○野田(卯)
委員 次に問題の物価問題に入りたいと思いますが、経済成長政策のひずみとして一番大きく取り上げられておるものは、やはり物価の騰貴の問題だろうと思います。
日本の卸売物価がもう世界で一番安定しておるのに、消費者物価というのは、御承知の
ように
昭和三十六年から以降急に上がってきております。去年あたり少し野菜が下がったとか、本年度に入りましてから少し落ちついてきておりますが、またごく最近は野菜が上がったとかいうことで、このパーセントがいま上がりつつあるのでございますが、私たち物価の、特に消費者物価の問題を取り扱っておりまして感じますことの二、三をただしたいのでございますが、その
一つは、消費者物価を検討してみると、野菜というものが非常に問題になっておる。野菜というものの値段が上ったり下がったり、それによって消費者物価というものがずいぶん変わってくるわけです。どうもその点がわれわれにはぴんとこないのでありまして、野菜は、たとえば天気がよければ非常に豊作になる。ことしあたりも、初めタマネギだとかキャベツなんというものは腐るほどできて、畑にほうってある。農家に野積みしてありまして、持っていっても運搬賃も出ないという
ような状態が続いたのでありますが、最近になりましては、今度は作柄が悪くなったということで野菜が上がってくる。こういう
ようなことで、経済的な原因よりも天候によって上がったり下がったりする。しかもそれが微小なものであればよいが、それが相当大きな
部分を占めるということになりますと、そういうことによって消費者物価が上がってくるわけです。外から見ておると、何か経済的な非常に大きな
変化が起こっておる
ように見えるのですが、中身はそういうことだということで、物価の基本的動向というものを見る点からいうと、そういうものが入ってくることによって非常にディスターブされるということになる。これは
経済企画庁長官も御同感であろうと思います。であるから、野菜をどうし
ようという
意味では実はありませんが、こういうふうに季節的に、特に天候によって非常に動く
ようなものを一緒くたにしてやりますと、まともな経済政策を
論議する場合に非常にミスリーディングになる。でございますから、野菜は野菜として対策を別に講じて、しっかりやらなければなりませんが、指数という
ようなものについて、こういうふうに豊凶によって、全く経済外の原因で乱高下するものと取り組んでいろいろ議論することはいかがなものであろうかということを感じておるのでございますが、これについて、あとで一緒に
経済企画庁長官から
お話し願いたいと思います。
それから、この物価に対する対策としては、個別な対策と総合的な対策がある。総合的な対策として金融引き締めとか、あるいは成長の程度を押えるという
ようなことがやられておりますが、しかし問題は、個別の対策について申し上げるのでございますが、この各個別の対策というものをびしびし打っていく、非常に勇猛果敢といいますか、適宜適当にやっていく、そういう機構というか、
政府の動作がいま欠けておるのではないか。何となくやっておるということで、ぴちぴちしていない。いわゆる物価対策あるいは物価を抑制すを施策が血が通っていないという感じがするわけです。だれかがやっておるのだ、関係官庁がやっておるのだという感じなんです。たとえば東京では野菜が上がってしまった。ところが山形のいなかでは白菜が腐っておるという場合、そのときにもう果敢にどっと車を向けて、そしてそれを運び出してくれば向こうのほうも助かるし、こちらも助かるという、そういう
ようなことを前にやったことがありますが、最近はどうもわれわれにはぴんとこない。これは
一つの例であります。その他具体的な価格調整がどうも行なわれにくい
ような状態であります。私は、いま
政府がこの物価対策というものに一番大きな問題点として取り組んでおられるならば、ちょうど
内閣も新しくなったときですから、この際真剣にまともにこの問題に取り組んで、国内の主婦の連中というものはこの消費者物価対策というものに非常に敏感でございまして、日夜これに頭を悩ましているのでございますから、この問題に正面から取り組んで、
政府としてはできるだけやっておるのだ、ここまで
政府がやってくれておるのだという感じがひたひたと身に迫る
ような
態度がとれないのか。いま
国民が、
政府が非常にやってくれているという感じは持たないだろうと思う。それをやはり
国民が、よくやってくれているのだ、
佐藤内閣はさすがだ、こういう
ような感じを受ける
ようなぴちぴちとした物価施策がとれないものかどうか、こういうことを私は感ずるのであります。
それに対して
一つの方法としては、たとえば臨時物価対策本部という
ようなものでもつくって、そうしてだれか
中心の人をつくってびしびしやるという
ようなことができないだろうか。われわれもそういう経験がありますものですから、ひとつ
考えていただけないか。
経済企画庁ではいろいろとやっておられますが、
経済企画庁というのは、そう言うと
高橋さんにお気の毒でありますけれ
ども、調整官庁です。手足を持たない。手足はほかの役所だということでありますから、役所の機構の問題から、隔靴掻痒の感といいますか、なかなか思う
ようにできないということで悩んでおられると思います。そこで、何とか
総理大臣が取り上げて、そうして血の通った物価対策がびしびしできる
ような何か体制をつくられるということを真剣に
考えていただいてよいのではないか、か
ように
考えます。
それから次に公共料金などの問題ですが、これは一年間ストップというのが
社会党だったか、そういう
ような
提案もあった
ようですが、なかなかむずかしい。今度は、これからの問題としては、いわゆるケース・バイ・ケースで、
一つ一つ調べて、そして適策をとっていこうじゃないか、こういう
ような方針も示されておるのでございますが、これも
一つの行き方だと思うのです。しかし、おやりになるときによほどしっかりやらぬと、ケース・バイ・ケースというものは、押され、流されることにもなりかねませんから、やはり筋金を入れつつケース・バイ・ケースでやっていかれる必要があると思います。
それから、今度どうしても米が上がりましょう。また医療費の問題があるとか、あるいはその他ガスとか水道とか国鉄というものが続々くるということを言われておるわけです。
国民はそれに対して心配しているわけです。
高橋さんのほうでは、いや国鉄は上げさせないのだという
ようなことを言っておりますが、公共料金に対して一体どういう
考えを持っておられるか。また、それを認める場合においても、
国民所得には、消費者物価には、あるいは生計費には一体どれくらい影響を与える程度なのか、そういうことをひとつ明確にしていただきたい。そしてある程度
国民に安心を与えておきたい。そして上がるぞ、上がるぞという
ような気分ができて、いわゆる値上がりムードですが、そしていたずらに便乗値上げが出ない
ような空気をつくることにお骨折りをいただきたいというふうに感ずるのであります。
もう
一つ申し上げたいのは、消費者の教育の問題だと思います。最近金融引き締めをやっておる。なぜか、それは国際収支が悪くなったから金融引き締めをやっておるということは、大体
国民はわかってきておるだろうと思います。そういう状態でありながら、
国民が必ずしも必要でもない輸入品をどんどん買う。これあたりは観念が離れてしまっている。これがイギリス人だったら、こうじゃないと思います。ところが、どうも離れておる。でありますから、消費者に対して、こういう国際収支が非常に問題になっておるときには、不必要な輸入品に手を出さない
ような風潮をつくり上げるという
ようなことが私は必要だと思います。
それから、最近私がいろいろな人に会って聞かされることは、一般にふところが豊かになったとか、所得が増したためかもしれませんが、従来、特に関西におきましては、品物を買うときに、品物の質を吟味して、そうして値段を見て、値打ちのあるものを買うという風習であったと言われます。ところが最近になりますと、その風がすたれまして、何でも高いものを買うという風習になっておる。これは、
皆さん方がデパートにお行きになって聞かれると、すぐわかってしまいますが、何でも高いものを買う。私はこの間ある女性に会いまして、どうして高いものを買うのだ、お前さんはどういう買い方をするのかと言ったら、高いものを買う。なぜ高いものを買うかというと、高ければいいだろうと思って買うという。いいということが、要するに値段が高いものはいいのだという標準でもって高いものを買うということを言っておりましたが、これは、お聞きになればわかることで、一般に値段の高いものを買う。それがために、正札なんかでもなるべく高くつければ売れるという
ような傾向を生じているということをその筋の専門家から聞かされるのでありますが、こういうことで、消費者が便乗値上げを誘うということになってしまう。また買い方につきましても、高くなったものをなるべくやめて、品物の種類を変えて買うとか、いろいろ消費者として当然なすべきことが最近は非常に少ない。だから、消費者教育については、それがために
高橋さんのほうもいろいろ
努力しておられる
ようでありますが、私はどうしてもやはり
国民の協力を得る——
国民は全部消費者でもあるのですから、消費者の面において
国民が協力してくれなければ、物価対策はうまくいかぬと思う。こういうわけで、
国民的解決を要する物価といたしましては、消費者教育に特に力を入れる必要があると思いますが、
高橋さんのほうでどういう
ようにしておられるか。
それから最後の問題といたしましては、物価問題をだんだん突き詰めていきますと、どうしても賃金の問題に触れざるを得ません。生産性の向上を上回るところの質金、あるいは生産性の向上の困難なる産業部門の賃金引き上げというものが、物価に響いてくることは御承知のとおりでございますが、
国民の所得はふやさなければならない、しかし物価は高騰を避けなければならない、この非常にむずかしい合い間にあるわけです。この難問題の解決を迫られて、最近、御承知の
ように所得政策というものがここに出てきております。
高橋さんもよく御
研究でございますが、この所得政策というものをこれからどういう
ように展開していくかという
ようなことにつきましても、あわせて御
意見を承りたいと存じます。