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1965-05-07 第48回国会 衆議院 社会労働委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年五月七日(金曜日)   午前十時九分開議  出席委員    委員長 松澤 雄藏君    理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君    理事 齋藤 邦吉君 理事 澁谷 直藏君    理事 河野  正君 理事 八木  昇君    理事 吉村 吉雄君       天野 光晴君    伊東 正義君       小渕 恵三君    熊谷 義雄君      小宮山重四郎君    坂村 吉正君       田中 正巳君    竹内 黎一君       中野 四郎君    橋本龍太郎君       藤本 孝雄君    松山千惠子君       湊  徹郎君    粟山  秀君      山口喜久一郎君    山村新治郎君       渡辺美智雄君    亘  四郎君       淡谷 悠藏君    伊藤よし子君       小林  進君    多賀谷真稔君       滝井 義高君    松平 忠久君       八木 一男君    本島百合子君       吉川 兼光君    谷口善太郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         厚 生 大 臣 神田  博君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         大蔵事務官         (主計局次長) 中尾 博之君         大蔵事務官         (理財局長)  佐竹  浩君         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚生事務官         (保険局長)  小山進次郎君         厚生事務官         (年金局長)  山本 正淑君  委員外出席者         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 五月七日  委員内海安吉君、亀山孝一君、倉石忠雄君及び  地崎宇三郎辞任につき、その補欠として天野  光晴君、小渕恵三君、湊徹郎君及び渡辺美智雄  君が議長指名委員に選任された。 同日  委員天野光晴君、小渕恵三君、湊徹郎君及び渡  辺美智雄辞任につき、その補欠として内海安  吉君、亀山孝一君、倉石忠雄君及び地崎宇三郎  君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  厚生年金保険法の一部を改正する法律案内閣  提出第二号)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第三号)      ————◇—————
  2. 松澤雄藏

    松澤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出厚生年金保険法の一部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案、両案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますのでこれを許します。谷口善太郎君。
  3. 谷口善太郎

    谷口委員 時間が非常に制限されておりますから、簡単に質問するし、簡単にお答え願いたい。  厚年年金等給付の始まったのは二十六年度ころのようであります。この二十六年度積立金総額利子それから給付総額をお知らせ願いたい。これは数字だけでけっこうです。
  4. 山本正淑

    山本(正)政府委員 厚生年金積み立て金年度末の総額は、制度が十七年に始まりまして……。
  5. 谷口善太郎

    谷口委員 二十六年度のことを言ってくれたらよろしい。
  6. 山本正淑

    山本(正)政府委員 二十六年度当該年度分で百五十億で、年度末の積み立て金総額は五百十九億でございます。
  7. 谷口善太郎

    谷口委員 利子のことを言われなかったが、それじゃ飛んで聞きますが、三十年度はどうですか。
  8. 山本正淑

    山本(正)政府委員 三十年度当該年度積み立て金が三百五十一億、年度末の総合計額が千四百八十七億でございます。
  9. 谷口善太郎

    谷口委員 今度は年金給付の額をお知らせ願いたい。
  10. 山本正淑

    山本(正)政府委員 保険給付費総額は、二十六年度に二十四億円、三十年度に六十五億円でございます。
  11. 谷口善太郎

    谷口委員 四十年以後は、今度の改正案であって予算になりますから、資料をもらっていますから私から言います。  四十年度積み立て金総額は一兆四千九百七億、利子収入が七百四億、給付総額が五百四十一億、それから五十年度積み立て金総額が六兆四千六十五億、利子収入が三千三百五十九億、給付総額が千八百九十三億、六十年度積み立て金総額が九兆八千六百八十七億、利子収入が七千二百七億、給付総額が五千二百九十九億、これに間違いありませんか。
  12. 山本正淑

    山本(正)政府委員 間違いないようであります。
  13. 谷口善太郎

    谷口委員 つまり、この厚生年金給付というのは積み立て金には一指も触れないで、すべて利子だけでこれをまかなう、こういうことになっているようであります。この積み立て金はいつ労働者に返しますか。現在一兆五千億くらい、昭和七十年度に二十三兆円という積み立て金になるのでありますが、これはすべて労働者が毎月毎月血のような掛け金政府に出してきたものでありまして、労働者の財産であります。これを返しますか。
  14. 山本正淑

    山本(正)政府委員 この年金給付につきましては、厚生年金成熟期に達しますと、現在の一万円年金構想で約三兆円給付費が毎年出ることになっておりまして、昭和六十二、三年ころに当該年度保険料収入では給付費がまかなえなくなりまして、それ以降は積み立て金利子と、それから当該年度保険料というものによりまして給付費をまかなっていく、こういう結果に相なるわけであります。
  15. 谷口善太郎

    谷口委員 つまり、この積み立て金労働者に返さぬというわけですね。利子でやっていくというわけですな。
  16. 山本正淑

    山本(正)政府委員 利子でやっていくというわけじゃございません。当該年度保険料積み立て金利子によって給付をまかなっていく。積み立て金がなければ利子相当分はその年度保険料でまかなわなければいかなくなるわけでございまして、そういたしますと、制度成熟期に達しますと非常に高い保険料を徴収しなければならぬ、こういう結果に相なりますので、積み立て金利子当該年度保険料給付がまかなえる、こういうしかけになっております。
  17. 谷口善太郎

    谷口委員 あなたがお出しになったこの資料によりますと、なるほどその当年の保険料に食い込むという時期がくる場合もありますが、しかし年年積み立て金がふえていく。どんどんふえていきまして、そうしてもってあなたの計算によりますと、昭和九十年度では三十四兆円ということになる。それくらいふえていく。これはその積み立て金は全く労働者に返さぬ。労働者掛け金を出しているときには、自分たちがかけた金は返ってくるものだ、これは年金として返ってくるものだと思う。ところがそれは年金として返らないで、すべてこれを財政投融資につぎ込んでその利子たるものによってやっていく。しかも統計によりますと、いまお答えになりましたとおりに利子それ自身すら一部しか年金としては返さない、利子も残っていくということになっております。こういうひどい収奪ということは何でありますか。こういうものだとは労働者は実際思っていないのです。これはまるでやり方が、何と申しましょうか、ことばはきたないけれどもどろぼうのようなやり方だというふうに、このことを知ったら労働者は思うと思います。私どもはこういう点は許すわけにはいかないのであります。  次に、この保険給付の実際の状況であります。大臣はこの法案説明にあたりましてこういうことを言っておられる。ここ数年来経済の非常な成長に伴って労働者生活が向上した、そのために年金はそれからはるかにおくれるようになった、取り残されるような状況になった、そこで改正をやらざるを得なかった、こう言っておりますが、それは一体どういう意味ですか。
  18. 神田博

    神田国務大臣 提案の際にも述べましたように、またいま御例示になったように、労働者生活が向上したことはこれはひとしく認めていると思いますので、そこで年金制度をそのままにしておきますと、そうした現実の労働者生活老後において保障されなくなってくるからこの案を改正する、こういうことになるわけであります。
  19. 谷口善太郎

    谷口委員 労働者生活が向上したなんというのはもってのほかでありまして、なるほどインフレーション、したがってまた物価上昇によりまして名目賃金は上がりました。確かに上った。しかし、このこと自体は決して生活向上にはなりません。この名目賃金が上がったということ、物価が上がったということ、このことが保険給付においては非常に残酷な状態を現出しているのであります。ここに政府統計がございます。これは厚生省が出している文書からとったのでありますが、昭和二十九年の平均標準報酬月額は二万一千六百円、ところが十年後の三十八年にはこれが二万一千九百円、ざっと二万二千円であります。これに対しまして、一件当たりの老齢年金給付額、これを見ますと、二十九年度は三千四百円、十年後の三十八年度は三千五百円であります。この平均月額に対してこの割合を見ますと二十九年度では二九・七%、ざっと三〇%の年金給付になっておりますが、三十八年度になりますと、名目賃金が上がったわりに保険給付が全く横ばいでありますから、実は一六%の値打ちしかない。つまり、インフレーションの中では、現行制度を認めたとしましても、年がたてばたつほど保険給付値打ちが下がってくる。こういう中に置かれているというのが実情だと思うのです。この点につきまして、政府は認めますか。
  20. 神田博

    神田国務大臣 そこで今度の改正をするということになったわけです。要するに、物価を上回る給付に引き上げた、こういうことを私しばしばお答え申し上げているとおりでございます。いま御例示もございましたように、賃金上昇物価を上回っている、保険給付はいま述べられたように非常にそれでへこんでいる、だから今度改正する必要がある、物価を上回るような給付に引き上げる、こういうことでございます。
  21. 谷口善太郎

    谷口委員 正直でなかなかよろしいですけれどもね、労働者はそのときどき値打ちのある金を掛け金としてやってきた。ところが、インフレーションの結果、それが値打ちのないものになったということで保険給付が減ってきた。これに対しまして、これをまた労働者の料金を上げて、そしてそれを補てんする、一万円年金にする、こういうことを言われる。労働者はすでに値打ちのある金を払っている。にもかかわらず、政府政策としてインフレーション政策が行なわれる。高度成長政策のこれはもう必然的な結果であります。その結果、受け取るときになって値打ちのないものをもらう。労働者政府政策で損をしているわけです。ところが、これをみずからの掛け金をふやすことによって取り返すという、そんなばかなことはないです。今度の制度は、大臣がおっしゃるとおりに、そういうことをねらっている、まずそれが一つです。  もう一つは、現在の瞬間に料率を上げまして、ことしだけでも一千何百億の剰余金が残る。積み立て金にそれが回ってくる。そういう高い保険料にするわけです。平年度になりますと、毎年毎年三千億以上の保険料を取るわけです。これは何のためだ。それは全部財政投融資にいくじゃないですか。財政投融資によりまして独占を擁護するのは自民党政府政策です。これに全部をつぎ込まれる。そして答弁が示すとおり、その利子の一部分保険がまかなわれる、こういうばかなことになるのが今度の政策です。労働者は今度の値上げに絶対に反対です。こういうことは許されません。そうではなくて、インフレーションによって労働者は損をしている。だれが一体これを奪っていったのかという点を追及すべきだと思うのです。大臣はこの点についてどう考えますか。
  22. 神田博

    神田国務大臣 政府インフレーション政策をとっているというが、政府はとっておりません。物価を抑制しよう、そして高度成長しようということをとっております。今日では、その高度成長安定成長に切りかえておりますことは御承知のとおりでございます。そこで、いまお述べになったように、保険金を前取りしているというが、保険金の性質上当然なことであって、ひとつ老後生活を安定させよう、こういうことでございますから、お尋ねになっているそのものが少しおかしいじゃないか、私はこう思うのでございます。最初にまずかけておいて老後生活を安定しよう、その年金でございますから、しかも物価の値上がり以上、掛け金以上に老後保障を見る、いわゆる一万円年金にする、こういうことでありますから、少し私、数字のほうが谷口さんと考え方が変わっております。
  23. 松澤雄藏

    松澤委員長 谷口君に申し上げます。申し合わせの時間が参っておりますから、簡単にお願いいたします。
  24. 谷口善太郎

    谷口委員 時間がございませんから次に入りますが、こういうやり方でいきますと、インフレーションで、保険給付の上で労働者は毎年毎年非常な損をしている。年がたてばたつほど損をしていく。これは将来も同じことです。大臣は、いま、政府としてはインフレーション政策をとっていない、こうおっしゃる。御冗談ではありません。それは事実に反します。現在学者たちでも、毎年六%ぐらいのインフレーションが続くと言っているし、いままでの事実もそれを示してきました。こういう状態でいきますと、将来、たとえば二十年後になりますと、物価は現在の三・五倍ぐらいに上がります。そういう中で一万円年金をいまやりましても、料率は上げる。二万円年金にするとなかなかいいことを言っておりますけれども、また再び現在と同じように、大臣が、これはまた労働者生活が上がったから年金はおくれたと言わざるを得ないようになる。そういう本質をこの制度は持っているのであります。  そこで、私、時間がないから次に進みますが、調整年金の問題、これについても一言お聞きしておきたいと思うのです。この問題はすでに各委員も申しましたけれども、現在企業内におきまして労働者企業年金とかあるいは退職一時金を戦い取っている。これは労働者既得権です。こいつを調整年金の中へ組み込んで、そしてもって資本家負担をなくする、あるいは低くする、こういうことが一つのねらいであることは明らかです。これはいままでだれも言いました。私はこれ以上触れません。しかし、それと同時に、この調整年金をやろうという中には、最もおそるべき陰謀があると私どもは見ている。それは、いまの大企業の大資本家政府の手を経て財政投融資なんというような、そういうまだるっこい制度でなくて、労働者に返す必要のない掛け金自分たちで運用しよう、こういう目的がひそんでおる。これはまことにひどい考え方であります。これは日経の四月二十二日号に、この点はっきりとそういっています。こういうふうにいっております。「株価上の注目点としては、ことしの秋に予想されている調整年金実施に伴い、生保筋電力株を注目してきている」こういっている。保険とか信託とかは、各企業と結託して、返すことの要らぬ労働者掛け金を毎年何百億、何千億と取り立てて、これを使って株を買う、こういうことをいっている。こういうことをやって労働者承知するものでありますか。私どもは絶対に許すことはできないのであります。直ちに調整年金のこういう新制度はやめるべきだと思いますが、大臣いかがですか。
  25. 神田博

    神田国務大臣 それは労働者経営者の話のついた分の話でありまして、政府のほうといたしては関知するわけではないわけです。政府のほうの積み立てている分は、還元融資労働者の福祉のために使っておることは、御承知のとおりであります。
  26. 谷口善太郎

    谷口委員 最後に、日本共産党の意見を申します。  共産党はこの改正案反対であります。しかし、同時に私どもはこういう要求を持っております。現在の積み立て金方式を直ちにやめまして、そうして、個人、法人を問わないで、高率累進所得税を賦課して、それによって政府資本家全額負担賦課方式年金制度をつくるべきであります。給付退職時の最高給を基準として、その六割以上、完全な最低賃金制度実施による最低額の決定、完全なスライド制労働組合による制度管理、運営、これを主張します。これによって初めて憲法にいっておる労働者生活、その老後生活保障することができる。これは、諸君はお笑いになりますが、私どもならやります。そして、世界の趨勢として、拠出制年金などというのはだんだんなくなっていっているのが事実であります。直ちに拠出制のこの年金制度をやめて、無拠出資本家政府負担による年金制度を樹立されんことを私どもは主張するものです。  以上です。
  27. 松澤雄藏

    松澤委員長 次は八木一男君。
  28. 八木一男

    八木(一)委員 政府提案厚生年金保険法の一部を改正する法律案について、厚生大臣並びに政府委員質問したいと思います。  まず、厚生大臣にお伺いをいたしたいわけでございますが、先日、日本社会党厚生年金法の一部改正案について、提案をいたしまして、趣旨説明をいたしました。それについてこの前御質問を申し上げたときには、それについての十分な研究厚生大臣がしておられませんでした。その十分な研究について宿題をお渡しをしておいたわけであります。十分な研究をされたかどうか。特に、その問題の中の、日本社会党提案理由の中に、政府提案調整年金が非常にいけないということをしろうとでもわかるように書いてございましたけれども、それについて厚生大臣が読まれて、いま提出した法案にこのような間違った点があるということを気づかれたかと思いまするが、それについて明確な御答弁をいただきたいと思います。
  29. 神田博

    神田国務大臣 八木委員から、社会党提案厚生年金改正案について勉強したかどうかということでございましたが、私は私なりの勉強をさせていただきました。たいへんけっこうな案のように拝聴いたしました。しかし、現在の段階においては政府案のほうがむしろ妥当だ、こういうように考えております。
  30. 八木一男

    八木(一)委員 それでは次に具体的に伺いますが、この調整年金民間企業年金と、標準報酬比例部分調整をして、民間厚生資金をつくる。民間管理に付するという点について、どのような理由でこのような厚生年金の本筋を曲げるようなことを計画されたか、明確な根拠をお示しを願いたいと思う。これは政府委員じゃなしに、厚生大臣からお伺いをいたします。
  31. 神田博

    神田国務大臣 御承知のように厚生年金老後保障をするということがたてまえであることは申し上げるまでもございません。政府厚生年金の考えておりますことも、それを究極のねらいにしております。また調整年金も、これは企業者側では一時金を年金制度に変えようというような考えのもとに成長してきたことも御承知のとおりでございます。ことに御承知のように、監督規定もございまするし、また労働者が同意をしなけば調整年金にもしないということも考えておりますので、その点は御心配ないのじゃないか、こういうふうに考えております。
  32. 八木一男

    八木(一)委員 監督規定をつくらなければならないような制度をどこにつくる必要があるのですか。どういう理由でそういう必要があるのか、はっきりおっしゃっていただきい。
  33. 神田博

    神田国務大臣 御承知のように政府がやはり厚生年金責任を持っておりますが、労働者並び経営者調整年金をどういうふうにおつくりになっても、これはやはり政府が一貫して監督するということは、私は当然だ、こう考えております。
  34. 八木一男

    八木(一)委員 大臣、いま言ったように、はずせば監督をしないとほんとう労働者公的年金が守られない部分があるから監督規定をつくられた。   〔委員長退席井村委員長代理着席〕 はずすことによってそういう危険がある、いまのままにしておけばそういう監督規定をつくらなくても政府がちゃんと管理をしてやっていけるわけです。社会保障というものは、国が関与する度を高めなければならないときに、なぜそれを相当部分民間管理に移さなければならないか、だれがそれを言い出したか、どの団体がそれを要望しておるか、そこをはっきりしていただきたい
  35. 神田博

    神田国務大臣 企業年金を、どの団体がそういうことをいったのかというような意味の御質問でございますが、これは御承知のように、企業年金も自然発生的に成長してきたものと考えております。そういうふうに自然発生的に一つ老後保障の対象になってまいりますと、これはやはり政府監督するというのは当然なんじゃございませんでしょうか。これはやはり政府が興味と関心を持って、そして労働者の利益を擁護していく、そういう考え方を持っておることは当然なことでございまして、むしろしないことがおかしいのじゃないかと思います。
  36. 八木一男

    八木(一)委員 顧みて他を言うようなことを言わないでください。企業年金が、いまあるものについて、政府監督の度を強めるということならかまいません。それに便乗をして、政府管理にある標準報酬比例部分、その半分の部分厚生年金という形において、実際には民間管理に付する。ですからはずれる部分について管理をしなければいけない、そこが主体です。あなた方が、企業年金を間違いを起こさないように政府監督をしたいというのなら、企業年金監督法律を出せばいい。公的年金の半分をちぎって向こうに持っていく必要がどこにある。その理由をはっきりしてください。
  37. 山本正淑

    山本(正)政府委員 いま八木先生のおっしゃられました、企業年金民間にあるからそれの監督を強化していけばいいじゃないかというお話でございますが、基本的には企業年金税制適格年金として税制上の保護を受けるようになりまして、企業年金が独自で発展していく、そのために公的年金の発展がおくれるというような現状もありますし、老後保障機能としてはやはり機能負担調整をはかっていくということ、結局公的年金民間企業年金というものの調整をはかる必要がある、こういう理由でございます。またそうすることによって公的年金の発達をはかり、老後保障の実を高度にあげ得る、こういう考え方から出発しているわけでございます。
  38. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣、いまの政府委員答弁聞かれましたか。時間がなくて、たくさんやらなければならないから、もう一回同じことは聞きませんが、いまの局長お話の中に、企業負担調整を行ないということがありました。これは一つの本心であります。公的年金労働者要求によってふやしていかなければならない、そこで公的年金に対して企業保障料負担をしなければならない、そのほかに企業年金ができている、両方合わさると企業主負担が多いから、かなわないから、それを一つにまとめてくれ、これが一つ理由であります。もう一つ隠された最も大きな理由は、民間管理に移して、それを間接的に事業資金に使おうというのが大きな理由でありますが、表向きの理由をいまはからずも年金局長は言ったわけです。そんなものは労働者老後保障企業主責任をもってやらなければならないということにブレーキをかけるために考えたものだ。ほんとう企業負担能力がなければ企業年金自分でやらなくてもいいのです。けれども、当然低賃金労働者老後保障要求する、そのときに企業主としてはあらゆる限りの努力をしてそれをふやしていったほうがいいわけです。それは退職金の形でもいいし、いろいろな形があります。ふやしていったほうがいいわけです。ところがそっちも要求をされる、公的年金もふえる、両方負担が重くなるとかなわないから、労働者老後保障なんかよりも、企業主負担の重くなるほうがかなわないから、政府のほうは労働者老後保障よりも、資本家のほうの負担を軽くするようにうまいことをやってくれ、そういうふうに二つ合わせれば一つ一つより多く見えるから、それだったらごまかしがきくだろう、そういうような観点で企業負担調整をはかるということが出ている。労働者老後保障をとめようという考え方でこのような調整が出ている。それについては厚生大臣はどう思いますか。
  39. 神田博

    神田国務大臣 厚生年金をふやそう、労働者老後保障をしようということで、そのほうが厚みが加わるということで考えているのでございまして、どうもその点少し八木委員と私、考え方が違っております。八木委員は、どうもこれは不当だ、こうおっしゃっておられますが、私ども労働者老後保障をしていくのにそのほうがなおいいのじゃないか、こういう考え方でございます。
  40. 八木一男

    八木(一)委員 労働者老後保障をする、多くしようという考えならば、一万円年金というような中途はんぱな年金ではなしに、社会党の案をあなたは読んでいるはずだ。ちゃんと料率をどうすればいい、それについて国庫負担をどうすればいい、事業主と労働者負担区分をどうすればいいとちゃんと書いてある。あなたは、見てたいへん傾聴に値する意見であるといま言ったんだ。そのとおりにすればいい。一万六千円にすれば労働者年金は上がるわけだ。そのような表向きの理由を、表向きのベールをかぶって、実際は企業主公的年金のほうの負担、それから企業年金あるいは退職金負担、そういうことを労働者老後保障について希望があっても、そういう希望のほうはあと回しにして、企業主のいまの負担のほうをあまりふやしたくない。それをじょうずにごまかしていきたい。それを政府とつうつうになってじょうずにごまかす方法で、いま厚生大臣が言ったように、労働者年金をふやすためにやったというような実にけしからぬ理由をつけて、このような調整年金という制度をでっち上げたわけです。厚生大臣、あなたは事業主の利益については、そういうことについては直接責任は持っていないわけですが、社会保障については責任を持っている。厚生年金制度については、労働者老後やあるいは障害やあるいは死亡についての保障を増大する責任を持っている。そこをそのようなことで実際にブレーキをかける。そんなことをやっている。これをやれば、ほんとう公的年金のほうが、標準報酬部分がふえてくるのが分断されて減ってきます。公的年金標準報酬比例部分をもっと急速に高めなければならない、あるいはまた計画も高めなければならないという要望が分断される。それに便乗して、それをあまり進めないでほっておくということになるわけです。そういうことではありません。  それとともに、厚生大臣、コンニャク問答だったら、これはもう厚生大臣を全面的に将来不信任するだけの話でありますが、さらに大事なほうについて伺いたいと思います。この調整年金ほんとう意味は何か。ほんとう意味は何かということは、厚生基金というものに移して、それを信託会社や保険会社に預けて——もちろん信託会社、保険会社は、私が質問をしていくときの弁解で、そこらは、その投資についてはいろいろの規制がありますということを山本君は言うに違いないから、そんなむだな時間を省きましてこっちから言っておきますが、そういうふうにはなっているけれども、系列のそういう信託会社や保険会社に預けることによって、たとえば三菱なら三菱、三井なら三井、そういうところへ預けることによって、それをてこにして事業資金を借り入れる。そういうところから出てきているわけです。そういうことをするから、今度の厚生年金保険改正案で幾ぶん保険料負担がふえる。事業主負担がふえる。それをのんでも得ではないか。一時的に資本家負担がふえても、たくさんだまってくる膨大な金額になる厚生年金の半分を、いま財政投融資という形で間接に事業主のほうに回わってきているけれども、もっと直接的に事業主が自分企業にこれを事業資金として取ってくるということが可能ではないか。そのことが事業主に得だ。そういう認識のもとに事業主は理解をして、この保険料の引き上げを伴う厚生年金、そういうことは年金額はよいことになるということで、世の中に宣伝をして、その実はその資金の運用を握ろうということで経営者団体が熱心になる。また資金を預かる保険会社と信託会社が熱心になる。そういうような背景を受けて、このようなあらゆる点から筋の通らない調整年金制度というものをあなたが出してきておる。そういうことがいいと思うか。そういうことが社会保障をあずかる厚生大臣として適当な措置と思われますか。国民のほんとうのしあわせのための行政をしなければならない国務大臣として、それが正しいことと思われますか。率直に御答弁を願いたいと思います。
  41. 神田博

    神田国務大臣 厚生年金老後保障の額が幾ら要るかということについての議論は、私はいろいろあると思います。いま八木委員からお話がございましたように、できるだけ厚いことにこしたことはないと思います。私どもも一万円でこれは十分なんだというふうに考えてやっているわけじゃない。御承知のように、機会あるごとに改正して、そして厚みを加えていこうという考え方です。ただし、この段階において、政府としては一万円がまあ妥当だ、これは二年やりますか三年やりますか、あるいはまた五年になりますか、物価問題も見なければなりません、国力の増加も見なければなりませんが、そういうものを総合的に検討いたしまして、そして次の機会にまた厚みを加えていこう、こういうことだと思います。   〔井村委員長代理退席、委員長着席〕 だから、私は八木さんとその点は意見は変わっていないと思う。労働者老後保障をしていく。やはり国力も限度がございますから、国力の限度において伸びていく、こういうことでないかと思っています。  それから、調整年金の問題も、いろいろと御疑問のあることは私も気持ちはよくわかっております。しかし、この段階で、私はやはりああいう現にあるものも併用していく、そうして労働者の利益を守っていくということがなお必要だ、こういうふうに割り切りまして考えたわけでございます。しかしそれについては同時に労働組合の同意も得るというようなことで、労働者の権利も正面から守っていく。そしてまたその運用についても、十分政府として発言権と申しましょうか監督権を持っていく。そのほうがよろしい。問題は安んじて働けるような仕組みに持っていく、老後保障をできるだけ十分いたしたい、こういう気持ちでございます。
  42. 八木一男

    八木(一)委員 私ども考え方と同じような考え方でやっていると言われながら、一番けしからぬ、厚生年金とは全然関係のないことに、厚生年金の本筋を曲げるということを私が言っている点については、だれにも納得されるような理由一つも言っておられないのです。現在の段階において——この現在の段階というのは一体何ですか。そういう資本家と約束をしたから現在の段階としてはそういうことをどうしてもやり抜くのだ、国民がどんなに反対しようと、厚生年金の筋が曲ってしまおうと、あとで大ぜいの人があのときにあなばかなことをやってほんとに困ったということになることが予想されておっても、なお現在の段階においてそういう経営者と約束をしたからやるというのですか。そこのところをはっきりしてください。
  43. 神田博

    神田国務大臣 どうも経営者と約束したのではないかというようなお疑いのもとに立ってのお尋ねのようでございますが、そういうことではございません。やはり厚生年金のあるべき姿というものを展望いたしまして、そうしてそのビジョンによってものごとを進めていく、こういうことでございます。  それから八木さんのお話でございますと、国民が全部反対しているというようなことを申しておられますが、私どもはそう考えていません。国民の大多数はこの案にひとつ御納得していただける、こういう考えのもとでものごとを進めているわけでございます。
  44. 八木一男

    八木(一)委員 問題を率直に答弁してください。いまの少ない基準を二万円に上げることについては、その内容を全部知らない方がその部分については賛成している人が多い。しかし、その人もまだ一万円では少ないという人も多いわけです。一万円になるということ自体については、率直に素朴に国民の方々には賛成の意見が多い。ところが、それをするときに、調整年金というような毒薬を一緒に仕組んであるということについては、これをわからない人はそのままにしておるけれども、その性質を見抜いている人は全部反対しているわけです。ほとんど大部分反対をしているわけです。大体こういうような異質のものを一つにまとめた法律を出すということが間違いです。一万円年金にしたいという熱意を持っておられるならそれだけを出したらいい。薬と毒をまぜられると、毒が非常に強くても薬の部分で宣伝をされてしかたなく毒薬を飲む人も世の中にはいるわけですが、そうじゃない人もいるわけです。毒薬があるから薬の部分も飲まないという人もあるんわけです。なぜ薬と毒とを別々に出さないか。それだけを出したらいいじゃないか。なぜそういうインチキなことをするか。その毒の部分についてあなたはいろいろなことを言っているけれども、毒じゃないというような説明一つもしていない。普通の常識のある人には納得のできるような理由一つも言っていない。現在の段階において言うことだけを言っている。どこの特定の事業主と約束をしたというようなことは言いませんけれども、これは事業主が、あるいはまたそれを預かる保険会社や信託会社が運動をしていることは明らかであります。そのようなことがわからないようではこの問題を扱っている厚生大臣はつとまりません。直ちに、もう即刻辞表を出さなければ国民のために不幸であります。この調整年金ほんとうにやる、そのような考え方になってもらわなければならない。それについてもう一回はっきり伺いたい。
  45. 神田博

    神田国務大臣 調整年金のことをたいへんお気に召さぬようなお、尋ねでございますが、私どもはさように考えておらない。ことに、そんなにもしいけないものでありますれば、労働組合反対すればこれは調整年金をする必要はないのでありますから、八木さんの説が通ると思うのです。実際の運用上、もしおっしゃるようなことだとすれば、法律が先行してもものごとは進んでこない、こう考えます。しかし、私どもはそう考えない。労働者も喜んで協和していかれるのじゃないか。そういうものは育ててまいりたい、こういうことでございますので、御了承願いたいと思ます。
  46. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣はインチキなことばかり言っている。労働組合反対すればといって、政府原案のどこに労働組合反対すれば調整年金はしないと書いてあるのです。そういうでたらめなことを言うのじゃない。どこに労働組合反対すればと書いてあるのですか。
  47. 神田博

    神田国務大臣 労働者が二分の一同意をする、こういうことになっておりますから、労働者労働組合をつくっていることは当然のことだ、そういう意味で申し上げておるのであります。
  48. 八木一男

    八木(一)委員 そんな三文文士みたいなことを言うものじゃない。あなたは一国の国務大臣ですよ。だから、インチキなことを言わないで、間違ったらはっきりあやまりなさい。労働組合というのはこの条文に入っていないですよ、この分については。そういうもので法律の中のそういうものを知らないで、あなたの省が提案者になっているのですよ。そのくらいあなたは研究をしていない。厚生年金保険法にそのくらいの毒があるということをあなたは知らない。知らないか、知っていてとぼけているかどっちかだ。しかしながら、あなたはいま言ったように、労働組合ということを書いてないのに言っているように、ずいぶんと研究不足だ。知らない点がたくさんある。それをいま教えているのだ。調整年金というものは強烈な毒薬だ、だからあなたはこういうものを提出してはならない。誤りをおかしたら直ちにその誤りを改めなければならないということを言っているのです。十分に反省して、いまからでも条文を全部読んで、われわれは説明してあげますから、間違ったら撤回なさい。
  49. 神田博

    神田国務大臣 八木委員社会保障のなかなか大家でございますからそれは私よりうんちくの深いことはこれは私もいつも認めております。しかも経歴において長年やっておられる。しかし、この段階において私ども厚生年金と取っ組みまして、やはりいま御審議願っておるようなのがよろしいのじゃないか。まあ改める点があれば御相談でひとつ国会の審議の場で訂正していただく。こういう考え方で、これは初めからそういうことを申し上げておったとおりでございます。だから、もしいまのような点で、もっと明確にすべきものがあるというならば明確にする問題があるだろうと思います。現に与野党で御相談なさっていることも−先ほど政府側といたしましても、会議でそういう場合に対処するような方途も実はつけてございますので、その点もひとつ御了承の上で御審議願いたいと思います。
  50. 八木一男

    八木(一)委員 内閣総理大臣が見えられたようでございますから、私の厚生大臣に対する質問は中断をいたしたいと思いますが、厚生大臣、いまの答弁はピンからキリまで全然答弁になっていません。社会党案について研究をされたならば、当然そうではない、政府案を撤回したいと思うから、国会のほうにそれをお願いしたいという答弁が出るべきである。その点について厚生大臣はおそらく内閣総理大臣について、いろいろ指摘された欠点について伝達をしておられないのではないかと思う。おられたら幸いであるけれども。ですから、あとで私はできるだけ時間をいただいて内閣総理大臣政府案の非常な間違った点——薬の点はあるけれども、それに隠された猛烈な毒薬を含んでいる点について総理大臣に指摘をいたしたいと思いますが、それについて厚生大臣は総理大臣をいろいろとお助けをする責任を果たされるように要望しておきたいと思います。
  51. 松澤雄藏

    松澤委員長 河野正君。
  52. 河野正

    ○河野(正)委員 いよいよ厚生年金審議が大詰めに到達いたしましたので、そこで私はまず総理の御出席もいただいておりますので、まずもって社会保障の基本の点について若干総理の御見解を承りたいと思います。  この社会保障の発展確立という問題は、近代国家の一つの趨勢でありまた責務でもなければならぬと私は考えます。日本の経済の発展というものが非常にものすごい勢いで進展を見せてまいったということは、これはしばしば総理からも承っておることばでございます。そこで、この経済成長というものは世界の他の国家と比較をいたしましても決して劣るものではございません。そこで、この社会保障の問題についてもやはり経済の成長に伴って当然その充実向上というものをはからなければならぬ。私はこれは憲法二十五条に規定されました精神でもあろう、こういうように理解をいたすわけであります。ところがまことに残念なことには、日本の社会保障の中身を検討してまいりますと、きわめて欠陥と不備というものが内蔵されておる。相対的に申し上げましても、日本の社会保障制度というものはやはり、不十分の域を脱しておらぬ。これが私は現状だと思うのです。そこで憲法二十五条の規定もございますように、やはり日本の経済が発展向上したとするならば、それに見合う社会保障の内容充実というものがはかられなければならぬ、こういうように考えるわけでございますが、まずもってひとつ総理大臣の御見解をお聞かせいただきたい。
  53. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 ただいま河野委員のお尋ねのように、経済が発展し国力ができる、そうすると社会保障制度、これを充実させていく、これは当然の政治のあり方だ、かように思います。そういう意味で今日までも努力してまいっております。わが国の社会保障制度あるいは医療保険制度、それらのおい立ち等を見、またそれぞれの間に総合的な基本的なものの考え方、統一がなされていないのじゃないか、とかく各制度間の不均衡がある、こういう点が指摘されておりまして、今後だんだんそれらの点も充実させていく、こういうことだと思います。ただいま御審議をいただいておる厚生年金法についても、いわゆる一万円皆年金制度、こういうような点で努力をしておる、かように私は理解しております。ただいま万全だ、かように申すわけじゃないが、今後とも相互の不均衡を是正し、内容を充実していく、かような方向に努力していくべきものだ、かように思います。
  54. 河野正

    ○河野(正)委員 社会保障の充実向上というものが経済発展に見合っていかなければならぬということは、これは当然のことだと思う。そこで、この社会保障そのものについて中身を検討してまいりますると、私はやはり社会保障には二つの柱があると思う。一つは医療保険という問題である、一つ年金制度という問題が、私は社会保障の二つの大きな柱である、こういうように理解をいたすものであります。ところが、いま医療費問題についていろいろ混乱を来たしているわけでございますが、それらの問題がございますけれども、いろいろ批判はございましても、医療保険制度というものは、国民皆保険でもございますし、かなり充実をしてきた。ところが、この年金制度の問題というものは、非常に立ちおくれておる。具体的に申し上げますならば、この社会保障給付費の中に占めます比重を見てまいりましても明らかでございまするように、医療保険の場合は四三・六%、ところがこの年金のほうは八・六%というふうに、社会保障の二つの柱というものが、一つは医療保険一つがこの年金制度とするといたしましても、いま申し上げまするように、一方は四三・六%であり、一方は八・六%というふうに、数字をながめてまいりましても、この年金制度というものが非常に立ちおくれておる。これも私は単に厚生年金法の一部改正ということでいたずらに批判をするわけではございません。この数字というものが明らかに年金制度の立ちおくれというものを強く物語っておる。こういうふうに指摘せざるを得ないと思います。  そこで、社会保障の拡充強化というものをやっていかなければならぬ。そのためには、いまでも医療費問題の混乱が起こっておるわけですから、したがって、医療保険に対します改善というものは必要でありましょうが、特に私は、いま非常に大きく立ちおくれておりまする年金制度という問題について、格段の改善をはからなければならぬ、こういうように考えるわけでございまするが、この非常に立ちおくれております厚生年金等の年金制度に対しまする対策、この点についてひとつ率直な御見解をお聞かせいただきたい。
  55. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 ただいま御指摘のとおりであります。したがって、今回も、そういう意味で、内容を充実したい、給付を増額したい、こういうことをただいま計画しておるわけであります。何とぞ御協力のほどをお願いしたいと思います。
  56. 河野正

    ○河野(正)委員 時間がございませんから、重ねて追及を省きたいと思いますが、特に今回提案をされておりますこの厚生年金法を見てまいりましても明らかでございますように、この法律というものは、昨年の四十六国会に提出をされて流産をした、そして昨年の暮れの臨時国会におきましては、とうとう提案もできなかったという経緯があるわけでございます。ところが、元来この厚生年金制度というものは、これは勤労者の老後生活保障あるいは病気で働くことができない、そういう人々の生活保障、あるいはこの遺族の方々の生活保障、いずれにいたしましても、労働者老後保障なりあるいはまた障害者あるいは遺族の方々の生活保障というものが目的でございますし、したがって、労働者を対象とする法案であるということは、これはもうだれも否定することのできない事実でございます。ところが、そういう労働者の諸君が非常に強い反対の意を表してきた。そのために、昨年の四十六国会では日の目を見なかったし、四十七国会では提案することもできなかった、こういうことになっておるわけです。  そこで、私はこれは後ほど具体的にお尋ねもいたしますけれども、やはり労働者を対象としなければならぬ。ところが、労働者が批判するということで、今日まで延び延びとなってまいったわけでございますから、したがって、私はやはりこの法案に対しましては、政府としても大いに反省される余地があろうと思うのです。これは反省がなければ、今後の改善というものはあり得ぬわけですから、したがって、私は具体的に後ほどお伺いするといたしましても、まずもってこのような経緯をたどってきたことに対して、政府としてどのような反省をなさっておりまするか、これは将来の問題がございまして、きわめて重要な問題でございますから、総理から御見解をお聞かせいただきたい、かように考えます。
  57. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 この厚生年金の案は、もちろんただいま、労働者のことに老後、そういうようなことを考え、あるいは疾病その他の者、あるいは遺族、こういうようなものに対しても十分これは考えたものでございます。そういう意味で、これは必ず皆さんの御協力を得られる、かように思いましたが、過去においては御指摘のような経過をたどっております。そういう点を十分審議の過程におきましても取り入れていく、こういうような方向でいま御審議を願っておるのだと思います。できるだけ早くこの案が成立するように、私ども心から願っております。その経過等につきましては、厚生大臣から必要によればお答えさせたいと思います。
  58. 河野正

    ○河野(正)委員 いろいろ過去に経緯はございましたし、また私どもがここで御指摘を申し上げなければならぬのは、それはもちろん医療費の問題の混乱もございましょうが、この政府の各審議会に対しまする態度というものが、私はやはり問題になってくると思う。と申し上げますのは、今日まで厚生年金がいろいろ批判をこうむって、さきの臨時国会で日の目を見ることができなかった。今度の国会でも非常に審議が渋滞をしてきた。それについてはいろいろな理由がございますが、一つには、ここで公の立場から申し上げますならば、社会保険審議会でなかなかこの法案に対する意見がまとまらなかったということがございます。それから、社会保障制度審議会におきましては、九項目の要望を付して、総理に答申をしたわけでございますけれども、特にその中でも、調整年金につきましては慎重を期してもらいたい、こういう要望があったわけでございます。それが尊重されなかった。そういうところにも、私はやはり今度の厚生年金の取り扱いについて非常に大きな問題点があったろうと思う。そこで、やはり政府のいろいろな見解があるとしても、いま私が指摘いたしましたような審議会に対する取り扱い、これについては今後さらに一そう審議会の答申なり御意見については、尊重するというたてまえをとらなければならぬ。それが単に労働者反対だけでなく、軽視されたから、今日まで厚生年金の審議というものが非常に渋滞したという原因に私はなっておると思う。でございますから、今後この社会保険審議会あるいはまた社会保障制度審議会の中でもいろいろ厚生年金の問題が問題になってくると思う。今日も国会で問題になっておるわけですから。そこで、それぞれの審議会に対する政府、総理の態度というものをひとつここで率直にお聞かせいただきたい。
  59. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 各種審議会につきましては、その答申を尊重するといつも政府は申しております。これはほんとに答申の趣旨を十分のみ込んで、そうして尊重しなければ、審議会を設けた趣旨にも反するわけであります。その道の権威者あるいは有識者、経験者等の意見を徴して、そうして施政が間違いないよう、このための審議会でございますから、これはどこまでも尊重ずるということでございます。ところが、この審議会の答申を完全に一〇〇%尊重をするという以上、一〇〇%採用しなければならぬじゃないか、こういうような御意見が間々あるように思いますが、政府自身はただいま申すように、まじめにこれを尊重し、取り組んでまいる、しかし、責任政府自身が国会に対し、国民に対しとるのでございますから、そういう意味で、政府自身必ずしも一〇〇%答申どおり、こういうことにはならない。間々そういうことはございますが、しかし、それが答申を尊重しない、こういう意味ではない。どうか誤解のないように願いたいと思います。
  60. 河野正

    ○河野(正)委員 そこで、私はその問題に関連をしてひとつお尋ねをしておきたいと思いますが、それは保険三法がいま社会保障制度審議会、社会保険審議会にそれぞれ諮問されておるわけです。ところがこの審議状態によりますると、社会保障制度審議会では、これは私も出ておりますけれども、十八日に委員会を開いて、そして、いま医療費問題が混乱しておりますので、そういう問題も含んで事態収拾をはかっていきたいということですが、いまの国会は御承知のように十九日まで、そういうことになりますと、今後の国会では健康保険法の改正というものは間に合わぬ。これは百重するということになりますと、そういうことになると思うのです。それでは今度の国会では健康保険法の改正案というものは御提案にならない、こういうことになりますかどうか。
  61. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 いわゆる保険三法の問題は、この国会におきましても、たいへん問題を起こしたといいますか、論議されている、こういうものでございます。したがいまして、政府が一方的に無理押しはしない、こういうたてまえをとり、すでに皆さま方にもしばしば申し上げたように、審議会の答申を得て処置する、かように申しておるわけであります。ところで、いままで社会保障制度審議会の委員の方々にもたいへん御協力を得てはおります。おりますが、現実の問題といたしまして、実際的にはこの会期中にただいま政府が望むような答申を得られるかどうか、これは非常に疑問の状態になってまいりました。こういう状態になってまいりますと、いわゆる保険三法、この提案もおくれざるを得ない、かように私は思います。ただいま委員の方々も、ほとんど連休なども返上して審議を尽くしておられるようでございますが、会期もわずかでありますので、私どもの期待する時期にはなかなか出ないのじゃないか、かように思っております。
  62. 河野正

    ○河野(正)委員 そこで、その点に関連をして一点お伺いをいたしておきたいと思います点は、この健康保険法の改正というものは社会的にも政治的にも非常に大きな問題でございます。それはいまお答え願いましたように、今度の国会の提案というものは審議会の審議の状況から非常にむずかしいということでございますが、この厚生年金の審議が一いろいろ理由はございます。それは審議会との関連もございますが、いずれにいたしましても、審議が渋滞をして、そのために、他の重要法案が当委員会におきましても十五近く残っておるわけですね。たとえば、ライシャワー事件で問題になりました精神衛生法の改正あるいは母子保健法の改正、こういうような重要法案が十五近く残っておる。これは全般的にも、現在国会全体を見ましても四五%しか成立しておらぬ、特に予算関係法案というものが五二%しか成立しておらぬというような実情のようでございます。そうしますと、こういう重要法案を処理するためには、当然考えられることですけれども、会期延長があるのかないのか、これは当委員会においても重要法案が軒並みつかえておりますから、重要な関連を持ってくると思うのです。その点についてはいかがでしょう。
  63. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 毎度申し上げておりますように、政府はいろいろ意思決定をするのにつきましても慎重であります。閣議決定をし、また与党とも十分連絡をとりまして、法律案の審議を願っているのであります。提案した法律案は全部成立を期したい、これには変わりはございません。しかし、ただいま御指摘のように、会期自身が非常に切迫しておるじゃないか、かような立場になってくると、国会におきまして、各政党間でもいろいろ相談されることだと思います。政府は、ただいま申すように、法律の成立を期したい、かような立場でありますし、また、国会運営そのものについては、議長、また与党、野党の国会対策等におきましてもいろいろ審議される、かように私は思いますので、いわゆる良識ある結論を出していただくということを政府としては望んでおるような次第でございます。
  64. 河野正

    ○河野(正)委員 総理の時間の制約がございますから、そこで、詰めなければならぬ点については、ひとつ若干具体的にお尋ねを申し上げてみたいと思います。  具体的な一つの問題は、年金額が非常に貧弱だという点だと思うのです。これは現在の年金額が非常に少ないわけですけれども、今度の年金額が一万円ということでございますが、しかしこれにはいろいろ問題がございます。二万五千円で二十年が一万円ということでございますので、必ずしも全部が全部一万円ということではございません。北欧あたりでは二万円年金、いろいろな福祉施設が発達しながら、その上に二万円いただける、こういう状況でございます。そこで時間がございませんからはしょって申し上げますが、この一万円年金ということで、今日の物価高でそれが生活保障に値するのかどうかという問題が一つございます。もう一つは、特にこの定額の問題ですね。五千円、五千円で一万円でございますが、その下の定額五千円の問題がそれでいいのかどうか、私どもはすみやかに定額の部分については大幅に改善を願いたい。それらの点について、ひとつ総理のお答えをいただきたい。
  65. 神田博

    神田国務大臣 私から先にお答え申し上げたいと思います。  御承知のように、定額を五千円にしたということは、一体五千円がいいかどうかという議論がいろいろなされまして、財政上の理由もありますし、また負担の問題もございます。そういうのを勘案いたしまして、この段階では、一万円年金の場合に双方五千円ずつがいいのじゃないかというような結論になったわけでございます。
  66. 河野正

    ○河野(正)委員 これは一万円年金とおっしゃるけれども、実際には、二万五千円の二十年ですから、全部が全部一万円じゃないわけですね。これは七千五百円、八千円の現在の既裁定の部分については、そういう人々が非常に多いわけでございますので、したがって、一万円でも非常に低い。特に北欧のごときは、二万円年金というふうなことがスウェーデンあたりいわれておるわけですから、当然これは今後大いに改善をはからなければならぬ。それからこの定額分についても、これはもう当然、これが最低保障ですから改善をはからなければならぬということを、強くこの点は要望いたしておきたいと思います。  それからいま一つ、やはりいろいろ問題でございますのは、スライド制の問題でございます。これはもう二十年前から見ますと、今日物価というものが数百倍にはね上がっておる。しかも今日標準報酬額が非常に低いというのは、その際スライド計算がとれなかったということにあった。そこで私は労働者の不満なり不平というものが非常に強くなったと思う。そこで私は、この生計費、物価変動の際のスライド制の具体的方式というものがすみやかに確立されなければならぬ、こういうふうに考えるわけでございますが、この点は全般に関連をいたしておりますので、総理からひとつお答えをいただきたい、かように思います。   〔委員長退席井村委員長代理着席
  67. 神田博

    神田国務大臣 私から経過をちょっと申し上げまして、あと総理にお答えしていただきたいと思います。  スライド制の問題は、いまお述べになりましたように、私どもも必要だと考えております。ただ問題は、しばしばお答えを申し上げておるとおり、賃金だけでいかず、物価その他の要素をどうするかというような問題、また、やはり他の制度との関連もございまして、それらの問題も割り切って考える必要があるわけでございます。そこで準備をいたしまして、相当突っ込んだ研究をいたしたわけでございますが、まだ十分な検討でなかったわけでございまして、スライドの問題はひとつこの次の段階に考えたい、こういうようなことで今回は御審議を願っているわけでございます。
  68. 河野正

    ○河野(正)委員 この次ということは、すみやかにということだとわれわれは理解をいたします。この点は、いま労働者が非常に不安を持っている。先にいってどうなるか、いまかけても二十年後はどうなるかわからない。実際に過去には苦い経験がございますから、そういう意味でこのスライド制の問題は労働者にとって非常に重大な問題だと思うのです。そこでこの問題につきましては、方式その他をすみやかに確立を願いたい、こういうふうに考えます。  それから、この国庫負担の問題は、いずれ具体的には大蔵大臣がお見えになってからお伺いしたいと思いますけれども、この点は非常に重要な部分でございますので、ひとつ総理からぜひお答えをいただきたいと思いますが、いま日本の厚生年金の額が非常に少ない。しかも積み立て金方式をとっておりますので、保険料というものは高い。そこで、額が少なくて保険料が高いということで労働者が非常に不満を考えておる点でございますから、この保険料率を引き下げる、給付内需を改善するというためには、やはり国庫負担というものが大幅になされる、それが公的年金の性格からいいましても当然の筋だと思うのです。そこで、国庫負担の大幅増額という点について当然考えに入れなければならぬと思いますが、この点について総理からお答えをいただきたい。
  69. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 ただいま言われるように、その点が実は問題なのです。いわゆる保険の場合の保険料率また給付金額の多寡等が問題になる。そういう場合に国の負担率をどうするか、こういうことが問題でございます。これは理屈を言えばいろんなことがあるだろうと思いますが、政府が原案を提案いたしましたについては、ただいまのような問題のあることを十分考えて、そして適正な国庫負担率並びに保険率、またそれによる給付金というものを実はきめたと思います。したがいまして、この段階におきましてただいま修正案等がいろいろ論議されておりますが、政府といたしましては最初の原案の成立をどこまでも期したい、この気持ちには変わりはございません。もちろん私どもは国会の審議を尊重する立場でございますから、皆さん方の御審議の結果こういうものが修正を受ける、これはやむを得ざる事柄だと思います。しかしながら、ことに予算にも関係のある重要法案であります。またこの種のものは他の保障制度あるいは社会保険の問題にも関連を持ちやすいものであり、それだけに非常に慎重な態度でこれには臨んでおる。したがってただいま申すように、本来は私どもの原案をぜひ通していただきたい、かように私は思っております。しかし御審議はもちろん尊重する立場でございますので、そういう意味で皆さま方とも、結論をどういう方向にいくか十分見きわめたい、かように思っております。
  70. 河野正

    ○河野(正)委員 特に既裁定分については保険料を納めるわけですから、したがってこの積み立て金を逐次食いつぶしていくという結果が生まれていくと思うのです。そういうことになりますと、現在厚年にかかっておる人が高い保険料を払わなければならぬ、こういう結果になってくると思うのです。そこで私は、既裁定分についても当然国がお考え願わぬと、そのために現在保険料を納めている人がよけい納めなければならぬ、こういう事態が生まれてまいりますから、そういう意味からも、やはり国庫負担については大幅な改善を要するというふうに私どもは考えるわけですが、その点も含めてひとつ改善せられることを要望いたしておきます。  総理の時間がございませんので、さらに一、二総理についての質問を続けたいと思います。  調整年金におきます積み立て金の運用についてでございますが、これは当然労働者のための積み立て金だという理解があるわけですから、したがってわれわれは少なくともその中の二五%というものは、直接労働者の福祉のために還元融資が行なわれるべきだ、こういうふうな考え方を持っておるわけでございますが、その点はそのとおりに理解してよろしゅうございますかどうか、お伺いいたします。
  71. 神田博

    神田国務大臣 お尋ねのございましたこの資金の運用の問題でございます。もとより還元融資でございますから、労働者の福祉が増していくように回すべきが当然である、こう考えております。そこでいま現に厚生省の扱っておるのは二五%、こういうことになっております。財投のほうに七五いっておりますから、これがいつ——いつといいますか、どの程度が一体財投に入り、どの程度が一体厚生省でやるべきものかというようなことについては、資金運用部審議会で検討いたしております。われわれといたしましては、将来ともできるだけ還元融資に持ってまいりたい、かように考えております。  それから調整年金のほうですが、この点につきましては、プラスアルファの部分は、原則として三割以上やりたい、こういうふうに考えております。
  72. 河野正

    ○河野(正)委員 非常にありがたく受け取っておきたいと思います。  次に、この調整を認める場合の企業年金のプラスアルファの分でございますが、このプラスアルファの分については、少なくとも三割以上の好条件を備える場合に認可をするというふうに私ども要望いたしておるわけでございますが、いまこの委員会におきます厚生省の答弁を聞きますと、二割以上のいい条件を備えた場合には認可の基準としたいということでございますけれども、その点については私どもは三割だ、こういう見解でございますが、その点はいかがでございますか。
  73. 神田博

    神田国務大臣 先ほど私が申し上げたのは、ちょっと混同しておったようですから取り消しておきます。  それからただいまの問題でございますが、できるだけいまお述べになったような線で考えてまいりたい、かように考えております。
  74. 河野正

    ○河野(正)委員 三割以上の好条件の場合に認可の基準としたい、こういうふうな理解でけっこうですね。  そこで、さらにお伺いをいたしておきたい点は、わが国におきます生活扶助を受けます保護世帯の中身をいろいろ検討してまいりますと、年寄り、母子家庭、それから心身障害者、こういう階層の方々が保護世帯の中の大きい部分を占めておる。私は、この点もやはり年金制度が非常に貧困だ、だから結果的には全部保護世帯に追い込まれてしまうというふうに考えるわけでございます。そこで、こういう問題の解決にあたりましては、一つには国民年金の充実というものをはかっていかなければならない。それからいま一つは、この厚生年金の急速な大幅な改善というものをはかっていかなければならぬ、こういうふうな方策というものが強力に推進されなければ保護世帯というものはどんどんふえていく、こういう傾向をたどっていくと私は思うのです。そういう意味からも、この国民年金の充実と厚生年金の充実というものが非常に迅速、急を要するという問題だと考えるわけでございますが、その点はいかがでございますか。
  75. 神田博

    神田国務大臣 国民皆年金制度でございまして、厚生年金、国民年金と二本立てでございますから、私どもといたしまして、やはり両々相まってこの制度の完備をしていきたい、かように考えております。  そこで、厚生年金はいま御審議を願っておるわけでございますが、国民年金につきましては、幸いと申しましょうか、来年が改定期になっております。そこで来年はひとつ大幅な改定をいたしまして、りっぱな年金に育てていきたい、かように考えております。
  76. 河野正

    ○河野(正)委員 総理が退席されるということでございますから、いずれ私ども厚生大臣、大蔵大臣、それぞれ質問を続行するものでございますが、総理にひとつ最後にお尋ねをして御見解を承りたい、かように考えます。  いま若干大づかみの点については御指摘を申し上げました。一番大きな問題は調整年金の問題、これがいまや労使の非常に激しい対立になっておるわけですから、この調整年金の問題、それから国庫負担の大幅増額という問題が逐次考えられてまいりませんと、先ほど申し上げましたような額の問題、あるいは保険料率の問題、それからさらには既裁定分に関連いたします問題、こういういろいろな問題が出てまいるわけでございます。そのほかスライド制、資金運用の問題、いろいろございます。私の足りません点につきましては後ほど関連で他の委員からの御質問があると思います。私ははしょって申し上げたいと思いますが、いま申し上げますように、非常に多くの問題をかかえておるわけでございます。そこで、総理としては、よりよい厚生年金を育てていくという意味から、以上申し上げました諸問題については、ひとつ前向きで重大な決意を持って臨んでいただかなければならぬ、こういうように私ども判断するわけでございますが、総理から最後にあたってひとつ総理の御決意のほどを承っておきたい、かように考えます。   〔井村委員長代理退席、委員長着席〕
  77. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 他の委員会でもお答えしたと思いますが、先ほど冒頭にお尋ねがありましたように、これから社会保障制度を充実さしていく、あるいは保険制度も内容を充実していく、それと真剣に取り組め、こういう御要望がございました。私もそういう方向で真剣に取り組みます、こういうお答えをいたしたわけでございます。ところで、わが国の制度そのものは今日までのところを見まして総合性に欠くるものがあったり、あるいは一貫性を欠くというような点が実はあるのではないか、かように思います。当面する問題で、いまのような年金制度の問題にぶつかってまいりますと、共済年金が直ちに問題になるとか、こういうようなわけで、相互の制度間に少しずつ内容を異にしたり、またなかなか一緒にはできないような関係があったりするのですが、それぞれの加入者の側から見まして、どうも政府がいろいろ干渉しておるにかかわらず、給付その他も一、二になっておるじゃないか、こういうような問題があるのであります。こういうことが今後の問題として取り組んでいかなければならない事柄ではないだろうかと思います。他の委員会でも、いわゆる医療保険の際にお答えしたかと思いますが、これは簡単な問題ではないように思いますので、方向としての私どもの前向きの姿勢、それには変わりはございませんが、よほど熱意を持って忍耐強く検討を続けていかないと、関係の方々の満足を得る、あるいは納得のいくような結論はなかなかできにくいだろう、かように思います。いずれにいたしましても、政府は前向きで積極的にこの問題と取り組んでまいる、かような気持ちでございます。(拍手)
  78. 滝井義高

    ○滝井委員 ちょっと一問だけ関連があるのです。  実は今度の厚生年金の一万円年金ができることによって資金運用部資金というのが非常に増加をするわけです。たとえばことしの資金運用部資金は一兆六百三十九億、このうち厚生年金の占める部分は三千二百六十億円、国民年金四百九十二億を加えますと三千七百五十二億円、三割以上がこれは零細な、いわば強制貯蓄にひとしい金が資金運用部に入っていくわけです。ところがその二割五分が労働者の福祉に還元されることになるわけです。あなたのおにいさんの岸さんが昭和三十五年に総理のとき、これは一割五分だったのを三割五分に英断をもって上げてくれたのです。そのとき私たちは、これはやはり三割か四割はくださいという主張を強力にした。そうしましたら、当時岸さんは二割五分にやってくれた。私はこの際、これだけ零細な金を集めているので、これをもう少し上げる必要がある。その点について総理はどう考えているか。  さいぜん河野さんの質問に関連をして、神田さんの答弁が非常にあいまいだったのは、この年々積み立てておく金の二割五分のほかに、もう一つ今度は企業年金調整年金になった場合に、調整年金の積み立て部分の二割五分というものを必ずこれは労働者の福祉に還元をするという約束をしておるわけです。この点をもう少し明白にしてもらいたいということ。  もう一つは、その金が一体どこで最終的に決定されるかというと、これは大蔵省の理財局関係の資金運用審議会で運用されるのです。ところが、その資金運用審議会の委員を見ますと、中山伊知郎さんのような非常に優秀な学者もおります。しかし、そこには銀行家等が入っておる。そしてこの金を積む労働者の代表は一人も入っておらぬわけです。そこで私は労働者の代表を入れろとは言いませんが、労働者の中には金融問題についても優秀な人がおるのですから、そういう労働者もやはり学識経験者として入れる必要があると思う。税制調査会等にも岩井章総評事務局長が入っておる。そういうように労働組合の中にも優秀な人がおるのですから、何も銀行家や学者や商工会議所の会頭ばかりではなくて、そういうところからも一名くらいは入れる必要があると思う。そうしないと、三分の一の金を出しておるのに、しかもその労働者にいく金ですよ。  それらについてお尋ねしたい。
  79. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 還元融資について岸内閣時分に二割五分に上げた、これはたいへんいいところにきめたように思います。私はそのそれぞれがいわゆる労働者生活向上のために使われるのだとか、あるいはこれは大企業の設備投資に使われるのだとか、かように区別いたしても、やはり最終的には働く者と資本家とともどもにその利益を受けるものだ、かように思いますので、どうかそういう点を十分御理解いただきまして、いまの二割五分はいいところをきめた、しばらくこれでいくだろう、かように御了承をいただきたいと思います。  それからその次の問題は、これは十分御意見も伺っておきますが、私ども別に組合の方を拝除するというような考え方ではございません。資金運用部資金の有効な運用ができるという、そういうたてまえで大蔵省もいろいろ考えておるし、厚生省あるいは労働省等の意見も取り入れておる、かように思いますので、政府部内の調整は、私責任を持って十分とらしていただきたい、十分とる、とこういうことを申し上げておきます。
  80. 滝井義高

    ○滝井委員 いまの最後の点については、実は国民年金審議会等は、こういう使途別分類表、いまの予算に出ているような分類表ではだめだ、だから特別勘定を設けるべきだという主張をしておるわけです。それもなかなか聞いてくれない。それならば、その配分をきめる審議会に一人くらい学識経験者の形で、やはり労働者代表を入れることが、私は民主主義の政治だと思うのですよ。それさえも一人も入れぬで、金融界からは入れている。たとえば全国銀行協会の中村一策さんなんかは入っている。そういう銀行家は入れるのに、学識経験者の一人として入れられないのか。労働者だって学識経験者はおるわけですから、この際思い切って、ここで検討するくらいの答弁をして、やはり検討をしてもらいたいと思うのです。使途別分類表とかいうようなくらいのごまかしでは、われわれは納得できません。
  81. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 拝撃するつもりはございません。ただいま申し上げるように、十分有効に使われるように政府が考えますということを申したのです。ただいまのお話のように、御要望は十分伺っておきます。
  82. 神田博

    神田国務大臣 先ほどの還元融資の問題でございますが、できるだけ御要望に沿うような率に上げたいと努力しております。
  83. 河野正

    ○河野(正)委員 先ほどちょっと触れたわけですけれども、保護世帯が非常にふえていく。特にその中でも心身障害者あるいは老齢者、それから母子家庭、こういう方々の御世帯というものが非常にふえていく。それはやはり厚生年金なり、国民年金なり、そういう年金制度の欠陥の中から出てくる、こういうふうに御指摘を申し上げたわけですが、大体老齢者、母子家庭、心身障害者の保護世帯で占める比率、これはどういう数字になっておるか、お聞かせいただきたいと思います。
  84. 神田博

    神田国務大臣 お答えいたします。この生活保護を受けている内容につきまして、いまお述べがございましたような老齢者であるとか、あるいは心身障害者であるとか、あるいは母子家庭の方々が相当数占めておることはお話のとおりでございます。そこで、年金制度が充実してまいりますれば、そういった方面のあたたかい手が伸びまして、要保護者が減ってくることも、これはお尋ねのとおりだと思います。どのくらいの割合になっているかということは、政府委員からお答えさせたいと思います。
  85. 山本正淑

    山本(正)政府委員 いま生活保護世帯の中に老人の占める割合の数字を持っておりませんので、いま調べておりますから、あとでお答えします。
  86. 河野正

    ○河野(正)委員 いずれにしても、非常に大きな比重を占めておると思うのです。それもやはり今後厚生なり国年を改善していかなければならぬ一つの大きな条件になるわけですから、そういう意味で取り上げてまいったわけでございますので、さらに改善のために御努力願いたい、こういうことをひとつ強く要望いたしておきます。  せっかくいま大蔵大臣においでを願いましたので、さっそく大蔵大臣にお尋ねをいたしたいと思いますが、一部は総理大臣にお尋ねをいたしましたので、重複を避けたいと思います。この調整年金積み立て金還元融資の問題ですが、一部は総理に総括的なことをお尋ねいたしましたので、重複を避けます。  そこで大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思いまする点は、厚生年金積み立て金が現在一兆三百億に達するといわれているわけであります。しかも一般民間でも年々ベースアップがはかられ、年間七%あるいは八%にいたしましても、この積み立て金というものはだんだん増加の一途をたどっていく、こういう傾向にあると思うのです。そこで私は、やはり労働者のための積み立て金でございますし、したがってその積み立て金というものが、いまも厚生大臣から若干お答えを願ったわけでございますけれども、当然労働者の福祉のために使わなければならぬ。ところが現在労働者は、いままでの資金運用部の還元融資にいたしましても、大体希望額の三分の一、需要額の三分の一程度が満たされておるという状況からいたしますると、少なくとも今後三倍くらいの融資をしてもらわなければ需要額を満たすことができない、こういうかっこうに相なってまいろうかと考えます。そこでその答えは二割五分という答えが出てまいったわけですから、あえて申し上げませんが、この労働者福祉のため、直接融資の道をはかっていくということが当然の事柄でございますので、その際は労働者のための直接の融資でございますから、労働金庫あるいはまた労住協、こういう機関を通じて融資の道がはからるべきであろう。この当初は、与党自民党のほうでは事業主を通じてという御意見もございましたけれども、私どもは納得がいかぬということで、直接融資の道をはかっていくという方向に相なってまいりましたので、それならばぜひ労働金庫なり労住協なり、そういう機関を通ずべきだというような判断に立つわけでありますが、その点はいかがでございますか。
  87. 田中角榮

    田中国務大臣 財投の原資が非常に大きくなるから、もっとふやしたらどうかという議論がございますが、これは二五%ということでありますから、元が大きくなれば二五%に該当する金額も大きくなるということが御了解をいただけると思います。究極のお話は、結局直接労働者還元融資の道がないかということでありますが、これはやはり法制上その性質から考えても、年金福祉事業等を経由して使うということが一番合理的だということで、労働金庫や個人にそのままストレートにお貸しするということは、この制度の上からむずかしいと考えます。また私もその必要はないだろうと考えます。
  88. 河野正

    ○河野(正)委員 与党の間では事業主を通じてというような御意見もございました。しかし私どもは、これはもうどんどん労働者の積み立てによって資金がふくらむわけですから、したがって当然労働者のものだというような理解に立つ。そうしますと、労働者に直接に還元融資が行なわれるべきだ、こういう理解に立ったわけですけれども、いま必ずしもそういう方向のお答えでなかったようでございます。しかし、直接労働者に融資する、いま私が指摘いたしましたような方向でぜひ還元融資が行なわれるべきだというふうに考えますが、あらためてひとつ御見解を承りたい。
  89. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほど申し上げましたように、財投に入ってくるものと入ってこないもの、——調整年金の分ですか、そういうものは契約によって入ってくるものと入ってこないものがあるわけでございますから、そういうものに対しては十分検討を進めていくということであります。
  90. 河野正

    ○河野(正)委員 国庫負担の問題については、総理も、国会のほうでいろいろ御検討願うならばその方針に従うということでございますが、これは大蔵省がなかなか渋いということを私どもは承っておるわけです。というのは、特に今度の一般に対しまする二〇%の問題についても、当初は厚生否はそういう腹づもりだったようでございますけれども、大蔵省が渋くて落ちたといういきさつもございます。ところが御承知のように、今度の厚生年金というものは四十六国会から提案をされて、四十七国会でも日の目を見ることができなかった。それから四十八国会においては、ごらんのように審議が非常に渋滞してきた。労働者の福祉のための年金制度でありながら労働者の批判を受けるということについてはいろいろな理由があろうと思います。その中で問題はやはり年金の額が非常に低い、貧弱だということも一つ。というのは、一万円年金、一万円年金政府はいま宣伝しておりますけれども、これは二万五千円の収入のある人が平均して二十年ということですから、決して一万円じゃないわけですね。でございまから、二万円でも現在の物価高の中ではなかなか生活保障には値しない。それが実際には七千円八千円ということでは、なおさら生活保障に値しないということでございますから、額の点が問題になるし、それかといって、今度の問題のように若干年金額を上げてもらったけれども保険料率が七割も上がるということでは困るので、そういうことからそういう一切の問題を解決するために、公的年金の性格から言いましても国がめんどうを見る、こういう処置がとられるべきだという私どもは強い考えを持つわけです。したがって、大蔵省としてもこの際ひとつこの年金額の問題あるいは保険料率の問題等々を改善するためにも、また今日までいろいろ各種の審議会で問題になってまいりましたような問題点を解決するためにも、その点は大いにお考えを願わなければならぬ問題ではなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。そこでひとつその点について大蔵大臣の御見解を承りたい。
  91. 田中角榮

    田中国務大臣 大蔵省といえども、もののわからぬことを言ったり考えたりしておるわけじゃありません。いままで短い間に社会保険それから年金制度、急遽これを採用したわけでございますが、先進国の歴史に比べまして、大蔵省も相当ものわかりのいい態度であったから今日早急に発展したということはすなおに認めなければ、国民が間違ったご見解を持つとこわいと思いますから率直に申し上げておきます。  社会保険でもすべて国庫負担という問題が常に出てまいりますが、保険料でまかなうか国民の税金でまかなうかというにすぎないのであります。全然どこかの国から補てんしてくれるわけじゃないのでありますから、そういう事実を踏んまえて日本の社会保険制度年金制度を国際的なよりいいものにしていくという理想を高々と掲げながら、国際比較も日本の力もまた国民の税負担状況も十分に勘案しながら、理想的なものに一歩一歩近づけてまいるという基本的な姿勢を大蔵省としても政府全体としてもとっておるわけでございます。今度もいろいろ御審議をいただいておるようでありますが、これはただその国の税金でもってまかなうということだけでこの制度がよくなるというものではないわけであります。これは一〇%のものが一五%に上がった、一五%のものがまた二〇%になる。それは当然内容的に違うのだから五%の差をつけなさい。こういう御意見もあるようでございます。どういう結論が出るかまだ私はさだかに承知しておりませんけれども、お互いにひとつ、何か国民の税金でまかなうことだけが国民に非常に大きな恩典を与えたというようなことではなく、こういう制度を大きく伸ばしていき、理想的な姿にする過程において、社会保険年金の問題に対しても国民の税でまかなうものをこれだけ持っておる、こういう事実をひとつ国民に十分理解をせしめて、より合理的な制度を発展せしめてまいりたいという考えでございます。
  92. 八木一男

    八木(一)委員 いまの問題に関連して大蔵大臣に御質問を申し上げたいと思います。  大蔵省としても、社会保障の進展のために努力をされたというようなことをかなり宣伝をされたようであります。社会保障制度というものは現在の時点でどんどん伸びなければならない。特に日本の場合にどんどん伸ばさなければならないという要件があるので、伸びるのは当然の政治の姿勢である。その伸びる勢いを大蔵省のいまの努力の足らなさのために鈍らしているというような状況だろうと思う。少しずつ伸びているのはわかっているけれども、そのようなもっと伸びなければならないのをあなた方の努力が足りなくておくらしておるということを十分に反省をしていただきたい。全体に伸びていることについて誇るよりも、反有をして国政を前進させるようにしていただかなければならない。  次に、大蔵大臣も十分御研究だと思いますが、われわれの研究についてひとつよく理解をされて、非常にいい点を含んでおりますから、社会保障制度を前進させるためにそれを考えに入れていただきたい。  まず第一に、いま、国庫負担の問題については、やはり保険料負担じゃなくても国民の税金の負担だということを言われました。それは一般的に政府に協力をしてくれる学者がほうぼうで宣伝をしているところであります。社会党はばかの一つ覚えのように国庫負担を言うけれども、そういうものではないというようなことを言っている方が多いようでございますけれども、そういう方々はほんとう社会保障を前進させる気持ちを持っておられないように私は思っております。いまの日本においては、もちろん国民の負担になりますけれども、国庫食掛でこれを前進をさしていけば累進課税の制度が——これも政府がもっとしっかりしなければなりませんけれども、直接累進課税という制度があれば、非常に負担能力の多い人が負担をして、それが国庫に入ってそれによって社会保障が前進をするという非常に有効な作用を示すものだ。保険料負担ということであれば、物価高や低賃金負担にたえられない者がその負担をしなければならないという点で、歴然として、国庫負担のほうが純粋に社会保障を伸ばす点において必要であるということであります。だからそういう方向で進まなければほんとうに熱心に政府が取っ組んだ、財政当局が取っ組んだとは言えない。だから、社会保障のことをほんとうに考えない政府のごますりをするような意見には耳をかさずに、ほんとう社会保障を心配している日本社会党なりあるいは与党の中で社会保障について熱心な方々の意見をいれて、国庫負担を増大することを本筋として社会保障を伸ばすという考え方に立っていただかなければいけないと思う。社会保障については、医療保障について今度非常に問題がありまして、神田厚生大臣に徹底的にそのいろいろな間違いを指摘されておりますけれども、その責任の一半はあなたにもあると思う。あなたに一半以上あると思う。それも十分反省しなければなりません。神田さんは徹底的に追及をされたけれども田中さんはこれからの機会でわれわれは神田さんと同様に追及をしなければならない。そのことも十分反省をされて、国庫負担で物事を前進させるという方向を進めていただかなければならない。  次に、それについても、国庫負担のいまの少ないのを五倍か十倍にしなければならないけれども、それも限度があるという話を、財政を預かっている人は言われると思います。そこで、考えを入れることは、医療保障については短期給付でありますから、即刻、すぐ入れなければならないということが非常に大きな要件になる。所得保障については、いまの給付、たとえば厚生年金のことし払う分についてもいまの国庫負担、これは賦課方式ですからそれをどんどん入れなければならないけれども、全般的に賦課方式という方式をとって、後代の負担にゆだねるという方向をとれば、これは直接の国庫負担はできるだけ入れるとともに、その方式を併用すれば、一万円年金というようなけちな年金ではなしに、少なくとも一万六千円年金くらいにはすぐいけるわけであります。そういうことも考えに入れて物事を処理をされる必要があろうと思う。もちろん、いま直接厚生年金は支払われておりますから、それが国庫負担が一五では少ない。少なくとも三〇%に即時されなければいけませんけれども、そのほかに、たとえば一万円年金でもあなた方は少し苦心をされたようだ。当然国民の要望である一万六千円平均の年金にするためには、さらにの国庫負担をするとともに、いろいろなことを考えなければいけない。保険料負担が増大するとすれば、一番低賃金に悩み、物価高に悩む労働者負担を軽減して、使用者と労働者負担区分を変える。使用主は七割にし、労働者は二割にするというようなことも考えに入れる。次に、それでもまかなえない分は、いまの修正積み立て金方式を——政府自体が積み立て金方式を修正して部分的に賦課方式をとっておられます。それをもっと大幅に賦課方式をとることによって、経済が成長し、分配がほんとうに公平に行なわれる時代にこの負担をゆだねるという方式によって、一万六千円年金は、さらにの国庫負担とともにすぐにできることであります。このようなことも考えて、もちろんこれは厚生大臣がぼやぼやしないで大蔵大臣と相談をしなければならないけれども厚生大臣が、この間十分にわれわれの意見を言って、そのとおりでございますと言った。ただし、いまの段階においてはというようなことをしばしば言っておる。この段階というのは、田中さんがすぐ首を縦に振らないおそれがあるということがこの半分であろうと思う。ですから、厚生大臣が、いままでの怠慢を改めて、社会党の案のようなものを出すと言ったときには、大蔵大臣は、直ちにそうやろう、厚生大臣はまだ少ないではないか、さらに、三割五分出そう、賦課方式をもっと取り入れるぞ、七、三の区分は八、二くらいにしたほうがいいと思うというくらいの勢いでそういう問題を進めることの決意を持たれなければ、社会開発を看板にしている佐藤内閣、その中の中枢の社会保障ほんとうに進めなければならない責任を持っている佐藤内閣の有力な閣僚であり、その財政面を担当している田中大蔵大臣としては責任を果たせないことになる。このような方向で熱心に、一応不乱に国民のために社会保障を伸ばす努力をされる決意があるかどうか、はっきり伺っておきたいと思います。
  93. 田中角榮

    田中国務大臣 社会保障を進展せしむるための御熱意、十分承知をいたしました。しかし、声は小さいけれども、私も人後に落ちない社会保障推進論者であるということもどうぞひとつ御承知おきをいただきたいと思います。それでありますからこそ、こうして皆様に御審議をいただいておるものにも、われわれもなかなか問題が多いという立場にもありながら御意見を静かに拝聴しようという立場をとっておるわけでありますから、どうぞひとつ御理解をいただきたい。特に社会保障に対しては、前年度比、一般会計が一二・四%しか伸びておらないところを一九・九%も伸ばしておるわけでありますから——これでいいなどと考えておりません。考えておりませんが、やはり限りある中で最大の効果をあげるという財政の基本もございますので、ひとつ政府も皆さんの驥尾に付しながら前進を続けてまいりたいと思います。
  94. 八木一男

    八木(一)委員 いまの御答弁、非常に率直で前向きでけっこうだと思います。田中さんは政治家として池田大成をされなければならない人でありますから、言われたことをほんとうに急速に実行に移すということを強力に要望いたします。  次に、積み立て金の問題については、滝井さん、河野さんからお話がありました。積み立て金というものの本質は、私は厚生年金積み立て金労働者のものであり、国民年金積み立て金というのは被保険者のものであるということでなければならないと思います。それについて政府側の認識が足りません。この積み立て金というものは、事由が発生すれば、老齢になれば、障害になれば、あるいは死亡したときに遺族に給付される金である。その金は非常に大切な金であるので、なくなってしまってはいけないから政府その他が管理をしている。そういう意味で、本質的には労働者のものである、労働者以外の制度では被保険者のものであるということになるわけです。したがって、この積み立て金を有効に動かすためには、おもに労働者が参画をして労働者の意思によってこれが運用されなければいけないということが本筋であろうと思います。それについては非常に政府側の考え方が足りません。   〔委員長退席、小沢(辰)委員長代理着席〕 こういう点を深く吟味をし、理解をされて、先ほどから主張されている二割五分ということは非常に少ない、三割、四割にしろ、調整部分だけでなしに元の部分についても、労働者がこれの意見の決定のほんとうの指導的な立場に立って、そうして労働者の福祉のために、労働者自体にあるいは労働者団体にそれが還元融資をされるという道を積極的に進めていただく必要があろうと思います。具体的にはけっこうでありますが、——積極的にそういうことについて御努力になることをいまも内閣総理大臣が御答弁になりました。大蔵大臣は関係の深い閣僚でございますから、内閣総理大臣の意思を体して、それを補足してその方向に一生懸命やるということを、ぜひ御答弁を前向きにいただきたいと存じます。
  95. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどもるる申し述べたとおりでございますが、被保険者の向上や、ためになることを目的といたしまして慎重にかつ合理的に運用してまいりたいと思います。
  96. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員長代理 関連質問を許します。滝井義高君。
  97. 滝井義高

    ○滝井委員 それではちょっと大蔵大臣に二、三、予算に関連ある問題をお尋ねしておきたいのですが、それは、一つは、今度の年金では妻の座というものが確立をされていない。その在職年限が非常に女子従業員は短いのだということで、女子はいま退職一時金の形で片づけているわけです。ところが一方、現実に女子が普通のビジネスガールであるときには一時金で片づけられ、今度は労働者の妻になると、これはどういうことになるかというと、労働者の妻になると、勤務をやめてしまって妻になったとたんに一時金で片づけられてしまって、あとは国民年金に任意加入になるわけです。そうすると、今度は奥さんになったわけですから、御主人がなくなると、今度は遣族年金がもらえることになります。もう奥さんは遺族年金だけです。障害年金もなければ、そのほかの年金もない。遺族年金だけで片づけられてしまう。日本は女性の方が多いのですが、そうすると女性の老後が確立されていないのですよ。いわゆる老後保障する年金が確立されていない。いわゆる一時金だけで打ち切られていく。こういう矛盾が起こってきている。この矛盾した——なるほど社会保障でうんと金を、一九%も出して、金はないのじゃとおっしゃるけれども、これは一時金だけでずっとお茶を濁していくというわけにはいかぬと思うのですよ。ここらあたり大蔵省、一体女子の老後保障する年金が遺施年金だけでいいかということなんです。当然これは労働者の妻を国民年金に強制加入するならする。この問題を一体大蔵省としては一時金だけでずっとそのままお茶を濁していくことにするのか、この際厚生省と話し合って妻の座を確立をして、労働者の妻にも国民年金でやるのか厚生年金でやるのか、どこかで確立していかないと、予算が足らぬのだから一時金だけでお茶を濁すというわけにはいかないわけです。これをあなたはどういうふうに考えているか。
  98. 田中角榮

    田中国務大臣 妻に一時金を支給するようなことを皆さんがお考えになっておるということは私は承知しておりますが、それにもまだたいへんな御不足があることはきょう初めて伺ったわけであります。しかし、これは大問題であることは御指摘のとおりであります。ですから厚生年金、国民年金の問題、社会保障の問題、こういう問題の中で妻の座をどうするかという問題に対しては大蔵省も慎重に検討いたしております。これは確かに検討をする必要のある問題でありますし、立て方の問題その他いろいろな問題もありますので慎重に検討いたしております。
  99. 滝井義高

    ○滝井委員 ぜひこれはあなたのほうの御協力がなければ、厚生省は労働者の妻を一体どうするかという問題はなかなか踏み切りができない。だから一時金というのは現実にお茶を濁す政策ですよ。そういう当面を糊塗する政策ではいかぬですよ。やはり妻の座を確立してあげて、そうして奥さんになっても年金がきちっとついてるのだ、遺族年金だけではなくてやはり確立されておる、あとは遺族年金との併給の問題になってくる、そういう形でぜひひとつこれは長期展望に立ってやっていただきたい。  もう一つ、大蔵大臣に私が言っておきたいのは、各省の政策がばらばらになりつつあるので、あなたがひとつこの手綱をしっかり締めてもらいたいという点です。それは最近通りましたが、商工委員会で小規模企業共済法というのができたわけです。そうして、これは三百万の中小企業の御主人あるいはその役員を対象にして退職金を出す法案です。そうすると、こういう人たちはいま何に加入しておるかというと、国民年金に加入しておるわけです。これはできました。それから中小企業労働者には中小企業退職金共済法というのがあって、現在すでに百万以上あります。これは退職金を出すことになっております。今度は退職金を出すわけです。その人たちは何に加入しておるかというと、五人未満は国民年金に加入し、五人以上は厚生年金に加入しておるわけです。こういうことです。それから赤城農林大臣はだんだん農民が離農するので、離農する農民に対して農民年金をつくりたい、離農者の報償年金をつくりたい、こう言っておるわけです。これらのものをつくるということになれば必ず国庫補助をつけなければならぬことになる。すでに労働者のほうの中小企業退職金共済法は、これは五%ないし一割の国庫負担をつけておるわけです。おそらく中小企業の小規模共済法にも来年はつけなければならぬことに追い込まれます。農民も必ずそうなる。そうしますと、厚生年金や国民年金は国庫負担をつけようといったって、あなたのほうのさいふも一つだからつけられなくなってしまう。そうすると今度企業年金ができて、これにも国庫負担をつけることになるでしょう。このようにもはや年金はばらばらです。ちょうど医療でいまや神田厚生大臣は四面楚歌の中におるというように、また年金でも四面楚歌になるのです。だから大蔵省は、この年金の問題は、このごろ神田さんは、私も国民年金厚生年金の二本立てで必ずやっていくのだ、こうおっしゃったけれども、現実はすでにばらばらになりつつある。ここをあなたがやはりきちっと手綱を締めて、そうして日本の金庫番のあなたががんばらぬことには何もならぬことになってしまう。このことについて一体大蔵当局としてはどう考えておるか。
  100. 田中角榮

    田中国務大臣 私も合理的な保険制度をつくっていきたい、年金制度も合理的なものにしていきたいという考え方はあなたと同じであります。しかし、さすがその道の大家であるだけに非常に卓見をお述べになりました。まあそういうことも十分ひとつ御発言を耳にいたしまして、より合理的なものをつくりたいという考え方でございます。ただ、ここで一言財政当局者らしく申し上げておきますと、何でもかんでも税金でまかなうということではなく、やはり世界各国の保険制度やそういうものとも比べて、やはり日本の現状——将来の理想は両々と掲げながらも、現実的にごたごたしないように、じくじくと一歩一歩前進を続ける、そしてある時点においてはこれは非常にりっぱなものになる、こういう大きな理想を掲げながらも、現実的に前進をするということに御協力をいただきたい。大蔵省も何もうしろ向きのものの考え方だけをしておりません。歴史にひとつ残るような実績を上げたい、こう考えておるわけでありますから、どうぞ御理解を賜わりたいと思います。
  101. 滝井義高

    ○滝井委員 したがって、いま言ったように、各省が、あなたと席を同じくする内閣の各閣僚が、それぞれ自分の実績をつくるために、中小企業の者には中小企業の共済をつくる、それから中小企業労働者には退職金の共済をつくる、それから大企業のためには企業年金をつくっていく、農民には農民年金をつくる、そうしてそれに一割か一割五分の補助金をつけてお茶を濁していく、これではいかぬじゃないか。毛利元就だって三本の矢は一本一本では折れるけれども三つを一本にしたら折れぬぞと教えてくれているのだから、それらのものを一括して集めて、厚生年金にたとえば三割の国庫補助を出すということになればずっと前進をするわけです。それをいま言ったようにぱらぱらと少しずつ出していくと、結局結論は三割とられているのだ。それをあなたが五分ずつ出しておるからいかにも三割とられていないような感じがするけれども、集めてみたら三割とられてしまっておるということなんですよ。だからそうでなくてやはりきちっとしてください。もう一つ今度は労働省のほうで労災保険法の一部改正法案を出しているわけです。これはいままでは一時金だったのです。労災のほうは一時金であった。長期のけい肺その他は年金だった。ところが今度労働省はこれを全部年金化するのですよ。一方厚生年金に障害年金がある。労災はまたこれを今度は年金化していく。こういう形で根本的な検討をやることなくばらばらに各省がやっていっておるわけです。こういうことでは社会保障の前進はない。もう少しきちっと体系を整理してやる必要があるということです。これは現実にそういうことがどんどん行なわれておるのですから、もう少しあなたのほうの主計局を督励をして、そして各省との連携を密にしてやらないと、医療問題と同じ形がやがて五年か十年したら年金で起こってくるということを私は言いたい。   〔小沢委員長代理退席、委員長着席〕  それからもう一つ、最後に予算の問題です。いま河野君の質問に対して総理の御答弁等もありましたが、議会である程度修正が行なわれるということになれば、それはもう私は社会保障の前進ですから異議ありません、こういうことになった。そうしますと、当然われわれはいまの一割五分ぐらいの国庫負担ではだめだと思っています。三十五の保険料率を五十八にも上げるわけですから、こういう点についても問題があるわけです。そうしますと、保険料の問題と国庫負担の問題の両面から予算上の問題が出てくるわけです。私は実はこれは少し詰めておきたいと思いましたけれども、まだこれは海のものとも山のものともわからぬ。しかし総理は、もしそういう議会の意思が決定をすれば、私は社会保障の前進ですから異議ありませんという内閣を代表しての説明があったのですから、当然そういう場合の予算措置については大蔵大臣としては責任を持っておいてもらわぬことにはどうにもならぬわけです。その点は私もこまかくは言いません。あなたの覚悟のほどだけをひとつ明らかにしておいてもらえばいいのです。
  102. 田中角榮

    田中国務大臣 私は政府の原案がそのまま通ることを希望しておりましたが、総理大臣が、内閣の主官者が何か申されたということでございますから、そうすれば連帯して国会に責任を負っておる閣僚でございますので、遺憾ながら自説を引っ込めて総理大臣の意見に沿わざるを得ないわけでございます。しかし、そういうことがもし起こって、負担率等が若干引き上げられて予算に穴があくというような場合には、所要の予算措置、財政措置というものは当然しなければならぬわけでありますので、何らかの措置をいたします。
  103. 滝井義高

    ○滝井委員 ぜひひとつそこだけはきちっと政治責任を持っておいていただきたい。いま、総理の言に従うということですからこれで終わります。  最後に、さいぜん私総理に要請しましたけれども、総理はただそういう方向で努力をするというだけだったのですが、資金運用審議会の委員の問題です。私たちはほんとうはここでこの年金積み立て金を特別勘定にしてくださいということを強硬に主張したいのです。ところがそれはなかなかすぐには大蔵省は受け入れてくれない。そこで先般以来使途別分類表というものができて、その使途別によって年金積み立て金の使途を明らかにするのだ、こういうことになっておるわけです。そこでそういう使途を明らかにする過程はどこでやるかというと、この資金運用審議会でやることになるわけです。ところが私委員を調べてみました。そうすると中山伊知郎さん、末高信さん、足立正さん、今井一男さん、工藤昭四郎さん、鈴木武雄さん、中村一策さん、こういう人が入っております。七人です。ところがこの中に学識経験者、銀行家、商工会議所の会頭等は入っているのですが、たとえば税制調査会に岩井氏が入っています。あれは学識経験者で岩井さんは入っていると思う。そういう形の人を、これは八人にしてでもいいから一人くらいは——私はだれと名前は言いません。何も労働者代表だからといって学識経験がないわけではないのですから、もういまみんな勉強して大学を卒業した労働組合の幹部はたくさんおります。企業の専門家だっておりますから、やはりそういう人を一人——銀行家その他商工会議所も入れているのですから、一人はそういう人を入れることが必要だ。そしていま言ったように特別勘定ということを主張しておったのだけれども、あれは全然入れてもらえぬので不満がうっせきしているわけです。その不満をやわらげて民主的に運用しようとすると、そういう優秀な人を一名くらいは入れるのは当然だ。これは厚生大臣としては当然じゃないかと思うのです。だから、そのくらいのことは大蔵省も——私は城を明け渡せとは言いません。城の一画に一つ入れてもらいたい、足を入れさせてくれ、このくらいの要求は佐藤内閣大番頭の田中角榮大蔵大臣、寛容と調和を唱える内閣ですから、これを入れることこそがほんとう年金に調和ができることなんです。ひとつどうですか。
  104. 田中角榮

    田中国務大臣 資金運用審議会の委員労働者代表も入れろという話は前からございます。ございますが、総理大臣どうお答えしたかわかりませんけれども、この問題は労働者の福祉が守れるような、国民全体の福祉が達せられるように十分な検討をしなければならぬということはあたりまえのことであります。ただ、労働者の代表を一人入れたことによってそれが一体達成できるのか。こういうふうに国会であなた方にこまかく御説明申し上げ、こうして審議を続ける、こういうことによって十分達成せられないのか。ただ人を入れるだけで達せられるかもしれませんし、かえってそれを入れたためにという問題もあると思いますし、こういう問題は歴史上長いことを検討されておる問題でありますから、慎重に合理的に検討いたします。
  105. 滝井義高

    ○滝井委員 なるほど労働者代表を一人入れたからといってできないかもしれません。しかし、やはり自分たちの代表が入って、そこで発言をして、しかもできなかったのだということになれば、やはり政治というものはときにはあきらめが必要になってくる。なるほどこれは利益代表じゃない。学識経験ある者は一人や二人はおるはずです。そういう人を入れなさい。これがみな学者なら話はわかる。ところが銀行家も入っている、銀行の会長も入っている、工藤昭四郎さんは都市銀行の総裁でもあるのです。入っておるのですから、そういうものが入れるものならば、税制調査会に学識経験者が入るようにそういう形で入れたらどうですか、こういうことなんです。
  106. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほど申し上げたとおり、総理大臣も慎重に検討いたしますと言われたそうでありますし、あなたも御承知のとおりこれは何年も前から私は知っておる。郵政大臣ころからずっと話も聞いておりますし、この二、三年来そういう御意見はございます。ございますが、一体どういう人を入れればいいのか、もっと具体的に、こうして御審議をいただいたら目的を達成するまでどういう努力をするのかということはこれは十分検討しておる問題でありますし、きょう私が何とかいたします、どうしますということを申し上げればいいかもしれませんが、慎重に合理的に、こう申し上げておるのでありますから、きょうはこれだけでひとつお願いします。
  107. 八木一男

    八木(一)委員 大蔵大臣質問をします。いま河野委員や滝井委員や私の言ったことについて、大蔵大臣ほんとうに勇敢に積極的に熱心にやらなければならぬと思いますが、これをぜひ勇敢にやられることを要望して次の質問をいたします。  スライドの問題でありますが、今度の法案の中に「生活水準その他」という文言——これは国民年金法にもございます。ごらんにならなくてもわかるように質問します。この間の質問として、厚生大臣といろいろ討議しまして意見の一致を見たことでありますが、「生活水準その他」ということについて、生活水準の上昇とか、あるいは物価という二つの要件があるということについて意見の一致を見ました。大蔵大臣は非常に頭のいい方でありますからすぐ理解をされると思いますが、スライドの問題について、いまは物価の値上がりに対してスライドしなければならないということが一般的に理解をされております。ところがこの法案をつくったときにはいろいろな関係で検討されて、物価の問題と生活水準上昇の問題を二つ加えて「生活水準その他」という表現になっておるような説明でございました。そのように私も理解をいたしました。スライドの問題は物価の問題についてスライドをすることが現今として最も必要でありますが、それとともに、物価が完全な安定をしたときに経済の成長があり、現時点で、生産努力によって分配が国民全般的に生産に従事しておる人にはふえておる。それを前時代の生産増強のために努力された老人に均てんせしめる——物価が安定した場合においても生活水準の上昇に応じて老人に対してスライドするということが必要であるということが学界の定説であり、またわれわれの質問に対して厚生大臣と意見の一致を見たところであります。そのことを大蔵省は当然同じ理解のもとに、物価についてのスライドと、国の生産の増強、生活水準の上昇というものについてのスライドと別々に考えて、両方ともにスライドするという認識を持たれることがしかるべきだと思うわけであります。その点についての田中大蔵大臣の明確な理解を伺っておきたいと思います。
  108. 田中角榮

    田中国務大臣 国民経済の状態によってだんだんと給付水準を上げていくということは、これは当然考えなければなりません。考えなければならないからこそ今度の改正案給付水準を上げよう、こういう誠意を披瀝をしておるわけであります。しかし、物価賃金に形式的にスライドする、こういう考え方には立っておらないわけであります。ですから、あなたと学者のどなたかがスライドすべきだということになった、厚生省もそういうように合意したということでありますが、ここは何かちょっとおかしいような気がいたします。これはそうではなく、当然労働者老後や、それから遺族に対する給付でありますから、国民経済や財政事情やそういうものを十分見ながら前向きな施策をとる。これはもう今度やっていることと同じことでありますが、これは生産者所得補償方式と同じようにして、数字が上がればそのままスライドして自動的に給付水準を上げなければいかぬということとはもう全然性質が違うものでありますから、スライドというものの考え方を、給付を上げるために財政やいろいろ諸般の事情を見ながら給付率を上げて生活向上に資さなければならぬというこの制度の目的というものと、形式的スライドというものを別に分けて御議論をいただきたいというように考えます。
  109. 八木一男

    八木(一)委員 非常に重要なことでありますから大蔵大臣よく聞いていただきたいと思うのです。物価のスライドという問題は物価についてのスライドというのが国民の一般的な認識であります。この年金制度について、たとえば国民年金について、非常に欠点はありましたけれども政府側としては前進と思ってやられた国民年金制度について非常に反対運動、批判運動、そういうものが起こりました。それは十分御承知であろうと思う。その中のいろいろな部分がありますが、一番根底は、いままで蓄積をした貯金であるとか、あるいは生命保険の契約であるとか、そういうものが、受け取ったときにインフレによって全然ただ同様なものになっておった、そういうことから、そういうような長期に預ける制度、その中の年金制度に対する不信の念としてああいう反対運動が起こった。現在の国民の認識は、物価について、物価が十倍になった、貨幣価値が十分の一になったときに、その年金をもらっても期待をしている生活の十分の一もできないというようなところに年金制度に対する不信があるわけであります。物価についてスライドをすることは当然中の当然である。これは厚生大臣がはっきりそれを認めたところであります。それとともに、もちろんダブるところもありますよ。物価が上がれば賃金も上がる。生活水準のダブることもあるが、学問的にちゃんと理解をしまして、物価が完全に政府の施策よろしきを得て安定をした場合、その場合にも生産の増強がある。それについて生産を担当しておった人が当然配分を受ける。それを年寄りになった人が配分にあずからないのでは、その基盤をつくった前代の老人に対する社会的な親孝行を果たすことにはならないということで、そのような配分に対する生産力の増強とか生活水準に対するスライドということが固定的に必要である。そのほかにそのような物価の変動に対してのスライドが必要である。そこを——もちろんダブる面はあります。ダブる面については具体的に検討してよろしいですが、基本的に見て貨幣価値が変動した、物価が変動した場合については、それについてスライドをする。それから国民の生産が上がって、配分がふえたときには、それを前代に働いた老人にも配分する、理論的にその二つのことが必要であるということを確認していただかなければ、田中大蔵大臣がそういう問題について理解が薄いということになる。あなたは非常に頭はいい人だと私は思っている、おせじではなしに。そういうことがわからぬはずはない。そこで政府のへんてこりんな防衛の立場に立つ必要はない。理論的に二つの部分がある。そこで現象的に物価が上がれば賃金が上がって、それで生活水準が上がるという部分もあります。そのダブった部分については学問的に分析をして考えたらよろしい。しかし基本的には、理論的には、原則的には、物価に対するスライドと、それから生活水準の上昇による、国民生活上昇による配分を一般的に及ぼすというスライドが必要であるということをあなたがわかっていただかなければ、非常に残念だと思う。わかっていただかなければ、これは大蔵大臣として、国務大臣としての資格は一切ない大臣であるということが言えるわけであります。そういう点でひとつお答えを願いたい。
  110. 田中角榮

    田中国務大臣 どうもそのとおりでございます、こう言えばいい大臣だと言われるのかもしれませんが、そうばかりも言えないわけでございます。先ほどから申し上げておりますように、国民生活水準が上がったり、またこういう制度そのものが、労働者老後や遺族の生活向上に資するためにある制度でありますから、当然時の事情を十分勘案して、絶えず給付の向上に意を用いなければならないということが基本的な姿勢でございます。今度もその立場に立って改正案を御審議いただいておる、こう申し上げておるのであります。ただ、物価が上がったら、年金やすべてのものはスライドしなければいかぬ、こういう単純な理論にはつながらない。これは当然時の経済情勢や財政の事情とかそういうものを勘案しながら給付水準を上げていく、こういうふうに分けて考えていただきたい。ですから、物価賃金が上がったからといって、年金というものの給付額が自動的にスライドするというような考え方とは事実違うものでありますから、だからそういうことは十分考えていただきたい、こう申し上げておるわけであります。
  111. 八木一男

    八木(一)委員 大蔵大臣は、私が声をでかく言っているのでかえってわかりにくかったかもしれないけれども、よく考えていただきたい。その具体的な問題については、大蔵大臣は、いろいろ野党から攻撃される心配があるから、その問題についてことばをぼやかしておられるけれども、いま私は、お断わりしているように理論的な問題として、原則的な問題として質問をしているわけだ。そこで、たとえば物価が一%上がったからそのとおり上げろといっても、これは技術的に困難であることはわれわれといえども十分に承知している。たとえば、その具体的なことについての問題はしかるべき審議会でもつくって、この問題を具体的にどうするということを審議すればよろしいけれども、原則的に物価が十倍に上がった、貨幣価値が十分の一に下がった、そういう場合に、前の貨幣価値で納めた保険料、またそれに対応する生活を期待している年金が実質価値が十分の一になれば、これは年金制度全体に対する国民的な全面的な不信が起こる。物価に対して年金額というものはスライドをしなければならないということが、一つの基本的な学問的な原則である。  それからもう一つは、国民の努力によって経済力がどんどん発展をした、そうして生産部門を担当している人の賃金なり、商売の収入なり農業収入なりでそういうものが返ってきますが、老人というものはすでにその生産部門から離れている、賃金収入においてあるいは自営業の収入において、自分にその後の経済の進展が回ってこない。そのことの基礎をつくった前時代の老人に対しては、その国民的の配分を年金のスライドによって及ぼさなければならないという一つの原則があります。それをあなた方は非常に便利なことばで「生活水準その他」とあらわしておられる。それは不十分だと思うけれども、それはそれとしてよろしい、よろしいけれども、基本的には物価に対するスライドと配分に対するスライドの二つの考え方があって、それを実際にはかるときに生活水準とかそういうものを政治的に勘案をしてスライドをきめていくということに反対はしないけれども、基本的には二つの要素がある。二つの要素についてスライドをしなければならないということは当然あなたは理解されなければならないことだと思う。厚生大臣は当然理解をされました。あなたはいまの論戦の経過から見て、メンツなどを捨てられてそういう点について理解を深めていただかなければ、大蔵大臣としてこういう問題に対処されるのに不十分であろうと思う。その問題を基本的に認めて、具体的には生活水準の上昇によっていろいろな財政とにらみ合わせてこういうふうにやるとかなんとかいう問題はありましょう。それについては審議会で審議して、具体的な方法は何がいいか国会でも論議してやることになろうと思いますが、基本的にはその二つの要素があるということについて理解を深めていただかなければ非常に問題があろうと思う。
  112. 田中角榮

    田中国務大臣 ちょっとこの問題は重要な問題です。あなたと同じような、そうでございますということばを私がもし吐いたとすると、これは年金だけではなくあらゆるものが物価にスライドするという原則を私は認めることになるので、これは遺憾ながら認めるわけにいきません。あなたは現実問題ではなく逆におっしゃっている。現実的には物価が上がれば物価が上がったことを見ながら給付を現実的に増大していくということを考えなければいかぬと言われればわかるのですが、そうじゃなく、理論的に物価に対してはスライドすべきものだ、理論的にすべきものだというところが全く逆なんです。理論的にはこの種の制度物価賃金に単純にスライドすべきものではない。理論的には全く違う。しかし現実的には、とにかくこの制度があって、何年後に給付をする場合に相当物価の差がある、賃金も上がっておるというようなことは、財政事情、経済事情、国民生活の実態を勘案しながら、時に給付水準を上げるような姿勢でいかなければいかぬ。これは現実問題と理論とは全く違うのであります。あなたは逆なんです、全く私と逆な考え方で責められても、これは理論的には違うことでありますから、理論的にはスライドすべき制度ではない、しかし、現実的には事実を十分勘案してこの制度を発展せしめなければならぬ、こういう考え方であります。
  113. 八木一男

    八木(一)委員 その問題について言い回しでごまかされては困ると思う。あなた方はこの前に、たとえば郵便年金などが戦前から、その戦前の貨幣価値に相当する生活ができる、生活の足しにできるということを国民が期待をして、郵便年金に入った。ところがインフレで貨幣価値がめちゃめちゃに減った。そういう問題についてこれを直さなければならないということについては御同意であろうと思います。御同意であるということは、国民の期待をした郵便年金の契約当時の金額によって保障をされる生活が、時代が変わっても、貨幣価値が非常にぐあいの悪い状態によって変わっても、そのような生活保障するというような考え方にならないということで具体的に対処をされておる。ですから、そのもとにさかのぼれば、理論的にこの問題は物価に対してはスライドをしなければならないという考え方に立っておるわけです。ことばのいき違いであなたはそうではないと言い切っておる。言い切っておるから、いま私の前でそのとおりだということを普通の個人の人間としては言いにくいかもしれない、しかしこのような年金制度とかあらゆるそのような長期の制度について国民信頼を与えるためには、物価に対してはスライドをするということを厚生大臣が言っておることに対して、大蔵大臣がこれを承知をしないということなればゆゆしき問題になろう。この問題についてはあなたがいま理解を示していただければよろしいけれども、そうでなければ閣内の不統一として内閣総理大臣に来ていただいてこの問題について詰めていかなければならないと思います。その点についてことばの言い回しや裏表で、この論戦の勝ち負けということには私もこだわりません。あなたもこだわらないで、このような物価が上がったことについて現実的に対処している。あなたは現実の面から理論の面にさかのぼる。私は理論の面から現実の面にくる。それで表裏一体であって、とにかく物価が変動したことについて年金額を改定をしなければならないという考え方一つ出てくる。  それから、国民的配分について、前時代の社会に貢献をした国民に対してその配分を考えることが必要である。そういう点について同じような理解を示していただかなければ問題は非常に多かろうと思う。この点について大蔵大臣の御答弁をいただきたいと思う。
  114. 田中角榮

    田中国務大臣 理論問題をやっておりますとどうも時間も足りませんし、混線もあるようでございますから、とにかく本件に対する基本的な姿勢を申し上げます。  給付はだんだんと向上せしめていかなければならない、こういう考え方を基本に持っております。ですから、このように改正案も御審議いただいておりますし、特にあなた方がいま何を御修正を考えておられるということに対しても私のほうでやむを得ないかな、こういう姿勢をとっているのですから、この姿勢そのものが給付を上げていくという、この制度を大きくしていくという考え方に立っておるのでありますから、これで御理解を願います。
  115. 八木一男

    八木(一)委員 大蔵大臣答弁は非常に不十分であります。この問題について内閣総理大臣の御出席を要求をいたしたいと思います。
  116. 松澤雄藏

    松澤委員長 お答えを申し上げます。  総理大臣のほうは予定の時間で外国使臣と現在会談中でございますから、直ちにいま御要望にはおこたえは困難だろうと思います。
  117. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣と大蔵大臣の意見が違いますから、それについて総理大臣質問しないと閣内が不統一になりますから、総理大臣をぜひ呼んでいただきたいと思います。
  118. 小林進

    ○小林委員 私は関連ですし、しかも与えられた時間は三分ですから、羅列的に申し上げますから覚えていただいて、メモをとっていただきたい。そうしてお答えいただきたいと思います。  第一に、こういうふうな大きい法案に対しては、やはりいま少し立法例とかあるいは各国のこういう制度の比較法とかいうものを、あなた方は丁寧に出してくれなければ困ると思う。それから法文のていさいだってそのとおり。まだこの法文のていさいに関する論議は一つも行なわれていないが、この法体系は実に矛盾しておりますよ。そういうことは、残念ながら時間がありませんから一々述べませんけれども、第一に立法の問題で申し上げたいのは、この年金の一番の中心は、実質的に年金の価値を維持するということがこの法律の基本にならなければいけないですよ。これはいまスライドの問題でだいぶ論議されましたから私は触れませんけれども、その点をどういうふうに重要に考えて処置をせられる考えであるか。これは私は、年金制度を設けても、実質的価値が維持できないような年金制度では、そんなものは何にもならないと思うのです。それから第二番目に、その立法論に関連しまして、法律の第一条は目的だけれども、こんなふていさいな第一条なんというものはいままでない。これは私は法制局の仕事だと思うのでありますけれども、この法律の目的は、この黒字で書いてあるところはいいけれども、そこへつけて赤字で書いたのは、法律の目的としてなっていないです。どの法律だって、こんなふていさいな第一条なんてあるものじゃない。これはどこかでお直しになるお考えがあるかどうか。  それから第二番目は、比較法の問題でお尋ねをいたしますけれども、こういう年金制度は、この類似的な制度はスウェーデンにもあるでしょう。多使用者年金とかあるいは携帯年金、ポータブルペンション、こういう制度も、審議の過程においてちゃんとその立法例あるいは類似例として出しておかなければいけません。われわれは残念ながらそういう各国の類似の法律に対する研究を営む時間がありませんし、われわれがここで論議するものは後世の歴史に残るのですから、あの当時の委員会ではさっぱり学問的な研究がなかったなんて言われたらわれわれは後世の人に笑われるから、私がいま申し上げましたそういう資料をここへ出していただきたい。これは後日ここへ配付していただきたい。  それから、三番目に私は申し上げますけれども、適用事業所の問題です。これは先ほどから常時五人未満の問題は論じられておりますけれども、私は五人未満は別として、この厚生年金に除外されるもの一あなた方は常時五人以上を使用するもの、十六の業種を列記していることは健康保険と同じである。常に除外されておるものを新しく採用しない。その除外されておるものは、農林、水産、畜産あるいは飲食店業、特に理容業などというものは、労働基準法の適用事業であるにもかからず、厚生年金保険法の適用事業所になっていない。なぜこういうものを新しい法律改正のときに真剣に取り上げないのか。そのほか映画、演劇、旅館あるいは弁理士、こういうのはみんな労働基準法上の適用事業であるにもかかわらず、厚生年金保険法、これには適用事業所になっていない。法律上これは矛盾しているじゃありませんか。いかにも親切がない。こういう問題は、参議院にいく過程においてもていさいを整えられて、いま少しこの適用事業所の範囲を広めて、年金の恩恵に浴するという配慮がなくちゃいかぬ。一体これをおやりになるお考えがあるかどうか。  そのほかに被保険者資格の除外事例、これは法律第十二条のこういうものの中にも、私はいま少し、季節的業務に使用される者等についても、これは特に出かせぎ者の多い問題ですから、こういうものをきめこまかく適用できるように考慮されなければならぬ。第十二条をいま少しきめをこまかくいたしまして、そして除外事業というものをなるべく狭めて、ひとつ適用を親切にしてもらえないかどうか。よろしゅうございますか。  それからいま一つは、これは先ほど申し上げました基金の役員は一体兼務を認めるのかどうか。これは特別法人でありますから、あなた方は基金の役員には刑事罰を加える、いわゆる公務員と同じような刑罰の対象にする義務を押しつけると言われておりますけれども、これほど高いようなそういう権利義務に立つものを、会社の重役が兼務したり社員が兼務して、いかにも私は矛盾があると思う。こういう点、一体兼務を認められているのか認められていないのか。  それからいま一つは、千分の五十八を五十五にお直しになるか。そうしたらこれは国庫に納入する率が、三十三が三十一になる。それから企業のほうに持っていくのが二十四プラスアルファ、そうでしょう。こういう分類のしかたが一体適当であるかどうか。私はむしろ、三十三は動かさないでいたほうがいいのではないのかと考えるが、この点はどうか。私は時間は厳格に守るから、以上をもって私のかおり高い質問は終わります。
  119. 神田博

    神田国務大臣 小林委員から、厚生年金法の御審議にあたりまして諸外国の例を引いた資料がほしかった、こういうことでありましたが、ごもっともなことだと思います。できるだけひとつ整備してお届けいたしたい、かように考えております。  それから、年金制度が将来に向かって実質的価値を維持するように配慮したらどうかという問題でございましたが、これはそういう前向きの姿勢でございまして、たびたびお答え申し上げておるように、物価の値上がりを相当上回る幅を持った改正にしておる。それからまた、将来におきまして国力の充実等も考慮いたしまして前向きで努力してまいりたい、かように考えております。  それから第三点でございますが、一体どこの制度を取り入れたかというようなお尋ねでございました。大体イギリスの制度を十分参考にして考えております。  その次の適用事業所の問題につきまして、原始産業その他で除外されておるのがございます。大体五十四万人ほど除外になっております。これらにつきましてはできるだけひとつ入れてまいりたい、前向きで検討いたしております。  なお、十二条の日雇い、出かせぎ者の関係につきましても、これも前向きでひとつ入れてまいりたい、かように考えております。  それから最後の、基金の役員の兼務が許されているかどうかということでございますが、これは兼務差しつかえないというように考えております。  以上お答え申し上げます。
  120. 松澤雄藏

    松澤委員長 吉川兼光君。
  121. 吉川兼光

    ○吉川委員 私の持ち時間は一分となっていますが、いま小林委員が三分の持ち時間で質問し、それに、大臣答弁を入れて合計した時間の三分の一を私は使わせていただくことを申し上げておきます。  神田大臣は先日の委員会で、私の質問に対し、政府原案に対しまして、よりよき修正案のようなものが出てきた場合は、考慮の余地なきにしもあらずといったような、きわめて弾力のある御答弁を伺ったのでありますが、わが党といたしましては、政府原案に対し、次のような修正案を持っております。いま、その要点を読み上げてみることにいたします。たとえば、保険料率につきましては、政府案の男子千分の五十八を千分の五十五に、女子の場合は千分の四十四とあるのを千分の三十九に改める。さらに、国庫負担は百分の二十に引き上げる。それからスライド制につきましては、年金が実効があるものとするためにこの具体的な導入を法文化する。次に、女子の脱退手当金につきましては、臨時措置といたしまして、任意脱退一時金制度については旧法の状態に復活する。これは御存じのように四十一年まで既得権がありますから、せめてそれに五年を足したもの、すなわちいまの時点で言いますと六年くらいの延期を認める。さらに、これは大事なことでありますが、女子で、前回の三十六年の改正から今回の改正までの間に加入し、脱退する者、これらの人にも不利益をこうむらないよう何らかの救済措置を講ずる。また、調整年金につきましては、これは政府案から厚生年金基金及び厚生年金基金連合会に関する部分を削除する。そして、これについては別に法律で定める旨を規定することにとどめる。まあ、大体こういうふうなことを主眼として、われわれは修正を考えておるのでございます。聞くところによりますと、委員長はわれわれの修正案とすれすれのところで修正案を用意されておるように聞き及んでおるのであります。はたして委員長の用意しているといわれる修正案がどんなものであるか、つまびらかにいたしませんが、もし伝えられるように、わが党のかねて主張してきた修正案に近い線で、松澤委員長から修正案が出ました場合に、大臣においては十分に考慮するお考えがあるかどうか、この機会に伺っておきたい。簡単でよろしいから、明快にお答えいただきたい。
  122. 神田博

    神田国務大臣 お答え申し上げます。  委員会の審議の結果、ただいま吉川委員の御意見の内容の修正をおきめになられた場合は、その趣旨に沿うよう最善の努力をいたしたいと存じます。
  123. 松澤雄藏

    松澤委員長 河野正君。
  124. 河野正

    ○河野(正)委員 いろいろ次々にバッターが出てきてヒットの連続ですが、それほどこの厚生年金については問題点が多いということだと思うのです。そこで、具体的内容については、いままで各委員がそれぞれ時間をかけて御指摘になり、また政府の反省を求め、政府の再検討を求められたことだと思うのです。私どもも今日まで前向きで、労働者にとってよりよい厚生年金をつくろう、そういう方向で建設的な研究なり検討をわれわれも加えてまいったのでございます。したがって、いろいろ問題点は多いわけでございますが、大づかみにつかんでも、これを要約いたしますると、大きな問題点だけでも大体十二項目あるように私どもは判断をいたしております。その中には、料率あるいは額を決定する国庫負担金の問題、あるいは調整年金が非常にいろいろ問題を呼び起こしてまいったわけですから、したがって、その調整年金制度についてもなお御検討願う価値があろう、それらについては一応半年間くらい凍結をして、そうして社会保険審議会で再検討する、こういうような両党間の、与野党の理解点にも到達をいたしておるという面もございますが、しかし、それにしてもまだ不十分な点がある。そのほか、定額部分が五千円では少ないのだからもっと上げろというふうな問題もございますし、あるいは積み立て金の資金運用という問題もございますし、これはもう労働者にとってはきわめて重大な問題が、いま一部申し上げたわけですけれども、たくさんある。したがって、これはよほど政府なり厚生大臣——主管大臣厚生大臣ですから、厚生大臣がふんどしを締めて取り組まないことには、そういう問題点を解決することはできない。しかもこの厚生年金というものは、労働者生活保障老後保障ということを対象にしておるわけですから、したがって、いま私が一部は指摘をいたしましたが、そういう諸問題の前向きの改善をはかっていただかなければ、真の労働者の福祉ということはあり得ぬわけですから、そういう意味で私はこの際、所管大臣でございまする厚生大臣の重大なる決意というものが当然示されなければならぬ、こういうように考えるわけでございます。いままでいろいろと私、さらに各委員から申し述べられました重大な諸点について、今後どういう重大な決意のもとに前向きで改善のために努力されようといたされまするか、その辺の腹づもりをひとつ率直にお聞かせいただきたい。
  125. 神田博

    神田国務大臣 お答えいたします。  ただいまお述べになりましたような問題が、この厚生年金法の審議にあたりましていろいろお述べになられたことは御承知のとおりでございます。どれを一つ取り上げましても重要なる問題であり、また将来につながっておる問題であることは申し上げるまでもないと存じます。厚生大臣といたしましては、この委員会でいろいろ御論議された点、またいろいろ未解決の点、また将来給付の引き上げ等について特段の考慮を払うというような点につきましては、十分検討を加えまして、そしてこの論議が反映されるような方向にひとつ持っていきたい、かような強い決意を持っておることを申し上げまして、お答えにかえる次第であります。
  126. 松澤雄藏

    松澤委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  127. 松澤雄藏

    松澤委員長 この際、本日まで委員各位と十分協議し、私の手元で起草いたしました両案に対する修正案を提出いたします。
  128. 松澤雄藏

    松澤委員長 修正案はお手元に配付してございます。その趣旨について御説明申し上げます。  まず、厚生年金保険法の一部を改正する法律案に対する修正についてその内容を御説明申し上げます。  第一に、保険給付費に対する国庫負担率の引き上げについてであります。現行の国庫負担率は、一般男子及び女子一五%、坑内夫二〇%となっていますが、これをそれぞれ五%ずつ引き上げ、一般男子及び女子二〇%、坑内夫二五%としたことであります。  第二に、保険料率の引き下げについてでありますが、国庫負担率の引き上げとの見合いにおいて、改正法案における保険料率を引き下げることとし、第一種被保険者、一般男子については千分の五十八を千分の五十五に、第二種被保険春、女子については千分の四十四を千分の三十九に、第三種被保険者、坑内夫については千分の七十二を千分の六十七に、第四種被保険者、任意継続被保険者については、千分の五十八を千分の五十五に改めるなど、それぞれ引き下げの措置を講ずることとしたことであります。  第三に、年金額の調整に関する規定につきましては、国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるため、すみやかに改定の措置が講ぜられなければならないと、その規定の強化をはかることといたしたのであります。  第四に、女子に対する脱退手当金の特例支給についてであります。  今回の改正法の公布の日から起算して六年以内に被保険者の資格を喪失した女子に対しては、従前の例により脱退手当金を支給することとしたことであります。  第五に、厚生年金基金の設立にあたっての労働組合の同意についてであります。  適用事業所の事業主が基金を設立しようとするときは、被保険者の二分の一以上の同意のほか、新たに当該事業所に使用される被保険者の三分の一以上で組織する労働組合があるときは、当該労働組合の同意を得なければならないこととしたことであります。  最後に、改正法は、原則として公布の日から施行し、昭和四十年五月一日から適用することとし、厚生年金基金及び厚生年金基金連合会に関する部分は、その施行を昭和四十年十一月一日からとしたことであります。  次に、船員保険法の一部を改正する法律案の修正につきましては、厚生年金基金に関する部分を除き、国庫負担率の五%引き上げ等、厚生年金に準ずるものでありますから、内容の説明を省略させていただきます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)  以上が本修正案を提出した趣旨と内容でございます。  この際、両修正案について、国会法第五十七条の三による内閣の意見があればお述べ願いたいと存じます。厚生大臣神田博君。
  129. 神田博

    神田国務大臣 厚生年金保険法及び船員保険法の一部を改正する法律案について、政府としましては原案の成立することを希望しているが、同法の修正案による国庫負担率の引き上げについては、他の共済年金制度とは性質を異にするので、この修正に応ずることにいたしたいと思います。
  130. 松澤雄藏

    松澤委員長 本修正案に対して御発言はありませんか。     —————————————
  131. 松澤雄藏

    松澤委員長 御発言がなければ、両案並びに両修正案を一括して討論に入るのでありますが、別に申し出もありませんので、これより順次採決いたします。  まず、厚生年金保険法の一部を改正する法律案に対する修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  132. 松澤雄藏

    松澤委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  133. 松澤雄藏

    松澤委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。  次に、船員保険法の一部を改正する法律案に対する修正案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  134. 松澤雄藏

    松澤委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  135. 松澤雄藏

    松澤委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     —————————————
  136. 松澤雄藏

    松澤委員長 次に、ただいま議決いたしました両案について、委員長の手元で附帯決議を起草いたしました。  案文を朗読いたします。     厚生年金保険法の一部を改正する法律案に対する附帯決議   政府は、厚生年金保険制度の改善拡充に一層努力し、特に左記事項については特段の考慮を払い、早急に適切な措置を講ずるべきである。         記  一 年金に対するスライド方式の確立については、その具体的方式を検討するため、審議会等により、なるべく速やかに結論を出す措置を講ずること。  二 定額部分の増大については、今後一層努力すること。  三 五人未満事業所に対する厚生年金保険の適用については、改正法公布後二年を超えない期間内に立法化を図るよう努力すること。    なお、日雇労働者に対しては、その雇用の実態を勘案し、これが適用についても速やかに検討すること。     船員保険法の一部を改正する法律案に対する附帯決議   政府は、船員保険制度の改善拡充に一層努力し、特に左記事項については特段の考慮を払い、早急に適切な措置を講ずるべきである。         記  一 年金に対するスライド方式の確立については、その具体的方式を検討するため、審議会等により、なるべく速やかに結論を出す措置を講ずること。  二 年金の定額部分の増大については、今後一層努力すること。  以上の附帯決議をそれぞれ両案に付したいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  137. 松澤雄藏

    松澤委員長 起立多数。よって、さよう決しました。  この際、神田厚生大臣より発言を求められておりますので、これを許します。厚生大臣神田博君。
  138. 神田博

    神田国務大臣 ただいまの附帯決議の御趣旨を十分尊重いたしまして、善処いたしたいと存じます。  いろいろありがとうございました。(拍手)     —————————————
  139. 松澤雄藏

    松澤委員長 ただいま議決いたしました両案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  140. 松澤雄藏

    松澤委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。   〔報告書は附録に掲載〕
  141. 松澤雄藏

    松澤委員長 暫時休憩いたします。    午後一時十七分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕