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1965-03-19 第48回国会 衆議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月十九日(金曜日)     午前十一時十九分開議  出席委員    委員長 安藤  覺君    理事 高瀬  傳君 理事 野田 武夫君    理事 福田 篤泰君 理事 毛利 松平君    理事 戸叶 里子君 理事 帆足  計君    理事 穗積 七郎君       菊池 義郎君    鯨岡 兵輔君       佐伯 宗義君    園田  直君       竹内 黎一君    野見山清造君       濱野 清吾君    増田甲子七君       三原 朝雄君    森下 國雄君       河野  密君    西村 関一君       松本 七郎君    永末 英一君       川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         外務政務次官  永田 亮一君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (国際連合局         長)      星  文七君         水産庁次長   和田 正明君  委員外出席者         外務事務官         (大臣官房外務         参事官)    西堀 正弘君         大蔵事務官         (主税局国際租         税課長)    大倉 真隆君         専  門  員 豊田  薫君     ————————————— 三月十八日  委員竹内黎一君辞任につき、その補欠として登  坂重次郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員登坂重次郎辞任につき、その補欠として  竹内黎一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月十七日  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国アメリカ合衆国と  の間の条約を修正補足する議定書締結につい  て承認を求めるの件(条約第四号)(参議院送  付)  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のために日本国とスェーデンとの間  の条約を修正補足する議定書締結について承  認を求めるの件(条約第五号((参議院送付)  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国カナダとの間の条  約の締結について承認を求めるの件(条約第六  号)(参議院送付) 同月十五日  在日朝鮮公民祖国往来自由実現に関する請  願(只松祐治紹介)(第一四二八号)  同)山下榮二紹介)(第一七五八号)  米国原子力潜水艦寄港反対に関する請願(村山  喜一君紹介)(第一七五七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国アメリカ合衆国と  の間の条約を修正補足する議定書締結につい  て承認を求めるの件(条約第四号)(参議院送  付)  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国スウェーデンとの  間の条約を修正補足する議定書締結について  承認を求めるの件(条約第五号)(参議院送  付)  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国カナダとの間の条  約の締結について承認を求めるの件(条約第六  号)(参議院送付)  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国政府フランス共和国政府との間の  条約締結について承認を求めるの件(条約第  七号)(参議院送付)  国際情勢に関する件(日韓問題等)      ————◇—————
  2. 安藤覺

    安藤委員長 これより会議を開きます。  所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国アメリカ合衆国との間の条約を修正補足する議定書締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国スウェーデンとの間の条約を修正補足する議定書締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国カナダとの問の条約締結について承認を求めるの件、所得に対する和税に関する二重課税回避のための日本国政府フランス共和国政府との間の条約締結について承認を求めるの件条以上四件を一括議題とし、審議を進めます。  質疑通告がありますので、これを許します。穗積七郎君。
  3. 穗積七郎

    穗積委員 いまのわが国と対四カ国との間の租税条約について一点だけちょっと事務当局にお尋ねいたしまして、あと運営について方針を明らかにしておいていただきたいと思います。  それは、フランスとの関係について、この条約の第十条でございますが、私も最近知ったのでありますけれでも、フランス統一税法によりまして、動産源泉課税の問題について、わが国との関係から見て追いかけ課税になるのではないか。それから、一括して質問しておきますが、もう一つは、向こうはこれは地方税も含まれるわけでしょう。それらの事情をひとつこの際つまびらかにして、それが不公平な課税にならないために日本政府としてはいままでどういう交渉をされたか、運営について今後どういう方針でお臨みになるつもりであるか、それらを一括して、経過並びに実情と、それからそれに対するわが国方針、この点だけ、ただ一点でございますが、明らかにしておきたいと思うのです。御答弁をお願いいたします。
  4. 大倉真隆

    大倉説明員 お答え申し上げます。  ただいま御質問のございましたフランスとの租税条約第十条に規定しておりますフランス動産資本所得に対する租税、まずこれがどういうものであるかという点でございますが、御承知のように、フランス所得をいろいろの種類に分類しております。事業所得とか、不動産所得でございますとか、そういうふうに分けております。その分け方の一つ動産資本所得ということになるわけでございますが、これは日本税法考えております所得のタイプといたしましては配当利子というふうにお考ええいただけばいいかと思います。  そこで、まず条約がない場合にどういうことになっておるかと申しますと、フランス国内法によりまして、とにかくフランスで何らかの事業に関連を持っておる外国法人、それが条約に申します恒久施設を持っているとかいないということと関係なく、とにかくフランスで何らかの事業上のかかわりを持っておる法人は、外国で本店を持っておりますから、たとえば日本法人フランスに対してある品物を売っておる、その日本法人東京配当をいたしますと、その配当金額の中にはフランスに物を売ってもうけ金額が入っておるはずである、したがって、その配当に対してはフランス政府課税権を持っておるから、フランス動産資本所得税を納めなさい、これがフランス統一税法に書いてございます動産資本所得税の中身でございます。具体的には、それはフランスにその法人が持っております資産をベースといたしまして資産割り配当額フランス源泉に配分いたしまして課税をしよう。  そこで、この条約でこれについてどういうことを規定しておるかと申しますと、まず、いま申し上げたような税でございますので、かりにフランスにおって支店を持っておるとすると、その支店所得がなくても、資産割りの結果こういう税金を納めなくてはならぬということになっておる。あるいは条約上その支店その他が恒久的施設と見るべきでない、たとえば単に情報収集をやっているような施設でありましても、それは資産割り税金を取られる。それではいかにも不都合ではないかということで、フランスは他の国との条約でもこの税は必ず取るということにいたしておりますので、この税を取らないということまでは主張いたしませんが、しかし、取る場合には合理的な範囲に限定してくれということを要求いたしたわけであります。
  5. 穗積七郎

    穗積委員 日仏会議でこれから交渉するのですか。
  6. 大倉真隆

    大倉説明員 もう交渉済みでありまして、調印した結果をここに御審議をお願いしておるわけでございます。  そこで、結論といたしまして、この十条では、そういう税は日本法人フランス恒久的施設を持っていない限りは課せられない。恒久的施設と申しますのは、この条約の中でいろいろ規定してございます支店とか工場とか、いわば非常にまとまった手足を持っている場合に限りそういうものを取られる。また、課税標準といたしましては、先ほど申し上げたように単に資産割りということにしないで、その支店が現実にもうけておるそのもうけ東京で払う配当の中に反映されておると考えてもいいであろう、そういうもうけを限度とするという趣旨規定しているわけでございます。  第二点といたしまして、御質問のございました地方税が入っておるということでございますが、これは、この条約全体を通じまして、制限税率を、たとえば配当については一五%をこえてはいけない、利子については一〇%をこえてはいけないという場合に、国税だけでなくてお互い地方税を含めたところで制限税率を適用いたそう、また、支店を持っていなければ税金を取らないということを書いてございます場合には、支店があって初めて国税を取る、同様に地方税支店がなければ取らないのだ、こういうことを相互に約束いたしております。  今後の運営といたしましては、情報交換規定相互協議規定もございまして、互いに税務当局間の連絡は密接になっておりますから、不公平がないように、また、日本法人フランスに行きましてこの条約に適合しないような課税を受けることがないように、私ども十分注意して運営いたしてまいりたいと考えます。
  7. 穗積七郎

    穗積委員 これはフランス国内税法の影響を受けて条約面はそういうふうになるわけだ。つまり、在仏日本会社は、たとえば本社がこっちにある、あるいは支店があるという場合、その日本における配当会社利益原因は、在仏恒久施設またはその運営によって生じておるという理由でしょう。そうすると、これは日本国内法ではそういう税法はないわけでしょう。そうなりますと、フランスに対してのみ資産割りを中心にして配当または利子についての税負担日本側法人は負うわけですね。そうすると、日本国内税法にはなくても、相互主義原則でございましょうから、したがって、日本にあるフランス法人または事業所日本にあることを原因として利益をあげてフランス配当した場合、それは相互主義でいきますか。それをちょっと伺っておきたい。
  8. 大倉真隆

    大倉説明員 御指摘の点、実質的に一方的な課税が起こるではないかということは、先生のおっしゃるとおりだと思うのでございます。ただ、条約を結びましたときに、いままで日本では取らないことになっておる、いわば存在しない税を、相手側にそういう法があるから新たに起こして取るかという問題は、従来条約を結びますときにはそういう考え方はとっておりませんが、確かに一つ考え方かとは思います。ただ、そういう税を取りますときには、単にフランスだけでなくて世界じゅうを相手にしなければならないという問題がございます。もう一つフランス側日本法人はそういうものを取られておるじゃないかという御指摘はおっしゃるとおりなのでございますが、先ほど申し上げましたように、フランスはほかのどこの国に対してもそれをコンシードしておらないわけです。したがって、フランスで商売しておるアメリカ法人イギリス法人もドイツの法人も、みな同じような負担は受けておる、そういう点はございます。もう一つ、これは先生に申し上げるのは釈迦に説法のようなことでございますが、条約交渉は何ぶんにも相手方とのギブ・アンド・テークでございます。私どもがこれと引きかえに取りましたものは工業所有権使用料で、これは、フランスは、ほかのどこの国との条約におきましてもお互いに使っておる国では税金は取るな、フランスから日本技術提供を受けますと日本ではそういう税金を取ってはいかぬということを非常に強く主張したわけでございますが、それに対しまして、私どもは、現在の技術交流の状況から言えば、これはフランスだけそんな税金を取らないというわけにはいかぬ、一番たくさん入ってきておるアメリカからも取っておる、イギリスからも取っておる、条約のない国からはもちろんそういうものを取っておる、フランスだけは取らないという譲歩はできませんということを強く申しました。全然違う税金ではないかとおっしゃればそのとおりでございますが、それではフランスはそれを認める、そのかわり日本動産資本所得税についてこの程度でがまんしろ、こういう交渉になったように私は聞いております。
  9. 穗積七郎

    穗積委員 相互主義で、しかもこの条約は多数国条約じゃなくて二カ国間条約になっているのですから、日本税法の中になくても、対フランスとの相互主義原則から、租税行政措置として、ほんとうを言えば特例は認められると思うのです。いまの工業所有権の問題とか技術交流の問題とからませないで、それはそれとして公正に相互主義でやったらいいと思うのです。だけれども、そこは他の日本以外のフランスと協定を結んでおる国も、いま言ったようにフランスについてのみ一方的に特例を認めておるということであれば、あえてここでこれ以上議論いたしましても何ですから、あと運営で、追いかけまたは二重課税にならないように、日本側の不利にならないように、これは随時協議条項も入っておりますから、そこを活用しながらひとつ誤りなき善処をしていただきたいということを要望いたしまして、私のお尋ねはその点に関してだけですから、終わります。
  10. 安藤覺

    安藤委員長 他に御質疑はありませんか。——他に御質疑がないようでありますので、これにて本件に対する質疑は終局いたします。     —————————————
  11. 安藤覺

    安藤委員長 これより討論に入りますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  右四件を承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立
  12. 安藤覺

    安藤委員長 起立多数。よって、右四件は承認すべきものと決しました。  おはかりいたします。ただいま議決いたしました四件に対する委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 安藤覺

    安藤委員長 御異議なしと認め、そのように決します。   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  14. 安藤覺

    安藤委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑通告がありますので、これを許します。  戸叶里子君。
  15. 戸叶里子

    ○戸叶委員 きょう私は日韓問題に限りまして外務大臣農林大臣質問をしたいと思います。若林大臣あとからおいでのようでございますから、いらしてから質問をしたいと思います。  まず最初にお伺いいたしたいことは、李東元外務部長官アメリカへ行ってジョンソン大統領と話をし、そして特に日韓の問題に触れられて、共同声明を出したということが伝えられております。私はこの共同声明の中で、二つの点に非常に奇異な感じを持ったわけです。それはなぜかと申しますと、その一点といたしまして、日本韓国との間に基本条約が調印されたことはまことに喜ばしいことだということが共同声明の中に述べられ、そしてまた、もう一つは、いままで韓国人たちが非常に心配をしておったことだと思いますけれども日韓条約が結ばれるならば、アメリカからの援助が減らされるんじゃないかというようなことに対しても、アメリカ援助をやるのだというようなことを、この共同声明の中にうたっております。  こういうことを見ましたときに、やはりアメリカ自身も、日本にも韓国にもこの日韓会談反対をしている人が多いので、何とかしてこれをなだめようとしての、うしろのほうから促進方を助けているというふうにだれが見てもはっきりするわけでございますが、共同声明の中にこういうふうなことを織り込んだということ自体の意図というものを外務大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  16. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 新聞でただ知っただけでございまして、まだ正式の情報に接しておりません。したがって、どういう意図のもとにこの内容がきめられたのかということにつきましても全く関知しないところでございますので、これに関する意見の発表はしばらく差し控えたいと存じます。
  17. 戸叶里子

    ○戸叶委員 外務大臣、たいへん恐縮でございますが、声を少し大きくしていただきませんと、私聞こえないのですから、大きくしていただきたいと思います。  いまの外務大臣の御答弁では、まだよく聞いておらないから、どういうふうな内容であるかもわからないし、聞いてもおらないということでございましたが、新聞にはすでに報道をされております。新聞に報道されておりますけれども外務省には何にもその共同声明については来ておらないのでしょうか。来ておらないかどうかということと、少なくとも外務大臣新聞ではお読みになったと思いますが、いかがでございましょうか。
  18. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 共同コミュニケテキストだけは来ておるそうです。
  19. 戸叶里子

    ○戸叶委員 テキストだけは来ていれば、お読みになったわけですね。そうしますと、内容はおわかりになっているわけでございましょう。
  20. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 大体承知はいたしております。
  21. 戸叶里子

    ○戸叶委員 では、いま内容については知らないから何とも言えないというのは間違いですね。お取り消しになりますね。大体承知しているといまおっしゃったですね。
  22. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 テキストは読んでおりませんが、新聞に掲げてある記事と大体似ておるという話でありますから、それならば内容承知しておるということを申し上げることができる、こういうわけです。
  23. 戸叶里子

    ○戸叶委員 最初私が伺ったときには、内容承知していないということでしたが、いま内容承知しているということでございました。  そこで、その内容をごらんになって、ああアメリカ日韓会談促進のためによくもこれだけ言ってくれたというふうにお考えになったですか。それとも、人の国のことをどうしてこんなに言うのだろうというふうにお考えになったでしょうか。
  24. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アメリカ側から日韓会談の問題について指図を受けたことはございませんけれども日韓会談妥結に対してはアメリカも希望しておるという意向は私は前から存じておりました。今回の共同声明は、ただ、日韓会談の前進を認め、これを歓迎しておるという趣旨のことが書いてあるようでありますが、これは前からアメリカ側はこれに対してかような態度を持って臨んでおるということは承知しておりました。
  25. 戸叶里子

    ○戸叶委員 アメリカは前々から日韓交渉が促進されることを望んでいたということでございますけれども、今回の米韓共同声明の中に、日本基本条約にまで触れられて、そうして特に喜びの意をあらわしたというようなことは、少しアメリカとしても行き過ぎではないか、私はこういうふうに考えますけれども共同声明他国のことに対してそういうふうにうたっても別に行き過ぎでない。あたりまえのことだというふうに外務大臣はお考えになるわけですか。
  26. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 他国の間できめられた共同声明内容に対する批判は、私は差し控えたいと思います。
  27. 戸叶里子

    ○戸叶委員 外務大臣他国共同声明に対しては批判しないということでございますけれども、これはその国でやったことでなくて——よその国のしたことですけれども、とにかく日本が重大な関心の的になっている問題についての共同声明でございますから、よそでもってする共同声明はかってにしたらいいという態度では済まされない問題だと思います。この新聞読みまして日本の国民はたいへん奇異に思ったのではないか。反対をしておる人も多い、韓国でもいろいろな問題がだんだん起きてきているときに、こういうふうな共同声明の中に日韓基本条約は非常に支持するというようなことを書かれておりますのは、非常に奇異な感に打たれたことと思いますので、私は質問したわけでございます。外務大臣がそうおっしゃって、よその国のしたことじゃしかたがないとおっしゃるならば、もうそれきりだと思いますけれども、こういうふうにアメリカ日本韓国との条約締結させるためにはいろいろな角度での応援というよりも出過ぎたほどのことをやっているということを私たち考えざるを得ないわけでございます。この点について椎名外務大臣の御所見をもう一度承りたいと思います。
  28. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日韓会談に関して特別の指示を与えられておるかという御質問でありますが、一切さようなことはございませんでした。
  29. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは角度を変えて伺いますが、外務省から出ております国際週報によりますと、朴大統領は、外務大臣がちょうど韓国を訪問された二月十七日に地方を視察されまして、そうして全州で、三月中には日韓会談の大綱を妥結して、五月には国交を正常化したい、そういうふうな方針を表明しておられるようでございます。また、先ごろ佐藤総理大臣も閣議で、日韓会談早期妥結したいというようなことを述べられたということも新聞で私ども承知したわけでございますが、これらの点を考え合わせ、さらにまた、李東元外務部長官アメリカからの帰りに日本に寄るというようなことを考え合わせてみますと、何かしら政府日韓会談妥結というものをたいへんに急いでいられるように私どもは感じるわけでございます。何かこの朴大統領韓国の全州で話して歩いたようなスケジュールといいますかプログラムというような、そういうところまでお話し合いになったのかどうか、この点も承りたいと思います。
  30. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 今回私が訪韓する前から、日韓会談早期妥結早期妥結ということをあらゆる場合に言われておったのでありまして、早期妥結はもうずっと前からの日本政府方針である。しかるに、いろいろな支障が起こって、じんぜん十数年を経過して今日に至った、こういうわけでありまして、日本のほうから言いますと、とにかく早期妥結ということは、もうこれは日韓会談に関する方針であったのであります。朴大統領あるいはその他の韓国の高官がどういう場所でどういう人々に対してこの問題を話したかということも、うわさには聞いておりますけれども、全然こっちの関知しないところでありまして、両方で口うらを合わせて、そうして最近になってから早期妥結というようなことを話し合った、その結果こういう表現が両国から発せられておるというふうなことは、全然ございません。
  31. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、朴大統領が大体立てておられるめどというものは、それはかってに立てておられるのであって、日本日本の独自の立場でいく、こういうふうに了解していいわけですか。
  32. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 さようでございます。それで、この問題についてはいつごろ妥結するつもりかというようなことをやはり国会の委員会等において質問を受けたことがございますけれども、これは相手方のある交渉案件であって、あらかじめスケジュールを立てるべきものでもないし、立て得るものでもない。とにかく早く妥結しようという気持ちはあるけれども、これについて時期を約束するというようなことはできないし、やるべきものでもない、こういうことを答えております。
  33. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、韓国のほうでは五月一ぱいにはめどをつけたいと言っても、日本のほうでは五月一ぱいめどをつけたいなんということは全然考えてもおらない、こういうふうに了解してもよろしゅうございますね。
  34. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 相手のある問題でありますから、五月一ぱいに解決をしたいという韓国意向があるならば、できるだけそれをくんで、こっちもそれに調子を合わせるということも当然考えなければならぬ問題だと思いますが、そういう問題について約束したことはございませんし、また、約束したことでもないのであるから、それにとらわれて無理やりにそこへ持っていくというようなことは考えておりません。
  35. 戸叶里子

    ○戸叶委員 無理やりに持っていくような考えはないとしても、韓国のそういう考えもくんで調子を合わせていきたいというようなところに、私はいろんな問題があるのじゃないかと思います。たとえば、外務大臣韓国を訪問されて基本条約にイニシアルをされたあと韓国新聞の社説というようなものがあちこちに出ておりましたけれども賛成している社説は一つくらいで、あと三つか四つの新聞は非常に警戒をした社説を出しております。私どもも今回の基本条約を見ましたときにたいへんに不安に思う点がたくさんございます。いろいろあります。けれども、たとえば、日本韓国との間の解釈が違っているけれども、その解釈の違いはそれぞれの国の政治的な判断にまかせて、そしてそっと条約を結んでおけばいいというような個所がたくさん見受けられるわけでございまして、こういう点に、韓国自身も不安を感じるでしょうし、日本の国民も不安を感じていると言わざるを得ないと私は思います。  その一、二の点を申し上げてみますと、たとえば、必ずしもすっきりしていないというような面で、三条の問題でございますが、この前この委員会穗積委員からの質問で御答弁になりましたことによりますと、三条によって、この条約の適用範囲、つまり韓国の管轄権の及ぶ範囲というものは三十八度線の南である、そのことははっきりいたしましたけれども韓国の領土というものはどこであるかということが書いてございません。わかりません。紛争のある地域におきましては当然領土というものははっきりさせるべきだと思いますけれども、そういうことが書いてない。しかも、一方においては、韓国の憲法の三条では、「大韓民国の領土は、韓半島及びその付属島嶼とする。」と書いてある。そういうふうな中で、管轄権の及ぶ範囲だけしか述べないで、そして領土というものがどこまであるかということも述べておらないようなこの条約に私たちはたいへんに不安を感じるものでございますけれども、どうしてこの領土の問題について述べられなかったかということもお伺いしたいと思います。
  36. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 この条約には領土の問題を明記する必要がないから書かないのであります。
  37. 戸叶里子

    ○戸叶委員 どうして必要ないのですか。条約を結ぶ以上は、やはり領土というものが書いてなければ片手落ちと言わなければならないと思います。一つの国家というものは、領土と住民と統治権というものからなっていると思う。そのうちの領土だけを抜かしておくということは非常に片手落ちじゃございませんか。
  38. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 この条約の及ぶ範囲は明記してあります。それは第三条に書いてあります。それ以外に領土というものを明記する必要はない。
  39. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私はそういうことを聞いてないのです。一つの国家といえば、やはり領土と住民と管轄権だと思うのです。そうすると、条約の及ぶ範囲つまり韓国の管轄権は三十八度線の南である。しかし、韓国の領土というものはどこの領土を相手にして交渉したかといえば、その点については何ら触れられておらない。ですから、韓国の言ういわゆる領土というのはどこを言うのですかと聞いているのです。
  40. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 この条約の及ぶ、有効に適用される範囲は明記してございますので、韓国の領土というものを別にまた明記する必要はない、こういうので書かれないのであります。
  41. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もしもそういうお考えでしたら、北のほうにはその管轄権が及んでおらない、領土の問題も触れないということならば、現に韓国政府が管轄している範囲というふうになぜここで明記されなかったのですか。現に韓国政府が管轄している範囲ということをはっきりさせる必要があったんじゃないかと思います。
  42. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 三条に書いてあります。つまり、国際連合総会決議一九五(III)に明らかにされておるのでございます。この一九五号の()には朝鮮人民の大多数が在住しておる部分というふうに書かれておるのでございまして、この条約の及ぶ範囲というものが非常に明確になっておるわけでございます。
  43. 戸叶里子

    ○戸叶委員 条約の及ぶ範囲というものはわかるわけですけれども、そうすると、韓国の領土というのは条約の及ぶ範囲を指す、こういうふうに了解していいわけですね。
  44. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 この条約に関する限りはさようでございます。
  45. 戸叶里子

    ○戸叶委員 条約に関する限りはそうだということは、ここに書いてあるんです。三条ではっきりしているわけでしょう。それじゃ、韓国というのは三十八度線の南だけを言うんだ、そうしてそこに支配権が及んでいるんだ、そういうふうに理解していいわけですね。ほかのほうにはほかの国があるということをはっきりさせればいいわけです。それならなぜ韓国の管轄権が及ぶ範囲ということをはっきり書かなかったか。大体、国連の決議というものを二国間の条約の中に持ってくるなどということは、私は長年条約を検討しておりますけれども、見たことないと思うのです。国連の決議というものは変わる場合もあるにもかかわらず、その決議というものをそのまま条約にそっくり持ってきたというようなことは少しおかしな形ではないかと思うのですが、これはいかがなものでございましょう。
  46. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 条約局長からお答えいたします。
  47. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 この第三回国連総会の決議第二項に書いてありますことが、大韓民国政府というものについて最も明確に規定していると思うのでございまして、そういう意味でこれを引用することが正確を期するゆえんであると考えた次第でございます。  なお、諸外国が大韓民国政府と国交を開く場合にもこの趣旨によってやってもらいたいということを、この国連決議自身がうたっておる次第でございます。
  48. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いま私が条約局長にそのものずばり返事していただきたかったのは、国連の決議というものが二国間の条約の中にそのまま取り入れられるというようなことがありますか。
  49. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 いまここで例は思い出せませんが、それはやって少しも差しつかえないことであると考えます。
  50. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私はほとんどないのじゃないかと思うのです。やって差しつかえはないかもしれませんけれども、決議がもしも変わったときはどうするのですか。
  51. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 この決議はその後の総会でもずっと再確認されてまいっておるわけでございます。この決議にうたわれておることが根本的に変更されない限りは、現在の条約のままで差しつかえない。理論上の問題として、国際法で事情変更の原則というようなことが言われますので、そういうことが援用され得るような前提条件の根本的な変更がない限りはこれでよろしい、こういうふうに考えております。
  52. 戸叶里子

    ○戸叶委員 根本的な変更があれば、この条約を全然くつがえしていくことになるわけですね。
  53. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 そういうものを予想することはいかがかと思いますが、ただ、理論上の問題としまして、この条約も他の一般条約と同様に、そういうような国際法の大原則には服するんだということでございます。
  54. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私どもこの条約を読んでいてたいへん奇異に思いますのは、国連の決議そのものをこの条約の中に、一九五のIIIというようなものを引用して持ってきたというところを非常に奇異に思います。いま条約局長は、この決議は大体において変わりはないと思うということをおっしゃいますけれども、今日のように国際情勢が年中変わってまいりますと、決議が変わるということもあり得ると思います。にもかかわらず、そういう決議というようなものをそのまま持ってきたというところに私は問題があると思う。しかし、それは私と条約局長との話が違うところでありまして、それではお伺いいたしますけれども条約の三条の原文のほうですけれども外務大臣、原文には、韓国というのを「リパブリック・オブ・コリア」と書いてあります。これは韓国となっておりますね。韓国が国連決議の一九五号の二項で特にきめられたそうした朝鮮における唯一の合法的な政府であるということはこの原文に書いてあるわけですけれども、この場合に、領土の問題をもしも触れないで、いまおっしゃったような管轄権だけを三条で規定するとするならば、この「イン・コリア」という字は別に要らないじゃないか、あるとないとではどういうふうに違うかということを承りたい。
  55. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 条約局長から御答弁いたします。
  56. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 御質問趣旨が私よく了解できておらないかもしれませんが、「イン・コリア」ということは、朝鮮半島全体を見て、その地域にはこの種の政府はこれしかないという判定を下しておるわけでございます。
  57. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、「イン・コリア」がないとどういうことになりますか。
  58. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 どこにその政府があるのかわからない。それで、どこにおいて唯一という判断をしたか、唯一という判断をした場合のながめた地域がわからない、範囲がわからないということになると思います。
  59. 戸叶里子

    ○戸叶委員 一九五号の二項にははっきり書いてあるのじゃないですか。「且つ、協議することができたところの、朝鮮の人民の大多数が居住している朝鮮の部分に、有効な支配と管轄権を及ぼす合法な政府が樹立されたこと、」、ここにはっきりと朝鮮ということが書いてあるでしょう、決議の中に。それでなおかつここに「イン・コリア」と言ったのはどういうわけですか。ここの中の朝鮮と言ったのと、それからここに「イン・コリア」と書いたのは違う意味に解釈するためにこういうものになったのじゃないですか。それとも二重に「イン・コリア」という字をお使いになったのですか。決議そのものの中に「朝鮮における」ということがちゃんと書いてありますでしょう。二項に、「臨時委員会が観察し、且つ、協議することができたところの、朝鮮の人民の大多数が居住している朝鮮の部分に、有効な支配と管轄権を及ぼす合法な政府が樹立されたこと、」、こう書いてあるでしょう。ですから、朝鮮の政府であるということははっきりしていますね。それだのに、なおここで「イン・コリア」という字を入れられたその理由を伺いたい。
  60. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 でございますから、ここでわざわざもう一度朝鮮の部分ということを離れまして朝鮮と言ったのは、北のほうのことも頭に入れながら、北のほうにはこういう種類の政府がないという判定をここで国連が下しておる、そういう趣旨に解すべきものだと考えます。
  61. 戸叶里子

    ○戸叶委員 何ですか。
  62. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 一ぺん朝鮮のある部分についてと申しながら、最後に締めくくりといたしまして、また朝鮮というふうにわざわざ申しましたのは、唯一のこの種の政府であるという判断をする上において、北のほうもながめて、北のほうにはこういう種類の政府はない、朝鮮全体でこういう種類の政府は大韓民国政府だけである、そういう判断をここであらわしているものと考えます。
  63. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、朝鮮にはこういうふうな決議をされたようなこの種の政府一つである、しかし違う政府はもう一つあるということを理解してこの条項が結ばれたわけですね。それは韓国との間に合意をされていることですか。
  64. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 そういう北のほうに政府があるとかなんとかということは一言もこの決議には言っておらないのでございまして、国連として、自分の目で見て、自分の見ているところで自由選挙が行なわれて民意を正当に反映している政府、合法政府と言い得るようなものはこれしかございませんということを、国連は言っておるのでございます。
  65. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私はちょっとわからないのですが、というのは、朝鮮において国連の第一九五号で決議したようなこの種の政府はこれだけだ、リパブリック・オブ・コリアだ、こう言っているわけでしょう。そうすると、そのほかにも何かあるということを想定してやったのだ、そういうことに対して韓国も理解をしているわけですねということを言っているわけです。
  66. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 ちょっといまおっしゃったことが正確でないようにも思うのでありますが、朝鮮における唯一のこの種の政府ということが決議の中に書いてあるわけでございまして、唯一のこの種の政府という直前には三つのことが書いてあって、一つは、国連が観察し協議し得た地域で朝鮮の人民の大多数が住んでいる地域を有効に支配しているということ、第二は、それが民意を正当に反映しておるということ、第三は、この選挙は臨時委員会が観察した、こういうことが書いてあるわけでございます。こういうことが当てはまり得る政府は朝鮮にはほかにないということを言っておるわけでございます。北のほうにほかに政府があり得るとかなんとかということを一言も触れておらないのでございます。自分が目で見、観察できなかったのでございますから、何らの判定を下す能力といいますか、可能性がないわけでございます。
  67. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私の伺っをいるのは、そういうことは知っているわけです。そうじゃなくて、それじゃほかの角度から聞きましょう。ここでイン・コリアと言ったのは、朝鮮全体でしょう。朝鮮全体の中で国連の決議にあったこの種の政府というものを認めているわけですね。そうしますと、イン・コリアというのは朝鮮全体の領土を言うわけですね。朝鮮全体の領土の中で今管轄権の及んでいる範囲はこれだけだ、しかし、領土はイン・コリア、朝鮮全体だということを韓国の人に納得させるために、こういうふうな書き方をしたのじゃないですか。そして、日本ではいまのような解釈をしているのですけれども、しかし、韓国のほうではこのイン・コリアということがあることによってあたかも朝鮮全体にその領土権があるかのような印象を与えるために、こういうものを書いたのじゃないですか。
  68. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 私は、国連決議はそういう印象を与えるためにこういう字を使ったわけではないと思うのでございます。それで、私が申し上げておりますことは、この書いてある字句の解釈として正確であると考えますので、別に、これを意識的に曲げない限りは先生のおっしゃるような意味は出てこないと考えます。
  69. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それじゃ外務大臣にお伺いいたしますけれども外務大臣、あれですか、お話の過程で、韓国は三十八度線の南が管轄権の及ぶところである、そうして、そこと日本との間に基本条約を今回結んだのである、そうして、韓国はなおかつ、日本が認めているように、北のほうに——どもは北鮮を認めておりますが、政府は、北に北鮮か何か知らないけれども何かオーソリティーがある、そういうものもあるのだ、そうして、韓国自身も、この部分的な領土を対象にして、自分の管轄権の及ぶ範囲の領土を対象にして今度の基本条約を結んだのだ、こういうことを了解しているわけでございますね。
  70. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 少なくとも日本に関する限りは、お話のように三十八度線あるいは休戦ライン以北に事実上の政権があるということを意識しておる次第でございます。
  71. 戸叶里子

    ○戸叶委員 少なくとも日本に関する限りはということですけれども、私たちはそういうふうにわかっても、韓国との同意はあったのですねということを伺っているわけです。
  72. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 両国の間でこれは取りきめた条約でございますから、もちろん了解していると思います。
  73. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは第二の点でお伺いしたいと思いますが、基本条約の第二条で、「一九一〇年八月二十二日以前に大日本帝国と大韓帝国との間で締結されたすべての条約おかび協定は、もはや無効であることが確認される。」、こう書いてあるわけです。オールレディーということばが使ってあるわけですが、もはや無効であるということが確認されたのであるからには、このもはやになる前の一体いつから無効であるということが確認されたのか、この点を承りたいと思います。
  74. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 この条約によってもはや無効であるということを確認したわけでございます。
  75. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いまやもはや無効である、でしょう。そうすれば、いつの時点から無効になったかということですね。
  76. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それは、併合条約は、これに反する事実が発生したとき、すなわち韓国が独立宣言のときに無効になった。それから、併合条約以前の条約は、併合によって無効になったものもあれば、あるいはまた、条約の中に、どういう事情が発生した場合に無効になるというようなことが規定してあります。それぞれ無効になっておる、こういうわけであります。
  77. 戸叶里子

    ○戸叶委員 日華条約でも、四条で、戦争の結果としていままでの条約というものは無効になるということが書いてあるわけですね。今度の場合には非常にあいまいな、もはやということばが書いてあったので、私はたいへんふしぎに思いましたが、いま外務大臣の御答弁では、併合条約というのは独立宣言のときから無効だということです。私は、少なくとも日本としては講和条約発効のときから無効になるというふうに考えるのが至当ではないかと思いますけれども、その間の食い違いはどうなっているのですか。はっきりしたその間の意見の統一ができているのでしょうか。
  78. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 平和条約以前の独立宣言というこの歴史的事実は、これはもう認めざるを得ない、そう思います。
  79. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私が質問したのはそういうことじゃないのですよ。日本は講和条約によってこういうふうないままで韓国との間にあった条約は無効だというふうに考える、韓国のほうではそうじゃなくて、独立宣言をしたときから無効であるというよりも、むしろ韓国そのものは、これらの条約というものは初めから不法だということを考えているのじゃないですか。だからそれをごまかすために、もはやということばをお使いになったのじゃないですか。
  80. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いや、そうじゃありません。
  81. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、韓国は、この二つの条約を認めました、しかし独立宣言とともにこれはなくなりました、日華条約が戦争の結果として無効になっと同じように、韓国の二つの条約も、いままではありましたけれども、これは今度の独立によってなくなりました、こういうふうに理解しているわけですね。
  82. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 われわれとしては、相手方はさような認識のもとにこの妥結に達したものと考えております。
  83. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いまの外務大臣の御答弁ですけれども、そうすると、韓国のほうも、いままで有効であったけれども独立とともに無効になったということを認めて、そしてもはやということばを使ったと、こういうふうに了解していいわけですね。念のためにもう一度伺っておきたいと思います。
  84. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 さように当方としては了解しております。
  85. 戸叶里子

    ○戸叶委員 外務大臣、私の質問に対する答弁として、外務大臣はたいへんに注意をされて、当方としてはとか、日本としてはというふうにおっしゃるわけなんです。そこが私どもは非常にひっかかるのです。条約というものは相互に合意して初めて結ばれるものだと思うのです。ですから、相互が理解をして初めて問題のない条約になるわけで、今回のように外務大臣日本としてはとか当方としてはとかというふうに言われますと、先方がそういう理解をしているのかしら、してないのかしらというように問題が残りますし、そのことは将来に私は禍根を残すと思いますので、はっきりさしておいていただきたいと思います。
  86. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 先方も同様の理解を持っておるものと了解をいたします。
  87. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、先方も同じように理解をして合意をしてこの条約を結んだと、こういうふうに結論づけていいわけですね。
  88. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そういうふうに解釈をしております。
  89. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そのように解釈をこちらがしておるにしても、そうだと言い切れますか。言い切れたいところにやはり少し問題があるわけですね。
  90. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それはもう厳然たる解釈であります。
  91. 戸叶里子

    ○戸叶委員 やはり外務大臣のことばの中には非常にあいまいなものがあるわけです。それは私はあいまいにならざるを得ないと思うのです。韓国新聞をごらんになりますと、外務大臣のおっしゃるような意見と逆な意見が載っているわけです。そして韓国自身の中でいまああいうふうな条約に調印したことはけしからぬという声があっちこっちで高まりつつあるわけです。したがって、私たちとしてはそのことをおそれるわけです。将来になってどういうことになりますか、その点を非常に心配いたします。これは、そんなことありませんとおっしゃるかもしれませんけれども外務省でお出しになっていらっしゃる国際週報の中でさえも書いてあることは、この新聞にはこういう社説で、心配だということが書いてある。やめたほうがいいということを書いてあるということがはっきり発表してあるのですよ。外務省の出している資料の中にでもそう書いてあるのです。そういう世論を無視して、一時的にいいかげんになすりつけて、同じような解釈をしておりますというような形で条約を結んだならば、あとに必ず問題が残るということを私は外務大臣に知っておいていただかなければならないと思います。  あと農林大臣にいろいろ伺いたいものですから、外務大臣のほうは鯨岡さんに聞いていただくことにして、あと農林大臣が来られてから農林大臣に伺います。
  92. 安藤覺

    安藤委員長 鯨岡兵輔君。
  93. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 私は、わが国の外交の基本方針に関する問題、さらには日韓会談に関する問題についてお尋ねをしたいと思うのであります。  わが国の外交基本方針は、国連中心主義である、それから二つ目は自由陣営の一員である、それからアジアの一員である、この三つが基本であります。そして、この基本の三大方針はいまに始まったことではないので、日本が独立を回復して以来これが続いておるわけであります。吉田政権から岸、池田、そして佐藤政権と、変わることなく引き継がれてきたものであると私は思うのであります。この三つの基本方針について、それが間違ったものであるというふうに国民の大多数は思っておりません。しかし、ここでとくと考えねばならぬと思われますことは、総理も外務大臣もその演説でしばしば申されましたように、国際政治情勢は目まぐるしいばかりの変転をいたしておるのであります。特にキューバ事件以来の国際政治はそれ以前と比べるならば相当の変化であります。  そこで、わが国の外交としては、以上の基本の三大方針がもしそのままであるとしても、わが国のナショナルインタレストを中心とした細部の身の処し方については相当の変化があってしかるべきものだと思うのでございますが、われわれの目には残念ながらそれらの点が完全には映らないわけであります。ただ三つの方針を繰り返して言っているような気がしてならないわけでございます。私は、きょうは国連問題その他について、何かそういうあせりに似たような気持ち、わが国の外交はこれでいいのかという、そんな気持ちを持ちながら政府の所信を伺いたいと思うわけであります。  質問内容に入ります前に、特に政府にお願いをいたしておきたいことは、質問をするほうも考えねばならぬことかもしれませんが、私は、における議員と政府当局とのやりとりは、単に質問する、そしてそれに答えるというだけではなくて、議員に答えるというだけでない、国民に答える、内外に所信を表明するという、そういう態度、そういう心組みでなければいけないと思うわけであります。議員の質問にはきわめて簡単に手ぎわよく答えて、早く会議を済ませてしまって、そして間もなく同じ問題について他の場所で政府考え方の発表がある、そんなことは私は困ったことだと思いますが、ずいぶんそれがあると思うわけであります。議会政治の立場からも、それはよくないことだと私は思います。しかし、議員のほうもそのためにはあらかじめ質問の概要についてお知らせしておくことがぜひ必要であろうと思います。とたんに考えも及ばなかったようなことを言い出して鬼面人を驚かすような態度は、やっぱり前進のためによくない、こう思いましたので、きのう私は文書をもって、これからお尋ねしようとすることについて比較的詳しくその大要を提出してあるのでございますから、きょうはひとつ外務大臣にいままでになく大胆率直に政府考え方を国民に知らせてくださいますようお願いを申し上げます。  まずお尋ねしたいと思いますことは、わが国の外交の基本方針は、申し上げましたような国連中心主義、自由陣営の一員、アジアの一員、この三つの基本方針に変わりはないとわれわれは考えておるのですが、それでよろしゅうございますか。簡単にお答えを願います。
  94. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御指摘のとおりだと考えております。
  95. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 それでは、まず国連中心主義ということについてお尋ねをいたしますが、国連中心主義とは現在の時点において何なのだろうということを私は疑問に思うわけであります。これについて教えていただきたいと思います。  戦争中の日本は国際世論に同調しないで反対考え方反対の行動をとってきた、そういうような批判にこたえて、あるいはそういうような批判に対する反省の意味で国連中心主義と言うのか。それだったらばきわめて消極的と言わなければなりません。または国連憲章を守るという意味で言うのか。それならばそれは法律論であって、これはあたりまえのことであると言わなければならないのであります。少なくとも国連中心主義というのであるならば、国連の中で積極的な行動が繰り返して行なわれなければならないと思うわけです。十七回総会まで日本アメリカの言うことに対しては九五%賛成、残りの五%は棄権であります。三大方針一つにアジアの一員ということを言いながら、AA諸国の提案に対しては五四%しか賛成しておらないのであります。アメリカの行動に対しても、ソ連の行動に対しても、それは国連憲章に反すると強い批判を加える勇気と自信を欠いて国連中心主義とは言えないと私は思うわけであります。国連の欠陥に対してこれを修正する強い熱意と行動が十分でなくて国連中心主義とは言えないと思うのです。対米協調とむき出しに言ったのでは自主外交を標榜している手前情けないから、そう言うかわりに国連中心主義と言っているのではないかと言えば、あるいは言い過ぎかもしれませんが、そんなように見て見えないこともない。私はその点ちょっと残念に思うわけです。特に最近の国連はその運営が全く行き詰まっています。十九回総会も開店休業の状態であります。ウ・タント事務総長みずからそれを認めています。六月に開かれるアジア・アフリカ会議は第二国連の準備会になるのではないかとさえ言われておるのであります。日本の安全と平和をこれにたよるときめている国連のこの危機に対して、わが国は積極的に一体何をしてきたのか、これから何ができるのか、何をしようとするのか、私は政府からそれを承りたいと思うわけであります。
  96. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 国連は、世界の平和をはかり、平和を維持する、こういう大きな目的のもとに設置されたのでありまして、国連の機関、諸種の機関すべて、その目標はこの一点に帰一するものと考えております。ただ、現在の国際情勢に比べてみて、国連の平和維持機能というものはいかにもどうも微弱である。その原因はどこにあるかといいますと、結局安保理事会、特にこの常任理事会に権力が集中されておるのでありますが、いわゆる拒否権というものを持っておる。このために国連の最も重要な機能がことごとに発揮できないという状況にあることが最も顕著なる欠陥ではないかと思うのであります。これをいかにして正常にするかということは、結局は、条文の問題をいじくる前に、五大国の間においていわゆる協調が絶えず保たれるということが最も必要でありますけれども、それがどうも実現ができない、でありますから、今度は制度的にこれを改善しなければならぬ、かように考えるのでありまして、これらの問題については、機会あるごとにわが代表がこの問題を提唱しておる次第であります。今回第十九回国連総会が財政問題を中心にして全く半身不随の状況におちいりました。ついに休会になって、今年の九月になって初めて開かれるといういま予定になっておりますが、こういうような問題から見ましても、とにもかくにも国連の非常な危機を迎えておる、かように考えるわけであります。  そこで、先般、長い休会に入る前に国連総会におきまして平和維持活動に関する特別委員会というのが新たに国連の内部に設置されることになったのでございまして、わが国もこのメンバーの一員としてこれに加わることになりました。これは、最近の国際情勢、これに対処する国連のあり方というものをいかにして解決するかという目標のもとに設置されたのでありまして、わが国がその一員に加わった以上は、今後この場において十分に国連本来の機能を発揮するように活動してまいりたい、かように考えております。
  97. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 農林大臣が見えましたので、私はいまの問題についてなお突っ込みたいと思いますが、ただ、外務大臣に私ども考えていることを申し上げまするならば、やはり、国連中心主義と言う以上は、積極的な、国連はこうあるべきだという行動、努力が繰り返して行なわれなければならない、こういうふうに思うわけです。よその国へも日本考え方を伝えて意欲的なやはり行動が繰り返されなければならぬ。特にわが国だけのことを言えば、あの敵国条項みたいなものは、まああってもなくても、あれを採用するというようなことはないのですから、もうこれでいいんですというようなお考えのように承っておりましたが、とんでもない考え違いだと私は思います。敵国条項みたいないやなものはもう率先してはずしてもらう。あんなものがあるからソ連の中国と北朝鮮との条約なんかも有効になってまいりますし、もし何かありまするときには日本に対しては安全保障理事会の承諾なしに行動がとれるというのも、敵国条項があるためであります。だから、敵国条項みたいなものはもうやめてくれというような積極的な行動がなければ、国連中心主義ということは言えないのではないか、こういうふうに思うわけであります。  私は、申し上げましたとおり、日韓問題についても具体的にお尋ねしたい問題があります。そこで、きのうも文書をもって提出しておきました中に農林大臣に対する質問も具体的に書いてございますが、戸叶さんの質問がまだ途中だそうでございますから、非常に紳士的に約束を守りまして、まず戸叶さんにお譲りいたします。私の農林大臣に対する質問はそのあとでいたします。
  98. 安藤覺

  99. 戸叶里子

    ○戸叶委員 農林大臣がたいへんにお急ぎのようですから、質問を簡単にしますから、答弁をなるべく親切にわかりやすくお願いします。  まず第一にお伺いしたいことは、いま日韓漁業交渉をやっていらしゃいますけれども、その中で、いままでにきまった点をここで明らかにしていただきたいと思います。
  100. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私から申し上げるまでもなく、漁業交渉をしている目的でございますが、日本といたしましては、李ラインの実質的な撤廃、こういうことと、日本の漁業実績を確保する、こういうことに主目的があると私は考えております。そういう意味におきまして、その線に沿うて大体きまったことをいまから御報告申し上げます。  李ラインの撤廃を実質的に実現しようということにつきまして一番先に考えられることは、最近の国際慣例にのっとりまして、韓国の一方的管轄権を行使する範囲を漁業専管水域と言われております十二海里以内の線に限定する、こういうことが必要であろうと思いまして、当事者同士で話し合って、十二海里の専管水域を設ける、これは大体その基線から専管水域の範囲が決定される、この話し合いが最終的になっております。その外側に帯状で漁業の共同規制水域を設けよう、その水域の中におきましては、両国が公平に平等に漁獲をしていく、こういうことが必要であるというふうに考えまして、そういう共同規制区域を設けることもほぼ結論が一致しております。そこで、共同規制区域内におきましては、両方とも公平に平等に魚をとるということでございますから、日本においてはどれくらいの船を出してそこで漁獲をするか、韓国はどの程度かというような話し合いをしておりますが、これは後に申し上げます。それから、李ラインの実質的撤廃ということになりますならば、一方的に韓国側の取り締まり権とかあるいは裁判権を行使されるということであってはならないわけでございます。そういう意味におきまして、共同規制水域内におきましては、その船籍の属する国、日本の船ならば日本韓国の船ならば韓国、おのおのその旗の国が取り締まり及び裁判権を行使するということにならなければ、これは平等公平でもありませんし、国際的にもそうでなければならないので、取り締まり及び裁判権は旗国の専属権限とする、こういうことを貫徹すべく交渉を続けてきました。そこで、これらの専管水域あるいは共同水域あるいは取り締まり及び裁判権、こういう点につきましては、当然でありますが、わがほうの主張のとおりにきまっております。  そこで、今度は漁業の実績を確保することでございます。これにつきましては、共同水域内におきまして日本の漁業実績をそこなわないように実績を尊重するという話し合いを初めからいたして、その話に入ったのでございますので、漁業の実績をそこなわないように交渉を続けております。そこで、それを漁獲量でいくかあるいはそこへ入っていく船の隻数でいくかということが問題となったのでございますが、ちょっと詳しく申し上げて時間をとるのはどうかと思いますが、結局、日ソあるいは日米加等の漁業交渉におきましては、漁獲量をきめてその漁獲量を守ろうというふうになっております。ところが、この水域は、サケ・マスとかそういう一定の魚種ではございません。まあ雑魚といいますか、そういうものでございますので、漁獲量といいますか、量できめることが非常にむずかしいという主張を私どもはいたしまして、隻数でひとつきめていこうじゃないか、出漁隻数、船の数できめていこう、こういうことを主張したのでございますが、一定のめどがなくては困るというので、漁獲量につきましては、年間十五万トン、一〇%のアローアンスを上下にきめていく、こういうことで漁獲量を一応きめましたが、ただいま船の数をきめようというところの交渉に入っておるわけであります。  そこで、だんだん船の数がきまるようなことになりまするならば、協定にあらわすのは一体どういうあらわし方をするか、協定文においては船であらわす、しかし、合意議事録等におきましては、先ほど触れました漁獲量ということも書いていかなければならないのじゃないか、こういうような話し合いを進めておるわけであります。  そこで、最後に、最後といいますか、もうほとんどきまったものでございますが、なお全然対立してきまらぬ問題がございます。それは、先ほど言いましたように、専管水域の基線の引き方に関連してでございますが、済州島周辺につきまして、基線の引き方について一致しておりません。私どもは、朝鮮半島は直線基線によって基線を引いて、それから十二海里、済州島周辺は低潮線から計算いたしまして十二海里、それが国際的な慣例でございまするから、そういうふうに引いていく。しかし、両方の十二海里線が合致するところで一部分入り組んだ公海のところができます。そこが将来紛争を起こす憂いがありますので、入り組んだところを専管水域並みに直線で取っていこうか、こういう考え方をしておるのでございますけれども、向こう側におきましては、斜めに線を引いてきて、これを直線基線で結ぼうかというような考え方でありますので、その点まだ一致しておりません。  それから、漁業協力資金の問題でありますが、漁業協力の金をどういうふうに出して、どういう条件でやるのか、これは民間の協力資金でございますけれども、それにつきましても話し合いがまだついておりません。  全般的に、前に申し上げましたのはほとんど話し合いが終わっておるのでございますが、あとの済州島付近の基線の引き方、及び漁獲量を隻数できめる、これはほとんどめどがつきかけておりますが、それから漁業協力資金、こういう三点がまだきまっておらないわけでございます。
  101. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いまのお話で、目的を立ててやっていらっしゃる、その中で、いまはっきりいたしましたことは、専管水域とそれから共同規制区域というものがきめられた、こういうことでございますが、この二つは永久的なものなんですか。何かの機会にこれが変わるというようなことはあり得るものでしょうか。これは永久的に続くものでしょうか。
  102. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 いままできまったのは、専管水域、それから共同規制水域、それから取り締まり及び管轄権の問題でございますが、その前の専管水域、共同規制水域は永久的なものかどうか、こういうことでございますが、これは協定ができまするならば協定の有効期間中でございます。御承知のように、ほかの国もそういうことになっております。
  103. 戸叶里子

    ○戸叶委員 協定の有効期間といいますと、日韓の協定全般的な有効期間ですか、それとも漁業協定の中の有効期間——そういうことはあり得ないですね、協定全般の有効期間ですね。念のために伺っておきます。
  104. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これはまだ外務省とよく話し合いがついておりませんが、私は漁業協定の期間と思います。日韓の協定というものでなく、漁業協定の期間、こういうふうに思っております。
  105. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、もしかりにここで日韓全般の条約ができますと、今度の場合には、基本条約、漁業条約、それから地位協定、いろいろなものがあるわけなんですが、そうしますと、漁準協定の中に期限というものを切って、これだけの間はこのとおりでいくというふうにきまるわけですか。
  106. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 日米加あるいは日ソなどの漁業協定がそういう形になっていますから、私は、日韓の間の漁業協定、この内容で何カ年か有効にこれを実施していく、こういう形になろうかと思います。
  107. 戸叶里子

    ○戸叶委員 次にお伺いしたいのは、先ほどの農林大臣の説明の中にありましたように、李承晩ラインの撤廃、これは国際法違反であるとたびたび政府がおっしゃっておられることで、撤廃ということを目標にしていかれる。そこで、いまお話にありましたことは、裁判の管轄権とかあるいは取り締まり権を旗国主義にするというふうにしていくとおっしゃったわけですけれども、私は、李承晩ラインの撤廃ということは、この裁判管轄権とかそういうことも必要ですけれども、それよりもっと根本的な問題があるのじゃないかというふうに考えるわけです。というのは、いまのお話の中にあったかどうか知りませんが、専管水域、それから共同規制区域に、そのほかさらに、魚族資源を保護する地域というものを設けられるというふうに承っておりますけれども、それはもうおきめになったんですか。
  108. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 魚族保有のために両国で魚の資源を調査するということは、両国共通の利益でございますからやろう、いずれ委員会でもできましてそういう調査をするということにはいたしたい、こう考えていますが、どこの区域を限ってというような、線を引いてどうということは現在では考えておりません。   〔委員長退席、野田(武)委員長代理着席〕
  109. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、魚族資源保護の水域というのは、共同規制水域の外側と、韓国の言っているいわゆる李承晩ラインとの間、その辺のことを魚族資源保護区域というわけじゃないのですか。全然別ですか。
  110. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 全然別でございます。共同規制区域内におきましても、お互いに漁労をしている間に魚族の保存に支障があるかどうかということを調査する必要がございます。それから共同規制水域外におきましてそういうことが必要を生じてくると思いますが、しかし、その線が李承晩ラインと共同規制区域の間、こういうことは全然考えておりません。
  111. 戸叶里子

    ○戸叶委員 日本で李承晩ラインを当然認めないというお考えはわかりますけれども韓国のほうには李承晩ラインを認めているところの宣言もあります。そして、その宣言というのは、隣接海洋に関する主権宣言というのを国務院告示第十四号として一九五二年一月十八日に大統領が発布をしているわけです。そしてまた、いままで日本の漁船が拿捕されたのはなぜかと申しますと、つまり、魚族資源を保護するというような法律があるために日本の漁船がつかまったと思います。したがって、その二つのものがはっきりとなくなるということが協定の中にうたわれるなり、話をしなければ、日本で一方的に李ラインがなくなったものと了解をいたしましても、韓国ではそれを受けつけないと思います。と申しますのは、日本で李ラインの問題が国会でさきごろ問題になりましたときにも、すぐに韓国のほうでははね返って、李ラインは残すのだということを韓国の責任ある人が発表しておりますので、この点がたいへんに心配になるので、この協定の中にはっきりと、李ラインを撤廃するとか、魚族資源のために韓国でいままで考えていた法令というものはなくすのだ、こういうふうなことはもちろんおうたいになるのでしょうね。
  112. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 向こうの法律をどうこうしようということは内政干渉になるおそれがありますので、私どもとしてはそういうことは申し上げかねますけれども日本といたしましては、いま行なわれているようなことは絶対に行なわないように、すなわち、どこの区域においても、公海におきまして拿捕、監禁、処罰ですか、抑留、こういうことはしないという約束は取るつもりでございます。
  113. 戸叶里子

    ○戸叶委員 向こうの法律に対してはとやかく言えないというようなところに私はちょっと心配があると思うのです。やはり向こうは向こうなりに考えているわけでございまして、はっきりと、いままでの李承晩ラインはなくすとか、あるいは向こうで日本の漁船を拿捕してみたり、そういう法律はなくすのだということを約束させなければ、内政干渉じゃなくて日本関係があるのですから、それをなくさせるということをはっきり条件として取らなければ、やはりそういうふうな問題が起きてくると思うのです。ですから、それは当然その協定の中にはっきりさすべきだと思いますけれども、もう一度お伺いいたします。
  114. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 内政干渉になることを話に出すことはいたしかねますけれども、いまのお話のように、拿捕とか抑留とか、こういうことはしないという約束は私取るつもりであります。
  115. 戸叶里子

    ○戸叶委員 拿捕とかあれをしないということを約束されることはもちろんけっこうですけれども、いままでのやり方を見ておりますと、たとえば、政府としては大事だと思っていらっしゃる日韓の会談をしている最中に、わざわざ拿捕したり、いろいろするわけです。しかも日本の巡視船までつかまえるというようなことをする国ですから、そういうことを約束されましても、約束だけでは私どもは信用できない面もあるんじゃないかと思いますが、たとえばどういう形でその約束を取りつけられるのでしょう。
  116. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これは交渉中でございますので、そこまで踏み入ってはお話ができませんが、約束を取るつもりでございます。
  117. 戸叶里子

    ○戸叶委員 約束を取りつけることは交渉中だからというのですけれども、そういうふうな形でいまの漁業交渉が続けられますと、私どもも何か非常に不安に感じます。それでは、約束を取りつけておしまいになったならば、こういうふうな約束であったからだいじょうぶだということをやはり条約の中にうたうなり、国会にちゃんとはっきりさせるなりなさいますね。おきめになった以上はそれをおやりになりますね。ただ農林大臣自身が、李承晩ラインというものはなくなったのだからもう拿捕はさせません、そういうお話をいたしましたということだけでは、私は済まないと思うのですが、その点はいかがですか。
  118. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、専管水域を設ける。漁業は向こうの専管水域内にしか向こうの権限はないわけです。共同規制区域内におきましては、両方で漁業を公平平等にやるのですから、そこの取り締まり及び裁判管轄権はお互いの国ということでございますので、向こうがそういうことをやれば条約違反です。その上に、公海上等におきまして向こうがいままでのようなことをやってはならない、やらない、こういう約束を取る、こういうことでございますから、それ以上のことをすれば、これは条約を破棄するようなかっこうになると思います、条約や協定ができた暁には。私は、そういう意味におきまして、李ラインというものは実質的になくなる、こういうことを、いろいろな方面から、そういう簡単な約束ばかりではなくて、いろいろな方面から実現を期しておるわけでございます。
  119. 戸叶里子

    ○戸叶委員 先ほど、漁業協定の有効期間というものが大体きめられて、その後においていろいろ討議されるというふうなお話でございましたが、今度の李承晩ライン撤廃というものは、日本自身がこれは国際的に不法であるということを認めていらっしゃるのですから、いまのような約束というものは、この条約の期限いかんにかかわらず永久的にこういうものは認めないのだというような話し合いでもちろんお進めになると思いますけれども、この点はいかがでございますか。
  120. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 それはそのとおりでございます。こういうものはあってならないものでございますから、何も条約の期限というようなことでその間だけというようなことではございません。
  121. 野田武夫

    ○野田(武)委員長代理 戸叶君、先ほどの約束の時間ですから……。
  122. 戸叶里子

    ○戸叶委員 時間がないそうですからやめますが、もう一点だけ伺いたい。   〔野田(武)委員長代理退席、委員長着席〕  先ほど、基線の引き方ではまだ話がついておらないということでございますが、あくまでも赤城農林大臣が主張されていることはお譲りにならずに交渉されると思いますけれども、ただ、この問題は、基線の内側は内水ということになると思うのです。そうすると、済州島付近の内水の幅というのは約六十海里にもなると思いますけれども、これを内水とするためには少し条約に違反するのではないか。つまり、領海及び接続水域に関する条約というのがありますけれども、それには、なるべく沿岸に沿うたところを内水とするということであって、そうなってまいりますと、これはこの条約に違反するのではないかと思いますが、この点はいかがでございますか。
  123. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先ほど御説明いたしましたが、私のことばが足りなかったと思いますが、済州島近辺は低潮線で専管水域を設ける、向こうの半島の近くは直線基線で十二海里、そうすると両方の十二海里線が一緒になる。ですから、これは内水ではございません。内水は基線の内側です。私は、これは専管水域、こういうふうな観点で話し合いをしております。
  124. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は基線の問題あるいは専管水域の問題でまだ質問があるのですが、先ほど鯨岡委員がたいへん紳士的に譲ってくださいましたから、私も時間をさきますけれども、またこういうような機会をぜひつくっていただきまして、まだわからないいろいろな問題を明確にしていただきたいということを強く要望いたします。
  125. 安藤覺

    安藤委員長 鯨岡君。
  126. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 農林大臣たいへんお急ぎのようでございますから、二点だけちょっと教えていただきたいと思いますが、共同規制水域をつくるゆえんのものは、魚族を乱獲してはいけないということでおやりになる。そこで、隻数、トン数をきめるというのですが、日本だけのほうを制限するのですか。朝鮮のほうは規制しないで日本のほうだけを規制するのですか。この点はどうなんですか。
  127. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これはもう向こうは非常にごく少ないのだと言って、いま数字を出してきていませんけれども、しかし私は両方対等でやるべきだ。話が深入りしますが、とにかく十五万トンなら十五万トン、あるいはそれ以下というふうにするか、そういう点ではいろいろ話がきまっちゃいませんけれども、これは、たてまえは両方平等公平に規制する、こういうたてまえでございます。
  128. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 そうすると、もちろんそれはそうでなければいけないと思うのですが、日本のほうを規制をすると、いままでお魚をとっていた人がとれなくなったという場合に、その漁民に対する日本政府の補償という問題はやっぱり出てくる問題でございましょうか。
  129. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 ただいま交渉しているのは、限度におきましては日本の実績をそこなわないように、すなわち向こうも日本の実績を尊重する、こういうことを主張しております。そしてまた、具体的にも日本の漁業でそれからはみ出されて補償しなくてはならぬというような事態が起こらないような交渉をいたしております。
  130. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 いまのおことばを期待して、もし減るというようなことになればそういう問題も起こるのだというふうに認識いたしまして、農林大臣に対する質問は終わりたいと思います。まだこまかく聞きたいことがあるのですが、予算委員会で非常にお急ぎだそうですから、どうぞ……。  先ほど外務大臣に、日本の外交の基本方針三つ、そのうち国連の問題についてお答えをいただきました。次に、私は、三方針のうちの一つの、自由陣営の一員という問題についてお伺いをいたしたいと思うのであります。  戦後わが国が独立を回復して、われわれはこれから自由陣営の一員でやっていくのだと方針をきめたころと現在とでは、ただ自由陣営といっても、その間にはずいぶんの相違があると私は思うのでございます。すなわち、当時の自由陣営はアメリカを中心とした結束第一主義であったのであります。経済にしても、国防にしても、何から何までアメリカを抜きにしては考えられなかった時代であります。それは、社会主義陣営というか、共産主義陣営のほうでも、ソ連を中心として鉄の結束を結んでいた時代でございます。しかし、いまは違うと思うのです。自由陣営はアメリカという一極を中心としてはいません。多元化しているわけであります。共産陣営のほうも同じであります。全く昔の様子とは違ってきております。むしろ地域的にブロック化しようとしているのが最近の大まかな傾向でさえあるように思われるのでございます。フランスなどは、NATOの一員であることに変わりはないとしても、昔のようにアメリカの言うことを何でも聞くというわけにはまいりません。中ソの間は毎日の新聞が伝えておるとおりであります。私がおもしろいと思いますのは、アメリカ中心、ソ連中心で二大陣営に分かれて対立していたときに、中立の第三勢力のような顔をしていて相当に意欲的であったインドは、いま必ずしも当時のような考え方に立っていないのであります。これを要するに、わが国の外交の基本方針が自由陣営の一員ということにあるといっても、この方針を立てたときと現在とでは自由陣営の姿に大きな相違があるのですから、ただ自由陣営の一員としてと言っただけでは、諸般の事象に対決する基本の考え方とはなり得ないと思うのであります。ベトナム問題、アメリカの北進政策に対してはフランスイギリスも心配して相当意欲的に行動しておることは新聞が伝えるとおりであります。フランスイギリスが心配するよりも、日本のほうがよほど心配であります。アメリカの行動に対して、その気持ちはわかるというようなこと、理解だけしているというようなことでは、自由陣営の一員としての態度とは言えない。そういうのが自由陣営の態度だというならば、あまりにこれは消極的であると言わなければならないと思うわけであります。そこで、現在の時点に立って、自由陣営の一員という基本の考え方について、自由陣営の一員というのは一体何かということについて少し突っ込んだ見解の御表明が願いたいと思うわけでございます。
  131. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 キューバ問題等を契機として東西の従来の対立がよほど緩和してまいりました。いわゆる平和共存というような思想が東にも西にも見られる情勢になってまいったのでありますが、それと同時に、御指摘のとおりに、東側あるいは西側において多元化してまいった、こういう情勢も見のがすことのできない顕著な姿でございます。しかしながら、これをよく観察いたしますというと、やはり同じ西側の自由陣営におきましては一脈相通ずるところのものがありまして、あくまで自由民主主義を標榜して国の成立をはかっていこう、こういう基本的な思想が底に流れておることは、これはもう共通の事柄であると思うのであります。一方また、東側の陣営におきましても、やはり、多元化しているとはいいながら、共通の点は、自由陣営に対抗して、勢力を減殺して、そして自分らの共通の政治的目的を貫こう、そういうような基本的な姿においては共通のものがある。でありますから、お互い、この二つの陣営が多元化しているとはいいながら、そこに一つの基本的なものにおいて東西の対抗の姿が消されてない。これが端的にあらわれておるのがアジアの各地における紛争、あるいはアフリカにおける紛争。そういうものをよく見ますというと、その紛争を一そう険悪なものにしているのは東西の対立ではないか。もし東西の対立がそういう紛争にからんでこなければ、この情勢というのはもっと解決しやすいはずであったと思うのであります。そういう次第でございますから、情勢は著しく変わりつつあるとはいいながら、われわれは同じ自由陣営の間に友好的な関係をできるだけ推進をいたしまして、そしてわれわれの国家利益を守っていかなければならぬ、かように考えるわけでありまして、そういう基本的な方針のもとに日本の外交を推進してまいりたい、かように考えておる次第であります。
  132. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 政府のお考えは、自由陣営というものは多元化し、自由陣営ばかりではなく共産陣営のほうも多元化して昔日のものでないように一見見えるけれども、しかしやはり根本は東西の対立というものはまだぬぐい切っておるものではない、そのあらわれは、アジアの対立にしても根本は東西の対立になっておる、これがなければこんなふうな騒ぎにはならなかったはずだ、そういう意味で、変わっておるように見えてまだ変わっておらない、こういうような御見解のようであります。そういう御見解の中から自由陣営の一員としての日本態度があるとするならば、ベトナム問題などは、アメリカ考えも十分にわれわれもわかりますけれどもフランスイギリスがいろいろ心配しておる以上に、やはり積極的に意欲的に日本が心配して、アメリカに忠告すべきところは勇敢に忠告するということがなければ、この自由陣営の一員とは言えないのではないか、こんなように思いますので、御見解を教えていただいたこの機会に私の考えを申し上げておく次第であります。  次に、アジアの一員という問題ですが、外交三方針のうちの一番最後、わが国の外交方針のうちのアジアの一員ということについてですが、佐藤総理は、この国会の施政方針演説で、アジアは世界の悩みを集約していると表現なさっておるのであります。そして、アジアの緊張緩和に寄与すべき意味におきまして責任の重大さを深く感ずるというようなことも言われておるわけであります。私は全くそのとおりであると思うのであります。また、外務大臣は、同じく施政演説で、アジアにおいて、国際的緊張と対立が日に日に高まっていく現象はまことに残念である、同じくアジアに位置するわが国は、アジアの諸国民の願望に深い理解と同情を寄せ、アジアにおけるわが国独自の立場を十分に生かして、永続的な親交関係をつくり上げるように、努力すべきであると思う、こういうふうに力強い演説をなさっておるわけであります。私は全くそのとおりであると思います。特に、外務大臣は、アジアにおける恒久的平和を確立するために最も考えなければならないことは中国問題であると言明され、さらに、ベトナムの政情に深い同情を寄せ、インドネシア、マレーシア問題を人ごとではない、むしろこれらの諸国はいずれもわが国に大きな期待を寄せていますので、政府としてはこれら諸国との友好関係には一段と努力してその期待にこたえるということを強調なさっておるのでございます。私は外務大臣のこの考え方に全く大賛成であります。総理の言われるごとく、いまだけのことを言うなら、世界の政治のむずかしい問題は全部アジアに集まっているような気がいたします。本来一つであるべきのに、二つに分かれている国が世界に四つあります。そしてそのうちの三つはアジアにあるのであります。南北朝鮮がそれであり、中国、台湾がそれであり、南北ベトナムがそれであります。いずれもわが国の近隣の国であります。日本の平和のために、日本の経済のために直接影響を受ける近隣の国でございます。アジアは一つであるということばがありますが、アジアは一つどころか、五つも六つも七つも八つにも分われておる。同じ民族の血を流して争っているのがアジアの現実の姿であります。その現実を直視して、総理大臣も外務大臣も、その状態を憂慮する、その解決に日本として責任をさえ感ずると演説なさっておられるのであります。  私がここで残念に思いますことは、日本の外交は行動として総理や外務大臣の演説のように必ずしもいっていないのではないかと思われる点であります。外務大臣は、アジアの苦悩する諸国はわが国に大きな期待を寄せていると言われておりますが、外務大臣は、日本の外交がその期待にこたえているというふうに思われるでしょうか。インドネシアがマレーシアとの紛争解決のためにわが国に期待しているであろうことは容易に考えられることであります。さきに、この問題については川島先生に行ってもらうのだといって、まずその前に小笠先生だったか出かけてまいりましたが、そして向こうは非常に期待しておったのに、何かそのあとが続かないような気がいたします。タイやビルマがやっているから様子を見ようというようなことでは、私は、演説のようなものではない、こんなふうに考えます。  中国問題だって、私はそうだと思います。これこそ重要な問題だ。この問題の解決なくしてアジアの平和はないとまで演説で御表明なさっておりながら、そして総理は、ジョンソン大統領との会談で、アメリカの中国に対する考え方は理解するけれども日本は近隣の国としてアメリカ考え方に全く同調することはできないのだと力強く御表明なさっておりながら、外務省の行動は必ずしもことばのようには行動しているとは思えないのがまことに残念であります。  日韓問題早期妥結は私どもの最も強く希望するところであります。しかるに、中国や北朝鮮は、この日韓会議早期妥結日本の軍国主義の再現であるとか侵略の野望であるとか非難をいたしております。日本国内だってそんなことを言う人がいます。共産主義の連中の言っていることだからほっておけというなら別ですが、アジアの一員であるという基本の方針から言えば、中国や北朝鮮の言っていることはほっておけという立場は出てまいらないと思います。これに対して協力してもらわなくてもいいですけれども、少なくとも理解させるような努力が引き続いて念を入れて同時に行なわれなければいけないと思うのであります。  そこで、外務大臣にお尋ねをいたしますけれども、まことに僭越ですが、アジアの一員である、アジアの平和に責任を持つという日本の外交の基本方針考え方から、今日のベトナムに対する処置は何か、日本政府はベトナム問題がどう発展すると予想しておるのか、さらに、この時点に立って日本のしなければならないことは何か、日本のできることは何か、私が申し上げましたような個個の問題を集約して、日本がアジアの一員としての立場を忘れない外交というのは何か、それを伺いたいと思うのでございます。
  133. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いま世界は狭くなりまして、距離的な関係にかかわりなく、この国際問題が連鎖反応をどんどん起こしていく、こういうわけでありますけれども、民族が非常に近いとか、地理的に近いというようなことになりますと、その間に一そうこの傾向が強いのであります。そこで、アジアに位する一国といたしまして、日本はアジアの問題には重大な関心を持たざるを得ない。国家繁栄のために、あるいはその他の政治的な安定のために、経済、文化の発展のために、あらゆる面において非常に近さを感ずるわけでございますから、アジア各地における今日の状態というものは決して対岸の火災視し得ないものである、日本の直接の国民的な利益の点から言って、これは看禍し得ない問題だ、そういうふうに感じておるのであります。  日本は、ようやく戦後の経済回復を推進してまいりまして、今日世界の数少ない経済的な先進国として、数えられるに至ったのであります。しかし、まだまだ国内にいろいろな難問をかかえておりますけれども、とにかくようやく世界的に認められできておるのでありますが、日本といたしましては、あくまで経済あるいは文化における力、経済力、文化力というものによって、アジアはみなほとんど低開発国であると思われるのでありますが、これらの平和建設に経済と文化力をもってこれに協力する、こういうたてまえを取りつつあるのでありますが、今日以後の段階において一そうこの方面に力を注いでまいりたい。そうしてお互いに繁栄して、いわゆる共存共栄の恵みを受けるようにしてまいりたい。この点につきましては何人も異存のないところだろうと思います。  ただ、現在非常に燃え上がっておるベトナムのかような情勢に対して、一体日本が単独の力によって何ができるか。これらの問題の安定のために尽くすべき場面はもちろんあると思うのでありますが、単独あるいは他と協力してこれらの問題の鎮静につとめるにいたしましても、やはりタイミングがある。いま一体どういう状況であるかといいますと、北越は、ベトナムのことはベトナム人にまかしておけ、アメリカの軍隊が撤退したら、それでもうよろしいのだ、こういうことを言っているが、しかし、アメリカは何も好きこのんであそこに行ったわけではない。五四年の協定というものが違反され、北方から破棄され、破られておる。そして南ベトナムの自由と独立が脅かされておる。そういうことに対してアメリカ援助を要請した。この要請に基づいて、その目的がいわゆる自由陣営の独立と平和を守る意味でありますから、これに同意を与えてアメリカがいま行動しておる。そこで、ただアメリカの軍隊が撤退すればそれで事がおさまるかといいますと、事はおさまらない。みすみす北越の野望を満足させる、南越の自由・独立というものが完全に破壊されるということが目に見えておる。そういうわけでありますから、アメリカとしても、これはのくわけにいかぬという立場をとっておる。アメリカはじゃどういうことを言っているかといいますと、北越の人及び物による浸透工作というものがやんで、そして南越の政治情勢が安定すればいつでも自分らは手を引く、こういうことを言っておるのでありまして、この両者の対立が容易に解けそうもないというところに今日のこの問題の核心があるのでございまして、日本といたしましては、これはもうどの国よりも非常な関心を持って一日も早く鎮静されることを望んでおるのでありますけれども、事態はなかなか困難である。ただぽかんとして拱手傍観しているようなわけではないのであります。そういうわけでございまして、日本政府といたしましても、あらゆる現地の公館からの情報を集めて、具体的な問題についていろいろ考究はいたしております。しかしながら、なおそれでも十分でないというので、松本俊一氏をわずらわして、この特に問題になっているベトナムはもちろんのこと、ラオス、カンボジアというインドシナ一帯をひとつ一段と高い見地で情勢をにらんできてもらいたいというような意味で同氏をわずらわして、その任務を引き受けてもらったような次第でございまして、われわれといたしましては、アジアの一員であるということを忘れるどころか、忘れようとしても忘れられない立場でございまして、これらの問題に対しては絶えず十分の注意を注ぎ、その問題の解決いかんを考究しておるというのが現状でございます。
  134. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 アジアの一員としてのわが国態度についてきわめて詳細に外務大臣からお話がありましたので、よくわかったような気がいたしますが、しかし、まだ私ども考えてもう一段の御奮発を願いたいと思いますことは、たとえば、大きな問題の中で一つの問題をとらえるようでございますが、南ベトナムからアメリカが引けばいいんだ、そんなふうに簡単に私ども考えてはおりません。考えてはおりませんが、アメリカ国内の世論調査を新聞等で見ましても、ベトナムでそういう騒ぎが起こっておるということを国民全体の中のわずかのパーセンテージしか知っていない。アメリカが危険を感ずる度合いというものよりは、日本のほうが直接危険を感ずる度合いが多いわけですから、アメリカが撤退したらばいいんだと簡単には考えられないにしても、それじゃどうするんだということの心配と、その心配に基づく行動とが積極的になされなければいけないと思うわけでございます。松本先生が出かけていかれたようでありますが、どうか、願わくは、その情報に基づいて引き続いての意欲的な行動、そういうものがなされなければいけない。日本が無関心でいて、アメリカ日本以外の国でもってこの問題に立ち入ってしかるべきような国は私はないと思う。フランスなんか行ったって、フランスはもともと失敗して帰った国ですから、そんなものはベトナムへ行ったって相手にしないだろうと思うので、日本がこの際奮発しなければ奮発するものはいない、こんなふうに私は考えるわけであります。経済と文化を通じてこれに貢献するというお話でございましたが、経済と文化以前に、同胞の血を流しているのですから、その血を流していることをまずとめてから経済、文化の貢献ということになると思うので、血を流している最中に経済や文化を通じてといったって、これは私はちょっとうまくいかないのじゃないかというふうに考えるわけでございます。これはまあ希望意見を申し述べたにすぎません。  私はこの三大外交方針についてお伺いをいたしたのですが、きわめて簡単に日韓問題について外務大臣にちょっと教えていただきたいと思いますことは、金・大平の会談で前に有償・無償五億ドルというのがきまって、民間ベースで一億ドル以上、これは非常に政治的な御発言できまっておったように思うのですが、このごろ何か新聞の伝えるところによると、これを二億か三億にふやしてくれろというような要求があったように新聞は伝えておるのですが、外務大臣お知りでしたらば、その点についてお答え願いたいと思います。
  135. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 以上ということになっておるのでありますから、これをその以上でいけないかどうかということならいいのでありますが、その以上、つまり二億とか三億とかいうような数字的な表示を特にする必要ありやいなやという問題が問題になるのでありますけれども、まあ一般の韓国の国民に対する印象と申しますか、そういうようなところをねらっての話だろうと思いますが、これは正式の会談では取り上げられてはおりませんけれども、そういうようなことをちょっと耳にしたことがございます。ございますが、これは別に一億ドル以上という、一億というものにそういう深い意味があったわけでもないと思うのでありまして、これを二億以上にするか三億五千万ドル以上にするか、そういったようなことは実質上変化のない問題ではありますけれども、しかし、一度きまった数字を、理由なしに、ただこれはまあどうでもいいからそれじゃ三億にしておけとか四億にしておけというようなことにはどうもまいらぬと私は考えております。
  136. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 この民間ベースの一億ドル以上というのは、二億とか三億とかというふうに数字を言えというようなことはまだ具体的になっていないにしても、伝えられている漁業の援助のほうはこの中に含まれるものと解釈してよろしゅうございますか。
  137. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは、漁業は民間資金で協力するということになっておりますから、資金の性質上から言いますと、この一億ドル以上というものになるわけでございます。
  138. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 そうすると、なお利息とか償還期限とかいうことでいろいろ要求があるようですが、そうなってくると、政府からの有償のほうの借款、これとの関係はどんなことになりますか。民間ベースだから全然違うと解釈してよろしゅうございますか。
  139. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは性質が違います。
  140. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 いままで韓国に対して日本の債権で焦げつきになっているものがあるはずでありますが、あれは交渉の過程においてどんなふうな形で出てまいるものでしょうか、お答え願いたいと思います。
  141. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 焦げつき債権の問題は金・大平会談のときにも取り上げられまして、そうして、そのときは十分話が詰まりませんで、ただ、一定期間の間に償還する、それだけがきまりましたことは、国会に当時配付いたしました資料にもございますとおりでございまして、あとそれをどういう期間にどういう方法でということは、今後交渉してまいらなくちゃいけない残っている問題でございます。
  142. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 今度の一連の日韓会談の中に出てくる問題でございますか。
  143. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 日韓国交正常化のプロパーの問題ではございませんですけれども、結局、従来の交渉の経緯の中にも取り上げられておりますように、今後のこの国交正常化交渉の中で取り上げられ解決されるべきものと心得ております。
  144. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 日韓会談の問題について、私は、基本条約のごときものは、あるいは政治的に突き詰めて幾らか矛盾を感ずるようなことがあっても、やむを得ない点もあろうかと思いますが、漁業問題のような具体的な問題になってまいりますと、必ずしもそうはいかない。いろいろ問題なってまいりますから、相当突っ込んだ質疑がここでかわされなければならないと思います。しかし、時期的にいまが適当であるかどうかはわかりません。しかも農林大臣もお帰りになったことでございますから、この問題は保留をいたしまして、きょうの私の質問はこれで終わりたいと思います。
  145. 安藤覺

    安藤委員長 永末君。
  146. 永末英一

    ○永末委員 私は日韓問題について御質問申し上げますが、時間がきわめて限られてありますので、大臣はひとつ簡単に御答弁を願いたいと思います。  第一は、政府はいま韓国政府との間にはなはだ事務的、法律的に交渉を進められておるようです。しかし、私どもの見るところでは、日本韓国との国交正常化は、単に政府政府の間においてある合意が成立したからといって国交の正常化ができ上がるものとは思いません。すなわち、日本韓国との間の長い歴史的な背景がございますから、少なくとも、両国政府の合意に達するものは、それぞれの国民の大多数が共感をもって同意を得る内容、その内容が一義的に明確に同じものが両国民に知らされておる、そういう状態にならなければならぬとわれわれは考えます。外務大臣はどうお考えか、伺いたい。
  147. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 お説のとおりだと思います。
  148. 永末英一

    ○永末委員 外務大臣は、二月十七日に金浦飛行場に兼かれたときのメッセージで、両国の過去の歴史を振り返って反省をするという旨の発言をされました。反省をするという意味はどういう意味か、お答えを願いたい。
  149. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 相当歴史的な伝統を持っておる民族が他の民族に支配されるということ自体が、民族感情の上から言っても、今日の国際情勢の上から言っても、これは遺憾なことである、こういうふうに考えられますので、そういう意味をもって、深く反省する、こういうことばを使ったわけであります。
  150. 永末英一

    ○永末委員 これは、外務大臣が初めて行かれたというときの声明の問題でございますけれども日韓交渉が最終的に妥結をする際に、日本政府として、いまの外務大臣のような気持ちは明文において何らかの形であらわれるものと考えてよろしいか。
  151. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いま、その問題については、特別に具体的に草案ができ上がっておるわけでもございませんので、そのことをお約束するわけにまいりません。
  152. 永末英一

    ○永末委員 約束するわけにはまいらぬと言われるが、あなたも御承知のとおり、韓国国民の中には、感情的な問題とは申しますけれども、非常に根深い問題について、正規の日本政府のある意思表明というものをはなはだ期待をいたしておる。これをしないままで国交正常化をはかろうとしても、韓国民大部分の共感を得るに至らないと私どもは判断いたしておる。お約束できないと申されますが、あなたは大臣として、そういうことが必要だとお考えかどうか、お考えを承りたい。
  153. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 深く反省というような文字を中心にしていま御質問になったと思いましたので、そういう点はお約束できないということを申し上げたのでありますが、そうじゃなく、この意味に盛られたようなことを何らかの形において表現して、そして両国民がほんとに心から解け合うというなことを期待することは、これは非常に望ましいことだと考えております。
  154. 永末英一

    ○永末委員 日韓会談、いわゆるそういうものが進行していくにつれて、日本の経済界等からもいろいろな使節団が韓国へ参る。あるいはまた、それにつけ加えて、日本韓国配当時に朝鮮のことをよく知っておるような人々が韓国へ行く。ところが、これらの人物については、韓国の国民は、彼らのことばを使いますと、日本の経済的帝国主義の手先がまたやってまいったという印象を受けるのです。したがって、そういう人物が政府の正規の交渉中にどんどん韓国へ押しかけていくということについて。私どもはやってはならぬことだと思いますが、外務大臣はどうお考えか、伺いたい。
  155. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これを統制するということは穏やかなことではございませんので、もしそういう人たちがあるとすれば、これこそ大いに反省をして、正しい行動をとり、誤解を受けるようなことは慎重に行動をしてもらいたい、かようには考えております。
  156. 永末英一

    ○永末委員 外務大臣意向が実現をする形において出ていかなければ、実際には韓国国民はわからないわけであって、いまのことばがありますから、外務省としては今後慎重に対処されるとわれわれは期待をいたします。  そこで、先ほど外務大臣は、日本政府韓国政府との間に合意に達するものが両国民の間に一義的な明確性をもって同様に理解されることは国交正常化の基本だという旨の答弁を私にされました。それならば、一つの問題といたしまして、先ほど戸叶議員から質疑があったのでございますが、基本条約の第三条にございます国連決議一九五号を引用しておる部分について、日本政府は、その一九五号にきめてあるとおりの朝鮮における唯一合法の政府だと大韓民国政府を認めておる。ところが、私の聞いておるところでは、韓国側では、国連決議一九五号に定めてあるような韓半島における唯一合法政府だ、このようにこの条文を韓国政府は国民に説明をし、国民はそのように受け取っておるわけであります。この事実を外務大臣は御承知かどうか、伺いたい。
  157. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そういう事実をそう的確に私はつかんでおるわけではございません。
  158. 永末英一

    ○永末委員 私が一番心配しますのは、両国間の政府である合意に達する、ところが、その場合、両方の解釈に違いがある場合には英語をもってその主たる解釈の基準とする、こういうことになっておる。その英文は、いまの問題の点は、「アズ・スペシファイド・イン・ザ・レゾリューション・ワン・ナイン・ファイブ」云々、こうなっておる「アズ」というのは、われわれ日本人としては英語の的確な意味はわかりませんが、日本政府は「きめてあるとおりの」と解しておる。ところが、「アズ」の中には「のような」というような意味もあるわけであります。その解釈について、もし日本政府日本政府の独自の解釈をし、韓国政府韓国政府の独自の解釈をするとなると、それを受け取った国民は違う感覚を受けるわけだ。すなわち、現在韓国の大部分の国民は、韓半島における唯一合法の政府は大韓民国政府であるということを日本政府は確認した、こういうふうに受け取っているわけである。このように受け取っておるとあなたは御承知でおられますか。
  159. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 とにかく、そういう問題は、私は、向こうの当局、いわゆる首脳部をあくまで信頼してこの条約の取りきめをいたしたのでございますから、一時的に国民がどういう判断をしているかというようなことについては私は深くせんさくもしておりませんし、その必要もないと思います。
  160. 永末英一

    ○永末委員 私が最初に伺ったのはまさしくその点であります。政府の責任者としては相手政府の責任者と話し合いをされる。しかし、日本韓国との国交正常化の問題は、ある時期における政府政府の間にかわされる合意の問題である。背後に国民の歴史的な感情というものがある。したがって、日本政府から韓国政府に向けて、どうせよこうせよということは言う限りでございません。しかし、もし日本政府の解釈と違った解釈を韓国政府が行なっておるということを正確に認識した場合には、日本政府としては、外務大臣としてどうされますか。
  161. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 解釈上別の解釈をして、そして向こうから自分のほうの解釈に同調せよというような場合には、これは問題になりますが、しからざる場合に、どういう人に向かってどういうことを言っているかということにつきましては、われわれは関知しないものであります。
  162. 永末英一

    ○永末委員 私は韓国国会においてこの点について討議された資料を持っておりますが、いずれ翻訳ができましたら正確な資料をもってもう一度伺います。留保しておきます。  しかし、この点でもう一点伺いたいのは、現在の韓国国民の間では、この点をそのように解釈しまするがゆえに、北朝鮮地域における政府は反乱軍政府である、悪いことばで言えば、もっと北側からのかいらい政権である、こういう感覚に立っておる。日本政府はそういう感覚に立っておられますかどうですか、お伺いたします。
  163. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 この問題に対する批判は、私は今日避けたい存じます。
  164. 永末英一

    ○永末委員 批判を求めておるわけではございません。あなたがこの国会で明らかにされたのは、大韓民国政府の管轄権は現在の停戦協定ライン以南にその管轄権が及ぶと言われた。それならば、ソビエトと中国との南の国境以南、停戦協定ラインまでにある地域、そこに一千万以上の人間が住み、その人々特有の政権をつくっておることは、これまた事実であります。その事実をお認めになりますか。
  165. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 事実は認めております。
  166. 永末英一

    ○永末委員 その事実を認められるというお答えでございますから、いま日本韓国との間で進められている会談の中で、たとえば日本におりますいわゆる朝鮮人の法的地位に関する問題や、あるいはまた、いままで金・大平メモによって示されておりまするような請求権の問題、そういうものはその管轄権の及ばないところにある政権との間においては将来に残った問題だと日本政府はお考えになるかどうか、伺いたい。
  167. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 在日朝鮮人の地位につきましては、ただいま当局者の間で折衝中でございますが、もちろんその在日朝鮮人の中には韓国政府というものに反対の君もある。そういうような点を十分に考慮に入れて在日朝鮮人の法的地位を定めたい、かように考えております。それから、請求権の問題につきましては、いわゆる停戦ライン三十八度以北の問題は全く白紙の状態であります。
  168. 永末英一

    ○永末委員 最近法務大臣が、この在日朝鮮人の法的地位の問題について、もしそれぞれの国籍取得を在日朝鮮人の方に政府から求めていった場合に大韓民国の国籍を求めない人々については無国籍人であるかのごとき発言を当衆議院においてやられたと新聞承知をいたしました。もしあなたが北の地域にある政権があるということを承知をされるならば、一体その無国籍というような状態が続き得るものかどうか、この点についてはどう考えておりますか。
  169. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 条約局長から答弁をいたさせます。
  170. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 ある事実を認めるということと、ちょうどそれが国家なり政府であることを国際法上承認するということとは別だと思うのでございまして、もしある地域にできている政権を国家の正当な政府であると認めないとすれば、そこの国民であると称する者に対しては、日本政府としてはその国籍を有する者として取り扱うことが法律上不可能である、かように考えます。
  171. 永末英一

    ○永末委員 すでに国際赤十字を通じて日本における朝鮮人の方がいわゆる北朝鮮のほうに帰還をされることを政府はお認めになる。何も私はその事実によって北朝鮮政府日本政府が認めたとか何とかそんなことを言うのではございません。しかし、事実関係としては、帰還はそれぞれの赤十字を通じてではございますけれども、事実としてはやはり認められておると思う。そういうふうに外務大臣解釈してよろしいですね。
  172. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 条約局長から御答弁いたさせます。
  173. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 事実関係は仰せのとおりでございます。
  174. 永末英一

    ○永末委員 事実関係はまさにそのとおりだと私も思います。そこで、外務大臣、請求権の問題は北の部分については白紙だと言われましたが、白紙という意味は、なしという意味ですか、その白紙には何らかの数字が書き入れられるものであるという御解釈であるか、伺いたい。
  175. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 白紙というのはあくまで白紙でございまして、ないときめておるわけでもなければ、あるときめておるわけでもないのであります。
  176. 永末英一

    ○永末委員 この請求権の問題についていまのお答えの中でひっかかってまいりますのは、日本政府は、請求権という問題はいわゆる金・大平メモによってそれぞれの経済協力によって解決せらるべき問題だという御説明をわが国会でやっておられる。ところが、韓国民の、まず私の承知し得る大部分の方々の意見は、そうではなくて、権の問題は請求権の問題として残っておる、こういう解釈をしているように思います。外務大臣はその事実を御認識になっておられますかどうか、伺いたい。
  177. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 あくまで責任ある当局者を相手にして交渉しております。
  178. 永末英一

    ○永末委員 その件に関してもう一点伺いたいのは、これまた先ほど戸叶議員が触れられた問題ですが、基本条約第二条の「もはや無効である」という点、そのもはやという字句については、外務大臣日本国会においては、大韓民国独立の時点と、こう言う。しかし、私ども承知しておるところでは、韓国では、そもそも当初から無効になったと考えておるわけである。これは、あなたが、そんなことは知らぬ、こうおっしゃいますけれども、彼らのほうはそう思っておる。そのそう思っておる根拠の一つに請求権の問題がかかっておるわけであります。そこで、あなたは、一九四八年大韓民国成立以来の問題だと言うなら、韓国側から、日本のいわゆる植民地支配時代、特に戦争時代、さらにまた大韓民国政府の成立の以前から成立まで、その期間におけるいろいろな要求が出ており、これは今国会でも取り上げられましたが、それらの問題については根拠がないとお考えですか、根拠があるとお考えですか。
  179. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 条約局長からお答えいたします。
  180. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 第二条で「もはや無効である」というのは、とにかくかつては有効であったということにほかならないわけでございます。それから、請求権問題と申しますのは平和条約第四条の問題でございますが、これは、国家間の賠償とか、併合していたことが悪かったというような意味の賠償とか、そういう趣旨規定じゃございませんので、そういうことと併合条約がかつて有効であったかどうかというようなこととはかかわりないものと私は考えております。
  181. 永末英一

    ○永末委員 かかわりないというのは、日本政府としてはもちろん合併条約が有効であったという見地に立っているがゆえに、もはやという解釈については一九四八年以後のことである、こういう御解釈だ。ところが、韓国民の大部分は、日本政府が支配しておった時代におけるいろいろな時点、——これをいわゆる金額に換算せられるものもあれば、せられないものもある。最初外務大臣に伺いましたように、反省している内容にこれがかかるわけである。したがって、請求権の問題は多分にそういう内容を含むことを請求せられてきておる。これを日本政府が経済協力ということだけで解決しようとするならば、彼らに映るのは、単に無償三億ドルだけによって、韓国民が年来要望してきた請求権問題を日本政府がごまかそうとするのではないか、こういう感覚になるわけです。そこで、これに関連して、一体外務大臣は、韓国側の言ってきた請求権問題なるものは根拠がないとお考えになるのか、それとも根拠があるとお考えになってこの問題に対処しておられるのか、この点を伺いたい。
  182. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 根拠のあるのもあるし、ないものもありましょうと思います。何しろ時間が非常にたっておるし、その間に朝鮮動乱というあの大事件がありまして、確たる証拠を具備することがきわめて困難である。したがって、請求権の内容についてこれをこまかに審査してその当否を決定するということがほとんど不可能である。そういうことでございまして、おそらく根拠のあるものもないものも入りまじって提起をされたと思うのでありますが、こういうわずらわしい仕事をやめて、そして経済協力の問題を進め、この問題が成立すればその随伴的効果として請求権は消滅する、こういう点で大平・金了解というものができておりまして、われわれといたしましては、その趣旨をくんで今回の妥結をはかりたい、かように考えておるわけであります。
  183. 永末英一

    ○永末委員 あなたはいま、わずらわしい問題はやめて、こうおっしゃいましたが、私は併合条約の無効の問題について伺いたいのは、たとえば韓国側の国民にいたしますと、その併合条約韓国民の意思に反して一方的に日本政府の力によって強行されたものである、その後たとえば過般の太平洋戦争を通じて五十八万三千七百三十六人の生命が奪われたとか、あるいはまた八千五百人の韓国の女性が不当に戦線にかり出されて恥辱に満ちた仕事をさせられたとか、金銭には換算できないけれども、こういう問題について一体日本政府はどう考えるのか、ただ単に遺憾である、反省をするということばでなくて、何らかの実効のある行動を日本政府としてはすべきではないか、こういう感情がみんなの気持ちの中にあるわけです。私が会いました四十歳以上の婦人でしたが、私も日本韓国との国交正常化は望む、ところが、自分が小学校のときに日本語を強制的に覚えさせられて、覚えない場合にはすぐ便所掃除をさせられた、それを思い出すと私の血が燃える、こう言っておりました。この韓国民の気持ち、これを日本政府が十分くみ上げて——あなたは根拠のあるものもないものもあると言いましたけれども韓国民としてはそれぞれ根拠のあるものとして請求権の問題を持ち出しておる。そこで、あなたはそのようなわずらわしい問題はやめるというように申されたが、それは日本政府考えですか、金・大平メモをつくった相手方の金君も同じ考えを持っているのですか、伺いたい。
  184. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 わずらわしいということばは少し適当でないから、私は別に申しますが、とにかく不可能である。的確に、朝鮮銀行の地金が幾らあってそれがどうどうした、あるいは郵便貯金がどうだとか、あるいは雇用契約の賃金の未払いがまだどうだとか、いろいろあったようでございますが、そういうような問題を物的に証拠立てるということはなかなか不可能である。そうかといって、言いなりほうだいに請求権を認めるというわけにはまいらぬ。そういうことでございまして、そういうように非常に困難な仕事であるということを、わずらわしいと、こう言ったわけでございますが、表現が適当でないから、さらに注釈を加えてはっきりさせておきます。どうぞ御了解願います。
  185. 永末英一

    ○永末委員 いま、わずらわしいというような主観的な価値判断を加えたようなことばはやめたとおっしゃいましたが、やめていただいてけっこうです。そういうことばをお使いになるべきものではございません。ただ、こういう問題がある。たとえば、経済協力三億ドルと、こういったぐあいに日本政府が打ち出した場合、韓国民の中には、太平洋戦争中の短期間の占領でも日本政府はフィリピンやインドネシアやビルマに対してあれだけの賠償を払ったじゃないか、われわれのように三十六年にわたる長い日本の、彼らのことばを使いますと不法な占領に対して三億ドルとは何事だという感情があるわけです。この感情は、外務大臣、御存じですね。
  186. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 その感情は、決して金に換算することのできない、何と申しますか、きわめて精神的なものでございまして、これを簡単に金に換算するというような、そういうことはむしろ精神的なものを冒涜することに私はなるのじゃないかと考えます。
  187. 永末英一

    ○永末委員 精神的なものを冒涜するわけではないのですよ。韓国民の抱いている感情というものを日本政府が正確にくみ上げなければ、当初申しましたように韓国民の共感を得られない。国交正常化というのは、両国民がこれから長きにわたって一緒に平和にやっていきます。共存をはかりますというスタートラインにつくわけでありますから、感情の問題は無価値な問題ではありません。一番大きな問題だと思います。その点で、無効の問題というのはごまかしてはならない問題である。  まず伺いますが、有効とすれば、日本政府としては、いわゆる韓国を支配しておりました一切の法令について、反省すべきものはない、こういう御感覚に立ちますか、それとも反省すべき点があるとお考えになりますか。
  188. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 向こうに到着して私がステートメントを発表いたしまして、遺憾な時代があったのであるが深く反省すると言ったことばの意味は、しばしば私は質問を受けるのでございますが、歴史的な伝統を持った民族を他の民族が支配するというそのこと自体が、民族感情の上から見ても、また今日の国際情勢から見ても、とるべきではない、そういう意味でいま深く反省する、こう言ったのでございます。したがって、いま御指摘のような問題について、これを総括して深くわれわれは反省しておる、こういうわけでございます。
  189. 永末英一

    ○永末委員 それに関連して、李ラインの問題に移りますが、李ラインの問題につきましても、韓国側の主張の中には、すでに朝鮮総督府時代、これは国内法ですけれども、総督府令をもってそういうようなことをやったじゃないか、こう言っている。ところが、いまの問題は彼らの中にも理論的に整理がつかない点がある。すなわち、李ラインが戦後主権をもってやられたために、国防ライン、平和ラインという形でこれを存続しようという意向がある。したがって、いま漁業交渉が行なわれておりますが、彼らの中には、なお平和ラインという形、国防ラインという形で、一方的に主権がそこの範囲まであるかのような形で解決され得るのではないか、こういう期待があるわけであります。しかし、もし日本側が何らかの形でそれを認めるとするならば、とんでもない国際問題を惹起するおそれがあります。日本政府はこれをお認めになりませんね。
  190. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 さようなものは一切認めない方針でございます。また、そういう問題について、責任ある当局者のほうから申し入れはございません。
  191. 永末英一

    ○永末委員 外交上の問題でありますから、共同水域問題について伺いたいのでありますけれども、共同水域ということを日本国韓国政府とが協定をいたしましても、第三国の漁船がこの中に入ることは、第三国側からすれば公海でございますから、自由に漁労ができる、こういうことになりますね。
  192. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 お説のとおりであります。
  193. 永末英一

    ○永末委員 先ほど申しましたように、相手方政府が平和ライン、国防ラインということを言ってないから安心しておられますが、そういう意見が強く韓国にあることは事実であります。したがって、いまのように、第三国がこの共同水域で公海だから自由に漁労する、あるいはその他の軍事的な艦船等も通るかもしれませんが、そのときに、これが国防ラインということの韓国の一方的な主張によって国際問題が起こらないように、日本政府としては、この点は厳重に、やはり両国民に共通の認識ができるように努力すべきであると思います。外務大臣の意見を伺いたい。
  194. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いやしくも公海自由の原則に違反するような問題につきましては、絶対にこれを受け入れない覚悟でございます。
  195. 永末英一

    ○永末委員 きょうはもう時間がございませんからこの程度でやめますが、いままでの外務大臣の御答弁では、必ずしもいままで協定に達し合意に達したことが日本国民、韓国国民に共同の内容として映っているようには、私にとっては判断できません。この点は、先ほど申し上げましたように、韓国における公の文書を通じてもう一度質問することを留保いたしまして、本日はこの程度で終ります。
  196. 安藤覺

    安藤委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。    午後一時五十三分散会