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1965-04-21 第48回国会 衆議院 社会労働委員会 第21号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
四十年四月二十一日(水曜日) 午前十一時三十七分
開議
出席委員
委員長
松澤
雄藏君
理事
小沢 辰男君
理事
齋藤
邦吉
君
理事
澁谷 直藏君
理事
藤本 孝雄君
理事
河野 正君
理事
八木
昇君
理事
吉村 吉雄君 井村 重雄君 伊東 正義君 亀山 孝一君 熊谷 義雄君
小宮山重四郎
君 田中 正巳君
竹内
黎一君
地崎宇三郎
君
橋本龍太郎
君
松山千惠子
君 粟山 秀君 山村新治郎君 亘
四郎
君 淡谷
悠藏
君
伊藤よし子
君 小林 進君
滝井
義高
君
八木
一男君
山口シヅエ
君
本島百合子
君 吉川 兼光君
谷口善太郎
君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 神田 博君 労 働 大 臣
石田
博英
君
出席政府委員
厚生政務次官
徳永 正利君
厚生事務官
(
大臣官房長
) 梅本 純正君
厚生事務官
(
保険局長
)
小山進次郎
君
厚生事務官
(
年金局長
)
山本
正淑君
厚生事務官
(
社会保険庁年
金保険部長
) 実本 博次君
労働基準監督官
(
労働基準局
長) 村上 茂利君
労働基準監督官
(
労働基準局労
災補償部長
) 石黒
拓爾
君
委員外
の
出席者
大蔵事務官
(国税庁直
税部
審理課長
) 小宮 保君
労働基準監督官
(
労働基準局賃
金部企画課長
) 佐竹 一郎君 専 門 員 安中 忠雄君
—————————————
四月二十一日
委員滝井義高
君
辞任
につき、その
補欠
として楯 兼
次郎
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 同日
委員楯
兼
次郎
君
辞任
につき、その
補欠
として滝
井義高
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。
—————————————
四月十五日
労働基準法
の一部を
改正
する
法律案
(
井手以誠
君外十四名
提出
、
衆法
第二五号) は本
委員会
に付託された。
—————————————
本日の
会議
に付した案件
労働者災害補償保険法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
第一二四号)
厚生年金保険法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣
提出
第二号)
船員保険法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
第三号) ————◇—————
松澤雄藏
1
○
松澤委員長
これより
会議
を開きます。
内閣提出
の
労働者災害補償保険法
の一部を
改正
する
法律案
を
議題
とし、
審査
を進めます。
松澤雄藏
2
○
松澤委員長
提案理由
の説明を聴取いたしま、す。
労働大臣石田博英
君。
石田博英
3
○
石田国務大臣
ただいま
議題
となりました
労働者災害補償保険法
の一部を
改正
する
法律案
につきまして、その
提案理由
及び
内容
の
概要
を御説明申し上げます。
労働者災害補償保険制度
は、
昭和
二十二年に創設されて以来、
労働災害
をこうむった
労働者
及びその
遺族
に対し
災害補償
を行ない、あわせて
労働者
の福祉に必要な
施設
を行なうことによって、
労働者
及びその
遺族
の
保護
に力を尽くしてまいりました。この間、
わが国経済
の成長と相まって、
労災保険加入事業場数
も逐年増加し、
保険経済
の
規模
も
拡大
の一途をたどり、現在、
労災保険
の
適用事業場数
は約八十八万、
労働者数
は約二千万人でありまして、
年間
約百万人の
労働者
及び
遺族
に対し、約五百億円にのぼる
保険給付
が支給されております。 しかしながら、
従業員
五人
未満
の
零細事業
や商業、
サービス業
などの
任意適用事業
に働く
労働者等
でいまだ
労災保険
の
保護
の外にある者も決して少なくない現状であり、最近における
社会経済情勢
の変化により、これらの
労働者
の
保護
をはかるため、
労災保険
の
適用
の
拡大
が強く望まれるに、至っております。 また、
労働災害
をこうむった
労働者
及びその
遺族
に対して、必要な
期間
、必要な
補償
を行なうという見地から、
障害者
と
遺族
に対する
保険給付
については、
原則
として
年金制
を採用し、これによってその生活の安定をはかるとともに、
労災医療
及び
リハビリテーション施設
の
充実
と相まってその
社会復帰
に資することが必要であると考えるのであります。とのことについては、去る
昭和
三十五年における
労災保険法
の
改正
の際においても、衆議院及び参議院の
附帯決議
におきまして、
遺族年金制
の
採用等
について要望されたところであります。 さらに、
労災保険法施行
十数年の経験及び最近の諸
情勢
に徴して、
保険給付
、
保険制度
及びその
運営
につきまして、なお
改善
すべき点がしばしば
指摘
されているのでありますが、特に
労災保険
の
適用範囲
がますます
拡大
されようとする事態に対処して、
労災保険
の
事務手続
を
簡素化
して、
事業主等
の
負担
を軽減するとともに、
保険者
たる
政府
の
保険運営
を能率的にすることが強く要請されており、このためにも、
施設
の
充実
、運用の
改善
と並んで、
現行法令
の
整備
が必要であると考えるので あります。
政府
におきましては、これらの問題を含めて
労災保険制度
の全般にわたって検討を進めてきたのでありますが、同時に、
労災保険審議会
においても、
労災保険制度
の
問題点
について
調査研究
が行なわれ、
昭和
三十八年十月にその結果を
労働大臣
に報告されたのであります。 このような諸
事情
を考慮し、
政府
といたしましては、
昭和
三十八年十二月に、
労災保険審議会
に対し、
労災保険制度
の
改善
につき諮問をいたし、昨年七月、
法改正
の方向に関する
答申
を得たのであります。この
答申
に基づき、
労災保険法改正要綱案
を作成し、これを同
審議会
及び
中央労働基準審議会
に諮問し、昨年十二月にそれぞれ
答申
を得ました。本年一月
右要綱案
に若干の
修正
を加えた
要綱
を
社会保障制度審議会
に付議し、その了承を得、その結果に基づいて、
労働者災害補償保険法
の一部を
改正
する
法律案
を作成し、国会に提案いたした次第であります。 次に、その
内容
につきまして概略御説明申し上げます。 この
法律案
の
内容
は多岐にわたりますが、
諸般
の準備を整えた上、逐次これを実施に移すこととして、
施行
時期別に三カ条に区分しております。すなわち、第一条は
適用関係
、
療養補償
、
休業補償
、
支給制限
、
保険料等
に関する
改正規定
でありまして、
昭和
四十年八月一日から、第二条は
労災保険事務組合
、
特別加入等
に関する
規定
でありまして、
昭和
四十年十一月一日からそれぞれ
施行
することとし、第三条は
保険給付
の
年金化
を中心とする
改正規定
でありまして、
昭和
四十一年二月一日から
施行
を予定しております。以下、この区分に従って、
法律案
のおもな
内容
を御説明申し上げます。 第一に、
改正法案
第一条の
規定
による
改正
のうち、
適用範囲
につきましては、
強制適用事業
の
範囲
について、従来のもののほか政令で定めるものを加えて漸次
拡大
をはかることとするとともに、
従業員
五人
未満
の
零細事業所等
へのいわゆる
全面適用
については、二年以内に成果を得ることを目途として
調査研究
を行ない、その結果に基づいてすみやかに必要な
措置
を講ずることといたしております。 次に、
保険給付
につきましては、
給付基礎日額
の
算定
にあたって、
平均賃金
を用いることが不適当な場合には、
労働大臣
が別途これを定めることとして、
特殊事情
によって
賃金額
が不当に低くなる場合等における救済をはかることといたしております。また、
療養補償
については、従来
給付
の
対象
としなかった少額の
療養費
をも支給することとするとともに、
休業補償
についても、
待期期間
を三日間とするように改めております。 さらに、
事業主
の
責め
に帰すべき事由による
支給制限
を廃止し、その場合にも
労働者
には
保険給付
をし、
事業主
からはその
費用
の全部または一部を徴収することができることに改めるとともに、
労働者
の
責め
に帰すべき場合の
支給制限
についての
規定
を
整備
することといたしております。 その他、
保険料
の
算定
、納付の
方法等
を簡便なものに改めるほか、技術的な事項について
所要
の
整備
を行なって、
保険加入者
及び
保険者
たる
政府
の
事務
の
簡素化
、
合理化
をはかっております。 第二に、
改正法案
第二条の
規定
による
改正
のうち、
労災保険事務組合
につきましては、
失業保険事務組合
の例にならって、
中小企業等協同組合
その他の
事業主団体
が、その
構成員
である
事業主
の委託を受けて、
事業主
の行なうべき
労災保険事務
を
一定
の
条件
のもとに代行することを認めることとし、もって
中小企業事業主
及び
保険者
たる
政府
の
保険事務
の
負担
の軽減をはかっております。 次に、大工、
左官等
のいわゆる一人親方、
自営農民
、
小規模事業主
及びこれらの者の
家族従業者等
、
労働者
と同様な状態のもとに働き、同様な
業務災害
をこうむる危険にさらされている人々についても、申請に基づき、
一定
の
条件
のもとに特別に
労災保険
に加入することを認め、
保険給付
を受けることができるように
特別加入
の
制度
を創設することといたしております。 第三に、
改正法案
第三条の
規定
による
改正
のうち、
保険給付
の
年金化
につきましては、まず、
障害補償
の
年金
の
範囲
を大幅に
拡大
することといたしました。すなわち、従来は
障害等級
第一級から第三級までの
重度障害者
にのみ
年金
を支給していたのを改め、第一級から第七級までについて
年金
を支給することとし、
身体障害者
が必要とする
期間
必要な
補償
を行なうこととしております。 次に、従来一時金であった
遺族補償
は、
原則
として
年金
とし、
一定
の
範囲
の
遺族
に対し
給付基礎年額
の三〇%ないし五〇%の額の
年金
を支給することとし、もって
遺族
の
保護
の徹底をはかっております。なお、
年金
を受けることができる
遺族
がない場合等には、
給付基礎日額
の四百日分の一時金をその他の
遺族
に支給することといたしております。 また、
長期傷病者
に対する
補償
につきましては、従来の複雑な
体系
を改め、その
内容
を従来のような通院及び入院の区別を廃止して、一律に
療養
の
給付
を行ない、かつ、
給付基礎年額
の六〇%の
年金
を支給することとしております。また、
厚生年金保険等
の
年金
と
労災保険
の
年金
とが併給される場合の
調整
につきましては、
厚生年金等
の六
年間
併給停止
の
制度
を廃止し、当初から
厚生年金等
は全額を支給するとともに、
労災保険
の
年金
については、従来の
方式
に準じ
厚生年金等
の
一定率相当分
を減じて併給することといたしております。 以上のほか、本
改正案
においては、
労災保険事業
に要する
費用
に対する
国庫補助等
につき
所要
の
規定
を設けるとともに、その附則において以上の
改正
に伴う
経過措置
、
制度
の切りかえに伴う
暫定措置
及び
関係
諸
法律
の条文につき
所要
の
整備
をいたしております。 以上、簡単でありますが、この
法律案
の
提案理由
及びその
概要
につきまして御説明申し上げた次第であります。何とぞ御
審議
の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。 ————◇—————
松澤雄藏
4
○
松澤委員長
内閣提出
の
厚生年金保険法
の一部を
改正
する
法律案
及び
船員保険法
の一部を
改正
する
法律案
の両案を
議題
とし、
審査
を進めます。質疑の申し出がありますので、これを許します。
竹内黎
一君。
竹内黎一
5
○
竹内委員
厚生年金保険法
の一部
改正案
についてはすでに
橋本委員
からも質問があったわけですが、
橋本委員
が時間の
関係
で保留をされた点を主として拾い上げて当局の見解をただしたいと思います。 まず第一に、
標準報酬
についてお尋ねいたします。
年金額
の
基礎
となっている
標準報酬月額
は全
期間
の
平均
をとっているわけですが、しかし、
考え方
としては、
最終報酬
あるいはそれに近いものをとるということも考えられる。むしろ日本のような
年功序列
型の
賃金
の場合においては、
最終
あるいはそれに近いものをとるほうが
労働者
のためにもなるのではないか。現に
国家公務員共済
、これは
最終
の三年
平均
をとっておりますし、
公企体職員
の場合は
最終
五年
平均
をとるという
ぐあいの制度
にもなっておるわけです。この厚
年法
において全
期間
の
平均
をとらねばならないという
理由
を御説明願いたいと思います。
山本正淑
6
○
山本
(正)
政府委員
年金制度
における
報酬
の
とり方
につきましては二つあるわけでございまして、
一つ
は、
保険料算定
の
基礎
としてどういうふうな
報酬
を把握するかという点と、それから第二点は、
給付
を
算定
する際における
基礎
になる
報酬
をどうするかという二つの要素があるわけでございまして、この問題は必ずしも
両者
の
関係
が一致しなければならないということではないと思いますが、現在の
厚生年金
におきましては、
両者
を一致させております。御
指摘
のように、
共済組合
につきましては、
最終
三年なり五年なりの
報酬
というものを
基準
にいたしまして
年金額
の
算定
もなされておるわけでございます。
厚生年金
におきましては、
制度
の発足当時からその被
保険者
が非常に広
範囲
な
対象
になっている
事業体
にかんがみましても、大
規模企業
から
小規模企業
まであるし、また
事務職員
も含んでおるという、非常に種類が多いという
関係
からいたしまして、かつまた年齢的に
相当高年輩
になりましても被
保険者
であるという
実態
がございますので、しかも
賃金
の
体系
は御
指摘
のように現在は
年功序列賃金
というのが大宗を占めておりますが、職種によりましては、
一定
の年齢を過ぎますと
賃金
が下がってくるというふうな、たとえば
石炭関係
とかあるいは
建設業等
におきましてはそういった
実態
もあるわけでございまして、かような
厚生年金
の被
保険者
の
実態
に即しまして、やはり被
保険者
としての
期間
の全
期間
を通じての
報酬
を
給付
の
基礎
の
基礎報酬
とするということが合理的であるということから
体系
が仕組まれておるのでございます。ただ、
厚生年金
につきまして、従来の経緯もございますように、戦後の
インフレ期
という時期に際会いたしましては、過去の
報酬
が非常に低い形となりましたので、その際におきましては
一定限
以下のものは
一定
の額とみなすというふうな
修正措置
を講じまして、
インフレ
の影響というものを
修正
するという形をとっておりますし、必要な場合にはそういった
方法
をとることによりまして、全
期間
の
報酬
というものを
給付
の
基準
にすることが合理的ではないか、かように考える次第でございます。
竹内黎一
7
○
竹内委員
この
法案
第百二十九条で
標準給与
という
ことば
が出てくるわけです。
一体標準報酬
と
標準給与
とはどういう
関係
にあるのか、同じものをただ
ことば
をかえているのか、それとも性質に差異があるのか、その点を御説明願いたいと思います。
山本正淑
8
○
山本
(正)
政府委員
御
承知
のように、
厚生年金
におきましては
標準報酬
、これは
健康保険
でもさような
標準報酬
という形をとっておりますが、これは一応恒常的な
賃金
を主体といたしまして
給与
を
標準報酬
として把握いたしまして、そうして
級別
の
段階
を設けまして大きく
段階別
にくくってある、こういう形をとっております。
企業年金
との
調整
の
措置
を講じます際に、実は
標準給与
という
ことば
を使っておりますが、それは
調整
される
企業年金
についての
報酬
の
とり方
は
標準給与
と呼んでおるわけでありまして、
標準報酬
と呼ばなかったのは、
厚生年金
におきましては
標準報酬
というものは一本でございますが、
調整
される
企業年金
につきましては
標準給与
という名前で呼んで、その
内容
は若干弾力的に考えてよろしい、一番典型的な型といたしましては
厚生年金
の
標準報酬
と同じ
標準報酬
の
とり方
で、かつまた刻みも同じであるということも可能でありますし、またそうでなしに、あるいは基本給というものを
基準
にするということも可能である、そこに
弾力性
を持たしまして幾つかの
報酬
の
とり方
を違えてよろしい、これを総括いたしまして
標準給与
というふうに呼んでおる次第でございます。
竹内黎一
9
○
竹内委員
一体
今回の
料率
の改定及び
標準報酬
の
引き上げ
によって
事業主
と被
保険者
の
負担増
はどの程度なのか、その
計算
を知らせてほしいのです。
山本正淑
10
○
山本
(正)
政府委員
今回の
改正
によりまして、
労働者
と
事業主
の
負担増
はどうかという点でございますが、御
承知
のように
標準報酬
の
改正
につきましては二点ございますし、かつ
保険料率
の変更という点と三点あるわけでございますけれども、まず第一点は、
標準報酬
の
最低
三千円という級がございましたのを、七千円以下はすべて七千円、かように改定いたしておりますので、それに伴います
負担増
というものがあります。それからもう
一つ
は、
最高限度
を現在三万六千円で抑えておりまして、三万六千円以上の
給与
の者はすべて三万六千円というふうになっておりましたが、これを
最高
六万円まで
引き上げ
ております。したがいまして
一般
的には
保険料率
を
現行
千分の三十五から五十八に、
一般男子
の場合でございますが、
引き上げ
るということになっておりますので、七千円から三万六千円のクラスに入るすべての者、したがって、全体の中で大
部分
の者はその
料率
の
引き上げ額
だけ
負担
がふえる、かような結果になるわけでございますが、六千円以下の級にランクされておりました
人たち
につきましては七千円としてみなされるわけでございますから、その間
料率
の
引き上げ
の幅以上に
負担
がふえるという結果になります。それから三万六千円以上の
給与
の者が三万六千円の
標準報酬
に格づけされておりますから、六万円と三万六千円とのそれぞれの中間にランクされる被
保険者
につきましては、これもまた
保険料負担
の
実額
といたしましては従来より増加するという結果に相なるわけでございます。それぞれ増加いたします
保険料負担
は、
折半
の
原則
によっておりますので、その増加するものは
労使
とも半額ずつ増加するという結果になるわけでございます。
竹内黎一
11
○
竹内委員
ただいまの御
答弁
で、増額になる分は
労使折半
、五〇、五〇の
負担
だという御
答弁
でございましたが、たしか今回の
改正
によって
事業主
と被
保険者
の
負担増
は千四百億、こういう
計算
になると見ているのですが、実際において
法人税
とか、あるいは
所得税
とか、そういうもののはね返りの
関係
からいって、いわゆる
事業主
と被
保険者
の
負担
が必ずしも五〇、五〇にもならないと承っているのですが、その点はいかがですか。
山本正淑
12
○
山本
(正)
政府委員
今回の
法律改正
によりまして、
保険料
の
負担増
というものは、全部を通じまして
年間
平年度で約千四百億ほどになるわけでございます。そうして先ほど申しましたような形で、
労使折半
によってそれぞれ
負担
するわけでございますが、
事業主
のほうといたしましては、
保険料負担
は損金として算入するという
関係——法人税
の
関係
が出てくるわけでございますし、被
保険者
のほうは
所得税関係
におきまして
保険料
の控除という形になってまいりますので、もし
保険料
が上がらなければその
部分
について課税されておったというものがそれぞれの
労使双方
におきまして、税制上控除されるということが
負担
の
実額
と税金を考えました
負担
の
実額
は
労働者
と
事業主
とにおきまして若干の差があるわけでございます。
竹内黎一
13
○
竹内委員
今回、
標準報酬
の一番下のほうが三千円から七千円に
引き上げ
られた。この七千円までの
標準報酬
のワクに納まる
労働者
というのは
一体
、全体の何%ぐらいある
計算
でございますか。
山本正淑
14
○
山本
(正)
政府委員
六千円以下の級に該当する被
保険者
の数は、最近の数字によりますと、〇・五二%に相なっております。
竹内黎一
15
○
竹内委員
〇・五二%と、非常にパーセンテージは低いわけですが、しかしこれら低
所得者
の階層としてはたいへんな
負担増
になるわけです。そういう
意味
におきましては、こういった
方々
についての
保険料
の
増加分
というものについては
国庫負担
をすべきではないか、こういう
考え方
も当然出てくるように思うのですが、この点はいかがですか。
山本正淑
16
○
山本
(正)
政府委員
従来
標準報酬
が三千円からあったわけでございますが、これを七千円を
最低
にいたしましたのは、今回の
法律改正
によりまして、従来
定額部分
が二千円でありましたのを五千円に
引き上げ
る、かような
措置
を講じておりまして、この
定額部分
とさらに
報酬比例部分
がそれに合算されて
年金額
が
算定
されるわけでございまして、そういう
意味
におきまして、
年金額
が過去の
標準報酬
より一〇〇%を上回る
年金額
ということは非常に問題があるということで
最低
の
年金額
に
算定
される額に見合うような
標準報酬
の
最低額
という
意味
で実は七千円に
引き上げ
たわけでございます。そういった
年金額
との見合いにおきましては、
最低
を
引き上げ
たことには
合理性
があると、かように考えておりますが、いま御
指摘
のように、その
引き上げ
たことに伴なう
負担増
というものは確かにあるわけでございまして、その
意味
におきましてその
部分
を別途国が
負担
する、
負担増
にあまりならないように
負担
するという
考え方
もあるわけでございますが、今回は
諸般
の
事情
からその方策をとっていない次第でございます。
竹内黎一
17
○
竹内委員
国庫負担
については
諸般
の
事情
から今回はとらないというお話です。
一般
に
標準報酬
が低ければどうしてももらう
年金
の額も低いわけでございまして、そういった
方々
に対してわれわれは特別の考慮をする必要があるんじゃないかと、こう考えるわけです。たとえば、米国の
公的知命
であるOASDIにおいては、
賃金
の低い人には
給付係数
を高くする、
賃金
の高い人は逆に
給付係数
を低くするというウエートのつけ方にくふうをしている例もわれわれ知っておるわけなんで、今回の
改正
はしかたがないといたしましても、せめて将来においてはそういうふうな
給付係数
の面で考慮する余地があるものかどうかをお尋ねしたいと思います。
山本正淑
18
○
山本
(正)
政府委員
過去の
賃金
に比例する
年金
でありますれば、いま御
指摘
のように低い
賃金
のものについては
支給率
を高くするという
方式
も
合理性
があるわけでございますが、ただいま申し上げましたように、
わが国
の
厚生年金
におきましては、そういった高度の
所得
再
配分
の
機能
というものは、全体の
年金
の約半分が
定額部分
という形で、一万円年令の場合におきましては五千円が
定額部分
と、かような形で
所得
再
配分
の
機能
を果たさしておるわけでございまして、その
意味
におきましては
比例年金
において
賃金
の低い
人たち
に率を高くするという同じ効果を発揮している、
機能
を発揮していると、かように考えておりますので、将来の問題といたしましては、
定額部分
を全体の
バランス
からいって低くならないように将来とも
引き上げ
ていくということによりましてその
機能
を果たさせたい、かように存じておる次第でございます。
竹内黎一
19
○
竹内委員
今回の
改正案
に対する
批判
の
一つ
として
女子
の
料率
と申しますか、掛け金が結局
割り高
だという
批判
があるように私ども聞いておるわけです。その点についてはいかがですか。
山本正淑
20
○
山本
(正)
政府委員
女子
の
保険料率
につきましては、従来から
男子
と若干差があったわけでございますが、ただ従来は
通算年金
の
制度
がなかったために、
中途脱退者
の率が非常に高いということから、その当時から
男子
と比較して
女子
が高過ぎるじゃないかという議論があったわけでございます。ところが、
通算老齢年金
の
制度
が
昭和
三十六年からできまして、
女子
につきましても、将来結婚後におきましてもその
期間
が、あるいは
国民年金
の
強制
被
保険者
となり、あるいは
国民年金
の
任意加入
被
保険者
となり、あるいは被用者の妻としてその
期間
が通算されるといったような
措置
によりまして
通算年金
が
算定
されますので、
通算年金制度
のなかった以前における感覚というものとは
実態
が違ってまいっておる次第でございます。現実に今回の
改正
におきましても、
数理計算
をいたしまして
男子
の千分の五十八というものに対応いたしましては千分の四十四という
計算
をいたしておりまして、これはそれぞれの
男女別
の
基礎資料
によりまして
バランス
のとれた同じような
方式
による
保険料率
の
算定
になっておりますので、
女子
が特に
料率
が高いという結果には今回の
改正料率
によってはなっておらない次第でございます。
竹内黎一
21
○
竹内委員
ただいま
通算制度
の話が出ましたので、ここで
政務次官
にお尋ねしたいと思うのです。 と申しますのは、
女子
の問題に関連するいわゆる脱退手当の問題でございます。御
承知
のように
通算制度
というのは確かに理想ではございますけれども、しかし現在の実情から申しまして、特に
女子
に関連して考えますならば、脱退手当金というものを廃止するのはやや理想的に過ぎるのじゃないか。少なくとも
女子
については脱退手当金を復活するか、あるいはまた現在予定されておる
経過措置
をさらに若干延長するということがむしろ好ましい配慮ではないか、私どもはこう考えるわけですが、その点御所見を伺いたいと思います。
徳永正利
22
○徳永
政府委員
ただいまの御質問ごもっともでございまして、先ほど
年金局長
がお答え申し上げましたのは、理論的にはそのとおりだと思いますが、いろいろと問題を含んでおると思います。将来は十分検討してまいらなければならぬと存じております。
竹内黎一
23
○
竹内委員
もう一点、
女子
の問題に関連するわけですが、いわゆる
年金
における妻の座の問題という点についてはすでに
橋本委員
からも質問があったわけです。私は特にこの際いわゆる加給金、御
承知
のように現在加給金は妻なり、子なりについて四百円でございます。どうもこの四百円というのはどういう
算定
の
基礎
があるのか知りませんが、ややどうも時代離れしているような気がしてしようがないわけでございまして、五年後に来る次の改定期にはこの加給金の問題はぜひとも増額をすべきものではないか、こういうぐあいに考えるわけでございまして、できるならばここで
政務次官
から次の改定期においては十分に考慮するという御
答弁
を賜われば幸甚でございます。
徳永正利
24
○徳永
政府委員
十分考慮してまいりたいと存じます。
竹内黎一
25
○
竹内委員
私は次にこの
法案
の最大の眼目とも言われている
調整
年金
についてお尋ねしたいと思います。この
調整
年金
については特に野党の先生方もいろいろ御
批判
があることは私も伺っております。これはすでに
橋本委員
からもお尋ねがありましたが、あえて重複を避けず、
一体
なぜ今回の
厚生年金
についてこういう
調整
年金
という
考え方
をとらなければならないか、そういう点をもう一度明確にしていただきたいと思います。
山本正淑
26
○
山本
(正)
政府委員
今回の
法律改正
におきまして
企業年金
との
調整
という
措置
を講じたいということに相なっております。これは民間に
企業年金
というものが最近非常に数多くできてまいりまして、特に
昭和
三十七年に税制上の優遇
措置
が講ぜられましてから税制適格
年金
という形で現在は二千をこえる税制適格
年金
ができておるのでございます。これは税制上の
保護
はされておりますが、税制上の
保護
だけであって公的にはその
企業年金
というものについて何ら
保護
といったものは考えられておらないわけでございます。
厚生年金
の
年金
給付
が非常に低い、
年金額
が十分でないということともこの
企業年金
という問題は関連いたしておりまして、そうして基本的には公的
年金
である
厚生年金
の額を老後の生活保障にふさわしい額に
引き上げ
るというのが基本問題でございますが、民間にある
企業年金
といたしましても、やはり
労働者
の老後の生活保障という
機能
を果たしておるわけでございまして、その
機能
の面におきましては重複する点があるわけでございます。それと同時に、公的
年金
を大幅に
引き上げ
るということによりまして、やはり
労使
の
負担
というものを増加するわけでございまして、さらに
負担
面においても重複する面ができてくる、こういった
実態
を踏まえまして今回大幅な
厚生年金
の
改正
と一万円
年金
というものを実現するに際しまして、その
機能
並びに
負担
という問題について
調整
をはかって、そうして
厚生年金
の
充実
と同時にその面における老後保障の
機能
というものを関連づけていくということは大幅な
引き上げ
に際しまして適切な
措置
じゃないか、かように考えた次第でございます。この
企業年金
と
調整
することによりまして
厚生年金
の
報酬比例部分
だけにつきまして代行を認める、必要な
条件
を備えております
企業年金
についてのみ代行を認める、しかも、その代行は
厚生年金
の
報酬比例部分
よりは幅の大きいプラスアルファのついたものでなければならないという
措置
を講ずることによりまして、
厚生年金
の場合よりは上回った
報酬
比例代行
部分
が確保されることによりまして、さらにこの企業の
実態
に応じた老後保障の実効があげられるのじゃないか、かような趣旨によりまして今回
企業年金
との
調整
というものを
条件
をつけて認めるという方針をとっておる次第でございます。
竹内黎一
27
○
竹内委員
この
法案
に対する
批判
の声として、特に素朴な声としまして、
調整
年金
ができれば退職一時金制というものがなくなるのだとか、あるいは退職
年金
がカットになるのだ、こういうような声を私ども聞くわけでございます。どうも私その点誤解があるのじゃないかと思いますので、この点退職一時金との
関係
、そういった点をはっきりさしていただきたいと思います。
山本正淑
28
○
山本
(正)
政府委員
現在
わが国
におきましては、退職一時金という慣行が普及いたしておるわけでございますが、現在できております
企業年金
につきましても、退職一時金とは別個のものである場合もありますれば、また
企業年金
として相当大きな額であるものにつきましては、退職一時金の一部といいますか、これは増額すべきものが
年金化
されているという場合もございますから、それを含めまして一部と申し上げますが、退職一時金の一部が
年金化
しておるという形もございます。それで現状から見まして、退職一時金の
機能
というのは非常に大きいわけでございまして、そういう
意味
におきまして退職一時金が
年金
にかわるということが望ましいことかどうかということについては、いろいろ議論があると思います。ただ、今回の
厚生年金
において
企業年金
の
調整
といたしまして
報酬比例部分
を代行さすという
措置
を講じておりますのは、そういった退職金が
年金化
するということを促進しようといったような趣旨は毛頭ないわけでございまして、
厚生年金
の
報酬
比例相当
部分
に上積みされた
企業年金
というものが、
労使
の合意によって
厚生年金
の
報酬比例部分
を代行したいという際に認可するという
措置
でございます。したがいまして、この退職金と
年金
の問題というのは、あくまでも
労使
間の問題でございまして、
労使
間によって円満な話し合いができるならば、退職金の一部を
年金化
する場合もございましょうし、いろいろの場合があると思いますが、
厚生年金
で
企業年金
との
調整
を考えたということによりまして、退職金をすべて
年金化
するとか、あるいはまた
調整
されるものを
年金
として扱うといったような趣旨なり
考え方
というものは全然ないわけでございます。
竹内黎一
29
○
竹内委員
その点はわかりました。御
承知
のように中小企業については、中小企業退職金共済
制度
というものがあり、現在その
改善
強化がはかられておるわけです。一方におきまして今回の厚年
法改正
で
年金化
が促進されようとしており、一見しますと非常に背反したような現象にも理解されるし、現にそういった点を
指摘
されておる方もあるわけですが、この点についてはどうお考えですか。
山本正淑
30
○
山本
(正)
政府委員
先ほど申しましたように、退職金というものが
わが国
の現状におきましては大きな
機能
を果たしておるわけでございますが、しかし、すべての企業を通じまして退職一時金
制度
が完備しているというか
充実
している現状ではございません。特に中小企業につきましては、退職一時金の
制度
もないという企業が非常にたくさんあるわけでございまして、中小企業退職共済
制度
というものはそういった退職一時金のない弱小企業につきまして
一定
の退職金が出るようにという政策として考えられたものでございまして、そういう
意味
におきましてはある
一定
の
規模
以上の大きな企業につきまして相当退職金も出されており、かつまた
企業年金
というものもあるといった場合に、公的
年金
をどうするかという問題とは別個の問題である。
一般
中小企業の弱小なものについては退職金すらもないという現状に対して、退職一時金の
機能
を生かすという
意味
における退職共済
制度
である、かように理解いたしておりまして、むしろ
年金制度
以前の問題として理解していいのじゃないか。そういう
意味
においては中小企業に退職一時金
制度
を促進していくという施策と何ら矛盾するものではない、かように考えております。
竹内黎一
31
○
竹内委員
次に国税庁にお尋ねいたします。 いわゆる税制適格
年金
の現在の普及状況と申しますか、特に
規模
別に見てどういうぐあいな状況になっているかを御説明願いたいと思います。
小宮保
32
○小宮説明員 お答え申し上げます。 いわゆる税制上の適格退職
年金
契約でございますが、本年の三月三十一日現在で二千六百三十五件を国税庁長官が承認しております。 それから御質問の趣旨は
従業員
の人数ということだと
承知
いたしますが、これで申しますと、保険型と信託型と二つございますが、それを両方通じまして二千百四十六件の中で、加入人員が百人
未満
というのが千百四十五件ばかりございまして、大体半分ちょっとくらいになるかと思います。それからそれをこえて三百人
未満
が七百二十五件、それから一万人
未満
が二百十四件、それから一万人強が六十二件で、計二千百四十六件となっておりますが、先ほど申し上げました二千六百三十五件というのはごく最近までの承認件数を集めたものでありますから、分類をしておりますその二千百四十六件は昨年末の状況で申し上げたわけでございます。
竹内黎一
33
○
竹内委員
引き続いてお尋ねいたしますが、税制適格
年金
の創設にあたって、その二千百余件の例から見て、退職一時金というのは大体どういう扱いになっておるか、何か傾向があれば、それをお知らせ願いたい。
小宮保
34
○小宮説明員 実は、申しわけないのでありますけれども、そこら辺の統計をとっておりません。ただ申せますことは、完全移行と申しますか、適格
年金
のほうに完全に移行する場合と、それから並行的に従来の退職金
制度
、たとえば退職一時金等との併給、そういう
制度
と両方あることは事実でございます。
竹内黎一
35
○
竹内委員
それではその点はあとで資料としてちょうだいしたいと思います。国税庁けっこうでございます。 先ほどの山木
年金局長
の御
答弁
の中で、
調整
年金
というのは
政府
代行相当
部分
以上のプラスアルファがあるはずだ、またそうでなければならない、こういうぐあいな御
答弁
でございましたが、
一体
そのプラスアルファというのは具体的にどの程度のものか、あるいはまたこの程度のものはどうしてもやれというような
最低
基準
は何か指導方針で示すつもりがあるのか、その辺を御説明願いたいと思います。
山本正淑
36
○
山本
(正)
政府委員
政府
の
厚生年金
の
報酬比例部分
にプラスアルファがつかなければならないということは、
法律
にも上回るものでなければならないというふうに書いてあるわけでございまして、その上回る限度というものをどの程度にするかということにつきましては、最局限につきましては考えておりませんが、認可の
基準
といたしましては、実質的に
厚生年金
の
報酬比例部分
を二割程度上回るというものを
最低
の認可の
基準
といたしたい、かように考えております。
竹内黎一
37
○
竹内委員
その二割程度のプラスアルファ分ですが、それは男女の性別あるいは職種別によってその
給付
内容
に差をつけることは認められるのですか。
山本正淑
38
○
山本
(正)
政府委員
現在の税制適格
年金
は
事業主
が主体になっておりまして、そして
従業員
の同意といったようなものがございませんので、全企業に働く全員ということになっておらないのでございますが、
厚生年金
の代行として
調整
する
企業年金
につきましては、企業の
従業員
全部、要するに被
保険者
全員、ある一部の者を除くといったような仕組みはできないということにまずなっております。それから先ほど申しました
厚生年金
の
報酬比例部分
を上回らなければならないという
基準
というものがあるわけでございます。 そこで
実態
的には、企業によりまして、たとえば
事務職員
と工員というものの
給与
体系
というものが著しく違っているという場合もあるわけでございまして、先ほど申しました
厚生年金
の代行
部分
を上回るという
条件
を満たしている限りにおきましては、あまり複雑なものは困るわけでございますが、比較的簡単な
内容
分類によりまして立て方を変えるということは認めていいのではないか、かように考えております。
竹内黎一
39
○
竹内委員
現在ある税制適格
年金
、さらに今回こういう
調整
年金
ができようとしているわけですが、
考え方
によっては、同じ
事業主
において税制適格
年金
をすでに
施行
しているところがさらにこういう
調整
年金
を採用するということも予想されるわけです。そうすると、二本立てというような形も出てくるわけですが、
一体
適格
年金
と
調整
年金
の
関係
というものはどういうぐあいに理解すべきものでしょうか。
山本正淑
40
○
山本
(正)
政府委員
この税制適格
年金
と今回の
調整
という際に、
企業年金
に要請する要件というものは相当異なっているわけでございまして、そういう
意味
におきまして、現在ある適格
年金
が今回の
法律改正
によりまして直ちに
厚生年金
法による
企業年金
として認可申請が出てくるかどうかということは必ずしも一がいに言えないと思います。まず現在の税制適格
年金
は、ほとんど大
部分
が有期
年金
になっているわけであります。
厚生年金
の代行でございますから、これは当然終身
年金
でなければならないということは申すまでもないわけでございます。 それから
給付
の
内容
につきましては、先ほど申し上げたとおりでございますし、また
厚生年金
の被
保険者
たる全企業の全
従業員
を
対象
としなければならないとか、各種の違いがあるわけでございまして、そういった
意味
におきまして、直ちに現在の税制適格
年金
が
厚生年金
法上の
企業年金
として切りかえられるかどうかということは、私どもは相当疑問視しているわけでございます。 それからもう
一つ
の問題といたしまして、
厚生年金
法上の、代行する
企業年金
というものがあって、かつまた税制適格
年金
というものがあっても差しつかえないわけでございまして、税制適格
年金
との
関係
におきまして、相互にどうあらなければならないといった規制は何もないわけでございます。
竹内黎一
41
○
竹内委員
規制は何もないというお話ですが、何か指導しようというような心づもりがあるのですか。つまりいまの適格
年金
を
調整
年金
のほうに移行させていくというようなそういう指導をする つもりがあるのですか、ないのですか。
山本正淑
42
○
山本
(正)
政府委員
それから先ほどちょっと言い落としましたが、税制上の優遇
措置
というものが、現在の税制適格
年金
よりは
厚生年金
法上の
企業年金
というものが優遇されております。そういった優遇
措置
が講ぜられているという一面、先ほど申しましたように全
従業員
でなければならないといったような要件がたくさんあるわけでございまして、その要件を満たす限りは、
厚生年金
法上の
企業年金
というものの認可申請があっても差しつかえないわけでございますが、いま御質問のように税制適格
年金
を
厚生年金
法上の
企業年金
になるように指導していくといったような
考え方
はございません。
竹内黎一
43
○
竹内委員
一般
に今回のこの厚年
法改正
は非常にむずかしい、ややこしくてなかなか
一般
の者には理解できないという
批判
があるわけです。今回の
改正案
が通過成立いたしますと、
定額部分
は
政府
から出てくる。従来は窓口は
政府
一本であったのが、今回はいわゆる代行
部分
とそういうものと合わせて二本立てになって、さらにややこしくなるのじゃないか、こういう声も聞くわけですが、その点はいかがですか。
山本正淑
44
○
山本
(正)
政府委員
御
指摘
のように、
事務
的には若干やっかいになります。ただ、
通算老齢年金
の
制度
が現在できておりますので、将来におきましては、各種の
年金
が現実にあるということから、
通算老齢年金
の支払いにつきましてもやっかいな面があるわけでございます。 それからもう
一つ
御説明申し上げておかなければならないのは、
企業年金
、いわゆる企業単位にできました
企業年金
におきましては、
中途脱退者
というものがあるわけでございまして、この
中途脱退者
をどう扱うかということは、いま御
指摘
の
事務
上、手続上の問題にも関連するわけでございまして、
一定
の
期間
以下の短
期間
の
従業員
で脱退した者については、基金の連合会をつくってそこで一括して窓口を一本にいたしたい、かように考えております。 それから、
年金
の受給者が増加してまいりますと、
年金額
の支払い
方式
は、各国並みにやはり銀行なりいわゆる金融機関の窓口に個人の口座をつくって、それに払い込んでいく、
年金
の受給者がふえてまいりますれば当然そういった方向をとるということは考えておるのでございます。そういった
方法
によって処理していく。要するに、受給者個人につきましては、あまり煩瑣にならない
措置
というものを当然考えていかなければならぬと思っております。 それから、先ほど申しました
通算老齢年金
の
制度
にできておりますことから申しましても、将来は受給者へのサービスという面で、窓口の一本化という問題については何らかの
方法
を講じて機構的に考えていくのも必要じゃないか、かように考えている次第でございます。
竹内黎一
45
○
竹内委員
いわゆる基金の設立、何人以上の
規模
にその基金の設立を認めるかということは、これは
法律
自体には書いてないわけですが、千人以上という御意向のように承っておりますけれども、その点はいかがですか。
山本正淑
46
○
山本
(正)
政府委員
現
段階
におきましては、一応千人以上というふうに考えております。これは実施によりましてだんだん
実態
を把握してまいりまして、そして将来にわたってはまたその
規模
を考えていっていいのじゃないか、かように考えております。
竹内黎一
47
○
竹内委員
どういうところから千人以上という
基準
を出してきたか。何か保険数理七の根拠でもあるわけですか。
山本正淑
48
○
山本
(正)
政府委員
保険数理上といいますと、もちろん
一定
の単位、
範囲
におきまして、脱退率、死亡率、かような大数的な数値というものを当てはめるわけでございますから、したがいまして、
一定
規模
というものはやはり考えるのが適当であると思っております。
年金制度
を考えます際に、どういった
規模
が保険数理上一番適正な人数であるかといったことにつきましては、定説的なものはございませんが、
一般
的に保険数理の専門家の感覚といたしましては、やはり八百人から千人といったようなところが、各種の
基礎
の数値を当てはめるに際して
平均
的であるというふうに考えられております。
竹内黎一
49
○
竹内委員
いまの説明では、千人以上ということにした
理由
は実はあまりすっきり納得はできないわけです。端的に申しまして、千人以上は基金の設立が認められる。あるいは三百人以下の場合には中小企業に対しての共済制がある。そうすると、その間の階層は
一体
何があるのだというふうな疑問が出てくるわけですが、あえて千人というのがさほど根拠が保険数理的にもないというものであれば、この
規模
をもう少し引き下げる、もっと
範囲
を
拡大
するということも、当然考えられていいと思うのです。もう一度御説明を願います。
山本正淑
50
○
山本
(正)
政府委員
基金の設立につきましては、おおよそ三種類のものを考えております。
一つ
は、一企業単位のものでございます。御
承知
のように、
厚生年金
は各事業所単位に
強制
適用
されることになっておりますので、一企業と申しましても、事業所としては数カ所にわたる、あるいは数十カ所にわたるということがあるわけでございますが、そういった一企業単位の
一つ
の型、それから
一つ
の企業系列と申しますか、そういった型と、それからもう
一つ
は同種の企業といったようなものがたとえば協同組合をつくって、そうして同種の企業で同じような
条件
にあるといった場合に、合わせて千人以上になる場合には基金の設立を認める、こういった三つの型が考えられるわけでございまして、したがいまして、同種の企業が、たとえば協同組合をつくっておるといった場合におきましては、個々の企業は千人単位である必要はないわけでございます。総合的に考えて千人なら千人という
基準
をこしておればいいわけでございますが、そういった三つのタイプを現在考えておる。ただ、いまも御
指摘
がありましたように、千人でなければならぬという確定的な数値的なものもないわけでございますので、そういった面につきましては、今後実情に応じて検討を加えていきたいと思っております。
松澤雄藏
51
○
松澤委員長
午後一時三十分まで暫時休憩いたします。 午後零時三十六分休憩 ————◇————— 午後一時三十五分
開議
松澤雄藏
52
○
松澤委員長
休憩前に引き続き
会議
を開きます。 質疑を続けます。
竹内黎
一君。
竹内黎一
53
○
竹内委員
午前中に引き続き、基金の
関係
について若干御質問いたします。 基金が行なうところの老齢
給付
のうち、
政府
代行分をこえるいわゆるプラスアルファ分についてですが、このプラスアルファ分については、企業の選択によっては一時金の形で支給することも可能なのかどうか、その点を明らかにしていただきたい。
山本正淑
54
○
山本
(正)
政府委員
ただいまの御質問のケースとしては二つあると思います。
一つ
は、
中途脱退者
としてその企業から離れる、こういった場合にプラスアルファがついている。そのプラスアルファをどうするかという問題が一点と、それからその企業で
年金
が
最終
的についた場合に、一時金として選択できるかどうか、二つのケースがあると思います。 最初の、その
企業年金
から脱退して他の企業に移るといった場合におきましては、もちろん一時金としてもらえる。通常のケースといたしましては、
政府
の
報酬
比例相当分が保証されますから、それ以上の分は一時金としてもらうケースが多いと思います。それはもちろん認めます。 それからそうでない場合におきまして、プラスアルファを一時金としてもらうようにするかどうかということにつきましては、これは
原則
としてはもう
年金
一本でございますから、一時金としてもらう。たとえば、その企業におきまして
企業年金
としての定年までつとめたあとで受給者となるわけでございますから、
原則
としては
報酬
比例にプラスアルファがついたもの一本としてもらうというのが
原則
になると思います。
竹内黎一
55
○
竹内委員
午前中の説明で、基金を設立できる人員
規模
を千人以上と考えておるというお話でありましたが、もし一千人以上として、
一体
基金の設立なりあるいは
適用
除外となる被
保険者
数というのはどのくらいになるだろうという見込みでございますか。
山本正淑
56
○
山本
(正)
政府委員
企業年金
として
調整
を受ける資格のある者が全部
企業年金
の
調整
をするかどうかということは、
調整
される
企業年金
につきまして各種の
条件
がございますので、その
条件
を満たすかどうかということは予測しがたい
事情
にあるわけでございまして、かりに千人以上の事業所
規模
が全部
企業年金
として
調整
を受けるということにいたしますと、おおむね
健康保険
組合の数というものを見当に置きまして、それくらいが
最高限度
であると考えますと、
健康保険
組合といたしまして約千
健康保険
組合、それから
従業員
総数といたしまして四百万余り、この
範囲
内ではないか、かように考えております。
竹内黎一
57
○
竹内委員
ただいま
健康保険
組合の話がちょっと出たわけですが、今回
調整
の
方法
としては基金と申しますか、特別法人による代行
方式
を採用していただいたわけです。しかし、
考え方
としては、これは健保の組合にやらせるとか、あるいは私企業にまかせる
適用
除外
方式
というものも考えられるわけですが、基金による
方式
とする特別な
理由
は何かあるわけですか。
山本正淑
58
○
山本
(正)
政府委員
現在税制適格
年金
は
事業主
が主体になっておりまして、これは特別に法人的なものはつくってないわけでございます。したがいまして、これは純然たる私的のものでございますが、公的
年金
の中に取り入れて公的
年金
として取り扱うということになりますと、これを事業所が主体となって行なうというわけにまいりませんので、どうしても公法人としての基金というものを考えなければ、公的な扱いというものはできないわけでございまして、たとえば企業が掛け金を納めないといった場合に、租税の例によりまして滞納処分を実施するという権限を与えるという
意味
におきましても、公法人たる基金をつくるという形にせざるを得ないわけでございます。そういう
意味
におきまして企業自体が行なうというのは現在の税制適格
年金
におきましては可能でありますが、
法律
上の
調整
をいたしますとそういうわけにはまいらないということから、基金の構想をいたしたのでございます。 それから、もう
一つ
の御
指摘
の
健康保険
組合に行なわすことがどうかという御意見でございますが、
健康保険
組合は
健康保険
法による性格を持っておりますので、そのまま
健康保険
組合が基金と同じような
機能
を果たすというのは適当でないと考えまして、特別法人たる
年金
基金というものを構想した次第でございます。
竹内黎一
59
○
竹内委員
大臣がお見えでございますので大臣にお尋ねいたしたいと思います。
厚生年金
にかかわらず、
一般
に保険の積み立て金の運用というものは非常に重要な問題でございまして、従来からもいろいろと論議があるわけでございます。今回
調整
年金
の資産運用というものは、この
法案
によりますと、生命保険会社あるいは信託銀行に行なわせる、この二つに限定しているわけですが、しかし民間のそういった運用にまかせるよりも大蔵省の資金運用部への預託といいますか、そういうまだまだ安全な
方法
もあるのではないか。そういう
意味
におきまして生保なり信託銀行にやらせるというふうに限定した
理由
はどこにあるかを明らかにしていただきたいと思います。
山本正淑
60
○
山本
(正)
政府委員
御
承知
のように
厚生年金
の積み立て金は資金運用部に預託いたしまして、
一定
の利回りによって運用されているわけでございます。それから税制適格
年金
は信託銀行または生保会社に運用契約を結んで運用させておる。これは信託銀行及び生命保険会社におきましては、たとえば
一般
の市中の金融機関よりは運用利回りがいいわけでございまして、そういう
意味
におきまして信託銀行と生命保険会社に限定いたしてあるわけでございます。今回の
調整
される
企業年金
の資金運用につきましても、予定利率を上回る運用、特に
政府
の場合には現
段階
におきましては六分五厘に運用されておりますので、六分五厘を上回る運用ということでなければ、下回る運用ということでは適当でないわけでございますので、そういう
意味
におきまして税制適格
年金
の例にならいまして信託銀行と生命保険会社の運用ということに限定したわけでございます。ただ
厚生年金
の
報酬
比例相当分にプラスアルファがつきますが、
厚生年金
の
報酬
比例相当分につきましては、そのうちの一部は
政府
の指示によりまして資金運用部の資金が運用されておると同様に、
政府
保証債を引き受けるといったような形で
一般
財投に協力をする、それからまた一部は還元融資という性格によって運用していくというふうな運用をいたしたい、かように考えております。
竹内黎一
61
○
竹内委員
いま運用利回りのお話が出たわけですが、この
法案
では実は運用利回りは一応五分五厘の見込みにしてあるわけです。しかし、これは現在の状況からいってむしろ低過ぎるような見方である。この利回りをもう少し高く見込むことによって逆に
保険料率
を減らせたのではないか、こういう
批判
の声を聞くわけですが、その点はいかがですか。
山本正淑
62
○
山本
(正)
政府委員
現在の
厚生年金
、
国民年金
等におきましても、予定利率といたしましては五分五厘で
算定
してございます。ただ、実際は資金運用部に預託いたしまして六分五厘の利子がついておりますので利ざやが一分ある、こういう形になっております。この利ざやはどういうふうに処理するかと申しますと、五年ごとの再
計算
の時期におきまして、その間における運用益というものを含めまして
料率
をきめるわけでございますから、現実に
料率
にはね返っておる、こういう形に相なるわけでございます。予定利率を幾らにするかということは、これはむずかしい問題でございますが、現
段階
におきましてはやはり五分五厘という予定利率にして、実際の運用益との利差益は五年ごとの再
計算
の時期におきまして
料率
に還元するなりあるいは
給付
の
改善
に還元するなり、こういった
措置
を講じていくほうが適当であると考えておる次第でございます。
竹内黎一
63
○
竹内委員
またその生保、信託の問題に返りますが、生保、信託に限定するならば、わざわざ基金を設ける必要もないじゃないかという議論も私は出てくるかと思うのです。いまの適格
年金
と同じようにやっていっていいじゃないか、こういう議論も出てくると思うのですが、もう一度その点を御説明願いたい。
山本正淑
64
○
山本
(正)
政府委員
税制適格
年金
の例によりまして、
事業主
が直接に信託銀行なり生保会社と契約するといった形で運用できるじゃないかという御主張はあるわけでございます。ありますが、
事業主
自体が運用するということにいたしますと、先ほど申し上げましたように、掛け金の滞納の場合における滞納処分というものを
事業主
にやらすというわけにもまいりませんし、そういった公的な性格というものをこの場合には税制適格
年金
と違いまして持たす面が多々あるわけでございますので、そういう
意味
から申しましてやはり公法人という公法上の権利主体というものを明確にするということが適切である、かように考えた次第でございます。
竹内黎一
65
○
竹内委員
生保、信託にもしやらせるとして、その場合被用者との
法律
的
関係
というのはどういうぐあいになるのですか。生保、信託と被用者との間の
法律
的
関係
というものは……。
山本正淑
66
○
山本
(正)
政府委員
あくまでも基金が公法上の主体でございまして、したがいまして掛け金の徴収の権利というものも基金にあるわけでございまして、基金は信託銀行、生保会社と信託契約なりそれぞれの契約を結ぶわけでございます。したがいまして、
年金
の受給者との
関係
におきましても、基金に対して受給者は
年金
を請求するし、基金が受給者に対して支払いの義務がある、こういう形になるわけでございます。ただ現実の問題といたしましては、その基金の業務をどの程度それぞれの信託銀行等に委任できるか、かような問題によって
法律
関係
は処理されるわけでございます。
竹内黎一
67
○
竹内委員
ここで大臣にお尋ねしたいわけでございますが、先ほどの説明によりますと、個々の企業ごと、一千人以上の
規模
があった場合には新しい
調整
年金制度
をやれる、こういう仕組みだそうでございますが、
一体
こういう各企業に、企業ごとあるいは事業所単位にそういう
年金
をつくることを許すということが、今日労働力の流動化を非常に促進しなければならぬということは
政府
もかねていっておるわけですが、そういった方針と何か矛盾するような結果を生みはしないか、つまり
労働者
をある
一定
の事業所に固定させようという労務管理的なねらいも当然あるわけでございますので、その点は大臣はどういうふうにお考えでございますか明らかにしておいていただきたいと思います。
神田博
68
○神田国務大臣 そういう考えは持っておりませんが、よくそういう批評は聞いております。
企業年金
と
厚生年金
の
調整
の問題につきまして、
厚生年金
のほうがおくれているといいますか後進性といいますか、そういう
意味
から既存の
企業年金
をひとつ認めて
労働者
の福祉を増進したい、こういう
考え方
、しかも
適用
する場合には
労使
が一致してそういう申請をしたときに認めていこうということでございまして、労務管理的云々というような気持ちはなかった、さらっとした考えでやったわけでございます。
竹内黎一
69
○
竹内委員
ここで質問を変えて
国庫負担
の
関係
について若干お尋ねしたいと思います。
社会保障制度審議会
の勧告におきましても、既裁定
年金
の
引き上げ
については、追加
費用
は
国庫負担
によるべきである、こういう勧告があるわけでございますが、この点、私ども十分に考慮されてしかるべきものと考えますが、いかがでございますか。
神田博
70
○神田国務大臣 お答えいたします。将来の問題として私もさように考えております。
竹内黎一
71
○
竹内委員
ただいま将来の問題というお
ことば
でございますが、この次の五年後に来る改定の際には十分考慮されるという
意味
に了解してよろしゅうございますか。
神田博
72
○神田国務大臣 むろんそういうことを含めて検討したい、かように考えておるわけでございます。
竹内黎一
73
○
竹内委員
ここで
事務
当局にお尋ねいたしますが、
厚生年金
と各種の共済
年金
でいろいろ
制度
的に必ずしも一緒でない。先ほども
標準報酬
の
とり方
についても違っていることを伺ったわけですが、
国庫負担
の
方式
でも、
厚生年金
の場合には
給付
時の
負担
になっております。ところが
国民年金
とかあるいは他の
共済組合
みたいなものは拠出時というぐあいに、
制度
的に必ずしも一緒でないわけですが、これは
一体
どういう
理由
によるものか、明らかにしていただきたい。
山本正淑
74
○
山本
(正)
政府委員
御
指摘
のように、
国庫負担
の
負担
のしかたといたしましては、拠出時の
負担
と
給付
時の
負担
とあるわけでございます。これは結果的には同じになるわけでございまして、たとえば一〇〇%の
費用
が必要であるという原資の総額を
計算
いたしまして、そのうちの一五%なら一五%は国が
負担
するということは同じなわけでございます。したがいまして、拠出時の
負担
の場合には、
国庫負担
から生ずるであろう利子分というものを含めて国が
負担
するという結果に相なりますから、その点は同じでございます。ただ、
厚生年金
制度
ができましたのは
昭和
十七年、戦争中でございまして、できました当時から
厚生年金
は
給付
時の
負担
という形をとっておりますので、それを踏襲しているということでございまして、最近できました
国民年金
等につきましては拠出時の
負担
という形に相なっておる。それは
制度
のできました当時の
事情
等によるわけでございます。
竹内黎一
75
○
竹内委員
その点はわかりました。しかし、
国庫負担
については、これはいろいろと野党の先生方にも御意見のあるところだと思うのですが、特に今回の
改正
におきましても、
国庫負担
率というものは据え置かれておる、こういう点にもいろいろと
批判
があるように私伺っておるわけでございます。また社会党さんのほうで何か準備されておる
法案
というものを伺いますと、
国庫負担
率についてはもっと高いものを考えている、こういうように伺っておりますが、据え置きをした
理由
と申しますか、これではたしていいと考えているのか、その点を明らかにしていただきたい。
神田博
76
○神田国務大臣 いわゆる一万円
年金
に踏み切るという点につきまして、
政府
の
負担
率も上昇することは、普通から考えれば私は当然だと思うのです。しかし、なかなかそこまでいかなかったというところに、いろいろ
政府
の手元不如意というか、財政上の問題があったことだろうと思っております。しかし、これらの点は、先ほど来お答え申し上げておるように、十分検討してみたい、こう考えておるわけでございます。
竹内黎一
77
○
竹内委員
さらに
国庫負担
についてでありますが、御
承知
のように基金の
事務
費は国庫補助の
対象
になっておりません。ところが基金の連合会に対しては二千万円の国庫補助があるというぐあいに私は
承知
するわけですが、
一体
どうしてこういうことになったのか。私は、基金の
事務
費というものは、
政府
の代行
部分
をやっている
関係
がありまして、補助
対象
に考えていいのじゃないかとも思うのですが、その点はいかがですか。
山本正淑
78
○
山本
(正)
政府委員
理論的に考えますと、
政府
の業務の一部を代行しているから、代行
部分
については
政府
の
所要
する
事務
費なり何なりを
基準
にして出すべきじゃないかという意見もあるわけでございます。ただ、現実問題といたしまして、
厚生年金
基金として運用します際におきましては相当高利回りに運用される。そうして利差益等も相当あるわけでございまして、基金につきましてはその利差益の
範囲
内において
事務
を処理する。実際の運用といたしましては、基金というものは公法上の権利主体になるわけでございますが、それぞれの信託銀行なり保険会社において実際の業務を行なうという結果になりましたので、その経費として包括して利差益で
事務
をまかなっていくことが可能である、かように考えまして
国庫負担
はいたしていないのでございます。 そこで、連合会に対して
国庫負担
をしたのは何ゆえか、こういう趣旨でございますが、連合会は、基金の
中途脱退者
に対して、これを連合会へ一括して原資を移し、また
給付
もやっていこうという趣旨でございまして、本来ならば、基金を脱退いたしますと
政府
が引き取るというのが筋でございまして、引き取るかわりに連合会がその同じ業務を行なうということでございます。そういう
意味
におきまして、連合会には何がしの国庫補助金を計上している次第でございます。
竹内黎一
79
○
竹内委員
最後に大臣に一点だけ伺っておしまいにしたいと思います。 実は、この点は午前中
政務次官
にも伺ったわけでございますが、いわゆる
女子
の脱退手当金について大臣のお考えを伺いたいわけです。
通算年金制度
、これは確かに理想ではありますけれども、しかし今日の現実から見て飛躍し過ぎる面もあるのじゃないか。特に
女子
について非常に不利を招いているのじゃないか、私はこう考えるわけで、少なくとも
女子
については、脱退手当金というものを復活するなり、あるいは現在考えられている
経過措置
の延長とか、あるいは一時金
制度
とか、こういうものが深く考えられていいのじゃないかと思いますが、大臣の所見はいかがでございますか。
神田博
80
○神田国務大臣 いわゆる
女子
の掛け捨ての問題でございますが、これはいま
竹内
さんもおっしゃいましたように、
女子
は最初から長くつとめるという意思がない、結婚資金の一部にしたい、あるいは家庭の資にしたいという目的を持った就職でございまして、そういう、長期の
年金
を初めから当てにしていないわけでございます。そういう観点からいたしますと、いまの
制度
そのままを
適用
していくということはいささか理想に走った押しつけではないかという御非難の点も私は同感でございます。これらの点につきましては十分検討いたしたい、かように考えております。
竹内黎一
81
○
竹内委員
これで終わります。
松澤雄藏
82
○
松澤委員長
本日はこの程度にとどめ、次会は明二十二日木曜日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。 午後一時五十九分散会