運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1964-11-30 第47回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年十一月三十日(月曜日)    午前十時五分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 青木  正君 理事 植木庚子郎君    理事 中曽根康弘君 理事 松澤 雄藏君    理事 井手 以誠君 理事 川俣 清音君    理事 辻原 弘市君       相川 勝六君    赤澤 正道君       荒木萬壽夫君    井出一太郎君       稻葉  修君    今松 治郎君       江崎 真澄君    小川 半次君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       上林山榮吉君    正示啓次郎君       田澤 吉郎君    塚田  徹君       登坂重次郎君    灘尾 弘吉君       西岡 武夫君    西村 直己君       橋本龍太郎君    古川 丈吉君       保科善四郎君    松野 頼三君       水田三喜男君    山本 勝市君       淡谷 悠藏君    石野 久男君       岡田 春夫君    加藤 清二君       多賀谷真稔君    堂森 芳夫君       中井徳次郎君    芳賀  貢君       武藤 山治君    山花 秀雄君       横路 節雄君    今澄  勇君       春日 一幸君    小平  忠君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 高橋  等君         大 蔵 大 臣         通商産業大臣臨         時代理     田中 角榮君         文 部 大 臣 愛知 揆一君         厚 生 大 臣 神田  博君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         運 輸 大 臣 松浦周太郎君         郵 政 大 臣 徳安 實藏君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 小山 長規君         自 治 大 臣 吉武 恵市君         国 務 大 臣 小泉 純也君         国 務 大 臣 河野 一郎君         国 務 大 臣 高橋  衛君         国 務 大 臣 増原 恵吉君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         総理府総務長官 臼井 莊一君         公正取引委員会         委員長     渡邊喜久造君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    高島 節男君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  向坂 正男君         検     事         (民事局長)  平賀 健太君         検     事         (刑事局長)  津田  實君         外務政務次官  永田 亮一君         外務事務官         (大臣官房長) 高野 藤吉君         外務事務官         (アメリカ局         長)      竹内 春海君         外務事務官         (欧亜局長)  法眼 晋作君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         大蔵事務官         (主計局長)  佐藤 一郎君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     福田  繁君         文部事務官         (管理局長)  齋藤  正君         厚生事務官         (保険局長)  小山進次郎君         農林事務官         (大臣官房長) 中西 一郎君         農林事務官         (農林経済局         長)      久宗  高君         農林事務官         (園芸局長)  林田悠紀夫君         水産庁長官   松岡  亮君         通商産業政務次         官       岡崎 英城君         通商産業事務官         (企業局長)  島田 喜仁君         中小企業庁長官 中野 正一君         運輸事務官         (大臣官房長) 堀  武夫君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         自治事務官         (選挙局長)  長野 士郎君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君  委員外出席者         国民金融公庫総         裁       石田  正君         中小企業金融公         庫総裁     舟山 正吉君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      山際 正道君         参  考  人         (商工組合中央         金庫理事長)  北野 重雄君         参  考  人         (全国銀行協会         会長)     中村 一策君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 十一月三十日  委員赤澤正道君、井村重雄君、小坂善太郎君、  五島虎雄君及び永末英一君辞任につき、その補  欠として西岡武夫君、橋本龍太郎君、塚田徹  君、芳賀貢君及び春日一幸君が議長指名で委  員に選任された。  委員塚田徹君、西岡武夫君及び橋本龍太郎君辞  任につき、その補欠として、小坂善太郎君、赤  澤正道君及び井村重雄君が議長指名委員に  選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十九年度一般会計補正予算(第1号)  昭和三十九年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和三十九年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和三十九年度一般会計補正予算(第1号)、昭和三十九年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和三十九年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、質疑を行ないます。  井手以誠君
  3. 井手以誠

    井手委員 佐藤総理に対して、私は、日本社会党を代表して、特に国民注目の的である経済政策物価などについて新総理見解をただしたいと思います。  去る総裁公選に際して、佐藤さんは、人間尊重政治生産第一主義人間不在政治などと称して、池田政策をきびしく批判をなさった。私はそれなりに立候補の価値があったと思うのです。当時、総裁公選の際は、すでに高度成長政策の破綻が各方面に広がっておりましたから、前内閣自身すでにそのひずみ是正に入っておったのであります。自民党の去る九月に発表された新たな政策によりますと、ひずみ是正がその重点になっておるのであります。かようなことを考えてまいりますと、高度成長政策といういままでの政策を改めて、新しいいわゆる安定政策というものに転換なさるのが、私は新総理のたてまえではないかと考えるのであります。いわゆる政策転換、このことが私は前内閣方針を踏襲される道でもあると考えるのでありますが、この政策転換について、あなたの強い心がまえと見解をただしたいのであります。
  4. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 七月公選の際にいろいろ議論をしたことは御承知のとおりであります。それにつきまして一部賛成のような御意向でもございますが、私、政局を担当して、在来の行き方を見ますると、池田内閣時代におきましても、すでに昨年末来引き締め基調に変わっております。いわゆる安定成長への道をたどりつつある、こういうように私は見受けるのであります。ただいま、そういう意味で、池田内閣時分にやっていたことをそのまま踏襲して差しつかえない、かように私は結論を出しておりまして、ただいま経済安定への諸方策をいろいろと考えております。ただ、問題は、時間的の問題がございますので、そう走り出していた経済自身が急ブレーキのかかるものではない、これは一つ御了承いただきたい、かように思います。
  5. 井手以誠

    井手委員 それでは、新内閣方針は、高度成長ではなくして安定成長政策である、そういうふうに政策転換していくのだと理解してよろしゅうございますか。
  6. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御承知のように、昨年来すでにその方針に変わりつつあった、かような意味中期経済計画も策定している、かように私は考えております。
  7. 井手以誠

    井手委員 それでは、重ねてお伺いしますが、九%あるいは一〇%という成長政策はやめて、そういう高い成長政策ではなくして、ひずみの起きない安定政策をやる、そういう政策に改めるということでございますか。
  8. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま、改めると、こういう方向といま申し上げることは、やや早いように思います。しかし、少なくとも在来成長率でなくて、中期経済計画におきましても八・一%、かように下げておりますから、こういう点に、経済成長あり方、それが内容的に変わりつつある、かように御了承いただきたいと思います。
  9. 井手以誠

    井手委員 中期経済計画については後刻いろいろとお伺いをいたしたいと思っております。あの中期経済計画でも、成長率は高過ぎるのであります。あれは安定基調ではございません。そこで、新総理は、従来の生産第一主義を改めて安定基調でいくと、何回も本会議で言明をなさるし、ここでもお話しなさった。それでは、安定基調目標はどこに置いておられますか。高度成長政策で多くのひずみが起こった、これを是正するために経済を安定させる、その基調目標をどこに置いておられますか。
  10. 田中角榮

    田中国務大臣 ・・。
  11. 井手以誠

    井手委員 ちょっと待ってください。せっかく発言を与えられたようでありますが、この予算委員会は新内閣佐藤さんの考え方を聞くのが筋であります。特に、私は、必要な場合は大臣を名ざしてお尋ねをいたしますので、この際特に総理の御所見を承りたいのであります。
  12. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま大蔵大臣が立ち上がりましたが、佐藤でなければいかぬ、こういうことでございますが、私の最も信頼する片腕でございますので、大蔵大臣の説明をお聞き取りいただきたいと思います。
  13. 田中角榮

    田中国務大臣 御承知のとおり、いま中期経済計画が公表せられておりまして、五カ年間を通じまして八・一%実質成長率ということでございます。政府与党としては、この数字十分吟味をしてみなければならないという状況でございます。先ほどから御指摘がございましたとおり、過去の成長率を見ますときに、昭和二十九年から約十カ年間の成長率は九%余でございます。しかも、三十五年以降の成長率は、御承知のとおり、その倍近い、非常に高い成長率でございます。でありますから、その場合を超高度というふうに言われたわけでございます。しかし、その結果設備近代化もできましたし、また国際競争力もついたために、現在二〇%、二三%という高い輸出伸びを示しておるということも御承知のとおりでございます。  しかし、このような状態になりますと、どうしても国内的に見ますと各種のひずみを生ずるのでありますので、国内均衡をはからなければならないという考え方に立っております。国内均衡をはかるという方向で進めますときに、一体どのくらいの成長率が正しいのかということでございますが、中期経済計画では八・一%ということでございます。しかし、中期経済計画初年度にあたる今年度がもうすでに実質一〇%をこすというような状態でありますので、来年度はどの程度一体見るべきか、実質七%、七・五%、八%といういろいろな議論がございますが、経済企画庁大蔵省等で何%程度にしなければならないかということに対しては現在慎重に考えておる状態でございます。  それで、これからの経済目標をどうするかということでございますが、言うまでもなく、国際収支の安定、物価の安定、それから経済安定成長、まあ端的に申し上げれば安定三要素といいますか、三安定政策目標にして国内均衡をはかってまいるということだと考えておるわけであります。
  14. 井手以誠

    井手委員 今日の経済混乱の一番の原因高度成長政策にあった、これは何人も否定できないはずであります。そこで、あなたは総裁公選にあたっても従来の政策を批判なさった。そうして先般の本会議においては、こういう所信表明をなさっておる。根本的解決策はすみやかに経済成長安定基調に乗せることである、とあなたははっきりおっしゃっておるのです。その安定の基調はどこにあるか。これがあなたの生命なんです。総裁公選からもう半年近くたっております。十分御用意はできておると私は信じておりますから、お尋ねいたします。安定基調、その目標はどこに置くか。もう少し私は申しましょう。あの成長が激しかったときに、前の池田さんは、最初三カ年間は九%でやるけれども、あとは六%前後になりますと平均七・二%になります、こういうことを言われておる。いままでは高かった、いわゆる高度成長のためにこういう事態が起こったのですから、いまからはずっと低めなければならぬのは当然です。その安定基調はどこに置くかという、それを私はお尋ねするのであります。
  15. 田中角榮

    田中国務大臣 あなたは、いま申されたその基調というよりも、経済成長率でもってあらわした場合どのくらいかということを指摘されておるわけであります。中期経済計画では八・一%ということでございます。でありますから、私が先ほど端的に申し上げましたとおり、その初年度である三十九年度がもう一〇%をこしておるということになるならば、いまの状態から考えて四十年度は一体七%になるのか、七・五%になるのか、七・七%になるのかということは、いま政府部内で四十年度の予算編成基調をきめる問題でありますので、いま検討をいたしております。こう申し上げたわけです。あなたは端的に、八・一%の中期経済見通しを立てた数字でも高いと言われております。これは、私たちも、その問題に対してはこれから中期経済見通し検討する過程において十分ひとつ慎重に検討してまいりたいと思います。しかし、あなたがいま端的に言われたその六%とか六・五%に一体なし得るのか、安定成長率というものが八%では高いのかということになりますと、これは非常に問題があります。戦後の日本経済成長が、構造自体を変えておりますので、必ずしもその六%台でなければ、五%台でなければ安定成長率でないというふうに断言するには、経済構造があまりにも変わり過ぎておるというふうに見られる節が多分にございます。私たちは、少なくとも七%から一〇%までの間でこれからの五カ年間を平均八・一%程度と押えたのはおおむね妥当だろうという考え方であります。それは、いまでも非常に高いと言われる。確かに今年度の実質経済成長率は一〇%余だと思いますが、それでも非常に不況感がある。一体これでもってひずみの是正ができるのか、こういうことが半面強く叫ばれ、論じられておるということも御承知のとおりでありまして、これからの安定成長率一体どの程度に置くことが最も日本のために好ましいことであるかということに対しては、慎重に検討し、しいて申し上げれば、中期経済見通しの四十三年まで平均八・一%というものは大体正しいものではないか。これ以下に詰めようとすると、縮小均衡というような事態が起きまして、なかなかひずみ是正という国内均衡是正が可能であるかどうかという問題もあわせて考えなければならないわけでありまして、慎重にいま検討いたしておる段階でございます。
  16. 井手以誠

    井手委員 新総理は、先般の所信表明においても、こういう国内混乱経済混乱があっておるから、国民の信頼と期待にこたえるべく決意を新たにして精根を傾けますとおっしゃっておる。いま国民が一番聞きたいことは、どうして新内閣経済を安定させるのか、物価を押えることができるのかというところに集中されておるのです。そうであるから、あなたのおっしゃる安定基調とはどこに目標を置いておられるか。もちろん急激にこれを下げることは困難かもしれませんが、どの辺にめどを置くということは、新総理が明示なさる必要があると私は思うのです。そこに、態度をはっきりすることに新内閣の、佐藤総理の意義があると思うのです。総理からはっきりおっしゃっていただきたい。
  17. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまお話しになります、経済安定の基調をどこに置くか、こういうことは、先ほど大蔵大臣が説明いたしましたように、抽象的には議論のできることであります。申すまでもなく、国際収支を安定さすとか、あるいは物価を安定さすとか、その他経済諸現象をして安定さす、これは動揺でなくて。これは抽象的にはおわかりだと思います。ただいま御指摘のように、しからば何%を目標にするのか、こういうお尋ねのようですが、これはたいへんむずかしいことであります。先ほど来、中期経済計画では八・一%にしておる、こういうことを申し上げました。問題は、これが高いとか、あるいはもっと低いところができるんだとか、こう言われますが、現在の実情自身は、先ほど大蔵大臣が説明するように、いまなお相当高いところにあります。この高い水準にあるものを今後安定への道をたどらす、こういう場合に、私が所信表明でも申しましたように、いたずらな刺激を与えるとか、動揺を与えることは、これは避けていかなければなりません。スムーズにこの安定基調への変化をたどるように、すべてのものを準備立てていかなければならない。おぜん立てをしなければならない。ただいまお説のように、いろいろ率幾らになるか、こういう点も聞きたいことだろうと思いますが、それよりも、政治あり方をどうするのか、そのほうが大事じゃないか、佐藤内閣が取り組んでいるのはその点であります。現在のような高い経済成長率、これを安定へ持っていく、そのためにはどういう方策をとっていくのだ、これが最も大事なことでありまして、そういう場合に最も望ましい姿は、動揺を来たさないようにすること、激変を与えないということ、その方法におきまして安定への道をたどる、これが政治姿勢でありますし、また、今日の経済問題と取り組んでまいりたい私の気持ちであります。したがいまして、ただいまお説のように、率を幾らにするか、こういう理論的なものよりも、この基本的な政策態度が望ましいんではないだろうか、こういう意味に御理解をいただきたいと思います。
  18. 井手以誠

    井手委員 私は、総理が言われる政治姿勢を明らかにする意味においてお伺いをしておるわけであります。設備投資中心とした総需要が急に伸び過ぎたために、生産消費の調和がこわれたのですよ。そこに今日の問題があるのですから、総需要、すなわち成長率幾らめどを置いておるのかと私は聞いておるのです。政治姿勢中心は、この今後の成長率中心なんですよ。九%、一〇%じゃ高過ぎてこういう事態が起こったのだから、安定基調とは一体どこにめどを置いているのかということを聞いているのですよ。そこをお答えくださいよ。八%でも高いと私は言っている。それはあとで詳しく言う。
  19. 田中角榮

    田中国務大臣 中期経済計画がいま内閣答申をせられて、与党及び内閣ではこれを受けて検討を続けておるわけでありますが、私は、先ほど申し上げたとおり、中期経済見通し指摘をし答申をしております四十三年までの五カ年間実質八・一%平均というものは、おおむね妥当であるという考え方であります。しかし、あなたのような議論、いわゆる八・一%でも高いじゃないかという議論もありますので、そういう問題に対しても十分慎重に検討をいたしております。こう申し上げておるのでございます。それから、それを前提としなければならない目標は何かといいますから、それは国際収支の長期安定であり、物価の安定であり、もう一つ国内の正常な安定成長を確保する、いわゆる三安定政策を進めるということを目標にすれば、大体八・一%平均ぐらいになるでありましょう、こう申し上げたのです。  それから、これを進めていく具体策は、こういえば、あなたがいま御指摘になったように、さなきだに総需要が高いのでありますから、財政景気刺激をしてはならないということが基本であります。でありますから、財政は少なくとも健全均衡の線を守ってまいるということになります。財政だけで景気が左右できるものではありませんし、財政は特に別な国民的要請もありますし、別な財政に対する要素もありますので、景気を調整をするという場合に必要な金融の問題を考えますと、財政金融がまさに一体的運営が行なわれるという健全な基調健全政策基調としていくことによっておおむね正常な安定をはかって、究極の目的を達してまいるということだと思います。
  20. 井手以誠

    井手委員 佐藤さん、中期経済計画あとで触れますけれども、あの中に物価年率二・五%の上昇になっておる。ところが、すでにことしは予定を上回った。この物価水準を横ばいにいたしましても、来年は四%になる。その次は一%しか見込めないのですよ。実際実現できますか、あの中期経済計画で。高橋さん、あなたにはあとで聞きます。ちょっと待ってください。中期経済計画は内容がすでにがたがたになっているのですよ。だから、八・一%などというところに、安定の基調を置いてもらっては困るのです。あなたがどうしても安定基調めどをおっしゃらぬのならばおっしゃらぬでよろしい。おっしゃいますならばおっしゃってください。ほかの問題に移りますから。経企庁は待ってください。あなたに聞いているのではない。   〔「だめじゃないか」と呼び、その他発言する者多し〕
  21. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御静粛に願います。
  22. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 数字の問題に限られるようでございますから、私から数字の関連の問題だけを先に御答弁申し上げておきたいと存じます。  中期経済計画は、一昨日も御答弁申し上げましたが、昭和四十三年度において国際収支均衡させるということと同時に、消費者物価の値上がりを年度平均二・五%にする、そういう制約条件のもとに、経済の各諸元を組み合わせて姿を描いてみると、年率平均八・一%でそういう目的が達成できる、こういう仕組みに相なっておるのでございます。しこうして、この中期経済計画において前提としました世界貿易伸びは、年平均大体六%と見ておるわけでございます。わが国輸出伸び世界貿易に対する弾性値は大体二と見ておりますので、そういうところにまた一つ前提を置いておるわけでございます。御承知のとおり、今年度は世界貿易がすでにもう一〇%程度伸びておる。そうして、わが国輸出伸びは二二・五%程度に予定されるような次第でございます。そういうふうに、前提とした条件が相当大きく動いておる関係もございまして、そういうことで今年度の物価もある程度の影響を来たさざるを得ないという状況に相なっておることは、井手さんも御承知だと存じます。そういう前提のもとにこの経済計画ができておるということを最初に御答弁申し上げておきたいと思います。
  23. 井手以誠

    井手委員 佐藤さん、きょうは、あなたが七月の公選でお出しになった「明日へのたたかい」という大事なものを持ってまいりました。いまからこれを基礎にお伺いをいたしたいと思います。ここで安定基調についてのめどをあまり明示なさらなかった。私は非常に不満です。しかし、それは後刻あらためてお伺いをいたします。  そこで、今日の不況混乱原因は、この「明日へのたたかい」に書いてあるように、従来の生産第一主義、すなわち大企業シェア争いによる設備投資の過当競争、そしてこういう企業の借金経営に対して金融機関の行き過ぎた系列金融にあった、私はこのとおりだと思うが、念のために佐藤総理見解を承っておきたい。
  24. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 経済現象につきまして、いろいろの見方があると思います。ただいま私の「明日へのたたかい」を引き合いに出されましたが、その後私も研究もし、だんだん変わっておる点もございます。しかし、今日の経済事象で最も大きな点として指摘できるのは、これは過当競争にあるだろうと思います。同時にまた、金融政策がはたして適当であったかどうか、こういう二点にあるだろうと思う。しかし、私どもが自由経済をとって、その立場においてそうした過当競争が生じた、かような事態でございますが、しかし、私考えますのに、やはり経済界にも一つの秩序が必要なんだ、その秩序を乱さない範囲においての競争、これは望ましいことだが、秩序を乱してまでの競争は私どもが厳に戒めなければならないものじゃないか、かように思います。この点は今日も私は同じような思想を持っております。
  25. 井手以誠

    井手委員 経企庁長官にお伺いいたします。三十九年度の設備投資成長率の現在における見通しですね、当初じゃなくて現在の見通し、改定の見通し、それから、もしできますならば来年度の予定をお示しいただきたい。
  26. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 御承知のとおり、今年度の年度当初の見通しは、設備投資を四兆一千億円と見込んでおったわけでございます。ところが、昨年の下半期以来設備投資が相当伸びてまいりました。その行くえが今年度の上半期もずっと続いておりました。それで、八月ごろの下半期の投資予測をずっととってみますると、そのころから大体横ばいまたは少し弱含みという状況が予測調査としては出てまいっております。これが実際の結果としてあらわれるのはなかなか見当がつけにくい状況でございますが、ただいまのところ、相当幅はございますが、四兆五千億ないし七千億というその範囲でいくのじゃなかろうかという見通しになっておる次第でございます。
  27. 井手以誠

    井手委員 重ねて長官にお伺いいたします。計画を立てたのと実際の投資がどうしてそんなふうに違うのですか。三十五年以来ずっと今日まで五カ年間、設備投資はいつも一五%ないし二〇%上回っておるのですよ。ここに一番の問題があるのです。政府は四兆円の計画を立てたけれども、実際の伸びは一割五分も二割も伸びておる。現に四兆一千億が三十九年度の金融引き締め下において一五%も伸びるようなことをどうして放任するのですか。そこに政府の計画がいつもくずれる原因があるのです。それは規制できないのですか。通産大臣でもどちらでもけっこうです。
  28. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 御承知のとおり、計画という文字は使っておりますけれども、自由主義経済でございますから、必ずしもそのとおりいかないということはおわかり願えると思います。なお、本年度計画が四兆一千億円でありましたのに対して、先ほど申しましたように、それを相当上回る結果になるであろうということになりました原因として考えられることは、当初本年度の輸出の見通しをこんなに高くは見ておりませんでした。ところが、世界貿易伸びが非常に順調であって、アメリカ並びにヨーロッパにおけるところの輸出環境が、いままでにかつてないいい状況であるというような関係からいたしまして、先ほども申しましたとおり、輸出が二二・五%も伸びるというただいまの見通しでございます。そういうふうに輸出伸びるということは日本経済にとって非常にいいことでございますので、これを抑えることは必ずしも妥当でなかろう。その結果として、設備投資がそれに関連してふえることは、これまた自由主義経済として当然あるべき姿でございまして、現在の程度以上に金融の引き締めを強化するということはいかがであろうか。御承知のとおり、ここ九月、十月ごろ、または今月にかけまして、だんだんと中小企業の倒産等も、金融引き締めが浸透してまいりまして多くなってまいったというような事態もありますので、その辺のこまかい配慮はいたすにいたしましても、この程度にいくことは、これはやむを得ぬ結果であろうか、かように考えておる次第でございます。
  29. 井手以誠

    井手委員 少し長官の答弁は筋違いじゃないですか。最近の輸出伸びておるのは設備投資とは直接関係がございませんよ。輸出産業の内容を見てごらんなさい。自由経済であるからどうにもならぬとおっしゃるなら、どこに経済企画庁の必要がございますか。どこに経済計画の必要がございますか。法律では規制できなくとも、行政指導というものがあるではございませんか。  兼任の通産大臣にお伺いいたしますが、従来設備投資に対して操業度はどのくらいに見てございましたか。鉱工業の操業度、機械の操業度合い。
  30. 田中角榮

    田中国務大臣 いま政府委員にただしまして、数字でございますから、すぐ申し上げます。
  31. 井手以誠

    井手委員 私は一昨日通産当局から承りましたが、八〇%で設備投資は計画されておる。いまどうして鉱工業の生産伸びておるのか、鉱工業の生産指数が非常に高いのか。それは、設備の圧力、借金の圧力、損益分岐点の上昇によって操業度がきわめて高くなっておるのですよ。八〇%を計算してあるのに、実際は九〇%、九五%運転しておるのですよ。そこに今日の過剰生産ができておる。過剰投資ができておるのですよ。そういう甘い考えを持っておるから、こういう事態になってくるのです。最近起こっておる過剰生産に対して、大蔵大臣はどういう対策を考えておられますか。こういう過剰な投資、過剰生産に対して、通産大臣をなさった佐藤さん、一昨年でございましたか、三十七年三月だったと思いますが、あなたは過剰生産に対して業界にきびしい警告をなさったことがございます。だから、佐藤さんも御存じでしょう。最近のこの過剰生産に対して、不況についてどういう対策を持っておられるか。在庫投資がふえてくる、こういう事態に対してどういう対策を持っておられるか、承りましょう。
  32. 田中角榮

    田中国務大臣 現在設備投資の圧力で操業度が高いというふうに判断をせられておりますが、確かに、設備投資が行なわれておるということ、また設備投資の資本圧力から稼働率を高くするということはよく理解いたしております。しかし、それだけではありません。率直に申し上げると、フル操業に近くやらなければ年々上がっておる賃金の上昇分をカバーしていけないという問題が確かにございます。われわれは、いまモーターを回せば回すほどもうけにならない、損をするような操業度をなぜ上げるのかということを非常に強く業界にただすわけでありますが、率直に言えば、はっきり言えば、自転車操業的な面が確かにございます。しかし、生産で吸収できない面までも支出が大きくなっていく場合、結局どこかでもって壁を設けて、ぶつけて問題を根本的に解決をするか、そうでないと、遺憾ながら、理論の上では確かによくわかるのですが、人もわれも自転車操業を続ける、こう言っておるわけなんです。ですから、そんなような状態である場合に、一体政府はどうしなければならぬか。結局金融で締める以外になくなるわけです。これはいいことではありません。いいことではありませんが、やむを得ず金融調整手段に訴えたわけであります。でありますから、去年の十二月から一年間——いままでは大体半年締めれば非常に変わってきたわけであります。ところが、今度は一年間締めております。締めておりますから、確かに変わってきております。経常収支もよくなり、貿易収支もよくなり、国際収支はよくなりましたが、しかし、締まらないところがある。操業度が落ちない。それから、もう一つは、卸売り物価は横ばいでございますが、この引き締め基調において、消費者物価、東京都の物価は上がってきておる。非常に不況感があるにもかかわらず生産は高い。高原横ばいである。こういういままでかつてなかった構造上の問題が表にあらわれてきているわけであります。でありますから、私たちは、業界に対しても、操短——自由経済の中で操短などやるべきではないとか、いろいろな議論がありますが、やはりある過程において業界自体の自粛的な措置も講じてもらいたいということもやっておりますし、金融の上で選別融資が行なわれれば一番いいのですけれども、選別融資をやる場合に、資金統制の議論がすぐ出てまいります。どうも統制色が出ていかぬということで、この間の特振法もついに流れてしまったわけであります。生産は高いけれども、三、四カ月前に反対しておった業者は、現在は、特振法をつくってもらわなければ困る、やはり政府の力である程度調整をしてもらう法的な規制ができるような状態でないと、われわれの力だけでは自主規制はできません、フル運転を下げるわけにはいかぬ。業者みずからがこんな弱音をはくことはおかしいのですけれども、事実井手さんも御承知のとおりであります。でありますので、一面において、調整過程ではあるが金を出そう、年末にあたって中小企業に対して金を出そう、しかし引き締め基調はくずさない、こういうことを言わざるを得ないのは、その間の事情を物語っておるわけでございます。政府に施策がないわけではございませんが、急に政府が資金統制を行なったり、自主的に何とかしょうと言って努力をしておる業界に対して、幾ら言ってもわからないのか、幾ら言っても聞かなければ法律で規制しますよと言うには、どうも少し早い。業界の自制、自粛を待ちながら政府もじりじりしておるというのが偽らないところであります。じりじりだけしておったのでは困るぞということを言われると思いますので、業界の自粛、また通産省としても十分行政指事を行ない、大蔵省としても金をしかるべく調整をして安定成長に持ってまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  33. 井手以誠

    井手委員 今日の不況対策では、いまの御答弁によりますと、金融を引き締める以外にないということでございます。そうでしたね。ないことはないでしょうけれども、主たるものは金融の引き締めを続けていく以外にないということでございました。今日の事態を招いたのは、政府の計画もずさんであるけれども、総理が言っておられるように、企業も借金経営をやった。しかし、もう一つ問題は、これをささえてきた金融機関の信用膨張にあると私は考えておる。一体日銀は何をしておるかということを私は言いたい。オーバー・ローン。しかし、いまお話しのように、その企業にとってはどんどん生産をしなければならぬという悩みがある。それをどう抑えていくかというところに政治の姿があると考えておるのであります。だから、私は、この際法律を出してでも資金の統制をやるべきではないのか、そこまできておるのではないのか、それをまだ早いと言うなら、今日のひずみの認識が足りないのではないかと思うのです。大蔵大臣があちらこちらの雑誌におっしゃった資料をここにも持ってまいっておりますが、いまの金融引き締め程度でこのひずみが是正されるとは考えられませんよ。一番の抜け目のあった産業資金の調達問題、政府は計画したけれども、資金については野方図であった。どんどん銀行は系列融資をやる、それに日銀がどんどん金を貸してやる、そこに問題があったのですから、総理がおっしゃるこの金融の正常化のために、資金の統制を加えるべきではないのか。(「反対」と呼ぶ者あり)統制に反対するような者は、ますます不況が深刻になることを認められるわけです。そういうものは許されません。資金について統制を加えられる、大口貸し出しに対して規制を加える、預貸率に対して規制を加えるということが必要ではないかと思うのですが、大蔵大臣はどうお考えになりますか。
  34. 田中角榮

    田中国務大臣 なかなか言いにくいことをぴしっとおっしゃっていただいて、まことにありがたいような感じもいたします。確かに、井手さんが言われるとおり、なぜ一体こうなったかということを考えると、御指摘の部面にぶつかるわけです。日銀の信用膨張によって今日まで設備投資がささえられてきたということも一つの事実であります。同時に、もう一つは、戦後新しくつくられた金融機関、日銀の範疇にない金融機関が非常に資金量が潤沢である。もちろん預貸率等に対して大蔵省は強い行政指導は行なっておりますが、都市銀行等基礎産業に向く部面の金融機関には金の集まりが悪くて、相互銀行、中小企業専門金融機関である信用金庫とか、また農林中金とか、系統金融には金が相当集まっておる。そういうものがコールに流す。ですから、コール資金が一兆四千億にもなり、都市銀行は三銭五厘、三銭六厘のコストの高い金を集めてでも金を貸し出す、こういう両面から設備投資が行き過ぎたということは、確かに御指摘のとおりだと思います。ですから、一体いまの制度でいいのか、私も必ずしもいまの制度でいいとは思っておりません。ですから、日銀法の改正もある意味において必要だし、銀行法の改正も必要だとここで申し上げたわけであります。しかし、軽々にかかるものがすぐ行なえるものではありませんので、いま作業しておるわけでございます。現行法でもって言いますと、昨年の十二月から、準備率の引き上げ、窓口規制、オペレーション制度の採用、それから公定歩合の引き上げ、もう一つ、通産大臣の管轄下にある輸入担保率の引き上げという五つの大きな仕事をやった。そのほかになお財政金融でもって引き揚げ得るものは相当引き揚げておる。こういうことをやっておるわけですから、相当締まるはずなんです。はずなんですが、いまあなたが御指摘のように、過去は締まらなかった。確かにいまの日銀と都市銀行との間は一定のクレジットラインを現在適用しておりますが、引き締め下に入らない前は交換に回わったもの、交換じりが全部日銀で自動的決済をされるということになるわけでありまして、統計上の数字を見ますと、ああ多かったなと思うときにはもう大きく貸し出されておったというような、確かに制度の上の欠陥もなくはないと思います。しかし、これを資金統制をしなければならない——私はあなたの議論が非常によくわかりまして、あなたのようなそのニュアンスを、自由経済の中で統制をしなくて自主的な中でうまくやれないかというので、表現を、財政金融との一体化、こういう考え方で申し上げ、政府資金、財投資金として吸い上げられるものは吸い上げて、重点的に投資をして、設備投資の行き過ぎ等はひとつ押えよう、こう考えておったわけです。しかし、これから調整過程をある程度進めていくという場合には、いままでのような考えだけではどうにもならないと思いますので、ある程度、これは非常に重要な発言になるかとも思いますが、いままでは日銀がやっておりましたそのワクだけを締める——クレジットラインをだんだんと下げていくから締める、締まると、こういうことですが、これは必要なところへも金が出なくなるということもあるわけであります。でありますから、やはりクレジットラインのほかに選別融資——資金統制ということはなかなかできないと思いますので、選別融資、必要なところには金を出し、必要でないところ、必要でないというよりも、少しがまんをしてもらえるところはきゅっと締める、こういうことをやらざるを得ない。そうすることによって引き締めが解除できる基盤ができるわけでありますし、また、引き締め過税においても中小企業とか農業とか、しわの寄っておる部面に対して適切に金を流すということができ得るわけでありまして、やりたくないことでありますが、やはり現在の状態ではそういう政策も加味しつつやらなければ合理的安定成長に導く金融政策にはならない、遺憾ながらそう考えます。これからひとつ十分慎重に検討しながら、うまくやってまいりたいと思います。
  35. 井手以誠

    井手委員 締まるはずのものが締まらないから困っている。選別融資だけでよろしゅうございますか。それには大口貸し付けの規制などというものも含まるものですか。統制ということばは非常におきらいですけれども、自由放任でやっていけないならばやむを得ないじゃございませんか。この際きびしい態度をひとつ示してもらわぬと、新内閣ですから、そこに新内閣の課題があるわけです。
  36. 田中角榮

    田中国務大臣 もちろん、集中的な大口貸し出しの規制ということは当然考えなければならぬと思います。それから、そこまでの御発言がございましたから、率直に申し上げると、戦前は比較的うまくいっておったわけです。これは興銀が非常に強かったから——ざっくばらんに言いますと、興銀が強過ぎたという批判もあるぐらいに興銀が中心になって、選別融資といいますか、いずれにしても設備投資行画どおりに金を出して、各銀行もこれに協調したということでありますが、戦後は興銀なり長銀なり、また都市銀行も長期の設備資金も事実上出しておる、また中小企業や地方の企業に対しては短期資金しか出さない、そういうことに表向きにはなっておりますが、手形の切りかえ切りかえという形式のもとに、地方銀行も相当大きな設備資金を協調融資の名において出しておる。またそのほかに、中小企業専門金融機関も設備投資の金を出しておる。こういうところに設備投資というものが統計をとらなければわからないという現状が出てきたわけでございます。これは、いまの状態で興長銀を含めて一切のものが全部投資計画会議でもつくっておやりになれば別でありますが、そうでなければ、やはり日銀が中心になって設備投資にかかる金融に関しては一つ目標を持ち統制を——統制じゃなく調整をする、こういうことが好ましかったと思います。どうも少しその意味では自由になり過ぎた、自由にまかせ過ぎたと行われても、これはもう御指摘のとおりだと思います。でありますから、そういう面も日銀の自主性、中央銀行の自主性というので、大蔵大臣いろいろな制肘をするようなことを言われておりますが、大蔵大臣があまり制肘をしなかったのでこういうことになったと私は思うのです。ですから、中央銀行の自主性、都市銀行その他金融機関の自主性をあまりにも認めておったというところに問題があると私は思うのです。でありますから、すぐあなたが言うように統制をするというようなことはございませんが、せめて世銀方式ぐらい採用できませんか、こういうことをテーマとして半年前に銀行協会に提示をしたのですが、だめですな、そういうことを大蔵大臣が言うと、資金統制の考え方ですかというようなことで、まあ今日に至っておりますが、いまあなたが御指摘になっておるようなものをこれからやはり積極的に検討して、よりいい方途を見出すべきだと考えます。
  37. 井手以誠

    井手委員 病気をなおすためには手術をしなくてはなりません。大蔵大臣はそうおっしゃるけれども、最近の財政演説なり施政方針演説を見ておりますと、計画は政府がやるけれども、あと金融機関の適性な運営に待つと書いてあるじゃございませんか、政府が悪いんですよ。  そこで総理大臣にお伺いいたしますが、総理は、この「明日へのたたかい」のほかにも何回となく金融の正常化を強調されておる。日銀の信用、オーバーローンの解消を訴えられておる。この日銀のオーバーローンを解消するように段階的に進められる、指導なさる御方針ですか、その一点をお伺いいたします。——総理からお伺いいたします。
  38. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 金融政策全般について正常化するというのが目的であります。ただいま御指摘のような点もその不正常化の一つのあらわれであります。したがいまして、それもほうってはおかない、かように御了承いただきたい。
  39. 井手以誠

    井手委員 日銀のオーバーローンもほってはおかない、それでは、これは不正常であるからオーバーローンを解消するように、年次計画を立てて解消するように指導するということですか。
  40. 田中角榮

    田中国務大臣 オーバーローンの解消をはからなければならない。オーバーローンの解消をはかって金融の正常化を完成していきたいということは、もう御指摘のとおりであります。ただ年次計画をつくってやるか、それは中期経済見通し八・一%を認める場合には、当然産業資金をどこから調達するかという問題とぶつかるわけでありますから、この問題とあわせて金融正常化の年次計画を立てなければならぬわけです。これは立てていきますかではなく、立てざるを得ないわけであります。でありますから、中期経済見通しで何%成長ということを政府がのむとしたならば、その場合当然産業資金の調達をはかる、はかる過程においてオーバーローンの解消をはかる。しかし、オーバーローンの解消をはかっていく場合には、貯蓄政策というものをあわせてやらなければ、日銀の信用をすぐ解消するというわけにいかぬわけです。ですから、貯蓄増強という政策を大きく打ち出しておりますが、しかし、貯蓄増強ということだけでは、日銀信用によるオーバーローンの解消ができても、金融資本偏重は、これはもう是正されないわけですから、その意味で直接資本である証券市場の育成強化、また長期設備資金などを行るためには、これが長期安定資金であり、当然そういう道から得なければならない社債市場の育成ということもあわせて行なって、その結果四十三年まで、いま二三対七七の自己資本比率と他人資本の比率一体を変えるのか、戦前のように六一%対三九%になるのか、少なくとも四十三年にはフィフティー・フィフティーになるのか、こういう問題をきめてかからないとならないわけです。もしきめてかかれば、証券市場を育成するためには、今度は税制上どうしなければならないかと、こういうことになるわけであります。ですから、税制上の処置などは、そんなことをしたら税理論の不公平などと言っておって、自己資本化率を上げろといっても、これはできないわけでありますから、この目標をきちんと立てましたら、国会に対して、この五カ年間で自己資本比率を高める、日銀のオーバーローンを解消する方策をひとつ政策として御審議をお願いしますから、そのときはひとつ御賛成をお願いしたいと思います。
  41. 井手以誠

    井手委員 金利についてお伺いをいたします。特に総理からお答えをいただきたいと思います。  人為的な低金利政策から今日の事態を引き起こしたことは申すまでもないのであります。この「明日へのたたかい」にも金利機能の回復ということが書いてある。金利について総理はどうお考えになっていますか。——ちょっと、これは本人が言いたんだから、佐藤さんが書いたんだから・・。
  42. 田中角榮

    田中国務大臣 金利につきましては、日本の金利が非常に高い。特に戦後の金利が高いということは、これはもう周知の事実でございます。戦前、日本が自由貿易をやっておりましたときには非常に安かったということは、いまの公定歩合が九厘、一銭を割ったときもあるのでございますから、これは現在から比べると非常に戦前は安くて、いまは高いということであります。ところが、高い高いといっておりました日本の金利が——原材料のない日本が、原材料を輸入してきて、原材料を持っている国と一緒に自由市場で競争しなければならない国でありますから、せめて金利は国際金利並みにしなければならぬ。これは当然のことなんです。しかし、きょうになりますと、公定歩合は日本よりも高い国が出てまいります。それはイギリスでございます。イギリスは七%でございます。日本は六分五厘七毛と、こういうことでありますから、日本よりも高いという国がようやく出てきたわけであります。しかし、西ドイツは三%であります。アメリカも実質三%であります。これを今度引き上げて三・五%、四・二五%であったカナダが四・五%に引き上げておる。こういうことでありまして、さすが先進国に比べて非常に高いということは事実でございます。しかし、日本銀行中心の現状であると、高いといっても、なおまだそのバランスの上からいいますと、資金需要のほうが多いというところに問題があり、低金利政策、いわゆる国際金利さや寄せ政策はなかなかとりにくいというような状態であることは事実でございます。法制上はどうかといいますと、法制上は臨時金利調整法がございまして、二銭六厘を限度にしているわけでございます。なお、大蔵省の銀行局長通達で標準金利二銭二厘とすると、こういっております。しかし、歩積み・両建て等のやり方がございますので、実質金利は大蔵省の銀行局長通達が守られておらぬということは事実です。二銭六厘の標準金利が守られておるかといえば、これも法律上は守られておりますが、守られておらない。そこで、歩積み・両建てを早く解消しなさいという皆さんのきつい御要求もあり、政府もこれと取り組んでおります。ですから、金利の議論からいいまして、金利というものを自由金利にしなさいと、公社債市場などを育成強化するには自由金利にしなきゃいかぬと、こう言います。理論的にも金利は自由化をさるべきであります。ところが、現実から考えまして、先ほどからあなたと私が話をしておるような状態日本人に金はありますよと言おうものなら、金利は高くとも、必要なときに必要な量さえ貸せれば幾らでももうけていけるという思想が横行しておる。こういう日本状態において、自由金利をいますぐとり得るかどうか、とったらどうなるか。それは設備投資年率二〇%くらいいってしまう。こういう危険が多分にございます。(「そういう日本にだれがした」と呼ぶ者あり)そういう日本になぜしたか。これがなかなかむずかしい問題でありまして、そうなったのであります。そうなった事実を直していかなければならぬのがお互いの仕事でございますから、そういう意味で金利問題に対しては、ただ単に理論的に金利は自由化なすべきであるということだけはできないわけでありまして、究極の目的は自由化に持っていく。ただ、現在は多小逆な状態にあるということもひとつ御承知いただきたいと思います。
  43. 井手以誠

    井手委員 佐藤さん、新総理は初めての予算委員会ですから、何もかにもあなたに聞こうと思っておりません。私はそれを心得て質問いたしておりますので、特に新総理に聞きたいときには名前をさして言っておりますから、その際はあなたが答弁をしてもらいたい。私も田中さんの気持ちはわかります。わかるけれども、やはり新総理の決意を聞きたいというこの予算委員会ですから、進んであなたが答弁に立ってもらいたいことを特に要望いたしておきます。先刻から話があっております中期経済計画、これは前内閣当時から採用にかかられた問題でありますから、あなたの言われる社会開発がこれに盛られておるとは考えられません。ほんとうに社会開発を実行に移そうというなら、当然中期経済計画に入れなくてはなりませんが、それはどうなさるのですか。社会開発を中期経済計画に織り込まれるお考えでございますか、どうですか。総理大臣からお答え願います。
  44. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御承知のように、私ども政治目標あるいはねらいというものを持っております。それがただいま御指摘の社会開発だというようなことにもなるわけであります。しかし、どこまでも現実の問題として取り組んだ場合に、直ちにそういうものが全部が全部取り上げられるものではございません。それは政治家である井手君もよく御承知のことだと思います。ことに来年度予算を編成するにあたりまして、現状について十分考慮を払わなければなりません。来年度どの程度が取り上げられるのか、これは当然のことであります。そういう意味でもう少し時間的な要素もお考え願いたいのであります。
  45. 井手以誠

    井手委員 それでは、この際社会開発についてあなたにお伺いをしておきたいと思う。社会開発は、これは新内閣の看板になっております。看板を掲げるときには、大体品物はそろっているはずであります。もう中身は大体できているはずだと思う。もちろん、そのことが直ちに実行に移されると、私はそう急に考えておりません。けれども、あなたが強調なさる社会開発の内容を当然予算に、政策に織り込まなくてはならぬはずです。一体社会開発の内容はどういうふうにお考えになりますか、どういうものですか。
  46. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 社会開発、これは私、所信表明でも明らかにしたところであります。御承知のように、経済開発が非常に進んできた、そうして大変化を来たしておる。そういう場合に、社会、経済、生活そのものがこれに順応しておるとは思いません。そういう意味のひずみ、これを直していかなければならない。あるいはひずみ是正と言っておるが、それよりも私は前向きの姿勢で、社会開発のこの理念でこういうひずみの問題と取り組んでいく、こういう意味でございます。  そこで、来年度は一体どういうことが取り上げられるか、公害の問題も取り上げられるでしょうし、あるいは社会保障につきましても積極的になるでしょうし、農業の問題も、中小企業の問題も、それぞれ顔を出してくるだろうと思います。しかして、私が所信表明で申しましたように、特に勤労者の住宅問題、これは真剣に取り上げたい、かように申しておりますので、この点でおわかりになるのではないかと思います。もちろん、この中期経済計画にももう社会計画、社会開発、この思想は出ておりますから、今回はおそらくその詳細を説明されれば中期経済計画にも入っておると思います。ただ、来年度予算編成にあたりまして、この社会開発の問題がどの程度どの点を具体化しているか、こういうことはこれからの問題であります。
  47. 井手以誠

    井手委員 佐藤さん、少し重大過ぎる発言をなさったようでありますが、自分の考えておる社会開発の内容はすでに中期経済計画にも織り込まれておる、従来もやっておるんだ、それは経済計画にも織り込まれておるから、これを実行すればよろしいという意味の御発言をなさった。あなたの言う社会開発というのは、経済開発が進み過ぎて人間不在状態になっておるから、今度は経済開発と社会開発を並行してやろうじゃないかというのがあなたの趣旨だと思う。十のものの中に八経済成長政策をやってきた、社会開発は二くらいであった。それを片一方は六に落とし、片一方は四にする、あるいは五分五分にするところに社会開発の意義があるのじゃありませんか。従来の政策をそのまま実行していくなら、社会開発という看板を特に掲げる必要はないのじゃないですか。これは佐藤さんのため、新内閣のために私は惜しむのであります。だから、自分はこういうことを考えておるのだ、これを実行するのだ、これを四十年度からやる、四十一年度からやるのだということを言明なさることがあなたの生命だと考えております。いままでやってきたことを、これを実行いたしますというのじゃどこに社会開発がございます。経済開発、経済計画の中に新たに自分の考えておることをよけいに織り込ませるのだ、それがあなたの生命じゃございませんか。これはどうですか、ひとつ・・。
  48. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 七月、私が社会開発ということばを取り上げ、またそういう命題を提供しました。池田総理もそれを取り上げたのであります。したがって、私はただいま申し上げるように、その程度の問題はいかようにあろうとも、社会開発はすでに前内閣も取り上げたのだ、かようなことを申しておるのでございます。それをさらに、井手さんのお話ではもっと率を上げろとか、こういうことを言っておられるようですが、率を幾らにするかということは、いわゆる予算編成の問題になってきますから、しばらくそれは預からしてもらいたい、こういうことを申しておるのです。
  49. 井手以誠

    井手委員 それじゃこういうことでございますね。佐藤内閣の社会開発とは、従来やってきておる社会保障であるとか、住宅政策であるとか、そういう社会開発の範疇に入るものを、これを今後も実行していくのだ、強く実行していくのだということ、あらためて社会開発を、こういう新しい内容のものを織り込んでやるのだということではない、こういうことでございますね。ちょっと大事ですよ。
  50. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ここは大事なことですから。在来どおりやっていくというわけじゃありません。ただいま申し上げましたように、勤労者住宅の問題は特に取り上げたい、これは所信表明でも説明したとおりであります。これははっきり申し上げて、今度の予算編成にもそういう点で顔を出してくるだろう、かように私は思います。また、あるいは児童その他の問題にいたしましても、全然遊び場を持たないものだとか、こういうようなものも、いわゆる人間尊重意味においての社会開発も進めていきたい。あるいは公害の問題等も積極的に取り上げたいとか、こういりような問題はあるのです。しかし、私が特に皆様に申し上げたいのは、政治姿勢として、はっきり社会開発というものを取り上げた、ここを買っていただきたいのです。それが先ほど来言われるように、次の予算編成にいかように消化されるか、こういうこととは別でございます。しかし、私はかように申した以上、その政治姿勢を続けてまいりますから、もちろん財源の許す範囲においてそれらのものが消化される、かように御理解をいただきたいと思います。在来よりもそういう意味では一歩進んでいる、かようにお考えをいただきたいのです。
  51. 井手以誠

    井手委員 私は国民とともに、いまの新総理の説明に失望を感ずるのであります。いままでは生産第一主義であった。人間がないがしろにされた、人間不在政治であった、何とかもっと社会開発をやってもらえぬのか。そこにあなたの新内閣に期待されておるところがあるわけです。ところが、新しく社会開発の内容は盛り込むのじゃございません。従来もやってきたことでございます。従来もやってきたこの社会保障なり環境衛生その他について、人間尊重意味を加えて予算を編成しますということでは、これではもの足らぬのじゃございませんか。中期経済計画において、新たに社会開発の内容をよけいに盛り込ませる。検討をするとか、そういうことをなさるのが私はあなたのかまえであると考える。  それではもう一つその点についてお伺いいたしますが、従来と変わりはないとおっしゃる。特に変わりはないが、政治姿勢として人間尊重の立場から重視していこうというお話でございました。そうであるなら、中期経済計画の中において社会開発のものを先に実行していこうというお考えなのか。生産基盤のものはあと回しにして、環境衛生、いわゆる社会開発に関するものをよけい先に実行していこうというお考えなのか。どちらでございますか。
  52. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 この経済の問題、これは調和のとれるところに妙味があるのです。その不調和を来たして、そうして経済の安定はないはずであります。そういう意味で私は調和の精神でそこはまいるつもりでございまして、どちらが先だとか、どちらがあとだとか、こういうことでなしに、均衡のとれた、安定した成長が望ましいのです。
  53. 井手以誠

    井手委員 それではこういうことでございますね。社会保障、社会福祉についても、教育についても、住宅についても、あるいは都市計画、農業、中小企業についても、従来やってきておったことを、中期経済計画に盛られておるものを、これを人間尊重の立場から重視していきますということですね。その程度ですね。あなたの看板になっておる社会開発というものを重視して、新たに盛り込んでやりますということではなくして、ただ人間尊重という立場から経済開発もやりましょう、社会開発もやりましょうという程度ですか。佐藤さん、よく考えてください。あなたに対してはみんなどう考えておるか。社会開発だ、社会開発だとおっしゃる。それでは何か住宅をうんと建てるとか、あるいは社会保障について画期的なものをおやりになるとかということがおそらく出るであろうと、みんな期待しておるのですよ。従来やってきたことを、これを人間尊重の立場からやりますということだけでは、これは割り切れませんよ。失望を感じますよ。
  54. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 現状、あるいは来年度予算、そういう点に限れば先ほど来のようなお話しの結果になるだろうと思います。しかし、これが長期計画ということになり、また数年後にいかような状態を設けるか、こういうことになれば、私の考えがはっきり出てまいると思います。だからその点を誤解のないように、ごっちゃにしないように願いたいと思います。
  55. 井手以誠

    井手委員 いま国民が欲しておるのは、早急に社会開発をやってもらいたい。あなたのおっしゃった、公害を排除してもらいたいという要望があります。住宅を建ててもらいたいという要望がある。計画は五カ年先のもの、五カ年のものであるから先にやるということでは、これではいただきかねます。それではよろしゅうございます。次に移りましょう。  この機会に私は大蔵大臣に対して、国際収支に関する見通しを若干承っておきたい。イギリス、アメリカ、カナダの公定歩合引き上げ、あるいはドル防衛の強化、さらに短期資本の最近の流出、いろいろ考えてまいりますと、輸出はどんどん伸びたけれども、問題の輸入水準は下がっていないということもある。海外の市場は必ずしも楽観を許さない情報がひんぴんとして入っております。こういう事態に対して今後の見通しをどうお考えになっておりますか。詳しいことは要りませんが、骨だけ御説明を願いたい。
  56. 田中角榮

    田中国務大臣 政府が当初見通しました国際収支数字を申し上げますと、輸出輸入は六十二億ドルでバランスをすることになっております。それから総合収支におきましては、御承知のとおり年度間を通じまして一億五千万ドルの赤字ということでございます。その後の事態から申しますと、約一年間にわたって金融調整が行なわれ、輸出も相当伸びておることは御承知のとおりでございます。特に政府が三十九年度予算編成前提となるべき国際収支の見通しを立てましたのが、ちょうど去年のいまごろよりちょっとあと、ちょうど約十一カ月前、昨年の十二月の初めに立てたわけであります。その後国際収支が逆調基調になりましたので、三月十八日の公定歩合引き上げを最後にしまして、一連の調整政策に入ったわけでございます。しかし、この調整もききまして、七月には貿易収支が均衡し、八月には経常収支が均衡して、現在の状態から考えますと、年度間を通じて一億五千万ドルの総合の赤字が大体とんとんくらいになるのじゃないかという見通しでございます。貿易は先ほど経済企画庁長官が述べましたとおり、二二・五%、二三%も、かつてない史上最高の伸びを示しております。これはアメリカが非常に好景気である。またヨーロッパに対しての輸出伸びておるということもあるわけでございますが、いずれにしましても輸出の場合はきいておるということで、相当輸出伸び輸出は六十八億ドル、もう少し上に行くか思います。ただ御指摘のとおり、輸入自体も上がってきた。ですから六十二億ドル・バランスが、六十八億ドル・バランスになるということになるのじゃないか。しかもその上、なお原材料在庫指数は七〇余でありまして、非常に低い水準にあります。でありますので、いまの状態金融引き締め基調、調整基調を変えないで、きめこまかな配慮をやってまいります。こういう姿勢をとっておる以上、十二月までは輸出期でございます。一−三月の輸入期を推計しましても、大体年度間を通じて多少の黒字になるというくらいの見通しは狂わないのじゃないかと考えます。ただ、こういう考え方はイギリスが公定歩合を引き上げない前の考えであります。しかし、イギリスがもう引き上げている。しかも一挙の引き上げになり、アメリカ、カナダがこれに追随をして公定歩合を引き上げ、一部においては、世は高金利時代になるのではないかとさえ言われておるわけでありますから、そういうことから考えて、輸出伸びるかどうか、いろいろな問題がございますが、経常収支改善のための方策も行なっております。開銀融資によって外航船舶もつくったり、また観光の問題に対して本腰を入れたり、日本から出る自由渡航の問題に対しても多少セーブをしてもらったり、いろいろな施策をやっておりますので、これらの一連の国外における状態に変化はあったにしろ、おおよその見通しに対しては間違わないでいけるのではないかと考えております。  なお、その上に一言申し上げると、公定歩合の引き上げという問題は、去る九月に行なわれましたIMFの年次総会の当時から、イギリスが公定歩合の引き上げを行なうのではないか、また行なった場合、アメリカ、カナダも一連の引き上げを行なうのじゃないか、それがアメリカの好景気にどう作用するかということは、多少織り込み済みと申しますか、いずれにしてもそういう事態をあらかじめ予想して、多少長期にわたるとさえ思われる金融調整を続けてきておるわけでありますので、ここで国内政策としては変更を必要としない、このように思われるわけであります。
  57. 井手以誠

    井手委員 ただいままで経済政策についていろいろとお伺いいたしましたが、一番肝心の安定成長安定基調めどがわかりませんでした。また社会開発についても、残念ながら中身がないように承りました。非常に残念です。  次に、財政政策についてお伺いいたしますが、まず大蔵大臣、いま提出されておる補正予算の財源にずいぶん苦労なさった。消費者米価、このことが唯一の財源になったような感がいたしますが、一体四十年度の自然増収の見込みは幾らであるのか。そして、その中にいわゆる当然増とか長期計画に基づく予算計上であるとか、そういう硬直性のあるものが幾らくらいであり、新規の政策にどのくらい予算か見込まれるのか、この点、数字的にお示しいただきたいと思います。
  58. 田中角榮

    田中国務大臣 現在まだ明年度の経済成長率を想定できる段階に立っておりませんので、税収が幾らになるかということはさだかに申し上げられる段階にないということは御承知いただけると思います。  ただ、前にも申し上げておりますから、大ざっぱなことさえもいまになってわからぬのか、こういうことを言われるおそれもございますので、全く大ざっぱでございますが申し上げるとすると、今年度の予算が三兆二千五百億でございます。これに補正額が加わるわけでございます。おおむね税収の総額三兆円、こう見ましても、来年度の成長率を名目一〇%程度経済企画庁長官等考えておられますが、まだ経済企画庁、大蔵省の調整さえついておらないのでありますから、そういう意味で受け取っていただきたいと思いますが、少なくとも実質七%から八%の間、名目成長率を九%ないし一〇%の間、こういうことでもって推算をしますれば、弾性値を見ましても大体一・一五、四千五百億くらいの自然増収しか見込めないのではないか、こういうことをいわれるわけであります。ですから、新聞にも四千五百億しか財源の自然増収はない、こういわれておるわけでございます。四千五百億に対しましては、特に今年度の減税をした平年度化ということで、今年度よりも五、六百億金が減るというような面も全部精算をしまして、大体四千五、六百億、こう見るのが普通だ、こう申し上げておるわけです。その中で硬直性のものがどのくらいかということですが、千四、五百億は硬直性のものというよりも、いまの地方交付税その他大蔵省でどうにもならないものがございます。これは千四、五百億と大ざっぱに見て間違いはないと考えます。
  59. 井手以誠

    井手委員 給与費のほうとか、あるいは医療費の問題であるとか、そういった当然増と交付税など、あるいは減税を引いてどのくらい新規に向けられる財源があるかと聞いております。
  60. 田中角榮

    田中国務大臣 これは、まだ数字的にはむずかしい問題でございますが、確かにこの補正予算が通りますと、人件費は平年度化されるわけであります。九月一日のものが年間になりますから、そういうものとか、社会保障費だけで四十年度にふえるものか約七百四、五十億から八百億、こう推算されておるわけです。ですから、こういうものを入れてどのくらいになるか、まだこまかい問題はわかりませんし、大ざっぱに読んでおっても、それを少なくともここで公表できるようなところまで煮詰まっておりませんが、四千五百億の中から硬直性の第一、いわゆる交付税等でどうにもならないもの、だまって別の項目に計上されるもの、そのほか五カ年計画、また家族給付等がそのまま平年度化されるということで、そういうものを全部ひっくるめてどのくらいあるのか。四千五百億から千億くらい引いてみれば、三千五百億、三千五百億より以上あるかもわかりません。いずれにしてもそういう歳出に食われるほうが非常に多いということだけは申し上げられると思います。
  61. 井手以誠

    井手委員 今日までの財政政策あり方、いままでは高度成長政策につれて、大型予算だといってどんどんありったけの財源を使い果たしてきた。一方では、将来予算化されるいわゆる硬直性のものをどんどん約束してきた。いわゆる予算の硬直性について私どもは何回となく警告しましたが、今日どうにもならぬ羽目におちいっておるはずです。いまお話しになった幾つかの項目は、全部いわめる物価の上昇によるはね返り、約束のもの、こういったものでぎりぎりになっておるじゃございませんか。いままではずっと経済が一〇%以上伸びておった。名目では十数%伸びておった。それを上回る財政の膨張であった。これは私は財政当局としてとるべきではなかったと思う。しかし、いま言ってもしようがない。今日はすでに財政政策は曲がり角にきておる。壁にぶち当たっておるはずです。この際、財政構造というものを再検討して新たに再出発する必要があると考えますが、大蔵大臣、あなたはもう長くおやりになっておるからおわかりでしょう。いままでのような財政あり方ではやっていけないはすです。うしろ向きの予算なんか組むべきものじゃないはずです。たとえば農地その他について、おとといも何か質問があったように新聞で承りましたが、そんなうしろ向きの政策を実行する余裕はいまないはずですよ。財政の責任者としてこの点をどうお考えですか。
  62. 田中角榮

    田中国務大臣 井手さんの御指摘、非常によくわかります。いままでの国会の御審議は、政府だけでもって適当に予算をやってはならない、すべてが法定主議によって国会でもってまとめられる、しかも五カ年計画を組め、単年度ではいけない、法律によってやれと、こういうことで財源を縛って歳出を確保するという方向の御発言ばかりでございましたが、今日井手さんのような、ほんとうに健全な御発言のあることは、財政当局としてははなはだ喜んでおるわけでございます。ほんとうにそういう状況であります。ほんとうにまじめに私は日本財政を考え、ほんとうに安定成長に導き、長期の国際競争場裏に立っていかなければならないとしたならば、財政姿勢に対してそうあるべきだ。しかし、法律は、一つ改正するにも、増額をする法律はいいのですが、なかなかどうも五カ年計画をもう一ぺん再検討するとか、減税法律は通っても、増税法律とか税の調整をするために税率を引き上げるようなものは、なかなか通りにくいというところに問題がございます。しかし、私も、いま御指摘の問題等、ほんとうにそう思っております。こっちでいま佐藤総理があなたに先ほどからいろいろな御質問を受けておりますように、社会開発という大きな看板を掲げても、一体予算はできるのですか、そういう御指摘を受けておりますが、そういうふうに予算そのものが硬直性をだんだん持ってきておって、大蔵省としても非常に困っておる状況でございます。しかし、私は、困っておっても、その中で一般会計だけが硬直しているから政策ができないというものではない。一般会計と財政投融資と、もう一つ民間の金融との総合調整をはかることによって、まだまだ私は政策的には新しい政策を勇気をもって取り上げていけるという自信もあります。またそうすべきであると思いますが、少なくとも一般会計の中も、もう少し合理性ということが考えられれば、非常によろしい、とこういうことでございますので、この四十年度の予算編成につきましては、あなたにいま御指摘を受けたような姿勢、ニューモードということで、ひとつ政策を提案をいたします。それで御審議をいただきたい。それに既定経費の中でも、少し荒っぽくなるかもわかりませんが、やはり整理をするものは整理をする。また歳出でもって削減をするものも削減をする。ある意味において重点的な施策に重点的に予算配分をするという姿勢をとりたいと思います。そういう考え方でございますので、ひとつよろしくお願いいたします。
  63. 井手以誠

    井手委員 田中さん、何もきょう初めて私が申し上げたのじゃないですよ。毎回これは警告しておるのですよ。農地予算を見てごらんなさい。あんなもの何が必要ですか。あんな約束をするから、圧力団体に屈するからこういう事態になっておるのですよ。いまどき地主報償の予算など組むべきじゃございません。しかし、これはきょうの議題ではございませんから、私はこれでとどめておきます。  そこで、私は提案いたしますが、あなたがおっしゃる財政投融資、これは特に今日まで景気刺激した予算になっておるのですよ。財政投融資が一番罪が一般予算よりも深かったと思う。そこで、これは基幹産業に回す金があるから、私はいけないと言っておるのです。   〔委員長退席、青木委員長代理着席〕 そこで、今後は従来のような財政あり方じゃなくて、成長刺激するようなそういう予算はこれを排除して、農業、中小企業、こういう格差、あるいは公害その他の矛盾、あるいは低所得者層、こういった格差解消の予算に重点を置くべきじゃないか、それが必要ではないか。さらにもう一点は、産業基盤強化の政策から生活環境強化の予算を組むべきじゃないか。私は、社会開発が非常に重視されておる佐藤内閣ですから、そうあるべきだとは考えておりますけれども、そういうふうに予算のあり方を変えるべきではないかと思いますが、この二点について大蔵大臣考え方を承っておきます。
  64. 田中角榮

    田中国務大臣 予算は、生産面に対して景気刺激するような方向にだけ予算が重点的に支出をされておるというふうな御認定で御発言がございますが、私は必ずしもそう考えておりません。いままで確かに一般会計が対前年度比で相当な高い比率で伸びては参りましたけれども、もう来年度の伸び率は少なくとも二〇%とか一八%というのではなくて、一〇%ないし一三%、一三%の財源を確保できるのかどうかと言われておって、三年前の約半分になっておる。伸び率が少なくとも三十六年の二二・四%、二四・六%から比べれば、非常に低い数字で押えられておるということでありますが、この中を見ますと、やはり社会保障とか、そういう戦前になかった項目が非常に大きなウエートを占めておるということは、言い得ます。言い得ますというよりも、佐藤総理が言われたように、社会開発中心の予算であるとさえ私は考えておる。でありますから、先ほど申し上げたとおり、厚生省関係の自然増、自然の歳出増だけで年間八百億に近いものになるわけです。一体こういった数字を持つ世界各国の予算の状態があるかというと、ないわけであります。ですから、こういう意味で、わが政府がつくっておりますものが、景気刺激というよりも、社会保障とか、そういう恵まれない、いわゆる日の当たらない面に対して可及的すみやかに先進国水準に上げようというようなものになっておることは、事実でございます。しかし、それかといって、これからもなお、総理は特に社会開発を大きな柱にあげられて誕生した内閣でございますので、そういう面からも特に重点的に進めてまいりたい、こう考えます。  さっきあなたがちょっと申された一般会計と財政投融資の問題は、これはまた次の予算委員会等でもって十分御論議も聞き、私も申し上げたいと思うのですが、ちょうど四十年度の予算を中心にして考えますときに、必ずしも——あなたがいま言ったように、財政投融資が景気刺激したという考え方をもう一ぺん考えていただきたい。私もいまだ考え方がまとまっておりませんから、さだかには申し上げませんが、今年度のやつを申し上げますと、予算が三兆二千五百億であります。それから第二の、財政投融資は一兆三千億であります。民間の金融機関の年間の資金量の増大は、約三兆五千億であります。三兆二千五百億、一兆三千億、三兆五千億、この数字を見るときに、一体これでいいのか。あなたが資金をもう少し効率的に、景気刺激しないように民間資金をうまく活用せよということになると、どうもこの一般会計と財政投融資と民間の資金との数字というものには、もう少し調整の必要があるのではないか。そうすることによって経済をもっと安定をさし、その過程においてひずみは解消され、もっと輸出伸びるような状態も招来できなくはない、私は何かそういう感じもいたしますので、現在その間の事情をひとつ十分詰めて、新しい観点に立って四十年度の財投計画をきめたい、こういう考えを持っておるわけです。これはいずれ私も申し上げますが、御研究をわずらわしたい、こう考えます。
  65. 井手以誠

    井手委員 次に、特に総理からお答えをいただきたいと思います。  これは七月四日の午後、総裁公選にあたって佐藤さんが発表されたもので、新聞に大きく出ておるのです。三千億減税をいたします、こう書いてある。所得税を中心初年度三千億減税を公約なさっておる。あなたはかつて大蔵大臣もなさった。総理、総裁の本命と言われたあの当時、私は軽々にこれが出たとは考えておりませんし、特に初年度からと断わってある。おそらくこれは間違いはないと信じておりますが、初年度三千億減税の御意思がおありになるかどうか。よもや間違いはないだろうと思いますけれども、念のためにお聞きをいたしておきます。
  66. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 三千億減税を約束したことは事実であります。しかし、初年度ということは、私は何かの間違いではないだろうか、かように思います。もっと減税をしたい、こういう気持ちはございましたが、これは何年間ぐらいにそれが実現できるか、もっと経済の実情を把握しなければいかぬ、かように思いますので、ただいま御指摘になりました初年度、これは、その新聞の記事に私は責任を持ちません。
  67. 井手以誠

    井手委員 こう書いてある。「国民負担軽減のため、初年度に、所得税を中心とする三千億円の減税を行なう」と公約された。これは、新聞は全部私は見てまいりましたが、どの新聞にも初年度ということが入っております。じゃ初年度じゃなくて、それはどうでございますか。それは新聞社の責任になさる、間違いだとおっしゃる。それじゃいつ三千億円の減税を実行なさるおつもりですか。
  68. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは、減税をやりたいという姿勢でございますから、さように御理解をいただきたい。
  69. 井手以誠

    井手委員 姿勢だとか、気持ちだとかいうことでは、政治家は済まされません。三千億円の減税をする。これは佐藤さんやるだろうと、私は総裁公選のときもたくさんの票があなたに入っただろうと思う。これは党内向けじゃございませんよ。総裁の選挙があれほど麗々しく新聞に報道されたというのは、その立候補者はおそらく次の総理になられるだろう、そういう見込みのもとにみんな期待しておるのですよ。あなたに今日それを期待しておるのです。それを新聞社の間違いであろうなどということでは、私は済まされぬと思う。もしその初年度だけが間違いなら、それじゃいつ三千億円減税を実行なさるのですか。昭和四十一、二年度までにおやりになるおつもりですか。その点だけはっきり聞いておきたい。気持ちだけでは済まされぬ。
  70. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま税制調査会が答申を用意しつつあります。私はその調査会の答申を待って、どういう答申が出てくるか、これを待たなければならないと思います。ただいまお話しのように、その新聞記事自身にこだわるわけではありませんが、初年度というようなことばを減税ではあまり使わないでしょう。平年度とかというようなことばを使うだろうと思います。私、その記事自身が、そういう意味ではややしろうとくさい記事ではないか、かように指摘しているのはその点であります。みなさんもそれははっきり平年度幾らだと、こういうことで御了承願っておる。したがいまして、ただいまの国民負担は、ほんとうに高いように思います。私は、かつて大蔵大臣時分に、一体国民所得と国民負担との率はどのくらいがいいのか、こういうことを尋ねられました。私それに答えて、大体二〇%程度にはしたいものだということをはっきり大蔵大臣当時に申しました。今日もなおそういう考え方を持っておりますけれども、しかし、減税という事柄は、そのときの経済情勢、これを十分勘案して、そうして結論を出してこなければならないことであります。みなさん方も減税について非常な御期待をかけられることはよくわかりますが、これは非常に急ぐという、それだけでは事は済まないんだ。問題は、当時の状況をよく勘案して、しかる後にこれを断行する、こういうことでなければならないのです。
  71. 井手以誠

    井手委員 総理は、初年度はこれは間違いだ、平年度だとおっしゃった。それでは平年度と私は理解しておきます。  あすあなたは総裁になられる予定ですが、総裁の任期は二カ年ですから、それじゃ二カ年の間に三千億円を所得税を中心に減税するということでございますね。それよりおそらく下回らないでしょうね。
  72. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま申し上げますように、その記事自身で初年度ということにとらわれていらっしゃるが、大体税の問題ならば、平年度ということばを使うんです。したがって、平年度幾らだということを申しているわけではございません。ただ、その記事自身がそういう意味でしろうとくさいじゃございませんかということを申し上げた。私はその記事を非難するわけでもございませんが、よくおわかりのみなさんがそういう記事を取り上げられることはどうかと思う。さらに、ただいま申し上げるように、減税の問題は、国民がほんとうに希望し、またこれを願うところでございます。しかし、これは経済状態と勘案してきめていかなければならない、かようなことを申しておるのでありまして、ただいま、私が二年間にはやるのか、こう言われましても、現在の経済情勢からはなかなかそういう結論は出てまいりません。この点は、先ほど来大蔵大臣の説明でおわかりだと思います。私は、政治姿勢として、国民負担の軽減をする、そういう方向へ持っていきたい、このことを重ねて申し上げます。
  73. 井手以誠

    井手委員 この「明日へのたたかい」にあなたはこういうことを書いておる。なかなか具体的で、けっこうなことが書いてある。「ただし、当面重点をおくべきは所得税の減税であり、少なくとも課税最低限度と標準給与家族の場合の標準生計費(三十八年は四十七万円)」——大蔵省が出した最近の資料によりますと、五十四万三千円、「の間に、若干のマージンをおき、中産階級の税負担を軽減すべきである。」とおっしゃっておるんです。四十七万円ですよ。標準生計費と最低課税限度との間にマージンを置いて課税すべきだとおっしゃっておる。そうであるならば、当然三千億円減税が出てくるじゃございませんか。数字から計算すれば出てくるはずである。あなたの側近の人は、ちゃんと計算して三千億円を出しておるはずですよ。重ねてお伺いいたしますが、それは間違いだとおっしゃいますか。
  74. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 数字の計算、それはいろいろのことがいわれております。私も、ただ単に勘で申し上げたわけではございません。したがって、ただいまお読みになったことは、これはあるいはそのとおり御理解いただいてもけっこうかと思います。問題は、いまお尋ねになりますように、いつ実現するか、いつ実施するか、こういうことにかかっているんです。この点が、先ほど来何度もくどく申し上げますように、理論がいかようにあろうとも、現状において減税がそこまでできるかどうか、これは税制調査会の答申も待って、しかる後に私どもも検討していかなければなりません。
  75. 井手以誠

    井手委員 あなたが総裁公選のときに、池田政策を批判なさった。あなたはこう言っておられる。ひずみ是正というのは、そんななまやさしいものじゃございません。これは構造的なものであると言わんばかりに——構造的とはおっしゃっていませんけれども、高度成長によるひずみは、単なる手直しその他じゃないということをおっしゃっておられる。それほどに根は深いんですよ。今度の場合は、半年、一年の金融引き締めでなおるような病気じゃございません。   〔青木委員長代理退席、委員長着席〕 そうしますと、経済情勢が悪いから実行できないとおっしゃいますが、今日の経済情勢は、これはもっと私は深刻になると思う。これはみな一致した意見である。構造的なものである。そうしますと、ここ数年の間は減税ができないということになるわけですよ。気持ちはあるけれども、できないということになってまいります。これ以上お聞きするとなんですから、総理大臣最初の場合ですから、これ以上私は責めません。けれども、あなたの公約は実行できないということになる。  そこで次にお伺いいたしますが、企業減税の問題。田中大蔵大臣は、前内閣から大蔵大臣をつとめておる。企業減税と所得減税はできるだけ半々にしたいとおっしゃる。その気持らはわかるけれども、今回は新内閣ですから、総理大臣から私は所信を承りたい。この企業減税、租税公平の原則からはずれているような租税特別措置法というもので大企業には二千数百億円の減免税が行なわれている。こういう優遇を受けている企業に対して、なお減税をしなくてはならぬとは考えておりません。特に私この際申し上げたいのは、安く外国に輸出しているような企業、あるいは現在四千五百二十億円というばく大な交際費を使っている企業——これは大蔵省の統計に出ている。そういう企業の減免税は、必ずしも企業の発展には結びついていないんですよ。それを考えてもらいたい。だから、総理大臣に率直にお尋ねいたします。減税ではなくて、所得税中心の減税をおやりになる意思があるかどうか、それをお伺いいたしておきます。
  76. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 井手さんも、税についてはたいへんな権威だと私思います。そういう意味で、井手委員のお説につきましてももちろん敬意を表しますが、ただいま私どもは税制調査会にその答申を求めております。したがいまして、これが税制調査会の答申を得た上で、大蔵大臣におきまして御議論になりましたような企業減税あるいは所得減税、そういうものをコンバインして、いかような減税案を具体的につくりますか、しばらくお待ちをいただきたい。大蔵大臣をしてりっぱな案をつくらしたい、かように考えております。
  77. 井手以誠

    井手委員 重ねてお伺いいたします。税制調査会は、自然増の二〇%を減税に充てるべきだ、その減税の中心は所得税である、と中間答申をいたしております。これを尊重なさるおつもりですね。これだけお伺いします。所得税中心の減税という答申を尊重なさるつもりですね。
  78. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 税制調査会の答申の基本的態度は、これは私ども尊重していかなければならぬと思います。ただいま申し上げますように、具体的なものにつきましては、大蔵大臣をして調整さすつもりでございます。
  79. 井手以誠

    井手委員 いや、私が聞きたいのは、所得税を中心に減税すべしという中間答申があっておりますが、これを総理大臣は尊重なさいますかと聞いておるのです。あなたのよく言われる政治姿勢……。
  80. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど申しましたように、まことに問いは簡単でございますが、答え方も、その辺率直にイエス、ノー、そうは答え得ません。先ほど来申したような私の態度でございます。
  81. 井手以誠

    井手委員 もう一つ公債発行について。佐藤さんは公債発行論者だとよく言われておる。先般の所信表明においての質問に対しましても、条件がそろわなくてはやれないとおっしゃった。その条件とは何でございますか。
  82. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど来、いろいろ経済の実情についての質疑が重ねられました。それによりまして、公債を発行し得るような条件が現在整っておるかどうか。問題は公債の消化でございます。消化がいかなる方法によるのか、これは最も大事なことであります。ただいまお尋ねがございましたが、現状については、先ほど来の大蔵大臣の率直な答弁によりまして、よく事情はおわかりだと思います。
  83. 井手以誠

    井手委員 大蔵大臣、いま総理大臣は、公債の消化に問題がある、起債市場に能力がないというお話でございましたが、いまの経済情勢、機能を失った証券市場などを考えてまいりますと、これが簡単に立て直れる条件が整うとは考えておりませんが、大体何年くらい努力すれば立て直る見込みがありますか。四、五年ですか、もっと先ですか。
  84. 田中角榮

    田中国務大臣 公債の発行という問題に対しては、ここでひとつ明らかにいたしておきたいと思いますが、俗に内国債を発行する、それは一般会計の財源にするということに対しての御質問でございます。一般会計の財源にするために内国債を発行するかどうかという問題については、現在のところ、少なくとも四十年度予算編成に対しては発行しない、こういうたてまえをとっております。これはなぜかといいますと、先ほどから御指摘がございましたように、健全財政を貫くということが一つございます。国際的な特勢から見ても、日本が現在まで健全財政をやってきて、ここでもって公債政策を採用するということは、必ずしも適切な処置ではないという考え方もございます。  それからもう一つ考え方は、一般会計を過大にして、さなきだに総需要の大きい日本景気刺激してはならないということは、私もあなたも同じ考えでございますので、そういう意味で、一般会計の財源として公債を発行するということは考えておりません。こういうことであります。これをともかく将来とも——学問的な上にも、また将来発行するためにはどうするか、これはもうやはり将来発行する場合のことを想定しながら考えなければならないことは、起債市場の問題でございます。いま発行すればどうなるか、これはあなたが先ほどから、やっちゃいかぬ、今日の事態を築いたのは日銀の信用膨張だ、そう言っていることと同じことなんです。公債を発行すれば、当然引き受け手がなければ、日銀信用によって公債を引き受ける。オーバーローンを解消するために、もしやむを得ず公債を持ち出したとしても、日銀信用を収束させるために日銀引き受けの公債を出してやったというのではなんにもなりません。しかも私は第二の段階として、日銀信用、オーバーローンによって景気が過熱をしたと同じような現象が起こる可能性のある日銀引き受けの公債発行ということは、これは慎まなければならぬ、こう考えます。  もう一つは何かというと、まあ一つ国民、いわゆる零細国民に相当な金がある。これは郵便貯金とかいろいろなものがふえておる。この購買力というものを吸い上げるために、物価対策上から考えてひとつ減税国債を出したらどうかという議論があります。私は、これにも踏み切るにはまだ早い。これは戦時中もまた戦後も、いろいろなそういうことをやったこともありますし、考えたこともあるのですが、当初の考えよりも別な方向になるので、私は減税国債必ずしも今日踏み切るべきではない。  第三の問題は、流通市場の問題であります。流通市場自体が、公社債市場の流通市場はほとんどない。日銀の行なっておるマーケット・オペレーションも、マーケット自身がない。オープン・マーケットのないところでオペレーションをやっているので、金が偏在をする、こういうことになっておるわけですから、私は、公社債市場の育成強化といっても、これは金利問題、先ほどあなたが御指摘になりましたが、こういう問題とか、起債条件、発行条件の問題とか、規模の問題とか、国民自体が一体そういうふうになるのか、税制上の問題とか、いろいろな問題がありまして、ちょっと一、二年で完全に国債を出せる、自由市場、オープン・マーケットをつくれるという環境にはないと思います。しかし、皆さんが四十年度の予算、税制改正で、ひとつ証券市場、オープン・マーケットをつくるために税制上思い切った施策でも御賛成願えれば、これはまた一、二年間のうちで大いに起債市場も確立をするということもありますが、まあいずれにしましても、内国債の発行議論をそう急ぐ段階ではない、こういうふうに考えております。
  85. 井手以誠

    井手委員 内国債発行は、条件はとてもむずかしいのです、しばらくの間は。  そこで、当面一番国民の関心の的である物価についてお伺いをいたします。政治姿勢についてお伺いをいたします。  まず経済企画庁長官に聞きますが、数字だけお答えいただきたいと思う。十月における全都市の消費者物価指数は、幾らになっておりますか。十月における全都市の消費者物価指数、それを今後横ばいとした場合には、前年度に対してどれだけ上昇になるかをお伺いいたします。数字だけでけっこうです。
  86. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 御承知のとおり、十月には野菜の価格が非常な暴騰をいたしました。その結果といたしまして、十月は、全都市の消費者物価は、前月比較において二・一%の上昇に相なっております。これは、私ども物価を扱うものといたしましては、実は一つのショックでございましたが、十一月になりまして、大体全国的に相当低下を見せております。御承知のとおり、十一月の東京の消費者物価は、〇・九%の下落と相なっております。しこうして、一昨日もその議論があったのでございますが、十月の二・一上がった水準でずっといくという前提に立ちますると、今年度で四・六%の上昇ということに相なるかと思います。しかしながら、これを季節的なものを除き、また十一月の状態で推移するとすれば四・二%いく、大体こういうような傾向になると思います。
  87. 井手以誠

    井手委員 高橋さん、野菜は日常生活で一番大事ですよ。一番大事なものを残すような数字の発表は、ここでは要りません。すでに本年度の予想の四・二%に対して、今後横ばいを続けた場合には四・六%の上昇です。これはたいへんですよ。しかも農林省が出した野菜の見通しや、あるいは魚が不漁である点などを考えてまいりますと、今後ますます物価が上がると見なくてはなりません。公共料金を考えますと、上がると考えなくてはなりません。  そこで総理大臣伺いいたします。この間、経済企画庁長官の高橋さんは、十月の予算委員会において私にこう言った。ここに持ってきておりますが、四・二%以内に絶対にとどめますと言明をなさっておる。私は責任をあとで問います。ところが、十月にはすでに全都市の消費者物価指数が前年に比べてこれを横ばいとした場合に四・六%の上昇である。物価上昇を抑制するんじゃない。物価を下げなくちゃならぬ事態になってまいりました。総理大臣所信表明で、当面の課題は消費者物価の安定に重きを置く。そして成田さんの質問やその他に対して、物価問題には真剣そのものでありますとおっしゃった。台所を安定することが政治の姿であるとあなたは何回もおっしゃっている。台所はいま恐慌状態である。これに対して、物価を下げさせる決意をこの際総理大臣から承りたいと思う。——ちょっと待ってください。高橋さんにはあとで聞きます。時間がありませんから、ちょっと待ってください。
  88. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 数字の問題を高橋長官から説明させますが、ただいまお話しのように、政府は真剣にこの問題と取り組んでおります。きょうあたりの新聞を見ますと、野菜の値段はよほど下がってきたんじゃないか、こういうような記事も出ております。この記事が私の目につきますことは、こういうことにも非常に意している。台所を守るという、その立場からこういう記事が目に映っているんだと思います。私は、先ほど来御議論なさるところのものが、特に季節的なものであるとか、あるいは特別な不漁の結果魚類の値段が高いとか、こういうことは季節的にはあるだろうと思う。しかしながら、総体として順調な、平準な状況物価が推移すること、これが望ましいものだと思います。ただ、消費者物価と言っても、台所のことばかり申すのではございません。私は、全体の物価問題に真剣に取り組まなければならないと思っている。そういう場合に、生産の上昇があり、また物価が相当上がってきても、これが消化されたと申しますか、受け入れられた。最近になって特にこういう点がやかましくなった。それは一体どういうことなのか。これはやっぱり国民消費の面におきましても、健全消費ということでないと、物価はなかなか安定しないのじゃないか。私は、政府だけの責任のようにこれを責められることは——政府はもちろんのこと、政治の責任を持っているんですから、そういう意味で責任を強く感ずることもけっこうだが、同時に消費者も健全な消費だ、こういうたてまえでないと、ただいままでのように総需要が非常に伸びてきている、そういう際に、物価自身を上げないで、そうしてこれがとどまる、こういうことは、経済現象として考えられないのじゃないか、そういう場合にりっぱな物価を形成するということは、やっぱり健全消費という、そういうたてまえにおいての国民一般の協力も得なければならないものだ、私はかように考えます。したがいまして、先ほど来議論になっておるもの、これは流通機構の面において——こればかりとは申しませんが、流通機構の面が非常に大きく物価を左右するように思いますので、特にそういう点につきまして関係各省を動員して、非常な真剣さをもってこれと取っ組んでおる、こういうような状況でございます。
  89. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 先ほどの御質問は、十月の二・一%上がった状態で推移したらばという前提の御質問でございましたので、ああいうふうにお答えしたのであります。ところが、現実に十一月は東京において〇・九%の下落を示しておる。また、例年の傾向を見ますと、十一月、十二月はいつも野菜の値下がりを示しておるのが従来の趨勢値でございます。そういう点から見て、いまだに四・二%程度に何とか押えたいということであらゆる努力を傾注しているのが現状でございます。ただ、総理大臣からもお答え申し上げましたように、物価は各種経済活動の結果としてあらわれる数字でございまして、これを初めからきめていくということはなかなか困難な問題であるということは、井手さんもよく御承知のとおりだと存じております。
  90. 井手以誠

    井手委員 佐藤さん、あなたはこの間記者会見でこう言われておる。台所を脅かされてはほんとうの政治ではないとおっしゃっておる。これはそのとおりですよ。消費者に安いものを、まずいものを食えという責任をかけられることは、これはけしからぬ話です。いま、まずいものとはおっしゃらないかもしれないけれども、消費態度を変えるとおっしゃった。言外にそのことが言われておる。私は四・二%以下に押えることがいま一番大事なことである。一昨年十二月に消費者米価が一二・四%上がったときに、それまでは横ばいであった物価が、その後半年の間に五%上がっておるのです。そういう政府姿勢政府物価を上げたからほかのものもどんどん軒並みに上がってくるという、こういう現象がございますから、いま私は、佐藤内閣に一番望まれるものは何か、物価を上げさせないという厳然たる態度です。ケース・バイ・ケースでやるとか、あるいは何でやるとかいう、そういうなまぬるいことではだめです。  それで、ここでお伺いいたしますが、なるほど一部は自由価格ですからやむを得ないかもしれぬ。けれども、少なくとも政府の関与した公共料金については断固たる態度を示すことが、私はいま佐藤内閣に課せられた一番大きな任務であると考える。次々に公共料金は軒並みに上がろうとしておる。これに対してどうお考えになっておるか。
  91. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 公共料金、これは政府は断固たる処置をとりまして、一年間これを据え置いた、こういう状態でいまその一年間が切れようとしておる。今後の問題といたしまして、私は経済の正常化をすることが最も大事なことだ。なお、本来から申しますならば、一つ一つ押えるいわゆる力の政治、これは必ずしも成功するものではございません。先ほど来お話を私静かに聞いておりまして、法律をつくる、あるいは統制をする、それで万事おさまるようなお説のように私聞き取りますが、必ずしも力の政治だけではいかない。ここはもう一つ考える余地があるものじゃないだろうか。私は、やはり政治自身は、国民すべての者の協力を得る、そういう形のものを望まないと、実効を、十分の成果をあげることはできないように思います。したがいまして、ただいま政府自身が公共料金の値上げについてケース・バイ・ケースでこれに対処していく、こういうことを申しておりますのも、ただいま申し上げるような気持ちでございます。私どもは、力の効果というものも全然無視はしませんけれども、何だかその力だけにたよって社会事象あるいは政治事象あるいは経済事象を片づけていこうというその考え方は、一番あぶないのじゃないか、私はかように考えます。
  92. 井手以誠

    井手委員 佐藤さん、私は、この物価問題ではそう簡単には引き下がりませんよ。この物価の安定というのは、昨年の総選挙のとき自民党は何とおっしゃった。一両年の間に物価を安定するという約束をなさったではございませんか。どこに安定しております。これはもうすでに予定をどんどん上回った物価の上昇、しかも一月からはケース・バイ・ケースで上げなくちゃならないものがたくさん出てくると予想されておる。みんな押えられておる。一カ年間押えられたならば、当然上がってくるじゃございませんか。その政府が関与できる公共料金に対してき然たる態度を示すことが、私は一番大きな任務であると考える。私は、これは国民環視の問題ですから、注目の的になっておりますから、あなたの厳然たる決意を聞かなくては引き下がるわけにまいりません。少なくとも公共料金をどうする、一カ年の間に、公共料金についてはそれぞれ検討があったはずです。してないならば、それは政策じゃございません。政策は不在といわねばなりません。だから、一月から軒並みに上がろうとするこの公共料金に対して、あなたのよく言われる政治姿勢をどうなさるつもりか、しばらくストップを延長して、その間に対策を考えてやるという方針をとられるかどうか。いまのままのケース・バイ・ケースで善処しますということでは、絶対納得できません。
  93. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  先ほど来、私の、政府態度ははっきりさしたつもりでございます。社会党さんが引き下がらないとおっしゃっても、私は公共料金の取り扱い方についてはケース・バイ・ケースでこれを処理していく、こういうことに変わりはございません。しかして私どもが当面しております問題、物価問題も先ほど来の御議論がそのとおりでありますが、どこまでも経済を安定させない限り、真の正常化された事態は生じないのであります。それにこそわれわれが最も力を入れるべきじゃないのか。経済金融あらゆる面において正常化の努力をし、しかる後にただいまのような物価問題というような派生的なものが解決されるものだ、かように私は思います。全部が総合的に関連しておる。その総合性を無視して一つだけをいじめると、そういう形のものにはいかない。とにかく過去において、あるいは資金統制あるいは物価統制、そういうものが十分の効果をあげなかったのもこういう点にある。片一方でやみ屋が横行するようになりましても、これは社会秩序の破壊だ、かように私は考えます。かようなことがもっと大事なことなんです。したがって、先ほど来申しますように、井手さんのお説もさることですが、私は力にたよる政治は望ましいことではない、こういうことをはっきり申し上げます。
  94. 井手以誠

    井手委員 あなたはこの「明日へのたたかい」にも書いてありますが、消費者物価上昇は当然だとの見解は反省しなくてはならないとおっしゃっておる。高度成長のひずみから、構造の中から物価がどんどん上がっておる。ならば、派生的な問題じゃございませんよ。あなたはいま派生的とおっしゃった。そういうことじゃございませんよ。いま一番大事な物価問題、上げなくちゃならぬような構造になってきたこの物価問題に対して、政府がどう決意を示すかということを国民は注視しておるのですよ。それじゃ、ケース・バイ・ケースでやりますということは、物価が上がってもいたし方はございませんということですか。上がってもしようがないということですか。
  95. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 もちろん物価の上がることは好ましい状況ではございませんから、その影響するところを十分勘案して、そして処置したいと思う。消費者米価を上げたことが一般物価に非常な影響を持つ、こういう御指摘がございましたが、これは経済企画庁の説明、その資料ではっきりするだろうと思います。私はこの数字自身を金科玉条といいますか、一番のたよりにはいたしませんが、ことに消費者米価そのものについては、これは何といっても米食の国民ですから、そういう意味消費者米価が上がったということは心理的影響があるだろう。政府としては、そういう心理的影響をも勘案しつつこういう問題と取り組んでおる、こういう例に申し上げるのです。したがいまして、今後公共料金の問題、あるいは引き上げの問題等が起こるでしょうが、それらの影響するところも十分勘案して、影響の少ない、あるいはほとんど影響はない、こういうような結論が出れば、これはやはりその処置をとることが当然ではないか、私はかように思います。ことに企業体の経営内容等を見まして、そうして非常にこれを痛めつけておる、これは政府が監督する、政府が認可権を持っておる、そういう立場であるがゆえに押える。したがって、これは非常な不公平を来たしてくる。自由価格はどんどん自由に形成される。特別なものについては政府がこれを抑えるのだ、こういう形では、政治の真の姿じゃないと思う。そういう点も十分勘案いたしますが、もちろん影響するところを勘案していくから、期限が来たら直ちに許すとか、かようなものではございません。正常な姿こそ——ケース・バイ・ケースに処理するという、それが正常の姿ではないだろうか、かように私は思います。
  96. 井手以誠

    井手委員 総理、ケース・バイ・ケースでやった場合にどうなりますか。どの企業も困っているのですよ。上げなくらゃならぬ内部の事情がある。それをいままで押えてきた。押えて物価を上げないという姿勢を示した。しかし過去一年間何をやったですか。何もやっていないじゃございませんか。結局、どこも値上げせざるを得ないような実情になっておる。この値上げをしたならばどうなるか。お互いの生活に関係しない料金の値上げはどこにもございませんよ。バスもふろもクリーニングも、みんな生活に関係がありますよ。だから聞いておるのは、こういう政府が関与できる公共料金くらいは、これこそは政治姿勢として、しばらくなおストップを続けていく、その間に対策を講ずるというくらいの決意があっていいはずだ。大蔵大臣、あなたは隣にいらっしゃる。このケース・バイ・ケースでやるという総理のことばを聞いて国民は失望するでしょう。そんなことではいけませんよ。消費者米価にしろ、その他の問題にしろ、使ってはいけないかもしれぬけれども、国には金があるはずだ。応急の措置として、そういうものも活用していいとは言わないけれども、保守党の政治としては私は考えられることもあると思う。いま大事なことは、公共料金を押えて物価を上げないという政治姿勢を示すことが、佐藤内閣、新内閣の第一の課題であると私は信じております。いまのようなことでは承知できません。これでは、国会、国民の代表としてわれわれが予算審議をこのまま続けるわけにはまいりませんよ。あなたは物価を上げないと言いながらも、ケース・バイ・ケースでやむを得ないと言っておる。よく考えておっしゃってください。今度の一言でどうなるかわかりませんよ。そう簡単なものじゃありません。
  97. 田中角榮

    田中国務大臣 物価の問題が非常に重要な問題であるということは、御指摘のとおりでございます。この四十年度の予算編成や税制改正にあたっても、物価問題等正面から取り組んでおるわけでありますが、ただここでもって、井手さんは公共料金の問題に焦点をしぼっておいででございますが、ほかの国でも物価問題に取り組んでおる国があるのであります。これもオーソドックスな立場で申し上げますと、物価抑制策としてほかの国は一体どういうことをやったかということは例になっております。それは緊縮財政をやる、金融の引き締めを長期間において行なう、低い成長率でもって押える、賃金ストップ令をやる、増税を行なう、それから預金によって預金吸収を行なって、消費抑制を行なう、それからなお経済の統制機構を打破しまして、自由化の促進をやる、そして公共料金のストップもやる、こういうことをやっておるわけです。ところがこれだけのものをやるといったらたいへんなことでございます。これは内閣一つくらい飛んでしまう。一つや二つではとても済まぬというくらいな大きな問題であることは私もわかります。ですから、第一の緊縮財政というけれども、いまでさえも中小企業も困っておるし、いろいろな状態で緊縮という財政までは事実できないのです。事実問題として健全均衡財政でなければならぬといっております。金融調整も一年間やったら、もう引き締めはある場合において解除の方向も必要であるとさえいわれる状態も露呈しておるわけであります。低い成長率というけれども、安定成長率も必要だという構造上の必要性もございます。賃金ストップができるかどうか、十月一日実施を九月一日に引き上げなければならぬ状態であることも事実であります。その上になお増税ができるか、減税しなさいというのが全国民の要請であります。預金吸収をやるといっても、預金に対する税率の特例はこれを廃止してしまえ、こういうことであります。しかも資本蓄積をやる税率は、税の不公平論からやってはならぬというのであります。でありますから、消費抑制をやるといっても、消費抑制をやれるような状態になっておらないのであります。でありますから、総理がそこで、国民の風潮の上においても、やはり物価抑制ということに対して一丸になって民官ともに一体にならなければならぬという発言は、そこに根があるわけであります。でありますから、政府が公共料金を一年ストップしておるために、じゃ減税はやめていいのかということにもならぬわけであります。でありますから、減税は減税で進めなければいけない。でありますから、財政収入というものは減っていくのです。ですから財政でもってすべての応益負担を——いわゆる公共事業といえども受益者負担が原則であります。これを押えることによって、確かに物価抑制策にはなりますけれども、といって国民全般の税金をもってこれをまかなう、税制上措置できますということにはならぬわけであります。でありますから、この間の調整をとりながら、いずれが優先するかということはケース・バイ・ケースで十分検討しながら、いずれを採用することがより国民的であるかということを十分検討の上、政府与党も相談をしながらやっておるわけでありますから、これを一年間やって、公共料金といってもいますぐこれを全面的に、ダムが決壊するようにこれをやろうというのじゃありません。できるだけ押えよう、そして財政でもってまかなえるものは、財政資金で何とかめんどうを見れるものは、税制上カバーできるものは、という姿勢をとっておるのでありますから、この間の事情もひとつ十分理解の上御協力を賜わりたい。
  98. 井手以誠

    井手委員 高度成長の終戦処理というような事態ですよ。これは新内閣には気の毒かもしれません。けれども、高度成長のためにこういうふうに物価が上昇してきた。これを押えなくちゃならぬということであるならば、私は内閣一つ二つ飛んだってやむを得ないと思うのです。国民生活安定が一番の目標であるならば、この物価を抑えることが一番大事であると私は信じております。私は、もう最後になりますが、もう一回大事な問題ですから総理大臣にお伺いいたします。政治姿勢、少なくとも政府が関与できる公共料金について一年間のストップをさらに若干でも延長して、その間にいろいろな政策を行ない物価を押えるという決意を明らかにすることが、私は当面佐藤さん、あなたの一番大事な仕事であると信じております。いまぐらいの御答弁では国民は失望しますよ。断固たる決意を述べてもらいたい。
  99. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御指摘になりましたように、高度経済成長をわが党が主張し、池田内閣が主張いたしました際に、社会党の皆さん方はもっと率を上げられたはずです。なまぬるいじゃないか、そういって政府に対してもっと高度経済成長を要求されたはずだ。今日それは忘れられて、そうして高度経済成長の批判をなさるようですが、私は社会党さんも、またわが党も、それこそ国のために、国民のために一緒になって議論すべきだ。今日それは過去の政策が失敗だろうがどうだろうが、そんなことはかまいません。私は、それよりも、今日当面する問題に真剣に取り組むべきだと思います。したがいまして、先ほど来御議論になっております物価問題、これは全く大事な問題であります。家庭の主婦、家庭が脅かされるようでは、国民生活の安定、また向上は期せられないのであります。そういう意味から私は先ほど来るる御説明を申し上げておる。  そこで、政府がやり得ることはほかにもあるだろうが、とにかく公共料金なんだ、したがってその公共料金というものを、今日一年来たが、さらにこれを延長しないか、こういう御提案でございます。それに対して、私は、先ほど来ケース・バイ・ケースで、そのつど考えてまいりますというお答えをいたしました。非常に不満だ、国民も納得しない、かように言われるのでありますが、私は、いわゆる期限が来たからといって、そうしてせきを切った水のように公共料金を取り上げようとは考えておりません。おりませんが、過去においての約束は約束であります。したがいまして、その期限が来たら後に各方面に影響するところのものを勘案して、そうしてただいま大蔵大臣が説明したような各種方策とあわせてこの問題を取り上げていくということを重ねて申し上げます。私は、安易な、期限が来たからもう押えないのだ、かような考え方では毛頭ございません。公共料金と一口に申しますが、あるいは地方自治体の公営企業等もございます。これらにつきましても、これをいかにするか、これを引き上げるかどうかということ、社会党の皆さんからも陳情を聞いたはずであります。そういうものに対して、直接料金は上げなくとも何らかの具体的な援助措置を講じろ、あるいは財政的な資金でもそこに回せ、先ほど来、そういうことがルーズになっては困るが、やむを得ない方法じゃないかというお話もございます。政府はそれらのことを全部勘案して、そうして物価を上げないように、またやむを得ず上がるにいたしましてもその程度は小さくなるように、あらゆる努力をするわけであります。私は、ひとり資金的の問題だけではないと思う。あらゆる施策と総合的に取り組んで、それで初めて解決ができると思います。しかして先ほど来御提案になりましたように、これを半年延ばすというようなことは、私はむしろ末ではないだろうか。それよりも、実際には半年後になるかもわからない。しかしながら、そういう期限をつけることよりも、より関係の方々の協力を得て、そうして経済自身の安定化の方向へ努力することこそ、われわれ政治家のつとめじゃないか、かように思うので、先ほど来の御提案に対しましては、遺憾ながら私は賛成しません。それよりも政府自身がなすべき事柄は多いように思います。この点は、必ず政府の公共料金の取り扱い方においても、その真剣さが今後その処置に出てくると思う。それが容易なものではないことだけはよくわかっておりますので、しばらく監視していただきたい、かように思います。
  100. 井手以誠

    井手委員 今日の事態になったのは、社会党の警告と世論の批判を政府が無視したからであると私は申し上げたい。いままで私は経済の問題、財政の問題、物価の問題で承りましたが、はなはだ不満なことばかりでありました。もう少し、安定政策めどなり、あるいは物価に対する決意なり、社会開発の内容について、私は詳しく聞きたかったのでありますけれども、知りたかったのでありますけれども、残念ながらそれができなかったことを非常に遺憾に存じます。  時間が参りましたから、これをもって質問を終わります。
  101. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて井手以誠君の質疑は終了いたしました。  午後は一時二十分より再開いたします。  午後の質疑者は加藤清二君及び中井徳次郎君であります。  加藤君の出席要求大臣は、内閣総理大臣、法務大臣、外務大臣大蔵大臣、文部大臣、厚生大臣、農林大臣、通産大臣、運輸大臣、郵政大臣、労働大臣、自治大臣及び経済企画庁長官であります。中井君の出席要求大臣は、内閣総理大臣、法務大臣大蔵大臣、文部大臣、厚生大臣、労働大臣、自治大臣及び経済企画庁長官であります。  暫時休憩いたします。    午後零時二十八分休憩      ————◇—————    午後一時二十四分開議
  102. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際申し上げます。参考人として日本銀行総裁山際正道君、商工組合中央金庫理事長北野重雄君及び全国銀行協会会長中村一策君、以上の御出席をいただきました。  参考人各位には御多忙中まことに恐縮でございますが、御出席をいただきましてありがとうございます。  なお、参考人各位の御意見は、委員の質疑に対する答弁の形で承ることといたしますので御了承願います。  昭和三十九年度補正予算に対する質疑を続行いたします。  加藤清二君。
  103. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私は荒舩委員長のお許しを得まして、国民の幸福と、池田総理の健康回復を心に祈りつつ、佐藤総理に質問をしたいと存じます。  まず第一番に、総理は先刻井出氏の質問に対しまして、いわゆる高度成長計画について、社会党も当初はまだ足りない、まだ足りないと言うたではないか、そうして今日になってそれを批判するとは受け取れないというような御発言がございました。しかし、そのことばを私は額面どおり今度はこっちが受け取るわけにはまいりません。なぜかならば、高度成長、いわゆる所得倍増につきまして、中小企業に対しては足らざるの旨を何回か本席でも申し上げたことがございます。しかし、大企業に対してなお政府の手当てが足りないなどとは申し上げた覚えはございません。もしそういう議員があったとしたならば、この際はっきり発表していただきたい。もしそれが中小企業を含めてという意味であれば引き下がりまするけれども、しからざれば、この問題は引き下がるわけにはまいりません。
  104. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  高度経済成長、こういうことを申しておるので、大企業幾らだとか中小企業幾らだとか、かようなことを言った覚えはございません。また社会党の議員の方も、高度経済成長という一括した御発言はあったように思うのでございますけれども、その他こまかな内訳を幾らだとか、こういうようなお話は私も聞いたことはございません。
  105. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは、社会党が高度成長の当初にあたって、まだ足りない、政府の手当てが足りない、予算が足りない、こう言うたのは、中小企業に対してと受け取るのか、あるいは大企業に対してなお足りないと社会党が言うたと受け取るのか、いずれでございます。
  106. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 事情のよくわかっている加藤さんのお話としては、ちょっと私意外なお尋ねのように聞くのです。経済は、大企業も中小企業も零細企業をも含めて、全部経済という一括した考え方になっております。それを小分けなさることはいかがかと思います。
  107. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 総理、あなたはいま国民の多数から、新しい期待とともに二つの疑念を抱かれております。その疑念をひとつぜひこの際払拭していただきたいと思います。  第一は、指揮権発動に見るところの権力主義、利己主義で、これは頭はいいけれども冷たい人ではないかという声でございます。  第二は、本会議以来のあなたの答弁からして、今度の政府にはサトウはあってもエエサクはどうもないんじゃないかという声でございます。これをぬぐい取る良策がもしありましたら、良策でもエエサクでもけっこうでございますから、ひとつはっきりと出していただきたい。
  108. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほどの井手委員お尋ねに対しましても片りんを出したつもりです。政治は権力ではない、そういうことで政治をやろうとすると間違いが起こる、また法律万能でもない、こういうことを申しました。また私が人間尊重政治をしようという、その一語でただいまのようなお話は払拭するのじゃないだろうか、かように私は思います。私は、今日台所の問題と取り組んだり、あるいは物価問題を消費者物価に局限したりしておりますが、それなどは、ただいまの私自身今日まで誤解されておれば、それを解消したいという努力であります。  また第二の問題として、ただいまの経済に対しての良策があるのか、こういうお尋ねでございますが、ただいま真剣にあらゆるデータを集め、また調査を進め、しかる後に結論を出す、こういうことで各界各層、ことに野党の諸君の意見にも十分耳をかしてりっぱな策をつくりたい、かように考えておりますので、これも御心配なく建設的な御意見はどしどし述べていただきたいのでございます。
  109. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 あなたの七月公選の際の政策、これを新聞、ラジオ、テレビで承りました。社会開発ということが政策の主体で、しかもその推進力は、それから発生するところの社会開発計画、それをつくる社会開発最高会議とあなたは呼んでいらっしゃるようですが、これが中心のようでございますけれども、それを、先般来同僚の委員諸君が何度尋ねましても、まだはっきりいたさないのでございます。社会開発とは総合的なものである、いわく、言うはやすく行なうはかたいなどというような調子でございまして、国民、われ人ともに、その内容が何であるのか、あなたの言わんと欲していらっしゃるところがどこにあるのかさっぱりわからないのでございます。この際はっきりと、その内容と、それを推進する開発会談なるもの、これをいつの日に発足させて、どのようなメンバーでというその骨子なりともひとつお示し願いたいと存じます。
  110. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私が申し上げるまでもなく、経済発展、これは国民生活にその効果を直結する、そういうことが目的であったと思います。私があらためて申し上げるまでもない。ところがこの経済開発それ自体が一つ目的であるかのように考えられる。所得倍増、あるいは生産第一主義、なるほどそれはそれなりに意義があると思いますが、同時に真の政治の究極の目的国民生活にこれを直結をしていく、こういうことを考えなければならないのじゃないだろうか。したがいまして、経済開発のその途上におきまして、あるいは人間不在政治だ、かようなことも言われますので、問題の要点は、経済開発の効果をお互いの生活に直結さす、そういう形でものを考えていくべきだ、これが社会開発の基本的なものの考え方であります。その点からいろいろの考慮を払ってまいればいいのじゃないだろうか。そこで具体的な問題として、あるいは公害の問題もありましょうし、あるいはひずみの問題としてあるいは中小企業あるいは農業等との格差の解消の問題もありますし、あるいは中高年齢層の労働の問題もございますし、あるいは人間形成の問題もありますし、まことに広範多岐にわたって私どもが経済開発の効果をお互いの生活に直結さす、こういうところへものの見方を集中していかなければならない、かように思うのであります。そういう方向で七月に私自身取り上げましたが、同時に池田総理におきましてもこの思想を取り上げ、また自民党自身、党内におきましてもその方向で考えておる。問題はしばしば池田総理からも伺ったとおりでありますが、経済開発あるいは高度経済成長、それだけが目的ではないのだ、これは繰り返して言われたように私の耳には残っております。これはただいま申し上げるように、この経済開発の効果をお互いの生活に直結させ、そうして潤いをもたらす、こうい方向でものを考えよう、こういうことであります。
  111. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 何度聞いてもはっきりしません。あいまいもことして修理固成されていない。まあ、新しくおなりになったばっかりでございますから、具体的に何と何と何ということは、これは困難かもしれません。しかし幸いあなたは、その際に具体的にひとつ名前をあげている問題がございます。それが教育開発でございます。  文部大臣に承りたいのですが、この教育開発についてあなたは新しい総理から何か聞いておられますか。
  112. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 文部行政と申しますか、文教の基本政策につきましては、前内閣以来、いわば前向きにいろいろと考えておりますが、その考え方につきましては、佐藤総理からもその方針で大いに推進するようにという趣旨の指示を受けておるわけであります。
  113. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 その教育開発の内容として、総理は、義務教育の国庫負担を完全負担に近づける、児童手当制度によるところの義務教育児童最低生活費を保障する、育英制度の拡充をする、こうございまするが、これはまさにわが意を得たりで、これならばわが党も決して反対はいたしません。大賛成でございます。われわれが十何年、いや戦後ずっと唱えてきたことでございまするので、大賛成でございまするが、あなたはこの義務教育の国庫負担を完全負担に近づける、これはいわゆる義務教育費全額国庫負担、こう解釈してよろしゅうございまするか。同時に、もししかりとするならば、それはいつから始め、何から手をつけておやりになる御予定でございまするか。本補正予算にはその予算の裏づけがございまするか、もしないとすれば、次の新年度予算には一体どのようにこれを実現する御予定でございまするか、ここをとくと承りたい。
  114. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 教育のあり方について私どもが理想とするところのものはございます。また目標とするところのものもございます。その理想とし、目標とするところのものが、ただいま言われたような方向に乗っておると思います。もちろん、財政上の問題もございますので、これは順次その方向へ進みたいものだ、かように考えております。
  115. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 順次だけではわからない。いつの日からそれを始めるか、予算としてはいつの予算から裏づけをするか、こう聞いておるのでございます。
  116. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 その点は、順次これを行なうということ以上には進みません。もちろん財政上の問題もございますことは御承知のとおりでありますし、また政府が行なう施策は、ただ文教ばかりじゃございません。全般にわたっての問題もございます。緊急を要するものもありましょうし、また中心をなすものもありましょうし、こういうことは私が申し上げるまでもなく、加藤委員もよく御承知のことだと思います。そういう意味でまことに抽象的でございます。
  117. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 順次行なうことはわかりましたが、それでは、この教育開発は何年計画でおやりになる御予定でございましょうか。ただ単なる美辞麗句の羅列であったのか、ほんとうにやる気があるのか、もし順次これをやるというだけで具体的な予算の裏づけもないとなりますと、私どもは遺憾ながら、どんなにひいき目に見ても、これは三日たてばはげていくところのこう薬と同じだ、こう受け取らざるを得ません。
  118. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 政治あり方というものは、やはり一つの夢がなければいかぬのではないでしょうか。それが理想と言われ、あるいは地についていないとか、かような御批評は御自由でございます。しかしながら、私どもが一つ目標を立て、またそういう夢を持つこと、これは政治として当然のことじゃないか、かように思います。
  119. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 しからばこの教育開発の問題は、夢と受け取ればいいのですか、あなたの夢であると・・。
  120. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 全部夢ではございません。その中には、今日もう手をつけておるものがありますから、先ほど来申し上げるようにこれは政治目標、かようにお考え願いたい。
  121. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは夢でない、うつつのものは一体何でしょうか。一つでもいいから例をあげて説明していただきたい。
  122. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま教科書を政府自身が負担する、こういう形でございますね。そうして、これは国庫だけではなく、地方費もそういうものを負担しておるということでしょう。あるいは給食の制度を設ける。その費用は別としても、こういう制度が設けられる、こういう点はやはりお考えになっていいのじゃないだろうか。またこれから中高年齢層の生活実態を考えたときに、教育費自身がだんだんかさんでくる、そうすれば小学校だけの問題ではなく、上級学校につきましても、この父兄の負担は何とかしてひとつ軽くしたい、こういうようなことも考えられている。またその他にも文教を担当しておるほうではいろいろあるだろう、かように私は思います。
  123. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 文部大臣お尋ねいたします。  小中学校の義務教育は、一体、最低の単位として児童が何人くらいあったらこれを行ない得ましょうか。最低線は一人であるのか、二人であるのか、五人であるのか、十人であるのか。国家がきめておりますところの義務教育、これを実施する場合の最低の員数は何人でございますか。
  124. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これにはいろいろの考え方があろうと思いますけれども、現在の文部省として、いわゆる適正な基準といたしましては、数年後において四十五人を一クラスということにするのが、外国の例その他から見ましても適正な規模である、そういうふうに考えまして、そして現在から数年の間においてその適正規模に持っていきたい、こういうことを考えておりますことは、昨年十二月のいわゆる標準法改正以来のわれわれの考え方でございます。
  125. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 この問題で私は論議しようとは思いません。いずれその一学級の適正規模については別な場所でしたいと思いますが、私は最低を聞いておるのです たとえば山村僻地、これは複式学級の場合もありますれば、単級の場合もございます。各学年一人ずつしかいないとか、そうなると六人で一学校を形成しなければならぬ、その際は単級でいく、こういうことでございますが、私は最低線を聞いておる。もう一度・・。
  126. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 お尋ねの点は、いわゆる僻地教育の問題とも関連しておると思いますけれども、私は、やはり適正規模としましては、先ほどお答えしたところが一番妥当である、それを基礎に置きまして、僻地の問題につきましては実情に沿うように、あるいはまた現在どうしてもやらなければならない僻地教育に対する措置として、適時適切な方法をかみ合わせていけばいいのであって、最低が幾らであればよろしいか、あるいは最低が幾らでなければならないかというふうには私はとらえるべきではなかろう、こういうふうに考えておるわけです。
  127. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 法律の示すところによれば、これは一人であったって、二人であったって、義務教育である以上は員数のいかんを問わないはずでございます。それを、あなたがいまここで急に発明しようとなさるものだから問題になるわけです。(「そういう質問をするから悪い」と呼ぶ者あり)ところが、なぜ質問しなければならないかというと、松澤さん、よく聞いてください。五人も十人もいるにもかかわらず、教育施設が全然ないというところがある。その地区は、日本人の料理人はいるけれども、日本人の子供を教える先生はいないというところでございます。書画骨とうや本ぜんやらさしみざらまであるけれども、そこには黒板も掛け図一枚もないというところでございます。それが一体どこであるかといえば、申し上げるまでもなく日本の外国における公館でございます。したがって、在外公館の子弟や、貿易に携わるところの日本人の子弟は、日本教育が受けられないのでございます。したがって、文相にお尋ねしたいのですが、諸外国にいるところの日本の子弟は、日本の子供ではないのでございましょうか。総理にも、まず最初に承りたい。
  128. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 在外公館あるいは外国において働いておられる方々が、一番問題にしておられるのがただいまの子弟の教育の問題です。そのためにいろいろ家庭的な悲劇すらある、これはまことに残念しごくでございます。しかし、ただいまの状況におきましては、いわゆる日本人教育、日本人としてりっぱな人をつくるということ、これは必ずしも学校だけではないように私は思います。ただいま言うような非常な不幸な勤務状況から生ずる不都合さを、家庭におきましても補っていくだろうと思います。この日本人教育はかくして完成されるだろう、かように思いますので、ただいままで私どもが非常に心痛している、また家庭的にこれに同情しておる、この一事を御披露いたしまして、この問題のお答えにしたいと思います。
  129. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私はこの件につきまして、これから及ぼす影響が、その子供のみならず、外国へ派遣されてかの地において日本の栄誉を発揚するとか、あるいは日本の貿易を振興するとか、国家のために努力していらっしゃる方々が、その子弟の教育が行なわれないがゆえに、赴任することをいやがったり、早く帰りたくなったり、あるいは定められた二年、三年をしんぼうするとしましても、それが苦労の種になって能率に影響を及ぼしているという実態を知っているのでございます。私が向こうからいただいた手紙がここにございます。エアメールできておるわけです。これをよく見てくださいよ。ここへは一通しか持ってまいりませんでしたが、私のところへはこういう手紙がたくさんきております。そのうちの一つを抜き取って一部だけ申し上げますと、「当地に期間中滞在した子女は、帰国後日本語の知識が不足するため、上級学校への進学の際大きな困難に逢着することは避けがたい実情でございまする。」そうして、その前にその前提条件がずっと書いてございます。それは略して、「公認の日本語学校の設立及び専任教師の派遣を望んでいる者は私一人ではございません。」飛ばしまして、「子女教育の最大の悩みは、実は帰国後の進学問題にあり、公認日本語学校の設立、専任教師の委嘱等の問題も、結局はこの問題につながるのでございます。」中略。「特定の教育施設を本邦に設立してほしいとの要望がほうはいとして起こっておりまする。」以下略しまするが、要は、やってやれぬことはございません。日本語学校をつくることができなければ、せめて専任教師を置くことくらいはできるはずでございます。見方によっては、留学生の活用であるとか、あるいはそれももしできないとするならば、この子弟が帰国しました際に、内地で特殊教育を施すぐらいのことは、あなたがほんとうに人間尊重のあの趣旨を実現しようとなさるならば、当然やってしかるべきであります。これをなすことが、やがて海外に派遣される人に、勇気を持って行くはなむけにもなる、こう思うわけですが、これについて総理と文相の御意見を承りたい。
  130. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 総理からも御答弁があると思いますが、御承知のように、たとえばバンコクというようなところは、現在非常に邦人の多いところでございますので、まずこういうところから手始めに、在留の邦人の子弟のために学校をつくっておることは御承知の通りと思います。(加藤(清)委員「一カ所だけです。あと全然なし」と呼ぶ)それから、そのほかの点につきましては、日本語学校等についてできるだけなし得る限りの措置を講じたいということで、いろいろとただいま勉強中であります。  それからもう一つは、全くいま御指摘のとおりでございます。というのは、外国に優秀な人たちに行って大いに働いてもらうのについては、子弟の教育について非常に心残りである。これは熱心家の方々が民間で団体をつくり、それから文部省に対しましてもしばしばいろいろの御提案がございまするので、これを誠意を持って取り上げまして、各方面の御協力を得、あるいは私立学校等に対しましても特に御協力を求めまして、できるだけそういう方々の子弟が、おとうさんが海外で働くために、教育の均等な機会を与えられないようになってはならないということで、鋭意努力中でございます。
  131. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 加藤委員が在外において活動しておられる日本人の子弟の教育に言及されたことに、ほんとうにありがたくお礼を言います。ただいま文部大臣からるる説明しておりますように、何かとくふうしておるようでございますから、どうか今後とも政府当局の鞭撻を願って、そうして安心して海外において活動ができるようにいたしたいものだと考えます。
  132. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 人間尊重、人間回復の問題についてもう一点だけ承ります。  人間尊重、人間回復を生産工場、職場の中においてどう実現しようとなさいまするか。これはまず総理、通産大臣、特に運輸大臣、この御三方に承りたい。
  133. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 生産第一主義、そういう意味から人間尊重をいかに取り扱うか。今日、具体的な問題としていわれておりますのが、労働災害の問題、さらにまた公害をいかにして除去するか、こういう問題であります。これは大気汚染、さらにまた河川の汚濁、あるいは交通地獄の緩和、それぞれの部門においてただいま人間尊重、そういうものの考え方をしないと解決のできない問題が至るところにあるように見受けます。
  134. 田中角榮

    田中国務大臣 通産大臣代理として申し上げます。  産業災害の防止に遺憾なきを期しておるわけでございます。これは法制上、また災害が起こった場合、その後の問題等に対しても、いろいろな措置をとっておるわけでございますが、炭鉱災害とか、過般における東海製鉄の災害とか、いろいろな問題が起きることははなはだ遺憾でございます。特に作業管理が不徹底であったために災害が起きたというような場合は、やはりこれらの管理不十分なものに対しては適切な措置を必要とすると思います。それから新しい設備、特に科学技術の急速な発展のために、まだ日本人の操作がかかるものに熟練をしておらないというようなものがございますので、新しい科学技術の取り入れを行なった場合、これが災害の防止という問題に対しては、やはり徹底した措置を必要とするというふうに考えております。行政上もできる限りの措置をいたしたい、こう考えます。
  135. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 お答えいたします。  就任以来、経営手腕が一つ、勤労が一つの柱であります。同時にもう一つは、国民と申しますか、最終消費者、これが一本の柱であります。この三位一体企業中心であるということをモットーとしてやっておりますが、いずれも真剣に働いてくれております。しかし、お問いの点は事故防止の問題であろうと思いますが、先日も札幌の近郊で起こりましたのは、自動車が線路の上でとまったときに汽車がやってきまして、ああいうことが起こったのでありますが、こういう問題に対しましても、常に踏切番その他に対しまして、人命の尊重に対して十分注意をするように警告を発しております。万全の措置をとるつもりでございます。
  136. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 いままで本件に関しましては何回もここで討議をされておるのでございます。特にまた労働大臣は、この件について検討を進めていらっしゃることと存じまするが、日本の会社の行き方は、どう見直してみても、会社の利益が先で、工員の人命があとになっておるように考えられてかないません。  ところで、アメリカのビッグ・ビジネスの関係を調べてみますると、三千人から一万人以上の工員を擁するような大きな会社でありながら、過去二十九年間重傷者と名のつく者は、一人も出したことのないという会社がございます。どうしてそうなっておるかといえば、それは安全と研究と人間ということが主体になっているからだ。ところが、いま大蔵大臣が通産大臣代理でおっしゃられました東海製鉄のごときは、ついせんだって始めたばかりだ。最新鋭の工場であってしかるべきなんだ。だから、みんな安心をしてここへつとめていたわけだ。ところが始めて以来ほんの日は浅いのに、もう三回も事故を起こしておる。しかも、これについて工場長は何と言っているかというと、つくったばかりで生産が急だった、その人命救助、人命救済ということについては手落ちの感がございましたとはっきりテレビでも述べている。こういうことは、結局設備増強、増産、資本の蓄積、これにのみウエートが置かれて、人命の尊さが忘れられているというところにその端を発すると思うのでございます。担当の労働大臣に所見を伺うと同時に、ぜひひとつあなたと通産大臣には、これは熱管理工場でございますから、視察をしていただきたい。幸い運輸大臣総理は、先般朝のラッシュを見るために視察なさったようでございまするが、これはまことにけっこうだと思います。ぜひひとつこの交通地獄、工場地獄、ここからまず人の命を救うということ、人命尊重はここから始めていただきたい。
  137. 石田博英

    石田国務大臣 事業場内におきまして人間の生命を大切にする、これは事業場内に重点を置く置かぬは別といたしまして、労働行政が人を取り扱う行政であります以上、一切の基本であると考えております。したがって、まず労働基準法を順守していただくということを基幹といたしまして、この人の命を大切にするということに施策の重点を置いてまいっておるつもりであります。生産第一主義よりは安全第一主義生産と分配を説く場合、あるいは利益を説く場合でも、むろん利益や生産が先になければならないのは言うまでもありませんが、それは何のために生産し、何のために利益をあげるかといえば、その事業を取り巻く人のために生産をし、利益をあげるのだという考え方で行政指導に当たっておるつもりでございますが、残念ながらまだ災害はあとを断ちません。したがって、機会を見て私ども工場の第一線におもむいて監督、激励をいたしますと同時に、関係各種団体等を通じて一般に人命尊重の精神を普及させるということにも努力をいたしてまいる所存でございます。
  138. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 お答えいたします。  過日、総理大臣とともに新宿のラッシュ・アワーの状況を見てまいりました。その以前にも何回も見てまいりましたが、いままでのところは、ホームに三千人くらい入るのですが、一ぱいになったところを見込んで一応改札を締めます。そこで二分おきに過密ダイヤが交互に入ってまいりますから、ちょうど一分おきに運ぶことになります。しばらくすると少しすいてまいりますから、また改札をいたします。その程度でやっておりましたが、もはやその方法も今日では緩和の状況にはならない。そこで、総理は非常な創意をこらしまして、各官庁及び会社に対しまして時差通勤をさせるような方法を編み出されました。それは、七時半、あるいは八時、あるいは八時半、あるいは九時というように、時差通勤を四つぐらいに分けて、そうしてやることによってこの緩和をさせようとする以外にいまのところ道はありません。これを緩和するとするならば、根本的にする方法は、複々線をつくって輸送の増強をする以外には道はないのでありまして、その点については時差通勤をする考えでございます。
  139. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 次に外交の問題についてお尋ねしたいと存じます。  佐藤総理は、アメリカ訪問をなさる御予定と承っております。この重大な時期に、外相を派米させられたのもそのためかと聞いておりまするが、一体予算を通すよりもなお重大な何事かが、しかも緊急問題があったのでございましょうか。国民の知りたいところでございます。同時に、行かれるにあたっては、あなたの対米の姿勢、対米貿易の基本的態度、これも同時にお示し願いたい。
  140. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 外務大臣がただいま渡米いたしましたのは、国連総会に出席するためであります。したがいまして、私の渡米と直接関係はございません。私の渡米の計画は、ただいま持っておりますが、当方で都合のいい日時と、向こう側のジョンソン大統領の都合のいい日と、まだなかなか最終的に打ち合わせができておりません。したがいまして、今日の段階では、はたして実現するかどうかまだ疑問を残しておる、こういう状況でございます。そのような実情にありまして、一体何をしに出かけるのだ、こういうお尋ねでありますが、私が考えておりますのは、かねてから、そういう機会に国際情勢も話し合いたいし、あるいはアジアの問題についてもとくと話し合ってみたいし、あるいはわが国の直接の問題である沖繩の問題、あるいは外交の問題、貿易の問題等々、各般にわたって話し合う問題は非常に多いように思います。ただいまわが国の対米貿易の態度一体どうか、こういうお尋ねでありますが、これについて詳しく申しますならば、私はかねてから自由外交を強力に積極的に展開するということを申しております。したがいまして、この自主外交というものが意味するもの、またねらいとするもの、これを貿易交渉の上にもあらわしていきたい、こういうことを私は考えておるのであります。ただいま冒頭に申しましたように、まだ具体的に日時がきまっておりませんので、ただいまそういう点についても具体的に各方面の意見を調整中でございます。申し上げ得ることは、自主外交の展開にある、かよりに御理解をいただきたいと思います。
  141. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 基本姿勢が自主外交の展開であるとおっしゃられましたが、もししかりとすれば、ぜひやってきていただきたいことがございます。ぜひ交渉してもらいたいことがございます。国民はみなそれを期待しておるのでございます。すなわち日米の経済関係経済外交の関係は、決して日米友好通商航海条約にうたわれているような互恵平等の状況ではございません。自由貿易という名のもとに日本品は排斥されている、封じ込めをされているのでございます。自主規制という名のもとで制限をさせられているのでございます。数量規制をこえた場合には、ケネディ・ラウンドで低関税にするというやさきに、べらぼうな、世界に類例のないような高関税を取られているのでございます。国際協定という名の手かせ、足かせでございます。これを具体的に申し上げますると、第一が利子平衡税でございます。第二が日米加漁業協定でございます。第三が航空協定でございます。第四が綿製品国際協定でございます。その上なお、いま引き続いて毛製品国際協定を相手方は強く要請してきているのでございます。一体貿易が自由化されたらさぞかし自由に売れるであろう、貿易が自由化されたらさぞかし品物も安くなるであろうという国民のほのかな期待は、アメリカとの貿易に関する限り全然いれられていないのでございます。一体これはどうしたことでございましょうか。ガット、IMF、OECDと、ともに義務のみ多く課せられまして、わが国の得るところは制限のみでございます。一体日本輸出する品物の中に、ほんとうに自由というものがあったならばひとつお示し願いたい。
  142. 田中角榮

    田中国務大臣 通産大臣代理として申し上げます。  IMFとかガットとかOECDの会議において自由化を進めているけれども、日本は義務のみ多くして、プラスになる面が少ないということを言われております。しかし、日本は御承知のとおり貿易依存の国でございまして、自由な国際競争場裏において日本輸出を漸次拡大をしていくということに、われわれの運命はこの一点にかかっておるわけであります。しかし、御承知のとおり、戦後十数年間をふり返ってみますと、対日差別をとっておる国がたくさんあるわけであります。特にヨーロッパのOECD加盟国等は、幾多の対日差別待遇をとっておりますが、日本とすれば、日本輸出を伸ばしていくためには、国際場裏においてだんだんと差別待遇を取り除いていかなければならぬということと、もう一つは、二国間交渉等において差別待遇の緩和をはかって今日まできておるわけであります。ガット三十五条援用撤回に対して、前内閣から引き続いて積極的な態度をとっておるのも、そういうことからきておるわけでございます。  アメリカにつきましては、御承知の毛製品の協定を締結するという問題に対しては、前内閣から反対の態度をとっておるわけでありますが、また国際長期綿製品協定という問題についても、少なくとも現在のとおり五カ年ということであり、日米綿製品協定については、できるだけ早い機会に改定の申し入れをしたいという考え方に立っておるわけであります。  いずれにしましても、ガット等の場においてどうも日本が押されぎみであって、いいところはないと言われますけれども、しかし、これはケネディ・ラウンドの例を引くまでもなく、日本自体が自由化の方針を進めることによって、日本の国際場裏における発展を願っておるのでありますので、ここで小さな問題にこだわっていわゆる大魚を逸するというような政策をとっておらぬわけでございますので、どうぞその間の事情は十分御理解を賜わりたいと思います。
  143. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 あなたは小さな問題とおっしゃいましたが、日米貿易が小さくてたまりますか。たとえば利子平衡税の問題でも、あなたがいまたいへんお困りの株価、これはこの声におびえて、それこそ水鳥の羽音に驚いて平家が落ちたと同じように、日本の株価はがらがらと音をたてて下がったじゃございませんか。どうして小さいのですか、この問題は。日米加の漁業協定、これも不平等なんです。航空協定、これもまた不平等なんです。綿製品国際協定のごときに至っては、全く手かせ足かせなんです。そうでしょう。二億八千万スクエアと最高の数字はきめてあるにもかかわりませず、なお四十六品目に分けて身動きができないようにしてあるでしょう。言うなればこれこそはイソップ物語なんです。つぼに盛ったお水をキツネの前へ持って行ってどうぞと、こう言う。おさらに盛ったごちそうをツルの前へ持っていってどうぞとやっちまう。できっこないじゃないか。できっこないものをやらせて、協定に達しないからいけないじゃないかという向こうの言いようなんです。すでに綿製品協定のごときは、御存じのとおり前提条件が喪失している。これは御承知のとおり。ケネディ・ラウンドでなくして、ケネディさんのさきの大統領選挙のときの公約の実現を迫られただけの話なんです。あなたが一番よく御存じのはずなんです。日本はその犠牲になっておる。引き続いてまた毛製品協定ときた。毛製品協定などに至っては、イギリスもフランスもイタリアも関係諸国は全部反対なんです。これについて新しい総理はどのような態度をとられるのか、まずその二つの協定についていかなる態度でございますか、あなたの姿勢伺いたい。
  144. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま通産大臣代理からお答えいたしたように、毛製品協定に対しては、これは反対を続けております。こういうような毛製品協定自身は別といたしましても、日本間に不平等である、こういう問題が、今日まで日米経済閣僚協議会等におきましてしばしば議題になっている。それが十分まだ目的を達していないという現状でございますが、こういう点では、日本の実情をよく理解してもらうように、重ねてまた機会あるごとに当分の事情を説明することによって、同時に私どもの要求を明らかにすることによってアメリカ側にも理解ある処置を望む次第でございます。
  145. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 機会あるごとに理解を深めたいとあなたはおっしゃいました。あなたの今後の方針であればそれでけっこうです。しかし、遺憾ながら過去においてはそのようなことが十分に行なわれたとは考えられません。なぜかならば——あなた、首を振ったってだめですよ。しからば、向こうのアメリカの上院のパストーレはいかがでございましょう。この方が中心になってパストーレ委員会をつくっております。そうして反対を言っておられます。日本製品の買い付けの反対の張本人。しかもこの中にはゴールドウォーターも入っております。あなた御存じですか。その次にケネディ大統領のきょうだいもここに入っておる。一斉に反対決議をしている。ところがどういうことか、そのパストーレにいまだかつて会った人がないじゃございませんか。これに向かって正正堂々と日本の立場を表明に行った人がないじゃございませんか。私はこの人と先般会ってあきれた。そういうことが累積されて、大蔵大臣、あなたは小さな問題だとおっしゃるけれども、大きな問題になっている。すなわち日米の貿易の帳じりを見てごらんなさい。毎年赤字が累積して、慢性的になっているじゃございませんか。どうして小さい問題です。
  146. 田中角榮

    田中国務大臣 間違うと悪いからひとつ訂正しておきますが、小さな問題と申し上げたのは、表現が悪かったかもわかりませんけれども、ここではっきりいたしておきます。  先ほどあなたの御質問に対してお答えいたしましたのは、毛製品協定に対しては反対でございますと明らかにいたしてございます。それから日米の綿製品協定につきましては、改定を申し入れるという政府方針を明らかにいたしておるわけでございます。それからもう一つは、ガットの場とかOECDの場において、いろいろ自由化を迫られて、自由化ばかりに応じておるけれども、たいしたいいことはないじゃないかという質問に対して私が答えましたのは、日本は自由貿易の国でございますので、対日差別待遇なども撤廃をさせながら輸出を確保していく。ですから、あまり小さいことにこだわらないで、ケネディ・ラウンドに全面的に賛成をしながら自由化の姿勢はとってまいりますが、究極においては日本の利益を守るためにやっておることであります、こう答えたわけでございますから、日米綿製品の問題とは分けて、ひとつ御理解をいただきたい。
  147. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 綿製品協定につきましては、私、通産大臣をいたして、その機会に加藤委員の御意見も十分伺って、そうして強力な交渉をしたことは記憶に残っております。その際に、私が日本だけでなく、やはり同じような事情にある各国の協力を得ることも、これまたアメリカ側の措置をして反省せしむべきゆえんである、かように考えまして、そのほうの協定も、話し合いも非常にうまくいっておると私は思います。  また毛製品の問題が、今回欧州方面の諸国とも同じような立揚においてアメリカ側にその反省を求めておるのも、ただいま申し上げるような行き方からこれは当然のことだと思います。そうして、私のわずかな経験ではありますが、日米経済閣僚協議会、これなどの場におきましても、当方において、当方の利益になるような主張をしばしば繰り返しております。  私は、申し上げるまでもなく自主外交、外交自身は、それはどこまでも自国の利益、ナショナル・インタレストを擁護するところにあると思います。アメリカ側にもアメリカ側の理由があるだろうと思いますが、私はその立場において、日本の代表としての立場においてナショナル・インタレストを守ることにこの上とも努力したい。そういう場合に、何といいましても国民世論の支持、これが私どもに勇気を与えるゆえんでありますので、社会党からも大いに御声援をしていただきたい、かように思います。
  148. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 確認をいたします。簡単に答えていただければいいんです。  この綿製品、毛製品両協定に関して、あなた、新しい総理は、前の池田内閣時代方針を受け継がれるのか、別な新しい立場に立たれるのか、そのいずれでございます。
  149. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 簡単に申しますが、受け継いでまいります。
  150. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 次に、あなたはもう一歩進んで、沖繩の返還を要求する、正式要求はかつてなかったが、それをすることは日米のパートナーシップに通ずる道であるとあなたはおっしゃってみえます。今度あなたは渡米なさるにあたって、いまのあげました五つの協定あるいは条約の問題、それからあわせて沖繩の返還をほんとうに要求されるのかどうか、この際はっきり承りたい。
  151. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 沖繩の問題につきましては、池田内閣以前からもう方針がはっきりいたしております。今日までもしばしば沖繩問題の扱い方について、日米間において協議が重ねられております。問題は、いかにすればこれが早期に実現できるか、こういうことだと思います。今日、私ども、返還だけを求めて、効果がどういうことにあろうと、そんなことにおかまいなしに外交というものは展開すべきではございません。そういう基本的なものは、もうすでに潜在主権を広めておるのでございますから、それがいかなる場合において、いかにしてこれが実現するか、そこの効果を十分考えて交渉すべきものだ、かように私は思います。
  152. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 次に、私は中国貿易とソ連貿易についてお尋ねいたします。  アメリカにおいてさえも向こうの新聞が、日米の貿易量が多過ぎるという社説を掲げている新聞がございます。私はこれをマイク・正岡とスティット氏にそのスクラップブックを見せてもらいました。多過ぎる、そんなに多く日本から買う必要はないんだ、日本はアメリカには某品目は五三・四%も売っているのにEEC諸国に対しては三・二%しか売ってないじゃないか、これはアメリカが日本に対して親切過ぎるんだ、というようなことで、したがって市場転換日本に対してさせるべきである、こういう論でございます。市場転換をしようとおっしゃるなら、待ってましたということなんです。そこで、アメリカとの貿易を私は反対しているのではない。ますます親善友好を深めて量をふやしていかなければならないと思うている。しかし、相手がふやすことを否定するならばこれはやむを得ない。ほかへ求めるよりほかに手はない。そこで中国貿易、ソ連貿易に対して基本的態度を承りたい。貿易です。いや、総理に簡単でいいです、基本的態度を。
  153. 田中角榮

    田中国務大臣 日米の貿易が非常に大きくなっておるということは御指摘のとおりでございます。今年度は、二十三、四億ドル、二十五億ドルにもなろうかということでございますので、非常に大きいことであります。しかし、アメリカがいろいろなことを言っておりますが、私はアメリカの一部の連中が言うことをそのまま真に受けておりません。日本から買うのが非常に多いから今度買わないことにしようなどと言っておりますが、私が日米の交渉においてこちら側の意向として十分言いましたのは、日本から物を買わないなどといえば日本も買わなくなるだけの話であって、商売というものはお互いが、原材料を日本に売ると同時に日本から製品を買うというのはあたりまえの話であって、商売はお互いがあっての話であって、一方的に買わないなどといって済むものじゃありません。ただ、あなたのところは金も貸してくれるので、調子がいいから原材料を買うのであって、そういうことはひとつアメリカも十分承知をなさいと言っおるからこそ、利子平衡税問題に対しても特免条項も発動しなければ、ニューヨーク市場において外債を発行しない、こう自主外交を展開いたしておるわけでありますから、これは御承知をいただきたいと思います。  それから、それを同じく申し上げますと、今度はソ連と中共の問題は、これは長い歴史的な事実もございますし、六億も七億も民族のおる相手と商売するのですから、将来確かに大きくなっていくということは事実でございますが、国交のない国との間でございますので、政経はおのずから分離という常識論で政府はきちんとした方針をきめておるわけであります。でありますが、このごろだんだんと大きくなり、日紡のビニロンの問題等もいろいろ問題にはなりましたが、これは民間ベースでやるというのであるならば、民間同士で進めるということで、政経分離の原則で少しずつでも大きくなっておりますから、これは私たちは阻害もしておりませんし、民間との間でもってだんだんと大きくなりつつある。しかし、アメリカ貿易を完全に共産圏貿易に切りかえていくには、それほど金を貸してくれるような相手でもなし、延べ払いはだんだん延ばして十年にしろと、こういう全然調子が逆であるということでございまするので、おのずから限界があるということでございます。
  154. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 政経分離の立場において共産圏貿易も前進させる、こういうことでございますか。時間を注意されていますから、なるべく簡潔にひとつお願いいたします。——ところで、私がふしぎに思いますることは、焦げつきが四千五百万ドルもある南鮮へは二千万ドルの援助をして、なおプラント輸出の延べ払いを行おうとしていらっしゃるようでございます。これに対して外相は商業ベースによる一億ドルの範囲内だと答えておる。あなたが政経分離で前進して前向きの姿勢で共産圏貿易もやるとおっしゃるならば、なぜ中国へは合繊のプラントを許されませんですか。なぜソ連へは油輸送管の輸出についてけちをつけられなきゃならないのですか。これは一体どうなんです。
  155. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、共産圏貿易のウエートはいままででも総輸出の一%程度ということでずっと長いこと続いておるわけでございます。でありますから、政府ベースといいますか、いわゆる輸出入銀行ベースでもって仕事をやるという場合には、おのずから資金の制約を受けるわけでございます。しかし、民間がこれをおやりになるということに対しては、民間が何年間の延べ払いをしても、政府はこれを大体容認をしてきたということでありまして、いままで政経分離の原則に沿ったものに対しては、成契というか、いわゆる契約が成立しておるものがございます。でありますから、日紡ビニロンの話がいま御指摘ございましたけれども、この問題に対しては、前の倉敷ビニロンの問題は、ソ連にはできませんでしたが、中共には延べ払いを認めたわけでございます。しかし、その後は民間でおやりになるということでありますので、政府まで話を持ち込んできてないということでございます。  それからもう一つは、朝鮮にどうしてやるのかということでございます。いわゆる南鮮、つまり韓国です。韓国に対しての二千万ドルの問題は、これはもう御承知のとおり隣国でありまして、いま日韓正常化を両国とも急いでおる。相手方の経済上の理由に基づきまして、日本がひとつ御協力を申し上げようと、こういうことで二千万ドルの延べ払い供与を行なったわけでございまして、四千五百万ドルは、これはもうちゃんとお払いをしますということでありますし、必ずお払いくださる、こういう考えに立っておるわけでございます。
  156. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私はこういうことを言っているのですよ。南鮮に手厚くて、中国やソ連には薄いではないかということを言っている。なぜかならば、南鮮には外貨がない。だから焦げついておる、四千五百万ドル。それで緊急援助と称して、二千万ドルをまた差し上げる。そういう焦げつき債権のあるようなところは、あと金融のことを聞きますが、金融の皆さんに聞いたら、みんなごめんされる、国内だって、日本人同士だって。にもかかわらず、韓国にはそんな手厚いことをしておきながら、そのお隣の中国に対しては薄過ぎるではないか。これは一体いかなる理由であるか。一歩進めて、それは、あなたたちがチンコム、ココムの亡霊に惑わされているんではないか。あるいは共産圏を憎むという——政経分離、政経分離といいながら、あぶないから、君子危うきに近寄らずだということで、憎んで、このほうの手当ては薄いのか。一体どのような精神、態度から出ているのか、総理に聞きたい。
  157. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ソ連、中国、韓国、それぞれ扱い方が違うじゃないか、こういうことで、誤解もあるような御発言がございました。私自身、ソ連とはかつて通産大臣時分に日ソ貿易協定をいたした中でございます。ソ連に対する日ソ貿易協定、これはソ連側にいろいろの要求がございましたが、ソ連の国力から見ましてあの程度がよろしい、また日本の国力から見てもこの程度はやむを得ない、こういうようなことで日ソ貿易協定をいたしたのであります。これがただいまちょうど期限が来ておる、かように思いますが、今回はさらにもっと拡大強化しようというような動きがあるように見受けます。ソ連側から日本に対するオファーは、なかなか熾烈であります。それも、支払い条件その他を勘案してきめるつもりであります。  また、中共と日本との関係におきましては、すでにLT事務所ができておりますし、また記者交換もやっておりますし、現状におきましてこの貿易は、どんどん進めていきたい、かような状況で、もうすでに本年などは、昨年と比較いたしますと、二倍以上になっておるのじゃないか、かように思います。たいへん順調に伸びておると思います。これを政治的に無理やりに、かような理由から制限をしておるんだ、かように考えられることは、政府の真意ではございません。したがいまして、韓国との間の問題は、これは隣国韓国との間の問題——今日国交正常化をしようとする、そういう立場において、韓国側のいろいろの経済事情など勘案して、二千万ドルを決定したようでございます。問題は、ただいま申す韓国あるいは中共あるいはソ連に対して、何だか政治的意図があるのじゃないだろうか、かように誤解をされやすいのでありますが、私どもは、それぞれの国と経済的には交流を盛んにしたい、貿易の拡大の方向へ持っていきたい、かように考えておりますので、特別な意図はございません。申し上げ得ることは、その支払い方法なり支払い協定などがいかように処置されるだろうか、そこらに問題がある。韓国だけは特別な事情でこれと取り組んでおる、こういうことであります。
  158. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 あなたのおっしゃりたいことは、簡潔に言うと、政治的意図はない、あくまで商業ベースである、こういうことでございますね。政経分離の立場で商業ベースでいくと、簡潔にお答え願いたい。頭が悪いものだから・・。
  159. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 そのとおりでございます。政経分離のたてまえで貿易は伸ばしていきたい、かように考えます。
  160. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それではお尋ねいたしまするが、チンコム、ココムについてはどのようにお考えでございましょうか。
  161. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 チンコム、ココム等の在来関係のものは、自由主義諸国はお互いにその制約を受けておるようであります。したがいまして、そういう事態には私どもはタッチしない、かようなたてまえをとっておるように思います。
  162. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 タッチしないと言って、これはせざるを得ないのですよ、させられているんですから。MSA協定によってさせられているんですから。タッチしないといって、一体、あなた総理でしょう、総理がこれにタッチせぬと言って済みますか。冗談言ってはいけませんよ。
  163. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 タッチしないということばが不適当なら、在来方針に変わりはございませんということを申し上げたい。
  164. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 在来方針に変わりがないということは、チンコム、ココムに従うと、こういうことなんです。従うということなんだ。そういうことですね。
  165. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 そのとおりでございます。
  166. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 これはたいへんなことでございます。あなたの政治姿勢がますますわからなくなってきた。いいですか、政経分離で前進する、敵視政策はとらぬ、これを額面どおり受け取りました。ところが、チンコム、ココムは一体何かといったら、これは敵視政策ですよ。そのチンコム、ココムは受け取ると、こう言うんだ。これは一体どう解釈するんだ。法制局長官、あの人は頭がいいはずだ。
  167. 田中角榮

    田中国務大臣 御承知のとおり、チンコム、ココムに対しましては、もう何回もこの席から内閣は明確にいたしております。チンコム、ココムの精神に対しましては、国際的立場にある日本としては基本的にこれに協力する、こういう立場でございまして、これは前からきまっておるので、こういうものを守っていくということが敵視政策であるなどと考えることは、これは少し事大主義か、どうも特にそのように追い込もうというようなお考えのように取られます。でありますから、日本の共産圏に対する通商政策の基本というものは、何にも変わっておらないし、民間の協力に対しては、政府もこれを基本的に認めて、政経分離の状態を認めておるわけでありますので、あなたが強く御指摘をせられるような変化はごうまつもないことを、ひとつお考えをいただきたい。
  168. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 これはたいへんなことなんです。チンコム、ココムの精神に従うということは、敵視政策をとるということなんだ。そこで、ほんとうにとらない、政経分離で行くというならば、せめてイギリスのように、チンコム、ココムを無視する。フランスのように、もうこれをないものと同じような態度をとる。これが前進というわけだ。ところが、後生大事に守っているのは日本だけなんだ。名誉の孤立を守っておる。それをそのまま受け継いでいくということになったら、これは敵視政策だ。封じ込め作戦、それ以外の何ものでもない。  そこで、急ぎますから次に承りますが、総理は南千島の返還も要求する、こういう御覚悟と聞いております。ところで、もししかくさようとすれば、あなたは日ソ国交回復条約——これを河野氏が行って結ばれました。その中に領事館設置をはかる、こういう問題がございます。これは、沿岸貿易はだんだん発展する。あなたが前向きでやるとおっしゃる。しかもなお日本船の拿捕だの何だのという問題が起きてくる。だから、これこそは当然あの条約に従って設置すべきだと思いまするが、一体いかがでございますか。あなたの覚悟を聞きたい。
  169. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほどの敵視政策云々にも触れまして、私お答えしておきたい、誤解があるようでありますから、佐藤内閣になりまして、池田内閣と別に方針は変わっておりません。しかし、ただいま佐藤内閣になって敵視政策云々が問題になる、こういうことは、私どうも理論上解せないのであります。だから、したがって在来から変わらない。池田内閣はそうでもなかったが、佐藤内閣は敵視政策をとっている、かようなことは、私はいただけないように思います。その点ははっきりしておきたい。  それから国後、択捉の問題につきましては(発言する者あり)ちょっと聞いてください、私答えておりますので、国後。択捉の返還につきましては、池田内閣以来たびたび返還を要求しております。これは、私が事新しくこの問題を取り上げたわけではございません。その点を御了承いただきたいと思います。したがいまして、領事館の設置の問題は、ただいまの段階ではございません。はっきり申し上げておきます。国後、択捉の返還の問題をたびたび池田総理以来重ねて交渉しておるのでございますが、ただいまそれを既成の実務として領事館設置というところまで話が進んでおらない。
  170. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 あなた、チンコム、ココムの精神でいくとおっしゃったでしょう。それの親元のアメリカとソ連とは、領事館設置の話し合いが進んで、これができることになっているんですよ。(「自主的にやっている」と呼ぶ者あり)いや、問題は自主的じゃないじゃないか、チンコム、ココムは。
  171. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 加藤君、こちらを向いておやりください。
  172. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 アメリカはすでに領事館設置の話し合いができているんですよ。もう調印の一歩手前ですよ。それを御存じでしょう。そういう場合に、日本は別である、こういうことでございますか。
  173. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 領事館の問題は、領事協約ができて、それから後に領事館設置の問題に発展するわけであります。ただいままでにそういう基本的な取りきめがございません。その点を誤解のないように願っておきます。
  174. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 時間を急ぎますから、次へ参りまするが、中小企業の倒産が毎月レコード破りでございます。その原因をどう把握していらっしゃるかということをお尋ねしたいが、参考人のお方が長時間お待ちのようでございまするので、それをあと回しにいたしまして、私は、まず先般この席で行なわれました歩積み、両建ての問題についてお尋ねをいたします。その歩積み、両建ては、田中大蔵大臣は、いけないからかくかくのことをすると言うて、銀行局長をして指令を出させたはずでございます。しかも半年以内に半分ぐらいは解決するという言明でございました。ちょうど半年たったきょうでございます。いかが相なっておりますか。
  175. 田中角榮

    田中国務大臣 歩積み、両建ての問題につきましては、過当、不当ともいわれる歩積み、両建てに対して手きびしい取り締まりをいたしたいということで、銀行側からも、また他の金融磯間からも、歩積み、両建て解消に対する具体的な方策大蔵大臣まで提出をしてございます。半年間にどうします、一年後にはどういたしますということは、御承知のとおりでございます。いままでこれらの処置に対して一体的確な効果があらわれたかどうかという問題に対しては、遺憾ながら私はここで胸を張って、加藤さん、うまくいきましたよと言うようなところまではいっておりませんことは、はなはだ遺憾でございます。しかし、大蔵省も、歩積み、両建て解消、特に不当、過当ともいわれる歩積み、両建ての解消には本腰を入れておるのでありますから、ここらで手をゆるめるなどという考えではございません。金融の正常化をはかると同じ立場において、過当、不当な歩積み、両建ての排除ということに対しては腰を入れておるわけでありますから、これから半年、これから一年たてば、今度はうまくいったねえとおほめにあずかるような状態までひとつやりたい、こういうことを申し上げておきます。
  176. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 中小企業の倒産の原因のうち最も大きいものが金融であることは、もうだれしも認めておるところでございます。その金融が不正常である。これを正常化するにあたってまず第一番に取り上げなければならぬのがこの歩積み、両建てであるということで出発したはずでございます。ところで、あの際の答弁、一罰百戒であるという答弁をした人が政府側にございます。一罰百戒である。はたしてあれから半年以内にそれをおやりになったことがありますか、ありませんか。もしなかったとするならば、歩積み、両建てというその不正常な行為がなかったと解釈するのか。あったけれどもやらなかったと解釈するのか。いずれでございます。
  177. 田中角榮

    田中国務大臣 御承知のとおり、私がこの席上でもってあなたに申し上げたのは、ちょうど半年前でございます。あのときに、金融機関から大蔵大臣あてに提出をされました具体的な歩積み、両建て解消方策というのは、第一段目が、半年後にはこういたします、一年後にはこうなります、こういうことであります。ですから、これからひとつ検査を始めるという段階になっているわけであります。でありますから、いままでは違反事件というようなものがあって、一罰百戒というような状態になっておらぬことは御承知のとおりでございます。だから、これからいよいよ検査をして、向こうが私あてに提出をしたことがうまくいっているかどうか、いっていなければどうするかということは、これからひとつやりますから、そういうことで、御了解いただきたいと思います。
  178. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 あなた、これからやるんじゃないのですよ。これからこれからと言うて、すでに三十九年六月、あなたの手元からこういうものが出ているんだ。しかも大蔵委員会でも決議をしたんだ。そうして銀行局長から指令が出たのです。過去において十二回出ているのですよ。これは自粛決議が六回行なわれているのですよ。そこでどうなったかといったら、一年で解消させることを目途として、とりあえず半年間に半減させると約束している。それを行なわれたのですか。
  179. 田中角榮

    田中国務大臣 でありますから、先ほどもるる申し述べておりますとおり、過去に何回もやりましたけれども、必ずしも実効があがっておらなかったことに対しては、はなはだ遺憾でございます。こうはっきり申し上げておるわけであります。これは加藤さんも御了解いただけると思います。それで、この半年前に、こんなことではどうにもならないから、ひとつ手きびしくやろう、こういう方針をきめまして、銀行その地金融機関とも十分打ち合わせをしました結果、自主的に、銀行局長通達に対してかかる歩積み、両建て解消の具体策を出しますということで、大蔵省に提案をしておるわけであります。その間、歩積み、両建てに対していろいろな御注文のあることも承知をいたしておりますが、私のほうでは、あらゆる状態において歩積み、両建てに対しては、あなた方が出した期日が来れば、この期日に対しては銀行検査を抜き打ち的に行ないますよ、行なって、しかもこのとおりの実績があがっておらなかった場合には、大蔵省としても何らかの方法を考えますよ、こういうことを言っておるのでございますから、ちょうど半年くらいいよいよたつ現在、これから半年、一年目の自粛が実があがっておるかどうかという問題に対しては検査を行ないながら、これはもう日銀と大蔵省と班を組んで、特別検査をひとつやるつもりであります。それでなお前と同じような状態であるならば、これは私が言っておりますとおり、日銀法の改正とか、銀行法の改正とか、その他を明らかにいたしておりますから、こういう中で手きびしく取り締まる措置を考えなければならぬ、こういう状態でございます。
  180. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私が聞いておるのは、これからあなたがやろうとなさることを聞いておるのじゃない。いままでやられたことについて、結果の報告を求めておるわけです。すなわち、定例検査の際の報告の内容についてはという問題で、これはその定例検査が周期的に長いので、中間に適宜検査を行なう、こうなっておる。半年たってから始めるのではなくして、あのときから、六月から始めて、しかも、それも中間に何べんも行なって、そうして報告をする、こういうことになっておる。いままでやられか、やられぬか。
  181. 田中角榮

    田中国務大臣 くどいようでございますが、私もちゃんと話をしてあるわけです。六月二十五日に通達を出したわけですから、そのときに自粛をこういたしますという案が出ましたのは、六カ月間たったらこういたしますということになっておるので、いままでの検査でもっていろいろな問題をやっておることとは別に、今度大蔵省で出した自粛の第一の段階とは、自粛が一体できたかできないかということは、あれから六カ月たつわけです。六月二十五日から六カ月というと、来年の一月であります。ですから、今度はひとつ半分やります。こういう一札が私のところに出ておるのですから、来年の一月ごろになったら手きびしくやりますよということを金融機関には間々申し上げておりますというのですから、一体きのうやったか、先月やったか、先々月やっかということよりも、来年の一月ごろになったら相当手きびしくやるのでしょうな、こういう考えにひとつ変えていただければ、よくおわかりになると思います。
  182. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 総理は何と言っておられるかというと、昔は不言実行といったが、きょうこのごろは有言実行だ、有言不実行というやつが一番いけないのじゃ、こう言っておられる。ところが、これは有言実行どころか、約束しているのですよ。決議しているのですよ。それをどうのこうの言われたら困りますと言う。困るのはこっちです。約束不履行なんです。あなたは不渡り手形を出したと一緒なんですよ。あなたの手形は、期限がきても割れなかったと一緒なんだ。そうでしょう。きているから、中間の調査、中間の報告を求めておるのだから。  それでは次に公取委員長にこの件についてのお考えを・・。
  183. 渡邊喜久造

    ○渡邊(喜)政府委員 お答えいたします。  公正取引委員会といたしましては、前国会で申し上げましたとおり、一面においては特殊指定をする場合の基準の検討を続けております。同時に、大蔵省のほうから報告はもらっておりますが、それはいま加藤さんのお手元にある数字でございまして、次会の報告は、本年末あるいは来年早々いただけるものと思っております。同時に、それと並行しまして、公正取引委員会としましては、本年の三月現在における借り手のほうのアンケートをとりました。この集計はすでに国会へも差し上げてあります。ちょうど半年たったこの九月現在の状態を調べるべく、四千通出しまして照会をいたしまして、前回よりも多少率が上がりまして、二割八分ちょっとの回収を得ております。これが現在集計中でございまして、近くその集計ができましたならば、国会のほうへ報告したい、かように考えております。
  184. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 この問題について、それでは参考人の銀行協会の会長さんにお願いします。
  185. 中村一策

    ○中村参考人 お答えをいたします。  五月末現在で自粛対象預金で自粛措置を行なっていないものの貸し出しに対する割合を、十一月末といいますときょう、半分に減らす、それから今後六カ月のうちにこれをゼロとする、全部減らすということになっておりまして、このきょう現在で半分に減らしたかどうかということは、先ほど渡邊さんもおっしゃったように、十二月から一月早々出ると思います。私は、この問題については、銀行行協会としても、あれだけ大きな問題になっておりましたから、末端にまで十分に徹底いたしまして、効果のあがるようにしてありますから、私は、半分に減らすということは、まず第一段階として必ずできると思います。次の問題のゼロにする問題についても、その上の結果を見まして、一そうこれを徹底していきたいと思います。
  186. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 半年に半分、一年先に完全にゼロ、こういうことでございまして、その目標たるやまことにけっこうでございますが、まことに遺憾なことに、おそらく公取が御調査をなされば、別な姿において依然としてこれが行なわれている。なおもぐってもぐって行なわれているということを発見なさるでございましょう。親の心子知らずとはよく言うたものでございまして、会長さんやらあるいは東京にいらっしゃる頭取さんあたりは、ここへいらっしゃるとそのようにお答えになって、たいへん御苦労でございます。しかし、末端の窓口に参りますると、遺憾なことに、一体歩積み、両建てとはどういうもんだと、こう言う。銀行の人が、どういうもんだと、こう言う。そんなむずかしいことを言うようだったら、よその銀行へ行ってちょうと、こういうことになる。したがって、全然直っていない。私は、この件については九州も調べました。関西地区も調べました。ただ遺憾なことに、北海道は調べておりませんけれども、調べるまでもなく、訴えもどんどんございます。投書もございます。ただ、それをあなたたちのようなお偉い方に持っていきますと、あとでお礼参りがあると困るから、名前だけは伏せておいてくれと、こう言うのです。したがって、雲の上にいらっしゃる方には、この実情はわからないのです。わからないが、依然としてもぐって、陰性的になってこれが行なわれておる。それが証拠は、某銀行のごときは、この問題が銀行局長から発令されるや、とたんに一月半超過勤務。何をやったか、全部帳面の書きかえなんだ。そこで、これは容易なわざじゃございません。私は、銀行局が半年でやりますの、一年でやりますのと言われたときに、それは無理だと言った。わしはそんなに急いではいない。できっこないのだ。急がせてはいけない、そんなに急いで、いま五割も六割も歩積み、両建てをやっているものを一年で解消したら、銀行が倒産しますわ。できっこありません。だからそんな無理なことを要求するよりは、できることからやらせるという態度にお直しになったらいかがでございますか。(「社会党の要求か」と呼ぶ者あり)そうですよ。できないんだから——できないんだから・・。
  187. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 こちらを向いて・・。
  188. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 ここでほんとうにやるとおっしゃるならいいんですよ、次の予算委員会で私は質問するだけだから、こっちは気が楽だから。できっこないですよ。そこであなたは、それじゃこの際どう指導をしようとなさるのか。一ぺん本件に関して総理に聞きたい。
  189. 田中角榮

    田中国務大臣 さすがに加藤さん専門でありますから、非常にむずかしい実態を十分御承知の上、適確な行政を促しておられることに対しては敬意を払います。でありますから、私も先ほどから申し上げておりますのは、商慣習として続けられておる歩積み、両建てに対して問題にしておるわけではないのであります。これは不当ともいわれ、過当ともいわれる歩積み、両建てに対しての排除ということが問題でございます。でありますから、歩積み、両建てということを黙過しておるために、実質金利は銀行局長通達をはるかにこして、それよりも、臨時金利調整法の金利よりもこして、三銭にも三銭二厘にもなっておるということが中小企業等に対しては非常に困ることだということで御指摘になっておるわけでありますし、われわれもそう考えておるのであります。中小企業に金利を安くしなければならないにもかかわらず、高い金利を取っておって、しかも短い手形を切りかえ切りかえやるために、一年においては十何日間も踊りがあったり、また他の名目——調査とか物件担保とかいろいろな名目で金利と同じような状態で金が徴収せられる。でありますから、表面金利よりも実質負担金利は非常に高い、こういうことを是正するというのが目標是正の約束を取りつけておるのでありますから、金融機関をぶっつぶしてまでやろうという考えはございません。しかし、私はぬくぬくと、歩積み、両建てはあたりまえだと言いながら、政府関係機関から借りた金に対しても歩積み、両建てを強要したりする者に対しては処罰をいたします。こう通産大臣も大蔵省も明言をしておるのであります。そういうものに対しての取引は、政府関係機関の取引は停止をいたします。こういう通達も出ておるわけであります。しかもその上に、われわれもできるだけ不当、過当な歩積み、両建てに対しては排除したいということでありますので、やはり来年ぐらいになっては、ひとつ銀行検査を徹底的にやって、そしてこれはあなたがいま言ったように、なかなかできませんものでしてねなどと言っている金融機関に対しては、厳格な態度で臨みたい、私はこう考えております。
  190. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 その意気たるやもって壮とすべし。それではいつそれを実現なさいますか。時期を承りたい。
  191. 田中角榮

    田中国務大臣 大蔵委員会で決議をいただき、またこの予算委員会でもいろいろ御叱正を賜わりましたのが六月二十五日でございますか。いずれにいたしましても、十一月、十二月ごろがちょうど半年目のめどになるわけですから、一つこの暮れあたりは、大いに中小企業のためにもなりますし、当然やるべきことでありますから、金融機関に対して歩積み、両建ての第一のめどの期間が来たんだから、半分くらいなくなっているでしょうねということは、当然ひとつ通告をして、随時検査を行なう。しかし、暮れだから、そういう検査などでごたごたすると、中小企業にかえって貸せられなくなる。こうなると困るので、これはやはり一月だったら一月からは検査をやりますよ、こういうことで、いまひとつ考えておるわけであります。
  192. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 今度は延ばさぬように、一月、十二月が期限だと言ってみえまするから、そのとおりに受け取って、必ずこの問題は次の来年度予算の本委員会において、あるいは大蔵委員会、商工委員会において、私一人のみならず、与党の皆さんも含めて、皆さんが質問に立つことをひとつ御承知おき願いたい。  次に、もしこれをやらせようとするならば、政府みずからも姿勢を正さなければならぬ問題がございます。それはとめてとまらぬこの道は、どうしてそうなるかといえば、それは政府姿勢が間違っている点があるからなんです。何が間違っているか。それはいたずらに銀行の預金額、これの競争をさせられる。ランクをつくって、一番から三番までになったら、政府預託はこれだけあげましょう。一番から五番までに対しては、公団預金はこれだけあげましょう、こうなんだ。つまりランクをつくってほうびが与えられる。各銀行ともそれがほしいわけなんだ。したがって、どういうことになるか。うそでもいいから、うその数字でもいいから預金をふやそう。それが歩積み、両建てのいわゆる架空預金までもつくるもとになっている。これをあなた方が指導をし直さなければいかぬ。それから信用金庫や相互銀行に至っては、東海財務局の人が何と言っているか。早う大きゅうなれ。何を大きゅうなれと言うかといえば、預金をふやせ、預金をふやせ、ふやさざれば合併せよ、こういう指導のしかたをしていらっしゃる。これがいたずらな背伸び競争や架空数字の競争となってあらわれる。その具体的な例が歩積み、両建て、こういうことなんです。これについて・・。
  193. 田中角榮

    田中国務大臣 歩積み、両建てが預金競争だけのものであるとは考えておりませんが、いずれにしても過当競争の結果であるということはわかります。もう一つ、過当競争の結果でしたら、過当競争は絶対に取り締まるという基本的な姿勢を打ち出しておりますから、今度は過当競争はせしめないということで行政指導をやります。しかし、過当競争だけではなく、もう一つの一番加藤さんの言われんとするところ、これはときどきお聞きをしておるわけですが、これは中小企業等に高い利息を払わしておって、それでぬくぬくと最高の月給などを金融機関が取っておるとしたら許されない、こう答えております。これは確かに金融機関の所管行政をあずかる大蔵省としては、最も考えなければならぬことでありますので、これは加藤さんの言われることを私ももう金科玉条としておるのでありますから、そこはひとつ十分御理解を賜わりたい。
  194. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 銀行側としては信用補完だと、こう言うでしょう。しかし、信用補完だけであるならば、それで歩積み、両建てをやらせるならば、歩積み、両建ての場合のこの金利はゼロにすべきだ。そうでしょう。ところが、依然としてさや取りをやっておるということは、余分な金利をかせぎたいということなんです。ここに中小企業は倒産しても、それと関連のある銀行が倒れないという一つの理由があるわけです。山でカラスのカアと鳴かぬ日はあっても、中小企業の倒れない日はない。今月に至っては日に二十件ずつ倒れておる。十一月は六百件余になりますよ。もう興信所の報告がそうなっている。たいへんなことなんです。それをあえてのんべんだらりと延ばしていくということは、これは政治家としてとるべき道じゃないと思う。したがって次に、もう一つ問題になる点は、この資金源がどうしても足りない。需要が多過ぎる。あなたたち高度成長、所得倍増計画がいたずらに突っ走るものだから、資金需要が多くなってきた。多くてかなわない。ところで預金が少ない。なぜ預金が少ないか。それは物価関係がある。物価が七%から八%も上がるものですから、銀行へ金を預けておくと損をするという結果が出てくる。そうでしょう。計算してごらんなさい。当座預金は二分二厘ですよ。ところが、物価の値上がりは七分から八分ですよ。百万円預けたらどういうことになる。差額の六万円から七万円は損したというかっこうが出てきますよ、来年になったら。そうでしょう。そんなことをやらかすものだから、預金が少ない。次にもう一つ物価の値上げは、やがて預金をすることができなくなってきた家庭がある、こういうことです。この調査は、日本銀行から行なわれているはずであります。物価が値上がりしたおかげで預金ができなくなってきた、預金を減らさざるを得ない家庭、それが四〇%余もある、こういうものです。この報告は事実でありますか、いかがでありますか、日銀総裁。
  195. 山際正道

    ○山際参考人 ただいま御指摘のございました資料は、私ども貯蓄推進部が調査いたしました結果だろうと思います。私は、その具体的なパーセンテージはちょっといま記憶いたしておりませんけれども、ただいま御指摘のような数字のありましたことは記憶いたしております。
  196. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 総理、お聞き及びのとおりです。物価の値上がりの急上昇ということは、やがて貯金をする人ができなくなった。減らさざるを得ぬようになった。預ける人でも損するという、こういう三色のかっこうをつくることになっちゃった。そこでこれに対するあなたの対策はどうです。どんな対策があります。これでは預金は集まりませんよ、貯金せい、貯金せいと言ったって。
  197. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま御指摘のように、物価が上昇すると、これは逆な言い方をすると、貨幣価値が維持されてないと、こういうことだ。だから、その貨幣価値の安定、これをはかることが第一の急務であります。そういう意味で、日銀その他がいろいろ対策を立てておる、信用膨張に対する対策を立てておるのは、その点であります。
  198. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 あなたのようなおりこうな人が、初歩の金融論みたいなことを言っておってくれては困ります。それじゃあなた、対策は立ちませんよ。そこで大蔵大臣、あなたは専門でございまするから、対策を承りたい。私は、この際どうしたらいいか、預金をほんとうに喜んでやれるようにしてあげるという策を大蔵省が講ずべきだと思う。それは一体何かと言えば、簡単にできることが一つございます。たとえば、預金いたします。これに預金利子税が課せられております。五十万円以下にはかかりませんが、それ以上はかかるわけなんです。五十万の二分二厘で幾らです。一万一千円です。これに対して税金がかかる。ところが郵便貯金にはかからない。公債にもかからない。日銀が貸し出しなさる公定歩合は、六分以上とっておっても、これには税金がかからぬ。ところが、国民が、零細な人が当座預金に預けまするというと、これは二分二厘からかかってくる。こんな不合理なことがございますか。大体戦前やら終戦直後の法律がそのまま生きているからいけない。終戦後の法律だからいけない。だから、憲法は変えるというような精神があったら、まずここらあたり簡単に変わるから、やったらどうです。
  199. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほども物価抑制の問題の中で、預金吸収ということは非常に大きな問題でございますと、こう申し上げたのでありまして、貯蓄の増額及び資本蓄積、ばかの一つ覚えだと言われても、私は二年数カ月これをやっておるわけでございます。でありますから、現在昭和三十九年度の予算編成にあたりまして、五十万円までの少額免税制度を採用いたしました。来年度どうしようかという問題でございますが、いま税制調査会で検討しておられますが、まあ答申があれば、百万円まで少額免税制度を上げたいと、こういうことでいま検討しておるわけでございます。しかし、これは財源の問題がありますので、大臣、はでなことをぶってもだめですよなどと言われますが、これははでなことではなく、いま言うように、やはり貯蓄をすることが物価の上昇ということを断ち切れる唯一の道でもあるというふうな考えでありますので、少額貯蓄免税制度を拡大してまいりたいという考えであります。それで、三十九年度には、政府がやっております簡易生命保険の限度額五十万円も百万円に引き上げたわけであります。ですから、郵便貯金も当然そうなれば百万円に引き上げられる。そのほか、いま五%の分離課税がございますが、これを一〇%にしたほうがいい、廃止したほうがいいという議論もありますし、据え置かなければならぬという議論もあります。五%財源にして三百億余の財源があるわけでございますので、これを据え置けばどうなる、これを一〇%に上げれば三百億増収になる、これは一体どこに使えるか、むずかしい問題でありまして、いま慎重に検討いたしております。  ただ、一言だけちょっと言っておきたいのは、貯蓄というものと物価問題は、ただ端的に、物価が上がれば貯蓄は絶対にできないということではない。これはいま、御承知のとおり物価は多少上がっておりますけれども、郵便貯金など少額貯蓄は相当の勢いで伸びておるということもあります。これは日本人の特性、とにかく日本人が貯蓄をやろうという考えでありますから、物価が上がるから貯蓄などしてもだめだなど、こういうことをあまり声を大にすると、じゃそうかなということになるわけでありまして、これはやはり貯蓄をなさい。貯蓄をどんどんとしなければ、物価は下がらないのです。ここをひとつ十分お考えいただきたい。
  200. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 経済の規模が拡大したおかげで、政府金融機関の規模もみんな拡大されている、郵便貯金も額が上がった、中小企業金融公庫の貸し出しも額が上がった、したがって、貸し出し限度額も上げなければならぬ時期がきている。いわんや日銀がいらっしゃるから、聞いてみてください。一口の預金は平均五十七万円になっている。そうすると、この人たちは全部税金を取られているということなんです。わずか一万円の収入に対して全部税金をかけられている、こういうことになるわけです。大衆に対してどうしてそんなみみっちい税金まで取らなければならぬのですか。はね返り財源がよけいある。三千億の減税をすると言っていらっしゃるじゃないか。新総理は三千億の減税をすると言っていらっしゃる。それを企業減税に持っていこうとするところに、この問題ができぬところがあるわけです。はね返り財源を大衆に返すべきである。したがって、いかなる方法で大衆に返すかは、これは間接税、消費税を減らすのもよかろう。しかし、いまのような問題に対して国民に返してあげる、これも決して悪いことではない。何もこれは社会党だけがいいと言うのではない。おそらく、聞いてごらんなさい、心ある、良識ある国民を愛する議員さんであれば、保守党の人だって賛成とおっしゃる、きまっていることなんです。  さて、そこでもう一つ問題になる点は、歩積み、両建てがこんなに苛酷に行なわれても、なお中小企業がついていかなければならぬ理由はといったら、政府の手が悪いからだ。どういう手が悪いか。それは三公庫をつくっておきながら、ここへの財投は、わずか全体のどれだけです。総理御存じですか。総理に聞きたい。どれだけあるのです。
  201. 田中角榮

    田中国務大臣 まあ加藤さん十分御承知で言われますが、これは国鉄が財投の一割余であり、三機関に対するものが八%であるということで考えるのは、ちょっとおかしいのです。これは御承知のとおり、前年対比何%伸びたか、こういうところが政府機関の財投がどうなるかということでありまして、二〇%、二四%、今度の貸し出しの伸び一体どうか、こう言いますと、二九・何%も第一・四半期に対前年度比伸ばしておる。それだから、中小三公庫にそれだけウエートを置いておるのだ。ですから、あまり金を出し過ぎると、景気が過熱になって困るから、引き締め政策をやりなさいと、午前中井手さんは言われたのです。その中にもかかわらず、中小企業には三〇%の金を出さなければならぬ、そういうところに政府が重点をどう置いておるかということを批判されなければいかぬので、これは一兆三千億の八%、一兆三千億の一〇%というものが、中小企業金融の大宗をなすものではない、こういうことで十分ひとつ理解をいただきたい。
  202. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 この問題について直接その衝に当たって、日々資金が足らぬ、資金が足らぬで御苦労していらっしゃいます三公庫の責任者に、いまのままでよろしいのか、ふやしたほうがいいのか、どうなのかを一度聞きたい。
  203. 田中角榮

    田中国務大臣 三公庫の代表者が、御質問に対しまして、資金をふやしたほうがいいか悪いかといえば、ふやしたほうがいいと言うにきまっておる。そういうことではなく、財投計画をやっております大蔵大臣である私からお答えいたします。  これは、財源は非常に乏しいことでございます。しかも同時に、明年度はあまり財投も対前年度比伸ばしてはならない。一般会計も対前年度比できるだけ低い伸び率、財投も二〇%も三〇%も伸ばしてはならないという御説ではございますが、限られた財源の中、また低く押えなければならない財源の中からでも、三公庫に対する出資は重点的に考えるということを申し上げておきます。
  204. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 あなたはそれだけよく御存じなら、なぜおやりにならないのですか。三公庫が答えるかわりに自分が答えるほどよう知っておられるなら、なぜそれを具体的におやりにならぬ。それがやれないということは何かといったら、あり余っている大企業のほうへの融資が、なお足りないというから、そっちに向けたい、こういうことになる、事実じゃないですか。  そこで郵政大臣に別な問題でお尋ねいたします。郵便貯金集まり集まって一兆六千億、投融資、保険その他がございまするが、これを戦前におきましては、郵便局において利用すること、すなわち貸し出しすることができていたのでございます。しかし、戦時統制令のおかげでこれができなくなって、全部大蔵省に吸い上げられてしまうことになる。その結果は、地方でこれが使えない。そのために、地方は金づくりに四苦八苦で、何をするにも銀行へ行かなければならぬことになってしまった。これについて、あなたは郵政大臣としてどうお考えでございますか。
  205. 徳安實藏

    徳安国務大臣 郵便貯金の金、簡保の金、これを有効適切に、あるいは貯金いたしましたり、加入した者に還元するような道路あるいは学校、住宅等に利用することが最も望ましい姿であるということを、しばしば各方面から承っておりまするし、私もさように考えております。したがって、できるだけそうするように運用されることが望ましいわけでありまして、私どもも、現在では大蔵省に預託いたしまして、そこで資金運用審議会で決定されるままに配分されておるわけでございますが、いまお話のような点につきまして私どもの考えておる点につきましては、大蔵省にもとくと話をしてございます。ただ、郵政省だけで法律で運用できるようにしたらどうかという御意見もございますが、いまの段階におきましては、さようしなくても、大蔵省と私どものほうとの話し合いで十二分にその趣旨が貫徹できると考えておりますが、もしかりにそういうことが不可能であるという結論に達しますれば、御説のような点を研究してみたいと思います。
  206. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 あなたの省内におきましては、こぞってあの戦時統制令からできたところの法律は改めて、各その郵便局の窓口で自主的に、それこそ自主的に運用ができるようにしたいという意見なんです。このことは、戦後ずっと一貫した考え方なんです。大蔵大臣、あなたにこれについてお尋ねします。
  207. 田中角榮

    田中国務大臣 いま郵政大臣のお答えをしたことで非常にいいと思うのです。私も郵政大臣をやりましたときには、あなたのように、窓口でもって集めさしてばかりおいて、大蔵省の下請ではない、そういう意味でやはり大衆と直結をする貸し出しが必要であるということを声を大にしてやってみました。ところが静かに考えてみると、どっちにしてもこれは国の金でございます。資金運用部にこれを統一をして、資金運用審議会でもって、大蔵大臣と郵政大臣が両方とも副会長であり、会長は総理大臣でありますから、ここで十分審議をして、そうしてこれをまとめて、学校とか下水とか水道とか、こういう国民大衆の生活の基盤になるもののみにやっておるのでして、あなたは大企業になんて言われますが、大企業幾ら一体やっておるか。これは多くは開発銀行を通じまして、対象企業として自動車に六十億とかいろいろありますが、これは一兆三千億の財政投融資の中から大企業向けなどというものは、あるかなしかということであります。これはすべて国民に還元をしておるのでございますから、いま考えてみますと、郵政大臣の考えも私の考えも同じでございます。
  208. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 あなたは答弁が非常にうまくなってきたのですけれども、遺憾ながらそんなことにごまかされるほどこっちもめくらではなかったということなのです。残念ですね。そうでしょう。あなたは、郵政大臣のときには私の意見と同一であった。ところが、大蔵大臣になったら、とたんに君子豹変した。なぜ豹変せざるを得ないか。ここから先はお気の毒だから、私も言わぬでおこう。しかし、あなたのいまおっしゃったところの、集めて資金運用部資金でやるでいい、あるいは財政投融資でやるでいいじゃないか、それはみんな国民のほうへ還元されておると言っていらっしゃる。特に開銀や興銀は、みんな国民——それは国民に違いない。しかし、あなた、そうおっしゃるならばひとつ聞きたいが、マッハということを御存じですか。マッハ、経済界で使われているマッハということを御存じですか。総理に聞きたい。それはどうかといえば、単位以下には貸さぬというときの単位なんです。公称資本金三億程度以上なければ、大体相手にしない。それが証拠に、開銀、興銀のデータを見てごらんなさい。いわゆる中小企業に対してどれだけ貸されておるか、統計でおわかりのとおりでしょう。全体の一割二分ないでしょう。それでもって郵便貯金がみんな中小企業、零細、地方へ行ったということが言えますか。地方へ行かないで、大企業にのみ集約されるから、地域的には格差ができちゃうじゃないですか。冗談言っちゃいけませんよ。あなた、この格差をどう考えられるか。何がゆえにこんな都会といなかとに格差ができてきたか。それがなぜぐっと戦前よりは広がったか。これをよく考えてもらいたい。あなたの苦しい立場はよくわかる。よくわかるけれども、あえてあなたが中小企業倒産対策に対して、ほんとうに歩積み、両建てにまっ正面から取り組むという勇気があるならば、当然これもやってしかるべきで、これこそ車の両輪なんですよ。しかもそれは、あなたのかつての古巣の郵政省の上から末端に至るまでの切なる長年の宿望なんです。どうしてそれができないか。総理、このことについてどうお考えになりますか。
  209. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 郵便貯金の還元融資、これは先ほど大蔵大臣が答えたとおりで私はけっこうだと思います。私自身も、加藤さんが御指摘のように、かつて郵政大臣をしたことがございます。その後に大蔵大臣をし、また今日は総理にございますが、私、大蔵大臣の答えたとおりでけっこうであります。
  210. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私は、佐藤総理田中大蔵大臣、このコンビのときにしてこのことができなければ、この問題はずっとずっと先に延びるだろうと思います。もっとも、社会党が天下をいただけば別です。いただく用意はあります。いただけば別ですけれども、なぜかならば、総理も郵政大臣、あなたも郵政大臣、郵政省の気持ちはよく御存じのはずです。しかもなおひずみ是正のためには、地域のひずみも、中小企業、大企業のひずみも、直そうという姿勢なんです。それでもしやれなかったら、有言不実行といわれる。あなたが一番いけないという有言不実行になる。
  211. 田中角榮

    田中国務大臣 加藤さんの言うこともよくわかりますが、そこで一歩進めて考えていただきたい。実際において、一体窓口でもってできるのかといいますと、これは三、四年前に郵政省がそういう案を持ってきまして検討したことがございましたが、これは実際において貸し出すということになりますと、非常に零細な金になってしまうのです。これをまとめると二兆円を突破いたしました。これから四年間出すと、四兆円になろうとするのであります。資金運用部資金を中心としたこの財投計画というものが、戦後の日本の生活のレベルアップということにどのくらい寄与したかということは、これはもう論を待たないところであります。それは、一つにはやはり集中的投資というところに、計画的投資というところに私は効果があったと思う。ですから、午前中に、あまりにも小さく細分化して払うと、やはりその設備投資の計画性もなくなり、非常に設備投資が行なわれたり物価が上がったりするので、資金統制をやれというのではないが、資金はもっと効率的に投資をするように政府は勇気を持って考えろ、これは社会党を代表して井手さんも言われたわけです。ですから、加藤さんも私も、その集めさせた者たち一つも貸し出さぬというような還元融資の制度はないことは悲しい、何かさびしいということはわかりますが、やはり公の問題に対しては、よりいずれが効率的であるかということを考えるときには、現在のように資金運用審議会を十分活用して、郵政省の皆さんにもありがとうございましたということで、これだけ国民に喜んでいただいておりますよ、こういうところにやはり集中的に使うことがより合理的だ、遺憾ながらそう思わざるを得ません。
  212. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 お約束の時間がまいりましたので、私は本件は緒論に終わっただけでございまするが、幸い来年四月まではずっと会議が開かれるわけでございまするので、残余の問題はそちらに譲るとして、一点だけ、それは先ほどの井出氏の物価問題について足らざるところを補って、私は終わりたいと思います。  物価の値上がりを防ぐ具体策一つには、だれが犯人であるかということをよく正体を見きわめて、それの原因を除去するということが一番大切なことだと思うのです。これについて討議を重ねたかったのですが、一問で終わります。今日、物価が上がることはあっても下がることはないという、こういう世界経済の七ふしぎ。上がることはあっても下がることがない。ところが、ほんとうの自由主義経済であったならば、不景気のときには、卸売り物価が下がって、小売り物価が下がっていくのが当然です。それがない。上がりっぱなしの一方交通。その理由の最大の原因は、独禁法の穴抜けの、いわゆる独占価格と管理価格だと思いまするが、総理、管理価格についてあなたの御所見を承りたい。
  213. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま御説明になった、この下がらないということ、それは加藤さんの言われるとおりであるとは私は思いません。なぜならば、その例に管理価格を引っぱり出されたようでございますが、そうでないので、その前に、総需要というものはいかに変わってくるのか、そしてその総需要が非常に強いと物価が、(発言する者あり)私持っているからだいじょうぶです。総需要が非常に強い。物価が相当上がりましても、これは消化されていくのです。だから、午前中も、健全なる消費体制というのが望ましいんだということを申しました。一応上がったもの、それが安くならないというのは、そういうところにあると思う。それは管理価格の弊ではございません。もちろん管理価格というものが、日本経済においてはこれという、管理価格という典型的なものはないように私は思います。大体競争で価格が決定されつつある。しかしながら、非常に寡少な経営者によりましていわゆる管理価格らしいものができつつあるだろうと思いますが、そういうものは、特殊な事情でカルテルその他によって価格をつり上げておるというようなことがあれば、これは公共の利益のためにこれを下げることにやぶさかではございません。しかし、私は、物価の動向というものはそういうものでなくて、大まかに申すならば、総需要が強ければ必ず物価は上がっていくものだ、さようなことを私は考えております。
  214. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 これ一問で終わるんですからね。物価論争をやろうとすれば、それはすそ野を広げなければならぬのですよ。ただ、私は時間の点で委員長に協力せねばならぬから、それで一点にしぼってるんですから、管理価格にね。いいですか。管理価格とは何かといえば、これは寡占、独占の業界がかってにきめる値段のうちの一つ。独占価格は、日本の独禁法の除外例をつくって政府の許可を得て相談してつくった、これが日本流の独占価格。ところが、この法律の許可を得ずに、この独禁法の除外側をつくらずにかってに独占、寡占なるがゆえに自分らだけできめるという、いうならばこれはお手盛り値段というやつなんです。お手盛り歳費がいけないと同様に、このお手盛りの値段は最も忌避すべきである。にもかかわらず、政府部内においてはどうなっているかというと、通産省のほうは、そんなものはないだろう、そんなものは知りませんとおっしゃる。ところが、黒金官房長官は銘柄まであげて、これがある、こう言っておられる。藤山愛一郎さんも、あると言っておられる。ところで、公取はといったら、下方硬直性の原因はこれである、だからというので、もはや調査が進んでおる。あなたはそのいずれをとられますか。
  215. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 管理価格だけについては、先ほどお答えいたしましたように、この価格が不適正な場合においては、私は引き下げさすようにいたします。先ほど来一般物価について申し上げましたが、独占価格だけについて申せばそのとおりであります。御指摘のように、寡占状態であるならば、それだけでかってな価格を形成することは望ましいことではございません。
  216. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 国民の幸福のために、あなたの勇断をもって、この独占価格、管理価格に対して徹底的な勇断をお願いしまして、要請しまして、しかも次の国会あるいは今国会のあとでこれをまた詳細に論議するという約束をしまして、私の質問を終わります。
  217. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて加藤君の質疑は終了いたしました。  参考人には御多忙中のところ長時間にわたりまして御出席をいただき、まことにありがとうございました。厚くお礼申し上げます。  次に、中井徳次郎君。
  218. 中井徳次郎

    ○中井委員 時間がだいぶたっておりますが、与えられました時間は、したがって五時四十分までということになるのでありましょうけれども、できるだけ簡単にお尋ねをしてみたいと思いますが、場合によりましては、そういうことでございまするので、時間一っぱいやらしていただきます。  最初にちょっと私、きょうは今回出されました補正予算に関連をして、地方財政の問題と、あとで、やはり地方の問題でありますが、選挙管理委員会のあり方とか、選挙法の問題だとか、そういうことをお尋ねしたいと思っておったのでありますが、   〔委員長退席、松澤委員長代理着席〕 先ほど加藤君の質問の中で、党といたしまして、佐藤総理の御返事が少し何か簡単過ぎやせぬかと思われることが一つございますので、いま外務大臣を兼ねておられるそうでありますので、その点だけちょっと伺っておきます。  それは、先ほど質問の中にあった日ソ間の関係でございまして、加藤委員は、領事館を置くということについて政府は考えておるかという質問をいたしました。それに対して総理は、考えておりませんというきわめて簡単な回答で、そのまま時間の関係で同僚議員は進めたのでありますけれども、たしか、日ソ国交回復に伴う共同宣言の中には、将来にわたってその領事館の設置等については両国で努力を続けていく、こういうふうな条項があったように私はちょっと記憶をいたしておるのであります。その点について、実情をあなたは御存じでなければ、法制局長官からでもお答えいただきたい。
  219. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答え申し上げけす。  ただいまの御質疑にありましたとおりに、日ソ共同宣言の第二項というところに、両国が外交関係を通じて両国内におけるそれぞれの領事館の開設の問題を処理するものとする、という条項がございます。
  220. 中井徳次郎

    ○中井委員 したがいまして、総理におかれてもそのことがあるとしてひとつ考えていただきたいと思います。つきましては、こういうことを申し上げるのは、御案内のとおり、ことしの夏、私ども社会党は成田書記長を団長といたしまして訪ソ使節団を編成いたしました。向こうでいろいろ会談をいたしました中で、この領事館の設置を促進しようじゃないかという話し合いができておるのであります。そういたしまして、特にミコヤン代表が、ソ連としてはもう賛成であるということを、責任のある地位におきまして、われわれは野党でありますが、はっきりと言っておる。こういう事実があるのでございます。あなたは党首会談をやるとかなんとかいろいろなことを考えていらっしゃるようだけれども、それはそれとして、わが党はわが党の考え方もありましょうが、そういうお考えがあるといたしましたならば、いま申し上げましたようなこともあるし、特にまた、先ほどから加藤委員が質問し、あなたが答えられておるところによりましても、日中、日ソの関係は、特に日中の関係は政経分離とはいいながら貿易はどんどん進んでおる。日ソの関係におきましては、とにかく大使の交換はいたしておる。私も実はことしの夏訪ソ使節団の一員としてまいりました。自由民主党の福永君を団長とするあの中で一行に加わってまいりました。あなたのところの、この間の総裁選挙の有力な候補者でありました藤山氏も、その当時ソ連におられて、各地を視察しておられる。日ソ間の人事の交流というものはたいへん増加いたしておる。こういう情勢の中にあって、貿易も毎年毎年倍くらいふえておるという中にあって、私は領事館というようなものを考えてもいいのではないかと思う。また、さらに、ナホトカと舞鶴というような地方は、両都市間で姉妹関係というようなこともいたしております。おそらくソ連としてはナホトカなんかを希望ししおると思いますが、日本日本としていろいろ事情はありましようが、新潟とか敦賀とか、あるいは大阪とか、いろいろと考えようはありましょうけれども、私は、こういうことこそ、新内閣佐藤総理は前向きで御研究いただかないと、そういう意思はありませんというふうなことではどんなことであろうか。ちょっと私はうしろで伺いまして、そういうことを非常に感じました。おそらく、いまの平和共同宣言の文句等についても、いま思い出されたのではないかとさえ思われますから、どうぞひとつ、その点についての総理考え方をもう一度聞かしていただきたいと思います。
  221. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  先ほど加藤委員お尋ねに対してお答えいたしましたように、領事館を設置するその基礎には、領事条約が必要でございます。日ソ間にはただいまその条約がございません。ただ、今日共同宣言以来国交は開かれておりますから、その大使館の中に領事部というものを設けておるようでありまして、それで領事館の事項を処理しておりますが、さらにこれを御説のように進めていくとなれば、そのもとになる領事条約を締結することが必要だ、かように思います。先ほどお尋ねのありましたのは、国後、択捉、こういう問題とからんでおるようでございましたので、私も誤解があったかと思います。しかして、社会党の訪ソ団、またミコヤン議長から当方の国会議員の方々が招聘されたことも、すでに承知いたしておりますし、いわゆる国民外交が展開されておることは、私は、両国の将来のためにまことにしあわせになる、かように思いますから、ただいま申し上げるような状態でございますし、ミコヤン議長がそういう点についても積極的な意思を表明されたということでありますれば、外務省のほうにおきましても、これらの点について十分考えてみて、研究をいたしてさしつかえないことでございます。
  222. 中井徳次郎

    ○中井委員 いまのお話では、領事条約がまだできてないからということでありますから、できるだけ早く領事条約をつくるように日本としても努力すべきである、私はかように思います。その点をもう一ぺん伺っておきたいと思います。
  223. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまお答えいたしたように、十分研究に値する事案だ、かように考えますので、研究をいたします。
  224. 中井徳次郎

    ○中井委員 それでは、本論に入りまして、労働大臣が四時からお出かけになるようでございますから、どうも質問の順序からすると少し途中なのでありますけれども、私がお尋ねをいたしますのは、本年度の追加予算について、特に公務員のベースアップについての件でございます。  この点につきましては、どうもここ十年来毎年毎年同じようなケースを繰り返しておる。そうして毎年毎年補正予算でこれを政府がごまかしてきておる。最初この問題が起こりました当初におきましては、なるほど初めてのことでもありますし、補正予算を組んでどうこうということはあったでございましょうけれども、その後もう十数年たっております。しかも、補正予算の成立をめぐりまして、その前後にかけて必ず国家公務員並びに地方公務員が、これは当然のことでありますが、人事院の勧告完全実施を要求していろんな動きをする。これはあたりまえのことであります。それに対して、毎年毎年また同じような処分をやっておる。ことしも、聞きますると、農林大臣にちょっとお尋ねしたかったが、とかく農林省関係において八十数名が譴責とか何だとかいうふうな処分を受けておる。また、地方方面におきましては、新潟県の地方公務員が処分を受けておる。こういう事態をそのまま毎年ほっておくということは、私は政府としてまことにまずい策ではないかと思う。労働大臣は、内閣においても党内においても、そういう点についてはまあまあほかの人たちよりも進んでいらっしゃるというふうなうわさがもっぱらある人でございますし、いままた担当の大臣でありますから、私は、この点について率直な石田大臣の意見を冒頭に伺ってみたいと思います。あとの私の質問の参考にもいたす意味もあります。
  225. 石田博英

    石田国務大臣 ちょっとお断わり申し上げておきますが、公務員関係の担当は私ではないのでありまして、増原国務大臣でございます。そこで、労働行政一般といたしましてのこの問題についての考え方を申し上げたいと存じます。  公務員については労働権の制限がございます。その制限に対する代替措置といたしまして、人事院の勧告を尊重するということになっておるのであります。そうして、この人事院の勧告のうちで期日を明記した勧告が行なわれましてからすでに六回に相なります。勧告を尊重するということの極限は、むろん期日を含めて完全実施することでありまして、労働行政の立場からは完全実施が最も望ましいと信じております。したがって、この問題の処理についての私の立場は、終始完全実施を求めてまいったのでございますけれども、同時に、私はやはり国務大臣といたしまして国の財政一般のことについても責任があるのでございます。したがって、本年は非常に財政事情が苦しい時期でございました。その財政事情の苦しい時期でございましたにかかわらず、例年の十月よりは一カ月早めて九月実施にいたしました。むろんこれで満足をしているわけではございませんけれども、財政事情等を勘案いたしました際に、やはり私は、一歩前進をいたしたもの、同時に、財政事情を考えて、国務大臣としてやむを得ないことだと考えておる次第でございます。  それから、人事院勧告実施についての公務員、地方公務員の行動並びにこれに対する処分、これは、地方公務員法、国家公務員法に関する事項でございますので、私の所管ではございませんから、所管の閣僚にお聞きいただきたいと存じます。
  226. 中井徳次郎

    ○中井委員 所管大臣にはまたあとで尋ねますが、いまの労働大臣の意見は意見として承っておきます。しかし、どうも一カ月ばかり延ばしたとか延ばさないとかいうことで、新聞などで私は拝見しておるのでありますけれども、何回も大臣皆さんがお集まりになって協議をなすったというふうな政治あり方について、私は実は非常な疑問を持っております。そのことだけ申し上げて、どうぞけっこうであります。  この間提出されました予算案を拝見いたしますと、大体、義務教育費国庫負担の三十八年度分の不足分とか、あるいはまた失対関係の経費とか、国民健康保険の不足分とか、さらにまた人事院の勧告に基づく一般公務員の財源の不足とか、まことに当然の義務的なことばかりでございます。したがいまして、その限りにおきましては、案を出したのはあたりまえだ、こういうことでありましょうけれども、私は、ことしの二月に、三十八年度ですか、第二次補正予算、第三次補正予算を出されましたときにも申したのでございますけれども、なぜこういうふうな当然出さねばならぬ義務的経費を年度の除中で補正をしなければならぬか。それは、敗戦後四、五年の間の日本のように、一年の間に物価が五割上がるとか倍になるとかいう混乱期におきましてはやむを得ないと思います。また、特殊な突発的な事情があれはやむを得ないと思うのでありますが、そういうことではない。だいぶ落ちついてきておる。先ほどから総理大臣は、高度成長政策の矛盾といいますか、ひずみといいますか、そういうものをこれから直していくように努力する、経済はなるべく安定でいくと言われる。予算も私は安定でいかねばならぬと思うのでありますが、そういう意味から考えまして、今年の四月十七日に前総理池田氏と総評の首脳部と会見して、いわゆる三公社五現業のベースアップについて話し合いがまとまった。それならば予算をさっそくいじるのだろうと私は思っておりましたら、まことにどうも大蔵大臣のみごとな手腕でありますか、三公社五現業の公企業関係の予算は、もういじらなくても予算のワク内で何とかやっていけるのだ、こういうことであります。そういたしますと、あの三公社五現業のいわゆる政府関係予算と一般会計の予算との間に、どうも何か私は納得できないものがある。これは組まねばならぬ、先のやつは組まなくともよい、この辺の事情をちょっと聞かせていただきたい。
  227. 田中角榮

    田中国務大臣 御承知のように、三公社五現業の仲裁裁定は完全実施をすることでございますが、現業でございますので、経費の合理化によって経費を削減して財源を浮かすこともできます。それから、努力をすることによって売り上げをよけいにする、こういうこともできるわけでございます。そういう意味で、既定経費の移流用その他で一部の財源ができるような仕組みになっておるわけでございます。ところが、一般会計は、御承知のとおり、税金をもってまかなっておりますし、これは非現業で、現業ではございませんから、幾ら一年間の延べ時間何万時間というものをその半分で仕事を全部終わらせたとしても、それだけのものが浮くわけではございません。そういう意味で、一般会計及び特別会計または三公社五現業の予算の制度の上から違うわけでございます。また、期末における賞与などは、一般会計の予算の場合は、余った場合もしくは新しく財源を補正追加をした場合に限って支出ができるわけでございますが、期末になって、三公社五現業等は、それほど金が節約できなかったという場合、また、自然増収が預金収入等非常によかったというような場合、いろいろ努力によって出た場合、努力メリットというものに対してはこれをよけいに払っていいという制度になっているわけでございます。でありますので、三公社、五現業の場合は移流用で完全実施がまかなえたわけでございますし、それから、一般会計の場合、また地方財政の場合は補正を必要とした、こういうことであります。
  228. 中井徳次郎

    ○中井委員 いまの御答弁は、半分ばかりほんとうであろうが、半分はどうも少しごまかしじゃないかと思うのです。大体、私がことしの二月か三月聞きましたときに、政府関係機関予算と一般会計予算と、こういう本予算やら特別会計やら、そういうものをたくさんつくって、特別会計だけでも四十八あろうか、そのようなものを整理してはどうだという質問と同時に、その内容について、大蔵省はひとしく同じウェートでもってこれを厳重に予算編成をするのかと言ったら、そのとおりでございます。こう言っております。ところが、予算か通って一月以内に、——あの話ができたのは一月か二月かあとですよ。ことしはまだ下半期に景気がひどくなるかどうなるかわからぬし、国鉄は赤字で二六%今度値上げをしたいといってこの間から言ってきている。非常にきゅうくつなんだな。だけれどもそれができた。私はできたことをけしからぬとは言いませんよ。だから、そこに何か国民として納得のいかないところがある。なぜ一般会計予算にもそれくらいの余裕のものを盛らないか。これは全部義務的経費なんだ。私はそれを言うのです。何か災害について予備費でもってやったというのだって、けっこうでございます。人件費に予備費を組めとは私は言わぬが、その辺のところどうなんですか。もう少し十分に見れば、毎年毎年こういうことを争うということもないのではないか。争うにしましても、こんなに、何と言いますか、がつがつと言えば何ですが、その辺のところ折衝が何か年中行事のようなものになっている。それを組まないのは、何か大蔵省として、私に言わせると、一応ほかにたくさん新規事業もあるし、いろんなこともやらなければならぬから、人件費、これは人事院の勧告が出たらまた補正するわ、それまでほっておけ、去年どおりという、こういうふうなことは、非常に不まじめで、怠慢で、義務的じゃないと私は思うのです。もうそこまで来ていると思うのだ。それはひどいものですよ。三公社五現業については、四月十六日、予算はよろしいと言う。私も、社会党は望むほうでありますから、黙っておりました。今度の八月十二日のもの、今度もそうだろうかなと思ったら、いやとんでもない、地方財政に至ってはということでございます。この辺のところ、大蔵大臣どうですか。もうあなたはずいぶんベテランになって、答弁もじょうずだ。この辺のところも、もう大した額ではありませんよ。これはどうなんです。三兆数千億の中の、この点は私はどうも納得できません。それをもう一つ・・。
  229. 田中角榮

    田中国務大臣 一般会計、特別会計、財政投融資と、こうずっと三つ並んでおりますこの制度の中で、一般会計は議決に仰がなければ厘毫の金も支出はできない。これは当然税金でありますからそのとおりであります。特別会計は一般会計よりも多少弾力性がある。また、財政でまかなう三公社五現業に対してはもっと弾力性がある。政府関係機関、政府機関で特殊会社その他、公団はもう少し弾力性がある。あとは民間会社になるわけであります。そういうことをお考えいただく場合は、民間に近いほど、先ほど申し上げたとおり、財源にも弾力性があることは、これはもう御承知のとおりでございます。企業性を帯びておるものは予算にも弾力性がある。企業性のないもの、これは弾力性がありません。ですから、国会の経費などというものに対しては全く弾力性がない。こういうことになるわけでございます。でありますから、それにしてもあまりにもひどいじゃないか、国会が終わって、予算が通ってから一カ月後に出た仲裁裁定は移流用でまかなった、これは、御承知の、電電公社及び郵政省などはあまり金額が大きくありませんでした。一番大きいのは国鉄であります。国鉄は、ちょうど三十九年度中に、四十年三月三十一日までに退職をする定年退職者の数に退職金をかけた金額がちょうど仲裁裁定の金額ぐらいであった。こういうことで、しようがなく、四月一日にその金を払うとすればその金でまかなえる、こういうことであったわけであります。ところが、一般会計でもって今度あらかじめかかるものを全部予測をして組むべし、これは私は十分考えられる問題だと思います。三兆二千五百億の一般会計に対して千億の第一次補正でありますから。ところが、法制がそういうふうになっておらないのであります。財政法は非常に厳密なものを要求されているわけでございますから、あらかじめ人事院勧告が出るであろうというようなことを予測をして予備費の中にこれを組む、こういうことは、これは財政法違反ということでまっこうから問題になるわけでございます。もう一つは、御承知の既定経費でございますが、これは、実額、実員とか、定額だとか、いろいろな制度がございまして、精算をしてこなければ払えないというので、今度出しております義務教育の国庫負担金などは、三十八年度の精算金の不足分でございます。それから、恩給のようなものでもって、精算しなくても、必要でなければ払わない、こういうものに対しては、三十九年度分の追加額を概算をして計上いたしておるわけでございます。でございますから、現在の予算制度、財政法のたてまえ、こういうものと十分関係があるのでありまして、私たちは、補正予算の御審議をいただいておる現状を考えますときに、右手では補正予算の審議に応じ、左手では四十年度の予算編成をしなければいかぬ、こういうことを考えましただけでも、補正予算などというものが一本であればいかにも合理的だ、こういうふうにも考えておりますが、遺憾ながらそれができないというのは、予測をして組むわけにはいかないという考え方でございます。ただ、いままでのよりに千億とか二千億の財源がございませんから、安定成長期に入りますと、自然増収をもうそれ以上に見積もるわけにはまいりませんので、いまの制度のままで人事院勧告が七%、八%、来年もなお出されるとした場合、ほんとうにその補正予算が組み得るのかどうか、私は自信がありません。これらの問題に対しては制度の上からまず正していかなければいかぬというふうに考えられるわけでございます。  いずれにしましても、貴重な御意見でございますので、十分検討してまいりたいと思います。
  230. 中井徳次郎

    ○中井委員 いまその制度の上でできないと頭からおっしゃいますが、ほんとうですか。確定的経費とかあるいは既定経費とかいうふうなことになっておると思うのですが、政府が一方におきましては、これは高橋さんにお尋ねするが、中期経済計画なんというものをおつくりになって、そうして、毎年何%か経済成長して、物価騰貴は何%と、はっきり書いておるわけです。これはやはり政府の責任を持っている書類だろうと私は思うのでありまして、明治時代の予算編成じゃあるまいし、私は、近代国家としての予算編成として、そういうものをにらみ合わせながらやるというのはもう当然のことだと思いますが、この辺についてちょっと私、高橋さんに、物価騰貴との関係、それから労働賃金との関係中期経済計画の内容を聞かせていただきたいと思います。
  231. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 一昨日来ここで何度もお答え申し上げました次第でございますが、所得倍増計画を検討いたしました結果、昨年末に経済審議会から政府に意見が出されました。その意見に基づきまして、今年の一月に内閣総理大臣から経済審議会に、昭和三十九年度から四十三年度に至る五カ年間について中期経済計画をつくることについての諮問をいたしました。その諮問におきましては、前提条件といたしまして、昭和四十三年度において国際収支におきまして経常収支でバランスがとれるということが一つ条件、もう一の条件は、昭和四十三年度において二・五%の消費者物価上昇率、この二つの条件前提として、しかもその中で、いままで立ちおくれておりました農林漁業とか中小企業の立ちおくれを取り戻すとか、社会資本の増大をはかるとか、または社会保障関係に重点を置くとか、そういうふうな重点項目を幾つか掲げまして、そういう条件のもとに経済計画を立てるように諮問されたわけでございます。それで、結果として出てまいりましたものは、先般十七日に答申があったわけでございますが、実質成長率年平均八・一%、こういうことに相なっておるわけでございます。  しこうして、ただいま御質問の中に、物価騰貴の原因一体どこにあるかというようなことに関連してのお話がございましたが、私どもの見るところでは、大きな要素として、大体、第一は、この半数以上を占めるものが、五十何%を占める個人消費でございます。その個人消費伸びが、過去の実態を見てみますると、昭和三十六年度から毎年一五%台の個人消費伸びを示したわけでございます。それで、これが物価騰貴には一番大きな影響を与えておるかと存じます。その次は設備投資でございますが、これが大体二割程度になろうかと存じます。そのあとが、社会資本、または政府消費、または輸出等がこれに影響を与える問題でございます。ところで、なぜ個人消費がそういうふうに年々一五%も増大するかという原因をたずねてみますると、結局これは個人の可処分所得が相当急速に増大してきているということが一番大きい原因であろうかと存じます。たとえば、今年について見ますると、今年の賃金の上昇率は、春闘の平均上昇率が一二・四%、その後の実質給与を見てみますると、大体一二%程度の上昇に相なっておるかと思います。なお、夏期のボーナス、これからきまりますところの冬のボーナス等がどういうふうに動くかという傾向も見なければならぬ次第でございますが、それらの点を考えてみますと、相当大きく可処分所得がふえている。それが貯蓄に向かって落ちついておれば、これは需要になってまいりませんけれども、貯蓄がそう伸びないということになれば、それがそのまま国民の個人消費需要として働いてくるわけでございます。これが相当大きな国民需要として物価を引き上げるところの作用をなすか、かように考えておるわけでございます。もちろん、農林漁業とか中小企業におけるところのいわゆる生産性の立ちおくれのために、この部分においては結局賃金の上昇がつまり所得の平準化の作用といたしまして直ちに価格を押し上げる作用をなす、つまり、コストの関係物価を引き上げるという作用をいたしておる、かように考えております。したがって、その両面から物価騰貴が出てきておる、かように私どもとしては判断をいたしておる次第でございます。
  232. 中井徳次郎

    ○中井委員 賃金と物価騰貴の関係につきましては、私どもは高橋さんと別の意見を持っておりますが、いずれにいたしましても、毎年二・五%ずつ物価騰貴をする、それで押えるというような基本的な立場で中期経済計画というものができておる。そういたしまして、国家財政、一般会計の人件費というふうなものについてはほとんど前年どおりであるというふうなことは、非常に矛盾をいたしておりまするし、また、毎年毎年人事院勧告が出ることはきまっておる。十数年きまっておる。そうして、毎年毎年、五月一日からやれというのを、十月からしかやらない、九月からしかやらないというのは、私は政治あり方として非常にまずいと思う。裏から見ると、事務に藉口して何か騒ぎを故意に起こして、それまたベースアップの要求してるわということで、他の方面では全然問題にならないが、国家公務員だけについてはそういうことがいつも行なわれておるというふうなことは、私は、安定をせにゃならぬ、安定をしてきたという現下の政治情勢の中で、与党の総裁が野党の総裁と懇談をしたいなんと言って、調和をしたいなんと言っているのですから、どうも策としてまずいものだと思う。特に、こういうことは事務的なことです。私は本質的には事務的なことだと思う。こんなもの政治でも何でもない。その点を十分考えていただきたい。  以上のことを申し上げて、ちょうど赤城さんが見えましたから、先ほども労働大臣にちょっと伺ったのですが、ことしのやはりベースアップの  ことで、全農林ですかどこかで八十数名か処分者を出したというのですが、これはほかの省では一向そんなことは話を聞いておりません。あなたのところだけ出ておる。何か特殊な事情があろうと思うのですが、しかし、私ども地方出身の者が見ますると、全農林系統の食糧事務所とか何とかいうのは一般的に非常に給与の低いものであります。そういうものでありますから、やはり人事院の勧告等については最も関心が強いということから来ておると私は思うのですが、そんなことを毎年毎年譴責だ何だというふうなことは、いいかげんに悪循環をひとつ断ったらどうかというふうなことで、大臣見解をちょっと伺いたい、こう思うのです。
  233. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 全農林労働組合の処罰の問題でございますが、傘下の職場において職場大会等を相当催したわけでございます。御指摘のとおり、給与が低い等の関係で、ほかよりもよほどよけいに、個所も非常に三百余カ所とあったわけであります。それで、その職場大会等の大半は勤務時間内に食い込んでおりまして、その食い込み時間の顕著なものは一時間半に及んだ、こういうふうになっております。私ども、職場大会を催す理由、その気持ち等はよく承知していますが、やはり秩序は秩序として保たなければならぬ、こういうような関係から、勤務時間内の職場大会等の違法行為を行なうことが国家公務員法及び人事院規則によってかたく禁止されておりますので、違法な行動に対してこれを厳重に禁止する方針をもって臨んできておりますから、今回の全農林労働組合の行動についても、事前に、全農林中央本部はもちろん、その傘下県本部、支部あるいは分会に対しましても、こういう違法行為を行なわないように、私も代表と会って厳重な警告を発しておったのであります。それを阻止しようとしたのでございますが、阻止ができなかった、こういうことでありますので、違法行為の実行の状況及び指導者の組合内部における地位等が職員に及ぼす影響等をも勘案しまして、国家公務員法の第八十二条に該当する者を処分をした。しかし、この処分は、もちろん正常な職員団体の活動を抑制しようとするような意図は持っておりません。ただ、考えられますことは、いまお話のありましたように、給与が低かったり何かいたしますので、そういう行動に出る動機等については私も十分了解をいたします。しかし、先ほど申し上げましたように、秩序は秩序として守ってもらわなければならぬ、こう考えましたので、処分に出た次第でございます。
  234. 中井徳次郎

    ○中井委員 八十七名のことでありますし、内容は減俸とかなんとかというふうなことでありまするから、ここで大げさに取り上げるつもりは実はございません。しかしながら、あなた中座をしておったが、このようなことで毎年毎年当局と職員組合との間で論争が起るということ、そのことの基本のことについて私はお尋ねをいたしておったのであります。たまたま農林省がことしやった、こういうことであります。あなたのところだけでありますから、精神がよくおわかりになるのなら、そういうことについて今後とも考えてもらいたい。私はなお詳しく聞いていますよ。場所によってまるで違う。処分のしかたがその庁のあり方によって違う。しかし、そんなこまかなことは言いません。あとよく調べて善処していただきたいと思います。  次に伺いますが、こういう給与問題に関連をいたしまして、この間から自治省のほうと大蔵省のほうで地方公務員の給与のことで大へん熱心な折衝があって、そうしてまとまった、こういうことでありますが、自治大臣から、大体どういう経過でどういうことになったのか、概略でけっこうですから、お聞かせをいただきたいと思います。
  235. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 お答えをいたします。  今回の地方公務員のベースアップに伴いまして必要な額は六百億でございます。そのうち、不交付団体が百五十億でございまして、交付団体分が四百五十億でございます。そこで、この財源措置にいろいろ困りまして折衝をしたわけでございますが、その中で、一つは地方交付税の自然増収分が百五十九億出たわけでございます。なおそのほかに、節約といたしまして、国の公共事業の節約に伴う地方団体分が五十億、それから、国と同じように旅費、物件費等の節約三%を見込みまして、これが三十億、合わせまして八十億でございます。そのほか、地方税の自然増収がどれくらいかということで、私のほうは最初六十億余りを見込んでおりましたが、途中で法人税が非常に減収の見込みであるということでございましたので、この点を考えまして二十九億を予定したわけでございます。そうしますると、先ほど列挙いたしましたものを差し引きますと、百八十二億というものが財源不足をいたすわけでございます。そこで、大蔵大臣と最後に折衝いたしまするうちに、地方税の増収分は六十一億は確実であるという点がわかりましたので、この点、私どもが当初見込みました二十九億との差、すなわち三十二億というものを百八十二億から差し引きまして、百五十億の財源処置を構じよう、こういうことで、これを地方交付税特別会計に政府預金部から借り入れまして、その利子は国が持つ、そうしてこの百五十億と、先ほど申しました地方交付税の自然増百五十九億を合わせまして三百九億、これを府県及び市町村の交付団体に交付することにいたしたわけでございます。
  236. 中井徳次郎

    ○中井委員 たいへん詳細な、しかも数字がみごとに合っておる御説明なんでございまするけれども、それを基礎にいたしまして私はいろいろお尋ねをいたしたいが、大体、自治省が毎年策定をし国会に出しまする地方財政計画、こういうものと現実の地方財政の決算との間にどれくらいの開きがあるか、過去四年か五年の実績を私はちょっと聞かしていただきたいと思います。
  237. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 財政局長からお答えをさせます。
  238. 柴田護

    ○柴田政府委員 正確な資料をちょっと持っておりませんが、概略でございますが、大体昭和三十七年度の決算で約六千億、それ以前から大体毎年千億ずつくらいの差が開いてまいりまして、昭和三十七年度決算では約六千億でございます。
  239. 中井徳次郎

    ○中井委員 そういたしまする、大蔵大臣や自治大臣に私はお尋ねいたしたいし、特にまた総理大臣にも見解伺いたいのですが、この間から大いに議論をなさって、徹夜をなさったというふうに新聞記事にございました。何か党のほうでも三役の方が中にお立ちになって百五十億をおきめになったというが、肝心の地方財政は、年度で決算してみるというと、政府の予定よりも五千億も六千億も違っておる。これは補正予算の関係もありましょう。私はそう思うのですが、どうも私は、この政府の予算と、先ほども申しましたように、一般会計、特別会計、政府関係機関予算、その他たくさん、大蔵大臣が言われたもの以外に、地方財政計画、地方財政というものがあるわけです。これの総計で、国家の全般の差し引き計算はもちろん必要でありましょうけれども、調和のとれた、総理大臣のお好きな調和のとれた財政というものがなければならぬ、こういうことで地方財政計画というのは私はできておると思う。ところが、どこかで抜けちゃって、六千億、その前の年は五千億というふうなことがある。ときどき何か地方税法と国税との関係の調整をはかる、あるいは補助金の問題、助成金の問題、地元負担の問題、いろいろありましょうけれども、どうも、全体として考えましたときに、何か地方財政と国家財政との関係に非常にちぐはぐなものを感じておる。そうして、先ほどの御説明だと、百五十億ですか、今度のベースアップでいきますと、総計は五百億ですか。そのうち政府が特にめんどうを見なければならぬものは六百億か、六百億の中でだんだん減りまして百五十億、そういうことのために、全国の知事が東京に集まって、かわりばんこ交代で詰めておる。知事というのは、地方において地方行政をやっておればいいと私は思うのです。いま地方自治体と政府との間には、憲法によってはっきりとした法制上の区別がある。この辺のところをどういうふうに政府がほんとうに基本的に考えていっておるのか、いまとにかくやかましゅう言うから、その日その日で調節をしていけというふうなことであるのか、私は率直に申して、大きな転機が来ておるように実は考えておるのです。大蔵大臣のこの辺の率直な見解をまず最初に伺って、その御答弁によって私はさらに申し上げてみたいと思う。
  240. 田中角榮

    田中国務大臣 国会で御審議をいただいておりますものの中には、一般会計を含めて、一般会計を中心にしましていろいろな会計がございます。ございますが、一般会計は三兆二千億に対しまして約千億の補正ということでございます。これは財源が非常に明確でありまして、国会の議決によらなければならないことになっております。特別会計またしかりでございます。そのほか三公社五現業と財政投融資の計画の変更等もございますが、政府関係機関としての予算の審議をいただいておるわけでございます。ただ地方財政計画は、御承知のとおり国会に参考資料として提案をしておりますが、これは政府、自治省及び大蔵省で詰めてみましても、新しい憲法といいますか。いずれにいたしましても戦後地方自治の制度が確立をしまして、どうも私たちがつくるのではなく、たくさんな人が出してくるわけであります。でありますので、その間の集計をしたものを国会で御審議を願っておりますと、経済成長率等が非常に伸びるような場合、増収がうんとあって年間を通じては約五、六千億も差がある、これは一体どういうことかということをいつでも言われるのであります。でありますから、地方財政計画であります、地方財政予算ではございませんと、こう言っているのですが、いずれにしましても、あまりにも違い過ぎる。これは、だんだんとこれからはそういう税収等が急激に伸びるというようなことがありませんので、だんだん私は正常なものになってくる、こう思います。第一、四十年度の地方財政計画はそんなに狂いはないのじゃないかというふうに考えられます。それぐらいに差がありますので、百五十億の金を国から出さなくても何とかなるんじゃありませんかと、こう言ったのですが、ないのです、こう言うのです。ないと言われてみれば、私が全部行って見るわけにもいきませんし、これはどうすることもできないわけでございます。五千億、六千億のうちでもって百五十億ないのですか、こう言ってみたのですが、自治大臣は、ほんとうにないんですよ、こういうことでございまして、ついにいかんせん、百五十億を特別会計でもってひとつ見よう、こういうことに落ちついたわけでございまして、私は少なくともこういう御議論、中井さんの御議論、非常に正しい御議論でございまして、こんなことでもって毎年毎年同じようなことを積み重ねておるということは避けなければなりません。そんな時間や、そんなエネルギーがあるならば、もっともっと別なところをやれるわけでありますから。私が自治大臣と話しましたたった一つの前進策は、昭和三十九年度の地方財政の決算はひとつよく見よう、そして、ほんとうに百五十億足りなかったかどうかはひとつ十分検討して将来のために資そう、こういうことでありますから、これだけでも前進だ、こう考えているわけであります。
  241. 中井徳次郎

    ○中井委員 いまのお話の中にありましたが、百五十億ばかりの金、いいじゃないか——私は大蔵大臣の言いようによっては、政府と地方自治体との関係、この接点が過去においていろいろ問題があるから、それが通らない。政府がめんどうを見ると言ったら必らず見るという形であるならば、私は地方自治体がそこまで言わないと思う。あなたは、もう百五十億なんか計算してみると、私はきょうは理屈は言わぬが、結局あれは将来の平衡交付税の先食いですね、五年間かかって。利子を補給するなんていって、まことにどうも親切丁寧のようですけれども、今度出ている予算の中にだって義務教育費国庫負担というものがあるでしょう。それは去年の分を、ことしまで利子を払っているのですか、どうなんです。文部大臣、いかがですか。さっきも義務教育費国庫負担の話が出ましたが、地方は国の立てかえこそすれ、国からの計画した金が余って、地方から返してもらったなんということがありますか。ちょっとその辺のことを伺っておきたい。
  242. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほど来の御議論、伺っておりまして私も非常に啓発されるわけですが、これは中井委員もよく御承知のとおり、義務教育費の国庫負担につきまして、たとえば給与費を例にとりますれば、二分の一国庫が負担することになっております。この制度につきましては、法令に基づきまして、こまかいことは省略いたしますが、たとえば定員実額というような原則もございますけれども、それによって各年度の予算の編成の際に概算を組み入れておいてもらいまして、それで、年度が済んで支出額を精算をいたしまして、そしてその精算分に対して足らずまえがありました場合には翌年度の予算、あるいは翌年度の予算でも事務的の精算が間に合いません場合には、補正予算という形で計上していただくことになっておりますから、義務教育費の中で給与費とか、あるいは教材費とかいうような点につきましては、多少おくれますけれども、国と地方の関係は非常にきちんとした法令に基づいた措置ができているわけでございます。  それから精算をいたします場合に、ここ数年来の、たとえば過去の実績を見てみましても、これは交付税の交付額の中の大体一%ぐらいでございますから、年間を通じて二十億余りというような数字になっておりますから、この関係からいって、国と地方、あるいは地方財政に圧迫になるとか、あるいは非常な支障を与えているということは起こっておらない。私はさように信じておりますし、また今後も、現行法令あるいは組織のもとにおきましては、こういう措置を円滑に今後とも進めてまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。しかし、何ぶんにも義務教育費の関係におきましては、父兄の負担を少なくしというか、これをなくしてやってまいりますためには、いろいろ今後もやるべきことが多いのでありますから、これらの点につきましては、御意見のあるようなことをわれわれの立場、文部省の立場といたしましても十分検討してまいりたいと思っております。
  243. 中井徳次郎

    ○中井委員 今度補正に出された金額だけでも二十億じゃないと思います。毎年毎年もっとたくさんの赤字になる、黒字になる場合でもあるならいいですけれども。これは、しかも文部省関係だけではございません。お隣にすわっていらっしゃる神田さんの厚生省関係は、最近非常に多いんじゃございませんか。あとでけつをふかなくちゃならぬ厚生省関係の地方自治体に対する経費の総額というものは、ことしあたり大体どれくらいの予想ですか。ちょっと承っておきます。金額だけでけっこうです。
  244. 神田博

    ○神田国務大臣 三十八年度で大体五十億と考えております。三十九年度は、これを上回るのじゃないかと思っております。
  245. 中井徳次郎

    ○中井委員 実はさらにいろいろな改正をなさいましたし、今度の予算にも出ておりますが、私どもが聞いておりますのに、来年度はどうやら三百億とか五百億とかいう金になりはせぬか。特に厚生省関係のものが非常に多いという。したがいまして、私は、何もこれはどちらがもうけておる、どちらが損をしておるというこまかいことを言うのではありませんで、百五十億ばかりのものを補正をするとかなんとかいうて、利子までつけるとかいうふうな大騒ぎをしておきながら、一方では大きなしり抜けがあるということ。だから地方財政と国家財政との接点というものをなぜもっとはっきりしないか。補助金の問題もそうです。毎年毎年大蔵省は補助金を削れと言う。出てきます。削る。いつの間にか各省から補助金がふえている。自治体はそれをじょうずに、悪口を言わしてもらえばあやつっておるということです。今度また逆に池田さんのような元気な総理大臣が出てきて、所得倍増だとかいって、河野さんはそれに大いにやって、ほら道路だ、橋梁だ、オーケー、オーケーといって地元負担がかかるんだ。それを大蔵省は計算しない。あとで計算して、えらいこっちゃというような形になっている。接点がどうもはっきりしない。私は、これは早急かかってもらいたいと思います。総理大臣、いかがですか。この地方財政と国家財政との関係、それはいまごろ理屈を言っておったり学者の意見を聞いたりしておるのじゃありません。去年は四十六都道府県のうちの三十一、二まで、三十六でありましたかの府県が実質的な赤字でございます。その赤字の大要は、これは国が勝手にいろいろな計画をやってやる。それについていかなくちゃいかぬ。それなんです。あなたは社会開発ということを言っている。社会開発は、一体どこで、だれが、どうするのですか、どうなんです。自治体は手足ですよ。社会開発、社会開発というのは、私はきのうから伺っているが、あなたからはっきりした答弁はないけれども、しかし、経済開発よりは、これは経済効率は薄いと思う。地方自治体としては、のどから手が出るほどやりたいことでありましょう。公害けっこうです。下水道はちっともない。上水道、道路はめちゃくちゃ。工場だけできた。あなたはそういうことを整備するのが社会開発の一つだとお考えじゃないかと思うが、それをおやりになるということになれば、口で言うておるだけじゃいけません。これは非常な金がかかる。国の計画と地方がそれに付随をするその接点、国の予算と地方財政との接点、これが二十年来まじめに検討されておらぬ。部分的にはやられておる。地方財政、税制はどうだ、補助金はどうだ、一番問題になっておりますのは交付税の問題でしょう。交付税の問題、いま税率はどうだと調べてみましたら二八・九%ですね。大蔵大臣、これはどういうことなんですか。これは率直にいって、おそらく四、五年前に何か逆算して出したのじゃないですか。そして、このままで税収入も多いからほうっておけ、こういうことじゃないのですか。二八・九%の根拠をちょっと聞かしていただきたい。これは接点の一つの大きな窓口です。そういう意味で聞かしていただきたい。
  246. 田中角榮

    田中国務大臣 地方財政と国家財政が調和をとっていかなければならぬ、これは御説のとおりでございます。いままでも調和をとっておるつもりでございますが、しかし、御指摘の問題はございます。ただ国の財政が三兆二千五百億に対して、いよいよ地方財政も三兆円台に乗り、四十年度予算の総ワクになりますと、地方財政のほうが国の予算を越すということになると思います。これを過去五、六年間の例をもって見ますと、国家財政のほうが非常に大きな、地方財政の約倍以上あったわけでございますが、わずか三、四年のうちに地方財政が国家財政のワクを越すというくらいに充実してきておることは、御承知のとおりでございます。地方交付税の税率二八・九というのが一体いいのかどうか。私はいまの状態でこれは変更すべきではないという考え方に立っております。地方財政間においては、いまの制度をとっていく以上、東京、大阪のように人口、産業、文化が過度に集中をしてしまってどうにもならないような状態があり、国内均衡状態を考えますと、まず地方財政の中で税源配分、財源調整というものこそ先にやらるベきである。いまのままでもってこの二八・九を変えていいというような状態にはないというふうに考えております。しかも二八・九は、ただ大蔵省と自治省だけの話できまったのではなく、地方財政審議会の議を経て恒久的に地方財政あり方を研究した結果、二八・九が正しいという結論になったわけでありまして、単年度の歳出、特に今年度のこの給与改定等を問題として二八・九を動かすべきではないという議論は、そういうところにあるわけでございます。
  247. 中井徳次郎

    ○中井委員 いまあなたの御答弁の中で、二八・九にきめたのは地方財政審議会か何かの議を経た、そんなことあるのですか。自治大臣どうですか。いつですか。その根拠を伺っておる。経過じゃない。
  248. 柴田護

    ○柴田政府委員 中井先生御存じのとおり、昭和三十年に地方財政が非常に困窮いたしまして、そのときに地方財政を一応全部洗い直して財政計画を組み直しました。そのときに二五%という計算を一応地方財政全体の姿からしてきめたわけでございます。もちろん、国会の御審議を経て法案をつくったわけでございますが、その後、住民税の減税でございますとか、あるいは地方財政の公債費問題、それからその後におきましては地方公務員の共済制度をつくります場合の地方団体の負担分、そのときどきの財政状態を、増加分を含めて地方財源全体の状態を見渡しまして税率をはじいてきた、そして今日二八・九%になっておる、こういう経緯でございます。したがいまして、改正の経緯になりました、今日の税率のもとになっております地方財政全般の洗い直しは昭和三十年度が出発点でありまして、そのときの二五%というのがベースでございます。
  249. 中井徳次郎

    ○中井委員 少しわかってきましたが、私は地方交付税の税率を人件費のために上げろなんて、そんなことを言っているのではありません。しかしながら、先ほども言いましたように、各地方ともここ両三年たいへんな赤字でございます。あなたは国家財政に比べて地方財政はだんだん大きくなったなんて言って、のんきなことを言っていらっしゃるが、戦争前は地方財政のほうがうんと大きかった。あの軍国主義の時代でも、地方財政の総計のほうが——いまは予算の組み方がずいぶん変わっています。変わっていますけれども、非常に大きかった。当然の経費でございます。当然の経費として非常に大きかった。私は、国が落ちついてくればくるほど、それはそうなると思う。特にいまの日本は軍備を持っておらぬのでありますから、地方財政がいまの形であるということがふしぎなんです。これは内容によっていろいろありましょうけれども、私はそう思います。したがって、地方に行ってごらんなさい。きれいな道は国道だけです。そうして、あなたがさっきおっしゃった大都市、大都市はいいのがあります。しかし、他の府県に行きますと全くひどい。山形県ですか、東北の県ですか、そういうことのためにだんだん人口が減って、いまの計算そのまま算術計算をすると、五十年たつと人が一人もおらなくなりそうです。こういうことは、地域開発とか社会開発とかいうものをいろいろと言う基礎になる地方財政というものを、うるさいことを言ってくるからそのときやっておけというふうなことじゃなくて、もっと基本的に何か接点的なものを考えてもらう時期に来ておると私は思うのです。もうそうでないといけません。補助金を切るなら切りなさい。私はそう思う、そういうようなことについてひとつ総理見解伺いたい。悪口を言わしてもらうと、池田総理は大蔵省の出身だったから、もう地方財政はさっぱりあかぬ、今度は佐藤さんでちょっとましだろうということを、何か町のうわさで実はしておるのです。そんなばかなことはないよとは言っておきましたが、しかし私は、そういう冗談が地方の相当なポストにある人から出るということ、そのことにやはり問題を感じます。佐藤総理見解を伺っておきたい。
  250. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 大蔵大臣あるいは自治大臣、これが地方財政と国家財政、その間に調和をとりたいという、これは長い間の懸案でございます。先ほど来お話が出ておりますが、私も大蔵大臣の経験があります。その際に、最も力をいたしたものは地方財政といかにして均衡をとらすか。ところが、御承知のように、ただいまの地方自治体、しかも市町村——これまた自治体でございますが、この関係において非常にむずかしい事情がございます。なかなか実態を把握することがむずかしいことであります。今日両大臣の間で、ことしからひとつ決算を十分見ていって、そしてその実情を把握しよう、こういうことが申し合わせをされたという、これは確かに一つの進歩だと思います。こういう点は、自治省におきましても十分その地方の実情を把握するという、その上で国の財政との均衡をとっていく、こういうことでありたいと思います。過去二十年近くたっておりますが、これが実情においてはまだまだ非常に把握が足らない。また地方における計画事項もそれぞれあるのでございますが、それが国家的規模において考えられない。こういうような点に地方財政のむずかしさがあり、また中央から見ましても、地方財政に対しての要望が十分透徹しないうらみがある、こういうような実情にあると思います。先ほど来お話を伺いまして、たいへん貴重な御意見を拝聴いたしております。私は、この地方自治体の地方財政、また中央の国の財政、この間に調和をとるということについて一そう努力したい、かように考えております。
  251. 中井徳次郎

    ○中井委員 この問題でもう少しやりたいのです。が、時間がございませんから、はなはだ残念でありますけれども、先ほど大蔵大臣が言われた答弁の中で、たとえば大都市の豊かな財政をほかへ回すようなことを考えるというようなことをちょっと触れられました。これは確かに在来大蔵省関係にある考え方であり、思想であるように私も伺っております。しかしながら、この問題は、それなら日本の大都市ははたしてどうだということになりますと、いままだ表面だけのことでありまして、なかなかもってやる仕事がたくさん残っておるということ、さらにまた、これははっきり申しますと、やはり憲法との問題があると思います。他の地方へ持っていくというのは、これはなかなか言うべくして行ないにくい。政府としては、いま地元負担金なんかにおきまして多少率を変えておるように聞いておりますが、こういうものはいいと思いますけれども、私は国家財政と地方財政の接点をその辺のところで求めてはならない、このことだけは申し上げておきたいと思うのであります。  次に、ちょっと選挙制度のことにつきまして、総理大臣並びに自治大臣、法務大臣等にお伺いをいたしたいと思います。  一昨日でございましたか、わが党の勝間田委員からも簡単に質問がありましたが、この選挙制度につきまして、いま選挙制度審議会というものができておるのでありまして、近く総理はその審議会に出て所信を述べるというふうなことも新聞記事に出ておりましたが、大体総理自身としては、小選挙区制に賛成なのか、反対なのか、比例代表というふうなことをどういうふうに考えておられるか、まずこれを伺ってみたいと思います。
  252. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 選挙制度審議会、これは前内閣の際に委嘱いたしたものであります。私は池田総理のこの選挙制度審議会をそのまま踏襲してまいるつもりでございます。こういう際に、総理自身はどういう考え方をしているか、総理自身の考え方があってかような審議会に答申を求める、こういうのはどうもよろしくないのじゃないか、好ましくないことじゃないか、この審議会自身がそれぞれ権威のある方にお集まりをいただいて、そして自由な討議を願っておるのであります。初めてこの答申を得て、しかる後に私の考え方でそれをいかにするか、こういうようにするのが本筋だと思います。したがいまして、私、今回政局を担当するようになりましたが、選挙制度審議会に出かけましても、私の意向を披露するということはしないつもりであります。私は、むしろそれよりも自由濶達な御高見を拝聴し、そして審議会として意見をまとめていただく、こういうことに全部の力をまとめたい、かように考えております。せっかく委嘱した審議会の委員の方々でございますので、これに対して私が熱意がないということでは、委員の方も御勉強なさるのにまことに不本意に思われるだろう。しかし、私がかような池田内閣の時分の審議会を踏襲しているその気持ちは、ひとつ熱心に討議をしていただいて、できるだけ早く議をまとめて、そうして答申を願いたい、かような考え方でございます。
  253. 中井徳次郎

    ○中井委員 総理大臣が政党の代表者——あした総裁になられるわけだ。きょうはまだそうでないかもしれませんけれども——として、選挙制度について意見があるけれども言えないというなら私も了解しますが、意見がないというようなことはないでしょう。
  254. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 意見がないわけではありません。ただいま委嘱している際に、公正な御意見、濶達な御意見を聞かしていただきたい、こういうことでありますので、私は申し上げないという意味でございます。
  255. 中井徳次郎

    ○中井委員 意見があるけれども申し上げる立場にない、こういうことでございますね。どうも私、聞くところによりますと、いまの選挙制度審議会は、これは発足に際しまして高橋会長以下、今度はいわゆる地区についても意見を述べさせい、自分は小選挙区論者である、そういうことを推進してもいいかというふうなことを条件にして——条件といったって具体的にはっきりしたわけじゃありませんでしょう。ありませんでしょうけれども、大体そういうつもりでそういうメンバーを集めた、こういうことは新聞でしばしば報道されておるのであります。そのときの総理佐藤さんじゃないわけでありますけれども、大臣はずっと当時と同じでありましょう、そういうことに対して実情はどうでございますか、伺っておきたい。
  256. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 お答えを申し上げます。  第三次選挙制度審議会を発足いたしまするにあたりまして、前池田総理から、ひとつ早く制度を進めたらどうかというお話がございまして、八月の初めから人選に取りかかり始めたわけでございます。その際に、いまお話のごとく、高橋雄豺先生は、長い間選挙制度審議会におられまして、権威者でございまするから、会長にお願いをしようということでお願いにあがりました際に、高橋さんのおっしゃることは、自分は従来小選挙区制を主張してきた一人である。世間もまた小選挙区制を念願する者も相当あるように見受けられる、したがって自分が会長になると、小選挙区論というものが出るかもしれない、そのときに池田総理、よろしいでしょうかという点をもう一ぺんひとつ念を押してくれないかというお話でございました。私は、前池田総理に率直にその意見を申し上げましたところ、総理としては、ただいま佐藤総理がおっしゃったと同じように、自分としていまどれをとりたい。これをやりたいということを言うべきことでない。したがって、高橋会長にすべておまかせをするから条件を付しないでひとつ引き受けていただきたい、こういうことでございます。その旨伝えましたら、さようでございましょう、それでは私まあ引き受けてみよう、こういうことで引き受けられました。高橋さんも審議会の席で、自分は小選挙区論をとっておったけれども、自分が会長になったから小選挙区をやるとかやらないとかいう考えではなくて、一に審議会の審議の結果を待って答申をしたい、こういうことを言われております。  なお、ただいまちょっと御質問の中にもございましたが、人選にあたって小選挙区論を唱えられる方を集めたんじゃないかということが審議会でもお話がございましたが、そういうことは毛頭ございません。御承知のように、選挙制度審議会は第一回、二回を通じまして審議会の委員になられた方が大部分でございます。三十人のうち二十人は従来どおり、十人がかわられましたが、新たにかわられました委員の方々の人選も、小選挙区論者であるとかないとかということは全然念頭に置きませんで、学界の権威のある方、あるいは経験者の権威のある方等を人選したわけでございまして、お調べいただきますれば、新しく任命した方の中でも現状を強く主張されている方もございます。また従来の審議会の委員の方の中にも、従前の選挙区がいいという方もそのまま残しておるわけでございまして、そういう意図のもとに私ども人選をしたことはございませんし、また審議の過程におきましても、政府からどういう選挙区制をやりたいということは、一度も申したことはございません。発足以来数次にわたって審議会が持たれておりまして、活発な論議がされておりますが、目下は審議中でございます。
  257. 中井徳次郎

    ○中井委員 やはり御説明は御説明といたしまして、会長の高橋雄豺氏は個人的には小選挙区論者である、それでもいいかということを言うておられるわけでありまして、私もずっと前ですか、多少関係をしたこともあるやに思うのでありまするが、こういう形でもって始まる審議会の答申というものは、大体もう方向がきまっていると私は言わねばならぬと思うのであります。これは、大体いまの予定では何月に答申が出るのですか。
  258. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 御承知のように選挙区制は選挙制度における最も大事な問題でございます。したがいまして、私どももまた高橋会長も慎重にこの問題は討議をしたい、こういうことでいままでに数次行ないましたが、まだ総会で全部の方の意見を聴取しておるような状況でございます。私は、会長がどういうふうな目途をもっておやりになっているかはまだ打ち合わしたことはございませんが、高橋会長のときどき触れられることばをもっていたしますれば、任期一年以内に何とか結論を出したいということのようでございまして、二カ月や三カ月でこういう問題は結論を出すべきものでない、こういうことで目下慎重に審議を進められておるところでございます。
  259. 中井徳次郎

    ○中井委員 そういたしますると、大体八月ということになりますか。  実は政府の閣僚の皆さんも御案内だと思うけれども、私ども日本社会党は、小選挙区制度には現状において絶対反対なんです。したがいまして、ここ数年前にゲリマンダーの騒動がございましたが、ああいう事態ともにらみ合わせ、さらにまたいまの総理が寛容と忍耐、それから調和ですか、そういうものの中で議会を運営される、第二党たる日本社会党が現状においては絶対反対であると言うておる中で、私は選挙制度審議会からせっかく御答申をいただいても、現実には非常に困難な事態になるのではないか、総理として、第二党たる社会党が絶対反対であるこういう小選挙区制というものについて、それを強行してやるというお考えはあるのですか。   〔松澤委員長代理退席、委員長着席〕
  260. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま選挙制度審議会にお調べを願っておるのは、選挙区制もさることですが、全般について御審議を願っておるはずでございます。ただいま社会党は小選挙区に絶対反対だ、これはもう党議だ、かように御表明になりまして、何だか審議会自身が小選挙区制に踏み切ったかのようなお尋ねでもございますが、私はまだ社会党が結論を出されるのも早いと思いますし、この審議会自身がいかような答申をするか、それをごらんになって、しかる上でその内容についての御審議をいただくことが望ましいのではないか、先ほど来私自身も、ただいまのところこの審議会の答申を得るまでは私の考え方も明確にしない、かように申しておりますが、第二党であられる社会党も、国政を運営する大政党としての立場上、ただいまから事前に、どんな話が出てもこれは絶対反対だ、こういうことは少し慎まれたらいいのじゃないか、私はかように思います。
  261. 中井徳次郎

    ○中井委員 ちょっといまの総理のおことばは取り消していただきたいと私は思います。私どもは党議として小選挙区制度に反対だと決定をしておるのであります。この小選挙区制度というのは一人一区であります。一人一区の制度に反対しておるのでありますから、これは取り消そうが取り消すまいが、われわれのかってでございますし、私がお尋ねをしておるのは、そういう反対である答申が出た場合に総理はどう扱うか。私は、やはり総理としては扱うべきでないと思うからお尋ねをいたしておる。
  262. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまの社会党の御主張はよくわかります。また、私どもは先ほど来何度も申しておりますように、審議会が答申を出した上で、しかる上で私のほうの態度をきめる、こういう考え方でございます。もちろん、何度も申し上げておりますように、社会党の方々にも国会運営上から当然話し合いは続けていく、この点はお約束して差しつかえないことであります。どこまでも話し合いを尽くし、そうして論議を尽くして、しかる後にルールによってきめていく、それはずいぶんかかるだろう、論議に論議を重ねる、これは私どもも今日から予定もしておるような次第でございます。
  263. 中井徳次郎

    ○中井委員 選挙制度につきましては、いま区制の問題でお尋ねをいたしましたが、それ以外にやはり根本は非常にいま選挙が腐敗をいたしておるというふうなことでありまして、そのことについては、同時にいま審議会におかれても、どなたか新しい委員のりっぱな御発言で御研究がある。これは私どもその面においては大いに賛成論でございますが、しばしば小選挙区制度をしくと金がかからないというふうな話などが非常にありますので、私はむしろいまの選挙制度の最も欠陥は、そういう区制の問題よりも、選挙のやり方にありはせぬかというふうに考えておるのであります。そこでこの間から、これはあなたのほうの党のことではなはだ申し上げにくいのでありますけれども、地方におきまして、山梨県の大月というところでありますが、どうも市長選挙にからみまして、非常な醜態なことが行なわれておる。何でも現職の市長が来年の二月に改選になるそうでございますが、それに対しまして、同じ自民党内でもう一人候補者が出た。調整がつかない。そこで、私も新聞で読んだ程度でありますけれども、結局、最初は現市長が立候補をして一年三カ月たてばやめるのだそうです。それでもう一人出たいという男のほうがそれからあと二年九カ月やる。どういうことで一年三カ月と二年九カ月ということになったのか。何でも花見のころ選挙をするのでそういうふうになるのだというふうなうわささえございますが、そういうことで、まだ任期がある市長です。任期のある市長が、これから立候補して当選をして、そうしてやめるときの辞表を書いた。それだけならまだいいのでありますが、もし約束を守らなければ一千万円よこせということになりまして、そうして、その立ち会いのうちのだれかが、一千万円をどこから金を工面して定期頭金をして、相手の候補者に見せびらかして、これでいいか、オーケーというふうなことで話がまとまった。私は小選挙区だ、中選挙区だ、金がかかる、選挙違反、いろいろなことを聞きますけれども、こんな驚いた話は初めてでありまして、大月といえばおそらく東京のすぐ西の山の向こうの市だろうと思います。人口も五、六万でございましょう。一千万円選挙に使う。こういうことについて自民党の総裁とされましてどうお考えになりますか。これはあした総裁で、きょうは代表者だが、実際あきれ返った話で、ここに資料もたくさんありますが、時間もありませんし、こんなことはあまりどうかと思います。いやだから。総裁の率直な気持ちを聞きたいし、何と言いますか、最近議会政治というものについて非常な悲観的な、あるいはそれを軽蔑した風潮が起こっております。特に青年たちに起こっておる。こういうことの原因は、あなた方に言わすと社会党が乱暴するからなんて言いますが、そうじゃない。やはりこういう腐敗選挙が一番いかぬ。いやになっておるということだと思うのです。これをどうしていくか、これは私は反対党のことでありますけれども、議会政治を守るというか、育てるというその意味で私はお尋ねをいたしておるので、反対党ならもっとぼろかすに言いますよ、もっと責任を追及したい。どうお思いですか、お考えを伺いたい。
  264. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 大月の市長選挙にからまる事態がお話しのとおりかどうか私は知りませんが、もしそれが事実であれば、まことに遺憾しごくの問題だと思います。申すまでもなく、先ほど来議論いたしておりますのも、民主政治、これを育てるということが私どもの責任であります。民主政治、これはどこまでも公正な選挙が行なわれて初めて守られるのであります。最近選挙自体があるいは腐敗しているとか、あるいは堕落しているとか、こういうような批判を受ける、そうして民主政治そのものに対する不信を来たしておる。こういうことはまことに残念しごくであります。私は所信表明でも民主主義を育てる、民主政治を育てる、こういうことを申してまいっております。どうかただいまのような腐敗した、あるいは不正が行なわれる、こういうことにつきましては厳にこれを戒めまして、そうして正しい民主政治あり方、これをつくり出したい、かように念願をしております。わが国の民主政治も長い歴史をたどっておりますが、その間にしばしば間違った方向にも出かけておる、いっておる、こういう事柄があります。しかし、こういう経験を生かして、そうして正しい方向へ民主政治を進めていくことこそ私どもの責務だと思います。先ほどお尋ねになりました選挙制度審議会も、そういう点をも含めて、正しい、また清らかな選挙が行なわれる、こういうことを念願して、いろいろ貴重な意見を答申されるものだ、またこれを私どもは期待しておるような次第であります。
  265. 中井徳次郎

    ○中井委員 この当事者たちに対して、自民党としてどういう処置に出られますか。
  266. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 新聞その他に出たというお話でございますが、よく実情を調査して、しかる上に誤解のないような、また誤解を解くような方法をいたしたいものだと思います。
  267. 中井徳次郎

    ○中井委員 調査もくそもありませんよ。自治大臣よく御存じだと思います。検察庁も何だし、警察も調べておりますし、それから何でしょう、選挙局もずいぶん調べておる。いままでわかったところをひとつ自治大臣から説明していただきたい。
  268. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 ただいま御指摘になりました大月市の市長選にからむ問題でございます。これは夏ごろから調整が行なわれておりましたところ、十一月の十六日に、現在の市長の井上武右衛門、それからも一人の落合熊雄さん、この二人の間に党の支部が間に入りまして調整に当たられたのであります。そのときの模様は、大体現在の井上市長が先にやって後半を落合氏に譲るというような話し合いであったような模様でございます。その際に一千万円の金が信用金庫に預託されまして、定期預金として預けられているということはわかりましたが、それがどういう話し合いになっておるか、どういうことでそうなっているかということは目下調査中で、まだ判明をいたしておりません。
  269. 中井徳次郎

    ○中井委員 そんな表面的な回答じゃ納得できません。新聞等には詳しく書いてある。その一千万円を返すとか返さぬとか、また約束をたがえたらこの一千万円をどう使うとかいうことについてまでちゃんと約束ができておったということが、これはどうですか、「山梨日日」「サンデー毎日」に、「市長のイスの交代保証金」ですか、「前代未聞のスキャンダル」といって詳しく書いてある。これがうそなら自民党大いにうそだといって抗議したらどうですか。訴えたらどうですか。選挙違反です。これは法務大臣いかがですか。聞いておられますか。私は確かに公職選挙法の違反だと思うのですがね。二百二十一条ですか、あるいは二百二十三条にはまる問題だと思うのです。ところが一部には、何か選挙が始まらぬことには違反に当たらぬのだという、そういう説さえあるものですから、私はあえてお尋ねをする。こまかく出ております。いかがですか。
  270. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 ただいまお尋ねの大月事件は警察当局において現在捜査中の事件でございます。新聞等に伝えられておりますようなことがございますればまことに遺憾に存じまするが、せっかくのお尋ねですけれども、まだ検察官のほうへ送致になっておりません。したがって、事実を確認をいたしておりませんので、せっかくのお尋ねですが、その法的見解について私からただいま申し上げることは適当でないと思います。差し控えさせていただきたいと思います。
  271. 中井徳次郎

    ○中井委員 いま捜査中というお話であります。したがって警察ではわかっておられると思うのですが、自治大臣、いかがですか、現状は。先ほどお話しになったのは選挙局の御調査ですか、それとも警察の調査ですか、御答弁なすったのは。
  272. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 先ほど申しましたのは、警察の調査の結果でございまして、一千万円が信用金庫に定期預金として預金をされたということはわかっております。しかし、新聞でいろいろ伝えられておりますが、そのとおりであるかどうかということをいま調べ中でございまするので、いま私がここでどうだというところのことを申し上げる段階ではございません。
  273. 中井徳次郎

    ○中井委員 これは全部事実のようであります。私はどの新聞を見ましても、同じようにちっとも間違いない。私がお尋ねいたしたいのは、この問題で選挙違反になって何年かかってとか、そんなことじゃなくて、冒頭申し上げたように、議会政治に対する冒涜といいますか、金でもっていなかの市長の地位を取引するというふうなこと、これがまだ残っておるということ。最近の選挙の投票の状況を見ますると、棄権者の大部分は、まあ摘出検査でありまするけれども、青年たちであります。二十歳から三十歳の若い人の政治に対しての不平不満、あきらめ、怒り、そういうものが錯綜しておる。私どもは地方に参って街頭で演説していると、その前をオートバイでもって大きな音を立てて、何百人人が集まっておってもだあっと走っていく。これは政治への一つの不信の表明、若者らしい表明であります。私は、このようなことにしたいまの社会情勢といいますか、これは自民党たると社会党たるとを問わず——社会党はあまり金がありませんからね、そんなことはありませんけれども、これはおもに自民党ですが、これは代表者たる、総裁たるべき総理として、事態が明らかになれば、こんな法の処断など待たずに、政党ですから、はっきりと除名するなり何なり私はやるべきだと思う。いかがですか。
  274. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私はただいま初めてその事態の報告を伺ったような次第でございます。これはゆゆしい問題でありますので、党におきまして断固たる処置をとり、善処する考えであります。それをはっきり申し上げておきます。
  275. 中井徳次郎

    ○中井委員 単にこの事態はほんとうに皆さんだけの党の内部事情というよりも、全日本の議会主義の進展のために私はそれを要望いたしますが、現に一千万円で任期交代、知事も出席して手打ちと書いてある。知事も出席して手打ちしたようでございます。これは天野という知事でしたか、市長は井上という。そういうようなことは厳重にひとつやってもらいたい。これを特にお願いをいたします。私は小選挙区の問題について相当調べまして、中に一つだけ、小選挙区になれば意志の疎通もはかれるし、経費もかからないで、自転直でも一回りできるようになりはせぬかという、実は社会党の党員でありながらそういう気持ちもなくはなかったのです。一割か二割はありました。ところが、これを読んでいやになりました。そういうことじゃない。選挙区制度とそれとはほとんど関係ないということを痛切に感じましたので、選挙区制度の問題とからみ合わせまして、特にまた政治姿勢の問題としてお尋ねをしたわけでありまして、総理は断固たる処置をおとりになるというわけでありますから、どうぞひとつ断固たる処置をとってもらいたい。党利党略で申しておることでないことを最後に重ねてもう一度申し上げまして、私の質問を終わります。
  276. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて中井徳次郎君の質疑は終了いたしました。  次会は来たる十二月二日午前十時より開会いたします。  同日午前の質疑者は春日一幸君、午後の質疑者は淡谷悠藏君及び加藤進君であります。  春日君の出席要求大臣は、内閣総理大臣、外務大臣大蔵大臣、通産大臣、労働大臣、建設大臣、科学技術庁長官、防衛庁長官及び経済企画庁長官であります。淡谷君の出席要求大臣は、内閣総理大臣大蔵大臣、厚生大臣、農林大臣、労働大臣、自治大臣及び経済企画庁長官であります。加藤君の出席要求大臣内閣総理大臣、法務大臣、外務大臣及び通産大臣であります。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十九分散会