正させていただいたものでございますが、ただいまあらためてその点について繰り返すように、こういうお話でございますので、申し上げたいと思います。  行政事件訴訟法の第三十二条の第二項で準用される第一項による第三者効力が及ぶ問題ということにつきましては、抗告訴訟性質からいたしまして、これは裁判所における裁判判決または決定の結果守られるべき権利を守る必要の限度におい考えられるというのが、政府側考え方でございます。したがって、今回の場合について申し上げますならば、あの決定によりまして、申し立て人それから相手方である厚生大臣との関係は、あの決定であのとおりきまったものでございますから、この決定効力当事者だけに限られるということになりますと、せっかくそういう決定を受けましても、事実上ほとんど無意味に近いものだ。たとえば医療に当たる医療機関なりあるいは健康保険組合組合員あるいはその被扶養者である家族というような者に決定が及ばないということになりますと、ほとんど無意味に近いものになりますから、それで決定効力というものを実効あらしめる必要な限度においてこれは第三者に及ぶ、こういうことでございます。したがって、保険医療機関は当然の結果として旧料金でこの分については取り扱わなければならない、また組合組合員及び家族は当然の結果として保険医療を受ける場合にはこの旧料金によって受けられる、こういうことになるという考え方でございまして、これはあの際にも青木訟務局長が沿革的に説明をいたしましたように、行政事件訴訟特例法にはなかったこの規定行政事件訴訟法に入れる場合に、こういったことについての判決または決定の既判力がどこまで及ぶかということについて、学説上若干異論があったので、それを立法的に解決するためにああいう規定にした、こういうような立法事情を申し添えたわけでありますが、そういうことから考えましても、当然解釈はそうならざるを得ない。先生がおっしゃる位野木決定においてそういう考えをとっておるのは、そういうような立法事情、それから抗告裁判という法の持つ性質というものを考えまして、そういう考え方に立ってあの決定をしたものだ、かように考えられるわけでございます。
  9. 大原亨

    大原委員 立法経過は、戦前の訴訟法と今回の行政事件訴訟法では差があって、そういう新しい立法をいたしたことはわかるのであります。それから判決決定について、つまり仮処分と本決定についてのその関係も、私は理解をするのであります。しかしながら、この法律第三者という点を限定いたしていないのであります。第三者に対する修飾、限定がないわけであります。したがって、私は、行政画一性ということからも、あるいは厚生大臣職権告示という、そういう行政処分から発生する効果というものが、国民に対して旧料金、新料金という差別を設けて、そしてこれに対して取り返しのつかない利害関係を発生する。行政処分は本来そういうものであるし、特に医療の問題は、本訴が勝ちましても負けましても、これはあと議論するといたしまして、これは取り返しのつかないそういう事実を発生させるのでありますから、国民立場に立って行政訴訟事件の両一性や公平性を保持するということになれば、法律関係者というのは、第三者医療機関だけに限定するというのではなくして、これは立法精神あるいは解釈、あるいは政治立場から考えて、当然一元的な措置をとらなければならぬ、そういう観点で、法律上の議論が、皆さん方三者の御答弁が十分一致しない点があった。特に厚生大臣は、これはまことに珍しいことでありますが、議事録を調べてみましたら、私と意見が一致したような答弁をいたしました。つまり当事者以外の者のことをいうのだ、国民のことをいうのだという御答弁もあったのであります。あとむにゃむにゃと言っておられましたけれども議事録にはぴしゃっと載っておるのであります。この点は私と厚生大臣意見が一致するということは、これは珍しいことであります。そういうことから考えてみまして、そういう疑惑をやはり発生さしてはならぬということで統一見解を求めるわけですが、これは申し上げましたように、旧料金、新料金が時間がだんだん経過するにしたがって取り返しがつかない現実をもたらすという意味から、私はそういう解釈論を離れまして、現実提案をいたしました。中央医療協の問題に関係をいたしまして、提案をいたしたのであります。これは非常に建設的な提案であります。総理大臣はこのことを——あと議事録を読み上げますが、私の意見を是認いたしました。しかし、厚生大臣は、必勝の信念を持ってやるのだというように、大東亜戦争のときのようなことを言っております。おれたち抗告が勝つんだ、あるいは本訴では政府が勝つんだというふうな、そういう全く私に言わせれは無責任きわまる答弁をいたしたのであります。現実にどういう事態が起きてくるかということにつきましては、全く理解をしない無責任な答弁です。その点は、総理大臣答弁のほうがやや一歩前進をいたしております。そのことは官房長官がお見えになりましたから、具体的にこれは政府を代表して、支払い側やいろいろな機関と話をいたしておりますから、官房長官に集中的に質問をいたします。  そこで、私ども解釈立場はそういうことですから、国民のだれが聞きましても、旧料金と新料金があって、五月一日以降は既成の事実で取り返しのつかないような事態を発生するのだ。そういうことは、だれが考えましても、この問題は非常に大きな問題である。そのことは、当然一致すべき診療側支払い側の対立や矛盾というものを激化する、収拾できないような事態に至るであろう。五月か七月か知らぬけれども厚生大臣はやめられる、あるいはいますぐ辞表を出されるか知りませんが、やめられるあとは、だれが処理するかという問題がある。この問題は、やはり一貫して政府が処理しなければならぬ。そういうことから、私は問題点がきわめて重要であるから、とにかく個人の感情を離れまして、厳密に事実に基づいて指摘をいたしたわけであります。  そこで質問に移りますが、東京地方裁判所位野木決定に基づいて、職権告示が違法であって、その効力を停止するという決定がなされたことは御承知のとおりですが、その解釈をめぐっていろいろあるわけであります。支払い側もあるし、政府解釈もあるし、医師会診療側解釈もあるのであります。この点につきまして、私は、小山保険局長通達を出した、こういうことですが、大臣通達でない、省令や政令でない、あるいはこれを局長告示として扱った、そういうことの根拠と一緒に、その通達内容骨子につきまして、簡単にひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  10. 小山進次郎

    小山政府委員 私は、大原先生が大局的な見地からおっしゃっておられることは、当面の責任者としてよくわかるのであります。ただ法律論としては、先ほど申し上げたようにならざるを得ない。もし法律論として、先生が大局的にお考えになるようにならざるを得ないという前提が通るのであるならば、実はあの決定自体法律解釈及び適用を間違ったということになるのであります。元来常に一本で扱わなければならない性質のものについて、特定のものとの間においてだけ効力を停止することができるという前提決定をするということは、間違いだということになるわけであります。これはもちろん今後法律問題としていろいろ論議されるべき問題でありますが、それはそれとして、おっしゃるように、問題を大局的な見地から、一刻も早く積極的にかつ根本的に解決するということが、政府の最高の責任者のみならず、われわれ事務当局にとっても常に考えなければならぬことだ、この点は私肝に銘じてさように考えております。  それから通達の問題でありますが、この種の通達というものは、大臣指示を得てそれぞれ関係地方行政庁に出すというのは、これは行政の普通のやり方でございまして、そういう場合に、事務連絡であれ、あるいは指示という性質を伴なうものであれ、事務次官または局長通達という形式をとるということは、それは普通のことでございます。  それから第二に、なぜ通達という形をとって、一部に言われているように、告示を改正するとかなんとかという措置をとらないのか、こういう問題でございますが、これはすでに先生も十分その点を前提としてお考えになっておりますけれども、過般行なわれました一月九日付の告示というものは、今回の地方裁判所決定で、何らの行為をまたないで、五月一日から四組合との関係においては効力が停止したのであります。別に何らの行為なくして、これは当然のこととしてそうなるわけであります。その結果として、そうなるのだということを一般に周知させる、これは行政庁として当然しなければならぬことであります。そういうことからいたしまして、その旨をさしあたり関係行政庁に伝え、それからそういうことに伴って間違いの起こらないようにという指示をいたしますと同時に、関係のある団体に対してその旨を連絡して協力を求めた、こういうことでございます。  それから第三に、通達内容でございますが、根本的な考え方としては、この地方裁判所決定効力が存続している間は、五月一日から一時的にせよ、四組合との関係においてほかのものが違った扱いになる、この点を十分徹底をしょう、こういうことでございます。そうしてこれについては、いろいろの意見はあるにしても、とにかく現段階における、さしあたりの措置としては、決定を正しくみんなで守っていく、そうしてその間にまた別の見地から根本的な解決をはかるべきである、こういう気持ちをあらわしたものでございます。  それから個々の内容といたしましては、一つは、今回の決定効力は、四組合との関係において生ずるわけでございます。このことは元来、医療機関側保険診療を行ない、あるいはそれに基づいて費用の請求をするような場合に、そのことを心得ておいて、正しくやってくれなければいかぬわけであります。一方医療機関側にわからないことがあって、間違いを起こしてもいけませんので、その場合には、ひとつ四組合のほうでも、自分たち関係は旧料金の実施を受けるのだということをよく徹底さしていただきたいということが一つ。それから第二は、ほかの健康保険組合とか、政府管掌健康保険とか、船員保険日雇い労働者健康保険国民健康保険各種共済組合、これにはこの効力は及ばないのだから、それをよく徹底されるように、それから第三は、生活保護法とか結核予防法精神衛生法等公費負担を受けることがありますが、その場合の医療費は新点数表によって、旧点数表は及ばないのだということ。それから第四には……。
  11. 河本敏夫

    河本委員長 小山君に申し上げますが、官房長官の御都合がありますので、答弁を簡潔に願います。
  12. 小山進次郎

    小山政府委員 第四は、医療機関が間違いなく行なえるように、旧点数表を配付するとかなんとかということは、これは役所側でやるように、こういうようなことを中心にしたことでございます。
  13. 河本敏夫

    河本委員長 大原君に申し上げますが、官房長官の御出席時間は約二十分でございますから、お含みください。
  14. 大原亨

    大原委員 器用な質問をしなければならぬが、官房長官にだけいまからやります。  この前、予算委員会におきまして、総理大臣以下厚生大臣法制局長官等質疑をいたしたのでありますが、官房長官出席を求めておったが、あなたはなぜ出なかったか。——その点はよろしいです。そこで官房長官は、この問題につきましては、やはり総理大臣にかわって政府を代表して、支払い側やあるいは診療その他の関係者と話し合いをいたしているのであります。いままで予算委員会や、いま本委員会でも私指摘をいたしまして、政府も認めておるのですが、五月一日からは新料金と旧料金が違法なる職権告示の結果に基づいて二つ存在することになるのです。そのことは、時間がだんだんと経過するに従って、本訴が二年後、三年後に確定するかどうかわからぬ。あるいは政府は高裁に抗告しておるが、どういうことになるかわからぬ。そういう事態経過いたしますと、五月一日以降は事実が積み重なるに従って、支払い側医療機関その他四組合政府との関係において、収拾すべからざる矛盾を拡大するような事態になるのであります。この事態において、政府としてどのような措置をとろうとしておるのかという点について、私は今日までこの問題を集中的に国会におい議論をいたしてきたわけですけれども総理大臣の心がまえの発表、御答弁はありましたが、官房長官といたしまして、大まかにその考え方をひとつこの際明らかにしてもらいたい。
  15. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 過日、予算委員会に喚問を受けることになっておりましたが、ちょうどそのとき参議院の議運の委員会でその前から呼ばれておりまして、ちょっと時間を多く要しましたために、私が予算委員会に参りましたときには、官房長官にかわって総理大臣答弁をしたからよろしいというようなことになってしまいまして、失礼をいたしたわけでありますが、ただいま大原さんがおっしゃいましたように、この問題は法律的論議は別といたしまして、現象としては好ましい現象とは考えておりません。ただ、法律的な解釈は、おそらく厚生大臣あるいは関係事務当局から答弁されたことと思いますが、私自身が扱っておりますことは、御承知のように、この医療問題というのはきのう、きょうの問題ではない、二、三年来からの問題として、非常な困難にしてかつ国民には影響の大きい問題であります。その二、三年来の紛糾が積み重なって今日に至ったのでありまして、いわゆる法律以前の問題もあり、かつまた新しい意味での制度等についても、これは研究、考慮をしなければならぬ事態であると考えまして、御承知のように、せんだって私並びに党の幹部が支払い者側七団体と数回にわたって協議を進めまして、全体的な問題の解決の方向として申し合わせが行なわれたわけであります。今回このような事態が起こりましたことは、政治観点からいえば決して好ましいものではない。ただ、法律的な解釈を申せば、厚生大臣並びに関係事務当局が答えたとおりになりますが、これでよろしいという問題だけでもない。せんだって支払い者側と、この問題が起きましたあとで私が二時間余にわたって会談をいたしましたが、そのときにも私は申し上げたのでありますが、ただこれを法律問題だけで取り扱っておったのでは、解決のつく問題ではないように考える。政府はもちろんであるが、関係者団体においてもひとつ知恵を働かして、そうしてこれらが話し合いの上で解決ができる道がないであろうか。四団体に仮処分が行なわれたことは当然他の団体に及ぶのだというような法律論議をやっておったのでは、話にならない。それだけでは決して全体の解決の糸口にもならないのであるから、したがって、全体の解決への糸口として、これらの問題を中心として今後ともひとつお互いに頭をしぼっていい結論を出すように努力しようじゃないかというようなことを申しまして、お互いに話し合いましてせんだっては別れ、きょうも十二時過ぎに私が会うことになっております。もちろん会うにいたしましても、私自身がいま具体的な解決案をまだ用意しているわけではありません。そうなりますと、あしたからこの事態が紛糾になるのに政府は怠慢ではないかというおしかりを受けるかもしれませんが、御承のように、そう簡単な事態でもないのみならず、ただこれを便宜主義で解決するということは、必ずしも全体の医療問題の上から考えても、賢明なる策とは考えておりません。そういう意味で、十分に話し合い、かつ大きな全体の一環としてこの問題を取り上げて解決の方向に持っていきたいというのが、私の念願であります。政府も、そのような大局的な方針でこの問題に対処していきたいとしておるわけであります。したがって、きょう会いましても、あしたからの問題に対して特効薬的な回答はできませんが、先ほど来から申しましたように、前向きで、国民医療全体の問題である、そういう意味で、ひとつ関係者の協力方を懇請をいたしておるのでありまして、あるいは支払い者団体側からも何らかの意見の開陳がきょうあるかもしれませんが、なお政府としては誠心誠意この問題の解決に努力をいたしたい。ただ、この間における処置については、事務当局が万全を期して、大きな混乱のないように処理をせよという意味での指示は与えてあるわけであります。これが政府の大体の見解であると御了承願いたいと思います。
  16. 大原亨

    大原委員 つまりいままでは、支払い団体側と診療側団体間の政治的な対立や問題であったわけであります。しかし、今度は医療機関を媒介といたしまして、国民の間に、第一線の支払い側の被保険者である患者と医者との間の問題に発展をしていくわけであります。元来医療の問題は、すでに指摘をいたしましたように——労使間の問題でも、御承知のように妥結点が昨夜来あったわけであります。医療の問題について共通の場が求められないというようなことはないわけであります。特に五月一日からは取り返しのつかない現実が起きてきて、先ほど指摘いたしましたように、本訴が仮処分の精神に従って確定をいたしましても、その反対であっても、これは権利義務の関係では、時間がたてばたつほど大きな問題が起きてくる。それから、時間があればまたあとで申し上げますが、社会保険審議会にかけておる九・五%の医療費の値上げに伴う総報酬、薬価負担という問題が、実現できない段階にきておるのです。この国会には間に合わないのです。そういたしますと、予算上大きな穴があく。元来ならば、これは佐藤内閣不信任の問題です。吹原事件その他あるけれども、この問題は予算上致命的な欠陥のある問題であるが、私どもは半ばほおかぶりで通したわけです。しかしながら、これは大蔵大臣答弁いたしましたように、そういう予算執行の画において、法律の裏づけのない、しかもちっとやそこらの問題ではないと思う、百億単位の、あるいは千億に達するような大きな問題が起きてきておるわけであります。そういう問題でございますから、時間的に考えれば、一党派の問題ではなしに、国民の健康を中心として政治全体の問題である、佐藤内閣の問題である。これは私は考え方に真剣さが足りないのではないかと思う。その日幕らしということであります。  そこで私は端的にお尋ねするのですが、官房長官了解事項を結ばれましたけれども、円滑な問題の解決を妨げているものは一体何か。何が障害となってこのような事態が発生して、時間がたてばたつほど、皆さん方が無責任に拱手傍観すればするほど、取り返しのつかない大きな事態になろうとしておるのは一体なぜか。何が一体根源なのか、こういう点につきまして、官房長官はお忙しいから頭が散漫になっておると思いますが、しかし、忙しくても、重要な問題に対してはやはり決断をしてやることが政治であると思います。その点について、あなたの認識をお伺いいたしたいと思います。
  17. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 この問題を妨げておる原因は、いろいろあろうと思います。皆さんのほうからおっしゃることも考えられますが、私のほうから考える点もいろいろあります。  一つは、御承知のように、政府としては、この問題に対してはふまじめな態度もしくは傍観的態度でやる考えもありませんし、かなり真剣にこの問題に取り組んでまいって、将来これを処理する上においても、相当困難と思われる問題につきましても、支払い者側といわゆる合意の点をお互いに認め合っておるわけであります。これは、あれを実際上実現するためにも、皆さんがごらんになって、従来やってまいりました経験から考えて、非常に困難なる——はだして政府はああいうような約束を支払い者側としたけれども、ほんとうにできるかどうだろうかと思われるくらいのかなり進歩的な約束を、支払い者側ともいたしておる状態であります。ただ、その問題につきましても、それじゃなかなか進んでおらないじゃないかとおっしゃるようなおしかりがあろうと思いますけれども、これにつきましては、御承知のように、中央医療協の再開の問題もやはりこれには関連があります。あるいは保険三法の審議がおくれておるという問題もあるわけでありまして、いろいろ相関関係があまりす。これにはまだ支払い者側なりあるいは委員においては、これが開かれない理由をわれわれは聞いてはおります。けれども、そういうぐあいになかなかいろいろの不信の問題あるいは困難なる問題がたくさんにこの中に織り込まれておりますために、関係者政府あるいは支払い者側にもその熱意と努力をしようという前進態勢がありながらも、その一つ一つがなかなかそう簡単には解決できない問題があることは、皆さん十分御承知のとおりであります。したがって、私といたしましては、いろいろな障害があっても、やはり勇気を持って処断しなければならぬ。この点は党の執行部も同様であり、その気がまえで進めておるわけではありまするが、何せ長い間のことでありますから、そう右から左に片づかないことに対しましては、まことに遺憾であり、相すまない次第と思っておりまするが、少なくとも御承知のように、せんだっての党の基本問題調査会等の発足等もこれに関連がありまして、党側に強く要請いたしまして、御承知のように、二、三日前に正式に医療基本問題調査会が賀屋さんが会長となって発足する運びとなり、これとの関連におい政府もまたあるいは皆さんの御意見も聞こうと思っておりまするが、政府の中にもこれが調査会等の設置の段取りを目下進めておる状態でありまして、必ずしも政府がこれを拱手傍観しておるのではない。ただ、基本的な点から片をつけなければ、眼前の問題の解決の端緒が得られない、かような考えのもとに誠心誠意やっておることを、ひとつ大原委員においても御理解願いたいと思うのであります。
  18. 大原亨

    大原委員 官房長官は誠意を持ってやろうという気持ちがあることはわかるのですが、私が了解しましても、国民は了解しませんよ。そこで私は、少なくとも障害は二つの面から出ておるのではないか。その一つは何かというと、一つ了解事項支払い側との間におい政府と与党の代表者がおきめになりましたけれども、あの了解事項の中には非常に重要な問題があって、直ちにできる問題と総合的な問題があるでしょう。あるでしょうが、できないような問題までも約束をしたのではないか。あるいは当然約束の中でやるべきことを中央突破その他——中央突破というのは、問題を一つ一つ解決して全体を解決するという面で、解決すべき面を厚生省政府全体に解決する態勢がないのではないか。つまりそういう解決すべき問題を放任しているところに問題があるのではないか。了解事項を実際に行なう段取りが、現状について簡潔でよろしいから、官房長官、私の第一の指摘する問題といたしまして、その問題につきまして経過と所信を簡単にひとつ御答弁いただきたい。
  19. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 大原委員のおっしゃることの一つ二つは、たとえば薬価基準の引き下げあるいは実態調査の問題等は、やろうとすればかなりやれる具体的な問題ではなかろうかという意味だろうと思うのです。これにつきましては、皆さんがよく御承知であって、私は専門家でありませんので、私よりも大原さんなり関係者のほうが詳しいわけでありまするけれども、従来のいきさつもありまして、第二回、形式的にいえば第一回ですが、従来の格間案との関係からいえば一種の第二次的な引き下げということになるわけなんですが、これはその後の状況を調査するために、政府においてその後における薬価の値下がり状況等を調査しておるという段階が一つと、もう一つは、それに関連して、支払い者側は前もってこれを行なえというような要望がなされておる。それに対して、事務当局において、厚生省を含めた事務当局でありまするが、技術的には困難性があるということで、まだ最終的な結論に至っておらない。問題は、その以前の引き下げ状況についての調査がまだ完了しておらないということが、主たる原因にもなります。なおこの実態調査の問題は、もちろん意見の一致した点でありまするが、これは支払い者側も十分に了承をいたしておりますように、この問題は一種の警察権の問題とは違いまして、いわゆる相手方のあることであり、かつまた相手方の十分なる理解と協力によらなければできない問題であることは、支払い者側も十分了解いたしております。したがって、あの申し合わせの中にも、円満なる方法によってこれの実現をはかろうということを支払い者側も了承をしておる。かような状態であの申し合わせができましたから、あしたにもこれが行なわれるかといいますと、いま申したように、前もって十分に相手側及び関係者が十分なる理解のもとに、そうして円満なるもとにやらなければ実際上できないという問題がありますために、厚生省当局並びにわれわれ政府関係者も、これらが円満に行なえるような状態をつくっていこう、こういうことに努力いたしておりますので、せんだっての支払い者側との申し合わせに対しては、政府も党も前向きでこれを処理しよう、こういう熱意に変わりないことを十分御理解願って、ひとつ大原さんその他関係者の陰ながらの御協力をお願いいたしたい、かように御理解賜わらんことをお願い申し上げます。
  20. 大原亨

    大原委員 せっかくですが、ぼくは、たとえば総評とか同盟とか、労働団体だけの意見でこの問題を処理しようというふうなつもりは毛頭ないのです。私はやはり、支払い側は、健康保険支払い側団体やその他、言うならば玉石混淆の人々が集まって、職権告示を中心として、いままでのいろいろな経過をもって、厚生大臣けしからぬ、こういうことになっておるわけです。それから当然診療側と対立する問題ではないということについては、腹の中ではみんな理解をしておるのです。このことは、医療の問題、命の問題ですから、みんな理解しておるのです。特にこのように人間関係がこの問題でトラブルが出てまいりますと、そういうことを痛感をいたしておるのです。ある意味におきましては、これは解決のチャンスでもあるわけなんです。ある意味では、裏返してみるとチャンスでもある。しかし、そういう指導力や識見や責任感が、あなたのほうにない。そこが問題だ。  時間の関係で第二の障害というのを指摘いたします。もう一つあと第三の障害があるけれども、第二の障害を申し上げると、あなたはしろうとでありながら、頭を突っ込んでおられるから、なかなか問題点指摘されておると思う。たとえば実態調査、やはり医療費決定する際においては、共通の場がなければいかぬ。しかし、医師会はどういうことをいっておるかというと、やはり昔の戦争中のことやその他があって、官僚支配になるのではないか、官僚の介入になるのではないか、医者の良心や自主性を阻害するのではないかということがある。やり方について協議しようと思うと、中央医療協というような場所がなければいかぬ。そこでみんなが納得できる方法で、官僚介入を排除をしながら実態調査をして、そうして医療費に対する共通の場を求めるという、そういう方向を出さなければいけない。あるいは薬価基準の問題にしましても、いままでの経過から、これは厚生大臣が実勢価格に応じて薬価基準を適正化していくのは当然ですが、しかし、診療費、技術料の問題とも関連いたしまして、医師会との間におい経過がある。この問題もやはり中央医療協の場において十分協議しないと、そでの下で個々の団体に対して話をしようといっても、これはつかない。だから、中央医療協の民主的なルールをぶち破って、ぶちこわして、そうして厚生大臣職権告示をしたことはけしからぬと私どもは言っているのであります。中央医療協軌道に乗せる、その二つの問題を考えてみても、そういうことがなければいかぬ。このことについて、何ら熱意を示さない、方針を示さない、そういうことの原因は一体どこにあるというふうに官房長官はお考えですか。
  21. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 いま大原さんがおっしゃいましたように、中央医療協の問題があります。この点に関しては、原因等はこの際遠慮いたしますが、せんだっても数回支払い者側と話し合いをいたしました際に、中央医療協自体の考え方、構成あるいは問題等も、やはり支払い者側のほうにも改善の余地があり、われわれのほうにもさような考えがあります。具体的な問題でそれがどこにどういうふうな改組の必要があるかということまでは触れる時間がありませんでしたが、お互いに感じ合っていることは、従来の中央医療協の組織内容等についても改善すべき点が多々ある、そういう問題を含めて、政府設置される調査会において検討して、新しい組織のもとに進める必要があるのではないかということは、支払い者側のほうでも十分に認めておるわけであります。政府のほうにおきましても、この点につきましては改善の余地があるのではないか。まだ十分厚生大臣と打ち合わせておりませんけれども、この問題があるわけであります。ただ当座の問題としては、それを待っておったのでは、これは一年先になるか——もし法律で行なうとすれば、この国会に間に合わないのであります。次の通常国会になると、二年も三年も先になってしまうのでありますから、とりあえずは中央医療協議会が動き出すということが、やはり前提条件になろうと思います。それにしましても、支払い者側なりあるいは診療者側なりに十分話し合いをつけなければ、なかなか再開の運びにならない。しかし、問題の中心はそこにあるのでありますから、今後支払い者側と会います際は、いかにしてこれを開く余地をつくるか。根本問題にさかのぼりますと、いろいろ不信問題とかありましょうけれども、それは一応たな上げにして、この際は、国民の多くの人が利害関係といいましょうか、医療問題には重大なる影響を持つのでありますから、この問題の取り扱い方について、私としては、大局的な見地から支払い者側とも懇談いたしたい、かように考えておるわけであります。この点もひとつあわせて御理解願いたい。
  22. 大原亨

    大原委員 第三の問題ですが、いまお話しになりましたように、中央医療協は完全な組織ではないということですが、その点は問題があるでしょう。しかし、いままでの経過から言えば、円滑にいった場合は、たとえば反対いたしましても少数意見を保留するとか、いろいろな民主的な方法があるわけですよ。十二日まで待ってくれというのに厚生大臣は待たないで——その前の年には、一月二十日までにやってくれればよろしい、国会再開までということを言っている。私は、厚生大臣答弁議事録をちゃんと持っている。であるのに、職権告示を一月九日にやったということが、中央医療協の場所をくずしたわけです。春闘のような労使関係の問題だって、公労協の問題だって、いろいろみんなが苦労してせんじ詰めていけば、意見が一致しないまでも共通点があるわけです。その共通の場が、やはり患者と医療側の信頼関係、人間関係にまで及んでいる。私が第三の問題として指摘したいことは、私は個人のことを言っているのではないのだが、厚生大臣は、当事者としての能力や問題処理の態勢にないのではないか。いいこともあるし、悪いこともある。しかし、この職権告示という厚生大臣のやり方に関しては、私は許しがたいと思っている。公の立場にあるのですから、いさぎよく責任を明確にしてもらいたい。このことは決していやがらせではない。問題解決のために言っている。厚生大臣当事者能力ありやなしや。官房長官が支払い者側と会ったり関係者と会ってこの問題を処理しなければならぬということ自体が、この問題の解決をスムーズにしないのではないか。その問題は、内閣改造の時期なんかと関連をして総理大臣にいろいろ質問いたしましたけれども、私は決して地主補償法案をつぶすとかなんとかいう前提で言っているのじゃない。会期延長その他の問題については、内閣改造の時間がなくて参議院選挙ぎりぎりになると、今度は参議院選挙後に臨時国会を開く、その前に内閣改造をするということになれば、これは非常におくれて、ますます問題の収拾ができないのじゃないかという点を私は心配しているから、指摘しているのです。私は、第三の問題として、官房長官にこの問題について——半分くらい足を突っ込んでずっと解決に当たられたわけだけれども、私は厚生大臣を目の前に置いて言いにくい話だが、当事者としての資格要件において欠くるところがあるのではないかと思う。これらの問題に対しまして、私は障害をずばり言いましたから、障害に対する官房長官のお答えをいただきたいと思うのです。
  23. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 それらの問題をひっくるめて、御承知のように支払い者側との話し合いでは、総理大臣に預けるということで支払い側と了解に達したわけでありまして、去る一月の問題をいまここで論議いたしましても、意義はありますけれども、必ずしも解決の立場に入るわけではございません。ひとつ大きな観点からこれを解決していきたい。私自身も、こういうものが官房長官の職責であるかどうかは、官制によるとそういうものではないようでありますけれども、しかし、問題が国民全体の問題でもあり、ある意味においては総理大臣の処理すべき問題でもありますので、私が総理大臣の補佐的任務を持っておりますから、これにあずかっておるわけであります。問題は何といいましても——話は違いますが、せんだってバンドン会議に超党派で行ったような気持ちで、ひとつ告示の問題も超党派の姿で解決していくならば、前向きの解決ができるのじゃないか。そういう意味で、ひとつ基本的なものの考え方を御理解願って、しばらくの時間をかしてもらいたい、かように考えております。
  24. 大原亨

    大原委員 私は、医療の問題は党派を超えてやるということには賛成です。私は、一党派が医師会との関係をつけ、支払い団体との関係、総評との関係、同盟との関係をつけるというかっこうでは、できないと思う。これは与野党を通じて意見は一致しておると思う。だから、いまや問題点はせんじ詰まって非常に切実な場面に逢着しているのですから、あとで逐次質問はいたしますが、五月一日以降、裁判決定に基づいて診療側支払い側医療機関政府関係、そういう面においてたくさんの問題が出てくる。既成事実ができれば、これは取り返しがつかぬ。こういう場面に逢着しておるわけであります。だから、これをスムーズに、建設的に解決する道は、先般の予算委員会でも提案をいたしましたが、総理大臣は原則的に了承のようだったが、総理大臣も忙しいから一というのは、中央医療協でいままでの経過を踏まえて、いままでの経過にこだわらずに、それを越えてこれをすみやかに一致点を確認をして、大臣がそれに基づいて措置をする。医療費値上げに伴う保険法の改正案についても措置をする。そういうことの段取りをとる以外にはないのではないですか。こういうふうに指摘をしている。原則的にはそれについて異議はない。やるかやらぬかであります。いままでの経過を踏まえ、いままでの経過にこだわらないで、これを乗り超えて解決する道は、現実においてはそれ以外にはない。あなたら会期延長するつもりかどうかわからぬが、参議院選挙の期日があるわけですから、どたんばへ詰まると、内閣改造の時期がない。そうすると、参議院選挙後に内閣改造をやるということになると、問題はまた時間的な経過とともに大きな問題に発展するのではないか、こういうことを私は言っているのであります。ですから、これは政治判断に関する問題です。官房長官総理大臣や与党の幹部諸君が、政治的な判断をする問題です。具体的に出てきた問題については、これは取り返しのつかぬ、佐藤内閣の命取りになる問題が、このままでいったらできるということを私は公言しておきますよ。このことははっきり言っておく。だから、御答弁をそらされましたが、私どもだって、お互いに失敗することがあるのだから、当事者をきちっとして、その人が責任を持って関係者と会って問題を処理できるような体制をつくるという政治判断をなさるべきじゃないか。いろいろ問題があるでしょう。あるでしょうけれども、なさるべきじゃないか。こういう点をずばりと質問をいたしておるのですから、問題をひとつそらさぬように御答弁いただきたい。
  25. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 先ほども申し上げましたように、かつまた大原さんのお話でありますと、予算委員会で総理が答弁なさったようでありますから、補佐役である私が重ねて答弁する必要もないと思いますが、支払い者側もあの話し合いで出しておりますように、これらの根本問題につきましては総理大臣に預けるということで御理解願っておりますので、大原さんにおきましてもさように御理解願いたいと思います。
  26. 大原亨

    大原委員 それで官房長官に、時間もあると思うのですが、国会は最高の審議議決機関ですから、各団体とお会いになることもいいことだし、やってもらわなければならぬけれども、いままでこのくらい問題を審議したのですから、国会において審議を通じて方向を見出すということは、与野党を問わず、政府、議会を問わず、責任であると思うから私は言っておるのであります。言いにくいことをずけずけと言っておるわけであります、はっきりと言わなければわからぬから。だから、私は三つの点を指摘いたしたわけです。私の三つの点については、異議ないと思うのです。政府、与野党を通じ、国民から聞いてみて、議論がないはずです。やるかやらぬかということであります。厚生大臣も、いままでの経過についてはこだわってはならぬし、責任の所在について、十分お考えいただきたいと私は思う。このことについて大だんびらを振り上げて議論するようなことはしないけれども、私はそういうふうにあってしかるべきじゃないかと思うのです。歯に衣を着せた議論をいたしましても、しかたがないと思う。  そこで、もう一つ私は官房長官にお尋ねするのですが、中央医療協は、御承知のように医療費の問題です。それから社会保険審議会は、負担をいかに分配するかという問題でしょう。総報酬制と薬価の半額負担を骨子といたしまして政府提案をいたしたわけですね。これは両々相まっておるのでありまして、一方だけを推していこうと思ったってできぬわけです。結局は率直な官房長官ですからお認めになっておると思うのだが、健康保険三法案は、予算に関係があるので予算の審議中に出すことになっておるのですが、もうこんなにおくれて、法律案は山積みにいたしておりますから、厚生年金もありますから、事実上これは時間切れでしょう。だめでしょう。だめなんです。そういたしますと、予算上大きな穴があくわけです。この解決を延ばせば延ばすほど、重大な事態政府自体も負うし、税金の負担も負うし、あるいは医療関係者も負うわけです。官房長官といたしまして、法案の取り扱い全体——これは一部局の問題ではないから、法案全体の問題について私が指摘いたしました点をどういうふうにお考えになっておりますか。
  27. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 保険三法は、政府といたしましてはできるだけ早く答申を得たい、その答申を尊重してこれを処理したい、こういうことは、国会を通じて総理大臣並びに関係大臣である厚生大臣から皆さんに答弁をいたし、約束をいたしておるわけであります。したがって、この審議会において、保険三法が話し合いでもっていかなる案にせよ答申が行なわれれば、今日においてもなお国会は間に合うと私は考えております。これは政府が全然はかってなものを出せば別でありますが、答申を尊重して法案を提出するというのでありますから、審議会において答申をされたものを尊重して出す以上は、国会での審議は、皆さんの御協力を得てかなり早くこれを処理することができると思います。したがって、いまなお政府としてはこれの提出ができないとあきらめておるわけではありません。それはひとつなるべく早く、皆さんのほうからも関係者に会いますれば、急いで答申を出すようにおすすめを願いたい。政府としては必ず尊重してこれを処理するというように考えていますので、必ずしもこの国会には間に合わないということは考えておりません。  もう一つ、いわゆる赤字問題、もしこれが通らぬ場合というお話でありますが、もちろんこれは関係団体においては赤字が累積せられることは当然であります。したがって、この赤字につきましては、関係大臣、大蔵大臣等も予算委員会等を通じて答弁をしているはずでありますが、これら赤字の場合においてのいわゆる融資等については、政府としてはできるだけの処置を講ずる。その後の問題については、これはある意味においては年度末にならなければ最終的な数字が出てまいりません。したがって、これらについてはなおそれらがきまった暁においてお互いに解決の道を考えよう、こういうように長期の見通しについては政府の見解を述べておるわけでありますが、それよりもいま大原さんがおっしゃったように、いわゆる赤字が出ることは、いまの三法がどういう形で出てまいりますかは別にいたしましても——これは政府原案どおりになれば赤字は非常に少ないことは明らかでありますけれども、答申案が修正を目的とするような答申であれば、もちろんこれは相当の赤字が加わる場合もありましょう。黒字が出るようなことはないでしょうが、赤字が出る場合もあるかと思いますが、それらについては、そういう意味ではもちろん政府管掌であり、政府関係とも言えるものでありますから、国民健康保険とは性格が違っておりますけれども、それにしても、各団体及び被保険者関係者には直接の利害関係の問題であるだけに、私、政府といたしましては、この保険三法が審議会の十分なる審議を経て一日も早く国会に提出することが、長期的な見通しを解決する意味でも必要である。その意味では、審議会が再開されておりますから、ぜひとも答申が出ることを切望してやまないのであります。
  28. 河本敏夫

    河本委員長 大原君に申し上げますが、官房長官の時間がだいぶ経過いたしましたので、簡潔に結論をお急ぎ願います。
  29. 大原亨

    大原委員 健康保険三法案は、大蔵大臣も半ばあきらめたような前提答弁されておるのですから、これはもう時間切れでしょう。だめでしょう。だめですよ。こんな大きな法案をいま出しても、これがだめなために起きてくる財政上の責任を政府は負いますね。これは重大な問題ですから、二つの問題にしぼって質問いたします。
  30. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 出てまいります赤字についての融資の道については、大蔵大臣が皆さんにお話を申し上げたとおりであります。その後の赤字の扱い方については、将来十分に協議をしていきたい、かように大蔵大臣はお答えを申し上げておると思いますが、大蔵大臣答弁せられたとおりと御理解を願いたいと思います。
  31. 大原亨

    大原委員 そこで、時間が参りましたから結論的に質問するのですが、つまりこういうことでしょう。中央医療協関係した問題では、医療費の九・五%の問題があって、物価その他の問題でよくわかるけれども、理由が十分納得できなければいけないという議論があって、いろいろ問題が起きて、しかも結果といたしましては、新旧料金という結果になった。それからもう一つの片面のほうでは、社会保険審議会に関係しておる問題で、総報酬制と薬代の負担の問題についても、これはやり直しをして、この審議を尊重するというたてまえを政府はとったわけです。中央医療協も社会保険審議会も尊重するというたてまえを、総理大臣もあなたも答弁されたわけです。それに従ってやっていると時間切れということに相なった。そこに大きな空白と混乱が生じているわけですね、これは政府は全責任をもって解決すべきである。社会開発を主張する政府は、全責任をもって解決すべきである。違った立場における調和を主張している——それは口先だけかもしれないけれども、そういう佐藤内閣は、これはまとめていくべきである。これができないような佐藤内閣は、やめるべきである。これは参議院選挙あるいはその後の議会を通じまして、大きな政治問題になるのだ、私はそういうポイントを、問題点の中心を一つ指摘しておきます。これに対しまして、官房長官の見解を明らかにしてもらいたい。
  32. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 この問題につきましては、事務的に解決できるものと事務的に解決できないものと、いろいろあろうと思います。それらにつきましては、政府としては十分話し合いの上で、前向きで解決の道を講じたい、こういうように考えておる点で御理解を願いたいと思います。
  33. 大原亨

    大原委員 関連質問もあるようですから、問題を大切な、具体的な問題にしぼって質問いたします、支払い側の主張は、繰り返して多くは申し上げませんけれども職権告示は違法であるのであるから、当然違法の行政行為、処分というものは、存在しないと同様である。当然行政府裁判所の判決に従うべきであるかち、国民として納得していない職権告示による医療費値上げの問題について了承するわけにはいかない、支払い基金やあるいは医療機関の窓口等において、そのような主張をするということを言っております。この点に対しまして、これは政府委員でけっこうですが、厚生省当事者の見解を明らかにしてもらいたい。
  34. 小山進次郎

    小山政府委員 第一に、今回の決定は、仮処分の決定をするに際してああいう判断をもとにしてしている、こういうことでございます。その意味におきまして、この問題について最終的な結論が出るのは、どうしても本訴にならざるを得ない。したがって、先ほど来いろいろ御議論があった大局的解決の問題は別でございますけれども、さしあたりの法律的な解釈としては、これはそれだけであの職権告示といわれるものが当然に無効だということにはならないわけであります。  それから第二には、決定自体も、あの告示は当然に無効なものだという前提でやっていないわけであります。違法性が非常に強い。したがって、あるいは将来裁判所の判決によって取り消される可能性というものが十分に考えられる。したがって、原告側の請求は当面いれるべきだ、こういう考え方であります。したがって、繰り返し申し上げるように、法律適用の問題としては、さしあたりは四組合以外については当然あの告示がそのまま適用される、これは被保険者、被扶養者に対してだけでなくて、医療機関に対してもそうだ、こういう考えであります。
  35. 大原亨

    大原委員 仮処分みたいな決定であるから、それは本訴ではないけれども、最高裁があるわけですから、それらの問題を想定して最終的な断定を下していないだけであって、仮処分の決定を下す以上は、地方裁判所は、本訴においてその方向で確定するということの前提がなければならないわけです。この裁判所における抗争は、最終確定まではおそらく二年も三年もかかるでしょう。だから、あなたのほうは寝ざめが悪い解釈だ。特に職権告示らしいなどというふうなことは、これは未練たっぷりじゃないですか。そんな議論を尽くした問題を、そういうふうなことを言うことはおかしい。それはともかくといたしまして、もしそういう医療機関、支払い基金等を通じてそういうトラブルが、現実に憲法や法律に基づいて権利を主張するという事態の中で発生いたしました際には、厚生省としてはどのような行政上の措置をとるのか、こういう点をひとつ突っ込んで質問いたします。
  36. 小山進次郎

    小山政府委員 先ほど申し上げましたように、さしあたりは医療機関側あるいは支払い側といわれる団体とよく話し合って、少なくとも当面のことはこの決定のとおり正しく行なわれるように、それぞれの関係者徹底をしてもらうということをやる、また現にやっているわけであります。そういたしましても、おそらく先生仰せのとおり、ある程度現地で困った事態というものが起きることは、十分覚悟しておかなければならぬと思います。そういう場合には、個々の問題に即しまして善処してまいりたいと思います。
  37. 大原亨

    大原委員 たとえば県立病院とか国立病院、公的医療機関においてそうですか、そういう立場の人は、公の立場に立ちますから、日雇い健保とかその他の関係者が、団体で患者と一緒に、請求書はこれだけいただきましたけれども、私どもは仮処分の精神に従って差別を受ける筋合いでありませんから、これだけしか支払いませんよといって現金を置いていったような場合には、強制執行その他のことをやるのですか。公の機関はどうするのですか。そういう問題が必ず起きますよ。私が言っているのはそのことなんです。
  38. 小山進次郎

    小山政府委員 医療機関の支払いというのは、基金を通じて請求され、基金を通じて支払うわけであります。したがって、いまの問題は、そういう保険者と基金の問題になると思います。少なくともいま仰せになった事例に関する限りは、これは政府管掌でございますので、当然金の支払いは社会保険庁でするわけでございますから、それは正しく支払いをいたします。  それから家族の問題については、これはやはり新料金の適用がある限り、その場において正しい料金を払ってもらわなければならぬわけであります。そういうことについてトラブルがあれば、それはやはりそのつど善処をしてまいるというほかはないと思います。
  39. 大原亨

    大原委員 そうしたら、そのときには、保険局長見地の窓口に行って、こうしなさいと言って説得するわけですね。全国どこにでも行って、ほかのことは伏せておいて説得するのですか。これはたいへんですよ。四組合の場合は、家族については旧料金が適用になるのだから、その精神に従えば、国民健康保険だって七割給付ですから、この場合は、支払いの方法はそれぞれ市町村その他を通じてやるわけでしょうが、とにかくそういう事態現実に起きるのです。そんなことができますか。
  40. 小山進次郎

    小山政府委員 私もちろん当面の事務担当者として申し上げているわけでありますから、私が動員できる事務組織というものを通じて、個々の問題についてそれぞれ善処をするということでございます。決して私自身が一々の問題にということではございません。それよりも、むしろ分担としては、先ほど先生が繰り返し申されたように、大局的に事が解決するということに少しでも役立つようなことに全力をあげるというほうになろうと思います。
  41. 大原亨

    大原委員 そういうふうにあなたの解釈と違った措置をして医療機関その他に迷惑をかけた場合には、今度は厚生省のほうが訴訟を起こす番だ。訴訟を起こす番だが、たくさんあるやつに向かってやったって、これは仮処分が出たらそのところだけですよとなったら、ほかのほうは影響ないから、これはあなたらが裁判で争うといったって、なかなかできませんよ。そのことを私は指摘しておく。  それから診療機関のほうの日本医師会——もう一つ病院側の団体決定があるわけですが、医師会のほうにおいては、理事において、伝えるところによりますと、大臣告示をしない医療費というものは認めるわけにはいかない、したがって、四組合も全部新料金でもらいますよ、こういうふうに態度を決定されて、窓口にビラを張られるそうです。これはまことに困ったことで、団体間の抗争が患者と診療側のトラブルにまで発展をするということになったわけです。これは非常に困ったことだと思うのです。一致すべき点について一致させないというようなことをしたのは一体だれかということが問題だけれども、ともかくも現実は困ったことになると思うのです。それに対しまして、そこから起きてくる問題の処理をあなたはどうされますか。
  42. 小山進次郎

    小山政府委員 私どもも確認はしておりませんけれども、どうやらそういうふうな動きをしているらしいということは承知しております。したがって、この点については、先ほど申し上げました通達は、二十八日に医師会にも伝えてありますけれども、あらためてきょうさらにこれを伝えまして、当面正しい取り扱いをしていくように、これは申し入れるつもりでございます。
  43. 滝井義高

    滝井委員 関連して。ちょっといま大原さんの質問をとぎれとぎれにしか聞きませんでしたから、あるいは重複するかと思います。あるいはいま大原さんがやっておったところがそうじゃないかと思うのですが、四月二十二日の東京地裁のああいう決定と関連をして、私五点ばかりちょっとお尋ねをしたいのです。  まず一点は、厚生省は、あの決定が四組合だけしか効力は及ばない、こういう見解ですね。それから支払い側は、これは四組合だけではなくて、全被保険者に及ぶのが当然だ、こうおっしゃっている。それから医療側は、これは料金の形で言っているわけですが、全部新料金である、十二月までの旧料金ではないのだ、こう言っているわけです。そして、もし、保険証を出して、われわれ四組合は旧料金だ、いやわれわれ被保険者は旧料金だということになれば、それはよろしい、全部自由診療でやります、こういう形になってきた。これはもう指令が、いま大原さんはたぶんそれを言っておったと思うのですが、いっておるわけです。それから、全国の公私病院協会、これは九・五%、新旧料金に差額が出る、この差額については全部国が見てください、こう言っておるわけです。四者四様の立場になっている。それがあしたから始まることになるわけですね。そうしますと、これは医師会側の見解を見てみますと、診療報酬の額を決定するのは、厚生大臣以外には決定するところはないのだという見解に立っているわけです。したがって、裁判所がそう言ったって、厚生大臣がもう告示をしているのだから、告示をやりかえなさい、こういう形になってきた。これはなるほど法律論としては一つの筋なのです。したがって、この事態であなた方が手先でこの問題をやろうとしたって、もはや九千八百万の国民と、全国の十万に及ぶ医療機関がやるわけですから、なかなか上のほうだけではだめなのです。これはもう末端に行きますと、窓口で医療機関と患者という形になると、どちらが一体弱いかというと、患者が弱いのです。そうすると、旧料金なんかでは私のほうは見ませんよ、文句があれば現金で全部お払いください、領収書を差し上げます、あなたが行って組合でひとつ交渉してくれ、こう言われたら、手が出ないのです。それは患者は、自分の命をこの医療機関でなければ預けられぬと思って来ているのです。したがって、一体こういう四者四様の考え方があるのに、あなた方が事態をどう収拾しようかというこの一点を、裁判とかなんとかに関係なく、まずいま現実に立ってやらなければならぬのです。これを一体どうおやりになるのかということです。これをまずここであなた方が全国に明らかにしなければいかぬわけです。まだ日にちがありますから、これは二日か三日ぐらいの間に関係四者を呼んで、やっぱり国が何らかの責任を持ってやるならやるということをやらないと、これはもう第一線で全く関係のない善良な被保険者と善良な医療機関がけんかをすることになるわけです。しかもその両者のけんかでは、弱い立場の患者が負ける可能性が出てくるのです。だから、一体これをどうするのか、いろいろの法律論その他はあります。ありますけれども、この現実の弱い患者の立場に立って事態を収拾をしておく必要があるわけです。これを一体どうあなた方は収拾しようとするのかということです。
  44. 小山進次郎

    小山政府委員 その問題について、先ほど来大原先生官房長官との間でいろいろと質疑応答があったわけであります。それはそれで考えていくという考え方でございます。それから、いま先生がおっしゃった問題については、帰するところ、やはり正しい取り扱いを当面関係者がしつつ、その間に問題を解決するということ以外に、これは道がないわけであります。あえて異を唱えて、これはこうだ、あれはこうだと言ったのでは、およそ裁判所の決定そのものがじゅうりんされる結果になるわけであります。現実の問題としてそれぞれ主張したいということは、おっしゃるとおりよくわかるわけであります。しかし、あの決定効力が四組合以外に及ばないというのは、政府全体を通じての確定的な解釈であるだけではなく、すでに当面の決定そのものがそういう前提に立って行なわれているわけであります。そうだとすれば、決定に従ってものを考えるという前提考えるならば、当然まずそのことはだれも容認してかからなければいかぬわけであります。ただ、政治論としてというより、むしろ実質論として、それで政府としていいか、あるいはおまえたち当面の担当者としていいかという実質論の点は、これはまた別の議論でございますが、それはやはり一つ一つを当面片づけるというわけにはいかぬので、全体的に解決をするという方向で努力をしようということを先ほど来申しておったわけであります。  それから、医師会側が厚生大臣告示をしない限りは適用がないというふうに言っているのも、これも間違いであります。あの決定そのもので、厚生大臣告示というものは、四組合に関する関係において五月以降いわば凍結されたわけであります。そうして旧料金を動かすということにそれできまったのであります。それ以外に厚生大臣が何か別個の行動をとってあの告示を改正するとかしないという問題は、法律上の問題としては出てこないわけであります。ただ、しかし、おっしゃるようにそういう見解があり、しかもおそらくそういう見解について一応顧問の法律家と相談をしてやっているという意味で、相当自信を持っているのでありましょうから、その点はきょうよく活をいたしまして、少なくとも法律の正しい適用としてはそうならぬのだということを徹底することによって解決をいたしたいと思います。
  45. 滝井義高

    滝井委員 四組合しか適用しないというのは、政府全体の一致した見解でございますと、こうおっしゃった。そのことは、職権告示のときも、この職権告示が違法でないということは、政府全体の統一見解でございますということを予算委員会でやっちゃった。その政府全体の統一見解がひっくり返っちゃった。そうでしょう。だから、そのことはもはや国民の中に権威がないわけですよ。政府全体の見解だといっても、被保険者が、第一、法治国家でありながら、そんなものだめだとおっしゃっている。医療機関もだめだとおっしゃっている。あなた方の監督下にある公私の病院も、だめですとこう言っているのだから、だれも支持する人はおらぬ。あなたと二人しか支持していない。われわれも支持していないのだから……。だから、九千八百万の国民の中の九分九厘が支持しておらない。政府が言うのは、政府の一握りのところが支持しているだけであって、だれもそれは支持していない。そうでしょう。それを権威として押しつけたのではだめなんです。だから、この場合は、法律論や何かといったって、麻のごとく乱れているのだから、私が言いたいのは、あとでもう少し二、三点問題は指摘させていただきますが、この際、あなた方は、いろいろな行きがかりを捨てて、やはり関係者全部一堂に集めて、そして政府が全部披瀝をして、九・五%分については判決が出るまで全部政府が持ちます、いまのところ解決方法はもうこれ以外にないのですよ。それだけの腹を政府がきめなければこれはだめなんです。本訴決定が出るまでは全部それは政府で持ちますから、ひとつ九・五でいっておってください、これなら全部納得する。これ以外にないのですよ。それをあなた方がじんぜん日を過ごしていっておれば——私まだもう二つ、三つ問題がありますから、それをだんだん指摘していきますが、どうにも収拾がつかなくなるのです。いま麻のごとく乱れておるのが、もう麻どころじゃないです。だから、その見解をまず全部集めておやりになって、この際政府が全部負担をしましょう、御迷惑はかけません、本証が出るまでの間はやります。本訴が出たあとは、もう一ぺんこれは問題が出てくるのです。神田厚生大臣、それはどうですか。
  46. 神田博

    神田国務大臣 そこまでは考えておりません。いま政府委員の述べたようなことで事を進めてまいりたい。しかし、いま滝井さんのお話にございましたように、十分関係筋とお話を進めて、何か妥結点があれば見出したい、そういう考えは十分持っております。
  47. 滝井義高

    滝井委員 その問題はちょっと残しておいて、次の問題に移っていきます。  それならば、一カ月か二カ月か三カ月かで本訴決定が出ます。本訴決定が出る場合には、二つの道がある。一つ政府が勝った場合、一つ政府が負ける場合がある。四組合ということで限定をして議論をしても、四組合はこれから二カ月、三カ月分は旧料金でいっているが、政府が勝った場合は新料金に返ってくるわけです。この窓口の清算はどうしますか。政府が責任を持ちますか。その場合が一つ。それから政府が負けてしまった場合は、今度は患者側は、五月からその本訴決定するまで二カ月か三カ月かかった間は、九・五をよけいに払ったことになるわけでしょう。だから、これは患者に戻しますか。この解決を一体あなた方はどう見ておるのですか。これを明らかにしておいてもらいたい。
  48. 小山進次郎

    小山政府委員 本訴が確定して、政府側の主張が通ってという場合どうするかという問題、これは窓口の問題については、実際問題として医療機関の回収がなかなかむずかしいという問題はあろうと思います。また、裁判の筋からいえば、それは個々に解決をはかる、こういうことであろうと思いますけれども、それでは問題は実質的にはなかなか解決し切れないと思います。その場合、少なくとも組合に対して、被扶養者の未清算分といいますか、その分については、私どもが間に入りまして、医療機関から一括した分の提示を受けて、組合側もそれを組合員から徴収をしておきまして、一括して清算をするということにするについて、これは十分な努力を払いたいと思っております。
  49. 滝井義高

    滝井委員 そういうことが現実にできますか。それは四者四様な主張をしているのですよ。全部ばらばらですよ。これは観念論ではできるけれども現実問題としてはできない。今度政府が負けた場合はどうなりますか。負けた場合は、九・五全部払い戻しますか。医療機関はそれを取ってしまっておるのですよ。
  50. 小山進次郎

    小山政府委員 これも裁判のたてまえとしては、個々に解決をはかっていく、こういうことであろうと思います。しかし、この場合でも、ただいま申し上げましたことをまた逆にいたしまして、なるべく組合がそれぞれの医療機関についての分を一括して提示をする、医療機関医療機関でこれを一括して処理をするということについて、当局が間に入って問題が解決するように努力をすることになると思います。
  51. 滝井義高

    滝井委員 大臣、お聞きのように、今度は国が負けた場合は払うんですよ。医療機関のほうは保険者に払い戻す。それで国が勝った場合は、今度は患者側が医療機関に持っていかなければならぬことになる。こんなばかげたことが一体できますか。そしてしかも一月から四月までの分は、もう新料金でいってしまっておるわけですからね。それから先は、裁判決定によって非常に混乱が起こるわけです。こういう不可能なことが——これは現実にもう不可能でしょう。ナポレオンでも不可能ですよ。いわんや佐藤さんや神田さんができるわけはない。そういうことを小山さんは頭の中ではできると思っていますが、現実にはできない。たとえばもう一つあります。そうしますと、新料金と旧料金でやる場合に、医療機関——これは新料金というものは、入院に非常に重点を置いたわけです。給食の関係その他は旧料金でまかなうことになる。だから、質を落とさなければならぬ。こういうこまかいところまで指導なんというのは絶対できないですよ。もうこれは答弁は要りませんが、そういう場合は非常に不可能です。四組合に限った場合でも、問題が出てくる。もう一つ重要な問題がある。四組合の中で、生活保証法と結核予防法精神衛生法の併給をした場合に、生保はあなた方は新料金でいくでしょう。四組合の負担するものは旧料金でしょう。これは一体請求する場合にどうして請求しますか。生活保護法結核予防法は新料金と、いま政府は言っている。そうすると、四組合でこれが併給になった場合に、一体どういうことで請求しますか。
  52. 小山進次郎

    小山政府委員 その場合のやり方は、すでに同様の場合に比すべきものが、三十六年の初めと、それから今度の場合、一日から十四日までの分についてあり得たわけであります。一人の患者が医療機関にかかった場合に、その人が窓口で払う分は旧料金で処理をし、それから保険者を通じて支払う分は新料金で処理をする、そういう処理をしておりますので、同様に考えて処理をすればいいわけであります。非常に複雑ではございますが、できるわけであります。  それからなお私、先ほど来先生が仰せのとおり、いろいろの問題が出てまいると思います。しかし、その議論は結局どういう議論に通ずるかといえば、こういう立法行為であって、国民全部に平等に適当するという性質のものについて、特定のものについてだけ効力を停止したり、あるいは停止しなかったりという、そういうことが裁判上できるかといって争っているわれわれの争点にかかわる問題でございます。これはひとつ裁判において最終的な結論をつける、こういう考えでいるわけであります。
  53. 滝井義高

    滝井委員 法律的にはこれはできるわけです。それは一枚の紙の裏と表をはがすことが、非常にミクロスコーピッシュにやれば可能ですよ。しかし、そういうミクロのことは、顕微鏡の世界であり、われわれの頭脳の世界で、現実にはそれはなかなかできかねるところがあるわけですよ。そういう問題と同じです、いまの問題は。したがって、もはやこれは法律論とか観念論ではいかないので、現実政治論で片づけざるを得ないところにきているわけです。その政治的に片づけなければならないものを、政府が、自分の財政負担があるために、いつまでも周章ろうばいをし、決断をにぶらしておれば、この問題は末端で非常に大きな混乱を来たすということを私は言っているわけです。だから、この際私は、幸い連休の間でも、政府は勇断をもって関係者を集めて、そうして額を集めて、お互いにない知恵をしぼり合ってでも、これはやはり解決しなければいかぬと思うのです。そうしないとたいへんです。  もう一つ、この問題にたいへんなものが重なっていくのです。何が重なってくるかというと、これは御存じのとおり、健康保険法の改正が通っていないわけです。そこでちょうど本訴の出るころというのは、これはわれわれが常識的に見ても、早くても一カ月か二カ月かかる。ちょっとおくれると三カ月かかるわけです。そうしますと、その時期が七月か八月になるわけです。一体七月、八月という時期は何の時期かというと、いまの健康保険における予算を組んでおる額だけでは、法律の改正がないんですから、金がなくなってしまうわけです。健保財政に金がなくなるわけです。健保財政は、ことし借り入れ金の利子は幾ら組んでおりますか。政府管掌で一体幾ら組んでおりますか。
  54. 小山進次郎

    小山政府委員 十六億でございます。なお七月、八月はまだ支払いに支障は生じません。これは社会保険審議会においていろいろと質問がございまして、その際に社会保険庁の当局から明らかにいたしましたが、そういう事態が起きてまいりますのは、十月ごろでございます。
  55. 滝井義高

    滝井委員 現実に支払いが遅延しておるのですよ。すでに現在支払いが遅延しているのですよ。そうすると、十六億だということになりますと、もう七月でなくなってしまうのですよ。
  56. 小山進次郎

    小山政府委員 これは、滝井先生少し前の事態を頭に置いて言っておられると思いますが、確かに三月の末には、一時資金がなくてやや支払いが遅延いたしました。これは四月の二日に金の受け入れを行ないまして、全部清算をしております。自後おくれはございません。
  57. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、今度は、いまの健保連を中心とする支払い側は、これは金被保険者に及ぶんだという見解をとって問題を進めていっているわけです。したがって、支払い側は、もし政府が四組合以外はだめだという強硬な圧力を健保連、支払い側に加えるとすれば、私たちは基金に対する支払いをそんなに順当にやるわけにはいかない、こう出てくることは明らかです。組合のほうはそういう態度である。それから政府管掌自身も、いま言ったように十六億程度ならば、あなたがいま正直に言ったように、十月末には二百億以上の支払い遅延が出てくるのでしょう。そうでしょう。十月末には二百億以上の支払い遅延が出てくるのです。臨時国会を九月にやったら、十月に法律がきちっといくものとは限らない。そうしますと、この問題が重なってきますと、ますます混乱です。だから、この際、いろいろの行きがかりはあるが、率直に言って、もはや事態神田厚生大臣の首を取るとかなんとかという問題ではなくなってきたわけです。もう末端では、あしたからたいへんな状態が起こってくる。この認識をもう少し保険局長政治家の諸君に伝えなければいかぬです。そうして、やはり佐藤総理なり神田厚生大臣が一体になって、事態の収拾へ乗り出していく。そのためには、ある程度国が金を負担をしてもやむを得ない。そうして、同時に裁判を早くやってもらう、促進をしてもらうわけです。そうして、できるだけこの混乱が起こらないようにやる。九・五%の一カ月か二カ月分ですから、そこを政府が腹をきめれば、この問題は解決するわけです。それだけの腹がないと、この問題は非常にいろいろの連鎖反応が起こって、国民の社会生活に重大な問題を提起してくる。そのときにわれわれが神田さんの首を取りに行ったって、そんなものは何も役に立たない。だから、この際、私は率直に申し上げておきます。小山さんもひとつ虚心たんかいに、観念論と法律論にこだわらずに、大乗的な見地に立って、神田厚生大臣なり官房長官なり総理を補佐して、そうして誤りなきを期すことを私は最後に要望しておいて、大原さんの関連質問を終わらせていただきます。
  58. 大原亨

    大原委員 いまの点、ずっと質問が続きまして、私が質問をした点と質問しようと思った点にも触れているわけです。つまり政府本訴で勝っても負けても、あるいは抗告して勝っても負けても、時間的な問題を含めて大混乱におちいるのだ、関係者立場や主張が違うわけですから。だから、法律関係法律関係として小山さんが言うように踏まえながら、この事態をどう処理するかということを頭に置きながら、事態を正確に把握して政治的に十分な措置をとるべきであるという主張であります。その際にとるべき措置は、私は二つの方法があると思います。その点は、私が従来から主張しているように、またきょうも主張しようと思ったのですが、いまお話がありましたように、九・五%の職権告示によって引き上げた分については、政府が財政上負担する。これは国立病院、全国公私立医療連盟の関係もあり、二、三百億円もあれば十分やっていけるわけです。これは地主報償に比べれば安いものである。その問題が一つと、それからもう一つは、中央医療協を即時開いて、いままでの問題点について前向きの解決をはかりながら、いままでの告示について再検討していって、ここで意見の統一をする、そういうことがある。やはり制度上きちっとしたものでなければいかぬから、みんな集まるということもあったが、各方面の見解を一致させるということが前提だけれども、しかし、中央医療協の審議の中で、いまの学識経験者の公益委員というものは足りないけれども——何とかいう、あなたと一緒になってふらふらした人、ふらふらして、弥次喜多みたいに、気の向くまま、おもしむくままにあっちこっちきたでしょう。あれではたよりない話であるけれども、しかし、いまの情勢でやはり一心同体となって、とにかく春闘で公労協や私鉄その他あれだけの問題に結論を出したのです。ILOだって結論が出たのです。最大公約数があったのですから、この問題についてあなたが独走して勇み足をやったことはいけない。そういうことは虚心たんかいに、現実に立ち直ってそういう方法をとるか、とにかく小山さんも私どもの主張を一部認めたけれども一つ行政処分によって国民の中に新料金、旧料金という、最も切実な医療の問題についてそういうことが起こるということは、あり得べからざることである。これは政府が違法なる行政職権告示をやったために起きたのであります。だから、私は、二つに一つの方法、これを決断すべきであると思う。この点につきまして、ひとつ念のために厚生大臣に御答弁いただきます。
  59. 神田博

    神田国務大臣 先ほどからいろいろ承っておりました。議論をするわけではございませんが、職権告示が違法だということについては、これは私承服しかねる問題でございます。ということは、支払い側診療側となかなか意見が違いますから、合わないことはよくあることでございます。前回の場合は、ここで公益委員の態度をまとめて政府に答申ができないというので、答申にかわる報告をいたしましてそれを政府がとったわけでございまして、いろいろ御批評はございますが、この点につきましては、私ども不動の考え方を持っていることを申し上げなければならぬことを、御承知願いたいと思います。  そこで、いま当面しておりますものをどうするかという問題であろうかと思います。この点につきましては、御意見先ほど来から十分拝聴いたしております。大原委員の御意見、またいまお述べになりました滝井委員の御意見、いずれも非常に憂えた御意見でございまして、また当面これは十分慎重に、しかも即刻解決しなければならぬ問題であることはお話のとおりでございまして、そういう点につきまして、私どもも中医協の場で、ぜひ最善と申しましょうか、次善の策を考えたい、話し合いをしたいということにつきましては、先ほどもお答え申し上げたとおりでございまして、いろいろ御意見のありましたことも参考といたしまして、善処してまいりたい、かように考えております。
  60. 大原亨

    大原委員 あなたはしつこいですね。そういう居直った答弁をするのなら、私はまたやるよ。公益委員が絶対のことを言われるけれども、公益委員は年末に辞表を出している。それで、厚生大臣支払い側も協力してやる、一月二十日までひとつ待ってくれ、弾力性を持つから、こういうことを言って、これを了承して土俵の上に上がっておるのですよ。十二日まで待てない理由はない。いまの労働問題だって、ILOの問題だって、政治問題だって、みんな苦労してやっているじゃありませんか。だから、そういうことについてあなたが言うのなら、あなたにはそういう解決の資格はない。あなたがこの問題を解決するガンだ。これは、人間の問題について触れたくないけれども、やはり政治の中には人間の問題があるのです。そのことの現実を直視しないで、出てくるものは、答申はこうでございます。私たちは勝ちます、必勝の信念でいたします、この問題は違法です、何事だというのだ。根拠も何もないのに、本訴で勝ちます、必勝の信念でやります、何事ですか。私は、あなたについて質疑応答をする必要はないと思う。あなたが支払い側やその他と話をするのは、官房長官総理大臣がすでにあずかっておるじゃないか。そこまであなたが開き直った答弁をされるのだったら、あずかっておるじゃないか。あずかっておるというのはどういうことなんですか、政治的に。私は、あなたのようなそういう誠意のない御答弁では、これは絶対に解決できない。そういうことをはっきり言っておく。私は、これをあなたとこれ以上議論いたしましても、せんのないことです。しかし、問題点質疑応答を通じて御理解されたという御答弁があった。そこで私は、さらに重要な質問を続けていくわけです。  第二の質問は、この設置法提案されまして、私も内閣委員会に配属されまして、これをずっと読みました。今回はかなり広範に事務の再配分をやっておられるわけです。しかし、まだ事務の再配分以上に緊急なものでやるべきものがあるのではないか、医療関係してやるべき問題があるのじゃないか、こういう問題です。これは設置法と離れた問題ではなしに、これは設置法議論して足りない点があるのじゃないか、こういう点であります。そこで順次そのほうへ質問を進めてまいりますが、私は前の質問の続きの都合上、やはり社会保険審議会で議論になっておって——これは社会保険審議会の場所でなくて中央医療協の場所でという問題で、中央医療協は事実上再開されてないが、官房長官指摘いたしました薬価基準の問題、薬務行政をめぐっての機構について、厚生大臣がしばしばこの国会における、いまだかつてないこういう薬務行政医療行政についての討論の中で、御答弁になったことがあるのです。だから、そういう問題について、どのような機構改革をお考えになるのかという点を、私はこの次の行政について聞きたいと思う。これは大まかな点ですから、最初厚生大臣のほうから大まかな点を聞いて、私は逐次問題に触れてまいります。
  61. 神田博

    神田国務大臣 ただいま御意見がございました薬価行政の問題でございますが、御承知のように、薬価行政はなかなか複雑でございまして、しかも薬事法の改正も先般行なわれたままになっております。特に今年は、国会におきまして、いまお述べになりましたように、薬価問題、薬事問題等を加えまして重要な御論議のあったことは、お話のとおりでございます。私どもといたしましては、今日の薬事法がどうあるべきかというような問題、同時にまた保険に取り入れる薬価の問題、こういうことも、いろいろ国会に御批判、御意見がございましたことを参考といたしまして、ひとつ十分これを検討してまいりたい。そしてりっぱな薬事法、また同時に保険に取り入れるべき薬価問題、薬価基準として考慮いたしたい、かような所存でございます。
  62. 大原亨

    大原委員 私は結論で、私の議論の中で出てきた一つの案を申し上げるのですが、これはあとにいたしましょう。  話が少し飛躍いたしますが、先般の予算委員会で、佐藤総理大臣が非常に注目すべき答弁をしているのです。これは二つあるのです。私の質問に対してよりも、河野委員質問に対してあるのです。その一つは、現在ばらばらに分かれておる保険者団体を統一するという問題、それから医薬を分業するという問題について、相当長々と所信を述べられた。これは私はどこで総理大臣は御勉強になったのかわからぬが、この問題はあの場所ではあのとおり済んだのですが、これは非常に大きな今日までの問題であるし、今後の問題はこの問題を離れては議論ができないような問題でもある。私は、武見会長の意見を一から十まで支持するわけではない。ずいぶんあれは失敬な人だと思うけれども、しかし、医療技術を尊重するという彼の徹底した考えは、私はある意味においては理解できる。ただし、それについての周辺のいろいろな議論は、ずいぶん矛盾があると思うから、理解できない。医療技術を尊重せよということは、国民立場に立って考えてみても、これは理解ができるのです。いまスクータードクターといって、三、四十のお医者さんがスクーターでかけ回って、そしてじゃんじゃん件数をかせいでもうけをやる。それがもうけがしらになっている。こういうことですが、これはおかしい。良心的な医者からも、やぶ医者からも、どんどん投書がきて、意見を聞くと、やはり技術が尊重されて、良心的な医者、技術のひいでた医者がもうかる、繁盛するような仕組みが望ましいという。これは国民立場に立っても同じです。いままでは、三日分の薬があればいいというのに、国立病院でも、一週間か十日分出してもうけている。それを病院や団体や患者を調べてみたが、半分くらいしか飲んでないというのがほとんどであるといわれている。そういう医療費の増大や医薬品の乱費を防ぐ——これは患者にも、誇大広告その他にも、問題はあり、議論したいところでもあるのですが、そういう点からいっても、私は医薬分業の問題は問題だと思う。これについての具体的な議論は言わないが、問題だと思う。総理大臣は、それについてはこの間相当はっきりした議論議事録に残しておられる。私はあとで速記を見ましたが、これは一般に新聞報道その他になかったから、あまり出なかったけれども、保険団体の一元化の問題で、どういう考え方から診療内容を皆保険のもとにおい機会均等にしていくかという問題の非常に大きな二つの点を、河野委員質問に対して総理大臣は提起しておる。突っ込んだ議論はなかったから、問題にならなかった。総理大臣のあの答弁は重要であると思うし、あと質問することに関係があるから、責任官庁の厚生大臣は、どういうふうに考えられるか、念のために聞いておきたい。
  63. 神田博

    神田国務大臣 いまお尋ねございました問題は、非常に重要な大きな問題であり、また私は、日本の医療のあるべき姿を端的にお話しになった点だと思っております。実は佐藤内閣ができまして、主管事項の説明の際にも、厚生省の割り当ての際に、総理にいまお尋ねございました点二つとも、私詳細申し上げております。実は総理も、非常にその方面の造詣といいますか、そういうお気持ちを持っておったことにつきまして、私も非常に共鳴と申しましょうか、畏敬を深めた次第でございます。日本のいまの医薬分業につきましては、いろいろのしきたりと申しましょうか、経過はございますが、私は、やはり方向として、これはそうすべきである、そうあるべきであるということにつきまして、全く同感でございます。いつやるか、どうするか、どうしてやるかということがむしろ問題であって、これは先般も薬剤師会からも、私のほうに早く実施してくれないかという請願も受けております。医師の処遇というものは、いまもお述べになりましたように、技術を尊重していく、技術を立てていく、そういうことにして、国民の健康を守っていただくのでございますから、やはり名医が繁盛すると申しましょうか、尊敬されると申しましょうか、立っていくということであるべきものであると思います。それが、長い間の保険制度のいろいろな仕組みが、薬剤で収入をはかるような面が出てまいりましたことが、今日の保険制度を災いしておるのではなかろうか、この点については全く同感でございます。そういう意味で、今度医療の根本問題に触れる調査会が発足してまいっておりますが、また政府側においてもそれをつくるといっておりますから、近く発足すると思いますが、そういう場合に、これはひとつ大きく取り上げていただいて、そして医薬分業制度を、外国の先進国並みの長所を取り入れまして、また日本の実情も織り込んでまいりたい。名医が十分安んじて研究もできれば、診療もできる、こういう仕組みにひとつ持ってまいりたい、あるべき姿にいたしたい。全く同感でございます。  それから保険の統合の問題でございますが、日本の保険は、やはり歴史的過程をもちましてそれぞれ発足してまいっておりますが、いま国民皆保険になっておりますから、いまのような健康保険の問題、それから地域保険の問題というのは、少なくともこれをみんな一本にしてしまうということは、将来の理想といたしましても、市町村単位の保険を府県に統合する、また将来国で統合するなり、これはいろいろ研究の余地があろうと思いますが、格差が大きく出ていますから、国民保険をいまの市町村のままに持っているということは、第一の使命は終わったんじゃなかろうか、こういう考えを持っております。それを少なくとも府県単位、行く行くはやはり国が見ていく。そういう場合には、保険の統合といいますか、一本化すべき問題ではなかろうか。これはずいぶん先の問題でございますが、そういう方向で国民が皆保険に恵まれて、皆保険で平等な扱いを受けていく。トラブルのないようなものにしよう。しかも医薬分業がその前に発足いたしておりますれば、日本の医療制度のいまのようなトラブルも、したがって少なくなっていくのではなかろうか。私もこういう考えを持っております。全く同感でございます。
  64. 大原亨

    大原委員 それでは、本会議の時間も参りましたからなんですが、非常に重要な御答弁であります。この点はいろいろ意見もあるし、反響もあるでしょうが、厚生大臣自体は、医療保険を処理するためには、いますぐやめてもらわなければならぬが、その意見だけは具現してもらわなければならぬ。それはそうとして、とにかく厚生大臣が一年ごとにかわるというふうな、そういう伴食大臣であってはいかぬ。そういう方針はいけない。こういう点はひとつ別の議論といたしまして、いまの議論で保険を統合する場合だって、政管とか日雇いとか国民健保のような低所得階層をどうするかという問題が一つある。それから医薬分業の問題でも、農村と都市とをどうするかという問題がある。それから外科とか眼科とか歯科とか、そういうふうな技術の問題で、たとえば盲腸なんかも外科手術であって、ネズミや動物を手術するのと同じような手術料しかとらぬという、いまのような技術料はおかしいんだ。看護婦が一ぱいかかってやって、命を的に手術をやっているようなものを、三千円や五千円や一万円というのではおかしい。そういういろいろな問題があるでしょう。あるでしょうけれども、その前提に立ちながらやるのだったら、薬務行政については医療費の問題と関係が深いけれども、私はこの際大いに議論をして、機構の問題、設置法の問題についても、ここらで結論を出すべきときがきておるのではないか。これは問題点指摘いたしますと、時間に限りがありません。  時間も参りましたので、以上の問題を指摘をいたしておきまして、あとひとつ理事間で相談していただきまして、質問を続けていくならばいく、こういうふうに処理いたしたい。設置法自体についても、内容に関連しての議論がたくさんあるのですが、以上をもちまして、本会議の時間が来ましたので、一応私の質問を終わります。
  65. 河本敏夫

    河本委員長 本会議散会後再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後零時五十四分休憩      ————◇—————    午後三時二十六分開議
  66. 河本敏夫

    河本委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  農地買収者等に対する給付金の支給に関する法律案を議題とし、質疑を行ないます。田口誠治君。
  67. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 ただいま理事会でも長時間いろいろと話し合いをされて、きょうはいろいろと先生方にも計画がございますので、なるべく簡単に、農地買収者等に対する給付金の支給に関する法律案に対して質問を申し上げたいと思います。  まず第一問といたしましは、昭和二十二年当時の、これは半年くらいは違っておりましてもよろしいですけれども、小作地面積が耕作面積に占める割合がどれだけあったか、この点からひとつお伺いをいたしたい。
  68. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 小作地と自作地の面積の比率でございますが、昭和二十二年におきましては、総耕地面積が五百一万二千町歩、それに対しまして自作地が三百三万一千町歩、小作地は百九十八万一千町歩。これは一九六〇年の農業センサスの内容でございますので、統計によりましてはやや数字が違った場合があるかと思いますが、概略五のうちの三対二という比率になっております。  なお、つけ加えて申しますと、昭和三十年におきましては、総耕地面積が五百十八万町歩余に対しまして、自作地が四百七十一万町歩ということで、割合にいたしますと、大体九一%が自作地になり、約九%が小作地になっております。また、三十五年には小作地面積がなお少なくなりまして、現在では総耕地面積に対しまして約六・七%程度の小作地が、なお残っているというふうなことになっております。
  69. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 ただいまの答弁を聞いておりますと、私の質問に対して若干聞き間違えがあったと思うのです。私がお聞きいたしましたのは、小作地面積が耕地面積に占める割合がどの程度あったかということを聞いておるのです
  70. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 ただいまお答えいたしましたのは、実はそのつもりであったわけでございますが、小作地面積は、総耕地面積に対しまして昭和二十二年では三九・五%、約四〇%、絶対値で申しますと、総耕地面積が五百万町歩に対して約二百万町歩の小作地があったわけでございます。
  71. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 その資料はどこで収集された資料ですか。
  72. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 私どものいま持っておる数字は、農業センサスで、農林省のほうの統計資料でございます。
  73. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 農林省の資料は、各市町村をおそらく調査されたのだと思いまするが、これは数字が違うわけです。だから、おそらく省のほうで調査された資料が残っておると思いますけれども、どういう方法で調査されたかということにおいて数字が違ってきておるのではないか、その点をひとつ明確にしていただきたいと思います。
  74. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 先ほども申し上げましたように、これは五年ごとにやります農業センサスの数字でございます。ただ、二十二年当時は、現在行なわれておりますような農業センサスではございませんで、当時のいろいろな資料をもとにしまして一応推定をいたしておると思います。やはりお答えいたしておりましたけれども、全体としてこの数字はおよそ違っていないと思いますけれども、統計によりましては、当時のことでございますから、やや違った数字のあるのもあるかと存じますが、具体的に御指摘いただければ、そういう数字の相違については、詳細にまた検討いたしまして、お答えをいたしたいと思いますが……。
  75. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 そこで、各市町村の農地委員会でこの農地の問題を最終決定をされた総坪数、こういうところから資料を合わしていただければ、私の申し上げる数字が違っておるというのは、パーセンテージを申し上げておるのですが、そこにおそらく相違があろうと思うのです。  それで、今日その点についての答弁が明確にできなければ、次の質問の時期に資料として提出をしていただけばよしゅうございます。きょう答弁していただければ、答弁をしていただきたいと思うわけです。
  76. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 私どもの数字はあまり間違ってないと存じますけれども、なお、具体的にその他の統計資料等いろいろ検討して、後日答弁をいたしたいと思います。  ただ、いま先生お話しになりました各町村ごとの農地委員会のいわゆる解放実績というものは、一応これを農林省で公定版にいたしておるわけでございますが、これがやはり総数として百九十三万三千町歩というふうに出ております。つまり当時の所有されておりました小作地で、自創法によるいわゆる解放の対象になって、それが実行されたのが百九十三万町歩、約二百万町歩近くあるわけでございます。日本の総耕地面積は約五百万町歩から、その後転用、転売あるいは干拓地の造成等でふえたり、減ったりいたしておりますけれども、大体五百万町歩から六三巨万町歩の間になっておりますので、具体的にこまかくは資料を突き合わせてお答えいたしたいと思いますが、大体五分の二は小作地である、逆にいろと、地主の所有地であるというふうに申し上げていいかと思います。
  77. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 室長の手元にある資料は、これは最終的な数字であって、その数字がどうして取られたかという、その基礎がわからないわけです。だから、私の調査しておりますものとパーセンテージの上において相違があるわけです。当時の解放総面積は、これはおそらく数字的には相違はないと思いますけれども、ただいま第一問として申しました質問内容からいきますと、相違があるわけなんです。こういう点につきましては資料を求めたいと思いますが、次の質問の時期までに資料の提出をお願いいたしたいが、よろしゅうございますか。
  78. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 資料は、この次までにできるだけ整えて、お出しをいたしたいと思います。
  79. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 いままでの資料要求に、できるだけという表現の答弁というのはあまり聞いたことがないのですが、これは自信がないからということなんですか。それとも、それを調査するのには相当日時を要さなければならないから、ただいまのような答弁になったのか。その点も確認しておきたいと思うのです。
  80. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 いま田口先生から御要求のありました資料については、確かにすぐこの次の審議までにお出しをいたしたいと思います。たまたまできるだけということばを使いましたのは、その他の関係資料もできれば出したいというふうに存じましたので、申し上げたのでございます。
  81. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 その他の関係資料云々と言って答弁をじょうずにやってみえますが、それはあなたの答弁じょうずということで受けておきますけれども、私のほうから質問申し上げたり、それから私のほうから資料を要求したものは、これはそのまま答弁していただき、資料を出していただかなければならないと思いますので、念のためその点を申し上げておきます。  そこで、昭和二十二年八月一日現在でいきますと、資料が一番整うかと思いますが、その当時自作農が何%あって、そうして自作を主にしてやや小作をやっているのが何%、それから小作が主であってやや自作もあるというのは何%、それから完全に小作農であったのは何%、この点の数字をお下しいただきたいと思います。
  82. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 ただいま手元に二十二年がございませんが、二十五年、三十年について申し上げますと……。
  83. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 あとはよろしいです。ただいま私の質問申し上げでおりますことは、農地解放をされた当時の数字と、そうしてその後一年たち、二年たち、こういうときの数字、それから農地解放が終わったときの数字が完全にどうなったかということについてお聞きがしたかったので、資料として一番政府のほうでとりやすいのは、昭和二十二年の八月がとりやすいと思いまするので、協力をして質問申し上げておるのであって、その数字がわからないということになりますれば、これはまた資料要求でお願いをしなくてはならないです。
  84. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 二十二年につきましては、ただいまはございませんが、二十二年についてはできると思います。二十八年につきましては、確かにお話のように、二十八年は二十七年までの旧自創法が失効したときでございますから、農地改革は一段落ついた時期でございます。ただ、その時期につきましては、直接そういう形で調べたものはなくて、三十年の農林漁業センサスで調べた数字がございます。したがいまして、資料としましては、二十二年については、戸数につきましては昭和十六年、つまり農地改革前の数字と、それから二十五年と、それから三十年というふうに戸数についてはございますが、それ以外につきましては、ちょっとあるかないか、もう一ぺん調べてみたいと思います。
  85. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 それはあります。二十二年、二十三年、二十四年と、解放された年度ごとの、二十二年にはただいま質問申しました内容のパーセンテージがどうなっておったか、解放の作業が進んで、そして二十三年にはたとえば自作農が何十%に作業が進んでおる、二十四年にはどれだけ進んでおる、こういうことが、これは資料としてできておるはずです。したがって、最終段階にいきまして、ここに提案されておるこの内容に数字的に入っていかなくてはなりませんので、私はそういう順序で質問を進めていきたいと思います。その数字がわからなければ、最終の数字をあなたのほうからお示しになっても、私どもの調査をしておるものと食い違いができては、これは補償する金額においても大きな相違が出てくるのではないか、こう考えられまするので、今日答弁ができなければ、ただいま申しましたように、農地解放の作業に取りかかった年から終わった年まで年度別に、自作農をしておったパーセンテージ、主として自作農でそうして小作農もしておった人、主として小作農をしておって自作農が少しある、そうして完全に小作農をしておったという、こういう四つに分けて数字をひとつお示しをいただきたい。それはきょうはできませんか。
  86. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 ただいまはちょっとできかねます。
  87. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 私が質問していこうとすることは、そうした数字を承って、そうして私のはうの調査したものと照らし合わせて、大きな相違のないものはそのまま質問を続けていこうと思いまするけれども、途中でまた一番最初から答弁のできないようなことになりますれば、これは質問を続けてみましても、私、むだであろうと思いまするので、先ほど理事会でも、きょうはいろいろな諸事情で簡単に質問をしてということになっておりまするので、政府のほうに準備がございませんでしたら、この辺で私は質問を終わりまして、そうして次の審議をするときには、ひとつ政府のほうでは十分こうした数字的な資料も持ってきていただいて、そうして質問に答えていただきたいと思うのです。
  88. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 ただいま御要求のありました資料につきましては、たとえば二十三年、二十四年というふうに、十六回にわたりまして買収が行なわれたわけでございます。ただ、それの年々の買収の実績というものにつきましては、各府県からの調査の集計等につきまして、最終的に三十一年に結果としてどういうふうになったかというのはただいまも持っておりますけれども、そういう年次ごとのはただいまございません。なお戻りまして資料に当たってみたいと思います。
  89. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 それは政府のほうでないと言われますけれども、それは数字は出ているのですよ。だから、私は、私の調査をしたものと数字を照らし合わせてみたいと思って質問申し上げているのですが、これは委員長、どうですか、こういうような状態ですが。ゆっくりと政府のほうで資料等を整えていただいて、そうして私のほうも、私のほうの質問申し上げたことが一つも欠けてはならぬという、そういう考え方で言っているのではありませんけれども、いまのところでは全然これは話にならぬ。だから、きょうこれ以上だんだんとむずかしい質問をしていっても、これは答えられないということは、もうこの時点ではっきりしているわけなんです。だから、もう少し政府のほうで答弁準備をしていただいて、次の機会にひとつ御答弁をしていただく、こういうことにお願いいたしたいと思いますが、これより方法はないと思うが、委員長いかがですか。
  90. 臼井莊一

    ○臼井政府委員 資料の問題でございますが、いま調査室長の申し上げましたように、一応十六年、二十五年、三十年、三十五年と自小作農別の農家の戸数の数字はございますけれども、しかし、毎年ごとのがただいま手元にございませんから、至急これは調査いたしまして、資料として提出をいたしたい、かように考えますが、おそらく農林省のほうでは、そういうものは詳細にあると考えます。  なお、いろいろほかのたくさん御質問もあろうと存じますから、ひとつどうぞ続いて御質問を願いたいと思います。
  91. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 いまの総務長官の答弁は一応了解をいたしまして、そうして今後の審議に支障のないことを期待をして、きょうはこれで質問を打ち切りたいと思います。きょうは質問を打ち切って、これはいずれにしても質問は留保してきておきますから……。
  92. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 議事進行。ただいま総理府として資料がそろっておらない。まことに遺憾ですが、ひとつ次会までには、田口委員のただいま資料提出という強い希望がありましたので、これはぜひひとつでき得るだけ総理府といたしましてあらゆる手を尽くして、資料の提出を願いたいと思います。委員長においてさよう取り計らい願いたいと思います。  なお、社会党さんせっかくの質問でございますので、続けて質疑を願うようにお願いします。資料以外のをひとつ……。
  93. 河本敏夫

    河本委員長 田口君、いかがですか、資料を必要とせられる以外の御質問をせられたらいかがですか。
  94. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 ちょっと窓口で話し合いをしていただきます。速記はやめておいてもらって話し合いをしてもらいますが、私の質問をしようとすることは、全部きょうは数学的にお聞きしなくてはならぬ。だから、きょうの態勢では、これは不可能です。そういうことで自民党さんのほうもひとつ了解をしてもらいたい。
  95. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 議事進行。そうすると、社会党さんのほうは、これできょうは質疑をいたさない、こういうことでございますか。
  96. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 きょうは、農地の問題に対する質問は、質問順序等を長々と理事会で議論をいたしまして、どうしても社会党のほうできょうやってもらいたいという強い要望もございましたし、それでは、私は数学的にいろいろ調査をしておるものがあるので、たっての要求であれば質問をしましょう、こういうことになって、ただし、きょうはこういうそれぞれ先生方の計画もございまするので、なるべく早く終わるということが大多数の先生方の要望でございましたので、その要望にこたえて質問にかかりましたけれども、まことに残念でございまするけれども、ここできょうは社会党としては質問を打ち切らしていただいて、そして次会から慎重審議でこの問題は十分にひとつ御質疑をさしていただきたいことを委員長にもお願いをして、質問を終わらしていただきます。
  97. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 議事進行。遺憾ながら、資料が整わないために、田口委員質疑は別といたしまして、社会党さんも慎重審議ということで、たくさんの委員質疑があるようでございますが、きょうはおやりにならないのでございますか。——社会党さんは遺憾ながら質疑がきょうはないようでございますので、そこで、先ほどの理事会並びにこの一週間ばかりの理事会でいろいろ審議をいたしましたことは、各党とも、この問題については慎重審議すべしという御発言がございました。もちろん、われわれもそういうつもりでおるのでございます。したがって、きょうは、三党間の理事の話し合いで、社会党さんが質疑を打ち切られましたら、次に民社党のほうから質疑があるはずでございますが、遺憾ながら、いまお見えにならないようでございます。そこで、遺憾ながら民社党さんの御出席がおそいようでございますから、民社党さんが出席するまで、永山委員質疑があるようでございますから、順序を振りかえて、永山君の質疑を許可されんことを望みます。
  98. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 議事進行。まあ残念ながら、私の質問はこういう経過で本日は打ち切りとなりましたが、引き続いて自民党さんの永山先生質問されるようでございますけれども、これは先ほど理事会でお約束いたしましたように、なるべく短くしていただいて、ぼくはきょうは四時に終わるつもりですから、そういうことで各先生方がいろいろと計画しておられることに支障のないように、そこは大先輩の永山さんだから心配ないと思いますが、そういう点を議事進行で申し上げて、永山先生質問を承ることにします。
  99. 河本敏夫

    河本委員長 社会党の村山喜一君外八名の諸君から質疑の通告がございますが、本日は御質問ございませんか。   〔「本日はいたしません。」と呼ぶ者あり〕
  100. 山内広

    ○山内委員 議事進行。ただ、そうなると、先ほど理事会できめたことが、そういう確認のしかたをされると、こわれてしまうわけです。私どもは、建設省が残っておる、厚生省が残っておる、これも成立させる義務があるわけですよ。それを強引に、中間にこれをはさんでおるわけだ。ですから、やるのならば、建設省、厚生省質問さしてください。
  101. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 議事進行。山内委員の御発言もございましたが、きょうは先ほどの理事会で、社会党さんの質疑農地についてあり、続いて民社党さんの質疑があり、(「ノーノー」「それは違う。そういうような話し合いではない。」と呼ぶ者あり)わが党の質疑もあるということでございます。しかし、残念ながら民社党さんが出てまいりませんので、振りかえて永山委員から質疑を願いたいと思います。
  102. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 議事進行。ただいま荒舩委員の発言を聞いておりますと、理事会におけるところの話をゆがめられてお話しになっておる。それは、そういうような話を荒舩委員自身がされたのではない。荒舩委員は、とにかく社会党に、まず農地の問題で入ってくれぬか。そして田口委員がそれを引き受けて、資料の要求等を、関連をいたしますのでただいま発言をいたしたわけであります。そのあとに時間があったら建設省の審議に入ったらいいじゃないか、こういうようなことを言われたのは、荒舩委員自身が、みずからのことばとして言われたのです。きょうのこの委員会において、まず社会党がやって、その次に民社党がやって、次に自民党がやるというようなことを理事会できめた覚えはありません。そういうように一方的に運営をされるのであれば、われわれとしては、こういうような議会運営については信を置くことはできません。われわれとしては、こういうような委員会の運営を委員長がおやりになるのであるならば、重大な決意を持っている。あなた方がそのような方針でやられるのだったら、これは問題ですよ。だから、休憩の動議を出します。
  103. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 議事進行。私の動議が早いのでございまして、実は衆議院の規則もございます。そこで理事会は非公式でありますから、だれがどう言ったとかこう言ったとかいうような議論も、非公式でございます。したがいまして、まあ議事は円満にいくのがいいのでございまして、そういう意味からいたしまして、実は民社党さんの質疑がなければ、わが党の永山委員質疑をするようになっておりますので、社会党さんにも何分かがまんをしてお聞きを願う、こういうことでひとつ議事を進めていただきたいと思います。
  104. 大出俊

    ○大出委員 議事進行。先ほどの理事会のやりとりからいきますと、最初荒舩委員のほうから、きょうは両社から質問をしていただきたいという話がありましたが、多少民社の皆さんのほうの意見も入りまして、きょうは受田さんもおられないということで、きょう質問するわけにはいかないという明確な意思表示が、民社のほうからあったわけです。それならば、とにかく社会党から質問に入ってくれ、民社の皆さんはきょうはやれないというこの問題を含めて、まず社会党から質疑を始めている間に窓口等で相談をする、ここまでしかきまっていない。そうなると、それが最後の結論なんだから、いま田口さんが決定どおりに質問に入ったところが、政府委員の皆さんのほうで資料がない。坪幾らという単価があってのことなんだから、その坪数についての資料がなければ、審議ができない。だれが考えても、これは世の中の常識だ。千四百五十六億もかかるのですから……。そうなると、質問ができないのだから、やめてもしょうがない。したがって、きょうはこれで終わるというのが筋なんだけれども、自後の運営という問題もあるから、それほど言われるならば休憩をして、あらためて理事会なら理事会というのが筋だろうと思いますので、そう運んでいただきたい。
  105. 河本敏夫

    河本委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  106. 河本敏夫

    河本委員長 速記を始めて。  この際、暫時休憩いたします。  直ちに理事会を開きます。    午後四時一分休憩      ————◇—————    午後四時三十分開議
  107. 河本敏夫

    河本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農地買収者等に対する給付金の支給に関する法律案を議題とし、質疑を行ないます。永山忠則君。
  108. 永山忠則

    ○永山委員 本法案による給付金の具体的内容についてまずお尋ねをいたしたいと思うのでございますが、本給付金は、農地改革すなわち旧自作農または農地法施行によりまして農地を一畝以上買収された者に支給することとしているのでありますが、なお、このような農地被買収者が本法施行前に死亡したり解散したりしている場合には、その遺族または一般承継人に支給することにしていますが、外国人や政令で定める一定の法人には支給しないこととしていますが、この点に対してまずお問いをいたしたいのであります。
  109. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 この法律案提案の理由はすでに御承知のとおりであります。それに対しまして、外国人は、これは本来この法案の趣旨はすでに御説明ございましたとおり日本の国内問題でありまして、外国人は省いてあるのでございます。なお、一定の条件に該当する法人は政令で除外いたします。それは、この法案の趣旨がやはり、心理的な影響を農地改革で受けた——もちろん農地改革には貢献いたしておりますけれども、心理的な影響を受けたかどうかということも重要な基準になっておりますので、あまり大きな、つまり会社等をこの対象にするのは妥当でないというふうに考えて、大体個人に準ずるもの以外の法人は除きたいというふうに考えておる次第でございます。
  110. 永山忠則

    ○永山委員 政令で定める一定の法人というのは、大体どのくらいをお考えですか。
  111. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 まだ最終的に決定をいたしておりませんが、たとえば株式会社等におきましても規模の小さなもの、この規模の小さなものをどういうふうに限定していくか、これはなかなかむずかしいのでありますが、現在なお検討いたしております。御承知のように、株式会社でありましても、個人の色彩の非常に強いものがございます。税法なんかでも、たとえば同族会社というようなものは株式会社の中でも別な取り扱いをいたしております。それを直接というふうにはまだきまっておりませんけれども、そういうことを加味しまして政令で定めていきたいというふうに考えております。
  112. 永山忠則

    ○永山委員 給付金額は被買収農地一反当たり二万円としておりますが、被買収面積が一町をこえたときにはこの二万円を一定の割合で逓減することとしておるのでございますが、その一定の割合とはどういう計算になっておるか、また、これらの計算の結果、給付金額は百万円をこえるときには百万円で頭打ちになっておりますが、その百万円という基礎数字を出した、頭打ちにした理由、並びに、被買収面積が一反未満の場合には一律一万円になっておりますが、いまの方針をお定めになりました理由をお聞きしたいのであります。
  113. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 割合につきましては、法律案の第六条にございますが、一町以下の場合には百分の百、一反二万円でございます。もちろん一畝未満はなしというのが前提でございます。それから、一町をこえ二町以下、これは百分の五十、したがいまして一万円ということになるわけであります。それから、二町をこえ三町以下の面積は百分の三十、六千円ということになるわけであります。三町をこえますと百分の十で二千円ということになります。これは法案の中にもございますが、畑は田に換算をいたしますので、いま申し上げましたのは田の面積での場合でございます。そういう計算をいたしますと、田で三十五町歩買収された方がちょうど百万円になるわけであります。言いかえますと、三十五町歩以上の方は百万円で頭打ちになるということになります。  ただいま仰せになりました、それではなぜ百万円で頭打ちをするのかということでございますが、これは、この法案がもともと買収された農地の価格の補償ということではございません。補償であれば当然面積に対応してそれだけ追加払いをするということに相なるわけでございますが、これは御承知のようにいわゆる報償でございますので、政府の気持ちと申しますか、報償の趣旨というものは、ある段階まで差し上げればそれで意思は通ずるのだということであります。逆に申しますと、あまり金額の多い旧地主の方にそれに対応してどんどん出していくということになりますと、まさに価格の補償というおそれが出てこないとも限らないのであります。そういう意味で、百万円ということで一応限度を設けたのであります。  それから、先ほど申し上げましたが、一町以下は一反歩二万円というふうになっておりますが、一反歩以下は一万円ということになっております。その理由いかんというお話でございましたが、これは、いまも申し上げましたように、補償ではなく、したがって厳格に面積に比例をさせないほうがいいということがありまして、かつ非常に大量の方に差し上げるということになっておりますので、一般的に反以下は切り捨てになっております。計算をします場合には反以下は切り捨てるということで計算することになっておりますが、しかし、零細な地主の方もおられる。したがって、一反未満を買収された方は全然これの対象にならないということは、やはり、雰細な地主ではございましたけれども農地改革に相当貢献されたという点から、これを端数計算のように落としてしまうというわけにはもちろんまいりません。したがいまして、一反歩以上は一反につき二万円、一反歩未満の方は、これは畝歩になり、九畝歩の方もあるいは四畝歩の方もおられますが、平均しますと五畝歩になる、したがって、二万円の半分で二万円というふうに考えたわけであります。ただ、御承知のように、一般的にはこれは十年償還になっております。ただ、一反歩未満の方につきましては五年以内償還ということで償還期限を半分の期間にいたしております。したがって、一反歩の方が二万円でありますと一年に二千円、一反未満の一万円ですと、やはりこれは五年でございますから一年に二千円ということで、バランスをとっておるわけでございます。
  114. 永山忠則

    ○永山委員 逓減率を設けられた点もやはり頭打ちをされたと同じような意味を持っておるのではないのですか。
  115. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 いま先生のおっしゃいましたとおりの意味で逓減率を設けた次第でございます。
  116. 永山忠則

    ○永山委員 次には、畑が六割で、北海道の農地については一定の割合を乗ずるということになっておるのでありますが、この基準はどういうような考え方でつくったのでありますか。
  117. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 実は、これも御承知だと思いますけれども農地改革のときに政府が買収しました対価の算出法というのは、田は当時の賃貸価格の四十倍、畑は四十八倍ということになっております。なぜ畑を四十八倍にし、山を四十倍にしたかといいますと、当時の勧銀の調べによりますと、畑は約五九%程度の出に対する率になっておる。したがいまして、現在も、いろいろな数字はございますけれども、田というものに対します畑の価値というのは六割で妥当ではあるまいかということでございます。  それから、北海道につきましては、北海道と内地の農地の面積に対する考え方の相違というものは、農地改革当時からやはり考えられておりまして、現在ももちろん経営面積その他から見ますと違うわけでありますが、たとえば、農地改革当時は、在村地主の保有面積というのは内地では一町歩でございましたが、北海道では四町歩というようなことで、大体四倍程度の広さというものが農業経営に対応しておるというふうに考えております。もちろんそれを特に今度援用するわけではございませんけれども、賃貸価格等の——現在は賃貸価格はございませんが、いわゆる旧土地台帳法に基づく賃貸価格によりましても、約五分の一から四分の一程度の価格の開きを持っている、評価も開きを持ってくるというようなことを勘案いたしまして、やはり四分の一にすることが妥当であるというふうに、これは政令で定めるとなっておりますから法律には書いてございませんが、私どもは四分の一というふうに考えておるわけでございます。
  118. 永山忠則

    ○永山委員 反当たり二万円とか、畑はその六割とか、北海道では四分の一であるとかいうような計算はきわめて公平のように見られますけれども、実際問題は公平ではない、むしろ不公平であるというように思うのです。賃貸価格を基礎にしてやられるということが一番公平ではないかというように考えるのでございますが、その点についての御意見はいかがですか。
  119. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 実は、賃貸価格を基礎にして考えていくという考え方につきましては、私どももいろいろ立案の過程で議論をいたしたわけでございます。ただ、この法案の本来の性質が、買収されました農地のいわば農地改革に対する貢献の度合いというもの、あるいは心理的影響というものが買収されました農地の価値というものとある程度当然比例するわけでございますけれども、これは前から申しておりますように補償ではない、つまり買収された財産の価値そのものと比例するということはむしろ報償というものでなくなってくる可能性がある、あるいは補償というほうに近づいてくるということで、個々の方から申しますと、中には確かに先生の御指摘になった点がなきにしもあらずでございますが、法案の性質上、私どもは一律にすることが妥当であろうと考えた次第でございます。
  120. 永山忠則

    ○永山委員 この点はひとつ十分お考えを願いたいと思うのですが、一反に対して二万円とか、畑は六千円とかいうようにきめましても、そういうようにきめるのも、賃貸価格できめるのも、総額できめておけばこれはやはり報償なんですから——補償ということになればその総額がきまらぬわけでございますから、報償制ということに至るのには、賃貸価格でやろうが基準価格で出そうが同じ思想ですから、やはりできる限り——金額の頭打ちをしておりますし、同時に総額においても政府が一定限度頭打ちをして出しているわけですから、その点で、必ずしも賃貸価格にしたら補償である、一定基準でやったら報償であるということにはならぬと考えますので、この点はひとつ十分御考慮を願いたいと思うのでございます。
  121. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 私どもはある程度一律でやることが妥当であると思いますが、なお、実は技術的に申しましても、賃貸価格というのはすでに制度上はないわけでございます。したがいまして、過去においての賃貸価格が現在も語録として残っておるところはかなりございますけれども、全部あるとは実は限らぬわけであります。土地台帳法に基づきます賃貸価格というのはもうすでにないわけでございますから、それでやるということは技術的にも困難な点がございます。なお、名筆ごとの、名たんぼごとの価格差を設けるということになりますと、これは技術的なことを申し上げて何でございますが、非常に複雑になり、膨大な事務量になる。もちろん考え方として賃貸価格ではまずいというふうに考えておるわけでございますが、技術的な意味でも賃貸価格を基礎にするということはなかなかとり得ない状況でございます。
  122. 永山忠則

    ○永山委員 技術的問題も、実際問題としては賃貸価格というのを旧町村全部持っておりますから、やるという意思であればできないことはないのでございますので、この意は強く要望をいたしておきます。  それから、給付金の支給というのは、本法施行後二年以内において有資格者の申請に基づいて出すということになっておるようでございますが、無利息の交付公債ということは財政法第四条に違反するのではないか、また、そういう先例があるかどうか、また、すでにわかっておりますが、念のためにお聞きしておくことは、交付金の支給を受ける対象者は幾らで、その総額はどういうふうになっておるのでございますか。
  123. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 これは無利息であるから財政法四条に違反するのではないかというお話かと存じましたけれども、これは財政法四条にございますいわゆる建設事業等をやりますために資金を調達するという意味の国債ではございませんので、無利息であるから云々、それからまた、無利息でこういう国債を交付した例は、戦没者等の未亡人に対する給付金法律が無利息で出しております。したがいまして、これは財政法上の問題でございますとあるいは大蔵当局が最も答えるのに適当であろうかと思いますが、従来そういう前例がございますので、違反にならないというふうに考えております。
  124. 永山忠則

    ○永山委員 大体、無利息ということになりますと、いまのようなぐあいに金利以上に物価が上がっていくわけでありますから、この情勢が続きますと、やはり十年後においては半分以下ということになりますし、それから、せっかく報償でいただきましたものも、これは経済的に利用する価値が非常に削減されてくるのでございますが、この点に関してどういうようなお考えを持っておられるか。無利息が至当だと考える理由ですね。
  125. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 必ずしも無利息だけを取り上げて議論するということではなくて、私ども立案をしあるいは検討をいたします過程で、たとえば反当二万円であるとかその他の条件の中で考えたわけでございますので、そのいろいろな金額あるいは十年という期限等々、それからこの法案の趣旨、その他いろいろ、記名国債で差し上げております他の法案との振り合い等を考えて、無利息ということにいたしたわけでございます。
  126. 永山忠則

    ○永山委員 いま創設農地が非常に高い値段で転用されたりあるいは転売されておるのでございますが、そういうものの中から一定の率を政府へ納入せしめて、それを財源措置として充てるということのほうがより合理的ではないかというように考えられるのでございますが、この点に関してはどういうようにお考えになっておりますか。
  127. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 いま先生お話しになりましたような考え方につきましては、これも御承知と思いますが、従来かなり立ち入って検討があったわけでございます。しかし、現在すでに転用転売をした方とこういう法律ができるとき以後の方との振り合い、バランスというものを考えてみますと、今後はそれだけのものをたとえば転用税ということで取るようなことは実はバランスを失するではないかというようなこと、あるいは、現在のような土地の需給の状況から考えますと、それだけの税金が価格の中から取られるということではなくて、いわば第三者に、つまり需要者に転嫁される可能性もないとは言えない。そうでなくても地価の問題はやはり一般的に高地価ということで問題になっておるときでございますので、第三者に転嫁される可能性がないかどうかというようなこと、これはあるということをはっきり申し上げておるわけではございませんけれども、可能性があるのではないかというようなこと等を考えまして、そういうふうな財源のいわば調達の方法というのは採用をいたさないことにしたわけであります。  なお、つけ加えて申し上げますならば、今回の報償は、必ずしも転用してけしからぬじゃないかという問題ではなくて、農地改革について非常に御貢献を願ったということで考えておるわけでございますから、やはり財源としては一般財源をもって充てることが政府としは妥当ではないだろうかというふうに考えられるわけでございます。
  128. 永山忠則

    ○永山委員 これに関連いたしますけれども、やはり、物価が上がり創設農地が非常に高い値段でどんどんいきますと、一そう強制的に買収を受けた方面の関係者精神的な刺激も大ですし、それから同時に、実際上の問題として交付公債の価値がほとんどないということになるわけでございますので、これは総務長官のほうで一般の地価対策というものをしっかり講じられる、それから物価対策を根本的にやるということにならないと——農地を買収された当時、その金がすぐ現金で渡っておればこういう問題は起こらなかったかもしれない。それが交付公債で、しかも渡ったときは紙の値段ぐらいになっておった、こういうようなことが今日の結果を来たしているのですから、同じような轍を踏むことになったのでは、せっかくの政府のいわゆる報償精神に沿わないことになりますので、一般の地価対策並びに物価対策に対する総務長官の所信を承りたいのであります。
  129. 臼井莊一

    ○臼井政府委員 この農地の被買収者の方々の非常な御不満の一つの原因は、農地を食糧増産のためにという非常に高度の目標、敗戦後の日本の経済、食糧等に関しての非常な高邁な精神から御協力されたのでありますが、それが目の前で実際他に高く売れて転用されるというところに一つの大きな不満があるということは事実でございます。しかし、いま室長も申し上げましたように、その中から税金なり何なり式に吸い上げるということになると、一つはこれが土地をさらに転用して利用しようという方面に転嫁されると逆に地価がさらにまた上がる、こういうこと等もありますし、すでにこの問題は転用が二十九年に事情によっては許されるということにもなっておりまするし、また、あと考えれば非常に安いではないかということでありますけれども、一応その当時としては正当な対価で耕地を政府から買ったというようなことにもなっております。したがって、そういうことにすることは適当ではなかろうということで今度のような法案になった理由でもあるわけでございます。しかし、お説のように、最高裁で判決のございますように、確かに当時としては正当な価格で正当な手段で政府農地被買収者から買い上げたのだということになっておりまして、そのとおりでございますけれども、金が手に渡るまでに多少時間的のズレがあったために、やはり売り渡したほうとしてはその点が非常に納得のいかぬ点も御不満の一つであったようであります。したがって、今後におきましても、物価の騰貴をできるだけ阻止するということ、これはひとり本件に関してばかりではございませんで、貯蓄奨励の上からも、国民生活の安定の上からも、物価を急激な大きな上昇のないようにすることは非常に必要であると考えますので、政府としても今後そういう方面に努力をいたしていくつもりでございます。
  130. 永山忠則

    ○永山委員 政府のほうで一般的地価対策及び物価対策に対して十分抜本的な施策を講じて、こういう憂いのないように努力をするという長官のお考えを了承します。大いに努力をしていただきたいと思うのでございますが、買収当時の値段は必ずしも適正ではなかったとわれわれは思うのです。かりに適正であったとしても、それが交付公債で手元へ入ったときは、やはり二年ぐらい後に入っているのですから、そのときは紙の値段にしかなっていないわけです。それをすぐそのときにもらっておればいいのですけれども、交付の時期がおくれたということが、実質的にはほとんどただにひとしい状態で政府がこれを接収したという結果を来たしておるのでございますから、この点について政府のほうは正しい値段できめてすぐ金を出していないのですから、きわめて不当なる価格でこれを接収したというように考えるのですが、その点のお考えはどうでございますか。
  131. 臼井莊一

    ○臼井政府委員 この点につきましては、さっき申し上げたように、農地被買収者に御不満のある点もよくわかるのでございますが、ただ、当時は、戦後の日本が経済的にも非常な打撃を受け、いわゆるインフレの激しい時代でありまして、この点につきましては、ひとり農地被買収者の方々が受け取られた交付公債に限りませんで、たとえば貯蓄の問題等にいたしましても、いろいろな面でそういうことがございますので、したがいまして、今回の新たに農地報償をいたしまする理由も、その理由ではございませんで、ただ、戦後の日本の国が非常に民主化し、また経済もこのように成長をしてきたこの裏には、社会的な不安を除く等々の非常な貢献をされたのはやはり農地解放ということが非常な功績であったということはだれしも認むるところでございまして、したがいまして、この大きな改革事業にとにかく協力をせられた旧地主の方々に対して、その功績をわれわれとしてもねぎらう、こういう意味で今回報償を決定いたしたわけでございますので、その点を御了承いただきたいと思います。
  132. 永山忠則

    ○永山委員 私が質問しているのは、インフレ関係で無価値になったということは別なんです。交付公債をすぐもらっておれば、それがインフレで無価値になろうと何だろうと、本人がそれを換物すればよかったし、利用すればよかった。政府が交付する期間がおくれたから、政府の責任においてただになった。インフレの問題とは別なんです。すぐその場でもらっておればよかったのを、交付がおくれたというために、その間インフレが出て、政府の責任でただにされた。ただに近いものになった。そこで、価格は適当な価格であるということを否定するものでは——裁判所の決定をわれわれは論議はしませんけれども、適当ではないと考えますよ。考えますけれども、しかし、すぐもらうのでなしに、交付の時期がおくれた、その政府の責任で価値を失ったというところに、やはり政府がこれに対して責任を負わねばならぬ問題ではないか、こういうように私は考えるわけです。
  133. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 あるいは直接のお答えにならないかと思いますが、政府が買収農地に対して証券で支払いました条件は、二年据え置き、三分六厘五毛ということで、二十二年の元利均等年賦償還の国債であったわけであります。実際問題としては、お話のありましたようにインフレ等が進行いたしましたので、二十五年の四月一日ではもう停止いたしまして償還をいたしておるということでございます。したがいまして、二十五年には全体の八十五億のうちの約六十五億を償還をいたしておる。そういうふうに、二十四年の期間という国債の条件自体が、当時のインフレと申しますか、そういう問題をかかえておる時期に適当であったかどうかということは別にいたしまして、政府としては当時条件以前に償還すべき努力はいたしております。ただいまお話しになりましたように、インフレの被害を受けることがなかったかということではございませんけれども、ただ、そういうふうに早くは償還をいたしておるわけでございます。
  134. 永山忠則

    ○永山委員 私が質問しようとするところは、その国債を手に入れた時期がおそかったのですよ。政府の発行と、入ったとき、その間に急激なインフレがあった。手にもらったときはもう価値がほとんどなくなるというような急激なるインフレだった。その場ですぐもらっておれば、それは何かにかえるとか、あるいはそれを何とかして商売に利用することができたのですが、もらったときがすでにおそかった。だから、それ自体を経済価値として活用することができなかった。だから、政府の交付の時期がおくれたことそれ自体においての損害というものは、これはもうはなはだしいものであったので、インフレによった問題とは別だ、こういうことを言っておるわけでありまして、この点に関しても、一般のインフレによるものだからだれも同じだという関係議論とは別途にお考えを願いたいというふうに思っておるわけであります。  その次に、やはり政府の命令で国家総動員その他応召して、あるいは外地で抑留されているというような関係者が帰ってみたら土地はなかった、こういう状態の者にはやはり政府の責任で別途に何らかこれこそ私は報償すべきだと思う。自己の事由ではないのです。政府命令で出ておったために、それらは家族をかかえて難儀をしておって、自分でつくれぬから人がつくっておった。こういうような者に対してはやはり何らかの形で別途報償すべきではないか、こういうように思うのですが、どうですか。
  135. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 たとえばいまお話しになりました応召というような場合もきわめて多かったと思います。工藤調査会等の調査によりましても、わりに旧地主の方の家庭はそういう戦没者がほかのグループよりも多い。したがって、推定でございますが、応召された方も相当多かったと思うのでございます。実はそういう意味での数字はございませんけれども、常識的に考えまして、相当戦争に行った方が多かった。ただ、法律の上では、そういう方も応召であれば在村の地主とみなすというふうになっておりましたし、それから、戻ってきて自作をするということが確実であるというような場合には自作の扱いにするというふうになっておったのであります。実際問題としては、いろいろの話を私どもは聞いておりますから、どの程度その法文どおりであったかどうかは、いまとなってはよくわかりませんけれども、当時の旧自創法におきましては配慮はあったというふうに考えております。今回の報償は、そういうことをも含めまして、先ほど来から長官も御説明になっておりますように、旧地主の方がとにかく自己の土地を解放せられたということに対する報償でございますので、そういうことをも背景には私どもいろいろ考慮の重要な一部として考えておりますけれども、特別扱いするということではなくて法案を構成したいと考えたわけでございます。
  136. 永山忠則

    ○永山委員 さらに、戦死をした、あるいは国家総動員法でなくなったというような家庭で、子供が小さいために、計画をやろうとしても目的が立たずしておるところを、それらの者に対しては全然顧みないという状態で、そういう方が非常に苦しい立場に置かれておるわけでございますが、いわゆる国家の命令で戦死した家庭ですね、そういう家庭でどうしてもやむを得ずこれを強制徴収されたというようなものに対しては、特別な報償制をおとりになる考えでございますか。どういうようなことでありますか。
  137. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 私どもが今回報償法案ということで考えましたのは、一般的に農地改革というものは非常に日本の経済の再建に役に立った、それにはそれなりに相当な犠牲を引き受けられ、心理的にはそういう気持ちが残っておるということに着目をして出したわけでございます。具体的に当時の旧自創法に基づきます農地改革は場合場合によってどうであったか、あるいはそれは非常に過酷であった、あるいはそれは手ぬるかった、あるいはその場合にはどうであったかというような、一つ一つのケースの補償をいまやろうというふうな考えでおるわけではございません。したがいまして、そういうことがいろいろ積もり積もって一つの問題になっておるということにつきましては私ども理解が十分できるわけでございますが、個々のケースに対応してそれを特別に扱うというふうなことは考えておらないのでございます。
  138. 永山忠則

    ○永山委員 昭和三十七年に行なわれました工藤調査会というようなものは、その当時はそういう問題については具体的な調査はできていないわけでございますか。
  139. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 いまお話しになりました、たとえば応召したからどうであったとか、あるいはたまたま働き盛りの当主がなくなって、あとに子供さんしか残っていなかったから農地改革のときにどうであったかというような形の調査は、工藤調査会の調査の際もやっておりません。ただ、工藤調査会の調査の際には、農地改革というものを当時の方がどういうふうに受け取られたかというふうな気持ち、あるいは現在の生活状況はどういうふうになっておるとか、あるいは現在の生活状況が戦前に比べてどういうふうになったと考え、かつその原因がたとえば農地改革にあると思うかどうかというような調査は、実はいたしております。しかし、個々のケースに基づいて、農地改革が行なわれたことがどうであったかという、いわゆる旧自創法をもう一ぺん再検討するというような意味の調査は行なっておりません。
  140. 永山忠則

    ○永山委員 工藤調査会と、それから昭和三十八年度に総理府のほうでやはり調査をされたのでございますが、その関連関係はどういうようになっておりますか。
  141. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 御承知のように、工藤調査会のほうは三十五年から三十七年に答申が出たわけでございますが、当時、調査をいたします対象として、つまり、調査を国民全部にやるわけにまいりませんから、当然サンプルでやるわけでございますが、そのサンプルで大体、たとえば国民の一万五千なら一万五千戸を選びます際に、その中に旧地主がどれくらいどういうふうに入っておられるかということは実はあらかじめわかっておったわけでございます。したがいまして、工藤調査会の際でございますが、一万五千戸の戸数を選びまして、そのうち約八%程度がつまり旧地主の方であるというふうなことがわかったのであります。逆に、政府で三十八年に行ないました調査では、これはその前に調査としていわば旧地主の方から申告をいただきましたために、約百万戸近くの旧地主の方のいわば実態と申しますか、どういうふうに農地を買われたかということはわかったのでございます。したがいまして、実際に私どもの調べでは、農地買収の対象戸数というものは二百万戸でございますが、面積からいたしますと大部分の戸数、約百万戸程度の方がというような意味で、第二回目の調査におきましては地主の方を特別にそれ自体としてつかまえるということができたわけです。  なお、最初の工藤調査会の際にもいろいろございますが、これはつまり、生活の状況調査、あるいは、先ほども申し上げましたように、それについて自分がどう考えているか、自己の生活をどう評価する、あるいはそれが農地改革との関連でどういうふうに関連があるかというような、いわば主観的な調査を相当程度やっております。第二回目と申しますか、三十八年に私どもがやりました調査は、そういういわば、どういうふうな考え方ですか、どういうお気持ちですかという点については調査をいたしませんで、たとえば生活状況調査について申しますならば、むしろどういうふうな所得がありますかというふうな客観的な指標について調査をいたしておるのであります。ただ、その調査と工藤調査会等の調査とのいろいろ調査上の約束を調べてみますと、工藤調査会当時、たとえば相当程度旧地主の方が農地改革によって打撃を受けている心理的な影響というものは、私どもが三十八年にやりましたときも、調査の対象とはいたしませんでしたけれども、その他の指標の類似性から見ますと、やはり工藤調査会で出ました気持ちというものは現在も残っておるというふうに言っていいんじゃないかというふうに考えております。そういう意味で関連があるわけでございます。  なお、三十八年の調査は、工藤調査会の調査と違いまして、先ほどの実態調査のほかに世論調査というようなものもやっておる次第でございます。
  142. 永山忠則

    ○永山委員 工藤調査会の調査に基づいて国民金融公庫法の改正法案が国会へ提出されて、いま参議院で継続審議になっておるわけでございますが、これに対しまして、総務長官のほうでは、この報償法案が出たのだからこれは消極的でよいというお考えでございますか、並行して進めていこうというお考えでございますか。
  143. 臼井莊一

    ○臼井政府委員 この国民金融公庫法の一部改正の法案でございますが、これは工藤調査会が旧地主の現在における生活上、生業上の問題を中心にいたしまして調査会をいたしました結果、農地改革によって農地を買収せられた者で現在において生活上また生業上困難な状況にある者に対してはその生業資金を貸し付けよう、あるいはまた、その子弟を進学させるのに困難な状況にある者に対しては育英その他の制度の運用においても配慮を加えることが適当である、こういうようなことの答申に基づいて、二十億の予算をもってそれらの方々に融資をするという法案でございますので、今回の報償法案とは別個の問題でございます。もちろん対象等は関連のある問題を含んではおりますけれども、しかし、それは別のものとして、これはこれでぜひ発足してまいりたい、かように考えている次第であります。
  144. 永山忠則

    ○永山委員 一つは報償の問題であり、一つは、工藤調査会では、旧地主は非常に急激な変動で生活の安定を欠くものがあるので、その経済対策として、まず国民金融公庫法の改正によって、金融的措置によって育英及び経済の更生の実をあげようということになっておるのですから、その性格は全然競合していないわけです。この推進方に対しては政府の所信を強く述べてもらいませんと、これが出たのだからこのほうは見送ってもいいのじゃないかという空気が支配的にあるというように感じられるのでございますから、長官の強い所信をぜひ浸透するように、そして本国会で成立するように希望をいたしたいと思います。  そこで、三十八年度の総理府の調査の結果報償制に踏み切られたのは、何か世論調査でもなさっておるのでありますか。また、調査の結果としてどういうような世論があったのでございますか。たとえば、報償すべきだという、あるいはしたほうがよいとするもの、しないほうよい、すべきではないというような点でいろいろ調査をされておるやに聞いておるのでございますが、これらの調査内容について御報告を願いたいのであります。
  145. 臼井莊一

    ○臼井政府委員 三十八年度における調査、その際に、世論調査におきましては、無作為抽出によりまして全国一万人についてこの農地報償問題の世論の動向を調査したのであります。その結果、たとえば、農地報償問題を知らぬという者が当時四二・八%、知っている者が五七・二%で、この五七・二%のうち、報償すべきだという者が三三・四%、また、したほうがよいという者が二八・四%、合計いたしますると六一・八%、したほうがよいという者があるわけであります。しないほうがよいという者は一二・二%、またはすべきでないという者は一〇・三%、こういうようなことで、反対のほうは二二・五%ということで、したほうがよいという意見から見ますと、非常に低いのであります。そのほか、わからないという者が一五・七%、こういうことでございます。それから、この内容について、報償に関する賛否両論について意見を聞いた後、結論として聞いた報償に対する意見といたしましては、すべきだというのが二一・八%、またはしてもよいというのが二八・九%、これが合計五〇・七、しないほうがよいとかまたはすべきでないというのを合わせても二六・一、わからないというのが二三・二、いずれにいたしましても報償に賛成するほうに意見が多いという結果が出ているわけであります。
  146. 永山忠則

    ○永山委員 さらに、生活状態の調査はどういうようになっていますか。
  147. 臼井莊一

    ○臼井政府委員 これも無作為抽出による全国被買収、世帯、一般世帯各一万、計二万の世帯の生活状況について調査をいたしたのでありますが、大体は他の一般世帯に比べてそう悪くないという一応のあれでございまするが、なお詳細申しますと、現在の生活状況は、年間平均所得において被買収世帯が他の一般世帯に比べて必ずしもそう悪くはない。しかし、いわゆる赤字世帯、つまり所得から家計費を差し引いた結果の赤字でございますが、それの総世帯に対する割合は、一般世帯において七%、被買収世帯においては一〇%、要するに被買収世帯のほうが赤字世帯がやや多い。こういうことで、結局、所得から経費を差し引くと、生活の赤字のほうの苦しさというものは被買収者の方々のほうが多いという結果であります。
  148. 永山忠則

    ○永山委員 そこで、この報償制ということを主張しておられるのでございますが、報償制ということをやるのに、またさっきの問題に戻りますけれども、頭打ちがあったり基準線はありますけれども、やはり、段階を設けて金を出すということになれば、報償というよりは補償ということの考え方が非常に大きいのではないかというように懸念を持つ意見の人もあるようでございますが、その点に対してもう一度ひとつさっきの質問につけ加えて解明しておいてもらいたいと思います。
  149. 臼井莊一

    ○臼井政府委員 この点は先ほど室長も申し上げたのでございますが、一般に補償と申しますと相手方の損害や損失を償うことが目的という、こういう観念に対しまして、報償は、その目的において、相手方の損害や損失を償うということの含みも多少ないとはもちろん言えませんけれども、しかし、それとは別に、相手方の一定の事項にかかる貢献や寄与に対してこれに報ゆるという概念でございまして、今回の農地被買収者に対して報償するという場合の報償は、もっぱら後のほうの、要するに、先刻来申し上げておりまするように、戦後の日本の世相の安定といいますか、それから経済の復興、これらに非常な寄与をした、しかもとにかく経済的な犠牲を払ってのことでございまするけれども、先刻来いろいろ申し上げておるような事柄が重なって精神的にも非常に農地被買収者の方は大きな影響を受けておる、したがって、これらに対しては、やはりその功績に対して報償し、また精神的な非常な影響を受けたことに対してねぎらいをしよう、こういうことのほうが非常な比重を占めておるということであります。
  150. 永山忠則

    ○永山委員 要するに、非常に国家に奉仕したということに対して、それに対する報償の概念に、この段階があっても何ら矛盾はしないというお説を承りまして、了承いたしましたが、これは社会保障的な政策とどういうような関係になるわけでありますか。社会保障的な性格は全然ないのでございますか。
  151. 臼井莊一

    ○臼井政府委員 これは社会保障的な考えからではございませんで、先ほど申し上げましたように、その功績に対して、また心理的な影響に対してのねぎらいをするということでございます。社会保障的な見地からではないということになっております。
  152. 永山忠則

    ○永山委員 それから、この中で採草地等をのけられておるのはどういうわけですか。
  153. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 これは結局農地改革というものに対する貢献あるいはそれに基づく心理的影響というものを基礎にいたしましての法案でございます。同じ自作農創設措置法の中には、確かに未墾地であるとかそういうものをも政府は買収いたしております。価格等につきましても似たような程度の価格であったわけでございますが、これは実はこの前綱島先生の御質問にもお答えしたと思いますけれども、たとえば未墾地を買収するということにつきましては、大いに買収されたのは確かにこの旧自創法に基づいて買収をされたのでございます。しかし、いわゆる土地の高度利用をはからなければならないという、いわば一般的な命題に基づいて、未墾地を買収しようという考え方はすでに昭和十三年に農地調整法の中にございます。あるいはまた戦争に入りましてからの農地開発法というふうな法律の中にもございます。そういう意味におきまして、すでにかなり前からあった思想のもとでの考え方である。なおかつ、現在の農地法では、農地については政府は旧自創法のような買い方をするということになっておりませんが、未墾地につきましては、あまり買ってはおりませんけれども、同じような法律制度になっておるわけでございます。そういう意味におきまして、未墾地等を農地改革と考えることは制度上いかがなものであろうかというようなことで、私どもは正確な意味における農地改革を対象にしようというふうに限定をいたしたわけでございます。
  154. 永山忠則

    ○永山委員 この未墾地や牧野というのは、農業構造改善のチャンピオンとも言うべき状態のものでございますから、経済的価値等から見まして畑以上のものであるとも言い得る場所もあるわけです。これは除外するということは適正を欠くのではないかというように考えられますので、大いに御検討を願いたいと思うのですが、さらに、譲渡令による強制譲渡農地や物納農地を除外してあるという理由はどういうわけでございますか。
  155. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 これも御存じと思いますけれども、譲渡令は、つまり、一定の所有制限以外の状態になった場合にはまずだれかに売りなさい、値段も特に統制をいたしませんということで構成がされております。そうして、適当な相手がなくてそのままの状態にしておくならば政府が買い上げますということでございます。一方、自創法は御承知のように昭和二十五年から現在の農地法に至るまであったわけでございますが、昭和二十五年以後におきましても、昭和二十五年七月以前にすでに一定の所有制限外の状態になっております土地は、これはやはり旧自創法に基づいて買ったわけでございます。特に譲渡令では政府が強制買収するという体制ではなかったので、いわゆる正確な意味の農地改革というふうには考えられない。むしろ現在の農地法に基づく農地改革の成果の維持という性格のものでございますので、対象にいたさなかったわけでございます。  なお、物納につきましては、これは実際問題として、農地証券でもって物納のかわりにした、これが今度対象になるわけでございます。そういうバランスはどうかということでございますが、物納というのは、いわゆる戦後の財産税制度一般の中で農地を出したということでございますので、私どもといたしましては、物納農地を対象にするということは、いわば財産税全体の問題になるのではないかというふうに考えて、これは省いた次第であります。
  156. 綱島正興

    ○綱島委員 関連で……。ただいまの物納ですが、これは農地解放のものとは関係がないようなふうなお話でございますけれども、実際は、御承知のとおり、創設農地法は二十一年の秋に出ております。そうして財産税も同時に行なわれておる。普通な、たとえば都会の土地のようなものでありますと、金を借りてその都会の土地を持っておればいつまでも持っておれる。農地は、余剰農地だとかあるいは賃貸借農地であるとか、そういうような種類のものはすべてその意思いかんにかかわらずどうせ強制買収されるにきまっておる、金を借りて税金を納めて、財産税を納めて、またその土地を取られても何もならないから、しかたがないから物納をする、泣き泣き物納をするということで、事実上は強制買収である、こう思うのでありますが、その点に対する御見解はいかがでございましょうか。
  157. 臼井莊一

    ○臼井政府委員 ただいまの綱島先生の御意見でございますが、政府といたしましては、財産税の物納は、いま室長が申しましたように、納税者が税を納付する場合に何で納付するか、したがいまして、その選択はどれにするかということは納税者の自由でございます。ひとり農地に限らず、宅地でも家屋でも、土地や家屋等の不動産あるいは有価証券あるいは当の金銭以外の財産を金銭にかえて納付するのが、たいてい現物を納付したものであります。物納農地もやはりこの一般的な物納というものの一環でございますから、したがって、政府解釈といたしましては、一般的な物納と同様に解釈をいたしておるわけであります。
  158. 綱島正興

    ○綱島委員 ただいまの御答弁でございますけれども、実は、農地以外のものですと、税金を金銭納入いたしておきますれば、今日でも持っておれる。何も強制買収はされずにおるわけなんです。ところが、農地だけの場合は、税金を金で納めましても、そのあとから強制買収をされますので、これはもう選択の自由が事実上できないわけです。表面上はちょっとありそうに思うのでありますが、事実上は、金で納めてまたそのあとそれを強制買収される、こういうものでございますから、これに関する限りは、私はどうも普通の農地と同じようにお取り扱いになるほうが提案として妥当性があるんじゃないかと思うのですが、もう一ぺんそこの点を伺いたいと思います。
  159. 臼井莊一

    ○臼井政府委員 その点につきましては、いまも申し上げましたように、税金を何で納めるか、普通は金銭で納めるのが常識でございますけれども、それにかえって、有価証券あるいは土地家屋というような不動産とか、農地も不動産でございますが、これを農地をもって、農地も耕地でありますけれども土地である、こういうことで、本人の選択によってこれを納めたわけでありまするので、農地改革による強制買収とはその性質と形態を異にしておる、こういう解釈をとっておるわけであります。
  160. 永山忠則

    ○永山委員 対象人員及び総額はいまのところどういうようなことになっておりますか。
  161. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 対象人員につきましては、現在私どものほうで推計いたしましたのは約百六十七万人、金額にいたしまして千四百五十六億というふうに推計をいたしております。
  162. 河本敏夫

    河本委員長 永山君、一問で結論にしてください。
  163. 永山忠則

    ○永山委員 それじゃ残余の質問は留保いたしておきます。      ————◇—————
  164. 河本敏夫

    河本委員長 厚生省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際おはかりいたします。本案についての質疑は終了したものと認めるに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  165. 河本敏夫

    河本委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     —————————————
  166. 河本敏夫

    河本委員長 委員長の手元に佐々木義武君及び山内広君より本案に対する修正案が拠出されております     —————————————    厚生省設置法の一部を改正する法律案に対する修正案  厚生省設置法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。  附則中「昭和四十年四月一日」を「公布の日」に改める。     —————————————
  167. 河本敏夫

    河本委員長 提出者より趣旨の説明を求めます。佐々木義武君。
  168. 佐々木義武

    ○佐々木(義)委員 ただいま議題となりました厚生省設置法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、提出者を代表してその趣旨を御説明申し上げます。  本案は自民、社会、両党の共同提案にかかるもので、案文はすでにお手元に配布してありますので、朗読は省略し、その要旨を御説明申し上げますと、原案では「昭和四十年四月一日」となっております施行期日は、すでにその日も経過しておりますので、これを「公布の日」に改めようとするものであります。  何とぞ御賛成くださいますようお願いいたします。     —————————————
  169. 河本敏夫

    河本委員長 次に原案及び修正案について討論に入るのでありますが、討論の申し出もございませんので、直ちに採決いたします。  厚生省設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  まず、本案に対する修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  170. 河本敏夫

    河本委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  171. 河本敏夫

    河本委員長 起立総員。よって、修正部分を除いては、原案のとおり可決いたしました。  右の結果、本案は修正議決すべきものと決しました。  なお、本案に関する委員会報告書の作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  172. 河本敏夫

    河本委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。   〔報告書は附録に掲載〕
  173. 河本敏夫

    河本委員長 次会は、来たる五月七日、午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十四分散会