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1964-11-28 第47回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年十一月二十八日(土曜日)    午前十時十二分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 青木  正君 理事 植木庚子郎君    理事 中曽根康弘君 理事 野田 卯一君    理事 松澤 雄藏君 理事 井手 以誠君    理事 川俣 清音君 理事 辻原 弘市君       相川 勝六君    赤澤 正道君       荒木萬壽夫君    井出一太郎君       今松 治郎君    江崎 真澄君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       上林山榮吉君    重政 誠之君       正示啓次郎君    田澤 吉郎君       登坂重次郎君    灘尾 弘吉君       橋本龍太郎君    古井 喜實君       古川 丈吉君    保科善四郎君       松野 頼三君    水田三喜男君       森下 元晴君    山本 勝市君       淡谷 悠藏君    石野 久男君       岡田 春夫君    加藤 清二君       勝間田清一君    五島 虎雄君       河野  密君    多賀谷真稔君       堂森 芳夫君    中井徳次郎君       武藤 山治君    山花 秀雄君       横路 節雄君    今澄  勇君       小平  忠君    永末 英一君       加藤  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 高橋  等君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 愛知 揆一君         厚 生 大 臣 神田  博君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  櫻内 義雄君         運 輸 大 臣 松浦周太郎君         郵 政 大 臣 徳安 實藏君         労 働 大 臣 石田 博英君         自 治 大 臣 吉武 恵市君         国 務 大 臣 小泉 純也君         国 務 大 臣 河野 一郎君         国 務 大 臣 高橋  衛君         国 務 大 臣 増原 恵吉君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         人事院総裁   佐藤 達夫君         総理府総務長官 臼井 莊一君         総理府事務官         (中央青少年問         題協議会事務局         長)      赤石 清悦君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    高島 節男君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  向坂 正男君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         大蔵事務官         (主計局長)  佐藤 一郎君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         大蔵事務官         (証券局長)  松井 直行君         大蔵事務官         (国際金融局         長)      渡邊  誠君         食糧庁長官   齋藤  誠君         水産庁長官   松岡  亮君         通商産業政務次         官       岡崎 英城君         通商産業事務官         (通商局長)  山本 重信君         通商産業事務官         (石炭局長)  井上  亮君         中小企業庁長官 中野 正一君         自治事務官         (選挙局長)  長野 士郎君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 十一月二十八日  委員井村重雄君、稻葉修君及び勝間田清一君辞  任につき、その補欠として橋本龍太郎君、森下  元晴君及び武藤山治君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員橋本龍太郎君及び森下元晴君辞任につき、  その補欠として井村重雄君及び稻葉修君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和三十九年度一般会計補正予算(第1号)  昭和三十九年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和三十九年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和三十九年度一般会計補正予算(第1号)、昭和三十九年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和三十九年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、審議を進めます。  これより総括質疑に入ります。  勝間田清一君。
  3. 勝間田清一

    勝間田委員 社会党代表いたしまして、総理大臣、また若干の問題については関係大臣に対して御質問をいたしたいと思います。  まず第一に、佐藤総理政治的な姿勢並びに若干の内政問題についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。寛容といい、また調和といい、ことばではいかようにでもこれを飾ることはできると思うのであります。しかし、申すまでもなく、問題は佐藤総理並びに佐藤内閣がこれをいかに具体的に行動に移していくかということが今日の最大の関心事であると私たちは考えておるわけであります。その意味から、今日あなたの考えておられる寛容と調和政治とは一体どういう具体的な内容を持つものであるか、このことをひとつお尋ねをいたしたいと思うのであります。  まず、佐藤総理三木幹事長との間で、主として外交問題を中心として党首会談を持ったらどうかという考え方があるやに聞いておるのであります。これは具体的な一つ提案としては注目すべき事柄であろうかと実は考えておるのであります。この具体的な構想、またその内容、これに対する佐藤総理の見解をまず承らしていただきたい。
  4. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 寛容とかあるいは調和とか、かように申しておりますが、私ども政治目標は、どこまでも民主主義民主政治、これをりっぱに行なうということにあると思います。いままで言われておりますところの寛容と忍耐、あるいは話し合い政治、それこそは民主政治基盤だと、こういうことを言われております。私は、どこまでもその民主主義に基づく民主政治、これは観念論でなくて現実のものにしたいのであります。そういう意味から、ただいままで寛容ということを申しておりますし、また、話し合い幾らでも続けていく、これがまた池田総理と同じよう考え方だ。忍耐をどうして落としたかというようなこまかいお話がございますが、私は、寛容ということばのうちには自然に忍耐は入っておるだろうと思います。問題は、その上にさらに現実的に民主政治を行なう、こういう場合には、これはやっぱり調和精神が必要なんじゃないか。それでお互いに話し合っていく。これは幾らでも話を続けていく。いままでもそれをやられております。忍耐には限度があると、かようなことはことば自身がおかしいのでありますが、私は、そうではなくて、論議論議を尽くして、そうしてどこまでも論議を重ねていって、納得ずく方向でいきたい。しかし、民主政治はやっぱり最後にはその民主政治ルールがあるんだから、それによっていただきたいし、もう観念的な民主主義はこの辺でさようならをして、現実的な民主政治のほうに取り組んでいく。それにはやはり調和が必要なんだ、これは、私が調和の理念を申し上げますとなかなか長くなりますが、かように思うのであります。  今日の民主政治、それは、どこまでも個人を対象とし、あるいは各政党考えてまいりますので、全部を一色に塗るというわけにはまいりません。したがって、必ず個々の対立もあるだろうし、個と全体の対立もあるだろう。その対立抗争をできるだけ避けて、対立抗争の形に持っていかないで、それを調和方向へ持っていくことが、それが正しい民主政治ではないか、かように思います。そういう意味から、党首会談というような話が出ておると思います。しかし、これはまだ具体的にどうこうということではない。もちろん、必要があればお互いに話し合っていく。その方法として、党首会談も必要だろうし、あるいは幹事長書記長会談も必要だろうし、国会対策委員長同士会談も必要だろう。とにかく、最初からもう対立抗争話し合いの余地なしという、これではよくない。議会政治である限りにおいて、お互いが必ず国のことをお考えになるに違いないんだ。こうすれば国のためになる、日本のためになる、この立場においては少なくとも同じよう基盤に立っておるんだ。そうすると、その基盤に立ってお互いに話し合っていくこと、それが望ましいことではないか。ただいま具体的にこういう問題がある、それについて話し合う、こういう段階ではございませんが、私は、必要があればそういう道も求めていきたい、こういう考え方でございます。
  5. 勝間田清一

    勝間田委員 聞くところによれば、国会対策の中でやはりこの問題が論議されて、自局党代表の中からは、主として外交問題がやはり論議中心となるであろう、あるいは国会対策委員長、あるいは政審会長幹事長等々の段階を経て党首会談等を行なうということになるであろう、こういうことまで論議されたと私は聞いておるのであります。しかし、いまあなたのお話によりますと、まだ具体的にそうしたことを考えておられるのではないのだ、こういうお話でありますが、かなりその点には食い違いがあるのではないか、私は、若干実は疑問を持たざるを得ないのです。民主政治ルールとして、新たに党首会談というよう一つの共通の場を持とうとするのかしないのか、この点については総理考えがあるはずであります。この考え方は、一体あなたは受け入れられるのか受け入れられないのか、その点をひとつ決意をお聞きしておきたいと思います。
  6. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど来申し上げたとおり、民主政治話し合い政治であります。したがいまして、必要があればそれをするということに私も賛成であります。そうしてまた、いま当面においていろいろの論議があるそうだ、こういうお話をしていらっしゃいますが、わが党でかくかくするときめますまでにはいろいろ論議を重ねてまいります。したがいまして、その中間においてどうこう取られましても、その中間状況で判断するわけにまいりません。先ほど私が申したように、最終的な結論は出ておりませんが、しかし、これからいろいろ問題を堀り下げてまいりますと、必要によっては皆さんと話をしていく、こういうこともできてくるかと思います。
  7. 勝間田清一

    勝間田委員 党首会談の問題はまだ具体化してはいないが、研究の過程にあるんだという、こういう認識でよろしゅうございますか。
  8. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 党首会談、これはもう問題ないことです。ただ、どういう問題で話し合うかという、あるいはどういう事柄党首会談議題にするか、あるいは話を進めていくか、こういうことが問題なのであります。本来から申せば、民主政治のもとで話し合い政治をやるんですから、二人が会う、あるいは三人が会う、そういうことに何ら疑問がないのであります。ただいま問題になっておりますのは、これからそういう必要が生ずるかどうか、そういう場合にどういう問題を取り上げるかどうか、こういうことだと思います。さように御理解を願いたいと思います。
  9. 勝間田清一

    勝間田委員 あなたは、過般、成田議員質問に対して、AA会議に対して出席をするという回答をされたわけであります。このAA会議に臨むあなたの態度はおきまりだろうと私は思うのです。一体いかなる態度AA会議に臨まれるのか、この際明らかにしていただきたい。
  10. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 AA会議出席する、これは私が出席するというわけではございません。あるいは総理級の方をお願いするということでなくて、AA会議にただいままで中断をされて日本代表が出ておらない、このことはいかにも残念だから、今度は新内閣ができた際に、AA会議にも参加していこう、こういうことを、その決意お話ししたのであります。御承知のように、三月に開催されるということでありますので、AA会議出席する代表はいかなる団体にするか、まだそれはきめておりません。ただ、私がばく然と考えておりますことは、これからさらに掘り下げていかなければならないのですが、しばしば私どもが申しておるように、日本アジアに位する国だ、かように申し、そうしてAA会議にも参加しておらない、こういうことが国際的なボイスを弱めておる、かように思いますので、私は、こういうAA会議、そういうものには積極的に参加して、そうしてわがほうの主張をこういう会議を通じても明らかにしておくことが必要なのではないか、かよう考えておるのであります。具体的な問題につきましては、来年三月のことでありますので、何かと研究中でございますから、ただいまこの機会お話しするようなことはまだきまっておりません。
  11. 勝間田清一

    勝間田委員 前回のAA会議におきましては、わが社会党も団の顧問団としてこれに参加して大きな成果をおさめておるわけであります。今回のAA会議に参加する決意を固められた佐藤総理大臣としましては、わが党もまたその状況いかんによってはAA会議に協力するにやぶさかではないのでありますから、したがって、こうした問題について十分私は話し合う機会をやはり持つべきだと実は思う。こういう点についてのあなたの態度をひとつお尋ねをいたしたい。
  12. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 たいへんけっこうなお話でございます。私どもも、保守党だけのAA会議だとか、こういう立場で出かけるわけではございません。日本の国の利益を代表する、また日本主張をする、こういう意味皆さん方と御協力し、話し合う、こういうことは必要だと思います。十分注意してまいります。
  13. 勝間田清一

    勝間田委員 先ほど佐藤総理は、あくまでも話し合い対立を避けていきたい、こういうお話でありました。しかし、それにもかかわらず、佐藤総理に対して私どもは若干の疑問を実は感ずる。たとえば、あなたが六月の二十七日、総裁選挙に立候補せられる際に記者会見をされておる。それではこう言っておる。池田内閣の低姿勢で野党は喜んでいる、与党の中には与党主張がどこに行ったか不満な者がある、いつの間に自民党と社会党連立内閣ができたのか、まことに皮肉たっぷりな批判をやっておる。こういう態度と、今度言われるような、あくまでも対立抗争をやめていこうということの態度とには、私は百八十度のあなたの心境変化があると思う。一体、こういう心境変化はどこから来たのか、この疑点を晴らさなければ、あなたをほんとうに信頼することはできない。これをひとつ明らかにしてほしい。
  14. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 七月の公選の際は、いわば自由民主党内部の問題でございます。したがいまして、そのときの言動、これは党運営上の基本的な問題であり、また党員全体をまとめる意味においての考え方でございます。そういうように七月の時点における私の発言は取っていただきたいと思います。今日私が最も頭を悩ましておりますものは、社会の、また日本国内対立抗争をいかにしてなくするかということでございます。対立抗争ばかりしておりましては、進むべきその方向も見失うし、また、進んでまいりません。何としてもこれは対立抗争をなくしていく、そういう努力をしなければならないと思います。これは刻下の急務だ、かように申しても過言ではないだろうと思います。ことに、私ども政党立場がそれぞれありまして、党の立場からの発言もさることだと思いますが、結局迷惑するものは国であり、国民である。ここに思いをいたしますならば、この対立抗争のない世の中、それへの最善の努力をすることこそ、お互い政治家のつとめではないかと思います。今日私は、そういう意味で、ぜひとも皆さん話し合いを続けていく、こういうことをしたいと思います。しかしながら、話し合い話し合いでじんぜん日をむなしくしていく、そうすることは、これは国のためにもならない。やはり国の方向というものはきめていかなければならない。あるいはきまるべき時期にそれぞれのものもきめていかなければならない。ここがまことに大事なことであります。一面において対立抗争をなくしていく、一面においてきめるべき時期にはものをきめていく、これを皆さま方にも御協力を願いたい、かように思って、私が調和精神を説き、しかも、同時に、進んでいくことを考えておる次第でございます。
  15. 勝間田清一

    勝間田委員 私は、理論闘争をしようとは思いませんが、国会運営は多数党によることであり、同時に、大部分、九割九分の議案提案者政府であり、与党である。提案者である側が、国会の連帯に対して民主的な配慮を加えていくということが、実は原則だと思う。これなくしてほんとうの民主的な運営はあり得ないと私は考えている。もし少数党提案者であって、また少数党がすべてを決定し得る力を持っているというならば、少数党に大部分の責任はかかってくると私は考える。しかし、今日の議案提出者は、大部分は、九割九分は政府であり、与党であります。これが絶対譲らないのだという考え方でものを進めるならば、それは独裁政治以外の何ものでもない。私は、ここに多数政党であり与党であるものの当然とるべき民主的な態度が要求されてくるものと実は考える。その場合に、じんぜん日を送るという問題についてあなたはよく言われるけれども、一番大切な問題は、あなたが参議院でわが党の藤田議員に対して回答をされたと新聞は伝えておるけれども、いわゆる単独審議強行採決は絶対やらないのだ、このことをあなたはここで確約ができるか、そのことをひとつまずお尋ねをしておきたいと思う。
  16. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 勝間田さんの前半についての御意見、私はしごくもっともだと思います。政府与党が九割九分その提案をしておる、こういうことを御指摘になったことは、そのとおりだと思います。しかし、そのものが全部原案修正で通過しておりません。必ず皆さま方と相談をし、そして落ちつくような形において適当な修正が加えられて、そして法律ができ上がっております。これは、やはり絶対多数に立ってはおるが、そのうち少数意見も十分見きわめておるのであります。問題になりますような、もう気分的に考え方が相違しておる、こういうような問題でも、なおかつ十分論議を尽くしておるのであります。だから、私は、今日までの国会運営は、多数党必ずしも多数ならず、少数党意見も十分採用されておると思います。私はいまそのパーセンテージは記憶しておりませんけれども、必ずや、国会運営の衝に当たっておられる方は、いかに修正議案が多いか、原案そのものでないもの、あるいは全会一致そのものでないもの、そういうものがいかに多いかということを知っておると思う。これが大事なことであります。  私は、藤田議員お尋ねに対しましても、そういう意味合いで、単独採決あるいは強行採決、これは私のとらないところであります、こういうことは答えました。今日も私は、かような点は依然として話し合い政治である、強行採決あるいは単独採決、これは私のとらないところだということをはっきり申し上げておきます。
  17. 勝間田清一

    勝間田委員 憲法に対する態度をひとつ明らかにしておきたいと思います。佐藤総理は、憲法に対する態度で、おれもひとつ憲法を読んでみる、国民もひとつ読んでみたらどうだ、これはすなわち総理就任最初のあなたのあいさつでありました。あなたはその後憲法を読んでみましたか。
  18. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 憲法を読んだか読まないか、ただいま研究中であることは確かでございますから、さように御了承いただきたいと思います。
  19. 勝間田清一

    勝間田委員 私は、この問題もあなたは党内問題として逃げるというお考えでは、許せないと思う。総裁立候補の際に、これは七月の四日であります。憲法問題は国民世論の熟するのを待って取り組む、この限りでは池田首相と大きな差はないかもしれないが、あくまでも自主的にこれを改正するという立党精神に服した姿勢で臨む、池田首相はこの立党精神を無視しており、私とははっきり違う。これが私が総裁に就任したらこうこうするというあなたの公約であります。これと今回のあなたの態度とは表面上は違う。この百八十度の転回もわれわれには理解に苦しむところである。しかし、おそらくこの七月四日のあなたの談話が佐藤総理の信念だと私は考える。そこで、熟するのを待って改正に取り組むといったことは一体どういうことか、ひとつお答えを願いたい。
  20. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 憲法問題は、ただいま皆さま方も、改正するとか改正しないとかは別といたしまして、熱心に論議をかわしておられます。わが党の立党精神は、ただいまお読み上げになったようにあると思います。しかし、立党精神がそこにあったからといって、その精神が万代不易なものでもないだろうと思う。しかし、少なくとも今日の段階においてはさように思います。  問題であります憲法の問題、これは、現在の憲法はその平和主義といい、あるいは民主主義といい、あるいは人権尊重といい、いずれにいたしましても今日国民の血となり肉となっておると思います。だから、この問題はたいへんな問題だと思う。そこへ持ってきて、憲法調査会から答申が出ております。憲法調査会答申も、これまたそう軽々しくこれを拒む筋合いのものでもないと思う。そこで、私の申し上げますように、やはり憲法問題はこれだけの問題なんだ、国の基本に関する問題なんだ、これは国民とともにもう一度研究することはあってもよろしいんじゃないか、研究自身も拒むという態度はよろしくないんじゃないか、そして、研究して、国民皆さま納得がいくという方向になれば、さてこれをどうするかという議論が必ず出てくるだろう、それに従ってやってしかるべきだ、これこそ、私が国民皆さまとともにこれをもう一度読んでみよう、こういうことであります。ただいまの憲法条章そのものが今日国民の血となり肉となりつつあるというその事実は、私どもも率直に認めなければならない。憲法調査会答申それ自身もまことにとうといものがある。こういう状況でございますから、私は、先ほど申しましたよう考え方で、もう一度読んでみようじゃないか、こういうことを申しておるのであります。
  21. 勝間田清一

    勝間田委員 自主的に改正する態度で臨んでいくというんでしょう。あなたは改正でしょう。改正しないのですか。改正でしょう。そこが池田と違うところなんでしょう。池田と違うところは一体どこですか、池田と違うところは。私と池田と違うところはここだというのは一体どこですか。
  22. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 池田総理の言い分では、いかにも自由民主党立党精神、それに書いてあることが忘れられておるんじゃないかというような気持ちがしております。私は自由民主党員であり、その立場において私ははっきりしている考え方を持っている。その立党精神、その綱領、これには私は忠実であります。しかし、先ほど来申すように、自由民主党というものも、その立党精神をいつまでも変えない、これは言い切れないということを申しておるわけであります。
  23. 勝間田清一

    勝間田委員 池田総理自由民主党立党精神を忘れているということだと思います。自由民主党精神を忘れているとは、一体どこなんですか。自由民主党精神を忘れているとは、どこなんですか。池田さんはどこを忘れているのです。
  24. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 申し上げるように、ことばが足らないのです。ことばが足らないからまた誤解を受けるようですが、どうも前総理も必ずしもそういう意味でもなかったろうと思うが、この自由民主党立党精神から申せば、この点ははっきりしていたのじゃないだろうか。それがいかにもあの表現では、国民とともにきめるのだ、こういうようなことでは、ちょっと中途はんぱだったように思うのです。   〔発言する者あり〕
  25. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ちょっと静粛に願います。
  26. 勝間田清一

    勝間田委員 これは、ひとつ静かに聞いてください。あなたのいまの答弁を聞いておりますと、自由民主党のいわゆる立党精神池田さんは忘れているのではないか、また、その忘れているではないかという——一番の私の聞きたいところは、国民とともに考えていくという考え方は、自民党の精神と反するのではないかということだと私は思う。いまのあなたの回答はそうです。そうであるならば、逆に言うならば、自民党は改正論である、池田さんはその改正論を忠実に守らなかったのだ、おれは改正論を守るぞ、これがあなたと違うところなんでしょう。そこはどうなんですか。
  27. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 そういう意味ではございません。問題は、各政党とも民主主義政党でございますから、これは国民基盤にする政党であります。国民が望まないようなものを強行するということは、これは自由民主党でも考えておりません。だから、その意味の御議論はしばらくおいていただきたいと思います。だから、池田総理も、そういう意味では、国民とともに研究するとか、あるいは国民の動向できめるとか、こういうことを申していた、これはそのとおりでございますが、何だかことばが少し足らなかったような気がするということを申しておるのです。
  28. 勝間田清一

    勝間田委員 この点は、何らか足らなかったという回答では、私は済まされないと思う。改正に対する態度池田佐藤とはどう違うのか、はっきり言ってください。改正に対する態度池田佐藤とはどこが違うのか、はっきり言ってください。
  29. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 以上申し上げるような程度の相違かと思います。したがいまして、皆さん方から、特別に違っておるとか、ここが違っておるとか、こう言って指摘されるほど、そう変わってもいないだろうと思います。これは感じの問題ですから、その点はなかなか説明がしにくいようです。
  30. 勝間田清一

    勝間田委員 私は、時間もありませんから、この憲法に対する態度はひとつ留保します。これは、佐藤総理のいまの答弁は・・。   〔発言する者あり〕
  31. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ちょっと静粛に願います。社会党の諸君、御静粛に願います。質問中です。
  32. 勝間田清一

    勝間田委員 私はいまの総理回答回答になっておらぬと思うのです。私は、こういう態度で、この重要な憲法問題に対する政府態度とは理解できません。私は委員長から総理に対して、もう少し明快な回答を求めることを要求します。
  33. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 どうぞ・・。
  34. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私の考え方は、先ほど来述べ、よくおわかりいただいたと思うのであります。ただいま問題になっておるのは、前総理佐藤と一体どこが違うのか、こういう問題のようですが、私の説明がわかっておれば、過去のいきさつの問題は別ではないでしょうか。それを、無理やりに、これは過去のいきさつがこうなっておるのだと、それを責められることは、やや問題がそれるような気がいたします。
  35. 勝間田清一

    勝間田委員 これは、はっきり私はもう一度申し上げます。佐藤総理は、国民とともに考えていくという池田さんの考え方は自民党の立党精神に私は沿っていないように思うので、この点は私の考えと違うように思う、私は自民党の立党精神に沿って自主的に改正するという、この立党精神だと私は思うのだが、その立党精神に従っていくのが私の立場であります、したがって池田佐藤とは違います、こういう御主張かと私は思うのだが、それならば、池田さんは国民とともに進んでいくという考えで、これは自民党の立党精神には反する、佐藤さんは自民党の立党精神にのっとって自主的に改正する、これが佐藤考えであり、前者が池田考えである、この相違があるのだと、あなたははっきり言えるのですか。それが常識じゃありませんか、あなたの答弁から。
  36. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど来申しておりますように、いまの憲法国民の血となり肉となっておる、それらの点については、あなた方と私どもも同じだと思う。憲法調査会がああいう報告を出しておること、そうしていろいろな論議をかわしておること、これも御承知のとおりであります。その段階において、ただ国民とともに、あるいは国民が好めばと、こういう程度でなしに、こういう事態になってきておるのだから、あらためて憲法問題を取り上げてみようじゃないか、——取り上げると言わないで、国民の一人々々とともにもう一度読んでみようじゃないか、こういうことを私は申しておるのです。それが積極的に改正の意欲ありと見られたり、あるいは、調査会の問題も出たが、これは改正をしないという、そういう積極的な意図を持っておるのか、そういうこととは関係がないのであります。私は、どこまでも、近代政党の姿としては、それは国民とともに歩んでいかなければならない。しかし、問題はやはり現に提供されておる、その提供されておる問題と真剣に取り組んでみて、それで初めて国民の動向がわかるのです。私はその点をうったえたいのです。これを最初から、あれは改正論者で国民にうったえるとか、こういうものでない、ただいまは、申し上げるように、問題が提供されておる、それとやはり真剣に取り組んでいこうということであります。
  37. 勝間田清一

    勝間田委員 私は了解できない。それならば私ははっきり聞きますけれども、端的に答えてください。立党精神に立って自主的に改正する、この立党精神をあなたは承認されるのですか、されないのですか。イエスかノーか。
  38. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど来申し上げますように、立党精神立党精神だ、しかしこれは万代不易のものじゃございませんと、はっきり申し上げております。
  39. 勝間田清一

    勝間田委員 私は依然としてこの問題は氷解しません。しかし、時間も何ですから、この問題は留保いたしておきます。  憲法調査会はすでに答申内閣並びに内閣を通じて国会に提出をいたしましたが、この報告書の処理をどうされますか。
  40. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 いまそれぞれ関係のところで調査、資料の整理をやっておる段階でございます。それから後にただいまの問題になります。
  41. 勝間田清一

    勝間田委員 これは内閣の中に何らかの調査機関をけるとか、議会の中に何らかの委員会を設けるとか、そういうような試みをあなたは感じておりますか。
  42. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 まだそこまで突き進んだ考え方はしておりません。ただいま法制局でその資料の整理をしておるという段階でございます。
  43. 勝間田清一

    勝間田委員 聞くところによりますれば、来たる十二月十一日に、第三次の選挙制度審議会が第七回目の総会を開くと聞いております。佐藤総理もそこに出席して、最初の所信を明らかにするということを聞いておるのであります。私は選挙制度の改正に対する佐藤内閣態度をひとつ聞きたい。特に第三次の選挙制度審議会は、区制の改正中心としてその審議を進められるやに聞いておる。しかし、私どもは今日の選挙制度そのもの考えてみた場合に、ここであらためて抜本的に考え直してみる必要があるのではないだろうか。ただ単に前内閣委員会の審議を踏襲するということだけでなく、考え直してみる必要があるのではないか。その意味で、あなたが最初に出られるこの審議会での態度が重要な問題だと実は思う。一体どういう態度で臨まれるのか、選挙制度改正に対するあなたの考え方をひとつこの際明らかにしていただきたい。
  44. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 選挙制度審議会、その委員会を委嘱いたしまして、これは前内閣のときであります。そうして私になりましても依然として高橋委員長以下非常に努力しておられます。したがいまして、これらの委員の方々にお目にかかることがどうも総理としての当然の責務じゃないだろうか、こういうことで近く開催される総会の席に私が出てまいってあいさつをするつもりでございます。もちろん、この審議会に委嘱ししておるのでありますので、これは自主的にとりきめていただく。政府がその内容等について干渉するつもりはございません。どこまでも審議会は中正に案を立てていただけるだろう、これを期待しております。そういう意味で別に党利党略、そういうことも考えない、そういうのが本来の筋じゃないか、かように思っております。
  45. 勝間田清一

    勝間田委員 それでは、区制を中心にして審議会が審議を進めていくということは、既定の事実としてはこれは考えていかない、こう考えてよろしゅうございますか。
  46. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま九月十五日にこういうような言い方がされております。「選挙区制およびその他選挙制度の根本的改善をはかるための方策を具体的に示されたい」、いわゆる根本的改善ということを特に注意しておりますが、事例としてその中に選挙区制その他選挙制度の根本的改善、こういうことを申しておるようであります。したがいまして、私になりましても、新しくその方針が変わるとは考えません。しかし、これはどこまでも皆さん方が中止に判断されることが望ましいのであります。
  47. 勝間田清一

    勝間田委員 これは、ひとつ関係大臣お尋ねしたいと思うのですけれども、いわゆる選挙区制を中心にこれを審議することを求めておるのではないですか。
  48. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 お答えを申し上げます。第一回の選挙制度審議会におきましては、選挙のやり方、あるいは定員是正、あるいは選挙区制等が論議されまして、主として選挙のやり方について答申がございました。第二回の選挙制度審議会におかれましては、定員是正と選挙区制について論議されまして、主として定員是正についての答申がございました。その際にあわせて選挙区制についても政府としてはひとつ考えよ、こういう答申がございましたので、これを受けまして第三回の選挙制度審議会において、選挙区制その他選挙制度の基本についての改善方策を諮問した次第でございます。
  49. 勝間田清一

    勝間田委員 私は、議会制民主主美の基礎を確立するということは、お互いの責任だと実は考えます。この議会制民主主美の確立という面から考えてみまするならば、幾つかの重要な問題があると思う。しかし、その中でも一番重要な問題の一つは、憲法に定められているところの正当に選ばれるということであります。正当に選ばれた者が国会に立って正当に国民代表の役割を果たすということであります。その正当に選ばれる過程が今日混乱しておるような状態では、議会制民主主義の基礎というものは破壊されると私は考える。その面で、今日最も考えるべき点は、選挙の区間を大きくするか、小さくするかという問題も全然ないとは私は言わない。しかし、もっと重要なことは何であるか。もっと重要なことは、金のかからない公明な選挙が行なわれるということであります。   〔委員長退席、青木委員長代理着席〕  正当な国民の意思が代表されるということである。しかし、この問題は今日においても、たとえば法定費用のごときは膨大な金がかかるのであります。その結果は、各政党が膨大な選挙資金を必要とすることになるわけであります。その結果は今日政治をよごしておるわけです。国民の不信を買っておるわけであります。あなたも、苦々しい経験をお持ちになっていらっしゃることはよくおわかりだと私は思う。そういうことを考えてみると、今日一番大事なことは、根本的にこれらの根本を打破するところの公営という問題を真剣に考えるときではないだろうかと私は思う。もし区制と基本的な問題を審議会が、審議するというならば、私はもっと選挙の公営の問題を真剣に考えるべきときではないだろうかと思う。簡単にあなたがこの際内閣を引き継いで、前会の踏襲をそのまま続けていくというのではなくて、もう一ぺん考え直して、現在の政治を美しくするために、私は抜本的な何をすべきかをもう一ぺん考え直す必要があろうと思う。それがやはりほんとう佐藤路線ではありませんか。この際、そういうことをあなたは考えてみる重要なときに当面しておるのではないかと私は思うのだが、あなたの考え方をもう一ぺん聞かしてもらいたい。
  50. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 確かに議会制民主主義、それから申せば、選挙制度がいかにあるかということは最も大事なことでございます。しかし、なかなかこの選挙制度は簡単に口で言うようには片づかない問題だと思う。長い歴史があり、またその間に正しい方向にばかりも進んでおらないと思います。わが国の憲政史そのものが選挙制度に対する変遷を物語っておると思う。そして今日、選挙費用が非常にかさむ。そういうことからいろんな社会悪までつくり出しておる。そういう意味で、この際に選挙についてもう一度みんなが、自粛し、考え方を変えてみる、反省の要がある、こういうことが望ましい。これは勝間田君の言われるとおりだと思います。私も、さよう意味においてただいま中正な、公正なその道の権威の方を集めて、審議会にかけて、その答申を待っておる、こういう状況でございます。必ずや言われるごとく、これらの方々もお説のような点にも触れることだと思います。そのことが根本でございますから、そういうことに触れて、その上にいま言われておるような区制なども問題の一つにしておる、かように私考えます。問題は、これはその衝にある者、その局にある者、これでつくることよりも、やはり各界の権威を集めて、そうしてそれらの方々が中正に、公正に、しかもどこに弊害があるか、これを見つけて、そうしてそれに対する答申をなされることが望ましいのであります。私は、そういう意味で、政府がこれに干渉するとか、あるいは圧迫を加えるとか、あるいは方向を示すということは必ずしも適当ではない、かよう考えます。
  51. 勝間田清一

    勝間田委員 行政機構の改革について、すでにこのための調査会は答申をしておるわけであります。わが党も、この調査会に太田委員が積極的に協力をいたしました。また答申された報告に対して、大綱に対して、私どもは支持の意を表明いたしました。しかるに、今日伝えられるところによりますれば、この行政機構改革に対する佐藤内閣態度はきわめて消極的であると聞いております。もしそうであるとするならば、これは私は重大な誤りだと実は考えます。行政機構改革をあなたはこの答申に基づいて断行する気持ちがあるのかないのか、明らかにしていただきたい。
  52. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 臨時行政調査会、これから答申の出たことは御指摘のとおりであります。しかも今回の答申は各界、各層からの御意見をまとめられたというところに非常な意義があると思います。ただいま総評の太田君も委員として活躍したということは、御指摘のとおりでございます。組閣以来、この問題は前内閣の方針を踏襲するということをはっきりいたしております。まだ三週間ばかりでございますから、熱意が強いとか弱いとか、かように判断されることは私はたいへん心外に思いますが、前内閣のその方針を踏襲する、しかも行政改革という以上、これはやはり勇気を持ってこれに臨まないと、なかなか問題は解決しないと思います。そこで、ただいま推進本部と申しますか、そこが中心になりまして、まず手っ取り早くこの際必要なもの、早急に解決のできるもの、そういうものから進めていこうというような段取りをとっておるわけであります。
  53. 勝間田清一

    勝間田委員 来たるべき通常国会に行政機構改革に対する具体的な案が提出されるのかされないのか、ひとつお尋ねしたいと思います。
  54. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 まだ来年度予算の編成大綱等ができておりません。問題は、あれで新しい機構をいろいろ考えられておりますが、新しい行政機構改革ばかりつくることのほうに熱意を持っても困るのじゃないだろうか。問題は、やはり国民に奉仕する行政機構のたてまえを堅持して、もっと簡略に、迅速に処理のできるような、そういうものから取り上げてまいりたい、かよう考えております。
  55. 勝間田清一

    勝間田委員 石炭の問題についてお尋ねしてみたいと思う。  佐藤総理がかつて通産大臣の当時以来、石炭問題についてはまことに苦難な道を歩んでまいったわけであります。しかも、あなたの御承知のとおりに、第一次有澤調査団の報告がなされて、これを池田内閣によって実行されたのでありまするけれども、きわめて遺憾ながら、スクラップのムードは盛り上がり、合理化のムードは盛り上がった、しかし、逆にビルドは立ちおくれた。まだ労働条件は少しも向上せずして、災害は頻発している。そうして労働力は未曾有の不足を来たして、今日五千五百万トンの出炭さえおぼつかないという状態にある。しかも、あなたがしばしば約束せられた産炭地の振興のごときは、政府の確約にもかかわらず、遅々として進まない。地方自治しかり。地方の産炭地における青少年の最近の非行状態というものを見ますると、まことに憂うべき状態にある。まことに今日の産炭地並びに石炭山労働者の窮状というものは目をおおうべきものがあります。池田総理はかつてわれわれの前に、私は心を入れかえてこの問題の処置に当たります、こう決意を表明されたのであります。それにもかかわらず今日の状態であります。世間とかくいたしますると、石炭問題はもう解決がついた、ああした問題はもうさわるのは損だといったような消極的態度さえ見られる。そういうならば、まことに重大な誤りだといわなければならない。佐藤総理は、私は石炭にとっては責任ある経過を持っておると考える。今後石炭問題の解決に対するあなたの決意をひとつこの際喚起したい。あなたはどう考えておられるか、お尋ねをしたい。
  56. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 第一次有澤調査団の報告の当時、社会党の諸君とも、ことに勝間田君とは、これが調査団の報告に対していかに処理していくか、これは真剣にお互いに討議を重ねたと思います。そのとおりにものごとが進んでおれば、これは問題ないことだと思いますが、ただいま御指摘のように、その後の変化は、またわれわれの想像しないよう方向に幾つもの発展を見ております。今回第二次有澤調査団が出かけて、これの対策を、ただいまちょうど真剣にどういう結論を出そうかといって悩んでおる最中のように伺っております。その詳細は通産省のほうからもお話をするだろうと思いますが、とにかく、長い問題であり、私の通産大臣時分にもこの問題にすでに手を染めたのであります。その後の経過等を見まして、池田総理ではないが、やはり心を入れかえて、そうして新しい気持ちでこの問題と取り組んでいく必要があるのではないか、かように私も考えます。ただいままでのところ、何としても五千五百万トンの国内の出炭量というものを維持するような方法はできないものか、五千五百万トンが実際にはなかなか維持できないと言っているが、それはどこらに欠陥があるのか、また国内産業の維持強化、それにつながる労働者の問題、あるいは次の世代を引き継ぐ労働者の問題、それなどいろいろ問題があるようであります。しかも、もっと困難なものにしておりますのは最近の物価問題、それにもからんできておるようであります。ただいまそういう立場から、各方面からの意見をまとめて、そうして総合的な対策を立てていくという、そこに調査団も苦心をしておるようであります。私は、その方向がきまればそれを勇敢にまた推進してまいりたいと、かよう考えております。
  57. 勝間田清一

    勝間田委員 私は、今日までの長い間の経験からかんがみて、もう政府資金も二千億以上の金をつぎ込んで、しかも、それも利子補給でもしなければ今日の石炭山の経理はやっていけない、旧債はたな上げしなければ経理はやっていけない、すべて国家資本に依存し、それでなおかつやっていけないという今日の状態になって、炭価も引き上げざるを得ない、あるいはその他の諸政策も考えざるを得ないということを一面考えてみ、他面において、今日の労働者の状態を考えてみるときに、一流の基幹産業の労賃というものと比較してみたときに、非常な大きな格差が、最低賃金の問題があり、賃金の問題があり、年金の問題があり、しかも災害はほとんど今日防除されていないという実情にある。このまま放置して、どうして石炭の山に労働者が、しかも青年労働者が入っていくことができるかということを考えてみると、資本と労働の両面において全く行き詰まっているというのが今日の状態だと私は思う。こういう状態のもとにおいて一体私企業のベースでやっていけるのかやっていけないのか。私はそこに真剣に取り組まざるを得ないと思う。私は社会党として考えるのでありますけれども、と同時に自民党としても真剣に考えてみなければならぬと思うのは、国営なり国家管理の姿にもう切りかえるべきではないのか、私はこう思う。これをあなたも考えるべきだと私は思う。そして無秩序に金をつぎ込んで、そして責任のない金の使い方をしているという状態を続けていくべきではないと思う。国が責任を負うべきだと私は思う。この点についての佐藤総理大臣の見解を承らしてもらいたい。
  58. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど来申しますように、調査団がいずれそのうち報告を出してまいります。その結果いかにするか、これを考うべきだと思いますが、ただいま突然国営論が出てまいりましたが、私ども立場そのものから申しますと、必ずしも国営に移せばこの問題が解決するというものでもないように思います。国営論もいいところもありましょうが、同時にまた欠陥の非常に多いものでもあります。これで議論するつもりはありませんが、その持っていくところをどういうようにするか、十分それを考えてみたいと思います。ただ、いま勝間田さんと私の考え方で似かよっておる、あるいは同一ではないかと思いますのは、いまのような経済情勢になってまいりますと、在来のようなやり方だけの、その行き方を強化するというだけでは解決はしないのではないか。やはりものの見方が新しく変わってこないと、そうして画期的な構想のもとにおいてのみ最近の経済発展に石炭産業を追随させていくこともできるんじゃないだろうか、こういう意味で何らかの画期的な考え方をそこに必要とするんじゃないだろうか、こうは思います。しかし、それは必ずしも国営の方向で片づくとは私は思いません。ここらが非常な議論のあるところだと思います。   〔青木委員長代理退席、委員長着席〕
  59. 勝間田清一

    勝間田委員 労働大臣にひとつお尋ねいたしますが、私は現在の石炭山の労働者の賃金の状態を見て、重要な基幹産業の賃金レベルにやはり石炭山の労働者の賃金を引き上ぐべきだと私は思う。またそれを保障してやるべきだと私は思う。また最低賃金の問題も再考慮すべきだと私は思う。同時に大事な問題は、安全の問題が依然として重要である。また年金の問題、老後の安定の問題、この問題も確保せずして、いま労働者の確保をすることは困難だと私は思う。また青少年を石炭山に確保するためには、やはり教育上の制度についても与えるべきだと私は思う。これらの諸問題についての労働大臣の見解をひとつ承らしてもらいたい。
  60. 石田博英

    ○石田国務大臣 第一次有澤調査団の勧告に基づきまする合理化の進行の過程にありまして、労働力の面については四十二年の目標にすでに達しておるというような急速な変化を来たしております。それと同時に、その反面には、元来坑内労働はその労働の困難な性質からかんがみまして、一般の産業よりは上位にあるべきものであり、またあったのでありますが、それが現在では、平均と申しますか、まん中より以下ぐらいに下がっておることも事実であります。また災害もふえております。したがって、石炭問題の今後の処理にあたって、これ以上労働側にしわ寄せされることは不可能であると私は考えておるのであります。  そこで、ただいま御指摘の問題でございますが、賃金のあり方については、これは原則として、賃金は労使の間で決定すべきものでございますから、私がそれがいかなるものであるべきかということは言う立場ではないと思いますけれども、一般的な常識から申しまして、坑内労働という性質から考えましても、少なくとも基幹産業の勤労者と同等のものであるべきだろうと私は考えております。  それから若い人々が石炭労働に染まってくるようにする、現在石炭労働の平均年齢は三十七歳をこえておりまして、若い人はほとんど入ってまいりません。ここに将来、日本の石炭産業をになっていく労働力を確保していくにあたりましては、まず第一に考えなければならないことは、従来この問題について、私どもは離職者対策ということに重点を置いてまいりました。しかし、これからは所要労働力の確保というところに重点を置いてまいらなければならないと思っております。所要労働力を確保しますためには、まず石炭労働というものについて魅力を持たせなければなりません。そのためには、今後わが国の総合エネルギー政策の中における石炭の位置づけを明確にしてもらうこと、それから石炭の労働者の賃金その他の労働条件を魅力あるものにいたしますこと、それから災害その他の防止について万全を期しますこと、その他が必要であろうと思っておりまして、現在その方向に向かって所要の施策を推進すると同時に、そういう方向で有澤調査団と接触をいたしておる次第であります。  最低賃金の問題につきましては、すでに御承知のごとく、職権によりまして二万六千円というものが大手十八社には適用されております。この適用労働者は七万二千人に及んでおるのでございます。そこで残っております問題は、中小に対してこれを適用する時期の問題と、全体としてそのレベルを上げる問題という二つが残っておると思います。中小については、明年四月一日からこれを実施することになっておりまして、諸般の事情等を勘案いたしまして、一年猶予するということもあり得ることになっておりますが、そして、それは中央最低賃金審議会の審議によることになっておるのでありますが、私といたしましては、でき得る限り四月一日から中小に及ぶようにしたいものだと思っておる次第であります。いずれ最低賃金審議会の御決定を持ちたいと思っております。  それから、最低貸金のレベルアップの問題についてでありますが、これは現在、中小企業の中小炭鉱に及ぼす問題を処理したあとで考えてみたいと思っておる次第であります。  さらにまた、住宅、年金その他について、特に住宅につきましては、明治時代からの住宅がまだ残っておるところが相当ございます。これではやはり魅力を持たせるわけにはいきませんので、住宅その他については積極的に融資、補助その他でできるだけ快適な住宅を与えられるよう努力が必要であると思っております。  それから、老後の保障につきまして、現在厚生年金は坑内労働について相当割り高な規定になっておりますが、なおこれでは不十分であると思いますので、何かの方法でこれを年金で処理するように接触をいたしておるのでありますが、これも有澤調査団の現在の第二次報告を待っておる次第でありますけれども、労働省といたしましては、そういう考えで調査団に接触をいたしておるところであります。
  61. 勝間田清一

    勝間田委員 内政の石炭の問題で最後のお尋ねをしたいと思いますが、私は、総理に、今日まで石炭問題に取り組んでまいった経験から見まして、やはり総理中心として関係各大臣との石炭問題の閣僚会議というものを持つべきだと思う。そうして統一的に推進するべきだと思う。総理の見解をひとつこの際に明らかにしておいていただきたい。
  62. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御意見をよく伺っておきます。
  63. 勝間田清一

    勝間田委員 外交について質問をいたしたいと思います。  佐藤総理は、今回の所信表明におきましても、中国問題についての重要性を特に強調をされたのでありまして、私は、その意味において当然な処置であったかと実は考えます。しかしながら、その内容を検討いたしますると、従来の政経分離の態度を確認をしたということ、将来にわたっては慎重かつ真剣に対処していくというだけであって、何ら具体的な方向というものは示されなかった。まことにこの点では私は遺憾だと実は思うのです。そうした無方針の中で、彭真市長の入国を拒否したという事態が起こって、佐藤内閣の最も中心的な課題であった中国問題は、今日著しい危機に立っていると私は判断する。最近の中国筋の新聞などを見ましても、まことに重大な感じを受けるわけでありまして、過去十数年にわたって民間諸団体が唯一に中国との間の外交を開いてきた。しかし、その過程においては常に政府がこれを破壊してきた。第一回が、言うまでもなくあなたのにいさんである岸内閣のときであります。今回は弟さんのあなたがこわすかもしれないという危機に立っているのであります。私は、この段階で中国に対する外交政策を明確にして前向きに具体的な案を示すという、日本国民にとっては実に重大なときだと思うのです。したがって、私はここに若干突っ込んでひとつあなたに質問をしてみたいと思う。どうか、あなたも慎重かつ真剣にお答えを願いたいのであります。  第一の問題は、常に論ぜられる問題でありますけれども一つの中国か二つの中国かという問題について、あなたはこの前の本会議において成田委員質問に対して、これは所信表明で表明したんだからお答えしないと逃げられておる。これは、それなら所信表明にどこに書いてあるかといっても、所信表明には一つも書いてはない。早くいえばあなたは答弁を逃げられた。しかし、それでは済まされないと私は思う。そこで私はあなたにお尋ねをしますけれども、これも古い証文を出して恐縮でありますが、本月の十日、これはあなたが総理に就任して最初記者会見のときであります。でありますから、あなたがいきり立って総裁に立候補しておって若干口ばしったときとは意義が違う。これは、責任ある地位についてからあなたが共同記者会見でしゃべられたときでありますから、私は責任を持たれると思う。この中で興味深い問題は、日本は幸か不幸か中華民国を承認している。台湾を承認している。中共も台湾も互いに一つの中国だと言っているときに、外国が外から二つの中国と言うことは内政干渉になる。蒋総統が終戦のときに日本に寄せた好意に対しては感謝の意はあるけれども、感情だけでは中国の問題は解決されない、こう実は言っておるわけであります。これはまことに微妙であり、まず重要であると私は考えている。私は、この談話をそのまま聞けば、当然だという感じがいたします。そこであなたに一つお聞きいたします。あなたの考え方からするならば、当然中国は一つだということになるんだが、中国は一つだと、あなたはやはりここで踏み切って、はっきり確信することができるか、まずこれをお尋ねをしましょう。
  64. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは、北京政府国民政府も同じように、台湾をも含めて中国は一つだということを何度も繰り返しております。私は、中国の問題は中国の方がまずきめるのが本筋だと思います。私ども外からとやかく言う筋のものじゃないだろう、かように思います。
  65. 勝間田清一

    勝間田委員 それならば、当然外国が外から中国は二つだ、あるいは一つの中国、一つの台湾とかいうことは内政干渉だというあなたの態度というものは、私はりっぱなものだと思う。確かに内政干渉になりますね。お答え願います。
  66. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 どうも用語が不適当で、ことばが言い過ぎたりなんかしております。いま内政干渉というのは、これは記者会見で私が使ったことは確かですが、これは公式の席上で取り消しておきます。私は、ただ両国が、いまある中国と国民政府とが同じように中国は一つだと言っておることを、外からはそのとおり承認したらいいと思います。  それからもう一つは、幸か不幸かというようことばがありますが、これも、どうもことばとしては不適当でありますから、これはもうあっさり取り消しておきます。
  67. 勝間田清一

    勝間田委員 これは、あっさりではあるけれども、非常な後退であると思う。しかし、いずれにしましても中国は一つだと考える。それからいまお答えになった答弁は、外からとやかく言うべきではない、内政について言うべきではないということをあなたは確認をせられた。それで、私はこの問題でこういうことが当然今後起こってくると実は思う。それならば一つの中国ということになるのだが、その一つの中国ということを、幸か不幸か台湾のほうを日本政府は承認しているのだが、この異なった、二つに分裂をした中国を一つの中国に統一をさせていく外交というものがなければならない。また、そのことが当然だと実は思う。たとえば、私は国連加盟についてお尋ねをしたいと思う。これを一体どういう意味であるかをひとつ明らかにされたい。というのは、過般の外交所信表明におきまして、外務大臣の演説に、このように言っておるのであります。「その及ぼす重要な国際的影響にかんがみまして、中共に代表権を認める当然の結果として、国民政府は国際連合から追放されるべきであるという考え方は、決して問題の妥当な解決をもたらすゆえんではない」、すなわち、一方の中共代表が参加するということは、他方を追放するというゆえんではない。これは逆にいうならば、台湾を云々するということは他方を追放するゆえんでもないということにもなろうと私は思う。この外務大臣の所信表明における考え方というものは、できれば二つにしたいという考え方が根本にあるのじゃないか。国連における考え方は、あなたは、やはり二つの中国にしていくという考え方が根本にあるのか。一体外務大臣の表明された考え方というものをあなたはどう解釈をされるのか、このことをひとつ明らかにしていただきたい。
  68. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは、ちょうどただいま私が外務大臣を兼務しておりますから、あわせてそういう意味でお答えをいたします。〔「まだ外務大臣おるじゃないか」と呼ぶ者あり〕いままだいらっしゃるようですから、それは取り消します。いまのお話ように、中国は一つだ、中国は一つだということになっておるそのたてまえから、いずれが中国の代表者であるかという問題になるが、二つの政府を承認するわけにいかない。そこの困難なところを外務大臣が言っておるのだ、かように思います。ちょうど外務大臣いますから、その点を正式に答えさしてみたいと思います。
  69. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 中共加盟を認めることが、他面において台湾における中華民国政府を国連から追放するということになることは、少なくとも現状のバランスをくつがえすことになりまして、そこに極東の平和あるいは政治的安定に多大の亀裂を生ずるゆえんでございますので、これは、われわれとしては認めることはできない、そういう趣旨の表明を行なったのであります。
  70. 勝間田清一

    勝間田委員 そこで一番重要なことは、今度の国連総会で、当然中国の国連における正当な地位の回復の問題が重要な問題になると思う。また本日、聞くところによれば、外務大臣はアメリカに渡って、ラスク国務長官等とも外交問題について話し合いをするということである。その際における中国の国連加盟の問題について、従来保守党、自民党の政府は、重要事項の指定方式の提案者となり、むしろ中国の正当な地位の回復を妨害するという態度をとってきた。今度の国連総会における日本態度は一体どうなのか、このことをひとつこの際に明らかにしていただきたい。
  71. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 前回のアルバニア側の提案に対しましては、ただいま申し上げたように反対してまいりました。今回の総会においても、やはり同様の態度をもって臨むつもりでございます。重要事項としてこれを取り扱うべきものであるという主張は、これも不変でございます。
  72. 勝間田清一

    勝間田委員 これを重要事項としてあくまでも扱うという考え方は不変であるという態度を表明された。前回のアルバニアの提案、すなわち中国を正当な地位に回復すべきである、台湾を追放すべきであるという提案に対する前回の勢力は、わずか十六票の違いで破れた。私は、その後におけるフランスの中共の承認、それから最近における中国核実験等を含めて起こった世界への影響等々からかんがみて、この情勢は著しく変化したものと考える。したがって、この情勢判断が、今日のきわめて重要なポイントにならなければならぬと私は思う。自民党が好むと好まざるとにかかわらず、世界情勢の変化というものは明らかにあらわれている。この判断を、一体佐藤総理はどのように判断をしているのか、これをひとつ明らかにしていただきたい。
  73. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま勝間田さんは世界の情勢を説かれたのでございます。私は、それにやや反対というか、こういう見方がしばしば誤るんではないだろうかと思うのです。と申しますのは、日本という国は、これはもう中国の隣であります。それで、これはほんとうに真剣に両国国交の親密化をはかっていきたい。これは歴史的にも民族的にも、そういう気持ちがあるわけです。それをフランスがどうした、あるいはアルジェリアがどうした、アフリカの諸国がどうした、この数の問題じゃないように思うのですよ。私は、どうも遠い各国が中国に対しましてどういうような気持ちでそのつき合いをなさるか、それは別ですが、とにかく日本としては、そういうことも大事だけれども、もっと本来の主張、本来の姿があると思う。ここに私が述べたい自主外交というか、そういうものがあるのです。したがいまして、私は必ずしも数が多いだけでどうこうしようとは思いません。わが国の利益のために、民族のために、これはほんとうに真剣に考えていかなければならぬ。今日私が、ことばはあるいは十分でないかわかりませんが、外交の中心は中国問題である、かように申しておるのは、そういう意味で、他の国とは事情を異にしておる。その点をはっきり認識していただいて、そうして今後いかにこれを展開していくか、これは大いに各界、各層の御意見も聞きたいと思う。ただいま申し上げ得ることは、在来からの方針、政経分離の方針、中共敵視政策をとらない、封じ込め政策は絶対にとらない、また中国は一つだ、こういうことを言っておるが、そのとおりだと、こういうたてまえで私はこの問題と取り組んでまいりたい。そういう意味でいま賛成すればいいじゃないかというのがございますが、そういう御意見もあるだろう。これが皆さん方の御意見でもあるならば、これもよく取り入れて、そうして今後の扱い方をいかにするか、いましばらく時間をかしていただかないと、たいへんな問題でありますだけに、そう結論は簡単には出てこない、かように私は思います。
  74. 勝間田清一

    勝間田委員 世界の情勢がどのようであろうとも、日本日本の特殊な条件のもとで自主外交をやっていこうという考え方というものは——総理、ひとつ聞いておいていただきたい。いいですか。世界の情勢がどのようであろうも、日本の特殊情勢に応じて自主外交をやっていきたいと思うということは、これを現実の外交の中に引きかえて考えてみれば、中国の国連加盟の問題が世界にもうすでに間近になっているにもかかわらず、あくまでも日本は、たとえ破れても、重要事項指定方式を貫いていくんだということになるんですか、外交は。はっきりして下さい。
  75. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  世界の事情がいかようにあろうともと、かようにもし私が申したら、それは変えていただきたい。私はそうでなくて、他の国の立場日本立場は違うんだ。それはどういう考え方で外国が中共を支持なさるか、それはまた別なんだ。しかし、わが国はわが国の立場があるんだ。その関係のことは、先ほど来申したとおりであります。したがいまして、私が今日この段階でさらに展開するという最後の考え方には、まだ到達しておらない、こういうことを申し上げておる。ただいま、たいへん重大な問題であり、わが国にはほんとうに身近な問題なんだ、これは真剣に考えなければならない問題なんだ、そこで、各界各層の御意見も十分取り入れて、そうして結論を出したいということを申しておるのであります。誤解のないように願っておきます。
  76. 勝間田清一

    勝間田委員 私の聞いておるのは、最初聞きましたのは、このアルバニアの投票はわずかに十六票の差であったが、その後の情勢の変化は著しいので、世界の情勢は、私は、中国の国連復帰の問題は遠からず実現するときがくるのではないかと見るのが今日の世界情勢ではないかと思うのだ。その情勢判断を一体あなたはどのように見ておられるかということを聞いておるのであって、それに対する日本佐藤内閣態度を私は次にお聞きしようとする。
  77. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 もし単純投票でこれを処理するということになりますと、前回の十六票の差よりももっと縮むであろうということは、一般に認められております。しかし、その場合でも、必ずしもこれが全部ひっくり返るというような、前回の決議が全くあべこべになるということはあるまいということが、ほぼ大勢のようであります。万々一の最悪の事態においては、あるいは一票、二票負けるかもしらぬ、こういうよう考え方もある。しかしながら、われわれは、あくまでもこの問題はただ手続上の問題でなしに、きわめて世界の平和に至大の関係のある問題でございますから、これはいわゆる重要事項として取り扱う、重要事項として取り扱うべきものであるという主張をずっと続けておるのでありまして、もし重要事項であれば、これは三分の二の多数をもって決議しなければならぬ、さよう状況であります。
  78. 勝間田清一

    勝間田委員 そうしますと、いまの外務大臣のは——総理と外務大臣にひとつお尋ねしますけれども、十六票がはるかに縮まるだろう、あるいは一、二票負けるときもあるかもしれない。そうすると、それにもかかわらず、重要事項指定方式を貫いていくのだ、こういうように私は聞くわけであります。いわば重要事項指定方式を貫いていって、それで一、二票負けてもしかたがない、一体、こういう考え方であくまでも日本の外交というものをやっていこうとするのですか。はっきりしてください。
  79. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 負けるということばが不穏当であれば、いわゆる賛成派が勝ちを占める、そういうことであります。ただ、私の申し上げたのは、単純投票として取り扱った場合にそうなるかもしらぬ。しかしながら、われわれはあくまでも重要不順として、三分の二の多数をもってこれを決定すべきものであるということを主張しておるのであります。そのことを誤解のないようにお願い申し上げます。
  80. 勝間田清一

    勝間田委員 外務大臣の言うことは、いわば過半数の単純投票でやっていけば負けるかもしれない、いや賛成派が多いのかもしれない。しかし、三分の二の投票でいけば勝てるのだ。それはもう当然だろうと私は思う。問題は、重要事項指定方式自身が過半数できめられることなんだ。いかに主張せられても、重要事項指定方式の効力の問題も、過半数単純投票できめられることなんだ。したがって、今回の国連については、あなたの言うとおり一、二票負けるであろうということも、十分あり得ると私は思う。そういう状態を今日ここにはっきり——少なくともあなたが今日そういう判断を持っている状況のもとで、依然としてあなたが重要事項指定方式に固執し、そしてあくまで国府の地位を守っていこうとするその態度というものは、私は理解することができない。その意味で、今回明らかにしていただきたいと私が思うのは、やはり従来の立場ではなくて、こうした国際間の動きというものを考えると同時に、佐藤内閣がもし中国に対する前向きの姿勢をとっていくというならば、今日のこの重要な国際情勢の変化を洞察をして、そうして日本の進むべき間違いのない態度をとるだけの、弾力性ある態度をとるだけの余地が、保守党内党といえどもあってしかるべきだと私は思う。その態度をとらない限り、今日の国連総会において、日本の外交というものが自主外交であるとは私は言うことができない。ひとつ佐藤総理の見解をもう一度伺わさせていただきます。
  81. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 前大平外務大臣は、国連加盟が、中共が祝福されるような場合には、日本もこれに賛成することを拒まない、こういうような表現をとっておりました。これはたいへん大事な、意義を持つものだと私は思うのです。ただいま隣国であり、日本にとっては中国問題は非常に大事だ、かように申しておりますが、そのたてまえから申しますならば、これを票で争うことは必ずしも望ましいことではないと思います。ただいま票が一票勝つとか二票勝つとか、あるいは重要問題だとか、こういう話をして、おられます。しかし、真の問題はそういうことではなくて、わが国が——また中国が日本をいかに理解するか、相互の理解が最も大切なことではないか、かように私は思うのです。そういう意味で、いまの加盟自身につきましても、全部の国がこれは祝福しておる、そういう場合に、日本自身が独自の立場をとってどうこうする、こういうものじゃないだろう、ここが、私がただいま中国問題は大事だから、そういう意味で各界、各層の意見を十分聞いていこう。ことに・・。(「過半数だ」と呼ぶ者あり)過半数だということばを言っておられますけれども、その過半数が、ただいま申し上げるよう日本立場とそれからアフリカの諸国とは、だいぶたてまえが違うのです。その地位が違うのです。だから、その中国問題に対する真剣さ、その重要性というものを身近に考えておる日本のほうが私は大事じゃないだろうか、かように思います。それはもっと基本的な問題で、形式的な問題でないようにこれを片づけることを与えていかなければならない、かように思っております。
  82. 勝間田清一

    勝間田委員 外務大臣に一つお尋ねしますが、重要事項方式というもののねらいは、現実的には三分の二できめよう、ということは、中華人民共和国の国連への正当な復帰を阻止しよう、あるいはこれを引き延ばそうという実際的な効果をこれはねらったものだと私は思う。それでよろしゅうございますね。外交はそうでしょう。まことに冷厳なものだと私は思う。
  83. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 この問題については、先ほども申し上げたように、前回のアルバニア側の提案日本は反対したのであります。その態度日本は変えておらない。そして、しかもその表決の方法をもしとるとすれば、これは重要事項であるがゆえにその取り扱いをすべきである、こういう主張をしておるのであります。
  84. 勝間田清一

    勝間田委員 あなたは、逆にものを与えて実際の効果——もう正直に言うべきだと私は思うのです。そういう持ち回った議論をすべきじゃないと私は思う。重要事項方式の提案者であった日本は、佐藤内閣のもとにおいても、今回もその提案者になるのか、あるいはあの決議が効力あるものと考えているのか、またその効力が過半数によって否決された場合も私は当然予測される、こういう状態であって、しかもその勢力関係は、私は明らかに今日は負けるかもしれないという実は状態にあると思うのです。そういう判断の上に立ってなおかつあなたは重要事項方式にこだわるということは、中華人民共和国の国連加盟を阻止する手段であり、あるいはそれを引き延ばす手段である、そういう外交として私はこれを見ることができる、そのように判断してよろしいのか。
  85. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 あなたの御解釈でよろしゅうございます。
  86. 勝間田清一

    勝間田委員 総理、このいまの外務大臣の答弁は、まことに率直で、しかも重要だと私は思う。そう私は理解せざるを得ないのですけれども総理はどう思いますか。
  87. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 外務大臣からお答えいたしておりますのは、現状においての外務大臣の態度であります。これは私どもも、政府もそのとおりであります。しかしてただいまお尋ねになるのは、これから先どうするのか、こういう問題だと思います。今日まで私は池田内閣がとってまいりました政経分離の方法で、中共を敵視せず、また中共の封じ込め政策にも同調しないで、そうして今日までやってきておる。しかもその実現を困難ならしめておるものは、中国は一つだという、これは国民政府もまた中共政府も同じことを言っておる、その点が一つのこだわりであります。しかしてこの問題で今日はいかにするかといえば、外務大臣の言うとおりであります。しかし私は、日本が当面しておる中国問題というのは、これから先のたいへん大事な問題だと思っておる。いままでのところは政経分離の方法で中国大陸とも非常に親密になってきておる。貿易などは非常に伸びておる。二倍以上になっておる。あるいは新聞記者も交換をしておる。ただいままでLT貿易が不十分だというようなことはあまり聞かない。そういう状況でありますので、今日までの行き方はこれでよろしいように思う。しかし、日本にとっては大事な中国問題だ。これとは真剣に取り組まなければならないのだ。そこで、私は各界の御意見も聞き、また国会における三分の一の勢力を持たれる社会党の御意見も十分耳を傾けて拝聴するつもりでおります。そういうことで今後われわれの行く道がきまってくるのではないのか、かように私は思っております。
  88. 勝間田清一

    勝間田委員 しかし、椎名外務大臣の答弁されたことを本来とるということで方針はきまっておるということでありますから、これはあなたが何と言おうとも、重要事項方式は中国の国連加盟を阻止することであり、これを引き延ばす手段であるということを私が質問したのに対して、そのとおりだと言うのであります。これで敵視政策をとらないのだという佐藤論理は成り立たないと私は思う。まことに遺憾しごくだと私は思う。そういう考え方のもとにおいて、あなたがいかに一つの中国論を論ぜられても、私は今日の日中間の友好関係を、前向きの形で前進させることは不可能だと実は考える。しかしこれらの諸問題についても、これから真剣に私はこの国会を通じて論議していきたいと思いますので、次に移りたいと思います。  新聞によりますれば、中国との間に、何らかの政治的な政府間の接触を持ちたいということが言われておる。私は、このことは重要な一つのことだと実は思う。御案内のとおりに、いま北京にはイギリスが外交機関を設置いたしております。フランスも同様であります。しかも英国の労働党は、新たな内閣を組織して、中国政策に積極的になるであろうことを私は考えるのであります。しかもあのアメリカが、今日ワルシャワにおいて大使級会談を持っておる。それもすでに百二十三回に実は及んでおる。世界の重要な大国はここに外交的な接触を、その思想、政治のいかんにかかわらず持っておる。このことは私は非常に重要なことだと実は考える。日本はあなたの言うとおりに、歴史的に地理的に特殊な関係にあるというあなたの強調であり、前向きの姿勢をとるという強調であるならば、私は戦後十数年間、捕虜の問題も、遺骨の問題も、避難港の問題も、貿易の問題も、何もかも民間だけにまかせ切っていた今日までの外交をやめて、やはり政府間の接触を何らかの形でもつべきときだと私は思うのだ。聞くところによれば、あなたがクレジットを与えた何ものかを、政府と折衝させる、それも一つの方法でしょう。しかし、私をして言わしむれば、あまりにも保守党の皆さんは、政府は、いろいろなルートで外交をやり過ぎる。ぼくは韓国の問題にしましても、台湾の問題にしましてもそう思います。正常な外交ルートを通じて接触をしていくというのが私はほんとうの姿だと思うのだ。しかし、いずれにしましても外交権を持っておる政府は——ここが野党と違う。外交権を持っておる政府は、政府みずからの責任において政治的な折衝を持つべきだ。私は、そのことを今日あなたがどう考えておるかをこの際に明らかにしていただきたい。
  89. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま政府は政経分離の方式、いわゆる民間ベース、こういうことで接触をいたしております。もちろん社会党の方も行かれるが、保守党の方もそういう意味では出かけておる。これは必ずしも全部が全部経済だけの問題でもないのだ。やはり政治的な発言もあるやに見受けます。これでだんだん両国間も、もっと意見の交換ができるようになり、お互いに認識を深めていくのではないだろうか、かように私は思います。ただ問題は、いかにも日本国の国論がこれで一になっておらない、こういうような印象を与えてもらうことは、わがほうとしてもこれはたいへんなことだと思うのです。私は、先ほど来申すように、中国問題はわが国の外交の中心課題だ、かように思いますので、どうか、こういう点についての十分の御理解を持たれるように、また、政府が間違ったことのないような、そういう意味の御協力も願いたい思うのです。で、私は、ただいま言われるような、外交権は政府だけが持っている、こういうことを言われますが、必ずしも政府だけの外交ルートじゃないと思うのです。これこそ、ただいまのよう段階において、国民外交というものが非常に大事なことじゃないのか、かように思います。ただ一部におきまして、党首会談というようなことがこれからも関連して出てくると思います。要は、やはり自主外交と、かように申しますが、どんな外交でも、自国の利益を考えない外交はないんだ、自国の国民の利益を考えないものはないんだ。この立場に立てば、私は、社会党さんだろうが、わが党だろうが、十分話し合いはできるもんだ、かように思っております。そういう意味で、これから先のこの問題の展開には、よほど私どもが慎重であり、また熟慮して、そして勇気を持って取り組もう、こういうことだけ申し上げておりまして、ただいま具体的な方法としては、在来の方法を続けていくんだ。在米の方法がすでに効果をあげつつあるんだ。これではあるいは時期的にまだ満足ができない、もっとスピードを上げろ、こういうお話もあろうかと思いますが、ただいまは在来の方針を堅持し、そうしてそのたてまえにおいて両国間を緊密にしていこう、かよう考えておる次第でございます。
  90. 勝間田清一

    勝間田委員 そうしますと、大使級会談あるいは政府がクレジットを与えた何らかの政治的な政府間の接触、これは持つ考えはないというのですか。
  91. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまさよう考え方まで進んでおりません。昨日など、ジャパン・タイムスあたりも、いろいろな記事を報道しておりますが、これには政府は関係はございません。はっきり申しておきます。
  92. 勝間田清一

    勝間田委員 きわめて佐藤内閣の対中国政策は後退していることが、明らかになりました。まことに遺憾しごくであります。  韓国の問題について、政府は、今日、非常な急テンポに交渉を進めつつあるようであります。しかし今日、この日韓交渉の妥結の状態を、われわれはなぜそんなに一体日本政府が急ぐのか。これは、従来隣国であり、あるいは長い間の懸案事項であるから、解決をつけるという形式論だ。しかし私は、形式論だけでこの問題を解決するわけにはいかない。たとえば政府系の朝鮮の最近の報道によっても明らかな一つの例でありまするけれども、ちょうどかつての伊藤博文が、韓国の保護条約を結んで来年はちょうど六十年になる、伊藤博文は長州である、今度再び長州の佐藤が同じことをやろうとしている、これも何かの因縁であろうと。これは、朝鮮の政府系の新聞の最近の論調であります。今日の韓国の国民が、この日韓交渉というものをほんとうに喜んでいるかといえば、喜んではおらない。同時に、野党系に至っては、全く今日の日韓会談に対しては猛烈な反対の態度をとっている。私は、真にあなたが従来答弁されたように、しこりを残さないようにしたいというあなたの考え方に立つならば、こうした事態において、何ゆえに日韓交渉をこんなに急いでやろうとするのであろうか、私は、その点をきわめて重大に考えなきゃならない。あなたの見解をひとつ聞きたいと思う。
  93. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 日韓間の交渉は、持ちましてもうすでに十数年になると思います。また、隣国、一衣帯水の間にある、こういう国と国交正常化をするというのは、これは当然のことだと思います。したがいまして、私は、この両国を早く国交正常化したい、この気持ちで一ぱいでございます。もちろん、過去の例を引き合いに出されましたが、今日の日本と過去の日本は性格的にも変わっておると思う。どこまでも平和を愛好する民主主義の国になっておる、また経済中心の国であります。防衛力も持たない、こういう国柄でございますから、私は、両国間の国交調整は容易にできるんじゃないだろうか、ぜひそういう方向に進みたいものだ、かよう考えております。
  94. 勝間田清一

    勝間田委員 あなたが今度相手にする日韓交渉は、三十八度線以南の韓国政府を対象にするものと考えてよろしいか。
  95. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 韓国を相手にするものでございます。
  96. 勝間田清一

    勝間田委員 したがって、平和条約に規定するところの請求権の問題も、韓国に関する限りのこれは解決であると考えてよろしいか。
  97. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 さようでございます。
  98. 勝間田清一

    勝間田委員 いわゆる北の、北鮮の請求権は当然残るのだが、そのことに関して日本国民は非常な不安を感ずるけれども、それでいいと考えているのか。
  99. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 請求権の及ぼす地域的範囲でございます。それは、ただいま申し上げたように、韓国に限定されるわけであります。それ以外の問題については、まだ具体的に問題になっておりませんので、これ以上の御説明は省略したいと思います。
  100. 勝間田清一

    勝間田委員 平和条約では、朝鮮全体に対する請求権の義務を日本は負っていると私は思う。したがって、いわゆる平和条約にいう対日請求権の問題というものは、朝鮮民主人民共和国に対しては当然残る結果に私はなると思う。外務大臣、どうですか。
  101. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 条約局長から答えさせます。
  102. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 サンフランシスコ平和条約の第四条(a)項では、日本から切り離される地域の財産請求権関係を、「特別取極の主題とする。」とあります。続きまして、(b)項に、「日本国は、第二条取び第三条に、掲げる地域のいずれかにある合衆国軍政府により、又はその指令に従って行われた日本国及びその国民の財産の処理の効力を承認する。」とあるわけでございます。したがいまして、大韓民国は、合衆国軍隊が占領しておりましたので、そこで、合衆国軍隊が日本の財産請求権を処理してしまっておる。つまり、日本から韓国に対する取り分がなくて、韓国の日本に対する請求権が残る。その解決のためにいままでいろいろ日韓間で交渉しておったわけであります。ところが、北鮮につきましては、こういうサンフランシスコ条約の四条(b)項のような規定がございませんので、これは必ず北鮮が、財産請求権の額が日本の分よりは大きいということにはならない。むしろ逆になる可能性があります、私は実際問題はよく知りませんが。その関係で、韓国と北鮮の場合は全然サンフランシスコ条約の規定上の根拠が違うわけでございます。
  103. 勝間田清一

    勝間田委員 この日韓問題について急送な交渉が進められることになるわけでありましょうが、私はひとつこの際にお尋ねしておきたいと思う。大平・金メモをやはり承認されるのですか。たとえば請求権の処理について、御案内のとおりに三億の無償供与二億の有償供与、これで妥結されるということについて、これを承認されていくのですか。
  104. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 御承知のとおり、一応請求権問題につきましては、両国の間にほぼ意見の合致を見たのでありますが、これが正式の完全な妥結に至らずして途中で会談が切れてしまった、そういうわけでありますから、再び会談を再開いたしまして、そしてこれらの問題を双方で確認するということになるのでありますが、ただいまのところは、大体お説のような二億、三億の問題はそのまま踏襲していきたいという考え方でございますが、これは、いずれともまだ先方と正式に合意した問題でありませんから、責任を持ってここで申し上げるわけにはいきませんけれども、大体その方向で進みたい、当方はかよう考えております。
  105. 勝間田清一

    勝間田委員 四千五百万ドルの焦げつき債権を棒引きにするのか、あるいはこの中に含まれるのか、また拿捕漁船に対する賠償というものは、別途に考慮されるのか、されないのか、この点についていかがですか。   〔「外務大臣だ、外務大臣だ」と呼ぶ者あり〕
  106. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 委員長の権限におまかせください。
  107. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 拿捕漁船の賠償権につきましては、一件一件賠償権を留保してございますので、これは請求権問題とは全然別ワクになっております。ですから、請求権のある三億、二億の外にまだ賠償権、要求権を留保しておるわけでございます。  それから焦げつき債権の問題につきましては、これはまだ話が十分煮詰まっておりませんけれども、こちらの方針といたしましては、この請求権の問題と貿易上の債務の問題とは別途切り離して、払わすべきものは払わすという方針でいま主張を続けておる段階でございます。
  108. 勝間田清一

    勝間田委員 最近なしくずし解決のような姿で二千万ドルのいわゆる経済援助をやっているようでありますが、あるいはプラント輸出等を行なっておるようでありますが、これはすなわち有償援助の中に含まれると考えますが、いかがですか。
  109. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 両国の間に意見の相違がございましたが、ただいまでは全く意見の合致を見まして、商業ベースによる例の一億ドル以上という範疇の中に入るということになっております。
  110. 勝間田清一

    勝間田委員 いかなる名目のもとにおいても李承晩ラインはこれを認めず、いかなる名称のもとにおいても李承晩ラインはこれを残さず、そして公海の原則を侵されることはないという基本原則はあくまでも貫かれる、かように解釈してよろしいか。
  111. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 李承晩ラインといい、あるいは平和ラインと申しておりますが、これは今日の国際法上、あるいは国際慣行に照らして不法不適当なものであるという考え方を堅持しております。したがって、この問題についてはあくまでこれを否認するという態度を持って会談に臨むつもりでおります。
  112. 勝間田清一

    勝間田委員 大平前外務大臣は、一括解決方式をとる、一件といえども解決されなければそれによって国交は設定はしないという態度をわれわれに言明しておったのだが、一括懸案事項を解決することなくしては国交は設定しないという原則を承認するかどうか、この点をひとつお尋ねしたい。
  113. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 基本的にはそうでございます。したがって請求権の範囲、二億、三億、これは他の漁業協定あるいは地位身分に関する問題であるとか等々と一括して解決していく、かよう考えております。
  114. 勝間田清一

    勝間田委員 その中には、当然竹島問題の所属の最終的な決定も含まれるかと思うが、どうか。
  115. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 法律上の問題もありますので、ひとつ詳しくアジア局長からお聞き取りを願います。
  116. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 仰せのとおり、方針といたしましては、この国交正常化のときに竹島問題のような、あとにしこりを残す問題も同時に片づけたいという方針でやっておりますが、前内閣のときからの政府答弁にもございますように、少なくとも最終的な解決のめどははっきりとその協定の中につけておく。ですから、権利の最後的の終結がそのときに済むというところまでいかなくても、それを最終的にきめる方法だけは少なくともしっかりきめておくというのが、前内閣以来の方針になっております。
  117. 勝間田清一

    勝間田委員 私は、総理が今回の所信表明において、沖繩問題を軽視したことをきわめて遺憾に思います。この沖繩問題の処理について、例の国連憲章七十七条と平和条約三条との関係は無関係であるという答弁をされました。私は日本政府として、これはきわめて重大なことだと実は思う。  私はまずお尋ねしたいけれども、国連憲章七十七条は信託統治の予定地をあらかじめ規定いたしております。私はこのa、b、cいずれにも沖繩は入らないと思いますけれども総理大臣の見解ばどうですか。
  118. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 この法律問題は詳しく法制局長官から説明させます。ただいままで私の申し上げましたのは、三条と七十七条との関係につきまして詳しく法制局長官に答えさせます。
  119. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 平和条約第三条には、御指摘のとおり、信託統治の制度のもとにおかれるアメリカ合衆国の提案ということが出ております。この信託統治の制度のもとに置かれるという現実の問題はむろん別といたしまして、理論上の問題のお尋ねでございますので、その点について申し上げますが、国連憲章第七十七条には、信託統治の制度が置かれる場合として三つの場合が書いてございます。その三つの場合のいずれに当たるかというような問題はございますが、これについては従来もそういう問題がございまして、第二次世界大戦の結果として分離された地域、あのうちに入るものとして解釈されるのではないかというような解釈をとってまいります。
  120. 勝間田清一

    勝間田委員 これは非常におかしいじゃないですか。だれの解釈でしょう。御存じのとおりにあのときにヤンガー・イギリス大使も、これは日本の主権のもとに残されたということを明らかにし、また御存じのとおり、ダレスさえ潜在的主権は日本にあるということを明らかにし、当時における吉田総理も、これに対する感謝の態度を明らかにいたし、主権が日本に存在する、これは、第二次大戦の結果として分離されたものとして解釈するのは非常な大きな屈辱的な態度だと実は思う。なぜ日本がそんなbの態度に服するのか、明らかに日本主張すべきじゃないのか。七十七条であえて日本がこれを信託統治に合法的な根拠があるかのごとく認めていくという態度は、私は日本の利益をみずから放棄するものだと思う。七十七条に対する考え方を改めてほしいと私は思う。取り消しなさい。
  121. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 いまの点、まだお聞き取りが十分できてなかった点もあるようですが、もう少し詳細に報告させます。
  122. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答え申し上げます。  平和条約の第三条で信託統治の制度のもとに置かれるということがございますが、その信託統治のもとに置かれるということについては、私が申し上げるまでもないと思いますけれども、これは政府として、そういうことは予想はしておらない、むしろ沖繩の返還ということが現実の課題になっていることは私が申し上げるまでもないわけでございますが、純粋の理論としての問題としてのお尋ねでございますので、その点について申し上げれば、国連憲章において信託統治制度が置かれる場合としてあげられているのは三つの場合でございまして、その三つの場合のいずれに当たるのかということについては、あるいはbあるいはcというような解釈上議論をする余地はあるように思います。思いますが、従来から私どもは、このa、b、cというものに当てはめてどれかといえばbではないかというよう考えを持っております。そして、bにおきまして非常に気になりますのは、御指摘のとおりに分離されたという文字でございますが、これはなるほどそういう文字は使ってございます。確かに沖繩はわが国が潜在主権を持っていることは、これは言うまでもないことでございますが、ただ施政権は、これも御承知のとおりに、立法、行政、司法の三権はアメリカ合衆国がその衝に当たっております。そういう意味で、分離されたということばの解釈についていろいろ御議論をされるわけでございますが、とにかく立法、司法、行政の三つにわたってアメリカが施政の衝に当たっておるという事実は否定することができないわけでございまして、そういう意味でbとして解すべきものだという解釈をとっておるわけです。
  123. 勝間田清一

    勝間田委員 私は、いまの考え方は法律上も解釈はなっておらぬと思う。デタッチという問題は、もちろん私たちは明らかに主権が分離されるということだと思う。しかし何ら主権の分離は行なわれていないのであります。だから、デタッチという問題を日本国民日本に不利に解釈しようとする屈辱的態度というものは、私はまず許されないし、ましてや、国際的にも、ヤンガー氏も言っておるとおりに、また潜在的主権という形もすでに起こっておる状態であるし、今日アメリカが信託統治を行なう意思もなければ行なってもできないという状態である。しかもあのサンフランシス条約は、御任じのとおり、それまでは施政権をわれわれは持っておるのだという考え方であって、施政権をわれわれは持つのだということが主目的ではない。このことも私は法律上の解釈としては明らかだと思う。そういう事態を、佐藤総理大臣は自主的解決というなら、自主的外交を行なう日本国民の利益を守るという立場ならば、明らかにそうした屈辱的な解釈ではなくて、正当な解釈の上に立って沖繩の領土権の返還を求める、この態度でなければならぬと私は思う。今日までの状態を見ても明らかなとおりに、岸総理のときでさえもアイクに対して施政権の返還の要求をやった。だから共同声明では併記されておる。それから池田・ケネディ会談になって施政権の問題をおろして、そして福祉にこれを切りかえた。われわれはこれを非難した。今度あなたはどうでしょう。施政権の返還を求めることは日本の利益になるかならないかわからぬと思うから研究してみる、何が利益にならぬのですか。施政権の返還がなぜ利益にならぬのですか。私はそれを明らかにしてほしいと思う。そういう見解のもとにおいて今日の沖繩問題を軽視していく態度というものは私は許されないと思う。でありますから、この際に施政権の返還の法的な基礎を確立し、それに対して返還を要求する、この態度を明白に私はあなたに要求したいと思う。あなたの態度はどうですか。
  124. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいままでの法律的な理論はともかく別といたしまして、私どもは潜在主権をすでに認めさしておる。また琉球諸島の諸君が祖国復帰を念願しておる、この立場に立っておる。これまた私どもと同じ考え方でございますので、この理論的な問題は別といたしましても、実際問題としてぜひこれは解決いたしたい、かように思います。  そこで、今日まで私どもが沖繩に対しましていろいろ手を打ってまいりましたのも、一に社会的な問題、あるいは自治権の拡大であるとか、あらゆる面において島民の要望にこたえてきている、こういうことでございますので、ただいま佐藤内閣少し軽く見ておるのじゃないかというお話でございますが、おしかりを受けましたが、私は国民全体としてもこれが実現を心から願っておることだと思いますので、私はその線に沿いましてこの上とも努力してまいるつもりでございます。私の訪米等につきましても、いろいろな議題がございますが、もちろん沖繩の問題もその主要な問題であること、これを申し上げてお答えにいたしたいと思います。
  125. 勝間田清一

    勝間田委員 これは重要な問題であると私は思いますが、法制局長官のいまの無準備な答弁をもって国の利益に引きかえてはならぬと私は思います。したがって、いまの法制局長官の回答は、この際取り消すことを私はお願いします。要求いたします。国の利益のために取り消しなさい。
  126. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答え申し上げます。  私が、実は先ほど申し上げましたのは、私が初めて申していることではございませんで、いままでも国会で申し上げた機会があると思います。  私は、この際つけ加えておきたいことは、この平和条約の締結の際でございますが、ダレスが、沖繩を平和条約第三条によって信託統治に置く場合には、憲章七十七条一項のbによる旨を発言していることが議事録にも出ているわけでございます。そういうこともございますし、いままでもそういう解釈をとってまいっておりますことでもありますし、私は純粋に法律的な解釈として申し上げたわけでございます。むろん沖繩が、潜在主権があり、それの返還ということが現実の問題であるということは、もうあらためて申し上げるまでもないことであります。
  127. 勝間田清一

    勝間田委員 私は、この問題は非常に重要であると思いますから、先ほど来から私が申しましたように、あまり無準備な状態の中で、法制局長官が国の利益に関する問題を軽々に論じてはならぬと私は思いますので、総理大臣、これに対する見解をひとつ承らしてもらいたい。
  128. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私は、これは単なる法律論、法律的な議論だけではないと思う。これは、もう島民の願望を私どもが実現さすべく最善の努力をするということが一番大事なことでございます。もちろん事務当局におきましても、この上ともよく研究はしますが、先ほど来申し上げておりますように、この法制当局の説明は在来から変わっておるとは思いません。それとはまた別に、私どもの本来の用務というか、仕事といいますか、外交の進め方というか、これは皆さん方と同じ立場であります。これはぜひとも進めてまいりたい、そうして島民の願望にこたえたい、かように私は申し上げます。
  129. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 勝間田君に申し上げます。すでにお約束の時間よりはるかに突破しておりますから、もう一問・・。
  130. 勝間田清一

    勝間田委員 二問だけお願いいたします。
  131. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 二問は許しません。   〔「委員長、横暴」と呼ぶ者あり〕
  132. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 横暴ではありません。
  133. 勝間田清一

    勝間田委員 わずかに、委員長から一問を許されたわけでありますが、この一問はきわめて重要でありますので、若干私の見解を述べさしていただきたいし、新たに質問をさしていただきたいと思います。  私は、中国の核実験が行なわれた際に、これは、その善悪についてはいろいろの議論はあろう。また私自身これについてはいかぬ、反対である。しかしながら、この現実を今日ながめてみたときに、いかにして世界に核の拡散を防止し、また同時に核実験から受ける人数の被害を防止して、そうして核兵器の完全な廃棄あるいは禁止に至る問題は、私は世界の政治家は真剣に考えるべきときである、このことはだれもが真剣に取り組まなければならない現時点における最大の課題であると考える。したがって、佐藤内閣がこれに対していかなる態度をとるかということは私は非常に注目していた。残念ながらその第一の原子力潜水艦の奇港の問題については、あなたはこれを許して、依然としてただ伝統を引き継いだだけにすぎなかた。またこれに対してあなたは部分的核協定に中国は参加すべきであるという主張だけにとどまった。この考え方から、今日における中国の核実験に対して、あなたはほんとうにこれを説得するだけの根拠と熱意が出てくるか、あるいは説得力が出てくるかどうかということは私は疑問に思う。いな、ないとむしろ考えてもよろしいと私は思う。私は、この際非常に重要だと思うものは、アメリカの提案は何か、言うまでもなく部分的核協定に参加すべきであるという主張であります。あなたはこれに対してオウム返しにそれを支持して、部分核定に参加すべきであるという主張であります。しかしこの主張はどこに大きな欠陥があるか。言うまでもない自分はたくさんな核兵器を持ち、地下実験は依然として行なっておいて、そうしてアジアには核兵器をだんだん配置して、核基地を拡大して、中国を核威嚇しているという状態のもとで中国に核実験をやめろと言うことは、これは中国を最終的にやめさせることには絶対ならない。だから、部分的核協定にあなたは参加しなさいという議論をアメリカと日本がおやりになることは、これは決して説得力も持たなければ、何らの解決にもならない。  もう一つ言いたいことは、ソ連が提案している問題は何か。ソ連が提案している問題は、核実験を完全に禁止する協定を結び、それに中国は参加すべきであるという提案をしている。この提案はアメリカの提案よりも一歩前進したものだと私は思う。だがこの提案も欠陥がある。何か。自分が持っている兵器だけは離さないぞ、それだけはいつも使うかもしれないぞという根拠に立って、核実験の完全禁止というものを行なっている。こここにソ連の提案というものの欠陥があると私は思う。中国の提案は何か。第三の提案だ。中国の第三の提案は、まず使用を禁止するということを第一課題にした世界首脳会談を持とうではないか。この使用禁止を第一課題とするという考え方というものは、私はさらに進歩発展した議論だと思う。だけれども、この議論の一つの大きな欠陥は何かといえば、実験だけは続けていくぞということがこの背後にあるということが、中国の提案一つの大きな欠陥だと私は思う。いわば今日の核実験に対する諸提案は三つあるけれども、三つはそれぞれの国の利益の上に立った提案であるということがわかる。私はこの意味において、日本のみが今日被爆国として、ほんとうに世界に訴えるだけの提案をし得る唯一の資格を持ったものだと思う。その資格を持ったものは何であるかというならば、核兵器を持っている諸国に対しては、やはり中国の提案が、すなわち使用してはならないという提案が行なわれるべきだ。それと同時に、これから持とうとする諸国に対しては、実験を禁止すべきだという提案を行なうべきだ。いわば私が今日言い得る事柄は、核兵器の全面禁止と使用禁止とを同時並行して協議する世界会議を持つということが、真実の核実験の廃棄をもたらすところの提案だと私は思う。私たち社会党は中国に参りまして、中国のいわゆる首脳会談提案に対して、長期にわたって私たちは協議をいたしました。そして中国の提案に対して、われわれは使用禁止の協定というものは賛成する、だが同時並行してわれわれは実験禁止も行なって、同時に協定に到達すべきであることを主張しました。かなりの意思疎通が行なわれたものと今日考えております。したがって、今日日本が真剣に今日の核実験を世界から追放し、アジアから追放して平和をもたらすというならば、私ば佐藤総理大臣が、単なる部分協定に中国よ参加しなさいということを一面言っておいて、潜水艦を寄港させたり、105Dの配置をやったり、沖繩のあれを云々したりしているようなものでなくて、もう一つ私たちの主張するように、世界の主張がどこにあるか、どこに欠陥があるかを検討して、真剣な核実験の停止と使用の禁止とを含めて、将来それの完全廃棄をもたらすところの提案にこれを持っていくべきだと私は思う。その考え方を私はここに申し述べて、あなたがもう一度この問題を真剣に討議されることを私は希望します。  私はあなたの所見を最後にお伺いして、私の質問を終わります。
  134. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまのは社会党代表しておられますので、社会党の統一的な見解かと思います。私どもは唯一の被爆国であり、しかもまた軍備を持たない、どこまでも平和な国としての日本、こういう立場から考えてみましたときに、少なくとも世界の国民、民族が希望しないような核兵器を持つという、とにかくそれだけはやめてほしい。しかしながら、これにはそれぞれの段階がございます。ただいま仰せのように、理想的なものは、これはもう全部持たないことでしょうし、使用しないことでしょうし、製造もしないことだろうし、また管理もしないことだろうし、また移動もしないことだろう、かように思いますが、なかなかそこまではいかない。そこで、まず順次段階的にそれぞれの手をとってほしいというのが私どもの気持ちであります。ただいま部分的核爆発禁止条約、これが全部だとは私は思いません。しかしながら、全然できない問題を直ちにいま提案いたしましても、これは実現への道としては遠いものじゃないか。まず実際的に処理されるものから片づけていく、こういうことでモスクワの核部分的協定に参加すべきじゃないだろうか、こういうことを実は提案しておるのであります。またそういうことを強く要望しておるのであります。本来から申しますならば、日本ように核兵器は持ち込まさない、どんなことがあっても持ち込まさない、これはもう三代にわたってわが国がしばしば主張しておる。こういう態度も好ましいけれども、現実に持ったのですから、持ったということがやはり世界民族からも批判されるということだと思うので、私は、中共が科学的の水準もたいへん高い、非常にけっこうなことだ。どうしてあの高い科学的な水準、その力をもって平和へ協力しないか、この点ではまことに残念に思うのです。ただいま仰せののように、やはりこれがその国を守るというその立場においては、中共の核実験をすることにも理解ができる、こういうことを言われますが、もしも自国の安全を守るというので、右へならえで全部が核兵器を持つというような国になったら、これはたいへんだと思います。私ども日本は、そういうわが国の安全を守りたい、これはどこまでも主張してまいりますが、核兵器の持ち込みだけは私どもは厳に慎んでいく、これはやらさない、こういう態度をとっておるのであります。この点は、やはり社会党の方も平和の確保、こういう意味から、国民の、また民族の希望しないような兵器を持たないことにしたい、そういう主張をしていただきたいと思います。ただ私、いま世の中にはこれほど矛盾しておることはないと思うのであります。片一方で軍縮が唱えられつつある、その際に、一面において軍備拡張をしておる、こういう事柄もあるのであります。この全然矛盾しておる二つの問題、これがいかに調和されるのか、今後の問題だろうと思います。軍縮、片一方で軍拡をやっておる。この核兵器を持ったということは、明らかに軍拡の方向へ進んだものだと思うのであります。これが本来一方だけの道を進んでいる、軍縮だけの道を進んでいるならば、かような兵器などは持たないだろう、そういう意味で私ども主張が正しいのであります。そうしてできる事柄から片づけていく、こういうことでありたいものだ、かように思います。
  135. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて勝間田君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  136. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 この際、参考人の出頭要求についておはかりをいたします。  昭和三十九年度補正予算三案の審査のため、明後三十日午後一時より、参考人として日本銀行総裁山際正道君及び商工組合中央金庫理事長北野重雄君の出頭を求めたいと存じますが、御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  137. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  午後は一時十五分より再開いたします。  午後の質疑者は野田卯一君であります。  この際、午後の予定について念のため申し上げます。一時十九分に再開し、故本院議員三田村武夫君の葬儀のため一時五十分に休憩し、三時より再開いたします。  野田君の出席要求大臣は、総理大臣、外務大臣、大蔵大臣、農林大臣、通商産業大臣、自治大臣、科学技術庁長官、防衛庁長官、経済企画庁長官及び増原国務大臣であります。  この際、暫時休憩いたします。    午後零時四十五分休憩      ————◇—————    午後一時十九分開議
  138. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際おはかりいたします。  先ほどおはかりいたしました参考人のほかに、全国銀行協会会長中村一策君を参考人として出頭を求めたいと任じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  139. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。      ————◇—————
  140. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 昭和三十九年度補正予算三案に対する質疑を続行いたします。  野田卯一君。
  141. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 自由民主党代表いたしまして、内治、外交の各般の問題について、総理その他の閣僚に御質問申し上げたいと思います。  最初に、第一に取り上げたいのは、政治の基本的な姿勢の問題でございます。佐藤総理は、池田総理が寛容と忍耐ということばをもって自分の政治姿勢を表現されたのに対しまして、寛容と調和ということばを用いられたのであります。この寛容と忍耐ということばがあたかも池田内閣あるいは池田総理政治そのものをあらわすことばとして国民に深く印象づけられて、一種のシンボル的な意味まで持つようになってまいりました。と同じように、今度の佐藤総理のお使いになります寛容と調和ということばも、必ず佐藤内閣を特徴づけることばとして、性格づけることばとして今後広く、また長く使われることと思います。したがって、その考え方、観念というものを明瞭にしていく必要があると考えております。最初総理から、この寛容と調和という考え方を、いままでよりももう少し明快にお話しをいただきたいと思います。
  142. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 午前中も勝間田君にお答えいたしたのでございますが、私ども政治の目標は、民主政治議会政治をより向上さす、よりりっぱなものにするというその目標に努力をささげるわけでございます。池田総理は、寛容と忍耐、さらに話し合いの場だ、こういう表現をされました。確かに民主主義がこれによりまして前進もし、同時にまた国会の正常化にたいへん寄与したと思います。私は、池田総理努力、この御決意は実ってきた、たいへんけっこうなことだったと思います。しかし、私、今度政権を担当するようになりまして考えてみますると、忍耐はやはり寛容のうちに入るんじゃないだろうか、もう一つ新しいものとして調和という考え方を取り入れたらどうだろうか。御承知のように、民主主義、そのもとにおきましてはどうしても個々の対立がございます。しかし、個々の対立、さらにまた個人と全体との対立、そういう事柄国民の進行をはばんでおる、こういう現状に思いをいたしました際、それぞれがところを得ていくならば、調和の実をあげて、そしてもっと円滑にスムーズにいくのではないか、そういうことを考えまして、とにかく不調和をなくしていく、調和という積極的なものよりも不調和をなくしていく、こういうことにひとつ努力してみよう、そうすれば、それぞれの存在がそれぞれのままにおいてやはり意義があり、そして全体としての調和が保たれる、ここに国会運営の妙味も発揮されるだろう、さらに、国際的の場におきましても、お互いがその思想についての批判はみずからが選択するところでありますが、その上でお互い調和をとっていく、そこに国際的な平和もあるんじゃないだろうか、かよう考えまして、調和という理念を取り上げたわけでございます。これは、いままでの寛容、忍耐、さらに話し合いの場、こういう事柄と別に矛盾もしない、さらに、その考え方を積極的に進めるものじゃないだろうか、かよう考えて、私は、調和の理念もぜひ取り入れたい、かよう考えております。
  143. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 ただいま総理のおっしゃいましたように、寛容と忍耐ということばは、私は、やや消極的な、パッシブな味が出ていると思いますが、寛容と忍耐のほかに調和を加えられたことによりまして、そこに一種の積極性を持たせて、前進の姿が出ていいと思いますし、そうまたさせなければならないのじゃないか、かよう考えるのであります。いろいろな対立関係あるいは抗争関係というものを取り除くこと、あるいはそれを越えましてお互いの協力によって一つの新しいものを見出していく、新しい場をつくっていくという努力こそ、佐藤内閣一つの大きな新しい特徴でなければならぬ、かように解釈するものでございます。  そういう意味において、三十日の総評その他の労働組合の代表会談をされるというお話もうけがえるのでありますし、また、先ほど勝間田君とのお話にありました党首会談というようなものも、事柄によってお話し合いになるということも、この調和精神に即するのではないか、かようにも考えるのであります。しかし、その際に注意すべきことは、あくまでもお互いによく理解し合うということが根本でありまして、いわゆる安易なる妥協というものに終わったのでは、この調和という意味が、ほんとう意味調和ということが失われていくんじゃないか、かよう考えます。  なお、念のために私総理に確かめておきたいことがございますが、先ほど勝間田君との質疑応答の中で、国会運営に関連いたしまして、勝間田君が国会単独審議あるいは強行採決は絶対にやらないのかという質問をいたしたのにつきまして、総理は、そういう単独審議あるいは強行採決はとらないということをおっしゃいましたが、私は、とらないという意味は、そういうことは好ましくないんだ、こういう意味だと思いますが、もし勝間田君のほうで、それはおれの言ったとおり絶対やらないのだ、こういうふうにとれば、かなり大きな問題になると思うのです。ですから、国会はやはり相互的なものでございますから、相手がやはり審議をあくまで拒否するというよう態度に終始するということになりますと、やはりこういう好ましくないことも起こってくるということになるのでございますから、この点については、ただいま申しましたように、絶対やらないという意味じゃなしに、自分としてはなるべくそういうことを避けていきたいのだ、好ましくないものだと思うのだ、こういうことに私は解釈していきたいと思いますが、総理の御所見を伺いたいと思います。
  144. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど来調和の基礎的な考え方は述べました。そういう意味から、いままで対立的な立場にあるという、そういう見方がされている、そういうことで話し合いの余地がない、もしこういうことならば、これはたいへんなことだと思う。ひとしくみんな国のことを考え国民の利益を考えているのだ、少なくともその点では共通の立場があるのであります。それぞれの野党にも野党の立場があるだろうと思いますが、そういう大局的な立場に立つならば必ず話し合いができるのだろう、こういうことで、具体的な問題は考えておりませんが、党首会談ども、話し合う、そういう気持ちがあるのだということを申しております。また、今回、労働組合の代表である総評、同時にまた今後は同盟系の組合員の方にもお目にかかるつもりでおりますが、やはり労働者の立場の組合の方々も十分私ども政治の一翼をになってもらう、こういう意味でしばしば会合を持っていきたい、かよう考えております。  私が冒頭に申しますように、どこまでも民主主義を育てるのだ、議会政治をりっぱなものにするのだ、こういう考え方を持っておりますので、単独採決あるいは独行採決、こういう事柄は本来いいことばではございません。そこで、私は午前中の勝間田君のお尋ねに対しましても、私のとらないところであります、こういう表現をいたしました。これは、私が好ましくないことだ、かようなことを申すのであります。もちろん、論議は尽くさなければいけない。したがって、今日までも、少数党を十分考えて、議案などはすべて修正もしているじゃないか。修正の数は非常に多いじゃないか。野党との話し合いの場は十分あったのだ。しかし、問題によりまして、どうしても野党の諸君が審議拒否だとか、こういうこともしばしばやられたようでありましたが、そういう事態は本来の民主政治をそこなうものでありますから、民主政治を進めるという観点に立っての野党諸君の、また社会党諸君の御協力も得たいものだ、かように思います。われわれの目標は議会政治の運用にあるのだ、その妙味を発揮するにあるのだ、これをどうか忘れないでやっていただきたい。いわゆる強行採決だとか、あるいは単独採決だとか、こういうことばで表現をいたしますと、まことにまずい結果になります。そういうことをやるのについては、あるいは審議拒否、こういう事態があるからやったのだと、いろいろ対立抗争方向にまいります。私は、その対立抗争のない世の中が望ましいのだ。それにはやはり何といってもルールは守らなければいけない。最後のルールは一体何なのか。ときに決をとる。それには、野党の諸君も考え方を変えまして、いわゆる単独採決あるいは強行採決、こういう事態が起こらないように、審議拒否をしないように、とにかくお互いに協力していく、こういうことであってほしいと思います。ただいま申し上げることは、勝間田議員の質問に答えた、私のとらないところだ、こういうことばでございましたが、まことに簡単でございましたので、ただいまふえんして御説明申し上げた次第でございます。
  145. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 ただいまの総理の御説明によって明快となりましたが、その精神でいっていただきたいと思います。  次に、総理はまた国民とともに進むということを言っておられますが、この国民とともに進むという政治態度というものは、まことに必然であり、また民主主義の原則にかなうものでございますが、問題は、先ほどおっしゃいましたが、この民主主義を現実的にしていくのだ、観念的な民主主義から現実的ななまなましい民主主義にしていくのだ、こういうようなことを先ほども答弁でおっしゃっておりましたが、当然そうあるべきものでありまして、国民がいつでも佐藤さんと一緒におるのだ、自分の苦しみを佐藤さんは知ってくれるのだ、こういうような気持ちを国民が起こすことが、私は政治を導く根本じゃないかと思うのです。  そこで、この間も、二十六日の日に、新聞を拝見いたしますと、ラッシュアワーに総理が新宿駅か何かに行かれまして、あの通勤列車の非常に混雑な、悩んでいる姿をまのあたりに見て、通勤対策に対するいろいろなことをお考えになっておるように見受けたのでございますが、あれも一つ総理の新しい態度として私は大いに高く買っておるのでございますが、その他、私は、国民と膚接する、こういう意味において、いろいろなアイデアがあるだろうと思う。したがって、これから次々といろいろなことが行なわれると思いますが、私は、その中に、国民のいわゆる普通の人と大臣が接触される、——委員会とかなんとかをつくっていわゆる世の中の上のほうのおえら方を集めてものを聞くということは、いままでしばしば行なわれておりましたが、それからさらに進んで、普通の人、おれなんかとても総理大臣なんかに話はできぬだろう、問題にしてくれぬだろうと思っている、そういう人といわゆる膚接される、じかに会われる、いろいろな方法で触れていかれるということがきわめて必要だと、こういうふうに考えられる。私の聞くところでは、総理は、国民懇談会といったようなもので、普通の人、町の人とじかに会うよう機会をおつくりになるとかいうことを承っておりますが、そんなことを考えておられるかどうか、また、その他の直接国民に触れるいろいろなお考えをお漏らしを願いたいと思います。
  146. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私ども政治を遂行していく、そういう場合に、あらゆる問題が起こってまいります。しかし、政治の目標は何か。これはやはり人間であります。人であります。何だか経済成長は経済だけやっておればいいよう考える、そのために、ただいま言われておるような人間不在の経済発展だ、こういうことも言われますが、私ども政治は、どこまでも国民とともにやる、国民の実態に触れるということが最も大事なことだと思います。そういう意味で、私どもの接触する範囲がいかにも狭い。これはあらゆる機会に接触する範囲を拡大して、そうしてあらゆる階層の方々とお話をしていく、そうして要望にこたえていく、こういうことが政治家としては当然のつとめだと思います。なかなか時間的にも制約がありますし、また、最近の状態から申しまして、総理自身が動きますとたいへん混乱も生ずるようでありますので、これも気をつけなければなりませんが、私は絶えずできるだけ一般の方々と肩を並べ、お互いに語り合い、そうして実態に触れる、こういうことをすれば、今日の政治のあり方もやや変わってくるのじゃないだろうか。ただいま、大きく見まして、何だか政治家というものは特権階級のように思われる、庶民の生活とだんだん遊離している、こういうことも指摘されるのでありますが、これもやはり一助にもなりまして、ほんとに直結した政治ができるなら、私の願うところであります。そういう意味努力は今後とも続けてまいりたい、かよう考えております。
  147. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 総理もたいへんお忙しいですから、なかなか時間がたいへんだと思いますけれども、幸い日本は非常にテレビも普及をいたしておりまして、ほとんど戸ごとにテレビもあるわけでございますから、テレビの活用等によりまして、身近に総理を感じ、また、総理の人間尊重の政治である愛情の政治が一億の国民の一人一人に感じられるよう努力をしていただきたいと思います。  次に、問題を進めまして、そういう意味合いから申しますと、いわゆる国民とともに進むという政治になりますと、国民が何に一番関心を持っておるか、一体何を求めているかということをよくつかんで、それにぴったりと合うような態勢をとるとか、それに総理が非常な注意を向けられるということが私は必要だと思う。こういう意味で私は一つ申し上げたいのでございますが、最近、生活問題について、ある雑誌社が世論調査をいたしております。その一つ内容を申し上げますと、生活部門でどういうことに一番生きがいを感ずるかという質問を東京大学の卒業生にいたしましたところ、東大の卒業生の四〇%が、しっかりしたりっぱな家庭を建設することにあるという答えをしておる。これが最高なんです。最高のパーセントを示して、りっぱな家庭を築くことが一番生きがいを感ずるということを申しております。それから、日本テレビだと思いますが、日本テレビが世論調査をいたしまして、そうして国民各層に呼びかけたものだと思いますが、毎日の生活において何に生きがいを感じているか、こういうことに対しまして、その一番高いパーセントを占めたのが家庭の関係なんです。家庭の関係のことがそのうちの三二%を占めておるという報告があるわけです。また、全国でいま婦人学級というものが広く設けられまして、総数三万以上にのぼっております。こういう婦人学級で一体どういう問題を一番大きく取り上げて熱心に論議しておるかというと、圧倒的多数を占めるのが家庭の問題なんです。こういうわけで、私は、若き人も、あるいは中年の人も、年寄りも、男でも女でも、いま生活に関連して一番関心を持っておるのは家庭の問題なんです。  そこで、私は、総理としては、その国民の気持ちというものをよく御理解をなさる必要があると思うのですが、佐藤総理のこの間の所信表明演説をずっと読みますと、遺憾ながら家庭ということは一つも出ておりません。五千字に余る長いお話の中に一つも出ておらないのでございますが、私はこの点についてよくよくお考えを願いたいと思う。私の聞いているところでは、アメリカの大統領は、その大切な演説の中に必ず家庭ということをうたっておる。うたわない大統領はないといわれておる。そういうわけで、りっぱな民主政治を行なうためには、家庭というものを十分に考えていかなければならない。家庭の持つ偉大な力、家庭の持つ重要な意義というものを認識して、健全なる家庭を育て、これを守っていくためにあらゆる努力をいたすという、そういう政治の姿がなければならぬ、かよう考えるのでございますが、この点に関する総理の御所見を承りたいと思います。
  148. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 いま町田さんのお話を聞きまして、私たいへんうれしく思います。私は、やはり民主政治を育ててまいりますが、同時に、健全な家庭をつくり上げるということにたいへん関心を持っておる次第でございます。今日の家庭はいわゆる健全か不健全か、そういう立場でものごとを考えてみたい。こういう意味で、家庭が健全でなければ一国も健全でない、それにつながるものだ、この考え方から進めていきたいと思います。保守党において家庭憲章をつくるという動きがあるように伺っておりますが、これなどはそういう意味でたいへんけっこうな問題だと思います。ことに最近物価問題がやかましくなってまいりましたが、この健全な家庭、そういう観点からも、この物価問題と取り組んでいきたいし、あるいは青少年の教育の問題も、健全な家庭をつくるという、そういう立場から考えていくならば、明るいものが考えられるのじゃないか。ただいま御指摘になりましたが、確かに、健全な家庭をつくるということは、それも政治の大きな課題である、かよう考えます。
  149. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 次に、青年の指導の問題に触れたいと思いますが、青年というものを政治の対象として大きく取り上げられたのは、私は、総理のお兄さんである岸総理だと思う。岸総理が青年というものを非常に政治の対象として大きく取り上げられた。そうして、青年を愛し、青年に親しみ、これを激励するという態度をとられました。それからずっと青年というものが政治中心に出てまいりまして、いまでは、私たちが政治を与えるときにすぐ青年というものがぱっと頭に浮かぶようになった。私は、この功績といいますか、これは非常に偉大なものがある、岸さんがおやりになったお仕事の中で最も恒久的なりっぱなお仕事じゃないか、こう思うのでございます。  そこで、最近、御承知のように東京でりっぱな世界一といわれる成績をあげたオリンピック大会が開かれました。われわれも非常な関心を持ってこの成り行きを見守ったのでありますが、その中で、非常に成績のよかったところもあるし、成績の悪かったところもある。特に陸上であるとか水泳におきまして、われわれの期待していたところのそういう種目においては成績が悪かった。その他で非常に成績のいいところもあったのでありますが、それを通観いたしますと、激しい、きびしい訓練を受けて不屈の根性というものをたたき込まれている、そういう部門にはいい成績が出てきている。その欠けているところには成績があがらないというなまなましい現実をわれわれは見せつけられているということは、私は青年指導の面においても何らか考えなければならぬものがあるのではないかというふうに感じております。また、いままではオリンピックというものを大きな旗にして、それを目標にオリンピック、オリンピックと過去四年間行年をひっぱってきた。ところが、オリンピックが終わってしまっていままでは全精力をオリンピック、オリンピックとやってきた全国の何万人の青少年がいるわけです。それがオリンピックの終了によって一つの目標が失われるようになる。とまどいすると言うと極端なことばになりますが、何ほどか空虚感を持つ。この空虚感を持つときに、このときが大切だと思う。そのいままで盛り上がってきた青少年の気持ちというものをぐっと引っぱっていって、そうしてよき国の建設よき社会の建設に向けていかなければならぬ。そのためには、政治家というものはそこに着眼して何らかの手を打たなければならぬと思う。そういう点において一体どういうふうに考えられておるか。青年はエネルギーと冒険心のかたまりだと言ってもいいのです。燃えるような情熱と非常な敢闘精神に満ち満ちておるその青年を、これからどう引っぱっていくのか。これが悪いとすれば、それがすなわち非行少年になって不良少年に転化していく。そのエネルギーと冒険心というものをどう活用していかれるか、引っぱっていかれるか、これについて総理大臣もきっとお考えだろうと思いますが、とにかくその行年の指導、特にオリンピックが終わった後における日本の青年の指導についていかなる抱負を持たれるか、お聞きをいたしたいと思います。
  150. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 政治のあり力、そうして、その政治のあり力から見て青少年問題というものが一つ大事だ、こういうことですが、私は政治のあり方を二つに分けてみたいと思うのです。現実の問題が一つ、それから将来の問題、十年先、二十年先を見た政治の目標というものと、この二つに分けてみます。そうすると、いまお話しになりました青少年の問題は、将来への次代をになう、次の世代をになう、そのときにはどういうようにするのだ、こういうところに青少年に希望がつなげるのであります。したがいまして、青少年に対して基本的にはビジョンがないとか、夢を持たせる、こういう言い方をされますのも、明らかに十年先、二十年光、これを考えての言い分だと思います。もちろん今日の問題も大事でありますから、これも私は政治の課題として等閑に付すわけではございませんが、その意味において青少年問題と真剣に取り組んでいく。これが最近、御指摘にありましたように、オリンピックが今日まで青少年を引っぱってきた、こういうことも言えるでありましょう。しかし、私は、オリンピックでりっぱな競技が遂げられたというだけで、これで青少年を満足さしておるとば思いません。先ほどお尋ねのありました、また御報告にありました健全な家庭をつくるという、そこにも青少年自身一つの夢を持っているだろう。また、りっぱな家庭をつくる、その人となるためにはいかにすべきかということを考えておると思います。私が所信表明におきまして特にオリンピックを引き合いに出し、そして高い徳性と、さらにまたその知能につきまして一言いたしましたのも、こういう点でございます。私は、オリンピックから、あるいは根性のある青年にならなければいかぬとか、そういう意味できびしい訓練をしたものは成績がよかったとか、かようにいわれますが、これは、外からさようなきびしい訓練をするということは、まことに情けないことだと思っておる。しかしながら、少年自身が、一つの夢を待ち希望を持ち、りっぱな日本人として、また世界市民として活動ができる、その素養をつくるんだ、いまのうちに養うんだ、こういう気持ちで立ち上ってほしいと思います。ことに、私最近考えますのは、どうも物質的な方向にのみ関心が高まりつつある、こういう際に精神の面を時に忘れておるんじゃないだろうか、こういうことでございますので、物心両面おのずから一体となって、そうして前進されることを希望してやみません。一部の非行少年等についていろいろの批判がございますが、私は、総体としての、全体としての青年の動き、青年の歩み方、これは期待してよろしい状況ではないか、かように思っておる次第でございまます。
  151. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 次に、問題を外交に移しまして、中国の問題に触れたいと思います。総理大臣は来年の一月にアメリカを訪問されまして、ジョンソン大統領と会談をなさるということを聞いておりますが、そのジョンソンとの会談において、主としてどういうことを取り上げてお話し合いになるか、その点についてひとつ伺っておきたいと思います。
  152. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私のほうでまだこれがきまらないことでございます。いずれさまりましたら、そのときに明らかにしたいと思いますが、もし実現するならば、その際に私の話したいことは、最近の国際情勢、それも一つでございます。また、アジアの問題、ことに中国問題がその中心でもございます。また、先ほど来お話のありました沖繩の問題、あるいはまた、わが国自身がアメリカとの関係においていろいろ貿易上に問題がございますので、そういう各般にわたっての意見の交換をしたい、これが私の訪米の目的でもございまます。
  153. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 私は、そのいろいろとお話しになる中で、やはり一番重点は中国問題の処理にに当てていただきたいと思う。この中国問題の処理というのは日本にとって大切である。同時に、アジアにとっても、また世界の政治にとってもきわめて大きな、最大の問題じゃないかと思う。このときに、先方の意見を聞くこともいいのでございますが、同時に、あるいはそれ以上に、こちらの意見総理の中国問題に関する意見というものを十分に向こうに伝える、こういう態度をとっていただきたいと思います。総理は、自主的外交をやるんだ、自主的というところに非常に力を入れて外交方針を述べられております。私は、この自主的という意味は、総理日本立場というものに立って、かつまた日本のナショナル・インタレストというものに立脚してその外交を進めていかれる態度だ、かよう考えるのであります。そこで、中共との関係におきましても、ヨーロッパの国と中共との関係、アメリカと中共との関係、日本と中共との関係というのは、それぞれ非常に違っていると思う。ヨーロッパでいえば、いま見方によっては、ヨーロッパの国の中共に対する関係はいわゆるコマーシャルなものだ、商的なものだといわれている。アメリカの中共に対する考え方には多分に感情的なものがあると思う。朝鮮戦争でもって第二次世界大戦で失った以上の人が殺されたという、これがアメリカの人にいかに多くの影響を及ぼしているかという、感情が多分に入った態度になってきているのではないかと思う。ところが、日本と中共との関係になりますと、歴史的に申しましても、地理的、政治的、経済的、文化的、どこから見ましても、非常に深い関係があって、他国の比ではございません。こういうように中共に対する立場が違っておりますから、立場が違えば、中共観というもの、中共に対する見方というものが変わってくるのは当然だと思う。この日本立場から起こってくるところの中共観というもの、これをやはり明確にして、そうしてこれを特に強く新大統領にインプレスされるということが、私は自主的外交の一環として必要じゃないかというふうに考えるのでございます。  そこで、お尋ねするのでありますが、従来日本の中共に対する態度というものは、政経分離の原則のもとに、民間の貿易などの接触交流を推進するという、そういう態度をとってまいったのでございますが、佐藤総理におきましては、これをそのまま墨守していかれるのか、あるいはそれより一歩前進をされる考えを持っておられるか、その辺のところについてのお考えを承りたいと思います。
  154. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま前段で抽象的にお話しなりました点、これは私と全然意見が一緒でございます。同意見でございます。私も野田さんのようにうまい表現をすれば、けさほどの勝間田君に対しても、もっと説得ができたかと思いますが、全然同一でございます。そこで、私の考え方は、ただいままでのところ、現時点までにおいては池田内閣がやっておったことと変わらないということで、これから先がいかように変わってくるか、これが問題でございます。しかし、私自身が、中国問題は日本の外交の一番中心問題である、重要な問題であるという意味で真剣に取り組むのだ、こういう意味で、名界、各方面の意見を徴して、そして私の意見をまとめていく、こういうことにしたいと思います。いましばらく時間をかしていただきたいのであります。  しかして、私がアメリカに行き、ジョンソン大統領と会見いたしました際に、わが国の特殊的な地位、それは十分理解がいくように話をしてみたいと思います。したがいまして、アメリカが今日まで中共政府に対して敵視政策だとかあるいは封じ込め政策をとっておりましても、私は、日本の行き方はさような政策には同調しないのだ、このことははっきり申し上げ得る。しこうして、池田内閣当時とってまいりましたような政経分離の方法で、経済的な提携を一そう緊密にしていく、このことは今日言える事柄でありまして、今後それをさらに進めていくかどうかということについて、けさほど来いろいろのお話があったのでございますが、私は、もう少し事態を見きわめたい、こういう考え方でございます。
  155. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 この際申し上げます。先ほど御承認願いました故三田村武夫君の葬儀のため、午後三時再開することといたし、この際暫時休憩をいたします。    午後一時五十三分休憩      ————◇—————    午後三時五分開議
  156. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。  野田卯一君
  157. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 先ほどに引き続きまして、外交問題についてお尋ねしたいと思いますが、先ほど勝間田君と椎名外務大臣との間の質疑応答の中に、来たる国連総会において中共の加盟問題が取り上げられるだろう、そのときに日本がどういう態度で臨むかということにつきまして、椎名外務大臣は、十六回総会で成立した重要事項方式による、そういう態度でいくのだ、こういう答弁があったのであります。それに対しまして勝間田君は、それでは、それは中共を国連に加盟することを阻止、あるいはこれを引き延ばすためにやるのではないか、自分はそういうふうにとらざるを得ないのだ、こうして外務大臣の答えを求められましたところ、外務大臣は、その御解釈のとおりですということを言われた。これは私は非常に問題だろうと思うのです。なぜかと申しますと、日本が重要事項方式に賛成したときには、外務大臣が長い演説をしているわけです。それは、ただそういったような中共が国連に入るのを阻止したり、あるいは引き延ばすためにやっているのじゃなしに、そのこと自体が非常に重要だからということを言っておるわけです。先ほどおっしゃったように、いま中共問題は世界で一番大きな問題だ。そして、しかも中共が加盟することによって、国際連合が創立以来その主要な柱としておりました国民政府の地位がどうなるかという問題がある。また、安保理事会の常任理事国に一体なるのかならぬのか、こういうような問題。あるいはまた、これまで、中共が国連憲章に違反するおそれのある行動を相当やってきておる。いろいろな問題がからんでおるわけです。でありますから、この加盟を認めるかどうかということはきわめて重大な問題である。であるから、これを重要事項として取り扱うことに日本は踏み切っておるわけです。これはただアフリカの一つの国が独立して、それが国連に加盟するというような問題とは全然性格が違う、重要性が違うのです。だから重要事項方式をとっているのです。でありますから、先ほどの答弁だけではどうも国民が誤解するのじゃないかというふうに考えますので、あくまで重要事項であるから、事が重要であるからそういう方式をとっているのだという従来の外務省、日本政府のとった態度総理大臣に御確認を願いたいと思います。
  158. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 椎名大臣が席をはずした際でありますので、たいへん皆さま方に申し上げるのが、いかにも椎名外務大臣と違っておるようで残念ですが、椎名外務大臣の発言いたしましたこはは、申すまでもなく、中国問題はまことに重大な事項であるから、そこで重要事項としてこの問題を取り上げる、こう言ったと私は考えております。その影響がいかようにあろうと、さよう意味のことを考えて意識的にそういう目的のためにやっておるものではない。これは性格から、性質からくる問題の当然の議論だ、かように私理解しております。したがいまして、何かその点に誤解があれば、その誤解は解いておきたい。これは、どこまでも中国の国連加盟問題はまことに重要な問題であるから、そういう意味においての発言である、かように御理解をいただきたいと思います。
  159. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 それでは次に日韓問題に移りましてお尋ねしたいのでございますが、いよいよ新しい金大使が来られまして、日韓会談を再開することについて非常に骨を折られまして、十二月三日からいよいよ第七次会談として開かれることになりました。まことに喜びにたえないところでございます。この会談がぜひとも成功するように、総理におきましては大いにこれを推進をしていただくようにお願い申し上げる次第でございますが、今度の会談につきまして二、三問題があるのは、第一は、新聞紙の伝えるところによりますと、例の李承晩ラインでございますが、あの李承晩ラインを取り払うということにつきまして、韓国の国内に非常に抵抗があった。と申しますのは、李承晩ラインというのは、一つは漁業上の問題でもございますが、もう一つは国防の関係の線でもあった。だから、それを一挙に取り払ってしまうということは、漁業協定ができたからもう李承晩ラインは要らないのだという取り払い方をすると、国防問題からくるところの不安が残るわけです。これは国民感情を非常に刺激するわけです。でございますから、平和ラインとかなんとか、しかるべき名前で、国防的な意味において何か残したい、こういう国民感情が向こうにあると私は思うのです。その点が今度の会談でも問題になってくるのではなかろうか、さよう考える次第であります。それがどういう形で向こうからプレゼントされてくるか、これはまだわかりません。しかし、先方の国民感情としては、何もなくしてしまう、国防的な意味を持っているものをなくしてしまうということに非常な不安感を持っているというその気持ちだけはやはり十分にのみ込んでこの問題に応対することが必要じゃなかろうかと、かようにも考えられます。また、この漁業問題について、先方の漁民は、李承晩ラインの存在というものを動かすべからざるところの事実として受け取っているわけです。日本側の漁民として見ますと、自分たちは向こうの領海のところまで行けるのだという、こういうベースに立ってものを考えておる。でありますから、考えの土台がすっかり変わっておるわけです。でございますから、これを調整するために、何としても双方で相当大きな譲歩をしてもらわなければならぬ。日本の漁民の方も、あるいは韓国の漁民も、両方とも譲歩した考え方をしてもらいませんと、問題は私は解決しないだろう、かよう考えるのであって、特に互譲の精神が望まれますが、その際注意しなければならぬことは、韓国の非常に零細であり、非常に哀れな生活をしている八十万の漁民がいるということと、それからまた、その生活をどうするかということは向こうの政府としては重大問題でございますが、同時にまた日本側の漁民も非常に零細である、非常にかわいそうな人がたくさんいる。この零細漁民は、やはり日韓交渉が妥結されればその影響を受けるわけです。それに対する思いやりもなければいかぬ。そこで、私もこの問題については前から関係しておりますが、日韓交渉あるいは日韓のいろいろな問題に関連して、日本の零細漁民がいろいろな目にあっているわけです。たとえば船を拿捕されるとか、引っぱられていくとか、いろいろなことをされております。そのときに日本政府がこれらの気の毒な零細漁民に対してとった態度、私はこれは必ずしも十分にいっておるとは思わない。保険に入っておる船であったれば保険金をもらえますが、保険に入ってない船でございますと、保険金がないわけです。その場合に、それをどうしてやるかという問題についての取り扱いぶりというものは、まことに、一口に言いますと、冷たかったと思うのです。私たちもその中に入りまして、党としても非常に活躍したことがあるわけなんです。こういうわけで、私はこの零細漁民に対する心からなる同情、先ほど総理がおっしゃいました愛の精神、あるいは人間尊重の政治というような点から十分よく考えてやっていただきたい。今度の会談ですぱっと問題がきまりますと短時間でございますけれども、事が長引けばやはりかわいそうな漁民がたくさん出てくるわけです。これについてはどうぞひとつ心からあたたかい気持ちで、今までのからを破って佐藤さんらしく——佐藤さんも山口県でよく御存じなんだから、佐藤さんらしいひとつあたたか味のあるところの取り扱いをぜひやっていただきたいというふうに私は希望したいと思います。  それから、なお最近抑留船舶の船員の釈放がなされまして、これはけっこうなことでありますが、会談の継続中に先方が日本の漁船を拿捕するということのために、国民感情がわっとわき上がるのです。この反発する国民感情のために、会談の進行が阻害されるようなことがあり得ると私は思う。でございますから、交渉に当たっては、交渉期間中、向こうとしては日本船の拿捕などということは極力手控えてもらうということを要請するとともに、やはり日本側でも問題があると思いますから、日本側の漁民があまり向こうに奥深く入っていって、韓国側を非常に刺激するというような行動をしないように、政府の側といたしましても適当な御指導をしていただきたいというふうに感ずるのでございますが、これらに関するひとつ総理大臣の御意見を承りたいと思います。
  160. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 第一の李ライン、これはたいへん両国の間に因縁のある問題でございます。最近の日韓交渉では、これらについてもだんだん両国が理解に到達しつつあるやにうかがいます。しかし、ただいまお話しのように、これから友好関係を続けていこうとする両国の間に、いわゆる国防ラインというようなラインがあっていいのか悪いのか、また平和ラインというものがあっていいのかどうか、私は両国親善の関係に、お互いに信頼し合うという関係から見れば、漁業問題は漁業問題として考える。少なくともただいま言うような、国防ラインというような線はないことが望ましいし、またそういう線がある限りにおいては、なかなか交渉は円滑にいかないものだ、かよう考えます。  第二の問題といたしまして、双方の零細漁民に対してのいろいろの救済措置などが問題になっております。今回日韓交渉が妥結するなら、こういう点に考慮も払われて、しかる後に両国の理解に到達する、こういうことでありたいと思います。また、わが国政府がわが国の零細漁民に対する態度につきましては、後ほど事務当局から詳しく説明させたいと思います。  さらにまた第三の、交渉中にこの種の問題を引き起こさないように、こうおっしゃることはたいへん御理解のあることばでありますし、私どももそういう過去において生じたような拿捕、抑留というような問題がないように、また片一方からも領海侵犯というような事態が起こらないように、両国間で、小さなものごとではございますが、そういうものが繰り返されないように一そう注意すべきことだと、かよう考えます。  なお、いままでの経過につきましては、条約局長その他から説明させたいと思います。
  161. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 国防線の問題につきましては、まだ従来の交渉中において向こうから持ち出したことはないのでございます。いろいろ向こうの新聞等に伝えられてはおりますが、いま総理がお答えになりましたように、こういうものは望ましくない、少なくともこの国防線が先方の北鮮に対するものとか、そういうものならばともかく、日本の漁業活動等に何らかの影響を及ぼすようなものであれば、これは認められないことは当然だという立場で従来交渉してまいっているわけでございます。  それから会談中拿捕が行なわれないという問題につきましては、今年度赤城・元会談が行なわれておりましたときは、向こうは拿捕を全然行ないませんでしたし、やはりその点、向こうはしんしゃくを加えておったように察せられるのでございまして、この間の外務大臣と金東祚の会談再開に関します会談の中でも、特に椎名大臣より、いつでも拿捕されては困るのでありますが、ことに会談中は拿捕あるいは安全操業妨害等のないようにということを繰り返し説得せられた経緯がございまございます。  それから零細漁民の保護の問題、特に外務省が関係しておりますのは先方の零細漁民に対する考慮の問題でございますが、これにつきましては、当初は十二海里の専管地域の外側では全然平等な立場に立って、単に漁業資源の保護の立場からのみこの共同規制をするという態度でわがほうは進んでおったのでございますけれども、先方の零細漁民に対する考慮もございまして、わがほうの出漁態様につきまして自主規制を加えてもいいという、原則的の考え方としてはそこまで思いやりを示しております。その自主規制の具体的な態様、程度等につきましては、今後の交渉にまかせられることになっておるわけでございます。それからもう一つ先方の零細漁民に対する考慮といたしましては、いわゆる漁業借款を通常の民間借款の形で相当額の漁業借款を与えるということも、この赤城・元会談の途中で明らかにいたしまして、目下その金額、それからその借款の態様等について今後の交渉にまかせられる。今後の交渉ではこれが問題になることになっております。  なお、わが国の零細漁民に対する保護等については、農林当局からお話があると存じます。
  162. 松岡亮

    ○松岡政府委員 ただいま外務省のほうから先方の零細漁民に対する対策、お話がございましたが、日本側の零細漁民に対しましては、まず拿捕されました際には、即時釈放につきまして外務省を通じまして厳重に申し入れております。その結果ただいままでに、本年に入りまして拿捕になりましたものにつきましては大部分釈放されるか、あるいは釈放の見込みが立ちつつあるのでございます。それとともに、救済措置といたしましては、まず乗り組み員の給与保険を特に設けております。これは昭和二十七年から実施いたしておりまして、現在までに加入類計約三万二百件でございます。支払い額は五億一千万円となっています。  それから抑留乗り組み員に対しましては、救済対策としまして留守家族に対する見舞い金及び向こうに抑留されておる間の差し入れ等のための購入品に対して補助をいたしておるのでございます。
  163. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 次に、海外経済協力について総理の御所信を承りたいのですが、総理は所信表明のうちにおいて、わが国としては、アジアの諸国の政治的な安定や経済繁栄に寄与する責任がある。その責任を果たすために、今後これらの国々に対する経済技術協力を重点的に推進していく考えである。また、南北問題の解決なくしては世界経済の真の繁栄、ひいては世界平和の実現は期し得ない。わが国は経済協力を初めとする諸対策を推進して、開発途上にある国々の経済力の強化に資し、国際的貧富の差の縮小に寄与したい、こう言っておられます。アジアの安定のために、あるいは世界の真の繁栄と平和を実現するために経済技術協力を大いにやろうという盛んな意欲を示しておられますことに心から力強く感ずる次第でございます。しかし、わが国がいままでやってまいりました経済協力の姿、またあり方といいますと、かなり問題点が多いと思います。その二、三を申し上げますと、第一に経済協力というものが数多くの省に関係しておる。十省とか八省に関係しておると思いますが、たくさんの省に関係しておる。どこの省でも関係があるから発言をいたしますけれども、しからば経済協力を自分の仕事として、自分の省のほんとうのプロパーの仕事として熱を入れて取り組んで、あくまでがんばってやるというような省がほとんどないというような感じがいたすのです。そこで、いままで施策と申しますと、自由民主党の中に設けられております対外経済協力特別委員会がほとんどその中心になって推進をしてきている姿だと思うのです。たとえば海外経済協力基金の問題にいたしましても、あるいは海外技術協力事業団の問題にいたしましても、大きないろいろな施設などにつきましては、どうも委員会が中心になってこれを推進してきておる。また予算の獲得についても非常に骨を折っておる。こういうような状態でございまして、政府の中の体制というものが、協力のまとまりが欠けているという感じを受けるのであります。  それから第二の問題といたしましては、経済協力に関する根本的な考え方あるいは方針が必ずしも明確でない。対外経済協力、輸出貿易を伸ばすのだ、必要な物資を外国から持ってくる、それを弁ずるためにやるのだ、こういうのが一番商業主義的な、経済主義的な見方なのです。そういう考えにたてこもっている人もいる。半面には、相手の国の経済を発展をさせて、その国の繁栄と民生を安定させる。それを通じて世界の平和とか福祉に貢献しよう、そういう非常に次元の高い考え方でこの問題を取り扱うところもある。こういうわけで、その間にいろいろな考え方がございまして、役所によって人によっていろいろと区々なというような様子があるわけです。これがこの問題の推進にかなり障害になっている点があると思うのです。この点を一つ申し上げておきたい。  第三の問題としては、海外経済協力基金というものを数年前に設けました。ところがこれが運営の実際になりますと、設立の目的を十分に理解していないまま、役所側等のいろいろな取り扱いぶりといいますか、あるいは足を引っぱるとかなんとかということばは適当でないかもしれませんが、足がしばられてしまっている。それで、せっかくのこの基金が十分な働きをしておらない、こういうような事実もございました。また海外経済協力基金と輸出入銀行との関係、この関係の分野の確定などにつきましてもまだいろいろな問題がある。こういうわけでかなりたくさんの問題を包蔵しておるのでございます。  私どもは、この経済協力をこれから推進していきたいためには、そういう点を解決していかなければならないのではないか。特に、御承知のように、世界の厳たる傾向といたしまして、先進国が後進国、開発途上にあるところの国々に対して経済協力をさらに進めようということが大勢でございまして、先般三月に開かれました国際連合の貿易開発会議においては、各国の国民所得の一%を後進国の開発援助、経済援助に充てるということが決議されている。日本もそれに参加しているわけです。日本としては、そういう意味におきましてある程度の義務を負うに至っておりますが、国民所得の一%を協力に充てるということは画期的なことだと思うのです。  私は、こういう機会にわが国の経済協力に関する理念というもの、あるいは理念と体制を確立したい、そして協力活動を旺盛にして、今後わが国に課された責任、特にアジアなどにおいては責任が重いのでございますが、それを完全に果たしていく。それにはどうしたらいいかという問題になるのでございますが、いろいろわれわれがこの問題に関連して経験したところを、結果でございますが、その一つの方法として海外経済協力基本法というようなものをつくったらどうか。そして各省間の、あるいは政府部内の観念を統一したらどうか、そうして海外経済協力に関するおもな手柄、大切なことはそこへ全部書き込んでしまって、国の方針として明定をする。こういうようなことをしていったらどうかというようなことを、海外経済協力に苦労してきた者として痛切に感ずる次第でございます。こういうものをつくりまして、とにかく観念の明確、各省間の歩調をそろえまして、そうして組織的な活動でもってこの重大問題を解決していきたい、推進していきたい、かよう考える次第でございますが、本件に関する総理大臣の御所見を承りたいと思います。
  164. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 経済協力につきまして、ただいま理論的にも正しい構成をされ、同時に今回の機会にさらに前進さすべく理念と機構も整えたい、そういう御意向、私もたいへんけっこうだと思います。大きく申せば、先ほど来お話にありましたように、政治の安定がなければ平和はございませんし、政治の安定をさすためには、その国々の国民の生活を向上させ、経済的な自立をはからなければならないと思います。それはやはりいわゆる先進国のやるべき責務の一つでもある、こういうことで、国民所得の一%に該当する協力基金を出せ、出そうじゃないか、こういうのもそういうところから先進国の責務を明らかにする、そういう意味できめられつつあるものだと思います。私はただいまの御提案、たとえば海外経済協力基本法をつくったらどうか、こういうようなことを御提案になりましたが、これなどもただいま申し上げるような、経済協力の真の目的に沿う、そういう意味で確かに研究に値するだろうと思います。そういう意味から私は、わが党が過去におきましても中心になって行政方面をリードしておられた。それを高く評価しますと同時に、さらにまた今回提案された事柄につきましても心から敬意を表し、政府側におきましても十分検討してまいりたい、かよう考えております。
  165. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 次に、経済問題に入りまして、最初に中期経済計画に関してでございますが、御承知のように、最近経済審議会から政府に中期経済計画というものが答申されております。これについてわれわれも検討を加えておるのでございますが、この中期経済計画は、所得倍増計画の残された期間の中期の経済計画で、最近の事態に合わせて、最近の事態を基礎として一部の倍増計画をつくり直したもの、こう言っていいと思います。この計画をつくる土台といたしまして、昭和四十三年度において国際収支の中の経常収支をとんとんにする、均衡させるということと、もう一つは、消費者物価の上がりぐあいを年平均二・五%にするということが前提とされておりますが、これをずっと検討してまいりますと、きょうは二、三申し上げるのですが、相当いろんな点が問題としてあがってくるのであります。その一つを申し上げますと、消費者物価の上昇率でございますが、これは二・五%としてあります。ところが、これは三十九年度から始まる。三十九年度は——あとで高橋さんからでもお話し願えるといいんだと思いますが、三十九年度では上昇率がおそらく四・五%前後になるんじゃないかと思います。それから四十年度、来年度ですが、来年度も大体その程度に、四・五%前後上がるんじゃないかと思います。両方合わせると九%になってしまう。そうしますと、差し引きますと、あとには四・何%、三・何%というわずかな数字しか残らないわけであります。それを三年間ということで、一年一・何%という数字になるわけであります。ところが、最近の日本の経済の実勢、過去の実績などを見ますと、年間に一・何%の消費者物価の上昇でとどめられるかどうかというと、まあちょっとわれわれは想像がつかぬ。よほど経済状態が変わってこなければ、とうていこれが実行できると思われない。そういうところに計画の脆弱性というか、何だかわれわれとしてたよりにならぬような心配があるという点であります。  それから第二点といたしましては、公共投資額であります。公共投資については、いま日本の公共投資は少ないということが経済のひずみだといわれておりますが、それを検対すると、道路とか河川とか港湾、住宅、そういったような行政投資、それから国鉄とか電電というよう政府の企業に関する投資、そういうものの合計が五年間で十七兆八千億という計算をされておるわけです。国民所得の分配の中で、そういう問題には十七兆八千億だけをつぎ込もうという数字になっておるわけです。これに対しまして、しからば各役所から要求というか提案してきているいろんな計画に基づく数字が幾らくらいになるかというと、それの合計が二十二兆八千億円というふうになるわけです。そうすると、その間に五兆円の開きがある、ギャップができております。では、各省の要求がでたらめであるか、あるいは非常な水増しであるかというと、私はそうは思わない。最近は、御承知のようにいろんな経済計画が進んでまいりまして、かなりじみちに計画を立てておられます。各デパート、デパートで非常に練ってつくられておるでしょうし、また前の倍増計画の一部にもある。そういうわけで、各省が非常に熱心に、またじみちにつくられました案、そういうものの数字の集計である。また、どうしてもこれだけくらい必要だという数字の集計でもある。それと非常な開きを来たしております。これがためにこの数字が発表されたときは、関係各庁から、民間からも騒然としたという事実があるわけであります。私は、もう騒然とするには一つの理由があると思います。そういうような点でございまして、どうもこの十七兆八千億というのが実際問題から見まして非常に問題になる数字だ、こういうふうに考えられます。  それから第三の問題といたしましては社会保障の問題。社会保障などに回されますのは、まあ振りかえ所得でございますが、それは国民所得の中の何%を占めておるかという割合がいま問題になっておるのでございますが、四十三年度にはそれが六・七%と予定されておるわけであります。ところが、政府がこの社会保障制度については非常に熱心でございまして、党もまた熱心でありまして、いろんな計画を立てておる。この前の国会におきましては、三木政調会長が党を代表して池田総理大臣に詳しい数字をあげて答弁を求めておるわけであります。それに対して総理は、やろうじゃないかというふうに言っておられる。そういうような数字もございまして、いろいろな数字から見ますと、これが合わないのです。相当大きな開きがある。ここでまあ社会保障担当の人からいえば、これはもうたいへんに問題になっておるわけです。  私は、時間の関係がございまして二、三の例だけを申し上げたのでございますが、こういうふうに計画そのものが、中期経済計画そのものを取り上げますと非常な大混乱を生ずるのです。関係方面から非常な反撃を食うというか、苦情が出るわけなんです。こういうものを一体どう取り扱われるか。まあこの計画を立てるためにはたくさんの人が動員されて、日本でも有能な人がたくさん動員されておられます。しかも熱心にやっておられる。政府も、総理大臣の名前で諮問をして、その結果が出てきた。出てきたものがいまのような状態である。この取り扱いはきわめてデリケートだと思います。でございますからどうか——中期計画を私はくさしたりなんかするわけではございません。これは熱心にやられたものです。りっぱな点もあると思います。思いますが、実情に沿わぬ点も非常に多いと思います。これをどう取り扱うかということについては、閣議においても十分検討くださいまして、皆さん納得するような線をお出しくださるということが特にわれわれとしては希望にたえないのでございますが、これについての総理大臣の御意見を伺いたいと思います。
  166. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 中期経済計画はただいま答申が出たばかりでございます。御説のようにいろいろ問題が多いのでございますので、これからこれをいかにほぐしていこうかということで政府当局、また与党におきましても御審議をいただいておるような状態でございます。問題は、諮問を出したときと現時点とその間に相当の開きがある。その開きがいかように今後取り入れられるか、こういう点にあるのではないだろうか、かように私は思っております。
  167. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま総理からも御答弁がありましたとおり、中期経済計画は今年の一月に総理大臣から諮問がございまして、約十カ月間二百数十名の人にお働きを願ってつくり上げたところの答申でございます。しこうしてこの計画の要旨は、ただいま野田さんがお話しになりましたとおり、目的をまずきめまして、つまり昭和四十三年度において経常収支においてバランスをとるということが一つの前提条件、もう一つの前提条件は、物価を二・五%の上昇程度に安定せしめること、この三つの前提条件を置いて、そして各経済諸元というものを四十三の方程式でもって、いわば計量経済学の科学的な手法をもってつくり上げたのが今度の答申でございます。しこうしてその中の政策目標といたしましては、ただいま御指摘になりました、たとえば社会資本の民間設備投資に対するところの立ちおくれを是正するという問題、または農林、漁業、中小企業の立ちおくれを取り戻すという問題、また、これは当初の前提条件になっておるわけでございますが、消費者物価の上昇の問題、それからなお社会保障関係の問題、労働の流動性の問題、そういう重点項目をそれぞれ取り上げまして、これを要素に組み込んでそれぞれの経済諸元を調和のある形にまとめたのがこの答申に相なっておるわけでございます。しこうして社会資本の総額は、ただいまお話しのとおり、五カ年間で十七兆八千億円という数字になっておりますが、この中で——この金額は過去五年間の社会資本投資額に対してちょうど倍額になっておるわけでございます。したがって、その金額が要求額よりも相当に低いということはよく承知いたしております。また各省の御要求というものがそんな空疎なものでないということもよく承知いたしておりますが、しかし、過去の実績から見まして相当大きい社会資本の金額を計上しておるということは御了承願えると思う次第でございます。しこうしてこの十七兆八千億は、先ほども申しましたとおり、経常収支においてバランスをとる、または消費者物価を二・五%に抑えるということを前提にして、そういうふうな相互連関表からはじき出してみますと、結局そういう、つまり社会資本としては重点を置きましたけれども、なおかつ十七兆八千億が限度であるという数字が出てきたわけでございます。したがって、もしもこの社会資本の十七兆八千億円を相当増額するということになれば、当初目標にいたしました、たとえば国際収支の経常収支におけるところのバランスがくずれて何億ドルかの赤字になるという結果が出てくる。または消費者物価について二・五%という目標を置きましたけれども、これがくずれてくるという結果を来たすわけでございます。  それからいま一つお話にございました、いわゆる振りかえ所得になります社会保障の問題でございますが、これは野田さんもよく御承知のとおり、過去数年間大体国民所得に対する割合は五%でございました。昭和三十八年度の実績は五・三%に相なっております。これを昭和四十三年度においては七%にいたしておるわけでございます。先ほど五・六とか六・幾つとかいうお話がございましたけれども、これは七%が計画で定められた数字でございます。したがって、年々の成長に見合うところの増額のほかに、国民所得に対する割合を五・三から七に引き上げたということは、この計画における一つの大きな特徴じゃなかろうかと存じます。そういうことで、それぞれこれからなすべきいろいろな重点項目については相当に重点を置いて盛り込まれておる、かように見ておるわけでございます。しかしながら、もちろんそれぞれこれは完ぺきなものであるとは存じませんが、何しろ最近の科学的なまた非常に近代経済学の手法を取り入れたやり方でございますので、非常によい点もあると思いますが、やはりそれにはまた反面相当検討すべき点も残っておるかと存じます。そういう観点から、政府といたしましては、先ほど総理からお答え申し上げましたとおり十分に検討し、また党側の御意見も伺いまして、できるだけ早くこれを政府の計画として決定するようにしたい、かよう考える次第でございまま。
  168. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 次に問題の物価問題に入りたいと思いますが、経済成長政策のひずみとして一番大きく取り上げられておるものは、やはり物価の騰貴の問題だろうと思います。日本の卸売物価がもう世界で一番安定しておるのに、消費者物価というのは、御承知のよう昭和三十六年から以降急に上がってきております。去年あたり少し野菜が下がったとか、本年度に入りましてから少し落ちついてきておりますが、またごく最近は野菜が上がったとかいうことで、このパーセントがいま上がりつつあるのでございますが、私たち物価の、特に消費者物価の問題を取り扱っておりまして感じますことの二、三をただしたいのでございますが、その一つは、消費者物価を検討してみると、野菜というものが非常に問題になっておる。野菜というものの値段が上ったり下がったり、それによって消費者物価というものがずいぶん変わってくるわけです。どうもその点がわれわれにはぴんとこないのでありまして、野菜は、たとえば天気がよければ非常に豊作になる。ことしあたりも、初めタマネギだとかキャベツなんというものは腐るほどできて、畑にほうってある。農家に野積みしてありまして、持っていっても運搬賃も出ないというような状態が続いたのでありますが、最近になりましては、今度は作柄が悪くなったということで野菜が上がってくる。こういうようなことで、経済的な原因よりも天候によって上がったり下がったりする。しかもそれが微小なものであればよいが、それが相当大きな部分を占めるということになりますと、そういうことによって消費者物価が上がってくるわけです。外から見ておると、何か経済的な非常に大きな変化が起こっておるように見えるのですが、中身はそういうことだということで、物価の基本的動向というものを見る点からいうと、そういうものが入ってくることによって非常にディスターブされるということになる。これは経済企画庁長官も御同感であろうと思います。であるから、野菜をどうしようという意味では実はありませんが、こういうふうに季節的に、特に天候によって非常に動くようなものを一緒くたにしてやりますと、まともな経済政策を論議する場合に非常にミスリーディングになる。でございますから、野菜は野菜として対策を別に講じて、しっかりやらなければなりませんが、指数というようなものについて、こういうふうに豊凶によって、全く経済外の原因で乱高下するものと取り組んでいろいろ議論することはいかがなものであろうかということを感じておるのでございますが、これについて、あとで一緒に経済企画庁長官からお話し願いたいと思います。  それから、この物価に対する対策としては、個別な対策と総合的な対策がある。総合的な対策として金融引き締めとか、あるいは成長の程度を押えるというようなことがやられておりますが、しかし問題は、個別の対策について申し上げるのでございますが、この各個別の対策というものをびしびし打っていく、非常に勇猛果敢といいますか、適宜適当にやっていく、そういう機構というか、政府の動作がいま欠けておるのではないか。何となくやっておるということで、ぴちぴちしていない。いわゆる物価対策あるいは物価を抑制すを施策が血が通っていないという感じがするわけです。だれかがやっておるのだ、関係官庁がやっておるのだという感じなんです。たとえば東京では野菜が上がってしまった。ところが山形のいなかでは白菜が腐っておるという場合、そのときにもう果敢にどっと車を向けて、そしてそれを運び出してくれば向こうのほうも助かるし、こちらも助かるという、そういうようなことを前にやったことがありますが、最近はどうもわれわれにはぴんとこない。これは一つの例であります。その他具体的な価格調整がどうも行なわれにくいような状態であります。私は、いま政府がこの物価対策というものに一番大きな問題点として取り組んでおられるならば、ちょうど内閣も新しくなったときですから、この際真剣にまともにこの問題に取り組んで、国内の主婦の連中というものはこの消費者物価対策というものに非常に敏感でございまして、日夜これに頭を悩ましているのでございますから、この問題に正面から取り組んで、政府としてはできるだけやっておるのだ、ここまで政府がやってくれておるのだという感じがひたひたと身に迫るよう態度がとれないのか。いま国民が、政府が非常にやってくれているという感じは持たないだろうと思う。それをやはり国民が、よくやってくれているのだ、佐藤内閣はさすがだ、こういうような感じを受けるようなぴちぴちとした物価施策がとれないものかどうか、こういうことを私は感ずるのであります。  それに対して一つの方法としては、たとえば臨時物価対策本部というようなものでもつくって、そうしてだれか中心の人をつくってびしびしやるというようなことができないだろうか。われわれもそういう経験がありますものですから、ひとつ考えていただけないか。経済企画庁ではいろいろとやっておられますが、経済企画庁というのは、そう言うと高橋さんにお気の毒でありますけれども、調整官庁です。手足を持たない。手足はほかの役所だということでありますから、役所の機構の問題から、隔靴掻痒の感といいますか、なかなか思うようにできないということで悩んでおられると思います。そこで、何とか総理大臣が取り上げて、そうして血の通った物価対策がびしびしできるような何か体制をつくられるということを真剣に考えていただいてよいのではないか、かよう考えます。  それから次に公共料金などの問題ですが、これは一年間ストップというのが社会党だったか、そういうよう提案もあったようですが、なかなかむずかしい。今度は、これからの問題としては、いわゆるケース・バイ・ケースで、一つ一つ調べて、そして適策をとっていこうじゃないか、こういうような方針も示されておるのでございますが、これも一つの行き方だと思うのです。しかし、おやりになるときによほどしっかりやらぬと、ケース・バイ・ケースというものは、押され、流されることにもなりかねませんから、やはり筋金を入れつつケース・バイ・ケースでやっていかれる必要があると思います。  それから、今度どうしても米が上がりましょう。また医療費の問題があるとか、あるいはその他ガスとか水道とか国鉄というものが続々くるということを言われておるわけです。国民はそれに対して心配しているわけです。高橋さんのほうでは、いや国鉄は上げさせないのだというようなことを言っておりますが、公共料金に対して一体どういう考えを持っておられるか。また、それを認める場合においても、国民所得には、消費者物価には、あるいは生計費には一体どれくらい影響を与える程度なのか、そういうことをひとつ明確にしていただきたい。そしてある程度国民に安心を与えておきたい。そして上がるぞ、上がるぞというような気分ができて、いわゆる値上がりムードですが、そしていたずらに便乗値上げが出ないような空気をつくることにお骨折りをいただきたいというふうに感ずるのであります。  もう一つ申し上げたいのは、消費者の教育の問題だと思います。最近金融引き締めをやっておる。なぜか、それは国際収支が悪くなったから金融引き締めをやっておるということは、大体国民はわかってきておるだろうと思います。そういう状態でありながら、国民が必ずしも必要でもない輸入品をどんどん買う。これあたりは観念が離れてしまっている。これがイギリス人だったら、こうじゃないと思います。ところが、どうも離れておる。でありますから、消費者に対して、こういう国際収支が非常に問題になっておるときには、不必要な輸入品に手を出さないような風潮をつくり上げるというようなことが私は必要だと思います。  それから、最近私がいろいろな人に会って聞かされることは、一般にふところが豊かになったとか、所得が増したためかもしれませんが、従来、特に関西におきましては、品物を買うときに、品物の質を吟味して、そうして値段を見て、値打ちのあるものを買うという風習であったと言われます。ところが最近になりますと、その風がすたれまして、何でも高いものを買うという風習になっておる。これは、皆さん方がデパートにお行きになって聞かれると、すぐわかってしまいますが、何でも高いものを買う。私はこの間ある女性に会いまして、どうして高いものを買うのだ、お前さんはどういう買い方をするのかと言ったら、高いものを買う。なぜ高いものを買うかというと、高ければいいだろうと思って買うという。いいということが、要するに値段が高いものはいいのだという標準でもって高いものを買うということを言っておりましたが、これは、お聞きになればわかることで、一般に値段の高いものを買う。それがために、正札なんかでもなるべく高くつければ売れるというような傾向を生じているということをその筋の専門家から聞かされるのでありますが、こういうことで、消費者が便乗値上げを誘うということになってしまう。また買い方につきましても、高くなったものをなるべくやめて、品物の種類を変えて買うとか、いろいろ消費者として当然なすべきことが最近は非常に少ない。だから、消費者教育については、それがために高橋さんのほうもいろいろ努力しておられるようでありますが、私はどうしてもやはり国民の協力を得る——国民は全部消費者でもあるのですから、消費者の面において国民が協力してくれなければ、物価対策はうまくいかぬと思う。こういうわけで、国民的解決を要する物価といたしましては、消費者教育に特に力を入れる必要があると思いますが、高橋さんのほうでどういうようにしておられるか。  それから最後の問題といたしましては、物価問題をだんだん突き詰めていきますと、どうしても賃金の問題に触れざるを得ません。生産性の向上を上回るところの質金、あるいは生産性の向上の困難なる産業部門の賃金引き上げというものが、物価に響いてくることは御承知のとおりでございますが、国民の所得はふやさなければならない、しかし物価は高騰を避けなければならない、この非常にむずかしい合い間にあるわけです。この難問題の解決を迫られて、最近、御承知のように所得政策というものがここに出てきております。高橋さんもよく御研究でございますが、この所得政策というものをこれからどういうように展開していくかというようなことにつきましても、あわせて御意見を承りたいと存じます。
  169. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 最初の御質問は、生鮮食料品のような季節性のあるものは、消費者物価からはずしたらどうか、別途に切り離して考えたらどうかというお考えようでございますが、もともと消費者物価というものは、国民の生計費に各都市においてどの程度に響くかということを示すところの指標でございますので、これをはずしてしまっては消費者物価指数そのもの意味が非常に不明瞭になるおそれがございます。そういうことで、これをはずすこと自体は必ずしも妥当でないと存じますが、しかし、全体の物価の動向をはかります場合に、そういう季節的な騰落という要素を一応除外して考えて、全体としての消費者物価その他の基調がどうなっているかということを見る場合において、そういうものを別途に分析して考えるということは、今後の物価対策に対して相当いい構想じゃなかろうか、かよう考えておる次第でございます。  また、物価に対してどうも経済企画庁は手足を持たぬ、個別対策ができぬじゃないかというお話でございます。物価の問題は、今日、単に政府の問題だけではなしに、国をあげての非常な大問題になっております。したがって、経済企画庁がその調整の総元締めをやっておるわけでございますが、各省にそれぞれお願いをいたしまして、各省は非常に敏速にこれに対応して働いていただいておりますので、その点は特に別の機構をつくるというほどの必要はなかろう、むしろその気がまえそのものが問題じゃなかろうかと考える次第でございます。先般も食パンの問題等につきまして、さっそく農林省がこれに対して対策を講じていただき、また、先ほどお示しのありました各農産物についての作況、また需給の関係、これはその後だんだんと農林省においても予算を増していただきまして、そうしてそういうふうな情報がきわめて敏速にそれぞれ連絡できるという状況に相なって、その点もだんだんと改善を見ておる、かように見ておる次第でございます。  それから公共料金についてよほどしっかりした腹がまえで臨まないとだめだぞという御激励をいただきましたが、これはまことにそのとおりかと任じます。ケース・バイ・ケースに従って、経済閣僚懇談会に一々付議してこれを決定していくということを、政府といたしましては決定いたしておるような次第でございます。  また、個人消費の健全化という点についての御質疑がございました。総理の所信表明演説にも、このことを大きく取り上げておられる次第でございますが、野田さんも御承知のとおり、過去三年度間、個人消費の伸びは一五%を年々こえておるのでございます。どうしても国民総需要がこれだけ大きく伸びますと、これが物価を引き上げるところの大きな要素になることは、これは否定すべからざる事実かと存じます。そういう点から、もちろんこの国民生活の内容がだんだんよくなっていくということは政治一つの目的でありますから、それ自体はいいことでございますが、しかし、われわれの個人消費生活の中を見てみますと、相当むだが多い。また、先ほども御指摘がございましたが、必ずしも外国品による必要はないというような面もございます。そういうような点から、個人生活の健全化ということについては、これはぜひあらゆる努力をして国民の協力を求めたい、かよう考えておる次第でございます。  なお最後に、所得政策についてのお尋ねがございました。これは野田さんもよく御承知のとおり、ヨーロッパの諸国では、これが相当大きな問題になっております。英国の労働党政府も、この問題を取り上げて労使双方に目下働きかけておられるということが、新聞紙上に載っておるわけでございます。ところで、この所得政策を必要とするゆえんは、結局労働の需給がだんだん逼迫してまいりますと、労賃の水準化が行なわれる。言いかえますと、日本においてもここ数年間、大企業におけるところの賃金水準と中小企業における賃金水準というものがどんどん幅を狭めてまいりました。ことに新卒の方々にとっては、もう条件が完全に一致してきたというふうな状況になってきておる。ところが中小企業等におきましては、生産性の向上が十分にその上昇するところの賃金をまかなうだけに至っていないというところから、結局そういうふうな部面におきましては、価格を上げることによって企業を維持することよりほか方法がないということになっておるようでございます。農産物については、御承知のとおり、米の価格は生産費所得補償方式によっておる。この場合において、生産性の向上が相当あれば価格の引き上げは少なくて済ませるはずでございますけれども、結局都市勤労者の賃金の上昇がそのまま米の価格に振りかかってくるというような仕組みになっておる。そういうようなことで、どうしてもこのままの状態でひけば、消費者物価は年々相当上がらざるを得ないという経済の仕組みになっておる、かよう考えられるわけでございます。他面、大企業等におきましてどんどん設備投資が行なわれる場合におきましては、生産性の上昇が相当高度に行なわれる。そういう場合に、その生産性の上昇が高度に行なわれる企業にありましては、それを全部賃金と利潤に分けるということでなしに、消費者にも配分をするという意味において、価格の引き下げをしていただく、、そういうことをしていただけば国の物価体制全体としては安定を得られる、こういうことになるわけでございます。そういうふうな観点から、OECDまたはヨーロッパの諸国等においては、これが今日非常に大きな問題に相なっておるわけでございます。これは、もちろん国民全般の協力を得なければ実行できる問題でございませんし、日本としては、まだ今日これから検討し、PRしていく段階であろう、かよう考えておる次第でございます。
  170. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 次に大蔵大臣にお尋ねしたいのでございますが、問題は企業、特に中小企業等の倒産の問題でございます。最近企業の倒産が非常に激しい。これは御承知のとおりでございます。国民が非常に心配いたしております。中小企業としては、自分の受け取った手形がいつ不渡りになるかもしれない、そういうことで日夜恐々としているというのが近状ではないかと思います。大蔵大臣は、最近のこの激しい倒産が一体どういう原因で出てきたか、政府としてもいろいろお考えになって、この倒産の防除のためにいろいろな手だてを講じておられると思いますが、それらのきめのこまかい点をひとつ御紹介いただきたいと思います。
  171. 田中角榮

    ○田中国務大臣 中小企業の倒産が非常に高い水準にあるということは、御指摘のとおりでございます。もう前の国会から中小企業の倒産問題に対しての御質問もあり——質問のあるなしにかかわらず、政府としてもこれが対策に腐心をいたしておるわけであります。率直に申し上げますと、金融調整、金融引き締めの過程においてしわが中小企業に寄るということは、いままで間々あったわけでありますから、金融調整を行なう場合に中小企業にしわが寄らないようにということで、万般の施策を行なうわけでございます。特に年末等につきましては、政府三機関の資金量を確保したり、また財政資金による買いオペレーションを行ないましたり、日本銀行の買いオペレーションの対象を中小企業向けにだんだん拡大をしましたり、また市中金融機関の協力も求めたり、あらゆる施策を行なっておりますが、史上最高といわれる倒産件数でございます。史上最高というのは、経済の伸び方も史上最高でありますから、そういう意味で経済の伸び方が非常に高い。輸出も二二、三%といういままでかつてない伸び方をしておるわけであります。数字を並べてみますと、確かに中小企業の倒産も非常に多い。こういうことをこまかく私も半年間にわたって内容を調査いたしました。これは、いままでのようにただ統計を見る。というのではなく、金融機関の報告を求めたり、また財務局でこまかくこれを調査をしたり、そしてなぜこのような状態になったのかというところまで前にさかのぼって調査をするということをやってみた結果、率直に私が申すことをお許し願えるとすると、比較的に金融調整ということが直接の原因で倒産をしておるということよりも、何か倒産をする原因というものが積み重なっておるという構造上の問題、遺憾ながらそういう問題が非常にはっきりとしておるわけであります。例を申し上げると、一つの親企業が倒産をして、そのまわりの協力業者が連鎖倒産を行なうとか、そういう問題は確かに北九州とか、また二、三大きな例でもございました。しかし、そうでなく、全般的な倒産の内容をこまかく調べてみますと、過去の倒産と非常に違った様相があることに着目しなければなりません。年間を通じての水揚げ量が一億でしかない。にもかかわらず、倒産をした時点における負債は五億円であるという状態であるのは、常識的にはわからない。よく調べてみますと、融通手形の乱発というよりも、融通手形の積み重なりがこうなったのだ。また、在来の事業は確かにささやかながら黒字をずっと続けてきておる。にもかかわらず倒産をする。それはどういうことか。設備投資もそう大きくやっておらぬ・これを十分調べてみますと、全然新しい事業に投資をしておる。極端な例を申し上げますと鉄鋼屋がホテルを経営したり、また、機械屋が自動車会社を経営しておる。もうかる仕事は全部経営すること、多様化をすることが新しい時代に即応するんだという風潮がたしかあることは、御承知のとおりでございます。これがあまりにも激しい。これは遺憾ながら指摘をせざるを得ない。そういういろいろな問題がたくさんございます。でありますから、金融というものをゆるめる、ゆるめるとはたしてこの倒産がゆるむのか、倒産がなくなるのかということに対しては、あまり自信もありません。ですから、私は通産省にも非常に強くお願いをしておりますのは——今度私は、きょうから通産大臣臨時代理をやることになりましたので、特に短かい間でも、暮れに向かっての非常に重要な時期でありますので、きめこまかくというよりも、積極的な施策を行なうつもりでございますが、いずれにしましても、どうも常識で考えられないような問題が非常にあるということだけはひとつ率直に申し上げて、事情を御理解いただきたいと考えます。しかし、いずれにしましても国民所得、国民総生産が過去四、五年の間に二倍に伸びておる。企業間信用は三倍に伸びておる。ですから、一つの例から言いますと、町のうわさでありますが、流通しておる手形のうちの二割は融通手形だろう。また、質問をする方は、融通手形を出さざるを得ないほど逼迫をしておるんだ、悪循環を続けておるという議論でございますが、こういうものに対して、ただその事実を認めておりながら、これを永久に終息せしむるわけにはいかないわけであります。でありますから、手形法の改正その他を打ち出しておるのですが、なかなか急場に間に間わない。あなたが先ほどから御指摘のようにやはり企業責任という問題もひとつ十分考えて、もとから直してこなければならない。ある考えから言えば、一年間とか二年間とかこの間に水を流して、鎖を解きながら金融の正常も行ない、企業自体の正常化も行なってまいる。そのある時期以後の不正常な金融手段に訴えておるものまでは責任を負いませんよというぐらいなきめのこまかいことを全国民にやはり訴える、きめのこまかい施策を強力に進める以外に、なかなか中小企業の倒産とか中小企業のこれらの問題を全部救済をしていくいうことは非常にむずかしいということをしみじみと感じておるわけでございます。これは私たちが自分で中小企業の出身者であるだけに、こまかく内情も知り、また相当熱意をもって実情を調べた結果到達した結論であります。しかし、いずれにいたしましても暮れを迎えてのただいまでありますので、全金融機関の御協力を得ながら、少なくとも年末の金融は相当程度思い切って出すものは出して、引き締め過程において暮れさえも越せないで倒産をする、しかも黒字倒産をするというようなことはないように、遺憾なき処置をとりたい、こう考えておるのであります。
  172. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 中小企業の倒産は、大蔵大臣のいまお話があったように、非常な広範、深刻な問題でありまして、大蔵大臣としても最善を尽くしてひとつめんどうを見てやっていただきたいと思います。それからわが国のいまの経済の一つの特色と言っていいのは、膨大な企業間信用の存在だと思うのです。こういう国はないんじゃないかと思うのです。日本が世界一番じゃないかと思うのです。膨大な企業間信用がございまして、一体総額がどれだけになるだろうか。私どもまだ大蔵省から意見を聞いておりませんが、この間本会議質問の中に出た数字、質問者が出された数字には、銀行の貸し出しの総額が十六兆円だ、それに対しまして企業間信用は二十兆だという数字だったかと思うのです、私の記憶では。そういたしますと、銀行が取り扱うところの、これは一種の金融統制に服しておる金が十六兆、それに対して二十兆というと、これはアウト・オブ・コントロールなんです。アウト・オブ・コントロール、コントロール外の金のほうがはるかに大きい。それがのし回っているというのは、いわばわが国の経済においては、企業間信用という一つの大きな怪物がのそりのそりと歩き回っている。それに対してみな手がつかずにおる。私はこういう姿じゃないかと思う。それが今日の日本の経済、破産にも関係いたしますが、経済界の異常な状態を来たしておる一つの大きな原因だと思う。私は企業間信用は、その中にはもちろん融通手形もございましょう。あるいは普通の長期の手形もあるだろうと思う。それが金融の引き締め——普通の人はすぐ金融を引き締めるから——たとえば物を買ったりあるいはサービスを提供した対価、対価を払うために金が要るんだ。その金を大蔵大臣が押えるから、そこで企業間信用というものが出て、いわゆる会社自体が、国民一人一人が自分で通貨をつくるようなことになってきてしまったんだ。こういうわけで、金融統制というものの限界がここに出てきているんではないか。いまのような状態というのは、私は世界でもまれな現象じゃないかと思う。こういうふうな現象について、融通手形につきまして、私、新聞で拝見したところによると、大蔵大臣は銀行に指示して、いろいろなこまかい、苦心惨たんと申しますか、たいへんやっておられるわけなんですが、私は、この企業間信用という怪物を退治るということはたいへんな仕事でありますから、これは大蔵省も日本銀行も各方面が協力一致いたしまして、どうしたら退治ることができるかということを真剣に考えなければいかぬと思うのです。また、私いろいろと日本銀行の人に聞いてみても、あまりしっかりした対策が出ておらない。傍観をしているというと極端なことになりますが、あれあれと見ておられるようです。でありますが、あれあれと見ておってはいけないのです。こういう怪物を田中大蔵大臣先頭に立って、これを退治る体制を一刻も早くつくっていただきたいと思います。この企業間信用について、いろいろ御苦心のほどもございましゃうが、お考えを簡単にひとつお述べ願いたいと思います。
  173. 田中角榮

    ○田中国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、中小企業の問題も、この企業間信用の膨張の一つのあり方として申したわけであります。これは確かに一番大きな問題でありますが、これは私、もう約一年半にわたって金融の正常化をはかるということの具体的な問題として取り組んでまいりました。でありますから、具体的な問題も十分お答えできるということでございますが、しかし、その結論的なところにいきますと、日本の経済の構造、それから一体いままでの金融の状態でいいのかというようなものにみなぶつかってまいります。同時に、最後は物価と、賃金問題と同じように、生産性と賃金の問題にぶつかってくるわけであります。なぜ一体こんなものと関係があるのか。これは関係があります。これは結局輸出の振興、国際競争力、その前提になるものは国内消費の堅調だ、こういうものにささえられて初めて日本の企業がだんだんと大きくなり、強くなり、輸出が伸びるのだ、こういう簡単な理屈でございます。ところが、もう現在は輸出というよりも国内消費、売らんかな、とにかく製品をどこかにさばかなければならないということで、一年間に倍ぐらいずつ割賦販売が長くなるわけであります。しかも非常に零細な割賦販売をやっておるわけです。ですから、よほどの金がなければ、よほどの力がなければ割賦販売というのはできないということでございます。これは自転車操業になるわけでありますから。そのすべのものが割賦販売の状態になっておって、小さいものは二千円一口というようなものまでが月賦でもって、手形というか、先付け小切手というか、契約書が手形か小切手かの見分けもつかないというような状態で、とにかく相当売り込んでおる。証券企業が売り過ぎて、その反動で非常にいま縮小を余儀なくせられておると同じような問題で、とにかく売り過ぎておる。売り過ぎるということは、結局つくり過ぎるからだ。つくり過ぎるということはどうか。賃金を払わなければならないし、設備に対しての銀行から金も借りておりますから、そういう意味でやはりフル運転に近いものをやらなければいかぬ。操短というものはできないのだ。需要と供給のバランスをとりながらモーターを回すということは不可能なんだという状態が企業間信用の無制限な膨張にあらわれておると、遺憾ながら言わざるを得ないのです。ですから、いまあなたは皮肉をこめて、日銀に聞いてみたら、日銀は、たいへんだとは言っておりますし、そういう事情は承知をしておりますが、実際においてなかなか幾らあるのか——確かににこれはわからないのです。企業間信用の状態はわかりますが、この間における融通手形は一体幾らあるのか、だれも融通手形などと言いません。銀行は商手でなければ割り引かぬという原則をとっておりますから、すべてが商手である、こういうたてまえに立って融通手形を出し合っておりますから、これは、やみはなかなかつかめないと同じことで、融通手形の実態をつかめない。不渡りが出て、倒産が出て初めてその失態がつかめる、こういうことであります。でありますから、金融の正常化、オーバーローンとかオーバーボローイングの解消とか、そういうものだけではなく、金融の実態そのもの、正常な金融、金融の正常化というものに対しては、いまの企業間信用の実態を究明してこれを正常化さなければならぬという考え方で、行金機関とも知恵をしぼり合っておると同時に、手形を発行したり、二年でも三年でも回収さえできればいいのだ、それを預金吸収で、銀行は二千円の手形のごときものまで窓口で集金をいたします、わが行にどうぞお預けを、こういうことではどうにもならない状態になりますので、この金融調整の過程ではありますが、これらの実態と取り組んで、この解決の具体的な手段を考究をいたし、これを推進をするという態度でございす。
  174. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 次に、証券対策について、私から申し上げることは少なくいたしまして、大蔵大臣からやっておられることをひとつお述べ願いたいと思います。  昨年来、大蔵大臣が証券対策に取り組んで一生懸命やっておられる。私は心から敬意を表します。歴代の大蔵大臣の中でも、これぐらい証券対策を熱心にやっておられる方はないのじゃないかと思います。そういう意味で敬意を表するわけであります。株式の価格というものはまだ既成概念があるのでありますが、株式の値段を安定させたり、株式市場の崩壊を防ぐということは、どうしても国民経済全体の立場から考えなければならないと思うのです。これは絶対に必要なことだったと思います。私ども自民党といたしましては、終戦以来、一般の国民に直接間接に、とにかく株を持ちなさい、そうして日本の産業と経済をこれからどんどんわれわれは発展させていくのだが、その産業経済の発展するそれに均てんしてもらいたい、普通の利付証券あたりではなかなか均てんできませんので、株を持ってわが国経済、わが国産業の発展の利益に均てんしてもらいたい、そういう態度をとってまいりましたことは、御承知のとおりであります。それがだんだん発展いたしまして、最近では、株式を持っておる人の層というものは非常に広いものになってしまった。数からいいましても戦前の何倍にもなってしまっておりますし、思いがけない人もみな持っておる。ほとんどすべての人が持っておるといってよいと思いますが、そういう状態にまで進みつつある。それだけに株の問題などというのは、昔ならば少数の金持ちのことだと軽く考えられておったが、今日ではそうは考えられません。そういうところに非常に社会的な重要性が起こってきておると考えられます。で、最近は国民経済に非常に大きな影響を及ぼしておるのみならず、株価の低落が海外にも響きまして、日本の信用のある程度の低下を来たしておるということも、御承知だと思うのです。たとえばADR、日本の株を外国に売るというためにつくったADRが、最近日本に逆流しつつあるという現象、これあたり、まさに海外市場の逆転といっていいと思います。そういうようなことでございますから、その点から見て、私は大蔵大臣の御努力を非常に高く評価しておるわけなんです。そこで、御承知の共同証券を一生懸命やっておられる。共同証券が三百億の資本金で、それからそれを繰り回して千何百億かの金ができるでしょう。それでも大体使い果たして足りなくなったというわけで、さらにまた増強しなければならないというわけで、いま日本銀行等と御相談中だと承っております。この共同証券によるところの買いささえということは、一つの大きな問題ではありますが、はたして共同証券だけでいけるかどうか、また共同証券で買いささえるというやり方一本でいいのかどうかということを疑問に思うのです。何といってもああいうことをやっておりますと、自由なるべき証券市場というものが、これが一種の統制市場みたいになってしまう。価格でも統制価格になってしまう。千二百円というものを目標にして統制価格、統制市場になってしまう。これは本来株式市場のあるべき姿じゃないだろうと思う。しかし、こういうことを長く続けておられますと、どうしてもそうなってしまう。でございますから、ああいう方法というものは、次に大きな援軍が来るまでのささえとしておやりになるという場合には非常に有効でございますが、これが長期化すると、いろいろな弊害が生じてくる。これは、大蔵大臣も御承知のとおりだと思うのです。しかし、やむなくやっておられるのだと思う。それから最近は、増資調整ということが行なわれる。増資を抑える。増資を抑えるということは、株式を発行するなということです。ところが、日本の自由主義の経済の体制で、株で金を集めるということは一番正攻法なんです。これは自己資金を集める一番正攻法だと思う。その正攻法を封ずるわけです。これもまた自由主義経済そのものを殺すことであって、大蔵大臣としても非常にせつない思いでやっておられるだろうと思う。こういうわけで、せつない思いをして増資を抑えたり、共同証券を使って株の買いささえをするというようなことをやっておられる姿は、私たち見ておりまして、ほんとうに御努力を多とするのでありますが、それだけでは片づかないのではないかと思う。それで、世の中にはいろいろな説が行なわれております。たとえば会社が金詰まりのために株を売ってしまう、それが株価を低落に導くから、あまり売らせないようにする。どうしても売らなければならぬような窮迫したときには、それは資金的な操作でもって何とか一時のしのぎをつけてやる、あるいは御承知の源泉分離課税をやって、これはもちろん多額のものについてやる必要はありませんが、株式に対する需要を喚起するために源泉分離課税をやるべきだという説も、これも財界一致の意見になってきておる。学者もそれに賛成するような者も出てきておる、こういうような状態でございますが、私は株式、国民経済の中核であるところの証券市場というものの困難、それを救って正しい経済のあり方にするためにいろんな方途が考えられている。二、三、例もあげたのでありますが、それらについての大臣の御所見をひとつ承りたい。
  175. 田中角榮

    ○田中国務大臣 御質問は非常にごもっともでございますので、この機会に率直に私の考えも、政府の証券に関する基本的な考え方を申し述べたいと思います。  先ほど冒頭に申されたとおり、私も就任後二年四、五カ月になりますが、就任の日から資本蓄積をばかの一つ覚えのように言ってまいったわけでございますが、そういう意味で大いに声を大にしてやったということに対して非常におほめをいただきましたが、しかし、にもかかわらず一番株価が下がっておるという、こういう皮肉な現象に当面をいたして、困惑をしつつも、それだけに解決の道を見出さなければいかぬという熱意を持っておるわけであります。あなたがいま御指摘になりましたように、確かに去年の七月のケネディ・ショックを契機にしまして、がたがたという今日の状態になったわけですが、これはケネディ・ショックということだけでなったのか。私は、ずっと考えますと、まあなるべくしてなっった、こういうことも言い得るわけであります。でありますから、やはり抜本的な対策をしなければいかぬという考えに立っておるわけであります。端的に申し上げますと、やはり成長率が高いのでありますから、産業資金というものをどこから一体得るのかということを考えれば簡単であります。これは戦後、十八年、十九年の間を簡単に想起をしますと、第一次は日銀信用によって設備投資を行ない、生産を起こしたわけであります。また第三回目の設備投資もそのとおりなんです。日銀信用によって企業が起こされた、年産が上げられたということは、オーバーローンによって経済がささえられた。しかし、これは無制限にいくものではありません。日銀信用によって、オーバーローンによって企業が回転をすれば、当然インフレが起こる、ついてくるということになるわけでありますから、その意味において、いつの日にか金融の正常化が必要である。オーバーローンの是正を必要とする。その場合には、産業資金はそのほか一体どこから借りるのかといえば、間接資本であるところの金融市場をセーブをしなければならないときには、直接市場である証券か、もしくは公社債市場によって長期安定、良質的な資金を得る以外に道はないわけであります。しかもその市場は国内か国外かと、こう分かれていくわけでございます。ですから、国内における公社債市場の育成強化も行なわれず、ただ成り行きまかせの証券市場だけで産業資金が一部集められてきた。これは、はっきり申し上げて一部です。戦前六一%あった自己資本比率が二三%に落ちた。毎日毎日、幾らかずつ落ちているという事実を考えると——遺憾ながら、それは事実でございます。その反面においてオーバーローンを解消しようというのです。オーバーローンを解消するか、オーバーローンをほんとうに解消して金融の正常化をはかるとなれば、民間にあるところの公社債市場や証券市場を育成強化して、国民の金が直接産業資金に流れてくる道を講ずるか、もしくは生産をとめるか以外に道はありません。どこに一体道があるか、これは道がないわけであります。が、しかし、金融に対しては、明治から百年に近い手厚いいろいろな処置が行なわれてまいりましたが、証券は、先ほど御指摘があったように、国民の一部しか証券を持たないんだという考え方で、証券と金融との間には税制上の優遇においても格段の開きがあるわけであります。でございますから、いま金はないのか、遺憾ながらあると言わざるを得ない。可処分所得をふやすことによってのみ証券市場はよくなるとか、いろんなことを言いますが、現在、御承知のとおり、郵便貯金は当初の五割、六割増しであります。しかも大衆が貯蓄をする相互銀行とか信用金庫とか、それから信用組合とか社内預金とか、こういうところはどんどんと伸びておるのです。しかも信託銀行、それから農協といういわゆる系統金融だけしか伸びておらぬ。ですから、零細大衆といわれて、金のないといわれるところからは、金は少なくとも平均以上ある、こう見ざるを得ないわけであります。事実ふえておるのは、そこだけしかふえておらぬのでありますから、この零細な国民的な金が証券市場に持ってこれないというところに問題があります。ですから、現在遺憾ながら御指摘を受けて糾明を受けても、二三%と落ちておるこの産業資金調達の正規な場である証券市場がよくなりますと、こういうことを言い得ないわけであります。ですから私は、税制上どうするとか、ここで抜本的な施策を講ずる以外に道はない、こういうことを言っておるわけであります。でありますから、今度中期経済計画を進めるならば、四十三年までには国民所得はこれだけになるのですから、その国民所得を生む産業資金は直接と間接をフィフティ・フィフティにするのか、戦前のように六〇%、四〇%にするのか、逆転しても四〇%、六〇%にするのかをきめて、それに合う施策を行なわなければオーバーローンの解消などはできませんし、ますますオーバーローンになるわけでありますし、ますます間接資本重点主義になるわけでありますから、どうしても踏み切らざるを得ない。踏み切ることが、将来の日本の産業資金をつくる唯一無二の道だ、こう私は信じておるわけであります。でありますから、四十年度の予算編成に際しまして、税制改正等につきましてはこれらの問題と正面から取り組む、取り組まざるを得ないのであります。これは明らかにいたしておきたいと思います。  それから、ただ現在二三%に自己資本比率が落ちておって、株は大いに増資をやらなければならないのに、増資を抑制しなければならない。これはいまでさえも——いま実に二三%でどうにもならない、この三倍も四倍も増資をしなければならないという要請でありながら、市場は遺憾ながら株がダブついておるということであります。これは、国民大衆に株を早く持たせるという施策を行なわないで、機関投資家という銀行と銀行が持ち合いをしたり、日銀から銀行が借りて銀行が基礎産業の大資本家になり、基礎産業が大きくなったら銀行が大資本家になる、両方持ち合いであります。これらの株を、配当の場合には換金をしなければいかぬから売り出してくる。暮れになれば売り出してくる。ボーナスになれば売り出してくる。こういう悪循環が続いておるところに市場がどうしてもささえ切れないという要因があるわけであります。そういう意味で、確かに自由市場であるべき市場ではありますが、一時的に共同証券をつくる、これは管理価格になってよくない。よくないことはまさにそのとおりでありますが、しかし、ただ理論だけを高々と掲げておってもいけないので、現実に即応する施策をとらざるを得ない。でありますから、やむを得ず一時増資の調整を行ない、一時市場にダブついておる株を共同証券に肩がわりをせしむる、こういうことでございます。でありますが、こんなことを長く続けておったら、日本の市場にだれも振り向く者はなくなるわけでありますから、できるだけ早い機会に自由な市場にしなければなりません。そういう意味で一時的な方策として、日銀が直接都市銀行を通じて共同証券に金を出しておりますが、今度は新聞で御承知のとおり、日証金を通じまして直接融資をする、株の掛け目を一体どうするかというところまでいま検討を進めておるようでありますので、特に十二月に入りますと、売るなといってもこれはどうも配当しないわけにはまいりません。十一月の三十日は九月決算の配当期でありまして、十二月一日からは配当を払わなければならぬわけであります。ですから、配当は三千億ありますから、九月決算だけでいっても千二、三百億から千五、六百億の配当が必要なわけであります。こういう金をどこでつくるか。銀行が貸せるか。貸せなければ、やむを得ず持ち株を売ろうか、こういうことになるわけであります。でありますから、こういう場合の対策を十分日銀も各金融機関もあげてとらなければならない。でありますから、暮れの中小企業対策とあわせて証券対策、市場対策は二本大きな柱として強力に進めておるわけであります。
  176. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 大衆資本を動員をいたしまして、大衆資本が株式市場に入ってくる体制がやはり根本だと思いますからそれに向かって邁進をしていただきたいと思います。  なお簡単に二、三の点だけお尋ねいたしまして質疑を終わりたいと思います。
  177. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 野田君に申し上げますが、お約束の時間があと一分でございますから、どうぞ簡潔にお願いいたします。
  178. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 それではその含みでもってやりたいと思います。  農地被買収者の問題でございますが、この前の通常国会には、これに対する御承知の交付公債に関する法律案が出されたのでありますが、農地被買収者に対する交付公債の法案は、そのままこの次の通常国会に出されるのか、あるいは若干改善を加えて出されるのかという点が一つであります。  それから海外引揚者の在外財産に関する問題でございますが、海外引揚者の在外財産に関する問題につきまして、御承知のように在外財産問題審議会が設けられております。ところがこれがまだほとんど動いておりません。であるから、これをやはり動かしてもらう必要があるのじゃないか。もう一つはこの委員ですが、二十名、その中にこの問題に精通している国会議員を加えてもらいたいということが世論となりまして、国会審議段階においてそれが要望されまして、それが大体いいというような印象を与える答弁を承っておるにもかかわらず、実行されておりません。でございますから、どうかこの委員の構成が片寄るというのを防ぐという意味と、審議を促進するという意味と、該博なる知識を導入するという意味で、ぜひとも国会議員をこれに参画させていただきたい、このことを希望いたしますが、それらの点について御意見を承りたいと思います。
  179. 田中角榮

    ○田中国務大臣 農地被買収者法案は、御承知の長い歴史を持ってようやく結論を得たものでございますので、この前の国会提案をいたしまして御審議いただいたものをそのままお出しをする、こういう考え方でございます。  それから在外財産の審議会につきましては、御承知のとおり非常に議論のあったところでございますが、予算の当時は、議長はこれにお入りにならないということを理解しておったわけでございます。しかし野田さん等のお話を聞いてみると、また入ったほうがいいような気もいたします。そういう意味でいろいろ検討いたしました結果、政府与党の間でお話をしていただき、国会議員を入れていただくというのであれば異論を差しはさまないという考え方になったことをここで明らかにいたします。しかし国会議員は、国権の最高機関でありますので、行政府の持つ審議会とか調査会にお入りにならなくとも、それよりもより一段高い立場で、オールマイティに近いお力をお持ちでございますので、何かお入りにならないほうがいいのではないかというふうな気もいたしますが、これはひとつ大きな意味でお考えをいただきたいと思います。
  180. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて野田君の質疑は終了いたしました。  次会は来たる十一月三十日午前十時より開会いたします。  三十日の質疑者は、午前は井手以誠君、午後は加藤清二君、中井徳次郎君であります。  井手君の出席要求大臣は内閣総理大臣、法務大臣、大蔵大臣、文部大臣、厚生大臣、農林大臣及び経済企画庁長官、加藤君の出席要求大臣は、内閣総理大臣、法務大臣、外務大臣、大蔵大臣、文部大臣、厚生大臣、農林大臣、通商産業大臣、運輸大臣、郵政大臣、労働大臣、自治大臣、経済企画庁長官、また中井君の出席要求大臣は、内閣総理大臣、法務大臣、大蔵大臣、文部大臣、厚生大臣、自治大臣、及び経済企画庁長官であります。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十五分散会