運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1965-04-08 第48回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月八日(木曜日)     午前十一時十九分開議  出席委員    委員長 加藤 高藏君    理事 有田 喜一君 理事 藏内 修治君    理事 中川 俊思君 理事 中村 寅太君    理事 多賀谷真稔君 理事 滝井 義高君    理事 細谷 治嘉君       小笠 公韶君    小渕 恵三君       大石 八治君    佐藤 孝行君       四宮 久吉君    澁谷 直藏君       田中 六助君    中村 幸八君       西岡 武夫君    野見山清造君       廣瀬 正雄君    藤田 義光君       三原 朝雄君    伊藤卯四郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  櫻内 義雄君         自 治 大 臣 吉武 恵市君  出席政府委員         通商産業事務官         (石炭局長)  井上  亮君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   吉瀬 維哉君         通商産業事務官         (石炭局鉱害課         長)      佐成 重範君         参  考  人         九州鉱害復旧事         業団理事長         鉱害賠償基金理         事長      天日 光一君     ————————————— 四月八日  委員小笠公韶君上林榮吉君、倉成正君、中  村幸八君及び廣瀬正雄辞任につき、その補欠  として藤田義光君、佐藤孝行君、小渕恵三君、  大石八治君及び四宮久吉君が議長指名委員  に選任された。 同日  委員小渕恵三君、大石八治君、佐藤孝行君、四  宮久吉君及び藤田義光辞任につき、その補欠  として倉成正君、中村幸八君、上林榮吉君、  廣瀬正雄君及び小笠公韶君議長指名委員  に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法律案  (内閣提出第五九号)  石炭鉱害賠償担保等臨時措置法の一部を改正す  る法律案内閣提出第六〇号)      ————◇—————
  2. 加藤高藏

    加藤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法律案及び石炭鉱害賠償担保等臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。  本日も参考人として、九州鉱害復旧事業団理事長鉱害賠償基金理事長天日光一君に御出席をいただいております。  質疑の通告がありますので、これを許します。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 質問はたくさんあるのですが、自治大臣の分だけを先にまずやらしていただきまして、それから通産大臣なりにお尋ねしたいと思います。  自治大臣御存じのように、臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法律がいま当委員会に上程されているわけですが、この鉱害復旧法の一部改正に関連して、いままでの自治体鉱害復旧に対する負担率が無資力分についてはやや少なくなってきたわけです。ところが有資力分について、たとえば農地を見てみますと、県の負担分が一一・〇五であったものが、今度は一四・四五と、三・四%だけ負担がふえるということになりました。それから。家屋等の土盛り、家屋復旧を見ますと、いままで一〇であったものが一三・三%だけふえることになる。したがって四十年度の県の負担を見てみますと、五億一千万円程度のものが、率がいまのように上がったため五億五千万円程度になって、四千万円程度県負担がふえることになるわけです。この分については、あと普通交付税なり特別交付税措置をされることとなっております。なっておりますけれども、普通交付税なり特別交付税措置される分は実は全体の六一・六%しか措置されないわけです。約四割程度は県が持ちます。その四割程度の県の持ち分の中で負担増加をしてくるということになりますと、御存じのとおり、大臣のふるさとの山口県も産炭地でございますが、山口県をはじめ、福岡、佐賀、熊本、長崎あるいは北海道、福島県というような産炭地の諸県というものは、今後における石炭採掘に伴って急激に鉱害増加することは明らかです。現在すでに通産省が大ざっぱに見たところでも、今後の鉱害はやはり八百億ある。こういわれているわけです。したがってそうなりますと、四十六年度までくらいに福岡県だけをとってみても、七億円から八億円の負担増になってくるわけです。もちろんそれはその分の六割程度普通交付税特別交付税で見てもらえますけれども、しかし財政の苦しくなった産炭地自治体としてはたいへんなことなんです。そこでこの負担軽減について強く通産当局なり大蔵当局に私どもは、こういうように産炭地鉱害復旧等自治省でしりぬぐいするということはいかぬ、やはりそれは政策を立てるときに国が、自治体負担をかけないように措置をすべきだということを強硬に主張してきているのです。そこで今回の、たとえば農地改正にあたっても、一一・〇五を一四・四五に国も上げるから、県も同じ率で上げろという論理というものは通らぬ。なぜならば、県が一四・四五負担するときに鉱業権者幾ら負担するかというと、一五しか負担しない。加害者である鉱業権者が一五であるときに、被害者の県が鉱業権者と同じような負担をしなければならぬというのは、幾ら国土保全といったって理論が通らぬ。そこで農地でいえばこの一四・四五を直しなさい、その分だけ国が持ちなさいということを強硬に主張してきているのです。ところが、ここ数日来けんけんがくがくの議論をやりましたけれども、なかなか泣く子と地頭には勝てぬでうまくいかぬのです。そこで思い余って、今年だけはやむを得ないので、ひとつ自治省に泣いてもらう以外にないじゃないか、こういう結論にならざるを得ないのです。仏の顔も三度で、前には水道のときに交付税で全部見ることにしてもらった。また今度見てくれということは、実は私としては言えない、言えないけれども、これはいま言ったように泣く子と地頭には勝てぬので、やはりどこかヒューマニズムを発揮してくれるところを見つけざるを得ない。これは吉武さんの自治省以外にない。こういう非常に泣くに泣けない境地に立ちまして大臣にきょう来てもらったわけです。  そこで、いまのような状態でございますので、四十年度については、今回の法律改正によって地方自治体鉱害復旧負担増になる分については、全額ひとつ年度末に自治省処理をしていただきたい。それができるかできないかということなんです。
  4. 吉武恵市

    吉武国務大臣 お話のように、鉱害復旧についての地方負担につきましては、御承知のように地方財政はだんだんと窮境にございますので、なかなか困難な事情でございます。しかしながら、今回のこの改正による県の負担増につきましては、お話のように、私のほうが交付税で見ざるを得ないか、かように存じております。
  5. 滝井義高

    滝井委員 ぜひひとつ、これは県だけでなくて、北海道もありますが、それの負担増になるものは全額交付税で見ていただきたい。  そこで、これをずるずると来年、再来年といっておったのでは、これは地方財政はなかなかたいへんだと思うのです。交付税肩がわりをすることになりますから。この点については通産大臣にお願いすることになるのですが、いままでの復旧というものは単年度、単年度でやっておったわけです。そこで長期見通しがないままにやるので、すべてしりはそのときそのときの力関係で、弱い自治体に負わせる、こういう形になったわけです。今後鉱害復旧が有資力、無資力を通じて急激に増加する客観情勢がございます。そこで通産省としては鉱害復旧についての長期見通し計画を立てていただいて、その中で地方負担がどういうように増加の趨勢にあるのか、今年はいまのような過渡的措置でやります。しかし四十一年以降の長期見通しにについては十分自治省と打ち合わせて、地方財政負担にならぬような措置を講じていただかなければならぬと思うのです。そのためにはまず、通産大臣のほうでそういう鉱害復旧長期見通しを立て得るかどうか。自治省としてはその長期見通しに立って、地方負担軽減についてやはり積極的に国なりが負担を持つという形をとり得る積極性を発揮してもらわなければならぬ。そういうことが両省の間でうまくいけるかどうかということなんです。
  6. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私のほうから先にお答えをさせていただきますが、今回の四十年度予算の中に、全国鉱害についての調査実施するようにいたしております。この調査に伴いまして当然長期計画を立てる考えでございまして、この計画に伴い、関係各省ともよく連絡をとりまして、御指摘のとおりに、今後自治体に不当なしわ寄せのないように努力してまいりたいと思います。
  7. 吉武恵市

    吉武国務大臣 自治省といたしましても、先ほど申し上げましたように、将来多額な負担自治体にかかるということになりますと、これは地方財政の上においてなかなか困難な事情がございますので、将来の鉱害復旧に対する総合的な計画を立てていただきまして、その上でひとつ県と国との関係も検討していきたい、かように存じております。
  8. 滝井義高

    滝井委員 ぜひひとつ……。ことしは二百六十万円くらいしか鉱害調査経費は計上されていないのです。そこで、やはりこれは、いまのようなお話になりますと、多年度計画を立てなければならぬことになるわけです。その多年度計画に見合う、やはり国なり自治体なり鉱業権者負担分というものを長期見通しを立てなければならぬ。そうすると、ことしの二百六十万円の調査費では全国的な調査ができないのです。だから、ある程度予備費を計上してでもやはり全国的な調査を本格的にやって、早期にその見通しを立てて、四十一年度予算には、今日のように吉武自治大臣のほうの自治体負担増にならない政策というものを、ひとつ早急に立てていただきたいと思います。いいですね。——大臣、首を縦に振りよりますから、それで納得をいたしました。  そうしますと、もう一つだけ自治大臣に、これは建設大臣にいずれ次の機会に来ていただきますが、急激に炭鉱がつぶれたために、たとえば大手炭鉱炭住というものがぽっこりあくわけです。あかなくても、現実に住民が住まっておりますけれども、いままで炭鉱は、労務管理上、社宅政策をとって、十分社宅管理をやっておったわけです。炭鉱が生きておる隆盛の問は、非常に清潔な炭住でございました。しかし一たび閉山をいたしますと、急激にスラム街化するわけです。そうしてまずし尿処理清掃、こういうものが一挙に自治体負担になってしまう。たとえば大手炭鉱でいいますと、五千戸、六千戸の炭住があるわけです。そうすると、その市の二分の一とか三分の一を占める、こういうことになる。こういうものの処置というものを、いま自治体は一挙に背負うことになるわけです。この問題を一体どう考えておるかということが一つ。  それからいま一つは、炭住があきますと、生活保護者がどんどん入ってくるわけです。それは家賃が安いとか、縁故で入るとかで入ってくる。同時に、他の人も入ってくるわけです。そうしますと、その炭住居住者は千差万別になってくるわけです。離職者がおり、第二会社に行っておる人がある、新しく起こった産炭地の企業の勤務者がおる、生活保護者が入る、失対の労務者の皆さんが入る、千差万別です。まさにかっての統一をした炭住が、町と同じような形になるわけです。しかしそこの管理というものは、いままで鉱業権者が統括をしてやっておったのが、そういうことができないので急激にスラム街化する。そこで私は先日ここでこれを問題にして、一つ提案をしたのです。それは、こういう炭住については、たとえば鉱業権者の意見を聞いても、ある程度自治体が積極的に肩入れをしてくれるならば払い下げてもよろしいという。そこで町のまん中にそういう千戸、二千戸の炭住あるいは五、六千戸の炭住があるとすれば、それがスラムになったら、治安上からいってもたいへんですから、こういうところは一括してその土地と建物をできれば国が買い上げるか、自治体に助成をして買い上げていただくか、あるいは住宅公団に買い上げさして、そして現在住んでいらっしゃる方には、住ませる権利を与えながら、これを高層建築化するといいますか、三階か四階建てにして、一階にはいまの人たちを住ませる。しかし二階、三階には新しい居住者を入れるとかいうような新構想による住宅政策持ち家制度といいますか、こういうことをやる時期がきておるのじゃないか。筑豊にはいま産炭地振興事業団でたくさんな工業用団地をつくりつつある。ところが、来てみるけれども住宅がないということになれば、たいへんなんですね。そういう形で、非常に便利のいい炭鉱地帯に、そういう新しい、スラム街を乗り越えた住宅政策を展開をしていくと非常にいい。そのためには自治体が積極的にやはりそういう方向に問題を持っていかないとだめなんです。ところが、いまの筑豊における貧弱な自治体ではどうにもならぬわけです。こういう点については、ある程度通産当局なり自治当局肩入れをしていただかないと、こういう政策が推進をしないのです。いま鉱業権者は、当面を糊塗するためには、何か会社でもつくって家賃を取りながらやっていかなければならぬという形になっちゃうわけです。ところが家賃炭住から取っていくような政策をやっておっても、それが非常にいい方向炭住が更新していくかというと、いかないですよ、そんなに高い家賃を取れないんだから。そうすると、やはり結論スラム街化するということになる。そこでこういういま言ったし尿処理とか清掃の問題をそういう千戸、二千戸の炭住地帯においてどういうあと始末をやるか、それからいまの炭住更新政策について、何かもしわれわれが具体案でも提示するならば協力する意思があるのかどうか、いずれこれは建設大臣にもお尋ねしますが、通産大臣自治大臣の御見解をこの機会にお伺いしておきたい。
  9. 吉武恵市

    吉武国務大臣 話おしのような状況もあろうかと思います。しかしながら何といっても、炭鉱閉山になりました地域につきましての、これら炭住に住んでおられる人々に対しましては、離職者対策というものがまず私は先決だと思います。離職者対策といっても、そう方々へ出かけていって職があるというわけにもいきませんので、産炭地には産炭地振興法によりましてできるだけ適当なる事業を誘致して、その場において就職のできるような方途が講じられれば、これが一番いいことだと思うのです。しかしなかなかそういっても、適当な仕事というものはすぐ右から左にもないわけであります。ただ住宅街が、そういう炭住炭住のままで保持していくといいましても、中に入っておられる方の生活というものを見ることが大事でございまするから、そういう面とにらみ合わせまして対策を立てていくべきじゃないかと思います。また、これは各炭鉱地域地域によって事情も違うことでございまするが、ただ滝井さんの御提案になりましたように、これを引き取ってりっぱな公営住宅にするといいましても、入る人の職というもの、生活というものの世話をすることがまず整いませんと、入れものだけ考えるというわけにもいかないかと思いますから、こういう点は全般的にひとつ検討を進めていきたい、かように考えておる次第であります。
  10. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 炭住の様相が一変するというお見通しについて、いろいろ御所見がございました。私もその見通しを否定するものではございません。こうして、新構想による住宅施策を御提唱になっておるのでございますが、ただいま自治大臣からもお答え申し上げましたとおりに、おそらく地域地域による実情も相当違うことと思います。一がいに一つ方針施策をやるわけにもいかないではないか。しかし御指摘のとおりに、家賃を取ってやっていくといっても、かえってそれがスラム街の助長になるというようなことも考えられますので、この点はお話しのとおりに関係各省ともよく相談をいたしまして、今後の炭住施策を進めてまいりたいと思います。
  11. 滝井義高

    滝井委員 大臣、この前局長と少し討論したのですが、いまの石炭山買い上げ方式は、変更されて、鉱業権抹消方式による新方式なんですね。そこで、炭住とか坑外施設は買わないわけです。鉱区抹消だけで整理促進交付金をくれるという形になった。ところが先日総理答弁によって、旧方式をとってもいいということになった。旧方式というのは、鉱業権合理化事業団が買い上げる方式なんです。そのときには同時に炭住坑外設備も買い上げていいという、もととっておった方式、三十七年以前の方式をとってもいいことになりました。そこでいまのような四千戸、五千戸の炭住が買われないままで放置されておるわけです。鉱業権者はこれを維持管理するのにたいへんなんです。そこでそういう場合に、幸いその鉱業権者鉱害が多ければ、それを国が買い上げて、それを鉱害の金に回せば無資力化を防ぐこともできるわけです。そこでこの前は、ことしは無理だけれども四十一年度になって、もしそういう鉱業権者がおれの炭住土地合理化事業団が買うてくれといったときには買い上げてやる、買い上げてやれば、これは国と同じ合理化事業団のものになってしまう。そしてそれを国が今度自治体に払い下げるなり何なりすれば、住宅政策が非常にうまくいくことになるわけです。局長は、それはひとつ前向きに検討いたしましょうというような意味のことを言ったのだけれども、大臣はそれを局長からお聞きになったかどうか。私はこの次やると言っておいたから、お聞きになっておると思うのですが、その問題について一体どうお考えになっておるのか。まずここらの基礎固めをしてから建設大臣を呼んで、そしてこれを推進する方向にいかぬことには話にならぬ。まずこれは旧鉱業権者から国のベースにものを移していく、これが大事なんです。幸いそういう方針を打ち出してくれたけれども、これを一体追加買収として買い上げてくれるかどうかということです。いままでは新方式で、鉱区抹消しかしておらない。炭住が残っておる。そうしたら、その金を鉱害復旧に一部充てられるわけですね。だから、それをひとつやってもらえるかどうかということです。
  12. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 先般総理の御出席の際に、新方式になったのでありますが、旧方式を再考慮されることを申し上げたことは、よく承知をしております。ところで、私としては、総理のことばを受けて、さっそくこれを実施すべき立場にございますが、これは言うまでもないことでございますけれども、四十年度予算においてはこれを具体化するのに非常に困難性があろうと思いますので、四十一年度以降の予算の上におきまして御趣旨に沿いたいと思います。
  13. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、四十一年度予算は、もうそろそろ資料集めにかかって、八月から具体的編成に入るわけです。そこで、これは先日局長も言っておりましたが、腹を固めてもらって、そういうものも追加をして買い上げてやろうという形に御検討いただけますね。四十一年度予算編成というのは、ことしの七、八月ころ始まるわけですが、その段階で御検討いただけますね。
  14. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 さようにいたしたいと思います。
  15. 滝井義高

    滝井委員 そういう形になりましたら、ひとつ自治省のほうも——いわばこれは地方自治体体質改善になるわけです。スラム街住宅が、今度はりっぱな住宅街編成がえされる。そこに新しい人が入ってきても、すぐに付近には工場団地幾らでもできておるのですから、工場さえ建てば住宅はああるということで、まさに一石二鳥あるいは三鳥かもしれぬ、こういう形になるわけです。その場合には自治大臣のほうも積極的な御協力をいただけますね。
  16. 吉武恵市

    吉武国務大臣 先ほど申しましたように、地域地域事情もございましょうししますから、一律にどうするということはここでは申しかねますけれども、その具体的な事象に対処いたしまして善処していきたい、かように存じております。
  17. 滝井義高

    滝井委員 ぜひそうしていただきたいと思います。これで自治大臣けっこうです。ありがとうございました。  次に、さいぜんの鉱害量調査をやらなければならぬのですが、これは年々二十億から二十五億程度鉱害量がどんどん増加してくることはわかっておるわけです。これは今後における施業案の実施採掘計画、そういうものと見合えば、いままでの長い経験を持っておりますから専門家が見れば、いまの二十億ないし二十五億が確実なものであるかどうかがある程度わかってくるわけですね。そうしますと、先日御答弁をいただいた約八百億になんなんとする鉱害が、ほんとうにその程度あるかという調査を確実にやらなければいかぬわけです。この調査の完了する時期は、一体いつごろになったら完了するのかということです。
  18. 井上亮

    井上政府委員 早急に始めまして、来年の二月ぐらいには完全に完了いたすというふうに考えております。
  19. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、来年の二月ころに完了をすれば、それに基づいて復旧の全般的な基本計画を立て、年度別実施計画を立てなければいかぬ。いままでのように、復旧基本計画というのが絶えずぐらついてはいかぬと思うのです。確実な調査に基づいてきちっとした復旧長期基本計画を立てる。それに基づいてやはり年次的な実施予算計画が立たないと、先ほど言った地方自治体負担区分というのがはっきりしないわけです。これは、来年二月にそういう調査が完了したならば、通産省としては四十一年度予算からは、そういう長期構想に基づく具体案というものをつくることになるのですね。
  20. 井上亮

    井上政府委員 この調査を完了いたしましたあとは、長期計画的な復旧計画をつくって善処してしまいたい。しかし、私一つおそれておりますのは、二月に調査が完了いたすといたしますと、それから長期計画をつくるわけでございますから、四十一年度予算はその前の暫定的な形になるのじゃないかというふうに考えております。ただ、しかし、これは早息に調査に着手いたす予定ですから、まあ予算編成の時期までには大体の見通しをできるだけつけるようにいたしまして、実施いたしたいというふうに考えております。
  21. 滝井義高

    滝井委員 四十一年のものが暫定的になるというのは、四十一年二月ころまで鉱害実態調査がかかる、そうすると、実際に調査が完了していないので、四十一年度長期的な見通しというものは明確でない。したがって、とりあえず、ことし八月ころから作業に入る四十一年度予算というものは、鉱害復旧については暫定的なものにならざるを得ない。こういう理解ですね。
  22. 井上亮

    井上政府委員 はい。
  23. 滝井義高

    滝井委員 わかりました。そうすると、それが本格的なものになるのは四十二年からということになるわけですか。
  24. 井上亮

    井上政府委員 そのとおりでございます。
  25. 滝井義高

    滝井委員 四十二年ということになると、来年の七、八月ころにはひとつ長期のきちっとした復旧見通しを立ててもらわないと、産炭地鉱害被害者というのはたいへんなことになるわけです。これはわれわれの譲り得るぎりぎりの線だと思う。ぜひよろしくお願いしたい。  それから特鉱ポンプばかりでなくて、ことしの予算を見ますと、特別鉱害かんがい排水施設管理費補助金というのになっていますね。これは昨年が四百七十万一千円で、今年は六百四十六万七千円になっておるわけです。これの中には、特鉱ポンプと、かんがい維持管理ポンプ、そういうものは全部入っておるのですか。
  26. 佐成重範

    佐成説明員 ただいま御質問特別鉱害かんがい排水ポンプ維持管理費予算、これは特別鉱害復旧法に基づきまして設置されました農業用地かんがい排水ポンプ、これの維持管理経費補助のみでございます。
  27. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、電気代とか人夫賃とか、そういう維持管理のものだけですね。
  28. 佐成重範

    佐成説明員 お示しのとおりでございます。
  29. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、この二十一ポンプ分ですね。特鉱ポンプ特鉱ポンプと申しますが、この特鉱ポンプの所有権というのは一体どこにあるのですか。
  30. 佐成重範

    佐成説明員 所有権につきましては、これは一つの固定的な動産といった中間的な対象でございますので、登録、登記というふうな制度がないわけでございますが、一般的に申しますけれども、工事を施行いたしまして設置いたしました炭鉱が、まず第一次的には所有権者であろう。しかしながら、その炭鉱が消滅いたしまして無資力化したということから、市町村が維持管理するということで市町村に所有権が移転する、あるいは水利組合といった農民の団体に所有権が帰属しているという場合もあるかと思いますが、いずれたいたしましても、画一的な所有権の所在というものが法的に確立されているということはございません。この特別鉱害かんがい排水施設を設置いたしまして、その後維持管理者がそれそぞれ契約に基づき、あるいは費用の負担関係に基づきまして、実体的にこの維持管理に当たってきたということが実態でございます。
  31. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、鉱業権者が健在であれば、そのつくった鉱業権者の所有である。鉱業権者がいない、不明である。あるいは無資力化した場合には、それは市町村の所有権に移っていく、あるいは水利組合の所有権になる。こういうことですね。
  32. 佐成重範

    佐成説明員 これは、私さいぜん申し上げましたように、登記、登録の制度がないわけございまして、所有権は当事者問の契約というふうなもので定まってまいるということでございます。ただこの所有権につきまして、一般的に申しまして、通常推測あるいは推定ということは考えられる次第でございまして、その一般的に妥当な所有権の所在の推定の形といたしましては、ただいま申しましたような分類に従いまして推定するのが最も妥当であろうということでございます。
  33. 滝井義高

    滝井委員 大臣お聞きのように、これは二十一くらい特別鉱害でつくったポンプがあるのです。それがいま言ったように登記、登録の制度がないので、所有権が一体だれにあるのかということがはっきりしないこと。こういう宙に浮いたような大事なものがあるわけですね。そこで私は、これは登記登録がないので、所有権が明らかでなくてもよろしいが、その最後の詰めだけを、大臣答弁をはっきりしていただけばいい。  それは、この維持管理の費用というものは、ずっと永久に国が出すかどうかということが一つ。それから、そのポンプが老朽化して、そして更新をしなくてはならぬ場合の経費は、これをそのものとの所有権者とか市町村に出せといっても、これはとても出せるものじゃない。したがって、その場合には、更新の経費全額国が持つ。その場合にまた大蔵省が、生活保護でさえも八割持つのが限界でございますと言われれば、二割自治体のほうで持たなければならぬということになる。そうすると、きょうとまた同じような問題が起こってくるのです。これは国が全額持つか、それともどうしても持たせなければならぬ場合には、持鉱ですから、自治体の持つ限度は一割でございます。いまから三年か五年先の問題もきちっとしておかなければならぬ。原則は全額国が持ちます。維持管理費は永久に国が持ちます。こういう二点を明白にできるかどうかです。
  34. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 維持管理に要する費用については八三%は国が持って、あと地方自治体、こういうことでございます。なお更新の場合におきましても、これに準じまして国がめんどうを見たいと思います。
  35. 滝井義高

    滝井委員 そう言うだろうと思ったのです。その場合は、したがってきょうとまた同じ問題が起こる。特鉱ポンプをつくるときには、自治体は一割しか持っておらぬ。したがって、この場合も特鉱並みに一割にしておいてもらわぬと、つくりかえるときは、一七%になると問題がまた起こってくるのです。まだすぐつくりかえるのはない。滝井が言っておるのだから、すぐつくりかえるのを持ってくると思うかもしれぬが、まだつくりかえるものはないのですから、先でいいです。またさきに言ったように、維持管理費は八三、一七で、これは納得しておればしようがない。将来更新する場合には、特鉱のときには一割ですから、自治体負担は一割ということにしておいてもらわぬと、これは困るのですよ。
  36. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 現在は一七%の負担をお願いしておるので、ただいま一〇%にというお話、これについては十分検討をさせていただきたいと思います。
  37. 滝井義高

    滝井委員 なかなかこれは答弁ができないらしいが、これはきょうあまりがんばりません。がんばりませんが、これは特鉱でやるときは一割でやっておるのですよ。だからこれはやっぱり一割にしてもらわぬと——特鉱という仮面をずっとかぶっていく。予算でも特鉱ポンプといっておるでしょう。その負担率をいまになって変えるということはできないだろうと思うのです。この点はいますぐ起こっておりませんし、またそのときがんばるとして、それだけはひとつ大臣、十分大脳の片すみに焼きつけておいていただきたいと思う。  それから果樹の問題がありますけれども、これは時間がございませんから、産炭地振興のところでやらしてもらいます。あと一問で終わります。  御存じのとおり、ことしはもうしかたがありませんが、制度の問題です。現在鉱害復旧に関連をし、あるいは石災鉱害賠償担保等臨時措置法に関連をして、合理化事業団と、それから復旧事業団と、それから鉱害賠償基金、今度鉱害基金になりますが、三つの機関があるわけです。そして合理化事業団は買い上げたり——いまは買い上げませんが、鉱区抹消をして整理交付金を出したり、整備資金を貸してやったり、近代化資金を貸してやったり、債務の保証をしてやったり、そういう仕事をしている。復旧事業団はもっぱら復旧工事をやっておるわけです。基金は鉱害賠償の金を貸す、今度は予防の金も貸す、こういうことになっているわけです。そこで現在日本の鉱害復旧をやる場合に、これらの三つの機関と通産当局が中心になってやっておるのですが、三十億をこえる予算を組もうとしても、なかなか測量あるいは設計をやる技術職員というものがばらばらになっておって不足しておる。いまお互いに幾ぶん有無相通じておる面もございます。そこで八百億をこえる今後の鉱害復旧をやり、あるいは石炭山に融資等をやろうとすれば、やはり一本の強力な機関にする必要があるのじゃないか。ある意見は、三つやっておったほうが予算がよけいとれるじゃないかという意見もございます。しかし、これはひとつ検討をしてもらって、合理化事業団復旧事業団と鉱害基金とを一本にして、強力な一つ事業団といいますか機関をつくって、そしてこの買い上げ、融資、復旧の三本を三つの部門にきちっと統一をして強力に推進したほうが、今後総合的な計画をお立てになって、自治体との負担区分等もきちっと見合いながらやっていく場合に、これらの三つがばらばらでわずかの事務費をもって、あっぷあっぷしておるということでは、強力な鉱害復旧体制なり石炭政策の推進はできないじゃないか。だから通産当局が参謀本部の働きをしてきちっとすわり、その下に実施機関としての一本の機関をつくっていく、そして県なり自治体、市町村と密接な連携をとって長期計画で推進していくということのほうがどうもいいような気がするのです。われわれも一つの山が買い上げられて、そして復旧するまでの問に、これらの三つの機関を行ったり来たりしなければならぬ。まず通産局の鉱害部に行って話してまとめる、そうしたら今度は合理化事業団に行く、合理化事業団でまとまらないと復旧に行く、それから金を借りるために基金に行くというようなことで、右往左往する時間というものは実にロスが多いのですよ。やはり参謀本部の石炭局と、そしてその下部の実施機関としての何とか事業団というようなものでやるほうが、今後の日本の石炭政策の推進、あと始末処理というものはそれのほうが効率的であり、合理的であり、合理化の促進にもなるじゃないか。いずれにしましても、佐藤さんが、最近の日本の政治は汚職も多いし、非能率でロスが多いということを、顔を赤らめて演説をしたということが、きょうの新聞に出ておりましたけれども、やはり私は能率を上げる必要があると思うのですが、大臣どうお考えになっておるのか。
  38. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 三機関と申しましょうか、三団体と申しますか、これは言うまでもなくそれぞれの設立の経緯があると思います。しかし滝井委員のおっしゃるように、現在の時点でこの三機関をもっと合理的にやる法はないかというふうに検討する場合に、私もこれは何か方法がありはしないかという気もします。その点からいたしますれば、将来の検討問題として十分考えたいと思いますが、いま直ちにこれを御趣旨の線に沿って一本化するということが現在問題を処理する上に旧そう合理的であるかどうかということについては、にわかに賛意を表しがたいのであります。将来の検討事項として十分考えたいと思いますし、またおっしゃった御趣旨につきましては、滝井委員のおっしゃるとおりに、通産省石炭局において総合的に円滑にこの三団体が仕事のできるようにつとめて配意してまいりたいと思います。
  39. 滝井義高

    滝井委員 ぜひひとつ三つの団体のあり方について真剣な討議をやっていただくことを要望して、私の質問を終わります。  それであと果樹問題はありますが、きょう農地局を呼んでおりませんでしたから、産炭地振興のときにやらせていただきますす。それから炭住の問題もあともう一回建設大臣その他にやらせていただくことにいたしまして、きょうはこれで終わらせていただきます。
  40. 加藤高藏

  41. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 法案に関連して、一、二点質問をしておきたいと思いますが、家屋の地盤等の復旧費に対する補助率が変わったわけですけれども、いわば復旧しないで、家屋鉱害に対する金銭賠償の場合に、この補助率が変わったことをもって、納付金の限度において鉱業権者は責任を免れるかどうか、これをお聞かせ願いたい。
  42. 井上亮

    井上政府委員 ただいま多賀谷先生から御質問の疑問点が往々にして私どもの耳にも入るわけでございます。お説のように、金銭賠償するだけでは済みません。済まぬものと了解しております。
  43. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 その前にちょっと鉱害課長に、家屋復旧の場合に、補助の対象になる地盤等の復旧は大体どの程度の率になるか、これをひとつお知らせ願いたい。
  44. 佐成重範

    佐成説明員 地盤等の復旧家屋自体の復旧と、この二つが合算されまして家屋等復旧となるわけでございます。率から申しますと、全部ならしますと、大体八割が地盤等復旧費であるというのがいままでの実績でございます。ただ最近の傾向を見ておりますと、地盤等復旧費の比重が八割をこえるというふうな場合も多うございます。多いと申しますことは、結果的に申しますと、家屋等復旧費の中で補助対象として考えるべき部分が多い事例が非常に多くなっているということかと存じます。家屋等復旧費の中で地盤等復旧費、すなわち補助対象となるべき復旧費、これの占める割合がいかような実態にあるかということを至急慎重に調査いたしまして、妥当な補助の交付ということを行なってまいりたいと考えております。
  45. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 先ほど局長から、納付金の限度において金銭賠償の責めを免れるものではないという答弁がありました。現実に鉱業権者がせっかく国会において補助率を上げたことを奇貨として被害者に迷惑をかけるような行動に出ておるというのは、立法者のわれわれとしても非常に心外にたえないわけです。鉱業権者の責めを免れるのはけっこうですけれども、額が少なくなるのはけっこうだけれども、それによって被害者の損害賠償額が減るなんというばかなことはないわけです。これはひとつ十分役所として注意をしてもらいたいと思うのです。これはわれわれとしては非常に心外にたえない、かように考えるので、再度御答弁を願いたい。
  46. 井上亮

    井上政府委員 鉱業権者鉱害を賠償する義務があることは申すまでもないことでございまして、今回国は最近の石炭産業の現状にかんがみまして、鉱害復旧についての国、公共団体の補助率の引き上げをお願いいたしたわけでございます。それによって鉱業権者負担軽減されるわけでございますけれども、それをもって、御指摘のように、直ちに賠償義務はその範囲内にとどまるというのは、全く誤解もはなはだしいものだと私は思います。善意で解釈すれば、鉱業権者は知ってそういうことを言っておるのではないと私は思いますが、しかしもし知らないでそういうことをするようでしたら、私ども直ちに全鉱業権者にその趣旨を徹底いたしたいというふうに考えております。(「通牒を出したらいい」と呼ぶ者あり)現にそういう準備を進めております。これは周知徹底させたいというふうに考えております。もしそういう不徳義な者があれば、厳重に私ども監督いたします。
  47. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 単に鉱業権者だけでなくて、鉱害紛争に対するあっせん人があっせんの内容にそういうことを書いておる。この前は五〇%でした。五〇%ですが、いま鉱害課長も話されましたように、必ずしも家屋等復旧費の全額補助対象ではありませんから、実際は六〇%くらいになるわけですね。ところがその六〇%程度で義務が免れるような金銭賠償に対するあっせんを出しておる。私はけしからぬと思うのです。ですから、単に鉱業権者だけでなくて、役所のかまえというものが必要ではないかと思うのです。一体どういう指導を役所としておるのか。あっせん人は両方の言い分を聞いて、その中を割ってあっせんをするということもあるでしょうけれども、やはり政府が補助金まで出して復旧するという場合には、これは公平でなくちゃならぬと思うのです。ですから、これは現地の通産局はもちろん、鉱業権者、それら関係者に十分趣旨の徹底をお願いいたしたい、かように考えております。  次に、今度、基金の融資対象として鉱害予防が追加されたわけですが、今後地上権者と鉱業者の衝突の面というものがかなり激しくなってくる。地価が相当暴騰しておりますから、地上の権利というものの価値が従来以上に相当高くなってくる、こういう状態です。そういたしますと、どうしても鉱害の予防ということを再検討する必要がある。そこで調査団の報告にも鉱害予防の融資制度というものがありましたし、それからわれわれもいままで論議をしてまいりましたけれども、一方においては鉱命の延長、鉱量の確保の面からも、どうしても坑内における充てん等の鉱害予防の措置が必要ではないかと思うのです。そういうことを考えると、地上に被害があらわれてきてからの補助金も必要でしょうけれども、やはり地上に鉱害があらわれることを予防する面に対する補助金というものも必要ではないかと思うのです。このほうが国が同じ補助金を出すにしても効率的であり、そして人心安定からいっても非常にいいことです。大臣は一体これらをどういうようにお考えですか。いま融資制度ができたのですけれども、一歩進んで鉱害予防ということを重点に考えて、坑内充てん等の処置を講ずる場合には、鉱害の場合と同じように、その工事については補助対象にしたらどうか、かように考えるわけですが、ひとつ大臣から御答弁を願いたい。
  48. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 御意見のような補助対象として考慮すべき問題も将来は起こるかと思いますが、今回は言うまでもなく、融資をいたし、鉱害防止の工事を促進せしめたい、こういうことでございまして、ただいまのところ補助事業としてさっそくに取り上げるということはお答えしかねるかと思います。
  49. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 もうすでに予算も通過をしておりますし、私はいま直ちにやれということを言っておるわけではありません。しかしこれは、少なくとも明年度予算等については、やはり鉱害の予防処置としての坑内充てん等の処置については、補助対象にしたらどうか、かように考えるわけです。これをひとつ、省としてはそういう方針でいく、こういうように大臣から言明願いたいと思うのです。これは大蔵省の関係もあるし、いろいろあるでしょうけれども、ここらで踏み切らないと、今後鉱害問題というのは紛糾をますます大きくするばかりである、かように考えるわけです。ですから、結局いまのようにだんだん鉱害鉱業権者負担分が減りますと、逆にいいますと、坑内で予防するよりも、やはり地上に鉱害があらわれてから直したほうが、鉱業権者としては得になるわけですよ。坑内充てんで予防すると、まるまる全額鉱業権者がかぶらなければならぬ。一応被害が地上にあらわれてからならば国も見てくれる、悪くいうと、こういうことになるわけですね。ですから、そういう場合に、牛はり坑内充てんの予防処置を講ずる場合には補助対象にするということが行なわれれば、やはり鉱量の確保もできるし、鉱命の延長もできるし、それから鉱害の紛糾も少ない、かように考えるわけですが、どうですか。
  50. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 お話の点はよくわかります。しかしながら、この鉱害が発生をした場合に、これは当然鉱業権者負担であるべきものを政府の補助施策をしておるわけでございますから、鉱業権者が新しい経営者として、やはり鉱害を起こさないという観念に徹底していくことが好ましいと思うのであります。そのために今回はひとつ融資をして、鉱害対策に万全を尽させよう、こういうことでございますが、いま補助対象にしたほうが、将来鉱害が起きてからいろいろな施策をするよりも、そのほうがより好ましいじゃないかということについて、そのお考え方についてはよくわかるのでございますので、これは前向きに検討はいたしたいと思います。しかしここで明年度以降補助対象としますというように明白にお答えをすることは差し控えさしていただきたいと思います。
  51. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それは坑内充てんについても、費用の問題もあるでしょう。ですから私は全部坑内充てんをせよということを言っているわけではありません。しかし国が総合的に見て、地上で鉱害が起こった場合の国の援助処置よりも、坑内において援助をすることによって、鉱害も防げるし、民生の安定もできるし、さらに費用も比較的少なくて済む、こういう場合には、私はそういう処置をしたらいいと思うのです。だんだん科学が進歩すれば、一体この程度の層を掘れば、地上でどのくらい出る、地上物件はかくかくしかじかのものだということがわかるわけですね。そうするとおのずから、地上に出た場合の鉱害の損害量というものも算定できるわけです。さらに坑内における充てんの費用というものも出てくるわけです。私の言いますのは、非常に充てんの金のかかるのをやれということを言っているわけじゃないのです。そういう場合に両者を比較してみれば、鉱害の予防処置を講じたほうがこれは必ずいい、しかしいまの炭鉱経営者の力ではなかなか困難だ、こういう場合が多いと思うのです。ですからひとつその点を十分検討してもらって、前向きの答弁をお願いしたいと思う。あまり消極的な答弁では困るですよ。
  52. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 鉱害に対して現在補助対象として事業をやっておるということから考えて、そしていまのお説を聞けば、確かに予防のほうに金を入れるほうが好ましい場合があると思うのです。しかし私先ほど申したように、鉱業権者がまず鉱害に対しても当然考えていくべきである、こういう立場でいきますと、この予防のほうについても、まず鉱業権者が十分その手当てをする、それを促進するものを融資をする、こういう考え方になっていくと思うのであります。ただ、現在の実情からしての御趣旨の点はよくわかりますので、政府の、また国民の貴重な税金を伴う仕事でございますから、より予防工事のほうが好ましいということに相なりますれば、これは前向きに検討してしかるべきものだと思います。
  53. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 鉱業権者は、いま鉱害の予防処置を作業の段階において講ずるというのは、これは特災区域であるとか、その他役所といろいろ折衝した場合しかあまりないのですよ。それはもう地上の鉱害が非常に巨額な費用になる場合には考えますが、普通の場合は実際問題としてそうならないのです。そのことは、いまのように総払い方式になりますと、昔のように残柱を残していく状態でないわけですから、当然総払いになると、そういう考慮を払っておれば能率も悪くなるし、なかなかやらないですよ。ですから私は、やはり政府の方針として予防処置を講ずる、せっかく融資制度ができたわけですからね。これを一歩進んで、これでやはり補助対象というものを通産省としては検討する、こういうように御答弁願いたいと思う。
  54. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 前向きに検討することはけっこうでございます。いま私ちょっとお答えが十分でないと思うのでありますが、鉱害予防といっても坑内充てん以外に、排水処理やなんかも鉱害のうちにも入って、予防措置を講ずべきだと思うので、それこれも考えて多少慎重にお答えしましたが、よく検討させていただきたいと思います。
  55. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 最近の終閉山に伴いまして、以前から問題になっております残存炭鉱の湧水量の増大、すなわち、周囲の炭鉱がやめますと、残っておる炭鉱に周囲の水が全部入って経営が不能になる、こういう事態が相当起こっておるわけです。たとえば最近忠隈炭鉱あるいは飯塚炭鉱の第二会社がなくなりまして、加賀炭鉱というのが、中小では有望だと言われながら、もう閉山の申請をせざるを得なくなった。これは周囲の炭鉱がやめますから、当然水が入ってくるというのでやめざるを得なくて閉山の申請をしたわけですね。あるいはまた今度高松炭鉱が、円城寺調査団の報告によると、一坑、二坑を全面的に採掘を停止するということになると、この水がさらに大正に行く。大正もすでに閉山をしておりますから、大辻に行く。大辻も湧水量が多くなってやめざるを得ない。だんだん湧水量が多くなるだけでなくて、かなり坑内の危険も出る。ですからそれに対して予防処置を講じなければならぬ、こういう問題も起こるわけです。これについても、ひとつ十分制度的に解決をしておかないと、もう炭鉱をやめるのは、個々にやめさせないで、一地域全部閉山、こういうふうに事実問題としてはならざるを得ないような状態にあるわけです。これについて局長は、前々から三井山野の例もあるし、いろいろ検討されておると思いますけれども、本年度予算御存じのとおりですが、制度としてどういうように今後持っていかれるつもりであるか、お答え願いたい。
  56. 井上亮

    井上政府委員 御指摘のように現在、筑豊地域だけではありませんで、常磐についても周辺の山が閉山しましたために、現在ビルド鉱で残っておる山に水が集まる、そのために非常に排水費その他の経費がかさみまして、いままでの経営がさらに悪化してくるというような例があるわけでございます。これは当該山の責任から起こったことではなくて、いわば一種の鉱害のような姿を見せておるわけでございます。しかし、特に筑豊につきましては、どこの山の水が当該ビルド山に来たのかなかなか判定がむずかしいような問題もありまして、この処置につきまして私ども頭を悩ましておるわけでございます。ただしかし現実問題としましては、やはり何らかの措置をしてあげませんと、その山の経営のよしあしとか労使の努力とかいうものにかかわらず、一種の鉱害的災害によって、その山の存立に大きな影響を与えるというのが実態でございますので、これは将来の石炭政策、特に資源対策というような面も含めまして、前向きと申しますよりもっと積極的な立場で検討してまいりたいというふうに考えております。
  57. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大臣、私がよく質問をしておりますように、新鉱開発といってもなかなか困難ですね。ですから、みずから経営者が、あるいは労働者がやろうという炭鉱はどうしても残していかなければならぬ、こういう現状です。そのほうが国の政策から見ると費用が少なくて済むわけですから、労使ともにその炭鉱維持したい、ところが外的な要因によってこれを投げ出さざるを得なということになれば、その外的要因はなるべく政府において排除してやる必要がある、かように考えるわけです。そこで、いま局長は、積極的に取り組んでみたいということですから、大臣から再度明確な御答弁をお願いいたしたい。
  58. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 周囲の閉山に伴う鉱害というか、災害というか、その影響というものは予測のできなかった現象であると思います。したがって、これに対してできるだけの政府としても措置を考慮すべきだろうと思いますが、局長からもお答えをいたしましたように、なかなかその原因探求についてむずかしい点もあろうかと思います。この点については、技術的な問題もまたからんでくるかと思います。しかし十分検討の上でさような事態には政府の施策が及ぶようにこれから努力いたしたいと思います。
  59. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 最後に希望を申し上げてやめておきたいと思います。  四十一年二月ごろまでに鉱害量の総合調査ができる、それから総合的な復旧計画を立てる、こういうことですが、いま滝井委員のほうから機構の問題もありましたけれども、これらを含めて、いまのように個別的な復旧でなくて、総合的な機構強化も含めて抜本的な対策を立ててもらいたい。そして、できれば私は、鉱害白書というものを出して政府はこれをPRする必要があると思うのです。われわれこれに関係しております議員は率直に言って実情もよくわかっておるし、それから石炭に従来関係していただいております商工委員の方は、他の地区でございましても現状を見ていただいておりますけれども、全体的に言って、衆参合わせますと一割くらいも理解があるだろうかと思うのです。いま、「こうがい」というと、公害はわかるようですけれども、深刻な石炭採掘による鉱害は十分認識がないわけです。ですから、この実態が出ましたら、役所としてはそういう白書を出して、そしてこういう深刻な鉱害の上に悲惨な住民の生活があるのだということをPRして、予算獲得あるいは対策の樹立に努力してもらいたい、このことを希望しておきます。
  60. 加藤高藏

  61. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 鉱害の問題については、政府委員はもちろん大臣ももう耳の穴にたこのできるほど聞かされておられるので、十分御承知だと思うのです。しかし、一地域の問題じゃないかという考え方が役所の中でも、また国会の中でもあるわけでございます。そこで、なるほど一地域の問題ですけれども、問題自体が国策的に考えて非常に重要であるという点もございますので、私は、この法案を成立させるにあたって、最後に具体的に四、五点を質問いたしまして、被害者並びに地域住民の人たちに安心感を与えなければならぬ、こういう意味において質問いたすつもりでございます。  たとえば、筑豊炭田だけでも鉱害被害地が大体一万町歩以上ある。これは復旧に力を入れておられますけれども、新たに新たに起こってくるので、一向鉱害被害地が少なくならないというのが現実です。それから、この鉱害のために米麦の年収何十万石というものがとれない状況にある。一福岡県の筑豊地域だけでそういう計算が出ておるわけでございます。でございますから、これを全炭鉱地域について見るならば、相当国家的に大きな損失をそのままに放任しておるのではないかという点から、これは真剣に国策として考える必要があるということは申すまでもないと思うのです。したがいまして、これは農民の問題あるいは地域住民の問題のみならず、国の食糧問題を大きく解決する上においても、また最近、炭鉱にとってかわる工業地帯を造成しなければならぬというところから工場団地住宅団地が盛んにつくられつつあるわけですけれども、これも鉱害が安定しなければなかなかつくるわけにもいかぬし、そこら辺の道路をつくるということもなかなかできないという問題等もありますから、そういう点から、いかに鉱害復旧ということが大きな問題であるかという点は、もう私が申し上げなくても大臣も政府委員も百も御承知のところであります。したがって、以下私は、五、六点大事なことだと思う点だけを質問をいたします。  合理化法によって、これもだいぶん議論されてきた問題ですけれども、新方式による買い上げ方式がとられ、その結果無資力鉱害が非常に増大してきておるということでございます。被害者は年々の減収、収穫が少なくなっていくことに対する補償は、買い上げ後三年間は合理化事業団がこれを補償していたわけでございます。ところが、今後はこれがもう補償をしてもらえなくなったということで、鉱害復旧をしてもらうことが非常におくれる。もう補償はないという点から非常な不安を持っているということは申すまでもありません。そういう点から、最近は特に、こういう被害者に対してあまりに過酷ではないか。だんだんこれを安心感のいくように、あるいは鉱害復旧を早くするとか、あるいはそれまでの間の減収補償をしてやるとかいうことは当然とられなければならぬのに、逆な結果があらわれておる。こういう点に対して、かなり被害者の間においては問題があるわけでございます。そこで政府のほうはあまりに、現地を知っておりながらこれらに対する処置というものが無責任じゃないかということで、相当強く地元被害者が政府に対して攻撃しているというか、反感を持っておるということは、これも私は十分御承知だと思うが、この問題について、どうしていままで補償しておったものを補償しなくてもいいのか、その論拠はどこにあるのですか。これをひとつはっきりしておいていただきたいと思います。
  62. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 いま局長からその論拠は申し上げさせますが、私としては新方式であろうが旧方式であろうが、先ほどからお話がございましたように、鉱害の実態、これを完全に把握をいたしまして、復旧を促進する、そのための予算を獲得をしていくということが眼目ではないかと思うのであります。ただ、旧方式につきまして、これについては総理もお答えをしておるとおり、私どもとして本年度以降旧方式をとってもよろしいということはお答えをしておるわけでございます。論拠につきましては、局長から答えさせます。
  63. 井上亮

    井上政府委員 ただいまの御指摘の新方式、旧方式——承知のように買い上げにつきましては、従来旧方式の制度をとり、二、三年前から新方式を主体に運営してまいりました。今回一部を修正する方針でございますが、そういった移り変わりの過程で、おそらくただいま先生御指摘のような問題が起こったのではないかと思いますが、ただ、一つ私わかりかねる点があるのです。新方式の場合と旧方式の場合で泣かされて不公平な場合があるとおっしゃった点が、ちょっと私わかりにくいのでございますが、御承知のように、新方式ですと、これはもう鉱業権は消滅いたしますので、したがいまして、鉱業権者がいなくなる形になります。したがいまして、その場合は、無資力復旧という形で、鉱業権者にかわって、国と地方公共団体が復旧するという仕組みになっております。そこで、年々補償の問題が問題になってくるわけであります。十分行なえなくなる、これが問題であるという点につきましては、私ども来年度以降におきまして、これについては十分前向きに検討してまいりたいというふうに考えておるわけでございまして、旧方式の場合だと、鉱業権者は一応実質上無資力であっても、鉱業権そのものを買い上げるわけですから、合理化事業団が一応鉱業権者になるわけであります。したがって、まだ善処する手があるというようなことで、その間の不公平は、御指摘のとおり、あると思いますけれども、今回、著しくそういう問題が起こります場合には、これは関係の利害関係者の同意が必要でございましょうが、たとえば労働組合が反対だというものを押し切ってやるわけにはまいりませんけれども、しかし、関係利害関係者が同意されますならば、率先旧方式をとって、鉱業権者がいなくなってあとめんどう見るものがいないというような姿は、できるだけ今後なくしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  64. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 旧方式であろうと新方式であろうと、行政上の処置をとられることは、それは政府が行政上やられることであって、当然そのときに起こってくるのは、そのためにどういう被害者、犠牲者が出てくるかということを考えて、その被害者、犠牲者をやはり従来どおり、あるいはより以上これを救済をしてやる、あるいは問題の起きないように解決をしてやるということは、これは行政上私は当然お考えにならなければならぬことじゃないかと思うのです。行政処置のために被害者が犠牲になって泣いておるというような処置というものは、私は行政的にこれは悪政であると思う。善政じゃありません。その点は私は局長もいやというほどきっと知っておられるだろうと思う。だからその点、国民を行政の犠牲にしないようにされるということは、今後のためにも私ども十分注意をしておきます。  それから、臨鉱法に基づく鉱害復旧事業団は、法の制定当時のごとく、鉱業権者という鉱害賠償の責任を負う者がおることを前提として、この法律は当時つくられた。ところが、今日は有資格者というか、鉱害の責任を持つ者がだんだんなくなってきてしまいまして、無資力鉱害というのがだんだんふえてきている。先般までは有資力と無資力とが半々ぐらいの鉱害であろうといわれていましたが、最近だんだん調べてみますと、無資力鉱害のほうが非常に多くなってきた。これはやむを得ないことです。炭鉱はやめてしまうし、また資力もなくなってしまうし、行くえ不明にもなってしまうのですから、したがってそうなるのはこれは理の当然でございます。そこで鉱害復旧事業団の性格を変えるべきときにきておるのじゃないか。従来のように加害者被害者地方自治体、この三者による共同機関の性格から、合理化事業団のごとく国が全責任を持つ機関にこの性格を変えるということが、鉱害を早く復旧し、また被害者に安心感を与える、そうして鉱害復旧計画的に促進されていくということになることは申し上げるまでもないと思うのです。現在ではもう事実上、国がやらなければ鉱害復旧は遅々として進まないということは、これももう申し上げるまでもないのです。したがって私が国が全責任を持ってやる機関としろということは、——炭鉱経営者から鉱害復旧資金として、トン当たり二十円ですか、それぞれ復旧資金を国が取っておる。だから、二十円で足らなかったら私はもっと取っていいと思うのです。そうしてさらに国がこれに国費を加えて、国の責任においてやる、こういうふうに復旧事業団の性格を変えてやられないと、私はこの鉱害がなかなか復旧しないのではないかという点をつくづく考えていますが、この点どうですか。
  65. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 伊藤委員のお説に私賛成でございます。したがっていまの御所見は、通産省としてもぜひこれを取り上げてみたいと思いますので、石炭鉱業審議会に新たに鉱害部会を設けてそこへ諮問し、早急に結論を出して御趣旨の点に沿いたいと思います。
  66. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 次にお伺いしたいのは、無資力鉱害被害者に不当な迷惑をかけないために、臨時石炭鉱害復旧法に基づく鉱害復旧促進地域の指定制度があるのです。これを活用して無資力鉱害を最優先的に指定地として復旧するようにする。そのためにはやはりすみやかに工業計画をつくって、その計画の内容を当事者である被害者にも示して、そして安心感を与えてやるということが、私は地元の被害者の諸君に政府を信頼さすというか、あるいは事業団を信頼さすということに大事なことだと思う。そこでその工事計画の執行がおくれる場合があります。そういう場合には、やはり農民なり地域住民に対して、当然年収、収穫の損害を与えておるのですから、これらの場合には年々の補償というものをやっぱり見てやるということは、これは私は当然だと思うのです。こういう点についてどうですか。
  67. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 御指摘のような地域を優先的に促進地域として指定することについては、そのようにいたしたいと思います。またそれに伴う工業計画を公示して、もしその計画どおりにいかない場合には年々補償をすべきではないかという御意見については、すでに局長から前向きに検討するとお答えをいたしておりますので、そのようにいたしたいと思います。
  68. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 次に明らかにしておいでいただきたいと思うのは、臨鉱法にいう復旧基本計画考え方の中に、総合的に復旧という考え方がないんです。すなわち現行法にいう基本計画は、地域ごとにやっており、それから個々ばらばらに復旧をやっておる。そこに天日さんがおられますが、天日さんが一番よく知っておるはずです。ばらばらにやっておるわけです。そこで、Aの地区ではたとえば二尺復旧かさ上げをした。それからBのところでは一尺しかかさ上げをしておらぬ。そういう点から、水田の水の流れぐあいというか、そういう点にとかく問題を引き起こして、天日理事長はたぶんこの問題でだいぶ押しかけられておるだろうと思うわけです。でありますから、こういう場合には広い地域にわたって鉱害が起こっているのですから、その広い地域鉱害は総合的に計画を立てて、あるいはAの地域を二尺上げるなら全体を二尺上げなければならぬとか、あるいはこの地域は三尺上げたほうが水田の場合に完全復旧になるとか、そういう総合計画を立て、その上に立って鉱害復旧をやるべきであることは、これはもう何人の常識でも私は当然だと思うのです。そんなことが実はやられてないのだが、これは事業団の天日さんのほうが怠慢ですか、石炭局長のほうの予算関係というか指示関係がまちまちなんですか。こういう点は、やはり復旧する以上はそういうトラブルを起こさないようにして、そしてやはり農民から喜ばれるようにやるべきだと私は思うのだが、これは一体だれの責任、怠慢によって、またやり方が悪いことによってこういうことがあるのですか、この点ひとつ明らかにしてください。
  69. 井上亮

    井上政府委員 ただいま御指摘の、総合的なあるいは計画的な復旧を行なうべきだ、この点につきましては、先生御承知のように、第二次石炭鉱調査団におきましても、特に現在の鉱害の実態、それからそれに対する鉱害対策の面におきましてやはり欠くるところがあるというような意味合いから、今後の鉱害対策としては総合的、計画的な復旧体制をつくるべきだというような意見になっておるわけでございます。ただいまだれの責任、だれの怠慢とおっしゃいましたが、それは率直に申し上げれば私どもの責任でございます。私どもも、ただいま申しましたように、第二次調査団においてもその点を指摘されております。したがいまして、私どもといたしましてはそういう自覚のもとに、今後できるだけ鉱害計画的、総合的に復旧するような体制をつくりたいというふうに考えておる次第でございます。この臨時石炭鉱害復旧法の第一条の(目的)には、「鉱害計画的に復旧することを目的とする」というふうに書いてあります。したがいまして、天日さんの問題も、むしろわれわれがそれをやりいいようにしてやらなければいかぬというふうに考えております。
  70. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 もう二点だけにします。  次に、今回の鉱害復旧のための国の補助率の引き上げがありますが、これが鉱業権者のみにその利益を与えて、地方自治体被害者にはむしろマイナスではないかということが言われておるわけでございます。したがって、鉱害復旧の促進にもなりませんし、鉱害復旧は、無資力がますます増大している。さっき申し上げたとおりであります。産炭地域振興のためにも、最も効果的にやっていかなければならないときでございますから、したがって抜本的にやり方を改めていくということが私は非常に大事であると思います。  時間の関係がありますから、もう一点続けて伺っておきますが、さらに、今回の政府金融機関から石炭鉱業者に貸し出している資金の金利について、利子補給することがきめられております。これが六・五%を三・%五として、三%の利子補給に定めましたが、鉱害賠償基金の鉱業権者への貸し出し分には適用しない。鉱害賠償の分には本文を適用しない。いわゆる石炭を掘り出すほうには適用するが、賠償のほうには適用しない。一体この区別がつくものだろうかと私は思まいす。経営は一体であるわけでありまして、石炭を掘り出せば、当然鉱害が起こってくる。ひどいところになれば、トン当たり四百円も七百円も、あるいは千円もかかったところがあります。そうすると、これは石炭を掘って出す経営の中に、鉱害の問題というのも当然含まれておるわけであります。だから、その辺の区別が、これは石炭を掘り出すほうの金だ、これは鉱害のほうの金だ、復旧の金だということを一体色分けをするということができるだろうか。やはり経営は一体として処理されていくものですから、こういう点からお考えになれば、いまのような利子補給のそういうものを差別をするということは、筋が立たぬというか、局長も私に答弁をされるのにも説明がなかなかはっきりされ得ない、こう思うのですが、この点どうですか。
  71. 井上亮

    井上政府委員 御質問の第一点でございますが、今回政府におきまして鉱害復旧についての補助率の引き上げをお願いいたしたわけでございますが、これはかえって被害者にも、あるいはその他の関係者にもマイナスになるのではないかという御質問でございます。この点につきましては、私ども今回補助率を引き上げましたのは、これによってむしろ鉱害復旧を促進したい、つまり経営者の負担軽減するわけでございますし、もう一つ鉱害復旧につきましては、鉱業権者被害者、いわゆる三者協議で話し合い、同志のもとに鉱害復旧がきめられていく体制ですから、そういう体制の中で、鉱業権者が実際負担能力が少ないという点が鉱業権者復旧に対する同意が得られない大きな隘路になっていたわけでございますから、今回この方式によりまして鉱業権者負担が軽くなれば、それだけ鉱害復旧は促進できるはずでございまして、それがもしかりにお説のように逆に動くというようなことであれば、これは私ども今回の助成を手厚くしたことと趣旨が全く相反する行為でございますから、私ども十分指導監督いたしまして、むしろ私どものねらっておりますような効果があがるように努力してまいりたいというふうに考えております。  なお、これらの制度について抜本的な改善をしたらどうかというお説でございますが、この点につきましては、先ほど大臣からお答えがありましたように、鉱害対策につきましては、私ども今日の現状にかんがみまして、全国鉱害調査をはじめといたしまして、今後総合的、計画的な復旧体制をつくるというような意欲を持っているわけでございまして、審議会にも、大臣からお答えがありましたような鉱害部会を新設して、根本的に鉱害対策についての検討をお願いしたい、私どもも一緒に研究したいというふうに考えておりますので、その点御了承いただきたいと思っております。  それから第二点の、鉱害について利子補給がないという御指摘でございますが、今回の利子補給につきましては、御承知のように政府関係の金融機関、開銀、合理化事業団、中小企業金融公庫、この三つの機関からの借り入れ残高、旧債につきまして利子補給をするという制度にいたしたわけでございまして、御指摘のように、鉱害賠償基金からの借り入れについて利子補給はないわけでございます。この辺は確かに御指摘のように、政府関係の機関からの旧債がよろしいのならこれも含めていいのじゃないか、お説のとおりでございます。この点につきましては、まだ鉱害賠償基金ができまして日がきわめて浅く、これの借り入れ残高がきわめて僅少でございます、というようなこともあり、かつはまた全体の施策のバランスというような点から、本年度につきましてはこれが除かれたわけでございます。しかし、御指摘のように、まあ私の考えといたしましては、今後の石炭産業の推移にもよりますけれども、さらに助成を進めていく必要があるという事態には、私としましては当然これも対象にして進めるように努力してまいりたいというふうに考えております。そういうことで御了承いただきたいと思います。
  72. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 質問を終わるにあたって大臣と政府委員に強く希望を申し上げておきたいのは、大臣は、私は目の前に置いて申し上げるのはどうかと思うけれども、非常に純情な、まじめな、一本気の人だと実は信頼しております。それから石炭局長は近来にないくらいなかなか勇気のある局長だと思っておる。  そこで、きょう御答弁になられた大臣答弁局長答弁は、よってくだんのごとしというほど、私は実行されると思いますから、再びいまのような問題を質問させないように実行されることをひとつ強く要望いたしておきます。
  73. 加藤高藏

    加藤委員長 これにて、両案に対する質疑を終局するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  74. 加藤高藏

    加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、両案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  75. 加藤高藏

    加藤委員長 これより両案について討論に入るのでありますが、別に討論の通告もありませんので、直ちに採決いたします。  臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法律案及び石炭鉱害賠償担保等臨時措置法の一部を改正する法律案を一括して採決いたします。  両案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  76. 加藤高藏

    加藤委員長 起立総員。よって、両案はいずれも原案のとおり可決いたしました。  ただいま可決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 加藤高藏

    加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。   〔報告書は附録に掲載〕
  78. 加藤高藏

    加藤委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二分散会