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山口政府委員 行政管理庁におきましては、去る
昭和三十八年の七月から九月にわたりまして、
科学技術に関する
行政監察を実施いたしました。その
監察の結果を三十八年十二月に、
監察を受けました
科学技術庁等関係省庁に対して
勧告をいたしたのでございます。その後すでに一年半を
経過いたしておりますので、
勧告に基づきましてそれぞれ各
省庁におきまして
改善を進められておる事案もございます。とりあえず当時の
勧告の
内容につきまして概要を申し上げたいと存じます。
まず、この
監察のいきさつでございますが、すでに
科学技術会議等におきまして、
政府の諮問に対しまして、
わが国の
科学技術振興対策等につきまして数々の答申を行なっておられるのでございますが、これらの答申が、
監察等におきまして、必ずしも十分行政の各分野に反映していないという点が認められたのでございます。たとえば国の試験
研究機関の充実刷新、あるいは国をはじめ
大学、各種団体、民間等において行なっております試験
研究の組織的総合化、あるいは
科学技術者の養成
確保等の各種の重要な問題が当時指摘されましたので、これらに対しまして国として果たすべき比重がきわめて大きいという
観点からこの
監察を実施いたしたのでございます。
監察の結果につきましては、大要以下申し上げます数項目についてこれを
勧告いたしたのでござます。
その第一が
科学技術行政の
基本方策、第二が
科学技術行政の総合性、第三が国の試験
研究機関の運営、第四が特殊法人、地方公共団体、民間における
科学技術の
振興、第五が
科学技術者の養成
確保、第六が特許事務の促進、これらの項目につきまして
勧告いたしたのでございます。
以下、その
内容につきまして各項目ごとに概要を申し上げたいと存じます。
第一が、
科学技術行政の
基本方策の問題でございますが、
結論といたしまして、当時国として
科学技術振興の
基本的
方策が確立されていないという
結論を得たのでございます。したがって、
科学技術庁等におかれては、
社会経済の発展
段階、あるいは国民所得の増加の状況等との関連において、国の
研究投資額、あるいは積極的に開発すべき重点
目標、規模などを総合的に定める反面、経済変動に左右されない長期的の見通しの
もとに、国としての総合的
科学技術振興基本計画を
策定されまして、強力にその実施を
推進される必要があるという
結論を出したのでございます。この問題につきましては、ひとり
行政管理庁の
勧告のみならず、国会あるいは学界等におかれましてもほぼ同じような線の御
意見が出ておるのでございます。国としての
科学技術振興の
基本方針を確定してほしいということが第一の
勧告でございます。
第二点が、試験
研究の総合性の問題でございますが、
科学技術の総合的な
進歩発展をはかりますためには、国は
もとより、
大学、地方公共団体、民間等の試験
研究機関のそれぞれの分野における試験
研究とその
成果の組織的な総合化が強く
要請されるのでございます。これらの間の有機的な連係は必ずしも十分ではないので、
関係省庁においては特に次の点について
改善の必要があるといたしまして、
第一に、
科学技術庁の総合調整機能の強化をはかることを
勧告いたしたのでございます。現在もすでに試験
研究予算の一括計上等の
措置がとられておるのでございますが、これらの範囲をさらに拡大する。あるいは各省において行なわれております試験
研究分担等を定めた試験
研究計画の
策定、あるいは総合調整に必要な資料の系統的な整備等が必要ではないかという趣旨でございます。
次に、国の試験
研究機関と
大学における
研究所との協調
関係を確立することを指摘いたしたのでございます。国の試験
研究と
大学の
研究の問題は非常に大きな問題でございまして、三ヵ月間の
監察によりまして必ずしも最終的な
結論を出せなかったのでございますが、とりあえず両者の間の協調
関係を確立することが必要ではないかという点につきまして
勧告をいたしたのでございます。これにつきましては、当時行なわれておりました国の
研究あるいは
大学の
研究等において必ずしも協調が十分にいっていなかった事例が幾つかあげられたのでございます。
次に、国の
研究と民間の試験
研究との連係をはかることの必要でございます。すでに民間のほうが国よりも進んでおる、あるいはむしろ国の
研究を民間にやってもらって、それを国として重複を避けながら活用する必要のある
研究等もありましたので、国の
研究と民間の
研究との連係をはかることを指摘いたしたのでございます。
次に、民間の試験
研究に対する補助金の総合調整をはかることを指摘いたしましたが、これは同じ
研究に対しまして、国から、違う省から重複して、しかも全額の補助金がいっておるというような事例が幾つかございましたので、これらに対しまして補助金の総合調整をはかる必要を指摘いたしたのでございます。
さらに、
共同研究体制を確立いたしますために、いわゆる流動
研究員
制度等の拡張を考慮することを指摘いたしました。
以上の問題を第二の試験
研究の総合性という項目の
もとに一括
勧告いたしたのであります。
次に、第三点といたしまして、国の試験
研究機関の運営の問題について
勧告いたしたのでございます。当時
研究学園都市建設の閣議了解が行なわれまして、各
省庁の
研究機関の移転が日程にのぼっておりましたので、
科学技術庁におかれましては、この機会に
関係各
省庁の御
協力を得て、国の試験
研究機関の実態
調査を行なって、組織の
合理化について
検討される必要があるという点を
勧告をいたしたのでございます。特に情勢の
変化に即応した
研究の再編成
計画を立てること、あるいは
研究所において行なっております検査、検定等の業務を思い切り整理してその
合理化をはかること等を組織の
合理化の問題として指摘をいたしたのであります。
次に、第四点といたしまして、国の試験
研究機関の運営について
勧告をいたしたのでございますが、各
省庁の試験
研究機関において行政上の
要請に応じた
研究を行なうことと、試験
研究の結果を行政の施策に反映することの
必要性、また職務上の発明の取り扱いについて明確にすること、各試験
研究機関にございます工務課、試作課等の支援部門の整備をはかって、機械器具等の集中管理を行なうこと、さらに
研究職員の
処遇の
改善をはかること等を運営上の問題として
改善の余地がある、したがって、この
改善が必要であるという
勧告をいたしたのであります。
次に、
科学技術庁の監督の
もとにあります特殊法人並びに民間における
科学技術の
振興について
勧告をいたしたのでございますが、特殊法人として取り上げましたのは、日本原子力
研究所、理化学
研究所、日本
科学技術情報センター並びに新
技術開発事業団等でございます。これらの各特殊法人の業務の運営について指摘をいたしました。これにつきましては、その後一年半の岡にかなり
改善の
あとが見られております。
それから次に、
科学技術者の養成
確保につきまして、特に理工系学生の増募
計画につきまして、当時文部省において立てておられました計面の不備を指摘いたしまして、その
改善を促したのでございます。
最後に、第六項といたしまして、特許事務の促進につきまして通商産業省に
勧告をいたしたのでございます。逐年出願件数が増加いたしておりますが、これに対する処理がはなはだおくれておる、したがって、そのことがひいて
科学技術振興の隘路にもなっておる状況にかんがみまして、当時の事務の状況を監査いたし、根本的には
制度の改正をはかる必要があるが、とりあえず審査並びに事務の機械化等を促進いたしまして、現在滞っております事務を一掃する必要があるという点を指摘をいたしたのでございます。
はなはだはしょりましたが、以上の数点を
内容とする
勧告を
科学技術庁等
技術省庁に対して行なったのでございます。
以上、簡単でございますが、
行政管理庁において行ないました
科学技術に関する
行政監察の結果について申し上げました。