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1965-04-06 第48回国会 衆議院 商工委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月六日(火曜日)    午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 内田 常雄君    理事 浦野 幸男君 理事 小川 平二君    理事 小平 久雄君 理事 田中 龍夫君  理事 中川 俊思君 理事 早稻田柳右エ門君    理事 板川 正吾君 理事 加賀田 進君    理事 中村 重光君      稻村左近四郎君    小笠 公韶君       海部 俊樹君   小宮山重四郎君       佐々木秀世君    田中 榮一君       田中 正巳君    田中 六助君       中村 幸八君    二階堂 進君       古川 丈吉君    三原 朝雄君       桜井 茂尚君    田中 武夫君       楯 兼次郎君    山下 榮二君  出席国務大臣         通商産業大臣  櫻内 義雄君  出席政府委員         通商産業政務次         官       岡崎 英城君         中小企業庁長官 中野 正一君  委員外出席者         参  考  人         (東京中小企業         投資育成株式会         社社長)    江沢 省三君         専  門  員 渡邊 一俊君     ————————————— 四月六日  委員村上勇辞任につき、その補欠として稻村  左近四郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員稻村左四郎辞任につき、その補欠とし  て村上勇君が議長指名委員に選任された。 同日  理事稻田柳右エ門君同日理事辞任につき、そ  の補欠として浦野幸男君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  中小企業投資育成株式会社法の一部を改正する  法律案内閣提出第九一号)  小規模企業共済法案内閣提出第七六号)      ————◇—————
  2. 内田常雄

    内田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出中小企業投資育成株式会社法の一部を改正する法律案及び同じく小規模企業共済法案、以上一案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。小宮山重四郎君。
  3. 小宮山重四郎

    小宮山委員 小規模企業共済法案について、中小企業長官政務次官にお伺いいたします。  まず、昨年来の経済不況あるいは解放経済への移行ということで、労働力不足など、中小企業、特に零細企業を取り巻いている経済環境というものが非常に変化してきている。また昨年来の不況から中小企業零細企業というものが経営が困難になって、経営者の意思とか努力にかかわらず非常に倒産が多いというような状況でございますけれども、この倒産廃業原因というものが、小企業零細企業においてはどういう原因であるか、そういう点についてまずお伺いしたいと思います。
  4. 中野正一

    中野政府委員 いま御指摘の点は、非常にむずかしい問題でございますが、全般的にわが国中小企業を取り巻く環境というものは、御承知のように昨年来非常にシビアーになってきておるわけでございます。これは何といっても一つには、最近の数年間の高度成長の結果、労働力需給関係が、もう根本的に情勢が変わった、いわゆる人手不足をかこち、賃金上昇人件費上昇中小企業は非常に苦しんでおります。これにどう対処していくかということが一番の大きい問題だろうと思います。それからもう一つは、いわゆる昨年の初め来、解放経済体制下わが国経済が入っていったということのために、一つには技術革新あるいは流通革命といわれておるような情勢、またいわゆる大量生産大量消費という形にだんだん経済の形が変わっていき、同時に外国品が、貿易自由化に伴ってだんだん自由に入ってくる、また同時に資本の導入等についても、もちろん政府中小企業に対して悪影響のないように配慮はいたしておりますが、これもなかなかいままでのようにきつく規制をするというわけにはいかないというようなことで、いわゆる中小企業の製品に対する市場関係というものが相当変わってきた、こういう情勢でございまして、いま御指摘の、特に規模の小さい零細な企業等につきましては、そういう市場関係というか、需給関係というか、そういうものの変化、それからもう一つは、何といってもやはり人手が足りない、賃金も上がっていくということの中で、零細企業者自身のいわゆる生産性の向上というものがなかなか思うにまかせない。そういう中に、昨年一年間のいわゆる金融引き締めの影響というものが、だんだん末端に及んでまいりまして、特に零細な下請企業等中心にしまして非常に支払い条件が悪くなってきた、こういうことのために無理な借金をして経営をやらざるを得ない。ところが、そういうさなかでもって、一つには零細なそういう企業者に対する金融円滑化というものが必ずしも、政府はいろいろ対策をやっておりますが、十分にいっておりません。そういういろいろな、いま申しましたようないわゆる構造的な要因、あるいは循環的な要因といわれておるようなものが重なりまして、転廃業に追い込まれる、こういう状況になっておるのではないかと思います。
  5. 小宮山重四郎

    小宮山委員 いま労働力不足あるいは金融の逼迫その他によって相当零細企業、小企業廃業するに至った、こういう、ひんぱんに起こるからこそ、こういう小規模企業共済法のようなものを制定しておくのか、あるいは中小企業基本法にのっとってこういうものをつくったのか、そういう点についてお伺いしたいと思います。
  6. 中野正一

    中野政府委員 いま申し上げました中小企業の中でも、特に中小企業の底辺をなしておる、非常に幅の広い、まあ大体三百万近い企業者があるのじゃないかといわれておりますが、そういう中小企業の中で八割以上のウエートを占めております小規模零細企業、こういうものに対する施策というものが、そういう情勢シビアーなだけに政府としても特別の配慮をせねばいかぬじゃないかということから、昭和四十年度の中小企業対策費の中でも特に小規模企業対策というものに重点を置いたつもりでございます。  第一には、設備近代化資金拡充する。これは主として製造業でございますが、これも大体主として比較的零細な企業者であって、一般の市中の金融機関でなかなか資金の調達が簡単にできないというような製造業を主として、これの近代化をやらせようということで、これにつきましては特に設備近代化資金拡充して、そういう国民生活にほんとうに密着した業種というものをどんどん対象業種として取り上げていきたいということを第一と考えております。  それから御承知のように、従来からありまする商工会商工会議所を通ずる経営改善普及事業拡充、これも約十四億円程度の金をとりまして、全国に四千七百名程度指導員がありますが、これのベースアップも行ないまして——いわゆるこういう零細企業というものは、まあ企業とはいえない段階にあるものが相当あるのであります。いわゆる生業的な要素が多いので、これにできるだけ経済性を与えるというか、経済性を持ってこの企業を営むように、経営指導経営指導といってもやはり金融のお世話であるとか税務の指導であるとか、そういうところから始まると思いますが、そういうことをひとつ拡充したいというのが第二点でございます。  それから第三点は、これも本委員会ですでに審議されまして、附帯決議をつけられて通過しておりますが、法案の審議は終わっておりますが、例の無担保、無保証人による融資保証制度をつくりたいということでやっておるわけであります。またもう一つ、零細な下請企業、いわゆる第二次、第三次の下請企業が非常に困っております。こういうものに対して支払い条件をよくするということも必要でありますが、むしろ今度は積極的に、たとえば協同組合をつくらせる。あるいはもう一つ、今度の予算で考えておりますのは、下請企業振興協会というような、府県と国が一緒になりまして下請あっせん機関をつくりたい。これは初めてのことでございますので、全国で二カ所ばかりつくりたい。そういうふうな拡充をはかるというような政策をやっておりますが、いま御指摘になりました小規模企業共済法というものも、いま申し上げました小規模企業振興対策の一環として考えておるわけでございまして、その本旨は、小規模企業者相互扶助精神に基づきまして、廃業あるいは退職後におきます生活の安定あるいは事業の再建に備えまして、各人が共済金拠出いたしまして、その拠出によって共済事業を行なうということを考えまして、これに対して国が必要な助成措置を講じよう、こういうことを考えておるわけでございます。
  7. 小宮山重四郎

    小宮山委員 いまのお話で、この法律案の第二条に、小規模企業者というものが企業自身でなくて経営者個人ということになっております。ほかの中小企業基本法とかその他関係法案においてはそういう規定がないのでございますけれども、この法律は、私読んでみまして一番感じましたのは、企業共済制度ではなくて、ある面では零細企業、小企業者廃業を促進するような共済制度というか、廃業保障制度というか、そのように感じられるのですけれども、その点についていかがですか。
  8. 中野正一

    中野政府委員 これは、御指摘ありましたが、確かに今度の共済制度というものは、いまの零細企業者が置かれておる環境、今後の経済情勢推移等から見まして、転廃業というような情勢にだんだん追い込まれていくのではないかということはございます。しかし、この制度はあくまで小規模事業者皆さん方相互扶助精神による拠出による共済制度でございますので、決してこれは廃業を促進するというような意味ではなくて、日ごろから積み立てをして、その金によって、たとえばそれが満期になる一これは三十年満期に考えておりますが、それから六十五歳以上になりますというと、二十年以上かけておれば給付を受けられるという制度になっております。それから廃業の場合はもちろん給付を受けられる。それから役員退職する場合にも給付を受けられるということになっておりまして、その意味で全体的な零細企業者共済制度、しかし先ほども言いましたように廃業退職の場合に備えた給付制度というような一種年金のようなもの、あるいは保険のような制度、こういうものは零細企業者個人事業主及び会社役員については、ほかの制度では全然ございませんので、その点をひとつ考えようということでございます。
  9. 小宮山重四郎

    小宮山委員 そういうことでございますので、ある面では名前自身も何か看板に偽りありというような感じもしないわけではございませんけれども、現在のように経済状況その他が非常に不安定、またわれわれとしても小規模企業が安定して、かつ伸びていく、発展していくということはだれも願っていることなんです。いま長官お話でございますと、満六十五歳、二十年かけ金あるいは三十年かけ金というようなことでございますけれども、実際において小規模企業者あるいは零細規模企業者という人たちは、そんな先のことまで考え得るだろうか。あるいは来年のこともわからないというような現状ではないかと思うのです。そういう意味においても、共済制度を行なうにあたって、将来長官としては何かこれを発展させるような意向あるいはそういうような考え方があるのかないのか、お伺いしたい。
  10. 中野正一

    中野政府委員 いま御指摘ありましたように、零細企業等につきましては、確かに転廃業等情勢に、過去においてもそういう情勢がありましたが、今後もそういうことになるのじゃないか。ちょっと数字を申し上げますと、三十七年度の中小企業総合基本調査によりまして見ますというと、製造業は三十三年から三十七年までの五年間に約一六%が新しく零細企業の分野に入ってきておるということでございまして、全体の数がそう変わりありませんので、大体同じ程度のものが廃業しているんじゃないかというふうに見ております。それから、商業関係でございますが、これは商業センサスによりますというと、商業平均廃業率が一年間に三・四%、小売り業がやはり二・九%ということになっておるわけであります。これで見ますというと、廃業の率というものは相当高いんじゃないかというふうに一応見られるわけであります。また、それだけ入れかわりも大きいわけでありますが、しかし、日本零細企業の場合も、いわゆる家族経営というようなものの特色を生かして、これは小規模は小規模なりに、今後ともやり方によりましては十分成り立ち得るし、過去の実績等を見ましても、相当程度転廃業はございますが、大部分のものはちゃんとした基礎の上に立ち、今後も指導よろしきを得、あるいは先ほど申し上げましたようないろいろな対策を、もちろん不十分でございますが、いろいろな零細企業に対する適切な対策をやっていけば、それをもとにして自力でもって今後やることができるように考えております。
  11. 小宮山重四郎

    小宮山委員 実際この共済制度を見てみますと、非常にメリットが少ない。たとえば税法上の面においても保険控除のワク内でやられておる。実質的にこういう制度をつくって、いまところ長官としてはどのくらいの人が加入し、どのくらいに発展していくと考えられるかお伺いしたい。
  12. 中野正一

    中野政府委員 お答え申し上げます。この小模模共済事業団をつくってくれということは、過去一年来中小企業業界から非常に要望が強くございまして、特に商工会議所中小企業団体中央会あるいは各種組合、あるいは税の関係でいいますと、各地にあります青色申告会、ここらからわれわれのところへ、ぜひこういう小規模共済法のようなものをつくってほしいという要望が非常にございました。また、中央会あたりでは、役所のほうでそういうことを考えてくれなければ民間自力でやろうという動きも出ておったわけでございます。また、別個に各種組合等中心にした、これは政治的な色彩があるような団体でございますが、日本中小企業政治連盟——政連という機構がございます。ここでは傘下中小企業でつくっておる組合等中心になっておるのでありますが、ここで転廃業等に備えて一種共済制度自力でやろうということで現在すでに制度ができて——ただ、政府のほうでこの共済事業団ができますと、これとダブる面は、向こうでやってもあまり利益がないということで、両者がダブらないような形でやろう。それから、今度政府事業団ができれば、この事業団に対する加入の促進とか、あるいは掛け金を代行して代理業務をやるとか、そういうことはやりたいということを申しております。いずれにしましても、そういうことで、非常にこの制度は、先生が御指摘がありましたように中途はんぱというか、零細企業者恩典の少ない制度じゃないかというおしかりの点は、われわれも非常によくわかるわけでありますが、しかし、いままでの零細業者要望からいうと、ぜひ最小限この程度のものをつくってほしい。そうすれば、商工会議所あるいは中央会、あるいは地方にあります商工会等が、その傘下のものを動員してできるだけこれに入る。これは大ぜいのものが入らなければ効果も十分あらわれない。法律にも書いてございますが、相当掛け金が集まれば、これを、たとえば転廃業資金災害復旧資金等還元融資をしようということも考えておりますから、そういうことで、特にそういう関係中小企業団体の御協力を仰ぐ意味もございまして、また、そういう御協力を仰がなければうまくいかないわけでありまして、四十三条に、事業団は、通商権業大臣の認可を受けて、事業協同組合その他の事業者団体に対して、事業団業務あるいは調査広報その他の業務の一部を委託することができるということになっておりまして、たとえば、そういう掛け金を毎月毎月中小企業者が、これは五百円単位になっておりますから、五百円単位で最大が月に五千円ですから、それだけの金を集めるのもたいへんな仕事でございますので、組合とか商工会議所とか商工会にこれを代行していただこうということで、またこの代行される場合には適正な手数料もお支払いしよう、こういうようなことも考えておりまして、各種団体協力を仰ぎまして、特にその制度趣旨広報、普及するというようなことを十分やりますれば、相当これは効果があがるのじゃないかというふうに私は見ておりまして、一応四十年度は加入目標事業主の数の約一%の三万人を最小限見ておる。そうして次年度以降の増加見通しにつきましては、たとえば類似の制度でありまする労働省でやっております中小企業退職金共済事業団がございますが、これなんかの実績等を勘案しまして、五年後には加入者が二十六万人、余裕金の総額が約二百億円程度目標として、ぜひこの程度のところには持っていきたい。労働省のやっております退職金共済事業団が発足後大体五年たっておりまして、三十九年度で百億円以上の金がいま集まっておりますが、この金はほとんど大部分を商工中金で債券を買って、結局中小企業なりに金が流れておるということに、運用面でもそういうことになっております。
  13. 小宮山重四郎

    小宮山委員 いま余裕金手数料の話その他が出てまいりましたのですけれども、大体商工組合その他商工会議所を通してやられるようでございますけれども、この手数料というものは大体どのくらいにきめているかということ、それから余裕金でございますけれども、余裕金を直接還元融資あるいはそのような形でするのは何年後に考えておるのか、その点もお聞きしたいと思います。
  14. 中野正一

    中野政府委員 手数料の点につきましては、要するに実費をまかなう程度ということで、いまいろいろ各団体によって事情も違うようでございますので、調査をいたしまして慎重に決定いたしたいというふうに考えております。  それから還元融資できる時期は、おそくとも三年後には還元融資ができるようにいたしたいと思っております。
  15. 小宮山重四郎

    小宮山委員 まず私、この法案の中で、先ほど長官が申しておりました一口五百円、十口五千円まで、この五千円に区切った、あるいは一口五百円に区切ったということはちょっと額が小さいのではないか。なぜかといいますと、廃業した場合、三十年かけても二十年かけてもたいした金額にならない。保険のほうがもっと率がよく、かつ、もっといただけるのじゃないかというような気がいたしますのですけれども、その点について……。
  16. 中野正一

    中野政府委員 この五百円、五千円にいたしましたのも、実はなかなかあれがむずかしいのですが、零細企業者年所得というものは、一年間平均して大体五十万円程度、非常に低いわけでございます。それで、中小企業に働いておる人とそれほど所得も変わらぬじゃないか。そこに先ほど言った社会保険であるとか、労働保険とか、いろいろな年金制度というようなものの適用がない。こういうことをいろいろ考えまして、したがって、労働省とうちでやっております中小企業退職金事業団制度というものを一応参考にしてつくった関係もございまして——これは一口二百円であります。二百円の、最高二千円であります。したがって、こういうことのバランスも考えて、これは非常に高い金額にしてもいいじゃないかというお考えもあると思いますが、できるだけやはり零細な企業者に全部に行き渡るようにということも考えまして、最低五百円、最高五千円、それで三十年満期の場合には、これは保険よりも満期の場合にはうんと有利になっている。保険というのは、御承知のように、途中で死亡とかなんとかで支払いもする。それから経費も、全部掛け金の中から経費をやるわけです。私のほうの今度の事業団のほうは、事業団運営費というものは全部国庫補助でやっている。しかも政府は四千万円全額出資するというような助成をやっておりますので、満期の場合はもちろんやる。それから先ほどもちょっと御指摘がありましたが、廃業の場合にややウエートをつけて給付を考えるというようなことをやっております。五千円毎月かければ、三十年満期で五百七十二万円ということになるわけでございます。まあ、これも非常に少ない金じゃないかとおっしゃられればそうなんですが、零細企業者の実情からいうと、これも相当給付じゃないかというふうにわれわれは考えております。
  17. 小宮山重四郎

    小宮山委員 いま掛け金の問題が出ましたけれども、もう一つお聞きしておきたいことは、別表の上と下と分けてある。これはなぜ分けたということと、計算してみますと半年複利のようでございますけれども、それの二年間はほとんど金利が入っていないというような現状でございますけれども、なぜこれは初めからもっと零細企業のためにそういう金利を含んだ計算をしてやらないのか。たとえば、半年複利五分、下の段で五分五厘の計算をしていきますと、二十四カ月ですか、二年たったときに、やはり金利の面においてもちょっと違ってまいります。それからもう一つ、一年かけたときには掛け捨て、そうして二つの要因があって、六十五歳二カ年という要因を満たさない場合、途中でやめた場合は金利がついていない。何か八〇%ぐらいしかもらえないということである。そういう面において、一番最初に申し上げましたように、中小企業が二十年先、十年先がわからないというのが現状なのに、なぜ金利をかけて返してやらないのですか。元本の八〇%しか返さないということに対して私は非常に理解に苦しむのでございますけれども、その点について伺いたい。
  18. 中野正一

    中野政府委員 いま御指摘がありましたように、一年間は掛け金の途中でやめれば掛け捨て、それから三年までは元本ということになっておりまして、これはやはり一種共済制度でございますので、退職金共済事業団の場合はこれよりなお条件が悪くなっておりますが、これはやむを得ないことじゃないか。それから、いま先生がおっしゃった任意解約ですね、任意解約の場合は、掛け金の一〇〇%から八〇%の範囲で政令で定める金額をお支払いする。これはもちろんこういう共済制度でございますので、それかといって、これは強制にすれば一番徹底するわけですが、強制にするわけにもまいりませんので、いろいろ考えてこういうことにいたしたわけであります。  それから上段と下段のほうは、要するに解廃業会社が解散した場合、あるいは事業主を廃止した場合、これは死亡した場合も入りますが、そういう場合にややウエートをつけて、役員退職の場合、それから六十五歳以上になって二十年以上かけた場合、こういう場合とやや区別して、今度の制度趣旨からいってややそこに差別をつけたほうが適切じゃないかと考えたわけでございます。
  19. 小宮山重四郎

    小宮山委員 もうやめろということでございますので、最後に一番お伺いしたいこと、また希望することを述べて、私の質問を終わりたいと思います。  この小規模企業共済法の、一番最初に申し上げましたメリットが少ない、あるいは控除といいますか、税法上の問題についても非常に恩典が少ない、そういう面において中小企業庁長官あるいは通産省政務次官にお願いしたいことは、今後こういう面において大いに税制上の問題についてもぜひ控除を多額にしていただきたい、あるいはもっとメリットを、還元融資のようなものを積極的にやって、中小企業の中で最も弱い零細企業を保護してやっていただきたいということをお願いして私の質問を終わります。
  20. 岡崎英城

    岡崎政府委員 ただいまの小宮山先生の御意見でございますが、通産省といたしましても初めての試みでございますので、非常に慎重にかまえていたしました点がございますので、中小企業の方方に対して十分なお助けにならないような面もあるように思います。いまおっしゃいましたようないろいろな点につきましては将来十分考慮いたしまして、満足のいくような体制に持っていくつもりでおりますことを御承知いただきたいと思う次第でございます。
  21. 内田常雄

    内田委員長 ただいま参考人として、東京中小企業投資育成株式会社社長江沢省三君が出席されましたので御紹介をいたします。  参考人には、委員質問に応じ随時御答弁をお願いいたします。  加賀田進君。
  22. 加賀田進

    加賀田委員 この投資育成株式会社事業が発足してからわずか一年半程度なんです。一年半程度事業を継続して、あらためて事業内容を拡張しよう、こういう改正なんですが、いわゆる転換社債をあらためて引き受けるという点と、一応投資した会社に対して、資本金が一億円以上になってもなおその投資を行なうことができる、いわゆる株式を引き受けることができる、こういう二つの内容になっておる。  そこで、まず基本的にお尋ねをいたしたいのは、中小企業というものの概念について、この法律の頭には中小企業というものがついておるわけですが、御存じのように、中小企業基本法では資本金が五千万円以下、従業員が三百名以下という規定の中に諸般の中小企業対策というものが樹立されているわけです。しかし今度の改正を見ますると、もうすでに五千万円以下という概念が改正によって吹っ飛んでしまうのじゃないか、したがって、いろいろ中小企業の概念については、五千万円以下がいいか悪いかということは論議がされておりますけれども、政府としては、この改正に基づいて将来そういう概念を近く改正する意図をもって出されたのかどうか、あるいは中小企業という名はついておるけれども、この法律だけにおいて一億以上の会社においてもさらに株式を引き受けようとする体制を考えておるのか。どうも従来の政府の概念がこれによって破れるような傾向があるように私は考えますが、その点政府は将来どう考えておるか、お答え願いたい。
  23. 中野正一

    中野政府委員 いま御指摘ございましたように、中小企業を資本金五千万円というもので限定をしておるということ自体が、もうすでに最近の経済の発展の状況等から見て、もう少し限度を上げるべきじゃないかという要望もございます。しかし通産省としては現在のところ、この中小企業の定義、資本金五千万円または従業員三百人ということ、これは基本法できまっておる考え方でございますので、これを変えるつもりはございません。ただこの法律によりまして実施をしてみた結果、資本金が一億円以上になっても、一時これを増資を引き受けることによって、その結果いわゆる株式の公開ができて、その企業の自己資本充実ということに非常に資するという場合が例外的にございますので、そういうようなことをこの法律できめようということでございまして、この中小企業の定義をこの法律でこういうふうにしたからといって、その方向に傾きつつあるということは、われわれとしては考えておりません。
  24. 加賀田進

    加賀田委員 一年半運営してみて、いわゆる中小企業が株式の開放、公開をするために、さらに増資が必要だということの事情によって、一億円をさらに増額する、こういう概念であれば、今日の中小企業対策においても、五千万円以上の企業でも、なお中小企業といって育成しなければならない企業もあるだろうし、あるいは三百名以上の従業員を擁しておる中小企業においても、法律的には中小企業に該当しなくても、実質的に中小企業として、今日の産業構造の中で助成政策を講じなければならぬ企業も私はたくさんあると思うのです。にもかかわらず、中小企業基本法でそれが制定されて抑えられ、この法律だけに、いわゆる新株を引き受けるために中小企業の概念を破るということになりますと、全般的な概念そのものに私は大きな支障を来たしてくると思う。個々の問題として中小企業育成が必要だということになりますと、中小企業全般の育成をしようとする諸般の法律についても、なお壁を破らなくてはならない問題がたくさん起こってくると私は思うのです。だからそういう意味では、この法律だけで一年半の運営の経過を通じて必要だということで認めることになると、他の対策にも大きな影響を及ぼしてくるのじゃないと思いますが、そういう問題について論議をされたかどうか、あるいはいま長官が言われたように、いろいろそういう論議が政府の中にあるが、将来はどうなるのか。これだけ認めるということが、はたして全般的な中小企業対策としていいのかどうか、将来またこれを中小企業自体の突破口として、さらに今日の基本法に制定されておる中小企業の範囲というものを破ろうとする動きが起こってくると私は思うのです。産業構造が高度化してくる、あるいは中小企業でも近代化が進んでくると、全般的に大企業中小企業とのそういう概念というものが変わってくることは当然だと私は思うのですけれども、そういう問題について、この法律の改正と重大な関係があると思うのです。だからこれだけを切り離して論議をするということは、政府全般の総合的な対策としてまずい結果が起こってくるのじゃないかと思いますが、その点はどうなんですか。
  25. 中野正一

    中野政府委員 この投資育成会社の増資引き受けの対象となる会社は、中小企業でございます。それは資本金五千万円以下——従業員のほうは見ておりません、資本金だけで見ておりますが、あくまで投資育成会社の対象となり得る会社は、資本金五千万円以下の中小企業でございます。ただ、それがいままででもこの投資育成会社が、自己資本充実のためになかなか増資ができにくいので、こういう特別の会社をつくって増資を引き受ける、一億円までいったらそれでストップだ、こういう規定になっておったわけでございます。これを実際実施してみますと、御承知かと思いますが、これは株式公開ということになりますと、いわゆる第二部上場銘柄といいますか、第二部に上場するということになるわけでございますが、これが資本金が一億円以上でなければならぬ。それがしかも過去一年間を通じて一億円ということになっておりまして、最近の実績からいうと、公開し得る最小限の限度が、大体資本金が二億円近くのものでないと公開できないというような情勢になっておるわけであります。その意味で、最近の情勢から、一億円を少しこしてもこの会社が引き受けてあげることによってその会社の増資が容易になり、あるいは公開できて、もうそうなると、投資育成会社のやっかいにならないで卒業生になるわけでありますから、そういうことをやって、またその回収した金をほかの中小企業のほうに投資してやる、こういう趣旨でございます。これはこの法律に限った実際問題から出てきた措置でございますので、全般的に中小企業規模を引き上げようとか、そういうことは基本法に従って考えていくべきだと私は考えております。
  26. 加賀田進

    加賀田委員 この改正の目的というのが、それが五千万円以下で新株を引き受ける、それが一億未満になってくる、さらにその会社が増資をする必要の場合に、一億円をこえてもその会社に対する新株を引き受けるという二段がまえになるのでしょう。最初から、一億円をこえた資本を持っている会社に対して新株を引き受けるという体制でなくて、五千万円以下で一応引き受けて、一億という線で引き受ける、それがさらに増資をする必要が起こってくるという、育成しようとする会社に対して第二回目の増資をする場合の新株を、これは一億円という限度ではなかなか発展性がないから、法律では通産大臣の許可を得て、こういうことになっておりまして、法律的にはこれは頭はどんどん伸びることになっております。一応のめどは私は持っていると思うのですが、そういう二段がまえになるわけなのです。そうすると、二回目の新株を引き受ける場合にはすでに資本金としては中小企業の概念から離れてきている、こういうことになるわけです。そこで問題になりますのは、たとえ三百名以下であっても、そのぎりぎりの企業においては増資をして企業拡大を行なうということになると、当然私は従業員の増加ということも必然的に起こってくるのじゃないかと思う。そうなると、私は、実質的に中小企業の概念から離れた企業にあらためてこの会社が新株を引き受けるということになるのじゃないかと思うのです。だから、そうなってまいりますと、いま申し上げたこの法律の適用においては、中小企業以外のいわゆる中堅企業といましょうか、中小企業から中堅企業に移行した企業にもこれが可能な状態に私はなってくると思うのです。  大臣に一つお尋ねいたしますが、法律的にはこれは一億をこえてもいい、通産大臣の許可を得るというが、一体どの程度まで増資後の資本金を増額した企業に対して認めようという意図を持っているのか、これは本委員会で明らかにしてもらわなければならぬと思います。法律的には一応一億円をこえる、こうなっておりますから、一千億も一兆億も認めることになりますから、その点はひとつ明確にしてもらいたい。
  27. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 現行の中小企業の観念からいたしますと、ここになかなかデリケートな問題もあろうかと思います。私がどの範囲に許可をするかということにつきましては、一応二億円を限度とするめどを置いております。そういうことでございます。
  28. 加賀田進

    加賀田委員 長官、投資を二段にするということについて。
  29. 中野正一

    中野政府委員 これはいま先生指摘のとおりで、現行法は五千万円以下の会社に投資育成会社が投資をする。したがって、たとえば資本金四千万円の会社に対して二千万円この投資会社が引き受けるということになると、資本金が六千万円になるわけであります。それがさらにもう五千万円どうしても増資したいというようなときに、それはたとえば半分は従来の株主が持つ、半分は投資育成会社が引き受ける、こういうようなことで、そのときには一億一千万円になるわけですね。そうなると、この投資育成株式会社が現行法では引き受けられないことになるわけで、ちょっと窮屈過ぎはせぬかということで、今度の改正をいたしたわけでございます。したがって、この法律だけをごらんになれば、いわゆる中堅企業という定義をどう見るかということは別として、中小企業の卒業生を健全に育てていくという面がこの法律には現実問題としてあることは御指摘のとおりでございます。
  30. 加賀田進

    加賀田委員 そこで具体化にお尋ねいたしますが、結局中小企業基本法では従業員も三百人以下と規定されておりますが、もし第二回目の増資新株を引き受けるという場合に、大臣の答弁では二億円の資本金まで認めようという意思でありますけれども、そうなってまいりますと、従業員の増加というものも指導方針として一つの規定になっているのかどうか。三百名以上従業員が第一回の増資において増加している、資本金は一億円以下というような場合には、これは中小企業の概念から離れてしまいますね。二つの条件とも中小企業の概念から離れてしまいます。そういう場合には、二回目の増資の新株の引き受けをするのかどうか、その点を明らかにしてもらいたいと思います。
  31. 中野正一

    中野政府委員 この法律の対象となる中小企業は、あくまで資本金だけで見ておりまして、従業員は投資会社としては数がどうなるということは基準にしておりません。資本金だけでございます。
  32. 加賀田進

    加賀田委員 そういたしますと、これは法律にございます中小企業投資育成株式会社中小企業という頭は取ってもらわなければならぬと思います。そうしなければ中小企業という全般の概念から離れてまいります。従業員が三百名であろうと四百名であろうと、それは関係がない。資本金というか、まず最初の新株を引き受ける場合には五千万円という中小企業の概念で押えている、これが六千万円になり七千万円になってまいりますと、従業員は別として、中小企業の概念から離れてくる。だから中小企業投資育成株式会社ということでなくて、投資育成株式会社ということで、中小企業であろうと中堅企業であろうと、それに応ずるという体制をとらなければ、われわれの頭の中で今日論議いたしております中小企業という論議から離れた範疇になってくると思うのですが、その点はどうなんですか。
  33. 中野正一

    中野政府委員 先ほどもちょっと御説明申し上げましたが、この投資育成株式会社の対象となる会社は、資本金五千万円以下の会社でなければならないということになっておりますので、これはあくまで中小企業者を対象にして自己資本の充実のお手伝いをしよう。しかしいま御指摘になりましたように、この投資育成株式会社が四千万円の会社に対して二千万円引き受けるということになると、六千万円になるわけでございますから、これは従来の中小企業の卒業生ということになるのだと思うのでございます。しかしそういう政策も、これはやはり一つ中小企業をだんだんと育てて、いわゆる中堅企業に持っていくという、これはやはり一つの政策としての大きな政策の柱でございます。ただ、これがあまり大きな、いわゆる中堅企業にばかり集中するということになると、これは法律改正をせなければいかぬということになるかと思いますが、現在でもそういうことで、五千万円以上になっても一億円までは引き受ける、それは一億円で頭打ちということは窮屈ではないかというので、通産大臣の例外許可でこれを認めていこうということで、これはあくまでも中小企業をベースにして、これが成長の過程をどううまくやっていくかという例外的な規定というふうにわれわれは解釈いたしております。
  34. 加賀田進

    加賀田委員 どうも長官の答弁は明確を欠いているように思うのです。私は、第一回目の新株を引き受ける場合は、これは五千万円以下という限度が中小企業の対象になると思います。ところが、その五千万円に三千万円増資をして八千万円になったということになると、資本金としては中小企業の範疇からはずれていく、中堅クラスに上がっていく、それについてなお一億円以上の資本金に増資をする必要があると認めた場合には、通産大臣の許可に基づいてこれを承認できるという形になってくる。そうすると、第二回目の時点においては、すでに中小企業から離れているわけです。それにもかかわらずこの法律では、中小企業に対する投資育成をして、産業構造の高度化やあるいは技術振興に貢献さそう、こういうねらいなんですから、そうなってまいりますと中小企業という概念を破ってしまうんだから、その点は政府としても明確にしておいてもらわないと、これだけは認めてもらいたいが中小企業基本法の概念で一貫して政策を立てますというようなことでは、政府自体の思想統一というものもなくなってくるんじゃないですか。われわれ自体が中小企業という一つの定義の中で論議をしても、この法律だけは別なんだという印象を与えてくる。だから私が言ったように、それだったら頭の「中小企業」をはずしてしまったらどうか。行政指導として結局中堅クラスにもやるんだ、こういう概念をやはり持ってもらわなければ、どうも中小企業というものの考え方がここで破れてくる。だから私は、政府として将来破る意思があるのかどうか、それはないと言う。ないとするならば、この法律だけが破られてくるということになりますけれども、中小企業庁長官としては、やはりそういう概念をずっと一貫しようという意思を持っておるのですか。この法律だけを破ろうとするなら、これはあらためて「中小企業」という頭をとってもらわないと困ると思うのですが、大臣、どうですか。
  35. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 中野長官からお答えさせておりますように、当初から七千万、八千万というものを対象にしたという場合であれば、これは問題だと思うのであります。しかし、少なくとも最初の対象として扱った場合は、これはいまおっしゃるとおりの定義の中に入るわけです。したがって先ほども私申し上げたように、この投資育成会社の対象になるものの中小企業の解決にきわめてデリケートな面があるということを率直に申し上げたのでありますが、私としては、少なくともこの二回目にはずれるという特例が出る場合がございましょうが、しかしこの会社が必ずしもその対象とする最初の段階において従来の中小企業の定義を変えるような行為はしない。やはりこれは育成というところにあるのでございまして、その育成の過程で見放してしまうのがいいのかどうかということを考えますときに、特認をしてある程度は考えてやっていいんじゃないか。こういうことで、この点は厳重に御指摘を受ければ、従来の定義に反する場合もそれは入ってくる、こういうことでございます。
  36. 加賀田進

    加賀田委員 どうも政府としては何だかわかったようなわからないような答弁なんですが、そうしますと、中小企業関係法律はたくさんありますね。たとえば中小企業近代化促進法とか、いろいろな法律がありますが、こういうふうにして政府自体が中小企業に対する助成政策を講じて、そしてその企業が中堅クラスに発展していった。しかし、これをもっと近代化する必要があるというような政府の見方が出た場合に、この諸般の助成政策の法律というものが継続的に適用されるのか。当初政府がこの法律に基づいて中小企業の育成をはかっていった。ところが、それがだんだん中堅クラスに移行していった場合には、この法律ではもう中小企業の対象からはずれていくのがほんとうなんでしょう、全部の法律の形態は。しかし実際には中小企業としてももっと政府助成政策が必要だ、もっと近代化しなければ、今日の産業構造の高度化しつつある中でりっぱに中小企業が発展することはできないという企業がたくさん出ているわけなんですよ。しかし法律的にはもう決定されているんだから、おまえは一人歩きせい、この法律助成政策からも離れているんだ、こういう態度が一貫して今日とられているのですよ。にもかかわらず、この投資育成会社だけが、そういう継続的に必要性あるものについて、なお中小企業の範疇から成長したものまでこれを与えようという法律にしようとしている。法体系からいけば、この法律だけが少しはずれているのではないか。だから政府自体が、中小企業から中堅企業にまで発展した、しかも当初政府助成、保護政策に基づいて発展した企業は、これからもなおそういう政策を続けて行なうのだという、総合的な中小企業対策としての転換をここで腹をきめて第一歩として行なうとするならばわれわれとして了承するのですが、一方では、そういうことで成長したら切る、この法律だけは成長過程を通じて中堅クラスになってもなお引き続いて保護政策を講ずるのだ、こうなってくると、法体系として政府の態度はばらばらではないかと思う。だから、その点は将来政府としてそういうふうに検討するのだ、この法律についても第一歩としてそういう政策を講じたのだということになれば、これは野党のわれわれとしても、なるほど政府としてもこれから中小企業の概念というものはさらに拡大していくのだという見方も私はできると思うのですけれども、ただ、その点はやはり政府としては明確にしてもらわなければ、どうも当初に申し上げたような概念が、突破口がここにできてきているわけですよ。それは政府の中ではそこまで問題を深めて論議はしなかったかもしれません。これは法改正に基づいて中小企業の育成政策に対する一つの大きな発展だと私は思うのですけれども、他の法律関係についてこれから検討されるのかどうか、明確にしてもらわなければ困る。
  37. 中野正一

    中野政府委員 基本法におきましても中小企業の定義はこういうふうに書いてあります。「この法律に基づいて講ずる国の施策の対象とする中小企業者は、おおむね次の各号に掲げるものとし、」それぞれの施策ごとにきめなさい、こういうことが書いてございます。しかし、あくまでここで製造業等につきましては従業員三百人あるいは資本金五千万円以下という基本が書いてございますので、この考え方を変えておりません。したがいまして、きょう提出いたしましたこの法案以外の各種中小企業助成策、保護策等がございますが、この対象はもちろんそれぞれの法律によって幾ぶん違っておりますが、助成によってその範囲を卒業したものまで追いかけていって中小企業政策でめんどうをみようという考え方は持っておりません。ただこの制度につきましては、実はこの前のその前の国会でございますか、中小企業投資育成株式会社法をお通しいただいたときにも議論になったかと思うのでございますが、あくまで投資育成株式会社法の最初に対象となる会社は資本金五千万円以下の中小企業ですね。これは間違いないわけです。ただこの制度の目的が中小企業の資本調達を円滑にして株式の公開にまで持っていこう、株式公開の橋渡しをしよう、そうすることによりまして中小企業がだんだん成長して株式市場において独力で資本を調達することができるように持っていくことが中小企業対策として大事なことではないか、こういう観点からできておりますので、最初中小企業であったものが、一回増資を引き受けたために資本金五千万円以上の中小企業でなくなった場合、それをさらに株式上場、公開につなぐためにさらに増資を引き受けることが必要であるという場合は、従来は一億円まではこれが引き受けはできる。ところがその一億円というものをいろいろ実施してみますと、どうも現在の第二部上場の条件等から見てやや窮屈じゃないか。したがって例外として通産大臣の許可を受けてこれを認めよう、こういうことにしたわけでありまして、あくまでこの法律の目的が資本調達を容易にして、株式公開へ持っていくつなぎの制度であるという趣旨から、基本法の考え方にややそぐわないんじゃないかという御指摘はそのとおりだと思いますが、この法律の目的からいってやむを得ないんじゃないかというふうに私は思います。
  38. 加賀田進

    加賀田委員 長官はこの法律趣旨の説明をされたのであって、私の質問にまっこうから御答弁されてないと思うのです。中小企業基本法でも中小企業の定義については明確にしてあるわけだし、だから、どうも冒頭に申し上げたような中小企業投資育成株式会社という、中小企業というものが頭についている以上、他の中小企業助成、基本法とかいろいろな法律の概念と同じような考え方の中に一貫して中小企業というものをきめておかなければならないと私は思うのです。だからこれは中小企業等か、それでなかったら投資育成株式会社か、どちらかにしなければ、どうもその点は——新たに当初の五千万円を一億円にする場合はそれはいいでしょう、中小企業という概念に入っておりますから。それから成長する段階ですから、それはいいとして、それをこえた場合には中小企業という、そういう定義からはずれているものについて——せなければならぬ現状はよくわかります。今日の株式市場等を考えたときに、証券市場現状を考えたときに、二億以上なければ実質的な公開株式ということは困難でしょう。だから、その点では中小企業の定義を五千万円と三百名以下という定義にしたのが無理なのか、あるいは今日いまそのことは適当であるとするならば、いま申し上げたように中小企業そのものの頭を等にするか、あるいはその頭を取ってしまうか、どちらかにしなければ、私たちが論議をする場合にどうも頭の中に統一された概念というものを、これまではずっと一貫してきているんですから、だから、そういうものが政府の中で論議されたのかどうか。現状は一億以上こえなければ株式の公開というのは困難だから、業務の運営をやってみたらそういう状態なんで、しかも過去今日までの中小企業がそれを要請している。それだったら実質的にこの業務の目的を達成するためには二億程度まで必要だろうということで改正されたのか、国会の権威にかけて一つの定義が制定されている以上、それを破る場合にはもっとここで論議してもらわなければ、これから中小企業云々といったって、それは基本法に基づく中小企業なのか、あるいはこの育成株式会社に基づくそういう概念でものを言っているのかわからなくなってしまう。だから政府としてはそういうものを論議されたのか、まあいいだろうというような簡単な気持ちでされたのか、それともいま申し上げた将来のことも一応考えてやられたのか。これは野党として了承する場合にはその点が明確にならなければ、これからの中小企業そのものの論議も混同してくると私は思うのです。
  39. 中野正一

    中野政府委員 今度の法律改正にあたりましては、一年半以上の実施の実績等を勘案いたしまして、この法律の目的を十分に達するためには、どうしても一億円以上になる場合も例外的にこれを認めることのほうがいいのじゃないか。もちろん、そのときに中小企業の定義というか、基本法に定めてありまする中小企業対策というようなものとの関連等につきましては十分検討いたしましたが、この法律の目的を十分達するためには、例外的にこういうものを認めることも差しつかえないのじゃないかということで意見が一致したわけでございます。
  40. 加賀田進

    加賀田委員 だから、この法律に基づいてさらに資本金一億以上の企業をも対象とすべきことが現在の日本経済情勢の中で必要だということについては、これはわれわれとしても了承するけれども、そのことではなくして、これから国会で中小企業ということで論議をする場合の定義については、やはり明確にしていってもらわなければ、私たち自体が今後の論議の対象として非常に混同するというおそれがありますので、そういうことについては、政府としても明確な中小企業の定義をきっちりと決定した上に立ってこういう問題についての法律改正等を提案してもらわなければならぬ。  次に、この株式会社の性格は非常に特殊でありますけれども、一体これは政府機関なのか民間機関なのか、どちらに多くのウエートを持っておるのか。各国の例等を見ますると、政府自体がこういうものに非常に力を入れて、資本等について相当の責任を持ってあるいは指導も行なっていくという例もありますし、イギリスのように全く民間の機関に移譲しておる、こういうところもあると思うのですが、わが国のこの法律に基づく育成会社は、一体どういう性格を持っておるのか。将来ともこういう形でこれから事業が発展していきますると、資本金等も増加せなければならない状態も起こってくるでしょうし、法律によりますと、金融公庫から六億以上出してはいけないというような規定もなされておるので、われわれとしては、これを行なうとするならば、政府がもっと肝を入れて政府機関的な性格にまで強めていかなければならぬ。このままでは民間的性格にだんだんと移譲するという傾向があるわけです。将来どういう考え方を持っておるのか、今日これはどういう性格を持っておるのか、この点をひとつ明確にしてもらいたいと思います。
  41. 中野正一

    中野政府委員 御承知のように、この投資育成会社につきまして、資本金の構成を見ますと、たとえば東京は資本金総額が二十五億に対して中小企業金融公庫からの出資がその約一割の二億五千万円、名古屋につきましては資本金総額が十億でありまして、そのうちのやはり一割の一億。それから大阪につきましては資本金総額は二十億でありますが、中小企業金融公庫が二億五千万円ということになっております。しかし、これは一種政府の金でございますので、中小公庫を通じて金を出しておる。したがいまして、その意味におきまして特殊の監督を受ける。要するに特殊会社といいますか、特殊の政府の監督を受ける民間会社というふうに考えております。その意味におきまして、監督等につきましても、できるだけあまりやかましいことを言わないようにし、事業の運営等についても、もちろん運営の基準等については業務方法書というもので、政府の認可を受けた業務方法書によってやっていただくわけでありますが、個々の運営につきましては一切政府会社のほうにおまかせをして、その意味においては民間的な能率のいい運営をやっていただくということに、これはこの前の国会でもそういうことで説明しておるわけであります。それからもう一つは、たてまえが、中小企業金融公庫の出資については、将来これを償還をするというたてまえになっておりますので、将来はどちらかというと、これがずっと育っていって、うまく運営されれば民間の経営、これは民間と地方公共団体がございますが、こういうものが中心になって運営されていくという形に法律のたてまえはなっております。
  42. 加賀田進

    加賀田委員 そこで私は、将来そういうことでイギリスのような完全な民間企業的性格になって移行していくと思うのです。そういたしますると、国家の政策としてやっていることについて、私はもっと出資金等についてさらに検討すべき性格があるんじゃないかと思うのです。イギリスはそのために非常にシビアーに、商業ベースに基づいて企業の安全性というものを非常に深く調査してやっております。今日の日本中小企業現状を見るとき、そこまで企業の将来について完ぺきを期すような、そういう企業の新株を引き受けるというようなことでは、この業務というものはいまの状態では発展しないと思う。イギリスは長い歴史を持っておりますから、そういうことでうまく行っているんでしょうけれども。さらにこれは転換社債も引き受けてくる、一億以上の増資後の企業にも投資をしていくということになると、もっと資本金が必要になってくるでしょうし、それを全部民間企業や地方公共団体に委譲するということになってくると、結局その設定される企業というものは非常に厳選されてくる。そういうことでは、どうです大臣、政府自体が今日の産業の高度化を促進する、貿易の振興をはかっていくというような、大上段に引き受けて、この法律会社をつくって、将来民間に移行するということで、ほんとうにこの業務というものは責任を持ってやっていけるかどうか。ある程度の危険度も了承の上に立って、だんだんにこの育成会社を発展させなければ、今日の中小企業はいわゆる近代的な企業に発展さすことは私はできないと思うのです。これは大蔵省との関係もあるでしょうが、一体大臣として将来完全に民間に移行するような、そういうことで会社をそのまま放置するのか、それとももっとこの法の目的を達成さすために政府自体が出資の体制を整えるように努力するのかどうか。これは将来の問題でありますが、ひとつそれを明確にしていただきたい。
  43. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ただいま中野長官より申し上げましたように、この会社の運営につきましては、できるだけ会社の自主的な判断にまちたいと思うのであります。しかしながら、各国の投資育成会社の資本の状況と比較をいたしますときに、日本の場合にはまだまだ不十分な点があろうと思います。でありますから、公庫の出資をふやすというようなことも考えられます。したがって、いまお話しのような点につきましては、今後この会社の運営状況を勘案しつつ、関係各省とよく相談いたし、善処をしたいと思うのでありますが、いずれにしても、この会社がもっと効率を発揮いたしまして、中小企業の自己資本の充実のために寄与せしめたいと思います。
  44. 加賀田進

    加賀田委員 これは法律的には総額六億を金融公庫から出資をするときめて、そして各会社ごとに三分の一以下ということで限定されているわけです。しかもこの出資は優先株式として将来償還するという性質を持っている。そうなってまいりますと、いま申し上げたように、この業績に基づいて、年限は別としても、将来完全に金融公庫から出資された株式についてはなくなってしまうわけです。あとは公共団体とかあるいは金融機関とかその他の株式保有によって運営されていくという、完全な民間企業になるわけです。完全な民間企業になるにかかわらず、なお通産大臣の、いわゆるある程度の監督権がいくような形になってきて、非常に微妙な会社になってくるわけです。だから、これはもっと政府としては通産大臣のある程度の、強い監督権ではございませんけれども、監督権を保持してこの会社をよく発展さすと同時に、この目的を完全に達成さそうとするならば、こういう態度であっては、私はかえって将来投資育成株式会社が迷惑を感ずると思う。民間の会社と同じことになってくる。公共団体が少し出資しますから、政府自体直接出資じゃございませんけれども、政府関係の地方公共団体が少し出資するという形で通産大臣が監督権を持つ、こういう議論にもなるでしょうけれども、しかし、これはもっとベルギーのように政府自体が五〇%程度ぐらいの資本を引き受ける、そしてある程度の危険度を越えて、一般の金融機関等の危険度も越えて、積極的にこれをやるという姿勢でなければ、この法の改正の目的は達することはできないと私は思うのです。もちろんこの会社も、いま大阪、名古屋、東京にございますが、きょう参考人がおいでになっておりますが、この会社の方々もそれを要請しておると思うのです。だから、この際その政府の決意をひとつ明らかにしてもらいたいと思うのです。
  45. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 先ほどお答えしたように、私としてはこの運営が自主的に行なわれることが好ましいということは重ねて申し上げたいと思うのであります。ただ、この投資会社状況をにらみながら、せっかくこの育成をしよう、自己資本を充実せしめたいという趣旨で出発しておるので、これに対する要望が強ければ、公庫の出資六億という限定あるいはこれを優先的に償還せよということについては、場合によってはその過程においてはもう少し出資もふやすとか、償還について猶予するとかいうようなことを——これはたしか十年になっておると思いますが、そういう点は考えるべきときもあるのじゃないか。そういうことから、先ほど申し上げましたように、ただいまの御趣旨の点についてはなお関係各省ともよく相談をしてみたい、こういうことを申し上げておるのであります。いずれにしてもこの会社を通じて中小企業の自己資本充実のために寄与したいという大きな目的は、これは完遂していきたい、こう思います。いま、いろいろお話を聞いておりますと、確かにこの会社の性格等について疑義の出られるのも無理がないようなふうに思いますが、その点は今後関係各省でよく協議をして改善をしていきたいと思います。
  46. 加賀田進

    加賀田委員 参考人がおいでになっておりますのでお伺いいたしたいと思います。  いま私が大臣に対して質問申し上げた、そういう性格に移行されるおそれがありますので、一年半の経験にかんがみまして、将来政府がある程度の出資等についてさらに考慮する性格の会社のほうがいいのか、あるいは完全に民間経営としてイギリスのような経営をするほうが将来ともいいとお思いですか、どちらですか。
  47. 江沢省三

    江沢参考人 いまお話のありました点は、今後の問題といたしまして政府御当局ともよく相談いたしまして適当な方向に持ってまいりたいと思いますが、私の希望しておりますのは、やはりおっしゃいましたように、なかなか民間出資だけでは大きな危険をおかしてやることができないことは事実でございますので、ある成長の過程におきましては相当の額の政府出資あるいは政府借り入れ金なり、こういうものの御援助を仰げばもっと活発な仕事もできるのじゃないか、こういうふうに存じております。これはしかし、政府御当局と御相談しましてやってまいりたい、こう存じます。
  48. 加賀田進

    加賀田委員 この一年半の実績を見ますと、今日新株を引き受けた総数が四十数件ございます。ところが調べてみますと、今日まで投資相談を受けたのは、それの約二十倍の六百四十六件ということを私は聞いたのですが、こんなに多く投資相談を受けながらも、わずか四十数件しか達成せられないということになってまいりますと、半官半民的なこういう会社においても相当厳選主義をとって、企業の将来性、企業の健全性、こういうものを相当シビアーに考えて引き受けたと私は思うのです。しかし、将来完全な民間企業になると、もっとその点がシビアーになってくるのじゃないかと思うのです。したがって、私がある程度の危険度も越えなくてはならぬというのはそこなんですよ。六百四十六件という申し込みがありながら、四十七件ですか、それだけしかこれを引き受けなかったという、この拒否した大きな事情等について明らかにしてもらいたい。
  49. 江沢省三

    江沢参考人 いまお話がございました点について、数字的に私のほうで調べたのがございますので御報告いたしますが、東京だけの数字を申し上げます。三百四十四件、これは全部集計した数字でございますが、そのうち約半分くらいは、ただ内容を聞きにおいでになったという程度の軽い意味のものが多いのでございます。それでそのうち、対象外とか増資計画に具体性がないとか、あるいは収益性が悪いとか、あるいは財務状態が悪いとか、製品に特色を欠いて成長性が見込めないとか、あるいは下請関係で業態上の成長性がなかなか見込めない、こういうふうなもの、あるいは公開意思が全くない、こういうふうな、相手先のお話し合いによりまして向こうから辞退したものが非常に多いのでございます。それで私どものほうで集計した数字によりますと、大体一割見当は実際おいでになったものからお取り上げ申し上げておる、こういうふうに御了承いただいていいのじゃないか。この数字は三月末で、いまお話がございましたように四十七件ということになりますが、外国の例に比較しましてもそう少ない数字ではないと思います。特に創業早々のことでございますので、われわれのほうといたしましてもPRその他行き届かぬ点がございますし、また仕事の上でも能率的に十分いかぬという点もあったと思いますので、この辺の数字はまあまあとお考えいただいていいのじゃないか、こんなふうに存じております。
  50. 加賀田進

    加賀田委員 まだこの法律趣旨を十分わからずに、ちょっと聞きに行こうかというものも私はあると思います。検討の内容を見ますと、企業の将来といいますか、企業内における業績その他が検討の中心になっておると思うのですが、もちろんそれも私は必要だと思うのですけれども、その業種の発展性というものについて、やはり近代化、高度化そうという性格、こういうものを検討の対象にしなければならないと私は思うのです。なぜかといいますと、これは業種を対象にしておるのじゃなくして、一社を対象にするわけですね。一社を対象にして資本を増加し、いわゆる近代的な企業の内容を整えようということになると、当然生産性等も上がってくるし、工場における生産量も増大してくるでしょう。そうなってまいりますと、全般的な国内におけるその産業の需要の発展というものも私は大きく影響してくるのじゃなかろうかと思うのです。同業者間における競合という問題が起こってまいります。こういう問題について検討されて、この可否を一体決定されるのかどうか。この会社は資本をつぎ込めば相当営業内容もいい、発展性もある、将来性も相当あるし、産業全般の高度化にも貢献するだろう、こういう企業内の内情だけが検討の対象になっておると私は思うのですが、もちろんその企業そのものは発展する要素を持っておるでしょうけれども、日本全般の同業者間における需要とか貿易の振興状態とか、こういうものについて、一社だけが生産を上げた場合に同業者に及ぼす影響等について検討されるのかどうか。これは私は大きな問題だと思うのですが、今日の経済情勢の中で、実質的に生産調整やそういう問題がやられているところも私はあると思うのです。しかもこの対象とするのは比較的健全な企業であるし、われわれからいえば中小企業の中においても上位の方々が対象になるわけですから、生産の同業者における集中ということも、これらの発展過程において私は懸念されるべき問題だと思います。そういう問題について検討されるのかどうか、また検討して、こういう問題を決定されるのかどうか。会社のこういう増資を育成することによって生産が集中してきて、同業者の販路が競合して非常に困難な状態になるというような事例も将来起こってくると思いますが、こういうことについて検討されて態度を決定されたかどうか、これをちょっと明らかにしてもらいたいと思います。
  51. 江沢省三

    江沢参考人 いまお話のありました点は、あらゆる角度から私ども検討いたしまして、成長性がわりあいに短期間に期待できるもの、と申しますのは、私ども御承知のように資金量が非常に少のうございますから、なるべく早くあるところまでいっていただいて、その資金を引き上げてまたよそに回したい、こういう気持ちでやっておりますので、こういうふうに勢い厳重な審査をするというふうなことにもなりがちだと思います。これは世界の経済の動き、日本経済の動き、それからその業種におけるシェアの問題とか、その業種の発展性とか、あらゆる観点から私どものほうは検討していきたいと思っております。
  52. 加賀田進

    加賀田委員 その点は特に留意してもらわなければ、一社を発展させたからといって、全般の需要との関係から同業者を窮地に追い込むというような事態になれば、これはほんとうの中小企業の育成にならないと私は思います。だからそういう点は会社だけに依存していても、広範な調査もあるでしょうから、なかなか困難でしょう。中小企業庁としても、そういうものについては背後から援助する必要があるので、そういう心がけをぜひお願いいたしたいと思います。  さらにこれが三年ないし四年になりますと、株式が公開されますね。そういたしますと、この会社はできるだけ証券市場にそれを移譲しようとする考え方を持っているわけですが、こういう公開をされた場合に、移譲するのはどういう方法をもってされるのか、明らかにしてもらいたいと思います。
  53. 江沢省三

    江沢参考人 いまの御質問は処分する方法をどうするかという……。これは先の話でございますが、これは方法書に全部詳しくきめてございまして、公開入札でやるというのが原則になっております。
  54. 加賀田進

    加賀田委員 これがいわゆる公開入札ということになってまいりますと、今日の中小企業は同族会社であって、その公開された株式がいわゆる大企業の同業者に行く、あるいは特殊な人にそれが渡される、こういうものについて非常に危惧を持っておると私は思うのです。したがって巷間いわれているような、会社が乗っ取られるというおそれがあるのじゃないかという考え方を私は持つのです。そこで大臣、外国の例を見ますと、これについては一つ法律に基づいて規制をして、そうしてできるだけ大企業と同業者に行かないように、その経営者の意図を相当参酌してそれを処分するという規制をとっておるところもあるのであります。公開入札ということになりますと、そういうおそれが相当あると思います。今日の中小企業は、大企業と違って資本力も非常に弱い関係上、大企業にその株式が取られてしまいますと、そういう危惧が起こります。なお、極論すれば、今日内在している総会屋というもの、これは大企業においては今日非常に頭痛のたねですが、公開したとたんにそういうことになってきますと、中小企業が非常に困ることが起こるわけです。だから、もちろん公開入札というようなことは原則でしょうけれども、もっと法律的にこれを規制する必要があると私は思うのです。そうしなければ、中小企業の同族会社は公開に踏み切らないと思うのです。これは、外国の例にもちゃんと法的に規制しております。これも、中小企業の方々がこの育成会社を利用しようとするための危惧の一つだと私は思う。ちょっと聞いてみよう、どうもこれは将来公開した場合には乗っ取られるんじゃないか、あるいは主導権がなくなってくるんじゃないかという危惧がやはり起こってくると思う。だから、法の目的を完全に達成するためには、今日の同族会社等のそういう危惧をなくするように法律的にちゃんと制定すべきだと私は思う。この点はどうでしょう。
  55. 中野正一

    中野政府委員 いま先生の御指摘の点は非常にごもっともでございまして、将来投資会社が増資を引き受けて株式市場に公開できるということになりますと、株式を入札する方法で処分する、これが原則でございます。ただ、御指摘のような、たとえば保有する株式を処分をするに際して、投資先の中小企業の株式の買い占めが行こなわれるというような、当該中小企業経営の自主性が著しくそこなわれる事態が懸念される場合に限りまして、当該中小企業の発行する株式総数の二四%をこえる部分を限度として、その会社の株主に優先的にそれを渡すということも、例外的にそういう規定を——先ほど申し上げました事業に関する規定、いわゆる業務方法書と一般に言っております。これは政府の認可を受けて各会社がきめておるわけでありますが、そういう規定を活用して、そういう最悪の事態の起こらないように処置することができるようにしておるわけでございます。
  56. 加賀田進

    加賀田委員 そうすると、これは法的に制定しなくても、いわゆる行政指導としてそういうことが今日なされているわけですか。どうもそういう意味では、法的には制定されていないで、中小企業の方々も非常に大きな危惧を抱いているという一面も私は聞いておるわけです。いろいろ資料を見ますと、イタリア等においては、相手方株主に対して保有株式の買い取り権というものを優先的に与える、あるいはそういうことについて、とにかく会社にすべての株式の処置については相当の権限を与えて、そういう危惧のないような法律的処置をして、この法の適用について中小企業の方々が安心して恩恵をこうむるような道を開いておるわけです。そういうことが今日の行政指導としてなされておるわけですか。完全に中小企業が安心して育成会社に資本を出していただくことができるのですか。公開されてもいいわけですか。その点を明らかにしてもらいたいのであります。
  57. 中野正一

    中野政府委員 いま御指摘のあった点が、この会社ができていろいろ優秀な、投資先としてなかなかいい会社だということで、相談に乗っていろいろ話をしているうちに、将来は公開しなければいかぬのだということを聞いて、それじゃ乗っ取られる、それはもうおそろしいからやめましたという事例が、当初相当出てまいりました。それで、いま申し上げましたような業務方法書ではっきりしておる点をよく説明をし、同時に、したがって、いきなり公開というのに持っていかれるのは非常にこわがるわけでありますから、そうでなくて、その間にしばらく公開を待って、その投資会社の持っておる株を優先的に現在の株主、あるいは第三者といいますか、指定をする第三者にそれを譲渡するというような方法も、業務方法書を実は改正をいたしましてやったわけです。この業務方法書というのは、政府の認可を受けて会社業務をやる業務に関する基準でありますから、基本方針をきめておりまして、これは世間に発表しておりますので、これをごらんいただけば、最近は大体その点がPRが行き届いて改善されてきたのではないかというように見ております。
  58. 加賀田進

    加賀田委員 私も中小企業の方々に意見を聞いてみると、それま相当危惧されているわけです。どうも公開されたら乗っ取られる。せっかく親代々から育成してきた会社が、発展し公開されることになって、そういう懸念があった場合には困るじゃないか、だから、やはりこれはちょっと困るというような意見があるので、これはできればわれわれとしては、諸外国のように法律的にちゃんと制定して、法律さえ読んでいただけば、中小企業が安心して投資にこたえていくという体制というものが将来必要じゃなかろうかと思うのです。それは行政指導としてなされるのはけっこうですが、将来の検討事項として、できれば明確に法律で制定していただきたいと思います。  それから、業種の指定についてですが、今日、業種はどれほどございますか。相当業種があるわけですが、これは中小企業近代化促進法に基づく業種相当相違をいたしております。二十三種ございますけれども、何を基準としてこういう制定をされたのか。目的は、やはり産業構造の高度化ということと技術振興というものが法的に明確になっておりますけれども、中小企業近代化を促進するためにに制定された業種と相違が相当あると思うのですが、そういう点について、将来これをさらに検討し拡大する意思があるのかどうか、一ぺん明らかにしてもらいたい。
  59. 中野正一

    中野政府委員 法律の第八条にございますように、「資本の額が五千万円以下の株式会社であって、その業種に属する中小企業の健全な成長発展を図ることが産業構造の高度化又は産業の国際競争力の強化の促進に寄与すると認められる業種で政令で定めるものに属する事業を主たる事業として営むもの」と、こういう限定がございまして、いま御指摘ありましたように、産業構造の高度化あるいは産業の国際競争力の強化の促進に寄与する業種を指定するということで、われわれのほうはできるだけ広い範囲の——もちろん、法律に限定があるわけですから、これをはみ出すというわけにいきませんが、できるだけ広い範囲で業種は拾うべきであるということで現在拾っておりまして、いままでのところでは、この業種を広げてほしいという要望はあまり聞いておりません。ただ、中小企業近代化促進法のほうは、これは法律にちょっときつい限定がございまして、いまちょっと資料を持っておりませんが、前段はずっと同じでございますが、強化に寄与すると認められる業種で特に国民経済上重要な業種を政令で指定をする、こういう書き方になっております。しかし、この近代化促進法のほうも、われわれの方針としては、やはり法律のきめた範囲においてできるだけ広く指定したいという気持ちは持っておりますが、こちらのほうが限定が少しやわらかいものですから、もし必要がありますれば検討して業種の追加をやりたいというように考えております。
  60. 加賀田進

    加賀田委員 日本の産業が、池田さんの手によって高度成長という一つの政策が立てられて、産業構造が非常に変革されてきていることは事実だと思うのです。概念的に高度化と、こう言っていますね。頭の上ではわかったような、高度化とは何かという定義について、どうもわれわれとしてはわかりかねるところがあるのですが、法律的にもちゃんと高度化ということが明確になっておりますが、一体政府としては高度化というものについてどのように考えているのか、これを明らかにしてもらいたいと思うのです。
  61. 中野正一

    中野政府委員 日本の産業構造が、一口に言うと重化学工業というか、それだけではございませんが、たとえば軽工業等についてもいわゆる製品の高級化というようなことで、迂回生産というか、そういう付加価値を高めるような形の構造にだんだん変わっていくわけでございます。そういうことを称して高度化というように解釈しております。
  62. 加賀田進

    加賀田委員 付加価値を高めることが産業構造の高度化、企業の高度化とか近代化というのは構造そのものが高度化していくということ、こういうことなんですけれども、長官の答弁では納得できない。
  63. 中野正一

    中野政府委員 産業構造でございますから、要するに業種全体として付加価値を高める、あるいは成長性を高めていくというふうな産業全体の構造に持っていく、それに寄与するような業種、こういうふうに解釈しております。
  64. 加賀田進

    加賀田委員 そこで、いま申し上げたようなこの目的というのは、一社の近代化目標として、業種そのものの総合的な高度化というものを目的にしていないわけです。だからどうしても構造の高度化ということになると、全般的な業種別の生産性を臨めていく一つの高度化というものが構想されるけれども、この目的はその中の要求された一社だけを近代化させようという、そのために構造そのものは全部が高度化することには私はなり程ないと思う。したがって、これはもちろん株式の援助をするわけですから一社だけでしょうけれども、やはりその中で業種全般を高度化することが可能なものについても総合的に検討し、それを育成するという形をとっていただかなくちゃならないと思うのです。この四十何社の中で見ますると、同業者は一社だけですが、あとは業種は一社ずつ全部別々です。そういう意味では、もっと集中的にその業種についての政策というものを考えていかなければ、ほんとうの構造の高度化ということには私はなり得ないと思うのです。したがってこの会社の目的というのは、いま申し上げたような個々の企業だけなんですから、その目的を達成するためには業種全般を広く検討しなくちゃならない。この中でも集中的に業種についての高度化政策というものを考えていかなければその目的を達成することはできない。だから、とにかく一企業の業績とか将来性だけを検討するのでなくて、業種全般の中で処置するという体制を一体政府としては考えているのかどうか。
  65. 中野正一

    中野政府委員 いま御指摘の点も十分考えまして、この会社の運営を適正に持っていきたい。四十七社のうちで申し上げますと、大体機械工業が十九社、しかし機械工業といっても非常に広いわけでございますから、機械工業の中で一社をどういうふうに持っていくか。これは会社に対して政府のほうでいろいろ調査、研究した結果、全体の方針を毎年指示しまして、それに従って運営していただくというふうに持っていきたいと思います。
  66. 内田常雄

    内田委員長 加賀田君に申し上げますが、決算委員会から、社会党委員質問がある由をもって大臣の出席を求められておりますので、どうぞ大臣に対する質問を先にお願いいたします。
  67. 加賀田進

    加賀田委員 それでは、この会社に対しては税制面から特殊な恩恵を与えているのかどうか。これはいま申し上げたような民間企業ではございませんし、しかもある程度の危険度も考えて業務をやっていただかなければその目的を達成することはできない、こういう性格を持った会社だと私は思うのですが、税制面で何か特殊な恩恵があるのかどうか。たとえば損益準備金等について特別の配慮をされているのかどうか、その点お尋ねしたいと思います。
  68. 中野正一

    中野政府委員 税制上の恩典としては、中小企業金融公庫の持っております株式に対する優先的配当という規定がございます。その配当の分については税金をかけないという規定がございます。
  69. 加賀田進

    加賀田委員 そうすると、あとは一般民間企業と同じような範囲しか恩恵がないわけですね。
  70. 中野正一

    中野政府委員 その他の点につきましては一般の株式会社と同様の規定になっております。
  71. 加賀田進

    加賀田委員 これは長官、もう大臣は退席されたのですが、やはりこういう一般民間企業と同じような税体系とか、特別の恩典がないとするならば、企業診断についても相当慎重に範囲が縮小されてくると思うのです。この目的は、中小企業を中堅企業に移行させようとする国策的な会社なんでしょう。そうなってまいりますと、ある程度の危険度を見てでも育成しなければならないという状態が将来起こってくるし、今日でも起こってきていると私は思います。そうなってまいりますと、政府自体も、税制面においても特別の配慮をしなければ、株式を引き受けるのですから、その会社と運命を共にするわけですから、担保があるというようなわけではございませんから、だから、そういう意味でもっと税制面で恩恵を与えて、ある程度の損失等について政府が背後から補償するような体制をつくらなければ、この会社業務を完全に遂行することはできないと私は思います。これは大蔵省との関係もあるでしょうから、長官も一ぺん検討してもらって——きょうは大蔵省は来ておりませんが、やはり国策会社なんでしょうから、一般の民間企業と同じような税制では、その目的を達成するには非常に困難な問題が起きてくると思いますが、長官はどう考えますか。
  72. 中野正一

    中野政府委員 いまの点は御指摘のとおりでございまして、実は私としてもいろいろ検討した結果、投資損失準備金制度というようなものが要るのではないか。これはほかの輸出入銀行であるとか、特殊ないろいろな会社がございますが、そういうものにもいろいろそういう規定がございます。したがいまして、少なくともその程度のことは要るのではないかということで実は折衝いたしたわけでありますが、まだ発足したばかりで実績もよくわかっていないし、時期尚早で、もうちょっと見送ってもらいたいということになりまして、非常に不本意ではありますが、この問題は、中小企業政策審議会の金融委員会のほうからも答申がありますので、ぜひ今後この問題は実現をしていきたい、それ以外の点についても、税制上この会社一つの特殊会社的に考えて育成をしていくという方向で検討してまいりたいと思います。
  73. 加賀田進

    加賀田委員 参考人の方からも、税金問題についての御意見をお伺いしたいと思います。
  74. 江沢省三

    江沢参考人 いま長官からお話がありましたように、私どもとしても、何らか政府の保護なり、資金的に損失関係のカバーというような意味でありますれば、非常に仕事がやりやすくなるのではないかという気持ちがいたします。これは将来の問題として、あまり何でもかんでも持ち出しても、大蔵省の関係もありまして通らないかもしれませんが、ぜひひとつ検討してみたい、このように考えております。
  75. 加賀田進

    加賀田委員 参考人の方から希望があるのは当然だと思いますけれども、やはりこれはほとんど各国がやっておるわけですから、わが国だけがそう冷酷な態度をとって株式会社の目的を達成しようといってもなかなか困難です。大蔵省との折衝関係等もあるだろうと思うのですけれども、長官としても鋭意達成するように努力してもらいたいと思います。  最後に、実はこの法律が制定されたときの附帯決議がございますね。東京、大阪、名古屋——名古屋はこの法を制定するときには相当要求があって成立したわけですが、三カ所です。他の地域にもこれを制定すべきだという動きがあったのですが、今日なおそういう動きがあるのかどうか、あるいは将来三つの会社だけで運営をしていこうとしているのか、ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  76. 中野正一

    中野政府委員 東京、名古屋、大阪の三カ所は現在、先ほどから御説明申し上げておりますように基礎固めの段階でありまして、まず転換社債を発行させるとかいろいろな方法を施行して業務を拡張いたしまして、この三社を強化するということによりまして、一応全国的に地域は三社でカバーしておりますので、東京、名古屋、大阪以外の地域の中小企業者の需要にも十分応ぜられるのじゃないかというふうにも考えております。それから他の地方の中小企業の方々の便宜をはかるために、これも御承知かと思いますが、各地の中小企業金融公庫の支店に窓口を設けて、そこに相談所を設けるというような方法をやっておりますので、そういうことをさらに充実するという方法でやっていきたい。しかし将来の問題としては、どうしてもほかの地域にもつくったほうがいいというような場合には、これは考えざるを得ないが、私はいまの研究段階では、できれば支店を、各地に重要な地点には、少なくとも将来は支店ぐらいは設けたほうが、中小公庫の窓口でやっているからいいではないかということではなく、そういうことでもしておけば相談に来やすいということもありますので、そういうこともあわせて検討してまいりたいと思います。
  77. 加賀田進

    加賀田委員 時間が相当経過しましたので、一言だけ申し上げますが、この法の目的は産業構造の高度化と輸出振興ですけれども、低開発地についての対策というものもやはりこの業務内容の中に私は必要だと思うのです。資料を見ますと大都市中心になっておりますけれども、やはり全般の産業構造を高度化そうとする場合には低開発地域の企業、特に中小企業でありますが、そういうところにも考慮をして、全般的な産業構造の高度化に寄与しなくてはならないと私は思うのです。そういう意味で、いま申された支店もけっこうでありますが、やはりもっと他の低開発地域にも及ぼすように、中小企業の方々もこの法自体を認識している人たちは今日非常に少ないのではないかと思いますので、したがって、そういうことで特段の配慮をいただきたい。これは希望意見でありますが、希望意見を申し上げまして私の質問を終わります。
  78. 内田常雄

    内田委員長 江沢参考人には、本日は御多用中を御出席いただき、まことにありがとうございました。      ————◇—————
  79. 内田常雄

    内田委員長 おはかりいたします。  理事稻田柳右エ門君より理事辞任の申し出があります。これは許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 内田常雄

    内田委員長 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。  理事補欠につきましては、委員長において指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  81. 内田常雄

    内田委員長 御異議なしと認めます。よって、浦野幸男君を理事指名いたします。  本日はこの程度にとどめ、次会は、明四月七日水曜日午前十時十五分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十四分散会