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1965-03-10 第48回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月十日(水曜日)     午前十時二十六分開議  出席委員    委員長 加藤 高藏君    理事 有田 喜一君 理事 藏内 修治君    理事 中川 俊思君 理事 中村 寅太君    理事 多賀谷真稔君 理事 滝井 義高君    理事 細谷 治嘉君       小笠 公韶君    田中 六助君       中村 幸八君    野見山清造君       三原 朝雄君    井手 以誠君       岡田 春夫君    中村 重光君       伊藤卯四郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       岡崎 英城君         通商産業事務官         (石炭局長)  井上  亮君         通商産業事務官         (鉱山保安局         長)      川原 英之君  委員外出席者         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局石         炭課長)    佐伯 博蔵君         参  考  人         (九州大学名誉         教授)     山田  穣君         参  考  人         (早稲田大学教         授)      中野  実君         参  考  人         (北海道大学教         授)      磯部 俊郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第七〇号)  電力用炭代金精算株式会社法の一部を改正する  法律案内閣提出第九二号)  石炭鉱山保安問題(北炭夕張炭鉱爆発事故  等)      ————◇—————
  2. 加藤高藏

    加藤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案及び電力用炭代金精算株式会社法の一部を改正する法律案を議題として、質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、これを許します。細谷治嘉君。
  3. 細谷治嘉

    細谷委員 この前の委員会におきまして、多賀谷委員から北炭夕張炭鉱事故のことについて質問があったわけでありますが、私はその中で、質問に出ておりますけれども、若干政府能度についてさらに質問をしてみたいと思います。  第一にお尋ねいたしたいことは、どうも最近の事故を見てみますと、三池炭鉱においてもそうでございますし、あるいは高松炭鉱の昨年の災害でもそうでございましたし、今回もそうでございます。また、これは鉱山保安の問題でありませんけれども、昨年の有名な勝島倉庫爆発、こういう問題を見てみますと、あらかじめあぶないぞということが指摘されて注意が行なわれ、あるいは勧告が行なわれておるにかかわらず事故が起こっておるという例が最近はほとんどなんですね。このことは根本的な原因は当事者、いわゆる炭鉱経営者側にある、こういうことでありましょうけれども、最近のいま申し上げたような経過からいきますと、もはやこれは政府責任がのがれられないところに来ているのではないか。勧告しておるところに、そのままずぼしでここはあぶないぞと言ったところに事故が起こっているということになりますと、三池においても夕張においてもそうでありますが、これはやはりもう幾ら勧告しても経営者が悪いのだということではのがれられない政府責任というものがあるのではないか、こう私は痛感いたしております。この点についてひとつ保安局長どうお考えなのか、お尋ねします。
  4. 川原英之

    川原政府委員 今回夕張におきまして起こりました事故につきまして私ども非常に遺憾に存じておりますが、ただいま細谷先生指摘のように、今回は、十二日に監督官が参りまして、具体的な指示と申しますか、監督表を渡しまして、施設の改善指示をいたしております。なお、一応改善の工事の進捗状況をただしますために、二十二日に札幌鉱山監督局に副保安技術管理者を招致いたしまして、さらに恒久的な方策を通達いたしたわけでございます。  この指示いたしました事項の中で、ガスを早く排除するという点につきまして応急措置をとって、さらに風道の切り広げにつきましては一日、二日でできないものでございますから、これは二月二十七日までにやるという約束であったわけでございまして、鉱山におきましてもその準備はいたしておったようであります。たまたまその過程におきましてああいう不幸な事故が発生いたしましたことはまことに遺憾でありますが、経過といたしましてはそういう措置鉱山側に通達をして、基本的には、さしあたりはそのガス量低下——風門を開いて減らしますが、さらに根本的な風道の切り広げ、これをやるようにいたしておったわけでありますが、この点で、私どももその途中でそういう事故が起こりましたということにつきましては、非常に遺憾に存じております。
  5. 細谷治嘉

    細谷委員 三池の場合は五月十九日ですか、注意をして、そして十一月の九日までそのまま放置されておって、二、三日後に調査をしようとしておったやさきに事故が起こった。高松炭鉱の場合は一度作業を中止して、始めた翌日かに事故が起こった。今回の場合は、十二日に注意を喚起して、事故当日呼んでさらに具体的な勧告をした、こういうことでございますけれども、そこまでわかっておって、そこまで当局として手を打っておるにかかわらず事故が起こっておるわけですから、ここで従来の考えではない事故撲滅のための基本的な態度を決定しなければならぬのじゃないかという気が私はいたします。今度の場合は、事故後水没してしまったので火源がわからない。火源については、いろいろな想像が行なわれておりますけれども、火源がわからないということであります。私は、考え方としては火源の問題じゃないんじゃないか。災害原因というのは、やはりメタンガス許容量以上になって、自然発火するようなガス混合状態になった。火源が問題じゃないのじゃないか、そういう、炭鉱がもう一瞬にして爆発するような条件になっておった。それも、指摘をしておる。私はここが問題じゃないかと思うのです。火源が何だったというそういうせんさくも大切でありますけれども、火源があっても、そういう条件がなければいいわけなんですから、原因というのは、そういう炭鉱条件がもたらされたということなんです。それについては、警告しておったのですから、そこがほんとう原因なんだ、それを排除しない限りはこれはだめなんだという考えに立って、そしてやはり警告を発する場合には、もう警告じゃなまぬるいのですから、作業停止しろ、このくらいの断をとらなければだめじゃないかと私は思うのですけれども、どうですか。
  6. 川原英之

    川原政府委員 これは、ああいう大きな事故が起こりまして、いま申し上げますとたいへん弁解がましくなりますので恐縮でございますが、われわれとしましても昨年来、明らかにいま即刻停止以外に手がないという場合には停止をいたしておりまして、昨年だけでも六百四十件ばかりの停止をやったわけなんです。ただこの場合に、御承知のように、あのガスの量が一・六%幾らあったそうでありますが、この一・六%の風量そのものをその場で応急的に低減させるというためには、風門の戸をあけまして若干風量を減らす。ただ基本的には、先生おっしゃいますように、風道を切り開くという以外にはないわけでありまして、そういうふうにいたします前に風道拡大ということをやらせまして、御承知のように切り羽が先にございまして、逆にその切り羽を全面的に捨ててしまうかどうかという問題になるわけでありますが、そういった観点から、おそらく監督官応急措置を命ずると同時に、風道拡大を二月二十七日までにやるということで措置をやる、風道拡大いたしますれば自然にメタンも減るわけでありますから、そういう措置をとったわけであります。
  7. 細谷治嘉

    細谷委員 私は、とられた措置についてはもうお伺いしておりますから、それをどうこう申し上げるわけではない。たとえば、従来と比べますと、一坑当たり巡回率も二倍以上になっているのだ、対策も講じてきたのだ、監督官庁としてはもうそれで責任はないのだ、経営者に問題があるというのではなくて、そういうことが何べんも繰り返されて事故が起こっているのですから、ここで断固とした決意で抜本的な対策を講じなければいけないではないかという気がするわけです。そういう従来のようなやり方ではなくて、断固とした決意で抜本的な事故撲滅のための手を、いままでよりもっとはっきりした、とにかく作業停止させるのだ、そのためにはいろいろな問題が起こりましょう、そういう問題を当局として解決するのだ、こういう決意をお持ちかどうか、その点だけ一点お聞きしているわけです。
  8. 川原英之

    川原政府委員 ただいま細谷先生から御注意を受けました点でございますが、私といたしましても、今回の事故にかんがみまして、これはいま先生もおっしゃいましたように、たとえば切り羽が全部とまってしまうというような問題も当然伴いますけれども、人命尊重という点からいって、先生のおっしゃるような停止措置を今後はさらにきびしくやっていくということでございます。
  9. 細谷治嘉

    細谷委員 そういう決意だけでなくて、具体的に——保安というものは、九分九厘だいじょうぶだと思っても、残りの一分で事故というものが起こるのです。私も二十二年間工場につとめておりまして、実際の生産もやってまいりましたから、事故を何べんか経験しております。絶対だいじょぶだと思っておるときに、やはりほんの網のすき間のようなところから事故が起こっております。これは私の身をもっての経験であります。そういうことからいって、まあまあだいじょぶだ、まあまあどころじゃない、これなら絶対だいじょぶだと思いましても、あるいは監督官庁のその人の性格、あるいは鉱山保安担当者その人の性格の、欠陥というとおかしいですけれども、若干のすき間から事故が起こるわけでありますから、ひとつ監督官庁としては、いままでの経験からいって、監督官庁断固たる措置をとらないところに炭鉱災害原因があるのだ、こういうふうに私はもう結論づけてもいいような今日までの経過でありますから、特にその点をお願いしたい、こう思うのです。こういう問題に関連して、保安機構の問題については、せんだって多賀谷委員からも質問がありましたし、また昨年も練りに練った問題として、二点の鉱山保安法の改正が行なわれたわけですけれども、これが現実に実施に移されておらななかったという点についても問題点がありますが、それはこの前十分に質問がありましたから、きょうは私は触れませんが、組夫の問題についてお尋ねしたいと思うのです。  私は鉱山保安局石炭課からいただいた資料を昨日拝見したのでありますけれども、この全国石炭鉱山職種別抗内死亡者状況という結果を見てみますと、抗内実働千人当たり死亡率というものを見ますと、常用夫においては、昭和三十四年に二・六〇なんです。三十九年は二・五四です。これはあまり変わらないのですね。臨時夫はどういうことかといいますと、三十四年には〇・一九であったものが、四・八〇と激増している。それから請負夫については、三十四年には三・三三であったものが、四・四八、こういうふうにふえておるのですね。この全体を見てみますと、請負夫あるいは臨時夫というのが非常に事故のケースが多いのです。今度の場合でも、高松炭鉱の場合でも入っております。三池の場合でもあったわけですが、これはこの法律で許された範囲を越えて、生産第一線に、保安教育の不十分な臨時夫なりあるいは請負夫が入っておる。こういうことが原因の非常に大きなものになっておるということを、この統計が示しておるのですね。これについてどういう対策を今後講じようとなさるのか、お尋ねしたいと思います。
  10. 川原英之

    川原政府委員 最近におきまして臨時夫請負夫組夫死亡率が非常に高いという点につきましては、ただいま御指摘のとおりでございます。われわれとしましても、この組夫をどういうふうに規制していくか、これはいろいろ検討をいたしておる次第でありますけれども、先般の高松災害以来、この組夫対策につきまして、特にその監督をきびしくするというようにもってまいったわけでございます。今回の夕張炭鉱におきましても、相当老齢の組夫が、これは病院にも私参りましたが、非常に高齢の組夫の方がおられまして、これはほんとうにわれわれとしましても遺憾に存ずるのでありますけれども、先生御高承のように、この請負作業につきましては、従来石炭合理化法によりまして、組夫を入れます場合は承認制度をとっております。鉱山保安法の系統としましては、組夫については特に保安管理機構保安教育についての届け出をとりまして、それに対する指導をしていくという立て方になっております。この点につきまして、ことしも昨年以来、監督局に対しまして種々の指示をいたしておりますが、特に石炭局及び石炭部から承認を与えます場合、これは監督局連絡十分密にして、その作業の実態を見るということと、これは当然のことでありますけれども、監督官が抗内を回ります場合にも、その作業規定外のところをやっているのではないかという点につきましても、十分な監督をするということで現在まで運んでまいっておりまして、今回の夕張におきましては、掘進に従事しておりました組夫の方が被災をされたのでありますが、やはり保安教育保安管理機構というような面におきましても、いろいろこれからまだ規制を強くしていかなければならない問題があるかと私ども思います。こういった点につきまして、この組夫の受け入れにつきましては、石炭合理化法承認とも密接な連携を保ちつつ、組夫の人を減らしていくということについての努力をいたしたいと存じますが、何ぶんにも今回の事故におきましても、やはり、掘進に従事しておりました組夫死亡者が出ておりますので、この点は深く遺憾に存じておる次第であります。
  11. 細谷治嘉

    細谷委員 この統計坑内実働者数というのを見ましても、常用夫においては三十四年には十九万人おった常用夫が、九万三千人になっておるのです。臨時夫は三十四年には千三百六十九名、三十五年には九百九十七名、三十六年には七百六十五と減ってきている。ところが三十七年以降急増いたしまして、三十九年には千四百六十という数字になっているのです。請負夫は一万三千三百三十八というのが三十四年でありますが、これが一万四千六十。職員のほうは一万四千百五十から九千百七十八と五千人程度減っておるのですけれども、とにかくふえておるのは臨時夫請負夫なんです。ですから、稼働者構成からいきましても、保安訓練の足らない人が入っていくわけですから、こういう構成からいきますと、ますます、保安が強化されるどころじゃなくて、弱体化している。これは、この構成を見ても明瞭なわけなんです。石炭合理化法では、安全に対する適当な措置を講じた上で許可を求めるわけでしょう。こうなってまいりますと、この実績からいって、しかも組夫事故原因罹災者に必ずなっているという点からいって、これについても、組夫ほんとうに法が期待しているような間接的な作業、いわゆる生産のための補助的な場所で働く以外は厳禁していくということを守らなければいかぬ。しかし私は、なかなか守られないのではないかと思うのです。許可を得るときにはそういうことでありますけれども、現実にはやはり生産第一線組夫を稼働させていく。安上がりなんです。組夫はある意味においては資材なんですね。人間扱いされていないのです。そういうことになりますと、これは許可を得るときの条件なんということは無視されるということが実情ではないかと思うのです。ですから、これについてもやはり抜本的な対策を、決意を持ってこの段階ではやらなければならぬところに追い込まれておるのじゃないかと思うのです。この点についてどうお考えなのか、政務次官も見えておりますから、一つ局長政務次官当局としての決意を承りたい。
  12. 川原英之

    川原政府委員 組夫が非常に増加しておるという点につきまして、これも先生に差し上げております統計の示すとおりでございまして、相対的な比率が非常にふえておるということも御指摘のとおりであります。ただいまも御答弁申し上げましたように、組夫の中の、特に坑内作業の中で掘進その他特殊なものに従事する場合の組夫等につきまして、こういうものに限定をして石炭合理化法承認を与えておるわけでありますが、やはり承認したあとでさらにこの管理機構規制する、保安管理の面からいきますと、親会社のほうからの二重チェックをいたすような指導をいたして、組だけで動かないで、その鉱山の正規の保安係員が二重の規制を、保安上のチェックをするというシステムをとっておりますけれども、先生指摘のように、組夫承認する際にそういうことをあらかじめ規制をしていくという方法が必要であるということは、御指摘のとおりであろうかと思います。こういった点につきまして高松災害その他、事故に引き続きます災害等にかんがみまして、われわれとしては石炭局とさらに密接な連絡をとって、石炭合理化法承認の際にそういった機構を改め、十分、従来もそれを無視しておるわけではございませんけれども、さらに規制をすることによって組夫の安全をはかるということをまずやってまいりたい、かように存じておるわけであります。
  13. 岡崎英城

    岡崎政府委員 組夫の問題につきましては、昨秋の臨時国会の際にも非常な御注意がございまして、通産省としても十分注意するというふうに、またくふうするというふうに私もお答え申し上げたのでございます。その後いろいろ検討いたしておりますところ、このたびの夕張炭鉱の事件におきましても組夫被害者が相当出ております。非常に申しわけないと存じておる次第でございます。ただいま局長の申し上げましたように、その承認の場合に対する制限または規制の強化、または組夫自体の使用の問題等についても根本的な検討をいたしまして、将来そういうような事態の起こらないように十分な注意を払いたい、こう思っております。
  14. 細谷治嘉

    細谷委員 十分な御検討をいただくということでありますけれども、最近の新聞に書かれておりますように、三池炭鉱にしても北炭にしても、経営内容がちょっと上向いて、やがて復配しようか、増資しようかという段階でがたん、どかんとやっているわけです。それが最近は一般的な傾向なんだそうです。とにかく会社経営が少し上向きになって、やがて復配しようかということを頭に考え始めるころにどかんとやっているのが、炭鉱傾向なんです。こういうことからいって、石炭鉱山保安規則等も、外国の例からいってメタン含有量についても、日本のは必ずしもシビアーじゃないわけですから、そういう点についても、それからまた炭鉱条件というのは、だんだんと深く奥にいきますから、そういう条件変化等をにらみ合わして検討をする必要があると私は思っているのですけれども、私はそれ以上、ここまできたら当局断固たる決意監督権を振り回す、ということばは適切じゃありませんけれども、もうこれなら絶対だいじょうぶだというくらいの措置を講じていただかなければならぬのじゃないか、こういうふうに最近しみじみと思っております。そういう点で組夫の問題についても、これは規則がどういうふうに変わろうと、法律がどう変わろうと、ごまかされて、月のうち一週間ごまかされていれば、そこから事故が起こる。月のうち一日でも、これは足らぬからひとつ生産のために組夫をやれということになりますと、命令一下組夫をやるから、そういたしますと、そこから事故が起こります。そういうことからこれはやはり断固たる、法律の問題はともかく、姿勢が必要であろうと思う。そういう点ではひとつぜひ石炭局長も、あまり生産生産で、鉄鋼会社や何かから原料炭を確保してもらわぬといけませんぞなんということでおどかされる、ということではありませんけれども、生産生産ということで経営者に協力いたしますと、それ以上の損失が起こってまいりますから、法の問題というより私は当局姿勢にある、こういうふうに思います。そういう意味においてますます当局はのがれられない剣ケ峰に立たされているんだ、こう思うのです。何かありますか。
  15. 川原英之

    川原政府委員 再三細谷委員から御指摘をいただきまして、たいへん恐縮に存じます。先ほども申し上げましたように、いろいろ生産確保というような問題、われわれはそのために監督をどうこうしたというつもりはございませんけれども、さらにこれは、たとえ生産がそのために一時ストップしても、人命尊重という観点から作業停止を命じるという方向につきましては、従来も、昨年以来その点は相当強化したつもりでございますけれども、さらにきびしいやり方をやってまいりたい、かように存じております。
  16. 細谷治嘉

    細谷委員 保安局長さん、ノイローゼになるほど真にまじめにこの問題に取り組んでいる姿はよくわかる。しかしあなたがいかにまじめにやろうといっても、これはそういう組夫の問題なり、あるいは鉱山保安法の問題を厳密にやって、そして監督権でやるというくらいの思い切りがなければ、まじめさ一点ばりノイローゼになるような、もう寝食を忘れてこれに取り組んでも、とても災害を防ぐことはできないと思う。当局がひとつ断固たる決意でやっていただきたい、こう思う。  こういう問題に関連して、時間がありませんからついでにお聞きしたいのでありますが、まあこの成果がどういうものかということについて私も確認をしておりませんけれども、朝日新聞の三月六日の夕刊に、「坑内保安に新威力、『パトローラー』の公開実験」という記事が出ております。それから三月五日の科学新聞というのに「炭鉱保安に新兵器、注目パトローラー完成」こういう記事が出ております。それによりますと、工業技術院資源技術試験所の福岡県嘉穂郡碓井町にある試験炭鉱で三月の五日に実験が行われた、リモートコントロールによるところのメタンガス移動式測定器、これはもうすでに学界でもこの問題が報告されて世界の注目を得ておるそうでございます。これによりますと、メタンガスのほか炭じん、それから風速、温度、一酸化炭素もはかれて、そしてこれはすべてリモートコントロールでやれる。しかも特に危険な坑内、古洞あるいは炭層中にあけられた試錐孔、こういうのにも十分な性能を持っておる。それで、この鈴木俊夫という工学博士、これは所長でありますが、この人の言によりますと、三百三十メートルの坑道に付設するのに約千三百万円かかるというのです。量産すれば安くなるんだから、政府補助金でも出せば一般の炭鉱に普及するのもむずかしくない、こう言っておるんですよ。そして、この科学新聞にはこういうふうに書いてあるのです。大体日本ではこういうりっぱなシステムが開発されておるけれども、おそらくこれを採用して使うのは外国炭鉱であろう、こういうふうに書いてある。この新威力パトローラーについて、どういう認識を持っているのか。これが書かれてあるとおりの事実とするならば、国庫等の十分な援助で、せっかく日本の人が開拓した発明であり技術でありますから、積極的にこれを取り入れる御意思があるかどうか、お尋ねします。
  17. 川原英之

    川原政府委員 ただいま御指摘いただきました保安パトローラーでございますが、これは通産省に所属しております資源技術試験所で、御指摘のとおり、従来鋭意研究をいたしてまいったものであります。われわれとしまして、日本でこういう新しいものができ上がってきたということについては非常にうれしく、また誇りを持って受け取っておるわけでありますが、現在実験室的にはほぼ完成に近づいたという段階であると聞いております。今後さらに実際の坑内で使用し得るような、いわば実用化試験、これを十分やりまして、その開発研究を進めますために、工業技術院のほうの特別研究費を使いまして、ほんとうにこれが坑内で使える状態にまでさらに開発研究を進めるという方針でおります。と申しますのは、これは先般多賀谷先生の御質疑のときにもちょっと申し上げましたが、いろいろ、ガス警報器等もほかにございますが、これもよほど実用化の試験過程を経ませんと、逆に、あまりこれに一切をゆだね過ぎるということになりましても、また無作動等で危険性も起こってまいりますので、その点は試験室段階から実用段階に移して、そして十分これが常時作動する、無作動の起こらないようなしかけを十分研究した上で、もちろんその段階に至りますれば、われわれとしてこれを積極的に炭鉱に導入していくということにつきましては、そういう方向を考えておるわけでございますが、現在ではなお、私、技術に非常にうといものでございますから、詳細なことは佐伯課長から御説明を申し上げますが、考え方といたしましては、坑内もいろいろな形がございますので、これに実験段階からどういうふうにアプライしていくかということをいま急いでやってもらっておるという段階でございます。
  18. 佐伯博蔵

    ○佐伯説明員 ただいま保安局長からお話し申し上げたことでございますが、資源技術試験所におきましてそういうものをつくろうということで、綿密な連携をここ数年来とっておりまして、私たちのほうでも監督経験を生かしまして、こういうふうなものが望ましいということを申し上げ、また資源技術試験所のほうでも科学的、技術的方面からいろいろ研究をなさっておりまして、先ほどお話し申し上げましたように、実験室的にはほぼ完成の域に達したわけでございまして、最近九州にございます試験炭鉱、これは工業技術院資源技術試験所付属の一つの試験炭鉱でございますが、これはそう大きいものではございませんが、そこで実験をいたしております。今後は実際の坑内にうまく適用できるかどうかということの試験研究を進めていく、なるべく早くこれを坑内に実用するという方向に資源技術試験所とともに努力いたしましてやっていきたいと存じております。  それから現在のところでは、自動ガス警報器は保安融資の対象にいたしておりまして、この保安パトローラーもやはりガス自動警報器の一種でございますので、これが完成いたしましたら、すぐにでも保安融資の対象といたしまして、坑内に普及させるという道は講じていきたいというふうにに考えております。
  19. 細谷治嘉

    細谷委員 私は、これは皆さんいままで関係してきたのでなんですが、やはり消極的な態度だと思うのですよ。この新聞によりますと、「パトローラーは坑道に懸吊したワイヤロープまたはモノレールを軌道とし、メタンガス計や炭塵計、風量風速計、温度計などを積んだ一〇)(二二)(六二センチメートル」というのですから小さいですね。それから「重量一二〜一七キログラムの保安監視器を、秒速約一メートルで自走させて計測を続けるもの」である、こう書いてある。そうして最後に工業技術院資源技術試験所の第六部長佐々木工学博士はこう言っているのですよ。「経済上の問題で日本は採用が非常におそい。外国は採用の方は非常に早い。パトローラーについても、」いいですか、この次が重要ですよ。「実用して十分な性能になったが、日本で採用されるのは大分先のことになろう。」こう結んであります。佐々木博士はもう実用段階にきたのだと言っていますよ。坑道の形とかは、それは千差万別でしょう。しかし、もう実用段階にきているのだと言っております。したがってこれは、採用するかどうかということをあなたのほうできめて、それに対して政府の補助をどうする、融資をどうするという態度をきめれば、これは採用される。価格については先ほど私が申し上げたとおり。ですから、むろんこれ一つに一切をゆだねるということは、あるいはまだ採用の初期の段階においてはむずかしいので、従来のものも併用しなければならぬでしょうけれども、何としてでも——これは非常ないい性能を持っているように書いてあります。責任ある人がこう言っているわけですから、もっと積極的にこれに取り組んで、もうただいまからでもこれに国庫補助等を導入してひとつやるという御決意がなければならぬと思うのですが、佐々木博士が指摘したように、せっかく開発したけれども、まだまだ実用段階ではございません、こういう理由であとにあとになるだろう。佐々木博士が言っているのです。これではいかぬと思うのですよ。もっと積極的にこれに取り組む決意を表明していただいて、ただいまからでもひとつ、たとえば夕張炭鉱なら夕張炭鉱等でみずからが保安と取り組むという体制をしいていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  20. 川原英之

    川原政府委員 通産省傘下の試験所におきまして研究をいたしましたこのパトローラーにつきまして、細谷先生から非常に御激励をいただきましてありがとう存じます。われわれといたしましても、そういった気持ちで、この問題は前々から実は早く進めようということで鈴木さんともいろいろ話をしている問題でございますので、仰せまでもなく、われわれとしてはいろいろな点を考えますけれども、できる限り前進していくということにおきましては、私どももそういう気持ちでございます。むしろお礼を申し上げたいと思います。
  21. 細谷治嘉

    細谷委員 これは委員長にもお願いがあるのです。これは学者なり技術者が言っていることですから、うそはないと思うのです。四月一日と二日に第六部が東京都でさらに試験をするんだそうです。東京都には炭鉱があると聞いておりませんが、嘉穂郡では実際に炭鉱でやったのですから、おそらく四月一日、二日に第六部でやるというのは、これは公開のPR的なものだと思うのです。この間やった三月五日のやつが、これはやはり本格的な実用試験の成果だろうと思うのです。したがって私は、予備費等でもこの問題については措置していくことが、今日あらゆる産業災害という問題があっていますが、その中で飛び抜けて大きいのは炭鉱災害でありますから、こういう手をひとつ積極果敢に打っていただきたい。こういうことについて次官の所見と決意をお聞きすると同時に、委員長にお願いしたいのですが、近くこの問題について佐々木博士なんかに委員会においても、こういう問題を具体的に学者あるいは開拓者、技術者としての所信のほどを伺う機会をひとつ持っていただけたら、こういうふうに思っております。これは委員長に対するお願いです。
  22. 岡崎英城

    岡崎政府委員 ただいまの御意見にございましたいろいろな保安上の設備、機械その他についての取り上げるべき問題につきまして、御意見またはいろいろなものがございましたならば、そういうのはもう早急に通産省といたしましても取り組みまして、いろいろな点について、予算措置その他の点についての必要がございますならば、やはりいま御指摘もございましたように、予備費等の活用をはかったりなんかして万全な措置をいたしまして、取り組んでいくというようにいたしたい、こう思っておる次第でございます。
  23. 細谷治嘉

    細谷委員 終わります。
  24. 加藤高藏

    加藤委員長 ただいまの細谷君の御意見に対しましては、後日の理事会で協議いたしまして御趣旨に沿うように善処いたしたい。当委員会でやりたいと思います。
  25. 岡田春夫

    ○岡田委員 関連して、政務次官にちょっと伺っておきたいのですが、昨日の晩にこの間事故のあった北炭夕張鉱業所の事務所が全焼したようでございますが、その経過をひとつお知らせ願いたいと思います。
  26. 岡崎英城

    岡崎政府委員 この問題につきましては、私も新聞承知しただけで、いま詳細について問い合わせいたしておる次第でございます。至急に状況等を詳細に問い合わせてお知らせしたいと思います。
  27. 岡田春夫

    ○岡田委員 関連ですからもう伺いませんが、その状況の御報告の中でぜひ私の伺っておきたいことは、ガス爆発原因をいま探究しているはずですが、事務所が焼けたということになると、証拠保全の問題に関連して、そういう点の関係は一体どうなるのか。焼けてしまいましたから原因がわからなくなりましたということも考えられると思うのでございますが、そういう点はひとつはっきりしておいてもらわないと、その火事の原因ということよりも、ガス事故原因の点がわからなくなっては困るので、そういう点も含めて御報告をいただきたいと思います。
  28. 岡崎英城

    岡崎政府委員 先生の御意見のとおりでございます。私たちといたしましても、原因を正確に、明確に、詳細に把握いたすということが将来の予防措置にも関連があり、またいろいろ措置をいたします方法等についての事前監督というものにも影響があることでありますから、おっしゃるとおり、そういうことがございましても支障のないように、できるだけ詳細な調査をいたしたい、こう思っておる次第でございます。
  29. 岡田春夫

    ○岡田委員 もうこれで終わりますが、それではとりあえずきょうじゅうに経過的な御報告、それから保全上の問題、そういう点は御報告いただけますか。よろしいでしょうね、きょうは午後も委員会がありますから。
  30. 岡崎英城

    岡崎政府委員 大体午後には御報告できるような段取りにやりたいと思って大いに努力いたします。
  31. 加藤高藏

    加藤委員長 岡田委員に申し上げますが、ちょうど午後参考人を呼んでおりますから、その前にちょっと……。  それでは、滝井義高君。
  32. 滝井義高

    ○滝井委員 石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案電力用炭代金精算株式会社法の一部を改正する法律案の二案について質問をいたしたいと思いますが、きょうはとりあえず石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案の中で、中心的な役割りを演じておる、主として石炭鉱業合理化事業団の問題を中心にお尋ねをいたしたいと思うのです。それからだんだん電力用炭代金精算株式会社のほうに入ります。  その前に、ちょっと細谷さんの質問に関連して。鉱山保安法の改正をやったわけですが、当時労働者の側から保安監督員の補佐員というのを少なくとも一人は出すことになっておったのですが、これは実行されておりますか。
  33. 川原英之

    川原政府委員 この法律は、先般の国会において決定いただいたわけでありますが、保安監督員補佐員を労働者の推薦に基づいて任命するということに相なっております。これはそれぞれ山によっていろいろ事情が違いますけれども、さらに金属鉱山石炭鉱山、それぞれ性質、状況は必ずしも一様ではございませんが、まだ労働者の推薦がなくて、労働者の推薦による保安監督員補佐員が必ずしも出ていない鉱山が相当ございます。われわれとしましても、これは一月から発効しておるわけでございますから、早くそういう方向に推進をして、そして補佐員の制度を活用していきたいということで、それぞれ監督局あるいは各組織に対しましても御要望を申し上げておる次第でございます。とりあえずは、現在補佐員を置くことになっておりますので、これは会社によって非常に事情が違いますが、会社によっては暫定的な補佐員を任命するということで一応補佐員は整えておりますけれども、まだ必ずしも労働者の推薦による補佐員が全部出そろっているという状況ではございません。まことに遺憾であると思います。
  34. 滝井義高

    ○滝井委員 それは何月からと申しましたか、いまはっきり聞こえなかったのですが。
  35. 川原英之

    川原政府委員 一月十五日からです。
  36. 滝井義高

    ○滝井委員 ことしの一月十五日ですね。そうすると今度の北炭はできておったのですか。
  37. 川原英之

    川原政府委員 北炭に関しましては、私の承知いたしております限りでは、労働者側の推薦する補佐員がまだ推薦がなくて、現在は会社のほうで任命する補佐員だけが出ておるという状態でございます。
  38. 滝井義高

    ○滝井委員 十五条で、省令の定めることろによって鉱業権者は選任しなければならないということになっておるわけでしょう。義務規定でしょう。省令はあなた方のベースです。そういうことが行なわれていないということが、非常に問題なんですね。こういう点をあいまいにしておいてはいかぬと思うのです。すみやかにそれぞれの監督局長なり監督部長を通じてやっておく必要があるんじゃないかと私は思うのです。  それからもう一つ、北炭の今度のようなことが起こった場合に、あなた方は保安統括者や保安技術管理者や副保安技術管理者または係員の解任ということをやることになるのですか。
  39. 川原英之

    川原政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、鉱山保安法の十五条二項におきまして「前項の保安監督員補佐員のうち一人は、その鉱山鉱山労働者の中からその鉱山鉱山労働者の過半数の推せんにより選任しなければならない。ただし、その推せんがないときは、この限りでない。」ということになっておりまして、これはいろいろと選挙その他の問題もあったかと思いますが、夕張におきましてもこの推薦を急いでおったようであります。ただ、たいへん残念でありますけれども、現在までその任命に至っていない。実際には補佐員を置くことになっておりますから、会社側の選任にかかる者がいま一人任命されておるという状態でございます、御指摘のごとく、われわれとしましても早くこの補佐員制度を実行に移して、いろいろな面で新しい体制をしきたいと存じまして、監督局長、監督部長にはもちろんその推薦を急ぐような指導をするようにという指示をいたしておりますし、またそれぞれの会社等につきましても、その方向で機会あるごとに申し上げておるわけでございますが、たまたま今回そういう状態にありましたことは、われわれとしても遺憾に思っております。  それから保安総括者及び保安技術管理者に対する解任その他の問題でございますが、もちろん保安のために必要があると認めるときは解任を命ずるということに相なっておりまして、われわれとしましてこれをいま具体的にどうするということを申し上げる段階ではございませんけれども、現在司法捜査の手続を通じまして原因の究明をいたしております。それらとも関連いたしまして、もし必要があればそういう解任というようなことも当然あり得るかと思います。
  40. 滝井義高

    ○滝井委員 事態ははっきりしておるのじゃないですか。メタンガスがたくさんあって、これは注意を与えておるわけでしょう。注意を与えておって、それを実行していないのです。こういうことは三池でも同じですよ。ぐずぐずしていると、ちょうど選挙違反が最高裁まで行って、そしてその結論が出る前に国会が解散になるのと同じです、結論が出る前にまた爆発が起こるでしょう。そういう選挙違反と同じように人間の命を取り扱われたらたいへんですよ。これは六十一人も殺しておるのですよ。だからこれはやはり即決即断でいかなければいかぬですよ。交通違反だって即決即断でいくじゃないですか。そのくらいのことでいかなければならない。そのためには、すぐにあなた方がこの十三条の二項の聴聞会を開いて、そうしてきちっとやるという体制を整えていかなければいかぬでしょう。それを一々司直の手を待ってとか、検察庁の調べを待ってとか、あるいは裁判の結果を待ってとか、こんなことを言っておったら、いつの日にその結論が出るかわからぬということになってしまう。雪深い北海道はやがて春が過ぎて夏になっちゃうですよ。そういうことでは私はいかぬと思うのです。もう少しこういう点は、法律をきめて、今度はこれでいくんだといって、三池災害が起こったあとに法律をきめて、少なくとも腹がまえをきめたわけでしょう。きめたが、補佐員はまだできておりません、しかも、いまのように十三条の問題についてもはっきりしないというのなら、これは鉱業権者はせせら笑うことになっちゃうですよ。だから、もう少しこういうところはきちっとやってもらいたい。法律に書いてあるのですからね。しかも大事なところは、ぼくらがいろいろ言って、もう少し労働者が保安について権限を持つ姿をつくれということを、私はこの鉱山保安法の改正をするときに主張したのです。ところが、それにどういう答弁があったかというと、保安というものは経営権の一環なんだ、だから労働者がそれをかれこれ言う必要はない、だからわれわれは補佐員にするのだという答弁がここであったのですよ。そういうように保安経営権の一環であるとするならば、その経営者があなた方監督官庁の言うことを聞かないというならば、やはりすみやかに社会的な懲罰を加えなければいかぬですよ。それが企業の社会性というものですよ。だから十三条のところを、次会までにもう少しはっきりした態度をきめてきてください。  それでは、今度はいよいよ石炭鉱業合理化臨時措置法の中に入るわけですが、主として事業団のことを中心にお尋ねいたします。  まず、三十五年に合理化法が改正をされて、合理化事業団が再出発をすることになったわけです。そして炭鉱関係の整理事務をやることになった。いわゆる旧方式です。その後、三十七年六月に法律を改正して、連帯責任の形をなくした。鉱業権者との連帯責任を合理化事業団が持つということをなくして、いわゆる新方式というものをやったわけです。現在までに、旧方式で一体幾らの山が処理されて、新方式で幾らの山が処理されたことになるのか。それから、三十六年の十二月だったと思いますが、石炭鉱山保安臨時措置法ができて、保安の不良な炭鉱あるいはどうも改善の見込みがないというようなところは、保安整理の交付金をやって山をつぶすことになりましたね。この三つについて、三十九年度末までにどの程度の山がつぶれることになったのか、それをまずざっと、トン数だけでけっこうですから御説明を願いたい。
  41. 井上亮

    ○井上政府委員 ただいま御質問の、合理化事業団が終閉山いたしました山を買収したり、あるいは交付金を交付する制度があるわけでございますが、制度的に申し上げますれば両方あるわけでごさいますが、最近では御指摘のように、交付金の交付が主体になっております。買収関係は、昭和三十一年から三十八年まで続いております。この間、全体を合計いたしますと六百三十一万一千トンの買収、買い上げをいたしました。さらに、石炭鉱山整理促進交付金の交付は、ただいま御指摘のように昭和三十七年度から——三十七年度は買収と並行して実施されておりますが、三十七年度から実施いたしたわけでございます。三十七年度が二百六十七万トン、三十八年度が三百九十八万トン、それから三十九年度は、ただいま実施中でございますが、大体ずれ込み等全部を入れまして四百五十一万トン程度になる見込みでございます。この促進交付金の合計と、先ほど申しましたような買収の総合計六百三十一万トン足しましたものが、今日まで終閉山の山を処理したトン数でございます。
  42. 川原英之

    川原政府委員 臨時措置法によります保安不良炭鉱に対します廃止関係の御指摘でございますが、昭和三十六年度は十炭鉱、約二十万一千トン、昭和三十七年度三十九炭鉱、約五十二万九千トン、三十八年度十四炭鉱、約三十万トン、三十九年度につきましては十二月末現在の見込みでは九炭鉱、約二十二万七千トン、全部合わせますと七十二炭鉱、百二十六万四千トンという数字を持っております。
  43. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、いまのを総計してみますと、約千八百七十三万トンくらいになるわけですね。そこでこれだけの、千八百万トン程度の山をつぶすことになったわけですが、合理化事業団は近代化、合理化の資金を貸し付けておりますね。三十五年の秋ごろから始まった貸し付け総額は一体幾ら程度ありますか。
  44. 井上亮

    ○井上政府委員 概略今日まで百三十億程度になろうかと思います。
  45. 滝井義高

    ○滝井委員 次は、山をつぶしたときにやる整備資金ですね。つぶすために貸す整備資金は二つありますね。市中銀行から金を借る場合と、合理化事業団自身が整備資金を貸す場合と両方ありますね。事業団分とそれから市中銀行から借る場合の保証をするのと、この両建てをちょっと御説明を願いたい。
  46. 井上亮

    ○井上政府委員 整備資金の融資につきましては、今日まで合理化事業団から概略約二百八十億程度の融資をいたしております。  なお、この整備資金の調達につきましては、本来ならば、これは運転資金でございますので、市中銀行から融資を受けるのがたてまえでございますが、御承知のように炭鉱の最近の状況からして、そのほとんど大部分はただいま申しました整備資金から融資いたしておるわけでございます。ただこの政府の整備資金だけではなかなか十分でございませんので、やはり本来の市中からの融資も大いにすすめておるわけでございまして、ただ借りるということだけではなかなかできませんので、御承知のように、合理化事業団に融資保証制度を設けまして、それによって、事業団が保証するという形をとって市中銀行からやっておるわけでございますが、この運用は、現在政府から大体五億くらいの出資をいたしておりまして、それの十二倍程度の倍率で保証を行なっておるというのが現状でございます。
  47. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、五億の出資ですと、六十億程度の保証ですね。
  48. 井上亮

    ○井上政府委員 そのとおりでございます。
  49. 滝井義高

    ○滝井委員 次は、国鉄の運賃の延納債務の保証業務です。これは三十七年六月ごろから開始しておるのですが、この関係は現在どの程度の保証を中小炭鉱の運賃負担を軽減するためにやっておるのですか。
  50. 井上亮

    ○井上政府委員 運賃の延納につきましては、これはたしか三十七年度だったと思いますが、国鉄の運賃を値上げするに際しまして、大手炭鉱につきましては大手の連帯保証ということで処理いたしました。中小炭鉱につきましては、連帯保証ができないというような実態から、合理化事業団が保証するという体制をとっておりまして、ですから、大体中小炭鉱の出炭量の運賃の総額の——運賃の値上げ分がたしか一五%程度だったと思いますので、その半額につきまして事業団が全部保証するということでございます。
  51. 滝井義高

    ○滝井委員 その額は幾らですか。
  52. 井上亮

    ○井上政府委員 詳細な資料につきましては、後刻提出させていただきます。
  53. 滝井義高

    ○滝井委員 その運賃の問題でちょっとお尋ねしたいのは、これはたいした額ではないと思うのです。二、三億くらいだと思うのですが、この取り扱いというのは、いまは保証はしていないのでしょう。
  54. 井上亮

    ○井上政府委員 現在はいたしておりません。現在は運賃の値上げをこの前の値上げ分につきまして一〇〇%上げたわけでありますから、いたしておりません。
  55. 滝井義高

    ○滝井委員 それはいつからいつまでのをやったのですか。そうしてその運賃分の支払いは、一体どういうことになっておるのか、いつから返すことになるのか、ここらあたりがどうも私たち全然はっきりわからないのです。
  56. 井上亮

    ○井上政府委員 保証いたしましたのは三十六年度から四十一年度まで延納ということで、その間の賃資を保証しておるということでございます。
  57. 滝井義高

    ○滝井委員 何か聞くところによりますと、最近閣議でこれは変わっておりはしないですか。それをずっとまた延ばしておりはしないですか。
  58. 井上亮

    ○井上政府委員 たしか昨年だったと思いますが延ばしまして、四十一年度まで延納する。四十二年度から現実にいままで延納していただきましたものを支払うということにきまったように聞いております。
  59. 滝井義高

    ○滝井委員 ちょっといまの説明、よくわからないのですが、三十六年から、運賃の保証する期間というのは四十一年まで保証したのですか。そうじゃないでしょう。非常に短い期間じゃなかったかと思うのですがね、炭価に繰り入れられておるのですから。
  60. 井上亮

    ○井上政府委員 当初の決定につきましては、三十八年度までということになっておりましたのを、四十一年度まで延ばしまして、四十二年度から支払うということに変わったわけでございます。
  61. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると四十二年から中小炭鉱は、合理化事業団から保証された、金額ははっきりわからぬのですが、三億かそこらくらいじゃないかと思うが、私もよくわからないのだけれども、その金を四十二年から中小炭鉱は合理化事業団に返還することになるわけですね。
  62. 井上亮

    ○井上政府委員 合理化事業団に返還するのではございませんで、合理化事業団は中小炭鉱が国鉄に支払いができなかった場合に、その保証の責めに任ずるということでございまして、支払うのは国鉄に対してでございます。
  63. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、三十六年から四十一年まで延納をして、まだこれは進行中ですね。その間にいま言ったように、千八百万トンの山がとにかくずっとつぶれてきているわけですね。つぶれたものの運賃の保証分というのは、合理化事業団が払わなければならぬことになるわけですね。その分が一体幾らあるかということです。きょうは少し合理化事業団の内部経理を洗いたいので質問をしておるわけです。  そこで、いま国鉄が一番先に出てきたから、国鉄を一番先に尋ねることになるのですが、わからなければあとでいいのですけれども、実はいまここで私は質問の形で全貌を明らかにしておきたいのです。政務次官にも聞いてもらいたいし、わかっておればどの程度になるのか……。
  64. 井上亮

    ○井上政府委員 詳細につきましてはこの延納関係の資料を後刻提出し、御説明をさしていただきたいと思っておりますが、いまのところまだそうたいしたトラブルは起こっておりません。
  65. 滝井義高

    ○滝井委員 あとでその資料を一ぺん出していただきたいと思うのです。  それからもう一つ。合理化事業団が雇用促進事業団に交付金を三十四年くらいから出しているのです。これは炭鉱離職者の援護措置として、総額どの程度出しておりますか。
  66. 井上亮

    ○井上政府委員 非常に詳細な御質問でございますので、不正確なお答えをしては申しわけないと思いまして、合理化事業団関係全体につきましてのそういった詳細な経理関係の資料を、単に延納関係だけでなしに、あわせて提出さしていただきたいと思います。  ただ一言申し上げておきますと、ただいまの御質問につきまして、合理化事業団から雇用促進事業団に対しましては、石炭関係の援護業務に必要な資金の大体一割程度は、合理化事業団のほうから出資するというようなたてまえで現在実施いたしております。
  67. 滝井義高

    ○滝井委員 その雇用促進事業団への交付金として出した額は、全体の一割程度を出すことになったそうですが、その額はあとで資料として出してもらいたい。  それからもう一つ。最近になってから合理化事業団からつぶれそうな山に再建資金というのを出しますね。この額はどの程度出していますか。
  68. 井上亮

    ○井上政府委員 再建資金はいままでに出しましたのは一件だけでございまして、昨年のたしか八月ごろに貝島炭鉱経営的に行き詰まりまして、貝島炭鉱につきましては石炭鉱業審議会の経理審査会で検討を加えまして、再建計画を立てたわけでございます。その際一応六億出しております。これだけでございます。
  69. 滝井義高

    ○滝井委員 これであと詳細なものを出してもらうとして、近代化資金が約百三十億、整備資金が二百八十億程度、それから市中銀行に対する、整備資金の事業団の保証分が六十億程度、国鉄はわからぬ、再建資金六億、いま言ったものだけでも四百七、八十億、約五百億程度くらいになるのじゃないかと思うのですが、そうすると、これと前の週に私が御質問を申し上げた、利子補給分に関連をする事業団二百七十二億円との関係、この関係は、一体二百七十二億円というのは、いまのうちのどういうところが二百七十二億円に該当することになるのかということです。
  70. 井上亮

    ○井上政府委員 二百七十二億円と前回申しましたのは、合理化事業団からの整備資金関係でございます。整備資金関係と、それから合理化資金ですね、近代化資金でございます。
  71. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと結局二百八十億の整備資金の中で、優秀な炭鉱分についてはやらないことになるので、優秀でなければ三分ないし六分五厘を全額見てくれることになるわけだから、この中からと、それからいまの近代化資金百三十億の中からと、両方の分で選択をすると二百七十二億円程度になる、こういうことですか。
  72. 井上亮

    ○井上政府委員 はなはだ申しわけないのですが、ただいまの答弁間違えました。整備資金だけでございます。近代化資金は無利子でございますから、保証分の対象になりません。私勘違いをいたしまして申しわけございません。
  73. 滝井義高

    ○滝井委員 近代化資金のほうはそうですね。無利子だから必要ないわけですな。そうすると二百八十億なら大体数字が合うようです。  そこで私が言いたいのは、問題になるあとの国鉄その他のものが払わなかった、そうするとかわりに事業団が国鉄その他に、中小炭鉱が払わなければ事業団が肩がわりをして払わなければならぬ。それから市中銀行から借りておる整備資金六十億についても問題が出てくるわけですね。もう少しその中を、一体市中銀行から借りている炭鉱がどういう炭鉱で、そしてそのうち払えるものがどのくらいあるかということが相当問題になってくるわけです。その場合に私が問題にしたいのは、保証したものは最終的には事業団が払わなければならぬことになるわけです。ところが利子補給は政府関係機関だけしかしないということになって、開発銀行と合理化事業団とそれから中小企業金融公庫の三つになっておったわけです。そうしますと、事業団が保証をしておって保証かぶりをしたものは、最終的に事業団が払わなければならぬことになるわけで、事業団の債務になるわけですね。この場合に、利子補給の対象にそれがなるのかどうかということです。市中銀行にやはり事業団が払わなければならぬことは確実、そうすると非常に高い利子を、おそらく一割か一割二分くらいで借りておるかもしれません。これはこの前ここまで詰めなかったのですけれども、全く単純にわれわれは三つの機関だけだという割り切り方をしておったのだけれども、だんだん私調べてみますと、事業団がこういうあと始末をしなければならぬ羽目になってくるわけです。そうするとそれを今度は国が、事業団おまえがやれ、そんなものは利子補給の対象にしないということになると、事業団はどこからかその金を捻出しなければならぬという問題が出てくるわけです。私のきょうの質問の目的は、合理化事業団というものは非常に経理が窮屈で、仕事が円転滑脱に行なわれないということです。うまくころばないということです。それは非常に経理が窮屈に締め上げられておるところに、事業団の非能率性があらわれている。したがって、いまいったような、整備資金を炭鉱が市中銀行から借りて、そのあと始末を、利子補給を国がしてくれずに、事業団に自分でやらせるということになると、これはたいへんなことになるのだということです。この点をひとつ明快にしておいていただきたい。
  74. 井上亮

    ○井上政府委員 事業団が石炭企業に対しまして整備資金の貸し出しについて保証する、ところが炭鉱企業が終閉山等あるいは会社がつぶれるということのために、事業団が保証を実際に実施しなければならぬ。そうすると事業団は穴があくということでございますが、現在のところさほどの問題はまだ起こっておりませんけれども、そういった事態が起こりますようなおそれがあります場合には、やはり保証基金を増額する以外にないのではないかというふうに考えております。現在では現在の保証基金の運用程度で一応運用できるということでやっておりますが、そういう事態になればそういったことで対処していく以外にないだろうと思います。  さらに利子補給の問題でございますが、利子補給につきましては、あくまでも基本的な考え方といたしまして、開発銀行の融資残高、合理化事業団の整備資金、それから中小企業金融公庫の残高、これを対象にいたしておりますので、事業団の赤字に対してまで配慮するつもりはございません。そうじゃなくて、先ほど申しましたように、そういった事態には保証基金をふやすという問題ではないかと思っております。
  75. 滝井義高

    ○滝井委員 保証基金をふやしてもらっても、事業団が保証しているのですから、銀行には利子は払わなければならぬのです。だから、たとえば石炭業者が六十億まるまる投げ出してしまった、その足が全部合理化事業団に来てしまったということになれば、合理化事業団はその六十億に見合う分だけの利子をつけて返さなければならぬことになるでしょう。そうすると、その利子分についてはおたくのほうで保証基金の中に入れてくれればいいのです。入れてくれないということになれば、事業団はどこからかその金を捻出しなければならぬ。私、あとからいろいろなものを出してくるのですが、一体事業団はどこからそういう金を出すかということです。事業団の経理の中に何か出す方法がありますか。
  76. 井上亮

    ○井上政府委員 いずれにいたしましても、そういった場合には利子補給の対象にするというのは適当でない、利子補給はあくまでも石炭企業が先ほど申しましたような政府関係の金融機関からいままで借りましたその残高に対して利子補給を行なう、そういったたてまえにいたしておりますので、事業団にそういったことで穴があきます場合には、予算措置をもって埋めるという以外になかろうかと思います。
  77. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、もう一歩前にさかのぼってみますと、事業団が整備資金を貸し付ける場合と、市中銀行から借りたものの保証をする場合との区別は、一体どういう基準でやるのかということです。滝井という鉱山が、ある一部は整備資金を事業団から借りている、ある一部は市中銀行から借りているという場合です。これは市中銀行よりか合理化事業団から借りたほうがいいわけですよ。これはもう高い利子の市中銀行から借りるよりか、合理化事業団のほうは国の機関ですからいいわけですよ。あえて条件のいい合理化事業団から借りずに、保証をしてもらって市中銀行から借るというのは、一定のワクかなにかがあってやむを得ずそうなっているのじゃないかと思うのです。そうしますと、最後になったら炭鉱業者は、ごらんのとおり投げ出すのは得意ですよ。なんでもかんでも投げ出してしまって手をあげれば、それでおしまいになるのだから。そうすると、あとのしりぬぐいは全部合理化事業団がやることになれば、結局は整備資金を貸しておったと同じことになるのです。その場合に、井上さんが言うように、それは保証基金でやるのだ、しかし利子補給はやらぬということになれば、合理化事業団は利子に見合う金等はどこからか捻出してこなければならぬことになるわけです。だから、その合理化事業団はどういう形でそういう金を捻出する方法がありますかということをお聞きしているのです。その方法があれば、私はそれでもいいのです。おそらくいまないのでしょう。
  78. 井上亮

    ○井上政府委員 しいてあると申し上げれば、余裕金の運用ということになりましょうけれども、これも大蔵当局の了解を得て使うことになろうと思いますが、しかし余裕金を使う場合にはやはり事業の運営に支障を来たしますので、基金を増大するとか、何らかの予算的な措置を講ぜざるを得ないというふうに考えております。
  79. 滝井義高

    ○滝井委員 ここらはやはり大蔵大臣に来てもらってちょっと論議をしなければならぬところですね。宿題に残しておきます。  そこで、またもとへ返るわけですが、合理化事業団が千八百万トンの山を買い上げるためには、これは当然財源が必要なのですね。この千八百万トンの山を買い上げるための事業団の財源措置をひとつ御説明願いたいと思います。
  80. 井上亮

    ○井上政府委員 財源の意味がちょっとわからないのですが、これは滝井先生よく御存じのとおり、毎年、買収をいたしました当時には買収予算、それから新方式で交付金を交付するという場合には交付金についての予算というようなことで予算をとりまして、御承知のように年々合理化計画をつくりまして、その計画に従って買上げておるということでござます。
  81. 滝井義高

    ○滝井委員 千八百万トンのものをいままで買い上げてきたのには、この財源、その買い上げる金は一体どこからどういう形で出てきているのかということを聞いているわけです。一つは納付金があるわけですね。そのことを尋ねておるわけです。その納付金が一体幾らで、新方式になってから国が金を出すようになったですね、大体幾ら出したのかという累計をちょっと知りたいのです。財源というのはそういう実態を知りたいわけです。
  82. 井上亮

    ○井上政府委員 この制度ができまして以来もう十年の年月をけみしておりますので、そういった当初からの概況につきましては後刻資料で提出さしていただきたいと思いますが、最近の仕組みを申し上げますと、たしか三十八年度からだったと思いますが、三十八年度からは国が八割を予算で支出いたします。それから二割相当額は石炭業者が拠出するという形をとっております。その以前におきましては、三十七年度までは国がたしか四割程度で、業者が六割程度出しておったかと思います。しかしいまは逆に国が八割支出しております。  納付金としましては、御承知のように、トン当たり二十円従来取っておったわけです。このトン当たり二十円の納付金では足りませんので、今回の合理化法の改正におきましてはトン当たり三十円の納付金に改めたいというふうに考えておるわけでございます。
  83. 滝井義高

    ○滝井委員 三十七年までは国が四〇%で、業者が六〇%分を納付金で納めているわけですね。三十八年度以降における、国が八割の予算を出した分と、業者の二〇%分、その総計が千八百万トンにどう見合ったか。それから保安のほうは納付金は関係ないわけですね。
  84. 川原英之

    川原政府委員 保安のほうは納付金は関係ございません。
  85. 滝井義高

    ○滝井委員 したがって保安の分は国が出しているわけですから、その分を年度別にして累計を一ぺん出してもらいたいと思うのです。  そこで、それならば一番問題は、国の出すのはこれは順当に出せるわけだが、納付金の収納状態というものは一体どういう形になっておるのかということです。あと資料で詳しいことを出してもらって、いまの傾向だけを言ってください。
  86. 井上亮

    ○井上政府委員 納付金につきましては、御指摘のように大手炭鉱におきましては順調でございますが、中小炭鉱におきましては最近納付金の納付状況が相当悪くなってきております。中小炭鉱でも百社程度は大体コンスタントに納めていると思いますが、あとの半分の百社ぐらいについては納付金が、全部が悪いわけじゃありませんが、なかなか支出が苦しいような現状になってきております。
  87. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、大手は順調にいっておる、中小は納付率が結局五、六〇%だということになるわけですね。納付金を納めていないと新方式では買い上げてくれないわけです。これが一つやはり買い上げ上におけるネックの問題点になってきておるわけです。手を上げて、もはや山を投げ出そうという人が、トン当たり二十円ずつの納付金を納めていくということについて、納めるだけの現金があれば山を続けていくが、ないからこそ私たちは手を上げたんです、こういう問題が至るところに起こってきているわけですね。現在、私はもう山をつぶしますといって事務的に整理促進交付金をいただく対象としての申請をした、ところが納めるべき納付金を納めていないので、おまえのところはだめだというて事務的に処理がおくれておる山が相当多いと思うのですよ。こういう山が一体どの程度あるのかということです。  それから先日私は、私は身売りをしますという申し出をしておって、やめたといって撤回をしておるのが三百万トンちょっとあることを指摘をしました。こういうように、やはり納付金を納め得ないからもうしばらく待とうというのが出てくるわけです。この前その内容を具体的にひとつ調べてくれということでお尋ねをしておったのですが、それがそのままになっておると思うので、そういうものの関係をもう少し明らかにしてもらいたいと思います。
  88. 井上亮

    ○井上政府委員 先ほどの答弁に関連いたすわけでございますが、納付金の納付状況は大手は大体問題はない、中小炭鉱のうち半分ぐらいもまず問題ない、あとの半分が苦しいというお話を申し上げましたのですが、苦しいけれども全部が納めていないわけではございませんで、ただ中に納付金を納めていない企業があるということですから、滝井先生の御質問の中で中小炭鉱の五割程度納めてないとおっしゃいましたが、私の答え方がまずかったわけでございまして、そんなに納付状況が悪いわけではございません。ございませんけれども、相当苦しい状態になってきているということを申し上げました。そういうことで御了解いただきたいと思います。
  89. 滝井義高

    ○滝井委員 あとでその納付金の大手、中小の納付状況をひとつお知らせ願いたいと思います。いまのあなたの答弁を割り引きしてみても、おそらく中小は七、八〇%くらいじゃないかと思います。百はよくて、百は苦しいというのだから。苦しかったらいまはなかなか金は納め得ませんよ。私はどうしてその質問をするかというと、さいぜん局長が御指摘になったように、今度二十円を三十円に上げるわけですから、二十円で納め得なかったものは三十円になったらなお苦しくなって、その比率は増加をするわけです。しかも合理化を促進して山がだんだんつぶれていくというのは、これは農業でいえば零細農、石炭山でいえば中小の山なんです。ところが、身売りをしなければならぬけれども納付金を納めていないからだめだ、こういう歯どめがかかっているわけです。だから、そこに自己矛盾が出てきているわけです。その自己矛盾を解決していくためにはこの実態を明らかにして、その上でやはりそこに政治的な対策というものをわれわれとしては考えなければならぬ。そこをもう少し明らかにしてもらいたいと思うのです。
  90. 井上亮

    ○井上政府委員 納付金の納付状況につきましては先ほど言ったような状況でございますが、納付金を納めない企業が中にある。これはいろいろ実態を調べてみますと、経理上の関係で納め得ないという人も中にはあると思いますけれども、私は大多数の方が納め得ると思います。これはやはりモラルの問題があるのじゃないか、これは相当激しい言い方かもしれませんけれども、そういうような感じがいたしております。そういう実例を、いざ閉山にあたって、いろいろ陳情を労使から受けるわけでございますが、その場合にそういう感じを深くするケースが相当ございますので、したがって単に経理上どうしても納められないから納めないということだけでもないというふうに認識いたしております。
  91. 滝井義高

    ○滝井委員 まあモラルの問題はともかくとして、現実としてそういう実態があって身売りの順当にいかない隘路を形成しておることは事実ですから、もう少しそれは実態を見てもう一ぺん議論をさしていただきたいと思います。  零時二十分までだそうですから、事業団の問題点だけ先に出しておきたいと思います。  それからこの交付金制度、新方式ができましてから鉱害の処理状況というものは一体順当に進んでおるのかどうか、いままでよりかだんだん鉱害の処理が困難になっておりはしないか、この判断だけをまず簡単に説明願っておきたいと思います。
  92. 井上亮

    ○井上政府委員 お答えいたします。御指摘のように新方式と旧方式では私は新方式のほうがスムーズにいきやすいというふうに考えております。なぜ旧方式を、買収制度を新方式にかえたかと申しますと、これは滝井先生よく御承知のことでございますが、旧方式によりますと、鉱業権を事業団が買うわけでございます。したがいまして事業団が鉱業権者になるということでありまして、そのために合理化事業団としては鉱害処理についての、鉱害の額あるいは処理の状況というようなことについて見きわめをつけてから買収したいという気分になるわけでございまして、そのために旧方式時代は閉山山の関係の鉱害被害者の方々に御迷惑をかけた事例が多々あったのでございますが、そういった事例を考えまして新方式制度に改めたわけでございます。新方式は御承知のように、交付金の交付でございますから、鉱業権を抹消してくれさえすれば交付金を交付するということでございますので、事業団は鉱業権者にならぬわけでございます。先ほど申しましたような、旧方式時代の鉱害処理についてのちゅうちょはそれだけ減るわけでございますので、私は一般的傾向としては鉱山処理については前よりも改善されておると考えております。
  93. 滝井義高

    ○滝井委員 合理化事業団の立場からいうと、いまのとおりだと思うのです。したがって合理化事業団がそれだけ責任をのがれてやらないので、鉱業権者はなおのがれるわけです。したがって、みんな責任をのがれて、責任は一体どこにきたか、しわはどこにおおいかぶさってきたかというと、農民とか中小企業とかいう被害者におぶさってきちゃったわけです。こういう実態になってきたわけです。だから最終的に鉱害の処理というものはなかなか終わらないという形が出てきておるわけです。事業団ベースでは終わってしまう。それは整理促進交付金の範囲内で責任をのがれておるのですから、それで終わった。しかしたんぼの中に行ってみると、あるいは傾いた家の中に入ってみると鉱害は済んでいない、こういう形が一つ出てきたわけです。ここで私がいまひとつ注意をしたいのは、今度の法律の改正でもう一つ問題が出てきたのです。それは非常にいいことだったんだけれども、鉱業権者の負担分をずっと軽くしてやったわけです。鉱業権者は約三割程度軽くしました。軽くしたから、軽くした分だけ自分の責任はなくなったという、こういう考え方になったわけです。そこでわれわれの賠償責任というものは、いままでよりも三割軽くなっただけの金を払えば、それでわれわれは一切の責任をのがれたんだという形で出てきたわけです。このことは非常に重大なポイントだと私は思うんですよ。いつか私は鉱業法の審議のときにこういう質問をしたのです。一体鉱業権者の責任というのは、復旧費を全部出してしまったら鉱業権者の責任はのがれるのですか、それとも鉱業権者は、鉱業権者負担分というものが法律的にある、その負担分だけの金を出したら鉱業権者の責任はのがれるのですか、どっちですかと言ったら、あなたの先輩は何と答えたかというと、鉱業権者の責任は復旧費に近うございますと言ったから、それならば負担金の関係は一体どうなるのだ、いや鉱業権者の責任は負担金にも近うございます、それでは、復旧費にも近いし負担金にも近いというならばどういうものだ、いやいや、それはとにかくどちらにも近いものが鉱業権者の責任でございます、こういうことで終わっているのです。それだから私はそれは納得しないと言った。なぜならば、予定賠償というものがあるわけです。そうすると、ずっと昔に予定賠償をやった、ところがその賠償が著しく高いとか低いというときには増減することができることになっているわけです。そもそも鉱業権者の責任というものの範囲が明確でなければ、予定賠償というものが行ない得ないわけです。鉱業法に予定賠償というものがあるわけですから、そういう点が明らかでない。ところが今度の法律の改正で鉱業権者の負担分はますます軽くなってしまった。そこで鉱業権者は交付金をもらえば全部打ち切りでやればいい。そうすると鉱業権者の負担責任は非常に軽くなって、いわゆる鉱業権者負担分で解決してしまうということになる。こういうことはいままでざらに行なわれておったのです。おれは金がない、だから君の家は傾いておるけれども、鉱業権者の負担分は百円だけ君にやればいいのだ、家は三百円なければ復旧できないけれども、三分の一の百円でおれの負担分はこれで終わりだ、これが百円が七十円とか六十円とかに今度下がるのですから、それだけやれば終わりだ、こういう形になってしまうわけです。そうしますと、哀れなのは祖先伝来の美田、家屋を荒廃に帰せられた人たちですよ。合理化事業団は責任をのがれた、鉱業権者の負担は軽くなったということになると、残るのは、この被害者は金をどこから取るかというとどこもないですよ。これがいまの悩みです。その鉱業権者の負担が軽くなったものを一体どこが払ったかというと、国と県が払ったでしょう。県の負担がふえたんです。県はそんなもの出せません。それをやっている県は被害者ですよ。被害者によけい金を払わせた。それができない分は、全部県が金を出せなければ、予算の関係で先に延ばせば延ばすほど、みんな農民や中小企業者が、祖先伝来の美田を荒らされ、家屋を荒らされて苦しむだけですよ。こういう形になってきたんです。そこでもう少しこれはしりぬぐいをはっきりしてもらわなければいかぬ。鉱害の最終責任というのは一体だれが持つのか、これは無資力になれば国が持ちますと言いますけれども、無資力と有資力とは格段の差がある。これを少なくとも無資力と同じように無資力をあげて国が責任を持つというなら、これは一つの方法でしょう。そこでこれは三十七年にわれわれは反対したのだが、石炭鉱業の合理化法を改正して、合理化事業団に連帯責任がないという形にしたところに問題があるわけです。だからこれはもう一ぺん合理化事業団に連帯責任がある形にしなければいけない。そうして有資力と同じ形にして国がやる。それがためには、合理化事業団にはもっと国が潤沢に金を入れる方法を講じなければできないですよ。私はこの前こういう主張をしたのです。たとえば私のところにたぎりというのがある。この農地を復旧しなければならない。ところが五つも六つも炭鉱があったけれども、全部つぶれて炭鉱はどこにもない。あそこには無資力のものがある 無資力のものをそれならば有資力のものが出てきて全部その復旧をやるかというと、絶対に金をやることはない。これはみんな逃げてしまう。だれもない。あるものは再び湿田化したたんぽがあるだけです。鉱害復旧をしたそのたんぼが湿田化したのですから、このたんぼを上げるとすればばく大な金がかかる。たんぼを上げ、家を上げなければならない。ここまでは無資力で何とかやりますけれども、しかしそれならば農道とか公共の建物とか道路というものがあり、市町村道というものがある。これをだれがやるか。これは市町村がやらなければならぬことになる。そうすると一尺も二尺も、一メートルも二メートルもたんぼを上げる場合に、この公共の建物なり公共の道路を今度は上げるときに、市町村が自分の持ち分を出して、国の持ち分と合わせて上げるということになると、市町村がばく大な何億という負担をしなければならぬことになる。とてもそれはできない。できないから、市町村がやらなければ道路が通れなくなってしまう。こういう場合に、合理化事業団が全部買い上げておるのですから、その中には旧方式のものと新方式のものとまじっておる。合理化事業団には連帯責任があるからその分の金を出しなさいと言っても、出す金がない。こういう複雑な問題が至るところに起こってきておるわけです。過渡的な段階だから旧方式と新方式、あるいは有資力と無資力が交錯しておるわけです。しかも法律は絶えず変わっており、全部が過渡的な段階ですよ。そういうときにこういう紛争を解決するのに、合理化事業団が無手勝流でやっても解決はできない。そこでこういう紛争の調整をする金、不時の金を合理化事業団の予算の中に組んでおかなければならないのに、何もないのです。中央の合理化事業団にもお百度を踏み、福岡の合理化事業団にもお百度を踏んだが、全部だめです。話を延ばすばかりです。それが終わっても、あとに浅所陥没とか幾らでも問題が起こってきます。起こってまいりましても、合理化事業団には解決する金がないので、すらすらいかない。もとの鉱業権者に言ってくれ、もとの鉱業権者がどうしてもだめだと言ったらそのときに何とかいたしましょう、こういうことなんですが、なかなかもとの鉱業権者は、おれは知らないから事業団に行けというようなことは言わない。そんなことを言うたら、今度は被害者が事業団に押しかける。そうして事業団から金をとると、事業団はもとの鉱業権者に求償権を発動してとるものですから裁判になる、こういう形になるので、これは何らかの形でどこかで紛争を解決しなければいけない。下の炭を掘ったことは明らかなんですから、それをいつまでも解決せずに、被害者に長い間苦難の道を歩かせるということはいけないと思います。合理化事業団にもそういう紛争の問題を解決する予算を組んで、あと始末というものをだれかがやらなければならない。国もあいまいな態度ですよ。こういう問題について有資力と無資力の差があるから、いまや無資力の場合はとにかくとして、有資力の場合はなお鉱業権者に肩がわりをいたさせようとしておりますが、そういうものの考え方は間違っておると思うのです。だからここらあたりで、合理化事業団の石炭鉱業に貸しておる金にさえ利子補給をしようという段階がきたならば、その前に苦しんでおる善良なる庶民、善良なる農民、中小企業に対する対策を国が責任を持ってやるのは当然だと思いますのに、それをやろうとしていない。これは事業団の性格論になるわけでありますが、ここらで私は事業団に連帯責任を持たせるべきだと思います。私たちは今度の法案の改正については、党にもはかってそれを修正したいし、もとに戻さなければいけないと思う。そうしないと、みんな逃げてしまう。そうして哀れな目にあうのは中小企業、農民、労働者だけだということでは納得がいかない。みんな逃げてしまっているじゃないですか。北炭だって同じですよ。悲しい目にあっている。われわれは虫けらになりたいと組夫が言っておる。何で虫けらになりたいと思ったかというと、常用の鉱員が虫けらで、組夫はそれよりも下だというんですよ。だから、せめてうちのとうちゃんは虫けらになって死んでもらいたかったと言っておるんですよ。虫けら以下だというわけです。そういう形にしておいて、鉱業権者がのほほんとぜいたくをするということは許されないと思います。あるいは、どこかの観光事業をやるということは許されないと思います。その観光事業をやっておる金をまず全部出させなさいよ。石炭産業で粒々辛苦して蓄積した資本を、そういうところに投資してしまっておるでしょう。日本の資本主義はそうでしょう。筑豊炭田や北海道から積み上げたものでこのけんらんたる日本の資本主義ができておるのですから、それをもとの筑豊の美田に戻すためには、当然、石炭産業から取り上げることができなければ、やはり国がその分だけの責任を持ってもらわなければいけないと思いますよ。そういう意味で連帯責任を明らかにして、有資力と無資力の差をなくする、こういう法律上の措置を今度は絶対とってもらわなければいかぬ。これはもう最後なんですからね。店じまいになるのだからね。だからそういう点について、いまるる述べましたけれども、鉱害処理状況は合理化事業団にとっては非常に円滑にいっておるけれども、末端にいったらそれは停滞しておるということです。だから、この停滞を打破する道を今度のこの法律の改正で考えてもらわなければいかぬ。これはひとつ局長、あなたの見解をまず簡単に述べておいていただきたいと思います。
  94. 井上亮

    ○井上政府委員 ただいま滝井先生からるると鉱害の理論をお聞かせいただいたわけでございますが、鉱害の問題につきましては、いろいろ複雑な問題があることは御承知のとおりでございます。ただ、新方式と旧方式の問題につきましては、やはりまた、滝井先生は旧方式のほうがいいという御意見をお出しになったわけでございますが、その点につきましては、これはよく今後検討さしていただかなければならぬわけでございますが、私の私見を申し上げますれば、旧方式にいたしますと、かつて見られたように、二年たっても三年たっても閉山山に対して交付金が出ないというような事態になることを私どもおそれております。これは思い切ってやればいいじゃないかとおっしゃいますけれども、やはり国の機関が処理をいたしますときに、所定の資金を支出いたします場合には、鉱害の支出が一体どの程度かというような点を詳細に調べるというようなことも必要でございましょう。ところが、御承知のように、鉱害につきましては、そう一見してすぐわかる性質ではございません。関係者もございます。いろいろな関係もございます。そういった事情がありますから、これはやはり一つそういった面での問題が、今度は別の面で大きな障害が起こるのではないかということを感じております。  それからもう一つ、御指摘の、今度国の補助率を引き上げた。補助率の引き上げにつきましては、金額的には国が圧倒的に多いわけでございますが、従来の慣例に従いまして、県におきましてもやはり一定の割合に応じて、国の引き上げに応じて引き上げていただくということに相なるわけでございますが、この額は国とは比較にならぬくらい小さいわけでございますが、しかし県についても負担をおかけすることに相なるわけでございます。そういった補助率の引き上げを通じまして、鉱業権者の負担は減少する。鉱業権者の負担が減少すれば、鉱業権者はそれだけ鉱害復旧をしないという断定を滝井先生はしておられるわけでございますが、滝井先生は多年にわたって鉱害問題につきましては御苦労されておられますので、またそういったケースも私ども以上にお詳しいわけでございますから、それに対しておことばを返すつもりは毛頭ございません。毛頭ございませんが、しかし私どもの国の意図といたしましては、鉱業権者に対しまして補助率を引き上げるということは、単に鉱業権者の負担を軽減して経理関係を改善させるというだけの意図ではございません。そうではなくて、むしろ現在鉱害復旧が促進しない根本的な原因は、御承知のように、鉱害処理については三者協議方式をとっております。したがいまして、被害者がこれだけ復旧してもらいたいといっても、鉱業権者が納得しなければできませんし、鉱業権者がこれだけやろうといっても、被害者側と合意に達しなければそれは実施できないというような仕組みになっておりますので、私どもむしろ今回補助率の引き上げをいたしましたのは、鉱業権者が積極的に鉱害復旧をするようにというような行政指導を伴いまして、そういうふうにさしたいという意図から補助率の引き上げをいたしておるわけでございまして、滝井先生指摘のように、補助率は引き上げたけれども引き上げた分だけやらないだけだということになれば、今回の予算措置は政策に大きな支障を来たし、政策としては相反する結果になるわけでございますので、私どもは、そういうことにならないように、厳重に鉱業権者を指導してまいりたい。負担が減っただけ復旧を多くする、それから迅速にするというところにねらいを置いておりますので、その私どもの趣旨は御了承いただきたいというふうに考えております。
  95. 滝井義高

    ○滝井委員 鉱害の問題は、いずれ、臨鉱法の改正が出ておりますから、そこで詳しく論議しますが、一点だけちょっと聞いておきたいのは、そうすると、あなたは、私がちょっと指摘したのだが、あなたの前任者は、なかなか鉱業権者の鉱害賠償責任の範囲については不明確だったのです。これは復旧費というものが鉱業権者の責任になるのですか、それとも、今度大幅に国庫補助が増加をして、鉱業権者の負担は非常に軽くなるわけですが、その軽くなったものだけ金を出せばそれで終わることになるのですか、どっちですか。
  96. 井上亮

    ○井上政府委員 やはり何と申しましても、鉱害賠償の責任は鉱業権者にございます。これには間違いないわけでございます。ただ、御承知のように、鉱害賠償につきましては、有資力者、無資力者というような範疇がございますので、無資力につきましては、国が責任を持って復旧しようという制度になっておるわけでございますが、鉱業権者が資力があるという場合にはもちろん復旧事業団を通じて復旧計画にのせてやる場合も多かろうと思いますが、復旧事業団にのせない場合には、鉱業権者が責任を持って被害者と話し合って、金銭賠償その他の措置で善処する。いずれにしましても、鉱害賠償の基本的な責任関係はまず鉱業権者にあるというふうに考えております。  それで、補助率の問題が出ましたが、補助率が引き上げられまして鉱業権者の負担は軽くなっても、やはり負担が軽くなればなるだけ、残存鉱害の処理をする資力、能力ができるわけでございますから、進んで鉱害処理を、何といいますか、従来以上にやっていく努力をしなければいかぬというふうに考えております。
  97. 滝井義高

    ○滝井委員 そういう抽象論はわかるのです。鉱業権者の責任の範囲というものは、復旧費が責任の限界ですか、それとも負担金だけでいいですか、こういうことを言っているのです。御存じのとおり、新方式では、債権者が三割とって、未払い賃金、退職金等の労働者の取り分が二割あったら、あとの五割が鉱害の復旧費です、こうなっておる。そこで、私はそれ以上金を持ちません、それだけ出したらといって逃げたら、それでいかんともしがたいわけです。それで、合理化事業団も、私のほうは、預かっておる金は五割だ、一億だったら五千万円出せばそれで終わりです。たまたまぼくがここで主張して、佐藤さんが通産大臣のときに、債権者には、鉱害が非常に多いときには、出さなくてもいいのだと言いました。だから、それは一億円だとすれば、三千万円がこっちに回る可能性があるというだけです。それでも、鉱害が一億も二億もあったというときには、そんなもので足りゃしない。そうすると、ぎりぎりその八千万円の限度で泣き寝入りしなければならぬということになるわけです。あとは取ろうといったって取れないわけですね。こういうのが、みんなあきらめていますよ。それでみんな判をついてやっておるわけです。判をついてやらないと、おまえたち判をつかなければもらえぬぞと言われるおそれがあるのです。苦しむのはだれが苦しむかといえば、自分です。家は傾き、雨は漏る、田は植えられなくて、小さな田を何段階にも田を切ってしなければ、でこぼこのあるたんぽには水が渡らないのです。田植えで苦しむのは自分自身だ。だからこれは、いつまでも金を置いておったって、利子がつくわけじゃないし、もらわなければ損だというて、一人が二百万円もらわなければならぬものを五十万円、せいぜい百万くらいで泣き寝入りしてしまう、こういうことです。そこで、鉱業権者の責任ということがはっきりしないのです。そういうときの論争だって、一体復旧費でもらうべきか、それとも鉱業権者が家屋の復旧なり農地の復旧なりやるときの負担金でもらうべきかということが、いつも議論になるわけです。鉱業権者は負担金しか出さぬでしょう。それ以上は国が負担するのであって、国はそのくらいしか出すといわないんだから、こういって逃げたらいかんともしがたいのです。だから定説がない。力関係にまかしておるというばかなことはないのです。国が話し合って、復旧費だったら復旧費とおきめくださいよ。復旧費ときまれば、われわれは復旧費をもらったら下がりますよ。公のものに見積もらせて、この家の復旧は二百万円かかるといえば、二百万円もらえばそれでいいんだが、それが出てこないんですよ。だから見地で混乱しているんです。だからこの点も今度は最後だから、きょうは答弁ができなければ、あなたのほうに私は政府の統一見解を求めますよ。そうして統一見解を出して、それを石炭協会等に通知をしてもらって、これでいくんだということにしてもらわないとたいへんです。いまのあなたのことばを聞くと、基本的には鉱業権者が責任があるということになれば、それをそっくりそのまま解釈しますと、それならば国の負担分もほんとうは鉱業権者が持たなければならぬのだ、だけれども便宜的、政策的に国が持ってやっておるだけだから、一切の責任は鉱業権者にあるんだ、それならそれで、そういうことを言ってくれてもいいですよ。そうすると、復旧費をもらえばいいことになるのですからね。そういう答弁をしなくて、あいまいもこたる答弁でこれはいままでみんな逃げてきているんです。そこでこれは佐藤総理が来たら追及しますから、統一見解をひとつ研究して、はっきりした責任の範囲を出してください。無過失賠償責任論とかなんとかいうような、わけのわからぬような、しろうとのわからぬようなものを出してきたってだめです。復旧費なら復旧費、負担なら負担、どっちでもいいです。国の補助金等を除いた負担金分だけであるというなら、それでもいいです。そうすればそれから先は、鉱業権者を攻めぬで、われわれは国を攻めていけばいいんだから、どこかわれわれが攻める目標を与えてくれないと、どこを攻めればいいのかわからぬようなことでは困るのです。事業団に行ったら事業団は逃げる。鉱業権者も逃げる、国も逃げるというようなことでは哀れなものですよ。そこら辺を明らかにしてもらいたい。これは統一見解を要求しておきます。  それでこれで終わりますが、確定をした鉱害については、合理化事業団は、山を買い上げた場合には積み立て金を留保します。それから未発生分あるいは不安定の分については、どのくらい取っていいかわからぬからめのこ算で保証金を取りますね。この積み立て金の額が一体幾らで、保証金の額が一体幾らになっておるか、これはいまわからなければ資料と一緒に出してもらって、わかれば説明してもらいたいと思います。
  98. 井上亮

    ○井上政府委員 お答えいたします。  最初に、鉱害の責任はどこにあるかという御質問に関連をいたしまして、復旧費の範囲内か、それとも国等の補助金を除いた鉱業権者の負担分か明確でないという御質問がありました。これにつきましては私ども、抽象論とおっしゃるかもしれませんけれども、あくまでも鉱害の責任は鉱業権者にある。ただそれがなぜ、滝井先生が先ほど来おっしゃいますような実態になっているかといいますと、これははなはだ私どもから見ますと遺憾な事態でもあるわけでございますが、私はその根本的な原因は、やはり炭鉱企業の経営の苦しさ、ここにあると思います。本来ならば炭鉱企業が鉱害を起こせば、当然鉱害復旧の責めに任じなければいかぬわけでございます。ただ国等におきましてもやはり鉱害復旧の公共的性格、こういう面からもちろん補助はいたしておりますけれども、しかしそれはあくまでも補助でありまして、やはり責任は鉱業権者にある、これがやはり誠実に鉱害復旧をしていかなければならぬ、あるいは賠償していかなければいかぬということであることには変わりはないというふうに考えております。遺憾ながら近年炭鉱経営が非常に悪化しているために、被害者の方々に御迷惑をかけているということであるというふうに考えております。ですから復旧費か負担分かとおっしゃいますけれども、それは復旧費を出せばそれで責めをまぬがれましょうし、あるいは負担分につきましても、これは当然被害者と合意の上の負担分でしょうから、合意の上の負担分を納めればそれで免責はされましょう。しかしながら、それだけではおそらく滝井先生は御納得されないんじゃないか、それは被害者の泣き寝入りだ、こういうふうに私はおっしゃるだろうと思いますので、やはり被害者を泣き寝入りさせないためには、鉱業権者に鉱害賠償の責任を感じさせ、かつそれを誠実に履行できるだけの企業経営にまともなゆとりを持たせるという施策が必要ではないかというふうに考えております。  それから第二点の、確定鉱害につきましては積み立て金、未発生分の保証金という御質問がありましたが、これにつきましては、その金額等につきましては資料で御報告申し上げたいというふうに考えております。
  99. 滝井義高

    ○滝井委員 いまの負担分で片づけようというときは、それは被害者と合意の上というけれども、形式的には合意の形になっておるけれども、これはあなたも御指摘になったように、無理に追い込まれて泣き寝入りの合意なんですよ。もうこれしか金がないんだ、おまえがここで判を押さなければ一文ももらえぬぞ、こういう形のものなんですよ。だから、しかたがないということなんだ。隣は有資力、隣は無資力という形では話にならぬわけですよ。だからこれは佐藤総理に来てもらったらもう少し詰めていきますけれども、やはりこういう点については、たとえば復旧費なら復旧費で責任を免れるなら免れるでいいですけれども、そこらあたりはもう少しはっきりしてもらわぬと、いまの段階でいまのようなあいまいもこな形では処置ないのですよ。片づかない問題です。政府の統一見解がはっきりすれば、それでみな押していけるわけです。だからもう少しそこらあたりをはっきりしてもらえば、足らぬ分は今度はいま言ったように、合理化事業団の経理の中から出すなら出すというような問題が出てくるわけです。私はいずれまたあとで具体的に鉱害の問題を詳細にやりますけれども、とりあえずきょうは石炭鉱業合理化法の運営をやる上の、いわば心棒の中身だけを簡単にお尋ねしました。今度はその中身がどういうぐあいに動くかの問題点については、なお資料をもう一回出してもらったら、その上で大蔵大臣等に来てもらって、佐藤総理の見解等も聞かしてもらいたいと思います。  なお合理化法、その他電力用炭代金精算株式会社法等も全然やっていませんから、さらに質問を続けさしてもらいます。きょうはとりあえずこれで終わります。
  100. 加藤高藏

    加藤委員長 午後は一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十九分休憩      ————◇—————    午後一時四十一分開議
  101. 加藤高藏

    加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  北炭夕張炭鉱爆発事故に関する問題と石炭鉱山保安問題について質疑に入るのでありますが、この際、北炭夕張炭鉱の事務所の火災について政府の説明を求めます。川原鉱山保安局長。
  102. 川原英之

    川原政府委員 午前中の会議におきまして岡田先生よりお尋ねのございました夕張鉱業所の火災につきまして、とりあえず現地と連絡をいたしましたところを御報告いたします。  発生日時は昭和四十年三月九日、十九時二十分ごろ。状況は、夕張鉱業所は一部二階建ての木造建築でございまして、いま申し上げました七時二十分ごろ、物置き小屋から出火いたしまして、北星産業、これは夕張鉱業所の第二会社でありまして、未亡人対策等の事業を行なっておる会社でございますが、これが隣接いたしております。この北星産業と食堂の一部を残しまして、二千四百八十平方メートルを焼失いたしたという報告であります。原因につきましては、目下道警本部で調査中でございます。  また鉱業所の関係書類は、大半は出火と同時に持ち出しておるという報告を受けております。なお今回の災害に関しましての証拠物件として札幌鉱山保安監督局で領置しております物件につきましては、これは鉱業所以外の別の場所に保管いたしてございますので、全然焼失をしておりません。したがって捜査、原因究明につきましては支障はないものと思います。      ————◇—————
  103. 加藤高藏

    加藤委員長 続いて石炭鉱山保安問題について、参考人として、北海道大学教授の磯部俊郎君、早稲田大学教授の中野実君及び九州大学名誉教授の山田穣君に出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用中にもかかわらず、遠路わざわざ本委員会に御出席を賜わり、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  御承知のごとく、石炭鉱山における保安の問題は、事、人命にかかわるきわめて重大な問題でございますので、参考人各位におかれましては、学識経験者として専門的なお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  参考人各位には最初一人十分程度それぞれ御意見をお述べいただき、そのあとで委員の質疑に応じていただきたいと存じます。それでは、山田参考人からお願いいたします。
  104. 山田穣

    ○山田参考人 一昨年は三池の大爆発、それから先ごろは北海道の夕張の大きい爆発が起きまして、こういう問題が起きるたびに、石炭鉱業の合理化の進展だけを取り上げたために保安問題がないがしろにされたのではないかといったような御意見が方々から出るのでございます。これは一応考えられることでございますけれども、最近の五年間の保安実績を、私は福岡におりますので九州のことだけしか申し上げられないのですが、見てみますと、必ずしもそういう結果が出ておりませんで、昨年などは死者におきましてはおそらく最小限の千人当たりの死者の割合というものが出ておりまして、その面では成績が上がっているということがいえると思います。ただ私どもが考えなければなりませんことは、御承知のように、石炭鉱業は数年前からいわゆる斜陽ということばが使われるようになりまして、簡単なことばでいいますと、石炭鉱業は不景気でございます。そういった関係で労務者も不足という現象を引き起こしまして、鉱山では必要なだけの労務者が得られないというのが、いまの一般的な事実になっております。そうしますと、ほかにもいろいろな関係があるのですけれども、組夫といいまして、組合に入っていない鉱員を使うことになります。これは経験が少ないものですから、こういったところには保安思想といったようなものも欠けておる面もありますし、労務者が少ないために、炭鉱は不景気だからどうしても出炭をしたい、出炭をするためには払いの人間が足りないから掘進をそのほうへ回すということは、各炭鉱でひとしく経験されておることじゃないかと思いますので、そういった面では保安のほうは感心できない一つの要因をつくることになるのではないかと考えております。しかし概略的に申し上げますと、合理化が進んだために保安がないがしろにされておるといったようなことは統計上からは出ておりませんので、その点はちょっと申し上げておきたいと思います。
  105. 加藤高藏

    加藤委員長 それでは次に中野参考人にお願いいたします。
  106. 中野実

    ○中野参考人 中野でございます。ときどきお目にかかっております。私はいまの山田先生からのお話と角度を変えまして、石炭調査団に関係した保安の関係をちょっと申し上げたいと思います。  炭鉱保安は、御承知のように非常に大切であるということになっておりますが、現実災害が起こっている。いろいろ問題があるわけでございます。第一次石炭鉱業調査団の答申をつくりますときにも、私は保安のほうでもちょっと関係したわけでございますが、はっきりとした対策があそこではうたわれているのでございまして、調査団の原稿ができ上がります一日か二日前に、私は保安の事項のところに、頻発災害があるからそれをひとつやってくれなければ困るということを筆を入れておきました。その程度でございます。  そんな関係で、三池災害が起こったりいたしまして、昨年私は、いまここに保安局長がおりますが、保安局長からの話もございまして、海外石炭鉱保安状況調査団をつくり、不肖私が団長になって、ヨーロッパ関係の炭鉱を見てまいりました。そのとき感じましたことを、あるいはお手元にその当時すでに配られているかどうか私よくわかりませんが、こういうような冊子にして、向こうの保安状況から日本のほうをながめたときの感想を書いておきました。昨年四月末に帰ってまいりまして、これを八月中旬に通産大臣に答申したわけでございます。  たまたま、第二次石炭調査団が出る。そこで参加しないかということでございましたが、第一次調査団のときには、現場の坑内やなんかをあまり見ないで、陳情を聞いて調査報告をつくったような気配がありましたので、第一次調査団のような調査のしかたでは困る、少なくとも生産保安の実態を見るために坑内状況技術的に見る時間的余裕がなければ私は参加したくないというようなことを、井上石炭局長に話したのであります。その結果かどうか知りませんが、保安問題もいろいろ取り上げるし、あるいは特別に技術班をつくって坑内関係をよく見ていただくことにするから参加してくれ、こういうようなことで参加したわけでございます。おかげで調査の過程におきましては、本団のほかに十二ぐらい炭鉱を見て、いささかくたびれたわけでございます。  その答申は、御承知のとおり、昨年の十二月十六日に出されておりますが、その中には、第一次調査団の当時に比べますと、保安対策はかなりはっきりと打ち出されておると思うのでございます。しかし、答申を出しっぱなしておいて、それで安心しているというわけではございません。まだ、いろいろと問題があるわけでございます。その辺の事情につきましては、先生方といろいろな討議を申し上げたいと思っておる次第でございます。  簡単でございますが、以上でございます。
  107. 加藤高藏

    加藤委員長 次に、磯部参考人。
  108. 磯部俊郎

    ○磯部参考人 磯部でございます。いま山田先生、中野先生が申し上げたことと私が申し上げることとは、多少見方と申しますか、角度が違った、別な、むしろ具体的の面からちょっとお話をしたいと思います。  私は北海道におりますので、北海道のことで申し上げます。  災害状況でございますが、昭和二十五年から三十九年までの十五年間の北海道内における死亡者の数というのを調べてきたわけでございます。それによりますと、炭鉱災害でなくなられる数の平均が年間四十人、最大が五十一人、最小が三十一人という数が出ております。こういう点から判断いたしまして、一体死亡災害は減ったのだろうか、ふえたのだろうか、これはこういうことにとらわれないで、この数字のみを一つの計算上で整理してみたわけでございます。そうしますと、結局結論としては、ふえもしないし減りもしない、横ばいの状態にあるというような結論が一応生まれるわけでございます。  結局、そういうことはどういう理由によるのだろうか。これは私個人の見解でございますけれども、要するに生産量というものは、現在ずっとある程度横ばいの状態にある。それで災害のほとんど多くはやはり切り羽、採掘区域に生じておる。そこに働く人の数というのは、全体の人員が減ってもそう減少してはいない。しかも十分気をつけているにもかかわらず、やはり災害というものは気のつかないところでときどき起こる場合がある。そういうことは人為的にどうにもならない、あるいは不可抗力に近いような災害のために、こういった方々がおなくなりになっているのではないか、私はこういうふうに考えております。ですから、根本的な対策というのは、結局無人採炭、そういうものに持っていく、いわゆる技術研究が先行すべきであるというふうに私は思います。  それから災害の種別でございますが、圧倒的に多いのは、やはり落磐でございます。その次が運搬事故でございます。三番目ぐらいにいわゆる爆発というのがございますが、これは総数から見ればずっと数が少なくなっております。ただ、一ぺんにたくさんの方が罹災されるので非常に問題として取り上げられますが、実数においては落磐が第一、二番目は運搬災害。運搬災害は、おそらく石炭を運ぶ数、いわゆる坑内の交通量というものに関係があるでございましょうし、それから落磐災害の大部分が採炭切り羽に集中しているという点から見れば、いわゆる出炭というものについてこういうものが規定されるわけでございます。しかも落磐などというのは、たとえば切り羽の下を通りましても、落ちそうな岩石でもたまたま通って落ちない場合がある、落ちそうに見えない場合でも何かの拍子に落ちる場合があるということで、これはわれわれ専門家が見ましても、この石は何時何分に落ちるか、あるいは、とめをしなければ必ず落ちるというようなことが言えないわけであります。そういうことがもとになりまして、結局落磐というのはある程度防ぎ切れない、非常に残念でございますが、そういうのが現在の状態でございます。運搬の災害などはかなり、注意をすれば防げるものもある。要するにこれは交通事故と同じで、一人一人の自覚にまつ点があると思いますが、やはり平均して考えると不意に起こっているわけでございます。それで、ほんとうに適切な技術的な措置ができないために不意に起こる、そういうことでこういう災害が出ておるのだと思います。そのほかに、災害としてはハッパ事故、自然発火、坑内出水、そういったようなものがありますが、こういう種類のものは、特に出水などは最近はほとんどなくなっておりますし、ハッパ事故も非常に気をつければ防げる種類のものであろうと思います。自然発火に関しては、これはやはり研究が先行すべきで、現在実験室的になまの石炭を自然発火まで持っていったという事例はございません。ガンの研究がガンをつくることによって進歩したと同じように、もし実験室の中で自然発火を常温の状態から出発してつくることができれば、さらに進歩するだろうと思います。  それで、結局大きな問題で考えてみますと、一番最初山田先生がおっしゃったように、炭鉱は不況でございます。そういう点からいいますと、悪い炭はなるべく取らない、結局掘っても売れない、売っても損をするというような観点から、やはり採掘の計画それ自体に経済状況の制約条件が入るのだと思います。その辺の解決があれば、保安的な面でもう少し合理的な坑内の計画ができるかもしれない、そういう面もあるいはあるのではないか、こう私は思います。  それから先ほど申しました無人採炭、これを推し進めることによって、いわゆる落磐関係の事故というものは大幅に減少する、こういうふうに私は思います。要は、防災に対して国費によって研究をさらに進めていくということと、もう一つは、いわゆる生産技術になりますが、無人採炭に向かってばく進すべきであるというふうに考えております。  以上でございます。     —————————————
  109. 加藤高藏

    加藤委員長 これより質疑に入ります。滝井義高君。
  110. 滝井義高

    ○滝井委員 中野先生でも山田先生でもどなたでもけっこうですが、一般炭と原料炭で、ガスと炭じんにどういう関係があるかということです。たとえば、一般炭より原料炭のほうが坑内におけるガスの発生率が高いということになるのかどうか。それからいまのような普通の採炭の方法をやった場合に、原料炭と一般炭と比べて、炭じんというのはどちらがよけいに出るのか。今度の北炭日本で有数な原料炭のところだし、先般の三井三池は一般炭の有数なところですね。何かの本を読んでおりましたら、今度の災害のことを書いている中で、三つの共通点が三池北炭との災害の中にはある。その一つは、これはともに三井系の炭鉱であるということ。三井鉱山というのは日本でも有数な石炭山を持っているところですが、結局そういう大きいところだからという安心感というものがあるのではないか。共通して三井系であるということが一つ。いま一つは、北炭三池も、他の山にくらべて合理化のスタートが非常におくれておった、これは先生方御存じのとおりだと思うのです。そして、最近になって、ともにピッチを上げて合理化に直進しておる。それから、ともに近々増配ないし復配の傾向にあった。そのことが同時に生産の増強というものに異常な力を入れておるという、この三つの共通点が、三池北炭にはあったのだということを何かに書いておるのを読んだことがあるのです。そういうことと、原料炭と一般炭とのガス、炭じんとの関係、ここらを何か学問的に検討したものがあるのかどうか。そういう何か共通なものを持っている中で、片や一般炭、片や原料炭で、ともにガス爆発があった。三池は炭じんの掃除が悪かったということ、片一方はメタンガスが非常に多く出てきているということで、何かそこらに、学問的に研究してみたら因果関係があるように思うのですが、そこらの見解をちょっとお教え願いたいと思います。
  111. 中野実

    ○中野参考人 いまの御質問、二つあるのでございますが、最初の一般炭と原料炭ガスと炭じんとの関係でございます。大体申し上げまして、これは日本に限定して考えたほうがいいと思いますが、一般炭の炭層にはガスは比較的少ないということは言えると思います。それに対して原料炭の炭層はガスが多いということは、一般的に言われると思います。しかしこれは、一般炭と申しましても非常に若い年代の石炭、たとえば日本の例で申しますと、常磐炭鉱の南地区の茨城等、あるいは釧路の太平洋、あの辺の炭層につきましては、これは一般炭なんですけれども生成年代が他の一般炭に比べまして少し若いようでございまして、これは構造ガスはかなりございます。特に太平洋等におきましては相当ございます。ですから、厳密な比較は一般炭、原料炭というような区分においては必ずしもできませんが、ガスにつきましてはおおよそそういうことが言えると思います。  それから炭じんの問題でございますが、炭じんの問題は石炭の破砕性に関係があるものでございまして、これも一般炭と原料炭というふうに一がいに区分するわけにはまいらない節もございますけれども、概して申しますと、一般炭のほうが粉化性が少ないのが常識でございます。原料炭につきましては、今度大災害を起こしました夕張、大夕張あるいは芦別等におきましても、こういうような原料炭の山は粉化性が多いものでございますから、したがって発生炭じん量が多い、こういうことが言えるかと思います。この関係等につきましては、一般炭、原料炭と区分した研究調査というものはございませんが、それぞれの炭層に関係いたしまして、たとえば粉砕性がどうであるとか構造ガスがどうであるとかいう研究は、それを主体にした研究ではありませんが、ほかの研究をしている過程でそういうものを各研究者がかなり取り扱っておりますので、そういう関係を取りまとめますと大体の傾向は出る可能性があると思います。  それから滝井先生のお話で、ちょっと私と見解の違う点が一つあります。三池炭を一般炭というふうに御発言がありましたけれども、これはいわば原料炭に近いわけでございます。つまり原料炭と一般炭は、御承知のように、ケーキングするかケーキングしないかということであるわけで、原料炭炭鉱でも、幾つかの炭層を掘りまして、ケーキングパワーの少ない部分は、市場の関係もありまして、一般炭としてさばいてしまいます。厳密に言いますと、三池は粘結性の石炭である。したがいまして、私どもの区分からすれば原料炭に属するのであります。しかし実情はボイラー等に使っておりますので、そういうものは混炭その他によって粘結度を低くするという面もありますし、その辺はあいまいな面がありますが、私どもは一応原料炭と解しております。  それから第二点の三要素でございますが、これは私の専門とは異なりますのでちょっと明快には言いかねますが、確かに、これは三池ばかりではない、三菱といえども原料炭山に安心感があるということは、私どもの立場からいって否定できないのでありまして、原料炭は手取りがいい、したがってそれほど精を出さなくても利益があるという、これは私の感触でございまして、本体がそう思っているかどうか別ですけれども、そう思います。そこで、これに関連して、一応枝葉に入ることなのでございますが、第二調査団のときに調査団に加わっておられました富士製鉄の徳永調査員、これが調査団の中で私に言われまして、先生、一般炭も原料炭も掘るのは同じじゃないでしょうか、原料炭であるがゆえに高くつくということがありますかという質問でございました。まさにこれは技術上の問題でありまして、それにつきましては、原料炭といえども一般炭といえども、むしろ炭層の状況とかそういうものに支配されるのでありまして、採炭のコストの点ではどちらを掘ろうがいわば同じであって、むしろ原料炭のほうは粉化しても一向市価に変わりはないのでありますから、一般炭のほうは塊炭をとらなければならぬというような市場性から申しますと、一般炭のほうがむしろ高くつくのではないか、原料炭のほうがむしろ安い、そういうような意見を述べたくらいでありまして、原料炭炭鉱というものが一般炭炭鉱に比べて能率が低いということも事実でございます。その辺は三池であるという安心感というのとは違いまして、私は原料炭であるという安心感というふろにこれを読みかえたいような気もいたしております。  それから合理化のスタートおくれということでございますが、それは、こればかりであるかどうかは別といたしまして、確かに御指摘の面があると思われます。それから増配、復配に至りましては、これは私お答え申し上げることができませんので、この辺でごかんべん願いたいと思います。
  112. 滝井義高

    ○滝井委員 一般論として、原料炭ガスの発住量が多くて、しかも原料炭が発生炭じんが多いということになりますと、私三池は一般炭だと思い込んでおったものですからああ申しましたけれども、いまの先生の見解で三池原料炭だということになると、そういう点でも共通点があるわけでございますが、原料炭と一般炭との保安上の取り扱いを同じにしておいていいかどうかという問題があるのじゃないか。原料炭が一般炭よりか炭じんが多く出て、しかもガスの発生が多いとすれば、保安法上やっぱりそこに区別をした取り締まりをやる必要があるのではないか。いまこれは区別が行なわれていないわけでしょう。そこらの見解をひとつ伺いたいと思います。
  113. 中野実

    ○中野参考人 いまのお話は非常に弱点ではありますが、微妙な点をおつきになっているのですけれども、私、法律規則はタッチはしておりましたけれども、実はあまり詳しくはないのです。これは違った角度から規制しております。というのは、炭じんの発生量とガスの発生量ということで規制しておりますので、この規制のほうがむしろ事実に即しておって、一般炭、原料炭規制するのはむしろいけないのじゃないかという感じがしまして、いまの法規はおおむね妥当であるというふうに考えております。
  114. 滝井義高

    ○滝井委員 確かに炭じんの発生量とガスの発生量を一律に規制するということは非常にいいことだと思うのですが、さいぜん先生もいみじくも御指摘になったように、三井系で安心をしておるという言い方をしたのですけれども、そうじゃなく、原料炭というものの市場性から見て、原料炭のほうが非常に有利で安定度が高いということが、むしろ原料炭の山が出炭能率が悪くて、そういうことがむしろ安心の裏打ちになるというようなニュアンスにも聞えたわけですけれども、そうなりますと、ここらにはあまり金を入れなくても、保安の設備をやらなくても、こういうところは政府はつぶすはずもない。原料炭は相当足らないので、政府もいざというときには輸入もやらなければならぬ形に追い込まれておるのだから、つぶすはずもない。ということで、あらゆる面から見ても条件が非常にいいものですから、保安その他もむしろないがしろにされる可能性があるんじゃないか、そういう気持になりやせぬかということなんですが、そこで典型的な三池とか北炭というような、こういう有数の、しかも市場性からいっても安定をしておる山に起こってくる可能性があるという見方は成り立たないかどうか。
  115. 山田穣

    ○山田参考人 ただいまのお話なんですが、一般炭と原料炭の山を保安法では一本に監督しておるわけですね。その際に違いますのは、ガスにつきましては甲、乙と指定するのであります。したがって、甲と指定されますと、非常に厳重と申しますか、やかましい規則に従って運営をしないことには保安法抵触という形にもっていかれますので、そうしておけば保安のほうでは差しつかえないような気がいたします。  それから、中野教授が十分お答えになったので、申し上げることはないのですけれども、一般炭と原料炭とのガス、炭じんの問題ですけれども、これはふしぎに日本ではいい石炭ほどガスが多いという結果になっております。いい石炭というのはカロリーが高い、それから原料炭で売り値が高い、こういったことになるのですが、ふしぎにそういういい石炭ほどガスも多く、炭じんも立つという傾向が多いようでございます。  それから三池ですが、三池の石炭というのは、私どもが研究をするときには百五十メッシュくらいの粉にするのですが、手で握ってみて、日本じゅうで一番手のよごれるのが三池の炭で、一番さらさらしておるのが沖の山の宇部の石炭です。原料炭はコークスになるのが必要なんですけれども、三池の炭は日本じゅうで一番よくふくれるのです。熱を加えるとふくれて、中に空気を含んで非常にボリュームが大きくなります。しかしコークスは非常にやわらかいものですから、非常にふくれるところを利用して、でき上がったコークスがかたくなる耐熱強度の強いやっとまぜて使うと、両方の特徴を生かすことができるというので、やはり原料炭考えたほうがいいのではないかと思います。  それから一般炭と原料炭とを比べますと、原料炭のほうが値段が高いものですから、同じ条件では、一般炭ではとても経済上採掘できないところでも、原料炭ならば掘れるというような場合がしばしば起こり得ると思います。
  116. 中野実

    ○中野参考人 いま山田先生のおっしゃったことを補足して説明させていただきますと、手取りもいいし、あれだから、保安をあれしているという見方もあるかもしれませんが、日本は特にそうだと思うのですけれども、原料炭山の自然条件、炭層の賦存条件というものが非常に悪い。三池あたりは偶然にも平均しておりますが、これもしさいにながめると膨縮がある。夕張、大夕張等の原料炭の山は非常に膨縮が多くなったと同時に、それが分かれているというようなことがございまして、採掘条件というものは必ずしもよくない場合もあります。それでガス、炭じんのあることはおそらく現地の技術者はかっておるはずでございますから、保安も、ゆるみがあるのではなくて、普通の炭層よりも保安に気をつけておるというのが実情だと思います。ただしかし、災害に結びつけて、災害を起こしたのはどういうわけかということになると、説明といたしましては、気をつけてはおるけれども、やはりぬかっておるわけで、気をつけた中のぬかりなんです。十分気をつけてはおるけれども、その中にぬかりがあったのであって、初めからぬかりがあったというふうな解釈にはならないというふうに考えております。
  117. 加藤高藏

  118. 細谷治嘉

    細谷委員 二、三点質問したいのですけれども、まず磯部先生が今度の夕張炭鉱爆発について、鉱山保安法なりあるいは石炭鉱山保安規則等を厳重に守っておれば、今度のような爆発は防げたのではないか、前回の北炭事故はある意味では不可抗力だ、今度の場合はやはり何らかの手落ちがあったのではないかということで、火源としては三つばかりの可能性をあげられておったのですが、その後水没等をして精査されておらないけれども、この問題についてどういうふうにお考えになっておるか、まずお尋ねしたい。
  119. 磯部俊郎

    ○磯部参考人 いまの問題についてお答えいたします。  私、夕張炭鉱爆発のあと、ここにはおられませんが、佐山団長のもとで調査団員として三日ほど夕張で調査を行なったわけであります。その結論につきましては、現在まだ資料の全貌が整っておりませんので、結論はこうであるということを申し上げることはできません。ただ、いまおっしゃいましたように、規則を十分守っておれば未然に防げたのではなかろうかというようなことについて三つほど原因考えられるという中の、その原因の一つ一つをおっしゃっていただければ、はたしてその規則がそこに適用されるかどうかということがわかるのでございます。たとえばガス量が非常に多かった、それを規定のガス量以下に減らしてさえおれば爆発は起こらなかったのではなかろうかということも、そのお考えの一つであるとすれば、それもそうでございます。
  120. 細谷治嘉

    細谷委員 私は新聞で拝見しただけで、先生の談話として載っておるのに、こういうふうに書いてあるのです。一つは、コンベヤー、コールカッターなどの電線が何かのはずみで切れて発火し、ガスに引火した。それから第二は、ドリルなどの作業用具がさびていたために、作業員がドリルを落としたり、ぶつけたはずみに火花が散ってガスに火が移った。第三は、ハッパをかける際、その操作がまずかったか、穴の掘り方が不適当であったかしたため、ハッパがきかずに火薬が穴からふき出して引火した、この三つの可能性が考えられる。採炭現場のガスの充満度やハッパのかけ方、コールカッターなど電気製品の使い方については、鉱山保安法に基づく石炭鉱山保安規則で厳重に規定されており、これを守っていれば爆発は起きないはず、三つのうちのどれかについて関係者に手抜かりがあったのではないか、これが先生の談話として出ておるのですが、その後三日ばかり御調査なさったそうでありますから、やはりこの新聞記事がそのとおりであるかどうかということをまずお尋ねいたします。
  121. 磯部俊郎

    ○磯部参考人 いまの御質問にお答えいたします。  夕張爆発が起こりましたときには、実は私かぜを引いて寝ておりまして、それで当日は学校を休んだわけでございます。夕方床の中に寝ておりましたところ、たぶん午後の八時ごろから新聞社それから放送局、そういうところからじゃんじゃん電話がかかってまいりました。その中である新聞社が、原因は何だということを私に聞いたわけでございます。私は状況判断もできないし、ただ聞いただけ、テレビで見ただけだから、原因は何だかわからないという話をしたわけでございます。そうしたら、一般的に爆発というものはどういう場合に起こるのだという質問を、その電話でしたわけでございます。そのときに、そのほかにも原因がございますが、おもに考えられるものはこの三つである。しかし、これらのものは、いわゆる規則が非常に厳重につくられているから、この規定を守ればある程度防げるものであるということを申し上げただけで、それは一般論で、それを新聞がどう取り違えたか知りませんけれども、あたかも原因であるかのごとく書いたわけでございます。それはやはり新聞とかそういうのはニュースバリューということをもとに考えるので、適当な解釈を下したのではないかと思います。私、それについては非常に異論があるのでございますが、そういうことが一回出てしまったらもうこれはしかたがないので、適当なときに訂正する以外に方法はないということで、皆さんにお会いしたときに聞かれた場合に、そうお答えしているわけでございます。以上でございます。
  122. 細谷治嘉

    細谷委員 一般論としてお述べになったことが、まさしく北炭夕張原因としてそのまま書かれたというおことばでありますけれども、実はきょうは山田先生もいらっしゃっておるけれども、三池爆発の際も鉱山保安監督局からさんざん指摘されておるわけです。今度の場合も、さかざんというほどじゃありませんけれども、十二日の日に指摘を受けて、十日後の二十二日に再度勧告を受けて、帰って間もなく爆発を起こしたこういう事態であって、私は端的に言いまして、最近の爆発というものについて、多くの場合、勧告をされたところが、ずぼしそのもののところで起こっておるということが非常に多いので憂慮しておるわけなんです。  あとでまたお尋ねしたいのですけれども、科学研究ということを、特にガス爆発等について先生は必要性を述べられたわけなんで、私もそれを痛感しておるわけですが、その前に、現在の炭鉱爆発というのは、科学研究が先行どころか、あとのほうからついていっているから爆発が起こっておるのじゃなくて、現に科学研究で解明された問題、保安規則等に盛り込まれておるにかかわらず、そういう問題が——むろん意識的じゃありませんけれども、無意識的に実行されておらないで、そのすき間から事故が起こっている、私はこう思っておるのです。北炭夕張の場合も、科学研究の問題じゃなくて、現実にやはり現行法どおりきちんとやっておらなかった、こういう点に問題があるのではないか、こう私は思っておるのですよ。ですから、ずばり言いますれば、私は、先生が訂正されたこの新聞記事先生の談話のほうが正しいのじゃないか、こういう見方をしておるのです。その辺いかがですか。
  123. 磯部俊郎

    ○磯部参考人 お答えいたします。  それについては、現段階で調査団の結論を申し上げるわけにはいかないと思いますけれども、いま申し上げましたハッパの問題、これは調査団の調査した結果に基づきますと、全然ハッパをかけた事実はございません。ですから、その点は白でございます。それから切り羽において採掘は、全部ピックを使って採掘をしておりましたし、それから切り羽面の運搬は、塩化ビニールのトラフを使って、石炭は自動的に滑走させる状態において運搬をしておったわけでございます。しかし塩化ビニールのトラフはかなりしめっていたということから帯電の心配はないということで、その電気的な火花、そういうものについても消えてしまった。それからハッパをかけておりませんので、ドリルはもちろん使っておりません。それから当時は鉄柱の一部を改修中でございまして、それからの火花ということはある程度は考えられるわけでございますけれども、その切り羽面において爆発を生じたという事実が消えてしまった、それでその面についても白になる。ですから、原因は、その三つ以外にあるというふうに考えざるを得ない立場に立っております。その結論については、まだ私も、現在御入院されておる方々に対しても、お医者さんの聞き取りの許可が出ておりませんので、それが全部済み次第、再度会議を催してはっきりしたものを出そう、そういうことになっておりますが、原因は別でございます。以上でございます。
  124. 細谷治嘉

    細谷委員 そうしますと、私は火源がこの三つであったか、それ以外であったかということも大切であろうけれども、爆発条件坑内に整っておったというところに問題がある、こう思っておるのですよ。そこで、メタンガスがある程度ふえてくれば自然発火という問題になるわけなんですが、先生の、特にこういうガス爆発、あるいは炭じん爆発等についてのもっと科学研究が先行すべきだ、技術研究が先行すべきだという点について、特にこういう部分についての科学研究が足らぬのだ、特にあげられるようなブランチというか、方向といいますか、そういう点は、どうお考えになっておるのですか。
  125. 磯部俊郎

    ○磯部参考人 お答えいたします。  これは非常に奇想天外な方法かもしれませんけれども、もしガスが見えたら、爆発はほとんどなくなる、こう思います。現にガス干渉計というようなもので干渉じまによってチャンバーの中に入っているガスは、ある程度見えるわけです。何らかの方法でガスが見えたら、ほとんど爆発はなくなる。そういうことに関して、われわれ採鉱屋だけで研究を進めていっても、それはほとんど不可能だ。やはり物理とか化学とかそういう方々の協力を得て、そういう大きな組織のもとに仕事を進めていけば、そういう夢も達成されるのでなかろうか。それはただ現実に目に見えるという意味ではなしに、もっともっと鋭敏な検知力を持つ検定器があらわれるのではないかというふうにも考えております。  それから落磐なんかも、ある程度天井の状態を、非常に微弱な電流を流してみる、あるいは音波を通してみるということで、その天井の脆弱の度合いというものを判定して、そして落磐危険地域というものをあらかじめ指定することができれば、この災害の大宗をなす落磐というものもほとんど消え去ってしまうのではないか、そういうように考えております。  これは私、最近始めたことでございますが、力をかけたら、岩石も電気伝導度の変化が生ずるのではないかというようなことで、ことしぐらいから実験を開始しておりますが、何せ非常に小さな実験室で、しかもごく少数の人でやっておりますので、いろいろな条件に支配される。しかも電気的な知識がわれわれだけでは不十分だという点もございまして、行きつ戻りつしている状況でございます。こういった基礎研究も、やはりある意味では強力に進めるべきじゃなかろうか、そう思っております。
  126. 細谷治嘉

    細谷委員 日本炭鉱ばかりでなく、日本の産業面というものは、いろいろな面において基礎的な研究というものが欠除しているということは、周知の事実であります。これは先生のおっしゃるとおりでありまして、そういう点で大いに科学研究をやっていただきたいと思います。  山田先生にちょっとお尋ねしたいのです。  生産第一主義ということから災害がふえたという見方があるけれども、統計は必ずしもそういうふうにはなっておらぬのだということでございますが、これに関連しまして、先生のおことばの中に、臨時夫なりあるいは組夫の導入ということ、これはとりもなおさず保安教育なり、あるいは保安上の訓練が未熟な人であるということは間違いないことなんです。これは先生も確かに組夫なりが導入されたこと、あるいは払いが足らなくなったので掘進から持っていく。したがって熟練工ではない。こういうことが最近の炭鉱災害原因——これは落磐にしてもそうでしょう。なれておりますと、第六感ということではないのですが、これは落ちるぞと思うと、何時間後に落ちたり、翌日落ちたりというような例があるわけですから、わずかの音でも異状さを発見することもあるわけですから、この災害を撲滅するには先生のことばをそのまま裏返してみますと、やはり組夫の導入とか、あるいは臨時工の導入というのが問題があるのだ、こういうふうに私は理解したけれども、この問題について、先生どういうふうな御方針なり対策をお持ちなのか、ちょっとお伺いしたい。
  127. 山田穣

    ○山田参考人 ちょうどそういった調べも九州ではできておりまして、大体三十六年、三十七年、三十八年、三十九年と調べておるのですけれども、三十六年について申しますと、常雇いのほうは死亡者が三百四十九名に対して、請負夫が二十九名、それから三十七年が常雇いが二百四十九に対して請負夫が二十七、三十八年が常雇いの死亡者が五百九十三名、請負夫が六十二名、三十九年度は常雇いの死亡者が百六名、請負夫が四十四名、こういうふうになっておりまして、パーセンテージに直しますと、三十九年で大体二七・七%というのが請負夫から出ております。これはいま細谷さんがおっしゃいましたように、常雇い夫に比べますと、経験なり、保安に対する感覚といいますか、そういったものが劣ることは間違いないと思います。だから、その場合は特に保安のほうに対して注意を払う指導者がついていくことが望ましいわけです。  それから、立ちましたついでに申し上げますけれども、大体落磐事故が一番多いのでありまして、災害の四分の一は落磐事故なんです。これは地球の引力が働いておりますから、坑内に入りますと上からいつ落ちるかわからぬ状態にあるわけですね。このほうは注意注意を重ねても、いまの限界では、思わざるところが落磐するというようなことがやはりまだ取り残されております。これを完全に防ぐということは、私ども考えましても、なかなかむずかしいのじゃないかという気がいたします。払いにおきまして、前は打柱といいまして、坑木を一本置くとか、あるいは荷合いワクといいまして、三本の坑木でワクをしてその中で堀っておったのですが、これを鉄柱にかえますと、成績は非常にあがったんですけれども、三、四年前いろいろ調べてみますと、今度は鉄柱カッペをやっておきながら、払いで相当の災害が出ましたので、九州ではこれはほうっておいてはいかぬのじゃないかというので、鉄柱カッペという研究委員会をつくりまして、本それからスライドをつくって全国に回ってやったことがございますが、そういうふうに落磐のほうはなかなかむずかしいのでございます。これに比べますと、ガス爆発なんていうのははるかに楽でございまして、ガスをためなければいい、万一たまりましても火源を用心すればいいというふうに、二段がまえ、三段がまえでやれますから、このほうは三十年ぐらい前から私ども、完全に防げるんじゃないかということを力説しておったんですけれども、やはりわれわれが考えておる以上に微妙な穴がありまして、今回のことなども、保安監督局注意をしたんですから——今回のことは私はよく知りませんけれども、おそらく山もガスを排除する方法をとったと思うのです。だからそれがうまく行なわれておれば爆発は起きなかったと思うのですが、やはり処置は講じたけれども、どこか爆発を防ぎ得なかったことがあるんじゃないないかというふうに考えます。
  128. 細谷治嘉

    細谷委員 いま先生から九州の災害状況のお話があったのですが、私は、その数字と全国的な通産省で調べました坑内死亡者状況というものを比較して、いまもちょっと感じたのですが、どうもこういう傾向があるのではないかと私は思うのです。北海道におきましてはむろん、全国的に見ますと、常用夫に対する千人当たり死亡率というものと臨時夫なり請負夫死亡率を見ますと、大体二倍以上になっております。三十九年度で常用夫ですと千人当たり二・五四、請負夫でありますと四・四八、臨時夫でありますと四・八〇、職員でありますと一・八五でございます。突っ込みで二・九三になりますから、大体において常用夫の二倍の臨時夫なり請負夫事故が起こっております。請負夫では六十三名というのが三十九年度の死亡者の数であります。そのうちの六十二名というのが九州のようでございます。そうしますと、北海道では、通産省統計によりますと延べ百万人当たりの罹災率というものを調べてみますと、これは死亡者でありませんが、罹災率を見ますと、請負夫よりも直轄夫のほうが統計が上回っているのです。全国的になりますと逆になるわけです。どうも組夫が罹災しているというのが九州にかなり集中的に起こっているのじゃないかというふうに、統計が示しているように思うのです。九州と北海道で、九州のほうでは組夫臨時夫の罹災が倍近くを占めている。北海道においては逆に直轄夫のほうが請負夫よりも罹災率が高くなっている。こういう勘定になっているのです。これは直轄夫とそれから請負夫組夫構成の比率上の問題からも出ていると思うのです。こういうことの統計から、先生、九州にいらっしゃって九州の山をとことんまで研究されておるのです。が、何か組夫の問題についてお感じになることはございませんか。
  129. 山田穣

    ○山田参考人 先ほどちょっと統計を申しましたが、簡単に申しますと、最近の五ヵ年間におきまして、常雇い夫は九州では災害率が減っておりますけれども、請負夫が二九%の増加となっております。それから稼働延べ百万人当たり災害で見ますと、これは常雇いと組夫とに分かれてはおらぬのですけれども、大体大きい傾向を見ますと、大手はよくなっておるが、中小が悪くなったという傾向。これを見ますと、北海道と九州とでは、小山は九州のほうが圧倒的に多くて、しかも九州の小山はいい炭層は掘ってしまって、だんだん掘り残しの条件の悪いところを掘っておるというような関係がありまして、したがって災害率も多くなる傾向があるのではないかというふうに考えます。北海道と九州との差はそういうところじゃございませんでしょうか。
  130. 細谷治嘉

    細谷委員 そこで、最後に先生にお尋ねしたいのです。ともかく、事実は組夫事故が相当出ておる。死亡者も多いし、罹災者も多い。そのうちの何分の一かというのがガス爆発ということになるわけで、端的に言いますと、五十人のうち一人か二人の未経験者がおった、たまたままざっておった。保安に対する訓練の不足な人、あるいは保安教育の徹底しない臨時夫なり組夫がおった。そういう者が針の先のような原因から災害を起こす可能性というのが、災害に関する限りあるわけですね。これが大事故になる。そういう点で、組夫というのが最近増加の著しい傾向常用夫が減って組夫がふえていく、それでいいならば、会社にとっては安い賃金で石炭が掘れるわけですから、一番いいわけです。これが保安上の問題としては問題点があるのではないかと私は痛感しておるわけです。そういう点で、組夫は法で規制されておるのですが、そういうものが厳守されておらないというようなことは、気がするどころじゃなくて、私どもはっきりそういうふうになっておるのだ、こう思っておるのですが、この組夫対策について、先生どうお考えですか、もっと厳重な規制をすべきだと考えますが……。
  131. 山田穣

    ○山田参考人 私が承知しておるところでは、臨時夫といいますか、組夫は払いには使っておらないと思いますが、払いには使っておりますか、おりませんですか。(「事実は使っている」と呼ぶ者あり)使っているのですか。それはどうも私はなはだ不勉強で申しわけございませんが、払いには使っておらないで、大体組夫というものは請負で掘進のほうには使っておるというふうに了解しておるのですが……。払いには法律的には使えないことになっておるそうですね。実際に使っておるということであれば、それは法律を守るようにやってもらわないと、人命に関係するのですから、そう思いますよ。うかつにして私は払いには使っておらぬというふうに了解しておりまして、どうも済みません。
  132. 加藤高藏

  133. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 二、三点、私の確信していることを申し上げて、もしそれが先生方の専門的に勉強されておられる点と違っておったら、ひとつお教えを願いたい、こういう意味でお伺いいたしたい。  私は、炭じんの爆発ガス爆発は、それぞれの保安対策が完ぺきを期されておれば絶対に爆発しないという確信を持っておる一人です。その例をあげますと、たとえば三池にあの大災害がありました。ところが、卸の車道と卸の人道との間の通気の目抜き目抜きに非常に炭じんがたまっておるというので、保安監督局から掃除をするようにということを強く命令された。その後、何ヵ月か後に、三池のほうでは、掃除をいたしましたという報告書を保安局に出しております。ところが、爆発保安局長に、掃除をいたしましたという報告書に基づいて完全に掃除をしていたかどうかの再点検をしたかと聞いてみましたところが、その後参っておりません、見ておりません、こういうことを正直に私に話しておる。そうすると、三井三池のほうが完全に目抜きの炭じんを掃除をしておれば、次から次へと目抜きの炭じんが爆発をしてあれだけの大事件を起こす道理はなかったはずです。そうすると、その報告書に偽りがあったと言わざるを得ないと思うのです。でありますから、これもやはり炭じん爆発というものの起こるべきことを保安監督局でも十分認めている。それで注意をしたのに掃除を怠っておった、やっていなかったというところに、あの炭じん爆発が起こったことは絶対間違いないことです。原因が何であるかということは、これは私は知りません。おそらく学界のほうでもおわかりになっていらしゃらぬだろうと思う。いずれにしても炭じん対策を完全にやっていなかった。その後に至って、今度は炭じんの出そうなところ、あるいは現場なりに、散水をするとか、あるいは岩粉をものすごく吹きつけておるる。これは掃除をして、その危険性のあるところに散水をして岩粉を吹きつけておけば、マッチを持っていったって火は絶対つかないのです。これは確信を持っております。  それからいま一つの夕張のこの間の事件でございますが、あれも原因は皆さんでいろいろ御研究願うことでございますから、私から想像的なことを申すことは失礼かもしれません。ただ言えることは、非常にガスが強くふいていた。それに対してガスを外に排出する通気が十分でなかった。それで、通気口が小さいので、これではいかぬというので会社側で通気口を大きくしておったことは間違いない。ガスの噴出量に対してそれを外に吸い上げていくだけの通気が足らぬ。そこでこれは通気口を大きくしなければいかぬぞというところから通気口を大きくしておったのであります。外に吸い上げていく通気の量のほうがガスの噴出量より弱かった、それを完全に吸い上げていくだけの通気を送り得ていなかったということは、これはもう論議の余地は私はないと思うのです。噴出量がこのぐらいであるというパーセンテージを出しておりますが、ガスというものは一ぺん爆発すると、しばらくちょっと少なくなるのが常識でございます。ところが逆に非常に多くなって自然発火しておるというので水没をさせざるを得なくなったということが、その後新聞に出ておる。また、実行されておることだそうでございます。そういたしますと、これも原因はいろいろ私ども想像すればし得るが申し上げません。少なくともガスの噴出量に対して、それを外に吸い上げていくだけの通気が十分でなかった。この対策を完全にやっていなかった。そこから何らかの原因爆発をしたということも間違いありませんが、これも完全にガスを吸い上げていくだけの通気を送り込んでおったなら、そのガス爆発は絶対防げたということは言えるわけでございます。でありますから、この二つの爆発というものは、いま申し上げるように、通気を完全に——これは深くなればなかなか容易でないということは、私どもよくわかっております。けれども、完全にその採炭現場あるいは掘進現場から排出するだけの通気量を送り込んであれば、絶対爆発しないということは間違いないのであるから、これといまの炭じんの二つの問題について私はそういう見解を持っております。したがって、これに対して会社側がやはり保安対策を怠っておったということは極言しなければならぬと思います。この二つについて私の見解が間違っておるかどうか、これをひとつお聞かせ願いたいということが一つと、あともう一点伺います。
  134. 中野実

    ○中野参考人 私からちょっと。伊藤先生のいまの御趣旨の大綱につきましては、私もそのとおりだと思っております。日本の場合で見ますと、かなり災害があるわけですが、対策が徹底しておれば完全になくなるであろうという基本理論は間違いないのですが、私、昨年保安調査団でヨーロッパのほうへ参りましたときに調べました数字を見ますと、たとえばフランスでは過去十年間に一件で死亡十名以上を出した災害の調べをしたわけですが、その十年間にガス、炭じん爆発が五件ございました。これは集中災害ですから七十七人ぐらいの人が死んでおりますが、合計九十一件の中で五件。イギリスにおきましては、合計百二十八件の重大災害の中で三件ガス、炭じんによる爆発が起こった。ドイツにおきましては、件数は三件のうち二件がガス、炭じん爆発となっておりまして、死亡者数が七十三人、こんなふうになっております。それに対しまして日本は、ガス、炭じん爆発は過去十年間に十七件ありまして七百八十一名の死亡者が出ているというようなことで、完全であれば絶対に防げるとは申しましても、やはりじょうずの手から水が漏れるというので、この発生の原因につきましては、これは私の想像になりますけれども、炭じんにつきましてはさほどでもないと思いますが、火源の問題であるいは防げない場合があるのではないか。つまり自然発火とかなんとかが早期に検知できないために、ガスについては普通の対策をしたけれども、あるところにたまった、たまたまたまったところの奥部が自然発火をしていたというような、からみ合った事情がある場合に、どうしても手抜かりを起こすのではないか。あるいはヨーロッパでは突出が多いものでありますから、突出に関連して起こっているのではないか、その突出の予測ができなかったのではないか。そういうような点で、完全とは申しましても、なかなか防げない面のあることが実情じゃないかと思っております。  それから三池のことにつきましては、御指摘のとおりでありまして、これは火源はわかりませんが、確かに炭じんがたまっていたことは事実のように考えられます。夕張の場合には、むろん保安の基本方針というものは、通気量を十分にするということで間違いはないわけでございますけれども、私、きょう鉱山保安監督局でちょっと夕張災害の図面を見せていただきましたが、これを貝ますと、採炭計画をあまり秩序立ってやっていない。その原因が掘進のおくれではないかというふうに私なりの判断をいたしました。しかもああいう六尺、八尺、十尺というような山は、累層に近いような形のところを無計画に——まあ無計画と言うとちょっと語弊がございますが、掘進のおくれに基づく、ちゃんとした採炭計画に乗らないような採炭をいたしますと、導風等の問題が起こりまして、いろいろ問題が起こってくる。この掘進のおくれにつきましては、昨年私ども石炭調査団に参加いたしまして一応当たってみたのでありますけれども、掘進のおくれは、昨年と一昨年でかなり多くて、たしか三十七年度辺では日本の年間掘進量のおくれが百キロ以上だというふうに数字は出ております。しかもそのうち沿層掘進が百キロもおくれている。全体の年間掘進量は六百キロないし七百キロが日本の大手炭鉱の数量でございますけれども、その間において百キロ以上もおくれておるということは、これは災害に直接結びつくかどうかは知りませんが、何か関係が出てくるんじゃないか、こんなふうな判断を持っておるわけでございます。したがいまして、結論的に申し上げますと、伊藤先生の理論は大綱において間違いはございません。しかし、その過程においてこまかいいろんな要因がほかにありまして、これもまあいわばみな含まれてしまうかもしれませんが、私どもといたしましては、多少そういうような二次、三次に関連する影響などをも考えておる次第でございます。
  135. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 いま中野先生のおっしゃった点、私も認めなければならぬ点がございますのは、やはり自然発火というものが御承知のようにあるわけでございます。自然にやはり炭に火が入っておるということもございます。そういうことで、これはいかんともすることのできない状態で発火し、水没せざるをないという場合もあります。そういう場合における爆発というのは、これは不可抗力と認めなければなりませんが、さっき二つの例をあげて申し上げたのは、そういう点からも、私はそれぞれに対する完全な保安対策を立てておくならば事件を起こさせないで済むであろうという私の信念でございます。この点は、私はおそらく先生方もお認めいただけるだろうと思っております。  それから、落磐の点でございますが、最近、御存じのように、非常に機械も進み、能率をあげなければならぬというところから、採炭現場を非常に広くいたしております。これもやはり、おのずから限度がございます。なるほど、北松炭田のように、ああいう天磐が一枚岩のようなところであれば、これは別でございますけれども、その他のところはああいうような天磐を持っておるところはございませんから、やはりそう広い採炭現場をつくりますと、鉄柱であろうと坑木であろうと、なかなか耐えられぬものが出てまいります。それでも、やはり働いておる人たちは非常に経験による注意力がありますから、なかなか大きな落磐をひき起こしておりませんが、多くの例を見てみますと、大きな落磐というものは交代のときか、昼休みに入った直後起こっております。先番が仕事をやって、それからあと番が入ってくるその間に、時間がある程度ございます。それから昼休みで、たとえば三十分なら三十分休んでいるときには、現場から離れております。その交代であとから入った者が、昼食をとった直後に入った後起こっておるのが多うございます。というのは、私も長い経験がございますが、必ず大きな落磐のあるときは何となく予告があります。まあ、何分間かの、逃げるだけの予告というものは絶対あると言っても差しつかえございません。それでも一人や二人落磐で何するという場合、これは全く予告も何もなくその犠牲を受けるということはありますけれども、たくさんの人が、何十人という人が生き埋めになるという場合には、大てい予告がございます。でございますから、やはりそういう点に対する注意というもの、指導者が常に注意をするという必要がある。それから、あまりにも採炭現場を能率のためにむちゃくちゃに拡大していくということなどについてもやはり限度がある、こういうように思いますが、こういう点について専門的にどういうふうなお考えを持っておられるか、ひとつお聞かせ願いたい。
  136. 磯部俊郎

    ○磯部参考人 いまの問題につきましてお答え申し上げます。  落磐というのは、山田先生がおっしゃいましたように、非常にわかりにくい。完全に落ちるかどうかということを判定することは、おそらく人間わざでは不可能であろうといわれるほどの点が多いわけであります。第一の問題の、非常に長い切り羽を持つということ、作業区域を大きくするということはよろしくないではなかろうかという御意見でございますが、その点はやはり私も賛成でございます。私、つい二、三ヵ月前ヨーロッパ及びインドの炭鉱を視察してまいりまして、ごく最近帰ってきたわけでありますが、ヨーロッパなどでは大体三百メートルくらい、日本ではほとんどないような長さの採炭切り羽を用いて採掘しているところもございます。大体二百メートルくらいというのが、現在常識になっております。ただ、採炭切り羽に入って見ますと、われわれ日本人として非常に驚いたことには、そこには断層が一本もない。非常に自然条件が恵まれております。そういう点で、そういう長い切り羽をとることができるのではなかろうかというようなことは私は考えました。この問題について、やはり切り羽面を長くするか短くするかということについては、ヨーロッパの人もある程度考えているようでございまして、切り羽面はなるべく短くて、そうして進みを早めたほうがむしろ得ではないか、断層その他のことを考えたら、かえってそういうもののほうが安全性を確保することができるではないか、そういうことを唱えている人もございます。そういう点で、私は日本のような炭層地帯、しかも天磐、下磐が脆弱であるというような場合には、非常に長い切り羽をとるということはやはり危険が多いと思います。どの程度かということを考えてみますと、少なくとも百五十メートルくらいが限度ではなかろうかと思います。ただし、自然条件によってはもっと長いものをとっても差しつかえないところもございます。  それから、交代ぎわとか休止のときに大きな落磐が起こるという問題でございますが、これについては、おおむね落磐というのは、大きく分けますと大体二種類あると思います。第一は、いわゆる切り羽全体に荷がかかってきている、支柱がびちびち鳴ったり折れたりするような形で落磐を起こす、そういう種類の落磐がございます。この場合は、いま伊藤先生がおっしゃったように予告がございます。荷重計などで切り羽の支柱の荷をはかっておりますと、数時間くらい前に、落ちるのではなかろうかと思うようなカーブが出てまいります。そういう意味では、こういう落磐はある程度予測ができるから、防ぐことはできないにしても退避することはできる、そういう種類の落磐がございます。ただし、この種の落磐というのは非常に規模が小さくて、切り羽の一部が落ちれば全体として荷がおさまってくるというようなことが多いようでございます。第二の落磐というのは、これはほとんど予告がない。たとえて申し上げますれば、ちょうど積み木を積んだような状況にあって、そのうちの一本を取り去ると積み木全体がバランスを失ってくずれ去ってしまうというような種類に近い、ほんの一つの石が落ちるとか、支柱がころがるとかいうような簡単な刺激がもとになって、切り羽全体のバランスが一気にくずれてきて、そうして大崩落を起こす、こういうのは非常に規模が大きいわけでございます。両方の特徴を比較してみますと、後者のほうは非常に崩落、くずれがこまかくて、そうして、その切り羽全面にわたっております。その場合には支柱の折損とか、あるいはカッペが曲るとかいうことはほとんどなくて、ただなぎ払わられるような形で埋ずまっているわけでございます。人的な被害も後者のほうがはるかに大きくて、大部分の方は窒息という形でなくなっておる。前者の場合では骨折とかあるいは身体的な傷害を受けるわけでございますが、第二のような場合にはほとんど窒息という形でなくなっておりますので、ほとんど傷害を受けておりません。これは私炭鉱にずっとつとめておりましたので、三回くらい埋まった御経験の方に伺ったところ、とにかく埋まったならばじっとしていること、それで舌で自分の目の前の石炭を押しのけて、そして鼻がちょうど入るくらいの空隙をつくって、そこに鼻をつっ込んで助けがくるまでじっと待っている、そうすれば助かることがある、おれは現にそうやって助かったというようなことを言っておられたのですが、そのように、荷というものはほとんど作用していない。天井のバランスが一気にくずれて落ちてしまう、こういった種類の落磐というのは、ほとんど予告がございません。ただしこれは大きな炭層のきわ、あるいは切り羽の地圧、しかもそれが長い間放置されて採炭を開始されたような地帯、そういうところは非常に岩磐がゆるんでおりますので、そういう現象が起こるわけでございます。それから累層採炭なんかの場合で、二つの切り羽が交差するところ、そういうようなところはやはり相当岩磐が脆弱になっておりますので、そういう現象が起こってまいります。  そういうことで、伊藤先生におことばを返してまことに恐縮でございますが、いわゆるほんとう意味の大落磐は、ほとんど予告なしに参ります。予告のある落磐というのは規模的に小さくて、一部の崩落で終わってしまうことが普通でございます。ですから、落磐に対しての問題点というのは、荷をはかるということよりも、いわゆる岩磐の脆弱性を測定して、いわゆる落磐危険度というものを設定するということのほうが大切だというふうに私は考えております。以上でございます。
  137. 中野実

    ○中野参考人 いま磯部教授から基礎的なお話がございましたが、私この委員会の前々の日まで九州の炭鉱を歩いてまいりました。歩きました目的は二つございますが、一つは御承知のように、このごろ自走支保という、きわめて金のかかる装置でございますが、これが三池と松島に使用されております。北海道でも自走支保が太平洋炭鉱で使われておりますが、これは不確実な情報でございますが、自走支保の払いでは死亡者がいままでなかったというようなことを聞きました。それと同時に、自走支保がかなり生産性に寄与する面が多いので、今後自走支保を石炭対策特別委員会としてもお取り上げいただきまして、この二年くらいの間に相当普及されるようにできますと、生産性はもとより——ここで申し上げます生産性というのが初めてほんとう生産能率でありまして、従来の生産能率は、これは普通の能率増進でありまして、本来の能率増進ではありません。そういうような関係をにらみ合わせまして、保安生産能率を向上させるためには、日本におきましても自走支保というものがかなり意味があるのではないかというふうに考えております。  それからもう一つは、私は、炭層の中にあります異物、松岩等の検知の実験のために九州に参ったわけでございますが、たまたまある先生が私に一つのマイクロホンを貸してくれました。これは実は土木会社の鹿島建設のものですが、その先生によると、これはスエーデンでできたマイクロホンであって、空気中のノイズはほとんど防いでしまう、あとは固体とか液体の中のノイズをとらえるのだということで、そんないいものがあるなら、松岩のあるところとないところとでは音のとらえ方が違うのではないかと思いまして、それを借りて松島炭鉱でちょっと調べてみたのです。実験をしておりますと、穴をあけまして、そいつをつっ込んでこちらで耳で聞いたり、あるいはレコードしておりますと、炭層にバリバリと荷がかかってくる状態が、非常に正確に出てくるわけです。鹿島建設の話を聞きますと、トンネルの落磐、崩落は一応これで防げておる、これは一本四十万円程度するが、そういうのをやっておけば相当防げるということでした。これは炭層とトンネルは相当違うわけでありますが、私どものほうにおります専門家も、その音の違いを聞き分けまして、切り羽のほうでこんなに記録がとれるとは思わなかったと言っておりました。そういう点から言いましても、実験の目的は違っておったわけでありますが、とにかく落磐予知というものの一つの技術的な方途が非常に問題なのでありまして、昨年も私調査団で参りましたときも、ヨーロッパ各国ではひんぱんに国際会議を開いて保安技術検討をしておるわけです。私どもがたまたま行って何かいいものをつかんで帰ってくるということで、そういう落磐予知なり何なりの一連の技術に対して日本が孤立しておるような気がいたしました。何とか石炭鉱山保安関係だけでも、たとえば常時そういう駐在員がおりまして、ヨーロッパ国際会議の情報をとってこちらに提供する。一々それに出席するということはたいへんなことでありますから、何かそういう担当者を置いてキャッチしまして、そうして何かいい装置を、当面石炭政策の四十三年までに間に合わせなければならぬものは日本研究するのがいいのですが、すでにできておるものをこちらで研究するのは非常につまらぬことでありますから、そういう点の配慮を、これもお願いでございますけれども、対策委員会等におきましてぜひお取り上げ願いまして、推進をしていただきたい。これはお願いを兼ねました説明でございます。
  138. 加藤高藏

  139. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 先ほど磯部先生並びに中野先生から欧州の保安状況について説明がありました。日本における災害は欧州各国に比べて非常に高いことが海外石炭鉱保安調査団の報告書にも出ておるが、そこで第一、欧州はなぜ災害が少ないかという理由に、先ほどお話がありましたが、自然条件が非常にいい、天磐も下磐も非常にいい、こういうお話があった。そこで、はなはだ失礼ですが、私は、日本保安規則等が欧州の状態等の基準によっていろいろ行なわれておるのではないかという根本的な疑問を持つわけです。たとえば一・五%という可燃性ガスの流出を見た場合には非常に危険だという。ところが日本の炭層は、先生が専門家ですが、石炭紀の石炭ではない、非常に若い時代の石炭です。ですから地殻の褶曲によって褐炭程度のものが石炭になっておるわけですから、初めから非常に危険ですね。一・五%くらいであったのが、いつ二になり三になり五になるかわからないという危険性があるわけです。そこで失礼ですが、この基準は欧州並みの基準ではないか、もう少し基準をシビアーにする必要があるのではないか、日本は自然条件が悪いのだという前提で初めからかかって保安対策をやる必要があるのではないか、こういうふうに思う。なるほど工業技術院の碓井の爆発試験場も私は見学したことがありますが、いろいろなされておるけれども、何さまささやかな予算ですから十分な研究がなされていない。非常に残念ですが、まず根本的には日本の学問が、はなはだ失礼ですが、欧州のいろいろのデーターによって行なわれ、その基準がとられておるのではないか。そうであったならば、こういう点について再検討する必要があるのではないか、こういうように思うのです。
  140. 中野実

    ○中野参考人 あまり完全なお答えにならないと思うのでございますが、まず第一点の災害率が高いこと。欧州の自然条件のよさということでございますが、これは調査団報告にも書いておったような気がするのですが、一つは背景が違うと思います。自然条件と申しましても、確かに向こうは構造が大きいわけですから、採掘に対する自然の条件はいいと思います。にもかかわらず、その保安技術研究に非常に金をかけておるわけです。ですからその比較で申しますと、日本のような自然条件の悪いところでは、ヨーロッパ以上の保安技術研究がなされて、それが現場に応用されて初めて保安が確保できる。にもかかわらず、事実は逆である。しかもまた、鉱山救護隊の体制を見ましても、日本ほんとうに申し上げようもないくらいおくれておりまして、これはもう何とも処置なしでございますが、幸い、先生方のお力で何か少し救護隊の何かにお金がついたように聞いておりますので、まことにありがたいと思っておりますが、そんなことでございます。  それからもう一つは、欧州の技術保安規則をまるまるそのまま入れたのであろうということでございますが、その辺の事情につきましては、私は実ははっきりとした知識と経験を持っておりませんけれども、あの保安規則ができます過程では、たしか進駐軍のおりました二十二、三年ころにごたごたいたしまして、二十四年の四月か五月に法律第七十号ができたと思いますが、そのときは大体はアメリカのルールのようなものを取り入れたような気がいたします。ところが、ガスのパーセンテージやその他につきましては、日本の実情等も、学問水準云々のあれはまたあとでお答え申しますが、加味しまして入れたことと記憶しております。したがって、欧州の数字がそのまま素通りしてきたというふうにも受け取れませんので、その点今後なおよく調べましてから、機会のあるときにお答えすることができるかと思っております。  それから、基準の問題でございますが、一・五なり二というものが甘過ぎるのではないかというお考えでございますが、これは御承知のようにガスが目に見えないところに非常な問題点があるわけでありまして、規則で一・五ときまりましたそのいきさつは、平均一・五%以下というような意味を含んでおるわけです。ところが、坑道等におきまして管理のための測定が必ずしもうまくいきませんと、それは測定技術にもよりますけれども、一応の水準の測定技術を持っているとしまして、あるところではかりましたものがかりに一・五あったといたしますと、これを数点はかって、その平均が一・五とすれば、それは非常にいいと思いますけれども、現場のせわしさその他からいいまして、かりにそれを省略したといたしますと、一・五以上のものがほかの気流の中にある場合も考えられます。そこで一・五ときめたといたしましたならば、そのはかり方についてのつまり技術的方法、それを観測者に十分教育すれば、一・五であっても、一・三であっても同じような結果になるのではないか。したがいまして、そういう保安教育の面でこれは相当防げるのであって、かりにこれを一としても、いま申し上げましたように簡単なはかり方をしておれば、一であってもあるいは爆発するかもしれぬ。そういうふうに技術的には見られるわけであります。  もう一つ、関連することでありますが、保安技術研究の水準というようなことであります。確かに、日本研究者はインターナショナルな関連をしておりませんものですから、自分ではこれが正しい、おもしろいとあるいは思ってやっておりましても、ふたをあけてみると、すでにほかではやっているというようなことでは非常に困りますので、また先ほどのお願いに移るわけでございますが、情報をよくとることにおきまして、日本人の研究者の本来持っておる能力をそのほうに活用するようにすればいい。いたずらに情報をとらないで、わりあいにいいように言われております日本人の頭をむだに使うのは非常に残念でございます。そういう点でも駐在員等に関連してそういうことも必要であろう、こういうふうに考えております。
  141. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いま基準の問題について、必ずしも欧州のそのままを受けたかどうかは疑問だと、こうおっしゃいますが、これは全然話が違いますけれども、山田先生もいらっしゃいますけれども、例の瀬板貯水池の下の採掘の引っぱりにつきましても、メートル当たり〇・五ミリという欧州の研究に対して、大事を踏んで〇・二五ミリ、こういうようにおやりになっておる。この慎重さが法案にも必要じゃないかという気持ちで申し上げたわけです。  そこで、いま非常に有益な、国際的な技術交換という話もありましたが、これは国会としても十分検討しなければならない問題だと思います。とにかく落磐の問題を土木技術者からそのマイクロホンを借りて調査をするようなことで、おくれておるわけです。これをひとつ十分検討していかなければならぬ。国も費用を出さなければならぬ問題だと思います。ところで、今度の問題はそれ以前の問題です。とにかく保安法にのっとって勧告をして、指示をして事件が起こっておるわけですから、これはお話にならない問題です。一体、これは三池の場合でも考えられるのですが、一つはこの保安法の規則が、たとえば三池三川のように八千トンも日産出しておるところと、あるいは月で八千トン出しておるところ、あるいは年産八千トン出しておるところと——なるほど若干法律は違います。法律はたとえば監督員を置いておる場合とかいろいろ違いますけれども、その危険度というものについて、炭鉱の規模ということをもう少し考えなければならぬのじゃないか。ここでちょっと炭じんが多いということを注意する。三池の場合、これは一日ほっておけば八千トンも出る。普通の炭鉱でいえば一日で一月分も出るわけですから、規則にそういうようなものも加味してやる必要があると思うのですが、そういう点が一つ抜けておるのではないか。こういう点が一点と、それからもう一つは、率直に言って、三池夕張炭鉱監督するようでは、保安監督員を何千名雇ってみても始まらぬと私は思うのですよ。これはこの前もわれわれ調査で行きましたが、一番恐縮しておるのは監督官庁でして、どうも経営責任にある人はそれほどに思っていないのじゃないかという感じがしたわけです。というのは、労使ともに災害というものになれっこになっておる。それは災害が起こったときには非常に憤激しておりますけれども、やっぱり何と言っても、いままで災害がなかったんだから、おれはいままで生きておったんだからと、なれっこというものが非常にこわい。こういう北炭のような大炭鉱で、たまたま入った監督官から注意を受けるなんということは、私は実におかしいと思うのですよ。しかも通気坑道が狭いというような注意を受け、勧告を受るというのは、きわめて不見識な話だと思うのです。これは法規とかそれ以前の問題です。ですから、これを措置するといっても、教育であるとか、あるいは大臣が経営者を呼んで訓示をしてもなかなかうまくいかない。そこで今度逆に経済的な罰則を加えれば——私は刑事罰の話をしておるのじゃないのですよ。経済的な罰則を加えれば、これはうまくいくのじゃないかという気がするのです。そろばん勘定を合わしてみて、どうもこれは災害を起こしたほうが損だということになる。それは、災害を起こしたくてやる人はないのです。ないのだけれども、どうも採算ベースから見て、そんなに保安のことを言っておってはやはり出炭が落ちる、こういう気持ちからゆるがせにする。ですから、もう少し法に示しておる、作業個所の停止であるとか、それができるまでは、改善されるまでは作業は中断をするとか、こういう法運用について監督官庁はぴしっと態度をはっきりすべきではないか、こういうふうに思うのですが、ひとつこの二点についてお聞かせ願いたい。
  142. 中野実

    ○中野参考人 山の規模で保安法関係のニュアンスを違えるというお話につきましては、たしか昨年も保安統括者制度をつくりまして、いろいろ私もわからないなりに検討の仲間の一人に加わった次第でございます。   〔委員長退席、藏内委員長代理着席〕 仰せのとおり確かに法とか規則とかの既成概念を離れまして、その必要があると思います。ですから、これを法制的にもう少し練っていただくことは確かに必要でありまして、そういう意味保安法を五、六年前から抜本的に改正せよということの決議をいただいておりますし、あるいはしておるのですが、なかなか専門家の白ばかまと申しますか、専門家が寄ってそれをしますと、何かこだわってしまって、どうしても抜本的にできない面があるわけです。ですから、今回の災害を契機にするわけではありませんが、一つ違ったコミッティみたいなものをつくりまして、これにただ働きをさせるわけにはいきませんから相当の金をつけた別のコミッティをつくって、少し長くやらせて、保安局その他の意見を参考にしてやれば、あるいは一つの抜本的なものが現行法規と無関係にできて、しかも現行法規に盛り込んでおる精神がうまくつかまえられるようになるのではないかという感じもいたします。これは私の一つの提案でございます。  それから労使なれっこの点は、これは労使なれっこの前提に、やはり原料炭山の性格が変わってくるのじゃないかというのが、私の何と言いますか、偏見でございますが、原料炭山の労使は少し安心しておるという感触でございます。  それから経済的の罰則を与える点でありますが、これは全く想像でございますが、今回の夕張のあれは、小かせ掘進をしておるという状態でございます。極端に申しますと、つまり十分風量が確保できるように坑道を切っておれば、さらに掘進長は短かくなるから、小かせでやろうというような感触からきておるのではないかと思います。ですから、もしこれに罰則を加えますと、小かせになると爆発するので、私はこういう場合には、金属鉱山で行なわれておる探鉱奨励金というのがございますね。非常に乱暴な議論でございますが、探炭奨励金をつけますと、掘進はどんどん伸びていくのではないか。そうしますと、生産も安定してくるのじゃないか。これも一つの偏見でございますけれども、そんなお答え方を申し上げたいと思います。
  143. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうも今度の場合は、探炭ではないですね。作業場の……。
  144. 中野実

    ○中野参考人 ですから沿層坑道がすっかり伸びておれば、しかも断面がしっかりしたところで伸びておれば、通気が取れまして、さっき伊藤先生が言われましたような十分な風量があれば、ガスが薄められておるという概念です。ですから、災害場所そのものでは、これは御承知のように掘進のおくれというものが非常に顕著で、いま取り返しつつあるわけですが、その掘進も大断面で機械化してやる場合と小かせで手積みでやる場合とは違いますが、苦しい場合には小かせで進むという形をとる。したがって生産性の向上のためには、岩石坑道も必要だし、沿層も必要である。だから沿層については沿層奨励金というような珍案を出したわけです。
  145. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 先ほどから組夫の話が出ておりましたが、組夫災害が非常に多いという実態に即して、これは何らか対策をしなければならぬと思います。従来は、炭鉱には御存じのように組夫というのは比較的他の産業よりも少なかったわけです。社外工という形は造船所なんかにはありましたけれども、炭鉱にはなかったわけですね。それが経営がだんだん悪化するに従って、組夫という形が出てきた。わりあいに臨時的なものじゃないわけです。立て坑を打つとか、そういったものでなくて、あるいは若干岩石坑道なんか、今度北炭でも岩石坑道の掘進がありますけれども、そういったことでなく、普通の掘進に組夫を使っている。ですから災害の起こったときは、被害者として一緒に入っておる。あるいはまた、中小炭鉱だけではございません、大手でも第二会社と言われるところは、最近はみな採炭に組夫を使っている。現実炭鉱に行かれると、何々組が何トン、何々組が何トンと、こう書いてある。これは使っておるわけです。これは労働組合にも責任があるわけです。自分たち本鉱員の労働条件の維持だけ考えて、組夫のほうは知らぬという形もいかぬ。しかしこれは人命の問題ですから、どうしても組夫という制度については、賃金その他の問題もあるけれども、保安教育だけはぴしっとやっておく必要がある。そこで保安教育を、第三者が何か関与してやる方法はないか。第三者による訓練。おそらく組夫というものは保安教育なんかしていませんよ。第一その組が人間を把握していないのです。とにかく、おれは百名持っているというけれども、毎日出てくるのは五十名しか出てこない。こういうような仕組みですからね。災害があったらだれがほんとう坑内に入っているか、正直に言いますとよく把握できませんよ。前身はいままで炭鉱にいた人がかなり多いから、何とか組が維持できておるのですよ。しかし、その組に入ってから保安教育をしたのじゃないのです。前に前歴としていろいろな炭鉱におった連中がいるから、何とかやっておるわけです。これがたとえば港湾とかその他の方面から炭鉱に入ったのなら、たちまちけがをすると思う。教育は全然していないのですから。教育をしたというのは、前の炭鉱において教育されたのです。その経験者以外には、新しい組夫を教育するということはほとんど考えられない現状です。ですから組夫をなくせといいますけれども、もし組夫を認めるとするならば、何らかの機関で何日間か教育をする、こういう制度が必要ではないか、こういうように思うのです。
  146. 山田穣

    ○山田参考人 細谷先生、多賀谷先生から組夫のお話が出ましたが、実際に組夫災害率が最近ふえているという事実から勘案しまして、組夫保安教育を何らかの形で施さなければいけないのでないかという御意見には私も賛成いたします。伊藤先生ガス、炭じん爆発は絶対に防げるという御信念は、私ももう三十五、六年前から学生にも申しましたし、業者にも言っておるのですが、理屈どおりにいかないところに保安のむずかしさがあるのではないかというふうにこのごろ考えるのです。たとえば志免炭鉱が閉山の二年くらい前に、あそこの払いで短い間隔を置いて二回事故が起きました。それで私ども行って調べてみたのですけれども、あそこの払いの中に帯状充てんを一ヵ所残しているのですね。それが学問的には天磐に非常に悪い影響を与えて、その周囲が落磐するのです。しかし鉱員はあれがあるというと非常に心強いから、あれだけはどうしても残してもらわなければ坑内に入らぬというものだから残しているという説明でございました。保安教育をして、これがあると大丈夫のように見えるけれども、このために非常に天磐を悪くするのだという教育をしなければなあという話をしたことがございます。それから炭鉱保安係が個所個所のガスを測定しまして保安日誌に書き込むのですが、これははかるところがちゃんときまっておるわけです。これも、はかるのはガス爆発を絶対になくするのであるという信念に徹すれば、そのきまった測定個所でなくても、あそこはどうだろうかというようなところもはかるようにならなければ、ほんとうガス爆発の根絶というようなところまではいかぬのじゃないか。つまり保安教育の職員並びに鉱員に対する徹底ということが非常に必要じゃないかということを、私は痛切に感じておるのでございます。ちょっとそれだけ申し上げます。
  147. 中野実

    ○中野参考人 関連してちょっと申し上げたいと思います。保安教育、第三者による訓練というのは非常に必要だと思うのですけれども、いま保安局長のお話をちょっと思い出しましたが、保安法からいきますと、鉱山労働者には一応組夫もみな入ってしまうようであります。したがって教育はしなければいけないということになっておりますが、実態の違うところをどう措置したらその目的を達せられるかについては、むしろこれは行政当局にあれして、ひとつその具体策を研究していただく必要があるのじゃないかという気がいたします。  それから教育のしかたでございますが、保安教育保安教育といいましても、実際は現場で助手になってやるような形が多くて、なかなか技術上の保安教育ができがたい面があったわけでございますが、これは一昨年の、三十七年の石炭鉱業調査団の答申の二十二ページにあります頻発災害云々の結果、何か教育用の予算が保安局扱いで取れたと思います。それを種にいたしまして、先般非常にたくさんの保安教育テキストが、全国一律と申しますか、この保安教育も個所個所によっていろいろ違うものでございますから、レベルが違った講師や人によっていろいろ違うものでございますから、それをあるレベル以上にするためにそういうものを編さんしたわけでございます。その当時私もその責任者の一人でございましたが、ようやく最近でき上がっております。ですからテキストその他はできたわけでございますが、今度これを徹底的にやるにつきましては賃金問題とか、労働条件の一つのように労働組合が考えるわけですから、保安教育の金を出せというような形にいくのではないかと思いますので、その辺の措置がうまくいきますと、組夫に対する保安教育も、いわゆる直轄夫に対する保安教育も、かなり、徹底しできるのではないか、大体そんなふうに考えております。
  148. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 国会に対して、先生方、先ほど国際的技術交流というお話は一つ承りましたが、その他どういうようにしてもらいたいか、御注文を承りたいと思う。と申しますのは、今度ひとつ、考えられるあらゆることをこの際列挙してみたらどうか。できないかもしれません。しかし一応問題点を全部出して、こうしたらいいだろうと皆さんがおっしゃる点を、一応俎上にあげて検討してみたい、こういうように考えるわけです。ですから各先生から、一体どうしてもらいたいか、長い間の経験と学識を持っておる先生方ですから、国会に対する要望がありましたら、法律並びに規則あるいは予算等についてありましたらお聞かせ願いたい。
  149. 中野実

    ○中野参考人 まずこれは保安対策も一つでございますが、石炭全体のことを含めまして、私どもは二、三年来痛感しておることでお願いができることの二、三点を申し上げたいと思います。  まず第一は、昨年の石炭調査団の資料を集計してみますと、日本の経済実収炭量、これが約二十五億トンということになっております。これはきわめて確実な根拠でございまして、現にその採炭計画が四、五十トンの能率でできるということで約二十五億トンということになっております。これを各地域別に見ますと、多少違いますが、それを四十一三年度の各地域別の出炭で割ってみますと、北海道あたりが六十年、それから九州が五十何年、常磐もその程度、それから宇部が百三十年くらいになるわけでございます。この話をある学会で私がちょっといたしましたら、日本の石炭はたりたそれっきりかという印象を炭鉱の方が受けまして、非常に先細りだというような感触のようでございました。そこで私は今回九州のほうを回ってみましてつくづく感じましたのは、たとえば西彼杵炭田、あるいは三池炭田につながります長崎の周辺でございますが、あの辺のボーリングというものは陸上地帯だけでありまして、海底のほうには有明海を除いてはきわめて少ないわけであります。一本か二本ということであります。あの辺では企業がもうかっておりますから企業自体でもできると思いますが、これが国の手厚い援助等によりまして、あそこに三木なり五本なりのボーリングができますと、確定炭量と申しますか、先ほど申しました経済実収炭量がぐっとふえてまいります。そうしますと、先ほど申し上げましたような、九州五十六年というような数字は飛躍的に上がっていくわけでございます。北海道につきましても常磐地区につきましても、そういうことが言えるのでありまして、この際未開発炭田を開発する前に、日本の持っておりますほんとうに掘れる石炭というものは、はたしてどのくらいあるかというようなことを炭鉱界に知らしてやらなければいけない。そのことによって、炭鉱に魅力を持たせるというお話を聞いておりますが、あと五十年といいますと魅力がなくなってきますが、さらに八十年、百年というようなことになりますと、何となく底力ついてくるのではないか、こういうことを痛感した次第でございます。したがいまして、未開発炭田の御調査をただおざなりに、何億か何千万円のやつを何ヵ年かに細く長くつけるというのではよくないので、これを思い切ってやっていただかなければならないのではないか。これが一つの、私なりに考えましたことでございます。  それからもう一つは、御承知のようにいま石炭協会が、大手関係が金を出しまして石炭技術研究所というものをつくっております。これはたしか五、六年前からできておるわけであります。出発当初の意気込みは非常によかったのでありますが、御承知のように、納付金もなかなが納められないというような状況でございます。ところが日本の中で、国立研究機関、あるいは大学等もございますけれども、当面石炭問題に直接タッチして研究する場所は、いま申し上げました石炭技術研究所以外にはいまはない状態でございます。ところがこの石炭技術研究所の年間の資金規模というのは、三億五千万円程度でございます。そのうち一億程度が国からの補助金になっておるという次第でございます。ところがいままでの行政の常識から申しますと、補助金を一億円出せば、業界が一億円負担しなければならぬ。この二億円出せばさらに倍になる。実質は三倍ぐらいになるようでございます。そんな関係で、業界では補助金を御辞退申し上げるということで、四十年度予算は三十九年度予算よりも少なくなっております。そこで、これは大蔵省では大いに意見のあるところとは思いますけれども、補助金がいけなければ、実際に機械をつくるとか買ってしまうとか、何かもう少し、少なくとも資金規模が六、七億円、これでも外国の例に比べますと十分の一以下でまことにみみっちいお話でございますが、かりにこれが倍ぐらい金を使えるということになりますと、貧弱な石炭技術研究所でも相当の活躍ができるのではないか。  それからもう一つ、それに関連します事項は、石炭技術研究所ばかりではありませんが、研究所というものができますと、研究所自体が性格を持ちまして、何でも自分でやりたいというような気持ちになるわけであります。現に石炭技術研究所でも研究室を設けて云々というような提案を聞いたことがあるわけでございまして、自分でやりたいという気持ちはますます強くなってくるのではないかと思います。ところが御承知のように、自分で何でもやるためには、いろいろな人材が必要でありまして、とうてい実現が不可能であることはあたりまえでございます。したがいまして石炭技術研究所は、独自の研究をするよりも、研究調査の窓口になって、そして大学でもほかの研究機関でもいいのでありますが、あるいはその人たちを集めてもいいのでありますが、そういうところに研究を委託する。しかも研究の委託のしかたは、日本の慣行であります、先生お願いしますというようないいかげんな、無責任な委託でなくて、こういうような研究は何ヵ年でできるか、これについて資金が幾ら要るか、人が幾ら要るか、そういう諸外国でやっておりますような契約に基づいてやるような、しっかりした研究の推進のしかたがありますと、これは明らかにそれに沿うのではないか。たとえ五、六億の規模におきましても、その効果は相当あるのではないか。全国には鉱山及びそれに関連した大学の研究者というものは相当おるわけでございますが、これが現実には文部省の管轄の研究費を少しずついただきまして、その資金規模に合わせた研究をしていると言っても過言ではございません。この点がほかの産業ではかなり活発にやっているように見受けられますけれども、事石炭に関しましては、保安が大事である、生産技術が大事であると言いながら、それに対する資金は、人件費を含めて三億五千万円程度、この点をひとつ念頭に置いていただきまして、この辺の推進を業界並びに大蔵省あたりにさとしていただくことが、私の希望でございます。  なお、ほかにもいろいろございますが、その他につきましては両先生から関連してお答えがあると思います。
  150. 山田穣

    ○山田参考人 ただいま多賀谷先生からお話がございましたのですが、こういうことをやってみたいというのをざっくばらんにというお話でございますが、実は三池調査団、あれは昨年の二月か三月に一応報告書を衆参両院に提出いたしましたのですけれども、私どもは外国の石炭鉱業界に見てもらうのには、もう少し科学的な記事を載せないといかぬのではないかというので、なお引き続きいろいろな科学的実験を行なっておるのです。これは近いうちにでき上がるのですが、その中にこういう実験もできればいいのになあというようなことが、だいぶ頭に浮かんできましたけれども、現状ではとうてい実験がやれないから、まあしかたがないなという問題がございます。そういったのを一そろえそろえまして、でき上がりましたならばこの特別委員会のほうにもお送りいたしますので、その一部でもいいから実現できるように御協力をいただければたいへんしあわせに存じます。お願いいたします。
  151. 磯部俊郎

    ○磯部参考人 私から最後に……。もう時間もだいぶたちますので簡単に申し上げたいと思います。  大体石炭産業というものは、日本では会社組織になっておりまして、各区域がいわゆる鉱区というのを持っておりまして、その鉱区を開発しておるわけであります。最初は小規模のものから出発したのでございましょうから、大した不合理を感じなかったのでございましょうが、だんだん炭鉱が整理統合されて大きくなっていくに従って、鉱区の不合理という問題が出てきたと思います。これは現に、いろいろなことを鉱区調整という問題について考えられておりますが、これをさらに一歩進めて、鉱区を強力に調整するというようなことを行なえば、いわゆる施設的にも保安的にも、非常に合理的な炭鉱ができ上がる、そういうように考えることが第一点でございます。  それから二つ目は、炭況の不況というものは、一つにはいますぐという問題ではございませんが、炭鉱がパワー・ステーションになれない、発電ができないというところに問題点があると思います。外国炭鉱では、自分のところで電気をつくって、それを電力会社に売っております。ところが日本では石炭をなまで電力会社に売らなければならないというような現状でございます。この点エネルギー産業という点から考えて、ひとつ公益事業法というものについての御検討を加えていただければ幸いだと思います。  三番目は、九州には試験炭鉱がございますが、北海道にはまだ不幸にして試験炭鉱がございません。生産の規模は、九州も北海道もほぼ同じくらいになっております。この際やはり保安とか生産、そういったものの試験研究を推し進めるべく、北海道にも一つの試験炭鉱を設置していただきたい、そういうふうに思うわけでございます。  四番目は、いわゆる研究施設というものを分散しないで、われわれなんかの力を一ヵ所に集めて、ある程度兼任とか併任とかいう形で、一つの研究所につとめる。そこに大予算をつけて集約的に考える、そういうやり方がいいのではないか、こう私は思います。  以上四点でございます。
  152. 藏内修治

    ○藏内委員長代理 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多忙中にもかかわらず、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  次会は明十一日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十六分散会