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1965-03-26 第48回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月二十六日(金曜日)    午前十一時五十四分開議  出席委員    委員長 加藤 高藏君    理事 有田 喜一君 理事 中川 俊思君    理事 中村 寅太君 理事 多賀谷真稔君    理事 滝井 義高君       小笠 公韶君    上林山榮吉君       倉成  正君    澁谷 直藏君       田中 六助君    中村 幸八君       西岡 武夫君    野見山清造君       廣瀬 正雄君    三原 朝雄君       八木  昇君    伊藤卯四郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         通商産業大臣  櫻内 義雄君  出席政府委員         内閣法制局参事         官         (第四部長)  田中 康民君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     福田  繁君         通商産業政務次         官       岡崎 英城君         通商産業事務官         (石炭局長)  井上  亮君         通商産業事務官         (鉱山保安局         長)      川原 英之君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      宮本  惇君         労働基準監督官         (労働基準局労         災補償部長)  石黒 拓爾君         労働事務官         (職業訓練局         長)      松永 正男君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   吉瀬 維哉君         参  考  人         (石炭鉱業合理         化事業団理事) 町田 幹夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第七〇号)  臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法律案  (内閣提出第五九号)  石炭鉱害賠償担保等臨時措置法の一部を改正す  る法律案内閣提出第六〇号)  産炭地域振興臨時措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出第七一号)  産炭地域における特定公共事業等に要する経  費に対する国の負担又は補助臨時特例に関す  る法律案細谷治嘉君外七名提出衆法第一〇  号)      ————◇—————
  2. 加藤高藏

    加藤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法律案石炭鉱害賠償担保等臨時措置法の一部を改正する法律案産炭地域振興臨時措置法の一部を改正する法律案及び細谷治嘉君外七名提出産炭地域における特定公共事業等に要する経費に対する国の負担又は補助臨時特例に関する法律案を議題として質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。多賀谷真稔君。
  3. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 昨年十二月十六日に石炭調査団答申が行なわれたわけですが、新聞は、きめ手を欠いたビジョン不在答申である、こう批評いたしました。私たちも、一息つくかもしれないけれども、これはやはり根本的解決になっていない、さらに深刻な状態がくるのではないか、こういうように心配をしておったわけです。ところが事態は私ども心配をしておったよりも深刻に、急速度に悪化状態にきつつあるのではないか、こういうことを憂慮するわけであります。北炭夕張炭鉱における爆発によって、北海道では戦後最大の六十二名の死者を出すという惨事を呈しましたし、さらに頻発災害昭和三十年度に比べて二倍もの多きに達しておるわけです。また、さきに大正炭鉱閉山がありましたし、また最近では高松炭鉱施業案認可の問題が起こり、さらに三菱美唄閉山うわさされておるという状態であります。さらにそれだけではなくて、経営悪化により深刻な事態がくるのではないかと憂慮されておる大手炭鉱もございます。労働者のほうも依然として労働力の流出がやんでおりません。こういうように考えてまいりますと、スクラップ・アンド・ビルドと言われましたけれどもビルドのほうも一向進捗していない、こういう状態であります。  そこで、私はいまの状態でいくならば、率直に言わしてもらいますならば、日本炭鉱は三千万トンの維持ができるだろうかということすら憂慮する気持ちになっておる。一体政府は将来の展望に対してどういう不動方針があるか、これをお聞かせ願いたい。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 専門家であられる多賀谷さんですが、ただいま石炭についての現状並びに将来を見通すその最も権威あるものは、私は第二次調査団、あの一行が出された答申以外にはないと思います。その他にもいろいろな御意見のあることは私も承知いたしておりますが、ただいま政府がそういう意味で第二次調査団答申と取り組んでおる、これはすでに御承知のことと思いますが、この調査団報告では、おそらく五千五百万トン、いま三千万トンだという非常に悲観した言い方をしておられますが、当面はそうではない、五千五百万トンから五千二百万トン程度のところをねらっている、かように私は思います。そうしてスクラップ・アンド・ビルドを進めていく、ビルドのほうがなかなか進まない、これが民間の力によってやっていけるか、政府がさらにてこ入れしなければならないか。いずれにいたしましてもこれも進めていくという、そういう態度でやっております。ただ、業界自身も在来のように何も国に全部おんぶするということでなしに、みずからやはり立ち上がる。そうしてこの国内重要産業をひとつ自分たちの力でも守るのだ、こういうことでないと、なかなかうまく立ち上がりができないのではないか。ことに、ただいま御指摘になりました災害などの点についてさらにこのことを見ますると、一そう自己防衛、そういう立場からの災害防止にも積極的な意欲を示さないと、なかなかむずかしいのではないだろうか、かように私は思います。ただいま申し上げたことが、あるいは要領を得ないかわかりませんが、第二次石炭調査団答申、これが今日、あり方等について比較的に明確な報告をしておる、これがおそらく権威のあるものではないか、かように私は思いますので、その点を率直に申し上げたわけであります。
  5. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 昨年、答申後に総理からお聞きいたしました、五千五百万トンは不動方針である、こういうお話でありましたが、それに間違いありませんですか。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そういうつもりでいろいろ進めております。ここ、なかなか困難な状態と思うのでございますけれども、将来に対する一つの期待を持ち、希望を持つ。そういう意味であらゆる努力をするというのが、今日変わらない政府態度であります。
  7. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 先年開かれました国際石炭大会で、シューマッハー英国石炭庁顧問が次のように言っております。一九八〇年代の石炭供給力は一九六〇年代によってきまる、要するに石炭供給力というのは、二十年前に政策を決定しておかねば追いつかないのだ、こういうことを言っておるわけです。石炭開発がいかに困難であるかを物語るものだろうと思います。そこで、各国とも、英国においては二億トン、さらにドイツにおいては一億四千万トン、EECで二億四千万トン、これをやはり維持する方針を固めており、さらにアメリカにおいてもやはり四億トンから一九八〇年代は九億トン出すという計画を進めておる。ソビエトは五億トンから十二億トンの計画を進めておるわけです。  ところが問題は、新鉱開発といっても非常にリスクが多いと私は思うのです。戦後新鉱開発がされたのに幾つ結実をしたか。実際、大臣一緒通産大臣の時代に三井田川炭鉱伊加利立て坑に入りました。これはビルドであろうといわれて入ったわけです。これは御存じのように、三十六年に竣工して、二十二億投資して、これがスクラップになった。現在使っておりません。その他北海道においても、庶路炭鉱も三十七年に竣工して、二十二億円やはり投資をしておる。これも閉山をしております。それから、昭嘉炭鉱も、十億円投資をし、三十八年に竣工して、翌年閉山をしておる。香焼炭鉱も、十四億円投資をして三十七年に竣工して、三十八年に閉山しておる。かように、この非常に危険性の多い企業において、これが一体、少し金利を見てやるからという程度開発できるでしょうか。私は率直に言わしていただくと、いまの石炭経営者というのは、一、二を除いては石炭投資をするという意欲がないのじゃないかと思うのです。観光事業には手を出すけれども石炭そのもの投資をするという意欲がないのではないか、こういう気持ちすらあります。ですから、これは非常に危険性があるから、私は、政府機関でひとつ新鉱は開発して、できたものをいわゆる貸与する、そうして償却と金利をその機関からとるというような方式でもとらない以上、この新鉱開発というのは実際上むずかしいのではないか。言うべくして実際行なわれていないわけですね。これはどういうようにお考えですか。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、やはりこれは自分たち責任でやるということをまず第一に考うべきことだ、かように思います。ただいまの御提案については、おそらく通産省等におきましてもいろいろ研究しておることだ、かように思いますので、結論が出ておれば結論を聞かしてもらいたいし、まだ出てなければ、さらにその研究を続けていきたい、かように思います。
  9. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大臣のほうでこの方式をひとつ検討していただかなければ、実際問題として新鉱開発できませんよ。いまの日本金利で、しかもいま申しましたように、その新鉱開発をするために、もしその新鉱開発立て坑その他が失敗に終われば、その会社そのもの浮沈存亡にかかわるわけですよ。ですから、そういうあぶない企業をやる経営者というのは、私は表彰されるような経営者だと思う。実際できないですよ。新しい起業をやって、それがだめになった場合、会社そのものが破産するという状態になる。ですから私は、この点を大臣、積極的にいまの方式でいいかどうかをひとつ検討していただきたい。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまやっておる合理化事業団の仕事のしぶりは御承知のことだと思うのでありますが、これだけでは不十分だというので、新しく提案なすったのだろうと思います。そういう意味の点をさらによく検討してみたいと思います。
  11. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 最近における経営悪化状態大手十八社、いま大正がなくなりましたから十七社で見ますると、昭和三十三年に借り入れ金銭高が六百四十億が、三十九年には千八百三十七億、ちょうど千二百億ふえているわけです。三十三年から合理化が始まったわけですね。千二百円引きも始まったわけです。ちょうど三倍になっておる。この数字はくしくも、年間四千万トンにして、ずっと五カ年間平均六百円値下げするとすると、ちょうどこれが千二百億になる。要するに、千二百円引きを、下げた分だけが借金になって会社経理を圧迫しておる。これは必ずしも数字が合ったからそのものだとは言いません。言いませんが、現実はそういう数字になっておるわけです。ですから、日本石炭の値段を調べてみると、必ずしも西欧に比べて高くない。欧州に比べれば安いわけです。アメリカとか豪州は特別です。たとえば電力用炭カロリー当たりを見ますと、西独で七十四銭、英国で七十六銭、フランスが七十七銭、アメリカは特別ですが、三十六銭、日本は六十八銭、こういう形になっておる。日本欧州に比べれば一番安いとこういうことです。  そこで、輸入エネルギー国産エネルギーとの価格問題は、国産エネルギーに対する保険料的な考え方はないのか、輸入エネルギーというのはかなり輸送費がかさみます。ですから、運賃の変動によってはものすごく差が出てくるわけです。こういったものの考え方では、ことに石炭は全エネルギーから見ると、一六%くらいに四十三年度には低下するわけです。国産エネルギーというものについて、外国からくる価格と常に均衡を保たなければならぬ。それは原則はそうでしょうけれども、そこに若干の保険料的なものが政策として考えられないかどうか、これを総理からお聞かせ願いたい。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 なかなかむずかしい御議論のように思うのですが、ただいま経済の当面しておるそのたてまえは、御承知のように開放経済自由化方向に全部が進んでおる。自由化方向ということは、ただいま無条件で何もかも自由化にというわけではございません。もちろん国内産業として自由化自由競争に耐え得ないものについて、あるいはその条件を進めるためにしばらく待つとか、あるいはしばらくそれに対して補助をするとか、あるいは国内産業であるがゆえに、またそれを育成強化し、労働力をその点で維持していくとか、こういうような意味から特別な保護政策もあると思います。ただいまの石炭自身についてそういう積極的な保護政策がとれるかどうか。これはエネルギーでありますだけに、また今日、国内に温存するだけでそれはけっこうじゃないのか、こういう議論も一面あると思うのです。ただ先ほども言われるように、二十年たたなければ計画には乗らないのですよ、こういうこともありますから、全然やめるわけにもいかないだろう。しかし、温存するだけでけっこうだ、そういうような議論もあるわけであります。でありますから、保護する、また育成強化するにしてもおのずから限度があるだろう。これは無制限にはなかなかできない。国内産業であり、その重要性も十分わかりますから、その意味において助長し、保護し、育成していくのにおのずから限度があるということを考えてみないといかぬだろう。ただいまお話しになるような点が、はたしてそれに可能なことか。いわゆる第二次調査団などは、価格を三百円あるいは二百円上げることによってこのなには可能なんじゃないか、こういうような結論を出しております。また新鉱の育成強化についてというようなわけでありますから、ただいま仰せになりましてこの席ですぐイエスかノーか言えというのは、やや、私のほうが研究しておらないだけに無理なような気がしますが、しかし、ただいまお話しになりましたことは、通産大臣も伺っておりますから十分検討するだろう、かように思います。
  13. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 具体的の問題を二点ほどお聞きいたします。  いま御存じのように高松炭鉱では施業案認可の問題をめぐって非常に大きな社会問題あるいは労働問題等を惹起せんとしておる。この高松炭鉱石炭を使うという前提で、若松に百十億の投資をして電発火力発電所ができておる。現在千二百円で電力用炭は送られておる。もし高松炭鉱閉山ということになると、千二百円の石炭を売ることはできません。さらに筑豊からの石炭も、鉄道が敷いてありませんからものすごく高いコストになる。ですから、結局若松電発というのは全く意味をなさないことになる。一体同じ通産省で、こういう行政が行なわれておってよいかという疑問を持つ。労働者の諸君は大正炭鉱の二の舞をしたくないという気持ちがある。経営者も同じですね。そこで一体総理はこの問題について積極的に再建をし、労働力確保する、さらに労働者生活を安定さすという自信がおありであるかどうか、これをお聞かせ願いたい。
  14. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 実情を私よく存じ上げておりませんから、通産大臣からお答えをさせたいと思います。
  15. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 多賀谷委員承知のとおりに、円城寺調査団も参りまして慎重に検討しておるわけであります。さらに具体的な対策につきましては経営審査会にかかっておる際でございまして、だんだんに結論が近づいておることと思います。その結論を受けまして政府としてできるだけの措置を講ずる考えでございます。
  16. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 総理としても積極的にこれに取り組まれるかどうか、その決意のほどをお聞きいたしたい。
  17. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま櫻内大臣から御説明したとおりでございます。閣内の問題で、通産大臣責任をもって処理するが、もちろん総理といたしましても力をかす、こういう考えでございます。
  18. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 次に、三菱美唄閉山うわさされております。これは百万トンの炭鉱であります。ですから、調査団先生方が幾らいい答申を出されても、かようにくずれていけばどうにもならないわけです、私企業ですからね。しかも三菱美唄のようなクラスの経理炭鉱をつぶすということになれば、日本炭鉱は半分くらいはつぶさなければならない、こういう状態である。ですから、私は、やはり一私企業社会的責任を感じないで、私企業だけの都合ではできない問題じゃないかと思う。これは一体閉山をさせないで維持をさすという自信があるかどうか、御答弁を願いたい。
  19. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 三菱美唄についてのうわさは聞いております。ただいま、閉山しないでこれを続けていく自信ありやと言われるが、私にはございません。が、ただいま申し上げるように、石炭も重要な国内基幹産業でありますから、それを育成強化するようにあらゆる努力はしていく。よく話し合ってみる。また助けることが可能なら——もちろんつぶすことは最悪の事態だ、かように考えております。
  20. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は一会社経理上だけの都合ではできないのじゃないかと思う。それは経理からいえば、悪い炭鉱をつぶすというのは私企業では当然でしょう。けれどもやはり五千五百万トンというものをうたい、それについては存続するということが前提条件になり、その需要者がある。そうして電力会社には供給責任を持っておるわけでしょう。そうして調査団答申が終わって後に、その数カ月後にもうすでにそれを閉山するというようなこと自体が問題じゃないかと思う。一体どういう資料会社は出しておるのか。ですから、これはやはり総合的に、企業家社会的責任としても維持をしなければならぬし、また維持ができないとするならば、政府はどういう方策をやれば維持ができるかということに対して、経営者とよく相談をしなければならぬ、こういうように考えるわけです。そこでこの問題についてもう一度御答弁を願いたいと思う。
  21. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど申し上げたように、おそらく多賀谷さんもこの処置を会社はきめた、こういうことじゃないだろう、ただいろいろなうわさを聞く、こういうことだろうと思います。これは、ただいま会社でもそういう意味検討はしておる。したがってまだ役所にも何とも言ってきておりません。またしたがって、こういう際に通産省で出てくるまで待っていていいのか、こういう実情があるが、君のほうはどうするのか、十分実情について相談に乗るか、こういうくらいのことは通産省においても、石炭局においても当然やるべきじゃないかと私は思います。ただいまこの席でお尋ねがありましたから、実情をよく聞いて山のほうと交渉を持ってもらう。  それからただいま五千五百万トンという基本線から見て、こういう大きい山がつぶれる、こういうお話でありますが、非常にむずかしいことではございますが、やはり新鉱の開さくということもございますから、必ずしもこれが百万トン減ったからもうだめだとか、こうきめないで、とにかく基幹産業育成強化する、こういうことに、どれだけの努力が実を結ぶか、これはいま申し上げかねますけれども熱意をもって成果を上げるように努力をすることが必要じゃないか、かように思います。
  22. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、答申調査団がつくる際に出す資料について非常に疑問を持つわけです。これをやりますということで出炭べースに乗せるでしょう。答申が終わればばらばら自由に閉山をするならば、電力に対する供給責任なんか果たせませんよ。ですから、需要家に対してはなはだ申しわけない状態になるわけです。ですから、もう少し経営者社会的責任を感じて、また政府もそういう面を総合的に判断をして、その炭鉱維持するように持っていってもらいたいと思う。そうしなければわれわれ何をきょう審議しているかわからぬですよ。電力用炭株式会社だってそうでしょう。本年はこれだけ維持するのだ、そしてこの料金についてプールするのだという、その前提条件がくずれればどうにもならぬわけです。しかもわずかな数字ではありません。ですからそういう点は、やはり通産大臣ははっきり維持をし、答申の線に沿うようにし、需要家に迷惑をかけないようにやるべきではないですか。
  23. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 多賀谷委員の言われるとおりだと思います。私ども答申を受けて諸施策を講じております。現に法案も出し、また予算の審議も参議院で最終段階を迎えておるわけでありますが、同時に、おっしゃるようにその前提がくずれてはいけないのでありますから、先ほど総理お話もございましたが、三菱美唄の問題などが新聞に出ました際は、さっそくに石炭局長をして会社責任者との間で話し合いをさせ、また行政指導もいたし、答申計画にもとることのないようにつとめておる次第でございます。また、今後もさように心がけてまいるつもりであります。
  24. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 答申の問題に関連して労働力確保の点について、特に調査団炭鉱労働者、ことに地下産業労働者に対する特別年金並びに退職金通算制というものについてすみやかに検討をせよということを答申しておるわけです。これは労働力確保の面から非常に大きな問題だと思う。これについて、どういう決意をもって総理はこの点に臨まれんとするか。労働力確保の点についてはこの点しか書いてないのですから、いま人が足らぬというけれども、そんな将来不安な炭鉱には行きません。ですからこれについてひとつ御答弁を願いたい。
  25. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 調査団答申報告、これはいろいろ処理しなければならないものがございますが、必ずしもそれが時期的に予算編成その他で間に合わないというものもあります。そういうので、まだ十分手当てができていないものがあると思います。これはどうもやむを得ないように思いますが、ただいまの労働力確保問題等につきましてもさらに検討していかなければならない、かように思います。熱意を持って検討していく、かように御了承いただきたいと思います。
  26. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 時間が参りましたから、最後に産炭地の児童の問題についてお聞かせ願いたいと思います。  実は大臣御存じのように、地域社会も崩壊しておる、まさに子供スクラップになろうとしておる、こういう実情です。その産炭地から送ってまいります新聞も、非常に悲惨な状態を報道しております。たとえば家庭の雰囲気が非常に不良だというのが大体一五%程度、朝めしを抜いて学校に来るというのが六・三%、それから親の教育意識で、全然放任が三五%程度、きわめて低いというのが三〇%程度、こういうような状態で、子供自体が、学校先生から、そんなことでは一人前になれぬぞと言われると、生活保護があるじゃないかと言う。こういう状態では、単にいまの成人のスクラップだけでなくて、次の世代のスクラップが行なわれようとしておる、かように考えるわけです。  そこで、答申ではカウンセラー等の増員のことを言っております。そこでわれわれは、等とは何かということを聞きましたところ、定員、定数も含めるのだ、こういうことを言っておるわけですが、この産炭地域教育について特別に定数について御配慮を願いたい。これはかねがね文部省にも話しておるわけですけれども、その教育について特に配慮する必要があるのではないか、こういうように思うわけです。原則的なことでけっこうですから、総理から御答弁願いたい。
  27. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま原則的なことでというお話でございますが、もう数年前になりますか、筑豊を多賀谷さんと一緒に回ったときに、あの炭住などに住んでいる生活実態などを見ると、これで教育がりっぱにできるだろうか、こういうことをまず考えさせられたのです。それがいまだに強く頭に残っております。こういう点は地方の自治体等もよくその生活実態に触れ、そして大事な次の世代をになう青年の教育、また当人としてもまことに重大な状況下に置かれておるのだ、こういうことでございますから、やはり自治体において特別の連絡方法をとって、そうして日常の指導が最も大事だろう、かように思います。  ただいま定員、定数等についても特別なくふうをしろということですが、こういう点も文部省においては特別にくふうしておるだろうと思います。しかしいずれにしても、もとは生活困窮、これに十分救いの手が行なわれないと、教育にまでなかなか力が及ばないだろう。生活確保、これがまず第一じゃないだろうか、かように思います。
  28. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、定員定数等にも十分配慮する、こういうように承ってよろしいですか。
  29. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはよく文部省に言っておかないとわからないことですが、もちろん定員定数等について考えるだろうと思います。しかしこれはいまの生活実態自身を把握して、それに対する援護を十分するということがまず第一だろう、かように思います。
  30. 加藤高藏

    加藤委員長 滝井義高君。
  31. 滝井義高

    ○滝井委員 なるべく多賀谷君と重複しないようにお尋ねをいたします。  今日石炭鉱業が非常な危機に直面しておることは、総理大臣御存じのとおりです。三十七年の十月に第一次調査団が出て、スクラップ・アンド・ビルド方式を確立してくれたわけです。そして四十二年には石炭産業は立ち直るであろうということであった。ところが実際には、四十二年に立ち直るどころでなくして、現実に三十九年度になってみると、非常に苦しい状態になってきたことは大臣承知のとおりです。そこで昨年われわれが強力に主張して、第二次有沢調査団ができることになって、行ってみたところが、自立ができない理由というのが大きく分けて五つくらいあることがわかった。  その一つは、予想外の離山ムードというものが、労働者の中に拡大しているということです。もちろんこれは三池の災害とか北炭の災害とか、災害が連続して起るということもありましたが、とにかく離山ムードが拡大しているということ、それから炭鉱合理化整備のために社会的な支出を非常にしなければならない、そのために経理に重圧がきている。それから高度経済成長政策の結果、資材とか労賃等が異常な値上がりをして、それがコストにはね返って、コストの上昇を来たしている。それからスクラップ・アンド・ビルドの、ビルドのほうが非常に立ちおくれているということです。そしていま一つは、需要と供給の不均衡というものが炭価にやはり影響してくる、炭価割れを来たしている、こういう五つのことが、いわば炭鉱の自立を非常に困難にしている。そういう実態を有沢調査団は発見をして、その結論に立って、まず何よりやらなきゃならぬのは企業の収支を改善をすることだ。これがもう何といっても最大のポイントであるというので、御存じのとおり、炭価の引き上げ、それから新たに利子の補給制度、こういう二本の柱をもって企業の収支を改善しようということになったわけです。そういう二本の柱で企業の収支を改善をしながら、大臣の言われたように、不動の五千五百万トン体制を確立したいけれども、当面は五千二百万トン程度がいいところであると、答申は非常に謙虚な結論を出してきておるわけです。そこで、その五千五百万トンの不動の体制を堅持しながら、現実においては五千二百万トンを一体確保する自信があるかどうかということです。多賀谷君よりもう一つきわめて現実的に、調子を落として言うわけです。私は非常にこの点について不安と疑問を持つから、総理にこの際明らかにしておいてもらいたいのは、実はことしの一月に、三十九年度の出炭目標の五千三百三十四万トンというのを政府のほうで大幅に修正して、五千百二十万トンにしたのです。その後北炭夕張の事故が起こったり、抗議スト等もありまして、いま五千百万トンの確保が必ずしも楽観を許さぬという状態になっているわけですね。そして、その炭鉱経理を見てみますと、大体いま大手十七社で合理化のための借り入れ金が二千百億円です。これをトン当たりに割り当ててみると、借り入れ金が四千八百円になる。そうすると、今度は炭価を三百円ないしは二百円上げる、それから利子補給が百円くらいになるでしょう、それから合理化によって、賃金の八%引き上げを含めても百円ないし百五十円の炭価引き下げ、一体こういう経理状態の中で五千二百万トンの調査団の非常に謙虚な線を確保するためには、いまのような離山ムードその他の五つの条件があるのですから、政府としてはそれらのものに一体どう具体的に着実にこれから手を打っていくかということです。エネルギー全体の中における石炭の位置という本のをどういうぐあいにやっていけばいいかというような総理の強力なバックアップがなければ、これはとても一通産大臣だけではできる客観情勢ではないのです。そこでそういう客観情勢を踏まえて、もう一回総理の意思を明らかにしておいてもらいたいと思います。
  32. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど多賀谷さんにお答えしたように、やはり、非常にむずかしいことだが、国内基幹産業だ、そうしてエネルギー源である、これは重要産業だ、そういう意味でこれの育成強化をはかっていく。五千五百万トン、まことに残念だが、ただいま言われるように五千二百万トン、その辺なら何とかなるだろうというのが調査団の言い方でもある。これをただいま各方面で値段その他でなかなか折り合わない点がありましたが、これも通産大臣が非常に努力して、引き取りその他の引き受けのあっせんをしておる。これから見ますと、各方面で努力すると、需要のほうは五千二百万トンというような何が出るのじゃないか。問題はその場合に供給力があるかどうかということですが、需要があれば必ず供給のほうもいわゆる採算割れもなしにやっていけるのじゃないだろうか。これは甘いといえば甘いでしょうが、そういう見方があるわけであります。問題はいま置かれておる実情について、十分お互いが理解し合って、生産者側もそれから消費する側においても、国内重要産業だという理解を持って、そして少少のことは国内産業ですから育成強化しましょう、こういう気持ちに乗った、ただいまの協力体制ができれば、こういう点は可能なのではないか。私は大体ものごとを楽観しやすいほうでありますから、佐藤はまた楽観だと言われるかもしれませんが、そういう方向で、楽観はしないが、一そうの努力をすべきじゃないか、かように私は思います。そういう点で、事務当局のほうでいま計画してあるものがあればつけ加えて話していただきたいと思います。
  33. 滝井義高

    ○滝井委員 それはあとでけっこうです。  そこで、これは一通産大臣だけでは、私率直に言って、もはや非常に荷が重いと思うのです。いま言ったように、生産側と需要側が企業としての相互理解をやるためには、総理みずからが石炭業界に乗り込んで相当積極的な督励をやる必要があると思うのです。率直に言って、ああいう災害が連続するところを見ると、やはりたるんでおるわけです。これはやはり相当やらなければだめです。五千二百万トンのこの供給の責任が果たせないということになれば、需要側と契約をする長期引き取りも何にもならぬことになる。それがうまくいかなければ、これは需要側も困るし、同時に供給側の生き抜いていく価値もなくなってしまうわけです。そこで石炭業界に激励をしてもらうが、今度は同時に、業界が相互理解をし合うとするならば、引き取る側の問題です。三百円と二百円の炭価を引き上げるということについては、昨年十二月十九日は、やはり石炭特別委員会に総理に来てもらって私が質問をいたしました。この際電力業界は三百円、二百円の炭価引き上げについて協力する体制を持たせ得るかどうかと言ったら、総理は、それはだいじょうぶ、相互理解でぜひひとつこれはぼくが持たせるつもりだということの言明があったのです。そこでいよいよ四月一日から三百円、二百円の炭価引き上げを実施しようという体制に、いまや通産当局は入っておるわけです。ところが、必ずしもまだすらっといっていないように聞き及んでおるわけです。そこで通産大臣にバックアップをして、総理みずからが電力業界に十分納得をしてもらって協力体制を確立する意思があるかどうかということです。
  34. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま滝井君の言われるとおり、すらっと案どおりに実施に移っておらない、こういうように私も聞いております。これはまことに残念なことですが、できるだけ早急に事態を解決するように一そう努力いたすつもりでございます。櫻内君とよく連絡をとりまして、私みずからもただいまのような話を電力業界、ガス業界あるいは鉄鋼業界等について話を進めたい、かように思っております。
  35. 滝井義高

    ○滝井委員 ぜひそうしてもらいたいのです。その場合に知っておいていただきたいのは、先日当委員会で、核内通産大臣からの答弁で、昭和四十年度における電力引き取り量は千九百万トンである。そして同時に、その場合に九電力のプールで還付する特別還付金は二十七億円、その他の一般還付は十六億円、だから四十三億。その場合に、一般還付はとにかくとして、特別還付二十七億と引き取り量千九百万トンとはこれはリンクしておるわけです。この線で必ずやってまいりますというのが、櫻内さんのこの委員会における確認です。そこで、この線で総理もやれるかどうかということです。
  36. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりやるつもりでございます。
  37. 滝井義高

    ○滝井委員 これで大体総理の裏打ちができましたからぜひ。……大体肯定になったわけです。  そこで、その場合にもう一つ総理に知っておいていただかなければならぬ点は、実は三十九年度における電力石炭引き取り量は二千五十万トンであったわけです。ところが、ことしの二月上旬になりまして、四十年の二月上旬になりまして石炭鉱業の審議会は、この二千五十万トンの当初目標を大きく変更して千八百五十七万トンにしたのです。この理由は、出炭が不足をしておったということと、それからことしは北海道その他に豪雪がございまして、その雪害によって石炭の輸送に障害があった、こういう問題があるわけです。  そこで、いまどういうことが行なわれておるかというと、千八百五十七万トンについてもなかなか引き取り量の目標達成が困難な情勢なので、山元にまだあって、そうして売買の契約の終わっている石炭も、ひとつ電力会社にも入荷したものとして認めてくれぬか、それから、現在もうすでに積み出し港に行っている石炭で、まだ入荷していないもの、これはしかし契約は終わっておる、こういうものもひとつ認めて、三十九年度の還付の問題を何とかしてくれ、こういう問題が起こってきておるわけです。三十九年度の特別還付の問題は、即四十年度の還付の問題と重大な関連があるわけですよ。いわば三十九年度に路線が敷かれて、四十年度に入っていくわけです。  そこで四十年度は、いま言ったように、櫻内さんも千九百万トン、二十七億と言明したのですが三十九年度についてはまだ明白でない。そこで、三十九年度の処置については、一体どういう方針政府は堅持をするのか、この路線をやはり確立をしておかぬと、四十年度に一足飛びにいくわけにはいかないわけです。この点をひとつ明らかにしておいていただきたい。
  38. 宮本惇

    ○宮本政府委員 お説のように、三十九年度の千八百五十七万トンという数字は、北炭の事故あるいは豪雪のために十万トン程度下回らざるを得ないんじゃないかという現実の状況でございます。それで、預け炭制度その他も、実際問題として、向こうへ行きましたときに、たとえば電力会社の規格の炭に合うかどうか確認がなかなかできない実情でございますので、ある程度三億五千万より下回らざるを得ないんじゃないか、こういうふうに実情はなっておる次第でございます。  御承知のように、先般通産大臣と大蔵大臣とのお話し合いで、三十九年度は特別還付が三億五千万というお話ではございましたが、現実に炭が来ないし、また電力業界自体も、入ったものについての具体的な還付でけっこうであると大体了承いたしておりますので、その数字をやや下回るということでございます。
  39. 滝井義高

    ○滝井委員 わかりました。それで、いまのような確認、大臣よろしいですね。縦に頭を振っておりますから了承しておきます。  次は、非常に大規模な閉山合理化が相次いで、大きな社会問題になっておりますが、同時に、さいぜんから御指摘申し上げますように、石炭企業経理が非常に悪化しておるために、もう一つの大きな問題は、石炭を掘ったあとのあと始末、鉱害の処理が遅々として進んでいないということです。そこで、これは民生安定、あるいは国土保全の見地から、鉱害の処理というものを総合的、計画的にやらなければならぬということが言われておるわけです。  そこで総理にお尋ねをしたいのは、この際、国の強力な指導のもとに、買い上げられた石炭山のあと始末、あるいは買い上げられなくて現在操業をしておる石炭山の鉱害の復旧、こういうものについては総合的、計画的な復旧計画をつくって、——無資力、有資力にかかわらず、均衡のとれた復旧をやっていかなければだめだと思うのです。これについてまず政府の最高方針をひとつ総理から明白にしておいていただきたいと思います。
  40. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この鉱害復旧、これはもうすでに政府態度ははっきりいたしておりますし、いままで特別な機関までつくってこのあと始末をいたしておるのは御承知のとおりだと思います。最近の傾向におきまして、これが業者等において十分にやられておらない、こういうようなものがあれば、政府としても最大限の努力をいたしまして、急いでそのあと始末をする、こういう方針でいきたい、かように思います。
  41. 滝井義高

    ○滝井委員 政府もできるだけ急いでやるということですが、その場合に、現在合理化事業団で山を買い上げます。これは鉱業権を抹消することになるわけです。その場合に、抹消した鉱業権に対して整理促進交付金を出すわけです。そして、およそ交付金の五割に当たるものを鉱害の資金として留保をするわけです。ところが、その留保した額と鉱害の額とが必ずしもイコールにならぬわけです。鉱害の額のほうが非常に多くて、留保のほうが少ない、こういう形になると、その不足分を鉱業権者が、自分の財産を売ってでも不足分は補てんをしなければならぬわけです。ところが現実に炭鉱業者の経理は悪い。たくさんの借金を開発銀行なり合理化事業団なり、中小企業金融公庫、市中銀行からしょっているわけですから、どうにもならぬわけです。そこでこれはお手あげになる。そういう形になると、これは無資力ということになるわけです。そこでそういう無資力の鉱害の復旧については、いま非常な欠陥があって、国も相当努力をしてくれておりますが、うまくいってない。そこでそれらのものの復旧について、相当国は予算を投入して復旧をやる必要があると思うのですが、一体総理はその場合にどうお考えになるか。
  42. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 だいぶ具体的な話になっておりますので、係のほうから説明させます。
  43. 井上亮

    ○井上政府委員 ただいま滝井先生から主として無資力鉱害の問題につきまして御質問があったわけでございますが、特に閉山炭鉱、この閉山炭鉱につきましては、滝井先生承知のように、現在交付金を交付する制度がございます。しかしその際、鉱害につきましては鉱害のための留保金をとっているわけですが、御指摘の点はその留保金を上回るいわゆる不足額が出て、それについての補てんがなされない、これについてどうするかという御質問でございますが、この点につきましては、私ども確かに御指摘のような問題があるというふうに認識しておりますので、今後十分この問題につきまして検討を加えまして、政府としても善処していきたいというふうに考えております。
  44. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、現在政府がある程度予算を注ぎ込んでやってはいただいておりますが、何せその予算の額が少ないために、特にこれは農地においてあらわれるわけですが、復旧計画を立てます、そうすると、復旧計画を立てますと、留保金がそれに見合って年々賠償という、いわば鉱業権者が支払わなければならない補償分に充てられていくわけです。ところが復旧計画が三年で終われば、その留保している金で全部イコールになって、ぴちっと何らの不満もなく終わるわけです。ところが予算の配分が少ないために、それが四年、五年かかると、そこに二年分だけは農家の減収補償をする金がなくなってしまうわけです。そこでほとんどの農家はお手あげになるわけです。その場合に、お手あげになったら生活保護にいったらいいじゃないかという意味もあります。しかし生活保護にいくにはミーンズテストを受けなければならぬし、農地を持っておりますから、とても生活保護にはいかないのです。そこで、一定の計画があって、計画からはみ出していくという場合における年々賠償の不足分、未払い分は一年にいまどの程度あるかというと、大体五千万から六千万あったら解決してしまうのです。来年度は三百六十五日晴れ晴れ、三兆六千五百八十億八千万円という予算をお組みになった。三百六十五日晴れ晴れなら、その中から五千万円くらいの金が出ないはずはないのです。これを出さないから、農民はお手あげなんです。そこで現地では、この問題をめぐって非常にトラブルが起こっておる。これを世に年々補償と言うわけです。この問題は当然やらなければならぬ。いみじくも有沢調査団も、これをやらなければならぬと言っておるわけです。ところが政府はことしサボっておるわけです。そこで私は特にきょうは総理に出ていただいて、この問題についての総理の見解をはっきりする必要がある。これがいま日本における鉱害問題を処理する一番のウイークポイントであり、最大の問題点です。これは額にしたら五千万円です。これはお聞きになってもいい。多くても六千万円しかかからない。そうすると、ことしは御存じのとおり五百億の予備費がありますから、小さい災害があったつもりで片づければ、農民は非常に安心するわけです。この点に対する総理の見解をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  45. 井上亮

    ○井上政府委員 先ほども総理から無資力鉱害の復旧につきましては、総理とされましても最大限に今後努力するというお話がございましたが、ただいま御指摘の点は、根本の問題はやはり無資力鉱害の復旧を急ぐ、そうして年々賠償などというような問題が起こらないようにする、復旧を急ぐことが基本的な要諦だと思います。その意味で、政府といたしましても、先ほど総理から御答弁がありましたように、無資力鉱害の復旧を急ぐということで、まず最大限の努力をいたしたいと思います。しかし、ただいま滝井先生がおっしゃったような事情がなお残る場合もありますので、私どもといたしましては、従来閉山炭鉱の処理につきましては交付金の交付制度一本でやってまいりましたが、今後は御趣旨もありますし、必要もあると存じますので、必要があります場合には一もちろんこの新方式が主体的な制度となろうと思いますが、必要があります場合には、旧方式を再び再開いたしまして——旧方式を再開いたしますれば、滝井先生承知のように、合理化事業団が鉱業権を買うという制度になりますので、鉱業権者ということになります。それでただいま御指摘のような点も円滑に処理される場合もございますので、旧方式の採用を考えていきたい、むしろ実施していきたいというふうに考えております。  それから先ほども答弁いたしましたが、この毎年賠償の問題につきましては、私どもとしましても御指摘のような実態を十分把握し、かつ制度的な検討をいたしまして、善処していきたいというふうに考えております。
  46. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま事務当局からお答えしたとおりでございますが、金額等も非常に少ないというお話でございますし、国の予算をつけないために計画の遂行に事欠く、またそれに関連する農家等が非常な迷惑だ、こういうような事態については行政のあり方としても私どもくふうしなければならない、かように思いますので、十分処善してまいる、ことばだけでなしに真剣に取り組んでまいりたい、かように思います。
  47. 滝井義高

    ○滝井委員 ぜひいまの年々賠償の問題については今年度からでも実現をするようにやってもらいたいと思います。  そこで、もう一つ重要な点に石炭局長が触れたのですが、そういう場合にやはり新方式ではいかないような場合が出てくるわけです。そのときには合理化事業団がその鉱業権を譲り受ける、買収するということについても考慮をするということですが、総理もその方針、よろしいですね。
  48. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 よろしゅうございます。
  49. 滝井義高

    ○滝井委員 それは四十年度からそういう方式を実施してもかまわぬですね。
  50. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはいま予算がちょうど審議の最中でございますから……(滝井委員「関係ない」と呼ぶ)関係ないならば、そのとおりやります。
  51. 滝井義高

    ○滝井委員 予算に関係ないですから、四十年度からよろしいということでございます。そこで、これで大体旧方式も場合によってはやれるし、年年賠償についても何とかくふうして民生安定上四十年度から考えていただく。  最後にもう二点あるのですが、一つは、Aという炭鉱が先に復旧をしてしまいます、今度はBという炭鉱がしばらくおくれてから復旧します、そしてAとBとの炭鉱というものはそれぞれ独自の復旧計画を立ててやるわけです。そこでAの復旧とBの復旧がアンバランスになるわけです。このときに、このアンバランスを直す方法が現在ないのです。それから、一ぺん復旧をしてしまいます、そうしてその炭鉱が店じまいをしてしまって、合理化事業団に残っている金も全部なくなってしまいます、その後に再びそこに鉱害が起こってくるとか、あるいは湿田化してくる。付近の炭鉱が全部やめるために湿田化が起こってきます。いわゆる全く予測しない処理しなければならぬ問題が出てくるわけです。そうすると、これは鉱害だとは認めるけれども、だれもやってくれない。こういう場合にいま産炭地の調整金というのが企画庁に計上されておりますが、そういう調整の金が合理化事業団予算にないとできないわけです。こういう調整の金を何らかの形で、これはことしでなくていいです、来年度予算編成についてはぜひ政府はこれは考えなければならぬ、こういうことが一つ。  いま一つ、そういうものを具体化していくためには本格的な鉱害調査を全国的にやらなければだめなんです。特に筑豊についてやらなければだめです。ところがことしの予算を見ると、その全国的な調査費は二百六十万円しかついていないのです。これでは本格的な鉱害調査はできないわけです。八百億から九百億になんなんとする鉱害を、もう少し政府は把握をしなければならぬ。そこで私が政府に要請をいたしたいのは、ことしはもう二百六十万円ですからやむを得ないのですけれども、二百六十万の限度ですみやかにひとつ本格的な調査をやってくれ、足らなければ何か財源を出してその調査をやるということ。  もう一つは、立ったついでに言うのだけれども、そういうふうに国がだんだん積極的な施策をやると、いまの制度では県の負担がウナギ登りにふえていくわけです。有沢調査団は県の負担をふやせなんということはどこにも書いていない。むしろ地方自治体の負担を軽減しなさいと書いてある。ところがことし、ちょっと福岡県を調べてみたら、今度の補助率の改定において四千万円だけ福岡県はふえるわけです。そのふえた額についてだんだんたぐって四十六年まで計算してみると、七億から八億の負担増になるわけです。そしてそのふえたものは、地方財政の状態をみると、それを基準財政の需要額にも入れてくれていないのです。県の負担だけがふえるという形になっておるわけです。そこでこの負担の軽減について当然やらなければならぬ。県は被害者です。ところが県が鉱業権者と同じ程度に、農地のごときは鉱業権者が一割五分、県は一割四分五厘と、鉱業権者と同じくらいに県が負担をするわけです。こんな矛盾はないと思うのですね。それは福岡県はあるいは愛知とか兵庫のように富裕県かもしれない。富裕県だといったって、失業者が多く、生活保護者が多い。これをやらなければならぬ。これは大臣の山口県だって同じです。宇部だって同じです。あるいは佐賀だって長崎だって、みんなそういう状態になっておるわけです。そこでこういう財政の負担についてある程度の軽減をしてもらわなければならぬ。調整金と、それから県の負担の軽減の問題と鉱害調査、この三点についてひとつ総理答弁をいただきたい。
  52. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 鉱害の調査をまず第一にすること、これはいかにも予算が少ないことですから本格的調査と銘打つのはやや過ぎますが、とにかく調査をする。調査の結果を今後の改善の方向に資していく、その資料としてとっていく、そういう場合に、ただいまの事業団に調整費を設けるとか、あるいはまた県との関係をいかにするか、こういうような問題もあわせて考えてまいりたい、かように思います。
  53. 加藤高藏

    加藤委員長 伊藤卯四郎君。  伊藤君に申し上げますが、総理の御予定もございますので、簡潔にお願いいたします。
  54. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 時間の関係があるそうですから、二点だけお伺いいたします。  一点は、政府から本国会に、通産省の所属機関として総合エネルギー調査会設置法案を出しております。ところがそのほかに、石炭鉱業審議会、石油審議会、電気事業審議会、これはいずれも通産省の所属機関、いわば諮問機関でございます。これと同じような一つの諮問機関として総合エネルギーの調査会をおつくりになるということなら、私はおよそ意味がないと思っております。というのは、石炭、石油、電力、いずれもこれはみな利害が対立をしておるものでございます。この調整に対して通産省あるいは通産大臣はお困りになって、どうすることもできないというお手あげの状態が今日まで続いてきておる。せっかく総合エネルギー機関をおつくりになるなら、これらを統括するところの、一段高い見地に立って、独立機関としてこれをつくってやっていく、たとえば憲法調査会のような機関としての使命を負わすということであるなら、総合エネルギーの国策の使命を果たすということになると私は思うのですが、この点に対して総理どういうお考えですか。
  55. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 総理のお答えの前に私から申し上げておきます。  いま御指摘のように、各エネルギーの間のいろいろ調整すべき問題もあろうかと思いますが、現に通産省石炭、また電気、あるいは今後予想される原子力発電についての行政責任を持っております。そういうことで通産省で総合エネルギーを調査すべき機能を十分備えておる、こういう見地に立ちまして今回の調査会の設置を通産省にやる、こういうことにいたしたのでございます。
  56. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま通産大臣がお答えしておりますように、ただいま総合エネルギーとしていわれておるものは大体通産省において所掌しておるようなものだけだ、したがって、そういうものを通産省でまとめてみようか、かように言っている。私は内閣に置くというのも一つの案かと思います。ことに将来原子力などが出てくるとすれば、これはまたいろいろな議論も出てまいりますから、内閣あたりがよろしいかと思いますが、ただいま言われますように、ただいま総合エネルギーとして調査の対象にしているものは、全部が通産省自身で行政を担当している、そういう意味だから通産省に置くことが望ましい、かような考えでございます。
  57. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。石炭鉱業審議会、石油審議会、電気事業審議会等の一段と上に立って、これらを統括して、総合エネルギーの国策としての使命を果たしていくものである。単なる通産省の付属諮問機関ではない、そういう一つの全体的な上に立っての使命を果たす役割りを持つものである、こう解釈していいですか。
  58. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりに考えていいかと思いますが、これはおそらく総合エネルギー調査会としては、電気あるいは石油、石炭、こういうようなものがそれぞれ調査会がございますが、そういうものを位置づけるといいますか、総合エネルギーとしての位置づけは、今回のこのまとめた調査会でしたいというのではないだろうかと思います。その位置づけができた上で、石油審議会などはその範囲で考えていく、あるいは石炭もその位置づけられたものについてくふうしていく、こういうことじゃないだろうか、かように考えます。
  59. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 時間の関係がありますから、これも追及いたしませんが、総理のただいまの答弁はまことにたよりない答弁で、どうもあいまいもことして、はなはだ遺憾です。遺憾ですが、これはいずれ櫻内通産大臣との間で後日もう少し明確にさせます。しかしいずれにしても総理が統括されなければならないという点だけは十分胸に置いていただきたい。  次にもう一点お伺いしますが、さっき多賀谷委員も一言触れておりましたが、有沢調査団長から炭鉱にだんだん人がいなくなってしまう、炭鉱は人的に老朽、老廃して計画出炭が出せなくなるというところから、炭鉱に特殊な保険制をつくる必要があるということが答申されている。その答申は、具体的にいうとどういうことかといって私が有沢団長にお尋ねいたしました。たとえばAの炭鉱に五年、Bの炭鉱に五年、Cの炭鉱に五年、そうすると、それが継続されて十五年勤続したということで老齢年金を支給する、欧州各国でとっている一つの年金制のやり方でございますが、そういうものをつくって、炭鉱に魅力を持たせ、永住させる、そして炭鉱の技能者、熟練工というものを炭鉱にとどまらせていく、そして人的な老朽、老廃をそれで防いでいくというようなお考えであるかどうかということを有沢さんに聞きましたところが、そのとおりでございます、そういう内容をもって答申をいたしておりますということを、この委員会で参考人として答弁されております。そこでこの点が今後の炭鉱の増産計画、いわば出炭計画あるいは人的な問題は解決する一番重要な点だと思っております。昭和三十三年から三十八年まで五年間において、合理化によって炭鉱から失業した人が十二万人おります。それに支払われた退職金が一千億円でございます。ところが、一千億円というとえらい大きいように見えますけれども、これは一人当たりに割ってみると、八十万円でございます。一般町方の工場から大工場などと比較すると半分に今日当たりません。したがって、そういう状態では私は、若いうちに早く炭鉱から去っていこうというのは、これは当然のことだと思うのです。公務員のほうはどうかというと、一番低い公務員でも、いま恩給が一カ月一万一千円以上支給されております。そのほかに退職金があります。さらに給与によって三万円、五万円という恩給を取り、退職金を取っております。私はこれを高いとか多いとかいうのではありませんよ。ありませんけれども、そういうのから比較すると、あまりにもみじめではありませんか、あの危険作業の中において。したがって、炭鉱の安定化あるいは出炭計画等を行なっていくなら、どうしてもこの問題を解決せなければ、私は炭鉱の安定化、計画出炭はできないと思うので、そこでどうしても老齢年金制をつくる必要があるというところから、石田労働大臣にもこの話をいたしました。石田労働大臣も、これは考えなければならぬことでありますから、私のところでも大いに検討いたします、こういうことを言っておりました。これはやはり厚生省とも関係し、あるいは通産省とも関係し、それぞれ関係があるわけでありますから、この点について、せっかく有沢調査団長からも答申され、それは尊重しますということを総理も言っておられるのですから、この一番重要な問題について、私は緊急にやられるべきことである、こう思いますが、至急そういう法律案をつくって出して、この問題の解決をはかるという総理のお考えがあるかどうか、これは非常に大事な問題だと思いますから、ひとつ総理、ぜひ明確に、今後のお考えも伴って御答弁願いたい。
  60. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 炭鉱労務者に対して厚生年金保険をいかに適用さしていくか、あるいはまた、それとは別個の特別な年金保険制度を設けるか——保険制度というと語弊があるかわかりませんが、私はどうもこの種のものは保険がよろしいように思います、そういう点について、厚生、労働あるいは通産等、すでにもう研究はしておりますが、急いで結論を出すように、早く進めるように、なおただいま特別な老齢保険というような意味の御発言がございましたが、そういうことをも加味して、どういうのが実情に合うか十分検討し、そして早く結論を出すように、各省を督励したいと思います。
  61. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 いま総理答弁されたことは、必ず総理のもとにこれをおまとめになって、その法律案等をあるいは臨時国会等に必ず出すというように、私は積極的に総理がお考えになっておるというようにとってよろしゅうごさいますね。——それでは総理も納得されておりますから、以上で私の質問を終わります。
  62. 加藤高藏

    加藤委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時十三分散会