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1965-04-14 第48回国会 衆議院 大蔵委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月十四日(水曜日)     午前十時十三分開議  出席委員    委員長 吉田 重延君    理事 金子 一平君 理事 藤井 勝志君    理事 坊  秀男君 理事 山中 貞則君    理事 有馬 輝武君 理事 堀  昌雄君    理事 武藤 山治君       天野 公義君    伊東 正義君       岩動 道行君    奥野 誠亮君       鴨田 宗一君    木村 剛輔君       木村武千代君    小山 省二君       砂田 重民君    田澤 吉郎君       谷川 和穗君    西岡 武夫君       濱田 幸雄君    渡辺 栄一君       佐藤觀次郎君    只松 祐治君       野口 忠夫君    日野 吉夫君       平岡忠次郎君    平林  剛君       横山 利秋君    春日 一幸君       竹本 孫一君  出席政府委員         大蔵政務次官  鍛冶 良作君         大蔵事務官         (証券局長)  松井 直行君  委員外出席者         参  考  人         (証券取引審議         会委員)    河野 通一君         参  考  人         (東京証券取引         所理事会議長) 瀬川美能留君         参  考  人         (公社債引受協         会会長)    湊  守篤君         参  考  人         (東京証券取引         所理事)    武井 好信君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申し入れに関する件  証券取引法の一部を改正する法律案内閣提出  第八九号)      ————◇—————
  2. 吉田重延

    吉田委員長 これより会議を開きます。  連合審査会申し入れの件についておはかりいたします。  内閣委員会において審査中の大蔵省設置法の一部を改正する法律案及び商工委員会において調査中の山陽特殊製鋼株式会社の倒産に関する問題につきまして、それぞれ連合審査会開会を申し入れたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 吉田重延

    吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、それぞれ連合審査会開会を申し入れることに決しました。      ————◇—————
  4. 吉田重延

    吉田委員長 証券取引法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、お手元に配付いたしました名薄のとおり、参考人方々が御出席になっております。  参考人各位には、御多用中のところ御出席をいただき、ありがとうございました。本委員会におきましては、証券取引法の一部を改正する法律案につきまして審査を行なっておるのでありますが、本日参考人各位より御意見をお伺いすることは、本委員会審査に多大の参考になるものと存じます。参考人各位におかれましても、何とぞ忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  まず、参考人方々より御意見をお述べいただき、そのあとに質疑を行なうことといたします。  それでは河野参考人からお願い申し上げます。河野参考人
  5. 河野通一

    河野参考人 ただいま御紹介にあずかりました河野であります。私が本委員会にお呼び出しを受けましたのは、私が証券取引審議会の一員であるという関係からかと存ずるのでありますが、本委員会でただいま御審議になっております証券取引法改正法案につきましては、証券取引審議会が昨年の十二月に大蔵大臣に提出いたしました報告趣旨を、一〇〇%とは申しかねるのでありますが、大部分取り入れられておりますので、私といたしましてはこの法律案賛意を表したいと存ずるのであります。  証券取引審議会では、この法案に盛られておりますような問題につきましてはしばらく前からいろいろ審議検討を行なってまいったのでありますが、その審議経過と申しますか、あらましをごく簡単に申し上げまして、皆さまの御参考に供したいと存ずるのであります。  一昨年の五月でありましたか、大蔵大臣からの求めによりまして、証券業者に関する基本的な諸問題について検討をいたしますために、審議会に小委員会というものが設けられましていろいろ検討が行なわれてまいったのでありますが、一応の中間的な取りまとめができましたので、昨年の二月に中間報告というものを大蔵省に提出いたしたのであります。さらに、その中間報告に基づきまして証券業者免許制などを中心としてさらに具体的な検討をするようにというこれも大蔵大臣からの求めによりまして、再び小委員会が設けられ検討が続けられたのであります。その結果、一応の結論を得ましたので、昨年の十二月にこの問題について大蔵大臣報告書を提出した次第でございます。  審議会及び小委員会における審議の過程におきましては、各界学識経験者多数の方々のおいでを願いましていろいろ御意見を拝聴いたしましたことはもちろんでございます。  ただいま申し上げました大蔵大臣あて報告書内容は、いずれまた皆さまのお手元まで資料としてごらんに供せられることと存じますので、詳しいことは省かせていただきたいと思いますが、ごくかいつまんであらましだけを申し上げておきたいと思います。  大体報告書内容は四つの点に集約できるかと思うのでありますが、その第一点は証券業者免許制について、証券業というものの公共的な性格から見て現在の登録制免許制に改めるべきであるという点であります。その免許に関しましては、いわゆる職能分離考え方を取り入れていくことが望ましい。したがってその免許にあたっては自己売買委託売買引き受け等業務別免許を与える、いわゆる業務別免許と申しておりますが、業務別免許を与えることにするのが適当であるということが大体第一点の概要であります。そのほか、免許にあたって免許の基準といったもの、あるいは免許制への切りかえを実施いたしますための経過的措置問題等につきまして若干の指摘をいたしておるわけであります。  第二点は、証券業業務規制といいますか、監督といいますか、そういったことをさらに充実強化する必要があるという点であります。この点につきましては、いろいろな点につきまして規制を強化し、あるいは監督をさらに充実していくことについて意見を述べておるわけであります。なお、この問題に関連いたしまして、現在の状況から見ますると、証券業者専業主義をさらに一そう徹底すべきであるという考え方のもとに、証券業者の兼業の制限に関する現行の規定について再検討を加える必要があるということを指摘いたしておるわけであります。   〔委員長退席藤井委員長代理着席〕  第三点は、有価証券外務員制度についてであります。この点を要約いたしますと、現在の外務員についての届け出制度を改めて登録制度にすることが適当であるという点であります。それから第二点は、外務員行為はその所属する会社行為であるというたてまえのもとに、投資者の不測の被害を防止する規定を設けるべきであるという点であります。  第四点は、証券業協会に関してであります。証券業協会の公共的な自主規制機関としての機能は、今後一そう充実をしてまいる必要がある。そのために若干の具体的な提案をいたしておるのであります。  以上が証券取引審議会から大蔵大臣に提出いたしました報告のごくかいつまんだあらましでございます。  最後に、この法案について二、三の点に関して私見を申し述べさせていただきたいと存じます。  第一点は、先ほど申し上げましたように、この法案の中には審議会報告を申しましたうちの第四の証券業協会に関する事項が取り入れられていない点であります。もっともこの証券業協会に関する問題は、証券取引所制度その他各般の事項と密接な関連がございますので、これらの問題とあわせて検討を要するという事情もございます。したがいまして、今般の改正法案に盛り込まれなかった点については了承される点もあるかと思うのでありますが、今後さらに検討が加えられ、この点について近い将来適切なる解決あるいは整備改善方策がとられますことを期待いたす次第であります。  第二点は、本法案にはいろいろ重要な事項が盛り込まれておりますが、次の二つの点については、法案条項そのものよりも、その条項の実際の運用と申しますか、施行といいますか、そういった点のいかんに多くの課題がかかっていると思われるのであります。  その一つは、この法案を貫いておりまする精神一つかと思われまする証券業職能分離に関する考え方であります。  もう一つは、この問題と関連がありますが、先ほど申し上げました専業主義を一そう徹底すべきであるとの考え方からまいりまする他業制限に関する規制の問題であります。この両者はただいま申し上げましたように相互に非常に密接な関連があるかと存ずるのでありますが、今後この法案が成立いたしました後において実際にどのように施行せられ、どのように運用せられるかについて、十分注目をいたしたいと存じております。  第三点は、この法案に盛られた事項はそれぞれ非常に大事なことばかりでありますが、これをもって証券事業あるいは証券市場整備改善をはかるための法的措置が全部出そろったということができないのはもちろんだと思うのであります。いわばこの法案に盛られております事項はそれらの一部にすぎない、いってみれば一連の諸方策のスタートを切ったということにすぎないのではないかというふうに考えられます。したがいまして今後引き続いて、証券の発行とか、流通とか、そういったいろいろな制度に関する問題、あるいは証券取引所制度に関する問題、その他いろいろ重要な問題があるかと思いますが、これらの一連の問題を引き続いて検討が行なわれ、かつ適切なる解決がはかられますことを切に期待をいたしておる次第でございます。  非常に簡単でございますが、以上をもちまして私の陳述を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  6. 藤井勝志

    藤井委員長代理 次に、瀬川参考人にお願いいたします。
  7. 瀬川美能留

    瀬川参考人 ただいま御紹介いただきました瀬川でございます。  委員皆さま方にはたいへんお忙しいところを、証券界のために、証券市場のためにいろいろとお骨折りをいただきまして、まことにありがとうございます。  証券取引法の御審議をいただくにつきまして、私に意見を述べよとのお達しでございますので、この問題につきまして私が平素考えておりますことを率直に申し上げまして、皆さま方の御審議参考の一助にでもなればと思っておるのでございます。  おかげをもちまして、証券民主化にいたしましても直接投資にいたしましても、その量的な面におきましてはそれなりにそれぞれがかなりな実績をあげました証券界ではございますが、何ぶんにも急速な成長発展を遂げましたために、証券市場を取り巻く諸環境の悪化と相まちまして、いろいろの面におきましてひずみを生じまして、それがために皆さまの御期待にそむき、また御心労をわずらわしているという現状でございます。  そういう意味から申しまして、今回の法律改正がねらう方向なり精神なりは、証券市場質的向上に資するということが大なるものがございまして、結果的に見まして証券市場発展に大いに役立つものであると信じておるものでございます。  私はかねがね、証券市場というものは一国経済の姿を映す鏡でありまして、国力をあらわすバロメーターであると考えておるのでございます。したがいまして、投資家を保護し、証券会社の姿勢を正し、もって証券市場の健全な発達をはかっていくという今回の証取法改正には、大いに賛意を表しておるのでございます。  ただ、私として申し上げたいことは、今回の改正におきまして政令、省令にゆだねられております点がかなりございますので、この改正法運用にあたりましては、証券業界実情を十分御認識いただきまして、弾力性を持った運用をお願いいたしたいということでございます。  もちろん私たち証券会社といたしましても、法の精神を十分に体得いたしまして、内部の自主的な規制をさらに一段と確立いたしまして、健全な証券市場発展のためになお一そうの努力を傾けていく所存でございますが、ただ証券会社だけをいまここで急速に理想の姿にまで正常化するといたしましても、証券市場を取り巻くところのいろいろの環境整備されませんことには、健全な証券市場発展は望めないのではないかと考える次第でございます。どうかこの点を御理解賜わりまして、今回の改正法をにしきの御旗として、即座に厳格に運用するということはなるべく避けていただきまして、証券市場を取り巻く諸環境整備環境と歩調を合わせまして、ともに歩んでいただくような運用を特にお願いいたしたいと思うのであります。  それにつけましても、ここで思い起こしますことは、アメリカ証券法及び証券取引法を制定いたしました当時のいきさつでございます。アメリカにおきましては、御承知のように一九二九年の大恐慌のあと証券市場の立て直しのために、一九三三年に証券法、一九三四年に証券取引所法がつくられたのでございますが、その当時理想の姿を追うあまり、現状とかけ離れた法案が立案されるのではないかという、そういう心配から、証券業務の遂行が一時ストップいたしまして、そのためにかえって市場がさらに混乱を招いたということがございました。その結果今日のような法律がつくられまして、その後この法律のもとに、証券市場は目ざましい発展を遂げておるのでございます。どうか法律改正目的実現を急ぐのあまり、本来の業務が沈滞することがないように、その実際的な運用面につきまして、慎重な御配慮をぜひお願い申し上げる次第でございます。  先ほどもちょっと触れましたように、今回の証券市場の不振は、われわれ証券会社といたしまして、大いに責任を痛感するところでございますが、さらに金融財政政策のひずみのしわ寄せを受けたものでもあります。また事業会社経営責任意識にもその原因の一半があるのではないかと思うのであります。したがって、証券市場の地位を向上させ、証券市場を確立させるためには、直接の当事者でありますところの私ども証券会社のなすべきことは、きわめて多いのでございますが、同時に、政界、官界、財界、金融界など、各界各層皆さま方の、証券市場に対する積極的な御理解、御協力をぜひともこの際お願い申し上げる次第でございます。私ども証券会社といたしましては、今回の法律改正の御趣旨に沿いまして、懸命に努力を積み重ねまして、一社でも多くの証券会社が、一人でも多くの証券マンが手に手を携えまして、免許制度を迎えるということにいたしたいと考えておるのでございます。委員皆さま方におかれましても、どうか私ども証券会社のこうした覚悟と努力をあたたかい目でお見守りいただきまして、御支援、御鞭撻のほどを深くお願い申し上げる次第でございます。ありがとうございました。
  8. 藤井勝志

    藤井委員長代理 次に湊参考人にお願いいたします。
  9. 湊守篤

    湊参考人 湊でございます。私は四年前まで銀行におりまして、四年前に証券界に移ったものでございます。また経済同友会その他でいろいろ仕事をいたしておる関係がございまして、今日は証券業者という立場から若干離れまして、国民経済的な立場から、この取引法改正についての意見を申し述べさしていただきたいと存じます。  私はかねがね、われわれが将来の理想として考えておる福祉国家の基盤になる国民経済の仕組み、あるいは構造といったものはどのようなものであるべきかということを模索し続けてまいった人間でございます。昨年そのことについて若干見解を発表いたしました。河出書房から、「日本経済未来像」というのが夏ごろ出ております。その中に、私の意見が織り込まれておるわけであります。そのことについてここで長々とおしゃべりするのは、かえって御迷惑かと存じまして、本件に関係のある要点だけについて申し述べたいと思います。私が考えております国民経済構造は、アメリカでは、ピープルズ・キャピタリズムというような呼ばれ方でいわれておるものと非常に似たものでございます。これは日本では、大衆資本主義というふうに普通訳されておりますけれども、私は特にこれを国民資本主義というような言い方をしておるわけであります。その要点は、簡単に申しますと、第一に、国の主要な企業株主国民大衆に広く普及しておるということ。第二に、これらの株主意思が直接間接何らかの方法で経営に反映するということ。第三に、したがって企業経営国民全体のために、あるいは国民経済のためにまずもってなされなければならないということ。こういった三つばかりの条件を備えたものであろうかと私は考えておるのであります。そういう経済にいま日本はだんだんなりつつあることは事実であります。御存じのように、戦後の占領政策によりまして財閥が解体され、その後証券民主化動きが相当推進されまして、かつて財閥が持っていた株は、今日国民大衆の手に相当程度移っておることは御存じのとおりでございます。しかしまことに不幸にいたしまして、日本ではこの株式比率、主要総資本の中で占める株式比率がまことにわずかであります。法人企業統計によりますと、これが約一六%ほどになっておるのでございます。その中で金融機関あるいは法人の持っておる株が相当あります。個人の持ち株は約半分程度でございますから、わずかに八%の株式資本が主要総資本の中で動いておる、こういう姿になっておるのでございます。こういうことが一つ問題です。したがって、経営者といたしましては、株主に対する感覚が戦前のような感覚とはだいぶ違ってまいっております。現在資本経営分離ということが言われておりますが、そういったことが今日日本経済に数多くのひずみを生み出した一つ原因になっておるということは多くの方が指摘しておられるところであるのであります。またこの株主——一にぎりの株主ではありますけれども株主意思経営に反映しておるという点についても、いま申したような数の点、あるいは経営者考え方の点、さらにはいろいろな仕組みの関係上、十分には行なわれておりません。その結果、経営国民大衆あるいは国民経済のためにまずもって運営されるといったようなことになりにくいような面があるのであります。こういう経済を続けていきますことは、私は福祉国家への道ではないのではないかとかねがね考えておるのであります。  そこで、そういう私が理想として考えておりますような経済構造を今後つくっていこうとすれば、どうしてもいま申したような幾つかの条件をこれからだんだんつくり上げていかなければならないという問題が出てまいろうかと思います。そうなりますと、かねて多くの方から指摘されております日本経済の従来の運営方式、いわゆる間接金融重点方式とでも申しますか、金融市場を非常に強力にして資本市場はとかく軽視されるといったような、こういう運営方式ではいけないということなってこようかと思います。数年来から企業体質強化ということが強く指摘されるようになりまして、それに関連いたしまして、自己資本を充実するためには資本市場を健全に育成しなければいけない。最近ではこれは合いことばのように言われておるように思うのでありますけれども、しかし実際の証券施策あるいは経済界動きは必ずしもそういった方向を指しておるとは言いかねる面がございます。  申し上げるまでもなく、自己資本比率は、三十年来低下の一途をたどっております。金融市場は非正常化一途をたどっております。証券市場はいまや国民経済期待する機能をほとんど果たせないところまで追い込まれておるのが実情でございます。こういったことでは、いま申し上げたような理想に向かっていくことはとうていできない。そこで、私はどうしても資本市場であります証券市場健全化を急速にはかり、この市場を拡大して、それによっていま私が申し上げたような経済構造ができるよな条件を整えていかなければならない、このように考えていろいろな機会にそういう主張をいたしてまいっておるのであります。そういたしますために、何よりも必要なことは、この市場国民大衆が安心して、喜んで参加してくれるといったような環境あるいは条件を積極的につくっていかなければいけないということになることは明らかだろうと思うのであります。  ところでいま瀬川さんからもお話ありましたけれども、私ども業界関係者といたしまして、振り返って見て、われわれの市場運営が必ずしも十全でなかったこと、その点については深く反省するところがあるのであります。しかし既往既往といたしまして、これからの問題といたしまして、何とかこの市場がいまよりはるかに健全になり、国民大衆が安心して、十分な信頼感を持ってこの市場に参加してくれることができるようにするということは、われわれの最も大きな責任だと自覚いたしておるのであります。しかしながら、われわれだけが自覚いたしましてもなかなか環境が、いま瀬川さんも指摘されたように十全ではございません。そこで政府におかれましても、何とかこの市場が健全に近代化されて、いま言ったような機能を十分発揮できるようにするために、政府面でいろいろ御支援をいただきたいとかねがね考えておったのでございます。そこに今度の証券取引法改正案が出てまいったのでございます。  この改正案は、一番大きなポイントは、免許制ということでございましょう。御存じのように、金融機関はいずれも免許制でございます。したがって証券市場金融市場と同じようなウエートを持ったものにつくり上げていくということのためには、この証券市場も同じような扱いになることが私は正しいとかねがね考えておりました。したがってこの免許制に移行するということ自体、私は全面的に賛成でございます。しかしながら、河野さんもさっき御指摘になりましたように、これはまだまだ証券市場整備のためには第一歩を踏み出したというだけの感じでございます。さらにもっともっとやらなければならないことがたくさんあとに残っておるということだろうと思います。私どもは、私ども業界の中で資本市場対策特別委員会というものを持っておりますが、その関係機関といたしまして、昨年高橋亀吉さんを委員長といたします資本市場研究会というのをつくりました。これは学者が三分の一、評論家が三分の一、われわれ業界人が三分の一といったような構成になっておりまして、私もその委員の一人でありますけれども、この資本市場研究会で、将来の資本市場はいかにあるべきか、将来の国民経済のビジョンをかいて、その中に資本市場を置いて、その資本市場はどういう姿のものにしたらいいのかということをいま検討いたしております。すでに中間報告は出しておりますけれども、来月あたり全体の報告がまとまる予定になっております。そこでは取引所はいかにあるべきか、証券業協会はいかにあるべきか、証券業者はどうあるべきかといったようなことがある程度具体的に示されることになろうかと思います。私はそういったわれわれの報告をぜひ御参考にしていただきまして、今後証券取引法を、証券市場健全化のために全面的に改正していかれることを期待いたしておるのであります。今日はその第一歩ということでありまして、私はこの法案の成立には賛成いたしておる一人であります。  以上簡単でございますが……。
  10. 藤井勝志

    藤井委員長代理 次に武井参考人にお願いいたします。
  11. 武井好信

    武井参考人 ただいま御指名になりました武井でございます。私が当委員会参考人として御指名いただきましたのは、主として中小の証券業者立場から参考意見を申し述べよということだと承っておりますので、主としてその立場で、私なりに感じておりますことを申し上げる次第でございますので、そのお含みでお聞き取りを願いたいと存じます。  これまで私どもが支配されてまいりました古いただいまの証券取引法に対します私どもの経験からいたしまして、今回御提案になりました新法案に対しまして、特に中小証券業者といたしまして、どういう感じ方をいたしておりますかということを率直に申し上げて、御審議の御参考に供したいと存じます。   〔藤井委員長代理退席、委員長着席〕  本来このような重大な改正は、証券市場のあり方ということについて、お役所が持っておられるところの総合的なビジョンと申しますか、あるいは青写真と申しますか、これから私どもが目ざしいかなければならぬところの構造的な目標をまずお示し願ってその一環として決定されることが、実は私どもとしては望ましいところでございますが、ただいまの参考人もおっしゃいましたように、公共的な証券業の職責にかんがみまして、とりあえずこのような改正がなされるということ自体につきましては、必ずしも反対をいたすわけではございませんし、賛成をいたしておるわけでございます。しかし免許制がもっぱら条件規制の強化に集約されるということであれば、私ども中小証券業者といたしましてはますまま萎縮いたしましてついていけないという感じにもなろうかと存ずるのでございます。  御承知のように証券界は遺憾ながらその基盤が弱く、私どもといたしましてはあたたかい育成強化という方向で、免許制のもとにおきましても、できる限り取引所あるいは証券業協会等の自主規制におまかせを願いながら、実情に即した無理のない証券行政を期待いたしておる次第でございます。  しかし先般私ども証券局の担当の課長さんから、この新法案につきまして御説明を伺いました。その御説明によりますと、たいへんあたたかい思いやりのある御説明でございましたので、私ども中小証券業者もみな安心をいたしておりますわけでございますが、考えてみますと現在のそういう担当の方々が、ただいまの地位に御在任中は心配ははないといたしましても、担当官がかわられましたときに、あるいは不安があるのではないかというのが私どもの率直な感じでございます。と申しますのは、改正法案を拝見いたしますと、重要な点に関します条文が抽象的と申しますか、非常に幅広い解釈ができる条文が多いように見受けますので、実際には政令なり省令なりあるいは日常の運用のしかたによりまして、非常に違ったものになってくるように感ずるのでございます。  そこでぜひともお願い申し上げたいことは、何とぞ御審議の過程におきまして法律案の条文につきましては、その条文の解釈または関係政令あるいは省令の内容、あるいはまたその他運用上の限界等につきまして、できる限り明らかにしていただきまして、そして記録にとどめていただきたいと希望いたす次第でございます。私ども中小証券業者といたしましては、その辺のところを十分見きわめまして、私ども自身の今後あり方等について勘考いたしたいと存じております。と申しますのは、実のところ私ども中小証券業者は単に業界が不況というばかりではございません。進退の岐路に立たされておるような気がいたしまして、はたしてこのまま証券業を中小業者として続けていけるのかどうか、続けていけるといたしますればどうすればいいかというようなことで日夜苦心しておるわけでございます。一昨日のダイヤモンド日報によりますと、東京証券業協会の百四十社中少なくともこの免許制が実施になりますと三割近くが廃業か、あるいは他社と合併によって整理されるだろうということが書いてございます。私ども中小証券業者特に小証券業者はみなこういう不安のうちにこの改正案の御審議を見守っておる次第でございます。  以上申し上げました私どもの感じ方からいたしまして、御提案になりました改正案のうち二つの点について簡単に私の考えを述べさしていただきたいと思います。  第一は、第三十一条及び第三十二条に証券会社資本金の規定がございますが、その中でたとえば元引き受け業者の資本金は相当大幅の引き上げをお考えになっているように伺っておりますが、この点につきましては、私どもといたしましては、現在のまま、すなわち昭和三十八年六月二十五日付の政令第二百十九号による資本金をもって免許条件としていただきたいのでございます。私どもといたしましては、その政令に従いまして正会員は昨年の十二月末までに所要の増資を完了したばかりでございます。また非会員——非会員と申しましても取引所会員でない業者でございますが、これは同政令の定めによりますと、その増資の期限が本年末でございます。つまりまだその政令の期限内でございます。どうかそういう点もお考えいただきまして、私どもの小さい証券業者にとりましては資本金の問題はそのきめ方によって致命的な問題でもございますので、その辺の事情をおくみ取りの上十分あたたかい御指導をお願いする次第でございます。  それから第六十四条に外務員の権限に関する規定がございますが、これは顧客に悪意があった場合を除いて、外務員はあたかも代表取締役と同様の権限を有するもののようにみなされておりますが、実際問題といたしまして、悪意の立証ということはきわめて困難な場合が多いばかりでなく、どういう場合を悪意というのか必ずしも明らかでございません。そのために証券業者が不当な責任を負わされる結果となることを懸念しているわけでございます。また顧客の故意とかあるいは過失を認める場合というのはどういう場合を申すのか、その他証券会社の免責条項をできますならば具体的にお示しいただきたい、かように考える次第でございます。しかしながら、そう申しましても、私ども証券会社といたしまして負うべき責任を回避する考えは毛頭ございません。また事実従来とも負うべき責任は負ってきたというふうに考えておるわけでございますので、その辺のところを十分おくみ取り願いたいと存じます。  いずれにいたしましても、事故防止と申しますことは、私ども証券会社といたしましても、顧客の保護及び自己防衛のためにもいろいろと努力はいたしておりますが、なかなか事故がなくなりませんということはまことに申しわけないと存じておりますが、一方事故防止は私どもの経験によりますと顧客の御協力がある程度ございませんと、なかなかうまくまいらぬのでございます。そこで、できますならば、規定の上からも、顧客に対して、ある程度御協力をお願いできるようなことにしていただきまして、正常な証券取引の慣行の確立ということに官民の御協力が必要ではないかと痛感する次第でございます。  最後に、証券界現状では、先ほども申しましたように、遺憾ながらまだ新法に対しまして受け入れ態勢が十分に整っておるとは言えない状態であることをまことに遺憾に存ずる次第でございますが、当面証券業者の育成強化についてこの上とも御配慮くださいますようにお願い申し上げまして、私の陳述を終わります。  ありがとうございました。
  12. 吉田重延

    吉田委員長 続いて質疑に入ります。  通告がありますので、順次これを許します。佐藤觀次郎君。
  13. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 時間が二十分と限られておりますから、河野さんはじめ皆さん方には答弁はなるべく簡潔にお願いいたします。  河野さんにお伺いするのですが、あなたは大蔵省におられて最近まで銀行局長をやっておられ、いまは商工中金の副理事長をやっておられるそうでありますから、いろいろな事情がおわかりと思いますが、この証券がなぜ不況になったかという原因をひとつ簡単に御説明願いたいと思います。
  14. 河野通一

    河野参考人 これは非常にむずかしい問題だし、また言い方によっては一時間でも二時間でもおしゃべりをいたさなければならないことになるかと思うのでありますが、先ほども他の参考人からお話がありましたように、証券がなぜ不況かということは、ある意味では証券市場というものは日本経済なり、あるいはもっと広い意味では世界経済にも関係するでしょうが、その推移なりいろいろなものの集約的なあらわれだと思うのであります。したがいまして、現象的にただ水の上に出ておるところだけをとらまえてかれこれ言っても、なかなか問題は解決しないと思います。答弁は簡単にということでありますから、なかなかお答えがむずかしいということだけをお答え申し上げます。
  15. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 河野さんがよくここに来ておられた昔は答弁が長かったのですが、逃げることがうまくなって……。  実は河野さんにもう一つお伺いするのですが、大蔵省の指導ということが非常におくれておるのじゃないかと言われておりましたが、最近証券局ができて松井さんが局長になったのでありますが、その大蔵省の指導ということについて証券界はどのように考えておられるのか、この点もひとつ伺っておきたいと思います。
  16. 河野通一

    河野参考人 ちょっと御質問の趣旨をあるいははき違えてお答えすることになるかと思いますが、私は一貫して証券業あるいは証券市場の問題に対して——政務次官もおられてはなはだ失礼なことを申し上げることになるかと思いますが、政府当局の腰の入れ方あるいはもっとことばをかえて言いますと、責任のとり方というものが少し消極的であったのではないか。しかしこれは法律のたてまえにもよると私は思います。こういった点で、今度法律免許制ということをとるならば、これはいろいろな意味がありますけれども政府当局が証券市場あるいは証券界というものの発展なり充実なりというものに対して、非常に重い責任を負うことになる。いろいろなことがありますけれども、それが一つの大きな目的であるし、また趣旨ではないかと思う。したがいまして従来のことは、私はいま率直に申し上げましたような感じを持っておりますけれども、今度この法律がもし改正になりますならば、そういった点が非常によくなるのではないかというふうに私は考えております。
  17. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 もう一度河野さんにお伺いするのですが、免許制の問題はいままでいろいろ問題があったから、今日まで踏み切れなかったと思うのです。先ほど武井参考人からお話があったのですが、中小の弱い証券業者に対してはこれは相当痛いと思うのだけれども、しかし一般大衆の投資家にとっては安全弁だと思うのですが、そのほかの弊害はどんな弊害があるか。免許制の弊害ですね、その点についてもう一点だけお伺いします。
  18. 河野通一

    河野参考人 免許制には私は弊害はないと思う。この運用次第によっては弊害が起こると思いますのは、私自身もいま金融界関係いたしておりますので、そういうことを申すのははなはだあれでありますが、他の審議会に実は私関係しておりますが、免許制一つの非常に悪いところというのは、先ほどの問題とも関連いたしますけれども、えてすると免許制の対象になるものが、安易になり過ぎるということがあるのではないかと私は思います。他面のことばで言えば、一種の既得権といったことになりがちだという点がある。したがってこの点は今後の運用にあたっては、ことばは非常に俗なことばで誤解を起こすかもしれませんが、つまり免許制の上にあぐらをかくといったようなことにならないようにしていかなければならない。そういう意味で、私は免許制というものは決して安易なものではなくて、きびしいものだというふうな態度で臨まなければいかぬと思います。  第二点のお話の中小業者に対して免許制がしかれると、非常に影響が大きいのではないかというお話でありますが、この点について私はいまここで具体的にお答えをする資格もありませんし、能力もありません。ありませんが、免許制というものが中小業者を淘汰し、数を減らしていくことを目的としているものではない。これは決してそういうものではないと思います。今度の法案にも、経過期間が置かれておりますが、その経過期間の間においてそれらの中小業者もできるだけ投資家の保護、いろいろな点で十分な資格を備えるように、これは政府当局もそういう援助をしなければならぬと思いますし、皆さま方にもそういう努力をしていただいて、一人でも多くそういう資格を持って、その三年間の期間中にりっぱなものに育っていくというふうな形にいくことが、本来一番望ましいのだと思います。しかしだからといって、免許の基準をあまり甘くいたしますと、免許制趣旨を没却するということになりますので、そこらあたりは今後の行政当局なりあるいは政府当局のいろいろな措置にかかってくるわけだと思いますが、この点については私は政府の外部の者ですから、かれこれ申すことは差し控えたいと思います。
  19. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 瀬川さんにお伺いいたしますが、瀬川さんは証券界理事会の議長として、非常に期待されていると思うのです。そこで、あなたの前半の話は聞かなかったけれども、この証券の不況の打開の道をどこに求められるのか。おそらくあなたはいろいろ意見があると思いますが、簡単でけっこうでありますからひとつ……。
  20. 瀬川美能留

    瀬川参考人 どうも苦悩を続けている最中でございまして、なかなかきめ手がむずかしいのでございますけれども、私どもといたしましてはいまの時点というものが、いろいろな見方もございましょうけれども、非常に証券市場の縮小したところである。取引高から見ましてもいろいろな点から見ましても、四、五年バックしたという点にひとつ経営の基盤をバックさせまして、そうして新しい商品の開拓をしていく。たとえば最近低金利政策からいわれております公社債市場の育成であるとか、あるいは起債市場の拡大という面にも力を注いでいく。同時に株式市場も税制にバックされた株式市場でありますからして、われわれといたしましては、先ほど湊参考人のおっしゃったようにピープルズキャピタリズムに挺身していく。それから投資信託も新しいディスクロージャー方式を採用いたしまして重点運用をやって、従来の失敗の歴史を繰り返さないように、従来の失敗の点に十分反省を加えて、しかも一歩一歩努力していくというほかに拡大の方法はない、立ち上がる方法はないと思っております。ただ証券市場は非常に連帯責任の発達しているところでございまして、大小取りまぜていろいろな面で業界が全体としてなるべく発達していくという精神が、非常に徹底している業界でございますので、こういう非常時でございますから、この精神をあくまでも貫いていくほかないと思います。
  21. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 今度の証券の不況ということは、むろん池田内閣の高度成長政策の失敗も大きな原因でありますが、外部的にはアメリカの利子平衡税というものが非常に大きな問題になって、私はちょうど藤井さん、堀さんと一緒にニューヨークに行っておった当時、利子平衡税の問題がホノルルからずっとアメリカを回った途中まで、非常に問題になっておったわけです。ところが最近この緩和がされるということと、同町に今度の法案政府が答申に反してでも配当、利子の分離課税をきめたといういい材料があるわけだと思うのですが、なかなか証券の景気がよくならない。千二百円を割ったというような状態であります。しかしそれならアメリカはどうかといえば、アメリカは御承知のように証券界日本のようにひどくない。アメリカ経済に非常に依存しておる日本証券界が、どうしてこんなに悪いのか。この点をどのように解釈されておりますか、この点を瀬川さんにもう一点お伺いいたします。
  22. 瀬川美能留

    瀬川参考人 先ほど河野参考人にお聞きになったと同じ趣旨の質問でございますか。証券界がどうして悪いかということでございますか。
  23. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 そういう材料が非常によくなっておるにかかわらず、どうもなかなか景気が出ない。証券界が上向きにならぬ理由は、ほかに何かあるかという質問です。
  24. 瀬川美能留

    瀬川参考人 一番根本的な問題は、最近の事業会社の成績が非常に悪化いたしまして、減配とか無配とか、あるいは例外的なものも出ておる、採算の基準の狂っていることだと思うのであります。われわれは今度の景気調整の段階がここへきて非常にきつく出てきた。そしてそれに対して金融緩和とか、対策が講ぜられておるが、それは当面には間に合わない。これから徐々に底入れをしていくという状態だと思いますので、周囲をめぐる材料は、貿易といいあるいは海外景気といい、非常にいいのでございますけれども、基本的に証券市場の商品であるところの株式の実体価値が下がってきつつある。それが底入れいたしますれば、いろいろの材料によって株式市場が回復の緒につくだろうと思っております。
  25. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 今度は銀行出身の湊さんにお伺いいたします。私は何べんも言うことですが、四年くらい前に大蔵委員会参考人を呼んだときに、銀行家よ去れ、証券家よ来たれということをここでやったことがあるのですが、どうも最近は逆の形が出てきておるというような情勢です。そこで銀行から証券界に移られた湊さんとしてみれば、その原因がどういうところにあるかということを少し説明を願いたいと思うのです。
  26. 湊守篤

    湊参考人 私が銀行から証券に移ったのは、ちょうどそのころだったのですが、心なきマスコミは、彼はあのキャッチフレーズを地でいくものだ。銀行にさようならをして、証券にこんにちはをした。しかし私はもうそのだいぶ前からさっき申し上げたようなことをいろいろなものに書いておりましたから、証券界のブームにつられて証券界に移ったわけではございません。私の予想どおり、その後証券界は転落の一途をたどりまして、こういう姿になっております。いま佐藤さんから言われたように、逆になったというお話がございましたけれども、もともと当時の銀行よさようならムードというのは、狂い咲きのようなものであったのではないかというような感じがしておりました。たまたま短期間にそういう現象が急速に強まってまいりました。そういえば例の有名なボンドオープン、公社債投信というものが、市中銀行の窓口から預金をかっさらっていくといったようなことが、短期的にたいへん強く出たものですから、そういうおもしろいキャッチフレーズも飛んだのだと思いますけれども、もともと日本の戦後の経済運営の方針が金融市場重点方式であったということは、私がさっき申し上げたとおりであります。こういった政策の一つのあらわれが、いま佐藤さんからも御指摘になった税制の上に出ておるわけです。預貯金の利子に対する税と配当に対する税が、税制の上で非常に大きな差別待遇がなされておる。こういったことは先進諸国にはその例を見ませんし、国民が貯蓄を選ぶ場合に、国がぜひ金融機関のほうに持っていけと指導するというようなことは、私は基本的に間違っておると思うのです。それだけではありませんけれども、そういったいろいろなことにささえられて、金融市場はますます強大になってきた。もちろんさっき言ったように非正常ではあるけれども、強力になってきた。それに対して証券市場のほうがだんだんおくれてくるということは、そういった政策の面からすると、これは一つの大勢だと考えざるを得ない。たまたまあの期間にあだ花が咲いたということであったのではなかろうかと思います。そこで私はそういうことではいかぬということをさっき強調したつもりなんで、金融市場証券市場資本市場というのが、この経済をささえる二本の大きな動脈と考えていいと思います。二本の柱と言ってもよろしいと思います。この二本の柱が、あまりにも力の差があり過ぎる。こんな国はないわけです。こんなことで国民経済が健全に運営される、あるいはさっき申したような福祉国家がつくれるとはとうてい思えないから、そこでこの資本市場金融市場が並ぶくらいの力の強いものに育て上げることが必要だということを、私はさっき国民経済立場から強調したつもりでございます。現在証券業者であるから、証券市場を強くしてください、そういったような言い方をしておるつもりは絶対ございません。それに対する根拠は、できますれば私の書きました「日本経済未来像」なるものをお読みくだされば、明らかになると思います。
  27. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 先ほど皆さんからも、日本資本蓄積が弱いということがたしか説明があったと思うのですが、いま公社債に対して一般国民が大きな興味を持たぬという一つの理由は、一時的にしろ投機的であるというような懸念があったということが結果にあらわれたのじゃないかと思うのですが、その点はどういうようにお考えになっておられるか。あなたは銀行から出られた人でありますから、そういうことを率直に言えると思うのですが、どうですか。
  28. 湊守篤

    湊参考人 もともと株式市場というものは、投機的な要素の濃いものでございます。またそうあるべきだと考えます。投機とばくちは違うということは申し上げるまでもないのでありますが、したがって株式市場と公社債市場というものとは、せつ然と区別してお考えいただかなければならないと存じます。ただ、いままでは、日本は、世界を瞠目させるような成長を続けてまいりました。したがってそういった成長経済では、投機的な興味が非常に高まるのは自然の理であります。さっき言った銀行よさようならといったようなときには、そういったさなかでございましたから、国民が落ちついた投資をする。長期投資をするとか、あるいは公社債といったような確定利付証券投資をするという気持ちには、なかなかなりにくかった。その上に社債というものには、個人がこれを持ちますためにはいろいろ不便な面があるわけであります。そういう点を考えまして、さっき言った公社債投信といったような非常に巧みな商品をわれわれが考えたわけであります。そこでどっとこのボンドオープンに投資が集まるといったようなことが起こったのですが、その後御承知のようにあだ花であったために散りまして、一ぺん木はやせたのでありますが、その後私どもが立て直しまして、この公社債投信はだんだん健全にいま育ちつつあります。いまかなり育ちつつあると思うのでありますが、最近公社債の条件の弾力化とか、あるい流通市場をつくるといったような問題が、今日の課題となって出てまいりました。こういうものがだんだん実現するようなことになりますと、いまこういった株式市場の状態でありますし、かつての高度成長から安定成長へというように、経済の基調が変わってきておりますから、投資家考え方もだんだん投機的なものからやや安定した投資的なもの、長期投資といったような、あるいは確定利付証券を買おうという気持ちに変化しつつあるときであります。ですからそういったいろいろな条件が改善されれば、公社債の個人消化というものは、今後だんだん伸びていくことになると思いますから、それによって証券市場がだんだん金融市場に近づく可能性が生まれてくるのではないか、このように考えております。
  29. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 湊さんにもう一点だけお伺いいたしますが、政府はこのごろ公定歩合を一厘ずつ二回引き下げて、いわゆる景気政策をとってまいったのですが、こういうことは証券界にはあまり影響ないのですか、この点だけ伺いたいと思います。
  30. 湊守篤

    湊参考人 本来ならば非常に影響がなければならないと思うのです。過去において、これだけの公定歩合の引き下げがあったときは、相当な反応を示した。それが今日ほとんど何らの反応を示さなかったというのは、十分根拠があると思います。その点はいま瀬川さんからも言われましたように、株式の実体価値が非常に下がっておる。それは言いかえれば、企業の利潤率がこの数年来急速に低下を続けておる、こういったことが直らない限り、公定歩合を下げてもそれがすぐ反応するということにならない。かつては公定歩合を下げれば当然金融が非常に緩和いたしましたし、金融緩和が進めば経済活動が非常に活発になる。それによって企業の成長率も高まり、利潤率も上がるというようなことであったのでありますが、遺憾ながら三十六年の秋を転機といたしまして、日本経済の基調がはっきり変わった。そういうようなことがすぐ経済の上に実現しないように、条件が変わったというふうに理解いたしております。申し上げるまでもなく三十六年の秋ごろまでの日本経済は、需要超過、供給力不足の基調にあった。あるいは労働力過剰の基調にあった。それが三十六年秋を転機として一変したわけです。三十四年から六年にかけて、民間設備投資は年々三割から四割の伸びを続けて、ついに四兆という所得倍増計画の十年目の水準を出たわけです。これだけの設備投資を生み出す供給力が非常に大きかったのが、その後は需要が常に足りない、過剰生生産、過剰設備といったような圧迫に企業は悩まされ続けるということになった。その上にそれまで労働過剰であったのが、不足に変わったというようなことから、企業は量的に成長いたしましても、必ずしも利潤がこれに伴わない、そういうふうに変わってきたわけです。最近の株式の実体価値の低下、利潤率の低下の基本的な原因はそこにあると思いますが、そういった原因はちょっと金融をゆるめただけでは、すぐには直らない。長期的に見ればもちろんプラス効果はありますけれども、すぐには直らない。そういったことから今度の公定歩合の引き下げが、株価にすぐ反映するということにならない、こういうふうに考えます。
  31. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 最後に中小証券を代表する武井さんに一つお伺いいたしますが、湊さんや瀬川さんは四大証券の四本柱の一角をになっておられるのですが、あなたは中小証券立場としてどんなことが望ましいか。今度の証取法にどのような期待を持ち、また希望されておるのか、その一点だけ武井参考人にお伺いしたいと思います。
  32. 武井好信

    武井参考人 お答えいたします。重複いたしますけれども、先刻私が申し述べましたうちの資本金の点が、将来の問題は別といたしまして、当面の問題としては非常に重要な意味を持っておるわけであります。と申しますことは、あるいはただいま湊さんもおっしゃいましたように、証券界が非常に弱いということは、私ども中小証券業者証券界の足を引っぱっているということであれば、まことに申しわけないと思いますけれども、私どもも何とかして証券界のために尽くすと言えば大げさでございますけれども、働かせていただきたい、かように考えて日夜努力しておるわけでございます。資本金の問題は、特に今日のような不況のときにおきましては、私ども公共的とは申しましても、やはり証券会社も営利会社でございますので、増資をいたします場合には、それに見合うだけの収益の見込みがなければ、増資が不可能ということになるわけでございます。そこでそれだけの収益をあげるということになりますと、また営業所をふやしたり、あるいは人をふやしたりして、そこにまた過剰設備と申しますか、拡張設備もしなければならぬということからいたしまして、少なくとも今日の時点では、そういうことが不可能な時点であるということは御承知のとおりでございまして、特にわれわれ中小業者がここで大幅の資本金の増額を命ぜられましても、いまの時点では絶対に不可能と言っても差しつかえない情勢でありますことは、先刻からお話がありましたように、上場会社の増資すら全面的にストップされておるという情勢からも、ひとつ御判断をお願いしたい。そういう意味におきまして、たとえば引き受け業者が、先ほど申しましたように、先般公布された政令では三億以上は元引き受け業務ができるということで、それをたよりにして私どもは増資をしてまいりました。しかしそれがかりに元引き受け業者はこの際十億にしろとか、あるいは二十億にしろとかいうことであれば、これはもう私どもできない相談でございますので、その面に関する業務は廃業せざるを得ないということであります。  そこで私ども考えますことは、一体証券会社資本金というものは何を意味するのかということを考えるわけでございますけれども証券会社業務をやる上に一番大事なことは、資本金額と申しますより、むしろ財務内容こそ重要であって、その会社の信用とか、その会社がいいとか悪いとかいうことは、必ずしも資本金額に比例するものではないというのが私ども考え方でございます。ですから小さいながらもよくやっておるということであれば、やらしてやろうというあたたかいお考えで、今後とも御指導をお願いしたいというのが、私どもの心からのお願いでございます。
  33. 吉田重延

    吉田委員長 武藤山治君。
  34. 武藤山治

    ○武藤委員 時間がありませんから、論争する気持ちはさらさらありません。事実を認識する上からの御回答をいただきたいと思います。  最初に河野さんにお尋ねいたしますが、証券取引審議会では報告の中で、「引受業務を行なう証券業者については、その業務の性質に照らし、免許制の採用に際して最低資本金の額の引上げが必要である。」こういう報告をいたしておるわけですが、いま武井さんのお話と審議会報告との間で、私たちが心配になる点があるような気がいたすわけであります。そこでお尋ねをいたすわけでありますが、審議会としては一体どういうねらいで、何を目的として資本金の引き上げということを報告されたのか。さらにでき得るなら、どういう基準で資本金を上げるか、これはまだ大蔵省の確たる決定ではないと思いますが、併営していて引き受け幹事会社になる会社は四十億から五十倍の資本金がやや妥当だろう、また引き受け業務を専業にやる会社は十億から二十億程度、併営し引き受け団に参加するだけのものは据え置きで二億円程度、こういうような目安がいま報道でわれわれの耳に知らされておるわけでございますが、審議会としては、大体そういう基準については議論をされておったのかどうか。答申をどのように実現するかというめどがあると思うのですが、その辺は審議会はどう考えておりますか。
  35. 河野通一

    河野参考人 証券業者一般の資本金というものの意味がどういうことかといことは、いろいろ意見があると思います。私ども証券業者資本金というものはやはり意味があると思っております。ただ資本金の外郭だけが大きければいいということではもちろろんなくて、実質がそれに件っていなければならぬということは当然でありますけれども、少なくともある程度の資本金というものはやははり証券会社は持っていなければならぬ。その中でも引き受け業というものは信用に非常に大きな意味を持っております。したがいましてその引き受け業というものをやる場合におきましては、これは御承知のように英語でアンダーライターと申すわけでありますが、特に資本金は相当高額でなければならぬという考え方であります。ただし引き受け業とは一体何ぞやという問題は、まだ私どもの答申の中には実ははっきり出ておりません。典型的な引き受け業者は少なくとも相当大額の資本金でなければならないということは指摘いたしておりますが、その引き受け業とは何ぞやということは、今後国会あるいは政府当局でいろいろ御検討になるところであろうと思います。  それからいま武藤さんから、引き受け業者で幹事になるもので兼業しているものは資本金五十億とかなんとか、そういうお話がございましたが、実は私その点は全然存じておりません。またそういうことまで審議会は介入いたしておりませんので、ごく抽象的に少なくとも本来の意味の引き受け業者は相当大額の資本金を持つことが必要であるということを申しただけであって、何億程度がいいかということは、審議会では全然審議いたしておりません。
  36. 武藤山治

    ○武藤委員 次に審議会では、引き受け業務を専業とする業者がやがてできるだろうという判断に立つのか、それとも引き受け業務専門の業者というものは出ないだろう、いまのような状態が当分続くだろうという判断に立たれているのか、そこらの認識はどうなんですか。
  37. 河野通一

    河野参考人 元ほど意見を申し上げましたときに申し上げたとおり、今度私ども報告大蔵大臣に提出いたしましたものには、幾つか精神的な支柱みたいなものがあるわけですが、そのうちの一つは、証券業職能分離といいますか、あるいは職能分化といいますか、そういう精神をできるだけ取り入れていっていただきたいということを言っておるわけであります。したがっていま御質問の点につきましても、本来そういった点はできるだけ職能分離精神に従って問題を解決されることを望んでおるわけです。しかしながらさればといって現実といいますか、実情を無視した強硬策をとることは、かえって証券市場全体を育てるゆえんではないと思います。現在の証券業界実情から見ますならば、引き受け業自体が完全に独立に専業で育つような基盤は少なくとも現在はできていないと私は見ております。したがってそういった仕事は、あるいはブローカー業務を営んでおる。非常に広い相手方を持っておるような人方がやはり兼業をしていくということは、少なくともここ当分の間はそういうことでいかざるを得ないというふうに考えておる次第です。遠い将来のことにつきましては、ちょっと私もまだ自分として意見を申し上げるだけの資格はございません。
  38. 武藤山治

    ○武藤委員 次に武井さんにちょっといまの問題に関連してお尋ねするのでありますが、私は証券については全くのしろうとで内容はわかりませんが、大蔵省の資料などによると、この十六年間に処分を受けた業者が六百二十八です。登録取り消し内訳が三百三十八、営業停止が二百八十一、廃業が七百十八、客観的に見ると、この十六年間の証券業者の歩みというものは、非常な勢いで変化をしてきているということは、この数字の上からうかがい知れるわけであります。そこで現存の五百十一社で、もし資本金をいま新聞あるいは金融財政事情等で報道されている兼業が四十億から五十億、あるいは専業が十億、二十億という資本金にきめられたとした場合、中小業者でその資本金払い込みができそうもないと思われる数というのは、どのくらいになるものでしょうか。五百十一社のうち大体のめどはどうでしょう。
  39. 武井好信

    武井参考人 その御質問に対して、私遺憾ながら知識がございませんので、数字はお答えいたしかねます。
  40. 武藤山治

    ○武藤委員 大ざっぱに中、小と分けた場合、中のグループの資本金は大体どのくらい、小のグループの資本金は平均して大体どのくらいになると御判断されていますか。もしわからなければ証券局長でもいいですが、中と小の資本金の額は大体どういうぐあいになっておりますか。
  41. 松井直行

    ○松井政府委員 会員の最低資本金が二千万円でございますから、この最低限に密着したところで、小証券が蝟集しておると考えてもいいと思います。それから大きなところと申しますと、大体投資信託を生みました——いま投資信託というのは分離いたしておりますが、生みました証券業者は大体十億以上。したがいましてそれに次ぎますところの十億から下へ下がりまして、二億ないし三億というところが中堅といいますか、中の大ということが言えるのではないかと思います。
  42. 武藤山治

    ○武藤委員 特に武井さんが心配されておるこの五百十一社のうち、業務が今度免許されないというような業者があるいは出るかもしらぬ。そういうような点については、先ほど東証の議長のほうからは、自主的にできるだけ業者間における調整、調和をはかっていくという御意見が開陳されておりますので、そういう点のひとつ検討を十分やらないと、確かに武井さんがおっしゃるように、下のほうにランクされている人たちが、非常な不安を持って動揺するのではないか、そういう心配があるわけであります。そういう点についてあなたの御見解はいかがですか、瀬川さん。
  43. 瀬川美能留

    瀬川参考人 ただいまこの東証でとっております一つの共済的な処置というものは、見舞い金制度というのを採用いたしておりまして、廃業の場合は一社一億五千万、見舞い金を出す。それから合併の場合は一億円、合併の場合には店も残り、人も残るわけですから、そういう処置をとりまして、そして健全に、つまり廃業できる方が投資家に迷惑をかけないようにという処置をとる。そうしてそれに所要しました金は一時調達をいたしまして、そうして残った業者の売買高から補てんをしていくという処置をとっております。現状はどちらかというと、それぞれ行き方がございますけれども証券界の前途を悲観してこの辺でひとつ、こんなきつい法律が出るならあきらめたほうがよかろうという業者は廃業していく。廃業すれば一億五千万の見舞い金によって、廃業できる状態のところは廃業していく。それからまた合併するところは合併するという状態で、私どもはなるべく各社それぞれの状態において残ることを希望いたしておりますけれども、そういうことのできない業者に対してはそういう措置をとりまして、一軒でも多く証券業務に従事できるという精神でやっておるわけであります。
  44. 武藤山治

    ○武藤委員 こういうことはどなたに答えてもらうのが適切かどうかわかりませんが、いまの四大証券でも三十九年九月決算を見ると、たいへん赤字を出しておりますね。黒字は野村さんだけで、あとはみな三十億、二十億以上の赤字を決算として計上しておる。こういう証券会社の趨勢を見ると、四大証券でこういう姿なんですから、あとの五百七社はことごとく赤字なのか、そこらの情勢はどういうぐあいになっておるのでしょうか。それをちょっと、一番適切な人でけっこうです。
  45. 瀬川美能留

    瀬川参考人 なかなかお答えしにくい問題でございますけれども、私どもはいま懸命の合理化をやっております。懸命の合理化というのは、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、大体証券業界が大きく膨張いたしましたのは昭和三十五年、六年以降でありまして、三十五年くらいのところまでは非常に正常な発展をいたしておりました。そしてそこのベースまで経営の合理化をやって、そしてコストを下げていく。不要な競合した支店あたりは閉鎖させる。人員配置もよく考えていく。それからまた証券業はかなりむだな経費の多かった業種だと私は判断いたしております。同時にまたはでな業種だと判断いたしております。その点につきましては、切っても血の出ないというところまでこの際徹底的に合理化していくという線を打ち出しておりますのと、先ほど申し上げました商品のバランスのとれた営業態度をとっていく。たとえば公社債市場を大きく拡大していく。売買高、引き受け業務を拡大していく。ちょうどそういう情勢が参りました。それから投資託信業務を前向きに、過去の反省を加えてやっていく。株式業務もインベストメントに徹して得意先を拡大していくということで、そういう三つのバランスのとれた面で経営努力いたしておりますが、おかげさまで、こういう情勢ですから急にいくというわけにはまいりませんけれども、どうやら暗いところに明るいともしびがついてきたという情勢になっておりますし、われわれの繁栄はしょせん日本経済発展にかかるものでありますけれども、この辺を大きな底として日本経済発展していくものであれば、われわれの努力がかなり報いられる時期が近づいてきたというふうに判断いたします。ですから今日の状態におきましても、三分の一程度の証券業者は経常収支がベースの状態に置かれつつあり、それがだんだん広がっていくということで、非常な苦しみの中に沈淪をいたしておりましたのが、税制とか金融とか、そのほかいろいろ御支援をいただきましたので、どうやらやっていける見込みがついてきたというのが現状だろうと思っております。
  46. 武藤山治

    ○武藤委員 いま証券業界に働いておる従業員も、今度の免許制、法改正で、いま血の出ない程度の合理化を進めていく。このことが従業員にとると、血の出るような合理化になりはせぬかという心配があるようであります。そこで従業員の数を、三十五年から今年までの状況をずっと見ますと、三十八年は十万を突破してかなりの人数をかかえておった。それがだんだん整理され、あるいは廃業もあるでしょうが、そういう形で現在八万七千何ぼ程度に三十九年は減ってきた。その合理化のめどというのをこの面からだけ見た場合、いろいろな面で合理化というものはありますが、大体過去の水準からいって、どの水準くらいまで血の出ないような方法で合理化をしていこうというのか、そこらの目安はどうなんですか。
  47. 瀬川美能留

    瀬川参考人 お答えいたします。いま武藤さんのお話のように、大体十万を最高といたしまして、現在七万台に入っているのではないかと思います。約三万近い人口が減少しておるわけであります。ところがその三万の人口のうち、女性が半分よりか少し多いのではないかと思っております。女性は大多数は結婚してやめていくのであります。ところがそれを補充しないでおるから減っていく。補充しない点はどういうことかといいますと、証券業者が事務の合理化、機械化を徹底的にやっているからであります。この面からはふえる心配はない。ところが男のほうは、いままで各社やったところもやらないところもございますが、大体希望退職以上には出てないようでございます。ところが希望退職ということになりますと、どっちかというとやめてほしい人が残って、やめてほしくない人がやめていくという実情で非常に困っておりますが、主としてセールスマンが非常に減っているということが、男子の場合大体の傾向ではないかと私は思っておりますが、そのセールスマンは、同業の中にお互いに転職されていくということ、それから最近自動車販売会社とかそういうところ、非常に証券界で働いた人は役に立つわけでございまして、そういうところに引っぱられて、何ら大きな問題は起こってないが、まあ大体この辺のところが底ではないか。証券会社というものは結局、人と電話と信用とくらいが、これが商売でございまして、人が最も大きな設備でございます。産業会社でございますと、労賃というものが、これは一つつくりますと二割労賃が要るというようなコスト計算が出ますけれども証券会社の場合は、優秀な社員をかかえておりますれば、三倍、五倍の生産をやるわけでございます。またマイナスの社員をかかえておりますれば、マイナスの生産をやるわけでございますから、証券会社で根本的な問題は、人材の養成と人材の確保ということだろうと思いますので、どこでも皆さん、そういう感覚を持って処理しておりますから、まずこの段階くらいが人員減少の最低限ではないかというふうに判断いたしております。ただし女子の場合は別でございます。
  48. 武藤山治

    ○武藤委員 湊さんのたいへん高遠な福祉国家のビジョンはやがて書物で読ませてもらいますが、ひとつ証券界の抜本的立て直しの方策として、いろいろ考えられると思いますが、公社債市場の育成、拡大、これが非常に大きな問題点になっていると思うのです。そこでいまはコールレートが二銭——ずっと下がってきて、社債の利回りとそう違わなくなってきたから、公社債側には非常に有利に働いてきている経済情勢だと思うのです。しかしこういう情勢がいつまたどういう形に転化されていくかわからないわけでありますが、そこで公社債市場の育成方法の一つとして、利回りをこの際引き上げたらどうかという議論、これに対してあなたの見解はどうか。もう一つは公社債市場育成、さらに証券界全体を改善するために、投資銀行みたいなもの、半官半民のような投資銀行というようなものをつくって、もっとこの分野というものが非常に画然とされるような形でてこ入れをしていく。福祉国家でありますから、国家権力というものがある程度介入していっても、それがよりよい国民経済発展に貢献するならばという視点からいうならば、そういう投資銀行というものもひとつ検討に値するのではないか。こういう二つの点について、湊さんのひとつ御高説をお聞かせ願いたいと思います。
  49. 湊守篤

    湊参考人 ただいま武藤さんからのお話の公社債市場関連いたしましては、先ほど佐藤さんの御質問に対してもお答えを若干いたしておりますが、私は公社債市場をここで再開いたしまして、公社債の自由な流通市場と申しますか、国民大衆はもちろんのこと、いろいろな機関投資家といわれるような方々が、どんどん公社債をお買いになるようにすることが、さっき申し上げた私が考えている福祉国家といわれるようなものに進んでいく上に、絶対に必要なことだと考えております。と申しますのは、さっき間接金融、直接金融という話を申し上げましたが、公社債に対する投資は、これはまぎれもなく直接投資であります。いまの税制では皆さん御存じのように、自己資本を充実する場合に、株式資本で充実しようといたしますと、結果としてはたいへんコスト高になってしまう。これは税制に問題があるのでありますけれども、これを急に変えることができないということになるといたしますと、直接投資を広げていくというのは社債ということしかないわけです。そういう意味においても私は、社債市場の拡大を非常に期待いたしておるのでございます。  そこで拡大をいたそうといたしますと、ここにいろいろな障害が現状ではあるわけです。何よりも一つの大きな障害は、社債の条件であります。現状ではコールレートが依然として社債の応募者利回りよりもやや高目であります。やがてこれはそれ以下になる可能性が出てきたと思いますけれども日本のように成長力が非常に強い経済では、そういう期間は過去においては長くは続かなかった。かつて三十一年に一ぺんそういう情勢が出ましたけれども、半年くらいでたちまちまた資金不足、金利高騰といったような経過をたどっておるわけであります。今度はあのとおりにはならぬと思いますけれども、もともと成長力が強いし、また成長させたい経済でありますから、そうなるとコールレートが正常な位置にいつまでも居続けるかどうか、いまのところ保証はございません。そこで現状で考えますと、コールレートよりやや応募者利回りが低い。同時にわれわれが公社債の消化について最も大きな期待をかけますのは、相互銀行とか信用金庫とか、そういった金融機関、さらに生保、損保、さらには個人ということです。ところでいまの相互銀行以下の金融機関の資金コストは、現在の社債の応募者利回りでは、ややそれより上にあると一般にいわれております。もっともそれより下のところもあると思いますけれども……。そこでこの社債条件、応募者利回りをもう少し上げることができれば、国民の社債に対する投資意欲が非常に高まってくるだろう。どうしてもコールレートがこういうような状態でありまして、高いコールレートの上にどちらかといえばあぐらをかいていたといわれるような金融機関が、これからだんだん資金の使途に困ってこられるわけです。それを社債というパイプで吸い上げていくことが、国民経済の健全な運営のためには非常に好ましいのではないか。いままで資金の偏在ということがいわれておりました。地方に多く払われて都市に多く需要が出て、その偏在をコールというパイプでアジャストしていたのがいままでの姿だと思いますけれども、そこに金融機関経営上の、あるいは企業の側の資金金利負担といったような非常にむずかしい問題、悪い問題を生んでおりますから、それを社債にパイプを切りかえていくというのが望ましい。そういう意味から言いましても、この際社債条件を改訂することによって、社債市場の急速な拡大をはかっていくということが望ましいと私は考えます。  それから二番目の問題の投資銀行でありますがが、投資銀行というのは、実は内容があまり明確でございません。アメリカではインベストメント・バンクということで言われておりまして、それを直訳すると投資銀行になるわけですが、アメリカのインベストメント・バンクというのは、いまの日本証券会社、特に引き受けをやっておりますような証券会社に近いものでございます。おそらく武藤さんのではなくて、もっと広い意味の投資銀行、あるいは最近証券中央銀行というような、いろいろな呼び方が出ておりますが、全般的に証券金融をやる金融機関ということではなかろうかと思うのです。ただいま申しました社債の問題につきましても、社債市場ができますと、これは自由な市場でありますから、売りたい人はどんどんここに売ってくる。そのときの情勢によっては、ここにかなりな手持ちが必要になってくることは考えられるわけです。いままでは市場がありませんでしたから、そういった場合には証券会社は、これはある期間手持ちした。その結果、証券会社はだんだん手元が苦しくなってきますと、この手持ちした社債をグレートマーケットという市場で売らなければならなくなる。過去において幾度かそういう事例があるのでありますが、そうなると、証券会社は、そこでたいへん大きな差損をこうむることになってしまいます。今度市場をつくった場合に、その自由市場をいつまでも続けようとすれば、そういった場合のアジャストをする機関がどうしても必要になってくるわけです。これを証券会社にやらせようとすると、現在の証券会社は、数年前に比べるとはなはだ微力になっておりますからできない。そこでできれば日銀の資金を使って、そういう投資銀行のようなものができればつくって、そこでそういう機能を果たしていくということは、今後のそういう事情を維持していくためにはきわめて好ましい、あるいは不可欠な条件だと当面は言ってもいいかもしれません。また株式につきましても、いままでいわゆる証券金融というものが、最近非常に改善されてはまいりましたけれども、必ずしもわれわれの立場から考えまして十分なものが現在あるとは思えないのでありますけれども、そういったものをいまお話が出たような投資銀行というようなところでもってつかさどるといいますか、そういう機能を果たしていただくことになれば、証券市場資本市場全体の健全化あるいは拡大のためには、非常に大きなプラスになるだろうと私は考えます。
  50. 武藤山治

    ○武藤委員 割り当ての時間になりますから、この一問でやめますが、いま証券会社運用預かりというのをやっておりますが、この金額が、四十年一月の末の調査でありますが、二千六百四十九億円、膨大な運用預かりというものをやっておるわけであります。この運用預かりの運用というものは、純資産の二倍ということに指導されておるようでありますが、現在その規定がほとんど実情は無視されておるのじゃないだろうか、その点がどうだろうか。もう一つは、運用預かりを運用してコールをとるということは、大手四社だけが認められておる。あとのものは認められていない。そういう差がついている理由、これは一体何なのか。これをひとつ明らかにしてもらいたいと思う。おそらく四社だけがコールをとることを認められておりながら、他の会社でコールをとっている会社があるいはあるのじゃないだろうか、こういう疑問を私持つのですが、その辺は当事者として現状をどのように把握されておりますか。どなたでもけっこうですが……。
  51. 松井直行

    ○松井政府委員 コール取引につきましては、これは取引の性格上、日本銀行に口座を持ちませんと、いわゆる普通のコール取引というものはできないわけでございますので、正規には四社がその部類に属するということに制度上、従来の信用その他からまいりました日本銀行の認定といいますか、規制といいますか、制度上そうなっておるものと思います。しかし現実には投資信託を運営いたしております会社におきまして、従来投資信託の余裕資金のうち、一部のものは本業である証券業者にコールを取り入れるという便法もございますので、投信を持っております証券業者でも、事実上のコール取引が行なわれておるということは言い得ると思います。コールにいたしましても、第二の問題の運用預かりにいたしましても、ここ三年間の証券界の不況でございますので、証券界の健全運営、過当な借金をできるだけ減らしていくという基本的な指導にのっとりまして、コールもそれから運用預かりもこれ以上ふやさない。特にコールにつきましては、投資信託からのひもつきといいますか、一般の自由なコール以外に昔の親会社がひもつきでとるということは、もう厳に圧縮いたしてきておりまして、この金額も非常に小さなものになってきておると思います。  それから運用預かりにつきましては、これは四社のみならず、兼業承認として現在承認されておりますものが、ほかに投信十社、運用五社を加えて合計十九社ございます。これは金融債の引き受け、売り出し等について、従来非常にシェアの大きかった業者につきまして承認されてきたというのがこの経過でございますが、運用預かりと申しますのは、金融債の発行銀行のことも関係ございますし、また金融債を消化いたします受益者側の利回りの問題もございますので、いまにわかにこれを全面的に禁止するということは、制度上なかなか問題があろうかと思いますけれども、信用を受けます証券業者自体にとってみますと、いわば無担保の借り入れ金にひとしいわけでございますので、本来証券業者が正規の金融を受ける利子としてどうあるべきかという観点から、われわれ今後とも非常に大きな問題として取り上げていかねばならない課題であろうと思います。したがいまして少なくとも現状におきましては、証券界の体質の改善という意味におきましても、あるいは将来のこうした信用供与を受ける方法の健全化という観点から立ちましても、運用預かりの量をふやすということを禁止する方向で指導いたしておりますし、現に運用預かりいたしました証券のうち、いつでもお客さんの請求に応じて返却できる一種の準備預金といいますか、預金ではございませんが、現品で二割以上保有するという流動準備と申しますか、支払い準備という制度も加味いたしまして、この面から来る信用の不安が起こらないように、現在厳重に注意をいたしておるところでございます。
  52. 武藤山治

    ○武藤委員 その問題についてはあとで局長とゆっくり論争することにして、きょうは参考人意見を聞く会でございますから、……。  最後に、四月一日から配当の実質上の分離課税が行なわれて、たいへん投資家がこれによって喜び、大いに株の売れ行きがよくなるだろうという皆さんからの陳情——ここに陳情書があるのでありますが、どうもその陳情書の趣旨どおりに運ばないような気が私はするわけであります。四日から実施されてまだ旬日でありますが、この十日間ばかりの株の趨勢、この配当分離課税がどう株にいい影響をもたらしているかという、ごく最近の傾向でけっこうでありますが、瀬川さんからひとつ。
  53. 瀬川美能留

    瀬川参考人 いま申し上げましたように、証人市場を取り巻く環境というものは非常によくなっておるのでありますけれども証券市場はもうひとつはっきりしない。先ほどからも御説明にありましたように株の実質価値の低下、配当の低下ということでありますが、いま御質問の分離課税の効果というものは、業績の安定いたしました、したがって配当の安定した公共優良株、大型株に徐々に向かってきておりまして、電力株とか、鉄鋼株というものが非常に安定して、投資家に利回り採算上買われている。そうしてそういう会社は御承知のように巨大会社でございますからして、株が時価相場から見ますと、去年の千二百円を割らなかった時代の時価相場よりなお数千億上にある。全体の株価としては上がっておるということが言えると思います。そういう方面にまずあらわれております。したがいましていま売られている銘柄とか、いま全体として下がっている銘柄もある時点で底をつきまして、配当の目安がつきましたならば八分配当なら八分、一割は一割並みに、だんだんと拡大していくものだと考えます。
  54. 武藤山治

    ○武藤委員 時間でありますから終わります。
  55. 吉田重延

    吉田委員長 横山利秋君。
  56. 横山利秋

    ○横山委員 私は意見じみた質問になるわけでありますが、まず河野さんから聞きましょうか。  今度の証取法改正案で、どうもうまくいかぬような証券業者があったらばっさりだ、それ以前はあまり手練手管を加えない、こういうことになって、官庁、大蔵省の直接支配といいますか、極端に言えばそういう傾向をこの証券行政がたどることになる、こういうことになって、いまは極端に言えば大蔵省の直接支配ですね。そういう傾向をこの証券行政がたどることになる。こういうことを私は非常に残念に思うわけです。審議会でどういう議論があったか知りませんけれども、もっと証券界の自発的な是正をするとか、あるいは取引所法を改正して、官庁の直接支配ではなくて取引所をしてやらせるとか、証券業界をしてやらせるとか、そういうような間接的な証券業界の盛り立てをするということがなぜできないのであろうか。また同時にそのことは瀬川さんにもお伺いしたいのでありますが、役所がどんどん証券業界に入り込んできて、やれ監査だ、やれ何だかんだということが非常にこれから多くなる、こういう傾向を私は好まないのであります。なぜみっともないこんなばかなことになっていくのか。なるほどいまの世の中というものは勝者優先の思想で証券業界はもうあかんのだから、あかんのは業者が悪いのだという一般的な傾向があることはゆえなしとはしないけれども、根本の流れとしては好ましいことではない。なぜ一体私の言うような意見法案作成の中にも流れていかないのか。これはお二人から……。
  57. 河野通一

    河野参考人 審議会でいろいろ審議されましたその免許制の問題につきましては、いま横山さんがおっしゃったように証券業界証券会社が非常にだらしがないから、ばっさりやってしまえといった意味の免許制を考えておるわけでは毛頭ないのでございます。これは私個人の意見になりますから、審議会全体の意見ではございません。私は本来証券業界証券会社といったような金融機関と同じような公共的な性格を持ち、かつ国民経済の上に非常に大きな責任を持っておられる事業は、免許制であるべきだと私個人としては思っております。むしろいまごろになって免許制の問題が出るのは、実は私はおそかったと思います。しかしおそい早いは別問題として、免許制制度がこういう時期にできたことについてはいろいろな考え方もありましょうが、私としてはやはりそのこと自体は望ましいことであろうと考えます。ただし私は免許制制度の上に乗れば、すべての問題が解決するなどとは全然考えておりません。この審議会の答申の中にも載っておりますように、たとえばいま横山さん御指摘になりましたが、証券業協会というものは自主規制機関としてさらに強い、また整備された機能を発揮されることが期待される。また証券取引所という制度が今後どういう形になりますか、検討が続けられると思いますが、やはり証券業協会というものが一つの大きな柱になって、ただ免許制だけの上に乗らないで、これらの制度証券業界全体あるいは証券市場全体の発展のために非常に大きな力を発揮するということが、並行して行なわれなければならないということも当然だと思います。さればといって免許制制度は要らないじゃないか、ほかの制度を整えれば免許制はなくていいじゃないかということにはならないのではないかと思うのでありまして、これらの制度は、やはり幾つかの柱が相携えて、業界なり市場なりの充実なり強化なり、あるいは発展なりに寄与していくというふうに考えていくべきではないかというふうに考えております。
  58. 瀬川美能留

    瀬川参考人 私はいま横山さんのおっしゃった方向というのは、そういう方向であってしかるべきだと思うのでありますが、遺憾ながら証券業の後進性であります。今日の意味での証券業というものは、昭和二十四年から打ち立てられたものであります。近々十六年であります。十六年の間に今日おかげさまでここまでまいりましたけれども、全体として見ましても、個々に見ましても、なお証券業者というものは非常に弱い。これは育成助長して、りっぱな証券業者をつくっていかなければならない段階だと思うのであります。その段階においていろいろいまのような方向をたどることはやむを得ないのではないか。今日の金融機関あたりはかなり強いものがありまして、かなり自主性を持ってやっておりますが、これは六十年、七十年の歴史を持っておるのであります。その意味で目ざすところは横山さんのおっしゃったとおりでありますし、現状においては横山さんがおっしゃったことが事実であります。賛成いたしますが、現状においてはやむを得ない、その観念をいたしておるのであります。
  59. 横山利秋

    ○横山委員 お二人の意見に私はきわめて失望いたします。それはあなたのおっしゃるような後進性がないとは言えないが、しかし資本調達という近代経済の最先端を行く人たちが、自分たちの商売のやり方は十六年かかっても後進性があるから、いまのところしょうがないのですよ、これでは情けないお話だと思います。  それから河野さんも、私の言うのを勘違いしておられますが、免許制は従来からあってもよかったので、別にいま免許になることが官僚支配になるとは思わないということをたてにとって免許制をおっしゃっておるが、私の言っておるのは、取引所法を改正するなり、証券業協会のあれにもあるような公共的な自主規制機関としてやらせればよいじゃないかということを言うておるので、その方向に対してあなたは答弁していないのです。あなたにもう一ぺん聞きます。
  60. 河野通一

    河野参考人 先ほども御答弁申し上げたとおりでありまして、証券業協会の自主規制機能を強化してまいらなければならぬと思います。それから証券取引所制度というものも、こういう点からさらに見直して検討し、改善していくことも必要だと思います。それとともに証券業者免許制という制度を整えて、今後体質の改善に資するということも必要であろう、こういうふうに考えております。
  61. 横山利秋

    ○横山委員 武井さんにお伺いしますが、あなたは全中小証券の代表としておいでになったように理解しております。表で中小証券の人に会うと証券業一般としてお話をなさるが、しかしさて実際の話をなさると、もう四大証券のシェアが六、七〇%になっておる今日、この証券業界の格差について、ふんまんやるかたない人が多い。きょうは残念ながら私は国対の仕事で最初の御意見を伺っておらないのでありますが、中小証券としておいでになった以上は、多少極端にわたるかもしれませんが、いまの四大証券のもとで苦吟しておる中小証券業者として、裏面にあって何とかかくしてもらいたいという問題が私はあると思います。その点についてきょうは、あなたがお述べになったことは全国の証券業者が読むのでありますから、舌足らずでそこまで国会では言いづらかったというのでは、中小証券業者として全国の期待に沿い得ない点があると思います。いまの証券界において中小証券の占める立場、たとえば今度の証券取引法によって中小証券にも大証券と同じように調査が行なわれるということが、一体中小証券として適当であるかどうかとか、そのほかいろいろな問題があると私は思うのでありますが、ひとつ遠慮のない中小証券の叫びというものをここで聞かせてもらいたい。
  62. 武井好信

    武井参考人 先刻冒頭の陳述で多少触れたことでございますが、先ほど佐藤先生の御質問につきましてお答えをいたしました点にも重複いたすかも存じませんけれども、一番いい例と考えますのは、引き受け業務なんかに関して、私ども中小業者として希望いたしますことは、たとえば東京の取引所について考えますと、一部、二部を通じまして銘柄数は約千四百銘柄であります。一部と二部と数において半々程度になっておるかと存じますけれども、その千四百の上場会社が、資本金にいたしますと大は千億前後から、二部の下のほうにいきますと、資本金一億の会社がたくさんあるわけでございます。その千四百の会社のかりに引き受け業務をどういうふうに分担すべきであるかということを、まず私ども中小業者といたしましては考えるわけでございます。そのときにどういうことを私ども考えますかと申しますと、その千四百の銘柄を、ここに大証券の方がおられますので申し上げにくいのですけれども、なぜ大証券が圧倒的に小さな上場会社にまで手を伸ばしておやりにならなければならないのかという点を痛感するのです。と申しますことは、私ども中小証券業者といえども、上場会社にいろいろな関係がございまして、できればそういう会社については、引き受けをやりたいのでございます。しかし今回どういうことになるかわかりませんけれども、かりに伝えられますように、元引き受けが専業で二十億、兼業では五十億というような線が出ますと、実際問題といたしますと、私どものやる余地はほとんどなくなるのではないかというふうに懸念いたすわけでございます。しかしその上場銘柄の大きさを一方に考えまして、またわれわれ証券会社の先ほど申しました財務内容にふさわしい程度の引き受けは、当然私どもはやらしていただきたい、かように考えておるわけです。じょうずな表現ができませんので申しわけございませんけれども、この新しい法律内容を御説明によって伺いますと、引き受けにあたっては、引き受けの数量または保有期間等について制限をおつけになるように伺っておりますけれども、そういう制限がある限りにおいては、小さな証券会社といえども、その力にふさわしい程度の引き受けは当然やらしていただきたい、かように私どもは熱望しておるわけでございます。  それからこれは局長もおいでになりますので、私ども申し上げにくいのですけれども、たとえばいま証券会社を区分いたしまして、四社とあるいは投信十社とか運用五社というふうに分かれておりまして、東京だけについて申しますと、二億以下の証券会社が大体半数を占めておる。しかし実際に日常に行なわれますところの大蔵省の御指導のあり方を拝見いたしますと、運用五社以上の会社に対します御方針は、指導的なところが非常に強く出ておるように感じるのでございます。私のひがみでございませんければ、中小証券に対する御指導は、むしろ取り締まりという面が非常に強く出ておるように私ども感ずるわけです。  元ほど武藤元生から、業者の増減が非常にひどいのではないかというようなお話がございましたけれども、私どもがこの新しい証取法の実施にあたりまして、一体どういうメリットがあるかということを考えるわけでございますけれども、この免許制によります一番大きなメリットは、そういった登録制度のもとにおきましては、好況のときには非会員がむやみとふえる。不況になりますとそれが片っ端からといっては言い過ぎでございますけれども、先ほど御指摘になりましたように、つぶれていくということが、免許制になりますとなくなるのではないか、かように考えますので、その点がこの免許制によります一番大きなメリットではないかと考えておるわけでございますけれども、そのほかの点につきましては私は、ただいまでも監督官庁と申しますか、大蔵省に、われわれの生殺与奪の権といえば言い過ぎでございますけれども、そういうものをお預けしている感じでございます。ですから免許制になりましても、その点はたいして変わらないという感じを持ちますけれども、先ほど申しましたように、資本金その他当面非常に困難なことをしいられると、これはわれわれ脱落していかざるを得ないということでございますので、先ほども冒頭陳述で申し上げましたように、免許制になりましても、取引所ですとかあるいは証券業協会が、できるだけ自主的にこれを調整していくという方向でおまかせを願いながら、育成の方針で、中小業者といえども、まじめにやっているものは育成していくという、あたたかい御方針で今後も御指導願いたい、かように考えておるわけでございます。  ただし先ほどもちょっと触れましたけれども証券界の足を引っぱっているものが中小業者であるということから、免許制によってこれを整理するのだというような御方針であれば、それも私はやむを得ないと考えるわけでございますけれども、そういうことでございますならば、どうかこの御審議の過程におきまして、そういう御方針を明らかにしていただきまして、そうして私どもが今後どうあるべきか、中小業者はこれからどうしたらいいのか、廃業すべきか、あるいは整理統合すべきか、そういう点についていま深刻に悩んでいるわけでございますので、そういう点についてどうか向かうべきところをお示し願えればたいへんしあわせだ、かように考えております。
  63. 横山利秋

    ○横山委員 最後にもう一つだけお伺いしたいのですが、河野さん、私はこう思うのです。私ども周囲で証券の問題というと、やはり流通過程の問題が目の前としては多い。しかし今日証券業がかくも衰微をしたという根本は、発行の問題であって流通の問題ではない。けれども庶民的には流通の問題が目に立つのです。したがって証券法なりいろいろ証券行政を議論するときに、どうしても流通の問題に問題が片寄ってしまう。発行しているのは実はいまお話があったように四大証券であって、中小証券ではほとんどないというわけですね。そこのところは私は今度の証取法の問題でも、目の前の問題に中心が少し狂っているのではなかろうか、こう思うのです。それが私の第一点です。  第二番目の意見はこういうことなんであります。私は大蔵と法務を兼務しておるのでありますが、株主総会のことでよく議論になるのですが、株主総会をやって、時間が短ければ短いほど優良事業会社だと言われている。株主権の行使なんというものは全然問題にならぬ、こういう現実の事情ですね。だから株主権というものが正当に行使をされるためには、もう少し何とかくふうが必要だ。そうすると、この推奨しておる幹事会社なんですけれども、これがもう自分のところで幹事会社になるためにまさに過当競争する。そして、この会社はいいんだ、いいんだと言って推奨した会社が、べらぼうな、たいへんなことになっても、推奨の責任証券会社としてもとろうともしない。したがって、私の意見の第二は、幹事会社なり何なりの証券が、もう少し株主権を代行をして、事業会社に対してもき然として、おまえさんのところはいま増資をすべきではないというたんかを切るほどの対等の立場というものを持たせなければいかぬのではないか。それを一生懸命におれのところへ頼む頼むと言ってついて回っていろいろな悪事が行なわれているということは言語道断ではないか。そそこのところを矯正する方法はないか。この二つの意見について、どうですか。
  64. 河野通一

    河野参考人 第一点につきましては、横山さんのおっしゃるところと全く同意見であります。これは、ちょうどお見えにならなかったかと思いますが、私冒頭に御説明を申し上げましたときにも申し上げたのでありますが、証券業界あるいは証券市場整備改善のためには、今度の法案に盛られておるような問題だけ解決したのでは何も——何もではないが、ほんの一部の問題で、これですべての問題が片づくと思ったら大間違いだ。今後引き続いて関連する事項——いまお話がありましたように私も具体的にメンションいたしたのでありますが、証券の発行、流通に関する諸制度、あるいは証券取引所制度、あるいはそのほかにたくさん問題があります。たとえば証券金融の問題とかいろいろございますが、そういった問題をどんどん続けて検討を加え、改善を加えていかなければならぬので、この法案はいわばスタートにすぎないのだということを申し上げたのであります。そういった意味で、私はこの法案に盛られておる事項だけですべての問題が片づくとは毛頭考えておないわけであります。ただ、そういった取引所制度とかあるいはいまお話がありましたような事柄とは関連があるのだから一括してその問題を解決すべきであって、この際免許制の問題だけを切り離して早く出すのはおかしいじゃないかという議論があるわけでありますが、私はそれには賛成できない。ことに、この免許制の問題は、法案にもありますとおり、三年の経過期間が置いてありますので、その間に少なくともいま言われておりますような諸問題の解決が進められるならば、おそらくすべての問題を歩調を合わせて総合的に進めることができるのではないかというふうに考えております。ただ、たとえば証券業協会の問題につきましても、私どもは答申の中にはっきり言っておるのでありますが、今度の法案には載っておりません。載っておりませんが、載っておらないことについては理由があるから載っておらないのだと思います。こういった問題等も今後ひっくるめて御検討がなされることが望ましいのではないかと思っております。ただ、今後あるべき姿が、この免許制とかいろいろな問題と違った方向に行くという場合、そういうことが想定されるならば、これはやはり双方関連して研究しなければならぬという問題が起こりますが、少なくともこの法案に盛られておる問題に関する限りは、そういった性質のものは私はないと思っております。したがいまして、この法案に盛られている事項だけが少し先行して立法措置がとられるということについては、別に差しつかえないのではないかと考えております。   〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕  それから第二点のお話の点も、これは私全く一個人として申し上げるのですけれども、感じとしては全く横山さんのおっしゃるところとは同意見であります。同意見でありますが、さてそれじゃおまえどうしたらいいかと言われますと、私は全くその辺はしろうとでございますのでよくわかりませんのでごかんべんを願いたいと思います。
  65. 金子一平

    ○金子(一)委員長代理 堀昌雄君。
  66. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、今度の免許制の問題の一番中心は何といいましても職能分離の問題にあると思っております。なぜそれでは私が昨年職能分離を中心とした免許制の論議をしたかといえば、過去における日本の特に四大証券の行き過ぎたいろいろな問題を是正するためには、どうしても職能分離とあわせて免許制の問題というものが非常に重要な問題点であった、こう私は考えております。証取審議会の答申も非常に弾力的な答申がされております。しかし、現状はまさにデパート方式ですから、これを分離していきますのには確かに経過的な措置が必要でありますけれども、この意図しておりますところは、やはり私どもはその弊害が完全に除去される範囲までは分離をしてもらわなければ困る、こう考えております。実は私ども証券問題をいろいろ聞いております中で、東京証券取引所というのは第五の取引所であるということを私どもよく聞くわけです。四社がおのおの取引所的な機能を持って東京証券取引所は五番目の取引所であるというようなことでは、私は証券界の健全な発展は望めないのではないかと強く感じておるわけであります。ですから、そういう意味でお伺いをしたいのは、きょうは形式としては東証の議長あるいは引受協会の会長としておいでをいただいておりますけれども瀬川さん、湊さんは四社の代表者でございますから、特にこの職能分離は、実は中小証券に向かって私は強く強制する意思ではなくて、四社についての職能分離日本証券業界の今後に最も大きな問題になると考えておりますので、ひとつ瀬川さん、湊さんから、四社の首脳部としてこの職能分離をどういうふうに受け取っておられ、どこまでそういう私ども考え方の上に立って推進をされるのか、その点をおのおのにお伺いをいたしたいと思います。
  67. 瀬川美能留

    瀬川参考人 お答えいたします。  まことにこの問題が非常に重要な点であるということは私も堀さんのおっしゃるとおりだと思っておるのであります。証取法に盛られた精神分離方向にあるということも承知いたしておりますが、分離ということは、やはり分離した場合に各企業が存立していくかどうかという問題と、分離した各企業が相互にうまく連絡し合って分離の効果を発揮していくか、この二点に尽きるだろうと思うのであります。現状といたしましては、私どもは一体どういう方向をとっていいか暗中模索しておるということが偽らざる心境であります。各国のそれぞれの証券市場を見ますと、各国それぞれに応じた証券市場というものがございまして、どっちかというと、自然発生的に一つ制度が生まれてきたように存じ上げております。そこで、私どもといたしましては、これを分離したほうがいいか、あるいは兼業したほうがいいか、兼業する場合にいろいろな弊害が生まれるということでありますが、これは一に兼業の場合の業者の営業姿勢の問題が大きくあろうと思うのであります。同時にまたその業者の歴史的な発展の過程においてそれぞれ違うだろうと思うのであります。現にアメリカにおきましても一九二九年以来銀行と証券業分離がはっきり進められてまいりました。アンダーライター、ブローカー、ディーラー、それぞれいろいろの形をもって兼営されておるのでありますが、はっきりした分離の形をとったアンダーライターもあるし、それから兼業しているアンダーライターもあるし、さらに驚くべき事実は、ブローカーハウスとして世界最大の発展をいたしましたメリルリンチ、これが今日ブローカーハウスから発展してアメリカにおける第二位のアンダーライターとして兼業の上で発展しておるという事実も見られるわけであります。さらにモルガン商会のような経営の形態も見られるわけでありまして、アメリカにおきましてもおのずからそこにいろいろの形が生まれているという事実を見まして、これは容易に決定すべき問題ではない。少なくともここ数年間、あるいは十年間くらい検討すべき問題であって、企業である以上は、非常に無理のないところでやっていきたい。かりに分離いたしましても、分離いたしました結果、弊害以上のマイナスが出ましたら、これは国民経済上、分離した意味がございませんので、要はその辺を勘案いたしましてどういう方向に持っていくか、まだ暗中模索、研究中でございます。さらに、証券市場をめぐるいろいろな制度発展のあり方等を見まして、やはり、日本にはどういう形がいいか知りませんが、日本独特の一つの形というものがあるのじゃないかということを考えまして、いろいろ検討を重ねておるというのがいまの段階でございます。
  68. 湊守篤

    湊参考人 私はさっきから繰り返し申し上げておりますように、皆さんが御期待になりますようなりっぱな証券市場をつくらなければいけない、そういう角度からすべて問題を考えておるわけでございます。(「永久に未来ではだめだ」と呼ぶ者あり)確かに永久に未来ではだめでありまして、当面の問題から入っていかなければならない。いま堀さんもおっしゃられたように、現在の証券市場にはいろいろな欠陥がございます。欠陥があるがゆえに、いま堀さんのような御指摘があったことは当然だと思います。問題は、職能分離をすることがいいかどうかということは、現在の欠陥とのかね合いといいますか、あるいはわれわれ証券業者、特に四社間の信頼感とのかね合いということにもなるんじゃないか。証券会社特に四社が十分堀さんから信頼されるようなものであったならば、堀さんはあのような強い御主張をなさるまい、そういうかね合いの問題であろうかと思います。確かにいまの四社の点につきましては、御指摘のような幾つかの点についてわれわれも反省すべきことが多い。また、武井さんからもたまたまお話がありましたし、特に横山さんから痛烈なお話がありまして、省みまして私どもほんとうにお恥ずかしいと思う点があるのであります。特にいまの幹事会社の問題、幹事会社株主権を代行すべきだということ、まことにごりっぱな御意見だと思いますが、私どもは当然そうなければならない。そうなればこそ初めて私どもはさっき申し上げたような国民資本主義というものができてくるんだとさえ思うのです。それが現在ほとんど実現できないのはどこに原因があるのか。おっしゃりたいことはよくわかるのであります。一言でいえば四社の過当競争、ここにお二人おるわけですが、正直に申し上げますが、過当競争というようなことが非常に今日まで多かった。その結果として推奨販売ということでいろいろまずさが出ておる。投資信託にも影響があった。さんざん指摘されておりますから、決して私どもは抗弁いたそうとはさらさら思いません。問題はこれからなんです。そういう意味でこの事態をどこから直していくか、どうすれば直るのかということであります。それに対して、職能分化、これで直せという御意見もあると思います。それも私は一つの正しい御指摘かと思いますけれども、それにつきましてはいま瀬川さんからお話がありましたように、問題がまことに複雑多岐に存在するわけでございます。特にいまアメリカの例をお出しになりましたけれども日本市場アメリカとは違った育ち方をしておりますし、金融市場アメリカとはたいへん違うわけであります。そこで、日本の場合どういう市場をつくったらいいのか、その中で証券会社がどういう姿で存在したらいいのか、その場合、職能分化という問題については、将来どういうことを考えていったらいいのかということを、私どもさっき申し上げた資本市場研究会でいま研究中でございます。これは間もなく結論が出ると思います。もちろんそこで即時に職能分化をすべきだとか、してはいけないという結論は出ないと思います。それは将来のビジョンがまだ明らかでないからであります。しかし何らかの結論が出ると思いますので、私は先走って私の意見を申し上げにくいのでありますが、将来の好ましい姿ということで考えれば、いま堀さんの言われたようなことは多分にわれわれとして考えなければいけないと思いますけれども、そこへいく過程では、さっき瀬川さんが非常に謙遜して後進国ということを申し上げておしかりを受けたのですが、われわれは謙遜して後進国と言っているのじゃなくて、いつまでもそれを甘受しておるつもりはなく、これを先進国にしなければならないというのがわれわれの非常に強い希望なんでありますけれども、それにいく過程において、どういう手順でいま堀さんが考えておられるような姿にしていくことができるのかということは、われわれはわれわれなりに考えておりますし、大蔵省大蔵省で考えておられると思いますが、皆さん方もぜひ御一緒にお考え御検討くださいまして、あまり早急に結論を出しますと、こういったきわめてビジョンの不明確な国民経済を運営をしておりますから、鬼っ子を生んでしまうということになりかねない。アメリカの例をさっき瀬川さんが出されましたけれども、そういう点も日本にもあろうかと思いますので、そういう点、十分慎重に御討議をいただきたいと存じます。
  69. 堀昌雄

    ○堀委員 私は今日四社が大きくなった一つの理由は、投資信託が一緒にくっついて、分離をされないままで、言うならば、悪いことばですけれども、多少投資信託を利用して四社が大きくなった経緯があると、私なりの分析をいたしておるのであります。今日投資信託を分離されて、最近の情勢は、投資信託がようやく本業に対して自主性を持って、投資信託受託の利益を守る段階にまいりました。分離の方針が、ずいぶん前から分離していながら時間がかかった。しかし今日ここをスタートとしなければ現在の投資信託が発展する可能性はない、こう私は判断しているわけであります。それに見合う皆さん方のほうの御努力も私はそれなりに敬意を表しているわけですが、そこでいますぐ分離をするという場合に一番問題なのは、ディーラーの問題がどのような形になるかということが実は新しい条件になってきますから、私もいまここで図式を書いてこうなるだろうということにならないと思います。そこで私はその経過期間として三年間くらいが適当だという発言をしてきたわけであります。その経過期間の中で私ども一番頭の痛いのは、証券会社のディーラーが顧客に立ち向かった過去の歴史は、どうしてもこれは私は払拭してもらわなければならぬと思います。これは今日投資家大衆が痛切に感じている問題点の一つではないか。それを明らかにするためには、証券局にも要望いたしておりますけれども、要するにすべてのもの、特に四社はこれらの買い付け伝票等を全部整理していただいて、時間的にも、その他きちんとした伝票の整理をして、アカウントを明らかにしていただきたい。いまの売買が顧客の売買に立ち向かっているようなものが、他の証券会社のディーラーがこちらの証券会社のブローカー部分に対して立ち向かうのはやむを得ませんが、同一証券会社内においてそのディーラー部分が投資家の部分に対して立ち向かうような事実は、これは直ちにやめていただきたいと思っているわけであります。しかしそうは言ってもそれは私ども外からはわかりません。ですからこの三年間の経過期間の中に、少なくともそのことがあと証券局として全部トレースができるような内部的な措置、伝票をきちんとつけ、アカウントをきちんと分けてあとでトレースするという点は、分離経過の中でどうしてもやっていただかなければならない、こう私は考えておりますが、これについてはいかがですか。
  70. 瀬川美能留

    瀬川参考人 いまの御質問に対してお答えいたしますが、日本証券市場は、御承知のように過去十六年間の間に今日までにやっとたどりついたわけでありまして、国民の蓄積もいまだし、あるいは機関投資家の未熟成という中に、今日あれだけの証券民主化を果たしてきたわけであります。したがいまして、四社の果たしてきました職能には、相当四社といたしましては膨大な手持ちをして、それに向かって調節していくというやむを得ざる作用がいままであったわけであります。しかしわれわれは、一度おいでいただいて、どういうプロセスで注文が支店から流れてきて、どういうプロセスで市場へ現在いっているかということを、御見学をぜひお願いしたいと思うのでありますが、今日の状態におきましては委託は委託、あるいは手持ちも商いを調節するために、営業用の手持ちというものは数日間の商いの大きく熱化するのを防ぐために、むしろ客の便宜のために営業用の手持ちを振り向けているということでありまして、客に一つ一つ向かって勝負するとか、客にぶつけるという、そういう根性では今日の証券会社はもはや絶対運営されているものでないということを御認識願いたいと思うのであります。先ほど東京市場は五つの取引所があるとおっしゃいましたが、そういう時代も形の上ではあったかもしれませんけれども、今日におきましては、取引所集中ということはわれわれもう当然のこととしてすべての取引が集中されているわけでありまして、四社の中に市場があるというようなことは毛頭ないわけでありまして、むしろわれわれは、取引所のほかに事業会社事業会社の直商いとか金融機関事業会社との直商いの、別の市場が生まれつつあることを非常に心配している状態であります。
  71. 堀昌雄

    ○堀委員 現在がないということはけっこうであります。それが普通の状態で、あったらおかしいわけですから、今後はひとつそういうことで——しかしそれがトレースができるような……。
  72. 瀬川美能留

    瀬川参考人 できております。
  73. 堀昌雄

    ○堀委員 できるような措置は十分ひとつお考えをいただきたい、こう思います。  それからいまちょっとお話がありましたけれども、いま金融債、皆さん非常に熱心に売っていらっしゃるわけですし、その他いろいろな社債の問題が今後あるわけですが、これが大体、四社が八〇%ですか、シェアが大体これまできまっておりますね。あと何社かで残りの配分をやる。ここらもやはり問題のある点じゃないか。今後やはり——私も長年当委員会で公社債市場の育成について声を大にしてまいりました。ようやくそういうきざしが見えてきましたから、われわれはバックアップするために、実は当委員会の金融小委員会において銀行の融資ルールの問題を大々的に取り上げている。これはサウンドバンキングの問題もありますけれども、一番大きな問題は、少なくともコールが安い状態をある一定度続けるためには、銀行側の行き過ぎた貸し出し姿勢をためない限り、日本の資金需要というものは常に大きいわけですから、そこに歯どめをかけることによって、人為的に多少の金融の緩慢をつくる以外には、公社債市場をつくるチャンスはないわけですから、そういう意味では、当委員会においては当面積極的に考えておりますけれども、しかしそういう片方でのいろいろな努力と、しかし現状の四社がそういう社債引き受けについてシェアを確定しておる等についてはやや問題があるのじゃないか、こういうふうに私は考えるわけですが、湊さん、公社債引受協会の会長でもありますので、今後の社債市場育成の過程におけるいまの問題点についてのお考えを承りたいと思います。
  74. 湊守篤

    湊参考人 確かに御指摘のように、現在では四社のシェアが大体八〇%というようなことになっております。しかしこの問題を考えます場合にまず皆さんに御注目いただきたいと思いますことは、現在の社債市場というのはきわめて変則的な市場でございまして、極論をする人は、現在の社債は社債と呼ぶべきじゃない、あれは変態的協調融資の証文みたいなものであるというようなことをおっしゃる人もあるわけです。事ほどさように、消化が自由な市場で自由に消化されているわけじゃないのでございます、大部分が金融機関消化になっております。金融機関消化でありますために、われわれがいただいている引き受け手数料は眠り口銭というような批判をいただくようなことになっております。またさっき申しましたように、はね返ってきた社債をグレーマーケットに投げ売りし、われわれが損失をこうむるという状態が起こってきております。こういった、いずれも変則的な市場だからであります。そこで、変則的な社債消化をやっております現段階においては、こういったようなことをやるしかなかったというのが偽らざる事実だろうと思うのです。最近中小証券方々が四社のシェアは高過ぎる、われわれにもっと分け前をよこせ、こうおっしゃられる。一々ごもっともだと思うのでありますけれども、それは結局、中小証券方々はその引き受けた社債を金融機関にはめ込まれる。それだけの職能なんです。ところがこれは口幅ったいことはちょっと申し上げにくい点もあるのですけれども、四社といたしましては、金融機関からいわゆる眠り口銭をちょうだいいたしまして、それを吐き出して、それで個人消化その他非常にむずかしい消化を実はやっておりますが、たいした額ではありませんが、野村証券さんあたりは非常にそれをやっておられる。それは現在の一円六十銭という引き受け手数料が実はたいへん安いというところに原因があるわけです。これは眠り口銭だということを理由にしてだんだん引き下げられまして、四円から一円六十銭ぐらいまで落ちてきてしまったのでありますけれども、しかしそれは一般の消化に対してはあまりにも安過ぎる手数料だ。そこでわれわれは金融機関の引き受け手数料を吐き出して個人消化をする、こういうようなことでやっておりますから、どうしても四社が高いシェアをこの際がんばるということは、いまのこの変則的な市場で社債を消化するためにはやむを得ないことだったと考えていただかざるを得ない。  そこで問題はこれからのことでございますけれども、いまお話しのような皆さまの御協力によりまして、だんだん社債の自由市場ができようとしておる。これは急いでつくらなければいけない。そうなればこういう問題は非常に変わってくるでしょうし、また変えるべきでありましょう。そこでさっき武井さんの言われたように、引き受け業者の資本金の問題が中小証券としては非常に心配になられる、こういうことになろうかと思います。
  75. 堀昌雄

    ○堀委員 時間がありませんから、ちょっと簡単にあれいたしますが、さっき横山委員指摘しておりましたけれども日本証券を含めての金融市場全体が過去において非常に無秩序であったと思うのです。私がいまその融資ルールの問題を取り上げておりますのも、言うなれば一つの金融の秩序をひとつ銀行のほうで考えてもらいたいということであって、私ども何も統制してどうこうしようということではなくて、本来的には自分たちでそういう秩序をお考えになるのが当然であるにもかかわらず、自分たちで秩序をおつくりにならないで今日に至ったわけですから、しかたがなく私どもが外から圧力を加えてでもつくっていただきたい、こういう段階にあるわけです。今度増資再開の問題がございます。現在の証券市場の不振の中には、これまでの無秩序なる増資が今日にはね返って、それが横山委員指摘をしましたような幹事会社の過当競争の結果としてあらわれておると思いますが、今日反省が行なわれて、増資再開については証券社側に一応のイニシアチブが与えられておると思います。先般新聞紙上では、増資基準を一つおつくりになって、それを見合いにしながら百五十円以上のものについては増資自由とかいろいろなものが発表をされました。おそらくこれは片方は融資ルール、片方は増資ルール、いずれも産業界にすれば入り口がふさがれるかっこうになりますから、増資ルールについても産業界がいい顔をするとは思いませんし、融資ルールについても産業界がいい顔をするとは思いません。しかし私に言わせれば、産業界自身は一体どうなのか、今日の過剰生産、過剰設備で、今日市場に与えておる影響は、これはみな産業会社自体の責任なんであって、証券会社や銀行も責任がありますが、その一つは産業関係経営者の無責任性にあると私は思います。だからその無責任性がこれほどはっきりしておる現在、これらの秩序をつくるということは私は当然だと思うのです。しかし新聞紙上では、経団連等ではかなり反対があったように思いますが、皆さん方はどこまでこの増資基準なり、言うなれば増資ルール、これについて貫徹をされる意思があるのか。これはかかって今後の資本市場の再建の大きな一つの問題点だ、こう思いますので、これに対する決意のほどを少し承りたい。
  76. 瀬川美能留

    瀬川参考人 お答えいたします。  増資調整の問題は、過去におきましては市況が不振になるたびごとに行なわれたわけでありまして、いわゆる量的調整が行なわれてきたわけであります。ところが昨年の九月二十八日でございますか、増資は全面ストップという非常にドラスティクな、証券市場に歴史のない措置がとられたわけであります。その後たとえば外資関係で、外国に信用上の影響があるからして増資しなくてはならない会社、ある財務比率を約束した会社、あるいは社債の発行限度に達した会社というようなものを例外的に増資ストップ下において取り上げてきたわけであります。それが大体九月をもって目先きのものが終了いたしますので、最近の証券市場の情勢はなお、さっきからしばしばお話のございましたように非常に低迷期でありますけれども会社の中には当然増資をすることを歓迎するというふうな株式も、あまりたくさんありませんけれども、少量ある。われわれといたしましては機能が全く麻痺してしまった証券市場機能を一日も早く回復したいということが念願であることはむろんのことでありますが、まずことしに入りまして、私ども責任をもって業界に例の保有組合をつくりまして、そして従来共同証券がてこ入れをいたしておりました千二百円のてこをはずしまして、そしてまず一歩自由価格に近づいたわけです。そこで、こういう考え方と同じ考え方において発行市場機能回復を一日も早くできる方法で実現したいという念願から、今度の案を証券界一致した案といたしまして、先般経団連の小林さんの委員会検討をお願いしたわけであります。私どもといたしましては百五十円以上の株価は自由はすべきだという思想でございます。いかにも百五十円というと株屋さんらしい表現じゃないかという受け取り方もあるかもしれませんけれども、要するに百五十円であろうと百三十円であろうと、増資が投資家から歓迎される会社から小さく口をあけていくべきだ。そして増資が株式市場に好影響を与える増資からその下に順次及ぼしていくべきだ。自由市場におきましては何としても株価というものが最高の基準判断になっております。むろん最低の増資可能の基準のところにも、一割配当とかあるいは一定の増資後の資本収益率、収益力あるいは株価とかいう基準も、最低の基準というものは置いておりますけれども、株価優先というたてまえを証券市場としてはやはりとっていくべきだ。そしてせっかくこうして固まってきた証券市場を指さされないような、投資家の信頼を回復さすような方向からいくべきだという考え方を打ち出したわけであります。細目につきましては異論が多少あったようでありますけれども考え方につきましては御出席の皆さんが相当了解してくれたと私ども判断をいたしております。われわれの考え方の線につきましては、あくまでも、これを押し通さなければほかに基準は何があるということを私は言いたいのであります。これでよろしゅうございますか。
  77. 金子一平

    ○金子(一)委員長代理 春日一幸君。
  78. 春日一幸

    ○春日委員 本委員会証券行政はいかにあるべきか、これを深く論じまして、特に本日当面しておるような取引所機能喪失の事態をあらかじめ予見いたしまして、それを改善的に予防的に避けることのために深く論じてまいったわけであります。これは河野さんが理財局長当時から本委員会においてもうすでに十数年にわたって論じてまいった。しかるところ、私は思うのに、これは証券取引所意思というものが、現状になじむといいましょうか、その現実主義が純粋の政策理論というものに優先するというか、これを妨害をいたしまして、そしてことごとの改善改革というものが渋滞をしてきた、あるいはなし得ずして今日に至ってきた。そのことについて責任者諸君は十分御反省をなさる必要があるのではないか。特に私が御指摘を申し上げたいことは、強い主張によって投信分離の問題、これはすでに十年前から論じてきたが、数年前ああいうような過渡的な改革がなされて逐次進められておるようでありますが、しかしこの証券市場をやはり国民経済立場に立って正公かつ合理的に有機的に機能確保の措置をはかっていくというためには、まず何を差しおいても取引所の公共性を確保していかなければならないとか、あるいは職能分離というものを強化しなければならないとか、またバイカイ行為ですね、こういうものの禁止措置をとらねばならぬであろうとか、幾つかの具体的な政策をここに明示しながら論じてまいったわけでございます。しかるところ、角をためて牛を殺す結果にならないかとかなんとか、そんな現実論が常にこのような政策論というものを圧殺して、この本日の事態にまいったということであります。これは私は業界が深く御反省を願わなければならぬ。特に河野君のごときは、ただいまの論述の中で、とにかく証券業者免許制のごときは、これは本来的にかくあるべきであると確信するなどと言っておられますが、そうであるならば、十年前貴殿が理財局長のときにわれらの所論に従ってなぜその改善改革を行なわなかったか。その当時はしさいありげな詭弁を弄して、そうして当面を糊塗しごまかしておいて、本日そのところを変えられたからといっていきなり正論にくみするようなことを言っておられますが、私は説得力を持たぬと思う。  だから私、本日得がたい機会でありますから、時間がありませんから三、四点について私は重要な問題を明示しながら特に善処方を求めたい。したがってそれに対する御見解を述べられたいと思うのでありますが、まず第一番、今度の改正点の中で重要な問題は、この証券取引所の公共性の強化という問題であろうと思うのでございます。現在の証券取引所が特殊法人になっておる。公益法人でも営利法人でもない。したがって会員組織の特質というものは、やはりこの市場において売買取引する会員自身がみずから市場を開設して、みずからその市場を管理する、こういうことになっておる。したがって本質的にみずからは市場を開設して管理するのであるから、会員の意思というものが当然強烈に反映してくる、そういう結果になっておるのでございます。その場合、特にこの現状におもんみるならば、その会員間の格差がはなはだしい現状においては、結局はその運営管理というものが大証券に傾くのきらいなしとはしない。現実にその市場占拠率というものが四大証券によって圧倒的シェアを占めておることがその実証である。これでよいかという問題。これでは証券取引所の公共性の本来的使命にかんがみて、これはこういう形であってはならない。とするならば、これは改善改革をはからねばならぬ。はかるためにはどうしたらいいかという形になりますと、その運営管理の当事者というものを、公共的な公益的な規模でその責任者を選任されなければならぬ。今日取引所の役員は、理事長、副理事長、専務、常務、この人々は公益代表という形で選任されておるが、十五名の執行理事の中で公益的な立場に立っていられる者は、せめて二名ですか、足立さんとそれからいまおっしゃったあなたですね。二名であって、あと十三名は全部業者代表であるということでございます。まず隗より始めよということがある。だから私に、この際この取引所の役員構成というものを、取引所の本来的使命にかんがみて、これが公共的使命を持つものであって、公益的使命が本質的なものであるとするならば、その十五名の理事の中のせめて半数、この程度のものを——七・五というわけにもいかぬでしょうから、七対八とかそんなような形でこれは半々にする必要がある。フィフティー・フィフティー、こういうことにするのでなければ、大証券の発言が強い。だから運営管理が大証券中心になっていく。しかもその大証券というものはみずからが業者だから、もうければもうけるほどもっともうけたいという資本主義本来的な性向の上に立ってやはりこの運営がなされている。そうしてある部分的な段階においてはいいかもしれないが、究極的にはにっちもさっちもいかないように、すなわち取引所機能の喪失、これは現にそこへきているのですから、その運営のしかたで現況にきたとするならば、その運営のしかたが悪かったであろう。悪かったならばいかに改善改革すべきであるか。ここにそのような猛反省があってしかるべきだと思うのです。だから私は、まず何ごとも差しおいて、取引所の役員構成の比率の改善、これをなすべきであると考える。これに対する頼川さんの御意見、それから審議会委員としての河野通一君の経綸、これをひとつお述べ願いたい。
  79. 河野通一

    河野参考人 はなはだどうもお答えにならぬことを申し上げることになりますので申しわけありませんが、取引所の運営が現在非常に理想的にいっておるとは言えないことはもちろんだと思います。この点についてはいろいろ改善をしなければならぬ問題があると思いますが、いま御指摘になりました取引所の役員の選任のしかた、あるいは役員を選ぶ方法という点はいろいろ検討の材料になるかと思いますけれども、具体的にいま春日さんから御指摘になりましたような具体的な問題をいかに考えるかということにつきましては、私は外部におりますので全然実情を存じません。存じませんので、抽象的に取引所の公共的な使命ということに合うような運営のしかた、仕組みをつくられることが望ましいということだけを申し上げることはできると思いますけれども、それ以上進んでの点につきましては私からお答え申し上げる資格がございませんので、ごかんべんを願いたいと思います。
  80. 瀬川美能留

    瀬川参考人 証券取引所でまず四社が横暴で四社中の証券取引所の運営がなされているのではないかというお問いに対して第一にお答えしたいと思います。四社は取引所ではかなり大きな売買高を示していることは御承知のとおりでございますけれども、決議権あるいは財産処分権について会員九十七社平等の一票の権利でありまして、決して四社が横暴できるような仕組みにはなっていないというわけであります。  それから証券市場の公共性の発揮という点につきましては、春日さんのおっしゃるとおりわれわれはそれを目ざしていろいろ改組していかなければならぬ、こう思うのでありますけれども、いま私はここで理事会の構成がどうあってしかるべきかということをお答えする段階にまでまいっておりません。
  81. 春日一幸

    ○春日委員 そうするとむしろやはり湊さんのごとき何か学者みたいな方に聞いたほうがいいと思うのですけれども証券取引所というようなものは証券業者のためにあるものではない。これはピープルズ・キャピタリズムの本質に徹しましても、これは国民大衆のためにあるものであるというわけですね。だからその公益代表というものがになうべき役割りというものが、これは全国民に負うものである。ところが証券業者出身の理事というものはやはり業者代表たるの性格を持つものである。だからその取引所の公共的使命にかんがみて、国民大衆の代表たる者がたった二名で、そうして業者代表すなわち利害関係者代表、この者が十三名というような比率が合理的なものであり妥当なものであり公正なものであるとお考えになりますか。あなたは何となく公正な意見を述べられるような気がしますから、ひとつ述べてみていただきたい。
  82. 湊守篤

    湊参考人 春日委員のおっしゃられたとおりに、取引所証券業者のために存在すべきものではなくて、広く投資家あるいは国民経済のためにその職能を果たさなければならないということは申し上げるまでもないところであります。ところが現在は御指摘のとおり理事者の二名ではないと思いますけれども、ほんの一握りの人しか……。
  83. 春日一幸

    ○春日委員 石坂泰三さんと足立正さんと十五名中二名だけでしょう。
  84. 湊守篤

    湊参考人 あと理事長……。
  85. 春日一幸

    ○春日委員 その人はだめです。
  86. 湊守篤

    湊参考人 とにかくそういったことからいま春日さんから御指摘のような疑惑あるいは批判を受ける、ここに問題があると思います。私どもは御指摘のような事実がはたしてあるかどうか、これはいろいろな問題がございまして、何とも的確なお答えはいたしかねますが、少なくもそういうふうに見られるということは、これは欠陥があるということになろうかと思います。  そこで私は、この証券市場健全化のためには証券取引所のいまの機構、あるいはいろんな仕組み、運営方式といったようなことについても十分批判が加えられてしかるべきだと思うし、必要な改善はなさるべきだとかねがね思っております。ですからさっき申し上げたように、高橋亀吉さんを中心とする資本市場委員会でいまその問題を正面から取り組んでおるわけです。その中には証券業協会の問題も出てまいっておりますし、証券会社のあり方の問題もある。また先ほどから出ているようないろんな一連の問題がここには出ているわけでありますが、その中ではかなり重要な問題としてそれは取り上げられておるわけであります。ですから私はあるいはこれは会員制であることをやめたほうがいいという議論になるかもしれませんけれども、会員制のまま存続させるとするならば、いま春日さんが言われたような改善措置をとるということも当然考えられておりますので、どの辺に結論がつきますか、まだちょっといまここではっきりいたしておりませんので、先ばしったことはちょっと申し上げかねる次第であります。
  87. 春日一幸

    ○春日委員 参考人学識経験者として権威あるものとわれわれが尊敬、信頼申し上げてここで参考意見を聞いておるのであって、高橋亀吉さんの意見を必要とすれば高橋さんを呼ぶのである。国会の国政調査権は、検事総長であろうと橋の上のこじきであろうと、これは国政調査の必要のためにはここに喚問することができるのでありまして、そういう意味でわれわれはお伺いをしておるのでありますから、あなたはあなたの良心に基づいてかくあるべしという御信念があるならば何ものにも顧慮することなく、かくのごとき問題はかくあるべし、こう御答弁にならなければ、これは国会法違反ではありませんけれども、とにかく参考人として御意見を拝聴する本委員会の希望にかなわない形になるのでございます。しかしいろいろな社会的な御立場もあろうかと考えまして重ねてかかる質問は差し控えまするが、そういう意味でひとつ御答弁を願いたい。  次はバイカイ、売買仕法の改善について、これはもう河野さんが理財局長のときから私はここでよく論じてきたんだが、これはひとつどうしても禁止をしなければならぬ、ある一定の段階において調整を必要とすべき事柄であると思うんです。このバイカイの占める比率がいま総取引の五割から七割にわたっておる、こういうことでございまして、その大部分がこの仕切りバイカイ、委託売買自己売買のつけ出しとこういう形によってこれが行なわれておる。このことの弊害というものはこれが乱用されますると、少量の八百長取引でもって相場をつくっておいて大量のつけ出しをやるというようなこと、これはもう公共性というようなものをはなはだ阻害する。取引所というものの機能株式の公定相場をつくるのでございましょう。それを値段を贋造したり捏造したりということになってくるわけですから、これが大衆の信頼を滅却して、そのためにピープルズ・キャピタリズムの本来的使命というものが結局はずれていってしまうのでございます。だから私は少なくともつけ合わせ売買というようなものはともかくとして、この仕切りバイカイだけはすみやかに禁止をする必要があると思うが、まず湊さんから、次いで議長からこれをひとつ御答弁願いたいと思います。
  88. 湊守篤

    湊参考人 どうも春日さんも意地がお悪いと思うのですが、私はまだ証券界は新米のほやほやでございまして、どうもその辺の株式の仕法についてあまり詳しくございません。いまおっしゃられた点につきまして、私は外部から見られた見方でいろいろ言われておりますことと、内部に入って見ることとの間にはだいぶ違いがあるということだけを申し上げたいと思います。あまり逃げるような答弁をしますとまたおしかりを受けるのですけれども、私も銀行におりますころにはいろいろ証券市場に対する強い批判を持っておりましたけれども市場の中に入って見ますとこれはかなり歴史的な、あるいは現在証券市場を取り巻く諸条件がございまして、外部から見ているほど急いですっきりしたものにこれをつくり上げるということが非常にむずかしいということを痛感いたしております。私自身はさっきからたびたび申し上げておりますように、何とか健全な市場をつくりたいと思っておりますから、外部からそういう批判を受けるようなことはなるべく、実態的にはこれはわれわれとしては十分弁解できることであっても、それは何とか、外部から批判を受けないようにしなければならないというように考えておるのでありますけれども、いまの仕切りバイカイを全面的に禁止するといったようなことでいまの日本株式市場がほんとうに大衆投資家のためにうまく運営されるようにはたしてなるかどうかには若干の疑問があろうかと思っております。
  89. 瀬川美能留

    瀬川参考人 仕切りバイカイによって値段をかってに捏造するというふうなお話がございましたけれども、これはそうではないのでございまして、直近の出来値でバイカイするという意味で、新しい値段をつくるという意味でありません。実際にいまの商いの実情をごらんくだされば、即座に全部廃止するということは、むずかしいというふうに考えております、
  90. 春日一幸

    ○春日委員 ただいま湊さんは、外で見ておるのと中へ入って見るのと違うと言われるのですけれども、それを言うならば、あなたがミイラ取りたらんとしてすでに、ミイラになったことに対する述懐であって、私は何ら権威あることばとは思えないのです。ただこの問題については、いま瀬川さんが御答弁になりましたように、少量の八百長バイカイを行なってそれによって一つの値段が出る、これによって大量のバイカイをつけ出しておるということが絶無であるならば、われわれこんな論議をいたしません。そういうバイカイがあるかないか、松井君に調査してもらおうじゃありませんか。ちょっといま低調でありまするから、最近一ヵ月の資料では適当でないかもしれませんが、ひとつこれをよく調査願って、そういうような実際の行為というものはなかったのであるのか、われわれがこういう指摘をしているのはただ観念的な指摘であって、実際的には心配がないのか、そういう実態についての問題でございまして、なければよろしい。けれども少量の八百長バイカイが行なわれて、それによってかってな値段がつけられて、それを相場として、そうして大量のバイカイのつけ出しがなされておるような実例はなかったかどうか。そういうようなことは心配はないか。またそういうようなときにいかなる取り締まりがなし得るかという問題ですね。取り締まりが困難であるのか、あるいは簡単に取り締まりができ得るのか、これを私は松井君の責任で調査を願って、あらためて本委員会にひとつその事実関係をつまびらかに御報告を願いたいと思う。  それから私一言だけ最後に伺っておきたいのですが、いま湊さんの御意見を伺っておりました中で私が非常に傾聴いたしましたことは、国民経済理想像、これはピープルズ・キャピタリズム、大衆資本主義である、こう言われた。これは主要企業株主が大衆性を持っておること、しこうしてその株主意思企業に反映すること、そしてその企業国民経済の目的に沿って運営されること、こうおっしゃられた。これは全く民主的な社会主義、要するに社会化経済とでも称するものでありましょうか、私はこれでけっこうだと思うのでありますが、そういうような理想像に到達するためには、いろいろな手段が尽くされなければならぬと思うのです。そういう意味でいま述べられたところによると、株主意見を尊重しようと思っても、企業の全資本の中に株主資本の占める割合は一六%である。したがって八四%というものは株主資本ではないんだ、だから尊重しようと思ったっても実際運用の中では実感が出てこない。だから尊重してもしようがない。結局は自己資本と他人資本とのこの資本比率の改善、改革をはからねばならぬ、こういうことだと思うのです。そうすると(究極するところはオーバーローンとオーバーボローイングを解消していかなければならぬ。これが当然出てくる当面の具体策だと思うのです。先生はどういうふうにこの具体策をお考えになっておるか。当面のオーバーローンの解消と当面のオーバーボローイングをいかなる手段を講ずれば解消し得るのであるか。現実論は別として一つの政策理論としてひとつこの際お述べ願いたい。
  91. 湊守篤

    湊参考人 たいへんむずかしい問題でありますけれども、いま当国会でも先ほどお話があったように論議されておりまする金融ルールの問題、あるいはさっき横山さんからおしかりを受けたけれども、増資ルールの問題、いろいろなそういう問題がいま出てきておるわけです。つまりいままでのそういった野方図に拡大してきたこの形態、そしてしかも企業資本構成がたいへん悪くなって、いわゆる企業の体質が悪くなって利潤率が低下する、こういうような不況が全体的にあらわれてきたというようなことにつながる問題、そういったのをいま言ったルールで解決していこうという考え方はほんとうはあまり好ましいことではございませんが、日本の場合は経過的にそうするしかないのであります。ただそのルールを官庁がおつくりになって、それををいわゆる統制的に発動されるということにはわれわれは張い反対を持っております。しかしながら、経済界の中で私かねがね自主調整ということばを言い続けてきた人間でありますけれども、やろうとしてきていままでそれがなかなか実現しにくかった面を考えますと、ここでどうしても政府経済界が一体になって、あるいはときには労働組合も一体になって、この日本国民経済健全化へ向かっていろいろな政策を出すなり、あるいはそれに対して対応していくということをしていかなければならない。ルールというようなものはそれによってお互いがお互いにしばるということで、一方的にしばりつけるというものではないはずです。さっき増資問題についてお話が出ましたけれども、あれもわれわれとしてはああいうものでもって株主権を代行するといいますか、株主の代弁をするという気持ちがありますけれども、これは結局強制できるという性質のものではなくて、産業界に向かってそういう気持ちで好ましい増資慣行をつくっていただきたい。それによってこの市場を育てていただきたいという願いから出ておるものでございます。そういうふうにいろいろろなルールへ期待して、皆さんで協力していい姿をつくり上げていくしかないので、一足飛びにさっき私が言ったような経済がつくれると思っておりません。この証券市場の問題もその中できわめて大きなプロポーションといいますか、大きさを占めているものでありますだけに、どうかこういう問題については今後も引き続き十分な御支援を賜わりたいと存じます。
  92. 春日一幸

    ○春日委員 時間が参りましたので、最後に一言申し上げておきますが、現実の問題といたしまして、証券市場が当面する破局を回避することのために、たとえば共同証券の設立、証券保有組合の設立等の応急的な措置がとられたわけですね。要するならば、出血するものに対して包帯を巻くとか出血どめの措置がとられて、当面オーバーローン、オーバーボローイングを解消することのために証券業界に対するその非常措置と同じような、何らかの見合う金融上の措置ですね、これを湊さんあたりは御研究になっておるかと思って私は質問したのでありますけれども、その点についてはまだ御着想が及んでいないようでまことに残念であります。  以上、いろいろと問題点を投げかけたにとどまるのでありますが、本委員会は少なくとも証券行政いかにあるべきかという問題については深耕細打する気持ちで、微に入り細に入り研究は積んでいるのです。ところが、ここで論じましてもかつての河野先輩をはじめとして松井君に至るまで、われわれの政策理論を列後に置いて、証券業界意見、欲望というものを優先させて、そうして当面を糊塗しておるところに今日わが国産業資本の非常なる危機を招来しておる。こういうことをひとつ先輩、後輩一緒くたになって猛反省の上、今後善処されんことを切望いたしまして、質問を終わります。金子(一)委員長代理 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人には御多用中のところ長時間にわたり御出席をいただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。  当委員会といたしましては、各参考人の御意見は、今後の法案審査に十分尊重反映せしめたいと存じます。ここに厚く御礼申し上げます。  次会は、来たる十六日午前十時より理事会、十時三十分より委員会開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十分散会