○松浦定義君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま
趣旨説明のありました
天災による
被害農林漁業者等に対する
資金の
融通に関する
暫定措置法の一部を
改正する
法律案に対しまして、佐藤総理大臣並びに赤城農林大臣、田中大蔵大臣に対し御
質疑を申し上げ、
本法の
特殊性にかんがみまして、被災
農林漁業者が納得のできる御答弁をいただくよう前もって申し上げておきたいと思います。
質問の第一点は、
わが国は特殊的地域の多いということであります。すなわち、
北海道から九州に至るえんえん三千数十キロに及ぶ長蛇のごとき島国であり、気候、風土ともに異なり、特に
災害常襲国、いや
災害王国とさえいわれる異名を裏づけるごとく、年じゅういずれかの地帯に
災害が発生しているのであります。最近の
実態を見ましても、
昭和二十九年の台風十三号による洞爺丸事件のあった悲惨な
災害、静岡県伊豆山ろく一帯の大
災害、伊勢湾台風、九州一帯の常襲
災害、さらに新潟の大
災害、
北海道の
冷害、二十号台風、八月、十月の長雨等々、大
災害の連続であります。これらの
被害に対し、
政府は、いずれの場合も、
現行法の不備を認めながらも、立法をたてに、ないそでは振れぬ式の旧態依然たる押しつけ政策の一貫であったことは、まことに遺憾にたえないところであります。
政府は、去る三十七年制定の
災害対策基
本法に基づき
努力されているとは思うが、今日までの各種の
災害に対し必ずしも適切で一あったとは言えないのであります。特に
北海道における
冷害等の
被害は、他の暴風、豪雨、洪水、高潮、地震並びに大火災等々と異なり、農作物の
被害であるので、一般社会通念の
災害としては表面にあらわれないものであり、その深刻さはきわめて把握しがたいものであります。
政府はこれら農作物
災害に対し特段の考慮をすべきだと考えます。特に
予算措置の点について
災害対策基
本法の改定が必要と思うが、総理大臣並びに大蔵、農林両大臣の御所見を承っておきたいと思います。
ただいま農林大臣の御
説明を聞いておりますと、
本法改正によって
被害農業者の
経営資金は十分に供給することができると言明をされておりますが、農林大臣の十分とはどの程度のものか、現在の
農業者の
経営の
実態を
資金の面より見てどのようにお考えになっておられるか、明らかにしていただきたいと思います。
私は、
本法の
改正が
北海道の
冷害に基因している実情から、総
被害額五百七十三億、
政府の調査によっても五百三億、
北海道においては史上最高の
被害であります。これらに対する調査の
実態を明らかにしていただきたいと思います。
次に、今回の
改正案に示された
貸し付け限度額、
天災融資法内地十五万を二十万に、
北海道二十万を三十五万についてであります。これは明らかに十年前の
経営資金量に照らして不十分であることは言を待たないところであります。特に激甚法については、
内地二十万を二十五万に、
北海道二十五万を四十万については、対象
農業者が収穫皆無であり、生活困窮者であるだけに、
内地二十五万、
北海道四十万では、これまた不足であります。特に
北海道の
農業者の平均耕作面積は、水田においては三・五ヘクタール、畑地帯においては十二ないし十三ヘクタール以上で、一戸平均にして
経営資金は少なくとも五十万以上は必要であります。
政府は、先般、
北海道と青森県に対し四十五億の融資を決定したが、
本法が
改正された場合の
資金総額を明らかにしていただきたいと思います。
さらに、今回の
改正は、
貸し付け限度の
改正のみで、金利等について一切触れていないのはいかなる
理由によるのか、この点を明らかにされたいと存じます。特に
本法の目的が
資金の
融通にあるので、安い
利子の融資が受けられるところに被災
農業者の救済が行なわれるのであります。
政府は、単にこの間の
利子補給と、最悪の場合は一部に対し
損失補てんを行なう程度であり、かかる
内容の不備な
本法は、この際全面
改正を行ない、被災
農林漁業者が安心して再
生産に取り組むことができるよう
措置すべきであると思うが、この点について
政府の見解を明らかにされたいと存じます。
次に、
法人に対する
貸し付け限度額についてであります。
改正案では一
法人二百五十万でありますが、聞くところによれば、一
法人を平均五戸の集団であると限定されているようであります。これは全く実情を無視したものであります。
法人組織については、
農業基本法の制定によって、自立農家育成の大方針に協力しながら、地域における
特殊性を最高度に生かして、
農業の近代化、
生産の合理化に
努力している
法人は、その
施設その他においても戸別
経営以上の投資をしているものであり、その
法人が
災害を受けた場合、少なくとも戸別集団の数、すなわち個々の集団の
実態に応じた額の
貸し付け額を認めるべきであります。一例を
北海道の中札内村の
法人に見るならば、一
法人十五人ないしは二十人の組織であります。それらが
内地並みの平均五戸で計算された二百五十万では、
法人が解散の道を選ぶ結果になると存じます。したがいまして、
法人に対しては戸別の累計を加味した
実態に即した取り扱いを行ない得るよう特例を設けるべきであると思うが、お伺いいたします。
以上を総合してみましても、
政府案は全く実情を無視した
災害立法だといわざるを得ないのであります。去る十二月四日
提出、本日
提案理由の
説明がありました、社会党
提案にかかる
天災による
被害農林漁業者等に対する
資金の
融通に関する
暫定措置法等の一部を
改正する
法律案が、芳賀
議員の
提案理由の
説明にありまするように、
政府案と社会党案と対比してみますと、
政府案では被災
農業者は救われないということになるのであります。社会党案をもっていたしましても、被災者の真の要望にはこたえられるものではありませんが、
政府案に比較するならば、被災
農林漁業者にとっては、史上最大の
冷害に対する
対策としては、社会党案は史上最善の法案であると確信するものであります。(
拍手)
すなわちへ
政府案による
貸し付け限度額は、
内地十五万を二十万に、
北海道二十万を三十五万とするのであるが、社会党案は、
内地十五万を四十万に、
北海道二十万を五十万とする。さらに、
激甚災害に対する場合は、
政府案では、
内地二十万を二十五万に、
北海道二十五万を四十万にする、また
政令で定める場合は五十万であるが、社会党案では、
内地六十万、
北海道七十万、
政令で定める場合は百万とする。特に
法人に対する場合は、
政府案では二百五十万であるが、社会党案では、
内地四百万、
北海道五百万とする、また
政令で定める場合は、
内地六百万、
北海道七百万であります。特に金利の点についても、三分五厘を二分に、五分五厘を三分に、六分五厘を三分五厘に、それぞれ金利の引き下げを行なうとともに、返済期間の五年を十年に、また七年を十三年に改め、さらに、
政府案では据え置き期間が全くなく、初
年度より直ちに返済期に入ることは、
天災法適用の
趣旨にも反するのであります。社会党案は、
被害者の
経済的並びに精神的な実情を配慮しての救済策として、据え置き期間を三年以内とする、このことは当然であると存じます。
以上の社会党案に対して、総理大臣、農林大臣、大蔵大臣より、その立場において
賛成の向きもあろうかと思いますが、もし
賛成できないとされるならば、その
理由を明らかにされたいと思うのであります。(
拍手)
次に、
政府は、
天災法の適用によって
経営資金を充当する、生活
資金については自作農
維持資金によってまかなうべきであるとの
説明がなされてまいりました。先般決定されました
北海道に対する四十億の配分を見ますと、
冷害の激甚地である畑作地帯の十勝地方において十五億の配分を見ても、一戸当たり十万以下で終わっているのであります。
政府は自作農
維持資金融通法の
改正を行ない、
資金額の限度及び
貸し付け条件の改定を行なう等、自立農家育成に万全を期すべきであると思うが、御見解を承っておきたいと思います。
この際、私は
冷害地の実情を申し上げてみたいと存じます。十一月二十五日の同僚湯山
議員の本
会議場における質問にもありましたように、
北海道の
冷害については、三大臣並びに事務当局あげて現地調査に当たられ、
北海道庁、市町村関係者の再三にわたる調査によってその
実態は明らかであります。特に、
国会の立場より、
災害対策特別
委員会、
農林水産委員会の合同調査も行なわれ、現地被災農民は一日千秋の思いで
対策の実現を願っていたのであります。しかるに、今日ようやくにして
提案されましたが、臨時
国会の会期は四十日であり、すでに余すところあと四日でありまして、この四日間において両院の
審議を十分尽くすことは不可能に近いのみならず、一方、
政府は与党の
意見さえまとまれば他党の
意見は聞く必要がないと考えておられるので、このような会期ぎりぎりの
提案をあえてなされたのは
国会無視の暴挙といわざるを得ないのでありまして、まことに遺憾にたえない次第であります。
今日、現地の農民は、零下十五度の寒さの中で一日わずか九百円ないし一千円足らずの救災工事に従事し、それも事業量が少なく、全くその日暮らしの日雇い労務者以下の生活を続けている。また、冬季間を生活の一助にと、
内地方面への出かせぎ者は日々増大しているのであります。一家の働き手の中心である青年層が、静岡のミカンつみをはじめとして、各地に、あるいは集団で、また個々で、働く場所を求め、すでに全道では一万五千人をこえんとしております。特に若い女子が家を離れて都会へ出かせぎに出るその結果、あの労働の激しい
農業に再び帰るかどうかとの心配は、子供を手放す親や兄姉のみでなく、いまや社会問題として十分考えていただきたいところであります。何百人もの女子出かせぎ者の年齢は、いずれも二十歳以下の十八、十九歳がほとんどでありますが、それは何を意味するでありましょうか。私の地元や町からも何十人もの集団が出ておりますが、全部十八、十九歳であります。成人を迎える二十歳の女子は、一生一度の成人式には地元で参列し、社会人としての再出発の思い出を、
冷害による生活苦からとはいいながら、他郷でのさびしい思い出として残したくないという、人間として生きている、いや、生きていこうとする、か弱いおとめ心を、親もこれを見るにしのびず、引きとめているのが実情であります。三月末まで働いて、四月より再び自宅に帰るには、喜んで帰ることのできるあらゆる環境の整備が必要であります。特に
災害対策の重点は、こうしたところに根深くひそんでいることを、
政府や関係当局は十分な御認識をしていただきたいと存じます。
今回の
天災法の一部
改正が、先ほど以来私が申し上げておりますように、
政府案ではこれら出かせぎ者に見られる若い働き手を勇気づけることが可能かどうか。特に、
農業後継者の中心的
役割りを果たす若き女子の
諸君が喜んで農家に嫁にいける
農業に
発展させることは、
政府の最大の
責任であると存じます。人間尊重、青年に夢と希望を与えると主張される佐藤総理大臣の確信のある御答弁を承っておきたいと存じます。
最後に、
改正天災法の実施にあたって、
政府の財政的負担は五カ年間に六億程度であり、初
年度はわずか数千万に足らずと聞き及んでおりますが、
利子補給額を明示願いたいと存じます。
以上で質問を終わりますが、農林大臣、増原長官並びに松浦運輸大臣等々は、それぞれ現地視察の際、地元関係者、特に被災農民に対し、収穫皆無の圃場に立って手を握り、肩をたたいて、要望にこたえますと言われたが、その
ことばはよもやお忘れにならないでありましょう。(
拍手)現地では
責任ある
政府を代表しての
ことばであると受け取っており、今日その結果を見守っておるのであります。
本法改正案の
内容では、現地農民等の
期待にこたえるにはほど遠いものがあります。
政府は十分この点を認識され、理解ある立場に立って、社会党
提案の
内容を尊重され、適切なる
措置を講ずる御意思がおありであるかどうかを最後にお尋ねいたしまして、私の質問を終わります。(
拍手)