○稻村(隆)
委員 時間もありませんし、大出
委員もおられますから、簡単にしてやめますけれども、これは
日本の
農政が行き詰まっている一つの証拠なんですが、すべてそうなんです。もう行き詰まっている。これだけの進歩した
技術を持ちながら、それを実践することができないように行き詰まっている。たとえば
開拓問題でありますが、初め終戦後、これは私本
会議で問題にしたことがありますけれども、相当な、三十九万ヘクタールというものが
開拓された。ところがいま離農資金を出しているのです。これなど極端なことばで言えば、最もばかげた
政策じゃないかと私は思っております。こういうつまり一貫した一つの
農政を持っていないのです。そういうところで
日本の
農政がどうにもならないものになってしまったのじゃないか、こう私は思うのです。
それで私、結論として申し上げますが、機会がありましたら、私、
農林大臣にもこういう点についてゆっくり話したいと思っておったのですが、たとえば私はデンマークの
農業を二度見ました。これは何といっても世界
農業の模範で、かつてユーゴがスターリンから破門された原因について、ユーゴの当局者は言っておりました。それはつまりソホーズとかコルホーズ一点ばりでは、ユーゴのような小国の
農業形態の小さい、
耕地の少ないところでは、
農業生産力はどうしても落ちるというのです。そこでユーゴでは北欧に使節団をやった。ところがデンマーク
農業というものは非常によかった、そこでそれを模範にしてユーゴの
農業の再編をやった。ところが、それがスターリンのげきりんに触れて、修正主義としてつまり破門された、ほかにもありますけれども、これがその一つの大きな原因だった。ところがユーゴの
農業は、
農業だけはよくなっているのです。私はソ連を見て、それからデンマークに行って、それからユーゴに行ったのですが、ソ連の豚などは――決して
農業政策はうまくいっていない。私は、社会主義者だからなるべく社会主義国をほめたいけれども、うまくいっていない。豚なんか非常に小さい。犬みたいに小さい。われわれにいいところを見せるのだろうけれども……。ところがデンマークに行くと、豚が――いろいろな理由はありますが、つまり油を取った、バター、チーズを取った
あとのやつをそのまま豚に飲ませるわけです。そのようなことから豚がどんどん太って、ああいう牛のような大きな豚になる。ユーゴに行ったらやっぱり大きい。デンマークに負けないような大きな豚です。それを見ただけでも、私は一貫した
農業政策が
日本では必要じゃないかと思う。私がデンマークに行ったときに、北海道の酪農を
指導したエミール・フェンガーという人が生きていて、
日本の
農業技術は、戦後
日本に来たらびっくりしちゃって、酪農の
技術的水準はデンマークとほとんど変わらない。ただ肺菌のいる牛が少しまだあるから、これだけは違うけれども、そういう酪農
技術も最高水準に達していると言っている。結局は
日本に一貫せる
農政がない、行き
当たりばったりな、そのとき限りの
農政をやっている。役所のための
農政をやっている。そこで私は御参考までに申し上げますけれども、デンマークの
農業教育というのは、非常にいいのです。農学校の教育は非常に完備しておりまして、
農業者でなければ入れない。
農業の経験者でなければ入れない。農閑期だけに開校する。そしてそこで寄宿舎生活をして、年齢に制限ありませんが、いろいろな教育をやるわけです。ですから、デンマークの
農民は、ある点まで、
農民のいわゆる戸主というような人は、みんな
農業技術者です。それだから、たくさん役人を集めて、それに何も一々講習会なんかしなくてもよろしい。これは
農業教育が非常によろしい。それからまず第一に、
政府が
模範農場というのを方々につくった。そこではどの
程度の
農業が一番適しているか、そしてどういう機械を使ったらいいか、どうしたら一体赤字にならないか、こういう経営の
研究をやっている。それが方々にあるわけです。だから、その
模範農場をほかの
農民がみんなまねするのです。それだから、デンマークのどこへ行っても、ジャージーの牛二十頭、鶏が百羽、豚が五十頭というのは、判を押したように同じです。あるいは五十頭、百頭も牛を持っている者がありますけれども、みんな
模範農場をまねするのです。そういうふうなことで、管
理事業団というものは、むろん低利の金、三分の金で――このごろはようやく三分とか三分五厘の金が出てきたのですが、これでも
日本の
農業金融というものは、世界の文明国家の中で一番高利短期なものです。これは
調査された方はわかるだろうと思うのですが、
日本の
農業は、そういう高利短期な金融でやっているのです。これが向こうに行ったら、三十年以上百年、しかもそれがみんな三分くらい、そういうふうな金融をやっているわけです。そこから金を借りて、
模範農場を経営すると同じような経営をやるわけです。むろん
日本の
農業は、非常に複雑です、ヨーロッパのようなそういう単純な
農業じゃないわけですから、そう簡単には金はできないという点はあるかもしれぬけれども、
農業管
理事業団は、
模範農場にして、そこで、
日本の
農業経営はどれだけの金でもって問に合うか、こうしたらどれだけの利益があるか、どうしたら返還できるかという一つのモデルをつくらなければならない。そういう
農業でないと、幾ら管
理事業団をつくっても、何をやったって、どうにもならない。私はそういうふうなことが必要じゃないかと思う。
次に、私はさっきの問題に戻りますが、農機具サービスセンターはどうしてもってくる必要がある。世界の文明国で、農機具サービスセンターのない国はない。三十万台も耕うん機が入っておる。そして、これは
農民に言わせると、不幸運機だと言っている。幸運機じゃない、機械を買ったら貧乏して、そして
耕地面積がだんだん小さくなる。機械を買った金を払うから、いままで一町、二町持っていたのが、しまいに五反売った、三反売ったということになる。だから、これはどうしても農機具サービスセンターを設ける必要がある、こういうふうに
考えます、そういうふうな点に対して、一貫せる
農政を確立されることが一番急務じゃないか。この
日本の世界で一番進んだ――五反百姓が何とか食えるというような国は、世界どこに行ってもありませんよ。その点にいけば、
日本は果物でも、酪農でも、一切の
農業技術はさすがに進歩しているけれども、その
農業技術をみんな殺して使っている。だから、
農民がみんな熱情を失って都会に行ってしまっている。
農政というものは、役所のための
農政であって――そういうつもりではないけれども、実際はそうなっている。
農民のための
農政になっていない。こういう点に対して、
農林省ば一貫した
方針を立てて、それこそ真の
意味の
農業構造改善事業をやるべきではないか、こう私は思うのですが、その点につきまして
農林大臣の御
意見を承りたい。これをもちまして私の質問を終わりたいと思います。