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1965-04-20 第48回国会 衆議院 内閣委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月二十日(火曜日)    午前十一時十五分開議  出席委員    委員長 河本 敏夫君    理事 荒舩清十郎君 理事 伊能繁次郎君    理事 佐々木義武君 理事 永山 忠則君    理事 八田 貞義君       岩動 道行君    池田 清志君       上林山榮吉君    亀岡 高夫君       高瀬  傳君    武市 恭信君       塚田  徹君    綱島 正興君       二階堂 進君    野呂 恭一君       藤尾 正行君    湊  徹郎君       受田 新吉君  出席国務大臣         国 務 大 臣 高橋  衛君  出席政府委員         内閣法制局参事         官         (第一部長)  関  道雄君         総理府総務長官 臼井 莊一君         総理府事務官         (賞勲局長)  岩倉 規夫君         総理府技官         (首都圏整備委         員会事務局長) 小西 則良君         総理府事務官         (経済企画庁長         官官房長)   村上孝太郎君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    高島 節男君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  向坂 正男君         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局長)  鹿野 義夫君  委員外出席者         議     員 八田 貞義君         議     員 受田 新吉君         衆議院法制局参         事         (法制次長)  鮫島 真男君         専  門  員 茨木 純一君     ————————————— 四月十六日  委員辻寛一辞任につき、その補欠として武市  恭信君が議長指名委員に選任された。 同月二十日  委員天野公義辞任につき、その補欠として上  林山榮吉君が議長指名委員に選任された。 同 日  委員上林榮吉辞任につき、その補欠として  天野公義君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  憲法調査会法廃止及び臨時司法制度調査会設  置法等の失効に伴う関係法律整理に関する法  律案内閣提出第一号)  皇室経済法及び皇室経済法施行法の一部を改正  する法律案内閣提出第一九号)  建設省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二二号)  大蔵省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二九号)  経済企画庁設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出第三一号)  厚生省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第七五号)  総理府設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第八四号)  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案内閣提出第一〇一号)  農地買収者等に対する給付金支給に関する  法律案内閣提出第七七号)  駐留軍関係離職者等臨時措置法の一部を改正す  る法律案中村高一君外八名提出衆法第九  号)  行政管理委員会設置法案内閣提出第一三〇  号)(予)  旧勲章年金受給者に関する特別措置法案(八  田貞義君外十三名提出衆法第二三号)      ————◇—————
  2. 河本敏夫

    河本委員長 これより会議を開きます。  ただいま社会党委員出席がございません。この際、あらためて出席を求めることといたしますので、暫時このままお待ち願います。——社会党委員出席がありません。やむを得ず、社会党委員が欠席のまま議事を進めます。  憲法調査会廃止及び臨時司法制度調査会設置法等失効に伴う関係法律整理に関する法律案皇室経済法及び皇室経済法施行法の一部を改正する法律案建設省設置法の一部を改正する法律案大蔵省設置法の一部を改正する法律案経済企画庁設置の一部を改正する法律案厚生省設置法の一部を改正する法律案総理府設置法の一部を改正する法律案防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案農地買収等に対する給付金支給に関する法律案駐留軍関係離職者等臨時措置法の一部を改正する法律案行政監理委員会設置法案、旧勲章年金受給者に関する特別措置法案、以上、十二法案を一括して議題とし、質疑を行ないます。受田新吉君。
  3. 受田新吉

    受田委員 それでは、いま提案された法案の中で、経済企画庁設置法の一部改正案を中心にお尋ねをさせていただきます。  経済企画庁長官は、今度の改正案の骨子に、国民生活局設置を掲げておられるのであります。これは私自身としても、また民社党としても、大いに共鳴するところであり、すでにわが党が消費者基本法案なるものを国会に提案をして、継続審議にいまなっております。この消費者基本法案と、わが党の考えている消費者をどのようにしあわせにするかという立場法案国民生活局との関係、この問題について、当局としてもある程度御研究しておられやしないかと思うのです。わが党の提出した法案について、一応の御理解をいただいておるという前提のもとにお答えを願いたいと思います。
  4. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 民社党から御提出になっておる消費者基本法案につきましては、私ども政府といたしましても、検討をいたしておる次第でございます。御趣旨は、「国民経済成長発展に即応する消費生活安定向上を図り、もって国民生活向上に寄与すること」ということが、その第一条に目的として掲げられておるのでございます。この点、今回経済企画庁国民生活局設置しようという趣旨もまた、消費者保護制度と全くその趣旨を同じくするものでございます。しこうして、あるいはこの先御質問があるかと存じますが、そういうふうな目的を達成するために、一般消費者保護に関する諸施策を掲げるとともに、これに伴って必要な行政機関消費者団体整備消費者保護政策審議会等について、それぞれ基本法には規定を設けておられるのでございますが、政府案におきましても、新しく国民生活局を設けるとともに、特に一般消費者保護に関する基本的な経済政策並びに計画総合調整を行なうことといたしておりまするのみならず、現在設置されておりまするところの国民生活向上対策審議会というものがございますが、これを改組いたしまして、現在は経済企画庁長官諮問機関でございますが、総理の諮問機関として国民生活審議会というふうに改組いたしまして、そこにおいてそういうふうな基本的な問題を審議していただくことにいたしておるのでございます。この点は、臨時行政調査会におきましてもいろいろ御意見のありました点でございまして、その御意見趣旨に合わせてそういうふうな方策をとっておるような次第でございます。  なお、民社党で御提案のこの問題については、臨時行政調査会等におきましても、消費者基本法の制定も今後の問題として考慮に値しようという御答申がございますので、われわれといたしましても、今後検討を続けていきたいと考えておりますが、ただ政府方針といたしましては、国民権利義務に関する事柄をこの消費者基本法は含んでいないで、大きな方向だけを指示しようとする意味法律でございますので、そういう趣旨において今後さらに検討を続けていきたい、かように考えておる次第でございます。
  5. 受田新吉

    受田委員 大臣、非常にわが党提案消費者基本法なるものに御共鳴を願っておることがはっきりしましたし、これに対する機構上の問題についても、大体同工異曲の新提案がなされている御答弁があったわけです。私は、この国民生活局設置されるについて非常な共鳴を感じているのでございますけれども、従来の政府のやり方を見ると、経済企画庁そのものが、まことになまぬるいお仕事しかしておられない。特に国民生活実態をながめてみたときに、政府自身が、経済白書でも十分な反省をしておられるのでございますけれども、個人の国民一人一人の消費量というものはどの程度いっておるかというと、これは国民経済全体の消費総量の大体半分以上だといわれておるわけです。それだけの量を占めておるにかかわらず、消費者保護対策というものは、従来実に幼稚であった。なぜ過去において消費者そのもの——生産者消費者の一部を占めておるわけなんです。そうした意味で、生産販売過程においてはばかに力を入れる。しかし、一方において消費者の側に立つ諸施策は非常におくれている。だんだんと生産販売消費者生活というものとが離れてくる。これをなぜ過去においてもっと経済企画庁としては高い観点から各省と連絡をとり、是正する方途を講じなかったか。過去を責めてもしかたがないのでございますが、どこにその欠陥があったかということ、これを御指摘願いたいのです。
  6. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 受田委員も御承知のとおり、たとえば中小企業団体法等を制定いたします際におきましても、その調整規定消費者の利益を害してはならないというふうな条項があり、各生産関係のこれを奨励するところの、または保護助長するところの法制においては、常に消費者立場というものを無視しておらないのみならず、むしろその点を必ず一項目入れて重視されてまいっておるのでございます。生産者は自分の生産したもの以外については、同時に消費者でございますので、これは当然の事柄でございますが、しかしながら、何と申しましても、農林省なり通産省なりそういうふうなところでそういうふうな法律実施に当たられるのでございますけれども生産者にどうしても重点が傾きがちだというふうな傾向は、ただいま御指摘のように無視できない点であろうかと存じます。そういうふうな趣旨によりまして、やはり消費者立場から国の政治全体を総合調整していく機能を持つという必要を、私どもは痛感いたしてまいっておったわけでございます。たまたま臨時行政調査会におきましても、その点を非常に重視されまして、この点についての答申もありましたような次第で、そういう趣旨をもって今回国民生活局をぜひ設置したいということで御提案申し上げておる次第であります。
  7. 受田新吉

    受田委員 政府は、国民生活行政理念というものを今度の提案理由には堂々と掲げておられます。一つ理想像といいますか、いわゆる国民全体がすべて豊かで合理的な生活を享受し得るような高度の福祉社会実現する、この掲げられた提案理由目標というものは、われわれが願っている福祉社会実現と全く一致しております。ところが、このすばらしい目標をどう実践していくかという個々の問題になったら、これはたいへんな作業です。私は、現実に日本の国の経済成長の偉大さというものについて、政府が誇るまでもなく、私自身生産販売過程においてはばか成長していることを認めます。しかし、一方で消費者のこの苦難な実態を見たときに、欧米先進国と比べたときに、これが文明国といえるかというふうなあまりにも大きな格差があります。非常に貧困層スラム街で苦惨な日々を送っているという実態、都市と農村のアンバランス、また住宅の不足、一方においてはばかに別荘まで幾つもつくって、皆さま方自民党の大幹部の中にも、これが生きながらの極楽浄土というようなぜいたくざんまいをしておる方々もあります。(「そんなのはあまりないぞ」と呼ぶ者あり)ありますとも。この実態は、文明国の名に恥ずるのであります。同じ人間としてこの世に生まれて、人間らしい暮らしのできないたくさんの悲惨な人々を取り残して、一部に富栄をきわめておるということ、それがしかも不義にして富み、かっとうとき人間であるということにおいては、ますます私は許されないと思う。この点におきまして、経済企画庁の果たす今度の国民生活局設置役割りは、非常に大きいと思います。  そこでお尋ねしたいのです。国民生産の額から見て、社会保障的な立場人間としての基本的保障をする立場比率というもの、予算上に占める比率というものが、現行昭和四十年度の予算に例をとって申し上げましても、この中には幾つもの例があるわけでございますが、これではたして国民生活を一方、「生活環境整備社会保障充実などにつとめ、」とちゃんと国民生活局提案理由に書いてあるような形でけっこうかどうかをお尋ねしたいのでございます。社会保障関係費なるものが一般会計歳出予算の中に占める位置は、四十年度に例をとりましてその金額を見ると、一四・一%しかないのです。欧米諸国の三〇%をこえる商い比率に比べて、一般会計歳出予算に占める社会保障関係費が一四・一%などということは、人間尊重のせっかく今回提案理由に掲げてあるこの目標を果たすのにあまりにも幼稚な数字である、私はかように考えるのです。この目標に対して、それをどういうふうに是正され、今度の社会保障充実につとめ、福祉国家を建設するという提案理由の裏づけをするための御処置をどう計画されておるか、お答え願いたいのです。
  8. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 受田先生、先般発表いたしました国民生活白書をおそらくよくごらんになっておると存じます。しこうして、あの国民生活白書におきましては、先進諸国日本との各分野における消費生活についての比較をそれぞれいたしてまいっておるのでございますが、全般的に見てそれほど生活消費水準が低いというふうには見ていない次第でございます。と申しますのは、御承知のとおり、なるほど為替レートは一ドル三百六十円になっておりますけれども、これを消費者の消費する実質的な物資と換算してそれぞれ比較したものがございますが、そういうふうな観点から申しますと、これがたしかアメリカの四分の一程度ということに相なっており、フランス、西ドイツの大体半分程度というふうに接近いたしておるわけでございます。しこうして、たとえば食料関係等を例にとってみますと、エンゲル係数は、御承知のとおり三八%程度まで低下してまいりました。しかしながら、その摂取カロリーが、今日なお非常に低い、二千三百カロリー程度であるということは、外国の三千カロリーというもの比較しまして相当低いということは、これまた事実として認めざるを得ないのでございますが、受田先生も御承知のとおり、摂取カロリーはそれぞれ体位に応ずるものでございまして、日本人平均体位は、体重から申しましても、身長から申しましても、相当に低いわけでございます。したがって、最近子供の体位は非常に向上してまいりまして、青少年の摂取するカロリー相当ふえてまいっておると存じますけれども、現在の標準的な日本人摂取カロリーとしては、この程度上昇の割合、つまりここ数年間に千九百カロリーから二千三百カローくらいまで上昇してまいっておるのでございまして、この程度の徐々たる摂取カロリー上昇程度で十分とはいえないまでも、大体順当なところにいっておるのじゃなかろうか、かように考えておる次第でございます。  しこうして、社会保障関係の問題を申し上げてみますと、なるほど諸外国と比較しての比率においてはそういうふうに少ないことは、これは事実でございますが、しかし、消費者行政関係全体の予算として、三十九年度と四十年度とを比較してみますると、今年は約四割近く、三九・九%という増加になっておるのでございまして、政府といたしましては、国民生活内容の詳細な分析をいたしますと同時に、できるだけ早く理想的な福祉国家の体制に移っていくことができるようなという趣旨において、そういう点に非常な重点を置いて予算の編成をいたしております点も、ひとつぜひお認めくださって評価していただきたい、かように存ずる次第でございます。
  9. 受田新吉

    受田委員 国民生活実態は、単にエンゲル係数で解決するものではございません。エンゲル係数がだんだんと好転していることは、私も認めます。四〇%をくぐってきたというところまで上がってきている。しかし、一方でテレビあるいは電気洗濯機からルームクーラーに至るまで、高い程度文化生活のそういう家庭器具を用意しながら、一方では食生活その他に非常な節約をしているという片寄った生活をしている人も、相当出ているわけなんです。われわれは、やはりエンゲル係数が低くなってきておるからもうだいじょうぶだというようないき方でなくして、そういう近代的な家庭設備、一方における文化生活というものへばかに力を入れて、食生活その他のものが歩合を下げてきておるというこの事実もながめながら、片寄った家庭生活をどうして是正させるかという基本政策をお立てにならないといかぬと思うのです。ヨーロッパの先進国においても、ルームクーラーのない家庭もたくさんあるのです。日本の場合には、そういうものを無理やりに取り上げる。そして一方では食生活などを節約しておる。野菜が高くなった、生鮮食料品が高くなった、これに対応する対策などというものは、急に今度必要度を感じて、抜き差しならないことになってくる。月賦でものを買って、長期にわたって経済負担を感ずるというような形態もある。そういう消費者生活実態というものを十分御検討されておりますか。
  10. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 国民生活内容については、各階層にわたって相当に詳細に分析をいたしてまいりまして、その結果として、四十年度予算におきましても、たとえば生活本位上昇、その他ただいま申し上げましたように、消費者行政関係について四〇%に近いところの上昇を見たということは、そういう点にいかに政府が力を注いでおるかということの一つの例証であろうかと存じます。もちろんこれで十分であるというふうに私が申し上げておるわけではございませんが、日本経済成長に応じて、できるだけそういうふうなことが急速に改善されるような方向政治方向を持っていきたい。そのために、もちろん日本人国民生活の各要素について検討してみますと、非常なアンバランスがあることは事実でございます。特に最もおくれているものは住宅であり、また住宅に関連して、生活環境整備、つまり環境整備的な社会資本の立ちおくれというものが、非常に目立っております。したがって、今後の政治方向として、そういうふうな方向に大きく力を注いでいかなければならぬということをわれわれは痛感いたしておりまして、四十年度の予算においてもそういう点に力を注いでいるような次第でございますが、これはもう一挙に夜から昼になったようなかっこうに変えられるわけではございませんので、そういう点は、日本経済成長に応じて、できるだけすみやかにそういうふうな理想的な姿に持っていきたい。なおまた、一体日本人国民生活のあり方としてどういう姿が一番理想的であるかというような点につきましても、これは非常にむずかしい問題でございまして、ただいま実は国民生活向上対策審議会政府から諮問をいたしましてその答申を求めておるような状況でございますが、そういう点ともにらみ合わせながら、ただいま御指摘のような方向に十分力を注いでいくようにいたしたい、かように存じておる次第でございます。
  11. 受田新吉

    受田委員 消費者生活に一番基本的な影響を与えるのは、物価政策です。その商品及び役務関係の安定した価格というものが、維持されてないという点における不安感がある。そういうものの消費者に対する適正価格安定政策というものを同時にとっておかれないと、消費者生活というものは決して保障されません。その物価安定政策基本的な構想を、経済企画庁からお聞きいたします。
  12. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 御承知のように、今年の一月二十二日に政府は十項目にわたるところの物価安定政策を閣議決定いたしまして、それを各省庁におきまして実施に移していただいておるような次第でございます。しこうして、物価安定のやはり基本的な問題は、経済成長を安定的な基調にのぼすという点にある次第でございますので、経済全体の運営の基本方針といたしましても、先般発表いたしましたように、いかにして安定した成長基調に持っていくかということに、財政金融政策等を通じてその方向努力をしてまいっております。御承知のとおり、一昨年の暮れに経済引き締めをいたしたのでございますが、その後金融関係におきましては、最近ほとんどもとの状態に引き締めの緩和をいたしまして戻してまいりました。しかしながら、企業態度または金融機関態度相当に、むしろ行き過ぎくらいな程度に警戒的でありますことも原因いたしまして、今日非常に落ちついた環境のもとに、これから漸次安定的な基調のもとにおけるところの着実な成長が期待されるものと、私どもは考えておる次第でございます。  しこうして、物価全体について申し上げますならば、昭和三十九年度全体の数字はまだ確実には出ておりませんが、私どもが十二月に想定いたしました年度間四・八%という線は確保できたもの、こう見ておるわけでございます。しこうして、昭和三十八年度までは、ほぼ三カ年度問いずれも六%をこえ、七%に近いところの消費者物価上昇率を示してまいりましたので、その点相当安定的な方向に向かっておるということを申し上げてよろしいかと存じます。もちろんこの問題は、賃金との関係も非常に緊密に関連いたしておりまして、なかなかむずかしい問題てございますが、四十年度におきましては、これをさらに四・五%程度に安定させていくということで、あらゆる施策を通じてこれが実現を期して、漸次消費者物価につきましても安定させていって、そして国民生活に不安のないように、しかも実質的な国民生活内容充実ができ得るような方向に、施策も総合的に調整し、努力を傾注していきたい、かように考えている次第でございます。
  13. 受田新吉

    受田委員 さらに物価政策基本をなす問題は、やはり公共料金だと思うのです。その公共料金というものを一年間ストップ政策をとっておられたのですが、もうぎりぎりの段階にきた、これを何とかしなければならぬという情勢と政府はお考えになっておるのじゃないか。一年間ストップ善後措置をちょっとお聞きしたいのです。
  14. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 この問題につきましては、いままでしばしば各委員会でお答え申し上げておりますが、ちょうど一年の期限が昨年一年で切れました。しかしながら、御承知のとおり、公共料金ストップの対象となるところの企業は、やはり賃金上昇すればその他のいろいろな経費も上昇してきておる環境にございますので、これを強行ずるということは、企業自体を場合によっては破産に導くとか、非常な不健全な、または安全性を無視した経営をせざるを得ぬというところに追い込むおそれがございますので、こういう臨時的な措置はそう長く続けるべきものではないという判断のもとに、期限が切れるとともにオールストップという措置は解除いたした次第でございます。しかしながら、公共料金そのものを全般的に抑制していこうという考え方そのものは、従前と何ら変わっておりませんので、ケースバイケースに一々の企業または公共企業体等につきましても内容の審査をいたしまして、そして最小限度程度でひとつがまんしていただいて、そしてなるべくその企業が合理化され、能率化されていけるような方向政府もこれを助長していく。同時に、公共料金のこれを引き上げる場合におきましても、上げ幅については最小限度にとどめるということでいくようにいたしておるような次第でございます。
  15. 受田新吉

    受田委員 この公共料金政策は、他の一般物価にすぐさまはね返る問題なんです。私、欧米先進国物価上昇テンポというものがはなはだ緩慢であるという実態も知っておるのでございますが、わが国ばか物価上昇テンポが速い。そこで、いまお話の労働賃金ども、ベースアップ、定期昇給などを加えながら、この物価上昇とかけっこしておる。こういう実にわが国としては特異の実態を露呈しておるのでございますけれども、このあたりで、生産状況経済成長に見合うための経済政策としては、そういう経済規模の拡大ということは、もうこの辺で一応力点の置き方を変えて、その経済成長生産の拡大に伴うてその所得の公平な分配、適正な配分という方向へ政策を転換すべきではないか。諸外国においてもそういう方向、所得政策に転換をしつつあるという先進国実態を見たときに、ただ単に生産の増強面だけでなくして、所得の配分方式を重点に置く経済政策に切りかえる段階にきておるのじゃないかと思うのですがね。
  16. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 所得政策についてのお話がございましたが、私ども先進諸国の所得政策についての考え方は、ただいまお述べになりましたように、生産重点主義から配分重点主義に移った、こういうふうに見ておるわけではございません。むしろ経済成長を続けるためには、どうしても所得政策を必要とする、こういう観点に立って、たとえば英国は、労働党政府が昨年の秋にできまして、そして最初に取り上げた問題が所得政策の問題でございました。十二月の十六日でございますか、政府、労使間において共同声明が出され、その共同声明は、英国の経済成長を今後最高限度に保つためには、どうしても所得政策というものが必要である。言いかえれば、国民経済成長の範囲に賃金、利潤等の上昇率を押えなければならぬということについての共同声明が行なわれ、しこうして、最近において、これは新聞の報道ではございますけれども、ウィルソン内閣は、賃金上昇率を三ないし三・五%の程度にとどめることが妥当である、こういうふうに言っておられるようでございますが、これも英国の経済成長を最高度——英国の場合は、四%程度目標にしておられるようでございますが、英国としては四%ということは非常に高い成長率で、この高い成長率を目ざすために所得政策が必要である、かように判断しておられると私どもは見ておる次第でございます。しこうして、日本の場合について考えてみますと、日本の場合においては、なるほど労働過剰の経済から労働不足の経済に漸次移行してまいっていることは事実でございますが、しかしながら、これは若年労務者においてそういうふうな事態が深刻に出てまいってはおりますが、中高年齢層においては、まだ必ずしも自分の能力に応じて十分に働けておるという状況でないという事実も、またお認めいただけるかと存ずるのでございます。言いかえれば、なお日本経済は青年期にある、なお相当な潜在的な成長力を持っておる、かように考えておりますので、そういうふうな方向で、私ども昭和四十年度の経済見通しにおきましても、実質七・五%の成長率というものを見通したわけでございます。しこうして、賃金物価との悪循環、これを断ち切るということが、日本の今後の経済にとって、これはもう基本的に最も重要な問題でございます。しかしながら、これは各企業において労使の間でそれぞれ自主的におきめになる問題でございまして、政府がこれに関与すべき問題ではない、かように考えております。しかし、ただいま御指摘になりましたとおり、物価が上がったから賃金を上げざるを得ぬ、また、賃金が上がったからコストが上がって物価をまた上げざるを得ぬという悪循環の状態にあるという事実は、私どもも認めまして、そういう点は十分国民各階層の方に御理解をいただいて、そうしてこの悪循環を断ち切るような方向国民全部が協力して、そういうふうな方向にぜひやっていただきたいということを、私どもは念願いたしておることをお答え申し上げたいと思います。
  17. 受田新吉

    受田委員 私は、この間労働大臣にもこの片りんを指摘しておいたのでございますが、かつて西独の石炭危機に際して、労働者はストライキをもって大量首切りに対抗しよう、また経営者は人員整理をやって人件費等の節約によって危機を乗り切ろうとする、こういう段階で、そこに労使が相通じて、労使一体となって生産の増強へ転換しよう、経営の中に労働者も参加しよう、経営参加をやってその危機を乗り切っていくという態度に出た。そこで政府が、この石炭危機を救うためには、まずアメリカなどから輸入しておった石炭の輸入を防ぐこと、石油に対する高い関税によって石油と石炭の価格の調整をはかることなど、政府と労使一体となって石炭危機を乗り切ったという事例もあるわけなんです。わが国は、大体民族という一民族で占められておるのですけれども、私は、アメリカの国、これはいろいろの点で批判をされておりまするが、あの雑多な人種を持っている。しかし、いざ国内のいろいろな廃業危機というようなことになると、ばかなストライキもやっておりません。労使一体となって生産向上につとめるという、プロダクテイブポリシイの意気も非常に伸びておる。こういう状態を見たときに、あの雑多な国民、雑多な人種のアメリカが、いざというときにはこういうふうにして生産の増強につとめて経済危機を救うという熱情を持っているのに、日本のこの単一の民族の大和民族で、総評は春闘と称して毎年のごとく猛烈な闘争を展開して、ゼネストも辞せずという事態もときどき起こる。経営者は経営者で、いかに労働者を弾圧するかの政策を重点に考える。労働省や経営企画庁は手をまねいて傍観しておる。こういう姿を見たときに、やはりわれわれは、欧米先進国のこのすばらしい、労使一体となって人間的融和によって生産を高める、しかも政府自身がこれとタイアップしてりっぱな政策をとるというこの姿は、大いに学ぶべきことだと私は思うのです。大和民族という単一民族であるだけに、日本の労働事情などにもっともっと政府が高い観点で、しかも所得政策などにおいても、資金と物価関係をどうするかというような問題においても高い観点政府施策を用意されて、労働者にも理解をこい、経営者にも協力を求めて、そこで労使一体となって、斜陽産業などにも救済の手を差し伸べ、もし物価が一部に上昇するものがあったならば、今度OECDのほうにも一人ほどあなたのほうの職員を派遣されましたが、ああいうところによって、国際交流によって特定国の物価上昇を防止するとか、こういうようないろいろな貿易上の施策も加味して、高い観点で、単一民族日本のあらゆる国民生活消費水準というものを高め、その生活を潤していくという、こういうお手だてをされる必要はないか。経済企画庁という役所はあるけれども、机上の空論だけを弄する役所で一向実績があがらぬというものであるならば、これは総理府の外局として国務大臣を当てる役所としては、無用の長物であると思うのです。各省間の経済閣僚会議などにおいても、ひとつ長官みずからが商い指導性を持って、これが実効性を持つような施策を用意されて、そして一たび立てられた施策は途中でしばしば変更されるようなずさんな机上図案ではなくして、もっと実効を伴う高い観点で、国際情勢、国内情勢というものをすべてにらみ合わした、総知をすぐったりっぱなプランをお立てになって実行に移す、こういうふうにお願いしたいと思うのです。御所見を伺いたいです。
  18. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 ただいまアメリカの状態またはヨーロッパの状態、それに比較して日本が単一民族でありながら、かくのごとく労使の間に対立がはなはだしく、しかもその解決が非常に容易じゃないという事態についての御所見については、私は全く同感でございます。ただ、日本は自由主義、民主主義の国でございます。したがって、政府としてそれに介入していくということについては、非常に慎重な態度を必要とする。むしろ政府としては、国民各層に経済の仕組みがそういうものであるという事柄について、十分御理解をいただくという努力を一生懸命にすべきである、こういうふうに考えまして、私昨年就任当初から実は所得政策ということを申し上げ、それぞれそれは相当の期間を要する問題であろうかと思いますが、国民各層の御理解をできるだけ深めていただくような方向努力していきたい、そういう考え方をもって、ただいまもまたその努力をいたしておる次第でございます。しかしながら、これはもうそれぞれ経済発展の段階に応じて国民のお受け取りになるなり方もだんだんと変わってまいってくる、こういうふうに私どもは期待いたしておりますので、漸次ただいま御指摘になりましたような方向に何とか政府としても国民全体の考え方がおもむくような方向努力いたしていきたい、かように考えておる次第でございます。
  19. 受田新吉

    受田委員 私がいま指摘した問題の解決のかぎは、やはり政治の衝に当たる閣僚の皆さんが陣頭に立っていただかなければならぬ。特に所得政策の中で十分考慮されなければならぬ高額所得者に対する高率累進課税を思い切ってやるべきだ。西欧の先進諸国家などでは、貧富の差が縮まってきておる。だから、ばかな、ぜいたくざんまいをするような日本の特権階級のような者は、向こうにはおらぬですよ。しかも、庶民でさえもセカンダリー・ハウス、小さな別荘を用意するほどの、スウェーデンなどでいろいろの選挙スローガンを見てきました。そういうふうな庶民が小さな別荘を持つ。特定の者が別荘を持って豊かな生活をするのではなくて、やはり庶民の中にも生活保障——国民年金でも、日本円に換算して一万から二万くらいの比率になっているのです。だから、上下が非常に圧縮されて、住宅などでも、日本のようなスラム街の悲惨なところを、先進国の中で私は見たことがありません。日本は、その点においては、一方においてはばかげた住宅事情の困難さ、一方ではばかに広いところにのさばって、何億というような家をつくるような閣僚もいると漏れ承っておる。こういうところは、指導者の心得違いだ。これはやはり国際的に悪影響を及ぼします。このあたりでひとつ閣僚の皆さんが先頭に立って、みずから庶民に別荘を開放する。そして一方では苦労している庶民に、高度の文化生活がむずかしければ、限られた文化生活を与えるような豊かな社会保障制度実施するというような、貧富の差を縮める経済政策というものをどのようにお考えになっておられるか。私、この点を特に経済企画庁長官が勇断をふるって実施に移されんことを望んでおるのですが……。
  20. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 受田先生のおことばでございますが、日本においても、戦前と比較してはもちろんのこと、戦後においても貧富の差はだんだんと挾まってきておる、こういうふうに数字に出ておるわけでございまして、そういうふうにどんどんと貧富の差が拡大していっているというふうには見ておりません。しかしながら、御指摘のような事実が存在していることも、またこれは率直に認めざるを得ないのでございます。そういう観点から、政府といたしましては、たとえば生活保護費の上昇相当大幅に毎年続けてまいりまするとか、またはその谷間に、いわば日の当たらぬ階層に対するところの思いやりのある政策を漸次充実していくとか、または中小企業、農業等が立ちおくれでございますので、そういう方面に対する予算の配分の率を大きくして、そして生産性の格差の縮小につとめるとか、そういうふうなところに非常な努力を払っているという、その事柄自体も、ひとつぜひ御認識をお願いいたしたい、かように存ずる次第でございます。
  21. 受田新吉

    受田委員 私は、先進諸国家と日本の比較論から申し上げているのです。いま私が指摘したようなところを大臣も御旅行されて、日本の国のこの悲惨な大衆、日の当たらぬ人々があまりにも多いことを嘆いていられると思うのです。これはすなおに見ておられると思うのです。この点は大事な問題であって、一応大国ばりを言い、また文明国と誇っておる国としては、文明国の中に人間らしい生活ができない庶民が残っておるということ、戦争のあとの悲惨な状態なら許されると思うのですけれども、こうして経済成長を誇っておる段階において、一部の人が非常に富栄の暮らしをしておるという現状において、ひとつ思い切って高額所得累進徴収政策をおとりになる、最高八五%ぐらいを採択するような英断をふるって、一方で特定の人のわがままを押えて、庶民を豊かにするという、貧富の差を圧縮する政策は、相当英断をふるわぬとこれはなかなかできません。漸次漸次なんて言っておったのでは、これはなかなか間に合わないのです。私はこの点を、同じ日本に生まれて——あなたにはまた都市と農村のバランスの問題も、これは国民生活関係しますからお尋ねしますが、いま農地を投げ捨てて、わら屋のくずれたような家を残して、町へ町へと出ている農民がたくさんふえておる。あの農家の悲惨な実情、農村人口の急激な減少、こういう実態に対して本、経済企画庁としては何かの対策があると思います。所得の比率からいっても、製造業者と農村とでは、農村のほうが三分の一以下になっている。こういうような数字が出ているところを見ると、これはやっぱりこのあたりで、同じ日本国民として生まれてきている以上は、都市に住もうと農村に住もうと、どのような職業を選ぼうと、人間として、ここで書いておられるような高度の福祉生活ができるというこのスローガンに合うような手を打っていただかなければならぬと思うのです。特定の選ばれた職業の人が豊かで、自分の選んだ職業によっては、何ぼ働いても、かせぐに追いつく貧乏なしということがまっかなうそのような生活をしておるのです。これは許されないことであって、都市と農村のアンバランスというものをどう是正されようとするのか。低所得階層に対して大幅な生活向上政策をとるには、何か思い切った手をとらなければいけぬが、それはやはり所得政策からいえば、高額の所得のある者に思い切って負担をお願いして、そういう所得の少ない者にこれを配分するという思い切った政策が、私は要ると思うのです。そのあたりには、どういう御施策を持っておられるのでしょうか。
  22. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 御質問にお答えする前に、いままでの事柄についても一応申し上げておきたいと存じますが、何と申しましても、戦後日本国民全部が非常に悲惨な経済状況にあった次第でございます。したがって、日本国民が立ち上がるためには、どうしてもまず生産ということを考えざるを得なかったという事実も、またその必要性もお認めいただけるかと考えるのでございます。また、そういうふうな政策をとってきたればこそ、今日これだけ外国が驚嘆するような成長を示してまいった次第でございます。しこうしてまた、日本の国が人口のみ多くして資源の乏しい国であるということも、これも事実でございます。したがって、どうしても外国貿易、つまり輸出の増進によってのみ日本経済の発展が急速に行なわれる。そのためには、国際競争力をどうしても強めなければならぬ。そのために経済におけるところの国際競争力の強化という観点から相当強力な政治を進めてきたことも、また事実でございます。そのおかげとして昨年、いわゆるIMFの八条国移行ということもいたしましたが、またOECDに加盟もいたしましたが、いわゆる開放経済体制に入りましたが、入りました後におきましても、国民はそれほどそれについて不安を持たずに、なお隆々として、三十九年度においては前年との比較において二六%に近いところの輸出の伸びを見せているという状況に相なっておるのでございます。そういうふうな観点から、そこまでくれば、もう政策の方向といたしましても、佐藤総理が絶えず言っておられますように、いわゆる人間尊重政治、社会開発ということに重点を置いた政治にある程度方向を変えていくという必要があろうというところから、こういうふうに経済企画庁におきましても国民生活局を設け、そして四十年度の予算においても、先ほど来お答え申し上げておりますように、御指摘のような方向相当力点を置いたところの予算の編成を行なってまいっておるような次第でございます。これはしかし、先ほどもお答え申し上げましたが、やはり経済成長成長として安定的な成長はぜひ確保して、そして資源を求めながら、つまり分配されるところのもとになるパイはできるだけ大きくしながら、その分配を公平にやっていくという方向に、双方の目的を調和のある方向でぜひ進めていきたいというのが、政府の考え方でございます。
  23. 受田新吉

    受田委員 時間が幾らでもかかるから、私もうこのあたりでよしますが、このことば、いま長官も指摘されたのですが、総理みずからが人間尊重、それから社会開発——社会開発と経済開発はどう違うのですか。それから調和と均衡とはどう違うのですか。これはあなたは閣僚として、総理からどういうふうに指示されていますか。
  24. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 総理がいつもお答えを申し上げておりますとおり、社会開発の内容については必ずしも一定した定義ができておるわけではございませんが、国際的に考えてみますならば、つまり経済の開発というのに対応した一つのことばとして社会開発ということが考えられる。そういう場合において、その内容として何が考えられるかと申しますと——まあ理念として申し上げますならば、経済開発は、もともと経済の合理性を追求するという点に重点があろうかと存じますが、それに対して社会開発は、人間の欲求の充足という面からとらえた、ここに重点を置いたところの計画である、こういうふうに申し上げていいかと存じます。それでその内容として考えておりますことは、まず第一に住宅整備、それから第二点が生活環境施設の充実、それから第三点は、最近非常に問題になっておりますところの災害並びに産業公害の防除、それから第四点が社会保障充実、第五点が労働条件の向上と雇用の改善、さらに国民の人的能力の向上と申しますか、国民の資質、能力の向上というような問題、並びに消費者保護、こういうふうに分けて考えておるわけでございます。なお、これはあるいは経済開発と重複する部面になるかとも存じますが、農業とか中小企業等立ちおくれた部面、つまり低生産性部門の近代化、合理化をはかるということも、これは経済政策ではございますが、やはり社会開発的な観点からもこれを強力に推進する必要があろう、こういうふうに考えておる次第でございます。
  25. 受田新吉

    受田委員 この社会開発の中には、私は広い意味経済開発が入ると思うのです。ところが、それをわざわざ取り上げられている。どうせ今度総理がここに御出席になるからそのときに聞こうと思うのですが、思いつきで新用語をどんどん製造されるだけでは意味をなさないわけなんです。私は、経済開発と人間尊重とかいうことであれば筋が通ると思うのですけれども、新語をいかにも何か新しい事態に即応する政策があるように印象づけておるのですけれども、これはわざわざこの提案理由にお書きなったのだから——去年の国民生活局提案のときには、このことばはなかったでしょう、だから、今度それが新しく入ったわけなんですね。それから調和的というのも去年はなかった。今度新しくこれが出たわけなんです。調和的と均衡的というのは、二つ並べてあるけれども、どう違うのですか。
  26. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 社会開発ということばの意味については、ただいま御説明申し上げましたが、昨年の提案理由にはこれはなかった。今年は入った。内容的にはそれほど大きな変化があったわけではございませんが、しかしながら、たとえば社会の、つまりひずみの是正ということばをいままでよく使ってまいったのでございますが、それをさらに前向きに発展的に表現するのには、社会開発ということばのほうがより適切であろう、こういうふうな観点のもとに社会開発ということばを取り上げた次第でございます。それで調和という問題は、経済成長に見合った、また経済成長に調和したところの社会開発をしていきたいというのが調和という意味であり、均衡のとれたという意味は、たとえば国民生活相互間において、現在日本国民生活内容を見てみますと、住宅が非常に立ちおくれでございますが、そういうふうに均衡のとれてない部面が相当ございますから、そういうふうな面について均衡のとれた政治をやっていきたい。こういう趣旨で調和といい、均衡といい、その文字を使っておる次第でござ、います。
  27. 受田新吉

    受田委員 均衡がとれれば自然に調和します。お互いアンバランスだから講和がとれない。だから、そこに人間生活も、みんなが人間らしい暮らしをして一応お互いが納得する形でバランスがとれれば、自然に調和が生まれるのです。だから、同じようなことばが二つ出てきているのですが、この点においては、何だか昨年の提案理由とことしの提案理由に——新内閣の性格を盛ったと言えばそれまででございますが、こうして新用語がどんどん思いつきで飛び出してくるということになると、やはりそれはそれなりに新しい意義がなければいけないと思うのです。この点において、私は特に長官にお願いしたい。私が先ほど来指摘するとおり、つまり国際経済社会の一員として国際間の関係も十分考慮していかなければ、日本だけではこれは解決しません。だから、ある特定の物価が上がっていくという場合には、それを抑えるために外国の安いものを買い込むというような政策も、そこに織り込まなければいけないわけなんです。そういう場合に、いまの開放経済下における貿易の自由化というものも生まれてきた。ところが、どうしても日本経済の上に打撃が大き過ぎるというので、一部のものはまだ自由化になっていないものがある。それは指摘するまでもなく農産物なんかにあるのですが、こういう問題は今後どう処理していくのか。農村のこの悲惨な状況を救うためには、農産物の価格安定という問題もあるし、農業に対する特別の補助金を出すとか、いろいろありますけれども、一般国民物価上昇を防止するという意味からいえば、安いものを買い込むという手もいいわけです。それらを調和的に、均衡的に、どう考えておられるか、ひとつ自由化に残された問題の今後の見通しをお聞きしたい。
  28. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 先ほど来御指摘のとおり、農業におけるところの比較生産性というものが、他の産業に対して非常に低い。農業基本法というものをつくりまして、その生産性の向上をはかろうということで非常な努力をし、また所得の均衡をはかっていきたいという目的のために努力をしてまいっておりますが、必ずしもその成果は十分にあがってないことは事実でございます。そうして今後自由化を進める上におきまして一番問題になるのは、やはりお話しのとおり、農業に関する問題であろうかと存じます。日本は、もうすでに自由化の率においては九三%にまいっております。したがって、その点において、なお諸外国から自由化を迫られるものは相当あろうかとは存じますが、そう必ずしも外国の言うとおりになる必要はなかろう。したがって、農産物については、これは特に慎重な態度をとって、私ども対処すべきものである、かように考えておる次第でございます。御承知のとおり、六カ国でもってEECという組織ができ上がりましたのは、一九五八年でございます。そのEECの内部において、やはり農産物についての問題が一番困難な問題でございまして、これがなかなか進んでおらないという事実も、よく御承知であろうかと存じます。最近漸次これが進んでまいっておることも、よく私ども調査をいたしておりまするが、そういうふうな観点から考えましても、特に比較生産性の低いところの日本の農業については、今後この問題については外国から要請がありました場合におきましても、日本の農業の実態というものをよく認識していただきまして、そして慎重の上にも慎重な態度をもって対処して、農民のこの困難な状態にさらに輪をかけるようなことは絶対に避けていきたい、かように考えておる次第でございます。
  29. 受田新吉

    受田委員 それはそのぐらいでひとつおきますが、経済企画庁は少し思い切った実態に即した案をお立てになって、高い観点から実績をあげていくような政策をおとりになることを願いたい。少し経済企画庁は存在がぼけてくる危険があるから、これはさすがに高橋長官のときにそれが実を結んだというようなかっこうにしてもらいたいと思うのです。  そこで、ひとつ長官にお聞きしたいのですが、あなたは国防会議の議員の一人でもいらっしゃるのですね。御存じのとおり、国防会議構成員の一人でいらっしゃる重要閣僚です。国防会議の懇談会はいままでしばしば開催されておりまするが、経済企画庁長官として、防衛生産に関し、あるいは防衛費に関して、いかなる意見を述べられたことがあるか。経済企画庁立場から、国の防衛に関する御所見を伺ってみたいのです。
  30. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 経済企画庁の仕事の重要性について非常に御理解のあるところの御意見をいただきまして、まことに恐縮に存じております。国防会議の私がメンバーであることも、御指摘のとおりでございます。しこうして、御承知のとおり、先般中期経済計画を閣議で決定をいたしておりますが、その中で政府の財貨サービスというものの年々の全額を、四十三年度までの計画を持っておりますが、この中には国防費を織り込んで計算をいたしておるわけでございまして、これは言うまでもなく日本国民経済成長、つまり日本の国力に応じて防衛費についても漸次充実をはかっていくという基本的な態度をとっておる次第でございます。
  31. 受田新吉

    受田委員 防衛庁長官よりもさらに上席の順序になっていられる経済企画庁長官が議員の地位にあるのが、国防会議の構成に関する法律なんです。そういう意味で特に防衛費について御見解をお持ちだと思いますから、ついこの間、四月六日でございまするが、アメリカのマクナマラ国防長官がこういう言明をしておるのです。これはあちらの雑誌に出ておったわけでございますが、記者の質問に答えて、日本の防衛予算は、日本国民生産を考えると、現在あまりに少額過ぎる。このため、米国としては日本がもっと防衛責任を分担するよう要請しておる。そうして具体的にそれを指摘しておるわけです。いま昭和四十年の一般会計歳出予算の中に占めるところの防衛関係費なるものを、一般会計歳出予算で見た比率は八・二%、これは適当であると思っておられるのか。いまマクナマラ国防長官が、日本に、国民生産の高からいったらあまりに防衛費が低過ぎる。自主防衛を提唱しているわが国としても、アメリカとしても、日本にもっと軍事費を、防衛費を高めていくように、いま盛んに注文をつけておる、こう書いてあるのですが、これは当然無償援助の打ち切りその他の問題、それから兵器の問題でも、中古品になったようなものを漸次切りかえていかなければならない、新兵器の製造、いろいろな問題をかかえてきておると思うのですが、経済企画の中にこの無償援助の打ち切りに対する対策、それから新兵器の製造、国産化、こういう問題を含めて、すでに来年をもって第二次防衛計画が終わって、さらに第三次長期防衛計画に入る、そういう際に、経済企画庁長官として、国防会議構成員の一人として、防衛費の成長といいますか、伸びということについて、いま私が指摘したようなことをどう考えておられるか。アメリカはいなおうなしに、国防長官のついこの間の言明を採用してみても、容易ならぬわが国への要求が出てくると思うのですが、このあたりで要求を打ち消すか、自主防衛といっても、経済成長の中で防衛の経費はわずかで押えておかなければならぬという考えがあるのかどうか、これらもひとつ……。これで質問を終わります。
  32. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 四月六日に国防会議の懇談会がございましたことは御指摘のとおりでございますが、その際、そういうふうな話は全然出ていなかったのでございます。それからいまマクナマラ長官の意見の御紹介がございましたが、この問題については、所管大臣であるところの、責任大臣であるところの防衛庁長官から、何らの御報告も、また御意見の提示も受けておりません。したがって、経済企画庁といたしましては、先ほども申しましたとおり、政府の財貨サービスというものの分量、この金額というものを国民経済成長に見合った程度にずっと年々伸ばしていく、その範囲でこれを当分はまかなっていく。それで、新しいそういうふうな御提案があった場合にあらためてそれを検討する、こういうことにいたしたい、かように考えております。
  33. 受田新吉

    受田委員 これで質問を終わりますが、長官、やはりこれは簡単な問題ではない。防衛庁長官から御相談があるものとかなんとかいう問題ではなくして、経済企画をする上において、防衛費のあり方をどうするか、防衛生産費をどう考えていくかということは、基本問題として当然企画庁が積極的にこれに取り組まなければならぬと思うのです。与えられたワクを経済企画の範囲内にどう押えるかという問題でなくして、全体の問題として、日本経済発展の過程においては防衛費はこの程度に押えなければならぬということを、むしろあなたのほうから中心になってこの防衛費のことを検討していただかなければいけぬと思うのです。向こうから要請されて、ひもつきの、まるのみの防衛費ということは、これは経済企画の総合的な立場で見たら許されないことなんですね。そうじゃないですか。防衛費はまるのみにするわけですか。前長官はまるのみでないとおっしゃっている。
  34. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 やはり日本の防衛計画については、責任大臣であるところの防衛庁長官が、今後の日本の防衛計画はこういうふうにするのだという計画をお立てになって、そのためにどういうことが必要であるかというお話しがあって、しかる後に私どもは、それを日本国民経済全体の立場からどう措置すべきかということを判断いたしたい、かように考えておる次第でございまして、まだ具体的なそういうふうなお話がございませんので、先ほど申しましたとおり、中期経済計画の示しておりますとおり、日本政府の財貨サービスの総量のうちからこの防衛計画充実につとめていきたい、こういうふうにただいまのところは考えておる次第でございます。
  35. 受田新吉

    受田委員 不満足だけれども、この辺でおきましょう。
  36. 河本敏夫

    河本委員長 藤尾正行君。
  37. 藤尾正行

    ○藤尾委員 ただいま受田委員からいろいろと御質問がございましたので、私は重複をできるだけ避けまして、ごく簡単に、地域開発を中心にして長官に御質問をしたいと存じます。  経済企画庁設置法の一部改正法律案提案理由の説明の中で、あなたは、国民生活の質的な面が非常におろそかにされておる。この向上を阻害するような諸事情をできるだけ積極的に取り除かなければならない。そのために、いろいろと所得の向上とその格差是正をはからなければならない。物価の安定、生活環境整備をやらなければならぬ。社会保障充実をやらなければならぬというようなこともいろいろあげておられまして、結局、高度の福祉社会実現することが目的だ、こういうふうに言っておられるのであります。  そこでお尋ねをしたいのでございまするけれども、この国民生活の質的な面を補うためにいろいろと措置をしておられるわけですが、その中で、生活環境整備について、どのような具体的な案をお持ちになっておられてこのような御提案になられたのか、その点を御説明いただきたいと思います。
  38. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 御承知のとおり、国民生活白書にも書いておりますが、国民生活内容をずっと検討してまいりますると、今日一番立ちおくれになっておるのは住宅であろうと思うのでございます。それにつけ加えて、やはり生活環境と申しますか、上下水道その他、つまり国民生活に必要な公共施設が非常におくれておるということも、これまた事実でございます。したがって、そういうふうな面に重点を置いて、政府基本的な経済政策の運営方針を打ち出していきたい。もちろんこれは具体的には各所管省において実施なさることでございますが、大きな方向をそういうような方向として打ち出していきたい、こういうふうに申し上げておる次第でございます。
  39. 藤尾正行

    ○藤尾委員 ただいま御説明があったわけでありますけれども、この問題については、一方において非常に大都市が膨張し過ぎておる、過密都市の問題がある。と同時に、他方において、あなたもおっしゃっておられるような環境整備が非常におくれておるという地域があります。この両方面に対して両方の措置をしなければならぬ、私はこう思うのですが、その点はいかがですか。
  40. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 東京都内または川崎とか、この隣接の区域については、工場とか学校とかの設置を制限いたしておることは、御承知のとおりでございます。しかしながら、この程度措置ではなかなか過密都市の問題は解決ができにくい、かように存じております。先般実は私どものほうで検討いたしまして、過密都市の問題を正式に取り上げて、過密都市関係の閣僚懇談会をつくってそこでもって本格的に検討いたそうということで、河野国務大臣を中心にしてその懇談会ができましたことは、御承知のとおりであると存じます。しかしながら、この問題は、こういうふうな東京とか大阪等の過密都市の産業、人口、文化の集中を抑制するということだけでは、成功できる問題ではございません。どうしても一方において、後進地域の開発と申しますか、後進地域に工場の誘致をはかるとか、またはそこにおけるところの文化の水準を高めるとか、または地域住民の利益の上昇をはかるとか、そういうふうな政策と並行して、初めてこの政策が成功する次第でございます。そういうふうな観点から、政府といたしましては、さきには低開発地域工業開発促進法を制定し、その後新産都市、工特等の諸般の立法を進めてまいり、また近くは近畿圏整備法等も議員立法において成立いたしましたような次第でございます。首都圏整備に関しましても、やはり近畿圏整備法のような考え方に基づいて、新しい観点から検討を進めているような次第でございます。
  41. 藤尾正行

    ○藤尾委員 いま過密都市対策の問題が出ましたが、私は、この過密都市対策の問題、公害の問題もございまするけれども、まず、何といいましても人間の飲み水——水という問題は無視できません。東京に例をとりましても、現在東京都の小河内の水系の貯水量というものは、わずかに三千万トンしか水が入っておらぬ。しかも、これは荒川あるいは利根川というものに対して膨大な公共投資をした結果でも、なおかつ、そういう状態にある。一方において、長崎というようなところでは、ほんとうに一日に三時間しか水が出ないというような問題もあるというように聞いております。こういった問題が全国的に発生をしておるという時期に、さっきあなたも言われましたけれども、社会開発という面で、これは単なる経済開発じゃないのであって、もっと他の面からもこれを補う一つの開発手段というものを政府として取り上げていかなければならぬだろう、こういうふうにとられるわけですが、そうなりますと、この水の問題というような問題を単に首都圏の問題としてのみこれを片づけてしまうということは、私は非常に問題があると思う。これは全国的な規模においてこの水を通観して考えられるような行政というものが必要であろうと思いまするし、また、そういった基本的な研究というものに基づいてあらゆる地域開発関係措置というものがとられなければならぬ、かように思いまするが、あなたのお考えはいかがでございますか。
  42. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 御承知のとおり、水資源開発促進法が制定されておりまして、私の経済企画庁に水資源局が設置されました。そして利根川をはじめ淀川、筑後川等がその指定河川となりまして、それぞれの河川についての総合的な開発計画を確立し、それを水資源開発公団をして実施せしめておるというのが実情でございます。もちろん、この三河川のみで足りる問題じゃございませんので、ただいま調査費用を五千万円計上いたしまして、全国の主要な河川についてそういうふうな計画を進めてまいっておるような次第でございます。  少し余談になりまするけれども、昨年末フランスの経済企画庁から発表になりました一九八五年の展望という中に、二十年後の問題でございますが、おそらくはもう二十年後には空気や水は希少資源になるであろうということを書いておりますが、私どもも、そういうふうな希少資源になるというような状態まではなるまいかと思いますけれども、これはもう非常に重大な問題だとして、今後の政治重点項目の一つとして取り上げて本格的に取っ組んでいかなければならぬ問題である、かように考えておる次第でございます。
  43. 八田貞義

    八田委員 関連。いま水道問題が出ておりますので長官にお伺いしたいのですが、上水道にしましても、簡易水道にしましても、公営企業として——簡易水道は準公営企業として、独立採算制のたてまえになっております。ところが、水道料金につきましては、各都市、各村によって非常に違っておる。今度の東京都の水道料金の値上げ問題について非常な騒ぎが起こっておりますが、あれは標準世帯十立方メートルから十五立方メートル百四十円なんですね。ところが、千葉県のたとえば銚子市とか成田市なんかは、二百円から二百五十円なんです。大阪なんかは、やはり標準世帯をとってみますと、たった百円なんですね。ところが、大阪付近の吹田市であるとか茨木市では、二百円から二百五十円なんです。今度経済企画庁国民生活局をおつくりになるのですが、そういった比較の点が十分つかめておらぬのです。特に簡易水道なんかは、四分の一の補助をもらって、起債充当率は七五%です。あと受益者負担というものがあって、三万円から五万円ぐらい払う。そうして払う水道料金が四百円です。所得の少ない地方の村民が高い水を飲んで、東京都のような、わりに所得の商い都民が安い水を飲んでいいということはないわけです。こういった点について、今後水道料金というものは非常に大切だと思うのですが、大臣として経済政策の面からどのようなお考えをお持ちになるか、ちょっと御見解をお伺いいたしたいと思います。
  44. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 水道に関しましては、先ほど藤尾委員の御質問にもお答えいたしましたが、日本が上下水道ともに普及度が非常に低くて、立ちおくれになっているという事態は、数字にあらわれているところでございます。しかしながら、一方から考えますと、日本はいままで非常に水に恵まれて、良質の水を飲料水として自由に得られたから水道の発達がおくれたという事実も、またあったろうかと考えるのでございます。そうして水道の恩恵に浴する人口の割合が、非常に少なかったというふうな沿革もございます。したがって、水道の恩恵に浴するという場合に、これを一々国でやっていくということになりますと、全国民的な感覚から申しますと、必ずしも公平じゃないというところから、各都市の施設におまかせをし、そうして各都市はそれぞれ独立採算制のもとに料金をおきめになってまいった、そういうところから、立地条件の非常にいいところは安い料金で済むし、立地条件の悪いところは非常に高い料金を払わざるを得ないということに相なってまいっておるのでございます。しこうして、簡易水道等につきましては、どうしても給水家屋がばらばらに散らばっておる。したがって、給水管その他の経費もたくさんかかる。または取水その他についても規模が小さいために割り高になるというふうな状況もございますために、しかも水質の非常に悪い農村等の地域が各地に存在するという事実を認めまして、政府としては四分の一の補助をし、地方公共団体が大体二分の一の補助をしていただきまして、そうして簡易水道の普及をはかってまいっております。それにもかかわらず、ただいま御指摘のように、非常に高い料金を払わざるを得ないという地域が、間々存在しているところでございます。そこで、この問題は、そういうふうな長い沿革を持ってき、しかもなお、全国民的な比率から見ますると、まだ十分に普及していないという状況でございますために、この間に国民全般同じ料金で良質の水を得られるという状況に持っていくということは、非常に困難な問題であろうかと存じます。しかし、ただいま御指摘の点は非常に重要な点でございますので、将来の問題としてぜひ私ども検討を続けていきたいと存じます。  ただ、東京都の問題について申し上げますならば、東京都は、一挙に六四%という非常に高い値上げ案をお出しになったわけでございます。私どもといたしましては、これはもとが安いからとかなんとかいうことじゃなしに、国民生活全般を考えまして、またこういうことが値上げムードになって、そのために物価全体の水準を上げていくということになることを非常におそれておりますために、私どもは、公共団体に対しましても、能率を向上して、合理化も進めていただきまして、何とかして最小限度にその値上げの幅をさしあたりはとどめていただきたい、こういうことをお願い申し上げている次第でございます。
  45. 八田貞義

    八田委員 長官、東京都の水は、今度全般としては六四%でございますが、一般家庭水道の場合は、百四十円を二百円にしろという案なのです。こういう点は、実際新聞を見ましても、よくわかっておらぬのですね。ただ値上げムードということをおっしゃいましたけれども、根源をはっきりと、真実を訴えるという行政があっていいはずなんですよ。マスコミで流したムードをそのまま政府のほうで黙っているということは、おかしいと思う。ムードはどこから来るのだ、真実は一体何だということは、やはり行政当局から十分出されてしかるべしだと思うのです。  それからもう一つ、水質基準の規定の問題があります。今日水系問題で水質基準の調査をやっておられるようですが、ほとんど進んでおらぬのですね。一体こんなふうなやり方で上水道とかいうものを促進さしていく意欲がおありになるのかどうかと思うのですが、これは法律の問題になります。やり方の問題になります。私は関連質問ですからこれ以上は質問しませんが、長官、これは頭に入れておかれまして、水質基準のきめ方、やり方、一体どっちを先にするかという問題がありますから、これは十分に関係部門と相談をされて、水質の調査について促進させるというようなことをひとつお考え願いたいと思うのであります。
  46. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 水質保全法が制定されましてから、もうすでに三年になるのでございます。御指摘のとおり、ただいままで水質基準を決定いたしましたのは、九河川にとどまっております。その当時、予定基本計画として計画を立てましたのは百二十一河川になっておるのでございますが、しこうして今日大体四十五河川については調査をどんどん進めておりまして、ただいま水質審議会に付議いたしておりますのが、たしか八件かあり、まもなくその調査を審議会にかける準備のできておりますのが、たしか七件ぐらいかと——数字が一件ぐらい違っておりましたら、御訂正願いますが、その程度になっておるかと思います。要するに、四十五河川については調査を相当進めて、非常に急いで水質基準を決定していきたい。と申しますのは、やはり工場その他のいろいろのものができてしまったあとに水質基準をきめますと、そのために新しい施設をしたり、またはその産業自体が非常な負担を受けるというような問題を生じますので、できるだけ早く水質基準をきめておくということが、国全体の立場からどうしても必要だという考え方から、この調査を急ぎ、また水質基準をきめることを急いでおる次第でございます。  ただ、この際申し上げておきたいと存じますことは、隅田川の例等にもございますとおり、水質審議会等において専門的に御審議を願っておるのでございますが、それぞれ意見が非常に鋭く対立しているような場合が多くございまして、そのためにその間の調整に非常な時間をとっておるというふうな事態もございまして、そのためにおくれておる面もございますが、御指摘のような趣旨から、できるだけ早くこれが決定をいたすように努力する所存でございます。
  47. 藤尾正行

    ○藤尾委員 ただいま八田委員からの関連質問で、私の申し上げることも幾つかカバーされましたので省きますけれども、現在までは、少なくとも埼玉県のほうが東京都に水を供給しておった。その埼玉県の洗たく屋がわざわざ洗たく物を持って、東京都で洗たくをして持って帰ったというような実例があるわけです。結局そういうところが過密都市というものを呼ぶわけで、こういった全般的な関連というものを、これは慎重にかつ徹底的にお考えをいただいて、御施策をいただくようにお願をいたします。  次に、時間がありませんからごく簡単にお聞きをいたしますけれども、いま経済企画庁では、地域開発関係の法令としていろいろなものをお出しになっておられると思います。たとえば、新産業都市建設促進法とか、あるいは工業整備特別地域整備促進法しか、あるいは低開発地域工業開発促進法とか、あるいは首都周整備法とか、あるいは首都圏市街地開発区域整備法とか、あるいは近畿圏整備法とか、近畿圏の近郊整備区域及び都市開発区域の整備及び開発に関する法律だとか、あるいは東北開発促進法だとか、あるいは北陸、中国、四国、九州の各開発促進法であるとか、あるいは産炭地域振興臨時措置法であるとか、あるいは豪雪地帯対策特別措置法であるとか、いろいろなものをお出しになっておられます。このお出しになっておられるそれぞれの目的あるいは地域指定の要件といいまするものが、ほとんど同じような例文でみんなつづられておるわけですね。これは一体どういう基準で御選定になっておられるのかをひとつお伺いしたいと思います。
  48. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 この前新産業都市建設促進法並びに工業整備特別地域整備促進法、この二つの法律が制定されます際に、当該委員会において、参衆両院ともに附帯決議がつきまして、これらの地域開発法をすみやかに整理統合すべきであるという趣旨の附帯決議がついておるわけでございます。したがって、政府といたしましても、何とかしてこれらの非常にたくさんの地域立法というものを整理統合して、そしてまとめていきたいという方向努力はいたしておるのでございますが、これらの法律のほとんど全部が実は——新産業都市建設促進法等二、三は政府提案でございますが、これも藤尾さんよく御存じだと思いますが、実質は議員立法でございます。議員立法を政府提案の形で出してくれということで出したような性格のものでございまして、いずれも議員立法でございまして、それぞれの法律にそれぞれ緊密な関係をお持ちになった生みの親がおられるわけでございまして、これを整理統合するということは、非常に困難な問題でございます。しかし、政府といたしましては、附帯決議の御趣旨もございますので、その方向努力をいたしたいと存じますので、ぜひその法律自体が議員立法であったという事実もよく御認識いただきまして、お力添えのほどをお願い申し上げる次第でございます。
  49. 藤尾正行

    ○藤尾委員 別にお力添えばかり願われても非常に困った問題になるわけですけれども、私は、その中で政府が最も力を入れておられるのが、やはり新産業都市の建設促進法と、それから工業整備地域でございますか、あるいは低開発地域の開発促進法というようなものだと大体思うのです。と申しますのは、もしこれを除きましたならば、あとは、地域立法はこれはおそらく日本全国全部を網羅しておる。これを日本全国並みにべたに全部促進するといいましても、いまの日本の国力をもってしてはとうていそういうことは不可能だ。とすれば、当然そこに力点の置き万というものがあるわけです。私が思っておりまするような程度なのかどうかという点を、ひとつ御指示をいただきたい。
  50. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 これらの法律基本的な法律になるものは、やはり国土総合開発法でございます。しこうして各地域立法または特殊立法につきましては、すべて国土総合開発法の趣旨とたがわないようにという趣旨の条項が必ず入っておるわけでございます。したがって、国土総合開発法の趣旨にのっとって、そして全国を調和ある発展をさせていきたい。先ほど御指摘のございましたように、過密都市の問題もその一つであり、また新産業都市、工特法等の法律もまたその趣旨から出ておるのでございますが、その中で一体どこに重点を置くかという問題になりますと、それぞれ非常にデリケートな問題でございますが、予算の配分その他の面から大体バランスをとりながら、重点を置く場所を考えながら、運営してやっているつもりでございます。もちろん新産都市の建設、工特法の実施、これが非常にその中心的な重要性を持っておるということは、お話しのとおりであると存じておる次第でございます。
  51. 藤尾正行

    ○藤尾委員 もう時間がございませんので、簡単に焦点に入りますけれども、ここに低開発地域工業開発促進法というものがあります。これについて、これの指定という問題を経済企画庁でおやりになっておる。一体どういう選択基準をもってこれの指定をおやりになっておられるか、ひとつ長官からお示しいただきたい。
  52. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 基準は非常にこまかくなっておりますので、政府委員から御答弁申し上げます。
  53. 鹿野義夫

    ○鹿野政府委員 指定の要件は、政令で定める要件を備えておるものを指定をいたすことにしておりまして、その政令で、内容的には、一つは、工業用地及び工業用水及び労働力の確保が容易であり、かつ運輸施設の整備が容易であること、もう一つは、当該地域に市の区域が含まれる場合には、当該市が次のような要件を備えておることということで、一つは、財政力指数というものが一つの基準以上のものであってはいけないということ、それから二次産業のウエートがある程度の基準以下であること、一次産業がある程度の基準以上であること、といったような基準を政令で定めておりますので、それに従って指定をいたすということになっております。
  54. 藤尾正行

    ○藤尾委員 こまかい問題ですから、政府委員がそういうお答えをされるのはそれでいいですけれども、私は、ここで一つ疑問があるのでお聞きをしたい。たとえば、私どもが現在首都圏の中に入っておる地域を代表した国会議員なんです。その首都圏内に一体低開発地区というものがあるかないかという問題を、どういうふうにお考えになっておるのですか。
  55. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 首都圏内においても、もちろん低開発地域として指定された地域がございます。
  56. 藤尾正行

    ○藤尾委員 私はある経済企画庁のお役人さんから漏れ承ったところによりますと、首都圏内には低開発地域というものは今後認めないのだ、低開発地域というものは、むしろ東北とかあるいは北陸とか北海道とかいうようなところを主として指定をしていくのであって、首都圏内にそういうものを認めるわけにいかないというようなお話を承ったことがございまするけれども、それは事実ですか、事実でないですか。
  57. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 藤尾さん御承知のとおり、近畿圏整備につきましても、あそこに近郊整備区域とか、または都市開発区域とかいう制度を設けまして、そしてそれぞれそれにふさわしいところの政府施策を進めてまいっておるのは事実でございます。しこうして、首都圏整備委員会とせられましては、あの近畿圏についてのやり方を首都圏についてもこれを適用していきたいという御趣旨のようでございます。そういたしますと、都市開発区域と低開発地域とが重複するというようなことになると、これは理論的に非常におかしいことに相なりますので、これはその法案の経過を見た上で、しばらく留保しておきたいという趣旨でございます。決してこれをやらないという趣旨ではございませんが、都市開発区域にどこが指定されるのか、または近郊整備地帯としてどこが指定されるのか、またそれに対してどんな施策が行なわれるのか、そういうことを見きわめた上で決定するために、一応留保しておきたい、こういう趣旨でございます。
  58. 藤尾正行

    ○藤尾委員 いまこれは留保するのだという、非常に便利なことばだと私は思いまするけれども、留保されたところでは私は非常に迷惑すると思う。たとえば低開発地域工業開発促進法によれば、少なくとも機械、装置、工場用建物についての減価償却の特例とか、あるいは地方税の課税の免除、あるいは不均一課税に伴う措置とか、財政上の措置とか、地方債に対する配慮とか、資金確保に対する配慮とかいうような特典が、非常に行なわれることになっておるという場合に、ある地域についてはこれは指定をしていくのだ、ある地域についてはそれは留保するのだというようなことになっていきますると、その留保された地域の住民といたしましては、これは非常に迷惑千万だ。そういうやり方はないと私は思う。その点についての御反省があるかないかということをお伺いしたい。
  59. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 先ほど申しましたとおり、近畿圏整備法に準じたような改正法律案が、すでに政府から参議院に先議として提案されておるのでございます。私ども政府といたしましては、これが今国会において成立するもの、かように予定をし、期待をいたして、ぜひ成立させていただきたい、かように考えておるわけでございます。成立しました後におきましては、従来のような機械的な、つまり百キロ以内というような考え方ではなしに、関東域地どの程度の範囲になるか、これは政令の問題でございますが、もう少し広い範囲を首都圏として考え、そしてその間に都市開発区域というものを相当に指定していくということが、ぜひとも必要じゃなかろうか、かように考えておるわけでございます。そういうふうな観点からいたしまして、今国会でこの法律案が成立いたしますならば、これはそうたいした期間じゃございませんので、それまでの期間しばらく様子を見たい、こういう趣旨で留保をいたしておる次第でございます。
  60. 藤尾正行

    ○藤尾委員 いまの長官の御答弁をいただいたわけですが、そこに首都圏の事務局長が来ておりますが、あなたそれでいいですか。
  61. 小西則良

    ○小西政府委員 この問題につきましては、都道府県知事から申請の受理をいたしまして、この低開発の関係法案によりまして首都圏の委員会を経由しなければならないということになっておりすすから、その経由をいたしました書類につきまして、首都圏といたしましては、委員会を開いていただきまして、審議を願ったのでございます。そこで、現在法案は出しておりますけれども、この法案改正と申し上げますのは、近郊整備地帯を設けるということと、現在市街地開発区域ということで処置をいたしておりますこの市街地開発区域というのを、都市開発区域というのに改める。まだほかにございますけれども、骨子はこの二つでございます。  そこで、それでは近郊整備地帯というのはどういう範囲になるのかという問題になってくるかと思うのでございますが、これは近郊整備地帯という名前のとおり——範囲はもちろんこれからきめるものでございますけれども、おのずからある程度の常識といいますか、そう首都圏全体にわたるものでもない。と申し上げますのは、現在首都圏の区域というのは、東京駅を中心にしまして大体百キロから百二十キロくらいの範囲になっておりますので、既成市街地である東京、横浜、川崎といったようなところの周囲に対してある範囲をとるということになろうかと思います。これらの問題は、もし法案が通ったとしますれば、審議会その他にかけておきめ願う問題でございますので、軽々しくその範囲というものを私らのほう想定するわけにもいきませんけれども、おのずからそこには、そう百キロ、百二十キロ全体というような形にもならないので、その申請の書類を受けましたときに、大体その近郊整備地帯というものはそう広がるものじゃないだろうというので、相当広い範囲の——ことばをかえて申しますれば、東京駅から相当遠いところにある地区に対しては、必ずしもこの低開発地域の指定というものは、現在の首都圏の整備計画と相反するものでも何でもございませんので、申請のあった中から条件というものを吟味していただきまして、指定すべきものはその意見を具して経済企画庁のほうに提出したのでございます。
  62. 藤尾正行

    ○藤尾委員 いまの事務局長の話によれば、近郊整備地帯というものは、過密都市といいますか、大都市といいますか、それの周辺の一定地域に限られるということになると、首都圏というような広い地域に網をかぶせた全体の中で、必ずしもその近郊整備地帯に入らない地帯が非常にたくさんできると思う。そういったところは当然低開発地域工業開発促進法に均てんせしめたほうがいいのじゃないかということで、その指定を首都圏から申し出たという話になっておりまするけれども、先ほどの長官のこれを留保した、一般にとにかく首都圏という網の中に入ったものは全部留保であるというお考えとは、だいぶ違っておるような気がいたします。その点はいかがお考えでございますか。
  63. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 近畿圏整備につきましては、ごく近々都市開発区域というものの指定が行なわれるものと思います。そして、その都市開発区域の指定の状況を私ども政府部内で御相談を受けておりますので、案の内容承知いたしておりますが、それは相当あちらこちらにまとまった都市開発区域として総合的にその地域の開発をはかっていこうという、むしろ広い観点からの総合開発計画が打ち立てられる次第でございますが、そうなりますと、低開発地域におけるところの感覚とはおのずからその開発の構想は変わってくる。しかも、その一体いずれの構想によるべきかという問題については、これは相当その土地土地の事情によって異なってくると思うのでございます。しこうして、首都圏の範囲内においても都市開発地域として指定される地域が当然に存在する、かように承知いたしておりますので、したがって、その関連を見た上で、私どもは、つまり都市開発地域として指定する意思は毛頭ないのだ、またそういうふうな適性を持っている地域じゃないのだ、しかし、低開発地域工業開発促進法の対象の地域としては適当な地域だということがはっきりいたしました際には、ただいまは留保いたしておりますが、これを指定していく、こういう考えで、さしあたりその経緯を見守った上で考えていきたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  64. 藤尾正行

    ○藤尾委員 いまの長官のお話で、さらに留保してよく考えるというお話でございますけれども、首都圏の中でも、栃木県とか、あるいは埼玉県の秩父の奥とか、あるいは千葉県の房総の先とかいうような地域について、これが首都圏にかかっておるということのために除外されるというようなことになりますと、その地域の住民の福祉というものが著しくここにおいて阻害されることになる。この点は、その実施の上において十二分にお考えをいただきたい。  次に、このあなたの提案理由の説明の中にも、いろいろと消費者行政評議会という構想も考慮して云々ということで、国民生活審議会というようなのを新設したいというようなお考えですね。現在こういった関連の審議会といいますものは、国土総合開発審議会、これは地域の問題ですが、東北開発審議会、九州地方開発審議会、四国地方開発審議会、中国地方開発審議会、北陸地方開発審議会、近畿圏整備審議会、地方産業開発審議会、水資源開発審議会、豪雪地帯対策審議会、電源開発調整審議会、あるいは離島振興対策審議会、あるいは台風常襲地帯対策審議会、チリ地震津波対策審議会、数え切れぬぐらいの審議会が一ぱいあります。こういった審議会ばかりがやたらに乱立をしている状況というものを、あなたはどういうふうにお考えになりますか。
  65. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 経済企画庁には、ただいま御指摘のとおり、非常にたくさんの審議会がございまして、しかも、その審議会一つ一つが、少なくとも関係の方々にとっては非常に重要な意味を持った審議会でございますために、私どもも、率直に申し上げまして、この審議会のお守をするのに非常に苦労をいたしておるのが実情でございます。したがって、私どもといたしましては、先ほどこういうふうな地域開発法について整理統合したらどうかという御趣旨がございましたが、その方向で、その法律の根本が統合されれば当然に審議会も統合されることに相なりますので、その点は、何とか少しでも整理方向努力をいたしていきたい、かように存じておるのでございます。しこうして、政府自体として当初からできております審議会は、総理大臣の諮問機関であるところの経済審議会、それから今回提案いたしておりますのは、国民生活向上審議会というのが現在ございますが、この国民生活向上対策審議会、これがただいま経済企画庁長官諮問機関でございますので、これを格上げいたしまして、総理の諮問機関として国民生活審議会に改組いたしたいということで、必ずしも新設ではございません。この二つの審議会は、何と申しましても経済企画庁の中心的な非常に大事な審議会でございますので、これを整理するというような考えは毛頭ございません。むしろこれに非常な力点を置いて、国政の調和のある発展に寄与していただくように運営をしていただきたい、かように考えておる次第でございます。
  66. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 関連して。端的に申し上げます。長官の意図はよくわかりますが、先ほど藤尾委員の質問に対して、首都圏整備法についての地区のいわゆる保留した部分について、低開発地域工業開発促進法とからんで関連質問をしたいと思いますが、ちょうど民社党の議員も出てきておりますので、次回に譲りますが、どうもこの答弁、気持ちはわかりますが、少しなまぬるい点がありますので、次会にひとつこの点を明確に御答弁願うように質問したいという気持ちでございます。なお、首都圏整備委員会の事務局長おいででございますが、あなたの先ほどの発言も、私にはまことに当を得ないように聞いております。そういういきさつもありますが、きょうは民社さんがお待ちですから保留いたしますが、どうぞひとつ次会はもう少し明確な——しかも首都圏整備法によって首都圏整備が非常におくれている状態、他の地域の開発地域と非常におくれている点、これらについて次会に質問いたしますが、ひとつ答弁の用意を願いたいと思います。
  67. 藤尾正行

    ○藤尾委員 最後にひとつ御要望申し上げますけれども、このように審議会というようなものが乱立して、あなたはその審議会をもし無視しているのでなければ、この審議会を通じていろんなことをやっておられるに違いない。そうしますと、その審議会対策だけであなたの二十四時間は費されてしまうというようなことになったのでは、経済企画庁の行政そのものが非常に曲げられたり、あるいはほんとうの施策がそれによって阻害をせられるというようなことがあっては、私は、これは国民にとってたいへんに迷惑千万なことである、かように考えるわけです。その点を十二分にお考えをいただいて、審議会というようなものをやたらにおつくりにならないで、政府の責任においてすべての行政を推進していくという気がまえをお示しをいただきたい。これをひとつお願いしておきます。
  68. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 きわめて力強い御意見をいただきまして、私どももその方向に向かってあらゆる努力を傾倒いたしてまいりたいと存じます。何ぶんにも議員立法においてつくられましたところの審議会でございますので、その点はどうしても皆さま方のお力添えを得なければ、政府だけではなかなか実現困難な問題でございますので、その点特にお願い申し上げておく次第でございます。     —————————————
  69. 河本敏夫

  70. 受田新吉

    受田委員 では、旧勲章年金に関係した法案に関連するかっこうで私より政府にただしておきたいことがございます。  政府は、すでに現行栄典制度をもとにして、法律によらずして生存者叙勲を実行に移しておられます。昨年の春以来、春秋二回にわたって生存者叙勲の恩典が付与されつつあるのでございますが、これはかねてよりわれわれといたしましては、国民に栄典を付与することは国民的な規模における最も重大な事項であるとして、法律によりこれを定むべし、しかも、それは党派を越えて各党の見解が一致した線において、民主的な国家における栄典を制定すべきであることを提唱しております。われわれのこの多年の主張が、しばしば政府から提出された法案に織り込まれて、その間二、三回にわたって、すでに各党で見解を一にしてそこに超党派の答えさえ、一応原案としてできたことさえあったのでございまするが、この基本的な栄典制度法律により国民的規模において超党派でこれを定むべしという基本線を、どういうふうに政府は考えておられるか、お答え願いたい。
  71. 臼井莊一

    ○臼井政府委員 戦後の栄典につきましては、いろいろ各党においても御意見のあったところは了承しているわけでございます。しかし、なかなか新しくするということにつきましてもまた議論もございますので、そこで従来、戦前から行なわれておりました叙位叙勲につきましては、戦後閣議におい、これが一時停止をした、こういういきさつもございまするので、そこでこれを復活するにも、長い歴史のあるこの栄典法を閣議において停止を戻した、こういう形において現在の生存者叙勲も復活された、かようなわけでございます。
  72. 受田新吉

    受田委員 私は、この基本的な取り扱い方を今後どうするかということをお尋ねしているわけです。今後政府としては、超党派による、国民的規模における、すべての国民が納得して栄典を付与されるという方式を、法律により制定すべきであると提唱している問題は、どのようなお取り扱い方になっておるかと、いま政府にお尋ねしているわけです。過去の経緯をお尋ねしているわけじゃないのです。
  73. 臼井莊一

    ○臼井政府委員 政府といたしましては、ただいま申し上げましたような理由で現在の栄典を行なっておりますので、政府といたしましてはこのままで続いてやっていく、こういう考え方でございます。
  74. 受田新吉

    受田委員 この問題は、現行制度を生かして政府の閣議決定で片づけられる問題としての現行制度のほかに、基本的問題を前向きで検討をする。栄典審議会のごときものを設けて、そこで十分学識経験者の意見も尊重して、願わくは国会で超党派でこれが成立する運びにしようというこの基本的な問題は、もう少しとにかく前向きで御研究を同時にしておいていただかなければならぬ問題だと思うのです。私は納得できないのです。前向きの対策は、いまのものじゃどうもわからぬのです。
  75. 臼井莊一

    ○臼井政府委員 ただいま申し上げましたように、戦後はまた別の栄典法をつくってやるべきだといういろいろな御意見等もあることも承知いたしておりますけれども、しかし、この栄典というようなものにつきましては、長い伝統的な歴史もございまするし、また、これは国民に親しみの深いものでございまして、しかも戦後相当の、数にすれば一万数千名の叙勲者もあることでございますし、また外国等の方々に対しても、元相とか大統領とかそういう方々に、これまた数千名叙勲もございますので、そういうこと等を考慮いたしまして、従来の栄典法を復活いたしまして、そのままで続行するほうが適当であろうということになったわけであります。
  76. 受田新吉

    受田委員 この前の長官は、いま私の提唱したこともあわせ検討するというお話があったわけです。現行制度としての新しい叙勲者を考えることもこれは政府でやるが、いま私が提案したことも、研究は十分続けていくという御答弁であったわけであります。そのほう、私の提案したことは、さっぱりお取り上げにならないわけですね。
  77. 臼井莊一

    ○臼井政府委員 もちろん、私がただいま申し上げましたいろいろの御意見があることは承知だということは、皆さま方の御意見等もいろいろ検討いたしましたその結果が、いま申し上げましたように、従来の栄典を続行するほうがよかろう、こういう結論になったということでございます。ことばが多少足りなかったので、決して多くの意見を全然無視したということではございませんで、政府部内でいろいろ検討した結果が、いま申し上げたようなことでやるほうがよかろう、こういう結論に政府としてはなっておる、こういうわけであります。
  78. 受田新吉

    受田委員 私の提案しておることは、現時点においては全然問題にしていない、こういう明確な御答弁になるわけですか。
  79. 臼井莊一

    ○臼井政府委員 問題にしてないというより、これを実施する過程におきましていろいろ検討をした結果、またいろいろ御意見もございまするから、今後もいろいろ検討すべき点があるならばこれはもちろん検討すると存じますが、しかしながら、現在までの結果では、いま申し上げたように、従来の栄典制度でよかろう、こういうことに一応なっておるわけでございます。
  80. 受田新吉

    受田委員 しからば、現行制度政府の考え方一つできめられる叙勲制度について、できるだけ民主的な方法で、その適正を期する方法として、栄典審議会というようなものをこれは当然置くべきだと思うのです。総務長官や賞勲局長や、ついほんの周囲の者でやるということでなくして、もっと広範囲に——勲一等を受けた人くらいまでを含んでおるというお話もありましたけれども勲章をもらった人が審査するというのもこれはおかしい話なんで、大所高所から、もっと別の角度の学識経験者を入れて栄典審議会として、これを付属機関に置いて、そこで審査をするというような形を政府としてはとるべきじゃないかと思うのでず。
  81. 臼井莊一

    ○臼井政府委員 その点につきましては、いま受田先生のお話の御趣旨等も受けまして、いまお話しに出ましたように、いわゆる長老会議というようなことで、先般も、また今回も、その方々の叙勲を実施する上についての御意見を十分伺たっ上で実施をしているわけでございます。ただ、いまお話しのように、勲一等、勲二等の受章者の中から選んだということについての御意見があるようでございますが、これはやはり長老といわれるような方は、むしろ優先して叙勲を受けられる資格者が多いわけでございます。そこで、もし受けられない方をこの中にお入れしてありますと、何かもしそういう方が受けられるということになった場合に、多少どうも俗のことばでいえばお手盛りというようなふうに誤解されてもいかがか、こう考えまして、すでに叙勲をせられた方々の中から、長老の方々にお願いして、叙勲のやり方等について御意見を伺ってこれを実施する、こういうことにいたしておるのであります。
  82. 受田新吉

    受田委員 これはもっと幅を広げて、府政がやろうとされる場合であっても、その公正を期する必要があると思う。社会党の党員である人は、一切の勲章というか、今度の勲何等という勲章を辞退しておる、こういう事実もあるわけでございますから、ひとつこのあたりも十分含めて検討される必要があると思うのであります。  なおまた、この春の叙勲というものの御計画も、おそらくすでに作業を進められておると思うのですけれども、今春の叙勲の時期及びその該当者、生存者においてはどの程度まで範囲を広げておるか、その構想をお示し願いたい。
  83. 臼井莊一

    ○臼井政府委員 なお、ただいまの御質問の前に、学識経験者等を加えてという御意見、ごもっともでございまして、その趣旨も入れまして、いわゆる長老といわれる方々の中には、各界の方々——実業界の方もありますし、学者の方もありますし、各方面の方を加えて、そういった御意見を伺う会をやっておるわけでございます。  なお、この春の叙勲につきましては、四月二十九日の天皇誕生の日に本年度の春の叙勲が発表せられるわけでございまして、先般長老等の御意見等を伺いまして、いろいろやり方等も考えたのでありますが、原則といたしましては、七十歳以上のお方で、そして日本の社会、国民等に非常に功績のあったと認められる長老的な方々をまず先にする、一応こういう原則になっております。しかし、そのほかに、苦労の多いわりあいに人目につかない領域の方があります。たとえば逓信とか鉄道とか警察の領域において、中には身の危険をも顧みず職務に多年尽くされた、こういうような方々に対しては、年齢というようなものについての例外はあるわけでございます。また人員も、およそ千人ぐらいということの目標、こういうことでございまして、従来は生存者叙勲といわれましたのを、何か生存者という語感の表現がよくないからということで、この春からは、昭和四十年春の叙勲というように呼び名を改めることにいたしました。人選にあたっては、広く各界各層にわたるようにして、いわゆる有名人のみに限らず、篤農家とか勤労者の功労者等も漏れないように、そういうような方針、また前回までは公務員の経歴のみの方は遠慮させていただいたのでありますが、今回は符に功労顕著な公務員経歴者に対しても、これを除くということもいかがかというので、叙勲とかあるいは賜杯をする、こういうようなことが大ざっぱな概略でございます。
  84. 受田新吉

    受田委員 私は、広く学識経験者の総知をすぐって、国民だれもが納得するような形の栄典を付与すべきだと思います。政府の思いつきで、だれか強く主張されるのが、他の力なき協力者を強制的に納得させるような方針をとってはいけない。  賞勲局長さん、あなたがやはり行政事務の責任者でいらっしゃるので、その点を十分心得てやっていただきたい。同時にちょっとお尋ねしておくのですが、位階令は、いまどういう取り扱いをされておりますか。
  85. 岩倉規夫

    ○岩倉政府委員 位階令の所管は、実は私どものほうではございませんので、官房の人事課のほうで取り扱っておりますが、位階令そのものは、大正十五年の勅令が現在も生きております。ただ、この運用につきましては、戦後、昭和二十一年五月の閣議決定で、生存者に対する叙位叙勲を停止するということがございました。その閣議決定のうちで、勲章だけが一昨年復活いたしました。したがいまして、現在は位階令、叙位につきましては、死没者のみを対象にいたしております。
  86. 受田新吉

    受田委員 この位階令の現在生きた規定として残っておる中に、正一位から従八位まで残っておると思うのです。この規定の中で生存者には全然出さないという、つまり危篤の場合でも出さぬということになりますか。そのことをちょっと……。
  87. 岩倉規夫

    ○岩倉政府委員 生存者には、危篤の場合でも位は出しておりません。
  88. 受田新吉

    受田委員 そうして、その位のつけ方ですが、これはなくなった場合、故人の「勲績顕著ナル者ニハ特旨ヲ以テ位ヲ贈ル」、この「特旨」というのは、どういうことなんですか。
  89. 岩倉規夫

    ○岩倉政府委員 位の実施につきましては、実は私ども賞勲局の所掌ではございませんので、その運用につきましては、私つまびらかではございません。
  90. 受田新吉

    受田委員 総務長官、これは位階令も賞勲局に所管を移転すべきです。官房人事課が扱っておるというような、こういうかたくななことで——位階勲等は栄典の一つですから、それが賞勲局の所管外にあるということは、非常に運用上困るのです。処理をしていただきたい。御答弁を願います。
  91. 臼井莊一

    ○臼井政府委員 ひとつよく検討いたします。
  92. 受田新吉

    受田委員 私これで質問を終わります。  現在、勲章を佩用することについては、金鵄勲章をぶら下げてもいいことになっておる。ところが、現実に勲章をぶら下げておりますか、どうですか。実際に、いろいろな諸儀式に勲章をぶら下げていっておる実態の御報告を願いたいです。
  93. 岩倉規夫

    ○岩倉政府委員 今年の元旦からでございますか、宮内庁のほうで、参賀のときに勲章をお持ちの方は着用するというように御通知になったと承っております。それから防衛庁の方々、制服の方々は、いわゆる略綬を御佩用になっております。これはやはりそれぞれの官庁の規定がございますので、祝祭日その他、それから公式の部隊訪問というようなときには、勲章を瀞期しておられることと思います。
  94. 受田新吉

    受田委員 この勲章の佩用について、宮内庁のほうで正月からそういう通達を出されたわけですね。そうすると、だんだん勲章をぶら下げるのを皆さんが喜ぶ時代が来るということになると思うのですが、いろいろ諸外国との儀式においては、これは事実日本人だれもがぶら下げておるわけですね。外国の賓客が来られたような場合にはいかがですか。
  95. 岩倉規夫

    ○岩倉政府委員 これは実は宮内庁の御所管でございまして、宮内庁で正式の晩さん等がございますときには、一定の服装に勲章を着用のことということになっておると存じております。
  96. 受田新吉

    受田委員 これはいろいろな規定が出ておるのです。勲章関係のいろいろな規定が出ておるわけです。これは、どうも昔の古い規定でして、何か新しい形で、政令なり規則なりでこれを整理される必要はないかと思うのです。栄典に関する諸規定は、非常に陳腐ですからね。これはいかがですか、基本的に諸規定改正するという御意図はないですか。
  97. 岩倉規夫

    ○岩倉政府委員 佩用につきましては、先般いわゆる生存者叙勲の再開に伴いまして規定改正いたしまして、たとえば勲四等以下の勲章は、ダークスーツ——普通のせびろでも着用してもよろしいということになっております。これは法規集にも出ているかと思いますが、そのように規定改正いたしておりますけれども、その他の太政官の布告でございますとか、あるいは旧憲法時代の勅令に根拠法規がありますものは、たとえば文化勲章の根拠法規は昭和十二年の勅令でございますけれども、これらはそのままの規定が有効として運用されておるような次第でございます。
  98. 受田新吉

    受田委員 終わります。
  99. 河本敏夫

    河本委員長 野呂恭一君。
  100. 野呂恭一

    ○野呂委員 旧金鵄勲章年金受給者に関する特別措置法に関しまして、二、三の点について質疑をいたしたいと思います。すでに本法案は、永山先生から提案者に対しまして御質疑がございました。私は、提案者及び内閣賞勲局、あるいはまた法制関係にお尋ねをいたしたいと思います。  本法案の第一条に規定いたしておりますように、旧金鵄勲章年金受給者が、かつて受けておりました経済的処遇を失って、精神的にもまた経済的にも非常な不遇のうちに毎日を送っていられるわけでありまして、年老いた方々のことを考えるときには、その処遇の改善をはかるために特別措置として一時金を支給しようとするものでありまして、この法案の第一条の規定が同法案の核心をなしておることは、いまさら論議の余地はないと思うのであります。  まず第一にお伺いいたしたいことは、本案の第二条に規定いたしておりますすなわち「昭和二十年十二月三十一日において旧金鵄勲章年金令による年金を受ける権利を有していた者で」とありますけれども、金鵄勲章の年金令によります第三条の規定によるものを除いて、金勲鵄章一時賜金受給生存者は除外されておるわけであります。本法案の第一条の趣旨から考えてまいりましても、一時賜金受給者に対しましても、その性質は年金受給者と全く同一であると私どもは考えるのであります。したがって、一時賜金受給者に対しましても、年金受給者と同じ取り扱いをなすべきではないだろうか、賞勲局はこの点をどうお考えになっておるか。ことにこの法案の審議の経過を判断いたしますると、衆議院におきましても、第四十二国会と第四十三国会に附帯決議がなされておるわけであります。議員立法でありながら附帯決議をしておるということ自体が、少し私どもは納得がいかないのでありますが、この附帯決議の内容は、一時賜金金鵄勲章保持者は除外されておるけれども、その殊勲の性質は旧年金受給者と全く同一であるから、可及的すみやかにこれが適正なる措置を講ずるものとする、こういう附帯決議がなされておるのであります。今国会におきまして提案されました本法案の中で、どういうわけで一時賜金受給生存者がこの特別措置の対象から除外されておるのか、この点について納得できがたい本のがあるのでございます。少なくとも、本法案は武功に対する顕彰とかあるいは社会保障とかを目的とするものではなく、単に年金を受けていた既得権の地位の保護目的とするものであるということでありますれば、私は、この既得権の問題について、まず賞勲局のほうから、金鵄勲章年金制定の趣旨、及びその後廃止されるに至りました経過、その意図は一体どこにあるのか、こういう点につきまして明らかにしていただきたいと思います。
  101. 岩倉規夫

    ○岩倉政府委員 金鵄勲章の年金につきましては、金鵄勲章の歴史があるわけでございますが、金鵄勲章の年金は、明治二十七年に金鶏勲章年金令によって創設されております。勲章の創設は明治二十九年の紀元節の日でございますが、勲章の年金令というのが二十七年に出ておりまして、金鵄勲章の第一回の授賜は、明治二十七、八年戦役でございますから、金鵄勲章には年金がつかないで出た勲章はなかったわけであります。ところが、日清、日露、それから日独戦争とか満州事変までずっと金鵄勲章をもらわれた方は年金をもらっておられたのでございますけれども昭和十六年になりまして年金令を廃止いたしまして、シナ事変の生存者、つまり昭和十五年四月二十九日に発令せられました、いわゆるシナ事変の生存軍人の金鵄勲章につきましては、年金を廃止して一瞬賜金に切りかえられたのでございます。そのときの趣旨は、ちょうど昭和十六年ごろに、在郷軍人会のほうで、年金の金頭が非常に軽少である、これの増額運動が起こったという事実があった由でございまして、これは恩給と異なりまして、つまり生活費の補給というような意味で下された金ではない、恩賞である、その恩賞を受けたほうの側からごほうびを増してほしいというような増額運動をやるというのは穏やかでないというような趣旨一つと、もう一つは年金でございますと、これを受けられます方の寿命の長短によりまして不均衡が生ずる。特に、戦没者の場合は五年間遺族は年金を受けることができるわけでございますけれども、生存者の場合は早くなくなる方、長生きされる方で金額に多寡を生ずる。その不均衡を是正するというような、二つの理由によりましてこれを一時賜金に御変更になった、そのように聞いております。ただ、昭和十五年以前、満州事変の当時までに年金をもらっておられました方の既得の地位と申しますか、これはなお旧令によるということで、昭和二十年までこれらの旧令による年金受給者の方は年金をおもらいになっておった、そういうことでございます。一時賜金に切りか、えましたあとどうなったかと申しますと、これは戦役、事変のつど別の勅令に基づきまして、金鵄勲章受章者のみならず、旭日章あるいは瑞宝章の勲章をもらう人も、賜金だけをもらう人も、いずれも賞賜内規によって別の体系で一時賜金をそのつどもらうというような仕組みになっておりました。以上沿革を申し上げました。
  102. 野呂恭一

    ○野呂委員 そうしますと、当時の年金と一時賜金の性質上の差異というものは、どういうふうに考えたらいいんですか。
  103. 岩倉規夫

    ○岩倉政府委員 性質上の差異と申しますと、年金のほうは生存中に限って毎年毎年いただける性質、の金でございますし、一時賜金のほうはそのときに一ぺんちょうだいすればそれで打ち切るという、そういう性質上の相違はあると思います。ただ、金鵄勲章そのものは殊勲抜群の方に授与されておりますので、殊勲という点からすれば、年金付の金鵄勲章も、一時金付の勲章も、それに盛られた功績内容については径庭はない、かように考えております。
  104. 野呂恭一

    ○野呂委員 そうしますと、一時賜金は大正八年の勅令第四百九十二号ですか、によって戦没、事変、それに際しまして賜金、賜杯を授与することができるということになっている。それが廃止されたのが昭和二十一年ですか、二十一年の勅令第百十二号だ。そうしまして、武功表彰の趣旨からいたしますと、表彰を特に厚からしめるという点においては性質上の差異はない。こういう点については、賞勲局及び法制局はどうお考えになりますか。
  105. 岩倉規夫

    ○岩倉政府委員 金鵄勲章受章者、つまり武功抜群の者の恩賞を厚からしめる、そういう意味におきましては、金鵄勲章の一時賜金は、やはり金額としては最高額のものを金鵄勲章受章者が賜わっておったわけでございます。
  106. 野呂恭一

    ○野呂委員 そうすると、金鵄勲章を授賜する基準は、一体どういうことになっておりますか。
  107. 岩倉規夫

    ○岩倉政府委員 これは当時の賞賜内規というものは、それぞれ事変、戦争ごとに勅定を経てつくられておりますが、大体功績の内容を四つの賞格に分かっております。殊勲、勲功、勲労、功労、この四つの段階に分けまして、その殊勲はまた殊勲甲、殊勲乙というふうに分かれておりますが、殊勲のほうは金鵄勲章をもらわれる、勲功のほうは旭日章、勲労のほうは瑞宝章、功労のほうは賜金のみ、そのような段階で、殊勲の部類の方だけ金鵄勲章と旭日章と一時賜金が出ておったわけであります。
  108. 野呂恭一

    ○野呂委員 そうすると、金鵄勲章の年金制度が一時賜金制度に変わりまして、昭和十五年の四月二十九日以降の授賜はすべて一時賜金ということになった。賞賜内規と申しますか、これによると、金鵄勲章は殊勲だ、それに限っておる。年金制度が一時賜金に変わりましても、授賜するところの基準は同じであるとしますと、資格においては変更がないのでありますから、この原則からいっても、当然同じ扱いを受けるべきではないか。したがって、本法案において一時賜金受給者を除外しているということは、むしろ適当ではないのではないか。こういう点についての御見解を承りたい。
  109. 岩倉規夫

    ○岩倉政府委員 これは私から答弁するのはいかがかと思いますけれども、この法案は、これは武功顕彰の趣旨ではないように拝承いたしております。武功顕彰の御趣旨ならば、おっしゃるように殊勲に甲乙ないということでございましょうけれども、これは国家の功績者の年金につきまして、長い間おもらいになっておられる既得権の地位と申しますか、これが失われた、かつまた御老齢に達していらっしゃる、そういう観点でこの法案が構成されております。そういうふうに私ども承知しておるわけでございます。
  110. 野呂恭一

    ○野呂委員 次に、金鵄勲章年金受給者に該当する総数は、一体今日この法案が可決確定された傍において何人くらいになるか。それを等級別に分けられて、あるいはまたその等級別に、兵の階級、あるいは下士官の階級、将校の階級、こういったようにその数をお調べ願っておりますか。
  111. 岩倉規夫

    ○岩倉政府委員 まず総数について申し上げますと、旧年金をおもらいになっておった方々と申しますと、日清、日露戦争から満州事変まででございますが、現在、これは昭和三十八年の一月一日現在の推計の数でございます。これは別に調査を具体的に一人一人に当たってやったわけではございませんので、昭和十五年ごろの受給者の数字に、それからの平均余命と申しますか、そういうものを厚生省の人口問題研究所のほうで計算をしていただきました、その数字によりますと、年金関係昭和三十八年一月一日現在における生存者は、八千六百八人というふうに推計されるわけでございます。また、その等級別の内訳もございますけれども、日露戦争、日清戦争のころの将校の方は、とうに鬼籍にお入りになっておる。大部分が兵隊さんと申しますか、下級の級別の方々で、これは表がございますから、いずれお手元に差し上げてもと思います。全部読み上げましても複雑でございますので……。
  112. 野呂恭一

    ○野呂委員 先ほどのお話の中でございますが、別に武功表彰ということじゃないんだ、こういう趣旨から見て、必ずしも一時賜金受給者を含めなくてもいいのではないか、こういう御解釈でございましたが、金鵄勲章年金受給者と一時賜金受給者とは、武功表彰の趣旨という点からすれば、これは同じなんだ、性質上は変わりはない。しかし、本法案の第一条の趣旨から考えてまいりますと、本法案内容が、栄典ととしての金鵄勲章制度そのものの復活ではない、敗戦による経済的既得権の喪失、これを国家が補償するのだ、それを本質としておるのだ、こういうことになりますから、国の至上命令のもとに自己を捨て国家のために働いた功労のある人々ということになりますと、同じである。したがって、一時金の受給者を含めてこれはむしろ拡大適用していくほうが、不合理な国民間の差別を排除するという憲法第十四条に規定されておる国民平等の原則に沿うのではないか、こういう点についてお考えを願わなければならないし、また処遇の改善につきましても、勲功というものを基準にしないので、功一級も功二級も功七級も、そういう等級的な差別というものはなくて、全部一律に七万円を支給するということになりますと、この点にいろいろ問題点があるのではないか、こういうふうに考えますので、この点提案者の受田先生にお伺いをいたしたいと思うのであります。
  113. 受田新吉

    受田議員 私は、いま野呂委員のお尋ねの問題で、年金受給者という場合は、これは毎年定期的な年金がもらえるという一つの期待があった。これは憲法二十九条の財産権は侵してはならないという規定からいえば、一つの既得権である。同時に期待権である。同時にそれが死ぬまでもらえる。そういう場合に、その年金の支給を打ち切るということによって、その既得権、期待権が喪失されることになる。死ぬまで毎年もらえる期待権が、そこで剥奪されたことになります。しかも、戦後二十年たっておると、一時金のほうは現時点においては喪失しているわけです。二十年の長期の支払い方式による一時金ですからね。しかし、年金受給者のほうは、二十年たっても、四十年たっても、これからも死ぬまでもらえるという期待権があったわけです。したがって、その期待権、それを基礎にして生活を設計することも可能であるわけですからね。それを剥奪するという意味において、期待権を一応ある程度社会保障的な性格を加味したいわゆる政策的見地で保障するという考え方から言うならば、これは分離して考えて差しつかえないものだと私は思っておるわけです。
  114. 野呂恭一

    ○野呂委員 期待権、既得権という問題はあとで承るといたしまして、受勲者の資格でございます。これは言うまでもなく、附則に示されておりますとおり、施行期日は公布の日である、その適用は昭和三十八年の四月一日から、こういうことになっております。また第二条一項一号に、昭和三十八年四月一日において六十歳以上の者であるということに規定されておるわけでございますが、実際は昭和二十年十二月三十一日において年金を受ける権利を有しておる者が、当然この法案における基本となるべきではないだろうか。昭和三十八年四月一日を一体どういうわけで根拠としたのか、こういう点、提案者である八田先生に今度はお伺いしたいと思います。
  115. 八田貞義

    八田議員 この三十八年の四月一日に資格確定日にいたしましたのは、御承知のように四十三国会におきまして、参議院におきまして審議の過程において、ただいま申し上げましたような資格確定日を三十八年の四月一日というふうに修正されたのでございます。それ以来、原案のまま国会に提出いたしておるわけでございます。
  116. 野呂恭一

    ○野呂委員 そういたしますと、この措置法は、昭和三十六年に三十八国会ですか、上程をされておる。三十七年においても三十九、四十国会、四十一国会にも、あるいはまた四十二国会にも提案されておる。それから四十三国会にも提案されておる。その提案の中に出ております適用の日というものは、昭和三十八年四月一日を受給権者の資格とするということになっておるわけでありますが、これは審議の経過からしてそのまま法案をただ受け取ってきたのだというのではおかしいのでありまして、少なくも本法案が年金を受けていたという経済的期待権にこたえるというならば、昭和二十年の十二月三十一日において年金を受ける権利を有していた者が基本となるのが、当然ではないか。ただ従来どおりわれわれがかってに——かってと言うとおかしいけれども、ずっとやってきたのだから、そのままそれでいいじゃないか。ことに私は、戦争による犠牲の平等化ということを考えていきますならば、しかもこの法案の性格上、これは当然さかのぼるべきだ、こういうことなら、昭和二十年十二月三十一日を適用の基本とすることがどうしても正しいのである。単に予算上の問題であるとか、あるいは受給権者の範囲が非常に拡大されていくから、過去に提案された本法案の適用の日をそのままにしておいて、四十二国会以来何ら変化がないから、見て見ないふりをして通ろうじゃないか、こういうことで本法案の適用期日をきめたとすると、この法案にはあまり権威がないのではないかというふうに考えるのでありますが、この点について、もう一度、今度は受田先生のほうからお伺いしたい。
  117. 受田新吉

    受田議員 この法律の適用期をどこにするかという問題は、なかなかむずかしい点があります。何となれば、多くの法案で施行期というものが既往にさかのぼるということは、事実問題として採用されておりません。ただ適用期については、引揚者給付金支給法、昭和三十二年の五月に法案が通過しましたけれども、三十二年四月一日にさかのぼるということで、三十二年四月一日を起点にしてそのときの条項該当者を救済する、それよりも前の分は救済していないのでございますが、このあたりで、ひとつ旧金鵄勲章の受勲者については、四十三国会の三十八年、二年をさかのぼって適用するという、いわば過去にさかのぼってその適用者を救済するということは、異例の措置でございまして、この二年くらいの限度で救済するということが適当ではないかという政策的見地でこれが採択されております。特に新しく権利を与えるとか義務を課するとかいうような法案では、過去にさかのぼって適用する例は全然ございません。ただこの場合は、この時点以後にだんだん人が減るだけであって、社会政策的見地からいって、できるだけ多くの人を救うという意味で二年前にさかのぼってこれを適用することにしたわけでございまして、あまりに前にさかのぼっていくということは、他の法案との関連もありますし、二年前にさかのぼるというのが適切だろうという政策的見地でこれを用いたことを、御了解願いたいのであります。
  118. 野呂恭一

    ○野呂委員 まあ政策的見地と言われたらこれ以上お尋ねいたしませんが、次に一時金の額を七万円ときめておるその根拠について、お伺いいたしたい。
  119. 八田貞義

    八田議員 一時金を七万円にした根拠を御説明申し上げます。  この七万円につきましては、いろいろと計算をやられた経緯があるわけでございますが、考え方といたしましては、かつて年金をもらっておられた人々で現在生きておられる人、先ほど賞勲局長から御答弁がありましたが、いわゆる八千六百八名でかつて年金をもらっておられた人の額を割りまして平均額を出しました。平均額を申し上げますと、百六十九円になっております。この百六十九円に対しまして、兵の階級の仮定俸給表の年額、あるいは物価指数等を勘案いたしまして、一五〇という指数をかけました。さらにまた、これは基本額になりますが、それに三年をかけまして、七万円というような数字になったわけでございます。御質問の御意思は、七万円では少ないのではないかというようなお気持ちだと思いますが、私らも同様な気持ちを持っておるのでございますが、いろいろな計算の結果、七万円というものが大体においてわれわれの政策的な考慮を満たし得る額であろう、こういうことできめた次第であります。
  120. 野呂恭一

    ○野呂委員 金鵄勲章の年金令によって、功七級が明治二十七年九月二十九日の勅令第百七十三号によりますと六十五円——七級だけとってまいります。金鵄勲章年金令のうち、改正いたしましてこれが明治二十八年の七月十六日、勅令第百十号、功七級で百円、さらに改正された昭和二年五月十九日の勅令第百二十号では百五十円、この百五十円になって、それの三カ年分としたら四百五十円、物価上昇、あるいは生活費の値上がり、これを百五十倍と見て六万七千五百円、まあ七万円弱であるという一つの計算の基礎も、また別にあるというお話も聞いております。先ほどの平均して百六十九円、それに指数一五〇をかけて、三カ年分を基本としていくと七万六千五十円である。この問題は一五〇という物価指数でありますが、四十二国会のときも七万円である。四十三国会のときも七万円である。一五〇というものを物価指数としておるならば、その後経済的な変動は全然ないのだという判断の上に七万円というものをおきめになったのか。あるけれども、大蔵省のほうの見通しが悪いからやめておこう、こういうことなのか。この点を明らかにしておいていただきたいと思います。
  121. 八田貞義

    八田議員 われわれも、この七万円の金額につきましては、ただいま御質問がありましたように、物価指数の取り方から考えてみましても、非常に不満足であります。しかし、不満足でありますが、この問題は、先ほど申し上げましたように、三十六年からの懸案の問題でございまして、財政当局の意向も十分にしんしゃくいたしまして、七万円に落ちつかざるを得なかった、いわゆる不満足の中の満足というような感じできめたものでございますので、御了承願います。
  122. 野呂恭一

    ○野呂委員 しかし、これは政府提案ではございません。議員立法です。議員提案でありますと、大蔵省にさきもって七万円か十万円かといったようなことでいろいろ憶測をして、そうして議員立法でありながら、七万円くらいで大蔵省が言うことを聞くのではないだろうかという仮定の上に立っておるということは、少しおかしいのではないかということを考えるのであります。したがって、総務長官にこの点、大蔵省、財政当局のいろいろふところぐあいもあるでありましょうが、総務長官としては七万円というものはこれでいいのかという問題について、ひとつ御所見を承りたいと思います。
  123. 臼井莊一

    ○臼井政府委員 まあ政府としては提案者ではございませんが、ただいま提案者の一人である八田委員から申し述べました理由は、政府としても妥当である、かように考えております。
  124. 野呂恭一

    ○野呂委員 次に、本法案と現憲法との関係につきまして、主として法制局のほうにお尋ねをいたしてまいりたいと思います。  憲法第十四条の第一項及び第三項、この規定の解釈と本法案によるところの一時金を給することとの関係が、どういうことに考えていったらいいのか。私どもといたしましては、本法案内容は、栄典としての金鵄勲章制度そのものの復活ではもちろんないし、敗戦による経済的既符権の剥奪に対する国家補償を本質としておるものと考えておるのでありますけれども、旧金鵄勲章年金受給者のみを対象として一時金を支給するということは、憲法第十四条第一項に違反するのではないかという一部の考え方もあるようでございますから、したがって、憲法の条文の解釈について、私は二、三の点をお尋ねいたしておきたいと思います。  憲法十四条一項の規定国民平等の原則とは、どういう差別を排除するというのか、具体的な内容について、衆議院の法制局の御見解を賜わりたいと思います。
  125. 鮫島真男

    ○鮫島法制局参事 憲法第十四条第一項及び第三項と本法律案関係についての御質問でございますので、お答えいたします。  憲法第十四条第一項は「すべて國民は、法の下に平等であって、人種、信條、性別、社會的身分又は門地により、政治的、経濟的又は社會的關係において、差別されない。」ということでございます。この第一項は、申すまでもないことでございますが、これは絶対的な平等あるいは機械的な平等を言っているのではございませんで、合理的な事情があれば、差別を設けても、第十四条第一項には直接違反しない、こういうことであろうと思います。  この法律案によりまする一時金の支給は、先ほど野呂先生もおっしゃいましたように、本法案の第一条におきまして、かつて年金を受けておりました方々が、その後年金を受けられなくなったという、そういう既得権ないし期待権を喪失したということ、それからまたそれらの方々で老齢な方々についてのみこの一時金を支給するということでございまして、これはやはり合理的な事情によりましてこういう一時金を支給するということに相なりますので、したがいまして、憲法第十四条第一項と抵触することはない、こういう考えでございます。  それからこの第三項の関係につきましては、これはただいま野呂先生のおっしゃいましたように、本法案は、金鵄勲章制度そのものを復活するものではなく、先ほど申し述べましたような趣旨において一時金を支給するということでございますので、この点も、第三項との関係において何ら問題にはならない、かように考えております。
  126. 野呂恭一

    ○野呂委員 まず、憲法第十四条に定めております平等の原則というものが、いわゆる機会的な平等ではない、人間関係におけるところの不合理な差別を排除するのだ、こういうように解釈していいわけですね。  それでは、その十四条三項の問題でございますが、一時金を支給するということは、特権ということにならないかどうか。つまり、栄典に伴う特権という問題において、本法案の一時金の支給は第三項に違反にならないかどうか、こういう点でありますが、いわゆる憲法上、特権というものの解釈は一体どう考えたらよいのか、この特権の問題について伺います。
  127. 鮫島真男

    ○鮫島法制局参事 特権の意義につきましてはいろいろな考えがあるわけでございますが、憲法第十四条第三項でいっておりまする特権というのは、ほかの人々と区別しましてある特定の人のみに権利を与える、あるいはその人のみに、たとえば一般に課せらるべき租税を、栄典の授与につけ加えましてそういうものを免除するとか、そういうような一般に与えられないところの地位を付与するのが、ここにいう特権というように解釈するのであります。
  128. 野呂恭一

    ○野呂委員 本法案趣旨説明が先般提案者から行なわれたのでありますが、その中に「その経済的期待権を喪失し、」云々、こういうことがある。この経済的期待権という経済的な利益、これと特権との関係はどう考えるか。つまり経済的期待権とは特権ではないのか、こういう点であります。
  129. 鮫島真男

    ○鮫島法制局参事 憲法第十四条第三項でいっておりまする特権は、栄典を授与しまして、その栄典を受けておる方に対してさらに特権を与えるということを、この第三項は禁止しておるわけでございます。しかし、この法律案におきましては、そういう栄典の授与というものは全然考えておりませんで、ただ一時金のみを与えるということでございますので、栄典の授与に特権を伴わせたということには相ならない、こういう考えでございます。
  130. 野呂恭一

    ○野呂委員 そうすると、この場合におきましては、本法案におきまする旧勲章年金受給者と一時金支給の特別措置との問題が、ちょうど文化勲章あるいは文化功労者年金の例との比較において、全く同一である、こういう解釈をしてよろしいか。これについて、いわゆる勲章勲章、年金制は年令制だとして、どこまでも刑だという考えにおいて解釈をしたらいいか、こういう点。
  131. 鮫島真男

    ○鮫島法制局参事 文化勲章は、文化勲章令によって賜与されるものであります。それから文化功労者年金は、これは文化功労者年金法に基づいて支給されるものでございます。文化功労者年金法に基づきまして、文化功労者に対して与えるというものでございます。したがいまして、文化勲章そのものに対して文化功労者年金を賜与するというのではございませんで、文化功労者としては、これは審議会がございまするが、その審議会の選考を経てきめられました文化功労者に対して年金を支給するというのでございまして、決して文化勲章を受けておられる方々に対して年金を支給する、こういうことには相なっておらないのでございます。実際の過去の例を見ますれば、文化功労者の中には、文化勲章を受けた方々を含めて選考されておるようでございますが、この二つは、法律的に申し上げますれば、全然関係がないわけでございます。それから本法案におきましては、そういう金鵄勲章そのものに対して一時金をやる、そういう関係もございませんので、文化勲章と文化功労者年金との関係とこの本法案関係は、これは全然また異質なものと考えております。
  132. 野呂恭一

    ○野呂委員 勲章自体を本法案は問題にしておるのではない。年金受給者であるから、憲法上何ら疑義がないのだ。同時に、年金受給者だけを対象にしていて、その勲章、つまり過去の金鵄勲章でありますが、したがって金鵄勲章というのは一つの条件的な問題であって、本質的には憲法第十四条の「栄誉、勲章その他の栄典の授與は、いかなる特権も伴はない。」、こういうことに何も抵触をしていない、こういうことを言われるわけですね。  そこで、本法案の憲法上の問題について締めくくりをいたしながら政府当局に御意見を承っておきたいと思うのでありますが、憲法第十四条の、平等の原則に関しては、本法案内容が、受給権者となるべき人の能力やあるいは経済的な地位あるいは社会に対する功績などを基準といたしまして経済的な利益を与えても、合理的な差別の排除であって、決して憲法に違反するものではない。戦争による犠牲全体の不均衡是正あるいは、平等化、こういう国家政策の点におきましても、一部の人々の間では、本法・案における金鵄勲章という性質そのものが現行憲法の基本的な精神に相反しておるし、憲法の前文の趣旨に定めた平和主義であるとかあるいは民主主義の精神に反し、軍国主義思想とつながるものではないかと主張している人もあるようであります。金鵄勲章というものが、国民主権の憲法と全く異なる明治憲法の天皇主権的な天皇軍隊に授与されたものであるから、これは現憲法の趣旨に反する、こういうことを言っておるわけです。われわれは、疑いなく、本法案内容というものは決してそういうものでなくして、かつての経済的既得権を失っておった人々に対して国家がどう補償するかという問題であって、命を捨てて国家のために尽くした行動そのものに対する報償的と申しまするか、あるいはそういうものに、先ほどお話しのありました老齢者を慰めるといったような要素を加味して、既得権を保護するというものであって、戦功を立てたものの評価を新しく見出して、武勲を奨励的な立場で取り上げていくものではないということを明確にしておかなければならないと思います。この点につきまして、私どもは、なぜ本法案政府提案にされなかったのか、旧地主の農地報償制度にいたしましても、あるいは長い間議員提案でありました国民の祝日に関する法律の一部改正案も、今国会におきましては政府提案に踏み切られたにもかかわらず、本法案だけが依然として議員提案であるという理由、あるいはこれは憲法上において法制局及び政府の間で統一的な見解がまだできていないからではないか、こういう疑問点も私はあったのではないだろうか、こういうふうに考えますので、政府、総務長官のこれに対する御所見をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  133. 臼井莊一

    ○臼井政府委員 本法案につきましては、第一には、先般提案理由の説明の際にも、草葉先生からも、国会法のたてまえからこういう種類の問題については議員立法にすることが政府立法よりは適切であるという、そういう御意見もあったわけでございまして、政府といたしましても、そういう御意見というものも一応尊重したい。また、憲法との関係につきましても、いまの質疑応答で明瞭になったのでございまするけれども、世上では、ややともするとこれがやはり金鵄勲章に伴う栄典の何か復活のような誤解がないではない点もありまするので、やはり政府といたしましてはそれもひとつ避けたい。それからさらにまた、これをいたしますると、一時賜金にまで拡大しろという議論等もございまするし、それら等もいろいろ勘案いたしまして、また一つには国会運営上の考慮もありまして、政府として提案するよりはやはり議員立法で出すほうが適当であろう、かように考えまして、政府といたしましては提案をいたさなかった次第でございます。
  134. 受田新吉

    受田議員 いま野呂委員のお尋ねに対して私から一曹申し上げておきたいと思います。  この法案に対しましては、民社党は自民党の方方と共同提案の形式をとらしていただきました。このことは、野呂委員指摘のとおり、この法案は決して旧軍国主義の復活などというような過去の亡霊にとらわれた人々の発言とは違いまして、長い間年金を対象に生活の設計を立てられた方々に、その経済獲得能力を喪失した方々に対する一部のお手伝いという意味法案でございまして、しかもよわい六十歳をこえられておい先の短い方々に、せめて一日も早くこのわずかではあるが国の志を差し上げるという意味で、われわれは共同提案をさしていただきました。(拍手)そういう意味でございまするから、この法案に反対をされる方々もあり、なかなか法案の通過が困難だという段階において、金鵄という名称を一応省かしていただいた新提案になっておりまするけれども、要は旧金鵄勲章年金をいただかれた方々に対して、老後にささやかな御苦労を謝する意味のお手伝いであることを含めて共同提案にさしていただいたことを、御報告いたしておきます。     —————————————
  135. 河本敏夫

    河本委員長 上林山君。
  136. 上林山榮吉

    上林委員 農地問題について質疑を試みたいと思っているのですけれども、当委員会において他の委員から何か発言があれば、後刻に譲りたい、こういうふうに考えておりますので、おはかりを願っておきたいと思います。
  137. 受田新吉

    受田委員 議事進行に関してですが、いま上林委員の御提案農地報償法案の審査を進められる御意図があるわけですか。
  138. 河本敏夫

    河本委員長 そうです。上林山君から発言を求められております。
  139. 受田新吉

    受田委員 それではちょっと私から意見を申し上げて、御理解を願ったらと思います。実はこの間から、当委員会は社会党が欠席したままで開かれております。社会党の諸君も、ILOの問題に関連してこの内閣委員会の審査を一応拒否しておるという形であると私は思うのです。そういう段階で、いまILO問題処理の首脳部交渉もやっておることでありますから、一日待てば、社会党の議員諸君も必ず出席してくれると思うのです。同時に、農地報償法案なるものは、本委員会におきましては一番最後に提案されております。各省設置関係など多くの法案がまだ審査過程にありますので、願わくは一番最後に提案された農地報償法案は、この当ではできればいままでのような各党の協力によって法案の審査を続行して、できるだけ審議に協力し合って実を結ぶというのがたてまえでありますから、順序を追うて各省設置法の片づけをし、しかる後に最後に提案された農地報償の審査に移る、そうした場合に、まじめな審査方式がとられるならば、野党のわれわれも御協力にやぶさかでありません。そういう意味で、もうすでに時刻は二時半を回ろうとしているこの段階で、なおいまから農地の質問に入られるということは、政府与党として十分御考慮願って、このあたりでひとつけさほどの理事懇談会で私の提唱したとおりの方式を御採用になって、農地報償の御質問は次会にお譲り相なるべきであると私は思いますので、さように皆さんの御協力を得たいと思います。私から発言をします。
  140. 河本敏夫

    河本委員長 ただいまの受田君の御発言の件につきましては、理事の間で御協議願いたいと思いますが……。
  141. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 ただいま民主社会党の御発言がございまして、一面われわれも賛成をする点もございます。あるいは一面はどうも納得し得ない点もございます。しかしながら、国会は、各党とも意見を尽くし、円満な議事を促進しなければならない。これは民主主義のルールであると思うのでございます。したがいまして、暫時休憩をしていただきまして、その休憩中に理事会を開いて、今後の審議をどうするかという問題を協議したいと思いますが、いかがでございましょう。
  142. 河本敏夫

    河本委員長 ただいまの荒舩君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  143. 河本敏夫

    河本委員長 御異議なしと認めます。  この際暫時休憩いたします。    午後二時三十三分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕