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1965-04-21 第48回国会 衆議院 社会労働委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月二十一日(水曜日)    午前十一時三十七分開議  出席委員    委員長 松澤 雄藏君    理事 小沢 辰男君 理事 齋藤 邦吉君    理事 澁谷 直藏君 理事 藤本 孝雄君    理事 河野  正君 理事 八木  昇君    理事 吉村 吉雄君       井村 重雄君    伊東 正義君       亀山 孝一君    熊谷 義雄君      小宮山重四郎君    田中 正巳君       竹内 黎一君    地崎宇三郎君       橋本龍太郎君    松山千惠子君       粟山  秀君    山村新治郎君       亘  四郎君    淡谷 悠藏君       伊藤よし子君    小林  進君       滝井 義高君    八木 一男君       山口シヅエ君    本島百合子君       吉川 兼光君    谷口善太郎君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 神田  博君         労 働 大 臣 石田 博英君  出席政府委員         厚生政務次官  徳永 正利君         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚生事務官         (保険局長)  小山進次郎君         厚生事務官         (年金局長)  山本 正淑君         厚生事務官         (社会保険庁年         金保険部長)  実本 博次君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働基準監督官         (労働基準局労         災補償部長)  石黒 拓爾君  委員外出席者         大蔵事務官         (国税庁直税部         審理課長)   小宮  保君         労働基準監督官         (労働基準局賃         金部企画課長) 佐竹 一郎君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 四月二十一日  委員滝井義高辞任につき、その補欠として楯  兼次郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員楯次郎辞任につき、その補欠として滝  井義高君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月十五日  労働基準法の一部を改正する法律案井手以誠  君外十四名提出衆法第二五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一二四号)  厚生年金保険法の一部を改正する法律案内閣  提出第二号)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第三号)      ————◇—————
  2. 松澤雄藏

    松澤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。
  3. 松澤雄藏

    松澤委員長 提案理由の説明を聴取いたしま、す。労働大臣石田博英君。
  4. 石田博英

    石田国務大臣 ただいま議題となりました労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  労働者災害補償保険制度は、昭和二十二年に創設されて以来、労働災害をこうむった労働者及びその遺族に対し災害補償を行ない、あわせて労働者の福祉に必要な施設を行なうことによって、労働者及びその遺族保護に力を尽くしてまいりました。この間、わが国経済の成長と相まって、労災保険加入事業場数も逐年増加し、保険経済規模拡大の一途をたどり、現在、労災保険適用事業場数は約八十八万、労働者数は約二千万人でありまして、年間約百万人の労働者及び遺族に対し、約五百億円にのぼる保険給付が支給されております。  しかしながら、従業員五人未満零細事業や商業、サービス業などの任意適用事業に働く労働者等でいまだ労災保険保護の外にある者も決して少なくない現状であり、最近における社会経済情勢の変化により、これらの労働者保護をはかるため、労災保険適用拡大が強く望まれるに、至っております。  また、労働災害をこうむった労働者及びその遺族に対して、必要な期間、必要な補償を行なうという見地から、障害者遺族に対する保険給付については、原則として年金制を採用し、これによってその生活の安定をはかるとともに、労災医療及びリハビリテーション施設充実と相まってその社会復帰に資することが必要であると考えるのであります。とのことについては、去る昭和三十五年における労災保険法改正の際においても、衆議院及び参議院の附帯決議におきまして、遺族年金制採用等について要望されたところであります。  さらに、労災保険法施行十数年の経験及び最近の諸情勢に徴して、保険給付保険制度及びその運営につきまして、なお改善すべき点がしばしば指摘されているのでありますが、特に労災保険適用範囲がますます拡大されようとする事態に対処して、労災保険事務手続簡素化して、事業主等負担を軽減するとともに、保険者たる政府保険運営を能率的にすることが強く要請されており、このためにも、施設充実、運用の改善と並んで、現行法令整備が必要であると考えるので  あります。  政府におきましては、これらの問題を含めて労災保険制度の全般にわたって検討を進めてきたのでありますが、同時に、労災保険審議会においても、労災保険制度問題点について調査研究が行なわれ、昭和三十八年十月にその結果を労働大臣に報告されたのであります。  このような諸事情を考慮し、政府といたしましては、昭和三十八年十二月に、労災保険審議会に対し、労災保険制度改善につき諮問をいたし、昨年七月、法改正の方向に関する答申を得たのであります。この答申に基づき、労災保険法改正要綱案を作成し、これを同審議会及び中央労働基準審議会に諮問し、昨年十二月にそれぞれ答申を得ました。本年一月右要綱案に若干の修正を加えた要綱社会保障制度審議会に付議し、その了承を得、その結果に基づいて、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案を作成し、国会に提案いたした次第であります。  次に、その内容につきまして概略御説明申し上げます。  この法律案内容は多岐にわたりますが、諸般の準備を整えた上、逐次これを実施に移すこととして、施行時期別に三カ条に区分しております。すなわち、第一条は適用関係療養補償休業補償支給制限保険料等に関する改正規定でありまして、昭和四十年八月一日から、第二条は労災保険事務組合特別加入等に関する規定でありまして、昭和四十年十一月一日からそれぞれ施行することとし、第三条は保険給付年金化を中心とする改正規定でありまして、昭和四十一年二月一日から施行を予定しております。以下、この区分に従って、法律案のおもな内容を御説明申し上げます。  第一に、改正法案第一条の規定による改正のうち、適用範囲につきましては、強制適用事業範囲について、従来のもののほか政令で定めるものを加えて漸次拡大をはかることとするとともに、従業員五人未満零細事業所等へのいわゆる全面適用については、二年以内に成果を得ることを目途として調査研究を行ない、その結果に基づいてすみやかに必要な措置を講ずることといたしております。  次に、保険給付につきましては、給付基礎日額算定にあたって、平均賃金を用いることが不適当な場合には、労働大臣が別途これを定めることとして、特殊事情によって賃金額が不当に低くなる場合等における救済をはかることといたしております。また、療養補償については、従来給付対象としなかった少額の療養費をも支給することとするとともに、休業補償についても、待期期間を三日間とするように改めております。  さらに、事業主責めに帰すべき事由による支給制限を廃止し、その場合にも労働者には保険給付をし、事業主からはその費用の全部または一部を徴収することができることに改めるとともに、労働者責めに帰すべき場合の支給制限についての規定整備することといたしております。  その他、保険料算定、納付の方法等を簡便なものに改めるほか、技術的な事項について所要整備を行なって、保険加入者及び保険者たる政府事務簡素化合理化をはかっております。  第二に、改正法案第二条の規定による改正のうち、労災保険事務組合につきましては、失業保険事務組合の例にならって、中小企業等協同組合その他の事業主団体が、その構成員である事業主の委託を受けて、事業主の行なうべき労災保険事務一定条件のもとに代行することを認めることとし、もって中小企業事業主及び保険者たる政府保険事務負担の軽減をはかっております。  次に、大工、左官等のいわゆる一人親方、自営農民小規模事業主及びこれらの者の家族従業者等労働者と同様な状態のもとに働き、同様な業務災害をこうむる危険にさらされている人々についても、申請に基づき、一定条件のもとに特別に労災保険に加入することを認め、保険給付を受けることができるように特別加入制度を創設することといたしております。  第三に、改正法案第三条の規定による改正のうち、保険給付年金化につきましては、まず、障害補償年金範囲を大幅に拡大することといたしました。すなわち、従来は障害等級第一級から第三級までの重度障害者にのみ年金を支給していたのを改め、第一級から第七級までについて年金を支給することとし、身体障害者が必要とする期間必要な補償を行なうこととしております。  次に、従来一時金であった遺族補償は、原則として年金とし、一定範囲遺族に対し給付基礎年額の三〇%ないし五〇%の額の年金を支給することとし、もって遺族保護の徹底をはかっております。なお、年金を受けることができる遺族がない場合等には、給付基礎日額の四百日分の一時金をその他の遺族に支給することといたしております。  また、長期傷病者に対する補償につきましては、従来の複雑な体系を改め、その内容を従来のような通院及び入院の区別を廃止して、一律に療養給付を行ない、かつ、給付基礎年額の六〇%の年金を支給することとしております。また、厚生年金保険等年金労災保険年金とが併給される場合の調整につきましては、厚生年金等の六年間併給停止制度を廃止し、当初から厚生年金等は全額を支給するとともに、労災保険年金については、従来の方式に準じ厚生年金等一定率相当分を減じて併給することといたしております。  以上のほか、本改正案においては、労災保険事業に要する費用に対する国庫補助等につき所要規定を設けるとともに、その附則において以上の改正に伴う経過措置制度の切りかえに伴う暫定措置及び関係法律の条文につき所要整備をいたしております。  以上、簡単でありますが、この法律案提案理由及びその概要につきまして御説明申し上げた次第であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。      ————◇—————
  5. 松澤雄藏

    松澤委員長 内閣提出厚生年金保険法の一部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、審査を進めます。質疑の申し出がありますので、これを許します。竹内黎一君。
  6. 竹内黎一

    竹内委員 厚生年金保険法の一部改正案についてはすでに橋本委員からも質問があったわけですが、橋本委員が時間の関係で保留をされた点を主として拾い上げて当局の見解をただしたいと思います。  まず第一に、標準報酬についてお尋ねいたします。年金額基礎となっている標準報酬月額は全期間平均をとっているわけですが、しかし、考え方としては、最終報酬あるいはそれに近いものをとるということも考えられる。むしろ日本のような年功序列型の賃金の場合においては、最終あるいはそれに近いものをとるほうが労働者のためにもなるのではないか。現に国家公務員共済、これは最終の三年平均をとっておりますし、公企体職員の場合は最終五年平均をとるというぐあいの制度にもなっておるわけです。この厚年法において全期間平均をとらねばならないという理由を御説明願いたいと思います。
  7. 山本正淑

    山本(正)政府委員 年金制度における報酬とり方につきましては二つあるわけでございまして、一つは、保険料算定基礎としてどういうふうな報酬を把握するかという点と、それから第二点は、給付算定する際における基礎になる報酬をどうするかという二つの要素があるわけでございまして、この問題は必ずしも両者関係が一致しなければならないということではないと思いますが、現在の厚生年金におきましては、両者を一致させております。御指摘のように、共済組合につきましては、最終三年なり五年なりの報酬というものを基準にいたしまして年金額算定もなされておるわけでございます。厚生年金におきましては、制度の発足当時からその被保険者が非常に広範囲対象になっている事業体にかんがみましても、大規模企業から小規模企業まであるし、また事務職員も含んでおるという、非常に種類が多いという関係からいたしまして、かつまた年齢的に相当高年輩になりましても被保険者であるという実態がございますので、しかも賃金体系は御指摘のように現在は年功序列賃金というのが大宗を占めておりますが、職種によりましては、一定の年齢を過ぎますと賃金が下がってくるというふうな、たとえば石炭関係とかあるいは建設業等におきましてはそういった実態もあるわけでございまして、かような厚生年金の被保険者実態に即しまして、やはり被保険者としての期間の全期間を通じての報酬給付基礎基礎報酬とするということが合理的であるということから体系が仕組まれておるのでございます。ただ、厚生年金につきまして、従来の経緯もございますように、戦後のインフレ期という時期に際会いたしましては、過去の報酬が非常に低い形となりましたので、その際におきましては一定限以下のものは一定の額とみなすというふうな修正措置を講じまして、インフレの影響というものを修正するという形をとっておりますし、必要な場合にはそういった方法をとることによりまして、全期間報酬というものを給付基準にすることが合理的ではないか、かように考える次第でございます。
  8. 竹内黎一

    竹内委員 この法案第百二十九条で標準給与ということばが出てくるわけです。一体標準報酬標準給与とはどういう関係にあるのか、同じものをただことばをかえているのか、それとも性質に差異があるのか、その点を御説明願いたいと思います。
  9. 山本正淑

    山本(正)政府委員 御承知のように、厚生年金におきましては標準報酬、これは健康保険でもさような標準報酬という形をとっておりますが、これは一応恒常的な賃金を主体といたしまして給与標準報酬として把握いたしまして、そうして級別段階を設けまして大きく段階別にくくってある、こういう形をとっております。企業年金との調整措置を講じます際に、実は標準給与ということばを使っておりますが、それは調整される企業年金についての報酬とり方標準給与と呼んでおるわけでありまして、標準報酬と呼ばなかったのは、厚生年金におきましては標準報酬というものは一本でございますが、調整される企業年金につきましては標準給与という名前で呼んで、その内容は若干弾力的に考えてよろしい、一番典型的な型といたしましては厚生年金標準報酬と同じ標準報酬とり方で、かつまた刻みも同じであるということも可能でありますし、またそうでなしに、あるいは基本給というものを基準にするということも可能である、そこに弾力性を持たしまして幾つかの報酬とり方を違えてよろしい、これを総括いたしまして標準給与というふうに呼んでおる次第でございます。
  10. 竹内黎一

    竹内委員 一体今回の料率の改定及び標準報酬引き上げによって事業主と被保険者負担増はどの程度なのか、その計算を知らせてほしいのです。
  11. 山本正淑

    山本(正)政府委員 今回の改正によりまして、労働者事業主負担増はどうかという点でございますが、御承知のように標準報酬改正につきましては二点ございますし、かつ保険料率の変更という点と三点あるわけでございますけれども、まず第一点は、標準報酬最低三千円という級がございましたのを、七千円以下はすべて七千円、かように改定いたしておりますので、それに伴います負担増というものがあります。それからもう一つは、最高限度を現在三万六千円で抑えておりまして、三万六千円以上の給与の者はすべて三万六千円というふうになっておりましたが、これを最高六万円まで引き上げております。したがいまして一般的には保険料率現行千分の三十五から五十八に、一般男子の場合でございますが、引き上げるということになっておりますので、七千円から三万六千円のクラスに入るすべての者、したがって、全体の中で大部分の者はその料率引き上げ額だけ負担がふえる、かような結果になるわけでございますが、六千円以下の級にランクされておりました人たちにつきましては七千円としてみなされるわけでございますから、その間料率引き上げの幅以上に負担がふえるという結果になります。それから三万六千円以上の給与の者が三万六千円の標準報酬に格づけされておりますから、六万円と三万六千円とのそれぞれの中間にランクされる被保険者につきましては、これもまた保険料負担実額といたしましては従来より増加するという結果に相なるわけでございます。それぞれ増加いたします保険料負担は、折半原則によっておりますので、その増加するものは労使とも半額ずつ増加するという結果になるわけでございます。
  12. 竹内黎一

    竹内委員 ただいまの御答弁で、増額になる分は労使折半、五〇、五〇の負担だという御答弁でございましたが、たしか今回の改正によって事業主と被保険者負担増は千四百億、こういう計算になると見ているのですが、実際において法人税とか、あるいは所得税とか、そういうもののはね返りの関係からいって、いわゆる事業主と被保険者負担が必ずしも五〇、五〇にもならないと承っているのですが、その点はいかがですか。
  13. 山本正淑

    山本(正)政府委員 今回の法律改正によりまして、保険料負担増というものは、全部を通じまして年間平年度で約千四百億ほどになるわけでございます。そうして先ほど申しましたような形で、労使折半によってそれぞれ負担するわけでございますが、事業主のほうといたしましては、保険料負担は損金として算入するという関係——法人税関係が出てくるわけでございますし、被保険者のほうは所得税関係におきまして保険料の控除という形になってまいりますので、もし保険料が上がらなければその部分について課税されておったというものがそれぞれの労使双方におきまして、税制上控除されるということが負担実額と税金を考えました負担実額労働者事業主とにおきまして若干の差があるわけでございます。
  14. 竹内黎一

    竹内委員 今回、標準報酬の一番下のほうが三千円から七千円に引き上げられた。この七千円までの標準報酬のワクに納まる労働者というのは一体、全体の何%ぐらいある計算でございますか。
  15. 山本正淑

    山本(正)政府委員 六千円以下の級に該当する被保険者の数は、最近の数字によりますと、〇・五二%に相なっております。
  16. 竹内黎一

    竹内委員 〇・五二%と、非常にパーセンテージは低いわけですが、しかしこれら低所得者の階層としてはたいへんな負担増になるわけです。そういう意味におきましては、こういった方々についての保険料増加分というものについては国庫負担をすべきではないか、こういう考え方も当然出てくるように思うのですが、この点はいかがですか。
  17. 山本正淑

    山本(正)政府委員 従来標準報酬が三千円からあったわけでございますが、これを七千円を最低にいたしましたのは、今回の法律改正によりまして、従来定額部分が二千円でありましたのを五千円に引き上げる、かような措置を講じておりまして、この定額部分とさらに報酬比例部分がそれに合算されて年金額算定されるわけでございまして、そういう意味におきまして、年金額が過去の標準報酬より一〇〇%を上回る年金額ということは非常に問題があるということで最低年金額算定される額に見合うような標準報酬最低額という意味で実は七千円に引き上げたわけでございます。そういった年金額との見合いにおきましては、最低引き上げたことには合理性があると、かように考えておりますが、いま御指摘のように、その引き上げたことに伴なう負担増というものは確かにあるわけでございまして、その意味におきましてその部分を別途国が負担する、負担増にあまりならないように負担するという考え方もあるわけでございますが、今回は諸般事情からその方策をとっていない次第でございます。
  18. 竹内黎一

    竹内委員 国庫負担については諸般事情から今回はとらないというお話です。一般標準報酬が低ければどうしてももらう年金の額も低いわけでございまして、そういった方々に対してわれわれは特別の考慮をする必要があるんじゃないかと、こう考えるわけです。たとえば、米国の公的知命であるOASDIにおいては、賃金の低い人には給付係数を高くする、賃金の高い人は逆に給付係数を低くするというウエートのつけ方にくふうをしている例もわれわれ知っておるわけなんで、今回の改正はしかたがないといたしましても、せめて将来においてはそういうふうな給付係数の面で考慮する余地があるものかどうかをお尋ねしたいと思います。
  19. 山本正淑

    山本(正)政府委員 過去の賃金に比例する年金でありますれば、いま御指摘のように低い賃金のものについては支給率を高くするという方式合理性があるわけでございますが、ただいま申し上げましたように、わが国厚生年金におきましては、そういった高度の所得配分機能というものは、全体の年金の約半分が定額部分という形で、一万円年令の場合におきましては五千円が定額部分と、かような形で所得配分機能を果たさしておるわけでございまして、その意味におきましては比例年金において賃金の低い人たちに率を高くするという同じ効果を発揮している、機能を発揮していると、かように考えておりますので、将来の問題といたしましては、定額部分を全体のバランスからいって低くならないように将来とも引き上げていくということによりましてその機能を果たさせたい、かように存じておる次第でございます。
  20. 竹内黎一

    竹内委員 今回の改正案に対する批判一つとして女子料率と申しますか、掛け金が結局割り高だという批判があるように私ども聞いておるわけです。その点についてはいかがですか。
  21. 山本正淑

    山本(正)政府委員 女子保険料率につきましては、従来から男子と若干差があったわけでございますが、ただ従来は通算年金制度がなかったために、中途脱退者の率が非常に高いということから、その当時から男子と比較して女子が高過ぎるじゃないかという議論があったわけでございます。ところが、通算老齢年金制度昭和三十六年からできまして、女子につきましても、将来結婚後におきましてもその期間が、あるいは国民年金強制保険者となり、あるいは国民年金任意加入保険者となり、あるいは被用者の妻としてその期間が通算されるといったような措置によりまして通算年金算定されますので、通算年金制度のなかった以前における感覚というものとは実態が違ってまいっておる次第でございます。現実に今回の改正におきましても、数理計算をいたしまして男子の千分の五十八というものに対応いたしましては千分の四十四という計算をいたしておりまして、これはそれぞれの男女別基礎資料によりましてバランスのとれた同じような方式による保険料率算定になっておりますので、女子が特に料率が高いという結果には今回の改正料率によってはなっておらない次第でございます。
  22. 竹内黎一

    竹内委員 ただいま通算制度の話が出ましたので、ここで政務次官にお尋ねしたいと思うのです。  と申しますのは、女子の問題に関連するいわゆる脱退手当の問題でございます。御承知のように通算制度というのは確かに理想ではございますけれども、しかし現在の実情から申しまして、特に女子に関連して考えますならば、脱退手当金というものを廃止するのはやや理想的に過ぎるのじゃないか。少なくとも女子については脱退手当金を復活するか、あるいはまた現在予定されておる経過措置をさらに若干延長するということがむしろ好ましい配慮ではないか、私どもはこう考えるわけですが、その点御所見を伺いたいと思います。
  23. 徳永正利

    ○徳永政府委員 ただいまの御質問ごもっともでございまして、先ほど年金局長がお答え申し上げましたのは、理論的にはそのとおりだと思いますが、いろいろと問題を含んでおると思います。将来は十分検討してまいらなければならぬと存じております。
  24. 竹内黎一

    竹内委員 もう一点、女子の問題に関連するわけですが、いわゆる年金における妻の座の問題という点についてはすでに橋本委員からも質問があったわけです。私は特にこの際いわゆる加給金、御承知のように現在加給金は妻なり、子なりについて四百円でございます。どうもこの四百円というのはどういう算定基礎があるのか知りませんが、ややどうも時代離れしているような気がしてしようがないわけでございまして、五年後に来る次の改定期にはこの加給金の問題はぜひとも増額をすべきものではないか、こういうぐあいに考えるわけでございまして、できるならばここで政務次官から次の改定期においては十分に考慮するという御答弁を賜われば幸甚でございます。
  25. 徳永正利

    ○徳永政府委員 十分考慮してまいりたいと存じます。
  26. 竹内黎一

    竹内委員 私は次にこの法案の最大の眼目とも言われている調整年金についてお尋ねしたいと思います。この調整年金については特に野党の先生方もいろいろ御批判があることは私も伺っております。これはすでに橋本委員からもお尋ねがありましたが、あえて重複を避けず、一体なぜ今回の厚生年金についてこういう調整年金という考え方をとらなければならないか、そういう点をもう一度明確にしていただきたいと思います。
  27. 山本正淑

    山本(正)政府委員 今回の法律改正におきまして企業年金との調整という措置を講じたいということに相なっております。これは民間に企業年金というものが最近非常に数多くできてまいりまして、特に昭和三十七年に税制上の優遇措置が講ぜられましてから税制適格年金という形で現在は二千をこえる税制適格年金ができておるのでございます。これは税制上の保護はされておりますが、税制上の保護だけであって公的にはその企業年金というものについて何ら保護といったものは考えられておらないわけでございます。厚生年金年金給付が非常に低い、年金額が十分でないということともこの企業年金という問題は関連いたしておりまして、そうして基本的には公的年金である厚生年金の額を老後の生活保障にふさわしい額に引き上げるというのが基本問題でございますが、民間にある企業年金といたしましても、やはり労働者の老後の生活保障という機能を果たしておるわけでございまして、その機能の面におきましては重複する点があるわけでございます。それと同時に、公的年金を大幅に引き上げるということによりまして、やはり労使負担というものを増加するわけでございまして、さらに負担面においても重複する面ができてくる、こういった実態を踏まえまして今回大幅な厚生年金改正と一万円年金というものを実現するに際しまして、その機能並びに負担という問題について調整をはかって、そうして厚生年金充実と同時にその面における老後保障の機能というものを関連づけていくということは大幅な引き上げに際しまして適切な措置じゃないか、かように考えた次第でございます。この企業年金調整することによりまして厚生年金報酬比例部分だけにつきまして代行を認める、必要な条件を備えております企業年金についてのみ代行を認める、しかも、その代行は厚生年金報酬比例部分よりは幅の大きいプラスアルファのついたものでなければならないという措置を講ずることによりまして、厚生年金の場合よりは上回った報酬比例代行部分が確保されることによりまして、さらにこの企業の実態に応じた老後保障の実効があげられるのじゃないか、かような趣旨によりまして今回企業年金との調整というものを条件をつけて認めるという方針をとっておる次第でございます。
  28. 竹内黎一

    竹内委員 この法案に対する批判の声として、特に素朴な声としまして、調整年金ができれば退職一時金制というものがなくなるのだとか、あるいは退職年金がカットになるのだ、こういうような声を私ども聞くわけでございます。どうも私その点誤解があるのじゃないかと思いますので、この点退職一時金との関係、そういった点をはっきりさしていただきたいと思います。
  29. 山本正淑

    山本(正)政府委員 現在わが国におきましては、退職一時金という慣行が普及いたしておるわけでございますが、現在できております企業年金につきましても、退職一時金とは別個のものである場合もありますれば、また企業年金として相当大きな額であるものにつきましては、退職一時金の一部といいますか、これは増額すべきものが年金化されているという場合もございますから、それを含めまして一部と申し上げますが、退職一時金の一部が年金化しておるという形もございます。それで現状から見まして、退職一時金の機能というのは非常に大きいわけでございまして、そういう意味におきまして退職一時金が年金にかわるということが望ましいことかどうかということについては、いろいろ議論があると思います。ただ、今回の厚生年金において企業年金調整といたしまして報酬比例部分を代行さすという措置を講じておりますのは、そういった退職金が年金化するということを促進しようといったような趣旨は毛頭ないわけでございまして、厚生年金報酬比例相当部分に上積みされた企業年金というものが、労使の合意によって厚生年金報酬比例部分を代行したいという際に認可するという措置でございます。したがいまして、この退職金と年金の問題というのは、あくまでも労使間の問題でございまして、労使間によって円満な話し合いができるならば、退職金の一部を年金化する場合もございましょうし、いろいろの場合があると思いますが、厚生年金企業年金との調整を考えたということによりまして、退職金をすべて年金化するとか、あるいはまた調整されるものを年金として扱うといったような趣旨なり考え方というものは全然ないわけでございます。
  30. 竹内黎一

    竹内委員 その点はわかりました。御承知のように中小企業については、中小企業退職金共済制度というものがあり、現在その改善強化がはかられておるわけです。一方におきまして今回の厚年法改正年金化が促進されようとしており、一見しますと非常に背反したような現象にも理解されるし、現にそういった点を指摘されておる方もあるわけですが、この点についてはどうお考えですか。
  31. 山本正淑

    山本(正)政府委員 先ほど申しましたように、退職金というものがわが国の現状におきましては大きな機能を果たしておるわけでございますが、しかし、すべての企業を通じまして退職一時金制度が完備しているというか充実している現状ではございません。特に中小企業につきましては、退職一時金の制度もないという企業が非常にたくさんあるわけでございまして、中小企業退職共済制度というものはそういった退職一時金のない弱小企業につきまして一定の退職金が出るようにという政策として考えられたものでございまして、そういう意味におきましてはある一定規模以上の大きな企業につきまして相当退職金も出されており、かつまた企業年金というものもあるといった場合に、公的年金をどうするかという問題とは別個の問題である。一般中小企業の弱小なものについては退職金すらもないという現状に対して、退職一時金の機能を生かすという意味における退職共済制度である、かように理解いたしておりまして、むしろ年金制度以前の問題として理解していいのじゃないか。そういう意味においては中小企業に退職一時金制度を促進していくという施策と何ら矛盾するものではない、かように考えております。
  32. 竹内黎一

    竹内委員 次に国税庁にお尋ねいたします。  いわゆる税制適格年金の現在の普及状況と申しますか、特に規模別に見てどういうぐあいな状況になっているかを御説明願いたいと思います。
  33. 小宮保

    ○小宮説明員 お答え申し上げます。  いわゆる税制上の適格退職年金契約でございますが、本年の三月三十一日現在で二千六百三十五件を国税庁長官が承認しております。  それから御質問の趣旨は従業員の人数ということだと承知いたしますが、これで申しますと、保険型と信託型と二つございますが、それを両方通じまして二千百四十六件の中で、加入人員が百人未満というのが千百四十五件ばかりございまして、大体半分ちょっとくらいになるかと思います。それからそれをこえて三百人未満が七百二十五件、それから一万人未満が二百十四件、それから一万人強が六十二件で、計二千百四十六件となっておりますが、先ほど申し上げました二千六百三十五件というのはごく最近までの承認件数を集めたものでありますから、分類をしておりますその二千百四十六件は昨年末の状況で申し上げたわけでございます。
  34. 竹内黎一

    竹内委員 引き続いてお尋ねいたしますが、税制適格年金の創設にあたって、その二千百余件の例から見て、退職一時金というのは大体どういう扱いになっておるか、何か傾向があれば、それをお知らせ願いたい。
  35. 小宮保

    ○小宮説明員 実は、申しわけないのでありますけれども、そこら辺の統計をとっておりません。ただ申せますことは、完全移行と申しますか、適格年金のほうに完全に移行する場合と、それから並行的に従来の退職金制度、たとえば退職一時金等との併給、そういう制度と両方あることは事実でございます。
  36. 竹内黎一

    竹内委員 それではその点はあとで資料としてちょうだいしたいと思います。国税庁けっこうでございます。  先ほどの山木年金局長の御答弁の中で、調整年金というのは政府代行相当部分以上のプラスアルファがあるはずだ、またそうでなければならない、こういうぐあいな御答弁でございましたが、一体そのプラスアルファというのは具体的にどの程度のものか、あるいはまたこの程度のものはどうしてもやれというような最低基準は何か指導方針で示すつもりがあるのか、その辺を御説明願いたいと思います。
  37. 山本正淑

    山本(正)政府委員 政府厚生年金報酬比例部分にプラスアルファがつかなければならないということは、法律にも上回るものでなければならないというふうに書いてあるわけでございまして、その上回る限度というものをどの程度にするかということにつきましては、最局限につきましては考えておりませんが、認可の基準といたしましては、実質的に厚生年金報酬比例部分を二割程度上回るというものを最低の認可の基準といたしたい、かように考えております。
  38. 竹内黎一

    竹内委員 その二割程度のプラスアルファ分ですが、それは男女の性別あるいは職種別によってその給付内容に差をつけることは認められるのですか。
  39. 山本正淑

    山本(正)政府委員 現在の税制適格年金事業主が主体になっておりまして、そして従業員の同意といったようなものがございませんので、全企業に働く全員ということになっておらないのでございますが、厚生年金の代行として調整する企業年金につきましては、企業の従業員全部、要するに被保険者全員、ある一部の者を除くといったような仕組みはできないということにまずなっております。それから先ほど申しました厚生年金報酬比例部分を上回らなければならないという基準というものがあるわけでございます。  そこで実態的には、企業によりまして、たとえば事務職員と工員というものの給与体系というものが著しく違っているという場合もあるわけでございまして、先ほど申しました厚生年金の代行部分を上回るという条件を満たしている限りにおきましては、あまり複雑なものは困るわけでございますが、比較的簡単な内容分類によりまして立て方を変えるということは認めていいのではないか、かように考えております。
  40. 竹内黎一

    竹内委員 現在ある税制適格年金、さらに今回こういう調整年金ができようとしているわけですが、考え方によっては、同じ事業主において税制適格年金をすでに施行しているところがさらにこういう調整年金を採用するということも予想されるわけです。そうすると、二本立てというような形も出てくるわけですが、一体適格年金調整年金関係というものはどういうぐあいに理解すべきものでしょうか。
  41. 山本正淑

    山本(正)政府委員 この税制適格年金と今回の調整という際に、企業年金に要請する要件というものは相当異なっているわけでございまして、そういう意味におきまして、現在ある適格年金が今回の法律改正によりまして直ちに厚生年金法による企業年金として認可申請が出てくるかどうかということは必ずしも一がいに言えないと思います。まず現在の税制適格年金は、ほとんど大部分が有期年金になっているわけであります。厚生年金の代行でございますから、これは当然終身年金でなければならないということは申すまでもないわけでございます。  それから給付内容につきましては、先ほど申し上げたとおりでございますし、また厚生年金の被保険者たる全企業の全従業員対象としなければならないとか、各種の違いがあるわけでございまして、そういった意味におきまして、直ちに現在の税制適格年金厚生年金法上の企業年金として切りかえられるかどうかということは、私どもは相当疑問視しているわけでございます。  それからもう一つの問題といたしまして、厚生年金法上の、代行する企業年金というものがあって、かつまた税制適格年金というものがあっても差しつかえないわけでございまして、税制適格年金との関係におきまして、相互にどうあらなければならないといった規制は何もないわけでございます。
  42. 竹内黎一

    竹内委員 規制は何もないというお話ですが、何か指導しようというような心づもりがあるのですか。つまりいまの適格年金調整年金のほうに移行させていくというようなそういう指導をする  つもりがあるのですか、ないのですか。
  43. 山本正淑

    山本(正)政府委員 それから先ほどちょっと言い落としましたが、税制上の優遇措置というものが、現在の税制適格年金よりは厚生年金法上の企業年金というものが優遇されております。そういった優遇措置が講ぜられているという一面、先ほど申しましたように全従業員でなければならないといったような要件がたくさんあるわけでございまして、その要件を満たす限りは、厚生年金法上の企業年金というものの認可申請があっても差しつかえないわけでございますが、いま御質問のように税制適格年金厚生年金法上の企業年金になるように指導していくといったような考え方はございません。
  44. 竹内黎一

    竹内委員 一般に今回のこの厚年法改正は非常にむずかしい、ややこしくてなかなか一般の者には理解できないという批判があるわけです。今回の改正案が通過成立いたしますと、定額部分政府から出てくる。従来は窓口は政府一本であったのが、今回はいわゆる代行部分とそういうものと合わせて二本立てになって、さらにややこしくなるのじゃないか、こういう声も聞くわけですが、その点はいかがですか。
  45. 山本正淑

    山本(正)政府委員 御指摘のように、事務的には若干やっかいになります。ただ、通算老齢年金制度が現在できておりますので、将来におきましては、各種の年金が現実にあるということから、通算老齢年金の支払いにつきましてもやっかいな面があるわけでございます。  それからもう一つ御説明申し上げておかなければならないのは、企業年金、いわゆる企業単位にできました企業年金におきましては、中途脱退者というものがあるわけでございまして、この中途脱退者をどう扱うかということは、いま御指摘事務上、手続上の問題にも関連するわけでございまして、一定期間以下の短期間従業員で脱退した者については、基金の連合会をつくってそこで一括して窓口を一本にいたしたい、かように考えております。  それから、年金の受給者が増加してまいりますと、年金額の支払い方式は、各国並みにやはり銀行なりいわゆる金融機関の窓口に個人の口座をつくって、それに払い込んでいく、年金の受給者がふえてまいりますれば当然そういった方向をとるということは考えておるのでございます。そういった方法によって処理していく。要するに、受給者個人につきましては、あまり煩瑣にならない措置というものを当然考えていかなければならぬと思っております。  それから、先ほど申しました通算老齢年金制度にできておりますことから申しましても、将来は受給者へのサービスという面で、窓口の一本化という問題については何らかの方法を講じて機構的に考えていくのも必要じゃないか、かように考えている次第でございます。
  46. 竹内黎一

    竹内委員 いわゆる基金の設立、何人以上の規模にその基金の設立を認めるかということは、これは法律自体には書いてないわけですが、千人以上という御意向のように承っておりますけれども、その点はいかがですか。
  47. 山本正淑

    山本(正)政府委員 現段階におきましては、一応千人以上というふうに考えております。これは実施によりましてだんだん実態を把握してまいりまして、そして将来にわたってはまたその規模を考えていっていいのじゃないか、かように考えております。
  48. 竹内黎一

    竹内委員 どういうところから千人以上という基準を出してきたか。何か保険数理七の根拠でもあるわけですか。
  49. 山本正淑

    山本(正)政府委員 保険数理上といいますと、もちろん一定の単位、範囲におきまして、脱退率、死亡率、かような大数的な数値というものを当てはめるわけでございますから、したがいまして、一定規模というものはやはり考えるのが適当であると思っております。年金制度を考えます際に、どういった規模が保険数理上一番適正な人数であるかといったことにつきましては、定説的なものはございませんが、一般的に保険数理の専門家の感覚といたしましては、やはり八百人から千人といったようなところが、各種の基礎の数値を当てはめるに際して平均的であるというふうに考えられております。
  50. 竹内黎一

    竹内委員 いまの説明では、千人以上ということにした理由は実はあまりすっきり納得はできないわけです。端的に申しまして、千人以上は基金の設立が認められる。あるいは三百人以下の場合には中小企業に対しての共済制がある。そうすると、その間の階層は一体何があるのだというふうな疑問が出てくるわけですが、あえて千人というのがさほど根拠が保険数理的にもないというものであれば、この規模をもう少し引き下げる、もっと範囲拡大するということも、当然考えられていいと思うのです。もう一度御説明を願います。
  51. 山本正淑

    山本(正)政府委員 基金の設立につきましては、おおよそ三種類のものを考えております。一つは、一企業単位のものでございます。御承知のように、厚生年金は各事業所単位に強制適用されることになっておりますので、一企業と申しましても、事業所としては数カ所にわたる、あるいは数十カ所にわたるということがあるわけでございますが、そういった一企業単位の一つの型、それから一つの企業系列と申しますか、そういった型と、それからもう一つは同種の企業といったようなものがたとえば協同組合をつくって、そうして同種の企業で同じような条件にあるといった場合に、合わせて千人以上になる場合には基金の設立を認める、こういった三つの型が考えられるわけでございまして、したがいまして、同種の企業が、たとえば協同組合をつくっておるといった場合におきましては、個々の企業は千人単位である必要はないわけでございます。総合的に考えて千人なら千人という基準をこしておればいいわけでございますが、そういった三つのタイプを現在考えておる。ただ、いまも御指摘がありましたように、千人でなければならぬという確定的な数値的なものもないわけでございますので、そういった面につきましては、今後実情に応じて検討を加えていきたいと思っております。
  52. 松澤雄藏

    松澤委員長 午後一時三十分まで暫時休憩いたします。    午後零時三十六分休憩      ————◇—————    午後一時三十五分開議
  53. 松澤雄藏

    松澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。竹内黎一君。
  54. 竹内黎一

    竹内委員 午前中に引き続き、基金の関係について若干御質問いたします。  基金が行なうところの老齢給付のうち、政府代行分をこえるいわゆるプラスアルファ分についてですが、このプラスアルファ分については、企業の選択によっては一時金の形で支給することも可能なのかどうか、その点を明らかにしていただきたい。
  55. 山本正淑

    山本(正)政府委員 ただいまの御質問のケースとしては二つあると思います。一つは、中途脱退者としてその企業から離れる、こういった場合にプラスアルファがついている。そのプラスアルファをどうするかという問題が一点と、それからその企業で年金最終的についた場合に、一時金として選択できるかどうか、二つのケースがあると思います。  最初の、その企業年金から脱退して他の企業に移るといった場合におきましては、もちろん一時金としてもらえる。通常のケースといたしましては、政府報酬比例相当分が保証されますから、それ以上の分は一時金としてもらうケースが多いと思います。それはもちろん認めます。  それからそうでない場合におきまして、プラスアルファを一時金としてもらうようにするかどうかということにつきましては、これは原則としてはもう年金一本でございますから、一時金としてもらう。たとえば、その企業におきまして企業年金としての定年までつとめたあとで受給者となるわけでございますから、原則としては報酬比例にプラスアルファがついたもの一本としてもらうというのが原則になると思います。
  56. 竹内黎一

    竹内委員 午前中の説明で、基金を設立できる人員規模を千人以上と考えておるというお話でありましたが、もし一千人以上として、一体基金の設立なりあるいは適用除外となる被保険者数というのはどのくらいになるだろうという見込みでございますか。
  57. 山本正淑

    山本(正)政府委員 企業年金として調整を受ける資格のある者が全部企業年金調整をするかどうかということは、調整される企業年金につきまして各種の条件がございますので、その条件を満たすかどうかということは予測しがたい事情にあるわけでございまして、かりに千人以上の事業所規模が全部企業年金として調整を受けるということにいたしますと、おおむね健康保険組合の数というものを見当に置きまして、それくらいが最高限度であると考えますと、健康保険組合といたしまして約千健康保険組合、それから従業員総数といたしまして四百万余り、この範囲内ではないか、かように考えております。
  58. 竹内黎一

    竹内委員 ただいま健康保険組合の話がちょっと出たわけですが、今回調整方法としては基金と申しますか、特別法人による代行方式を採用していただいたわけです。しかし、考え方としては、これは健保の組合にやらせるとか、あるいは私企業にまかせる適用除外方式というものも考えられるわけですが、基金による方式とする特別な理由は何かあるわけですか。
  59. 山本正淑

    山本(正)政府委員 現在税制適格年金事業主が主体になっておりまして、これは特別に法人的なものはつくってないわけでございます。したがいまして、これは純然たる私的のものでございますが、公的年金の中に取り入れて公的年金として取り扱うということになりますと、これを事業所が主体となって行なうというわけにまいりませんので、どうしても公法人としての基金というものを考えなければ、公的な扱いというものはできないわけでございまして、たとえば企業が掛け金を納めないといった場合に、租税の例によりまして滞納処分を実施するという権限を与えるという意味におきましても、公法人たる基金をつくるという形にせざるを得ないわけでございます。そういう意味におきまして企業自体が行なうというのは現在の税制適格年金におきましては可能でありますが、法律上の調整をいたしますとそういうわけにはまいらないということから、基金の構想をいたしたのでございます。  それから、もう一つの御指摘健康保険組合に行なわすことがどうかという御意見でございますが、健康保険組合は健康保険法による性格を持っておりますので、そのまま健康保険組合が基金と同じような機能を果たすというのは適当でないと考えまして、特別法人たる年金基金というものを構想した次第でございます。
  60. 竹内黎一

    竹内委員 大臣がお見えでございますので大臣にお尋ねいたしたいと思います。  厚生年金にかかわらず、一般に保険の積み立て金の運用というものは非常に重要な問題でございまして、従来からもいろいろと論議があるわけでございます。今回調整年金の資産運用というものは、この法案によりますと、生命保険会社あるいは信託銀行に行なわせる、この二つに限定しているわけですが、しかし民間のそういった運用にまかせるよりも大蔵省の資金運用部への預託といいますか、そういうまだまだ安全な方法もあるのではないか。そういう意味におきまして生保なり信託銀行にやらせるというふうに限定した理由はどこにあるかを明らかにしていただきたいと思います。
  61. 山本正淑

    山本(正)政府委員 御承知のように厚生年金の積み立て金は資金運用部に預託いたしまして、一定の利回りによって運用されているわけでございます。それから税制適格年金は信託銀行または生保会社に運用契約を結んで運用させておる。これは信託銀行及び生命保険会社におきましては、たとえば一般の市中の金融機関よりは運用利回りがいいわけでございまして、そういう意味におきまして信託銀行と生命保険会社に限定いたしてあるわけでございます。今回の調整される企業年金の資金運用につきましても、予定利率を上回る運用、特に政府の場合には現段階におきましては六分五厘に運用されておりますので、六分五厘を上回る運用ということでなければ、下回る運用ということでは適当でないわけでございますので、そういう意味におきまして税制適格年金の例にならいまして信託銀行と生命保険会社の運用ということに限定したわけでございます。ただ厚生年金報酬比例相当分にプラスアルファがつきますが、厚生年金報酬比例相当分につきましては、そのうちの一部は政府の指示によりまして資金運用部の資金が運用されておると同様に、政府保証債を引き受けるといったような形で一般財投に協力をする、それからまた一部は還元融資という性格によって運用していくというふうな運用をいたしたい、かように考えております。
  62. 竹内黎一

    竹内委員 いま運用利回りのお話が出たわけですが、この法案では実は運用利回りは一応五分五厘の見込みにしてあるわけです。しかし、これは現在の状況からいってむしろ低過ぎるような見方である。この利回りをもう少し高く見込むことによって逆に保険料率を減らせたのではないか、こういう批判の声を聞くわけですが、その点はいかがですか。
  63. 山本正淑

    山本(正)政府委員 現在の厚生年金国民年金等におきましても、予定利率といたしましては五分五厘で算定してございます。ただ、実際は資金運用部に預託いたしまして六分五厘の利子がついておりますので利ざやが一分ある、こういう形になっております。この利ざやはどういうふうに処理するかと申しますと、五年ごとの再計算の時期におきまして、その間における運用益というものを含めまして料率をきめるわけでございますから、現実に料率にはね返っておる、こういう形に相なるわけでございます。予定利率を幾らにするかということは、これはむずかしい問題でございますが、現段階におきましてはやはり五分五厘という予定利率にして、実際の運用益との利差益は五年ごとの再計算の時期におきまして料率に還元するなりあるいは給付改善に還元するなり、こういった措置を講じていくほうが適当であると考えておる次第でございます。
  64. 竹内黎一

    竹内委員 またその生保、信託の問題に返りますが、生保、信託に限定するならば、わざわざ基金を設ける必要もないじゃないかという議論も私は出てくるかと思うのです。いまの適格年金と同じようにやっていっていいじゃないか、こういう議論も出てくると思うのですが、もう一度その点を御説明願いたい。
  65. 山本正淑

    山本(正)政府委員 税制適格年金の例によりまして、事業主が直接に信託銀行なり生保会社と契約するといった形で運用できるじゃないかという御主張はあるわけでございます。ありますが、事業主自体が運用するということにいたしますと、先ほど申し上げましたように、掛け金の滞納の場合における滞納処分というものを事業主にやらすというわけにもまいりませんし、そういった公的な性格というものをこの場合には税制適格年金と違いまして持たす面が多々あるわけでございますので、そういう意味から申しましてやはり公法人という公法上の権利主体というものを明確にするということが適切である、かように考えた次第でございます。
  66. 竹内黎一

    竹内委員 生保、信託にもしやらせるとして、その場合被用者との法律関係というのはどういうぐあいになるのですか。生保、信託と被用者との間の法律関係というものは……。
  67. 山本正淑

    山本(正)政府委員 あくまでも基金が公法上の主体でございまして、したがいまして掛け金の徴収の権利というものも基金にあるわけでございまして、基金は信託銀行、生保会社と信託契約なりそれぞれの契約を結ぶわけでございます。したがいまして、年金の受給者との関係におきましても、基金に対して受給者は年金を請求するし、基金が受給者に対して支払いの義務がある、こういう形になるわけでございます。ただ現実の問題といたしましては、その基金の業務をどの程度それぞれの信託銀行等に委任できるか、かような問題によって法律関係は処理されるわけでございます。
  68. 竹内黎一

    竹内委員 ここで大臣にお尋ねしたいわけでございますが、先ほどの説明によりますと、個々の企業ごと、一千人以上の規模があった場合には新しい調整年金制度をやれる、こういう仕組みだそうでございますが、一体こういう各企業に、企業ごとあるいは事業所単位にそういう年金をつくることを許すということが、今日労働力の流動化を非常に促進しなければならぬということは政府もかねていっておるわけですが、そういった方針と何か矛盾するような結果を生みはしないか、つまり労働者をある一定の事業所に固定させようという労務管理的なねらいも当然あるわけでございますので、その点は大臣はどういうふうにお考えでございますか明らかにしておいていただきたいと思います。
  69. 神田博

    ○神田国務大臣 そういう考えは持っておりませんが、よくそういう批評は聞いております。企業年金厚生年金調整の問題につきまして、厚生年金のほうがおくれているといいますか後進性といいますか、そういう意味から既存の企業年金をひとつ認めて労働者の福祉を増進したい、こういう考え方、しかも適用する場合には労使が一致してそういう申請をしたときに認めていこうということでございまして、労務管理的云々というような気持ちはなかった、さらっとした考えでやったわけでございます。
  70. 竹内黎一

    竹内委員 ここで質問を変えて国庫負担関係について若干お尋ねしたいと思います。社会保障制度審議会の勧告におきましても、既裁定年金引き上げについては、追加費用国庫負担によるべきである、こういう勧告があるわけでございますが、この点、私ども十分に考慮されてしかるべきものと考えますが、いかがでございますか。
  71. 神田博

    ○神田国務大臣 お答えいたします。将来の問題として私もさように考えております。
  72. 竹内黎一

    竹内委員 ただいま将来の問題というおことばでございますが、この次の五年後に来る改定の際には十分考慮されるという意味に了解してよろしゅうございますか。
  73. 神田博

    ○神田国務大臣 むろんそういうことを含めて検討したい、かように考えておるわけでございます。
  74. 竹内黎一

    竹内委員 ここで事務当局にお尋ねいたしますが、厚生年金と各種の共済年金でいろいろ制度的に必ずしも一緒でない。先ほども標準報酬とり方についても違っていることを伺ったわけですが、国庫負担方式でも、厚生年金の場合には給付時の負担になっております。ところが国民年金とかあるいは他の共済組合みたいなものは拠出時というぐあいに、制度的に必ずしも一緒でないわけですが、これは一体どういう理由によるものか、明らかにしていただきたい。
  75. 山本正淑

    山本(正)政府委員 御指摘のように、国庫負担負担のしかたといたしましては、拠出時の負担給付時の負担とあるわけでございます。これは結果的には同じになるわけでございまして、たとえば一〇〇%の費用が必要であるという原資の総額を計算いたしまして、そのうちの一五%なら一五%は国が負担するということは同じなわけでございます。したがいまして、拠出時の負担の場合には、国庫負担から生ずるであろう利子分というものを含めて国が負担するという結果に相なりますから、その点は同じでございます。ただ、厚生年金制度ができましたのは昭和十七年、戦争中でございまして、できました当時から厚生年金給付時の負担という形をとっておりますので、それを踏襲しているということでございまして、最近できました国民年金等につきましては拠出時の負担という形に相なっておる。それは制度のできました当時の事情等によるわけでございます。
  76. 竹内黎一

    竹内委員 その点はわかりました。しかし、国庫負担については、これはいろいろと野党の先生方にも御意見のあるところだと思うのですが、特に今回の改正におきましても、国庫負担率というものは据え置かれておる、こういう点にもいろいろと批判があるように私伺っておるわけでございます。また社会党さんのほうで何か準備されておる法案というものを伺いますと、国庫負担率についてはもっと高いものを考えている、こういうように伺っておりますが、据え置きをした理由と申しますか、これではたしていいと考えているのか、その点を明らかにしていただきたい。
  77. 神田博

    ○神田国務大臣 いわゆる一万円年金に踏み切るという点につきまして、政府負担率も上昇することは、普通から考えれば私は当然だと思うのです。しかし、なかなかそこまでいかなかったというところに、いろいろ政府の手元不如意というか、財政上の問題があったことだろうと思っております。しかし、これらの点は、先ほど来お答え申し上げておるように、十分検討してみたい、こう考えておるわけでございます。
  78. 竹内黎一

    竹内委員 さらに国庫負担についてでありますが、御承知のように基金の事務費は国庫補助の対象になっておりません。ところが基金の連合会に対しては二千万円の国庫補助があるというぐあいに私は承知するわけですが、一体どうしてこういうことになったのか。私は、基金の事務費というものは、政府の代行部分をやっている関係がありまして、補助対象に考えていいのじゃないかとも思うのですが、その点はいかがですか。
  79. 山本正淑

    山本(正)政府委員 理論的に考えますと、政府の業務の一部を代行しているから、代行部分については政府所要する事務費なり何なりを基準にして出すべきじゃないかという意見もあるわけでございます。ただ、現実問題といたしまして、厚生年金基金として運用します際におきましては相当高利回りに運用される。そうして利差益等も相当あるわけでございまして、基金につきましてはその利差益の範囲内において事務を処理する。実際の運用といたしましては、基金というものは公法上の権利主体になるわけでございますが、それぞれの信託銀行なり保険会社において実際の業務を行なうという結果になりましたので、その経費として包括して利差益で事務をまかなっていくことが可能である、かように考えまして国庫負担はいたしていないのでございます。  そこで、連合会に対して国庫負担をしたのは何ゆえか、こういう趣旨でございますが、連合会は、基金の中途脱退者に対して、これを連合会へ一括して原資を移し、また給付もやっていこうという趣旨でございまして、本来ならば、基金を脱退いたしますと政府が引き取るというのが筋でございまして、引き取るかわりに連合会がその同じ業務を行なうということでございます。そういう意味におきまして、連合会には何がしの国庫補助金を計上している次第でございます。
  80. 竹内黎一

    竹内委員 最後に大臣に一点だけ伺っておしまいにしたいと思います。  実は、この点は午前中政務次官にも伺ったわけでございますが、いわゆる女子の脱退手当金について大臣のお考えを伺いたいわけです。通算年金制度、これは確かに理想ではありますけれども、しかし今日の現実から見て飛躍し過ぎる面もあるのじゃないか。特に女子について非常に不利を招いているのじゃないか、私はこう考えるわけで、少なくとも女子については、脱退手当金というものを復活するなり、あるいは現在考えられている経過措置の延長とか、あるいは一時金制度とか、こういうものが深く考えられていいのじゃないかと思いますが、大臣の所見はいかがでございますか。
  81. 神田博

    ○神田国務大臣 いわゆる女子の掛け捨ての問題でございますが、これはいま竹内さんもおっしゃいましたように、女子は最初から長くつとめるという意思がない、結婚資金の一部にしたい、あるいは家庭の資にしたいという目的を持った就職でございまして、そういう、長期の年金を初めから当てにしていないわけでございます。そういう観点からいたしますと、いまの制度そのままを適用していくということはいささか理想に走った押しつけではないかという御非難の点も私は同感でございます。これらの点につきましては十分検討いたしたい、かように考えております。
  82. 竹内黎一

    竹内委員 これで終わります。
  83. 松澤雄藏

    松澤委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明二十二日木曜日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。    午後一時五十九分散会