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1965-05-27 第48回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年五月二十七日(木曜日)    午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 岡  良一君    理事 佐々木義武君 理事 福井  勇君    理事 前田 正男君 理事 原   茂君       秋田 大助君    小沢 辰男君      小宮山重四郎君    坂田 英一君       野呂 恭一君    渡辺美智雄君       日野 吉夫君    内海  清君  出席政府委員         科学技術政務次         官       纐纈 彌三君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   小林 貞雄君         総理府技官         (科学技術庁研         究調査局長)  高橋 正春君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局長)   村田  浩君         総理府技官         (科学技術庁資         源局長)    橘  恭一君  委員外出席者         総理府技官         (国立防災科学         技術センター所         長)      和達 清夫君         総理府技官         (国立防災科学         技術センター第         一研究部長)  有賀 世治君         農 林 技 官         (農政局農産課         長)      加賀山国雄君         農 林 技 官         (農林水産技術         会議事務局連絡         調整課長)   杉  頴夫君         運 輸 技 官         (気象庁予報部         長)      今里  能君         参  考  人         (東京教育大学         教授)     三宅 泰雄君         参  考  人         (東京大学教         授)      戸刈 義次君     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件(核実験に伴う放  射能に関する問題及び防災科学に関する問題)      ————◇—————
  2. 岡良一

    岡委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件につき調査を進めます。  核実験に伴う放射能に関する問題調査のため、本日東京教育大学教授三宅泰雄君に参考人として御出席願っております。  三宅参考人には、本日御多用のところ、本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございました。どうか忌憚のない御意見をお述べくださるようにお願い申し上げます。  それでは、最初に、村田原子力局長より概況の説明を聴取した後、参考人から御意見を伺うことといたします。村田原子力局長
  3. 村田浩

    村田政府委員 今回の中共核実験に伴います放射能測定状況等を、私のほうから御報告申し上げます。  その前に、このような調査を現在行なっております放射能対策本部のこれまでの活動状況をごく概略、かいつまんで申し上げておきたいと思います。  御承知のとおり、放射能対策本部は、昭和三十六年の十月三十一日の閣議決定によりまして内閣に臨時に設けられた組織でございまして、この組織を通じて放射能測定分析の充実、人体に対する影響に関する研究の強化、放射能に対応する行動、勧告、指導、その他放射能対策にかかわる諸事項に関連いたしまして、関係機関相互連絡調整を緊密に行なうよう随時協議を行なって、そしてわが国放射能対策の万全を期する、こういう趣旨のものでございます。  自来今日まで約三年半ばかり経過いたしたわけでございますが、この間対策本部におきましては、国内における環境及び食品等放射能水準調査を行ないまして、その結果をまとめまして定例的に発表を行なってきております。今日までに本部会は九回、この下部機構といたして各省関係者の間で構成されております幹事会は四十二回開いてきております。特にその間、御記憶と思いますが、昭和三十七年に米ソ両国において大量の核実験を行ないましたために、わが国放射能降下物は非常にふえたわけでございます。その際には、対策本部の計画によりまして、中部太平洋における実験水域放射能調査のために調査船を派遣する、あるいは離島などにおける飲料用天水放射性降下物除去のためのろ過装置を整備する等の措置も講じてきたわけでございます。  お手元に「環境及び食品等放射能汚染について」第二十三号と申します小冊子がお配りしてあると思いますが、これは同放射能対策本部が最近、四月の末でございますが、国民に発表いたしました定例報告の実際のものでございます。ここにございますように、今日まで二十三回定例発表を行なっております。降下物の非常に多かったときには毎月行なっておりましたが、最近は一部中共、あるいはソ連地下核爆発漏洩等の場合がございましたけれども、以前に比べまして放射能レベルはやや低下しておりますので、大体三カ月に一度というくらいのめどでこの定例報告を行なっております。  その内容は、この冊子ごらんのとおり、大きく分けまして、環境放射能調査結果と、それから食品分析によって調査しました食品中にございます放射能調査、このように二つに大きく分かれております。  環境放射能調査につきましては、さらに雨水放射能、それから地表付近浮遊塵放射能高空における浮遊塵放射能。それから、いままでは全放射能でございますが、特にこの中で長期にわたり人体に対する影響の上から見まして問題になりますストロンチウム九〇の量を調査する必要がございますので、そのような調査をさらに月間の降下量について行なっております。  それから食品のほうにつきましては、特にこのストロンチウムを中心といたしまして、日常食中に含まれておるストロンチウム九〇の量の変動状況、それから飲料水中ストロンチウム九〇の量の毎月毎月の状況、さらに乳幼児に最も影響のございます牛乳中に含まれるストロンチウム九〇の量の変化を詳しく分析いたしまして、その結果を報告申し上げておるわけでございます。  最後にあとがきとしまして、この定期報告に載せられました数字の解説と今後の見通し等について述べてあるわけでございます。  この第二十三号の報告は、今回の中共核実験の直前に出したものでございますので、今回の実験影響についてはこの報告の中に入っておりません。  そこで、別にグラフと表からなります資料をお手元にお配りしてございますが、今回の実験影響につきましてはこの資料によって御説明申し上げたいと思います。  この資料の一番最後ごらんいただきますと、ことしの五月一日から今日まで全国に降りましたの雨水中に含まれている放射能測定結果の毎日毎日の数値測定場所別に出してございます。ここにごらんのとおり、雨水中の放射能測定全国十三カ所の気象台において行なっております。ここに出ました数値は、右肩のところに単位が書いてございますように、雨水の量及びその中に含まれます放射能の量を一平方キロ当たりミリキュリーで幾らになるかという単位で示してございます。これは放射能対策本部がおつくりになりました暫定指標という考えからしまして、平方キロ当たりミリキュリーの量をもって目安とするようになっておりますので、その点に合わせて数値をそろえてあるわけでございます。それでごらんいただきますと、実験が行なわれましたのが十四日でございますが、十四日あたり雨水中の放射能はほとんど出てございません。さらに十五、十六、十七等とも、たいした変動はなかったわけでございますが、二十日に至りまして、つまり実験後約一週間たちまして全国的に雨が降ったわけでございますが、この雨の中にかなりの量の放射能が出てきたわけでございます。たとえば、東京で申しますと三百八十ミリキュリーパー平方キロメートル福岡では特に四百三十ミリキュリーパー・、平方キロメートルというような数字が出ております。しかし、その後二十一日、二十二日、二十三日とたつに従いまして、二十日をピークにしまして漸次雨水中の放射能は低下してきておるようでございます。つまりわが国の上空には二十日ごろ一番たくさん降ってきた、こういうような形になっております。  この数字を一応グラフにいたしましたのが前のほうに示してございますが、その前に、この表の第一ページは、比較のために、前回中共が第一回核実験を行ないました際の日別雨水中放射能降下量グラフにしたものでございます。ごらんのとおり、第一回、昨年の十月十六日に核実験が行なわれまして、その後の全国における最高の数値をここにとってございますが、十七、十八日はほとんど変化なく、二十日ごろから少し隆下いたしまして、ちょうど実験後一週間目の二十三日に秋田で百四十六ミリキュリーパー平方キロメートルという最高値が出ております。それをピークといたしまして、その後は漸次低下いたしておる。それから、十一月に入りますと、ほとんど実験前と同じレベルになっておる。こういうような結果が出ております。  二ページをごらんいただきますと、ことしの一月十五日にソ連地下核爆発実験を行なったそうでありますが、その際に漏洩いたしました放射能と思われるものがわが国にも到達いたしております。すなわち、一月の十五日まではほとんど変化がなかったわけでありますが、十五日からこれまた約一週間たちました二十一日に輪島において二百八十ミリキュリーパー平方キロメートルという、かなり高い数値が出ております。これをピークとしまして、二十二、二十三日と漸次低下しておるわけであります。  このような最近の放射能変化に加えまして、今回五月十四日に中共の第二回核実験があったわけでありますが、五月一日から今日までの状況は第三ページのグラフごらんのとおりであります。先ほど御説明申しましたように、大体十五日ごろまではたいした変化はなかったわけでありますが、実験後納一週間の二十日に至りまして全国的に相当多量放射性降下物雨水中に出てまいりまして、特に福岡では四百一二十ミリキュリーパー平方キロメートルというような、従来に比べましてかなり高いレベルのものが出てきたわけであります。しかし、そこをピークとして、その後は漸次低下しておる、そうして今日に至っておるというのが今回の中共核実験後におけるわが国放射能調査状況であります。  ここには便宜のため雨水中の放射能につきましてのみお示ししたわけでございますが、対策本部といたしましては、もとより、このほかに地表付近における浮遊塵放射能、それから高空における浮遊塵放射能、両方とも測定をいたしております。特に高空における浮遊塵放射能につきましては、防衛庁のジェット機を飛ばしていただきまして、実験が行なわれた翌日の十五日以降、毎日一回、全国三カ所において、高度一万メートル及び一万二千メートルの浮遊塵を採集しまして、その放射能測定いたしております。その場所は、北は青森県の八戸中部岐阜県の岐阜、それから南部は九州の築城でございまして、今日まで大体毎日各所で二つの高度に対して飛行機を飛ばしましてデータをとってございますが、このほうは実験後二日たちました十六日に八戸におきまして二千マイクロマイクロキュリーパー・立方メートルという、かなり高い数値が出ておりますが、その後は大体九百から四百、最近では百ぐらいに減ってきておるようでございます。  これらの状況から見まして、今回の中共核実験によるフォールアウトは、大体高空においては十六、七日、地表におきましては二十日ごろをピークといたしまして、漸次減っておるといいますか、通過していっておる、このように観測されておるわけでございます。  なお、このような雨水中あるいは浮遊塵に含まれます全放射能の強さは、たとえば先ほど申し上げましたように、福岡で四百六十というようなかなり高い数字が出ておりますけれども、対策本部の立てました御定指標の考え方では、環境放射能相当長期にわたって持続されたときに影響が出てくるおそれがあるということで、引き続く三十日の合計の全放射能の強さをもって指標といたしております。すなわち、緊急事態に対する指標としなしては、引き続く三十日間のレベルが二千五百ミリキュリーパー平方キロメートルに達し接したときを第一段階、それから二万五千ミリキュリーパー平方キロメートルに達しましたときを第二段階というような、段階を分けまして必要な措置を講ずることを考えております。この第一段階では放射能の監視を強化するということで、第二段階に達しますときに所要の行政措置を検討するということに相なっておるわけでございます。  したがいまして、一日だけ四百六十ミリということが出ましても、これが数日あるいは十日近く続きますとそのような数値に達しますが、先ほどグラフ及び表でごらんのとおり、二十日をピークとしましてその後また低減しておりますので、現在のところ第一段階の二千五百ミリキュリーパー平方キロメートルに達することは、今回の実験によってそのレベルに達することはないのではなかろうか、このように考えております。
  4. 岡良一

    岡委員長 次に、三宅参考人より御意見をお願いいたします。
  5. 三宅泰雄

    三宅参考人 三宅でございます。  きょうは当委員会において放射能による汚染の問題について話をする機会を与えられましたことを、たいへん光栄に存じております。  いわゆる環境放射能汚染と申しますのは、現在のところでは主として核兵器爆発の結果生じたものであります。もちろん一部には原子炉施設からの汚染もございますけれども、それはごく局地的なものでありまして、いわゆる地球的な規模放射能汚染が起きておるのは、核兵器によるウランあるいはプルトニウム核分裂生成物の散布の結果であります。  現在核兵器として用いられております原子力というのは、これは大体二つに分けることができまして、一つは、いわゆる核分裂つまり原子核の分裂であります。それから一つは、核融合原子核を融合して別の原子核にする、そのときに生ずるエネルギーつまり核分裂エネルギー核融合エネルギー核兵器の物理的なエネルギーとして使われておるわけでございます。  ところが、このうち核融合のほうは、その結果として有害な放射性物質を誘起いたしませんけれども、核分裂のほうが人間にとって最も危険なる各種の非常にたくさんの——非常にたくさんのということは非常に種類の多い、しかもまた量的にも、かなりの量の放射性物質を放出するわけであります。  最初一九四五年に広島及び長崎で落とされましたいわゆる原子爆弾というのは、このウラン及びプルトニウムのそれぞれ核分裂を用いたものでありまして、それを物理的なエネルギーに換算いたしますると、その当時の最も強い火薬TNTという火薬がございますが、それの二万トン分に当たるといわれておるわけでございます。ところが、その後開発されましたいわゆる水素爆弾、これは元来なれば水素あるいは重水素をヘリウムあるいは三重水素という形に核融合させて、そのときのエネルギーを用いるものでございますけれども、同時に非常に多量天然ウラン核分裂エネルギーをそれに加えて、非常に強力な爆発物をつくったわけでございます。そのために物理的エネルギーとしては一挙にして、TNTに換算して百万トン、つまり一メガトン以上のものができるようになったわけでございます。  ところが、そのうちにどのくらいの核分裂エネルギーが分け前をとっておるかといいますと、これはいずれも兵器でありますから公表はされておりませんけれども、科学者たちの観測の結果から推定いたしますと、最初のころの水素爆弾では、大体半分が核融合エネルギーであります。つまり半分が核融合エネルギーということは、たとえば百万トンTNT換算、一メガトンですね——百万トンTNT換算の力を持った爆発物のうち、五十万トンTNT分だけは核分裂生成物である。つまり原子爆弾に換算すれば、一メガトンの水素爆弾というのは二百五十個分の原子爆弾相当するわけであります。つまり二百五十個分の原子爆弾から出る核分裂生成物相当するわけであります。したがって、現在の地球上の汚染というのは、ほとんどすべて水素爆弾爆発によってもたらされたものといっても過言ではございません。  現在までに、では一体どのくらいの爆発をしたかと申しますと、これは主としてアメリカ及びソ連でございますが、ほぼ五百メガトン分の火薬相当する爆発を行なっております。そのうちそれでは天然ウラン核分裂によってどのくらいのエネルギーが出されておるかというと、現在の推定では、その半分より少し少ない値、二百メガトンくらいが水素爆弾によって核分裂を起こして、そうしてそれだけの核分裂生成物世界中にまき散らされていると考えられております。  先ほど申し上げました核融合核分裂との比は最近になって次第に小さくなってきておりまして、最初は大体五十対五十くらいだったものが、最近では六十対四十、あるいは七十対三十というように、だんだんといわゆる彼らのいうきれいな爆弾に向かっておりますけれども、しかし全体の爆発規模が大きくなっておりますので、決してきれいということはできません。  そのような核分裂生成物が一体どういう経路で地球上にまかれておるかと申しますと、ほとんどそのすべてが一度空高く成層圏まで打ち込まれております。成層圏と申しますと、大体高さにして八キロメートルから十二キロメートルくらいのところに対流圏成層圏の境がありまして、それより上を成層圏と申しますが、最近では次第に成層圏の非常に高いところに核分裂生成物が打ち込まれておるような形跡がございます。ところで、成属圏に打ち込まれた核分裂生成物は、次第にまた対流圏に戻って、対流圏の中で雨に洗われたり、あるいはちりにくっついて落ちたりいたしまして、次第次第に地上降下するわけでありますが、大体成圏層に一年ないし三年くらいとどまって地上に落ちてまいります。  それで、地下に落ちてくるときに非常におもしろい現象がございまして、その一つは、いわゆる春の極大といわれておる現象であります。年々三月ごろから六月ごろにわたって降下極大が見られます。これは必ずしもそのころに雨が多いからたくさん落ちてくるというわけではないのでありまして、大体世界じゅう世界じゅうといいましてもこれは北半球の話ですけれども、北半球ではちょうどいまごろ、四月から五月ごろに降下極大がございます。  それから、もう一つおもしろい現象は、いままでの実験というのは、主として北半球の低緯度地帯から高緯度地帯にわたって行なわれておりますが、北半球の中緯度地帯北緯三十度から北緯六十度くらいの間に降下極大があらわれます。ところで、大体その付近文明地帯がずっとありまして、世界人口の大部分がそこに集まっておりますので、これは世界の人類にとって非常に憂うべきことではないかと思います。  それで、もちろん降下陸地ばかりではなくて、海の上にも行なわれておりますので、これから陸地の問題、海の問題に分けて考えてまいりたいと思います。  最近日本あるいはヨーロッパ、アメリカ等で観測されましたところでは、先ほども原子力局長からのお話もございましたが、現在までのストロンチウム九〇の蓄積量と申しますか、降下しました総量というのは、東京あたりで一平方キロメートル当たり大体六十五ミリキュリーくらいの値になっております。日本でも裏日本は特に多いのでありまして、秋田地方では一平方キロメートルあたりミリキュリーをこえるような値が出ております。これは裏日本では特に冬の積雪が多いということが、相当ストロンチウム九〇の降下を大きくするのにきいておるようでございます。セシウム一三七のほうは、大体ストロンチウム九〇の二倍から二倍半くらいの降下量を示しております。これらはいわゆる長寿命核種と申しまして、ストロンチウム九〇が半減期が大体二十八年くらい、それからセシウム一三七が三十年くらいでありまして、これらのものが植物、動物を通じ食品となって人間のからだに入ってまいりますときには、特にストロンチウム九〇のようなものはかなり長期にわたって人間影響を与えるということが考えられております。  その食品のほうでございますが、現状では一日一人当たり、これは日本人の場合でありますが、ストロンチウム九〇の場合は四十ないし五十マイクロマイクロキュリーぐらいのものを食品からとっておるようであります。セシウムのほうは大体その倍ぐらい、一日一人当たり百マイクロマイクロキュリーの摂取があるようでございます。このような放射性物質を摂取した場合にどのような影響があるかということにつきましては、これはまだいろいろむずかしい問題がありまして、正しい値は出ていないと思いますけれども、大体のところ、天然放射性元素からくる放射線の数%ぐらいはもうすでに人工のものによってもたらされておると考えられております。数%といえば少ないようではございますけれども、天然現象を数%変えるというのは、これはかなり大ごとではないかというのでありまして、今後またそれがどのようにふえていくかということをわれわれとしては注意していかなければならないのではないかと思います。  一方、海のほうの汚染でありますが、これは一九五四年にいわゆるビキニ事件というのがありまして、遠洋でとれました魚の非常に強い放射性汚染のために、一部分の魚を廃棄したことは皆さんも御記憶に新しいことと思います。そのときには、ビキニ及びエニウエトク環礁で非常に大型の水爆実験が行なわれて、しかもそれが環礁の上で行なわれましたために、多量放射性物質海水中に流れ込んで、そしてそのために間接的に魚を汚染したものであります。しかしまた、一部には、直接的に船の上で放射性落下じんが落ちてきて、それによる汚染もございましたけれども、これはそれほど多量のものではなかったわけであります。ビキニ及びエニウエトク環礁で非常に多量放射性物質が海の中に放出されましたために、いわゆる北太平洋、赤道より以北の太平洋の西側ですね、すなわち日本が位しておる側の海水汚染が非常に高くなりまして、北太平洋の東側、つまりアメリカ側に比べて数十倍から数百倍の汚染をもたらしたのであります。もちろんこれは大西洋に比べても、大西洋ではそのような直接的な汚染がなかったために、大西洋に比べて太平洋日本側のほうはやはり数十倍ないし数百倍の高い汚染がございました。それは次第に現在では一様に拡散して薄まりつつありますので、一九五五年、五六年ごろをピークとして次第にその汚染は薄くなってまいっておりますけれども、また一方には、それだけのものが北太平洋全域にわたって拡散しておりますので、その結果としてどのような影響を海の生成物に与えるかということについては、今後注目すべきことではないかと思います。水平的にはそのように数年間の間にかなり薄まりを見せましたけれども、これを海の垂直的、鉛直的と申しますか、深さによって考えてみますと、もうすでに六千メートルから七千くらいまで放射性物質汚染が広がっております。それでございますから、今後海における放射能汚染の問題は、特に水産国である日本といたしましては非常に大きい関心を持たなければならぬのではないかと思います。各国ともこの十年ないし十四、五年にわたってこの種の研究をしてまいりましたけれども、何と申しましても非常に広い、いわゆる地球的な規模を持った汚染でありまして、これを一国の手によって調べるということは非常にむずかしいことでございます。  それからまた、先ほど申し上げましたような生物に対する影響人間に対する影響人間に対する影響二つありまして、いわゆるその人が生きている間に起きる影響と、その人の今後の子孫に及ぼす影響、遺伝的な影響とあります。が、これらにつきましては、まだ科学的に解明されてない問題がたくさんありまして、これは、どうしても世界じゅうの科学者が協力してこれらの問題に当たらなければ、とうてい解決がつかない問題ではないかと思います。  それで、日本におきましては、原子力局を中心としまして、各官庁でこの種の試験研究調査が行なわれてまいりましたが、一方、文部省のほうでも、放射能研究に対して、いままで特別の御援助をいただいて、十年間研究をしてまいりましたけれども、まだこれとて非常に不十分でありまして、今後の研究が必要ではないかと思うのであります。特にこの研究は、物理学、化学ばかりではなくて、先ほど申し上げました生物医学といったような非常に広い範囲にわたっておりまして、どの一つの部門だけでこれを研究することはできないという特徴を持っております。それだけに、この研究に対しては国家からの相当の御奨励がなければやっていけない問題ではないかと考える次第でございます。  また一方、国際的な問題でございますが、これは一九五五年にユネスコの総会において日本の代表が、その前年に起きましたビキニ事件影響について警告いたしまして、国際的な規模でこの問題を研究すべきではないかということを提唱したのでありますが、そのようなことがきっかけとなって、一九五五年に国際連合の決議によって、国際連合の原子放射線の影響に関する委員会というのができまして、これは通称国連科学委員会といっておりますが、それが一九五六年に発足して、当時まだ日本は国連に加盟しておりませんでしたけれども、特別にその委員会の委員国として参加して、今日までいろいろ貢献してまいっております。しかし、先ほど申し上げましたように、いまのところ大型の爆弾実験は、一応いわゆる核実験部分停止条約によって中止はされておりますけれども、もうすでに蓄積されているものが相当多量にのぼっておりまして、また成層圏に残っておりますものも相当たくさんございまして、今後の推移は十分に注意して見守っていかなければならない状況でありますので、何とかして世界じゅう全体の大きい規模において観測網、研究網をしく必要があるのではないかと思うのであります。  特にアジア地域におきましては、この研究をやっておりますのはほとんど日本だけであります。日本だけと申してはほかの国に失礼に当たりますけれども、もちろんインド、フィリピンその他の国々にあっても行なわれてはおりますけれども、かなりの成果をあげているのは日本であります。御承知のように、アジアの場合にはヨーロッパやアメリカと違いまして、たとえば食習慣におきましても非常な差がございます。たとえば先ほど申し上げました国連の科学委員会でも、アメリカ、ヨーロッパの学者たちは、ストロンチウム九〇の人体摂取の問題はほとんど牛乳を指標として片がつくというようなことを申しまして、実際にそのような報告をつくっておるわけです。ところが、日本及びその他のアジアの諸国においては、牛乳のような食品にはいまのところほとんど重要性がないのでありまして、大部分の人体汚染は穀物とかあるいは野菜類を通してきておるのであります。それでありますから、国連科学委員会の出しましたいろいろな報告が必ずしもすぐアジアの人民に当てはまるとは言えないのでありまして、早急に日本をはじめとするアジア諸国においてこの問題の研究が必要ではないかと考えられます。特にアフリカ諸国においてはほとんど研究の成果があがってないというような実情でございます。  大体現在の汚染状況を申し上げたのでございますが、最近一つ問題になっておりますのは、この雑誌の表紙にさし絵になっておりますが、これはいわゆる放射性のジャイアント・パーティクルといっております。ジャイアント・パーティクルといっても、実は非常に小さいのでありまして、十ミクロン程度のものでありますけれども、普通の放射性のちりは一ミクロンあるいはそれ以下でありますから、それに対してこれをジャイアント・パーティクルといっておりますか、これは一粒で数万カウントくらいの放射能を持っておるわけです。こういうものがほらばら上から降ってくるという現象が一九六二年のソ連の大型の水爆実験の際に全国で認められまして、それ以来着目されております。これは実はスウェーデン、インド、それから日本等でもそれ以前にも発見されていて、私がたしか国連の科学委員会に出ましたときにもその問題についての警告をいたしたのでありますけれども、まだその当時はそれほど大きい問題になっていなくて、国連の科学委員会報告でもその点にはあまり触れておりませんが、最近になりまして各国でこういうようなジャイアント・パーティクルの落下の問題について注目が払われまして、だんだんと研究が進んでまいっておるようであります。このような非常に強い放射能を持った微粒子が人体のどこかの部分に落ちる、あるいはそれを吸い込んでそれが肺に到達する、あるいはのみ込んでそれが消化器官に到達するといった場合に、どのような影響を与えるかということについては、今後大いに研究を進めていかなければならないのではないかと思われます。  いろいろまだ研究すべき問題がたくさんございまして、まだ研究が始まってわずか十年くらい、実際に本格的な研究は各国ともまだこの五年くらいでありまして、学問技術としてはごく初歩の段階にあるものであります。特に今後中共実験がどのような推移をもって行なわれるかということにもわれわれとしては関心を持っております。一つの国が核実験を始めました場合には、たいていそれが水爆の完成に至るまではやめないというのがいままでの歴史的な事実であります。でありますから、中共も今後どのように推移するかということは、これは日本ばかりではなくて、各国の注目の的ではないかと思うのでありますが、一方フランスも、おそらく今年中には太平洋において水爆実験を行なうのではないかと考えられておりますので、まだまだフォールアウトのほうの脅威からもわれわれはのがれてはいないわけであります。  ところで、一方、われわれ人類にとって最も大切な原子力の平和利用の場合においても、この放射能汚染というものは原子力の平和利用の積極的な面に対して必ず汚染という消極的な面がございまして、この二つの面が同等の努力によって解決されない限り今後の原子力の平和利用というものは発展しないという、これがほとんどすべての科学者の考えておるところでございます。そういう点から申しましても、われわれといたしましては、兵器によるフォールアウトの監視をすることは科学者としては少しもおもしろいことではないのでありまして、これは国民あるいは大きく言って人類をそのような脅威から守るためにやむを得ずやっている仕事なのであります。実は今後原子力の平和利用を進めて人数の福祉を増進するということのほうが科学者としての元来の任務である、しかしそこには汚染という点につきましてはやはり同じような問題が出てくるのでありまして、そういう点につきまして皆さま方の御関心を賜わりたいと存ずる次第でございます。  どうもありがとうございました。
  6. 岡良一

    岡委員長 以上で参考人からの御意見の聴取は終わりました。     —————————————
  7. 岡良一

    岡委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。福井勇君。
  8. 福井勇

    ○福井委員 途中から参りましたので、速記録でただいまの貴重な御意見を拝見させてもらって研究するつもりでございます。したがって、もうすでに陳述していただいたことを私は繰り返すかもしれないことを御了承の上、お願いいたします。私は研究家でありませんので、非常に愚問になるということもあらかじめ前提の上に置いて願いたいと思います。  日本においても、また世界においても、この種の研究が非常に少ないという御説明がありましたやさきに、特に日本がこの研究に指導的立場で研究しておられるように聞こえましたので、非常に喜んでおります。この問題を委員長が取り上げられたのは、私はまことに時宜を得た委員会の催しだということも非常に喜んでおるところでありますが、せっかく三宅さんのりっぱな陳述に委員が少ないということを、初めての委員会御出席についてお思いになるかもしれませんが、私は福井委員としてかってに申し上げることは、これは貴重な御意見は速記されておりまして、全国のその関係者に行きますので、その点は貴重な頒布が行なわれますことも一委員として申し上げておいて、御了承願いたいと思います。  この中の放射能対策本部で書いてある被害について、やっぱり牛乳で一番よくその判定をするのだということをほぼ察せられるように、めくってみて思うのであります。英国でちょうどコールダーホールの発電所のすぐ近接したところに牧場がずっとありますが、もう二、三年前になるかと思いますが、ここでリアクターの事故があって、直ちにその牧場の牛乳の使用を禁止したということを記憶しております。  このストロンチウム九〇は、この表でもある時期にはだんだん減ってきておるというふうなデータが出てきておりますが、減るのは、雨で地上に落ちてそれが地下に浸透してしまうために、核爆発が少なかったときとかシーズンとかいう町によって減っていくのですか。それ以外に、地球の上層部に減っていく原因を予想するというようなことがありますか。減る原因はどんなふうでありましょうか、御参考に。
  9. 三宅泰雄

    三宅参考人 お答えいたします。  たとえば先ほどの牛乳の中のストロンチウム九〇のようなものは、ふえる原因が二つございます。その一つは、上から降ってくるというようなもの。そのときに上から雨その他で洗い流されて降ってくるものでございますね、それによってふえる。一つは、地上にすでに蓄積しておるものによってふえる。つまり蓄積量が多ければ多いほど牧草の中によけいに入ってまいります。それからまた、上から降ってくるものが多ければ多いほどまた牧草の中によけい入ってくる。この二つの面があるわけなのです。  ですから、たまたま実験が行なわれて、上から非常にたくさん降ってくる場合には、そのときに急に牛乳の中のストロンチウム九〇の量が増してまいりますが、しかし、かといって、もうすでに蓄積したものが相当たくさんある場合には、上から降ってくるものがたとえ非常に減りましても、ゼロにはなっていかないのです。  一方、減るほうは、これは非常に長期にわたって減っていくのでありまして、ストロンチウム九〇の場合には、全蓄積産の大体二・五%ずつが年間に減ってまいりますので、ほぼ四、五十年たてばもとあった蓄積量が半分になるくらいのゆっくりした減り方で減っていくわけです。ですから、一度汚染を来たしますと、上から降ってくるものがなくても、その滞積したものによって汚染かなり長期にわたって続くということが考えられるわけであります。
  10. 福井勇

    ○福井委員 いまの話で、降下した場合のことはよくわかりました。上空において、あるいは物理的でなくて、私たちの想像するプロパゲーションをして希薄になるというような何か原因はないものか、ということもひとつ。
  11. 三宅泰雄

    三宅参考人 上空におきましては、主としてこれは成層圏の中にたまっておるわけですけれども、成層圏の中でももちろん空気の働きがあって、次第次第に地球全体に広がっていく傾向があるわけです。ですから、そのような成層圏の中における混合あるいは拡散によってかなりの薄まりはありますけれども、しかし、そういうものは全体としては地球の上に最終的には降ってくるわけであります。上層から地球の外側に失われるというのは多少はあるにしても、ほとんど問題にならない程度であります。
  12. 福井勇

    ○福井委員 都会人と農村のストロンチウム九〇の摂取量が、三十九年の調べによると、平均値が一六という数字が出ておるのに対して、農村成人が大体二〇というふうになっておるのは、これは、やはり農村は都会よりも野菜のものなどを多く食べるということだけが大きな原因になっておるものでしょうか。
  13. 三宅泰雄

    三宅参考人 結局、都会と農村の場合、これも、必ずしも農村が多いとばかりは言えないのですけれども、しかし、全体として農村のほうが少し多目に出ている場合が多い。これはもちろん食習慣、食生活の違いでありまして、特に肉類あるいは魚類には——特に海の魚でありますが、海の魚には現在ところストロンチウム九〇が非常に少ないのです。ところが、そういう動物性食品ではなくて、ほとんどすべて植物性食品から栄養をとっている場合はどうしてもストロンチウム九〇の値が高めになります。
  14. 岡良一

    岡委員長 日野吉夫君。
  15. 日野吉夫

    ○日野委員 ちょっと伺いますが、非常に高度な研究と貴重な研究を私は惜しいと思うのです。まあ、きょうあたり全国会の完全な機能を果たしていない状況ですから非常に残念だと思います。これは今後私たち大いに研究してみたい、こう思うので、ぜひこの研究を継続してやっていただきたい。委員長にそう注文いたしておきます。  このストロンチウム九〇というのは、いろいろ研究されておるのだが、人体に及ぼす影響、たとえば致死量あるいは危険量、こういうものはどの程度のものなんでしょう。
  16. 三宅泰雄

    三宅参考人 実は、私は人体や生物体の専門家でございませんので、そういう専門家から聞いたことを申し上げるわけなんですけれども、ストロンチウム九〇とかその他の放射性元素について、それぞれの、大体どれくらいそれを摂取した場合に危険が招来されるかという一応の目安がございます。それで、たとえばストロンチウム九〇の場合には、数字で申し上げますと、もちろん数字で申し上げてもあまりはっきりしないのですけれども、一マイクロキュリーという量がございまして、それ以上を長期にわたってとることは好ましくない。特に、これは職業人の場合でございますけれども、そういうことが規定されておりまして、そうして、一般人の場合にはそれよりも百分の一ぐらい値を下げてとらなければいけないということがいわれているのです。  致死量の問題は、大体、いわゆる放射線の強さで五百レントゲン。放射線の強さにレントゲンというのがありますが、これはエックス線の強さをはかる値でございまして、五百レントゲンになった場合には、大体かかった人の半分くらいは死ぬ、いわゆる半致死量というように普通学会の常識でいわれているわけなんです。  しかし、現在のところ、食品の中に入っているストロンチウム九〇その他がそれだけの大きい障害を起こすかどうかについては非常に不明な点が多いのでありまして、特に非常に低線量の場合に、高線量の場合と同様に、はたしてそれの線量に比例して障害が起こるものかどうかということは、現在の学問上の最大の論争の的になっておるところなんです。しかし、国連科学委員会等においては、低線量の場合も高線量の場合も、同様にその線量に比例して障害が起こるものとしていろいろな障害の推定をやっておりますけれども、障害の推定の実験的基礎については、これも今後研究しなければならない問題が多いというふうに承っております。
  17. 日野吉夫

    ○日野委員 ミッドウエーの実験の場合、魚を廃棄された。あの当時そういう実例がたくさん出たのです。あのときのはストロンチウムの量が比較的少かったという話ですが、あの被覆もやはりストロンチウムの被害だ。あのときだいぶ被害者が出て、原子灰をかぶった実例が出ておるのですが、その場合の元素は何ですか。
  18. 三宅泰雄

    三宅参考人 例の一九五四年のビキニ実験のことでありますね。あのとき船員がかぶりましたのは、核分裂生成物といいまして、いろいろな種類の放射性物質を同時に受けておるわけです。しかも、それの線量もかなり高かったというふうに示されておるので、非常に被害があったわけです。  魚のほうは、実は船の上に積んであって上から落ちてきた放射性の灰によって汚染されたものと、海の水の中に住んでいたものが水から放射性元素をとったものと二つありまして、前者のほうはかなり高いわけですけれども、後者のほうは前者に比べればずっと低かったわけです。しかし、現在の魚の汚染に比べれば、ビキニ周辺でとれた魚というものは驚くべき高い汚染を示していたわけです。
  19. 日野吉夫

    ○日野委員 これは希元素だと思うのです。ストロンチウム九〇というのはいつごろ発見されて、これは鉱物でしょうか。地下にこういうものが存在するあれはないですか。
  20. 三宅泰雄

    三宅参考人 御質問のように、このストロンチウムそのものは希元素でございまして、いままでストロンチウムそのものの存在についてあまりわれわれ気にはしていなかったわけですけれども、たまたま先ほどのウラン核分裂生成物の中に、同じストロンチウムであって、非常に強い放射能を持っているそういうストロンチウムの仲間が見つかったわけであります。ですから、これはそれ以来問題になってきているわけでありまして、その発見されたのは、結局原子爆弾の製造の時期と前後しているわけです。
  21. 岡良一

    岡委員長 ほかに御質疑はございませんか。——それでは若干私からお尋ねをしたいと思います。  三宅先生、この、いま国会に提出された放射能対策本部資料でございますが、おおむね実験が行なわれた一週間後なりその前後における放射能のカウントを書いた図表、他のものは月間あるいは年間における植物その他における放射能の平均値が資料として出されておる。放射能対策という立場から厳密な資料、科学的な資料としては、こういうものではなく、いわばこれが地上に、水中に、空気中に蓄積し食物等を通じて人体に入るという、この蓄積の実態というものが明確に資料として提出されたとき初めて放射能に対する対策ができ得るものであって、そういう意味で粗雑な資料じゃないかと私は思うのですが、この点先生どうお考えでございましょうか。
  22. 三宅泰雄

    三宅参考人 放射能対策本部からの御発表には、この資料として短期間の放射性落下物の推移、あるいは食品の中における濃度の御発表と、長期にわたる、先ほどの委員長からお話しの蓄積量に関する御発表もあるのでありまして、きょう御提出のものは、たまたま短期間のものではないかと思うのです。  しかし、その放射能の対策の立場から申しますと、短期のものと長期のものと両方がありませんと対策ができないのでありまして、この長期のものについては、非常に大きい人口の日本国民全体といったような場合を対象として対策を考える場合に、これが非常に役に立つわけでありまして、短期の場合は、先ほどどなたかのお話がございましたが、たとえばイギリスのウインズケールの原子力事故というような場合には、短期しかも局地的な資料によっていろいろな行政的な手だてを講ずる必要があるんじゃないかと思います。
  23. 岡良一

    岡委員長 この点、村田局長、私のことばが若干表現において不足するところがあったかと思うので、また局長の御見解をひとつ。
  24. 村田浩

    村田政府委員 ただいま三宅先生からもお話がありましたように、放射能対策を考えます場合には、短期と長期と両方の面からこれを考えねばならぬわけでございます。  短期といいますのは、結局環境汚染そのもの、そのときにおける汚染状況、それからきます人体、生物に対する外部被曝、あるいはすぐ摂取される形で入るもの、具体的に申しますと、たとえば飲料水のようなものでございますが、そういったものの放射能を調べる、こういうことだと思います。  それから、長期的には、何しろ毎日水を飲み、食物を食べているわけでございますから、そういった内部に摂取される飲食物等を通じて、からだの中にどのように入ってくるか。また、それが長期的にどういう影響を及ぼすかという観点でとらえられるものと考えております。  ただいまの本日提出しました資料は、今回この実験が行なわれまして、今日まで十日余りの状況がどうなっているかということをお示しすることを主たる目的と考えて数字を出しました関係上、ここにございますように、この間に降りました雨水中の放射能レベルを、ここに示したわけでございますが、これはもちろん短期的な観点からの数字でございます。  長期的な資料としましての、先ほど来の問題になっておりますストロンチウムがこの中にどのくらい入っておるか、またそれがどのくらい蓄積され、さらに飲食物に入ってくるかということは、もちろん引き続いて調査分析をやっておるわけでございまして、その結果がまだすぐには出てまいらない。核種分析いたしますのには、採取から化学分析の場合は約一カ月余り時日を要します。非常に微量なものでありますし、その分析技術もたいへん高度の分析技術を必要とするわけでございますが、そういう時間もかかりますので、まだ今日の段階でここにお示しするような数字が出ておらないということでございまして、そのような調査はもちろん対策本部の仕事の一環として毎日やっておるわけでございます。この点の御了承をお願いいたします。
  25. 岡良一

    岡委員長 いずれにしましても、ICRPの最近の勧告の精神から見ても、やはり全蓄積量というようなものが日本もいよいよ重点になってきておるわけであるが、対策本部としての、今回の核実験によってたいした影響はない、何かしら非科学的な政策的な発表がしばしばされることがあるが、国民がそういうことから放射能に対しては免疫的感覚を持つことは私はおもしろくないと思うので、この点、対策本部としても御注意を願っておきたい。  それから、十月の中共実験の場合は西方地区であったのが、今度は西方上空においてやったということになっております。また、日本において測定された放射能の量を見てもそれが想像できるように思われます。  これは予報部長にお伺いをいたしますが、大体中共における核実験はタクラマカン砂漠の以南に当たりますか、ロプノル湖地域であるというようにいわれておりますが、この場合偏西風が相当なスピードで吹いておる。大陸圏の偏西風と日本列島の関係、これはどういうふうな関係に季節的になっておりますか、お示しを願いたい。
  26. 今里能

    ○今里説明員 日本が位置しております中緯度におきましては、世界じゅうを取り巻いておりますところの偏西風帯がございます。その偏西風は波を打って地球を回っておるわけであります。それで、いずれにしましても中共方面を通過いたしました偏西風は日本にやってくるというわけでございますが、たまたま今度の中共核実験の場合には、五、六千メートル以下のところでは風が南東の方向に吹いておる。それでちょうど日本列島の上のほうにまいります。風は二百ミリバールでございますから、大体一万メートル近くでございますが、その辺のところの風はそのころ日本列島の上のほうにまいっておりました。下のほうでは南東の方向に吹いておりますために、わりあいに直接向こうのほうからの風が日本列島にやってこなかったのではないかと解析をしております。  しかし、これは常にそうあるというものではございませんで、偏西風の波動の状況によりまして、また谷の状況によりまして、そういう下層の偏西風も日本列島のしにやってくることは考えておかなければならないことでございますし、過去においてもそういうことは多くあるのであります。  以上であります。
  27. 岡良一

    岡委員長 それから、三宅参考人にお尋ねいたしますが、先ほど御説明のジャイアント・パーティクル、二万カウント占めるいは四万カウント以上を帯びた微粒子が二十日以前に、十七日には新潟の市役所の上空、十八日には防衛庁の構内に若干の微粒子が発見されております。この微粒子の降下の分布状態というものの調査というものが、やはり責任ある予防対策上必要ではないでしょうか。
  28. 三宅泰雄

    三宅参考人 先ほど申し上げましたように、この微粒子と申しますか、あるいはジャイアント・パーティクルと申しますか、これの落下の現象が比較的最近になってわかってまいったものですから、いままでのところ十分な観測網もないようでございますけれども、これはやはり現象の重要性から見て、今後しっかりした観測体制をもっていく必要があるのじゃないかと思います。
  29. 岡良一

    岡委員長 科学技術庁にお尋ねしますが、先ほど三宅参考人のほうからもお話があったように、いまドイツでも必要に応じ週に一回、また定例的には月に一回、英国あるいはスウェーデン等でも、いわゆる放射能月報的なものを出している。日本でもそのような措置をとっておる。各国がそれぞれ独自な立場で放射能に関する発表をやり、国民に注意を喚起している。  こういうような問題は、これは一国独自の問題ではなくて、平和利用が進められればなおさらのこと、全国際的な協力と国際的な組織のもとに当然行なわれ、そしてそれがまた国連の科学委員会等における国際的な権威者の手によって十分に究明されつつ、予防対策等についても具体的な考え方を示される。いずれにしても、こういう国際的な調査綱の確立、そして首尾一貫した総合的な対策の樹立、こういう方向へ、日本も特に広島、長崎において大きな被害等があったのでありますし、積極的な一歩を政策的に踏み出していこうという、そういう考え方、また、事実上そういう行動があってしかるべきだと思うが、この点、科学技術庁としてはどうお考えになっておりますか。
  30. 村田浩

    村田政府委員 ただいま岡先生よりお話がございましたように、わが国はもとよりでございますが、世界の主要国におきましてはそれぞれ国内に所要の放射能調査網を持っているわけであります。それで、これらはそれぞれ調査結果を定期的に発表いたしております。  対策本部ができましてから、昭和三十六年あるいは三十七年の初めだったと思いますが、わが国としましても、国内のデータをまとめるだけでなく、各国のそのような調査の結果をまとめた資料を集めまして、そして全世界的な調査の結果をまとめておく必要を感じております。  その趣旨から、さしあたりわが国における放射能調査の主要な役割りをやっていただいております気象庁にデータセンターを設けまして、ここのデータセンターに各国の放射能調査の結果が収集されるように措置いたしてございます。その各国からカバーしております国の数は、小さく分けますと約七十カ国くらいになっておりまして、調査をいたしております観測所の数はおよそ四百余りになっております。これらの調査結果は気象庁に設けられましたわが国のデータセンターに集められているというのが現在までとってまいりましたところでございます。  ただ、これは各国の調査結果が一応そこでわかるようになっておるということでございまして、ただいまの委員長の御質問の御趣旨は、さらにそれをもとにしてどのような国際的な対策を講じていくか、そういうようなことを含めての御質問であったかと思うわけでありますが、その点につきましては、御指摘のとおり、まだ国際的なそういう組織はできておりません。  ただ、三宅先生のお話にもございましたように、現在国連の科学委員会におきまして、わが国からも設立以来代表を送っておりますけれども、ここで放射能関係の専門の各国の学者が集まられて、各国から得ましたデータを分析し、そのデーダをもとにして、起こるべき種々の障害等の可能性を検討されつつありまして、その検討の結果は随時報告となって出てきております。したがいまして、国際的なスコープでの対策を考えます際には、このような科学委員会における検討あるいは研究結果というものを反映されてまいる必要があるのじゃなかろうか、このように考えておるわけでございます。  現状は大体そういうところでございます。
  31. 岡良一

    岡委員長 重ねて要望しますが、科学委員会は科学委員会としてりっぱなお仕事をしていただいているが、また一方、アメリカのニューヨークにはAECの管理下に、全国の各地から集めた空気中の放射塵を、きわめて優秀なオートマテックな設備で測定し、分析するという施設を持っておりまして、私ども自身見たこともあるわけであります。科学委員会がさらに一歩進めてこうした施設を持って、そして積極的な調査活動をもあわせて行ない得るようなところまで高められる段階にきたのではないかと思いますので、この点、たまたまIAEAの総会もありますので、ぜひ科学技術庁のほうでも御努力願いたいと思います。  三宅参考人には、本日は貴重な御意見を述べていただきまして、本問題調査のためたいへん参考になりました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。     —————————————
  32. 岡良一

    岡委員長 引き続き、防災科学に関する問題について調査を進めます。  本問題調査のため、本日は東京大学教戸刈義次君に御出席を願っております。  戸刈参考人には、本日御多用のところ、本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございました。忌憚のない御意見をお述べくださるようお願い申し上げます。  特に最近の異常低温によって農作物の凶作が憂慮されているのでございますが、たまたま今里気象庁予報部長が、いま現在襲いつつある台風の事情のために非常に御多用でございますので、今里気象庁予報部長から、長期予報の立場からこの異常気象に対する予知の問題等について、まず御説明を承りたいと思います。
  33. 今里能

    ○今里説明員 御承知のとおり、ことしの冬は非常に異常でございました。ことしの冬のみならず、異常の気象は昭和三十八年ごろから続いておりまして、昭和三十九年におきましては、気象要素のいろいろの新しい記録が非常に出るというような状況でございます。  ことしの冬をどういうふうに申し上げますかと申しますと、大体二月の中旬から三月の下旬にかけまして真冬がやってまいったのでございます。したがいまして、春が非常におそうございました。  これはどういうことでこういうことになったか、その原因はよくわかりませんけれども、地上から五、六千メートルくらい高いところの上層の天気図を書いてみますと、非常におもしろいことになっております。これはアメリカ大陸、それからヨーロッパ大陸、それから日本のほう、との三本の足のように、北半球の冷たい空気が流れ出るようなパターンになっておるわけでございます。さらに、上層の成層圏の天気図を見ますと、大体北極に冬は低気圧があるわけでございますが、その低気圧が非常に早く解消いたしますときには順調な夏が来るというようにいわれております。ところが、ことしはその成層圏の北極のあたりの低気圧は約一カ月半から二カ月おくれて解消しかかったわけでございます。  そういう因果関係はもちろんよくわからないのでございますが、そういう状況でございまして、この四月の初めにおきまして気候は約一カ月おくれておりましたが、五月の上旬に至りまして、大体気温について申しますと平年並みになってまいりました。しかし、平年並みになったということでもって、これから先も平年並みに推移するかと申しますと、これはちょっとまだ問題があるのでございます。五月の普通の状態、高温と申しますか、高温とは申せません、普通の状態に戻るだろうということは、すでに三月に発表いたしました長期予報にもそれが触れてございます。  それで、その後の推移につきましては、六月の上旬には大体雨も少なく、普通の状態でありましょうけれども、下旬、後半になりますと、オホーツク海のほうに高気圧があらわれ、また日本海にも商気圧があらわれまして、いわゆる梅雨前線が日本日本海側に沿って走るのではないかということが予想されております。したがいまして、梅雨期の気象といたしましては、東北も含めまして北日本のやや低温、それから山陰、北陸等裏日本海側の低温と日照りの少なさ、それから雨というようなことが予想されるのでございます。それと反対に、表日本側におきましては、むしろ雨が少ないのではないかということが考えられます。  それから、台風につきまして申しますと、西日本のほうは、この七月、八月には例年よりもやや台風が来る公算が多いように見込まれております。  いずれにいたしましても、今後の見通しといたしましては、五月の上旬の状況で申しましても、三陸沖に平年よりも約五度低い低水温の域もございますし、冷夏というようなことが懸念されるのでございます。  それから、太陽の黒点のことにつきまして報道関係などで報じられておりますけれども、太陽の黒点は約二百五十年ばかり前からの記録がございますが、昨年の十月が太陽の黒点の最少期でございまして、それから先徐々にふえておりますが、この太陽の黒点が極大から極小になってまいりまして、また次の極大に向かうという、何と申しますか、なべ底の形になりましたときに東北の凶作というものがいつも起こっておるのでございます。それで、この数年間の太陽の黒点の変化状況を過去の状況と比べてみますと、ちょうどいまから百八十年ばかり前の天明二年から七年あたり状況に酷似しておるのでございます。そういうことから、これはまずそのころと同じような気象状況変化があるのではないかということが予想されております。  以上、申し足りませんでしたことは、また御質問で……。
  34. 岡良一

    岡委員長 予報部長は台風の関係で帰りを急いでおりますが、御質問ありませんか。——小宮山君。
  35. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 天明のあれとどんなふうに似ているのですか、太陽の黒点とが。
  36. 今里能

    ○今里説明員 変化状況がきわめて酷似しております。その数年間の極大から極小になり、また極大になり、そういう変化状況が酷似しておりまして、その百八十年隔てた変化状況とを重ね合わせますと、全くよく合う。そういう点で酷似しておると申し上げたのでございます。
  37. 岡良一

    岡委員長 渡辺君。
  38. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 天明以外の凶作というのはいつごろですか。酷似したもの以外はないですか。
  39. 今里能

    ○今里説明員 お答え申し上げます。  天明年間の次が天保年間にございます。それから、明治の初年にございます。それから、程度はずいぶん違いますが、昭和九年ごろにもそういう凶作がございました。
  40. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 そうすると、昭和九年ごろから気象学というものが非常に発達したときのほうが、比較するのに参考になるのではないかと思うのですが、そういう方面の比較はどうなっておりますか。
  41. 今里能

    ○今里説明員 気象学及び気象業務の施設の違いでございますか。
  42. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 天明時代と申しましても、それは太陽の黒点や何か望遠鏡なんかで見たんでしょうが、いまから見たらまるきり天文学といいますか、そういうのが進歩の程度が違うと思うのですよ。ですから、直接比較するにしても、なかなか比較しにくいのではないか、百八十年間もあるのですから。その後にも冷害の年は何回もあったのですから、気象学や天文学というものがもっと発達した最近におけるところの冷害のときの気象状況との類似したものというのは、いつといつありますか。百八十年間なかったのですか、酷似したというものは。
  43. 今里能

    ○今里説明員 お答え申し上げます。  太陽の黒点の観測は、私専門でございませんからよく存じませんけれども、太陽の黒点数を記録するのでございます。この天明年間——これはイギリスの記録でございますけれども、そのころと今日と比較にならないような違いはないんじゃないかと私どもは思っております。  それから、太陽の黒点の変化状況につきましては、これは十一年周期——多少二、三年のズレはございます。——それから九十年周期というようなものもございます。大体天明の次の九十年周期のときもやや似たのがございますが、まあ百八十年たちました今日のが天明と一番似ておるという関係でございます。
  44. 岡良一

    岡委員長 ほかに御質疑はございませんか。——では、今里予報部長にちょっとお伺いします。  現在の気象の予報について、あるいはまた異常気象の原因、理由等についての解明のための国際的な資料の交換が完全にいっておるかどうか。  あるいはまた、資料に基づく国際的な研究、あるいは根拠追求のための機関があるかどうか。  それよりもまた、日本における現在の施設等によって、あなた方が責任ある気象の予報ができるのか。  もし足りないとすれば、どういう具体的な施設等の整備が必要なのか。  この四点について、率直な御意見を伺いたいと思います。
  45. 今里能

    ○今里説明員 お答えを申し上げます。  この最近の日本における異常気象は、日本に限られたことではございませんので、全世界的な傾向でございます。先ほどの御説明にも申し上げましたとおり、アメリカ大陸、ヨーロッパ大陸、それから日本の方向と、冷たい空気が流れ込むようなパターンになっております。端的な例をもって申し上げますと、この四月にはアメリカ大陸に異常な低温がございましたし、それからまた、史上三番目といわれるようなたつまきもアメリカで発生しております。それから、ヨーロッパの低温も報ぜられております。それからまた、これは寒気が入っておるところではございませんけれども、アラビア海、インド洋方面の南西季節風の流入も非常に異常であるといわれておりまして、実は私、コロンボに五月一月から二週間ばかり滞在しておりましたけれども、八日間連続雨が降り続きまして、洪水が起こったような状況でございましたし、そういう状況はセイロンではきわめて珍しいということでございます。それから、その間、五月の十二日にはパキスタンに一万二千人の死傷者を出したといわれる熱帯性低気圧が襲っております。  まあこういうように、異常気象というものは全世界的なものでございますから、異常気象の予報を、特に長期予報をいたしますには、全世界的な気象情報を収集いたしまして、それを解析予報いたさなければならないのでございます。この点につきまして、現在でもある程度の施設は、国連の専門機関でありますところの世界気象機関においてやっておりますけれども、それでは十分でないというので、世界気象機関におきまして、ただいま世界気象監視計画というのを計画しております。  この世界気象監視計画といいますのは、在来得られましたような地上観測のデータを集めてそれを解析し予報するという方法と同時に、先ごろ来開発されましたところの気象衛星のデータを十分に利用いたしまして、在来のデータとあわせまして、全世界的な解析予報をやろうという計画でございます。このためにモスクワとワシントンに世界センターというものを置きまして、そこでは大がかりな電子計算機によりまして、諸種のあらゆる利用できるところの気象情報、気象データを処理いたしまして、それを世界の数地区に置かれますところの地区センター、地区中枢というものに送り込みます。それで、その地区中枢におきましては、世界センターから来ました、これも南半球も含めてでございますが、全地球的な解析情報をもとにいたしまして、その地区のさらにより詳しい情報を解析いたし、予報し、そうしてその地区センターから、さらにそれぞれの地区に所属するところの国々にそれをまた流しまして、その国における気象予報、特に長期予報というようなものを、大きな全世界的な目で十分判断していこうという計画が進められております。  私どもといたしましては、こういう異常気象に対処いたしますには、そういうような機構に積極的に、国際的に協力いたしまして、それをもとにいたしまして、国内のきめのこまかい予報、長期予報の基礎にいたして、諸種の方面に貢献したいと存じております。  そのためには、私どもといたしましても、現在気象庁にございますところの長期予報管理官室というようなもの、これは当然整備拡充することに努力を尽くしたいと思っております。  以上でございます。
  46. 岡良一

    岡委員長 なお、具体的に気象観測上、日本として当面どのような施設がまだ足りないのか、あるいは同じ施設でも幾つ足りないのか、そういう具体的な御意見はございませんか。
  47. 今里能

    ○今里説明員 日本におきましては、測候所の数が百五十数カ所、そのほかに区内観測所、あるいは農業気象観測所というようなものがございまして、特に農業気象観測所は北海道、東北地方、それからごく一部南九州地方にも展開されておりまして、その観測網の稠密度におきましては世界一流だと思いますが、日本はほかの国に比べまして気象の変化が非常に激しいところでございますから、きめのこまかい仕事をやりますには、やはりそういうような施設を、まだ足りないところには置くということも必要か存じますが、私は予報の技術者でございますので、技術的な点からはいろいろそういうふうに考えられるわけでございます。
  48. 岡良一

    岡委員長 どうもありがとうございました。  なお、加賀山農産課長が御出席でございます。今回の異常低温地域、いわゆる冷害地の実情を御視察になられたと聞き及んでおりますので、その間の状況について伺いたいと思います。
  49. 加賀山国雄

    ○加賀山説明員 農政局の加賀山でございます。  先般、衆議院の災害対策委員会の諸先生方と東北地方の現地を視察してまいりましたわけでございますが、参りましたのは五月の上旬でございましたが、その前に福島県の只見地方を農林省のほうから私見てまいりました。  現地における実情は、災害対策特別委員会のほうから御報告がもうすでに出ておりますので、すでに詳しく聞かれておるわけでございますが、先ほど予報部長からお話がございましたように、ことしは非常に春から低温が続きまして、さらに四月に入ってからの降雪が非常にございまして、その結果融雪遅延という状態になっております。私が奥只見に参りましたときに、なお一メートルくらいの残雪がございましたし、五月の上旬、岩手、秋田、山形に参ったわけでございますが、やはり多いところはなお五十センチをこすような積雪状態でございました。かように東北の山間部におきましては、ことしは例年よりも融雪が非常におくれたというのは、温度が低いということと同時に、四月に入ってからの降雪が非常に例年より多かった、そういうふうに見てまいったのでございます。
  50. 岡良一

    岡委員長 次には、和達防災科学技術センター所長から、今回の冷温等を中心に、防災科学の立場から御説明を伺いたいと思います。
  51. 和達清夫

    和達説明員 防災科学技術センターは、一昨年設立いたしまして、日なお浅いのでございますが、各種の防災に関する科学技術的研究わが国において総合的に推進されて成果をあげるように努力いたしております。  昭和三十七年、八年の豪雪に対しまして、私どもは北陸豪雪の総合研究を計画いたしまして、多くの関係研究機関を総合して、この雪害防災に対する研究をいたしました。その際に、農林省関係の試験場におきまして、融雪とか消雪とかという問題を研究していただきました。これは市街地と農地とある問題のうち、農地について主としてやっていただいたのでありますが、これも今回の冷害には関係があると思われます。  なお、今回の異常低温に対しましては、あるいは残雪問題に対しましては、防災科学技術センターにおきまして、特別研究を計画し、すでに飛行機による残雪の分布を調査するとか、あるいは河川の低温状態を調べるとか、また新潟県あるいは福島県の特に残雪の多いところを中心に調査を進めております。そのほか昨年には北海道の冷害に関する特別研究の推進もいたしましたが、ともあれ今回の低温によるところの、あるいは雪がおそく降ったことによるところの災害というものが——わが国においてこの種の災害は過去にもあったのでありますけれども、その程度においては非常に珍しく強いものであったと申せるのであります。  今後、こういうように春から夏にかけて低温が出始めた場合に、これが夏までつながりまして、そうしていわゆる凶作というところにまでいくかどうかということは、非常な問題であります。そういう場合も過去にありますし、夏になって気温が取り返され、事なく済んだ場合もありました。これらは一に長期予報のほうにかかっておるわけであります。気象庁においても長年その方面は鋭意研究を進められております。もちろん非常にむずかしい問題でありますので、先ほど来お話がありましたように、いろいろその施設、設備を拡充して、もっともっと正確なる長期予報を出していただきたいように思う次第であります。  それに基づかれて実際に農業関係の方が防災につとめられるわけでありますが、そのやり方に、長期予報に基づくものと、それからその後もう少しまぎわになってきまして刻々の情報に基づくそのときの処置というものと、二色あると存ずるのであります。こまかい気象の状態につきましては、先ほども御説明がありましたように、気象庁におきましては農業気象観測というものを数年来整備してまいりました。まだ全国ではありませんけれども、東北地方あるいは北海道方面にはかなり整備されてまいっております。それらの材料も刻々出るものでありまして、それらが有効に農業方面に使われまして、こういう事態が起こった場合に、根本的にはそれでは解決つかないとしても、刻々の手当てをするというような問題には役に立とうかと思うのでありまして、私はそういうようなことについて、ますますいろいろな関係機関がよく連絡をとられて効果をあげられることを望んでやまない次第であります。  防災センターといたしましては、その任務が、各省庁研究機関にわたる調査研究で、総合的にこれを行なうことによってその効果を発揮できるという場合に、できるだけそれを推進し、援助できればできるだけして、わが国の防災に役立ちたいと思う次第であります。また、共通の施設をつくったり、共通に必要な資料を整えたり、あるいは共通の諸研究をしなければならない場合には、それをお引き受けしたりすることでありまして、防災センターでは、各省庁研究機関、技術陣がこういうことを総合的にやりたいということも伺い、また世間の要望にこたえて、総合的に防災科学技術を推進いたしたいと考えている次第であります。  今回のこの冷害につきましても、できるだけお役に立ちたいと思っております。
  52. 岡良一

    岡委員長 それでは、次に、戸刈参考人から率直な御意見を承りたいと思います。
  53. 戸刈義次

    戸刈参考人 戸刈でございます。  いまお話がございましたように、農業の立場から申しますれば、長期予報というのは、確実になってまいりますと利益するところは非常に大きいわけでございます。  長期的な予報についての対策と、短期的な予報についての対策がもとよりあるわけでございますが、その長期的なほうと申しますのは、たとえばどの作物を選ぶか、それから、稲作でありますれば稲の中でどういう品種を選ぶか、これはもう帯しろにまくとか、あるいは直播いたすにいたしましても、種の準備ということは前からいたさなければならないので、短期にはそれはできないわけでございます。たとえば、低温がことしくるので冷害を起こしやすい、起こすであろうという見込みが確かでありますならば、ある程度は作物の選定、特に一つの作物の中で品種の選定ということは、かなりの程度に可能なはずであります。わせ品種は生育期間が短いわけでございますので、こういった品種を選でいくことができるわけであります。それからなお、種をまきます、あるいは田植えをいたします前にやっておかなければならない整地、しろかき、こういったようなことも長期のほうに大体属するものと考えます。  それから、短期のほうは、これはたとえば保護苗しろで被覆の油紙あるいはビニールフィルムを取り除く、そういうようなことが短期の予報に応じまして対策として行なうことが可能であります。  短期のほうは、わかりますればそれを有効に使っていくことは可能でございますが、長期のほうは、一つの経営にとってみますと、品種を変えるとかあるいは作物を変える、場合によれば農業の経営の相当な部分を変えなければならないというようなことになりますので、それに踏み切ることがなかなか困難であるだけに、その予報がかなり立確であることが望ましいのは言うまでもないわけでございます。  そういうような面で、関係の指導と申しますか、実際に奨励いたしておりますところの側といたしますれば、長期予報を非常にたよりはいたしまして、それに基づく対策を行なっていくということは一般に行なわれることでございますが、一方それを受ける農家の側にとってみますと、何と申しましてもいままでの経営を続けたいという気持ち、それから、できるならばたくさん収入を上げたいという望みがありますので、どちらかと申しますと、その予報が悪く出ておりましてもある程度楽観的、あるいは無理をいたしまして、従来のやり方、多収を望むやり方、こういう方向をとっていきがちなものであります。したがって、それを押えて冷害対策といったようなやり方に踏み切らせるためには、かなり強力な奨励と、それからその奨励の裏づけになる確実な予報に対する自信、これがございませんと困難な面がかなり生じてくることが考えられます。  それから、作物栽培の側から申しますと、いろいろな技術が最近出てまいりましたので、かなりの程度に明確になっております。たとえば稲を例にとりますと、一枚の葉っぱが完成といいますか、出てから大きくなる、つまり一枚の葉っぱの生長に要します温度は、積算温度と申しまして、一日の平均気温を足してまいりますやり方で百度というのが明らかにされております。したがいまして、低温でありますと所定の大きさにするまでにかなりの日数を要する、一般に申しますれば生育がおくれるということになるわけでございます。  このことをもとにして考えますと、気温の面もございますけれども、水温が重要な問題になってまいりますので、気温を高める、こういうところにも重要な技術、対策があるわけでございます。水温は、曇りや雨の日でありますと上がりませんが、太陽が照っておりますと、気温は低くてもかなりの程度に水温は上がってまいります。その水温を維持するとか高めるのに、下のほうに水が漏れる、漏水をいたしますと、冷たい水を入れなければなりませんので何にもなりませんから、漏水どめというような操作、つまり漏水を少なくするといったようなこと、これが種まきあるいは本田移植前にとられる処置でございます。  先ほど申しましたように、品種は、一枚の葉っぱを生長さすのに百度要るというその積算の面から、どの程度のわせ品種を選ぶか。それから、その生長を早めるのに、水温を高めるために漏水を防止していくといったようなこと、そういうようなことを行ないますと、苗あるいは本田に植えました稲の生育はかなりの程度に促進されるわけであります。  それから、田植えをいたします場合に、最近の前づくりでは、保温折衷と申しまして油紙をかぶせる苗しろ、それからビニールやポリエチレンのフィルムを使いまして畑状態で苗を育てますやり方がございますが、この畑状態の被覆苗しろの苗は、水苗しろの苗と違いまして、植物体の中にでん粉とたん白質、ともに両方たくさん持っております。一般に植物は、たん白が多いとでん粉が少ない、でん粉が多いとたん白が少ない、合わせれば一〇〇になるといったような関係にございますが、畑苗しろでつくりました苗は、でん粉もたん白もともに多いという性質を持っております。そういうこととどの程度関係があるかは別といたしまして、比較的低温、平均気温の十三度半のところでは、畑苗は移植が可能であります。発根して、根づき、生育いたします。それから、油紙をおおいました折衷苗しろの苗は十四度半——一般の水苗しろは十五度半——で田植えをして、根づきが可能であります。したがって、畑苗といままでの水苗では、平均気温二度の違いがありますので、こういう点を利用いたしますと、根づき及び生育を盛んにいたしまして、生産を上げていくことが可能であるわけであります。  それから、雪解け水のように非常に冷たい場合、融雪が非常におそい地帯が多くあるという例は最近は非常にまれであったと思います。したがいまして、本年のように雪解けのところで水が冷たいところでは、いままでの経験からちょっと予想外のこととして特に注目しなければならないと考えますが、水温の上昇、それから苗づくりの様式、こういうようなことを勘案することによりまして、この冷害をかなりの程度に克服していくことができるのではないか。ことしは、融雪がおそいための、それからまた四月の低温といったようなことが軸になりまして、生育がおくれておる。場合によれば苗が腐る、花不足を来たしておる地帯もあると思いますが、一方において、いま申しました畑苗しろとか、油紙をおおいます苗しろというような形で育てられておりますので、いままでの水苗しろに比べますれば、苗立ちははるかによろしいと見ていいわけだと思います。  こういった苗しろ期の低温というものはいままでの冷害にはあまり例がなくて、昭和九年にいたしましても、最近の二十八年、九年、三十一年、あるいは北海道の昨年にいたしましても、いずれも田植えをいたしましたあとの低温であります。ことに収量の上に大きく響きますのは、穂が出ましてからあとの温度であります。穂が出ましてからあと約四十日間の温度、これが問題であります。温度と申しましても、実は日照なんですが、日照が多ければ気温が高いのが普通でありますので、温度といってもよろしいのでありますが、ここの天候、これが非常に大きく関係いたします。で、これが先ほどのお話では、裏日本ではあまり思わしくないというようなお話でございまして、非常に懸念されるわけでございます。この穂が出ましてからあと四十日間の——大体平均気温で考えていいのですが、穂が出ましてから後四十日間の温度が二十二度以上ございますればまず豊作、二十度から二十二度ぐらいですと平年作、それから十八度から二十度ぐらいですと不作、十八度以下ですと、これは非常な凶作、こういうふうなことが大体わかっておりますので、問題は今後の気温と申しますか、天候によるところが非常に大きい。いままでは苗しろでありまして、苗しろ様式が、寒地においては特に畑苗しろ、ビニール被覆というような形式に変わっておりますので、従来に比べますればその被害は少ないと思っております。問題は、今後特に穂が出ますころからあとの気象、天候、これが非常な大きな影響を及ぼしてくるもの、ここの長期予報が思わしく出ていないようなところ、ここでは対策が非常に必要だと思います。たとえば、こういった冷害のときにはいもち病が出ますので、それに対する薬剤の手当てであるとか、それから、水温をできるだけ高めるための水管理、こういう問題が非常にものをいってくる、かように考えます。  御質問によって、あといろいろお答えしたいと思いますが、一応これで終わります。
  54. 岡良一

    岡委員長 ありがとうございました。参考人からの意見の聴取は終わりました。     —————————————
  55. 岡良一

    岡委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。渡辺君。
  56. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 農林省のほうにお尋ねします。  非常にことしは低温で、予報部長の話だと、いままででことしの気象に酷似しているのは百八十年前の天明だ、こういうわけですね。想像するところ、これは非常な凶作になる危険性が十分考えられるわけです。それに対しまして、いまいろいろ戸刈先生からこまかい具体的な苗の栽培方法とか、それから肥培管理、そういうふうなことのお話があったわけですけれども、もっと大きな視野から、過ぎてみないことには天候だからわからないといえばそれまででございますが、大体ことしの米の収量は一体どれくらい、こういう状態ならとれるのか、そうするとどれくらい不足するのか、それに対する手当てといいますか、輸入のようなものを考えておるのか、あるいは輸入するとすれば、ことしはまあ日本だけでなくて、予報部長の話だと、全世界的な冷害だというのですから、ほんとうにそうなら全世界的な不作になる可能性があるわけですね。しかしながら、全世界的といっても、国によっては多少の違いもあるでしょうし、いままでの経験からして、凶作になる地帯とならない地帯ということも、いろいろな資料等でわかるはずでしょうから、そうすると、米の輸入ということについても輸入先というような問題も一応検討しておかなくちゃならない、こう思いますが、それに対してどういうふうなことを農林省としては考えているか。  それから第二番目は、食糧は米ばかりじゃございませんから、米がとれないなら、かりにソバのようなものはことしのような天候ではやはり米と同じようにだめなのか、それとも、ソバならだいじょうぶなのか。そういうふうな米を補うような他の作物、そういう作物を何か指導奨励するという点で考えているかどうか。こういうふうなことをお聞きしたいと思います。
  57. 加賀山国雄

    ○加賀山説明員 ただいま渡辺先生の御質問、たいへんに広範にわたっておりまして、私が責任を持ってお答えできない場面もあるかと思いますが、私のお答えできる範囲でいたしたいと思っております。  先ほどから、非常にことしは天明の飢饉以来の異常気象というお話でございました。そういうことは、三月十日に暖候期予報というのが気象庁のほうから出ます。それが、昨年に引き続きまして天候がことしは非常にまずく推移するであろうというような予報がございましたので、農林省のほうも直ちにその対策に乗り出しまして、次官通達をもちまして稲作については全国的に警戒警報を出したわけでございます。  その後、気象庁の予報どおりの天候の推移でございますので、それに対しましては、農林省といたしましては、まず国内生産の確保ということを第一に考えております。  これまで昭和九年の冷害以後、西ケ原の農業技術研究所、その他東北に冷害のための試験研究施設をたくさんつくりまして、先ほど渡辺先生からお話がございましたように、品種の育成等についても非常に強力な努力をいたしてまいりました。そういう点で、その他また、その後保温折衷帯しろあるいは保護奇しろ等、いろいろ新しい技術が出てまいりまして、昭和九年時代に比べますと、農業技術といたしましては、何と申しますか、相当目ざましい進展をいたしまして、技術陣といたしましては、ことしこそこれまでの積年の研究成果あるいは努力を、ことしの天候にうちかつために一〇〇%以上に活用いたしたいということで、現在努力をいたしておるわけでございます。  そのために、一般には、東北、北海道が、——北海道が昨年と同じような状態でございますが、減収をするのではないかという御心配をおかけしておるわけでございますが、われわれといたしましては、なんとかわれわれの持っております技術を駆使いたしましてこの減収を防ぎたい、そういう努力にただいま集中いたしておるわけでございます。  それで結論的に、先生の御質問でございますが、どのくらい減収するかということは、正直に申し上げまして、私ここで申し上げにくいのでございますが、それは今後の天気の推移ということもございますので、それとの関連で出てまいると思いますが、ただ先ほども申し上げましたように、先般視察いたしました現地のような、非常に融雪遅延によって苗しろづくりがおくれた、そのために、東北地方では五月三十日が田植えの安全限界であるとわれわれは一般に考えておりますが、それを越して六月に入らなければならぬ。そういうふうな地帯が、面積的には小でございますが、若干ございます。そういうところが、よほど今後の本田移植後の施肥の方法、あるいは病虫害の発生した場合の非常に早い時期の一斉防除、同時に先ほど先生からも御指摘がございましたように、水管理をうまくやるということが非常に収量に影響してまいります。そういうようなことで適切な処置をとってまいりまして、なんとか冷害に備えたいという努力をやっているところでございまして、そのためにどのくらいの減収をするかということは、ここで私といたしましては申し上げにくいのでございまして、減収しないようにこれから努力するということでただいま熱中いたしておるわけであります。  もし減収というような事態が起こった場合にどうなるかということでございますが、日本全体で米の生産量をどう維持するかということが問題になってまいります。その点、ただいまはほとんどの目が北のほうに向いております。ほとんどの目が北で減収するのではないかというふうに一般的には御心配をかけておるようでございますが、西のほうが、若干米の生産は停滞ぎみでございます。たとえば佐賀県の稲作というのは、非常に長い間停滞をいたしておりました。しかし、そこで新しい品種を導入することによって、最近また目ざましい増収をおさめております。そういうようなことで、西のほうで大いに米の生産に努力をいたしてもらいたいということで、すでに私どものほうから西のほうにそういうふうな技術的な指導をいたしたわけであります。そうして、全国をトータルいたしまして例年の平年作くらいに持っていきたい、そういう努力を現在やっております。  それから、最後の御質問でございますが、どのくらいの輸入を考えておるかということでございますが、これはできるだけ輸入をしないで、国内で皆さまの食糧を供給するというのが農林省の念願でございます。しかし、最近若干輸入がふえてまいっておりまして、四十米穀年度では約六十万トンという計画になっております。しかし、これも何年か前に百五十万トン以上輸入しておりましたころは、東南アジアその他の米作国からかなり自由に買えたわけでございますけれども、最近はそういうような輸出国が必ずしも輸出力がないという問題がございます。また、日本の皆さん方がだんだんと日本の米ということに、食味という点で非常に敏感になってこられまして、終戦当時のようなあのロンググレーン、要するに長い形をいたしました東南アジアのほうの米は、なかなか皆さんに喜んで食べていただけないということで、現在輸入いたしましてもビールの醸造用に使うとか、あるいはせんべい等の原料に使うというような程度になっております。やはりカリフォルニアとか、そういった準内地米の産地から輸入ということになりますと、なおさら終戦直後のように容易に輸入ということも考えられないというような面等もございますので、何としても、われわれこれまで努力いたしてまいりました日本の技術をことしこそ大いに活用いたしまして、また農家の方々にもそういうふうな気持ちをぜひ持っていただきまして、両者一体になってこの異常天候を克服いたしたい、そういうふうに考えておる次第であります。
  58. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 努力をして平年作をとりたいという気持ちはわかりますが、万一とれなかった場合は、その場に臨んであわててみたところでしかたがないことだし、こういうふうな準備のためにある程度金を使って、それがむだ金になるという場合もありましょうけれども、それはけっこうなことでして、自衛隊だって三矢研究までやっていろいろ研究しているのですから、まして長期予報で科学的にある程度割り出して、相当の可能性のあるというような問題について、農林省がいろいろな手をもう少し詳細に検討して、こういうぐあいだったらこうする、こういうぐあいだったらこうする、というような対策ぐらいは少なくとも立てておかなかったら、なかなかやれないのじゃないか、こう私は思います。  もう一つは、米はとれるというようなお話なのですが、はたしてとれるか、とれないか、それはわかりませんけれども、とれない見通しのほうが強いんですね。そういうときにあたって、できるだけとれるようには努力することと同時に、もっと、先ほど言ったような代用食といいますか、他の食物で米の不足分の何分の一かをまかなうというようなことを考えているのかどうかということについて答弁がなかったわけですが、それが一つ。  それから、防災センターの所長さんにお聞きをするのですが、この凶作問題、冷害問題ということは、防災センターだけで仕切れるような仕事でなくて、もっと内閣が本部でも設けてやらなければならないような大きな問題だと思いますけれども、たとえば建設省等においては、今度の台風その他の予報に対して、どこに台風が来るであろうか、あるいはどれくらいの降雨量になるであろうか、そうするとその地区の河川の中でどことどこが非常に堤防が弱い、それに対する水防計画はどうするか。いますぐ堤防を築くというわけにもいかぬけれども、応急措置はどういうふうにするか、ということまで考えているという話を聞いておるわけです。事これは建設省に限らず、鉄道の問題もありましょうし、そのほか各般の問題にまたがるところが多いと思うのです。  ただ単に、ことしは冷害だというばかりでなくして、表日本は雨が少ないけれども、場所によっては西日本は台風が多い模様だ、こういうふうな長期予報が出ているということになれば、西日本全体に対するところの台風の対策ということになってくると、農業問題ばかりでなくして、これは各般に関係すると思うのです。そういうふうな場合、長期予報という観点から、それは兵隊でいえば一号作戦、二号作戦、三号作戦、いろいろな仮想問答で、いろいろな作戦計画なんというのをつくるわけですよ。それと同じように、科学技術センターとしても、いろいろな情報をとって、しかも、こういうような、どの程度信憑性があるかわからぬけれども、現在の科学では最新の技術を集めていろいろな予想を立てているわけですから、その予想に相応するような、各省各分野にわたるところのいろいろな対策、一番被害がひどく来た場合、二番目に来た場合、三番目に来た場合、いろいろ想定されると思うのです。そういう想定に基づいたところの対策要綱というくらいなものは持っていなかったならば、科学技術センターの仕事として私はちょっとまだるっこいような気がするのですが、どの程度具体的にそういうことを考えているのか。それともやっているのか。そこらの点を御説明をいただきたいと思います。
  59. 和達清夫

    和達説明員 ただいまの御質問、まことに防災問題として重要だと思うのです。ただ、私のほうの防災科学技術センターは、対策本部で必要なる科学技術の総合研究の推進をいたすところで、対策そのものでありませんので、そういうようなことで研究者が集まって基礎になる科学技術の限底をつくるそのお世話はいたしますが、刻々の対策については、災害対策本部から御要求があり、あるいは指示があった事柄の技術的なことはいたしますけれども、対策につきましては、全体としては災害対策本部また各省所管それぞれやっておられますので、私のほうは、ただいまの御質問には直接お答えいたしにくいと思っております。あしからず……。
  60. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 まことにそれは心細い話です。所管権限という点からだけいえば、あなたのような答弁になるかもしれませんけれども、気象の問題や何かについてはやはり気象庁とか、防災科学技術センターとか、そういうところがほかの各省よりも一歩進んでいろいろな情報もとりやすい立場にあり、また現実に握っているのですから、そういう専門的な立場からいろいろ想定されるものを提示をして、あなたのところではもちろんそれはやる権限がないならばないように、所管は科学技術庁になるのかごうか知りませんけれども、それは技術庁の大臣からでも、閣議の際でも何でも、わが省において研究しているところはこういうところだ、これについてはどういう措置をとるかというような、大きな政治問題を提起するぐらいの積極性というものが必要なのじゃないか。それはいずれしろうとの集まりですから、やはり専門家が突き進んで積極的な意見を述べてもらうということは、非常にいろいろなヒントを与えると思うのです。そういう点で、もう少し積極的にやってもらったほうがいいのじゃないかと思いますが、この点ひとつ、きょうは大臣おいでになりませんから、政務次官の考え方をお聞きしたいと思うのですが、そういう点はどうですか。
  61. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 渡辺委員の御質問でございますが、大体防災センターの仕事につきましては、和達さんから御説明があったようなことでございます。  そこで、政府といたしましては、いまお話しのような、いわゆる政策実行の面につきましての場合に、それぞれ所管官庁で進めていくべきものであると私は思うのでございます。  ただ、お話のように、ある程度科学技術的の調査について、そういう政策実行について必要なものは、あるいは命令を待たないでひとつ進んで積極的にやっていただく、こういうことについては私は大いに努力していただきたいということでございますが、一応そうした、いまあなたの御質問のような御趣旨の問題は、大体それぞれの主管官庁で政策として推進し、それに対するいわゆる科学技術的のアドバイスというものは進んでやっていただく、こういうようなたてまえのものであろう、私はそう考えております。
  62. 和達清夫

    和達説明員 私、先ほどの御質問を多少誤解いたしておりまして、本年の台風に対する対策だと思いましたので、少し消極的に申し上げました。  わが国の防災問題に対する基礎問題、またそれが科学技術的にどういうふうに解決し、あるいは改善されるかというようなことは、研究者、技術者集まりまして、一つの改善案あるいは改正案というものができましたならば、これは科学技術庁を通じましてこれが実行に移されるように建言いたしたいと思います。
  63. 加賀山国雄

    ○加賀山説明員 御質問の最後の点に触れませんでしたので、失礼をいたしましたけれども、私たちのほうで考えておりますのは、何とか米でとるということをいま努力しておるわけでございます。  もしか米がとれないという想定で、それに対する対策をどうするかという御質問だと思うのでございますが、その地域地域によって代作として取り上げられる作物というものはいろいろあると思いますが、北海道であればバレイショというのがすぐ出てまいります。たとえば北海道でございますと、米作の非常に調子の悪い年というのは、バレイショの生産量が非常に多いわけでございます。しかし、私たちは米のとれなかったものに対してどうするかというところまで、正直申し上げて、まだそこまでの対策というのは、こまかくは立てておりません。  ただ、先般福島の現地に参りましたときに、ソバでもつくるかという話もあったわけでございますが、ソバでもつくるかということよりも、やはり帯しろをしっかりつくりまして、米をとったほうがいいという農家の方々の御意見もございますし、昨日現地の様子を再び聞きましたところが、非常に早くやりました畑ビニール苗しろの生育はよろしゅうございます。思ったよりいい調子で進んでおるようでございます。  なお今後検討いたさなければならぬ問題と思っておりますが、現在の段階ではそのように、米をいかに確保するかということに注意をいたしておる現状でございまして、先生の御指摘のようなことは、今後も検討いたしたいと思います。
  64. 岡良一

    岡委員長 日野君。
  65. 日野吉夫

    ○日野委員 あとから来て、詳しい話を聞かないのですが、加賀山農産課長に、ことしの農村の低温と申しましょうか、冷害地域、こういう事情を農林省で調査なされたのですか。
  66. 加賀山国雄

    ○加賀山説明員 それにつきましては、統計調査部という組織がございまして、全国調査組織を持っておりますが、それが最近のデータでは、五月十五日に苗の生育状態を調査いたしております。その前にも、苗の生育状況並びに播種の状況調査いたしておりますが、定期的にこまかい調査全国組織でとっておりますので、特に東北、北海道につきましては注意いたしておるわけでございます。その現況は、もしあれでございましたら、発表いたしておりますので、その資料を持参したいと思っております。  その結果は、平均的に見ますと、やはり五日から十日、おそいところで二週間くらいのおくれということになっておりますが、最近、五月に入りまして、若干天候が持ち直しておりますので、先般も朝のテレビでやっておりますように、宮城県あたりはいま田植えの最盛期になっておりますし、秋田あたりでも、大体五月一ぱいには八五%以上の田植えが終わるだろうという想定をいたしております。その点は、現在の時点におきましては、考えましたとおりの段階で順調に進んでおると思います。  全般的のおくれをどこで取り戻すかといいますと、まさに七月、八月の天候にかかってまいります。この点は、先般の五月二十日の向こう三カ月の長期予報は、かなり気にかかる予報でございますが、その場合はまたその場合の技術対策をとることにいたしております。  要するに、先ほど戸刈先生からお話しのように、あとは出穂後の気温、積算温度が八百九十度ということであります。要するに四十日間で八百八十度を維持できるかどうかということが、平年作を持つかどうかというきめ手になってまいります。ただ、日照、気温が高いというだけでは、かえって稲作というものはうまくまいりません。病気が出てまいります。日照時間というものが問題になってまいります。その点と、梅雨の上がりがおそいという予報が東北に出ておりますので、そういう点は若干やはり心配になっておるわけでございます。  その点と、今後とも一日一日こまかい天候予報とあわせまして、具体的には、末端で動いております農業改良普及員が、農家の方にほんとうにこまかい毎日毎日の接触をいたしまして、技術指導をやって、農家の方々がそれをよく聞いていただいて、やっていただく。そういうことがことしの天候にうちかつ唯一の道かと思っております。
  67. 日野吉夫

    ○日野委員 ことしの天候は、何百年に一度とか、天明の飢饉に似ているとか、いろいろうわさされて、暗い影を投げかけておることは御承知のとおりでございます。私も東北で実情は見ておるのですが、苗しろなどの被害はだいぶ目に余るものがあるのです。それでいろいろ、追いまきとか、手配は各県等でもやったようです。これらの施策に対して、農林省はいつも補助、助成というような程度というような程度の応急対策だけをやっているのですが、何かことしの天候に対して、こういう事態を根本的に解決する新しい抜本的な一つの対策等を考えておられるのですか。従来どおりの補助、助成ということでその場をしのいでいこうというような対策の用意しかないのですか、どうなんです。
  68. 加賀山国雄

    ○加賀山説明員 ただいまの御質問でございますけれども、お答え申し上げますが、私たちがいま考えておりますのは、まずいま起こっておる現象に対処していくということが行政といたしまして必要だと思っております。いま御指摘のようなことで、たとえば委託苗しろとか、共同苗しろというものを早急に北のほうではやっております。そういうことに対する必要な経費につきまして、これは予備費をもって助成をいたしたいと思って現在考えておりますけれども、根本的な問題ということになりますと、私は、一番期待をいたしますのは、試験研究と申しますか、そういった寒冷な気象に向かっていけるような農業技術の一番根っこになっております試験研究に大いに期待をいたしておるわけでございます。私は試験研究のほうにおりませんで、行政のほうにおりますので、行政のほうからの気持ちは、そういう試験研究に大いに力を入れていただきたいというふうに考えておる一人でございまして、ただ私がここで抜本的な対策を持っているか、農林省が持っているかということにつきましては、ちょっと私の段階ではお答えしにくいわけでございます。
  69. 日野吉夫

    ○日野委員 ここは科学技術の委員会ですから、科学的な対策があるかどうかということについては、あとここで十分検討したいと思うのです。  七、八月の天候が高温多湿であれば回復するであろうといういまのお話でありましたが、長期予報の分になりましょうが、七、八月の見通しはいかがですか。所長さんに伺います。
  70. 和達清夫

    和達説明員 私、権限はございませんけれども、資料を持っておりますので、予報部で出した五月二十日の向こう三カ月の予報というのがございます。六月、七月、八月と出ておりまして、その中でいまのお尋ねの部分だけ抜いて申し上げますと、  「六月の気温は、北日本ではやや低いほかは、並みないしやや低い程度。雨量は前半に少なく、後半に多くなりますが、地域性が大きく、関東以西の太平洋側で少なく、また本州の日本海側では多めとなる見込みです。」  七月は「気温は西日本で高目、北日本で並みないしやや低く、その他は並みでしょう。雨量は山陰、北陸、東北地方にかけて多く、その他は少ないでしょう。」  台風のことを申し上げますと、  「八月、関東以西は太平洋の高気圧におおわれ、盛夏期は雨が少なく暑い見込みです。また台風の影響は一、二回考えられます。北日本の天候は変動が大きく、一時低温となる期間があるでしょう。八月の平均気温は西日本で高く東日本は並み、北日本はやや低いでしょう。雨量は前月に引き続き本州日本海側及び東北地方で多く、その他は少ないでしょう。」  これで見ますと、表現は非常に技術的になっておりまして、天明程度とか何とかいうことはここに少しも見えておりませんが、並みないしやや低いのが北の部分と日本海側の部分に出ております。ですから、春先から低温であったのは相当響く。これは部分的で日本全体ではありませんが、そういう予想になっております。
  71. 日野吉夫

    ○日野委員 きょうなども、これは異常天候でしょうね。いまごろ台風が来るという状況なんですが、この間なんか、群馬県ですか、かなり大きなひょうが降ったということがいわれています。北関東などはこれからも霜の降ることがまだあり得るのじゃないかと思うのですが、いまのこの予報関係からそういうことも予想されますか。どうでしょう。
  72. 和達清夫

    和達説明員 私が気象庁におりましても、ちょっといまの御質問は担当の専門家に聞かないとわからない問題で、まことにどうも詳しくは申し上げかねますが、本年の異常は、先ほど予報部長が言われましたように、非常に寒波が強く、おそく来まして、それですからそういうような異常がいろいろ起こっておりますので、気候というものは毎年多かれ少なかれ異常はつきものでありますけれども、本年の異常は確かに珍しい強い異常であると考えます。
  73. 日野吉夫

    ○日野委員 加賀山さんに伺いますが、この間大きなひょうが降ったということもあり、霜露、これはかなり広範に被害があるわけです。ぼくらも北関東一帯をしばしば襲う霜害の現地調査もしてきたわけですが、ことしもそういう危険がいままでだいぶあったし、これからもあるわけです。これらの対策はいろいろ研究はされて、補助、助成の手当ての点などは十分いっていますが、機敏な気象庁との連絡によって霜の予防対策など、われわれだいぶ建言してあるのですが、そういう被害を回避する方法等、名案が農林省で出ていませんか。何か新しいものがあったならば伺いたい。
  74. 加賀山国雄

    ○加賀山説明員 その問題につきましては、私長いこと普及教育課長をやっておりまして、農業改良普及組織というものを全国的に、農林省は県と共同してやっておりますが、当然国の段階でも気象庁との連携を保つようにいたしておりますが、県段階、それから私たちいま希望いたしておりますのは、県段階のもっと下の段階の、農林事務所あるいは改良普及事務所の段階の気象庁関係の仕事との連携というものをたいへん重要視いたしておりまして、先ほど気象庁のほうから御説明ありましたように、北海道、東北、南九州につきましては農業のための観測地点を相当に増加していただいたわけであります。そういうところでこまかい時々刻々の気象観測もなさっているようでありまして、それを私どもの組織でいただきまして、それに対応して非常に早い時期に農家の方々に注意を申し上げる、あるいは警告を申し上げるということで、全国的にはまだ私たち満足するような状態になっておりませんけれども、最近農村有線放送施設というものが相当完備してまいりましたので、それ等も利用いたしてやっておるわけであります。ただ、組織的にそういうものが完全にでき上がっておるという段階にまだ至っておりませんが、問題はそういうふうに気象のデータを農業にうまく使っていくというのが、やはり自然を対象にいたしましたわれわれ農業の場面では非常に重要な点だと常に思っております。  私が前にやっておりました時代には、そういうことを非常に強調いたしましたが、最近漸次そういう方向に向かっております。とりわけて目ざましいような対策ということでなく、やはり時々刻々両者の緊密な連携を末端の段階でやるということが最も重要かと存じております。
  75. 日野吉夫

    ○日野委員 重ねて伺いますが、ぼくらのところも前に何べんも経験しておりますが、なるほど有線放送、これは災害回避のためには非常に利用のできる、いい施設だと思うのですが、いまの普及の程度では局部的に回避できるだけで、全般的な災害回避の用に立つとはわれわれ考えられない。農林省には前には何か有線放送普及の費目があったのですか。農業改善等で補助助成をする、そういう予算を特に出して災害回避の役に立てるようなものがあるのですか。
  76. 加賀山国雄

    ○加賀山説明員 農村放送施設につきましては、従来新農村建設という仕事を現在の構造改善事業の前にやっておりました当時に、非常に普及をいたしまして、その後も利用価値が認められまして、全国的には相当普及しておると思っております。ただ、いま御質問のように、非常に徹底した指導ができるまで普及しておるかという点につきましては、なお今後問題があるかと存じます。  予算的には、私、所管でございませんのでよく存じておりませんけれども、たしか十年くらいになるので、有線放送の記念大会か何かも、本日皇太子もおいでいただきましてやっておるようでございますし、農林省といたしましてはあれに相当力を入れておるというふうに私は考えております。  ただ、今後、何と申しますか、最近超短波でお互いに機械を持って話ができるような機械ができておりますが、ああいったものでもお互いに持ち合って早急に急いで気象情報を入れ合うとか、そういうことも必要であろうかと考えておりますが、そういう点等、まだ予算化をしておらないわけでございます。
  77. 日野吉夫

    ○日野委員 戸刈先生に伺いたいと思います。  お話を全部聞かないで失礼なことを申し上げるかもしれませんが、いままでの農業の研究というのは、かなり長い歴史を持って、防災の研究も農業面ではかなりやられているわけでございます。まあ品種の改良とか帯しろの改善とか、だいぶ成果はあがっているようですが、それだけではなかなか災害に対して対抗できないのではないか。年々災害の被害の大きさから考えますと、まだまだ十分でないと思うのですが、きょうは科学技術の委員会で、これから取り組む問題でおいで願っておるわけです。  それ以外に、何か悪天候を阻止する、天候を変革するような、何かひとつ奇想天外の構想でもないものでしょうか。そこらの先生の夢物語でもいいですから、あったらひとつお聞かせ願いたいと思います。
  78. 戸刈義次

    戸刈参考人 農業のほうにも、農業気象というふうなところで、研究室あるいは大学でも講義などございますけれども、気象を変えようというところまでの夢はかつて抱いたことはどうもなさそうでございます。私ども終戦後間もなく、当時の気象台で藤原先生が原子爆弾エネルギーで台風を避けようというような計算をされたというふうなことを聞いているのがせいぜいでございまして、あとは聞いておりません。  農業の立場からは、やはり悪天候を予想いたしまして、それに対する対策、抜け道という、そういう考え方の研究が多いし、また農業の立場から気象を変えようというようなことをやるにいたしましても、これは農業の立場からだけではなく、全般としての気象の変え方でございますので、農業からやるにいたしましても、やはり気象庁その他のところにお願いしなければならない性質のものかと考えます。  ただ、先ほどからお伺いいたしておりまして、たとえば霜害防止など、バーナーで火をたくとか、煙を出すとかいうようなことが一般ではございますが、最近蒸発抑制剤のOEDというのがございます。これはアルコールの一種なんですけれども、水面に膜を張りまして、蒸発を防ぐために、蒸発熱が失われないので水温が高まるというやり方でございます。それが今回の苗しろなどにも利用されておるわけですが、霧滴の表面をOEDでおおうというふうにしますと、その霧の蒸散、蒸発がなくなりますので、霧の状態で長い間保っておる。つまり煙幕を長く張っておるということが可能になりますので、そういう面から霜害の防止をしていこうという構想での技術を技術化しょう。もう研究室ではでき上がっておるんですが、実際にそれをやっていこう、技術としよう、容易に使える技術にしようという方向での研究一つございます。  それから、先ほど加賀山課長から、抜本的な対策としては研究であろうというお話がございましたけれども、事実私もそう考えます。と申しますのは、農業の研究というのは、私もまあ農業の研究に従事しておる一人でございますが、非常に研究のやり方というのがみみっちいんです。小さいんです。この冷害というような場合にぶつかりましても、たまたま冷害が起こりますと、品種収良をやる試験地をつくるとか、栽培法の研究の試験地をつくるとか、それも一つの試験地が大体百万円か百五十万円程度の予算を使っているにすぎない。  実は、農業で非常に困りますのは、天然の自然の状態に暴露しておりますので、本年見ました現象は次年度にはそのとおりにはあらわれないということなんです。ある刺激を与えまして反応が出ますけれども、その反応を再びあらわすという再現の装置というものが農業にはないわけなんです。したがって、何年も何年も試験をやりまして、たまたま思うところにぶつかると成績が出るとか出ないとか、したがって、物理、化学のほうで年間何回となく繰り返すということが、農業ではできないのであります。したがいまして、農業で欠けている重要な点というのは、光とか温度、湿度、そういう環境条件というものを自由にコントロールできる設備が、これがいまハイトトロンとかバイオトロンとかいう名前で幾らかできておりますけれども、それも完全にコントロールするのではなくて、温度だけが、それもある範囲でコントロールできるという程度のものなんで、いわゆる環境調節設備というものが欠けているために、農業の研究が非常におそいという点なんです。北海道でも東京でもいいのですけれども、そういう環境条件をコントロールできて、冷害ならいつでも冷害を起こせるような施設、そういうものがありますれば、その中で低温下における作物が必要とする養分の吸収であるとか、それからその中で種が実って発達していく過程であるとか、そういうものの観察なり、調査なりができるわけですが、それができない状態にあるという点なんです。そういう環境条件をコントロールできるような、しかも箱ではだめなんです。いまやっております一メートル平方の箱では問題にならないので、はるかに大きな施設、こういうものが非常に欠けているだろうという点が一つなんです。  それから、品種改良と申しましても、農業のほうではすぐに品種改良ということばを出すのですけれども、品種改良も国内品種の間の交配なんですから、外国の作物なり植物の遺伝因子を入れるということができていないわけです。いわゆる近親繁殖をやっているにすぎないのでなかなかいいものができてこないのです。もっと広く世界じゅうのいろいろなところを探検して、野生で強いものとか、いまの栽培から見ますれば変わっているものを集めまして、それを保存し、そのうちからいい遺伝因子を見つけて、それを日本の作物に導入していくというようなやり方が必要なんですけれども、そういう面での範囲が非常に狭い。  要するに非常にスケールが小さい。農業の研究と申しますと、一つ研究が十万とか二十万とかいう非常に小さなものばかりが数多く行なわれまして、成果をあげていない。また来年試みなければならない、試みてもだめだということが非常に多いわけです。もっと抜本的な施設というものが必要だ、こんなふうに思います。
  79. 日野吉夫

    ○日野委員 霜害の対策として煙を使うということは、四、五年前に栃木県下を視察したときに、軍隊上がりの元将校さんが、戦場で煙幕を張ったあの経験から実験して、非常に成果があがったというので、それをぼくらの班が発見して農林省に建議して、今日は発煙筒かなんかやっているでしょう。ぼくらも盛んに奨励しておりますが、あの方式をとると、単なる煙だけじゃなしに、何か薬剤でも入れまして霜害というものを防止できるような方法も考え得ると思うのです。そういう点の研究はだいぶ進んでいるが、これからもそういう研究を深めていただきたいと思う。  先生の話では、どうも農業研究はみみっちくて、成果があがらないということですが、それは予算面でございましょうが、もう少し、必要な研究であるならば、被害額を考えますならば、国が金を出してもいいのですから、災害防止のために役立つ研究ならばやっていただきたい。このことは科学技術委員会でも手伝いますから、ひとつ今後大いに研究を進めていただきたいと注文をしておきます。  さらに、科学技術庁のほうでいろいろ研究所がありますが、いま農林省や東大の先生のほうからも、いろいろ研究の不十分な、今後に残された問題もたくさんあるという話もありました。技術庁としても、調査機関、研究所というものを持っているのですから、これは日本経済に及ぼす影響が大きいですから、科学的な研究をして大いに役立てることが必要ではないかと思うので、研究課題の中に気象の問題とか、農業の問題とか、できれば科学技術庁の一つの仕事として気候の改変、そういうところまで——藤原先生は原子爆弾で台風の目をつぶすということは可能だというようなことを言われたことを私も記憶しております。もう一つ、東北あたりのしょっちゅう来る冷害は、樺太の間宮海峡がふさがれてしまったので寒流が全部太平洋に張り出して冷たい水が赤道の近くまで張り出していっている、日本の近海に暖流の入ってくる余地がなくなったというようなことまでいわれるのですから、これはいろいろ研究課題にはなると思うのです。くふうされて研究をされれば、私は気候の改変可能なりという一つの信念を持っておりますが、これは抜本的な、ほんとうに根本的な改変になると思うのですが、そういうところまで研究の課題としてこの委員会では研究してみたいと思いますから、科学技術庁にひとつ注文しておきます。  そういう新しい研究課題を、いま科学技術庁が持っている研究機関の中に予算でもつけて、大いに研究を進めていきたい、こう思うのですが、そういうことに対してお考えを承っておきたい、こう思います。
  80. 高橋正春

    ○高橋(正)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま参考人はじめ各先生方からお話がございましたけれども、異常冷温に対する技術的対策を大きく分けますと、異常冷温の長期予報の精度を非常に向上させるということ、それから農作物の保護の対策ということであります。  前段につきましては、特にお話のございましたように、現在では十分な精度が上がっていない。その解決のためには、冷害気象の成立過程と申しますか、そういうメカニズムを解明する必要がある。先ほど先生の御指摘にございましたように、一例を申し上げますと、冬の間にオホーツク海のところで非常に海氷が多くなりまして、それが親潮寒流と一緒に南に流れてまいりまして、夏の七、八月ごろになりますとオホーツク海から三陸沖にかけまして海上の水温が非常に低下する。と同町に、オホーツク海に非常に高い高気圧がございまして、そこで、やませというものが起こるといわれております。そういうようなメカニズムもやはりさらに科学的に解明しなければならない問題でございます。私のほうでは、特別研究促進調整費をもちまして、これは三十九年度でございますけれども、約十年ほどの間の北日本太平洋地区の近海の表層の水温の分布を調べ、それからまた、やませの統計的の解析を行ないまして、そういうものと内陸の気温の低下というものがどういう関係にあるかというようなことをとらえております。  それから、先ほど先生のお話にございました天候のコントロールの問題は、これは私専門でございませんので申し上げられませんが、夢のようなことを申しますと、たとえばベーリング海の氷を全部溶かしてしまえとか、太平洋の水を注ぎ込ませるとあたたかくなるというようなことをソ連の木で読んだことがございますが、現在そこまで参りません。  ただ、私のほうで、これはかんがいの対策といたしまして、人工降雨の研究をこの五年ほどやっております。その研究の中で、技術的にはオーバーシーディングといっておりますが、種をまきます場合に、あまり種の量が多うございますと、零度以下の雲の中に全部氷の粒だけになってしまう。御存じのように、氷の粒と水の粒とがまじりました場合にそこで雨が降ってくるなり、雪が降ってくるわけでございますが、種を非常にまき過ぎますと全部氷の粒になってしまう。そのために雨や雪が降ってこないというような研究結果等も出てまいりましたので、逆にそういうようなこと等も研究をいたしますれば、降雪等をコントロールし得るようなものができるかと思っております。  それから、農作物の保護の対策に関する研究につきましては、いろいろお話がございましたように、水田の諸条件の整備、特に火山灰性の漏水田などの多い、また冷水かんがい田の多い日本の現状につきましては、いろいろと従来からも土地の改良事業等が行なわれておりますので、これはある程度コントロールできると思います。  それから、冷害に抵抗性の強い安全な品種をつくることにつきましても、これもお話がございましたように、昭和九年の冷害以後かなり研究が進んでおるということでございます。  それから、早期に健康な前をつくることにつきましても、保温折哀苗しろその他いろいろな育苗技術の進歩によりまして、これも一応のめどがついておるわけでございます。  そのほか、地力の造成でございますとか、あるいは病虫害の防除というお話がございましたけれども、これも技術的にかなり進んでおります。  私どもがただいま手がけております一つの問題といたしましては、先ほどお話がありましたように、水温の保持の問題でございます。これでただいま取りかかっております研究といたしましては、融雪、要するに、雪が解けますると河川の流量がふえるわけでございます。そういたしますと、相対的に水温が低下するわけです。そこで、大体ことしはどのくらいの雪があって、その雪に面積当たりどのくらい水を含んでおるか、したがって、それが解けます場合には河川の流量がどのくらいになるかということの予測がつきますれば、これは河川の水温の低下についての一つの予報的な技術が確立するわけであります。従来はいろいろ現地観測等をやっておりましたものを、この三年ほど飛行機で積雪地の写真をとりまして、二十万分の一でございますか、非常に詳細な、七段階ほどに分かれました雪の深さを飛行機でとります。これによりまして、この地点にはどのくらいの雪がたまっておるか、したがいましてその面積当たりどのくらいの水を含んでおるか、それがどのくらい川に流れるかというようなことで、将来の融水の量の測定なり、あるいはそれに伴いますところの水温の変化というものにつきましても、ただいま研究を進めている段階でございます。  それからもう一つは、早期田植えの問題でございます。その一つは、できるだけ融雪を促進するということが必要でございますが、これも三十七、八年、ころにいろいろ検討いたしましたのですけれども、農地の場合におきまして現在最も実用的に応用し得るという段階のめどのつきましたものは、カーボンブラック、いわゆるすすをまく方法でございまして、こまかい資料は持ってまいりませんでしたけれども、たしかその当時の資料によりますると、融雪期日を二十一日間でございますか、短縮することができるというような結果が出たと思います。なお、実際的には、これをまきますダスターの様式でございますとか、あるいはヘリコプターからまきますので、まき方の問題とか、多少技術的な問題が残っておりますけれども、すでに今回の雪害に際しましては、農林省でもこのカーボンブラックの散布をおやりになっておるようでありますので、まあ芽が出たのではないかと思います。  それから、先ほどお話がございました防霜対策、いわゆる霜の対策につきましては、従来の散水法でございますとか、あるいは熱風法でありますとか、あるいはウインドマシンですか、そういうようなもので要するに地表面からの熱の放散を防ぐというお話が先ほどございました。これは昨三十九年度北海道の冷害に対処したものでございますけれども、蒸発の防止剤を含めました水を霧にいたしまして、これを地表面近くにまきまして人工的に霧をつくる。これによりまして地表面からの熱の発散を防ぐ研究をただいまやっております。なお、噴霧機の開発でございますとか、噴霧状況というようなことにつきまして多少の問題点があるようでございますので、ただいま引き続いて検討いたしておるわけであります。  以上のようなことが大体全般的な異常冷温に対しますところの研究の実情と申しましょうか、そういうことでございますが、先ほどもお話がございましたように、予算額というものが申しわけないほど非常に少ないわけでございます。これは雪害関係その他を含めまするともちろん多くなりますし、さらに災害を含めますればもっと多くなりますけれども、私どもが各省庁の予算の見積もりをいたしました時限におきましての三十九年度、これは非常に狭い意味にとっておりますけれども、異常冷温に対します研究費の総額というものは、当庁の防災センターのやっております特別研究等を含めまして千二百万、これに先ほど申しました空中写真の撮影等を入れましても二千八百万程度ではなかろうか、これはちょっとここで試算いたしましたので正確な数字ではないかもしれませんが、大体そのようなことになります。  なお、今後といたしましては、事の重要性にかんがみまして、当庁といたしましては予算の見積もり調整の際に、十分にこれらの点に重きを置きまして要求いたしますとともに、特別研究促進調整費等を活用して対処していきたいと思います。  以上であります。
  81. 日野吉夫

    ○日野委員 ただいま艦橋局長から話を聞いていると、だいぶいいアイデアと着想を持って、これならば相当次の研究に役立つものが出る、こう思うので、全幅的な賛成をいたします。  ただ、何といっても予算が足りないということのようですから、最後に纐纈政務次官、さっき伺ったように戸刈先生の学校のほうも研究費が足りないということに同様の嘆きを持っているようですから、ここらは委託研究費という制度も考えられるわけです。何かそこらで予算をふんだんに与えて、よい研究をせられて、災害を未然に防止するというお考えとその熱意をお示し願って、私の質問を終わっておきます。
  82. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 日野委員からいろいろ御要望もあり、また御質問がございましたが、科学技術庁といたしましても、いま高橋局長からもいろいろなお活を申し上げましたように、最近御承知のように農業の技術は非常に進んで、増産、増産できておりますが、やはり科学技術的に根本的な問題に欠けておるという問題がまだ相当あると思うのです。そういう意味で、そういう見地から科学技術の基本的な調査というものをやるにはどうしても金が要りますから、お説のように、ひとつ委員のほうからもバックアップしていただまして——日本の経済をあれする上からいいましても、何からいいましても、科学技術が一番大事な問題でございますから、皆さんの御支援のもとに大いにがんばってやりますから、ひとつよろしくお願いいたします。
  83. 岡良一

    岡委員長 原茂君。
  84. 原茂

    ○原(茂)委員 時間がなくて、飛び入りみたいな質問ですが、一ぺんに関連して皆さんにお答えをいただくように、全部先に申し上げますが、順次お答え願いたいと思います。  最初は、これは次官も含めて総合的な問題ですけれども、いままでの参考人の御意見をお伺いしたり、あるいは質疑応答を聞いていますと、はなはだ残念なことに、非常にばらばらという感じを受けまして、一体これでいわゆる防災という点で的確な成果が上がるだろうか、こういう感じを強く受けたわけです。  それを前提にしてお伺いをするわけですが、最初に、和達所長の先ほどの御意見をお伺いいたしております間に、次のような疑問が浮かんだので、明確にお答えを願いたいのです。  防災科学センターというものは、いろいろと研究の成果を防災そのものに役立てるような行動的なものを何かしなければ、私どもの側から言うと、満足はできない。ところが、どうも研究の範囲にとどまって、それをこうしなければいけないという必要性を勧告はするけれども、ある的確な力をもって必要な何かの措置をある機関にしろというような命令、あるいは指導の強い力というようなものが発揮できないんじゃないだろうか。それじゃ、あっても無意味じゃないかというような疑いを持ったわけです。  もう一つは、こういうことをしなければいけないのだとある答えを出しましたときに、それをどなたかチェックをしてさせるべきだ。あるいはそのままだれかが忘れると、忘れっぱなしになってしまうのをチェックする機関というものが正式にあって、いろいろとセンターとして答えを出しましたそのものが、もう一段上の強力な、いわゆる科学技術庁かどうか知りませんが、設置法を読んでおりませんけれども、そこに強力なチェック機関があって、なぜ一体これをこのままにほうっておいたのか、これは当然、的確にこういう関係の各機関に連絡をすべきではなかったかというチェックが行なわれるようになっていれば、まだ安心だという気がいたすわけですが、この二点、和達所長からお答えをいただきたいと思います。  ついでに、あと戸刈先生に関係があるわけなんです。  先ほど戸刈先生の将来の抱負の中の一つといいますか、現在の苦しみといいますか、御意見をお聞きする中に、いわゆる天候的な環境のコントロールをするような施設、研究というものをやりたいし、やらなければほんとうのものにならない、だが、予算云々というような御意見が出ました。これを聞いていまして、私、非常に貴重な御意見だと思うのですが、先生にもお答えを願いたいのですが、それほどいい御意見がありましたら、必要な予算措置を講ずるための経路をたどった、要するに要求なり進言なり、ぜひこういうものが必要だということを、かつて強く主張をし要求をしていただいたことがおありになるかどうか。うっかりすると、もうすでに常識的なものなので、和達長官なんかは——いま所長でございますが、とっくに御存じなのかもしれませんが、いまセンターの所長として、防災センターというからにはこの種のことに思い切った熱意を示し、積極的に予算化等にも動いて、科学技術庁を動かしながら、防災科学という点から特に関心を持って取り上げなければいけない問題じゃないだろうかというふうに思うのです。いままで御存じなく、何にもしていないのなら、きょう戸刈先生の御意見を聞いた現在、センターの所長として、この種の事業こそセンターが思い切って取り上げ、何とか推進力となる必要があるというふうに私は考えるわけですが、所長のこの問題に関する考えはどうか。ですから、合わせて三つ御答弁を願いたいと思います。  戸刈先生に、先ほどこまかい、特に稲作の技術的な温度を中心の御意見をお伺いしたわけですが、いわゆる畑苗しろといいますか、これでいくと十三・五度、いわゆる水苗しろですと一五・五度ですか、それから保温折哀ですと何か十四・五度というような一度ずつの差がある。低温でも畑苗しろの場合には稲作が非常に進んでいくのだという御説明をお伺いしたわけなんです。そういう先生の御意見を、大学で研究をされた成果としてお持ちになっておられるわけですが、本年の異常気象といいますか、いまの冷害みたいなものはすでに始まっているのですが、だいぶ前から、今日のこの段階は、ある専門家には予測されていたわけです。予測されたとおりの事態がいま農民を襲っているわけです。そういうときに、先生のせっかくそこまでの研究が、いままでの惰性で単なる保温折衷帯しろとか水苗しろで、ことしこの天候下に、考えてみると危険だ、できるなら畑苗しろに転換をすべきだというような、強い農民に対するサゼスチョンなり、あるいは必要な機関に対する、農林省あるいはその他に対しての御進言なりが行なわれたのか。また当然そういうことをしていただかなければ研究の成果ということにはならないと思いますので、こういう点を先生にはひとつ、二つ目ですが、お答えをお願いしたいと思います。  加賀山さんですか、課長さんがおいでになっていますが、先ほど日野先生から、将来この種の遠大な対策として何かないかという御質問がありましてお答えがございましたけれども、私はやはり具体的に、いま私が和達所長なり戸刈先生に御質問申し上げているようなことが、当然農林省の立場で、特に農産課長という職務はその範疇に入るかどうか知りませんが、農林省の立場では、ぜひともいま私が考えているような考え方で、先生の研究の成果、あるいは防災センターを督励してもう少し農業そのものに寄与させるような積極的な態度というものが農林省にあってしかるべきだと思うのです。いままでの説明を聞いていても、そういう能動的な面の御説明はなかった。機関は機関でかってに研究をしている、こういう成果があるそうだ、こういうことは聞いております、そんなことで一体農民のための役所といえるかどうか。私はもうちょっと積極的、能動的な何かが、せっかくいま日本に優秀な技術があり研究がなされているのですから、これをもっと進んでくみ上げていく、農業に生かしていくような態度、そういういろいろな積極的な活動というものがあってしかるべきではないかと思います。そういう点も、いまそうやっているならやっているのだ、言うとおりにもうちょっと積極的にやってみたい、その方法としてはこういうことをやるというようなことをひとつお聞かせ願いたい。  それから、高橋さんに最後一つお伺いしたいのです。  先ほど本年度の積雪がまだ非常に解けない、融雪という問題、これからどんどん解けてくる、量が多ければ当然水温は低くなる。この種の研究を、飛行機を使って山における積雲を三年来研究されている、こういうお話がいまあった。一体ことし三年目とすると、おととし、去年のその種の融雪が農業に与える影響というのはこういうものだということが、わかったらわかった範囲で、一体それをどう農林省を通じて、あるいはその他の研究を通じて農業そのものに生かすような科学技術庁としての努力をしてくれたか、どういう能動的な働きをしたのか。そのことの三年目、特に融雪が非常に多いというこのいまの異常気象の中で、一体どんな成果をあげたのか。山形、秋田においては、すでにこの冷害を苦に病んで自殺している農民が出ている。一体それまで二年間この種の研究の成果というものは  ああいう農民にいきなり大きな打撃を与えたのじゃなくして、科学技術庁は科学技術庁としてそれなりの研究の成果を生かして農業に寄与している、本年はそれでもこれだけの成果が上がっているんだよというような事例をあげて、ひとつ御説明をいただきたい。  以上、一括して恐縮ですが、時間がないようでありますので……。
  85. 和達清夫

    和達説明員 お答え申し上げます。  第一番に、防災科学に対する指導力と申しますか、そういう問題ですが、とにかくこういうような科学研究におきましては、研究者の自主性は非常に尊重されるべきものであります。  ただ、防災というような特殊の目的に向かう場合には、その目的に対して研究者が力を合わせてこれを行なわなければ、一人あるいは一部分では達成し得ない場面が多い、そういう御要望から、この防災センターが生まれたのでありまして、防災センターでは、各省あるいは学識経験者からなる運営委員会を持って、何が大事であって、何をすべきかということを相談し、そしてその上で総合研究を取り上げて行なう、またどういう施設が要るかということをそこで相談して、つくってやっておるのであります。そういう意味におきまして、全体として一つの機運を盛り上げ、そしてそれがもっと高いレベルで推進の必要な場合には、先ほど申し上げましたように、科学技術庁を通じて国に建言してそれを行なうようにしていく、こういうような現在の仕組みになっております。  なお、いろいろなことが起こりまして、科学技術的にもチェックが必要であるとか、さらに考え直すこと、あるいは特別推進することというようなことは、科学技術面におきましては先ほども申し上げましたものと同様に私どもでも考えておりますし、また、研究者あるいは技術者も、それぞれの行政機関において研究途上においてもそのことは反映して、成果が出ますればさらにまた強く反映して、各担当の行政機関のほうからそれが施策に移されるわけでありますので、その全体としての、なお上から見たところの問題がございますならば、科学技術的に見て私どもがそう思えば、先ほどと同じように科学技術庁のほうに申し出ます。あるいは、場合によっては災害対策本部のほうに申し出ることになっております。  最後に、施設の問題でありまして、先ほど戸刈先生からお話がありましたようなことは、防災に関する限りまさに防災センターで十分考えなければならないことで、事実研究者が大規模な施設でもって、単に一研究部門でなくて、国じゅうが使えるものについては、私ども重大任務として日ごろ心得ていたしておりますので、この方面にもぜひとも私どもも力を尽くしたいと思います。  ただ、ここで問題がありますのは、大学と各省庁との関係でありますが、私は、科学技術においてそのような区別をするのもおかしい、こん然一体になってやりたいと思います。
  86. 戸刈義次

    戸刈参考人 環境、特に気象条件でありますが、これをコントロールする施設が農業の研究にはぜひ必要であるという主張は、私のみならず、同じような研究者も一緒に主張いたしまして、約十年くらい前からこの種の施設ができております。全国の文部省関係の農学部のかなりのところ、それから農林省関係研究機関の大部分、それから地方試験場、県の試験場でも二、三この施設ができております。  しかし、できてはおりますけれども、コントロールする条件と申しますのは、温度は比較的容易でありますが、これもたとえは二十度から三十五度くらいの範囲というふうに大体限定されておりまして、もっと低温というようなところになりますと金もかかるわけですが、これができていない。  それから、光は、真夏のころの太陽の光線は、明るさで申しますと十万ルクスというくらいの明るさでございますが、現在の照明の程度ではせいぜい三万ルクスくらいしか出ない。  それから、そういうふうに密閉しました部屋の中でコントロールするわけでありますから、その中の空気中の炭酸ガスの濃度が、普通の空気の炭酸ガスの濃度を持っていなければいけないのですが、植物を育てておきますと、たちまちにして中の炭酸ガスを吸ってでん粉にしてしまいますので、炭酸ガスの欠乏になる。したがって、普通の状態の炭酸ガスの七五%程度の炭酸ガスを入れておくというところに限定いたしましても、一時間に十数回、たとえば冷えた空気なら冷えた空気を入れかえしなければならない、空気を送らなければならない。冷やす場合には冷やして送る。その冷やすという装置にまた膨大な設備を要する。  こういうような、いろいろな面の完備に近いような状態での環境装置というものは一つもできていない。  ごく最近、二年ほど前かと思いますが、平塚の園芸試験場にできました、これは三億かかけたと聞いておりますが、この装置がわが国では一番進んでおる装置なのでありますが、これも光線の点、それから炭酸ガスの点、こういう点では不備でありますし、それから、温度もコントロールの範囲が限られておるという意味で、十分ではありません。  また、最近の話になりますと、農業技術研究所で、室内でありますが、一坪もないような非常に小さな施設で、ここではもうほとんどあらゆる条件を満たすだけの施設がつい最近できております。これは大体一千万円ほどかかったものであります。これの大じかけのものにいたしますれば、自由な研究ができて、一度出てまいりました現象を、その条件さえ与えればいつでも再現することができる。したがって、その結果を確かめることができる、こういう装置になってまいります。  そのほかのものは、去年とことしで大いに違うということになって、そういう方面では信用することができない、こういう程度であります。したがいまして、こういうものの設備の完全に近いものを施設したい。こういう点ではどの程度主張しているかというと、程度でちょっとあらわせないのですが、非常に希望いたしております。  それからもう一つの、つまりその設備を使いまして低温のほうの研究は自由にできる、そうでないと、低温がきたときにはできるけれども、そうでないときにはできない。ことしは低温がくるだろうというので準備いたしておりましても、低温がこないとその試験はふいになるということで、研究者の意欲をそぐ。こういう点が非常に困る。こういうことを申し上げたいのであります。  それから、この稲の移殖のときの問題を、温度を中心にしまして、苗の種類が違うと苗の育て方が違う、違った温度でも田植えができる、低い温度でも田植えができるということを申し上げました。この研究は私の研究のようにおとりいただいているのでありますが、これは私がやったのではなくて、農林省の東北農業試験場が中心になりましてやったのであります。これも先ほど申しましたように、環境調節設備の中でやったのではございませんので、多くの人々がおやりになりました。私もその一人と見ていただいてよろしいのですが、多くの資料を寄せ集めまして、およそこういうふうになるという、統計的ともいえないのですが、多くのデータを総合いたしまして、こういうところに置いてよろしい、その結果を比較してみると大体それが当たっておるというところから申し上げたものでありまして、この種の研究も、ただいま申しました環境調節設備がありますればもっと簡単に出てくる、こういう種類のものでございます。
  87. 高橋正春

    ○高橋(正)政府委員 お答え申し上げます。  原先生の御質問でございますが、災害に関します研究、特に従来基礎的な学問分野のおくれと申しますか、そういうようなもの、あるいは各研究の総合性というものが欠除いたしておりましたために、ただいままでの研究につきましては、非常に基礎的と申しますか、将来の研究につきましての基礎的な資料を収集する段階にすぎないものもございます。  なお、一部につきましては、先ほど申し上げましたような、たとえば消火に関します研究でございますとか、あるいは空中写真によります積雪量の分布等を調べますための、国土あるいは道路開発というようなものに、すでに必要と申しますか、援用されておるものもあるわけでございますが、融雪量とそれから水温に関します研究につきましては、二つの面がございまして、これから結局河川の水温を予測しようという研究でございます。これにつきましては、端的に申し上げまして、まだ研究の途次と申しましょうか、積雪量からそこの積雪の面積当たりの水の量と申しますか、そういうものを仮定いたしますような計算方式等は、試算が出ておりますけれども、さらにこれが気象条件あるいは流出のいろいろな条件によりまして、どのように河川に流量として流れ、それが温度をどのくらい変えるかということにつきましては、なお将来の問題であります。ただ、そのような基礎的な資料を得ますと同町に、具体的に河川の水温がどのくらい低くなったということは、直ちに農業の施策等にも援用できるわけでございます。  実は端的に申しまして、従来その点の即応姿勢が足らなかったと思っておりますけれども、今年度におきましては、異常残雪に対しまして、直ちに先ほども申します空中写真によりますところの積雪量の撮影と、それから異常冷水の測定ということを五月の五日から開始いたしております。五月の十三日には、一応この結果によりますところの航空写真を農林、建設、気象庁、あるいは新潟、福島等の各県等に直ちに解読して送りまして、行政上の参考資料にしてもらうこと、並びに河川の水温の測定値につきましては、現地に担当者を派遣いたしまして、農林省はもとよりでございますけれども、地方の農業普及改良員、こういうものと直接に接触をいたしまして、日々の水温の測定結果というものを直ちに援用してもらうようにという、従来よりも即応的な方針だけは一応とっております。  以上でございます。
  88. 岡良一

    岡委員長 以上をもって参考人に対する質疑は終了いたしました。  戸刈参考人には、まことに長時間にわたって貴重なる御意見をいただき、本問題調査のため、大いに参考になりました。ここに委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。  本日は本会期最後委員会であります。委員各位におかれましては、長時間熱心に御協力くださいまして、ここにつつしんでお礼を申し上げます。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時十三分散会