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1965-04-09 第48回国会 衆議院 外務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月九日(金曜日)    午前十時二十四分開議  出席委員    委員長 安藤  覺君    理事 高瀬  傳君 理事 福田 篤泰君    理事 戸叶 里子君 理事 帆足  計君    理事 穗積 七郎君       菊池 義郎君    鯨岡 兵輔君       佐伯 宗義君    竹内 黎一君       濱野 清吾君    福井  勇君       三原 朝雄君    森下 國雄君       石橋 政嗣君    西村 関一君       川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君  出席政府委員         外務政務次官  永田 亮一君         外務事務官         (経済局長)  中山 賀博君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君  委員外出席者         外務事務官         (大臣官房外務         参事官)    西堀 正弘君         大蔵事務官         (国際金融局短         期資金課長)  藤岡真佐夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  千九百六十三年十二月十七日に国際連合総会決  議第千九百九十一号(XVIII)によって採  択された国際連合憲章改正批准について承  認を求めるの件(条約第二号)      ————◇—————
  2. 安藤覺

    安藤委員長 これより会議を開きます。  千九百六十三年十二月十七日に国際連合総会決議第千九百九十一号(XVIII)によって採択された国際連合憲章改正批准について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。  川上貫一君。
  3. 川上貫一

    川上委員 私は、国連憲章の今度の改正の問題、この問題について、特に反対をするという立場ではありませんが、この際、国連そのものの問題について、政府考え方を聞いておきたいと思うのです。外務大臣の御答弁をお願いしたいと思います。  国連というのは、その成立の過程から見ても、また憲章精神に照らしてみても、国際間の平和と安全を維持する、人民の同権と自決の原則を尊重する諸国間の主権平等の上に友好関係を発展させるところ、こういうものだと思うのです。こうならなければならぬと思う。したがって、この国連というものは、各国人民自主独立を助け、その安全を保障する、そしてあらゆる侵略を阻止して世界の平和に貢献するための国際的機関であるとわれわれは考えておりますが、外務大臣はどうお考えになりましょうか。
  4. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私も、いまあなたの御指摘のように考えております。
  5. 川上貫一

    川上委員 大臣答弁もそうだろうと思います。それならば、今日の国連というものは実際にそういう国連になっているのでありましょうか。そういう国連になっていないではないかと思う節が多い。一口に言うと、今日の国連はこの根本精神が守られていないと言うても差しつかえない。そこで、国連の真の精神を尊重してこれを守る、国連がその成立目的を全うする、このためにはどういうことが必要なんだろうか。今日国連を利用して世界の至るところで他国の主権を踏みにじり、民族解放独立運動を破壊し、侵略干渉の張本人となっているアメリカ、このアメリカ帝国主義横暴を押え、その手足を縛る、これこそ国連としての目的・任務を遂行する何より第一の道であるとわれわれは考える。アメリカのこの横暴干渉侵略政策手足を縛らずして国連そのもの目的を遂行することはできない、こう思いますが、この点についての外務大臣の御所見を承りたい。
  6. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アメリカ国連精神をじゅうりんしておるとは考えておりません。ベトナムにおけるアメリカ軍事行動は、これは南ベトナム独立と自由を守るために要請によって軍事行動しておるいわば防衛の意味でありますから、他国の領土を侵略するとかあるいは政権を倒すとか、そういったような政治的な野望に基づいておるものではない。でありますから、あなたと全く見解を異にしております。
  7. 川上貫一

    川上委員 外務大臣は私と全く見解を異にすると言われました。しかし、私はこの外務委員会の席上で外務大臣に対していいかげんなことを言うておるとは思わぬ。今日ここでただいま審議されておる国連憲章改正、この問題にしても、これは主としてアジアアフリカ諸国を考慮したものであると言われております。常任理事国の増加ということです。しかし、今日までアメリカは、アジアアフリカ諸国に対して、国連名前を使って、また国連の名によってどういうことをしてきたか。一口で言えば、それら諸国の要求と提案をないがしろにして、そればかりか、反対に、アジアアフリカ諸国民の民族解放独立運動干渉しておる。あらゆる圧迫を加え、これを弾圧してきておる。これがアメリカではありませんか。外務大臣はどうお考えになりますか。
  8. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アジアアフリカ民族独立解放に対しまして非常な干渉をしておる、そうは考えておりません。
  9. 川上貫一

    川上委員 どうも外務大臣は私のまじめに質問しておるのを頭からそらしてしまって、いま言ったような答弁をしておられますが、これは日本としてももう少し真剣に考えなければならぬ。日本政府としても腹を固めなければならぬ問題じゃないかと思います。私は先に、いいかげんなことを言っているのじゃない、こういうことを言いましたが、第一、朝鮮コンゴマレーシア等に対するアメリカのやり口はどういうものでしょう。いま外務大臣が言われたような、そういうやり方アメリカはしておりますか。  第一に、朝鮮に対しては、言うまでもありませんけれども、一九五〇年、アメリカ国連軍なるものをでっち上げて朝鮮に派兵しております。これは内政不介入を原則とする国連憲章の完全なじゅうりんであります。それだけではありません。国連の名によるアメリカ帝国主義無法は今日に至るまで続いておる。国連軍を僣称するアメリカ軍南朝鮮に駐とんさしておる。朝鮮人民自主的統一を妨害し、朝鮮人民独立アジアの平和を破壊しておる。これが国連軍の名を利用するアメリカやり方。これが朝鮮なんです。  第二は、マレーシアの問題。マレーシアなるものは、そもそも英米帝国主義者が、マラヤ、シンガポール北カリマンタン民族解放独立闘争を圧殺しまして、この地域を新植民地にするためにこれまたでっち上げた。こういう国であります。したがって、今日のラーマン内閣、これは全くの英米帝国主義のかいらい政権である。英米帝国主義は、こうしてインドネシアを直接脅かし、東南アジアに対して諸国民の解放独立の戦いに干渉している。これを圧殺する帝国主義軍事基地なんだ。マレーシア全体が軍事基地なんだ。イギリスは、シンガポール軍事基地としておったこの軍事同盟を、全マレーシアに広げておる。このマレーシアに対して国連総会はどういうことをしたか。正規の採決も経ずし安保理事国議席を与えた。これが国連アメリカイギリス指図です。これに一貫して反対してきたインドネシアが、国連に脱退してまで反対しておる。その不当を追及しておる。これは当然のことではないでしょうか。これは国連アメリカ指図によってやっておることであります。  ついででありますから、もう一つ著しい事例は、これはコンゴであります。これはアメリカ国連の名によって憲章精神を踏みにじり民族独立闘争をまっこうから破壊する役割りを果たした典型的事例であります。すなわち、一九六〇年、アメリカ国連を動かしてコンゴの法と秩序を回復するといって国連軍なるものをつくって、コンゴに出兵させたのであります。その国連軍なるものはどういうことをしたか。当時のルムンバ首相アメリカのかいらいとなることができない、こう考えるや、無法にも国連軍は彼を逮補した。帝国主義手先チョンベ一味に身柄を引き渡し、ついにルムンパ氏を暗殺させておる。これが国連軍である。コンゴ統一独立のかわりに、今日のような戦争と混乱を引き起こした。これが国連軍である。  このように国連を利用するアメリカ無法、これをそのままにしておいて、ただ憲章の一部改正だけで真の国連精神を全うすることができるとお考えになりますか。私がいま述べたこのことに留意せずして国連の真の精神を発揮することができるとお考えになりますか。この点をもう一ぺんお聞きしておきたい。
  10. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いま朝鮮戦争あるいはマレーシア現状あるいはコンゴ紛争をおあげになりましたが、われわれは全く見方をあなたとは百八十度異にしております。朝鮮戦争が起こったのは、共産圏の支持のもとに北鮮協定線を破って全半島を一挙に自分の勢力下に置こうとしたことに原因があるのでありまして、国連のたてまえは一応は安保理事会にかような場合に対処すべき権能は集中されておるのでありますが、遺憾ながら、五大常任理事国にそれぞれ拒否権がありまして、まとまらない。そこで、総会を開いて、常任理事会にかわって総会決議によって国連軍が編成されて、その不当な侵略を阻止したのでありますから、国連が本来の平和維持機能というものをどうやらここで発揮することができた。そういうことでありまして、マレーシアコンゴ等におけるあなたのおあげになったようなことは、全部われわれは見方を逆にしておるのであります。やはり、平和維持機能という点から言うと、まだ国連憲章あるいは国連憲章に伴う実力自主性というものが十分に機能が発揮されておらないというところにあるのでありまして、米国の帝国主義というものによって国連がじゅうりんされておるのだというような見方には、とうてい私どもは同調するわけにはいきません。
  11. 川上貫一

    川上委員 朝鮮の問題の御答弁がありましたが、共産勢力侵略したから国連軍が出ると言う。共産主義がどこを侵略したのですか。どの国を共産勢力侵略したのですか。
  12. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 南鮮であります。
  13. 川上貫一

    川上委員 共産勢力がどこかの国を侵略したかどうかということを聞いておるのです。朝鮮国内の、朝鮮人民の、これに国連軍を出したのは完全なる内政干渉だと私は言ったのです。そうしたら、共産勢力侵略したと言う。どこを侵略したのですか。
  14. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これほど明瞭なことを、あなたはいろいろほじくってきますけれども、これ以上はお答えいたしません。
  15. 川上貫一

    川上委員 これ以上答えぬというより、答えることができぬのでしょう。朝鮮の問題です。朝鮮内部の問題です。朝鮮内部には、それは共産主義者もありましょうし、そうでない者もありましょう。それは国内の問題です。それに国連軍が出るということは内政干渉だと私は言っているのです。ところが、外務大臣は、それは共産勢力侵略したと言う。そこで、どこを侵略したかと私は聞いたのです。何か答弁をせぬというが、どういうわけでしょうか。
  16. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 共産勢力が北のほうにあって、三十八度線というものを一応停戦ラインとして区画しておったのでございますが、それまでは南朝鮮アメリカ軍が駐とんしておった。おったけれども、大体これで問題は起こるまいというので撤兵した。その撤兵した留守にいきなり侵略をしてきた、こういうわけでありますから、南朝鮮人民意思要請によって、国連軍がこの不当な侵略というものに対して反撃を加えた。そしてあの政権独立というものが今日までそのために維持されておるのであります。これは内政干渉ではございません。その国の政権意思によって、要請によって国連軍平和維持機能というものを発揮したまでの話で、これは本来の国連の使命であります。
  17. 川上貫一

    川上委員 外務大臣は三十八度線を国境だと思っているのですか。
  18. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 国境以上のものかもしれません。
  19. 川上貫一

    川上委員 国境以上の何ですか。国境以上のものと言うが、国境以上のどういうものですか。
  20. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 事実上三十八度線を区画して、南に大韓民国があり、北に事実上の政権がある。厳格な意味において国境であるかどうかという議論もございましょうが、見ようによっては三十八度線は国境以上のものである、そういうふうに考えております。
  21. 川上貫一

    川上委員 外務大臣はそれ以上御答弁はできぬだろうと思います。あれは国境ではないのです。また、侵略というのはどこを侵略したか。朝鮮国内のこと、朝鮮人民の問題である。侵略したのはアメリカである。これが国連軍という名前侵略した。侵略ということばはそう簡単に使えるものでない。これは、朝鮮に対する国連の、アメリカ指図による完全な内政干渉である。こういうことをやらしておいて、国連ほんとう精神が発揮できるかどうか。私は、外務大臣と問答しても、これ以上とてもはっきりした答弁外務大臣はなさる心配はないと思うが、もう一つ聞きたい。  国連における中国問題、これはどういうことを国連はやっておるか。すなわち、アメリカは、彼らの二面政策、平和あるいは平和共存、この仮面をかぶっておりますけれども、実際には中国及びアジア社会主義諸国を抹殺しようとする、いわゆる中国封じ込め政策国連に持ち込んでおる。国連をして中国に正当な代表権を与えないためのあらゆる策謀を行なわせておる。あなたもこれに一役買っておる。これが中国国連代表権問題の本質です。しかも、中国に正当な国連代表権を与えない、このことが国連をますますアメリカ帝国主義道具にさしておる一つの大きな原因となっておることは、言わずして明らかであります。外務大臣はどうお考えになりますか。中国国連の正当な議席を与えない、こういうことをしておりますから、国連はますますアメリカ道具になり下がっておる。これが事実である。これが国連における中国の問題です。  特に私はこの際指摘しなければならぬと思うが、今日のベトナムにおけるアメリカ無法きわまる侵略戦争は、あれはどうですか。あれは何でもないですか。傍若無人です。国際法をじゅうりんし、毒ガスを使い、他国連続爆撃をし、これに対して国連は何をしましたか。この無法きわまるアメリカ手足を押えましたか。これをせずして国連の値打ちがありますか。アメリカは、トンキン湾事件時分には、さっそくこれを国連に持ち込んで、北ベトナム被告席に置いて、あわよくばかつての無法朝鮮出兵の再版をはかる、こういうことを企てたが、いまなおこの陰謀を続けておる。これがアメリカ行動です。こういう行動を非難し、その強盗的武力行動をやめさせる、これこそ国連根本精神を発揚する仕事ではないですか。何にもしない。これでもなおかつ外務大臣は、国連根本精神を十分発揮している、こう言われますか。アメリカに対して国連は何をしておりますか。あの無法アメリカ侵略に対して何もしない。これでいいですか。
  22. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 たびたび申し上げるように、国連平和維持機能というものが完全じゃない。一応紛争処理等に関しましては一切常任理事国にまかせられておる。その常任理事国というものは、一国一国が拒否権を持っておるために、安全保障常任理事国としての機能が発揮できないというような状況にもなっておる。でありますから、この拒否権の発動ということによって機能が全然動かないという、この点を改善し、さらにまた、平和維持のための警察軍隊、そういうものを国連が掌握して、そして一切の加盟国実力行使をやめるということになれば、これはもう国連としては一番いま欠点であると言われておるところが是正されて、平和維持機能というものが完全に発揮できることになるのでありますが、現状はそうはいっておらぬ、こういうところに遺憾な問題が残っておるのであります。でありますから、実際の実力をもって争っておる国際紛争に対しては遺憾ながら国連というものは十分の機能を発揮できない現状である。何をしているかというわけでありますが、国連そのもの機能が十分発揮できないような機構になっておる。この問題をわれわれの希望どおりに完全なものにしていくために、しんぼう強く絶えざる努力が必要である、かように考えておるわけであります。
  23. 川上貫一

    川上委員 私が最初に質問しましたように、この無法なわがままな横暴アメリカ手足を縛るという、こういう国連にならないで、それで国連ほんとう精神が発揮できると外務大臣はお考えになりますか。
  24. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アメリカ帝国主義とあなたはおっしゃっておるけれども、アメリカ世界全体の平和維持ということの目標に向かって努力しておるものと私は考えますから、あなたとは全然正反対でございます。
  25. 川上貫一

    川上委員 この点はいつまで言っても押し問答にすぎぬと思う。しかし、実際に考えなければならぬことは、ここに外務大臣おられますが、今日の国連というものは、その根本精神を発揮してはおりません。一口に言ってアメリカ道具です。アメリカはこれを利用して、あらゆるアメリカ侵略戦争政策を進めておる。私はこの事例をいま述べたはずなんです。このことについての反駁は、私の質問に対する反駁にはなりませんし、御答弁にもならぬと思う。こういうお考えをあなた方が持っておられますから、国連中心主義というものを振りかざしておられる。しかも、その国連というものが、いま私が言いましたような、質問を続けましたようなこういう国連。この国連中心主義、これをあなた方は振りかざしておるのです。そして安保条約を推し進めておるのです。国土の膨大なる地域アメリカ軍事基地に提供しておるのです。すぐ国連を言うのです。そこに水爆搭載戦闘爆撃機まで引き込んでおるのです、軍事基地に。アメリカの第七艦隊の寄港を無制限に許しておる。そして原子力潜水艦さえ引き入れました。日韓会談にあたっては、国連の名を利用して、その基本条約の第三条に、十七年も前の、アメリカ朝鮮戦争をした、あの朝鮮戦争を合理づけた国連総会決議、あの無法決議をちゃんと据えておるのです。そして朝鮮唯一合法政府韓国政府だという基本条約に仮調印までしておる。沖繩アメリカ永久戦略基地、これを合理づけておるその根本に、その基礎に国連を利用しておる。こうして、国連協力国連中心、こういうことを言って、日本軍国主義の復活をどんどん進めて、憲法改悪考え、自衛隊の海外派兵から核武装化まで政府ほんとうに血道をあげておると言っても差しつかえないと思う。アメリカ中国封じ込め政策には積極的に加担しておる。国連に行ってまで外務大臣はこれをやっておるのです。このような政策をとることが、ほんとう国連精神国連がつくられた時分精神国連憲章基本精神に合う道であると、ほんま外務大臣考えておりますか。外務大臣というのは、一国の外交を担当し、民族の将来の運命関係する仕事をなさっておる。ほんま日本民族の利益とアジアの平和を考えたら、こんな外交できますか。こんな国連中心国連主義、こんなことばかり言うて済みますか。  私は、いま外務大臣から私が望んでおるような答弁はとても得られないと思う。得られないと思いますが、私は、議員の一人として、日本人民の一人として、特に外交を担当しておる外務大臣に申し上げておきたい。日本の将来をどうする。アジアの平和をどうする。日本アジアにおける平和あるいは戦争拠点です。日本が平和な道をとれば平和な拠点になり得る。日本戦争の道をとれば戦争拠点になり得る。これを外務大臣は担当しておるのです。いまのようなやり方で、ほんとう民族運命を担当することができるかどうか。外務大臣日本人です。いすを守るだけがよいものではないと思う。静かに考えられることを私は希望する。日本人として反省されることを希望します。即座に答弁は求めません。お考えを願いたい。これで私の質問を終わります。
  26. 安藤覺

    安藤委員長 この際、午後三時再開することとし、暫時休憩いたします。    午前十時五十八分休憩      ————◇—————    午後三時四分開議
  27. 安藤覺

    安藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。  穗積七郎君。
  28. 穗積七郎

    穗積委員 これから国連憲章改正関連をいたしまして質問をいたしたいと思います。政策に関することでありますので、その分は大臣から直接お答えをいただきたい。  今後の憲章改正は、安保理事会並びに経済社会理事会増員でございまして、これはもう十八回総会前からの強い要望のあったところでございます。昨年の夏にコペンハーゲンで行なわれました世界各国の議会の代表による会議におきましても、このことが強く決議として全会一致要請をされたわけです。それがようやく実現しましたことは、まことにこれを多とするものですが、いささかおそきに失するくらい考えております。  そこで、私はこれに関連をしてお尋ねをいたしますが、佐藤内閣外交の第一の柱として国連外交を主張しておられるわけです。そのときにおそまきながら前向きの改正が、ごくわずかなる前進ですけれども、いたしましたことはけっこうだが、ところが、問題は、憲章の規定ももとより大事でありますが、それのみでなくて、これを運営する国際政治における各国政府の態度が問題だと思うのです。そういう意味大臣にお尋ねしたいのは、順序不同でありますが、まず、経済問題が深刻になってきておりますから、それからお尋ねいたします。  経済社会理事会理事国増員になって、世界各国の各地域代表国家発言権が増大しますことは、南北経済あるいは東西経済交流発展、格差の縮小のためにたいへんけっこうなことだと思いますけれども、一番問題になりますのは、端的に申しまして最近、資本主義諸国間における済の過剰生産、すなわち市場狭隘圧力市場獲得戦争となってあらわれ、現に、アメリカによって不法不当に行なわれておるインドシナ半島に対する侵略行為、これらの背景も、やはり、国際経済間における不均衡、あるいは帝国主義諸国過剰生産圧力市場狭隘圧力というものがこういう誤った外交政策に表現をされておるわけです。ときたまたま、世界政治情勢というものは、単なる一時的な情勢ではなくて、経済政治構造的矛盾というものがあらわれてきていると私は思う。そのことは、すなわち、最近の自由主義諸国間における自由化に伴います国際通貨の不安定という形で表現されていると思うのです。それらのことは、これは経済委員会ではありませんから、わが外務委員会におきましては多くを触れませんが、私の質問の要旨を理解していただくために、その質問背景を申し上げているわけです。質問目的とも言いましょうか……。  そういうことでありますので、最近のポンド、ドル、それに結ばれておりまするわが国経済、円、この国際経済内における不安定というものは、これは国連経済社会委員会におけるわが国の今後の方針にとっても重大な問題になりつつあると思う。したがって、今度の国連憲章改正によって各地域理事国増員をするということだけでは、何ら希望的展望は持てないわけです。したがって、今後拡大された発言権背景にして、わが国は一体いかなる国際的な経済方針というものを持って臨むつもりであるのか、こういうことでございます。  そこで、具体的に質問をいたしますと、ポンドの危機につきましては、最近ウィルソン内閣緊縮予算を組んだということで、一時的にこれを持ち直しておりますけれども、昨年は、わが国をも含む三十億ドルの巨大なるカンフル注射によって  一時持ちこたえようとした。ところが、それで足りなくて、直ちに平衡税を計画しまして、世界反撃と不評を買ったわけです。それでもポンドは持ち切れない。そこで、今度緊縮予算を組んでデフレ政策をとりだした。わが国インフレ政策ですね。そういうことで、一時的な関係におきましてはポンド国際価値のやや値上がりという形はとっておりますけれども、私が昨年来興味を持っておりますのは、わが国並びにEEC諸国資本主義経済過剰生産というもの、これに対する今後の展望ですね、これは非常に私は深刻だと思うのです。そうなりますと、一時的にまず国際通貨の中に占めるポンドは持ち直したと言われておりますが、これは私は持ち切れないと思う。イギリス国内における現状維持的な経済構造の改革が行なわれなければ、賃金のアップと、それから国際通貨の不安定というものはますます累増されていくというふうに私は考えます。私の判断は、評論家、学者ではありませんから、ものを見通すために端的に言う必要があると思うのです。ある意味では論断をしておかなければ、われわれの具体的な政治行動なり判断というものは生まれないわけですから、私は、総合的な詳論は避けますけれども、この秋を待たずして、再びイギリスポンドというものは非常な不安定、行き詰まりを来たすというふうに考えます。というのは、イギリスは労働党が政権をとりましたけれども、これはわれわれの考えておる社会主義政党とはおよそ縁の遠いものでございまして、かの国の古い帝国主義経済構造、社会構造に対してメスを入れる勇気はないわけです。外交においてもそうでしょう。今度のベトナム問題に対する態度を見ましても明瞭であります。このデフレ政策国内における緊縮政策というものに対して、労働党の味方であるべき労働者に至るまで、これには耐えられない。したがって、賃金のアップと、それから国際通貨ポンドの危機というものは、本質的、構造的な危機として続くものだと判断をいたします。そうなりますと、直ちにドルの危機に大きな影響を与える。日本はどうかといえば、日本の外貨、国際通貨というものは、完全と言っていいほどドルから独立をいたしておりません。すなわち、完全なる植民地化、従属化が経済の上においては行なわれております。そうなりますと、ポンド、ドル、円というものの国際通貨地位における経済的危機というものは、これはぬぐうべからざる事実である。ちょうど昭和三、四年ごろ、当時大臣は通産省におられまして、日本の工業、経済を中心とするいろいろな事情は御承知だと思う。われわれちょうど大学で学んでおる時代でありますから。昭和三年ないしは四年、一九二八年から九年の情勢に今日差しかかっている。モメントは違います。違いますけれども、このドル並びに円の国際自由主義経済内における危機というものは、昭和三年ないしは四年に差しかかってきた。これはもちろん大ざっぱな表現であります。比喩的表現にすぎません。内容は条件を異にいたしておることは言うまでもありませんから、ちょっと誤解を招かないために申し上げておきますけれども、時間がありませんから、結論的に申しますと、そう思う。  そういう情勢の中で、今度の改正に伴って国連外交をやるのだと言う。この経済社会理事会での発言権地域的、国別の発言権が強化される、こういうことは歓迎すべきことでありますけれども、それによってわれわれは何らの期待も持てない。何らの希望も持てない。国連が現に開店休業状態であり、そして、アメリカ資本主義経済の行き詰まりに伴う帝国主義侵略がわがアジアにおいて行なわれておるのに、安保理事会は何らの機能を果たしていない。ジュネーブ会談というものは何らの約束が守られていない。ほごにひとしいものになっておる。その平和と独立のために、アジアに住んでおるわれわれとしても努力しなくてはならぬのに、安保条約によって軍事的にアメリカに縛りつけられ、この危険な政策に縛りつけられて、日本政府はこれに対して何らの努力すら示していない。このように、国連尊重の精神というものはごうまつもないという事実にわれわれはぶつかっておるわけです。  きょうは、経済社会理事会増員、拡大の改正案でありますから、外交上の議論はいたしませんけれども、そういう意味で、わが国の成長経済の前にはだかつております壁というものは、端的に言いますならば、昭和三年の段階に到達してきた。したがって、国内におきましては労働賃金のアップ、それから国際的には国際収支の赤字、不安動揺、これは、自由主義経済の中で生活しておる資本家といわず、労働者といわず、サラリーマンといわず、農民といわず、中小企業といわず、すべての人々にとって重大な不安であり、関心事であると思う。したがって、この際佐藤内閣は、国際通貨の問題について、どうこれを分析され、いかなる態度方針をもって臨まれんとしておるか、これをまず大臣から総括的に態度を明らかにしていただきたい。それに従って質問を続けていきたいと思います。
  29. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ポンドに対する不安というものが一時高まりまして、わが日本もこのポンド地域に対する輸出を行なっております関係上、その動向いかんが日本に相当の影響をもたらす問題として、これを重視いたしました。したがって、ポンド危機に対する各国の措置というものが講ぜられたわけでありまして、わが国もこれに参加いたしまして、ポンド危機を乗り越えることができたのであります。その後、御指摘のように、デフレ政策をも併用いたしまして、ポンドの危機というものは大体峠を乗り越えておる現状でございます。これは、申すまでもなく、一つの連帯的な関係にありますので、ポンドにしろドルにしろ、こういう国際通貨の破綻というものは非常にそれからそれへと影響を与えるのでございますから、これは一国の問題ではない。世界全体、あるいは自由諸国、自由圏の共通の問題でございます。でありますから、最近は特にこの国際連帯感が高まりまして、こういう問題に対する動向を各国が各方面から注視しておる。そして、危険信号が上がれば、これに対する対策を十分にとるような訓練ができておるのでございますから、絶対に安全とは言えないが、しかし、危機がそのまま実現した場合にはどうするかというようなことよりも、危機を乗り越えるだけの十分の準備をわれわれは共通の問題として講じなければならぬ。なおかつ、非常な危機が迫ってくるであろうという想定のもとに御質問のようでございますが、われわれはさような危機を未然に防止するだけの十分な訓練と自信があるということをもって御質問にお答え申し上げたいと存じます。
  30. 穗積七郎

    穗積委員 大臣は、アメリカ並びにイギリスとの外交上の関係によりまして、ポンドの危機について正直な話ができないであろう。いかように考えましても、いまおっしゃったような甘い分析で日本経済外交のかじをとっておられるとは私は思いません。そこで、こういう公の場所では、いささか、イギリス経済政策あるいはポンド運命に対してこれをディスパリッジする、批判するような印象を与えることが政治外交関係から好ましくないという配慮で言っておられると私は思います。しかしながら、その配慮は国民にはわからないのです。一体、そんな甘い情勢判断で、日本の円の問題をこれから考えて、あるいは貿易の問題をお考えになって、経済外交方針をおとりになっていいのでございましょうか。あなたはそれに対して責任が持てますか。お互い政治家でございますから、判断を誤って責任をお互いにとらなければならぬ場合があると思う。私は、端的に言えば、今年度内、幾らおそくても来年の春までにはポンドは必ず危機に当面すると思う。引き下げをやらなければ、国内国民生活のアップもできなければ、輸出もできない、競争に勝てません。いまのイギリス労働党がああいう保守的な、コンサバティブな、現状維持的な政策を続けております以上は、部分的にやった金利に対する平衡税、それから今度やった緊縮政策、こんなものでポンド国際通貨としての問題が解決できるなら、われわれは苦労する必要はない。与党、野党の間で声を大にして議論する必要はないのです。そうではないと思うのです。  続いてお尋ねいたしますが、そういう判断については、私は、年度内に、おそくも来年春までにポンドは必ずくずれると思う。そういう判断に立って日本経済あるいは貿易の外交政策というものを外務省がとらない限り、わが外務省というものは、国民生活、経済の発展に対して妨害者になると私は思うのです。インフレ競争すなわち通貨の引き下げ競争の中でアメリカを中心とする自由主義諸国間における過剰生産市場の争いに臨んでいく、そのあげくの果ては、昭和四年、一九二九年のデッドロックにぶつかる、ようやくにいたしましてわが国経済も来年その段階に到達してきたと私は思う。一大臣、あなたも私も、政治外交について、お互いに国会に席を置いて、そして国民の負託にこたえて議論するわけですから、とこでひとつ勝負しましょう。あなたは、年内に絶対にポンドは微動しない、私は、微動する、微動どころか大きなデッドロックにぶつかると判断をいたしております。したがって、そうなりますと、日本のいまのインフレ政策と逆行するわけですから、国際貿易競争の中、すなわち国際通貨防衛戦争の中で深刻な問題が出てくる。そうなったときに、最近ですらすでにあらわれている中小企業の倒産の問題なり、すなわち日本経済の構造的な欠陥というものが、そのインフレ政策または逆にデフレ政策の中で露呈してくるわけですね。それはあなたのほうがむしろ専門家ではありませんか。私も通産省に、わずかばかりの期間ですが、あなたの部下としておったことがある。そのときに深刻に考えたことはそのことでございました。それが再びやって来たのです。これはわが国経済における宿命的な一つの弱点であって、それが今度は、一九二九年より倍増された深さと広さにおいて、深刻な国際競争の中で実はこの決着をつけなければならぬ段階に来ていると思うのです。それが国際通貨の危機となって象徴されておるわけです。あなたは責任持ちますか。国内の各企業あるいは国民生活を、そういう安定成長が今後続くから心配するなという方針でお導きになって、来年も再来年もその次も、生産は拡大し生活はアップされる、そして、階級間、産業間、地域間の格差の矛盾も出てこない、こういうことが言い切れますか。これは実は最近の国際情勢の中で下部構造における最も重要な問題だと私は思います。ここから日韓の問題もベトナムの問題も出てきておると思うのです。だから、責任を持ってもう一ぺん念のために、私とあなたの、議員としての、政治に参与しておる者としての責任をかけて、ひとつここであなたの御答弁をいただきたい。私は行き詰まると思うのです。
  31. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 先ほども申し上げたように、いわゆる資本主義経済は、相当な波を越えてまいりまして、いまや相当の訓練を積んで、いろいろの経済危機に対する防衛の方法というものを相当研究しておるのであります。社会党は、しばしば、過去におきましても、いよいよ資本主義経済が破綻に瀕するとか、あるいは何月危機とかいうようなことを繰り返し繰り返し言い続けられたのでありますが、事実は決して社会党に味方をしなかったのでございます。御記憶に新たなところだろうと思います。  さようなぐあいで、あなたは必ずポンドの崩壊が来るということをおっしゃっていますけれども、これは一国や二国の問題じゃない。世界全体の国際通貨の問題でございまして、これを何とか現体制を守ろうという国際連帯感が相当に発達しておるし、その組織なり運営なり方法等についても相当に熟達しておりますから、私は、そう心配のあまり、いろいろな対策を、その破綻のときを予想していまから講ずるというようなことは、かえって経済現状にむしろそのこと自身が非常に弊害をかもすゆえんである、かように考えまして、さような見方をしながら政策を樹立することは、私は反対でございます。それは国家のためにとるべからざる政策である、かように考えております。
  32. 穗積七郎

    穗積委員 椎名先生は、あなたはひきょうですね。私は、資本主義社会構造か社会主義社会構造か、その革命の問題を論じているのじゃないのです。資本主義経済体制内におけるいまの国際競争の中でポンドの位置が守れるか守れぬかということを言っている。いまの平価によるポンドは守れないと私は言っているのです。その行き詰まりと矛盾に対してどういう対策をもって臨むかということは、いま言ったとおり、国際連帯の中でわが国に直接一番早く響いてくるわけです、地理的には遠いけれども。フランスには響きません。フランスには条件は有利になるでしょう、国際競争の中で。ところが、わが国運命連帯で、それがドルと結び円に結んでおるから言っておるのです。  それでは、外務省にお尋ねいたします。現在の時点においてアメリカ国際通貨の保有量はどれだけですか。その中に占める金地金はどれだけになっておりますか。それから、EECの保有するトータルの国際通貨はどれだけで、その中で金メタルの占めるパーセンテージはどれだけですか。日本の現在保有する国際通貨の総量はどれだけですか。その中で金メタルの占めておるパーセンテージはどれだけか。これをちょっと伺いたい。大臣はいささか簡単に考えておられるようだ。そういうことでは国民は安心できません。われわれは安心できない。だから、その構造的な矛盾というものを立ち入ってお尋ねいたしますから、数字でございますから、これはありのままにお答えをいただきたい。
  33. 中山賀博

    ○中山政府委員 アメリカの長期短期の債務関係というものは、いまここに数字を持っておりませんけれども、御承知のように、昨年は総合収支といたしましては三十億近い赤字が出たわけでございます。現在アメリカが持っております金の保有量は百五十億を割ってきたわけでございます。それから、日本の持っております外貨は大体二十億近くございまして、中で金の占める割合は、あとで訂正するかもしれませんが、私は一割以内だと思います。
  34. 穗積七郎

    穗積委員 お答えになりませんでしたけれども、アメリカの金の保有量はどれだけですか。それから、フランスを中心とするEECはどれだけになっておりますか。
  35. 中山賀博

    ○中山政府委員 アメリカは、正確には覚えておりませんが、百五十億ドルを割っております。それから、ヨーロッパのEECの金の保有量は、全体としてアメリカの保有量を凌駕しております。
  36. 穗積七郎

    穗積委員 どれだけですか、数字……。
  37. 中山賀博

    ○中山政府委員 ちょっといま……。
  38. 穗積七郎

    穗積委員 凌駕どころのことではないのです。構造的な量の問題、程度の違いではなくて、質の問題に転換してきているわけですから、それをちょっと明らかにして大臣の認識を改めておいてもらわないと困る。昔の経済の頭でこれからの国際競争の展望に臨まれたのではミステークを起こします、エラーを起こしますから。どれだけですか。
  39. 中山賀博

    ○中山政府委員 資料を取り寄せましてお答えいたします。
  40. 穗積七郎

    穗積委員 これは、いまお話がありましたように、フランスを中心とするEECが一番強い立場におるわけです。それから、イギリスは非常に弱体でございます。そして、イギリス労働党は、自由化に逆行いたしまして、昨年の暮れの選挙のとき政権をとってからこの間まで、むしろ保守党より古い経済政策をとって、旧連邦、すなわちグレート・ブリテンの植民地、あるいは属国をエンクローズして、その中における経済の立て直しをやろうと考えておる。こんなものができるはずはありません。なぜこういうことに逃避したかというと、国内における経済的な社会改革、これをやる勇気がなかったからです。そこで、エンクロージャー政策をとって、そして旧植民地経済と女王を中心とする古くさい経済統合によってEECと対抗する、あるいは日本とも対抗しよう、こういう政策をとって、それが数カ月でひっくり返った。今度は国際自由化に臨まなければならぬということになって、そこで、その行き方として、国内の労働階級、中小企業あるいは一般の生活に緊縮政策をとって、井上準之助さんの緊縮政策と同じですよ。これは国内的には不評を買うでしょう。しかし、政権はまだ長い、選挙はまだ長いと見ておりますから、それで乗り切れるものなら乗り切りたい、こういうことに転換してきているでしょう。これはできませんよ。のみならず、イギリス経済の成長率というものは二%台じゃありませんか。そうすると、人口の増加を見込めば、イギリスの諸君は国民生活のアップというものはないのだ。たいへんな行き詰まりだと思うのです。それらのことを一々ここで数字を示し合って議論していると長くなるが外務委員会で基礎的な分析をお互いに話し合うことも有意義なことだと思う。いまのお話によりますと、私は、大臣政治的な御発言でございますが、ポンドは守れぬ。守れない場合に一体日本はどうするかということを考えておかなければ、経済社会理事会にわれわれが発言権を持つようになってもナンセンスだと思うのです。何を一体しようとしているのか。いまのお話のとおり、二十億ドルのドルがあるから心配するな、一時的な不安は一掃して、経済界における不況印象をぬぐっていこう、そして国内においてはインフレ政策をとりながらということでしょうが、最近の金メタルはどうですか。これは一〇%しかないと言っている。そのとおりですよ。これで一体わが国国際経済における独立は守れるでしょうか。ドゴールの指摘しているとおりだと思うのです。非常な危機だと私は思うのです。危険な構造になっていると思う。そのときに一体だれが得をしてだれが損をするかということがこれから問題だと思うのです。国内においても国際的にもそうです。だから、いま行き詰まりました没落地主であるイギリス経済が、ポンドは必ず没落する、それを一体われわれは何のゆえをもってそれに心中しなければならないかということが私にはわからないわけです。おそらくは、ポンドがやればドルは必ず切り下げを競争でやらなければもてない。貿易も伸びない。アメリカ経済もまた年の成長率は国際的に最低にいるわけです。Cクラスにおるわけでしょう。そうすると、日本の外貨というものは、いま言ったように二十億ドルのうちほとんど全部が米ドルで持っておるわけですから、これは当然に平価切り下げによるインフレ政策に転換する以外にない。その前哨として、今六五年度の国内予算というものは、国際連帯の中で守るというならば、なぜ一体わが国においては緊縮政策をおとりにならぬのでしょうか。イギリスはとっている。それが正しいからわれわれ支持すると言っておられる。そういう構造を英米日の経済的な運命共同体の中でおとりになるとするならば、わが国の予算・経済も、これは井上さんが不評を買って殺されましたけれども、しかし、経済の段階としては、今年度のようにインフレ政策をとる段階ではなくて、デフレ政策をとってみてなおかつ守れるか守れないかわからぬという円の運命になってきていると思うのです。  局長、あなたは事務当局でありますから、経済を客観的かつ正確に責任を持って分析をし、そしてこれを国民の前に示して何ら差しつかえない。われわれ国民代表として最も不安に思っている点を申し上げまして、そして、国連経済外交に一体いかなる方針で臨まれるのか。いまのお話だと、ポンドと心中しよう。われわれはその政策に賛成できない。そんなことで、国連に、経済社会理事会発言権を得たといたしましても、一体だれのために、何のためにわれわれはこれを歓迎すべきであるかわからないのです。局長は一体いかなる分析と見通しと方針をお持ちであるでしょうか。
  41. 中山賀博

    ○中山政府委員 先ほどの諸外国の外貨保有量と金の保有量について、数字が届きましたので、まずお答えいたします。  アメリカの外貨保有量は百五十八億でございまして、そのうち金が百五十六億、九八・六%でございます。それから、EECは、百八十九億でございまして、そのうち金が百二十八億ドル、六七%でございます。それから、イギリスは、外貨保有量が二十六億、うち金が二十三億ドルでございます。八七%。日本につきましては、現在の外貨保有高は二十億二千万ドルでございまして、うち金が三億ドルで一五%を占めております。これは締め切った日は六四年十二月でございます  いまのポンドの価値の問題、それから、それがまたひいてはドルにどういうふうに響くかという問題でございますが、御承知のように、去年の暮れすでに、たとえばクリスマスの前にポンドの平価切り下げがあるというようなうわさもありました。私は当時通産大臣のおともをして、OECDへ、ちょうど閣僚会議がございましたので行きましたが、最も大きな問題としてはこの問題が取り上げられたわけでございます。そこで私が受けております印象では、いま大臣からお答えがありましたように、ポンドの危機という問題は、単に英国だけの問題ではない、これはEECも関係するし、もちろんアメリカにも響いてくるものであります。でありますからして、去年の暮れに三十億ドルの金を拠出し合って、そうしてポンドの危機を回避するように出る準備をいたしましたときにも、あれだけ御案内のようにアングロサクソンの金融支配に対して批判的なフランスまでが、きん然としてこれに貢献しているというわけでございます。私は、ポンドの切り下げがありましたら、当然ヨーロッパ全体の切り下げに及び、そうして非常な混乱が来るものだと思うわけでございます。したがって、各国とも何とかしてこのポンドの価値を防衛しようとして努力をしておるし、なかんずく、イギリスに対しては、いわゆる金融的なディシプリンというものを確立して、そうしてインカムズポリシーを確立して、そうして放漫な財政政策を行なわないようにということを強く要望しているわけでございます。今度発表になりました予算を見ても、かなり均衡予算に努力をしておりまして、これに対しては、きょうの新聞にも出ておりますように、各国とも一様に好感を持って迎え、そのイギリスの努力を多としているというわけだと思います。したがって、私は、ポンドの危機の問題は、単に日本だけがこれと心中するという問題じゃなくて、やはり、ヨーロッパにもアメリカにも、世界的な金融の一つの問題だと思います。ただ、御承知のように、ポンドの地位というものは、戦後かなり、低下してまいりまして、たとえば十年ほど前は世界の貿易の半分はポンドでやって、半分はドルだったわけですが、いまは三〇%くらいに落ちております。これは確かにポンドというものが常に危機をかかえてなかなか多難な道を歩んでおるということは事実でございますけれども、それじゃポンドにかえて何をつくるかということになると、そこに非常にまた問題が起こって、御承知のような国際流動性の問題が起こっているわけであります。しかし、これとてもやはりみんなが協力してやるということでありまして、私は、やはり、このポンドを買い支えるというか、防衛のための努力は今後も続けていかれるであろうし、また、日本もその一端をになうべきだ、こういうように考えるわけであります。
  42. 安藤覺

    安藤委員長 穗積君に申し上げます。時間があまりございませんので……。
  43. 穗積七郎

    穗積委員 時間のことは聞いておらぬ。
  44. 安藤覺

    安藤委員長 あなたのほうでお打ち合わせ願っておりますので、できるだけ要約してお尋ねください。
  45. 穗積七郎

    穗積委員 安保理事会答弁さえちゃんとしていただけば早く済むのですが、途中で引き下がることになると、責任上ちょっと困るのです。それで、場合によりましたら、安藤委員長の良識ある格別なあれで——この条約の問題はきょう何か話ができておるのですか。私は、前々から、これについては非協力であったわけじゃないのです。条約を押えておいてどうしようなんていうような、そういうさもしい、どろくさいことは反対だからと言って、早くから大臣の出席を求めているのです。政策論でありますから、事務当局に聞いたのでは、あと責任の所在がどこに行ったやらわからぬようになるから、いやがらせのために大臣を要求しておるのじゃない。大臣がお出になるなら、何曜日でもけっこうです、どんな時間でもけっこうです、夜中でもけっこうですと言って委員長にお願いしておった。というのは、これは重大な転換期に立っておると判断しているからです。ところが、危機感の違いかもしれませんが、同じ日本の共同体の中に住みながら、わが外務省とわれわれ野党との間でこれほど情勢分析や見通しが違ったのでは、政策における一致点なんていうものはあり得るはずはないのですから、これはたいへんなことだと思うのです。そういう意味で、ぼくはいやがらせの質問じゃないのです。条約について何か言っておかなければならぬというような行きがかりの質問じゃないのです。機会があったら外務省に一ぺん、この問題についてどう判断しておられるか聞いてみたいと思っていたのです。これは一番大事なことだと思うのです。そういう意味で、たまたま国連憲章改正という重要な問題が出てきましたから、その機会にこれを明らかにしておきたいと考えたわけです。特にいま、外交・上における拒否権を中心とする誤った大国主義の戦争政策、それから経済的にはいまの国際資本主義経済の危機といったような矛盾が構造的にあらわれてきておる。この国際政治経済の両面は、最近の情勢の裏と表をなすものです。すなわち、現在われわれの立っている時点は、政治外交の上においても、国際経済の今後の方針についても、重大な転換期をなすものである。そういう重要な質疑だから、実は委員長に特にお願いしたのです。なぜ一体時間を制限してお打ち切りになるのですか。
  46. 安藤覺

    安藤委員長 御趣旨はよくわかっておりますが、きょうは外務大臣が四時四十分までここにおっていただくことができますが、それ以後になりますと所用のため退席されざるを得ませんので、このことを了承して私は外務大臣に出席を求めております。しかるところ、あなたのほうにはなお三名ぜひ外務大臣国連憲章問題においてきょう質問したいと言われる方がありますから、御調整を願いましたところ、帆足、西村それぞれの方々から四時四十分までに終わらしたいからというお話し合いでございましたので、いまあなたの時間がまいりましたから御注意を申し上げただけであります。
  47. 穗積七郎

    穗積委員 それは私は実は伺わないで来たのです。  ちょっと委員長に申し上げますが、まだ本国会は五月下旬近くまであるわけです。そうして、この審議は、私は準備をして真剣にこの問題については質問をしたいから、他の同僚諸君はだれとだれとだれと三人質問者があり、私を加えて四人だ、順序はどうでもいいから、時間をいただいて、政策論だから大臣に来ていただきたいと思っておった。それをなぜ一体大臣のペースによってそんなに国会の審議権が剥奪されたり制限されたりしなければならぬのでしょうか。まだ会期はありますよ。
  48. 安藤覺

    安藤委員長 お答えいたします。審議権の剥奪などはいたしておりません。
  49. 穗積七郎

    穗積委員 制限じゃないですか。だれが一体そんなことをきめたのか、そんなことは私は一ぺんも聞いておりません。このことは一カ月も前から通告している。
  50. 安藤覺

    安藤委員長 時間の内容については、あなたのほうの同士の間でお話し合いをなさったことであります。  なお、穗積さんに一言申し上げておきます。きょうこれで質問を打ち切ってあと採決をするとか、あるいはこの次にはもう質問なしに採決に入るとかいうような意味ではございません。そういうことは私として何も言うてもおりませんし、現在考えてもおりません。したがいまして、私があなたの時間を制限するというのは、委員長の職権で制限するというのではございません。
  51. 穗積七郎

    穗積委員 私はそんなら譲ってもいいです。順序はどうでもいいと初めから言うておるのです。だから、大臣の御都合できょうだめなら、これでやめましょう。この次に時間をいただいて、政策の問題ですから時には事務当局から説明をしていただくこともあろうと思うけれども、もしきょうお時間がないならこれでやめます。やめまして、続いて次の大臣の御出席のときに私はぜひ時間をいただきたい。そのかわり、私のほうも、ちょっと委員長、申し上げておきますが、いかなる御用務によって御退席になるのか知らぬけれども、われわれ国会の審議が常時二六時中毎日毎日大臣の御都合のために手をあけて待っておらなければならぬというようなばかばかしいことは、実はおかしいのですよ。一体何のための委員長でございましょうか。いささか私は疑問に思うし、不快に感じますね。途中で質問の内容を変えて——私は引き延ばしでもなければいやがらせでもない。真剣に外務省や大臣の御意見を伺っておる。突如としてそんなことを言われても困るわけですよ。
  52. 安藤覺

    安藤委員長 穗積さんに申し上げます。西村さんがきょうの御質問は後日に譲るということにされるそうでありますから、その西村さんの御担任になる時間をあなたが御質問くださってけっこうですから、さらにこれから以降二十分あなたの御質問をお続けください。  それから、申し上げておきますが、決して私のほうから制約とかなんとかということは現在の段階においていたしておりませんから、お話し合いの上でなさってください。
  53. 穗積七郎

    穗積委員 それじゃ続いてお尋ねいたします。それにしても、無制限にやるというのも、外務委員会でございますから、経済論争は大事な基礎でありますけれども、次の機会でもまた伺えるから、きょうは締めくくりとして二点だけ伺っておきたい。  第一点は、フランスが提案しておる国際通貨提案、これは具体的には私は多くの問題がまだ残されておると思うのです。しかしながら、先ほど中山局長も触れられたように、今世紀の外交並びに国際経済の中においてはアングロサクソンの帝国主義的な世界支配というものを破るときであるというふうに思います。そういう意味では、アジアに位するわれわれといたしましても、アングロサクソンのポンドまたはドルを中心とする一方的な国際金融支配というものはもっといわば民主化する、国際的な民主化の中で合理的に行なわれなければならないと思うのです。いままでは、ドル一方の、ポンドにかわるドルが引き続いて二十年間世界経済を支配してきた。貿易も支配してきた。制限も加えてきた。まことにアメリカ経済のエゴイズムの中で世界の金融並びに貿易が動いてきておる。国連もまたそういう運営が行なわれてきた。そういうときに、いよいよことしから来年にかけて大きな転換期である。現状維持者にとっては不安の年でしょう。危機かもしれぬ。われわれは危機とは考えておりません。ポンドの危機ではある。ポンドにとっては危機でしょう。それから古い体制のドルにとっても危機でしょう。わが国においても、独占資本を中心とする円維持者にとっては、現状維持者にとっては危機でしょう。われわれはそう考えない。経済における民族主義的なデモクラシーの実現できる絶好の機会であるというふうに考えております。この転換期に立って、国連経済社会理事会日本発言権の道が開かれようとしておるときに、このフランスの提案しておる国際通貨基金の具体的な内容について、そういう路線、そういうアイデアについては、私はアジアにおける日本としては支持すべきものだと考える。それをどうお考えになっておられるか、この点について大臣からひとつお答えをいただきたい。補足があるならば中山経済局長から御説明をいただきたい。
  54. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 現状は、ドル、ポンドというのは国際通貨として支配的にこれが通用されておるのでございまして、たとえどういう構想でありましても、この現状に急激な変化を与えるということは、国際経済の安定の上からゆゆしい重大問題でありますから、軽々にこれにくみすることはできないと私は考えるのでございますが、なおこの点に関して中山局長からお答えいたさせます。
  55. 穗積七郎

    穗積委員 外務省はドゴール提案を分析し、その研究をしておられるか、そこからまず説明をしてください。
  56. 中山賀博

    ○中山政府委員 フランスの考え方は、端的に言えば、金為替制度から金本位制度に返っていくという考え方が基調になっておると思います。もう一つ、その基調の思想といえば、昨年のIMF総会でもフランスの大蔵大臣のジスカール・デスタンが言いましたように、基礎的には国際流動性は不足していない、むしろ国ごとのバランスをしたペイメントの不安というものがある、そして、そのよって来たるゆえんのものは、むしろその国々のいわゆるマネタリーディシプリンというものが欠けておるからであるということを言っておるわけでございます。したがって、ジスカール・デスタンは、ドルに対してもポンドに対しても、まず国内のマネタリーディシプリンというものを保持することが必要だという論拠から説いてきておるわけでございます。そして、この問題に関連しまして、国際流動性はそれ自身としては不足じゃないのだから、したがって、ポンドとかドルとかいうようなものよりも、もっと金に近くくっつけるというか、近いもので国際的な一つの決済をしていくべきだという考えが基本にあると思うのです。ただ、この問題につきましては、私も専門家ではございませんけれども、われわれがしろうととしてでも一つ考えつく問題は、それは確かに国際流動性は現在の状態で足りなくないという前提に立つにしても、今度金為替から金本位制に移っていったときに、それでもなおかつ国際流動性は十分あるかどうか、ことに、世界の貿易というものが伸びて、そして金の生産というものが限られているということになりますれば、やはりそこに一つの大きな問題があるのじゃないか、その辺を一体どういうように解決していくのかということが根本的な疑念として浮かぶわけでございます。  それから、そのドゴール政策によりますと、EECの先ほど申し上げました数字でもわかりますように、金準備が圧倒的に多くて、外貨保有は比較的少ない。たとえば、フランスなんかは、十三億ドルぐらいのドルを持っておって、これはカレントな取引に支払っていくけれども、大半は金で持っておるという状態であります。ただ、この問題は、フランスとしては、ことに金選好の強い国民としてはこれは当然なことでございますけれども、しかし、同時に、日本とフランスで若干違う点は、たとえば、日本は、いま申し上げましたように二十億ドルの中で十七億以上もドルを持っておりますけれども、同時に、俗に言えばその金でまた外国から金を借りているという面もありまして、日本の債権債務を見れば、ドルの債務のほうが大きい。フランスが持っている十三億ドル、あれをさらに金にかえるという問題もありますけれども、あそこはやはり、貸借対照表を出してネット十三億ドルくらい遊ばしておくことができるわけでありますから、その辺がやはり日本と違う点じゃないかと考えております。
  57. 穗積七郎

    穗積委員 これは局長にお尋ねするのが適当かと思いますが、わが国の保有外貨の中で、私の調べたところでは、やはり金のパーセンテージが先進国の中で一番低い。しかもその程度がひどい。これは、非常に不安定状態に入ってきました国際経済の中で、政府としては国民経済に対して責任があるわけです。もう少しやはり独立性を保つように、ドルに宿命的に結びつけておく国際通貨ではなくて、やはりそれから独立をする外貨保有に切りかえておかないと、これは非常に危険だと思う。それについてのお考えはどうですか。御方針はどうでございましょうか。
  58. 中山賀博

    ○中山政府委員 これは大蔵省並びに日銀の問題かと思います。私からお答えするのも適当でないかと思いますが……。
  59. 穗積七郎

    穗積委員 大蔵省であっても、外務省であっても、通産省であっても、政府方針ですから、外務委員会において経済政策質問ができないというのでは困ります。答えるだけの意見と資料を持っていないなら別の機会でもいいですよ。われわれは政府に聞いているのです。国の執行部に聞いているのです。そんなばかな御答弁がありますか。
  60. 中山賀博

    ○中山政府委員 直接の担当ではございませんが、日本でいま申されたような金の保有量が少ないということは、一つは、日本アメリカのドルを保有しておりますけれども、同時に、アメリカに対してそれをいわば見せ金としてたくさん金を借りているということも一つ原因だと思います。それから、もう一つは、もともとヨーロッパの国民は金選好の傾向が非常に強くて、これは民間でも多額の金をフランスあたりでは死蔵している、退蔵しているといわれますけれども、日本では、もう一つ考えられますことは、やはり銀行に預けておけば年に五分なら五分という利子もあがるわけでございます。金利も得られるわけでございまして、そういう点もこういう結果になっている一因ではないかと思います。また、将来につきましては、そういうわけで、国際的な情勢もにらみ合わせながらいろいろ討議研究が行なわれていると聞いております。
  61. 穗積七郎

    穗積委員 最近の傾向は、御承知のとおり、ヨーロッパ並びに日本は換金の傾向がだんだん強まるというか、増大しつつあります。この傾向は、外務省としては、外務省というより日本政府としては、歓迎すべきものであるとお考えになっておりますか、あるいはこれを抑制しようとお考えになっておられるか、そのいずれであるか、伺っておきたい。
  62. 中山賀博

    ○中山政府委員 この金価格の問題は一つの結局ドル価値維持につながる問題でございまして、われわれとしては、先ほど大臣も申されたように、ドルの価値維持ということについてできるだけ協力していきたいという考え方でございます。  それから、もちろん、国内で密輸等によって金の輸入が行なわれ、しかもそれが高価な値段で売買されていると聞いておりますけれども、しかし、この傾向は、われわれとしては、いま言った広い国際協力の意味から押えていくべきものだと考えます。
  63. 穗積七郎

    穗積委員 保有外貨の中における金メタルのパーセンテージというものは、これは経済技術的のようですが、最近のような国際通貨の動揺期に入りますと、非常な大きな政策の問題の一つになるわけです。そういう意味で、きょうの御答弁ははなはだ不十分であります。そこで、私はあげ足をとったり、いやがらせな質問を続けようと思っておりませんが、関係があるのは政府部内のことで、われわれ国会に関係ないことです。あなた方のほうのことは、われわれそういうことに責任を持つ必要はない。だから、外務省であろうと、大蔵であろうと、通産であろうと、経済企画庁であろうとかまいませんから、政府統一した方針として、どういうものであるか、ちゃんと御相談の上で、次の機会に答えていただきたい。  この問題について、もう一ぺんだけ、よろしゅうございますか。
  64. 安藤覺

    安藤委員長 どうぞ。
  65. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、最後に、この問題については外務大臣あるいは中山局長いずれでもけっこうですけれども、イギリスが財政予算の面でデフレ政策をとりだしておる。これは国際的に正しいことである、歓迎すべきことであるという御意見がある。わが国はそういう政策をとっていない。むしろ経済インフレ政策をとって、そしてそれによっていまの国際的な不況を食いつないでいこう。これはちょうど井上緊縮政策の後のわが国の財政金融政策のように、このことが実はやがて外交の面にあらわれますとエクスパンショニズム、膨張主義に発展してくることでございましょう。その基礎はここにあるわけです。したがって、私どもとしては、この問題は軽視できない。そうであるならば、ここでお尋ねしたい。その政策論争でありますが、イギリスにおいてはデフレ政策が正しくて、わが国においてはインフレ政策、膨張政策が正しい、それでお互いはドルを中心にして経済的な運命共同国である、これは矛盾ではないでしょうか。一体どこにそういう政策国際的な変化、二つの違った政策をとらなければならぬ理由と原因があるか、それが正しいか正しくないか、われわれ大いに疑問を持っております。いかがなものでございましょう。
  66. 中山賀博

    ○中山政府委員 経済成長、それからまた景気政策と申しましても、やはりこれは、ことにわが国では直ちに国際収支の天井というのか山にぶつかるわけでございます。したがって、景気政策も、国際収支の健全なる状態を維持しながら、それが第一前提となってすべての施策が行なわれているわけでございます。したがって、先ほどのフランスの考えにもありますように、確かに国際流動性の問題は一面ございますけれども、他面において、各国は、ある国は国際収支がよろしい、ある国は国際収支が悪いという国があるわけでございます。そうして、それらの国が国際収支に合わせて国内景気政策をとっていくということも、これまたやむを得ざることかと思います。ことに、先ほど申し上げましたように、ポンド国際通貨として、この価値維持にイギリス政府が最大の重点を置いて経済を運営していくとなれば、当然国内におけるマネタリーディシプリンというものを確立していかなければならない。そうして、国際収支をしっかり支えるために国内経済においてある種のある程度のデフレ的な傾向を来たしていくことも、これもやむを得ない。しかし、いまの日本の状況は、まあ国際収支については、そう楽観することはできないと思いますけれども、しかしまた、必ずしもイギリスと同じ状態にあるわけではございませんので、これはやはり自分の国の国際収支とにらみ合わせながら各国がかじをとっていくべき問題だと考えております。
  67. 穗積七郎

    穗積委員 大臣のお考えを伺いたい。いまの御答弁について、デフレとインフレの問題について伺いたい。
  68. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日本のとり来たった政策はやはりデフレ政策でございましたが、しかし、そのために、中小企業をはじめとして、他の原因にもよるところでありますけれども、非常な倒産を見るに至った。こういうようなことで、そうかといって、デフレ政策、緊縮政策を一ぺんにゆるめるわけにはいかぬ。しかし、大体国際収支の見通しがつきましたので、それで、この公定歩合の引き下げ等を順次に行ないまして、いまこのデフレ政策というものを緩和しつつある。こういう状況で、これがインフレ政策であるというお考えは、これはいかがなものかと思いますが、しかし、それはしばらくおいて、とくかく、国際通貨でつながっておるから同じような政策をどの国もとらなければならぬということは、私はないと思います。
  69. 穗積七郎

    穗積委員 私は、実はその点がちょっと、次の機会にいたしたいと思いますが、大事な認識の違いが、同じ国会の中の議員同士でありますけれども、悲しいかな認識が違うわけです。私は、ポンドの切り下げを契機にして、これから自由主義諸国におきましては、貿易は、関税の問題と、国際通貨の価値のいわば平価切り下げ、国際通貨切り下げ競争、そういう安易な道を歩んで貿易の拡大をはかる段階が、ことしから来年にかけて表面化してくる危険があると判断をいたします。ということは、わが国においては、中小企業並びに労働問題というものを本質的に解決すべきものを、それを避けて、しかも、世界的に異常な過剰設備投資をいたしました独占資本、これが、中小企業どころか、独占資本自身が持ち切れなくなってきている、そういう中で緊縮政策をとると、階級的に自民党の背景とするその政治的な基礎がくずれる、そういうことで、階級的な立場に立って実はインフレ政策をとりつつあるというふうにわれわれは非常に不安に見ております。それでいけるのならばいいけれども、とどのつまりは、今の路線を発展せしむるならば、満州事変直前の国際的な資本主義経済の矛盾と危機が表面化してくるのではないか。そのことを中心にもう少し伺わないと、佐藤内閣の第一の外交の柱である国連中心外交というものが何であるのか、実体がさっぱりわからない。外交においても経済政策においても、そういうせっかくの曲がりかどの機会ですからお尋ねしたわけです。ところが、委員長からの突然の御指示もありまして、帆足委員も続いてあなたに質問をしたいということですから、きょうはこれで保留いたしまして、次のあなたの御都合のよい時間に私もできるだけ協力して合わせます。しかし、これはむしろ大臣が国会の都合、ペースに合わせるべきです。あなた方は国会から選ばれてできた執行部ですよ。このごろは、何だか大臣の都合に国が合わせて、議員どもはそれに手待ちをしていなければならぬ。大臣はきょう一時間しかないから、おまえは三十分だ四十分だという、ばかばかしい、そういうみずからの民主主義を封殺するようなそういう審議の状態というものは、私は絶対に賛成できない。したがって、こういう真剣な問題でありますから、ぜひ、あなたの都合によって、夜でもけっこうですし、早朝からでもけっこうです、私はいといませんから、あなたもそのつもりでひとつ用意をしてきて答弁をしていただきたい。この次私がお尋ねすることをあらかじめ申し上げておきますから、中山さん、あなたはそこへメモしておいて、外務省はどうだこうだ、大蔵省に聞いてくれなんて答弁しないように。答弁ができなければ大蔵省を連れてきてください。ぼくは外務省に敬意を表してきょうは通産と大蔵は呼ばなかったのだ。経済局というものがあるのですから、おかしな答弁はやめてもらいたいのですよ。  それで、あと、経済社会理事会を中心とする今後のわが国国連外交の中で、いまの国際通貨の問題が一点と、それから、もう一つは、やがて国際的に出てくる関税引き下げの問題、これは自由化の中で重要な問題であると思います。それに対して一体どういう態度を当面とられるか。当面の二つのトピックでありますから、それに対するお尋ねをいたしますので、政府方針をまとめてきてください。それから、次にお尋ねしたいのは、安全保障理事会の増員が今度の改正案の中に出てまいりました。これについては拒否権の問題を中心にしてお尋ねをいたしたいと思っております。それで、これについて一体どういうお考えを持っておられるか。そのときに私は、これは藤山さんが大臣当時、条約局長はいまユーゴに行っておられる高橋さん時代であったと思いますが、国連政治機構を、安全保障理事会の数を増員するというようなこそくなことではなくて、拒否権を削除し、そうして、同時に根本的な改革をやって、国連政治機構というものを、執行部とそれから総会、すなわち、政府と議会に分けるように分離すべきではないかといって、この世論は、学者、評論家の間に出ておるだけではなくて、すでに各国の国会議員を中心とするいろいろな集まりにおいてこの問題が提起されていることは、外務省当局は御承知のとおりだと思う。この問題と関連をいたしまして私は具体的にお尋ねをいたしたいと思います。これは今度の改正案の中に間に合うものではありません。しかしながら、あなた方が安保理事会に出ていって、拒否権の問題と、それからいまの総会意思は一体何を背景とするものであるかということを議論をして、国連外交というものを強化していただかなければ、国連外交なんというものは、各国その国のエゴイズムによって、やったりやめたり、無力になったり、場合によれば無力ではなくてマイナスのじゃまになったりする。いまのベトナム事件で証明されている。したがって、安保理事会増員することはわれわれは賛成いたします。その改正案に賛成いたしますが、この中心である大国の拒否権の問題とそれから国連政治構造を執行部と総会に分離する提案については、外務省は一体どういう展望方針を持って臨まれるか。それから、それに関連いたしまして、五十一条の削除の問題をどう考えておられるか。それから、その次に、十二章並びに十三章の、たとえば七十三条、あるいは七十七条、七十八条等の信託統治制度というものは、これは国連憲章の中から削除すべき段階に来ているというふうに私は考えて、この問題については外務省はどういう用意を持って国連外交に臨まれようとしているか。それから、その次には改正手続です。今度の改正でもそうですよ。これは安保常任理事国一国の拒否権があればできない。世論でできないのですよ。総会でできない。こんなばかな、非民主的な、独裁的な、権力主義的な誤まった機構がありましょうか。国連憲章の五十一条とこの改正手続規定というものは、国連精神根本的に矛盾する不名誉な規定でございます。これは当然総会によって決定されるべきものに改正さるべきだと思う。  以上につきまして、私は具体的に内容にわたって質問をしたい。それで、委員長もお聞きのとおりであります。そのほか、この改正案の具体的な条項の解釈それから、それが提案されているように、はたしてアジア地区の諸国が五だけの数字が確保されるかどうか、これも問題でしょう。それは事務当局にお尋ねいたします。しかし、以上申しました五つの点につきましては、国連外交政策に関すること、外交の路線に関することでございますから、ぜひとも大臣と私の都合の合いますときに十分の時間をいただいて、政策に関する問題をこの際お尋ねをして、わが佐藤内閣国連外交の具体的な内容を明らかにしていただきたい、かように思っておりますから、外務省ではわからぬから大蔵省に聞けの、あるいはきょうは国連局長がおらぬからわからぬとか、つまらぬ御答弁で問題を回避されないように、あらかじめ用意してきて、われわれに満足を与える御答弁を賜わりたいということを要望いたしまして、きょうは委員長のせっかくの御提案で、不当な提案だと思いますけれども、事情を伺いましてわかりましたので、これで私は割愛をいたしまして、途中で帆足さんにやっていただくようにいたします。
  70. 安藤覺

    安藤委員長 帆足計君。  帆足さんに申し上げますが、大臣は四十分までおられます。なるべくは大臣に対する御質問は四十分までに終わるようにしていただいて、あとは、事務当局に対してはそれ以後においても継続してよろしゅうございますから、さようなお計らいにひとつ御同調ください。
  71. 帆足計

    ○帆足委員 国際連合は、過ぐる第二次世界大戦の世界諸国民の体験から、人類に戦争と絶望と恐怖のない世の中をつくろうというのでできたのでございます。しかるに、今日まだ中国七億近くの人口は加盟していない。ゆえに、インドネシアの脱退等ありまして、いわば最も必要なときに国際連合はいま危機に瀕していると思うのです。したがいまして、安保理事会経済社会理事会増員の問題を審議するにあたりまして、やはり根本的に国際連合のあり方について互いにここで意見をかわして、そして国際連合の今日の欠点等について十分検討する機会を得るということは大切なことだと思うのです。穗積君が先ほど言いましたように、どうも今日、外交の問題でも、住宅難解決の問題でも、あるいは厚生省では、たとえば医療保険の問題、それからガンの対策とかウイルスの追及、心臓外科の問題など、非常に重要な問題でも、与党と野党と話さねばならぬことがたくさんあるのに、日本の不幸といいますか、日本の悲劇といいますか、少し距離が遠過ぎるように思うのです。よく英国をだれしも例にとりますが、もう少し共通のコモンセンスというものがあってよさそうなものだと思うのですが、それがどうも、国会の審議というものがただ形式上のやりとりに終わって、ほんとうに意見を交換する機会が少ないような、何か国会の審議そのものにも欠点があるのではあるまいかとわれわれ思うのですが、大体同じゼネレーションに育って、同程度の学識教養の機会に恵まれて、しかもかくも思想が隔たっているということは、私は世にもふしぎなことであるまいかとすら思うのでございます。今度のベトナムを中心とした問題につきまして、昨夜ジョンソン大統領の演説がありまして、一応危機緩和が希望されておる状況で、一るの希望がそこからあらわれてくるならば御同慶の至りでありますけれども、こういう重大な危機に際して、国際連合の安全保障理事会がどういう役割りを演じたかというと、まことに心もとない状況で、国際連合はなきにひとしかったのではないかとすら思われるのですが、ちょっと外務大臣の御所見をその点伺っておきます。
  72. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 国連機能の中で最も大事な問題は、平和維持機能であると思うのであります。国際紛争が起こった場合に、これを国連の権威のもとに収拾するということができればまことにけっこうなのでありますが、御承知のとおり、安保理事会というものがこの役目に相当するものでありますけれども、常任理事会というものの運営が、拒否権の行使によってほとんど全身麻痺の状況におちいる、こういうようなことになっておりまして、常任理事国の連帯感というものの欠除にもよるのだが、拒否権というものがまた大きく作用して、目的に向かって行動することがほとんど何もできない、こういう状況でありますので、この点をどういうふうに改善するかということが、これが一番大きな問題だと思うのであります。それが今日まだ改善をされないという現状でありますので、遺憾ながら、こういったような国際紛争に対する国連機能というものがゼロにひとしいものになっておる、こういうことであろうと思います。なお、この問題に関連して、各国の軍縮がだんだん進んでまいりまして、そして、それと同時に、国連軍と申しますか、国連平和軍、平和維持のための万一の場合の一つのこういう機能国連に備われば、なお万全を期する上においてけっこうだと私は思うのであります。いまそのいずれも機能が欠けておるというところにあると思います。
  73. 帆足計

    ○帆足委員 国連現状が麻痺状況にあるとするならば、私ども、この理事会の増員を論ずる際に、その麻痺状況をどうして直せばいいかということをあわせて論じておかなければ職責が済まないのじゃないかと思うのです。昨夜のジョンソン大統領の演説を読みますと、とにもかくにも一まつの光明があらわれたという点では御同慶の至りですけれども、私はまことに心もとない思いをして実はこの論文を読んだのです。これは翻訳が悪かったせいかどうか存じませんけれども、たとえば、中段のところに、「この戦争は、ほとんどの戦争がそうであるように、恐ろしい皮肉に満ちている。」と、人生の深き教訓のごときものが述べられておりますが、そのあとには、今度は粛然として、「現世代の人類は、破壊か建設か、殺害か援助か、憎悪か理解かのいずれかを選ばねばならない。」、そのあとには何を言っておるかと思うと、「われわれは、いくつかの国が時にはわれわれと争うことがあるということも考えておかなければならない。それはわれわれが豊かで、あるいは強力だからであるかもしれず、あるいはわれわれがあやまちを犯したためとか、これらの国がわれわれの意図について心から恐怖をいだいているためかもしれない。」、こういう思い入った反省のことばが述べられておるかと思うと、今度は突如として、「われわれは空襲だけではこれらすべての目的を達成できないことを知っている。しかし空襲は平和への最も確実な道の必要な一部であるというのが、われわれの最善の、祈りをこめた判断である。」、こういうことばが突如としてあらわれる。かと思うというと、そのあとには、「大砲や爆弾、ロケットや軍艦はすべて人間の欠点のシンボルであり、それらは必要なシンボルであり、われわれにとって大切なものを守るものである。しかしそれらは人間の愚かさを実証するものである。」、こういうざんげ僧のようなことばが書かれてある。かと思うと、今度は突如として、「教室で健康な子供たちを見るのは力強いことである。」、それはしかも、北ベトナムで三十七人の罪なき子供たちを銃撃した一週間後に、その舌の根もかわかぬうちにこういうすばらしいことばがあらわれてくる。それかと思うと、今度はまた、驚くべきことには、「北ベトナムの人々が汗と犠牲で打建ててきたものを破壊しつくしたいとは考えていない。武力を行使するにあたって、自制心とあらゆる英知を働かせるだろう。」、こういうことばもある。私は、この前後撞着した文章を読みまして、現代史の一こまを見るような思いがしました。まるでこれでは、ごろつきが一ぱい飲んで酔っぱらって、おばあちゃんにわび言を入れているような支離滅裂な文章である。人類に戦争回避の一筋の光明があらわれたときに、こういう辛らつな批評をしておる批評家のことばを聞いて——その批評家とはすなわち私でありますが、(笑声)感慨無量の思いがしておりますが、これは一体どういうことであろうか、深く思わざるを得ない。  そういう状況のもとでいま国連の問題を語り合っているのです。しかし、総じてこの外務委員会でゆっくり外務大臣と話し合う機会がないし、また、与党の議員の方々に野党の議員が何を考えているかということを聞いていただく時間がなくて、私どもがどうも枝葉末節に走っているような気がいたしますことは穗積委員と同感でありますが、いかんせんあと十分ばかりの時間でありますから、一、二のことだけをお尋ねいたしまして、あとは穗積君と共同戦線を張りまして、時間を十分取っていただいて少し話し合わねばならぬと思っている次第であります。  そこで、私は、どうも大臣に向かって失礼なことばでありますけれども、この国の官僚制度は、相当の行政力を持っており、実務能力を持っておる官僚制度であるし、また、日本の財界は非常にすぐれた技術と組織力を持っておりますが、どうも政治の面で、哲学が弱いというか、おつむが弱いというか、ものの認識力が非常に弱いような気がいたします。この弱さをやはり外務委員会で補わねばならぬと思うのですが、たとえば、与党の外務大臣は歴代きわめて簡単に、国連外交アジアの一員、そして自由世界の一員、この三つの柱がわが自由民主党の外交の柱であるというようなことを言いますけれども、そう簡単に言って済ませる問題ではないと思うのです。  そこで、まず第一にお尋ねしますが、国連中心主義というのは、それはどういう意味なのか、国連できまったことを守るという意味なのか、多数決のほうにつくという意味なのか、あるいは国連憲章を尊重するという、一つのスピリットというか、理想を持っておるという意味なのか、そこをもう少しはっきり示していただきたい。また、アジアの一員というのはどういう意味か。長い間植民地であったことが歴史の宿命であったとはいえ、それは天の摂理と真理に反することであって、アジア解放されねばならぬ、植民地状況は不正であって不義である、したがって植民地解放の方向にわれわれは力をかさねばならぬという意味であるのかどうか。ただ、われわれもちょっと顔の色が黄色いからたぶんアジア人であろう、そういう色彩学的なアジアの一員であるかどうか。まず三本の柱のうちのこの二本について外務大臣の所信をお尋ねしておきます。
  74. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これはたしか藤山外務大臣時代に唱えられた一種のスローガンと申しますか、それだと思います。それで、別にこれに反対するというわけではありませんけれども、政府の当局者の中でもそれぞれこれに対する解釈があるいはまちまちかもしれません。しかし、大局的に言えば、読んで字のごとく、国連を中心にして世界の平和というものを守っていこう、こういうことじゃないかと思うのです。そのためにもし現在欠けるところがあるならば、これを補強して、ほんとうの平和機構の本山としてそれに値するようなものをつくっていこう、こういうことじゃないかと思うのです。  それから、アジアの一員、これは地理的に考えてもアジア、人種的に考えてもこれはアジアの一員じゃないということは言えないと思うのです。そういう気持ちで外交施策を行なっていく、こういうことでございまして、必ずしも、アジアの一員であるからといって、場合によっては考えを異にする場合もありましょうし、その間に利害の対立もあるでしょう。いろいろあるでしょうが、とにかく、アジアの一員としての自覚を十分に持って外交の諸般の施策に当たる、こういう心がまえの問題であろう、私はさように解釈しております。
  75. 帆足計

    ○帆足委員 御答弁を聞きますと、外務大臣は行政官としては有能練達でありますけれども、外交上の哲学という点についてはまるで話の泉のような御答弁です。これは鉱物か植物かとか、また、民族的には色彩的に黄色人種であるとか、アジアに住んでいるとか、私はそういうことを聞いているのではなくて、これはやはり、社会学、歴史学的な範疇として日本アジア民族とどういう連帯関係になるかということをお尋ねしたのであって、その問題の根本は、色彩学の問題でなくて、植民地として苦労しておった民族が、すなわち欧米に押えられておった民族がいまや目覚めて、そして独立と自治を戦い取る、そして自立の経済復興をし、自分の民族の文化に花を咲かせたいその上に沿うて国際的な平和連帯をはかりたいということ。その大きな流れをわれわれも一緒に助けようじゃないか、そういう意味であるならば、与党と野党との距離は非常に接近すると思うのでございます。ところが、やはりそれに徹してないというのは、過去において日本が、特に英国の極東における番犬として、軍国主義の立場から、むしろアジア解放の友になるべき日本アジアを弾圧するという立場に立ってアジア植民地を持っていた、いまその矛盾が解ける日が来たので、われわれはその矛盾を思い切って解きたいと思っているわけですが、思い切って保守党の諸君はそれを解くことができないというところに悩みがあるわけです。われわれは、英国やアメリカよりも多くの共感と共鳴、また理解と同情をアジアの諸民族に寄せたい、こう思っているわけです。そういう意味アジアの一員と言っていただくならば、バンドン会議に出席いたしましても鼻が高いわけでありますけれども、バンドン会議に出ましたときの足場というものが、むしろ欧米のほうに共感を呼ぶというような足場では、私は心もとないように思うのでございます。  外務委員長、もう時間がありませんね。これでは一体何のために立ち上がって哲学から論じたのか、これはまことに残念なことです。(「あと一分半だそうです」と呼ぶ者あり)まことにありがたいことでありますが、国連総会におきまして椎名外務大臣も、やはりこのことに多少お気づきになって、国連のあり方について再検討せねばならぬという意味の演説をなさっておるのを私は拝読しました。したがいまして、国連のどういう点に欠点があって、どういう方向に日本は改善していく意向を持っておられるかというようなことを、この次の機会に聞きたいと思っております。また、西村君からいただきました資料でございますが、昨日、世界連邦を理想としている国会議会議総会で、英国の下院で質疑応答がありまして、スチュアート外務大臣からある種の世界安全保障の権威ある制度の設立については日本政府とときどき打ち合わせをしておるというような発言があったということにつきまして、この発言は一体何を意味しているのであろうかということを清瀬会長さんからもお尋ねがあったのですが、そういうこともこの次伺いたいと思います。また、ウ・タント国連総長は、何分にも国連は古い国際連盟から一歩脱却したばかりであって、ほんとうに原子力時代に、そしてあれから後数十の国々が独立いたしましたが、東西南北、人類の一大平和同盟として機構がふさわしいかどうかというと、いろいろな欠点が目につくようになったということを指摘しております。これらのことがこの外交委員会で論議されなくて、そうして国際連合についての若干のことだけがここで委員会を通過したというのでは、私は片手落ちであろうと思いますので、穗積議員ともどもこれらの問題を外務大臣にお尋ねいたしますから、どうしてももう一度は外務大臣に出ていただいて、そうして意思の疎通をはかりたいと思います。いずれにいたしましても、外務大臣と私どもは年は五つ六つしか違わぬと思いますけれども、どうも五百年も隔たっているような思いがいたしますのでは互いにわびしいことでございますので、もう少しやはり意見の交換が必要ではなかろうかと思う次第でございます。  このことだけを申し上げまして、たった二十分間一体何のために立ったのかわかりませんけれども、ひとつ御了察願いまして、これでもって終わります。
  76. 安藤覺

    安藤委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。    午後四時四十三分散会