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1965-03-18 第48回国会 衆議院 決算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月十八日(木曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長代理 理事 田村  元君    理事 壽原 正一君 理事 田中 彰治君    理事 福井  勇君 理事 勝澤 芳雄君    理事 田原 春次君       根本龍太郎君    湊  徹郎君       栗原 俊夫君    楢崎弥之助君       三木 喜夫君    森本  靖君       八木 一男君    吉田 賢一君  出席国務大臣         国 務 大 臣 小泉 純也君  出席政府委員         防衛庁参事官         (長官官房長) 小幡 久男君         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         防衛庁参事官         (教育局長)  島田  豊君         防衛庁参事官         (人事局長)  堀田 政孝君         防衛庁参事官         (経理局長)  大村 筆雄君         防衛庁参事官         (装備局長)  國井  眞君         防衛庁事務官         (防衛施設庁総         務部長)    沼尻 元一君         法務事務官         (人権擁護局         長)      鈴木信次郎君  委員外出席者         会計検査院事務         官         (第二局長)  樺山ただ夫君         専  門  員 茨木 純一君     ————————————— 三月十七日  委員山田長司辞任につき、その補欠として安  宅常彦君が議長指名委員に選任された。 同日  委員安宅常彦辞任につき、その補欠として山  田長司君が議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員福永健司君、神近市子君、松原喜之次君及  び山田長司辞任につき、その補欠として湊徹  郎君、楢崎弥之助君、八木一男君及び三木喜夫  君が議長指名委員に選任された。 同日  委員湊徹郎君、楢崎弥之助君、三木喜夫君及び  八木一男辞任につき、その補欠として福永健  司君、神近市子君、山田長司君及び松原喜之次  君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十八年度一般会計歳入歳出決算  昭和三十八年度特別会計歳入歳出決算  昭和三十八年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和三十八年度政府関係機関決算書  昭和三十八年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和三十八年度国有財産無償貸付状況計算書  昭和三十八年度物品増減及び現在額総計算書  総理府所管防衛庁関係)      ————◇—————
  2. 田村元

    田村(元)委員長代理 これより会議を開きます。  堀川委員長本日所用のため出席できませんので、その指名によりまして私が委員長の職務を行ないます。  昭和三十八年度決算外三件を一括して議題といたします。  本日は総理府所管防衛庁関係決算について審査を行ないます。  まず小泉防衛庁長官から概要について説明を求めます。小泉防衛庁長官
  3. 小泉純也

    小泉国務大臣 昭和三十八年度決算概要につきましては、お手元に印刷物をお配りしてございますので、これによって御承知おきいただきたいと思います。  何とぞ御審議のほどをお願い申し上げます。
  4. 田村元

    田村(元)委員長代理 委員各位のお手元に配付してあります昭和三十八年度決算説明書は、便宜委員会議録に掲載いたしたいと存じますので、さよう御了承願います。  次に、会計検査院当局から検査概要について説明を求めます。樺山会計検査院第二局長
  5. 樺山ただ夫

    樺山会計検査院説明員 検査報告不当事項として掲げましたものは、工事一件、物件四件、補助金三件、計八件でございます。  まず一号は北海道白老にあります陸上自衛隊弾薬支処構内の整備工事等において監督や検収が十分でなかったために、石がきや側溝の胴込み、裏込みのコンクリートが設計量と違っていて、約百万円の出来高不足となっていたというものでございます。  次に物件関係でございますが、まず二号は、海上航空自衛隊で暖房などに使用する油類部隊ごと地方調達を行なっておりますが、各部隊から使用計画をとりまして、中央で調達したといたしますれば、約五百八十万円の経費節減となったという事案でございます。  三号は、同じく陸上自衛隊野外通信用として使用する通信線は、銅線スズメッキを施したものを購入いたしておりますが、この通信線絶縁体にポリエチレンを使用しておりますなどのような状況からみて、スズメッキは必要がないものと認められますので、約百四十万円は不経済な支出となっているという事案でございます。  四号は、同じく陸上自衛隊の騎銃などに使用する弾倉キャップ購入価格でございますが、本院で調査した価格からみまして、約百四十万円ほど高価に当たっておりまして、これはキャップ製造業者から直接購入すれば有利であったのに、武器製造業者を通じて購入したことによるものと認められるものでございます。  次の五号は、防衛大学測定試験用として購入しました機械につきまして、業者の選定がよろしくなかった上に、納入された機械が不完全であったにもかかわらずこれを受領していたものでありまして、本院の注意によりまして、その後業者負担調整済みとなっておりますが、このような事態ははなはだ遺憾に存じております。  次に、補助金の三件は、いずれも教育施設等防音工事に関するものでございますが、工事費から差し引く金額計算等を誤ったものでございまして、本院の注意によりまして該当の補助金はいずれも返納済みとなっております。  以上、簡単でございますが御説明を終わります。
  6. 田村元

    田村(元)委員長代理 これにて説明聴取を終わります。     —————————————
  7. 田村元

    田村(元)委員長代理 これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。栗原俊夫君。
  8. 栗原俊夫

    栗原委員 書類をいただき、ただいま会計検査院のほうから報告があったわけでございますが、指摘事項が若干あるわけでありますが、指摘事項質疑に入る前に、少しく総括的な問題でお尋ねしたいと思います。  大臣お尋ねしますが、昨今、というよりも、大臣が御就任になって以来、自衛隊装備機材購入、こういうことにあたりまして一、二お聞きしたいのですが、自衛官というようなものは、われわれにはしろうとでよくわからぬのですが、最近海上自衛隊装備する自衛艦というものは一ぱいつくるのに大体どのくらいの規模のもの、そうしてどのくらいの金額のもの、さらには発注してどのくらいの期間納入されるものか、こういうことについて、しろうとの私たちにわかるようにひとつ御説明を願いたい、このように考えます。
  9. 小泉純也

    小泉国務大臣 お答えを申し上げます。  自衛艦の二千トン級とか三千トン級とか、トン数において相当の相違がございますが、そういう三千トン級というような現在において最大のものといたしましては、価格において約五十億程度年数においては建造から完成まで三年、四年というような日時を費やしておる状況でございますが、なおもう少し詳細に政府委員から概要を答弁いたさせます。
  10. 大村筆雄

    大村政府委員 お答えいたします。  自衛艦につきまして四十年度新規計画艦に例をとりまして申し上げますと、四十年度甲型警備艦と申しまして基準排水量が二千トンのものがございます。速力が二十八ノット程度でございまして、兵装が三インチ速射砲二門あるいは短魚雷発射管二管というようなものを装備いたしておりまして、大体船団防衛の目的を持っておりますが、総額が約四十億、四十年度より四カ年でもって建造予定でございます。あるいは三千トン級で甲II型警備艇がございますが、速力が三十二ノット程度、五インチ速射砲二門というような装備をやっておりまして、総額が約六十七億円でございまして、四十年度以降四カ年でもって建造予定でございます。大きな自衛艦はそんな程度、あと千六百トンの潜水艦とか三百トンの掃海艇というのがございますが、大きいのはそういうものでございます。
  11. 栗原俊夫

    栗原委員 大きなもので三、四年、大体長くて四年、こういうことですが、これは技術の進歩で竣工期間というものがだんだんと短くなってきたのですが、それではなぜこういうことを聞くかというと、過去にはもっと、発注してから納入するのに竣工する期間が七、八年、こういうようなものが多々あったのですが、この辺の経過はどうなんですか。
  12. 大村筆雄

    大村政府委員 建造期間は、こういう三千トン、二千トン級でございますと、おおむね四年という長期継続費を利用してやっております。そのほか、小さいものは二年とか三年とかいうものがございますが、建造期間の点ではそう大きな相違はないように承知しております。
  13. 栗原俊夫

    栗原委員 私どもしろうと考えで、発注して竣工するまでの期間の一番長いのはやはり艦船のように思うのですが、艦船よりも長い竣工期間を要するような装備機材というものはほかにありますか。
  14. 大村筆雄

    大村政府委員 現在こういう長期にわるものにつきまして認められている予算制度は、御承知のとおり、継続費が五カ年でございます。それから国庫債務負担行為がやはり五カ年でございますが、私のほうで利用しております継続費は艦艇だけにしか認められておりませんが、これは長くて四年ということでございます。ただ例外的に国庫債務負担行為で私どもいままで五カ年でやっておりますのは、F104ジェット戦闘機二百機を昭和三十五年度発注いたします場合に、五カ年の国庫債務負担行為契約した例がございます。そのほかはおおむね四年以下でございます。
  15. 栗原俊夫

    栗原委員 そこで大臣お尋ねするのですが、この決算報告書によりますと、昭和三十七年度以前の未確認額検査確認、こういう項がございます。この項によりますと、昭和三十年度以前の一般会計及び各特別会計歳入歳出決算のうち、未確認額で、なお検査確認するに至らないものは、付表第三及び第四のとおり、合計三百八十八億百二十八万六百二十八円であって、その他のものはこれは検査確認した、こういう御説明がありまして、付表第三、第四を見ると、その内容はあげて防衛庁関係のものであります。しかもその中で、既往年度一般会計決算確認額表、三十九年十二月一日現在の炎を見ますと、昭和三十三年度、この中で五千六百七十二万余円というものが前金払い精算未了になっておる。三十四年度では八億八千六十二万余円が同じく精算未了である。三十五年度になりますと、総合計額は五十五億二千七百五十万余円、そのうち艦船関係のものを除いて、防衛本庁精算未了が五十五億二千六十七万円残っておる。さらに三十六年度になりますと、総額で百八億七千百万余円、こういう総合計額の中で、艦船等のものを差し引いたあるいは航空機等のただいま説明のあった継続費のような事項を伴う購入費を引いた残りが四十三億八千百三十万余円、こういうことでありますが、この精算未了前払い金あるいは概算払い金精算未了、こういうものの内容というものは一体どういうものなのか。われわれとすれば、ただいまの説明を聞いて、なるほどそういうものはあるのだなと、こうは承知しましたが、しかしただいまの経理局長説明によると、そういうもかは艦船関係あるいはF104の特別に継続費を認めてもらったものなのだ、こういう話からすると、どうもこの前払い金が四年も五年も六年も精算できないとは一体どういうことなんだ、国民の一人としてどうも了承できないので、納得のいくような説明を賜わりたい、このように思います。
  16. 小泉純也

    小泉国務大臣 いま栗原委員から御指摘になりました未精算額があまりにも金額として大きいし、年数においても長い、御不審の点はまことにごもっともと存じます。これは大部分アメリカからのMAS関係、いわゆる有償援助関係装備品がたくさんこの中に含まれておるのでありまして、そういうアメリカとの関係において期間も、精算になかなか手間どる、未精算額も大きいというようなわけでございます。内容等につきましては、ただいま経理局長から説明いたさせます。
  17. 大村筆雄

    大村政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘の三十三年度から三十五年度にわたりまして多額の未確認金額があるわけでございますが、これはただいま大臣より御答弁申し上げましたように、アメリカからの有償援助による輸入調達がまだ精算が完結しないものでございまして、これはアメリカ有償援助品目は相当多いわけでありまして、援助対象品目が膨大な数量に上ってございます。これに加えまして、米軍援助機構事務処理が細部の点でなかなか思うように迅速に事務が進まないような点等がありまして、日本側精算事務が完結していないものでございます。ただこういう長期にわたりまして未確認のままに残っているものは、私どもといたしまして非常に困るものですから、従来とも外務省のルートを通じましてこれの未精算の解決の促進をはかりますとか、あるいは私ども駐在員を米国に四名ほど出してございますが、その駐在員を通じて極力そういう事務促進をはかりますとか、あるいは私ども防衛庁の中で、こういう契約を担当しております調達実施本部担当職員をすでに過去二回にわたりましてアメリカに派遣いたしまして、直接精算事務に従事させまして、総額におきまして約七十億程度促進を、その結果はかっておる状況でございまして、今後ともこれの促進に努力してまいりたいと存じております。
  18. 栗原俊夫

    栗原委員 これらの各年度の未確認金額前払いということになっておるのですから、金は支払ってあることは間違いないのですか。
  19. 大村筆雄

    大村政府委員 さようでございます。
  20. 栗原俊夫

    栗原委員 単価はきまっておるのですか。
  21. 大村筆雄

    大村政府委員 契約時において単価はきまっておるわけでございます。
  22. 栗原俊夫

    栗原委員 単価はきまる、数量がきまる、したがって金を前払いする。問題は、金は払ってあるけれども品物が来ないから完結しない、こういうことなんですか。
  23. 大村筆雄

    大村政府委員 いろいろ原因がございまして、米軍から物品納入は終わっているのでございますが、ただ精算書到着がおくれておりますために精算事務が完結しないものもございますし、全体の四五%はそういうもののようでございます。それから物品納入はほとんど終わっておるわけでございますが、ごく一部が納入がされませんために、全体がまだ未精算になっておるもの、これも約三割程度ございます。あるいは物品納入も終わり、精算書到着いたしまして、目下精算手続中のものが十数%もございます。というふうに、いろいろ原因はございますが、大部分がただいま申し上げましたように、物品納入も終わっておる、ただ精算書が来るのを待っているとか、あるいはごく一部は来てないとか、あるいは全部精算書が来ておるけれども精算手続中というのが、合わせまして約九割ぐらいはそういうものでございます。
  24. 栗原俊夫

    栗原委員 単価がきまっておって、納入が済めば——それご精算できない理由はどこにあるのですか。
  25. 大村筆雄

    大村政府委員 ただいま申し上げましたように、精算書が参りませんと、精算の完結を手続上終わるわけにいきませんものですから、その精算書到着を待って、あるいは精算書が来ましても、内部でその精算目下手続中だというようなものもございます。したがいまして、物自体が着いておりましても、そういう関係でおくれておるものが相当あるわけであります。
  26. 栗原俊夫

    栗原委員 このような、今年からすれば、三十三年ということになれば、足かけ八年ということになりますか、こういうもので、相当価額な金が前払いされて、しかも精算がされていない。普通前渡金、概算払い、こういうものの精算がされていないところには、常識的にいうと、いろいろな問題がわだかまっておると見られるわけです。したがって国の防衛に当たるという聖職を持っておられる自衛隊にこういうものがあることは、とかくの目で見られる危険性があります。  そこで、重ねてお尋ねしますが、こういう金額はすでに四、五年あるいは五年以上も経過してなおかつ前払い金精算未了になっておるものは、すべてMAS関係のものだと言い切れる内容のものですか。
  27. 大村筆雄

    大村政府委員 三十五年までのものにつきましてはそのとおりでございます。
  28. 栗原俊夫

    栗原委員 会計検査院お尋ねします。  ただいまの質疑応答の中で、常識的には、前払い金をしておきながらあまりにも長期に、しかも多額の金が精算未了になっておるが、これは国際的なMAS関係のものに限ってそうなんで、しかもそういう手続がおくれておるためなんだ、こういう説明でございますが、会計検査院の見解はどうでございますか。
  29. 樺山ただ夫

    樺山会計検査院説明員 ただいま御説明のとおり、三十三年度から三十五年度までのものは、有償援助関係のものだけでございます。そこで、ただいま防衛庁から御説明がありましたが、確かに品物が入っておるが、精算書が着かないというようなものもございます。中には注文どおり品物が入らないで、クレームをつけておりまして、それに対してまだそれが解決してないというような事態もあるわけでございます。したがいまして、会計検査院といたしましては、単に精算書が着かないというようなものは、あるいは確認してもいいのではないかというような御意見もあろうかと思いますが、そういうものを含め、一応完全な検査が済んでないという意味におきまして検査確認としておるわけでございます。
  30. 栗原俊夫

    栗原委員 三十五年度までは一応そういうことでわかったような気がいたします。三十六年度以降、これは年度が迫っており、三十六年、三十七年、三十八年の決算でありますから、まだなかなか精算しきれないものがありますが、その中で項目別に見て、航空機あるいは艦船建造、こういうことは先ほど来の説明で継続的な事業をやる、こういうことで理解ができるのですが、三十六年度以降の防衛本庁費、この中にはやはり前払い金精算未了、こういうものの中に、もちろんMAS関係もありましょうが、この中にはそういう関係以外のものもあるんじゃないか、このように思いますけれども、この点はどうなんでございます。これは防衛庁のほうにお尋ねいたします。
  31. 大村筆雄

    大村政府委員 お答え申し上げます。  三十六年度、三十七年度におきますところの防衛本庁精算未了内容は、三十五年度までと同様、大部分これはMAS関係精算未了のものでございます。
  32. 栗原俊夫

    栗原委員 大部分というのは、全部ではない、こういうことだと思うのですが、その全部ではない、いわゆるMAS関係でないもので、精算未了になっておるものは、たとえばどういうものですか。
  33. 大村筆雄

    大村政府委員 これは大部分MAS関係と称しておりますが、それ以外のものにつきましては、ただいま手元資料がございませんので、至急調べましてお答え申し上げたいと思います。
  34. 栗原俊夫

    栗原委員 会計検査院お尋ねします。ただいま防衛庁経理局からのお話によれば、三十六年以降の防衛本庁前払い金精算未了額、この額の大部分はやはりMAS関係だ、こう説明しております。しかし大部分というのは全部ではないということで、しからばMAS関係以外のもので前払い金精算未了のものはたとえばどういうものだ、こういうお尋ねに対して、手元資料不備のため後ほどと、こういうことなんですが、会計検査院のほうの所見を伺いたい、このように思います。
  35. 樺山ただ夫

    樺山会計検査院説明員 まず数字から申し上げますが、三十六年度百八億七千百四万円の未確認額となっておりますが、このうちMAS関係が五十億九千七百六十六万円になっております。その他の国内関係が五十七億七千三百三十八万円となっておりまして、この大部分航空機購入費関係でございます。それから三十七年度は、未確認額が二百十四億五千七百四十九万円となっておりますが、このうちMAS関係が三十四億でございまして、その他の国内関係が百八十億五千六百万円ということになっております。この国内関係のおもなものは航空機関係並びに艦船関係ということになっております。
  36. 栗原俊夫

    栗原委員 ただいまの会計検査院説明によると、三十六年度総額百人億の未確認額の中でMAS関係が五十億九千万、そして国内関係が五十七億、こういうことでありますが、そういう内訳になってくると、私のしろうと考えのねらいとは全く変わってきたので、こういうことになりますと、三十六年度航空機あるいは艦船その他のものの中にもMAS関係のものが入っておるのだ、こう理解していいわけですか。ということは、防衛本庁の未確認額総額四十三億、こういうことでございますが、MAS関係が五十億九千万だということになると、防衛本庁費総額をはるかにこえてMAS関係があるということは、本庁費以外のいわゆる航空機艦船、こういう関係の中にもMAS関係があって精算ができないのだ、こういう事情があるわけですか。
  37. 樺山ただ夫

    樺山会計検査院説明員 項別内訳の話だと思いますが、確かに航空機購入費の項、それから艦船建造費の項におきましても若干のMAS関係はございます。これは特殊装備品であると考えます。
  38. 栗原俊夫

    栗原委員 最後のところ、いま少しはっきり言ってください。
  39. 樺山ただ夫

    樺山会計検査院説明員 三十六年度で申し上げますと、防衛本庁の項はすべてMAS関係でございます。それから航空機購入の項におきましてMAS関係が六億八千五百万円ございます。同じく艦船建造費においても、ちょっと数字手元資料に出ておりませんが、若干のMAS関係がございます。
  40. 栗原俊夫

    栗原委員 航空機購入費関係あるいは艦船建造費の中にMAS関係があるというのは、どうもぼくが勉強が足らぬからわからぬのですが、これは物自体国内でつくっても、それに装備する品物等を海外で発注してつくって持ち込んできて、国内でつくっている物に添加していく、そういう関係MAS関係というものが出てくるわけなんですか。それとも単なるお金の関係MAS関係という関係が出てくるのですか。この辺もしろうとでわかりませんが、ひとつ御説明願います。
  41. 國井眞

    國井政府委員 ただいまお話航空機関係MAS関係のものはどんなものだ、こういうお尋ねかと思いますが、航空機部品等でたとえば国内でできないもの等もございますし、あるいは特殊扱い等のものもあります。そういったもののMAS購入というものがあるわけでございます。
  42. 栗原俊夫

    栗原委員 大体防衛庁関係前払い金精算事情がわかりました。わかりましたけれどもお話によれば、品物が納まっておりながら、なおかつ諸般の手続等精算ができないということは、率直に言うと、痛くない腹を探られる条件です。精算ができぬのではないかというような見方をされる危険がありますから、これはもちろん御努力なさっておられるとは思いますけれども品物の納まったようなものについては一日も早く精算をきれいになさることを特に要望をいたします。  それでは、次に指摘事項についてお尋ねをいたしたいと存じます。特に指摘事項の中で報告書二十五ページの第五項目の「制御系解析機購入にあたり処置当を得ないもの」、これは報告書によりますと、防衛庁の大学校で制御系解析機を買った。ところが実際には製造能力のないものを指定して、そしてつくらせ、持ってきたものが案の定動かない、こういうことである。しかもその間納入にあたっても、納入期日等も実際は四月に入ったものを三月に納入されたというような取り扱いをしておる。こういうことはまことにもってけしからぬことでありますが、まずこの事情をひととおり防衛庁当局から、特に大臣が御存じであれば基本的に大臣の御説明、そして考え方を中心にお伺いいたしたい、このように思います。
  43. 小泉純也

    小泉国務大臣 ただいま御指摘の、防衛大学において購入をいたしました制御系解析機の問題につきましては、私もその概要説明事務当局から受けまして、まことに遺憾なことである、たいへん残念に思った事柄でございます。本件についてはわがほうにおきましても十分徹底的な調査をいたし、問題を解明いたしますとともに、責任者につきましても適当な処分をいたし、今後かかることがないように厳に私も注意をいたしておるわけでございまして、ただいま栗原委員から御指摘になりまして、一そう遺憾の意を表明せざるを得ないわけでございます。この間の経過等につきまして、政府委員から説明をいたさせたいと存じます。
  44. 大村筆雄

    大村政府委員 ただいま大臣より御答弁申し上げました点につきまして、補足的にこれが経緯等につきまして御説明を申し上げたいと存じます。  防衛大学校の理工学研究科と申しまして、一般国立大学の大学院の修士課程に該当するものがございますが、その理工学研究科の自動制御講座におきまして、教官なりあるいは学生の研究に使用いたします器材といたしまして、制御系解析機購入する必要がございまして、これを三十九年二月八日、防衛大学校と日本レジン株式会社との間に、価格三百十万円、納期三月三十一日とする製造請負の随意契約を行なったものでございますが、完成が予想以上に長引きまして、一応の製造を終わりまして納入されたのが四月十六日でございます。なお未調整で、完全な作動をしなかったにもかかわりませず、契約どおり納入されたものとして支払い手続を完了いたしましたところ、その後、当初は若干の調整を加えれば完全に作動するのじゃないかというふうに考えていたところが、意外に調整がはかどりませんで、十一月二十四日に至りまして初めて十分な作動をするようになったのでございます。その間、九月十四日に昭和三十八年度会計検査院の実地検査を受けまして、指摘事項にも書いてございますように、業者の選定にあたって、同機製作に関して特許出願中であるとの理由で随意契約を行なっているが、その事実がないということ、同大学校では三十五年十二月にも制御系解析機購入しており、ほかに同機製造の経験のある会社があることを知りながら、製作能力がなく、全面的に下請さしている同社日本レジンを選定しているということ、検収にあたっては三月に納入されたものとしているが、実際の納入は四月であるということ、納入の際に不完全で作動不能の事実が判明したのにそのまま受け入れたことなどが不適切であるとして、指摘をいただいておるのでございます。  このような結果を生じました経緯でございますが、検査院の御指摘のとおり、同大学校では三十五年の十二月にすでに製品化されておりました東京計器製造所の制御系解析機購入いたしまして、現在航空工学教室で使用している例もあるのでございますが、制御系解析機はまだ開発段階の装置でございまして、各種の規格品があるわけではないのでございまして、今回の理工学研究科自動制御講座では、従来のものより能力が大きく、かつ教官の研究になるところの構造を取り入れました全く新しい規格のものを製作することといたしましたために、その観点から業者を選定いたしたのでございますが、この制御系解析機が技術的に高度な構造で、物件の正確な理解が困難でありましたことなどから、事務系の契約担当職員あるいは検査担当職員は要求元の教官の意向を尊重いたしまして、それぞれみずから深く調査することをいたしませんで契約及び検査を実施した結果、かような不都合な事態に相なったわけでございます。  なお特許出願の事実の点でございますが、契約担当職員は調達要求教官から日本レジン株式会社の特許出願中のもののみが適当であるという業者指定の理由がついておるわけでございますが、その業者指定理由に基づきまして随意契約を行なったものでございますが、これは当時特許出願準備中でありましたものを要求元教官がもうすでに特許出願のものというふうに誤認いたしまして、さように業者指定理由に書いてございますが、その後これの特許出願の技術者が本件の下請を行ないました東亜興産株式会社に転出いたしましたため、この特許出願は東亜興産株式会社から出願されるに至りまして、現在特許出願中でございますが、それはすでに本機の一部に使用されておるものでございます。   〔田村(元)委員長代理退席、壽原委員長代理着席〕  それから日本レジン株式会社の製作能力の点でございまするが、先ほど申し上げましたように、契約時におきまして要求元教官の意向を尊重いたしましたために、契約担当職員は十分な調査を行なわないで日本レジン株式会社と契約いたしたのでございますが、事後の調査によりますと、本機の製造につきましての引き合いを行ないました三十八年の九月ごろには、日本レジン株式会社は電気部分の設備を持っておりまして、一応の製造能力はあったものと推定されるのでございますが、契約いたしました三十九年二月ごろには先ほど申しました特許出願の技術者が転出いたしまして、またそのほかの従業員も整理いたすなど、本機の製造にあたりまして下請に出さざるを得ない状況になったものと認められるのであります。  それから検査院の御指摘の中に、納入が四月になったにかかわらず三月と認めたという点でございますが、まことにこれも遺憾な点でございますが、当初三月末までには納入があるものと考えまして、繰り越しの手続をとらなかったのでございますが、その後製造工程が意外に長引きまして、四月十六日に納入を見たのでございます。そこでやむを得ず三月末納入ということで、代金の支払いを行なっておる状況でございます。  それから御指摘の中の不完全なものをそのまま受け入れたことについてでございますが、納入されますときにおきましては未調整でありまして、完全な作動を見ていなかったわけでございまして、これもそのまま完全に作動するものとして納入を満了いたしました。きわめてこれも遺憾な点でございますが、またその後の調査によりますと、納入時には未調整ではございましたが、規格、構造等は一応仕様を満たしておりまして、簡単な調整を行なうことによりまして完全な作動をするものというふうに担当教官のほうで考えましたので、領収いたしたのでございますが、その後調整にかかりましたところ、意外に調整に難渋したものでございます。本件につきましては、納入後担当教官の指導のもとに、業者の責任におきまして不完全部品の交換あるいは試験、調整を実施させてまいりましたが、昨年十一月二十四日に一応十分な作動を行なうようになったものでございます。また納期から納入があった日までの遅延料といたしまして九万九千二百円を徴収いたしております。さらに、関係職員に対しましてもそれぞれ処分をいたして厳重に戒めておるものでございます。また、本件のような事態が生じましたことにつきまして、私どもの指導の点にも欠くるところがありはしないかということで、特に防衛本庁におきまして、昨年の十一月には、会計業務その他につきまして業務監査を実施いたしまして、問題点その他につきましての改善策を検討いたしまして、これが改善の勧告を行なっておりますが、とりあえず防衛大学校におきましても種々の改善措置をとりまして、現在実施しておる状況でございます。
  45. 栗原俊夫

    栗原委員 ただいま概略をお伺いしたのですが、まず最初にお伺いしたいことは、防衛大学校の物品購入のやり方ですね。発注のしかた、こういうことは、これは正しかったので、たまたま入ってきた機械がうまくなかった、だから運が悪かったんだ、こういうお考えなのか、あるいは発注の過程において何か正規でないものがあったとお考えなのか、この辺はどうなんです。
  46. 大村筆雄

    大村政府委員 発注の過程につきまして、私ども調べたところによりますると、先ほど御説明申し上げましたように、要求元教官から物件の製作発注につきまして要求があるわけでございますが、その要求を受けまして、防衛大学校の総務部会計課におきまして、契約担当職員契約の規程に従って契約いたしますと同時に、できたものにつきまして十分な検査をして納入をいたすという筋合いになっているわけでございますが、その契約のやり方、あるいは物件検査の場合に、たまたま発注を受けました本機は技術的に高度な構造で、事務系の職員にはなかなか理解が困難であるということで、要求元教官の意向のままに契約をする。そのことにつきまして、契約担当職員として十分な調査もしないで、要求元教官の要求内容そのままを信用して調査する。あるいは検査等も要求元教官の検査結果の成績証明書そのままを信用して検査を了したという点が遺憾な点でございますが、かつまた要求元教官につきまして申せば、要求元教官において会計規程等の知識がきわめて不十分なために、会計法規しから見て遺憾な要求内容が行なわれておる。   〔壽原委員長代理退席、田村(元)委員長代理着席〕 それがたまたま要求内容が技術的に事務系職員の理解困難なためにそれをうのみにしたというようなことがからみあいまして、こういうような不都合な結果を来たしておるというふうに考えておる次第でございます。
  47. 栗原俊夫

    栗原委員 いまの説明で、今度の発注、それから品物の検収が正しく行なわれておると考えるかどうか、こういう質問に対して、そうだとか、どこか遺憾なところがあったという答えで十分なんです。長く説明をいただいたのですが、正しいと言っているような、正しくない、どうもどこか一本抜けているところがあると考えているというような、どうも聞いていてどんぴしゃりとわからぬのですがね。これでよかったんだ、たまたまその機械が高度のものであって、そして技術的にちょっとぐあいが悪いところがあったのが機械の者にわからなかったんだ、そういうことだけなんだ、こういうことなんですか。それとも、この発注、検収の過程において正規でないような、何かややこしいことがどうもあるように考えているのですか。ここはどうなんですか。私はここのところを聞こうとしているのだ。
  48. 大村筆雄

    大村政府委員 会計法規上からみますときわめて遺憾な事態に相なっているわけでございまして、定められたとおりの調査が行なわれていない。なぜ定められたとおりの調査が行なわれていないかと申しますと、内容はきわめて技術的なものでございますので、要求元教官の要求内容をそのままうのみにした。要求元教官もまた会計法に暗いものでございますから、会計法に触れるような要求をなさっていたという点がこういう事態に相なったわけでございます。
  49. 栗原俊夫

    栗原委員 たまたまこれは防衛大学校に起こった、しかも購入金額三百十万円程度のことですが、本庁関係で、いわゆる装備機材の問題等はまさかこういうことはないと思うのですが、これまた要求元が要求して、受けて立つ経理関係のほうは、これも十分技術的に知識を持たれる方々が、そうした購入事務に当っておられるだろうと思いますけれども、その辺はどうなっているのですか。
  50. 大村筆雄

    大村政府委員 本庁におきましては、きわめて多額装備品の発注等をいたしております関係で、付属機関といたしまして調達実施本部という機構を設けまして、ここで専門的に発注をいたしまして、ここでは契約規程に定められたところに従いまして十分いろいろな審査もいたしますし、不都合な事態が起こらないようにやっている所存でございます。
  51. 栗原俊夫

    栗原委員 また大学のほうへ戻りますが、そうすると、この解析機を必要とした講座、そうして担当教官は何という方なんですか。
  52. 大村筆雄

    大村政府委員 必要といたしました講座は理工学研究科、自動制御講座でございます。理工学研究科と申しますのは、国立大学の大学院の修士課程に相当するものでございます。それから担当要求元教官は郡教授でございます。
  53. 栗原俊夫

    栗原委員 聞くところによりますと、この郡教授がかなり強引にレジン株式会社と随契を持っていくということを押し進められたやに伺っております。さらにまた品物が三月三十一日の期限をおくれて四月十六日に入ってきたときに、向山検収官ですか、ただいまのお話で、かなりの高度の技術を要するものであるが、向山検収官のその時点における技術知識をもってしてもかなり危惧の念がある、こういうことであったが、だいじょぶなんだと太鼓判を押したのは郡教授だ、こういうように聞いておりますけれども、こういう問題は会計検査院が調べて初めて問題化したのですが、それ以前においてこれはたいへんなんだというようなことで防衛大学自体がみずから自発的に機械をいかにして段取りをつけるかというような行動に移っておったのですか。この辺はどうなんですか。
  54. 大村筆雄

    大村政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、納入時におきましては完全には作動はしていない状況でございまして、ただ若干の調整を加えましたならば、十分所期の仕様どおりの作動をするのじゃないかということで、規格、構造等も一応仕様のとおりにできております関係で、そのまま郡教授のところで検査の成績証明において合格を認めまして、それに基づいて検査官である向山係長が検査の終了をさしておるのでございます。その後さっそく調整にかかりましたところが、意外に当初の予定よりか調整に難渋いたしまして、時間がかかっておりましたが、たまたま担当の郡教授が病気で一カ月以上にわたりまして休まれるというような事態もありまして、調整がさらにまたおくれておりましたところが、たまたま検査院の検査が九月にございまして、検査院からの検査の最中にそういう状況が御指摘を受けたということでございます。
  55. 栗原俊夫

    栗原委員 それではひとつ検査院のほうの御所見を承りましょう。  検査院の指摘によれば、これはかなり痛烈なことばが使ってあります。おそらく相当しんぼうしながら、また官庁同士のことだからという気持ちでこういう文言なんでしょうが、ありていにいえばこれはこっぱみじんに書くところだろうと思うのです。でたらめもはなはだしいとおそらく書くところだろうと思うのです。ひとつ国の財産を守る検査院としてそういう衣はかなぐり捨てて検査した実態をざっくばらんにここでもって国民の前に明らかにしてもらいたい、このように思います。
  56. 樺山ただ夫

    樺山会計検査院説明員 四月十六日に本件物品納入されたわけでございますが、その際の性能検査におきまして抵抗器に雑音が出る、それから位相計に周波数どおりの位相が出ない、したがってメーターの指針が安定しないというような状況であったわけでございます。ただいま防衛庁から御説明があったのでありますが、これを郡教授は、調整すれば簡単に性能どおりのものとなると判断して受領したということを申しておりますが、私どもが半年過ぎました九月に実地検査したのでありますが、その際にもこれとあまり変わらない状況でございまして、このようなものを簡単に調整ができるといやしくも技術者が判断すること自体が若干おかしいのじゃないかと感じた次第でございます。  なお、その後もいろいろ調査いたしましたところ、この性能試験の際にもう一人の入道という講師がいるのでございますが、この方が本件は不完全であるから合格するわけにはいかないというような意見もあったのでございますが、責任者である郡授教は調整ができるという判断で検査職員のほうへ検査成績表を出したというような関係になっております。  それから契約の相手方が適当でなかったという点がもう一つの問題でございますが、この点はもっと根本的に申しますと、こういった教育機関におきまして、要求元の教官がいろいろその会社でこういうものを買ってくれというようなことは、これは防衛大学のみならず、国立の大学にも同様な傾向があるわけでございますが、そういったことに引きずられて会計職員がそのまま契約してしまう、そういうような傾向が最も問題ではなかろうかというふうに考えております。したがって、会計職員といたしましては、こういうものを買えということを要求元の教官から要求されればそれを購入することになるわけでありますが、契約の相手方につきましては、やはり契約担当官としていろいろ調査をすべきではなかったか。そういう問題が、こういった研究教育用の備品とか機械につきましては、大学関係では教官に引きずられるというような傾向が一応問題ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  57. 栗原俊夫

    栗原委員 ただいま会計検査院からの説明もありましたとおり、われわれがこの案件をいろいろ聞いてみますと、単純に、たまたま発注してあがってきた機械が、率直にいって運悪くうまくなかったことだけではないように思える節があるのです。経理局長は、発注した当時には軍機関係をやっておったから、このレジン株式会社には能力があったと言うけれども会計検査院のほうではまだなかなかおとなしくて、言いたいことを言っておらぬ。実際には能力がなかった。そして受ける初めから下請である東西興産ですか、ここへでも出すつもりだった、しかも東亜興産は郡教授の部下というか教え子というか、そういう下清——そういうような関係でやっておった。したがって、おまえのところにやらせるのだという関係の中から出てきた案件だと思うのです。こういうことはやはり別の角度から徹底的に調査してしかるべきだと私は思います。  なお、きょうは時間の制約がありまして、あと同僚議員がやりますし、この問題についても、われわれのほうの理事である勝津料がまた詳しくいろいろと掘り下げる予定になっておりますから、本日はこの程度でとどめますけれども、やはりいろいろと色目をもって見られる中に、しかも厳とした立場をとらなければならぬ防衛庁のあり方ですから、ひとつ以後こういうことにつきましては、特段の配慮を払うと同時に、さらにこの案件、全額でも三百十万円と小さな額かもしれませんけれども、こういうあり方がすべての問題に波及する危険もないとしないし、あるいはそういうあり方がすべてにあるのではないかという危惧の念を抱く危険もあるのでありますから、しっかりした調査の上で処断すべきは断固処断する、こういう方向をとってもらいたい、こういうふうに思います。  本日は、以上をもちまして私の質問を終わります。
  58. 田村元

  59. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 少しお伺いしたいことがあるのですが、これは数年前にも一応問題になったと思うのですけれども、いま三矢計画等日本の防衛問題が非常に浮かび上がっておる時期でございますから、いずれ私は三矢研究とからんで本質的な質問はいたしたいのでございますが、その参考にするために一応わずかな質問でございますけれども、お伺いをしたい。  防衛庁の予算の中に報償費というのがございます。まず、この報償費がどういう使われ方をしておるかお伺いをしておきたい。
  60. 大村筆雄

    大村政府委員 報償費の御質問でございますが、防衛庁におきましては、たとえば四十年度におきまして一億円余の報償費の予算の御審議を目下お願いしておるというところでございますが、中身は、まず第一に自衛隊法施行規則第一章によるところの表彰の副賞及び賞詞あるいは賞状、功労章、精勤章の製作、それから情報、資料収集、浮遊機雷の発見等に対する報償費、あるいは犯罪の捜査に必要な報償費、あるいは災害出動等の際における隊員に対する賞じゅつ金、あるいは表彰等に関する訓令第二十四条による「隊員以外の者又は団体に対」する感謝状の製作及び副賞というふうに相なっております。
  61. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、調査委託費というのはどういう支出がなされておるのですか。
  62. 大村筆雄

    大村政府委員 いま手元金額数字は持ち合わせてございませんが、中身は、調査委託費はいろいろな調査を委託した場合の寄託者に支払う報酬ということでございます。
  63. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それはわかっておりますよ、そのくらいのことは。内訳をもう少し言ってください。
  64. 大村筆雄

    大村政府委員 ただいま四十年度数字は持ち合わしていないのでございますが、三十八年度決算数字を申し上げますと千五十八万一千円というふうになっております。
  65. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 内容です。どういうことに払っているかということを具体的に言ってもらいたい。
  66. 大村筆雄

    大村政府委員 調査委託費は、各種の調査をお願いいたします場合に寄託者に支払う金でございますが、そのお願いいたします調査の項目はあるわけでございますが、ただいま諸項目資料を持ち合わしてございません。
  67. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 資料をいま持ち合わせてないようですから、しようがありませんから大まかなところだけ聞いておきたいと思います。技術調査研究関係の委託費は別に組んであるでしょう。
  68. 大村筆雄

    大村政府委員 技術関係につきましては、項、研究開発費におきまして技術調査研究委託費という目がございます。それによりまして約三億程度の金が支出されております。
  69. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 調査委託費のほうにも、そういう技術関係の調査に支払われているでしょう。
  70. 大村筆雄

    大村政府委員 調査委託費は項、防衛本庁でございます。それから技術研究委託費は項、研究開発費でございますから、技術的な研究開発に関連しての調査委託費は技術調査研究委託費のほうで支出される。それ以外の毛のは調査委託費と御理解願えれば幸いでございます。
  71. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もう少し細目があれば私は具体的にお伺いしたいのです。技術関係ではその辺ダブっているのではありませんか。もう少し具体的にお伺いしたい。私は資料を持っている。しかし資料をお待ちにならぬそうですから、それじゃ別に諸謝金というのがあるでしょう。これはどういう方面に支払われておりますか。
  72. 大村筆雄

    大村政府委員 目に諸謝金という目がございます。これは先生、御承知の点かと思いますが、学校におけるいろいろな講習の際の部外の講師に対する講師謝金あるいはその他の講演、執筆、研究あるいは弁護等を部外者にお願いした場合のそういう謝金数でございますが、三十八年度決算におきまして約三千七百万円ということでございます。
  73. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 謝金のうち、情報提供者にそういう謝金を出されているでしょう。
  74. 大村筆雄

    大村政府委員 諸謝金はただいま御説明申し上げましたように、学校の講習等に対する部外の講師に対するものとか、あるいは講演等、執筆、研究、弁護等の場合に部外の方にお願いする謝金でございますから、情報等に対する謝金はこれからは出しておりません。
  75. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは情報を提供した者に対するお礼金はどこから出ているのです。まさか出していないとはおっしゃらないでしょう。
  76. 大村筆雄

    大村政府委員 情報を提供いただきました場合に対するお礼は、報償費から出ております。
  77. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは確実ですか。取り消すようなことはないですか。数年前からそういう方法をとっておりますか。
  78. 大村筆雄

    大村政府委員 そのとおりでございます。
  79. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 違うじゃないですか。謝金から出しているという答弁をしたことがあるでしょう、防衛庁は情報提供者に対するお礼金は。ないですか。謝金から出しているでしょう。それでは、報償費の中からそういう情報提供者に対する礼金は出しているんですか。それは確実ですか。
  80. 大村筆雄

    大村政府委員 そのとおりでございます。
  81. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大臣、責任を持たれますか。
  82. 小泉純也

    小泉国務大臣 事務出局で十分調査をした結果の答弁であろうと思いますので、もちろん大臣としてそのとおりであると考えまするが、なお、いま楢崎委員からもいろいろな前の答弁その他に食い違いや疑義があるような御発言でございますので、十分念を入れて正確を期するためにさっそく十分に調査をいたしまして、あらためてまた大臣の責任においてお答えを申し上げます。
  83. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大臣はなお調査するとおっしゃっていますが、事務当局のほうは確信を持って——いま私が何回もお伺いしましたが、確信を持って言われましたね。間違っておったら責任とられますか。大事な問題です。あなた方はスパイ行動をやっているんです。その情報を絶えず収集しておるはずです。その金がどこから出ておるかということは、あいまいじゃ困ります。もう一ぺんお答えをいただきたいと思います。
  84. 海原治

    ○海原政府委員 防衛庁での情報の収集あるいは調査ということになりますと、これは私のほうの所管になります。ただいま楢崎先生、スパイ行動をしているとおっしゃいましたが、私どもはそういうことをいたしておりません。私どものほうで、従来、私が知っておる限りにおきまして、いろいろと必要な情報の収集につきましては、先ほど経理局長からお答えしましたように、報償費の中から支弁しているものでございます。
  85. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、私は、きょうはこの問題はここまでにしておきます。スパイ行動もしていないという防衛局長のお答えでございましたが、それも次の機会に私は明確にしたいと思います。  最後に、検査院の方、おられますか。
  86. 田村元

    田村(元)委員長代理 樺山第二局長がおられます。
  87. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 検査院の万にお伺いをしたいのですが、防衛庁のこういう報償費なりあるいは技術調査費なりあるいは諸謝金の内容については綿密に検査をされておりますか。
  88. 樺山ただ夫

    樺山会計検査院説明員 報償費につきましては、一部が部隊職員の表彰のための経費でございまして、これは正規の証明となっております。それから大部分は情報収集関係の経費でございますが、これは事柄の性質上、簡易証明となっておりますが、ただわれわれが実地検査をいたします場合は、実際の領収書その他は当該官庁に保管していることになっておりますので、実地検査の際はその領収書等によって確認をいたしているわけでございます。  それから委託費関係は、これはすべて正規の証明でございまして、ほかの経費と同じように、われわれとしては十分な検査をいたしているつもりでございますが、先生おっしゃるような点につきましては、なお、今後も十分注意をいたしたいと思います。
  89. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これで最後です。いまの点もさらにこまかい質問をする点があるんです。  最後にお伺いしたいんですが、いま言ったような費目を使う防衛庁の組織といいますか機構といいますか、空幕ではどのようになっておりますか、ひとつ部長以下ぐらいから下部までの役職といいますか、それから西部航空方面隊ですか、西空ではどうなっておりますか。その担当、係をひとつお知らせをいただきます。
  90. 海原治

    ○海原政府委員 この報償費は、陸海空自衛隊に、ある程度のものを分けておりますが、これは陸海空によりまして、それぞれいっておりますところの段階が違っております。私、ただいま詳細な資料は持っておりませんが、航空自衛隊につきましては、各方面航空隊の司令部までいっておると思います。それから先、あるいは場合によりまして、その航空方面隊司令官、これを補佐しますところの情報担当の部長の判断で、さらに下のところまでいっておるかもしれませんが、その点につきまして、私、詳細正確なところ存じておりません。一応は航空自衛隊につきましては、各航空方面隊司令官どまりだと記憶しております。
  91. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それから先のことを聞きたいのです。私は具体的にお伺いしておるのです。西空ではどうなっておりますか。   〔田村(元)委員長代理退席、福井委員長代理着席〕
  92. 海原治

    ○海原政府委員 ただいま申しましたように、航空方面隊司令官からの下のところにつきましては、私、ただいま正確な資料を持っておりませんので、これを調査の上あらためてお答えさせていただきます。このように思います。
  93. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは私は質問はすべて保留をいたしておきます。きょう私がお伺いした点は、いつでもお答えになられるように、機会があったときにお伺いしますから、お願いをいたしておきます。あとは保留をいたします。
  94. 福井勇

    ○福井委員長代理 三木喜夫君。
  95. 三木喜夫

    三木(喜)委員 私は、先般の予算委員会、二月二十七日ですか、ここにおきまして自衛隊内におけるところの差別問題についてお聞きいたしました。当日御答弁いただいたのは、防衛庁人事局長堀田さん、それから人権擁護委員会の、先には鈴木局長、後には辻本調査課長でした。そこで、問題の概要は、いまさらここで申し上げるまでもないと思いますので、ずばり本論に入っていきたいと思うのですが、当日の質問で明らかになりましたことは、自衛隊というところは特別のところであるから、こういう人権問題が起こっても調査に入れないのじゃないかという心配が私たちにありましたので、堀田人事局長にただしましたところ、それは入って、そうして人間同士、人同士、差別をされた者、差別をした者、それを面通しをすることもできる。それから教育の面については、そういうことが起こらないように今後していくために十分教育をしていきたい。それは自衛隊の団結のためだとおっしゃったのですが、団結のためだけではない、団結以前の問題がある、それについても十分教育をしていきたい、こういう御答弁でした。さらに、こういうことを起こした者につきましては、それ相当な処罰をしていくということにつきましても、それについてはやっていく、こういうようなお話でございました。なお、法務省の人権擁護局長並びに課長としては、これについては十分調査をする、自衛隊の中へ入っても調べます——両者の一致点を見出して、私は調査のしやすいように質問をし、質問によってお答えを得たのであります。  そこで、法務省の人権擁護局長にお伺いしたいのですが、その後、この深刻な問題に対しまして調査を進められ、どのような実態をつかまれたか、ここで明らかにしてもらいたい。
  96. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 ただいま御指摘の事件につきましては、現在までに自衛隊関係者二十名、この中にはすでに自衛隊を退いていらっしゃる方もございます。それから申告者が富士学校勤務中居住していた付近の住宅の主婦たち及び申告者の妻、父等四名、計二十四名、延べ二十九名につきまして調査を実施しました。その調査の、どういう点に重点を置いて調査をいたしたかと申しますと、すでにこれは御指摘の中にあったと思いますが、山北敏彦が陸上自衛隊富士学校勤務中に、上司、特に大坪正芳三等陸佐との間にあつれきがあったかどうか、あったとすればそれは差別問題に根ざしたものであるかどうかという点。それから第二番目に、真実差別言辞の事実があったかどうか。第三番目に、山北敏彦の離婚の原因、その後奥さんと離婚したのでありますが、その離婚の原因陸上自衛隊富士学校勤務中の差別問題に根ざしたものであるかどうか、こういう点につきまして、先ほど申しました関係者について調査したのであります。調査の結果、まだ最終的な結論を出すところまでは至っておりませんが、申告の内容、それから現在までの調査との間には相当な食い違いもあるのでありまして、最終的にはさらに申告者側につきまして調査を実施いたしまして、できるだけ早く結論に達したい、かように思っております。
  97. 三木喜夫

    三木(喜)委員 それでは何も調査されてきたことについてお聞きしたことになりません。食い違いがあっただけで、どういうところが食い違っておるのですか。さらにまた、いつ自衛隊のだれに会ってどのような答弁がなされたか。それを言ってもらわなければ、そういう抽象的な、食い違っておったからと、これだけでは承服ができないわけなんです。その点ひとつ明らかにしていただきたい。
  98. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 延べ二十九名の関係者の供述一々全部につきまして、だれがどのように言ったかということをこの席で逐一申し上げるというのも、これは時間の関係もあるかと存じますので、主要な点につきまして御説明をいたしたいと思います。  まず第一の、姫路市にあります第三特科連隊一等陸尉山北敏彦からの申告の内容によりますと、おおむね次のとおりであります。  同人が陸上自衛隊富士学校勤務中に、上司から次のような取り扱いを受けたというのであります。いろいろ出ておりますけれども、そのうち問題になります点をまず申し上げますと、三十七年の春ごろ、大坪三佐から北海道に転属を迫られた。第二点は、大坪三佐から、再三にわたりまして官品である作業服上下、ワイシャツ、くつ等の提供を要求されたという点。それから第三番目に、昭和三十九年一月二十一日、大坪三佐から家庭問題を問われましたので、妻の実家への仕送り状況等を話し始めましたところ、同人から、君の奥さんは金持ちのお嬢さんだと言っていたが、貧乏人だそうじゃないか、部落民だそうじゃないかと言われたという、この三点がまず問題になると思うのであります。  それで、この三点につきまして現在まで調査の結果判明いたしましたところでは、まず第一の点につきましては、北海道転属の話のあったことは認定できますが、強要されたという点はいまだ認定することができません。第二の点につきましては、大坪三佐に成規の手続を経ないでワイシャツ、短ぐつが渡っているということは認められますが、山北敏彦自身が自発的に渡したものか、あるいは大坪三佐から強要されて渡したものか、この点はいまだ明らかにされておりません。なお、これらの品につきましては、その後大坪三佐の上司からの注意もあって、隊へ返品されております。それから問題の第三点につきましては、差別言辞を弄したという事実、これはいまだ、これを認めるに足る証拠はありません。しかし、なおこの点は問題の点でありますので、慎重に調査を続行しておる状況でございます。もっとも山北敏彦の妻が特定の部落出身であることを知っているのは、隊内でも限られた人であり、しかもその多くは本人自身から直接聞いて知ったものであるというふうに言っております。  以上のような次第でございまして、申告の内容と現在までの私どもの調査の結果との間に食い違いがありますので、これらの点につきまして、さらに詳細に申告者側を調査いたしまして結論を出したい、こういうふうに考えております。
  99. 三木喜夫

    三木(喜)委員 いまのお話では、本人に対するところの調査ができていない、申告に基づいてさらにこの本人を調査するというお話ですが、本人を主体にして聞いてもらいたい、その上に立って調査をされるのがほんとうじゃないかと思うのです。私の聞くところによると——本人の申告しておるところの供述書、これは私、克明に写してきました。それから、その周辺の人や、それから本人に近い人、こういう人の供述は全部テープにとってきてあります。だから、あなた方は、たぶんそういうことは本人については十分調査された上で、これの調査に当たられたと思うのです。神戸でも本人を二、三回呼んでおるようです。あるいは本人の奥さんも呼んだようであります。そこから出てきた問題は、あなたの分析のように、北海道への転属問題、官品の問題、家庭の問題、特に差別に関係して——それだけでしたか。そういう分析のしかただけで問題の焦点にはいれますか。   〔福井委員長代理退席、田村(元)委員長代理着席〕
  100. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 まず、本人についてまだ直接調査をしていないのではないか、本人について詳細に調査をすべきではないかという御指摘でございますが、本人につきましてももちろん最初に調査をいたしております。そして問題のポイントは、これをせんじ詰めますと、申告にあるような差別的言辞があったかどうかということになりますが、この差別的言辞があったかどうかということの有無を判定するにつきましては、その前後のいろいろのいきさつ、事情につきまして調査をする必要がある。これまたもちろんでございます。これらの点につきまして先ほど一応三点をあげましたが、そのほかいろいろな点について調査をしております。しかし、肝心の点につきまして、先ほど申しましたように、これは結局一対一で、言った、言わないの問題になります。最終的な認定は相当困難が伴うかと存じますが、慎重を期しまして、本人から最初に聞きましたこと、さらにいわば反対側に立ちます富士学校関係の方々について詳細に調査をし、それをもとにして、さらにもう一度詳細微細な点につきまして、いわゆる本人側の方々についていまから調査をしよう、こういう段階になっておるわけでございます。
  101. 三木喜夫

    三木(喜)委員 法務的な立場でお聞きすることは、また法務委員会でひとつお聞きいたします。しかし、きょうは自衛隊のほうからも来ていただいておりますので、自衛隊の関連において重要な点を聞いておきたいと思うのですが、それには本人というものを十分見きわめてもらわなければいけないわけです。  そこで私は御質問いたしますが、姫路でもあるいは神戸の支局でも、どこでもいいです。本人に会って、この山北一尉は身体的にも精神的にも何ら狂ったところがない、だいじょうぶだということを、医学的にもあるいは法律的な立場からも、あるいは人としても見られた上で、そういう心配はなかったかどうか、それが一つと、それから重要な点ですが、家庭の事情が——これはこの前も、離婚の原因は差別でない、女の問題だ、あるいはまたその他家庭の事情からこういうことが起こっておるのだという言い方をされたので、私は疑いの念を持っておるわけなんです。その重要な点についてお聞きしておかぬと、あとで自衛隊の方にお聞きすることが違ってくるわけなんです。
  102. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 山北本人につきましては、すでに二回調査いたしまして、現在、先ほどもお答えいたしましたように、富士学校関係の方々から詳細事情を聴取いたしましたので、それらについてさらに三回目の調査を姫路のほうに命じている段階でございます。  本人について身体的あるいは精神的に欠陥がなかったのではないかという御指摘の点でありますが、私どもの調査で、現在までのところ、本人に身体的あるいは精神的に、いわゆる病的な欠陥があるというふうな結果は出ておりません。  それから、離婚原因が差別的な言辞に起因するか、それともその他の原因によるか、これは非常に重要な点でありまして、この点は、先ほどもお答えいたしましたとおり、関係者の供述が必ずしも一致しておりませんので、その間の詳細な経過につきまして、さらに本人の供述を求めるべく、現在姫路にその間の調査を命じておる、こういう段階に至っておる状況でございます。
  103. 三木喜夫

    三木(喜)委員 本人は自衛隊に十数年勤務して、今日姫路でも上層幹部になっております。そうして勤務の状況も、私は見てみましたところが、非常にまじめで、不正に対しては敢然として抵抗していく、こういうことがうかがわれるわけなんです。したがって、身体的にも精神的にも欠陥があろうはずはないのですが、いま法務省のほうからもそういう欠陥は認めぬというように言われました。離婚の原因はみな食い違っておるからということなんですけれども、離婚の原因自衛隊に聞く必要はないです。あるいは周囲の人に聞く必要はないです。御本人と奥さんと御親族、親か兄弟か、こういうところに聞いていけば、おのずからはっきりしてくるのじゃないか。それが食い違っておるからというようなのは、私はおかしいと思うのです。差別にあるかどうかということは、これは自衛隊側はそういうことはないだろうということをおっしゃるでしょうし、日がたっておりますから、そういうことは調査できにくい、こうおっしゃるでしょうから、そういうところを押し問答で押えておってもらったって、差別問題の焦点は出てこないと思う。本人のところから、離婚はそれだということが明らかになったかどうかということだけを聞きたいのです。
  104. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 離婚の原因がどこにあるのかという点でありますが、もちろん離婚ですから、これはその当事者でなければわかりません。したがって、本人、夫、妻について調査をする必要がある。あるいはその直接の親族等につきまして調査をする必要がある。これは当然でありますけれども、たとえば他のいろいろな原因で夫婦げんかをしばしばしておったというふうなことがかりにあったといたしますと、その事実は、むしろ遠方に住んでいる父母等よりも、付近の人のほうが知っている場合もあります。正式の裁判所における証言とは違いますが、特に第三者的に正しい証言を供述をすることもできる場合がありますので、御指摘のように、本人あるいは親族について調査をする必要があることは、これはもちろんでありますけれども、同時にかつて居住をしておりました富士学校の官舎付近の方々等についてその状況を調べることも、これはまた欠くことのできないことだろうと考えまして、現に調査をしており、将来もなおその補充をなすべく、現在調査を進めておる状況でございます。
  105. 三木喜夫

    三木(喜)委員 回りくどい答弁はやめましょう。そうしてずばり言うてください。差別があったかどうかということを、自衛隊を調べるときは、それで調べてください。離婚の原因というものをどういうように両者が言っておるかということだけ、はっきりしてください。女の問題だったか、経済的な問題だったか、あるいは差別が原因だったか、それだけ明らかにしてください。
  106. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 本人につきましては、御指摘のように、差別的言辞があったということは最初から言っておるわけでありまして、それから本人の親族等も同様な供述をしておりますが、これは現場において直接差別的言辞があったということを聞いたのではなくて、いわば伝聞証言になるのであります。したがいまして、それだけで直ちに差別的言辞があったと断定するのは、これはいささか早計であろうと考えられるのであります。したがいまして、現在その周辺の状況、特に反対の供述をしている方々の詳細な経過について、さらに本人について調査をしておる、こういう状況でございます。
  107. 三木喜夫

    三木(喜)委員 差別があったかなかったかということは、これから調べるのですね。これはもうそれでいいですよ、自衛隊のほうについて調べるのは。本人の奥さんは差別が原因であったと言っておるかどうかというのです。それだけ聞いておるのです。周囲を調べる必要は、それは事件の真相を突きとめるためには、これから必要です。その前提として、本人はそういうように言っておるかどうか、これだけをはっきりしてください。
  108. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 山北本人、それから本人の妻、本人の実父、これはいずれも差別的言辞があった、それが原因で離婚に至ったのだというふうに言っております。
  109. 三木喜夫

    三木(喜)委員 それではっきりしました。この前には、離婚は別の原因があるように、法務省では、これは女の問題だとか、あるいは経済問題とか、こういうようなことばがありましたので、本人の供述並びにその妻、親族、これらの供述が一致しておるかどうかということを確かめたかったわけなんですが、これではっきりあなたはそういうようにおっしゃいました。  そこで、私は自衛隊にひとつお聞きしたいんですが、ここは決算委員会でございますから、そういう立場からお聞きいたしたい。  まず、自衛隊の中におきましてしばしば官品を私するというような上官がおって、いまのお話ではその現物を返した、こういうことなんですが、一体こういう状況が許されていいのでしょうか。あるいはどんな事実が、この山北一尉が言うようなことが行なわれておったかどうか。返されておるのは事実ですから、一つはわかりますけれども、そういう不正があったことを認められるわけですか。それが一つ。  それから、差別問題につきましては、これは非常に痛ましい問題でございますので、こういう家庭的な悲劇をついに惹起してしまった。私は本人にも会ってみましたが、本人は自衛隊が好きで好きでしかたがない。いまも自衛隊を愛する気持ちは変わりはないそうです。にもかかわりませず、こういうような事件のためにこんなことを言わざるを得なかった本人の苦衷を私は考えてみたいと思うのです。さらにそれがためには、自衛隊幹部諸公としましても、誠意を持ってこの事実があったかどうかということを調べてもらわなかったら、またうやむやにされるということになりましたら、本人は遺恨に思うことはもちろん、世間にもこんな人権問題すら自衛隊はごまかしてしまうという印象が強く残ると思うのです。そこで、どのような調査をされたか。この前のときには隊が分散し、あるいは本人ないしは関係者が分散しておるので調べられなかった。しかし、大かた一月ほどになりますから、かなり詳細にお調べになっただろうと思います。しかし、それはどこまでもこういう問題が外へ出れば不名誉であるから、隠蔽せんならぬという立場で調べられておるならば、全然問題は別だと思うのですが、しかし、事、人権に関する問題だから、かなりそういう差別を受けた人間の立場に立ってお調べになっておるだろうと思うのです。  その二点をお伺いしたい。
  110. 堀田政孝

    ○堀田政府委員 お答え申し上げます。  三木委員の御指摘になりました第一点、官品を使用した事実があるかどうか、また、あるとするならば、そういうことが許されていいかという点でございますが、大坪三佐が、官品、ワイシャツ等数点を私用したという事実は事実でございます。この官品を私用するということはもちろんいけないことで、厳に戒めなければならないことでございますけれども、これを私用するに至った経路については、当時保管の責任者は山北君で、その上司の班長が大坪三佐であるということで、両者の意見が食い違っております。山北君は、班長から強要された、こういうふうに申しております。班長は、そうではない、こう言っております。ただ、その点の詰めを十分にいたしまして、大坪三佐の非行についての処理をどうするかということは当然考えなければなりませんので、私どもは、差別事件の目安がつきましたあとで、さらに詳細に調べまして大坪に対する態度をきめたい、さような考えでおります。  第二に、御指摘の差別の事実があったかどうかの調査にあたって、あたたかい気持ちで調査を実施しておるかどうかというお尋ねでございますが、これは、前回の予算委員会の分科会で私からたびたびお答え申し上げましたように、部隊においてそういう意識があったならば、部隊というものは成り立たないんだ、そのように考えております。また同時に、三木委員から、それは部隊存立の以前の問題である、人権を尊重し人格をまず認めるというところから出発する、部隊存立以前の問題であるという御指摘がございましたが、全くそのとおりでございまして、少なくとも差別という意識がある限りは、部隊における団結も、なおその以前の民主主義的な部隊運用ということもあり得ないというふうに考えますので、いたずらにこれを隠蔽するとか、あるいは適当にごまかすような気持ちはいささかも持っておりません。徹底的に調べまして、その事実が確かに御指摘のようなことでございましたならば、今後は非近代的なそのようなことは一掃いたしたいという決心で当たっています。
  111. 三木喜夫

    三木(喜)委員 本人の供述書をごらんになりましたか。この中には、ワイシャツの問題だけじゃありませんね。たびたび強要されておる。その都度上司にこれを訴えておるわけであります。訴えておることは上司は認めておりますか。それからたくさんの事実はみな御銘記になっておりますか。これは差別問題が解決がついて調べるていの問題ではない。これは不離の問題になっておるのでありまして、これを聞かなかったから差別的な言辞を弄した。これは一回じゃないんだ。その一回でなくて、その腹があって絶えずそういうことでいじめられておる。これは、官品云々の問題でいじめられたということ、そういう非常に公正な立場でやるということについて腹を立てておったということと、もう一つは、差別的な気持ちが底流しておったわけです。これは離すことはできませんから、こういう事実をみなあなた方はよくとらまえた上でお調べになるがよかろう、こういうことなのです。これはお読みになりましたか。そういう事実はみな御存じですか。
  112. 堀田政孝

    ○堀田政府委員 申し立て事実につきましては、私どもも読みかつ分析をいたしまして、その一々についての事実の存否を確かめたわけであります。いまの官物を私用したという事実について、これをたびたび上司に訴えておるという、たびたびという解釈でございますが、課長に申し出ております。で、課長から大坪三佐に絶えず注意が行っておるという事実になっておるようでございますけれども、そのいきさつにつきましても、先ほど申し上げましたように、若干本人の申し立てと大坪三佐の申し立てば食い違っております。これはなお詳細に調べなければならないということで、一応中間報告をまとめたわけでありますが、不十分である、この点をなお徹底的に調べるようにという指示を与えています。
  113. 三木喜夫

    三木(喜)委員 そうすると、事実は数回あったことを認められますね。そこで私申し上げたいのは、そういう官品を私したということは事実ですね。それが強要されたものか、あるいは山北氏が持っていったものかはわからない。しかし、それはもう枝葉の問題じゃないですか。強要しておるというのだが、それはもう消えてしまって、強要したかせぬかわからなくなっていますね。しかしながら、それを私しておったということは事実で、あなたはそんなところも調べる必要があるでしょうけれども、そういう私しておったという事実は消えない。それは返しておるのですから、それを強要さえしておらなければいいとお考えになるのですか。何か私は、それを聞いておって、そこを調べておるので、返せばいいじゃないかというふうに聞こえるのですが、この点どうですか。
  114. 堀田政孝

    ○堀田政府委員 返してしまっているから差しつかえないとは申し上げておりません。そうでなくて、官品を私用した、そういう非行があったという事実は事実でございますから、その事実をさらにはっきりさせまして、本人の大坪三佐の責任をとらせるということは考えております。しかしながら、当面問題が、差別があったかどうか、その差別が離婚ということを結果したかどうかということに私は焦点があるというふうに思いますので、まず差別事実を重点的に調べる。それから、先週末の私の指示では、この官品私用の問題については、まだ問題が徹底的に明らかになっていない、これをさらに明らかにしろという指示を与えたわけでございます。
  115. 三木喜夫

    三木(喜)委員 人事局長、たとえばこの供述書の中に書いてあるのですが、男女関係の疑いがあった。そうしたら、おまえは恋愛してもいいけれども、こういうことをしたらいかぬぞということで、女性の性器を表徴するようなかっこうをしてやられた、これはまことにばかげた話だというようなことが書いてありますけれども、それを言うたか言わなかったかというようなことで、両方水かけ論になっていると思うのです。しかし、動かせない事実は、くつを強要したとか私しておったとか、そういう事実がワイシャツだけじゃないでしょうということです。そのほか、この中でどういうものがありますか。それはあとで調べるとおっしゃるでしょうけれども、これで彼は往生したのですけれども、そのあげくについに抵抗したといいますか、文句を言ったところが、おまえはこれじゃないか、奥さんは部落民じゃないか、こう出たわけですね。そういう官品を私した事実をどういうように押えておられるか、一ぺん言ってください。
  116. 堀田政孝

    ○堀田政府委員 お答え申し上げます。  報告が官用ワイシャツ等数点という報告でございますので、この点も非常に不十分である。むしろ何月何日に何を、それから何月何日に何をというふうに明細な調査をし、報告をしなければいけないという指示をいたしたわけでございまして、ここには詳細な調査の資料を持ってまいっておらないわけであります。
  117. 三木喜夫

    三木(喜)委員 それを読まれたと、あなたこうおっしゃるのですか。読まれたら、その中に書いてあったでしょう。その書いてあったことを事実として押えされたかどうか。不明瞭だとおっしゃる。本人が言うとるじゃないですか。
  118. 堀田政孝

    ○堀田政府委員 本人の申告に基づきますと、三十七年の、月ははっきりしないけれども、作業服、ワイシャツ等をくれと班長に強要された、そのように本人が申告しておるのを記憶いたしております。
  119. 三木喜夫

    三木(喜)委員 申告というのは、あなたの言っている問題ですか、これですか、人権擁護委員会に申告しておるこれの中に書いてあるとおっしゃるのですか。
  120. 堀田政孝

    ○堀田政府委員 人権擁護委員会ではなくて、人権擁護委員会に対する申告書要旨と、それから私どものほうへ参っておりますのは、三月六日に陸上幕僚監部の業務班長大槻一佐、これが本人に会っております。それから二月二十六日に師団長、三月十八日に連隊長が本人に会っております。その三人の聞きました内容を申し上げておるわけであります。
  121. 三木喜夫

    三木(喜)委員 そうすると、あなた、これを読まれておらぬですね。——そうですか。さっきこれを読まれたとおっしゃるから、この中に善いてあること以外は、やはり上司としては知っておっていただかなかったら、こういうことが軒並みに行なわれておるようなことはないでしょうけれども、大坪さんという人が特にこういう方面にきつい人で、そういうことを要求したかもしれません。しかし、それはこの問題と非常に関係がありますから、申し上げます。  いまおっしゃったように、作業服とワイシャツの問題でございますが、「昭和三十七年三月末ごろ大坪三佐からですといって糧食として購入されたらしいふりかけ大袋一袋を女子職員が差し出したが隊員が食べる糧食で私すべきでないと返却しましたところ、家で使ってもとすすめられたがこれを断りました」これが一つ出ております。「昭和三十七年五月ごろ、不用等決定品を使用可能等の送別中、大坪三佐より短靴一足を取り上げられ、大坪三佐のもとへ届けさせられた、証人需要班整備工場洗濯係鈴木技官」「次に倉庫保管物品は出納命令でない限り物品の払い出しはできないことは規定されておりますが、班長大坪三佐は出納官の保管する物品を私有するために再三再四に及んで私を官舎に呼びつける等して作業服上下ワイシャツ等をくれと要求されそのつど断わり続けました。」あなたは、こういうことを指しておられる。そういうような物品の問題がございます。  詳細に申し上げればまだ出てくると思うのですが、時間もありませんからそのくらいにいたしまして、さて、今度は、大坪氏と山北氏との間に非常にいざこざがあった。そして現時になっておるのですが、そういういざこざというものがどういうものか、一体どういうことがあったか、押えておられますか。
  122. 堀田政孝

    ○堀田政府委員 山北君から申し立てがございました事実の第一の問題は、いまの官物の私用の問題でございますが、そのほかにも、たとえば大坪三佐が本人山北君の北海道転属を画策した、またAOC——これは幹部の上級課程でございますが、AOCに入るについて不利益な取り扱いをした、こういうことを申しております。  これは、私どものほうで調査いたしました結果によりますと、北海道に転属するというのについて本人の意向を調べますのは、上司としては当然のことであります。したがって、呼んで、君は、もし北海道に転属する命令が出たならば、行くかいやかということを聞きますことは、あり得るだろうと思います。これを強要した、つまり大坪三佐が本人の意思に反して転属方を強要し、上に対して上申をするということはいたしておりません。またAOCに入りましたのが後輩よりもおくれたということを本人は言っておりますが、これはむしろ本人の希望によっておるということが友人等の証言からはっきりいたしております。したがって、不利益な取り扱いをしてAOCに入るのをおくらしておるという事実はないと私どもは判断いたしております。  次に、山北君は、大坪三佐から、女性関係について、部下の面前で中傷侮辱的言辞をもってはずかしめれらた、そのために自分の妻は実家へ帰った、こういうふうに申し立てておるのでございますが、これも、調査の結果によりますと、三十八年の六月ごろと言っておりますが、課内の某女子職員との関係を疑われるような行為があったので、それを大坪三佐が注意をした。これは事実でございます。しかし、これは中傷侮辱をしたというような事実ではなかった。特に、某女子職員との関係を理由として云々ということを本人は言っておりますが、これは本人の奥さんが誤解したというのは、本人が言ったからではないかというふうに推定をされまして、家庭不和の原因が大坪三佐に中傷されたからというふうにはどうしても判断できないのでございます。  それから次に、山北君は三十九年の一月に妻を連れ戻したけれども、同二十一日に、大坪三佐から、君の奥さんは部落出身である、こういうふうに侮辱をされたので、妻は自殺をしそうな興奮状態になって、とうとう離婚になってしまった、こういうことを申しておりますが、この大坪三佐が侮辱を与えたということ、あるいはそれと誤解されるようなことを言ったという事実は、目撃者、伝聞者ともに、防衛庁で調べましたところでは出てこないのでございます。特に山北君の妻が一番興奮をしておりましたのは、昭和三十八年の六月ごろでございまして、某女子職員との関係云々という事件があった直後であるというふうに判断されます。  なおまた、本人は、差別について富士学校の当局に対して再三訴えたけれども、学校はとうとう取り上げてくれなかった、こういうことを申しておりますが、本人は在校中に三回申し立てを行なっております。その内容は、職務に対する不満、それから大坪三佐の非行に対する非難、それから家庭の事情等についての相談ということでございまして、差別問題には触れておりません。それから、さらにまた、本人は姫路の部隊でもこれを訴えたけれども、とうとう取り上げてくれなかったというふうに申しておりますが、この事実は、彼が転属をいたしました直後、三十九年の四月に、連隊長が身上に関する質問をいたしましたときに、自分は富士学校で差別をされたということを申し述べております。しかも、それは妻の出身を理由としていわれなき待遇を受けたというふうなことを言っております。直ちに富士学校にも調査をそのときに依頼をいたしました。また、連隊長みずからが、三十九年の五月、富士学校に会同がございましたときに富士学校に参りまして、この件の調査を行ないましたが、差別の事実はなく、離別の原因は家庭の事情であるというふうに連隊長は判断をいたしまして、連隊長は、本人に対してはそのように指導をいたしております。  以上申し上げましたのは、大体富士学校関係で十九名、習志野部隊三名、秋田部隊が一名、姫路部隊三名の人たちの供述をもととした結果でございます。なお、指揮をいたしましたのは、陸幕の業務班長の大槻一佐でございます。
  123. 三木喜夫

    三木(喜)委員 そこで、法務省にお聞きをしたいのですが、これは上司との関係でそういう事実があったかということを面通しをかけますと、みな身にかかるところの災難というものから逃げようという考え方が出てきます。言わざるが花だということになりますし、大きな権力に向かってものを言うのですから、なるべく権力側につくことが大切で、御身御安泰のためにはそういう考え方が出てくるわけなんです。   〔田村(元)委員長代理退席、福井委員長代理着席〕 そこで、非常に困難だと思うのですね。ところが、先ほど言われたように、差別が離婚の原因だと言われている。連隊長は差別が離婚の原因じゃないというように判断しておりますが、それが十九名だろうが、二十名だろうが、三十名だろうが、五十名だろうが、なんぼ人数が多くなりましても、それが真実に迫るところのくふうがなければ、調べました、調べましただけでは、これはどうにもならぬ問題です。そこで、人権擁護局にこの前のときに私は十分御注意申し上げておいた。御本人を呼び、あるいはまた関係者も呼んで、そうしてその人の名前を出さないようにして調べてもらわなければ、この真実は出るはずはありません。よほど正義感に燃える者でない限りは、上官に調べられて、そのとおりですなどと言うような者はないだろうと私は思うのです。自衛隊のためにはほんとうはそれのほうがいいのですけれども、われわれ社会党は自衛隊というものはけしからぬといって何でも自衛隊のことを悪口を言う、こういうように端的におとりになっているかもしれませんけれども自衛隊も、自衛隊それ自体が考えておられることには問題はあるのですけれども、しかし、人間として——私は三十二年教師をしておりましたから、教師という立場から考えれば、教え子が行っているのですから、国民としては何ら違いはないのですから、人間性に立脚するという立場に立ってやはり考えていかなければならぬ面がたくさんあると思うのです。そういう面から考えますと、このままならば事を隠蔽される方向に自然にいくのです。それでは事実の正体に触れることもできないし、あたら山北一尉は、おまえは抵抗するために、誹謗するために、捏造して言っているのではないかという事実、そういうことが事実になってくるわけです。そこで、せっかくこういうようなことを訴えているからには、よくよくのものがあろうと思うのです。それはもちろん大坪氏との不仲ということも大きな原因でしょうけれども、しかし彼は、差別だと言い切っているのですからね。こういうことを言うことは非常に勇気が要ると私は思うのです。昭和二十五年に入隊したのですから、そうすると十五年間自衛隊におったわけです。いまの俗なことばで言うと、彼の表現をもってしますと、好きで好きでしょうがない自衛隊だったらしい。そういうような中でこういうような訴えをしているのですから、そのくふうは、自衛隊としても防衛庁としても考えてもらわなければならぬ。どんなくふうをされたか、ただのしゃくし定木といいますか、形式的にずっと調べていけばみなノー、ノー、ノーという返事が出てくるだろうと思います。これだけ大きな組織で問題を起こしているのですから、そのくふうの点がどこかということを私は聞きたい。あるいは法務省の人権擁護局も、そのくふうもせぬで、何らの手当てもせぬで、素手で入っていって、どうでしたか、どうでしたか、どうでしたかと聞けば、ノー、ノー、ノーとくる。ノーでしたと言わざるを得ない。そんな調べ方だったら、私たちはあなた方にまかせられないわけです。われわれが自衛隊まで行ってそんなことを調べられないから、そういうことを職業にしておられるあなた方にこのことをお願いしたわけです。そういうことで、人権擁護局においでいただいて、そういう点を私は聞いておきたい、こう思うのです。まあ、内容の詳しい法務的な立場に立った問題は法務委員会でやりましょう。しかしながら、それを自衛隊のどこでやるか、これは両方はっきりさしておかないと問題がぼやけてしまうもとになるのですから、お聞きしておきたい。どちらもひとつこれについてお答えをいただきたい。
  124. 堀田政孝

    ○堀田政府委員 どういうふうにくふうをして、本人の訴えております真相に迫る努力をしたかというお尋ねでございますが、これは前回の分科会でも私申し上げたと記憶しておりますけどれも、本人に反感を持っておると申しますか、あるいは批判的であると申しますか、そういう人たちだけの話を聞いてはいけない、むしろ本人に対して好意を持っておる人の話を聞くのでなければならないというふうに指導をいたしまして、富士学校では、大体先ほど申し上げましたように、十九名の人から話を聞いておりますが、これはたとえば部下の一曹、部下でも彼に対して非常に理解のあった人たちの話を聞く、あるいは習志野におきましても、彼の親友と目されておった人たちの話を聞くというふうにさせております。それであがってまいりました——全部あがっておるわけではございませんが、証言の一、二を聞いてみますと、非常に仲のいい自分の同僚に対しまして、たとえば習志野の当時などは、自分の奥さんのことを部落出身であるということを言ってはずかしめた——私どもは、もしほんとうに彼が差別観といったような非近代的なものに対して正面から戦うという決意であるなら、同僚あるいは仲のいい部下の前でそういうことを言うはずはないのじゃないか、そういうことはひた隠しに隠して、そして自分の妻のことをはずかしめるというようなことはするはずはないのじゃないかというふうな感じがいたします。この証言によりますと、なぜそういうことをおっしゃったのかわからない、非常に奇異な感じを持つということを証言いたしております。また、そのほか、これも最終的にはまとめた上で申し上げたほうが適当かもしれないのですけれども、奥さんが部落出身であるということをどこでだれが聞いたかという話は、ほとんど本人から聞いたという話が多いのでございます。したがって、どうも御本人が言ったことから起こるトラブルというものを、勘違いしたのじゃないかというふうに私は思うのでございますが、人権擁護局でおやりになっております調査等もいまお話で伺いましたので、私どもまだ十分でないというふうに感ぜられるところもございますので、なお調査を引き続き行ないまして、事実に接近をいたしてまいりたい、かように考えます。
  125. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 先ほど私の御説明がちょっと不十分だったのかもわかりませんが、私どものほうで差別的言辞があったというふうにいまだ断定しておるのではないのでありまして、本人の妻、本人の実父が、本人から直接聞いた、そういうふうな一つの証拠資料があがっておるというふうに申し上げたつもりであります。  それから、ただいま御指摘の点でありますが、なるほど御指摘のように、たとえば自衛隊あるいは警察というふうに、命令服従関係に立つ大きな組織体の中における事件の調査は非常に困難であります。しかしながら、決して不能ではないのでありまして、ただ簡単にある事実があったかなかったかというふうに聞きますと、これはおっしゃるとおり、ない、ないというふうに答えるのが普通でありますが、その事案の前後の経過を詳細に聞いていきますと、なかなか真実に反したことをそう言えるものではないのでありまして、どこかで物による証拠との関連が出てくるものもあるのであります。これは非常に重要な点だろうと思います。  それから、ただいま御指摘の点について申しますと、なるほど大部分は現在まだ自衛隊に在隊しておる方々でありますけれども、中にはすでに自衛隊を退いている方、どういうふうに言いますか、退隊と申しますか、あるいは昔のことばで言いますと除隊している方もあるのでありまして、こういう方からは相当正しい証言を得られるのじゃないかと思っております。私どもも御指摘のように決して簡単に聞いて片づけるというのではなくて、かりそめにも、こういった事実がありといたしますると、これは人権擁護上とうてい承認できない問題でありますから、その点につきましては慎重の上にも慎重を期して調査をいたしたい、そしてできるだけ早急に結論を出したい、かように考えております。
  126. 三木喜夫

    三木(喜)委員 時間がございませんので、残余はまた法務委員会でするといたしまして、大事なところだけもう少し申しておきたいのですが、あなたがいまおっしゃるように、物的なものだとか、困難は困難だけれども不可能ではない。不可能に対するところの打開策としては、慎重にとか努力とかだけでは、これはできません。どういうような方法をされるかということを私は聞いておるんです。いま除隊者ということを言われました。除隊者から聞けばかなり正しく聞けるのではないかと思うということですが、その点は聞かれましたか。そういうところから攻めていかぬことには事件の真相に迫らぬのに、その点不審に思うのです。それをひとつお聞かせ願いたいと思います。  それから、自衛隊のほうにお聞きしたいことは、事ごとにこういうことを訴えた場合に、大坪さんの手が回っておったかどうかは知りませんけれども、おまえは頭が変だとどこでもきめつけられているわけなんです。いまの自衛隊では頭が変だというふうに解釈なさっておるんですか。よほどたまらなかったでしょうから、こういう訴えをしたんでしょうが、そういう訴えをした者に対して、頭が変だということで片づけられるということなら、それこそ前近代的な措置ですね。それと、いま心配なのは、事実がずっと消されてしまうことですよ。物的証拠ということをいま法務省のほうで言われましたが、物的証拠を出さなかったら、言った言わぬというようなことがだんだんに消えていくわけです。この消されてしまうということと、頭が変だということで片づけられてしまうことが、私たちは一番おそろしいのです。たいていの場合、大きな組織が小さい人間の人権を踏みにじっていく場合には、そういう方式でいつも行なわれるのですが、そういうことに対するくふうをされる必要がありますし、その点について法務省としてもやられる必要があると思うのです。それで私は最初に頭が変ではないかと言いましたら、頭は変ではないということだから安心したわけでありますが、いろいろ証言で消えていきますので、これに対する配慮をしていただかなければならぬと思います。早急に結論を出してみたいというお考えですから、そういう点十分気をつけていただきたいと思います。  それから、自衛隊内の場合は、いろいろな官給品を不正使用したということについて、まだお調べになっていないようでありますが、これが一つの底流をなしておりますから、十分お調べいただいて——私も調べておりますし、いろいろなことをテープにとってきておりますから、何なら本人と一ぺん対決させてもらわなければならぬと思うのですが、自衛隊のほうではそれをやられましたか。
  127. 堀田政孝

    ○堀田政府委員 いま三木委員の御指摘になりました前段の物証が消えていくのについて、早く調査を進めて消えるのを防ぐようにしなければならないという御指摘は、そのとおりだと思います。したがって、人権擁護局で御調査になりますことについては、どんな協力でもいたしたいというふうに考えておりますし、これはこの前もお答え申し上げましたが、もし人権擁護局のほうから御要求がございましたら、本人の対決ということは私どもは喜んでさせたいと考えております。  なおまた、本人は頭がおかしいんじゃないか、おまえは変なんだということを言っておるという御指摘でございますが、私は本人に会っておりませんけれども、私のところへ出てまいります調査の文書では、一切そういうことを言っておりません。本人は抜群とは書いてございませんけれども、勤務状態は普通である、性格は間々激情的になる、しかし勤務状態は普通である、平静に勤務しておるときにはまじめである、こういうように書いております。したがって、頭がおかしいというふうには私は判断をしてない、また、すべきではないと思います。
  128. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 除隊当時、自衛隊におられまして、現在除隊した者についてどういう方法をとったかという御質問でございますが、これは、私のほうではこの調査は非常に重要であるというふうに考えまして、現地第一線の担当者に命じて調査をさせるということをしないで、人権擁護局におります、現在の人権擁護局では調査について最も熟達した職員にその調査を命じてやらせたのであります。
  129. 三木喜夫

    三木(喜)委員 私は、時間がございませんので、この辺でおきたいと思いますけれども、まだ両君とも十分な御調査をしてられませんので、調査が熟しましたら、もう一回この問題についてお聞きしたいと思います。この辺でおきたいと思います。
  130. 福井勇

    ○福井委員長代理 田原春次君。
  131. 田原春次

    ○田原委員 自衛隊内でしばしば部落民に対する差別与件が起こっておるのであります。たとえば昭和三十九年の二月には陸上自衛隊三十七普通科連隊の信太山事件、畠中一曹という部落出身の下士官が上司から差別されておる。それから昭和三十七年夏ごろ静岡県富士学校内において、大坪三佐から山北一尉がその妻が部落民であることを理由に差別を受けた。自衛隊が一致団結するということからすれば、こういう事件は平素徹底的に究明し、その教育をしておかなければいかぬ。  そこでお尋ねしたいのは、一体部落民とは何であるか、部落は何で発生したか、人種が違うのか、民族が違うのか、こういうことに対して自衛隊でどうお考えになっておるか、大臣がお見えであるが、人事局長からお伺いしたい。
  132. 小泉純也

    小泉国務大臣 御指摘のように、この前、信太山事件といわれた問題が起きましたし、今回また、先ほど来御質問いただいております富士学校の問題でございまするが、私どもは、まことにこういう問題の発生はきわめて遺憾にたえないと存じておるわけであります。申し上げるまでもなく、人権の尊重ということは憲法の中心をなす問題でございますし、自衛隊員はみんながこん然一体、団結をして日常の訓練をいたし、また団結をしてその任務の完遂に当たらなければならないわけでございますので、同じ同僚の仲間で差別的な考え方があり、また差別的な言辞等があっては、全く許せないことでございまして、こういう事件で当委員会でも御究明をいただいておりますことは、私も長官としてまことに遺憾であり、責任を痛感いたし、将来このごときことは絶対あらしめてはならないということを深く痛感をしながら、委員の方々のお話を承っておるようなわけでございます。将来にわたりまして、私どもは、部落民とかなんとか、そういうことは、全然念頭にございませんし、そういうことをいまでも一体言う者があるのかどうか、私はふしぎなくらいに考えておるわけでございまして、もちろん今後も一そうこういうことがないように根絶を期すべく、私は、長官の責任において、あらゆる方策をとっていきたいと考えておる次第でございます。
  133. 堀田政孝

    ○堀田政府委員 私は、実は東京生まれの東京育ちでございまして、この問題を論議いたしますときに、部落とは一体何であるか、差別とは一体何であるかということが、からだでわからない、なぜそういうことが行なわれるのか、なぜそういうふうに感ずるのであるかというふうに、むしろ差別をすることそのことに、私どもは全然わからないという感じがいたします。したがって、人事をお預かりいたしております現在の職責上、こういう問題が起きましたときの処理については、私は、徹底的にやり、そしてそういう問題が再び起こらないような事態にいたしたい。もちろん教育の面で徹底的にそういう感じを持っておる人たちの考えを改めるということが必要でございますから、私一人でやるわけにはまいりませんけれども防衛庁事務担当者、すべて大体考えをそろえて、私はそういう方向に進んでまいりたい、かように考えております。ただ、先ほどお答え申し上げておりますように、私自身全然わからないという感じでございますので、それをむしろ真剣に勉強するというところまでいたしておりませんので、歴史あるいはその生成の過程等については、今後勉強いたしたいと思います。
  134. 田原春次

    ○田原委員 ぜひ御勉強を願ったほうがいいと思いますが、御参考までに申し上げますと、東大の歴史の先生で、なくなった久米邦武という博士がおります。それから京都大学の歴史の先生で喜多清治という方、これもなくなっております。こういう方々の著書によりますと、日本人の形成から論じておるようですが、簡単に言いますと、日本人というものは大別して四種類ぐらいある。原住民であるアイヌ、熊襲、それから蒙古、朝鮮を経て入ったモンゴリアン、それからポリネシアン、ミクロネシアンなどが大部分であり、いまの天皇御一家あたりは南方族といわれておるのであります。どこから来たにいたしましても、日本に居住し、そして日本人としてりっぱな生活をすればそれでいいわけで、いわゆる合成族なんです。アングロサクソンであるとかユダヤ人というふうに同一民族、同一国家ではない。このことはそういう学者の説が定説になっております。  それから部落の発生は、日本の歴史を二千六百年として、最初の千四百年の間には部落というものは発生しておらぬわけです。聖徳太子時代から封建制度になってからのことでありまして、つまり言うてみれば、封建時代における軍事上の落後者ということになるわけです。軍事上ですから、自衛隊関係ありますよ。どっちが勝った、どっちが負けたということでなくて、負けたほうの部隊に属しておったさむらいや人夫の子孫である、こういうふうに一応学者は見ております。それが封建制度が続く限り、最初軍事上の落後者であったのが、今度は社会上の落後者となった。こういう別個の社会をつくらされて非常に不当な待遇、悪い仕事を与えられておる。日本のいまの明治以後の資本主義社会になりますと、今度はそれが経済上の落伍者になっておるわけです。貧乏人ということになってきたわけです。そういうわけですから、経済上の平等を要求する社会主義の運動であるとか、それから社会上の差別をなくするデモクラシーの運動であるとか、こういうことが中心となっていろいろな団体も起こっております。自由民主党の中にも熱心にこの団体を推進している人もあります。社会党の中にもむろんあります。基本的には日本人は合成民族であり、人間として差別さるべきものではないのだ、境遇、身分によって自然そうなったのだということがはっきりすれば、私は自衛隊はそれを徹底して教育していくならば、いまわしい差別事件は起こらないのじゃないかと思う。いま、局長の御答弁としてはまことにりっぱな御答弁であります。それを願わくは実践してもらいたい。この間の新聞を見ますと、信太山事件もうやむやになったし、証拠がないとかやってないということにして、それから差別している上司をどこかに転任させております。そういう不満を残したのではだめです。今度の事件はあなたも相当調べておるようであるし、法務省のほうも調べておるようでありますが、言ったとか言わぬの問題になってきてどうもはっきりしない。そうでなく、山北一尉が捏造するわけはないのだから、そういうふうに感じたならば、それを徹底的に調べていって、部落というものは差別さるべきものではないのだ、人種が違うのじゃないのだということ、アメリカにおける黒人と白人のような関係じゃないのだということを知らせなければいかぬと思うのです。そこまで徹底させるためには、ことばだけでなく、事実において自衛隊の中で真剣に同和教育というか啓蒙というか、学者を呼び、調べて安心させてお互いつき合うようにしていかなければいかぬのじゃないかと思うのです。そういうことに対する用意ができますか。これは人事局でやるか、教育局でやるか知りませんが、この対策についてはどういう具体案をお持ちになっておるか。いま大臣の答弁を聞くとまことにけっこうですが、大臣の答弁だけでは具体的にならないから具体化について何か方針があるかどうか聞かしてもらいたい。教育局長でもよろしいです。
  135. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 この問題に関します自衛隊の基本的な考え方、そして方針については、先ほど長官から話があったとおりでござ、います。さらに今後の具体的な方策をどうするかという御質問でございますが、実はこの問題の取り扱いにつきましてはかなりデリケートな問題があるわけでございます。いままでのこの問題に対する政府としてのいろいろな施策なり考え方を調べてみますと、昭和三十四年に同和問題閣僚懇談会におきまして同和対策要綱を決定しておりますし、さらに総理府の中に同和対策審議会が設置せられまして、三十九年度中に内閣総理大臣にその研究の結果を答申をされるというふうに伺っておるわけでございまして、私どもとしましてはその結論を見たしでそれに沿った措置をいたしていきたいというふうに考えておるわけでございますが、伺うところによりますと、積極的なそういう意識の改善方策を講ずべきかあるいはいろんな問題についての経済的なあるいは社会的な地位の改善、向上方策を講ずることによりましてこの問題を解決していくかということについて、やはり人によりましていろいろ意見の分かれるところであるそうでございまして、われわれ防衛庁自体としても、この問題についてはいろいろな面から対策を考えねばなりませんが、一応政府としてのそういう研究をしておられる段階でございますので、その措置を待って自衛隊としても有効なる対策を講ずる、こういうふうにいたしていきたいと考えておるわけでございます。  先ほどお話のございました信太山の事件につきましても、信太山の連隊におきましては、この問題についての権威の先生方をお呼びしまして隊員に対して教育をやっておるようでございますが、そういう教育を自衛隊全体につきまして、適当な講師を招聘し、これについての歴史的な経緯並びに今日新しい民主的な憲法下における考え方、こういうことにつきまして教育を徹底させるというところまでにはまだ至っておらないのでありまして、一般的に、先ほど長官が申されましたように、要するに新しい今日の憲法下におきまして、これは教育以前と申しますか、人権尊重を重視するたてまえからは当然のことでございます。ことに防衛庁としましては、隊員の間にそういう問題についての何らのわだかまりのない、上下、同僚間におきましてわだかまりのない融和団結と申しますか、そういう気風を醸成していくということが団結の前提であります。そういう面で、こういう問題につきましては、全くいわれのない差別感情であるというふうにしてこれを指導していくという方策をとっておるわけでございます。今後の対策につきましても、いろいろ先ほど申し上げましたような線に沿いまして具体的に考えていきたい、かように考えております。
  136. 田原春次

    ○田原委員 小泉大臣に再度御答弁をいただきたいのです。いまあなたが聞かれたとおり、人事局長としては、自分ははだでは感じられないけれども、この事件については非常な関心を持っているから調べていく、教育局長のほうも、隊内の融和のために、予算等も少なければとってでも教育の機会をつくりたいと言われる。したがって、あらためて二点についてお尋ねしたいのは、第一は、この種の事件が起こった場合は徹底的に糾明する、疑わしいところは、言ったとかの言いがかりでなくて、行政的な措置をする。たとえば大坪三佐の場合でもかなり事実がわかっておるから、これはむしろ転任させていくあるいは懲戒する、戒告するくらいの処置をする。人事局においては、こういうような部落問題等のいまわしい問題が起こった場合は、徹底してこれを解決までやってくれるのだという信頼感と期待感を持たす、これに対してどう考えるか。  第二点は、教育局の方針が単に軍事上の教育だけでなくて、隊内の融和のために徹底した教育をやっていく、これらに対する処置をすべきである。  以上二点に対して大臣の再度の御答弁をいただきたいと思います。
  137. 小泉純也

    小泉国務大臣 先ほども申し上げましたように、私どもはむしろこういうことを考えておる者がいまの国民の中に一人でもある、あるいはそういう部落民ということばなんというものが使われるということ自体実にふしぎなくらいに私は考えて、そういう不祥事件が自衛隊内にある、この前もあり、今回も起こっておるということには、何と申しますか、ただただあまりにも非常識と申しますか、あまりにも現実離れをしておるということに驚いてきわめて残念に思っておるわけでございまして、いま田原委員が申されましたように、そういうとうてい私どもが国民の常識として考えられないことではありますけれども、万が一でもそういう言動をした者があるとかあるいは差別をした者があるというようなことでありますれば、それは徹底的に糾明いたしまして将来これを根絶するためのあらゆる厳重な処置をしなければならぬと私は決意をいたしております。  なおまた、第二の、今後の問題につきましては、前段申し上げたとおり、こういう事態があることが私はふしぎに存じておりまして、われわれはそういうことのあり程ないことと、あってはならないことというような考え方に立っておりますから、これは全体にわたって、われわれが良識の中にない問題を提起して、これをどうこうするとかいうことがはたして適当であるかどうかということも相当慎重に考えなければならない、実態に即して十分担当の局課でも具体策をば検討させますが、私もその結果によりましてどういうことにすることが——いま私が前段で申し上げました、こういうことはもう国民の間にあり得ないことなんだ、いわんや自衛隊の中においてはなおさらのことであるというようないい結果が生まれるような方向に持っていくことに十分慎重な検討をいたしたいと存じます。
  138. 田原春次

    ○田原委員 しばらく防衛長官の言を信じまして、しかしながら現在進行中である富士学校事件の調査究明等についてはわれわれも独自に進めますが、画局長も長官のいまのような言明に沿うて積極的に進められることを希望して私の質問を終わっておきます。
  139. 福井勇

    ○福井委員長代理 八木一男君。
  140. 八木一男

    八木(一)委員 田原委員に引き続いて御質問を申し上げたいと思います。  私は奈良県の生まれでございまして、水平社運動が発足した地域におりますので、部落の問題については私なりに相当研究をいたしておるつもりであります。そこで先ほど田原委員に対する防衛庁長官の御答弁ですね。この大半は非常にすなおに受け取ってけっこうだと私も思うのですが、少し心配があるわけであります。その点についてちょっと御指摘を申し上げまして、また御意見を承りたいと思うのです。  このような部落差別の問題は絶対にあってはならないという防衛庁長官の御意見はまさにそのとおりであります。しかしながら、このようなことがあることがほんとうにびっくりするくらいの問題であると言われました点については、いささかこの問題について、まだ御研究が十分でないと思うわけであります。関西が一番いわゆる部落の多いところでございまして、密度が多うございます。そこにおいては、残念ながら部落の差別が現存をしているわけであります。これは残念ながら否定できない事実であります。しかもそれがだんだん減ってくるのじゃなしに、場合によっては拡大をする傾向がございます。そういうものがどういうことから淵源しているかということをひとつ御研究をお願いいたしたいと思うのです。  この問題については、昭和三十三年の三月の十一日に、当時は岸信介総理大臣でしたが、衆議院の社会労働委員会において、私が岸さんにいろいろと質問をいたしました。その前の二月の二十五、六日だったかと思いますが、予算委員会において各閣僚に御質問を申し上げました。そこで総理大臣と私どもの間に意識の統一をしたことがございます。この部落の差別は、差別があって非常に貧困がある、またその貧困があるために差別がなくならなくて拡大再生産されるという問題については実に許しがたいことである。これをなくすためには、政府も、それからあらゆる人が努力して至急に根絶するようにやっていかなければならないという意識統一があったわけであります。その問題で、幾分歴史的な問題に触れております。  実は、この部落差別の直接の根源は、徳川幕府からまいっております。徳川幕府が権力を集中して固めるときに、政治の根源は経済的な問題でありますから、そのときの一番生産に関係した人から、権力を持っている支配階級である武士階級がいかに収奪をするかということから始まっているわけであります。そのことは、いわゆる百姓をして食わしむべからず、飢えしむべからずということばで表現しております。百姓が飢えて、どうしてもやりきれなくて、たとえ武士の弾圧を受けて投獄とかあるいは殺されるというようなおそれがあっても、もうがまんがで芦ないというので百姓一揆をやる、そういうところまではしぼってはいけない。しかしそのすれすればまでしぼれということが、徳川幕府の基本的な政策でございました。それを、いろいろな点でそれだけではなかなかいかないので、それを補強する政策をとりたいというのが徳川幕府の政策であった。そこで経済的な問題と別に身分的な問題でこれを補強しよう、いわゆる士農工商という身分の制をとりました。士というのはさむらい階級で、そのときの支配階級であります。これが一番上位にいくのは、幕府でありますから、当然そこにいく。あと、各種の職業に従事している中で農民が全部の生産の大部分を占めている。ここからしぼらなければならないかわりに、これには名誉を与えて、武士の次の地位を与えて、国の宝であるというような、はっきりいえばおだてて、ものをしぼろうという政策をとった。したがって、それよりも下級の身分をつくらなければ百姓の人が喜ばない。ですから、農工商、工といえば、これは大工さんであるとかいろいろの技術を持っている人、一般的にいえば農業をしている人と差別を受けるべき人ではございません。ございませんけれども、それよりも農を上に置いた。商もそうであります。いろいろと商業をする人が徳川幕府の末期においては幕府をしのぐぐらいの実権は持ちましたけれども、形式的においては、その中では一番はずかしめられた。それだけでなお足りずに、その次にえた非人という階級を置いた。そういうことで多くの生産に携わっている人たちの名誉心をもってこれをごまかして、そしてすれすれまで収奪したというところに徳川幕府の機構があった。それを強調するためにえた非人という階層を置いて、いろいろ戦国時代以前の戦争によって敗残した人たち、社会的に迭避したり、経済的にも大っぴらにそういうことをしないから状態の悪くなった人が、いわゆる戦国時代において実力時代になって、それが実際上なくなりかけておった。ところが徳川幕府が権力を確立するときに、それをさらに確立したわけです。三百年間、人間外の差別を法律的、行政的に行なっていった。それが明治時代に太政官布告で廃止になりました。廃止になったことはよいことでありますが、それが実際上は逆ともいっていいような状態になった。というのは、身分差別が一応なくなって、全部平民だということになった。しかし、その時代には士族という階級を置いた。しかもその上に華族という階級を置いた。したがって華族、士族というような敬意を表されなければならないようなそういう階層があった。その反対に、逆のほうはないがしろにされる、卑しめられるという状況が歴然として残った。しかも華族、士族には位階勲等がみなつきました。勲等はあとでございます。そういうふうに身分制は、太政官布告はありましたけれども、明らかに残った。  そこで徳川時代においては、そういうことをしたかわりに、徳川幕府に非常に巧妙な政策をとっております。そういうふうに身分差別、人間外の差別をしたならば、たとえその数は少なくても、その集団の人たちはがまんができなくなって一揆を起こすもとになります。したがって、そちらには別な方法をとった。いわゆる皮革その他に関係の産業に従事している人が多かったので、それに対する経済的独占権を与えた。したがって、武士の所有の馬が死んだ場合、百姓の所有の牛が死んだ場合、武士及び百姓が、前は自分の家畜であったにしても、これに手を触れることを許さない。皮革の製造は近隣の部落の特権になっておったわけであります。したがって、経済的に恩典を与え、身分的に非常な差別を与えておる。百姓の場合は逆に身分的に非常に持ち上げて、経済的に収奪した。そういう両輪でやっておった。ところが明治以後は、観念的には差別は撤廃いたしましたけれども、経済的な点については一切考えなかった。たとえば士族については秩禄公債というものを発行いたしました。これは現在の金にすれば非常に大きな金であります。しかも士族は大体身分的にいわゆる官吏になりました。開拓するときに一番いいところを与えられて。裕福な農民として自立する世話をされ、しかもその資金を秩禄公債で与えられた。また商工業に回るにしても、その秩禄公債の原資がありますから、そういうことができる。武士のほうにはそれだけのものをしておいて——武士というのは世襲的に俸禄があった。それがなくなったかわりにそういう手当てをした。ところが部落民には全然それをしなかった。ただ名目的に平民という名前で呼ぶというだけだ。しかしながら一般に新平民という名前で呼ばれておった。そういうようになっておった。経済的な特権がなくなったわけですから、皮革産業に近代資本主義が浸透いたしまして、その伝統的な産業が資本主義経済に圧迫された。伝統的な産業は独占権がなくなった。したがって非常な貧困が生まれた。そこで、働こうとする場合に都会に出て就職をしようとすると、依然として差別概念が残っておりますからいいところに就職ができない。それでは商売をしようか。町のまん中で商売をしたら事業上都合がいいとわかっておっても、差別概念がひどいからそこに土地を貸してくれない、家はもちろん貸してくれない。ですから商工業で成り立とうとする競争にも非常におくれたわけです。そういうことで経済的に非常に貧困になった。おまけに前からの差別概念は依然として残っておる。それが、だんだん民主的になったからなくならなければならないのに、非常な貧困な状態にあるために、人間的な差別概念に貧困な人に対する差別概念が混淆いたしまして、さらにこれが強くなったというかっこうであります。それで米騒動の与件が起こったということで、世の中にこの問題に対処しなければならないという空気が起こった。戦後の新憲法になってからも、この問題がほんとうの意味で対処されていないわけです。たとえば農地解放が行なわれた。それは小作権を持っていた人に、耕作農民に農地を与えておる。ところが部落農民は小作権すら持っておらなかった農業労働者だった。わずかに何十年の努力で小作権を持っておってもごく少ない農地である。また一番条件の悪い山のはたで、収穫ができない。川のそばで水が出たら流される、そういう悪い条件のものをごくわずか獲得したにすぎないのであります。それをもとに農地改革が行なわれたから、農地改革の恩典は部落農民には均てんをしておらないわけであります。資本主義経済の中においてはそのような失業者群がいることが、非常に低賃金で収奪をするのにぐあいがいいわけであります。明治、大正以後、そういうことに対しては積極的に対処されておりません。新憲法になって労働法規その他ができていろいろなことが擁護されるわけでありますけれども、それはおもに日の当たる産業であって、たとえばいまの臨時工、あるいは日雇い工、左官工という人の大部分が関西以西においては部落の出身の人です。したがって、あらゆる点でそういう対処が行なわれておらない。そこで非常な貧困がある。もちろん子供は上級学校にいけない。もし中学校で一生懸命勉強をして就職をしようとしても、依然として就職に差別がある。というのは、民間の会社では身元調査ということで実際上差別がある。身元引き受け能力がない。何か事故を起こしたときに賠償能力がないというようなことで、同じ成績であってもとらない。ですから、その青年がそこで一生懸命ひたむきに生産に邁進しようと思ったところが、それがいけないとなったら一部虚無的になる子供が出てまいります。そういうことがずっとある、そういうことを申しております。そこで、この三百年の間に同胞がほんとうに非人間的な差別を受けた。しかも明治以後、より以上の差別というべきものを受けておる。その問題は許しがたい問題である。これは政党のいかんを問わず、まただれが一番大将であるとを問わず、徳川時代以降の歴代の政府の責任です。これを解決することは今後の政府、全国民の責任であって、それに対処するには歴代の政府が全力をあげてあらゆる面でやっていかなければならないということを、岸さんと私どもの間で確認をいたしたわけであります。昭和三十三年の三月八日であります。それを受けて先ほど教育局長が言うように、内閣の閣僚懇談会が三十四年にございました。幾ぶん問題が進んでいるが、あらゆる面でいたさなければなりません。普通の場合、民主主義が進展したならば、人権思想が進展したならば、これが直るというように観念的に考えている人が非常に多いのです。それだけではない。むしろ経済的な問題を根本的に——雇用の問題なり、生活の問題を解決しなければこれは根絶する道が進んでこないということを強調してございます。しかし、それと同時に観念的な差別概念が一掃されることが必要であることはもちろんであります。したがって教育局長が言われたように、経済的な点についてあの当時の論議があまりにもなおざりにされておったために、これに重点が置かれておったけれども、基礎として観念的な人間としての差別概念を払拭しなければならないことは、その大前提であります。ですから、こっちをやればこっちをほっておけばいいということではないわけであります。そこで、それから以後ずっと部落問題を集中的に取り上げられております。労働省との話し合いによって、雇用の差別についてこのような討議が何回も行なわれております。差別雇用をなくさなければならない。ところで民間のほうの事業主はさっき言ったような例で、うまくいかない。これに対して使用主教育をやらなければならない。家庭のいい子をとれば楽だというような間違った概念でやることによって、差別が温存される。そういうことをやるような使用主、差別雇用をするような業種には、いまのような労力不足のときにも新しい青年労働力を供給する紹介を政府はしないというような罰則をもってやっていくというようなことを論義されております。しかしながら、それ以上に先にやらなければならないことは、国家公務員であるとか、公共企業体であるとか、地方公共団体の職員であるとか、そういう国の威令が直接に行なわれるところにおきましては、断じてそういうことがあってはならないし、雇用の当初の問題だけではなく、雇用ができてからあと昇進その他についてそのようなことが一切あってはならないということが確認されているわけであります。この問題について、たとえばそのようなことがあったら出世の妨げになる、そのような言辞があったように伺っております。こういうようなことが少しでも自衛隊の中にあっては困る。自衛隊の中では、政府がほんとうにやりたい、解決をしたいという意思が率直に反映し、そのとおりにされなければならない部門である。民間の企業にこのとおりやれといっても、これはやりたいけれどもすぐにはいかないが、自衛隊は国家の機関である。だから自衛隊においてはそんなことが断じてあってはいけないのに、このようなことが起こったことは非常に遺憾である。あと一問いたしますが、それについて小泉防衛庁長官が、先ほど非常に真剣に御答弁になっておられますけれども、そのような状態について御理解がまだ十二分でなかったと思いますので、この点について御検討をいただいて、いま言ったような趣旨で本格的に取っ組んでいただきたいと思いますが、それについての御答弁をいただきたい。
  141. 小泉純也

    小泉国務大臣 本問題につきましては、私は先ほど来自分自身の考え方を実は率直に申し上げたわけでございまして、一体いまどきそういうことを言う者があるのか、おかしいじゃないか、そういうことはあり得ないことだ、またあってはならないことだというふうに自分が信じ切っているものですから、私は率直に自分の気持ちを表明申し上げたわけでございまするが、いま八木委員からいろいろ、多年の御研究なり、またこの問題の解決のために非常に御献身になっている体験等から御高見を承りまして、実は私ははなはだ不勉強ながら、現在関西方面においては、私どもがあり得ないことだ——部落民ということばすらまだ使う人間が一体いるのか、おかしいじゃないかと思っておる私の気持ちは、これまた一つの驚きであったのでございまして、八木委員から承ると、関西方面においては、あってはならないことではあるけれども、現実においては残念ながらそういうことがまだ現存しておる。さらにこれが悪い面に深刻化する傾向すらあるというようなことにつきまして、私は非常に教えられることがございます。もちろん自衛隊は命令をもって上司がこれを貫徹しようと思えば、他の民間と違いまして十分徹底、実効があげられる組織にもなっておりますので、今後はただ自分の気持ちで、あり得ないことだ、そういうことは常識上ないだろうというようなことでなしに、そういう事実を承りました以上は、積極的にこういう問題をあらしめない、そうして部隊内におきましても、気持ちの上で隊員にそういうことの解消を完全にはかることはもちろんのこと、昇進等にそういうことが影響するようなことが断じてあらしてはならないということで、私は強力なる措置をするように努力いたしたいと存じます。
  142. 福井勇

    ○福井委員長代理 ちょっと八木委員に。貴重な御質問で、長い時間を私も実はいただきたいぐらいに思うことでございますが、吉田賢一君がもう一人ございますから、その点調節をお願いいたします。
  143. 八木一男

    八木(一)委員 小泉大臣の御答弁で、私は非常にその点で満足いたしますが、それをぜひ実際に進めていただきたいと思います。  具体的な問題で一つしていただきたいことを率直に申し上げたいと思います。先ほど三木委員の御質問を私、拝聴いたしております。田原委員の質問も拝聴しております。人権擁護局のほうでこの問題について御努力になっている、また人事局のほうでもいろいろ御努力になっていることを伺ったわけです。この問題についてぜひ申し上げておきたいことは、小泉大臣にもぜひ理解していただきたいことは、そういう問題があるのですから、そのある問題については、はっきりと出すことによって将来の禍根が断てるわけです。そっとしておけば、それで三百年、何百万の人が苦しんできた問題が解決しないわけです。ですから、この問題については、徹底的に調査をしていただきたい。人権擁護局の調査について、自衛隊のほうとしては全面的に協力をしていただきたい。  そこで要請があるのですが、私も軍隊で召集を受けまして、五年間ほどいたことがございます。そこで、やはり軍隊の中ではずっと命令が入るほかに、やはり上官に対する遠慮ということがございます。戦前の軍隊といまの自衛隊と違うかもしれませんが、私の経験では、やはりこういうものを調べられたときに、上官がどう言っているか、しかもその焦点に当たっているのが三佐という人であれば、その人に不利なようなことを言ったならばどれだけ自分のほうに迷惑がかかるかもしれないということで言わないという状況があると思うのです。それで擁護局のほうの実相調査に非常にぐあいが悪いことがあるのであります。そこでぜひしていただきたいことは、この問題についての人権擁護局の調査について全面的に協力をすべしということを書面で通達していただきたい。回覧して、一応幹部が全部それを読んで、判をつくことが昔の軍隊でありましたが、いまの自衛隊でもそれまたはそれに似たことがあると思う。書面で、中央の偉い方の名前によって通達が出ておれば、すぐの上官に遠慮があっても、知っておることをいわなければならないといった場合に、その通達に従って上部の偉い人の命令に従って自分は行動するんだということになれば、口を閉ざすということがなくなってくると思います。そういうような人権擁護局のこの問題についての御調査については、隊員全部、関係者全部が全面的に協力をすべしというような指示、それをちゃんと書面で、各関係者が見られるような処置をぜひとっていただきたいと思います。それについての御答弁を願いたいと思います。
  144. 堀田政孝

    ○堀田政府委員 いま八木委員から御要請のございました点は、まことにごもっともな御要請だと思います。すでに私どもは前回の予算の分科会で、法務省の調査に対して協力するかという御質問がございまして、いたしますということをはっきりお約束申し上げております。私は帰りまして、直ちにいかなる御要求があっても全部でき得る限りの御協力をせよという指示をいたしております。いま調査中でございますが、なお法務省のほうでは調査を引き続き徹底させたいという御意向のようでございますので、さっそく帰りまして、通達等による趣旨の徹底をはかりたいと思います。
  145. 福井勇

    ○福井委員長代理 吉田賢一君。
  146. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 時間がありませんから、簡単にしておきます。先に資料を要求しておきます。法務省人権擁護局に、この富士学校の差別事件につきまして、現在の時点で明らかになっておる範囲で、可能な限りその報告資料として至急に出すようにお願いいたします。  それから人事局長にちょっと聞いておきたいのですが、いただきました申し立ての「事実並びに調査の結果」これによりますとあなたのほうの結論は、山北一尉の上申に対しまして差別事件は一応なしという判断をしておられるらしいのです。これは物的証拠というよりは、甲と乙との間のことばのやりとりということになっておりますので、したがいまして、これは神にあらざれば知りがたいことかもしれませんけれども、やはりこの種の問題の調査の困難性にも由来すると思います。したがいまして、これは最終には調査の内容といたしまして、三十人等についていろいろとお調べになったことが書いてはありますけれども、やはり一応何らかの方法で本人同士を呼び出して——あなたのほうの隊員でありますから、呼び出して、具体的に直接聞いて、そうして、それから看取するいろいろな印象なり判断というものを加えなければならない、こう思います。殺したとか、切ったとかいうのであれば、ものの結果が残りますけれども、ことばということであれば、そうはいきませんので、そこでもしこれがこのような事実がなかったものと推定されるということで雲散霧消するということになりましたら、これは結果的にはきわめて重大な悪影響を残すものとお考えにならねばいかぬのであります。かかる意味におきまして最も慎重な方法でそのような措置に出て、むしろ時間的に結論を急ぐというのでなくて、手続の慎重を期することがこの際は必要であろうと思いますので、このようなことを要望し、かつそのようなお覚悟で調査を進めていかれるかどうかを聞いておきたい。
  147. 堀田政孝

    ○堀田政府委員 吉田委員が御心配になっておりますような点は、前回の分科会でもやはり御指摘がございまして、おまえたちが調べても、やはり一つの組織の中で調べるのだから、ほんとうのことをはたして言うかどうか保証しがたいので、やはり法務省のお調べが徹底しなければ信用できない。したがって法務省の調査については、どんな調査でも協力するか、こういう御質問がございましたので、私どもは、一生懸命になって調べるつもりでおりますけれども、しかしおまえたちの調べたものでは不十分だからということでございますならば、どんな御協力もいたしますということをお約束いたしております。法務省のほうからは、やはりいろいろと御連絡がございますが、私どもは全部一〇〇%御協力をいたしております。今後ともいたしてまいりたいというふうに考えております。
  148. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 大臣に一点伺っておきたいのでございますが、これはすでに釈迦に説法ではございますけれども、何しろ関東の土地あるいは東京の付近というようなところにおきましては、差別事件というものが、われわれの日常生活のはだにしみておりませんので、したがいましてことばからあるいは字から、耳からということになりますと、いかにも理解しにくい。先般予算の分科におきましても、高橋法務大臣も同様な感想を漏らしておられましたが、これはごもっともなことでございます。それだけに、たとえば山北一尉があまり人に言外しないというところにやはり問題性があります。取られたとかぶたれたとかいうときでしたらすぐ茶飲み話にもすっと出てしまいます。やはりこの種の問題は、当人にとりましても潜在している時間が相当ございます。また第三者におきましても、触れまいとする気持ちも相当あります。そのような人間の心の底に潜在するという性格を持ったものであり、同時にまた社会的にも問題があって、触れまいとし、言うまいとしという、それがありますので、なかなかこの一尉が周囲にすぐに訴えたり、言わなかったりしたということだけで、直ちに真実でないのではないかという疑いを持つべきではない、こう思います。いずれにしましても不幸にしてわが国には、部落に経済的貧困と、そしてきわめて社会的低位性が広い範囲で存在しておることはいなめませんので、したがいまして、この問題をほんとうに解決せなければいけませんから、疑いがあったということであるならば、どこまでも追及してこれを明らかにするということと、そして差別問題の絶滅とを期して部落問題がなくなってしまうというところまでいかなければ、ほんとうの政治の民主化というものは、たわごとでございます。われわれはそういうように考えますから、事さほどに関西の土地におきまして奈良県、大阪府、兵庫県、福岡県、岡山県等におきましては、有名な幾多の、大正年間以来からもいわゆる社会的事件となってみなはだ身に感じた事実がございますので、この辺につきましても抜かりないと思いますけれども、そのような最も深さ、広さ、大きな影響を持っておるものとして今後ひとつ最善の御努力をせられんことを御希望申し上げておきたいのであります。これはだんだんと八木君の御質問に対してお答えになったことでありまするから、格別私は要らぬと思いますけれども、一言あなたになお最終の所信についてお伺いしたいと思います。
  149. 小泉純也

    小泉国務大臣 ただいま吉田委員から承りまして、問題は非常に深刻なものがありまして、将来に対してもこれはきわめて国として日本民族としても重要な問題でございますので、私どもは、いままでよりも——先ほど各委員の方々の非常に実態に触れた深刻なお話をいろいろ承りましたので、今後は、さらに一そうこの問題に対する取り組み方を心がまえからひとつ変えまして、積極的に解決に当たる。ことに、私は長官としてしみじみ考えますことは、日本国民の中に一部であってもそういうことが残念ながら現存するものであるとするならば、まず先にわが自衛隊の中からでもこれを完全に払拭をして国民全体の模範をひとつ示したい、こういうような意欲に燃えておるわけでございます。
  150. 福井勇

    ○福井委員長代理 最後に田原春次君。
  151. 田原春次

    ○田原委員 防衛庁関係決算の審議については、なお審議の必要がありますので、後日審議することをお願いします。
  152. 福井勇

    ○福井委員長代理 さよう取り計らいます。  本日はこれをもって散会いたします。    午後二時二分散会      ————◇—————