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1965-05-18 第48回国会 衆議院 社会労働委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年五月十八日(火曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 松澤 雄藏君    理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君    理事 齋藤 邦吉君 理事 澁谷 直藏君    理事 松山千惠子君 理事 粟山  秀君    理事 河野  正君 理事 八木  昇君    理事 吉村 吉雄君       亀山 孝一君    熊谷 義雄君       倉石 忠雄君   小宮山重四郎君       坂村 吉正君    田中 正巳君       竹内 黎一君    橋本龍太郎君       藤本 孝雄君    山村新治郎君       亘  四郎君    伊藤よし子君       小林  進君    多賀谷真稔君       滝井 義高君    松平 忠久君       八木 一男君    本島百合子君       吉川 兼光君    谷口善太郎君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 神田  博君  出席政府委員         厚生政務次官  徳永 正利君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      若松 栄一君         厚 生 技 官         (環境衛生局         長)      舘林 宣夫君         厚生事務官         (医務局次長) 大崎  康君  委員外出席者         参議院社会労働         委員長代理   丸茂 重貞君         大蔵事務官         (主計官)   船後 正道君         厚生事務官         (医務局総務課         長)      渥美 節夫君         厚 生 技 官         (保険局医療課         長)      松尾 正雄君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 五月十八日  理事松山千惠子君同日理事辞任につき、その補  欠として粟山秀君が理事に当選した。     ————————————— 五月十七日  医療法の一部を改正する法律案草葉隆圓君外  二名提出参法第一一号)(予) は撤回された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  精神衛生法の一部を改正する法律案内閣提出  第八五号)  優生保護法の一部を改正する法律案参議院提  出、参法第一七号)  清掃法の一部を改正する法律案内閣提出第一  二〇号)(参議院送付)  理学療法士及び作業療法士法案内閣提出第一  〇七号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 松澤雄藏

    松澤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出精神衛生法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 精神衛生法の一部を改正する法律案について、精神衛生審議会等の答申を見ましても、精神障害のある者について早期発見をして、早期治療をし、同時に、リハビリテーションを十分に、しかも体系的にやるという一貫した治療体系というものをつくらなければならぬということが、非常に強調をされておるわけです。  そこで、早期発見早期治療をやるために、精神衛生センターというものはどういう活動をすることになるのか、それから同時に、その場合、現在ある保健所活動というのはどういうことになるのか、これをひとつ簡単に御説明願いたい。
  4. 若松栄一

    若松政府委員 従来、保健所精神衛生相談所というものを置くことができるようになっておりまして、各県が一、二カ所程度設置しております。この精神衛生センターは、患者訪問指導等を行ない、早期発見早期治療に資するというたてまえでございますけれども、現に府県に一カ所程度、しかも専任職員のいるところ、単に兼任職員だけのところがございまして、決して十分ではございません。そこで、今度の法律改正では、保健所の任務として精神衛生仕事をはっきり打ち出しまして、保健所の固有の業務として精神障害に対する指導を行なう、そのために保健所専任職員を置いてやっていく、そういう構想で、保健所が本来の活動として早期発見早期治療あるいは患者家庭訪問指導等を行なうようにやるわけでございます。  それに伴いまして、精神衛生対策は、保健所等職員配置いたしましても新しい仕事でございますので、なかなか技術的な指導援助等ができない。そこで、一県に一カ所精神衛生センターというものを設けまして、これが技術中心になる。したがって、センターにおきましては、その地方における精神衛生実態の把握、調査研究等を行ないますと同時に、保健所における職員指導援助等を行ない、保健所での職員をもってしてはできないようなむずかしいケースはセンターが引き受けてやるというような、二段がまえの構想になってまいったわけでございます。
  5. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、第一線中心は依然として保健所にある、こういうわけですね。  現在、御存じのとおり、保健所には精神衛生に関する専門医者なんというものはいはしないわけです。それから、この法律ごらんになっても、訪問指導というものの中には、特別の専門家かあるいは医師以外は、保健婦もできる法律的な規定を与えられていないわけです。医者もいない、それから保健婦もこういう精神病患者について家庭訪問をやる法的な資格はないということになれば、末端は空白ですよ。いわば幽霊みたいな状態精神衛生センターというものが県に一カ所できたって、これはナンセンスなんです。しかも精神衛生センター必置のものでないわけです。義務制ではないわけです。置くことができるわけです。したがって、その予算裏づけその他も非常に不完全で、ことしの予算ごらんになっても、精神衛生センター人件費及び事業費、四十六カ所、補助三分の一、千五百八十五万四千円しかないわけです。それで全国の百二十四万人の患者相談に応ずることは、とても不可能に近い。だから、ナポレオン以上のことをやろうとしてもできることではないわけで、それこそ、これができるというなら精神病扱いにされることになる。  だから、まずあなたのほうとしては、この精神衛生法の一部を改正する法律案に伴って保健所第一線機関とするということは、一体どういう具体的な予算裏づけでそうしようとするのか。  同時に、第二点は、第七条に書いてある精神衛生センター機構構成人員予算というのを一体どういうようにやろうとするのか、その場合に、政令都市、六大都市、こういうようなものは、県知事というのが非常に前に出て、それらの政令都市との関係は一体どういうことになるのか、それをひとつ御説明願いたい。
  6. 若松栄一

    若松政府委員 訪問指導等を行ないますための保健所整備につきましては、この資料保健所運営費補助金というところがございますが、ここで原則として保健所精神神経科専門家嘱託一名、それからケースワーカーを二名配置するということを目標にいたしまして、これはなかなか一挙に充実することは困難でございますので、さしあたって本年度の予算といたしましては、嘱託医を三百五十名、それから精神衛生ケースワーカーとして精神衛生相談員百二十二名、医療社会事業従事者九十六名、このほかに従来から医療社会事業に従事しておりますものが三百六十一名ございますので、これらの職員をもってさしあたりやっていく。これらの職員を置きますと、そこで都市型、あるいは都市型と農村型の中同型の大きな保健所にはすべて職員配置されることになりまして、非常に小さな保健所、それから農村地域の小さな保健所にはまだ設置されないことになりますので、およそ三カ年計画くらいで全保健所にこの職員配置いたしたいと存じます。  なお、精神衛生センターにつきましては、ここに載っております予算はごくわずかでございますが、現在精神衛生センターとして、単独の施設として活躍しておりますのは数カ所ございまして、三十九年度に三カ所新設の建物をつくっております。四十年度には六カ所の設備費を計上しておりますので、これも四、五年の間には全県に設置するようにしたい。そういう意味で、さしあたり設置できないところがございますので、法律義務設置としないで、さしあたり「できる。」という権限を与えただけでございます。
  7. 滝井義高

    滝井委員 精神衛生センター機構構成人員予算等につきましては全く見通しがないわけですね。そういうお考えを持っておるならば、精神衛生対策五カ年計画というものをお立てになって、そうしてまず第一年度において何県と何県と何県をつくります、したがって君のところではその準備をしたまえ。第二年度は何県と何県と何県だ。精神病患者の分布の状態というものは、統計的に見れば一つの層をなしておるわけですから、これは大都市に多いにきまっている、精神病質、ノイローゼを入れれば。そうしますと、大都市から順次に、あなたの言うように、いま都市型の保健所から農村型の保健所に、順次年次計画でやっていけばできるわけです。こういう年次計画というものが、少しも社会保障にないところに問題があるわけですよ。だから、当然年次計画というものをつくるべきだと思うのです。それは中期経済計画昭和三十八年から四十三年までの五カ年計画があるならば、それを受けてやはり精神衛生対策の五カ年計画をつくる、いまがチャンスじゃないですか。ライシャワーがやられるし、学校になたを持ってあばれ込むというような者があって、あるいはきのうもどこか東京付近精神病院から、十二人とか十三人とか軽いのが逃げたというのがあるでしょう。まさに世論が成熟しておるのですよ。この成熟した世論のときにばっとそれにこたえる五ヵ年計画を発表して、そして各県にそのムードをつくっていくというのは、当然打たなければならぬ手だと私は思うのですよ。それを何もやらぬで——精神神経学会ですか、そういう学会なり専門家からしりをたたかれぬで済むのですよ。それはどうですか。政務次官、当然、私がいま言ったように、精神衛生センターも全然予算的に見通しがない、保健所もいま言ったように三百五十人の嘱託を集めます、ケースワーカー相談所に百二十人置きます。医療社会事業従事者を九十六人置きます。三カ年計画くらいでやりたいと思いますというくらいのことで、これは予算がなければ三カ年でできるかどうかわからない、だから、五カ年なら五カ年の計画をつくって、人的、物的体制を整えていくんだという形にならぬとうそだと思うのですが、どうですか、その意思があるのですか。
  8. 徳永正利

    徳永政府委員 もちろん年次計画を立てるべきだと思います。ただ、当面、中間の施設でございますとかリハビリテーションなんというものは立てにくい面がございまして、また詰めにくい面がございまして、さしあたりこういうような御審議をいただいておるわけでございます。当然年次計画というものは将来立ててまいらなければならぬ、かように考えております。
  9. 滝井義高

    滝井委員 当然将来立てるのでは間に合わないのであって、いま傷つけたりあばれたりするのがどんどん出てきているのですから、これは将来の見通しとしていまからやはりすぐ立てていく、こういうことでなければならぬと思うのですよ。今年はやむを得ないならば、来年度予算編成からは、もう七月、八月に始めるのですから、それからすぐ五カ年計画を立ててやります、このくらいの言明をしてもらわなければ話にならぬわけですよ。どうですか。
  10. 徳永正利

    徳永政府委員 さしあたりこの法案は、こういうような御審議をいただいておるわけでございます。年次計画を立てまして、推進いたしてまいりたいと思っております。
  11. 滝井義高

    滝井委員 ぜひひとついまの公約を実現していただきたいと思うのです。これは大蔵省をちょっと呼んでおかなければならぬのだが、主計官に来てもらいたい。意見を聞いておいてもらわぬと、から鉄砲では困るのです。  それから政令市の問題です。これは一体どういうものになるのですか。県に精神衛生相談所かわり精神衛生センターができる、それから国立精神衛生研究所が中央の精神衛生センター的機能をやることになる。政令都市については、どういうことになるのです。
  12. 若松栄一

    若松政府委員 結核精神がよく対比されますが、結核では、比較的人権というような問題が薄くて、結果的には福祉の面が強いために、これはすべての業務保健所におろし、したがって政令市までおろしております。精神の問題は、人権問題が非常に厳重でございますので、そういう意味で従来から政令市におろすことをやめて、一切都道府県段階にとどめております。したがって、六大都市にさえもおろしていない実情でございますので、そういう意味でこの問題、精神衛生センターであるとかその他すべて県の段階にとどめておるわけでございます。  なお、六大都市あるいは政令市等に置くということになりますと、政令市は大体県庁所在地が多いものでございますから、県の福祉施設政令市福祉施設が同じ市にダブって非常に偏在するというような結果にもなりますので、現段階では都道府県設置するセンターをもって中心にして、技術指導をやっていく。保健所がこの末端作業をいたしますので、政令市においては保健所をできるだけ充実してもらって、センター指導のもとでやっていくという方針をとっていきたいと思っております。
  13. 滝井義高

    滝井委員 それならば、よほどしっかり末端保健所人的構成をやらないと、六大都市というのに精神病患者は相当多いわけです。それだけに手抜かりのないようにぜひやっていただきたいと思います。  それから、四条関係ですね。新旧対照表でずっとやっていきますから見てください。二一パージです。この四条で、いままでは「都道府県は、精神病院設置しなければならない。但し、第五条規定による指定病院がある場合においては、厚生大臣承認を得て、その設置を延期することができる。」といって、厚生大臣というのが出てきておったのですが、これは厚生大臣承認が要らなくなったわけですね。これはどういう理由ですか。
  14. 若松栄一

    若松政府委員 都道府県病院設置するのに一々厚生大臣承認を得るということは、知事自主性を阻害するのみか、いたずらに手続を煩瑣にするだけであるということで、行政管理庁の勧告も出ておりましたので、その趣旨に沿いまして手続簡素化するという意味知事にまかせたわけでございます。
  15. 滝井義高

    滝井委員 それは医療法精神からいって、厚生省はいつも病院のことを知らないわけですよ。だから、日本医療行政は混乱するわけです。やはり厚生大臣がきちっと握って、そうして児知事にやらせるという形のほうがいいのじゃないですか。各県でばらばら精神病院をつくってやる、あるいは他の病院をつくるということでは困るのじゃないですか。やはり一元的にきちっと医務局長厚生大臣が握っておる、これでなければならぬというので、医療法改正をやったわけです。そうでないと、病院運営の主体がばらばらで困るじゃないかということであったはずなんですがね。総務課長がいらっしゃっておるけれども、この関係はどうしてですか。厚生大臣がまた知事にかってにまかしてしまうということになれば、精神病病院配置その他というものは、各県によってばらばらで違ってくるのですよ。医療行政からいってもこれは問題です。医務局の見解を先に伺いたい。   〔委員長退席井村委員長代理着席
  16. 渥美節夫

    渥美説明員 都道府県立精神病院義務設置の問題でございます。精神病院義務設置規定につきましては、少なくとも一カ所を都道府県におきまして県立の精神病院として設置するという規定でございます。精神病院なりあるいは精神病床の全国的な配置、あるいはその病床の確保という問題につきましては、医療法の考え方に基づきまして、都道府県におきまして設置を奨励するとか、あるいはそれに対しまして国が援助をするということに相なっております。
  17. 滝井義高

    滝井委員 どうして厚生大臣承認を排除したのかということなんです。やはり日本医療行政全体を厚生大臣が達観的に握っておる、承認くらいもらいに来るぐらい何のことはないわけですから。この五条というのは、たぶん指定病院のことでしょう。だからこれは、その病院をそこにつくるかつくらぬかということを、都道府県医療機関整備審議会ですか、あれできちっときめてくるわけです。きめたら厚生大臣に、こうきめました、承認いただきたい、それだけのことなんです。そうすると、厚生省医務局なり厚生大臣は、なるほど何県にはどういうふうに配置されておるということが一目りょう然にわかってくるわけです。一々資料をとらなくたって、わかってくるわけでしょう。だから、その関係は、これは削る必要はないじゃないか。そうして各県ばらばらでかってに知事にやらしておったら、ますますアンバランスになるのじゃないですか。何でこれをやるんです。いままでの医療行政のやり方を——われわれは、厚生大臣がやはり日本全体のものを握っておかなければいかぬということを言ってきておるわけですよ。
  18. 若松栄一

    若松政府委員 都道府県立精神病院といいますのは、この精神衛生法ができます前の精神病院法並びにその以前の精神病者監護法時代からの流れをくんできておる条文でありまして、私宅監置精神病患者私宅監置をやめて精神病院に収容せよという思想がずっと昔から流れてきておりまして、その私宅監置をやめて精神病院に収容するというためには、どうしても都道府県病院がなければならぬということで、この必置義務が出ておるわけでございます。しかし、現状におきましては、もう精神病院というものは単に私宅看護かわりというよりは、精神病患者を治療する場所という性格が非常に強くなってきております。御承知のように、資料にもありますように、現在十六万床の中で都道府県立のベッドは一万三千床程度でございます。そういう意味で、この性格が昔の時代と多少違ってきているということは一つございますし、それに、現在におきましても、都道府県病院設置する場合には、通常私どもの持っております公立精神病院補助金がございますので、補助金を受けて設置することになります。また、医療機関整備審議会意見も聞かなければなりませんので、実態として、手続上どうしても医務局あるいは公衆衛生局の門をくぐらずには実際は実行できないわけでございます。したがって、私ども厚生省でも十分その実態は把握できるわけでございます。したがって、形式的にあらためてまた承認をするということは、手続を重ねるだけでございまして、この点、臨時行政調査会におきまして手続の許可、認可の簡素化という問題にからみまして、この条文は、厚生大臣承認を省略することが適当であるという意見も出ておりますので、それらの点もすべてかみ合わせまして、これらの措置をとったわけでございます。
  19. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、指定をするとぎの承認は、私は要らぬと思うのですよ。それは、五条の二項「都道府県知事は、前項の指定をしようとするときは、あらかじめ、省令の定めるところにより、厚生大臣承認を受けなければならない。」、これは要らぬと思うのです。私は精神病院を建てますという設置の申請さえしておけば、もうそれから先は、前に精神病院ということで設置をしたのですから、指定は当然ですよ。ところが、設置についても、指定についても、両方とも厚生省ははずしてしまうということになれば、これは厚生省はわからぬわけです。わからぬでしょう。だから、設置だけはやらぬことには、これは医療行政は混乱してしまうですよ。そういう点で私は、やはり四条の「厚生大臣」は残すべきだ。五条はよろしい。これはいままでの医務行政と違うのですよ。そういうことになれば、保険医療機関だって何だって、全部知事にさしてしまって、厚生大臣関係ないようにしなければいかぬですよ。全部県知事だけにしてしまって、もう厚生大臣は関知しない。この法律はそういう体系になっておるのですよ。厚生大臣というものはもうほとんどなくなって、全部知事が前面に出てしまっておるわけですね。今後医療行政をそういうことに改めるというなら、また別ですよ。いま厚生大臣は、医療のああいう小さいところまで干渉をしていっておるのですからね。だから、この点はいままでのあれとは違うのですよ。もう一ぺんよく相談してください。医療行政がいままでと違う方針で転換をするなら別です。これから政府として、医療行政は全部厚生大臣はタッチしない、知事自由裁量に、結核精神もまかしていくというならいい。こういう人権関係するような施設、しかも鑑定医というものを非常に高くしてくださいというような段階になったとき、それを知事に全部まかせるというならそれでもいいです。それならそれで、全部他のものも知事にまかせるようにしてもらわぬといかぬです。この問題はひとつ留保しておきますから、意思統一をしてください。  次は、精神衛生センターというものをどうして必置義務にしないのですか。義務制にどうしてしないのですか。
  20. 若松栄一

    若松政府委員 精神衛生センターは、先ほど申しましたように五カ年計画くらいで設置をしたいということでございますので、いま必置義務にいたしますと、最終の五カ年までの間に設置する県が、それぞれ法律違反状態になるわけでございますので、そういう意味任意設置にいたしまして、猶予を与えるという意味でやったのでございます。
  21. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、ある程度七割か八割方設置されれば、それからは義務制にしますね。
  22. 若松栄一

    若松政府委員 整備が終わりました段階義務制にすることも考えられると思います。
  23. 滝井義高

    滝井委員 精神衛生対策がこれほど重要だと言い、しかも第一線保健所を強化して、そうして各県のつかさの役割りを演ずる精神衛生センターがぜひ必要だと学者も言い、あなた方もそう思っておるのに、これが今度は義務制でないということになれば、財政の苦しい都道府県はつくらないですよ。それはやっぱり緊急のものから先にいって、いま言ったように、気が狂って生産にたいして貢献してない人のために金を出すということはやらぬです。それほど県は豊かでない。地方財政は豊かでない。ほとんどの県が、ここ一、二年赤字に転落しつつあるじゃないですか。やっぱりこういうものは義務設置にして、国がある程度裏打ちをするという体制にしないとできないですよ。こういう点をもう少しあなた方ががんばって、やっぱり竜をかいたら眼だけは入れることを忘れぬようにしておかぬと、眼を忘れておったら竜は天にのぼらぬですよ。これはあなた方義務制にする意思あるのでしょう。それなら政務次官局長のほうは頭を振って義務制にする意思があると言っておるのですが、これは予算が認められないからいまはできないということですが、私はいまとは言いません。少なくとも六割か七割方前後の県ができたら、その残りのものについては、その段階になったら義務制に変えて、どうしてもつくれないところは、国が相当大幅な財政措置をしてやるということでなければいかぬと思うのですよ。それでいいでしょう。私はいまとは言っておらぬ。
  24. 徳永正利

    徳永政府委員 お説のとおりだと思います。また、局長の申し上げておるのも、いま義務制で全部網をかけてしまうと、いろいろ法律的なめんどうなことも起こるから、もう少したった時点でそういうことを考えたいという答弁でございまして、私どももそういう方向に持っていくつもりでございます。
  25. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、八条では、義務制にさえすれば、国は必然的に経費の二分の一、運営費の三分の一の金を出さなければならぬことになるわけですね。そうでしょう。これは当然、前を義務制にさえすれば、あとは必ず予算がつくことになるでしょう。この条文で三分の一を補助するということは、補助しなければならないということと同じでしょう。
  26. 若松栄一

    若松政府委員 おっしゃるとおり、補助義務ができます。
  27. 滝井義高

    滝井委員 そうすれば、七条の条文をそういう形に書きかえさえすれば、国は必ず予算措置ができる、こういうことになりますね。  次は、十一条の指定病院の取り消しです。この指定病院運営方法がその目的遂行のために不適当であると認めるときは、指定を取り消しますね。これは一体具体的にはどういう場合ですか。
  28. 若松栄一

    若松政府委員 運営が不適当ということは、本来の目的である精神障害者の医療保護に欠けるような運営をしている場合には、その指定を取り消すという趣旨でございます。
  29. 滝井義高

    滝井委員 いや、具体的にどういう場合ですか。最近精神病院で、きのうの参考人の方も言われましたが、たとえば知事が解除したい病院の管理者の意見を求めたら、いや解除する必要はないのだということを言う場合があるわけですね。それから生活保護その他で、相当、最近福祉事務所の職員と結託をして、変なことがあったというようなことが精神病院に出てきているわけです。そういう場合は全部指定を取り消す、こういうことになるのですか。
  30. 若松栄一

    若松政府委員 一番具体的に考えております点は、やはり病院運営がまずくて専門の医師が得られないとか、処遇が悪いとか、あるいはその能力がないとかいうようなことが一番具体的な問題だと思いますが、運営があまりに営利その他に走って、医療、看護が適切でないということも当然その中に入ってまいると思います。
  31. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、指定を取り消されたその病院というのは、普通の病院としては運営できるのですか。
  32. 若松栄一

    若松政府委員 指定病院を取り消された場合には、一般の精神病院として運営することになって、措置患者等を入れることがなくなります。
  33. 滝井義高

    滝井委員 一般の病院として運営をしてもいい、こういうことですね。そういうときは、おそらく保険のことも一緒に重なってくるでしょう。  それから精神衛生診査協議会ですか、この精神衛生診査協議会というものが必要であるかどうかということです。私は、いまはもう結核の診査協議会なんというものは必要ではないのじゃないかと思う。パス、マイシスも安くなったし、レントゲンもそう高いものでもないし、健康保険でどんどんやってもいいと同じように、精神病についても精神衛生診査協議会をつくる金があったら、都道府県にすみやかに地方精神衛生センターをつくらせてやったほうがいいのじゃないか。いままでこんなものがなくてもやってきておったのだから、どうしてこんなものをつくらなければならないか。われわれは、むしろ結核の診査協議会のようなものは要らないのじゃないかと思うのです。もうパス、マイシンも安くなったし、何なら結核予防法を全部健康保険でやらして、その分だけ国が健康保険の会計に入れてやって、事務の簡素化をはかるべき時期にきておる。それをいろいろなものでやるということはナンセンスだ。こんなものは支払い基金でやったらいい、こんなものは要らないのじゃないか。何か役所はたくさんの協議会とか審議会とかをつくるのが好きだけれども、必要なものはつくらずに、たいして要らないじゃまなものを喜んでつくるのですね。いままでの経験から言っても、こんな段階ではないでしょう。また、結核のあとを追ってつくらなくてもいいじゃないですか。あなたは結核の経験もあるのだから……。
  34. 若松栄一

    若松政府委員 結核の例が出てまいりましたが、結核では、結核予防法の改正のときに新しい化学療法を適正に普及するという趣旨で、その適正を維持するために診査協議会を設けたわけでありますが、現在においては、この結核の化学療法が非常に普遍化してまいりましたために、確かに診査を無条件でパスする例が多くなってまいりましたが、診査協議会が何年間か努力を続けてきたということが、一般の医師がそのように適正な医療を自動的に行ない得るようになった原因だと思っております。精神のほうも、向精神薬の開発が比較的新しい問題でありますので、やはり当初におきまして向精神薬の化学療法の普及を適正にやりますためには、診査協議会という機関を置いたほうがより適切にいくのではないかと考えております。
  35. 滝井義高

    滝井委員 結核で診査協議会が要らなくなった——御存じのように、結核ほど精神は多くないわけですし、医者も多くない。したがって、そこでやる精神科の医者というものは、相当専門医的な人が多いわけですね。だれでもというわけにはいかないでしょう。特殊のものを必要といたしますから、だから私はこういうものをつくる必要はない、屋上尾だ、審議会に診査の専門家を置いてやったらよい、こう思うのですが、専門家の松尾さんのほうはどうですか。あなたのほうでいままでやっておるのだから、精神病の診査は、わざわざその診査をやる前に、もう一回この精神病患者にこの薬をやることが適正であるかどうかをめんどうくさい書類で申請させて、許可をおろしてその抗生物質を使うなんというようなことをやらなくとも、あなたのほうできちんとできるわけですよ。それが適正でなかったら削除したらいいんです。そうでしょう。二段階に、こういうめんどうくさい制度を二つも三つもつくらなくともよい。そうでなくてさえ、医者は書類が多くてどうにもならないで困っておるわけです。その分だけ医者に勉強させて、治療を前進させたらいい。患者を親切に扱わせたらいい。いま医者をノイローゼにして精神病者を見させるよりも、もっと平静な気持ちで見させたらいい。そういう書類をつくっておったらノイローゼになってしまう。松尾さんのほうは、何か経験上いままで診査に支障がありましたか。
  36. 松尾正雄

    ○松尾説明員 ただいま公衆衛生局長の言われましたような新しい分野の問題として十分に普及をさせていきたい、しかも事前にそういうふうな指導というものが実際的に行き渡る、こういう意味では、やはり存在価値はあり得ると考えております。保険の場合でありますとか、あとで査定をするという結果になる新しい分野でございますから、事前にそういう指導をいたすことは望ましいことではないか、かように考えております。
  37. 滝井義高

    滝井委員 これはしろうとならそれでいいけれども、しろうとではなくみんな専門家なんだから、診査員と同じレベルの人ですから、ほとんど必要ないのじゃないか。むしろ大蔵省はこういう予算は削らなければならない。船後さん、いま幸いにあなたが来てくれたから言うが、私はいまこの精神衛生法の一部を改正する法律案精神衛生診査協議会のことを言っておるわけです。いままでも結核にもこういう協議会が各保健所ごとにあったわけですが、これはもうパス、マイシン等の薬も安くなったし必要でなくなったのに、またこの精神衛生診査協議会というものをつくって同じことをやろうとしておるわけです。歴史は繰り返すというが、いままではこういうよい薬を使っておっても、みんな審議会でちゃんと専門家がやっておるわけですよ。そうしてそれが間違っておったら削除しておるわけですよ。今度は、前もってまた精神病でいろいろ薬の新しいのができたからやろうというわけです。私はむしろこういう予算というものは認めるべきではないと思う。あなた方が認めなければならないのは、精神衛生診査協議会ではなくして、都道府県精神衛生センター地方精神衛生センターをむしろ必置義務として認めるべきであって、予算の削除のしかたが間違っているということを言っているわけです。あなたはいま来たからちょっとわからぬかもしれぬけれども、そんなものは松尾さんのほうで審査をやるのですから、精神の請求書が出たら、審査をやる、不適当なら切って落としたらいいのですよ。それからまた、こういう専門医は多くないでしょう。精神病をやっております医者は、全国で何人おります。少ないですよ。
  38. 若松栄一

    若松政府委員 精神科の専門を標榜しておる医者は約二千八百人でございます。
  39. 滝井義高

    滝井委員 御存じのとおり二千八百人ですよ。私たちの同級生で精神科になったのは一人もおらぬ。河野君が学校を卒業したときは河野君たった一人。このくらいしかいないのですから、しかもこれはみんな特別に勉強した人たちばかりですよ。そんな診査協会をつくって、専門的にやった人が出したものを目の色を変えて削らなければならぬほどのものではないですよ。いまの段階では、こういう非常に事務的に複雑なことをすべきではない。そんなものは二千八百人集めて講習をやったらいい、講習があるのですから。そして、それから先は請求書がきたら、あとは松尾さんのほうにまかして、松尾さんのほうにやってもらう、こういうことでいい。私はこれは削除すべきだと思う。こういうところで医師会のボスをつくる必要はないですよ。これは一人のボスになるのです、見てみて刷ったりする権限を持つのですから。こんなものをつくる必要はない。五人ずつですけれども、これは相当できることになるわけです。したがって、各県にこんなものをつくる必要はない。事務簡素化をして松尾さんのところでやるべきだ、こういう主張です。私の体験からいっても必要ないですよ、これは。医者の上にまた医者をつくる。人の上に人をつくらずと福沢諭吉さんが言った。あなたは、ちゃんと福沢さんの医学校を出ているからわかっているはずだ。人の上に人をつくらず、人の下に人をつくらず。同じ医学を受けた者が自分たちで出して、あとは経済的に見て正しかったかどうかということの審査を一回やればいい。二回も三回もやる必要はないということです。そうでしょう。そんな中間機関をつくる必要はない。これは私は削除すべきだと思う。だから、これは私のには掛け印がしてある。これは納得いくでしょう。
  40. 若松栄一

    若松政府委員 診査協議会の診査内容と保険の審査内容とは違っておりまして、私どもの診査協議会は、病状を見ながらその病状に適切妥当な医療内容を規定するのでございまして、保険の審査は、支払いの関係が適当に行なわれているかどうかということを、審査することでございますので、内容、目的が若干違っております。そういう意味で、この診査協議会の意味は十分あると存じております。結核についてはもう全く無用の長物ではないかとおっしゃいますが、結核でも、現在第二次向結核薬剤等の使用が非常にふえてまいりまして、パス、マイシンは安くなりましたけれども、第二次向結核薬剤は依然としてきわめて高価でありまして、そういう薬剤の適当な使用という意味でも、現在でも結核診査協議会は相当な意義を持っております。同じように、向精神薬におきましても、現在なお開発の段階でございまして、まだ次々に新しいものがどんどん出てまいりますし、現在出ておる薬にいたしましても、なお決定的な使用方法というものがない、実験的な段階にあるものもかなりございます。そういう意味で、専門家の中の専門家が適当な指導をしていくということは、現在の段階で十分意味のあることだと存じております。
  41. 滝井義高

    滝井委員 あなたは勘違いしているです。経済的な関係だけを松尾さんのところは見るのじゃない。その病状に適合した治療内容がやられておるかどうかということもし審査するのですよ。私も審査委員をやったことがある。そうでしょう、松尾さん。経済的な問題だけじゃない。
  42. 松尾正雄

    ○松尾説明員 御指摘のように、保険の審査では、病名等を中心にしながら考えております。ただ、非常にこまかいところまで病状その他がわかるかということになりますと、それはおのずから制限がございます。
  43. 滝井義高

    滝井委員 それは、こまかいところは診査協議会だってわかりやしない。同じことなんです。むしろ、診査協議会は五人で見るけれども、こちらのほうは何十人で見るのですから、それだけ綿密ですよ、松尾さんのほうが。だから、松尾さん、あっさりこういうものは——屋上屋を架していたずらに医者をノイローゼになして、そして精神病者をノイローゼで見ると診断を間違うですよ。これはやらせないほうがいいのです。あなたはこだわっているけれども、役所は、こういうくだらぬものをつくるときは予算を一生懸命になってとるけれども、大事なものは落ちているわけだ。だから、まず先に船後さんと相談して、地方のほうが必置になったら、こんなものをつくりなさい。金があり余ったらこんなものをつくりなさい。足らぬときにこんなものをつくる必要はない、松尾さんのところに機関があるのだから。私はこれは絶対反対です。  それから、医療の面ですが、措置入院をする場合に、他の保険と競合した場合には、これは八割を国が見てくれますね。そうすると、その残りの二割は、その者が被保険者である場合は全部保険で見ることになりますか。二割のうち、精神結核は七割給付ですから、二割の七割を見ることになるのですか。どうなんです、その場合は。
  44. 若松栄一

    若松政府委員 措置入院の場合は、全額公費で負担いたします。したがって、保険の適用は全くございません。公費で負担いたしますが、相当の資産がある者につきましては、一部負担をさせることができます。その負担は現実には二%程度で、それが自己負担に回る。自己負担があった場合には、その負担に関する限りにおいて、保険の適用が始まる。したがって、保険の適用は、現実には措置入院患者医療費の二%にしか適用しない。その公費で負担する分の八割を国が負担し、二割を都道府県が負担するという組織でございます。
  45. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、その二%の場合に、たとえば百円かかった。そうすると、三十円だけは負担能力があるから持ちなさいという、その残りの三十円について、その者が健康保険の被保険者である場合は、これは全部保険で見ますから無料ですね。ところが、これが家族あるいは国民健康保険の場合は、その三十円については、負担の割合というものはどうなるのですかというのです。
  46. 若松栄一

    若松政府委員 一般の公費負担医療の場合と同じでございますので、残りの自己負担分について、国民健康保険であれば国民健康保険の給付率をかけたもの、それから健康保険の家族でありますと、五割までの限度見れますから、事案上全額保険給付ということになります。
  47. 滝井義高

    滝井委員 精神は、国民健康保険においては七割をみますね。そうすると、いま国と県とでほんとうは全額見るのだけれども、負担能力があるというので三十円なら三十円を負担しなさい、こういうことになった場合に、その者が健康保険の被保険者であれば、何もやらなくてもいい。保険が全部見てくれる。それから家族であれば十五円を負担をして、十五円を保険が見ることになるのですか、どうですか。それはどういうことになりますか。
  48. 若松栄一

    若松政府委員 健康保険の本人は全額見ます。それから家族は、医療費の五割の限度内であれば全部見れるわけであります。したがって、中央上家族の場合も全額保険給付が行なわれる。国民健康保険の場合は、給付を受けるべき者について七割なら七割ですから、三千円の自己負担があればその七割ということになります。
  49. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、健康保険は家族であろうと本人であろうと全部無料だ、こうなるんですね。いまのあなたの御説明では、健康保険なら家族、本人無料、それから国民健康保険については、三十円負担ならば二十一円は見てくれるが、九円は自分が出さなければならぬ、こういう解釈でいいですね。
  50. 若松栄一

    若松政府委員 実態的にはそうなると思います。
  51. 滝井義高

    滝井委員 それから一般患者の場合は二分の一を負担しますね、そうしますと、残りの二分の一の負担のしかたです。一般患者に対する医療では、精神病医療に必要な経費の二分の一を都道府県が負担をしてくれますね。そうして都道府県の負担をした二分の一のまた半分、四分の一は国が見てくれる、そういう形になっておるわけです。そうしますと、百円は国と県が見た。そうするとあと二百円だったら、あとの百円は一体どういう形になるかというと、いまと同じになりますね。そうすると、その百円は半分になるのだから、健康保険においては本人も家族も全部無料だ。そうすると、国民健康保険については三十円だけ自分が出せば七十円は保険が見る、こういう形でいいですか。
  52. 若松栄一

    若松政府委員 そのとおりでございます。
  53. 滝井義高

    滝井委員 次は、二十七条の2を見てください。「都道府県知事は、入院させなければ精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあることが明らかである者については、前六条の規定による申請、通報又は届出がない場合においても、精神衛生鑑定医をして診察をさせることができる。」こうなっておりますね。それでこの場合には「明らか」というのがついておるわけです。この改正案の条文を見てみると、「明らか」とついているのはこの場所が一カ所だけです。それでどうしてここだけ「明らか」というのをつけなければならなかったのかということが一つ。いま一つは、改正前において精神衛生鑑定医の診断は必ずさせなければならぬことになっておったわけです。ところが、今度は「診察をさせることができる。「ですから、させてもさせなくてもどちらでもいいのです。どうしてこういう変化をすることになったのか。この二点。
  54. 若松栄一

    若松政府委員 後段のほうから御説明申し上げるほうが順当でございます。  現在の第二十七条第一項は、従来のとおりの「診察をさせなければならない。」という規定でございまして、これは措置入院の常道をいく場合の規定でございます。これに対して第二項が加わりましたのは、これは申請、通報に基づいて精神衛生鑑定医の鑑定を経て措置をするという常道が間に合わない場合の緊急の措置でございまして、たとえば現在も、あばれている者をどうにもならなくなって連れてきた、かつぎ込まれてきた、これはもうだれが見てもあばれているというようなことで明らかな状態でございます。そういう場合に申請、通報等がない、そういう場合に都道府県知事が鑑定をさせることができるという特例を、特殊な場合、緊急の場合を想定した条文でございます。
  55. 滝井義高

    滝井委員 なるほど、そういうように明白に言われるとよくわかりました。  そうすると、それと関連をして二十九条の二ですね。いまの二十七条の二項は、「明らか」というのは、ばたばたあばれておるのだということの表現だった。そうすると、今度は二十九条の二で、「都道府県知事は、前条第一項の要件に該当すると認められる精神障害者又はその疑いのある者について、急速を要し、前三条の規定による手続をとることができない場合において、精神衛生鑑定医をして診察をさせた結果、その者が精神障害者であり、かつ、直ちに入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人を害するおそれが著しいと認めたときは、その者を前条第一項に規定する精神病院又は指定病院に入院させることができる。」今度は、「明らか」が「著しい」となったわけです。「明らかである者」、「著しいと認めたとき」、このニュアンスの違いというのはどうしてですか。「明らか」と「著しい」というのがついておるのはこの二カ所しかないのです。このところはどういう状態ですか。前はばたばたあばれておる、だから急速に入院させなければならぬ。この「害するおそれが著しいと認めたときは、」という、「著しい」というニュアンスはどういうことですか。
  56. 若松栄一

    若松政府委員 先ほどの鑑定の場合は、現実にあばれているというようなことが一見明らかな者を鑑定するという手続でございます。この二十九条の二は、緊急措置をするという段階でございますので、すでに診断もついた、ある程度の診察も終了してその状況が判断できたという、その判断に基づいて緊急措置をする場合でございます。したがって、その判断が明らかになっておりますので、ここでは医師が障害の程度を、軽度であるか疑わしいか著しいかという決定ができている段階でございますので、医師の診断をもとにした著しいという判断に限ったわけでございます。
  57. 滝井義高

    滝井委員 それならば当然、そういう者は入院させなければならない、こうしなければならぬが、それをさしていないわけですね。精神鑑定医が診断をして、明らかにこれはあばれておったし、そしてもう精神病者であることははっきりしている、自傷他害の顕著な症状があらわれている、顕著であるというならばこれを入院させなければならないとしなければならぬが、していないですね。それから同時に、その次の、二十九条の二の二項をごらんになると、「前項の措置をとったときは、すみやかに、その者につき、前条第一項の規定による入院措置をとるかどうかを決定しなければならない。」こういう形になっておるわけです。そうすると、知事よりか精神鑑定医のほうがむしろ重点が置かれなければならないのに、医者でない知事のほうに重点が置かれるのはおかしいわけですよ。ここにこの法律医療立法であるよりか治安立法的な、公安立法的な陰影があらわれているわけです。むしろこれは逆じゃないかという感じがするのです。鑑定医が見た結果、明らかにこれは精神障害者である、この者は相当重いんだから自傷他害の顕著な様相があらわれておる、だからこれは入院させなければならぬ、こうしなければならぬのだが、「入院させることができる。」として、一にかかってその判断を知事にゆだねておるというのは、結局これは精神病といえども県の財政状態を考えずしてはだめだ、こういうことでしょう。そういうことに重点が貫かれておるのではないですか。医者の診断よりか知事財政的な判断というものがここでは優先をしておるでしょう。そうしか読みとれぬでしょう。これは、あなた方はどう一体解釈しているのですか。
  58. 若松栄一

    若松政府委員 この第一項の「できる。」ということは、これは現実の具体的な行動として入院させることができるということでございまして、すぐにそういう身柄を病院に入れろ、入れることができるんだという意味でございまして、第二項の規定は行政処分の決定でございますので、そういう意味知事にはっきりまかして、その決定をゆだねておるわけでございます。
  59. 滝井義高

    滝井委員 二十九条の二も主語は知事です。そうでしょう。二十九条の二の一項の主体も知事、二項の主体も知事なんです。知事は「その者を前条第一項に規定する精神病院又は指定病院に人院させることができる。」こういうことなんです。そうでしょう。その次に、入院指貫を決定しなければならぬ、こういうことになっているのですから、ほんとうはこれは、鑑定医がもう診察の結果明らかに精神病者でございます。自傷他害の顕著な様相がある、入院させなきゃならぬ、こう言ったら、入院させなきゃならぬとどうして書けないのか、権威ある鑑定医が見たものを、今度はまた知事が入院させるかどうかを決定するんだということで、知事に決定権を与えるのはちょっとおかしくないかということなんです。
  60. 若松栄一

    若松政府委員 この法律の全体を流れております趣旨は、いわゆる通報、申請前置主義でございまして、措置を行なうためには必ず前提として申請あるいは通報がなければならぬという趣旨が貫かれておったのでございまして、必ず二十三条以降の申請、通報に基づいて二十七条の鑑定を行ない、その結果初めて措置ができるというたてまえをとっておりました。しかし、それでは緊急の場合にどうしても間に合わない点ができてまいりますので、新たに緊急の措置を加えたわけでございまして、この緊急措置はそういう申請、通報の前置を排除して、ほんとうの意味の緊急の場合に限ったわけでございますので、そういう場合はそういうこともできるんだということを知事に権限を付与したのでございまして、申請、通報に基づく通常の措置におきましては、必ず知事措置しなければならないのでございますが、この緊急の場合は、人身拘束をする権限を緊急やむを得ない場合に限って知事に与えたということで、これが権能規定になっておるわけです。そういうふうにして人身拘束を緊急の場合した以上は、これを成規の手続にするかしれないかという問題を至急に決定しろというのが、第二項の、ねばならないという規定に返ってくるわけでございます。
  61. 滝井義高

    滝井委員 その次の二十九条の三をごらんになると、「入院措置をとる旨の通知がないときは、直ちに、その者を退院させなければならない。」わけですね。自傷他害のおそれがあると思っておったって、知事の判断でだめになるわけです。このときは、その費用は、全部やっぱり措置入院と同じ形で全額公費負担になるわけですか。
  62. 若松栄一

    若松政府委員 緊急の措置といえども措置に変わりはございませんので、公費負担の対象にするつもりでございます。
  63. 滝井義高

    滝井委員 この入院措置をとらないときには、当然これは精神鑑定医意見は聞かないですね。ただ、病院の管理者の意見指定病院あるいは都道府県精神病院の管理者の意見を聞けばいいのであって、鑑定医意見は聞かないですね。
  64. 若松栄一

    若松政府委員 緊急入院させた者は、成規の措置をとるかとらないかという場合には、当然鑑定医意見を聞かなければならないことになります。
  65. 滝井義高

    滝井委員 その入院措置をとる旨の通知をしないときの鑑定医意見を聞くという条項は、どこにありますか。
  66. 若松栄一

    若松政府委員 二十九条第一項の成規の措置に振りかわるわけでございますから、当然鑑定医の診察が一致しなければならないわけでございます。
  67. 滝井義高

    滝井委員 通知がないから退院させるわけでしょう。そのときに、一体鑑定医の診断はないじゃないか。それはあると言うから、あるならどの条文でやりますかと言っておるのです。
  68. 若松栄一

    若松政府委員 失礼いたしました。成規の措置に切りかえる場合のことを申し上げたわけでございまして、成規の措置がとられないとすれば、それは当然退院させなければならないわけでございまして、その場合には、鑑定医の結果がどうあろうと、措置をとらない以上は病院は退院させなければならないわけでございます。
  69. 滝井義高

    滝井委員 だからそういう場合は、退院させるのですから、鑑定医は見ないわけでしょう。ここは鑑定医が見る必要があるじゃないかということです。一ぺん鑑定医が見て、そして緊急に入れたところが、知事措置をとらないためにこの者を出すと言えば、明らかにとか、著しく自傷他害の疑いがあるということで入れておったくせに、今度は措置をとらなかったからといってほっぽり出すのでは、底抜けになるじゃないかということです。だから、その場合には、もう一ぺん知事鑑定医意見を聞いて、とらない旨のむしろ通知をしてやらなければいかぬわけです。「通知がないときは、」という、知事は幽霊のように消えてしまうのはおかしい、こういうことなんです。それはそうでしょう。どうして退院させるときには何もしないのですか。
  70. 若松栄一

    若松政府委員 この「退院させなければならない。」という規定は、人権保護の規定でございまして、知事がぼやぼやしていて四十八時間も、あるいはもっと長い間、何も処置をしなかったというような行政当局の怠慢によって不当に拘束を続けるというようなことは適当でないので、もし行政当局が適正な判断をしない場合でも、四十八時間なり適当な法定の期間が過ぎました場合には、退院をさせなければならないというのは、もっぱら人権保護の規定でございます。
  71. 滝井義高

    滝井委員 自傷他害の疑いが非常に濃厚だということで、むしろ本人の人権より、今度は本人以外の第三者の人権というものが大事になってきておるわけでしょう。だから入院させたわけです。ところが、それを確認することもなくて、本人の人権と言って出すことはおかしいじゃないか。何かそこにもう一ぺん——本人の人権を守ってやると言っても、自害するかもしれないのだから。そうでしょう、自害するかもしれないのだから、もう一ぺん鑑定医が見てやる必要があるのじゃないかと言うのです。見て、これならだいじょうぶだというときには、それから知事はやはり通知しなければいかぬですよ。「通知がないときは、直ちに、その者を退院させなければならない。」という、こういうばかな条文はないと思うのです。知事から通知があったときに退院させる。人を入院させておいたけれども、わしは忘れておったというのじゃ、おかしいことだと思うんですよ。
  72. 若松栄一

    若松政府委員 そういう意味で、人権保護をするために二項の、前条の成規の手続をとるかどうかを早急に決定しなければならないということを知事義務づけておるわけでございまして、知事がそういうような怠慢をすることはないというたてまえでそうなっておりまして、もし万一そんなようなことがあったとしたら、そういう場合には患者人権を保護、してやらなければならないという、念を入れた規定でございます。
  73. 滝井義高

    滝井委員 知事が忘れる場合もあるし、病院が今度忘れる場合もある。入院さしておる患者が多いのですから、待て待て、あの人の退院はきのうだった、しまったというので、三日たって退院さした場合もあるんですよ。知事よりもむしろ病院のほうが案外忘れるかもしれないんですよ。  時間がきたそうですから、まだ半分ぐらいしかいかないけれどもやめますが、この法律は、実はやればやるほど非常に疑問が多いんですよ。いまちょうど二十何条しかいかぬのですが、これでやめますけれども、あとはあとの人にやってもらいますが、この精神衛生法は、今度はやむを得ませんけれども、きちっとした五カ年ぐらいの計画をして、そしてあまり治安立法でないようにして、おまわりさんやら何かをあまり入れずに、ひとつすっきりしたところで人権を守ろうとすれば、ほんとうの医療体制の確立の中で精神衛生法を確立してください。これは予防、治療、あと保護、リハビリテーション体系、きちっとしてもらわぬと、予防体系なんか全然ないのです。そういうことを要望して、私の質問を終わります。   〔井村委員長代理退席、委員長着席〕
  74. 松澤雄藏

    松澤委員長 竹内黎一君。
  75. 竹内黎一

    ○竹内委員 ごく簡単に二、三点お尋ねいたしますが、まず、議論の出発点として数字を確かめておきたいと思います。いわゆる三十八年の実態調査によれば、精神病院やあるいは精神薄弱児の施設、こういったものに収容を要する者は三十五万人というぐあいに伺っていますが、この三十五万人という数字でよろしいのでしょうか。
  76. 若松栄一

    若松政府委員 精神病患者精神病院に入院させなければならないという者は二十八万、重度精薄その他でそういう施設に入れなければならない者は七万、合計三十五万という計算でございます。
  77. 竹内黎一

    ○竹内委員 いわゆる、三十五万人の人たちが現在野放しにされているといって、いろいろジャーナリズムでも論議を呼んでいるわけです。そこで、厚生省当局としては、こういう野放し解消のためにどういうプランを用意しているのか、お聞かせ願いたいと思います。
  78. 若松栄一

    若松政府委員 精神病患者が二十八万入院しなければならないという数が出ておりますが、これが現実に世の中に適用される場合には、二十八万人が全部精神病院に入るということは予想できないわけでございます。たとえば結核患者で、結核実態調査結核の要入院という者が四十八万ございますが、そのうち、結核のベッドは二十三万で、現在空床を続けておる状態でございます。病状だけでなしに、社会生活の都合がございまして、医学的な判断だけではとうてい規制できません。したがって、私どもといたしましては、現在の段階では、大体人口万単位二十床程度までいけば、およその需要を満足させるのではないかという想定をいたしまして、そのつもりで年次計画を立てて、病床整備をはかっております。  なお、精神病の治療につきましては、単に精神病院だけで行ない得るものではございませんで、向精神薬の発達等によりまして、外来治療で治療を行ない得る血が年々比率が増大いたしておりますし、また精神病院でなしに、むしろそれ以外の中間施設的な、社会復帰関係施設をつくって、そこを利用することによって、従来の精神病床をそれほど大きく利用しなくてもいいという状態もございますので、それらのものを勘案いたしまして、将来計画を立てて推進してまいるつもりでございます。
  79. 竹内黎一

    ○竹内委員 何か年次計画でもってベットの問題を考えているというお話でございますが、その年次計画の中には、いわゆる国立なり公立の精神病院の持つ比重をもっと高めるべきだ、こういう議論があるわけでございます。現在わが国の場合は、八〇%は個人の精神病院である。そういう意味で、たとえば諸外国、カナダを見ますと、全体の四分の三が国立、公立である。スウェーデン、デンマークでも大体四分の三程度、こういうぐあいのところから、もっともっと国立なり公立の病院をふやせという議論がありますが、それに対してはどういうような用意をされておりますか。
  80. 若松栄一

    若松政府委員 精神病の治療というものも非常に進展が激しゅうございますし、いわゆるリハビリテーション作業療法というようないろいろなものをやる関係上、治療の内容が年々変化いたしております。そういうような変化を、学問の進歩についていきますためには、営利的な観点からあるいは一般の収支を度外視しない医療機関ではなかなか困難が伴いますので、ある程度収支にこだわらないでいけるような公立病院が、そういう先駆的な役割りをしてもらわなければ困る。そういう意味から、公的な医療機関をできるだけ推進したい。そういう意味補助金あるいは融資等をやっておるわけでございますが、それ以上に現在民間の医療機関の伸びが早いということは事実でございまして、私ども、民間医療機関の御援助も得たいのでございますが、公的医療機関整備については、一そう公共機関の御努力をお願いしてまいりたいと思います。
  81. 竹内黎一

    ○竹内委員 ところで現行法第四条によれば、  「都道府県は、精神病院設置しなければならない。」と規定してありますが、現実には、まだ都道府県によっては設置していない県が何県かあると聞いておりますが、ここを明らかにしていただきたい。
  82. 若松栄一

    若松政府委員 遺憾ながら、現在八県なお県立の精神病院の未設置がございます。その中には、県が建てたいと思っていても、医療機関の分布の都合等でなかなか話のつかないところ等もございまして、すべて県が怠慢のために設置していないというわけではございません。
  83. 竹内黎一

    ○竹内委員 ところで、次にいわゆる中間施設、アフターケアの施設の問題について、私は若干お尋ねいたしたいと思います。  こういう中間施設の必要なことは、いまさら議論するまでもないところだと思うのでございますが、中間施設がなかなか日本でできないという一つの点として、医療体系の一つに現在組み入れられていない、こういうのが一つの大きな難点になっているような気がしますので、渥美さんから、ひとつ医務局のほうのこういう中間施設に対する考え方を聞かしていただきたいと思います。
  84. 渥美節夫

    渥美説明員 現在のところ医療法では、医療施設としましては病院、診療所、助産所、三つの種類になっております。そのうちで病院に関しましては、その運営について、あるいは疾病構造の変化等に対応してこれをどういうふうに運営していくかという問題があることは事実でございます。それは、たとえばリハビリテーションの問題もそうでございますし、あるいは慢性疾患の患者に対する対策という問題も考えられなくちゃいかぬということになっております。しかしながら、こういった点につきましては、つまり病院の構造でありますとか運営の内容等につきましては、現在のところ、昭和三十八年の三月に出ました医療制度調査会の答申等もありまして、これらを検討しておる段階でございまして、同時にまた、この点につきましては医療費をどういうふうに見てくれるかという問題とも関連しておりますので、医療施設のことにつきましても、また支払いのほうにおきましても、両面におきましてそういった中間的な施設、病限であって第二種病院、あるいはナーシングホームと外国では呼んでおりますものもありますが、そういった点につきましては、そういったいろいろな観点から現在検討しておるということであります。
  85. 竹内黎一

    ○竹内委員 ただいまの御答弁の中に医療費の関係もあるのだという答弁をいただいわけですが、そこで私は、今回のいわゆる中間施設について、特に精神障害者の治療対策として作業療法というものが非常に有効であるということはすでに定説になっております。ところが、残念なことに、作業療法というものは現存点数に入っておりません。現実に松沢病院とかその他の療養所などで作業療法を行なっておりますが、いわば療養者の奉仕という形で行なわれておるように聞いておりますが、そういう作業療法というものをなぜ点数化しないのか、どこに問題があるのか、その点を御説明願いたいと思います。
  86. 松尾正雄

    ○松尾説明員 精神病の治療におきまして、療法というものが、ちょうど向精神薬の治療と相並びましてたいへん重要な問題であるということは、私も承知しております。御指摘のような点数化という問題になります場合には、どうしてもその基礎になりますものとして、作業療法の体系と申しますか、どういう人をどれくらい使ってどういうふうにやっていけばいいか、この問題は実は確立をしていただきませんと、私どものいわば点数設定になじめない、こういう問題がいままで一つございます。この点につきましては、かねがね公衆衛生局等とも打ち合わせまして、厚生科学研究室その他の専門家に御検討をわずらわしておる、こういうことでございます。いろいろ携わります身分の職種というものを確立してまいりますと、当然こういうことは積極的に考えなければいけない、こういう段階にきいるわけでございます。その際の具体的な時期といたしましては、保険点数全般にわたるいろいろな合理化、適性化という時期に到達しておりまして、こういう機会に早急に取り上げて各方面から検討したい、こういうように考えております。
  87. 竹内黎一

    ○竹内委員 なるべく早く結論を出すように希望申し上げて、次に、いわゆる日用品費の問題についてお尋ねしたいと思います。  実は、私のところにある精神障害者の方から手紙がきまして、その中で、日用品費の問題で差別待遇を受けているという書面がまいりました。その書面によりますと、医療扶助による一般入院患者の場合は、六四年四月から月額千八百二十円になっておる。ところが、精神病院入院の者は月千二百七十円と、五百五十円減額支給されている、これは明らかな差別待遇ではないかという趣旨の書面がまいったわけですが、まずこの数字が事実であるかどうか、お尋ねいたします。
  88. 若松栄一

    若松政府委員 その数字は事実でございます。
  89. 竹内黎一

    ○竹内委員 事実とすれば、なぜこれだけの五百五十円の差があるかということの理由を聞きたくなるわけです。この点はどうですか。
  90. 若松栄一

    若松政府委員 患者病院内における生活態様等を考慮いたしまして、措置患者等におきましては、原則的にほとんど自由を拘束されたような状態になっておりまして、趣味、嗜好とか、あるいはタオルその他のものも事実上看護者がやってやるというような状態でございますので、日用品に若干差が出てくると思います。
  91. 竹内黎一

    ○竹内委員 いまの点、もう少しお尋ねしたいのですが、時間がないので先に進むことにいたしまして、先ほど滝井委員の質問にもありましたいわゆる緊急措置入院の問題でありますが、昨日私ども参考人からお話を伺いましたところでは、四十八時間では実務家としてはできないというような実は御答弁をいただいたわけです。精神衛生審議会の答申では、たしか十日間程度というようなあれであったかと記憶するのですが、おそらく人権保護の観点から四十八時間ということにされたかと思いますが、たとえば土日とかゴールデンウィークとか年始年末といったような場合には、はたして四十八時間で実際に手続というものができるかどうか、その点はいかがですか。
  92. 若松栄一

    若松政府委員 この緊急入院の期間の問題につきましては、精神衛生審議会の段階におきましてもいろいろな議論が出てまいりました。実務家のほうはできるだけ長く、せめて二週間程度という御意見が出、また人権擁護のほうの法務省系統からは、少なくとも二十四時間、四十八時間以内にとどめろという意見が出まして、結局妥協的に五日間、十日間という答申が出たのでございますが、これも実務家の、ただいまの御指摘がありましたような実務上の点を考慮してのことでございます。しかし、人権保護の面から見ますと、職員がゴールデンウィークで休んでいるために患者を拘束しておくということはあり得べからざることである、したがってそのような問題については行政官庁が最大の努力をすることを期待して、その最大の努力をした場合になおかつ拘束しなければならない時間としては、四十八時間くらいが適当であろうという意見になっております。
  93. 竹内黎一

    ○竹内委員 最後に一つ、例の施設外収容禁止についてお伺いしたいと思います。施設外収容禁止については、すでに精神学会のほうからも改正要望が出ておることは局長御承知だと思いますので、くどくどお尋ねいたしませんが、学会のほうではあすこを改正しろと申しておりますが、その点については当局の意見はいかがですか。
  94. 若松栄一

    若松政府委員 施設外収容禁止の条項を、現在精神病院とあるものを普通にただ病院というふうに改めようという意見が出ておったわけでございます。この根拠といたしましては、精神障害者の定義を拡大する、したがって、神経症その他の患者精神障害者も組み入れるという想定、前提のもとにそのような問題が出たわけでございまして、つまりノイローゼの患者精神病院以外のところへ収容されてはならぬというようなことになりますとたいへんでございまして、ノイローゼの患者は一般病院でいいんだ、したがってノイローゼも含めるということになりますと、一般病院ということにならなければならぬわけでございますが、その精神障害者の範囲の拡大が見送られましたので、従来どおり精神病院のままに残したといういきさつであります。
  95. 竹内黎一

    ○竹内委員 終わります。
  96. 松澤雄藏

  97. 本島百合子

    ○本島委員 時間もありませんし、かなり質問もあって、私、実はこの法律に従ってお聞きする予定でありましたが省略いたしまして、三点ばかり御質問します。  一点は、今度の精神衛生診査協議会委員が非常勤となっておりますが、非常勤という形における勤務のしかたというのは非常に疑問があるということで、非常勤勤務ということはやめたほうがいいという意見がかなり強く出ておったわけです。今回も非常勤となっておるようですが、大体月給は幾らぐらいか、そしてどういう日にちでなさるのか、こういう点を明らかにしていただきたい。それから任期が二年となっておりますが、よほど簡単なことだけしか仕事をなさらないと思うのです。精神病院に関しては非常に患者数が少ない、また医師も少ない、こういうことになっておりますので、こういう点を明らかにしてほしいと思います。
  98. 若松栄一

    若松政府委員 診査協議会の委員は、月一回とか二回というような診査しかないと思われますので、都会地で非常に申請の多いところはあるいはもう少しひんぱんになるかもしれませんが、非常に回数が少ないわけでございますので、常勤である必要は全くなくて、午後あるいは午前の時間に出ていただいて、一月に何回という程度でございますので、当然非常勤でけっこうだと思います。  その手当は、そういう形で一回出ていただけば二千円というような計算をしております。
  99. 本島百合子

    ○本島委員 それは仕事の内容で御説明になったのでしょうが、そもそもそういう形における人を置くということは、全体的な空気として反対であるわけです。ということは、いつでも非常勤という問題は問題になっている。責任があるような、ないような形になりがちですから、こういう点、やはりこういう新しいものをつくられるときには御検討願って、なるべく精魂を打ち込んでやっていただく機関をつくってほしい、こう思うわけです。  二点は、二十四条の問題でありますが、申請、通報、こうなっております。ところが、この精神病は、先ほども言われたノイローゼは含まれない、こういわれますが、この申請、通報という場合に、他人が非常におそれをなして通報しますのか大体こういうものの傾向ですね。当事者の家庭では、これは反対する傾向が強いのです。ですから、ここのところは一体どういうふうな形でなさるのか、この点が一番問題であろうと思うのです。他人さまから見れば、非常におそれをなすような行為が行なわれておるが、しかし、家庭の者は、これはちょっとした間違いで腹を立てておるんだとか、あるいはまた異常な状態を呈しておるだけだからということで拒む傾向がある。この人たちはどこへ行っておるかと言うと、大体心理学的な相談所あるいは宗教団体にたよっておるわけなんです。ですから、他人の通報等は困るということで、いつでも断わられるのです。こういう点をどういうふうになさってきておるのか。
  100. 若松栄一

    若松政府委員 申請、通報は二十三条から二十六条まであるわけ七ございまして、一般人ももちろん通報はできますが、警察官、検察官あるいは行政施設の長といろいろございます。一般人の方が、自分の身の回り、隣近所に精神障害者がいるために身の危険を感ずるというような場合は、これは公安上の問題もございまして、自分自身の利益を守るためにも、やはり通報するということは当然許されることであろうと思います。その際、もちろん行政当局はそれらの通報に基づいて調査いたしまして、調査の結果、鑑定医を差し向けて診察をする必要があるかどうかを決定するわけでございまして、その段階で、行政当局としては患者の家族に御迷惑のかからないようにできるだけの配慮をいたすつもりでございます。
  101. 本島百合子

    ○本島委員 答弁のところではきちっと言っておりますが、実際問題としてはここが一番問題なんで、なかなかできないのです。そして、たとえば審査を受けると申しますが、たいていずらかっちゃうのです。それから何日かかる。そんな簡単なことにひっかかっては困るというので、そのほうに出向いていくこともだんだんおろそかになる。ところが、季節の変わり目とか何かの衝撃を受けた場合、はっとやるという事件が非常に多いのです。そこで憲法に抵触しないような形でひとつ何とか処置してほしいという御意向が非常に強いわけです。この法律を、さっと私、目を通して見ましたときにも、この点が一番心配されるんじゃないかと思ったわけです。ということは、たとえば三十九条でいきますと、警察官の職権乱用が起こるんじゃないかという危惧を一つ持つわけなんです。かりに第三者の申告の場合に、警察官はすぐそこへ行って事情をただしてということになる。これを一番みんながこわがる。ですから、たとえば、過日婦人議員たちが一生懸命努力いたしました、俗称トラ退治法といいますが、これの場合でもここが一番問題になっていたわけです。こういう点について、あなたのほうの立場として、そういう官権の乱用にはならないのだ、しかも第三者の協力を得てその患者に対する適切なる措置がとれるかれないか、こういう点をひとつお聞かせを願いたいと思います。
  102. 若松栄一

    若松政府委員 この法文の中に申請、通報ということがございまして、申請、通報に基づいて調査し、さらに鑑定医を派遣するという手順になりますが、その場合に、申請、通報を受けるのは都道府県知事実態的には保健所でございまして、保健所調査をし、そして鑑定医を差し向けるということでございまして、決してその間に警察官が入ることはございません。警察官は、職務執行法によりまして、従来は現実にあばれておるような者、精神錯乱しておる者を保護することができるという三条の規定がございましたが、通報についてはそれ以外ございませんので、したがって、相当危険な者を逮捕し、あるいは職務質問をいたしました場合でも、警察官としては何の手の打ちようもなかったわけです。そういう意味で、警察官が職務上明らかに傷害の危険のあるような者を発見した場合にも、保健所に通報し、保健所はそれに基づいて調査し、鑑定医を差し向けるということでございますので、警察官の職権乱用というようなおそれは万々ないと存じております。
  103. 本島百合子

    ○本島委員 そこで、いつでも問題になるわけですが、たとえば他人のうちを訪問した、そういう場合に、どうもおかしいと、こう思うわけなんですね。もうちょっとすれば狂暴性になるとわかっているわけなんです。そういうときに警察に言う。警察は、あばれていないものですから、これはしようがありませんと行っちゃうわけです。さて、その帰ったあとあばれられちゃうという事件が非常に多いです。あるいはまた、危険性があるという通報があった場合でも、警察官が行った場合にはやってないのです。だから、まあいいだろう、あと何とか家族でしておいてくださいというわけで、あとで殺人が起こったという半作が、私の地域でもあるわけなんです。ですから、そこのところでどういうふうに警察官は保健所に通報してくださるのか、一般の人は、保健所に通報するということはなかなかその場合わからないのです。こういう危険があったという事実からいたしまして、のんびりしたやり方ではとても危害を防ぐことができない。こういうことが一つ。  それからもう一つは、性格異常者というものが、御承知のように非常に多いわけです。過日、医療少年院に参りましたが、その場合でも、性格異常者というものが非常に多いということを言われたわけなんです。また、現実に、今日の犯罪というものが性格異常者という形でなされておる。先ほどのノイローゼと同じような形で、この問題については触れないとおっしゃるかもしれませんが、こういう点についてはどうお考えになりますか。
  104. 若松栄一

    若松政府委員 性格異常者の中から犯罪者が多く出ることは確かに事実でございますが、しかし、性格異常者といいましても、これもピンからキリまであるものでございまして、どの程度からほんとうに具体的に危険性があるかどうかということは、一つの断面で把握することはきわめて困難でございます。性格異常者というものは、生活上の条件によって非常に行動、態度が変わるわけでございまますから、特殊な、非常に刺激する、あるいは反抗的な精神を高揚するような状態が起こればそのときには異常な行動をいたしますけれども、生活条件が安定している場合には普通の社会生活を営めるという者でございますから、そういう性格異常者については、やはり家族が、常にその人の介護をするにあたって刺激的なことの起こらないように、家族自体の間で、あるいは家庭のまわりの人、職場のまわりの人、それぞれが注意をしてあげなければならない。そういうようなことはしろうとにはなかなかむずかしいということから、精神衛生相談所あるいは保健所相談員というようなものを貫きまして、そういうことの相談にも応じていきたいというふうに存じておるわけであります。
  105. 本島百合子

    ○本島委員 相談に応じたいと言われましたが、その相談をする前にこういう人々の措置をしなければならない。現行法上何らの措置も加えられていない。したがって、こういう人たちが野放しになっておるわけです。性格異常者といっても、相当精神異常者に近いような者もあるわけなんです。こういうような人々に対しては何らの法的措置がないから、どうすることもできないというのが現在の状況なんです。相談して適切な措置を講じられればよろしいですが、なかなかそれがやられないということで、今日の青少年の犯罪が多く行なわれておる。こういうことですから、私どもは、このセンターが、あまり期待できるかどうかわかりませんが、こういう点についての指導の方法、どういうふうにこの人たちの措置をとっていただけるか。たとえば家族の中で、何とか、どこかに何日か置いてもらってなおしてもらいたいという要望が非常にあるわけです。そういう場合、どこにも行くところがないのです。へたすれば精神病院に入れられるから、家庭のほうも困るということにもなってくるわけです。そういうものがないという危険性があるのですが、今回のこの精神衛生センターで、そういう何日か泊めて指導訓練をしてくれることができるのかできないのか、これはおそらくできないことだろうと思いますが、そういう点どうでありますか。
  106. 若松栄一

    若松政府委員 現在の精神衛生センターそのものには、そのような収容施設を持つことは考えておりません。将来の問題としては、中間施設あるいはそういうような相談施設みたいなものを考える必要があろうかと存じております。
  107. 本島百合子

    ○本島委員 将来に託される問題が非常に多いようですが、それではせっかく法律が通過しても、なかなかうまいこと精神病の人々に対する措置ができないと思うのです。先ほど滝井委員からも御質問があった措置入院の問題についても、これは基準があってなかなか強制的にはやっていただけないのです。現実問題としてそれだけの病床もないから、それは順序を待たなければならない。少々あばれるくらいは待ってください。これが現実の姿であります。  そこで、病床を先ほど結核患者と照らし合わして御答弁になっておったようでありますが、そんなことでは精神病者の野放しになっておる問題の解決はできない。そこで来年度の予算として病床をどのくらいおふやしになるのか、その目算がおありになるだろうと思いますが、そういう点で究極どういう形をおとりになろうとしておるか、聞かしていただきたいと思います。
  108. 若松栄一

    若松政府委員 精神病床は、現在なお不足であることは間違いありませんので、できるだけ争い機会に整備をやりたい。現在、大体ここ数年間、毎年一万床程度ずつ増加いたしております。その一万床のうち、公的な病院につきましては国の助成がございますし、また、私的なものにつきましては医療金融公庫の融資等がございまして、そう意味で私的なものも合わせまして一万床程度でございますので、これはかなり順当な伸びであろうかと存じております。
  109. 本島百合子

    ○本島委員 これで最後にいたしますが要望しておきます。  最近、人間の暮らしも非常に高度化してまいっておりますので、またいろいろ交通問題等、そういうことの障害から精神病者は非常に増加しておるといわれております。それから、現在の姿の上に立ってものを考えていられるように私は先ほどから答弁を聞いて感じたわけなんですが、これであってはならない。病床が余っていてもいいじゃないか、徹底的にそういう方々を収容して、治療してあげるということが最大目標でなければならぬ。それをどうも遠慮がちな答弁でいきますと、やはり野放しの数というものは依然として減らないだろう、こういうふうに思うわけなんです。また、予想もしなかったような場合も起こり得ることなんですから、そういう意味で、来年度の予算には相当大幅に獲得するという覚悟を持って、性格異常者並びにノイローゼ、こういう者たちに対する相談所、治療所、こういうものが必要だと私どもは感じるわけなんです。青少年の犯罪を防止するという立場に立ってものを考えたときにも、こういう施設がないばかりに現在のような不祥事が起こっておるということがいわれておりますので、この点腹を引き締めて、ひとつ来年度予算では確保していただきたい、こういうことを要望して、私の質問を終わりたいと存じます。
  110. 松澤雄藏

    松澤委員長 河野正君。
  111. 河野正

    ○河野(正)委員 きのうから精神衛生法改正につきましての意見の交換が行なわれてまいったのでございますが、学会あるいはまた審議会等の意見を聞いてまいりましても、いろいろな問題点が実は提起されておるわけでございます。したがって、政府としては、当然それらの意見を尊重する形で、この法案の手直しというものを行なわれることが私はきわめて望ましかった、こういうように考えるわけでございます。しかるにもかかわらず、きのうからの論議を承ってまいりますと、なお問題点が非常に多い。この点については、私は、当然政府としても再検討せられる必要があると思うわけでございますが、この点について大臣の率直な御意見を承りたい、かように思います。
  112. 神田博

    ○神田国務大臣 ただいま河野委員のお尋ねでございますが、精神衛生審議会の答申等はできるだけ尊重いたしまして本法案をつくったわけでございますが、まだ十分じゃないというお尋ねはごもっともであると思います。御承知のように、この精神衛生審議会の答申も、私どもの判断によりましても、半分くらいしか尊重できなかったんじゃないか、これは私の率直な答弁でございます。まだ半分は、後年度に善処しなければならない問題である、こう考えております。そこで、十分なものではないのでございますが、精神衛生の置かれております現在の情勢下におきしては、少なくともこの程度のものは取り上げなければならぬ、こういうような意図をもちまして、そして御審議をお願いしておる、こういう段階でございます。
  113. 河野正

    ○河野(正)委員 いま大臣のお答えを承りますと、精神衛生審議会の答申については半分程度参考にしたんだ、こういうお話でございます。この精神衛生審議会という諮問機関意見なり答申というものを尊重しなければならぬと同時に、政府としては、その他の、たとえば社会保障制度審議会というような審議会もございますが、これらの審議会の答申についてはいかが処置されましたか、お伺いをいたしたい。
  114. 神田博

    ○神田国務大臣 いまお話しの点でございますが、これはむろん答申を尊重するように努力いたしましたが、ことにその問題につきましては、精神衛生審議会の答申の中にも十分うたわれておりますので、それらも考えながら尊重してまいりたい、こういうことでございます。  社会保障制度審議会のほうの問題も、できるだけ尊重してまいりたい。しかし、先ほど来お答え申し上げておるように、これはなかなか一ぺんにはいけなかった。いずれも半分くらいが目安で考えた。後年度にはこれをやはり拡充強化していって、りっぱなものにしなければならぬという問題が残っておる、こういうことでございます。
  115. 河野正

    ○河野(正)委員 それでは率直に聞きますけれども社会保障制度審議会の答申なり意見というものについて、尊重せられましたかどうか。
  116. 神田博

    ○神田国務大臣 御承知のように、社会保障制度審議会の答申は、精神衛生審議会の答申を尊重してやれということが根幹になっておるようでございます。その精神をくんでやってまいった、こういうふうに御了解いただきたいと思います。
  117. 河野正

    ○河野(正)委員 その点は実は了解できぬのです。どういうことかと申しますと、社会保障制度審議会に諮問をされて、その審議が行なわれましたのは二月の十日でございます。ところが、私ども審議の最中に、すでに厚生省は、精神衛生法の一部改正が成案としてでき上がったんだという新聞発表をなさっておるわけです。そこでわれわれは、いま大臣がおっしゃったように、いろいろ答申なり意見が出てまいりますが、そのうち政府の責任でどの程度法案改正の中に盛り込まれるかどうかということについては、いろいろ事情もあろうと思います、これは政府の責任でやられることでありますから。ところが。少なくとも精神御生法一部改正についての社会保障制度審議会の意見というものは、時間的にも物理的にも全く尊重されなかったという経緯があるわけであります。それをあえて尊重されたということでございますならば、私どもは承知することはできません。いかがですか。
  118. 神田博

    ○神田国務大臣 いまお尋ねのございました社会保障制度審議会の答申は十日に出ておりまして、そしてこれを尊重いたしまして閣議決定は十六日、こういうことになっております。ですから、答申をちょうだいいたしまして約一週間近く慎重審議いたしまして、答申を尊重しながら閣議決定をした、こういう手順でございます。
  119. 河野正

    ○河野(正)委員 大臣、事務当局からごまかした資料をもらって答弁されるからそういう結果になるのです。私は社会保障制度審議会に出ておりますから、また、具体的にその問題と関連がございますから、あえてここで指摘をいたしておるわけです。これは二月十日の社会保障制度審議会におかけになって審議をいたしました。ところが、審議の過程の中で新聞記者に厚生省は発表されているのです。ちゃんと夕刊に出ている。だから私は、その次の社会保障制度審議会で大内会長に対して注意したところが、大内会長も、全くけしからぬ、自分も審議会を終わってうちに帰ったら夕刊に発表されていた、こういうことで、大内会長も非常に遺憾の意を表しておったのです。ですから、尊重する尊重すると言っても、実際には、きのうの参考人の御意見にもありましたように、あるときは隠れみのとして、あるときは単に機械的に利用する機関として御利用になる、こうい経緯があると思うのです。だから、今日せっかく改正法が出てまいりましたけれども、いろいろ学会なりその他において議論のたねになっている、こういうことだと思うのです。この点、いま局長からどういうメモが渡されたかわかりませんけれども、そういう誤ったメモで答弁されることについても問題がございます。そういう認識では、幾らここで論議いたしましても、実際には大臣の判断としては適切な判断は出てこないと思うのです。ですから、たとえ局長がどのような報告をしても、いま申し上げまする事実がありますことは厳然たる事実ですから、そういう事実の認識に十分立っていただかなければ、私どもいろいろ申し上げても無意味に終わると思うのです。そういう意味で私はあえてこの問題を取り上げたわけでございますので、これは局長が何と言おうとうそなんです、社会保障制度審議会が全部認めているわけですから。ですから、こういういろんな問題の中で、しょっちゅう審議会の意見なり答申を尊重するかせぬかという問題が出てまいります。特に完全尊重という主張をいたしておりますゆえんというものは、実はそこにあるのです。そうしませんと、いま申し上げますように、尊重したのだ、尊重したのだというように単に機械的に取り扱われる、こういうきらい、弊害というものが非常にいままで強かった、こういう意味で取り上げてまいっておるのでございますから、この点は、特にこの精神衛生法についてはひとつ厚生省も大いに反省してもらいたい。その他の問題はございますけれども、これは具体的な一例でございますから、これを契機として大いに厚生省は反省をする、こういう態度をとっていただきたいと考えるわけでございます。その点について……。
  120. 神田博

    ○神田国務大臣 ただいま河野委員より、大臣の答弁であったが、審議会の答申を尊重すると言いながらなかなか尊重していないではないか、しかも社会保障制度審議会にかけているのにすでに案を発表したではないかというようなことでございます。河野さんはそのほうの非常な大家でございますから、この内容の問題について私は議論をいたしませんが、事務当局の話を聞いてお答えするという意味ではないわけでございますが、事実問題でございますからその点で少し触れますと、審議中にそういう発表をしたわけではない。しかし、それがどういう経路で漏れたか、そういうようなことがあって非常に遺憾であった、こう言われているわけです。ですから、河野さんの言われたことは事実なんです。あなたの言われたのは事実であるが、しかし、意欲的に発表したのではないということは、ひとつ御了解願いたいと思うのです。私にはそれがどういう経路から漏れたかわかりませんが……。
  121. 河野正

    ○河野(正)委員 それならやめた。
  122. 神田博

    ○神田国務大臣 それはちょっと、もう少しお聞き願いたいのですが、それから審議会の答申を尊重しろという問題は、これはごもっともだと思います。これは当然のことだと思います。しかも、これをやっていながらそういうものが漏れるということはけしからぬことでありますから、これは河野委員のお怒りになることはごもっともであります。ですから、そういうことのないように、私どもは今後責任を負って善処しなければならぬ、こう考えております。また、審議会の答申を尊重すると言いながら、先ほども率直にお答え申し上げたように五〇%だ、こういうことでございますから、御不満の点もよくわかります。私どもも十分じゃないと思っていることもまた御承知願いたい。相手のあることでございますし、また急いだ事情もございまして、これは次の機会にできるだけ早くこの答申を全部尊重して成案を得ていきたい、こういうことでございます。今後は、いま御指摘になったような点のないように十分監督いたしまして、われわれは断固前向きでやってまいりたい、こういうように考えておりますから、御了承を願いたいと思います。
  123. 河野正

    ○河野(正)委員 了解できないわけです。私は、やはり単に精神衛生法の一部改正にとどまらず、今後いろいろ法律改正が行なわれると思うのです。その際、それぞれ各審議会の意見なり答申を尊重しなければならぬということが繰り返されて起こってくると思うのです。ところが、私がいま具体的な実例を示して反省を求めたにかかわらず、それを肯定なさらぬということでは、私はやはり今後の厚生省の施策についていろいろ疑問を持たざるを得ない。そういう意味で、私は自後の問題については留保いたします。
  124. 若松栄一

    若松政府委員 御指摘の点、私どもの公式の手続としては、先ほど大臣がお述べになりましたように、十日に御審議をいただき、十六日に閣議にかけて、その結果発表したものでございますが、私どもの事務の手落ちもございまして、ある新聞一社にその記事が前もって載ったということは私ども事務の手落ちでございまして、今後このようなことの起こらないように十分注意いたしますので、御了承願いたいと思います。
  125. 神田博

    ○神田国務大臣 先ほど来問題になっておりました河野さんの御指摘の、政府がいろいろの審議会の答申を尊重すると言いながら、しておらぬじゃないかという問題、これはたびたび原則的には尊重すると言って、そういうような御指摘の点のあることは私もわからぬではないのでございまして、いままでの惰性があったと思いますが、この点は今後十分尊重するということを率直に申し上げまして、御了承をいただきたいと思います。同時に、ただいま具体的な問題になりました精神衛生法審議にあたりまして、社会保障制度審議会というものに御審議をお願いして、そしてそれが政府の決定のごとく新聞等に出しているということは、これは厳に慎むべきことであり、取り締まるべきものだと私は考えております。河野さんのお述べになった点につきましては、私は、十分この点は厚生省としては反省して、今後そのようなことを再び繰り返さないことを期していきたい、かように考えております。この点につきましては、関係局長はじめその他にも十分ひとつ私は厳重に注意を促しまして、将来そういうことがないようにいたしたいと思いますから、御了承を得たいと思います。
  126. 河野正

    ○河野(正)委員 法案の適正を期するという意味におきましては、やはりそれぞれ各界、各方面の衆知というものを集めて、そして法案の完ぺきを期していかなければならない。そういう意味では、私はやはり、この審議会というものはそれぞれ権威者を集めて意見を聞くわけでございますので、過去の事例については十分反省をせられて、今後こういった社会保障の問題についていろいろな異論が出てこぬように、この点は十分御注意を願うべきだと思います。  いろいろございましたけれども、大臣からも率直な御見解を承りましたので、ひとつぜひ将来はそういう方向で善処せられんことを望みます。  特に私はきのうも申し上げたのでございますけれども、この精神衛生については、欧米先進国は非常に進歩いたしておるわけであります。しかるにかかわらず、一九六三年におきましては、ケネディが精神障害者及び精神薄弱者に関する教書というケネディ教書を議会に提案をして、そうしてもう減税は一応中止しても精神衛生対策に抜本的な方策というものを立てなければならぬ、こういうようなケネディ教書の問題もあったわけでございます。そういう点から考え合わせましても、このそれぞれの関係機関あるいはまた審議会、そういう方面の意見を一そう重視しなければならぬということは、欧米先進国の例を見てまいりましても考えなければならぬ問題だ、私はこういうように考えまするがゆえに、反省を求めたということを御理解をいただきたい、かように考えます。  本論に若干入って、重要な点については、ひとつ明確にいたしておきたいと思います。  その第一は、この精神衛生法の骨格というものは第一条と第三条にあると思うのです。そこで、この第一条の定義、これとこの対策というものが、やはり非常に関連をいたしてまいるというふうに私は理解をいたします。たとえば昨年のライシャワー刺傷事件、あるいはそのほかいろいろな社会的な事件が起こってまいりましたが、そういう問題を解決するにつきましては、やはりこの定義の問題を解決する必要がある。たとえば実際に精神病患者、あるいはまた極端な精神変質者、こういう患者については比較的保護もしやすいし、医療の対象になりやすい。そういうようにきちんと黒色という範囲は捕捉もしやすいし、保護なり民族というものもしやすいのですけれども、灰色の部分、学問的には異常心理という部分もございまして、これは東京工大の宮城教授等によりますと、異常心理についての日本の対策というものが欠けておる、それが今日のいろいろな社会的な事件となってあらわれているのだ、こういう識者の意見もあるわけです。そこで、どうしても中岡層と申しますか、ボーダーライン層と申しますか、いわゆる灰色の部分を何とかしてきちんと捕捉せぬ限りは、チェックせぬ限りは、いまいろいろ世間を騒がしているような問題を解決することはなかなか困難だ、こういう理解に立ちます。そういう意味でいろいろ議論のあったところではございましょうが、やはりこの定義をどこに求めるかということがきわめて重大な問題になってくると思うのです。そういう意味で、厚生省がこの精神衛生審議会の意見を尊重されなかったということにつきましては、私どもも非常に遺憾に感ずるわけでございます。いま局長人権問題と言っておりますけれども、これは人権問題でも考えようがあるわけです。本人の人権も必要ですけれども、社会の人権というものも非常に重大です。ですから、その間の調整をどうするかということが非常に大きな問題になってくると思うのです。患者人権だ、人権だ、もちろん人権は侵してはいけない。いかぬけれども、その人権ばかりを唱えることによって、今度はまわりのほうが社会的に被害をこうむってくる。そうすると、一体社会のほうの人権というものはどうなってくるのだ、こういう問題があるわけですから、そういう意味で中間層と申しますか、異常心理の範囲と申しますか、いわゆる灰色の部分と申しますか、そういう点の解決というものが当然はかられなければならぬ、そういう意味学会なり審議会の定義に対します意見というものは傾聴に値する、こういうふうに私は考えるわけでございますが、その点はいかがでありましょう。
  127. 神田博

    ○神田国務大臣 ただいま河野委員のお述べになりました事項につきましては、私も全くこれは同意見に思っております。特に第一条に規定しておる点を考えましても、いまお述べになりましたように、精神異常のはっきりした者については、これは議論がないと思います。しかし、灰色の問題をどうするか、これはなかなか微妙な問題だと思います。あまり前向き過ぎてしまっては相手の人権を侵すことになり、しかもまた一歩遠慮いたしますと、今度は逆に集団の人権を侵害することになる、こういう問題も起ころうかと思います。この辺の問題はデリケートだとは思いますが、しかし、これは今日の医学の進歩からいえば、私はむしろ集団の人権というものにウェートを置くべきものじゃなかろうか。何といっても、白か黒かということはそうはっきりわからぬ点がありますから、少なくとも灰色だというような事態が感づく以上は、やはり前向きにこれを施行していくということが必要じゃないか。厚生省の任務も、そういうところにウェートを置いて考えなければならぬじゃないか、こういうはっきりした考えを持っておるわけであります。
  128. 河野正

    ○河野(正)委員 そこで、時間もございませんからいろいろ議論は申しませんが、いろいろな意見があるとするならば、やはりこの際、学会なり審議会の意見を尊重するというたてまえをとられなければならぬと思うのです。意見がなければ別ですけれども、いろいろな意見があるわけですから、そうすれば、どっちをとるかということになれば、この際、ものさしになるのは学会なり審議——これは厚生省か諮問されて、あなた方権威者ですからひとつ御検討願いたいと言っておるわけですから、そういうことから言っても、やはり学会なり審議会の意見というものを尊重するたてまえがとられなければならぬ。それは当然だと思うのです。ところが、それがとられてないから、先ほどからいろいろと、審議会の意見をどうするのですか、こういう取り上げ方をやったわけです。これはひとつ早急に善処を願いたい、こういうように考えます。  それからいま一つは、精神障害者というものが拘束をされる、あるいは行動の自由というものが制限されるというようなことですから、少なくとも医療機関におきまするいまの精神鑑定医という問題については、私は非常に重要な使命というものが付与されておるというふうに考えるわけです。そこで、これはきのうの参考人の意見の中にも出ておったわけですけれども、やはり精神鑑定医の権限というものが強まる、あるいはまた人権を拘束する、行動の自由というものを拘束するということになれば、当然それらの患者の管理に当たる医師の地位というものは高められなければならぬ、これは筋だと思うのです。ただ、医師会方面の意見があった、それが資格制限だ、あるいは専門医制度に通ずるのだという意見もございます。ございますけれども、やはり患者の自由を拘束したり、あるいは人権を侵す可能性というものが出てまいるわけでございますから、そういう意味で、やはり医師の地位というものは高められなければならぬ、こういうように思うわけです。その際、いま申し上げまするような資格制限の問題であるとか、あるいは専門医制度に通ずるというような意見も出ておるわけですから、その間の調整をはからなければならぬということは、私どももそのとおりだと思うのです。ですけれども、いずれにいたしましても、鑑定医の問題については当然検討を加えられる必要があろうと思うのです。この点についていかがお考えでございまするか、率直な意見を承りたいと思います。
  129. 神田博

    ○神田国務大臣 ただいまお述べになりました河野委員の御指摘は、私も同感であります。やはりそういう方向で処置を進めていく、こういうことだろうと思います。
  130. 河野正

    ○河野(正)委員 これはやはりそれぞれ各界の強い意見もございますが、一方におきましては日本医師会の意見等もあるわけですから、早急に調整される必要がある。そしてこういう問題は、やはり一刻もすみやかに解決する方策というものがとらるべきだ、こういうふうに思いますので、ひとつぜひ再検討をしてほしい、こういうように思います。
  131. 滝井義高

    滝井委員 ちょっと関連をして……。  今度の改正の中で十月一日から実施される部面というのは、三十二条から三十二条の四までの規定は、四月一日から実施ではなくて十月一日から実施なんですね。この部面が、いわば一番、今度の精神衛生法の一部を改正する法律の中における財政負担を伴う部分です。したがって、いわばこれは一番重要な部面なんです。この一番重要な、十月一日から実施される部分における特に重要なところは、一般患者に対する医療、すなわち三十二条なんです。この三十二条は、すでにわれわれが過去における結核予防法で苦い経験を持っておるように、都道府県医療に要した費用について二分の一の負担をすることができるという、こういう任意的な規定にしますと、結核と違って精神病患者というのは少ないわけです。結核より少ないわけです。そうして同時に、社会的な世論形成というものも非常に弱い、結核患者に比べて弱い。それだけに、財政の苦しくなった都道府県が、今年度国の組んでおりますこの一般患者に対する医療というものは、人数が四万八千三百六十八人、額にして二億一千五百三十万七千円です。もちろん措置入院のほうは、百五十六億をこえる経費を組んでおります。結核の三百五、六十億の半分近くを組んでおりますが、これはもう何が何でも措置入院ですからうまくいくわけです。ところが、この一般患者に対する医療の二分の一負担というものは、すでにわれわれが結核で経験をしておるように、必ずしも当初から、これが全部都道府県の受け入れ態勢ができて消化するとは限らないわけです。そこで政府としては、精神衛生対策の重要性にかんがみて、ほんとうはこれは義務規定にしてもらって、何が何でも県に組んでもらうというのが一番いいのですが、地方自治のたてまえから言ってもそうもいかぬでしょうから、この際、行政指導によって、四万八千三百六十八人がそれぞれの各県における精神病患者実態において配分をせられたならば、その配分が必ず各県において二分の一の予算措置がされるように強力な行政指導をやれるかどうかということです。これはまず大臣の所信をお伺いいたしたい。そして非常に性急な私ですけれども、半年がまんをして、そして来年の予算委員会ではその実績を見ます。いま私手帳にちゃんと書いてある。この二分の一の実績を見ると書いてある。もしそれが、半年分があいまいもこたる姿で十分消化をされていないとするならば、直ちにこれは義務規定にやってもらわなければならぬ。この、当面行政措置をして必ずやります、やらなければやむを得ずそれは二分の一の義務規定をやろう、こういう二点について大臣の所信を承っておきたい。
  132. 神田博

    ○神田国務大臣 ただいま滝井委員からお述べになりました三十二条の第一項の関係でございますが、いわゆる四万有余の一般患者都道府県の二分の一負担の問題、要するにこれが厚生省指導によって完全に治療をするような状態に置かれるかどうか、そういう自信がないとするならば、これは義務費にしてひとつ来年度以降考える気はないか、こういう御趣旨だと思います。私どもといたしましては、精神障害者の置かれている地位、また一般の社会の公益から考えまして、これはやはり早く治療を必要とするわけでございますから、早期治療をするというたてまえに立って都道府県が二分の一の費用を負担して積極的にひとつやる、こういう期待をし、またそれを目安として強力な指導をもってやっていくという決意でございます。もしこれが、そういう厚生省としていろいろ行政上の手を尽くしてもやれない、精神障害者の問題の解決がおくれるというようなことがありますならば、これはなかなか容易ならない問題だと考えます。そこで、そういう場合には、いまお述べもございましたが、われわれのほうから進んで都道府県義務としてもやらなければならぬという方途に出る、これはやむを得ないことだと考えております。
  133. 滝井義高

    滝井委員 ぜひひとつそうしてもらいたいと思うのです。実は一方に、頭のところに措置入院があるわけです。しっぽのところに一般患者の入院があるわけです。そしてその胴のところに当たる部分に、これは措置入院でもないし、通院の患者でもない、普通の入院があるのです。これは何もされていないわけです。いま河野さんが質問しておったように、灰色の部分が、精神病患者とそれからそうでない者との移行形の中間部分が何もされていないじゃないかと言ったと同じように、入院も頭を押えて、実は今度はしっぽを押えてくれと言っておる。ウナギでも頭としっぽを押えると、これは動かぬようになるわけです。しっぽを押えていないで頭だけ握る、これではとてもウナギは握れぬ。頭としっぽをぎゅっと押えると、まん中がかっと出てくる。だから、私は、いまここで中間の灰色の部分の、入院をしておって措置入院でないものは言いません。これは頭としっぽをきちっとできれば、必然的にまん中は出てくるのですから、したがって、まん中のところはこの次言うことに残しておいて、ぜひしっぽをきちっと押えていただくことを要望して、私の関連質問を終わります。
  134. 河野正

    ○河野(正)委員 いまの滝井委員の要望に関連をして明らかにしておきたい点がございます。  入院の場合は、措置措置でないかという二つの区分になるわけですね。そして措置の場合には国が八割、府県が二割ということで全額国庫負担である。ところが、命令入所でない入院患者については、全くゼロ回答ということになる。ところが一方では、いま前向きで検討なさるとおっしゃった通院患者については二分の一ということになりますと、その間のアンバランスが出てくる。ですから、私はこの負担の多い入院患者、しかも命令入所以外の入院患者の問題についても早急に善処され、財政措置等も講ずる必要があろうと思う。そうしませんと、外来患者は半分やる、入院患者の場合、措置ならばいいけれども措置でないものはゼロとなりますから、これはアンバランスだ。この点についてはぜひ前向きで、これもあわせて滝井委員の要望のとおりに御検討願いたい、こういうふうに考えます。
  135. 神田博

    ○神田国務大臣 ただいま河野委員のお述べになりましたことは、私も同感でございます。ごもっともだと思います。そういうような方針で本法の適用をしてまいりたい、善処いたしたいと考えます。
  136. 河野正

    ○河野(正)委員 いろいろお尋ねしますと、私の場合は際限がなく、二日でも三日でもかかる。ですけれども、議事に協力を申し上げる意味におきまして、ぜひこの際再確認しておきたいと思います点は、いずれにいたしましても、精神衛生審議会で十六項目に及びます意見が出てまいっておるわけです。しかもその中の大部分が軽視をされ、あるいは全然取り上げられなかったといういきさつがあるわけです。精神衛生に関していろいろな意見があることは事実です。いろいろな意見があるといたしましても、政府が責任を持って諮問をいたした以上は、やはり、審議会の意見というものを十二分に取り入れるということが、政府にとって非常に大きな責務であろうと考えるわけです。  今度の法案に盛られました欠陥あるいは不備を一々取り上げますと際限がありません。もう少し時間を許してもらえれば、二日でも三日でも取り上げてもけっこうだと思いますけれども、それも不可能でありますので、いろいろ申し上げません。いずれにいたしましても、非常に多くの不備と欠陥があるわけですから、今後は審議会や学会意見を十分お聞き取り願って、今後大いに前向きに、この法案の適正な運用なり改善なりについて努力を願う要があろうと考えます。特に学会審議会の皆さん方の意見を聞いてまいりますと、一年有半の時間をかけて熱心に審議し、検討を加えた、だが、実際法案ができ上がってまいったのを見てまいりますと、ほんのちょっぴりしか取り上げておらぬということに対して、非常に大きな不満がございます。これでは私は将来に禍根を残すと思う。一生懸命に真摯な検討なり審議を重ねても、政府がそれを十二分に取り上げぬということになりますと、学者の皆さんなり審議会の皆さん方が、今後法案に取り組む意欲というものが減殺されると思うのです。そういう意味で、私は今度の法案に対します措置というものは必ずしも適切でなかったというふうに考えます。したがって、私は委員長の議事に協力する意味において多くは申し上げませんが、将来については、いま滝井委員の具体的な御指摘もございました、それらの点ももちろん重大な問題でございますが、先ほどから申し上げてまいりました審議会なり学会なり、そういう皆さん方の熱意あふれる意見というものを今後大いに行政の中に、あるいは将来の法律改正の中に盛り込まれることを強く要望いたしておきたいと存じますので、それに対して大臣のしっかりした決意なり姿勢というものをお示しいただきたい、かように考えます。
  137. 神田博

    ○神田国務大臣 ただいま河野委員のお述べになりましたこと、これは精神衛生法の問題だけでなく、学会審議会その他等でいろいろ御審議願って答申をしていただく、こういう問題について十分な尊重をすることは当然のことでございまして、いままでその尊重が十分でなかった点についきましては、政府もこれを率直に反省すべき点は反省して、今後は十分ひとつ尊重をしてまいりたい。ということは、いまお話がございましたように、学会審議会の各委員等は責任を持ってなお一そう御協力願えるように、こういうことは全く同感でございます。また国会で論議された点につきましてもこれを尊重することは当然でございまして、できるだけ前向きにまいりまして——何といっても社会保障は先進国よりだいぶおくれている、これでは恥ずかしいのじゃないかという気持ちを多分に持っております。そのいう点等も考えますと、いまお述べになりましたことはまこと適切な御要望でございまして、私ども十分反省しながら、しかも前向きで大いに元気を出してやっていく、こういう考えでございます。
  138. 松澤雄藏

    松澤委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  139. 松澤雄藏

    松澤委員長 ただいま委員長の手元に、精神衛生法の一部を改正する法律案に対し、小沢辰男君、河野正君及び本島百合子君より修正案が提出されております。
  140. 松澤雄藏

    松澤委員長 修正案の趣旨説明を聴取いたします。小沢辰男君。
  141. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員 私は、自由民主党、日本社会党及び民主社会党の三派を代表し、精神衛生法の一部を改正する法律案に対する修正案の趣旨を御説明申し上げます。  その内容は、精神衛生に関する事項を調査審議させるため、都道府県地方精神衛生審議会を置くこととすることであります。  何とぞ委員各員の御賛成をお願い申し上げます。
  142. 松澤雄藏

    松澤委員長 本修正案に対し御発言はありませんか。     —————————————
  143. 松澤雄藏

    松澤委員長 御発言がなければ、原案並びに修正案を一括して討論に入るのでありますが、別に申し出もありませんので、これより採決いたします。  まず精神衛生法の一部を改正する法律案に対する修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  144. 松澤雄藏

    松澤委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  145. 松澤雄藏

    松澤委員長 起立多数。よって、精神衛生法の一部を改正する法律案は、小沢辰男君外二名提出の修正案のごとく修正議決すべきものと決しました。     —————————————
  146. 松澤雄藏

    松澤委員長 この際、松山千惠子君、八木昇君及び本島百合子君より、精神衛生法の一部を改正する法律案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  その趣旨の説明を求めます。松山千惠子君。
  147. 松山千惠子

    ○松山委員 私は、自由民主党、日本社会党及び民主社会党の三派を代表し、精神衛生法の一部を改正する法律案に対する附帯決議の趣旨を御説明申し上げます。     精神衛生法の一部を改正する法律案に対する附帯決議   わが国の精神障害者対策が諸外国に比し、著しく遅れている現況にかんがみ、精神衛生審議会の答申を尊重し、今後早急にこれが改善をはかり、精神障害者の福祉の増進を期すべきである。   政府は、とくに次の点については格段の努力をなすべきである。   一、精神障害の定義については、更に検討すべき点があると思われるので、これにつき結論を出すこと。   二、措置入院患者以外の入院忠君及び外来患者に対しても、速やかに医療費保障の実現を図ること。   三、精神障害者の社会復帰促進のための訓練、療法を施す施設設置すること。   四、精神衛生鑑定医制度については、速やかに意見の調整をはかり、所要の改善に努めること。   五、通報制度の拡大については、その運用にあたり適切を欠くことなきよう一層の慎重を期すること。  以上であります。  何とぞ委員各位の御賛成をお願いいたします。(拍手)
  148. 松澤雄藏

    松澤委員長 本動議について採決いたします。  本動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  149. 松澤雄藏

    松澤委員長 起立多数。よって、本案については松山千惠子君外二名提出の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、神田厚生大臣より発言を求められております。これを許します。厚生大臣神田博君。
  150. 神田博

    ○神田国務大臣 精神衛生法の一部を改正する法律案並びに修正案につきまして慎重な御審議をいただきまして、ただいま御可法くださいましたことにつきまして厚く御礼を申し上げます。  なお、政府といたしましては、今後とも精神衛生施策の前進に力を尽くしますとともに、ただいま同法案に対しまして付せられました附帯決議の御趣旨を十分尊重の上、慎重に検討を進めてまいりたい所存でございます。     —————————————
  151. 松澤雄藏

    松澤委員長 ただいま議決いたしました本案に関する委員会の報告書の作成等に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  152. 松澤雄藏

    松澤委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。   〔報告書は附録に掲載〕
  153. 松澤雄藏

    松澤委員長 この際、本会議散会後再開することとし、休憩いたします。    午後一時三十二分休憩      ————◇—————    午後三時七分開議
  154. 松澤雄藏

    松澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  参議院提出の優生保護法の一部を改正する法律案を議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。丸茂重貞君。
  155. 丸茂重貞

    ○丸茂参議院議員 ただいま議題となりました優生保護法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。  現行優生保護法におきましては、都道府県知事指定を受けて受胎調節の実地指導を行なう者につき薬事法の特例を設けまして、その実地指導を受ける者に対し避妊薬を販売することができることといたしておりまするが、この販売を認められる期間は昭和四十年七月三十一日をもって切れることとなっております。  ところで、この特例が設けられました趣旨は、避妊薬の簡易な入手をはかることによって、受胎調節の指導を全うしようとするものであります。この必要性は、現在なお存続していると思われまするので、この期間をさらに五年間延長することといたしたのであります。  以上、この法律案の提案の理由について御説明申し上げたのでありまするが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第でございます。(拍手)     —————————————
  156. 松澤雄藏

    松澤委員長 ただいま議題となっております本案にあわせて、内閣提出清掃法の一部を改正する法律案及び理学療法士及び作業療法士法案の各案を一括議題となし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。滝井義高君。
  157. 滝井義高

    滝井委員 理学療法士及び作業療法士法について質問をいたします。もう逐条的にざっとやりますから……。  この法律の七条の二項で「都道府県知事は、理学療法士又は作業療法士について前項の処分が行なわれる必要があると認めるときは、その旨を厚生大臣に具申しなければならない。」こうなっているわけです。免許の取り消しで、こういう具申を厚生大臣にするというような例が他の立法にあるのかどうか。
  158. 大崎康

    ○大崎政府委員 お答え申し上げます。  かような条文を定めた医療関係者の法規はないように考えておりますけれども、事実上処分に該当する事件が起こりまして、そして厚生大臣が処分をいたします事例というのは、医師法はじめその他の法規にあるわけでございます。そのようなときには、実際上は都道府県知事から厚生大臣意見を付しまして、その事件の概要につきまして申し出るようになっておるわけでございます。
  159. 滝井義高

    滝井委員 まず、知事がこの免許の取り消しが必要だ、こう認めるわけですね。認めたときには、これは免許の取り消しが必要ですよというのを厚生大臣に具申をする。そうすると厚生大臣は、七条の四項で、理学療法士作業療法士審議会の意見を聞かなければならない、こういうことになる。これは義務ですから、聞いて処分をやる。その場合に、当然弁明その他有利な証拠の提出の機会を与える、こういうようになっておるわけですね。そうすると、その具申というようなものは、私の記憶では他の法律にはないような気がするのですが、ほかにあればそれをちょっと教えてもらいたい、それが質問の要旨です。
  160. 大崎康

    ○大崎政府委員 これは医師法等の古い立法例には実はございません。いまさがしてみましたところ、薬剤師法の第八条の三項に、「都道府県知事は、薬剤師について前二項の処分が行なわれる必要があると認めるときは、その旨を厚生大臣に具申しなければならない。」こういうふうな規定がございまして、以下同じような規定になっておるわけでございます。
  161. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、古い立法になくて、こういう新しい立法——薬剤師法は二、三年前に改正されましたから、新しい立法にこういう形が出てきたというのは、何か特別な事情があるのですか。具申でなくて、必要なときには直ちに厚生大臣に通知するとかなんとかいうことでいいんじゃないか。何か具申という、薬剤師法からこういう立法形態が出たというのは、立法上特別にこうしなければならない必然性というか、そういうものがあったのかどらか。
  162. 大崎康

    ○大崎政府委員 薬剤師法の立法のときのことはつまびらかにいたしませんが、具申といいますのは通知と違うわけであります。それは都道府県知事意見を添えまして、その処分につきまして通知をする、これが具申の内容であろうかと思います。そのようなことを都道府県知事が行為を起こしませんと、事実上の問題といたしまして、厚生大臣が事件の詳細につきまして承知するような状態にならないことが多いわけでございます。そのようなことで、このような規定を設けた次第でございます。   〔委員長退席、小沢(辰)委員長代理着席〕
  163. 滝井義高

    滝井委員 実は私は、この理学療法士及び作業療法士の法律を読んで非常に感じたことは、この理学療法士なり作業療法士なりの身分というものを非常に高く評価しているということです。そこで私が特に具申ということを他に先例があるのかどうかということを聞くのは、そのためなんです。こういう専門技術者の処遇というものは、こうなければならぬと思うのです。ところが、それに比べて、いま言ったように薬剤師法にはできたが、古い立法の医師法や健康保険法にはこういうものがないんですよ。私は、理学療法士なり作業療法士より医師のほうが身分が上だとは思っておりません。しかし、これは医師の指示のもとにいろいろの仕事をするけれども、こういう意見を付さなければ簡単に厚生大臣はその身分を左右できないということで非常に重く見ておるのに、その指示をする医師のほうにはそういうものがないところにむしろ問題があるのだ、こういうことを言いたいのです。次長は、医師法の所管の次長でもあるわけだから言うのですが、健康保険の指定医というものはすぱっとやられてしまう。これは地方医療協議会にかけます。かけますけれども厚生大臣まで具申をして、そうして中央社会保険医療協議会にかけるというようなことはないわけですよ。地方の社会保険医療協議会においてす。はっとやられてしまう。ずいぶん違うんです。扱い方が軽い。こちらのほうは非常に重くしてある。営々辛苦七年の学業を終えて医師の免許をもらったって、保険医の身分を取り消されたら、そんな免許というものは何にもならないんですよ。そういうような意味からして、私はやはり医師法その他もそういう形で改正しなければならないのじゃないかという感じがするわけですよ。地方医療協議会がすぱっと保険医の身分を切ってしまうというようなことは、やはり問題じゃないか。それは医師の免許を取り消すのと同じ価値がある、それだけの重みがあるわけですよ。保険医を取り消されるということは、皆保険のもとでは医師の免許が役に立たないのですから、いかにりっぱな金殿玉楼のような医療機関であっても、保険医療機関指定を取り消されたら、日本のいまの状態では掘っ立て小屋と同じ価値になってしまう。それは地方でやれる、知事は具申をしない。だから、そこらの関係というものをもう少し考えてもらう必要がある。これは医務局が考えないと保険局が考えないんですよ。幸い医務局が考えたこの理学療法士及び作業療法士については非常に高く評価しておるので、そういう点で、私はこの立法のいわば一番よい点はここだということを言いたいんですよ。どうですか、医師法なり健康保険法についても、こういう形を推進する意志があるのかどうか。
  164. 大崎康

    ○大崎政府委員 御案内のとおり、医師法は昭和二十三年に立法いたした法律でございまして、いま先生御指摘の理学療法士及び作業療法士法案の七条二項のような規定のたてまえにはなっていないわけであります。医師法におきましては、医師が一定の条件に該当するときはその免許を取り消す、こういうふうなことになっておるわけでありますが、ただし実際上の措置は、いま御審議をいただいております法案の七条二項のような形で運用いたしておるわけでございます。この点はひとつ御了承いただきたいと思うわけでございます。  それから第二番目の問題といたしまして、健康保険法における保険医の指定あるいは取り消しの問題でございます。これは医師の身分という基本的な問題の上に、いわば保険によりまして医療給付を行なう一定の地位を取得するというための一つの行為が、指定するという行為であらわれるわけでございます。その指定権者は、御案内のように知事さんでございまして、したがいまして、取り消しにつきましても、中央までこないような構成になっているわけであります。この健康保険法の構成がどうあるべきかということは、指定権者をいかに定めるべきかというふうな問題であろうかと思うわけであります。これは医務局の所管ではございませんが、その辺につきましては検討問題として残るのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  165. 滝井義高

    滝井委員 昔は保険医とそれから医師の身分というのは、あなたの言うように、医師の身分の上に保険医が乗っかっておったわけです。したがって、医師のやる範囲と保険医のやる範囲というものは相似形でなかったわけです。うんと医師のやる範囲のほらが広かったわけです。ところが、いまや医師のやる範囲と、保険医が予防のところからアフターケアまで取り扱う段階になりますと、これはほとんど重なってくる。相似形の形になってきておる。重ならぬ部分というのは少ししかない。重なる部分が非常に多くて、重ならぬ部分が少ない、こういう形になってきておるわけです。それだけに、皆保険政策によって、昭和二十三年当時や昭和二年に健康保険法ができて以来の状態から比べたら、非常に大きな時代の変遷があるわけです。したがって、私はやはり保険医の身分についても、こういう考え方を持つ必要がある、むしろ保険医の指定権というものは厚生大臣みずからが握るべきじゃないか、こう思うわけですよ。その保険医がこの理学療法上なり作業療法士なりを指示して、いろんなことをやっていただくのですから、だからその保険医がやるのでしょう。これは保険のことについて使うのですから、いま保険以外に使うのはないのだから、その人のほうの身分は県知事が自由自在に動かして、指示を受けるほうの人ははるかに上の人がやるというのでは、身分的にギャップが出てきますよ。そうして薬剤師さんは同じ形態になっておるのですよ。そうでしょう。だから、ここに一つ矛盾が出てきておるということを私は言っておるのです。これはすなおに考えてもらって、やっておく必要があるということだと思うのですよ。それだけ健康保険が、近代の立法に比べて、立法形態がおくれておるのですよ。昭和二年にできた健康保険法を見てください。かたかなで書いてある。いかに船員保険や健康保険が時代的におくれているかということなんです。だから、いまのような医療におけるややこしい問題が起こるというのは、あの健康保険なり船員保険の思想というものが、労務管理的なものに根ざしたものとしてずっときている。近代の社会保障立法としてのていさいを欠くところがあるから、こういう形になってくるのです。したがって、いまの段階では、私はこれはこういう形に医師法も改めてもらう必要があるし、それにならって健康保険法も変えていく必要があるんじゃないか、こう思うわけです。これは保険局に言ったってなかなかわからない。医者の身分を扱うあなたのほうから推進をやらなければいかぬと思うのですが、どうですか。
  166. 大崎康

    ○大崎政府委員 先先のおっしゃる御事情は私どももよくわかるわけでございますが、法律的には医師という身分がございまして、その医師の身分を持った者が保険医療機関としての指定を受けるというていさいになっておりまして、その点は現在のところ二重がまえになっているわけでございます。それで、医師の資格というものと保険医の資格の取得というふうなものを、どういうふうに法律的にうまく構成するかという問題であろうかと思います。その点につきましては、保険局の所管でもありますが、私どもにおきましてもなお検討を重ねてみたい、かように考えるわけであります。
  167. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、この理学療法上なり作業療法士が健康保険を扱う場合にはどうなるのですか。健康保険の指定理学療法士作業療法士になるのですか。ならないのでしょう。このままでおやりになるわけでしょう。
  168. 大崎康

    ○大崎政府委員 保険法上の指定は受けませんで、看護婦でございますとか、診療エックス線技師でございますとか、衛生検査技師でございますとか、そういうふうなものと同じような立場になるわけでございます。
  169. 滝井義高

    滝井委員 そうでしょう。同じ保険をやるのに、身分法のままでやれるわけだ。医者は身分法のままではやれないわけです。保険医にならなければやれないわけです。ここにも差別が出てきておるでしょう。だから、こういうように、使われる人は身分法のままで保険を扱えるのだけれども、医師は請求その他の責任があるので、指定を受けなければだめだ、こういう形になって、そこにもちょっとちぐはぐが出てくる。同じ医療に働く医療従事者でも違うわけです。それは滝井義高という管理者に使われる大崎というお医者がおれば、この人も保険医でなければだめなんですからね。同じく使われるのでも、保険医でなければだめなんです。だから、こういうように同じ医療に従事する人でも、医師ということで違う。しかし、やることは同じことをやるわけです。片一方は注射をやるか、片一方は同じ被保険者のマッサージをやるかによって区別することもおかしいことになる。だから、こういう点はすでに現在の日本の立法上においてもそういう矛盾が出ているので、その点についてはひとつ今後も配慮をしていただきたい、こう思うわけです。  それから七条の三項です。「第一項の規定により免許を取り消された者であっても、その者がその取消しの理由となった事項に該当しなくなったとき、その他その後の事情により再び免許を与えるのが適当であると認められるに至ったときは、再免許を与えることができる。この場合においては、前条の規定を準用する。」この場合も私がちょっと疑問に思うのは、「その他その後の事情により」という、これは一体どういう場合をさしておるのかですね。
  170. 大崎康

    ○大崎政府委員 たとえば罰金以上の刑に処せられた場合におきましては、四条の一号の規定によりまして、免許を与えないということがあるわけであります。しかしながら、その後事情が変わりまして改悛の情が非常に著しいといった場合には、ただいま先生がお読み上げになった条文によりまして再免許を与える、かようなことに相なるわけであります。
  171. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、この四条は、与えないことがあるのであって、取り消しではないでしょう。これは明らかに与えておって、取り消されたわけです。この場合はいずれかのときには与えないことがあるというので、罰金刑に処せられた者は免許を与えないのですよ。取り消しじゃないわけでしょう。
  172. 大崎康

    ○大崎政府委員 条文四条一号は誤りでございまして、第七条の一項の規定によりまして、四条各号のいずれかに該当するときは、免許の取り消しをすることができるという規定についてでございます。その場合に、第四条の各号の場合、どういうふうな場合が第七条の三項の後段の規定に該当するかといいますと、私がただいま申し上げましたように、四条の一号の罰金以上の刑に処せられて免許を取り消されたが、その後改悛の情が顕著でありまして、再び免許を与えるに適当であると認められるに至りました場合には再免許を与える、かように読んでおるわけでございます。
  173. 滝井義高

    滝井委員 次は十一条です。これがなかなかややこしいところですがね。「理学療法士国家試験は、次の各号のいずれかに該当する者でなければ、受けることができない。」と、こう書いてある。まず、「学校教育法第五十六条第一項の規定により大学に入学することができる者で、文部大臣が指定した学校」、文部大臣が指定した学校というのはどういう学校で、現在何カ所そういうものがあって、人数はどの程度養成しているのか、それから厚生大臣指定した理学療法士の養成施設というのは現在何カ所あって、どの程度の人を養成しておるのか、それを先に伺いたい。
  174. 大崎康

    ○大崎政府委員 現在法律が施行いたされておりませんので、指定はまだ行なわれていないわけでございますが、法律が成立の暁におきましてはおそらく指定されると考えられますのは、一つは厚生省所管の国立療養所東京病院にございますリハビリテーション学院でございます。これは指定いたそうかと考えております。これはPTが二十、OTが二十の定員であります。それからその次に、おそらく文部大臣が指定をされるであろうと考えられます施設は、東京教育大学の付属盲学校に設けられておりますPTの課程がございます。これが定員十九名でございます。それから大阪府立盲学校のやはり同じようなPTの課程がございまして、これまた定員十五名でございます。それがおのおのの例でございます。
  175. 滝井義高

    滝井委員 それは、三カ所以外にまだあるわけですね。
  176. 大崎康

    ○大崎政府委員 現在は三カ所がおそらく指定に該当すると考えておりますが、私どもの承知いたしております範囲では、労災保険におきまして九州の労災病院の付属施設といたしまして、PT、OTの養成課程が四十一年度から始まるということになっておりまして、四十年度におきましてその施設の建設費が計上になっているというふうに承っておりまして、それが開設になりました暁におきましてはやはり指定を受ける、こういうふうな関係に相なるかと思います。
  177. 滝井義高

    滝井委員 そうすると四カ所ですね。
  178. 大崎康

    ○大崎政府委員 さしあたって四所でございます。
  179. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、四カ所、わずかしか出ないことになるわけですが、それでわかりました。そうすると、十一条の一項の二号ですね、「作業療法士その他政令で定める者で、」という、その「その他の政令で定める者」というのは何を意味しますか。
  180. 大崎康

    ○大崎政府委員 作業療法士の資格を持っております者が理学療法士の国家試験を受けます場合におきましては、その養成課程を二年にいたそうというのが、まず第十一条の二号の原則的な趣旨でございます。その理由は、理学療法士作業療法士の養成課程は、第一学年の普通授業科目及び専門科目のうちで、基礎医学に関する授業科目が双方の職種で重複いたしておるわけでございまして、そういうような関係上この三年の課程を二年に短縮しても差しつかえないではないか、かように考えておるわけでございます。これと同じように、他の医療関係の職種におきまして、作業療法士なり理学療法士の第一学年の共通科目のごときものを修養した医療職というものがあれば、これはこの政令によって定めたい、こういうふうに考えておるわけでございます。これはどういうふうなものが該当するかということでございますが、これはいろいろ審議会等に御相談をした上で定めたいと思っておるわけでございますが、大学等でいろいろな一定科目を修めた者等につきまして、その修めました内容を精査いたしまして政令で定めたい、かように考えておるわけでございます。
  181. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、いまどういうものかということはちょっと例示できかねるのですか。
  182. 大崎康

    ○大崎政府委員 この問題につきましては、作業療法士なり理学療法士の、いわゆる普通授業科目なり専門科目のカリキュラムの組み方ということと関係をしてくるわけでございます。抽象的に御答弁を申し上げますと、私がただいま申し上げましたようなことになるわけでございます。具体的にはそれではどういうふうなものを考えておるかと言いますと、たとえば作業療法士というふうな場合を考えますと、大学で心理学科というふうな学科がございまして、心理学を中心にいろいろな学科を修めるような例があるのです。そういうふうな各大学の学科のカリキュラム等を十分考え合わせまして、そしてこの三年のコースを二年に短縮してしかるべきかどうか、これを十分検討いたしたい、かように考えておるわけでございます。
  183. 滝井義高

    滝井委員 同じような質問になるわけですが、十二条の一項の一号ですね。これで文部大臣が指定した学校、厚生大臣指定した作業療法上養成施設というのは、どのくらいありますか。OTです。
  184. 大崎康

    ○大崎政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、これから指定をするに値するであろうと考えられる施設は、国立療養所東京病院施設のOTのコース、それから四十一年度から具体的に発足するであろうというふうに考えられます九州労災の付属OTのコース、これかとりあえず該当するのではないか、かように考えるわけでございます。
  185. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、PTのほうは四カ所、OTは二カ所、このくらいですね。そうしますと、同じく十二条の一項の三号の「理学療法士その他政令で定める者」というほうのやつは、前の作業療法士とは今度は違うわけです。この「その他政令で定める者」というのはどういうことになるのですか。
  186. 大崎康

    ○大崎政府委員 これは趣旨は全く十一条の二号の趣旨と同じようなことでございます。たとえば理学療法士の一学年とほぼ同じようなカリキュラムを持つと考えられておりますのは、たとえば大学の体育学科、こういうふうなものが考えられるわけでございます。その趣旨は、先ほど理学療法士国家試験の受験資格というふうなところで御説明申し上げましたと全く同じでございまして、十分カリキュラムを精査した上で政令で定めたい、かように考えております。   〔小沢(辰)委員長代理退席、松山委員長代理着席〕
  187. 滝井義高

    滝井委員 それから十五条業務、この「診療の補助として理学療法又は作業療法を行なうことを業とすること」という、あれは看護婦その他も業とすることになっておりますか。
  188. 大崎康

    ○大崎政府委員 やはり業となっているわけでございまして、たとえば保健婦助産婦看護婦法の第三十一条には、「看護婦でなければ、第五条規定する業をしてはならない。」という条文がございます。
  189. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、次の十五条の二項です。この「理学療法士が、病院若しくは診療所において、又は医師の具体的な指示を受けて、理学療法として行なうマッサージについては、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師等に関する法律第一条の規定は、適用しない。」と、こうなっておりますね。これは同じことをやるけれども、この長い名前の、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師等に関する法律は適用しないのです、こういう区別をしたわけですが、それならばこれを逆にして、病院等に理学療法士がいないので、あん摩マッサージ指圧師を使うことができるか。
  190. 大崎康

    ○大崎政府委員 ただいまのお尋ねは、マッサージ師を、病院、療養所等で行なう理学療法の中のマッサージを行なわしめて差しつかえないかという御質問であろうかと思いますが、その点は、この法律におきましては差しつかえないわけでございます。
  191. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、その場合に、それは診療の補助ということにはならないですな。そのあん摩マッサージ指圧師の法律におけるマッサージ師なり指圧師を使う場合には、診療の補助として理学療法または作業療法を行なうことを業とする者、これには入らぬわけでしょうね、同じことをやるのだから。診療の補助と見るのかどらか。
  192. 大崎康

    ○大崎政府委員 診療の補助は、現在の法制では、御案内のように看護婦の業務独占となっている業務でございますので、理学療法の中で診療の補助というふうなものに考えられます分野は、理学療法の中で、回復過程の初期の段階で病状が十分安定しない時期に行なわれるもの、あるいは電気刺激、温熱、光線等を用いる療法、あるいは精神障害者に対しまして疾病治療の一環として行なわれる作業療法、こういうものがいわゆる診療の補助に該当するわけでございます。これらの業務は、従来は看護婦の業務独占として、看護婦の行なうべき業務として規定されているわけでございます。
  193. 滝井義高

    滝井委員 それはわかるわけです。だから、十五条で、看護婦が独占をしてやるのだけれども、今度はこの法律ができると、診療補助として、理学療法士なり作業療法士は看護婦と市なってやってもいいのです、こういうことになったわけです。そこで今度は、その理学療法士がやることと同じことをやるあんまさんなり、マッサージさんなり、指圧師さんがやることは診療の補助になりますか、こう言っているのです。
  194. 大崎康

    ○大崎政府委員 理学療法の中で、これは法律にも書いてあるわけでありますが、大体理学療法は三つの部分に分かれるわけでございます。第一は、基本的動作能力の回復、こういうふうなことがあるわけであります。それから第二番目の問題は、これは電気刺激、光線、温熱等の物理的手段を用いまして、疼痛でありますとか炎症などに対して対症療法を行なう、こういうふうな分野があるわけであります。それから第三番目には、いわば日常生活動作の訓練といいますか、そのような分野があるわけであります。  そのマッサージと申しますのは、私が御説明申し上げました第二の分野に属するわけでございまして、理学療法の中のいわゆる療法としては漸次その領域が狭くなりつつあるわけでございまして、マッサージという部門はございますけれども、それは理学療法のごく一部をなしているわけでございます。そのマッサージをすること自体は、これはあん摩師、はり師、きゅう師、柔道整復師法のいわゆる一条の免許を持っておらなければ、マッサージということは行なうことができないわけでございますが、そういうふうにいたしますと、理学療法士というものの仕事の内容を分断するわけにはいかないものでございますから、したがいまして、理学療法士という名称を用いまして、理学療法としてのマッサージを行なう者につきましては、あん摩法の一条の特例の規定を十五条の二項において設けたわけでございます。ただし、設けましたが、この法律そのものは、理学療法士という名称を持って理学療法を行なうということは禁止されておるだけでございまして、いわば名称独占、そういうふうなものでございますから、マッサージ師というものが、マッサージの有資格者として理学療法の一部たるマッサージを行なうということは、法律的に、この法律施行後においては一向差しつかえないわけでございます。
  195. 滝井義高

    滝井委員 私が言っているのは、いまあなたが言ったように、この法律によって理学療法とか作業療法というのは、基本的な動作能力の回復と、物理的な手段によって電気的な刺激を与える、それから日常生活動作の訓練という三つがあります。その中の一つであるマッサージあるいは電気的な刺激というのを、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師等に関する法律の免許を持った人はやれることになるわけです。この中の一つをやるわけです。医師が指示をして、この患者に、君マッサージをやってくれと言ってマッサージをやらしたというときは、それは診療の補助と言えるのかどうか。言えないとすれば、それは一体何なのかということです。いまもやっておるわけです、現実にPT、OTがないから……。
  196. 大崎康

    ○大崎政府委員 診療の補助というものは、繰り返して申し上げますように、保健婦助産婦看護婦法によりまして、看護婦の業務とされているところでございます。その業務の外側に、いわばそれに準じた業務としましてあんまマッサージ指圧というのがございまして、これの領域につきましては、私がただいま申し上げましたように、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師等に関する法律という法律で資格を定め、業務を定めている分野でございます。したがいまして、看護婦法の領域とあん摩マッサージ指圧師等に関する法律の領域とは、法律的にはこれは全く違うわけでございまして、マッサージというものは、これは独立してやれるわけでございます。したがいまして、その際に医師の指示があってやったときには、そのこと自体が診療の補助にすぐなるか、こういうふうなお尋ねであろうかと思うのでございますが、これは法律的には、やはりあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師等に関する法律の領域に属するものに法律的にはなる、かように考えます。
  197. 滝井義高

    滝井委員 それは法律的にはそうだが、それが医学の分野に入ってきたときには診療の補助になるのかどうか、こう言っているのです。ここで私がどうしてそういうくどい質問を言うかというと、十五条の二でイコールに書いておるのです。条文がイコールになっておるのですよ。理学療法士がやるマッサージは、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師等に関する法律によって行なうマッサージと同じだということをここでは書いているのです。裏を返して言うと、同じだと書いておる。同じものを医学のところに持ってきたら、理学療法士さんがやったときはそれは診療の補助になるけれども、この長い法律のほうのマッサージをやったものは診療の補助にならぬというのは、これはまたどういうことかと言っているのです。実は、ここらが今後受験資格を与える場合の非常に重要なポイントになってくるのですよ。あなた方が、十五条の二に、同じだということをここに書いてくれているものだから——これは同じだということなんですよ。まあこれ以上言いませんけれども、どうもそこを私もいろいろ考えてみたのだけれども、観念的には割り切れるけれども、それを今度は具体的に当てはめてみると、なかなかそれが区別できないのです。その悩みがあるということ。  それから、二十条の政令への委任です。「この童に規定するもののほか、審議会の組織、運営その他審議会に関し必要な事項は、政令で定める、」となっておるわけですね。理学療法士作業療法士審議会、これは厚生省の付属機関としてできる非常に大事な審議会なんですね、免許に関することを扱うわけだから。その審議会の組織、運営その他審議会に関し必要な事項は政令で定めておる。その組織、運営その他の審議会の政令内容を御説明願いたい。
  198. 大崎康

    ○大崎政府委員 審議会の内容につきましては、現在このように考えております。  総数約五十名の委員をもって組織いたしまして、その内容は、審議部会及び国家試験部会の二部会を設けたいと考えております。審議部会には免許の取り消し等の処分、それから学校または養成所の指定に関する重要事項の調査審議を行なわせたい、それから国家試験部会におきましては、理学療法士作業療業士の国家試験の実施をさせたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  199. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、これはそういうものの学識経験者を五十人選んでやる、こういうことになるわけですね。
  200. 大崎康

    ○大崎政府委員 国家試験部会におきましては、国家試験を実際に担当していただくわけでございますから、国家試験の試験科目の専門家を御委嘱申し上げたい、それから審議部会の委員といたしましては、いわゆる学識経験者あるいは関係行政機関職員というふうなものから委嘱したい、かように考えております。
  201. 滝井義高

    滝井委員 これは非常に新しい分野ですから、そんなに多く専門家はいないですわね。一体学識経験者というのはどういうところから、たとえばどういう学識の人ですか。放射線科とか物療科とか、医学部のそういう方面の人、それから体育関係あるいは心理学、もちろん基礎的な解剖学とか生理学等も必要だと思いますけれども、いわゆるこの審議会に入る学識経験者というものはどういう学歴、専門的な知識を持っている人が入ることになるのか。それから試験をやるといっても、いま言ったように全国で五、六カ所しかないのです。しかも各学校で十人か二十人しか一学年出ないわけです。どういう学歴の人が試験委員になるのか。
  202. 大崎康

    ○大崎政府委員 この試験につきましては、現在厚生大臣なり文部大臣から指定されると考えられます学校あるいは養成施設の定員は少ないわけでございますが、現在病院等におきまして、いわゆる病院マッサージというような形におきましてこれらの仕事に従事しておられる方は、経過的にこの試験を受けていただきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。したがいまして、養成施設なり学校の定員よりは受験者のほうが相当多くなると考えられるわけでございます。試験科目といたしましては現在考えられておりますのは、解剖学、生理学、運動学等の基礎医学のほか、理学療法士の場合におきましては治療体操、マッサージ、温熱療法、光線療法等の理論、作業療法士につきましては織物作業、木工作業、手芸作業等による作業療法の理論が課されるというふうに考えられるわけでございます。そのほか理学療法士作業療法士につきましては実技の試験が行なわれる、かように考えられておるわけであります。したがいまして、国家試験部会におきましてはこれらの専門家を御委嘱を申し上げたい、こういうことであります。  それから審議部会のほうでございますが、これは現在もいろいろ大学の整形外科でございますとか、理学診療科でございますとか、精神科でございますとか、そういうふうな専門家、それから現在リハビリテーションを相当やっておられる、たとえば肢体不自由児施設、あるいは国立の療養所、あるいは労災病院関係専門家、そういうふうな方々とともに関係行政機関職員、それからそのほかの一般的な学識経験を有しておられる力、こういうふうな方々を御委嘱申し上げたい、こういうふうに考えております。   〔松山委員長代理退席、委員長着席〕
  203. 滝井義高

    滝井委員 たとえば昨業療法士の業務内容等を見ましても、編みものから織物作業から手芸、木工、金工作業というのは私知らないのだけれども、それから粘土、陶芸、庭園づくりですね、それから絵画、玩具、ゲーム、タイプ、謄写、印刷、ラジオ、テレビ、時計、非常に広範にわたるわけです。こういうものの国家試験をやる試験委員というものは、作業内容がこうですから、こういうことに対する試験も科目でやっぱり教えてやらないとこれはできないことになるわけでしょう。これは医療制度調査会から出た内容の中にありますが、非常に業務の範囲が広いわけです。だから、五十人も選ぶというのだから、おそらくそういう広い範囲の者から選んで、それらの基礎知識——大体そういうものは手先が器用でなければならぬし、共通的なものがあるから、基本的なものを教えてやればそれから先は自分の創意工夫で、陶芸をやる人は粘土細工もうまいことになるだろうし、できると思うのだけれども、ただ問題は、こういうPT、OTというのが長い間日本にできていなかった分野だけに、そういうことを教える専門家とそれから試験委員というのは、よほど慎重にやらぬとなかなかいい人が来ないのではないかという心配があるわけです。  次は附則の2「(免許の特例)」ですね。「厚生大臣は、外国で理学療法士の免許に相当する免許を受けた者又は作業療法士の免許に相当する免許を受けた者であって、理学療法士又は作業療法士として必要な知識及び技能を有すると認定したものに対しては、第三条の規定にかかわらず、当分の間、理学療法士又は作業療法士の免許を与えることができる。」と書いてある。この知識とか技能を有すると認定をするのは、どの機関で認定をすることになるのですか。
  204. 大崎康

    ○大崎政府委員 法律的には厚生大臣でございます。
  205. 滝井義高

    滝井委員 神田さんが認定してくれることはよくわかるのだが、滝井義高が陶芸の専門家であると言ったって神田さんはなかなか認定ができるわけじゃないので、どこか神田さんの下に機関があって、その機関がこれはだいじょうぶだ、こういうことにならなければいかぬのじゃないかという感じがするわけです。これは試験を受けなくても認定だけでいくわけですから。これは昔の引き揚げの医師、特別の医師等は口頭試問、面接だけでやったですね、そういうことだと思うのです。認定するといったって、何もやらぬで書類審査ですか。書類審査ならば医事課長なりあなたが見てもいいですよ。これで神田さんが見たわけになるのだけれども、しかしそうはいかぬと思うのですが、これはどういうことですか。
  206. 大崎康

    ○大崎政府委員 元来、外国の理学療法に関する学校あるいは作業療法に関する学校等を卒業いたしまして、外国でそれぞれ理学療法士なり作業療法士としての資格を持っておられる方でも、原則は十一条、それから十二条のおのおの三号にございますように、国家試験を受けなければいけないのがたてまえでございます。そのたてまえは私どもどこまでも堅持をしていきたい、かように考えておるわけであります。  そこで、先生がただいま御指摘になりました附則のような規定、これはあまり例がないことなのでございます。私どもの承知をいたしております範囲では、公認会計士の登録制度についてあるようでございますが、いずれにいたしましても、その例は少ないのではないかと考えております。そこでなぜかような規定を設けたかと申しますと、実はわが国におけるところの理学療法なり作業療法の技術的水準は非常に低いわけでございまして、当分の間、技術者の養成なり、リハビリテーション施設運営等の面では、外国の専門家指導及び助言を仰ぐ必要がどうしてもあるわけでございまして、この規定によりますのは例外中の例外と申しますか、いわばそういうふうに理学療法士なり作業療法士という資格を外国でお持ちになった方々の中で経験も相当豊富で、たとえばWHO等から派遣をされまして日本の養成施設で教えておられるというふうな方々を、例外的にこれによって資格を差し上げよう、こういうふうな規定でございまして、例ははなはだ少ないと思っているわけであります。したがいまして、そのようないわば世界的水準をぬきんでる方々でございますので、その辺につきましては私どもで供用に選考いたしますと、おのずから判定がつくのではなかろうか、そのように考えましてこの規定を置いたわけでございます。
  207. 滝井義高

    滝井委員 十一条の一項三号で、同じような者には試験を受ける資格を与えておるわけです。「外国の理学療法に関する学校若しくは養成施設を卒業し、又は外国で理学療法士の免許に相当する免許を受けた者で、厚生大臣が前二号に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認定したもの」、こうして試験を受ける資格を与えておるわけです。ところが、同時に、同じような者でも特例で認める者がありますよということで、あなたはいま、WHOから派遣されてきた非常に特殊な者を言われたわけです。それならば私どもでやれます、こうおっしゃるけれども、私どもでやれると言ったって、たとえば滝井義高が陶芸の専門家ですよ、ひとつ次長さんわしをしてくれと言って、上から見たり下から見たりしたって、滝井義高のどこから陶芸の力が出るかということはわかりはしない。やはり何か認定をする機関がないと一いまの十一条の試験を受ける資格でも認定になるでしょう。前のほうは「修得したもの」、修得をしたということがあるから、修得した証拠を出しなさいと言えば、証拠があるわけです。これこれの修得をしました、卒業しましたというのがあるわけです。ところが、これは認定する。外国で受けたと言えば、受けた証拠を持ってこいということになったって実は証拠はないんだ、しかし、おれは実際はできるのだ、こういうことで全く認定と修得とは違うですよ。私どもが認定をしますということは、神田博さんが認定をするということでしょう。だから認定をするのには、その認定の何か機関みたいなものをつくっておかぬと、ちょっとぐあいが悪い。こういうところに、なお明治以来の外国の思想なら拝むというところが残っておる。そうでしょう。ちょっと頭を冷やして考えておいてください。  それから受験資格の特例、附則の四項ですが、「この法律の施行の際現に病院、診療所その他省令で定める施設において、医師の指示の下に、」云々と書いてあるわけです。この受験資格の特例を与えるのに、病院とか診療所以外の省令で定める施設というのはどういうものですか。
  208. 大崎康

    ○大崎政府委員 たとえば肢体不自由者更生施設あるいは精神薄弱者等の収容施設、こういうふうなものでございまして、職員として医師が置かれておる、その医師の指示のもとに理学療法または作業療法を行なっていると認められる施設、こういうふうなものを原則として定めたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  209. 滝井義高

    滝井委員 これはやはりその他の施設についても、一号から三号までのきちっとした資格が要るわけですね。精薄の施設や肢体不自由児の施設で医師の指示を受けて働いておった者。そうすると、その附則の四項の一号に当たる「学校教育法第五十六条第一項の規定により大学に入学することができる者」はわかりますが、「又は政令で定める者」とは一体何ですか。
  210. 大崎康

    ○大崎政府委員 理学療法士作業療法士がその業務を適正に遂行するために必要とされる知識から見まして、その基礎学歴は、ここの四項の一号に定められておりますように、学校教育法第五十六条第一項の規定により大学に入学することができる者、すなわち普通でいえば高卒程度であることが望ましいわけでございます。ただ、高卒程度の学歴を有しない者でございましても、看護婦でございますとか、あるいはあんまマッサージ指圧師でございますとか、柔道整復師等の医療関係の資格を持っている者は、理学療法、作業療法の業務遂行に必要な基礎的な保健衛生関係の知識を一応修得していると考えられますので、これらの方々を政令で定めたい、このように考えておるわけでございます。
  211. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、あくまでもこれは、診療所とか病院とか、いま言われたような肢体不自由児施設精神薄弱児施設において勤務をしておる、その医師の指示のもとにそれを業としておる、そしていまのような学歴を持っておる。こういう条件がそろわなければだめだということになるのですね。ただその場合に、「政令で定める者」というのは、例外としてあの長い法律の、あんまとかマッサージとかの免許を持っておれば試験が受けられる、こういうことですね。
  212. 大崎康

    ○大崎政府委員 四項の一号にございます「政令で定める者」というのは、看護婦でございますとか、あんまマッサージでございますとか、そういうふうな保健医療関係者、こういうことでございます。
  213. 滝井義高

    滝井委員 「政令で定める者」は、保健医療関係仕事に従事している者。  その次の二ですが、「厚生大臣指定した講習会の課程を修了した者」、この内容は何ですか。
  214. 大崎康

    ○大崎政府委員 特例試験に該当いたします者は、本則で定められております国家試験の受験資格、すなわち正規の養成課程を終えた者ではございませんので、何といいましても理学療法なり作業療法の基礎的な問題につきまして知識が不十分であるというふうに考えられるわけでございます。したがいまして、相当長い間の経験を持っておられる方がございまいますが、学理的なものを補講する意味で、講習会の課程を終了した者に限ってこの国家試験の受験資格を与える、こういうふうに考えておるわけでございます。講習会の内容といたしましては、解剖学でありますとか、牛理学でありますとか、運動学等の基礎科目と、理学療法、作業療法等の専門科目についての講義が中心となるわけでございまます。この講習会というのは、できるだけ利用者に便なような形態でありましても、これは厚生大臣指定をする。たとえば休日でございますとか、あるいは夜間でございますとか、そういうふうなものを利用した講習会でありましても、一定の基準に該当いたしますれば厚生大臣指定する、かように考えております。
  215. 滝井義高

    滝井委員 科目はわかりました。それから休日や夜間を指定していただけるというヒューマニズムもよくわかりました。そうすると、期間は一体どの程度であるか。
  216. 大崎康

    ○大崎政府委員 現在私どもにおきまして考えております時間数は、理学療法士作業療法士の講習会、いずれも二百四十時間という時間数でカリキュラムを一応組んでおるわけでございますが、この点につきましては、さらにいろいろな専門家にも御相談申し上げたい、かように考えております。
  217. 滝井義高

    滝井委員 二百四十時間というと相当長い。夜間とか祭日、休日等にやるとすれば、相当長期にわたることになるわけですね。そうすると、これらは、御存じのとおり、あなたが御指摘になった病院、診療所その他政令で定める施設に勤務をしているわけです。勤務のかたわら行くことになるわけですね。そうしますと、これはなかなか受けにくい形になる。たとえば東京なら東京で一カ所でやるということでは受けにくいことになる。といって人数が多くないわけですから、あまり地方にまた分散をしても、講習をやる講師の関係からいってもうまくいかぬということになる。これは非常にむずかしいところですから、相当のくふうをしていただかないとなかなか講習その他がうまくいかないのじゃないかということになれば、休日、祭日等を利用せずに、たとえば二週間なら二週間、三週間なら三週間は、どこか大学なら大学の教室を借りて、かん詰めにしてずっと一挙にやってしまう。そして講習が終わったら、すぐにあまり忘れぬうちに試験をしてやる、こういう形にならぬと、これはぐあいが悪いんじゃないですか。その町は、できるだけ事業主に賃金保障をしてもらう、有給休暇をとってもらうようにするという親心でやらないと、この「厚生大臣指定した講習会の課程を修了した者」という条項ができても、これはうまくいかぬことになる。その点はどう考えておりますか。
  218. 大崎康

    ○大崎政府委員 先生のただいま御指摘になりましたとおりでございまして、先生がお述べになりましたように、いわばかん詰めで集中的に講習を受けるということが一番望ましいわけであります。私が、休日でございますとか、あるいは夜間とか申し上げましたのは、そういうふうなことにいたしますと全部が全部受けやすいということにはならぬ、施設によりましては、そういうふうな形態ではなかなか講習を受けにくいであろう、したがって、そういうふうな方々のためには、なるべく便宜なように講習の時間割りを組んだ場合におきましても、厚生大臣はなるべく基準に合致する限り認めていきたい、こういうふうなことを申し上げたわけでございまして、全く先生の御意見どおりに考えておるわけでございます。
  219. 滝井義高

    滝井委員 一日八時間やっても三十日かかるのですね。五時間やると約五十日かかるわけです。これは勤務しておるのですから、よほど配慮してやってこの条文が生きるようにしていただきたいと思います。ぜひひとつそれだけのヒューマニズムを持ってやっていただきたいと思いますね。そこで、できれば九州の者ならば福岡なら福岡に集める、関西の者ならば大阪なら大阪でやるとか、関東ならば東京とか、東北なら仙台、北海道なら札幌なら札幌というふうに、それぞれ大学があるわけですから、そこでPT、OTの試験を受けようという人を、全国三、四カ所に分散して思い切って試験をやる、経費もつぎ込むという形でやっていただきたいと思います。  最後に、その次の附則の五項に「前項に規定する者については、第十四条規定に基づく理学療法士国家試験又は作業療法士国家試験に関する省令において、科目その他の事項に関し必要な特例を設けることができる。」こうなっておる。いま解剖学とか生理学とか運動学が理学療法士、療法士の専門科目、こうなったわけです。ところが、御存じのとおり、引き揚げ医師試験等でも、内容を見るとなかなかうまくいっていないわけですね。それで引き揚げ医師さんの状態を見たら、インターンの学生さんを家庭教師にしてやっている。これが一番早いわけです。いまから国家試験を受けるのだから、それを家庭教師にしてやると早く合格するわけです。そこでこういう人たちも、PT、OTの学生で今度試験を受ける人を家庭教師にしたら、やはり一番早いわけです。道は近きにあるので、それが一番早いわけです。しかし、われわれも、いま試験を受けろと言われたら、やはり向こうはち巻きで相当勉強しないと、生理解剖なんかで骨の名前なんかやってみいと言われても、これは忘れてしまっております。それと同じで、やはり自分の身をつねって人の痛さを知らなければいかぬ。それはあなた方だって、いま昔とった高文試験をひとつやってみろと言われても、まあ憲法ぐらいのことはできるかもしれぬ。行政法ぐらいはできるかもしれぬが、民法とか国際法を言ってごらんよ、それと同じです。だから、自分の立場と人の立場をよく見比べながら、科目の特例を十分配慮していただきたいと思いますが、いかがですか。
  220. 大崎康

    ○大崎政府委員 経過的特例によりまして、国家試験の受験資格を認められております者は、実地の業務経験を相当期間にわたりまして積んでおる者でありますし、さらにそのうちには、すでに他の医療関係者の資格試験などを通じまして、衛生関係の学科につきまして知識、技能の認定を受けている者も多いわけでございまして、これらの方々に、学校とか養成施設において通常の課程を修了した者と同一の試験を課することは必ずしも適当ではない、かように考えましてこの規定を置いたわけでございます。特例の具体的な内容につきましては、理学療法士作業療法士審議会の意見を聞いてきめることといたしたいと考えておりますが、たとえばその方がすでに他の資格試験において合格している科目について試験を免除するとか、あるいは通常の受験者の場合よりも業務経験を積んでいる方に受けやすい実地試験を重視するとか、そういうふうな観点から十分にこの内容を生かしていきたい、かように考えておるわけであります。
  221. 滝井義高

    滝井委員 ぜひひとつ、そういうヒューマニズムをもって処理していただくことを要望して、終わります。
  222. 松澤雄藏

    松澤委員長 この際、おはかりいたします。  理事松山千惠子君より理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  223. 松澤雄藏

    松澤委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  これより理事補欠選任を行ないたいと存じますが、その選任は委員長において指名することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  224. 松澤雄藏

    松澤委員長 御異議なしと認めます。よって、粟山秀君を理事に指名いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時十八分散会