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1965-03-12 第48回国会 衆議院 地方行政委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月十二日(金曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 中馬 辰猪君    理事 亀山 孝一君 理事 久保田円次君    理事 中島 茂喜君 理事 川村 継義君    理事 安井 吉典君       亀岡 高夫君    登坂重次郎君       森下 元晴君    森田重次郎君       山崎  巖君    和爾俊二郎君       重盛 寿治君    華山 親義君       細谷 治嘉君    門司  亮君       吉田 賢一君  出席政府委員         自治政務次官  高橋 禎一君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君         自治事務官         (税務局長)  細郷 道一君  委員外出席者         参  考  人         (税制調査会委         員)      木村 元一君         参  考  人         (税制調査会委         員)      松隈 秀雄君         専  門  員 越村安太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方税法の一部を改正する法律案内閣提出第  八七号)  石油ガス譲与税法案内閣提出第八二号)      ————◇—————
  2. 中馬辰猪

    中馬委員長 これより会議を開きます。  地方税法の一部を改正する法律案及び石油ガス譲与税法案一括議題とし、審査を進めます。  本日は、両案について参考人として税制調査会委員木村元一君、同じく松隈秀雄君が出席されております。  この際一言ごあいさつを申し上げます。両参考人には、御多用中のところ、当委員会法律案審査のため御出席をいただき、まことにありがとうございます。  本委員会におきましては、地方税法の一部を改正する法律案及び石油ガス譲与税法案の両案について審議を重ねておりますが、さきに税制調査会から今後における基本的な租税制度あり方についての答申及び昭和四十年度税制改正に関する答申がなされましたので、本日両参考人からそれぞれの立場で、税制調査会における審議経過等をお述べいただき、両案審査参考といたしたいと存じます。  なお議事の整理上、初めに御意見をそれぞれ約十五分程度に取りまとめてお述べ願い、次に委員諸君からの質疑に対しお答えを願いたいと存じます。  それでは木村参考人松隈参考人の順序でお願いいたします。木村参考人
  3. 木村元一

    木村参考人 ただいま紹介にあずかりました木村元一でございます。  税制調査会は、三年がかりで諮問事項であります今後におけるわが国の社会、経済の進展に即応する基本的な租税制度あり方について答申を出す段取りになりまして、昨年暮れに発表させていただいたわけでございます。同時に、毎年の例では、その年度年度税制改正につきましても一応答申を出すということ、これは例年どおりやったわけでございます。したがって、昨年の暮れには、答申といたしましては二つに分かれまして、長期の基本的な税制と、当面昭和四十年における改正に対する答申と二通り出たわけでございまして、ただいま御指示がありましたように、私は主として長期税制あり方、特に本席では地方税制あり方について税制調査会考え方を述べよ、こういうことでございます。  実はこちらへ参ります前には、参考人肩書きをよく読まないで参りまして、一橋大学の教授として申し上げることに心にきめておったのでございますが、実は出がけによく案内状を見ましたら、税制調査会委員という肩書きがついております。また委員長のほうからもそういうことで御紹介がありましたので、これから申し上げますことは、調査会の一員として申し上げることになると思います。ただ自分意見を特に申し添えるときには、個人的な意見であるということをお断わりして申し上げたいと思います。  何ぶんにも税制は長い伝統の上に立ってでき上がってくるものでありますので、どのような改正を考える場合でも、現状の認識ということを無視しては改正は考えられない。しかし毎年、毎年差し迫った問題だけを考えていくということでは、日本の将来の税制あり方に思わぬひずみが生ずるおそれもあるというところから、委員のほかに、専門調査員といいますか、専門委員をわずらわしまして、私どもといたしましては相当衆知を集めたつもりで皆さんにお集まりいただき、そこでかなり熱心に、自分から申し上げるものも少し口幅っとうございますけれども、相当集中的に日本税制あり方について研究をしたのであります。一般の、国、地方全体を通じての考え方というのは、すでに皆さんも御承知のことだと思うのでございますが、いままでは国民所得の何%という形で税負担を考えておったのを、将来の日本税制財政需要規模等を考えれば、くぎづけにした形で、国民所得のふえただけ、それのまた二〇%なら二〇%という程度税制規模ではとうていやっていけないのではないか、また財政需要並びに租税負担というものは、国民一人当たり所得水準が上がってくれば少し程度ふえても差しつかえない、というと語弊がありますけれども、まあたえることができるし、また国民所得の上昇に伴って、社会保障であるとか、公共事業であるとか、相当強い財政需要が見込まれるということもあるので、そこで自然増収になっていく部分を大体二割程度当初予算において還元するような減税委任方式を考えれば、負担の問題はそれほど考えなくてもよろしいのではないか。むしろ大事なのは、個々税金が公平であるかということで、非常に不公平な税金ほど人々の気持ちをすさますものはないのでありまして、幾ら重い税金でありましても公平に負担している場合には、少々重くても人々はがまんするけれども自分だけが取られているというような形の税制であっては根本秩序——勤労意欲とか事業意欲ということばがこの答申にも使われていますが、それよりももっと奥深いところで、政治の秩序といいますか、国の秩序というものが保たれなくなるという状況が出てくる。  そういうことのないように個々税金をよく検討した上で、直接税が何%になるか、間接税が何%になるかということも結果として出てくるものであろう、こういうような立場に立って全体の租税負担あり方などを考えたのでございます。  ところが他方におきまして、現在の国と地方財政規模なり財政収入なりを考えてみますと、これも御案内のことだと存じますけれども、国で取っております税金は大体総税収の七割ございます。地方地方税として取っておる分は三割しかない。けれども実際に窓口で使っておる実情から申しますと、地方のほうが七とまではまいりませんが、六三ほど使っておって、国で使っている分が三七程度つまり六対四で地方のほうがよけい使っておる。これはどうしてそうなるかといえば、これも御案内のとおり一つには地方交付税というもので国から資金が流れていく。国税三税の二九・五%になりますか、それを地方へ流す。そのほかに補助金負担金という形で各省からそれぞれの事業費目に応じた資金地方へ流されていく。こういう形になっております。  そこで財政需要との対照で考えますと、中央に比べて地方のほうがどうも手薄ではないのだろうか。そこで答申の線におきましても全体としては自然増収の二〇%程度減税せよという負担水準を示しながら、他方においては地方では少しずつ財源強化せよということをうたっておりまして、一部の委員からは、減税のムードを出しながら地方に関してはむしろ強化とか整備とか何か税金をたくさん取れといわぬばかりの感覚ではないかという批判が内部でも起こったほどに、地方税収については、需要との関係から見て、むしろもう少し強化しなければならぬのではないかということがこの答申に出るようになったのであります。けれどもぶんにも租税の全体の水準というものを頭で押えている、その中で今度は地方強化をはかるということは、卒然と考えますと矛盾でございまして、委員の中から批判が出るのもその意味ではなるほどもっともであったのであります。この間の調和をどうはかるかということについて、私ども税金立場から非常に苦労をいたしたのであります。けれども、いま言ったような差し迫った事情が一方にありますために、何とか妥協といいますか、道を見つけていかなければならぬ。だんだん皆さんのお考えをまとめていきます間に、こういうことが結論になって出てまいりました。それは、先ほど言いましたように、税収財政需要の非常な違いをカバーしているものが実は交付税補助金である、使わなければならぬものはいずれにしても使わなければならないので、国から取ったものであろうと地方へ回さなければならぬ。そうすると資金量といいますか、需要量を一定にしておいても、地方自治強化し、中央からのあまりのひもつき行政を回避するためには、ここでひとつ補助金というものを整理するということ、また、事務配分関係が、現在では非常に乱れておるようなところがございまして、窓口がたくさんあって、そこから補助金が出ている。補助金補助金との間の調整というものは、従来それほど熱心に考えられていなかった。大蔵省に補助金課といったものができたのは最近だと聞いております。従来は、各省からそれぞれの名目で補助金が流れていった。それが地方を統制する、いわゆる縦割り行政というものが姿をあらわしてきておる。これをひとつ整備をして、どうせ使う金なんであるから、整理した分について地方財源強化に充てることができないであろうか、こういうことをいろいろ検討したのであります。  それからもう一つは、国税におけるいろいろな減税措置であるとか減免措置が、地方にすぐにそのまま及ぶという姿が多いし、また、いろいろな勢力関係で、地方としては当然取ってしかるべきはずの税金についても、いろいろな形で減免措置がついておったり、非課税措置がついておったりする。こういうものも少し整備して、地方独立財源をふやすことを考える必要がある。  大体いま申しました二つの観点から、一般的に税の強化ということを考えることに答申では結論が出されたのであります。けれども、さてそれでは補助金合理化ということは簡単にできるか、また、先ほども申しました事務配分につきましても、国には田の出先機関があり、地方にはまた府県市町村があり、その間と、また出先機関と、さらに中央との関係というふうな複雑な状況になっておるのは、やはり理由があってなっておることでありまして、そう簡単にこれを整備して、地方でやるべきものは少なくするとか、国でもっと負担するとかいうことを口先で言いましても、事業の種類、行政の違い、それぞれの地域の事情によってなかなか一律に律することができないのであります。補助金また同様だということでございまして、税制調査会立場といたしましては、これはだいぶ前にも参議院の別の会で申し上げたことがあるのでございますけれども税金の問題を考えておるというと、交付税をどうするか、補助金をどうするかがきまらぬと、税のことが最後的には決定できぬという、何か管轄外のことまで手を出すことがはばかられるという事情がある。私は補助金にも関係しましたが、補助金調査会へまいりますと、税と交付税がはっきりせぬのに、補助金の問題だけを取り上げて切るとかどうとか言ってみたところで、これはなかなかできぬじゃないか。それで、ほかのものは大体現行税制というもの、あるいは現行補助金制度というものを前提に置いて、事務の上ではどうしたらいいかを考えなければならぬ。それから仄聞すると、行政調査会のようなところでは事務配分その他についていろいろ提案も出てくるのでありますが、それじゃ税金はどうする、交付税はどうするという話になってくると、これは税制調査会があるのだ、補助金欄面会があるのだ、あるいは刑の調査会があるのだ、そこでいろいろやっていることがあるのだから、そのほうを見なければということで、何か三すくみすくみ状況になりまして、なかなか抜本的な理想的な案を導き出すことがむずかしい。私ども長期税制における地方税関係答申におきましても、やはりいろいろ問題があることを皆さん知っているのですけれども、さてどうするかということになりますと、管轄外である、研究がまだできていないということで、税なら税だけのほうへしわ寄せというか、その中で考えてみるということしかできない、こういう大きな前提といいますか、条件の中で仕事をさせていただいたのであります。  そういう前提の中で、若干個々税金あり方について答申でお示しさせていただいたのでありますが、ごく大まかに申しますと、府県におきましては府県税源強化のためには、今日の事業税というものを付加価値税方式に持っていったらどうかということが一つ大きな骨になっております。  それから市町村のほうにつきましては、一つにはやはり現在あります税金なんですが、固定資産税というものを、先年固定資産税課税標準評価がえということをたいへんな犠牲を払ってやったのでありますが、それが一向に税収のほうにはいまだ反映させるような措置がほとんどとられておらない。はなはだ中途はんぱな、二割増の頭打ちという制度をとっただけで済ましておりますが、これも実際に評価額が上がっているならばそれにフルに、いままでの税率である百分の一・四をかけることができないにしても、もう少し固定資産税強化することができるのではないかということが一つ。  それから市町村税につきましてもう一つの面は、住民税のかけ方について、考え方として、こういうことを考えたらどうか。いまここにかりに五十万円取っている人と百万円取っている人がいるとすると、最初の三十万円なら三十万円というのは住民税控除といいますか住民控除といいますか、そういう形で、これは国税控除と同じような形で控除する。しかし国税で今度出ているような五十数万円というような基礎控除よりもう少し低いところから住民控除をやる。そうすると五十万円取っている人は三十万円を基礎控除して、残り二十万円が地方住民税課税対象になるというような形、しかしその人は五十五万円以下でありますから国税は納めない。片一方の百万円の人はどうするかと申しますと、その上の段階をどこまでするかは問題でありますけれども、やはり初めの三十万円は住民税控除で取られてしまう。つまり百万円のうち五十万円までの部分については三十万円を引いて二十万円の部分について住民税だけ払う。それから五十万円以上、いまの国税控除で引かれる五十万円を引いた残りの分だけについて国税を納める。つまり所得税の納め方が、現在では所得税がきますとそれにまた住民税がかかってくるという形で、二重にかかるような形になっておるのでありますが、それを大所得者であろうと小所得者であろうと、低いほうの所得部分、その部分地方税という形で課税対象にし、高いほうの部分をひとつ国のほうの課税対象にする、こういう形でやることはどうであろうかという提案を基本的な考え方として出したのであります。その理由は、これも御案内のとおりで、市町村は三千五百ありまして、相当有力な市町村もあれば、まことに貧弱な市町村もある。下のほうの所得者ばかりしかいないようなところで課税の最低限というものをあまり上げますと、納税人口がほとんどなくなってしまうというような状況がございますので、ある程度低い所得部分、これをどの程度にするかというようなことについての提案は全くいたしておりませんけれども考え方としてはそういう考え方をとったのであります。  まだほかに電気ガス税であるとか、あるいはガソリン税であるとか、LPGであるとかいろいろございますが、審議のごくあらましの経過と持っていき方、考え方について御報告申し上げました。  時間が一ぱいになりまして、どうも……。
  4. 中馬辰猪

    中馬委員長 どうもありがとうございました。  次に松隈参考人にお願いいたします。
  5. 松隈秀雄

    松隈参考人 ただいま委員長から御紹介がありました松隈秀雄であります。私は税制調査会の中に設けられました昭和四十年度税制改正に関しまする小委員会委員長をつとめた関係もありまするので、昭和四十年度税制改正に関する答申のうち、地方税に関しまする答申について、説明を申し上げたいと思います。  ただいま木村参考人から長期税制答申についての御報告がございましたが、昭和四十年度税制改正案を立案するにあたりましては、できるだけ長期税制答申の線に沿うようにつとめたのであります。ただ長期税制答申をごらんになればおわかりになると思うのでありますが、長期税制答申が、必ずしも結論まで出しておるものばかりではございません。問題を提起してなお今後の検討にまつ、こういうような書き方をしております。そういう点では比較的所得税のようなものは、はっきりこれを改正すべし、こういう減税をすべしという線が出ておりますが、法人税になるとまだかなりその点が問題として扱われておる。地方税の中にも答えのはっきりしておるものもあるけれども、まだ提案検討というものもあります。それを受けての四十年度改正でございますので、四十年度改正地方税に関する限り、全体としては微温的、消極的であるという非難は免れないかと思うのでありまするが、根本長期税制答申が、地方税に関しては地方財源の再配分というような大きな問題が片づかないことが一点と、それから根本的改正ということが、かなり地方団体の数が多い場合に、いろいろな影響を与えるということからして、結論をはっきりまだ出し得ないでおる、こういう前提がありまするので、昭和四十年度地方税に関する改正が勢い先ほども申し上げましたような微温的、消極的という批判を受けるような形になった次第でありまして、その辺あらかじめ御了承を願いたいと思うのであります。  具体的内容に入って申し上げますると、まず「地方税については、来年度地方財政実情を考慮しつつ、次の方向で負担均衡化及び合理化を行なう。」こう書いてございます。  第一の事業税につきましては、「個人事業者負担軽減を図るため、個人事業税事業主控除額を二十四万円」——現行は二十二万円でありますが、それを「二十四万円に引き上げる。」という答申をいたしております。これは今回の地方税法の一部を改正する法律案の中にそのまま受け入れられております。  第二の電気ガス税につきましては、長期答申におきましては電気ガス税の性格についての議論をいたしております。一方においては、電気ガス税は必ずしも適当な税でないから廃止すべしというような論も行なわれておりまするが、結論といたしましては、電気ガス税の廃止は困難である、こういうふうに長期答申は申しております。その部分をちょっと読み上げますと、「地方財政現状の下においては、電気ガス税のもつ伸長性及び都市財政における地位等にかんがみ、」これは御承知のとおり電気ガス税市町村税であるためにそこではなかなかウエートが高い、これが府県段階の税であるともう少し扱いが違ってくると思うのでありますが、それらの諸点にかんがみ「現行税率を引き下げることは困難であると認めた。」こうありますものですから、税率の点には今回触れておりません。それならばどういう改正提案したかと申しますと、「電気ガス税零細負担軽減合理化を図るため、免税点電気について四百円、ガスについて五百円」現行電気ガスともに三百円でありまするが、これをただいま申し上げたような引き上げを行なったらという提案をいたしておりますが、これも全面的に受け入れられております。  第三の、自動車税でありますが、「道路交通現状にかんがみ、あわせて自動車税負担均衡化を図るため、自家用乗用車、観光貸切川バス等に対する自動車税税率をおおむね五〇%程度引き上げる。」こういう提案をいたしたのでありまするが、これも今回の改正案に全面的に受け入れられております。  第四の、住民税につきましては、「法人税税率引下げに伴う住民税法人税割の減収を回避するため、住民税法人税割税率調整を行なう。」こういう提案をいたしまして、これも今回の改正案にそのまま受け入れられております。国において法人税税率引き下げによる軽減を中心とした減税を行なうのでありますが、冒頭に述べられておりますように、来年度地方財政実情を考慮するというと、地方団体において住民税法人税割軽減まで行なうという財政上の余裕はとうてい認められない、こう考えましたので、住民税法人税割税率引き上げて、減税分を割り戻しといいますか、増税をするのじゃないけれども減税影響を遮断する、こういうことはやむを得ない措置である、こう答申をして、そのとおりになっておる次第でございます。  第五として、固定資産税、「大規模償却資産所在市町村における財政需要増高に対処するため、大規模償却資産に対する道府県市町村閥課税区分について、所要の調整を図る。」これ未税制調査会はその必要ありと認めて答申をいたしまして、今回の改正案がこれを受け入れております。  それ他といたしますると、「自動車用燃料として消費される液化石油ガスについて、揮発油等自動車用燃料に対する課税との権衡及び道路整備財源確保緊要性等にかえりみ、新たに一トン当たり一万七千五百円」一リットル当たりに換算すると十円でありますが「の課税を行なうこととする。」 税制調査会がこの答申をきめた当時におきましては、これを国税とするか、地方税とするかについては意見がまとまりませんでしたので、時間的関係もありまして答申段階においては「なお、これに対する課税国税として行なうか、地方税として行なうかについては、道路整備財源との関連において政府検討することが適当である。」こういうやや中途半ぱな答申を行なわざるを得なかったのでありますが、その後政府段階におきまして、これを国税として設けて、その二分の一は都道府県、六大市に交付するという趣旨のもとに今回の石油ガス譲与税法案提案されておりますので、これは税制調査会の線に沿ったものと見ることができるわけであります。  以上が昨年の十二月十七日税制調査会会長中山伊知郎の名前をもって内閣総理大臣佐藤榮作殿といたしまして提出しました答申の概要でございます。  今回提案になっております地方税法の一部を改正する法律案並びに石油ガス譲与税法案についてみますると、ただいま説明申し上げましたとおり、税制調査会の四十年度地方税改正に関する答申を全面的に受け入れております。その意味においては、国税の場合においては政府がある程度これに変更を加えておりますが、地方税においては審議した範囲が微温的、消極的であったという関係もありましょうけれども、全面的な受け入れということでありますので、税制調査会の一委員といたしての所見でありますが、私としてはきわめて満足すべきものだ、かように存ずるわけであります。  なお、その税制調査会答申以外に新しく加えられておるものが数項目ございます。たとえば道府県民税及び市町村民税段階で、個人道府県民税及び市町村民税について、障害者未成年者老年者または寡婦についての非課税範囲年所得二十二万円、現行は二十万円であるのを二十二万円までとするとありますが、これは一方において所得税基礎控除引き上げがあったり、先ほど申し上げましたように事業者事業所得についても控除額が上がっておる、そういうことと関連すればこういう提案理由があることと、かように考えます。  それから租税特別措置につきましては、新たに不動産取得税軽油引取税電気ガス税固定資産税につきまして非課税とかあるいは課税軽減というような条項が入っておりますが、地方税といたしましては長期答申におきまして地方段階において租税特別措置はできるだけ採用しないほうが望ましい。国税段階においてはある程度経済政策を入れて、租税特別措置を行なうことも認められるけれども地方団体財政需要関係その他からしまして、租税特別措置をあまり拡大することは好ましくないという方向を出しております。それから言うと、少しこれは租税特別措置がふえたので多少不平を申し上げたいような気もいたしますけれども、列挙されておりまする事項は、いずれも現在の経済情勢に顧みましてかなりな必要性が感じられます。私としては、これも個人意見になりまするけれども、やはりきめのこまかい行政をやるとすれば、ある程度財源が犠牲になりますけれども、この程度租税特別措置がこの際取り入れられたからといって、そうやかましく攻撃することはないような気がいたします。  それから娯楽施設利用税といたしまして、ボーリング場を法定の施設に追加するとございますが、これは現在条例で府県段階課税もしておりますことであります。むしろ法定化してはっきりしたほうがいいというような感じがいたしますので、こういう点は取り入れられても理由があるというような感じがいたします。  以上、きわめて簡単に昭和四十年度地方税改正について税制調査会がとった態度と、それから今回政府二つの法律の改正案として提案されておりまする内容についてその同意点、相違点、それから受けまする税制調査会委員としての感想を申し上げて御参考に供した次第であります。どうも御清聴ありがとうございました。
  6. 中馬辰猪

    中馬委員長 たいへんありがとうございました。  以上で、両参考人からの意見の開陳は終わりました。     —————————————
  7. 中馬辰猪

    中馬委員長 質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。川村継義君。
  8. 川村継義

    ○川村委員 お二人の参考人皆さん、御苦労さまでございます。  かねて、たいへん税制調査会で御努力願っておりまして、心から感謝いたしておるところであります。本日はまた非常にお忙しい中をおいでいただきましてたいへんありがとうございます。実は、せっかくの機会でございますから、時間がたくさんございますならば、いろいろとお尋ね申し上げたいことも多うございますけれども、時間がたいへん少のうございますし、せっかくの機会に両先生の御意見をいただきたいと考えております委員諸君も数多くございますので、ごく簡単にお尋ねを申し上げておきたいと思います。  そこで、本日はいま申し上げましたように、詳細にあるいは基本的な問題等についてお尋ねできないのが残念でございますが、主として私は地方税にしぼって数点お尋ねをいたしたいと思います。  松隈参考人に三点ばかり、木村参考人に三点ばかりお尋ねいたします。いま申し上げますようにたいへん時間を急いでおりますから、まず私のほうからお尋ねする問題をずっと羅列してみたいと思います。  まず第一に、自動車税でございますが、以下三点は松隈参考人に初めにお尋ねいたしますが、自動車税でございますが、今度自動車の税を全部ではありませんけれども自家用乗用車、観光貸し切りバス、こういうものが五〇%引き上げられる。貸し切りバス等の税率が五〇%引き上げられたのは、五〇%引き上げてもそれらの業態には十分担税力があるのだ、五〇%引き上げても運賃に響くようなことはない、あるいはいま非常に地方の道路財源が不足しておりますから、まあそういう公共事業関係財源を充実していったほうがいいのではないか、そういう意味ではこういう税収も高めていかねばならぬというようなお考えで五〇%の引き上げが考えられたのかどうか、これが自動車税についての私の一つのお尋ねであります。  さらにいま一つは、今度答申には「観光貸切用バス等」と書いてありますが、この「等」というのはやはり政府案にございますように、怪自動車等もやはり考えられておったのかどうか、私はもちろん軽自動車税引き上げは一千五百円程度で、そう驚くほどの引き上げではないと思いますけれども、これらがやはり中小企業者や農業者の経営実態からして及ぼす影響は非常に大きいのではないか、こういうことを実は心配しておりますから、その点をお尋ねいたします。  次に、急ぎますけれども住民税法人税割についてでありますが、税調の答申には、法人税率の引き下げの減収を回避する、その調整をはかれというようなことが出ております。なるほど、今度の改正で、それぞれ道府県民税において一%ずつの引き上げ、あるいは市町村民税において約三%程度引き上げということになっておりますが、税収額から申しますと、むしろ道府県民税のほうはマイナスをしておる。市町村民税のほうが少しプラスをしておる。ただ単に調整ということだけ考えると、これは全体合わせて考えますと、その目的を達しているかと思いますけれども、今日の税負担の公平と申しますか、そういう点から考えると、私は、この法人税率はいま少しく高めていく必要があったのではないか、もう少し増収をはかったほうがよいのではないか、こう考えておるものでございます。したがって、その点についてのお考えをひとつお聞かせいただきたいと思います。  それからいま一つは、住民税の所得割についてでございますが、この住民税あり方については、先ほど木村先生もいろいろと基本問題調査会におけるいろいろのお考えをお述べいただきました。なるほどこれには非常に検討しなければならない問題が多いのではないかと存じております。そこで、基本問題調査会答申にもいろいろと御意見が出ているわけでありますが、またこれからの課税の方法等も十分検討されることだろうと存じますけれども現行において、二、三年前に、いわゆる道府県民税所得割が百五十万円を境にして二%、四%の、ごく軽度の累進課税と申しますか、比例税率改正をされた。ところが、これによって低所得層が受ける影響というのは相当大きなものがあらわれてきていると私は思っております。今日、地方に参りまして、いろいろこういう問題に手をつけておりますと、地方税負担の非常な増高にみな驚いておる。何とかならぬのかと、こういう声が非常に高まっております。一々数字を申し上げる必要はございません。その中でやはり一番いま住民が頭にきておるのは、この道府県民税の比例税率の取り立てであります。そこで、私は、この道府県民税所得割については、いま一度市町村民税所得割の標準税率みたいなかっこうにそのまま持っていけるかどうかは別といたしまして、やはり累進的な税率改正する必要があるのではないか。この点はやはり基本問題調査会等で住民税をお考えいただく場合にも課題としていただいていいのではないか、こういうように考えておりますが、それに対する御所見をいただきたいと思います。  その次に、木村先生にお尋ねいたしますが、一つは、答申にもございましたように、大都市の、あるいは指定都市等の問題でございますが、これは答申の二十五ページの第五項でございましたか、いろいろと税調におきまして御検討いただきました問題点が並べてあるわけであります。今日、大都市、特に指定都市等が次々に赤字を出しまして非常に苦しんでおるということは御存じのとおりでございますが、ここはやはり何とか考えなければならぬのではないかという気持ちを持っております。そこで税調等においても、そういう御意見がずいぶん出たのではないかと思います。そこで木村先生方のほうで、特別の措置を講ずるという、一体どういう具体案が考えられるか、そういう何か案でもございましたら、この際お示しいただけばたへんけっこうと存じておるわけであります。  その次に、いま一つの問題は特別措置の問題でございます。先ほど松隈先生からもいろいろと地方税の今度の改正の特別措置についてのお考えが述べられましたけれども、私たちはもっともっとこれは、国税においても、地方税においてはもちろんのこと、この特別措置のはね返りというものを遮断する必要があると思っております。これは大改革を加えねばならぬのではないかと考えておるわけであります。いま国税の特別措置によって地方税に与えているそのはね返りの大きな影響、あるいは地方税独自の特別措置の大きな影響、これは一千億以上に上るといわれておりますけれども、そういうような状態を解決していかなければ、租税負担の公平も期せられないし、地方の自主財源強化ということもあり得ないのではないか、こういうことを強く感じておるものであります。住民税におきましては、先年、全く所得税とは別の方法でその課税影響遮断がされた。ところが、特別措置関係においてはこれがほとんどといっていいほど手が触れられておらない。国税の特別措置によって次から次に地方税影響を及ぼしてくる、こういうことは大きな一つの問題ではないか、こう考えております。したがって、それについてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。  最後に、木村先生にお尋ねいたしたいことは、道路財源の問題でございますが.これは答申にも強く指摘をしておられたと思います。私たち今日公共事業全般についての地方負担ということを非常に心配をいたしておりますが、この道路財源にいたしましても、私が申し上げるまでもございません。五カ年計画におきましても、地方事業負担が一兆四千三百億といわれます。ところがそれに対する特定財源は六千八百億しかない。つまり四八%ぐらいであります。そうなりますと、道路等について地方負担がものすごく増高をしておるし、おそらく一般財源の持ち出し等も非常に多いのではないか、こういうことを考えておりますから、この地方道路譲与税等の地方配分を高めていくということも一つの方法ではないか、税調等でどのような具体案をお考えくださっておるのか、その点をひとつお聞かせいただきたいと思うわけでございます。  以上、両先生におのおの三点ずつ、まず問題を提起いたしましてお尋ねを申し上げます。
  9. 松隈秀雄

    松隈参考人 私に三点の御質問がございましたので、お答え申し上げます。  まず第一点は自動車税改正についてであります。自動車税改正につきましては、長期税制答申ではごく簡単に、こういうような字句で表現しております。「また、自動車の所有者に対する課税として自動車税税率引き上げて道路事業費に充てる考え方については、別途自動車用の燃料についての課税が行なわれているとの意見もあって、今後なお検討することが適当であると認めた。」というわけでありまして、長期税制答申から申しますると、揮発油課税なり、それから最近に改正しようとするLPGの新設等とも考えあわせまして、問題が重大であるからなお検討するということで、必ずしも自動車税引き上げるべしというほど簡単には書いてございません。しかし、いざ四十年度税制改正審議するにあたりまして、地方財政状況を見ますると、ただいまもちょっと御指摘がございました道路整備五カ年計画との関係において、地方団体の特定財源の持ち出しが、国の場合なんかに比較してはるかに比率が高い。それが地方財政を圧迫しておるので、やはりどうしても道路財源関係において自動車税引き上げが必要であろう、こういう意見が強くなりました。それから、これは正直に言ってそのまま伝えていいかどうかわかりませんが、やはり委員の一部には、現在の道路の状況を見ると、多少負担関係から無理はあっても、少し自動車税を重くして押えるくらいでないと、とても追っつかぬぞ、これはちょっといまおっしゃった負担理論からは逸脱するのです。しかし税制調査会でも、もうそちらの手も合わせて打たぬと、こんな自動車ラッシュになってしまったんでは困るじゃないか、こういう意見も出たりしましたものですから、おおむね五〇%程度税率引き上げということを答申したわけであります。したがって内容からいえば、公共事業費の財源充実という点に重点はある。しかし税のことですから、全然負担を無視してよろしいとは言わぬ、負担力もあるという前提はとっております。しかしどちらかといえば公共財源の充実、ことに道路整備五カ年計画との関連においてやむを得ず踏み切った、こう見ていただきたいと思うのです。運賃関係にどう及ぼすかということは審議の過程で出ましたけれども、これは政府の公共料金政策に関することであるから、税制調査会はそこまでは答申に書くことは遠慮しておこうというので削っでございます。  それから軽自動車の増税が入っておるが、それは予期しておったか、こういう御質問でありますが、先ほども申し上げましたように、「等」という字である程度幅を持たしてございますのは、それぞれの自動車間におのずから負担の均衡と申しますか、あるいは課税のつり合いというようなものもあることであろうし、こまかく各自動車の状況を調べて、一々列挙するというだけの時間的余裕もございませんでしたので、軽自動車ということも議論に出ました。そういうものに及び得るように答申としては少し幅を持たしておこう、こういう意味で「等」という字も入っております。しかがって先ほども申し上げましたように、今回の提案に入っておることは、税制調査会としては反対だとか、意外だというふうには申し上げかねると思います。  第二の問題として、法人税割の税率調整について、今回の調整では不満であって、できればむしろ法人税割が増収になるように税率を定むべきではないかという御意見でありますが、税制調査会は四十年度税制改正は、大体において長期答申の線を受けまして、減税を四十年度においても実施したい。しかし国の場合と地方団体の場合とでは状況が違って、国はある程度大幅な減税ができても、地方団体にそれを望むことは、地方財政現状からいって非常に無理がある、こう考えましたので、審議段階においては国が法人税を減らすんだから、ぜひそれに相応するくらいのものは地方団体も、俗なことばでいえばつき合ってほしい、こういうことが出ましたけれども、それはあきらめるべきだ、こういうふうにして答申をまとめたのであります。したがって将来増税するかどうかというようなことは、これは一般の地方財政の問題として検討しなければ、四十年度にはちょっとこの点は無理だったということを申し上げます。それから住民税の、道府県民税所得割の税率が二段階である。市町村民税の所得割のほうはたしか十三くらいだったかと思うのですが、多段階であるから、これは国民住民税負担の観点から、道府県民税の場合には負担力の応じ方が不公平になりはしないか、こういう御意見でありますが、そういう点をどう改正するかということは、実は四十年度改正については住民税はたまたま課税方式を本文方式に統一するとかあるいは標準税率を設けるということが進行中なんで、それらが一段落したあとの四十一年度住民税あり方はどうか、四十年度の実施の結果を見た上改正案を立てるほうが時宜に適するのじゃないか、こういう意見がありましたために、その点が見送られております。したがって御意見の点は一つの見方だと思うのでありますが、その点は四十年度は見送っておる。そうして木村参考人の申し述べられたように、住民税はやはり何らかの形で根本的に手をつけたい、つけるべきだ、こういう方向で進んでおることだけ申し上げます。
  10. 木村元一

    木村参考人 私に質問が三つございます。第一が大都市に関係財源強化、第二が特別措置の波及の遮断、第三が道路財源。  第一の問題につきまして、具体的な案がないかということでございますが、長期答申段階では、いろいろ考えられるということをにおわしておる程度に終わっておりますのは、まだどういう具体案をつくるかというところまで議論のひまがなかったということもありますし、あまりこまかなことまで長期答申でいうのはどうかという遠慮と、両方ありまして出さなかったのでございます。  ただ、これから申し上げることは一木村個人意見でございます。大都市の財政窮乏の原因はいろいろあるかと思いますが、現行制度を念頭に置いて考えました場合に、第一には固定資産税の徴収において、税制上まだ抜け道が残ったままになっておるということがあります。それから固定資産税のとり方との関連におきまして、都市計画税の強化ということが一つ考えられはしないか、これは第二点であります。それから第三点は、住民税課税のしかたが、現在では居住地主義になっておりますが、大都市の財政需要を引き起こします一つの原因としては、周辺都市から大都市に人口が昼間集まってまいりまして、昼間人口が非常に多い。そのために都市的な施設としていろいろなものが要求されるという現状にあります。それでこれは繰り返して申しますが、私の個人的な考えでございまして、税制調査会皆さんと議論したわけではないのでございますが、普通の住民税のほかに、またそれとのかね合いでもって、昼間つとめておる地域の納税者を対象とするような税金を考えることができないであろうか、これが住民税関係一つの対策でございます。  それから最後に、都市財政を非常に圧迫しておりますのは、実はいろいろ原因がある中で、公共料金が非常に低く押えられておる。もちろん経営の合理化その他について、民間の経営者の方々から見ますと、なかなかむだも多いという批評もあるのでございますが、他方において、下水にしても水道にしても、あるいは都営、市営のバス、電車にいたしましても、ややもすると住民のほうではコストを考えないで、ただ安ければそれでいいのだ、上げることは絶対反対だというふうなムードがありまして、これに押されている面がないとは言えないんじゃなかろうか。したがって、税金とは違いますけれども都市財政強化という点からは、公共料金の改定の問題が将来ますます逼迫した問題として出てくるのではなかろうか、このようなことを個人としては考えております。  第二の特別措置の遮断の件につきましては、国策上当然地方税金にも及ぶべきものと、それから、これは国だけで処置して地方に及ぼすべきではないというものと、理論的に、並びに実体的な分析研究が、実は従来もどちらかというとないがしろにされておりまして、主として手続上の問題などで、国税でこれだけ減税措置があるということで、所得が出て計算されておる。これに住民税をかける、あるいは住民税法人税割をかけるというときに、また計算し直すことがたいへんめんどうであるというようなことが一つの原因になって、それも大事なことだと思うのでございますけれども、つい国の特別措置地方のほうにも及んでくるというふうなケースも若干見られるのでございますので、将来はよほど理屈をはっきりさせて、及ぼすべからざるものは及ぼさないようにけじめを立てていくことが必要だと思っております。  次に、第三の道路財源の確保の問題につきましては、これまた私個人の考えでありますが、私は目的税には絶対反対でございまして、この道路がよけにかかるから、じゃガソリン税をとれ、自動車税をとれという考え方は、どうも税の本質から見て私はおもしろくない。しかし、これは私個人の考えであります。私のような立場に立ちますというと、道路財源の特別の強化ということを考えるというのではなくて、一般的な財源強化ということで、おのずから道路のほうにも財源が行くようた形を考えたい。ただ、いろいろ税制調査会の内部でも、先ほど松隈先生のほうからお話がありましたように、LPGとかあるいはガソリン税、これの担税力の問題、自動車税に対する担税力の問題、いろいろ議論がございまして、自動車なりガソリンは精一ぱい税金をかぶっているんだ、これ以上なかなか上げるというのは無理じゃないか、こういう意見も相当強うございまして、将来道路計画がまた一割方ふえたから、それじゃガソリン税を五%上げよう、あるいはそれにつれて自動車税も少し上げようといったような形での増税が行なわれていくということは、今後は私、税制調査会全体の空気の中でも、もうむずかしいんではないかと考えております。
  11. 川村継義

    ○川村委員 ありがとうございました。  先ほど申し上げましたように、非常に時間がございませんから、繰り返していろいろとお尋ねをいたしません。ただ、いま木村先生のほうからお話がありました大都市の税源問題については、これは検討しなければならぬ御意見だと私も拝聴いたしたわけでございます。ただ、最後に一つ申し上げて私のお尋ねを終わりたいと思いますが、松隈先生から自動車税についていろいろお話がございましたが、もちろん運賃等は公共料金でございますが、この自動車税引き上げを単に自動車会社等は担税力が非常にあるのであって、五〇%上げても運賃に響かない、あるいは貸し切りバスなどはどうも少しぜいたく品だ、こういう考え方で今度の五〇%値上げがなされたということになると、これは非常に問題だと思うわけであります。そこで、実は私の手元にちょっとした資料がございますけれども、貸し切りのバスにいたしましても、これは先生方御存じだと思いますけれども、全国の貸し切りバスの業者が五百十八団体ありまして、そのうち五五%、まず半数以上が経理上赤字を出しておるようであります。それから貸し切りバスの専用業者が全国で百八十七あるようでありますが、その中でやはり五一%というのが赤字を出しておる。しかもその赤字団体は大阪あるいは名古屋、東京、関東という、こういう先進地域にその赤字団体が集中をしておる傾向を示しておる。そこでこの貸し切り、バスの利用者は一体どういう者たちかと考えますと、これはおそらく富裕階級ではありません。学生の修学旅行あるいは年に一度か二度の慰安旅行、そういうような諸君がほとんどこの貸し切りバスを利用しておる。そういうような実態から考えて、またこれらの貸し切りバスの業者の経営の内容から見ていくと、わずかに五〇%の引き上げ、こういって運賃には響かない、運賃は公共料金の部面だ、こういうようなことでは始末がつかないのではないか、やがては私はこれが運賃値上げ運動にはね返ってまいりまして、公共料金のほうとしてもその値上げを認めざるを得ないというようなかっこうになったらこれは事だ、こういうように実は見ておるわけでございます。しかしきょうはいろいろといただきました御意見をもとに、さらに今後の委員会審議を続けてまいりたいと思っておるわけであります。ありがとうございました。
  12. 中馬辰猪

    中馬委員長 安井委員
  13. 安井吉典

    ○安井委員 持ち時間十五分だそうですから十分お尋ねできませんけれども、初めに総括的な問題として、租税負担率等の問題をちょっとお伺いをしたいわけです。どちらの参考人のお答えをいただけるか、どちらでもけっこうでございますが、ひとつその点をお伺いしたいわけでありますが、その前に私どもいま地方税法改正案審議をしていますが、現在国会には国税についての諸法案と地方税の諸法案と、政府提出のものがあるわけです。ところが実は税調の四十年度税制改正答申というものがその前にあるわけです。その前にもう一つ長期税制答申があるわけです。三つこう並んでいるわけです。ところが、私どもの目から見ますと、どうもその三つがすっきりした線で一本で貫かれてないので、少しずつどっかに、断層が間にあるような気がするわけです。長期答申と四十年度税制改正についての答申との断層はそれほど大きなものではないと思います。ただ最後に出てきて、現実に国会でいま審議しておる政府税制との間には非常に大きな差があるわけです。その点、私ども政治論議という立場の中でも強く追及していかなければならないわけで、大蔵委員会とこの委員会で現にやっているし、予算委員会でも現にやってきたわけです。問題があまり大き過ぎますので、詰めて私伺いたいのは、国民所得の二〇%以下を租税負担率の一つのリミットにするといいますか、そういうような考え方が初めあったのかも毎年度自然増収の二〇%程度、平年度二五%をめどとするということに今度も限られたわけです、長期答申では。それの理由といいますか、そういうような点に入りますとずいぶん問題が大きく広がりますけれども、その点をちょっとお触れいただきたいし、それともう一つは、佐藤さんが立候補したときに、所得税中心に平年度三千億減税ということを言われたわけですね。ところが自然増収の二五%というこういう限定を置かれたということになると、一兆五千億くらい自然増収がなければできないわけで、したがって、予算委員会の中でも、大蔵大臣と野党との間にいろいろやりとりがありましたけれども、私は、税調のこの長期答申の中でもう答えが出ているのじゃないかというふうな気がするわけです。その点どうお考えになっているか。中期経済計画の中でも、そう自然増収が伸びるようなそういうふうな情勢は私ども見取れないわけで、佐藤さんいつまで総理大臣をやられるかわかりませんけれども、その間にはどうもそういう段階がきそうにないので、何か一つの答えをお出しになっているような気がするわけです。その点が一つと、それからもう一つは、政府は今度の減税は八百七十八億でしたか、そういうふうな数字だし、それから税調のほうの数字は、松隈さんのほうの御努力でも四百四億ではないか、だから、政府のやつは倍以上も減税しているじゃないか、こういうような答弁が大蔵大臣からなされるわけでありますが、しかし私どもの目から見れば、その数字の大小はありますけれども、実質的な内容というものは税調のほうが数段まさっているわけで、つまり、特に所得税については基礎控除答申よりも下げたり、それから、特に税率改正を見送ったり、株式配当についての特別措置をやったり、そういうようなことで減税幅がふくれているわけですから、本質的な内容からいえば、税調のほうが私はもう数等すぐれているというふうに思うわけです。そこでさっき自然増収の二〇%というそういう表現をするということは、とにかく形の上でも減税の数字さえ上がればそれでいいのだという、そういう印象を国民に与えるきらいがあるのじゃないかというような点も考えられるわけです。一つのめどということで、それはもちろん差しつかえないと思うのですけれども、しかし単なる形式的に上がった数字ではなしに、その減税のメリットがどこに帰属するか、国民の中のどの階層に帰属するかということのほうが私はずっと大事な問題ではないかと思うわけです。そういった点につきましてひとつお答えを願いたいと思います。
  14. 木村元一

    木村参考人 たいへんむずかしい問題で、御満足のいくようなお答えになるかどうかわかりませんが、率直に申し上げますと、税負担を考えますときに大事なことは、一方では、経費として何に使われていくかということ、かりに税負担が大きくなりましても、国民に還元することの非常にはっきりしておるもの、たとえば公共投資であるとか、あるいは社会保障であるとか、そういうものがふえておる場合には、かりにA国とB国と両方ありまして、両方とも負担率が二〇%であるといたしましても、実質的な負担率では軽いというととであります。一番いい例はおそらくイギリスであろうかと思いますが、イギリスの租税負担率は三〇数%になっておる。それじゃ非常に重いのか、−確かに重いのでございますが、また別の観点からいたしますと、社会保障が非常に進んでおるから、それの進んでいない国と比べて、ただ負担率だけでいっては正確な答えにならないだろう、こういう問題がございます。  それからもう一つは、先ほどもちょっと申し上げましたが、パーヘッドの国民所得の大きさというものが担税力を非常に大きく規定いたします。インドで現在一〇%足らずの税収をあげておりますが、これはおそらく日本でわれわれが考える以上に強い税圧ではなかろうか。その意味負担率というものを固定的に二〇なら二〇で押えるというのも一つの政治的と申しますか、減税を考えるときの大ワクと申しますか、そういう意味では確かにいままで役割りを果たしてきておったと思うのでありますが、実情を申し上げますと、二〇%で済んでおりませんで、だんだん実は上がってきておる。それを特にジャスティフィケーションするわけではございませんけれども、五、六年前に比べれば、公共投資も相当金を食っておるし、社会保障は曲がりなりにもだんだん充実の方向にある。こういうことを考えたのと、それから世界でも例のない成長率を示しまして、不景気だといいながら七・数%、これはアメリカの二倍の経済成長率、こういう段階で考えた場合に、若干財政上の需要要求に応ずるような税措置をしておくことは許されるのではなかろうか、こういうことで、あまり固定的に国民所得の何%ということじゃなしに組むということが、われわれ基礎問題の小委員会で、若干異論もございましたけれども、大体その方向で話がまとまったわけです。  第二番目の問題で、形式的な減税と実質的な減税とがそこですりかえられやしないかという問題、これはもうお説のとおりでございます。同じ自然増収の二〇%を減税するにしましても、どこにどれだけ減税するかということのほうが実は大事なんで、それであればこそ長期答申では、直接税と間接税の割合といったようなものを頭から考えてその中でものを考えるというのは間違いなんで、むしろやはり一つ一つ税金の公平、負担力に応じているかどうかということを考えながらやっていかなくちゃいけないんだ、こういうふうに答申してありますのも、やはり同じ趣旨でございます。いま現に非常に政治問題になっておるといいますか、やかましい問題になっております減税幅とその減税内容の食い違いということにつきましては、税制調査会も御案内のとおり、三十人の委員の方がおられまして、約半数はいわゆる、こういうことばを使いたくないのでございますが、中立と申しますか、しかし他の半分は、それぞれ自分の業会において非常に苦心をされて税圧をひしひしと感じておられる方がお集まりになって議論をしております。したがって、私がここで政府案が税調案より後退しておるということを申し上げましても、他の委員は、それは君だからそう言うのであって、わしは当然だと思うということにおそらくなろうかと思います。しかし口はばったいことを申してはなんでございますけれども、もう確かに私、木村個人としては、非常なぐらいに腹を立てるというと語弊がありますが、だいぶ曲げられましたわということでございます。
  15. 安井吉典

    ○安井委員 あと方の御質問がありますので、もう一つだけ伺って終わりたいと思いますが、これもこれからあとの問題としてお伺いいたしたいわけでありますが、固定資産税の恒久措置を次の段階で出さなければいけない問題や、あるいはまた、事業税等における付加価値税方式の導入の問題、こういう重大な課題にとれからお取り組みになるわけでありますが、それを一々伺う時間がないようでありますので、そういう問題も含めまして、税源再配分の点で、この長期税制答申の中にも、国税地方税、五〇%、五〇%という意見もあったというふうな書き方がなされているわけでありますが、それに関連して自治省のほうが二千八百億円ですか、国税から地方税へ回すという、そういう一つの試案を御提示になったわけでありますが、これについて税調ではどういうふうな反応をお示しになり、また今後の検討の際に、あの試案なるものをどう位置づけてお進みになるおつもりか、その点ちょっと伺いたいと思います。
  16. 木村元一

    木村参考人 だいぶ前に、議論の最中にそういう試案が出たことを記憶して、いま資料をちょっと見せていただいたのでございます。問題点はこういうことでございます。地方税強化いたしますと、必ず格差がふえるということです。有力なところには税源がある。何の税金を渡してもある。ところがそうでない弱い団体は、どのような独立税を差し上げても税金がとれない。格差ができる。それを認めていいかどうかという一つの問題があるわけですね。交付税で非常な傾斜配分をやって、行政水準を全国的になるべく一致させようという要求が一方にはある。他方では独立財源で、裕福なところは裕福なりに、貧乏なところは貧乏なりにやっていくのが自治のたてまえだという考え方、そこで国税から地方に移譲するという形をとったときに、どのような配分状況になるだろうかということを、かりにたとえばたばこ消費税でやってみたらどうだろうか、住民税でやってみたらどうだろうかというような試案が出まして、しかし計算のしかたその他いろいろまだ未決定のところもあるので、これをすぐこの税金をそれじゃ地方に渡しましょうとかいうふうな議論の段階までいかないうちに、これはもう少し計数をやはりよく考えなければいかぬし、またうっかり出しても、これはまた政治問題になるかもしれぬというような点もあったかと思いますが、まだ税制調査会では十分考えておりません。ただ先ほど申し上げたような、答申にちょっと出ております低いほうの部分の所得について、住民税課税対象にするというふうな方向で考えれば、格差もあまり起こらないで財源強化ができやしないだろうか。そうなると、かりに国税基礎控除——基礎控除だけではありませんが、いろいろな控除で、夫婦子供三人で七十万円という線が現在出ておりますが、これが八十万円になったといたしますか、あるいはそういうふうにする、そういたしますと、その下の部分について地方の税源の強化に充てる部分がそこに出てくる。はっきりした移譲という形でなくても、何かまた手が考えられはしないか、この程度段階でございます。  それから固定資産税については、現に非常な不公平が出ておる。たとえば大阪市内で、いままで十万円であったところがその後十三万円に上がった。そうすると、二割頭打ちですから、二万円分はよけい納めなければならない。ところが一方、前に坪百円しかしてなかったところがいま十万円になっても、前の百円のまた二割増しですから、税金は何銭だけしかふえないというふうな非常な不公平が起こっております。この点は私ども承知しておりますので、暫定措置がなくなりますと同時に、補足的な対策を何か考える必要がある、こういう心がまえでおるわけであります。
  17. 安井吉典

    ○安井委員 固定資産税の問題については、私は若干の意見もあるのですけれども、それは別として、いまの税源再配分的な作業を、四十一年度税制改正をめどとしてお進めになるつもりかどうか、その点どうですか。
  18. 松隈秀雄

    松隈参考人 これはすでに御承知と思うのでありますが、政府委員会として地方制度調査会がございまして、これが第九次の答申で、抽象的に国、府県市町村事務配分、これに伴いまする財源の再配分審議すべきであるという答申を出しまして、第十次の地方制度調査会の中に委員会二つできまして、その第二小委員会というものは、もっぱら第九次の答申を具体化して事務別に移譲の範囲をきめて、それに伴う財源調整をする案を検討しておりますので、それが大体いまの見込みとしましては六月末ごろまでに答申を取りまとめたい、こういうことを言っておりますので、ことしの夏ごろには一応の結論が出るかと思っております。  それから税制調査会のほうは、現在の委員の任期というものが、ことしの七月末か八月末かに切れるのであります。制度そのものは恒久制度でありますけれども。そこで委員の任期切れに伴いまする改選ということが行なわれまして、はたしてどういう顔ぶれになりますか、その新しい委員によりまして、地方税はもうおっしゃるとおり財源の再配分ということが問題ですから、それに取り組む。たまたま地方制度調査会のほうの財源配分答申も出ておるということになれば、それと相まって四十一年度には検討が開始される。すぐ四十一年度結論が出るか、もう少し時間がかかりますかしれませんけれども、その点では相当の進行を見るのではないか、こういう感じがいたしております。
  19. 中馬辰猪

    中馬委員長 次に細谷委員
  20. 細谷治嘉

    ○細谷委員 最初に木村先生にお尋ねいたしますが、先生は先ほどのおことばで、いろいろな調査会なり審議会というものができておる。税制調査会においても縦割り行政の問題なりあるいは管轄等の問題で、人のクワにはみ出しては困るということで、なかなか理想的な検討ができなかった、こういうおことばがあった。私もそう思うので、へたをしますとそういう縦割り行政の中でつくられた委員会というものの——先ほど松隈先生は、大部分取り入れられた、こういうことで若干満足の御意見を言われておったのですが、どうもやはりそういう問題が隠れみのになって、公正妥当な、あるいは公平な措置がとれないのではないか、こういう、私も先生と同じような印象を持っておるのですが、これについてひとつ先生の個人的な意見でもけっこうでありますからお聞かせいただきたい。こう思います。  それから先ほど安井委員からお話があったのでありますが、二千八百億の自治省構想、こういうものがいわゆる地方の自主財源強化するという意味において出されたわけであります。私の承知しておる範囲では、内容はともかくとして、資料等が税制調査会に出ておるわけでありますけれども、また新聞等の社説などを見ますと、内容については大蔵等の意見もありまして、検討の余地がありますけれども地方財源強化するという自治省の考えというものは、やはりきわめて重要な一つの構想だ、こういう評価がなされておるわけでありますが、税制調査会縦割り行政なりワクの問題もありたでありましょうが、地方財源強化すべきだという基本的な考え方については一致しておるにかかわらず、この構想を一つのポイントとして御検討をしていただきたかったのでありますけれども、どうも軽視されたというように私は見ておるのでありますが、地方財源強化という点でもっとこの問題について検討をしていただきたかった、こう思っております。私は端的に言いますと、これは個人意見になりますけれども、二千八百億ということでは税調が言っておりますように三四%くらいしか自主財源というものはないわけでありますから、四〇%から五〇%にするというのでありますけれども、私はこれでは足らぬのじゃないかと思うのです。しかも大蔵当局が言う税の配分が必ずしもバランスがとれてない、こういう点からいきますと、たとえば思い切って酒の税なども、従量税も地方の自主財源としてやってしまったら、三千八百億くらいあるのですから、その上で交付税制度をやって調整をしていくほうがいいのじゃないかという考えを持っております、とにかく自主財源について、自治省の構想というものを私も評価しているのですが、どうも税調ではあまり評価されておらなかったというのを遺憾に思っているのですが、この間の経緯をお聞きしたいと思っております。  もう一つお尋ねしたい点は、先ほど川村委員の御質問に対して、都市計画税を拡充すべきだ、大都市の財源問題とからんでおりますが、先生も争ういうふうにおっしゃったわけでありますが、大蔵大臣も目的税である都市計画税は千分の二を千分の四とか六にしていいじゃないかということを言われたと新聞等に出ております。大都市の再開発税というような構想も自治省の一部にあるやに承っております。こういう問題について、これは形を変えますと、どうも都市計画税の変わった形になりかねないのでありますけれども、こういう問題が検討をされたのかどうか、こういう点についてひとつお尋ねしたいと思っております。  それからもう一つ、重要な財源であります住民税のことについて、かなり基本的な点について触れられたわけでありますが、要するに今度は低いほうは全部住民税にしてしまう、そして一定限度以上のものについてはひとつ所得税で取るという、低いところについては住民税、上のほうについては所得税、こういうふうになった場合に、突っ込んでこの点を御研究になったか。基本的にはそういう態度をきめられたようでありますが、おそらく私はかなりの激変が今日の地方団体間に起こってくるのではないかという気がいたします。この点についてどういう御検討をなさったのか、この一辺をお聞かせいただきたいと思います。  いろいろとまだ、たとえば事業税を付加値税で——一体シャウプ勧告に基づいてできた当時と、今日そういう付加価値税をやるような条件が今度はできたのかどうか、こういう点も問題でありますので、簡単でけっこうでありますから、その辺もひとつお聞かせいただきたいと思います。  それから松隈先生にお尋ねしたい点は、地方税の特別措置と、こういう問題に関連して、地方税、しかも都市等でかなり伸びの期待できる電気ガス税のうちの特に電気に関連する税であります。全国的にいきますと、わずか一二、三%くらいしか使っておらない一般家庭が、税に関する限りは半分くらい納めるのです。産業用の電気になりますと、全国突っ込みではおそらく四割くらいというのが非課税品目になっておると思うのです。都市によりましては産業用電気というのは九〇%から九二%くらいもう税の対象にならないで、わずかに八%か九%くらいしか税の対象になっておらぬという都市が、今日のいわゆる広域都市の中心といわれる産業都市に多いのです。こういう問題について、これは松隈先生の原則的なお考え、私も大賛成でありますが、国の財政政策あるいは産業政策から出たものを、地方が完全にもらうべき、税制からいただくべきものの九割というものはカットされて税の対象にならぬということは、それは交付税として、結果としてもらうじゃないかということになりますけれども、税体系としてはやはり問題があるのではないか。そうしますと、との問題は税の問題で解決すべきでありますが、できないとするならば、国のほうで何らかの補てん措置というようなものを講ずる必要があるのではないかという気がいたしますが、この点についてどの程度検討いただいたか、あるいは松隈先生の個人的な見解でも、ひとつお尋ねしたいと思うのです。  それから、消防施設税というのは、税制調査会の過程においてもかなり議論されたということを新聞等で私どもお聞きしておるわけです。御承知のように、昨年の新潟あるいは最近の伊豆の大火あるいは宝組の勝島倉庫の事件等、こういう点からいって、消防の近代化あるいは科学消防の導入というような問題が非常に大きく出ておるわけでありますけれども、遺憾ながら地方財源はない。今度の国の予算で消防施設の充実として計上されたものもかなりカットされまして、十億前後だったと私は思うのです。ところが消防施設税は、見積もりによりますと三十億くらいの金があるのだといわれております。私は、今日の産業構造の激変からして、少なくともこの消防施設税は、恒久立法であるかないかは別として、近代的な産業に即応できる消防態勢をつくるという意味で、三十億の税源は目的税としては非常に重要ではないか、こういうふうに考えております。ところがこれについてはいろいろ税調で議論されたようでありますけれども、とうとう今度も日の目を見なかったということをたいへん遺憾に思っているのですが、この点についてひとつお聞かせをいただきたいと思っております。  もう一つ先ほどのおことばでLPGの帰属の問題、それから半分を地方の譲与税にやる、この二点が政府に一任されたということを聞き、政府部内では大蔵省と自治省との間で地方税にすべきだあるいは国税にすべきだという議論が取りかわされたように新聞に出ておるわけですけれども、私は、半分を道路譲与税に還元するということも非常になまぬるいし、これこそ地方税にして少なくとも地方財源を充実すべきだと思う。しかも、道路税が非常に重要だという観点に立つならば、税調でも結論が出されてしかるべきものであったのではないか、複雑なデリケートな条件はあったかと思うのですけれども、もっときちんと税制調査会で出していただけるならば、少なくとも二分の一とかあるいは何とかいう変な形にならなかったのではないかと思っておるのですが、この点について松隈先生の御見解を——私は遺憾に思っておるのですから、御見解というわけじゃないでしょうが、お聞かせいただきたいと思います。以上でございます。
  21. 木村元一

    木村参考人 調査会がいろいろありまして、他の畑までは入れないということで、少し苦情を申し上げましたら、私にどうしたらいいかという御質問があったのでございますけれども、どうも私にもいい考えはございません。どうしたらこういうことがほんとうにやれるのか、また考えようによっては税と補助金制度と全部一緒にしたような委員会ということになりますと、これはもう非常に大きな権力の強い委員会になりますし、人選もむずかしいでしょうし、いろいろな問題があろうかと思うのでございます。ただ、そういったいつでも何かこっちだけは現行前提としてという話にならざるを得ない状況にたいへん不満を持っておるということだけしか私言えないので、それをどうしていただいたらいいのか、実情にうといものですから、ちょっと対案らしいものも何もございません。  それから調査会の進行の途次に、いろいろ地方財源の案が出されたりしたのが若干軽視されたのではないかというお話でございましたが、長期答申をまとめましたのが八月の末でございましたか、箱根に東京銀行の寮がございまして、八月の末に三日間、松隈先生もおいでになりましたが、委員の先生方とそれから専門委員になっていただいた方々お集まりいただきまして、三日間、ほんとうに朝から晩まで議論をしたのでございます。それで地方財源強化ということが必要だということを強調するような案文もできました。しかしさてそれではどういう税金をどういうふうにしたらいいかというというところまではなかなか議論を進める余裕もなくて終わってしまった。そのあとになって、先ほどのお話のような案が参考意見といったような形で出されてきたのでございますがこれもデータのとり方その他につきまして、そのデータのとり方なんかのほうでいろいろ議論が出て見送ってしまった。その点は私どもの力が少し足りなかった、努力が足りなかったということがあるいはあるかもしれません。  それから住民税考え方を少し変えていくということになった場合に、負担の激変が生ずるだろう、これはもうおっしゃるとおりでございまして、長期答申でも、そっちの方向にでも持っていくということで、ぼんやりながら方向だけを示したのでございますが、これをまた実行に移す段階になりますと、各市町村税収面の激変ももちろんのこと、それから納めるほうの納税者の側の激変ということもありますし、やはりそれこそ一つの分科会くらいなものをつくりましてやるだけの価値がある仕事じゃないかと思っております。  最後に、これは御質問にあったのかどうか、ちょっとはっきりしませんでしたが、付加価値税をいまになって取り出すという条件があったのかというお話ですが、これは考え方の相違で何とでも答えられるかと思いますが、シャウプ税制が始まったときには、法人税というのは微々たる——微々たるではございませんが、非常に小さな税金であった。ところがおそらく法人税がこんなに取れている国というのは世界じゅうにないのでございます。その原因、いろいろあるかと思いますが、法人成りの現象、それから大きな産業がみな法人形態で営まれ、それが経済成長の波に乗って大きくなってきた。それで法人所得が多いものですから、法人税率は列国に比べて低うございますけれども税収が高くなってきておる。ところが、それじゃ法人の全部が利益をあげておるのかというと、そうではございませんで、相当赤字になっておる企業もあるわけでございます。ただ法人の場合には、これは経済学者の一般論でございますから、すぐに適用されて迷惑するところもあるかと思いますが、会社というものは、長い目で見れば、少なくとも配当する、何%か平均配当率ができないような会社というものはつぶれていく性格のもので、会社である以上は相当の利潤があるはずなんだ。ところが法人税という形で取りますときには、ある年には税金は取れるけれども、ある年には税金は取れないというふうな状況が出てまいりますので、税のたてまえとしましては、純益課税固定資産税のような外形的な課税と組み合わせることがやはり必要になってくる。そういう意味法人税——個人の場合もありましょうが法人税がいまいったような形になっておるときには、カウンターバランスの意味で、付加価値税といったようなものを一つだけでも府県段階あたりに設けておくということが税の体系としては意味があるのではなかろうか。お答えになりましたかどうか、そんなふうに解釈しております。
  22. 松隈秀雄

    松隈参考人 私へのお尋ねは、第一が電気ガス税であります。細谷先生の御意見では、電気ガス税の産業用免税が範囲が広過ぎ、負担均衡の点からいって遺憾である、こういう御意見でありますが、この点につきましてはあるいは先生と見解を異にするようなことになるかとも思いますが、個人意見として御了承願いたいと思うのですが、私は電気ガス税というものは、電気ガスを消費する一つの消費税だと思っております。それでその消費税として適当であるかどうかという場合において、電気ガスのような生活必需品的な消費に課税するというというようなことは、戦時中のような、戦いに勝つためにあらゆるものを犠牲にするというような時代においては是認されるけれども、平時においてはこういう種類の消費税は必ずしもいい税とは思わない、したがって、これがもし国税であればおそらく廃止されていると思うのであります。たまたまこれが現在では地方税になっておる。しかもそれが先ほども申し上げましたように財源の比較的貧弱な市町村財源になっているために、ずいぶん電気ガス税の廃止論はあるのでありますけれども、それが実現しない。現に先ほども申し上げましたが、長期税制答申におきまして、電気ガス税税率の引き下げは見送るべきだ、わずかに零細負担排除の見地から、免税点引き上げていくべきだというようなことで、つまりこの税の存続をやむを得ず是認しているというようなかっこう、そういう見地からいたしまして、私は産業用に課税するというような事態は間違っている、といったらあるいはおこられるかもしれませんけれども、そこに大きな疑問がある。産業用の電気ガスというものはこれは間接原料で、コストです。コストに対して税をかけるという手はない。普通の家庭用の電気ガスは、これはやはり最終消費者が使っているその段階課税しておる。電気ガスを使って製品をつくるというときに、その製品に、消費者に担税力があるなら物品税であろうとあるいは特別の消費税であろうとかけたらいい、それを必需品であるか何であるかわけがわからないコストになっておるところに課税する点は、もし電気ガス税を消費税と解するならば無理がある。しかし、これはやはり理屈です。一方において一般家庭の電気ガス課税する場合に、相当多くの産業用の電気ガスを全然免税にしておいては、さっき言ったようにこの税の性質がもともとあまり感心しませんから、取りにくいので、やむを得ず産業用の電気ガスを道連れにしておると思うのであります。そうしますれば、これがコストに相当占めておるような割合の場合においては、遠慮してもしかたがないということで地方税にはあまり入れたくない、租税特別措置であるけれども、産業用非課税が入っておるのだ、それでその点もやはり長期税制答申も、一定の基準を置いて、その程度に該当した重要産業とか新規産業の電気ガス税非課税はやむを得ない、こういう答申を出しておりますので、その辺で御了承を願えるかどうか、こういう問題だと思います。その場合に国の産業政策でやるなら財源は補てんせよ、これは一つの御意見であって、やはり地方財政全体のワク内では御意見を尊重して考えるべきだ、かように思います。  それから次の消防施設税、これは四十年度税制改正段階においても問題になったことは事実であります。ただこれが答申に残らなかったということは、目的税自体に対して長期税制答申が非常に消極的であります。その目的税のところを申し上げますと、「目的税のあり方について検討を行なった。一般的に言えば、目的税の創設拡充は、財政の硬直性を招くほか負担の適正な配分という見地から問題があるので、好ましくないと考えられるが、——「が」という字がついて、そのあと、道路財源は現にやっていることだしゃむを得ないと思う、こう弁解している。こういう前提があるとすると、冒頭に申し上げましたように、四十年度税制改正はできるだけ長期税制答申の方向に沿うのがいいのだ、こういう前提をとりましたもので、これが意見が盛り上がらなかったということがいえると思います。  それからもう一つ、消防施設税の納税義務者について問題が出たのであります。通常考えられるところは、火災保険会社が消防施設が充実すれば災害率が減って、したがってそこに利益が出る、だから保険会社を納税義務者にしたら、こういう意見があるのですが、それに対してまた反論がありまして、保険がかかっている家とかかっていない家とが火事で焼けるという場合がある。保険会社に消防施設税をかければ火災保険料が上がるとか、少なくともいま火災保険料はどっちかといえば下げることを政府が勧奨しているのを、下げない口実に使うということは、やはり保険をかけている人がそれだけ被害を受ける、それが保険をかけない人は知らぬ顔をしている、それはおかしい。ですから、もしかけるとするならば、むしろ消防施設によって守られる固定資産税のうち、土地は焼けっこないのですから、家屋とか償却資産に対して、ある一定率で消防施設税をかけるというのなら、これはわかる。ところが、その固定資産税について、先ほど木村参考人も申し上げましたとおり、いま土地、家屋、償却資産の間のバランスの問題その税率が一本になるがいいか、別がいいかということが割り切れないところに持ってきて、また消防施設税というので都市計画税以外に、もう一つまた付加税なんかつけるというのはなかなか容易でないぞ、こういうことのために見送られたわけでございます。したがって、いろいろ問題があり、具体化、までには時間がかかる、こういうふうに見ていただいたらどうかと思うわけでございます。  それからLPGの帰属と、それから二分の一を地方団体に交付することにしたというのは、結果的にそうなったので、税制調査会段階においてはもう少しはっきりさせるべきであったではないかというのでありますが、中での議論としては地方税に向いているのではないかという意見のほうが、どちらかといえば多かったのであります。しかしこれをきめかねたのは、地方団体財源補てんの問題がありまして、交付税率の引き上げというようなこともその当時地方団体から要求が出ておりまして、これを幾らにするかというようなこともきまっていなかった。したがって、そういう財源のやりとりでこれを全額地方税にする、あるいは交付税引き上げ率を減らすとかなんとかいう問題もからんできまして、最後は税制調査会の問題であるけれども、国の財政の他の問題とも結びついているから、それならばもう一つ政府にまかせたほうがよかろうということで、安易な解決といわれるならばまことに恐縮でありますが、そういう問題が出たために一応政府にまかせた、こういう経緯でございます。
  23. 細谷治嘉

    ○細谷委員 最後に一点でありますけれども、たいへん失礼なことばになると思うのですが、私どもはたから見ていますと、税制調査会というのはかなり大蔵省寄りで、自治省というものはどうも大蔵省よりも離れている、こういう感じがします。それから、順序をつけると、大蔵、自治、県、市町村というような段階で、だんだんだんだんうとんじられているのではないかと私は思うのです。その具体的な例として、今度の税制調査会答申をほとんどいれられて、若干手を加えたものが地方税法改正として出ているのですが、この税法の改正に伴って府県の増収と市町村の増収というものを見ますと、市町村のほうは十億しかない、府県のほうはもっと多いのです。私は一般的な傾向として、府県がどうだ市町村がどうだということを申しませんけれども、一般的な見解としては、従来から一口に地方税といっておりますけれども、国と地方税との関係ということがいわれまして、地方税という問題を見ますと、どうも府県の自主財源充実ということに重点が置かれている、市町村はないがしろにされているのではないか、こういう感を深くしております。今度の改正案でも数字としてそういうものが出た。府県のほうは税法の関係だけで差引百億くらいふえるでしょう。ところが市町村は十億くらい。これを見ても歴然たるなどとは申しませんけれども自治省も府県のほうをかわいがって、市町村のほうをうとんずるというところがあるのではないかという感じがいたします。そういう観点で今度の税法改正の中で大法人の償却資産、これはかっては全部市町村税であった。ところが途中で、市町村では大法人の償却資産評価能力について事務的にひとつ欠けるかもしらぬという理由のもとに、一部が府県税に吸い上げられた。今度改正しますと、四十億くらい府県に残るようでありますけれども、十億ばかり市町村に移るようであります。これはかってそういうことでありますし、市町村評価能力がないなんということよりも、むしろ市町村側からいいますと、自治省や県のほうに少し政治的な色合いがついて、的確な評価が、市町村が握っておるよりも下目になる。先ほど固定資産税が的確に把握されておらぬ。課税客体が的確に把握されておらぬということばを先生からお聞きしたのでありますが、そういう批判市町村にあるくらいでありまして、市町村も十分評価能力を持っていると思うのです。そういう点で大法人の償却資産というのは、府県市町村との関係からいってももとに戻すべきであったのではないか、こういう点は検討に値したのではないか。あるいは最近の大都市の問題に関連し、産業開発に関連して、道路を痛あるのは大工場の償却資産なんです。そういうことになってまいりますと、むしろ目的税——目的税の根本的な問題についてはいろいろありますけれども、土地、家屋だけじゃなくて償却資産のほうも目的税の一環にはめ込むのが今日の事情に合うのではないかという気がいたします。県と市町村の税の配分ということを十分御研究いただく具体的な問題としては、こういう点があるのじゃないかという気がいたしますので、松隈先生の御意見をひとつ伺いたいと思います。
  24. 松隈秀雄

    松隈参考人 第一の問題の税制調査会の性格といいますか、あるいは個人でいえば体臭みたいなものですが、これはそういう御批判とか見方があるとすれば、税制調査会としても反省すべきことだと思うのであります。先ほど木村参考人も申し上げましたように、中立委員が中心になりまして、特に片寄ったといいますか、特別なバックがあるという方もありますので、問題をまとめ上げるときには中立委員意見を中心にまとめるようにしております。そういう点、運営において考えもれてはいると思うのでありますが、御批判があればそれは注意すべきことであり、あるいは最初の人選の問題にもなってこないとも言えないと思います。そういうこと、は政府の仕事の範囲に入りまするからこの程度で省略さしていただきまして、大規模償却資産について、これを市町村に戻すべきだという御意見でありますが、先ほど来話が出ておりますとおり、固定資産税あり方について大きな問題が残されてしまっているものですから、それをその段階で、いま府県市町村とで一定比率で分け合っているものを、すぐ市町村のほうに全部渡してしまうというのはあまりにも改革が急過ぎますので、しかし現状はいかにも市町村側に財政上もう少し財源をやらなければ無理がいき過ぎているという感じはみなが持っておりましたので、さしあたりの調整だけをやりましたが、一つのお考えとして今後の固定資産税研究対象に十分考えられるだろうと信じております。
  25. 中馬辰猪

    中馬委員長 両参考人には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十二分散会