運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1965-02-24 第48回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年二月二十四日(水曜日)委員会におい て、次の通り小委員及び小委員長選任した。    科学技術の基本問題に関する小委員会       菅野和太郎君    佐々木義武君       中曽根康弘君    福井  勇君       前田 正男君   小宮山重四郎君       田中 武夫君    原   茂君       三木 喜夫君    内海  清君    科学技術の基本問題に関する小委員長                 前田 正男君 ————————————————————— 昭和四十年二月二十四日(水曜日)    午後一時三十二分開議  出席委員    委員長 岡  良一君    理事 菅野和太郎君 理事 佐々木義武君    理事 中曽根康弘君 理事 福井  勇君    理事 前田 正男君 理事 田中 武夫君    理事 原   茂君 理事 三木 喜夫君       秋田 大助君   小宮山重四郎君       野呂 恭一君    石野 久男君  出席政府委員         科学技術政務次         官       纐纈 彌三君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   小林 貞雄君         総理府技官         (科学技術庁研         究調整局長)  高橋 正春君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局長)   村田  浩君         総理府技官         (科学技術庁資         源局長)    橘  恭一君  委員外出席者         原子力委員会委         員       武田 榮一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員会設置並びに小委員及び小委員長選任の  件  科学技術振興対策に関する件(原子力行政に関  する問題等)      ————◇—————
  2. 岡良一

    岡委員長 これより会議を開きます。  まず最初に、小委員会設置の件についておはかりいたします。  科学技術の基本問題について調査を行なうため、小委員十名よりなる科学技術の基本問題に関する小委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 岡良一

    岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、小委員長及び小委員選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 岡良一

    岡委員長 御異議なしと認めます。  それでは、科学技術の基本問題に関する小委員に、    菅野和太郎君  小宮山重四郎君    佐々木義武君  中曽根康弘君    福井  勇君  前田 正男君    田中 武夫君  原   茂君    三木 喜夫君  内海  清君以上十名を指名し、また、小委員長には前田正男君を指名いたします。  なお、小委員及び小委員長の辞任、及びその補欠選任、並びに小委員会において参考人より意見を聴取する必要が生じました場合には、その期日、人選その他所要の手続につきましては、あらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 岡良一

    岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  6. 岡良一

    岡委員長 科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  それでは、本年一月インドプルトニウムプラント竣工式に出席され、また、現地においてインド原子力事情を視察してまいりました武田原子力委員が出席しておられますので、この際、インド原子力事情について説明を聴取することといたします。武田原子力委員
  7. 武田榮一

    武田説明員 武田でございます。  ただいま委員長から御紹介がありましたように、私、一月二十二日に、インドトロンベイにつくられましたトロンベイというところは、インドの東海村というようなところでございますが、そこに新しく、プルトニウム工場といっておりますが、日本でいう再処理工場完成されまして、その落成式が行なわれましたので、ちょうどインドから、日本からも政府を代表する者を一人招待がありましたので、私が行ってまいりました。  その当日は、午後五時半という夕方、日が落ちかけたころから開会式が行なわれました。その落成式というのは、ちょうど原子力研究所の一隅にありますプルトニウムプラントにすぐ隣接したところで行なわれました。その落成式では、原子力委員長バーバさん、総理大臣のシャストリさんのそれぞれ約三十分にわたる話がありました。その後、序幕式を行なって、一応落成式を終わるということでございました。  この落成式に列席したのは、約四十カ国のおもな国々の人が集まってきまして、それぞれ原子力委員長、あるいはそれぞれの国を代表する人が出ておりました。そのほかに、大体集まられた人たちというのは、全部で五千人といわれておりまして、原子力研究所職員、それからその家族、そういう人たちは、さくがありまして、そのさくの中におりましたが・さくの外まで一般人たちと思われるような人たちが集まって、熱心にその落成式に参加しているということでございます。われわれが日本でちょっと想像できないような、そういう雰囲気でありました。このプルトニウム工場完成ということをインド国民たちは非常に喜んでいるというふうに感ぜられました。  インドというのは、御承知のように非常に貧しい国でありまして、聞くところによりますと、月収二万円以上が大体納税者であります。その月収二万円というのが、国民のわずか一一%にしかすぎないということでございます。それで、ボンベイというと、インドとしては非常に文化の進んだ都市のようでありますが、それでも非常に貧しい。スラム街が連続しているというような感じを持ったわけであります。至るところで貧しい人たちの生活というものを、たとえば自動車で原子力研究所に参りますときには、そういう風景の中を通ってまいりまして、一たん原子力研究所に入りますと、もうすっかり芝生が整備されておりますし、カンナだとか・そういう日本でも咲く花などが、百花咲き乱れているというふうに、中が非常に整頓されております。そういうことで、まるで地上の楽園であるかのように原子力研究所というものが仕立て上げられておりまして、非常に印象に残っております。  そういうふうに、インドでは原子力研究というものに非常に金をかけているというふうな感じを持ちます。インドの一年間の経費というのを聞いてみますと、設備投資に約百八十億円、研究開発の費用に六十億円、合計二百四十億という金を、日本の金に換算しまして、使っております。まあ日本の約倍の予算であります。  ただ、事情がだいぶ日本と違うという点はありますので、この予算が倍であるということだけで実際の仕事の全体の量をはかるということはできないように思います。というのは、トロンベイ原子力研究所の中には、エレクトロニクスのディビジョンで非常に大きな部門がつくられておりまして、そこでその原子力研究所職員設計した放射線計測器あるいはオシロスコープというようなもの、そういった原子力研究に使う放射線測定器といったようなものはすべてその原子力研究の中でつくっております。そういう原子力研究所でつくった測定器というものは、インドのほかの研究所あるいは大学というようなところに売り出しているといったような事情があるようでありまして、インド民間企業というものはそこまで成長していないという感じであります。特に向こうで見せられたのは、たとえば女工さんがサリーをあれしてトランジスターの小さいエレメントをつくっているというような光景まで見せられまして、こういった調子ではなかなかたいへんだなと思いましたが、そういった国情の違いが非常に大きくございます。そういうようなことで、結局インド民間企業の水準というものは一般に非常に低い。それで原子力研究所というものが、ただ単に研究ということだけをやるのじゃなくて、そういう必要なものをすべて自分でつくっていくという機関であるというふうに感じました。これがいいことか悪いことかは別問題といたしまして、そういうようなことがございます。  エレクトロニクス・ディビジョンでそういった計測器をつくるというような考え方は、インド原子力全体に当てはまる考え方でありまして、インドにも幾つかの原子炉がありますが、その原子炉に使う核燃料というものは、ウランの採鉱から始まって、それを製錬して金属なら金属に還元し、そしてそれを燃料シースにする、そうして実際に使う、そこまで原子力研究所仕事でございます。そういった核燃料まで原子力研究所職員が自作しているという事情がございます。それでありますので、今度つくったプルトニウム工場というものも、プルトニウム工場全体としては二十七億円という金が使われたと聞いておりますが、そのうちの数億円分というのは原子力研究所の中の工作工場でつくったということでございます。そういうように、結局インド原子力研究というものが日本とはだいぶ事情が違うということをまずお話しいたします。  その次に、インド原子力開発方針というものが非常に先まできちんとつくられているということでございまして、日本などははっきりした筋を立てるということがなかなか現在までむずかしくて、多少混迷している状態でありますが、それに比べて非常にうらやましく感じたわけであります。そういう開発方針がはっきりしておるということは、問題は、インド原子力資源を持っているということでございます。その資源というのは、まずモナザイトというトリウム鉱石が非常に大量に見つかっている。この間まではトリウム鉱石にしまして二十万トンという資源埋蔵量を持っておりましたが、つい最近と向こうは言っておりますが、別に三十万トンというトリウム鉱石が見つかった。現在のところ合計五十万トンのトリウムがある。そのトリウムというのは、鉱石の中に大体八%から一〇%という割合で含まれておりまして、非常に高品位のものだけで五十万トンある。そのモナザイトという鉱石の中にはウランも入っております。ウランは大体〇・三%以上といっておりますが、大体〇・三%くらいはモナザイトの中に入っている。そういうことを考えますと、相当量、大体二万トンとかその程度ウラントリウムがあるということがわかるわけであります。  そのウランですが、インドは昨年五月からウラン鉱の発掘を行なっております。そのウラン鉱というのは、先ほど申しました、あとに三十万トンのトリウムが見つかったというので、ビハール州という、カルカッタから少し西寄りのところでございますが、その付近でトリウム鉱石の採掘を始めておりまして、大体いまのところ日産千トンという鉱石を掘っております。それを製錬して現在ウランをつくっているわけでありますが、その容量としましては、一年間に二百トンないし三百トンといっております。ある別の人に宴会の席上でいろいろお話をしておりましたら、インドウラン埋蔵は年産千トンで三十年間の供給が可能であるということを言っておりました。そうしますと、大体三万トンということになります。ともかくその程度トリウムがある。それで、先ほどのトリウムとそれから三万トン程度ウラン、これを使って原子力開発をするということが根本の方向であります。  そういうことで、トリウムというのはそのまま原子炉に入れて燃やすわけにはまいりませんで、その前に一段階を必要とする燃料の親物質といわれるものであります。そこで、インドが考えております段階は、三つ段階に分かれております。  第一段階というのは、先ほど申しました約二万トンないし三万トンというくらいの天然ウランをまず燃やす、そういう動力炉開発する。この動力炉を逆転しましてまずプルトニウムをつくる、これが第一段階の問題であります。  第二段階は、その第一段階天然ウラン重水炉という形でいまスタートしておりますが、そういう天然ウラン重水炉でつくったプルトニウムというものと、それから非常に大量にあるトリウムとを使ってウラン二三三を製造する、これが第二段階であります。  その次は、第二段階でつくられたウラン二三三とトリウムを使って熱中性子による増殖炉をやる。  そういうことによって五十万トンのトリウム全体を燃やそう、こういう考えであります。これがインドのこれから先、何十年という間にわたっての開発方針であります。  現在は、先ほど申しましたような開発計画の第一段階をやっておりまして、第一段階は、先ほど申しましたように、天然ウラン重水炉というものをつくってそれからプルトニウムを生産するということであります。現在そのためのプロトタイプ動力炉設計をすでに済ませまして、設計をするのには、たとえば臨界実験装置というものを数年前からつくって、そういうもので基礎実験をし、さらに重水動力炉をつくるためのプロトタイプの炉をいま製造にかかっておりまして、一九六九年と言っておりましたが、いまから四、五年先に一応完成する。そういう目標でプロトタイプのものをいまつくっております。それで、プルトニウム動力炉使用済み燃料から分離するという工場が今度のプルトニウム工場といわれるものでありまして、その今度つくられたものは一応パイロットプラントということでスタートしたわけであります。  ついでに、インド原子力発電所で最近アメリカ型のもの、それからカナダ型のものを入れているという事情を、ちょっとこの間に、本論からそれますが、申し上げます。  インドは、近く第一号の発電炉というものをタラプルというところにつくることは御承知だと思います。これはボンベイの北六十マイルのところにBWR型のものを、IGE、インターナショナル・ゼネラル・エレクトリック・カンパニーから購入する。この場合は短期コンタクトでつくる。その次の第二号発電炉というものは、ラジャスタンのアトミック・パワー・ステーションと呼んでおりますが、これはニューデリーの少し西側のところにつくる予定であります。この場合はカナダのCANDU型の二十万キロワットのものを二基、結局四十万キロワットのステーションとする予定でありますが、これはカナダからの技術導入でいろいろのインフォーメーションを買いまして、そのいろいろの部品はなるべく国産品を入れるということを言っております。それから第三号の原子炉を、これは南のほうでありますが、マドラスにつくる。大体それぞれ四十万キロワット前後のものでありますので、その三つができますと百二十万キロワットの原子力発電ができる。これを第一期に考えております。  こういう発電炉というのは、大部分はそういった輸入とか技術導入でやりますが、インドはもともとすべての原子力開発というものを国産技術でやろうということを考えておりまして、いままで研究炉としてはアプサラというスイミング・プール・タイプのものをすでに十年近く前につくっております。それは、燃料だけはイギリスから買ったけれども、国産でやったということを自慢にしております。それから、CIR——これはCというのはカナダ・Iというのはインドカナダインド炉といわれておりますが・結局カナダインドとの協力でつくった炉ということであります。この場合にも、カナダからデザインとかいろいろなものを買いましたけれども、大部分国産したということを言っております。それから、ゼルニナという重水炉臨界実験装置お話を先ほどちょっと申し上げましたが、それも国産でつくって、数字は忘れましたが、すでにもう二年くらいフルに運転しているということを言っております。  そういった三つ原子炉建設した経験はあるけれども、発電炉をこれからインド国産しようとすると、相当ギャップが感ぜられる。だから、最初の炉あるいは二番目の炉というものはある程度技術導入でやるということ、しかし、これから先つくるいろいろたくさんの天然ウランを燃やしてプルトニウムをつくるというための炉は、全部国産をしようということを言っております。そういったような事情がございます。  それで、その発電コストについて申し上げますと、ダラプルの三十八万キロワットの炉の場合には、キロワット時当たり二円二十八銭である。これが、もし同じ場所石炭火力のものをつくるとしますと、三円六銭かかる。その間、結局八十銭見当、キロワット時当たり原子力のほうが安いということを言っております。それから、ニューデリーの近くにつくるカナダ型の炉の場合については、コストのエスチメーションはキロワット時当たり二円六銭と言っております。もしその場所石炭火力をつくるとすると二円七十六銭かかる。この場合にもやはり七十銭くらい原子力のほうがすでに安いということを言っている。ただ、この数字がすぐ日本に適用できないのは、金利が違いまして、御承知のようにインドはほとんど国営でありますので、金利が五%ということをその計算の基礎に置いております。ですから、日本民間がつくる場合の一四%前後という数字とは差がありますので、その値段だけですぐ日本に焼き直すことはできないと思います。しかし、インド原子力発電がすでに石炭火力よりも安いということをはっきり言って、そしてその原子炉開発を急いでいるということはわかるわけであります。  大体それがいまインドにおける原子力発電ということに関連したことでございますが、このわれわれの視察目的でありますプルトニウムプラントに戻って話をいたしますと、インドはそういったように非常に国産技術ということを大事にしておりますので、プルトニウムプラントをつくる場合にも、設計建設ということは、全部、パブリッシュされた、公表された資料以外は使わない。そういうものだけを用いて、自分たちだけで設計をし、完成をした、そういうことをおりに触れて強調しております。このプルトニウムプラント建設方針というのは、一九五八年、七年くらい前に決定いたしまして、一九六一年にプロジェクト・フェニックスとしてプルトニウムプラント建設を開始いたしました。そして一九六四年、去年の二月に建設を終わっております。その後、昨年の三月末ごろには、まだ原子炉に入れないなまのウラン燃料を入れて模擬的な運転を開始いたしました。その後、CIRという研究炉から出てきた燃料、これはあまり放射能は強くないわけでありますが、そういうものの運転処理を開始いたしました。そして、現在までそういった比較的放射能の弱い燃料要素について運転を続けてきて、今回の落成式に至ったわけであります。  このプルトニウムプラント建設費というものは、前に述べましたように二十七億円と言っておりまして、その通常の処理能力公称年間三十トンの燃料処理できると言っております。ただ、バーバさんといろいろ個人的に話をしたときには、この年間三十トンということは公称だけれども、実際は運転してみると、もっとメニー・タイムズのキャパシティーがある。何倍かはっり申しませんが、おそらく年間百トン前後は処理できるのではないか。これはほかの国の人たちともいろいろディスカッションをしたときにそういう結論でございまして、大体そのくらいの処理能力はあります。  先ほど申しましたように、このプルトニウムプラントは、最初パイロットプラントとして、その次に、数年後に建設費百億円を要するフルスケールの、もっと大きいプルトニウムプラントをつくる予定であった。ところが、実際パイロットプラント運転してみると、そのフルスケールプラントというのは、そんなに急いでつくらなくとも十分間に合うということで、大体十年間くらいはいまのパイロットプラントでやっていけるという見通しがついたようであります。この点は、まだそうはつきりはいたしておりませんが、向こうではそう言っております。  このプルトニウムプラント処理法というのは、普通いままでのこの再処理を手がけたのは、アメリカ最初でありまして、それからイギリス、フランスとまいりまして、ソ連もやっておるということで、インドは五番目のそういう再処理工場をつくったんだと言っておりますが、その処理法は全部同じ方式でありまして、ピューレックスという方法であります。結局使用済み燃料を酸に溶かし、その酸に溶けた燃料を全部溶かしてしまいまして、それからTBPという有機剤ウラン部分だけを分離するというやり方あとはそれを化学的な分離をもっと繰り返していくというやり方であります。  一回に入れる燃料というのは六本、燃料棒にして長いものを六本入れまして、目方にして四百キロ、その一つの燃料棒——この再処理工場というのは非常に大きい建物でありまして、横といいますか、長いほうが八十メートルくらいが、奥行きが三十五メートル、高さが二十メートル前後、そういう建物の片端から燃料を入れまして、順々にケーブの中で処理していく。最後にプルトニウムがおそく硝酸塩の形で出てくるわけであります。その全工程を終わるのに十五日を要するということでありまして、もちろんその十五日の間には幾つかのチャージを順々に入れて、重複してやっていけるわけであります。  こういうプラントに必要ないろいろの付属設備もたくさんつくられておりますし、そのおもな、そういう処理のための建物のほかに、廃棄物を蒸発する、そういう工場といいますか、プラントもあります。それから、その廃棄物をためておくための非常に大きいコンクリートのタンクも六個つくってあります。  大体そういうのがプルトニウムプラントの全貌であります。  日本でもいろいろプルトニウムプラント安全性という問題が最近いわれておりますが、インドでも、安全性の問題については、だいぶ気をつけているということを言っております。  安全性の問題は、結局廃棄物が出る、それをどういうふうに安全に処理し処分するかという問題と、万一処理の途中で臨界事故が起こるといけないので、そういう臨界事故を避けるための幾重かの検査といいますか、そういうことをやっていくという、この二つの問題が非常に大きい安全上の考慮であろうと思います。そういう点について、インドでもクリティカリティーの問題を避けるために、二重の監視のシステムを採用しておるというようなことを言っておりました。結局、この廃棄物処理の問題、プルトニウムを使うという問題、取り扱うという問題、そういうようなことで、相当慎重に各国やっております。  そういうことで、そういう問題が起こったときにまず問題になるのは、従業員の保健上の問題が一般には大きいわけであります。それから、外に放射能が漏れる、そして一般大衆に被害を与えるという問題は、これは原子炉よりは問題が少ないと一般に考えられております。というのは、原子炉が万一事故が起こった場合には、原子炉の中にたまっている放射能が何か気体あるいはその他のものとなって外に出ていく心配がある。それに比べれば再処理工場の中の問題は、すでに放射能を解きほどいてしまうということを初めから考えておりますので、事故としてはそう考えにくい。たとえば先ほど申しましたように、臨界を避けるための処置というようなものは二重、三重にやっている。これは日本なんかの場合は、三重にやるということでいろいろ議論が原子力委員会安全審査でディスカッスされておるようでありますが、そういったように非常に慎重にやっております。それで、まず安全性の問題を問題にするとすれば、むしろ従業員の問題は十分気をつける。しかし、一般、外に対しての問題というのは、普通の原子炉の場合ではさらに安全で、大きな問題にならないと私は考えております。  それで、臨界性の問題、それから廃棄物処理ということで、いろいろ廃棄するものは、ガス状のものは固体に吸収するとか、いろいろのことをやりまして、あとで外に出す。そういうためにものすごい高い煙突が用意されておりまして、百三十五メートルという高さの煙突をつくって、そこから室内の処理した空気を換気しておりますが、その換気した空気、あるいはそういったものを捨てるためのものを用意しております。  それから、廃棄物は、先ほどのように蒸発して小さい容積にしてためておく。そういうために直径が十八メートルという大きいタンクを、これは千五百トンくらいのキャパシティーのものを四個用意し、それから直径十メートルくらいの五百トンのキャパシティーのものを二個用意して、実際に使うものは当分の間はその半分であります。六個を用意しておりますが、実際は三基しか使う予定はない。結局あとの三基分というのは、万一の場合の予備として用意しております。  これが大体私の見てまいりましたプルトニウムプラント、並びにインド原子力開発の大きな道筋であります。  最後に、私がちょっと気のついたことを申し上げますと、今回のインドの旅行というのは、非常に短い、十日間くらいで、ごく上つらを見てきたにすぎないかもしれませんけれども、日本で問題になっております再処理工場建設問題、あるいは日本で二、三年来騒いでおります国産動力炉開発の問題、こういうような問題は、すでに日本では、いろいろ議論しては立ちどまり、うろうろして議論を繰り返しておるわけでありますが、インドはどんどんそれを進めているという点で、国の事情、状態が非常に違いますので、そのまままねをするというわけではもちろんございませんけれども、われわれも大いに参考にしなければならないことだと思います。  インドの場合は、たとえばプルトニウム工場というのは、日本て考えているキャパシティーのものよりは小さいものでありますけれども、すでに国産しています。それから、そういうものをつくるという場合に、中共で原爆実験をやった、爆発をしたことに対しての何か政治的な意図が多少感じられるのでありますが、その対抗的な一つのインドの持つ材料としてそれを利用しようとしている感じがあります。たとえば落成式のときにバーバさんもシャストリ首相も言っておりましたけれども、インドは原子爆弾は、原子力の破壊的な利用は絶対にしないということを確言しておりました。ただ、原子力を大いに進めて、それによってエネルギーを得て国民の生活水準を高めるということが最大の願いである、そういうことを強調しております。  現状はそういう状況でありますが、中国にいたしましても、インドにしましても、十分の資源を持って、そうして独力でどんどんとそういう原子力開発を進めている。たとえばインドの場合ですと、工業技術というのは、全般的に言いますとかなり低いようでありますが、これから先どんどん工業技術が進んでまいりますと、日本は、現在工業水準が高いということに安閑としているわけにはいかないように感ぜられます。特に日本資源が少なくて、エネルギー資源まで購入し、いろいろの材料を輸入し、そうして太刀打ちしていこうとすると、これから何年かたったあとには、国力を維持していくということが次第に困難になることさえ考えられないわけではないというふうに思いますので、一そう奮起しなければならないと思います。  そういうことにつきまして、日本原子力開発事情などを見ましても、日本ではすべてがわりあいに安易に、自分で手をよごす仕事はなるべく避けるとか、あるいは責任を背負い込むような仕事はなるべくやらないというふうな傾向がいろいろな場合に見られまして、これはインドなどと比較しまして、こういうことでほんとにいいのかということを特に痛感するわけであります。われわれもしっかりした原子力開発計画というものを早く確立して、その方向に向かって国全体をあげて大いに努力していかなければならないと痛感するわけであります。  一応この辺で失礼いたします。
  8. 岡良一

    岡委員長 どうもありがとうございました。  以上で説明の聴取は終わりました。     —————————————
  9. 岡良一

    岡委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。福井勇君。
  10. 福井勇

    福井委員 たいへん参考になる資料を提供していただいて、委員の一人としてお礼を申し上げます。  そのうちで一、二お尋ねしたいと思います。  インド原子力開発バーバ博士を主体としてやっておることは大体わかっておるところでありますし、お話の中にバーバも出てまいりました。この再処理工場にいたしましても、またプルトニウムの生産工場にいたしましても、インド研究員、学者等の訓練は、いままでどこに依存しておったか。あるいはバーバ自身が国内で相当教育しておったか。私たちがOECDの会議に出ても、その他ジュネーブ、あるいはアメリカにおいても、あるいはロンドンの会合においても、バーバは大体チェアマンというような格で出ております。そういう中においてここまで引き上げてきたことについて、ニュースは二、三年来もちろいとっておりますが、非常に驚異の眼をもって私たちは観測しておるわけです。  こういう資源は、大体いまおっしゃったように、前からも相当インド埋蔵量があるということもわかっておりますが、年間設備投資に百八十億、研究開発に六十億、大体二百四十億が投資されたというような点は、一般が非常に生活水準も低いし貧乏であるか——貧乏ということははいま委員は使われませんでしたけれども、相当水準が低いというような状況にありながら、どこからか援助をひもつきで得ておるかどうか。  また、インドプルトニウムの生産をやるのについて、日本と同じように原爆はつくらぬということを声明しておるのは、非常に私たちも世界平和のためにうれしいニュースでありますが、よそでは、中国がどんどんやれば自分たちのほうでもつくればつくれるということを、西独が言うように、バーバは言わなくても、インド国民は言っておるやに仄聞しておるわけでありますが、政策としては絶対インドはつくることはありますまい。私たちはそういう方針を堅持してもらいたいと思っております。  それで、お尋ねしたいのは、いま申しました二点ばかりの点について、資金面、それから学者のいままでトレーニングされた内容というのは、一番先からいえば、インドはいまでこそああいうふうな政体の形になっておりますが、どちらにしても英国に近いようでありますから、やはり英国のほうの研究に依存したのではなかろうかと想像しておりますが、それらの点について、若干の知識を私は得たいと思っておりましたから、お尋ねするわけです。
  11. 武田榮一

    武田説明員 ただいまの点は非常に重要なことだと思いますが、人の養成の点についてまずお答え申し上げます。  インドの大学などのレベルというのは、私はあまり詳しくは存じませんが、聞くところによりますと、あまり高くないそうであります。それで、そういう大学のレベルとしては低いけれども、そこを卒業した者の中で、いい人はほとんど海外へ送ってしまう。少し前、たとえばインドが独立する前というようなことですと、ほとんどイギリスへ送られたわけです。バーバさんなどもその中の一人だと思います。それから、それぞれの大学で、たとえばロンドン大学とか、どことかの大学に入る資格というものを成績のいい者だけに与えていたわけです。現在では、聞くところによりますと、アメリカのほうによけいに出ているようであります。アメリカ、それからイギリス、その他フランスとか、カナダとか、そういうところにみな送っておる。そしてあとの仕上げをしておる。そういう意味で、たとえば日本人が日本語で相当高いレベルまで教えているということは、インド人などには理解ができないことらしくて、つまり非常に高いレベルの学問というのは外国語でしか教われないものだというふうに思っておるようでありまして、その点が日本のいい点であると思います。  それから、もちろん外国に人を送るために相当な金は毎年使っておると思います。そういう点では、日本は外国に学者というか、若い研究者、技術者を派遣するというようなときにはあまり金を使ってない、そういうことは感じます。  そういう意味で、インドの弱みというのは、そういう人を自分の国で養成できないというところに一つはある。ただし、その欠陥は外国に人を送って補っている。実際外国へ送られた人というのは、相当優秀な人が多いものですから、ノーベル賞をもらった人もおりますし、あるいは相当の仕事をしておる人も、たくさんアメリカその他の国へ行ってやっております。その能力とか頭脳の程度というものは、各国にかなり高く評価されておると思います。外国で相当修練を経た人が、トロンベイ研究所などの主任研究員あるいは部長というような形でやっております。たとえばこのプルトニウムプラント設計したといわれているセスナという人などは、二回にわたって表彰を受けたりしておりますが、その人も、私はどこかはっきり知りませんが、外国へ行って勉強してきた人だと思います。  それから、金の面について申し上げますと、インド原子力にそれだけ金を使ったということは、一つの原因は、前の総理大臣のネールさんが原子力の非常なシンパであったといいますか、原子力によって国民生活を上げるということに熱心であった。その問題がシャストリさんにかわってからどうなるかというのが、一つの今後の見方であります。インドとしては、政府の金を使いたいところはたくさんあるに違いない。その中で相当の犠牲を払って原子力に金を回しているというところには、多少の無理が感ぜられないわけではない。そういう意味で、たとえばこの間参りましたアメリカ原子力委員のパルブレーさんも言っておりました。それから、同じことを、落成式のときにバーバさんがシャストリさんにいろいろお願いをしておりました。つまり演説で、原子力に前のネールさんと同じように大いに力を入れてくれということを丁寧なことばでお願いしておりましたし、そういった、いままでよりはちょっと事情がむずかしくなるかもしれないという懸念が現在ある。しかし、その原子力開発に使っている金は、政府の国家的な金である。それから、発電所の建設、あるいはそれに関連した問題というのは、政府の金とは切り離されていると私は思います。詳しい事情は存じませんが、たぶん外国からの経済的な援助で相当部分をまかなう。これは村田局長のほうが知っておられるかもしれませんが、半分という程度は外国の経済的な援助によって、低利で借りて、何年間で償還する、そういうような形式の金をなるべく利用するということにつとめていると思います。  この二つの問題でしたでしょうか。
  12. 福井勇

    福井委員 その程度でけっこうです。
  13. 岡良一

    岡委員長 石野久男君。
  14. 石野久男

    ○石野委員 いろいろとたいへんいいお話を承りましたが、お話の中で、トロンベイ研究所で再処理の問題が非常に大胆に取り上げられて、日本など、もたもたしておるとおくれてしまうぞというような意味の御意見でございました。非常に教えられるところがあったと思います。  そこで、ここでお聞きしたいのは、トロンベイ研究所というものを私は知りませんものですから、どういうような位置にありまして、大体どのくらいの敷地を持っているようなところなんだろうか。そういうような立地的な条件、周囲における都市はどういうふうに隣接しておるのだろうか、そういうようなことを概略頭の中に地図が描けるようなことがございましたら、お話しいただきたいと思います。
  15. 武田榮一

    武田説明員 黒板でもあったらわかりやすいと思うのでございますが、ボンベイというのは四百五十万人の人口をかかえた都市でありまして、昔は一つの島であったのですが、それがいま陸地につながっております。そこからトロンベイまでが十八マイルといいますから、約三十キロくらいだと思います。ボンベイのホテルからそのトロンベイまで自動車で、あまり速い速さで行かないのですが、約一時間かかります。ですから、日本でいえば、そのボンベイの町からトロンベイまで行く間に幾つかの小さい町といいますか、村みたいなものがありますが、ボンベイの町がここにありまして、ずっと入り組んで湾になっております。ずっとこう下がってきておりまして、ちょうどボンベイからトロンベイまでぐるっと回って行くわけです。直線距離にしますと、おそらくその半分くらいの距離しかない、そういうところにつくっております。トロンベイボンベイも海岸に沿った町であります。研究所の大きさは大体東海村の程度かと思います。百万坪というくらいのオーダーのところだと思います。その付近には石油のエッソの精製工場がありまして、その隣に隣接した山のがけ下というようなところであります。その山の上はボンベイの何か公園みたいにしてありまして、ガーデンにいろいろ花を植えてあります。その山に登ってみますと、トロンベイ研究所は一望のもとに見えるようなところでありまして、その先にはボンベイの市内が見えるというようなところであります。ですから、距離的にいえばあまり離れていない。たとえば、三十キロといいますと、東京から横浜というくらいの距離であります。ただ、その原子力研究所のまわりにはそう人家はないと思います。しかし、その付近に全然人がいないという場所ではもちろんございません。
  16. 石野久男

    ○石野委員 重ねてお尋ねしますが、トロンベイ原子力研究所の周囲にはあまり人はいない、小さな部落はもちろんあるであろうと思いますが、そのボンベイの主たる都市からは大体円曲した距離で三十キロの地域にある、周囲は案外未開発地帯になっておる、こういうことでございますか。
  17. 武田榮一

    武田説明員 はい。
  18. 石野久男

    ○石野委員 ありがとうございました。
  19. 岡良一

    岡委員長 それではこの際、私から若干お尋いたしたいと思うのです。  まず第一に、いろいろ参考になる御説明でございましたが、インド原子力行政の行政機構というのはどういうことになっておるのでございますか。
  20. 武田榮一

    武田説明員 私は的確にお答えするだけの勉強をしておりませんので、存じません。  ただ、トロンベイなんかアトミック・エナージー・エスタブリッシュメント・トロンベイといっておりまして、アトミック・エナージー・エスタブリッシュメントというのは研究所で、それの長がバーバさん。一方、原子力委員会というのがあって、それはボンベイの町の中に本部があります。そこのチェアマンがバーバさんで、その原子力研究所原子力委員会というのは密接につながった機関と思います。あまり詳しいことを存じませんので、それ以上……。
  21. 岡良一

    岡委員長 なお、いま御報告を承りまして、インド原子力政策の推進が、国内資源とにらみ合わせた長期の計画を立て、かつその計画目標を設定して、そのためには非常に組織的な研究開発体制を整えて、逐次原型炉から試験炉、そして実用炉へという努力を積み重ねているということ、このこととあわせて、これに対する政府の資金的その他の援助、責任というものが非常に大きいということ、同時にインド原子力開発利用が、つとめて国内の技術あるいは国内の資源によってまかなうという自主的な努力が強いということ、この三つが御報告を通じて非常に特徴的な、むしろ日本原子力政策としては教訓的な点ではないかと思われましたが、武田委員としてもそのようにお考えになりましたか。
  22. 武田榮一

    武田説明員 はい、私もそう思っております。  それに関連して、日本が今後どういうふうに原子力開発の政策、といっては語弊があるかもしれませんが、考え方をしていったらいいかということについて、二、三考えておりますので、まだ原子力委員会として皆さんにおはかりしたということではございませんが、私の個人的な考え方が多少入っておりますが、ここで御紹介してもよろしいでしょうか。
  23. 岡良一

    岡委員長 どうぞ。
  24. 武田榮一

    武田説明員 参考のためにお聞きくださる程度にとどめていただきたいと思いますが、日本原子力開発の基本的な方針を考える上に最も重要なことは、インドのように資源がないということです。日本でも、もちろん燃料公社が方々の探鉱をしておりますが、資源としては十分でない。それで大部分核燃料というものは海外からの輸入によってまかなわなければならない。これが日本原子力のこれからを考える上に避けられない一つの事情であると思います。  そういう環境の中で考えますと、核燃料資源を輸入するということをどうやって安定するかという問題が一つの重要なことであると思います。それには、核燃料の購入を一国だけに限るということは非帯に危険である。幾つかの国から核燃料が手に入るような方策を購じなければならない。たとえば濃縮ウラン原子炉にいたしますと、これは実際的にはアメリカ一国にたよることになると思うのであります。ところが、天然ウラン核燃料を使うもの、あるいはそれを少しプルトニウムその他で濃縮するという程度のことであれば、これは天然ウランとしてはカナダからも入り、アメリカからも入り、南アフリカからも入る。さらに今後の交渉によってはインドからも入るかもしれないし、インドネシアからも入るかもしれない。もっと非帯に身近なところからでも入る可能性はある。そういうことを考えますと、ただ経済性が若干いいからというようなことで、濃縮ウラン一辺倒で今後の開発を進めてしまうことには問題がありはしないかということを考えております。  もう一つの問題は、購入した核燃料は十分に有効利用していくということを考えるべきである。核燃料は、確かに石炭、石油などに比べてはエネルギーとしては安いものであるかもしれませんけれども、今後の原子力の利用がどんどん進みますと、相当外貨を必要とする。そういう外貨の節約というような意味でも、一度輸入した核燃料というものはとことんまで使い切っていくという方針が一つの非常に重要な日本の方向ではないか。  この二つの点、つまり輸入の安定化ということと、輸入したものは十分に有効に使っていくという、この二つの点が、今後のわれわれが考えていく上の重要な点ではないか。  そういうことをやるのにはどういうことが必要かということを考えてみますと、たとえば核燃料を国内で再処理するというふうなこと、これも有効利用ということの上に欠くべからざる一つの問題であります。  それから、外国からでき合いの炉を買って据えつけるだけでは、濃縮炉というようなものがほとんどきまってまいりますので、日本で何か有効利用しようとしても、なかなかしにくい。そういう点で、日本の国情に合った動力炉開発していこう、そういうことも非帯に重要な点ではないか。  そこで、少し三段論法か何かで、話がどんどん先に進んでしまうようでありますが、そういうような前提が是認された場合には、動力炉研究開発ということが今後の原子力政策の重要なポイントを握っていると考えます。その動力炉研究開発に関しましては、昨年来動力炉開発懇談会という場で、各方面の権威者を集めて議論を戦わして、結論に一歩一歩近づきつつあるわけではございますが、比較的早い機会に方針を、あまりこまかい点まできめようとすると無理がありますので、かなり大筋だけでも皆さんの意見の一致する点を見出していきたい。  その動力炉開発に関しましては、いままでその懇談会などで議論しておりますのは、在来型といいますか、プルーブンタイプといわれている炉の国産化及びその改良という問題が一つございます。それから、将来、少し先を見通したときに、高速増殖炉というようなものが考えられます。それの開発日本でどういうふうにするか。その中間的な問題とよくいわれるのですが、新型転換炉というものの開発をする。この在来型と、それから新型転換炉と、高速増殖炉、この三つのものについての考えをはっきりさせる。そういうことの整理を現在行なっておりますので、これはいずれ近いうちに何らかの結論が出ていくものと思っております。   日本がそのうちの、たとえば新型転換炉、あるいは高速増殖炉というものの研究開発を進めるという場合に、金にしまして一つの炉型ごとに三百億ないし五百億という金がおそらく十年間という期間に要ると思います。つまり十年の間に一つの炉型を開発しようとすると三百億ないし五百億かかる。もし両方やるとすると六百億ないし千億という金が十年間にかかる、そういうことになります。  そういうことで、金をかけるについて、もし日本開発していこうとする炉型に近いものが、といいますか、そういうものが、外国でもおそらく研究開発を進めておりまして、それが万一日本よりも先に実用化されて、ユーザーといいますか、電力界が外国から技術導入で入れようという問題が起こる可能性が考えられる。結局、その商業上の権利というものと、それから国家が数百億ないし千億というような金を投じて研究開発を進めたときのその研究開発——それは当然先に実用化までやろうというのがねらいでありますので、その両者の調整の問題が非帯に重要な今後の議論の対象になるのではないか。われわれとしては、その研究開発を大いにやりその結果が十年後くらいに実用的なものとなって、日本の国情に適した動力炉がそれによって開発が行なわれる、そういうことによって国内の技術を確立するということと、研究体制を強化する、そういう上にそういう方向が不可欠であると私は感じておりますが、そういうためには結局先ほど申し上げたような電力界との調整というような問題を考えますと、そういう研究開発の組織も初めから相当強力な組織をつくって、電力界の人も入れてその研究開発のプランを練り、みんなでそれを認めるというかっこうに持っていかないとうまくいかないのではないか。それと同時に、そういうプランを立てる前提は、もちろんその十年間に数百億ないし千億という程度の金は最低必要になると思いますので、そういう金を調達するという面で、国会その他の十分な御理解がなければそういうことが実現できないと思っております。  簡単でございますが……。
  25. 岡良一

  26. 前田正男

    前田(正)委員 関連してちょっとお聞きしたいと思うのです。  実は、われわれも昔、東南アジアを委員会で視察に行って、帰りまして、実はインドトリウムを利用するということは非常に困難かもしらぬけれども、タイに非常にたくさんトリウムがある。日本がアジアの原子力の協力体制を整えるということになれば、そのトリウムをどうせいまお話しのように外国から燃料を入れなければならぬのですから、日本かタイ——外国その他もあるでしょうけれども、アジアの国から手に入るトリウムをもっと利用する方面の研究開発といいますか、いまおっしゃったようなプルトニウムと一緒にして動力炉を使う、こういったような問題も研究したらどうかということで、たしか原子力委員会だったと思うのですが、タイのほうにもだれかに資源を見にいってもらったりしたことがあるのです。しかし、トリウムを使うということは非常にむずかしいところがあるという話になっておると思うのですが、この点どうでしょうか。見てこられた感じで、このトリウムを利用するのがインドは非常に進んでおるようですけれども、われわれの国のほうにおいても非常に可能性があるものかどうか。現在は原子力研究所でやっておるかどうか私はよく存じませんけれども、非常に可能性のあるものかどうか。われわれの行ったときにはそういう感じを受けて進めたのでしたが、中断していると思うのです。そういう可能性があるならば、アジアに非常にたくさんあることですから、インドネシアにも、あっちこっちにたくさんあるようですから、将来日本としても相当取り組むべき大きな問題だと思うのです。日本でそういうトリウム——それだけというわけではないですけれども、トリウムによるところの将来の原子力利用ということについての可能性をどういうふうに感じてこられたか、ちょっとお聞きしておきたい。
  27. 武田榮一

    武田説明員 いままでのところは、原子力開発というのはまだごく入り口のところでございまして、天然ウランを使う、あるいは天然ウランを濃縮して、濃縮ウランにして使うということしか考えておりませんが、さらに、炉を運転しているうちにつくられるプルトニウムの利用というのが、これから数年後に大体実用化するんじゃないかというように現在予想されている状況でございます。  そういう状況の中で、トリウムの利用ということをあまり現在大きく取り上げるということは、まだ相当先がありますので、問題かもしらぬと思うのですが、十分これは可能なことだと思います。  トリウムを使うという問題は、一つの非常な利点がございまして、普通のウラン二三五を燃やすよりは、ウラン二三三からトリウムを燃やすというほうが中性子のサイクルがうまくいくということが知られておりまして、結局増殖炉になりやすい、そういうことがいわれております。それで、現在高速増殖炉というものに、日本の、特に電力界など一辺倒になりつつあるのですが、むしろ最近では、アメリカなどではトリウムの利用、熱中性子増殖炉といっておりますが、そちらのほうと高速増殖炉の二つをそれぞれ研究開発を進めていまして、いずれ天然ウランを濃縮して軽水炉で燃やすというようなやり方では、ここ十数年、十五年とかそういう間に行き詰まりがくるということが相当はっきりしておりますので、その破局をどちらかで救おうという考えであります。いまのところ、たとえば高速増殖炉で、一九八〇年あるいは八五年といわれておりますが、そのころまでに高速炉がうまく進んでいれば、それでもある程度救うことができます。それから一方、トリウムを使うほうであれば、それよりはやさしく、増殖炉としての性能は高速増殖炉よりは劣るかもしれない、つまり増殖する能力というものは多少小さいかもしれないけれども、技術的には、いままでわれわれが使っている原子炉の技術というものはトリウムを使うのに生かせるという意味で、トリウム増殖炉のほうがかえって近いのじゃないかということさえいわれているわけです。  そういうようなことで、トリウム資源さえ十分に確保できる見通しであれば、日本としてもそういうことは十分検討する意義はあると思うのです。私たちがいま動力炉開発懇談会で新型転換炉を大いにやろうじゃないかということを言い出しているのですが、そのねらいは、やはりそういうトリウムの利用というところに結びついていくべきものだと考えております。
  28. 前田正男

    前田(正)委員 いまのお話、いろいろ参考になりました。  実は、さっきちょっと申したとおり、原子力についてアジアの協力という問題は、最近アイソトープのセンターもできると、いろんな問題があるし、そのほか学問的にも、あるいはまたいろんな点で連絡が多い。それからまた、一方、アジアにおける日本の経済協力といいますか、あるいは貿易とか、こういった面においても非常にいろんな問題がありまして、特に日本は原材料を買わない、日本との経済協力は非常にむずかしいというようないろんな問題もあるので、われわれこういう面が日本の将来として非常に必要性があるのじゃないかと思っておるわけなんです。  ただ、いまお話しのように、前途のあるものならこれはどうせやるとしましても、何年間研究しなければできないことでしょうから、研究体制に早く入っていただいて、そしてひとつ御研究願いたい。入手する可能性はとにかく相当あるように聞いておりますし、特にタイは日本に対してはトリウムを輸出してもいいというような口ぶりをしておるようにわれわれ聞いております。ですから、日本トリウムと一緒に、何とか言いますね、セリウムなんかタイから入れて使っておったわけですね。現在も輸入して使っておりまして、それでそういう可能性が非常にあると思います。それで、そういうことを少し研究していただいて、せっかく今度インドに行ってこられたのですから、原子力委員会でそういう意見を述べて、大いに伸ばしていただいて、研究にさっそく、取りかかっていただければ大いに可能性があるのじゃないかと思っておりますから、どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。
  29. 原茂

    ○原(茂)委員 ついでに一つだけちょっとお伺いしておきます。  いまお話のありました廃棄物処理タンクですね。千五百トンのものを三基当分使う、そういうお話であったと思うのですが……。
  30. 武田榮一

    武田説明員 五百トンのものを二基、それから千五百トンのものを四基用意してあります。そのうち五百トンのものを一つと、千五百トンのもの二つ、それで三基を当分使う、こういうことであります。
  31. 原茂

    ○原(茂)委員 その処理の最終的な見通しですが、タンクに入れてまして、百年ないし何百年というか、五百年というかしりませんが、入れっぱなしにしていく方針なのか。あるいは固型にして何らかの処置をしようとするのか。その点どちらなんです。
  32. 武田榮一

    武田説明員 私まだ最終処理の最後の姿はよく存じておりません。ただ、インドで言っておりますのは、いろいろ処理をしまして容積を少なくする。そういうようなことをして、そこに永久貯蔵するという考えだと思います。
  33. 原茂

    ○原(茂)委員 日本の原研の場合、いまのところ永久貯蔵といいますか、そういった方針でタンクができておるようですが……。(武田説明員「ああそうですか」と呼ぶ)御存じですか。
  34. 武田榮一

    武田説明員 別に研究しておりません。
  35. 原茂

    ○原(茂)委員 それじゃ、また後ほど聞きます。  そのインドの場合、最終処理のしかたをどうするのか、どういう方法でどういう見通しを持っておるかということが、調査できるならあとでお調べ願っておいて、また次の機会に教えていただきたいと思います。      ————◇—————
  36. 岡良一

    岡委員長 次に、去る二十二日、北海道の夕張炭鉱で爆発事故が起こり、不幸な多数の犠牲者を出しました。  たまたま資源調査会の勧告におきましても、石炭利用技術開発に関し特に炭田ガスと石炭のガス化利用技術について勧告をされておりますので、これを中心に説明を聴取することにいたします。橘資源局長
  37. 橘恭一

    ○橘政府委員 お手元には、去る三十八年七月二十四日の資源調査会の科学技術庁長官に対する勧告文が届いておると思います。それによりますと、三点の勧告をしておるわけでございますが、一応その前に、三十七年の後半からのいろいろ政府側のやりました経緯の御説明を簡単に申し上げます。  第一回の石炭鉱業調査団が三十七年の十月に答申を出す。続きまして、三十七年十一月二十九日に閣議決定で石炭対策大綱ができ、その中に幾つかの柱がありますが、石炭利用の研究、石炭技術の研究、そういうものがうたわれております。  それに対応しまして、資源調査会で先ほど申しました三十八年七月二十四日の勧告を出した。そのねらいは、石炭利用技術開発に関する勧告、中身は三点で、そこにございますように、石炭のスラリー利用技術、二番目が先ほどお話のございました炭田ガスと石炭のガス化利用、三番目は国内炭による製鉄用コークスの製造技術のうち予熱炭装入法及び成型炭全量装入法そういう三つの利用技術の開発を必要とする。  この三につきまして、この勧告以来どういうことが行なわれておるか、通産省、科学技術庁等のやられましたことを概略申し上げます。  石炭のスラリー利用技術、これはねらいとしましては、石炭をいまのような固体のままで送らないで、スラリーと申しまして、水とまぜてパイプで送る。あるいはスラリーのままで、船に積む。そういうことでスラリーの輸送方法を利用して揚げ地で発電する。そういうことでございます。通産省では、三十九年度に産炭地域振興費によって日本動力協会に委託し、検討を行なっております。いままでわかりましたところ、一般の現在の石炭火力発電に対して、このスラリー輸送技術でやれば、一キロワット・アワーの電力単価は六十銭安くなる。常にいずれの場合でも平均して一般石炭のたき方より六十銭くらい安くなるという一応の机上計算ができる。  それから、二番目の炭田ガスの回収の問題であります。これは、ねらいますところは、炭田ガスは現在爆発その他の保安の見地からして、これらのガス抜きをやっておりますが、それを積極的に回収し、主成分はメタンでありますが、山元で低品位炭をガス化しまして、それを逐次配合していろいろ市ガスその他に有効に使う。これは三十八年度に、やはり産炭地域振興費によりまして現在委託調査をやっております。これの勧告のねらいとしますところは、そういう積極的に山元で低品位炭をガス化してコンバインするということでございますが、何分にもこれの実用化、開発研究をやるにはやはり百億に近い設備費がどうしても要るというような形になりまして、現在のところは、まだとりあえず炭田ガスを使いまして鉱口発電をし、カーバイド、コークス、石炭乾溜、そういうふうな一連コンビナートを考えている。この試案が調査報告で出ている状態でございます。  第三番目に、製鉄用コークスの製造技術につきましては、先ほど予熱炭装入法というのと成型炭全量装入法と二つ申し上げましたが、その二つともほぼ成果をあげつつありまして、予熱炭のほうは北海道炭礦汽船の夕張化成工業所、そこの実際の炉でいま実験を相当やって、ついせんだって十二月ころに中間的の報告が出ました。これによれば、予熱炭を六割くらい配合することによって、一般予熱炭であって相当固い製鉄用のコークスができるという見通しがつきました。なお、その研究費といたしましては、予熱炭のほうは総額が二千七百万で、そのうち千二百五十万は石炭技術振興費の補助金でございます。  それから、成型炭全量のほうは、弱粘結を主にして、やはり製鉄用コークスをつくる方法でございます。これは総研究費一億六千百万で、そのうち補助金が六千五百万、日本鉄鋼協会に委託しまして、現在八幡製鉄所の敷地内で設備建設中でございます。実働試験はことしの秋になるかと思います。  また、それに応じまして、先ほどのスラリー輸送の点は、試験そのものは通産省の工業技術院の資源技術試験所で二千六百万円、それから運輸省の船舶技術研究所で六百万円、合計三千二百万円でやっており、これはそのもとは科学技術庁の特別技術研究助成費でございます。  なお、ついでながら、昭和四十年度でいま予算を提出しておりますのは、やはりこのスラリーの引き続き研究として四千八百五十万円になっております。  大体の概況はそのようなことでございます。     —————————————
  38. 岡良一

    岡委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。原茂君。
  39. 原茂

    ○原(茂)委員 いまのスラリーの問題、引き続きやっている四千八百万円の研究というのは、どこでやっているのです。
  40. 橘恭一

    ○橘政府委員 今年の研究は、船体の傾斜した場合の状況を見る設備でございます。引き続きやるほうはスラリーと、今度扱う船関係の荷役関係のほうの研究が進展しております。
  41. 原茂

    ○原(茂)委員 進展しているのですが、どこで実際はやっているのですか。
  42. 橘恭一

    ○橘政府委員 四十年度でございますが、まだ予算が通りました上のことでございます。
  43. 原茂

    ○原(茂)委員 先ほどキロワットアワー六十銭ですか、安くなるようなことを言っていましたね。その六十銭安くなるという計算の基礎は、もう大体確定的にそう思っていいのですか。ある特定の場所、一、二カ所でやったときにたまたま安かったというのでしょうか。それとも、どこでやっても現在のものと比較して安くなるのだ、火力としては安くなる、こういうふうに思っていいのか。
  44. 橘恭一

    ○橘政府委員 いまの試算をやりましたのは、石狩炭田から苫小牧で積んで、これを京浜揚げにして揚げ地発電をやる、そういう前提を全部設定したあれでございます。
  45. 原茂

    ○原(茂)委員 そういう前提が一般的なものかどうか知りませんがね、ということは、他の火力発電と比較しても六十銭は安くなるのだという計算だと思っていいのか。しろうとのあれですが…。
  46. 橘恭一

    ○橘政府委員 いまの前提のもとに、現行の石炭火力をやる場合とスラリー発電をやる場合との比較でございます。
  47. 原茂

    ○原(茂)委員 はい。ありがとうございました。
  48. 岡良一

    岡委員長 なお、資源調査会からここ五年間にわたって出された勧告、それが行政上に実施されているかいなかという点についての資料、あるいはスラリー法等についての外国における実施側等を、委員会に資料として御提出を願います。  本日はこの程度にとどめ、次会は来たる三月三日水曜日、午後一時理事会、一時三十分より委員会を開くことにし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時五分散会