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1964-12-17 第47回国会 参議院 石炭対策特別委員会、商工委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年十二月十七日(木曜日)    午後一時四十八分開会     —————————————   委員氏名    石炭対策特別委員     委員長         剱木 亨弘君     理 事         大竹平八郎君     理 事         岸田 幸雄君     理 事         大矢  正君     理 事         小宮市太郎君     理 事         鬼木 勝利君                 江藤  智君                 亀井  光君                 川上 為治君                 郡  祐一君                 高野 一夫君                 徳永 正利君                 野田 俊作君                 二木 謙吾君                 堀  末治君                 松平 勇雄君                 山下 春江君                 吉武 恵市君                 阿具根 登君                 阿部 竹松君                 大河原一次君                 小柳  勇君                 豊瀬 禎一君                 和泉  覚君                 田畑 金光君    商工委員     委員長         梶原 茂嘉君     理 事         赤間 文三君     理 事         上原 正吉君     理 事         近藤 信一君     理 事         向井 長年君                 植垣弥一郎君                 大谷藤之助君                 川上 為治君                 岸田 幸雄君                 剱木 亨弘君                 小林 英三君                 豊田 雅孝君                 前田 久吉君                 阿部 竹松君                 大矢  正君                 椿  繁夫君                 中田 吉雄君                 藤田  進君                 鈴木 一弘君                 奧 むめお君     —————————————   出席者は左のとおり。    石炭対策特別委員     委員長         剱木 亨弘君     理 事                 大竹平八郎君                 岸田 幸雄君                 小宮市太郎君                 鬼木 勝利君     委 員                 江藤  智君                 亀井  光君                 野田 俊作君                 二木 謙吾君                 松平 勇雄君                 大河原一次君                 小柳  勇君    商工委員     委員長         梶原 茂嘉君     理 事                 上原 正吉君                 近藤 信一君                 向井 長年君     委 員                 植垣弥一郎君                 川上 為治君                 前田 久吉君                 阿部 竹松君                 椿  繁夫君                 藤田  進君    国務大臣        通商産業大臣   櫻内 義雄君    政府委員        通商産業政務次        官        村上 春藏君        通商産業省石炭        局長       井上  亮君    事務局側        常任委員会専門        員        小田橋貞壽君    参考人        電気事業連合会        副会長      石原 武夫君        日本鉄鋼連盟会        長        永野 重雄君        日本瓦斯協会理        事、原料対策委        員長       安西  浩君        日本石炭協会副        会長       佐久  洋君        日本石炭鉱業連        合会会長     植田  勲君        日本石炭鉱業連        合会会長    庄野崎道雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○当面の石炭対策樹立に関する調査  (石炭鉱業調査団答申に関する件)     —————————————   〔石炭対策特別委員長剱木亨弘委員長席に   着く〕
  2. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) ただいまから石炭対策特別委員会商工委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、私が連合審査会委員長の職をつとめます。  それでは、当面の石炭対策樹立に関する調査の一環として、石炭鉱業調査団答申に関する件を議題といたします。  本日は、本件につきまして参考人方々に御出席をいただいて御意見を拝聴いたしたいと存じます。  参考人方々一言あいさつを申し上げます。  年末たいへん押し詰まりまして御多忙の中をおいでをいただいたわけでございますが、にもかかわらず時間をおさきいただきまして、まことにありがとうございました。  御承知のように昨日、石炭調査団答申政府に出されたわけでございますが、その答申につきましては、時間的関係もございましてまだ御十分なる御検討もないかもしれませんし、皆さま方業界での御意見のおまとめもできない場合も想像されますわけでございますが、本院といたしましては、会期が明日に迫っておりますし、急いで調査を進める必要がございましたので御無理を申したわけでございます。一応本日は、この報告書に対します、皆さま方業界立場といたしまして御決定になった御意見ではないかもしれませんが、皆さま方の御意見を承りたいと存じます。大体お一人まず十分くらいの程度で御意見を承りまして、それから任意、委員各位から御質疑を申し上げまして、三時にはぜひ終わるようにいたしたいと存じますので、何とぞ御協力をお願いいたします。  議事の進め方につきましては、ただいま申し上げましたように、まず石原参考人永野参考人安西参考人順序で、お一人十分程度意見を拝聴した後、質疑を行ないます。それが済みましてから、佐久参考人植田参考人順序で、お一人十分程度で御意見を拝聴した後、質疑を行なわしていただきます。  まず、石原参考人から御意見伺いだと存じます。
  3. 石原武夫

    参考人石原武夫君) 私は御紹介にあずかりました電気事業連合会石原でございます。本日は、私ども会長の木川田が参らなければならぬところでございますが、ちょっとかぜを引いてのどを痛めておりますので、私、代理に参りまして恐縮に存じておりますが、よろしくお願いいたします。  ただいま委員長お話にもございましたように、昨日の調査団報告を拝見いたしまして、内部でも十分検討する余地がございませんでしたので、これからお話し申し上げる点につきまして、一部私見が入るかとも思いますが、その点はひとつお許しをいただきたいと存じます。  石炭問題につきましては、電力業界といたしましては、かねて、同じエネルギー産業でもありますし、基礎的な産業でもあるということで、できるだけ協調していくべきだという考えを持っております。すでに先生方承知のように、三十六年の六月に、石炭長期取引契約を、これは民間の話し合いでいたしたわけでございます。将来二千万トンまで順にふやして取っていくという案でございますが、そういう長期取引話し合いを進めておりました。その後、三十七年になりまして、御承知のように、石炭調査団ができて、報告が出まして、さらにこの数量を増加するという問題が起こりました。その際は、これも御承知のように、石炭価格を千二百円順次引き下げてまいりまして、そのベースで横ばいで、四十二年あるいはその将来にわたって、順次、石炭電力側の引き取り数量を増加するようにという案でございまして、これは政府からもその案に協力するようにというお話がございまして、三十八年以降その線に沿って御協力を申し上げているような次第であります。ただ実情は、すでに御承知のように、石炭生産予定より落ちておりますので、われわれが三十八年度に、当初にお約束をいたしました二千五十万トンという数字は約二百万トンくらい増加するような結果になりました。また、本年度も二千五十万トンをお引き取りするという当初のお約束ではございますが、これも出炭状況が順調でございませんので、これは見通しになりますが、ほぼ昨年くらいの引き取り数量に終わろうかというふうに思われます。  それでその後、前回の石炭調査団の御報告以後、石炭事情はいろいろな事情の変化もありまして、非常に困難な状況に立ち至っていることは、今回の調査団で十分御審議、御調査願ったこの報告書にも出ているように、非常に困難な状況であることは、われわれもこの調査団の御報告を通じてよくわかったわけでございます。  それで、ただ、今回の調査団報告を拝見いたしますと、第一の問題は、最大の問題は、石炭鉱業収支の不安定と申しますか、経理的に非常に無理が生じておるということが最大の問題であるように指摘されておるところでございますが、それについての対策といたしまして、需要者価格を引き上げるというのが主たる結論のように思います。それにつきましてわれわれとして意見があることを申し述べさせていただきたいと思います。  そもそもエネルギー政策につきましては、かねて総合エネルギー部会答申というのがございまして、これもすでに先生承知のように、ここに二つ原則が掲げられておるわけであります。一つ低廉原則、それから第二番目には安定供給原則、この二つ原則エネルギー政策上根幹をなすものだというふうに指摘されております。そのうちで、やはりウエートのありますのは、第一の低廉原則ということが書いてございます。これは日本調査団報告以外に、西独なりフランスなり、そういうエネルギー調査報告を見ましても、やはり皆第一義に低廉原則ということが書いてございます。それで、今回の案は、石炭鉱業の危機を救いますために、需要者負担において解決するのだというような方向のように承知いたしますが、私は、エネルギー政策といたしましても、先ほど申しましたように、価格引き上げによるのが適当ではないのじゃないかという感じを持っております。今回の調査団報告を見ましても、御指摘になっておりますが、日本といたしまして、石炭産業維持してまいりますことの必要性はわれわれも全く同感でございます。また、国際収支観点等から、大規模の石炭生産維持すべきだという結論についても同意でございますが、さような国家的な見地から石炭産業維持されるについては、相当国が力を入れて、そうして石炭産業維持を行なわれるべきではないかというふうに考えるわけでございます。ところが、今回の案を拝見いたしますと、石炭価格を引き上げるのが中心でございまして、そこに案に出ておりますように、一般炭については三百円、原料炭については二百円という案が出ておりますが、これを金額に直しますと、一般炭では四千万トン余あると思いますが、それが三百円でございますので百二十億になります。原料炭は二百円ということになっておりますので、これが二十億でございますと、合計で百四十億くらいが炭価値上げによって出てくる数字になろうと思います。政府のほうの御施策によります分については、ちょっと私まだ研究不十分で、どの程度数字になるかは承知しておりませんが、一番大きな柱になっております利子補給の額は、三%の利子補給というのは、これは私の推算でございますが、たぶん二十億くらいの数字になろうと思います。それから石炭経理を改善するために要る資金は、大体二百億くらいというふうに言われているようでございますので、かりに二百億といたしましても、業者負担の分が七〇%に相なるわけでございまして、われわれの立場から申しますと、この調査団の御報告については、あまりに需要者負担をかけ過ぎているという感がするわけでございます。  次に、電力業界にどの程度影響があるかということが問題でございまして、われわれの業界といたしましては、最大関心事でございますが、先ほど申しましたように、電力用炭一般炭でございますので、これは三百円が引き上げられるということになっておりますが、いま大体二千万トン前後の数字が現在の一つベースになっておりますので、かりに二千万トンにいたしましても、年間六十億の負担増ということになるわけでございます。さらに、いま御承知のように、電発石炭火力をつくっておりますが、これも全部九電力でその発電コストで買うということになりますので、まあその分も負担増とはなるわけでございますが、とにかく六十数億の負担増となることに相なろうと思います。ところが、電力会社のいまの経理状況は、ずっと一割配当をいたしておりますが、全体の利益のうち配当に充てている分はほぼ九〇%ぐらいのものでございます。配当性向が約八七、八から九〇ぐらいでございまして、したがって、一割の配当をいたすために、その必要な法定準備金を除きますと、利益から配当金法定準備金を除いた金額というのは、年に三十億くらいが現在の決算状況でございます。また、現在電力会社は過去の非常な償却不足を持っておりまして、というのは、税法上、五年間過去の償却不足は、次の、将来の年度において償却が認められておりますが、償却不足は九電力合わせますと千億くらいあるわけでございます。これもまだ会社によっては事情は違いますが、全体としましては、償却がそこまで、税法の認める範囲まで償却していないという状況もございますので、われわれ電力業者といたしましては、極力事業の性質上長期の料金の安定をはからなければならぬということで努力をいたしておるわけでございまするが、かりに六十億というような大きな数字でございますので、とうていこれは経営上やっていけないというような問題になりまして、これは電力業界として負担の限界をはるかにこえる問題であろうというふうに考えております。それからまた、九電力である程度格差がございますが、特に産地におきます会社石炭ばかりにたよっておるわけでございまして、これが上がりますると電力用の燃料全部が上がるということで、これまた非常に大きな影響を受けることになりますので、それらについては、とうていこのままの案では受け入れられないというような状況にございます。ただし、そのことにつきましては、調査団の御報告もその点は十分御承知のことでございまして、報告の中にも簡単に、需要業界に対する負担増についてはそれを負担増対策を講ずべきであるというふうな趣旨のことがございますし、それから産炭地会社については特別の配慮を要するという趣旨の明文が書いてございます。しかし、これは昨日もちょっと調査団にお伺いをいたしましたが、具体的な案は何もおありになりませんので、どういうことで負担増を補てんをするのだという具体案はお持ちでないようでございました。それはあげて政府のほうで今後考えろという御趣旨のように拝聴いたしました。それで、これが負担増が、実質的に負担増対策は、この値上げを補てんされるような案が考えられますれば、これはまた話は別でございますが、現在のところは、あるいはまた従来の実績に徴しますと、この負担増対策というのは、なかなか実施が十分まいりません面がございますので、われわれとしては、この具体的な案を拝見をしないと、とうていこの案をのむことはできないというような感じがいたしておるわけであります。  それからなお一つ、われわれのほうの電力関係といたしましては、この調査団報告には共販組織ということが書いてございます。これは御承知のように、現在すでに電力用炭につきましては、電力用炭代金精算株式会社というのがございまして、そこを全部一元的に通して支払いをいたしておりまして、すでに炭価維持でありますとか、その他の機能を果たし得るような状況になっております。私の感じでは、電力用炭以外の一般炭と比較いたしますと、はるかに合理的な価格安定と、その他の合理化の面に役立っておるかと思いますので、石炭だけについてこういう組織をお考えになる必要は毛頭ないのではないかと思います。それで、また、こういうものをつくりますと、責任体制が不明確になりまして、各石炭山電力側契約をいたしましても、すべて代金なり何なりは共販会社へ通すのだということになりまして、実際の荷物の引き渡しその他について、非常に責任体制が不明確になりまして、われわれとしては非常に望ましくない結果に相なろうかと思います。先ほど申しましたように、現在の精算会社を通じて、電力用炭については十分さようなお考えのようなことを今後運用上やられると思いますので、これはぜひ取りやめていただきたいということは、調査団にも申し上げてございます。  以上があれでございますが、なおもう一つ、先ほど申し上げましたように、私のほうは長期取引契約をやっておりますので、実は第一回の調査団のときに、四十二年で二千五百五十万トンというのを電力側で引き取るように約束しておるのだが、今回の調査団の御報告を見ましても、どうも五千五百万トンという目標がございまするが、必ずしも現実の出炭がそれに達しないじゃないかというふうな前提で書いておられるところもございます。具体的に申しますると、五千五百万トンベースのときには、電発で現在すでに三基を着工いたしておりまして、四十年に二基着工する予定になっておりますが、それが着工いたしませんと、電力側で四十二年に二千五百五十万トンの消化ができないということになるわけであります。その二基の着工分につきまして、しばらく事態の推移を見て決定をするという御趣旨の規定もございまして、どうもわれわれとしましては、出炭数量についてどの程度出炭があるか非常に不明確でございまして、不安を持っておるわけでございますので、従来の長期取引については、数量については実は再検討して、われわれとしましては、供給責任の持てる数量についてお約束するようにさしていただきたい、こういう希望を持っております。  以上、非常にざっぱくでございまするが、一応調査団報告を拝見いたしました電力側感じを申し上げた次第でございます。
  4. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) ありがとうございました。  次に、永野参考人からお願いいたします。
  5. 永野重雄

    参考人永野重雄君) 鉄鋼連盟会長をいたしております永野でございます。今日御検討になります石炭の問題につきまして、われわれ石炭の大きな消費者の一人としまして、率直に意見を聞いていただく機会をいただきましてまことにありがとうございます。  鉄鋼業は、先ほど石原さんのおっしゃいました電力と、消費者としましては同じ立場でございますけれども、しかし、鉄鋼業国際商品であるという特殊な事情がございますので、先ほどお話のありましたような今回の答申案に盛られてございます石炭事情並びにこれの実態は、何か検討せなければならぬ問題があるということに対しては同じ感じを持つのでございまするけれども、時間の節約上、重複する点については繰り返しませんが、先ほど申しましたように、日本鉄鋼業が今日、去年の例をとりましても、三十八年度でございますが、輸出の総額五十六億四千万に対しまして鉄鋼が約十億余輸出をしておるような、一八%見当の輸出産業にもなっておるような次第でございます。この点を御勘案いただきたいと思うのでありまして、こういう観点から申し上げますと、どうして輸出を増進せしむるかということが今日大きな日本経済施策一つになっておるかのように拝察をいたしておりますが、そういう観点からしますと、各国が、日本のみならず各国経済事情から、輸出産業に対してはみな国の力でもって助成をしてでも輸出をしたいという立場になっており、そこで、それがお互いの封じ合いになってもということで、ガットはこれを禁じております。私ども一昨年、足立日商会頭のお伴をしましてイギリスへ参ったのでありますが、その当時、日本輸出の直接な国の奨励金輸出助成金、これは先年あったようだけれども、今日はやめておるようだ、しかし、輸出面として輸出収益に対する免税措置、これもとるべきものをとらないのだから間接的に輸出の国家的な助成になるのだ、これもガットの精神からいうと反するのだ、これもやめてもらいたいということを向こうでいっておりました。現に、今年の四月一日から、輸出免税措置もそんなような観点からおとりやめになったような次第でございます。しかし、相変わらず輸出を何とかしてふやさなければならぬということは、国の大きな柱でありますし、われわれ国とともにあるつもりで働いております産業人としても、努力はいたしております。先ほど申しましたような数字も、その努力の一部表現だと、御推察をいただきたいのでございます。  そういう観点から考えますと、現に、もう一つ他のことを申し上げようと思いますが、イギリスも最近非常に国内為替事情から、これをよくするというためにいろいろな手を講じております。現に最近労働党内閣になりましてから、輸入に対する特別職課金をとる、また最近輸出産業に対しては国内のそれに使う原材料の間接税を免除するというような、いろいろな意味でガット禁止令にすれすれ、あるいはまともに引っかかっておるとも考えられるかもしれませんが、そんなような手を打っておるのであります。われわれは去年輸出助成措置一つといたしまして、これはことしの四月から禁止されましたか、三十八年の例を申し上げてみますと、総免税額輸出控除による免税額は全部で二百三十五億円でございます。そのうち、鉄鋼関係のこれに均てんする数字は、多少推計も入りますけれども二十八億円になっておるのでございます。これだけが輸出助成という結果になっておるのでございまするが、これは、ただいまのようにガットから禁止されたのでございますが、イギリスはとるべき間接税を免除して輸出にバックアップしているという観点から、われわれからいいますと、今回の、そうでなくても他の産業を、それを中心にして助成措置を国がとられるために受ける影響というものは、直接ガットには触れないような形になっております。ただいま申しましたように、輸出産業に対する奨励方策という観点から、国としては、先ほど申しましたような鉄については二十八億円の免税措置があったのですけれども、これだけの数字については、予算をお立てになとるきに、とるべきものをとらない。裏からいいますと、出される場合と同じようになるかと思いますけれども、そこまで国としては負担を持ってでも輸出をしたいというお考えであったのじゃないかと思うのであります。それが、今回のようにそれがなくなった上に、また、石炭産業恒久対策と申しますか、対策のためにそれを他産業の、まあ私ども立場でいいますと、鉄鋼産業がその一部を負担するということになりますと、ただいまのように、すでに支援を打ち切られて、しかもこれは日本としてはやりたいけれどもガット関係で、国際関係で打ち切られた上に、石炭産業をお手伝いするためにまた負担するためにまた負担が加わるというようなことになるのでありまして、この点はぜひひとつ御勘案をいただきたいと思うのであります。今回の措置によりまして鉄鋼は、先ほどお話がございましたように二百円のアップということになりました。これを使って生産しております。トン当たりに換算しますと、銑鉄で六十六円、それをもとにします鋼材で七十二円の値上がりになるわけでありまして、これだけ国際競争力に影響力を与える。そしてまたこれは鉄だけの問題でなくて、御承知のように、最近は重化学工業が相当大きな輸出の部分を占めております。船、これは世界第一の地位になっております。造船あるいは機械、車両、プラント等を通じまして、鉄の受け持つ部分が相当広いかと思います。このすべてに関係を持つ数字でございまして、基幹産業である鉄鋼が力が弱くなる、あるいは競争力が弱くなるということは、相当大事な問題かと考えます。まあそんなような点を考慮いたしまして、今回の石炭対策の一環として取り上げられました需要者に転嫁する、ことに鉄鋼に転稼するということについては、われわれ鉄鋼業を営んでおります立場からいえば、何かほかに方法がないものであろうかという感じがいたすのであります。こんなことはわれわれ消費者、買い手の立場からいいますと、余分なことを申し上げることになるかもしれませんけれども、これは御参考までに、われわれのかってな見方を申し上げてみますと、先年重油の関税が上がります場合、重油は、電力はもちろんですけれども鉄鋼にも主要原料の一つでございまして、相当影響があるというので、二度にわたりましたけれども、今日一二%——その当時は六%のものを一〇%にされた、次いでまた二%上がったのでございますけれども、その場合に、そういう産業影響を与えてはどうかという観点から、電力なり鉄鋼等につきまして、戻り税——その関税を戻していただくという措置がとられておるのであります。これはまだ残りが——よけいなことを申し上げるようですけれども、その方策をそのまま演繹していただきまして、広げて解釈していただきますと、まだ六%の措置し得る余地は残っておるように存じます。  それからまた、今回の石炭業の再建のためにとられました措置の中に、国家機関、国家金融機関——開銀とか中小企業公庫とかを通じまして出ている資金が大体六分五厘と伺っております。それを三分下げて三分五厘にするという御案のように伺っておりますが、そうだとすれば、これも国の負担におきまして、国のお立場でもって融通し得る金額がまだ三分五厘残っておるとも解釈できるのでありまして、国の立場から消費産業負担をかけない——ただいま申し上げましたいろいろな影響が波及いたしますので、負担をかけないような方法としては、まだそこいらに残る措置の余裕があるのじゃないかと、かってに拝察をいたすのでございますが、そういう点等を考慮いたしまして、消費産業であるわれわれに負担をかけて、ただいま申しましたような国際競争力を弱化し、あるいは間接に鉄鋼を使う輸出産業影響を与えることなく、ほかの方法で御検討いただければ、われわれの立場といたしましては、今後の国際競争力に立ち向かう場合にだいぶやりやすい、あるいは困難を多少とも克服できるというように考えております。この点を申し上げる次第でございます。
  6. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) ありがとうございました。  次に、安西参考人から伺いたいと思います。
  7. 安西浩

    参考人安西浩君) 私は、東京ガスの副社長と北海道ガスの社長を兼務いたしております。なお、ガス事業の原料対策委員長といたしまして、ガス事業を代表して、石炭鉱業審議会その他に出ております関係から、本日は出頭して陳述することに相なりました。  ただいま、石原参考人永野参考人から御陳述になりましたが、石炭鉱業審議会の総論とも申すべき問題についての、石原氏の御批判は全く同感でありますので、私はその点を省きたいと思います。なお、永野さんから最後に申されました対策につきましても、その点は同感でございますので、その点は時間の関係上省略いたしまして、ガス事業界に及ぼす影響その他につきまして、簡単に申し上げたいと思います。  このたびの石炭調査団報告につきましては、実は、私は石炭鉱業審議会の委員でございます関係もございまして、去る十一月二十四日に石炭局長と、十一月三十日に鉄鋼連盟の首脳部と一緒に石炭調査団団長以下と、さらに十二月十一日には有沢団長、稻葉調査員、石炭局長の御訪問を受けまして、私はこの問題につきましていろいろ会談をいたしました。なお、昨日の石炭鉱業審議会におきましても、これらの会談につきまして、私は終始ガス事業の現状を説明いたしまして、価格の引き上げはできませんということを説明してまいったのでございます。  その理由といたしては、第一は、原料炭という私ども鉄鋼で使っている石炭は、従来ともこれは値段が高いのでありまして、一般炭をカバーしている分があったのでございます。そういう関係から、今日現在の価格につきましても、かりに豪州炭を輸入いたしますと、京浜地区において千円の値差があるのでございます。千円ないし千五百円の価格差がございます。なお、国際競争力の面で考えますと、アメリカ国内における原料炭と比較しますと、千円ないし千五百円の値差があるのでございます。そういう理由が第一。  次に、皆さま諸先生方の御承知のように、最近はLPGというエネルギー日本に盛んに入ってまいりました。これは申し上げるまでもなく、リキッド・ペトローリアム・ガスという石油液化ガスでございます。この石油液化ガスの攻勢がはなはだしいのでございまして、今日現在、私ども都市ガス事業者は、需用家が六百四十万件に対しまして、LPGの需用家が七百八十万件に相なっておるのでございます。さらに、その供給量から申しますと、LPG二百万トンといわれておりますそれをガスに換算いたしますと、五千カロリーで五十億立方メートルになるのでございます。都市ガスはこれに対して四十六億立方、こういうように、LPGの攻勢を受けておるのが現状でございます。  こういうおもに二つの点から、私は反対し続けておったのでございますが、この二つの問題につきまして、私が関係いたしております東京ガス、これは全国二百社くらいある会社の約五〇%を占めておるものでございますが、大手としては東京ガスの例、それから五番目に位する北海道ガス会社の社長をいたしております関係から、この二つ会社の例をとって、これから少し具体的にお話を申し上げたいと存じます。  先生方も御承知のように、北海道は日本一の産炭地でございます。私の経営いたしております北海道ガスは、北海道の中で、札幌、小樽、函館、この三都市にガスを供給しているのでございますが、この産炭地である北海道と京浜地区と比べますと、石炭価格において千円の値差がある。北海道でも中近東から持ってきた油、これを分解しましてできたナフサ、これは御承知のように粗製ガソリンでございます。その粗製ガソリンを分解してガソリンを発生したほうが経済性があるのでございます。私ども日本石炭政策に協力しておるものでございますけれども、LPGの攻勢に会って経営ができなくなったから、こういうことをあえてしておるのでございますが、札幌工場におきましては一〇〇%といっていいくらい、九四%くらいナフサに転換いたしました。あとの六%は天然ガスでございます。また函館工場におきましては全面的にナフサに切りかえました。それから小樽工場におきましては、これはまだ石炭を九〇%、それからプロパンを一〇%使っておりまして、これを全体として見ますと、この北海道ガスでは石炭が二割、その他のエネルギーが八〇%というふうに、産炭地ですらこういうふうにエネルギーの転換を行なわなければならないような状況に相なっておるのでございます。またこの北海道全体を見ますと、こまかいのでございますが、公営が三つ、民営が九つございますが、このうち旭川、御承知のあの飛行場のある千歳、これらも来年七月、八月にナフサあるいはブタンに切りかえますが、北海道で石炭を使うのは小樽の工場だけ、これも一、二年のうちには転換されるだろうと思うのでございます。中小会社はLPGの攻勢に会いまして、エネルギーの転換を余儀なくしておるという一例でございます。また一例を大手の東京ガスにとって考えてみますると、東京ガスが年間石炭のみを使うといたしますと四百八十八万トン要るのでございます。しかし、これも原料の転換がやむを得ませんで、原油、天然ガス、オフガス、オフガスと申しますのは、石油精製会社から出るガスでございますが、このオフガス、LPGに原料を転換いたしました分が六四%、石炭三六%、こういうようになっておるのでございます。現に東京ガスはこの三六%が百三十四万トンに当たっておるのでございます。どうしてこのような転換をするかということは、いま申し上げましたが、これは石油、エネルギーたるLPGが従来国内生産されておりましたが、最近は専用船を作ってどんどんこれが輸入されるようになったのでございます。こういう点につきましても、政府が総合的なエネルギー対策考えるならば、こんなにLPGを専用船で輸入しなくともいいということを一昨年来私は強調いたしておるのでございますが、最近は、計画造船という非常に金利の安い船を使ってLPGをどんどん輸入しておる。ブリジストン三十万トン、ゼネラル五万トン、日石が五万トン、それから出光が二十万トン、こういう状況でございますので、私どもも船を一ぱい作りまして東京ガスが六万トン、合わせて六十六万トン、ガスに直しますと十六億五千万立方メーターのLPGが輸入されておるのであります。本年度はこの計画造船に十社も希望した。そして出光一社にしぼられた。来年も再来年もこの計画造船が行なわれるのじゃないかと思っております。こういう関係から、私どもは非常に経営が困難になってまいったのでございまして、ただいま全国で百三十五社の民営の会社がございますが、この民営の会社で赤字を出しておるのが三十社、配当のできないのが四十社、七十社がふらふらふらふらしておるのが現状でございます。したがいまして、今回の調査団答申のように、二百円アップということをされますと、私は一生懸命に、石炭を皆さん幾らかでもお使いになったほうがいいですよ、ということを常に言っておるのでございますが、背に腹はかえられません。株式会社でございますから、どんどん石炭から転換いたしていきまして、数年ならずして石炭を使うものがなくなるだろう。東京ガスはそんなことはいたしませんが、そういうふうな原料の転換に拍車をかけるだろうということをおそれておるものでございます。そういう関係から、今回の価格値上げにつきましてはうのみにするわけにはまいりません。  以上簡単でございますが、御陳述申し上げました。
  8. 永野重雄

    参考人永野重雄君) ちょっと一つだけ。
  9. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) どうぞ。
  10. 永野重雄

    参考人永野重雄君) 先ほどちょっと落としたのでございますが、今度の石炭対策に関連をいたしまして、御承知のように石炭はまだ自由化されておりませんので、為替割り当てがございません。したがいまして、日本の総生産量の計画がそのとおり出まして、また、時期的にも適切な時期に出ますれば、量だけの関係からいえば足りるような場合でも、五千五百万トンの計画数量も、最近ひそかに漏れ承りますと、これが五千二百万トンとか、あるいは労働者その他の事情等も手伝いまして、もっと減るかもしれないというような場合に、計画を前提にしました輸入石炭の割り当てがあった場合に、予定どおりでなかった場合には、臨機に割り当てをふやしていただくという問題を考えざるを得ない次第でございます。そういう場合に、数字が明らかに足りないというような実態があらわれてしまった。言いかえますと、急に輸入炭をふやさなければならんような場合には、外国も、積み出す場合の埠頭の貯炭とか、あるいは船を手当てしなければならない。急に船を探せばどうしても足元を見られて高い運賃を取られるというようなこともございますので、計画は目標を立てて高めにお立てになる。これは政策上場合によっては必要かもしれませんけれども、われわれ現業をやっておりますものの立場からいたしますと、それが狂った場合に、またはトータルは、総計は同じでありましても、ある時期にそごをきたしたような場合に、生産を減したりストップすることはできませんので、対策を講ずる。その場合に非常に不利な環境に追い込まれますので、そういうようなところにつきましては、相当幅広く手配ができるような対策を、今度の対策の中にも御考慮いただきたいと思います。  それからもう一つ、先ほども落としたんですが、今日の、安西さんのガスの関係鉄鋼関係は、これは同じ立場にございますけれども、本来の石炭の賦存状態につきましては、一般炭もコークス原料炭も、それから運不運といいますか、天然の数量、したがって、コストは、そのメリットほどには違わない場合もあり得るわけで、だからコストの計算から積み上げていく場合には、現状では今日約千円見当の開きがございますけれども、それと、石炭産業に寄与する意味で、幾らかでもお手伝いする意味で、多少コストの割合から言いますと割り高に負担を受けておったようなかっこうにもなるのでございますけれども、こういう点もあわせ考えていただきまして、そういう事情を御勘案いただきたい。落としましたのでつけ加えて御説明申し上げます。
  11. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) それでは質疑に移りたいと思います。  御質疑のおありの方は、順次御発言願います。
  12. 藤田進

    藤田進君 いずれもたいへんお忙しい方々でございますから、多くの時間をおさきいただくことは無理かと思いますので、主要な点についてお伺いいたしたいと思います。  御承知のように石炭産業そのものも、これまたかなり広範にわが国経済、ことに産炭地周辺の経済に影響を与え、労使間を通じて重大な問題になっているところであります。したがって、先般の通常国会におきましても、両院は本会議議決として、石炭産業に対する対策を講ずるために、特別にひとつ、この際は調査団も派遣するなりいたしまして、当面する対策答申するようにという運びになったと思うのであります。ただ私ども答申をせられ、これを拝見いたしますと、いかにも当該石炭産業のみにその考慮が集中いたしまして、これが影響する基幹産業としての性格というものについて、ややどうも近視眼的ではなかろうか。重油消費については、御承知のようにさらに期間延長をして、これを消費規制をいたしておりますという状態の中で、永野さんおっしゃるように、貿易の価格市場競争の関係、片や電気、ガスのような、料金そのものも許認可事項として制約をしている純然たる自由主義経済、自由主義価格ということでない状態において、トン当たり三百ないし二百円というものをいきなり出してきた場合に、どうだろうかという感を深くするわけであります。ところが、対症療法としてこれは当面急を要することなので、この際、産業構造をどうするとか、一体、基幹産業のあり方はどうだという議論は出るとしても、当面の間に合いませんので、お伺いをいたすわけですが、これがどの程度社内の、個々のガス、鉄鋼、電気と、必ずしも独占単一法人ではございませんので、むずかしいでしょうが、事業者団体とされて、いまの段階では少し無理かと思いますけれども、ある程度の、企業の中における電力鉄鋼あるいはガス等、幾分かは消化できるものだろうか、できないものだろうか、概括的になりますけれども、お伺いをしてみたいと思います。  電力は最近、中部電力の料金改定という問題が出ていて、聞くところによると、このままでいくと、下期約三十億の欠損になるとかいったようなことが言われ、石原さんの御説明では、さらに石炭炭価値上げによって百二十億、厚料炭の場合が二十億といったようなことを指摘されたように思います。ところが、北海道のようにかなり石炭依存の地域において、一体、経費その他の事情からアンバランスが各地域ともあろうけれども、まず、石炭中心の火力地帯においてどういう影響があるのだろうか、できれば概括的でもいいからお伺いをしたい。  それから鉄鋼の場合は、全体としていま産業自体の問題があるように思いますわけですが、これも大ざっぱでけっこうでございますが、企業的におけるこれが吸収、消化についての方途なり目安があれば、ガスとともにお伺いをいたしたいと思います。とりあえず、その辺で一応の御答弁を賜わりたい。
  13. 永野重雄

    参考人永野重雄君) ほかの電気あるいはガスのお話もございましょうが、ただいまの御質問の、鉄だけの問題を申し上げてみますと、結局、負担力というものは、製品の相場が非常に動くのだから、五十歩、百歩ではないかということになってまいりますと別問題でございますが、われわれがなけなしの知恵をしぼって、企業が成り立つようにしながら、今日は半年前と違いまして、非常に楽でない状態に追い込められております。これは国際事情もございますし、御承知の、最近とっておられます緊縮政策の関係からの影響もございます。国際事情は、日本が急激に非常に伸びたものですから、海外市場がこれにいろんな法制的に、また企業が金融方面とタイアップして、これが防遏にいろいろな方法で対抗策を講じ、少しでも力をつけてこれに負けないようにせぬならぬ立場にございます。また、他の製品を使います関連産業、先ほど申しました船とか、機械とか、車両とか、一般プラントとか、そういう問題も同じ立場にございます。また、そのもとをなす鉄の立場もございますので、極端に言えば、一円でも二円でも安くして、それで対抗していかぬならぬ状況でありまして、また、最近鉄が過熱だ、先ほどのおことばの中の寓意も、行き過ぎた競争なり、行き過ぎた設備競争があるのではないかというふうにとれますが、この点につきましては、結局資金をむだに使っては相済まぬから、国家の要請、国民の要請に沿うような行き方をしようという考え方を最近みんな持っておる次第でございまして、ベストを尽くしていく所存でございます。なお、資金が潤沢でない証拠に、戦前には、財務比率が自己資本がおのおの六割以上あったのが、今日では逆に四割、三割あるいは二割であるというふうにずっと下がってきております。自分の力でははじき出せないから、結局国家資金なり、市中銀行とか、生命保険とか、損害保険とか、その他各方面の協力を得てやっと調達をしているようなわけでございまして、結局、これがいまでは一つの企業の負担にもなっておるような次第です。そんなような観点から、企業の健全化並びに国際競争力を強める、あるいは鉄鋼はすべての産業関係を持つ点から言いますと、国内の物価政策にも関係を持つかと思うのでございますが、さような観点から、この程度なら負担ができるであろうという点については、ほとんど余地もなく、また、あるとすれば、それだけ輸出をたくさん出すとか、国内経済に寄与するとかいうほうに向けるべきであろうと思います。私どものいまの考え方から申し上げますと、そういうことのないように、自由な立場でうんと競争のできるような立場に御理解をいただきたいと思うのであります。
  14. 石原武夫

    参考人石原武夫君) ただいまの藤田先生の御質問にお答えをいたしますが、あまりこまかい数字検討しておりませんので、十分お答えができかねるかと思いますが、先ほど私が申しましたのは、九社全体で考えた場合でございまして、九社全体で考えますと、この調査団報告によります三百円値上げというのは、大体二千万トンといたしますと六十億になるわけでございます。九社合計といたしまして。それで先ほど申しましたのは、九社合計で六十億という数字は、とうてい各社の経理の許す限度を越しておる、こういうふうに申し上げたわけであります。それは藤田先生は非常にお詳しいので、よく御承知でございますが、利益のうちから配当をいたしまして、それから法定準備金は、これは決算上積まざるを得ませんので、それを差し引きますと、一カ年の利益からいま申しました二項目を引きました残余というのは三十億ぐらいと思います。したがって、年間の純利益が三十億ぐらいというところを六十億負担しようということになりますと、これはとうていできる話ではないという趣旨お話を申しましたのでありますが、ただいま御指摘もございましたように、九社にはそれぞれ各企業の格差がございまして、いまのは総体的なお話でございますが、ただいま御指摘ありましたような北海道電力等におきましては、これは非常に、油をほとんど使っておりませんので、石炭の値上がりが燃料費として完全にかぶってまいります。これが石炭の引き受け数量いかんによっては違いますが、最近の実績で考えますと、三百円というのは三億八千万になります、これは年間で。ただ北海道は、すでに先生もよく御承知のように、内部保留の最も少ない会社でございまして、一割の配当がかつかつできるという現状でございますので、これをさらに負担をいたしますと当然経営が成り立たないということになろうかと思います。  なお、いま定額償却をぎりぎりやっておりますのは東北、中部、北陸というのがございますが、北陸は石炭に直接関係がございませんが、東北、中部等も定額償却もやっとできておるという現状でございますので、これはいま申しましたような負担の能力はございません。それから東京電力につきましては、これも御承知かと思いますが、これは上期のこの九月末、この間の決算で申しますと、計上利益は六十七億でございます。それで六十億を配当をいたしまして、六億を法定準備金に積んでおりますので、それを差し引きますとわずか一億数千万円というようなことになります。しかし、東京は相当大量に石炭を取っておりますので、本年当初の二千五十万トン引き受けるときの東電の割り当ては五百八十万トンでございます。したがって、これによる、これと同じ数字をかりに引き取るといたしますと、十七、八億の負担増になりますので、東電といえどもこの負担は引き受けることは容易ではないであろうと思います。御承知のように電力会社としてはできるだけ将来の長期の料金安定を考えますために、できるだけ内部保留をふやし、そして料金を長期に安定したいという努力をいたしておりますので、東電等はもちろん定額以上に償却をいたしておりますが、そういうものを含めますと、長期安定ということが非常に困難になってまいりますので、私といたしましては、これは九電力を通じてもこのままの数字は受けられませんし、ことに個別の会社になりますと、当然料金に響くような結果になろうと思います。
  15. 安西浩

    参考人安西浩君) ガス事業の問題につきましては、いろいろな角度から、大手、中小につきまして御説明したとおりでございますが、先生の御質問に対しましてお答えいたしたいと思います。  みんなで百三十五社のうち、いまだ、転換のできないと申したほうがいいと思いますが、石炭だけを使っている会社が三十五社でございます。これは、エネルギーの転換をしたいのだろうと思いますけれども、金融その他の関係からできないのだろうと思います。そういうところへ、二百円アップということは、これはもうとうていできない相談だと思っております。きょうも実は午前十時から、全国の定例のガスの社長会がありましたので、私は今度の調査団報告についていろいろ説明いたしましたが、そのあとで、私ちょっと考えたのでございます。どうしてこれを救済したらいいか、したがいまして、これは全く私の私見でございますが、この三十五社が使っております石炭の量が、これ小さい会社でございますので、十八万七千トンでございます。この十八万七千トンをどうしてこれを救済するかということを、私、先刻から考えておったのでございますが、先ほども申し上げましたように、豪州炭とは千円の差があるのでございます。したがって、この豪州炭の輸入を認めてもらえば、これは救われる。しかし、この豪州炭を持ってきて、鉄道で小さい会社は運搬すると、やはり千円くらいかかりますから、かえってマイナスになる。そこで、これを東京ガスが輸入しますと、千円差ができますから、実際、今度のアップが二百円ですから、五分の一の三、四万トンを輸入して、その価格差補給金を東京ガスから二百円還元してやったら救われるのではないかということくらいも考えておるのでございます。ただ私は、従来、弱粘結炭は国産品であるべきだという信念のもとに、いまだかつて一トンも豪州炭を輸入いたしておりません。これは石炭政策に協力するゆえんからそういたしておるのでありますが、しかし、こういう救済の面から言うならば、これはめんどうくさい話ですが、そういうことも考えなければならないのじゃないかということが、先ほどから頭に浮かんでおったのでございます。一方、ガスは、御承知のように、コークスが副産物として出ますから、この二百円をコークスでカバーするといたしますと、コークスの価格を四百円高く売ればいいのでございます。しかし、いつもコークスは高く売れるのではないのでございまして、そう簡単にはいきませんが、計算上はコークスの価格を四百円上げるというふうにすればいいのであります。また、東京ガスを例にとってこれを計算いたしてみますと、この二百円アップをガス料金に反映させますと、十五銭ないし二十銭になるのでございます。ただ、先ほども申し上げましたように、公共料金の問題もあるし、今日、全国のガス会社でガス料金を値上げしてもらおうなんということを考えておるのは一つもありません。それはLPGの攻勢という問題からしましても、そういう状況にあるのでございます。お答えが完全ではないかもしれませんが、私見を交えて以上お答えしました。
  16. 藤田進

    藤田進君 永野さんにお伺いしたいのですが、いろいろ政府行政機関、その他、国のそういった審議会等の、あるいは会長、あるいは主要メンバーでおられるわけですが、当面、この三百円、あるいは原料炭二百円というものが答申されておるわけですが、私ども、通産大臣に本日後ほど出席を求めていろいろただすべきはただすつもりでおりますし、佐藤総理にもいろいろお伺いしたいという日程にしているわけですが、なるほどこれだけの炭価アップになりますと、そのままではどうにもならないかもしれません。とするならば、何かここに関税戻しの一つのことも指摘されてはおりますのですが、ただ、一般の国民全体にこれが負担になるようにといってみても、また利用者負担原則等から見ても、ガスあるいは電気——電気はかなり普遍的ですけれども、これもいわゆる電力、電灯等サービス的なものもありますし、負担者において、だとすると、何か現在のいわゆる私企業としての立場を貫きつつ、これが処理をするということになれば、どうしても国の政策、対策ということに依存する以外に方法がないのじゃないだろうかというふうに考えてまいりますと、これは石炭産業のみならず、御承知のとおりで、いま国鉄ももう上げなければどうにもならない。しかし、全体の物価その他から見て見送りするとか、あるいはまた、全面的にバスその他の値上げであるとか、まあまあ一々申し上げなくても御承知のとおりです。そういう一連のものがありますから、当該企業経理だけを考えてまいりますと、政府はかなりのものを背負い込まなければならないことになるだろう。行財政上それができるかどうか、石炭という基幹産業、そうして地域に与える今日の深刻な事情といった特殊事情はありますけれども、それにしても、かなりこの影響というものは大きいのじゃないだろうか。造船等については、貿易外収支関係もあり、利子補給といったことが復活をした例もあるように、まあだんだんと国の行財政に依存する面が出てきて、そのことはやがて、あるいは今日唱える者もあるように、企業の形態であるとか、資本の所在であるとかいったようなことを考えたくなるわけです。これは当面の問題にしてみたところで間に合いますまいが、何か広範に行政面にも十分なる知識を持たれる永野さんに御高見を承りたいと思います。
  17. 永野重雄

    参考人永野重雄君) ただいまの御意見でございますが、私考えますに、世界じゅうから自由に買える値段よりも若干低いとかいうような立場ですと、それを特に見るということは、議論の余地もあろうかと思いますが、先ほどガスの関係安西さんのお話がありましたように、外国の石炭を買えば、もっともこれは運賃の関係ございますから、北海道と九州の場合と、東京、名古屋、大阪という消費地の場合とは違いますけれども、とにかく千円あるいはそれ以上に高いものを、国内産業助成とか、あるいは大きな産業同士の相互の理解とかという点で、現在われわれとしては甘んじている次第でございます。また、現実に自由に買おうとしましても、為替の資金の割り当てがございますから、自由にはできないのでございます。そこで、いまの石炭の問題は、もちろんワン・クッション通っていけば、関連はないとはもちろん申しあげかねるのですが、ただ資金さえあればほかのものが安く買えるという事情を申し上げている次第ですが、そこで石炭の問題は、経済構造全体の見地から見て、国としてもほうっておけないという大きな国策から、石炭調査団もお考えになり、またそういう観点から御検討いただいているのじゃないかと思うんですけれども、もちろんそうだとすれば、他の産業がそれを負担して、また、その負担が、できる負担ならもちろんよろしゅうございますが、先ほど来申し上げましたのは、ひいては企業の国際競争力に影響を持ちますので、いま国として一番大事な外貨の獲得ということにも影響を持つ。それは、それだけの負担を自分でしていけばいいのじゃないかということになりますと、それだけ出血が大きくなるという事情もございますので、負担の点から申しますと、先ほど申し上げたとおり、しかも目的が大きな見地からの国策だということになれば、国の施策でもって御判断を願うのが一つ考え方じゃないだろうかと申し上げている次第でございまして、私ども立場から申しますと、企業だけの立場考えますと、それはとても、いま言ったような観点から余力はないのだということを申し上げておけばいいはずのものだと思いますけれども、みな何かの御研究の資料に、たまたまほかの会合等で知っておりますことを加味いたしまして、そんな方法もあるというようなことを申し上げたような次第でございます。いまの戻し税の段階でも、あるいは現在の利子負担の三分を、四分なり、五分なり、六分になりしていただくことになれば、そちらから——いずれにしても国の負担になることは間違いございまませんけれども、政策のもとがそちらに、先ほど申し上げましたように国の政策に関連がある問題だけに、余分なことを申し上げた次第ですけれども、私はいまもそう思っておる次第でございます。
  18. 藤田進

    藤田進君 石原さんにお伺いしますが、どうも私が直接ないし間接に調査したデータを持ってじゃありませんが、最近、石炭事情の中でも出炭が必ずしも安定していない。したがって、石炭が火力発電所もなかなか入手難という事態もあるということを聞くのであります。したがって、石炭が少々高くても、まあ安定供給という面があれば、その辺は何とか解決つくのではないだろうかという人もあるわけであります。しかし、安定供給はむろんするとして、かつ三百円の値上げというものは困るということだろうと思うのですが、実際問題として、かりに契約だけの物がその期限にこないで困っておるという実情があるのですか、ないのですか。
  19. 石原武夫

    参考人石原武夫君) ただいまのお話は、お話しのとおりでございます。三十八年度は、石炭調査団報告の結果、二千五十万トン引き取れという御指示があったのです。電力側といたしましては、二千五十万トンというのは、急に大幅な数字を引き取れと言われましたので、なかなかたくだけの設備がなかったわけであります。一部貯炭になろうという覚悟の上で、協力するという意味でお引き受けをしたわけです。それがたしか千八百四十六万トンでございましたか、千八百五十万トンをわずか切った程度になったわけでありました。それはもっぱら石炭側の御事情によりまして二百万トン弱切れたわけでございます。その結果、さらに本年に入りましても同じように、当初は二千五十万トンどうしても電力に受け入れてもらわないと、需給のバランスが合わないということで、これもお引き受けしたのでありますが、これも、現在の設備で二千五十万トン全部を完全に消化することは困難でございましたが、前年度数字が減って貯炭がそれだけふえなかった事情もございまして、これは石炭側に御協力するという意味でお引き取りをしますというお約束をしましたところ、いままでの状況では、先ほど御説明申しましたとおり、去年と大体同じくらい、千八百五十万トンくらいの数字に落ちつくだろうというふうにいま予想をしておるわけであります。  そこで、それじゃ石炭がなくて困っておるかという御質問でございますが、現在、大体北海道炭に頼っております東地域のほうは、わりありに出炭は順調でございます。一番入りませんのは九州炭によります九州地元だと、それから量的に多いのは関西、その辺が相当石炭がショートをいたしております。それから関西揚げ地につきましては、これは石炭が入りませんければ重油をよけいたくということで、これは非常に簡単でございますし、むしろ経済的でもあるわけです。それから九州は自分の出炭が落ちておりますので、現在は油をその分だけ入れておる、油の混焼率をふやしてたいておりまして、具体的に電気の生産に支障があるということではございません。
  20. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 石原参考人に、時間がございませんからごく端的に二点だけ伺いたいのでありますが、一点は、これは参考として伺いたいのでありまするが、あげられました今回の値上げによって相当な数字が見込まれる、これは事業採算の上に相当影響がある、これはよく私ども承知いたしておるわけでありますが、そこで、先ほど永野さんから、立場はあなたのほうと違うわけであります。あなたのほうは国内もっぱらございますが、永野さんのほうは、これは輸出関係でありまするから、そういう点で各外国のいわゆる助成の問題、これは、しかし、ガットという問題もございまするから、そのままずばりとはいけぬわけでありまするが、電力事業自体に対しては各国でも相当な施策を講じておるというのでありますが、これについてごく端的に先進国の一、二の例を、こまかいことは要りませんが伺いたい。  それからいま一点は、先般国会において法案として通りました電力用炭精算会社でございますね。これは個々の電力会社から聞きますと、私どもはいろいろむしろ苦情的なことを聞くのでありますが、これの活用といいますか、あるいはこれに対する御意見、そういったこの二点だけをひとつ伺いたいと思います。
  21. 石原武夫

    参考人石原武夫君) 第一の御質問の、諸外国の例は、私もあまり詳しく存じません。御承知のように、イギリス、フランス、イタリー等は国営をやっております。それで、これは私企業とちょっと事情が違うわけで、原則として国営でございますので違います。それから西独、アメリカ等はこれは全く民営で、あるいは公営もございますが、やっておりますが、政府電力事業に特別の施策をしておるとか、あるいは援助をしておるとかいうような話は、私は寡聞にしてまだ存じませんですが、あるいは私の知らないことがあるかと思いますから、何でしたら調べまして、もしございましたら後ほどあれさしていただきたいと思います。  それから第二番目の、電力用炭代金精算会社でございますが、これは第一回の調査団のときに、こういう答申が出て、できたのでありますが、そのときに、われわれとしては長期契約をやって、誠実にそれを履行するつもりだ、それから価格も従来の千二百円引きということでございますると、そのとおり実行をいたしますから、かようなものはおつくりいただく必要はない、とにかく手数はかかることは確実でございますので、という御意見を申し上げたのでございますが、やはり不安があるということで、こういうものをおつくりいただいたわけでありますが、私の感じを率直に申し上げさしていただきますならば、はっきり供給責任をお持ちいただければ妥当な数量はお引き受けをするつもりでございますし、値段も大体石炭協会その他お入りをいただいて具体的にだんだんきまるようになりますので、なくても私はほば同じ効果があがると思いますし、また、これがあるために相当の手数が要ることはこれは事実でございますので、むしろ電力界だけから申し上げますと、こういうものはなくて、お話し合いだけでやってもらってもいいのじゃないかという感じがいたします。ただ、石炭側からおっしゃると、あるいはそんなことをいっても不安があるというかもしれませんが、私どものほうからは、さような感じでございます。
  22. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 三時までというお約来をしておりますから、簡単にお願いします。
  23. 向井長年

    向井長年君 時間がないようでございますから、ちょっと要点だけ、要点といいますか基本的な問題ですが、これは場合によれば参考人の皆さん方では答えられない問題であって、政府に聞くほうが正しいかもわかりませんけれども、現在、御承知のごとく、石炭産業が私企業であり民営である。しかしながら、現状においては、政府の特別な措置を講じなければこれは立ち行かない。こういう形で有沢答申が出、これに対しての炭価問題、補給金の問題が出て、いわゆる消費者に——消費者といいますか大口の消費者にしわ寄せが行きつつある。これはひいては国際収支にも影響するであろうし、あるいは一般国民消費者に対しましても、いろいろな角度から影響をもたらす結果になりはしないか、そういうことをわれわれは憂慮するわけなんですが、そういうことで、皆さま方考え方としては、国自体の施策の中から処置すべきであるということが、永野さんからも言われておりますが、もっともだとわれわれも思うのです。ところで、根本的に本年度はこうだ、来年度はこれはまたこうだ、こういう形で、ただ石炭の当面の救済ということだけで考えておっても、石炭問題は解決できない。したがって、今後石炭産業というものを日本エネルギー産業の中でどういう位置づけをするか、あるいはまた国がどういう形でこの石炭産業というものを考えていく——端的に言うならば、国家管理の方法とか、いろいろあると思いますが、こういう点につきまして、大体これはまとまった意見がないかもわかりませんが、一応、概略、将来の石炭産業の位置づけ、あるいは国として石炭産業に取り組む手段、こういうただ当面の救済の問題ではなくて、根本的な問題でどう考えられるか、お答えできるならばひとつお答えいただきたい。三人の方にお答え願えればけっこうです、根本的な問題ですから。永野さん、いかがですか。
  24. 永野重雄

    参考人永野重雄君) おっしゃるとおり、私どもの触れていい問題かどうか問題かと存じますが、私は石炭産業も他の産業と同じく個人の創意とくふうを十分に発揚して、そこからスタートする。ただ、どうしても自分の力だけでは片づかない問題については、若干のものは突っかい棒してやるけれども、何でも安易にやるべきじゃない。個人の創意くふうを最大限に発揚せいという行き方のほうが、われわれ経済人として仕事をやっておりまして思うのでありまして、私の立場から私見を申し上げたわけですけれども、御了承願いたいと思います。
  25. 石原武夫

    参考人石原武夫君) いま永野参考人が端的におっしゃったとおりに思いますが、私はいま永野さんのおっしゃったとおりで、ちょっと調査団にはなはだ失礼なんですが、あまり数量にこだわっておられるのじゃないかという感じも卒直に申しているのです。やはり私企業として成り立つ、もちろんそれには特殊な石炭産業ですから、国家の相当の支援がなければ成り立たぬと思いますが、その限界を越えて数量だけにこだわり過ぎるということについては私は疑問を持っております。だから、そういう範囲で、許せる範囲でやっていくというほうが正しいのではないかという感じがいたします。それだけ申し上げます。
  26. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 以上で、参考人お三人に対する質疑はこの程度にとどめたいと存じます。  参考人方々にごあいさつ申し上げます。たいへんお忙しい中を長時間にわたりまして貴重な御意見を拝聴いたしまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。     —————————————
  27. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 次に、佐久参考人植田参考人に対し、一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、たいへん御多忙のところ、年末も押し詰まりまして、御無理を申してまことに申しわけありません。厚くお礼を申し上げます。  つきましては、石炭鉱業調査団答申に対しまして、御忌憚のない御意見を拝聴いたしたいと存じます。なお、議事の進め方につきまして申し上げますが、佐久参考人植田参考人順序で、お一人十分程度の御意見を拝聴しました後に質疑を行ないたいと存じます。御了承願います。  それでは、まず佐久参考人からお願いをいたします。
  28. 佐久洋

    参考人佐久洋君) 本日、石炭関係で、かねがね慎重な御検討をいただいているのでありますが、特にまた本日、われわれ参考人としてお呼びいただいて、意見を述べる機会を与えられましたことを厚くお礼を申し上げます。  石炭の最近の状況は、すでに御承知と思いますが、本年の夏から第二回目の石炭鉱業調査団というものが編成されて、今後の石炭のあり方について、昨日その答申が行なわれました。第一回の調査団というのは、一昨年の春から秋にかけて編成され、対策を出したのでありますが、それが一年半足らずで今日の状態に至った理由は一体どこにあるのだろうか、こういう点を申し上げてみたいと思います。  それは、こういう調査団の計画あるいは役所の計画というものは、すべての点について理想的な条件を前提にしてつくられるものであります。それはそれなりにやむを得ないと思うのでありますが、現実のあらわれ方は必ずしも考えられた前提どおりにあらわれていない。つまり描いた姿と現実の姿というものは食い違ってくるわけであります。しかも、それがしばしば悪い食い違いを起こしているというその結果が、今度、第二次調査団の編成を余儀なくされた理由だと思います。  で、具体的に若干その食い違いを申し上げますと、かりに三十八年度出炭だけを見ましても、調査団予定では、これは大手だけについて申し上げます。三千八百三十八万三千トンという予定でありましたが、実績は三千五百二十九万三千トンにとまったわけであります。損益についても、純損益で見まして、調査団予定では、トン当たり三百七十円の損失というのが、実績は二百八十三円の損失にとまった。それから、したがって、原価についても、調査団答申予定よりもこれは下がっております。そこで、三十八年度だけを貝まして、しかもそれを純損益だけを見ますと、いかにも好転したように見えるのでありますが、この出炭が非常に減ったという関係で、それは予定外に閉山を非常によけいいたしました。数字で申しますと、閉山の三十八年度予定が三百二十六万トンでありましたが、実績は五百五十五万トンほどの整理をした。その結果、退職者が予定では一万人余りであるのが、実績は三万五千人に近い数字になった。それだけ退職金の支払いもふえる。また、閉山によって生ずる諸費用の負担がふえておる。これが三十八年度だけの出炭収支を見ますと、非常にいいのでありますが、将来、非常に大きな負担となる。  そこで、このままに放置いたしますると、第一次の調査団考えられました昭和四十二年度にほぼ自立し得る状態になるであろうという予想が全然くずれまして、その予想が立たないという結果になったのであります。なお、この調査団予定と実績の狂いをかりに設備資金について申しますと、三十八年度では予定が大手だけで二百七十四億の設備投資をやる予定にいたしておりました。ところが実績は二百十八億というふうに相当落ちておるのであります。ところがこの内容について見ますと、政府資金はそのうちで百六十三億の政府資金が出るという予定が、実際に出ましたのは八十二億であります。したがって、総体の予定よりも設備投資は減りましたけれども、自己調達の分は予定よりもふやさなければこれだけの投資ができなかった。その自己調達を予定よりもふやした、こういうところにまたいろいろの負担が、影響が及んでいる。こういう現象で、これは一例を数字について申し上げたのでありますが、要するに、調査団予定したものと現実の姿が非常に食い違ったということであります。  そこで、最近の状況を申しますと、累積される赤字がざっと八百億をこえておる。借り入れ金も一千八百億をこえるというような、企業としては将来どうにも負担し切れないという状況になったわけでございます。この累積赤字八百億というのは、最近の五年間で年間平均百億ずつの赤字がふえていく、それが累積される、こういう形であります。借金のほうも年々二百億ずつふえていくという状況であります。そこで、私どもよくこの最近の出炭状況から、五千五百万トンの目標というものは一体達成されるのかどうかということを問われるのでありますが、もしこの五千五百万トンというものは全然不可能だということであれば、これはもう根本的に考え方を変えなくちゃいかぬ性質のものだと思います。この五千五百万トンができるかできないかというその見方は、いろいろの方面から見なくちゃいかぬと思いますが、自然条件あるいは埋蔵量の関係からいってそれが不可能かといいますと、これは問題ありません。可能であります。一面、今度は技術的に日本の炭鉱というものは非常に賦存状況が諸外国の炭鉱と比べてむずかしいのでありますが、技術的に不可能かということについては、これも問題がない。不可能ではない。それから人員不足の点からいって今後五千五百万トンは掘れないのじゃないかという問題もあります。現状のままではどんどん一種の離山ムードと申しますか、労務者が去っていく、しかも働き盛りの若い人が去っていく、新しい人はなかなか入らないという状況でありますから、労務上問題はあろうと思いますが、その離山ムードあるいは若い人が入ってこないというのは、結局、石炭企業に対する将来性に不安があるからそういう結果になるのであって、もしこの石炭企業というものがペイする企業ということになれば、その問題もおのずから解消されるというふうに思われるのであります。もちろんこの今後の石炭について、坑内構造を改善するとか、あるいはさらに機械化する、つまり人力から機械力へ依存するという、そういう方向は合理化の態度としてとらなくちゃならぬと思いますが、そのもとに横たわ  、やはり資金の問題であり、それは収益の問題だというふうに考えまして、石炭企業に対する今度の調査団調査の重点は、やはり現在の石炭企業の経理の改善にあるのだ、その点を十分にえぐり出して、それに対する対策を十分に考えてほしい。こういう要望をいたしたのであります。  そこで、それでは収支改善を幾らに見ればいいのかという問題でありますが、われわれとしてはトン当たり五百円の収入増になるような対策考えてほしい。その五百円をどういう方法でやるか、これはわれわれとしては実は名案がないんでありまして、調査団先生方に十分御検討をいただきたいという形で要請を申し上げたわけであります。まあこの収支改善の方法としては、きわめて端的に割り切って考えれば、消費者負担していただくということは単価を上げるということであります。それでなければ国民の負担において解決をしていただくということは、補給金という形で解決策を見出すということであります。あるいはそれを組み合わせた形の解決策、まあ大きく分けて考えれば、その三つしか私はないと思いますが、その私どもの概略の考え方も、実は調査団先生方には申し上げたわけであります。なおその際に、われわれの要望としては、固定資産税あるいは鉱産税の負担が一般製造業に比べて非常に重い。これを一般製造業並みに考えて、おおよそ負担を半減してほしいという要望もいたしましたし、さらに、負担の軽減方法としては国鉄運賃の問題についても触れて要請をいたしました。そのほか公害対策についても要望いたしましたが、昨日の答申を拝見いたしまして、われわれ感ずる点は、非常に熱心な討議検討の結果、多岐にわたって詳細にしかも具体的に答申がされた。この点はわれわれとして非常に感謝をしておるところであります。ただ、いろいろの制約のもとで対策考えるんでありますから、もちろんわれわれの要望そのままを実現はされておりません。一例を申しますれば、五百円の収益増加をはかってほしいという、その額には今度の答申においては達しておりません。あるいはいま申しました固定資産税とか、鉱産税というような地方税の問題についても、今度の答申には掲げられておりませんが、まあ諸制約のもとでは、まあまあこの程度答申でやむを得ないじゃないかという感じがしております。もちろん十分な満足というわけではありませんけれども、いままで常に石炭企業が置かれた環境から満足を得られたためしはないんでありまして、その環境と申しますのは、すべての消費者あるいは国の立場から見て、石炭はぜがひでも相当の無理をしてでも保持しなければならぬというまでの機運というものはないのであります。一、二の人のことばを借りて申しますると、石炭は実はやっかいものだ。あるいはいまごろ石炭などということはもう時代おくれなんで、すでに石油の時代も去らんとしつつあるのだ。早く石炭なんというものから足を洗ったほうがいいというような言い方の人もありますし、中には、なまじ石炭があるということはかえって災いだという表現をする人さえある。そういう環境の中で石炭業界から見て、これでもう満足だという答申、回答を得ようということ自体が私は無理だと思いますので、今度の答申はまあまあやむを得ないというふうに思うわけであります。ただわれわれ石炭業界としては、これに満足か不満足かというようなことを言ってみても始まらぬ話でありまして、与えられた条件下で最善の努力を払って今後の出炭を確保する。現に去年もことしも電力に対しては約束石炭供給ができない状況でありまして、これはまことに申しわけないことでありまして、今後そういうことのないようにあらゆる努力を払いたい、かように思っている次第であります。
  29. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) ありがとうございました。  次に、植田参考人にお願いします。
  30. 植田勲

    参考人植田勲君) 中小炭鉱の現状を少し申し述べたいと思いますが、去る三十四年の石炭審議会におきまして石炭対策が講ぜられたときに、需要の確保と拡大のための価格政策として、重油八千三百円に対する石炭価格として、千二百円下げるという措置がとられたのでありまするが、われわれ中小炭鉱もこれに同調しまして、それを実施してきたのであります。  かつては中小炭鉱の数は約八百六十余数えておったのでありますが、今日では従来の中小炭鉱の数は約百五十という炭鉱数に激減しておるのであります。これは如実に炭鉱の衰微を表示しておるものと思われます。大手の十七社以外は中小炭鉱と呼ばれておるのでありますが、大手系列炭鉱が約八十、これが中小化して中小炭鉱のワクの中に入っておるような次第であります。それで、中小の炭鉱と現在称せられておるのは二百三十鉱ぐらいになっております。その出炭は、本年度の計画としましては五千四百万トンということになっておりますが、その五千四百万トンの中で、約千五百五十万トンの出炭を占めておる。それで労働者の数は現在三万九千七百人くらいであります。右の千二百円引き下げの措置として財政融資による近代化、合理化、設備の促進が講ぜられ、能率の増進とコストの低減が行なわれたのでありますが、はなはだ残念ながら、中小炭鉱は規模、炭量等の点からその恩恵を受けることがきわめて低く、かつ薄く、範囲もきわめて限られております。その条件も、炭層もまた悪い中小炭鉱が、石炭政策の一般の千二百円下げを一様に負担してきたのであります。かかる炭価のもとで経営はますます苦しくなり、赤字の累積を負担していく力がないので、勢い八百幾らあった炭鉱が、いま申し上げたように二百三十になっておる、こういう状況であります。また、合理化資金を借り入れるにしても、担保力が弱いので、能率の向上も思うにまかせません。逆に賃金の引き上げとか、物価の値上がりによってコストの値上がりを来たして、その中にあって石炭鉱業は斜陽ムードというような中に沈滞し続けて、次々と、一山やめるとか、またあしたには一坑がつぶれるとかというような状況の中小炭鉱でございます。  かかるときに、再度この調査団が編成されて、われわれ石炭鉱業、特に中小炭鉱は光明があると、これに非常な期待をかけて希望を持っておったのであります。有沢調査団の再調査に対しては、団員の皆さまの非常な御労苦に対しては心から感謝をする次第でありますが、石炭一般論の立場をとれば、どうしても取り残される運命にあるのは弱い中小炭鉱であろうかと思います。今後の問題としては、石炭産業立場とあわせて中小企業をいかにするか、この両面から検討対策考えられなければ、十分なる中小炭鉱対策は望めないのではないか、こう思うのであります。この点特に政治に携わられる、わが国産業、中小企業の問題に深い御理解のある政治家の皆さまに特にお願い申し上げ、御援助を切にお願いする次第であります。  それで、中小炭鉱の現状は、いま申し上げた二百三十余りございますが、この中で三十九年の上期の出炭は七百六十七万八千トン、これは五万一千トン計画よりよけい出しております。もっともこれは速報とそれから実績とは若干違いますが、速報でいいまして五万一千トン、実績でいいますと九万八千トンばかりオーバーして出ているような次第であります。  それで、今度の調査団答申につきまして一言申し上げますと、収支をこの前に調査団にお願いしたのは七百円ばかり改善してもらいたいという要望をしまして、とりあえず五百円程度の炭価を何らかの形で引き上げてもらいたい、こういうことをお願いしておったのでありますが、答申におきましては、一般炭三百円引き上げ、原料炭が二百円引き上げというようなことでございますが、これでは炭鉱の収支の改善にはなお不十分な点があるのじゃないかと思います。しかし、こういう答申が出た以上は、需要業界あるいは政府のほうの御協力を得て、これを完全に、この答申を完全に実施してもらいたい、こう思うのであります。それで、大手と中小の値差があるわけです。需要者に渡す値差が相当あるのですから、これを撤廃してもらいたい、これを強く要望しておいたわけでございます。  それから、この問題はいろいろありますが、利子の補給。この利子の補給というのが出ておりますが、この利子の補給は主として大手企業に対する措置であります。中小炭鉱はその恩恵に浴するのが非常にきわめて薄いのであります。というのは、中小炭鉱は、借りておるのが中小企業金融公庫ですか、中小金融公庫、これから借りておるのがわずかでございまして、開発銀行から借りる炭鉱も二百三十のうち二十鉱程度しか開発銀行から借りる金はないのでございます。それで、そういうふうに恩典が薄いのでございますが、これにかわるべき措置が何ら考慮されていないというのははなはだ残念であると、こう思います。それから財政資金に対する利子補給は、中小金融公庫の設備資金には補給するといいますが、運転資金を中小炭鉱は相当借りておりますから、これに対しても、これを対象とすべきじゃないか、こう私たち考えるわけでございます。  それから資金の確保でございまますが、今後、中小炭鉱の生産性の向上と経営の安定は一に資金の確保いかんにかかっておる。中小炭鉱においては資金効率はきわめて高いのでございます。炭鉱個々にとっては、比較的少額の資金を確保することによって、その生産性が著しく向上し、経営の安定を期し得られるのであります。中小炭鉱は、炭鉱の近代化のための設備資金とともに、特に長期運転資金の確保、これが絶対必要でございます。これは今後、中小公庫の資金に依存せなければならないので、中小公庫資金に石炭ワクを設定して、そして石炭向け融資の限度ワクを引き上げてもらって、それで長期運転資金の貸し出し制限の緩和と、それから直接貸し付け制度、こういう制度を活用さしてもらいたい。通産局の推薦制とかいうのを実施されて、具体的措置を早急に講じてもらいたい、こう思うのであります。  さっき佐久さんがちょっと触れられた税制の問題も、私たちずいぶん要望しておったのでありますが、これは、坑内に持ち込んだ機械類、これはもう固定資産税とかいうのを免除してもらいたいというようなことも申し上げておったのですが、これは税制のほうは税制のほうで考えられると思いますが、この調査団のほうには何ら答申に盛られておらぬということでございます。  以上でございます。
  31. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) ありがとうございました。  それでは質疑に入りたいと存じます。御質疑のおありの方は順次御発言願います。
  32. 藤田進

    藤田進君 佐久さんにお伺いをいたしたいのですが、いろいろ精査せられました一般的全体的な立場からは、少なくともトン当たり五百円のアップを考えられていたということのようであります。とするならば、一般炭で三百円、原料炭で二百円ということでは、かなりの開きがあるように思われます。答申の方向は前向きではありますけれども、しかし、あの答申どおり諸般の施策を講じられていっても、なお、石炭産業に関する限り救いがたいものが残るということになるのでしょうか、いかがなものでしょうか。
  33. 佐久洋

    参考人佐久洋君) この答申というのは、もちろんいろいろの前提を置いて一つの試算をして、それで四十二年度に安定が得られるであろうという結論を出しているわけです。その前提というのは、生産量がどのくらいになるか、あるいは年々の能率がどのくらいになるか、それから炭価引き上げが、一般炭三百円、原料炭二百円というのが完全に実施されるかどうかというような、そういうものに変動があれば、結論がまたおのずから変わってくると思います。かりに、たしかあの調査団答申の基礎数字というのは、私ども示されておりませんからよく知りませんけれども出炭を五千二百万トンぐらいに見ていると聞いております。これが非常に調子がよくなって、それ以上出たらコストは下がります。収支状況予定よりもよくなるということもあり得るわけです。それから賃金についても、この試算の基礎数字としては、年率七%で上がるという計算をされておるようでありますが、今後の一般経済の状況次第で、七%以下でおさまるということであれば、これまた状況が変わるということでありますが、いま、この調査団答申も出た直後でありますので、これでいつごろにどういう状況になるのか、どういう悪化状況がくるのかということはちょっと申しかねます。われわれとしては、先ほど申しましたように、この与えられたいろいろな諸条件下で最善の努力をしていきたい、こういう程度以上にはちょっと申し上げかねると思います。
  34. 藤田進

    藤田進君 実は石炭調査団をすみやかに編成して、具体的調査と、これが答申、かつ自後の政府対策ということについては、私も本会議に立ちまして、電気事業法に伴う問題として、一連のエネルギー政策の根本的なものを打ち立てようということで、これに付随して石炭調査団の問題について、私ども提起した一人でございます。ただ、この答申を見ますと、かなり問題が、これが処理については残るように思われる。佐藤総理、あるいは櫻内通産大臣に、引き続き、いろいろただすべきはただすつもりでおりますが、先刻、消費者の代表といいますか、鉄鋼、ガス、電気というそれぞれの御意見を承ったわけでございますが、あのまま炭価に移行されると、鉄鋼においては、今日の国際市場の競争関係電力においては、現電力コスト、単価といったような料金問題、ガスにおいてはLPGその他の事情に加えて、かなりの経理、料金に影響を持つということで、直接これをどうも引き受けるわけにいかないということが強く打ち出されているところであります。やがて根本的な立法をいたしまして、エネルギー全体について、国は一つの方向を持たなければなりません。従来、石炭ベースということで、エネルギー中心に置いてまいりましたが、池田内閣の後半になりますと、エネルギーベースは石油であるというようなふうに変わってきたように思われる。加えて、先ほど来御説明もありますように、離職者対策で、私どもも真剣に過去取り組んでまいりましたが、確かに予想外のことで、今日では逆に求人難、これが指摘されたような、佐久さんの言われたようなこと以外に、私どもとしては問題があるのではないだろうか。その産業自体の近代性、魅力というか、青年たちに対する、ですね、これが問題ではないか。単に先ほど言われただけにとどまるものではないのではないか。なかんずく子供を就職させるについて、親たちは、あるいは本人も、いつ爆発して吹っ飛ぶかもしれない、忘れたころにはまた炭鉱の事故があるという、そういう悲惨な状態だ。さなきだに、もう何かすると炭鉱ということばは、あまり労働市場というか、職場としては、過去においても好まれていなかった、その印象のあるところへ、近代産業として今日もあれだけの犠牲者を出すというような、いわば職場の安全に、衛生、環境ということが、かなり求職側に影響を持っていると思われます。こういう全体から考えてくると、いかなるものだろうか。われわれもこまかく検討しているわけではございませんが、これから取り組まなければなりませんが、もうかるときにはもうけて、どうもうまくいかないということになればすぐ国にもたれてくる、そういうだらしのない産業なり経営というものがあるかどうかというようなことを間々聞くわけであります。企業においても、いろいろ国に、戦前、戦争中、敗戦直後尽くされた、そういう日本産業エネルギーベースとして、このことは、これは高く評価しなければなりませんが、さて石油の、あるいは原子力にやがてといったような時代においては、石炭産業としても十分ひとつ御考慮をいただかなければならないのじゃないだろうかという点を私は痛感するわけであります。中小を代表されて植田さんの御発言、私としてもうなずける点が多いのであります。今日、炭価の差であるとか、あるいは利子補給その他については、確かに中小についてはどうも片手落ちな点があったと思いますので、われわれは非常に、きょう勉強になり参考になったわけであります。特に今日の大手とされては、相当、企業自体としても、たとえば社会党はいつも口を開けば言うとおっしゃるでしょうが、いわば、どうにも私企業としてやっていけない、国の行財政に依存しなければならぬというのであれば、この際、私は炭鉱企業におかれても、国民全体の、わが国の産業全体の基本としてもっと真剣に考えてもらいたい。うんともうかってしかたがないというものも私は放置すべきではないと思う。しかし、どうにも企業の運営なり、その手腕をもってしても、どうにもならないという客観的な時代的なものがある以上、これをどうしていくかということについては、企業そのもののことについても、私は考えていただくときがいま来ているか、やがてくるか、何だかそういう気がしてなりませんが、その辺について、依然として私企業体制を続けていき、かつ立ち上がり、やがて国のそういったものから脱却するという自信があるかどうか。というのは、石油については、これはもう御承知のとおりです。発電においても、規制法をつくって、さらに延長して安くなる、国民は電力にしても安いものが買えるのだが、しかし、わが国の石炭政策というものから、これを重油規制をして石炭をたけということになっている。このような事情から考えてくると、ここらで基本的なやはり石炭産業の経営形態なり何なりということを、国民は関心を持つということは自然なことではないだろうかと思うのですが、この辺についてのことについてお伺いしたい。
  35. 佐久洋

    参考人佐久洋君) 問題があるという点、先ほどの御質問がそういう点にねらいがあったということ、こちらが気づきませんで申しわけありませんでした。いまのお話の中で、鉄、電気あるいはガス産業が炭価を引き上げることの影響が大きいために、炭価引き上げには賛成できない、これは私も聞いております。ただ、今日まで、問題の解決を炭価引き上げということでなしに、逆に炭価引き下げというところにおいて相当努力を払ってきたという点は、ひとつお認めいただきたいと思うのですが、過去において石炭業の一部のものに、世間から指弾を受けるような行動のあったことは、これはあえて私は否認をいたしません。だからといって、現在も依然だらしがないという見方はひとつお改めを願いたい、これをお願いいたすわけであります。そこで、このいまの経営形態で、将来とも一体石炭というものが維持できるかどうかという御質問でありますが、これは私はあるいはそういうことが論議される時期が将来くるかとも思います。ただ、私ども石炭大手の業界では、現在のところは、あくまで私企業の形態で最善の努力を払おうという決意を持っているわけでございます。この私企業の形態を離れて、あるいは国家管理とか、国営とかいうものに移る、将来あるいはそういうことがあるかもしれませんが、それを実施するためには、これは石炭消費者がまずその気になることが大前提だと思いますが、先ほど申しましたように、現在、石炭の見られている見方というものは、どちらかというと、石炭に対しては冷淡であります。そういうさなかにおいて私は企業形態をどう変えるかということは、私の見解ではまだ時期が早いのではないかというふうに思うわけであります。
  36. 藤田進

    藤田進君 大臣の本会議その他の予定もあるようですから、私は以上で参考人方々に対する質疑を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  37. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  38. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 速記を始めて。  おはかりいたします。日本石炭鉱業連合会会長庄野崎道雄君を参考人に追加し、意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 御異議ないと認めます。  では、副会長の庄野崎さんから補足説明として御意見を承りたいと思います。
  40. 庄野崎道雄

    参考人庄野崎道雄君) いま先生お話の炭価の値上げの問題ですが、私たちも新聞で見まして、一般炭の三百円と原料炭の二百円云々、これが企業が非常に困るからということを一番心配しております。これはぜひひとつやっていただきたい。それで、さっき中小炭鉱としても申し上げましたように、要望といたしましては七百円、こういうふうに要望をいたしまして、とりあえずの措置として五百円の収入という、これは大手と結論は同じになりましたのですけれども、三百円の二百円ということ、これが一番大事な問題であるということ。それから利子補給は、さっき申し上げましたように中小に恩典がない。それでわれわれといたしましても、この企業形態の問題ですが、労務者の問題にちょっと先生御質問がありましたのですが、われわれの地区といたしまして、こういう実例がございます。十月の初めでございました。いまちょっと珍しいのですが、着炭祝いをやりました。ところが大手のほうからも、また近所の閉山しました炭鉱からも、就職が非常に希望が多いのでございまして、ちっとオーバーな言い方でございますけれども、門前、市をなしたというようなことになって、断わるのに往生した、こういう実例がございますので、炭鉱の人たちというものは、ほかに行きましても、モグラが丘に上がったようなことで、なかなかうまくいかないのです。ですから、やはり大体炭鉱で働いている人は炭鉱で働きたいという希望がありますが、現状としては、先がどうなるかわからぬ、実はこういう問題のためにやはりやむなくそれが出ていく、賞金がほかが高いから出ていく、決してそうじゃございません。これはいろいろなデーターがございますが、やはり将来の安定ということを考えて出ていきますので、これが収支が償う、変な言い方ですけれども、ある程度もうかる産業だということになりますと、これは炭鉱の鉱夫という者もここには安定する。だから、政府のほうでもいろいろ心配すると言いましたけれども、離職対策よりも、まず炭鉱をもうかる産業にある程度していただきたい、こういうふうに考えるのでございます。  それから災害の問題がありましたのですが、これは私はそのことを申し上げたらおこられるかわかりませんけれども、これは災害の起こらないようにやりたいと思いますけれども、結局やはり金がないというようなことで、十分注意をしながらも、そういうことが起こるというようなことがあり得ますので、これはやはりある程度収支も償うという経営状態になりますと、こういう問題も自然に解消する。昔はそういう大きな災害とか、いろいろな問題は少のうございました。このごろに限ってやはりある程度あるような状態になってきておりますが、結局やはり経営という問題から、保安のほうに十分の金がいかないというふうなことから、つい不注意な点が——そこは生命に関することでございますから、みんなが労使ともに一生懸命である。これは自分自身のことなんでございます。そういうことから見まして、われわれといたしましても、何とかしてさっきも佐久さんから話がありましたが、これはまだまだいろいろ不満はあります、中小炭鉱としては。しかし中小の三百円、二百円というこの炭価をそのまま実施してもらうということが、中小に対する運転資金、設備資金、これが非常に大きな効果がございますので、これをひとつ行なっていただくということで最大努力をして、私企業として切り抜け得るというところまで努力してみる、こういうふうに考えております。
  41. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 簡単に一言、佐久参考人にお尋ねいたしますが、まあ当初五千五百万トン程度、これは何か至上命令のようになっていて、結果はああいう数字が出たわけでありますが、その間において三井争議とか、あるいは人災、天災等が幾多行なわれたのでありますが、そういうものの減少炭というものはどのくらい見込んでいるのか、これをひとつ参考人伺いたい。
  42. 佐久洋

    参考人佐久洋君) 年々の生産計画を立てる場合に、生産の能力がどのくらいあるかということをまず見るわけであります。それから需要がどのくらいあるか。その生産の能力と需要とを見てその年の生産計画というものを立てるわけでありますが、災害がどのくらい起こるかということはちょっと見当がつきませんので、年々災害による減産というものは特に掲げてはみておりません。ただ、労使双方間で賃金の争いあるいは期末手当の争いということで、どの程度のストライキによる減産があるだろうかということは生産計画の中に見るわけであります。
  43. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 その数字はわかりませんか、大体でいいですが。
  44. 佐久洋

    参考人佐久洋君) それは、今度の有沢調査団答申に基づくその基礎数字ということであれば、私どもはその数字を示されておりませんのでそれはわかりません。
  45. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 他に御質疑がございませんければ、参考人に対する質疑は終了いたします。  参考人方々には、御多用のところ長時間にわたりまことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。
  46. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 引き続き大臣に対する質疑を行ないます。
  47. 藤田進

    藤田進君 通産大臣にお伺いいたしますが、有沢調査団答申を拝見いたし、かつ、ただいままで石炭関係の深いそれぞれ業界代表者の皆さんからの意見聴取を行ないました。かなり、いずれも消費、生産両面を通して大きな問題があることは、これはもうわれわれあらかじめ十分承知していたところでございますが、いずれにしてもこの答申を受けられた通産大臣とされては、あるいは内閣全体の問題として、しばらくたなに上げておくというわけにはまいらないかと思います。ことに十九日、すでに大蔵省は四十年度予算案の大蔵原案をつくるという段階でもあるように承るわけであります。答申を受けられた所管大臣とされては、今後具体的にこれをどういうプロセスをもってどのようにせられようとしているのか、まずこの点をお伺いいたしたい。
  48. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 藤田委員、御承知のように、申し上げるまでもないことでございますが、今回の第二次調査は、八月十一日の閣議決定に伴いまして、私より石炭鉱業審議会の植村会長にお願いをし、植村会長の指名による調査団ができたわけでございます。かような経緯にかんがみまして、昨夕五時半に、有沢団長を帯同して、植村審議会会長が大臣室にお見えになりまして、この石炭鉱業調査団答申というものを私は受けたのであります。そこで、最も近い機会の閣議にこれを報告いたしたい、こういうふうに考えておりまして、明日の閣議にこの答申書をお配りいたしまして、さらに有沢調査団長あるいは植村会長の御説明もございましたので、この全文を閣議の席上で全員が閲読することもたいへん困難なことであろうと思いますので、植村会長や有沢団長がこの内容のうちで重要と思われる点を私にも言われましたので、それらを書き出したものを添付して、明日の閣議に報告をし、了承を得たい、こういう手順を踏みたいと思います。  なお、これに伴う予算措置につきましては、大体現在、省内におきまして計数が出ております。これは閣議の決定直後に大蔵省のほうに対して裏づけの数字を要求したい、かような順序考えております。
  49. 藤田進

    藤田進君 閣議に報告をされ、了承を求められるという内容は、おそらく私そんたくいたしますのに、この答申どおり実施いたしたい、閣議了承を得たいというものではなくて、かかる答申を受けた、この答申について通産大臣は検討いたしたいということではなかろうかとも思われる。その点が不明確であります。特にこの炭価問題を中心考えられることは、これが連鎖反応についてどう処理するか、あるいは連鎖反応の起きない他の方法でこれを処理していくのかという大きな方向か、あるいはこの折衷的なものか。つまり炭価三百円ないし原料炭二百円の引き上げということは、電力についていえば約六百億の影響を持つという説明が、とりあえず当面あるということを聞きました。鉄鋼については輸出競争その他について七十二円、トン当たりの影響がある。石炭はLPその他の関係もあって、ということで、必ずしも炭価転嫁を消費に即直結させる方法はかなり困難なようにも思われる。一方石炭事情を見れば、このまま放置するわけにはいかない。少なくともトン当たり五百円程度のこの際炭価改訂が望ましいという御発言も生産者側からあったわけであります。とすれば、ここをどういうことにするか、利子補給では中小には何らの恩恵はないということも言われているわけであります。このような金融でいくのか、あるいはこれが炭価に移行するのかといったようなことも含めて一つの方針をすでに出して、明日の閣議におはかりになるのか、お伺いしたい。
  50. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) ただいまの段階で詳細を申し上げるのはいかがかと思うのであります。これは藤田委員もいま御指摘のように、私としては閣議に報告のまだ前の段階でございます。しかし、しゃくし定木にそういう形式的なことを言うのではないのでありまして、私の心がまえを申し上げますならば、この調査団の、そして石炭鉱業審議会の答申というものは、あくまでも尊重さるべきだと思います。そうして、この内容を私なりに一応検討してみまして、ただいま藤田委員御指摘のようないろいろ疑問点もございますが、また同時に、この答申をよく拝見をしていきますと、それらの疑問にも大体答えておるとも思うのであります。たとえば一般炭三百円、原料炭二百円の引き上げによる電力鉄鋼、ガス事業等に対する影響につきましては、原重油の関税特別還付をもって考えろとかいうようなことがございます。その考え方について、大蔵省がどの程度意見を言われるか、これは別といたしまして、一つの道筋は出ておると思います。また、中小炭鉱に対する利子補給の問題につきましては、これは私の記憶しておるところでは、合理化事業団あるいは中小企業金融公庫、また、開銀等からお借りになりましたそういうものの救済については、大手と同じように利子補給を行なうものと、かようにこの答中から私は承知をしておるようなわけでございまして、したがって、そういうことを頭に置いて考えますときに、この答申を尊重いたしまして裏づけの数字を出していきますならば、もちろんこの裏づけの数字が、財政当局がはたして通産省の要求どおり、のむかのまないかということが、これが問題になろうかとは思いますが、私としては、答申書を尊重しての最善の努力を払って、この答申書に盛り込まれておる諸施策の遂行に当たりたい、こういうふうに考えている次第であります。
  51. 藤田進

    藤田進君 他にも御発言があろうかと思いますし、なお重要な問題が残されておりますので、本会議その他の御事情もあるようでありますから、私は質疑を本日のところ終わるわけでありますが、御指摘のように、財政当局等の今年度特に予算編成難その他の事情から問題もあろうかと思いますが、少なくとも全体の公共料金その他にはね返りのないような姿において、しかも石炭のこういったさんたんたる事情を救い得るという、その方向において善処をわずらわしたいことを希望いたしまして終わりたいと思います。
  52. 小柳勇

    小柳勇君 藤田委員の第一の問題に関連して、一問だけ質問なり御要請をいたしたいと思いますが、この答申を拝見いたしますと、山と金と人との問題が書いてございますが、その人の、労働者の家庭生活や環境などの問題については、実は詳しく触れてないのでございます。これはこの調査団の任務がそうでありますから、それを多く求めることは無理かと思いますが、文教委員会でも再三問題にしておりますように、産炭地、特に閉山地帯などにおける学校教育の問題、非行少年の問題など非常に重要な問題でありまして、これも決して無視できない重要な問題であります。したがって、これを閣議に報告される場合に、文部大臣からももちろんいろいろ意見が出ると思いまするが、その石炭問題の責任者である通産大臣からも、この答申の中に項としてあげてございませんけれども、労働者の生活環境の問題、特に産炭地教育の問題については格段の配慮をされるように、つけ加えて、十分ひとつ閣僚諸君にお伝え願いたいと思います。その点、大臣の御意見を聞き、要請をいたしたいと思います。
  53. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 小柳委員のお触れになりましたことは、まことに重要なことでございます。昨日も有沢団長の、この答申に伴っての重要事項としてのお話の中に触れられております。なお、この答申書をずっとごらんいただきますと、産炭地域振興対策の項の中に、大体お話の点も触れておるということを承知しております。五十一ページの中ごろに文教問題は触れておると思います。たしか炭産地の環境問題については、有沢団長は、現在の雄山ムードを何とかこれを解消しなければならない、それがためには、産炭地の住宅が、用便を足すにも外へ足を運ばなければならないような、そういう実情のものが相当あるのだ、こういうようなことを放置しておいたのでは、なかなかいまの難山ムードを解消することはできない、特に住宅の点は考えたい、あるいは私が言うまでもなく、現在炭鉱でお働きの皆さん方が大体中高年層の方が多い、これらの方々が老後のことについての非常な不安感を持っておるので、どうしてもこの年金制度というものを考えてもらいたい、いろいろそういうことも付言せられておりました。御心配の点はまことにごもっともでございますので、私も十分注意をいたしまして、今後の施策に反映をさせる考えでございます。
  54. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 他に御発言もなければ、本連合審査会はこれにて終了することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 御異議ないと認めます。よって連合審査会は終了することに決定いたしました。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時七分散会