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1965-04-07 第48回国会 衆議院 大蔵委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月七日(水曜日)    午前十時五十一分開議  出席委員    委員長 吉田 重延君    理事 金子 一平君 理事 藤井 勝志君    理事 坊  秀男君 理事 有馬 輝武君    理事 堀  昌雄君       天野 公義君    伊東 正義君       岩動 道行君    奥野 誠亮君       鴨田 宗一君    木村 剛輔君       木村武千代君    小山 省二君       砂田 重民君    田澤 吉郎君       谷川 和穗君    西岡 武夫君       濱田 幸雄君    福田 繁芳君       渡辺 栄一君    佐藤觀次郎君       只松 祐治君    平林  剛君       春日 一幸君    竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     渡邊喜久造君         大蔵政務次官  鍛冶 良作君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         通商産業事務官         (企業局長)  島田 喜仁君         中小企業庁次長 影山 衛司君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    加治木俊道君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    柏木 雄介君         国税庁次長   喜田村健三君         農林事務官         (農政局農業協         同組合課長)  小山 義夫君         通商産業事務官         (重工業局次         長)      谷敷  寛君         労働基準監督官         (労働基準局監         督課長)    東村金之助君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 四月六日  入場税撤廃に関する請願今澄勇紹介)(第二  四九九号)  同(久野忠治紹介)(第二五〇〇号)  同(栗山礼行紹介)(第二五〇一号)  同(丹羽兵助紹介)(第二五〇二号)  金融機関拘束性預金禁止促進に関する請願  (田中武夫紹介)(第二七九三号)  中小企業特別税法制定並びに税制改正促進に関  する請願田中武夫紹介)(第二七九四号)  公務員共済組合短期給付費用の一部国庫負担に  関する請願(只松祐治紹介)(第二八二〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  税制に関する件  金融に関する件  証券取引に関する件  外国為替に関する件  派遣委員からの報告聴取      ————◇—————
  2. 吉田重延

    吉田委員長 これより会議を開きます。  本委員会は去る三月現地委員派遣し、山陽特殊製鋼株式会社倒産に関する金融問題等実地調査をいたしたのでありますが、この際派遣委員より報告を聴取いたします。金子一平君。
  3. 金子一平

    金子委員 ただいま議題となりました当大蔵委員会国政調査について、派遣委員代表して御報告申し上げます。  私ども一行七名は、山陽特殊製鋼株式会社倒産に伴う金融問題等について、その実情調査するため当委員会より派遣され、去る三月二十二日、姫路市においてその調査を行なってまいりました。  まず、午前中は、市内交友クラブにおいて、山特鋼下請企業等代表者並びに金融機関等代表者懇談し、次いで午後は、山特鋼におもむき、同社の幹部並びに労働組合代表者懇談いたしました。  以下順を追って概略御報告申し上げます。  まず第一に、下請企業等代表者との懇談でありますが、出席者は、下請企業者物品納入業者及び建設業関係者代表の十六名でありまして、各代表者からそれぞれ要望が行なわれましたが、おもなものを申し上げますと、  一、連鎖倒産防止のための救済融資は、長期、低利、無担保とされたい。  二、信用保証協会保証料を引き下げられたい。  三、現在担保に提供している定期預金を即刻解除して支払われたい。  四、債権償却特別勘定の設定による売り掛け金等の五〇%損金算入の特例を、三月決算法人ばかりでなく、二月ないし一月決算法人についても認められたい。  五、債権完全確保及び優先支払いを配慮されたい。  六、更生会社資材購入先更生債権者に限定されたい。  七、固定資産税を一、二年免除されたい。  八、手形サイトの短縮をはかられたい。等であります。  第二に、金融機関等代表者との懇談でありますが、出席者は、大蔵省銀行局近畿財務局大阪国税局大阪通商産業局兵庫労働基準局日本銀行神戸支店政府関係金融機関民間金融機関兵庫県、姫路等代表の二十一名でありまして、各代表からそれぞれ各機関が今回の倒産に関してとった措置等について説明が行なわれましたが、これらの内容を要約いたしますと、おおむね次のとおりであります。  すなわち、財務局は、適宜金融機関代表者を招集して連鎖倒産防止を要請するとともに、職員二名を姫路に常駐させ、金融機関個別指導に当たらせている。また、山特鋼振り出し手形で期間の到来したものについては、下請業者に対する単名手形に切りかえるほか、当面の運転資金の融通にも十分配意している、  次に、通産局は、富士製鉄等下請企業に対する仕事のあっせんと救済を要請しているほか、姫路職員を駐在させ、実態の把握と金融機関との連絡に当たらせている。また本省としては、神戸地裁から山特鋼会社更生手続の申し立てに関する意見を求めてきたので、保全処分弾力的運用によって、下請企業の使用人の給料及び小口債務の弁済については優先的に確保することが望ましいこと等を内容とする意見書を提出した。  次に、国税局は、下請業者等に対しては、租税徴収猶予貸し倒れ損失の計上など租税上の措置を認めているが、特にその処理手続を周知させる必要があるので、所轄税務署等において説明会を開催するほか、係長クラスを専属配置した窓口を設ける等の措置を講じた。  次に、日銀は、各金融機関代表者姫路に招集し、各金融機関取引先融資をした際には、日銀資金量については全面的にバックアップをするから、各金融機関は足並みをそろえ、かつ、それぞれの金融機関においては、本支店一体となって関連倒産防止につとめ血の通った支援をするよう、また、日銀取引がない銀行についても資金めんどうを見る旨指示した。なお、山特鋼自身再開資金についても協力したい所存である。  次に、政府関係金融機関は、取引の有無にかかわらず、山特鋼の影響をこうむるものは代理貸し制度でできるだけ配慮することとするほか、既住貸し付け条件を緩和する等積極的な態度で臨んでいる。  次に、神戸銀行は、山特鋼資金繰りは昨年十二月ごろから極度に悪化した。山陽を更生会社にすると影響するところが大きいので、当行をはじめとする銀行団は何とかしてそういうことでなく再建する方途がないか熟慮検討したが、赤字が意外に多いので、追加融資の見通しが立たず、三月三日荻野社長に、三月十日の決算日には金融面めんどうを見ることができない旨申し渡さざるを得なかった。そこでさっそく、大蔵大臣日銀総裁関係金融機関全国銀行協会等に協力の要請をお願いした。  また当行としては、特別相談室を設けて取締役を専属させ、関連企業から倒産を出さないよう努力している。なお、山特鋼早期再開を望んでいる。  次に、相互銀行は、三月初旬から財務局及び日銀から指示を受け連鎖倒産防止につとめたが、現地支店にまかせておくとそごを来たすおそれがあるので、山特鋼関係はすべて本社でまとめて処理することにしている。  次に信用金庫は、現在はともかく、これから五、六カ月ぐらいたつと政府当局をはじめとして一般の本問題に対する熱意がさめると思われるが、むしろそれから先のほうが大事である。また、山特鋼関係のない姫路地域の他産業にも不安ムードが波及し、他地域との取引に著しく信用を害しているので、その払拭について配意されたい。  次に、信用保証協会は、県が二千万円、市が三千万円を限度として損失補償をすることになったので、今後二十億円の保証が可能である。協会としては、県に特別室を設けてベテランを常置させている等であります。なお、兵庫県及び姫路当局からは、書面をもって要望がなされておりますが、重複する点がありますので、その内容は省略させていただきます。  第三に、山特鋼幹部との懇談会におきましては、荻野社長及び藤井社長等から、会社更生法適用申請を決定するに至るまでの経緯について説明を求めるとともに、派遣委員から、粉飾決算手形サイト社内預金等について質疑を行ないました。  第四に、山特鋼労働組合代表者との懇談におきましては、生産の早期再開再建計画における人員整理労働条件悪化の回避、社内預金早期優先支払い等要望されました。  以上が大体の経過でありますが、今回の調査を通じて、基本的な問題点と思考されますのは、融資ルールの問題、社内預金制度の適否、手形サイトの規制、紛飾決算公認会計士の監査に関する問題、農林系統資金融資に関する問題等でありますが、これらにつきましては、要望された事項とともに、今後引き続き当委員会においても十分検討を加えていくべき問題であると存じます。  以上御報告申し上げます。
  4. 吉田重延

    吉田委員長 これにて派遣委員報告は終わりました。      ————◇—————
  5. 吉田重延

    吉田委員長 税制金融外国為替及び証券取引に関する件について、調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。堀昌雄君。
  6. 堀昌雄

    堀委員 先般、当委員会から吉田委員長金子理事等とともに姫路に参りまして、山陽特殊製鋼実情について調査をいたしました。ただいま金子委員から御報告がございましたように、この問題の中には、実は現在の日本における金融上の諸問題が集約的にあらわれておるというふうに考えるわけでございます。またもう一つは、現在の設備投資の行き過ぎ、それから下請関係取り扱いに対する問題点、いろいろな角度で現在問題が非常に集約的に出ておりまして、私たちは、この山陽特殊製鋼倒産問題というものをこまかく分析をし、さらにその分析の上に立って批判をすべきことは批判をし、正すべきことは正していくということが、政府なり関係者のとるべき道であろう、こういうふうに考えるわけであります。  そこで問題は、大まかに申しますと、金融についての問題が一つございます。金融の問題の中では、都市銀行が異常な貸し出しをしておるという大口貸し出し等の問題がこの中に含まれておりまして、このことはただいま御報告のありましたように、いま当委員会金融小委員会議論をいたしておりますところの融資ルールにも、いみじくも関係を持っておる問題だと考えるわけでございます。  二番目には、外国銀行からの借り入れが行なわれておりまして、この山陽特殊製鋼倒産は、海外における金融機関において非常に大きな話題を提供し、日本企業とその企業保証をしたところの日本金融機関信用上の問題について非常に大きな問題を出したということは、はなはだ遺憾でありますと同時に、今後のインパクトローン等借り入れ等についても多くの問題を残したのではないかというふうに感じるわけであります。  三番目は、借りられるところからはすべて借りるということでありますが、都市銀行数行参加をしておるだけではなくて、相互銀行信用金庫等、あらゆる金融機関相当多数これに参加をしておるということで、これらの金融機関との問題があると思います。  その次には、飾磨農業協同組合がどういう仕組みでここに金を出しておったかわかりませんけれども、これも非常に複雑な経緯の中で、七千万円をこえる資金が貸し出されておったという点、問題が一つあると思います。  もう一つは、すでに新聞にも二、三出たと思いますけれども、サッスーンシルベアというユダヤ人商社が、円で相当多額貸し付けをしておるという事実もあらわれております。これも聞くところによると、相当高利の金利で取り扱いが行なわれておるというようなことでありまして、まことに複雑怪奇な問題といわなければならないわけであります。これらについて、まず金融についてお伺いをいたし、その次に税の問題、公取のほうでは異常な手形サイト取り扱いの問題、あと設備投資あり方等についての通産行政の問題、公認会計士処分等をめぐって、今後の粉飾決算に対する措置の問題、実に問題は多岐にわたっておりますので、一応最初に大体質問の要点を申し上げて質疑に入りたいと思います。  最初銀行局にお伺いをいたしますけれども、今回の倒産のときにあらわれておりますところの金融機関からの借り入れ金実情をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  7. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 昭和四十年二月末現在の数字を申し上げます。  普通銀行からの借り入れ金百二十六億三千八百万円、そのうち神戸銀行が五十七億四百万円、三菱銀行二十二億六千六百万円、三井銀行二十五億七千百万円、富士銀行十一億五千三百万円となっております。長期信用銀行からは、合わせて十四億六千三百万円の借り入れをしておる。信託銀行四十二億九千八百万円、外資が四十二億二千六百万円、その他金融機関が五十八億四千七百万円でございまして、このうち大きなものは、保険会社の四十三億七千五百万円でございます。商社からの借り入れ金が四億五千五百万円、その他二十億九千三百万円となっております。
  8. 堀昌雄

    堀委員 都市銀行のほうからお伺いをいたしたいと思いますけれども、いまのお話の百二十六億のうちで、五十七億神戸銀行貸し出しをしておるということでありますが、私ども大口貸し出しを規制したい、あるいは融資ルール等処理をしたいと考えておる一つの典型的な問題点としてここにあらわれておるのではないかと私は思うのであります。この神戸銀行は、私が参りましたときに、あそこには平木という常務派遣をしておって、こういう貸し出しが継続して行なわれておる。二番目の三菱銀行は、ここに副社長を送り込んでいて、やはり相当の額の貸し出しが行なわれておる。ただ私がちょっとここで奇異な感じがいたしますのは、神戸銀行から出しているほうが、実はメーンバンクになっておるのに、ここからは常務が行っておって、三菱メーンバンクではなくて、順位からすれば三番目ぐらいであるにもかかわらず、これが副社長になっている。ここらあたり、私どもなぜこういうことになったのか、どうも理解に苦しむのですが、そこで行って見て、この人たちの話を聞いてみると、われわれはどうも会社実情がちっともわかっていませんでした。あなた方粉飾決算というのを知らなかったのですか、知りませんでしたというような答弁が実は行なわれておる。私はこれを見ながら、日本金融機関というのは、これはこれまでも私よく議論をいたしますけれども、つぶれない世界で唯一の銀行ではないかと私は思っておるのです。預貸率が一〇〇をこえておるわけですから、原則ならこれはとうの昔つぶれておるべきものがつぶれていない。その銀行がそういう預貸率の状態であるにもかかわらず、五十何億も金を出して人を出していて、その出した人間が相手先会社実情もわからないということは、日本銀行というのはかなりでたらめな銀行だという印象を、海外相当にそういう評価をしておるのではないかという気がしてしかたがないのです。これは海外一つそういうのがありますが、もう一つ下請人たちも私どもにはこう申しておるわけです。われわれはこれだけの大きな銀行が副社長とそれから常務派遣して金を出しておる、銀行だからまさかつぶれるとは思わなかった、そういうことがなければわれわれも考えたけれども日本都市銀行というものはそういう点ではきちんとしておる銀行だと思っておったにもかかわらず、その人たちは行っておって何をしておったかわからないけれども、われわれは何も知りませんでしたというようなことであるというのは、これは私非常に重要な問題ではないか、こういうふうな感じがするわけです。そこで貸し出しの問題はいま金融小委員会でやっておりますが、よろしいですか、一体都市銀行というものは金を貸してその会社がどうなるか等については何らかのそういう判断をしておるのかどうか。これは日本銀行がカバーをしなければ、よその世界の他の国の銀行のような形でこの事件が起きたならば、私は神戸銀行はつぶれていたのではないかと思うのです。取りつけによってつぶれていたのではないか。ただ日本の場合には三菱銀行が副社長を出しておったからというわけではないでしょうけれども、まことに適切に宇佐美総裁はこの問題については日銀が全部責任を持つという発言をなさって、これで私は三井三菱はそういう余波を受けないで済んだのではないか。ちょっと私の思い過ごしかもしれませんが、さらっと感じても何かそういう感じがしてならないような措置が今度はとられておる。この点について都市銀行というものはもう少し責任を明確にして、自分たち貸し出し先については預金者に対しての責任を果たすべきではないのか、こういうふうに思うのですが、ちょっと大臣は途中でお入りになりましたから、先に銀行局長から答えてもらって、大臣にもひとつお答えをいただきたいと思います。
  9. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 全く堀委員のおっしゃるとおりでございまして、私どもそれに弁解の余地はございません。ただ山特鋼の場合は数ある貸し出しの中でももう異常に過ぎるものではなかったか。私どもはっきりしたほんとうの正体はつかんでおりませんが、有価証券報告書が出ておりますので、それとつき合わして銀行側等あとからどこに違いがあったかということを見てもらいますと、主要な項目のすべてにわたって粉飾が著しく行なわれておった。実は税のほうの申告もとってみましたところ数期前から赤字申告になっておりました。赤字申告が累計で九月決済期で六十何億円かになっております。それが決算書の上ではすべて黒字決算になっておる。数億円の黒字を毎期計上しております。したがいまして、税のほうはちゃんと税を払わないでおるのですが、一方では黒字にして配当を続けておった。むろんこれはタコ配でございます。商法違反であります。商法禁止に触れておるわけであります。いろいな点ではなはだしく粉飾が行なわれておって、またそれがなぜ把握されなかったという点は、都市銀行等の審査がきわめてずさんではないかという指摘を受けるのもやむを得ないと思います。とにかく売り掛け金の操作、これは一般粉飾する場合にいわば手口としてはたいへん多い手口のように思いますが、架空の売り掛け金が計上される。それからこの会社だけではありませんが、売り掛け金で実は回収不可能とすでに認定されておるものを落とさないでおるというのが非常に多いように私ども思います。それから一方でその資産面売り掛け金相当多く計上しておるほかに、建設勘定がからんでおる。ことに支払い利子のある部分が建設勘定にみんな乗っけられておる。そのために水ぶくれになっておるということがあります。それから一方反対側のほうでは買い掛け金のほうは圧縮されておる。だから貸借対照表の両面にわたって非常な粉飾が行なわれておる。私は個人的な意見でございますが、売り上げ金がちょっとおかしかったのではないか。何か会社からの報告によりますと年間売り上げが二百億円となっておりますが、あとから調べたところによりますとせいぜい月十二、三億円の売り上げにすぎない。十二、三億円の売り上げでありながら金融機関を中心とした借り入れ金合計額が三百十億円になっておりますから、三百十億円借りて年間売り上げが百四十億程度としますと、とても引き合ったものではない。その面からもおかしいということがある程度つかめなければならない。また山特鋼社長が非常なワンマンでございまして、銀行のほうから専務——先ほど常務とおっしゃいましたがあとから神戸銀行専務になっております。それから三菱のほうは副社長であります。この人たち銀行から派遣されたということになっておりますが、派遣と違うのです。銀行側からは出向させるという場合があります。出向の場合にはいもがついておりまして、これはまた戻ってくる。この両名の場合は行ったきりなんです。やめて行ったということなんです。ですから天下りみたいなものでございますが、約一年余り経過しておりますので、だから内部におってもう少しつかめなかったんだろうかという疑念が生じますが、荻野社長のいろいろなやり口が相当徹底しておった。重要な経理事項についてはなるべく触れさせないようにしておったのだということもございます。それから経理担当につきましても縦割り政策で横の連絡はとらせないようにしておる。自分たちほんとうに掌握しておる、あるいは自分のほんのわずかの腹心の者にだけ実績がつかめ、他の者にはさわらせないようにしておったというような事情があるようでありました。かなりその裏には威圧めいたこともあるようでございまして、多少銀行から行きました重役も気の毒な点もないではございません。しかし銀行調査といたしましてこれほどずさんであるとはやや意外な次第でございまして、その点これからいろいろな問題につきまして十分銀行側に全体といたして反省を求めたいと考えております。
  10. 田中角榮

    田中国務大臣 大体銀行局長が申しましたとおりでございます。ただ私はもう一つつけ加えて申し上げると、徹底した経営であるということは、銀行から行った副社長の話ですが、君は経理担当などということではなくわしの後継としてやるんだから大いに勉強しなさいということで、工場へ行っておるうちにこうなった、こういうような話も聞いております。まあいずれにしましても正さなければならない問題がたくさんあると思います。いまいろいろな問題の中で私が最も注目しておりますものは、銀行へ出す書類が銀行別にみな違う、こういうこと、そういうことをやっておると、どれがほんとうなのか、経理担当の者自体もわからなくなってしまう。そのほかに税のほうは別な決算を出しておる。こういうところに問題があるわけであります。でありますから私はこの山特鋼の問題だけではなく事業が急激に伸びておるために主管者自分の能力を越えておるということで、なかなか会社実態をつかんでおらないというような問題もあると思います。それからいま苦しい会社は、決算をするときには自分在庫製品全額株を持っておる商事会社利益を計上して売り払うという形式をとって決算をする。来期にはもう少しよくなるだろう、そのときには買い戻せばいい。今度は自分の子会社利益を付してまた買い戻す、こういう決算が常識化しておるということになったら、これはもう何をか言わんやで、もう経営者態度そのものから正していかなければならぬと思います。でありますから、問題は上場しておる会社、いわゆる不特定多数といわれる人から資金を集める。こういう人は表に出る決算書信用する以外にないわけであります。その決算書相当な権威のある経緯を経て公表されておるが実際の決算は全く違うものであれば、これは詐欺のようなものになるわけであります。でありますから、これからは証券取引法における、今度御審議を願っておりますが、大蔵省検査権という問題が一つあります。それから証取法でもっと検査をやるということを規定する場合、これよりも優先すると思われる商法の規定をどうするのかという調整の問題がございます。それから取引所がもっと検査をしなければならないという面もあるでしょう。それから公認会計士がいまのような制度では徹底するわけにもまいりませんので、公認会計士というものの共同監査ということにしますか、公認会計士会というものに対してもっと法律上義務を負わすべきかというような問題もございます。  銀行につきましては銀行局長が申しましたとおり、銀行から出向ではなく、大体ある年齢にきますと大口貸し出し先の重役に入る。こういうことをやっておるとどうしてもここでうまくいかなくてもまた別のところに世話してくれる、こういう面もあるでしょう。ですからこの間銀行協会の首脳部に会ったときにも、銀行は直接やって、こんなことが幾つも出たら銀行信用にも関する。だから経営コンサルタントのようなものをつくって、そこへみんな押し込めておって、そこに籍を持っておって、そこから管財人を出したり会社の整理をしたりてこ入れをしたり、こういう制度ができないか、こういうことも相談をしておるわけでありまして、企業の形態が非常に複雑になり非常に膨大なものになる。同時に経理書類、その書式が非常に複雑だ。全く経理担当しておる専門家以外はよくバランスがわからぬ、こういうところにも問題があるわけであります。ですからこれは極端な例でありますが、税金を幾らか免れるためにいろいろな書類をつくっておるうちに、税金の何十倍も大きな穴があいた、こういうケースもあるわけであります。ですから山特鋼問題等を契機にしてあらゆる角度から、公表されるものと実際のものが同一のものでなければならないということを何らかの方法でこれを徹底せしむるというような制度上の問題を幾つか解決していかなければならぬ、こんな考えを持っておるわけであります。
  11. 堀昌雄

    堀委員 実はいまの問題点都市銀行にしぼって問題を言っておるわけなんですが、なるほど都市銀行から行った二人は出向ではなくて天下りですか、要するに定年退職者を送り込んだという感じだと思うのです。しかし銀行というのはずいぶんあちこちそういうのを入れていると思うのです。外から見ますと、銀行から人が来て幹部になっているということは非常に連帯責任を持ってくれるんだという理解をしておるわけです。そこで私ども直接に副社長にも聞きました。月計表が三カ月くらいおくれておるけれども、どうしてこんなにおくれるのかなと思って調べているうちにこうなりましたとかいうことです。しかしずっと私が聞いて感じたのは、なるほど出向とそうでない人との差はこれだなと思ったのです。彼らが三菱銀行から来たにしても山特の中で余生を送ろうという姿勢があったのではないか。もし出向で来て帰る人間なら銀行代表してもうちょっとやったのではないかと思うのです。しかし外部からは出向で来た者か天下りで来た者かについての差はあまり気にしないで、そこがああいうかっこうをしているからということになりかねない。ですからこの点は私は非常に重要な点だと思いますので、天下りをさせた会社についてはその銀行責任を持つのだ、出向と同様に責任を持つのだという姿勢でなければ人を幹部に出さないでもらいたい、はっきり言うと。だからそうするから変なくされ縁のようなことになって、ずるずると五十七億もの貸し出しが起きてきたということは、預金者に対して私どもはまことにこれはもう申し開きの余地はないのではないか、こういうふうに感じます。この点はひとつ銀行行政として、銀行幹部がそういう天下りをする際についても出向と同様に銀行責任をとるかまえで処置をするという方向で指導してもらいたいと思いますが、どうでしょう。
  12. 田中角榮

    田中国務大臣 あなたと同じような考え方で銀行協会の皆さんとも話し合いをしております。おりますが、これは天下りというのではなく経営者のほうでひとつ専門家をぜひお願いしたい、こういうことになるわけです。それが人から見ると銀行と一体だ、こういうところをねらっておるということもあると思います。ですから銀行から出た以上、大衆から見れば銀行が一体になって、あの銀行から重役が入ったんだから、しかも副社長専務が入ったんだから金は幾らでも出すのだろう、こういうことになるわけでありますから、これから銀行から出すとすればひとつ優秀な人材を出す、とにかくそういう一点に尽きると思うのです。これは銀行から出しちゃいかぬといっても、これはちょうど官吏を一生官吏としておくならば別ですが、そういつまで——そういう意味で優秀な人材をもらいたい、こういうところでやりたいという人と一致すれば人が出ていくわけですから、出ていく人をここでとめるということになったらたいへんだと思います。ですからそうではなく、いやしくも行った以上、自分企業に就職をしたというだけではなく、自分の経歴が社会に及ぼす影響ということを考えて、自覚を持って働いてもらうということを徹底せしめるべきだと思います。同時に協調融資をしておりますと相当大きな金を出しておりながら、だれかやっておるのだろうということで監査が不徹底になる。こういうところにはやはり現役の会社調査団というようなものをつくって十分経理を把握するというようなことで、より合理的にやるべきだろうという考え方を持っておるわけです。銀行からどこにも行けないということになると困りますし、銀行の人はとにかく経理に明るい。明るいことは明るいのでaが、明るい自分の特技を十分生かしてもらわないと、これから銀行から出ていく人のために出非常にふためになるわけでありますから、これからは銀行から出られた諸君とか官庁から行った人たち、こういう人たちは、自分の持つ外部に対する影響ということを十分みずから評価をしながら、ひとつ徹底した仕事をするようにしてもらいたいという考え方であります。
  13. 堀昌雄

    堀委員 私が言っているのは、行っちゃいけないというのじゃないのです。人を出した以上、その銀行として責任を持つという姿勢にしてもらわないと、あれは銀行から行ったけれどもあれはらちの関係じゃないんです、もううちはやめて行ったんですからというようなことでは世の中は済まないということなんです。だから出す以上は、その出し方は、それは向こうから来てくれといって出そうと何だろうといいです。しかし少なくとも銀行のかなりの幹部であった者が向こうに行って取締役以上になる場合については、銀行は少なくともその会社保証したと同様な一般的な効果を及ぼしておるという認識の上に立って、銀行が姿勢をただしてもらわないと困る、こういうことを申しておるわけですから、そういう線で、大蔵省としてはひとつ厳格な線で銀行側に対する指導をやってもらいたいということを申し上げておきます。
  14. 吉田重延

    吉田委員長 関連質問を許します。有馬輝武君。
  15. 有馬輝武

    ○有馬委員 先ほどの堀委員の質問に対する銀行局長の答弁に関連して一つだけお伺いをしたいと思うのです。その答弁を聞いておりますと、銀行局長もまるで気楽に答弁をしておる。よそ様のことだというような態度がもう歴然としておるわけです。私がお伺いしたいのは、銀行法の二十条、二十一条の調査権なり検査権というものが現在までどういう形で行なわれてきたのか。それといま一つは通産省の出先、こういったものとどういう連携をとって企業の健全な発達と、それに対する金融のあり方についてどのような指導をしようとしておるのか。これは昨年の北九州の鉄鋼関係倒産に次ぐ四十社ぐらいの関連倒産があった。そのときにも私たち国政調査に参りまして、一番感じたことは、都市銀行あるいは相互銀行だけではなくして、政府の出先機関までがどたんばにならなければ何も手当てをしない。わかっていながらしない。融手が乱発されておるのにかかわらず、これは銀行筋で見れば、もうすぐわかる、それを半年近くも放置しておる。どたんばにならなければ手当てをしない。先ほど、金子委員からの御報告を伺っておりましても、各行、都市銀行政府金融機関相互銀行、すべて関連倒産防止するためにはどうしなければいかぬか、この急場をどうしのがなければいかぬかということだけを委員の各位に話をしておられて、こういうところまでくる過程でどういう手当てをしたかという点については御報告がないわけです。ぼくらそこら辺に一番問題があるのではないかと思いますので、この二十条、二十一条に関連して、正常な金融のあり方というものに対して銀行局はどのような指導をされようとしておるのか、この点をいま少しお聞かせをいただきたいと思うのです。
  16. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 検査は行なっておりますが、従来はまあこれは検査の定員もございますから、非常にひんぱんに行なうわけにはまいりませんで、通常地方銀行の場合には二年に一回ぐらいの周期です。ただし、これはさまっておりません。問題のある銀行につきましては、もっと周期を縮めてやっております。それからその中間において、大体その間にはまるようになっておりますが、日本銀行に考査局がございまして、そのほうの考査も行なわれます。ですから、通常の地方銀行等については、おおむね一年に一回ずつ日銀及び大蔵省検査を受けていることになります。都市銀行につきましては、従来は周期が長くて、四年に一回ぐらいになっております。したがって、その間に日本銀行から入りますから、二年に一回ぐらいの割合になっております。  検査の回数についてはそのようになっておりますが、検査のやり方といたしまして、主要な貸し出しにつきましては、一件一件全部調査表に書き込みをさせます。つまり、手形につきましても、一件一件記載せしめるのであります。しかし貸借対照表のようなものにつきましては、それを、つまり山特鋼の場合ですと、全然うそで固めたような貸借対照表が毎期連続してつくられておるわけです。これを見破ることが事実問題としてできなかった、こういう点に遺憾な点はございますが、相当多数の件数につきまして、都市銀行ですと、大体三週間ぐらいの日時をもって数名の者がかかって検査をするわけでございますが、その相手先企業が非常に数多くございますので、貸借対照表そのものがうそで固めてあります場合に、それを見抜くだけの能力といいますか、その仕事の上にある程度限界があるということでございます。しかし、このようなことに対しまして、私どもはそれでよいとしておるわけでございませんで、いずれこれは実際に行なうっもりでありますが、銀行調査の方法、審査の方法についてもっと深く突っ込んだものを徴求してやるように、また、資料をそのまま信用するということでなくて、それらの資料にうそがないかどうか、縦、横にこれをながめれば、ある程度そういうことができるのではないかと思いまして、そういうことが実際問題としてできるだろうかどうかを十分検討し、また特別に私どものほうで調査を行ないまして、主要な貸し出しにつきましては、少なくとも従来のような通り一ぺんの書類でなしに、深くせんさくして審査を行なうように打ち合わせをしたいと考えております。  それからもう一つ、北九州における融通手形のような問題、それを乱発されておったのをなぜ未然に察知して防げなかったかというお話でございますが、これは私ども、ちょっと無理ではないか。いまでも全国的に見て主要都市などには融手が乱発されておるという話は私どもは聞いております。しかしそういう数多くの融手について私どもが何か追いかけ回してみても、容易にこれは把握できるものじゃありません。もっとも金融機関の中には、北九州における場合などを見ますと、融手ではないかという疑いを持って、ほとんどその割引に応じていなかった——あとからわかったことでございますが、融手の問題にほとんど関連しなかった金融機関もございます。この場合におきましては、どちらかと申しますと都市銀行がわりあいにそういうものを敬遠しております。それから地方銀行がその次にかかり合いが少なかった。相互銀行等がひっかかっている例が多い。つまり融手であるかないかの判別ができなかった、そういうことでありまして、まあ銀行の窓口におればあるいは部分的に察知し得る場合もあるかもしれませんが、財務局等がそういったものを把握するということはまずほとんど不可能に近いことではないか、結局その事態が起こってしまってからあと始末に狂奔するというふうな始末になるわけで、その点申しわけないと思いますけれども実情としては、融手そのものを私どもが把握するということは非常にむずかしい。ただ、銀行等には、そういうものをなるべく見抜いて、かかり合いにならないように、つまり融手が乱発されるのは、割引される、あるいは貸し出しのために何か種になるからでして、金を借りられなければ融手というのは実は意味がないわけです。そういうことでございますから、金融機関の窓口において厳選して、よく注意をしてそういうものを遠ざけるよう、指導は十分につとめてまいりたいと考えております。
  17. 有馬輝武

    ○有馬委員 そこで大臣にお伺いしたいのだけれども大臣の先ほどの答弁でも、銀行局長と同じて、そういった事態を見抜くについて限界がある、そういう答弁でありましたけれども、いまの銀行局長の答弁にしても、なかなかむずかしい、ぼくはそこがわからぬ。たとえばこれはケースは違うけれども、事徴税に関しては、疑わしいものは徹底的にやる、業務を停止させても調べ上げて、とにかく音を上げるまでは締め上げる、そういった機動力と人員の配置とすべてをかけてやっていながら、こういう問題に対しては限界があります、そういうことでは、私、どうも疑問が残ってしょうがないのですよ。この点について通産省なり財務局なり、こういった連携はどういうぐあいにやっているのですか。たとえばいま問題になっております安定ルールに乗せる方途というものも、そこら辺がちゃんとしていなければ私は口頭禅に終わってしまうと思うのですが、大臣から御答弁願います。
  18. 田中角榮

    田中国務大臣 いま銀行局長が答弁をしておりますとおり、なかなか現実的にはむずかしいということは事実でございます。ですから、証券取引法に見ましても、とにかく大蔵省が届け出を受けて検査をするというあれがあるのですから、検査権を発動するという場合どうするかといいますと、この条文がありますし、確かにやらなければならないのですが、検査権を発動して一体できる人員かと考えると、なかなか人員は間に合いません。そこで大蔵省検査権を発動するということになると、これは徹底してやらなければいかぬ、こういうことになるので、事実こういう条文がありますが、検査権の発動ということはむずかしいのです。これを銀行行政にあれしますと、銀行法を非常にこまかく規定をして大蔵省がやるということにした場合でもなかなか問題がありますので、金融機関に、ひとつこういうことがないように十分やりなさい、こういう行政指導をするしかないわけであります。ところが金融機関も数が多いし、相手が非常に膨大になっておるし、もう一つは、あまり金融機関が強くやってしまうと相手の信用に関するとか、こういういままでのものの考え方というものを正さなければいかぬということを考えておりますが、そういう意味でつぶれてしまうところまでいってようやく手をあげてしまう。手をあげるまでは、もっと何年間か前から十分検査をしたり、てこ入れをするひまがあっただろうというのですが、信用に関するというようなことで、最後のどたんばになって各銀行が鳩首会議をして、もうここらでだめですな、こういうことで投げ出す。投げ出すときにはどうにもならない、こういうことになっておるわけであります。ですから、大蔵省がやるべきことは、大蔵省自体がやるということよりも、金融機関に対する金融行政の上で、貸し出し先内容というものを十分把握をして、そして預金者に迷惑をかけないようにという指導は当然すべきであります。ですから、いままではよくやっておりましたが、こういうことになりました。こういうことであると思いますが、やはりそこに問題があったということは十分私も理解できます。ですからこれからは金融機関に対しても相手先を十分ひとつ考えて、また事前に手を打てばつぶさないで済むものもありますから、そんなに膨張させないで、正常な成長をさせられるということでありますから、金融機関の自覚を十分促してまいりたい、こう考えます。ところが、これは変にやりますと——いま私が困っているのはある時期うしろ向きの資金でも、中小企業等に対しては出さなければいかぬ、こういう指導をしておるわけであります。ところが金融機関は、この山特だとかサンウェーブの倒産を機にしまして、今度は相手の正体を十分見なければ、もう次の金も貸せない、こういうことになりつつあるわけであります。これは私たちがいま考えておる考え方とは逆な面もあるわけであります。ですから将来については、十分慎重に預金者を保護しながら、的確な貸し出しをやってもらいたいという行政指導をするとともに、いま連鎖倒産とかそういうおそれのあるものに対しては、多少うしろ向き資金ともいうべきものでも出させなければならぬ、こういう調整をやっておるわけでございます。ですが、これからはやはり一年とか二年とか三年とかの間には、正常な成長と正常な金融という状態までに持っていくために、あらゆる角度から検討してまいりたいと思います。  ただ融通手形というのは、落ちなかったときに初めて融通手形でした、こういうのであって、どこまでも融通手形じゃないかといっても強弁するわけです。融通手形でありません。相手に聞いてごらんなさい。相手に聞いてみても、正常な商品代金でございます、こういうところに問題があるわけであります。この間の下請代金支払い遅延防止法の改正のときも、ひとつ罰則をうんとつくりたい、こう思って検討してみたわけてございますが、いますぐにできないということで、将来の問題として十分検討してまいりたい、こう考えております。融通手形を出した人は、出していろいろな問題を起こしたときは、今度は何年間か取引口座は開けないとか、いろいろなことをいま考えておるようであります。あまりこれも強くやり過ぎると、角をためて牛を殺すということにもなりますので、実情を十分把握しながら、漸進的に正常な状態に追い込んでまいりたい、こんなふうに考えております。
  19. 堀昌雄

    堀委員 そこで銀行局長にちょっとお伺いしたいのは、最近一連の倒産がずっとございました。この倒産関係のあった都市銀行日本特殊鋼、サンウェーブ、富士車輌、大きなちょっと目立ったところですが、たくさん言えば切りがないが、これの関係銀行をちょっと言ってもらいたいのです。  これはこの前当委員会で新格づけ基準という問題を議論したことがあるのですが、そういうぶつ倒れるようなところへ、もっぱら金を貸しておる銀行というのは、私に言わせれば調査が不十分だと思うのです。少なくとも現在の近代的な経済というものは、調査が一番中心にならなければならないと私は思うのです。調査機構が十分にあるならば、こんなことがわからずに済むはずはないのですよ。私に言わしたら全く銀行経営者責任感の欠如だと言いたいのです。ともかくこれは預金者の金なんですからね。自分たちの金を貸しているのじゃない。預金者の金を預って——現在の銀行法はわれわれ非常に不満足だと思うが、預金者保護にだけは一応一本筋金が入っておる銀行法がある中でこういうことが行なわれておるということは、まことに私は重大な問題だと思うので、いま私の申し上げました、最近の倒産会社融資をしておる主たる銀行都市銀行の名前を出していただきたい。
  20. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 主たる金融機関を申し上げます。  日本特殊鋼は第一銀行三菱銀行でございます。サンウェーブは、これは都市銀行ではございませんで、メーンバンク日本信託銀行でございます。これが非常に大きくて、ずっと下がりまして三和銀行でございます。それから富士車輌は三和銀行でございます。
  21. 堀昌雄

    堀委員 いま伺いますと、山陽特殊製鋼日本特殊鋼それからサンウェーブ、富士車輌については三菱銀行は二つもひっかかっているわけですね。   〔委員長退席、藤井委員長代理着席〕 この頭取は現在日本銀行の総裁でありますけれども、これは私、都市銀行の番付からいうと、富士銀行に次いで預金量は二番目ということであります。私は三菱銀行がこういう状態では、調査は必ずしも十分とはいえないのではないかという点を感じます。  そこで、この問題を契機にして、当然これは銀行がやるべきことなんですけれども、私どもがここで問題にするというのは、資本主義の原則からいうならば、銀行経営者が恥入らなければならないことだとは思いますけれども、しかしわれわれは預金者保護の立場からするならば、やはり言わなければならないことをここで言っておかなければならない、こう思います。  ついては、今後こういう問題を防ぐためには、都市銀行はさらに強力な調査機構を設けて、その調査を十分に通ったものでなければ貸し出しはしないのだ、都市銀行貸し出しをした以上は——これは中小企業は別ですよ。少なくとも上場会社等について倒産が起こるようなことについては、もう少し責任が明確になるような措置を、銀行のあり方として今後私はやってもらいたい。それはこの都市の中にも、私が知っておる範囲ではきわめて完備した調査機構を持っておるところがあります。そこは大体倒産に全然タッチしていない。最近ずっと見ていまして、一つもその銀行倒産したときにタッチしていない。それはなぜかといえば、完備した調査機構がその銀行の主体的な力を握っておるからです。近代的な経済の中ではあたりまえのことだと思うのです。それほど外部からは都市銀行というのは組織もりっぱで安心できるものだというふうに思われておるけれども、内部は、今度のこの案件を見ながら、意外に都市銀行というものは調査能力もなければ、そういう貸し出し等についての責任感も希薄であるということを痛感をいたしましたので、この際ひとつ都市銀行に対して、そういう信用調査機構といいますか、それを十分補完をして、貸し出し等について、特にこれらの大企業の大口貸し出しについて、自今問題のないような措置をとるような指導をしてもらいたいと思いますが、いかがですか。
  22. 田中角榮

    田中国務大臣 預金者保護のたてまえから考えましても、健全な貸し出しを行なうように、あらゆる角度から機構を整備するということは当然のことでありまして、こういう問題に対しては絶えず指導もしてまいったわけでありますが、これからもひとつそういたしたいと思います。  それからこれはいま非常にむずかしい状態でありますので、あまり強く言いますと、いますでに山特綱を契機にしまして、銀行は金があっても内容をよく見なければ貸せられないということで困っている企業もあります。ですから実態をよく見きわめて、そうして倒産をしそうな状態である場合にはうしろ向き融資をしなさい、こういうことを言っておるわけであります。それからこれはうしろ向き融資なのか、前向き融資なのか、全然実態をつかまないでいままでやっておったというところに問題がありますから、実態をよく把握をしながら貸し出しを行なうということは当然のことであります。  もう一つ、私も長いこと考えながらなかなかできなかったのは、今度の倒産の例を見ますと、例外なく過小資本であるということであります。ですから企業がよければ、内応がよければ、幾らでもペイすれば貸せられるのだというような考え方よりも、やはり自己資本と他人資本、外部資本との比率ということに対しては、新しい立場から考えていかないと、今度のこの山陽特殊製鋼で一番大きな問題は、外債市場が一時混乱をした。これは、まあ日本全体の経済から見たら山陽特殊製鋼などというものは大した問題じゃないと思っても、世界的な視野から見ますと、日本産業はみなこんなんじゃないか。非常に大きな問題であります。そういう意味で、融資の限度とその資本の比率という問題も、いますぐやれば混乱を生ずるわけでありますから、やはり長い目で見て計画的にそういう一つのラインをつくるということも必要だと思います。まああらゆる意味で、いろんなことが言われておりますけれども金融機関の自覚と責任というものを十分徹底させてまいりたい、かように考えております。
  23. 堀昌雄

    堀委員 いまちょっと大臣もお触れになりましたが、二番目に、今度は外国銀行からの借り入れの問題が出てまいります。これは所管は国際金融局だと思いますが、外国銀行からのインパクトローン及び国内支店からの貸し出しの状態、それから保証の状態、一体いつ貸し出しが行なわれたのか、その時期、それから今後の措置等について、ちょっとあらましをひとつお答え願いたい。
  24. 柏木雄介

    ○柏木説明員 山陽特殊製鋼に対しますインパクトローンは三〇ございまして、三十八年の六月にバンク・ランベールから五百万ドル貸し出しが行なわれております。それから三十九年の五月にバンク・オブ・ロンドン・アンド・サウスアメリカから三百万ドル貸し出しが行なわれております。それから三十九年の十一月にチャータード銀行から三百万ドルの貸し出しが行なわれております。最初のバンク・ランベールの融資につきましては、三菱銀行保証しております。それから二番目のバンク・オブ・ロンドン・アンド・サウスアメリカの融資につきましては、三菱銀行神戸銀行保証いたしております。最後のチャータード銀行融資につきましては、神戸銀行保証いたしております。このほかに、国内でコンテ・ナショナル・シティという銀行の支店が二億五千万ドル貸したとありますが、これは銀行局のほうから御説明があってしかるべきだと思います。
  25. 堀昌雄

    堀委員 いまお聞きのように、外国銀行が三行、インパクトローンを総計一千百万ドルにわたって山陽特殊鋼に貸し付けをしておった。これの保証三菱銀行神戸銀行がしておったわけですが、これは、私ども新聞紙上でも見ましたけれども、これらの外国銀行にとってはまさに青天のへきれきだったろうと思うのです。少なくとも日本の主要なる銀行保証をしてインパクトローンの形で——三十八年の六月、これはまあちょっと時期が古いからやや無理かもしれません。しかし、三十九年の五月、三十九年の十一月などという時期に、貸したらすぐつぶれたなどということは、これらの銀行にとっては致命的な信用に対する損害であったろう、こう思うのです。これは、私は日本全体として見ても、外国銀行がそのような不測の災難を受けたことに対してはまことにお気の毒な感じがしてならないわけですが、しかし、これもやはり日本都市銀行が中に介入しておったからこそインパクトローンが行なわれたのであって、直接山陽特殊製鋼が貸してくれなんといってもなかなかそう簡単に貸したりしないのではないかと思うのですが、今後、そのインパクトローンの取り扱いについて何らかの——もちろん国内の問題としてもありますけれども、インパクトローンというものがこういう形になった場合における国外における信用の問題はまさに、いま外債等でもお触れになったけれども、単にそのことは企業倒産だけではなくて、日本金融機関信用の問題に重大な影響を及ぼしたと思うのですが、これらについて、大臣、今後の措置を何らかお考えになっておるかどうか。
  26. 田中角榮

    田中国務大臣 この山特鋼が外国に与えたショックというものは、私先ほど申し上げたとおり、日本の経済界から見れば小さな問題であっても、国際市場から見て非常な影響があったというふうにも考えられるわけであります。でありますから、こういう山特鋼の外債につきましては、銀行筋は直ちにでも返債をするということで話をしておるようでございますので、相手方も非常に落ちついております。おりますが、将来、これからのインパクトローンの外債発行の問題等につきましては、いままでは、為替局時代から、どうも大蔵省は締め過ぎる、こういう議論がたくさんあったのです。締め過ぎておってさえもこうなったのでありますから、いまから考えれば大蔵省のやり方はやはりあのとおりでよかったという考えであります。しかし、それよりも、こういう問題のあと始末を十分にすると同時に、将来の日本銀行保証というものに対しても、やはり相手方に十分納得してもらう手を打たなければならぬと思いますし、銀行自身も、われわれが保証してわれわれが返すのだからよいじゃないかということではなく、外国に対する信用保持のためにも十分な調査を行ない、自信のあるものに対してのみ申請をするということ、その方向でひとつ十分な指導をしていきたいと思います。また、政府の考え方としても、どうも外債とかインパクトローンに対しては安易に業者が考えております。特にわれわれが見て、だめです、こう言っても、もう向こうと話がついているのです、こういうことでいつでも窓口に持ってくるという傾向がございます。この問題を契機にして、より慎重に信用をつなぐという面から考えていくべきだと思っております。
  27. 堀昌雄

    堀委員 それから、いまのコンチネンタルのことはあとで聞きますが、私が最初に触れましたサッスーン・シルベアの貸し金の問題というのは、これは一体国際金融局のほうが答えるべきか銀行局が答えるべきかわかりませんが、どっちでもよいのですが、これが十億ともいわれ、十五億ともいわれる金が、いつからどういう形で貸し付けになっておったのか、貸し付け自体はどういう項目にあげられておったのか、そこらについてちょっとお答え願いたいと思います。
  28. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 サッスーンという金融業につきましては、実は私どもも非常に深くはわからない点がございますが、一応の私どものほうの調べを申し上げますと、これはサッスーン・シルベアという特殊会社でございます。港区芝田村町の南桜ビルというところに本拠がございます。これは東京銀行等からの情報で得たものでございますが、スイス系のユダヤ人であって、戦前上海で貿易をやっておった。戦後におきましては、日本に移住しております。四、五年前に貿易商をやめまして、もっぱら貸し金業に転向したということになっております。その資金はどこから出てきたのか。かなり大きな額なので、これは何とかして調べなければならぬと思いますが、私のほうではちょっと調べにくいのです。円資金の蓄積であるというふうに言われております。貸し金業の届け出をしているかどうか。調べたところ、届け出がございました。三十八年十二月に、資本金五百万円で、貸し金業の届け出を行なっておりますが、いわゆる高利貸しの部類に属するわけであります。それから、山陽特殊製鋼がこれから借り入れましたのが単名手形で十億円。商手の割り引きで四億五千万円。利率は年二割でございます。これの三十九年九月の決算のバランスには、この借り入れ金が全然計上されておらない。バランスシートからはずれておる。それから、会社ほんとうの帳簿にはあるはずなんですが、一部はその帳簿にもない。会社の帳簿にもない借り入れ金があるということでございます。この内訳がいろいろございますが、商手割り引きについて申し上げますと、その日付は三十九年の十月三十日から十一月七日、十二月十日、十二月十日、十二月二十八日、十二月二十八日、十二月二十九日、十二月三十日、こういう日付になっております。十月の末から十二月の三十日までの間に数件の商手割引を行なっておりまして、その合計が四億五千万円。商手割引でございますので、期日がまいりますと、商手の支払い人が日本側の商社でございますので、これは決済されます。それから十億円の単名のほうは、これは割引でございませんから、一般債権、更生債権になると思いますが、この日取りはやはり昨年の六月から借り入れが始まっております。六月の二十二日から始まりまして、九月の二十五日までの間に六回に分けて借り入れが行なわれております。貸し出し期間は六カ月で利率は年一八%、書きかえをいたしますと、年二割になる、こういうことになっております。その金が一合計で単名のほうは十億円でございます。
  29. 堀昌雄

    堀委員 いやお聞きになったように、ここまできますと、山陽特殊製鋼というのは実際ひどいもひどいも、めちゃくちゃな会社でおそれ入るんですけれども、これはしようがない。  国税庁、いまのサッスーン・シルベアが十五億も円で持っているんですが、これは居住ですから、当然国税庁のほうで税金を取っているんだろうと思いますが、過去におけるサッスーン・シルベアに対する納税状態及びあなたのほうの調査の状態はどうなっておりますか。
  30. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 サッスーン商会は現在税務署所管の課税対象法人として把握されております。それから申告及び調査というのも進んでおります。ここで幾らということは申し上げかねますが、申告調査がなされております。  なお、いま銀行局長からお話があったような問題について、さらに今後こうした資料をもととして調査の徹底を期したい、こう考えております。
  31. 堀昌雄

    堀委員 いま金額はいいのですが、一体いつから申告があってどうなっておったのか。貸したのは貿易商社だったのでしょうから、要するに過去においてそういうあれがちゃんとやられておったのかどうか。金額はいいけれども、あなた方のほうではどこまで遡及して見ておるか。これからやってもらうことですけれども、どんなふうですか、これまでの経緯は。
  32. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 ただいま申し上げましたのは会社になりましてからあとの課税申告でございまして、設立いたしましたのは三十八年十二月ということで、それ以後の申告につきましては、承知しておりません。それ以前の問題につきまして、まだちょっと手元にどうなっているかの資料がございませんので、ここではお答えいたしかねます。
  33. 堀昌雄

    堀委員 ともかく何といっても十五億円のキャッシュというのは、どっちにしてもたいへんなものです。ですから、これが正当な状態であるなら、われわれ何をか言わんやでありますけれども、どうも私は、課税上の問題としてもやや問題があるのではないかという感じがいたしますので、この点はひとつ厳重な調査を国税庁に要望いたしておきます。   〔藤井委員長代理退席、委員長着席〕  その次に、時間がありませんから少し前へいきまして、農林省が入っておられますから、ちょっと聞いてみたいと思います。  実は飾磨農業協同組合というのが約七千万円山陽特殊製鋼融資をいたしておりました。私がこれまで聞いた範囲では、何かこの社長飾磨農業協同組合の組合員になっておったらしい。どうやって組合員になったか、私わかりませんが、組合員になっておった。そこで、飾磨農業協同組合は、組合員だからといって七千万円貸した。ところが担保に入っておったのが神戸銀行三菱銀行その他の商社の株で、そして金は借りた。担保は、会社が持っておった会社名義の株券が向こうの担保になっておった。三月の六日に更生の申請があると同時に、飾磨農業協同組合山陽特殊製鋼に対して、金を返してくれなければ担保を処分しますと、こういう話になった。そこで担保を処分されては困るというので、神戸銀行は自社株を引き取って金を飾磨農協へ返した。その他関係銀行はみなそういう処理をしたようであります。私はその中に一つ非常に重要な問題があると思いますのは、最近当委員会でも少し議論をしてまいりましたけれども、コールマネーの出し手の一番大きいのはどこかというと農協系統金融がコールマネーの出し手の最大なるものであります。すなわちそのコールマネーが出てくる原資は、ほんとうに農業資金からくるのかどうかというところを考えてみますと実はそうじゃない。農業資金として政府が支払ったものが農協にもちろん入りますが、いま系統金融で非常に金が余ってきておるのは、都市近郊における土地売り渡し代金があげて農業協同組合の中に入ってしまう。そしてこの金は非常にたくさんの預金があるけれども貸し出しは金利の関係でなかなかできないとなると、こういう形の問題が随所に起きてきております。そこで、いま農業協同組合の金融関係は農林省の指導下にあるのだろうと思うのです。農林省の指導下というか、県のほうへいくと農林部が担当しておる。まことにまかふしぎなことになっておるのですが、系統金融の問題というものは、ここで少し再整備をしなければならぬところにきたのではないかと私は思う。ほんとうに農業資金として支払われたものが農業協同組合に入ってくるだけなら私はいまのままでもいいのではないかと思うのですが、その他の資金、たとえば土地売り渡し代金のようなものが巨額に入ってくる都市周辺にある農業協同組合は、これは金融機関としての取り扱いをするという新たな角度での取り扱いをして、これはひとつ大蔵省のほうへ全部引き上げて、監督その他はきちんとする。少なくとも農業協同組合の法律から全部変えていかなければならぬと思います。そうしなければ農業協同組合という名前の金融機関ということになって、監督も何もおろそかにされておる中で今度のような問題が起きてくる。私は非常に重大な問題だと思う。  実は私が住んでおります尼崎にも、武庫農業協同組合というものがあって、りっぱな鉄筋のものを建てている。それは何かというと、あの付近の土地が一斉に売れまして、金が余って余ってしようがないので、浮き貸しだとか何とかという問題がしょっちゅうそこで起きておる。われわれ新聞で見ておるのですが、ですから農業協同組合の預金の中身を調べて、それが当該地域における農業資金関係、米の売り渡し代金が入った、野菜の売り渡し代金が入った、それからそういう形での収入がここへ預金をされる状態なら、私は農業協同組合の本来の姿として今後そのままでいいと思いますけれども、そうでない資金が入る農業協同組合は、新たな角度からの法制上及び行政上の取り扱いを検討する段階にきておるのではないか、こういうふうに考えるわけです。そこでそこらの観点について、現状を農林省のほうからお答えをいただき、それから今後の対策等について、ひとつ大蔵大臣の所見を伺っておきたいと考えます。
  34. 小山義夫

    小山説明員 ただいまお話のありました飾磨農協の問題につきましては、実は県のほうから簡単な連絡を受けておる範囲で申し上げますと、御指摘のように約七千万円の貸し付けが荻野何がし個人に行なわれていたようであります。荻野さんという方は、県の報告によりますと、二町五反ばかり農地をお持ちになって、農業者という資格がおありだそうであります。そういう意味で飾磨農協の正組合員になっておられ、法令の立場だけで見ますと、正組合員に対しては貯金だとか有価証券を担保にした場合には一組合員に対する貸し付けの限度というものはございませんので、そういう意味で形式的には合法という形で金が出ておったわけでございます。なおその貸し付けは三月の上旬に全額回収されたというふうに聞いております。しかし先ほど先生からお話がありましたように、形式的には、たとい合法であっても、一人の組合員に対してそれだけ多額の金を貸し付けるという実態そのものについては問題はあろうかと思います。これから特に都市近郊の農協につきまして、この種のことがあり得る危険性があるわけであります。行政検査その他監督を厳重にいたしまして、とかく世間から批判を受けるようなことのないように努力をいたしたいと思っております。
  35. 有馬輝武

    ○有馬委員 関連して。こういったケースがないようにという答弁でありますけれども、いまのこういったケースばかりなんです。あなたそれはよく知っておるじゃないですか。そうでしょう。そうじゃないですか。だから私たちが聞いているのは、そういった事態に対して現在までどういう指導をしてこられたのか、これをお伺いしたいのですよ。こういうケースがないようにという将来のことみたいに、さっきの銀行局長と同じように、あなた方はもののとらえ方というものが気楽なんだな。いまや農協は農民のものじゃないのですよ。その事態をあなた方はどう改善されようとするのか、それをお聞かせ願いたい。
  36. 小山義夫

    小山説明員 農協に対する監督につきましては、一般的な指導もございますが、一番的確にあれしておりますのは、行政検査検査職員が直接農協におもむきまして、検査しております。ただこれは農協法上のたてまえといいますか、趣旨からいいますと、少なくとも年一回常例としてということでございますが、実際問題として検査職員の手も足りません。あるいは農協の事業分量も非常に多くなっておりまして、なかなか成規の行政の検査がどの農協に対しても年一回というところまでは手が回りかねているというのが正直な実態でございます。ただ問題のありそうな農協あるいは合併前後の資産確認というふうな点につきましては、特に重点を置いて濃密に検査ができるようにという努力はいたしておりますけれども、現状で十分であるかということを言われますと、必ずしもそうでない向きがあることは認めなければならないと思います。
  37. 有馬輝武

    ○有馬委員 うまやが建たないで農機具が買えないでいる中で農協の金がホテルに回っておるのですよ。そういう事態をあなた方はどう見ているかということをお伺いしているのです。多くを言わぬでもあなたのほうが知っておるでしょう。
  38. 小山義夫

    小山説明員 最近の農協の資金の中には、非農業の分野から得られた資金相当入っておることも事実でございます。それから貸し付けのほうにつきましても、必ずしも農業の近代化のための資金だけでなくて、その他の分野に使われる。非農業の資金需要に応ずるための貸しつけというような面が、傾向が強いことも事実でございます。特にそういう傾向は都市近郊の農業に強いわけでございますが、現在の農協制度あるいは私どもの指導方針自体をそのままにしては、部分的に解決できる面はあまり多くないというふうな制約を、私ども実際に仕事をしておって感ずるわけであります。本年度からは少しその点を、部分的な手当だけは限界があるのではないかというふうなことで、農協問題全体について少し再検討をいたしたいというふうなことを考えておりまして、これは信用事業だけではございませんで、ほかにも御承知のようにいろいろいま農協は問題を持っておりますので、あるいは一年でできるかどうか非常に疑問がございますけれども、少しそういう基本的なワク自体を再検討させていただきたいというふうに考えております。
  39. 田中角榮

    田中国務大臣 私もよくあなたの言うことはわかります。わかりますし、私自身も日銀法の改正とか銀行法の改正の場合でも、戦後銀行法、日銀法がつくられた当時とは全然違う金融機関というものが非常に大きな資金を集めております。その中の一番大きいのが系統金融であります。でありますから、系統金融に対してまで中央銀行は全然やれないということであるならば、どこで一体金融政策をやるのか、こういう問題も起こるわけであります。でありますから、その当時からこれらの問題に対しては何らかのより合理的な道を選ばなければならぬという考え方であります。ただ農協の資金というものは自分資金自分でもって利息をつけているというようなことであって、そして国会におきましても、政府が農林漁業金融公庫に対しての出資が少ない、こういうことはこれはなはだおかしいことであって、これをもっと系統金融の中でより合理的にしなければいかぬ、こういうことはだれでもそう考えることであって、だれでも言うのですが、なかなか農協が力が強いものですから……(堀委員「いや自民党がだらしがないからだ」と呼ぶ)いや、自民党だけではなく、すべて農協に対しては弱いというような考えで、話はするけれども大きな声を出して言わぬというところに一番大きなガンがあるというようなことを考えております。でありますから、景気過熱というような中にはそういう面もあったわけです。ですからやっぱり金融の正常化というものをはかるための一つの大きな問題点であります。でありますから、農林大臣にも、私は就任以後、社内預金を廃止したいということと系統金融機関等も含めて、金融というものは金融政策によって左右できるような状態をつくらなければ政府責任をなかなか負えるものではない、こういう考え方と、第三点目には、農業金融というものをより合理化するという面からも、系統金融というものにはメスを入れなければいかぬ、こういう考え方を持っているわけであります。しかし農協の問題につきましては信用組合のようにするのか信用金庫のようにするのか、いまあなたが指摘されたように、農業収入以外で得たものの預金を禁止するのか、員外貸し付けをもっとうんとしぼってしまうのか、それから系統金融機関から関連産業ということで貸し出しをしておってもそれに対してワクをはめる必要はないのか、いろいろな問題を私も承知をしております。一年で片づくとは思いませんが、これはひとつ農林大臣とも話をしながら、より合理的な道を選ばなければならぬ。それにはひとつ皆さんからも大いにやれ、こういう意気込みで応援をしていただかないと、一大蔵大臣の力だけではなかなかできない、こういう問題でございますので、せっかくの御協力をお願いいたします。
  40. 堀昌雄

    堀委員 たいへん前向きの答弁をいただきましたから私もまああれですが、そのうちにひとつ法案が少し片づきましたら、一ぺん農林大臣もここへ来ていただいて農業金融全般を少し根本から議論をするようにいたしたいと思います。  ただ、さっきどこも農業のほうには弱いというお話ですが、その点は政治の姿勢としてやはり正していかなければならない問題なので、これは与党の諸君も不合理な点は十分御承知のことでもあるし、われわれもそう思うわけですから、これはひとつまた国会の場を通じ十分検討させてもらいます。  その問題は後刻に譲りまして、次にお伺いしたいのは、山陽特殊製鋼の買い掛け債務の実情をちょっとお答えをいただきたいと思います。
  41. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 買い掛け債務のおもなる内訳を申し上げます。商社関係は二十六社、その残高一月末現在でございますが、百二十一億二千七百万円、それから合金鉄関係九社、十六億一千六百万円、スクラップ関係が四社、五億四千八百万円、外注関係、いわゆる下請と称するものに相当するものでございますが、この会社は事業の性質上下請会社には金額的にはあまり多く使っておりません。下請関係はわりあいに少なくて三十六社、金額は五億六千四百万円、それからインゴット・ケース、これが二社、二億八千七百万円、炉材関係が八社、十億六千六百万円、その他が三百十八社ございまして、二十七億八千万円でございます。これはいろいろな品物の納入先等であります。関連会社といいますか、非常に関連の薄いものも入っておりますが、三百十八社でございます。それから別に運輸関係が十六社で九億九千五百万円、建設関係が十三社、十五億二千八百万円、合計四百三十二社、二百十五億一千一百万円でございます。
  42. 堀昌雄

    堀委員 銀行貸し出し借り入れ金残高が三百十五億、それから買い掛け債務が二百十五億ですから、そのうちで一番大きいのは商社関係二十六社で百二十一億二千七百万円、これはちょっと商社のおもな分だけでいいですが、買い掛け債務  のおもなところをちょっと出してもらいたいと思うのです。
  43. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 調査したのがあるのですが、いま手元に持っておりませんので、あとで書いて差し上げます。
  44. 堀昌雄

    堀委員 そこで、私はいま金融問題で、都市銀行、外銀、農業協同組合、商社金融サッスーンと聞いてきたのですが、その最後の商社金融の問題です。商社関係で百二十一億二千七百万円というものが売り掛け金になっておる。ここに私はいまの日本金融上の非常に大きな問題点があると思うのです。一体その商社が、これはちょっとお伺いをしたいのですが、これはまあだれに答えていただくのがいいかわからないが、外国ではこんなべらぼうな状態になっておるのでしょうか。いま延べ払いというものは、いろいろな点である程度あると思いますけれども、ともかくこの会社は資本金はたしか八十億くらいじゃないですか。一年の売り上げ全体がいまの話では百五十億内外で二百二十億も商社売り掛け金を置いておるなどということは、これは売り掛け金といいながら実は設備投資貸し付け金の名前が変わったものではないかというふうな感じがするのですが、ここらについてちょっとお答えをいただきたいと思います。
  45. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 たまたまいま他の官庁において調べました数字がございますから商社のおもなものを申し上げます。三井物産が合計額ですが四十億三千万円、伊藤忠商事が十七億七千三百万円、東京通商二十二億四千四百万円、三菱商事十三億八千六百万円、住友商事二億七千百万円、江商五億一百万円、それ以外におきましてはあまり金額は多くございませんが、会社の数は先ほど申しましたように二十六社に及んでおります。金額は一億台あるいは何千万というものもございます。  それからいまの御質問で日本商社のようなものは外国にないんじゃないかとおっしゃいますが、全く私もその点同感でございます。それはこういう総合商社、年間に一兆円も売り上げが行なわれるというような、国の全体の産業界の規模に比べて総合商社の規模が非常に大きい。こういう総合商社は外国には例がない。つまり専門商社というのはありましたけれども、あらゆる物品を扱うというような意味で、窓口が極端に広がっているわけです。もちろんこれは輸出の関係においてもその点では非常なメリットがあると思いますけれども、この商社がしかも相当競争が激しくて得意先を奪い合う。得意先と申しますか要するに品物を納入する先を確保するために、その相手先に一種の金融を行なっております。はっきりした数字を私いまここでは申し上げられませんが、大商社でも自己資本を上回る投融資が行なわれております。しかもそれは表面上投融資として扱われるものだけでございまして、それ以外に手形による金融というのがございます。ですから手形のうちで相当なものがいわゆる商社金融といわれているもののようでございまして、極端な例では工場一つ商社の何といいますか売り掛け債権だけでできてしまう、こういう例もございますし、ビルなどでもそういう例が非常にございます。銀行から当初から融資を受くべきものを、商社がかわって金融を行なう。その商社に対してはその取引銀行金融をつける。その金融のつけ方が内容を十分に洗っていない。何といいますか目の子算で、今期はこのくらいの売り上げの伸びだから借り入れ金をこのくらいにふやしてくれというような、一種のクレジットライン方式をとっているように聞いておりますが、銀行のほうでも実は手をやいているのが実際ではないかと思う。先ばしってそういう商社による一種の金融でいろいろな施設までつくられてしまう。それが商社は非常に長期の金を貸すわけではございませんので二、三年で回収する。だから二、三年たってから銀行その他の金融機関が、今度はすでにできてしまったもののために金融をつけなければならない。これは私ども融資ルールの問題につきましてもその点をたいへん問題にしているわけで、この金額が一つ商社として行なうものがちょっとした地方銀行ぐらいの金融を行なっているわけでございますが、それを何か全く無計画に行なわれているような感じがいたします。この場合におきましても、百二十一億の融資につきましてはこの中には建設関係といいますが工場をつくったり建設機械を入れたりする関係の一種の延べ払い的な方式でやっておりますそういうものもかなり含まれているのではないか。品物の代金、いわゆる普通の商品の代金以外に、そういう特殊の金融が含まれているように思います。   〔委員長退席、藤本委員長代理着席〕
  46. 堀昌雄

    堀委員 大臣、いまお聞きになったようにこれがまた実に摩訶不思議な金融なんですね。日本というのは私ずっと調べてくると大蔵省金融を握っているようなつもりでいるかもしれないけれども、何の何の、大蔵省の外側に農業系統金融があるし、社内預金という金融機関がある。商社という名の金融機関がある。てんでんばらばらで、大蔵大臣なんかさっきの山陽特殊製鋼じゃないけれども、どこかの小さな存在かもしれないということ、その意味では私はこれは重大な問題だと思う。金融の正常化とかいろいろな問題を取り上げてきた中では、まさにこの商社金融というものはこれは大きな今後の−過熱状態その他についてもこれまでドライブしてきたし、それがいま二十兆にのぼるところの、要する企業信用の最も大きな部分は、私は商社がやっておるのではないか、こういう感じがいたします。そこで私が融資ルールの問題をいま小委員会で取り上げておるのに対して、この間新聞で拝見をしたら公定歩合が下がる日の話に、融資ルールをそう急ぐことはない式のことを大臣お話になっているが、私が言いたい融資ルールというのは、いますぐ膨張する貸し出しをするなという問題ではなくて、やはり日本金融というものがオーソドックスな金融の軌道の上に乗るようなことをしない限り、これが悪いほうに行っている。いま悪循環は重なっているわけですから、どこかで歯どめをかけてやはり外へ、横道へ流れても軌道の上に乗せ返すような努力を、そういうある一つのルールか何かでやる以外には手がないのではないかということが、私が特に融資ルールをドライブしていきたい一つの大きな理由なんですね。だからこのことはある意味では経営の過熱の問題でもあるけれども、しかしもう一つの意味ではこれは金融の場合として見るならば、これは実は預金者保護の問題なんです。だからこの間も小委員会に来ていただいたある頭取は、設備投資をいろいろおっしゃいますけれども都市銀行貸し出しておる資金の中の設備資金は四・何%しかありませんというお話です。しかしそれは聞えませんよと私は申し上げているのです。なぜかというと、あなた方金融債を買っているじゃないか。この金融債はワンクッション置いてあなた方設備投資しているじゃないですか。長期信用銀行債、興業銀行債その他買っておるでしょう。全部これは設備資金にいっている金じゃないですか。商社金融といっている金の中で、一体どれだけが運転資金だとあなた方確認ができますかと言ったら、お答えがなかった。だから金融機関自体としてもわからないと思う。商社運転資金として貸しておる中でどれだけ設備投資にいっているのか、これもわからない。これもあとでちょっと通産にも伺いますけれども産業構造審議会があってここに資金部会がありますが、全く絵にかいたことが行なわれておるだけであって、ほんとうの中身というものは、現実にはいまいろいろな角度から申し上げてきた中に埋没をしているわけです。  そこでひとつ大蔵大臣商社金融の問題——商社金融というのは、銀行商社に出す金融商社金融商社企業に出す金融商社金融、二つありますが、この二つの問題を含めて、今後あるべき姿が徐々に直していかなければならない問題だと思うのですが、それと融資ルールに関して、やはり私はそういう意味でも融資ルールというものは非常に必要な問題であると考えておりますが、この点についての大臣のお考えを……。
  47. 田中角榮

    田中国務大臣 融資ルールが必要であるということは、私が一番初め申したことでありますからそのとおりであります。ただ先ほど申し上げたように、銀行が十一月、十二月ごろからクレジットラインを大幅に上げておる。またコールも相当下がっております。資金の状態はよくなっておるにもかかわらず、相手の正体を見なければとても出せないということで、ある場合には必要な面さえも押えられているというようなときに、公定歩合が引き下げられたわけであります。公定歩合が引き下げられても、なかなか中小企業まで届かないじゃないかと言われておるときに、またその融資ルールということを、特に大蔵省が主導権をとって言うまでもないことだ、こういうことを言ったわけであります。でありますから、融資ルールに対しては、いま金融制度調査会でも検討をいたしておりますし、そういう官製に近いものでなくても、われわれ自身でもやりますということで、いま金融機関でもやっておりますから、いいものはできると思います。いいものができなければこちらに案がありますから必要があれば出したい。こういうようなつもりでおります。  商社金融に対しては、銀行局長が言ったとおり、私もたいへんなことだということを知っております。どうして一体商社がそんなことをやっているのかといいますと、工場建設等に対して、工場ぐるみ請け負うわけであります。そしてその中の、実際に請負会社がしなければならないものだけは建設会社にやれ、そしてあとの材料は全部自分の商品でもってまかなう。ですから元請は商社がその工場全体ワンセットの請負をやっておるわけです。そういうことになれば、安い面もあるかと思うのですが、やはり高いでしょう。高いのですが金は延べ払いだ。それともう一つ自分の系列の建設会社が大きくなってくる。ですから、商社の系列の中にあるものは二、三年前にできたような会社が、いまはもう中堅以上の会社に、二、三年間でもって実績はどんどん上がって、建設省のランクはどんどん上がっていく。こういうようなものは、一つのシェア競争というような考えからだんだんと起きてきた問題でありますが、相当行き過ぎであります。そういう意味で、金融面から締めていくということが一番合理的だと思いますので、商社金融という面につきましては、十分検討してまいりたいと思います。これはあなたがさつき言ったとおり、私自身が、商社金融とかそれから社内預金とか系統金融とか、これを少し大蔵大臣のもとへ持ってこないと金融政策はなかなかうまくできない、こういうことを就任早々から言っておることでございまして、ただ官僚統制というようなにおいを起こさないように、今度はいいろいろな問題が起きておりますから、金融の調整をやるにはいい時期だ、この時期をひとつはずさないで相当前進的態勢をとらなければいかぬだろう、こう考えております。
  48. 只松祐治

    ○只松委員 直接関連はしておらないのですが、大臣お帰りになるようですから、一つだけ伺います。  新聞なんかにもちょいちょいそういうことを書かれておるわけですが、さっきからのお話もありますように税務署に対してはとにかく六十億ですか大幅な赤字だ、こういう申告が過去数年間なされておるわけです。一方たこ配、粉飾決算が行なわれて、黒字だ、こういう形でやられておる。これは機構上は大きく異なっておりますけれども大蔵省という管轄下において、片一方は黒字片一方は赤字、こういう形が——しかも税務署に申告するなり何なりで、多少の違いがあることは社会常識上やむを得ないということもありましょうが、非常に大幅にこういうように違ってきておる、これはやはり行政官庁として一つの大きな問題だと思います。さっきから堀さんがお聞きになっておる金融その他とも非常に関連してくるわけです。税務署に報告されておることを銀行や何かが全部信用しておれば、こんなでたらめな貸し方はできないわけです。国税庁は実際大会社は、よく調べてないというと、調べておりますと言うが、よく調べておればなぜこんなばかな貸し方をするかということになる。国税庁のいうことは大会社に関してはでたらめだということから、おそらく会社側の言っておることを信用しているのだと思います。これはちょっと言い方がひど過ぎるかもしれませんが、それだからおそらく貸しておるのでしょう。国税庁の言っておることを信用しておればこんなむちゃな貸し方なんかはしないだろう、こう思う。そういう点についていずれ税制委員会でも開いて倒産会社関係、それからいわゆる税金と粉飾決算こういう問題について一いろいろ税務署に偽りの申告をしておれば、いままでは詐偽だったのですが、今度は偽りの申告でやられるわけです。それからもしほんとに赤字が出ておって、こういう黒字の配当をしておれば、不当に会社に損害を与えたということで、商法上の罰則もあるわけです。いろいろそういう問題はあるわけで、当然役員の連中がどっちかにひっかかってひっくくられなければならぬ、こういうことになります。そういうこまかい点はいずれ論議したいと思いますが、一所管の中でこういうように大幅に食い違ってきているというところがいろいろあると思いますが、これの関係者はそれぞれ答弁されますので、私はきわめて遺憾でありますが、大臣はこの点に関してどうお考えになるか、それから今後何か対策があれば伺いたい。
  49. 田中角榮

    田中国務大臣 国税庁、税務署で真実に近い数字をつかんでおるわけであります。でありますからこの山陽特殊製鋼につきましてもずっと赤字決算をしておりますので、税金はもらっておりません。それから配当した場合には配当に対する源泉だけは取っておるわけであります。同じ大蔵省の管内にあってということでありますが、税によって得た秘密は守らなければならぬ、こういうことでこれは絶対に外に漏らせないということでありますから、銀行に税の書類をやって、会社はこういうふうになっているからうまく貸しなさいということはこれはできないということであります。ただこれは皆さん専門家でございますから率直が話を申し上げますと、こういう会社が増資をしておる。増資の届け出はちゃんと証券取引法によって大蔵省が見ておるのだろう。なぜ検査権を発動しないか、こういうことになりますと検査権を発動ずるとすると、それは国税庁に近い、とてつもない膨大な人員を持たなければなりません。こういう答弁をするのですが、これがほんとうにこの検査権を発動してやりなさいということになって、そしてこれは大衆を守るということでありますから、そういう意味で結局国税庁と一緒になってやるという法制が確立されれば、これはいまやってないことはないのです。地方税の書類をつくるには国税庁の書類をそのまま地方税に移してやっているわけですから、国民の利益を守るために、同じ国の行政権を発動するということによって、国税庁の資料をもとにして証券取引法に基づく検査を行なう、こういうことにでもならないと実効はあがらない。私も証券取引法の改正案につきまして、どうだ一体できないか、やるということになれば、この条文があって大蔵省検査をしているんだということで、大衆はそう思うのだから、当然この検査権というものに対してはもっと実のあるものにしなければいかぬ、すれば、何十万人という人をふやすわけにはいかぬ、これは法律上国税庁の書類と照合して検査をするということにならないか、こういうところまで話をしておりますが、法制上やるとすれば画期的なものになって、なかなか法律の上ではいろいろな議論があるようであります。しかし私は、そういう意味で、大蔵省の中でほんとうのものを持っておりながら、他の局は全然それと別な判定をしておるということになると行政上問題がありますので、これを合理的にするにはどうするかという状態まで検討しておるだけでございまして、まだ結論は出ておりません。しかし突き詰めればそれ以外にはないわけでございます。
  50. 堀昌雄

    堀委員 いまの問題、実は私この前国税庁にお願いしておいたのですが、配当しておる上場会社赤字欠損の申告をしている会社がまだあると思うのですが、名前はいいけれども、幾らあるかちょっとお伺いしたい。
  51. 田中角榮

    田中国務大臣 そういうことは秘密会でも開いてやってください、影響するところが大きいから。
  52. 堀昌雄

    堀委員 出中さん大いに株のほらを気にして、それが出るとまた株ががたっと下がるからということかもしれませんが、しかし私は実は逆だと思うのです。みなが不安に思っているからよくないので、やはりいまそこで何社あるという話が出たら、その会社は早急に自分たち会社として考えるべきことをやらなければいけないのですよ。それをまだ依然としてわからないからというのでしてないのでは、次に起こる山陽特殊製鋼のような問題があるわけです。これは明瞭なわけです。だから、それなら大臣、私次に秘密会で伺うことにしますが、わかっておる範囲のものについて、これは明らかにいまお話しのように増資の場合には書類を出なければならないし、それだけではなくて、監査報告はいまのでチェックできるわけですから。現在の証取法によれば、おかしい監査報告が出たところは大蔵省としてその監査報告を受け取らないでいいわけです。そうなれば、その会社は上場会社でなくなるのですよ。現在の大蔵省の権限の中で処理できる問題なんです。あなたがいまいろいろ新たな法律のことをおっしゃったが、現行法でできるのです。  それじゃ私あなたのほうに責任を持たせますから、ひとついまの上場会社で有配で赤字欠損の申告を出しておる会社を早急に調べて、監査報告とそれらの条件を徹底的に洗ってもらって、そういう事態が今日以後起きないという保証大臣がここでされるなら、私は一応引き下がります。それが国民のためですから、あなたがその保証をいたします——それらの税の赤字欠損の申告をしておりながら、有配で黒字処理をしておる会社がもし倒産をしたときには、これは重大ですからね。私はいまここでそれをおそれるあまりこの議論をしておるわけですから、さっそく大蔵省の行政能力をもって、国税庁、証券局その他のスタッフを動員をして、その監査報告の真偽のほどを再検討をするということを約束をし、同時にその関連金融機関に対してもこの点に基づいて、何もこまかいことを言うのじゃないですから、さっそく調査をするなり諸般の準備を整えて、重大な事故の起こらないようにやれということをお答えいただくならば、まだ私は引き下がりますが、大臣どうですか。
  53. 田中角榮

    田中国務大臣 堀さんの言われることはよくわかりますし、私もそういう気持ちでございます。しかし、いま国税症の書類を証券局に使えるかどうかという問題になりますと、なかなかいろいろ問題があると思います。法律上は、国税庁で調べておる書類を、銀行局でそれを見せてくれと言っても、証券局でそれを見せてくれと言っても、それは使えないわけです。
  54. 堀昌雄

    堀委員 そうじゃないのです。私が言っているのは、使う使わないはそっちの自由ですが、要するに赤字欠損であるかどうかということは、私はかまわないと思うのです。行政当局がこの会社赤字欠損であるかどうかすらも出せないなんて、そんなばかなことはないはずです。だって、私この間現地調査にいって、この会社の過去における状態はどうですかと聞いたら、大阪国税局長は過去六期にわたって赤字欠損でございます。これで下請の連中一ぺんにびっくりしてしまって大蔵省に抗議に来ている。そんなことになっているのにわれわれに全然知らさないでいるのはけしからぬ。これは筋違いかもしれない。筋違いかもしれないが、赤字欠損であるかどうかということは、何も大蔵省の内部でこの会社赤字欠損になっておって何年出ておるということを資料をこまかく言わなくたって、それさえ出れば今度は証券局が当然それは監査報告をきちんと再検討するだけの責任があるし——私に言わせれば証券局は重大な怠慢をやっている。いまの山陽特殊製鋼にしたって公認会計士の監査報告は認められているのだから。とにかく何でもかでも出てきたものをみな認めるなんて、そんなでたらめなことはないですよ。いまの法律上そんなことになっているのじゃないですからね。そうでしょう。だから私はできると思うのです。何もこまかい資料を全部突き合わせろなんて言っているのじゃない。証券検査官を全部−証券検査官はいま何人おりますか。
  55. 加治木俊道

    ○加治木説明員 本省と財務局と合わせて全部で約百五十人、本省で三十何人でございます。
  56. 堀昌雄

    堀委員 ですから、いま国税庁の特別調査班でやっているのでも大体一班十名内外でやっているのですから、本省に三十八いるのですから、とりあえず十名残しておいて二十名でひとついまの赤字欠損になっておる部分の有配会社については監査報告の再検討をしてくださいよ、スタッフがないのじゃないのだから。これほど重大な問題で、証券局もこれは責任重大だと思っているのですよ。出てきたものは何でも受け取る。この前私高森産業で一ぺんやりましたよ。今度の山特問題は高森産業のときに私は十分取引所その他に対して注意が喚起してあるわけです。これは関係者御存じだと思うが、ワンマン社長のところは非常に危険だから気をつけろと言ったのです。相互牽制のきかないところは、何が起こるかわからない。高森産業の場合でも、ワンマン経営で、手をあけて調べてみたら経理部長も何もちっとも知らない。相互牽制がちっともきいてないのです。だから、そういう上場会社で相互牽制のきかないところは厳重に気をつけなさいということを当時の大阪証券取引所の駒村理事長に言っているのです。これは去年の春のことです。今度の山特だって同じことですよ。だから、その点について、今度は、その上場について、取引所で認められてきておるから証券局はそれでいいと思って認めました。しかし、大蔵大臣責任で認めた以上は、取引所が出してきたものはそれでよろしいということで判を押しちゃ困るのです。大蔵省責任がなさ過ぎるのです。その点については山特だって何だって、ここに出ておる上場会社については、監査報告書をうのみにしているという意味で、大蔵省に重大な責任があるわけです。ですからそういろ意味で、あなたの責任を私は何も追及するのではなくて、今後未然に、当然権限の範囲内で行なうべきことが行なわれていなかというならば、それを行なう責任大蔵省にあるのではないか。それをするためには国税庁もでき得る範囲における協力をするのは当然なのではないか。これは多数の株主なり国民に影響することなんですよ。よろしゅうございますか。だから大臣が心配しておられるそういう心理約な影響の前に、私は実態をよくしない限り、いまの問題は解決しないということから議論を進めておるわけでありますから、その点においてひとつ大蔵省できちんとした監査報告の再検討、場合によってはいまの行ない得る範囲における立ち入り検査、その他についても行なったらどうかと思うのですが、この点はどうですか。
  57. 田中角榮

    田中国務大臣 証券取引法に基づきまして、可能な限り最大の努力をいたします。
  58. 堀昌雄

    堀委員 それでは大臣あとの用事があるようでありますから、ひとつその点はいまの御確言のとおり、証券局その他関係部局で、早急に陣容を整備して処置を進めていただきたいと思います。大臣けっこうです。  その次に、公正取引委員会にお伺いをいたしますが、今度私どもがそこへ調査に参って非常に驚きましたのは、手形の下請業者に対する支払い条件というものは、完全にでたらめなんです。聞きますと大体十五カ月くらいで支払われるというのが実情のようでありました。  そこで私は、いまの下請代金支払い遅延防止法で、立ち入り検査等もできるのではないかと思って、その点を通産局に聞きましたところが、通産省では知ったけれども出てきたのは四、五カ月くらいの手形サイトであった、こういうことなんです。当時当事者が申したところは、その点は非常に申しわけがなかった、こう言っておるのです。下請業者のほうが、実は会社がつぶれないと思ったので、一番いい手形だけを通産省の検査のあったときには出しました、こういうふうに言っておるのですが、一体いまの現状で手形の条件が全部無記名、期日の書かれない手形で、大体半年目くらいに支払われて、そうしてそれの落ち方というのが全体の売り掛け代金の大体二〇%から一八%くらいだけに対して、ずっと支払われてくるということのようですから、これは実に支払い条件というものが、いまの独占禁止法、公正取引のああいう諸法から見て非常に不当なものだ、こういうふうに思うのですが、公取のほうではこの問題について、特に山陽特殊製鋼の問題について、もし御調査をしておられる点がありましたら、ひとつ御報告をいただき、お考えをお述べいただきたいと思います。
  59. 渡邊喜久造

    ○渡邊(喜)政府委員 山陽特殊製鋼の問題でございますが、この会社につきましては三十八年ころから私どもとして相当注目をしておりました。  私のほうの仕事のやり方をちょっと申し上げさせていただきますと、年間約二千程度の親事業者を対象としまして——もっともこの親事業者の数は本社でありませんで、事業所ごとに計算されておりますが、定期的に年四回に分けまして、支払い状況の照会を出しております。その照会を中心にし、同時に下請企業者のほうから名前を出して、あるいは匿名でもってこの会社の支払い状況が非常に悪いという申し出がよくあります。ただこれは、なかなか下請業者としては苦しいところでございまして、名前を出すときには、大体下請関係はこれでおしまいだというときの話のようであります。相変わらず下請関係を続けたいというときは、匿名の場合におきましても、できるだけこういったことが下請業者から出たということを親会社に知らせてほしくないという希望があるようでございます。私のほうではそういう点も考えまして、匿名の場合においては定期調査の中に入れまして、そして書面で調査し、それでもって出てきました関係で、いまの法律に違反していると思われるもの、そうした匿名である場合におきましては、特にそれを中に入れまして、そうして年間約二百ちょっとの件数について実地調査を行なっております。その場合におきましては、親会社のほうを調査しますとともに、不請業者のほうも調査をする、こういうやり方をとっております。  ところで、この山陽特殊製鋼の問題でございますが、三十八年の当初におきまして、いわゆる滞留月数とわれわれは呼んでおりますが、これは品物を受け取りましてから、検収の期間は別に考慮しませんで、手形または現金——これは原則として現金で払うことになっておりますが、現金で払う場合における状況というものを調べてみますと、調べてみましたときの報告では、滞留月数が三・一六カ月、それから手形サイトが二百四十六日、きわめてひどい状況にありました。そこでわれわれのほうとしては、さらに書面の往復をしまして、同時に多少触れましたが、三十八年の十二月に立ち入り検査をいたしました。そうして昭和三十九年の五月の実態を見ますとかなり改善されておりまして、滞留月数は一・〇三それから現金と手形の割合は、現金が二割九分、手形は七割一分、手形のサイトは通常が百三十三日、最高が百六十四日、こういうような状態にありました。私のほうの現在の法案の解釈としましては、六十日以内に現金で払うのが原則だ、手形を支払う場合においてもそれが六十日以内に現金化される手形でなければいかぬ、こういうふうな解釈、それも通常の金融機関でございます。したがいまして、それから見ますと、まだこれではいかぬということで、そこで問題に取り上げたわけでございますが、当初に比べますとかなり改善されていたというので、主として行政指導によってこれの改善方をということでやってきたわけであります。  ただ、私のほうで調査対象にしております下請業者と申しますのは、これはすでに御承知だと思いますが、下請代金の法律にありますように、下請業者としても資本金五千万円以下とか、あるいは三百人以下とかといったような、いわゆる中小企業に属するもの、したがってそういうワクをはみ出ている下請業者というものは、現在の段階では、私のほうとしてはちょっと手が届かないということで、それからまた製造委託なり、修理委託というものを中心にしているわけで、材料業者の資金も一応これのワクの中に入っている、あるいは建設関係下請もこれに入っている、限られた範囲であるというところが、いわゆる下請業者という範疇とちょっと違う点があることも御了承願いたいと思います。  そういうふうになってまいりましたところ、今度の事案が発生した結果を見てみますと、これは通産局の調べを私のほうでは現在のところいただいていますが、私のほうのそうした範疇に入っている下請業者の数が三十七社、同時に推定債務額は三億五百万円、それでこの会社は、いろいろ聞いてみますと、やはり下請業者相当出たり入ったりといいますか、出入りが相当激しかったようであります。私のほうでもってつかまえて、少しわれわれのほうのやり方も手ぬるかったと思いますが、特に目をつけていた下請会社というもの以外の新規の下請会社が十九社ございまして、これの関係が三千百万円、これから支店の扱いのものが六社ありまして、これは五千五百万円、これは東京とか名古屋、大阪に支店がありまして、需要者の希望するサイズに特殊鋼を切るということの下請をやらせておるわけですか、私のほうの調査が本社のほうに集中していたものですから、これは私のほうの調査の中には入っておりませんで、この六社が五千五百万円、それから私のほうで問題にしておりましたものが六社、これが九千八、百万円、それからこれも私のほうの立ち入り検査のちょっと行き届かなかった点でありますが、もう少し立ち入り検査が行き届いておりましたら、つかまえられていたと思われるものが実はもう六社あるわけであります。これが一億一千九百万円、そういうわけでありまして、私のほうでやかましく言った会社については、少なくとも地方事務所のほうの報告によりますと相当改善されている。ところが私のほうでやかましく言わなかった分については、これは全部なおざりにしていたというので、おっしゃったような事態もあったのじゃないか。実は昨日も決算委員会でいろいろお話がございまして、私ども一つの機会ですから、この機会にわれわれのほうの仕事のやり方も大いに反省してみたいという気持ちもございますので、近く委員の人と相当の事務局のスタッフをつけまして、そしてわれわれのほうの仕事のやり方についてもトレースしていく。それから山陽特殊製鋼下請関係について下請法の関係の分はもちろんのこと、もう少し広い範囲にわたってのこの関係を調べてみよう。あるいは手形のサイトの問題についてもどんなふうな状況であるか、それがどんなふうに改善されていくべきか、あるいはわれわれのほうとして、独禁法の立場としてどういうふうな取り締まりをなし得るか、実は多少時間的におくれたことは遺憾でありますが、いままでは出先の書類を中心に、あるいは通産局などの御報告を中心にわれわれのほうとしては内部的な調査をしておりましたが、どうもそれではやはり十分じゃないということを痛感いたしましたので、早々委員の一人とそれから事務局をつけまして現場へ行って、私のほうの角度から過去における私のほうの仕事のやり方、あるいはそれの不十分さ、あるいは将来の改善策、こういうものを全部徹底的に反省し直してみようじゃないか、かように考えております。いずれ決算委員会のほうでも御要求がございましたし、そうした現地についての調査の結果が出ましたらば、要すればこの委員会においても御報告申し上げることにいたしたい、かように考えております。
  60. 堀昌雄

    堀委員 実は私も参りまして事の意外に驚いたわけであります。私ども手形サイトが長いいろいろな条件というのは聞いてはおりました。大体一番長期で十五カ月などということでは、これは企業が一年間何をしているかわからないわけです。一年間働いたのは全部会社売り掛け金になり残っているというようなことでは、これは中小企業対策も何もあったものではないと思いましたので、その点は私も非常に驚きましたしするので、これから現地調査をしていただくそうでありますから、この問題の中にはこういう下請関係の問題としても異常な問題でありますけれども、象徴的な問題が含まれております。私は特殊鋼の社長にこう聞いたのです。あなたの会社は十五カ月くらいの手形が出ているということを知っていますかということを聞きましたら、そんなですかねということなんです。知っていてもとぼけたと思うのです。そこで平木専務というのは、大体経過として検収期間が三カ月ですか、八カ月くらいの手形は出しておりますとか、何かそういうことを言っておりました。下請業者に聞きますと、もうすでに七、八年こういう状態が続いていたというのです。これもまた私は驚くべき事実だと思うので、あなたのところは七、八年も前からこういう支払い状態になっているということじゃありませんかと言ったら、社長のいわく、われわれの納めるほうのものも何か手間がかかっているので、その程度はやむを得なかったのですというそらぞらしい答弁でございました。その御本人はいままで私が述べてきたように、まことに複雑怪奇なことを何でもやる人ですから、これは論議の対象の外でありますけれども、私どもとしては今度下請人たちが受けた被害というものは全く大きな打撃であったと思いますし、特に非常にこの中の人たちで憤慨しているのは、やはり信用させられるような条件が外的につくられていたということですね。その中で自分たちもついそれはまずかったけれども、これはだれだってこういう条件に置かれたらこういうふうに信用していかざるを得なかったのではないかというようないろいろな点があるものですから、ひとつせっかくこの際御調査をいただいて、下請関係のこういう不当な措置がもう少し全体として改善をされるようにお願いをしたいのと、もう一つ通産省の所管の局長がおいでになっておるわけではないかもしれませんが、下請代金支払遅延等防止法による立ち入り検査等があって、虚偽ではないのでしょうが、その中の一番いいところだけをちょっと出して、八カ月、十カ月の手形があるのに、一番短いサイトのものを一つ出して処理をするなどということでお茶を濁さないで、何かしっかりした調査ができないものか。これは公取のほうも同じことで、いまお話を聞きますと二百四十六日となっておりますが、現地で聞いたのは、いまのその下請の中に入るのかどうかは、ざらざらといる方の話ですからわかりませんけれども、おいでになった方からお聞きしたのは、大体十五カ月ぐらいですというのがほとんど出席者十七、八名がみなそういうふうな答弁をしておりました。ここらはやはり公取のほうでの調査でも実はかなり実態よりはいい。実態に誤差があったのではないか、こう思いますので、ひとつ通産省のほうは一体どういうことにするのか。公取としても、いまお答えになったことで公取はけっこうでございますが、何とかこういうことを未然に防ぐ措置を、今度の問題を契機にしてひとつ対策を立ててもらいたいと思うのですが、ひとつ通産省のほうにお伺いしたいと思います。
  61. 影山衛司

    ○影山政府委員 公取のほうでお話がございましたように、手形の下請代金支払遅延等防止法に基づきまして、手形サイトについての、今日の支払い条件等についての取り締まりというものは、公正取引委員会が主として親企業、それから私どものほうは小さいところの親企業下請を取り締まるというふうに分担をしてやっておるわけでございます。下請企業に対しましても、私どもは立ち入り検査権というものを法律上有しておるわけでございまして、そういう意味で立ち入り検査官がおるわけでありますが、本省及び通産局にその係官がおりまして、立ち入り検査をやっておるわけでございます。山陽特殊製鋼の場合も、先ほどお話ございましたように、下請のほうの立ち入り検査をしたわけでございますけれども、その検査が不徹底であったというふうに感じております。今後そういうことのないようにひとつ徹底をして調査をしてまいりたいというふうに考えております。
  62. 堀昌雄

    堀委員 下請が、さっき公正取引委員長もおっしゃったように継続しておる状態では、なかなかやっぱりそういうことを出しにくいということは、いまの日本関係でよくわかるのです。そのことは、まことに不公正な取引のワクの中に閉じ込められてしまってもう身動きができないものだからしょうがないということになっているが、そのこと自体が私は不公正な、独禁法違反だと思うのですね。そこまではどうしようもないということですね。これは親企業下請の場合でもあるし、金融機関企業の場合も同じことであって、企業はものが言いたいけれども、言うとばっさり切られるからがんじがらめで言えないという、実に前近代的な条件日本の経済の中には動いておるわけなんです。どうかひとつ今後は立ち入り検査の場合には、今回の例を十分考えていただいて、そこが受け取っておる手形は、全部一体いつからいつまで幾ら受け取ったかということを基準にして全部見るということにしてもらわないと、ちょっと見せなさいなんということでは、彼らは一生懸命中をよって、一番いいのはこれなんですということでは立ち入り検査の意味がないんですね。だからその点ひとつ親企業のほうも何も調べられないわけではないのですから、親企業がどのぐらい手形を発行しているかということを、何も枚数じゃなくて金額でもいいのですから、そうするとあなたのほうにはこのぐらい手形がきているでしょう、これを全部出しなさいということで、立ち入り検査の際粗漏のない措置をしていただけば、もうちょっとこの問題等についても指導がすみやかに行われ得たのではないか、こう思いますし、とにかく銀行局もこの手形サイトがそんなに長くなっていることは、金融機関の側から少し問題にしていいのではないかと思うのです。そういうような非常な不正常な状態で支払いが行なわれておるということは、会社経営上おかしいわけです。それは、いま公取のおっしゃったように、六十日でどうこうというのはいまなかなかそう簡単にはいかないかもしれないけれども、もうちょっとアローアンスがあってもいいかもしれないけれども、これで拝見しても、二百日をこえたりしておるような条件というものは正常な会社経営の状態とはわれわれは思わない。金融機関側にしても、そういう下請関係手形サイトの状態というものは、会社経営に対する一つのメルクマールとして、金融その他についてもうちょっと発言をしてもいいのではないか、こう思うのですが、ひとつ通産のほうで今後の措置と、それから銀行局長、いまの問題についてお答えいただきたいと思います。
  63. 影山衛司

    ○影山政府委員 公正取引委員会の親企業のほうの立ち入り検査とあわせまして、徹底的にやりたいと考えております。
  64. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 銀行は、非常に長い期限のもの、つまり支払い期日が非常に遠い場合は、割引の対象にしないのが通例でございます。割引となれば、これは通常三カ月以内に支払い期日が到来する分だけを対象にする。そうでないものはせいぜい担保の対象にはしますけれども、従来は振り出しの期日がないのが多いわけです。ですから手形を見ても、その手形がいつ振り出されたのかわからない。そういう点に非常に遺憾な点があった。今度の手形の用紙の統一にあたりましては、振り出し日を必ず書け、そういうことになっております。ですから、持ってくれば、それがもともと非常に長い手形で、百五十日のものであるかどうかは見ればわかるわけであります。いままで、わからないから、どうもそういう問題があった。そのほかに、私ども、大企業に対する貸し出しについてむしろ問題があるのでしょうが、親企業と目されるものについて非常に長いのではないかという疑いがあれば、統一された用紙で自分の振り出した手形について期間別に金額を書いて出すというふうな、そういう資料を企業から徴求するように、そういうことを実は前々から話し合っていたわけですが、銀行側が、非常に煩瑣になるというので、あまり喜ばないのです。ですから、原則的にはとるたてまえにするが、まあ除外するのもあっていいということになっております。しかし、すべてのそういう大企業について全部報告をとらぬでいいということになりますと、いまの実態はわかりません。そこで、とかく非常に問題があると思われるものについて、場合によっては公取の調査等で、そういうものが手がかりが得られますれば、そういうものについては当該銀行が資料としてとりなさい、とった結果、あまりひどいものは是正するようにというふうなことにしたいと思っております。しかし、この是正するということは、当該銀行としては金を貸すということであります。ところが、自分が金を貸さなければならないようなことになるものですから、その点銀行としてはたいへんデリケートな問題で、なかなかスムーズにいくとは思いませんけれども、こういう非常に手形の長いものを使っているところが結局経営があぶないのですから、そういう問題として調査をし、かつ指導もするということを銀行側にひとつよくわかってもらって指導してまいりたいと思います。   〔藤井委員長代理退席、委員長着席〕
  65. 堀昌雄

    堀委員 いまの件で、これから公取、中小企業庁、それからあわせて銀行局も、ひとつそういう手形サイトの問題を中心として、あるべき企業の姿に追い込んでいっていただくということでなければ、せっかくの山特問題というのが、何といいますか役に立たないと思いますので、これらはひとつ十分分析をしていただいて、今後——たまたまこれが出ただけですが、実際はいまたくさんあるので、これをどうするかということのほうが当面非常に重要な問題だと思いますので、その点十分配慮をお願いしたいと思います。  それから、銀行局伺いますが、いまの手形期日を入れてやる例の手形の銀行協会がやっているのはいつからスタートをしますか。
  66. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 なかなかはかばかしくありませんで、実を申しますと用紙の規格がきまった段階であります。それを各金融機関に徹底させまして、その用紙をほんとうにお客に使わせるという段階になるのはおおむね十月ごろじゃないかと思っております。
  67. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、新しいその用紙なら別として、振り出しの期日のない手形を発行した会社に対してはともかく融資上制限を加える。手形には書くのがあたりまえなんですから。山特へ行ってみたら全部書いてありませんというのですから、ここのは書いてありません。おかしな話だけれどもそれがあたりまえになってしまっている。これは実は困ることなんです。手形としての本来の条件を備えていない。だから手形じゃないのですよ。言うなればそれは紙切れなんです。それを手形と称して使っているだけのことですから、困ると思いますから、ひとつ金融機関側として——小さなところはいま影響するところも範囲が小さいから、中小企業がどうこうしているというところまで私は厳密に言いませんが、少なくともあるレベルに達しているところ以上は、そういう手形に振り出し期日の入っていないようなものが最終的には必ず金融機関に回ってくるのですから、これは銀行だけに限らないでしょう、あらゆる金融機関、どこかへ回るわけですから、ひとつ全金融機関に対して、少なくとも資本金五千万円以上の企業で手形に振り出し日の入っていないものが出た場合には、全金融機関内部で知らせ合って、これについては警告を発する。(「手形法違反じゃないか」と呼ぶ者あり)手形法違反だけれどもしょうがない。そんなものこっちでどうにもできやしない。そういう実質的に効果のある措置を早急に講ずべきだと私は思いますが、どうですか。新しい手形用紙の問題は十月でいいけれども、手形の問題というのは十月まで待っていられない。ここで期日の書いていない手形は十月にならなければ全部期日が書けないなんて、そういうでたらめなことにならないはずだから、そこはひとつ銀行局の指導で処理できると思うのですが、どうですか。
  68. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 この点は非常に技術的にむずかしいのでして、いわゆる手形というのは白地手形もございますが、振り出し期日を記載しないで発行された手形を下請銀行に持っていって割り引いてもらおうと思ったときは、ちょうどその期間が三カ月になるように補充をする、こういう悪い慣習があるのです。だから一見それを見ただけではわからない。ところがあとからちょうど三カ月だというふうな期日を書いてくる。最初に親企業に渡すときには期日が書いてなくて、あとから期日を入れる、こういうひどいことになっております。
  69. 堀昌雄

    堀委員 そうしたらこれはそれじゃ中小企業庁ですよ。これから大問題のありそうな企業を一斉に立ち入り検査をやって手形を調べてください。中小企業段階ではまだ十五カ月先のものだから書き込むわけにいかない。もし書いてあったら、いま手に持っているものが十月の日付で発行した手形になっていたりすることになるわけですから、ひとつ中小企業庁で、親企業側のそういう期日のないものを早急にエネルギッシュに立ち入り検査をやってくださいませんか。そこでなければこれはわからない。金融機関に来たらいまのようにかってに日にちを書いてあるからこれはちょっとチェックができないかもしれないですが、これはその点でならチェックできると思うのです。どうですか。
  70. 影山衛司

    ○影山政府委員 下請のほうの立ち入り検査をやりました場合に、そういう手形があるということがわかりました場合には、厳重に指導いたしたいと思います。
  71. 堀昌雄

    堀委員 そこで大蔵省、さっき言ったように問題会社——きょうは聞きませんよ。きょうは聞かないけれども、問題会社が出るわけですから、少なくとも上場会社についての問題会社が出たら、これに関する下請への立ち入り検査はこれだけひとつしてもらいたいというのを証券局は中小企業庁に連絡してください。そうしたら、その連絡があった分については早急にひとつ中小企業庁は下請企業の立ち入り検査をやっていただく、公正取引委員会は親企業についての検査をやっていただくということで、まず一番問題になりそうなものから手をつけて、実際的、具体的にその問題点を拾い上げながら対策を講ずるのが、私当面非常に重要な問題じゃないか、こう思いますが、証券局いいですね。
  72. 加治木俊道

    ○加治木説明員 私のほうの立場で申し上げますと、非常にデリケートな時期に差しかかっております。はたしてそういうことで、これが市場環境にどういう影響を与えるかということまで判断がつかないと、かえってそっとしておけば生きるべきものが倒れるということがあります。一方で会社内容の真実を公表すべきだという一つの大きなプリンシプルがあるわけですから、そういう点で問題の会社は真実を公表すべきだ、徹底的に追及すべきだという点は、全くおっしゃるとおりだと思いますけれども、現在の時点において、どういうアクションをとるかということについては、一応私のほうで指令があります限り、検討いたしまして、その後どういうふうに措置いたしますか、関係当局とも十分相談して、できるだけ御趣旨に沿うように善処いたしたい、かように考えております。
  73. 堀昌雄

    堀委員 ちょっとこれだけははっきりしておきたいのは、くさいものにはふたをして、そうして何とかかんとかやり繰りした結果が山特のようなかっこうで出ているわけです。これは厳密にいえば、証券局は重大な責任があるのですよ。そんな会社報告を、ともかく公認会計士が判を押したから出している。四川も五期も六期も前から、この植田という公認会計士は知っていた。知っていてやっている仕事は、ちゃんと公認会計士法で処分ができるようになっておるのは、あなた方が実態を知らないからごまかしをやられていてもそのままで過ぎているわけです。証券局のほうは——証券局は最近できたのだけれども、あなた証券部長として長いのだから、ほんとうのことをいえば、あなた重大な責任ですよ。責任を追及するのがわれわれの目的ではないのだから、それは触れないのだけれども、せめて罪滅ぼしにこれからそういうことのないようにするだけの責任があなたはあるのです。大臣大臣として私に確認をしたのですから、私が言っていることは、非常に微妙な段階とかなんとかいうけれども、微妙だからやらなければならないのですよ。微妙でなかったらやる必要はないのです。そういうことをきちんきちんとやって、倒れるようなものをどうしたら倒れないようにするか、そのためには下請会社はどうしたらいいかということで、事前に手を打てるものを打たないのは明らかに行政官庁の怠慢です。その面については国税庁、証券局、中小企業庁、公正取引委員会銀行局、あわせて本日ここに御出席なさっている皆さんは、私の真意がどこにあるかということは、十分御理解をいただいていると思いますから、やるべきことがやられていなかったということが、私は山陽特殊製鋼一つの大きな問題点だと思っているのです。その点についての政府側としての責任を果たすべきものは果たしてもらいたい、こういうふうに私は言っておるのです。それはもう要望であります。大臣のああいうはっきりした答弁を得ていることでありますから、ひとつ関係公正取引委員会、通産省ともにこの点について十分に考慮をしていただいて、自今こういうことの起こらないような措置をできるだけ、やむを得ませんものもありましょうが、措置をしていただきたいと思います。  それから、あとの問題は設備投資の問題なんですが、私ども調査に行きましたら、実にりっぱな鉄筋コンクリートの本館が建っているわけです。一体いつできたのかと思ってみたら、昨年の十一月でしたが、昨年の十一月に竣工した本館の社屋が建っておる。いやはやおそれ入るんですよ。もうその粉飾決算をやり、赤字でやり繰りしながら、一体この会社はどういうことなんだろうかというふうな気持ちがしておるのですが、一体この設備投資について、あなた方のほうでは、個々の会社の投資までについては立ち入っておるのではないかもしれませんけれども設備投資の状態と、この設備投資に対する資金の問題、ここらについて一体通産省としては、どういう行政指導をしてきたのか。なるほど行ってみると、新規設備できれいにできていて、人をだますには持ってこいの条件を整えているわけです。これは、まさにまぼろしの工場が建っているのと同じことなんです。外形はあるけれども中身はないということなんですから、そういう設備投資の指導のしかたがやはり過去に行なわれてきたのか、あなた方の指導に反したことが行なわれておったのか、そこらの点について通産省にお伺いいたしたい。
  74. 谷敷寛

    谷敷説明員 特殊鋼の業界の設備投資の問題につきましては、私からお答え申し上げますが、企業に必要な生産設備の投資につきましては、毎年各会社から投資計画を提出させまして、これを事務当局で検討をし、産業構造審議会の資金部会にかけまして、適当な規模の設備であるというふうに認められるものは、産業構造審議会の資金部会の答申として、一般業界なり金融機関に示す、こういうことになっております。山陽特殊製鋼につきましては、そういうことでやってきたわけでございますが、非常に大きな問題を申しますと、あそこにカルド転炉という非常に新しい転炉を設備することになっております。これにつきましては事務当局といたしましては適当でないという実は判断をしたわけでございますが、これは事務当局あるいは資金部会の結論を山陽特殊製鋼は聞かないでやっていた、こういう経過があります。それからその後新しく溶鉱炉を建てたいという計画がございました。これも事務当局としては適当でないということで押えたわけでございますが、このほうは事務当局意見に従って溶鉱炉の建設は取りやめたという経緯がございます。したがいまして、通産省としましては、たとえば開銀の融資を仰がなければ設備はできないというような問題であればとめられるわけでございますが、会社自分で市中金融機関等から資金を調達いたしまして設備をするということになりますと、これは経営者の良識と申しますか判断の問題になりますので、事務当局がやめろと言ってもやるということになりますと、現在ではこれを押える法律的な権限はない、こういう状況になっております。
  75. 堀昌雄

    堀委員 実はいま私どもその融資ルールの問題をやっております中で、産業構造審議会及びその資金部会がありながら、いまお話しのようなことで総ワクをきめたりいろいろするけれどもあとはもう開銀融資でもなければチェックができないんだ、あとは野放しで、それじゃいまの山特のようなカルド転炉、まだ発注中のものがあるわけですね。入ってこないものでまだ商社があれしておるものもあるということで、でたらめなことが行なわれてもチェックができないような産業構造審議会というのは一体これはどういうものなのかという気がするのです。そこである程度の設備投資計画ができてきちんとされて、その資金がどういうかっこうでついたかということは、この審議会なりその資金部会は過去の状態についてトレースしてあるのか。計画はこう出しました、あなた方のほうではこの程度で資金がこういうかっこうだというような大まかなものになっておると思うのですが、それを前年度できめたものは結果としては同じカバレージにあるものの部分についてはどうなったか、資金は初めはこれだけ予想しておったが、さらによそからどれだけ入ってきたかというようなことがこまかく分析をされ、トレースをされておるのなら、私はこういう問題は検討の角度があったのじゃないかと思うのですが、この点はトレースなんかをされておるのでしょうか。
  76. 島田喜仁

    ○島田政府委員 まず全般的に設備投資の問題についてお答えを申し上げます。  御承知のように、設備投資の行き過ぎという問題がございまして、各企業のシェア競争、生産設備の拡大競争という問題が、実は日本の経済の一面からいえば成長の要因としましていい面も持っておりましたけれども、悪い面と両方あるわけでございます。  そこで、私ども通産省の考え方といたしましては、やはり最近は企業もこういう倒産であるとかあるいは金融引き締めによる不況という以外に、構造的な不況要因というものが少し長期的になっておりますので、そういう面からやはりお互いに設備の投資の行き過ぎをやめるべきではないかというムードが産業界にも実は出てきております。と同時に、私どもは特に大企業等につきましては、やはり企業の自主的な活動という問題と、国民経済的に見た好ましいあり方との調整を企業みずからも、要するに社会的にと申しますか、そういう面で考えていくべきであるという考え方もあるわけでございます。そういうムードも出てまいっておりますので、私どもは従来重要な業種につきましては、ただいま事務当局から御説明がありましたように、産業資金部会におきまして、設備投資の業種別に、設備投資が大体どのくらいあればいいのか、需要の動向、もちろん輸出も内需も含めまして需要の動向、それから設備投資の総量というものをある程度きめまして、そうしてその産業資金部会の答申に基づきましてそれを受けるわけであります。資金部会には御承知のように、金融機関も入っておれば学識経験者も証券業界の代表も入っております。それを受けまして、そうして今度はできるだけその範囲にとどめるべく、各企業に対して説得もし誘導もし、あるいは個々に必要があれば行政指導もいたしておるわけでございます。そのもっとも遺憾な例として、実は山陽特殊製鋼等が出てきておりますが、大体そういう点を認識をしまして、好ましい設備投資をしていくものも相当あるわけです。それから、行政指導によってそれを受けていくものもあるわけです。全部がそうじゃないわけです。  そこで、私どもといたしましては、こういう最近業種によって供給が過剰になっておる、設備過剰になっておる。その結果は御承知のように販売競争、過当競争をやって、その行き過ぎのために倒産をする。それから同時に、それが先ほどお話しの、買うほうから言えば、下請その他関連企業企業信用、悪い企業信用もあるし、売るほうから言えば、現金が入らないという問題が実はございます。それは要するに、今後は大体さらにその資金部会を活用しまして、必要な行政指導によりまして、この設備投資の行き過ぎを私ども抑制してまいりたい、こういうふうに思います。ただ問題は、その業種によりまして非常に実態が違っております。御承知のように、われわれといたしましてはこの日本経済が成長してまいらなければならぬ。そのためには相当伸びていかなければならぬ産業もあります。それから、ある程度停滞をしてきた企業もありますし、伸びがゆるやかなものもあります。そういうような企業、業種、それぞれの実態に応じまして、伸ばすべきものは伸ばす、抑制すべきものは抑制するという方向で、しかもできるだけ衆知を集めて、ただいま一例を申しました産業構造審議会、あるいは業種によりましては、通産省とそれから産業側の代表とが集まりまして、好ましい設備投資の方針、あり方というものを検討してまいる。その際問題になりますのは、私どもがただいまのお話しのように、行政指呼によって所管官庁としての責任におきまして指導をするだけでは、御承知のように生産なり設備血だけでなしに、先ほど来お話しがあった金融面があるわけでございますから、そういう面につきましては、できるだけそういう好ましい設備投資の方向に協力をしてもらう意味で、私ども日銀にもあるいは全銀協にも協力方を要請しておるのでございます。具体的な業種について、すでに実は話し合いを始めておるわけでございます。したがって、私どもは法律によらずに、いわゆる行政官庁としての責任において、今後はやはり秩序ある設備投資が行なわれるように私ども行政指導をしてまいりたい、こいうふうに思っております。
  77. 堀昌雄

    堀委員 そこで、私はこの間も小委員会議論をしたのですが、そこへ皆さん並んでおられるのを前にづけづけ言うのも悪いけれども日本の役所というのはかなりセクトがあるのですよ。通産省は通産省のセクト、大蔵省大蔵省のセクト、企画庁は何かといえば、これは両方からぱぱっときてぱぱっとしてしまう。私に極言させるならば、ものの用に立ち得べしとも思われずという感じがするのです。実にふわふわした役所です。ほんとうは私は大蔵省と通産省と企画庁がもうちょっとそういう点の連絡を密にして、その資金部会のような問題は——私は資金部会に出ている銀行幹部から聞いてみましてもよくわからないと言うのですよ。実は出ておる人さえも実際企業のいろいろな問題について個別的にはわからない。総体としての話は聞くが、個別的には実はわからないというようなことで、資金部会のワクそのものも実はかなりふわふわしたようなもののようですね、私が金融機関幹部から聞いた話では。そこでもう少し何というか、資金部会というのは金融サイドの問題ですから、金融サイドの問題については大蔵省といまの問題がもうちょっと有機的な結合として処理ができるように、おそらくいまの金融機関といっても、都市銀行とかそういう大きなところが来ておるだけだろうと思うのですが、必ずしもいまの山特のところで見るように、それは大手はみな都市銀行ですから、その他金融機関、生命保険でも四十三億から貸しておるところがずいぶんあるわけです。ですからそこらを含めて、私はやはりもう少しいまの資金部会の活用のしかたは、大蔵省側ともうちょっと調整のできるような処理はできないものなのかどうか、こう思うのですが、企業局長その点はどうですか。大蔵省もあわせて銀行局長のそれについての意見を聞きたい。
  78. 島田喜仁

    ○島田(喜)政府委員 いまのところは、要するに通産省の諮問機関ということに実はなっておるわけです。メンバーもただいま申し上げました中小企業を含めましていろいろなメンバーが入っておりますが、全体の設備の要するに望ましい投資というような問題につきまして、役所側で大蔵省等と相談をして、必要な話し合いをして、必要な面が出てまいりましたならば、その点は役所ベースで話し合いをする必要があろうかと、こういうふうに思います。
  79. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 産業行政の上から見た総ワクというようなものについては、それは私どもある程度理解をしておるわけです。従来そういった方式でございますから、一つのワクといいますか、一つのめどとして業界、業種別の設備投資額というものをきめて、その中で融資に仰ぐべきものと、あるいは社債であるとか、そういう資金調達面の話し合いの結果につきましては承りておるわけです。ただ非常に問題になるのは、たとえばいままでしばしば問題になっております特殊鋼の業界のようなものにつきましては、すでに日本特殊鋼と山陽特殊製鋼の二つが倒産しておる。そういう例から言いまして、結果から見れば明らかにこれは過剰な投資が行なわれておる。しかも両者について金融面においても実態が把握されてなかった。把握されないままにずるずると融資が行なわれてきた結果がこうなった。ですから、融資というものは産業政策上必要だというふうなことになりましても、どこにその金をつけるかということになると、若干また別に考えなければならぬのではないか、施設は必要であるけれども、とんでもない赤字をかかえておる、それがほうっておけばどんどん累積していくというようなものまでも設備資金をつけるということは、これはとても受け合いかねる問題なんです。個別の問題になりますが、金融はしょせんは最後は個別的にならざるを得ない。だから全体の調整ということだけで事足れりというようなことにはいかない。いかなる企業融資をすべきかということは、また別個の観点から考えていかなければならないので、私どもは十分にこういう産業政策上の計画といいますか。めどには考慮を払いますけれども金融機関を指導するにあたりましては、やはり経理なり内容について十分考えた上で適正と思われる範囲でしか融資してはならぬという感じになる。何かこう全体の資金を確保するという面にあまりにも重点を置かれますと、貸せ貸せという面が強くなってき過ぎる。その点は個別には話は別でございますということを考えてやっていただかなければならぬ、こういうふうに思っております。
  80. 堀昌雄

    堀委員 私ども、いまの銀行局長の考えに同感なんですが、そこでいまの産業資金部会なり産業構造審議会で毎年やっていますね。あのトレースはどうなっているのでしょうか。過去の状態の……。
  81. 島田喜仁

    ○島田(喜)政府委員 実はそれは中間トレースをいたします。それから産業資金部会に報告をいたします。そのときに、たとえば全体から出てきた計画をこれだけ全体として減らす。減らす計画に沿って行なわれるようにしろということに答申はなるわけです。その答申に基づいた線をその中間の過程におきましてまたトレースをしまして、資金部会に出す。資金部会に出して初めに考えたのよりもオーバーしているじゃないかというときには、またその線に押えるようにあれしまして、個別に個々の企業について、うまくいっている業種はいいわけですが、そうでない業種について個々の企業の指導をいたすわけでございます。
  82. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、いまそこまでやりますには、最終的にいまのその年度における設備投資計画の際に、産構審のやつは計画だから前向きでしょう。途中でトレースするといっても、着工ベースでなにするか知りませんけれども、年度が終わってしまってから実際に予定をした年度のたとえば昭和三十九年度の産構審の答申なり資金部会なりにつけたいろいろな答申が四十年なり、いまはまだ無理でしょうが、四十年の後半になって三十九年度のやつは現実にはその計画と実施はどうなって、資金はどうなって、どういう形だったかというようなことを、おまけにその資金の内訳があそこに大ワクが書いてありますが、もうちょっと分析したものが準備されていなければ、次々計画ばかり出していたのでは困ると私は思うのです。その点の要するにあとからきちっとした分析ですね、計画の再検討といいますか、確認といいますか、そこらの措置はどうなっていますか、
  83. 島田喜仁

    ○島田(喜)政府委員 それは前年度の要するに資金部会の答申に対して実施がどうなったかということはトレースいたします。
  84. 堀昌雄

    堀委員 大体いまの設備投資はわかりましたが、どうかひとつ——山陽特殊製鋼問題というのは、やはり私は通産省も責任があると思うのです。やはりこれは何といったってあなた方のきめた範囲でやっておったのか、きめたよりはもっとたくさんできておったのか、それは知りませんけれども、どうなんですか、特殊鋼業界はあなた方の大体いまの設備投資計画のとおりきておるのか、それとも計画よりだいぶ上回ったのか、もし上回っていたとしたら、ラウンドナンバーでいいですが、どのくらい上回ったのか。
  85. 谷敷寛

    谷敷説明員 先ほど申し上げましたように、山陽特殊製鋼につきましては、若干事務当局が考えておりましたよりも大きな設備投資が事実上行なわれたという点がございまして、その面では少し供給能力がふえたのではないかと思われます。そこえもってまいりまして、需要面が思ったほど伸びなかったということで特殊鋼業界につきましては需給のアンバランスが他の業界に比べて少し強くなったということで、日本特殊鋼、山陽特殊製鋼倒産というような問題が起こったわけでございますが、今後の問題につきましては、種々その対策を講じておりまして、まずこれ以上の犠牲を出さないで何とか特殊鋼業界は乗り切っていけるんじゃないか、こういうふうに考えております。
  86. 堀昌雄

    堀委員 もう時間もございませんから、私は日を改めてこの設備投資関係、いまの資金関係をしますから、ゆっくり一回やらしていただきたいと思いますけれども、やはりいまのお話を聞きながら、需要測定に見通しを欠いておった点があると思うのです。これはやはり供給と需要の関係があるわけですから、需要の測定ということも非常に重要な問題で、供給の面だけ見ておって——それで特殊鋼は相当外へ出ているわけですよ。輸出も私はおそらく過去推計されたよりはたくさん特殊鋼はよそへ出ていたのじゃないかという気がするのですが、にもかかわらず需要測定を誤ったということは、やはり設備投資の面で非常に重要な問題点だと思うし、操業度の問題ですね、一体どのくらいの操業度のものを見ておるのか。ある程度アローアンスが本来あるはずなんです。そのアローアンス一ぱい一ぱい来ているからこういう問題が起こるので、どうもやや成長経済だからアローアンスを小さ目に見過ぎたという点があるから、そういうふうに集中的にここへ出てきたのじゃないかと思いますが、そこらの点、もし企業局長、何かありましたら。
  87. 島田喜仁

    ○島田(喜)政府委員 実は一言だけ申し上げますと、特殊鋼というのは実は非常にむずかしい業種でございます。と申しますのは、御承知のように、特殊鋼の需要先というのは全般的にいえば機械工業でございまして、特に一例を申しますと、その大口需要は自動車業界でございます。これは非常に伸びておる、機械工業も非常に伸びたわけです。その上に実は特殊鋼の企業が数はわりあいに多いにもかかわらず、その需要の伸びに対してマッチしていかなければならぬ、コストも下げなければならぬ、設備も近代化しなければならぬという問題が一つある。それから同時に普通鋼と違いまして、普通鋼は御承知のように大体見込み生産でいきますけれども、特殊鋼はある業種を除きますと注文生産でございますので、非常に需要口の範囲が多岐にわたる。したがって、そういうことになりますと、やはりそこに流通機構が介在するということになるわけでございます。しかもコストを下げるためにはやっぱり特殊鋼の技術だけでなしに、原料から量産していくということになると、溶銑を使うというような問題が出てまいりまして、ここが普通鋼メーカーと特殊鋼メーカーとの提携問題に実はなる。それから特殊鋼業界につきましても、そういうように需要がうんと拡大されておりますから、そういう意味でコストを下げるために企業間の提携その他の問題というものを実は苦労して行政指導もいたしておったわけであります。そういう意味で実は伸びる産業の需要先とそれとの谷間にあるということで、特殊鋼業界は確かに複雑でございます。したがって特殊鋼問題を考えるときには、単に特殊鋼業界全体の問題あるいは個々の企業だけの問題のみならず、その原料を買うほう、あるいはその需要先の産業のあり方との関連が実は出てまいっておりまして、そういう意味で特殊鋼業界は単に企業倒産問題でなしに、特殊鋼業界全体として非常にむずかしい問題を内包している、こういえると思います。
  88. 堀昌雄

    堀委員 まあ確かにお話しのとおりだと思いますから、もうここまで来たらどうにもならぬわけですから、いろいろむずかしかったけれども、しかし少なくとも適切ではなかったということだけは明らかになっているわけですから、これはひとつ他山の石として今後の設備投資については十分慎重にやっていただきたいと思います。  あと残っているのは社内預金公認会計士の問題ですが、基準局長はこの社内預金の問題については中央労働基準審議会かなんかにかけてひとつ検討したい、こういうふうにお話が出ておりました。その後の経過とめどですね、答申がいつごろ出るのかというめどをお答えいただきたい。
  89. 東村金之助

    ○東村説明員 社内預金の問題につきましては、先生ただいま御指摘のように非常に沿革も長いことですし、関係者はいろいろ御意見を持っておることでございますので、私どもとしては審議会等にかけて皆さんの御意見を聞いてから態度をきめたい、こういう観点で前にお答えしたわけですが、三月十九日にこの審議会がございまして、そのときにいま問題になっております山陽特殊製鋼問題等報告しながらこの問題の御検討をお願いしたわけでございます。その審議の状況でございますが、審議会内部のことでございますので、こまかいことは一々申し上げられませんが、非常に広範な御議論が行なわれ、集約したところによりますと、やはり労働者保護という観点からこの問題を取り上げていこうじゃないか、引き続きやっていこうじゃないか、こういうことで事務局としても二回までには所要の資料をそろえて出すように、こういう考え方で今後も引き続き検討する、こういうわけでございます。なお、今後いつごろまでにこの審議会の結論が得られるか、こういう問題でございますが、一たん審議会にお願いいたしましたわけでございますから何月何日ということは申し上げられませんが、できるだけ早い機会に御結論を得たい、こういうふうに考えております。
  90. 堀昌雄

    堀委員 私も何月何日までにということを申し上げているわけではないのですが、審議会でこの問題が出たときには、大体あなた方のほうとして、時期はいつでもよろしいということではなくて、まあ半年とか一年とか大まかなめどは、やはり室議会の幹事として考えなければ、今後の審議会の運営ができないと思うのです。そこらの大まかかめどを大体どこらに置いておるのかということです。
  91. 東村金之助

    ○東村説明員 大体私ども審議会のことでございますので、はっきりは申し上げられませんが、萩ごろまでに何らかの結論を得たい、そういうふうには考えております。
  92. 堀昌雄

    堀委員 今度の山特の問題は、共益債権になって、限度を限って支払いがされたようでありますから、一応の当面の措置は何とか済んだと思うのですが、その点についてはひとつあなたのほうで審議会にお出しになる資料等がありましたら、これは労働省側の資料も私どもは拝見をしたいと思いますので、あわせてひとつ、当委員会にもその資料等でお出しを願いたいと思いますが、ここは関係委員会でありますから、その点を要望いたしておきます。  最後に、公認会計士の問題でありますけれども、聞くところによると、植田という公認会計士は、自分のほうで公認会計士の廃業か何かをしたのですか。その点の山特の公認会計士の問題について、経過を伺います。
  93. 加治木俊道

    ○加治木説明員 まだ自廃いたしておりません。
  94. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 私はこの間言ったのは、昨日何か廃業届けを出しましたとか、私に直接申しました。その点は間違いありません。
  95. 加治木俊道

    ○加治木説明員 廃業したいという意向があったということは聞いております。聞いておりますが、その後一体この責任のとり方は、どういうとり方をしたらいいのかよく考えてみたいということで取り下げたようであります。
  96. 堀昌雄

    堀委員 そこで、こういうでたらめな処理をしておいて、はいさようならで廃業したらそれでいいということでは実は困るのです。だからその点私もやはり処分は処分としてしてもらわないと困ると思っているのです。それと同時に、この前私当委員会でやりました監査基準の問題も、いま会計審議会で努力していただいているようでありますからけっこうなんですが、ともかく一連の倒産会社における公認会計士としての不適正な意見をつけた——不適正というのは、不適正だという意見というのではないのですよ、あるべきでない監査報告をつけた公認会計士処分等については、証券局としては現在どういう考え方でおるのか、いまの植田公認会計士の問題を含めて、ちょっとその考え方を明らかにしておいていただきたい。時間もだんだんたちますから。私はやはり処分は処分としてきちんとすべきものはしておかなければいかぬと思うのですが、その点どうでしょうか。
  97. 加治木俊道

    ○加治木説明員 全くお説のとおりだと思います。今回の事件をどうするのか、処分の対象になるかならぬかをいまここで申し上げるわけにはまいりません。実態を把握しておりませんので……。
  98. 堀昌雄

    堀委員 ともかく、山特の問題はいまここですけれども、もう半年も前からのやつがまだ何にも処分されてないでしょう。特に富士車両なんというのは、明らかに公認会計士法違反だと私は思っているんだけれども、ここらの問題等について、すでに何か措置がとられておるのかどうか、そこらをひとつ……。
  99. 加治木俊道

    ○加治木説明員 現在実情調査中でございます。調査の結果によって、しかるべき処分はすべきものはすべきだと思います。
  100. 堀昌雄

    堀委員 実情調査というのは、どういうことをやるのですか。私はいま宿題に出したあの問題ですね、同じような監査報告の再検討なんでしょうからね。同じようなことでやるのですか。その点どうなんですか。それに一体どのくらいのスタッフをかけて、どういう調査をして、いつごろ結論が出るのか、その実情調査内容を少し話してください。
  101. 加治木俊道

    ○加治木説明員 手続的にはこちら側で職権によって調査をいたしまして、最終的には本人、場合によれば参考人等の意見を聞いて審問いたしまして、事実を確認した上で、もし処分の対象になる場合には、公認会計士は行政処分の対象になるだけでありまして、会社のほうはやはり刑事上の制裁もございますから、その会社側の責任をどうするかという問題と当然これはあわせて考えるべき問題だと思いますが、そういう意味の形式的な審問という段階にはまだ入っておりません。しかし予備調査という意味での実情調査をいたしております。
  102. 堀昌雄

    堀委員 いまこの問題非常に重大でありますから、だらだらとやらないで、少し歩度を早めて、やはり締めくくりをきちんとしていかなければ、何をやってもたいしたことはないではないかということでは、公認会計士制度の根本がくずれるわけですから、その点はひとつ十分歩度を早めてやっていただきたいと思います。では、いますぐめどはいつかということは聞きませんが、ひとつあなた方の能力の範囲において、できるだけすみやかに明確な処分をするということで、公認会計士制度全体の建て直しの私は最初の石だと思いますから、その点十分局内の意見を統一して、積極的に推進をしていただきたいと思います。  それから最後に、ちょっと報告にもありましたが、国税庁にお伺いをしたいと思うのです。今度の問題で下請業者は非常に困難な立場に立っておることは明らかであります。ですから、その点については、税法上の措置として、可能な範囲における処理をしてやってほしいし、同時に、こういう業者はあまり事情を知りません。税法というのはなかなかむずかしくて、そうなったら一体どういうふうになるのかということが必ずしも明確でないと思うので、これは私は国税局長にも言っておきましたが、ひとつ国税庁側としても、要するに善意の指導をして、できるだけ、そういう不測の事態で災難にあったようなものですから、それらについての税法上の取り扱いについては法律の許す範囲、あるいは措置のできる範囲において措置をしてもらいたい、こう思いますけれども、これらについての国税庁側の見解を少し——現地の局長はいろいろな処理について国税庁にいま照会中でございます、こういう答弁を実はわれわれ現地で聞いたわけですから、それらの点を含めてちょっとお答えいただきたいと思います。
  103. 喜田村健三

    ○喜田村政府委員 一般的にこうした更生会社に対する債権者の債権取り扱いでございますが、これにつきましては、現在税法上及び取り扱い通達によりまして、課税面及び納税面につきまして、いずれもかなり整備された取り扱い及び規定ができております。したがいまして、これを運用していけば実情に税法上の取り扱いができる、こういう規定はできております。ただ、いまおっしゃいましたように、これは納税者がなかなか知らない、非常に複雑になっております。また法律そのものに書いてなくて、取り扱い通達で詳しく書いてあるというような性格の規定もございまして、なかなか納税者の方が知り得ないということのために、まず納税者に対して十分これを周知徹底させるということ、説明するということ。それと同時に、税務署側も納税者からいろいろ照会があった場合、あるいは調査その他において納税者に接する場合、こうした取り扱いについて十分親身な取り扱いをするようにということを本年三月九日の通達で、特に新たな取り扱いとして規定したものはございませんが、いままでの通達を全部一覧にいたしまして、こうした規定があるから、十分納税者に対する親身な取り扱い及び説明をやるようにという指示通達をいたしました。  それから大阪国税局で検討中と申しました問題、先ほども金子委員報告にもありましたように、事業年度がたとえば一月、二月に済んでしまった、ところが更生会社の手続開始決定が三月になってから行なわれた。このために、こうした納税の債権償却の特別勘定の設定が、二月に終わった、あるいは一月に終わった事業年度にできないから、半額貸し倒れとして落とすという取り扱いができないじゃないかということについて納税者から要望があった。こういう問題につきまして、国税局長から直ちに国税庁に照会がありまして、どうするかということを十分検討いたしました。これにつきましては、現在課税所得が事業年度ごと、あるいは個人で申しますと年分ということできちんと計算されるという取り扱いになっておりますので、たとえば事業年度が済んでから二カ月、申告期限までの間にいろいろの事態が起こって、たなおろし商品が焼けたとか、あるいは債権が取れなくなった、あるいは火事が起こって雑損を受けたという場合に、すべてこれをその年度に戻って課税所得を訂正するということになりますと、非常に複雑になりますし、実情になかなかうまく沿った取り扱いができないのじゃないかということで、課税上これを直すということがむずかしい。それでは、こうした場合に一切を救えないかということになるわけでございますが、これにつきましては国税通則法に納税の猶予及びその延滞税の免除という規定がございますが、この規定を十分活用いたしまして、たとえば債務者の会社更生会社になるというような場合には、そのために納税の資金が、一時に納付することが困難ということになりますと、納税の猶予をする。しかも延滞税を免除できるということになりますと、結果的には課税が一年延びたことと同じことになるわけでありますが、この規定を十分活用いたしまして、実情に即した取り扱いをするようにという返事をいたしまして、そういう実施をいたすことになると考えております。
  104. 堀昌雄

    堀委員 いまの措置がとられれば、実質的な効果においては同じことになると思いますので、実情に即してひとつ国税局側としてそういう措置をとられるような指導をしていただけばそれで十分だと思います。  終わります。
  105. 吉田重延

    吉田委員長 この際、参考人出席要求に関する件について、おはかりいたします。  証券取引法の一部を改正する法律案につてい、来たる十四日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  106. 吉田重延

    吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次会は、来たる十三日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたしたします。    午後二時一分散会