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1965-04-22 第48回国会 衆議院 内閣委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月二十二日(木曜日)    午後一時十分開議  出席委員    委員長 河本 敏夫君    理事 荒舩清十郎君 理事 伊能繁次郎君    理事 佐々木義武君 理事 永山 忠則君    理事 八田 貞義君 理事 田口 誠治君    理事 村山 喜一君 理事 山内  広君       井原 岸高君    岩動 道行君       池田 清志君    上林山榮吉君       亀岡 高夫君    高瀬  傳君       武市 恭信君    塚田  徹君       綱島 正興君    二階堂 進君       野呂 恭一君    藤尾 正行君       湊  徹郎君   茜ケ久保重光君       稻村 隆一君    大出  俊君       大原  亨君    中村 高一君       楢崎弥之助君    山田 長司君       玉置 一徳君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         国 務 大 臣 高橋  衛君  出席政府委員         人事院事務官         (給与局長)  瀧本 忠男君         人事院事務官         (職員局長)  大塚 基弘君         総理府総務長官 臼井 莊一君         宮内庁次長   瓜生 順良君         総理府事務官         (皇室経済主         管)      並木 四郎君         総理府事務官         (経済企画庁長         官官房長)   村上孝太郎君         大蔵事務官         (大臣官房長) 谷村  裕君         大蔵事務官         (国有財産局         長)      江守堅太郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         検事(刑事局長)津田  實君  委員外出席者         人事院事務官         (公平局長)  三浦 直男君         宮内庁長官   宇佐美 毅君         国税庁次長   喜田村健三君         専  門  員 茨木 純一君     ――――――――――――― 四月二十二日  委員天野公義君、角屋堅次郎君、中村高一君及  び受田新吉辞任につき、その補欠として上林  山榮吉君、大原亨君、山田長司君及び玉置一徳  君が議長指名委員に選任された。 同日  委員上林山榮吉君、山田長司君及び玉置一徳君  辞任につき、その補欠として天野公義君、中村  高一君及び受田新吉君が議長指名委員に選  任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  経済企画庁設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出第三一号)  皇室経済法及び皇室経済法施行法の一部を改正  する法律案内閣提出第一九号)  大蔵省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二九号)      ――――◇―――――
  2. 河本敏夫

    河本委員長 これより会議を開きます。  経済企画庁設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案についての質疑は終了したものと認めるに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 河本敏夫

    河本委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  これにて質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  4. 河本敏夫

    河本委員長 ただいま委員長手元佐々木義武君外二名より、本案に対する修正案が提出されております。
  5. 河本敏夫

    河本委員長 提出者より趣旨説明を求めます。佐々木義武君。
  6. 佐々木義武

    佐々木(義)委員 ただいま議題となっております経済企画庁設置法の一部を改正する法律案に対する修正案趣旨説明をいたします。  案文はお手元に配付いたしておりますので、朗読は省略さしていただきまして、要旨を申し上げますと、原案中昭和四十年四月一日となっております施行期日につきましては、すでにその日を経過しておりますので、これを公布の日に改め、定員に関する改正規定は、今年四月一日より適用しようとするものであります。  何とぞ御賛同あらんことをお願い申し上げます。     ―――――――――――――
  7. 河本敏夫

    河本委員長 これより原案及び修正案討論に付するのでありますが、討論申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  経済企画庁設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  まず、本案に対する修正案賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  8. 河本敏夫

    河本委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  9. 河本敏夫

    河本委員長 起立総員。よって、修正部分を除いては原案のとおり可決いたしました。  右の結果、本案は修正議決すべきものと決しました。  なお、本案に対する委員会報告書作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 河本敏夫

    河本委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。   〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  11. 河本敏夫

    河本委員長 皇室経済法及び皇室経済法施行法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。  質疑を行ないます。質疑申し出がありますので、これを許します。田口誠治君。
  12. 田口誠治

    田口(誠)委員 昨日、村山委員のほうから内閣助言によるところの天皇国事行為についていろいろと質問をしたわけでございますが、その中になおちょっと疑問になる点がございまするので、お聞きをいたしたいと思います。  お聞きをする場合に、整理としてわかりやすいと思いますので、いろはのいの字からお伺いをいたしたいと思いますが、いわゆる内閣助言というこの表現は、どういう範囲のものであり、どういう性質のものであるかという点からお聞きをしたいと思うのです。
  13. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 ただいま御質問内閣助言承認という範囲でございますが、憲法第七条に列挙してございます十項目天皇の権能に属しまする助言承認ということで、助言承認と重なっておりますが、これは法制局見解をまつところでありますが、同様の意味というふうに解せられておると思います。また、憲法上に規定されておりますのはその限度であろうかと思いますが、しかし、たとえば憲法上の委任事項に関する特別の法律という問題につきましても、同様に内閣助言承認を要するというような解釈になっております。
  14. 田口誠治

    田口(誠)委員 あとの質問者が来ましたので、私はこれだけでしぼって急いで質問をいたしたいと思いまするが、ただいま答弁のありました内容につきましては、村山委員のほうから昨日質問があって、そして次長のほうから答弁があったわけであります。そこで私がお聞きしたいのは、憲法七条による十項目によるもの以外は、これは私事というように解釈してもいいのかどうか。昨日の質問では、 私事範囲についての一応の答弁はあったわけでありますが、この十項目以外のものは全部私事であるかどうかという点について、お伺いをいたしたいと思います。これは三条の関係としていろいろございましょうけれども、七条、八条の関係、この内閣助言承認たよってという項は十項目に分けられておる、これを中心にお聞きをしておるのですが、その他八条とか、また関連をしておる条項に加わっておるものは、これは私は承知しておりまするので、それ以外のものはこれは全部私事というふうに考えていいかどうかということです。
  15. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 憲法第七条、それからいまお断わりがございましたその他の憲法上の条項につきましても、二、三内閣助言承認が当然要ると解せられるものがもちろんございますが、その他のものは一切私事であるというふうには分けておりませんので、その他天皇として公的な事実上の御行動というものがあろうと思うのでございます。たとえば各国の元首に公電を発せられるとか、その他公的な色彩を持った行事がございますので、純然たる私事に属せざるそういった公的な行事があるというのが、ただいまの解釈でございます。
  16. 田口誠治

    田口(誠)委員 ちょっと議事進行について申し上げますが、茜ケ久保委員宇佐美長官に来ていただいておるのは瞬間に制限があるようですので、私の質問を中座して、茜ケ久保委員質問を交代したいと思います。
  17. 河本敏夫

  18. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 宇佐美長官にお出かけを願ったのは、宇佐美長官はかつては政府委員として当委員会にずっと御出席をしておられたと記憶するのでありますが、いかがでありますか。
  19. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 従来の例は、私の前の長官時代から政府委員にお願いしておりません。次長経済主管が、宮内庁からは常に政府委員になっておるわけでございます。
  20. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 あなたが長官になられて以来は、一度も政府委員として当委員会ないしは国会に出たことはないと、こういうのですか。
  21. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 そういうふうに記憶いたしております。
  22. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 皇室関係の、たとえば今度の皇室経済法ないしは施行法、その他かつては新しい宮殿の造営等に関するかなり重要な問題を論議するのでございますが、そういった場合に、長官政府委員とならないで、次長をして政府委員とされている理由をお聞きしたいと思うのです。
  23. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 これは前長官時代からそういうふうな扱いになっておりますが、もちろん宮内庁ひとりできめるわけでなく、政府とも御相談の上でございますけれども、やはり陛下のいろいろの御行動あるいは儀式、いろいろな点で、そういう場合に出席しなければならないことが多いわけでございますので、いつも政府委員でありながら国会出席できないというような状態が多くなりがちでございますので、一応政府委員というものをはずしておるわけでございます。しかしながら、差しつかえない限りできるだけ国会出席いたしますことは当然でございますので、そういうふうに努力をいたしておるつもりでございます。
  24. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 私そのことをお尋ねするのは、実は従来皇室に関することについては、社会党といえどもできるだけこれは触れないで、なるだけ皇族一家をそっとしておきたいという気持ちがあるわけであります。しかし、やはり今日の社会情勢の中で、私ども皇室あり方ないしは皇族あり方について無関心であり得ない。長官政府委員として当然国会血族関係議案責任を負うという形が、これはあるべきであって、普通の官庁の場合には、大臣ないし政務次官は政府委員として出席になるけれども、事務次官は普通の官庁では政府委員になっておりません。これは国会にその行政庁長官責任を負う、次長内部にあって内部行政責任を負うという形をとっておるのが、実例でございます。宮内庁だけが長官政府委員をはずして、次長にこれをやらしておる。もちろん次長だからいけないとは言いませんけれども、少なくとも皇室国民国会という立場から考えれば、私は当然長官みずからが政府委員として全責任を負って、国会にその責任の所在を明らかにすべきだ、こう思うのです。私は先般長官出席を要求したところが、営内庁からの返事で、政府委員次長がやっておるのだ、長官はできるだけ出たくないかのような返事を聞いたのです。私は、もちろん次長でもそれは差しつかえない面もあるけれども、少なくともいま言ったように、他の行政府はそれぞれ長官責任を負うのに、宮内庁に限ってそういう措置をとるということは、天皇国事があるといえども――私は、天皇国事といえども、今日では国会審議をこえるものでないと思うのです。したがって、この辺、あなたはもあなたの長官時代に、もちろん次長政府委員としてそのままいていいけれども長官みずからも当然政府委員として国会責任を負うべきだと思うが、いかがでございましょう。
  25. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 私は、もとより宮内庁の長として国会に対して責任を負うという立場にあることは疑いのない、問題のないところであると思います。ただ、ほかの役所と違いますところは、陛下のいろいろな御行事、御行動その他の場合におきまして、おそばへ出ていなければならない場合が多いわけでございます。したがって、国会開会中いつもかわりの者で出すということにもいろいろ難点も出てまいりまして、いままでのような取り扱いになったことと思うのであります。そういう点からでございますが、できるだけ差し繰りまして、御通告があれば出席するように努力いたしているつもりでございます。この扱いにつきましても、政府のほうとも相談いたしましたが、従前どおりということでございます。御質問の点もございますので、政府のほうとも今後よく相談いたしたいと思います。
  26. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 もちろん国会は、通常会が御承知のように百五十日という長期にわたる会期を持っております。しかし、皇室関係議案というものは、そうたくさん出るものではありませんし、そう長期間審議するものでもございません。したがって、宮内庁長官天皇国事をされることに支障を生ずるほど国会に出ることは、実際問題としてもないと思うのです。でありますから、私は、ややともすると従来の皇室ないしは、天皇という一つ隠れみののもとに――これは宇佐美長官がそうであるとは申しませんよ。かつて長い間そういうことがあったわけです。したがって、いわゆる国民と新しい姿に立ち直った皇室との関係というものが、また後ほど指摘しますように、いろいろと問題を惹起しておる。そういう際であるから、特に長官みずからが国会責任を負う、これは国民責任を負うことであります。したがって、そういう要望をするわけでありますが、総務長官、いま宇佐美長官の御答弁を聞いておりますと、政府と打ち合わせをした際にも、政府みずからも、いわゆる現在のまま次長をして政府委員とさせ、長官政府委員にならぬでもよかろうというようなお話しがあったかのように伺っておりますが、私が先ほど来申し上げますように、私どもとしては、国民の名において行なうこの国会審議に、当然営内庁責任者である長官みずからが政府委員として――もちろん天皇国事その他について万やむを得ない場合には、次長政府委員でありますから、次長がかわることは当然でありますが、現在の段階では、次長が当然出てきて、こちらが特に要求しなければ長官は出て来ぬ。これは変則であります。私は、国会立場から、これはあくまでも変則であって了承できぬ点でございますが、担当長官である総務長官は、いま宇佐美長官はさらに検討してとおっしゃっておるようでありますが、政府を代表しての御見解を承っておきたいと思います。
  27. 臼井莊一

    臼井政府委員 私は、ただいま宇佐美長官がお答え申し上げましたように、やはり宮中においていろいろ行事とかあるいは天皇に奉仕するとか、いろいろそういうことがおありのために、そちらのほうを代理さぜることばかりではいかぬ、こういうような配慮から、むしろ例外的に次長政府委員となって、長官政府委員でないということになっておるようでございますけれども、なお、この点につきましては、私のほうでもよくひとつ検討いたしてみたいと思います。
  28. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 ぜひひとつ検討してもらいたいと思うのであります。それは、後ほど触れますが、一部に今後の皇室あり方に対する問題点が出ております。そういうことを考えますと、これはやはり国民全体に対して天皇というものがいかにあるべきかという問題でありますけれども、そういうことを国会を通じてはっきりする。それにはやはり長官みずからが責任を負っていただくということ。それは先ほど言ったように、何も常時来てもらうということでなくて、次長長官とも政府委長ならば、差しつかえある場合には、次長がこれを行なうことは当然であります。しかし、やはりいま言ったように、長官みずから政府委員として、常に天皇一家というか、皇室に対しても、国民に対する責任を明らかにするということを、私は特に要望したいと思うのであります。これはぜひ御検討願いたいと思います。  さらに、観点を変えてお尋ねいたしますが、現在この委員会にも憲法調査会廃止に関する法案が出ておりますが、長い間の時間をかけて憲法調査会は、いろいろな観点から現行憲法に対する検討を加えてまいりました。その中でいわゆる改憲論者と称される一部の方々の主張をずっと見ておりますと、いろいろな問題点がありますけれども、要約すると二点になると思うのです。一つは第一条の天皇地位の問題、第二点は第九条の戦争放棄の問題、この二つが大きな柱となっているようであります。いまここで第九条の問題は問題にいたしませんが、第一条の天皇地位に関する問題点としては、いま国の象徴という形で、いわゆる政務の一切からその責任を引かれて、国事を代表するという立場にいらっしゃる天皇をして、再び旧憲法下元首天皇としての地位に戻したいという空気が、いわゆる保守党の一部にも根強くあります。また、これをバックアップする一部の学君の中にもあるようであります。憲法改正主眼点は、いま言ったようにその二つに要約できる。このことは宇佐美長官もおそらく御承知だろうと思うのでありますが、私はここで特に宇佐美長官にお尋ねしたいのは、現在の天皇が国の象徴としての立場人間天皇に帰られて今日二十年、私どもからすれば、たびたび指摘するように、まだまだ天皇生活に対してかなり大きな制肘があって、はっきり申し上げれば、お気の毒だということばで発現できる事態がたくさんあると思うのであります。幸い皇太子御夫妻は、天皇からするとかなり自由な立場をとられ、しかもそれぞれ自分の意思による行動もあるようでありますが、天皇はいわゆる国の象徴という立場から、あるいはまた古い教育を受けられた立場から、かなり不自由であるし、人間としてはまだまだかなり制約されている、こういうように私は感ずるのであります。それが再び元首ということになりますと、これはいわゆる政治的な面における問題はもっと大きな問題がありますが、天皇自体もえらい、さらに強い制約と非常な貧打がかかってくる。ここで宇佐美長官にお伺いしたいのは、あなたはもちろん戦後の宮内庁長官でありますけれども、当然戦前の、いわゆる旧憲法下宮内省ないしは天皇状態も御承知であります。あなたは天皇に常時奉仕する立場責任者として、旧憲法下天皇状態といまの憲法下における天皇状態は、どちらが望ましい姿であるかという点についての御見解を承りたいと思います。
  29. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 旧憲法と新しい憲法とのもとにおきまする天皇の御地位、御生活等についての御質問でございますが、ここで憲法についての論議をいたす私の立場でございませんが、もちろん旧憲法時代の御生活も詳細には存じませんけれども、少なくとも戦後におきまする皇室の御生活というものは、非常に自由になってきているということだけははっきりと出ておると思うのでございます。もちろん、非常な窮屈なことが昔ございまして、そういうことがだんだんとれますることは自然のことで、私どももそのほうがいいと考えております。しかし、皇室におきまする天皇皇族という方々の御地位、要するに日本国民統合中心としての御地位ということになりますと、どうしてもある程度の御不自由というものはしかたない。これは総理大臣でありましょうとも、大きな会社の社長でありましょうとも、その地位というものに伴う自然の制約というものはどこでもあることでございまして、これが全然関係のない一庶民とは違うということだけは明らかでございます。ですから、そういう意味におきましてやはり一定の限界がございますけれども、自然な姿にあられるということは、私は大事なことだと思います。
  30. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 私は、ここで宇佐美長官憲法論議を要求しているわけじゃないのでございます。ただ残念ながら、憲法調査会の長い間の審議を見ておりましても、私どもあえて社会党的な立場からだけではなくて、やはり一国民として考える場合に、ややもすると旧憲法への逆戻りというか――ようやく日本も戦後二十年、民主主義的な教育なりいろいろな制度にだんだん習熟してまいりまして、まだ未熟であるけれども、いわゆる人権の尊重なりあるいは男女の平等なりその他かなりよくなってきたと思うのであります。そこで私がその点を指摘したのは、戦争中私どもたびたび言うように一つ犠牲者でございますが、いわゆる天皇という存在を元首とし、神格化することによって、私は天皇自体生活を――いま長官もおっしゃったように、もちろん最近は天皇国民統合象徴でありますから、その意味における制約は当然であります。一般の国民とは違うのは当然です。その点はもちろんわかります。しかし、それを神格化し、何か神聖不可侵のものとして、天皇という――私ともかつて学生時代に、いまでは問題になりませんけれども天皇別名をよく言ったものです。天皇別名、いわゆるニックネーム的なことを言ったために、交番に引っぱられて、二十九日の豚箱生活、こういうことがあったわけです。それは悪意といえば悪意ですが、ほんとうの若い時代のそのときの気持ちで出たことばが、はからずも聞かれて、そのためにだけ二十九日も留置されたという経緯もあるわけです。ところが、それがいまは幸い天皇自体も御自由になられたし、国民天皇の仲もだんだんスムーズな関係が生まれつつある。これは望ましいことだと思うそれをまたかつての状態に引き戻そうとする根強い力がいま起こりつつある。それが憲法改正への一つの方向となってあらわれている。その中で私が心配するのは、天皇を神格化し、かつての天皇に押し戻して、天皇自体生活を乱すことも当然であるとともに、その陰に隠れて――かつて戦争以前に天皇という神格化されたものを看板に置いて、自分たちの私腹を肥やす者、自分たち地位を築く者、いろいろなことがあった。これは歴史を見ればはっきりしている。こういうかつてのそういった状態にあったときの権力者が、まだ盛んに残っている。そういう人たちが、財界にもあります、政界にもあります、あるいは新聞界にもある。あらゆる面にございます。その力がいまや総合してそういったものを打ち立てようとしている。(「そんなことはないよ。」と呼ぶ者あり)これを憂うるのです。  そこで、私がいま宇佐美長官にお尋ねしたのは、長官みずからもおっしゃったように、これはもちろんあなたの立場があるから、強いことばはおっしゃられぬけれども、今日の天皇の実態というものは、いろいろな制約はあるけれども、非常に自由な、しかも人間としての生活を楽しんでおられるということをおっしゃっておられる。それをもっと拡大して、ほんとう人間的な生活をしていただきたいというのが、私ども気持ちであります。それを逆行する力がある。一方においては、先ほど言ったように、天皇一家に対して非常にお気の毒な状態に逆戻りするという一点と、もう一点は、それをいわゆる一つ隠れみのとして、かつて自分たちのほしいままにした権力なり利権なり、あらゆるものをまた再現しようとするこの力を、私どもはあくまでも阻止しなければならぬ。そういうことがいま起こりつつあるので私は長官に対してお尋ねしたのですが、長官の御答弁は、それ以上要求しても、これはなかなか答弁もできないでございましょうが、そこで総務長官伺いたいが、あなたは憲法調査会廃止法案の当面の責任者でございますが、これはただ廃止法案でありますけれども、いま私が指摘したようなものが現実にあるわけなんです。いま自民党の議席からはそんなことはないとおっしゃるけれども自民党の党内にそれがある。あるからこそいろいろな問題が出てきておる。これに対しまして、総務長官の――いまいわゆる天皇という一つの具体的な例をあげての質問でありますが、こういう点に対する総務長官の御見解をここでひとつ承りたいと思います。
  31. 臼井莊一

    臼井政府委員 憲法に対するいろいろの意見は、調査会でも出ておるわけでございまして、 したがって、人それぞれによっていろいろの御意見はあろうかと存じますが、政府におきましては、もちろん現在の憲法を順守するというその責任がはっきりいたしておるのでございますから、私どもは現在の憲法を順守していくというこういう責任をもって、そのたてまえをとっておる次第でございます。
  32. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 これ以上申し上げましても、この段階ではそれ以上の答弁も御期待できないと思うのでございますが、この問題は、あらためて憲法調査会廃止法案に関する審議の際に、また重ねてお尋ねをしたいと思うのであります。  本題の皇室経済法並びにその施行法改正でありますが、この点は幾人かの委員が前にお尋ねをしたと思うのでありますので、そうくどくは申しません。ただ、昨年もこの金額の増額がなされております。また本年さらになされる。さらに一面においては、成年の皇族の方が十分の一が十分の三になる。これはいわゆる世間一般の物価上昇なり生活のいろいろなあれもありましょうけれども、御承知のように、今日、あす公労協はいわゆる半日ストをあえてしてもこれは要求を貫徹したいという熱望を持っているわけです。これに対して、政府当局なりあるいはそれぞれの当局者は、わずかの賃金値上げに対してもかなり難色を示している。したがって、あるいはへたをすると歴史的な問題が起こり得るような状態にあると思うのであります。そういう中で、皇室の費用だからということで、いわゆる毎年毎年かなりの。パーセンテージにのぼる皇室費の値上げ――もちろん私どもは、皇室の御費用をそうめちゃくちゃに削ろうとか、あるいは多過ぎるとは言いませんよ。しかし、いわゆる世間の働く勤労大衆、税金を納めている一番大きな諸君が、このような非常に苦しい状態にある中で、こういうことは一度や二度は遠慮されても、決して皇室のあるいは皇族生活が危殆に瀕するとは、私は思わないのです。したがって、これはよく皇室費の点などで文句を言うと保守的な方からいろいろなことを言われますけれども、それはそれとして、私はひいきの引き倒しになってはいかぬと思うのです。やはり皇室を大事にしたいならば、国民感情というものをかなり計算をしておかないと、かえってひいきの引き倒しになるという点でございますが、この法案をお出しになるときに、どのような見解とどういう基礎で出されたのか、長官みずからにお聞きしたいと思います。
  33. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 内廷費、皇族費は、一種の定額でございまして、法律的に金額がきまっております。この経費は、そういった意味におきまして、むやみに改定すべきものではないというふうに私どもは考えております。ただ、過去の実際を見ますと、急激な貨幣価値の変動がございましたし、それから物価の変動がございます。そういう場合に、大体におきまして公務員給与の改定というようなことがある程度の幅で行なわれます際に、皇族費のほうも、大体同額の率をもって幾たびか改正をお願いいたしたわけでございます。しかも、それは大体において一年ぐらいおくれて行なわれておりまして、今回も、昨年の公務員給与の改定に伴いまして、ことしからお願いするようになったわけでございます。これは、こういう改定の場合に、やはり皇族さまも、先憂後楽というような意味から、あまり無理してはいけないということをいつも私にもおっしゃっておりますし、私どももそういうつもりでございまして、必要やむを得ざる限度になるべくとどめてまいっておるわけでございます。しかし、宮家の職員もおりますので、この人たちが、どうしてももともとの出発が公務員ベースよりも低いところから出発しておりまして、そのつど改定をいたしまして増額にはなっておりますが、公務員と同等ということにはまだいっていないと思います。今回二割増額になりましてもならないと思いますし、なお、六月あるいは十二月の賞与等も、公務員のようなものは出たいのだろうと思います。しかしながら、少なくとも同じように働いておる職員に対しましては、なるべく公務員程度の給与に早く達するようにということで、お願いしているわけであります。昨年もいたしましたが、実はいままで増額するときの基本的なあれは、内閣総理大臣のベースアップの率を皇族費に適用しておりますが、昨年は、その前の年において総理大臣の給与が、たしか五二%幾らか上がりましたが、昨年とことしを合わせましても、まだその率になっておりません。しかし、実際常陸宮が独立されまして新しいおうちをお立てになることにつきまして、われわれは実はこまかく内容を検討いたしていきますと、宮家の会計というのは、私的経済でございまして、私どもにもほんとうのことはよくわかりませんが、常陸宮さまのを計算いたしまして、非常に赤字になるのに実はびっくりいたしたわけであります。そういうような点から、少なくとも赤字だけは出ないようにして差し上げたいというふうな考え方から再検討いたしまして、今回もこのようなことをお願いしておるわけでございます。もともと皇族費は、品位保持のために必要な経費ということになっております。しかし、品位保持の経費というのは、なかなかこれはどういう基礎かということは非常にむずかしい問題でございまして、殿下方も、自分らのいわゆる品位保持とぜいたくの限界はどこかということをいつもお尋ねになるくらいでございまして、しかも現在の計算は経常的な経費が中心になっておりまして、お住まいの大きな修理あるいは大きな御病気の場合の臨時的な経費は、ほとんど計算に入っておりません。速記に残していいかどうかわかりませんが、あるものを御処分になっているような実情も、昨年あたり見えております。そういう点を考えまして、それでも最低の何とか赤字のお出にならない程度にお願いしたいというわけで、私どもは常にそういうような気持ちで検討をいたして、国会の御審議をいただいておるわけでございます。
  34. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 予鈴も鳴ってきたようでございますが、まだいろいろお聞きしたいことがあるのでございます。いま長官がおっしゃったように、私ども決して皇室費が高いとか安いとか、そういうことを言っているわけではないのです。しかし、国民の中には、みずから苦しみの中から税金を納めながら、なおかついま言ったように、公労協の諸君がたとえばいい例であって、あしたも自分たちの首をかけても闘争しなくちゃならぬというところに追い込まれている現実である。片一方では、これは一時の問題でありましたが、皇居の造営等についても問題があったわけです。しかし、これはあえてされました。もちろんそれは私どもは存じませんけれども皇室なら皇室の、あるいは皇族には皇族の苦しい点もございましょう。しかし、それはやはり国民の一人として、ある点は私は苦しいことも御体験願ってもいいことだと思うのです。私は、必ずしも皇族だから特別な条件がなくちゃならぬということは言えぬと思うのです。その点は、しかし、決してそうでなくちゃならぬとは申しません。私がこういう質問をするのは、ややもすると、一部の非常に反動的とも思われるような方々の言行なり行為が、逆に皇室国民との間を疎外するという実態があるわけです。少なくとも天皇家という存在がある以上は、日本の平和と新しき憲法を守るためには、やはり国民と密着した姿で今後あることが望ましいと思うし、そのことが日本の将来にも大きな影響があると思う。そういう点からお聞きするのであって、決して天皇家に対して私どもは他意はございません。  まだ質問したいことがございますけれども、時間もないようでありますから、一応この辺できょうは私の質問は打ち切りますが、どうぞひとつそういう点も十分含まれまして、特に先ほど申したように、ぜひ来国会からは、政府とも御相談の上、長官みずからも政府委員として国会責任を負う立場をとっていただくことを要望しまして、私の質問を終わります。
  35. 河本敏夫

    河本委員長 本会議散会後直ちに再開することとし、この際休憩いたします。    午後一時五十三分休憩      ――――◇―――――    午後三時十八分開議
  36. 河本敏夫

    河本委員長 これより再開いたします。  大蔵省設置法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。  質疑を行ないます。質疑申し出がありますので、これを許します。藤尾正行君。
  37. 藤尾正行

    ○藤尾委員 私は、この前大蔵省設置法の一部改正につきまして、社会党の山内委員がいろいろ質問をせられましたダイヤモンドの問題について、ごく簡単にお伺いいたしたい、かように思うわけであります。  この前の内閣委員会の山内議員と向井説明員との間に行なわれました審議の議事録を拝見しておりますると、このダイヤモンドの処理という問題が大体終わって、そしてこれを取り扱っておりました貴金属処理部でございますか、これを廃止して、この第一、第二課を一緒にして一課にしようというお話のようでございます。私は、この貴金属処理部というような大きな機構が簡単にせられるということにつきましては賛成でありまして、これを簡略にするということは非常にけっこうなことであると思うのでありまするが、このダイヤモンドの処理という問題について、いささか政府の処置に親切さが欠けておる面があったのではないかというような気がいたしますので、二、二質問をいたします。  まず第一にお尋ねをしたいのは、このダイヤモンド、現在日本銀行で保管をいたしております十六万一千カラットといいますものが、全部が全部その出どころがはっきりしていないというようなことで、国の所有にするというようなふうに受け取られ得るのでございますけれども、さように理解してよろしゅうございますか、どうですか。この点を御答弁をいただきたいと思います。
  38. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 全部が全部、だれのものかわからないのは国のものにするというのではございません。ほとんどすべては戦争中の接収機関でありました交易営団等四つの機関が、戦争中に回収したダイヤでございます。戦争中に回収いたしましたダイヤは、所有権が政府にあるという意味で国軍に帰属するものでございます。ごく少量のものにつきまして、いま申し上げましたような、とにかくだれのものかわからないということで国に帰属するというのがございますが、大部分は、もともと国に帰属すべきものが国に返るということでございます。
  39. 藤尾正行

    ○藤尾委員 しからば、その少量のものというのは、一体どれくらいございますか。
  40. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 交易営団等に返還されまして、国に帰属いたしますものの総額がまだ最終的に決定いたしておりませんので、だれのものかわからないので国に帰属するというものの数量も、正確にはまだ定まっておりません。
  41. 藤尾正行

    ○藤尾委員 概数でけっこうです。
  42. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 営団等に返還されまして、国に帰属いたしますものが四万四千カラット、それから法十一条の関係で国に帰属する部分が十二万七千カラット余りでございます。その十二万七千カラットの中に、先ほど申しましたようなものが含まれるのでございますが、それがどのくらいというのは、ちょっと私いま御返事いたしかねます。
  43. 藤尾正行

    ○藤尾委員 それではよくおわかりになっておられないようでございますから、視点を少し変えまして伺いますが、いままでこの問題につきまして非常に厳正に、過去五十何回というような回数を審議会にかけられまして、非常に詳細にこれのいろいろな分類とか、あるいは返還要求を審査をせられたということになっておりますけれども、この五十数回の審査におきまして、個々の民間人から出されました返還要求につきまして、これは返還すべきものであるというようにきめられたものが何件ございますか。
  44. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 ダイヤモンドにつきましては、請求が六十三件ございます。そのうち、これは返還すべきものであるというふうに認定いたしましたものは、十六件でございます。
  45. 藤尾正行

    ○藤尾委員 そういたしますと、十六件を除いた四十数件につきましては、いろいろな観点から返還すべきものでないというように決定をせられたわけですね。その返還すべきものと決定したもの、あるいは返還すべきでないと決定されましたものの分かれ目というものは、個人の財産につきましては、私は非常に重要な点だと思うのです。その認定がどの点でなされておるかという点を、御指示をいただきたいと思います。
  46. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 棄却したものが四十五件ございますが、そのうち、国の請求であって棄却したものが二十二件ございます。それから戦時中の回収機関で棄却したものが二件ございます。あと法人、個人に対しまして二十一件あるわけでございます。棄却いたしました理由は、国に二十二件、回収機関に二件ございますが、これらはいずれも接収されたことはわかる。であるけれども、接収された現物は日本銀行の中にない。と申しますのは、進駐軍から日本政府が引き渡しを受けますまでの間におきまして、進駐軍が接収いたしましたダイヤをあるいは賠償として返還をいたす、あるいは中間解除と申しておりますが、中間におきまして産業、工業のために民間に開放したものがございます。そういうものがありますために、接収はされたけれども日本銀行の中にはない。こういうために国並びに回収機関に対しまして棄却したものがございます。それから個人と法人に対しましては、いま申しましたようなものもございますが、そのほかに接収された事実は認めるけれども、その現物が日本銀行の中にあるという事実を確認し得ないというために棄却したというものでございます。
  47. 藤尾正行

    ○藤尾委員 いまの最後の御答弁のところに、私は非常にひっかかる重大な点があると思うのであります。接収をせられたということは、はっきりこれは認証ができる。しかしながら、それが日本銀行のいまの十六万一千カラットの中に入っておるかどうかということの証明がはっきりしない、そのために棄却をするんだということになりますと、一体その接収をせられた人たちにとりまして、それが入っておるかどうかということの証明がどうしてもつかぬという場合には、これが国に取り上げられてしまうというようなことでは、私は個人の財産権の侵害になりはせぬかというような気がいたしますが、その点はいかがでございますか。
  48. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 仰せのような点もあるかと思いますが、たとえて申しますと、確かに進駐軍の者が参って個人からダイヤを接収をいたしました。接収されましたダイヤは、正当な手続を経てCPCの保管するところとなり、それが戦後、平和条約発効後政府に引き渡されたというルートを通るわけでございますが、そういった正常なルートを通らずに、当時のことでございますので、たとえばその接収に行った者が、接収に行ったときは進駐軍の接収として参ったけれども、接収をしたあとにおいてどうも正規のルートに乗せなかったというようなものも中にはございます。そういうものは、取られた御本人に対しては非常にお気の毒と思いますけれども、だからといって政府がそれを返すというわけにはまいらない、そういった事情もあるわけでございます。すべてがすべてこういうことであるとは思いませんけれども、そういう関係もございますので、政府の保管中のダイヤとそれから接収されたといわれる方のダイヤの現物が、まさに対応するものがはっきりわかるというものでなければ、政府としてはお返しするわけにはまいらないというふうなことで仕事を進めておるわけでございまして、接収された方のお立場から申しますと、同じく接収されながら返されるものと返されないものがあるということは、まことに不合理と思いますけれども、私ども責任を持って仕事をしてまいるという立場から申しますと、やむを得ないというふうに考えておるわけでございます。
  49. 藤尾正行

    ○藤尾委員 ただいま局長のお話でも、まことに不合理だと思う。しかしながら、処理上やむを得ないことだ、こういうお話でございます。そうしますと、私は、国というものの国民の財産権に対する保護という面におきまして、非常に不合理で、やむを得ないというようなことでは、国としてのつとめができないのじゃないか、国民に対する義務が果たしてないのじゃないかというような点があるのじゃないかというような疑問を持たざるを得ませんけれども、その点はどういうふうに御理解されておりますか。
  50. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 何分にも終戦のあとの接収という異常な事態に起きたことでございます。国民の財産の保護ということに対しましては、もちろん万全の措置をすべきことと思いますけれども、と同時に、われわれがいま保管しております十六万一千カラットのダイヤモンドを、万全を期して処理返還するという立場からまいりますと、先ほど申しましたような措置をとるということが、またそういうことにもなるという面もあるかと考えております。
  51. 藤尾正行

    ○藤尾委員 あなたの御答弁は、私は頭が悪いものですから、よくわからない点があるのでございますが、実はここに一つの例がございます。これは私の知人でありますけれども、終戦後におきまして進駐軍がうちまでやってまいりました。そうして現実にダイヤモンド約八百カラットを持っていった。それに対する証明もございます。そのCPCの係官は、アメリカでこれは宣誓をしておりますけれども、確かにそれはCPCに入れたんだということを宣言をしておりますけれども、そのCPCに入っているべきものが、大蔵省のCPCから受けた帳簿には載っていないという御説明でございます。ということになりますると、CPCから日銀に行く間にどこかへ行ってしまったのかどうかという以外には、私は解釈のしようがないと思うのでございますが、そういった問題につきましては、国といいまするものは、何ら責任をお感じにならないのかどうか。それは個人の責任でアメリカまで行って取り返してくればいいじゃないかというような処理で、一体済むのかどうかという点をお伺いいたします。
  52. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 CPCから日本政府に引き渡しを受けますまでの間に現物がどうなったかというようなことを私どもは問題にいたしまして、そういうものがないから、途中でなくなってしまったから、この問題はお返しできないのだというふうに、本件については考えておりません。いま仰せられました、当時接収に実際立ち合いました人の宣誓がございます。その宣誓に基づくところの記憶が、はたして最終的に信頼をして、私どもがそれでは返還をしてよろしいというふうに認定し縛る資料であるかという点でございます。この点につきましては、アメリカの法律に基づいて宣誓された資料でございますけれども、私どもがしさいに調べましたところ、この返還を御主張なさる方が、当時の記憶に基づいてお会いになって、こういうことではなかったかということをお話しなさったのに対して、そのようであったという確認をされたのでございます。もしも当時の実際接収に従事された方が、何らかの御記憶以外の、もう少ししっかりしたものに基づいて宣誓なすったならば、私どもは喜んでお辺ししたいというふうに思いますけれども、そこのところが、何とも私どもの仕事としては、信憑するに足る事実というふうに認定をするのには少し不十分であるという意味で、事実関係が不明であるからお返しできないというふうに考えておるわけでございます。
  53. 藤尾正行

    ○藤尾委員 私は、この占領軍というものの占領当時におきまする立場というものから考えまして、その当時ピストルか何か突きつけられて持っていかれたというのが、あなたの言っておられる正確な資料を全部そろえて、これはこうでございますといって証明書を全部取りそろえておけるような立場になかった、そういうように私は解釈するのでありますが、そういう環境のもとにおきましても、個人的になおその立ち会い人の証明書があり、それを証明する数人の立ち会い人がおり、それに現に立ち会いました人が証明をしても、なおかつ不備であるということでそれを済ませられますかどうかということをお伺いをしたいのであります。
  54. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 事実関係につきましては、つまり接収された事実、約八百個のダイヤモンドの接収をされたという事実に対しましては、私どもはそのとおりだということを思っておるのでございます。ただ、その事実だけに基づいて現在日銀にありますところのダイヤモンドをお返しするには、先ほど申しましたようなことで不十分である。いわば私どもは十六万一千カラットのダイヤモンドの善良な管理者の立場におきまして、そういう方にお返しするということについて自信が持てない。したがって棄却せざるを得ないのだということでございます。
  55. 藤尾正行

    ○藤尾委員 そんなことを幾ら押し問答をしておったって切りがありませんからこれでやめまするけれども、一体取り上げられた、接収せられたということは事実である、自分たちもそう思うというのでありましたならば、しかしながら、その接収せられたダイヤモンドがどれかはっきりわからないというようなことで、管理する立場からこのダイヤモンドはお返しできないのだ、そこで棄却せざるを得なかったというのがあなたの御答弁のように思うのですが、しからばダイヤモンド以外のことででもあなた方はそれに対する補償のお考えがおありになりますか、どうですか。
  56. 田中角榮

    ○田中国務大臣 藤尾さんの言われること、非常によくわかります。同じ接収された人でも、現物が認定せられたものは返しますし、同じときに接収されたものでも、現物が認定をせられないということで却下になったものは、同じきょうだいでも返せない、非常に不公平ではないかということでございますが、接収貴金属等の処理に関する法律、これの第一条を読んでいただくとわかるとおり、その後占領軍から政府に引き継がれたもの、それから同二条の三項、「この法律の施行の際現に大蔵大臣が他人のために管理しているもの」、でありますから日銀の金庫の中にあるものという限定で法律ができているわけでございます。でありますから、この法律で処理する場合には、認定ができない場合に却下をする、これは不公平があってもしようがないということになるわけです。ですから、いま江守局長が、青いましたとおり、大蔵省の国有財産局がこの法律に基づいて処理をするという場合、却下せられたものに対しては、事実不公平があってもいかんともなしがたい、こういうことでございます。ただ、占領軍に無償で接収せられたというものが、その書類が不備のために――現に接収された人が、その証書となるべきものが宣誓してちゃんとある、この場合国家賠償というものとどういう関係になるか。これはやはり最終的には、いまのこの法律に基づく返還はできない、しかし事実接収せられたという証拠がたくさんあるのだからということになれば、最後に裁判を行なう。裁判で最終的に国は補償をすべしということになれば、この法律によらない国家賠償の責任が起こってくる、こういうことであります。ただその場合には、占領軍の接収というものに対しては、その後に行なわれた平和条約で全部というようなものもあるようです。ですから、やはり裁判で最終的に国にどういう責任を負わせられる判決があるか、判例を求めないと 現在の段階においてこの法律で処理できない、これはもう明確でございます。
  57. 藤尾正行

    ○藤尾委員 そうしますと、最後にもう一点だけ大蔵大臣にお伺いをいたしたいのでありますが、私は大蔵大臣の御答弁のとおりだと思うのです。しかしながら、ここで私ども考えなければなりませんのは、とにかく大蔵省の審議会におきましてこれは法律解釈上絶対できないというものが、それでは裁判に訴えるということで裁判にあげられましたときに、法律の番人たるべき裁判官が、一体その大蔵省の接収貴金属等処理審議会以上の幅を持ってこれを審査することができるとお思いになりますか、どうですか。
  58. 田中角榮

    ○田中国務大臣 これは裁判の結果を私が予測することは非常に困難でありますが、裁判が認定をするという場合に――この法律でもって返還をしろということは、法律改正がなければできないと思いますが、その証拠がどの程度信憑性があるかということによるわけです。ですから、この法律では、その信憑性というものは非常によくわかっても、現物がない、この法律施行のときに大蔵大臣が所管をしておる物件の中には当該物件がないということですから、これは却下する以外にはない。その事実を証明すべきものが明確であれば、裁判は当然結論は出すと思います。出すと思いますが、戦争のとき、あるいは戦争直前、直後には、大なり小なり国民はいろいろな問題があるわけです。なぐられたとか、いや何か盗まれたとか、そういうものについて戦後どのような判例があるか、私はつまびらかにしません。しませんが、あなたのお考えになっておることは、私も個人としてはよく理解できますが、最後は裁判所の認定にまつ以外にない、こう思います。
  59. 藤尾正行

    ○藤尾委員 それでは最後に御要望を申し上げまして私の質問を終わりますが、こういう問題については、大蔵省の審議会で認定のできなかったものが、裁判において正確に、それでは返すべきものである、あるいは何とかしてやれというように認定をされることは、私は実際問題としては少ないと思うのです。ですから、そこのところは私は、その接収をせられたということが大体において確認ができるということであれば、あるいはどういうことになるかわかりませんけれども、裁判の行なわれておる閥、その提訴者との間にいろいろと連絡を保っていただいて、そうして国が行政上きわめて親切であるというような印象を与えていただくことが、国民政府に信頼をし、行政が非常にうまくいく一つの道でないだろうか、さように思いますから、そのような道がございましたならば、ひとつ十二分にお考えをいただいて、親切な行政を徹底しておやりをいただくようにお願いをいたしまして、私の質問を終わります。
  60. 河本敏夫

    河本委員長 大出俊君。
  61. 大出俊

    ○大出委員 最初に、事務的な点について多少承りたいと思うのです。そこで、銀行法に基づく銀行検査の問題につきまして、定期検査というのがあるわけですが、そのほかに、これは問題があるという場合に、まあ抜き打ち検査といいますか、そういうふうな形のものを大臣の命令でおやりになるのでしょうけれども、そういう点について、現在までどういうふうになっているかということをお答えいただきたい。
  62. 田中角榮

    ○田中国務大臣 銀行につきましては、大体定期検査を行なっております。今年度も、日銀と大蔵省で手分けをしまして、全部を一ぺんにやるというわけにはまいりませんので、先年度やらなかったものを今度やろうというようなことで大体予定をつくっておりまして、日銀と大蔵省と分担をしてやります。それからまた、特別なものがあれば合同でやっていくということでやっております。
  63. 大出俊

    ○大出委員 そこで、いま設置法で銀行局の中に保険部をつくる、こういうことが出ておるわけですが、それには人員の異動が多少ありますが、ところで、筋が通るものであれば新たに部をつくりあるいは局をつくるという場合に賛成するのにやぶさかでないのでありますが、やはり必要なところには人が必要でしょうし、現在ある部局の中でかっちりやっていただくことはやっていただかなければならぬ、こういうふうに思うわけです。  ところで、もう一つからんで承っておきたいのですが、上位四行あたりのところは日銀の考査、こういうかっこうではないかと思うのですが、その辺のところはどういうことになりますか。
  64. 田中角榮

    ○田中国務大臣 今年度は、都市銀行の上位のものは日銀でやるということでございます。中位のものについては大蔵省でやるということで、大体計画はいたしております。
  65. 大出俊

    ○大出委員 ところで、その上位四行に問題があるというふうな場合に、日銀の考査だけということでなくて、大蔵省として検査をするなり、こういうかっこうのことはとれますか。
  66. 田中角榮

    ○田中国務大臣 それはいつでもとれます。いつでもとれますが、いままで日銀でやるということをきめておりますし、やはり大蔵省でやろうというのは、国会に対する考え方も一つあったわけです。それは歩積み両建てというものがどのくらい解消したかということを国会に対して報告しなければならない、こういう状態でありますので、検査をしようということできめたわけでございます。でありますが、大蔵省は特別な監査を必要とするというふうな事態があれば、いつでも日銀と話し合いをして、大蔵省も合同でやりますということになれば、何ら問題はないわけであります。
  67. 大出俊

    ○大出委員 重ねてもう一つ承っておきたいのですが、宇佐美さんが日銀総裁におなりになったのは昨年の六、七月以降のような気がするのですが、その前はたしか三菱の頭取をおやりになっておられたと記憶するのですけれども、この点について、間違いがあるといけませんので、専門の方は御存じだと思いますから、承っておきたいと思います。
  68. 田中角榮

    ○田中国務大臣 宇佐美日銀総裁が選任をせられたのは、十二月十七日ないし十八日だと思います。その前の前職は、三菱銀行の頭取であります。
  69. 大出俊

    ○大出委員 まあ上位の四行の場合でも大蔵省がおやりになる、こういうことでございますから、いまの点はそこのところを承っておけばいいだろう、こういうふうに思います。  次に、貸し出し限度額というのが銀行法上あろうと思うのでございますが、これがたとえば都市銀行の場合でありましても、三菱あたりと、あるいはその他大和等をいろいろ考えました場合に、おのずから預金高その他によって違いがあろうと思うのですが、一銀行に対して、その限度が預金高のどのくらいになっているか、この辺のところを承りたいと思います。
  70. 田中角榮

    ○田中国務大臣 限度額という御質問趣旨があまり明確でありませんが、銀行が個人や法人に対して一個人及び一法人に対しての限度があるか、これは限度がありません。これは実績によって貸し出す。しかし、無制限ということはないので、常識的な貸し出しを行なうということであります。  それから預金に対してどのくらいかということは、これはございます。これは法律的にどうとか、大蔵省が政令や省令によってどうしているかということじゃありませんが、だいぶ率はよくしておけということで、一〇〇%全部預金を貸し出すということは、できるだけそういうことのないようにということをやっておりますが、しかし、これは現実的には日銀から借り出しを行なって、預金よりも上回っておるという事実はございます。
  71. 大出俊

    ○大出委員 ところで、きょうの新聞にだいぶにぎやかに吹原産業の問題が載っているわけです。たまたまきのうの大蔵委員会質問の結果だろうと私は思うのでありますけれども、私も、実はずいぶん前からいろいろな話や資料等が舞い込んでまいりまして、いろいろとこの種のことは真偽のほどがありますので、そうめったに持ち出してみたところでという気持ちでおったのでありますけれども、ここまで信頼するに足る各新聞が書くようになりますと、そのままにもできないという気がいたします。その意味は、中に私が長年おつき合いをいただいておって、かつお世話にもなっておる方がおられるわけでありますから、そういう点で、人の名前が出てきたりしておりますので、したがって、かつ慎重でなければならぬという気がいたしますし、さらに考えてみますと、与党、野党の問題、個人の問題ではなくて、ひとつ間違うと、この種のものをこのままにしておくことは政治不信につながるという心配もあるわけでありまして、そういう意味ではっきりするものははっきりさせておかなければならぬ、こういうふうに実は思うわけであります。  そこで専門家の方々伺いたいのでありますけれども、人の名前が少し出てまいりまして、できるだけ気をつけて申し上げるつもりでおりますけれども、吹原産業の吹原さんという方が、手形をいろいろ各企業から預かった。そこで預けた人は、藤山さんの名前の五億円だとか、間組の十億円だとか、リコーの三億円だとか、東洋精糖の三億円だとか、朝日土地興業の三億円だとか、つまり合計これで二十四億になりますが、これを預かって割ってあげようということだろうと思うのであります。ところで、この手形がどこに行ったかということが、その後いろいろうわさが飛んでいるわけであります。したがって、私は、専門の銀行局の方々がおられるわけでありますから、その辺のところを、ここまできましたら、やはり御存じである限りは明らかにしておいていただいたほうが、ものの性格上明確になっていいのではないか、こういうふうに思うわけであります。御答弁いただける方でけっこうでありますけれども、御答弁賜わりたいと思います。
  72. 田中角榮

    ○田中国務大臣 どうも大蔵省では非常にむずかしい問題でございます。大蔵省でわかりますことは、銀行検査をして、銀行に関係があれば、銀行でこれを割り引いておるとか、銀行で担保になっておるとかいうことになれば、検査の結果は当然出てまいりますし、検査がなくても、こういうものに対して取り扱っておるか、担保に供しておるか、割り引いておるかという報告を求めればわかるわけでありますが、現在大蔵省がわかるのは、一体納税者であるかどうかということ、税の面でわかります。それ以外は、大蔵省所管の金融機関で預かっておるということになればわかりますが、いま御指摘になったようなものは、これは吹原さんに聞かなければちょっとわからないし、私のほうではちょっと聞く手だてがない、こういうことであります。
  73. 大出俊

    ○大出委員 ということになりますと、そこに一つの何となくどこに行ったのだろうかという疑問が出てくるのは常識だろうと思うのでありますが、これは私がというのではなくて、いろいろ書かれたものによりますと、どうもいま大臣答弁をされたまさにそのとおりで、普通の意味の金融ベースに乗っていないことになりそうなわけであります。新聞にもたくさん出ておりますから、個人の名前を申し上げてまた恐縮でありますけれども、そうでないと話が続きませんので、ごかんべんをいただいて申し上げますが、森脇将光さんという方は、今日金融業をやっておられますか。やめたという話も聞くのだが、その辺のところを……。
  74. 田中角榮

    ○田中国務大臣 新聞では、やめるという宣言をした記事は出ております。しかし、これは東京都で貸し金業というのは登録しておりますので、大蔵省ではいまわかりませんが、必要であれば調べてお答えをします。
  75. 大出俊

    ○大出委員 私の持っております。たくさんあるのでありますけれども、書いたものによりますと、ここに資料がございますけれども、これによりますと、正常な金融ベースに乗っかって割り引かれたり何かしているように、この預けた方々は思っておったのですね。ところが、どうもそれがあとになってみたら、正常な金融ルートに乗っていないという。つまりいわゆる町で金を貸す方、こういうところに、まあ悪く言えばどうもやみみたいな感じがするのでありますけれども、つまり森脇さんのところに行っていたのではないかということが書かれているわけであります。そこで、私が先ほど御質問申し上げたのは、これはあとに引き続くのでありますけれども、正常なルートではわからない、こういう御答弁と相からむと、ますますもってその信憑性に近い感じが感ぜられることになるわけであります。新聞にもそれらしいことは載っておりますけれども、その辺はお調べになってみたなどというようなことはございませんか。
  76. 田中角榮

    ○田中国務大臣 私も、きのう私は大蔵委員会に午後から出ましたので、午前中の質疑応答は全然承知をしておらなかったわけであります。きのうILO審議の本会議に出ましたら、こういう質問があった、こういうことであります。しかし、これは去年あたりからいろいろ文書になっておったというようなことでありますから、私は、たいしたことじゃないだろう、こう思っておったのですが、夕刊を見たら、新聞は非常に大きい。これはたいへんだということで朝見たら、各紙一斉に書いておる。一問一答が出ております。一問一答を見まして、まあこんなことかな、こういうことであります。けさ登院しましてから、銀行局長に、どうだ銀行はこういうものに対して関与しているのか、調査をしたか、こういうことをただしました。三菱に対して、こういうものの関連があるのかというようなものだけは、いま照会いたしております。これは大蔵委員会で資料要求がございましたので、この資料は当然調査をして資料提出をするということで、それを聞いておりますが、現在の段階ではまだ正式の報告がございません。こういうことでございます。
  77. 大出俊

    ○大出委員 そこでひとつ、私は全く大蔵省に責任がないようにも思えない節があるのです。と申しますのは、これまた個人の名前で恐縮なんですが、藤山さんは私の選挙区で、私が尊敬する先輩なんですけれども、この文章がもしかりに真実だとすれば無理もないと思うのでありますが、藤山さんが非常におおこりになって、告訴をするというふうなことで、だいぶ憤慨されたということが載っておるのです。それはどういうことでおこられたかというと、正常な金融ベースに乗っていくものなりというふうに思って、安い銀行金利だからそれでという話があって預けたところが、それがどうもそっちのほうに行かなかったという結果が生まれた。しかも、これは手形ですから期限がありますから、そうなると、土建関係方々のところあたりも、その後今日になってみると不渡りになったとか、あるいはなりそうであるとかいうふうなことで、何となくやはり騒然たるものが出てきたというふうに、ここに詳しく書いてありますが、あまりどうもてにをはみたいなことは申し上げないつもりでいるので、したがって、これはもしかりに不渡りという形になったとすれば、訴訟を起こす起こさぬよりも、そのこと自体が、一つの企業についてたいへんなことが起こるわけです。そうなると、これはいやでもおうでも、どういうルートでどうされたとしても、会社のほうは公ですから、表に出てくる筋になっているのです。ということになりますと、こういうルートで、しかもわずかな金ならともかく、二十四億もの手形が、大蔵省のつかまえにくい形で、どこからどこへ行っているかさっぱりわからぬというままで放置されているということ自体は、これはどう考えるべきだろうかという気がするのですが、答弁の限りにあらずというのであれば、それなりに私も勉強いたしますから……。
  78. 田中角榮

    ○田中国務大臣 その個々のケースに対しては、私のほうは全然関知しておるわけではございませんが、融通手形というものが横行するということは、金融の正常化に逆行することであって、かかることはよろしくない、こういうことは、私は昨年から、大蔵委員会でも、いろいろなところで金融政策の問題について申し上げております。融通手形を出すようになっちゃ、実際困るのです。しかも、いろいろな問題、いままでの過去にあったケースから見ますと、何といいますか、金融屋といいますか、そういう人たちが、長い歴史と看板、実績を持っておる人が、正常な金融機関で割り引けない手形というものが、そういう特殊な人によって割り引けるというようなことがあるのかないのか。そういう認識があるかないかというところに問題があるのだと思います。だから、私は、こういう問題でもって国会で申し上げたのは、北九州にある金属会社が倒産をしたときに、その下請が金繰り上全部融通手形をやっておった。それによって将棋倒しになった。これを契機にして国会でも問題になって、融通手形というものを横行さしてはならないということで、私も間々申し上げておりまするし、金融機関にも、また通産大臣から各企業に対しても、融通手形というものは早期に解消しなければいかぬ、こういうことを長いこと言っておるわけでありまして、こういう金融の正常化を乱る行為そのものは、なくなるように指導しておるわけでございますが、融通手形というものは、事件が起こってから初めて融通だった、こういうことがわかるわけであります。銀行に持っていっても、これは商業手形でございます。こういうことでございまして、これは相落ちになっておる。片方が落ちない――向うが落ちないからこっちが落とせないというのではなく、やはり信用度の高い人は泣く泣く落として、もっと強い人は回顧を供託して争うということになるわけでありますが、そういう問題が現に世の中にあるということは好ましいことではないので、金融の正常化の面からも正してまいりたいと考えます。
  79. 大出俊

    ○大出委員 ところでひとつ承りたいのは、吹原産業という会社について、これはおそらくきのうも質問が出たことですから、お調べにはなっているだろうと思うのですが、謄本をとれば簡単なことですから、私のほうで、これはこうですと申し上げるのもいいけれども、やはり筋ですから承りたいのですが、どういうふうにお考えになっておりますか。どういう会社であろうという点について、とりあえずお答えいただきたいと思います。
  80. 田中角榮

    ○田中国務大臣 私がわかりますことは、大蔵省関係、いわゆる国税庁で税金を納めておるということはわかります。わかりますが、会社自体がどういうことであるのか、これは増資もしておりますから、財務局でもって調べて会社の構成を報告せいということであれば、調べた上、報告申し上げます。
  81. 大出俊

    ○大出委員 調べて御報告いただけるということでありますから、それはぜひいただきたいと思うのであります。  ところで、私の質問も少し慎重に過ぎてぴんときておらぬようでありますから、重ねて申します。国税庁の次長さんお見えになっておられると思うのでありますが、そちらのほうで、税金の面等からどのくらいの収益が上がって、どうなっているのかという点は、これはおつかみになっていると思うのであります。さて、たしか三十七年といわれたり二十九年といわれたり、いろいろ設立の時期の問題が世の中ではいわれておりますが、あんまり昔までさかのぼってみたって、これは北海道まで電話をかけるなんていうことになったらたいへんですから、したがって、ここ一、二年のところ、どんなふうなぐあいなのか、お知らせをいただきたい。
  82. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 吹原産業自体につきましては、現在京橋税務署に対して法人税の申告が出ております。ただ、その中身は、ただいまおっしゃったように、営業収益が幾らで所得が幾らだというようなことは、職務上の秘密ということで、ここではちょっと申し上げかねます。それ以外に、関係会社として幾つかの名前が、たとえば吹原冷蔵であるとか、北海林産、東洋木材、大曜製紙、これらにつきましても、いずれもそれぞれの所轄税務署に対して申告書は出ております。
  83. 大出俊

    ○大出委員 非常識な質問になるのかどうかわかりませんが、私は、大蔵省の関係の方が私のところに聞きにこられたので、さかのぼっていろいろ言われると、そこまでは手が回りかねるというから、それはごもっともだろう。じゃあ手の回る範囲でけっこうだから、ここ一、二年に切るから、その辺でひとつ知らしてくれと言ったら、よろしゅうございますということなんですが、どうしてもうまくないですか。
  84. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 現在、税法には職務上知り得た秘密は漏らしちゃならないという規定がございまして、現在までいろいろこうした御質問のあったときにも、すべて個々の所得、あるいは申告内容というものは公にいたしておりませんので、今回もこの程度で御了承を願いたいと思います。
  85. 大出俊

    ○大出委員 これは非常に聞き方がむずかしくなってまいりましたが、しからば吹原産業なる会社がボーリング場を建設をされるというので、相当信用できる銀行等からたいへん金が貸されているのでありますけれども、その事実について御存じありますか。
  86. 田中角榮

    ○田中国務大臣 知りません。
  87. 大出俊

    ○大出委員 そこで、ひとつ念のために承りたいのですが、法務省の刑事課長さんか局長さん、どちらかお見えになっておりますか。――そこで承りたいのでありますが、昨日の質問、きょうの新聞等によりますと、調査中であるというふうに御答弁を承っておるのでありますが、そう確認してよろしいですか。
  88. 津田實

    ○津田政府委員 その件は何の件かということを御特定いただかないと、ちょっと申し上げかれるわけですが……。
  89. 大出俊

    ○大出委員 私、いま特定して実は話してきたつもりなんですが、それではもう一ぺん言いましょう。吹原産業の吹原さんが、あとから申し上げますが、大和あるいは三菱などというような銀行、あるいは先ほどお話に出ました町のある種の金融関係者というふうな方々との間において、今日世上いわれているようないろいろな問題が出てきたわけでありますが、この点について、そういううわさがあるのだがどうなんだという質問に対して、あなたのほうは調査中だ、捜査を将来するということになれば、それに支障があるから詳細は申し上げかねる、こういう意味答弁がなされておりますけれども、その点をもう一ぺん確認をしておきたい、こういうわけです。
  90. 津田實

    ○津田政府委員 吹原産業株式会社の関係者の吹原弘宜という人に対する詐欺事件につきまして、捜査をいたしております。
  91. 大出俊

    ○大出委員 きのうの答弁ときょうの答弁が違うので、そこをはっきりしていただきたいのですが、きのうは調査とおっしゃったが、きょうは捜査と言われておりますが、調査と捜査は明確に違うはずであります。調査は、いわく内偵中であるということになりますが、捜査となれば、そこに踏み切ったということになると思います。その後者であるというふうに受け取りますが、よろしゅうございますね。
  92. 津田實

    ○津田政府委員 刑事訴訟法上の捜査でございます。
  93. 大出俊

    ○大出委員 非常に明確になりましたが、さて、そこでそうなりますと、これはどっからどう考えても――真偽のほどはわかりませんよ。私も真偽のほどを言っておるのじゃない。ないのだが、やってきた結論として、相当世に有名な銀行と関係がある、あるいはかかわり合いがあるという、この点については、私は間違いがない事実だろうと思う。そうだとすると、その銀行との関係等から見て、大蔵省の銀行局あたりでそこのところあたりは調べておおきにならぬという手はないと私は思うのでありますが、そこのところ、銀行局長さん、どうお考えになりますか。
  94. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 吹原産業に対する融資その他の関係につきまして関係があるように思われる銀行に対して、いま事情を聞いておる段階でございます。これは問題が捜査の段階にすでに入っておりますので、その方面の御要望もございます。捜査上、なるべくならば事実をあまりに公開すると申しますか、そうしないでほしいという問題がございます。そうしたことに対しまして私ども若干協力的な立場をとるべきであろうと思いますので、すべての事実が明らかになりました後においても、そのとおり申し上げてよいかどうかは、また慎重に検討して申しますが、かの冷蔵倉庫といいますか、それに対する設備資金の貸し出しを行なっている銀行が、いままでのところ、これは非常に短かい間でございますが、一、二ございます。しかし、まあそのほかには、いろいろ世上いわれておりますが、特に銀行として大口融資を行なっているというふうなことはないようでございます。
  95. 大出俊

    ○大出委員 これは二つ問題が出てきたわけですが、一つは、きのう調査できょう捜査と、こういうわけですね。きのうは内偵中であり、きょうは捜査に踏み切った、こうなるわけです、筋道は。そうして銀行局長さんのほうは、だから捜査に協力するたてまえ上言えない、こういう理屈になっているわけですね。どうもその辺の関係は、私はぴんとこない。逆に言えば、どうも勘ぐりたくなる、こうも言いたいのですが、そこでぼくは大臣に申し上げるのだけれども、冒頭に申しましたように、これはやはり与野党の問題云々でなくて、政治不信につながる問題だと思うのです、どこから考えても。したがって、あわせて私ども責任もあるということになりますと、やはり言えるところは、国会なんですから、これはやはり言っていただかないと、その意味で私どもに協力を願わぬと、私は話は進まぬと思う。だから、私のほうから申し上げますが、大和銀行から二十億円、これは担保物件は銀座のキャノンビルそのものですね。キャノンビルそのものと、それから仙石燕町ですか、これは土地約一万六千五百平方メートル、これは担保物件になっているようです。それから三和銀行から約六億、担保物件は五反田ボーリング場、土地約三千七百六十二平方メートルその他、こういうふうに私の持っている資料では書いてある。それから三菱銀行からは五億円ないし十二億円、これはいまお話に出ました冷蔵云々とおっしゃったのですが、北海林産、吹原冷蔵などの小会社名義なんです。したがって、これは三菱銀行そのものでは吹原産業に対する貸し付け金はないのだという説明になっている、こういうふうに書かれてあるのです。ということになりますと、どうもそこのところあたりをやはり銀行局のほうから言うてもらっておかないと、あと私の質問とからむので、念のためにもう一ぺん質問しますから、真偽のほどをお答え願います。
  96. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 三菱銀行の融資という点につきましては、銀行側としては融資は現在ほとんどないというふうに申しております。それで、その点についてはなお続けて事情を調べておりますが、いまの段階ではないと言っております。前の二件につきましては、私どもの知り得た範囲では、おおむね事実に近いものと思います。
  97. 大出俊

    ○大出委員 おおむね事実に近いというお話がありましたから、それはその程度で私も了解しますが、となりますと、ちょっとさっきの御答弁と食い違いが出てまいりますが、私の申し上げたいのは、三十四億以上もかかったボーリング場に、つまり有名な銀行から、日本のトップレベルをいく、トップ四行にも入っているようなところを含めるようなことになりそうなんですが、三菱がいまのところは貸していないとおっしゃるから、これはちょっと別になりますが、こういうところからたいへんな金が出て、しかもけたが違うのです、その結果入ってくるものは月額八十万円くらいにしかなっていないということ、採算という面から見てもきわめて非採算的である、かつ非生産的である、こういうところに、これだけ金詰まりの世の中に、少なくも大蔵省があり、銀行局というものが存在をする中で出している、こういう金融のあり方、しかたというものについては、私はどうしても解せないのでありますけれども、そこのところ、大臣から御弁答を賜わりたい。
  98. 田中角榮

    ○田中国務大臣 私は、まだその事実をよく知っておりませんから、ここで何とも申し上げられませんが、しかし、金融は当然過ぎるほど預金者の保護を目的としなければなりませんし、また都市銀行でありますから、重要な産業とか重要な面に貸し出すということが主でなければならないということは、申すまでもないわけであります。このボーリング場三十四億というような数字で御指摘がありましたし、新聞にもそういうことが書いてありましたが、一体こういうものがどこの銀行から出たのかということで、私自身も多少奇異の感じを持ったわけであります。でありますから、私は、半年くらい前から大蔵委員会でも、ビルとかレジャー的な大きな投資に対しては固定資産税を上げなさい、こういうことさえも明らかにしておりますので、まあ結果としての議論でございますが、現にもうあれだけできておるのでありますから、どこからか金が出ているのでしょう。そういう意味で、こういう金があるなら、もう少し中小企業にでも重点的に貸すべきである、こういう感じでございます。
  99. 大出俊

    ○大出委員 まあそういうふうにお答えになるとすればまた聞きたくなるわけでありますけれども、まずはっきりしていただきたいのは、これだけ金満まりで倒産をする会社が山ほどある世の中で、この吹原産業なる会社の実情を私なりにものを読んでみますと、非常に危険きわまりない会社だというふうに思えるわけですよ。吹原さんにはまことに失礼な言い分ですけれども、数字がそうなんですから、これはごかんべん願いたい。いまも二十億貸している大和銀行、あるいは三和銀行六億ということについては、おおむね事実に近いだろうというお話なんですが、よほどのことがない眠り、大和銀行ともあろう銀行、三和銀行ともあろう銀行が、会社の資産内容、あるいは利潤の状態、その他経営の事情等を調べずにお貸しになるはずはない。そうでなければ、また金融ベースには乗らない。そうなってまいりますと、どういう理由で一体、私どもしろうと目に見ても、調べてみる限りでは、これはたいへんな借金をかかえておるのではないかと思われるようなところに、けたはずれの二十億もの金が一銀行から出ておるのか。だから、私はさっきから貸し出し限度額的なことを承りたいと言っておるのですが、これはあらためて伺いますが、こういうことは私は常識では考えられないのだけれども、そこらのところを、あなた方のほうはどういうふうにお考えになっておるのか。これはやはり明らかにしておいていただかなければ――そういう意味で私は黒白を言っておるわけではないのだけれども、世の中はまともには受け取らないだろうと思うので、お答えを賜わりたいのであります。
  100. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 これは重ねて申し上げますが、事情を聞いておる段階で、まだはっきりした実情をつかんでおりませんが、当該貸し付けを行なった銀行の気持ちとしては――これは銀行の言い分であります。ボーリング場に貸すというつもりはなかったので、その冷蔵倉庫に対する融資である、こう考えておった。ところが、実際でき上がってきたときに招待を受けて行ってみたら、ボーリング場が上に乗っかっておったというふうな、同じ建物の上の部分がボーリング場になっている。私は、実際見たわけでも何でもありませんので、それはよく知りませんが、銀行の貸し付けは、ボーリング場に貸すというのではなくて、冷蔵倉庫のはずであった、こう申しております。
  101. 大出俊

    ○大出委員 そういうところに、やはりそういう意味がやみ金融を正すとか、それからいまのようなことをなくすとかいう意味で、設置法上今回こう考えたいとか、法律改正あるいは新しくこういうふうに法律をつくりたいとおっしゃるなら、人が要る、それも私どもとしては筋として認められるわけでありますけれども、これを放置しておくということは、私はどうも解せない。  そこで、なお続けて伺いますが、奇怪なことには、真否のほどはわかりませんが、このほか第一銀行から一億四千万円行っておるわけですね、この資料によりますと。それからなお先ほどお話に出ましたから再度申しますが、森脇さんという方から、五反田のボーリングセンターに平木何がしという名義で十億円の融資がしてあるわけです、この資料によりますと。承るところによりますと、平本さんという方は、森脇さんの企業と申しますか、その中の枢要な地位を占めておる方、こういうふうに私が調べた限りでは聞き及んでおります。この方が十億円融資をしておる。ところで吹原産業が怪しいということなので、同ボーリング場を十六億円の売買仮登記の予約をしたというわけですね。そうなりますと、先ほど、銀行はこういう理由で貸した、貸したらボーリング場が乗っかっておった。ところが銀行から借りたほかに、好ましくないと大臣が言われる町の金融関係方々の金が入っておって、しかもそのボーリング場が怪しいというので十六億円の売買仮登記の予約さえ行なわれている。こうなってまいりますと、私はただごとではないという気がするのでありまして、申し上げておきましたように、真否のほどがわからぬというのは、私は検察官でもなければ何でもないのですから、その意味で申し上げているわけでありますけれども、こういうことで、おまけにボーリングセンターの開所式に、これは国会議員の皆さんですから、それは場所によっては私どもだって出ていくのだから、どうということはないのだけれども、いまの点をお答え願えないから言うのだけれども内閣の枢要な地位におられた方々などが出席をされておられたり、さっきつい口にしてしまいましたが、藤山先生のような御関係方々がお見えになっておられたり、こういうふうなことがどうも出てくるわけであります、この文書から見ますと。そうなりますと、これだけ不安定だと思われる会社に、市中銀行、りっぱな都市銀行からこういう金が行っているということ、その裏に今度はまた町の金融機関の方々とのそういうやりとりがあるということ、これは私はきわめて不健全だと言わなければなりませんが、普通の銀行の状態なら貸すはずがないところに貸した。案の定八十万円しかあがらないとなると、金利にも足らない、こういう非採算的な状態になっている。そういうところに相当枢要な地位におられる方々が出ておられるということになってまいりますと、どうもそのあたりがもう一つ気になるというか、世の中が不納得というか、そういう問題になりかねないと私は思うのでありますが、そこらあたりのところ、大臣のほうのお考えを、ノーコメントとおっしゃられればそれまでだけれども、もし承れれば承りたい。
  102. 田中角榮

    ○田中国務大臣 大出さんはどこでお調べになったか、非常に詳しくお調べになっておりますが、私はきのうの夕刊からびっくりしてやっておるわけですから、どうもあなたのようにそういうことはよく知らないのです。知らないのですが、新聞に書いてあることが、あなたがいま御指摘になっておられるようなことが事実であるとすれば、はなはだ遺憾なことだと私は考えます。そういう地位のある人がいろいろなことを言って金を引っぱり出して、大きなボーリング場になってしまった。特に私は全然初耳でありますが、市中金融から行なった十億円のために擬装的な売買契約さえも行なわれておる、こういうことになると、これは金融機関はその前にきっと担保を取っておると思います。思いますが、非常に複雑な問題であります。そういう問題に対しては、私もいま聞いたばかりでありますから、どうこう申し上げるわけにはまいりませんが、あまり気持ちのいい話ではないということはわかります。ただ、新聞にわれわれの友人の名前が出ておりますが、こういう人たちは、少なくともいまあなたが御指摘になったようなものには関係はないだろうということは、私は非常に長いつき合いでありますから――政治家というのは、これはお互いにそうですか、非常に忙しいので、まわりに人が寄ってきて、適当に私の名刺なども持ってそこらじゅうに寄付金集めに行くということは、こちらは非常に迷惑しております。迷惑しておりますが、お互いに政治家は、与野党を問わず、こういう記事等を見ましたら、やはり身のまわりというものに対してはもっと注意しなければいかぬなと、私は感じたことをそのまま申し上げるわけでありまして、現在そんな心境であります。
  103. 大出俊

    ○大出委員 次に、もう一つだけいまの問題とからんで承りたいのでありますけれども、この吹原産業なる会社がどういう会社かというふうにさっき御質問申し上げたら、その意味ではお答えが願えなかったわけでありますが、重ねてもう少し具体的に承りたいのでありますけれども、前の内閣の相当枢要なところにおられた方々が、八万四千株とここには書いてあるのでありますが、これはお一人の方ですが、そういうことが書かれております。そうなりますと、これはまさに大株主になる筋合いですね。そこで、吹原産業なるものは、これまたお答えがなければやむを得ませんが、いつごろ設立されて、どのくらいの資本金で始まって、今日はどのくらいの資本金になっているのかという点を、お答えをいただきたいのであります。これはどちらでもけっこうですから……。
  104. 田中角榮

    ○田中国務大臣 吹原産業の本店の所在地は、銀座の五丁目三番地、社長は吹原弘宣、不動産業――貸しビル、遊戯場、宅地造成、分譲ということです。三十七年の九月四日に設立であります。資本金二千万円です。それから三十九年五月三十日現在で一億六千万円ということであります。
  105. 大出俊

    ○大出委員 これはわずかの間に資本金が八倍になっているわけですね。こういうふうに、たいへん急激に資本金が伸びた。これは例があるからそうなったのでしょうが、そのことは世の中の商業取引その他経営ですからどうということはありませんが、やはり国税局の立場からいたしまして、税金の脱漏等の問題も、これはひとつ考えてみなければならぬ筋合いにもなりかねない、内部的に言えば。ということになれば、やはりこの辺あたりは、相当国税局のほうで検討をなさっている筋合いではなかろうかと私は思うのでありますが、そういう点について、国税局の側ではお調べになったことがあるのか。そうして先ほど税金の件については言えないとおっしゃったのだけれども、かくのごとく急激に大きくなった、しかもこれは問題がなければ、こんな失礼なことは、一つの会社のことについては申し上げないけれども、問題があるから申し上げているので、お答えをいただきたい。
  106. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 急激に増資があったというような場合、一般論として申し上げますと、その増資の資金の払い込みをどこから手に入れたか、そういった調べ方はもちろんいたします。また、一般に不動産の取得が非常に大きいといったような場合には、当然そういう観点から会社を調べるということもございます。こうした事業につきまして、この会社につきましても、もちろんそうした観点から、そういった点についても重点を働いて、今後十分調査をするということになっております。
  107. 大出俊

    ○大出委員 ところで、先ほど枢要な方々がたいへんな株を持っているというふうに申し上げたのでありますが、これはお答えがございませんので、おそらくその点は肯定をされているのだろうと私は思うわけでありますが、一人で八万六千株もお持ちになっているということになりますと、これがわからぬことはないわけであります。ところで、ここから先は少し推量が入って恐縮ですが、いままでは書いたものを持って読み上げているのですが、その推量と申し上げますのは、冒頭に申し上げましたように、幾つかの企業から手形を預かった方があって、その手形が金融ベースに乗らないで、大蔵省の目の届かぬところで割り引かれていたか、預けられていたかわかりませんが、そういうかっこうをとっておった。これがあとになってわかっている。そうなると、返済の期間もくる。さあ不渡りになった、ならぬという騒ぎが起こってくる。そうなると、その間に入って預かった方に、吹原さんなる方は当然返済をすべく金が必要になってくる、こういうふうに当然進むだろうと思います、一般常識から考えれば。そうだとは断定してはおりませんけれども……。  そこで問題が出てまいりましたのは大和銀行との関係でありまして、大和銀行にどういう筋かわかりませんけれども、約束手形らしきものが振り込まれて、そして銀行の保証小切手なるものが、けたはずれなんですが、二十億というわけですが、そのほかに十億ということもありますけれども、出てきたという形、さてそれを今度は三菱銀行に持っていかれて、長原の支店長さんのところで通知預金か何かにおかえになったという形になっているわけであります。そこまでは現金化されていないわけですが、そこからさて持っていった先が先ほどの森脇さんという形の中で、ここでは現金になっている筋合いですね。そうなりますと、約束手形なんというものはどんどん動いているわけですからつかまえにくいわけでありますけれども、これは銀行の保証小切手というわけなのでありますから、この辺のところを――保証小切手なら預金高という問題も出てまいりますが、おそらくこれはきのうももめたのだし、新聞にもこれだけ出ておるのでありますから、よもや知らぬとおっしゃらぬだろうと思いますが、そこのところを銀行局長さんに承りたい。
  108. 田中角榮

    ○田中国務大臣 まだその件は調べておらぬそうでありますが、銀行当局に照会をしておるそうであります。
  109. 大出俊

    ○大出委員 ところで、これは少し不見識だというそしりを免れぬかもしれぬけれども、けたが大きいのですから、その種の小切手があったかなかったか、約束手形があったかなかったかなどということは、これは三菱のある方も言っているように、それだけ大きな額であれば必ず目についている。だから、わかっているはずなのだけれども、実はわかっていないということは、なかったのだろうなどという回りくどいことを言っておられるようでありますけれども、そうなりますと、これはあったかなかったかくらいのことがわからぬはずはない。それも捜査に協力ですか。どういうふうになりますか、そこのところは。
  110. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 その点についても、全く私どもが知らないというわけではございません。しかし、大筋を申し上げますれば、その辺のところが非常に検察当局が取り上げている問題にも関連があるのじゃないかというふうに私は思います。そういうことで、まだ実は話として承っている程度でございまして、正確な報告を受けたわけではございません。銀行側の申しておりますことは、結果においては銀行に何ら損害はない仕組みのものであった。いまおっしゃられました手形云々というようなことでございますが、そういうことではないようでございまして、私どもがわかっておりますことは、実害はなかったと銀行が申しておる。しかし、実害がないということは、銀行にとって実害がない、こういう意味でございます。その程度のことしかただいま申し上げることができません。
  111. 大出俊

    ○大出委員 大和と吹原、大和と三菱と両方あわせて申し上げますが、私のところの資料によると、一番最初に三菱銀行の通知預金証書二十億、大和銀行の通知預金証書十億円を見せて、これは裏金だから使えないということで、これを担保にして銀行で手形を割ってもらう、銀行金利だから安いんだということで手形を預かったということが出てきているわけです。これは真否のほどは、何べんも申し上げているようにわからぬ。そこで吹原産業の方が見せたという通知預金証書については、三菱銀行も十億円とか二十億円とかいう通知積金はざらにあるものではないから、あれば知っていると語っているわけです。これはその後記者の方が当たったものにも出てまいりますね。そこで、預金証書について知らない、つまりその事実がない、こういうことになるとすれば、ではそれは偽造であったのかという問題が、一つ疑問として出てくる。あるいは不渡り小切手などによる詐欺ということになるのじゃないかという疑問が出てくる。あるいは銀行職員と気脈相通じたという形においてつくったのかという問題も出てくる。さらには銀行側の内部にこの件についてタッチした方々があって、用紙を持ち出してきてつくったのだと考えられる節も疑えば出てくる、こういう問題が派生をするわけです。そこで私は大蔵省の、まさか銀行局長さんがというわけじゃありませんけれども、方の耳打ち、ひとり言等いろいろ承っておるのでありますけれども、その中で、どうも小切手が一枚大和でなくなったのだ。はからずもそれが何がしという人の手に渡った。じゃ一体今日はどうなっているのかということで、数人の方にお願いをして、私、当たってもらったと言っては悪いけれども、聞いてみた。ところが、銀行から外に出たことに間違いはないのだけれども、今日は台帳には載ってないと言う。台帳に載ってない。では銀行にはないのかと言ったら、あると言う。あると言うなら、一体それは何だ、どうなっているのだと言ったら、書損処分、つまり書き損じたということで処理してあると言う。私も検察官ではありませんから、聞いた話でありますから、そこから先の信憑性のほどについてはこれまた確認の余地がありません。したがって、承った話そのままの話をしているわけでありますけれども、ただ、私はそこで考えてみると、よしんばどういう形であるにせよ、三菱銀行の副頭取の中村さんに会われた記者の方々の話を聞いてみると、日銀のクラブで発表されたとき聞いておられた記者の方々にも聞いてみたところが、ことばの節々にちらっといろいろとにおってくると言うのです、その記者の方の言い分としては。その話を聞いて最初はびっくりした。この事実を否定はされていない。ただ言っておられるのは、大臣からいま御答弁いただきました、実害を外部のものに与えていない、内部の問題だということ。そうなりますと、じゃ長原の支店長さんは一体どういう責任を負わなければならぬのかという問題が出てくる。この質問も記者がしておりますけれども、善処したいというふうに答えておられる。ここまでくると、うわさの段階を過ぎているような気がするのです。確かに、今日銀行検査をやられてみても、普通の状態ならば、書き損じたのだということで処理されておれば、これは台帳にあがってきっこない。書き損じまで一々調べてみる人はないと思う。私は、正直の話、銀行検査をしている大蔵省の方に友人が何人もおりますけれども、聞いてみると、書き損じたもの、そんなところまでとてもじゃないがやっていられない、そういうわけですね。だから、私は、さっき設置法とからんで、ふやすべき人はふやしたらどうかという話をしておるのであります。何も銀行局に保険部をつくるだけが能じゃない。これをやめたってふやすべきところにふやさなければならぬということになるわけですが、いろいろと調べてみて聞いてみると、私の耳にそう返答が来るわけです。三菱銀行の副頭取さんが日銀のクラブで記者発表をした、これを聞いた方に聞いてみた。そうすると、否定はされておらないという。ただ、いま発表の時期ではないと言われる。びっくりしたとも言われる。そうなってくると、これはあくまでも推量になりますけれども、私は、どうしてもこれはただごとではないという気がする。したがって、私は、実はこれらの資料を入手しておりましたけれども、この種のことは、御迷惑をかけることになりますから、なかなか私も不用意なことはできません。したがって、今日までだれにも申し上げたことはないのでありますけれども、ただしかし、今日までこの状態を見ると、きのうの大蔵委員会における簡単な質問に対してこれだけ各新聞の方々がお書きになるという事態は、至るところでうわさは耳にしておりましたが、そうなると、やはり冒頭に私申し上げた与野党だの何党だのということではなくて、政治不信につながる問題だけに、政府の要路の皆さんはもっと責任を持っていただいて、間違いなら間違い、誤解なら誤解、こういうことで正しておかなければ、私は政治の姿勢は直らない、こういうふうに信じます。そういう意味でいま申し上げた点を承っているのであります。したがって、ささやかれた大蔵省の関係の方のことも私の耳の横のほうに入っているのでありますけれども、そういうことは、これは事務官僚の方で公にできないというのであれば、これは万やむを得ません。やむを得ませんが、しかし、公の道で知っておられる限りは私は答弁がいただきたい、こう思いますので、再度、もし大臣がお困りになる、ないしは御存じないとおっしゃるなら、関係の方からでもけっこうなんでありますけれども、御答弁を承りたい、こう思います。
  112. 田中角榮

    ○田中国務大臣 どうも私も、きのうの晩からけさにかけて新聞を読んだり、あなたの御質問を聞いておるだけでございまして、銀行局長も、御指摘がございましても答弁に立ちませんから、そういうことは知らないと思います。しかし、銀行の問題に対してはいま照会をしておりますし、新聞を見ても、きのうの晩の同じ人が言っていることばが違うというようでは困りますから、出してもらうならやっぱり文書ででも出してもらうということになると思いますので、多少時間をかしていただければ、そのような金融機関に関する件については大蔵省が所管しておりますので、銀行局で調べたらお話できると思います。しかし、これはお話ができるという段階になって、先ほども捜査に踏み切った、こういうお話がございましたから、そういう状態も十分考えながら、発表できる限りにおいてお答え申し上げるということになると思います。
  113. 大出俊

    ○大出委員 そこで、次の問題でございますけれども、つまり三菱銀行ということで副頭取からお話があった。そこで内部の問題だというふうに言われて善処をしたいという――くどくどしくは聞きません。聞きませんが、大臣の御答弁によりますと、事重要な問題がひっかかってきた場合には、定期監査、定期検査ということでなくて検査はできるとおっしゃる。さて、日銀の考査という問題、上位四行について、日銀でなくて大蔵省でおやりいただけぬかと言ったら、それもやれるとおっしゃる。私はここのところは勘ぐるわけではありませんけれども、ただ偶然に一致したとしても、それでは困るという気がするので申し上げるのでありますけれども、三菱銀行の頭取をやっておられた方が、人材あまたある中で選ばれて、たまたま十二月ごろでありますか、日銀の総裁になられた。ところで、日銀が考査する対象は三菱銀行である。総裁はその前まで三菱銀行の頭取であった。こうなりますと、何となく、どうも日銀の考査がございますのでということだけでは心もとない気がいたします。そこで私は冒頭に大蔵大臣にお尋ねしたのは、大蔵省として考査にまかせずにおやりになる気はございませんかということを申し上げたわけでありますので、重ねてひとつそのあたりのところを承りたいわけであります。
  114. 田中角榮

    ○田中国務大臣 日銀のほかに大蔵省が検査をすることは、一向差しつかえございません。しかし、いま御指摘になりましたような問題につきましては、いま調べておりますので、特別検査をしなくとも、この種の問題に対して御報告ができるような状態をつかむことはむずかしいことではないわけでありますから、こういう問題が一つ出て、たくさんあると思うからやりなさい、こういうことであればこれは別でありますが、あまりそういう必要もないように思います。また、宇佐美さんりっぱな方でありますから、宇佐美さんが日銀に行かれたからといって、日銀の考査がいいかげんだ、こういう考えは、国民もお持ちにならないだろうと思います。また国民が持つようになれば、当然大蔵省はいつまでも検査ができるということでありますから、その点は御了解いただきたいと思います。
  115. 大出俊

    ○大出委員 誤解のないように願いたいのですが、ですから私は、総裁がそういう御関係だからそれでどうという勘ぐるわけではこの問題はないのだけれども、何となく不自然な気がするということなので、やはりおやりになる以上は、世の中はきれいなほうがいい、こう思いますから、そういう意味で、そのほうがすっきりしやせぬかということで申し上げているわけですから、またそれが私は筋ではなかろうかという気もするので、事これだけ新聞が善き過ぎるくらいお書きになった問題ですから、そこのところはそういうふうに私は要望したいわけです。  そこで、もう一つの問題なんでありますけれども、法務省の刑事局長さんお見えにならなければ課長さんでけっこうなんでありますが、承りたいのであります。私の持っております文書によりますと、先ほど幾つか例をあげましたが、この種のこと以外に考えられないという結果から、それは捜査段階だからお答えいただけぬというのなら、それなりに別途検討いたしますが、どういうことになるだろうか。何かがなければ捜査にはお踏み切りにならぬわけでありまして、告訴があったとか、あるいは内偵をされた結果として相当重要な問題が見当たったとか、何かがなければ、捜査には踏み切らないと思う。つまり、きのうまで内偵をされて、きょう捜査とおっしゃる以上は、何かが出てきたということ、あるいは出てきていたと考えられておって、捜査に踏み切ったということだと思う。そこで、二つばかり伺いたいのでありますが、一つは、三菱銀行の側が森脇さんとの関係において、私の手元にある文書を読んでみますと、どうも偽造だ云々だということが出てきたために、森脇さんの側は訴訟提起まで考えたという。けさの新聞によりますと、資料が整理できたらやるというふうな意味のことを書かれている新聞もあります。そうなりますと、もう一つ、三菱のほうの側も、大和との関係等において債務を受けることになる、そういう意味で実害は与えていない。確かにそれはそうです、現段階では現金化されていないのだから。そうなると、訴訟に踏み切るとか、あるいは踏み切ったとか、いろいろいわれております。そういう告発、告訴等があったのかなかったのかという点が一点と、あわせて、私のところにある内容からいきますと、特別背任事件などということにまずなるのではないかというふうに書いてある。それらの点について、答えられる範囲でけっこうでありますが、お答えを賜わりたい。
  116. 津田實

    ○津田政府委員 先ほど申し上げました東京地検で捜査をいたしておりますという件でありますが、この件の捜査は、株式会社三菱銀行が吹原弘宣を告訴いたしました詐欺事件であります。その事件について捜査をいたしておるわけであります。したがいまして、昨日調査と申し上げましたのは、課長でありますので、その段階しか存じなかったので、その程度に申し上げたのでありますが、昨日調査であり、きょうは捜査であるということではありません。
  117. 大出俊

    ○大出委員 ちょっとすみません、私いま資料を見ておりまして一番最初を聞き漏らしたのですが、告訴というのは、どういう告訴でございますか。
  118. 津田實

    ○津田政府委員 それではもう一度申し上げますが、株式会社三菱銀行が吹原弘宣を詐欺事件で告訴をいたしたというのが、事件の端緒でございます。
  119. 大出俊

    ○大出委員 ということになりますと、これは私ならずとも、皆さんがそうお考えなんだと思うのでありますが、先ほど来私がるる申し上げている――こんなに私はたくさん資料がありますが、ずいぶんきわどいことまで実は書いておるということですから、申し上げたのでありますけれども、どうもそう荒唐無稽な作文ではない気がするのであります。したがって、先ほどあくまでも御存じないと言われるのですけれども、三菱銀行との間における、何か新聞にちらっと十九日大蔵当局がどうのこうのというふうに載っておった記憶があるのでありますが、この辺の関係は、これからどういうふうにお止めになるおつもりでありますか。
  120. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 私のほうの所管課長が、三菱銀行についてこのうわさが非常に強くなってまいりましたので、あるいはこれが公の問題になる可能性がある、そういうことから、担当部長を呼びまして、その事件の内容を聴取しておるわけでございます。しかし、その段階におきましては、その回答といいますか、銀行側の答弁は、きわめて要領を得ないのでございます。そういうことでございますので、続けてまたきのう問題になりましたので、銀行側に対しまして、もう少し責任のある内容を述べるように、こちらから要求しております。しかし、銀行側といたしましても、そのように告訴をいたしまして捜査に乗り出したということがありますので、非常に話しにくい点があるということで、いまの段階ではあまり詳しく言うことをちょっと遠慮さしてもらいたいというふうな、まあ言いにくい状態にあることを了解してもらいたい、こういうことを繰り返しておりまして、したがって、先ほど申しましたとおり、この点が今回の地検の特捜部の捜査開始の端緒になっておりますが、その点については、法務省の側としてもはなはだ微妙な点でございますから、でき得べくんばもうしばらく事実の究明を遠慮してもらいたいのだ――しかし、これは行政監督の問題は別でございまして、司法の問題と行政監督とは別個でございますから、私のほうとしては、それとは別に、公表する、しないは刑といたしまして、真相を明らかにするということを銀行側に強く要求いたしております。
  121. 大出俊

    ○大出委員 たいへん貴重な御答弁をいただいたのですが、だから私は何べんも申し上げておるのですが、いまの御答弁まで承れば、私はここに帯いてあることがそうむちゃくちゃなことでもないような気がする。  そこで、なお重ねて承っておきたいのですが、つまり吹原産業というこの会社は、先ほどの大臣の御答弁では、二千万円の資本金で始めて急激に一億六千万円になった。それにしても資本金は一億六千万です。しかも上場株として二部に上場できるのは、たしか一億くらいでしょう。一部は十億かそこから上でしょう。ここにも入ってきていない会社なんです。そういう会社にけたはずれな大きな金を、なぜ一体三菱銀行なり大和なり三和なり、あるいはそのほかにまだたくさんありますが、こういう銀行が貸したのだろうかということが、どうしてもわからぬ。よほどの信用がなければ貸すはずがないと、私は思うわけであります。そこで私がさっき聞いたらお答えがないのだけれども政府要路の中に大きな株主と申しますか、八万六千株も持っておる方がおられたり、あるいはそれ以上のりっぱな方が役員をやっておられたり、株を持っておられたりというふうなことが、どうも裏づけになっているのじゃないかという気がする。信用の度合いということ、つまり御本人の意思云々にかかわらず、客観的に第三者が見ればそういう結果になるようなぐあいになっていたのじゃないか、こういう気が私はどうしてもしてならない。大臣がおっしゃるように、長年の友人だということで、そういう方の名前が出ているという意味で、そういうことはないとおっしゃられる。そのとおりだと私も思うけれども、しかし、第三者がながめてみれば、その辺のところに信頼の度合いを置くのでないとすれば、裏づけのない金を貸すなどということがあっていいはずはないわけです。そういう点からいくと、あるいはもっと有利な話が、新聞等によりますと考えられる節もなくはない。つまり、北海道における北海林産の風倒木云々ということは、私は重ねて申し上げませんけれども、温泉団地等の土地などは、一体国有地であったのかなかったのかというふうな問題等を新聞が取り上げておりますから、私はあえて御賛同するのだけれども、その辺のところを明らかにしていただけないか、こういうふうに思うのであります。
  122. 田中角榮

    ○田中国務大臣 一体どうして貸したのかというのは、これは調べてみなければわかりません。これはただちょっと考えて、だれかがうしろにおったのじゃないかというようなことは憶測であって、銀行でどういう状態で費したのか、どういう担保があったのか、どういう回収の見込みがあったのか、これは調べればわかることでございます。  第二の問題の、北海道の風倒木が云々とか、北海道の広大な土地が国有地じゃなかったか、そういう事実は全然ございません。これは私もきのうの夕方ですかただしましたが、大蔵省として北海道で国有財産を売り払ったり払い下げをしたりということは、全然ございません。ただ立木を幾らか払い下げたということはあるようでございますが、これも少額でございまして、これは農林省の林野庁の関係で幾らか払い下げたが、たいした額ではないということでありまして、北海道の土地やその他のものに対して国有物件を払い下げたという事実もございません。
  123. 大出俊

    ○大出委員 もう一つ、これは法務省刑事局関係のほうに承りたいのですが、何べんも申し上げているように、私のところにある書いたものの中に、この問題をめぐって政界の相当な方というだけでなくて、どうもそのほかに右翼関係の方の名前等が出てきているのでありますけれども、そういう点がある意味では私は非常に気になるのであります。したがって、これは差しつかえがあるというならばまた別の機会にいたしますけれども、あなたのほうで内偵を続けられて捜査に踏み切ったという段階でありますから、抽象的にはお答えをいただけるのではないかというふうに思っておるのですが、その辺のところはいかがでございましょうか。
  124. 津田實

    ○津田政府委員 先ほど申し上げましたように、この事件は、三菱銀行が吹原弘宣という人を告訴した事件として捜査を続けておるわけです。したがいまして、その捜査の段階においてどういうことがありますか、それは私ども承知いたしておりませんが、かりに内容がわかりましても、いまこの段階で申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  125. 河本敏夫

    河本委員長 大出君に申し上げますが、時間もだいぶ経過いたしましたので、結論をお急ぎ願います。
  126. 大出俊

    ○大出委員 この問題の結論をひとつ申し上げておきたいのですが、冒頭に申し上げましたように、この種のことをこののまま放置することは、いずれにしても、私ども国会に席を置くものの立場から考えまして好ましくないことこれに過ぎるものはないという気がするのであります。いわく政治不信の問題につながりかねない、こういうふえに実は思っているわけであります。したがって、私も大臣が言われるように、ずいぶん古いおつき合いの方々、かつまたお世話になっている方々の名前が出てくること、あるいはそれと相通ずることをあえて申し上げているわけでございますが、さらにこの文書によりますと、またけさの各紙の論調の中に、総裁公選の資金とからむがごとき内容のものが、ずいぶん見受けられるわけであります。東京新聞なんか、ずいぶん大胆不敵に書いておられるわけであります。私の資料の中にも長々と書いてある。いわく何派、いわく何派、しかも中心になられる方々は、この種のことを押えていればその派はおとなしくしているだろうとか、その派の中心人物はおとなしくなっているだろうとか、あるいは別なほうでこの種の問題をつかまえているから、そっちのほうはだいじょうぶだろうなどということが、いろいろ君かれている。そこに先ほど申し上げましたような右翼の方々の名前まで判てきている、こうなってまいりますと、私はこれと相関連をして申し上げたくはないのですけれども、そういう疑惑、不信まで招きかねない今日の時点、段階だろうと思う。そういうふうなことになったのでは、たいへんなことになりはせぬかと私は思うわけです。したがって、いずれにしても、この問題については黒白をつけるという努力を、逆に皆さんのほうも積極的におやりにならないと、これから先が思いやられる、こういう結果になりますので、この辺について長く閣内におられ、しかも大蔵省を担当される大先輩の大蔵大臣のことですから、こういうふうに――昨日来お気づきになったそうですから、きのうからきょうまでお考えになったことになるのでしょうが、その辺のところを聞かしておいていただきたい。
  127. 田中角榮

    ○田中国務大臣 この問題は、三つくらいに分かれると思います。  一つは、大蔵省として金融行政の上からこれをただしていくという考え方でございます。これは大蔵省といたしまして十分調査をいたします。  第二の問題は、捜査の問題であります。私は、きのうからずっといまの御質問を聞いておりまして、これは三菱銀行が告訴したということでありますし、検察当局も動いておりますから、案外簡単にこの問題は究明されるだろうと、私は先ほどから考えております。お話だけでも、あまりにも常識をはずれておるということでありますから、常識をはずれておるものは、捜査すればすぐ解明される、私はそういう認識をいま持ちました。こういうものは早く解明されるだろうと思います。  第三の問題は、政治不信の問題ということでありますが、これは新聞に出ておるわれわれの友人の名前に対して好意的なお話でございますから、私もそのまま受けておきますが、私は長いつき合いのこれらの友人諸君が、被害者であっても加害者ではないということは感じております。まして、あなたがいまうわさをされておるという公選、こういう方々から、こういうケースのところから政党に献金がされるなど、考えておりません。私も閣内にもありましたし、七月の公選にもみずから投票したものでございますが、いかに何でも、こういうことと政治というものがからまっておらぬということだけは、しっかりと私はそう感じております。ですから、検察当局の捜査によってこの問題は比較的簡単に内容が明らかになるだろう、また、なって国民全体の疑惑というものが解けることこそ望ましいことだと思っております。
  128. 大出俊

    ○大出委員 そうでなければなりませんし、またそうあってほしいと思っているのです。  そこで時間の関係もありますので、いま春闘で二十三日ということでいろいろ問題がございますので、その方面の関係を、せっかく人事院にもおいでいただいておることですから、できるだけ簡略に質問さしていただきたいと思います。  冒頭に、二つ大蔵大臣に承りたいのであります。公労協の調停が進行中でございますが、この問題をめぐって二十二日に二カ月の調停期間が切れますので、この長い間の調停段階でどうしてもまとまらない、また合議にも入らない、こういう事情で実力行使ということも生まれてきているというわけで、二十日の閣議で御決定をいただいておる内容があろうというふうに思いますが、それについてひとつ大臣から承りたいことと、あわせて、本日官房長官が、私こちらのほうにおったり、本部のほうにおりましたから知らないのでありますが、何か記者会見で発表されたということでありますけれども、それも二十日の閣議決定のあとを受けておられるはずでありましょうから、かつまた前回の二十日のいきさつでは、大蔵大臣が大体おつくりになった内容のように聞いておるのでありますが、そこのところを冒頭に承っておきたいと思います。
  129. 田中角榮

    ○田中国務大臣 労使間は円満に協調してまいりたい、こういう基本的な考え方を前提にしまして、二十日には御承知の官房長官談話を出したわけでございます。これは調停段階でございますので、調停が円満に妥結することを期待し、政府も努力します、不幸にして結論が出なかった場合には仲裁裁定に移行するわけでございますが、仲裁は実施をいたします、こういう政府の基本的態度を明らかにいたしました。  その後、公労協の諸君からももう一回有額回答をやれという話がございまして、そうしなければ前進しないという陳情もございましたし、いろいろ意見の開陳もございました。いままでに比べて五百円の有額回答をし、第二回目には調停段階で妥結することを期待し、努力する、そういうことまで言ったことは、非常に前進的なものであります。これは混乱を避けたいということであります。そういう誠意を持った態度でやったわけでございますが、まだ二十日の官房長官同等でもだめだということでありますので、きょう官房長官の談話を二回目に出しました。これは、さきに有額回答を行ないましたが、諸般の状況にかんがみ、おそくとも四月末までには再回答を行なう、こういういままでとしては非常に前向きな、明日のストライキを避けたいという基本的な立場を明らかにいたしたわけでございます。またその次に、公労法により禁止されている三公社、五現業のストライキは違法でありますから、また国民にも多大の迷惑をかけるということになりますので、厳に自重されたい、こういう期待を呼びかけたわけでございます。一番最後には、ストライキが行なわれた場合は、厳正なる処分云々、こういうことがございます。この三点のうちの前のほうの二点に、政府はいままでなかったことをこれだけやっているわけでございますから、あしたのストライキはぜひ回避していただきたい、こういう立場でいるということをはっきり申し上げたいわけでございます。
  130. 大出俊

    ○大出委員 昨年の四・一七の問題、一昨年の三・一五の問題を含めまして、大臣御存じのように、私もまとめ役を買った一人なんですが、後段のほうの厳重処分というのは、これは私が書記長で田中大臣が郵政大臣のときに、あなたが私の首を切ったことから、かくて私はここに立っているのだから、これは覚悟の上でやっているのでしょうが、私は、大臣と同じ気持ちで、一刻も早く収拾をつけたいというふうに考えていることに変わりはないのです。そこでお願いがあるのは、調停段階で、ILOの問題もきのうああいう形で片づいて参議院に行っているのだから、この時点ぐらいはせめて片がつくというくらいの御努力は願いたいものだと私はこいねがうわけです。そこで私は一つ苦情があるのですが、最初郵政関係の郵政省、全逓の団体交渉で出てきました、四月以降になって民間賃金が上昇した場合にはあらためて考慮するという趣旨の文書の回答がある。この文書回答を調停委員会に提出をしたところが、とたんに大蔵省からちょっと来いということになった。そこで、この真偽のほどを大蔵省に確かめてみたら、事実であるというわけであります。私は、この席で石田労働大臣に御質問申し上げたところが、大蔵省も知らぬようなことを言われちゃ困るという趣旨で呼んだのだという話が出てまいりましたが、これは予算委員会山田耻目君が御質問したときに、大蔵大臣がお答えになった内容と違う。つまりそういうことはしない、労使間の当事者能力を拡大するという方向を認めておられるのだから。とすると、ここから先調停段階においてまとまるようにということである限りは、両当事者間の自主性を十分に皆さんのほうもお認めいただきたいということと、さらに呼びつけて云々ではなくて、逆にその当事者能力を拡大できるような考え方というものを第二次回答といわれる中でお示しをいただいて、そこでひとつ調停段階でかつて五大臣が出られて私どもと話し合いしたときに出中大臣がおっしゃっていたように、このところは仲裁と同じような意味で調停を尊重していくのだということでおまとめをいただく努力をいただきたい、こういうように思うわけです。くどいようですが……。
  131. 田中角榮

    ○田中国務大臣 先ほど申し上げたとおり、とにかく有額回答五百円をやったということも、歴史的にはたいへんなことでございます。にもかかわらず、また第二の回答をやろうというのですから、いかに調停段階でまとめようと考えておるかという基本的な姿勢は、理解をしていただきたい。日本の労働史上にないことをやっておるわけでありますから、ひとつその誠意は認めていただきたいと思います。  それからいままでの五百円の回答で、五百円、五百円と言っておりますが、予算で組んである四・五%の定昇分を入れると千八百円余になっておるわけですから、そういう意味から考えると、相当出したなあという気持ちだ、質問されているあなたも、そう言う腹の中で、十年前と比べると今昔の感にたえない、こういう気持ちだろうと思います。そういう意味で第二回目を出そう、こう言っておるのでありますから、政府の考え方はぜひ御理解賜わりたい。  それから大蔵省が呼びつけた、これは当事者能力に水をかけようというそんなことではない。これは政府全体として連帯して責任を負うわけでありますから、財政の問題に対してはいつでもお話し合いをするということにすぎないわけであります。大蔵省が出すとか出さないということではありません。いずれにしても、私のほうでも努力しておりますから、ストはぜひやめていただきたい、こういうことであります。
  132. 大出俊

    ○大出委員 ほかならぬ田中大臣のことですから、善意に受け取りまして、ひとつ一そうの努力を賜わるということと、あわせて私どもも努力いたします。  ところで、人事院の瀧本さんおいでになっておられますね――これも要点を承りますので、ずばりお答えを賜わりたいのでありますが、例の六人委員会等の関係から今度は次官会議に移って、勧告の実施時期の問題、さらには勧告の時期の問題、調査の時期の問題、こういうような問題が論議をされていたわけでありますけれども、ことしの勧告というものを予測をする場合に、数字に詳しい瀧木さんでありますから、私は数字的なことは申し上げませんが、大体の実施要綱というものはできるはずでありますけれども、いつごろを対象に調査をされて、いつごろから実施を予定されて、いつごろ勧告をお出しになるという御予定でござ  いますか、ちょっと承りたい。
  133. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 ただいま御質問でございますが、人事院といたしましては、これは公務員法に規定してございますように、絶えず公務員の給与がどうなっておるか、民間との関係でどういうバランスになっておるか、これは調べてみなければならぬということで、毎年一回少なくも報告しなければならぬ義務があるわけであります。そこで、いつの時点で官民との比較をするかということが非常に問題になるわけでございますけれども、これは昨年からただいまお示しのような事情でいろいろ問題になっておる点でございます。しかしながら、われわれ人事院におきましてもいろいろ検討いたしたのでございますけれども、これは完全にいまよりよりいい、決定的にいい方法というのは、なかなか見つけがたいのでございます。そこで、ことしは去年と同様に、四月中の給与を民間において調査するということをいたすことに現在決定いたしております。そしてこの調査の結果は、大体六月二十日くらいまでに実地調査を終わりまして、それから集計段階に入るのでございますが、これはおそらく例年と同様の日数を要しまして集計分析ということに相なろうかと思います。そこで、いつごろ勧告するかというお話でございますが、これは毎月勤労統計等で大体勧告するようになるかならぬかという見当はつくわけでございますけれども、現在われわれがそれを決定的に申し上げることができる段階ではございません。したがいまして、作業は例年どおりにやって、大体例年どおりに研究をいたしまして、その上で必要があれば勧告をいたす、こういう手順に相なろうか、このように考えております。
  134. 大出俊

    ○大出委員 そこで重ねて承りたいのですが、政府のほうからも、大蔵大臣がおられるところですが、六人委員会のあとを受けて検討された結果が、人事院のほうに伝えられているように聞いている。そこで、私どものほうは、ことしの勧告はなるべく去年の暮れのうちくらいに算定をしておいて、予算編成とあわせて、そして五月実施といったらいつも値切られるということでないようにしていただきたい気持ちがある。そこで、いまのお話を聞いていると、四月調査、五月実施、勧告の時期はわかりません、また内容もやってみなければわかりません。これは認めますけれども、しかし、人事院の皆さんが――これは総裁でありますけれども、組合の諸君といろいろやりとりをしている議事録を読んでみた。そうしたところが、その間の事情について説明をされたあとで、勧告の調査対象、時期、それから実施時期、勧告の時期、これについていろいろと方法があるけれども、今回は四月調査、五月実施、勧告の時期は八月というような意味のお話が出ているのですが、いろいろ方法があるというのは、一体どういう方法があるのですか。
  135. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 総裁がどういうお話をなさったのか、いま大出委員のおっしゃいますのがいつの会見のことを意味しておられるのか、その辺私事情がよくわかりません。そこで、多少御質問趣旨と違うことになるかもしれませんが、人事院といたしましては、この前の勧告を実施されますときの政府の閣議決定に附帯しております事項等もございます。また国会でおつけになりました――これは衆参両院でおつけになったのでありますが、附帯決議もあるわけであります。そこで、この問題は非常に問題であるということは十分意識いたしまして、いろいろ検討いたしたのでございますけれども、非常にいい方法というのが、現在の段階ではなかなか見つけがたいのであります。そうなれば、積極的に考えるということが現在の段階ではなかなかむずかしいということになるのでありまして、したがいまして、今後とも十分研究は重ねてまいらなければならぬ問題でございますけれども、現在の段階において何か積極的に変えるいい方法があるかということになりますと、現在のところまだそういう時期でない、こういう状況でございます。
  136. 大出俊

    ○大出委員 それでは、いまの点は繰り返して答弁は要りませんが、三月二十五日午後三時から、公務員共闘の皆さんと、瀧本さんも御出席ですが、やりとりをしている。この議事録の中にありますので、私はいまの点はいろいろ申し上げたいのですが、理論的に詳しくなると長くなりますから、これは省略いたしますので、そう御記憶を願っておきたい。後ほど直接承ります。  それから次の問題でありますが、四月調査ということになりますと、調査要綱の備考か何かの中に、後ほど民間賃金の値上がりの状況はなどといって入れてみても、昨年みたいに民間賃金の上昇がずれてまいります。ことしの場合も、四月ということになりますと、ずれそうであります。したがいまして、それらの点を昨年は実際には考慮をなさらないで、四月ということで出されている。その点について国会質問を申し上げたら、ことしは事業規模五十人というのを百人以上と変えかんだから、それでごかんべんをという筋の通らかい答弁だった。したがいまして、ことしの春闘の今日の状態、鉄の場合には千五百円を出している。鉄の場合には、昇給その他大体千円くらいですから、二千五百円。造船なんかですと、千円と三百円出したから千三百円。これが三菱三重工あたりへいきますと、千四百円が昇給ですから、二千七百円とか八百円とかいっているのですけれども、こうすでに上がってきている。これは私は比較的低いところを言っているわけですけれども、そういう状態になりますと、当然民間賃金の上昇というもののズレ、これをことしこそ克服していただかなければならぬ、つまり勧告の中に入れてもらわなければならぬ、こういうふうに思うのでありますが、それに対する方途、考え方を、簡単でけっこうですから、お聞かせいただきたい。
  137. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 この調査という技術的な問題がございまして、ある時点で調べるということにたりますると、現実に四月分として支払われたものを調べる、こういうことよりしょうがないのであります。こう申しますのは、あとから追給があったから、その分を加えて計算して、そして持って帰るというようなことは、事実上非常にむずかしいし、それからまた統一のとれないことになります。したがいまして、調査はあくまで四月分ということで調べました。しかしながら、われわれが調査いたしまするこの時点におきまして、四月分としては支払わなかったけれども、もうすでに労使妥結して追給することが決定しておるというようなものは、これは残らず調べてまいることにいたしております。そこで、どういうぐあいに春闘のズレというものがあったかということは、しさいに把握をいたしたいということを考えておるわけであります。ただしかし、これをどういうふうに処理するかということは今後の問題でございまして、十分研究いたしたいと思います。
  138. 大出俊

    ○大出委員 八月勧告をかりに――私は賛成するわけじゃありませんけれども、もっと早く勧告してもらわなければ困ると思うのですけれども、かりに勧告ということになった場合には、四月調査の結果としては、まだ時期があるのですから――それは瀧本さん、いろいろ理論的に説明されることはわかりますよ。ただ、私のほうにも理論的な反論があるのですから、そうなりますと、それを人事院勧告に取り入れてもおかしくない方法というのはあるはずなんです。全くないとおっしゃるのなら、これはまたあとでお話ししなければならぬと思うのですが、私は、そこのところをやはり考慮をいただかないと、その分だけ翌年に回ってずれていく、こういう結果になりますので、そこのところを御配慮をいただきたい、こういう言い分であります。  それから次に承りたいのは、ことしの調査の重点が、いままでのやりとりの中でいきますと、通勤手当あるいは住宅手当の二つにしぼられているような感を受ける。そういうことかどうかという点をひとつ……。
  139. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 民間の個々の職員の給与を調べる、これが民間給与調査の本体であります。そこで民間給与実態調査という調査をやっておりますが、その実態調査の中で、主要な手当を三年に一ぺんぐらい順繰りに調べる、こういうことにいたしておるのであります。これは調査能力との関係もございます。そこで今年は、仰せのように通勤手当と住宅関係を調べるということに相なった。これはたとえば宿日直を調べないとか、あるいは扶養手当を調べないとか、いろいろお話は出ております。しかし、われわれは宿日直は去年やったばかりでありまして、ことしそれほど大きな変化があろうとは思いません。それから扶養手当につきまして申しますならば、大体の情報はわかっておるということがございます。ことしは通勤手当と住宅手当について詳細に調べてみる、その上でわれわれの実態的な判断でどういう勧告をするか考える、こういうことになると思います。
  140. 大出俊

    ○大出委員 ちょっと聞き取りにくいのですが、大体わかりますから繰り返しません。そこで承りたいのですが、住宅手当については、昨年は報告でしたと思いますが、そのときに私の質問にお答えになったのは、これは総裁からでございますが、大蔵大臣がここにおられますから承りたいのですが、政府に住宅をよけいつくってくれということを言ったんだ、そのできぐあいいかんによっては、報告などという弱いものではなくて、人事院が勧告なら勧告に明確に入れるべきではないか、こう言ったら、ことしはいろいろな御意見も政府からもあるので、言うてみれば、その結果を見て、住宅手当あるいはそれに類するもの、これは考えなければならぬ、こういうお話があったのですが、この辺のところについて、人事院が満足する状態になったのかどうか、ことしの予算の面で。私も予算を見ておりますが、その結果によっては、私は大蔵大臣質問があります。
  141. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 満足するかどうかは総裁が判断することでございますが、事実問題といたしまして、一昨年から去年にかけましては、約三割程度公務員の住宅関係の予算が増加しております。これはこの前御報告してあるはずであります。ことしはどういうことになっておるか。ちょっと観点が変わりますが、一昨年は大体六千戸ぐらいの公務員住宅を建てる計画になっておったのが、去年は八千戸になっております。ことしの予算ではこれが一万戸になっておりますので、人事院で国会並びに政府に対していろいろお願いをしておりますことは、これはただいま申しました数字のように現実にあらわれてきておる、こういうことはわれわれ考えております。
  142. 大出俊

    ○大出委員 民間の場合に、昨年、建ててやる住宅あるいは出している手当、こう分けてみますと、人事院の調査というのは、どうも不十分なような気がする。ことしはその両方をおやりになるのだろう、こう思うのですが、そういう一面で、これは時間がありませんからここで結論にしておきますけれども、できるだけ前向きで調査結果を見ていただきたい、こういうふうに思うわけです。  それから、いまおことばに出ましたからここで聞いておきますが、宿直手当、これはどういう趣旨でつくられているとお考えになりますか。例をあげますが、九-一五、一五-九、この二つが人事院規則ですね。しかも私は気がつかなかったのですが、昨年の十二月ですか、金の出ないほうができておる。これはどうもごまかしがあるので、私はいろいろ申し上げなければならぬ。職員局長もお見えになっておるようですが、あの中の要点は二点です。一つは、あまり頻度が高い、過度にわたるというような宿日直がある。たとえば陸運局のように、人が足りなくてしょうがない、外部との連絡まであの規則の中に入ってきたから、電話がかかってきたら出なければならぬ、こういう結果になるので、寝てはいられない。そうすると、この過度にわたるかどうかの判断が所属の長にまかされているかのごとく人事院は説明をされるのだけれども、過度にわたってはいかぬとなっている。一体その判断の基準というのは、どこがおきめになるのか、この点について明確にしていただきたい。  それからもう一点、もし実費というふうなとらえ方を宿直手当についてなさるならば、税金の問題というふうなものはどうお考えになるか。これはかかるはずですからね。将来に向かって五百円をこえない保障はない。宿直手当というのは、いまの金額はあまりにも低過ぎる、過酷過ぎる、上げなければいけない、こう思っている。そこで税金との関係その他について、これはひとつ人事院と大蔵省と両方から、今日のままであってもやはり聞いておきたいので、ひとつ承りたいわけです。
  143. 大塚基弘

    ○大塚政府委員 確かに人事院規則一五―九でもって新たに宿日直勤務に関して規定をいたしました。しかし、この宿日直勤務の仕事の内容に関しましては、本来の業務でない、お話に出てきましたような外部との連絡あるいは庁舎の管理というようなものを、宿日直勤務の中に規定いたしました。これはお話のとおり、新たに宿日直勤務の内容をつけ加えるというものではございませんで、給与関係の規則から中身を移してまいったものでございます。それからこの規則には、御指摘のとおり、職員の健康及び福祉に関して考慮しなければならない、そういうふうな規定を入れたのでございますが、これに関しましてどういう判断基準を示すかという点に関しましては、まだ人事院としては示しておりません。したがいまして、事実上の問題としましては、この点の判断は管理者にまかされておる。将来の問題としましては、勤務時間に関しましては、御承知のとおり相当不備の点もありますので、われわれとしては、これらの一極の訓示的規定の内容に関しても検討しなければならないと思っております。
  144. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 この宿日直手当というものを実費弁償と考えるかどうかというお話でございますが、これはあくまで給与法の中の手当としてきめてある、給与ということでわれわれは考えておるわけです。したがいまして、給与全体は所得税の対象になるわけでございますが、現在御承知のように宿日直の一部分、それから通勤手半の一部分につきましては、実費弁償的という考え方から国税庁のほうで御処置願っておる点がございます。しかし、これはわれわれの考え方からいたしますならば、実費弁償であるならこれは給与の外できめるべきものであって、給与法の中の手当としてきめておる以上は、そういうところの便宜がはかられるとすればそれを拒否するものではありませんけれども、そこに重点を置いて考えるものではないというようにわれわれは考えております。  それからこの手当の額でございますが、これもいろいろ考え方はございます。しかしながら、民間で同種の作業をやっておりまするときに、大体どのくらいの程度の額になっておるかということが、やはりこの手当の額をきめますときの一番たよりやすい判断基準になるというようにわれわれ考えております。そこでわれわれは、現在民間の同種の作業に従争いたしました場合の支給されております額を、一応基準にとってこの額をきめておる、このような状態になっております。
  145. 大出俊

    ○大出委員 もう一言つけ加えて大臣の御答弁を承りたいのですが、補食費というのがありますね。これは食事ですよ。実費弁償の形になっているから、もちろん税金はつかない。私は、やはりどうしても宿日直手当というふうなものは、実費支弁という形でなければおかしい。給与法から抜けばいいのですから、どうということはない、その点は考え方の問題だから。だから、これを言い出すと一家の言があって長くなりますから私は申しませんが、御検討をいただいておる云々というお話もありましたので、大蔵省としては、この辺のところは、問題が小さいようですが、実はそこで働いている方々は苦労をし抜いているわけです。一晩何回も電話で起こされて、わずかの金しかもらってなくて、それからまた税金を取られて、これが手当でございます。そういう筋合いのものではないと私は思うのです。これは企業によっては宿日直の義務はないのだから、拒否だってできるところでもやっているのです。そうなりますと、ここのところはやはり大蔵省でとくと御検討いただきたいと思うが、大臣の御答弁を賜おりたい。
  146. 田中角榮

    ○田中国務大臣 いろいろ問題があると思いますが、十分検討してみます。
  147. 大出俊

    ○大出委員 それから行(二)と標準生計費等について、ことしは調査検討ということはお考えになってないのですか。
  148. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 標準生計費は、これは何回もお答え申し上げるのでありますが、人事院は、単身者の標準生計費と二人世帯、三人世帯、いろいろ参考につくってはおります。しかしながら、事実問題としてこれを俸給表と関連させて使っておりますのは、十八歳の単身者の数字でございます。この点に関しては、むしろ新制高等学校卒業の場合の初任給は、行(一)より行(二)のほうが高いのであります。そういう関係で、その問題は一応その点に限ってはわれわれ割り切っておるのでございますが、しかし行(二)の賃金というものを考えた場合に、あれでよいのかというような話がしばしば出てまいります。われわれは、その点につきましては十分今後検討してまいりたいと思います。
  149. 大出俊

    ○大出委員 三十分とさっき申し上げました時間になりますので、もう一点で終わります。  これは看護婦さんの問題なんですが、人事院に行政措置要求が出て久しくなるのが一つあります。たしか全医療の関係方々だと思うのですが、人事院会議等で二、三回御論議になっているように聞いております。それからもう一つ、医療費の九・五%の値上げのときの理由づけの中で、これは社会労働委員会の議事録等にも載っておりますけれども、看護婦さんの勤務時間を四十八時間から四十四時間に切りかえたい、診療所の問題も入れざるを得ない、こういう結果になったということが理由になった。そうなってまいりますと、今日正規の資格を持っている看護婦さんが四十二万くらい。その中で稼働されている方が十八万、副看護婦という方々が十万六千人くらいおられる。したがって、副看護婦さんという力は、民間に多いわけですから、人事院の関係とはちょっと離れますが、これについて私が聞いた範囲では、このことについてきちっとしたものを人事院がお出しになると、厚生省がピンチに立つ、予算の面その他で大蔵省もそういうふうになる、こういうお話を聞いているのだが、看護婦さんの定数基準等から見て、四ベット一人というのは、患者の数と看護婦さんの数を相対的に見て、患者の数を看護婦さんの数で割ってできたんだから、そうなると、めちゃくちゃな勤務状態で、夜勤が続いて、しかもろくな超勤がもらえないで、しかも人がないから、三浦の国保病院じゃないが、若い看護婦さんが流産をするなんて騒ぎがあって、調査に行った、こういうわけですから、この点は、ぴしっと人事院のほうでせっかく手がけてきたのなら、あとは大蔵省と厚生省が相談すればいいのだから、そういうことで結論ははっきりさせていただきたいと思っているが、時間がありませんから簡単に申し上げたのですが、そこらのことについて、ぴしっとしたお答えをいただきたい、こう思うわけであります。
  150. 三浦直男

    ○三浦説明員 全医療の看護婦の夜勤問題に関しましての行政措置要求につきましては、昨年来人事院といたしましてはこれを本格的に取り上げまして、大規模な調査をいたしまして、その結果に基づきましてただいま人事院会議で検討をしておる段階でございますが、いまだ最終的な結論に達しておりません。しかし、大体大詰めに近づいておりますので、ごく近い機会のうちに判定が出る運びになるのではないか、かように思っております。
  151. 大出俊

    ○大出委員 いまの質問で終わりなんですが、いまの御答弁ちょっとはっきりしないので確かめておきたいのですが、私の耳に入る限りでは、どうもだんだん影が薄くなって、厚生省がピンチに立つからとか、大蔵省との予算の関係がむずかしいからとかいうことで、出てくる結論がだんだん向こうに行ってしまう。そんなけちなものを出されるとかえって困る。事は医療の問題なんです。皆さんだって病気をすれば医者にかかるんだから、そうでしょう。だから、この辺のところはやはりはっきり筋が通ったものにして――これは筋が通らぬことだから、そうしていただいて、その上で国会で相談をする、予算出局に御検討いただく、厚生省にもそういう意味で御検討いただく、こういうふうに、私は人事院の持てる力という意味で申し上げておきたいのですが、変てこりんな形になりはしないでしょうね。念を押しておきますが、どうですか。
  152. 三浦直男

    ○三浦説明員 ただいま看護婦の実態調査につきまして、慎重に人事院会議で検討しておる段階でございます。おっしゃるように、筋の通らぬことになるというようなことはないというふうに確信いたしております。
  153. 大出俊

    ○大出委員 筋を通すというそうでありますから、できましたら大蔵当局に検討していただきたいと思います。ありがとうございました。
  154. 河本敏夫

    河本委員長 これにて質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  155. 河本敏夫

    河本委員長 ただいま委員長手元佐々木義武君、山内広君及び玉置一徳君より、本案に対する修正案が提出されております。
  156. 河本敏夫

    河本委員長 提出者より趣旨説明を求めます。佐々木義武君。
  157. 佐々木義武

    佐々木(義)委員 ただいま議題となっております大蔵省設置法の一部を改正する法律案に対する修正案趣旨を御説明いたします。  案文はお手元に配付いたしてありますので、朗読は省略させていただきまして、その要旨を申し上げますと、原案中「昭和四十年四月一日」となっております施行期日につきましては、すでにその日を経過しておりますので、これを「公布の日」に改め、宏員に関する改正規定は、本年四月一日より適用しようとするものであります。  何とぞ御賛同あらんことをお願い申し上げます     ―――――――――――――
  158. 河本敏夫

    河本委員長 これより原案及び修正案討論に付するのでありますが、討論申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  大蔵特設世法の一部を改正する法律案について採決いたします。  まず、本案に対する修正案賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  159. 河本敏夫

    河本委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  160. 河本敏夫

    河本委員長 起立総員。よって、修正部分を除いては、原案の通り可決いたしました。  右の結果、本案は修正議決すべきものと決しました。  なお、本案に関する委員会報告書作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  161. 河本敏夫

    河本委員長 御異議なしと認め、そのように決  しました。   〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  162. 河本敏夫

    河本委員長 次に、皇室経済法及び皇室経済法施行法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行ないます。田口誠澄君。
  163. 田口誠治

    田口(誠)委員 午前中に引き続いて質疑を申し上げたいと思います。午前中は長官がおいでになりまして、長官質疑のしかけでございましたが、長官より次長のほうが答弁も要領がいいと思いまするので、明解にひとつ御答弁をいただきたいと思います。  こういう時間になってからあえて御質問申し上げたいと思いますものは、昨日の村山委員質問に対して、天皇国事行為並びに内閣承認等の問題について、いろいろお聞きをいたしましたわけです。天皇国事行為の問題については、憲法の三条、七条によって明確になっておりまするし、これ以外のものは私事という考え方において、一つの例を述べられたわけです。そこで私がただ一つ疑問になりますことは、三月の十六日に韓国の外務大臣が参りましたときに、天皇がお会いになったわけなんですが、これはどれに該当するものかということをお聞きをしておかないと、将来まだ国交が正常化されておらない国々の要人の来た場合に、天皇にお会いしたいという申し出のあったようなときの取り扱いにいろいろと困難な面もあろうと思いまするので、お聞きをしたいと思うのですが、これは何に該当しておるのか。私事であるか、それとも憲法に許されておる国事行為一つであるか、この点を承りたいと思います。
  164. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 お尋ねの点は、国事行為でいう大使、公使の接受、その条文にはっきり当たりません。こういう場合は私事でもございません。天皇の公的な行為の一つというふうに考えております。
  165. 田口誠治

    田口(誠)委員 国事行為の場合には、これは天皇には責任がなく、内閣責任を負うということになっておりまするが、天皇私事の場合には天皇責任を負うということに理屈上なるわけなんですが、その点は間違いございませんですか。
  166. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 私事でありますればそうでありますが、いまの場合は公的なもの、公事と申していいかもしれませんが、公事というふうに言う学者の方もございます。天皇のなされ方は、国事行為憲法ではっきりしております。それ以外には公事、公の行為、それから私事というのがあるわけでございます。これは昨日もちょっと申し上げましたが、そういう公の行為は、憲法ではそういう条文はないので、憲法には「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関す、る権能を有しない。」国政に関する範囲においては、この国事行為以外にはないわけであります。しかし、国政に関する権能という概念に入らないものであって、憲法七条の象徴という公のお資格でなさる行為というものは、公の行為、こういうふうに存じております。しかし、象徴というお立場でなくて、私人としての行為はまた別にあります。たとえば生物学の研究をなさるとか、いろんな御親戚とおつき合いになるというようなことは、これははっきりした私事であります。
  167. 田口誠治

    田口(誠)委員 ちょっとその辺をはっきりいたしたいと思いまするが、公事の場合は、これはもう天皇御自身の意思からそうした行為を行なわれるのか、それとも宮内庁長官等に御相談をなさるのか、この点ひとつどうなっておるのか、お話し願いたい。
  168. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 公事につきましては、当然宮内庁長官に相談されます。それから先日の韓国の外務部長官が見えてお会いになる、ああいうことにつきましては、外務大臣のほうからも適当であるという御意見をやはり得ております。これはこの前インドネシアの大統領が昭和三十三年にお見えになったときも、国交正常化の前にやはりお会いになっておるわけであります。
  169. 田口誠治

    田口(誠)委員 憲法七条に言うところの外国の大使及び公使云々というこの項は、これは明確に大使、公使、それから全権大使もこれは含まっておると思います。もちろん王子だとか国王、こういうような方はこの中に含まろうと思いますけれども、まだ国交が正常化されておらないところの要人が来られた場合に、公事としてお会いになるということは、私は適当でないというふうに考えておるわけであります。その点をどういうふうに宮内庁としては判断をされたか。おそらく長官には御相談なさったと思いますので、お聞きをしたいと思います。
  170. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 これは韓国の外務部長官が、陛下に敬意を表したい、敬意を表したいと言われる場合に、その方に会われることは、これは差しつかえないのではないか。以前にインドネシアの大統領の場合にもそういう例がありまして、正常化の前に、敬意を表したいというのでやはり会っておられます。韓国の場合、何か在京の代表部がありますが、そういう方は、たとえば園遊会のときやなんかのときは呼ばれておられるわけであります。これはある程度交際関係がある、ほんとうの正常化までいっておらない、そういうような場合におきましても、先方が特にいまの場合のように敬意を表したいと言われる場合、それをお受けになるということは差しつかえないというような見解でお会いになったわけであります。
  171. 田口誠治

    田口(誠)委員 私があえてお聞きをしておりますることは、ただいま答弁のございましたように、外務大臣にも御相談なさったら、外務大臣はそれは妥当であろうというオーケーを与えられたわけです。そこで考えていただかなくちゃなりませんことは、いま日韓会談の問題は、国会内においては与野党が相対立をして戦いが進められておる。国論も二分されておる。こういう中において、天皇がまだ国交正常化しておらないところの、しかも問題になっておる問題をかかえて来ておる大臣とお会いになるということは、これは天皇を政治的に利用するというように国民解釈をするわけなんです。特に外務大臣と御相談をされて、外務大臣がオーケーを与えたということは、すなわち、いま行なわれておる日韓会談を有利に導こうとする党利党略の一つの行為であって、私はこういうことはほんとうに慎まなければならないと思うのですが、そういう政治的な面を配慮されて考えられたときに、妥当であるか妥当でないかということはおのずから出てくると思うのですが、これは私は問題であろうと思うのです。どうなんですか。
  172. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 われわれも相談の際には加わりまして、その際もいまおっしゃるような懸念はないかということも十分考えましたのですけれども、しかし、以前にインドネシアの場合においても正常化の前にお会いになっておるので、その相手方のほうが何か敬意を表したいと言われるのですから、その敬意を受けないというのも、やはりいま適当じゃないのじゃないか。何か特別のときにお話をされるわけじゃなくて、敬意を表されると言ったら敬意をお受けになるということは、差しつかえないんじゃないかというふうに考えたわけであります。
  173. 田口誠治

    田口(誠)委員 やわらかいことばでいえば、助言というのは助けるということであろうし、それから承認ということは天皇から申し出のあった場合に同意を与えるということであろうと思います。したがって、このことは憲法三条に内閣責任として明確になっておるのですが、一国務大臣の言によってこうした行為をさぜるということは、私は認めるわけにはいかないと思うのです。一国務大臣助言承認を与えるということはあり得ないと思うのですが、長官、その点は私の申し上げておることは間違っておらないと思うが、どうですか。
  174. 臼井莊一

    臼井政府委員 公的な行為であるか私的な行為であるかということは、これは宮内庁において判断をせられるわけでありますが、しかし、その判断につきましての責任は、もちろん私のほうで監督の責任上当然負うわけでございます。いまのようなお話の場合にも、立場によっていろいろの御解釈がないとは言えないかもしれませんけれども、しかし、いま次長がお話しのように、敬意を表したいということについて、それをすなおに受けられるということについては、公事としても政治にかかわるわけではございませんから、その程度のことであれば一向差しつかえない、こう私どもは考えております。
  175. 田口誠治

    田口(誠)委員 天皇がお会いになりたいということなら、これは内閣に対して申し出をするということなんです。承認を与えるということは、そういうことなんです。天皇からの申し出に対して同意を与えるということは、これは承認を与えるということなんです。そうすれば、天皇がお会いになりたいという気持ちなれば、これは当然、一国務大臣の意見を聞くのでなしに、内閣に意見を聞かなければならない。内閣の同意を求めなければ、憲法上すっきりした行為でないと私は思うわけなんですが、そういう点の取り扱いが非常にずさんであると思うのです。これは与野党を問わず、この問題を考えてみますると、疑問はあります。疑問が将来の問題として残ろうと思いますので、明確にしたいというのであえて質問をしておるわけなんですが、疑問はないと思われるのですか。それでもし天皇がお会いしたいというお気持ちであったら、承認を得たいというなら、なぜ内閣に対して申し出をされなかったのか。この点をお聞きしたいのです。
  176. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 そういうようなお客にお会いになりますのは、国事行為ではございません。国事行為でありますと、内閣助言承認をもってなされるわけですけれども、この行為は国事行為ではございません。ほんとうの大使とか公使の信任状を受けられるという場合は、これは内閣のほうの助言承認があってやっておるわけでございます。要するにお客さんでありますが、お客さんに会われる場合の公的な場合、これは皇室事務に関する国家事務を扱っております宮内庁のほうで判断をしていたしているわけでありますが、なおそういう場合に申し出てきます場合には、外務省の儀典長室を通じて言ってまいります。そういうことがありましたので、外務大臣の意見も聞いたわけであります。これは憲法第七条の助言承認を要するという中に入らない。しかし、そういう行為でない公的な行為があるかないかという問題について一部議論がありますけれども政府見解、それから学者の大部分の方の見解は、こういう公的な行為があり狩るという解釈に現在なっております。
  177. 田口誠治

    田口(誠)委員 明確に答弁をされましたが、私は、憲法に示されておる国事行為以外のものは、これは私事であるという解釈なんです。その中に中間のものがあるということはあり得ないと思う。どうですか。そういうことから考えてみますれば、こうした問題のときは、当然一国務大臣承認を得るとか、一国務大臣の意見を聞くというようなことがあってはならないと思いますし、特に外務大臣の意見を聞くということになりますと、これは日韓会談の問題について、外務部長官日本へ来て天皇と会った、こういうことになると、日本国民のこの日韓会談というものに対する認識というものを有利に導こうとする外務大臣の一行為であって、全く党利党略に天皇を使っていくというように、私どもは判断をするわけなんです。そういうことになりますと、戦争中に天皇をだしにしていろいろと日本の軍事政策が進められた、こういう経過から考えてみますと、私どもはこれは問題であろうと思うわけなんで、そういう点からお聞きをしておるのですが、公事というものは、これは学者の意見も大かたと言われるけれども、私はここに十数名の学者の合同討議の内容の解明をしたものを持っておりますけれども、そういうものはありません。あなたは大方の学者が云々と言われるが、たとえばどの学者がそういう見解を言うたのか、明確にしてもらわなくてはならない。
  178. 村山喜一

    村山(喜)委員 関連。ただいま次長答弁の中で、この重大な問題に関する御答弁がございましたので、この点だけはただしておかなくてはならぬ。というのは、天皇地位、権能に関する問題でありますから、この問題を憲法上ゆるがせにするような回答の内容をそのままにしておくことは、きわめて問題があろうかと思う。天皇が刑事訴訟法上の訴追行為から免れるという特殊な地位にあられるということは、これは天皇国事行為その他公的な行為について、みずからの発意権というものがない、そういうことにおいてこの条項というものはあるんだ。しかも、その責任はあげて内閣責任承認のもとにおいて行なう。国政の中に天皇を巻き込まないという原則を明確にしたのが現在の憲法、そういう立場からあなた方が輔弼の任に当たるという立場を任務としてお持ちになっておるわけだが、そういうような天皇の発意に関する問題は、はっきり憲法学上明快な措置をおとりにならなければ、今後においてこの問題については重大な疑義が残りますので、これについての見解総務長官でもよろしゅうございますので、明確にお答えを願っておきたい。  それと、先ほど次長がお答えになった中において、この権限については、お客さんの扱いであって、宮内庁だけで処理をするというたてまえになっているということをおっしゃるのだけれども、いわゆるわれわれは憲法上十二項の国事行為以外には、天皇の公的な国事行為というものはないと考えている。しかしながら、それ以上に、いわゆる国事行為ではないけれども、公的な行為というものがあり得る。それはいままでの政府答弁の中に出ておる。しかし、それには明らかに二つの条件が明確についている。第一は、国政権能にわたらないものであるということが一つ、第二は、その公的な行為というものは、内閣の指導と承認のもとにおいて、内閣責任承認のもとにおいて行なうということが一つ、これ以上のものはありません。だから、あなた方がおやりになったことは、当然内閣のそういう責任承認のもとにやったんだ、こうおっしゃれば私は了承いたしますが、それが宮内庁だけでおやりになったんだというような、そういう発言の内容というふうに聞き取りましたので、この点については明快にお答えを願っておきたいのであります。
  179. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 私の申し上げたことが何かまずくて、違ってお聞きいただいたようで、その点はすまぬと思いますが、この内閣助言承認を要するというのは、国事行為というこの範囲のものである。この公的な行為につきましては、内閣助言承認というその条件がついていない。しかしながら、いま先生もおっしゃったように、そのことについても、これは内閣の指導のもとに、責任のもとに行なわれるものであります。宮内庁の管理は、総理大臣が管理しておられるのであります。そのことは申し上げなくてもよろしいのですが、要するに宮内庁がやっておりますことは、内閣の下部の機関としてやっておるということでございます。実は先ほど田口先生に、外務大臣のほうの意見も聞いたと言いましたのは、これはいま宮内庁だけでなく、内閣のメンバーとして、これはざっくばらんに言いますと、他のさらに外務大臣内閣の上のほうの意見も聞いておられるかもしれません。それでそういうふうに計らったわけでありまして、やはり内閣責任下において宮内庁がそういうことを扱っておるということでござ  います。
  180. 河本敏夫

    河本委員長 田口君に申し上げます。約束の時間が参りましたので、結論をお急ぎ願います。
  181. 田口誠治

    田口(誠)委員 そこでこういうように分けてよく考えていただきたいと思いますが、外務大臣にお聞きになったことは、これは国務大臣にお聞きになったことなんですよ。国務大臣には、これはこの国事行為に対する助言承認のこういう権限はないわけなんですね。これは内閣だけなんです。だから、内閣を構成しておる一国務大臣だから、その国務大臣の意見を聞けば、これは内閣に了解を得たんだという、こういう解釈をされると、これは大きな誤りを起こすことになりますので、その点を私は忠告申し上げておるわけなんです。この点がおそらく、この問題だけは静かに考えていただければ、これは与野党の議員を問わず、ちょっとおかしいな、こういう感じをお持ちになると思うのです。こういうことを宮内庁責任においてされたということは、私は将来あってはいけませんし、そうして将来の問題についてこのことを問題にしておるわけなんです。たとえて言うならば、中国から来て、中国の要人が天皇に敬意を表したいといって申し込まれればお会いになるかどうかということになると、さてこれはあなた方のほうでは問題があろうと思うのです。そういうような実際に国交の回復してないところの要人とお会いになる場合には、これは慎重に考えて、この事前取り扱いということについては慎重を期さなければならないと思うのです。だから、現在のところでは当然内閣責任においてなされるべきことが、内閣責任でなしに、一宮内庁責任においてこういう行為をお認めになったんだから、このことは自己反省をしていただかなければならないと思うのです。できたことについてやり直しをやれといったとて、これはやり直しのできるものではございませんので、これを動機に自己批判をしていただかなければならないと思う。あくまでもこれが正しいのだという、こういう見解だったら、私はまだまだ質問の中でこの点を追及して回答を求めたいと思うのですが、ひとつ慎重に最後の御答弁をいただきたい。
  182. 臼井莊一

    臼井政府委員 いまいろいろ御質問の問題は、要するにまだ国交の回復していない国ではございますけれども、やはり国際親善をはかるという意味において、そこで敬意を表されるというお申し出をすなおに受け入れられたわけでございまして、しかし、いまお説のような御解釈の方もおりましょうから、今後ひとつこの種の問題につきましては慎重の上にも慎重を一そう期するようにいたしますので、宮内庁のほうにはたびたび申し上げておりますように、公事であるか私事であるかというその御解釈は、そのつど従来のいろいろ伝統とか歴史でよくおわかりの宮内庁のほうにおまかせしてございますので、そういうことのいろいろ誤解のないように一そう私のほうでも、監督をいたしまして、慎重の上にも慎重を期してまいりたいと思います。
  183. 田口誠治

    田口(誠)委員 質問を終わります。
  184. 河本敏夫

    河本委員長 これにて質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  185. 河本敏夫

    河本委員長 ただいま委員長手元佐々木義武君、山内広君及び玉置一徳君より、本案に対する修正案が提出されました。
  186. 河本敏夫

    河本委員長 提出者より趣旨説明を求めます。佐々木義武君。
  187. 佐々木義武

    佐々木(義)委員 ただいま議題となりました皇室経済法及び皇室経済法施行法の一部を改正する法律案に対する修正案趣旨を御説明いたします。  案文はお手元に配付いたしましたので、朗読は省略させていただきまして、その要旨を申し上げますと、原案では「昭和四十年四月一日」となっております施行期日につきましては、すでにその期日を経過しておりますので、これを「公布の日」に改め、改正規定を年度当初にさかのぼって適用しようとするものであります。  何とぞ御賛同あらんことをお願い申し上げます。     ―――――――――――――
  188. 河本敏夫

    河本委員長 これより原案及び修正案討論に付するのでありますが、討論申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  皇室経済法及び皇室経済法施行法の一部を改正する法律案について採決いたします。  まず、本案に対する修正案賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  189. 河本敏夫

    河本委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除いて、原案について採決いたします。   これに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  190. 河本敏夫

    河本委員長 起立総員。よって、修正部分を除いては、原案の通り可決いたしました。  右の結果、本案は修正議決すべきものと決しました。  なお、本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  191. 河本敏夫

    河本委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。   〔報告書は附録に掲載〕
  192. 河本敏夫

    河本委員長 次会は、明二十三日、金曜日、午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時十分散会