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1965-03-09 第48回国会 衆議院 地方行政委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月九日(火曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 中馬 辰猪君    理事 亀山 孝一君 理事 久保田円次君    理事 田川 誠一君 理事 藤田 義光君    理事 川村 継義君 理事 佐野 憲治君    理事 安井 吉典君       大石 八治君    奥野 誠亮君       亀岡 高夫君    島村 一郎君       武市 恭信君    登坂重次郎君       村山 達雄君    森田重次郎君       和爾俊二郎君    井岡 大治君       阪上安太郎君    重成 寿治君       華山 親義君    細谷 治嘉君       吉田 賢一君  出席政府委員         警察庁長官   江口 俊男君         警  視  監         (警察庁保安局         長)      大津 英男君         自治政務次官  高橋 禎一君         自治事務官         (大臣官房参事         官)      宮澤  弘君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君         自治事務官         (税務局長)  細郷 道一君  委員外出席者         警  視  長         (警察庁刑事局         捜査第二課長) 関根 広文君         大蔵事務官         (主計官)   平井 廸郎君         大蔵事務官         (主計官)   小田村四郎君         大蔵事務官         (主計官)   長岡  実君         文部事務官         (管理局教育施         設部助成課長) 岩田 俊一君         厚 生 技 官         (公衆衛生局保         健所課長)   金光 克巳君         農 林 技 官         (農政局普及部         長)      原  政司君         建 設 技 官         (河川局防災課         長)      重兼 暢夫君         建 設 技 官         (道路局企画課         長)      豊田 栄一君         建 設 技 官         (住宅局住宅建         設課長)    後藤 典夫君         専  門  員 越村安太郎君     ————————————— 三月九日  地方公務員等共済組合法等の一部を改正する法  律案内閣提出第一一三号) 同月五日  地方交付税税率引き上げに関する請願(小澤  佐重喜紹介)(第一〇八三号)  同(濱田幸雄紹介)(第一〇八四号)  同外二件(大倉三郎紹介)(第一一四八号)  同外六件(櫻内義雄紹介)(第一一四九号)  同外一件(伊東正義紹介)(第一三二三号)  地方公営企業財政確立等に関する請願(久保  田鶴松紹介)(第一一八二号)  同(重盛寿治紹介)(第一二一一号)  同(肥田次郎紹介)(第一二一二号)  同(細谷治嘉紹介)(第一二一三号)  同外一件(秋山徳雄紹介)(第一三二四号)  同外一件(井岡大治紹介)(第一三六八号)  同(安井吉典紹介)(第一三六九号)  同(佐野憲治紹介)(第一四〇九号)  同(松原喜之次紹介)(第一四一〇号)  地方公務員共済組合短期給付費用の一部国庫負  担に関する請願外一件(高田富之紹介)(第  一一八六号)  同(八木昇紹介)(第一一八七号)  同(中澤茂一紹介)(第一二一〇号)  消防団員待遇改善に関する請願中馬辰猪君  紹介)(第一二〇〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律  案(内閣提出第一〇号)(参議院送付)  地方財政に関する件(昭和四十年度地方財政計  画)      ————◇—————
  2. 中馬辰猪

    中馬委員長 これより会議を開きます。  地方財政に関する件について調査を進めます。  昭和四十年度地方財政計画について質疑の通告がありますので、順次これを許します。華山親義君。
  3. 華山親義

    華山委員 ちょっと前提として専門家でいられる税務局長にお聞きしたいのでございますが、今日のこの国及び地方を通ずるところの税制、税のあり方、そういうものは、昭和二十四年のシャウプ勧告というものから根源を発して、今日顧みますとあの当時の勧告とは相当違っておる点もありますけれども、しかし、大綱をなしておるものだというふうに私は理解いたしますが、局長はどんなふうにお考えでございますか。
  4. 細郷道一

    細郷政府委員 昭和二十五年シャウプ勧告によってできました国、地方税制のあり力は、御承知のように、地方独立税体系をとってきた、税源分離の明確を期することにした、こういったことが骨子になりまして、租税配分をいたしておるわけでございます。その後二十九年に若干の改定を加えておりまするが、現行税体系は基本的にはやはりシャウプ税体系を持続しておる、こういうふうに考えております。
  5. 華山親義

    華山委員 今日シャウプ勧告をわれわれがまた振り返って読んでみましても、シャウプ勧告は国と地方というものを決して分離しては考えておらない。なったなわのように一本は国の財政、税であり、一本は地方財政であり、税である。それをかみ合わして、そしてそれがいかにあるべきかということで一つできておると私は思います。ところが、今日のこの地方財政と国の財政、そういうふうなもの、またそれに最も重大な関係のあるところの国税地方税、これは全く分離してしまっている。めいめいかってなことになっているのではないか。片方では健全財政ということで国債の発行をしない。片方では地方債を発行している。これは一つ一つ団体から見れば、財政が小さいのでございますから、あれでしょうけれども、総体として漸増をしておる。こういうふうなことを考えてみますと、私は今日のこの地方財政と国の財政を総括して見た場合に、シャウプ勧告からはその形態だけが残ってしまって、根本はもう忘れてしまっているのではないか、こういうふうな気がいたしてしかたがございません。この点、局長さんにお伺いいたしてもどうかと思いますけれども、そんなような気持ちが私は深くするのでございます。また、いろいろ調査会がございますけれども地方制度調査会地方のことだけを考えている。また税制調査会にいたしましても、税制調査会は税の専門的なことはよくやられますけれども、全般としていかにあるべきか、行政財政とはいかに結びつけるべきであるかということを、全くこのごろはやっておられないのではないか。ここで政府としましては、私はシャウプ勧告がそれでいいというのではございませんけれども、もとに一ぺん返ってみて、国と地方とを総合したところの財政はどうあるべきか、税はどうあるべきかということを、一つの大きな観点から見直すべき時期ではないかと思うのでございますが、これはまた大臣等にも伺ってみないとわからないと思いますが、政務次官、どういうふうに御理解なされ、お考えなされますか。
  6. 高橋禎一

    高橋(禎)政府委員 華山委員のお考え、すなわち御質問の御趣旨から華山委員のお考えになっておることを察するわけでありますが、国税地方税とのあり方、それが両者ばらばらにおのおのその立場立場だけで考えての制度であってはならないというお考えはもっともであると存じます。その意味におきまして、政府といたしましても、たとえば地方制度調査会等におきましても、事務配分の問題、その財源、ことに税源問題等においても検討を願っておりますし、そのほか税制調査会等においてもいろいろと国税地方税との関連において検討されてまいりましたことは、御承知のとおりでございますが、やはり一つ制度でございまして、これが完全無欠と、こういうものではなかろうと思うのでありまして、絶えずいまお話のございましたような趣旨に従いまして、国税地方税あり方というものを両者調和のとれたものとしての考え方に一歩一歩前進をしていく、こういう態度でいくべきだと思うのでありまして、税のあり方につきましては絶えず検討を続けてまいって、両者調和のとれたものになすべきものである、このように考えておるわけであります。
  7. 華山親義

    華山委員 私は、ただいま政務次官のおっしゃったことにつきましては満足いたしません。それは、いま政府は思い切って地方と国とはいかなる関係行政でつながるべきかどうか、それに伴うところの税はいかにあるべきかということを、ほんとうに反省してやってみなければいけない時期だと思います。それで、ただいま政務次官地方制度調査会のことを言われましたけれども、私はあの組織ではできないと思う。これは私の独断ではございません。臨時行政調査会の意見の中にも、現在の調査会でこれを解決できる調査会はないと書いてあるのであります。現在の行政に関する調査会、それから税に関する調査会、この間には何らの連係もない。これを総合したところの大きい調査会が大局に立って、そしてシャウプ勧告、このよしあしは別といたしまして、その当時に立てられたところの体系、そういうものがぎざぎざに刻まれちゃって、なわはほごれてしまっている。これをもう一ぺんなえ合わさなければいけないのじゃないか。私はその点を痛感いたしますので、その点についてひとつ十分な御配慮をお願いしたいと思うのでございますが、大臣にもお伺いしなければいけないことでもありますし、さらに総理大臣にもお伺いしなければいけないことでありますが、政務次官からも一言だけ、私の申し上げることがおわかりになったのかどうか、ひとつおっしゃってください。
  8. 高橋禎一

    高橋(禎)政府委員 お話のように、調査会あり方等につきましていろいろの批判もあるかと存じます。したがいまして、現在あります調査会運営等につきましても、どこまでも総合的に検討して結論を出すという行き方、さらにまた、場合によりましては総合された立場での機関をどうするかというような問題もあろうかと存じますので、それらについては将来——私といたしましてはお話のございましたような御趣旨は十分わかっておるつもりでございますが、総合的に結論を出し得るような方向に向かって十分検討、努力いたさなければならぬ、このように考えておるわけであります。
  9. 華山親義

    華山委員 私の申し上げることに誤解があるといけませんから申し上げておきますが、私は地方制度調査会を批判いたしておるものじゃございません。ああいう調査会では困るのじゃないかということを言っておるのじゃない。現在の地方制度調査会、あるいは税制調査会だけで、これで国と地方との財政あり方、仕事の分野というものがきめられないのではないか。この上に立つといってはことばが悪いかもしれませんが、これをあわせて融合した、一本の機関というものが必要なのではないか。それで、これに該当するのが臨時行政調査会であったはずでございますけれども臨時行政調査会答申というものは、これを尊重なさるとはいわれておりますけれども、はたしてどうなのか、私はさらに臨時行政調査会よりももっと深く一本にしぼったところの地方と国とのあり方、これを総合して研究するような機関、そういうものが私は必要ではないかと思います。これに関連いたしまして、こういう点からもあるいは出発しているのではないかと思いますが、新聞等で見たのでございますけれども、昨年の秋でございますか、自治省の当局から大体二千六百億程度でしたかの国税地方税に移管すべきである。移管したほうがいいのではないかと申しますか、何かそういう案をお考えになっているように新聞等で見えますけれども、それにつきまして、どういうふうなことか、当局お話を伺いたいと思います。
  10. 細郷道一

    細郷政府委員 税制調査会は御承知のように、基本的には現在の社会、経済の情勢に合った国、地方を通ずる税制はどうあるべきか、そうして、その際に国民負担し得る租税限度はどの程度であるか、まあいわばそういう角度から国税あるいは地方税についての議論を進めておるわけでありますが、その議論の中におきましても、現状の国、地力税制体系上は、なお地力税制を強化していくべきではなかろうか、そういう方向は強く出ておるのであります。その場合に、地方税制をもっと強化充実していくにはどういう方法があるか。国民にさらに税負担を求めて新たに強化していくのか、あるいは現行程度租税負担の範囲でこれを求めていくのか、そこいらが税制調査会あり方の基本にも関連する問題であったわけでありまして、税制調査会はいろいろ国民租税負担限度につきましては、かなりの時間を費やして議論をいたしました。その結果といたしましては、おおむね現行程度国民租税負担具体には租税負担の現度を教字で示すことなく、毎年現在の税体系上生じます自然増収措置をどの程度減税に振り向け、どの程度行政経費に振り向けるかというようなことについての考え方をまとめたわけであります。その際に、地方税制を強化するにあたって、そういった基本的な租税負担限度の上に立って、これをやろうといたしますと、どうしても国税地方税に分けていかなければならない。分けていくにあたっても、それでは国の財源がそれだけ減りますので、その部分をどういう国の経費から落としていけばいいのかというような議論になりまして、税制を国、地方の間で分け合うには、やはり国と地方の間の財税制、こういったもの、あるいは行政事務制度、こういったものを検討すべきであろう、こういうような方向が出ておるのであります。その場合に、ただそれだけでは議論具体に進まないわけであります。私ども議論をさらに具体に進めていただきたいという意味において、いまお話のような二千八百億の国から地方移譲をする試案を出したわけであります。その考え方は、現在におきます地方財政に占めます地方税割合が、昨年の財政計画で見ますと四〇%、せめてこれを五割にするにはどのくらい地方税が要るかといいますと、それがおおむね二千八百億になるわけであります。そこで一つ議論の進め方として、財政計画地方税収入を、地方財政中に占める収入割合をおおむね五割にするためには、どうしたらよろしいかというので、二千八百億の中身といたしまして、所得税から所得割への移譲法人税から法人税割への移譲並びにたばこ専売益金からたばこ消費税への移譲といったようなことで二千八百億の案を考えたわけであります。ただその場合に、二千八百億移すにあたっては、国の歳出がそれだけ切られなければならぬ。それには何が考えられるかといいますと、昨年の計画でまいりますと、約八千六百億に及びます国から地方への国庫補助負担金が歳出されておるわけであります。これについては別途補助金合理化審議会においても補助金の整理あるいは統合、能率化といったような議論が出ておりますので、補助金を切ってでも、そういう措置考えることは検討に値する考えではなかろうか、こういうようなことで試案を出したわけであります。その試案につきましては、審議を進めていただくための全くのたたき台だけでございましたので、どういう補助金をどう切るかといったような問題、あるいは別途行政事務配分をどうするかといったような問題もあり、かたがた時間的なこともございまして、税制調査会としては、その試案をさらに深く掘り下げるまでの時間を持たなかったわけでありますが、税制調査会立場として国民租税負担考えるならば、地方税を増強する方途としては、そういった方向にいかざるを得ないだろうというようなことで、なお今後の審議検討をするよう答申が出されておる、こういうような次第であります。
  11. 華山親義

    華山委員 最後の点でございますが、私まだ勉強が足りなくて恐縮でございますけれども、さらにその点を審議検討するようにということで、一応軌道に乗った考え方ではあるのでございますね。
  12. 細郷道一

    細郷政府委員 いままで地方税を増強せよといって、抽象的にいろいろ議論されたことはございます。抽象的にはほとんどの委員の方も方向としてこれを是認しておられたわけであります。やはり具体に、それではどうなるかということの審議が次の段階として残っているのではないか、それの試案として出したわけでございますので、その限りにおきましては、今後具体に進める一つ方向が出た、こういうふうに私どもは了解をいたしております。
  13. 華山親義

    華山委員 私の申し上げますことは、そういうふうな方向が出たのでございますから、その方向によりまして——これはいろいろ調査会がございます。地方制度調査会もございまするし、いろいろな調査会がございますが、その方向に従ってこれらの調査会を一丸とした大きな調査を進めていただきたい。こういうことを強くお願いをいたしたいと思います。  それで、いま補助金お話が出ましたが、私は地方税補助金、これが今後どうなるか、これが一つのポイントだと思うのでございます。この補助金が今日いろいろな点でめちゃくちゃになっている。やるべき筋のものでない補助金を与えましたり、また地方自体も反省する点があるのでございまますけれども、何もかも中央からすすめられればそれをやってみる。私はものを言うのにたいへん苦しいのでございますけれども、また、いろいろなこの国の補助制度というものを利用いたしまして政治運動を展開する、陳情の大部分は、借金をすることと補助金をもらうことに限られている。そういうふうなことで、ボスということばは悪いかもしれませんけれどもボス政治の悪い方面への発展、そういうものと補助金制度が結びついて、そして補助金というものが全くだらしないような状態になってきている。そういうふうな点が一面から申しますと政治を乱す根源ではないのか、私にはそういうふうにさえ思われます。いつかここで小林さんでございましたかどなたかがそれを取り上げまして、新潟には何々橋、何々道、何々幼稚園というふうな、政治家の名前を冠したものがたくさんあるとおっしゃいましたけれども、みな補助金の悪用から出ているのです。私はこれは政治家地方も国もやはり姿勢を正して、そしてりっぱな補助金制度に持っていかないと非常に困るのではないか、政治が乱れるのではないか、そういうふうな気持ちがいたしますが、その点につきまして政務次官はどういうお考えを平生この問題について持っていらっしゃいますか。
  14. 高橋禎一

    高橋(禎)政府委員 いまお話しの補助金制度について考えてみましても、やはり制度の出発当時は非常にりっぱな理想を持っていたに相違ないのであります。また現在の制度も、制度そのものはその精神においてやはり実情に即したりっぱな目的があると思うのであります。ただ、その制度が悪用されてはならないのでありまして、私どもといたしましてはでき得る限りその制度を、まあいわば善用していくということに努力してまいらなければならないわけであります。こういう心がまえで、地方公共団体等においてもいわゆる現存の制度をどこまでも生かしていく、善用していくという方向に向かって助言し、指導してまいるよう心がけておるわけでございまして、将来も制度を、ほんとう意味において生かしていくということに十分努力いたさなければならないと存じまするし、また制度心ずし完全無欠でない点が見出されましたときには、これをまた順次改めてまいる、こういうふうにいたさなければならぬと思っておるようなわけでございます。
  15. 華山親義

    華山委員 いろいろな原因からでもございますけれども、この補助金制度の今日問題になっております一番悪い点は、超過負担の問題でございます。これはもう多年言われてきたところでございますし、昨年私が、超過負担の問題は非常に大きな問題だと思うが、どのくらいになるだろうかということを自治当局にお尋ねしたところが、明白な調査はないけれども、大体五百億程度であろうということをお話しなさいました。お願いいたしまして、今日配付されたところの超過負担推計の表を見ますと、八百六十三億になっております。これはたいへんな大きな問題でございます。八百六十三億というふうなことが出ておりますけれども、このまま受け取っていいのかどうか、これにつきまして御説明でもありますれば、調査されました当局から御説明を願います。
  16. 柴田護

    柴田政府委員 お手元にお配りいたしております推計の資料はまさに推計でございまして、実は私ども超過負担の問題を非常に心配をいたしまして、昭和三十八年度の決算状況につきまして、ちょうど昨年の春ごろから秋ごろまでにかかりまして、府県は悉皆、市町村は抜き取り調査をいたしました。その結果、おもな項目について超過負担率というものが出てまいりました。その超過負担率を三十九年度の事業費、これは財政計画上の事業費でございますが、この財政計画上の事業費に対しまして乗じまして推計したものがこの数字でございます。したがいまして、その後におきます国の予算地方予算執行状況等によりまして是正せられたものはこれには含まれていないわけでございます。つまり三十八年度の超過負担状況はそのまま続いておるという前提のもとにおきまする三十九年度の推計でございます。  その左側に書いてあります六百七十億というのが一般会計に属するものでございまして、地方財政計画関連を持つものでございます。  それから4と書いてありますのは特別会計でございまして、統計関係国民年金の、これは委託事務費でございます。国民健康保険団体委任事務でございますが、これは俗にいう事務費不足分でございます。それから下水道終末処理関係は準公営企業でございますので、これは別に財政計画ワク外でございますのでこちら側に掲げたわけでございます。八百六十三億円という推計は、以上申し上げましたような前提でもって計算をしたものの積み上げでございます。  財政計画なりあるいはこれに関連する財政運営上の問題といたしましては、とりあえずはその左側の欄の六百七十億というのが問題になるわけでございます。そこに補助職員と書いてありますが、保健所運営農業改良普及事業、この二つは人件費でございます。職業訓練と書いてありますのも主として人件費でございます。それから普通建設の中の警察施設、これはいわゆる警察署の建築その他のものでございます。公営住宅文教施設、これは主としては敷地買収関係その他のものでございます。清掃も同じでございます。大体そのような前提推計して六百七十億という数字が出てまいりました。  ただ、昭和三十九年、四十年、そのあたりにおきましては国庫当局におきましても相当のものが是正を努力をされておりますし、執行面におきましてもいろいろ是正改善されておる面があろうかと思うのでありますが、それらの点はこの表には含まれていないのでございます。
  17. 華山親義

    華山委員 超過負担のこの六百七十億の分が、これは一般会計でございまして、地方財政計画の計数の中に入るわけでございますが、その地方財政計画の中には超過負担という項目がございません。これはあってしかるべきものだと私は思う。これがないのはどういうわけでございますか。
  18. 柴田護

    柴田政府委員 地方財政計画の立て方の問題でございますので、いろいろそこには議論があるのでございますけれども、つまり補助金を出す場合あるいは負担金を出す場合、まあ私ども負担金補助金とは明確に実は区別をいたしております。負担金につきましては、これは一定の適正な単価なり対象に対しての国の負担でありますので、もしそれが現実に合わなければそのこと自身を直すべき問題だ。したがって、負担金につきましては単価対象是正という前提に立ってものを処理していくものであって、実際問題としてかりにそれが実態に合わないということでありますれば、それを国のほうで改めていくべきものであって、地方財政計画の中に当然それを継ぎ足すべきものだと見るべきものではないのじゃないか。その他の一般補助金につきましては、これをどう理解するかというのは一つ議論があります。私どもといたしましては補助、負担金の過去から今日までのいきさつから考えまして、やはりそういうものは補助金負担金というものでなくて、補助金そのものでもって是正をしていただく。したがって、地方財政計画としては国が計算をした補助金というものは、それでできるという前提に立っていいはずだ。そこでそのできるという前提に立って法定の補助率による地方負担分を計算して組み入れる、こういう態度をとってきたわけでございます。それが御指摘のようになかなか解決をしない。それで去年あたりは、どうもこれじゃ従来のやり方ではいかぬのじゃないかということで、実は私どもは各関係各省が予算をお出しになる前、予算要求をされる前、関係各省にお願いをして、そして超過負担がないように単価対象の適正化をはかってもらいたいということをお願いをいたしましたし、その結果につきましても、予算折衝の過程におきましても、できるだけその実情をくみまして、必要なものにつきましては大蔵省の予算当局にお願いをしてまいったのであります。しかし、それでもなかなか直らないということになってまいりますれば、その辺のところはもう一ぺん考え直さなければならないのじゃなかろうかという気持ちを実は最近持っておりますけれども、いままではやはり補助、負担金というものは、法定の補助率、負担率というものがある限りは、国が予算を組みましたものでできるはずだという前提の上に立って財政計画を組んでまいったわけでございます。
  19. 華山親義

    華山委員 しかし現実の問題として、六百七十億というものが超過負担としてあるわけでございますが、あの財政計画から見ますと、この六百七十億というところは地方の単独事業にしわ寄せになるのじゃございませんですか。そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  20. 柴田護

    柴田政府委員 財政計画だけからいいますならば、建設関係のものは、単独事業、それから一般行政費につきましては補助を伴わないものというところから支弁せられておる。そして何とかつじつまを合わしておるということになるわけでございます。しかし御承知のように財政計画は標準経費と標準収入というものを対比させておりますので、ワク外に置かれました収入、支出があるわけであります。したがいましてワク外収入でもって、計画収入でもってそういった超過負担分をまかなってまいるものも相当あるわけでございます。その一部が、在来やかましい税外負担というものでもって末端に堆積してまいる、こういうこともあろうかと思う次第でございます。
  21. 華山親義

    華山委員 地方財政はそう簡単ではございませんから、いろいろな点を考えますと、これがおっしゃるとおり税外負担のほうに流れてまいりましたりいろいろなことがあるわけでありますから、一がいに申せませんが、とにかく六百七十億というものは、お出しになりました地方財政計画というものはああなんだということであれば、ここでよりしか支弁する方法がない。  それから百九十三億、これは一般会計には全然関係がありませんか、この4のほう。
  22. 柴田護

    柴田政府委員 なお私ちょっと申し落としましたが、六百七十億という推計は実態調査に基くものでありますが、個々のものについて直接当たったわけではございません。そこでたとえば文教施設の場合を考えてみますと、国の場合は木造の建築を予想しておるものを鉄筋に建てかえる、その部分超過負担として出てきておるという、いわば地方団体のプラスアルファと申しますか、地方団体立場から、同じつくるならもう少しましなものをというものも含まれております。したがって、純粋の意味におきますところの超過負担といわれるものはどれくらいあるかというものでございますけれども、私どもは昨年の予算要求のときに、おおよその見当でそういうものにつきましては約五百億くらいではなかろうか、あとの約二百億足らずのものはプラスアルファと見てよろしいのではなかろうか、こういう大ざっぱな推算を持っておりましたことを申し上げておきます。  それから4の問題でございますが、4の問題につきましては一般会計に全然無関係というわけではございません。たとえば国民健康保険でありましても、統計関係のものでありましても、この統計関係のものになりますれば、その部分は全くそのまま一般会計にしわが寄っていく。国民健康保険のものにつきましては、本来ならこれは国民健康保険の会計の赤字になってくるわけでありますが、現実には一般会計から、繰り出しという形になってしわが寄っておる。年金も同じであります。下水道につきましてはこれも一般会計であります。あるいは負担金というものにしわが寄ってまいりましょうけれども、たてまえといたしましては、こういうものは一般会計財政計画からいいますならばワク外に置かれるべきものである、こういう意味合いで4というものを別ワクにしたわけでございます。
  23. 華山親義

    華山委員 私は、実は地方財政計画は実態とは相当離れたものであるということもよくわかっておりますし、それだけで国の予算とか地方の現実の予算とかを追及するということはいかがかと思いますけれども、結局超過負担が八百六十三億円ある、それから一般会計の繰り出し金というものが三百億円ある。繰り出し金というものは地方財政計画には載っておりません。それからこれはまあ単独事業には違いはないのでございますけれども、もう国のほうで長期計画、そういうふうなことで道路五ヵ年計画、あるいは治水治山五ヵ年計画、港湾五ヵ年計画、環境五ヵ年計画、住宅五ヵ年計画、厚生五ヵ年計画、これが単独事業でやるのだというふうにきめてしまって、あと何にも残らない、計算するとマイナスになるのではないですか。私はなおこれを精密に計算してみたいと思いますけれども、これでは地方自治というものはないのだということなんです。それはもう単独事業で道路のことをやったり、治水のことをやったり、港湾のことをやったり、そういうふうなことをやるのもこれもやはり地方自治じゃないかといわれますけれども、全部政府の息のかかったものなんです。五ヵ年計画におきまして、それは何もやれというのじゃない、政府がいわれる。しかし末端にいきまして建設省なりあるいは運輸省なりそういうところが、いや五ヵ年計画に入っているのだから、おまえのほうはこういう単独事業はやらなければいけないのだ、こういうふうにいわれますと、筋は通らないと思っていてもおっかないものですからさようでございますかとやるようになるでしょう。ほんとうに自治体が住民の生活の台所の仕事をやる、そういうふうな本質は失われてしまっておるのではないか、失われるのではないか、そういうことに対して政府が細心の注意を払っていないのではないか、私はこういうふうに思います。道路五ヵ年計画とか治山治水五ヵ年計画とかこれはけっこうなことだと思いますけれども、それに単独事業の分まで加えて、そして何千万だ、何億だというふうなものは、これは選挙運動にはいいでしょう。私はこういうやり方はひどいと思いますね。ことに港湾五ヵ年計画なんということで、単独事業というのはどういうものがあるのですか、伺いたい。
  24. 柴田護

    柴田政府委員 お話の点は、現在の財政計画の中でも一つの問題点でございます。しかし、従来は、単独事業につきまして何もかも、みそもくそも一緒にして組んでおったのでありますけれども、これではやはり地方計画的な事業執行がむずかしいからということで、ある程度関係各省の立てました計画にのっとりながら、単独事業の計画化と申しますか、そういう観点から、本年、昭和四十年度におきましては、単独事業の中身につきまして多少ともこれを計画的なものに直してあるわけでございます。  それで、次に問題になりますのは、いまおっしゃいましたような、これで一体必要な単独事業が盛り込まれておるかどうかという問題が問題になるわけでございます。ただ、そういう意味合いからいいますならば、各省でお立てになりましたそれぞれの五ヵ年計画なるものの中の単独事業の扱いというものには、御指摘のように問題がないことはないのでございます。しかし、各省の事業執行責任省といたしましては、単独事業のさまつなものに至るまで、これが入っている、入ってない、やってくれる、やってくれないというような議論はないわけございます。またそれほどの指図はいたしておられないようであります。またそうあるべきだと私は思うのでございます。問題は、補助事業の間に占める単独事業の地位と申しますか、位置ということから考えましたならば、やはりこの間にある程度の単独事業をもって、これが補助事業とその団体の持つ施設の総合整備計画というものの接着剤になるわけでございますので、そういう意味合いにおいて、この単独事業というものを有機的に結びつけていくという作業をやっていかなければならない。これがことしは手始めであったわけでございますが、今後とも実は充実してまいるつもりでおるわけでございます。  お尋ねの港湾事業等につきましても、たとえば補助事業に至らないようなごく小さな改良事業、たとえばほんのちょっとした堤防を改良するとか、あるいは防波堤をどうするといったような問題は、ごくわずかでございますけれども、単独事業として行なわれておる事例はございますので、そういう意味合いから五ヵ年計画の中にも組み入れられておりますし、地方財政計画の単独事業の中にもそういう意味合いでその部分を取り入れたわけでございます。
  25. 華山親義

    華山委員 実は、御迷惑かもしれませんけれども、ちょっとここでお聞きしたいことがあるのです。わかり切ったことだと思うのでございますけれども、この道路五ヵ年計画をとりますと、五兆一千億でございますね。五兆一千億のうち八千億は単独事業ということになっておる。それで八千億の単独事業ということになりますと、これが富裕な地方はどうか知りませんけれども財政貧弱な府県ではとうていやれるものじゃない。具体的に申しますと、山形県は大体全国の一%と考えていいわけなんです。八千億の一%といたしますと八十億。八十億の五ヵ年計画と申しますと、年平均十五、六億になるわけです。道路の単独事業が十五、六億というのは、山形県にとっては夢のようなものです。実際問題として、昨年あたりは四億か五億あったかどうかなんです。まあそれはそれといたしまして、これは問題でございますが、そういうふうなことを言いました際に、自民党のある代議士さんがこういうことを言われた。いや八千億ということの中には、直轄事業の負担金であるとか、あるいは補助事業の地方負担する部分であるとか、そういうものを全部包含しているんだ、こういうふうに、私には全くわけのわからないことを、その地方では土木行政の神さまのように思われている人が言っているのですが、私の言ったことがうそなんですか、その方のほうがほんとうなんですか、ちょっとここで公式に伺っておきたい。
  26. 柴田護

    柴田政府委員 おそらく何かの間違いじゃないかと思いますが、八千億というのはさような国庫補助事業並びに国の直轄事業に関連する地元負担というものは一切含まれておりません。純粋の単独で地方団体がやる分でございます。
  27. 華山親義

    華山委員 私は、当然なことで、まことに御迷惑なことをお聞きしたと思うのでございますが、その代議士さんは、いや、おれが立案したのだから間違いないということをみんなに言った。まことにこっちはチンピラなものですから、私がうそを言ったように思われますから、その点御迷惑だと思いますがお聞きしておいたわけです。  それからちょっと伺いますが、この超過負担がございますが、この中で自治省として非常にこれは著しいものだというふうにお考えになるのはどの点でございますか。
  28. 柴田護

    柴田政府委員 私どもは、4の問題は別といたしまして、1、2、3の問題を含めて申し上げますならば、一つはやはり人件費の問題でございます。人件費の補助をどのような形でもって是正をしていくかという問題、それは地方の側からいいますならば、まともな単価でまともな対象をつかまえて補助金を出してもらいたい、国の側にいわせますれば、地力が適当な人を連れてきて、そして仕事をさす場合に、そのすべてについて補助の対象になるということを言うわけにいかぬじゃないか、こういうことになる。そこで人件費の補助負担金というものを一体どのような形で扱っていったらいいのか、義務教育職員費については実額負担でございますので、これは問題はございません。その他一般のここにあります保健所と農業改良普及員、この二つの問題についてどのように補助職員というものを考えていったらいいかということが一つの問題点だろうと思います。国の立場からも議論のあるところでありますし、地方の側からいいますならば、実際に仕事をさしておりますので、そういうかっこうで始末されると困ってしまう、それをどのように将来持っていくかという方向を早く見定めることが必要であろうというのが一点。それから施設費の問題につきましては、住宅費とか文教施設ということになってまいりますと、敷地買収費用をどうするかという問題、これは実際は地方債でもってある程度のものは見てまいっております。しかしそれでいいものかどうか、補助対象として敷地買収費を入れるべきなのか、入れるべからざるものなのかといったような問題。それから単価の問題になってまいりますと、たとえば構造比率というもをどう見るか、つまり学校といったようなものは、もう今日鉄筋でもって建てるというのが建築であって、木造を例外と扱うべきではないか、あるいはやはり木造と鉄筋の比率を現在のような比率にしていくのがいいのかどうかというところの問題だろうと思うのでございます。問題は、地方立場からいいましたならば、同じつくるならばりっぱなものを、こういう立場から、木造の補助金をもらっておりましてもついでに鉄筋にしてしまうということがあるわけでございまして、そこに超過負担という問題がより拡大化された形で出てくる、こういう問題があるわけでございます。そういうものをどう指導していったらいいかという問題もここにひそむわけでございます。大きくいいますならば、4に掲げておりますのは委託費であります。委託費については、委託する以上は委託された仕事ができるように委託費を出してもらうのが筋だろうと私は思うのでございますけれども、1、2の問題につきましては、そういう意味合いから、地方側の要望と国側の立場、この間の調整というものが毎年いろいろ議論になりながら、なかなかそこが調整ができていない。したがって、それが地方負担という問題になって出てまいる。国にも反省する点がございましょうけれども地方側にも反省すべき点がないとはいえない。その辺をどのように調整していくかというところに将来の進路を見出していかなければならないだろうというふうに私ども考えておるわけでございます。こういう観点から、常に予算折衝の時期になりますと、関係各省に是正方をお願いしてまいっておるわけでございます。
  29. 華山親義

    華山委員 とにかく現実にこういうふうな超過負担ということが非常に大きな問題になっております。ことにいままであまりなかったと思うのでございますが、自治省がこういう推計をなすった。それも府県についてはすべての悉皆調査をなすってある。市町村につきましては、標本的な調査をなすって、とにかく実地に基づいてなすった数字がここに出てきているわけでございます。こういう問題を契機といたしまして、私は今後超過負担の問題が大きな問題になるだろうと思うのでございます。  これについて伺いますが、大蔵省のほうでは、どういうわけでこの超過負担ということが生ずるのであろうか。自分のほうの単価を設定する際については、何ら考えるところはないのだ。地方がぜいたくをするからこういうことが起きるのだ、こういうふうにお考えになるのか、あるいは自分のほうは、単価はこれでは十分ではないと思うのであるけれども、各省が個所あるいは人数をふやせふやせというものだから、総額だけを押えて、それを件数などで判るから単価が低くなるというふうにお考えなのかどうか、そういう点、なぜ超過負担ということが、大蔵省の単価という問題から関連して生じてくるのか、その原因を大蔵省からお伺いしたい。
  30. 平井廸郎

    ○平井説明員 先生ただいま御指摘にもなりましたように、また柴田財政局長から先ほどるる御指摘がございましたように、率直に申しまして超過負担の生ずる原因は種々多岐にわたっているわけでございます。これ一つでその原因になるというふうなものはございません。ただ国の予算のたてまえといたしましては、補助金考え方は、あくまでもその補助事務が標準的な職員によって、標準的な能率をもって執行される、あるいは住宅ないしは公共事業等の場合におきましても、標準的な単価によって、標準的な規模のものがつくられる。こういう前提予算考えるというのが基本でございます。  したがいまして各地方の物価差であるとか、あるいは先ほど申された構造比の問題であるとかいう点からして、地方の公共団体の実際にかかった経費と、現実の予算単価との間には差が生じてくるのも、ある程度はやむを得ないところがあろうかと思っております。また人件費の問題につきましても、国の場合におきましては大体この程度の職員、たとえば六等級の五号なら五号というものを前提にして職員単価考えまして、補助単価をきめるわけでございますが、それが現実にはかなり高年配の方で俸給等の高い方が従事される場合もございます。またその給与ベース等をとりましても、府県等の場合におきましては、国の職員を上回っている場合等もございます。したがいましてそういった点を考えますると、現実の問題として、すべての地方公共団体が満足するような形で、補助単価の問題を解決するということは、いかなる制度考えましても、率直に申し上げて不可能に近いということになろうかと思います。  ただ御指摘のように、国の補助単価自体が、それじゃ一〇〇%間違いのないものであるかということについては、これは必ずしも私ども過去の経緯から徴しまして、間違いのないものであったと言い切る自信はございません。ただ御承知のように、国の財政規模もきわめて窮屈な点もございまして、過去の経緯から見て必ずしも十分でないものについては、財政の許す範囲において、毎年度単価是正をはかっていく次第でございまして、本年度におきましても、御指摘のあったような諸施設については、かなり物価騰貴率を上回るような是正を行なっておるというような経緯もございます。したがいまして国としては、先ほど申し上げたような基本的な立場に立ちながら、できるだけの是正をはかってまいる、こういう考え方をとっているわけでございます。
  31. 華山親義

    華山委員 私は、そうだったならばこんなに超過負担が出るわけないと思う。例外的にそういうものを生ずる場合がある、あるいは地方が標準以上のものを意識してやるために生ずるものがある。これは地方の責任ですから別といたしまして、そうでないのに五百億もの差が生ずるということは、大蔵省の言うような主義、原則をとるならば、私は出るはずはないと思う。どういうわけでこういうものが出るか、どこにそういうものが出る欠陥があるのか。大蔵省がこういうふうな査定をしているにもかかわらず、なお超過負担が出るのは何であろうかということについて、六百七十億ですか、この中には地方が標準以上のものをやったものも含んでいるでしょうから、まあ五百億でもいい、人件費等につきましては、ぜいたくな人の使い方はしていませんからこれは別といたしまして、あなたの言われるとおりでなおかつ出るというのはどういうわけなんでしょうか。何かそこにあるのじゃないでしょうか。私はわからない。大蔵省は、こういうものが出てくるのは変であって、出てこないのがあたりまえだ、こういうふうにお考えでございますか。
  32. 平井廸郎

    ○平井説明員 先ほど私御説明申し上げましたように、大蔵省の場合は標準的な単価前提にして議論しているわけでございますが、現実の問題としては、標準的な単価によらないで事業が執行される場合もございます。それから好ましくないことではございましょうが、先生先ほど御指摘になったように、各省の場合において全体として員数をかせぐために結果的に補助が十分に行き渡らないようなケースが出てくることは皆無ではないかもしれません。ただ五百億という数字も、実はそうであろうと自治省はおっしゃるわけでありますが、率直に申し上げて、この数字も腰だめであろうといわざるを得ないわけでございまして、この六百七十億の中で、それぐらいはほんとう超過負担であって、いわゆるデラックスでないものになるという議論も私どもとしては抽象的にはわかりますけれども、現実的な数字として五百億あるということは、まだ必ずしも納得をしておらないところでございます。もちろんそれでは逆に超過負担がゼロであるかということになれば、これは私ども必ずしもゼロであるとは考えておりません。したがいまして先ほども説明を申し上げましたように、四十年度予算におきましては、そういった単価是正等をはかりまして、今後においてできるだけこういった超過負担を生じないように努力をしているというわけでございます。
  33. 華山親義

    華山委員 私、それでは伺いますけれども、各論的なことはあとで伺うつもりでございますが、一つの例として学校の建設費について、これは文部省の責任か大蔵省の責任かわかりませんが、大蔵省にお聞きいたします。頭から二割だけ天引きするというのはどういうことでしょうか。
  34. 小田村四郎

    ○小田村説明員 お答えいたします。  二割天引きするということではございませんので、計画を立てまして申請がございました学校建築につきましては、文部省で配分をいたすわけでございますが、その配分の際に単価及び基準面積を査定いたしまして配分いたします。その際に一割天引きいたしますが、これは実際の建築が場合によっては安くなることもある。そういう場合に補助金を返還させるという手数を省くための便宜的な方法でございます。いま先生のおっしゃいました二割というのは、起債措置によりまして国庫補助によります計画の二割を一応起債計画の中に含めておるということをおっしゃったものと考えるわけでございますが、各地方公共団体におきましては、国庫補助以外にも単独で事業をなさるところがあるわけでございます。そういうものにつきまして二割の起債措置計画として組んでおるということでございまして、二割天引きするというような考えではないわけでございます。
  35. 華山親義

    華山委員 天引きということばは悪いかもしれませんけれども、たとえばここに勘定しやすいように一千万円の学校——これの基準単価は別にいたしまして、一千万円の学校という場合に、二分の一の補助ですから五百万円をお出しになるのですか。
  36. 小田村四郎

    ○小田村説明員 一千万円の場合に、これは文部省の実行上の資金配分でありますが、一千万円で基準面積どおりの建築が予算単価によってできる、こういう場合には、それに九掛けをいたしまして、九〇%で割り当てておるということでございます。
  37. 華山親義

    華山委員 それはどういうことなんですか、九〇%というのは。
  38. 小田村四郎

    ○小田村説明員 これはむしろ文部省からお答えになったほうがいいかと思いますが、予算の実行上の問題といたしまして、かりにその配分額以下で建築が完了した場合には、その差額につきまして補助金を返還をさせなければいけないわけであります。ところが、その辺の実態は必ずしも明らかでございませんので、一応一律に九割をかけて、その辺の手数を省いておるというふうに私は存じております。
  39. 華山親義

    華山委員 文部省に伺いますが、昨年私がお聞きしたときには、八割ということをおっしゃいましたが、ことしは九割になったのでございますか。
  40. 岩田俊一

    ○岩田説明員 お答えいたします。  華山委員のおっしゃいました八割と申しますのは、こういうことであろうと思います。これは長期計画上の問題でございまして、文部省が長期にわたって学校建築の必要量を測定いたします。その場合に財源措置としてどういうぐあいにするか。従来、三十八年度までは七、三の割りであったのでありますが、三十九年度八、二の割合はいたしております。それは、八割を国庫負対象事業とする、二割は起債の対象とするというような財源区分を行ないまして、長期にわたる計画を立てておるわけであります。でございまして、この八割と申しますのは、個々の執行上の問題とは直接の関連はないわけでございまして、実際には八割以上でやっておりまして、三十九年以降の実施につきましては九〇%の計画坪数に対する充足率をもって執行いたしております。今年度も大体その割りで執行するつもりでおりますが、では一割はどうなるかということになるかと思いますが、これにつきましては、いま主計官の話がありましたように、これはあらかじめ配付するワクの問題でございまするから、実際執行してみますると、市町村のほうで計画を変更したり、あるいは実施単価が安かったというような問題がありまして、一ぱい一ぱいに配付いたしますると、あとでまた補助金の返還という非常にやっかいな問題等を生ずるおそれが多分にございます。そういうことでございますので、若干そこの間に幅を設けておかなければならぬ、それが一割がいいか、私どもといたしましては九〇%の充足率はさらに高めていきたいと思っております。さらに差を小さくして、できるだけ超過負担の原因にならないように持っていきたい。しかし、その一割分も十分起債をもってカバーするというたてまえにはなっておるわけでありますけれども、できれば補助対象としてこのワクを詰めていきたいと考えております。
  41. 華山親義

    華山委員 文部省は、去年おっしゃったことと違いますよ。去年私がこの点をお聞きしたところが、大体いままで一割や二割は地元で寄付金を集めているからそれで間に合のだろう、そういうことで、いろいろなところに学校をたくさん建てさせたいから一割、二割は引いているのです、去年はこう答弁をなさった。ことしは、何か市町村との間に不信があって、金を取り戻すときに困るから初めからすぐやったのだ。実際そうでなかったときにはまた一割をこえて足してやるのですか。一割引いたのだけれども、実際りっぱにやってきちんとできたというときにはあとから一割は補給するのですか。
  42. 岩田俊一

    ○岩田説明員 最初から計画をもって配付しておりますので、あとから単価差が非常に開いたような場合に補正をするというようなことも間々ありますけれども、原則としてはあとから追加するというようなことはいたしておりません。それから寄付を当てにして補助金を配付するというようなことは全くやっておりません。ただ、その一割が適当かどうかという問題はいろいろ議論があると思いますが、今後この差はできるだけ縮めて充足率を高くしていきたい、かように申し上げたわけでございます。
  43. 華山親義

    華山委員 なおその点私には了解できませんけれども、全くおかしなことをやる。超過負担というような問題が起る原因は、そういうようなところになるのじゃないですか。学校建設に一割違っただけでも相当な額ですよ。それから、少し各論的になりましたが、大蔵省のほうに伺います。公務員住宅の一坪の単価は幾らでございますか。——調べる間、別に関連があるそうですから。
  44. 安井吉典

    安井委員 私もいまの妙な話を伺っていたのですけれども、文部省のいまの作業はずっと以前から続いてやっているのですか。いつごろからです。ずっと以前からこの一割ということでやっていたわけですか。
  45. 岩田俊一

    ○岩田説明員 この差の問題は、公立文教施設補助制度の発足いたしました前後でございますが、ずっと続いておりまして、発足当時からございまして、計画上では、三十八年度までは、全体計画坪数に対しまして七割を国庫補助の対象にし、三割分については起債の対象にするということで執行しております。でございましたから、実際執行上は、その当時は補助金としましては大体八割以下の充足率であったかと思います。ですが、三十九年、本年度、それから来年度もそうでございますが、大体九〇%の充足率でいきたい、かように考えております。
  46. 安井吉典

    安井委員 これはだれにお聞きしたらいいか、自治省ですか、いまの文部省がやっておられるようなこういう例はほかにたくさんあるのですか。
  47. 柴田護

    柴田政府委員 学校につきましてはいろいろ問題がございますが、あまりほかには私は聞いておりません。
  48. 安井吉典

    安井委員 たしかことし単価が変わりましたね。ことしは幾らになったわけですか。
  49. 岩田俊一

    ○岩田説明員 鉄筋を例にとりますと、小中学校の校舎で七万八千九百円でございます。
  50. 安井吉典

    安井委員 そうしますと、私いまの華山さんとの問答を聞いておりますと、七万八千何がしというのは、文部省としては自信がないということですか。つまりその一割落としが正しいという御判断なのか。何のために七万八千とおきめになっているのか。それは初めから一割落とすことを目標にしておきめになっているのでしょうか。その辺がどうしてもわからないのですが。
  51. 岩田俊一

    ○岩田説明員 ただいまの一割の話は単価の問題ではございません。これは補助の坪教として、どの程度を国庫補助事業として認定をするかというその問題でございます。
  52. 安井吉典

    安井委員 結局事業量というのは、単価に坪教をかけたものでしょう。だとすれば、単価から一割落とすのか、坪数から一割落とすのか、結局両方の問題になってくると思うのです。だから、それについて自信がないからそういうことになっているのか、それともこれは大蔵省の指導方針としておやりなのですか。
  53. 岩田俊一

    ○岩田説明員 一割は自信がないからというわけではございませんで、国庫補助事業としてどの程度を認定するかという坪教の問題でございまして、総体の経費から見れば、一割を補助対象から起債のほうに移すということは、それだけ補助金が相対的に減るわけでございますけれども、基本的な考え方は、単価を落とすというような思想は持っていないわけでございます。
  54. 安井吉典

    安井委員 いずれにしても、その一割落とした額よりもさらにもっと安くできたところには返還させるのでしょう。それからそれよりも上になったところにはやらないわけでしょう。どうなんですか。
  55. 岩田俊一

    ○岩田説明員 そこら辺のところは実質上の運用の問題になりまするけれども、これは最後の決算の時期にあらわれてくる問題でございまするので、資格坪教の範囲内であれば、その間の坪数との関係、あるいは単価関係で調整することはありますけれども、実際の実施単価が補助単価よりも下回るような場合は、やはり還元してもらうというようなこともあり得ます。
  56. 安井吉典

    安井委員 いまの補助金適正化等の法律から言っても、基準単価よりも余ったら、これはよけいにほかに使うわけにはいかないでしょう。自治体は戻さなければならないのでしょう。しかし、それより上のものについては国はやらない。これじゃ私はどうしてもおかしいと思うのです。それじゃあなたはそういうふうに言われるなら、過去三年間くらいにおける資料をひとつ御提出願いたいと思います。基準単価がどうで、現実にそれより上にいっている事例と、それから、それより下になっている事例、つまり基準と実際の事例について、これはいま御質問が続きますから、その資料を御提出いただいて、さらにこれはまた機会を見て論議したいと思います。
  57. 細谷治嘉

    細谷委員 関連して質問しますけれども、だんだんこういう超過負担については是正する方向をとっているんだと言いますけれども、いま毎年ベースアップがあるのですが、同じ仕事で前の年より補助単価が減っているという例を御存じですか。
  58. 柴田護

    柴田政府委員 私は存じません。
  59. 細谷治嘉

    細谷委員 農林省のほうで、農業改良普及員の問題につきまして、補助単価が前年より、毎年毎年ベースアッブがあるのに、減っておるという例を御存じであるかどうか、お聞きします。
  60. 原政司

    ○原説明員 先ほど来質疑がございましたように、私のほうの補助職員がかなりの数に達しておりまして、地方財政上いろいろごやっかいなことを申し上げておりますが、四十年度の予算措置といたしましては、ただいまの御指摘の点、私ちょっと心当たりがございませんが、御案内のように、農業につきましては次第に技術が高度化してまいりまするし、いろいろやっかいな問題、あるいは事業といたしましても、構造改善事業その他が急速に展開してまいっておりまするので、それにふさわしい職員を設置していただきたいというような観点からいたしまして、現地で働いておりまする普及員につきましは、先ほど来大蔵省からも御説明がございましたように、補助基準等につきまして、一挙にはなかなか適材も得られませんので、逐次これを改善し、増額してまいるということで大蔵省の御承認を得、国会に予算の御審議をお願いしておるような状況でございまして、具体的に先生御指摘のような補助単価が昨年よりも下がっておるということは、ちょっと私わかりかねるのでございます。
  61. 細谷治嘉

    細谷委員 こういう問題はマクロの質問ではいけませんから、少しミクロで質問しているのです。そういうことをおっしゃいますが、指示人員、指示職員数というのは同じであって、私はこれはある県の数字を申し上げておるのですが、総事業費もふえておる。ところが、補助基本額というのは逆に減っているのですよ。そういう例はございませんか。
  62. 原政司

    ○原説明員 ただいま御指摘の県が何県か私も存じませんが、私の感じますところでは、対象補助職員が非常に更迭いたしまして、たとえば年配の方が非常に若くなったというような実情がございませんければ、さようなことは私はちょっとないんじゃないかと思うのでございます。
  63. 細谷治嘉

    細谷委員 これはないということでありますが、あったらたいへんですが、事実はあるのです。ちょっと古いのですが、ある県で三十七年と八年と比べますと、三十七年は農業改良普及員の職員費が二十七万六千二百二十円だったものが、三十八年は二十六万一千六十円に逆に減っているのです。これは指示人員は三百七十八名で変わらないのです。また事業費は一億七千五百万から二億三千九百万になっている。補助対象の基本額はどうかというと、一億四百万がその翌年度になりますと九千八百万に減っているのです。こういうところに、いくら法律を直そうと、法定の補助率をきめようと、適当にやっているという形がはっきり出ているわけです。ですから、私は財政局長さんにお尋ねしたいのだが、こういうことは自治省はおつかみになっているのでしょうか。四十年度はそういうことはないでしょうか。四十年度は実績が出ておりませんからわかりませんが、こういうことが各所に出てきている。ほかの例もあります。いま農業改良普及員の職員費あるいは事業費について申し上げたが、毎年毎年ベースアップがあるのに、その翌年になると御都合主義で、予算のワク内でございましょうが、基本額を減らしている。こんなことは絶対あり得ないですよ。お医者さんを一例にとると、六十二万円で雇いなさいというのが三十九年度の単価です。六十二万円でお医者さんを雇えるなら地方団体一つも苦労しません。実績は百二十万とか百三十万とか、そういうことなんです。そういうような問題は別としても、非常識なんです。前年より基本単価が下がっている。これは自治省御存じか。これについて先ほどのマクロのお答えでは、財政局長の決意はたいへんけっこうで私も同感ですが、具体的にこういう問題が是正されませんと、ミクロの問題が解決しませんと全体が解決せぬわけです。積算されますと依然として、八百億という交付税をちょぼっと上げて、自慢しておったとたんに、それ以上の超過負担ということが、法律が無視されて起こっているという現状です。これについて財政局長の御見解、決意を伺いたい。
  64. 柴田護

    柴田政府委員 私らの経験から言いますと、お話しのような問題が全然起こり得ないということは言えない場合があるだろう。つまり御指摘のような事例は、よくわかりませんけれども、全体としての額から推算すると、結論としてそういう結果になってしまうことがあり得る場合があるだろうというように私は思います。しかしそういうことはお前は知らぬじゃないかとおっしゃいますれば、そういうことはなかなかわからない。実際問題として地方団体側について調べましても、そこはいろいろございまして、なかなかわれわれのところに真相を明確にしてくれない。それが問題をなかなか明快に片づけない一つの原因だと思っております。私は実はこの補助負担金の合理化問題、つまり超過負担解消の問題につきましては、単価対象の問題と補助条件の問題と二つあると思います。よく世間では、単価対象の問題をやかましくやりますけれども単価対象の問題が適正化されましても、条件によって狂ってくる場合がある。おそらくいまおっしゃったような事例は、さようなことが多少ひそんでいるのではないかと私は推測するのですけれども、なかなかこの全体を直すということが、いままで私ども関係各省にもお願いし、大蔵省にもお願いして努力してまいりましたけれども、先刻来いろいろ御指摘ございましたように、結果的にはそう思わしい速度でもって進んでいない。どういうぐあいに今後この問題に対処していったらいいのか、方向はわからぬこともございませんが、具体的な方法論といたしまして、多少私どもは頭を悩ましておるというのが現状でございます。しかしいずれにいたしましても、地方のことを考え、国の立場考えてまいりますれば、やはり両者の調整をはかって、妙なことのないように国も悪いところは直してもらうし、地方も出過ぎたところは直してもらう、こういう方向に持っていかなければならぬ、その方向で努力してもらうつもりでおりますけれども、従来のようなことをやっておってもなかなかこの問題は解決せぬなという感じを持っております。
  65. 華山親義

    華山委員 先ほどの公営住宅の問題につきまして私お尋ねしたのでございますが、お調べになるのがたいへんなら私のほうから申し上げますか。
  66. 長岡実

    ○長岡説明員 公務員住宅のほうは、昭和四十年度坪当たり建設費単価でございますが、中層耐火構造を例にとりますと、約八万円になっております。
  67. 華山親義

    華山委員 建設省の住宅局の住宅、この単価は三十九年は、第一種、第二種、多少の違いはありますけれども、六万八、九千円というところです。四十年は七万一、二千円というところです。それで、私がお聞きしたところによりますと、大蔵省の国有財産局で所管しておられるところの関東地方の鉄筋コンクリートの坪単価は、三十九年は八万円、四十年は八万六千円。公営住宅と公務員住宅との間に約一万四、五千円の差がある。この一万四、五千円の差というものは、各府県の実績によるのです。それが大体この一万四、五千円の差があるのである。私は公務員なるがゆえに、あなたの言う標準的なものよりも、いい家に入れているはずはないと思う。もしも標準的なものよりも高いところに公務員が入るのであるということであれば、これは別だ。この公務員住宅の実績、実行単価が大体八万円、こういうふうになっている。片方は六万九千円になっている。一万円の違いがある。この一万円の違いというものは、各府県の公営住宅の決算の実績との間の一万円に大体該当している。標準とおっしゃいますが、この点どうお考えになるのですか。公務員については少しよくてもいい、こういうお考えですか。一般住宅は少し安くてもいい、こういうお考えですか。どこが違うのですか。
  68. 長岡実

    ○長岡説明員 予算上の単価といたしましては、ただいま先生がおっしゃった数字と若干食い違うのでございますが、公務員住宅の中層耐火で申しますと、三十九年度が坪当たり約七万六千円、四十年度は先ほど申し上げましたように、約八万円でございます。これに見合います公営住宅の中層耐火で申しますと、三十九年度は約六万九千円、四十年度は約七万二千円でございます。御指摘のように両者の間には単価の開きがございますけれども、御承知のように公営住宅は全国に平均的にと申しますか、全国に配分される予算でございまして、その平均単価がここに載っております。公務員宿舎のほうはどちらかと申しますと公務員の住宅事情が非常に逼迫しております東京、大阪あるいはその周辺といったような大都市近辺が多かろうと推定されますので、若干の開きはやむを得ない、この公営住宅の中層耐火、ただいま申し上げました三十九年度約六万九千円、四十年度約七万二千円につきましても、実行上は全国を何地区かに建設省のほうで分けまして、大都会につきましてはこの平均単価よりは上回る単価配分を行なっております。したがいまして、この表面にあらわれた開きそのままが両者の開きには実際問題としてはなっておらないと思います。
  69. 華山親義

    華山委員 予算単価が違うのは、どれだけ違いますか。公務員住宅と一般公営住宅とでは予算単価はどのくらい違っているのですか、来年度では。
  70. 長岡実

    ○長岡説明員 ただいま申し上げましたように、予算単価を比較いたしますと、第一種公営住宅の中層耐火構造は坪当たりが七万二千三百円、それから公務員住宅のほうは四十年度八万六百八十五円になっております。
  71. 華山親義

    華山委員 あなたの言うことは、私は牽強付会だと思いますね。都会のほうだから建築費が高い、こういうことはいわれると思います。しかし公営住宅だって都会のほうが多いのじゃないですか。公務員住宅のほうは都会のほうが濃度が高くて、公営住宅のほうはいなかのほうが濃度が高いなんということはないでしょう。濃度が高いのは、むしろ公営住宅じゃありませんか。この違いということが、すべてこの単価でできない場合、大蔵省はどうなさいますか、公営住宅の場合、公務員住宅の場合……。
  72. 長岡実

    ○長岡説明員 公務員住宅につきましては、私直接担当いたしておりませんので、実績をどういうふうに処理しておるか存じません。ただ、先生のおっしゃいました公営住宅についても、なるほど住宅困窮度合いは大都会に非常に片寄っておるわけでございまして、私どもも理想といたしましては公営住宅そのものの建設も当然大都会に重点的に配分せられるべきであると思いますけれども、用地の問題、あるいは地方財政上の制約等がございまして、必ずしも東京、大阪等の大都市に公営住宅予算が非常に集中的に配分されておるというふうにはなっておらない実情だと理解いたしております。
  73. 華山親義

    華山委員 そうしますと、大蔵省の方針は、公営住宅は都会ではなくいなかにつくるんだ、こういう方針でございますね。
  74. 長岡実

    ○長岡説明員 理想といたしましては、東京、大阪等の大都市周辺に公営住宅を重点的に建てたいと考えておりますけれども、過去数年間の現実の問題は必ずしもそのようになっておりませんので、また公営住宅は、御承知のように国が国庫補助を通じまして家賃の補助をいたしております低家賃住宅でもございますし、低家賃住宅に対する需要は地方にもあるといったようなことを勘案いたしまして、大都会の住宅対策としては、公営住宅以外に住宅公団の賃貸住宅等によってカバーいたしておるというような状態でございます。
  75. 華山親義

    華山委員 それはいなかのほうがぜいたくだとおっしゃるならば別ですけれども、東京だって地方だって、超過負担の調べによりますれば、実績、実際上の単価はそんなに違っておりませんよ。東京は高いのだ、地方は安いのだなどということは実績に出てきませんよ。私はここに間違いがあるのだと思う。少なくとも一万円をこす、低い見積もりがいろいろな方面から私は証明されるのではないかと思う。  それから文部省に伺いますが、文部省もいろいろ直轄の学校をおやりになっている。これは大学のようなところは別といたしまして、付属の小中学校程度のものもおやりになる場合が直轄の事業としてあるだろうと思うのです。その単価は幾らでございますか。
  76. 岩田俊一

    ○岩田説明員 私は国立の関係は直接担当いたしておりませんので、具体的な数字はよく存じておりません。
  77. 小田村四郎

    ○小田村説明員 鉄筋で申しますと、国立文教施設の付属小学校、四十年度は八万四千円でございます。これに対して公立文教施設の小中学校の鉄筋が七万八千九百円、こういうことになっております。
  78. 華山親義

    華山委員 それは公立小中学校でございましょうね。
  79. 小田村四郎

    ○小田村説明員 公立小中学校は七万八千九百円、それから国立学校の付属小中学校、これが八万四千円でございます。
  80. 華山親義

    華山委員 いままでそういうことで文部省の直轄の学校は建ちましたか。
  81. 岩田俊一

    ○岩田説明員 建っておるようです。
  82. 華山親義

    華山委員 私の調べたところとは違いますけれども、建っておるとおっしゃるならばここで議論してもしょうがない。実際は建っておらないですよ。でなければ、請負者が文部省の顔をおそれて、出血請け負いしておるかどっちかなんだ。常識じゃないですよ、こんな数字は。これはどうしても一万五千円くらいの違いがここにあると思うのです。
  83. 安井吉典

    安井委員 関連して。公営住宅のいまの御質問で七万二千円ですか、これでだいじょうぶできていますか。あちこち行きますと、とてもこの単価では間に合わないということも——私資料もだいぶ調べたのですが、これはだいじょうぶですか、これはできていますか。
  84. 長岡実

    ○長岡説明員 ただいま申し上げました単価は、全国平均の単価でございまして、各都道府県に配分されますときには全国を数階級に分けまして、その地域に見合った単価で出しておるわけであります。しかも七万二千三百円は四十年度の単価でございますから、まだ実績は何とも申し上げられませんが、過去の例で見ますと、先ほども御指摘もございましたように、超過負担をいたしておるようなところもございますし、それから現実にこの単価で建っておるところもあります。
  85. 安井吉典

    安井委員 超過負担で出しておるところと、これでできるところというふうなのと、二通りあるということでありますが、その差はどういうところから出てくるのだとお考えになりますか。
  86. 長岡実

    ○長岡説明員 御承知のように建築費のほうは、資材費と労務費との混合によりまして建築費の指数をはじきまして、これによって毎年度の予算単価是正を行なっておるわけでございます。地域によりましては特殊な事情で労務費が非常に値上がりをするという場合もございますし、また全国平均のセメント、鋼材といったような単価が、ある地域には非常に輸送費等の関係から高くつくといったような問題もあろうかと思います。ただ公営住宅の建設の場合に、非常に大きな問題になっておりますのは、建築費よりもむしろ用地費であろうかと思います。用地費につきましては、実は四十年度も三十九年度に比べまして一三・八%単価是正いたしておりますし、過去三、四年間にいずれも一四、五%ずつ、非常に大幅に上げておるのでございますが、なおかつ最近の非常に高騰を続けております地価には必ずしもマッチしておらない点もあろうかと思います。そのような点につきましては、ただいま御説明申し上げましたように、一方においては予算単価是正を行ないますと同時に、他方公団の宅地造成あるいは住宅金融公庫の宅地造成融資といったようなものを通じまして、比較的低廉な住宅の用地が供給できるように努力を続けておる次第でございます。
  87. 安井吉典

    安井委員 一三・八%上げて今度幾らになったわけですか。
  88. 長岡実

    ○長岡説明員 一三・八%上げました結果は、公営住宅第一種で申しますと、中層耐火全国平均坪当たり一万四百円でございます。
  89. 安井吉典

    安井委員 公営住宅については、私どもも去年和歌山県の実態などをこの委員会から調査に行ったときの話を聞いて、建築費そのものについて、やはり単価が低いということが一つ。それから何といいましても用地費です。用地費は全く問題になっていない。問題にもならないわけです。この用地費については、学校なんかについてはもう大体補助の対象になっていないのだし、国立高専でさえ、大蔵省は用地費ゼロなんですからね。敷地のないところに学校を建てようというのが大蔵省の方針なんですから、用地についてはまるきりお考えにならないというふうなことで、一万四百円——これは去年より上がったから幾らかいいのかもしれませんけれども、これは坪でしょう。坪一万円で買える土地というのはこれは常識でお考えになってもおわかりになるわけですよ。できっこありませんよ、これは。そういうようなことが今日の問題の基礎になっているということだと思います。これは私どものほうでも、全国あちこちから三十八年度における実績を集めておりますので、その資料を私どもが集めた限りにおいてのそれをきちっとまとめて、いずれあらためてまたお伺いをしたいと思います。
  90. 華山親義

    華山委員 超過負担の問題につきましては、ことし、去年に始まった問題ではないわけでございまして、ずいぶん長い間論議されておるわけでございます。しかも、今日でも大蔵省のほうでは超過負担が出るのがおかしいというふうな態度である限りは、これは永久に直らないと思うのです。しかし現実にあるのです。しかも大蔵省はそういうことはないはずだ、こう言われるけれども、各種の委員会は全部あるということを指摘しているじゃありませんか。単価は適正でないということを各種委員会で全部指摘しているんだ。そういうふうなことで、——いろいろな委員会がごさいますね、臨時行政調査会、それから負担金についての、補助制度についての調査会、そういうふうなものもあります。府県知事会や市町村会は、自分勝手なことを言うからしかたがないとあるいは大蔵省は言うかもしれませんが、それは別にしても、国の機関が全部適正でないと言っておるわけです。適正だ、適正だと言っておることは、この調査会を非常に無視したことばだと思うのですよ。静かに反省してごらんになるべきだと私は思います。それで、このことにつきましては、自治省は非常に苦労していらっしゃると思うのでございますが、どういうふうな御努力を自治省はなさっていらっしゃいますか。先ほどお答えもあったようでございますから、簡単でよろしゅうございます。
  91. 柴田護

    柴田政府委員 先ほど来お答え申し上げておりますように、私どもといたしましては、少なくとも国の要求する基準によってやる以上は、できる単価で組んでほしい、こういうことをるるお願いしてまいっております。それ以上地方が望みますものにつきましては、だんだん自分で金を継ぎ足してやればいい。いわゆる継ぎ足し単独事業でございますけれども、不自然な形の継ぎ足し単独事業でございますならば、それはそれで問題はないわけでございますが、ただ問題は、国が要求する補助の基本条件としてつけ加えるものについては、やれるだけのことをしてほしいということで努力してまいったつもりでございます。しかし御指摘のように、いろいろ問題点が残されております。  ただもう一つ問題は、私ども単価の問題とともにこれを執行してまいります場合に、どれくらいのことを要求するかといういわゆる補助条件の問題というものを、実行不可能な補助条件をつけられて、そうして標準単価で執行しろと言われましてもこれはもう困るものですから、そこのところを両々相まって無理のかからぬような補助行政が行なわれるように、こういうことを念願いたしましていろいろお願いをいたしてまいっておるのでございますが、先ほど申し上げましたように、率直に申しましていままでのような形でやってきましてはなかなかものごとが解決しない。そこでどういうように今後お願いしていったらいいかということを、この辺で私どもは私どもなりにひとつ考えを変えていかなければならぬのではなかろうかというような気持ちを持っておるわけでございます。しかしいずれにいたしましても、地方に不必要に荷がかかりますことは今日の財政状態におきましては困る問題でございますので、この点につきましても今後とも極力是正いたしますように、私どもといたしましては私どもなりの力を尽くしてまいりたい、かように存ずるわけでございます。
  92. 華山親義

    華山委員 自治省がいろいろ要求していらっしゃるようでございます。自治省のほうからは各省にもいろんな要請があったと思いますけれども、農林省、厚生省、文部省等、何かこの点につきまして非常に努力をしていらっしゃるのか。予算さえ多くなればいいんだというふうな考えで大蔵省と折衝しておられるのか、この点どうなんですか。非常に困った問題で、これは何とか大蔵省にしてもらわなければ困るんだというふうなお考えが、農林省や厚生省や文部省はおありなんでございますか。いまの大蔵省の単価でこれでもういいんだ、こういうふうにお考えでございますか、ひとつ正直におっしゃっていただきたい。まず農林省の方に伺います。
  93. 原政司

    ○原説明員 農林省といたしましては、先ほど御説明申し上げましたように、農業の実態あるいは農村生活の問題がなかなか指導がやかましくなってまいりましたので、そういう実態に即しまして、補助職員の好ましい姿といいますか、そういう点等を考慮して先ほど御説明申しましたように逐次補助基準、方法につきまして改善をはかっております。そういう状況でございます。
  94. 金光克巳

    ○金光説明員 お答えいたします。  保健所の職員約二万二千人の補助単価につきましては、年々若干の増額をはかってまいっておりますが、現在の書態におきましてはまだ決して十分とは言えない状態でございますので、今後関係当局と協議いたしまして十分努力いたしてまいりたい、かように考えております。
  95. 岩田俊一

    ○岩田説明員 学校の単価につきましては、例年相当程度の改善をここ二、三ヵ年の間続けておりまして、たとえば昭和三十七、八年と比較いたしてみますと約一万一千円程度上がっております。相当の改善が行なわれてきたとは考えておりますが、これで十分だとは考えておりませんので、なお今後もう少し改善する必要があると考えております。
  96. 亀岡高夫

    ○亀岡委員 地方財政を非常に圧迫しておるこの超過負担の問題の中の、職員に対する補助の問題で関連して質問したいと思います。  結局いままで華山委員から国の政策として——補助職員の場合はほとんど国の政策として、あるいは法律に基づいて、あるいは行政措置によって国庫補助職員というものが置かれておるわけですが、この職員に対する補助の実態が非常に現実離れをしておるというところに超過負担の問題が出てくるわけなんです。それで自治省の財政局長にお尋ねしたいのですが、国庫補助職員の各省別の種類、法律に基づいているもの、それから行政措置で、政令でやっているもの、その実態を調査したものがあるかどうか。
  97. 柴田護

    柴田政府委員 いまちょっと手元に資料を持ち合わしておりませんが、全体でたしか六万人くらいだったと思います。その中で大きなものは保健所の職員、農業改良普及員、この二つが圧倒的に多いのでございます。あとは統計職員でございますが、これは委託職員でございまして、補助職員とは別でございます。
  98. 亀岡高夫

    ○亀岡委員 各省別の法律に基づく補助職員と、行政措置でやっておる補助職員、その一覧表をぜひひとつ出してもらいたい。  そこで、実は法律に基づいて置かれておる、本日問題になっております保健所関係の職員並びに農業改良普及事業に携わっておる普及員と生活改善普及員というものがあるわけでありますが、生活改善普及員の場合には、あるいは農業改良普及員の場合には、農業改良助長法に基づいて三分の二の国庫補助をしなけれどならぬとはっきりと法定をいたしておるわけです。ところが現実には二分の一補助にもいっていないという実態、ここらあたりから地方超過負担というものが非常に多く出てきているということでありますので、自治省として法律に基づいた三分の二の補助をしなければならないという法律の精神を大蔵省が実際に果たしておらないというところから、ここに四十億という超過負担が出てくるということに相なるわけでありますので、こういう点自治省からも、普及事業にかかわらず、各省の補助職員の補助の実態が、法律に定められておるものでさえもいま申し上げたように法律違反をしておるような補助の実態ということにかんがみて、地方財政立場からも大蔵省方面に強く折衝をしなければならぬと思うわけです。と同時に、また大蔵省の主計官諸君も、法律に基づいたものはもちろん、あるいは政府の施策として、国の方針としてある政策を進めるために補助職員というものが置かれておるわけです。そういう立場からいうと、法律に三分の二補助とはっきり定めてあるものでさえも、実質的には二分の一しかいっていないというところに先ほど来の問題が起きてきておるわけでありますので、こういう点を法律の精神に沿って補助の基準単価をきめてもらわなければならぬというふうに考えるわけです。こういう問題を解決しようというと、いや、これは六万人にも及んで、全部に波及するからなかなか手がつけられないんだというようなことを大蔵省も言うし、またその大蔵省の言うことに易々諾々として各省が引き下がってくるというところにこの地方超過負担の問題の根源がある、こう思います。したがって文部省あるいは農林省、厚生省、やはり法律の精神をよく体し、また政府の政策、方針をよく体して、もっと勇敢に自信を持って大蔵省と折衝してほしい。見ておりますと、非常にそういう点大蔵省に対して弱いし、また大蔵省の主計官諸君も、もっと現実をよく見て——それは国の財政の苦しいことはわかりますが、しかし法律にきめられたもの、政府の方針できめたものだけは、その精神を十二分に発揮できるような処置をして、そうしてあとで強く各省に対してその予算の執行を適正に指導してもらうというふうにしていきませんと、いつまでたってもこの超過負担の問題が解決し得ないということになっておるわけですから、ひとつ自治省が中心になって、この際思い切って国庫補助職員に対する基本的な態度を確立して、そうして各省の協力を得て、ここに正しいあるべき姿というものをすみやかに立ててもらいたいということを要望いたすわけでございます。これに対する政務次官並びに担当柴田局長の御意見をお願いする次第でございます。
  99. 高橋禎一

    高橋(禎)政府委員 地方財政の健全化のために、お話しになりましたように、超過負担、しかも多額な超過負担というものが出てまいらないように努力しなければならぬことはもちろんでございます。この超過負担の発生いたします原因はいろいろございますが、一口に申しまして、お話しのように、いまこれに関する制度が確立されておるわけでございますが、しかし、この運用ということになりますと、制度そのものがきわめて一般的な、標準的なことを考えておる場合もありますし、また運用そのものが、時がたつにつれて、やや法律の持っております真精神を実現していくのにふさわしくないような事態も起こってまいる場合もございます。いずれにいたしましても、問題は御指摘になりましたように、制度そのものをどこまでも厳守してまいるということが必要なわけでございまして、自治省といたしましては、他の関係省に対しましては先ほど来財政局長も申しておりましたように、いろいろとお願いし、こちらの考えを十分理解いたしてもらうよう努力をいたしておりますと同時に、また予算で限定されたそれに対する需要というものが全国的には非常に多いわけでありまして、そこにいろいろ競争的な問題も起こっておりますし、その間に無理をするというようなことも起こる場合も絶無ではないと考えられますので、やはり自治省といたしましては、地方公共団体側に対しても、この法の真精神が順守されてまいりまして、不当な超過負担等が発生いたさないようにすることを十分指導し、助言してまいりたい。いろいろ委員会でこの問題についての御論議を拝聴いたしまして、いま申し上げましたような気持ちをさらに一そう強くいたしておるような次第でございます。
  100. 柴田護

    柴田政府委員 先ほど来お話し申し上げてまいったとおりでございますが、私ども補助職員を含めての補助制度の問題につきましては、この辺で少し考え方を変えるというと語弊がございますけれども、もう少し一歩進めた考え方をとっていかなければいかぬのじゃないかという気がいたしております。と申し上げますのは、御承知のとおり、地方職員の職員構成というものが、過般の実態調査で明らかになりましたけれども、だんだん年齢が上がってまいる。したがって、国が要請するようなグレードの職員を雇うことがなかなかむずかしくなってまいります。そうなってまいりますと、補助条件に合ったような職員を雇うことができない。しかし、現実に行政事務をやってまいらねばなりませんので、やはり職員を雇う。そこにおのずから必然的に超過負担の問題が起る素地があったわけであります。その場合に超過負担というものを一切起こらないようにしていくことが今後はたして可能なのかどうか、可能でなければある一定の限度で線を引いて、あとの問題は別の形の処理のしかたというものを考えていかなければならぬのじゃないか。そういうように実は思うわけでございます。したがって単価の問題もさることでございますが、同時にやはり補助職員の補助を考えます場合に、どういう条件をつけて補助をするかという問題、それから現実の問題、この三つの問題を相関的に考えまして、地方財政に無理がいかぬような形でもって処理していく、こういう態度をとっていかざるを得ぬだろうと思います。そういたしますと、いたずらに単価是正の問題だけに血道を上げてまいりましても、外に大きく流れたのではしょうがないのじゃないか、もう少し広い視野に立って総合的にものを考えてまいりたい、こういうようなつもりでこの問題に処してまいりたいと考えておる次第でございます。
  101. 華山親義

    華山委員 私は、先ほど公務員住宅と公営住宅のことだけ、ただ一つだけ申し上げましたけれども、いろいろな点でおかしな点がたくさんあるのです。しかし時間もございませんし、そういうことをいつまでも一つ一つやっておりますと一つの問題でも一時間くらいかかりますから、そういう個々の問題につきましては別の機会に時間でもありました場合にお尋ねすることにいたしまして、もうここでやめますが、ひとつ総括的の問題についてお考えを承っておきます。  補助金等合理化審議会が政府のほうへ設けられまして、非常によく調査をされたわけでございますが、その答申の中には、超過負担の解消に関連いたしまして、補助単価や補助対象の適正化ということをうたわれておるのです。そういうことをきちんとうたわれておるのです。政府は常に審議会の答申は尊重するということを言っておる。したがって今度の予算編成方針についてもこのことが一つの柱になっていなければならぬと思うのでございますが、この点、今度の予算編成につきましてどの程度の関心をもってこの答申をお考えになったか、大蔵当局にひとつお伺いしておきたいと思います。
  102. 平井廸郎

    ○平井説明員 先生御指摘のように、その答申が一昨年の秋に出されまして、三十九年度予算の編成に関しましてはあまり時日がなかったものでございますからその答申の実現という点については必ずしも十分な措置をとる余裕がございませんでした。そこで、四十年度予算の編成にあたりましては、予算編成大綱の中におきましても、補助金補助職員制度の合理化ということをうたいまして、この点について昨年の夏以来各省ともいろいろ交渉を申し上げたわけでございます。もちろんその内容といたしましては補助金制度合理化の一翼としていわゆる単価是正等の問題もございましたし、一方では零細かつ目的を果たしたような補助金についての整理という問題もございました。両々相兼ねて調査検討を進めたわけでございます。その結果といたしまして、四十年度予算におきましては、不要不急と申しますか、すでに目的は果たしたような補助金についても相当の整理を行ないますと同時に、先ほど来申し上げておりますように、従来単価が低きに失すると思われるものについては予算の許す範囲内でできる限りの是正につとめたということにいたしたわけでございます。もちろんその結果については必ずしもこれで万全であるかということについては御議論のあるところだろうと思いますし、今後におきましてもこの補助金制度合理化審議会の御答申の精神を尊重いたしまして、政府としても本年度において十分できなかった点についてはさらに四十一年度においても努力をいたすことになろうかと思います。
  103. 華山親義

    華山委員 自治省の政務次官がおられますので申し上げますが、自治省のほうでは各省に対しましてこの単価の適正化、補助対象の適正化等につきまして十分に要請をしておられるということでございますが、予算を編成するその際には、私申し上げるのですけれども、各省とも自治省と連絡をとって、各省がうんと言わなければ認めないくらいのことにならなければだめじゃないですか。みな各省のセクショナリズムで、極端なことをいえば自分の仕事さえ多ければいいのであって、そういうことで、少しぐらい予算単価が少なくったってこれでがまんしようというふうなことが問題になるのであって、地方自治を守るという立場からいえば、自治省の承諾を得なければそういう予算単価はつくれないんだ、このくらいな政府内部の体制が整わないといけないと思うのですが、どうですか。次官、どういうようにお考えになりますか。ただやってくれ、やってくれじゃだめなんじゃないですか。
  104. 高橋禎一

    高橋(禎)政府委員 華山委員のおっしゃいまするような制度になってくれば、自治省としては実に仕事がやりよくて、しかも自治省の考えておることが非常に簡単に実現するのだと思いますが、やはりいまの制度はそのようになっておらぬことは御承知のとおりでございまして、やはり自治省といたしましては、先ほど来申し上げましたように、補助金等合理化につきましては関係省に対しては十分自治省の立場考えというものを理解していただくように最善の努力をし、また一面地方公共団体に対しましてもいろいろと助言、指導等をいたしまして、超過負担等の出てまいるようなことのない方向に向かって進んでまいりたい、そのように考えておりますことを重ねて申し上げておきます。
  105. 華山親義

    華山委員 今日の問答の中でも、自治省のほうは八百億幾ら、一般会計では六百億幾らですか、しかし地方では自分で任意に、ある規模以上のものもあったかもしらぬから五百億程度のものはあるだろうというふうなことを自治省が言われて、それに対して大蔵省は、そんなはずはないんだ、私はこういう資料は信用しておりませんと言っておる。政府部内でこんな不信の感があったのでは問題が解決しないと思うのです。いわんや臨時行政調査会は自治体と国との間に不信の感が存在するということを言っているのです。この不信の感というのは一体どこから出るのか、こんな問題から派生しているのですよ。こういうふうな不当に低い単価の補助なんかをして、学校をつくれ、先生、職員を置け、こういうところに国と地方自治体との不信というものが胚胎しているのじゃないか。これじゃ私は、先ほど言ったとおり、一本のなわになって地方自治体と国とがやっていくということがなかなかできないのじゃないかと思うのです。ぜひひとつこういう問題については自治省が関係各省と連絡を密にする以上に、自治省が承諾しなければだめなんだというくらいなことでやっていただきたい。  その次に伺いますが、いろいろな点で、補助金を出すときに、条件をつけられますね。この条件をつけるときには、これだけの金額でこの条件はつけられるかどうかということをお考えになって条件をつけられるのですか。ひとつその点は人件費にしぼって申し上げますが、農業の問題、農業の専門家問題等につきましていろんな条件をつけていられる。しからば、その条件に合うようにしなければいけない。農林省は、農業普及事務につきましてどういう条件をつけていらっしゃるか、採用条件を。
  106. 原政司

    ○原説明員 お答えいたします。  農業改良助長法に基づきまして、改良普及員並びに専門技術員を設置しておりますが、専門技術員並びに改良普及員につきましては、それぞれ法律に従いまして資格要件というものが規定されております。専門技術員につきましては農林大臣が試験を実施いたしますし、改良普及員につきましては都道府県知事が試験を行なう、こういうことになっておりまして、試験によりまして合格いたしました者の中から、各都道府県におかれまして、適材と思う者を採用願うということになっております。  なお、先ほど来いろいろ申し上げましたが、専門技術員並びに改良普及員の中におきましても、非常に専門的な技術を持って指導に当たる方、あるいは一般的な方、あるいはそれらの長になっておる者、いろいろ内容がございまするので、それらにつきましては、それぞれに各県とまた御相談を申し上げるということになります。非常にきびしい条件といたしましては、それぞれ資格試験があり、それに合格しなければならないというのが一番きびしいと申しますか、そういうことになっております。
  107. 華山親義

    華山委員 これは単価は号俸でいいますとどうなっておりましたか。
  108. 原政司

    ○原説明員 単価につきましては専門技術員と申しますのは、県庁段階におきまして、非常に高度のそれぞれ専門に分かれた技術を持って指導してまいる、こういうたてまえになっておりまして、たとえば受験をいたします資格を例にとりましても、四年制大学を出まして七ヵ年間試験研究機関あるいは短大以上の学校等におきまして教職にあって、かたわら研究をしておった、そういう一つの職歴を持った者が試験を受ける資格を持つわけでございますが、それらの方につきましてはただいま国家公務員の基準で申し上げますと四等級ということを一つの補助の標準にいたしております。したがいましてこれは一般的に申しますと地方公務員の場合は二等級に相当するかと存じます。  それから改良普及員、つまり現地におきまして活動しておりまする方々につきましては普及所という制度がありますが、普及所長につきましては先ほど私が申し上げましたように、従来普及所長は五等級ということで標準の補助単価考えておりましたが、だんだんに技術の指導がやかましくなりますし、それから普及所自体が非常に大きくなってまいっております。さような実態の変化等を考えまして、つまり組織が非常に大きくなってまいりますし、仕事の内容がやかましくなってまいりますので、大きな普及所につきましては四等級ということで適材を確保していただきたい。できるだけ従来以上にりっぱな方を確保していただきたいということを逐次御相談申し上げたい。さらにその普及所の中で働いておりまする普及員につきましても、専門的な技術を持ってこれに当たる方につきましては国家公務員で申し上げると六等級でございますかそういう格づけをいたしており、その他の方につきましては比較的若い方が多いものですから、国家公務員の七等級、そういうことで御相談をしてやっている、こういうことでございます。
  109. 華山親義

    華山委員 農林省の方ですから相当地方の実情にはお詳しいとは思いますけれども、そんなに簡単にいま地方では人は採れませんですよ。ことに農業関係の技術者で相当の訓練を経た一般の農業普及員といいましても、そんなに簡単に採れるものじゃないんです。現在一番地方で、農業県といわれるところで困っているのは農業の専門家なんです。学校を出る人は少ない、学校を出た人は役人にはならない、会社にいく。こういうことで、こういう人々を採っていくということについては相当の報酬を出さなければだめなんです。また人が引っぱられますから、とめておかなければいけない。それである程度の処遇をしなければいけないと思うのですが、現在の大蔵省の補助単価では人も採れない、とめられない。その結果私は超過負担が出るだろうと思う。金をやって、これでしかるべくやってくれということでいいじゃないですか。そうすると超過負担はあまり出ないですよ。どういう人が入るかは別の問題ですよ。条件をつける以上は、条件をつけたことに該当するだけの補助がなければいけないと思う。その点、実態としてどういうふうにお感じでございますか。
  110. 原政司

    ○原説明員 ただいま先生から御注意をいただきましたように、農業あるいは農民の指導というものは非常にむずかしゅうございます。私も先生御指摘のとおりだと思います。したがいまして、できるだけいい人が喜んで活動いたします条件をつくってまいるということは非常に大事な問題でございますので、昭和三十八年度から農業改良普及手当というのを創設していただきまして、十分と申し上げるにはいかがかと思いますけれども、われわれといたしましてはできるだけのことをやったつもりでありますが、かような措置をいたしまして、現地で昼夜を分かたず働いている人々にいささかなりとも報いたいということでやってまいっております。  なお第二の点の、補助基準と適材との関係はどうかということになりますと、これは抜本的にはひとり農業だけではございませんで、いろいろの方面——農林省の中におきましてもいろいろの職種がございますので、御指摘の点につきましては今後の農業あるいはその他の発展等を考えまして十分検討しなければならない、さような問題だと存じておりますが、現段階といたしましては、先ほど御説明申し上げましたように、末端におきまする技術指導を幾ぶんなりとも向上するということからいたしまして、さような技術指導を従来以上に十分やっていくというたてまえから、補助基準法を一部改正し引き上げをいたしております。  なお、将来の問題といたしましては、御指摘のようにこれは十分慎重に検討すべきであろう、かように考えております。
  111. 華山親義

    華山委員 国は、机の上で観念的でいいのですよ。農林省だって大蔵省だってそうです。しかし地方はそうはいかないのです。予算が足りないから人をとれませんとか、これしか国が予算をくれないからこれしか人を雇えませんとか、そういうわけにはいかないのです。そこが地方の苦しいところなんです。ことばは悪いようですけれども地方がそういうやむを得ざるところの立場にあるということを国が考えて人に対する補助単価等を引き下げているのだとすれば、これは国が非常に悪いことをしていると思う。そういうふうなことで条件をつけるならば、しさいに検討して、あなたの言われるように昼夜を分かたず農家に出入りをして働いている農業普及員ならば、どのくらいの賃金あるいは給料を与えれば人が得られるかということを考えて条件をつけていただきたい。条件をつけるならば、それに該当するだけの補助金を与えていただきたい。これは農林省ばかりではないのです。先ほどお医者さんの例もありましたけれども、お医者さんだってそうです。保健所の実態を申し上げますならば、保健所の医者なんてなる人がありません。よほどの人でなければないのです。ですから五万や六万の金で保健所の職員を置けなんて初めから無理なんです。したがって所長に対しては十万円あるいは十二万円の金をあげなければいけない。それが実態なんです。そういう点、実態から離れた人件費の補助があるわけで、この点農林省のほかに厚生省にもお聞きしようと思ったのですけれども、やめておきます。  次に、私は非常にふしぎに思うことが一つあるのでございます。先ほど安井委員からもお話がありましたが、なぜ敷地を学校補助の対象にしないのですか。何か理屈があるのですか。
  112. 岩田俊一

    ○岩田説明員 学校敷地に対しては、従来ずっと沿革的に補助金は出しておりません。特段の理由があったわけではございませんで、元来学校設置はそれぞれの市町村の当然の責任といたしまして、従来から出してなかったわけです。ただ戦後、戦災復旧だとかあるいは新制中学の発足だとか、ベビーブームによるところの教室の不足とか、そういう面に着目いたしまして、その面に限り現在の制度は建物について補助金を出す、こういうことになっておるわけでございます。  なお学校敷地につきまして、現在申請があれば公募債をもってこれに充てるというたてまえになっております。
  113. 華山親義

    華山委員 制度のことを聞いているのじゃないのです。私知っておりますが、なぜやらないのかということを聞いているのです。金の要ることは建物だって土地だって同じですから、建物だけにやって土地にはなぜやらないのかということを聞いている。そういう制度がどういうわけでできているのかということを聞いている。
  114. 岩田俊一

    ○岩田説明員 敷き地につきましては地方公共団体でそれぞれやっていただくというたてまえできておるわけでありまして、これは地方財政の問題でございまして、文部省といたしましてなぜやらないかということは別段考えておるわけではございません。
  115. 華山親義

    華山委員 それじゃ大蔵省に聞きますが、なぜそういうたてまえになっているのですか。これはほかにもありますよ。学校ばかりじゃありません。補助は建物だけにして、土地は自分でやれ、そういうふうなことを国がやりますから、県庁も市町村にやりますよ。建物は補助するけれども、土地は市町村でくふうしなさいということになる。国が範を示すから一番困るのは末端の市町村です。市町村の財政の逼迫というのは、その点に非常に原因があると私は思っている。どういうわけで建物についてはやるが土地については補助しないのか、この点を、しきたりとか、こうなっていますとかいうことでなしに、根本的ものの考え方をひとつお聞きしたい。
  116. 小田村四郎

    ○小田村説明員 公立の学校は、市町村が設置することになっております。そういうことで、考え方といたしましては市町村の負担において、つまり設置者の負担において学校をつくるということが原則である。ただ六・三制実施以来非常に地方財政が窮迫いたしましたことと、それからまた学校建築を急がなければならないという事情がございまして、それから戦災復旧をかかえて国庫補助という制度が始まったわけであります。そういうような関係から申し上げますと、どこまでを国が補助しなければいかぬとか、どこまでをやらなければ制度として成り立たぬというようなことはないのでございます。そのときの慣例と申しますか、実情に合わせるようにしていくのが補助制度のたてまえだろうと思います。  いま文部省のほうからもお話がこざいましたように、従来から用地につきましては国は補助いたしておりません。これは慣例でございます。そういう慣例ができておりましたことと、それから土地というのは、やはり建物とはちょっと意味が違うわけでございます。建物の場合にはいずれ老朽いたしますと建てかえるという必要が起こってまいります。あるいはまた企業会計から申しますれば償却対象というようなことがございますけれども、用地につきましては、これは永久に所有権が移るわけでございます。そういうようなことで、かりに移転というようなことがありましたときには、これは市町村の財産として残るわけでございます。そういうような意味からいたしまして、建物とは性質が異なるものというようなことで補助対象からは除かれておる、こういうふうに私どもは理解しております。
  117. 華山親義

    華山委員 この考え方をある程度かえていただかないと市町村は発展しないと私は思います。現在これはどこの責任だということになるのでしょうけれども、とにかく経済実勢とは離れた土地の高騰を来たしている。その点で、もういろいろな施設というものは土地の問題で行き詰まってきているわけです。ですから、その点につきましては補助の問題、先ほどの根源に返りますけれども地方税、そういうふうな問題、その点から根本的にやってまいりませんと、私は地方自治体というものは、もう全く仕事ができないような問題にぶつかってくるのではないかと思います。  最後に申し上げますが、シャウプ使節団は、あの際に、われわれは明らかに必要のある場合を除き、将来地方団体が中央政府のために働くことをやめるように提案する、現在の習慣、補助金制度は国と地方の責任を混乱させる傾きがあり、不必要にも地方当局をこまかい統制下に置くものだ、こう言っておる。現実がそのとおりじゃないですか。それだから、こういうことをやります、こういうことでいきますからということで、皆さんお役人の方々は夢にもお考えにならないでしょうけれども、現在の補助金制度は、とにかく国の方針というものに地方を奉仕させるための誘い水だ、こういうふうに批判もされるわけです。この批判がいいか悪いか別問題といたしまして、私は、みんなが楽しく、国は地方自治体を信じ、地方自治体は国を信じて相協同して仕事がやれるような体制にぜひ持っていっていただきますよう皆さんにお願いして、質問を終わります。
  118. 中馬辰猪

    中馬委員長 和爾委員
  119. 和爾俊二郎

    ○和爾委員 私は地方税制、財政の問題に関連いたしまして、人口過密の都市、すなわち大都市の税財政の問題について、二、三お教えを願いたいと思うのであります。  この問題につきましては、前回の委員会におきまして、奥野委員から御質問があり、それに政府側よりお答えがございましたので、大体了承をいたしておるのでございますが、もう一度、重複するようなことになるかもしれませんが、簡単にお尋ねをいたしまして、政務次官から簡明直截なお答えをいただきたいと存じます。  その第一点は、御存じのように、大都市におきましては財政が非常に逼迫いたしております。これは当局におかれて御調査があったので、御認識をしていただいておるであろうと思いますが、その財政需要は、現在の税制のもとにおきましては、はるかに大きなものがございまして、この現在の税制のもとにおきます財源ではとうてい充足していけないところが多いということは、御存じのとおりでございます。  そこで私は、政府におかれましては、この点につきまして、昭和四十年度のことはともかくといたしまして、四十一年度において特に税源を強化するような方策をお考えになっておられるのであるか、またそれまでの間に十分なる御検討を願って、方策を樹立する御意思があるかないかをまずお尋ねをいたしたいと存じます。
  120. 高橋禎一

    高橋(禎)政府委員 この問題につきましては、お話のように前回の委員会で奥野委員の御質問に対しても政府考えを申し上げたところでございますが、過密都市対策はきわめて喫緊な、そしてきわめて重大な、しかしながらはなはだ難問を包蔵しておる問題でございまして、いまお話しの税制財政問題等について目下真剣に検討をいたしておるわけでございまして、できるだけ早くそうした結論を得たいものだと考えておる次第であります。
  121. 和爾俊二郎

    ○和爾委員 大体前回と同じようなお答えで、よくわかっておるのでございますが、窮迫しておる大都市の状況というものは、特に財政の面におきましてはもう極点に達しております。したがいまして、政府におかれましては、少なくとも昭和四十一年度においては、税源の強化を具体的な形において具現されるよう要望をいたしたいと存じます。  それから第二点でございますが、固定資産税、都市計画税並びに大都市再開発に関する税源につきましては、いずれも固定資産を対象に強化していかれるような方針でございますが、これは大都市にとってもまことにありがたいことでありますけれども、なおそれ以外の方法があるのではないか。この点につきましては、国税地方税を通じて税源配分を御考慮願いまして、大都市税源の強化をはかっていただきたいと存ずるのでありますが、具体的な個々の問題につきましては、時間もございませんのでお尋ねするのを御遠慮いたしますが、方針と意思のあるなしについてお答えを願いたいと存じます。
  122. 細郷道一

    細郷政府委員 大都市税制のみならず、地方税制全体の強化充実につきましては、先ほど華山委員の御質問にございました国、地方を通ずる税源配分の問題として引き続き検討を要するものと考えております。ただ、制度面の問題もございますが、同時に、現実の現行税制のもとにおいてどういう考えがあるかということもあわせて検討すべきではなかろうか、かように考えているのでございまして、特に過密都市あるいは大都市につきましては、税制のみならず、広く各般の行政措置を通じて対策を包括的に立てるべきであると考え、現在内閣審議室におきましても過密都市問題についての検討を進めておるわけでありますが、かりにそういった包括的な問題はそれといたしまして、それと並行いたしまして税制の面で、現行税体系のもとで何を考えるかということになりますと、やはり大都市における各般の都市的行政の受益を最も受けますものは所在する固定資産ではなかろうか、かように考えるのでございまして、そういう意味合いにおきまして固定資産の所有者からどういう税負担を求めていくか。現在、御承知のように、昨年の新評価によって、宅地については頭打ちをいたしておるわけでありますが、こういった措置についての反省をも加えながら固定資産についての負担の求め方を引き続き検討してまいりたい、かように考えております。
  123. 和爾俊二郎

    ○和爾委員 大体固定資産を対象としてお考えになっておることは、よく存じておりますが、私がお尋ねいたしておりますのは、これはこれとして、それ以外の問題についてのものは何か具体的なお考えがおありでありますかどうか。もう一度お尋ねいたしたいと思います。
  124. 細郷道一

    細郷政府委員 それ以外の問題と申しますと、結局さっきもちょっと触れましたように、新税の適当なものがあるかどうか。あるいは現行の国、地方を通ずる税体系の中での配分をどう考えていくか、こういうことになると思いますが、その場合に、やはり国民租税負担というようなことを考えてまいらなければなりませんし、半面では受益的な負担ということも考えていかなければならない。その辺をあわせ考えまして、税体系上の問題として、たとえば現行税体系ではどういう方法があるかというようなことは今後の検討事項であろう、かように考えております。
  125. 和爾俊二郎

    ○和爾委員 それからもう一つ、これは奥野委員のお尋ねを重ねてお聞きするようなことになりますが、固定資産税の土地に関する課税標準の特例は昭和四十一年度までということになっておりますが、もう一年繰り上げて、昭和四十一年からは新たな課税標準を設けることとして、そして四十年度限りこの特例を打ち切るというようなお考えはございませんか。
  126. 細郷道一

    細郷政府委員 固定資産の新評価によります税負担につきましては、昨年当国会におきまして成立を見ましたとおり、二割、三年間頭打ち、こういうことになっております。しかしながら、これは暫定の措置でございまして、われわれとしましては昨年以来鋭意恒久的な措置について検討を続けておるのでございまして、その恒久的措置具体化と相まって、あわせて大都市のような固定資産の新評価に対する税負担の求め方について、最も検討すべき大都市等の実態をもあわせ考えまして、できるだけすみやかに結論が出るように努力を続けてまいりたい、かように考えております。
  127. 和爾俊二郎

    ○和爾委員 特に人口過密都市に対するお考えを取り上げておられるようでございますので、たいへん満足でございますが、政府におかれましても、大都市の行財政につきましては、一そう調査を厳密にせられまして、今後合理化の道をもっと進め得るものがあるならば、これをうんと強調をされまして、そして大都市の財政の健全化をはかるよう御指示を願いたいのはもとよりでございますが、他面におきまして、ただいま要望いたしましたような諸点につきましては、特にお心を用いていただきまして、現在の大都市の財政が逼迫しておる現状を少しでも打開するような方策をお立てになるよう特に要望いたしまして、私の質問を終わります。
  128. 中馬辰猪

    中馬委員長 吉田賢一君。
  129. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 だんだん時間が迫りましたので、きょうは少しばかり伺いまして、さらに引き続いて別の機会に、地方財政をいかに強化すべきか。こういう目標で御質疑を申し上げたい、こう思うのであります。  そこで、自治省の財政局長に聞きたいのですが、一般にいわれます地方財政が、都道府県並びに市町村を込めまして、次第に弾力性を失って、ずっと下部にいくと硬直性が強化しつつある、こういったことがそちこちに出てくるのであります。こういうような、地方財政が次第に悪化していくというような傾向は、これはまことに憂慮すべきことだと思うのですが、根本的に何が原因であるかということを事務当局としては十分に把握しておられると思いますが、これは何が原因をなしておるものでしょうか。
  130. 柴田護

    柴田政府委員 お尋ねの問題は個々の団体によりまして窮迫してまいる事情がそれぞれ異なっておりますので、事こまかに論じますれば、いろいろ原因があろうかと思いますが、私どもは総括的に申し上げまして、一般会計の問題といたしましては、だんだんと給与費人件費の占める率が高くなってくる、これに見合う財源の伸びがない。言いかえますれば財源の伸長率を上回った給与費の増がある。これが硬直性と申しますか、地方財政の弾力を弱めておる一つの原因であると思います。  それから二つ目の問題は、先ほど来御議論のありました超過負担の問題、補助負担の適正でない面から出てまいるひずみが第二番目になろうかと思います。  第三番目の問題は、繰り出し金の問題でございます。特別会計が非常に窮迫してまいっておりますので、これに関します繰り出し金がだんだんふえてまいっておる。それが一般財政というものを窮屈にしてまいっておる原因だと思っております。その繰り出し金の出てまいります大きなところは、御承知のように公営企業合計と国民健康保険会計、この二つが一番大きなものであります。  一般論として申し上げますならば、主としていま申し上げましたこの三つの問題、これが地方財政にとって当面これを非常に窮屈にしておる大きな原因だと思うのでございますが、もう一つ需要の面におきまして、最近の交通通信の発達によりまして、地方財政行政の態容というものが変わってきておる。つまり、いっとき前のように、ある特定の年度において特別の財政需要があって、それを借金でまかなってあとはまた平静に戻るといったようないわば静態的と申しますか、静かな町の生活が繰り返されておるという、最近における地方の末端の市町村ではそういう行政あり方がくずれてまいりまして、どこの市町村でも目まぐるしい世の変転に対処して、行政水準の引き上げという要請が非常に強く、これに対処してまいりますためには、地方財源というものが足らない、こういう問題が出てまいっております。  そこで、私がそういうことを申し上げますのは、ここ数年来市町村に対しまして財源の傾斜配分というものも強めてまいりました。そして市町村、特に町村につきましては、一般の財源の増強の度合いは、府県等に比べますれば非常に多いのであります。ところが、実態を見てまいりますれば、それだけの財源ではとても必要な財政需要をまかなうに足りない。多くの市町村では大きな仕事というものはどんどん地方債を起こしてやっておる、こういう状況であります。全体的に申し上げますならば、需要の姿が変わってきておる。地方行政の姿が静態的なものから動態的なものに変わってきておる。これに対応する財政制度ができていない、かように思うわけであります。
  131. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 三十八年度の地方財政の決算を見てみますと、市町村の普通建設事業費におきまして四千百十三億、増減の割合は、三十七年の決算の場合は一五・二%。ところが、三十八年度におきましては、二七・三%になっております。都道府県の場合は、同じく普通建設事業費の決算額が六千八十七億円。前年における増減は一〇・八%。三十七年度の対比は三七・三%ということになっておる。これで見てみますると、地方財政を圧迫しておりまする重要な原因として、人件費の増もさることでありますけれども、総体的に投資的な事業費というものが非常に大きな要因をなすのじゃないかと思うのです。この点は、いま御説明のように、静態的な需要から動態的需要に変化しつつある過程において当然うかがえるのでありますが、この点につきましてはどういうふうにお考えになっておるか。
  132. 柴田護

    柴田政府委員 給与費の問題を私どもが非常に心配いたします原因は、要するに、給与費というのは、いわば経常費でございます。したがって、一般の財源で支払わるべきものである。財政の構造的なものから申し上げますならば、経常的なものの支払いに充てらるべき一般財源というものは、ある程度安定した形で推移するということが望ましいのであります。残ったものは投資的経費なり仕事の面に充実されていけばいいのでございますけれども、この一般財源の経常的経費へ充てられます割合というものは、非常に大きくなってまいりますと、財政の硬直性が増してまいります。われわれの家計で申し上げれば、月給だけでやっと暮らせる状態にある。そうでなく、若干の余裕がありまして、それでほかの必要なもの、生活水準の向上に充てていくという状態に持っていく。そういうような財政構造を打ち立てることが地方財政の一番大切な目標だと思うのでございますけれども、そういう理想からいいますれば、最近一般財源と経常費の関係というものは非常に幅が縮まっておる。そこを心配するわけであります。  おっしゃるとおりに、投資的経費の問題もあるわけでございまして、私はさように申し上げたのでございますが、これにつきましては、全然問題がないことはございません。静態的なものでございますれば、いっときの投資的需要に対しましては、地方債で期限を切らすという方法もありますけれども、こうひんばんに投資的経費が増してまいりますと、そういう方法だけではいかぬのじゃなかろうか。そこに何らかの一くふうが要るのではなかろうかというふうに考えるわけでございます。お話の点は、それも地方財政の問題点でございますけれども、それだけではない。むしろ構造的な問題からいいますならば、それ以外にもっと重要なものがあるのじゃなかろうか。かように考えている次第でございます。
  133. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 普通建設事業費が増大してまいりますこと、それは今度新たに別の法律案審議しておりまする新産都市あるいは工特地域における今後の財政需要は、主としてそういうものにまたかかってくるのではないか。そういたしますと、これはよほどの精密な計算、あるいは現在、将来における財政経済を測定した上でないと、私はやはり地方財政というものはまた大きな混乱におちいってしまうのではないか。たとえば、この間大臣説明になっておりました新産都市、工特地域における財政の需要が、四十年から五十年までの間に六兆三千億円ということが述べられておるのであります。しかし六兆三千億円といえども、これとても、しからば、その内容を十三の新産地域あるいは六つの工特地域における具体的な需要の見通しないしは需要の数字の積算の基礎はどうなるのだろうか、こういうことになってきますと、私はむずかしい問題が横たわっていると思うのであります。でありますのでこういうようなことは、総合いたしまして、地方財政の現在の赤字傾向の原因は、それならばどうして是正、解決すべきかという方針、あるいはそのよってきたるところを究明していくということでないと、この新なる新産都市、工特地域の財政需要の計画にいたしましても、結局砂上楼閣のようなことになって、基礎のないものになってしまうのではないか、こういうふうにさえ私は考えるのです。ことに社会開発をひとつの大きな目標にした現内閣の財政計画とにらみ合わせまして、なおさらその需要は今後も増していくのじゃないか、こういうようなことを考えるのであります。  そこで、これはやはり大臣に、基本的な問題として四十年度の地方財政計画との関連において、私は明らかにしておかなければならぬと思いますので、あなたの御答弁も、時間の都合上、きょうはなくてよろしいのでございますが、ひとつその辺につきましては相当論議をして、尽くすだけ尽くしておかなければ、毎年、これまたことしよりも来年、来年よりも再来年、たとえば三十六年と三十七年の地方財政決算状況を見てみますと、三十七年から三十八年はまた悪くなっている、また三十八年から三十九年度の決算はまた悪くなるのじゃないか。そういたしますと、昭和三十年ごろをもう一ぺん再現するのではないかというようなことさえ考えられるのであります。こういうようなあまり、いまの点に触れて言った次第であります。ひとつ次官にお頼みしておきますが、これは地方財政計画をお立てになり、今後進めていかれる上におきまして、私は非常に大事な問題で、地方地方財政計画を立てても、地方財政計画と決算と両者バランスのとれぬようなことになってしまって、問題は問題を生んでいく悪循環をするのではないか。こう思いますので、ひとつ十分にその辺につきまして、われわれの納得のいくような御説明をする機会を持ってもらいたい、かようにお願いいたしておく次第であります。  それから、関連して超過負担の問題ですが、これはあなたのほうに聞くというよりも、大蔵大臣に聞かなければならぬのです。また各省の大臣が自分の責任でもってはっきりしないといかぬのであります。きょうは大蔵省から主計官が二人見えておるんですが、予算単価といいますか、補助金単価でもよろしいのでありますが、一体単価というものは、具体的にいうならば、どういうものなんですか。
  134. 平井廸郎

    ○平井説明員 ちょっと御質問が非常に大きな問題でございますので、的確な御答弁ができるかどうかわかりませんが、たとえば人件費補助をいたします場合におきましては、大体その仕事に従事する者の学歴、年齢、経験年数等はどの程度の人を充てるのが適当かどうか、こういった点を各省と御協議申し上げまして、それに該当する等級号俸を前提といたしまして、国家公務員に準ずる給与単位をきめるというやり方をいたすわけでございます。  それから、いわゆる事業費の補助単価につきましては、御承知のように、資材の使用状況あるいは人件費の上昇状況その他を勘案いたしまして、しかるべきそれぞれの単価を決定いたしていく。こういうようなやり方でやっておるわけでございます。
  135. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 わかったようでわかりませんのですが、予算は、積算されるときには基礎になる数字がある。この基礎になる数字は人間に対する給与の数字もあろう。物件に対する代価の数字もあろう。建設事業に対する事業費数字もあろう。その数字の基礎になるものを私は尋ねるのですが、おしなべてひとつその概念を御説明してほしい、こう思うのです。大蔵省は予算の査定をなさる省でありますから、各省の予算要求に対しまして一々筆を入れ、一々意見を求め等々して査定するのでしょうが、予算単価をもう少し正確に、各種の問題に当てはまり得るように、一体どういうふうに理解すればいいのか、大蔵省の方だれか説明してください。
  136. 平井廸郎

    ○平井説明員 非常にむずかしい問題でございまして、先ほども申し上げたように的確に御答弁できるかどうかわかりませんが、たとえば具体例を引きまして御説明を申し上げるならば、農業改良普及員の場合におきまして、普及所長につきましては、私どもの記憶いたしている限り誤りなければ国家公務員の五等級三号俸、それに相当する方が大体その仕事に当たられるということで計算をいたしております。またいわゆる特別の技術普及員につきましてはたしか六等級三号俸、さらに一般の普及員につきましては七等級四号俸というのが基礎号俸になって計算されておるわけでございます。  なお建築単価等につきましては、これは私どもの所管でございませんので明確な御答弁はいたしかねますが、一応全国的な平均的な数字が大体どの程度になるかということについて、各省とそれぞれ検討いたしまして、過去の実績単価に物価上昇率とかあるいはその他人件費の伸び率とか、そういったものを基礎的に加算をいたしましてきめていく、こういう考え方でございます。その場合に全国的な標準的な単価というものの見方が問題になろうかと思いますが、これにつきましては、過去ずっとやってきたやり方というものを前提にして、いわば既往の単価前提にして計算をするという考え方になろうかと思います。
  137. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 どうもわかりません。そういたしますと、自己のに管行政の必要なる経費を算定するときに、その基礎になる数字は各省において認定することが、これが正しい適正な数字というふうに見るべきなのか、もしくはそうでなしに、大蔵省の当局と話し合いで妥当適正なものをきめるというふうになるのであるのか、あるいはそれでもなし、これでもなし、そのときそのとき、その場所その場所で、あるいはその対象できめていくので、これは別にきまっておると見るべきでないのだ、こういうふうに理解すればいいのか、その点はどうなんです。きょうは各省が見えておるのだが、建設省はどなたが見えておりますか。
  138. 中馬辰猪

    中馬委員長 防災課長、企画課長、住宅建設課長が来ておられます。
  139. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 それでは建設省の企画課長に聞きますが、あなたのほうで行政事務について予算を計上するときのいわゆる予算単価というものは、現実の単価をさすのか、それとも何か仮定した観念的の単価があるのか、単価というのは文字どおりの単価ではなくして、通称単価と言うておるけれどもそれはそのときその場所できまるというのか、一体何を正確な基準にして予算を作成するのか、この点をひとつお話し願いたい。
  140. 豊田栄一

    ○豊田委員長 私、道路局の企画課長でございますが、御質問の点の、私どもの所管に関してちょっとお答え申し上げます。  予算単価は、建設省の道路関係におきましては、要求単価とそれから実施単価とは違っておるのでございます。と申しますのは、要求単価というのは前年度の要求でございまして、これは過去の実績といままでの要求実績、こういうものをかみ合わせまして、一応私どもの場合ですと道路延長当たりあるいは単位当たり、舗装で平方メートル幾ら、そういうような積算でもって予算要求をいたしております。その結果、今度予算が成立いたしましたとき、実施単価につきましては当該年度になりまして大蔵省と一本一本の設計につきまして協議して実施単価をきめてまいりまして、それによって執行いたしておるわけでございます。したがいまして、そういう点では事業の実施に支障のないように意を払っておるわけでございます。
  141. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 それでは文部省の助成課長に聞きます。各省にわたって予算単価の問題は共通の問題を持っておると思いますので聞くのですが、いまの建設省のお話もわかったようでわかりませんので、これはあなたのほうで、たとえば小学校の改築の補助金を算定するというときに国が負担する金額、そのようなときに文部省の打ち出す単価というものは何を基準にするのであるか、つまりそれは机の上できめるのか、何か相場を見てきめるのか、去年のものと比較して適当にきめるのか、要求してきたものを適当にきめるのか。例を一つの学校の改築費補助金というものにとってみれば、単価というものは一体どういうことになりますか。
  142. 岩田俊一

    ○岩田説明員 学校の補助執行単価につきましては、これは法令の規定によりまして、大蔵大臣と協議した単価によるということになっております。その協議した単価というのは、大体におきまして予算単価ということになっておるわけでございます。この予算単価の成り立ちにつきましては、先ほど大蔵省の平井主計官から申されたような行き方でございます。なお、その大蔵省の協議いたしました単価を基準にいたしまして、私どものほうではそれを標準にとりまして、全国の個々の地域につきましてはそれぞれの資材、労務賃の地域差、それから設計上の理論単価、それから実施単価割合を考慮いたしまして執行いたしております。
  143. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 次官にちょっと聞きますが、この単価問題は同時に超過負担とうらはらの関係になるものだと私は思うのですが、国が助成計画を立てて、そして歳入でどのくらいの補助金を予定するか、ないしはどの程度の起債のワクを認めるべきか、こういうことを一方に立てる。ところが一方、地方財政需要におきましては、地方の需要がかりに百とすれば、これに百という財源を予定しておいて、それを薬を盛るように案分して渡す、こういうふうには財政の実態はなっておりませんね。なっておりませんので、地方における財政需要というのが一〇〇、そこで国が用意しておる財源は七〇とかりにいたしますなら七〇を適当に割らなくてはならぬ。適当に割るときには足らない地方が出てくる、こういうような関係も一面あるのじゃないかと思うのであります。  そこで結論的に言うならば、まず実施単価というものは単価としての概念に入らぬ、こういうような考え方が出てくるのではないかと思うのです。これはあるいは財政局長でもけっこうでございますが、それはどうなんでございますか。
  144. 柴田護

    柴田政府委員 予算を組みます場合にどういう組み方をするかという技術上の問題でございますが、実際いままでやっておる実情から言いますならば、一応学校で言いますなら、坪幾らという単価をきめます場合には、過去のいろいろな実績、現在の状態、それらの資料をいろいろ集めまして、総合平均したところで単価をきめる、それに員数を掛けますと予算額が出てくる。それで先ほど来の各省の御説明は、予算としてはその平均値のものを単価としてとらえて予算を組むけれども、実施する場合には各地方の実情に応じてその平均したものに多少傾斜をつけて配っておる、こういうことでございます。
  145. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 地方財政法の十八条によりますると、「国の負担金補助金等の地方公共団体に対する支出金の額は、地方公共団体が当該国の支出金に係る事務を行うために必要で且つ充分な金額を基礎として、これを算定しなければならない。」こういうことになっておりますね。そういうことになっておりまするのみならず、補助金等適正化法によりましても、第六条三項によれば「補助金等の交付の申請に係る事項につき」云々、そこで「申請に係る当該補助事業等の遂行を不当に困難とさせないようにしなければならない。」ということにもなっておるのであります。こういうことになりますると、私は去年の実績がどうとか、ことしの何がどうとか、何か平均して、足して割っていくというようなことが正しいのか、もう少し合理的な単価の設定のしかたがほかにあるのか、それとも単価というのはもう通称単価というのであって、別に財政的にそういう単価という明確な文字どおりのものではない、こういうふうになっておるのか、そこが自治省と地方事業主体と大蔵省、また各省の凡百の予算査定をする単価なり基礎の問題である、いまだ統一的にこういう点につきましてもはっきりしないところが、結局超過負担の問題が未解決になってくるということになるのじゃないかと思うのです。だからこの法律から見ましても、やはり主張すべきところはちゃんと主張して突き詰めていくというところまで議論を徹底さすということをどうしてしないのだろう。しないところに原因があるのじゃないだろうか。いまのような状態でありましたら、超過負担の問題は、私どもの浅い調べによってみましても、これはもういつまでたっても解決しませんわ。大蔵省は予算の範囲内で、ないそでは振れませんと言っておりまするから、法律で二分の一負担するとか四分の一負担と書いてあっても、適正化法に、地方財政法にこのような規定があっても、ないそでは振れませんと言うて、そこで適当にごまかしてしまう。だから地方はだんだん赤字に追い込まれていくという、こういうことの悪循環になるよりほかないのじゃないかと思うのです。ここは抜本的に問題点をはっきりして、単価とは何ぞやというところまで一ぺん突き詰めてみなければいかぬのじゃないかと思っておるのですが、その点は法律の規定といま私が出しました問題点に対するお考えはどうです。
  146. 柴田護

    柴田政府委員 法律論から申し上げますならば、ここで言う積算単価というものは、個々の地方団体に補助をいたします場合の単価であります。したがって、予算単価とは別の概念でありまして、むしろ個々の補助金を出します場合の単価が法律上の単価だと考えます。しかし御指摘のようにこの法律ができましてから今日まで、毎年毎年同じことを指摘され、同じような努力を私どもしてきたのでございますが、いまだに問題は解決していない。それは御指摘の点もあろうと思いますけれども、実際に補助金をもらって仕事をした場合に、それがほんとうに足りておるのか足りていないのかということが実はよくわからない。昨年地方団体につきまして私どもが調べましたのは、実際に地方が行ないました仕事上の金額と補助金の基礎になった金額との差額であります。したがってその中には地方がみずから進んで出したものもあるだろう、したがって多少割り引いて考えなければいかぬだろうということを先ほど来申し上げたわけでございますが、地方側から、国の指図どおりによってやりますとこれだけ金がかかる、これだけ足りませんという資料がなかなか出ないのであります。これは非常にふしぎなことだとおっしゃいますかもしれませんけれども、実際問題としてなかなか出ない。そこで非常に事態を明確にするのがむずかしいのでございます。したがって私どもはさような条件を捨象し去って、一応実際にやった仕事と補助の基本になった金額というものとの差額を出してきたのであります。それが先ほどお手元にお配りした推計でございますけれども、六百七十億前後という数字でございます。
  147. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 きょうは時間がありませんので、これ以上話を展開するのはちょっと無理でありますので、政務次官にお頼みしておきたいのです。  たとえばさっきもシャウプ勧告というのが片りんに出ておりましたけれども、私は長い間の国と地方行政並びに財政配分とかあるいは税制配分の問題とか、ないしは地方地方のお互いが信頼感に欠けるところがあるのかないのかというような政治の姿勢にまで突き進んでいって議論を展開しなければ解決してこぬ問題のように考えるのであります。でありまするので、単に地方財政をどうかしてくれ、よけい金をくれ、財政需要に応じてくれというような、そんなことばかり繰り返しておったって、これは議論ばかりから回りすることになるのじゃないかと思われます。やはり適当な機会に私は、場合によりましたら質問書でもよろしゅうございます、また文書で回答を求めてもよろしゅうございますので、地方財政あり方はこれでいいのか、この実態に対して国はどうなすべきか、国がどうなすべきかということは、自治省がどうなすかというのじゃなしに、内閣がどうなすのかということからもっと掘り下げていきたい。そうするのでないとこれは同じようなことをおそらくは毎年繰り返しておるのじゃないだろうか、未解決で同じ問題が次から次と起こってくるのじゃないかと思われますので、ぜひそういう機会をつくってもらうようにお願いしたいのです。次官ひとつよく相談してくださいませんか。  きょうはいろいろな関係で時間もありませんからこれでやめます。
  148. 中馬辰猪

    中馬委員長 本会議終了後再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時五十分休憩      ————◇—————    午後二時二十分開議
  149. 久保田円次

    ○久保田(円)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  銃砲刀類等所持取締法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。  質疑の通告がありますので順次これを許します。安井吉典君。
  150. 安井吉典

    安井委員 ただいま議題となっております法案も、組織暴力団の取り締りという点に主眼を置いた法案だというふうに伺っているわけでありますが、最近における政府の暴力団取り締まりに関する対策やら、それの状況等につきまして、まず御説明願いたいと思います。
  151. 江口俊男

    ○江口政府委員 お答えをいたします。  暴力団犯罪の撲滅を期すという意味合いにおきまして、昨年の正月に交通事故の撲滅と並びまして、警察努力の二大目標として全国的に取り上げたわけでございますが、その後世論のバックアップ等もございまして、また内偵等の成果というようなものも出てまいりまして、昨年中におきましては従来にも増して暴力団検挙の実績をあげたのでございます。お手元に配付いたしました資料につきまして、ごらんをいただけばわかりますように、昨年中に検挙いたしました暴力団犯罪の総数は七万三千五百五十二件、人員にいたしまして五万八千六百八十七名と相なっておりまして、この数字は一昨年に比べまして、大体件数で一割二分、人員で一割五分という増加を示している次第でございます。そのうち特に目立ってふえましたのは、率におきまして賭博が非常にふえておる。これは資金源をつくという意味合いで賭博につきまして現行犯以外も手がけるという方針をとりましたために急激にふえたわけでございます。それから数ば多くございませんが、二番目にふえた数字は証人威迫でございまして、これは数は必ずしも多くございませんが、暴力行為を抑圧するのに最も必要な証人の保護ということに関連しまして、証人威迫というものの事件を取り上げたという点にこれは特色があろうかと考えます。第三番目に伸びておりまする取り締まりは、やはり暴力行為等の取り締まりに触れまするところの事案で、次に銃砲等の不法所持という順序になっているようでございます。なお、この結果、暴力団が組を解散する、あるいは政治結社の名前をせっかく掲げたものを取りはずすというような事態もおいおい起こってきている状況でございます。この体制を続けて努力いたしまするならば、すぐというわけにはいかぬにしても、最大の目標である暴力の撲滅ということも将来においては期待し得るのじゃなかろうか、こういうような考えであります。なお、詳しい点につきまして御疑問の点がございましたら、私ないしは他の説明員から説明させたいと考えております。
  152. 安井吉典

    安井委員 順次数点についてお尋ねをいたしたいと思います。  いわゆる頂上作戦というふうに新聞が書いておりますけれども、親分のような立場の人を逮捕するというような形の中から根源を断とうというふうな努力がなされておるとお聞きいたしますが、ただ、その組が解散をしても、それによってちりぢりばらばらになってまた別の組に入ってしまうとか、あるいは地方に散らばって、最近の傾向は暴力団のローカル的な問題がたくさん起きておるわけであります。そういうような形になっていくおそれがあるのではないかと思いますが、そういうような事態が起きないようにどういうふうな措置をされておるか、それをひとつお伺いいたします。
  153. 江口俊男

    ○江口政府委員 頂上作戦という名前は、実は私たち自身がつけたのではなしに、そういう傾向を示してもらいたい、そういうところまでいってもらいたいという意味で、新聞等で幹部のところまでいく取り締まりをそういうふうに呼んでおるのでありまして、自然私たちも頂上作戦という名前を現在まねておるようないきさつでございますが、御承知のように末端のところで暴力行為があれば、常識的には一つ団体を構成しておる以上、その幹部なり首領なりというところにその罪というか、常識的な意味合いにおきましてはつながっていくわけでございますが、法律のたてまえとしてそういうわけにまいらないことは御承知のとおりです。したがいまして、頂上をねらうといっても、具体的にはやはり下のほうの行為が頂上にまでつながる関連性をはっきり発見することが一つでございます。いままであらわれました頂上をやったという事例は、頂上に位する連中そのものの自分の行為をとがめられて、たまたまかかってきておるというような状態でございますから、これは力はありますが、時間の常識どおり、組員がやればその責任者のほうにも当然及ぶということが御期待どおりにすぐいくかどうかということは、なかなかむずかしい問題だと思います。しかし、世間の要望というものがその辺にあるということは十分承知しておりますから、これは努力によってその間の関連性の解明に私たちは努力していかなければならない、こういうふうに考えております。  なお、一つの組がかりに解散しても、これはまた他の組に移動するのじゃなかろうかという御心配につきましては、私たちも多分にそういう懸念を持ちます。したがいまして、暴力団の壊滅というようなことは、一方に警察力をもってこれを壊滅していくということと、一方にやはり何らかの施策でこれを正業のほうに更正させるという面が相またなければ、私はやはり個人個人の性格を切りかえない限り、Aの団体がなくなっても、Bの団体に加入するということがあり得ようかと思いますから、総合的な広い暴力対策というものが樹立されて初めておっしゃるような心配がない状態がまいるものだ、こういうふうに考えておる次第であります。
  154. 安井吉典

    安井委員 組及び親分が逮捕されたというふうな事態で、あるいはまた、そうでなくても解散した組もだいぶあるようでありますが、それが一般の団員が市民の中にもぐり込んでしまって地方に散らばった、こういうことでは意味がないわけであります。その点、正業にきっちりつかせていくというそういう対策が政府の中にないような気がするわけです。これは警察だけの責任ではないと思うのですが、警察として、政府全体の施策の中にどうすればいいとお考えなのか、またどういうふうな要求をされているのか、それを伺いたいと思います。
  155. 江口俊男

    ○江口政府委員 具体的にどういうことをしてもらいたいという要求は現在のところいたしておりません。そこまでの検討というものはやはり専門専門のところだと思いますが、いずれにしても暴力団退治ということはわれわれが一生懸命やりますから、それを受けて更生のほうはお願いしますということは、そのつどそのつど総理等にも申し上げている次第でございます。どういうことをどうやってほしいというところまでのことは、現在私たちにその答があるわけでございませんので、具体的な要望をしたという実績はございません。
  156. 安井吉典

    安井委員 これは警察に最後まで責任を持っていただくというふうな問題ではないと思いますので、これは政府自体の問題として取り組んでもらわなければならない問題だと思います。ですから、法務省の関係やら、それから政府の官房長官やら、そういうような方々にも機会をあらためてお聞きをし、対策を要望してまいりたいと思いますが一たんつかまえられた団員がごく簡単に保釈をされている。あるいはまた、仮釈放なども刑期三分の一でそういうことになるわけでありますが、一たん隔離されたのがごく簡単な仕組みでまた社会に戻ってくる、こういうような点で不合理を感じておられませんか。
  157. 江口俊男

    ○江口政府委員 そのことに関しましては、警察官のみならず、むしろその被害者である一般市民の方々が証言等を拒まれるというのはそこにあろうかと考えます。この点につきましては、私たちも一般市民と同様にすぐ出てくるので困るという気持ちは十分持っておるわけであります。しかしそういうことが一つの原因となりまして、御承知のように昨年の議会で暴力行為等の処罰に関する法律の改正を見ましたので、将来はだんだんよくなろうかと考えます。  なお、起訴そのものの問題にしましても、昭和三十八年についての私たちの統計では、暴力団の事件について、一〇〇の検挙をいたしますと、三〇が無罪放免で七〇の起訴を見ておる。七〇のうちで執行猶予に一〇くらいがなりまして、三〇が罰金、体刑を食うのは三〇というふうなことで、百人中三十人が事実上人の目に見えるように罰を受けているというようなことに相なっておりますが、これなどもさらに将来いろいろ全体を通じて考えるべき要素じゃなかろうか、こういうふうに考えております。
  158. 安井吉典

    安井委員 これらの事後処理の問題は、法務省の問題ですから、これまた別の機会にいたしたいと思います。  あと伺いたい点は、ピストルその他の凶器の問題であります。最近新聞でも、警察側が相当積極的にこの問題に取り組んでいるという報道を見るわけでありまして、中には芸能人やあるいは作家等がピストルを所持していたというふうなことで、問題を起こしているようであります。それらの銃砲や刀剣についての外国からの輸入経路——輸入といってもこれは大部分密輸でありますけれども、そういうような問題に対するいまの取り組みをちょっと御説明願いたい。
  159. 大津英男

    ○大津政府委員 拳銃の取り締まりにつきましては、いままでも国内における密造というものがあるのではないかということでこの捜査もやっておりますし、それから密輸入が相当数あるということでその取り締まりもやってきておる。しかも、その密輸されたものが暴力団の手にほとんど渡っておる、こういうことが取り締まりを通じて見まして現実に出ておるというようなことで、暴力団対策を進める一方、拳銃の出所の糾明ということにつきましては特に努力をいたしておるわけでございます。と同時に、いままで国内にありました旧軍関係のもの、こういうような隠退蔵されていたものがまだあった、それから駐留軍関係から盗難や持ち出されたというものがあるというようなことでございますが、最近の傾向を見てまいりますと、特に一昨年、昨年あたりから、海外から相当数の密造の拳銃が入ってきておる。御承知のようなCRS拳銃というようなものが相当数日本の国内に入って暴力団の手に渡っておるというようなことが、検挙、捜査を通じて出てまいりました。それを初めは国内の密造じゃないかということで捜査をしてまいりましたが、これがフィリピンにおきまして密造されており、それを日本の船員が参りまして、トランジスタラジオなどと交換をいたしまして、これを国内に持ち込んで相当な金額で売っておる、こういうようなことが出ておったわけでございます。そういうようなことで、拳銃の不法所持の事案を検挙してまいりました数字も、三十七、八、九とだんだんにふえてきておるわけでございます。特にそういう密輸拳銃が、昨年の暮れから本年にかけましては、またエールフランスの航空機の機長が持ち込んできたものに関連いたしまして、日本のホテルにおりまする従業員が関係をしておったというような事案、あるいはまた映画俳優で京都の関係で検挙をいたしましたもの、あるいはさっきお話がございましたけれども、作家とか歌手とかいうような芸能人にまでこういう拳銃が渡っておるというようなことが実際の検挙事例を通じて見られてきておるということでございまして、こういう拳銃が海外から入ってくるのを徹底して取り締まっていく体制を今後一そう強化してまいりたい、かように考えておるわけであります。
  160. 安井吉典

    安井委員 私は、あとで用がありますのできょうは十分に深くお尋ねするわけにはまいりませんが、一つこの点だけ伺っておきたいのは、暴力団の資金の取り締まりについて、相当積極的な態度で警察は臨まれているように伺うわけであります。特に公共施設で芸能興行が行なわれる場合に、暴力団に関係のあるものは、それを拒否するとか、その他芸能人等と暴力団との結びつきを断とうというそういう努力、それに対して芸能人の側も相当積極的な反応を示しているということを聞きます。この点、私は芸能界というものと暴力団というのは、そう簡単な結びつきのあるものであってはならないと思います。それだけにいまの傾向はむしろしっかりやってもらいたいと、こういうふうな気持ちでいるわけでありますが、現在における実態、それからいままで芸能人諸君が暴力団にたよらなければいけなかったということは、これは警察が無力であったといったら少し言い過ぎかもしれませんけれども、あまりたよりにならなかったということを裏書きするものじゃないかと思うのです。警察があまり役に立たないというふうにそれらの人たちが考えていたかどうかわかりませんけれども、たとえばロケーションなんかがある場合も、やはり暴力団にたよらなければできなかった。あるいはまた、いろんな興行を持つ場合にも、暴力団にたよらなければ成功をおさめることができなかったとか、そういったような事態が今日まで実に長い間芸能界と暴力団との結びつきを進めてきたのではないかと思うわけです。その点をやはり警察は十分に反省をしていただかなければいけないと思います。そして、いまこういうふうな傾向が起きている際に、暴力団よりも警察のほうがたよりになるのだと、こういうふうな実態をやはり示すべきだと思うのです。その点につきまして、長官のお考えを伺いたいと思います。
  161. 江口俊男

    ○江口政府委員 ただいまおっしゃるような点も過去においてあったろうと思います。暴力団にたよったほうが手っとり早いということは少なくともあったことだろうと思いまするし、なお邪推をすれば、暴力団にたよることによって実際以上の観客を吸収するということも、これはあり得たろうと思います。普通ならば五千人も一万人も毎日集め得るような芸能人じゃなくても、強制的に、あるいは暴力を背景として興行をやるということによって観客も集まるというような例も私は皆無じゃなかろうと思いまするから、過去のことを、どういうふうにどちらを信用したかというようなことは別問題としまして、警察の示す方向に従ってかえって損をしたというようなことのないように、将来ともわれわれの態勢はきちっと続けていかなければならぬ、こういうふうに考えています。
  162. 安井吉典

    安井委員 俳優協会等が暴力団との絶縁の声明ですか、そういうような形で対処しているということを新聞で見るわけでありますが、それについての暴力団側の反応はどういうふうに警察は見ておられますか。今返しをするとか、何かそんなような動きはないか。現在の段階において、反応の受け取り方ですね、それについてひとつ伺いたい。
  163. 江口俊男

    ○江口政府委員 私も絶対にないかどうかということについては断言できませんが、少なくとも私自身の耳に入っておる現在までの状況におきまする反応は、暴力団のほうから、そういう動きをする俳優協会なり、あるいは芸能人なりに対していやがらせがあったということは聞いておりません。しかしながら、逆に芸能人等で、いままでそういうルートでやっておった、あるいはそういう背景でやっておったというものが、急に絶縁しろということになると、どういう方法で興行をやっていっていいかわからないというような悩みというものは一、二訴えられた事例がございます。
  164. 安井吉典

    安井委員 ですから、私が申し上げたいのは、一応いま芸能界がそういうふうな傾向に入ろうと決意をしている段階でありますから、この際、いままでなぜ芸能界が暴力団のほうにたよらざるを得なかったかという実態をもう少し私は掘り下げる必要があると思うわけです。つまり、警察よりも暴力団のほうがたよりになるというのは実はおかしな言い方で、暴力団からの恐喝的なそういうふうな事態の中で、暴力団にたよらざるを得なかった、あるいは少しくらい金がかかっても——警察に頼めば別に金がかかるわけじゃありませんけれども、金がかかっても暴力団のほうがプラスマイナスからいえば利益だ、こういうような判断も私はあったのではないかと思うわけです。だから、いままでの実態を掘り下げる中から、警察側がむしろ積極的に、いろんな興行の問題やら、あるいはまたロケーションの場合だとか、そういうような場合に対する積極的な援助といいますか、そういうようなことを持ちかけるべきだと私は思うのですよ。そうなれば、いまの彼らの決意というようなものが生きてくると思います。そうでない限りは、決意はしっぱなしで、そうはいってもやはりいままでのしきたりがあるし、ずるずるとまたもとの道に入ってしまうおそれがあるのではないか、そういうふうに私は思うわけです。そういうような意味で私は申し上げているのですが、どうでしょう。
  165. 江口俊男

    ○江口政府委員 先ほども申し上げたように、警察より彼らのほうが信用があったというふうには、私、考えませんけれども、手っとり早かったということは認めます。したがいまして、将来、ロケーション等が暴力団に守られてしかやれないというような場合、それに肩がわりをして警察が守ってやるかというようなことでございますれば、私は必要によって十分そういう手は打たなければならぬと考えます。現に、まあ興行界というのはずいぶん昔からあったもので、私たちも深くその関係は実は知らなかったのですが、競輪等が戦後に起こりました際には、その競輪場の警備等に、市当局等は、その辺の何々組というのを雇ってきたほうが一番早いというようなことをおっしゃった事例があるのです。しかし、関係いたしました警察といたしましては、もちろん警察として手は足らないけれども、そういうのを初めから入れるということではだんだん悪いくせがつくから、相当無理をしてもそういうところの警備はこちらのほうでやりますからということで引き受けたようなことも各県ございます。だから、そういう考えを推し進めますれば、将来ロケーション等でほかの人にじゃまされる、だれかがそれを守ってやらなければいかぬというような事態がありますれば、警察で協力してやってやるということは当然のことであり、私たちとしてはそういう覚悟をしておるわけでございます。
  166. 安井吉典

    安井委員 それでは一つ最後に、この暴力団の資金源の問題について、たくさん問題がありますけれども、いま興行の問題についてもう少し真剣に取り組まなければいかぬのではないかと私は思うわけです。いまは公共施設の使用拒否だとかなんとかいう形で対処しておりますけれども、いつまでもこのままではいけないのじゃないか、興行界のシステムそのものに根本的なメスを入れる必要があるのではないかと思うわけです。そういう点、警察はどういうふうにお考えでしょうか。また興行界の問題は、警察だけが責任を持って処理すべき問題かどうか、私もちょっと疑問があるわけですけれども、どういうふうにお考えでしょうか。
  167. 江口俊男

    ○江口政府委員 興行界全般の問題の改善について、警察だけでやれるか、あるいは警察だけが責任があるかということにつきましては、私は疑問というよりも、そういうことじゃないという気持ちを持っております。しかし、少なくとも興行界を正常化するために違法な状態というものを排除するのは警察の責任だと考えますので、たとえば資金源と申しましても、正常な興行で、正常な収入を得ているというものまですぐどうこうするということは警察でできないことでございますが、たとえば強制的に札を売るとか、あるいはいやがるものを強制的に契約をさせるとか、あるいは入場人員等をごまかして脱税をはかるとかというような、そういう個々の違法な事柄につきましては、厳重に目を光らして、正常な興行状態というものを、だれがやっても同じという状態をつくらなければいけない、こういうふうに聞えます。
  168. 安井吉典

    安井委員 それでは、きょうはこの程度にして、また次にいたします。
  169. 川村継義

    ○川村委員 関連して一、二点簡単にお尋ねをしておきます。  銃砲刀剣の所持取締法の改正の審議に入るわけでございますが、それについて、いま問題になっております暴力団関係の実情を少し聞いておきたいのでお尋ねをするわけです。ちょっとおくれて来ましたのでたいへん恐縮ですが、きょういただきました一枚紙の資料がございますが、これは昭和三十九年一月現在の暴力団の現況等を示してあるようであります。この資料は、ちょうど昨年の六月皆さん方からいただいた資料と全く同じであります。約一年間経過しているわけですね。このいただいておる資料はおそらく三十八年の現況であろうと思いますが、そこで、この一年間に皆さん方の相当強固な取り締まりによって関係の暴力団がどういう状態になったか、それを少し知りたいのです。きょういただいた資料も昨年六月いただいた資料も全然同じでは、一年間皆さん方の努力がどういう状況をあらわしているか、私にはわかりませんから。まあ聞くところによりますと、大体一年間で四百ぐらいの団体が壊滅をしたとか、あるいは事務所を閉鎖したとかいうようなことを聞いておるのであります。その辺の実情を少し知らしていただきたいと思います。
  170. 関根広文

    ○関根説明員 昨年一年間に取り締まりました結果、暴力団体が解散、あるいは暴力団構成員の人数に変動がございまして、ただいまその最終的な数字を集計中でございますが、中間的に、現在一年間に団体がどうなったかという点だけを取り上げて申し上げますと、昨年一ヵ年間に三百九十九団体が、取り締まりによりまして解散、壊滅いたしたのでございます。その内訳は、解散した団体が五十七団体、壊滅状態になった団体が三百十一団体事務所など閉ざして事実上活動を停止した団体は三十一団体、合計三百九十九団体でございます。構成員の数から申しますと、解散した団体に所属しておる人達が千七百七十五名、壊滅状態になった団体に所属していた者が五千四百名、事務所などを閉ざし活動を停止した団体に所属しておりました人数が七百四十八名、この合計が七千九百二十三名になるわけでございます。  これらの団体構成員が、それぞれの理由によりまして解散、壊滅いたしたのでございますが、解散、壊滅といいますのは、これが全部きれいに正業に転換した、こういうふうに見られるわけではございませんので、中にははっきり正業についた者もございますが、中にはいまだ正業につかない、あるいは他の団体に入っているのではないかと思われるような状況の者もございます。以上でございます。
  171. 川村継義

    ○川村委員 いま御説明いただいたように、解散をした団体五十七、壊滅状態に落ちたというのが三百十一団体事務所を閉鎖したというのが三十一団体、こういうことでありますが、つけ加えて御説明がありましたように、これらが全く正業についたとは見られない者も相当あるようであります。あるいは擬装解散であったかもしれない。あるいは擬装的に事務所を閉鎖した団体もあったかもしれない。それらに所属しておる三百九十九団体の七千九百二十三名、こういう諸君がどのようなその後の行動をとっておるか、全く正業についておるのか、あるいは他の暴力団の中に入り込んでいったのか、そういう点につきましては、当局はどういうように把握しておられるのか、あるいはその努力は重ねておられるのか、こういう場所でこまかなところまで御説明をあるいはいただけないかもしれませんが、お話をいただける範囲においてその点を説明願いたいと思う。
  172. 関根広文

    ○関根説明員 第一線におきましては、取り締まりによって解散、壊滅しました団体の構成員が現在どのようになっておるかということは把握しておるのでございますけれども、私どもは、現在数字でそれがどうなったか、こういうふうに申し上げるわけにはいきませんので、概況として、ただいまかなりの人々が正業に転換しておりますけれども、それ以上の人がなおはっきりと正業についたということは、いえないような状況でございます。   〔久保田(円)委員長代理退席、亀山委員長代   理着席〕
  173. 川村継義

    ○川村委員 これは取り締まりの上から非常に重要な問題でありましょうから、こまかな方針あるいは具体的な方法等を聞くわけにもまいらないのではないかと思っておりますが、その解散をしたであろうといわれる三百九十九団体に所属しておる七千何百人の諸君の氏名等は、これは明らかにつかまえてございますね。
  174. 関根広文

    ○関根説明員 第一線では把握しております。
  175. 川村継義

    ○川村委員 私はこの後もやはり、一年、二年、三年と年月を追うて犯罪等が発生した場合に、これらの諸君の歩き方というものが大きな問題点となるのではないかと考えておりますから、こういう点についてお尋ねをするわけですけれども、先ほど長官から安井委員の質問にも答えておられたと思うのですが、皆さん方がこういう暴力犯罪について逮捕なさる、そうして起訴を受ける。ところが、実刑を受けたものは三〇%なんです。三〇%以下だともいわれておりますが……。ほとんどあとの七〇%は起訴猶予になる。あるいは罰金刑で直ちにその処罰が済む。こういうことで大部分がまたもとの古巣に帰っているということをよく聞くわけです。私は、この仲間には、こういう組織の中には、やはりどうしても彼らは足が洗えない、何かそういう大きなものがあるものだと推測するわけですけれども、皆さん方がかりに逮捕されて、いろいろお調べになって、逮捕された者がすぐ罪を受けるというわけではないでしょうけれども、それらの諸君がほとんど簡単に罰金刑で済まされるとか、あるいは起訴猶予になって大手を振って自分の古巣に帰る。これは刑法のたてまえ上やむを得ないかもしれませんが、この古巣に帰っているという、世の中に出ているという、みずから所属する組織に、あるいは関係のそういう組織にまた足を踏み込んでいくという、そういうところに私は非常に大きな問題があるのではないかと思います。長官はそういうような問題についてこの後どういう対策を立てるべきであるか、ひとつ抱負所見を聞かせていただきたいと思います。これは警察当局では、とても十分なる手の打てない問題ではありましょうけれども、あなたの立場で刑法上の問題、あるいは取り締まり上の問題等々いろいろお考えになっておることをこの際聞かせておいていただきたい。
  176. 江口俊男

    ○江口政府委員 先ほど安井委員にもお答え申し上げましたとおり、このことに、いまおっしゃったような事柄が一番重要な事柄であるということについては御同感でございますが、それじゃ、はたしてどういう具体策を持っておるかという点になりますというと、率直に申し上げまして名案というものは警察としては持ち合わしていないわけであります。ただ言えることは、暴力団という団を組んで暴力行為をするということの存在の基盤は、もちろん個々人の暴力性もあるでしょうけれども、そうじゃなしにやはりそういう形が割りが合うというようなことにあるだろうと思います。したがいまして、やはり暴力団の行為は、個々人の偶発的な暴力行為等と違って、重い制裁を受けるということが暴力団というものを存立せしめない一つの大きな条件ではなかろうか、こう考えまして、昨年の法務省から御提出になった例の暴力法の改正等にも全幅の賛意を表してきたわけでございます。  それから第二には、現在すでに暴力団の組織員になっている者はさておいて、その補給源になっている青少年不良団というものにつきまして、私たちは一番大きな力を注いでいくべきだ、こういうふうに考えます。暴力団員でありましても、だんだん年をとったり、あるいは刑を重ねて終始刑務所におるというようなことになりますれば、それで種が絶えるわけでありますが、ちっとも減ってまいらないのは、新しい分子がさらに供給源として現存しているというところにあるのでございまして、この青少年の不良化対策というものが、長い目で見た暴力団対策の一番根幹になるのじゃなかろうか、私はこう考えて、これこそ政府が全力をあげて青少年の非行化対策というものを行なうことによって新しい供給源を絶つ。それから現在ある暴力団については、それがあること自身が引き合わないというような法的な措置をする。そうしてそこから足を抜け出すものについては、十分正業につき得るような条件を、これまた政府なり社会全体の総合的な施策でやっていくというようなこと以外には、そう急な即効薬があるように私には思えません。お答えになるのかならぬのか存じませんけれども、私はそういう考えを持っている次第でございます。
  177. 川村継義

    ○川村委員 長官からいろいろお話がございましたが、こういう組織暴力に対する一つの刑の問題も確かに考えられる対策の一つではないかと思われます。さらには御説のように非行青少年対策、これはずっと前から一つの大きな社会問題となっているのでありますから、この非行青少年の対策というのがやはり大きな問題であるということも考えられると思います。ただ私は、長官に、あなたのお立場から、あなたのほうの今日までの非常に苦労しておられまするその体験等に基づいて、もっと広い視野で対策をぜひ考えておいていただきたいと思うのです。いまお話しのような点はもっともなことでありましょうけれども、このようなお話しのような点だけでは、今日のこのおそるべき状態というものはどうしてもなくならぬのではないか。たとえば先ほど安井委員も申しておりましたけれども、興行関係との結びつき、なぜ一体俳優さんや歌うたいをするような人たちがピストルなど持たねばならぬか、その原因は、要素は一体何なのか、こういうような問題もえぐって、皆さん方のほうからやはり対策を進めていただく必要があるのではないか。あるいは地方興行等について、今日では、へたをすると、皆さん方から追われた諸君が、いわゆる皆さん方の取り締まりにはかからぬけれども、やはり資金というものを獲得するために、警察の網をのがれていろいろと仕事を伸ばしていく。やがてはそれがまたおそるべき組織暴力の温床となっていくということなどがあるとするならば、私は、あのような興行関係の法律というものもある程度考えてみる、検討してみるという問題が存在するのではないか、こういうことなど考えておるわけですが、そういう点につきましても、やはりこれらの一番大きな課題をになって苦労しておられるし、また、この取り締まりに深い体験を持っておられます当局が、皆さん方のほうが広い視野でいろいろの具体策を考えていただくことを実は要望してやまないわけであります。またいずれ、銃砲刀剣等の取り締まりの審議に入りましたときに、それらの関係等につきましてもひとつ十分お聞かせをいただくようにしたい、こういうふうに存じております。  きょうは一言、暴力団のここ一年ばかりの現況等をお聞きしてやめたいと思います。
  178. 亀山孝一

    ○亀山委員長代理 田川委員
  179. 田川誠一

    ○田川委員 私は、この法案に関連して二、三お伺いしたいと思います。  その前に、暴力団のことについて少しお聞きしたいことがございますが、いまやっておられる警察当局の暴力団に対する取り締まり、組織暴力に対する取り締まりは非常に果敢にやっておられるようで、私どもも敬意を表する次第でございます。ただ、こうした取り締まりは線香花火に終わりがちでありまして、もしそういうようなことになりますと、かえって弊害が起こるのではないかと私ども心配しておるわけです。たとえば親分が逮捕された、また金の出どころがなくなる、そうした結果、追い詰められた暴力団は、逆に言ったら手負いのイノシシみたいなものだと思うのです。そういう意味から、こうした取り締まりというのは絶えずやっていく。それからもう一つ大事なことは、国民によく啓蒙をして、被害があったらすぐ届けさせるような啓蒙も必要だと思うのです。それから先ほど長官も言われましたけれども、そうした暴力団的な人々に正業を与えるというような事後処理も大切なことだと思うのですが、長官は先ほど、具体的な対策は持ち合わせないということでありまして、非常に残念なことでありますが、それはともかくとして、このような取り締まりが一体いつごろまでやられるのか、永続的にずっとやられるのか、その辺のところをお伺いしたい。
  180. 江口俊男

    ○江口政府委員 暴力団対策ということを警察の目標に掲げましたのは、御承知のように昨年の正月からでございます。その以前におきましても、われわれ古い記録を繰りますと、過去におきましてもそういうことは数回行なわれておるようでございまするが、最近におきましては、昨年の二大目標として暴力と交通を取り上げたのは御承知のとおりでございまするが、ことしの初頭にあたりまして、やはり警察として何に重点を置くべきかということをいろいろ論議をいたしましたときにおきましても——これはもちろん目標というものはその時代によって変わっていくわけでありまするけれども、警察としては、やはりことしも去年と同じ考えで暴力と交通というのが中心である、こういうふうに衆議一決しまして、全国の警察をあげて一番大きな柱に立てているのは言うまでもございません。しかし、いつまで続くか、こうおっしゃいますと、五年間だとかあるいは十年間だとかということを私がただいまお約束するというのは適当でないと思いまするけれども、少なくとも暴力団というものが存在し、それが弊害を流しておるという状態の続く限りは、警察の一番大きな目標になることは私信じて疑っておりません。おっしゃるように、線香花火で終わりますと、むしろ弊害のほうが出てくることは当然でございまして、警察に協力した者がばかを見るというようなことになりかねないと思いまするので、これは半永久的に続くものだというふうに御了承願いたいと思います。
  181. 田川誠一

    ○田川委員 長官の決意を聞いて非常に頼もしく思います。ぜひともこういうような暴力行為がなくなるまで努力をしていただきたいと思います。  次にお伺いしたいのは、いわゆる組織暴力というのは一体どういうことをいうのか、ちょっと形式的なことになりますけれども、警察でお出しになっておられます「警察の窓」に、暴力団とはということが書いてありますが、集団的にまたは常習的に暴力的不法行為を行ない、または行なうおそれのある組織ということが書かれておりますが、こういうものは、ばく従であるとか、それからテキヤであるとか、あるいは青少年不良団その他暴力団というような説明が書かれておりますが、大体こういうものをさしていわれておりますか。
  182. 江口俊男

    ○江口政府委員 そのとおりでございます。
  183. 田川誠一

    ○田川委員 この組織暴力の種類でございますが、この中でいわゆるテキヤであるとか、ばく徒であるとかいうような取り締まりは、わりあいに目立って行なわれるわけでありますけれども、その他の暴力団の中に比較的目立たない、そうして非常に知能的な暴力をふるうものがかなりあるのではないかと私は思う。たとえば一時数年前に問題になりました都庁に巣くっている赤新聞、ごろつき新聞であるとか、あるいはまた大きな会社に出入りをする小新聞、さらに株主総会にあばれ込む総会屋、こういうものが比較的見のがされがちであります。いまやっておりますいわゆる暴力団の取り締まりというのは、こういうものを含んでおやりになっておるかどうか、お伺いしたいと思います。
  184. 江口俊男

    ○江口政府委員 詳しいことは捜査二課長からお答えさせますが、暴力団ないしは組織的暴力団、こういっておる中には、赤新聞等一つの団をなしておればもちろん入るわけですけれども、これが個々の人間がやっておる場合は暴力団というわけにいかないわけでございまして、おっしゃるように団をなしてやっておっても、知能的な暴力行為については、外見に見えても、肉体的な物質的な暴力と違ってつかみにくい点はもちろんございまするけれども、十分そういう組織があって、そういう知能的暴力をやっておるものがあれば、暴力団だと私たちはもちろんいえるわけであります。おそらくその他の中にはそういうものも幾らか入っておるものだと思いますけれども、関根課長から補足的に説明をいたさせたいと思います。
  185. 関根広文

    ○関根説明員 ただいま長官から御説明されたとおりでありますけれども、その他の暴力団の中に、小グループなどで暴力犯罪を繰り返すものというものがありまして、いわゆる会社ごろ、新聞ごろというものがこういう範疇に入っております。新聞ごろと申しますのは、ただいま御指摘ございましたような新聞あるいは雑誌などの報道機関の公共性ということをバックにしながら、会社や個人などの弱点、非行などを探ったり、あるいはこれを種にして記事にするぞといっておどかして、原稿を買い上げろ、寄付をしろ、広告料を出せ、こういうようなことでいろいろ金をおどし取るというようなことをやっておるグループを、一応その他の暴力団の中に入れまして警察では把握しておる次第であります。
  186. 田川誠一

    ○田川委員 私がお聞きしておるのは、そういう定義ではなくて、いまやっておる組織暴力の取り締まりに、いまあなたの言われたようなものが入っておるかどうかということであります。
  187. 関根広文

    ○関根説明員 入っております。
  188. 田川誠一

    ○田川委員 入っておればけっこうでございますが、どうもいままでやられておる取り締まりの重点が、こうしたものよりも、むしろテキヤであるとか、何々組であるとかいうほうに重点が置かれてやっておるように私どもには見えるのでありますけれども、いかがですか。こういう、いま言った総会屋であるとか、そういう者に対しても相当力を入れておられるのでしょうか。それとも、いわゆる暴力団に重点を置いておるのか、どちらに重点を置いておられるのか。
  189. 関根広文

    ○関根説明員 ただ抽象的にどちらに重点を置いておると申しましても、これはそれぞれに目を向けてやっておるのでございますが、これを数字のほうでちょっと御説明してみますと、三十八年一年じゅうと三十九年一年じゅうの検挙人員がございますが、三十九年の検挙人員五万八千六百八十七の中で、いわゆるばく徒の種別に入る者が一万四千六十、全体の二四%でございます。それからテキヤの種別に入ります者が七千七百十で約一三%でございます。青少年不良団、いわゆる、ぐれん隊等の部類に入る者が一万四千三百六十七名で約二四%でございます。その他、これが非常に広いのでございますが、二万二千五百五十、約三九%、この中にいろいろな種別の者が入っておりますので、新聞ゴロ、会社ゴロを取り出せば取り出すことが可能でありますが、一般的にかような状況でございますので、ばく徒、テキヤは、もちろん取り締まりをしておる重点でございますけれども、そのほかの者につきましても広く目を向けて取り締まりをしておる、かような状況でございます。
  190. 田川誠一

    ○田川委員 長官に、この点ははっきりひとつ決意をお伺いしたいのですが、こうした総会屋であるとか、赤新聞であるとかいうものは、非常に目立たない、そして巧妙にやっておる。しかも被害は非常に大きい。これをこの際徹底的にやってもらいたい。これは一般の国民の協力を得なければなかなかできない。めんどうだから、あとがうるさいから——これはむしろそうした力の暴力よりも、こうした言論による暴力、知能的な暴力のほうが、被害者からいうと非常に訴えにくいのです。どうも私どもがいままで感じておるところでは、そういう面の取り締まりというものは、おろそかではないでしょうけれども、少し消極的であるように感じられる。これは啓蒙が足りないからだ。いまやっておる組織暴力の取り締まりというのは、そういうものもやるのだから、被害があったらどんどん届けろという啓蒙をぜひやるべきだと思うのですが、それに対する長官の決意をお伺いしたい。
  191. 江口俊男

    ○江口政府委員 決意といたしましては、おっしゃるとおり非常に害悪を流す性格のものでありますから、PRが足りないならば足りるように、またPRだけでなしに、現実に訴えられた場合には、それに即応して十分誠意を持ってやるように指導したいと考えます。ただ田川委員も申されたように、なかなかこれは被害者の協力というものがないとできにくい問題なものですから、常識的には非常にけしからぬ状態であっても、法律的に手がつかぬということも間々あることと思いますので、御賢察を願いたい。
  192. 田川誠一

    ○田川委員 私は、今度の組織暴力の取り締まりに、いま申しました言論の暴力というものも、ともに重点を置いてやられるということを了解して、今後もぜひともやっていただきたい、こういうふうに思うわけであります。  その次に、いわゆるテキヤであるとか、ばく徒であるとかいうような暴力団に対する対策でありますが、ややもすると、ただ暴力団が悪いのだ、テキヤが悪いのだということだけが表面に出て、せっかく正業についてまじめにやろうという人たち、更生をしようという人たちがなかなか更生しにくくなるということも、非常にむずかしい面だと私は思うのでありますけれども、これは課長さんでけっこうですが、一体、やくざのやくざ憲法ですか、杯をかわして親分、子分の契りをする。一たんやくざに入った人たちが、そうした精神的な面で正業につくのだ、更生をするのだというような悔悟といいますか、そういう封建的なものはだめだということを言って、はたして更生できる性質のものかどうか、ちょっとお伺いしたい。
  193. 関根広文

    ○関根説明員 第一線の捜査関係者からいろいろ承ったところによりますと、暴力団関係者の中でも、正業につきたい、あるいは足を洗うというふうなチャンスはいろいろな場合に相当あるんだということを聞いております。たとえば警察に検挙され、実刑を受けまして、刑務所に入っておる間にいろいろと考えて、こういう稼業から足を洗いたいということで、刑務所を出所するときには、かなり多数の人がそういう考えを持って出てくるというふうなこともあるようでありますが、かなりな人がまた出所した後に、それ以前のいろいろな恩義関係等から暴力組織に戻るということも多い。また、若い人で、結婚をしたりそういうふうな家庭的なあたたかみを感じたような時期に、将来のことも考えて、こういうふうな組織から抜け出したいというふうに考えることもかなりある。また、そういったことで実際にいわゆるやくざ組織の中のルールと申しますか、話し合いで杯を返す、あるいはそういう縁を切るということで正業に転換していくことも相当ある一面、一部には、足を洗いたいということで、本人は相当決意を持っておるにかかわらず、その仲間、グループがいろいろな方策で、正業に転換する、足を洗うことを阻止する、中にはリンチを行なうというふうなこともかなり事例がございます。昨年はそういう正業につきたいという者が相当出ました反面、正業につくことを防止する、いわゆる組織として脱落者を生ずることが組織を弱める最大の原因でございますので、そういう脱落を阻止するためのリンチというような事件もかなり発生しておると聞いておりますが、そういうふうなことを考えまして、取り締まり関係といたしましては、正業につきやすいようにバックアップをする、あるいは本人の保護をする、将来のそういう点についても施策をするということで、リンチ事件の検挙、防止というふうなことにも目を向けるというふうなことをやっております。大体そんなところを聞き及んでおるわけでございます。
  194. 田川誠一

    ○田川委員 暴力団の取り締まりというのは、私は非常にむずかしい問題だと思うので、警察当局もその取り締まりというものに対しては、苦労なすっておるということを承知しておりますが、へたをすると人種差別みたいなことになりがちじゃないか。まあその行為が悪いのであって、その人間が単に暴力団に入ったからけしからぬということで職を与えないということになると、これはアメリカの黒人問題みたいになるかと思うのです。そういう意味から、正業を与えるということは、取り締まり当局も十分念頭に置いてやっていただきたいと思います。芸能界と暴力団とのつながりということがよくいわれ、新聞にも盛んに書き立てられておりますけれども、私はちょっと考えが違うのです。芸能界とそういう暴力団との関係で悪い面もたくさんありますけれども、また便利な面もずいぶんある。そしてそういう暴力団が芸能関係に非常に詳しい。また組織網を持っておるということで、芸能界のほうでは、被害を受けるどころか、むしろ便宜を供与されているというのが実情じゃないかと私は思う。そういう意味から、芸能界としては、むしろ今回の組織暴力の一般的なやり方に対しては多少批判は持っているんじゃないか、こういうふうに推察をするわけです。非常に言いにくいことでありますけれども、どうでしょうか、芸能界に対して非常に被害が多いのか、芸能界の側から見たら被害はないんだ、むしろほかの面で被害があるんではないか、いずれかちょっと御説明をしていただきたい。ちょっとむずかしい質問かもしらぬけれども……。
  195. 関根広文

    ○関根説明員 少なくとも警察関係に従来表立った被害届けというのがあったのは、ごくまれでございます。したがいまして、ある有名な俳優がある地域で興行するに際して、そこの暴力団関係者と接触がまずかったということで、重傷を負ったというような事件があって、そういう場合にはもちろん警察は、芸能人が被害者ということになりまして関係者を検挙しますから事件が明るみになってまいりますが、そういったような傷害事件を負わない場合は、これは推察でございますけれども、かりに金をおどし取られる、あるいはおどし取られると申しますか、いやいやながら提供しておる。場合によっては恐喝事件になるという場合でも、被害として表面に出ないで、潜在化しておる場合がかなりあるんじゃないか。そういう面から考えますと、芸能人がある特定の庇護者のもとに、あるいは特定の業者のもとに営業を行なう場合は、その特定の庇護者との関係さえ保っておれば、ほかの人から被害を受けないというふうなことで、あるいは利益を得ている場合もかなりあるんじゃなかろうか。興行界の実情は詳しくありませんけれども、大多数がある地域で興行するときに、これは法律上何も権限がないのになわ張りと称して、その地域を確保しておる関係者にあいさつをする、あるいはある特定の芸能人の興行をやる際には、その特定人と関係のある興行関係の人にあいさつする、あるいはそのほかいわゆる荷を回してもらうというようなことがあって興行が大多数行なわれているというような実情でございますので、考えようによれば、そういう仕組みの中で営業が行なわれているという限りにおいては、おそらく被害というよりは、むしろ利益の場合が多いんじゃないか。しかし暴力団犯罪取り締まり上の面から見ますと、そういうなわ張りがありますために、なわ張りの利益をめぐって、相当対立抗争事件というのがあちこちに発生しておるというふうなこと、それからそういう興行をめぐって暴力団が利益を上げるというのは、やはり興行関係に相当の不正行為がまつわっておるというふうな関係がありますので、警察としてはこういう面から問題を取り上げて、興行関係の不正の面を追及するという態度で暴力団取り締まりを始めたわけなんですが、興行関係者のほうからかりにものごとを見るといたしますと、ただいま申し上げましたように、被害の面あるいは逆にそういう慣習的な営業形態の中における利益を受ける面と両方があったのじゃなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  196. 田川誠一

    ○田川委員 芸能界の組織というのは、なかなか簡単ではないようでありますけれども、たとえばコロムビアであるとかビクターであるとかいう芸能社が地方で興行をする場合には、東京の主としてある大きな代理店にあっせんを頼むわけですね。そしてその代理店がさらに地方の代理店、興行主などに頼む、そしてそれがまた商店会などに頼むというような中間形式になっておるようでありますが、そういう中間の芸能社、興行会社、こういうものに悪いことをしないで元暴力団だったというものがかりにあるとしたならば、私はそれはそれでけっこうだと思うのですけれども、どんなものですか、そういうものも今回解散させるということでありますか。
  197. 関根広文

    ○関根説明員 実態が暴力的な集団でなく、また常習として暴力を行なわないような実態であり、かつ、従来かりに暴力団であったとしても、そういう組織から縁が切れておるということで、正業として興行を行なっておるということであれば、それは純然たる正業であり、問題になるものではないというふうに考えます。
  198. 田川誠一

    ○田川委員 いま私が言いました、中央のたとえばビクター芸能社とかコロムビア芸能社が興行の依頼を頼む芸能社、たとえば神戸芸能社とかあるいは江東楽天地とかいうようないろいろな芸能社が相当にありますね。そういう芸能社のうちに暴力団的な色彩のない芸能社と、暴力団的な色彩のある芸能社とどっちが多いですか。
  199. 関根広文

    ○関根説明員 はっきりどちらが多いということは申せませんが、第一線の実際に仕事をしている者から聞き及んでいるところから概括的に申し上げますと、暴力団関係のほうが多いというふうな感じがいたします。
  200. 田川誠一

    ○田川委員 これはちょっと勉強不足だと私は思う。ぼくが調べたところでは、数は逆だと思う。いわゆる暴力団の色彩の全然ない、正式ということばがいいかどうかわからぬけれども、そういう芸能社のほうが多いと思う。比率を言うとこれも私は受け売りですからはっきりした数字は言えませんけれども、大体八対二くらいだと思う。もう少し調べて、そうした芸能社の種類を委員会に出していただきたい、出せますか。
  201. 関根広文

    ○関根説明員 特定の府県で暴力団に関係ある芸能社というもので把握している数はございますので、それをもとにして申し上げましたので、全国的に調べるとすればかなり時間がかかると思います。
  202. 田川誠一

    ○田川委員 全国のをいただきたいということじゃないのです。中央にある中央的な芸能社、いわゆる地方へまた委託をするという芸能社、たとえばビクター芸能社とかコロムビア芸能社、江東楽天地というような種類の芸能社です。
  203. 江口俊男

    ○江口政府委員 暴力団体約五千、人数にして十八万ということを常々申し上げておりまして、この中身を具体の場合以外は言っていないというのもそういう点にあるのでございまして、私の聞くところでは東京に相当ある中で、三十幾つとかは明らかに暴力関係の芸能社だというふうに報告を受けたことはございますが、その三十幾つにしても、その名前でこれが暴力芸能社だということをあげていくのはいかがか。それは事件を起こした場合には私はかまわないと思いますけれども、それが更生していく、あるいはその中から暴力団員だと思われる者を排除していったあと、それが正常な興行を続けていくというような更生のしかたがある。それるつぶしてしまうということなら別でございますけれども、それはできないというような意味で、幾らのうちに幾らぐらいを警察としては暴力的な芸能社として見ているかという抽象的な数字なら私はあげることができると思います。しかし、具体的にA、B、C、は暴力芸能社だというようにいうのはいかがなものでございましょうか、ちょっとちゅうちょするわけでございます。
  204. 田川誠一

    ○田川委員 芸能社の種類はわかると思うのです、ビクターだとか江東楽天地だとか。その中で、どれが暴力的色彩があるのかという格づけがなかなかむずかしいというお話ですね。それはけっこうです。ですから、私が言うのは、大きな芸能社、これは調べればすぐおわかりになると思う。それがわからないと、暴力団と芸能界のくされ縁を断ち切れなんと言ったって、それはそれだけのことであって、その実態をよく把握しなければ簡単には私はできないと思う。そういう意味で中央的な芸能社というのはお調べになればすぐわかると思う。それが出せるか出せないかということを私は伺いたい。
  205. 江口俊男

    ○江口政府委員 私が申し上げるのもそういうことでございまして、中央的な芸能社が幾らあるかということはわかると思います。現にわかっていると思います。それから、その中でどれとどれとを暴力的な芸能社だと見ているかということもわかっているはずでございます。ただ、それを名前をあげていくということはいかがかと思うから、幾らのうちに幾らぐらいを警察としてはそういうふうに見ているという数字ならば私は出せるかと思います。
  206. 田川誠一

    ○田川委員 その数字でけっこうでございます。  それから、あともう少し芸能関係のことについてお聞きしたいのですが、時間がありませんから、また数字をいただいてから質問をさしていただきます。ただし、私は誤解があるといけませんが芸能社の代弁でもございませんし、それから暴力を肯定するものでもございません。  次に、本題の法律にちょっと関連をしてお聞きをいたしますが、銃砲刀剣類等所持の今度の改正について、ピストルなどの輸入禁止規定を新たに入れました。たいへんけっこうだと思うのですが、一体この拳銃などの輸入をどうやって取り締まっていくのでしょうか、具体的な取り締まりの方法をお聞きしたいと思います。
  207. 大津英男

    ○大津政府委員 拳銃の輸入の取り締まりということになりますれば、やはり水ぎわでこれを捕捉するということが一番の対策でございますので、そういう取り締まりを進めてまいらなければならないと考えておるわけであります。したがいまして、主要な港湾はもちろん、あるいは空港等につきまして、税関ともよく連絡をとり、また、警察といたしましても、従来の捜査からいたしまして得ました情報その他によりまして、十分にそういう点の情報も検討いたしまして、その実態をつかみ、その情報に基づいて、出入する外国人あるいは日本人のそういう密輸の仕事をやっておる、こういうものの追尾をいたしまして、これを捕捉するということをやってまいりたい。さらにはまた、外国の警察との間におきましても、情報交換、連絡、協調をいたして、これを押えていく、こういうようなことを推し進めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  208. 田川誠一

    ○田川委員 水ぎわで密輸を取り締まるということでありますけれども、今度この新しい法律ができて、さらにその水ぎわで取り締まりを厳重にする具体策がありますか。たとえば警察力をふやす、羽田でいえば東京空港署の署員をふやすとか、そういうような計画がございますか。
  209. 大津英男

    ○大津政府委員 羽田の警察につきましては、絶えず税関当局とも連絡をいたし、情報もかわしておるということでございますが、現在の定員をさらにふやすかどうかということでございますけれども、これは今後の増員計画もございます。現在のところ百五名というような定員であると聞いておりますが、さらにこれを少しでも増加をしていきたいということを聞いておりますので、増員対策も警視庁として考えておると考えるわけでございます。
  210. 田川誠一

    ○田川委員 私がお伺いしたいのは、この取り締まり規定を新たに設けたことによって、従来と取り締まりの体制が違ってくるのかどうかということをお聞きしているのです。同じかどうか……。
  211. 大津英男

    ○大津政府委員 取り締まりの体制といたしましては、従来以上に、こういう密輸罪も設けていくということでありますので、捜査専従班を設けるなど、さらに相当力を入れていかなければならない、かようなことを考えておるわけであります。
  212. 田川誠一

    ○田川委員 力を入れるには、現在のままではたして十分できるかどうかという心配が私どもにあるわけです。羽田だけとりましても、年間十八万ですか、去年入った人が日本人だけで十八万四千人、外人が二十七万五千人ある。そういう大ぜいな出入国があって、それからさらに、そういう密輸が地方にだんだん多くなってきている、手薄なところをねらって多くなってきているということも私どもは聞いておりますが、はたしてそういう水ぎわで取り締まりができるものかどうか、どうも私ども非常に心配なんですよ。この点はどうでしょうか。
  213. 大津英男

    ○大津政府委員 確かに、税関を通る旅客すべてについて、拳銃の不法所持があるかどうかということで、全部をそういう嫌疑者として見ていくということは、事実上できないことであると思います。したがいまして、従来の経験から申しましても、相当情報がありまして害疑の濃いというようなものを特定をいたしましてやっていく、それから、麻薬などの例を引き出しては何でございますけれども、やはり麻薬のようなものでも地方の港へ入っていくような事例もございますし、また大きな港でこれを捕捉しておるということもございますが、こういうものもすべて情報に基づいて、外国との情報交換あるいは国内でいままで密輸入に携わっておった者というような者の提供した情報が、相当確度が高くて、これを検挙しておるというような事例もございますので、そういうことを専門にやる係を設けまして、いままで以上に検討してまいるようにしたい、かように考えております。
  214. 田川誠一

    ○田川委員 羽田の税関の様子をこの間ちょっと見てきたのですが、何かあそこで銃砲等の取り締まりをやるということはとても困難なように私ども思うわけです。でありますから、できるだけほかの面でそういうところを補ってやっていく以外にちょっと方法ないと思いますね。どうでしょうか。大蔵省などともう少し連絡をおとりになって、水ぎわで、空港で押える方法をもう少しお考えにならないと、いままでと同じような状態じゃないかと思うのです。私この間羽田に見に行ってびっくりしたのですが、飛行機からおろした一般の貨物、手回り品じゃなくて貨物は、一たん空港の会社の保税倉庫へ入るわけですね。エアランスならエアフランスの保税倉庫は、大体この委員会の大きさくらいのところに一ぱい荷物が詰まっておる。そしてこういう部屋がたくさんあるわけです。そこへ飛行機からおろした荷物が検査をされないで入っちゃう。関税法からいうと、飛行機がおりたときにそこで調べて、そうして保税倉庫へ入れるというたてまえになっておりますけれども、いまの能力からいったらそれができない。そして一たん倉庫へおさめてから、一日、二日たってから品物と書類と照らし合わせる。そしてその貨物が今度は輸入業者から引き取られるときに税関で照らし合わせている、そういうような仕組みになっておる。これはいまの関税法が古い法律で、昔の船の輸出入の場合を想定してできた法律であるから、そういうところは非常に手抜かりがあると思うのです。この間のフランス機長の事件ばかりでなく、銃砲等の密輸入の場合、いろいろ聞いてみますと、そういう保税倉庫を利用して犯罪が行なわれているという例が多いですね。調べてみますと、空港の係員がいろいろ不正をやる。いまの状態だと、航空会社の雇い人が悪いことをしようと思えば何でもできるわけです。そういう非常に不完全な状態でありますから、私は空港ではなかなかそういうものは押えられないと思う。ぜひ税関とあなた方と、もう少し取り締まりの方法を検討していただきたいと思う。あの保税倉庫に——各飛行機会社のこういう倉庫がたくさん並んでいるのです。税関で一体何人でやっているかというと、勤務員五人です。五人ではとてもその倉庫の扱いなんていうのはできるものじゃありません。それをひとつぜひ相談をしていただきたいのでありますが、どうですか。
  215. 大津英男

    ○大津政府委員 御承知のように、非常に少ない職員で税関当局もこういう点に取り組んでおるということでございますので、警察といたしましても、必要に応じ、犯則事件があるというような場合でありますれば、応援の要請を受けまして、それに立ち会っていくというような方法もないわけでもないと思います。十分打ち合わせをいたしまして今後の取り締まりを進めてまいりたいと思います。
  216. 田川誠一

    ○田川委員 時間がありませんが、最後に猟銃ですね、最近猟銃が非常に精巧なものができて、ライフル銃なんかがありますけれども、ぼくはこれが非常に危険なものじゃないかと思うのです。暴力団なんかでも、ピストルを持たないで猟銃持っておれば大体だいじょうぶだということを言っておるようですが、この猟銃輸人もかなり多い。羽田の税関なんかでピストルはどんどん領置します。そしてライフル銃なんかも許可がなければそこで領置するわけですが、羽田で押えられたそうした銃砲等のうち、猟銃なんかはすぐ申請して、公安委員会で許可を求めれば、みんな持ってっちゃう。そういうことでどうもいま猟銃は、暴力団の関係にいたしましても何か非常に軽く取り扱われているような気がするんですけれども、これに対してもう少し規制がないのかどうか、お伺いいたしたい。
  217. 大津英男

    ○大津政府委員 猟銃につきましては、少なくも今度の法律改正におきましてその処理について、若干その所持、移動の場合の規制というような点を考えておりますが、これも根本的に輸入を禁止するとかいうような、拳銃等と同じようにするというところまではいっておらないのでございます。確かに御指摘のような点もあるわけでございますが、やはり猟銃がイノシシ、クマ、ああいうふうなものまで撃つために必要であるということでございますれば、そういうものの輸入を禁止するというところまではいかないのでございますけれども、他の条項を活用いたしまして不法所持をこの際取り押えたいということと、その移動についても規制を強化していくという方向で対処してまいりたい、かように考えております。
  218. 田川誠一

    ○田川委員 猟銃のライフル銃は機関銃と同じですね。それから戦争中の三八式歩兵銃とたいして変わらないくらい非常に強いものだと私は思うのです。そこで第五条に公安委員会の許可を受ける条件がありますが、この中の「他人の生命若しくは財産又は公共の安全を害するおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者」、これは一体具体的にどういうふうに解釈したらよろしいのでありますか。
  219. 大津英男

    ○大津政府委員 第五条の第一項の第六号「他人の生命若しくは財産又は公共の安全を害するおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者」、これは、現在とっております解釈といたしましては、殺人、傷害、強盗等の犯罪を犯し、または再犯のおそれがある者、それから不法所持の罪を犯しましてまだ確定判決を受けていない者、それから生命、財産、公共の安全を害するおそれがあると認められる者、こういう者がこの第六号に該当する者と考えておるわけでございまして、先ほど申し上げましたそういう種類の犯罪を犯し、または再犯のおそれがある者、あるいは現に生命、身体、財産、公共の安全を害するおそれがあるという者につきましては若干明確を欠いておるということから、各都道府県警察におきましてもその運用につきまして取り扱いが若干区々になっておるという点もございましたので、この点、昨年、各府県に対しましてもう少し詳細な基準を示しまして統一的にこれを処理するようにいたしておるわけでございます。その考え方といたしましては、殺人、強盗、傷害等の暴力的な不法行為、こういうものを犯しまして、そうして罰金以上の刑を受けるというようなことになりました者につきましては、刑の執行を終わり、あるいは執行を受けることがなくなった日から起算して三年を経過していない者、それから銃砲刀剣類を用いてそのような暴力的不法行為を行なって罰金以上の刑に処せられた者で、その刑の執行を終わり、もしくは執行を受けることがなくなった日から起算して五年を経過していない者につきましては、原則として再犯の疑いがある者として検討をする。それから暴力的不法行為を行なって罰金以上の刑に処せられた者で、その刑の執行を終わり、もしくは執行を受けることがなくなった日から起算して五年から十年というような者で、改悛の情が認められないというような者、それから暴力的不法行為を行なった者のうち、その当該行為について現に刑事被告人あるいは被疑者となっている者についても、先ほどと同じような疑いがある者に該当する者として十分検討をするということにいたしております。それから暴力団の構成員というようなことが明らかである者のうちで、そういう暴力的な不法行為の前歴があり、かつその前歴のある他の構成員を直接支配しあるいはその者の直接の支配を受けているという者につきましては、やはり再犯の疑いがある者に該当するとして十分検討する、こういうことにいたしておるわけでございます。それから犯罪の経歴がなくても生命、身体、財産、公共の安全を害するおそれがある者といたしましては、短気粗暴な行状、あるいは酒癖があって粗暴な行為がある、そういうような者は十分に検討する、こういうことでこの第五条一項六号の運用を全国的にも同じような歩調で十分に検討していくように申しているわけでございます。
  220. 田川誠一

    ○田川委員 そうすると、大体いまの何々組だとかテキヤとかいうようなところでは、猟銃は持てないものというふうに解釈してよろしゅうございますか。
  221. 大津英男

    ○大津政府委員 この第五条一項六号の解釈からいたしまして、いま申し上げましたようなものに該当してくる者が大半でございますので、そういう意味では許可が非常に困難であるということでございます。
  222. 亀山孝一

    ○亀山委員長代理 森田委員より関連質問の申し出がありますから、これを許します。
  223. 森田重次郎

    ○森田委員 いま出川委員からの質問を聞いておりまして、関連した二、三の点をお伺いしておきたいと思います。  第一に、これはいまここで私、青少年不良団というものが千九百二十七、これの構成員数は四万九千七百六十五人、この教字を見て実はびっくりいたしたのです。大体暴力団というものは、ばく徒、テキヤ、この辺が中心のものと実はいままで考えておったのですが、ここに青少年不良団と称するものが、こうたくさん出ているということになると、これは容易ならざる社会問題だと実は考えるのでお伺いしたいということなんです。これは、ここでは公安委員会の問題なり、あるいは警察庁の問題なりとしていま取り上げられたので警察庁の方々がおいでになっていると考えるのですが、これは決してそういう限られた官庁において取り扱うべき問題ではないと思う。非常に影響するところも広いし、原因するところもまた種々の方面にある、こう考えられるので、私は一体この非行青少年——これは団を扱ったようですが、非行青少年としての個々の問題なり個々の人の数はこれに何倍するほど多いものだろう、こう考えるわけなのです。これを一体どうするのかということなのです。そこで、これは一つの官庁で、その与えられたる権限内の問題として処理する面だけを扱っておったのでは、とてもこの問題を解決することはできない、私こう平素考えておる者の一人なんです。そこで長官にお伺いいたしたいことは、一体各官庁がどの程度まで有機的な関連性を持って、この問題を国全体の大きな問題として取り扱うことになっているのか、その関連性の現状というようなものをもしお伺いできればと思っていま立ったわけなのでございますが、どうでしょう。
  224. 江口俊男

    ○江口政府委員 青少年の不良化につきましてはおっしゃるとおりでございまして、また暴力団の絶滅という点からも、これが最後的には供給源になるわけでございますので、私たちも重大な関心を持っておりますが、これをなくする、あるいは善導するということはひとり警察の力だけではできないという点につきましてもおっしゃるとおりでございます。政府といたしましてはそういう点に着目いたしまして、現在総理府に中央青少年問題協議会というようなものがございまして、その責任者としては総務長官が各省各庁にまたがるいろいろな施策について総合的な推進をするということに相なっております。先般の風営法の審議の際にも、青少年問題協議会から出席をされまして、どこの省ではどういうふうにしている、あの省ではこういうふうにしている、政府としてはそれをこういうふうに総合したというような御発表があったようでありますが、その構成員であります私たちは、自分たちの分野における与えられた任務である犯罪捜査あるいは防止という点に全力を尽くしますが、そのほかに教育としては文部省の系統で十分な配意をする、あるいは厚生省の関係でも興行場なり風俗なりというような点から十分のことをやるというようなことを説明をすれば、各省でいろいろなことを申すのでございますけれども、それが十分行なわれていないというようなことから、非行青少年が非常に多いということは残念でございます。そのうちの一部が団体をなして青少年不良団というような数として上がっているものだと思います。そういうふうに御了承を願いたいと思います。
  225. 森田重次郎

    ○森田委員 そこでもう一つお伺いしたいのは、戦争後犯罪傾向というものはどこの国でも起こる、これは世界的現象だということで、一応日本の国内に起こった犯罪についても一通り弁解が成り立ったようなのですが、アメリカ等は、最近はどうなのでしょう、フランス、西ドイツ、イギリス、アメリカ、イタリアあたり、この非行青少年に限ってのあれを聞いているのですが、最近の傾向は、日本のこの傾向などと比べてどんな姿になっているか、お調べになった点がありましたら、ちょっとお伺いしたい。
  226. 江口俊男

    ○江口政府委員 ここにその数字等の持ち合わせはございませんが、私たちが接触いたします同業者といいますか、警察等に関係しているものに関します限りは、自分の国でいま一番問題になっているのは何かというときに、青少年問題であるということを言わない国は、文明国では一つもございません。ただ東南アジア等の後進国から参られた方々はまだそんな段階じゃない。しかし青少年が悪いということは十分あるけれども、もっと切実な問題があるというようなことを言うのはあります。しかし、青少年はうまくいっていますというような話は一回も聞いたことはございませんので、あるいは青少年の犯罪統計等、おっしゃったようなところがあれば後刻御報告申し上げます。
  227. 森田重次郎

    ○森田委員 そこでもう一つ、これは少し内面的になる問題でありますが、人間像の問題であります。これは過般文部省からですか、何か諮問して学者の間に日本人の理想像というものはどういうものかというので、人間像に関する答申が出たはずであります。これに対してはいろいろの方面から批判が出ていることは御存じのとおりであります。そこで私、特に不良少年団、この団の中に入っている人の間に、はたして倫理的反省というものがあるだろうかということを平素疑っておるものなんです。案外道義的なものなどの反省が足らない。そうしてそのやっていること自体が、一つの英雄的なものだというような間違った少年理想像といいますか、まぼろしの理想像というものにとらわれて、いい気持ちになってやっておるという傾向がないのだろうかということを、心理学的な立場から、おもしろいテーマだから、この問題に対して警察庁なりあるいは犯罪心理学などを研究している人の間から、何か結果が出ているのではあるまいかというようなことを疑問に思っておったのですが、この辺に対しての警察庁でお調べの実情を、ひとつ結果が出ておりますればお伺いしておきたいと思います。
  228. 大津英男

    ○大津政府委員 青少年の問題につきまして、非行グループに入っております者につきまして、私どもも非常な関心を持っておるわけでございます。その際私ども考えておりますことは、青少年の非行グループを解体させる。そうしてそれがいい方向に各人が向いていくようにする、あるいはまたそのグループそのものが、いいほうに向いていくようなことも必要ではないかというようなことで、関係の向きともいろいろ相談をいたしておりまするし、また各都道府県警察におきましても、だんだんにその緒についておるわけでございますが、ソシオメトリーという方法を取り入れてまいったわけでございます。この方法は青少年の非行グループをとらえまして、その非行グループの中におけるA、B、C、D、E、ずっと何十人おりましても、そういう者のうちで一番リーダー格になっている者はだれか、その者とBとはどういう結びつきか、Cはだれと一番仲がいいか、Dはむしろその圏外におって何かあるときだけ出ていくようなことであるのか、そういう少年の人間的な結びつきが、グループの中でどうなっておるかということを、感情的な問題やいろいろな面から調べまして、グループの中の青少年の個々の結びつきを調べてまいりますと、一番重要な役割りをしておるリーダーはだれであるか、またその影響を受ける者はだれか、それ以外の者はそれほどの役割りをしておらないというようなことが、おのずからグループとして出てくるわけでございます。その解明をソシオメトリーという方法を用いてやっておりまして、一番おもな悪い少年は、これを家庭裁判所に送致をするというようなことで、あるいは少年院送りなどの場合もありますし、いろいろな措置をしてもらう。あまりそういう影響を受けておらないような者につきましてはグループそのものの全体をうまくもっていく方向でやっていく。あるいはグループそのものが非常に悪いという場合には、グループそのものを解散するように学校あるいは地域の諸団体と協力してやっていくということで、青少年がグループとして非行に走っていく傾向が非常に強いわけでございますので、そういう点からこれを食いとめていく。そうしてそのグループがよくなっていくためには、よい遊びとかあるいはよい読みものを与える、あるいはいろいろな工作を、学校その他と連絡いたしまして、それこそ理想的な人間像に向かって青少年が進めるような方向に、警察だけの力ではできませんけれども、警察としてもそういう方向で努力をしておるというような状況でございます。
  229. 森田重次郎

    ○森田委員 私のお伺いするのは、そういう点をお伺いしたのじゃないのです。それはあたりまえです。あなた方のおとりになっている、どうして改過遷善せしむべきかという手段のお話だと思うのであります。私のは飛び離れた質問なものですから、あなた方は誤解なさっただろうと思うのですが、私いま聞いていることは、普通のたとえばあなた方が非行青少年の団体を調べる。そうすると大体現象的な面だけ調べるのですよ。警察の取り調べというのは、大体刑法に触れるか触れないかということを中心に調べますからね。そのことを聞いているのじゃない。日本人は暴力団の根底に非常に悪いイデオロギーが——大前田英五郎、昔の侠客が必ずうしろのほうにいて、そうしてそのときの時代に反抗したということで、反抗することそれ自体に一つの英雄感を持って、そこに一つの快感を持つ。だから警察には悪いのだけれども、できるだけ警察には低姿勢で妥協するようなかっこうで、そうして外に出ては一つの暴力行為をやっている。しかし彼らは頭の中では、われわれは一つの英雄的な気持ちでやっているのだという心理が、これを改過遷善させる上の非常に大事なポイントとなるので、この心理的洞察を欠いたのでは、外から幾ら押しつけてやって、なぐったって、あるいは少年院に入れて長いこと置いたからといって、なかなか簡単に直らない。どうもいままでの少年院あるいは少年感化院あたりのやり方を見ていると、やはりそういう心理的洞察を欠いて、その英雄感が間違いだということを、魂の入れかえをやる、人格転換をやるという方法を欠いておる。そこに科学的心理学の研究もしない外的なあるいは取り扱いの欠点がある、私は平素こう考えておる。そこでどうしても警察のほうで、もしあなた方のほうに学者の手があれば、グループの心理、団体心理いわゆる団体の中心をなしている者の英雄感、こういう間違った倫理観というものはなかなか簡単に直せるものじゃないということを、強く研究しておくことが私は必要だと考えているので、はたしてそういうような研究をなさっておいでになるだろうか、あるいは学者の中に特殊な篤志家があって、そうしてそういう犯罪心理学の、青少年の心理の動きはこうだという研究をした結果が出ているでしょうかということを、一つの方法上の問題として、時間もないので、ぽつっと一つ問題を出したものだから、ちょっとお答えにとまどったのじゃないか。簡単です。そういう研究があるかないか、あるいはまた警察などでも、学者などに助成費でも出して、そういう方面の研究などさせているかどうか、この点をお伺いしておきたい、こういうことだったのです。
  230. 大津英男

    ○大津政府委員 警察庁の科学警察研究所に防犯少年部というところがございまして、ここにはやはりそういう少年の非行原因あるいはそういう非行の心理というようなことをいろいろな面から研究をいたしております。そういう意味で青少年がそういう集団グループに入っていく、あるいは暴力団にあこがれを感じて、むしろ英雄気どりで入っていくというような面とか、そういう面につきましてもいろいろな事例について研究をいたしておりますが、そういうものをまとめて結論的にこうあるべきであるというところまでいったものはまだ出ておりませんけれども、いろいろな面から研究をいたしております。
  231. 森田重次郎

    ○森田委員 もう一点お伺いしておきたい。  それは、最近の映画など私もちょいちょい行って見るのですが、ほとんど暴力団の映画ですね。ピストルで幾ら撃っても死なない劇ばかり、どこの映画館に行ってもやっている。これがひとつの流行をなしている。そこで、これも心理学の問題になるのですけれども、青少年の心理というのは感受性が非常に敏感なんです。感覚でこれを受けて中枢でいいか悪いかを判断して、そして外的にこれを表現する。これが心理の過程——感覚中枢運動の弧という心理学の原則があるわけでございますが、これが人間の衝動的な表現、受け方なんです。われわれのような年とった者から見ると、これは仮説のものだということはすぐわかるし、そんなばかげたことをやってはいかぬということを考えるけれども、青少年にはまだそういうような価値判断の中枢心理というものが形成されておりませんから、感覚中枢をそのまま通ってすぐ行動に移る、これが青少年の衝動的な行為になるのだ、こう考えておる。そうすると、こういう暴力団中心の映画というようなものから受ける影響というものは決して軽規できないものがあると考える。そこで、こういうものに対して一体どうやればいいかということになると、立法的にこれを禁止するというわけにもいかぬ事情もあるでしょうし、いろいろありましょうけれども、どういうような方法でこれといまの犯罪関係とを中断させるかということは、非常に大事な問題になると私は考える。そこで、現在警察庁のほうでとっておいでになるこれらの問題に対する方法というか、おそらく最低限度の方法で何か手を打っておいでになると思うのですが、その辺の事情をひとつお伺いしたい。
  232. 大津英男

    ○大津政府委員 映画の青少年に与える影響、これはいままでありました少年の非行の実際を調べてみまして、あの映画によってヒントを得たとか、あの映画やテレビを見て衝動的にこうなったというような事例もございますので、森田先生御指摘のような問題があるということは言えると思うのでございますが、その映画そのものをどういうふうにすべきかということは非常にむずかしい問題でございまして、やはり自発的な改善を映画界がはかっていく、あるいはテレビその他につきましては、番組の向上ということで何らかの措置がとられるということも聞いておるわけでございますが、映画界につきましては映倫という組織がございまして、その映倫の委員会できめておる映画倫理審査基準と申しますか、そういうものでは非常にエロ的なものあるいはグロ的なもの、残忍なもの、暴力的なもの、こういうシーンはいけない、こういうものはいけないということをいろいろきめております。ただそのきめております基準そのものを守っておったのでは、なかなか映画としてうまくいかないようなことらしいのでございまして、実際には相当どぎついものが日常映画館で上映されておる、こういうものが映倫でパスしておるというのが実情だと思うのでございますが、これを立法的にどうしていくということは現在はとうていできない。やはりこういうものは映倫自身が判断をし、もっと映倫の手によりましてりっぱな映画に直していくということをやっていただく以外にはないのではないか、私はかように考えておるわけでございます。  警察といたしましては、特にお話の暴力的なもの、残忍なものにつきましては、現在ちょっと取り締まりの法規というものはございません。非常にわいせつなものにつきましては、刑法の活用もございますけれども、そうじゃないものにつきましては、ちょっと取り締まる法規もございませんので、そういう自発的な措置を望むという態勢でございます。
  233. 森田重次郎

    ○森田委員 あと一点、これは私の意見になりますけれども、非行青少年の問題は先ほど申し上げたとおり、政府の総合政策になって、すみやかに対策を樹立しなければならない段階に追い込まれている。これをわが党でももう少しまとまった姿で筋を通し、総合性のこもったものをやらなければいかぬはずだ、こう思っておるのでありますが、今日までおくれていることをむしろ与党として恥じているものの一人であります。しかし、臼井さんが長官でやっているのでしょうが、忙しいので、これをはっきりと実行面に打ち出すことには、時間も相当かかったりなんかするのではあるまいかという点を心配するものの一人でございます。せっかく暴力団をこの際解消せしめようとして、非常な努力をなさっておいでの点には最大の敬意を表するものの一人でございますが、これはもっと積極的に各方面へ呼びかけて、一日も早くこの問題を解決していただきたい、これは私の希望でありますが、よろしくひとつお願い申し上げます。
  234. 亀山孝一

    ○亀山委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十八分散会