-
-
○
中馬委員長 これより会議を開きます。
道路交通法の一部を改正する
法律案を議題とし、質疑を行ないます。
この際、昨日の質疑に対する答弁中保留された部分につき、警察庁
鈴木交通局長代理から発言を求められておりますので、これを許します。
鈴木交通局長代理。
-
○
鈴木(光)政府委員 昨日の委員会におきまして、
秋山先生から御指摘のありました神奈川県下の
道路交通法違反事件二件につきまして、その後県警本部からその事案の概要につきまして報告を徴した結果、その事案の概要並びにこれに対する本庁の見解を申し上げたいと思います。
御指摘の第一の問題は、金沢警察署管内の事件でございまして、この事件は
道路交通法第六十八条最高速度違反の事件でございます。
違反の日時は、昭和四十年二月八日午後九時ごろでございまして、場所は横浜市金沢区寺前町二十四番地の、ちょうど金沢警察署から北方約百メートルの地点でございますが、この地点で、おりからの県下一斉交通取り締まりに従事中、横浜市保土谷区岩崎町の芙蓉タクシー内の自動車運転者小根沢勇雄、三十一歳でございますが、同人が法定最高速度四十キロにかかわらず、十七キロほどオーバーの五十七キロで運転したということで逮捕に及んだのであります。逮捕した
警察官は、金沢警察署交通係巡査西清志でございます。
その当時の状況でございますけれども、先ほど申し上げましたように県下一斉交通取り締まりに従事中、当該車両が最高速度四十キロメートル毎時と指定された当該地域を、十七キロメートル毎時超過した五十七キロメートル毎時の速度が測定されましたので、前記被疑車両を停止させまして、記録テープを提示いたしましたるところ、被疑一事実を頑強に否認いたしましたので、署内に任意同行して取り調べを開始いたしましたが、住所、氏名につきましては、免許証に記載されているとおりであるとのみ称して、また違反事実につきましては否認の態度を示したほか、立ち去ろうとして、かつ逃亡のおそれがあると判断いたしまして、現行犯逮捕して、身柄を拘束して取り調べることにしたものでございます。
なお、被疑者につきましては、翌二月十日午前八時三十分をもちまして身柄を横浜区検察庁に送致いたしましたが、勾留の必要を認めずといたしまして、同日身柄在宅となりまして、本人は正式裁判を請求いたしましたものでございます。
以上が神奈川県警察からの報告でございます。
本件に対します私どもの見解でございますが、本件は神奈川県警察の報告に徴しまするに、刑事訴訟法上現行犯逮捕の要件は充足しておりますので、違法の問題は起こらないと思いますけれども、取り扱い上やや妥当性を欠くという点が認められますので、神奈川県警察本部長に対しましてさらに事実を詳細に調査して適宜な措置をとるように、昨日さっそく指示いたしました。
なお、本件につきましては昨日御指摘のように告訴が出ておりますが、この告訴事件につきましては、被逮捕者小根沢勇雄に対しまして、補充調書を作成するために同人に出頭を求めておりますが、まだ本人が出頭いたしませんので、現在のところ関係書類が整わないままになっております。
以上の状況でございまして、昨日御指摘のありましたように、この事案につきましては現行犯逮捕ということで違法ではございませんけれども、任意捜査を原則といたします観点から、やや妥当性を欠くというふうに判断しております。
第二の御指摘のありました事案につきましては、道交法第七条並びに第九条二項の一方通行違反でございまして、違反被疑者は前の例と同じく芙蓉タクシーの自動車運転手の内藤盛蔵、三十歳でございます。これもやはり逮捕をいたしましたわけでございますが、そのときの状況につきましては、逮捕
警察官の
小林巡査が池ノ坂派出所で勤務中、同派出所東わきの道路を一方通行出口方面から入り口方面に進行してくる違反タクシーを認めまして、同巡査は警笛を鳴らして停止を求めたのでございます。車両は直ちに停止いたしましたが、免許証の呈示を求めましたところ、運転席にありまして免許証をひらひらと見せびらかす状態で、確認することができないということでございました。
小林巡査は、不正免許の疑いを持ち始めましたので、さらに再三にわたって呈示を求めましたが、運転者は応じないということで、本署に連絡して、交通係の応援を求めて、さらに任意の取り調べを重ねてまいりましたが、これに応じない。そこで身元がどうしても確認できないということで、したがって、このままでは任意の取り調べができないと判断いたしまして、その場にて現行犯逮捕をしたわけでございます。そういう状況でございまして、本件につきましては、先ほどの第一の事例と違いまして、全く身元を確認できない、免許証をひらひらさせるだけで内容を確認することができないという状態が続きましたので、やむを得ず逮捕をしたということであります。この事案につきましては、逮捕権を行使したことはやむを得ないというふうに考えておる次第でございます。
以上が
秋山先生の御指摘の事案に対する警察庁としての事案の検討並びにそれに対する見解でございます。
なお、もう一件保留がございましたが、
細谷先生の御質問中、信号機の各府県の要求はどのくらいあるかということでございますが、この点につきましては、四十年度から四十三年度までの四年間——警察庁におきまして、交通警察の長期展望をいたしまして、将来交通警察はどうあるべきかということを検討したのでございますが、この検討の中で、信号機を将来この四年間にどのくらいつけたらいいかということで、各府県の要望を取りまとめたのでございますが、御承知のように、信号機の設置につきましては、今後の道路事情並びに交通事情の推移によりまして、変化することが予想されますけれども、現在の時点においてどのくらいこの四年間に整備すべきだろうかということで報告を徴しましたところ、定周期の信号機にいたしまして、約五千基という要求が出てまいりました。したがって、この五千基をもとにいたしまして、昨日御答弁申し上げましたように、補助金によりますところの信号機と損保協会の資金を財源にいたしましたところの起債等によりまして、この四年間にこの五千機を充足しようということで、目下その計画を着々進めておる次第でございます。
以上昨日保留いたしました答弁の概要を御説明申し上げました。
-
-
○
秋山委員 ただいま昨日の質問に対しまして、御答弁をいただいたわけなんですが、小根沢勇雄については、
警察官等の遺憾のことがあったということでございますし、なおまたもう一つの内藤盛蔵につきましては、全くそれとは逆な立場であって、免許証の呈示を拒んだために、交通警官の応援を求めて、これを連行したということでございますが、これは両方が対象的な問題であるというような御答弁を伺うような始末でございます。しかしながら、いずれにいたしましても、最近行なわれておる事例の中におきましては、最近ひんぱんに行なわれておることの一つとして、切符制になりますと、運転者が速度違反なりあるいはその他の問題につきまして、簡単なものでありましても、これは一時的にも免許証を取り上げて、それにかわる交付証ですか、交換券ですか、こうしたものを渡しているということの事例が方々で行なわれております。そういうことになると、本人の申し立てなどは一考だにしないという結論になりがちでございまして、しかもこれは本式裁判を一々行なうということになってもかなりな不便が行なわれるわけでございます。したがって、これを要約すれば、そういうことの結果あらわれてくる問題としては、
警察官のその場における認定のみによって一方的に処置をされがちであります。そういうことがもし行なわれてくるといたしますと、これは運転者というものは非常に迷惑をこうむるばかりであって、非常に困る問題が起こってくるのではないか、こういうふうな考えが持てるわけであります。したがって、先般来いろいろ質疑の中で行なわれましたように、
警察官においても、できる限り指導の面において、よほどりっぱな指導をしていかないと、間々、いま御答弁のありましたような遺憾な点が、より以上に多くなってくるということになりがちだと思います。そういうことではならないので、より一そうあなた方のほうで指導の面について努力をしていただいて、そういうようなことが今後起こらないようにしていただきたいということが第一であります。
もう一つは、こうした事例を見てまいりますと、なるほど二番目の件については、これはお互い言い分はあるでしょう。あるでしょうが、それはさておいても、事例としては、さきの遺憾の意を表せられたほうにおいては二月八日の問題であり、その後においては四月二十五日の問題であります。そうなってまいりますと、片一方になって考えますれば、
警察官が一方的にそうしたことを起こしておるということが、各仲間に伝わってくるわけであります。そうなってくると、何か感情的な面もあらわれてこないわけではありません。そういうことがもし起こってくるといたしますると、その問題ごとについて、いろいろかつて
警察官が行なってまいりました白タクの問題なんかにおいて、いろいろ大きな事件の起こった事例もございます。そうしたことになりかねないということも考えられてくるだろうと思います。そういうことを考えてくると、常時
警察官とそうした運転者の仲間たちと相反目し合っていかねばならない、こういうことも起こってくるのではないかということも予想できるわけであります。私どもはそういうことが起こらないようにお互いに注意し合っていかなければならない。ただしそこで考えるべきことは、確かにスピード違反にしても、あるいは駐車違反にしても、信号無視にしても、事例そのものは決していいことではないと思います。私はいつもこの場においてあなた方に要望したり、あるいはまた質疑を通じて申し上げていることは、少なくとも車のほうがえてして自分のほうの安全が強いためか、人的な問題については軽視をしがちな気がしますので、そういうことを常時言い続けております。そういう立場から考えましても、私は運転者と
警察官と相反目するようなことがあってはならない、こういうことが原則だろうと思うのであります。したがって、何回も申し上げるようでございますが、あなた方のほうにおいても、その点を十分考慮していただいて、指導の面でより一そうの万全を期していただきたい、かように考えるわけであります。少なくもこうした事例が再び三たび起こらないように努力をしていただきたい、私はこういうことを考えます。したがって、これも理屈を言い出せば、第二の回答のほうにおきましても確かに言い分はあるでしょう。私の持っている記録によれば、あなたの答弁とはかなり食い違っている面があります。まりながら、ここでこういったことを議論する場でもありませんし、そういうことは差し控えますけれども、いずれにしても、捕えるほうと捕えられるほうにおいては、かなり食い違いがあることもまたやむを得ないことかもわかりません。いずれにいたしましても、単なる交通事犯であり、しかも運転免許証というものは身分証明のような形で交付されているものであって、住所を問われて、ここに書いてありますと言ったことはけしからぬということにはならない。もし住所を移転した場合には即刻届けるようになっておりますから、したがって、これは身分証明にもなるし、また本人がしっかりしたところに勤務をしておれば、これもまた逃亡のおそれはないというのが常識であろうと思います。そういうことの上に立って考えたときに、こうしたわずかな交通問題について、そのつど留置をしていく、こういうことになりますと、経費の面で考えましても、それぞれ留置費用がかかってまいりますし、あるいはまたそのためにいろいろな問題をかもしてくるということになりますと、これは決していいことじゃないと思います。そういうことも考えられますので、今後なお一そうの御注意を願い、御注告を申し上げて、私の質問を終わります。
-
-
○
細谷委員 大臣がいらっしゃっていますから、ちょっとお尋ねしたいのです。昨日と、またいまの答弁で、信号機の財源問題についてお尋ねしたいのです。
消防施設の充実の際に、消防庁の松村消防庁長官が、当初はこう答えております。それは、消防施設の充実は非常に重要だから、今年度は起債もふやした、そこで補助をつけたところに対しては起債は認めないで、そして損保等の起債については別途にさらに充実のほうに回す、こういう考えであったのでありますが、いままでのやり方はそうではなくて、補助のついたものについては優先的に損保の起債等が認められて、地方財源の枯渇しておる今日ですからやれるようにという答弁をいただいて、従来どおり補助のついたものには起債をつけていく、こういうことになったわけでありますが、この信号機の問題については、昨日私が
警察庁長官なりあるいは交通局長さんにお尋ねしたところでは、地方団体の負担がふえないように努力するというかなり前進した御答弁はいただいたのでありますけれども、はっきりしておることは、約五千個、ある私の資料では、七千二百二十個というように私は考えておるのでありますが、現実の要求案が五千個、これを四十年から四十三年まで四カ年間にやらなければならぬ。そうしますと、大体五千個といたしますと、七十万円平均として三十五億円ということになります。四十年度の国の補助額というのは一億八千万円、かりに二億としても四年間では八億円であります。三十五億円かかるのに八億の補助しかつかない。半分の補助をするというのがたてまえでありますけれども、数字はそういうふうになります。その上に、いまお聞きしますと、補助金をつけたものと、それから損保債の起債というのは別立てだということであります。補助金をつけたものと起債をつけたものは別々ですから、具体的にいうと、補助金がついたものには起債はつけない、こういうことになりますと、これは三十五億円のうち八億円だけが国の負担であって、本来ならば十七億五千万円の負担をしなければならないのでありますけれども、八億しか負担せぬ、あとは起債、いずれはこれは返さなければいけないということになりますと、信号機の五千個を実現するために、結果としては補助に起債をつけておったいままでのやり方から、補助と起債は別々でありますから、
地方財政にしわ寄せをする、こういう形になります。市町村等に地元負担という形でぶっかけたことは、やめさせるように指導するということでありますけれども、県にいたしましても、これは大きな負担になることは、いま私が申し上げた数字ではっきりしております。現実は、七十万円平均と言いましたけれども、九十万円くらいかかりますから、これはもう大部分がやはり市町村の財政でやらなければならぬということになります。
そこで、大臣にお尋ねしたいことは、これはたいへんなことでありますから、超過負担というのはもう来年から二年間でやめるという自治省の方針のようでございますが、補助額が少ない、ですからそれに起債を見るというようなそういう従来の考えをやめて、別建てということでありますから、これは消防庁も最初考えておったようでありますけれども、従来どおり補助金のついたものについては、やはり優先的に起債をつけてやる、信号機をふやすために
地方財政にこのようなしわ寄せをしないようにひとつお願いをしなければならぬと思うのですが、この際大臣の決意と方針をひとつ承っておきたいと思います。
-
○吉武国務大臣 私は実はいま初めて承ったのでございますが、方針が変わったということを存じませんけれども、いま政府委員の連中から聞いてみますと、従来の補助金のついたところだけに起債を認めるということになると、なかなか数が増加できないというところから、補助金は補助金、それから損保のほうの起債は起債ということで、できるだけ増設をしようという趣旨からお答えしたようでございます。
細谷先生のおっしゃるようにしますと、補助金というものは大体きまっておりますから、したがって、数が非常に小さくなるということになりますので、将来の問題としては、私は実はこの補助金も増加せざるを得ぬと思っております。もっと施設を——交通事故をなくするには、昨日もお答えいたしましたように、私どものほうの所管としては交通取り締まりの分をある程度強化しませんと、これもほうっておけないから今度の改正を出したわけでありますが、同時に、交通事故をなくするためには施設が必要でございます。これは昨日もお答えしたとおり。その施設の中には、私のほうで受け持つものは信号機、それから建設省で受け持つ、いわゆる道路付設の施設ももっと充実しなければいかぬと思うのです。横断歩道橋にいたしましても、あるいはガードレールにいたしましても、もっとやれば、それだけ事故が減っている実績があるのですから。私ども将来の問題として、補助金の増額は努力しなければならぬし、当然のことだと私は思いますが、いま前のように、補助金のついたところだけに起債をしぼられるということになりますと、本年度の計画の増加というものがそれだけ減るということになりますので、もうしばらくひとつこの問題は検討さしていただいて、
細谷先生のように、補助金を増額するというほうに努力をすることにして、あまり起債をくぎづけにされますと、事務当局がいうように、ちょっとこれは予定より非常に少なくなるということになりますから、ひとつ補助金の増額に努力をするということで御了承願いたいと思います。
-
○
細谷委員 納得がいきません。消防施設は、昨年もたいへんな問題がありまして、地方団体がやらなければならぬわけでありますが、国の方針に合わせてやっていこう、その際に、消防庁長官も警察庁と同じような、信号機と同じような、消防施設の充実について、起債は起債、補助金は補助金という考えを持っておったようでありますけれども、それではいかぬということで、従来の方針で、補助のついたものについてはやはり起債をつけていこう、こういうお考え、結論に到達したわけです。この交通問題は、ことしの一月から四月までは若干減って、警察庁は自慢しておるようでありますけれども、昨年は三万人以上死んでいるのですよ。日清戦争以上の、一つの戦争以上の、交通戦争といわれるように人が死んでいる。ですから佐藤総理もこの問題を非常に重要視されまして、生命尊重ということで、総理府にこれを統括的に推進するところの会議をつくったほどです。きょうの新聞にも、それの推進についての人事、機構上の問題が発表されております。こういう時期に、いままで八百くらいしかつくっておらぬのを、四カ年で五千個というと千二百五十です。五割以上ふやしていく、五割以上ふやすのに、予算というとたいしてふやさないで、起債を損保から五億円引き出してきて、補助と起債は別ものだという考えは、数をふやすに急であって、実際の財政的なしわ寄せを地方団体にさせるということは、どうしても納得できません。私は、大臣が誠意を持ってやられるようなおことばに受け取っておりますけれども、もっとはっきりしたお答えをこの問題についていただかなければ、私は了承することはできません。
-
○吉武国務大臣 いま承りますと、従来は、補助一本だったものですね。それを損保のほうから何か起債を引き出して、少しでも増設をしようという努力で新しくやった問題ですから、一般の、従来ありましたのは、従来の厚生施設、福祉施設等は全部補助がございますと、その補助のついたものはある程度起債で見るという原則は、
細谷先生のおっしゃるとおりですけれども、この問題はいままでは補助だけでやっていたのを、今度増設するために補助が思うようにとれなかったから、起債で他の面をひとつ補おうという趣旨から出ているわけです。ですからこれをまた補助にくっつけられるというと、せっかく増設しようとしてやったものが違ったふうに結論が出るようになりますから、それで私が先ほど申しましたように、補助をもっととりたい、これはもう根本的にはそれでいくよりほかないのです。ですから、ひとつ補助については、誠意を持って努力をするということでことしは……。
-
○
細谷委員 昨年とことしは、予算は変わっておらぬですよ。四カ年計画で五割の信号機をよけいやるというなら、補助も四、五割はふやしたらいかがです。その上に、それほどスピードアップするので、一方
地方財政は枯渇しておるんだ。ひとつ起債で一部それを継ぎ足してめんどう見てやろうという、これが自治省の態度でなければならぬと私は思うのです。経過は大臣のおっしゃるとおり、消防は従来から補助と損保がありました。この信号機については、今度損保の資金を引き出すのは初めてだ。その努力は私は多といたしますけれども、それで別にやろうというのでは、
地方財政にしわ寄せするものではありませんか。何かもっと前進した回答を得なければ私は了承できません。
-
○吉武国務大臣 大体の経過は
細谷先生も御承知のとおりで、消防は従来ありましたのを変更するということであるから、まあそれは変更しないで、従来どおりにやろうということになったと思うのです。この問題はしわ寄せといっても、補助があったやつを、別に特に負担をかけるわけじゃないので、従来どおりなのですが、それを、補助が少ないから振り当てが思うようにいかぬから、起債で見るところは起債で見ようということでやったわけであります。ですから特にしわ寄せをさせたわけではない。従来とちっとも変わりはないわけです。ですから、結論を言えば補助が少ないからそういうことになる、そうでしょう。補助がうんとございますれば数多くいくんだけれども、補助が少ないために振り当たりがうまくいかないから、補助金がいかないところは起債で色をつけよう、こういうことなんです。将来私は、補助を増さなければならぬ、当然増すべきである、こう思いますので、補助の増額で努力をしていって、そうして補助がうんと取れるようになれば起債と抱き合わせだってかまわないわけですから、それは両方が悪いわけじゃない。いまの
細谷先生のようにおっしゃると、せっかくやったやつがもとどおりの数になっちゃって、せっかく事故を防止しようと思ったけれども、数は同じだということになったのでは、趣旨を貫くわけにいきませんから、その点をひとつ御了承願いたいと思います。
-
○
細谷委員 そうなってまいりますと、四カ年計画五千個とやった以上は、従来の八百という実績が千二百五十個になるわけでありますから、これはやはり五割増です。いま言ったように地方負担がそれだけふえていく。三十五億にたった八億程度しかない、そういうことでありますが、これは、五割ふやすぐらいは、五百億円の予備費もあるわけです。これは総理大臣の重点施策なんですから、そのぐらいのことについては警察庁と自治省で地方団体に迷惑がかからぬように——迷惑はかかるでしょうけれども、スムーズにこれがいくように配慮していただかなければならぬと私は思う。どうもだんだんお聞きしますと、大臣のことばはどうもことばだけで、まあ末期でありますから何とかして
法律案を通そうということでうまいことを言っておりますけれども、腹の中は一つも前進しておらぬですよ。これはぜひひとつもっと前進した回答をやってください。たいしたことはないですよ。
-
○吉武国務大臣 御趣旨の点に沿うて努力をいたしましょう。
-
-
○
華山委員 私も
細谷さんと全く同じ意見でございまして、自治大臣は少ないからと言うが、少なくきめたのは政府じゃありませんか。政府が少なくきめたのであって、したがいまして、ほかの人が少なくきめたからやむを得ないというかっこうは私はおかしいと思う。総理大臣がこれほど交通の問題について、生命尊重といっておるが、さっぱり予算をふやさない。そのしりはいつもやるとおりに借金で地方でやれ、これじゃただ言うだけの政府なのであって、そのしりは全部地方だ。こんなことではおかしいじゃないですか。これをきめたのは一体だれの責任なんです。新しくことしから起債でやるのだという方針をおきめになったのは、これは大蔵省の責任ですか、自治省の責任ですか、ひとつ承りたい。
-
○吉武国務大臣 政府といたしましては補助金の額はこの程度でやむを得ないということで予算計上をしておるのでございます。その上になお努力をしようじゃないかということで、損保と交渉いたしまして、少しでも起債のワクをとって増加をしよう、これは努力でございます。ですから、責任とかどうとか、予算が少ない多いは、それはおっしゃるとおり私はこれで十分だとは思いません。でありますから、努力をすることをお約束をしているわけでございます。その上になおかつ努力をして、起債のワクを認めるようにしたということでございますから、その努力はひとつお買いをいただきたい、かように思います。
-
○
華山委員 原則といたしまして、信号機というものは国のほうで補助金として持つべきものであって、ことしはやむを得なかったから起債でやったんだ、本来原則論としては起債でやるべきものじゃない、こういうふうにわれわれ了解してよろしゅうございますか。
-
○吉武国務大臣 さようでございます。そのとおりでございます。
-
○
華山委員 そうしますと、ことしは例外なんであって、来年からは地方にはこういうものについて単独事業として起債をさせない、こういう方針で今後いかれますか。
-
○吉武国務大臣 先ほど申しましたように、予算というものにはおおよその限界があるわけであります。ところが要望については、無限というわけじゃございませんが、より多くのものをわれわれは要望し、国民も要望しておるわけであります。でありますから、来年は増額について大いに努力して取りますが、しかしそれには限界があるでございましょう。そうしたらその限界で打ち切る、起債はもうやめて打ち切って、そうして数はその程度で満足するということではなくて、やはり私は努力はいたすべきだということでございます。
-
○
華山委員 議論めきますが、信号機はほかの道とかなんとか、そういうものと違いますよ。人間の生命に関することじゃないですか。予算には限度があるとか、要望は何とかとか、そういうふうな問題じゃないと思うのです。ほかのことと違いますよ。そういうことからいって、この交通の問題については、国の問題であるとともに地方の問題なんです。地方だけにやらせるというふうな原則はやめてもらいたい。国と地方が共同してやる、この原則をあくまでもとっていただきたい。単独事業でやらせるというふうな方針、そういう方針でなくてもやる場合がありますけれども、そういう方針はやめていただきたい、こういうふうに考えますが、いかがでございますか。
-
○吉武国務大臣 先ほど来申しますように、できる限りの、増設、予算の増額をやって施設の完備をはかっていくという方向で努力をいたしております。
-
○
華山委員 私はもう議論ですからやめますけれども、そういうことにつきまして総理大臣に聞いていただきたい。そういうことでいいのかどうか。総理大臣の御趣旨がそれでいいんだということであるならば、総理大臣のいま言っていることは、全部ただかっこうだけだということになる。そういうことでいいのかどうか、ひとつ総理大臣によくお聞きになって、そんなたいした額じゃないのですから、重点的な政府の施策としてやっていただきたいということを申し上げて、あとは議論になりますからやめます。私はたいへん不満足です。
-
○
中馬委員長 ほかに質疑はありませんか。——なければ本案についての質疑はこれにて終了いたしました。
-
○
中馬委員長 これより本案を討論に付するのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。
道路交通法の一部を改正する
法律案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
-
○
中馬委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
-
○
中馬委員長 この際、
久保田円次君、
佐野憲治君及び門司亮から、三派共同提出をもって本案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
この際、本動議を議題とし、その趣旨の説明を求めます。
久保田円次君。
-
○久保田(円)委員 ただいま議題となりました
道路交通法の一部を改正する
法律案に対する付帯決議につきまして、私は自由民主党、日本社会党、民主社会党の三党を代表してその趣旨を御説明いたします。
まず、最初に、案文を朗読いたします。
道路交通法の一部を改正する
法律案に対する附帯決議(案)
政府は、現下の交通事故激増のすう勢に対処し、交通事故防止の徹底を図るため、特に左の諸点について強力かつ抜本的な措置を講じ、その対策に遺憾なきを期すべきである。
一、警察庁、運輸省、建設省、その他交通に関係のある行政機関相互間の連絡調整をさらに徹底し、一元的総合的な道路交通行政を策定推進すること。
二、交通安全施設等(歩道、信号機、ガード・レール、街路照明灯、横断歩道橋、道路標識、踏切道の改良等)を早急に整備拡充し、そのための十分な財政措置を講ずること。特に地方公共団体に対する国の財政措置は極めて僅少であるのでその財源を充実強化すること。
三、交通安全を実践するための一大国民運動を展開して、交通法令の周知徹底を期するとともに、遵法精神を昂揚し、交通道徳の
確立を図ること。
四、学校教育を通じ、交通安全教育を強力に推進すること。
五、不適格運転者を排除するため、適性検査を強化するなど運転免許制度を根本的に再検討し、すみやかにその改善合理化を図ること。
六、自動車損害賠償保障制度の内容を充実強化し、被害者救済制度につき一層の改善を図ること。
七、軽自動車等に対する運転免許の資格要件の強化については、中小企業への影響が少くないことにかんがみ、本改正の趣旨の周知徹底を期することはもちろん、その影響を最少限に止めるよう慎重に配慮すること。
右決議する。
次に、提案の趣旨を御説明いたします。
御承知のように、交通事故による貴重な人命の損傷は全国的に激増の一途をたどっており、昨年度の死者は一万三千三百十八人を数えて、史上最高を記録しております。しかも、ある推計によれば、昭和四十年代、すなわち今後の十年間に、日本国民のうち約一千万人の者が交通事故によって死傷するものと推定されているのでありまして、交通問題こそは現下の最も深刻な社会問題といわなければなりません。
しかるに、政府のとった交通事故防止対策を顧みますると、ただいま案文で述べましたように、なお遺憾な点が少なくないのであります。
さきにも述べましたように、国民に多大の不安を与えている交通問題をいかにして解決するかということは、現下最大の政治的、社会的問題でありまして、その解決は一日といえども遷延することを許されません。政府はさきに交通対策本部を設け、本年に入りましてからは、一月に交通事故防止の徹底をはかるための緊急対策を決定し、三月には、交通安全国民会議を開催するなど対策を進めてまいっておりまするが、交通事故防止の徹底をはかるためには、何よりも勇断をもってその対策を緊急かつ強力に推進しなければならないと存ずるのであります。
このため、当面最も張く要望されますことは、道路交通行政の総合化、一元化ということであります。道路交通行政については、これまで所管がそれぞれに分散しているため、ややもすれば責任の所在が不明確となりやすいばかりでなく、有機的、一体的な行政の推進されないうらみがきわめて強く、したがって、道路交通行政の総合化ないし実質的な一元化をはかることこそ焦眉の急務といわなければなりません。
次に、じみちな、しかし最も実効ある交通事故防止対策として、歩道、信号機、ガード・レール、横断歩道橋等の交通安全施設等をさらに一そう整備拡充するとともに、国は地方公共団体に対して交通事故防止のための十分な財政措置を講ずることが強く望まれるのであります。
ざらに、今日の抜き差しならぬ交通戦争を克服するためには、国をあげて交通対策に取り組むことが何よりも肝要であります。このためには、先進諸外国にならい、学校教育を通じて交通安全教育を強力に推進するとともに、交通安全を実践するための一大国民運動を早急に展開して、交通法令の周知徹底と交通道徳の
確立をはかることがきわめて大切であると思います。
またちまたに横行する悪質運転者等、いわゆる不適格運転者の排除も当面の急務であります。このためには、現行運転免許制度を根本的に再検討して、すみやかにその改善合理化をはかるととが必要であり、次いで被害者保護の見地からは、自動車損害賠償保障制度についても保険金額の引き上げと、自動車損害賠償責任保険審議会の答申にもございますように、原動機つき自転車を保険の対象とすることなど、その内容の充実強化が望まれ、被害者救済制度については、救急医療を充実するなど、その改善が要望せられるのであります。
最後に、このたびの改正に基づく軽自動車や自動三輪車に対する運転免許資格要件の強化につきましては、日本の中小企業の雇用実態からいたしまして、影響するところが少なくないものと予想されますので、本改正が中小企業の方々に円滑に受け入れられますよう、その趣旨を十分に周知徹底せしめるとともに、法実施後の推移を慎重に見守ることにより、中小企業への影響を最小限度にとどめるべきであると存ずるのであります。
以上が本決議案の趣旨であります。何とぞ各位の御賛同をお願いいたします。
-
○
中馬委員長 本動議について採決いたします。
本動議のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
-
○
中馬委員長 御異議なしと認めます。よって、本案は
久保田円次君外二名提出の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。
この際吉武国務大臣から発言を求められておりますのでこれを許します。吉武国務大臣。
-
○吉武国務大臣 政府といたしましては、ただいま御決定になりました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重して十分努力をいたす所存でございます。
—————————————
-
○
中馬委員長 おはかりいたします。ただいま議決されました本案に関する委員会報告書の作成等については、
委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
-
○
中馬委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
〔報告書は附録に掲載〕
————◇—————
-
-
○
佐野委員 私、警察問題に対して質問いたしたいと思いますが、特に最近労働組合運動、あるいは労働争議に関しまして、警察権の発動がしばしば見られるわけですが、これらの最近の傾向に対しまして、労働法の関係学者並びに有識者から警察権の発動に対して強い非難が加えられているわけです。と申し上げますのも、たとえば労働運動に対する警察権不介入の原則を逸脱している事象があまりにも多過ぎる。第二の点としては、警察権の権限を越えて乱用がなされているのではないか。第三の点としては、労働組合運動そのものを治安視する傾向が強くなっているのではないか、こういう点が一斉に指摘されているわけでありますが、私きわめて遺憾なことだと思うわけであります。
そこで、具体的に、最近起こりました問題といたしまして、三公社五現業を中心とする春季闘争と申しますか、大幅な賃金値上げの統一要求と統
一行動に関しまして、いろいろ警察権の発動が見られたわけでありますが、この点につきまして私特にお聞きいたしたいのは、この労使の紛争が公共企業体労働委員会の手を通じまして、いわゆる調停から仲裁へと、このような動きが相互の信頼のもとに行なわれようとしておりましたし、あるいは当局と、公社と、それらの労働組合との間に自主的な調整が行なわれようとしておりました四月二十九日から三十日の段階にかけまして、次の点につきまして警察の警備活動に対する御報告をまず求めたいと思うわけであります。
その第一点は、当時における警備活動はどのようにして行なわれておったか、どのような手段方法をもって行なわれておったかという点、第二の点は、現場における警備活動といたしまして警察権の発動を見ているわけですが、その中で二つの態様、一つは
警察官職務執行法による行政警察の立場において発動された根拠、第二の点といたしまして刑事訴訟法に基づく司法警察の立場において発動されたところの態様、この二つにつきまして詳細な御報告をいただきたいと思います。第三の点といたしまして、事後措置の警備活動といたしまして犯罪の捜査、逮捕、送致、このようなものが一体どのように発生され、措置されているか。以上三点についてまず御報告をいただきたいと思います。
-
○後藤説明員 いま先生御質問の点は、今回いわゆる四・三〇闘争といたしまして全国的に国労あるいは一部の動労が中心となりまして、各所において不法事犯が行なわれたわけでありますが、その過程におきまして警察権の発動を見、あるいは
職務執行法によるところの整理なども行なわれたわけでございます。
第一点の警備活動の手段方法ということでございますけれども、私ども今回の事件に対しまする基本的な態度といたしましては、これは御承知のように公共企業体等労働関係法第十七条の規定によりまして争議権を持っておらない組合でございます。しかるにもかかわらず、これらの組合、動労と申しますか、事前に四月三十日をとらえてストライキを起こすということを宣言しておったわけでございます。警察といたしましては、当然このストライキに伴いまして不法事件が起こるであろうということを予想したのでございます。警察といたしましてはストライキ権がないかどうかということと警察の取り締まりは必ずしも一致するものではございませんけれども、従来の経験にかんがみまして、公労協のこれらのストライキに伴いましては、往々にして不法越軌行為から犯罪行為が出てくるということから、犯罪がありました場合におきましては、当然警察法のたてまえからいたしましても、また警職法、あるいは刑事訴訟法のたてまえからいたしましても、それぞれの活動をして、国民の生命、身体、財産を守らなければならぬということで、ある程度の体制を整えたのでございます。ただ、しかしながら私どもといたしましては、不必要に刺激をしたり、あるいはいわれなき非難を受けるといったような行動のないようにということは、十分注意をいたしておったのでございます。大部分の地方におきましては、警察ざたということにまではいかないで済んでおるのでございますけれども、幾つかの個所におきましては、
警察官の実力による規制、あるいは犯罪捜査の対象になるような事態を引き起こしておるのでございます。
全般的に申しますと、一定の拠点が指定されましたので、その情報に基づきまして、これらの起こり得べき事案に対処するために必要な規模の制服員を動員するとともに、現場における不法事件の場合の検挙に備えまして私服員を動員した、こういうことでございます。
それから第二点の現場における活動でございますが、これは現場におきましては、もう二十人目ごろから各所において出てまいりましたけれども乗務員の争奪と申しますか、当局側が乗務員を確保しようという行為と、組合側が乗務員を確保して、三十日には乗せないようにしようという行為とが、各地において行なわれました。そういうところから入りまして、いろいろこの過程をめぐりまして双方にもみ合いが起こったような事態もございます。そういう場合におきましては、これは警職法五条の制止の対象になりますものにつきましては制止をいたしておりますし、さらにその程度が犯罪行為に当たる場合におきましては、その過程におきましてもそれを犯罪捜査の対象にしておるということでございます。刑事訴訟法の立場からいたしますと、現場においてそのような犯罪が行なわれました者につきまして、必要な向きにつきましては現行犯の逮捕をもって臨んでおりますし、それから、事後において諸般の資料を収集した結果捜査すべき者につきましては、事後において検挙をいたしておるのでございます。
それから第三点の事後の捜査ということでございますが、私どもといたしましては、現場においてできるだけトラブルのないようにということを考えまして所要の
警察官を動員したのでありますが、遺憾ながら犯罪行為が発生しておる点が幾つかございますので、それらにつきましてはそれぞれ証拠資料を収集いたしまして、事後において被疑者の逮捕あるいは任意出頭による取り調べあるいはその他の捜索、差し押え等を行なっておるわけでございます。
-
○
佐野委員 これはもっと数学的に把握しておられないのですか。逮捕の件数とか、あるいはそれらに対して……。
-
○後藤説明員 件数で申しますと、ただいままで四月三十日の闘争につきまして私どものほうで検挙いたしました者は、国労と動労と合わせまして十五名でございます。そのうち現行犯の逮捕で処理いたしました者が四名でございます。それから事後令状によりまして逮捕いたしました者が十名でございます。それから任意出頭で処理いたしました者が一名でございます。それで全部で十五名になるわけでございます。
-
○
佐野委員 具体的な質問に入る前に一応、長官もおいででありますので、次の二つの点に対して警察の考え方をただしておきたいと思います。
一つは、いま後藤課長の報告の中にありました公労法十七条違反の問題につきまして、条文を読んでみましても、十七条で争議行為の禁止は規定されております。これに対する罰則は十八条における民事上の解雇を科しておる。ところが刑事上に対してはこの法規は黙して語っていないわけです。ですから、当然これは労組法におけるところの問題との関連が出てくるのじゃないか。いわゆる刑事責任を免責されているのかどうか。失われておるものなのかどうか。民事上には解雇の処分を受ける。ところが刑事上においてはどうなんだ。他の国家公務員法なりその他には規定がありますけれども、公共企業体等労働関係法にはこの規定がないわけです。その場合に、いわゆる十七条で違法ストだ——それから民事的な問題として、私的の自治の立場に立って労使双方の問題を解決していくという労働法のたてまえからいえば私は当然だと思うのですが、これに対して刑事罰の対象としないという考えを持っておるのか。あるいは刑事罰の対象になる、こういうぐあいに警察は判断して、違法ストだ、大がかりな警備情報体制をとっておられるのか、この点に対して一応お聞きしておきたいと思います。
-
○江口政府委員 公労法違反は、ただいま読み上げられた条文から直接刑事罰の対象になるかどうかということは出てこないと考えます。公労法違反の争議をやったから、即刑事罰がついてないのに刑事罰の対象になるというような予断をもってわれわれ警備をするわけじゃございません。しかしながら、争議の許されない組合が争議をやるというようなことになりますれば、争議が当然許されている組合の場合と違いまして、経営者側といいますか、当局側との摩擦、あるいは一般民衆との摩擦というようなことが、争議の許されている場合以上に予想されるということはいえると思います。したがいまして、そういうことからする警備上の必要がほかの場合より、より多くあるだろうということは予想いたします。すぐ刑事罰を受けるとは思い幸せんけれども、また同時に、そのことは労働組合法にいう免責云々ということはもう全然問題にならないものだ、こういう立場をとっております。
-
○
佐野委員 学者におきましても、あるいは成文法、解釈法上いろいろな問題点を含んでおる条文だと思うのですけれども、一応それはまた後ほど具体的な問題でただしていきたいと思います。
第二に、警察の補充性の原理、これに対しまして一体どのように解釈して、こういう原理に対して承認をなさっておられますかどうか。
-
○江口政府委員 ただいまおっしゃったのはたぶん警察比例の原則……。
-
-
○江口政府委員 補充性とは、聞き返すようですけれども、どういう……。
-
○
佐野委員 警察権の行使における原理といたしまして、補充性の原理として学者が定説として述べておるわけです。すなわち一つの面としては、国民相互の私法的関係に介入しない、第二の面として、警察は政府の政策、行政執行に積極的な推進の機能を果たさない、この二つの作用を警察補充の原理だ、こういうぐあいに学者は述べておるし、また、近代国家と警察国家との相違も、この原理を承認するかどうかにあるんだということなんですけれども……。
-
○江口政府委員 私、そのことばそのものについては存じませんけれども、ただいまおっしゃいましたような内容については、警察の積極行政でないという面からして当然のことであり、私たちも常にさよう心がけて行動しているつもりでございます。
-
○
佐野委員 そこで最近の労働刑事事件の統計、累計、これらを見てみますと非常に変化をしてきておるわけですね。皆さんの考え方が非常に変化をしてきておる、こういうことは累計の中から出てくる。たとえば、最初の場合、労働組合運動、争議の中で派生する具体的な、あるいは個別的な問題が訴追の対象になってまいる。ところが昭和三十二年ぐらいからの統計を見てまいりますと、威力業務妨害罪あるいはまた暴力行為等取締法、これが刑事事件に適用になってきておる。これは明確に数字的にそういうようなことが私、出てきておるだろうと思うのです。そうすると、こういうぐあいに変わってまいりましたことの中で、労働組合なり争議行為の中から派生する個別的な問題を訴追するだけではなくて、最近は労働組合、あるいは争議なり、怠業なり、あるいは実力行使そのものが犯罪を構成する、こういう考えに変わってきておるんじゃないか、こういう変わり方が、犯罪の統計の中から、刑事事件統計の中から、非常に大きな変化が最近の警察は多くなってきておる。これは一体どこに根拠があるのか、御説明願いたいと思います。
-
○江口政府委員 私のほうの統計を見ますと、ずっと争議の数はふえておりまするけれども、それに伴う検挙というものは、おっしゃるようにふえているという数字はございません。ただ警察は、労働問題について不介入の原則をとっているとはいえ、具体的な刑事事件があれば、それが免責されるかどうかという点はもちろん考慮いたしますけれども、そうでない、免責外の行為については、やはりはっきりとやっていかなければならぬという立場をだんだん発揮いたしてきましたことは事実でございまして、現在におきましてもそういう立場をとっております。
-
○
佐野委員 二十九年の十一月六日に出されました政府の、不法な実力行使の禁止、これが労働次官通達で出されてまいっておるわけです。それから三十年の十二月三日の通達として、公務員公共企業体職員の労働争議についての通達が出てまいっております。それから昭和三十一年の二月九日には、次官会議の申し合せ通達として、公務員等の労働運動について、それから三十二年の一月十四日には団結権、団体交渉その他の団体行動権に関する労働教育行政の指針というのが労働次官通牒によって出されておるわけです。三十二年の九月二十七日においては、閣議了解事項として、いま申し上げました一連の通達、通牒を総括いたしまして、公共企業体等の職員の労働組合の争議行為について、こういう通達がなされておるわけですが、これらの通達が警察権の発動に非常に大きな影響を及ぼしておるんじゃないか。先ほど長官は、量はそう拡大してないんだと言われますけれども、私は労働刑事事件に対する累計から見てまいりますと、質的に大きな変化を遂げてまいっておる。二十九年以前における同じ公共企業体に対する取り締まり、あるいはその中で派生している問題と、それ以後におけるところの昭和三十二年ごろからとられておるところの警察と質的に違ってきて、威力業務妨害罪なり暴力行為等取締法が適用されてまいっておる。それ以前はほとんどそういうものがないわけですがね。それから冒頭に言われた派生する個別的な問題に対する追及が行なわれておったのが、質的にもう変わってきてしまった。労働組合運動そのものを違法視する、実力行使そのものが犯罪の構成、そこに組合そのものが責任を追及されるという形に私は質的に大きな変化を遂げてきておるじゃないか、かようにも考えられるわけで、だからまた冒頭にお聞きいたしました、警察の補充性の原理という面から考えてまいりますとどうかという点と、もう一つは、こういう通牒に対して警察は拘束されているのかどうか、こういう点に対して、あるいはまた政府、行政庁がいわゆる行政の執行にあたりまして、現在ある法律に対しまして、そのもとにおける労働組合運動に対して一方的な公権的な解釈を下す、こういう行為に対しまして、一体警察はこれに拘束され、あるいは作用を受ける、こういうことがあるのかないのか、この点をまずお聞きしておきたいと思います。
-
○江口政府委員 第一に警察の姿勢の問題でございまして、昭和二十九年以前と三十年以後との間に質的な取り締まりの変化があるのじゃないかという御質問でございますが、一々の具体の事件を分析して、そういう結果が出ますればこれは何とも申し上げませんが、私も戦後二十年、中央にあることもございますが、地方にあったこともございまして、ずっと労働組合運動も見ておりますし、それに伴う警察事件というものもタッチいたしておりますが、ちっともその間に、いつ幾日からどういうふうに考え方を変えてやるというような指示を受けたこともございませんければ、またこちらのほうから指示をしたということもございません。しいていえば、終戦直後のごたごたの時期には警察もふなれなために、労働問題不介入ということばだけで、個々具体の事件になるたけタッチしなければ無難だというようなことで過ごした時期はあったかと思いますが、それではやはりいかぬ、警察がやるべき仕事があるならばやらにゃいかぬという立場をとっていることは先ほど申し上げたとおりであります。
それから第二点の、他の行政庁の解釈にこちらは左右されるかどうかという御質問でございますが、これは全然左右されないと申し上げるのはいかがかとも思います。とにかく責任を持った行政庁の解釈を、私たちが尊重するといいますか、私たち自身の考えをまとめる上におきましても、そういうことを参考にするということは当然でございまして、各行政庁の解釈そのものは尊重いたします。しかしながら、それだからといって、警察が発動するしないという判断は、そういうところから頼まれるとか、あるいは圧力がかかってどうこうするというようなことはございません。
-
○
佐野委員 具体的にいろいろ問題を通じてお尋ねすればよくわかってくると思うのですけれども、きょうの本論はそうでもないわけだし、また別の機会にさせていただきたいと思うのですが、ただやはり、誤解を与えていますのは、たとえば昭和二十九年の十一月六日におけるこの不法な実力行使の防止、これは労働省の一方的な見解なんですけれども、こういう一方的な公権的な見解を出される、これは行政庁としては当然かもわかりません。しかしながら、同時に警察からアメリカ極東司令官に対しまして、やはり米軍が雇用している労働者のストに対する警察の措置という連絡措置がなされている。それが労働省のピケ通達と同一の文句をもってなされてきている。こういうふうになってまいりますと、行政庁の公権的な解釈に拘束されるのじゃないのだといいながら、実際は同日付をもって
警察庁長官から米軍極東司令部に対して警察の考え方が述べられていっておる。同じ内容になってしまっておる。こういうことにも非常に問題がかもし出ますし、私は率直に申し上げまして、行政庁がある法規に対しまして一方的な公権的な解釈を下すということは、とりもなおさず一定の労働政策を遂行しようとする考え方、これに基づくと思うのであります。ですから、労働政策として現在の法規と労働組合運動に対していろいろな解釈を下すということは、行政庁として行き過ぎな解釈でもありますけれども、そうした公権的な解釈を加えるにいたしましても、警察はそれらのいわゆる行政の執行過程に介入して、その政策を積極的に果たす機能を持っていないのだ、機能を果たさないのだということが、近代国家と警察国家の唯一の差異だといわれている。この原理はやはり守っていただかなければならないのじゃないか。そうでなければ、大きな問題がここから起こってくるのじゃないかという点を憂慮いたしますので、一応確かめたわけですけれども、原則論にあまりこだわっておりましても恐縮で、特に二十九日から三十日にかけまして、いま申し上げました十七条に基づく争議行為がとられようとしているという警察の判断に基づきまして、いろいろな警備情報活動が行なわれておった。その中にもいろいろな点があるのではないか。この点につきましては、また後ほどお伺いいたすといたしまして、特に昭和三十二年ですか、三十四年ですか、大阪の平野署かの一巡査が落としました手帳を通じまして、全逓大阪スパイ事件として国会の問題にもなりましたけれども、そういうような情報活動がやはり行なわれておったのではないか。そういうことがいろいろ労働組合の皆さんから疑惑をもって見られておるわけですが、私は、この問題につきまして、また後ほど同僚議員も質問すると思いますので、現場活動の面に対してお尋ねしておきたいと思うのですが、現場活動におきまして、十七条違反に基づくというだけではなくて、そういう中から当然いろいろな事件が通常の状態において発生する、こういう考え方に立って警備配置をされた。そういう配置のしかたを見てまいりますと、たとえば秋田県の場合におきまして、秋田県の警察千四、五百名の中で千名もここに導入しなくちゃならない、そういう緊迫した、あるいは明白現実的な危機が見られたのかどうか。あるいは鉄道公安官の出動数と警官の出動数とが出されておるわけですけれども、この資料を見てまいりましても、ともかく三倍から四倍、はなはだしい場合になりますと、たとえば宮崎の場合におきましては、公安官の出動数が八十に対しまして五百名の
警察官が出動されていっておる。岡山の倉敷の場合には、
警察官が百五十名、公安官が二十名だ。第一次的に公安官がこれらの問題に対して犯罪の発生、あるいはその他のおそれを防止するために出動している。これは第一次的に予防措置としての責任があると思いますけれども、ところが警察がこれに対して六倍、ないしいま申し上げましたような七倍に及ぶところの
警察官を出動させねばならなかった、それほどの状況であったのかどうか、こういう点に対してはどうですか。
-
○秦野政府委員 四月三十日の闘争の際に、私どもの判断では、確かに組合の上層部の方々などが刑事事件を起こすような方向にまでいかないようにという努力をされたことも、ある程度承知しておるのでありますけれども、全体的な情報を見ますと、やはりかなり不法行為にまで発展するであろうという情勢判断をしたわけでございます。むろんこれは地域により、拠点によってかなりの差はあるのでありますけれども、やはり結果的に見ましてもかなりの不法事犯が出たわけでございますが、そういうような情勢判断をいたしまして、それに応じて各府県の責任者が適当な待機なり出動、
警察官の配置を実行したわけでございますが、いまお話しのように、動員の数が非常に多いのじゃないかというふうなお話でございますけれども、実際問題としては、
警察官の動員は、地方なんかに参りますと、非常に交通が不便であり、時間もかかる、急に事案が起きたとしても、とうてい間に合わないというようなこともございまして、勢い、したがって、現場で必要であるという数字よりも、やはりある程度上回った人数を動員するということがあり得るわけであります。
実際問題としまして、秋田県のお話がございましたけれども、秋田の場合に人数が少し多いのじゃないかという感じが実は私どももしたわけであります。いろいろ調べてみますと、実際に
警察官が活動するために動いた数というものは二百数十名。と申しますのは秋田駅の構内に入ったものは九十何名であります。それから構外のところで支援労組等との対峙がございまして、何しろ駅構内等、危険な区域に接着したところでございますので、そこで若干警戒要員がございました。それらを通じて二百数十名——三百には至っておりません。あとは、ほとんどの動員の人数というものは、構外の場所で待機をされておったというのが実際の状況でございます。それに類するような方法で
警察官を動かしておるのでございまして、一応最初の計画で県本部等におきまして
警察官動員計画を立てますが、動員された
警察官が全部が全部取り締まりに従事するということではない点を御了承願いたいと思います。
-
○
佐野委員 しかし、戦後国鉄には、幾多の労使における紛争——労使と申しますか、公社との間における紛争があるわけですけれども、そういう中で、今回ほど大量に
警察官が動員されたということはないというぐあいに国鉄当局も言っておるわけですが、一体これほど大量に動員しなくちゃならないという情勢というものがあったのかどうか。
警察官職務執行法第五条に基づく、犯罪がまさに行なわれようとしておることを認めた、あるいは第二の要件として、身体、生命に危険が及び、財産に重大な損害を与えるおそれがある、第三の要件として急を要する、こういう事態が発生を予測されたかどうか。あるいはまたそういう事態が行なわれていること、そういう、通常の状態においてそういうものが発生することを予期されないにもかかわらず、これほど大量の
警察官が動員されなければならなかった根拠というのは、一体どこにあるわけですか。その点をもう少し説明願いたいと思います。
-
○秦野政府委員 全国的に四月二十九日から三十日にかけての闘争の場に
警察官が出動した人数は、個所で言いますと、拠点十四カ所であります。これは構内に立ち入って警察権を行使しております。しかし、その十四カ所で実際に
警察官が職権行使をしたという人数は大体千五百くらいでございます。組合員の動員の数というものは、おそらく全体の拠点でいうならば相当の人数になったろう。私どもある程度の数字はあるのですが、正確なところはわかりませんが、かなりの人数になっておるわけでございまして、実際に事案を処理した経験から判断をいたしますと、大体実際
警察官が現場に行って、でき得るならば犯罪が発生しないという状態がいいのですけれども、不幸にして犯罪が発生されたならばやはりこれをできるだけすみやかに捜査する、処理するということでなければわれわれの立場としてはいけないわけでございまして、実際にやった経験で見ますと、やはり不法行為がかなり見のがされているという実情がございまして、今日までのところ、先ほど申し上げましたように十数名の検挙者でございます。私どもは不法行為と申しましても刑法等の構成要件を満たすというような事案について介入というか職権を行使するわけでございますが、そういう事案が相当数起きておるわけでございます。したがって動員された数が非常に過大であるというふうには私どもは考えておらぬのでございます。
-
○
佐野委員 第二の点といたしまして、従来なら構外に待機しておるのに、今回の場合におきましては国鉄当局の要請もないのに
警察官みずからが構内に入り込んでおる、こういう事例が出てきておるわけです。特に過去における慣例から申しましても、あるいはまた鉄道公安官に対する法律によりましても、警察との協力規定があるわけでございます。それから当然公安官と組合員との間においてトラブルが起こる。起こった場合において、鉄道当局からの要請によって
警察官が出動していく、こういう慣行が保たれておるのに、今次の場合におきましては警察が国鉄当局の要請もない、あるいは無用の刺激を避ける——片方においては第三者機関における調整が行なわれておる。公共企業体等労働委員会がいわゆる調停から仲裁へと相互の信頼を取り戻す自主的な解決をはかるために最大限の努力を片方でなしておる。しかも民事上の私法的な関係ともいえる賃上げ運動でありますから、こういう問題をめぐって中央ではそうなっておる上、現場におきましてはいろいろの交渉がなされておる。もちろん双方において自主的な解決をはかりたい、自主的におさめたい、こういう努力をされておるときに、警察のほうが当局は何をしておるのだ、おれたちは
警察官職務執行法第五条によって制止あるいは警告、予防、この任務に基づいて出動してきたのだ、こういうことで構内に入り込んで異常な雰囲気をもたらした、こういうことが述べられておるのですがどうですか。そういう報告を受けておりますか。
-
○秦野政府委員 四月三十日のような場合ですと、あらかじめそういう不法事案が発生するというようなことが予想されることでございますので、事前に国鉄当局とは各府県とも十分連絡をいたしまして、
警察官の出動あるいは構内立ち入りにつきましては連絡、了承の上に立って、大体今回の場合は職権が行なわれておるわけでございます。ただ実際問題として、大ぜいの
警察官あるいはまた公安職員というようなことで、末端に十分徹底しないというような場合もたまに見受けられる。そこで多少現場でトラブルが起きるというようなこともあるわけでございます。今回の場合も一つそのような報告を受けたのでございますけれども、やはりその場合によく調べてみますと、事前には幹部のほうとは十分連絡をとっておるということがわかりまして、問題は末端への組織の中での徹底ということについて、十分将来注意をしなければならぬというふうに考えたような事例が一つあるわけでございます。
-
-
○秦野政府委員 千葉県でございます。
-
○
佐野委員 広島におきまして、これは二十三日に属する事件ですけれども、広島の小郡機関区の合理化闘争に対しまして、
警察官五百名程度が出動して鉄道構内に立ち入った。これに対しまして国鉄当局、特に広島支社の労働課長が現場におりまして、労使の間にいま交渉が進展中である、
警察官の出動で組合側に無用の刺激を与えることは得策ではない、だから出動を差し控えてもらいたいと再三にわたって申し入れた。しかも業務上何らの支障も起っていない。にもかかわらず出動しておった。こういうために非常に緊迫した、逆にそのことが原因となって緊迫した空気が生まれた、こういうぐあいに支社の労働課長が述べておるけれども、これらに対して御報告をお受けになっておりますか。
-
○秦野政府委員 具体的なただいまの御質問のお話については聞いておらぬのでございます。よく調べてみたいと思いますが、ただ私どもは交渉がいま始まっているから、いま進行中だから、したがって
警察官の出動をどうのこうのする、控えるとか控えないとかいうことは、さほどわれわれの重大な関心ではないのでございまして、もっぱらそこに刑罰法令に触れるような事案が発生する可能性という観点に立って出動の問題をきめていくわけでございます。そういうことでやっておるわけでございますが、ただいまのお話の問題につきましてよく調べてみたいと思います。
-
○
細谷委員 いまの点に関連いたしまして。先ほど警備局長のおことばで、上のほうでは連絡が十分ついておったのだ、末端では行き過ぎがあったのだ、そういう例もあったのだ、こういうおことばですが、これはどこですか。
-
○秦野政府委員 私ども先般のような闘争が行なわれ、そこに不法な事案の発生が予想されるというような状況のもとにおいては、いろいろわれわれのできる範囲で情報をとるわけでございます。その場合に、私どもいろいろ、むろん私自身も幹部の人と会ったこともあるのですが、国鉄、国労の首脳部の方の中では、やはり刑事事件というようなものに発展するというようなことはわれわれの思うところではないのであって、そういうところまでいかないでひとつ大いにやっていくんだというようなことも事実あったわけでございます。しかし私どもの判断は、各府県の状況を聞いてみましても、やはり勢いのおもむくところ不法事案の発生も起こりかねないという状況がございまして、それに備えて
警察官の動員配置をしたというのでございます。
-
○
細谷委員 その勢いのおもむくところというのを、どうも労働団体にばかりその責任を課しておるのではないか。先ほども小郡の例であったりですが、これをはっきり十分調査していないようでありますけれども、第一線に出ている人がとにかく待ってほしいと言うのに対して、警察当局は、何を言っておるんだ、あれをどうして見のがすことができるかというような形で、その再三の当局側のちょっと待ってほしいということを踏み越えてやはりやっておる。これは警察が勢い余った。私はその現地を見ておりませんけれども、それは騎虎の勢いといいますか、あるいは上部の意思が下部末端に徹底していなかったということがよくいわれるのでありますけれども、そういう例がしばしばあるのです。今回の場合もそういうことがあったと私もお聞きしておるのであって、これは先ほど来
佐野委員が言われたような原則に立って十分にやっていただかなければいかぬと思うのです。ただ趣旨徹底が不十分だったということだけでは済まされない問題じゃないか、こう私は思うのですが、いかがですか。
-
○秦野政府委員 ただいまの具体の問題につきましては、よく調べて、われわれも注意すべきところは十分注意していかなければならぬというふうに考えます。
なおこの機会に、先ほど私が勢いのおもむくところと申し上げましたのは、たとえば列車を止めるというような挙に出る場合にも、おのずからそこに限度と申しますか、たとえば今度具体的な不法行為の例で出たのですけれども、ポイントの切りかえをしようとする者に対して、信号機に連なる線を足で踏んでこれをじゃまするとか、あるいは乗務員の争奪といったような問題にしましても、そこにはおのずから限度があるというようなことで、しかし実際の場合に、集団心理と申しますか、現場のエキサイトした状況のもとにおいては、やはり犯罪、刑罰法令に触れるというような行為にまで発展する可能性がある。だからわれわれとしては、できるならばそういう事態にならぬように、不幸にして事態がそういうふうになった場合には、これはまた捜査をしなければならぬ、こういう意味で申し上げたわけでございます。
-
○
佐野委員 私、先ほどのお話を聞きながら、本委員会へ
警察官職務執行法の改正案が出たときのことを思い起こすわけです。あのときの皆さんの改正法案の考え方が、実はいまの場合にも出てきておるんではないか、かように考えるわけですが、現在は、
警察官職務執行に対する要件といたしまして、非常にきびしく定めておるわけです。たとえば立ち入りの場合におきましても、第四条に基づく危険な事態がある場合において、あるいは第五条におけるところの、いま申しました犯罪がまさに行なわれようとするのを認めたとき、生命、身体に対する危険が及んだとき、重大な財産の損害をこうむるおそれがあったとき、急を要する、この二つの予想する危険な状態が発生して人の生命、身体、財産に危害が切迫した場合においてのみ立ち入り、こういうことが認められておるわけですね。しかし皆さんが改正法案に出されようとしたのは、犯罪が行なわれることが明らかであると認めたとき、また犯罪が行なわれようとしており、そのまま放置しては人の生命、財産、身体に危険が及び、公共の安全と秩序が著しく乱されるおそれのあることが明らかである、こういうぐあいに改正されようとしておったことが大きな問題を派生さしたわけです。と同時に、この現在の
警察官職務執行法では、立ち入りの場合におきましても、二つのきびしい要件がなければ立ち入ることができない。国鉄における争議の場合は、しばしば申し上げますように、公共企業体労働委員会が自主的解決のために努力をなすっておる。しかも現場におきましてもいろいろな折衝がなされておる。業務におけるところの支障なり、あるいは生命、身体に対して重大な犯罪が行なわれていないというときに、これほどたくさんの
警察官を動員しなければならないというのは、何か予測するものがあったからそういうことが行なわれておるのじゃないか。その争議が正当であるかどうかというその認定は
警察官に与えられておるというところに、違法性なりその他のことに対して先入的な考え方、労働運動に対する
警察官の意識、そういう問題がからんで、非常に行き過ぎた行動がとられておるのではないかということを非常におそれるわけですが、と同時に、なお現場からのいろいろな報告によりますと、たとえば
警察官が構内に立ち入り、しかも中央からの指令なりあるいは公共企業体労働委員会の調停の状況を刻々組合に知らさなければならない、組合側も自主的な統一意思のもとにおいて行動する以上、幹部が連絡、伝達に当たらなければならない、こういうことまでも阻止してしまう、通行を禁止する、逆に
警察官のピケが張られておる、こういうことになってまいりますと、何か労働組合の実力行使そのものが犯罪を構成しておるのだ、こういう解釈に立って、特に、私が前段に申し上げました次官通達その他に示される行政庁の公権的な労働対策としてとられる解釈に、
警察官自身もなってしまっておるところに、しかもそういう解釈が行政庁においてとられるとしても、現場においてはやはり労働慣行その他において自主的に解決すべき協定なり話し合いなりがあるし、組合執行部といたしましても、組合員との間に意思の連絡、統一、機関決定の伝達その他の必要な任務があるにもかかわらず、それを
警察官がまさに犯罪が行なわれると認めた、あるいは生命、身体に危険が及んでいない、急を要していないにもかかわらず、交通を遮断してしまって組合活動を阻害をする、こういうことになってまいりますと、これは非常に重大な、労働運動を治安問題視しておるのじゃないか、こういう労働法学者の批判がここから生まれてくるのではないか。現に皆さんもそういう報告を受けておられるでしょうけれども、組合の役員が組合員との連絡をとることも拒否してしまう、一切の交通を遮断する、そういうことが一体
警察官職務執行法の中のどういう要件があったからなされたのか、こういう点に対して、もう少し御説明を願いたいと思うのです。
-
○秦野政府委員 ただいまのお話の中に、私どもが十分戒心していかなければならない問題があると思います。ただ、あえて私どもの立場で申させていただきますと、大体今回の構内の立ち入り等につきましては、要請に基づいて
警察官が入ってくる、あるいは事前の打ち合わせで入っておるということでございます。それから警察権の介入というものは、あくまでも刑罰法令に触れるような状況、あるいは生命、身体、財産、先ほどお話があったようなそういう条件を満たすときに初めて発動するものでございまして、今回たとえば不法事案がわりあい少ないのに
警察官が多いじゃないかという印象もないではございませんけれども、今回のような事例というのは集団の行動でございます。なるほど大きな不幸な事件は起きなかったわけでございますけれども、中には組合員と管理者とのもみ合いで、かなり激しい状況になってきたという事例も間々あるのでございまして、一触即発というようなもことも、群集心理の関係で、私どもはここ幾たびも経験をしておるわけでございまして、やはり少し用心し過ぎるのではないかというようなことを言われるかもしれませんけれども、やはりそういう不法な事案が起こったときに、これはたいへんな責任でございます。あくまでも労使の争いには絶対に介入しない、手続がどういうふうに進行して——いろいろそういう問題はあろうと思いますが、そういうこと自体にはわれわれは相関しないということで、正直のところこういった労使の争いというような状況下に警察が出動するということにつきましては、責任者としては一番神経を使っておるわけでございます。そういうことでございまして、具体の問題につきましては、ひとつよく調べてみたいと思います。
-
○
佐野委員 ILOのドライヤー氏も指摘しておられますように、日本の特に官公労をめぐる労働運動の中で、やはり双方における相互信頼の欠如ということを指摘し、話し合いによる意見の交換その他を通じて諸般の解決ができ得るではないか、 諸外国の例をあげてもおられるわけです。たとえば、諸外国においては、鉄道のストライキを禁止しておる国は少ない。同じ鉄道であって、民間の場合は許されて、何の場合は許されない、これらの点についても、もっと突っ込んで話をする必要があるんではないか。そういう意味から、政府におきましても公務員制度審議会が生まれて、いわゆる労働基本権として憲法二十八条に保障しておる国民主権と基本人権の尊重を主として労働基本権が保障されておる。その保障の中に争議権が含まれておるわけです。公共企業体だから争議権を剥奪しなければならぬ根拠というものは非常に薄いではないか、こういうこともあるいはそのときの事情によってあり得るかもわからない。しかし、民間に許して、単に政府に使用されているだけで一体それが生命、身体に対する重大な影響を及ぼすだろうか、いわゆるそれの自由権利の体系そのものとしての国民的な公共の安全と秩序が乱れるだろうか、こういう疑問はやはり諸外国の労働学者は一斉に、やはり日本の法体系に対して不審を抱くのは私は当然だと思うのです。大体そういう中にあって、だからこそ労働関係調整法の中におきましても民事上の制裁を加えておるけれども、刑事上の責任につきましては黙して語らない。やはりそれ以上の刑罰規定を置くことはできなかったんだということも私たちは理解できるのではないかと思うのですが、そういう中で行なわれておる問題につきまして、警察当局が国鉄その他と相談をしておる。労働組合ともいろいろな意見をお聞きになって、しかもそれが立ち入りの場合には、
警察官職務執行法によって非常にきびしい要件があるにもかかわらず、それを安易に、しかもこれは不法な、あるいはまた労働運動そのものが違法性を持っておるんだ、だからその要請のもとにおいては不法行為が発生するんだろうというような解釈で安易に出動しておられる、こういうところに警察権の権限を逸脱しておるんではないかという点が指摘されておると思うのですけれども、特にそういう問題とも関連いたしましてお聞きしておきたいのは、たとえば南浦和の電車区で、地本の責任者たる、現地の責任者たる外山
四郎、これは地本の
委員長だそうですけれども、現行犯で逮捕されているそうです。この場合におきましても、いわゆる公共企業体労働委員会が双方の信頼を取り戻して、調停から仲裁へと、これに対する承認を得てそれに移行する。ここで各労働組合は実力行使を取り下げるという指令を出すに至るには若干の時間がかかる、そういう指令が出されることがほぼ確実になった、テレビが伝えておる。現場の責任者として国労本部から停止の指令が来ることが要求される、そういう意味におきまして、すぐ電車を走らせなくてはならないというので、五時二十分一番電車を発車させるために説得をして、当然組合本部から指令が来る、発進させた。二番電車を発進させようとするときに現行犯として逮捕しておる。こういうことなどに対しましても、全く不当な現行犯逮捕、刑事訴訟法による逮捕でしょうけれども、そういう事例に対する報告を受けておりますか。
-
○後藤説明員 報告を受けております。この事件はいま先生がおっしゃいましたように、四月三十日の早期に南浦和駅で起こった事件でございますけれども、これは私どものほうの報告によりますと、電車を発車させようというのを線路上にピケを張ってこれを妨害したり、あるいは運転手席を占拠して中からかぎをかけるというようなことで発車を妨害し、そのために電車が相当時間、約一時間ばかりおくれた、こういうことでございます。
-
○
佐野委員 この場合におきましても、組合として当然指令が出るものとして現地の責任者として電車を発進させておる。しかも一番電車が出て、二番電車を発進させるために、行動隊その他に対する説得活動をやっておる。こういうことが現行犯逮捕という形で進められているわけですけれども、しかしこういうものは後ほど幾らでも刑事訴訟法に基づいて、もし問題があれば訴追できるのではないか。現行犯逮捕という形で組合としての行動をしている組織の責任者をそういう形において逮捕することは、少なくとも組合活動に対する一つの責任者をねらえというのはおかしいのですが、やはりそういう労働組合機能を麻痺させる、こういうことが考えられて行なわれた現行犯逮捕ではないか。第一線の
警察官はそれを知らない。何かあれば
委員長を逮捕しよう、こういう考え方でやられておった。だから本人の行動その他に対しましても冷静な観察がなされなかったのではないかということも考えるわけですけれども、そういう点に対しまして、警察としてはもう少し調査していただきたい、こういうように考えるわけですけれども、あるいはまた、たとえば国鉄の旭川ですか、旭川事件というのが昭和三十三年にありましたときとられている録音によりますと、いわゆる
委員長、書記長を逮捕する、そうすると組合はつぶれるのだ、あれらをねらえ、こういう声が
警察官の声として録音にのっておるということもあるわけでありまして、そういうようなことが非常に不明朗な印象を与えているし、不当な弾圧が考えられておったんじゃないかという点が指摘されているわけなんですけれども、こういう点に対しても十分な御配慮をしていただきたい。ただ私、ここでもう一つ、警察比例の原則に対しましてどのような考え方をこの場合でも持っておられるか、いわゆる
警察官職務執行法第一条第二項に警察比例の原則が明確に規定されているわけですけれども、これらの点から見てまいりまして、個々のたとえば勝田電車区において現行犯として逮捕されておるのを見てまいりましても、単に鉄道構内を歩いておった、もちろんそれは青年行動隊であったということから、警察からずぼしをかけられておったために現行犯で逮捕されておる。しかもこれに対しまして当局からも、これは国鉄当局あるいは公安委員からも事実行為が非常に単純であるし、すぐ釈放してもらいたいということに対しても耳をかさないで、いわゆる責任者だからというので勾留した。これは警察だけじゃない、警察当局の問題にもからんでまいりますけれども、そういうことが行なわれるところに問題があると思うのです。ですから、これらのことを通じまして、私は、やはりもう少し確かめておきたいのは、警察の比例の原則を一体どのように理解しておられるか、こういう点をひとつお聞きしておきたいと思います。
-
○秦野政府委員 警察の権限は何といっても人権に関する問題でもあるし、また、ただいまお話のような組合運動というようなものに関連して発動する場合には、一歩誤れば断圧とか非常に忌まわしい結果を招く点もあるわけでございます。したがって、私どもとしては、最小限度権利の使用ということを念頭に警察の活動を指導いたしておるわけでございます。特に普通の刑事事件でもそうなんですけれども、労使の問題になりますというと、御説のように、きわめてデリケートでございますので、格別その点については意を用いておるような次第でございます。ただ、重ねて申し上げることになりますけれども、公労法でスト行為を禁止されている。違法なストである。だから、直ちに警察は、したがって、出動するのだということはございません。そういうようなことではなくて、あくまでもこれはもう集団のトラブルなんかが起きて、そこに不法な事案が発生するというようなことを予想し、そういうような可能性ということを十分予想しての出動でございます。また、ただいまお話のございました問題等につきまして、具体的な前後の状況等を承知しませんとなかなか判断がむずかしいのでございますけれども、組合員が集会のために入っていくとか、そういったものを、むやみにとめるというようなことは、それ自体では間違いでございます。われわれとしても、比例の原則というものを十分念頭に置いて将来ともやってまいりたい、かように考えております。
-
○
佐野委員 昭和三十二年四月二十日ですか、大阪高裁の判決、特にこの事件は、新聞印刷事件に対する判例が示されておるわけですけれども、これは私は非常に
警察官として考慮すべき判決じゃないか、かように考えるわけです。その判決には、「労働組合のする争議行為の態様は、争議行為に対し使用者の施す対抗策に対応して相対的に流動するものであるから、この具体的な態様を無視して固定的に争議行為の手段、方法の正当性の範囲を限定して観念しようとすることは、わが国労組の現状にかんがみて、往々労組側にのみ不利益を強いる結果となり、労使対等の立場を失わせ労組の団結権を不当に圧迫するおそれが多分にある。従って実力行使の許される限度について固定的な限界を定めることは不可能であって、個々の具体的な場合に応じて限界が定められるべきである。」こういうぐあいに訓示いたしておるわけですけれども、私はそういう動の中から、いろいろな法規その他に規定する可罰的違法類型と申しますか、それに形式的には該当する、こういう場合が往々出てまいると思いますけれども、しかしながら、そのことによって直ちに犯罪を構成するものとして、
警察官の実力行使その他が発動されるべきではないんじゃないか。やはり個々においても比例の原則というものは守られねばならぬじゃないか。そういう意味から考えてまいりますと、今回の国労に対してとられた全体の警備情報活動なり、あるいは現場におけるいろいろな措置、事後措置等を通じましても、非常に遺憾だと、かように考えるわけでありまして、そういう点に対しまして、警察の考え方をもう少しお聞かせ願いたいと思います。
-
○秦野政府委員 ただいまの判例の詳細については、私らただいま承知しておりませんけれども、確かに労働運動に伴ういろいろな、われわれが警察権を発動するといったような事態というものを見ますと、千差万別で、まことにだあっと型にはまったというような事案はまれでございます。確かにむずかしいのでございます。それだけにまた、現場における判断等につきましては、慎重を期さなければならぬというふうに私ども考えておるわけでございます。そういう意味合いにおきまして先ほど来申し上げますように、特にこの労使の問題に関連する不法事案に対する私どもの職権の行使という点につきましては、将来、教養指導の上に十分徹底をはかってまいりたい、かように考えています。
-
○
佐野委員 最後にひとつ、熊本県の宮地ですかに起こった問題なんですけれども、いわゆる組合員の中に
警察官が覆面をして入り込んで、たとえば三百名の組合員、あるいは動員者に対しまして、三組に分かれておったその各組の中に、二人ずつ覆面をして入っておる。点呼したときに数が多いものだからだれだということになって、実は
警察官だという騒ぎの中で、それらの人たちが逃げて帰ってしまった。まあおとり捜査が行なわれておったのじゃないかといろ点が指摘されておるわけですけれども、そういう具体的な報告を受けておりますか。
-
○後藤説明員 との点は、先般社会党の先生方が私のほうの次長のところにお会いにおいでになったときに、私も同席しておりまして、そういう話を承りましたので、状況を調査いたしました。そうしましたところ、これは先生ただいま覆面とおっしゃいましたけれども、覆面をしておったということはない。ただ、アノラックを着ておった者が二、三名おったということの報告を受けております。と申しますのは、熊本県の阿蘇の山ろくに一の宮という警察署がございますが、そこではときどき山岳遭難等がありまして、山登りするために十一名の、これは一個分隊に相当いたしますが、そのために十一着のアノラックが用意してあるそうでございますが、そのうち二、三名の者がそれを着て現場に出た。これは私服員でございまして、決して変装するというような意図もございませんし、また覆面するというようなこともございません。それから、組合員の中にということをおっしゃいましたが、その中に入ってどうこうしたというようなことはない、こういうことの報告を受けておるのでございます。
-
○
川村委員 時間がありませんから、関連をして少しお聞きしておきたいと思うのです。
ただいま
佐野委員から、労働争議、労働権、警察権の関係等についてもいろいろと見解をただしたのでありますが、今日警察権が労働争議に不当な介入をするのではないか、こういうような非難が非常に高まっております。当局はそうではないと言うかもしれませんが、そういう非難が非常に高まっておる。これはよほど警察当局としても、ただ皆さん方の言い分だけを主張なさるのではなくて、考えてもらわなければならぬ問題があるのではないかと私も考えておるわけであります。特にこのような問題の起こったときに、きょうのような委員会で皆さん方の見解を聞く。実際の現場における調査をしてみる、こういうことになりますと、たとえば労働側の、組合側のとった行動について調査をしたその調査と、警察のほうの、皆さん方の調査というものが相当ずれることがある。これはさきの佐世保のデモの問題についても著しいものがあったのでありますが、相当ずれる。これは警察当場は、皆さん方の第一線である県警等の調査の報告に基づいていろいろとわれわれの前に見解を述べておる。そこで問題は、県警のほうでほんとうにそのままの報告がなされておるかどうか、そこに私は一つの食い違いがあると思うのです。そこで、ややともすると、皆さん方はどうも実際問題で不利な問題が出てくると、報告がなされていないとか、調査をしてみなければわからないというようなことで、その時間を、言うならば、逃げてしまわれるというようなことがあるわけであります。そこで私は、いろいろの法的な解釈等は一応抜きにして、具体的な問題について一、二この際お聞きをしておきます。それはやがて
佐野委員がいろいろと指摘をいたしました学説あるいは法律解釈とも結びつく問題ではないかと思います。
第一にお聞きしたいのは、先ほど後藤さんでしたか、当初お話がありまして、公共企業体がストライキをやることは公労法違反である、そこで不法な事案が起きることが予想されたので、事前の警備体制あるいは警備活動を開始した、そういうことが起こらないように準備をさせた、こういうようなお話があったのでありますが、そのことは、これは皆さん方が各県警、今度の国鉄の場合でいうならば、いわゆる拠点に指定をされた県警に対して、そういうように十分なる警備体制をとれ、とるべきであるということを指示なさったのかどうか、それをちょっと明らかにしていただきたい。
-
○後藤説明員 まず私冒頭に申し上げました中で、ことばが足りませんで、その点は長官があとでお話を申し上げましたので、御理解いただけると思いますが、公労法によりまして争議権がない、剥奪されておる公共企業体等の職員が争議行為をやるからといって、直ちに警察がこれにどうするということはございません。ただ長官がお話しになりましたように、争議権のない組合とある組合とでは、おのずからそこに発生するであろうトラブルが違うわけでございます。あるいはその争議の態様をめぐりまして、当局側との間にトラブルが起こったり、あるいはこれを利用する乗客との間にトラブルが起こったりするかもしれないというその程度は、これは一般の民間労組などの争議の場合とは違うということで、これは警察の責任上当然注目をしていなければならぬことだと思いますので、そのような意味で、国労が特に四・三〇の闘争におきましては、かなり高い姿勢を示し、六十個ばかりの拠点を指定しておるわけでございますので、よくその重点を見きわめて、間違いのないようにやるようにということの指示はいたしてございます。ただしかし、これはやはり通常争議行為に伴って発生いたします不法行為に関する観点からやっておるのでございまして、決してこれは争議行為をやるから直ちに警察のほうが取り締まりをするというようなことは毛頭ないわけでございます。
佐野先生もおっしゃいましたように、何か公労法によって禁止されておる組合が争議行為をやると、直ちに警察がこれを犯罪視をすると申しますか、警察の取り締まりの対象にしているのではないかということを申されましたが、そのようなことはございません。ただすでに今回の場合にも起こっておりましたし、また過去においてもしばしばその例がございましたが、国鉄の争議の場合におきましては、一般的に正当なる争議行為の範囲とされておりますところを逸脱いたしまして、積極的な力を使いまして、あるいは電車、汽車の運転をとめるというような行為に出ますので、これはやはり犯罪行為として分離していかなければならないということでございますので、従来の経験にも徴しまして、また今回の国労の四主一〇の闘争に対する取り組みの状況から申しましても、先ほど局長から申し上げましたように、中央のほうにおいては、必ずしも刑事事件を引き起こすほどの事態まで争議行為をやらぬようにといったような気持ちは持っておったようでございますけれども、これはやはり現実に起こっておりますことからも明らかなように、各所においてそれを逸脱する行為も考えられるということで、警察としては十分間違いの起こらぬように、こういうことを指示してきたのでございます。
-
○
川村委員 当初の御答弁とずいぶんいまの御答弁とは、ことばが不十分とおっしゃったけれども、考え方が、受ける印象としてはずいぶん違っておるようであります。そこで問題は、今度の事件で私一つ強く感ずるのでありますけれども、そのように本庁からいわゆる警備体制の問題について、たといいまお話のようなことであっても、指示がいっておる。指示がいっておるからこそ、さっき
佐野委員も指摘いたしましたように、われわれから考えると、無用の動員体制ではないか、そうまでして膨大なる
警察官を動かさねばならぬのであるか、こういうような疑問が起こるわけです。その膨大なる動員がいろいろの影響で組合側を無用に刺激をする、あるいは陽動作戦に転換をさせるということが起こってくる。まことに残念なことだと私は見ておるのです。皆さん方は、先ほどからできるだけ刺激をしないように、こう言っておられるけれども、結果はそうなってくる、こう言わざるを得ないのであります。
そこで第二にお尋ねをすることは、こういう問題については、県警には全く自主的に判断をして対処せよ、そういうことはないのでありますか。
-
○後藤説明員 これは私かうお答え申し上げるのはいかがかと思いますけれども、技術的の問題でございますので、私から申し上げますと、これは今回のように全国一円に行なわれます争議行為でございますので、ある県とある県との警察の態度、取り締まりと申しますかそういう態度が違うようでは、やはり法を執行する警察の立場からいたしましていかがかと思いますので、その辺の調整という意味で必要な事項を指示と申しますか、連絡といいますか、そういうことを各県警にあてていたしておるわけであります。
-
○
川村委員 私が熊本県当局に対しまして、おそらくいま後藤さんがおっしゃったようなことに違いはないと思いますから、本庁からは今回の問題についてはどのような指示がありましたか、それを受けて県の公安委員会はどういうような態度をおとりになりましたかと、ころ実はお尋ねしたのであります。ところが、本庁からはそういうような指示が公安委員会にあったとは全然聞いておりません、こう答えておる。私が疑問に思ったのは、県の公安委員会は、こういうような問題が自分の県内に起ころうとするときに、一体どう考えて対処をしようとしているのか、自治体警察の本領というものは全然没却しておるのか。これはよく考えていかなければすべての問題について大きな禍根を残すのではないか、私はそう考えておる。いま後藤さんが言ったように、まあ労働運動、あるいは不法事案が起こるかもしれないから、各県ばらばらの警備態様では困る。そこでまあ指示をした。なるほど、それは皆さん方の職務上なさることは必要でありましょうけれども、私はやはりそこには県の公安委員会、あるいは県の県警本部における一つの判断というものが、あるいは警備体制というものが生まれてくることが必要ではないか、そういう指導をなさることが大事ではないかと私は考えておるんです。長官、お考えをお聞かせいただけませんか。
-
○江口政府委員 いま後藤課長が指示をしたということばでございますが、後藤課長自身も、指示というか連絡というか、というような表現を使ったくらいに、いわゆる法律上の指示ではございません。こういう全国的な大きな事件になりますれば、現地の事情に詳しいのはもちろん現地、しかし中央の方針がどうかこうかというのは——組合自身のですよ。そのことを知り得るのはやはり中央ということで、現地、中央、ちょうど組合自身が連絡をしますのと同じように、われわれのほうも連絡をし合って、どうやっていこう、こうやっていこうという相談をするわけでございまして、これは指示、命令というものじゃもちろんございません。しいていえばアドバイスあるいは連絡というようなことでございまして、最終的な責任はもちろん府県の公安委員会にあるわけでございます。だから、もしも現地において中央からのいま申し上げたような連絡、あるいはアドバイスというものが適当でないと思うならば、それは自分の責任においてそれを遂行するわけにいかぬという場合におきましては、中央とさらにその点は話し合うとか、あるいは極端な場合におきましては、それを聞かないという場合もあり得ることだと思います。私自身の経験におきましても、中央からのアドバイスは受けますけれども、最終的にはやはり県の公安委員会なり本部長なりがとるという仕組みになっておりますから、これはけじめは間違わないで熊本もやっていると思います。そういうことから、中央でお聞きになると、いやそういう意味で連絡はいたしました、こう正直に申し上げますと同時に、地方におきましては、そういうこまかい一々の指示を受けてわれわれは動いているのではない、こう言うことも正しいのであって、私はそう言うぐらいの気持ちが熊本にないとやはり困るのではないか、こういう気持ちを持っております。
-
○
川村委員 長官がおっしゃること、私はいいと思うのですが、そのように動いておりますと、私は県警、地方警察の問題としてはそう心配をしないのでありますけれども、どうも実際問題としては、長官がおっしゃるように動かぬのではないか、こういう懸念がございます。この点はひとつ一つの問題に考えていきたいと思います。
それからいま一つ、先ほどから警備局長も、またあとで後藤さんも言われたように、こういう労働運動について、初めから違法ストであるからやれ、こういう考え方は全然ない、そういうことでやっているのではないというお話がありました。それはその点で了解をいたしますが、残念ながら下のほうにいきますと、皆さん方のその考え方がよく周知徹底をされていないきらいがある。ちょうど私が熊本に参りました前日、組合側の代表がいろいろと交渉をしたそうであります。そのときにメモされていることばがあります。違法ストを取り締まるのに何が越権だ、違法ストを取り締まるのは当然ではないか、こういうようなことばが言われております。これは非常に組合、あるいは県の労働組合総評議会といいますか、こういう諸君を刺激した。これは先ほど
佐野委員もやはりいろいろ法的に指摘をいたしましたように、問題があることは十分皆さん方も承知いただけると思う。こういうようなものの考え方というものは、よほど責任を持って指導をしていただくというか、これこそほんとうにこういうものに対する助言というようなものが生かされてこなければ、ややともすると、われわれが心配するような実際の現地における警備体制、あるいはその行動に行き過ぎが起こる危険性をはらんでいる、こういうことを考えるわけであります。
そこで、たびたび問題になりましたことでもあるし、
佐野委員も先ほどから問題にしておりますけれども、やはり労働運動、集団的なああいう行動を、しかも労働者がやっている力の行使を、頭から暴力団的な行為だ、暴力行為だ、頭から犯罪行為だ、こういうような考え方も、そこからやはり生れてくるのではないか、こういうことをつくづく感じているわけであります。これはいままででもやはりそういう懸念はあったのでありますけれども、こういう点がやはり警察権を行使なさるときに大きな問題ではないかと私は強く指摘をしたいのであります。
そこで具体的に一、二お聞きしますけれども、先ほど
佐野委員が言いました服装の問題でありますが、長官、この
警察官の服制および服装に関する規則というのがございます。いろいろ制服から規定をしているのでございますが、第七条に「別表に掲げるもののほか、土地の状況または勤務の性質により必要な特殊の上衣、ズボン、防寒衣等について必要な事項は、
警察庁長官が定めるものとする。」こう書いてあります。どういう定めがございますか。
-
○江口政府委員 私個々に一々覚えておりません。特に定めたものは記憶いたしておりませんけれども、必要でございましたら、後刻調べた上で、書面で御返事申し上げます。
-
○
川村委員 それでは、あとでひとつお知らせをいただきたい。
これは「
警察庁長官が定めるものとする。」と書いてありますけれども、
警察官は必要なときには何でも着用してよろしい、まさかそういう規定があるわけではないでしょうね。
-
○江口政府委員 特殊なものを特に定めたという記憶がございませんけれども、何でもよろしいということを規定した覚えはありませんから、おっしゃるとおりだろうと思います。
-
○
川村委員 次の第八条に「
警察官は、所轄庁の長の定めるととろにより、私服を着用することができる。」その私服というのは、私の持っておる洋服ということでしょうね。
-
○江口政府委員 この私服は、公私の私というプライベートのものだという意味じゃなしに、制服に対するいわゆる私服でございまして、制服以外のものということでございます。
-
○
川村委員 先ほど熊本の阿蘇の一の宮の駅におけるトラブルが起こったときに、
佐野委員からも言いましたように、
警察官が数名、全く組合員と同じ服装でおったという事実、これはさっき後藤さんも、調べたところが三名ばかり、後藤さんのことばによればヤッケでしたかアノラックでしたか、そういうような洋服を着ておった、それは私服であった、こういうことばがありました。これも実は後藤さんのいまの答弁、それから当局の答弁と、組合側が目撃したこととずいぶん違うのです。私はヤッケと聞いておったのですが、この点三名ばかりの私服が、ヤッケを着なければならなかったのですか。
-
○後藤説明員 なぜ着なければならなかったかということは、私どもその点はわかりませんけれども、これは二十九日の夜から始まる事件でありますから、やはり防寒という意味もございましたでしょう。他に適当なものがないということで、アノラックを着たにすぎないのであって、どうも組合員とまぎらわしい服装をして何かしようといったようなつもりは毛頭なかった、こういうふうに聞いておるわけでございます。
-
○
川村委員 それは一種の弁解になってしまうわけですね。
そこで、こういう事実があるのです。二十九日の二十一時十九分熊本発、二十二時五十分宮地着、この汽車で国鉄の労働組合の諸君が駅に着いた。そして労働組合の諸君はみな旅館で一応休養をした。そのときに駅の待合室で六名の人が、いま着いたとほとんど同じ——私に言わせるならいわゆるヤッケ姿で駅の待合室におるわけです。そこである組合員が、こっちへ来い、みな旅館に行ったぞ、こら誘ったら、駅の人が、それはこっちの組合員ではないですよ、こう言った。ああそうかと言って、旅館に到着しております。
それから三十日の二時過ぎごろ、これから実際行動がいろいろと始まるわけですが、ピケ隊は実は四時ごろ始発の下り大分行き貨物列車の発車を阻止するという一つの目標をもって、どこかにピケを張るという計画が実はあったらしい。ところが相当数の
警察官が、駅前も、東側、北側、熊本寄りのほうにも
警察官のピケが張られておるのでその目的を達することができず、遂に初めの計画を変更して、組合側ピケ隊はみな行動をして、はるか熊本寄りの駅の構内を通過しておる。一般道路を通って駅舎の反対側のほうに行動した。そうしてそれから逐次隊列を組んで南側、大分寄りの一般通路の、これも構内を通っております。通路の踏切を通って一応待機の場所に行った、ここは非常に暗いのです。ところがだれかから、どうもこの隊列の中には、だけかが待合室で見たという
警察官が入っているぞというささやきが出た。まさかそんなことはないだろう、しかし一回点検をしてみなければいかぬというので、さらに同じ待機した場所から引き返して駅舎の反対側の通路を通って明るいほうに移動してきたところ、三名ほど隊列から離れて、すぐ隊列の横の畑の上に上がって小便をしている。こっちへ来ないかと言ったら畑を飛び下りて逃げてしまった。それから何人かがあわてて見たけれども、暗がりでだめであった。そうしたらその中隊のすぐうしろのほうから、二名だけさらにその畑を乗り越えて暗がりのほらに姿を消した。組合員が騒いで激高して、あわてて追及したけれども遂に見失った、こういう事実を実は組合側が述べておる。率直にいうなら、明るいところで実は点検をしてみる予定であった。実にけしからぬことをやるといって激高した。ところが後藤さんが言われるように、警察側のほうは、山岳遭難等に備えてそういう服装が用意してあるから、それを私服の人が着用しておったことは事実であります、三名ほど確認をいたしました、しかし隊列に入っておったなどということは全然ありません、こう答えておる。こうなるとこれはもう水かけ論ですね。皆さん方は入っておったとおっしゃらぬだろう。しかしこれは両方の調査をして合わせると、一体第三者はどっちに信用を置くか。私は組合側のこの言い分に信用を置くと思うのです。これはもう少しよく調べてもらいたい。この労働争議といいますか、これだけの実力ピケを張るのに、
警察官の人が同じ服装で組合側の隊列の中に入り込んで情報捜査をするとか、何かあったらやるぞ、そういう気持ちでまさか入り込んでおられようとは私は信じたくないけれども、この両方の言い分を聞いてみると信ぜざるを得ないのです。たいへんなことだと思うのです。警察権の行使がここまでいくということになると、これはそのまま捨ておくわけにはいかない問題ではないか。警備局長、いま私が申し上げた事実に対して何かお考えがありましたら、ちょっと御答弁をいただきたい。
-
○秦野政府委員 私も初耳なんでございます。よく調べまして問題を検討するほかないと考えておりますが、実際問題として
警察官の職務熱心のあまりの行き過ぎというようなこともたまにはあるわけでございます。よく検討さしていただきたいと思います。
-
○
川村委員 時間もありませんから、この問題はくどくどお聞きしませんが、いま局長言われたように、熱心のあまり行き過ぎがあるということも、これは人間ですから考えられる。しかしこれは皆さん方よほど注意していただかなければならない問題だと思います。そういう点でひとつ相当厳重な調査をしていただく、あるいは県警の
警備課長あるいは本部長、これまた御存じないかもしれません、やはり現地の隊長あるいは私服の責任者、こういう人たちの責任問題かもしれませんが、この点はひとつ再度確かめていただくことを、私は強く要求をしておきたいと思います。
そこで、時間もありませんし、
佐野先生の関連でもございますから、最後にお聞きいたしますけれども、もう警察法の第二条第二項がどうであるとか、そういうことをここで申し上げる必要もないのですが、私が強く皆さん方に要望したいのは、その第二項に規定をするところの精神、不偏不党といいますか、そういう立場に立って善処していただかなければならぬということであります。先ほどから皆さん方も言っておられたように、こういう問題が起こるときには、管理局当局が警察に出動を要請するという何かの非常事態——非常事態とはちょっと言い過ぎですけれども、これはひとつ警察の皆さん方に少し加勢をしてもらわなければいかぬ、どうも鉄道公安だけではどうにもならぬ、そこでぎりぎりの線で警察の出動を要請する、そういうときによく出ていかれたのがいままでの大体の慣行であったと私は見ております。もちろん要請があろうがなかろうが、皆さん方には出ていける権能があるでしょう。しかしいままでは、どうもそうではなかったようです。今度の場合でも、先ほどからちょっと具体的にお話がありましたように、当局が手控えてくれ、出てくれるな、こういうような要求があったのに、鉄道管理局はなまぬるい、弱腰だ、そういうことで権力を行使するというようなことは、労働運動という立場を考えると、よほど気をつけてもらわねばならぬ重大な問題ではないかと思うわけであります。熊本の場合も、鉄道管理局に当初聞いてみると、私たちは要請をいたしませんでしたと言っておる。よくよく聞いてみると、確かに要請書は、県警本部は文書でとっておる。何で鉄道関係のほうはうそを言うのか、こういう問題も実は起こっておる。
さらには、これは二十三日のできごとでありますけれども、熊本の人吉というところで動力車が実力行使をやった。そのときに鉄道公安官を管内から人吉に集めた。そのときに、熊本に集結した諸君が、みんな県警の機動隊に前後を守られて人吉まで行っておる。何十里とあるのですね。これは一体どうしたことだろう。県警の機動隊が初めから公安官を守って自動車輸送に従事したということになりますと、これはやはりいろいろと勘ぐられるあるいは誤解を受けるということになる。こういうような実際問題が実はいろいろある。そこで、先ほど申し上げましたように、特に私がきょう最後に要求したいのは、申し上げるまでもないことですけれども、警察法第二条第二項の精神というもの、あるいは警職法の
職務執行ということについて十分ひとつ検討をしていただくし、実際の犯罪防止等々についても細心の注意を払って警察権力を行使していただきたい、こう考えておるわけでございます。
最後に、長官の御見解がありましたらお聞かせをいただきたい。
-
○江口政府委員 警察のあり方及び警察のやるべきことということに関するただいまの御意見は、一々ごもっともでございまして、私たちもそういう趣旨で法律の趣旨に従った行動をやっているつもりでございますけれども、具体的の例において誤解を受けるようなことがありますれば、事実をよく調べました上で必要な助言をいたす所存でございます。
-
○
佐野委員 もう時間もおそいし、
川村委員から具体的にいろいろな問題に対する質疑もありましたので、重複も避けたいし、またいずれ別の機会にいろいろと質疑をかわしたいと思いますので、本日は、私、最後に長官に希望だけを申し述べさしていただきたいと思います。
と申し上げますのも、私
警察官の最近の巡査部長なり、警部補の試験問題集を手に入れまして、いろいろと見せていただいているわけですが、その中でやはり労働争議に対するいろいろな設問が出されておる。全体を通じまして、私も少しばかり法律をやってきた者として考えさせられるのは、現在における市民法的な法律の成り立ちと、労働法が生まれてまいりまして組合意識の統一のもとに集団行動をとる、こういう労働法理論というものと非常になじめない点が多くあるんじゃないか。ですから形式的な条文だけで市民法的な立場で考えてまいりますなら、労働組合の団体行動というのはほとんど何かの脅迫、脅威あるいは何かの財産的な損失というものをやはり内包しておるのが労働法の理論だと思うのです。ですから労働法が生まれた理由なり背景というものと、いわゆる市民法的な立場というものに対するもっと明確なる理解が必要になってくるのではないか。特にいろいろな労働争議におきまして、争議の正当性そのものの判断は、
警察官にのみ与えられているものでございまして、その中からやはり実力行使その他が行なわれてくるわけでありますので、特にこの点は
警察官の意識の問題として、教養面におきまして十分考慮していただきたい。
第二の点といたしまして、やはり主権在民、基本的人権の尊重を基調として団体交渉権なり争議権を憲法が保障しておる。こういう意味における理解というものは必要だし、また、そういう意味において労働争議権を憲法が保障しておるという意味に対する理解というものはいささか欠けておるのではないかということを、最近の行動などから感ずるわけです。
第三の点として、新しく戦争前の警察国家から、近代国家の警察として成長してまいりました以上、しかもそのきっかけになりました、たとえば極東委員会における十六原則の十三項目に述べられておる、特に
警察官並びに政府は労働者を監視し、ストライキを破り、正当な労働組合を抑圧する仕事に従事してはならないと、日本民主化の一つの原則として、深い日本の民主主義に対する原則が与えられたと思うのですが、いわゆる労働組合活動に対する警察権の不介入の原則、これがやはり新しい警察の一つの性格だろう、かようにも考えますので、この点に立ちましても十分部内においても趣旨の徹底、こういう点に対して一段の配慮を願いたい、そういう点を希望申し上げて一応私の質問を終わらしていただきます。
-
○江口政府委員
佐野委員のおっしゃること、一々ごもっともでございますので、先ほど
川村委員にお答えしたのと同様の意味合いにおきまして、われわれも一生懸命勉強して御趣旨に沿いたいと思います。
————◇—————
-
○
中馬委員長 次に、本委員会に付託されました
請願は三百六十四件であります。
請願日程第一から第三六四までを一括して議題といたします。
まず、審査の方法についておはかりいたします。
各
請願の内容については、文書表で御承知のことでもありますし、また、昨日及び本日の
理事会において御検討願いましたので、この際、各
請願について
紹介議員の説明聴取等は省略し、直ちに採否の決定に入りたいと存じますが御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
-
○
中馬委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
これより採決いたします。
先ほどの
理事会において決定いたしましたとおり、本日の
請願日程中、第一ないし第二五三、第二五六ないし第二七〇、第二七四ないし第二七六、第二八一ないし第二九二、第二九四ないし第二九六、第三〇一ないし第三〇三、第三四三、第三四四、第三四六、第三四九、第三五〇及び第三六四の各
請願は、いずれも採択の上内閣に送付すべきものと決し、日程第二五四、第二五五、第二七九、第二九七ないし第三〇〇及び第三〇四の各
請願は、議院の議決を要しないものと決し、残余の各
請願は、いずれも採否の決定を保留いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
-
○
中馬委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
なお、おはかりいたします。ただいま議決いたしました各
請願に関する委員会報告書の作成等につきましては、
委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
-
○
中馬委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
〔報告書は附録に記載〕
—————————————
-
○
中馬委員長 なお、今国会におきまして、本委員会に参考のため送付されました陳情書は、お手元に配付いたしておりますとおり、交通安全対策
確立に関する陳情書外五十九件でありますので、念のために申し添えてす。
————◇—————
-
○
中馬委員長 この際、
参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。
東京都の水道事業に関する件について調査のため、明十九日参考人の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
-
○
中馬委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
なお、参考人の人選等につきましては、
委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
-
○
中馬委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
————◇—————
-
○
中馬委員長 閉会中審査申し出の件についておはかりいたします。
川村継義君外八名提出の
地方財政法の一部を改正する
法律案、地方自治に関する件、
地方財政に関する件、警察に関する件、消防に関する件、以上の各案件につきまして、閉会中もなお審査を行なうことができますよう、議長に対し閉会中審査の申し出をいたしたいと存じます。これに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
-
○
中馬委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
次に、閉会中審査案件が付託になりました場合、本会期中調査のため設置いたしました
地方公営企業に関する調査小委員会、及び風俗営業等に関する調査小委員会につきましては、閉会中もなおこれを存置し、調査を進めたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
-
○
中馬委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
なお、おはかりいたします。両小委員会の小委員及び小
委員長は従前どおりとし、その辞任の許可及び補欠選任につきましては、
委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
-
○
中馬委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
次に、委員派遣承認の申請についておはかりいたします。
閉会中審査にあたり、現地調査の必要がありました場合には、
委員長において適宜委員派遣承認申請をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
-
○
中馬委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
なお、派遣地、派遣期間、派遣委員の選定等につきましては、
委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
-
○
中馬委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。
午後一時三十人分散会