○清浦参考人 御紹介いただきました清浦でございます。
われわれの日本は、きわめて狭い国土に人口が非常に密集しております上に、天然資源も非常に乏しい。その日本が独立国としまして世界に存立するためには、
工業の
発展と輸出
産業の振興をはからなければならないということはすでに御案内のところでございますし、これが日本の
工業立国という国是になっておるわけでございます。
わが国の
産業の
発展にあたりまして、新しい
産業都市あるいは
工業特別地域というものを
開発していくことは非常に重要な意義を持っております。しかしながら新
産業都市あるいは
工業特別地域の急速な
発展を期していくにあたりまして、もし
工業廃
ガスとかあるいは
排水等による
大気汚染あるいは
水質汚濁、それらの
対策に適切な
方法を欠きます場合は、
地域住民への
公害を招く危険がございます。ジャーナリズムその他がやや誇大な報道を従来やってきた。そういう
影響もございまして、沼津・三島地区に見られますようにコンビナート造成反対運動なども起こっております。これらが
地域工業開発に一とんざを来たさせるという大きな事態を招くことになっております。
そこで、
開発計画の目標を日本としてはどうしても達成しなければいけないということは先ほど申し述べました理由でございますが、一方では
産業公害をできる限り防除する必要がございます。そのために新しい
産業都市の
工業開発にあたりましては、まず
公害発生の危険の有無を
事前に
調査しまして、
公害未然防止の
対策を
検討するとともに、
公害を防除する
技術を十分に確立します科学
技術士の研究の促進、これがわが国の緊急な課題になっていると存じます。
日本の新しい
産業都市あるいは
工業地域の
開発は、日本の将来を託するものでございまして、たとえば日本は、これも御案内のとおりでございますが、ほとんどあらゆる
工業原料を輸入しなければならない。そしてこれを国内で加工し、
工業製品の輸出として今度はそれでかせいで原料購入の代価を得なければならないという必然の運命にございます。さらにわが国は、これも御案内のとおり、米麦等の主食の一部はもちろん、家畜等の飼料を大量に輸入しておる
現状でございますから、これに要する外貨も主として
工業製品の輸出によって獲得しなければならない
関係にございます。
たとえば一例を申しますと、石油資源に乏しいわが国は年に約六億ドルの原油を輸入しておりますけれども、それから生まれます石油化学製品は約七十億ドルの価値を持つものにわが国の
工業が加工いたすわけでございます。六億ドルの原油を輸入して約七十億ドルのものに加工をいたします。そのうち国民の
生活資材として消費されるものが約六十三億ドルでございますが、さらに石油化学製品として約七億ドルが輸出に回されるわけでございます。そういたしますと、先ほど申しました原油輸入の約六億ドルをここで取り返して一億ドル残すことができるわけでございます。
また、いろいろこういう例はございますが、化学肥料
工業の例をとってみますと、一九六四肥料年度のわが国の窒素肥料は、国内全生産量の約四〇%を輸出しております。これは欧米とソ連を凌駕いたしまして、すなわち硫安換算で約二百二十万トンを輸出することができまして、世界の第一位になることができました。金額にいたしまして約四百億円を中共あるいは東南アジア、台湾、韓国その他に輸出しております。これは輸出
産業という点から見ますと、外貨手取り率が九八%にも達するものでございまして、戦略的商品としまして最も重要なものだということも御案内のことでございます。これは無尽蔵に得られます空気中の窒素とか水とか、それに少量の原油を主原料といたすわけでありますから、外貨手取り率が九八%というような非常に高率のものが得られます。
これからの日本は、いま申しましたようないろいろな理由から、
地域開発によりまして新しい輸出
産業の一そうの
発展に期待をかけるわけでございます。
ところが、その次に
地域開発、
工業化、近代化を急がなければならないということをもう少しつけ加えさせていただきますと、たとえば日本は昨年度約四百億円の窒素肥料の輸出ができて世界第一位になっております。これも日本の
工業が非常な苦難の暁にかちえたものでございますけれども、すでに本年二月ごろ
欧米諸国がわが中共輸出市場に巻き返しに出てきております。すなわち欧州の窒素肥料の輸出カルテルでございますナイトレックス、これが硫安換算で約百万トンでございますから、約二百億円
程度を中共に輸出することに成功したと外電が報じております。またナイトレックスに未加盟のイタリアのENI傘下の国営肥料会社ANICというのがございますが、それが約二十億円に相当する窒素肥料を中共に輸出することに成功してまいっております。英国のICIも商談をしてきております。今日もうすでに日本には売る市場がないわけであります。
欧米諸国が、たとえばこの化学肥料を見ましても、こういうものを中心にしました大型新鋭
工場の建設を数年来急いできておる。それらのコンビナートづくりが着々と進んで、これがもうある
程度運転が始まったという証拠でございます。つまり欧米の新鋭
工場が生産活動を開始し始めたということでございます。おまけに、わが国を取り巻きます東南アジアあるいは中近東など、わが国肥料輸出市場の中に大
工場を建設しまして、そこで最新式の高
濃度肥料の現地生産に乗り出してきております。最近それらの
工場の完成が間近に迫ってまいりまして、製品を中共、東南アジアその他低
開発諸国に輸出するのみならず、さらに余剰製品のアンモニア等を非常に安い値段で日本に売り込むべく激しい商社活動を開始しております。欧米
資本の大規模な新設
工場が廉価な製品を、わが輸出市場のみならず、日本国内に奔流のように流し込んでくる危険がございます。開放
経済の今日では、世界情勢を無視して
工業や
経済を
考えることは許されないし、また無意味でございます。これらの欧米財閥の
産業攻勢によって日本の
工業が万一敗北するようなことがあってはたいへんでありますから、日本としてもできるだけ数鋭
設備工場を新しいコンビナートに立てていかなければならない。そして新しい
設備でより優秀な、より廉価な
工業製品をつくって、これを外国の輸出攻勢に負けないように日本も売っていかなければ、このきびしい開放
経済の時代に日本が敗北する危険があると私は
心配するのであります。
ところが、
産業公害をはばむものとしまして、
公害への危惧と住民の反対がございます。次に、このことで少し申し述べたいと思います。
新産
都市あるいは
工業特別地域の
工業開発が日本にとって特に重要なことはただいま申し述べましたけれども、コンビナートができることによって
公害が起きるということを強く危惧する人々がございます。そのために
工業開発に積極的に賛意を表さない風潮も一部にあらわれております。たとえば四日市の
公害問題がテレビあるいはジャーナリズムでむしろ誇大と思われるような表現で広く報道されたことも
原因しております。このためか、国民の中には
公害に異常な恐怖を抱く人も少なくない
現状でございます。沼津・三島地区のように石油化学や
火力発電の進出によるコンビナート化を
公害発生の危険をたてにしまして強く拒否した事態も起こっております。しかし、もしわが国の
工業開発適地の周辺の住民が将来沼津・三局
地域の人たちと同じように
産業公害の危険に対する危惧のために
工業開発にまっこうから反対することになっては、国の将来に容易ならざる事態を招く危険がございます。そこで
工業開発地域における
事前の
公害防除
対策、これを十分
検討することが今日きわめて大きい命題となってまいったのでございます。国としましても、また、
企業側としましても、もちろんできる限りの努力を傾けて
産業公害の軽減につとめ、住民の
生活を快適なものとすることが重要でございます。なおまた各指導者階級、また報道機関も
公害を論ずる場合には事実を正しく報道することにつとめ、社会を誤らすような誇大な表現や不確実なニュースを流すことを十分慎まなければならないのであります。
公害の問題が社会に認識されなかった昔のときは、社会の関心を強め、世論として訴えるために、過大な表現、誇大な表現を用いる必要があったことはある
程度了解できます。しかし
公害が社会問題として強い関心を呼んでおります今日としては、むしろ正しくかつ正確な表現を絶対に必要とするのでございます。このことは広く官民ともに留意すべき点でございます。たとえば住民側としましては、
地域開発や
工場誘致にあたっては、
公害問題に対する正しい科学的ないし
技術的な知識をもとにして事実を冷静に理解し判断する必要がございます。また、
政府、地方自治体におきましては、新
工業郡市の建設や
工業立地等にあたっては、
公害の
対策を含めた総合的な
立場から
計画すべきであり、また土地利用
計画を明確にする必要があります。通産省で実施中の全国
工業開発地域産業公害対策調査、こういうこの種の
調査は
公害発生を未然に防ぐものとしましてきわめて時宜を得たものであり、今後さらに継続的な、さらに徹底的な総合
調査を期待するものでございます。
企業の負担では解決が困難な場合もございます。その際は国あるいは地方自治体が補助、助成の
方法を講ずることも必要であります。あるいは
企業が共同で
対策を講ずる等の指導もなすべきであると思います。これは国として指導をすべきであるという意味でございます。
企業体におきましては、
企業の公共性を自覚しまして、
公害発生の
防止に努力すべきであります。また、
企業の進出や
工場建設にあたっては、
公害問題について十分な
資料をもとにして、
事前に自治体等を通じまして住民の理解を深めることが必要でございます。個別に
公害対策を講ずることが困難なときは、共同しまして
公害問題に対処することを考慮することも必要でございます。
次に、
産業公害とその
対策について、簡単に申し述べます。
四日市の
公害の事例を簡単に取り上げて申し述べますと、四日市はわが国の終戦後
国民生活の復興のために
経済の高度成長を必然的に要求された時期に造成が始まったわけでございます。高度成長のひずみともいわれておりますけれども、この四日市の
産業公害の実態を十分
調査して、今後の
産業公害の
対策樹立の上に参考とすることは非常に有用で有効であると存じます。一言にして申しますと、四日市の
産業公害はきわめて局地的にごく一部の地区に発生しておりまして、たとえば塩浜、それから磯津、それから午起のこのきわめて小さい三
地域でございますが、発生は局地的でございます。これがなぜ起こったかということは、
工場配置
計画と
都市計画がきわめて
気象条件を無視して進められたということに大きな欠陥があると思います。
今後の
対策をどう
考えるかという例を
一つ申し上げますと、たとえば
工場側としましても、できるだけの努力をする。現在その努力が進んでおりますのは、たとえば石油精製
工場で水添脱硫装置及び接触分解装置から発生します
ガス中の硫化水素を硫黄として回収するプラントの建設が完成し、現在九十トン・パー・デーの硫黄が回収されるように今年、つい先日からこれが運転されております。これによりましておそらく相当量の
亜硫酸ガスが廃
ガスから除外されたことになるわけでございます。
それから四日市の場合は、きわめて明瞭な冬と夏の
二つの季節風がございますから、この季節風を十分考慮して
煙突の高さあるいは
煙突相互の高さ、そういうものを考慮することによりまして、かなり
大気汚染による
公害を
防止することもできると存じます。
それから
都市計画による
対策も進めていただくのがいいのではないかと
考えております。
簡単に四日市の例でその
対策がいかに進むであろうかというようなことも申し述べました。
時間がございませんので、先日お手元に差し上げましたプリントをちょっとごらんいただきますと――プリントの説明をしてよろしゅうごさいますか。