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1965-03-17 第48回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月十七日(水曜日)    午後一時十分開議  出席委員    委員長 保科善四郎君    理事 天野 公義君 理事 小笠 公韶君    理事 奥野 誠亮君 理事 丹羽 兵助君    理事 南  好雄君 理事 角屋堅次郎君    理事 重盛 寿治君       川野 芳滿君    熊谷 義雄君       和爾俊二郎君    中嶋 英夫君       堀  昌雄君    門司  亮君  出席政府委員        通商産業事務官        (企業局産業立        地部長)     馬郡  巖君  委員外出席者        厚 生 技 官        (環境衛生局公        害課長)     橋本 道夫君        通商産業事務官        (企業局産業立        地部産業公害課        長)       平松 守彦君        参  考  人        (産業構造審議        会産業公害部会        長)      進藤武左エ門君        参  考  人        (中央電力協議        会専務理事)   山崎 久一君        参  考  人        (東京工業大学        教授)      清浦 雷作君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  産業公害対策に関する件      ――――◇―――――
  2. 保科善四郎

    保科委員長 これより会議を開きます。  産業公害対策に関する件について調査を進めます。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本委員会におきましては、目下産業公害対策樹立のために調査を進めておりますが、本日は、前会に引き続き、参考人各位から御意見を承ることにいたしております。各位には、それぞれのお立場において、忌憚のない御意見をお述べくださるようお願い申し上げます。  それでは進藤参考人
  3. 進藤武左エ門

    進藤参考人 御指名によりまして、産業公害につきまして私の考え方を申し上げたいと思います。  産業公害という定義がいまだ明確ではないと思っておりますけれども、従来から産業公害というものはあったわけでございますが、最近、特に近代産業の急激な発展都市過密化によりまして、産業公害による影響が非常に深刻になってまいりましたために、この産業公害ということばが特にクローズアップされたと考えておるわけでございます。  産業公害とは大体どういうものを言われるかということを申しますると、工場排水のために河川の水でありますとか海水が汚濁されますこと、それから工場操業によりまして、騒音とか震動とかあるいは悪臭の発散によりましていろいろ害を及ぼしておること、あるいは工業用水の過度のくみ上げによりまして地盤の沈下を起こしておるということ、それからもう一つは、工場排水によりまして悪性のガス発散いたしまして大気を汚染させるということ、大体こういうふうなことが考えられております。その中でも水と空気、これはわれわれの生活に最も密接な、というより生活必須条件でありまして、これが汚濁されることは、われわれの生活に対しまして一番影響が大きいのでありますから、河川汚濁大気汚染、こういうふうな問題が対策としてもむずかしいし、また影響もたいへん大きいものだろうと考えておるわけでございます。  そこで、産業公害原因は一体どういうことであろうかということを申してみますと、いま申し上げましたように、近代産業の急速な発展によりますところのいろいろの工場操業による発散物影響でございます。しかしこれに対しまして、いままでいわゆる工業設備をやりますときに、公害防止施設を並行していたしますと、公害というのはたいへん防げたろうというふうに考えておるわけでございますし、また工場経営者におきましても公害防止に対しまして注意をしておるべきだったろうと考えておるわけでございます。しかし、最近の産業は、産業の急激な発展のために資本は投下されておりますけれども、公害防止に対する資本投下というものは、言いますとないがしろにされておったということが言い得るじゃないかと考えております。でありますから、工業経営者におきましても、さらに一段と公害防止に対する対策考えていただきたいということがわれわれの願いでございます。しかし、日本の経済は非常に浅い経済でございまして、しかも公害に対する施設への投下資本というものは相当かかるわけでございますから、従来の施設公害防止資本を投下いたしますと産業発展支障を来たすという点もございまして、産業発展をとるか、あるいは公害防止をやるかという、この調和をどうするかというところが私は非常にむずかしい問題だろうと思います。しかし、近年のように公害問題がわれわれの生活に非常に影響を及ぼしてまいりますと、この点をほうっておくわけにはまいりませんので、ことに産業家がこの問題を解決するという十分の熱意を持っていただきたいというふうに考えておるわけでございます。しかし、産業公害は特に過密都市において言われるわけでございますが、産業公害だけでなくて、一般公害、たとえば自動車排気ガスでありますとか、あるいは都市の下水でありますとか、こういうものと一緒になって公害が非常に度を増しておるわけでございますから、ただ産業公害だけの対策を講じただけで、いま言われておりまする公害が完全に防止できるとは考えておらないわけでございます。こういう点につきましては、公害防止対策として、産業公害だけでなくて、一般防止対策と並行して行なわれなくちゃならぬと考えております。  それから、特に公害は発生するほうと受けるほうと二つ関係によって初めて起こるわけでございまして、発生するだけで公害にならぬわけでありますから、発生するほうと公害を受けるほう、つまり、加害者と申しますとちょっと語弊がありますが、加害の側と被害の側との関係をも十分検討いたす必要があると考えております。  いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、現在産業公害とは何ぞやということばのはっきりした定義と申しますか意味がまだ解明されておりませんので、この点を十分解明することが必要でございます。そして、その解明された定義に対しまして、一体どの程度まで産業公害防止するか。完全に防止しなくちゃならぬことは当然でありますけれども、しかし、先ほども申し上げましたように産業発展との関連もございますから、われわれの生活支障のない一定の限度を見出しまして、その限度を必ず維持できるような対策を講ずる必要があると考えております。  これには、まず、どう言いましても産業公害に対する技術開発技術的な解明をいたしませんと、ただ作文だけで産業公害が防げるわけじゃございませんから、技術開発をいたしまして、産業公害防止技術をまずしっかりつくること、それからもう一つは、産業公害の測定をはっきりつかむ、この二つ技術的にどうしても必要であるわけでございまして、こういう点で、今後、産業公害防止に対しましては、産業公害防止技術の発達をどうしてもはからなくちゃならぬと考えておるわけでございます。  もう一つは、公害のいろいろの規定がすでに――地下水のくみ上げの制限でありますとか、あるいは水質汚濁基準でありますとか、大気汚染基準でありますとか、いろいろの法律はすでに数年前から政府のほうでも出しておりますが、こういう法規をもう少し整備しなくちゃいかぬじゃないかというふうに考えておるわけであります。  それから、これの取り締まりと申しますか、産業公害規制いたしまする行政組織をもう少し簡素化して、はっきりさして、責任体制をしっかりさすということが私は必要じゃないかと考えております。ごく手近な例をとりますと、私、水資源開発公団におりますが、この三月一日から利根川から荒川へ導水いたす水路ができまして、ただいま荒川へ水が入っておりますが、荒川の鴻巣から浦和までは荒川自然流下にいたしておるわけであります。ところが、荒川自然流下する部分に対する水質の保全をどうするかという問題で実はいま非常に頭を悩ましておるわけでございます。いまのままほうっておきますと、せっかく利根川から水が入りましても、多摩川の二の舞いになる心配がございますから、こういう点でもう少し行政組織と申しますか機構を簡素にいたしまして、そうして責任をはっきりさしていただきたい。そして公害防止に対する施設がうまく運営できるようにしていただきたいと考えておるわけでございます。  それからもう一つは、公害現状が、いろいろ議論はされておりますけれども、はっきり把握できておらないと思うのであります。公害は非常に複雑でございまして、時により場所により、しょっちゅう変化しておるものでございますから、この変化の現状を十分把握してそれの原因を究明するという、公害現状に対する検討を十分しなくちゃならぬと考えておるわけでございます。  それで特に公害問題としては、現在起きておる公害をどうするかという問題と、将来起きるべき公害をいかに防止するかという二つの問題が取り上げられなくちゃならぬと思いますが、現在起きておる公害に対しましては、防止施設を至急つけてもらうということ、それから作業方法を改善してもらうという問題もございますし、あるいは工場を移転するという問題もございましょうし、あるいは被害を受ける住宅の移転をするという方法もございましょうし、あるいは環境を整備する、たとえば公共投資によりまして下水道を完備して工場排水をそちらへ導くというような問題が対策として講ぜられなくちゃならぬと思います。また、将来の問題といたしましては、適正な工場立地計画をつくっていただいて、そして公害をあらかじめ起こさないようにするということが非常に必要でございまして、ことに最近十三の新産業都市が指定されましたので、これをしっかりと計画を立てて進めませんと、また従来の都市公害二の舞いを各所で演ずるという心配もございますから、こういう点もぜひ注意していただかなくちゃならぬと思います。  それからもう一つは、将来の問題に対しましては、ぜひ公共投資を充実していただいて、そして下水道の整備をするというふうな公共投資、従来非常におくれております公共投資をぜひ充実さしていただくこと。それからもう一つは、産業施設に対して、ある程度規制をやるということをはっきりときめていただいて、あらかじめ産業公害防止施設をやるという対策をぜひ講じていただきたいと思います。それからもう一つは、どうも現在の産業公害に対しましては、発生源に対する問題だけが非常にクローズアップされておりますが、発生源に対する問題だけをクローズアップして議論されますと、対策が画一的になりがちじゃないか。つまり、むだな施設までしなくちゃならないようことになる心配もあるわけでございますから、この点、将来の問題に対しましては、たとえば工場立地の土地の風の状況はどうであるとか、あるいは地形の状況はどうであるというふうに事前調査しまして、その調査条件に合うようなむだのない施設をやっていくという対策もぜひ講じていただきたいと思います。  産業公害問題に対しましては、いま申し上げましたように、いろいろ原因もございますけれども、しかしこれの対策をぜひ完全にいたしますのには、単に発生源だけの問題でなくて、これを受けるほうの側との関連と、もう一つ行政関係あるいは取り締まり関係というものとの三者一体になっての対策が必要ではないかというふうに考えておるわけでございます。  それから、私はただいま通産省の産業公害対策部会部会長を仰せつかっておるわけでございますが、これに対しまして、すでに昨年の十月発足以来、四回部会を開きました。いままでに産業公害未然防止対策はどうしたらいいか。たとえば工場特別地域調査事前にやっていくというふうな問題の議論、あるいは過密都市における産業公害問題の解決はどうしたらいいかというふうな問題、それから公害防止技術開発に対してはどうしたらいいかという問題、それからもう一つ大きな問題としましては、現在の公害発出源に対しましては、特に中小企業に対しましていま公害防止施設をつくれと言っても、実際問題としてなかなかむずかしいのでありますから、政府あるいは公共団体におきまして技術指導を行ないますとともに、ある程度助成措置をぜひ講じて、一日も早く現在の公害防止するような手配をしていただきたいというような考えをもちまして助成措置等検討もいたしております。  それからもう一つ騒音防止、これは実は技術的にもなかなかむずかしい問題でございます。金も相当かかる問題でございますが、最近騒音防止に対する小委員会も開きまして、これの対策をどうしたらいいかという技術的の問題もただいま検討中でございます。  以上申し上げましたように、政府におかれましても、産業公害対策に対しましていま非常に熱意を持っておやりになっておりますし、それから昭和四十年度の予算におきましても、防止事業団発足をはじめといたしまして、産業公害の問題に相当力を入れていらっしゃいますが、しかし、いままでどっちかと申しますと、ほとんど放置されており、また企業経営者におきましても関心の非常に薄かった問題でありますだけに、産業公害問題は今後国においても非常に力を入れていただき、企業側もこれに対してしっかりいろいろの施設をする、また被害者の側におきましても、企業経営立場も考慮しながらこの問題を解決するという、発生源被害を受けるほうと、それから政府、こういう三者がどういうふうにして公害を防げるかという問題に結論がなっていくと思います。  繰り返して申しますが、現在の産業公害対策は、大体発生源に対する対策は非常にクローズアップされ、また被害に対しましても発生源を責めるような考え方が必要以上に強くなっておるのじゃなかろうか。そのために、工場のほうでもいま一生懸命やっておられるようでありますが、現状におきまして最上の理想的な施設をやらなければならぬという方向へいきますと、これはけっこうなことでありますけれども、そうしますとかえって角をためて牛を殺すと申しますか、産業発展に対して非常な支障を来たしやせぬかというおそれも実はあるわけでございますから、産業発展産業公害とを調和しつつ、しかもわれわれの生活支障のない程度公害施設をやっていくという問題をぜひ技術的に解明していただいて、そして施設をはっきりやっていく。そしてそれに対しまして産業発展できないような問題が起こりましたら、国が積極的に助成策を講じまして、産業発展とそれから産業公害防止とを両方が立ち行くようにしていただきたいということをお願いいたします。  非常にざっぱくな考えでございますが、私の意見を申し上げました。
  4. 保科善四郎

  5. 山崎久一

    山崎参考人 ただいま御指名をいただきました山崎でございます。電気事業公害防止対策という問題につきまして卑見を申し上げさせていただきたいと存じます。  本論に入りますまでに、お許しを得ますれば、関連事項といたしまして電気事業現状に若干触れさしていただきまして、それから電気事業公害防止対策という当面の問題、最後に、今後この防止対策についてはどういうことを考えておるかという点を申し上げさしていただきたいと思います。  まず最初に、電気事業現状といたしましては、お手元に「電気事業現状」と申します資料をお届け申し上げてございますので、これに関連をつけながら御説明を申し上げたいと存じます。  まず、わが国の産業発展国民生活水準向上とによりまして、電気需用は間断なく増加をいたしております。その増加率欧米諸国にもその例を見ないほどの高い率でございまして、その点は二ページのところにグラフをもちまして説明いたしてございますが、昭和二十六年に九電力発足いたしましてから三十八年度、十二年間で消費電力量は約四倍でございます。こういうような高い伸び率をもちまして現在まで増加をいたしてまいりました。なお、今後も年率にいたしまして約一〇%程度伸びを示すものと現在予想をされておるわけでございます。電気事業におきましては、その需用に応じまして安定な供給を確保するために、年々二百万キロないし四百万キロワットの電源設備開発し、なおこれに付随いたしまして送変電設備あるいは配電設備などを建設いたしてまいったのでございます。その結果、近年に至りまして供給力需用を十分まかないまして、なお必要な供給予備力を持つような実態になりました。これによりまして水力の異常な渇水がありましても、また、発電所の事故などがありましても、支障なく安定した供給が続けられるというような状態に相なったわけでございます。広域運営という制度によりまして、他社または他の地域からの応援というような問題も、この場合安定供給という問題には大きな役割りを果たしておるわけでございます。  電気事業本来の使命といたしましては、御高承のとおり、豊富、低廉な電気を安定して供給するということにありますが、電気料金はどうかと申しますと、これも資料の二一ページにその内容が出ておりますように、欧米諸国と比較いたしましても低位にございますし、また、他の公共料金と比較いたしましても過去の倍率が低い倍率と相なっております。  電気事業合理化はどういうところから一番効果をあげておるかと申しますと、送電損失を減らすということ、それから燃料消費率、つまり発電所の能率をあげるということ、それから近代技術を導入することによりまして、生産性が非常に向上してまいっておりますが、それはこの資料の一七ページに示してございますように、送配電損失率が二五%、四分の一が途中で消えてなくなっておりましたものが、現在の段階では一〇%以下というようなところまで合理化されてまいっております。それから燃料消費率にいたしましても、二十六年発足当時におきましては、一キロワットアワーを発電いたしますのに〇・八六七キログラムという燃料を――これは石炭換算でありますが、そういう燃料を必要といたしましたものが、それの半分以下の〇・四一四というふうにまで合理化されてまいっております。これらのことが料金低位に安定させていることに対しまして大きな貢献となっているのであります。これによりまして産業国際競争力を強化させる上に大きな役割りを果たしておりますし、また、国民生活向上にも貢献していると確信している次第でございます。  電気事業電源開発には、ただいま申しましたように年々二百万ないし四百万キロを開発いたしてまいりますが、このうち、最近の状態では水力資源の枯渇によりまして、約二割程度水力でございまして、あとの残りの八割が火力発電ということに相なるわけであります。火力発電需用中心地に遠くないということ、それから燃料の輸送に便利であるということ、あるいは冷却水を多量に必要といたしますが、その分を取りやすいということ、それからその電力を配電いたします送電線を引き出すことができるというような、いろいろな立地上の制約がございます。  電気事業におきますところの公害問題は、主としてこれらの火力発電所煙突から出てまいります煙によりまして、大気汚染という形で出てまいるのであります。これにつきまして、もう一つの簡単な資料として「電気事業における公害防止対策」というものを書いてまいりましたが、この中の二ページの下のほうにございます「当面の公害防止対策」といたしまして、電気事業ではどういうようなことをやっているかということを申し上げたいと存じます。  まず火力発電所の中には、石炭を主として燃料といたします発電所と、重油を主として燃料といたします発電所とございます。  まず石炭火力発電所でございますが、現在全国の石炭火力発電所では、設整出力にいたしまして千百万キロワット程度で、重油火力が約八百万キロワット程度でございますが、石炭火力発電所の場合は、まず煙の排出に先立ちまして、高性能の機械式並びに電気式集じん装置をつくりまして、発電所出力に応じまして適宜必要な高煙突施設いたしております。石炭の場合は、主として出てまいりますのはすすとか粉じんでございますので、こういうような施設をいたしております。なお使用石炭の品質に吟味を加えますとともに、優秀な燃焼制御装置を用いまして、燃焼管理にも万全を期しております。このようにいたしまして排煙中のばいじん濃度法定基準値内に押えるようにいたしておるわけでございます。しかしながら、もちろん将来新しい技術開発されましたならば、当然、今後建設する発電所にはもちろんのことこういうような設備をつけてまいりたい考えでございます。  それから第二には重油火力発電所の場合でございますが、一般重油火力発電所はおおむね最新のボイラーを使っておりますが、立地とか気象条件並びに出力に応じまして高煙突施設いたしまして、かつ、できるだけ硫黄分の少ない重油を採用するという方針をとりまして、その上優秀な燃焼制御装置を用いまして良好な燃焼管理を行ないまして、排煙の中の亜硫酸ガス無水硫酸濃度法定排出基準値内に押えるというふうにやっておるわけでございます。  なお、現在、排煙中の亜硫酸並びに無水硫酸除去方法開発及びばいじん除去装置などの改良につきましては、いろいろと研究中でございますが、これらのものが完成した場合には今後つくります発電所はもちろん、あるいは既設の火力発電所にもこういうものを積極的に導入する考えを持っておるわけでございます。  なお、今後新設いたします重油火力発電所におきましては、ユニット容量がだんだん大きくなりますし、地域産業集中巨大化というようなこと、また環境改善社会的要請などを考慮いたしまして、いろいろの対策を実施いたしたい考えであります。  その第一は、気象条件を綿密に調査いたしまして、公害防止設計に万全を期するということでございます。  それから第二といたしましては、排煙拡散性を高める、すなわち濃度をなるべく薄くするために、煙突の有効高さを二百五十メートル以上としたい。煙突から出ていきます煙の速度を上げるということ、並びにその煙の温度を上げることによりまして有効高さを三百五十メートルというふうなところまで持っていくということが望まれておるわけでございます。  それからなお、排煙清浄化をはかるために、ばいじん除去装置をつけることであります。  それからもう一つは、ばい煙排出規制警報が発令されましたときに備えてできるだけ硫黄分の少ない重油を使うというために必要なタンクとかその他の関連施設をつけるというような方向で努力いたしたいと思っております。  このような方策をとりますので、火力による公害を生ずるおそれはないと考えておりますが、特殊な悪条件下におきまして、他産業排煙とかあるいは自動車の排ガスなどが重畳いたしまして、排煙の抑制を要請されるような事態が起こりましたときには、今度はこの運用の諸対策を実施いたしまして公害防止に協力をいたす考えであります。  まず第一の方法といたしましては、硫黄分の少ない重油を備蓄しておきまして、そういう緊急時にはこれを使用いたしまして、排煙中の亜硫酸ガスなどの含有率を一段と減少させたい。  それから第二といたしましては、その地域石炭火力発電所につきましても、重油をまぜてたくそのまぜる量をなるべく少なくする。  それからなお、そのほかに広域運営によりまして他の地域発電所電力を発電してもらいまして、そこから電力を受けて当該地域重油火力発電所の負荷を減らすというような方法もとろうということでございます。  以上が当面の公害防止対策でございます。  それから最後に、今後の推進方向でございますが、公害問題は前述のとおり全産業、全社会がひとしく直面いたしておる問題でございますので、あらゆる面からその防止対策を講ずべきことは申すまでもないと考えますが、電気事業におきましては率先して万全の対策を実施いたしておりますし、今後も実施する覚悟でございます。  なお、現在各社におきましては公害対策委員会などによりまして対策調査防止の研究など一段とやっておるわけでございますが、そのほかに、先般中央におきましては公害防止対策会議をつくりまして、これによりまして各社間の協調をさらに深めまして公害防止対策をさらに推進いたしたいと考えておる次第でございます。  大気汚染防止対策は、その研究分野が非常に広くなっておりまして、今後なお研究すべき問題がたくさん残っております。現在確立されております対策といたしましては、燃料の質的吟味とか、ばい煙除去装置の設置とか、排煙速度の上昇と高煙突の採用による拡散効率の向上とか、煙突配置の適正化による排煙重畳の回避――煙が重なることをなるべく避けるという方法でございますが――並びに緊急時におきます臨機の運営方策などでございますが、これらの対策を積極的に実施するとともに、国及び民間研究機関と強力な共同研究体制を固めまして、当面次に述べますような抜本的な技術開発を進めて排煙による公害の根絶をはかるべきだと考えておるわけでございます。  まず第一は亜硫酸ガス並びに無水硫酸を除去する実用的技術開発。これを開発することができますならば、産業に対するいろいろな重圧なしにこういう対策が立てられるというわけでございます。  それからさらにさかのぼりまして、燃料油の脱硫法の開発促進、これは非常にむずかしい問題でございますが、この問題も、電力関係におきましては官庁側の御研究もお願いすると同時に、中央電力研究所におきましてこの問題の研究にも取り組んでおる次第でございます。  以上のような公害防止対策並びに研究を強力に推進いたしますとともに、役所、関係諸団体などと緊密に連絡をとりまして環境改善に積極的に努力いたしておる次第でございます。  最後に付言いたしたいことは、公害原因は多種多様でございまして、経済成長の根幹である出産活動の発展国民生活向上とに伴い免ずる幾つかの社会的な不利益があらわれたものであると言うことができましょう。したがいまして、公害防止し、環境を改善するにつきましては、関係のある全産業、全社会が直面している問題でありますので、各層がそれぞれの立場で官民一体となって協力対処すべきものと考える次第でございます。  すなわち、原因者側といたしましては最善の対策を実施することはもちろんでございますが、一般といたしましても公害というものの実態を科学的な調査に基づいて認識と理解を深めていただくということがこれまた肝要であると考えるのでございます。また、国におきまして法による規制を行なうにあたりましては、産業発展を阻害することのないように御配慮を願いたいこと、また公害防止経済的負担の過重となるような産業に対しましては助成措置を講ずること、さらに公害防止に有効な社会資本の充実整備ということ、並びに新しい技術の研究開発推進等の政策をとることが強く望まれるのでございます。  以上で私の公述を終わります。(拍手)
  6. 保科善四郎

    保科委員長 次には清浦参考人にお願いをいたします。
  7. 清浦雷作

    ○清浦参考人 御紹介いただきました清浦でございます。  われわれの日本は、きわめて狭い国土に人口が非常に密集しております上に、天然資源も非常に乏しい。その日本が独立国としまして世界に存立するためには、工業発展と輸出産業の振興をはからなければならないということはすでに御案内のところでございますし、これが日本の工業立国という国是になっておるわけでございます。  わが国の産業発展にあたりまして、新しい産業都市あるいは工業特別地域というものを開発していくことは非常に重要な意義を持っております。しかしながら新産業都市あるいは工業特別地域の急速な発展を期していくにあたりまして、もし工業ガスとかあるいは排水等による大気汚染あるいは水質汚濁、それらの対策に適切な方法を欠きます場合は、地域住民への公害を招く危険がございます。ジャーナリズムその他がやや誇大な報道を従来やってきた。そういう影響もございまして、沼津・三島地区に見られますようにコンビナート造成反対運動なども起こっております。これらが地域工業開発に一とんざを来たさせるという大きな事態を招くことになっております。  そこで、開発計画の目標を日本としてはどうしても達成しなければいけないということは先ほど申し述べました理由でございますが、一方では産業公害をできる限り防除する必要がございます。そのために新しい産業都市工業開発にあたりましては、まず公害発生の危険の有無を事前調査しまして、公害未然防止対策検討するとともに、公害を防除する技術を十分に確立します科学技術士の研究の促進、これがわが国の緊急な課題になっていると存じます。  日本の新しい産業都市あるいは工業地域開発は、日本の将来を託するものでございまして、たとえば日本は、これも御案内のとおりでございますが、ほとんどあらゆる工業原料を輸入しなければならない。そしてこれを国内で加工し、工業製品の輸出として今度はそれでかせいで原料購入の代価を得なければならないという必然の運命にございます。さらにわが国は、これも御案内のとおり、米麦等の主食の一部はもちろん、家畜等の飼料を大量に輸入しておる現状でございますから、これに要する外貨も主として工業製品の輸出によって獲得しなければならない関係にございます。  たとえば一例を申しますと、石油資源に乏しいわが国は年に約六億ドルの原油を輸入しておりますけれども、それから生まれます石油化学製品は約七十億ドルの価値を持つものにわが国の工業が加工いたすわけでございます。六億ドルの原油を輸入して約七十億ドルのものに加工をいたします。そのうち国民の生活資材として消費されるものが約六十三億ドルでございますが、さらに石油化学製品として約七億ドルが輸出に回されるわけでございます。そういたしますと、先ほど申しました原油輸入の約六億ドルをここで取り返して一億ドル残すことができるわけでございます。  また、いろいろこういう例はございますが、化学肥料工業の例をとってみますと、一九六四肥料年度のわが国の窒素肥料は、国内全生産量の約四〇%を輸出しております。これは欧米とソ連を凌駕いたしまして、すなわち硫安換算で約二百二十万トンを輸出することができまして、世界の第一位になることができました。金額にいたしまして約四百億円を中共あるいは東南アジア、台湾、韓国その他に輸出しております。これは輸出産業という点から見ますと、外貨手取り率が九八%にも達するものでございまして、戦略的商品としまして最も重要なものだということも御案内のことでございます。これは無尽蔵に得られます空気中の窒素とか水とか、それに少量の原油を主原料といたすわけでありますから、外貨手取り率が九八%というような非常に高率のものが得られます。  これからの日本は、いま申しましたようないろいろな理由から、地域開発によりまして新しい輸出産業の一そうの発展に期待をかけるわけでございます。  ところが、その次に地域開発工業化、近代化を急がなければならないということをもう少しつけ加えさせていただきますと、たとえば日本は昨年度約四百億円の窒素肥料の輸出ができて世界第一位になっております。これも日本の工業が非常な苦難の暁にかちえたものでございますけれども、すでに本年二月ごろ欧米諸国がわが中共輸出市場に巻き返しに出てきております。すなわち欧州の窒素肥料の輸出カルテルでございますナイトレックス、これが硫安換算で約百万トンでございますから、約二百億円程度を中共に輸出することに成功したと外電が報じております。またナイトレックスに未加盟のイタリアのENI傘下の国営肥料会社ANICというのがございますが、それが約二十億円に相当する窒素肥料を中共に輸出することに成功してまいっております。英国のICIも商談をしてきております。今日もうすでに日本には売る市場がないわけであります。欧米諸国が、たとえばこの化学肥料を見ましても、こういうものを中心にしました大型新鋭工場の建設を数年来急いできておる。それらのコンビナートづくりが着々と進んで、これがもうある程度運転が始まったという証拠でございます。つまり欧米の新鋭工場が生産活動を開始し始めたということでございます。おまけに、わが国を取り巻きます東南アジアあるいは中近東など、わが国肥料輸出市場の中に大工場を建設しまして、そこで最新式の高濃度肥料の現地生産に乗り出してきております。最近それらの工場の完成が間近に迫ってまいりまして、製品を中共、東南アジアその他低開発諸国に輸出するのみならず、さらに余剰製品のアンモニア等を非常に安い値段で日本に売り込むべく激しい商社活動を開始しております。欧米資本の大規模な新設工場が廉価な製品を、わが輸出市場のみならず、日本国内に奔流のように流し込んでくる危険がございます。開放経済の今日では、世界情勢を無視して工業経済考えることは許されないし、また無意味でございます。これらの欧米財閥の産業攻勢によって日本の工業が万一敗北するようなことがあってはたいへんでありますから、日本としてもできるだけ数鋭設備工場を新しいコンビナートに立てていかなければならない。そして新しい設備でより優秀な、より廉価な工業製品をつくって、これを外国の輸出攻勢に負けないように日本も売っていかなければ、このきびしい開放経済の時代に日本が敗北する危険があると私は心配するのであります。  ところが、産業公害をはばむものとしまして、公害への危惧と住民の反対がございます。次に、このことで少し申し述べたいと思います。  新産都市あるいは工業特別地域工業開発が日本にとって特に重要なことはただいま申し述べましたけれども、コンビナートができることによって公害が起きるということを強く危惧する人々がございます。そのために工業開発に積極的に賛意を表さない風潮も一部にあらわれております。たとえば四日市の公害問題がテレビあるいはジャーナリズムでむしろ誇大と思われるような表現で広く報道されたことも原因しております。このためか、国民の中には公害に異常な恐怖を抱く人も少なくない現状でございます。沼津・三島地区のように石油化学や火力発電の進出によるコンビナート化を公害発生の危険をたてにしまして強く拒否した事態も起こっております。しかし、もしわが国の工業開発適地の周辺の住民が将来沼津・三局地域の人たちと同じように産業公害の危険に対する危惧のために工業開発にまっこうから反対することになっては、国の将来に容易ならざる事態を招く危険がございます。そこで工業開発地域における事前公害防対策、これを十分検討することが今日きわめて大きい命題となってまいったのでございます。国としましても、また、企業側としましても、もちろんできる限りの努力を傾けて産業公害の軽減につとめ、住民の生活を快適なものとすることが重要でございます。なおまた各指導者階級、また報道機関も公害を論ずる場合には事実を正しく報道することにつとめ、社会を誤らすような誇大な表現や不確実なニュースを流すことを十分慎まなければならないのであります。公害の問題が社会に認識されなかった昔のときは、社会の関心を強め、世論として訴えるために、過大な表現、誇大な表現を用いる必要があったことはある程度了解できます。しかし公害が社会問題として強い関心を呼んでおります今日としては、むしろ正しくかつ正確な表現を絶対に必要とするのでございます。このことは広く官民ともに留意すべき点でございます。たとえば住民側としましては、地域開発工場誘致にあたっては、公害問題に対する正しい科学的ないし技術的な知識をもとにして事実を冷静に理解し判断する必要がございます。また、政府、地方自治体におきましては、新工業郡市の建設や工業立地等にあたっては、公害対策を含めた総合的な立場から計画すべきであり、また土地利用計画を明確にする必要があります。通産省で実施中の全国工業開発地域産業公害対策調査、こういうこの種の調査公害発生を未然に防ぐものとしましてきわめて時宜を得たものであり、今後さらに継続的な、さらに徹底的な総合調査を期待するものでございます。企業の負担では解決が困難な場合もございます。その際は国あるいは地方自治体が補助、助成の方法を講ずることも必要であります。あるいは企業が共同で対策を講ずる等の指導もなすべきであると思います。これは国として指導をすべきであるという意味でございます。企業体におきましては、企業の公共性を自覚しまして、公害発生の防止に努力すべきであります。また、企業の進出や工場建設にあたっては、公害問題について十分な資料をもとにして、事前に自治体等を通じまして住民の理解を深めることが必要でございます。個別に公害対策を講ずることが困難なときは、共同しまして公害問題に対処することを考慮することも必要でございます。  次に、産業公害とその対策について、簡単に申し述べます。  四日市の公害の事例を簡単に取り上げて申し述べますと、四日市はわが国の終戦後国民生活の復興のために経済の高度成長を必然的に要求された時期に造成が始まったわけでございます。高度成長のひずみともいわれておりますけれども、この四日市の産業公害の実態を十分調査して、今後の産業公害対策樹立の上に参考とすることは非常に有用で有効であると存じます。一言にして申しますと、四日市の産業公害はきわめて局地的にごく一部の地区に発生しておりまして、たとえば塩浜、それから磯津、それから午起のこのきわめて小さい三地域でございますが、発生は局地的でございます。これがなぜ起こったかということは、工場配置計画都市計画がきわめて気象条件を無視して進められたということに大きな欠陥があると思います。  今後の対策をどう考えるかという例を一つ申し上げますと、たとえば工場側としましても、できるだけの努力をする。現在その努力が進んでおりますのは、たとえば石油精製工場で水添脱硫装置及び接触分解装置から発生しますガス中の硫化水素を硫黄として回収するプラントの建設が完成し、現在九十トン・パー・デーの硫黄が回収されるように今年、つい先日からこれが運転されております。これによりましておそらく相当量の亜硫酸ガスが廃ガスから除外されたことになるわけでございます。  それから四日市の場合は、きわめて明瞭な冬と夏の二つの季節風がございますから、この季節風を十分考慮して煙突の高さあるいは煙突相互の高さ、そういうものを考慮することによりまして、かなり大気汚染による公害防止することもできると存じます。  それから都市計画による対策も進めていただくのがいいのではないかと考えております。  簡単に四日市の例でその対策がいかに進むであろうかというようなことも申し述べました。  時間がございませんので、先日お手元に差し上げましたプリントをちょっとごらんいただきますと――プリントの説明をしてよろしゅうごさいますか。
  8. 保科善四郎

    保科委員長 けっこうです。どうぞ。
  9. 清浦雷作

    ○清浦参考人 お許しをいただきまして、この大きいほうのプリントがございます、それは「亜硫酸ガス公害および除害法」というのでございまして、最初のページに「有害廃ガスによる公害産業」こういうことで、世界でいままで廃ガスでどのような公害が起こったかの例を述べてございます。  それから二ページ目の左側の3の「西ドイツの大気汚染対策と法制」というところをごらんいただきます。これは西ドイツでは大気汚染防止にVDI、これはドイツ技術者協会と訳されておりますけれども、このドイツ技術者協会が非常な働きをしております。そしてドイツ技術者協会の中に設けられましたコミッション・ライン・ハルツング・デア・ルフト、これは大気清浄委員会あるいは大気汚染対策委員会とでも訳しますか、この委員会がきわめて強力な委員会組織をこしらえまして大気汚染防止に活動しております。その構成メンバーは、そこに印刷してあるとおりでございまして、医者十二人、化学者十人、あるい冶金学者十一人とか物理学者九人とかその他、合計百四十三名の委員が活動をしております。  このページの右側のほうにちょっと書いてございますが、ドイツでは亜硫酸ガスにつきましては、現状では経済的に実施し得る除害対策の処理方法がまだ研究が完成しないということで、放出濃度規制する基準が定められておりません。たとえば日本では、煙突から放出する濃度亜硫酸ガスについて火力発電所の場合は〇・二%というようにすでに規制ができておりまして、日本ではドイツより先にこの大気汚染規制が実施されております。ドイツはまだ直接放出濃度規制することはしておりません。  その次のページでございますが、今度はイギリスの例を簡単に申し上げますと、イギリスは昔からアルカリ・アクトというものがございまして、アルカリ法による取り締まりはこれまでと同様に、現在の進歩し繁栄するイギリス工業の要求と、また一方で清浄な空気の必要性との妥協という方向に向けられていると思われます。この工業の進歩、それから公衆の衛生、その両面の相互調和ということが非常によく強調されて法律が適用されているように思われます。  それからその次のページに、世界で火力発電の除害を実施しております一つ技術的な例としまして「ロンドン市における廃ガス規制と処理例」というのがございます。これを概略申しますと、これはロンドンのテームズ川に面しまして十二万五千キロの火力発電所がございます。バンクサイド・パワー・ステーションと申しておりますが、その火力発電所の煙が国会議事堂とそれからセントポール寺院にかぶる。そしてこれを腐食させる、あるいはまっ黒にしてしまうということで非難を受けて、バンクサイド・パワー・ステーションの煙を洗浄処理することになりました。そのために石灰乳で洗います洗浄処理プラントが設置されたのでございます。それは非常に膨大な建設費を費やしまして現在に至っておりますれけども、かえって今日では湿式処理をしたために廃ガスの温度が下がり、それからガス中の水蒸気もふえるということで、煙が気象条件によっては舞いおりてまいりまして、そしてかえって局地的に好ましくない現象を呈するということで、非常に評判が悪いのが現状でございます。英国は御承知のように電力は国営でございますが、英国の電力庁も、もうこのような湿式洗浄の方法は二度とロンドンないし英国では採用しないということをこの技術首脳部は私に申しております。  それからロサンゼルス地区の廃ガス規制でございますが、これは御承知のように非常にはげしいフォッグがかかるロサンゼルスの気象条件になっておりまして、日本ではそのような気象条件の場所はちょっと見当たりません。また季節的にもむしろ夏のほうがロサンゼルスはフォッグがひどいときでございまして、日本ではたとえば東京は冬のほうがフォッグがひどいというように、全く逆になっております。ロスは非常に車の多いところでございますが、これは自動車排気ガスの除害装置をつけろという声がもう十年も前、もっと前から出ておりますけれども、ようやく昨年ごろから、新しい車を買うときは必ずつけろ、そういうような法律が出てまいりまして、そうしてなぜ多年排気の除害装置を取りつけることが法律で規定されなかったかと申しますと、昨年までは効力があってかつ経済的に見て妥当な除害装置の製作ができなかったという技術的な理由でございます。ところがようやく一昨年ごろから約一万円前後の除害装置ができるようになりまして、それも一社たけではなくて数社――三社以上現在ございますが、約三社以上のメーカーがそれをつくるようになったということで、州の法律でこの取りつけを規定することになったのでございます。これは独禁法にも関係して、一社だけの、あるいは一、二社のメーカーがつくっておるという時期にはやはり法律を適用しておらない状態であります。  それからもう一つ米国のロサンゼルスの大気汚染関連しまして、火力発電所でどんな除害装置をしておるかということを申しますと、サザン・カリフォルニア・エジソン・エレクトリック・カンパニーというのがございまして、ちょうど東京電力とほぼ同じくらいのきわめて大きな電力会社でございますが、ロサンゼルスにございます。そこであの火力発電所に対しまして、現在石灰の紛末を煙の中にほうり込みまして、そうして煙の中の硫酸分――亜硫酸ガスはとうていこれをつかまえて除害する技術がまだ確立できていないから実施できない。ただ硫酸分についてだけ石灰を噴霧いたしましてこれを硫酸石灰、あるいはマグネシアを噴霧いたしまして硫酸マグネシアとして、硫酸分だけを結合させまして、そしてそれを最終的にバックフィルターでこして除去する。そして除去したあとの廃ガス煙突へ出すという処理をしております。ただしこれは亜硫酸ガスは依然として除去することができておりません。もしこの亜硫酸ガスを除去する研究が進めば非常にありがたいことであるということをしきりに述べております。  それから次に、ドイツでそれではどんなことをしているかを簡単に最後に申し述べます。ドイツにはラインルフト・フェアファーレンという方法が非常に有名であります。世界にこの名が喧伝されております。その詳細は、最後から二枚目のページの右側に図がございますが、活性炭素を用いまして廃ガス中の亜硫酸ガスを吸着させます。そして今度はその活性炭素を温度を上げて亜硫酸ガスを放出させるという方法で回収させることを実施するのでございますが、現在世界でこの方法を実用的に取りつけているところはまだございません。と申しますのは、この方法経済的にもいくぞとかなり宣伝がなされておりますけれども、実情をよく調査いたしますと、まだきわめて技術的に不十分な点が多いのでありまして、とうてい経済的にあるいは技術的に安全に実施できる方法ではないのでございます。パイロット・プラントも運転がなされておるのもわずか数カ所でございまして、すでに四、五年経過いたしますけれども、まだこれが実用化されておらないのでございます。しかしドイツのラインルフト・プロセスというのは非常に有名になっております。英国でも米国でも研究所あるいは企業会社を訪れますと、この話が出まして、そしてみんなよく知っている。結局あれはどういうことかということの結論は、ラインルフトの社長は世界一のセールスマンであるぞということが世論でございました。非常に宣伝はうまいけれども、まだものにはなっていないというのが実情でございます。  時間が延びましてたいへん御迷惑をおかけしました。御清聴ありがとうございました。
  10. 保科善四郎

    保科委員長 以上で参考意見の聴取を終わりました。      ――――◇―――――
  11. 保科善四郎

    保科委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。角屋堅次郎君。
  12. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 ただいま進藤さんはじめお三方からそれぞれの立場より貴重な参考人としての御意見を承りまして、今後の審議のためにたいへんありがとうございました。  お述べになりました意見の内容については、特に最後に述べられました清浦先生の意見については、内容的に少し異論があるところもございますが、後ほどまた簡単に御質問申し上げます。  きょうで予定しました参考人からの意見聴取を終わりまして、これから具体的な議論に入っていくわけでありますが、まず進藤さんは、産業構造審議会の産業公害部会長としていろいろ議論をされてきたわけでありますが、今後の審議の参考として、わが国の国家行政機構における産業公害の問題を進めるにあたって、今後新しく検討するとすれば、機構のあり方というものをどう考えていったらいいのか、そういう議論部会のほうでやられたかどうか知りませんけれども――と申しますのは、もう申し上げるまでもなく、公害関係というのは当然のことでありますけれども、通産省あるいは厚生省あるいは農林省と、各省に相当またがるのでございまして、それぞれ各省でそれなりの機関を持っておる、あるいはこれから持とうとする。試験研究機関という立場から見ましても、産業公害というのに焦点を合わした一本の国立の試験研究機関というのがまだ存在してない。いろいろな試験研究機関でそれぞれの分野のことをやっておるというふうな形でありますが、私は、今日までの、特に戦後の経済成長の中で公害対策というものが案外に軽視をされて、とにかく経済の高度成長ということで進められてきた。そのひずみといいますか、その点が今日、公害問題として大きくクローズアップされた要因であると思います。地方自治体の知事だとか市町村長というものが従来やっきになりましたのは工場誘致問題であって、工場誘致をやるというときに、実際にどの業種のものを自分の地元に持ってくるのが適切であるのか、その場合には十分公害問題等も含めて考えなければならぬ、地域の住民や地域産業に対する影響考えなければならぬ。残念ながら地方自治体の理事者側は、われわれも含めてそうでありますが、科学一般に対する十分な理解がなくて、ただ工場誘致ということに熱心のあまり、どんどんある意味では無計画工場誘致に狂奔している。そして工場が今日のような現状になっている。ここでもう一回既成の工場地帯についての再検討をしなければならぬというふうな問題等も出てきておるかと思う。その問題は後ほどにして、いずれにしても今日各省が公害関係したものをばらばらにやっておる。そして実際にこれから本格的に公害対策というものを総合的にやろうという場合には、私どもとしては、やはり今後の国家行政機構のあり方としても、各省にまたがっているそういう問題についての総合的なものを内閣直属の中で考えていく必要があるのではないか、そういうものを考える場合に、現実に公害が起こっておる問題が企業責任であるとか、あるいは地方自治体の責任であるとか、いろいろなことで、地域住民がそういう問題を提起して具体的な解決方法を要請していっても、責任がうやむやにされたり回避されたりして、なかなか具体的に問題が解決してこないという悩みがある。私は三重県ですが、さっき四日市の話が出庫したが、そういう問題にしばしば私は逢着する。であるとするならば、そういう問題についても、公正取引委員会じゃありませんけれども、実態調査に基づいて企業に対しても勧告命令を出すなり、場合によっては一時的な操業停止をする、あるいは施設の設置を命ずるというような、そういうようなところまでの公的な機関によるところの規制がされていく必要も含んで、総合的なそういう内閣直属のものが必要ではないかという感じを強く持っておるわけであります。そういう点で、いまも行政機構の中で各省がそれぞれ持っておる総合的なもの、しかも試験研究機関といたしましてもやはり国立のそういった意味の公害に対する総合研究というものをつくり、現にひどい地域においてはそういう国立の試験研究機関の出先を置くというくらいの熱意が当面の一つの問題として必要ではないかということを感じておるわけですけれども、産業構造審議会産業公害部会でそういう問題まで含めておそらく議論されたと思いますけれども、その点議論された内容にこだわらずに進藤さんの御意見があれば承りたいと思います。
  13. 進藤武左エ門

    進藤参考人 お尋ねの問題でございますが、産業公害自体が、ことに最近非常にクローズアップされた問題でございます。たとえば発生源の問題でありますとか、また被害を受けたほうの問題でありますとか、発生源にいたしましてもなかなかいろいろの種類のものがございますから、内容が非常に複雑なわけでございます。それで、最近総理府の中に産業公害対策の連絡会も御設置のようでございますが、つまり日本としては産業界の新しい問題であるということと、それから非常に内容が複雑であるということの二つ考えまして、あるいは公害被害に対する事後処置であるとかいうような問題を考えまして、従来の行政組織だけではなかなか解決できない問題もあるだろうと思いますので、連絡会等におきまして十分御検討になりまして、どういうふうにしたら最も能率よくというか、簡素化されていくかということを御研究願いたいというのが私の希望でございます。自分の意見としてはなかなかむずかしい問題で、ちょっとしっかりした意見はございません。
  14. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 参考までに大学の先先の立場から、この点については清浦先生のほうはどうですか。
  15. 清浦雷作

    ○清浦参考人 国に公害対策を十分研究する総合的な公害対策技術に関する研究機関が設けられるということは、きわめて有用なことであると考えます。
  16. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 次に、これは進藤さんにお伺いしたいのですが、発生原因という問題がいろいろあるわけですけれども、公害の発生原因をもともともたらしておる直接の多くの場合は企業責任であるが、産業公害防止立場から見て、防止のためのいろいろな諸施策をやる、その場合に国、地方自治体あるいは企業側のそういう対策をやる場合のアロケーションというものは、本来産業公害をもたらしておる企業者自身がまず中心的な責任を負う、そういう意識と責任に基づいて産業公害に対する問題を考えるべきだろう。しかしそうは言っても、やはり全体の生産コストといいますか、そういう中で非常に過大な施設を要求されて、それが生産コストの中でオーバーしていく、国際競争その他の問題から見て当然配慮しなければならぬ問題が出てくる。そういう面は公共的な立場考えていくということは当然のことだろうと思います。本来的には、発生原因の主たる原因である企業者が企業責任においてやっていくというのが大前提であろうと思うわけであります。そういう公害防除のための責任のアロケーションという問題については、進藤さんはどういうふうに日本の場合にお考えでございますか。しかも、いろいろな現行の法律に基づいて一定の基準にとどめるということを企業者側が企業責任においてやる場合にも、その地帯としてはそういうものが全体を合わした複合要因によって地域住民にいろいろな影響を保健的にもまた生活環境としても与えておる。四日市もそういうことになる。個々の企業になりますと、ちゃんときめられた範囲内においてやっております。しかし現実にはぜんそく問題だとか、あるいは大気汚染とか、日常いろいろ苦労する問題が出てくる。そういう複合要因で出てくる問題については一体どういうふうに公害防止として考えていくのが日本の場合に妥当であるかという問題を含めて、いかがでございますか。
  17. 進藤武左エ門

    進藤参考人 先ほど申し上げましたように、産業公害対策としては、企業家が施設をしていくということは当然であると考えております。しかしそこには限度がございまして、国の要請によりまして産業発展をどうしてもするということが、さっきお話がありましたようにございますから、公害対策のために非常な金を、資本を投資しなければならない、これは産業発展を阻害するというふうな問題があると思いますが、こういう問題に対しましては、やはり国として産業公害防止し、しかも産業発展するような措置をおとりになることが私は望ましいと思います。  それからなお、個々の公害発生原因が、一つ一つではたいした公害にならないのでも、集団公害になると非常に大きな問題になりますから、こういう問題に対しましては、やはり国が公共施設として公害防止していくという措置が必要じゃなかろうかというふうに考えております。  なお、将来の公害防止対策と現在ある公害防止対策、この二つの問題を分けて考えたいと思うのでありますが、現在すでに発生しておる公害に対しましては、これを産業家が急に防止するということは実際上なかなかむずかしい問題でございますから、現在の公害に対しましては産業家に対してある限度をお示しになって、この程度公害産業家がやるべしという基準政府がお示しになって、それを産業家が守る、それと同時に、現在の産業がつぶれないように国がしっかりした助成措置を講じ、しかも産業技術がいまのところなかなか新しい技術でございますから、一般の個々の産業家が理解しない点が多いと思います。技術の指導と設備に対する助成、これは当然国がおやりになるべきであると思います。  なお、特に過密都市公害に対しましては、単に産業公害だけではなくて、いわゆる一般公害と申しますか、下水の問題等がありますから、これは当然、現在非常におくれております国の公共施設を早く整備すべきだと思います。それから将来の産業施設に対しましては、これはやはり基準をはっきりおきめになって、それを産業家が守っていくという態度が私は望ましいと考えております。
  18. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今度公害防止事業団法案というのが提案をされてくることになるわけですが、当面これは東京とか千葉あるいは神奈川という地帯、あるいは四日市の地帯、大阪を中心にした地帯というところから手がけていく構想のようなんですが、そういう既成のいわば四大工業地帯というふうなところ、あるいはそれに次ぐようなところ、こういうところで公害防止の手を打っていくという場合に、出発点として、いわば産業経済を含んだ都市改造計画というものが既成都市に全体的にあって、その一環として公害防止対策が、原則としては将来にわたって手直しの必要ない、そういう形で進められるということでないと、現に発生しておるものに対して手を打つというだけでは、これはきわめて不十分ではないか。もっとそういう既成都市においては、都市改造というような大きな展望の中で現に発生しておる問題について十分やっていく。そしてまた将来発生する危険のある問題については、無規制にせずに規制的な措置をそういうところではやっていくという配慮が前提として必要なんじゃないか。そのことは、新産都市等のこれからの問題についての事前調査が非常に強調されております。そのことは私は非常に重要だと思いますが、その大前提として必要なことではないか。さっき清浦先生から、何か公害の問題について、過大なPRということをお聞きしたのですが、私は、過大なPRでなくて、今日責任が回避されたり、大衆の公害に対するいろいろな要望というものが十分迅速に処理されてきていないという不満というものは、こういう公害の問題の起こっておる地域ではほうはいとしてあると思います。それはやはりそういう公害の非常に起こっておる地帯における総合計画、そういうものの中で年次的に、計画的にそういうものが推進されていくということが具体化されてくれば、新しく新産業都市の建設をやる場合にも、そういう展望と理解の中で地域住民の受けとめ方というものが違ってくると思いますが、私は、そういう点では、公害の非常に激しく議論されておるところは、過大なあれではなくて、むしろ大衆の声というのはややもすれば埋没しやすい、それをマスコミが意識的に取り上げなければならないという事態が反面存在すると思う。そういう点では、先生の意見はなるほどそういうことが全然ないということは言えないかもしれないが、むしろそういう点では、既成都市あるいは工業地帯等における都市改造的な意欲に基づいた長期計画、そういう中で公害が取り上げられ、またそれが計画的に推進をされるということが非常に必要なんではないか。単にこういうものが発足したから公害問題が相当に解決していくだろうという甘い期待はこの内容からは持てないわけですが、これは進藤さんにお伺いしますが、そういう点の受けとめ方はどうですか。
  19. 進藤武左エ門

    進藤参考人 たいへん大きな問題になりますが、やはり住みよい国土を建設するということは、国土計画の一番大切な考え方一つになると思いますので、私はできるなら、たとえばいま東京都がいかにあるべきかというふうな問題が各方面で議論されておりますが、やはり公害を防ぐのにはどうしたらいいかということも、東京都を将来どうするかという考え方一つの柱にどうしても取り上げられなければならぬと思います。ことに、新産都市の建設にあたりましては、やはり公害考えまして、たとえばどうしてもこの場所へ工業都市をつくらなければならぬという場合には、住宅との関係をどうするか、あるいは公害防止するのにはどうしたらいいかというふうな、いまお話のありましたように、国土総合開発計画のうちに公害対策というものを入れて考えまして、その一環としての公害対策ということを進めていただくことが非常に秩序ある公害対策ではないかと考えております。
  20. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 時間の関係もありますから、山崎さんに一つお伺いしたいと思います。電力関係であります。  先ほども電力現状公害に関する問題についていろいろお話がございましたが、私ども住んでおる三重県では、中部電力関係で四日市の関係、あるいは尾鷲の最近できました火力ということに関連して、公害問題ということでいろいろわれわれも関係が深いわけでありますけれども、日本の場合、非常に硫黄分の多い重油を採用しておるわけですが、これが異臭として地域住民から非常に問題になるわけですけれども、これはやはり外国からのそういう重油の輸入先といいますか、そういうところから見て、転換ということは実際問題としてはむずかしいわけですか。あるいはそういう点は、硫黄分の少ないものを入れてくれということは、コストその他の面で支障があるのか。公害という問題からいけば、なるべくそういう異臭度の少ないものを重油として採用していくということは、通常素朴な大衆から見て希望されるわけですが、そういう点はどうなのか。
  21. 山崎久一

    山崎参考人 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のございましたように、現在の発電所で使っております重油は硫黄の含有率が二・五%から二・八%程度の範囲内の見当のものを大体使っておりますが、現在日本で入手できる重油はそのような性能の重油がほとんど大部分でございまして、このサルファの低い重油というものは、なかなか日本内地では相当量を入手することが困難な実態にございますので、これは電気事業といたしましては相当量の希望をいたしておりますけれども、実際の入手が困難でございます。  なお、値段の点につきましては、硫黄の含有率の半分程度に下がったものが約一割ぐらい上がるような見当でございますので、これを多量に入れますと全体の生産コストにも関係をいたしますので、大きな転換は現在のところ望めないのじゃないかと考えられます。
  22. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 さっきの、火力の現実にある発電所重油を使う場合にも、緊急の場合にはもっとサルファの軽いものを使う、すべての既設の火力発電所ではそういうことを全部やっているわけですか。また、そういうことによって緊急の場合に使うそういう量は、年間の中では大体何%くらいそういうことをやるわけですか。
  23. 山崎久一

    山崎参考人 お答えを申し上げます。  現在、ただいまお話のございましたような緊急時の場合に低いサルファを使えるような設備が全部のものについておるというわけではございません。それからその数量もかなり低いパーセンテージであるということだけは承知いたしておりますが、現在何パーセントかということは、ここに私資料を持っておりませんので、お答えはできません。後ほどまた御説明申し上げてもよろしゅうございます。
  24. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 けっこうでございます。
  25. 保科善四郎

    保科委員長 重盛寿治君。
  26. 重盛壽治

    ○重盛委員 角屋委員から私のお聞きしたいと思ったことをほとんど聞いていただきましたので、私はあまり申し上げることはございませんが、いずれにいたしましても、先ほど来先生方のおっしゃるように、公害というものは非常に広範多岐にわたっておる。しかし今日まで放置されてきておる。たまたま今度取り上げられたことは一歩前進したのだと私は考えます。  そこで、事務的なことになりまするが、今度公害防止事業団法案というものを政府が出そうとしておるのでありまするが、こういう問題に関連をいたしまして特に進藤さんのほうには何か御連絡があったかどうか。私はこの法案の内容についてさらに知恵を拝借できれば非常に幸いだと考えておりますが、この問題に限らず、たまに政府がいいことを考えてくれた、しかし、法案はつくったが、逆に締めつけ法案になってしまって、産業発展を阻害してしまったというような例もなきにしもあらずであります。したがって、こういうものをつくっていくという段階なり、新しい仕事に国自体が着手をするといたしますならば、これは広範な立場から、そして関係するあらゆる皆さんの御意見を拝聴した上に立って法案をつくっていくべきものだ、このように考えまするが、こうした面に対しまして、いままでの先生のおことばの中にもかなりいろいろの御意見が含まれておって、その中からもどのようにお考えになっているかということは察知できるのでありますが、特にこういうものをつくるに際してはどうあらねばならぬか、この際何かお聞かせ願えれば非常に幸いだ、このように考えます。  それから山崎さんのほうにも、そういう山崎さんのほうのお立場で、この公害防止事業団というものを設ける法案をつくるに際して何か御連絡があったのか。相談があったのか。あるいは、そのことがあった、なかったということは抜きにして、この法案をつくるならば、先ほどのお話で大体わかりますが、特にこういう点は必要だと考えるからそれは入れるべきじゃないかというものがあるならば、お述べ願いたいと思います。  それからもう一つ、これはいま角屋さんからもお聞きになったし、先ほど清浦先生のお話の中にもありましたが、私どもどこかで聞いた浅知恵にすぎないのだが、あのばい煙を阻止するためには、日本においては四国かどこかの石灰を利用することによってばい煙がほとんどなくなっていくのだというようなことをちょっと教えられたことがあるのだが、電力会社として、いま火力電力に対してそういうものをどこかでお使いになっているのか、使っている効果がどういう程度になっているのか、これらがもしありましたら教えていただきたい。
  27. 進藤武左エ門

    進藤参考人 お尋ねの第一点でございますが、事業団はただいま政府のほうでいろいろ発足の準備をいたしておるそうでございますから内容を詳しく実は存じておらぬわけでありますが、ただ、新しい企業体というものができますと、その企業体の仕事をやりやすくしていただくということが一番大きな問題だと思いますし、また、企業体の性格を十分一般の人に理解していただくということが私はたいへん必要だと思うのであります。ことに産業公害の問題はお話のように非常に広範な影響があります。内容も非常に複雑でございますから、あんまり間口を広げますとかえってその効果が薄くなると思います。そこで、私の希望といたしましては、当面最も必要なところはどこかという問題をはっきりおつかみになって、しかもその問題のうち自力でできるものはぜひ一般の人が公害に関心をお持ちになって、発生源のほうで注意していただく。どうしても自力でできないものに対しては事業団が貸し付け金をやりますとか、あるいは指導しますとか、または仕事を自分の手でおやりになるというふうに――事業団ができたから事業団が万能薬で全部ができるという安易な考えは決してしちゃいかぬと思いますので、事業団の事業の運営としては一般公害防止の仕事と一緒になって事業団がおやりになるということと、それから事業団が当然公害防止に対する一つ政府の施策をおやりになるのでありますから、公害防止のお手本を示していただく、こういうことをぜひやっていただきたいと考えておるわけでございます。  なお、事業団は独自に仕事をお進めになるわけでありますが、しかし事業団は単に産業公害だけでなくて、やはり一般公害の問題との関連も十分考えていただいて、そして事業団が防止できない問題は、たとえば下水、排水施設をしっかりやるとかいうふうに、積極的に一般公害防止に対しても政府のほうへ意見を出していただくということが実際的に効果が多いのじゃないかと考えておるわけでございます。
  28. 山崎久一

    山崎参考人 ただいまの御質問に対しましてお答え申し上げます。  第一の事業団の問題につきましては、私、団の内容につきまして的確に存じておりませんので、あるいはお答えが適切であるかどうか存じませんが、公害対策を実際に実施いたします状態が事業によりましていろいろあるかと存じます。つまり、その間に実際にはやりたくてもできないような産業などもかなりあるんじゃないかと思われますので、そういうようなところにひとつ力を注いでいただくような仕事であることが望ましいのじゃないかと考えられます。  それからもう一つは、亜硫酸ガスとかその他有害ガス除去の方法といたしましていろいろ伝えられるような方法に対しての御質問でございますが、それにつきましては先ほど清浦参考人から御説明になりましたような幾つかの方法考えられまして、それらのものにつきましては、現在小規模ではございますが、幾つかの会社におきましてその個々の問題につきまして実際の実験研究を続けてやっておりまして、現在まだそれに対する成果はあがっておりませんが、いろんなそういうようなものの研究調査を進めておりまして、今後もやるつもりでおります。  以上でございます。
  29. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 ちょっと関連して。御指名申し上げてお尋ねすることはたいへん恐縮なことと存じますが、しかしお許しをいただいてお名ざしができるならば清浦先生にお尋ねしたいと思います。  先生は学者としての立場でものを考えていただきますので、事業に直接関係ございませんからお尋ねするわけでございますが、先ほど進藤参考人がおっしゃいましたように、公害というのは非常に範囲が広いし、複雑であって、また公害そのものの定義づけというものもできていないというようなお話がございました。私は現在の段階においてそうかと思いまするが、人畜に被害はないにしても、においなんかの点で一つ産業から出てくるものが非常に耐えられないのがある。学者の御意見を聞けば、それはからだに健康上支障がないだろうとおっしゃいます。しかしそれは非常な不愉快を与えるのですね。これは一体公害の部類に入らないかという、まことに子供らしいお尋ねなんですが、しかし地方住民にしてみると相当これは深刻に考えております。  それから、たとえばパルプ会社などの廃液でございますが、これまた川に流れます。昔はきれいな川で、子供たちが魚をとり、あるいは水遊びですか、泳ぎもできた。しかしその水がよごれまして泳ぎもできないし、魚もいないようになった。魚がいなくなったということなら、一つ公害かもしれませんが、これは川に入って泳いだって別段生命に危険を及ぼしたり被害はない。なるほど泳げば泳げますけれども、きれいな水がまっ黒になって、そこで泳ぐということは心理学上どうもいやがってら入ない。これは一体公害に属するか属せないか。こういうような一、二の例をとってお尋ねしたわけですが、私はどういう御答弁をしていただいたって、これをどうこう考えるものではありませんが、人間として非常に不愉快なことになったときには、たとえばそれが人畜に健康上被害がなければ公害の中に入らないかどうか、こういうことについてお考えがあったらお教えをちょうだいいたしたいと思います。
  30. 清浦雷作

    ○清浦参考人 お答えいたします。  最初のおことばの、たとえば悪臭で非常に不愉快であるということが公害であるかどうかということにつきましてお答えいたしますと、日本語で現在使われております公害ということばそのものの定義を明確に申し述べることは、学問上非常にむずかしいのでございます。でございますから、一応公害公害としてお考えいただきたいと思いますが、では悪臭はどうかということになりますと、これは住民にかりにそれが衛生上害と言われるほどのものでなくても、精神的にそのものがきわめて不愉快を及ぼすということであれば、それはやはり公害一つ考えられると思います。と申しますのは、欧米では。パブリック・ニューサンスということばがございます。それを翻訳いたしますと、安居妨害という字句になろうかとも思います。もしパブリック・ニューサンスというような意味から考えますと、それはやはり悪臭は安居妨害の一つである。はなはだしい騒音などと同様にこれを取り上げて考えるべきものかと思います。  それから、その次にお話のございました、たとえば川に廃液が流れて色がつく場合、これは色がつく程度であって、泳げることは泳げるけれども決して気持ちのいい水泳を子供たちができないということについてはどうかという御質問かと思いますが、これもなかなかむずかしい問題でございまして、現在の産業としまして、その一つの例がパルプ工場の例が出たのでありますが、これは用水型産業と申しまして、一つのパルプ工場経済単位から見まして、一日に四万トンとか五万トンの用水を必要とし、また、それが排水となるわけであります。排水を流さなければ工業は成り立たないのでありまして、できるだけ流す排水を処理いたしまして、なるべくできるだけの処理をしてこれを放流するという努力を企業も実施していますけれども、全く最初の、取水した用水と同じ透明度を持ったものに戻して返せということは、現在の科学技術では不可能なことでございます。やはりそこにある程度の、産業と住民との間の相互協調、調和ということで理解を互いに深めていく必要があるのではないかと思います。
  31. 保科善四郎

    保科委員長 この際、一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用のところを本委員会に御出席をいただきまして、貴重な御意見をお述べいただき、たいへん参考になりました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  本日はこの程度にとどめ、次会は来たる二十四日水曜日午後一時から理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時一分散会