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佐々木(良)
委員 下平君の意見に賛成する
意味で、私もちょっと要望しておきたいと思います。
まず、
委員長に対して要望いたしますが、この問題は、先ほど話があったように、この
委員会においても、三十三年の
事件以来いろいろと検討を重ねたところでありますけれども、これは
内閣の中でも、
警察の中でも、それから
国会の中でも、必ずしもまだ本質的な
解釈は一貫したものが成り立っておらぬと思います。したがって、先ほど
内閣法制局長官が言ったように、もし五十条の
解釈を、先ほど来話があったように、
国会の審議権尊重という趣旨に基づいてできておるのだという
解釈のもとにその法制化をしようと思うならば、あるいは現行の
国会法の三十三条、三十四条だけでは必ずしも立法が十分でないこともあり得ると思います。したがって、
解釈論で埋められないならば、当然に今度は法改正という問題もあわせて検討しなければならぬと思います。その
意味で、いま下平君が提案されたように、この問題については、今後引き続き本
委員会において検討を続けられるように要望いたしたいと思います。
それからもう一つ、官房
長官並びに
内閣法制局長官に、同じ
意味で私は要望しておきたいと思いますが、五十条の
解釈は、先ほど来話があったように、大体一致したところにきておると思います。しかしながら、この運営にあたっては、現実にわれわれが経験した三回の
許諾要求
事件、二十七年、二十八年、三十三年に
許諾要求が来ておって、あるいは来る寸前に取り下げがあったりして、似たような
事件が三回続いておる。それから、
現行犯逮捕は今回初めてという
事例が起きたわけであります。この起きたことについて、
内閣の
考え方なり態度というものは必ずしも一貫しておらぬと思います。格別に、
許諾要求につきましては、先ほど来申し上げておりますように、十分なる慎重な態度をとらなければならぬという態度は、
内閣側から一貫して述べられておるところであります。
許諾要求を単に
犯罪捜査上の必要ということだけで、
憲法十四条が命ずるような、あらゆる人に対して行なう捜査上の必要ということだけではなしに、
国会議員の
身分及び職責からかんがみて、慎重な態度をもって
許諾要求をしなければならぬというふうには答弁をされております。しかしながら、現実に、先ほど申し上げましたように、その第一次的な要望をすべき
警察官、本部長及び所轄の
警察署長の近所においては、申し上げましたように、これはむしろ十四条のほうが先行するみたいな
考え方であって、
許諾要求は、少しでも
犯罪捜査の必要があればわれわれは行なうのだ、そうして、それをうんと言うか言わないか、
許諾にイエスを言うか言わないかということは、
国会側の判断に帰せしむべきだ、こういう
解釈が実際には
警察官の線には一貫して流れておるような気が私はするのでありまして、
内閣及び
警察庁、それから
公安委員長の近所の
解釈と事実上運営が異なっておるわけであります。同時にまた、先ほど来話がありましたように、
現行犯逮捕の問題については、先ほど
江口さん自身の口から出たように、このことは必ずしも明瞭ではありません。つまり、
議員として慎重な態度をとるべきかとらざるべきかということについて、ある場合には慎重な態度と言われ、ある場合にはそれは証拠隠滅のおそれ、逃亡のおそれが、
議員であるからないから、こういう
意味で逃亡のおそれだとか、証拠隠滅のおそれの、それの判断材料として
議員の資格を取り上げられておるだけでありまして、
憲法五十条に基づいて、審議権を尊重しなければならないから、
議員の
逮捕については、
現行犯についても弾力的に
考えなければならぬということにはなっておらぬわけであります。そうしますと、実際はその判断を
第一線にまかされるわけですけれども、
第一線にまかされた場合に、そういう判断ができないのは当然でありまして、
お話がありましたように、むしろ乱用的な傾向さえあり得る状態である。格別、私は日本の法制、特に
公務執行妨害罪につきましては、これら明治
憲法以来の伝統みたいな形で、公務員の職務を
執行するにあたって、これに対して暴力脅迫を加えた場合は
公務執行妨害の容疑だということであって、諸
外国の
立法例にあるような、適法に
公務執行が行なわれることが
公務執行妨害罪の前提となっておらないという状態から、なお一そう私は乱用のおそれがあると思います。そして、現に乱用のおそれなしとしない
事例が、
楢崎事件を中心にして起こっておることは事実でありまして、この辺に対する
内閣及び
警察庁、それから現場の
解釈は決して一貫したものではないと思います。したがいまして、現行法上におきましてもこの
解釈を一貫され、そしてその
解釈に基づいて、運用、施行上に矛盾がないようにひとつ十分配慮を願いたいと思います。
公安委員長は知らぬ顔をしておられますけれども、現実に三十三年の場合には、ここに
警察本部長も見え、扱われた警官も見えて、それから
江口さんの前任者の石井さんですかも見えた場合に、はっきりと意見が食い違ったわけでありまして、その意見が直されても何もしておらぬわけであります。その
意味におきまして、乱用のおそれを含めた場合の運用上の問題は厳然として残っておるわけでありますから、これらについて十分に配慮をした法の運用を、
警察権の
執行に対しまして、現行法のもとにおいても、
憲法五十条の趣旨が尊重されるような
意味において、ひとつ特に考慮を払われたいと思います。
それから最後に、私は
公安委員長と
江口長官に対して同様な
意味から申し上げておきたいと思いますけれども、あなた方自身がどう
解釈をされても、
第一線に
解釈を徹底し、運用を徹底しなければ
意味をなさぬことであります。格別
江口長官に申し上げておきたいことは、
現行犯を除外した不
逮捕という問題について、
公務執行妨害罪なり、
現行犯罪が成立するかしないかという問題とは無関係である。先ほど
共産党からも意見がありましたように、
逮捕ということ自身に対して
憲法五十条の特例が出ておるのであるから、
憲法五十条の特例というのは、
公務執行妨害罪に対して
議員も同じようだということではなくして、
議員が
逮捕されるか
逮捕されないか、この
逮捕の問題のところに重点があるのでありますから、この運用は非常に重大だと思います。事実は、おそらく
柳田君が言いましたように、右手でたたいたか、左の手から引っぱったか知りませんが、事実認定する場合にはいずれかに決して、それが
公務執行妨害罪になるかならぬかということで、理論上は紙一重でぴたっとなると思う。しかし、
逮捕するかせぬかの幅は、非常に広い幅を持って存在するわけであります。この非常に広い幅こそは、まさに不
逮捕特権をどう生かすか生かさないかという問題と密接に関連するところでありまして、この辺が、先ほど
内閣法制局長官からも
お話が出たように、
解釈論で埋められるか、埋められないとするならば、あるいは特殊立法も必要ではなかろうかという問題が残っておる。しかしながら、残ってはおるけれども、この
逮捕というところに非常に大きな事実の幅が存在しておることを承知をされて、そうして少なくとも
憲法の趣旨に反しないような運営と、それから特別な
警察官に対する訓練を怠らないようにお願いをいたしたいと思います。
私はえらいくどいようでありますけれども、実際問題として、この新
憲法下になってからこの問題が扱われたのが、
許諾要求三件似たような
事件があったのに対して、しかも、三件とも
選挙違反容疑の問題、それから
逮捕一件は、それが現実に
妨害罪になるかならぬか、
考え方によっては
行き過ぎだと見られるくらいな案件である。にもかかわらず、
憲法にきめられた五十条という
条文に照らしてみたときには、その実際のあり方と非常に幅があり過ぎる気がするわけでありまして、特に
国会議員の
特権問題については、いま世の中はたいへんシビアーであることは私ども承知している。しかしながら、この
議員の
特権問題についていろいろ話がありますけれども、私は、いま
憲法に定められたるものに従って、むしろ
国会の権威というものを最も慎重に
考えなければならぬ時期にきていると思うわけであります。したがいまして、一そうこの問題について慎重に当局側も
考えられ、
委員会側でも扱われるように要望しておきたいと思います。