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1965-05-12 第48回国会 衆議院 社会労働委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年五月十二日(水曜日)     午前十時十五分開議  出席委員    委員長 松澤 雄藏君    理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君    理事 齋藤 邦吉君 理事 澁谷 直藏君    理事 河野  正君 理事 八木  昇君       亀山 孝一君    熊谷 義雄君      小宮山重四郎君    坂村 吉正君       田中 正巳君    中野 四郎君       藤本 孝雄君    粟山  秀君       山村新治郎君    淡谷 悠藏君       伊藤よし子君    小林  進君       多賀谷真稔君    滝井 義高君       細谷 治嘉君    松平 忠久君       八木 一男君    山田 耻目君       鈴木  一君    本島百合子君       吉川 兼光君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 神田  博君  出席政府委員         厚生政務次官  徳永 正利君         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      若松 栄一君         厚生事務官         (医務局次長) 大崎  康君         厚生事務官         (児童家庭局         長)      竹下 精紀君         厚生事務官         (年金局長)  山本 正淑君         厚生事務官         (社会保険庁年         金保険部長)  実本 博次君         中小企業庁次長 影山 衛司君  委員外出席者         大蔵事務次官         (主計官)   船後 正道君         厚生事務官         (大臣官房審議         官)      伊部 英男君         厚生事務官         (大臣官房企画         室長)     網野  智君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 五月十二日  委員長谷川保君及び本島百合子辞任につき、  その補欠として細谷治嘉君及び鈴木一君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員細谷治嘉君及び鈴木一辞任につき、その  補欠として、長谷川保君及び本島百合子君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 五月十一日  優生保護法の一部を改正する法律案社会労働  委員長提出参法第一七号)(予) は本委員会に付託された。 同日  優生保護法の一部を改正する法律案横山フク  君外一名提出参法第一〇号)(予) は撤回された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理学療法士及び作業療法士法案内閣提出第一  〇七号)(参議院送付)  国民年金法等の一部を改正する法律案内閣提  出第六五号)  寄生虫病予防法の一部を改正する法律案起草の  件      ————◇—————
  2. 松澤雄藏

    松澤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出理学療法士及び作業療法士法案議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。厚生大臣神田博君。
  3. 神田博

    神田国務大臣 ただいま議題となりました理学療法士及び作業療法士法案について、その提案理由を御説明申し上げます。  最近における身体または精神障害のある者を社会生活へすみやかに復帰せしめるためのリハビリテーション手段発達は、まことに目ざましいものがありますが、わけてもその根幹をなすともいうべき理学療法作業療法等医学的リハビリテーションの推進こそは関係方面から最も期待されているところであり、政府におきましても、かねてよりその普及及び向上につき格段の意を用いてきたところであります。  しかしながら、先進諸国においては、早くから理学療法士作業療法士医学的リハビリテーション専門技術者資格制度が設けられ、またその組織的・体系的な養成訓練が行なわれてきたのでありますが、従来、わが国にはこれら医学的リハビリテーション専門技術者資格制度がなく、このことがわが国における医学的リハビリテーションの本格的な普及発達を著しく阻害する要因となっていたのであります。  このような現状にかんがみ、医療制度調査会は、医学的リハビリテーション専門技術者資格制度をすみやかに創設すべきである行政府に答申し、政府においては、この答申を尊重して昭和三十八年以来理学療法士及び作業療法士資格制度の創設について関係有識者の意見を聞く等調査研究を進め、他方国立療養所東京病院付属リハビリテーション学院を設置して理学療法士及び作業療法士養成を行なってきたのでありますが、このたび、その資格制度についての成案を得たので、ここに、この法律案提出した次第であります。  次に、理学療法士及び作業療法士法案内容について、その概略を御説明申し上げます。  まず、この法律案におきましては、理学療法士及び作業療法士資格を定めるとともに、その業務が適正に運用されるように規律し、もって医療普及及び向上に寄与することを目的といたしております。  第二に、この法律案では、理学療法とは、身体障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力回復をはかるため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいい、また、作業療法とは、母体または精神障害のある者に対し、主としてその応用的動作能力または社会的適応能力回復をはかるため、手芸、工作その他の作業を行なわせることをいうことといたしております。さらに、理学療法士または作業療法士の定義については、それぞれ厚生大臣免許を受けて理学療法士または作業療法士名称を用いて医師指示のもとに理学療法または作業療法を行なうことを業とする者をいうことといたしております。  第三に、この法律案では、理学療法士または作業療法士となるためには、大学入学資格を有する者が、文部大臣が指定した学校または厚生大臣が指定した養成施設において三年以上修業した後、理学療法士国家試験または作業療法士国家試験に合格し、厚生大臣免許を受けなければならない旨定めております。ただし、理学療法士作業療法士となる場合または作業療法士理学療法士となる場合等においてはその学校または養成施設における修業年限を二年に短縮することを認めているほか、さらに経過的な特例として、この法律の施行の際現に病院診療所等医師指示のもとに理学療法または作業療法を業として行なっている者については、昭和四十六年三月三十一日までは、一定の学歴または資格を有すること、厚生大臣が指定した講習会の課程を修了したこと及び五年以上の業務経験を積んだことを条件として、特例による理学療法士国家試験または作業療法士国家試験の受験を認めることといたしております。  第四に、この法律案では、理学療法または作業療法については、理学療法士または作業療法士独占業務とせず、ただ、理学療法士または作業療法士でない者が理学療法士または作業療法士またはこれらにまぎらわしい名称を用いてはならない旨定めたのでありますが、理学療法及び作業療法業務には看護婦及び准看護婦独占業務である診療の補助にわたるものもあり、また、理学療法士業務の一部であるマッサージあんまマッサージ指圧師独占業務であるので、これらの業務との調整をはかるため、理学療法士及び作業療法士業務につき保健婦助産婦看護婦法及びあん摩マッサージ指圧師はり師きゅう師柔道整復師等に関する法律関係規定適用を除外する旨定めております。  第五には、厚生大臣等の諮問に応じて理学療法士及び作業療法士国家試験等に関する重要事項調査審議し、あるいはこれらの国家試験に関する事務をつかさどる機関として厚生省に理学療法士作業療法士審議会を置く旨定めております。  以上がこの法律案提案理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。      ————◇—————
  4. 松澤雄藏

    松澤委員長 この際、寄生虫病予防法の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。  本件については、かねてより委員各位と協議してまいりましたが、今般委員長におきまして、お手元に配付してありますとおりの草案を作成いたしました。
  5. 松澤雄藏

    松澤委員長 まず、その趣旨を御説明申し上げます。  従来日本住血吸虫病溝渠新設基本計画は、昭和三十二年度以降十カ年にわたるものとされておりますが、これを改め、昭和四十年度以降七カ年にわたるものとし、日本住血吸虫病予防の徹底をはかろうとするものであります。何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。     —————————————
  6. 松澤雄藏

    松澤委員長 次に、質疑申し出がありますので、これを許します。細谷治嘉君。
  7. 細谷治嘉

    細谷委員 ただいまの寄生虫病予防法の一部を改正する法律案についてごく簡単に二、三の点について質問したいと思います。  私は、この問題につきまして、昨年の四十六国会で、地方団体負担の問題として、厚生当局自治省当局に御質問し、今年度の予算委員会分科会厚生大臣にこの問題についての基本的な態度、方針等お尋ねいたしたいのでありますが、ただいま委員長提案という形で、長い間地元民が待望しておりました改正案提出されたことをたいへんうれしく思います。  そこで、まずお尋ねいたしたい点は、三十二年から十カ年計画でやってまいりました基本計画は、総延長二千百七十七キロメートル、こういうコンクリート溝渠を築造することでございますけれども、三十九年までの実績は、山梨、岡山、広島、福岡佐賀の五県で、若干の進捗率の違いはございますけれども、通じて四九%、半分にも満たないのであります。四十年度の予算は三十九年度と全く同額でございますから、この十カ年計画が終わる四十一年度には相当量の工事が残る、こういうふうに私は思っておったわけでありますが、今度これを実質的に五カ年延長する、こういうことになったわけでありますが、基本計画を、この法律案改正が行なわれた場合に、そのままおやりになるつもりかどうか、これをお尋ねいたしたい。
  8. 神田博

    神田国務大臣 ただいまの細谷委員お尋ねでございますが、ただいま議題になっております地方風土病に関する問題につきまして、国の基本計画といたしましては、私はそのまま実施してまいりたいと思っております。  しかし、いまお述べになりましたように、計画どおりに一体いくかどうかという問題でございます。これは多少延長せざるを得ないのではないだろうか、その段階においてもう一ぺん考えたい、こう思っております。  それから、これは地方病でございますから、当該地方負担能力等考えますと、御心配されておる点につきましては、まことに同感でございます。これらの点につきましても、自治省等十分連絡をとりまして、地方負担というものをできるだけお救いいたしまして、交付税の増加も考え、また地方におきましても、いろいろ財政面配慮等をいたしまして、そうしてできるだけすみやかにこうした風土病撲滅をはかりたい、かように考えております。
  9. 細谷治嘉

    細谷委員 いま大臣のおことばで、当初の基本計画——むろん若干整理可能のものもあるという各県等の報告がございますけれども、大体基本計画にのっとっておやりになる。大体いままでの速度でやってまいりますと、四年半か五年くらい、こういう勘定になります。  ところで、私はせんだって五月の初旬に、この繁殖している地帯に参って、たまたま保健所を中心にして各市町村が宮入貝採取をしておりました。ところがこの基本計画をやっている地域については、このコンクリートづくり溝渠実績が顕著にあがっておるのでありますけれども水害等関係もありまして、この基本計画区域外のところに顕著な繁殖を見ていることが、今度の宮入貝採取からわかったのでありますが、こういう問題をどう処理していかれるおつもりか。
  10. 若松栄一

    若松政府委員 現地における実情からいいまして、基本計画に入っている部門と入ってない部門とがあって、そこでいろいろ事情が年々変わりつつあることもまた事実でございます。そういう意味で、基本計画といいましても、当初はある意味において大ざっぱな網をかぶせて、その後逐次具体的な検討を加え、もちろん農地改良等の問題あるいは宅地化の問題あるいは工場誘致の問題もございまして、御指摘のように、当初の基本計画から若干はずしていい面も出てまいります。逆に、御指摘のように、おそらく新たに基本計画に追加していかなければならぬ面も出てくるかと思います。   〔委員長退席小沢(辰)委員長代理着席〕 これらの点は、基本計画といいましても、そうかたくなに固執するつもりではございませんで、実情に合わせてやってまいりたいと存じます。
  11. 細谷治嘉

    細谷委員 いま実情に即してということでございますが、お尋ねしておきたいもう一つの点は、基本計画が、予算関係で、三十七年くらいにおおむね機械的に二割程度圧縮されました。これは今度復元するおつもりかどうか。この当初の基本計画も、これは基本計画のできる前に、地元からの申請を二割切って、基本計画はできたわけであります。それをまた途中で二割をカットしたといういきさつがございますので、その辺のところを十分お考えいただけるかどうか、これをお尋ねしておきたい。
  12. 若松栄一

    若松政府委員 この基本計画と申しますものも、三十二年当時作成いたしましたものと、三十七年ころに修正いたしましたもの、あるいは三十九年にまた再修正いたしましたいろいろな段階がございまして、二割削減ということは、三十七年ころに出た構想でございまして、その後さらに、頭から二割というものは適当でない、むしろ実情に合わして、現地実情を見て修正すべきもの、つまり、控除されたものを正確に調査して差し引くということから、二割というものはもとへ戻しまして、新たに調査されました十四万メートルというものを削除の対象にいたしたのが現在の基本計画でございますので、御指摘の頭からの二割削減という構想はすでに修正をいたしております。
  13. 細谷治嘉

    細谷委員 次にお尋ねいたしたい点は、今日まで基本計画を推進するにあたって、おおむね縦、横、高さ一メートル以内のコンクリート溝渠、若干の例外はございますけれども、そういうことでやってまいったわけであります。御承知のように、筑後川、これは福岡県、佐賀県の場合でございますが、筑後川が大改修をやっております。そして一メートル以下のコンクリート溝渠ができておるわけです。その中間クリーク地帯があるわけです。このクリーク地帯相当宮入貝繁殖可能性がありますし、現に今度の採取でも出ております。せっかく撲滅したと思っても三年くらいしますと、またぞろ宮入貝繁殖する、こういうことでありますから、そういう筑後川と、それから今度の溝渠中間にあるクリーク、あるいは大きなため池等の問題はどういうふうにお考えになるのか、この点もお尋ねしたい。
  14. 若松栄一

    若松政府委員 溝渠の築造につきましては、ただいま御指摘のように、基準的な大きさを想定して、それに相応する単価等を定めてまいっております。しかし、現実にはおっしゃいますように、最近は非常に大型の溝渠をつくる傾向が多くなってまいりました。したがって、単価等につきましても、既存の計画ではとうてい間に合わない。したがって、予算単価といたしましては、従来から一メートル当たり一千七百円というような単価でございますけれども、運用にあたりましては、溝渠の大きさに応じまして、二千円とか三千円の単価まで承認いたしておる実情でございまして、そういう意味で、計画メートル数というものと実行実績というものは多少狂ってまいります。したがって、そういう意味実情に合わして私どもはやらなければならぬと考えておりますので、そういう点も配慮して、メートル数予算との関係も弾力的に考えなければいかぬ。また、ただいま御指摘のように、クリークであるとか、あるいは貯水池というような問題も出てまいります。しかし、そのクリークみたいなものが従来の基本計画で入っていたかいないか、あるいは貯水池がそうであったかどうかというようなこともまだ問題はございますので、これからの進行を見ながらできるだけ実情に合ったような方向で実施してまいりたいと思っております。
  15. 細谷治嘉

    細谷委員 もう一点具体的にお聞きしたいのです。  今度の採取でかなり顕著に採取された個所が、この地域外基本計画に入っておらぬ部分で、クリーク地帯を貫通しておる西日本鉄道という鉄道がございます。その西日本鉄道の横のクリーク、ずっとその通っているクリーク相当宮入貝採取されたわけであります。これは計画区域外でございますし、また、西日本鉄道の側溝みたいなかっこうになって素掘りなんです。こういう問題はどういうふうにやるのか。これはやはり地方病撲滅対策としては無視できない大きな問題でありますが、この点をひとつお尋ねしたい。
  16. 若松栄一

    若松政府委員 当初この溝渠改修を始めましたときは、大体たんぼのあぜあるいはそのかんがい用水路というような程度でございましたが、ただいまお話しのようなクリークというような問題で、農地とも関係のない、農耕とも関係のない問題が新たに出てまいっておるようでございますが、そういうふうな点は私どもまだ正確に実情を掌握しておりませんので、できるだけ事実を調査の上で、将来計画の中へ盛り込めるものならば盛り込んでまいりたいと思っております。
  17. 細谷治嘉

    細谷委員 最後大臣にお願いなりお尋ねでございますが、今度のこの法律案によりまして実質的に五カ年の延長ということになるわけでありますが、基本計画を、原則としてこれは消化していく。なお、その他にいま申し上げたような具体的な、基本計画にどうしてもプラスしなければならぬ問題がございます。そうしますと、基本計画を消化するだけでいまの速度ですと四年半という計算になるわけであります。相当予算措置等来年度以降いままでの速度をアップしていただきませんと、この法律案でもなお撲滅が期せられないのではないかと思うのですが、この問題についての大臣の御方針を承っておきたいと思うのです。
  18. 神田博

    神田国務大臣 いまの細谷委員お尋ねでございますが、たいへんいいところをお突きになったごもっともなお尋ねだと思っております。私どもといたしましても、これは五年過ぎますと御承知のように、一応基本計画が終わりますから、弾力性がついてまいります。その機会に一掃するような、ひとつもう一ぺん根本的なことを考えてみたい。しかしそれまでやはり来年度以降、その完ぺきを期す意味において、予算の増額なり所要の施策を達成するのに必要なものをひとつ用意いたしまして、まともに取っ組んで、最後の仕上げをしたい、こういう考えでございます。
  19. 細谷治嘉

    細谷委員 もう一つ最後に。それで、大臣は、そういう溝渠のできておらぬところには薬剤散布によりまして宮入貝を殺す、こういう方針をとっておるのですが、最近、非常にりっぱな薬が久留米大学の寄生虫学教室で発見されました。この辺の完全に施設ができるまでの間、薬剤散布等によって、やはり撲滅を期さなければならぬと思いますが、この辺の予算措置についても十分な御対策をお願い申し上げまして、私の質問を終わります。     —————————————
  20. 小沢辰男

    小沢(辰)委員長代理 他に御発言もありませんので、直ちに採決いたします。  お手元に配付してあります寄生虫病予防法の一部を改正する法律案草案成案と決定し、これを本委員会法律案といたしたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立
  21. 小沢辰男

    小沢(辰)委員長代理 起立総員。よって、そのように決しました。  なお、本法律案提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  22. 小沢辰男

    小沢(辰)委員長代理 御異議なしと認め、そのように決しました。      ————◇—————
  23. 小沢辰男

    小沢(辰)委員長代理 内閣提出国民年金法等の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。  質疑申し出がありますので、これを許します。八木一男君。   〔小沢(辰)委員長代理退席委員長着席
  24. 八木一男

    八木(一)委員 国民年金法の一部改正案について厚生大臣並びに政府委員に御質問を申し上げたいと思います。  まず、今度の国民年金法改正案については非常にその内容が乏しいということが一目りょう然としてわかるわけであります。こうした内容だけではなしに、根本的な改正について衆議院の当社会労働委員会において毎回論議がされ、毎回附帯決議がついておるわけであります。前国会におけるその附帯決議について厚生大臣は御存じであるかどうか、ひとつ伺っておきたいと思います。
  25. 神田博

    神田国務大臣 ただいま八木委員から前国会における国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正する法律案に対する附帯決議趣旨を十分了承しておるかどうかというお尋ねでございました。これはお尋ねがございましたように、非常に重要な内容を持っておりまして、これらの点を熟読玩味いたしまして、そして本法の御審議をお願いしておる、こういう段階でございます。
  26. 八木一男

    八木(一)委員 一回読んでみますから、そっちも持っていらっしゃるようですからよく見てください。この附帯決議は当社会労働委員会で各委員が熱心に討議をしてきめたものですから、ほんとうに腹の中に入れておいてもらわなければならないと思うのですが、いままで入ってないように思うのです。  第四十六国会衆議院社会労働委員会における附帯決議昭和三十九年四月二十七日、昨年です。   政府国民年金制度重要性にかんがみ左記事項につき速やかに実現するよう検討努力すること。  一 左の大綱に従って改善を行なうこと。   1 各年金年金額を大幅に引き上げることとし、厚生年金改正との均衡をはかること。   2 老齢年金老齢福祉年金支給開始年齢を引き下げること。   3 福祉年金給付制限を緩和すること。   4 保険料年金額給付要件受給対象等すべての面において社会保障精神に従って改善すること。   5 右の実現のため大幅な国庫支出を行なうこと。  二 特に左の事項については可及的速やかに実現するよう努力すること。   1 各種福祉年金額を大幅に引き上げること。   2 各福祉年金所得制限額を引き上げるとともに、所得水準上昇に伴い、これが自動的に引き上げられるよう検討すること。   3 夫婦とも老齢福祉年金をうける場合の減額制度を廃止すること。   4 老齢福祉年金及び障害福祉年金における配偶者所得制限を廃止すること。   5 母子福祉年金、準母子福祉年金については、精神薄弱者を扶養する場合は二十歳に達するまでこれを加算対象とすること。   6 障害年金障害福祉年金に関して配偶者並びに子につき加算制度を設けること。   7 内部障害適用範囲をすべての疾病による障害及び精神薄弱者に及ぼすこと。   8 福祉年金と他の公的年金との併給の限度額の不均衡を是正すること。   9 保険料の免除を受けたものの年金給付については、更に優遇措置を講ずること。   10 拠出年金について物価変動及び生活水準向上の二要件に対応する明確なスライド規定を設けること。   11 年金加入前の障害についても拠出制年金支給対象にすると同様なる給付を行なうこと。   12 障害年金障害福祉年金とともに障害範囲につき拡大をはかること。   13 年金受給に達しない者の実納保険料がその被保険者のものとして確保されるようすること。 という附帯決議があるわけであります。  これについては、今回の提出法案はほとんど実現をしていない、非常に怠慢な内容であると思いまするが、厚生大臣はいかにしてこのような貧弱な内容国民年金保険法の改正案にとどめたか、その理由や経過あるいは何がブレーキになっておったか、それについて伺いたいと思います。
  27. 神田博

    神田国務大臣 いま八木委員が例示されましたこの国民年金法に関する四十六国会、すなわち三十九年の四月二十七日の衆議院における国民年金法改正をしてこのような実現をするといういろいろな安件につきまして、今度の改正法案がその内容として取り入れたことが非常に少ないではないか、一体それは努力が足りなかったのか、あるいは努力はしたがどういう障害があってできなかったかというような意味に承ったわけでございます。  御承知のように根本の問題は、私どもこの附帯決議趣旨は、これは国民年金の法のあり方といたしまして当然と申しましょうか、充実した年金をつくる上からいきますと、これはまことにごもっともなことでございまして、この線で努力いたしましたことは申し上げるまでもないつもりでございます。ただしかし、御承知のように来年度計算の改定期になっておるものでありますから、来年度でひとつこれを行ないたいという問題がございました。これを前提として考えまして、そしてそれ以外の肝要の改正を今回やりたい、こういうことでできるだけ取り入れようという趣旨で検討いたしたわけでございます。御承知のように、厚生年金の改定の御審議をお願いいたしておりました際にも申し上げましたように、なかなか政府の財政上の伸び等に関する意見が私どもとだいぶ違う点もございまして、きのうも滝井委員がいろいろ御指摘になっておりましたとおり、窮屈だというような問題、しかもまた、こういう大幅な取り入れをすることは来年度の改正の時期にやるべきものであって、今回はひとつ第二の、「特に左の事項については可及的速やかに実現するよう努力すること。」この第二項を目安にしまして考えた、こういうことでございます。福祉年金等に対する問題がしたがいまして一番中心になる、こういうことでございまして、盛られておるものは少ないということにつきましては、私どももいや十分でございますなどいうような大それた考えを申し上げる気は持っておりません。ただ努力いたしましたが、大幅なことは来年の改定期にひとつ御相談しようじゃないかという前提になりましたものですから、この前提でものごとを運んでまいった、こういうことでございまして、御指摘された点につきましては重々私どもといたしましてごもっともだ、来年度はひとつなお心を新たにしてこれに取り組んでいかなければならない、こういうふうに考えておる次第であります。
  28. 八木一男

    八木(一)委員 いまの御答弁に対して……。
  29. 松澤雄藏

    松澤委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  30. 松澤雄藏

    松澤委員長 速記を始めて。
  31. 八木一男

    八木(一)委員 私の申し上げたいことを委員長から言っていただきましたので、虫は殺して質問を続けることにします。  一番本筋から、厚生大臣からただしていきたかったのですが、十分ほどいないというわけですので、厚生政務次官に申し上げますけれども、そのことは繰り返して神田さんにまた申し上げることにいたします。そういうことですから、政務次官にも理解しておいていただく必要があろうと思いますから申し上げます。  いまの厚生大臣の答弁はあらゆる点で不完全でございます。不十分で怠慢だという証拠になろうと思います。二つ、三つ、幾つもありますけれども、政務次官に理解しておいていただきたいのは、こういうことでなかなかむずかしいから、この前の附帯決議の第二項のほうにあることについて努力したいというようなことが言いわけの材料になっておる。第二項のほうを全部入れて、あと第一項の大きな問題は来年だというのだったらまだ情状酌量すべき点がありますけれども、第二項を一体どれだけ実現しているか。第二項の中には十三項目あるのです。その中の九牛の一毛しか努力をしていないわけです。そういうことではなりません。  それからその次に、第一項についてさっき厚生大臣は来年が改定期でありますからとおっしゃいましたけれども、これは間違いだ。この前も山本君に指摘をしておきました。そういう間違った解釈をすることではならないということを厚生政務次官は理解をしていただかなければなりません。間違いであるという理由について政務次官は御理解であるかどうか、御理解でなければ私から申し上げます。
  32. 徳永正利

    ○徳永政府委員 いま八木先生の御指摘の件につきましては私詳しいことを実は存じ上げませんので、四十一年が改定期というふうな態度を厚生省はとっているようでございます。
  33. 八木一男

    八木(一)委員 それが間違いなんです。改定期というのは「五年ごと」と書いてある。「少なくとも五年ごと」ということに書いてあるので五年後でなければいけないということじゃない。なまける気がなかったら一年目でも二年目でもいいのです。それを「少なくとも」と書いたら一番多いところに持っていくという厚生省初め各官庁のしきたりがいけない。「少なくとも」と書いたらそれより前にするのがあたりまえです。それは書いてあるのですからだいじょうぶです。大臣や政務次官はそういうことを全然理解していない。「少なくとも」ということはそれより早くしろという激励的な意味も含んでおる。そのぎりぎりのところがあたりまえのような考え方を持っているのが、厚生省以外の役所も全部そういう考え方です。大蔵省もよく聞いていただきたいのですが、いまの改定期が「少なくとも」と書いてあるけれども、少なくともというのはそのときでなければいけないということではなしに、それより早くするほうがいいという意味です。それを来年度四十一年度が改定期というのは大間違い。そういうことを厚生省が考えているのは大間違いです。また大蔵省もこのようなことを考えているとすれば非常に間違っています。そういう風習をこれから一切一掃させなければならない。厚生省があらゆる法律について「少なくとも」というときにはそれより前にやることがあたりまえだというようなやり方をこれから確立してもらわなければならない。それについての厚生政務次官の御意見を伺いたい。
  34. 徳永正利

    ○徳永政府委員 ごもっともな御意見だと思います。十分今後は検討してまいらなければならぬと思います。
  35. 八木一男

    八木(一)委員 検討ではなしに、日本語の解釈というのは、少なくともというのはそれがぎりぎりだ、通常の場合には日本語はそれよりも前だということを意味する。それを役所のほうが日本語の正当な解釈を怠って、それがあたりまえだというような解釈をしておる。そういう間違いは厚生省はもちろん、残念ながら国務大臣がおられませんけれども神田さんに厳重に話しておいて、国務大臣神田さんから内閣全体がそういう誤まりをしないように、少なくとも、少なくとも何々までにということはそれより前にやることがあたりまえだという概念に官庁なり内閣が統一するように、厚生大臣の代理としての厚生政務次官がそういうふうにするという意思表示をされて、それを断じてやらせるというような御答弁をいただきたい。
  36. 徳永正利

    ○徳永政府委員 ただいまの御意見十分尊重いたしまして、厚生大臣にも十分お伝えいたしまして善処いたしたいと思います。
  37. 八木一男

    八木(一)委員 その次に、「少なくとも五年ごと」ということはそれが四十一年というのは大間違いだ。根底が間違っておるわけです。山本君と一回論議して山本君はその誤りをいましみじみとかみしめて感じているだろうと思う。断じて間違いなんです。これはもう誤りであるということを理解して、全面的に厚生省は怠慢であったということを認めて事を処せられなければならないと思う。その誤りの理由は何かというと、昭和三十六年から国民年金の拠出制の保険料を徴収をした。したがって、それから五年目は四十一年であるということが厚生省の解釈であるらしい。ところが、保険料を徴収した時期から五年目なんということはひとつも書いてない。「保険料の額は、この法律による給付に要する費用の予想額並びに予定運用収入及び国庫負担の額に照らし、将来にわたって、財政の均衡を保つことができるものでなければならず、かつ、少なくとも五年ごとに、この基準に従って再計算され、その結果に基いて所要の調整が加えられるべきものとする。」というように書いてある。これは長ったらしい条文ですが、この保険料の額というのはいつきまったかというと、昭和三十四年にきまっているわけです。徴収をしたのは三十六年ですが、三十四年にきまったわけです。ですから、保険料の紙と年金額は、三十四年の国会において通過したときにきまったわけだ。実施が三十六年。ですから、三十四年の時点においては年金額がはなはだ不十分な内容だというけれども、六十五歳で三千五百円という年金額は、三十四年のときにおいては妥当とされて、われわれの少な過ぎるという反対にかかわらず、国会の多数によってきまった。三十四年次で五年後に改定をするということは、すなわちその三十四年の時点から計算されなければならない。したがって、三十九年になるわけです。それを、保険料徴収の時期なんか一つも書いてないのに、三十六年の徴収だから五年後の四十一年でいい、これは怠慢を合理化するはなはだかってな理屈であります。これは非常に間違いなんです。厚生省だけではなしに、政府全体が怠けている。これは池田内閣から続いて佐藤内閣も——佐藤内閣は最近だけれども、特に池田内閣のほうは責任が重大だ。非常に怠けている。その怠慢について、率直に認められて、国民に対してわびをしなければならない。それについての厚生政務次官の御回答をお願いいたします。
  38. 徳永正利

    ○徳永政府委員 八木先生の御意見は、一応そのようなあれもあると思います。しかし、保険料の額というのが、いろいろ話を聞いてみますと、徴収の時期ということを時点に解釈するのが正しいの、じゃないか、かように考えております。
  39. 八木一男

    八木(一)委員 そういうことでいま形式的に御答弁になりましたけれども、三十九年はすでに経過したのですから、その反省を十分にせられたらいいわけであって、とにかく年金額保険料額をごちゃごちゃにまぜて一項、二項に分けて書いてあります。こういう点この法文が不十分であると思うけれども厚生大臣の言ったのは、年金の改定について五年ごとだと言ったわけです。ここは保険料について言っております。ですから、その点で少し内容が違いますけれども、「年金額及び保険料額」というように書いてあって、中が非常に関連を持つ一体のものであることは明らかである。厚生大臣はこの四条の規定に従って、来年が改定期だからということで、ことしはその改正を出さないのだというようなことになっておる。それが非常に間違いであって、三十四年の時点で年金額、それに伴う保険料額をきめた以上は、五年ごとに改定することが至当であるとするならば、三十九年がこれに当たるということを十分に理解せられて、いままでの怠慢を取り返す、今後もそういう怠慢をしないというような決意をしていただく必要があろうと思う。それについて、厚生大臣おられませんから、厚生大臣にもう一回ひとつ十分お伝えを願いたい。それについて……。
  40. 徳永正利

    ○徳永政府委員 御趣旨の点は十分大臣にお伝え申し上げます。
  41. 八木一男

    八木(一)委員 大臣がおられないので、事務的なことを、山本年金局長に伺って確認しておきます。厚生年金です。厚生年金の現行法はいま国会提出をされて、衆議院では修正可決をされた。一万円年金というものを、その計算方法、たとえば二万五千円の標準ベースで二十年間経過をしたというような基準で当てると、何千円年金ということになるわけですか。
  42. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 現在の厚生年金のうちで、老齢年金の受給の金額の平均は月額三千五百円見当でございますが、これは平均でございまして、しかもその平均の中には老齢特例、要するに四十歳以上の加入者は十五年間の期間でよろしいという、十五年間の勤務者が非常に多くを占めておりますから、そういう意味におきまして三千五百円見当になっておりますけれども、一般的なベースで考えますと、やはり定額部分と報酬比例がおおむね同額、定額部分二千円でございますから、先生いま御指摘のような一万円ベースと比較して幾らベースだとおっしゃられますと、四千円ベースと考えるのが常識的じゃないか、かように考えます。
  43. 八木一男

    八木(一)委員 そこで、政務次官のお考えを伺いたいのですが、厚生年金が四千円ベースから一万円ベース、これは非常に少ないのですが、一万円ベースになった。二・五倍になったという場合に、国民年金についてはどのように考えるべきか、政務次官のお考えを伺いたい。
  44. 徳永正利

    ○徳永政府委員 実は私は金額まで申し上げようと思ったのですが、金額の計算はまだ早いそうでございますから、大体このベースにならって増額すべきだ、また今後もそういうふうに努力するということであります。
  45. 八木一男

    八木(一)委員 ならってというところじゃ半分合格なんですが、どんなに少なくとも二倍半以上の金額に上げなければならないということになるのですが、厚生年金のほうが歴史が長い。国民年金昭和二十四年に——もちろん福祉年金についても論議が集中しましたけれども拠出年金についても論議が集中されたわけです。そこで、こんな内容の悪いものでは所得保障にならぬではないかというような徹底的な追及が行なわれまして、そのときの総理大臣の岸信介君やあるいは厚生大臣の坂田道太君が、ほんとうに不十分でお恥ずかしい、しかし発足するときだから、すぐよく直すからまあごかんべん願いたいとさんざ言われたわけです。向こうからさんざ言われたわけです。そこでわれわれはそれでも少ない、こんな制度をこんな少ないベースから始めたら将来の発展も鈍る、日本社会党案を出していますからわが党案のようなりっぱなものにしなさい、そう言いましたけれども、与党の多数の方が賛成されまして、あのような貧弱なベースから始まった。その貧弱なベースから始まったときに、時の内閣総別大臣、岸生大臣はわれわれも貧弱だと思っています、これはひんぱんに、急速に改定するということをおっしゃったわけです。ですから、厚生年金と比較してそれと同じベースにするということは半分合格なんですが、その前のスタートが悪いのですから、スタートをうんと直して、それから直したものについて少なくとも厚生年金の倍率以上のものをかけなければ、国民年金というものは済まないということになる。半分合格ですが、半分ちょっとその前の点について——初めからほんとうに問題にならなかったのですから、それを直して、それからそのベースに直さなければならない。そういう点についてどうですか。
  46. 徳永正利

    ○徳永政府委員 お説のように、これが生まれるときには、私ども八木先生のように大議論を党内においてやったわけでございますが、やはり提案者と申しますか、政府側としては、何としても生まれるばかりだから、不十分なことは十分了承しているけれども、何とかこれで踏み切ろうじゃないかということで落ちついたというのも、先生御承知のとおりでございます。したがいまして、おっしゃいますように、生まれるもとがもうすでに少ないのでございますから、この点につきましても十分ひとつ努力してまいりたい、かように考える次第でございます。
  47. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣の御努力を期待したいのですが、そういう政務次官のお考え厚生大臣に浸透さして勇敢にやられるようにしていただきたい。大蔵大臣が来ていないのがいまのところ非常に不都合なんですが、幸い船後君もおられますから、これは厚生省の決意にさからってはならない、それが当然だという決意を固められると思いますし、そういう点で非常に勇敢にやっていただきたいと思う。それについて……。
  48. 徳永正利

    ○徳永政府委員 八木先生のいままでおっしゃいましたことにつきましては、もう私どもあと一カ月くらいで首が飛んでしまりかもしれませんが、幸いにして残るようなことがございますれば、こういう問題につきましては全力をあげて今後も私は社会労働委員会に残って、この問題の解決に当たりたいと思っておりますから、大臣に申し上げるのももちろんでございますが、私自身も全力をあげてひとつ努力をするつもりでございます。
  49. 八木一男

    八木(一)委員 その次にやや具体的にひとつ金額について考察をしてみたいと思うのです。  実は国民年金の金額が六十五歳から三千五百円、三千五百円というのは、国民年金のいろいろな計画がされた前に、社会保障制度審議会で国民年金についての勧告を行なったわけです。国民年金に関する限り、社会保障制度審議会の討議及びその結論ははなはだ不十分でありました。私は解散の間——決定のときに解散で、そのときだけ資格がなかったので、参加しておりませんけれども、あれは歴代の答申、勧告の中で一番できの悪い勧告です。大体九十点以上の勧告をしているけれども、あれは六十点くらいです。ですから、非常に不十分な勧告ですが、その六十点の勧告が出たときにいろいろと討議をされたのは、当時の生活保護水準平均して一人当り二千円というものをもとにして、それは非常に貧弱な案を考える人が、それをもとにして考えたものがもとになって、三千五百円という実に魅力の全然ない数字が出てきたわけです。またそれに対応して、福祉年金の金額もいろいろと算定をされたわけです。ところが、その生活保護基準二千円というものが、いまは平均四千五百円というふうになっておる。これが四十年後になるとどれだけ上がるかわからない。そういうことも年金額算定の大きな要素にならなければならない。しかも、その後に出た社会保障制度審議会の総合調整及び社会保障制度の推進に関する勧告、この中で生活保護は物価を入れないで実質三倍に昭和四十五年までにしなければならないということが少なくとも明確に——それ以上にするのはかまわないのです。五倍でも十倍でもかまわない。少なくとも実質三倍にしなければならないという勧告が出ている。そういうことを全部合わせられますと、これはよっぽど勇敢な金額を出されないと、国民年金の将来を誤ったことになる。また諸勧告に忠実だということにならないのです。国民の要望にこたえないということになる。来年度の勧告においては、いま貧弱な草案を出されるといけないけれども、とにかくあなた方としてよっぽど思い切ったと思われる金額を出されて、それでまだその勧告よりも少ない、まだ国民の要望よりも少ないということになろうと思う。よほど強力な決心を持ってこの問題に当たられないと、将来を誤まることになると思う。それについてのひとつ御答弁を願います。
  50. 徳永正利

    ○徳永政府委員 いまお説のようなことにつきましては、厚生省はもとより先輩、同僚諸君のお力も借りて、全力をあげてそういう方向に持っていくように努力をいたしたいと思います。何といっても大蔵省が金を出してくれなければどうにもなりませんから、大蔵省のほうにもひとつ十分御忠告を願いたいと思います。
  51. 八木一男

    八木(一)委員 大蔵省に御質問をします。  大蔵省のやり方というのは、この間田中角榮君と二、三回討議をしたけれども、ほかのことでは頭がいいといわれて、かなり熱心な政治家といわれているけれども、私と討論した二点については、大蔵大臣は全く大蔵省をし上って立つ資格はない。大蔵省というのは財政運用やそういうことに当たる責任は持っておりますが、財政というもの自体は、国の政治をどのように展開をするか、どのようにして実現をするかということが根本でなければならない。ところが、この根本のほうを忘れてしまって、財政をわりに楽につじつまを合わせる、そういうほうに主眼を遣いでいる。田中君の答弁はそういう答弁ばかりだ。そういう者は大蔵省の主計局の課長さんの役はつとまるかもしれないけれども、国務大臣としての役はつとまらない。これは田中角榮君にはっきり言っておいてください。そういうような答弁を大臣にさせるようなことについては、補佐をされるあなた方にも責任がある。大蔵省の単なる財政のつじつまを合わせる立場に立って、国政全体を有効に展開をする、そのような考え方を持ってはおられると思うけれども、そのほうを二の次にして、答弁のつじつまを合わせるほうを重視する、そういうような風潮が、大蔵大臣をして、国務大臣の任務よりも、大蔵省という行政官庁のほうが大事だというような観点に立たしている。こういうことは非常に間違いだと思いますので、聡明で非常に熱心な田中角榮大蔵大臣が、政治家としてもっと成長するように、このような未熟なことがなくなるように、大蔵省は補佐をしなければならない。それにはそのもととして、あなた方が財政を運用していくとかいろいろな点で非常に苦労をしておられるのはわかるけれども、財政というのはただ締めるのが目的ではない。税金で取った金を有効に使って、国民のためにどういうふうに使うか、それが非常に大事なことであろうと思う。そこでこれはいろいろな指示がたくさんある。だから、その緩急の順序があって、社会保障ばかりできないというようなことを言われるかもしれないけれども、そういうことがごまかしの原因になるわけです。日本の経済成長が非常に進んでいるのにかかわらず、日本の社会保障が非常に停とんをしている。そういう時代においては、ほかのほうの要望を抑えても、最重点に社会保障に金をつぎ込まなければならないということになる。それをいまの各省の割拠主義にあって、厚生省の要求をいれて通産省の要求をいれないというようなことについて苦労をされるから、まんべんなくちょっちょっと金を使って、その金が有効に働かないということになろうと思うのです。そこをやはり大蔵省は事務的なことで責任を持っておられても、その事務のもとは何か、目的は何かということは、国の金を有効に一番大切なところに使うというところにあることを考えておられる、だろうと思いますが、もっと徹底して考えていただいて、たとえば防衛庁のような不要不急のものに金を出すようなことは一切削減をする。そうしてそれを社会保障に持っていく、そういうような考え方でそういう問題を処理されないと困ると思う。防衛庁だけではありません。たとえばまた、これは主計同ではなくて、主税局のほうになるかもしれませんが、今度のあんな分離課税みたいなよけいな、実に間違った方法をとって、そのほうで財源を少なくしている。そういうことをやらないで、こういうほうに金を入れる方法もありましょう。あるいはむだな広告をしているようなことを経費として認めないで、そういうことを規制する。それに対して税金をかけるというような方法で財源を生み出す方法も一ぱいあるわけです。  これは釈迦に説法になりますからこのくらいにしておきますけれども、そういうことで、大蔵省としては、厚生省が非常に怠慢でいくじなしで肝っ玉が小さい。ですから厚生省の肝っ玉の小さいところをふるい起こして、要求をしたところで、国民の要求は、ほんとうの社会の進歩からすれば、まだ半分か三分の一くらいの要求です。厚生省の要求はなぜこんなに少ない要求を出すのだ。倍くらいにしようじゃないかというような勢いで大蔵省は当たらなければいけないというふうに私ども考えるわけです。そういう点について主計局の船後さんの御意見を伺っておきたい。
  52. 船後正道

    ○船後政府委員 財政は締めるばかりが能じゃない、金を有効に使わなければならぬという先生の御意見につきましては全く同感でございます。社会保障の充実につきましては、私どもといたしましては困難な財政事情にかかわらず、かなり努力をしているつもりでございますが、また先生のお立場からいたしますれば、まだまだ努力が足りないというおしかりを受けるかもしれないと思うのでございます。今後につきましてはただいまの御意見を体しまして仕事に当たりたいと存じます。
  53. 八木一男

    八木(一)委員 いまの船後さんの御答弁はなはだ満足であります。その御意見のとおり、またそれ以上に田中角榮君並びに後任の大蔵大臣がやることに、ひとつ十分な補佐あるいは自主的な指導をしていただきたいと思います。  その次に、やや具体的なほかの問題に入ります。年金の問題は、金額の問題のほかに年齢の問題が非常に大切なんです。年齢の問題については厚生省はあまり努力を示しておりません。年齢を下げるという問題についても十分に考えられる必要があろうと思います。それについてひとつ御意見を伺っておきたい。
  54. 徳永正利

    ○徳永政府委員 確かに金額の問題じゃなくて年齢に相当問題点がございます。無拠出年金につきましても、少なくとも六十五歳くらいまでには引き下げたいという努力は続けてまいらなければならぬと思います。今後もそういう努力を続けてまいりますが、また何ぶんの御鞭撻をお願い申し上げます。
  55. 八木一男

    八木(一)委員 拠出年金、無拠出年金、これは最低で両方とも六十歳から開始しなければ意味をなさない。いまのお気持ちには敬意を表しますけれども、さらにそれを強めていただきまして、両方とも六十歳が最低になるように御努力をいただきたいと思います。
  56. 徳永正利

    ○徳永政府委員 お説のとおりだと思いますが、私が申し上げましたのは、少なくとも来年度においてはというその努力目標を申し上げたので、将来においては先生の申されたような方向にまでは持っていきたい。でなければ意味がないのじゃないかというふうに考えております。
  57. 八木一男

    八木(一)委員 その次に、それでは政府次官に申し上げますが、いまのこの法案は福祉年金の問題でございますが、国民年金法自体には拠出年金が大部分の問題でありますから、福祉年金の問題はもう少しあとから十分に御質問を申し上げます。  根本的な問題で、拠出年金のことを申し上げておきたいと思います。拠出年金の金額とか年齢のほかに、組み立てに非常に間違った点があるわけです。拠出年金制の組み立てにつきまして、政務次官が御研究になっておられることがあればひとつ伺っておきたい。
  58. 徳永正利

    ○徳永政府委員 組み立てということを私よく理解できませんけれども、またお教えいただきましたら幸いでございます。
  59. 八木一男

    八木(一)委員 実はこの国民年金法は珍しく悪法第二上五条を引用して、第一条に、社会保障を熱心にやろうという考え方の意欲を出して書いた法律のはずです。ところが、これに社会保障精神と違った内容がありまして、民間の保険に似た内容の仕組みがある。まず保険料が二十歳から三十四歳までは月百円、三十五歳から五十九歳までは月百五十円という保険料になっておる。これは月計算でいくから百円、百五十円と少ないように見えますけれども、年計算になると相当な金額になりまして、非常に不運な方々としては負担が困難な金額になっている。そういう問題に対して対策として出した社会党案のほうに、免除及び減額規定を私どもは仕組んでおります。社会党案を昭和三十三年に提出をいたしました。ですから、政府のほうは十分に社会党案を手本にしていろいろ研究をされた。その中で免除及び減額という規定について一部分はまねをされまして、免除規定というものを政府案の中に入れてこられました。ところが、半分まねしただけで、半分は非常にけしからぬ内容になっておる。社会党案のほうは免除しても減額をしても、たとえば社会党案は六十歳から開始ですから、あのときの貧弱な案でも月七千円、年八万四千円という案であった。ですから、免除を受けても減額を受けても、それを何回受けても、所得保障はそういう免除を受けるような人に必要であるという概念に立って絶対にその人には支給をする。極端に言って、社会党案は保険料徴収は三十五年です。何回免除を受けても月七千円というものは六十歳になれば支給をする。極端なたとえ話を言えば、昔かたぎの人で私は保険料は払っておりませんからそのお金をいただくのは非常に心苦しい。飢え死にしてもそれはちょうだいしませんとおっしゃっても、その人は警察にお願いしてつかまえてもらって、年に八万四千円の年金を受け取っていただかなければうちにはお返しをしない、どんなことがあっても八万四千円はその人に差し上げるというような内容であったわけです。ところが、政府のほうではそうではなしに、いま一部改正になっておりますけれども、最初できた法律は、免除になったら、その免除期間は年金額を算定する年限には入らない。極端に言えば、四十年全部免除であれば、一文も年金はもらえないという案です。いまは少し変わっておりますが、こういうのはほんとうに国民年金という名に値しないわけです。保険料の払えないような人にとって一番年金が必要なんです。老齢にとっても、あるいはまた障害を受けた場合も、あるいは死んで遺族が受け取る場合も一番年金が必要なんです。その人に一文も年金が入らない。こんなものは全然社会保障ではないのではないかということになる。これは前の制度ですよ。いまはちょっと変わっておるが、そういう前の制度について厚生政務次官は当然それについての御批判なり御理解を持っておられると思うのです。その前の状態、これは改正しましたからね、改正点はまたあとで触れますけれども、前の状態について非常に不適当であると思っておられるだろうと思うけれども、それについて御見解を承りたいと思います。
  60. 徳永正利

    ○徳永政府委員 お説のとおりでございます。私もさように考えております。
  61. 八木一男

    八木(一)委員 当然聡明な、そうして熱心な徳永政務次官はそう考えられたと思うのです。これはだれが考えてもそう考える。ところが、そういうことが最初の国民年金法に入って、非常に国民年金法に対する批判運動が起こりました。その批判運動の中には、保険料を払うときに保険料を払わないとか、年金に入らないとか、延期をしてくれとか、いろんな運動が起こった。その運動の中には国民年金制度について、拠出年金制度について理解が少ないから発生した部分があるわけです。それからインフレによって、昔、老後の準備をしたものがただになってしまったということでそういう年金制度自体についての不信感もありました。  それからまた、その運用について資金運用部に委託をされて、それが軍事資本に使われて戦争につながるというようなことを心配をしておった方もある。その中に、当たっている点もあれば思い過ぎの点もあれば、年金制度について理解はまだ不十分であったという点もありますけれども、そういういろんな批判はありました。その批判のときに、批判に受け答えるためにいろいろと改正案を出され、それについて、議会においてもこれらは不十分じゃないかという意見を言って、その免除についての幾ぶんの調整、幾ぶんの改善がなされた。その改善については、百円について五十円、五割の国庫負担保険料に対する五割の国庫負担、百五十円について七十五円、五割の国庫負担、この分だけを、そういうような全部免除を受けた人でも、これは免除が半分の、はんぱな人もあるけれども、やはりわかりやすく全部受けた場合として計算をしますけれども、そういうふうな半分の免除を国から出そうということになった、これは当然中の当然ですよ。いままでのことは、保険料を出せる人に国庫負担がついて、出せない人にもついているのはおかしいじゃないか、最低次元のことだけが実現しまして、そういう国庫負担がつくことによって、約三分の一の人たちに保障されることになった。これはなによりはましですけれども、それではほんとうに意味がないと思います。年金を必要とする人が、ほかの人が三千五百円のときに千二百円、千百六十六円、これは切り上げて千二百円に算入する制度になろうと思いますけれども、そういう制度では所得の保障にはならない。もちろん年金が改定されればそれにスライドされて上がってくるだろうと思いますけれども、それにしても、上がったところで普通の人の三分の一では、一番所得保障の必要な人に少なくて、それでは意味をなさない。ですから、当然このようなことを直すためには、保険料全部について、その免除の期間については国がかわりに払ってやって、それで少なくとも同じ金額を保障するということにならなければならない。金額自体が、たとえば月に五万円くらいの内容だったら、それは同額でもいいと思う。月に五万くらいですから、年に六十万円くらいの内容だったら同額でもいいと思うのですけれども、それよりはるかに少ない金額であれば、ほんとうをいえば、そういう人にこそ割り増しをした年金をつけなければならないと思うのです。そういう考え方で私どもはいます。そこまでいかないにしても、少ない保険料を払った人たちと同じだけの金額は絶対に確保しなければならない。そうなれば、あのような国庫負担だけでお茶を濁しているのではなしに、保険料全体についてそのような保険料支払いができない状態になる、免除の人については国がかわって払ってやる、そういうことをするということが必要だと思うのです。ここで船後さんがちょっと首をかしげましたね。そうなると、財政が少し影響するなという考え方らしいのです。そこで、それをすることをまず前提に置いてきめるわけだ。それだけの金額について、いま積み立て金方式であるから、毎年毎年の金額が要るということであれば、そういう点は賦課方式に直してもいいと思う。来年の予算には影響しない。ですから、何も積み立て金方式を——国庫負担まで積み立て金方式をいまとっておるわけだ、国民年金については。これはそうでなければならないということではない。そういうことで、どうしてもできなければ、そういう部分は賦課方式をつくれば、船後君が首をかしげなくても、田中角榮君がうん、よしやろうということで原案はつくれるわけだ。そういうようなことで、何といいますか、同じように免除を受けた人についても同じだけの年金額を保障する社会保障の原則に立って、社会保険の異常な弊害をそこで除くという方向に、来年度の改正については進まれなければならない。それについての徳永厚生政務次官のお考えを伺いたい。
  62. 徳永正利

    ○徳永政府委員 八木先生のお説は私も全く同感でございます。この国民年金は、何といってもこれはすべての年金制度の中で中心になってまいらなければならぬものですから全く同感でございます。その方向に努力してまいらなければならぬと思います。来年度一挙にできるかできぬかというようなことをいまここでお約束される問題ではないと思いますけれども、理想の方向に向かって努力を続けてまいるつもりでございます。
  63. 松澤雄藏

    松澤委員長 大臣に本委員会の運営の責任者として一言強く要請を申し上げておきたいのですが、先ほどのような、突然立ち上がって、たとえ参議院からの要請があったにいたしましても、質疑続行中であって、一言お話を願って、そこで直ちに行かれるというようなことであればけっこうですけれども質疑はまさに発言を二言、三言始めてからやられるというようなことは、委員会としてせっかく政府に対しても御協力を申し上げて、特に与党の諸君が非常に努力を重ねてやっておることであって、かつまた社会党の諸君のほうもすでにこの問題については理解をいただきまして、きょうあなたが参議院のほうに本会議の席上に立ち会わなければならぬということもすでに了解を得ておったわけですから、一言こういうわけでこうだ、お迎えに来ましたから、こういうふうにして、それからこっちの許可を得るような立場に立って行くような形にしてもらわないと、委員会の運営が秩序を保持してやっていけないことになりますから、まことに言いにくいことを委員長の席から申し上げるようですが、特にきょうはあまりにも大臣がせっかちにやられたというようなことから、一時どうなるかというような気持ち一もあったものですから、どうかその点は御留意あって、本委員会の運営にも政府側としても御協力を願いたい、かように思います。
  64. 神田博

    神田国務大臣 いま委員長からお話を聞いて、実は私も意外に思ったわけでございますが、私はそういうことは全部了解がついておったつもりで、私もまたそういうことを申し上げたつもりで実は立ったわけです。しかし、いまのように、そういう御注意を受けるということになると、これは私の考えておったこととまるで違うわけでございますので、これは私のほうで言われるだけのことがあったというふうに自覚いたしまして、今後ひとつなお一そう留意してそういう手落ちのないようにやりたいと思いますので、先ほどはほんとうにそういう気持ちは全然なく、全部了解がついておった、私は委員長にお断わりいたしました、また同僚にもお断わりしましたし、皆もいいんだ、いいんだ、こういって催促されたものですからやったわけでございまして、決して私はそういうような、毛頭委員会を軽視するような気はないということを申し上げまして、そういう機会を与えたことにつきましては、どうぞひとつ免じて御了承を願いたいを思います。
  65. 八木一男

    八木(一)委員 委員長から適切な御発言がありましたから、私それでちょっとむかっとしたのですが、おさまりました。しかし、いまの話をしておられても、やはり出られるときには委員会を主宰しておられるのは委員長である。また質問者のほうも神田さんに向かって話そうとしているのですから、使いの人に義理を立てるよりは、ここでちょっとスムーズにいくようにあいさつをしてからおいでになっていただきたいと思います。  それから引き続きなんですが、神田厚生大臣に、いま徳永政務次官に重要なことについていろいろお伺いをしておりました。要約して申し上げますが、私もちょっと記憶が抜けておるかもしれませんが、政務次官から御連絡を受けられて御答弁を願いたいと思いますが、まず第一に、五年目の来年度改定ということは、これは間違いなんです。というのは「少なくとも」ということを書いてあるので、五年後でなければいけないということではなくて、熱心にその前にするのがあたりまえだということ、そういうふうに何々までにとか、少なくともというときに、これだけやっておればいいという、厚生省にもそういう風潮がある。諸官庁にもそういう風潮がある。内閣自体にもそういう風潮がある。そういうことを改めなければならぬ。少なくとも考えたら、それよりも上になるのが金額も上になるし、時期も早くなるというのが政治家としての姿勢でなければならない。ぎりぎり決着まで、ぎりぎりの金額までで政府としての責任を果たしたということではいけないということを閣議で御発言になって、それで各省がそういう準備を怠たることを改めさしていただきたい。それから総理大臣並びに各閣僚もそういうイージーゴーイングな考え方でなしに、各法律できまっていることは、それよりも早く、それよりもよくやるということをやらなければ、ほんとうに責任を果たした内閣ではない。それができないような内閣ならあっさり自分たちから退陣すべきだ。このような決心をもって国政に当たらなければならないということをひとつ御提言になっておいていただきたい。  それからもう一つは、五年後ということについては本質的に間違いがある。というのは、この年金額保険料昭和三十四年の国会において法律が成立してきまった。五年だから三十九年にできるわけです。ただ保険料徴収の時期が三十六年であったので、それから計算をすると四十一年になる。ところが年金額なり保険料をきめたのは三十四年です。その時点において、われわれは反対をしたけれども議会の多数でこれでよろしいということになって年金額保険料がきまった。それから五年後を考えて三十九年に改定をしなければならないのにそれが非常におくれたということになる。おくれてしまったことはしかたがないけれども、そういうことにならないように、ほんとうに熱意を持って年金をよくしたい、あるいは医療をよくしたいと考えているならば、そこを見ても、これはこっちにしなくてはいけないじゃないかという考えが浮かぶわけです。ただ責められて、しんどくてやりたくないけれども、ちびちびやろうなんて考えてやっているとそういうことになってしまう。ですから、そういうことを今後ともひとつお気をつけを願いたい。   〔委員長退席小沢(辰)委員長代理着席〕 その二つについて、厚生政務次官から誠意のある答弁がございましたが、厚生大臣からも同じく誠意のある御答弁をいただきたい。特に閣議における発言は、政務次官は非常に誠意を示されましたけれどもあなたがやられないとできない。そういうことについてはっきりやられるということをひとつ何っておきたい。
  66. 神田博

    神田国務大臣 ただいま八木委員からいろいろお話がありました。特に厚生年金については、五年目ごとに改定するということはこれは少なくともということであって、できるだけすみやかにやるべきだという御趣旨のことを強く御要望ございました。これは私どももさように考えております。申し上げますまでもなく、年金制度がいまおくれておりまして、特に国民年金の姿というものは私は不十分きわまるものだと思っております。しかも、創設以来賃金の上界なり物価の上昇というものが逐次その傾向を見せております。しこうしてまた、国民の年齢も老齢化そうとするような傾向を持っております。こういう際でございますから、できるだけひとつそういう心がまえで前向きにやっていきたい、こういう私基本的な考え方でございます。ただ、言いわけするわけではございませんが、ことしやらなかったということは、やるつもりで努力したが、それよりもひとつ来年まとめてやろうじゃないか、こういうことでございまして、ことしは緊急やむを得ない程度にいたしまして、来年はもっと突っ込んだ前向きの姿勢でやりたい、こういう配慮の関係でございます。なおまた、ことしのような少なくともこれこれというような問題については、八木委員のお述べになった考えと私も同感でございます。閣議等におりがございますたびにそういうことはひとつ申し上げまして、閣僚全般の御協力も得てものごとを進めてまいりたい、かように考えております。
  67. 八木一男

    八木(一)委員 政務次官も御同席で質問したかったのですが、用があるそうですから、政務次官のおっしゃったことを私正確に言いますから、やはり大臣と同じ自任を持っておられるので、大臣も同じように考えていただかなければならぬと思うのです。それで拠出年金年金額について来年改定を出される場合に、非常に勇敢に出されなければならないというようなことを申し上げておいたわけです。そこで、まず厚生年金については、現行の厚生年金保険法はこれは算定のときからいうと四千円年金、それをことしいわゆる一万円年金にされようとした。そういうことになると二倍半ということになる。そういうことについて伺ったら、当然そういうことで年金額考えなければならないと思いますということを徳永政務次官が言われたわけです。そこで半分及第であります。その点はいいけれどもそのもとがしっかりしていない。国民年金法が出たときには、岸総理大臣や坂田厚生大臣がいろいろな論議の過程で、非常に不十分でお恥ずかしい、非常に不十分でお恥ずかしいけれども急速に内容をよくするから、金額その他についてよくするから何とか通していただきたい、こう言われた。そういう貧弱な内容であると国民年金の将来を誤るからこれは日本社会党案のような内容にしなければいかぬとわれわれは食い下がりましたけれども、与党の多数の方も近々においてそういう内容がよくなることを期待して、政府のほうの発言について信頼をしてやっと通したという形なんです。ですから、非常に内容が貧弱であるということは、時の内閣総理大臣厚生大臣も十分に認めて、これは急速にその補足をするけれども、発足のときの内容の悪いことについては直すと言っておる。直すと言っておることが実現されてないわけです。ですから直して、それから厚生年金のいまのベース以上にまた直さなければならない二更の要件があるわけです。三千五百円に二・五倍をかけて厚生年金と同じでございますなんて言ってもこれは通らないということです。今度の年金額をよくすることについて、内容の問題もありますし、国庫負担をどうするかという問題もこれから触れますけれども、よほど勇敢にやられてまだ国民の要望よりははるかに遠いということになろうと思う。そういう点でほんとうに根限り勇敢に金額をよくする。その負担やいろいろなことはまたあとで申し上げますけれども、金額をよくするということの決意を表明されなければならない。いまの三千五百円に二・五倍をかけたのでは少ないということです。それではまだはるかに少ないということ、よほど本腰に国民年金をよくする考え方で当たられなければならない。それについて厚生大臣の、本腰に年金内容をよくする決心で当たるというような御答弁をいただきたい。
  68. 神田博

    神田国務大臣 国民年金厚生年金と性質は若干違いますけれども、国民年金の支給額の少ないことは先ほど来八木委員もお述べになっておられますし、私もまた同感だということを申し上げておるわけでございます。そこで改定期になりますれば、やはりそういう考えのもとに立ってできるだけひとつ厚くしよう、額をふやそうという努力をひとつ私はいたしたい、こういうふうに考えております。  それからまたもちろんこの厚生年金との比較の問題がございます。厚生年金にとった考え方を十分参考にしなければなりませんが、やはり私はこの年金というものは厚生年金改正になったからそれに右へならえして、ものさしをはめてやるのだというようなそろばんだけで考えてはいけないと思います。やはりそれぞれの基盤、そのようなそれぞれの制度があるのでございますから、しかも一年おくれてやるというふうになればまたそれだけの事情も新たなものが加わると思います。そういう角度に立って、そうして日本が福祉国家をつくろうという目標でございますから、そういう角度に立ってりっぱな国民年金をつくろう、この段階では相当思い切ってやったというような私は処置をいたしたい、かように考えております。
  69. 八木一男

    八木(一)委員 熱意は込めて言われましたけれども、やや抽象的でありましたし、私も少しほかの雑一談が耳に入ってはっきり聞こえなかったのですが、とにかく一生懸命にやられる、金額をよくせられる、そういう御決意を表明されました。それは非常にけっこうだと思う。それが先ほど私が例を申し上げましたように、厚生年金を今度は一万円年金に上げようとしておる。一万円年金では少ないとわれわれは、育っているのですよ。一万六千円年金にしなければ少な過ぎると私は言っているのです。われわれの考え方は別として、政府としてこの一万円年金を出されて、いまの四千円年金の二倍半になる。そのくらいの比率はこれはベースですよ。基礎ですよ。そのほかにいま言ったような国民年金の発足当時から非常に貧弱であるということを面してからその率がかけられなければならぬということであって、どんなにあってもその基礎が低くなるということではいけないわけです。そこで、国民年金厚生年金は性質が違うというような変なへ理屈をつけないようにしていただきたいと思います。所得保障が必要であるということは、日本の全国民に必要であって、それが少ないということは、全国民共通な問題であって、それを上げようというときには、そこを少なくしようというようなへ理屈を考えないで、多くしようというほうで理屈を考える。どんなことがあっても二倍半がベースであって、それに相当多くのものが加えられたものが政府の原案として出てこなければならないということについて、その御決意のほどをひとつお伺いたいと思います。
  70. 神田博

    神田国務大臣 八木委員のお考えになっている基盤と私の考えている基盤とやはり同じことだと思うのです。私はそういう考えを持って、そして十分検討してまいりたい。福祉国家をつくろうということでございますから、そういう面で向かうことは私はもう当然だと思う。そういう考えのもとにひとつものごとを運んでいきたい、こういう意味でございます。
  71. 八木一男

    八木(一)委員 それから、申し上げておきますが、いま大蔵省の船後さんに二、三回非常に熱心に質疑応答をいたしたわけです。そこで申し上げたことは、大蔵省は厚生省のこのような要求について積極的に協力をしていただかなければならぬ根底として、財政というものは国民のために必要なものを有効に使うことが必要であって、ただ形式的に財政をワク内に締めるとか、そういう技術論であってはならないということを申し上げたわけです。ことに、普通にいくと、各省のいろいろな要求があるからということで査定をされるけれども、とにかく経済がこれだけ成長して、社会保障がこれだけ停とんしているおり、社会保障は第一義的に取り上げなければならない問題であって、そういうことにほんとうに勇敢に資金を投入して、制度がよくなるようにされることが必要であるということを申し上げて、ことばはきっちり同じじゃありませんけれども、そういう方向のことを申し上げて、船後さんとしては賛成であるという意見、また田中角榮大蔵大臣をそういうことについて十分な補佐をするという御発言があったわけです。そこで、私はさらにつけ加えて、厚生省は一生懸命やっておられるのだけれども、いままでから見れば、厚生省が非常に一生懸命になっても、国民の要望から見るとはるかにまだほど遠いところにある。厚生省が要求を出したら、こんなけちな予算要求では社会保障は前進しないではないか、大蔵省自体でそれを倍にしようではないか、三倍にしようではないかという勢いで大蔵省でやっていただかなければならないということを申し上げたわけです。それについて原則的に——原則的にと申し上げますのは、船後さんにもいろいろお立場がありますから、原則的にそういう考え方について賛成で、一生懸命やりたいと思いますというふうに言っておられました。でございますから、厚生省もその大蔵省の協力に大いに期待をして、ちびった案ではなしに、勇敢な案を出されるという準備をひとつ……。勇敢というのは無鉄砲なということではなくて、ほんとうの理想、ほんとうにすべきことに近づく熱心な案を出される、そういうような決心をひとつ固めていただきたいと思います。  次に、金額の問題のほかに年齢の問題について申し上げます。年金については開始年齢という問題が非常に大きな問題であります。それについて徳永政務次官からは、少なくとも福祉年金については六十五歳からしたいということを言われた。そんななまけたことではだめではないか、両方とも、拠出年金福祉年金も、六十歳から支給するようにしてほしいということを申し上げた。その考え方は同じであります。ただし、来年すぐ実現するかどうかわからないので、福祉年金六十五歳ということは来年のこととして申し上げますという考え方でございました。そういうようなまだ非常に未熟な、また熱心度の少ないことについて、いま追及をしておったわけですが、神田さんがおられないので、それは宙ぶらりんに終わっているわけです。年齢を引き下げなければこの年金制度というものは意味がないわけです。年齢引き下げは、財政的にはいろいろ非常にこたえる点があります。こたえる点があるけれでも、とにかく年金制度に通有な不公平というものがあるわけです。というのは、長生きをしたら得だ、早死にをしたら損だという、これは年金制度の特性上そういうことが起こる。そういうことがなくなるために、その特性が——特性のいい点ももちろんあるのですが、その特性の反面の点について、その弊害を少なくしようとすれば、年金開始年齢を下げるということが一つ要件になってくる。それでは特性を伸ばしたほうがいいじゃないかという議論に発展しますから、ほかのことを申し上げますが、何といいますか、非常に不幸な人が残念ながら早く寿命が終わるという現象があるわけです。しあわせな人が長生きをする現象がある。そういう現象で、不幸な人は、普通の意味で年齢が少なくても、たとえば、五十九歳であってもしあわせな人の六十六歳よりは老衰しているという場合があるわけです。そういう場合が多い。非常に世の中の政治が悪いために不幸な人が多い。そういうようなことをなくすためにも、これは下げる必要があるわけです。もっと根本的に言うと、この所得保障というものは労働力の問題と関係がございます。生産に携わる年齢を幾らに設定するという問題と関連があるわけですが、そういう生産に携わる年齢を過ぎたならば、すぐに年金制度で十分に老後を暮らしていけることができる、そういうからみがあるわけであります。からみがあるわけでありますが、その中で、拠出年金福祉年金共通の問題もありますし、また別々の問題もございますけれども、いまの年齢が高過ぎるということは、総体的に見て明らかに言えると思う。開始年齢を下げるということについて、次の改正案なるべきものにそれが盛り込まれるようにぜひやっていただきたいと思います。これについての厚生大臣の御決心のほどを伺いたい。
  72. 神田博

    神田国務大臣 この年金支給につきましては、年齢を幾つにするかということがやはり基本的な一番重要な問題ではなかろうかと思います。各種年金等の場合、それぞれいろいろな事情がありまして、異なっておる例があることは御承知のとおりでございます。そこで、そういう中で国民年金の年齢を引き下げて六十歳にせい、こういう御意見でございましたが、これは私個人としては、六十歳くらいにすればいいと思っております。私は六十一歳でまだ若いつもりでおりますが、私のような若い人は少ないのじゃないか、こういう意味考えまして、できるだけそういうことは望ましい、こう思っております。しかし、いま八木委員もお話ございましたように、財政上の問題もございますが、財政上の問題は、これはまた国家の伸びる力というものを、どういうように見通しを立てるかという見方によっても違います。いまのような伸び率でいくのか、あるいはもっと大きな伸び率でいくのか、あるいは日本はもう伸び切ってしまって伸がないのかという考え方も、これはいろいろ各種の統計をとった見方があると思います。いずれにいたしましても、所得の再配分でございますから、私はそうあまり老齢にならぬうちにあげたほうがいいという考え方を持っております。いろいろ財政上の事情もあることは御承知のとおりでございます。しかし、私の考えを申し上げると、そういうあたたかい気持ちに考えております。十分ひとつ理論的にも実際的にも検討いたしまして、大事な問題でございますから、十分検討を加えると申しますか、研究いたしてみたい、こういうふうに考えます。
  73. 八木一男

    八木(一)委員 非常に前向きな答弁でけっこうでございます。問題は、いろいろなところで理屈が出ると思いますから、私の考え方を申し上げておきたいと思います。  福祉年金拠出年金で少し共通の問題もありますけれども、また別な論点もあるわけです。拠出年金については、ほんとうの意味で論議されるといいのですが、それを下げると金がかかるというようなことで、ブレーキをかけるためにする論議が一これは船後さんみたいな方はそういうことはないですけれども、ほかのほうでは出るおそれがある。たとえば、労働人口がどんどんふえていく。だから年をとるまで働いてもいい。年金をそんなに早くする必要はないじゃないかというようなことを言われる。年金制度というのは、この国民年金制度も四十年先——現在の時点で考えていけないわけです。現在の時点で考えなければならないのは福祉年金です。現在の時点で考えないで、将来を見通して考えなければならない。そうなれば、いろいろな問題について、たとえば農業についても中小企業についても自由業についても、これはいろいろオートメーション化が起こるわけです。いままでは工業におもに起こっておりました。そういうふうに起こるわけです。いま労働力不足ということを労働省あたりが言いますから、年寄りも働いてもらわなければならぬという議論が起きる。しかし、いまの時点でそういうことをきめて、今度はオートメーションが発達をして、今度は二十年後に人がダブついてきた。そんな年寄りが働いておったら若い者が働くところがなくなるんじゃないかという場合が必ず出てくる。そういうようなときに処して四十五年後の、四十五年というのはけしからぬと思うのですが、西土五年後の将来を見通した問題、国民年金というのは二十から六十工まで、四十年払って五年待たされるのですから、これは六十にしていただく、四十年にしていただきたい。そしてただいまの時点で四十年先を見通す。いまの時点では労働力が不足だから年寄りに働いてもらう、働くから年金はそんなに早く要らぬじゃないかという俗論が方々で出ると思います。そういう俗論については徹底的に粉砕する。長い目で見たほんとうの年金制度というものはそういうものではない、人間の文明が発達をして、それで若い、二十から六十までくらいの人が生産に従事して、そして生産の分配は全国民があるいは全人類が十分に受けられる時代が早晩——早晩ではなくて近き将来に到達をするのだというような見通しで考えていかれないと、いま私の危惧したような反論がおそらくつまらないところから出てきて、正当論みたいに言うと思いますから、そういうことを撃破して、六十歳から開始するということをぜひやっていただきたいと思います。  それからもう一つ、ほかの年金が五十五歳で支給——共済その他がそういうことになっている。そういうものに並べるためにも五十五歳——五十五歳のものがある。厚年は六十歳、国年は六十五歳だ。そんなばかな年金制度の格差というものはあったものではない。少なくとも国民年金は六十歳に合わせる。法制的にも合わせる点でもそういう点を強力に主張していただきたい。  ちょっと基本的な問題点からはずれますが関連がありますから……。福祉年金についてはこれまた別なんです。福祉年金については別であって、いま福祉年金の該当者は七十歳以上、私どもは六十歳以上に該当させなければならないと思う。いま六十歳の人はどういう生活をやってきたか。戦争中、戦後に非常に苦労してきた。経済政策が非常に悪いために失業もした。おまけに貯金をしたものはインフレでパーになった。いま六十になった人はめちゃくちゃな目にあってきた人です。ですから、日本のいまの全国平均とちょっと違って猛烈に老衰の度が大きい。特に福祉年金の該当者で所得制限をされている人たち、その人たちについてはその度が特に大きい。ここにおられる方の中に、神田さんも若く、非常に若々しい顔をしておられる。私も五十三であと一月で五十四歳になりますが、六十になっても神田さんくらいの若さは保てるつもりでおります。つもりでおりますけれども、こういうところでしゃべっているのは日本国じゅうではレアケースですから、ぼくも、神田さんもおっしゃったように、われわれはレアケースとして、われわれの判断で勘定してはいけない。また年金制度についていろいろ言う人がおります。これはまたもとの議論に返りますけれども、ある学者が公聴会でこういうことを言いました。人間は働くことによってあれがあるんだ。年金をそんなに早くやって働くことから除外されたら生きがいがないのだと言われました。それはあなたは間違いです、あなたは学者という、大学教授というそういう特別に恵まれた地位を持っている、頭脳的な地位をもっているから頭は老衰しないのだ、いつも学生を指導し世の中を指導したいという意欲に燃えておられるが、しかし普通の人はそうではない、疲れはてて休みたい、子供が一本立ちになった、娘が嫁に行った、老後を楽しみたい、これが普通の国民の気持ちだ、あなたのようなエリートの感覚でこのような国民全体のことを考えてもらったら困るということを昭和三十四年の公聴会で公述人に対して言ったことがあります。これが私は当たっていると思いますが、どうもこういう問題を論議するときに、いろいろな学識経験者とかあるいは高級公務員とかあるいは国会議員とかそういう者が議論をするので幾ぶんの若さを保ち、これからの仕事に意欲を持っている連中がやるので、そういう国民一般の概念からはずれた判断をすることがあろうと思います。こういう問題についてそういう議論が出ましたら、そういう自分たちの立場で考えないで、国民の平均水準で考えるというふうに反論をしていただきたいと思います。  問題をもとに戻して福祉年金の点ですが、六十歳になっている人は非常に苦労したから非常に老衰の度が大きい。苦しい時期をささえてきた人たちですから、その人たちに対して社会的な親孝行をしなければならない。それが七十歳からではほんとうに苦労をした人にひとつも報いることにならない。特に苦労をした人は六十七、八で死ぬ人が多いんです。七十をこえて年金を受ける人はその中でも比較的しあわせだった人が多い。そういうことを考えれば七十歳開始というようなことはほんとうに問題にならない。少なくともこのような福祉年金に関しては、これこそ決断を持って即時六十歳にしたらいい。ところが福祉年金ではすぐ金がかかる。だから抵抗があってなかなかできないということ。拠出年金六十五歳と書いておいて福祉年金を七十にするなんて、そんなものは法制上の理屈に全然合っていない。法制上のバランスから考えててんでなっていない。拠出年金六十五歳、福祉年金七十歳、話にならない法制です。おまけに実質を考えれば、いまの老人こそ苦労をしている。老衰の度が早い。早くなくなられる方が多い。したがって早くから社会的にも親孝行をしなければならない。これこそは六十歳からすぐやらなければならないという問題である。  根本的な問題と、少しプラスアルファの点がございますから私の考え方を申し上げておきますが、この福祉年金の開始年齢の引き下げについては、次の国民年金法改正案に断じてこれを入れる、そういう決意を表明していただきたいと思います。これはあなたが総理大臣になられるか、ほかの大臣になられるか、しばらく閣僚を休まれるか知りませんけれども、あなたの在任中に各閣僚に断じてそれを承知をさしておく、大蔵大臣にもそれを承知をさして、もっと熱心になるように言っておく、そのような努力をしていただかなければならないと思う。その点について断じて老齢福祉年金の開始年齢については大幅に下げる、私の要望では六十歳、そういう要望に従って断じて引き下げた提案をするという御決心のほどをひとつ明確に強力に示していただきたいと思います。   〔小沢(辰)委員長代理退席委員長着席
  74. 神田博

    神田国務大臣 ただいまの八木委員福祉年金の年齢引き下げの問題につきまして私も実は同感でございます。ただひとつ、八木さんいろいろお述べになりましたが、経済政策が失敗しているからこういうことになったというような問題になりますと、議論しようとは思いませんが、これは少し……。
  75. 八木一男

    八木(一)委員 昔のことです。昔、東條内閣や何かのことですから、そんなことは言わないでください。
  76. 神田博

    神田国務大臣 そういうことならまた話は別でございます。そこまではっきりおっしゃるのでございますから申し上げませんが、とにかくこの戦争のあと、いまの七十歳等の方々が一番苦労された、これはもうおっしゃるとおりでございます。私も同感でございます。ですから、所得の再分配をやるのにできるだけ年齢を引き下げて、老後の思いやりをしていくということは私は非常にけっこうだと思います。私もそういうような考えを持っておりまして、できるだけひとつそういうような処置をしたい、こう考えております。まあ日本の経済がどういう伸びの見通しがつくかということにも関連をいたしますが、しかしこれは民族が優秀だといわれておる、また勤勉だといわれておりますから、私はある程度の日本の将来というものは期待できる、こう考えております。そういう前提に立って、そうして社会保障を手厚くしていくという感覚で邁進したい。  またいろいろ御注意もございましたが、われわれの同僚につきましてもそういうことを十分お願いしたい、こういうふうに考えております。
  77. 八木一男

    八木(一)委員 非常に熱意を持って御答弁くださってありがとうございました。  具体的に来年度の政府原案に年齢を下げる原案をつくって、老齢福祉年金についてはもう断じて開始年齢を下げる、そういう点についてひとつはっきりお答えを願いたいと思います。
  78. 神田博

    神田国務大臣 そういう考えでひとつものごとを運んでいきたいということをはっきり申し上げておきます。
  79. 八木一男

    八木(一)委員 その次に、さっき政務次官と大事な点を論議していたのです。というのは、この拠出年金制の中に非常に仕組みの悪い点がある。前に厚生大臣に申し上げたから簡単に申し上げます。たとえば免除という制度がある。それはいいように見えるけれども、修正の前は、免除というのはただ保険料を取らないというだけであって、年金が一文ももらえない制度になっている。この前の修正前はそうなっていた。そうなれば、保険料を取らないという名目のもとに、所得保障の一番必要な人を所得保障がないからほうり出す、そういう内容法律だった。社会保障精神とすっかりさかさまになったとんでもない法律だ。一番所得保障の必要な人には所得保障の適用をしないという法律だ。そういうくだらぬ状態について徹底的に追及が行なわれて、与党の先生方もそれはそうだということになりまして、それでとにかく部分的なこの点についての手直しが行なわれた。たとえばほかの人には百円について五十円の国庫負担がつく。百五十円について七十五円の国庫負担がつく。金持ちに国庫負担をつけて、貧乏人につけないとは何事かということから、それと同じような国庫負担だけはつくようになった。したがって、三分の一の年金だけでは確保されるようになった。ところが、それでは話にならない。所得保障が一番必要な、保険料を払いにいくような人は蓄積が少ないし、財産もないから、そういう人が一番必要だ。年金額というものが、たとえば現在の貨幣価値で月に五万円ずつくらい全国民にくれるようになれば、これは同額でいいけれども、そこまでいかない以上は、そういう所得保障の必要な人にこそ年金額をたくさんあげなければならない。それがほんとうの考え方です。そこまでいかなくても、最小限度保険料を全一部払った人と同じだけのものが、特にそういう所得保障の必要な人にそれが保障をされなければ、この国民年金法というものは意味がないということです。ですから、それをやるためには、不幸な事態で百円、百五十円の保険料の免除を受けなければならないときに、国がかわって保険料を払って、同じだけの金額はどんな場合でも保障するというふうに仕組みを変えなければ、それは社会保障でもなくて社会保険、特に悪質の社会保険ということになる。そういうことを今度の大改正といわれる予定された時期に仕組みを変える、そういう方向をとられなければいけないと思う。それについては、いろいろと大蔵省から考え方はわかるけれども、なかなか国庫負担とかなんとかということで、ほかの国庫負担をうんとふやさなければならないからという考え方が出るでしょう。しかし国庫負担で埋めるのが一番はっきりしていいわけです。その国庫負担について難点が出たらもう一つ考え方がある。賦課方式を入れるとかなんとかいう考え方もある。それは大蔵省のほうで知恵を出すでしょう。そういう点でその免除した期間も国が保険料を埋める、そして保険料を埋めるという方法じゃなくて賦課方式でもかまいませんから、少なくとも保険料を払ったのと同額の年金額が完全に保障される、条件つきでなしに完全に保障される、そのような方向にこの仕組みを直していかなければならない。徳永政務次官との論議では、その御趣旨全くそのとおりでございます。そういうふうに努力いたしたいと思います、神田厚生大臣にその由をお伝えしてそのような決心を固められ、実行されるように進言をしますというお約束をなさいました。神田さんは徳永さんと同様、あるいはそれ以上に社会保障制度や所得保障に御熱心なお気持ちを持っておられると思います。徳永政務次官より以上に強力な明確な御決意のほどをひとつ示していただきたいと思います。
  80. 神田博

    神田国務大臣 ただいま八木委員から国民年金の支給方法について、保険料を免除した場合の国が行なうものの給付がどうというお考えでございましたが、国民年金の支給の対象になる場合の考え方は、八木さんの言われた気持ちのとおり私も考えております。むしろそういう人が必要なんであって、年金の加入者でございますから、財産があっても年金を支給することはかまいませんが、ほんとうに必要なところに必要な程度のものを差し上げる、それが私はほんとうの社会保障だと思っております。だから、その考え方に全く同感です。政務次官もそういうお答えをしたというのですが、これは私どもも一体になって考えておりますから当然だと思っております。そういう考えに立って、できるだけりっぱな年金制度を打ち立ててまいりたい、かように考えております。
  81. 八木一男

    八木(一)委員 たいへん前向きな御答弁でけっこうであります。ひとつ厚生大臣の誠意のある御努力で完全に実現されるようにお願いしたいと思います。  それで、拠出年金についてまだまだ申し上げることもございますが、さきの協定で小林さんがやられた後にまたやることになっておりますから、拠出年金のやや具体的なこまかいことはそっちに譲るとして、今度の改正案内容福祉年金のほうに少しだけいま入っておきたいと思います。  福祉年金の金額を、老齢福祉年金月当たり千百円を二百円増で、千三百円にした、説明では年額になっておりますが。それから、母子福祉年金、準母子福祉年金あるいは関係の児童手当、そういうものも二百円増、それから障害のほうも二百円増というような内容になっておるわけですが、これでは非常に少な過ぎて話にならないわけです。なぜこんな少ないものを出されたか、理由なり経過を伺っておきたいと思います。
  82. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 福祉年金の二百円の引き上げにつきましては、昨日も滝井先生から、本来ならば拠出年金の改定というものと見合って考えるべきじゃないかという御意見があったわけでございます。そうしないと、拠出年金とのバランスという問題も出てくるのじゃないか、これも一つ考え方でございます。確かに福祉年金の改定ということだけ考えないで、拠出年金の際にバランスを見ながら考えていくというのがあるいは本筋かもしれません。今回の改正につきましては、その問題はもちろん考えながら、拠出年金とのバランス、均衡をくずさない範囲内において、現実に物価の上昇というものがあるので、制度創立当時の千円というものの実質価値を維持するという観点から考えますと、あの当時から見ましておおむね消費者物価においては三割、農村の家計支出につきましては二割という上昇を示しておるという現実に立ちまして、そして当時の老齢年金の千円の実質価値を維持するという観点から月額千三百円という考え方になったわけでございます。ただ、障害福祉年金母子福祉年金につきましては、一昨年の改正老齢福祉年金よりは大きな額の引き上げをいたしておりますので、母子福祉年金のごときは制度発足当時からは五割増しになるという結果に相なった次第でございます。
  83. 八木一男

    八木(一)委員 いまの考え方でいいと思われますか。
  84. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 先ほど申し上げましたように、拠出年金の問題に触れておりませんから、均衡をはかる範囲内においてこの程度の引き上げでやむを得ない、かように考える次第でございます。
  85. 八木一男

    八木(一)委員 そこでさっきの問題に戻るのです。拠出年金ではなまけて五年目にやらないで二年も伸ばした。だから、均衡ということを考えたら、こっちは根本的にできない。福祉年金対象者とはいまの老人ですよ。そして毎月毎月死んでいるのです。そんな形式的なことを考えるものじゃない。バランスをとって拠出年金と一緒に考えたいというなら、拠出年金をなぜ早くやらないか。そういう形式論じゃなしに考えていただきたい。バランスの問題を考えても、厚生大臣や政務次官に言ったように、あなたは専門家だからあれだけれども、三千五百円とかこんな単位ではなしに、それより一つ上の単位のものにならなければならないという見通しはできておるわけです。それだったら、バランスを考えたって、一つの見方では、それと回顧の福祉年金を即時出してもいいという考え方もある。ところが政府の貧弱な考え方ではそういかない。そうでない考え方もあるだろうから、政府の最低限の貧弱な考え方に合わせても、片方が二万円なら片方は一万円、片方が一万五千円なら七千五百円くらいになってもいい。二百円や三百円でなくて、せめて二千円とか三千円にしても、来年考えられる拠出年金の金額とのバランスを失するという金額にはならない。二百円とかちびったものではなしに、二千円、三千円にしても、次のバランスを失するというようなことにはならない。それがなるというような考え方をしておるなら、来年の拠出年金はよほどなまけた案を出すという決心を持っておるということになる。来年の拠出年金について相当の決意を持っておるとすれば、厚生省ベースの決意であっても、福祉年金はもっと上げてもいいという腹づもりがあるはずです。二百円というのは、上げ過ぎてあとのバランスが困るという範囲じゃない。二千円以内のところは、大蔵省で船後さんみたいに理解のある人でなくても、厚生省がどんなにいくじがなくても、来年の改正案を出すときにこれを二千円にふやしたから困ったことになるというようなことになるはずはない。それを二百円というちびった案を出すのは、現在老齢で老齢福祉年金をもらいたいと考えている人も、来年になれば死亡ということでそれをもらう資格がなくなるかもしれない。そういう人たちに対して国の政治は対処したことにならない。厚生大臣はそう思いませんか。
  86. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 先ほど申しましたように、制度発足当時の千円というものが、物価の上昇によりまして実質価値が維持されていない、それは最小限カバーしたいということでございます。
  87. 八木一男

    八木(一)委員 物価については上げるのがあたりまえですよ。いままでがなまけ過ぎていた。これは山本さんや神田さんだけ責めるわけじゃない。前任者全部がなまけていた。そんなことはあたりまえのことで、そうではなしに、いま老人が老齢福祉年金の増額を求めている。ことしやらなければ、ことし一年の間に死ぬ人がいる。来年改正したって間に合わない。最初の制度発足のときに、四十五年後の年金額も論議されたけれども、それと同じような性格で現在の老人のことも論議され、たったの千円で何になるかという話をした。それについては急速に毎年変えるからということを岸さんも高田さんも言った。それが事務局がいままで怠慢であってそれを変えることをしない。やっとちょっと前に百円上げたけれども、物価のほうがずっと上がってあんなものは八百八十円に下がっている。あのときの計算では、今度は千三百円に上げて、やっとこの前の岸さんのときと実質的に同じになる。母子福祉年金障害福祉年金は少しよけい上げたというけれども、こんなものは所得保障の必要度が多いのですから、初めからあんな千円と同額であったり、千円に対して千五百円であってはいけない。初めから障害福祉年金は四千円くらいでなければいけない。母子福祉年金についても、老齢が主体ではあるけれども、初めから特別なものだから多くならなければならないのに、その機会に少しずつ多くしたというにすぎない。しかも、これだけかかって百円しか上がっていない。そして、いま二百円上げる話しか出さない。その間に物価のひずみはどうしたか。最初の約束の千円よりも翌年もその翌年も下がっている。この前百円上げたときも昔の八百八十円の値打ちしかない。その間に老人にそれだけ苦しい生活をやらしている。いま上げたって、その間の老人のしあわせを少しでもお手伝いすることができなかったことは、政治の責任として解決のできない部分がある。いま物価だけ考えても、いまの物価だけじゃなしに、その間のマイナスの部分を埋めなければならない。そういう考え方で二百円、三百円という考え方が出てきた。でもそれではいけない。初めから少なかったのだから、基本的に上げるということを考えなければならない。そこで、拠出年金のバランスの問題がありましょうけれども、五年も改定なしに、六年目に厚生年金を——政府としては画期的というが、われわれは中改正だと思っているけれども、そういうものをしたあと、それに準じてしっかりやりたいといっている以上、ある程度の腹づもり——大蔵の金額以上でなければならないという腹づもりはあるはずだ。そうなったら政府側の考え方とバランスを失しない老齢福祉年金の金額もあるわけです。それを越えたらいけないという役所の警戒心をもし許すとしても、少なくとも千円や千五百円くらい上げることはそういうことのじゃまにならない。来年やることをなぜことしやろうとしなかったか。拠出年金はこれから将来の問題で、現在障害を受けた人、あるいはなくなった人の遺族、一部の気の毒な人以外の大多数の人はあまり関係がない。ことしも来年になってもそれほど影響がない。しかし、いまの老齢福祉年金や、あるいはほかの福祉年金対象は全部がいまの問題です。なぜもう少し金額を上げなかったか、厚生大臣のお考えをひとつ伺っておきたいと思います。
  88. 神田博

    神田国務大臣 いろいろ御意見がございましたが、われわれとしてはできるだけ上げたいという考え方でございまして努力いたしたわけでございますが、相手のあることでございまして、なかなか思うようにいかなかった。しかし、これは来年の改正期にまたもう一度検討したい、かように考えております。
  89. 八木一男

    八木(一)委員 いまこの論議で、与党の皆さん方も少な過ぎるから二千円くらいにしろという修正案が出るだろうと思います歩、それは別として、出ようが出まいが福祉年金のことしの改定は、改定という内容に値しないくらいの少額の金額です。福祉年金の金額について抜本的に来年はふやす、あるいはさっき言ったように開始年齢を下げる、そういう案を出す決意を持って当たられるべきだと思う。それについての御決意をひとつ伺っておきたいと思います。
  90. 神田博

    神田国務大臣 むろんその考えで邁進したいと考えております。
  91. 八木一男

    八木(一)委員 もごもごおっしゃいましたけれども、もう少しほんとうにやる気で元気で、一生懸命やると、もう一回前向きの確信を持った、われわれを安心させる御答弁をお願いしたい。
  92. 神田博

    神田国務大臣 ことばの強弱の使い方も大事なことでございますが、特にこの年金制度というものにつきましては、日本の福祉国家建設のために重要な支柱だ、こう私は考えております。それからまた年金を支給される側から見ましても、いまいろいろ御議論があったように、これは大事な対象でございます。そういう相手の境遇、環境等を考えましても、現在の年金制度が不十分であるということは、申すまでもないと思います。いろいろ制約される点のあることは御承知のとおりでございますが、われわれとしてはできるだけ前向きでひとつこのことを進めてまいりたい、かような決心でございます。
  93. 八木一男

    八木(一)委員 山本年金局長に伺いたいのですが、国民年金法改正案について、社会保障制度審議会の答申がいままでの慣例よりはかなり異常な答申を出していることを御存じだと思います。それについてどのように感じておられるか。
  94. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 本案を制度審議会に諮問いたしました際に、「差し当たっての措置としては、これを了承する。」とありますが、国民年金制度の根本的改正について提案がなされてないという点を指摘されまして、項目といたしまして、年金額の大幅引き上げ、福祉年金の所得制限の緩和並びに所得水準上昇に伴うスライドの実施、老齢福祉年金の開始年齢の引き下げ、夫婦受給制限の撤廃または緩和、障害福祉年金に関する扶養加算の新設、障害等級の適用範囲の拡大という六項目にわたりまして、「ただちに実施すべきであると考える。」という答申をいただいております。
  95. 八木一男

    八木(一)委員 その意味はどういうことを希望したのか、どう理解しておられますか。——時間がないからこっちから言います。この社会保障制度審議会の答申を全部読んでいただくと、これだけきつい答申はいままでないのです。「今回の諮問案は、昭和三十九年二月七日付の本審議会の答申の趣旨からすれば極めて不満足なものと考えるが、差し当たっての措置としては、これを了承する。」と書いてありますが、これはほんとうはこれじゃいかぬと書く予定だった。ところが政府側の立場を最大限度に考えて、一応「了承する。」と書いた。そこであとのところは、「なお、国民年金制度の根本的改正についてなんらの提案がないことは極めて遺憾であり、特に以下の点についてはただちに実施すべきであると考える。」「ただちに」というのは、その時点の「ただちに」なんです。ですから、制度審議会の意思は、この下のものについては、「年金額の大巾引き上げ」というものはいろいろなものがありますから、これは専門家が見ればわかりますけれども、あとの第二点以下は今次の改正案に盛らなければならない、それから根本的な改正案として至急にりぱっなものを出せという趣旨なんです。ただ政府側の神田さんや山本さんの立場を顧慮して一応は「了承する。」と書いた。検討すべしとかなんとかかんとかといういろいろな、あそこ特有の、今井さんや近藤さんのつくるわけのわからぬ、どっちにも解釈できるような文章があるのです。そうではなしに、「ただちに実施すべきである」ということは、ほんとうに文字どおり直ちに実施しろということだ。それを今度の改正案に盛っていない。あなた方は、いまの問題は、制度審議会や保険審議会の答申を尊重すると言いながら、ここでこんなに明らかに問題の内容点を指摘して、検討とか善処ということではいけない、「ただちに実施すべきである」と書いてあることを一つも入れてない。そういうことではいけない。この問題は時間がかかりますからまた申し上げますけれども、この第二点以下はあなたの出した案で直ちに出されなければならなかった問題ですし、これについては与党の方々とお話をして、与党の方々が社会保障に御熱心であり、そして非常にいい方であれば、一緒に修正しようとおっしゃるでしょうし、そうでなければそうじゃないことになると思いますが、おそらく非常に熱心な、いい方ばかりであると思いますので、修正なさると思います。そういうことについてあなた方も準備をなさって、そのときの政府の答弁としては、修正案の議決について、政府は大体けっこうだと思いますというようなことを言わない。これを入れなかったのは政府の怠慢でありました。それを衆議院社会労働委員会において修正していただき、私どもの怠慢をカバーしていただいてありがとうございました、全面的に実施をいたします、それを総理大臣も大蔵大臣も首をそろえて言う、そういうような準備をしておいていただきたい。
  96. 松澤雄藏

    松澤委員長 この際、午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時三十六分休憩      ————◇—————    午後一時五十一分開議
  97. 松澤雄藏

    松澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。小林進君。
  98. 小林進

    ○小林委員 実は、私は国民年金に対する質問もたくさんありますけれども、この社会労働委員会といたしましては、法案の審議に先立ちまして、いま日本の国内に起きているもろもろの厚生関係、労働関係関係する社会事象の問題をとらえていかなければならないと思うのでありますけれども、残念ながら今度の国会においては、百五十日の期間の間、それがなかなか与えられていないのです。私はこの社会労働委員会の運営のあり方に対しては、若干の不満を持っております。いまこうやって激しく世界も動けばアジアも動く、日本も動いておる。その中でもろもろの問題が起きている。国民の息吹きをこの社会労働委員会に取り上げてもらって、ここで国民の意思を明らかにしてもらいたいという問題が雲のようにわいているのに、何もされていない。そしてもっぱら政府が用意した法案のしりだけつついている。私は法案のしりをつつくために国会議員に当選したのじゃない。政府のサーバントになるために、政府の法案の従属者になるために国会議員になったのじゃない。どうもそういう問題が取り上げられないのは残念だと私は思う。大臣のすばらしい手腕によって日本の医療費も二通りできたりして、北海道あたりは旧法によらないとか新法によらないとかという決議をしたという。そういうようなことで、人間の健康や生命に関するものが国内で大きく波乱を起こしておる。それは本来国会で取り上げるべきものを、国会外の制度審議会とか社会保険審議会というようなところでそれが取り上げられている。一番の中心になるべきわれわれ社会労働委員会でそういうものを取り上げるチャンスを一つも与えられないという、そんなばかな委員会の運営というものはあるはずがないと思う。きのう、おとといあたりの新聞によれば、麻薬を取り締まるべき麻薬取締官が麻薬の中毒者になって、医者の名前をかたって麻薬を不正購入しているなどという問題が起きている。一体だれがそれをやるのか。この委員会以外にないじゃないですか。そのほか大小幾多限りなく、朝から晩まで国会の中で、社会労働委員会でこれを取り上げてくれ、あれを取り上げてくれという声もある。あるいはクリーニング屋が、新しい近代的な業者ができて自分たちの生活を追われるような問題も出てきている。いろいろな問題があるのでありますけれども、そういうことはいま委員会で取り上げるべきじゃない、何でも法案審議が中心だ、こういうしきたりができておるそうです。午後から一般論をやることに対してはだめだという両党の間の申し合わせで、何でも国民年金をやれということになっておって、わずかに許されるのは国民年金に関連して因果関係のある問題ならやってもよろしいという話なんです。実に言語道断だ。けれども、それが一つのしきたりならしかたがないから、私は残念ながら国民年金のほうは若干質問しまして、それに関連して因果関係があるかないかわからないけれども、徐々にそういう方向に変えていきますから御了承をいただきたいと思います。  それでは、ひとつ国民年金お尋ねいたしますけれども政府は四十三年度を目途にいたしまして中期経済計画なるものをお立てになった。何か総理大臣は、数日前でありますけれども命令を出されて、どうも中期計画は若干実情に沿わないからこれを手直しせいというような——手直しというのも実に不謹慎な話でございますけれども、そういう命令をお出しになっているようでありますが、その中期計画の中で占める社会保障費というものは大体幾らになっておるかお聞かせ願いたいと思います。
  99. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 中期経済計画の中で社会保障費といいますか、振替所得の金額の見込み額は二兆一千億になっております。
  100. 小林進

    ○小林委員 その二兆一千億の内訳を大まかでよろしゅうございますがひとつを聞かせ願いたい。医療費が幾ら、年金が幾ら、その年金の中にも国家共済もありましょうし地方共済もありましょうし、厚生年金も国民年金も船員保険もありましょう。そういう区分で仕上げの四十三年度にはその額が分類いたしまして大体どれくらいになるか。大体の予想をお聞かせ願いたいと思うのであります。
  101. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 昨日も滝井先生の御質問でその点が出たわけでございますが、内訳については明確でないということで経済企画庁長官も御答弁になっております。ただ年金につきましては、私のほうの先般御審議を願っておりました厚生年金の一万円年金を引き延ばし、かつまたそれとの見合いにおいてかりに国民年金を現在の、現在といいますか制度創立当時の倍額にすると四十三年はどうなるかという試算した数字を出してみろといわれまして、昨日御発表しましたのは、厚生年金におきましては西十三年の見込み額で八百一億になる。それから国民年金も制度度創立当時の倍額にいたしますと、福祉年金拠出年金合わせまして八百四十億見当になる。船員保険がやはり一万円年金で三十六億になる。各種共済組合の現状を四十三年の見込み額に直しますと八百億前後になるであろう、そういたしますと、この各種年金で四十三年度の見込み額は国民年金改正するといたしまして約二千五百億になる、こういうことに相なります。
  102. 小林進

    ○小林委員 そういたしますと、社会保障費の基準の取り方や内容によって違いましょうけれども、そういうこまかい議論は別にいたしまして、昭和四十三年の中期計画の仕上げの年には社会保障費として二兆一千億お出しになる。その二兆一千億の中でいわゆる年金関係は合計して二千五百億円、こういうふうにお踏みになったわけですね。二兆一千億の中に国民年金の占める割合は二千五百億円、こういうふうに解釈してよろしゅうございますね。
  103. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 二兆一千億の内訳を申し上げておるわけではございませんで、年金につきまして、現在並びにその間における改正一つの目標というものを考えると幾らくらいの金額になるかということを申し上げたわけでございまして、二兆一千億の積み上げの内訳ではございませんので御了承願いたいと思います。
  104. 小林進

    ○小林委員 昭和四十三年は中期経済計画の仕上げの年ですね。そのときになると、社会保障費として総額が大体二兆一千億になるのでしょう。その総額の中で年金関係は一体どのくらいに膨張するかというと、二千五百億になるというのでしょう。そうでありましょう。そうすると、二兆一千億の中で占める年金額は二千五百億、こういうことばで表現して無理がありますか。社会保障費の総額は二兆一千億円、その中で年金関係は二千五百億円、そうじゃないのですか。それは違いますか。
  105. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 同じこととは思いますが、二兆一千億の内訳でないということを申し上げただけでございまして、現実に昭和四十三年の目標年次における振替所得の総額が二兆一千億というように中期計画ではわかっておりまして、年金関係はその中で二千五百億くらい占めることになるという見込みでございます。
  106. 小林進

    ○小林委員 それなら言わんとするところは同じだな、大体同じことを繰り返しておる。  それではお尋ねしますけれでも、そういう分数でいって現在はどんなものですか。
  107. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 昭和四十年度におきまして約千二百五十億くらいでございます。
  108. 小林進

    ○小林委員 それはあなた年金額だけでしょう。社会保障費全額はどのくらいになっておりますか。一兆円出ておりますか。
  109. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 いま昭和四十年度の手持ちはございませんが、昭和三十八年度におきまして約九千八百億、それが四十三年で二兆一千百億、こういうことになるのでございます。
  110. 小林進

    ○小林委員 昭和二十八年度とおっしゃいました、いささか古いが、その三十八年度の国民の総所得は幾らでありましたか。
  111. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 十八兆一千億だと思います。
  112. 小林進

    ○小林委員 私も忘れましたが、三十八年度は十八兆一千億ですか、あるいは間違いないかもしれません。そうすると、十八兆一千億の中で占める社会保障費、この基準のとり方はいろいろILOその他国際的に違っておりますけれども、日本的なとり方によると、先ほどあなたは九千八百億とおっしゃいましたね。十八兆一千億円の国民所得の中に占める社会保障費の支出が九千八百億円というと、一体所得の何%になりますか。これはちょっとそこで計算していただきたいのです。
  113. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 昭和三十八年当時におきまして、国民所得に対するいま申し上げました数字の比率は、五・四%になっております。
  114. 小林進

    ○小林委員 十八兆一千億対九千八百億円は、五・四%になりますか。どうも私はパーセントを出すのは得意じゃありませんものですから……。九千八百億円は五・四%ですか、これは国際的な基準においてはどういうものでしょうか。世界的に見て、これは一体何位くらいになるのですか。日本の国民の総所得、総生産内における社会保障費というものの比率は五・四%、スズメの涙と言いたいけれども、スズメも悲しくて涙も出さないくらいのささやかなものであります。これは一体国際的基準において比較したらどんなものですか。社会保障社会保障と口を開けばうまいことをおっしゃるけれども、これは欧米先進国の中でも西独あたりは、たしか国民総所得の二〇%以上出ております。大体社会保障などを口にする国は、みんな国民の総所得の一割以上出ておるはずだ。日本は悲しいかな五・四%だ。これは一体世界の比率の中でどの国の程度なのか。グアテマラ程度なのか、いま問題を起こしているドミニカ程度なのか。どのくらいの国の社会保障制度に匹敵するのか。ちょっと序列、順序をお聞かせ願いたいと思うのであります。コンゴよりは少しいいかもしれませんけれども、どの程度のものでございますか。
  115. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 世界の百幾つの国の中の順位の表というものを実は手元に持っておりませんが、ただいま先生も言われましたように、西ヨーロッパの帝国は比較的パーセントが高いわけでございます。これはいろいろ理由があるわけでございますが、それは別といたしまして、西ヨーロッパ諸国から見ると非常に低いわけでございます。ただ、アメリカが比較的低くて七・三%になっております。それに対しまして五・四%。その他の弱小国との比較は手元にございませんので、ごかんべん願いたいと思います。
  116. 小林進

    ○小林委員 こういうようなことはやはり社会保障を論ずる場合の基本的なわれわれの態度ですから、こういうデータはきちっとお持ちになっていなくてはならぬ。これは年金局、あなただけの問題ではございません。厚生省全般としてちゃんと持っていなければならぬ。これは官房の仕事です。官房長いますか。——官房長いない。ふまじめなことだ。どこかに遊びに行ったんだな。天気がよいと官房長は遊びに行くが、こういうときに来てこういう資料を用意しておかなければならぬ。この資料は後日、この国会が終わらないうちに提出していただきます。わが国社会保障が世界の先進国の中でどのくらいのランクになるかということは重大な問題でありますから、ひとつ正確なデータを出していただきたい。それが出てこない以上はこういう年金法なんか通すわけにいきません。  その五・四%、九千八百億円というわずかな社会保障費の中で——公的扶助の問題や失業保険の問題は別にいたしまして、社会保障の二本の柱といえば医療保障と所得保障だ。その中でやはりILOの百二号の国際的水準まで医療保障自体がまだいっていない。でこぼこがありますからいっていないけれども、しかしわが日本の医療保障はそれなりに進歩している。おそらく九千八百億の中の半分以上は医療費が占めているだろう。あなたがおっしゃる四十三年度の仕上げの年にいって、二兆一千億円の社会保障費の中でわずかに一割強じゃないですか、二千五百億になるというのですから。これが社会保障の二本の柱といわれるものの一本の柱なんです。その中期経済計画が完成した暁においても、わずか一割強の所得保障しか出さない。そんなへんぱな、そんな片寄った、花恥ずかしいような社会保障が一体どこの国にありますか。われわれは貧しきをいとうものではない。ひとしからざるを憂う。同じ社会保障でも二兆一千億しか金が出せないというならば、やはり二本の柱として、そのうちの半分の一兆円は医療保障、あとの一兆円は所得保障、こういうバランスのとれた所得保障の組み方ならばまだわれわれは了承できますよ。それを何ですか、一割強しか出さない。中期経済計画なるものでこの社会保障をつくり上げる作業には厚生大臣や各省の大臣、局長が参画されたものと私は思うけれども、こんなへんぱな貧しい作業をよくのめのめとあなた方はおきめになったものだ、恥ずかしくないかと私は思っている。どうですか、文句ありますか。
  117. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 これは先生は十分何もかも御承知の上で言っておられると思うのでありますが、申し上げるまでもなく、わが国年金制度ができましてから日が浅いものでございますから、したがいまして西ヨーロッパ諸国は年金制度は歴史が長いために大体人口の一割というのが老齢年金の受給者になっております。わが国におきましては老齢年金の発生がまだ将来の問題でございまして、この間御審議願いました一万円年金を現時点において受給者がフルに受けたと考えますと、一万円年金は金額で約三兆円の支出になるわけでございますが、そういった時期が将来の問題であるという点が第一点と、第二点は、これも先生御承知のように、児童手当という制度が日本にはございませんので、その意味におきまして所得保障の面で全体に占めるウエートが西ヨーロッパ諸国と比べて低い結果に相なっていると理解いたしております。
  118. 小林進

    ○小林委員 いま言われた歴史が新しいからものがうまくいかないなどという理屈は私はちょうだいしかねるのです。政治というものはその国の実力に沿うて形がとれなくちゃならぬのであって、いまの日本が世界の各国、中進国や後進国より国が貧しいからそのために作業がうまくいかないならともかく、口を開けば何ですか、総理大臣以下各省大臣、もはや日本の経済力は世界の中で五番だの三番だの、実力においてはアジア一だのこれくらいすばらしい経済の成長をした国はないだの、何ですか。そういうようなことを言わなければよい。大きな口をはたいておいて、その中に生活している国民の生活といえば、社会保障などというものはグアテマラやメキシコ以下などという恥ずかしい、こういう不均衡な形を示しているから私はいかぬと思う。それは歴史の問題ではありません。歴史の新しい古いの問題ではありません。もしあなたの理屈が、歴史が新しいからだめだというなら、戦争に負けて敗戦から立ち上がった日本の歴史が一番短い。その一番短い、日本の政府のことばを借りて言えば、世界の三番だ、五番だ。戦争に勝ったイギリスの歴史はどうなんだ、何百年も続いているじゃないですか。戦争に関係のない古い国は幾らもあるが、経済の成長率においては日本は負けておらない。歴史の長短の問題じゃないの。だあなた方は自分たちの都合の悪いときになると、歴史が新しいだのと言うが、そういうような理屈はいただきかねる。児童手当だってそのとおりです。確かに児童手当がないから社会保障は貧弱だ。それはILO百二号の児童手当がないことは自慢になりませんよ。やる実力は日本はある。あるけれども、残念ながら保守党にいう、自民党という政党に含まれている各省大臣以下が頑迷固陋にして、まだ時代の動きを知らず、こういうことでまだやらぬだけの問題である。問題は意欲の問題です。歴史の問題ではございません。やるかやらないかというその人たちの心がまえの問題です。その心がまえを忘れて、歴史にその原因を籍口するなどというととは耳をおおうて鈴を盗むたぐいであって、とうていわれわれはそういう理屈を了承するわけにいきません。ともかくそういう意味において午前中の話も聞いておりました。四十一年度から改正の時期であるから、そこでひとつ抜本的な改正をしたいなどというようなお話があったが、これもいただきかねる。いま四十年、四十一年といえば歳月人を待たず、直ちに四十一年が来るのですから、もし四十一年に抜本的な改正をしたいのなら、いまのうちから心がまえができておらなければならない。何にもできていないじゃありませんか。実に不まじめきわまると思うのです。こういう不まじめきわまる法案を出して、われわれに貴重な時間をさいて審議をせよ、質問をせよなど実におこがましいやり方だと思う。  そこでいま一つ申し上げると、三十七年に社会保障制度審議会、大内委員会がいわゆる総合調整に関する答申の勧告をしたわけだ。その問題を一体国民年金法改正は正しく受けておりますか。
  119. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 先般来御質問がありまして、また御答弁を申し上げておりますとおり、国民年金の根本的な抜本的な改正につきましては、御指摘のように昭和三十七年の制度審議会の答申、勧告の線もあるわけでございます。それからまた厚生年金改正に件いましての改善という問題も考えなければいけないわけでありますが、こういった根本的な改正につきましては、次に国民年金の拠出制を中心として改正する際においてできるだけ解決していきたいという趣旨でございまして、今回御提案申し上げております福祉年金の改善につきましては、その線に沿った改正であるという大きな意味におけるそういう趣旨のものではございません。
  120. 小林進

    ○小林委員 来年の改正のときに籍口して何とか急場をのがれたいというこそくえんえんたる答弁をなさる気持ちは推しはかって余りあるものがあるから、それはそれだけにしておくとして、またもとの中期経済計画に戻りますけれども、四十三年になれば——これはきのうの大局の質問が出ましたか。出ておれば私はあまり詳しく申しませんが、福祉年金は二倍にする。振り出しの二倍、千円、千五百円のときの二倍にする。中期経済計画ができ上がった。二倍といえば少なくとも年齢を据え置くとすれば、七十歳になれば老齢福祉年金は二千円、障害福祉年金は三千円、それから母子福祉年金は同じく二千円、これが二倍になった額だ。これを四十三年には必ず実行される自信がありますか。おやりになりますか。大臣、こういう中期経済計画ができ上がった。内閣でおつくりになった計画には、四十三年には福祉年金は二倍にします。二倍にするということは金額は見積もれば三千円、二千円にするというのでしょう。間違いありませんか。そのときには大臣をやっていないからいま何を言ってもいいというような無責任な放言は言わないでもらいたい。
  121. 神田博

    神田国務大臣 中期経済計画の四十三年の前くらいにひとつそれだけやりたいという固い決心でございます。
  122. 小林進

    ○小林委員 これは中期経済計画の決心の表明ではないのでありまして、これはあくまでもそういたしますという計画なんでありますから、その計画は正しく実行されなくちゃいけない。だから、それを若干でも実行する気持ちがないというので、総理大臣はそれを幾らか手直しをしたらどうか、こういうふうな指令を企画庁長官ですか、四、五日前にお出しになっているのであります。ですから決意や決心の問題に関するわけじゃないのでありますから、少なくとも来年度はこの国民年金法改正をお出しにとなるきには、この中期計画できちんと四十三年には倍になるという具体的なものがなければいけない。あなたはさっきも言ったけれども、四十三年にはおられないかわからぬけれども、来年はそういう答弁じゃ間に合わない。来年はきちんと、四十三年には二倍になるような法律改正をやらなければならないと思うのですが、大臣大大夫ですか。
  123. 神田博

    神田国務大臣 そういう目途でやっているという決意を申し上げたわけでありまして、これは自民党内閣の持続性から考えて、どなたが厚生大臣であってもできる、私はこういう意味で申し上げております。  それからもう一つ、総理が中期経済計画の改定を経企庁長官に示唆したということは、いま小林さんのお話を聞きますと、中期計画の縮小をするようなことをおっしゃったように聞こえたのですが、全体が違うのではないかと思っております。
  124. 小林進

    ○小林委員 私は縮小というようなことは言わない。そういう悪意の推定をして答えてはいけない。日本の法律のたてまえもすべてものごとは善意で成り立つというのが法の構成の根本であります。あなたはそれを悪意の推定をしてはいかぬ。  それは別にいたしまして、いま一つ。これはいろいろの問題があるけれども、こういう話が出ておるから、私は自分でわからぬからお聞きする。たとえて言えば、小林進が七十歳になって、——これは拠出年金の場合でもいい、六十歳になったとする。私は無収入で子供が二人いるが、長男のほうはちゃんとりっぱに生活している。所得制限の七十万円以上ある。けれどもおやじと仲が悪い。娘は嫁に行った。御亭主は厚生省の課長さん程度くらいにいって、りっぱな収入があるけれども、その娘のところへおやじが寄生をした。そうしてこのおやじが高年に達した。おやじの扶養義務はせがれが持っておるのだけれども、扶養義務のない娘のところへ行った。そうすると、娘の亭主がいかに収入があろうとも、娘は扶養義務はない。そのときに一体おやじは福祉年金をもらえるかどうかということです。それはもちろんむすこのところへ行けば、むすこは年の収入が百万以上あるから、これは所得制限でもらえないけれども、むすこのところへ行かないで、娘の嫁入り先へ行ったときに、一体今日のあなた方の年金法の中でどうなるかということです。具体的な質問ですが、これはどうなりますか。
  125. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 いまの設例の問題でございますが、拠出年金はもちろんそういうことは制限はございませんから、それは別問題でございます。拠出年金の場合は、そういった所得制限はございません。本人が拠出したものに対してもらうわけでございますから、これは関係ございません。福祉年金につきましては、お嬢さんと御主人との関係はありませんから、扶養義務者にならぬわけでございますから、その意味におきまして、もらえるはずでございます。
  126. 小林進

    ○小林委員 もらえるでしょう。これが問題なんだ。そうすると、一つの脱法行為ですね。やはり七十歳になって年金をもらいたいときには、自分の扶養義務者であるせがれのところへ行けば年金はもらえないから、身はせがれのところにいようとも、寄留だけは娘のところにいることにすれば年金はもらえる。ところがいま一つ、そういう場合に今度は健康保険はどうなるか、このむこ殿は扶養義務者ではないけれども、健康保険に対しては、自分の妻のおとうさんが自分の家族に同居していれば、同居人として、これは健康保険の引き受け者になりますから、健康保険の加入者になるわけだ。だから、この老人はむこのおかげで健康保険には加入できる、年金はもらえるという、実にめでたしめでたしというかっこうになる。これはよけいもらうんだからいいだろけれども、これが老齢者の福祉年金の運用法としては公平じゃないじゃないか、片一方は所得制限を受けて、七十歳になっても八十歳になっても老人年金をもらえない老人がいま四十万も五十万もいるのに、むすこは課長様以上で、あんた方よりえらかったということならば、娘のところへ行って年金をもらって暮らしておる。七十歳以上の老人の中からこういう形ができるということは法律上不公平ではありませんか。不公平だとお考えになりませんか。差しつかえないと言うなら、私は太鼓を持っていって皆に教えますよ。所得制限を受けている七十歳以上の老人にやめなさい、離れて娘の嫁入り先へ行って年金をもらいなさいと教えますよ。こういう不備な年金法を通すのはやめなさいと言うのです。どうですか、よろしゅうございますか。
  127. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 年金制度でなしに、生活保護等もございますけれども、そういったただいまあげられましたケースという場合も考えられますが、要するに世帯分離といったようなことも現在可能なわけでございまして、世帯分離をすれば、独立の生計者となって、そういう形において所得制限のあります際には、それで判定をするということが可能なわけでございます。そういうケースは確かにバランスからいいまして、所得制限というものがあるために、常識的に言うとおかしいじゃないかというケースも起こり得るわけでございますけれども、その基本としての世帯分離というものが容易にできるといった現状でございますし、その点のところはある程度やむを得ないじゃないか、かように考えております。
  128. 小林進

    ○小林委員 私は、きょうはほかの質問をする目的で、年金はひとつこれは羊頭狗肉の策で、目的はここにあるのではないから、きょうはこれくらいにします。これ以上追及すると、あなたも苦しくなって、いよいよやけのやんぱちの答弁をしてくるだろうし、そこまで追い詰めるのは感心した話ではないから、これくらいにして解除いたしますけれども、いずれにしてもこういうことはよくないことだ。よくない根本はやはり所得制限という問題だ。これはあなた方もこの法案をおつくりになるときに相当研究されたと思うけれども、この所得制限というものは、少なくとも老齢福祉年金に関する限り、ぼくはおやめになったらどうかと思っているのだ。同じ国家のために尽くしてきて、七十になった、やれやれと思うときに、わずかな金でも国からちょうだいをするという、これはわれわれのようなずうずうしい者は別として、素朴な国民の中には、やはりお国はありがたいものだ、こうやってお国からお金もちょうだいする。それで老人たちは喜んでいる。長生きしていてよかったというときに、お隣のじいさんはどうだ、おれはもらわぬ。実に老人間で相嫉妬したり、悲しんだりする、非常に好ましからざる感情問題を起こしておる。わずかな金じゃないですか。人生を終えた七十歳以上の老人たちに、そんな一カ月千円や千五百円のわずかな涙ほどの金で差別をつけて、喜びと悲しみをつくったところで、りっぱな行政と言われますか。これは八木さんも言ったことだから、私が同じことを操り返して何回も言うのは感心しませんから言いませんが、所得制限をおやりになるところから、先ほどから言うような、そういうばかな事例も生まれてくるのだから、この際おやめになったらどうかという私は意見なんです。ただしかし一方には、あなたの言われるように、所得制限はそのままにして、むしろ年齢を下げて、七十歳を六十五歳にしたほうが効果的ではないかという意見もあるようだ。年齢を下げるのが先だ、所得制限をするのはあとだとか、七十歳をそのままにして、むしろ所得制限を先にすべきであるという意見と、ちまたには二つの意見が相交錯してあるようだけれども、皆さん方どれをおとりになりますか。私はやはり所得制限をおやめになるべきだと思うが、大臣、 いかがですか。厚生大臣、あなたも世間にいろいろ問題を投げ出して、相当世間をおわかせになりました。あなたの行政の中には功罪半相ばしている。しかしこの中で、いま所得制限を思い切っておやめになって、七十歳以上の老人が婦人たると男たると問わず、みなお国のお恵みに浴して老人福祉年金をもらえるとなったら、あなたの名声はいままでの罪を消して余りあるものがありますよ。さすがに神田さんはえらい、こういうことで非常に喜ぶことが大きい。どうですか、この所得制限をおやめになる気持ちはありませんか。これをどうぞひとつお聞かせを願いたい。
  129. 神田博

    神田国務大臣 いま老齢年金に対する所得制限の問題でございますが、私も小林さんと実は同感なんです。小林さんは、おれはずうずうしいと言うが、私はずうずうしくありませんが、全く気持ちは同感です。しかしいまやめると、こうおっしゃいましたが、御承知のように、御審議を願っておるわけでございまして、政府提案したのを朝令暮改で、私がどうこう申し上げる筋合いには参らぬと思います。考え方は同じだということをはっきり申し上げまして、お答えにしていただきたいと思います。
  130. 小林進

    ○小林委員 それでは、来年の改正あたりにはこれを廃止される方向に出てまいりますか。来年はいかがですか、本改正のときには。
  131. 神田博

    神田国務大臣 十分検討いたして善処いたしたいと思います。
  132. 小林進

    ○小林委員 そこでお伺いいたしますが、ことしの所得制限は五人家族で七十一万六千円。これはいわゆる本人を入れれば六人ですな。本人を入れて六人の家族で七十一万六千円の所得制限だ。この所得制限なんかも、この物価高の悪政の世の中に、六人家族で七十一万円以上あったらもはや福祉年金をもらえないなどというものは、私は、所得制限を認めるにしても何とも残酷非道ではないか、こう思わざるを得ないのです、そりでしょう。六人家族で一年間に七十一万円だ。十二カ月で七十一万六千円ですから、十二カ月で割ったら、一カ月幾らになりますか。一カ月六万円にもならないのです。六人家族で一カ月五万何ぼの収入があれば、もはやその人は所得制限にひっかかって、七十歳になっても、これはいわめる年金をもらえない。大臣、この物価高の世の中で六人家族で五万何ぼで人間として生きていけますか。一人一カ月の総生活費が一万円にもならない。六人で五万何ぼですから、もはや一人平均八千円か九千円の暮らししかできない。その家族に生活をしている老人は、七十歳になっても老齢年金をもらえない。所得制限をおやりになるにしても、あまりしかしこのワクはかた過ぎるんじゃないか。いま一体老齢福祉年金で七十歳以上の所得制限にひっかかってこの年金をもらえない人はどれくらいいますか。
  133. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 所得制限の緩和は、昨年度、標準世帯で六十五万円でございまして、それから約一割緩和したわけでございます。賃金の伸びの平均が約一割でございまして、それにあわせまして緩和したわけでございます。それじゃ、この所得制限でどれくらいひっかかっておるかという御質問でございますが、大体約三割弱の者がこの所得制限によって支給されない現状でございます。
  134. 小林進

    ○小林委員 いま老齢福祉年金をもらっている人たちが二百八十万人、そのうちの三割、驚くべき数字だ。八十四万人の老人がこの福祉年金の恩典に浴せないということは、これは重大な問題じゃありませんか。六人家族で一年間の所得七十一万六千円なんてこういう無理な数字は、それをおきめになるならせめて百五十万とか二百万円の所得制限ならいいけれども、七十一万円というこういう無理な所得制限をおやりになることが私は間違いだと思う。数字をお直しになる気持ちがありますか。厚生大臣、どうですか。   〔委員長退席、井村委員長代理着席
  135. 神田博

    神田国務大臣 私は、先ほどからお答え申し上げているのでございますが、所得制限をするということはそれ自体意味のないことではございませんが、老齢年金等に限って——七十歳以上になるということは、これは古来まれなりということで、いわゆる古稀に達した方でございまして、なるほど人口の老齢化等もございますが、やはり老人になっておれば、老人としてのからだの保養もしなければならぬ境遇に置かれている方でございます。そうして将来もそう楽しみが長いとはいえない方が相当私はおありだと思う。そういう方をいまのような七十一万円くらいで所得制限をするというようなことは、これは私自身としては好ましくない。しかし今度は大改正ではございませんで、いわゆる厚生年金改正に準じた改正でございますので、それで、来年度の大改正にはこれをひとつ根本的に検討いたしたい、こういうことを先ほどからお答え申し上げておるわけでございます。
  136. 小林進

    ○小林委員 私どもも帰りますと、私はどうして年金がもらえないのだろうか、どうして私にこないのだろうかといって、あの老人連中が、つえをついたり何かして方々から来ます。説明するのにも困るのですが、その説明の材料をひとつちょうだいしたいと思うのだけれども、いまも言うように、六人世帯でいわゆる扶養者の世帯主の収入が七十一万六千円、それで、四人の場合幾ら、三人の場合、二人の場合というその数字がありましたらちょっとお聞かせ願いたい。
  137. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 扶養人員がゼロ人、すなわち七十歳以上の老人と収入のあるむすこさん、こういった場合が一番少ないわけでざごいます。それが四十三万円が限度になっております。それからあと、その御本人とその義務者以外の扶養人員が一人ふえるごとに、一人の場合には五十三万八千円、それから二人の場合には五十八万三千円、それから三人の場合は六十二万七千円、四人の場合は六十七万二千円、それから五人が七十一万六千円になっています。
  138. 小林進

    ○小林委員 わかりました。こういうところにもこの法案の大きな弱点があるということをひとつ申し上げておきたいと思うのでございます。  次に、これも実にちゃちな質問で申しわけないのでありますけれども、大体国民年金の該当者というものは農民、漁民、中小企業者ということになりまするが、この法律が制定せられましてから、どうもだいぶ変遷してきたのであります。そこで、現在払っている百円、百五十円というこの保険料に対して、一体高いとお考えになっているのか安いとお考えになっているのか、まことに愚なる質問で申しわけありませんけれども厚生当局のお考えをひとつお聞かせを願いたいと思う。
  139. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 政治的な感覚じゃなしに純事務的な見地からしか申し上げかねますが、現在の国民年金給付保険料の関連におきまして保険料というものを考えますと、これはいまの年金給付保険料は見合っておるわけでございます。そこで、それじゃ安いと考えておるかということになりますと、負担能力の問題になるわけでございます。この点につきましては国民年金だけで判断できない要素もあるわけでございます。やはり農家の所得その他小企業の従業員の所得から見まして、簡単に申し上げますれば、国民年金と国民健康保険と、両方の負担をあわせ考えてどうであるかという判断がほんとうは一番正しいわけでございますが、国民年金だけの立場から申し上げますれば、給付も安いのでございますが、保険料も高くない、かように考えております。
  140. 小林進

    ○小林委員 それではお尋ねいたしまするけれども、現在保険料が免除されているのはどれくらいありますか。法定免除と申請免除と区別されてどれくらいの数字になっておるか。
  141. 実本博次

    ○実本政府委員 被保険者の一割二分ばかりが保険料免除になっております。その実数は二百二十万であります。そのうち法定が六十六万、申請免除が百五十五万になっております。
  142. 小林進

    ○小林委員 大体国民年金は世帯別でいくのでしょうけれども、一戸平均二人強、三人まではいっていないようですな。そうすると、これを世帯別にしたらどのくらいになりますか。大体半数と見れば、百万世帯くらいが免除を受けているという推定が成り立つわけでありますが、いかがでございますか。
  143. 実本博次

    ○実本政府委員 いま世帯別にとったものがございませんが、大体先生のおっしゃるような数字になるかと思います。
  144. 小林進

    ○小林委員 私ども農村を歩いてみますると、年金に対してはまだ人は信頼をしていない。そんな四十年後に三千五百円もらう、夢みたいな話に対してあまり魅力がない。こうやって毎日毎日物価が値上がりしているのだから、この世の中に四十年後の三千五百円がどうなるかわからないことも原因しているのでしょうけれども、いまの苦しい生活の中で、何とかしてこの保険料を納めたくないという気持ちが圧倒的に多い。だから、いま申請免除が百五十有余万とおっしゃいますけれども、何とかこれをまけてもらいたいという気持ちは実に強い。あなた方はそういう気持ちを察知しておられますか。その意味においてこの定額制というものも将来は大いに改正をしていかなければならない。あらゆる社会保障費や税金その他の中に定額制というのは年金以外にないでしょう。百円、百五十円という定額でとる制度というものは、日本ではこれだけでしょう。そのほかに何かありますか。私は寡聞にして知らない。あとは所得割りだとか資産割りだとか家族割りだとか、いろいろそういう割合でとっているけれども、貧富にかかわらず——貧富といっては悪い。大体農村や漁村はいまはもう人生の底辺です。国民健康保険の加入者なんというものは、まずまずわが日本における人生の底辺です。金持ちだの貧乏人だのといっても、そう大きな差はない。差はないけれども、その中にもやはり高低はある。それを一律一体に百円と百五十円なのです。山本さんはさっきも、給付負担能力の問題から考えて安くないとおっしゃいましたけれども、農村や漁村へ行くとこれが安いと考えている人はいませんよ。まるでただとられると思っている。非常に高いと思っている。私はその意味において、先ほど出ましたけれども、制度審議会が答申をいたしましたね、やはり所得割り制度というものをこの際保険料については考えなければならぬじゃないかと考えます。私の結論はそこへいくのです。来年度の本改正においてあなた方やはりこのまま定額制でいかれるのか。定額制でいくならあなた方の結論では百円と百五十円では安いというのだから、来年は二百円と三百円にするのか、また五百円と三百円にするのか、きっと腹の中でまた上げるつもりでいるのではないか。山本さんは人の悪い人だ。あなたが一万円年金を出すときにも、一万円年金一万円年金と言って、保険料を千分の五十八まで上げることをひとつも言わないから、みな一万円をもらう点だけで喜んでいた。ふたをあけてみたら保険料が倍近くに上がっているじゃないか。それを千分の五十五に下げたけれども、千分の五十八を千分の五十五に下げる程度じゃこれは何にもならぬですよ。その前の千分の三十五を思い切り千分の五十五に上げたのだから。そういうことを言わないで一万円くれるような宣伝をするものだから、素朴な国民はだまされて、早く一万円年金をちょうだいするようになるようにわれわれのところにああいうはがきの通知なんかをよこしてわれわれを脅迫するようなことをやる。みんなあなた方が正しい宣伝をしないからこういうことになる。そういう意味において来年あたりもこの保険料を、あなたが年金局長をおやめになるかどうか知らないが、いられて改正するときには、きっと三千五百円を五千円くらいにするのじゃないか、少なくとも中期計画において倍にするというのだから、国民年金を比較したって八千円なり少なくとも七千円くらい以上に持っていかなければ厚年とつり合いがとれないでしょう。国民年金と厚年とのバランスをとるためには三千五百円を五千円ではだめでしょう。そこから入っていきましょう。来年度の計画は別にいたしましても、一体厚年とのつり合い上、来年の国民年金をどのくらいにおやりになるつもりですか。厚年とのバランスがとれるとお考えですか。厚年とのバランスばかりじゃございません。国民生活の向上進展も考えていかなければなりません。あなたは一体どれくらいを念頭に置かれるのか。あなたがお答えできないなら大臣にお聞きしましょう。  大臣はことしは厚年を一万円おやりになった。平均二万五千円の所得で二十年たてば一万円という厚年をおやりになった。国民年金は一体来年の改正においてどのくらいを大ざっぱに言って出していただくのでしょうか。
  145. 神田博

    神田国務大臣 まだ熟したわけではございませんが、厚年に準じてなおよくしたい、かように考えております。
  146. 小林進

    ○小林委員 そういう空々漠々たる御返答ではね。私は何も禅宗坊主の禅問答をしているわけじゃない、厚年には一万円という数字をお出しになったのだから、その一万円に比例して国民年金はどれくらいの金額にしたらバランスがとれるかということなのです。いまは三千五百円なんだけれども、片方はぐっと一万円になったのだから、国民年金だって厚年と同じように一万円まで持っていってバランスをおとりになるのか、厚年のほうの被用者と一般の国民とは違うから、二割引きぐらいにして八千円くらいにしようというのか、どの程度が適当であるかという数字をお示し願いたいということなんです。
  147. 神田博

    神田国務大臣 数字を申し上げれば御満足と思いますが、まだ数字までは固まっていないのです。ただ上げ幅といいますか、上げ率を、ひとつ厚年を見習って、これを基準として考えてみたい、できれば上回ってもみたい、こういう欲を持っている、こういうことでございます。
  148. 小林進

    ○小林委員 それは中期経済政策であなた方は厚年をおやりになった。厚年は三十六年から拠出をおやりになって最低十年だから、いよいよあなた方が支給されるといえば四十六年だ。中期経済計画では四十三年で、また違いがあるわけで、何でもふんだくる一方でまだ払うほうは関係はない。まず四十六年あたりからそろそろ支払いを開始しなければならないでしょう。そのときに一体どの程度厚年と比較して支払うのが至当か。中期経済計画は四十三年は倍と考えておる、倍というのは七千円、じゃ七千円と踏んでよろしいですか。来年の計画は国民年金拠出年金の支払い額は七千円と厚生省は考えておられる、こう踏んでいいですか。
  149. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 数学的には先ほど来大臣の申し上げますとおり固まっておりませんので、幾らにするということを確定的に申し上げるわけにはまいりませんが、先ほど大臣のおっしゃられましたとおりやはり一つには厚生年金改正というものを片方に見合いながら、それからまた一つには中期経済計画もございますが、制度審議会の四十五年の目標ということについての基本的な考え方もございますし、そういったものを総合いたしまして、負担とも見合って考えていかなければならないのじゃないか、かように考えるわけであります。
  150. 小林進

    ○小林委員 少なくとも、それほど数字を言うのがいやならば、いやだというのを水辺へ引っぱって行って水を飲ませるわけにいかぬからあきらめるとして、かりに倍として七千円以上とすればいまの百円、百五十円という数字が変わっていかなければいかぬ。そうでしょう。これも倍ですね。そうすると二百円、三百円、七千円の場合はあなた方はやはりこの保険料は大体倍の二百円、三百円という基本的な立場に立っておられるのかどうか。これはもう目前に迫っておる問題ですから伺っておきましょう。
  151. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 先ほど来の御議論もありますように、年金の目標額を幾らにするかという負担の問題にはね返るわけでございまして、そこでかりに倍にするというふうに言明申し上げるわけにいかないのは、はたしてどこまで負担能力があるかということのかね合いで考えなければなりませんし、そういたしますと、負担というものは保険料と国庫負担とこの二つでまかなわれるわけでございます。そういったかね合いを考えなければならないと思っておりまして、単純に保険料を倍にしますというふうに申し上げることができない事情があるのはそういう点でございます。
  152. 小林進

    ○小林委員 そこで、やはり質問がもとへ戻るのです。いまの百円、百五十円が高いか安いかという問題に戻るわけです。現在でも、申し上げますように農村、漁村なんかへ行くと、この百円、百五十円というものは払うのに非常に苦労しているというかっこうなんです。それを今度は来年度の改正に基づいてそれを倍にするあるいは三倍にするということになりますと、むしろ私はやはり保険体系というものがだんだん形の悪いものになっていく懸念があるから、この際制度審議会が三十七年度のあの答申、勧告の中に述べられるように、所得割りといういわゆる負担能力に応じて保険料を取るという他の一切のものに準ずる原則に改めてみたらどうかという、この問題を一体どうお考えになったかということなんです。どうお考えになりますか。
  153. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 この問題につきましては昨日も滝井先生から出た問題でございますが、私申し上げましたように所得比例という要素が非常に大事な問題だと思っております。ただ、この問題につきましては見解が二つございまして、一つは所得比例の年金額をそのまま本人に返るような所得比例付加保険給付といったようなものとの関連において考えてはという意見もございます。それからまた所得比例の保険料を徴収して、その全部でないにしても一部にいたしましても、それを財源として所得の再配分を行なう。どの限度まで行なうか。この二つの問題があるわけでございまして、理論的にはやはり先生のおっしゃられましたように負担能力の全般的な実情から見て所得再配分の面において所得比例の保険料を取るという議論があるわけでございまして、そういう点は十分検討いたしまして、やはり所得比例の保険料というものを真剣に検討してみたいと思っております。
  154. 小林進

    ○小林委員 まあひとつ真剣にお考えいただいて、これはあなた方が一番得意なんだから、定額部分と報酬比例部分なんというのは一番厚生省がお好きなところだから、あるいはまたそういうミックスした形でもどうかということもあとでひとつ御考慮いただきたいと思います。  同時に免除の問題なんかも、これは前の保険局長の小山さんとは一番激しくやったことでありますけれども、こういう長期の展望に立った年金などというものは間近にあるわけじゃない。医療費というのはすぐ出るものですが、年金なんというものは長期の展望だから、ひとついままけてもらいたいというやつは気持ちよくまけてやってくださいよ。うんとまけてくださいよ。あなたの責任は問いませんから。どうせその人たちがいよいよ年金をもらうときには、われわれ社会党が天下を取っているんだから、そのときには拠出制なんかとらないで、ちゃんと社会保障制度でただでくれる、そういうような世の中になっているんだから、だからそんな四十年も先のことを考えて無理して拠出の金を取るようなことはやめて、百円や百五十円でもほんとうに農民や漁民も参っているんだから、そういう人たちには気前よくまけてやってください。あとの責任はわれわれが負うんだから御安心願ってやってください。  まあそのほかにいろいろ質問したいこともあるけれども、ひとつきょうはこれくらいにしておきます。ただ、私はこのいまおあげになりました老齢福祉年金千三百円、障害年金が二千円、それから母子年金が一千五百円、こういう分け方も三十四年に実施された物価指数——ひとつ聞きますよ、物価指数もやりますか。ただ物価の値上がりに対してこの年金の値上げ比率がマッチしているかどうか。マッチいたしておりますか。この質問は出ましたか——それじゃ私はやりません。人が言ったことならやりませんが、私はマッチしていないと思っている。あなた方はみなつかみ勘定でやっていますよ。こう人間の生活の実態を守るのにつかみ勘定でやるなんというのは実に言語道断です。きょうのところは、年金問題はこれは終わったわけじゃないのですけれども、この程度にしておきまして、きょうは私の本論である国民年金に最も因果関係のある問題についてひとつお聞きしたいと思うのです。  それは国民生活に重大な影響のある人間の生命身体に影響する問題であるから、年金も同じでありますが、実は週刊誌に載ったクリーニング業者の「総理大臣様にモノ申す」——これは北九州市八幡区小嶺というところで九州化学ドライセンターを経営する平田好正さんが佐藤首相あてに出した手紙です。これはいわゆる洗たく屋の取り次ぎ店、クリーニングの取り次ぎ売というものをたくさん設けて、そして近代的な設備を設けて、それでクリーニング料金を半額以上に安くした。それに対して福岡県議会において九州化学の料金は適正でないというので規正命令を出すようなことをきめた、こういうようなことは非常に時代の進歩に逆転をした行政のあり方ではないか、総理大臣は一体どう考えるのか、こういうことを総理大臣に手紙でよこした。これはみんな国民年金関係あることなんです。そういたしましたら総理大臣からその返事が行った。四月二十日過ぎ「お手紙を拝見しました。よく検討するようにと厚生省に公文書で渡しましたので」こういう総理大臣の返事が届いた。結局あなたのところへその問題の処理が行ったわけでありまするけれども厚生大臣は総理から回ったこの書簡に対してどういう処置をおとりになったかお聞かせを願いたいと思うのであります。
  155. 神田博

    神田国務大臣 ただいま小林委員お尋ねの北九州ですか、例のクリーニング屋の紛争問題といいましょうか値引きの問題といいますか、総理あての手紙が総理から厚生省に回ってきておるようでございます。ただいま承知いたしました。伊部審議官もまだ見ていないようでございまして、その事実をいま確認いたしましたのですが、これはなかなか意見がございまして、手紙をたてに申し上げているのではありませんが、この問題はだいぶ前からそういういきさつがございまして、厚生省でいま検討している事項でございます。手紙の問題は総理から最近回ってまいり、いま初めて承知いたしたわけであります。だいぶ時間もたっておりますようでございますから、検討してひとつやりたいと思っておりますが、大体こういう特別料金については元来業界の自主的活動によって解決するということがたてまえになっておるようであります。われわれ行政当局としては決定に関与することは好ましいことではないというふうに考えておったわけでございますが、なかなかそれが自主的にうまくいかないということでありますれば、ひとつ指導いたしまして適当に落ちつかせてみたい、かように考えておるわけでございます。
  156. 小林進

    ○小林委員 大臣はあるいはこの問題を御認識になっておられるかどうか。私はいまの答弁では大臣は事態が急を告げておることを深く御認識になっていないのではないかと思います。このクリーニング店がこういう取り次ぎ店等を設けて、いわゆる正常なクリーニングの、既成の業者の生活を脅かしあるいは職業を奪っておるというような問題は、これは北九州だけの問題じゃない。これは数年前から起こっておる問題であります。そこで、この社会労働委員会でもしばしば論ぜられて、そうして昨年、三十九年六月三十日にも、この問題を含めて法律改正をしているのです。そうしてこういう取り次ぎ店もクリーニング業種としてやはり同一のクリーニング業法の適用を受けなければならないという、そこまで法律改正をしてきたのです。そうしてわれわれのほうではしばしば既成の業者を守らなければ中小企業のクリーニング業者が立っていかないじゃないか、こういうことをこの委員会で意思表示をしておる。意思表示をいたしまして法律改正をするとともに、こういうことをでき得べくんば行政の中において規制すべきであるということで、それも間接ではあるけれども厚生省にこの国会の意思を通達してあるわけです。だから、その意思を尊重いたしておりますから、それを受けて福岡の県議会は三十八年の夏、その九州化学の料金は適正でないというので規正命令を出しているのだけれども、その後いわゆる公正取引委員会だとかあるいは厚生省の出先機関等もどうも行政指導やものの判断がうまくいかないから、いま総理大臣質問をした平田好正等は、こういう法律で規制せられている取り次ぎ店を幾つもつくり上げて、三年前にそういう近代的といいますか新しいやり方をしたときにはわずか数人しかいなかった従業員が、今日では百六十人にもふえておるわけです。そうしてだんだんその工場を新築したり職場を広げたりして四月の末には福岡県の筑紫野町等にも新工場を完成して、そうして燎原の火のような勢いで既成業者の職場をみな奪いつつあったのです。こういうことがいいことか悪いことかということなんです。国会の中でわれわれがやれ中小企業の保護をどうするとかあるいは資金をどうするとか、組織をどうするとかということを一生懸命に論じているさなかに、こういう一番零細なクリーニング業者がみな荒らされていて職業を奪われていく。クリーニングなんというものはあまり仕事がふえるものじゃありませんからね。ワイシャツは二日に一度とか、冬服なら着かえるときに出すとか、出すのはきまっているんだから。それをこういうような形でやられる。それを厚生省が野放しにしている、通産省も野放しにしておる。これじゃ業者はとてもたまりませんよ。私はそれをお尋ねしておるのだけれども、どうもしかしこれを規制しているのはいわゆる環境衛生法とクリーニング業法ですね。この二つの法律で規制する以外にないのでありますが、あなた方はこの法律改正をわれわれがここでやっても、ちっともそれを善用するようにお仕向けにならないのがわれわれいかにも残念でたまらない。この問題、厚生省でまじめに真剣にやっているところは一体どの課ですか。
  157. 伊部英男

    ○伊部説明員 環境衛生課でございます。
  158. 小林進

    ○小林委員 環境衛生課長はいますか。——それでは、あなたは審議官だが、この問題の経緯を話してください。
  159. 伊部英男

    ○伊部説明員 ただいま小林先生から御指摘のございました福岡県のクリーニング業の従来の経緯を簡単に御説明申し上げますと、三十七年の六月ごろから、ただいまお話しのようなことで低料金の三業者ほどが営業を開始いたしまして、クリーニングの環境衛生組合から、いろいろ知事に対しまして強い勧告または規制命令の申し出があったわけでございます。その結果、福岡県におきまして、衛生部長名で三社に対して要望書を交付するとか、あるいは知事の勧告等が行なわれたのでありますが、依然問題が解決いたしませんので、三十八年の三月に、組合から規制命令の申し出書が提出されたわけでございます。この申し出書が厚生省に五月に進達をされまして、七月から中央環境衛生適正化審査会でこの問題の審議に当たったわけでございます。この間、環境衛生適正化審査会は業者の代表の方も多数入っておられまして、いろいろ御議論が多かったわけでございますが、三十九年の十月十七日、中央環境衛生適正化審査会から適正化法に基づく規正命令を出すことはやむを得ないものと認めるという御答申を得た次第でございますが、ただ、その際、ただいま大臣から御説明がございましたように、特例料金につきましては、元来業界の自主的活動によって解決すべきものである、したがって、行政当局がその決定に関与することは好ましいことではないので、省令公布に先立ち、重ねて自主的解決がはかられるよう業界指導を行なうことという補足意見がございました。これに基づきまして、現地関係官を派遣いたしまして、いわば業界の指導に当たったわけでございます。その結果、これらのいわゆるインとアウトの業者の間におきまして、問題を話し合いによって解決していく、それから特別料金のきめ方につきましては、ダンピングにわたらない範囲で原価プラス適正利潤といったような線できめるということに了解がついたのでございますが、ただ、なお具体的にその特例料金をどうするかという点につきましては、まだ両者間の調停あっせん中である、こういう状況でございます。
  160. 小林進

    ○小林委員 この問題は一つも解決していないのであります。そしてあなたたちがそういう規正命令を出すのがやむを得ないという判断をしながらも、自主的に解決するほうがいいなどと、もじもじしていられる間に一年たち、二年たち、歳月が過ぎているうちに、数人しかいなかったものが、百六十名もの多くの職員を擁し、雇い人を擁して、だんだん業者の生活を奪っていくという形になっておる。実に、いずこに一体行政ありやとわれわれは言いたくなる。こんなふうに、干渉するがごとくせざるがごとく、指導するがごとくせざるがごとく、そしてこの間にみんなヘビのなま殺しのように業者を殺していく。  通産省にお伺いをいたしますが、一体全国でクリーニング業者というものは何万軒ぐらいあるものでございますか。
  161. 影山衛司

    ○影山政府委員 私ども調査した限りでは、四万軒ぐらいあると思います。
  162. 小林進

    ○小林委員 厚生省は、クリーニング業者の数字はどのぐらいになっておりますか。
  163. 伊部英男

    ○伊部説明員 約三万八千軒と承知しております。
  164. 小林進

    ○小林委員 ここに業界誌がございますけれども、これによりますと三万六千といっておりますから、大体当たらずといえども遠からずだが、そのうちの九三%を占める三万三千五百人というものは全く資力の乏しい零細業者であると、これは彼らの業界誌みずからが称しているわけです。こういう零細なる業者が、新しい変わったクリーニングのやり方で、いままさに生活を奪われようとする累卵の危うきにあるわけです。こういう実態を、中小企業庁、御存じですか。通産省、御存じでありますか。通産省の認識を承っておきたい。
  165. 影山衛司

    ○影山政府委員 クリーニング業の近代化につきましては、厚生省のほうと相談いたしながら中小企業庁としても進めておるわけでございますが、御承知のように業種別振興法というのがございまして、それにクリーニング業を指定いたしまして、その結果に基づきまして近代化の方途が示されたわけでございます。その内容といたしましては、大体零細な企業につきましては、共同化とか協業化によって集まりまして、力を合わせて近代化をはかっていくという方向、それから個別の企業につきまして、近代化に乗り得るようなところは近代化のための資金を流していくというようなことで、近代化を前向きで進めていきたいというふうに考えておるのでございます。
  166. 小林進

    ○小林委員 中小企業のいわゆる共同化、あるいは近代化資金の貸し付け等の問題については、これはもういま始まったことじゃないのだ。こんなことはもう古い手なんだ。数年前からやられておる。しかし、そういう形の中で、いまクリーニング業界に新しい形のものが彼らの職業を奪いつつある。その新しい形のものは何かというと、第一番目に言えば——これは今日始まったことじゃないのです。これも数年前から始まっているけれども、第一はリネンサプライというやり方。大臣、リネンサプライというシステムを御存じでありますか、それから聞きましょう。大臣お知りにならなければお知りにならないで、私のほうで説明いたしますがね。——大臣はお知りにならない。いま三万八子の業者が生命を断たれようとする、その凶器の一つがこれなのに、その凶器を御存じないというのは、いかにも残念。その一つというのは、営業者自体が、シーツだとか、カバーだとか、まくらカバーだとか、その他の繊維製品を持っている。それをいわゆるバーだとか喫茶店あたりに貸し付けて、それで一定の期間ごとにこれを新しいクリーニングしたものと交換をしていき、クリーニング及び貸し付けの料金を受け取るという方法です。こういうものが巨額の資金を持っているのですよ。こういうことをして、クリーニング業者の商売を奪っているわけです。東洋紡だとか、東急、西武あたりがみなこれをやる。その他人資本が陸続と進出をいたしまして、製品を貸し付けるわけです。新しい洗たくしたものを貸し付けるというわけです。こういう形がクリーニング業者の根本から足元を、営業を脅かしている。  第二番目の方法、これはコイン・オペレーション・クリーニング。大臣、この方式を御存じでありますか。
  167. 神田博

    神田国務大臣 いまのシステム、洗たく機を貸すというようなふうに聞いております。
  168. 小林進

    ○小林委員 おっしゃいましたように、コイン・オペレーション・クリーニングというのは、店頭に洗たく機を置いておいて、かたい銅貨というか硬貨を入れてぐるぐると洗たくするシステムです。こういう機械、これは自動的に洗える方法だ。これは一貫目幾らというように目方で料金を取る。しかし、実際にはこの機械は自動的に洗えないのです。やはり店員というものがいて、お客さんからとってきて、そしてそれを洗ってやるというのがほとんどであって、料金も一枚幾らということで、数人のお客さんから取りながら同時に洗っているのだけれども、現在こういうような金を入れて自動的に機械が動くので自動洗たく機だといっているのだけれども、東京で三百軒、全国で約九百と推定せられるものがこういう洗たく機を擁して、そしていまでもどんどんそれがふえつつある。これがまた非常に低廉な料金でやって、洗たく業者の生命を奪っている。これが一つです。これは洗たく業者にとっては第二番目の凶器だ。  第三番目には、移動クリーニング施設というのがあります。大臣、移動クリーニング施設というのを御存じでありますか。——御存じありませんければ御説明申し上げますけれども、これはトラックの上に発電設備、それからクリーニングの設備等を搭載していて、自動車で団地回りをやるわけだ、集団的な人の住んでいるところに行って。そしてそこで注文を受けて、そこで洗って適当に返す。一切設備を持っている車で洗たく屋が移動していくわけです。これが現在川崎だとか百合ケ丘団地等で営業いたしておりますけれども、これも市価の半額ぐらいの低料金でやっているわけです。これでありますから、この団地あたりに入っているいままでのクリーニング業者というのは、全部お手上げです。全部商売が停止された形であります。このトラックに洗たく機を載せて発電機をつないでやるという移動設備の車を生産しているのが日産自動車です。それから三洋電機。あるいは巨石あたりが溶剤をつくっているというような形で、おそらく現在だけでも全国で一千台くらいあるのじゃないですか。これはどんどん日産あたりが、自動車でもうけようと思うから、一生懸命これをつくって売っているわけです。これが三番目の凶器。  第四番目のいわゆる業者の生命を奪う凶器は、先ほど申し上げましたクリーニングの取り次ぎ店というやつです。いわゆる従来のクリーニング業者というものは、主として外交的手腕ですね。洗たく屋がこんちはと各戸を回って注文をもらっているやつを、今度は地域別に取り次ぎ店というものを設けておいて、そこへ品物を出しておいてもらう、そこから集約して洗たくする、またそのうち洗ったものをその取り次ぎ店に置く、お客さんはそこから個々の自分のを持って帰る、いわゆる配達というものを節約した設備だな、そういう形にしておいて、これも料金を半額ぐらいにしてやっておるのでありますが、この取り次ぎ店が全国で五千ぐらいあるのではないかといわれているのであります。先ほど申し上げました北九州の例というのは、このケースです。こういうふうに、四つの新しいクリーニングに関する形のものができ上がって、これが三万八千の、いわゆるいままでの零細なるクリーニング業者の生活と商売を奪いつつあるわけです。こういう差し迫った問題に対して、一番の所管官庁たる厚生省において、まだ何ら手を打っていない。明快なる見解も表明されていない。これが問題なんです。私は大臣に一々そういう業界のあり方まであなたに勉強してもらいたいということを言うのじゃない、大臣はもっと大きな問題がたくさんありますから。けれども、やはりあなたの部下に的確な資料をとらして、こういうものを守るという姿勢をとってもらわなければ、大臣、あなたの責任は果たせません。  第一のコインオペレーションの設備の問題だけれども、コインオペレーション、いわゆる店頭に洗たくの機械を置いて、金を入れたら自動的にぐるぐる回るという、これは一体洗たくの機械であるか、あるいはこれはやはりクリーニング業法の第三条に基づくクリーニング所という解釈であるべきかということを、まずここでお尋ねをしたいのです。これが重大なポイントなんです。
  169. 伊部英男

    ○伊部説明員 ただいまおあげになりましたコインオペレーションは、消費者が直接その洗たく機を使用して、自分で、かつ自分の責任で洗たくをされる場合におきましては、それはクリーニング所ではないと考えられるわけですけれども、実際上は、店員が受け取って、その機械を店員が運転をして、きれいにした上で返すということであれば、それはクリーニング所と見るべきである、かように考えております。
  170. 小林進

    ○小林委員 これは大臣、重大な問題なんですよ。これがクリーニングの一つの機械である、自動的な洗たくの機械であるということになれば、お客さんは自分の好きな品物を置いて、ぐるぐる回して、出たものを持って帰るということで、それで済むのです。これは環境衛生法の管轄でもなければ、クリーニング業法の監督下でもないのです。けれども、これがやはりお客さんの多数のよごれたものをこの中にたたき込んでぐるぐる洗うのだから、これは衛生上非常に関係がある。そうでしょう。衛生上非常に関係があるから、これは機械とみなすわけにはいかぬ。少なくとも同一な機械の中に、いろいろな人の着用したよごれたもの、ばい菌のついているものから伝染病のものまで、継続してぐるぐる回して、そしてそれをされいにするのでありますから、これは一般のパチンコ屋とか金を入れればチューインガムが出てくるよらなそういう機械とは違って、やっぱり衛生上重大な関係があるから、これはいわゆるクリーニング業法にいうクリーニング所であるわけです。そういう場所であるから、環境衛生の見地からこれを取り締まり、監督をしなければならないという、この見地に立つべきかどうかということです。いまの伊部君の答弁によると、自動的に入れるのだからこれは機械だ、環境衛生法やクリーニング業法からは別個のものであるというふうな答弁であるがごとくに私は耳に入ったけれども、これはたいへんな重大な問題だ。そんなことであると、これはもうたいへんなことになってくる。いま一回ひとつ明快に答弁してもらって、答弁のしかたによっては、これはたいへんなことになる。   〔井村委員長代理退席委員長着席
  171. 伊部英男

    ○伊部説明員 クリーニング業法によりますと、クリーニング業とは、衣類その他の繊維製品または皮革製品を原型のまま洗たくをすること、そして洗たく物の処理または受け取り、引き渡しの場所がクリーニング所でございますので、消費者が直接機械を運転する限りにおきましては、クリーニング所とは認められないと思います。現行法の解釈上は、クリーニング所とはならないと思います。
  172. 小林進

    ○小林委員 これは現実は機械を回して洗たくをして金を取るんですよ。ただでやるのじゃない。お客さんの衣類を洗って金を取るのだから。これは一体それじゃクリーニング所とどれだけ違いがあるのですか。洗って金を取るのです。他人のものを1日分のものを洗うのじゃない、あらゆる多数人から継続的に品物を集めてきて機械の中に入れて洗って金を取る、どうして一体クリーニング業法と違うのですか。しかも、現実は機械だけじゃない。実際は一貫目とか二貫目とか貫数があるし、みんな五人とか六人のものを集約して中に入れて、しかもその中にはやはり人手がなくてはいけないから、出したり、金を取ったり、たたんだり、包んだりして処理をやっている。単なる自分の家の店頭に置いて自分のものだけ入れて自分が取るというのではない。ここらが実に微妙なところだけれども、いま一回お答えください。私が言うように、不特定多数人のものを継続的に機械の中に入れて、そうして洗たく料を取るのです。
  173. 伊部英男

    ○伊部説明員 営業者が消費者から洗たく物を受け取りまして、その営業者の責任において洗たくをするという場合におきましては、それはクリーニング所と見るべきだと思います。
  174. 小林進

    ○小林委員 そうすると、実際問題としてこういうことが出てきますよ。普通のいわゆる営業所と称するものは、不特定多数人から結果においては同じものをとって、そうして洗たくをしてその料金をもらう。こういう人たちは機械でない人間がそれは部分的には機械だが全面的な機械じゃない。こういう人たちは環境衛生法とかクリーニング業法によって伝染病その他の防止の上から法の規制を受けて、一切の監視、監督を受ける。一方はいわゆる機械だからといって、コインオペレーションだからといって、同じように不特定多数人の品物をとってぐるぐる回して金を取っているけれども、それは環境衛生法の規制を受けない、クリーニング業法の監視を受けない、不衛生であろうとそれはほったらかしてどうにもならないとなったら、実際の面においてはずいぶんこれは不公平な形が結果においてあらわれますよ。あなたの解釈でいけば不公平な形になる。それならクリーニング業法なんかやめなさい。同じ不特定多数人から洗たく物を集めて、そうしてあらゆる不衛生なことをしておきながら、それは営業ではない、クリーニング所ではない、監視、監督のほかだ、そんなことをやったらばい菌を振りまいて歩くようなものだ。何で一体環境衛生法の価値があるか。どうですか、あなたの解釈はそれで実情に即しておりますか。たいへんなことですよ、これは。
  175. 伊部英男

    ○伊部説明員 機械を消費者が直接利用するわけでございますから、利用している間は要するに自分のものを洗たくをするということでございます。そういう形態であればそれはクリーニング所ではない、こういうことでございます。したがって、店員が不特定多数の人からいろいろ洗たく物を受け取って機械を運転するようであればそれはクリーニング所である、こういうことになると思います。
  176. 小林進

    ○小林委員 やや少し進歩してきたようだけれども、いま一回言うと、個々の人、たとえば私がいわゆるコインオペレーションのところにいって私の洋服を中に入れて、金を払って洗って持ってくる。それはコインオペレーションを私自身が活用するということであって、それでいいかもしれませんけれども、そういうことが継続的に行なわれるわけだ。そうして払った金というものは、そのコインオペレーションの所有主かだれかが料金を取っていく。その料金は何だ、機械の貸し付け料か洗たく料か、一体どっちなんだ。私はその結果というものは、洗たく屋がお客さんの品物を預かって洗たくして、洗たくの料金をとったのと結果においては同じじゃないかと思うのです。ところが個々のお客さんが行って、洗たくして、洗たく料金をおさめたものはいわゆるクリーニング業法に該当しないということになれば、一体その衛生やその他の設備はどう取り締まるのかということだ。そうでしょう。私の言うことがわかりませんか。これに目を光らせなければたいへんです。環営法なんかやめたほうがいい。
  177. 伊部英男

    ○伊部説明員 営業者が洗たくの責任を負うかどうかということが結局きめ手だと思います。したがいまして、営業者が責任を負うような形でコインオペレーションが運用されておりますような場合におきましては、それはクリーニング所と認めるべきだと思います。したがいまして、そうじゃないケースといいますと、それは消費者が自分のものだけ自分で機械を運転する、こういう場合でございまて、そういうケースは従前もたとえば農協あるいは狭い地域で共同でやるというようなケースはあったわけでございますが、そういうケースであればそれはクリーニング所ではない、こう思います。
  178. 滝井義高

    ○滝井委員 委員長、ちょっと関連があります。いま店員がおって、そして代金やできた品物の受け渡しをやるというときはクリーニング所だ、しかし機械だけをコインを入れて使用するならば、不特定多数の人が次々に来て使用するならばそれはクリーニング所ではないんだ、こうおっしゃる。そうすると、その場合に、チブスあるいは赤痢等の患者の使ったものを持ってきてやってしまった、こういうときには何にも責任がないということになるわけだ。しかしその場合に、その機械を滝井義高が赤痢であって、滝井義高の使ったものを洗っちゃった。そしてそのあとに井村重雄がやってきて洗って伝染した。その場合には、機械の所有者が当然滝井義高が赤痢であったかチブスであったかということの認定をして、消毒をして次の人に貸さなければ、これは商売なんだからここに一つの違反が起こってくる。その場合に、なるほど伊部さんのほうの環境衛生はそれでいいかもしれないけれども、伝染病予防公衆衛生局長の立場からいうとたいへんなことになる。だからそこに若松君のほうはきちっとした監督が要ることになるわけです。これは現在健康保険で御存じのとおり、共同の洗たく屋が病院の洗たく物を洗たくする場合がある。その場合に、健康保険ではなるほどやってもよろしい、共同の洗たくをやらしてもいいんだ、しかしその場合には、病院がやらずに共同の洗たくで病院のシーツその他をやる場合には、病院は厳重にこれを監督してもらわなければ困りますということを健康保険でもきちっと言っているわけです。それと同じことが言えるわけです。何もかも使った、レプラであろうと何であろうと使ったものを持ってきて個人がどんどん洗って、——これを商売にしていかなければいいです。商売にしていないならば、しかも農協のよりに非常に限られたところに共同の施設として使わせるというなら、伝染病その他が発生したときにはすぐわかるわけです。ところが町のまん中やどこか団地に置いて、不特定多数の人がきて自由自在に使うということになるとそうはいかぬわけです。その町からの規制が必ずいくことになる。しかも営業をする所有者にその規制がいくことになる。だから、なるほどクリーニング業法からはあなたのような論理が出てくるかもしれないけれども、もう一つの伝染病予防の立場から今度は規制が出てくる、こういうことになるでしょう。
  179. 伊部英男

    ○伊部説明員 伝染病予防法にはいろいろな規定がございまして、伝染病毒に汚染されもしくは汚染の疑いある物件の取り扱い規定につきましてはいろいろ規定があるわけでございますが、その規定は当然適用されるわけでございます。
  180. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、当然その持っておる機械を他人に貸与して商売をしている人の責任になってくるわけです。少なくとも滝井義高というチブス患者の衣類をそれで洗たくをしてしまったら、それを確認をして次の人に貸さないと、そんなものを確認しないで野方図に貸しておったらたいへんなことになるのです。そうでしょう。どこにもそこの歯どめがかかっていない。やっぱりこの歯どめをかけておいてもらわぬと、これはあなたのほうの責任でないかもしれぬけれども若松君のほうの責任になる。したがって、共同責任で歯どめをかけてもらわなければならぬことになる。当然でしょう。これは何も小林さんがいま言われたコインオペレーションだけではなくて、移動してくるクリーナーカーについてもそういうことは言えるわけです。動いて回るのでどこにいるかわからないから監督がしにくいわけです。
  181. 伊部英男

    ○伊部説明員 したがいまして、伝染病にかかっておる方がコインオペレーションを利用すること自体が伝染病予防法では適当ではないことに相なるわけでございますが、万一かようなことが起これば、先生のおっしゃるような問題も出るかと思います。したがいまして、その点につきましてはなお関係局ともよく相談してみたいと思います。
  182. 小林進

    ○小林委員 滝井さんが伝染病ということだけに限って言われたから、あなた方は伝染病に籍口して逃げようとされるけれども、問題は伝染病だけではないのです。クリーニング業法では、クリーニング所というものは、洗たく機、脱水機がなくちゃいかぬとか、クリーニング機械を清潔に保つことが必要だとか、洗たくまたは仕上げを終わったものと仕上げを終わらないものを区分けしておかなければならないとか、洗たく物をその用途に応じ区分して処理しなければならぬとか、洗い場においては床が不浸透性の材料、コンクリート、タイル等、汚水が浸透しないもので築造され、適当な勾配と排水口が設けられていなければならぬとか、そのほかいろいろむずかしい条件が加えられているのですよ。その条件が加えられているのに、こういうコインオペレーションなんというものはいわゆるクリーニング所ではない、単なる機械だといえば、こういうクリーニング業者に要求しているすべての条件が全部パーになる。かってにどんなものを使っても、どんなきたない水でも、どんなところでもよろしい、かってに金を入れてぱっぱっと洗たくをやればいいということになったら、このクリーニング業法という法律が有名無実になってしまうのじゃないか。片一方では、クリーニング業法に従って清潔にしなさい、機械はりっぱにしておきなさい、あかをつけてはいけない、洗ったものと洗わないものは区別をして処理しなければならぬといいながら、コインオペレーションのほうは、まるで野放しです。そうなってきたら、どうして一体衛生が保たれるかと私は言いたいのだ。これはあなた方の国会における手練手管の答弁の問題ではない、重要な問題なんです。政務次官、私の質問の要旨がおわかりになりますか。政務次官はなかなか頭脳明晰にして判断力旺盛な方でありますから直ちにおわかりになると思いますけれども、こういうようなことです。単なるクリーニング業者の経済的な問題を守るということだけではなしに、環境衛生、公衆衛生の立場から衛生を守っていこうというものを全部こういう形で侵害されているから、私は非常に危険じゃないかと思う。だからここは行政の問題、法解釈の問題もありましょうけれども、ひとつ大きく政治的にもこの問題を高所からながめてりっぱな解決をしてもらわなければならぬ。コインオペレーションは別として、いま滝井さんの言われた移動カーの問題もそうです。大きなトラックに揮発油の機械から洗たく機まで積んで移動して歩くわけですからね。そして団地とか大きなアパートがあるところに行って、洗たく物を全部集めて街頭で洗たくするわけだ。ごみがあろうと、ハエが飛んでいようと何でもかまわない。そこで洗たくしてすぐ引き渡すということになりますから、こういうクリーニング業法や環境衛生法で要求している衛生とか設備云々の問題は全部除外されてしまうわけです。このクリーニングの移動カーの問題、移動クリーニング施設について、一体皆さんはこれが機械であるとお考えになるか、あるいはクリーニング所であるとお考えになって環衛法の適用営業所としてあくまで監視、監督を強めていかれる考えであるかということを私どもお尋ねしたいわけなんです。どうですか。
  183. 伊部英男

    ○伊部説明員 移動カーによりますクリーニングは、クリーニング業法によりますクリーニング所である、かように考えております。
  184. 小林進

    ○小林委員 これははなはだ明快になりました。そのとおりですよ。これはクリーニング業法に基づく営業所であるというふうにお考えいただかなければ、あなた方は衛生設備につきまして常時監督することができません。車のほうはじゃんじゃん移動するからそれは監督はできない。これは道路交通法の関係が出たり、火をたくから消防法に関係してきたり、たいへんな問題なんです。こんなものが需要の集中した地域に不定期に出没したら、これはたいへんです。ですから、これはどうしても厚生省が的確な規正命令なり行政指導なりをしていただいて、こういうふうなことはやめさせるようにしてもらわなければいけないと思います。これが二番目です。  時間がありませんから、三番目のクリーニングの取り次ぎ店の問題、これは御承知のとおり三十九年の法改正で第二条の第二項に入れました。「この法律で「営業者」とはクリーニング業を営む者(洗たくをしないで洗たく物の受取及び引渡しをすることを営業とする者を含む。)をいう。」いわゆる受け取ったり引き渡しをする取り次ぎ店もクリーニング業者であるというように法律改正をやりました。やったのだが、これには実はまだ不完全さがあるのです。いわゆる未処理の汚染したものを全部取り次ぎ店が引き受ける、洗たくしてすっかりでき上がって、いわゆる消毒のできたものも同じように取り次ぎ店が預かっている、ここに相当不衛生な問題が出てくるわけでありますから、単に取り次ぎ店はクリーニング営業所という形の名称だけではなしに、やはりクリーニング師、専門師というものを配置して、洗たくしたものと洗たくしないものを区分し、衛生的に処理していくということでなくちゃならぬと思う。そうでなければ、私はこんなことは無制限に許可すべきものじゃないと思うが、どうですか。あなた方はクリーニング営業所だけに厳格な規制を設けて、クリーニング師がいなくちゃいかぬ、有資格者がいなくちゃならぬといっておいて、取り次ぎ店だけはクリーニング師は要らない。たばこ屋のばあちゃんがたばこを売る片手間に洗たく物を、取り次いで、でき上がったものをお客さんに渡して金をもらっていればいいんだというような考え方でいられたら国民の衛生というものは保てない。この点は取り次ぎ店にもクリーニング師というものをちゃんと配置をしておくという事務責任を課すべきであると考えるが、どうですか。
  185. 伊部英男

    ○伊部説明員 ただいま御指摘のように、洗たくが終わりましたものとこれから洗たくしようとするものを混合することは衛生上からも非常に問題でございまして、クリーニング業法におきましても営業者の義務としてそういうことが規定してあるわけでございます。したがいまして、クリーニング所の中に受け取り及び引き渡しを行なういわゆる取り次ぎ店を加えられましたので、当然この規定が適用されるわけでございます。ただ、第四条におきましてクリーニング師の設置につきまして、クリーニング所には一人以上のクリーニング師を置かなければならないという規定があるのでございますけれども、この受け取り及び引き渡しのみを行なうものにつきましては、この法律の中で除外をいたしておりますので、義務としては課せられないということになります。
  186. 松澤雄藏

    松澤委員長 小林委員 一体あなた何時までやるつもりですか。
  187. 小林進

    ○小林委員 神田大臣もおいでになりませんから、もう少しで終わります。  そこで、私は言うけれども、取り次ぎ店にはクリーニング師を必要としないという除外例は、法律改正をしなければ画竜点睛を欠くのではないか。そうでしょう。いま実際のクリーニング屋でも共同施設を持つと、そこに品物を集めて、そこで大きく水洗いなんかして、仕上げは個々の店に持っていって、また共同施設のところへ持ち寄ってそこで品物を渡すという形になっているのだから、取り次ぎ店と共同施設を持つクリーニング業者というものは、これはもう区別のつかないぐらいに似通った形になっている。そうでしょう。ところが、共同施設を持っても、クリーニング屋ではちゃんとクリーニング師というものがいなければ営業をやってはいけない取り次ぎ店のほうにはクリーニング師は要らない、たばこ屋のばあさんでもいいということになれば、これはせっかく取り次ぎ店を営業所という名称に変えた趣旨が生きてこないじゃないか。だから、当然クリーニング師というものは、取り次ぎ店にも配置しなければ、完全にクリーニング業法の精神は生きてこない、環衛法の精神は生きてこないと私は考えるが、いかがでしょう。これは法律改正をしてもらわなければいけないと思う。私が質問すると、いつでも委員長は、もう時間だ、やめろ、やめろと言って言論の制限をされるから、せかされて問題のポイントをはっきりさすいとまがない。いとまがないが、この問題は重大な問題なんです。業者が生きるか死ぬかの問題だ。片一方は非常にむずかしい規制をやっておいて、それと同じ行動をしておるものを、取り次ぎ店という名目で、こっちはクリーニング師も要らない、何も要らないということになれば、同じような仕事をしながら片一方にはきつく、片一方にはゆるくという不公平な形が出てくるのではないか。だから、あくまでも環衛法の精神に基づいて、クリーニング業法というものはそういう伝染病や不潔なものを避けて、国民大衆の衛生を守るという見地に立っているというものであるならば、取り次ぎ店もいわゆる共同施設を持っている個々のクリーニング営業所と同じように、やっぱりクリーニング師というものを配置するというところまで法律改正をしていかなければだめだ。私の言うことが理解していただけますか、伊部さん。
  188. 伊部英男

    ○伊部説明員 クリーニング師のクリーニング師という資格は、洗たくの仕事をする上におきましていろいろな知識、経験が必要であるということで一つ資格が定められておるわけでございますが、そういった知識、経験が、この洗たく物の受け取り及び引き渡しのみを行なう場所にも必要かどうかという点は、若干問題があるように思うわけでございます。現行法が、洗たく物の受け取り及び引き渡しを行なうものとあくまでなっておりますので、この点はやむを得ないかと思うわけでございます。ただ、共同施設を持つ洗たく業者との比較均衡の御議論がございましたが、これはややへ理屈めきますけれども、もし共同施設を持つクリーニング業者が共同施設でだけ働くようになれば、その点は同じことになります。ただ、共同施設でも洗たくをし、自分の店でも洗たくをするということになれば、自分の店にもクリーニング師が要る、こういうことになりますが、もしかりに自分の店は単に受け取りのみ、引き渡しのみという形になれば、それはもうクリーニング師は共同施設だけでよろしい、こういうことになります。
  189. 小林進

    ○小林委員 私はそのあなたの解釈は逆にならなければうそだと思う。やはりクリーニングというものは、単なる技術だけじゃなくて、その洗たくをする技術とあわせて洗たくにからむ公衆衛生なり環境衛生なりを守るという専門的知識が必要なんです。だから、単に洗たくする場所だけではなしに、できた洗たく物、よごれた洗たく物を交互に取り扱うところにも、やはりそういう衛生を守るという専門師というものは絶対必要である。私はそういう考え方です。だから、将来、洗たく屋が集まって共同施設を設けて、その共同施設で洗たくしたものを洗たく店の個々の店からお客さんに配付したり引き渡したりする場合にも、やっぱりクリーニング師というものは必要である、その意味において取り次ぎ店にもクリーニング師というものは置かなければならない、私はこういう主張です。きょうのところは私は譲るわけにいきません。時間がありませんから、この問題はあなたのほうで研究してもらいましょう。  あと二問だけで終わりますけれども、次に、いまのクリーニングがそういうふうな移動クリーニングであろうがコインオペレーションであろうが、適当な人のところに機械を持ってきたり、それで監視、監督の届かぬままにぐるぐる洗たくをやられたのでは、不衛生であるはかりでなく、経済的にも、一万六千軒からの業者の生活は成り立たない。こういうものを守る意味においても、一方に移動的なクリーニング業者等のクリーニングの類似行為というものをひとつ厳重に衛生設備の上から監視すると同時に、経済面においてもクリーニング業者の生活を守るという見地から、やっぱりふろ屋のような適正配置というものをこの際思い切ってやって、そういうおかしなものが出ないように、洗たく屋もふえないようにして、きちっと身分を守ってやるという抜本的な政策が必要ではないかと考えますが、この点いかがでしょう。ふろ屋には適正配置がある。薬屋さんにも今度は法律に基づいて適正配置ができ上がる。クリーニング業などというものもそこまで守ってやらなければ成り立たぬと私は思うが、この問題、ひとつ距離の制限をすることはいかがでしょう。
  190. 伊部英男

    ○伊部説明員 ただいま先生御指摘のようにクリーニング業の近代化、合理化をはかりますことは非常に必要なことでございます。このため通産省のほうにもいろいろ御相談申し上げまして、たとえば昨年から中小企業近代化資金を入れていただいておりますし、そういうことを中核といたしまして、たとえば共同化でありますとか経営の近代化その他の努力もいたしたいと考えておるわけでございます。特に今年からは組合及び都道府県に対しまして若干の補助金を認めていただきましたので、これによりまして組合の自主的な改善活動を援助する、そして組合でたとえば経営の相談室を設けますとか、あるいは県におきましていわば経営の診断、指導に当たる人を置く、あるいは県におきまして講習会を開催する、そういったことを考えておるわけでございます。こういったことでクリーニング業自体の近代化、合理化を進めていくわけでございますが、その過程におきましていろいろ御指摘がごごいましたような問題が出てまいるわけでございますが、これにつきましては、昨年の改正によりまして、たとえば大企業者との間の組合協約といった問題も問題でございますし、そういった努力を重ねつつ、一方においてクリーニング業の近代化、合理化を急速に進めていくというような考え方でおるわけでございます。
  191. 小林進

    ○小林委員 いまおっしゃるように、近代化資金助成法とかあるいは近代化促進法等によって長期低利の融資をやって、何とかひとつ他の大きな産業の進出に対抗するように守ってやろうというそのお考えはありがたい。その点は通産省ともやっていただきたい。業者はやっぱり自己脱皮のために努力しております。何とか共同施設を持って大きく団結しようとしております。団結した協同組合なんかも全国的には七十ばかりでき上がっているはずです。だんだんやっているけれども、しかしいかに零細業者が集まってあなた方の金をもって近代化を促進しようとしても、いま申し上げるようにコインオペレーションだとか、移動カーだとか、あるいは取り次ぎ店の無制限な進出だとか、こういうのができてくれば全くあらしの前のともしびなんだ。それはできないから一方にやはりこういうものを正しく規制するという積極的なかまえを早急に打ち出していただかなければならぬ。これはぜひお願いしますよ。これはここで質問終わったわけじゃないのだから、ぜひひとつこういう無法なものの進出を——そして日産や何かはクリーニングの移動カーをつくってもうけようなどという、そういう資本家はすぐ厚生省に行く。やあ、伊部先生などと言って菓子折りを持って行くから、そういうものを厳重に警戒して、そういうものの手先にならないように、零細なるクリーニング業者を守るという崇高なる使命を持ってやっていただきたい。それが一つです。  それからいま一つは、長期低利のほうはあとに回して、ぜひお願いしたいことは、いわゆる先ほどおっしゃった協約だとか、あるいは特殊契約等の問題に対するあっせん、調停なんです。このあっせん、調停が、私どももこれを改正するときには国会関係したのだけれども、いまいかにも時代に適応してないのだ。先ほども言われたように、環境衛生適正化審査会というものが出ておって、その審査会がこれはひとつ適正命令を出すべきである、あるいはこういう的確な判断ができても、ところがそれがまた公正取引委員会に行かなくちゃならない。公正取引委員会に行くとまたそれだけもたもたしているものだから結局その調停、あっせんを願っても時間的に間に合わない。そこで環境衛生適正化審査会というもので結論が出たらそれを直ちに実行に移していただく。公正取引委員会というものをその上に設けて、そして屋上屋を重ねて時間をかせぐような形はやめてもらえないか。そうしなければとても業者は助かりません。たとえていえば、さっき言った北九州でもそうでしょう。三十八年に適正化審査会は適正命令を出すべきだという。それを公正取引委員会は今度は不当なダンピングじゃないかとかなんとかいうことを言って、それはあなた方が指導していったが、三十八年から四十年五月になるけれども、結局まだ解決しないうちに、だんだんだんだんこの無法なものが大きくなっていって、そして数人しかいないのが百六十人も定員をまして、なおかつ力を入れて総理大臣様なんて言って佐藤総理大臣に手紙をたたきつけることになれば、この地区における業者というものは二年間もほっぽり出されたら、そのまま真綿で首を締められているようなものですよ。だれも守ってくれないことになる。こういう大企業や、いわゆる独占の大きな力の進出を防いで、やはり調停やあっせんが効力を発生するというためには時間的にやはり間髪を入れずにやらなければならない。その意味において私は適正化審査会一つでよろしい、公取にそれを持っていく必要がないように法律改正をやっていただきたいと思います。どうですか。この問題はなおいろいろ申し上げたいことがあります。ありますがきょうは時間がないから、ひとつ副大臣、そういうわけで皆さんの意見をもっと聞きたい。これはやはり業者が生きるか死ぬかの境目ですから、ひとつ真剣に厚生省も考えてみてくれませんか。私ども党のほうでも、とても環衛法ではクリーニング業は間に合わない、特に洗濯業者だけを特別に守る——先ほど言いました適正距離の配置等の問題も含めて特別法をつくって守ってやらなければとてもだめじゃないかということまで党自身は思い詰めておるわけです。しかし、それを実現するのはなかなか時間がかかる。現実に業者は毎日毎日荒らされて職場を奪われておるのですから、この点をひとつお考えいただきたい。私は自分でクリーニングをやっておるわけではありません。クリーニング屋の番頭をやっておるわけでも何でもないが、やはりこういう零細業者を守る委員会は社労委員会しかない。中小企業庁がありますが、中小企業庁は完全に大企業の下請みたいなことをやっている。中小企業庁長官や次長をやりますと、早く本省に帰って大企業の仕事にお手伝いしたほうがいいという気持ちになっておりますから、社会党は通産省と中小企業庁の仕事を離して中小企業省を特別につくって中小企業省大臣をつくろう、こういう話なんだが、こういうことをやらなければとても中小企業というものを通産省で守ってくれるはずはありません。そこで社会労働委員会でやる以外にございませんから、副大臣ひとつ真剣に考えていただきたい。まだ意を尽くしませんけれども、政務次官の決意を聞いて——きょうは非常に不満足ですがこれでおいておきますから、御決意のほどを…。
  192. 徳永正利

    ○徳永政府委員 いろいろ御指摘になりました点が多々あるのであります。ひとりクリーニング業ばかりでなくて、ほかにもたとえば美容師、理容師等においても最近においていろいろな問題を起こしております。そういう問題につきまして積極的なかまえでまいりたいと思います。なお法律改正が必要とあれば、その点につきましてもいろいろ検討いたしたいと思います。
  193. 滝井義高

    ○滝井委員 いまの小林さんの質問に関連して、厚生省のほうから法律上の関係の資料を出してもらいたい。  それはクリーナーカーや食肉販売カーが汚職の問題に関連してクローズアップされたが、東京都で許可しようといておるのですね。あるいはしたのかもしれません。それからコイン・オペレーション・クリーニングの関係があります。そういうものと伝染病予防法との関係はどういうふうになるのかという厚生省のまとめた統一見解を出してもらいたい。  それから道路交通取締法、危険物の取締法、それからクリーニング業法とか理容師法、美容師法というような単独法、それからそれらを包括する環衛法、これらの法律関係と、いまのニューフェーのスクリーナーカーや食肉販売カー、こういうものとの法律上の関係はいまの立法上から検討したらどういうことになるのかという資料を、できれば至急にこの委員会に出してもらいたい。
  194. 松澤雄藏

    松澤委員長 なお先刻の小林委員の資料要求のありました件につきましては、厚生省網野企画室長より発言を求められておりますので、これを許します。
  195. 網野智

    ○網野説明員 先ほど、わが国社会保障給付の費用が国民所得に対してどの程度の割合を占めておるか、しかも国際的に見てどの程度の順位になっておるか、こういう御質問がありまして、私から答えさせていただきたいと思います。  社会保障給付費については、国際比較というものにつきましては一応ILOで出しておりますコスト・オブ・ソシアル・セキュリティーがございます。これは実は三年おきに出しておるわけでございます。ごく最近その資料が届きまして私どものところでいろいろその研究をやっておるわけでございますが、それによりますと、フランスは一九五七年が一七・九%、六〇年が一七・四%。西ドイツが五七年が二〇・〇%で六〇年が一九・九%。イタリアにつきましては五七年が一四・二%で六〇年が二五・二%。スエーデンについて見ますと、五七年が一二・五%で六〇年におきましては一三・六%。それからイギリスにつきまして申し上げますと、五十七年が一一・四%、これが六〇年におきまして一二・九%、わが国におきましては、五七年が五・五%でございまして、六〇年が五・六%、それから六三年につきまして見ますると、六・三%に実はふえておるわけでございます。それで一九五七年、前の先ほどの資料で申し上げますと、大体三十四カ国が対象になっておりまして、その中で大体社会保障給付率は二十六番目になっております。  それから、先ほど申しましたように、わが国はそのまま国民所得も伸びておりますが、社会保障も伸びておる。若干比率が上がっておりますが、その順位はたいして上がっておらないのじゃないかというような観測をしております。
  196. 小林進

    ○小林委員 了承いたしました。
  197. 松澤雄藏

  198. 八木一男

    八木(一)委員 午前中に引き続いて国民年金保険法の質問をいたしたいわけでございますが、いま同僚の小林委員、滝井委員から前半は国民年金、後半はおもにクリーニング業界の問題についての御質問を私も拝聴いたしておりました。クリーニング業について政府が対処していただかなければならぬ要件はたくさんございます。先ほど小林さんが言われたように、リネンサプライによる圧迫というようなことも当然ございますが、そういうような、大企業からの圧迫から保護するというような問題もあろうと思います。近代化について、たとえば融資の措置、減税の措置、そういうような点についても考えていかなければならぬと思います。また社会保険が適用されて、そこで労働者が集まるためにいろんなことを進めていかなければならない。社会保険適用に対して、零細な事業費の負担が困るようであれば、それについても考えていくというような問題もあろうと思いますし、いろいろな問題について、このように国民にとって大切な仕事をし、しかも非常にいま業界で苦しんでおられる状態に対して万全な対策を立てていただきたいと思うわけです。具体的な問題については、私も御質問また御要望申し上げたいことがたくさんございますけれども、本日は委員長とのお約束によりまして、国民年金法質問を続けることになっておりますので、他日に譲りまして、先ほど政務次官から小林委員に対して非常に積極的な御答弁をいただいておりますが、さらに一言私に対しても、そういう点について全面的に御努力を願うということと、大臣に御要旨をはっきり伝えられて、大臣ともども厚生省全体に御努力になるということの決意を御表明になっていただきたいと思うわけです。
  199. 徳永正利

    ○徳永政府委員 ただいまお説のようなことにつきましては、私も実は小林先生あるいは八木先生以上に深刻に考えております。私はクリーニング業でもございませんし、何でもございませんけれども地方に出ていって、ほんとうにそういう方々の身に触れておりますから、よく承知しております。一生懸命に積極的なかまえで進んでまいります。何といいましても、私もやがて去ることでございますが、役人はこれは続けてやるわけでございますから、私は厳重に責任を持って今後対処するように申し伝えておくつもりでございます。大臣につきましても、同様によく意のあるところをお伝え申し上げます。
  200. 八木一男

    八木(一)委員 国民年金法について、午前中はおもに拠出年金の問題について質問いたしました。一部福祉年金についても触れたわけでございますが、再び拠出年金にちょっと戻って質問をいたしたいと思います。  先ほど拠出年金制の制度の組み立てにおいて非常に間違った点があるという点について、これは政務次官にも大臣にも申し上げました。そういう点についてたくさんございますが、そのほかの点についてもたくさん方々にありますから、明らかな一つの例として申し上げてみたいと思います。  そこで、国民年金法の今度の改正案にはなはだりっぱなことが書いてありますのですが、この内容はしり抜けなんです。というのは大臣の読まれた中に、一ページ目の終わりに、「第二に、障害年金等の支給範囲の拡大についてでありますが、これには二点ございまして、第一点は、障害年金及び障害福祉年金の支給の対象となる障害範囲精神薄弱にまで拡大することにいたしたのであります。」この文章だけでいうと、いままで怠慢な政府としては非常にりっぱなことを、やったというふうになりますけれども、政務次官御研究かどうかわかりませんけれども、この中に一番肝心なものがしり抜けになっているわけです。障害年金のほうに精神薄弱を適用するということは、これはほんとうはすらりとそのまま適用していただけばいいのでありますけれども、そうなっていないようであります、表題にかかわらずこの内容は。というのはたとえば精神薄弱の人が二十になって拠出年金の年齢に達した、それで保険料を払った、そうなればいまの年金法でははっきり規則、細則は覚えておりませんが、約一年後には障害福祉年金でなしに、障害年金が支給されることになっておらないようです。この文章の印刷とは全然きっちり合っていないわけです。これは山本君のほうがよく御存じのわけでありますが、たとえば十九歳になった精神薄弱者が二十歳で拠出年金に入って保険料を払った。それで半年か一年の後に一級障害があれば四千二百円のものをもらえることになっておりますが、その場合はもらえない内容なんです、私の理解するところでは。ところが、ここではもらえるように解釈できるような実にりっぱな文章が宝田いてある。この内容と表題が違いますので、これは表題どおり内容があるならばいいのですが、そうでなさそうですから、そこのところを局長からひとつ明らかにしていただきたい。
  201. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 精薄者を国民年金対象にするようにというのは、当委員会におきましても昨年もやかましい問題でございまして、私ども検討しました結果、精薄者を国民年金対象にすることにいたしまして、問題はまず福祉年金でございますが、精神薄弱者につきましては一般的に言いまして、若いときに精神薄弱になるわけでございます。ただいま御指摘がありましたように、国民年金につきましては、二十から強制加入になるというしかけになっておりまして、そういたしますと、二十以前の精薄者で、重度の精薄者につきましては二十までは精薄児の手当法によりまして保護を受ける、二十をこすと保護が全然欠けるという点におきまして、障害福祉年金対象になるようにいたしたのでございます。その際に、この障害者は拠出制の年金につきましても適用されるようにはなっておりますが、それは二十になりまして拠出制の年金の強制被保険者となった以降に起こった事故につきましてはずばり適用になるわけでございますが、二十以前の事故のものにつきましては、二十以降におきまして強制被保険者となった以後の他の疾病と併合といいますか、併合されてたとえば一級障害になる、二級障害年金に該当するというようなケースが起こりました際に生きてくるわけでございます。そういう趣旨のものでございます。
  202. 八木一男

    八木(一)委員 大臣と政務次官はこれをお聞きになっておわかりになったと思います。政府のほうの印刷したこれを読めば、それが適用されるかのように内容がばかにりっぱに見えるわけです。私は前から山本君にも、前の厚生大臣にもずっと言ってきたことなんで、誇らしげに、することになりましたとおっしゃるだろうと思いましたけれども、全然おっしゃらないで、これを読んだらこういうことが書いてあるけれども、ほんとうじゃないのじゃないかと思っていま聞いたところが、そういうことです。それがいいと思われるかどうか、率直に大臣や政務次官、両方とも伺いたいと思います。  実際のところ、これは精神薄弱者だけじゃありません。身体障害者の、目の悪いときもそうです。それで、例としてはっきりしますから、一級障害ということにしておきます。両眼失明の場合、あるいは非常に重度の精神薄弱の場合、これは当然一級に入るわけです。一級に入る人が十九歳まではいまの精神薄弱児扶養手当法という親の激励法、そういうものがちょっとつくように大橋君の時代であったかに、なったわけです。それから、そのときにやかましいことを言って、親の激励手当てをするならば、ほんとうの所得保障の必要なのは、親のないときの精神薄弱児のほうが必要ではないか。そういうふうに精神薄弱者並びに精神薄弱児のことを取り上げるのは非常にりっぱなことであるけれども、取り上げる場合に、そういう小手先細工でごまかすようなことはいかぬ。所得保障が必要であれば、これは親のない精神薄弱者のほうが必要である。もちろん親のほうに激励手当てをつけることは賛成であるけれども、それをあと回しにするというようなとんでもないことはないのじゃないか。子供のほうにむしろ必要なことは、施設を徹底的に国立でつくりあげて、施設に入って精神薄弱児が能力が開発され、社会に順応され、あるいは仕事もできるというふうになることが親の望みだ。そっちのほうについてはちょっぴりの予算しか出さないでおいて、それを世の中のほんとうの要望に沿ったような形で、その答えが百分の一にもなっていない。そういうような及び腰ではいかぬということを徹底的に申し上げたわけです。その結果の回答として、精神薄弱者に対して福祉年金適用するということを今度は出された。これはちょっと前進だからいけないとは言いません。言いませんが、そのときにいろいろなことを申し上げておいたわけです。なぜこれを福祉年金だけにしか適用できないか。障害年金適用すれば、一級障害年金ならいまの三千五百円に対する刷り増し金があるから、四千二百円もらえる。障害福祉律令だったら、今度は改正されて二千円になる。金額がはるかに違うんだ。なぜそれができないのか。したらできないはずはない。歴代の大臣もそれはそのとおりだと言う。ところがそのブレーキは何かというと、三文学者の意見がいけない。これは憲法二十五条の精神を受けてつくったとちゃんと条文に書いてある。だから社会保障立法であるはずである。それを保険料があるから、保険システムだ、三文学者がそういうことを言うわけです。憲法には社会保障という規定はあるけれども、社会保険なんというのは一つも規定していない。ただ、その具体的な方法として、社会保険をとっている。これはある程度過渡的には認めますけれども、しかしそれを社会保障精神に従って直していかなければならない。ところが保険事故ということばはこの条文には一つもないのですけれども、三文学者の説を信奉する事務官なりが、保険事故だから、そういうような適用ができない。具体的に言えば、障害者の場合のほうが言いやすいから言いますけれども、二十で保険に入って、それからその後両眼がぱっと失明をしたならば、これは一級障害年金に入るわけです。ところが十九でそういうことになった場合には、これは絶対もらえないわけです。一年前に——極端に変な理屈をすれば、一年前に両眼を失明したならば、この失明者としてはいろいろなことをしてもらえるから、その人のほうが不幸度が少ないというようなめちゃくちゃな議論をする人があるかもしれないけれども、そんなものは理屈にならない。前から目が見えない方のほうが不幸です。その不幸な人には十九歳で両眼失明した人には四千二百円が入らない。今度の改正案でも二千円、いままでは千八百円しか入らない。二十になってやったならば、これは四千二百円が入る。こんな不合理なことはない。三つのときに失明したけれども、入らない。ところが二十から二十一になって失明したら入る。これはもう、厚生大臣も政務次官も率直にお考えになったら、絶対におかしいと思われる。その絶対におかしいことを直せと何回も言っているのに直さないのは何かというと、条文に一つもないのにかかわらず、三文学者が保険事故だという、そういう詰まらぬことばを使うからできない。保険事故なんということばは法律には一つもない。それにもかかわらず、保険事故、これは社会保障のはずなんだ。それを保険——社会保険とは一応認めてもいい。社会保険だったら保険事故なんということを顧慮しなくてもいいのです。社会保障を指向する社会保険だったらいい。民間の生命保険や火災保険なら保険事故ということばを使ってもいい。ところがそういう三文学者がつくったことばに制約されて、同じような気の毒な人に給付がいかない。これは大蔵省の方もよく聞いていただきたい。ほんとうに間違いであります。そういうことを直すということを、次のときに必ずやられなければいけないと思う。いますぐ修正することが必要だと思う。そういうことについて厚生大臣と徳永政務次官の率直な御答弁を願いたい。もう断じてそういうことを言う学者は曲学阿世です。そんなものを顧慮する必要は断じてない。政治家としての良心と情熱を持って、そういうものは直ちに直すという決心を披瀝していただきたいと思う。
  203. 松澤雄藏

    松澤委員長 八木委員にちょっと私からお願いしますが、答弁する前に恐縮ですけれども、参議院の委員会で採決がいま迫ったので、ちょっとの間政務次官をお貸し願いたい。こういうことであります。
  204. 八木一男

    八木(一)委員 どちらから先に答弁されてもけっこうです。これは勇敢に答えてください。
  205. 徳永正利

    ○徳永政府委員 御説のように、そういう三つにして失明した。それが適用がなくて、二十になったら適用がある。これはもう社会保障という立場から見ますと、まことに私は不合理なものがあると思います。その改正あるいは今後の問題等につきましては、ひとつよくその実態もきわめまして、努力してまいりたいと存じます。
  206. 神田博

    神田国務大臣 いまほどお尋ねがございました八木委員の、いわゆる十九歳で失明したのはもらえない。半年か、数カ月か、一日違いか、二十になればもらえる。非常に不合理ではないかということは、私もおっしゃるとおりだと思います。さすがは八木委員だ、非常に御研究家で、私どももひとついいお話を聞いたわけであります。  社会保険か社会保障かということにつきまして議論のあることは、学者の意見のあることもそれはございますが、しかしそういうような議論で学者が勉強されることは御随意でございますが、やはり社会保障という線に沿ったら、その実態をとらえていくというのが国家の責務ではなかろうか、私はこう思っております。だからかような場合には条理に照らして、その実態に沿うようにしていくということが、私は為政者の姿勢ではなかろうか、こう考えております。もう十分検討すると申し上げるよりも、率直なお答えを申し上げたほうがよろしいのではないかと思います。
  207. 八木一男

    八木(一)委員 非常に率直な前向きな答弁でけっこうであります。  山本年金局長に申し上げておきますが、大臣と政務次官があれだけ率直に御答弁になった。事務局としては、それを実現するために、いますぐに条文その他を十分に考えて万全の態勢をして、それで局長として、ことさら努力を最大限度にされて、すぐにそういうことが解決されるような準備をする必要があると思う。大臣、政務次官の御意見のとおりに最大限度の御努力をされる義務があると思いますが、その決心をひとつ聞かしていただきたい。
  208. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 大臣によく説明申し上げまして、大臣がこうせられるということになりますれば、事務当局といたしましては、十分それにもちろん従います。大臣に十分御説明申し上げます。
  209. 八木一男

    八木(一)委員 御説明は私が十分したわけですから、御説明の必要はありません。ですから、いま大臣と徳永政務次官は率直にほんとうに明快に判り切って答えられた。それの実現のために努力をすることが局長の任務であります。そのとおりすなおに、率直に、熱心に努力をされるということでなければならない。ずばりとそのとおりにいたしますという御答弁を要望いたします。
  210. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 またしかられるかもしれませんけれども、私ども下僚といたしましては、大臣には十分御説明申し上げる義務があると思いますので、十分御説明申し上げまして、御裁断が下りますれば、それに従うということであります。
  211. 八木一男

    八木(一)委員 それでは十分御説明するという内容を聞かしてください。   〔委員長退席小沢(辰)委員長代理着席
  212. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 ただいま大臣が、私どもあるいはいままで十分御説明申し上げてなくて、もし誤解があるといけませんので、そういう意味におきまして、いままで精薄者については全然福祉年金も支給されていなかった、そして重度精神障害児については二十までについては法律ができた、そして二十以降についてそのまま野放しにされるというのは不合理であるということで、その二十以降につきましても福祉年金を支給する、こうして継続的になるという点が一つあるわけでございます。それから先生がおっしゃられるのは、福祉年金ではいけないのだ、拠出制の国民年金を支給しなければ社会保障としていかぬじゃないかという先生の御意見でございますが、そういうことをさらに十分御説明申し上げまして、御裁断が下りますればそれに従いたいと思います。
  213. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣、いま説明されたとおりであります。厚生大臣が御答弁になったことが一番りっぱなことで、ただその一年間の過程として、いままでなかったところを厚生省としてはその三分の一の努力をいままでしてきた。だからいままで全然怠慢じゃなかった。ことし一年間ちょっとそれを近づける努力をしたという経過の御説明を山本君がここで公開の席上でやられたわけです。いままで三分の一の努力をして福祉年金適用になったことは、これはかまいません。けれども、さっき御答弁になったように、障害年金適用するようにならなければならない。いま公開の席上で言われたのですから、それ以外のへんてこりんな理屈は言われないはずです。そういうことですから、大臣の先ほど御裁断のことについては、全く一〇〇%ありとあらゆる点から正しいことであり、実現すべきことでありますから、どうかそのとおりの説明だけをお聞きになって、三文学者、えせ学者の説明は要らぬ、断じていかぬ。それをぜひ実現するようにしていただきたいと思います。大臣、それについてだけ御答弁ください。
  214. 神田博

    神田国務大臣 先ほど来お答え申し上げたとおりであります。
  215. 八木一男

    八木(一)委員 それではその次に、そういうふうに社会保障であるべきものが社会保険というようなことで、いろいろ悪い点が拠出年金についてたくさんあるわけであります。ですから、まず先ほどから申したように、金額が少な過ぎる、めちゃくちゃに少ないという点を直さなければならない、年齢が多過ぎるからそれを下げなければならない、それからいまのような社会保険的な弊害が各所にあるのを、これを直していかなければならない、これが拠出年金についての三本の柱であります。  ところで、今度はその費用の点であります。費用の点については、これは当然国のほうで相当の覚悟をもって見ていかなければならない。いま国民年金については、保険料について五割の国庫負担ということになっておる、五割というとばかにたくさん出したように見える。ところがこれは給付については厚生大臣何割になるとお思いになりますか。
  216. 神田博

    神田国務大臣 三分の一と承知しております。
  217. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣が明確に御答弁になったように、三分の一です。だから世の中に喧伝されているように、非常にたくさんの国庫負担ではないわけです。三分の一なんです。ですから、それをさらに伸ばしていかなければならないと思うわけなんです。これは厚生年金についても、どんどん努力されなければなりませんが、たとえば国民健康保険について調整交付金その他を入れても五割とか四割五分とか、答弁によって違いますが、平均五割の国庫負担という点がございます。これは給付全体についてで、保険料についてではございません。ですから、この三分の一というのがかなり勉強していますということを大蔵省が言われる危険性がございますけれども、まだまだ勉強が足りないのだということを強力に御主張になる必要があろう、少なくともこれは給付の五割以上というものをしなければ、何といいますか、非常に農村の方が多い、中小企業者が多い、担当しておられる仕事は、日本の高度経済成長の中で非常に圧迫されておるところであります。したがって、いままで国、社会を背負っておられたのが、経済の変動によっていままでの労苦が報いられずに、老年になった人、そういうようなケースになるわけであります。したがって、当然それについては手厚い国庫負担をもって給付をよけいにするという考え方がなければなりません。ただ保険料を上げればいいのだというわけのわからない社会保険学者的な意見は聞かれないで、国庫負担を上げることを一番の重点に置いてこの給付内容を変えていく、保険料はなるたけ上げないという考え方で問題を組み立てていただきたいと思うわけであります。それについてぜひ最大の御努力を願いたいと思います。
  218. 神田博

    神田国務大臣 厚生大臣といたしましては、そういう努力を十分いたしてまいりたいと思っております。
  219. 八木一男

    八木(一)委員 そこで給付額でありますが、私どもは先ほども厚生大臣や政務次官と質疑応答をいたしておりましたように、たとえば厚生年金が四千円年金から一万円年金になった、二倍半という率である。政務次官の話では少なくとも二倍半くらいは上げなければならないと思いますというような御発言でありましたけれども、それでは五十点、半分しか及第はしておらない。国民年金の発足当時は少ないから、それを直して、そこに率をかけなければならない、それだけの金額を実現するための努力をしなければならないということを申し上げたわけであります。それについて前向きに御検討願えると思いますけれども、たとえば厚生年金の率をかけたときに、三千五百円に二・五かけると、どういうことになるかというと八千七百五十円ということになります。それでは及第にならない、それでは落第ですよ、八千七百五十円では。少なくとも万をこす金額になる、それでも十分にはいきませんが、そういうようになろうと思います。そういうときに国庫負担を五割にするというだけでは足りないで、保険料を上げなければつじつまが合わないではないかというような議論が出てくるおそれがあります。八千七百五十円程度であったら、保険料なんかびた一文も上げる必要はない、国庫負担で全部まかなえばいいけれども、それをもっとふやした場合に、それだけでは足りないのではないかという議論が大蔵省から出てくるだろうと思います。それに対して、こういう年金制度については何も積み立て金制度に固執する必要はないではないか。経済がどんどん発展をする、その配分がふえる、将来の配分がふえて、当然もらうべき配分が全国民に行き渡ったときにはその税金において、行き渡っていないときには高額所得者の累進課税の税金によって、負担をしていい問題であります。ですから、この完全積み立て金方式で考えられた国民年金を、いまの八千七百五十円程度であったら、保険料を上げずに国庫負担を、つぎ込むことによってこれをやる。これが一万五千円くらいになれば、それではちょっとまかない切れないという話が出るであろうから、そこで積み立て金方式を修正して賦課方式を入れて、後代の生産が増強いたしまして配分が非常に公平に行き渡った人たちの税金の負担による。われわれに対して後代の子供たちに社会的な親考行をしてもらう。その子供たちがまた孫に親考行をしてもらう。時代をずらすことによって、この年金額の目標を非常に大きくすることができるわけです。そういうことについてもよく御研究になって、大蔵省も、船後さんなどは非常に御理解が深いわけでございますが、船後さんが局長になられて、理解のない主計官が来るおそれもなきにしもあらずでありますから、そういう連中がばかなことを言ったときには、そういうばかなことを言うな、こういう方法もあるんじゃないか、一万五千円ぐらい何だといったようなことで主張を通されるというような前向きな考え方でひとつ当たっていただきたいと思うわけです。それについて厚生大臣のお考えを伺いたいと思います。
  220. 神田博

    神田国務大臣 年金の問題については格別造詣の深い八木委員から、いろいろと具体的なことをお聞きいたしまして、これは非常に私参考になると思っております。十分それらの点も考慮いたしまして検討を加えて、年金は厚いにこしたことはございませんから努力してまいりたい、かように考えております。
  221. 八木一男

    八木(一)委員 拠出年金についてまたまだありますけれども、ちょっとスピードを上げてやります。  拠出年金制でスライドの問題、通算の問題、積み立て金の運用の問題、いろいろございます。スライドの問題については、通算通則法でかなり片づいたようでございますが、それは、国民年金厚生年金の間では、やや、八十点か九十点ぐらいな内容になっております。しかし各共済組合の長期と国年の間では五十点か六十点ぐらいの内容であります。そういうふうに、たとえば、共済の長期の該当者が途中でやめた、国年の該当者になったというときに、非常に損をするような、そういう不完全な通則法ではいけない。通算通則法についても、そういう実情に従って改正されるように御努力になる必要があろうと思う。これは非常にめんどうくさい法律でございますから、各省と調整しなければならない点、やっかいなんですが、来年度において、そんなことは考えておりませんでしたということを言われないで、すぐ考えて、各省の人たちと御協議になって、それがより完全なものになるように、ひとつ来年度には、そういう前進的な前向きの改正案が出るというふうに御努力を願いたいと思います。それについて厚生大臣及び関係者の御答弁を願います。
  222. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 通算年金につきましては、御指摘のように、制度はできましたけれども、いろいろの問題点が最初から指摘されておるわけでございまして、この問題につきましては、厚生年金改正それから国民年金改正ということを考えますと、当然にそういったいままで出されております諸問題を検討して解決していく方向に持っていかなければならぬ、かように考えております。
  223. 八木一男

    八木(一)委員 年金制度については、脱退一時金の問題が具体的によく方々で要望があるわけです。年金制度がほんとうに信頼できるものになれば、理解が深まれば、脱退一時金に対する要望は減ってくると思います。だけど、年金制度だけじゃなしに、やはり賃金なり退職金なりその他の制度がしっかりしなければ要望は絶えないと思います。雇用なり、賃金なり、労働条件なり、退職条件なり、そういうものがしつかりでき上がって、年金制度の欠点が全部排除されれば、こういう要望は出てこないと思う。ところがそういう状態でないために、足りない年金をもらうよりはいまお金がほしい。お金がほしい中には、女子が結婚費用に充てたい、あるいは家を借りる権利金に充てたいというような要望がある。これは住宅政策が全くなってないから、こういう要望になる。それがちゃんとなれば、そういうことがだいぶ解消するわけです。それから年金制度についてスライド制が確立していないから、将来それをくれるといっても、くれたころにはそんなもの使い道のない金になるのではないかという心配が絶えないから、いまの現なまのほうがいいということになる。そういう欠点がありますから、理論的に脱退一時金がどうのこうの、いま言うことはできません。これは当然の具体的な要望であろう。しかし、ほんとうに年金制度の将来を思えば、年金制度について、そのスライドの問題なりそういう問題について完全な状態に置いて、脱退一瞬金よりは年金のほうがありがたいんだという状態をつくり上げなければいけないと思う。そういう点について、いまのような、たとえばスライドの問題なり通算のときに一部損をするという問題なり、それからほかの政策で、退職についてのいろいろな条件あるいは具体的な住宅政策、そういうものが完全になれば、そういう要望が出てこなくなる。少なくとも年金の面については厚生省が非常に責任を持っておるわけであります。そういうこと全体についてそういうような心配が起こらない、年金制度が非常に信頼を持たれるという方向について、これはいつかはやらなければならない問題ですから、通算についてもスライドについても急速にそういう努力をされる必要があろうと思う。次の大改正の前には——厚年がことし片づいた、来年は国年だということになれば、そういう問題について当然完全な解決をする案が提出されなければならない。それについての厚生大臣の御意見を伺いたい。
  224. 神田博

    神田国務大臣 いま八木委員のお述べになりましたいわゆる通算の問題あるいはスライド制の問題等々につきましても、十分検討いたしまして善処いたしたいと思います。
  225. 八木一男

    八木(一)委員 先ほど具体的には通算年金のことを申し上げました。スライドのことのほうがより重大であります。スライドのことについては、この前、物価についてのスライドが現実の点として大事なことである、根本的には、生産力が増強された配分を、前代の社会において非常に貢献をされた人に及ぼすという点でこういうスライドをする、その両面のスライドを考えなければならないということについて厚生大臣に御質問申し上げましたところ、厚生大臣はその点については明快なる理解を持って、その両面について考えなければならないということを御答弁になったわけであります。ところがその問題については、田中大蔵大臣質問をしましたら、田中大蔵大臣は、その他の点については熱心な政治家であり、また頭のいい政治家といわれておりますが、この問題については沖田厚生大臣ほどの御理解がありませんでした。なかなかにはっきりした答弁がない。その答弁の中では大蔵省の予算編成のことばかり頭にあって、これはいまの現実の問題でなしに、原理として、原則としての問題を御質問申し上げていると言っておるのに、そういう点について明快な答弁がなかった。これについては委員長にお願いをして、国民年金——厚生年金のときは時間が過ぎましたから、大蔵大臣に御出席願って、大蔵大臣は、なかなか頭のいい方ですから、その後考えられて自分の誤りを悟っておられると思いますが、それについて御質問をして明確にいたしたい、まだ考え方に御理解がなかったら、十分な討議をして理解していただくようにいたしたいと思いますけれども、それとともに、厚生大臣がやはりそういうことについて大蔵大臣に理解をさせるということをしていただかなければならないし、また船後主計官がその理解をさせる補助をされなければならないと思う。それは大蔵大臣だけの問題じゃなくて、やはり総理大臣は次の改造においてもお続きになる御予定らしいですから、大蔵大臣は留任されるかかわられるかわかりませんけれども、次の大蔵大臣が無理解であってもまためんどうくさいですから、総理大臣に対しても、そういう問題について、スライドの問題は非常に重大な問題で現時点の問題でありますから、総理大臣がそういう理解を持たれるように、厚生大臣から十分に御連絡になって説明をしておいていただきたいと思う。それについての厚生大臣のお約束をひとついただきたい。
  226. 神田博

    神田国務大臣 いま八木委員のお述べになりました御要望はいずれも重要なことでございまして、私が一人だけ聞きおくという問題ではなかろうかと思います。八木委員に言われるまでもなく、私大いに、ひとつお約束しまして伝えておきたい、かように考えます。
  227. 八木一男

    八木(一)委員 その次に、国民年金にも拠出制がありまして、積み立て金というものがあるわけです。この積み立て金については保険料の四分の一だけが還元融資をされるということになっておりますが、その内容自体については、またほかの委員から精密な御質問があろうと思います。特にこの問題に関心の深い滝井先生などから御質問があろうと思いますから省略をいたしておきますけれども、とにかく四分の一自体が少ないわけです。少ないですからこれはもっと多くしなければいけないと思う。大体積み立て金というものは、私は被保険者のものであると思う。それについて厚生大臣のお考えを伺っておきたい。
  228. 神田博

    神田国務大臣 年金の資金が被保険者の資金だと直接法に言うたほうが正しいかどうかについては私つまびらかにいたしておりませんが、とにかく被保険者に払うものであることは間違いないと思います。そこで被保険者のためになるような還元融資をするということは、これは同感でございます。
  229. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣の御理解は非常にけっこうであります。確かに被保険者に払う金、それを積み立てておるのが積立て金であります。だからほんとう言えば運用などせずにじっとこうやっておいてもいいわけです。しかし金を寝かしておくともったいないから運用するということになれば、これは被保険者に払う金だから、もう一度さかのぼってきて被保険者のものだから被保険者の意思によって被保険者のために運用する。ただむちゃくちゃな運用をして積み立て金がなくなってしまうような運用をしてはいけないということは、当然所管庁でおわかりになる。それはわかりますけれども、そういうことがないようにしなければなりませんけれども、そういうような、商売がもうかるとか、あるいは大企業のほうに資金運用部を通じて貸すとか、そういうようなことでなしに被保険者のために使う。このためにその運用については被保険者の代表が参画をする。そうしてその会計を資金運用部にぶち込むのじゃなくて、別な会計としてそれは厚生省が管理をする。山本君がいかに首を振ってもこれは大蔵省のものじゃない。厚生省のものだ。そういうふうにしなければならない。これは神田さん、ほんとうに閣議で御主張になって、だれが何と言っても、向こうの要請によって国のほうの資金に回さなければならない部分があろうともなかろうとも、最初の管理は厚生省がする。それを断じて御主張になって、在任中に実現をしていただきたい。それから、大蔵省が、どうしても必要だからそれをこっちで運用さしてくださいといってきたことについては、内容を検討してそれが間接的でも国民のためになるというのなら、それじゃ一部分大蔵省のほうにもお貸しいたしましょうという程度のことはいいけれども、大蔵省が決裁権を握ってぱっぱっと貸すということはいかぬ。これは厚生省の管理になるべきだ。これは福祉年金も同じだ。それについて閣議で至急に御発言になって、この問題は厚生省の管理に移すべきだということを主張されてこれを実現していただきたい。在任中にぜひやっていただきたい。
  230. 神田博

    神田国務大臣 ただいまの預金部の資金になっておる積み立て金を厚生省が主管するように、管理をするようにという御意見は、私の前からの持論でございまして全く同感でございます。常々そういうことを実は主張してまいっております。しかし、なかなか従来の実績といいますか、そういった慣行といいますか、一度しかれた制度をぶち破るということは容易でないことも八木委員承知のとおりだと思います。しかし不断の努力を払っておる次第でございますので、なお一そう努力したい、かように考えております。
  231. 八木一男

    八木(一)委員 むずかしいことはわかりますが、とにかく国民にこの事情を話してやれば十人のうち十人までそうだと言います。関係者の、被保険者の話は十人のうち十人までがそうだと思う。この社会労働委員会の与党の方に伺っても、これは十人のうち十人の人がそうだという御意見を持たれるだろう。厚生大臣もそのように考えておられる。そのようなことが通らないということは非常におかしなことだ。大蔵省が実質的に非常に強い権限を持っておることはわかりますけれども、大事なことに権限をお持ちになることはいいけれども、筋違いのところで権限をお持ちになることはいかぬ。間違ったことですから、これは改めなければいかぬ。そういう意味で、委員長厚生大臣にも御努力をお願いしますけれども、これはとにかく内閣総理大臣に来てもらわなければ話がつかない、総理大臣をさっそく呼んでいただきたいと思います。前から要求はしておるのです。
  232. 小沢辰男

    小沢(辰)委員長代理 八木委員の御希望は承っておきます。
  233. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣は最大の努力をされる。われわれは総理大臣の真意を伺いたいと思います。総理大臣がそれの理解を示されるのは当然で、理解を示されなかったら国政を担当する資格はないわけで、おやめ下さいと忠告をしようと思う。そういうことですから、総理大臣をぜひ呼んでいただきたいと思います。  次に、管理の問題ですが、四分の一の内容を、ほんとうに被保険者のためではなしに間接でごまかされている点がずいぶんある。これは時間の省略上、また後日私がやるか同僚の議員がやられるかどっちになるか、いまはちょっと省略をいたしますけれども、それについても厚生大臣は十分に関係の担当官から内容を調べられたならば、ほんとうに四分の一が被保険者に直接渡っていない、驚くべきことだということを発見されるだろうと思います。ひとつ御研究になっておいていただきたい。まだまだありますけれども、後日の質問に残しておきまして、福祉年金にもう少し具体的に入ります。  福祉年金のほうでさっき一部触れましたけれども福祉年金の金額の問題です。いま千百円が千三百円になった。あなたがいらっしゃらないときに山本君と大きな声で議論をして、山本君は非常に防戦をいたしたけれども、明快な山本君も論旨を立てて説明ができなかった。非常に怠慢な年金額の改定案だということになった。少なくともこれは大まけにまけてことしの段階においては、来年の改定でありますから、老齢福祉年金を三千円くらい、母子福祉年金を同額ぐらい、傷害一級のほうは四千円から五千円、このくらいにしなければ恥ずかしい内容だと思う。今申し上げたのは月額ですよ。それについて厚生大臣に伺っておきたい。
  234. 神田博

    神田国務大臣 御審議願っております福祉年金の増額の問題につきまして非常に過小だ、練達たんのうの山本君もたじたじしたということでございまして、一体福祉年金の増額を今回どの程度にしたほうがよろしいかということにつきまして議論があったわけであります。山本君なんか相当の額の年金の主張者でございました。御承知のように厚生行政もなかなか窓口が広うございまして、こちらにばかり片寄るわけにはまいりませんし、国庫の財源も限度がございまして、私どもや局長なんかの体当たりによりましてもやはりなかなか壁の厚いところがございまして、ついにこのような額にきまったわけでございます。おそらく山本局長も遺憾だというか心ならずであったと思います。これは正直な話です。厚生行政をあずかっている者が、それぞれの保険なりあるいは医療給付にいたしましても、この程度でけっこうなのだというような、そういう思い上がった行政担当者はいないと思う。できるだけあたたかい手厚い配慮をして十分満足のいくようにしたい。立ち上がってもらいたい。労務なり福祉年金としての値打ちのある、いただいたほうもいただいたかいがある、これはほんとうにありがたい、いただいたほうが自然にそういう気持ちになるような処遇をしたいという気持ちで行政を担当していることを、私はそのとおりだと考えております。その意味から申しますと、私どもといたしましても心ならずのことでございまして、繰り返し申し上げますが、いろいろ制約がございまして、この段階としてはやむを得なかったということでございます。来年度におきましては、なお一そう努力いたしたい。今年度でみんなきまって終わるわけではありませんから、逐次努力いたしまして、実らせていきたい、こういう考えでございます。
  235. 八木一男

    八木(一)委員 何回も言っておりますから省略して御答弁要りませんが、これについては前から大蔵大臣との問題を申し上げてきた。予算の最初の一次要求案を、いままでは五割増しにしたが、今度は三割にしたというようなことにも関係がある。これについても、田中角榮君は反省がなくて、それがいいのだという大蔵省の計算の便利なことを主張しておられますけれども、これはやはり神田さんが閣議で、そういうことのために大事なものが進まなかった、大蔵大臣もそれで熱心に努力をしておることはわかるけれども、そういうような基本的な態度が間違っておることは改めてもらいたいということを、田中君に直言をしていただきたいし、田中君がきかなければ佐藤君のほうから閣議でそれはたしなめる、そういうものは取り上げない、最初のところでブレーキをかけるようなことはさせないというような方針を強力にあなたの在任中に確立をしておいていただきたいと思う。あなたが総理大臣になられたらされるでしょうけれども、いまのところ厚生大臣ですから、在任中にそういうことを閣議で確立することをやっていただきたいと思う。   〔小沢(辰)委員長代理退席委員長着席〕  それじゃ、もう少し具体的な問題に入りますが、所得制限の問題について先ほど同僚小林委員から御質問があったようであります。これは正確に言うと世帯所得制限という名前は使っておりませんが、われわれが読んでも長ったらしくて非常に言いにくいような制限です。五人を標準にして何十何万円とかいうことで言いにくいので、これは世帯所得制限と言いますが、神田さんも山本さんも船後さんも、世帯所得制限ということばを使いますが、それを少し拡大されたということはわかります。わかりますけれども、毎年拡大の度が少ないために、それから名目的な貸金が上がって、むすこさんの収入がふえたために、去年はもらえたが、ことしはもらえなかったというようなことがずいぶんある。所得制限自体をどんどん撤廃していくということがまず第一に大事であります。それとともに、それを時限でやっていられますけれども、所得制限を緩和するという方向で大幅にやっておかれまして、それから後は全国の賃金の上昇率とか、これは国民年金だからといっても、むすこさんの収入が直接に関係がありますから、そういう上昇率のまん中をとってはでこぼこになりますから、少し上増しをしたくらいのところで所得制限の金額が自動的にスライドするというようなことを考えるとか、あるいは少なくともことしもらえて来年もらえなくてまたもらえるということじゃなく、一回もらえたら三年間くらいは引き続きその老人はもらえる。来年はくれるかくれないかわからない。ことしくれないのは残念だった。次はむすこの収入が減ったからもらえると思ったところが、ぽんとその老人は死んでしまうというようなことにならないように、長期間で、一回福祉年金を老人がもらえたら、少なくとも二年や三年はそのまま査定なしにもらえるという具体的なことを考えていただきたい。賃金に対するスライドでもいいし収入のスライドでもいい。一回大幅に引き上げてスライドするか、それからもう一つは、一回査定をしたら、少なくとも三年間はその老人にはそのむすこの収入が少しでこぼこになろうと支給する。できれば五年でもいい。そういうことをぜひ考えていただいて、次の改正案はそういう内容を出すということをひとつやっていただきたいと思う。それについて……。
  236. 神田博

    神田国務大臣 所得制限の問題につきましては、これはいろいろ私は議論があると思っております。しかし老齢年金等こういった社会保障の場合、私は当人の所得制限はまた別でございますけれども、世帯所得制限をするということは、私個人の考えを申し上げますと、あまり好ましいものではないと考えております。しかし制度でこういうのをやって願いっておりますから、これを除くとなかなかこれは抜本的な処置になると思います。いろいろ関係方面の折衝等にも相当の努力が必要だと思います。八木さんの意見は私もよくわかります。そういう意味で、ひとつこれは考えてまいりたい。いろいろな所得制限がありますが、所得制限によっては、たとえば若年停止であるとか、高額停止だとかいうようなものについて私はある斜度納得してもいいが、こういう社会保障の、しかも老齢年金とか障害年金というようなものの停止は、当人でない世帯の制限というものは好ましくない、私はそういう率直な意見でございます。
  237. 八木一男

    八木(一)委員 できればそういうことについて、この審議は会期のこともありますから、そう長い時間、一週間も二週間もやるわけじゃないと思いますが、別な機会にある程度の時間をいただいて、そのことについてもまた御質問をしたいと思いますから、そのときに、ひとつ非常に国民の喜ぶような、安心するような決意を伺わしていただきたいと思います。さっそく、いまの御答弁の趣旨に従って御検討願いたい。  その次に、配偶者所得制限の問題がある。これは奇妙きてれつな制度であって、世界じゅうどこをさがしてもないと私は思っておる。もし一カ所でもあったらその国の政治家はよっぽどばかばかりがそろっている。こんなものはあるべきものじゃない。そういうものがまだ温存されておるわけです。それについては即刻直していかなければならぬ。配偶者所得制限については、先生よく御存じだと思いますが、たとえば本人所得制限と世帯所得制限がある。その間に配偶者所得制限というのがある。おじいさんに収入があったら、おばあさんにくれないということ。金額はいま税法に従って変わっておりますから、きっちり覚えておりませんが、二十何方くらいおじいさんが収入があったら、おばあさんにはくれない。ところが、子供が六十かくらい収入があってもおばあさんにはくれるということになる。全体の収入は多い。六十万の収入のある子供さんに親孝行してもらっているおばあさんにはきて、かわいいむすこさんが死んでしまって、お嫁さんも死んでしまったというさびしい気の毒なおばあさん、しかもそのおばあさんを食べさせるために、おじいさんが腰を伸ばしながら働かなければならない、そういうおじいさんにわずか二十数万の収入があったら、おばあさんにはいかないということになっておる。ほんとうにあらゆる点から不合理なことです。これもぜひ撤廃すべきだと思う。ごく近い機会に、それについてさらに御質問を申し上げたい。その点ずばりこんな問題は、断じて廃止するという決意を表明していただきたい。それについても十分に山本局長の説明を聞かれて明快な御判断でだれが何といってもそういうことをするというような御答弁をいただけるように、これはいまとにかく一日だけ御検討になって、御決心になるおひまを持っていただきたいと思いますが、こういう不合理のものがある点について御理解が深いと思いますから、その不合理であるということについてひとつ御意見をいただいて、その具体的な問題については後日御質問のときに明快な御答弁をされたい。一般的なことについていま御答弁を……。
  238. 神田博

    神田国務大臣 いろいろ例をあげての御質問でございますが、明日の機会ということでございますから、その際に十分所信を申し上げて御参考にしたいと思います。
  239. 八木一男

    八木(一)委員 それから、その次に夫婦受給制限というものがあります。この夫婦受給制限といいますのは、おじいさんとおばあさんの両方とも七十以上で両方とも受給されておるときに、最初は一千円に対して二百五十円ずつ削減されて、二人で一人半分、手続的には一人ずつ七百五十円ずつもらえるわけです。これは月割りですけれども、ほんとうは政府は年間四カ月分ずつ支給しておりますから、実際の支払う金額は違いますけれども、とにかくそういうふうになっておるわけです。二割五分削減しておる。ところが、その金額は据え置いておりますから、幾分いま率は変っております。その率のことは私知っておりますから、御答弁に及びませんけれども、とにかくそのような削減があるということ、そういうことは非常に不合理だと思うわけです。これについて私ども議論をしますと、率直な方は、そんなことは一切必要ない。百人に一人くらい三文学者がまたそれもあってもいいじゃないかという。どうも三文学者がだいぶ年金制度にブレーキをかけておる。そういう三文学者はやめにして、ひとつそういう不合理なもの、わずかな金額です。これが二万円か三万円くれるのだったら少しわかりますけれども、千幾らというような金額についてそれを値切っておじいさん、おばあさんにやるというようなけちな政治じゃなしに、ばっと全額をおじいさん、おばあさんにくれるというふうになるべきだと思う。それについても御検討になって次会にはっきり御答弁をいただきたいと思いますが、これは非常に不合理であるということについて原則的に率直な前向きな御答弁をひとついただきたいと思います。
  240. 神田博

    神田国務大臣 いまの夫婦の受給制限の問題でございますが、私はどうも日本の社会保障制度にしても税制のたてまえにしても非常にやきもち政治が行なわれていると思うのです。ということは、所得税の場合、夫婦合算課税をやっている。夫婦の所得を合算して、高いほうの税率をかけている。これは昭和三十二年の改正でございましたか、それまでそういうことはやらなかったのです。そういうことをやるもんですから、取るほうは合算課税をやる、くれるほうは自給制限を、やる。それはみんなやきもちなんですね。これは別居していれば合算課税もしないし別々にくれるのです。夫婦というものは一緒にいるのがあたりまえなんで、一緒にいるから合算課税だ、受給制限だということはおかしいと思う。このやきもち政治がなくならぬうちは私は日本の政治は一人前にならぬ、よくならぬと思っています。そういう意味八木さんのいまの御意見は大いに賛成だと思います。
  241. 八木一男

    八木(一)委員 たいへん御理解の深い、いい御答弁であります。  その次に、今度は障害者の問題なんですが、母子福祉年金については扶養加算というものがある。たしか月額四百円だったと思いますが、何回も変わりましたから私もはっきり覚えておりませんが、ちょっと山本さん……。
  242. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 母子福祉年金は、子供の数がふえるに従いまして四百円ずつ加算になります。
  243. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣にその点御理解いただいて質問を受けていただきたいのですが、母子福祉年金については子供がたくさんだと生活が苦しいのが多いだろうからといって四百円ずつふえてくるわけです。この制度は、非常に乏し過ぎるけれども悪い制度ではありません。ところが障害者についてはそういうことがない。これは非常にこの制度の欠陥だと思う。この問題は福祉年金だけではなしに障害年金のほうにもそういうことが必要であります。ことに障害者の場合は子供だけではない。配偶者についても考えなければならない。母子福祉年金は残念ながら未亡人の家庭ですから配偶者はない。ところが障害者には配偶者があるわけです。ところで配偶者があればいいじゃないかという俗論が世の中にはあるかもしれませんけれども障害者がほんとうに人間として、障害はあるけれども一生懸命苦労をしてやっていくためには、政府がいろいろな点で援助をしなければならない。そこで障害者がやはり人間として結婚という非常に大きな人権をちゃんと実行をする。そうなったときに、やはり、障害者といえども、家族に対して扶養する立場でなければならない。それから子供ができたときに子供を扶養し教育をするということにならなければならない。ところが労働をしても商売をしても、障害者の場合には非常にぐあいが悪い。そういうことに対して対処をするために、障害に対する所得保障というものがあるわけです。その場合に、当然障害者個人ではなしに、配偶者なり子供についての加算というものが、現在の制度は非常に乏し過ぎて問題にならないけれども、ないよりはましです。これはつくっていかなければならないと思うのです。それについて非常にこの制度は欠陥が多かったと思う。配偶者並びに子供の問題について、障害年金及び障害福祉年金の両方について加算をつけるということをぜひ実現しなければならない。それについての御答弁を願います。
  244. 神田博

    神田国務大臣 いまのお尋ねの点も私は非常に実情に沿った御意見だと思います。私どもといたしましては、児童年金もひとつ実施したい。どういう方法をとるかということを検討中でございますが、いまの問題も込めてひとつ検討いたして実情に沿うようにしたい、かように考えます。
  245. 八木一男

    八木(一)委員 障害の問題に触れましたから、障害の問題についてなお一つ申し上げておきたいと思いますが、障害年金のほうでは一級、二級が象対になっております。障害福祉年金については一級だけが対象になっておるわけであります。障害福祉年金について今度の改正案で現行千八百円が二千円、老齢福祉年金で千百円ということは、これは非常に乏しいと思いますけれども、ある程度障害に対する所得保障が、対象の数字は少ないけれども、特別な理由として一般老齢に対するよりもたくさんの所得保障をしなければならないという思想がそこに幾ぶん実現をしているわけです。これは方向としてはよいと思う。ところがこの方向をさらに進めないと非常に不公平なことが起こるわけです。一級について千八百円、改正案で二千円、これは少な過ぎて問題になりませんけれども、一級と二級の間にごくわずかの差で二級の障害者がいる。また二級と三級の間にいるわけです。ですから、それについてやはり金額は全体を上げなければならないけれども、いま千八百円が二千円になればそれに対応しただけ、少なくなってもかまいませんけれども、二級の障害者に対しても障害福祉年金をつける、三級の障害については障害年金障害福祉年金をつけるということが当然考えられなければならないと思う。それについてぜひ前向きに実現のほうに御努力を願いたいと思う。それについて厚生大臣の御意見を伺いたい。
  246. 神田博

    神田国務大臣 十分検討いたしたいと思います。
  247. 八木一男

    八木(一)委員 次に、障害について前々から委員会でずいぶん論議をされまして、内部障害については、結核あるいは心臓あるいはまた精薄という人たちが障害給付対象になるようになり、たとえば、いまの保険事故の問題でけしからぬブレーキが一つかかっておりますが、とにかく傾向としてはそいうふうになっておる。これは先ほどから山本君にわあわあ言いましたけれども、山本君の非常な御努力が実現の推進になったことも私ども認めておりますし、いまの神田厚生大臣なり前任者の厚生大臣なり、そういう方が御努力になったことは認めますけれども、しかし国の政治の必要の点から見るとまだ十分でないと思うわけです。これについては、内部障害について適用すべしというときに、その内部障害について、障害がなおるということになれば障害ということにはならないというふうになっているわけです。なおるものは障害として認められないということでブレーキがかかっているわけです。そこの中ではっきりとわかる結核あるいは胸部疾患あるいは心臓疾患——心臓疾患は入っていたかな。それから精神、そういうものが入りました。だけれども、それ以外にもそういうものがあるはずであります。非常にむずかしい問題でございますから検討の時期が必要だという話でございましたけれども、なおそれ以外の部分について、固定した障害であるということをはっきりさしてその対象をふやしていく必要があろうと思う。それについてどのように進んでおられるか、ひとつ局長から伺っておきたいと思います。
  248. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 精神にいたしましても結核にいたしましても、当委員会におきまして強力な御推進があり、その線に従って実現してまいりまして、今回精薄をさらに加えていくということになりましたが、その他の疾患につきまして、内部障害の中には、まだ相当種類のもの、数は少ないようでございますけれども、まだいろいろの種類のものがあるようでございまして、この問題につきましてはやはり専門家の意見を聞かなければいけないというので、社会保険審議会の中に専門委員会を設けてそれぞれの専門科目のお医者さんに委員になってもらいまして検討を進めておりますので、精神と結核が実現いたしましたので、そういった内部障害の問題として、今後の問題といたしましては意見が一致いたしますものから、要するに廃疾認定基準というようなものが事務的に可能であるという方法さえ確立していただきますれば、逐次拡充していきたい、かように考えております。
  249. 八木一男

    八木(一)委員 具体的な問題をちょっと教えていただきたいのですが、心臓疾患はいま入っておりますか、入っておりませんか。
  250. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 心臓疾患の問題はいま検討中でございます。
  251. 八木一男

    八木(一)委員 心臓疾患は入っておらないようでございますが、この前、内部障害の問題をやってかなりの日限がたっているわけですから、それはやはり早く実現しなければならない問題で、検討というのは、いつまで検討していても問題が動かないということではいけないので、その小委員会にはもっとしっかりやってもらうようにしなければいけないと思います。おそらく小委員会というのはそんなにひんぱんに開いていないと思います。大体何回くらい開いておりますか。
  252. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 会合として小委員会を開くということじゃなくて、小委員会には各科の先生方が入っておりまして、やはり心臓になりますと、数人の先生方がございますから、これにつきましては、そういう先生方がある先生を中心といたしまして、そして数人のグループで常時検討を続けてもらっております。
  253. 八木一男

    八木(一)委員 その方々に、心臓の部門をひとつ、ほかの部門とともに督励をしていただきたいと思うのです。学者の方はりっぱな方がおるのでございます。私はさっき三文学者三文学者と言ったけれども、別にりっぱな学者もいるのですが、学者の風習として、学問が先になって政治があとになる。これは政治のための研究ですから、学理的な研究じゃない。政治としては早くしないとこれは意味をなさない。ですから、そういう学問的研究というような態度ではなしに、政治の要請だからということで急速にやるようにひとつ要請をしていただきたい。それについてもう一回。
  254. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 御趣旨の線に沿いまして促進いたしたいと思います。
  255. 八木一男

    八木(一)委員 それでは今度は、拠出制の年金のほうにちょっと房ります。この前、厚生年金の問題で滝井委員がたしか取り上げられた問題で、当委員会においては私どももずっと取り上げてきた問題ですが、妻の問題であります。妻の問題について国民年金では任意適用ということに相なっております。そうなると、妻で老齢保障をもらえない人が出てくるわけであります。こういう問題については所管庁が熱心に取り組んで——これは労働者の妻です。労働者の厚生年金部門として取り上げるか、またはほかの方法がいいかということについて積極的にやはり取り上げていかなければならない。それについて専門家の山本さんのお考えをひとつ伺っておきたいと思います。
  256. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 妻の扱いという問題につきましては、年金制度の上において非常に重要な問題でございまして、厚生年金法を改正するに際しまして、審議会におきましてもきわめて大きな問題として取り上げて議論していただいたのでございます。ただ、これにつきましては、結局、結論を得なかったわけでございまして、御指摘のように、被用者の妻は、国民年金の制度ができました際に国民年金に任意加入ができることになっておりまして、現在百二、三十万被用者の妻が加入いたしておるのでございますが、結局問題は、国民年金の任意加入であるという問題が一つの問題点であり、それから現実問題といたしまして、被用者の妻の際に任意加入である。加入してなかった、それは期間としては、被用者の妻になりました際には計算がされるわけでございますけれども、そこにやはり問題がある。それからまた、現実問題といたしましては、離婚した妻という問題もあるわけでございますので、そういった扱いをどうするかということは非常に重大な問題でございまして、この点につきましては速急にまた各方面の御意見を伺いまして、私どもといたしましても何が一番合理的でかつ実情に合った案であるかということの成案を得たい、かように考えておる次第でございます。
  257. 八木一男

    八木(一)委員 この問題についていろいろな考え方があると思いますが、労働者の要望は、たとえば健康保険の制度のように、労働者のほうのこととして労働者の妻の老齢保障の問題を見てもらいたい。これは現実的に非常に重視すべき要望だと思うのです。  離婚者の問題ですが、あらゆる点についてそういうものがあれば、離婚した人、たとえば労働者の年金のほうに入っておる、これは遺族年金の妻の年金として入っていて、かりに不幸にして離婚をされたその人が国民年金に入った。そのために、通算通則法があるわけです。国民年金のほうで、商売をしていたその人が結婚して労働者の妻になった。これも労働者になって通算できるわけです。ですからこのようなあき地をなくしておけば、これは通算通則法で片づく問題です。そのあき地がある点について、やはり急速に対処をされなければならない。対処をされるとともに、現実の時点で任意加入というものがあることについて、これの点について厚生省があまり熱心じゃないように私は思う。その事実ですね。私ら熱心でないように感じておりますが、感じだけで申し上げてはいけないですが、それを浸透させる点についてほとんど努力が見られないように思いますけれども、それについての実情をひとつ聞かしていただきたいと思います。
  258. 実本博次

    ○実本政府委員 妻の任意加入につきましては、われわれ社会保険庁といたしましても努力をいたしまして、なるべくその加入を進めるようにあらゆる機会をつかまえて宣伝いたしております。その実績と申しますか年度別の数字を申し上げますと、現有昨年度に比べまして——毎年度約九万から十万ばかりふえております。
  259. 八木一男

    八木(一)委員 その対象は、全部強制適用すると何人くらい対象者がいるのですか。するとしたならば——するということじゃないですよ。任意適用資格のある人の数はどのくらいありますか。
  260. 実本博次

    ○実本政府委員 その調べはできていないのでございますが……。
  261. 八木一男

    八木(一)委員 まあ毎年九万から十万ということなら、発足してから、三十六年からまだ五年くらいですから、五十万くらいにしかならない。これは資格のある者からすればずっと少ないということになろうと思うのです。  そこで具体的に、これは手続ですから、私も年金は勉強したつもりだけれども、そこまで勉強が及んでおりません。手続は、昭和三十六年から国民年金法拠出年金のほうは適用になった。たとえば、いま妻が入りたいというときに実際の扱いはどうなるか。三十六年にさかのぼって保険料を徴収するのか、いまからの保険料で入れるのか、その点について伺いたい。
  262. 実本博次

    ○実本政府委員 その申請当時からでございまして、さかのぼることはいたしておりません。
  263. 八木一男

    八木(一)委員 そういうことがしゃくし定木だと思うのです。先ほどお話しのように、将来妻の老齢保障の問題について根本的に考えられるとしても、いままでの厚生省のやり方では、それをさかのぼってマイナスの点を全部保険料を国庫で入れてやってくれるというような考え方になっていただけばいいけれども、なかなかなってくれないだろう。そうなれば、妻の任意適用している人はそこで通算通則法で通算をされる。その制度が労働者のほうに付属する制度のほうにかわっても通算をされる。あるいは国民年金に入ったらそのまますぽっと続くということになる。ところがそれがされない間は、それだけたとえば四十年の要件を達成するのがおそくなる。その点も免除と同じような適用をしてぐれればいいけれども、そういうこともなかなか熱心にやりそうもないということになれば、これは早く入れておかないと、日本の労働者の妻たる女性の老齢保障の問題がそれだけおくれるわけです。ですから、しゃくし定木じゃなしに、いままでさかのぼってあとの、たとえば百五十円であれば千八百円、五年間の九千円納めなければ次から納めても適用しませんよといったら、そういう気持ちになっても、そんなもの九千円払う金はないし、おやじさんも無理解かもしれないからやめておこうということになります。いまから入れたって、いまから勘定すればちっとも損はない。ですから、そういう点はぜひひとつ御研究になって、年金制度について解理を持ち、期待を持つ人がいまから入りたいというときには、さかのぼって取るというようなしゃくし定木じゃなしに、入っていない人を無理にいまから取るわけでもないですからこれからでも入れるというふうに変えられなければいけないと思うのです。そこですすめて、前からでも入れてあげますよ、そうなれば年金資格が早くできますよ、金額も多くなりましょうといって、それをすすめることはかまいません。その人が余裕があって、年金制度をほしいと思えば、そういうことをやれる人は前からさかのぼって入ってもいいけれども、それができないでこれから入りたいという人は入れるようにこれは規定しなければならない。それについてぜひ、こういうことはもうすぐ厚生大臣はじめあなた方が決心されればできる、そういうふうに変えられるようにしていただきたい。これは担当者と厚生大臣から伺いたい。
  264. 実本博次

    ○実本政府委員 これは任意加入のたてまえになっておりますので、その点いろいろ問題があると思います。強制適用にして妻の独立した年金として扱うという方法も一つ考えられないことはございませんが、これは制度の根本問題でございまして、そういうことも含めて検討をする方向で努力してまいりたいと思います。
  265. 八木一男

    八木(一)委員 任意加入でありますからということで逆選択をおそれておられるのだと思う。そこで実情を——というのは年金制度が発足したときに、年金制度自体について非常に反論があったわけです。こういうようなスライドをちゃんとしてなくて実際に収奪されるのはいやだということ、そんな四十年先に生活保護の金額よりも少ないものは全然魅力がないというような問題、保険料負担が高くてやり切れないというような問題、その金が独占に回されて戦争に使われるのじゃいやだという反論もありました。いろいろな反論があったために、また年金制度について理解が十分になかった人もいるし、まだその反論を続けている人もいますが、そういう状態のもとに三十六年に出発したけれども、任意適用がほとんど伸びなかった。これは政府のほうにも法案に欠陥があること、またその宣伝啓蒙に不十分であった責任があるわけです。ですから、そういう点について、たとえばいま言ったように、全部逆選択ということを抜きにして考えられるのが一番至当であると思うけれども、どうしてもそれができなかったら、ここ三年の間は最初から始まったと同じようにこれは全部入れる。それから延びたときから入ろうという人は、だんなさんが死にかかったときに遺族年金をもらって入ろうとして、逆選択のおそれがあるから、それはいけない。しかし、一定の期間二年か三年、その間についてはこれから始まる制度として全部受け入れるというようなことで具体的に考えられなければならない。初めについてその理解が少なかったことは政府にも非常に責任があるわけです。そういう点で逆選択論というような、これも三文学者の言うような一千分の一ぐらいの危険をおもんぱかって九百九十九人の要望をじゅうりんするような、そういうやり方を脱却して、そういう問題の処理をされなければならない。そういうことでいまから入りたいという人について、いまから保険料を徴収をしてこれを適用する。そしてそのときに前からの保険料をさかのぼって払い込んで年金資格期脚をもらいたいという人については、もちろんさかのぼってもかまわないというような、両方の方法について直ちにやっていただく必要があろう。具体的な手続については御検討になる必要があろうと思いますが、そういう方針に従ってやるということを、これは担当者が厚生大臣に御説明になって、やるという決意をいま表明していただきたいと思います。厚生大臣はりっぱな大臣として社会保障の実際の適用の具体化、それの前進のためにそれをやるという御決意を表明していただきたい。それでまず事務的な複雑な問題でございますから、実本君からでこっこうでございます。その基本的な方針について直ちにいま決意ができる、この余裕は残してあります。いま私が、その内容の余裕は残してありますが、そういう方針について直ちにやるようにしたい、それで厚生大臣にお進めをしたいという御答弁を願いたい。
  266. 実本博次

    ○実本政府委員 この問題、先ほどお答え申し上げましたように、妻の年金の問題といたしまして、その根本問題とあわせて検討をさせていただきたいと思います。
  267. 八木一男

    八木(一)委員 実現をする……。
  268. 実本博次

    ○実本政府委員 その方向で検討さしていただきたいと思います。
  269. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣、ちょっと。事務当局はそういうことに練達であっても、事務局員として大臣ほどはっきり言えません。大臣先ほど前半聞いておられませんでしたけれども、聡明な大臣ですから後半でわかっておられると思う。年金を早くもらいたいという労働者の妻が任意適用したいというときに、さかのぼってでなければだめだということほど、いまからでも九千円払い込んでから、百五十円払い込まなければ適用がないということになっておる。年金制度を理解してこれから入りたいという人にブレーキをかけることはいけない。いままでの分は百五十円払う。足りない分は年金をもらう金額が減るから保険的にも損はない。いまからでも入れるように前進した方式をとっていただきたい。具体的な方法については、いま申し上げましたけれども、そういうことについて前進した方向をとるようにぜひ御決意を表明していただきたい。
  270. 神田博

    神田国務大臣 いま八木委員お尋ねは保険部長からもお答えしたとおりでございます。私も十分ひとつ身を入れて検討いたしたいと思います。
  271. 八木一男

    八木(一)委員 その次に、この問題で任意適用について魅力のないことは、これはだいぶ理解して魅力が出てきたと思いますが、私どもやや専門的な者から言うと、魅力のないところが一つある。たしか任意適用について免除の適用がなかった。これは山本君でも実本君でもいいからちょっと答弁をしてもらいたい。
  272. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 任意適用でございますから、免除のあれはございません。
  273. 八木一男

    八木(一)委員 任意適用だからないということを事務的にあっさり言われたけれども、ないことはない。そういうことではいけないと思う。これもまた逆選択理論で考えておられると思いますけれども、そのような枝葉末節から考えるのではなしに、労働者の妻も国民である。そこで、政府のいろいろなやり方が足りないために、これは強制適用ではなくて、任意適用という事態におちいっておる。労働者のほうの年金の、女子自体の老齢年金がないためにそういうことになっておる。そうなれば、これはレアケースで、あまりないと思います。労働者の妻ですから、だんなさん収入があまりないと思いますけれども、非常に零細企業で、だんなさんの収入が少ないという場合には、免除の適用があってしかるべき家計状態である人も出てくるわけです。この免除についても、任意適用について適用できるよりに御検討願いたい。おそらくそこには逆選択理論がいろいろと問題になってくるでありましょう。しかし、それは理解が少ないからです。それは強制適用になって、その人が低賃金で、その世帯が貧しいということはこういう制度に関係なしにあるのです。貧しい人については、強制適用の人は免除の適用を受けて、ある程度の年限を延長するとか、資格期間を通算する制度ができておる以上、同じ扱いにするのがあたりまえだということになる、そこで、そうなると、免除の適用の人だけが入ってきて、そうじゃない人が入ってこないであろうから逆選択になるというようなことを考えられるのだろうと思う。ところが、免除の適用になるような人は、これこそ、やはりその御主人も老齢保障の必要がある。入ってきて何でもない、免除の適用のない人がたくさん入ることは、もちろん望ましいけれども、これは宣伝啓蒙で入ってくればいいわけです。一番必要な人が、免除の適用があるからといって任意加入でその人ばかりが入ったら困るというような、保険会社的な考え方でなしに、社会保障を担当する厚生省としては、そういう人こそ、そういう婦人こそ所得保障の必要がある。免除の適用になったところで、強制適用になったら、当然その人は免除の適用になる。国費がその点について幾ぶんカバーしても、それは強制適用なら幾ぶんしなければならないから同じことではないかということで、理論を刷り切って——へんてこりんな学者の逆選択理論は一切排除して、免除についても適用して、このような任意適用がほんとうに実際的に動くように、そうして制度についてもっと完ぺきになったときに、その期間が通算通則法で完全に通算をされて、そのような労働者の妻の老齢保障ができるだけ完全に進めていかれなければならない。その問題についても十分御検討になって、このような不利益処分、差別処分がないように、差別扱いがないように、問題を前進させていただきたいと思う。それについて御答弁をひとつ伺いたいと思います。
  274. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 先ほど来の御意見でございますが、根本的には、やはり最初御指摘もございましたように、任意適用は制度そのものも含めて、検討しなければいかぬ問題があるわけでございます。これは妻の座の問題といたしましては、単に国民年金の現在の任意適用制度を何か事務的にやりくりするだけで片づく問題ではないわけでございます。そういった問題を含めまして、いま御指摘の点も十分検討いたしたい、かように考えておるわけでございます。
  275. 八木一男

    八木(一)委員 そういう制度ができたらこの問題は解消するわけです。ですから一年間何があったって、この金額については大蔵省の負担もごくわずかなんです。あなた方がなまけて三十年もほっておくつもりだったら、これは相当な金額になるかもしれませんが、ほんとうはやらなければならない。一両年でそれが実現するとすれば、たった一両年の問題なんだ。ですから金額なんかも、船後さんが心配するような金額では全然ないわけです。しかも、そういう人たちに、特に所得保障の点について置き去りにされた労働者については、いまからやはり期間を通算するためにやっておかなければならないということを申し上げておるわけです。そこで不利益処分がないほうがいい。不利益処分をしないことによって逆選択を受けるというものを勘定してごらんなさい。私もその点ではほんとうにあきれ返ったくらい少ない数なんです。あなた方が深刻な顔をするような金額にはなりませんよ。そういうことで、もしそれが大きな金額であっても、強制適用だったら当然免除を受けて、当然期間の通算を受ける人ですから逆選択になっても悪いことでも何でもない。それほど年金の必要でない人がただ入らないだけであって、一番必要な人は入る。強制適用だったら当然免除の適用を受けて期間の通算を三分の一だけされることになるのですから、金額が大きくなってもちっとも悪くない。しかも、その金額もたいした金額ではないのです。ですから、金額についてもそんなに心配をする必要がない。それだからそういうことをやりなさい、やるように進めてくださいということを言っているのです。もっと問題を割り切って、勇敢に進めていただきたい。それについては、厚生大臣は政治家の御判断から率直に受け取っておられると思う。山本さんも率直な方ですけれども、いろいろなしゅうとめやなんかいるから気にされるのだけれども、そんなつまらぬことは一切抜きにして、年金制度をほんとうにすべての国民に浸透させるという意味でこの制度をつくらなければならないのだし、実本さんは、その扱いについてすぐやらなければならないということになろうと思うのです。それについて厚生大臣の前向きの御答弁をお願いしたい。
  276. 神田博

    神田国務大臣 十分前向きにひとつ検討さしていただきたいと思います。
  277. 松澤雄藏

    松澤委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明十三日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。     午後五時四十三分散会