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1965-04-02 第48回国会 衆議院 地方行政委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月二日(金曜日)    午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 中馬 辰猪君    理事 亀山 孝一君 理事 田川 誠一君    理事 川村 継義君 理事 安井 吉典君       大石 八治君    奥野 誠亮君       亀岡 高夫君    武市 恭信君       登坂重次郎君    村山 達雄君       森下 元晴君    山崎  巖君       和爾俊二郎君   茜ケ久保重光君       細谷 治嘉君    山本 幸一君       門司  亮君    吉田 賢一君  出席国務大臣         自 治 大 臣 吉武 恵市君  出席政府委員         自治事務官         (行政局長)  佐久間 彊君  委員外出席者         文部事務官         (初等中等教育         局地方課長)  高橋 恒三君         専  門  員 越村安太郎君     ————————————— 四月二日  委員井岡大治君及び重盛寿治辞任につき、そ  の補欠として茜ケ久保重光君及び山本幸一君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員茜ケ久保重光君及び山本幸一辞任につ  き、その補欠として井岡大治君及び重盛寿治君  が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方自治に関する件(地方公共団体議会に関  する問題及び地方公務員懲戒に関する問題)      ————◇—————
  2. 中馬辰猪

    中馬委員長 これより会議を開きます。  地方自治に関する件について調査を進めます。  地方公共団体議会運営に関する問題について質疑通告がありますので、これを許します。山本幸一君。
  3. 山本幸一

    山本幸一委員 どうも私は声が悪いので、前列に立たしてもらって、はなはだありがとうございます。こういう民主的な運営をやっておられる地方行政委員長に感謝いたします。  大臣にきわめて簡単にお尋ねしたいんですが、実は私がお尋ねしようとすることは、地方自治体及び地方議会運営に関してでございます。そこで、まず冒頭にお尋ねしたいんですが、万一地方議会等がきわめて不当な運営をした場合に、自治省当局ではこれに勧告なり注意なり等の指導ができるのかどうか、この点を冒頭に伺いたいと思います。
  4. 佐久間彊

    佐久間政府委員 地方自治法によりますと、地方公共団体に対しまして、違法または著しく不当な運営がございました場合に、自治大臣勧告ができるという規定がございますけれども、運用にあたりましては、勧告対象知事市町村長執行機関に対しては、必要によって行ないますけれども議会に対しましては、その性格上行き過ぎることのないように、なるべく議会の良識に待つという態度で当たってまいっております。ただ、議会のやりますことにつきましても、もし違法なことが明らかな場合に注意を喚起するというようなことはやったことがございますけれども、なるべくそのようなことも議会に対しては避けてまいりたいという心がまえでやってまいっております。
  5. 山本幸一

    山本幸一委員 それじゃ、私からいまお尋ねしようとする内容について少しく申し上げてみたいと思うのですが、これはちょっと私のひとりしゃべりになるおそれがありますけれども、やはり大臣関係者内容を聞いていただかぬとその質問趣旨がわかりませんで、恐縮ですが、ちょっと時間をかりたいと思います。  お伺いしようとするその内容は、三月九日午前中に岐阜県議会の本会議が開かれたわけです。そこで渡辺嘉藏という県会議員一般質問に立ったわけであります。その一般質問が動機になって渡辺県会議員に対しての懲罰動議が出て、これがきわめて非民主的な方法で決定をされておる。これが要約すると結論でございます。  その質問の第一点となりましたのは、実は岐阜県で近く国体が開かれようとしております。したがって、そのために県民体育会館が建設されておるのであって、この金の支出のしかたに問題があったわけです。それは、この工事を請け負ったのが——その間にはかなりいろいろ問題がありましたけれども間組が請け負いまして、約七千万円の赤字を出したわけです。ところが、当時間組新聞談話によりますと、常に県当局にはたいへんお世話になっているから、七千万円程度の赤字はこの際がまんする、こういう新聞談話をやっておるわけです。ところが、それと時期を前後して県当局から建物設計変更がございまして、その設計変更によって七千万円がプラスされておるわけです。さよういたしますと、いわば間組が七千万円、県の世話になっておるからといってがまんをしたその分を、設計変更という理由で上積みしたんだ、こういうことが第一の問題点です。要約するとそういうことです。  それから第二点は、この体育会館が三月の十四日に完成予定なんです。これを目ざして実は岐阜県知事松野幸泰——これは御承知のように自民党本部でも非常に問題になった天下の大人物ですね。彼の後援会が、聞くところによると岐阜県では六十万人近くあるそうです。その後援会代表者総会を、まず完成する県体育会館でその完成すると予定された三月十四日に開こう、こういうことをきめられて、一月の三十一日にその後援会合同総会通知状記念品あるいは食券等を同封してそれぞれ送ったわけでございます。ここに問題があったわけです。少なくとも知事は公私混同しておる。この種のような建物についてかってに自分が日にちをきめ、かってに通知を出してやるようなことは許されない、こういうことが質問の第二であった、速記を見るとそういうことであります。  それから第三の問題は、県庁職員の中に最近交通事故を起こして被害者に非常に迷惑をかけている事件があった様子です。これに対して被害者からいろいろと県に陳情要請がありましたが、県はみずから取り締まるべき人が、いわゆる被害者にむしろその交通事故の、何と申しますか、理由をおっかぶせて、そうして訴訟にまでたびたび持ち込んできている、こういう事件が第三に問題になりました。  それから第四点は、これは特に当日懲罰の最大の問題になったのですが、実は岐阜県知事の、当時自民党支部長であった松野幸泰君、これは知事であり、自民党支部長であり、最近は自民党のおしかりを受けて支部長をやめさせられたことは事実です。それと同時に、公明選挙推進連盟岐阜県の会長をやっておられるわけです。ところが、たまたま第三次池田内閣総裁選挙に際して、私は名前は申しません。失礼ですから申しませんが、岐阜県の代議員の一人の方が、総裁選挙運動費として三百万円を受け取ったという問題が内部から発表されたわけです。そこで本人記者会見をいたしまして——その三百万円を、当時内部から出たうわきとしては、いわば池田派とアンチ池田派と両方からもらっておる。俗に言うサントリー・オールド・パーという例の問題でありますが、本人が非常におこりまして、私はそういうことをいたしておりません、確かに三百万円もらったけれども、それは池田派のうちの池田派を支持するO派から二百万円ちょうだいし、K派から百万円ちょうだいして、トータル三百万円受け取っておる、その三百万円の使途については、二百万円は岐阜自民党に献金をいたしました、残余の百万円については自民党政治運動のために使いました、こういうことを記者会見で言っておるわけです。  そこで渡辺県会議員は、この発表された御本人が来たるべき六月の参議院選挙候補者でもございますので、それとの関連の上で、知事岐阜県の公明選挙推進連盟会長をやっておるが、そういう金を岐阜自民党がいただいて参議院事前運動知事が先頭に立つということは好ましくない、こういう点を質問したわけであります。これが当日の懲罰の最大問題になった様子であります。  その次には、知事補助金をいわゆる自己本位に乱用しておる。言うならば、特にその例としてとられましたのが、本年は昨年よりも補助をすべき対象団体が非常にふえた。そのふえた団体はほとんど知事後援団体である。そこへ次の知事三選のために補助金を出しておると県民は疑ぐっておるが、その点はどうか、そのほか二、三の点がありますが、こういうことを質問いたしております。  これに対して知事答弁を待たず、いきなり当日の本会議休憩を宣告されたわけです。そこで休憩いたしまして、午後五時五十九分ごろ再開をいたしましたところ、自民党県議会の五名の諸君の名前渡辺嘉藏君に対する懲罰動議が提出されました。懲罰理由は、特定の個人の一身上に関すること云々ということらしいのです。そういうことで懲罰動議が提出せられたわけです。直ちに懲罰動議の採決が行なわれて成立したことは、これはもう論を待ちません。それからさらに日程が追加されまして、七名の懲罰特別委員が選ばれて、六分後の六時五分に再び休憩になったということです。その後ずっと休憩いたしまして、午後九時に再開をして、懲罰特別委員長報告がございました。その報告の中心は「普通地方公共団体議会会議又は委員会においては、議員は、無礼の言葉を使用し、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない。」との規定によって懲罰は成立して、五日間の出席停止といいますか、本院でいえば登院停止、そういうことに決定がなされたわけです。これがいわば要約すると、当日の懲罰問題のおもなる内容であります。  私はここでその懲罰内容の善悪を問おうとは思っておりません。そういうことは私どもは問うべきでなく、それぞれの議会の判断によることだと思っておりますからそれには触れようとは思っておりませんが、ただ問題は、いまの懲罰内容はどう考えても、速記を見ると、いわゆるくさいものにふたをするようなやり方であるということが言えるということ。それからいま一つは、この懲罰がきまる前に、地方自治法による岐阜県の条例ですが、その第百八条に「懲罰対象となった議員は、議会または委員会一身上弁明をすることができる」、それから第二項に、「議会または委員会は、必要があると認めたときは、懲罰対象となった議員一身上弁明をさせることができる」、いずれも「できる」ということばであることは間違いありません。ところが、国会はもちろん、全国のあらゆる議会慣行は「できる」という文句であっても、議員一身上の問題についてはお互いが正しい意味において保障しなければならない。したがって、文句は「できる」であるけれども慣行上は、必ず要求があればさせるんだ、この点私は全国どこでも間違いないと思っております。ところが、本人から一身上弁明要求があり、かつまた同僚議員四名より一身上弁明要求がございましたが、これに対して何ら弁明の機会を与えない。午後九時過ぎに再開されますと、一挙に五日間の登院停止、いわゆる出席停止決定してしまった。私は、問題はここにあると思うのです。もう大臣も御承知のように、これはまあ国会のことですけれども国会においては、議員の不逮捕条項というものがございます。また、国会には何べんも懲罰問題がございましたが、いずれにしても本人から一身上弁明要求があった場合には必ずこれを認めております。どんな場合にも認めております。地方議会には不逮捕規定はないかもしれません。しかし、弁明を認めるという点については、議会民主主議の上から、また議員一個の一身上の重大さから考えて、これはどこでもやらしておることです。それを本人要求があったにもかかわらず、全然無視して、そうして一挙に懲罰決定してしまう。私は、これはたいへんな問題だと思うのです。こういう行為を許しておきますと、どこにもこれが連鎖反応を起こしまして、自分の都合の悪いときには懲罰に付して登院停止をやる。その間相手の言論を封殺して何でも思うことをやってしまう。あるいはくさいものにふたをしてしまうということは、もうどんな点からいっても許されぬと思うのです。いわんや、いま私が申し上げたように、議員身分保障の問題については、特に民主議会においては重要な問題の一つになっております。そういうときに一身上弁明を許さない。これは、私はどうしても理解できないわけです。私はあえて岐阜県の自分選挙区にこの問題が起きたから問うというのでなく、国会運営を私は十何年やってきまして、自分の経験に徴してもそのようなことは許されるべきではない。こういうことで実は本日この適不適について大臣関係者からお尋ねしようということです。それで、一体大臣はこういう問題にどのような御認識をなさるのか、まず承りたいと思っておるわけです。
  6. 吉武恵市

    吉武国務大臣 岐阜県のこの件につきましての詳細は、まだ私承っておりませんが、ただいま山本さんの御意見を承っておりますると、内容について、いろいろあるけれども、それは別として、こういう懲罰をきめる際には、やはり本人一身上弁明を求むべきである、こういう御意見につきましては、私も全くそのとおりだと思います。自治法でございましたか、会議規則にも、御指摘がございましたように、そのような規定もあることでございまするし、また、あるなしにかかわらず、やはり民主的な運営ということは、これは民主政治の今日において当然のことでございます。いわんや、議事規則にそのような規定がございまするとするならば、やはり一身上弁明をさせて、そうして決定すべきものであったであろう、かように存じておる次第でございます。
  7. 山本幸一

    山本幸一委員 くどいようでありますけれども国会議員は何も政府のためにできておるのではありませんし、県市議会議員も、県や市当局のためにできておるのではなしに、これはやはり民主的な選挙の手続を経て、それぞれ国会議員は何万票の信任を得、また地方議員もそれぞれ必要な票の信任を得て出ておるわけでありますから、したがって私は、もう理屈抜きに、そういう人々身分の重要さ、それからその人々の発電というものは、やはり選ばれた選挙民に対するこたえでありますから、これは非常に重要な問題であると思うのです。したがって私は、大臣に別に突っ込むようなことはいたしませんけれども、いまの大臣の御見解は私の考え方と一致しております。一致しておるならば、先ほど冒頭に御答弁がございましたように、行政上のことについては、いわゆる執行のことについては勧告ができるが、地方議会運営については勧告等はしないのだ、そこで注意をした例はあります、こういうことですが、これに対してはどういう措置を講じられる予定でしょうか。
  8. 吉武恵市

    吉武国務大臣 実は、地方議会におきましては、いろいろの問題がございます。各府県にあるいは各町村にございまして、まあ私どもといたしましては、自治体のことでありますから、あまり政府自治体のやったことについて一々、それは間違っておるとか、こうすべきであるということは、実は差し控えておるわけでございます。というのは、あまりそれをやりますというと、自治体に干渉的になるものですから、多少いかがかなと思うことがございましても、自治体自体解決をしていただくというような趣旨のもとにおるわけでございます。そうかといいまして、今日地方議会におきましても、地方自治体におきましても、いろいろとまだほんとうに正常に行なわれているとも言えない点もございますので、事あるごとに私どもとしては、指導と申しまするか、注意と申しまするか、そういうことはやってきておるわけでございます。  本問題についてどうするかというお尋ねでございますけれども、これはよく中を検討いたしませんと、いま申し上げにくいけれども、先ほど来申し上げましたように、懲罰する場合には、やはり相手方に重大な関係のあることでもございまするから、一身上弁明をさせるということは、これは国会でもいたしまするし、考え得べきことでございますから、指導はしていきたいと、かように存じております。
  9. 山本幸一

    山本幸一委員 御意見よくわかりましたが、私がいま当日の模様を申し上げたのは、速記全部を申し上げては時間がかかって恐縮ですから、速記を要約して申し上げたので、この速記の中には固有名詞等も使われております。ことさら私は固有名詞等をはずしたわけでありまして、この点は御理解いただけると思いますが、私の申し上げたことより速記はもっと具体的です。けれども、その内容には先ほど申し上げたように触れようとは思っておりません。速記を見たのですから事実であることは間違いないと思います。しかし私は、ここで事実であることを強弁しても、一応従来の慣習からいっても、わかっておっても役所のほうでは調査をしてみなければならぬという時間の必要なことも存じております。私は調査をなすって、私が申し上げたことに間違いない、こういう場合には、これは指導ということばは非常に抽象的であって、どういうことをされるのかわかりませんが、もう少し大臣は、こういう点は事実であったらフランスに、勧告はできぬけれども、何らかの注意をするんだ、そういうふうにしていただかぬと、私はこの悪い慣例が方々にできると思うのですよ。そういう点でもう一つ明確なお答えをいただきたいと思うのです。
  10. 吉武恵市

    吉武国務大臣 山本さんのことでありますから、おそらくその事実をそのままおっしゃっていることとは思いますけれども、私どもといたしましては、まだ内容の詳細の点を存じませんので、これに対していますぐどうするということは申し上げかねますけれども、先ほど来申しましたような趣旨に基づきまして、あるいは注意というようなことになりますか、指導ということばになりますかわかりませんが、正常な運営に持っていくように私どもとしてはいたすつもりでございます。
  11. 山本幸一

    山本幸一委員 最後に一つ、重ねて要望しておきますが、私は実は去年でしたか、記憶はございませんが、去年のいつごろだったか覚えがないのですが、文部委員会で、やはり岐阜県庁支部行政について非常に不当な点がありましたから、しゃべるのがへただから、めったに委員会でしゃべったことはありませんけれども、お尋ねして、その結果文部当局理解を得て、非常に厳重な勧告をしてもらったことがあります。それ以後直りました。さすがのあの知事も、ヒットラーと自称する知事も直しましたよ。だから、それは国のやり方によって、こういう点については正常な指導を幾らでもできる。したがって、重ねて申し上げますが、ひとつ至急に御調査いただいて、事実だったら、かなり強い御注意をいただいて、これは何もどちらを救うとか救わぬとかいうのではなしに、いま大臣の御言明のように、正常な運営をせしめるという、指導という意味においては、ぜひひとつおやりいただくように、強く要請して質問を終わります。
  12. 中馬辰猪

    中馬委員長 次に、地方公務員懲戒処分に関する問題について、質疑通告がありますのでこれを許します。茜ケ久保重光君。
  13. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 群馬県の沼田市で起こりました教職員に対する不当懲戒処分につきまして自治大臣の御見解を承り、さらにこれが解決に対して適当な御処置を要請したいと思うのであります。  事件は、沼田市の県立沼田女子高等学校松本泰三という先生が、団体交渉の席上で校長先生教頭先生暴行を加えたということによっていきなり懲戒免職にされた。一見小さい問題のようではございますけれども、現在のいわゆる労働運動の、労働問題の過程において、当局者労働組合との問がILOの問題等関連といいますか、非常に変則的な形を出しております現在、非常に私はやはり全般的な全国的な問題に関連があると思いますので、実はあえてこの問題を当委員会に持ち込んで自治大臣にお尋ねするわけです。そこで文部当局から責任者の方が見えておるようでありますから、私がいろいろと例を上げて申し上げる前に、文部当局からこの事件の概略についての御説明をお願いしたいと思うのであります。
  14. 高橋恒三

    高橋説明員 私どものほうに県のほうから報告が参っておりますので、そう長いものではございませんので、これによって御説明いたしたいと思います。  いま茜ケ久保先生から御指摘がございましたように、群馬県立沼田女子高等学校松本泰三教諭懲戒免職させられたわけでございますが、その事実につきまして、報告によれば、昭和三十九年の十一月二日、学校内において、校長職員職員室に集めまして、伝達事項伝達しようというので、十一時五十分ごろ、——集まるように指示しておいたわけでございます。その指示は午前八時二十分ごろからやるからということで、教頭を通じまして職員室に集合するように申し渡したのでございますが、職員職員室に集合しないで、会議室のほうに集まってなかなか集合されない。そこでまた教頭会議室に入っている職員に対して、全員すぐ職員室に集合してくださいと伝達いたしましたところ、その伝達及び通達の伝達を阻止しようとして、教頭の胸を右のげんこつで突き飛ばして暴行を加えた。そうして教頭職務執行を妨害したというのが一つの事実でございます。  その同じ十一月二日の正午ごろに、同じ場所でその伝達をしようと思っておったところが、予定の時刻を経過してもまだ職員が集まらないというので、今度は校長が、職員会議室におるのならそこに行って伝達してもいいからというので、会議室のほうに行こうとしたわけでございます。そうして校長室から会議室に通ずる出入口を半分くらい開いて、とびらを半分くらい開きまして、入室しようとしたわけでありますが、その伝達を阻止しようとしていきなり校長の胸を両手で強く突き飛ばして暴行を加えて、校長職務執行を妨害したということでございます。  その後十一月十九日のことでございますが、午後四時三十分ごろ校長室の北側の廊下で帰宅をするために玄関に行こうとした教頭に対して、ほかの同僚の黒岩という教諭がおるようでございますが、その教諭が十一月二十日に組合会議に行くために休暇願いを出しているのを、それを承認しないということを憤慨いたしまして、松本教諭教頭の上腹部を突き飛ばして暴行を加えた。その後今度は十二月に入るわけでございますが、十二月九日に夕方の五時三十分ごろ、職員室教頭に対しまして、公務員共闘統一行動に参加するために願い出をしておる。休暇願いを承認しろということで、それを承認しないということを憤慨いたしまして、帰宅をしようとしておりました教頭に執拗にそれを要求しまして、今度は胸を右のげんこつで二回くらい突き飛ばし、治療一週間くらいを要するような右前胸部筋痛症という傷害を与えた。そういった、同人が校長教頭に対してその職務執行を暴力をもって妨害したというようなことが、この事件の事実なのでございます。私ども報告がございましたのは以上でございます。
  15. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 ただいま文部当局の御報告県教委から参りました一方的な報告でありまして、もちろんこの事実については私どもいろいろ疑義もありますし、問題点もたくさんございますが、とにかくそれは後ほど究明してまいりたいと思いますが、自治大臣は、そういったことがあったという報告によって、しかも当時松本教諭懲戒免職をされた時点においては、身柄はまだ起訴か不起訴かもきまりませんし、いわゆる捜査の段階であるにもかかわらず、いきなり懲戒免職という最も強い、若い二十四歳のまだ青年教師でありますが、若いその青年教師の将来、一生を、もう全然台無しにするような懲戒免職という処分がはたして適当なものかどうか、この点自治大臣は、私はあとから実はいろいろ申し上げますが、このお聞きになった事柄を一応前提にして、県教委ではそういうことにしたのでありますが、いかようにお考えか、御所見のほどを伺いたいと思います。
  16. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私は、よく各地方においてこの種のトラブルのあることを耳にしております。で、率直に申しますると、地方における地方公務員当局との間においてまだほんとうの、何といいますか、当局のほうにも理解が欠くる点もございましょうが、同時に組合側といいますか、公務員側のほうにも、いわゆるやり方において行き過ぎと申しまするかがあるように思います。それが勢いトラブルになってあらわれておるわけでございまして、これはまあそう一挙によき慣行ができるとは思いませんけれども、これは両方の理解と相まってよき慣行というものが早く打ち立てられるべきである、かように抽象的ではございますが、私、感じておるわけでございます。  で、この本件あたりにつきましては、詳細のことは私まだ承っておりませんけれども、御承知のように、学校は授業という大事な仕事を持っておるわけでありますから、先生が、共闘があるからといってかってに休暇願いを出して、そうして休むということでは、学校校長にいたしましても、教頭にいたしましても、管理者としてはやはりその職責上、それを唯々としてかってに許すというわけにも私はまいらないと思います。そうかといって、組合組合のいろいろなことがございまするから、それをただけしからぬぞという目でもって一々これを阻害するということも、私は、理解がない態度だと思うのであります。本件あたりのように、ただ何か共闘を行なうのだということで休暇願いを出して、どんどん休んでいくということに対しまして、校長教頭注意を促し、またしなかったということは、私は詳細は存じませんけれども校長なり教頭としては、やはりそういう処置をとることは、これはあたりまえじゃないかという感じがいたします。それに対して暴行を加えるとかなんとかということになりますれば、それがやまなければ懲戒処分に付するということも、これはあり得ることでございます。ただ、懲戒がどの程度かという問題は、私はあろうかと思います。これらの点につきましても、従来のいろいろな例等も関係することでございまして、私がいまここで、これは重いとか軽いとかどうとかということは言いにくいのでありますが、しかし御承知のように、そういう関係もございまして、普通の民間労働におきましては、労働委員会というものを設けまして、そこで訴えて公正な判定をするという制度もあるわけであります。公務員につきましても、御承知のように、人事委員会あるいは公平委員会等の制度が設けられまして、不当であれば、それによって救済の道があるし、またあたりまえであればそこで判定が下る、こういうことでございまして、私、いまこの本件だけ承っただけで、それがどうかということは、まだ詳細を存じませんから申し上げかねますけれども、私は、従来いろいろ地方でこの種の問題がございます。ございますときに感じますることは、これはやはりいわゆる労働運動といいますか、そういうものを、もっと正常な姿において両方とも考えていくべきものじゃないか、早く何とか軌道に乗したいものだという気持ちでございますことを率直に申し上げます。
  17. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 自治大臣のお答えはわからぬこともございませんが、私がお尋ねしているのは、教職員に限らず、国家公務員でも地方公務員でもいろいろな職種がございますが、懲戒免職というのは最高の量刑でございますね。事件内容について御承知ないのは当然としても、いま承った当局側の一方的な御報告によりましても、暴行ということば、あるいは暴力ということばを使っておられるけれども、まあ私、いま御報告を承っただけでは、ことばの表現にはいろいろありましょうけれども、それが事実としても、そう重大に考えるほどのこともないと思うのであります。しかも先ほども指摘したように、警察権が介入をして、これも問題がございますけれども、とにかく捜査をした。捜査をして、その事件起訴、不起訴決定しない前に、懲戒免職という最高の極刑を持ってきたということは、これは自治大臣としては、いまおっしゃっているいろいろな点を勘案されてでございましょうけれども、少なくとも極刑といわれる懲戒免職をするにはそれだけの理由もなければならぬし、またいろいろな情勢もなくちゃならぬと思うのですが、この件について考えますと、私は、あまりにもこれはもう無謀と申しましょうか、私ども常識としては考え得ないことだと思うのであります。たとえばいろいろな、たくさんの例がございますが、起訴されまして、休職になって、いわゆる刑が確定した後に懲戒免なりあるいは依願免なりその他のことがあることがいままでの例だと思います。先ほど岐阜県の県議会のことも出ましたが、しかも私ども、法律があり規則がありましても、社会的な習慣なり常識もございます。したがって、私どもの関知する限りにおいては、公務員の場合であってもかなりの、たとえば重大な汚職があったりあるいは使い込みがあったり、社会的に見てかなりひんしゅくを買うような事件でありましても、これが起訴と同時に休職になりまして、事件が決着してから身分の最終的な決定をいたします。にもかかわらず、松本教諭事件、私は具体的に暴力行為があったか、あるいは教頭先生がけがをされたか、これは私も現場を見ないから承知をいたしておりません。しかし少なくともいま文部当局から報告された当局側の一方的な報告を聞きましても、そう私は重大とは考えないのです。にもかかわらず、いま指摘したように、懲戒免職ということは、これは自治大臣は当、不当は言えぬとおっしゃるけれども、この具体的な松本事件について限定して言われますと、これはまたいろいろな点が出ましょうけれども、一般的な一つの例として、これは私どもの常識では、あまりにも無謀ということばを使って表現しても差しつかえないようなことだと思うのですが、もう一回その点、いわゆる懲戒免職という処分に対してだけの御所見を承りたいと思う。
  18. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私も、ただいま文部当局からも御答弁がございましたし、また先生からも承りましたのですが、どの程度の暴行が行なわれたかどうかも実はわかりかねるわけでございます。おことばの中に、刑事事件として決定してからでもいいじゃないかというお話もございましたが、刑罰的な問題は必ずしも待つということでなしに、やはり懲戒ということは懲戒としても、これはあり得ることだと思います。ただ問題は、程度として懲戒免職は行き過ぎか、あるいは値するかという問題になるかと思いますが、これらは私は、自治体のやることでございまして、あまり自治体の中に立ち入って——それが違法であるとか著しく不当でございますれば、先ほど山本さんにもお答えいたしましたように、自治省としては適当なる指導というものをしなければならないし、するつもりもございまするけれども、一々のそうした処分について自治省がこれを判定するということでなしに、そのために人事委員会とか公平委員会とかというものがございまして、そこで公正な判定を待っていく、そしてそういう事例がだんだんと重なりまして、ちょうど裁判に判例がございまするように、大体こういうときにはこの程度の処分だというようなことが積み重ねられていくと思うのであります。これは本委員会でも、事例は別の事例でございましたけれども、いろいろと問題がございます。私はそのたびに同じようなことを申しておるのでございまして、それは自治省としてはもう少し踏み込んで何とかやったらどうだとおっしゃいまするけれども、それは私はかえって自治体というものを損する、やはり自治体自治体の立場において独自の判定をしなければならないし、それにもし行き過ぎがあれば、そういう制度というものが行なわれているので、その制度によって是正をされていくべきものだと思います。  私は最初に申しましたように、いままでの、本件は別でございますよ。本件は別として、私がいままで各地方で行なわれている実情を見ますると、まだ日本は戦後二十年でございまして、その間にいわゆる組合活動もだんだんと正常化されております。私もかつてはこういう問題に直接関係したこともございますが、率直に言って、行き過ぎという点も相当あったように思います。また当局にも理解が足りなかったという点も相当あったように思います。ですから、こういう問題は、先ほど申しましたように、ただこれだけをおとらえになりまして、これがどうだ、こうだということにすればできることでありまするけれども、やはりこの種の問題は、正当なといいますか、正常な運営を私は一日も早く確立したいという感じでございます。
  19. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 自治省として、いろいろ地方自治体のやることに干渉したくないということはわかる、これは当然であります。ただ大臣、皆さん方は、こういう事件なんかにかかわりますとそうおっしゃいますが、反面地方自治体地方自治体における労働組合とのいろんないざこざの大きな原因である年度末賞与とか、年末賞与に対するプラスアルファなんか絶対やっちゃいかぬということは強く指示なさるのですね。そうしておいて、地方自治体をがんじがらめに縛りつけて、ある自治体ではプラスアルファを出したい、出す余裕もある。にもかかわらず、あなた方のそういった強い指示で縛りつけて、出さない。そこでトラブルが起こる。あなたは組合の良識が足らぬとおっしゃるし、当局もとおっしゃるが、私は必ずしも現在の日本の労働組合は、あなたが御心配になるほど良識が欠除しているとは考えません。もちろんそれは特殊な例はございます。それはそれとして、ここであなたと論争したいと思いませんが、地方自治体に対して干渉はしないとおっしゃる、自治体にまかせるということはたいへんけっこうなんだけれども、そういう片一方のいわゆる重大な賞与などのプラスアルファなどについては強い指示をなさっておきながら、こういう問題が起きる根本原因である地方自治体のいろんな問題については知らぬ顔、これでは少し虫がよ過ぎるというか、無責任というか、あまり自治省はおかって過ぎるんじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。吉武自治大臣、良識と、なかなかりっぱな大臣でございますが、しかしいまのお話を聞いていると、ちょっとあなたの世評を裏切る感があると思うのです、これは冗談じゃなくて。片一方では締めておいて、片一方では都合のいいことは自治体にまかせてあまり干渉しないということは、これはちょっと納得できませんが、いかがでございましよう。
  20. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私は決して問題を避ける意味で言っておりません。ほんとうにこの種の問題というものは、お互いに考えていき、お互いに早くいい慣行に到達をしていきたいということで、私はほんとうに念願をしております。これを一々私どもが乗り出していって、この処分はいい、悪いということになれば、組合運動自体のあり方についても言うようになるわけであります。それは私は必ずしもよくないと思う。ですから、それは自治体自体において解決をし、もしそれにお互いに行き過ぎがあれば、そういう機関によって解決をはかっていくという、そういう慣行というものが早く打ち立てられなければいけないという感じを私は持っておって、実は言っておるわけでございます。  それでプラスアルファの問題にいたしましても、私どもはプラスアルファを出しちゃいかぬぞといって表向きに言っていないのであります。プラスアルファをお出しになれば、それだけの財政の余裕があると見ざるを得ないから、特交においてはその点だけは差し引きますよということを言っておるわけであります。ですからお出しになる、ならぬは自治体のことでございまするから、それまでは関与はできないのでございますが、まあ言いのがれとおっしゃれば言いのがれになるかもしれませんけれども、私どもは真正面からは言っておらないわけであります。ですから、その点は、私は早く自治体自治体として、そうして当局職員も、やはり正常な姿に立ち返っていただきたい。それはお話のようにだんだんよくなっております。一時から比べますと私は非常によくなったなという感じもしておりますけれども、まだまだいろいろなところにはいろいろな問題がございまして、これは私はどちらがどうだとは申しません。お互いにと申し上げているところでございまするから、その点はひとつ御了承いただきたいと思います。
  21. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 ついては、局長あたりにも聞きますが、もう一ぺん大臣、あなたなかなかお上手に逃げておられるのですが、これは松本事件は別として、私先ほど指摘したように、たくさんの事例がございます。その中で、いわゆる全然起訴、不起訴もきまらぬ前に懲戒免職した例は、私は寡聞にして聞いていないのです。強盗殺人、これはまた別です。しかしあなたも御承知のように、中央の官庁ではかなり大きな汚職もございまして、国民のひんしゅくを買う点がたくさんございます。それにしても一応休職ですよ、処分がきまるまでは。したがって、この地方公務員法二十九条に処分の方法はいろいろな事例がございます。戒告、減給、停職または免職。しかも免職も依願免でなくて懲戒免、最高の極刑です。したがって私がいまお聞きしているのは、松本事件という具体的な例でなくても、このようにまだ事件起訴、不起訴もきまらぬ前に、最高の極刑に処することは適当かどうか、この点を聞いているのです。この点なら、松本事件を別にすれば、あなたの良識として御答弁できると思うのです。いかがでございましょう。
  22. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私は先ほどから申しまするように、先生のおことばは、少し行き過ぎじゃないかという意味のことで御質問なさっていると思います。私は実態をよく存じませんし、この問題は、この問題自体、あるいは平素の問題等も考えなければならぬ点もあろうかと思います。したがいまして、私は、本件の具体的な問題についてどの程度がいいとか悪いとかいうことは、先ほど来申しますように、申し上げかねるわけであります。そういう問題のために人事委員会というものがありますから——それはこの問題だけではない。しばしばいろいろな問題が出てくるでありましょう。ですからそれにかけて、そこでお、互いが主張し合って、そうして公正な判断をして、こういう問題はこの程度の処分であるぞという慣行は一日も早く打ち立てられるべきです。それを一々中央にいって、中央で私どもはどうだこうだということになりますれば、いつまでたっても軌道に乗らぬ。これが今日地方公務員のいろいろなトラブルの原因だと私は思う。この点は本委員会でもほかの県でも、しばしば取り上げられている問題でございます。私は何だか自分でのがれるために言っているようにお考えになるかもしれませんけれども、私は私なりの考えがあって実は申し上げておる。こういう問題というものは、早くお互いにそれによっていい慣行が生まれて、そして組合活動も行き過ぎないように、当局もまた無理解の態度がないように、こういうことを私は申し上げるので、言っていることでございますから、ただ普通の言いのがれのようにお考えいただきますことははなはだ私としては心外でございます。
  23. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 言いのがれと思っているわけじゃございませんけれども、聞いていると、やはりそういう感じはどうも持たざるを得ませんね。それは先ほど言ったようにあなたの良識あることは十分に知っていますけれども、しかしいまの御答弁を聞いておりますと、あなたにしては少しいまあなた自身のおっしゃった言いのがれ的なものを感じるわけであります。  まあそれはそれとして、いま公平委員会なりあるいは人事委員会に提訴するとおっしゃいました。それはもちろんやります。やっております。ただ問題は、人事委員会、公平委員会も、これは当然名前のように公平委員会でなければならぬのでございますが、残念ながら日本の現実は必ずしも公平でないと思うのです。やはり弱い者が常に弱いために不利なことが多いわけです。したがって、もちろんそういう救済制度はあるけれども、私がたびたび言うように、懲戒免職という最高の極刑をされますと一しかも五十を過ぎて、ほとんど人生を終わった人ならまた別として、二十四歳、大学を出まして一年しかたたない青年でございます。将来大いに働いてもらわなければならぬ人、その人がいきなりそういうことにされますと、たとえ公平委員会なり人事委員会に提訴してやりましても、これはおそらくあなたもこれに対して立場上、私が言うようにこれは少しひど過ぎるということはおっしゃれぬように、人事委員会なり公平委員会等でも、出る結論は大体予想できます。したがって、それに期待できない。もちろん私は決して群馬県の公平委員会、人事委員会が悪いとは言いません。それはその責任を持ってやっていただきましょう。しかしいままでの長い例を見ますと、なかなか期待ができないのが事実であります。したがって、良識ある自治大臣のこれに対する御所見を承って、そのあなたの御所見が決して群馬県の教育委員会を拘束したり、これをどうするのではなくて、事は群馬県教育委員会一つの事例でありますが、これがこのまままいりますと、全国の教育委員会なり教組との問題に発展する可能性があるので、あとで指摘します特昇等の問題もございますが、これはやはりここでこの問題をかなり厳正に、しかもりっぱに解決しておきませんと、これが一つの例として、全国的な問題として方々に起こってくる可能性とその心配をしておりますから私は申し上げるのであります。これは決して群馬県の一問題としてでなくて、もちろんこれは具体的には群馬県でありますけれども、これがいわゆる全国的な規模に発展する可能性を、現在の状態においては皮膚に感じますので申し上げる。したがって、自治大臣も一応責任をお感じになって、ことばをお濁しのようでありますけれども、いま申し上げましたように公平委員会、人事委員会等についてもなかなか期待できない面もございますから、実はくどいようでございますけれども、こういうふうに申し上げるのです。こう申しましても、あなたとしてはこれ以上の突っ込んだ御答弁もおそらく期待できぬかと思いますけれども、私はきょうのあなたのこの問題に対する所見については、教職員だけではなく、全国地方公務員がかなり重大な関心を持ってながめていると思う。したがって、あとこの問題について具体的に他の方にお聞きしますが、もう一ぺん自治大臣からその公平委員会、人事委員会のこともかみ合わせて御答弁をお願いいたしたいと思います。
  24. 吉武恵市

    吉武国務大臣 御指摘のとおりでございまして、その点は私も重大な関心を持っております。自治体のことだから自治体がかってにやればどうでもいいという趣旨で言っているわけではございません。数多くの各府県の人事委員会のことでございますから、県によって多少の取り扱いの差というものがあるいは出てくるかもしれませんけれども、そういう問題はやはり公正な判断というものに落ちついていくと私は見ております。というのは、過去この二十年間において、いろいろのこの種の問題も落ちついてきております。最初はいろいろな極端な問題もございましたが、だんだんと正常化されていっているわけでありますから、各県ともあそこがやったからかってにやるなどということではなくて、公正な判定がくだされていくものと思いますし、私ども自治体のやることではございますけれども、ただこれを知らぬふりをして見ないというわけではございませんで、重大な関心を持っていくつもりでございます。
  25. 安井吉典

    ○安井委員 ちょっと関連して伺いたいと思います。  一番初めに文部省地方課長から事件の概要についての御報告がありました。その御報告は県の教育委員会からの報告をそのままここでお話しになったのだと思うわけであります。私も現地で現実に調査したわけではありませんけれども、私が聞いております事実とだいぶ食い違いがあるわけです。  そこで伺いたいのは、県の教育委員会段階で本人その他から事情の調査を十分に行なって県教委の判断が行なわれたのかどうかということです。その点については、私どもの聞いたところでは、県の教育委員会において本人から話を聞いたというふうな事実もないようだし、それから本人に特に親しい人たちから調査を行なったというふうな事実もないというふうに聞いているわけです。そこでこの点を伺いたいのが第一点。  第二点は、それにも関連いたしますけれども、事実の認定が十分に行なわれたかどうかということです。その点県教委における作業が完全であったかどうかという問題です。  それから第三点は、これはもう起訴されたのですかどうですか。起訴されたとすれば起訴事由というものがあるはずですが、それはどうなっておりますか。
  26. 高橋恒三

    高橋説明員 第一点の本人あるいはその同僚からいろいろと調査したかという点でございますが、私どもが聞いておりますところでは、校長から種々事情を聞いているということは聞いておりますが、本人その他から聞いているかどうかということまでは私どもは聞いておりません。  第二番目の、県教育委員会がこの処分をするにあたって、綿密な調査をしたかどうかという点でございますが、県の教育委員会としては十分に調査した結果の判断だとわれわれは見ております。  第三番目の、起訴されているかどうかという点でございますが、起訴されているということについてまだ確認をいたしておりません。おそらくまだ起訴されていないのではないかというように判断をいたしております。  以上でございます。
  27. 安井吉典

    ○安井委員 いまの御答弁で明らかになりましたことは、事実の認定は十分に行なったはずだということでありますが、しかしその認定のやり方はこの事件が刑事事件だとすれば、原告の立場になっている校長から報告を受けただけで、それで事実の判定が十分に行なわれたというふうに県教委がお考えになっているということ、御本人松本教諭からも、あるいはその同僚からも、きちっとした証言をとって県教委の判断がなされていないということですね。どうも一方的な判断が基礎になっているような気がするわけです。それからまた起訴になるかならないか、いままだそれはわからない段階のようですね。そういう段階に早くも死刑の宣告を教育委員会がなさるというのも、どうもこれは私はおかしいような気がするわけです。そういう点について、文部省として別段ふしぎにお考えにならなかったわけですか。
  28. 高橋恒三

    高橋説明員 起訴になるならないの前段階において、そういう懲戒処分をしたということについて行き過ぎではないかというお話でございますが、この点につきましては、ほかにも、私の記憶でございますけれども起訴されない前に処分をいたした例が幾つかございます。それで本件についてそれが妥当であるかどうかという問題でございますが、県の教育委員会が十分調査をして事実を判断し、そして懲戒免職ということに決定したわけでございますので、私どもとしては、その場におり合わせたわけではございませんし、もちろん人事権を持っておりませんので、県の教育委員会のおやりになったことを信頼するというように考えております。
  29. 安井吉典

    ○安井委員 文部省が県教委を、人事権を持って指導すべきだというふうな意味で私が言っているわけじゃなしに、ただあなたがそういうふうな報告をお受けになって、ふしぎにお思いにならなかったかどうかということだけを私はいま伺っているわけでございます。この事件につきまして、どうも教職員の服務と組合活動の問題、こういうふうな問題についての校長職員の側との考え方の違いといったようなものが一番根拠になっているように思うわけです。文部省として、この服務と組合活動の関係について、県の教育委員会に対してどういうふうな指導をなさっておられるか、それをひとつ伺います。
  30. 高橋恒三

    高橋説明員 従来いろいろと、先ほども自治大臣が申されましたように、トラブルが多かったときに一斉休暇闘争というものが組まれた際に、そういうものが起これば、当然学校の授業が中止されるわけでございまして、そういう従来の状態の場合には、少なくもそういった授業に支障が起こることのないようにという指導は再三いたしてまいりました。最近においては、そういったトラブルも非常に少なくなってまいりましたので、私どものほうとしては、特に現在指導はいたしておりません。
  31. 安井吉典

    ○安井委員 服務に専念することに関連する条例がありますね。それが結局どこまでこの組合活動を許すかということに関連があるものだと思うのでありますが、その適用のしかたやその他につきまして、最近どういうふうな指導をされているか、ひとつ伺います。
  32. 高橋恒三

    高橋説明員 最近、別段ことさら指導をいたしておりません。
  33. 安井吉典

    ○安井委員 一番新しい指導は、いつごろされたのですか。
  34. 高橋恒三

    高橋説明員 私、昨年七月から地方課長になったわけでございますが、この二、三年はたしかやってないと記憶いたしております。私が就任いたしましてからは一回もやっておりません。
  35. 安井吉典

    ○安井委員 自治省はどうですか。
  36. 佐久間彊

    佐久間政府委員 自治省といたしましては特にこの問題について格別の指導をいたしたことはございません。法律に基づきまして、条例で定めます場合には、職務専念義務が免除できるということになっておりますので、その条例によりましてそれぞれの地方公共団体において適当と考える規定がなされておる状況でございます。
  37. 安井吉典

    ○安井委員 それではこの問題はもう少しあとに残します。  本論の懲戒やり方の問題でありますが、ただいま茜ケ久保委員質問されておりますように、私もこの地方公務員法の規定を読んでみますと、分限と懲戒と二通りあるわけです。分限に関する規定においても、第二十八条には、その第二項で「職員が、左の各号の一に該当する場合においては、その意に反してこれを休職することができる。」その第二号は、「刑事事件に関し起訴された場合」、こういう規定があるわけです。つまり法律では、刑事事件に関し起訴された場合には、一応分限としての休職にする、こういうような段階を経て、それで刑事事件の判決が確定して刑になったというふうな段階にいきましたら、これはこの懲戒規定の第二十九条の発動で免職、こういうような一応の予想も法律の上に置いてあるような見方ができると私は思うわけです。ところが今度の事件は、最初から刑事事件として発展するかどうかもわからない、つまり刑事事件としての起訴が行なわれるかどうかもわからないというふうないまの段階において、とっつき第二十九条の懲戒規定を発動して、懲戒免職、つまり死刑の宣告を、頭からしてしまう、こういうやり方はもう少し考えなくてはならないことではないかと思います。そういうようなことでは、地方公務員の人たちが安心してその職場で働くわけにはいかぬわけですよ。この地方公務員法の規定は、職員の権利といいますか、あるいは身分保障といいますか、そういうものをもう少し考慮に入れた法律ではないかと私は思うわけです。そういうような趣旨からこの地方公務員法ができているのではないかと思うわけです。  そこで伺いたいのは、この懲戒やあるいは分限に関する規定の実際の運用の基準、適用の基準というふうなことについて、自治省や文部省は地方当局にどういうふうな指導をしているのか、つまりどういうふうな場合にはどういう規定を適用するという基準を示していないのかということです。法律があって、この法律の中にあるからそれで地方はかってにやりなさい、どうでもいいからかってにやりなさい、こういうことなのですか。
  38. 佐久間彊

    佐久間政府委員 この適用の基準につきまして、格別の指導はいたしておりません。法律上の解釈といたしまして、刑事事件に関し起訴されました場合に、まず休職にしてからでなければ懲戒処分ができないのかどうか、こういう照会があったことはございます。その場合におきまして、私どもは、法律上の解釈といたしましては、休職にしないで懲戒にするとことは、これは差しつかえない。刑事上の責任と、公務員の秩序を維持するための懲戒上の責任とは、それぞれ目的が違うわけでありまするから、それはさしつかえないという回答をいたしたことはございます。
  39. 安井吉典

    ○安井委員 分限と懲戒は、これは一応別なものですから、法律解釈の上では私はそれでさしつかえないと思います。法律解釈の上ではそうなるでしょう。しかし現実の処理の場合は、一つの段階を考えて、分限と懲戒という二つのカテゴリーを私は分けてあるのではないかと思います。ところで、その基準を全く置いてないということは、これは地方自治体のほうはもちろん慎重な態度でこの規定の適用をするのだろうとは思いますけれども、しかし地方公共団体の首長にいたしましても、これはもういまは政党政治ですよね。だからそういうふうな政党的な動きの中に巻き込まれないとも限らないわけです。その他地方地方の実情があるわけで、ある程度そういうようなものに従ってニュアンスが出てかまわないと思いますけれども、しかし一つの県の適用とほかの県の適用とが、全く違ったような形になるのも私は問題ではないかと思います。そしてまた、使用者の側にあるほうの適用基準については、ある程度いたし方がない。しかし自治大臣は人事委員会があるじゃないか、公平委員会があるじゃないかと言われるが、その人事委員会にしても公平委員会にしても全く基準がないでしょう、同じわけですね。全く基準がなくて、自治体の首長のほうも基準ない、人事委員会のほうも基準がない。全国まちまちの形に出てもこれはしかたがありません、これが自治大臣の御答弁なわけです。私は全国が統一的な姿に完全にやれという意味ではありません。もちろんそれはニュアンスが出てもかまいませんけれども、しかしある程度の判断のものさしというものができていないことにはおかしいことになりはしないか、私はそう思うのでありますが、重ねて伺いたいと思います。
  40. 佐久間彊

    佐久間政府委員 御指摘になりました点は、地方当局が運用をいたします場合に、ごもっともな事柄であると思うのでございます。実際の問題といたしましては人事委員会の連合会あるいは公平委員会の連合会におきまして、それぞれの事例研究をいたしておりますし、また人事委員会、公平委員会の判定に不服があります場合には、裁判所に出訴もできるわけでございますから、裁判所の判例によっておのずから統一もなされるわけでございます。またいろいろな研究会等の席上におきましては、私どもも過去のいろいろな事例をもとにいたしまして、こういう場合にはこの程度の量刑が適当であろうというような研究を一緒にいたすというようなこともございますが、そのようなことを積み重ねまして、おのずから一つの基準というものをつかむようにするという行き方がよろしいのじゃないか、また現在そのような行き方をとっておる次第でございます。
  41. 安井吉典

    ○安井委員 いまの佐久間行政局長の御答弁からすれば、これまでの事例、裁判所の判例みたいたものだと思うのですけれども、そういうようなものの適用の中から、今回のこの事件について、これがいいのか悪いのかという判断をこの際お聞かせ願うことができるような気がするのですが、どうですか。
  42. 佐久間彊

    佐久間政府委員 今回の具体の問題につきましては、私ども事情を詳細承知いたしておりませんので、申し上げることはできないのでございます。ただこの問題につきまして、先生のさっき御指摘になりました点について所見を申し上げさせていただきまするならば、刑事事件になりました場合におきましては、御指摘のような御疑問も出るかと思いますけれども、刑事事件にも至らない問題につきましても、懲戒処分といたしましては、法令違反、あるいは職務上の義務違反、あるいは全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合に、それぞれ懲戒ができるわけでございまして、これはおのずから目的が違うわけでございます。でございまするので、この非行、あるいは職務義務違反というような点を重点にいたしまして判定をいたす場合におきましては、この刑事事件の成り行きいかんにかかわらず懲戒処分が先行するということもあり得るものと考えております。
  43. 安井吉典

    ○安井委員 関連ですから私はこれでやめますが、いずれにいたしましても判断の基準というものがどうもはっきりしていないという点は私は問題だと思います。いままでいろいろな事例もあったろうし、そういうものを基礎として一応の判断基準といいますか、そういうようなものを今後やはりお示しになる必要があると思うのでありますが、今後どういうふうなおつもりですか。
  44. 佐久間彊

    佐久間政府委員 先ほど過去の判定の事例、あるいは判例等をもとにいたしまして、いろいろ関係者が研究をし合っておるということを申し上げたわけでありますが、これも一般的な一つのめどをこれによって関係者が修得をするというわけでございまして、具体の事例になりますると事実は千差万様でございますので、それらにつきまして今後いままで以上に積極的に私どもが基準を指導するということは、ただいまのところ考えておらない次第でございます。
  45. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 自治大臣が何かほかのほうへいらっしゃるそうで退席されるようですから、最後に一言お尋ねしておきたいと思います。  それは、この事件の起こります前後の背景です。これは私は問題が多分にあると思うのです。と申しますのは、群馬県では他県に先立って特別昇給の条例をつくった。いわゆる勤評による特昇問題であります。どういうものができましたか私は存じませんが、とにかくそういうことでございまして、いわゆる勤評にもかなり群馬県では反対をされた事例がありますし、その反対したことがすぐに特昇という形で出てまいりまして、教職員をはじめ父兄等にも非常な刺激を与えたわけであります。したがって、全県的に特昇反対の運動が巻き起こりまして、実は当地方行政委員会に所属しておりました山口鶴男前代議士が責任者になって、地方自治法による直接請求の運動を起こしたわけであります。群馬県では二万五千余りとればいわゆる直接請求ができるのでございますが、それがいわゆる特昇に対する教職員はもちろん、父兄その他の反対が強かったために、短い期間に八万幾千の直接請求の署名ができたわけであります。これによって県会の招集を要求したわけでございますが、これは全国的にも珍しい事例といわれております。結果はもちろん自民党の非常に強いところでありますからこれは否決されましたけれども、そういう特昇反対の直接請求の署名運動の進行しておる期間でありますし、一面また県教委が十一月に組合活動制限通達、年休以外の勤務時間中の組合活動の禁止、こういった指令を出したあとでありますし、いわゆる組合当局者との間における状態が非常に、あなたの先ほどから指摘していらっしゃるように正常でない状態を背景とし、しかも県会あたりで、自民党議員諸君が教職員組合活動に対する制限なり、あるいは非常に行き過ぎた発言をされるという実態の中で起きた問題でございます。したがって、いわゆる暴力とか暴行とか言われますけれども、そういう非常に異常な、しかも組合活動制限をし、組合活動を弾圧し、しかもそれが政党の介入もなされて行なわれている。非常に異常な状態の中で行なわれたというこの実態をやはりお考え願わぬと、この問題の根源なり解決の道もないと思うのです。したがって、私はここで自治大臣に要請したいのは、大臣は先ほどから何べんも御答弁の中で、逃げようとしているとは申しませんけれども、はっきりした所信を御披瀝にならぬし、抽象論で終わってきておりますが、ひとつこの辺でいかがでしょう、これはどう考えましても——いろいろなデータによる詳しい具体的な例をあげたいのですが、大臣の時間もあるようですから、行政局長にあとでお尋ねしますが、だれが考えましても、これはどう見ても私は不当処分と断定せざるを得ないと思うのです。これは新聞の報道等、新聞の投書なりあるいは当時の新聞の論調なりないしは父兄、生徒等、いろんな陳情等にも出ておりますが、これはどう考えても不当処分と断定せざるを得ないのです。  したがって、ひとつ自治大臣、この辺で群馬県の教育委員会に、これは不当処分であるから処分を撤回しろという御指示はできないでしょうが、しかしあなたの見解として、当委員会において私の質問に対して、やはり自治大臣としては、この処分はこれはどうも少し行き過ぎではないか、したがって、群馬県教育委員会のひとつ自発的な処分撤回を希望するくらいの発言があって当然と思うのです。そのくらいのことが自治大臣、この辺で出ないでは、これは大臣としてのいすを  私はこれは決して無理ではないと思うのです。お立ちになるそうですか、この辺であなたの度量のほどをお示し願いたいと思うのですが、いかがでございましょう。
  46. 吉武恵市

    吉武国務大臣 御指摘のように、いろいろの経過が私はあると思います。でありますから、私は当初に抽象的ではございまするけれども、申し上げたのでございます。私は本件は事実を私はまだ詳しく存じませんし、どうこうということは申し上げかねます。問題は一に群馬県における人事委員会の公正なる判定に待つ以外にないと思います。と同時に、私は御指摘がございましたように、こういう問題を解決するゆえんのものは、当局理解を持つことが一つであります。また、組合活動を行なうほうも、正常なるルールの上に乗った活動を早く打ち立てられるべきだと思います。群馬県のいままでの状況がどういうふうであったかは私は存じませんけれども、私が過去十数年の間に感じましたことは、何とか早くひとつ双方とも理解のある正常な姿が打ち立てられたいものだという念願を持っておることでございます。本件につきましても、ひとつできるだけ早く正常な姿が打ち立てられることを希望いたしまして答弁にいたしたいと思います。
  47. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 行政局長にお尋ねいたしたいのですが、事件内容につきまして、私どももデータを持っておりますが、ここでやった、やらぬということを、水かけ論をしても切りもございません。とにかくただいま文部省の課長の御報告は、県教委等の一方的な報告でございまして、これに対しては私どもたくさん反駁する資料を持っております。しかし、時間もございませんし、またそのことで時間をとってもと思いますので、別な観点からお尋ねをしたいと思うのでありますが、今度の懲戒免職の根拠は、「昭和三十九年十一月から十二月にわたり校内で校長教頭に数度暴行を加え、教頭に負傷させた。これは職場め秩序を乱し、教員としてあるまじき行為であり、全体の奉仕者としてふさわしくない非行である」ということであります。したがって、地方公務員法第二十九条第一項三号に違反しておるとしてあり、いわゆる「全体の奉仕者たるにふさわしくない非行」とありますが、松本教諭の日ごろの教師としての態度は、組担任として組の五十数名の生徒からは非常にいい先生として慕われていたようであります。これは決して私が一方的に言うのではなくて、おそらく教委も認めておると思う。ただ現場の実情がどういうふうであったかは残念ながら全然承知しておりませんけれども、たまたま先ほど申しましたような非常に異常な情勢の中で、学校長なり教頭と交渉のあったときでございますから、おそらくある程度本人も興奮していたであろうということは想像できます。しかし興奮したといたしましても、先ほどげんこつで突いたとか、両手で突いたとかありましたが、これは突かなくても相手が出てきますと、ぶつかりますから、これでも突いたと言えますよ。私はたびたびこの委員会で砂川の事件の当時、警視庁やあるいは警察庁を呼んでずいぶん詰問しましたが、あれは警棒は絶体振り上げてはならぬというのに、警官は盛んに振り上げておる。私などもずいぶんたたかれました。公務執行ということで当事者は逃げておる。松本氏の場合も、いま言ったように、校長先生なり教頭先生が出かけようとする、そこに立っていた。たまたま手を握っておった。それでぶつかった。これでも暴行ということにされる感じがするのです。私はおそらくそうだと思う。手は幾らか伸び縮みしますから、これはときによっては伸びることがありますよ。それでぶつかったということもあります。私は暴行と思っておりませんし、暴力とも考えません。これは教育委員会では一方的にそう言っておりますが、全体の奉仕者としてということは、団体交渉校長先生なり教頭先生といざこざがあったことが、いわゆる全体の奉仕者としての態度であるかないか、ここに疑問があると思う。この処分理由——どもは全体の奉仕者としては、生徒に忠実であり、教職員としていわゆる授業に専念をし、生徒なりあるいはPTA活動の場におけるほんとうにまじめな行為があれば、全体の奉仕者として十分だと思う。校長先生教頭先生と何かの機会にちょっといざこざがあったことが、全体の奉仕者として非行があったということは言えないと思うが、この点行政局長としてはどのように判断されますか。
  48. 佐久間彊

    佐久間政府委員 「全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合」という規定でございますが、「全体の奉仕者」は、御承知のように公務員のあり方につきまして憲法でそう規定してあることばをここへまた引用しておるわけでございまして、要するに公務員としてふさわしくない非行のあった場合というような意味かと思うのでございます。ただいま御指摘になりましたいろいろな事実関係につきましては、私つまびらかには承知していない、ここでお伺いいたした範囲でしか知識がないわけでございまするけれども、教育委員会が申しておりますように、暴行校長教頭に対して数度行なわれたということが事実であるといたしますならば、かりに生徒の授業につきましては非常に非の打ちどころのない先生でありましても、やはり本号に該当するものとして処分がなされるということもこれは首肯できることであろう、かように考えるわけでございます。
  49. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 解釈が違うのじゃないですかね。それは人間でありますから、いろいろなことがございます。しかし、少なくとも公務員としての全体に対する奉仕というものは——いま行政局長は、大臣がああいう答弁をしていかれましたから、大臣答弁と食い違うことはあなたとしてはできないでしょう。また、さらにあなた方は——ども国会質疑応答で常日ごろ感ずるのは、どうもあなた方は、具体的な事実が非であっても、それは何か当局者が有利なように弁明をし、そういうふうに口うらを合わせて答弁をされるのですが、これはやはり、少なくとも国会における審議の過程では非常にいかぬと思うのです。それはあなた方は公務員として、国に、いわゆる国ということはたくさん内容がございますが、われわれ一般の国民が現在主でございますから、国民に奉仕する立場でありますから、国民が不利になる場合には、たとえ当局者が何かあった場合でも、それを非としてこれは当然やるべきだと思う。いまあなたの答弁を聞いておりますと、教職員が教師として非の打ちどころがなかったとしても、何かのその場の関係で、校長先生なり教頭に、暴行ということば自体が今度の場合にはおかしいと私は思うのですが、それは別として、そんな場合には、全体の奉仕者としてやはりこの処分に値するというお考え方は、これはどうも私は納得できないのですが、やはりあなたはそうとしか答弁できませんか。やはり行政局長という立場として、何十万の地方公務員の立場というもの——これは先ほど言ったように、教職員の場合もそうでありますが、一般の公務員の場合でも、実に優秀な地方公務員であって、何かの関係で、ちょっとしたはずみに上司に対して何か事があった場合に、直ちにこの二十九条一項三号が適用されるということになりますと、これは安心して仕事もできないことになります。したがって、きょうここに指摘したのは、先ほど言ったように、一松本先生の問題であるけれども、この問題はいま言ったように地方公務員に重大な思想を持っているし内容を持っているからお尋ねするし、また自治大臣の協力もお願いしなければならぬ。したがって、いまのこの法文の解釈ですね。行政局長はいまの答弁のようにされておると、これは私はなかなか容易でないと思う。もう一度さらに重ねてお尋ねいたしますが、いかがでありましょう。
  50. 佐久間彊

    佐久間政府委員 私は、先ほど教師として非の打ちどころがないというようには申し上げませんで、生徒に対する授業の点においては非の打ちどころがないといたしました場合におきましても、校長教頭に対して数回にわたって暴行を加えるというような行為があれば、これは二十九条第一項三号に該当するものとして処分がなされるということも、これは首肯できることだということで申し上げたわけでございまして、職場外の関係におきまして、個人的な恨みを持って、校長教頭に対して暴行でもしたということでありますれば、これは全体の奉仕者ということとは何も関係がないと思うのでございまするが、本件の場合におきましては、職場におきまして、職務上の関係につきまして、校長教頭に対して命令を聞かず暴行を加えた、こういうようなことでございまするから、この点につきましては問題がないというふうに考えておるわけでございます。  なおまた、誤解を生んでもいけないかと思いまするのでつけ加えまするけれども、かりに私生活における関係におきましても、その行為から判断をいたしまして、その本人の性向が公務員たるにふさわしくないという判断がなされます場合におきましても、この懲戒対象になるということも、これもあり得るとは思います。もちろん事実関係の認定にあたりましては、当局といたしましては十分間違いのない心証が得られますように、事業関係調査をいたすべきことは言うまでもございませんし、特に先生指摘になりますように、懲戒免職というような処分にいたします場合には、慎重を期すべきだというふうに心得ることはこれは当然のこと、かように考えておるわけでございます。
  51. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 また機会をあらためて、文部省のほうからも適当な方においで願って、この問題はきょうはこれではとても足りませんので、あとでまたやることを要求しておきますが、先ほど、自治大臣もあなたも、具体的な問題をきょう初めてお聞きになったのじゃないですか。しかし事実は事実としてあるのでございますから、早急に自治省としても調査なさって、次の機会にこの委員会文部当局もおいで願って、これはいま言ったように松本教諭一個人の問題ではなくて、地方公務員の重大な問題でありますから、私は重ねて究明していきます。したがって、早急に御調査なさって、この次にはいわゆるあなた方の常套手段である承知しないではなくて、十分承知した上で答弁を願いたいと思います。  以上できょうは終わります。
  52. 佐久間彊

    佐久間政府委員 調査をしろということでございまするが、地方職員の件につきましては教育委員会当局でございまするし、教育委員会指導につきましては、文部省が当たっておるわけでございまするので、私どもが直接こちらから調査をするということは、これまでもいたしておりませんので、文部当局を通じましていろいろ資料の提供をしていただくということにいたしたいと思います。  なおまた、すでに人事委員会に提訴されております段階でございまするので、それらの点も考慮をいたさなければならぬと思いまするが、いずれにいたしましても、私どもができる限りにおきまして、事実関係をさらに承知をいたすことには努力をいたしたいと思います。
  53. 中馬辰猪

    中馬委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時十九分散会