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1964-06-05 第46回国会 参議院 予算委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月五日(金曜日)    午前十時二十三分開会   —————————————   委員の異動  三月三十一日   辞任      補欠選任    矢山 有作君  阿具根 登君    久保  等君  亀田 得治君    曾祢  益君  高山 恒雄君    村尾 重雄君  基  政七君  四月一日   辞任      補欠選任    谷口 慶吉君  鳥畠徳次郎君  四月三日   辞任      補欠選任    日高 広為君  吉江 勝保君  四月十六日   辞任      補欠選任    村山 道雄君  野村吉三郎君  五月八日   委員野村吉三郎君は逝去された。  五月十三日   辞任      補欠選任    亀田 得治君  佐野 芳雄君  五月十五日   辞任      補欠選任    植垣弥一郎君  竹中 恒夫君  五月二十日   辞任      補欠選任    竹中 恒夫君  植垣弥一郎君  五月二十一日   辞任      補欠選任    佐野 芳雄君  亀田 得治君  五月二十八日   辞任      補欠選任    柴田  栄君  木村篤太郎君    西田 信一君  塩見 俊二君            村山 道雄君  六月四日   辞任      補欠選任    高山 恒雄君  田畑 金光君    基  政七君  村尾 重雄君    奥 むめお君  佐藤 尚武君  六月五日   辞任      補欠選任    安田 敏雄君  北村  暢君   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     太田 正孝君    理事            大谷藤之助君            斎藤  昇君            平島 敏夫君            村山 道雄君            藤田  進君            山本伊三郎君            鈴木 一弘君    委員            井上 清一君            植垣弥一郎君            木村篤太郎君            小林 英三君            小山邦太郎君            木暮武太夫君            後藤 義隆君            河野 謙三君            郡  祐一君            佐野  廣君            櫻井 志郎君            塩見 俊二君            杉原 荒太君            田中 啓一君            館  哲二君            鳥畠徳次郎君            山本  杉君            吉江 勝保君            亀田 得治君            木村禧八郎君            北村  暢君            瀬谷 英行君            羽生 三七君            米田  勲君            小平 芳平君            中尾 辰義君            田畑 金光君            村尾 重雄君            須藤 五郎君            佐藤 尚武君            市川 房枝君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    法 務 大 臣 賀屋 興宣君    外 務 大 臣 大平 正芳君    大 蔵 大 臣 田中 角榮君    厚 生 大 臣 小林 武治君    農 林 大 臣 赤城 宗徳君    通商産業大臣  福田  一君    運 輸 大 臣 綾部健太郎君    郵 政 大 臣 古池 信三君    労 働 大 臣 大橋 武夫君    自 治 大 臣 赤澤 正道君    国 務 大 臣 佐藤 榮作君    国 務 大 臣 福田 篤泰君    国 務 大 臣 宮澤 喜一君    国 務 大 臣 山村新治郎君   政府委員    内閣官房長官  黒金 泰美君    内閣法制局長官 林  修三君    内閣法制次長  高辻 正巳君    総理府総務長官 野田 武夫君    総理府特別地域    連絡局長    三枝 三郎君    防衛庁防衛局長 海原  治君    法務省刑事局長 竹内 壽平君    外務省アメリカ    局長      竹内 春海君    外務省条約局長 藤崎 萬里君    大蔵省主計局長 佐藤 一郎君    大蔵省主計局法    規課長     相沢 英之君    大蔵省銀行局長 高橋 俊英君    文部政務次官  八木 徹雄君    文部省初等中等    教育局長    福田  繁君    文化財保護委員    会事務局長   宮地  茂君    農林大臣官房長 中西 一郎君    農林省農地局長 丹羽雅次郎君    農林省畜産局長 檜垣徳太郎君    食糧庁長官   齋藤  誠君    水産庁長官   庄野五一郎君    中小企業庁長官 中野 正一君    運輸省鉄道監督    局長      廣瀬 眞一君    運輸省自動車局    長       木村 睦男君    電気通信監理官 畠山 一郎君    電気通信監理官 野口 謙也君    郵政省経理局長 長田 裕二君    労働省労政局長 三治 重信君    労働省労働基準    局長      村上 茂利君    労働省職業安定    局長      有馬 元治君    労働省職業訓練    局長      松永 正男君    自治省行政局長 佐久間 彊君    自治省選挙局長 長野 士郎君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    法務省刑事局刑    事課長     羽山 忠弘君    日本専売公社総    裁       阪田 泰二君    日本国有鉄道総    裁       石田 禮助君    日本国有鉄道常    務理事     石原 米彦君    日本電信電話公    社総裁     大橋 八郎君   参考人    公共企業体等労    働委員会委員  金子 美雄君   —————————————   本日の会議に付した案件理事補欠互選の件 ○参考人出席要求に関する件 ○予算執行状況に関する調査   —————————————
  2. 太田正孝

    委員長太田正孝君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  委員の変更につきまして御報告いたします。  去る三月三十一日、矢山有作君、久保等君、曽祢益君及び村尾重雄君が辞任され、阿具根登君、亀田得治君、高山恒雄君及び基政七君が選任されました。  四月一日、谷口慶吉君が辞任され、鳥畠徳次郎君が選任されました。同月三日、日高広為君が辞任され、吉江勝保君が選任されました。  五月二十八日、柴田栄君、西田信一君が辞任され、木村篤太郎君、塩見俊二君が選任されました。  昨日、高山恒雄君、基政七君及び奥むめお君が辞任され、田畑金光君、村尾重雄君及び佐藤尚武君が選任されました。   —————————————
  3. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 次に、理事補欠互選を行ないます。  現在、当委員会におきましては理事が三名欠員になっておりますが、本日は都合により、理事一名の互選を行ないたいと存じます。その互選につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 御異議ないと認めます。それでは村山道雄君を理事に指名いたします。   —————————————
  5. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 次に、予算執行状況に関する調査を議題といたします。  本調査に関しまして、理事会において協議いたしましたおもな内容について御報告いたします。  本日及び明日の二日間にわたり委員会を開会いたします。質疑の総時間は三百二十分とし、その各会派への割り当ては、自由民主党及び社会党おのおの百二十分、公明会三十分、民主社会党二十分、緑風会共産党及び第二院クラブおのおの十分といたします。  質疑順位は、社会党自由民主党社会党公明会民主社会党緑風会共産党、第二院クラブ社会党の順といたします。  以上報告のとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  7. 太田正孝

    委員長太田正孝君) この際おはかりいたします。亀田得治君から、本日の同君の質疑に、公共企業体等労働委員会公益を代表する委員出席を求められております。参考人として、公益を代表する委員金子美雄君の出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  9. 太田正孝

    委員長太田正孝君) これより質疑に入ります。亀田得治君。
  10. 亀田得治

    亀田得治君 最初に私は、自民党総裁公選問題に関しまして若干お尋ねをいたしたいと思います。すでに七月の中旬にその公選が迫っておるわけであります。第一次的には、もちろん自民党の行事でありますが、しかしこれは同時に、日本の最高の政治上の責任者を決定していくということにもなるわけでありまして、われわれ社会党はもちろん、全国民関心を示しておるところであります。したがって、この問題が合理的に進められるかどうか、間違えばやはり政党全体に対する不信というふうな問題にも結びつくものであると考えるわけであります。そういう立場から、われわれも大きな関心を持っておるわけでありますが、この問題は、従来ややもすると、いろいろな忌まわしいうわさなども関連して聞かされたわけです。今回はそういうことがなく、きわめて公明正大に進められなきやならないと思うわけですが、そういう立場からこの際、池田総裁所信を承りたいと思います。
  11. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 選挙はあくまで公明正大に行なわれることが絶対要件でございます。したがいまして、自民党総裁選挙公明正大に、そうして国民の納得のいく方法で行なわれていくことが至当だと考えております。
  12. 亀田得治

    亀田得治君 過去の選挙を振り返ってみますると、多数派工作のために金が動いた、こういううわさをわれわれ公然と耳にいたしたわけなんです。これは他党のこととはいえ、先ほど申し上げましたように、はなはだわれわれとしても心外に思っておるわけであります。具体的にそういったようなことをやめさせる、なくするということにつきまして、具体的な何か方策なり、やり方というものを総裁として考えておられるのかどうか。ただ公明正大にやるというだけでは、過去の実跡があるだけになかなか世間はすなおに受け取らないと思うわけでありまして、この点だけを特に一つ再度お尋ねをしたいと思うのです。
  13. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど申し上げましたごとく、きれいに、公明に、正大にやるべきだと考えます。具体的方法はございません。やってはいかぬということが具体的方法でございます。
  14. 亀田得治

    亀田得治君 池田さんのお気持ちは一応わかりましたが、しかし大体立候補される立場の人とか、いろいろな派閥関係等もあるようでありますが、何かもう少し具体的に、そういうことはなくしようじゃないかというふうな指導を、総裁としてやるべきではないか。ただ公明正大にやる、それだけでは足らぬように思うわけですが、総裁みずからひとつ音頭をとって、具体的にそういう指示を与えるなり、話し合いをするなり、そういうふうなお考えはないものでしょうか。
  15. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは公明にやらなければならぬというのは、国民のひとしく熱望しておるところでございます。具体的の方法は別にとらなくても、お互いの心がまえで実現できると考えております。
  16. 亀田得治

    亀田得治君 関連して佐藤国務大臣に一、二点お尋ねしたいと思います。  せんだって、三日の日に、毎日三浦政治部長佐藤さんが対談されまして、政局に対するいろいろなお話をされ、詳細に翌日の新聞に載りまして、私たちもそれを拝見いたしたわけであります。で、まず最初お聞きしたいのは、毎日の四日の朝刊に載りました記事、私も詳しく、重要な記事でありまするので、読みましたが、これは間違いない記事だというふうに受け取ってよろしいかどうか。
  17. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私も新聞に載った記事を読みました。大体大まかに申せば、間違いはないようです。しかし片言隻句必ずしも言ったとおりと、かようには申しません。しかも私の決意そのものは、いまだかつて表明はいたしておりませんので、公式にはお話をしておりません。そういう点も、多分に毎日のほうで私の胸中を察したものである、かように考えます。
  18. 亀田得治

    亀田得治君 胸中を察したと言われますが、この政局転換の必要があると、いろいろな説明はありますが省略  いたしますが、この点だけは明確におっしゃっているわけではないでしょうか。これは十六日の佐藤派の木曜クラブのことばづかいともきわめて似ておるわけでありまして、これは佐藤さんのなまの声がそのまま載っておるように理解したわけですが、この点はどうでしょうか。
  19. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの段階におきまして、私は公式には私の決意を表明しておりません。したがいまして、いろいろの批評はいたしております。——そういうようにあの記事をお取りいただきたい。私がその時期等につきまして、また考えがございますので、そういうときが来れば、また私の考えが固まれば、そういうこともはっきりするだろう、かように御期待をされていいだろうと思います。
  20. 亀田得治

    亀田得治君 また解釈のしかたは別といたしまして、政局転換の必要があると、こういうおことばはお使いになられたわけでしょう。
  21. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま申し上げたとおりでございます。この場所は、御承知のように参議院予算委員会でございます。したがいまして、私の表現が慎重であるのは当然でございます。ただいま申し上げるように、ただいまのところ、まだ公式に表明する段階でございません。その点を重ねて申し上げます。
  22. 亀田得治

    亀田得治君 まあ非公式に、三日の日には真意を披瀝したという意味のようでありますが、政局転換の必要があるというふうなことを言われれば、あと毎日の方が多少修飾をしたとあなたはおっしゃいますが、そう言われれば、これは立候補するんだと。政局転換——じゃあ、あなたが、だれかほかの人を応援しよう、そういうふうには常識的に考えないでしょう。政局転換の必要があると言えば、これはやはり、じゃあ佐藤さんは立候補をしてやるつもりだなと。これは私は修飾でも何でもないと思うわけです。この毎日記事の初めのほうのこのところは、新聞社としてそういうふうに理解して書いておるわけですね、あなたの対談そのものを。だから、そういうふうに毎日の記者が受け取ったということは、あながち筋の通らない推測ではなかろうと思うのですが、公式、非公式は抜きにして、どのようにお考えでしょうか。
  23. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来申したとおりでございますので、ただいま亀田さんからお話のありました点、それは御想像にまかしてよろしい。私は他人がどういう結論を持とうと、それについてとやかくは申しません。
  24. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃ公式の問題をお聞きいたしますが、大体いつごろを公式に明らかにすべき時期と考えておられるわけでしょうか。
  25. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いずれのときか、まだきめておりません。
  26. 亀田得治

    亀田得治君 あと、もう三十日ぐらいですからね。それほどきまらない問題じゃなかろうと思うのですが、まあなかなか言いにくいようでありますから、一応この程度にしておきますが……。  そこで、池田さんにお尋ねしますが、すでにこの総裁公選問題に関しまして、藤山さん並びに佐藤さんから、池田さんに対するはっきりとした政策上の批判が出ておるわけですね。私は、総裁公選というのは、やはり自民党の立党の精神なりワクというものを持ちながら、そのワク内で、おのおのがまた考え方を明確にして、そうしておやりになるのが筋だと思うわけでありまして、そういう立場から聞くわけです。藤山さんは、池田さんの経済政策批判され、その日暮らしだと、こういうまあ批判もされておる。佐藤さんの先ほどの三日の談話の中にも、政策に触れた個所がたくさんあります。特に中小企業なり農業の問題につきましては、非常に痛いところをこれはついておるわけなんです。だから、こういう点につきまして、池田さんといたしましては、この批判を認めるおつもりでしょうか。あるいは、それは違うと言うお考えでしょうか。国民だれもが、これは何とか池田さんからはっきりとした意見を聞きたいものだと、待望しておると思うんですね。そういう意味で、ひとつ、これほどはっきり池田政策批判をされておるわけでありますから、お聞かせを願いたいと思うのです。
  27. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 民主主義の世の中でございますから、いろいろ意見はございましょう。その意見でとるべきものはとります、とるべからざるものはとらないのであります。われわれは党員の特定の人の考え方批判するよりも、どういうふうにして日本経済国民生活の向上あるいは国の発展をやっていこうかというのが、私の考えでございます。個々の人の意見を、党内意見批判することは、私のあれでない。採用するかしないかということが、私の考えでございます。これを批判するということは、適当でないと思います。
  28. 亀田得治

    亀田得治君 しかし、藤山さんは総務会長でありますが、佐藤さんは国務大臣であります。同じ閣内における重要なメンバーです。その人からはっきりとした意見が出ておる場合に、それに対してはっきり総理大臣からお答えを聞かれないというのは、はなはだ私残念であります。で、池田さんはもちろん三選を目、さしておやりになっておると思いますが、公式にはいつ表明されることになるのでしょうか。
  29. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は三選を目ざしていっておりません。日々これ新たに政治に精進しておるのであります。立候補するかしないかということにつきまして、いま考えておりませんから、それを公式とかいう問題は、これは考え以外のことで、お答えするわけにはいきません。
  30. 亀田得治

    亀田得治君 まあ日々これ新たと言いましても、党大会になって二、三日前に三選の決意を固めるというものでもなかろうし、またそういうことでは私は困ると思うのです。政治の継続が切れてしまう。そんなものではなかろうと思うのです。だから、この段階に来たら、いつごろにはどういうふうに自分考えを明確にして進むかということは、われわれも非常に関心を持っているわけです。ほかのほうだけからいろいろな批判が出ているわけですね。肝心の御本尊は何もおっしゃらない。日々これ新たというようなことだけでは、私は済まぬと思うのです。まあ、ともかくいずれにしましても池田さん、佐藤さん、藤山さん、おのおの総裁総理大臣としてりっぱな適格者だと私たち思うわけでありますが、ともかくそのきれいなやり方をとってもらいたい、きれいなやり方——これは否定できないと思うのです。新聞論説等にも堂々と指摘して書いているわけですね。私たちも相当具体的な話を耳にします。話半分に聞いても、これはいかぬと思っているわけなんでして、その点だけはひとつしっかり守って、どなたが当選されましょうとも、あとから批判されないようにしてもらいたいと思います。最初にも聞いたわけですが、今度は絶対そういううわさが、あとに残るようなことはしないという決意を披瀝できますか。
  31. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 問題は二つあると思います。私は、延長国会重要法案が山積しておりますので、七月に私の任期の切れることは知っておりますが、それどころではない。重要法案を何とかして通したいということに精魂を尽くしておるのであります。三選の問題には全然関係ございません。考えたこともございません。ただ第二の問題として総裁公選公明正大に、きれいにやらなければならないということは、自分が立つ、立たぬにかかわらず絶対必要であり、これは守らなければならないということはっきり申し上げられると思います。
  32. 亀田得治

    亀田得治君 それでは次に、終盤国会に臨む池田総理の態度につきまして一、二点お伺いしておきたいと思います。今度の国会終盤を迎えて例年以上に法案が山積しておる。私は、これは理由がいろいろあろうと思いますが、一つの大きな理由は、まあ自民党の中の色分けをしてはなはだ済まぬわけでありますが、便宜だからそう言いますが、自民党の中の右派人たち総裁公選というものが一月先にぶら下がっている。そういう点の足もとを見て、池田総理に対して突き上げをやっておる、こういうことが一つの大きな問題ではなかろうか、と思っております。池田さんも日々これ好日で、三選のことなんか考えておらぬようにおっしゃるけれども、巷間伝えるところでは、やはりそのことが頭にあるので右派の不当な突き上げにやはり気を配らなければならないのだ、池田さんはかわいそうだ、こう言われている人がたくさんおります。私は真相は正にそうだと思う。だからここで池田総裁指導力というものを一体どうして発揮するのか。それができませんと、これは混乱します。その第一は、例のILOだと思うんです。これは倉石・河野両者間で話がまとまった。そうして、まとまったものは幹事長書記長会談でも了承を受け、またその過程では、われわれの聞くところでは、池田さん自身にもあの案というものは通じているというふうに理解をしているわけなんです。それがいまごろになって突き上げられて、自民党党内自身がもたもたしている。これじゃ私は、自民党のほうはおさまっても、野党のほうはおさまらぬようになる。これではたくさんの法案をかかえて、これからの国会というものは非常に紛糾する。だから私は、こういうところで総理大臣としてのリーダーシップを発揮してもらって、党内意見というものは押えるべきものは押えて、野党との約束というものは尊重して、そうして軌道に乗せていく。こういうことが非常にいま必要な時期に来ているのじゃないか。むしろ皆さんのほうの立場考えると、その点が実は気になるわけです。池田さんの所信を聞きたいわけなんです。総裁公選といったようなことがなければ、これは筋書きどおりいっていると思う。もたついているのはそうなんじゃないか、それにからんでいるんじゃないかと思うわけですね。どうなんでしょうか。
  33. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 法案審議状況は、大体ただいまのところでは昨年と同じ程度だと思います。今回はあと三週間ばかりありますが、昨年は法案の五割九分程度で、今年は五割五、六分程度じゃないか、大体進捗状況は似ていると思います。  なおまた、法案審議が来たる総裁選挙にからむといったようなことは、私は考えておりません。やはり党内のいろいろな意見を聞き、また野党考え方委員会における議論等を見まして、そうして調整していくべきだと考えております。
  34. 亀田得治

    亀田得治君 ILO問題は、山本さんからさらに質問があるようですからこの程度にいたしておきますが、ILOだけじゃなしに、たとえば旧地主補償——政府の言い方は報償、こういう問題でもいまだにこれはもたもたしている。あるいは防衛庁の昇格問題、この終盤になって、いまだにこういう世間から見たら非常に重要な法案を出すとか、出さぬとか。こういうことは、国会全体の終盤の状態をスムースにするためにも、早く総裁としては打ち切るべきじゃないかと、われわれ希望もしているわけなんですが、どうなんです。
  35. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 農地の問題につきましては、大体近日中に成案ができると考えております。また、防衛省の問題につきましては、出す出さぬの問題は、まだきまっておりません。農地のほうは出す考えで進めております。
  36. 藤田進

    藤田進君 関連。関連してお伺いするわけですが、参議院としましては、総理大臣承知のように、二十六日まであとわずかなんですが、相当の案件が衆議院の段階にあるわけであります。これが多分にILO問題にからみ、また主観的にはどうあろうとも、客観的には総裁選挙にかなりからんでいる。池田内閣を倒す倒閣運動の主将と一緒に内閣を組閣されているように思われるのです。これはやはり現在それぞれ解散されたと言われておりますけれども、それは名目だけで、実際には派閥解散というものではないと思うのです。ここでいろいろな打ち合わせができてやっている。池田支持派の人でも、ILO条約について見ても一生懸命に反対だといってやっている人もあり、なかなか複雑怪奇の状態なんです。これはILO条約の問題に例をとってみても、衆議院段階野党の内部の調整がいつできるのだろうか、できないのだろうか。今朝、新聞等でも伝えられているように、まさにわれわれ院内にいる者としても、記事に誤りがないような気がいたします。参議院においても、あるいは衆議院においてもそうですが、御承知のように、国民がほんとうに必要だと思うものについては与野党一致してこれを通す。また修正すべきものは修正して、何とか審議を促進しようとしているわけですが、しかし、そうかといって、重大なILO条約が信義にもどる与党のやり方ということになりますと、これは他に連鎖反応を持つ可能性も非常に大きくなってきているわけです。いずれにしても、われわれ参議院の側としては、早急にILO問題に関しましても、衆議院で総裁、総理としてのここに決断を持たれて、調整すべきものは調整に乗り出されて、円滑に今後の進行がいくようにおやりになる時期にもう来ているのじゃないだろうか。しかしいろいろな将来の問題も控えているので、党内のそれぞれの機関にもうすべてをまかす、その結果に従うという総理の態度なのか。みずから乗り出して、先ほど言われたように、重要な案件の成立も期しながら、その他のILO条約の調整というものも、ここで総理、総裁みずから乗り出しての調整をおやりになるという——まあ時期はそれぞれお考えもありましょう。党内の事情もありましょうが、やり方として一体どういうところにこの帰結を求められようとするのか。国会のうちそとにおいて重大な関心を持っていると思いますから、この際、ひとつ御言明をいただきたいと思います。
  37. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御質問のILO条約批准並びに関係国内法規の改正につきましては、いろいろお話のとおり議論がございます。いま議論をし、大体出尽くしたやに考えます——まだこれからもあるかもわかりません。そういうことで、いろいろな議論を出した上におきまして調整段階に入ると思います。その調整のやり方をどうするかという問題につきましては、これはいま私がどうこうという問題じゃないと思います。できるだけ党の機関が十分審議し、それでやっていく。こういうことがほんとうだと思います。党の正常の機関をはずして、総裁がいますぐ出るという問題は、いま議論すべき問題じゃないと思います。
  38. 亀田得治

    亀田得治君 地主報償の問題は、近いうちにまとまるようなことを言われましたが、これは大蔵大臣どうなんです。大蔵省じゃ三百億だ、こういう案を出して、非常に開きがあって難航している状態なんです。そんなにこの問題が簡単にまとまりそうな状況なんでしょうか、大蔵大臣。
  39. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 農地報償問題につきましては、党内においても機関をつくりましていま検討いたしております。政府の考え方の提示も求められましたので、政府側の考えの基本を党側に提示してございます。党側は、二、三日のうちに政府側に党側の意向を伝えたいという意向でありますので、党側の意向の提示がありましたら、政府としても検討してみたいという段階でございます。
  40. 亀田得治

    亀田得治君 まとまる見込みがあるのですか、大蔵大臣として。
  41. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御承知のとおり、自由民主党と政府は政府・与党の関係でございます。いままでまとまらなかったものもございませんから、こういう問題に関しては世間周知、衆人環視の中でお互いが十分意思の疎通をはかって、最終的に国民の理解が得られるような案をつくるということでありますから、私は時間が多少かかっても、政府と与党の間で意見の一致ができないというような問題ではないというふうに理解しています。
  42. 亀田得治

    亀田得治君 たとえまとまっても、そんなものがすぐ国会を通るということは考えられないでしょう。どうなんです、池田さん。
  43. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国会を通る通らぬは、国会のことでございますから、われわれは最善の案を出しまして、国会通過をお願いするわけであります。
  44. 亀田得治

    亀田得治君 そういう形式的な答弁じゃなしに、それは、実際了解のつく案であれば、一日ですっと通すということだって、これはできるわけです、形式的にいえば。しかし、そんな問題じゃない。だから、ILO等を控えて、重要問題がたくさんあるときに、そういう問題は中止すべきじゃないか。自民党として検討されるにも、これは次の国会ということに踏み切られるべきじゃないかということを言っているわけなんです。それが常識的な扱いではないか。それができないのは、つまり右派のつき上げ、総裁公選の足元につけ込んでいる、こういうふうに見られても仕方がないじゃないか。無用のことに、この忙しい終盤のときに、そういう問題に手間をかけるということは、はなはだこれは心外です。打ち切っていいのじゃないですか、そういう話は。
  45. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 総裁公選の問題とは、もう全部離れてわれわれは考えているのであります。農地の被買収者に対する報償の問題も、世論調査その他を三月末までにやりまして、そうして四月から案をいま練っているのでございます。われわれは、できるだけ早くこの問題を片づけるということは、内閣並びに党としてももう声明しているところでございます。総裁公選があるからどうこうという問題ではございません。われわれは、お約束には誠実に事を運んでいくことが民主主義のたてまえと考えております。
  46. 亀田得治

    亀田得治君 では次に、外交関係に移ります。  外務大臣にまずお伺いいたします。韓国の最近の政治の不安状態、これをどういうふうに把握されておりますか、まず御説明を願いたい。
  47. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 民政移管後、経済困難を中心といたしまして、もろもろの困難に韓国政権が直面いたしておりましたように感じているのでございますが、先般来、当初は、日韓交渉をめぐって一部の学生運動が起ったのでございますが、その後の状況を見ておりますと、この学生運動の性格がやや変わってまいりまして、政権自体に対する反対運動であるという色彩を濃くしているというように見られるわけでございます。私どもは、たびたび申し上げておりますように、貴重な独立をかち得た国々、これは韓国ばかりじゃなく、新興国が政治的にも経済的にも各種の困難に直面し、苦悶を重ねている例が多いのでございまするが、こういった苦悶の過程を経過いたしまして、漸次民主政治のあり方に対する理解が深まり、民主政治の基盤が徐々に醸成されてまいるということを期待しているわけでございまして、韓国の今日の苦悶の状況に対しましても、常に深甚なる理解と同情を持ってまいっておるわけでございます。今日もそれに変わりはございません。  で、今日、韓国政府におきましても、この事態の収拾につきまして、各政党の間の会談がもくろまれているようでございますし、十日からは国会が開かれるということでございまして、ここ当面の動きにつきましては、注意深く私どもは見守ってまいりたいと考えております。
  48. 亀田得治

    亀田得治君 戒厳令は相当長期化するという見通しでしょうか。
  49. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私どもとしては、長期化するのかどうかということにつきましては、さだかに申し上げるまで、自信を持って申し上げるまで考えが熟しておりません。
  50. 亀田得治

    亀田得治君 今回の戒厳令では、学校に対する弾圧並びに言論報道機関に対する弾圧、これが特に目立っているようでありますが、そういう点の具体的な事情ですね、キャッチしているだけここで明らかにしてほしい。
  51. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私ども承知しているところでは、戒厳令を公布するかどうかにつきましては、いろいろな論議がかわされたようでございまして、できるだけ事態を話し合いのうちに解決しようという基本的な考え方が支配的であるように伺っております。したがいまして、戒厳令を公布した地域も、ただいまのところ、ソウルに限られておるということでございまするし、現実に戒厳令下にある、戒厳令の実施の実態につきましても、非常にきびしい段階に立ち至らないように配慮されておるというふうに承知いたしております。
  52. 亀田得治

    亀田得治君 そういう韓国内の情勢というものは、直接外務省がキャッチできるようなルートというものは、きちんとでき上がっているわけでしょうか。
  53. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私どもといたしましては、長期にソウルに調査官を派遣いたしまして、情勢を刻々こちらに伝えさせる、ようにいたしております。
  54. 亀田得治

    亀田得治君 そこで、こういう情勢のもとでは、当分懸案の日韓会談というものは事実上やれないというふうに理解するわけですが、その点、外務大臣どうお考えです。
  55. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 日韓交渉は、御案内のように、十二年に及ぶ長い交渉でございまして、この過程を見てみますと、時には進み、時には停滞した、そういった過程をずうっと繰り返してきたわけでございます。このことは、日韓両国の政情が日韓交渉に無関係であると言えない証拠だろうと思うのでございます。私どもといたしましては、日韓交渉というパイプを通じまして、こういう政情が交渉にどのように反影し、どのように結晶をしてまいるかということには十分注意深く対処しておるわけでございまして、今日までそのようにやってまいったわけでございまして、今後もそのように対処していくわけでございます。目下の段階におきましては、そういう交渉のパイプを維持しながら、先方がどのようにこれに対処して出てまいるかという点を注目いたしておるという状況でございます。
  56. 亀田得治

    亀田得治君 日韓会談、続けることはできないでしょう、こういう状態では。事実上の問題を聞いておる。
  57. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 日韓会談は毎日続けておるわけでございます。で、会談がどのように進捗してまいるか。私、先ほど申しましたように、進捗した段階もあれば、停滞した段階もございまするが、会談それ自体は、ずっと続けておるわけでございます。いつも開かれた状態にあるわけでございます。
  58. 亀田得治

    亀田得治君 開きっぱなしということですな。それ以上進行しないのだったら、事実上ストップしておるのと、これはことばの使い方の違いでしょうが。だから、実際上、こういう状態では、会談を開いてやっても、開くこと自身もなかなかできないし、開いたところで解決もできない。それは、向こうの政権自体が絶えずぐらぐらしているわけですから。当然、そういう帰結になるのと違いますか。
  59. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 政情が交渉と無関係であると私は申していないわけでございまして、過去の沿革を見てみましても、進捗したときもあれば停滞したときもあるわけでございます。今日の状態、実質的な進捗を見る段階にないということは、御指摘のとおりだと思うのでございますけれども、しかし、私どもは、過去の日韓交渉におきまして、たびたびこういう瀬戸は通ってきたわけでございまして、会談は続けておる。そして私どもといたしましては、いつでも応じ得る態勢に置いておく。そういたしますれば、機運が熟せば、これがまた進展するということになってくるわけでございます。それを期待しつつ、会談は、場面は、堅持してまいりたいと思っております。
  60. 亀田得治

    亀田得治君 そういう無定見なことではいけないと思うのですね。この三月、予算委員会で、韓国政権の安定性ということについて外務大臣の意見を聞いたときにも、それほど心配されておらぬようでありましたが、それから一月も出ないで三月末にはああいう状態におちいっておるわけですね。その後、さらに今日のような状態になっておるわけなんです。だから、そこで現在の韓国の事態というものを一時的な現象として考えたら間違いだと思うのですよ。もっとこう、日本政府として、根本的にこの際考え直す必要のある問題が出ておるのじゃないかということなんですね、私の言いたいことは。だから、いまの日韓会談の方式で進めていけば、それは、煮詰まりそうになれば必ず同じことを繰り返しますよ。これはもう予言しておきますよ。いつもこっちの予言が当たっておるわけですから。あなたのほうがいつもはずれておる、日韓会談に関する限り。今後とも必ずこれを繰り返すだけですよ。この際、日本と朝鮮との関係というものをもっと高い立場で検討し直すべきじゃないか。外務大臣の意見を聞くために私の意見を申し上げましょう。  その一つは、北鮮というものに対する態度をやはり再検討することなんです。北鮮の古い国連決議があると、そんなものにいつまでもこだわっておるようなことは、もう客観情勢に合わないのです。これはこれとしてちゃんと認める、そうして北と南との関係をどうするか。これは韓国内部においても、統一運動というものが、北とはまた違った意味で相当出ておるわけですね。これは、いきなり南北一つにしてしまおうという性急なものじゃなしに、一応二つの国があることを認めながら、連邦的な考え方で結びつけていこうといったような統一運動が、相当やはり最近は特に出ておるのです。私は、日本としては、ほんとうに朝鮮のことを心配されるのであれば、そういう線で再検討する必要があるのじゃないか。そうしなければ、たとえば韓国の根本的な弱点である経済問題、軍事費の増大、こういうこともこれは解決しないのです。日本からちょっとくらいの援助なんか持っていったって、だめなんです、これは。だから、そういう基本的な立場に立って、そうして日本がほんとうに朝鮮民族のために、平和的な国家ができ上がるようにという努力をすべきじゃないかと思う。いままでの道を幾ら押していったって、だめですよ、これは。外務大臣。そういうふうに私たち考えておるわけですが、そういう議論は、もう机上の空論ということで一蹴されるのか。それはひとつ、一つ考え方として検討してみようというのか。その辺をざっくばらんに、外務大臣としての考え方を聞いておきたい。
  61. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私、これもざっくばらんに申し上げますが、亀田さんのお考え方、一応理解はできるのですが、私どもの考え方は、あなたのように深刻に考えていないのです。つまり、韓国という国が世界の七十三カ国と国交を持っておるわけでございます。隣合わせの日本が国交を持つということは、きわめてあたりまえなことです。あたりまえなことをやろうじゃないかということを申し上げておるわけでございます。統一の問題をからませたり云々というのは——この、ごくあたりまえのことをやろうとすることに対して、そういう要素をお入れにならずに、まず日韓の間の国交、おつき合いをやりましょう——隣合わせでおりまして、「こんにちは」「さようなら」のあいさつができないなんというようなことは、これはきわめて不自然なことでございますから、こういうことは自然にやろうじゃないかということだけを申し上げておるわけでございます。  それから第二点として、たびたび統一問題が出るわけでございますが、私は、この委員会を通じましてたびたび申し上げておるとおり、南北の統一という問題は、朝鮮民族の第一義的な問題になるわけでございます。わが国がとやかくそれに介入していくということ、これは、私どももとより統一を望んで、平和的に統一されるということを望みますけれども、第一義的には、これは、南鮮、北鮮の両当局がどのように考えるかという問題が第一義的な問題なんでございまして、日本が裁判官の立場で判定をして差し上げるほど、おせっかいはやきたくないと思っておるわけでございます。きわめてあたりまえのことをやらしていただこうという、きわめて低姿勢なやり方をやっておるのでございます。この点は、ごくすなおに御理解いただきたいと思います。
  62. 亀田得治

    亀田得治君 現在の日韓会談のルートというものは、従来の韓国の方式というものを維持していくことになる。軍事国家、軍事費の重圧に苦しんでいるわけでしょう。それでは問題は解決しない。だから、南北両鮮とも、そういう点で、もっと大衆の負担を軽くする、もう質的に変わった方向が出てこなければ、これはだめなんですよ。だから、他国のことですから、こちらがもちろんそんなことを、指図といったようなことはできるもんじゃありません。しかし、そういう立場で検討し直すべき時期に来ているんですよ。  まあ、この程度にしておきましょう。時間がいたずらに過ぎますから。
  63. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連して。ただいまの亀田さんの御指摘の点で、韓国に対しては、アメリカが長期にわたり大量の援助をしたわけです。それにもかかわらず、韓国の政情は、あるいは経済状態は、安定しておらない。今度の問題でも、結局は、イデオロギーの問題よりも、韓国民衆の生活苦が、ああいう大きな騒乱に発展をした一つの客観的な条件だろうと思う。したがって、いまのこの韓国のあの程度の国で、ああいう大量の軍隊を持って、いまのような政治をやっておる限り、この矛盾は解決をしない。際限なくこういう問題が起こってくると思う。しかも、日韓の会談が中断したことは一再にとどまらない。外相先ほどお話しのとおりであります。今後も起こるでしょう。  それならば、昨日、衆議院で質問のあった際、外相の御答弁では、韓国についての見通しを日本が述べるなんということは不謹慎だというお話がありましたが、私は、こういう席で韓国の政情あるいは将来についての見通しを述べることを求めるわけじゃありませんが、日本としても、先ほど来亀田委員が述べられたような問題を十分お考えになって、門を開いておいて、会談にはいつでも応ずるといっても、将来韓国の現在の政権がどうなるかわからない。その場合に、何億ドルつぎ込むのは日本国民の金だということを忘れないでいただきたい。結局、むだづかいになる、いまの事情では。ですから、これは私は、そういう意味で非常に大きな問題があろうと思う。私は、これをイデオロギーにからませて議論する意思は毛頭ありません。でありますから、見通しを述べていただく必要はありませんが、日本としては、この韓国の政情についての、一定の何らかの情勢判断、そういうものを不断に持って、適当なところで何らかやはり一応の判断をする段階に来ているのではないかという気がいたします。お考えを伺います。
  64. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 交渉を断続的にずっと続けてきておるわけでございます。経済協力云々の問題も、交渉がまとまらなければ実行しないわけでございます。たびたび政府が申し上げて御了解をお願いいたしておりますように、この日韓の間の諸懸案の解決というのは、相互に十分納得がいく合理的な内容のものにいたしたいということを申し上げておるわけでございます。それの意味するところは、何でも小手先でやり遂げ得るような、こういう簡単な問題ではないと思うのでございます。それはもう羽生さんも、私、あなたと御同感なんでございまして、したがって、十分両国民の納得のいくようなものにしたい。納得のいくようなものにしたいという意味は、十分の理解を得なければなりません。これは、両国とも、それぞれ世論の支持を得なければいかぬし、国会の御承認を得なければならぬという手順がいろいろあるわけでございまして、したがって、そういうことを十分地固めして国交を回復しないと、これは、あなたが御指摘のように、安全した国交の回復にはならぬと思うのでございます。私どもが納得いく内容でと申し上げている意味は、そういうことでございます。決して早急に事を急いでやるなんということは毛頭考えていないわけでございます。このことは、十分の納得のいくような方法において、内容においてやるということが私の責任だと存じまして、そのように努力しておるつもりでございます。
  65. 亀田得治

    亀田得治君 外交問題は、時間の都合でこの程度にいたしまして、次に、仲裁裁定の問題に移ります。  まず最初に、公労委のほうに、金子さんにお尋ねいたしますが、公共企業体の賃金を民間のどの規模と比較をするか、これは、結果において非常に大きな違いが出てくるわけでありまして、太田池田会談のほんとうの気持ちが生かされるかどうかということも、実際は、その作業にかかっておるわけなんです。太田池田会談は、これはまあ気持ちだけをうたったもので、実際にあの気持ちが実現できるかどうかは、これは公労委の作業のやり方なんです。  そこで、端的にあなたに聞くわけですが、なぜ公労委は、民間賃金との比較において百人以上というものをとったのか。組合のほうでは千人以上ということを主張しておりました。まあ、せめて五百人程度であれば、当局のほうも暗々裏に認めていたようにもわれわれ聞いておるわけでございまして、なぜ、そういう中で百人というものをとったのか、まず、理由を明確にしてほしい。
  66. 金子美雄

    参考人金子美雄君) お答えいたします。  民間の賃金と比較する場合に、民間の大企業千人以上と比較するようにというのが組合側の主張であったことは、ただいまお述べになりましたとおりであります。これに対して、使用者側の意見は、少なくとも過半数、民間の過半数を占めるようなところと比較すべきであるというような主張がなされました。千人以上をとりますと、統計の対象人員の中の三七・八%を占めるわけであります。また五百人以上をとりますと四四・四%でありまして、これは五百人以上最大の規模まで全部積み上げてとるわけですが、四四%。そこで、過半数をとるといたしますと、統計で規模別の刻みのある次の刻みは百人以上でありまして、百人以上をとって初めて六三・七%というカバレージになります。  仲裁委員会といたしましては、公企体のような公益性の高い事業の賃金、民間の給与と比較するということは一つの基本ベースになりますけれども、その場合に、組合側が主張されますように、特に大規模の従業員だけとって比較することがいいのかどうか。同じような問題に直面しております公務員の給与の場合には、人事院はずっと五十人以上の事業所の統計というものをとって、これを公務員の給与を決定する基礎とされております。そういう事情を考えまして、われわれといたしましては、やはり百人以上というところをとるのが統計上妥当である、また、一般公務員の給与の従来の決定されている経緯から見ても妥当である、かように考えた次第であります。  なお、ついででありますから、千人以上をとるということと、それから百人以上をとるということが、結果として非常に大きな影響を及ぼす、こういうふうに一般に考えられているのではなかろうかと思います。もし千人以上をとったといたしますと、われわれが今回行なっておりますように、超過勤務であるとか、あるいはベースアップというような、必要な修正を行なわねばならないことは言うまでもないのですが、いわゆる組合側が出されておりますようななまの数字で申しまして、千人以上をなまで比較いたしますと、四千二百六十七円ほどの違いが出てまいります。百人以上をとりますと、百人以上でやりましても、実は、なまの数字で申しますと、三千三百四十円という格差が出るのでありまして、いわゆるなまの数字で比較すれば、千人以上と百人以上をとりまして、そこには九百円ほどの差がありますけれども、いずれにしても、それは三千円と四千円の差でありまして、なまの数字でとれば、百人以上でも、実はそういう数字が出るのであります。  ただ、公企体の場合には、仲裁委員会におきましては、このなまの数字をそのまま比較することは正しくないという見解に立っている。それは、超勤の手当の額というものが、公企体の場合と民間の場合では、三十六年の四月という調査段階において非常に違っているわけです。御承知のように、超勤というのは、その月によっても大きな変動があるのでありまして、また、産業によっても違いがある。公企体の中でも非常に大きな違いがある。たとえば、最近の数字で申しまして、造幣などは一人平均一万円に近い超勤が、毎月、一カ月平均として出ております。こういうものも、それは収入としては確かに労働者の生活の原資となっているでありましょうけれども、賃金の水準として見る場合に、特別の長い時間働いて超勤した部分を賃金の水準として見ることが妥当であるかどうかということになりますと、われわれは、それは妥当でない、超勤をはずしました所定の労働時間に対する給与というものによって比較するのが至当である、こういう考えに立ったわけであります。  これは、発表された数字で申しますと、その三十六年四月における超勤の違いを比較いたしますと、民間の給与の場合には三千百四十円の超勤がございます。公企体等の平均の場合には千百五十六円の超勤にすぎません。そこにすなわち二千円の差が出てまいります。また、三十六年四月という特別の時期と申しますのは、四月の調査でありますが、民間の場合には、その年のベースアップの賃金というものがある部分含まれている。公企体の場合には、その年のベースアップの賃金が支払われたのはずっとあとのことでありますから、そこでその調整もしなければなりません。その調整を考えますと、これが約千円程度の額と試算されるわけであります。ですから、百人以上をとりましても、組合側がおやりになるような方法でやれば三千数百円の格差が出るのです。  しかし、この数字をそのままとるのが妥当かどうかというのは問題でありまして、いま申したような、われわれの考えといたしましては、超勤でありますとか、民間のベースアップ分の修正でありますとか、そういうものは、これは行なうのが当然であるという、まあ考えに立ちまして、その修正を行ないますれば、結局仲裁委員会が申しましたように、差額というものが非常に少ないものになりまして、民間との給与には特に考慮するほどの格差はないと、こういう結論に達した次第でございます。
  67. 亀田得治

    亀田得治君 まあ、いろんなこまかい説明がありましたが、昨年並びに一昨年は、民間との比較は五百人以上でやっているわけですね、公労委は。それを、なぜことしに限って百人に下げたかということなんです。いま説明がありましたが、それはやはり、百人、五百人、千人の場合、おのおの違うわけなんです。金額はさほどのことはないと言われますが、違うことは事実なんです。昨年まで五百人規模以上と比較されたものを、いま言われたような、これはたいした理由にならぬと思うのですよ。やはり、民間と比較するのであれば、大体同程度の大きさの規模というものを基準にして比較するという理論も厳然とあるわけですからね。また、そういうふうにやっておられたわけなんだから、それをなぜ変えてまで新しい百人をとらなきやならぬかという点を聞いておるわけなんです。去年、おととしやったことは、これは間違いなんですか。民間賃金との比較のしかたは。
  68. 金子美雄

    参考人金子美雄君) お答えいたします。  昨年、一昨年におきまして、民間賃金の動向というものは、これは仲裁委員会として当然考慮すべきことでありますから、それを考慮する際に  ただいま御指摘の点は、たぶん毎月勤労統計の五百人以上の年間の賃金の上昇率について理由書に言及されていることを御指摘だと思います。しかし、民間給与との比較という、ことしやりましたようなもの、つまり、ことしの比較は、実際の賃金水準の比較でありまして、これは各男女別、年齢、階級別というようなものに分けてやっているわけでありますから……。
  69. 亀田得治

    亀田得治君 金子さん、簡単に、ポイントだけでいいですから。
  70. 金子美雄

    参考人金子美雄君) そういう比較は、昨年、一昨年やっておりません。つまり、賃金水準の比較というものは、今回初めてやったと了解しております。
  71. 亀田得治

    亀田得治君 賃金水準の比較であろうが、動向の比較であろうが、規模をどこにとるかということは同じことじゃないですか。動向の場合は五百人以上でやってもいいと、ことしは違う、その具体的な水準なんだと、それは一応そういう理屈は言えるかもしれませんが、そういうことをしなければならぬそれほど大きな理由もないわけです。百人がそれほど正しいものであれば、動向を調べる場合にもそれをやったらいいことなんです。それを、いままではやっていたことを急に切りかえる、それはやはり、太田池田会談、あの精神でやりますと、五百人以上ではどうもベースアップを多くしなければならぬ。それを適当なところに縮めたい、そういう政治的なやはり意欲があって、こういう結果になったのと違いますか。あなたのほうじゃ、千人以上をとれば民間との比較がどう、さっきちょっとお話がありましたが、五百人以上の場合にはその比較はどうなるという計算は一応おやりになりましたか、五百人の場合。
  72. 金子美雄

    参考人金子美雄君) これは、動向を見る上の統計、毎月勤労統計を使うわけでありますけれども、毎月勤労統計の昨年の場合は、規模別に申しますと、三十人以上と五百人以上の統計しか発表されておりませんので、五百人以上を使いました。ことしは、五百人以上の統計が、サンプルがえの関係で、まだ発表されておりませんので、民間賃金の動向の場合に五百人以上の統計を使うことができませんので、これは毎月勤労統計の全体の統計を参考にした、こういうわけであります。これは、毎勤の統計の区切りの関係であると御承知願います。
  73. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 関連、いま聞いておりますと、きわめて専門的なことを言われておるのですが、昨年までは毎勤統計による上昇の率によって仲裁裁定の額を出した。本年の場合は、実際の民間の賃金実態、いわゆる百名以上の事業所を、これをもとにとって格差を出した、こういうことでありますが、しからば、昨年までその上昇率だけでやった根拠、われわれとしては、いままで、きょう初めて知ったわけですが、裁定なり人事院勧告を出す場合には、民間の給与との格差自体が問題であると思う。上昇率となりますると、昨年、一昨年は、非常に景気がいいときには、中小企業、いわゆる零細企業の率が多くなる。したがって、そういう点が、いま初めて聞いたんですが、昨年はそうとっとった、今度は、池田太田会談によって、民間との給与の格差をはっきり出さなくちゃいかぬからそうとったと言われるかもしれませんが、その理由をちょっと説明してくれませんか。
  74. 金子美雄

    参考人金子美雄君) お答えいたします。  仲裁裁定に限らず、賃金の決定をいたします場合に、実際どういう要素を最も重要な要素として考えて賃金の決定を行なうかということは、必ずしも毎年画一的に考えられるものではなかろうと思います。そのときどきの事情によりまして、賃金決定のウエートというものは、おのずから変わってくるものだと思います。  本年、先ほど申しましたようなこまかい、積み上げた賃金水準の比較をやったということは、先ほど来御指摘がありますように、本年の場合には、民間の一年間の賃金の上がり方というのは、後ほど春闘の問題として考えられるわけですけれども、絶対的な水準の比較ということが、これが労使双方の間で非常に問題になりました。ですから、単なる年間の動向ということでなしに、ことしの場合は、そういう水準の比較ということが非常に重要な問題でありますから、その点を中心として考えたわけであります。  なお、この点につきましては、従来それをやろうとしましても、やるような的確な資料がなかったということも一因でありまして、労働省が三十六年にやりましたいわゆる賃金センサスと称する非常な広範な統計というものが昨年の八月ようやく使えるように発表されまして、この統計が使えるようになったために、労使双方とも水準の問題を論ずるようになった、こういう事情もあるのであります。
  75. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 あの人事院勧告は、例年いわゆる人事院自体のセンサス、統計調査によって、民間との給与の格差を出してやっておりますね、そのときそのときというような、気の抜けたような考え方には変えてませんよ、ずっと。私は、そういう仲裁委にそれだけのスタッフがおられないからできなかったと言われるならば、了解ができます。私は、いままで、民間との格差を見る場合には、本年のやつはいい悪いは別として、やはりそういう形でとっておると思う。本年は、たまたまいろいろ政治的な問題になったからやられたと思いますが、これは規模別五百名以上、百名以上という問題は、いま私は触れておらない。しかし、やり方というものについては、相当仲裁委について異議があるのです。私の時間でないから、この点注意だけ喚起しておきたい。どうなんですか。
  76. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 金子君、答弁ありますか。
  77. 金子美雄

    参考人金子美雄君) ただいま御指摘がありました人事院の場合と、それから仲裁委員会の場合のやり方の違いでありますが、われわれの考え方では、人事院は団体交渉とかそういうものを前提にしないで、独立の機関、つまり人事院だけの独立の賃金勧告の機関として存在しているわけでありますから、先ほど御指摘のような人事院独自の調査ということも非常に必要であろうと思います。しかし、われわれは調停仲裁機関でありまして、労使の紛争を前提とし、労使のそれぞれの主張というものを聞いて、その中で判断するたてまえでありますので、人事院の場合と、それから公労委の場合には、多少の違いがあると思います。
  78. 藤田進

    藤田進君 関連。
  79. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 簡単に願います。
  80. 藤田進

    藤田進君 聞きますがね、民間産業の場合でも、中労委としてそういう理論だったら同じことになる。三者構成で調停をし、かつととのわない場合には定めにしたがって仲裁をやる。人事院の場合と違うというそのポイントについてです、私の明確にしたいのは。人事院は団体交渉等そういった状態が前置されていない独自の判断できめるのだ。いまの御答弁では、団体交渉というものが前置されているので、判断の基準が違うと、こういうことになる。しかし、いやしくも調停の場合は、あるいはすでに出ている賃金も、場合によってはあるでしょう、紛争議を解決する手段として、態様はいろいろある。けれども、いやしくも仲裁裁定ということになれば、その基準において、責任のあるまた中立公平な立場からおやりにならなければならぬ。しかし今回は、特に一国の総理大臣と紛争議の一方の団体である総評の議長との間に、御承知のように六項目という話し合いがなり、事態が収拾されたあとを受けた仲裁裁定ですから、その意味では、このことの評価は若干加わるでしょう。しかし一般的には、仲裁裁定の基準ということを論じる場合には、いまのようなことでは納得いかない。人事院と、仲裁裁定をおやりになる公労委との関係において、もっと具体的に科学的にひとつ御説明を願いたい。あいまいです。  それから統計問題をときどき出されるけれども、統計自体が民間産業、——先ほど逆に私は聞こえている、民間産業のほうは早く賃金改定がなされて統計に入っている、三公社五現業等は、統計自身がおくれているが、実際べースは早く上がっていって、あまり格差はないのだという響きを受けたけれども、それは逆だと思う。民間産業はおおむね三月ないし四月年度初めに改定をされてくる。これがベース改定されたそのものの統計に出ないままに、つまり民間の一年前の給与が大体基礎になって、公務員ないしはいまの公労委関係団体の労働者の賃金というものはきまっている。これがずれてくれば、公務員のように、およそ民間より一年ないし二年ぐらいベース改定というものがおくれてきているのが実績なんです。こういった点もあわせて考えると、今度の仲裁というものは、まことにふに落ちない。その理論において、絶対金額において、また民間とそして三公社五現業との基準賃金との比較において、全くどうも説明自身も当を得ていないし、したがってわれわれ納得できない。もっとはっきり言ってもらいたい。
  81. 金子美雄

    参考人金子美雄君) 人事院と公労委の賃金決定の基本的な立場といいますか、そういう違いを申し上げたのでありまして、裁定を行なう場合に、可能な限りの資料調査も行なって、厳正な仲裁裁定を行なわなければならないことは、全く仰せのとおりだと思います。  それからあとの点ですが、これは実は三十六年四月の賃金についての統計であります。その統計が、民間の場合はその年の春の賃上げの額が入っております。公企体の場合には、そのときの裁定の金額というものが配分がきまりまして、支払われたのはあとになっています。ただ、それは四月一日にさかのぼって支払われるわけですけれども、四月の賃金の中にはそれがまだ入っていない統計なのです。したがって、その裁定の金額を四月の中に入れて比較するか、あるいは民間のその年のベースアップ分をはずして裸で比較するか、どちらかをとらなければならない、こういう問題なんでございます。
  82. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 関連。
  83. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 簡単にお願いします。
  84. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 いまいろいろ言われますが、あまり事務的な答弁だけを私らのほうでは求めているわけではない。賃金水準の最後のきめどころとしては、人事院であろうとあるいは仲裁裁定であろうと同じであるということになれば、どこに比較の対象を求めて、どのようにして賃金をきめていくかということが一番問題であろうと思います。いままでの説明によれば、今回は百人以上の企業というところに比較の対象を求めたということでありますが、これは言うならば、低いところへ右へならえをするということになると思うのであります。千人以上の企業よりも百人以上のほうが、あるいは五百人以上のほうが低いから、全体の数が多い少ないのパーセンテージの問題よりも、高いところに比較の対象を求めるのか、低いところに比較の対象を求めるのか、どちらが正しいかという基本理念の問題について、われわれはやはりここで明らかにしてもらいたいと思うのであります。いままでの答弁によれば、低いところに右へならえをすると、こういう基本理念に立って作業をしたというふうにしか解釈はできないのであります。それは言いかえるならば、公益性の強い企業に対しては、高い賃金は要らないのだ、あるいは人材は求めなくてもよろしいのだ、こういう考え方に立つということに結果的にはなってしまうのでありますが、そのように理解をしてよろしいのかどうか、また、そういう作業をするのは一体どういう理由に基づくものであるか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  85. 金子美雄

    参考人金子美雄君) 先ほど申し上げましたように、われわれとしては高いところに比較するとか低いところに比較するとか、そういう数字を見てどうこうということではないのでありまして、百人以上というところを民間賃金の水準として考えるのが妥当であるという考え方に立っているわけであります。なお、この比較をいたしましても、その数字自体が必ずしも絶対的なものであるかどうかということは別問題であります。つまり、ただいまもお話いろいろありましたけれども、公務員の給与、それから民間の給与というものを根本的に比較し、あるいは公務員の、公企体の職員の質でありますとか、そういうものを問題にする場合には、賃金だけでなしに、もっと他のいろいろな要素というものもあわせて考えなければならないというような問題も派生してまいるかと思います。今回の場合は賃金水準の比較でありますけれども、実際の数字で申しますと、実は個々の公企体と民間の給与というものを、いまのような形で比較いたしますと、相当多額のでこぼこというものが生ずるわけであります。しかし、そういうでこぼこというものを、たとえば二千円とか三千円という差が出たといたしましても、それをそのまま機械的に考えるかどうかということはまた別の問題でありまして、公企体の仲裁委員会が裁定しておりますのは、特に問題とするほどの格差がないというのは、公企体全体についての問題でありますが、実際に個々の公企体との関係でいえば、また違った姿が出るわけであります。しかし、それはそれといたしまして、公企体の賃金を実際に決定する場合には、理由書の後段にありますように、たとえば民間の春闘というものによってきめられたことしのベースアップという程度のものは賃金を上げているという結論を出しているところでもわかりますように、そういう統計から出る機械的な格差というものを、実際の何千何百円という賃金の決定に、必ずしも機械的にはとっていないわけであります。その点もどうぞ御了承願いたいと思います。
  86. 亀田得治

    亀田得治君 時間の都合もありますが、問題点は、ともかく民間賃金との比較をどう扱うのが合理的かというところでやはり一番議論もあり、また、われわれもそこに関心が集まっているわけであります。そこで、いまお聞きしますと、資料の取り方などもはなはだ場あたり的な感じを受けるわけなんです。そういうことで大事な組合員のベースが左右されるということは、はなはだ遺憾だと思うわけですが、公労委としても調停、仲裁の過程で、直接共通資料をお集めになったわけでしょう。それは最近までのものを調べた資料を集めたわけでしょう。昭和三十八年の十二月、三十九年の一月まで入っているのもあるように聞いておる。そういうものは集めながら、なぜ昭和三十六年四月と現在といったような、そういう古いものをお使いになるのか、これもはなはだふに落ちない、どうなんです。
  87. 金子美雄

    参考人金子美雄君) お答えいたします。公企体の賃金につきましては、事務当局として随時いろいろな資料を集めております。しかし民間の賃金と比較する場合には、民間のほうの資料が問題でありますが、同時点で民間の賃金を調べた資料は三十六年四月の調査が、われわれといたしましては最も新しい権威のある資料だと考えております。
  88. 亀田得治

    亀田得治君 聞いておるのですが、共通資料というものは民間賃金が載っておらないのですか。
  89. 金子美雄

    参考人金子美雄君) 民間の賃金は公企体としては調査いたしておりません。
  90. 亀田得治

    亀田得治君 公企体が労働省なり関係各方面に頼んで集めたのがあるでしょう、ごく最近の状態というものが。
  91. 金子美雄

    参考人金子美雄君) 民間の賃金については調べておりません。
  92. 亀田得治

    亀田得治君 そんな、公企体関係だけは昭和三十九年一月現在まで把握しながら、民間のやつはそんな古いものしか調べない、それは怠慢じゃないですか。そういうことは二、三年出雇えば非常な大きな賃金の全体の状況というものは違うわけですから、なるべく最近の新しい時点におけるものをつかんでそうしてやる、これは当然な仕事じゃないですか。まあよろしい、それは。まあそういう態度を肯定するわけじゃないが、どうなんです、調べたらいいじゃないですか。公企体のやつを調べながら、どうして民間のやつを調べることができないのですか。
  93. 金子美雄

    参考人金子美雄君) 民間の賃金の調査というのは、たいへんな予算と手数を要するものでありまして、この三十六年四月の統計は、労働省が指定統計として行なわれたいわゆる賃金センサスと称する非常な大調査であります。それが、われわれが今日使えるような形で発表されたのが昨年の八月であります。われわれとしては、これは最も新しい統計と考えるわけであります。そういう広範な大調査というものは、なかなか集計に時間がかかります。
  94. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 関連して。これは重大な、奇怪なことを聞くわけですが、もちろん労働省の賃金センサスはそうかもしれません。しかし人事院は、この三十八年の四月一日、五十人以上の事業所を抽出して相当広範に調べておるでしょう。私はそれをとれとは言わない。少なくとも仲裁裁定として出される場合には、そういうものを一ぺん参考として見るという熱意はなかったのですか。私は、その点は実にどうも仲裁裁定をあいまいにやられたと思うのですね。それを聞きまして、私きょう何もこういう関連質問しようという考えがなかったのですが、あまりにも奇々怪々なことを聞いたから、私はそれを聞くのですが、なぜ人事院勧告の資料を参考までにとらなかったか。
  95. 金子美雄

    参考人金子美雄君) 人事院の調査は、御承知のように職種別ということを原則とした調査でございまして、われわれのほうは、組合側も当局側も、賃金水準の比較につきましては年齢階級別でありますとか、あるいは勤続年数別でありますとか、いわゆる一般に賃金モデルを決定する諸条件、つまり勤続年齢制度というそういう資料で調べることをやっておりましたので、人事院の統計は直接調べておりません。
  96. 藤田進

    藤田進君 関連して。この際、総理にお伺いいたしますが、ことしの、三十九年度の一般会計予算その他でも御答弁ありましたように、民間の大企業、中小企業とのそれぞれの賃金格差は漸次縮まってきたと。それは昭和三十六年ごろから、池田総理の言をして言えば、わが政策がよかったということで、所得倍増計画に沿って賃金格差はだんだんと縮まってきたと。これはまあ一面現実にそういう面もあったと私どもも聞いたわけでございますが、三十六年、七年、八年、九年と、少なくとも正味今日三年経ている。三十六年当時から、百人以上のいわば中小企業を中心とする賃金というものは、実際にいまの公共企業体よりは伸び率が格段に違うです。それはかねて総理の答弁のとおり違ってきております。今度の裁定の百人以上ということになれば、これは相当なウエートを占めておるのです。百人以上の職場の数、並びにその労働者の数、したがって、賃金水準についていろいろなことを言っているけれども、でたらめ言っているんです、あれは。かなり響くです。したがって、少なくとも三十九年度以降の、これも半ばの給与をきめるにあたって、三年前の比較において格差はないということは、統計数字をもって対抗される総理としては、これは納得がいったはずがないと思うんです。私ども納得がいきません。この点は正直に答えて総理いかにお考えでしょう。
  97. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御質問の点がはっきりとれなかったので、もし間違っておったら再質問をお願いいたします。  私が賃金格差が縮まったと言うことは、民間におきまするいわゆる大企業、中小企業等の間の格差が縮まってきているということを言っているのでございます。したがって、私は公共企業体の賃金と民間の賃金の格差が縮まったとは言っていないのであります。したがって、太田君との会見につきましても、公共企業体の賃金は民間賃金との均衡をとるべきだということは法律できまっておる。だから均衡をとるということに合意したわけでございます。したがって、私が言うのは、民間の賃金の上昇を見ながら公共企業体の賃金も考えなければいかぬ、こういうことなんであります。その考え方に間違いはないと思います。ただ、御質問の点が、三十六年を基準にしてやったならば民間の賃金は相当上がっていると、格差の縮まりも……。しからば、公共企業体の賃金もならうとすれば相当上がるべきじゃないか、こういうことだろうと思うのでありますが、公共企業体のほうも相当上がっておるじゃございませんか。したがって、いまの時点において比較をどうするということになりますると、一番そういう格差の問題で調査したのは昭和三十六年の実態調査、非常に金をかけた。それが昨年の八月にでき上がったから、資料としてはこれが最近のものだというので仲裁裁定ではお使いになったという御答弁でございます。私はやむを得ないかと思います。
  98. 藤田進

    藤田進君 ちょっと聞き違いがやっぱりあるようです。かなりの点、質疑いたしました問題点を把握されておりますが、どうも総理の結論が、数字をもって鳴る総理としてはどうもおかしいのですね。三十六年は、つまり五十人あるいは百人、千人、あるいは三千人といったように、それぞれ企業の規模によって賃金は格差がある。その平均をとってみれば、企業規模の小さいもの、中小企業のほうが大企業よりは賃金水準は低かったわけです。そこで、その当時の三十六年の民間産業のうち、大企業の賃金水準の伸び率よりも中小企業に所属する労働者の伸び率のほうが、その後三年でかなり大きくなったわけです。だから、大企業と中小企業の格差が縮まってきたと総理はいつも言われる。そのことはいま認められたわけです。そこで、その当時、つまり三十六年当時に、百人以上の事業所を含めた統計によるわけですから、中小企業が相当部分これにはあるわけです。そこで、その当時の百人を入れられているわけですが、したがって、民間はかなり低い賃金です、いまから見れば。三十九年度、八年度よりは、どう考えてみても。その民間の谷底というか、低いところと公共企業体との差を考えられたわけでですから、公共企業体もむろんその後年々ベース改定はしております。おりますが、もともとそのベースが違うわけですからして、同じテンパーセントの伸び率であればだんだん格差が広がってくるわけです。ところが、今度の場合、それを是正するのではなくて古い資料をとっているものですから、だんだんと開いたものを、今日まで三年間開いてきたものを直すんじゃなくて、三年前の、多少開いているものを、いま数字を言っていたが、少し開いたときのものを論じて、これで格差がなくなったんだ、たいした格差はないんだということは、どう考えてみてもこれは理屈が通らないと思う。統計は現実にその年のを一年間でとれなければ、サンプリングとしてこれをピックアップしてとっていくとか、これは方法があるんです。それをやらないで、いまのような答弁で総理がこれを納得了解しておるということはどうもおかしいので、考え直してみていただきたい。
  99. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 問題は二つあると思います。民間のほうの格差はなくなって縮まったという、それなら公共企業体の格差は縮まらないという前提があるかどうかという問題ですが、公共企業体のほうは私は格差が縮まっておると思います。その程度の分をどう見るかということにつきましてはいろいろ批判があります。そうして先ほど申し上げましたように、三十六年の調査は古いと、こうおっしゃいますが、いまとしては、昨年の八月出たんだからこれよりほかにしかたがないじゃないか、今後におきましてどういうふうな調査をするかは別問題、だから二つの問題があります。一般企業のほうの格差は縮まったが、もし片一方の公共企業体の格差が縮まらぬという前提じゃございますまい。これも格差が縮まっておると見る。民間の分をとるのは三十六年をとることがいいのか悪いのか、それはいまの実情として、先ほど言ったようにやむを得ぬ、八月に出たんですから。ほかにどういう方法があるか、それは今後考えてやるべきことで、いまの状態としては、先ほどお答えしましたように、昨年の八月できたそのための調査を使うよりしかたがない、やむを得ない、こう答えておるんです。
  100. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 関連。いま総理大臣は、三十六年の四月の統計が三十八年の八月にできたんだから、これが一番新しいんだからしょうがないと言われたんですが、三十六年と、今年は三十九年ですから三年たっておるわけですから、戦前の三年なら物価はたいして違わなかったと思うんですが、いまの三年はえらい違いがある。具体的には総理大臣をはじめ国会議員の歳費だって三年前といまとはえらい違いがあるんです。それだけの違いというものを現実に考えたならば、それは労働省としても二年前の数字を出してそれを基準にして三年後の賃金水準をきめる場合の参考にするということはまずいというふうにお考えにならなければならないと思うんです。やはりこの三年間の違いというものをどこかで修正するという方法を労働省自体として考えるのが私は親切な方法じゃないかと考えるのでありますが、労働大臣として、この統計の発表に時間がかかったという理由、かかった場合の措置というものはどういうふうにやるべきであった、今回のようなやり方が親切な妥当な方法であったというふうにお考えになるのかどうか、労働大臣から御答弁を願いたいと思います。
  101. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 御承知のように、公共企業体等労働委員会は労働省の所管部局ではございますが、仲裁裁定なりあるいはあっせんなり、その職務の執行に際しましては、独自の立場とその責任においてやるということに相なっておりますので、私の立場から公企体がこの仲裁裁定を出すにあたってとりましたいろいろな処置につきまして、かれこれ批評を申し上げることは、差し控えたいと存じます。ただし、公共企業体等労働委員会がこれまでの実績、経験から、将来にわたってこれこれの統計が望ましいというような希望がありましたならば、今後十分に相談に乗ってまいりたと思います。いずれにいたしましても、公共企業体等労働委員会が必要な資料は労働省もできるだけ協力をするつもりではございます。
  102. 亀田得治

    亀田得治君 なかなかいいかげんなことをやっているということがはっきりいたしましたから、ひとつ次に移りたいと思いますが、この民間の何人規模をとるかという問題につきまして、当局側はどういう考えを出していたわけでしょうか。総評では、この経営規模の大きさという点がやはり比較の基準だという立場から、千人以上というものを主張していたわけですね、それに対して郵政関係ですか、これはまあ地方に小さないろいろな職場等もあるといったような特殊事情から、郵政だけは例外であったように聞いておるのですが、そのほかの当局のほうは百人なんというようなことを考えていたものは一つもないんでしょう。その点これは一人々々聞いたほうがいいわけですが、これは相当論議になった問題ですから、どういう意見を当局側として出したのか、三公社五現業、これは全部責任者からひとつその点を明らかにしてほしい。まず国鉄からやってください。民間との比較において、規模をどこがどういう規模が正当と考えたのか。
  103. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) お答えいたします。  今度の仲裁裁定について国鉄として主張いたしましたことは、公共企業体間の格差是正をしてくれ、そうしてその上にできるならプラス・エックスを加えてくれ、こういう主張です。民間との格差の問題につきましては、これは当然仲裁裁定でやるということに私どもは了解しておりましたので、特に国鉄の賃金と民間の賃金の差をどうしてくれというようなことは、私のほうとしては請求しなかったのであります。
  104. 亀田得治

    亀田得治君 専売は、簡単に。
  105. 阪田泰二

    説明員(阪田泰二君) 専売公社が専売公社職員の給与と民間賃金との比較をいたしますにあたりましては、これは先ほど来いろいろ御質疑がありましたように、いろいろな統計がございますが、必ずしも十分に適切にこれでいけばいいというようなぴったりした統計が見当たらないのでございますが、普通私ども毎年やっております場合には、毎月勤労統計、これにつきましては大体五百人以上のところをとって比較をやっております。また、賃金実態総合調査、ただいまお話のありましたことですが、これにつきましては、大体規模十人以上の分と規模千人以上の分、両方参考にいたしております。それから東洋経済統計月報、これにまた賃金の統計がございますが、これにつきましては、企業規模五百人以上というものをとっております。いろいろそういったような資料を参考といたしまして、公社側の賃金に関する案を考えておるわけでございます。
  106. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと、答弁八人してもらうわけですから、民間との比較を何人規模ということで意見を出したのか、出さぬのか、出したとすれば何人をいったのか、この点にしぼって簡単に答えてください。
  107. 大橋八郎

    説明員大橋八郎君) 電電公社としては、特に何名という統計を基礎にするということは出しておりません。
  108. 亀田得治

    亀田得治君 なお、郵政以下、どうなっておりますか。
  109. 古池信三

    国務大臣(古池信三君) お答えいたします。私のほうでは、大体中小企業を含めて対象とすべきものであって、千人以上というような大企業を対象とすることは反対であるということを申しております。
  110. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 林野関係で農林大臣。
  111. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) お答えいたします。林野関係におきましては、民間との比較の数字は出しませんで、一般公務員との比較において給与の改定を主張したわけでございます。
  112. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 大蔵大臣、印刷局関係
  113. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 印刷につきましては、何人以上といったようなことは主張いたしておりません。
  114. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 通産大臣、アルコール関係
  115. 福田一

    国務大臣福田一君) われわれのほうといたしましては、仲裁関係の方におまかせをいたしているのでございます。
  116. 亀田得治

    亀田得治君 この仲裁委員会のあり方として、はたしていまのようなことでいいのかどうか。この民間の比較が今回は非常に重要な課題になり、そうして組合側のほうは規模からいって千人以上でなければならぬという主張をしている場合、そういう場合に、当局側にその点の意見を求める。出さなければ求める。出せばその理由を明確にしてもらう。これは私は当然やるべき仕事じゃないかと思います。あなたは先ほど人事院の場合と仲裁の場合は違うのだ、私もそれは仲裁委員会は若干違うと思うのです。あっせん、調停、仲裁と、これは法律的な効果は調停とは非常に違うわけなんです。しかし、立場というものは非常に似通っているのじゃないか、調停の延長としての仲裁なんですね。したがって、当事者のお互いの考え方を詰めていく、こういうことは当然仲裁委員会としてやるべき仕事なんです。それを一方だけは意見を出さして、一方のほうは、あるものは言う、大部分のものは言わない。そういう問題を詰めないで、それで一体仲裁委員会というものは正しい仕事をやっているというふうにお考えでしょうか。それを詰めないで、今度は使うほうの資料はかってに使って、これが客観的な判断だ、そんなばかげたことはないじゃないですか。まず、第一段階において、両者の根拠となっている問題点は詰めてかかる必要があるわけでしょう。これはどうなんですか。
  117. 金子美雄

    参考人金子美雄君) お答えいたします。  先ほど来、各公企体の当局から御答弁がありましたように、民間企業に対する考え方なり比較の方法というのは、それぞれの公企体においてみんな違っております。したがって、仲裁委員会としてこの問題について集約的な考えを求める際には、それぞれ仲裁委員会には労働者側の委員、使用者側の委員というものが参与として参加しておりまして、そういう使用者側の委員を通じて全体の意見を集約的に聞かしてもらうと、こういう立場をとっておりますので、ただいま問題となりました規模の問題につきましても、われわれといたしましては、使用者側の参与委員を通じてその意向を聴取いたしております。
  118. 亀田得治

    亀田得治君 先ほど各当局の責任者は、大部分が意見を出しておらぬと言っている。使用者側の委員を通じて意見を聞いておると、あなたはこう言いますが、出しておらぬ意見をどうして聞けるんですか。どんな意見を聞いたんです。これをはっきりしてください。
  119. 金子美雄

    参考人金子美雄君) お答えいたします。  合議の段階におきまして、民間産業の規模を何人のところにとるかという問題について、使用者側の意見を聞いたわけでございます。
  120. 亀田得治

    亀田得治君 だから、具体的にそれを言ってください。先ほど当局の責任者は、出しておらぬというのが大部分なんです。
  121. 金子美雄

    参考人金子美雄君) 使用者側の参与委員と各当局との間にどのような連絡があったかということはわれわれは関知いたしておりませんが、使用者側委員意見といたしましては、少なくとも対象労働者の過半数を占める部分によって比較すべしというのが使用者側の意見でございました。
  122. 亀田得治

    亀田得治君 違いますがな。私の言うのは、この調停、仲裁というものは、委員の人はこれは判断する人なんです。委員じゃなしに、当事者のなまの意見というものをその委員の人が聞くべきなんです、これは。その基礎が一つも出ておらぬじゃないですか。それは委員としていいかげんな意見を言っているということになる、使用者側の意見としていまおっしゃったようなことは。肝心のもとのほうはそんな意見を出しておらぬわけですね。なぜその意見を詰めないかと言うのです。それは、私は、そういうやり方は公企体法の違反だと思うんですよ、いまおっしゃったようなやり方でずっときておると言うんなら。この第一条の第二項ちょっとあなた読んでごらんなさい。第一条第二項を全然それは無視している。ないですか。私から言いましょうか、なければ。「この法律で定める手続に関与する関係者は、」、これは調停も仲裁も含めた委員です。「経済的紛争をできるだけ防止し、且つ、」、その次に「主張の不一致を友好的に調整するために、最大限の努力を尽さなければならない。」。何か仲裁委員会は勘違いをしていやせぬかと思うんですね、いままでのやり方を聞いていると。何か客観的に、自分たちがこれが正当だからということで適当な説明をつけて判断をすればいいように思っているんじゃないかという感じがするわけです。そうじゃないわけなんです。まず当事者の意味の調整なんですよ。で、もし当事者の意見がそこで合えば、客観的に見て多少それが変だなと思ったって、調停、仲裁というものはそんなことに関与する必要がこれはないわけです。何か仲裁委員会というものは賃金決定機関のようなふうに誤解しているんじゃないかと思うんですね。だから、そういう考え方があるから、当事者の考え方をよく煮詰めて、そうしてまとめてということが一つも出てこぬのです。どうです、これは。どういう運用をやっているんです。会長に出て来てもらわぬとこういうことは困るわけですけれどもね。労働大臣どうですか。仲裁機関としてのあり方です。
  123. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 公労委といたしましては、御朗読になりましたような法律に従って、誠実にその職務を執行すべきものと考えるのでございます。
  124. 亀田得治

    亀田得治君 実際問題としてやっていやせぬじゃないですか。今度の紛争の一番大事なところについて、仲裁委員会を開いた段階においてもわずか一時間でしょう、事情聴取は、一つの組合について。どうです。
  125. 金子美雄

    参考人金子美雄君) 今回の調停、仲裁の場合は、おおむね二月の十七日ごろから五月の初旬にかけて、調停委員会としての事情聴取を五回ないし六回行なっております。その結果として、総会の決議によって仲裁に移行したのでありますが、調停段階における当事者の主張、諸資料、それらはすべて仲裁委員会に引き継ぐ、こういうたてまえになっておるのでありまして、なるほど仲裁委員会としての事情聴取は一回だけでございましたが、それは過去数十日間の調停段階の最後の仕上げという意味の事情聴取でありまして、調停段階を含めれば、われわれといたしましては十分審議を尽くしたと確信しております。
  126. 亀田得治

    亀田得治君 その民間賃金との比較というのは、池田太田会談がありまして、それから本格的にこれは何とかしなければいかぬということになってきたわけです。その段階においてほとんど意見を聞いておらぬじゃないですか。一方の意見だけしか出ておらない。当局側は、先ほど言ったように、一つ意見を出しておらない。出せばこれは組合から追及されるわけでしょう。おそらく、数字的に出そうということになれば、郵政等のような特殊なところは別として、それは従来の例等からいいましても、五百人とか、そういったような数字が少なくとも私は出てくると思う。それをなぜ意見を詰めなかったかということを聞いている。大事なことです。そういう詰め方をしていないでしょう、比較の規模について。
  127. 金子美雄

    参考人金子美雄君) 民間給与との比較の方法につきましては、組合側も必ずしもすべての公企体の組合が民間の千人以上と比較するという主張をしているのではないのでありまして、それぞれの公企体によってそれぞれの主張、立論のしかたは異なっております。それぞれの主張の点については、当事者間の意見が十分ただしてありますけれども、千人か百人かという問題は、全体としては調停、仲裁の段階では起こってきているわけではないのでありまして、これはわれわれの最後の裁定合議の段階における問題として取り上げられた問題でありますので、全体としては合議の段階における労使双方の参与委員意見というものを十分確かめるということをもってわれわれは審議をいたしたつもりであります。
  128. 亀田得治

    亀田得治君 それはあなた、組合側の意見がまた違うようなことをいま言われますけれどもね、それは特殊な例外の問題でしょう。じゃ八つの組合一々についてここで説明してください、どういう意見があったか。特に例外的な発言があったようなことをとらえて何か言われるようだが、共通しては千人以上という主張が出ているでしょう。はっきりそういうことまで否定されますか。
  129. 金子美雄

    参考人金子美雄君) 電電の場合には、国際電電との賃金の比較ということが主張されました。  またアル専の場合には、アルコール製造業というもので比較が主張されております。  専売の場合には、食料品等というようなものの産業が比較の対象となって論議された例もあります。  以上のように、必ずしも仲裁、調停の段階で、千人か百人かという形の論議が集約的に行なわれたのではございません。
  130. 亀田得治

    亀田得治君 だから、千人というのは、こちらはまあまとめた言い方をしておるわけです。それに対して、電電であれば国際電電もあるでしょう。しかし、いずれにしましても、組合側はその点を非常に重視して意見を出しているわけでしょう。またもっともな意見でしょう、法律でもちゃんと書いてあるわけですから。なお会談もあるわけなんです、その点を重視するということは。だから、その詰め方をしないままで、そんな問題は仲裁委員が判断することだといったようなことで百人以上というような比較をされるということは、これはもう僭越しごくですよ。仲裁委員会のあり方として、これは間違いですよ。詰めるべきものを詰めないで、事実調査もやらないで判決をしているようなものです。  それから、各当局の責任者に聞きますが、今度の仲裁裁定の実施につきまして補正予算を組まないでやる、こういうふうになったようですが、その裏づけですね、財源措置をどういうふうにやられるのか。これは全部、ひとつ要点だけを明らかにしてほしい。
  131. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) お答えいたします。国鉄は今度の仲裁裁定によりまして人件費の増が二百六十七億であります。それに対しまして予備費六十五億ありますので、そのうちから五十億をひねり出す。それから資産充当で四十五億——資産充当というのは、これは不用の財産を売却してそれによって得た金であります。それから、その次には増収であります。これは二十億。これは雑収入の増。詳しく申し上げればちょっと長くなりますから申しませんが、これは十分あるということです。それから一番大きなのは経費の流用で、これは大部分が、退職金を三月三十一日までに払うのを一日延びて四月の一日に払うというようなことで何とかやりくりがつくと、こういう確信を持っておるのであります。
  132. 亀田得治

    亀田得治君 最後のやつ、幾らですか、流用は。
  133. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 流用は百五十二億であります。そのうちで退職金の流用が百二十二億、あとの三十億は工事費の流用。それで念のために申し上げてきまするが、これをやりくりするにつきましても、保安対策に関する費用については絶対に手をつけておりませんということでどうぞ御了承を願います。
  134. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 時間もあれですから、私が便宜申し上げます。造幣は計一億でございますが、移流用が五千万円、予備費が五千万円、計一億。印刷が三億六千万円でございまして、移流用が二億六千万円、予備費が一億、計三億六千万円、林野が二十億三千万でございますが、予備費で全額充当いたしております。アルコールは六千万円でございまして、移流用が三千万、予備費が三千万、計六千万でございます。郵政は百二十四億四千万でございますが、増収分を見込みましたものが三十八億でございます。それから他会計の電電等からの繰り入れ、受け入れが六十六億七千万円、移流用が九億七千万円、予備費が十億、計百二十四億四千万円。専売が十五億八千万でございまして全額移流用及び予備費を充当いたしております。国鉄は、いま申し上げたとおり二百六十六億五千万円でございます。電電の合計は百五億七千万でございますが、資産充当が二十四億円、移流用が六十一億七千万円、予備費が二十億円、計百五億七千万円。純計といたしまして五百十五億弱となるわけであります。
  135. 藤田進

    藤田進君 関連。私ども本年度予算の審議をいたしましたものとしてまことに心外なんです。時間がございませんので、郵政大臣にだけこれは一つの例として聞きますが、私ども予算審議の段階で、部会で、いま仲裁裁定におそらく行くかもしれない調停段階であるけれども、民間産業の動向から見てもいずれベース改訂というものが当然あるだろう。これに対して三%前後しか各省庁とも見ていない。これは自然——新陳代謝その他の財源でしょう。それ以外にベース改訂がかなり大幅にある。少なくとも一〇%以上ある。そういった場合にはどうするのかということに対しては、いまのような移流用の答弁をしていないんです。移流用じゃない。そのときは補正予算なり何なり考えなくちゃならぬという意味のお答えで、それぞれ必要性を、ベース改訂を予想しないで、それは別の問題として考えられて予算というものを組む考えだという答弁を、何回突っ込んでも、されている。必要なら速記録を出してもよろしい。いまの大蔵大臣の御答弁のように、かりに郵政でいえばやっていけるということになれば、予算審議の段階で御答弁なさったことがうそなのか、今度のこれがうそなのか、どちらなんです。
  136. 古池信三

    国務大臣(古池信三君) お答えいたします。予算審議の際にも別にうそを申したわけではございませんが、ことしはようやく新年度に入りましてまだ二カ月済んだばかりでありますので、今後の収支の見通しというのもここで確定的なことはもちろん申し上げかねますが、大体その当時の収入の見込みというものは、過去の五年間の実績に基づきまして一定の算式に基づいて出したわけでございます。ところが、その後二カ月の収入の趨勢を見ておりますと、まずこの分で進んでいけば大体二十七、八億円の増収が見込まれるのではなかろうかという一応のめどがついたわけでございます。さらにオリンッピクの東京大会の際の記念切手の問題ですが、これも最近記念切手発行に対する国民的な要望が非常に強いものですから、これも相当発行したい、こういうふうに踏み切りました。そうしますと、それで十億程度の増収が見込まれる、こういうわけでございますので、何とか補正予算を組まないでもこの措置ができそうに今日考えられる、こういうことであります。
  137. 亀田得治

    亀田得治君 まあこれだけ大きなものを補正を組まないでやっていくと、どこかに非常なやはり無理がくるのじゃないか。もし予算というものがきちんとつくられておるのであれば、これはだれでも感ずる疑問なんです。代表的に国鉄のほうをちょっと聞いてみますがね。この工事費の三十億使う、こういうことでありますが、まあ保安のほうには手をつけないというお話でありますが、三十億というと相当なやはり工事量だと思います。簡単にそういうものをストップしてこれはいいのですか。一体どこを考えているのですか。
  138. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) お答えいたします。  三十億の工事費の問題は、これはひとつこれから大いに努力をして、単価の引き下げによってひねり出そう、こういうことなんで、多少無理はあるかもしらんが、しかしできないことはないんじゃないかというようなふうに考えております。  それからついでに申し上げますが、予備費の五十億、これは例の雪害だとかというものに対して六十五億組んでいるのでありますが、雪害なんというものは年によって大になり小になり、これは神さまに聞いてみなければわからぬが、まあそれぐらいのものははちゃんと取ってよくはないか、どうしても足らぬときには補正予算を組んでいただく、こういうように考えております。
  139. 亀田得治

    亀田得治君 そんな単価の引き下げというようなことを簡単にやれるのでしょうか。そういうことをすると、必ずそのしわ寄せがまたどこかへ出るのじゃないですか。そのためにまた人命にも及ぶようなこともできてくるかもしれない。まだその内訳などはどうもはっきりしておらぬような答弁のようですね。単価の引き下げでやろうという程度のことなんですか。
  140. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 請負業者との契約というものは、まだ三十九年度において全部きまっておるわけじゃありません。が、しかし、いまの情勢から考えれば、物価そのほかの情勢から考えれば、単価の引き下げ、全体の工事費の中から三十億ぐらいをひねり出すということはこれは努力次第によっては決してできないことではないと私は考えております。
  141. 亀田得治

    亀田得治君 単価の引き上げということが途中起こってくるというようなことはあっても、これは初めて聞きますな、単価の引き下げということは。まあ補正を組まないでスムースにいけりや、それはけっこうだと思いますが、なかなか私はむずかしい問題だと思うのです。まあいずれそういった点はまたはっきりする時期があろうと思いますから、その時期にあらためてお尋ねすることにします。  大体予定の質問は終わったわけですが、ちょっと二、三つけ加えて総理大臣にお聞きしたいと思います。時間がありませんので、ほんの問題点の指摘だけであり、したがって、まあ大まかなお答えになろうかと思いますが、文化財の保護という問題ですね。これはずいぶんいろいろな建設事業があちこちにあるわけですが、そのために古墳が非常に荒らされておる。所有権の関係なりいろいろむずかしい問題もあるわけですが、ともかくこういう民族の共同遺産ですね、こういうものが当面の建設の便宜というようなことでこわされていくことは、はなはだ残念だと思う。文部大臣なりあるいは建設大臣——まあ建設大臣はこわすほうですが、両方ともきょうはおられないから、お聞きできないわけですが、もう少しこういう点について法律的な規制をするとか——まあ文化財に関する規定が若干あることは私も知っておりますが、もう少し検討して規制を強めるとか、あるいは行政指導などについてももっと強くやる、また、財源の措置も必要ですね。そういう点について総合的に前向きの姿勢がとれないものだろうか。おそらく総理大臣もいろいろな陳情を受けておると思いますが、私もやはり最近、大阪府下の茨木市の将軍山というところの古墳、これは四世紀ごろの古墳ですがね。専門家の間では何とかこれを保存したいと言っているのですが、建設の関係のほうからはこれができない。しかし、それならば、せめて現状の調査ですね、記録をきちんと整理しておくとか、そういうことをやりたいということで調査をやっておりますが、ところが、その現場を見ますと、調査は予定よりおくれる。そうすると、建設のほうがどんどん追いかけてくる。もう非常にあぶないのですね。調査をやっていると、いつ土がくずれてげがをするかもわからぬというようなことをやっているのですね。私きょう写真も持ってきているのですがね。これでは一流の文明国とは言えないですね。一方では、文化財の保護のためにそういう方面の人が非常に働いておる。こっちのほうでは、まあもうけ仕事です、一種の。そういう諸君がブルドーザーで土を削っておる。豪雨でも降って間違ったら、くずれてもうたいへんなことが起こる、こういう現状ですね。ほかにも私はあるのだと思いますが、何とかもっと積極的な姿勢というものがとれないものかというように考えているわけですが、総理のひとつ気持ちを聞かせてほしい。
  142. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 文化財の保護は、お話のように、文明国として最も重要な問題として考えなければならない。ことに日本は古い歴史を持ち、そうしてまた今後観光ということを考えれば、これが保護には十分の熱意を持っていかなければならぬということは当然であります。したがいまして、文化財に指定されるならば、それにつきましての取りこわしあるいは保存等、十分な検討を加えるたてまえになっておるのでございます。私が最近の経験では、奈良の平城、これに私は四億の予算を特に組みまして、これが保存とそうしてまた整備を計画しておる状況であります。文化財の保護につきましては、いままで以上の私は関心を持ってこれが保存に当たっていこうと考えております。ただ、文化財として指定せられないものにつきましての保護はいろいろ問題がございます。したがいまして、指定するかしないかという点を考えながら私はやっていかなければならない。ただ、いままでの経験から申しますと、一部にはあまりに保護がきつくて、産業経済の発展のためにある程度のものはやむを得ないのじゃないかというような議論も相当あるのであります。片一方では、絶対にできないという議論もあるところでございますが、具体的の問題につきましてはそのつどつど考えていかなければならない問題だと思います。
  143. 亀田得治

    亀田得治君 時間もまいりましたから、もう一問だけにいたします。  綱紀粛正の問題で実はきょうは若干お尋ねしたいと思って法務大臣にも来てもらったわけですが、最近公務員の汚職が非常にふえておる。これは新聞でもときどき出て非常な批判を受けておるわけなんです。総理としてはどういうふうにこういう問題には対処したらいいのか。それは単なる精神訓話だけではいかぬと思うのです。その所信をひとつここで聞いておきたい。  それから法務大臣には、たとえば検察庁にまで最近はそういう問題が及んでおる。せんだって名古屋の高等検察庁でごちそうになって、収監を、刑務所へ入れるのを延ばしておったといったような問題等も出ておる。法務大臣として、最近の賄賂罪の状況なり、これに対する考え方ですね、どこに問題点があるのだろうか。まあ具体的ないろいろな事件のケースによって違うわけですが、大まかな考え方だけをひとつ明らかにしてほしい。
  144. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 汚職事件の絶えないことは、まことに遺憾千万であります。行政の威信の上から申しましても、絶滅を期さなければなりません。内閣としては常に心がけ、関係各省でも防止に万全を尽くしていると考えておるのでございます。なお、今後ともこういう汚職事件の絶滅のために努力していきたいと思います。
  145. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 検察部内にお話のような問題が起こりましたことは、まことに遺憾千万であります。ひとり検察内部のみならず、官公庁にそういうことがございますのはまことに遺憾な問題でございまするが、とにかく法に対する責任を持っているその官庁にお話のような事件があることは、私はまことに遺憾に存じております。  その原因につきましては、いろいろあると思います。一面、戦後におきましては、法の軽視というムードと申しますか、そういう点もある。また、責任感というものが非常に薄くなった、こういう点もあるように考えます。それからいろいろ一般を通じまして、行政の組織、それからくる問題、事前にそういう問題に対する監視、したがって、そういう問題を起こさないような組織の上に当人が置かれる、こういう問題等やはりいろいろあると思います。まことに遺憾でございまして、それらの点に十分注意しましてなるべく引き締めてまいるつもりでございます。  ただ、数字の上から申しますと、必ずしも戦前に比べてふえているとは申されません。全体といたしましてむしろ減っておるのではないかと思われる次第でございまして、非常にふえているという事態ではないと思います。しかし、それだからといって決して安心して油断するのではなく、今後こういうことが絶滅されますように努力してまいりたい、かように考えております。
  146. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 亀田君の質疑は終了いたしました。  午後は一時三十分に再開することにいたしまして、暫時休憩いたします。    午後零時五十五分休憩    ————————    午後一時四十六分開会
  147. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行ないます。  委員の変更がございました。安田敏雄君が辞任され、北村暢君が選任されました。   —————————————
  148. 太田正孝

  149. 大谷藤之助

    大谷藤之助君 先週の日曜三十一日の朝八時半から約三十分にわたって、表題は「大野副総裁急逝の波紋」として行なわれたフジテレビの放送をめぐって、特に質疑を行ないます。  まず、総理にお伺いいたしますが、総理はこの放送はむろんお聞きになっていないと思いますけれども、一応荒筋は御承知でございましょうか。
  150. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日曜日で旅行いたしておりましたので、そのテレビは聞いておりません。しかし、事柄の概要は聞きました。また、衆議院におきまするこの問題につきましての質疑応答も承知いたしております。
  151. 大谷藤之助

    大谷藤之助君 実はこれが、当時の録音の、郵政大臣に提出された現物でございます この録音の速記も手元にあるわけでございますけれども、これをいまお読みし、あるいはお聞かせする時間もございませんし、その内容の問題点について、ひとつ質疑を行ないたいと思います。  言いますれば、この録音、単なる一巻のものでございますけれども、これのとりようによっては、生殺与奪の権も持っておるテープだと申してもはばからない言論の暴力だと、強く指摘される方もあるわけでございますけれども、またあらためての機会に、御承知ない委員の皆さん方にお聞きを願っておくことが、これは一党派の問題ではないと思うのでございます。  実は、この放送の当日は、大野副総裁の遺体は、荼毘に付するために、御承知の高輪の自宅を、家族と訣別して密葬に行かれる当朝でございます。むろん遺族、関係者はもとより、この故人の遺徳をたたえてあの門の内外、あの沿道には、何千といういろいろな各層の人が涙とともに送っているさなかに、この放送があったわけでございます。しかも、これはいわば悪口雑言の限りを尽くして、しかも、事実を曲げて故人を誹謗し、この場で私は申すことも実ははばかるわけでございますけれども、あるいは大野副総裁を指摘して、政界を毒し国を毒する一種のキノコだ、あるいはガンだ、あるいはウイルスだ、あげくのはては、その政治活動一切のものは博労の取引のような、袖から袖へというようなことばも使い、さらには、恥部と言いますから恥ずかしい部分ということだろうと思いますが、人は隠すけれども、この恥部を頭に置いて、恥部を副総裁としていただいて云々と、こういうような、実は故人のみならず、この国会なり、あるいは政治の場全体に対する強い刺激のことばも吐いておる。最後には、大野副総裁がなくなったことは、国のためにはお祝いすべきこと云々、かようなことまで、いまだ密葬も行なわれていないそのさなかに、かような放送がされておる。その非情性、非人間性、言語道断だと私は考えます。この放送を聞いた縁のない町のおかみさんが、聞くにたえないといってスイッチを切ったということを、実は私も直接その人から聞いておるわけであります。まあ前後に例を見ないこの放送を聞かれた悲しみの遺族さんの心情を思いますれば、これはもう察して余りあるものが実はあるわけでございます。  かようなことがはたして言論の自由に該当するものであるかどうか。事実さえも曲げて、故人の名誉を誹謗棄損し、あるいは侮辱する。さらに、あるいは政治に携わる者、いな国会国民全体を侮辱冒涜し、人が政治を破壊すると言っていますが、自分から口の下で、この放送を通じてむしろ政治に対する不信を国民にあおり上げたいと、さような意図すら実は勘ぐられるようなこの放送は、もしこれを見のがすというようなことがあったら、これは、その人の政治感覚を私は疑う。また、これに憤激しないような人間であるならば、私は人間でないとさえ申し上げたいわけであります。私は、決してこの低級なそういう一部の評論家個人を名ざしてどうこう考えておるものではございませんが、むしろ直接行動、あるいは力の物理的な暴力よりも、なおおそろしい害のあるこの言論の暴力に対して、その真相というものは徹底的に糾明し追及しなければいけないと、かような見地から実は質疑を申すわけでございます。  最初に、まあ総理は、その放送はお聞きになっておりませんから、放送から私どもが感じますムードは、やはりこれは言うたことばよりも、それはテレビの大事な点でありますけれども、まず言論の自由という問題について、ひとつ総理にお尋ねを申し上げたいと思います。  もとより私どもは今日政治の場に携わっており、あるいはまた党派が違い、あるいは思想が違い、イデオロギーが違い、いろいろ立場が違う方々がおるわけでありますけれども、しかし、事実を事実としての反論やら、あるいは批判は、たとえ、これは立場が異なっておりましょうとも、私どもは謙虚に耳を傾けて、そうして進んで反省の資料とするなり、また、明日へのよりよき政治へのかてとすることは申すまでもないことでありますけれども、かくのごとくに、言論の自由に名をかりてその乱用、これはあたかも評論家の特権であるかのごとく、全国民の上にバチルスをまき散らすような、かかる評論家のあり方は、強く指摘し、自由の中にもやはり社会的な節度もございます、限度もございます、秩序もございます。いわんや、事実を曲げて人権を侵害し、名誉を傷つけ、死者を冒涜し、政治の不信をあおる、これほどの言論の暴力は、とうてい黙過できない。私ども、今日、言論の自由の殿堂だと言われる、人が言っておりますこの国会の中におけるわけでございます。何をしゃべっても刑法には引っかからない、おこられることはないといいますけれども、やはり私どものこの言論の行き過ぎは、あるいは失言として懲罰を加えられ、あるいはまた、極端になれば陳謝どころか、除名されて、その政治的生命を断たれるということもあるわけでありますけれども、評論家の言論の自由や、その行き過ぎ、乱用については、これは天下の公器であるテレビやラジオを通じて害毒をまき散らしても、これが何ら取り上げられることのない、指摘されることのない、対処されることがないということであって、はたしていいものか、私は総理の御見解を承りたいと思います。
  152. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 基本的人権であります言論の自由につきましては、やはり憲法に規定しておりますように、そこに公共の福祉ということとの関係がなければならぬことは当然でございます。確かに、こういうマスコミの時代におきましては、自由のうちにも、そのもとに良識がなければなりません。節度がなければならぬということは、言をまたないことであります。  敗戦後の状態を振り返ってみますと、行き過ぎの点が非常に多かったように考えられますが、最近に至りまして、ようやくそれが落ちついたと私は安心いたしておったのでございます。しかし、お話のような点は、私も先ほど申し上げましたごとく、衆議院の質疑におきましても、鉄道関係は事実無根のことがテレビで言われたように聞いております。また、評論につきましても、先ほど申し上げましたごとく、国民のひんしゅくを買うような評論は、これは行き過ぎでございます。やはり、みんな国民のいわゆる福祉を阻害しないようにやっていかなければならない。  なお、私は考えなければならぬことは、まだ葬送が済まないうちにどうこうと言うことは、大野先生の死後の政界を論ずるのならよろしゅうございます。それをかりて誹謗にわたるということは、私は、日本国民の道徳の上からいってもいかがやに思われるのであります。  なおまた、私の聞くところでは、全国放送であったそうでございますが、特殊な関係地域の分はカットしているということを聞きまして、私は、この点につきまして非常にまた遺憾の気持ちがいたすのであります。作為があったかどうかは、まだいま研究中でございますが、関係大臣と十分協議いたしまして、善処いたしたいと思います。  私はここではっきり申し上げますが、多年指導を受けました大野先生に対する私としての気持ちは、葬儀の際に弔詞で申し上げております。また、大野先生に対しての政治的手腕、立場、そうして貢献につきましては、衆議院の本会議でるる述べられておるのであります。これは、国民は十分承知しておると思うのであります。
  153. 大谷藤之助

    大谷藤之助君 総理のお気持ちは十二分に了解いたしました。私は直接この録音を両三度となく耳にいたしておりますが、関連した事項で一、二重複するかもしれませんがお尋ねをいたします。  池田総理は、私どもに大いに共鳴し、かねがね政治の姿勢を正しくせい、あるいはまた、人つくりということを特に強調されておられる今日でございます。まことに同感であるわけでございますが、この放送を通じまして、まざまざ、やはり筆の力というものは剣よりも鋭いと身にしみてこたえさせられたわけでございます。いわんや、筆の力でなく、言論の、この放送を通ずる暴力は、むしろ凶悪な殺人、強盗の凶器よりも、いわばむしろ、さらに深刻、広範な害毒を流すものでございます。  先ほど話も出ましたように、生前の功績をたたえて、最高の実は栄典も受けておる大野副総裁でございます。政治的な場あるいは国の場から、さような栄典を受けておる方に対して、ああいう放送がされる、また現に、きのうの衆議院における社会党山本君の弔辞、私も目の前で耳にしたわけでございますけれども、あの切々たる、私どもの肺腑をつくあのりっぱな弔辞を、まさにこの放送はさようなものはうそでござるということを、実際その事実さえ否定するようなこの放送であるわけでございます。これは一個人大野副総裁とか、あるいは池田総理のことをあげ、あるいは、いろいろその他のことをあげつらっておりますけれども、一個人ということばかりでなく、考えようによったら、あるいは国会に対して、あるいは国家、国民を侮辱するものだと、こういうふうに実は私は考えるもので、この点からも決して看過できないと思う。もう総理の御答弁は、これは求めませんけれども、さような気持ちもいたしております。  なお、総理にお伺いしますが、今日、重要法案として、暴力行為取り締まりの法案が、いま国会で審議をされております。私どもは、ぜひこれは通過させなければならぬ、わが党ということではなく、これは当然通過させるべき法案であると思っておりますけれども、もとよりこの法案の中には、物理的なそういう暴力に対処することも大事でございます。しかし、考えようによれば、このおそるべき言論の暴力、これをひとつ慎重に配慮し、対処を要するものがあると思います。これは言論の真の自由を守るために、また、言論統制の危険を排除するために私はやらなければならぬ、かように考えるものでございまして、民主主義のほんとうに基調を守るべきこの言論の自由でございまして、総理の御見解を伺いたいと存じます。
  154. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど申し上げましたごとく、民主主義におきましては、言論の自由ということはその根本でございます。あくまでも言論の自由は守っていかなければなりません。しかし、自由のうちにも、やはり節度と良識がなければならぬことは、これはもう民主主義のたてまえからいって、当然要求されることでございます。私は、そういう意味におきまして、民主主義の気持ちがだんだん国民に行き渡り、ほんとうの良識ある言論ということが今後行なわれるように努力していきたいと思っております。
  155. 大谷藤之助

    大谷藤之助君 先年のことでございますけれども、嶋中中央公論社長をめぐる刺傷事件がございました。この裁判のときに、弁解しないということをたてまえとしておると言われておった飯守裁判官が、あえて、この裁判のためには禁を破って実は弁解します、あるいは警告をしますという気持ちから言われたことばがございます。この嶋中事件というものは、皇室に対する名誉棄損をした深沢七郎、嶋中中央公論社長こそ、このテロの直接行動の直接原因と断言するということで、いろいろあげておられますけれども、さようなことの警告を当時発しておられるわけでございます。私は、殷鑑遠からずといいましょうか、もしも本件の処理が、あるいは不当に看過されたり、その処置を誤るというと、再びかような、あるいは直接行動なり、そういう無思慮な、また非民主主義的なことが起きるかもしらぬ。さようなことを未然に防止をするためにも、その不安を除去するためにも、私は、これに対して賢明な措置をとる必要があると痛感するものでございます。どうぞひとつ総理にも、さような点をお含みの上で、以下は、各問題点を個々に指摘いたしまして、そうして、この審議を通じて真相を国民の前に明らかにしておきたいと、かように考えるものでございます。  まず、国鉄総裁お尋ねを申し上げたいと思います。この放送の中には、羽島駅の問題を通して、大野副総裁というものは、あらゆる政治の場において、国の利益を部分の利益にすりかえて、一身といいましょうか、あるいは県といいましょうか、あるいは町村といいましょうか、自分のためには、常に全体の利益を犠牲に供しておった人だと、さような一例として、この羽島駅の問題を取り上げておりますが、この事実の真相をひとつたただしておきたいと思いますが、はたして、これが言われるとおりの事実であるのか、事実に反するのであるか、重ねてひとつ明白にしていただきたいと思います。
  156. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) お答えいたします。  実は、この問題につきましては、過般、衆議院の予算委員会で同じような質問を受けたのでありますが、私が国鉄総裁に就任したのは、昨年の五月二十日でございまして、それよりずっと前に起こった事件でございます。先日は、副総裁よく事情を知っておりますので、私にかわって説明さしたのでありまするが、本日は出席することができません。しかし、同様に同じ事情をよく存じております石原常務が参っておりますから、私にかわって説明いたせますので、どうぞ御了承を願います。
  157. 石原米彦

    説明員(石原米彦君) 新幹線を担当いたしておりますので、ただいまの御質問に対してお答え申し上げたいと思います。  新幹線のことにつきまして、御指摘のように、全く事実に反する判断に基づきまして、なき大野先生の誹謗が行なわれましたことに対しまして、私ども、まことに心外にも存じ、遺憾にも存ずる次第でございます。  以下、事実に基づきまして経過を御報告いたしまして、お答えにかえたいと存じます。  東海道新幹線が増設の認可を受けましたのは、昭和三十四年四月十三日でございます。これで東海道新幹線を、東海道の線路増設として新設するということが、運輸大臣の認可を受けたわけでございます。その後、逐次、各線区に分けまして、ルート選定の基礎になります線路経過地の認可というものを受けてまいっております。御指摘のございました岐阜県につきましては、増設の認可がございましてから約半年後の三十四年十月七日に、名古屋−大阪間の線路経過地を一括いたしまして総裁から申請いたしまして、十月二十四日に認可を受けております。この際の名古屋−米原間のルートは、現在建設してありますルートの線と多少違ったところがございまして、名古屋の出はずれました庄内川から関ケ原まで、ほとんど直線でまいりまして、それから関ケ原隧道を抜けまして米原に達するという、いわば直線ルートで認可を受けまして、引き続きまして三十四年十一月の十七日に、中間駅の認可申請というのをいたして認可を受けております、この際に、羽島を除きます九駅は、駅設置の地を指定いたしまして認可をいただきまして、それに追って書きをつけまして、岐阜県下に一カ所、駅設置を申請いたす予定でありますということを申請いたしております。この岐阜県に、結局、名古屋−米原間に一駅設置するということは、すでに東海道新幹線が認可になりました半年後には、国鉄として方針を決定いたしまして、運輸省の認可も受けておったわけでございます。ただ、これが羽島駅ということに決定いたしましたのが後に譲られたということでございます。  ここに、名古屋−米原間に一駅設置いたしますのは、運転計画上の必要からでございまして、東海道新幹線開業後におきまして、当然速度の異なる列車が運転することになります。その際に、最も待避の多いと考えられますのは名古屋でございますが、名古屋の駅は土地が高架の上で限られておりますので、待避線がおのおの一本ずつしかできないのでございますが、その次の駅が米原というのは、非常に著しく遠くなります。  もう一つは、岐阜県から米原に至りますところが、例の関ケ原の勾配でございまして、これが新東海道線の最大の急勾配になります。最大の急勾配と申しますよりも、新幹線のほとんど唯一の長大急勾配になります。それののぼりがけの手前に一駅置くということも、一つの目的になっております。  それで、新設されます羽島駅と、それから名古屋の手前の豊橋駅は待避線が三本ありまして、将来の待避に備えているわけでございます。  以上、駅設置の方針は、まさにこのときにきまりましたのでございますが、その後に、このルートの問題につきまして疑義が起こりましたのでございますが、それは、初め予定いたしました直線ルートは、御承知のように、名古屋から米原に至ります間には、富士川、長良川、揖斐川の三大河川を横切ることになりますが、その中間のデルタ地帯が、直線ルートをとりますと、地盤が非常に悪いのでございます。地質が悪いということが漸次判明いたしました。地質の若干悪いところは、どうせ、現在建設いたしましたところにもございましたのでありますが、長区間にわたりまして相当程度地盤が悪いということが判明いたしまして、将来に禍根を残す、高速度運転をいたします際に、将来に禍根を残すことがおそれられますので、ルートを北のほうに振りまして、大垣のほうにやや近づげたルートを選定いたしました。そしてルート選定を変更いたしたのでございます。  これは、現在の時点で判断いたしましても、正しかったと信じます。と申しますのは、すでに開業を控えております新東海道線におきまして、路盤の悪いところが、長区間ではございませんがございまして、これが開業を控えた現在の要注意点になっております。開業後も当分の間、要注意点に、問題点として残ると存じますのでございますが、こういうデルタ地帯の長大な区間に路盤軟弱地帯がありますと、工費も相当かさんだと思いますが、それのみならず、将来に長く禍根を残したことと存じます。したがいまして、この際、初めに申請いたしました直線ルートを捨てまして、少しルートは延びますが、ルートをやや北のほうに振りまして、現在ルートに選定し直したということは、技術的に絶対に正しかったと信じております。  ところが、ここで問題が起こりまして、どうせルートを北のほうに振るならば、もっと北のほうに回して、岐阜市の近くを通せということが、岐阜県知事をはじめ、岐阜県から非常に強い要望が出てまいりました。しかし、これは国鉄といたしましては、遺憾ながら、どうしても承認できないルートでございます。と申しますのは、御承知のように、現在の東海道線は、名古屋からほとんど北のほうに向いて岐阜に達しまして、それからほとんど直角に西のほうに回りまして、関ケ原経由半原に到達しております。それに近いルートになりますれば、東海道新幹線といたしまして、非常に大きな迂回ルートを不必要——不必要と申しますといけませんが、全体としてかなり大きな迂回ルートになります。それのみならず、揖斐川、長良川を相当斜めに切る形になりまして、これは河川管理者との協議が非常に困難を予想されたのでございます。そういったような点がございまして、これは岐阜県民の一致した非常に強い要望であるという御要望でございましたけれども、国鉄としては、どうしてもこれは応じられないということで、このルートを決定いたしますのに、用地買収ともからみまして、非常に話がもめたのでございますが、その際に、大野先生がお骨折りくださいまして、むしろ、岐阜県の県民の要望を押えて、国鉄として最善のルートである現在建設いたしましたルートをとったらよかろうということにまとめてくださいましたのでございます。  その後に、そのルート上で岐阜市、大垣市、その他と比較的に一番近い羽島駅が選定されまして、あらかじめ予定されておりました一駅が羽島駅ということに決定いたしまして、これは三十六年一月十一日に、ルートの経過地の変更と、それから羽島駅の設置とが認可を受けております。この点が非常にほかの区間に比べましておくれましたので、実は、新幹線の開業に、最もルート選定のおくれたところで開業に間に合わなくなるのじゃないかということを非常に心配したのでございますが、故大野先生のお骨折りによりまして、ぎりぎりに間に合う期間にルートが決定いたした次第でございます。  ただいま、七月一ぱいには全線路が完成いたしまして、十月一日の開業は間違いない確実な時期に達しまして、故大野先生のお骨折りに対しまして、国鉄新幹線関係の者が一同心から感謝をいたしておる次第でございまして、放送にございましたようなことは、まことに事実に反することで、私どもといたしましても、まことに心外でもあり、遺憾に存ずる次第でございます。
  158. 大谷藤之助

    大谷藤之助君 以上の答弁で、この問題に対する、事実に反するということは明白に私どもは承知したわけでございますが、法務大臣に関連いたしましてお聞きいたしたいと思いますけれども、まあ私は、そういう法律はしろうとでございますけれども、事実を曲げてこういうふうに故人を冒涜あるいは中傷する、まあ私どもは、人の墓をあばくということは、これはあらゆる角度から、罪としてはこれは重い罪だと、人の墓をあばいてさえ、そうであろうと思いますが、いわんや、故人の葬儀も終わらぬこの故人に対して、かような冒涜なり侮辱なり中傷を加えることは、そういう人の墓をあばくどころか、それ以上のものがあるような実は気持ちがするわけでございます。法務大臣のお気持ちをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  159. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 御指摘の放送に対しましては、その内容及び時期相まちまして、まことに乱暴きわまる遺憾しごくの感じを持っております。御質問の中にありまするいろいろなことばに対しまして、多分に同感の点が非常に多い次第でございます。また、ただいま御指摘のような、きわめて非礼な言論に対しまして、基本の言論の自由に対しまする考え方は、総理大臣より御答弁がございました、全くそのとおりの次第でございまするが、ただいまの現行の法律のもとにおきまして、どういう点が違法になるかという問題につきましては、言論の自由の幅が広く認められてはおりまするが、やはり少なくとも二点に関しましては、違法になる場合があると思うのでございます。それは電波法第百六条所定の、無線設備による虚偽通信罪に該当する場合でございまして、その場合は、同条によって処罰されます。また、刑法第二百三十条所定の名誉棄損罪者については、誣罔し、すなわち、虚偽の事実を公然摘示して、その名誉を棄損する行為に当たれば、同条によって処罰される。これが現行法の定むるところでございます。
  160. 大谷藤之助

    大谷藤之助君 これも私しろうとですから、お聞きしたいと思いますけれども、本人がなくなった場合でも、これは、名誉棄損罪というものは、かりに成立する場合には成立するものでございますか。あるいはまた、遺族という立場からそれができるというなら、遺族というのは、やはり法的にははっきり限界があるわけでございますか、この点を。
  161. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 本人がすでに死亡しております後におきましても、犯罪は成立するわけでございます。この訴えを起こし得る人の範囲につきましては、ただいま説明員より申し上げさしていただきたいと思います。
  162. 羽山忠弘

    説明員(羽山忠弘君) お答え申し上げます。  刑法が死者についての名誉棄損罪を規定いたしておりまして、それに対しまして刑事訴訟法におきまして、一定の親族が告訴をなすことができるようになっております。
  163. 大谷藤之助

    大谷藤之助君 一定の親族とは、一定の親族の範内……。
  164. 羽山忠弘

    説明員(羽山忠弘君) 刑事訴訟法の二百三十三条でございまして、「死者の名誉を毀損した罪については、死者の親族又は子孫は、告訴をすることができる。」、これが第一項でございます。
  165. 大谷藤之助

    大谷藤之助君 まあその犯罪の成立とか、そういうことは別にいたしまして、かりにもこれが行政的に、あるいはまた道義的に責任が追及される、そういう場合、あるいはまたそういう名誉棄損罪が成立するというような場合において、まああの対談に参加しました四人のこの当事者はもちろんでございますけれども、この事業主であるフジテレビそのものの場においては、私どもがしろうと考えで言いますならば、政治的にも道義的にもこれは協力者の立場である、罪という場合から考えれば、まさにこれは共犯であると私は指摘できると思いますけれども、その点について法務大臣なりあるいは政府委員の御答弁をいただきたいと思います。
  166. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 社会的常識におきましては、ただいま御指摘になりましたようなことが相当同感される点があると思います。ただ、法律上の解釈になりまするというと、共犯関係が成立するか成立しないかという問題になりますと、これは相当専門的の検討を経なければならぬ問題でございます。私はただいまどうなるかということはちょっと申し上げかねる次第でございます。
  167. 大谷藤之助

    大谷藤之助君 次に、郵政大臣にお伺いいたしたいと思います。実はいまここに手元に、大臣に提出された録音盤がございます。この録音は、現に放送されたものよりも一部をカットして実は提出されておる、そういう疑いがあるということで、実はいま調査もしておるようでございますけれども、そういう事実があるのかどうか。これはその文句は全部覚えておりませんけれども、暴力団云々というようなことだというようなことを聞いておるわけでございますけれども、それについて郵政大臣御存じでございましょうか。
  168. 古池信三

    国務大臣(古池信三君) お答えいたします。私はその朝の放送それ自体は聞いておりませんでした。その後になりまして、当時の録音を取り寄せまして、これを聞いたわけでありますが、ただいま御指摘のような事実があったかなかったということについては、まだ確かめておりません。ただいまの御発言がございましたので、至急調査をいたすことにいたいと存じます。
  169. 大谷藤之助

    大谷藤之助君 もしそうだとしますというと、これは私文書かあるいは公文書偽造というような悪質なことも考えられるわけでございまして、後日問題を明らかにしていただきたいと思います。  次に、本番組は、実は前夜の十一時いわゆるビデオ録音をして、翌朝八時半に放送された、そういうことを聞いておるわけでございますが、こうなりますというと、またこの事業主なり企画者と当事者の間にはいろいろ問題もあると思うわけでありますけれども、さような事実について、実は放送された直接の方からそうだというような事実も実は聞いておるわけでありますが、どういうことにこれは相なっておりますか。
  170. 古池信三

    国務大臣(古池信三君) 私の手元に参りました報告によりますると、当日の朝なまの放送であったとなっております。
  171. 大谷藤之助

    大谷藤之助君 その問題は、いずれ真相もはっきりすると思いますから、あえてこれ以上触れませんけれども、たとえこれがまあビデオで前の晩に録音されようと、あるいは当日の朝なま放送で行なわれたということになりましても、これは決して事業主やあるいは編成・企画の担当者の責任を軽減するものでは私はないと思っておりますが、郵政大臣のお考えはどうでございましょうか。
  172. 古池信三

    国務大臣(古池信三君) お説のとおりだと存じます。
  173. 大谷藤之助

    大谷藤之助君 次に、これは毎週日曜日に行なわれておる「世相談断」の一こまであるわけでございますが、かような番組の編成や企画をやる——まあ一応この四人の顔ぶれを見ますと、私の見方が違っておるかもしれませんが、かなり何か片寄ったような、そういう結論も出るんじゃないかということは、およそまともな人なら私は考えつかれるんじゃないかと思うわけでございます。決して私はひがんで言うわけでもございませんし、考えが違うから人を指摘するということでもございませんが、私は、編成される当事者なり企画をされる当事者には、こういうやはり放送をされるときの一応の社内の基準なりあるいはまた計画的なものがあってよかろうと思うわけでございますが、これは大臣は、監督の場にあるといいましても、事業主じゃございませんから、御存じないかもしれませんが、一体どういうことになっておるのか、片りんを御存じならひとつお知らせ願います。
  174. 古池信三

    国務大臣(古池信三君) 番組の編成そのものについては、私どもとして何ら監督をいたす権限はございません。各事業者には、それぞれ番組審議機関というものを設けることが法律によって定められて、これらの審議機関が放送の番組については常時注意をいたしておる次第でございます。また、編成にあたってどういうふうなやり方にするかということについては、各事業者によって自主的にやるものと考えております。
  175. 大谷藤之助

    大谷藤之助君 もう一点お尋ねしたいと思いますが、まあ監督諸官庁として、あるいは法律の上でないかもしれませんが、先ほど法律の一部は法務大臣から話もございましたが、法律的に、あるいは政令の上で、何か監督官庁としてそういう指示なり基準というものはこうだというような通牒なりあるいはそういうものが従来出されておりますか、全然そういうことは出ておらないということでございましょうか。なおまた、現在の放送法、電波法を見ましても、私どもが考えましても、これはすみやかに手入れをしなければならぬ、改正もしなければならぬ、こういうものにはどうもまことに不備な点が多いと、かように考えるわけでございますが、大臣の御見解をあわせてお聞かせ願いたい。
  176. 古池信三

    国務大臣(古池信三君) この放送の内容につきましては、先ほど来総理大臣からお答えがありましたとおりに、私も考えておりまして、まことに内容といい、またその時節といい、遺憾な放送であったと考えております。したがって、関係者は少なくとも道徳的には十分責任を負うべきものであろうと考えます。また、法律的に考えました場合においては、行政機関として放送に対する通牒のようなものは発しておりません。また、今後の放送法、電波法の改正にあたりましては、十分に検討をいたしてまいりたいと存じております。
  177. 大谷藤之助

    大谷藤之助君 いろいろその他問題点ございますが、時間もすでに超過いたしておりますし、後日いずれ各所管の委員会でさらに究明あるいはまた明らかにすべき問題だと存じますので、これで結びに一言入りたいと思います。  重ねて最後に総理の御所見を伺って終わりたいと思うのでありますが、いろいろいままで問題点その他を指摘いたしました。私はこの場でこういうことを申し上げることはきらいでございますけれども、あの放送では「恥部」云々というようなことまで——初めは私とも何のことかと思ったわけでございますが、さような表現で人を指摘しておるわけでございますけれども、自分こそ口の下から、ほんとうに恥部を頭に置いて、これを売りものにして、これを実は自分の食いぶちにしておる。私は、まあ何といいましょうか、評論家の一部のかような人が自分の口の下からそういうことを表現しておると言っても私ははばからぬと思うわけでございますが、かような言論の暴力といい、あるいは人権のじゅうりんといい、人の名誉を棄損し、悔辱をあえてするというようなことが、もしもこれが、法律的にも、あるいは行政的にも、あるいは道義的にも看過されるというところに、私は問題が起きることを非常に懸念するわけでございます。もしもそういうことで、これは看過されるとなれば、あえてこれをひとつ反省させるためには、テロでも、あるいは実力行使でも、直接行動に訴えてもしようがないじゃないかというような無思慮な者があらわれてくることは、これこそ社会不安を招来する一番根源をなすものだと思うのであります。かようなものをひとつ未然に防止することが大事であり、それがためには、私はやはり適当な措置がとられることが何よりも望ましいと、まあその点を痛感するわけでございまして、総理の重ねての御見解を伺いまして質疑を終わりたいと思います。
  178. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 暴に報いるに暴をもってするということは、よくないことでございます。そういうことの起こらないように、十分関係当局と検討をいたし、善処したいと考えております。
  179. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 大谷藤之助君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  180. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 次に米田勲君。
  181. 米田勲

    ○米田勲君 池田内閣の経済成長政策は、わが国の経済に偏向と格差を生み、急激な変化をもたらす、向こう見ずな政策でありまして、総理が過去いろいろな機会の答弁にいかに巧みにこれを答弁しようとも、動かしがたい現実として、国際収支を悪化させ、物価の高騰を誘発し、経済の二重構造を深め、生産設備と社会資本の不均衡を増大し、労働力の需給関係にもはなはだしいアンバランスをもたらすなど、国民大衆の生活に不安と苦痛を与えていることは、もはや否定できない事実となっているのであります。だから、私たち立場で申しますと、総理としては、施策の失敗によって起こった国内経済国民生活面の不均衡、矛盾、苦悩をまず解決するということに施策の重点を置くべきであったにかかわらず、もっぱら国際収支の均衡を至上命令とし、あらゆる施策はここに集中し、ここに発したのであります。ことばをかえて言うなら、金融引き締めを中心として、輸出力の増大、大資本の擁護に重点をかけ、国内均衡、国民生活は犠牲にして、国際収支の均衡に専念したと言っても過言ではないでないかと、こう思うのであります。経済の異常な成長によって生まれた悪条件を是正するには、まず急上昇を続ける成長率を落とさなければならないとわれわれは思うのであります。それには、予算規模を引き締め、個々の施策と配分を根本的に再検討すべきだったにかかわらず、三十九年度予算はその性格もそのままに三兆二千五百億円にのぼる膨大なものにしてしまったのであります。そして、一切の頼みの綱を金融引き締めに依存したために、今日中小企業の面に特徴的に見られるように、深刻な打撃を与えることになってきたのであります。そこで、この際、総理の立場としてはまことに答えづらいことではあろうけれども、もはや現実はおおい隠せないのであるから、欠陥や誤りをすなおに認めて、経済政策の再検討をすることをあらためてここに国民に約束する考えはないか。私はそのことが池田総理がこのたび三たび総裁公選に出馬するための道義的、政治的な資格要件だとさえ思うのでありますが、この際総理の御見解をお伺いします。
  182. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) いまお話しの点は、われわれは全く承服しない。あなたの個人的意見であります。私の経済政策につきましては、昭和三十五年の秋に国民批判を得まして、いわゆる三百名近い同志の当選を得ました。また、昨年の十一月におきましても、私の経済政策国民は非常な支援を与えてくれたのであります。したがいまして、私はいままでの経済対策を今後も続けていく考えであります。
  183. 米田勲

    ○米田勲君 それでは再びお尋ねしますが、池田内閣の進めている経済政策には欠陥や誤りがないと断言をいたしますか、お尋ねします。
  184. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 長い目で見て誤りはないと思います。それは、いろいろな施策でございますから、これが最上のものである、全部が最上のものであるとは言えません。過去の日本経済の歩みをごらんくださったならばわかると思います。そして、いまわからなければ、歴史が証明すると思います。
  185. 米田勲

    ○米田勲君 私は、いまの総理の答弁は、長は目で見ればわかると言いますが、国民毎日生活をしておるのであります。ですから、現実に国民の姿の上にあらわれているその事実に基づいて、池田内閣の経済政策には断じて誤りや欠陥はないのだと言い切れるのかどうか、もう一度お尋ねします。
  186. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 各般の行政の場合に、全部が誤りないというわけのものじゃございません。たとえば、先ほどもありました、公務員の涜職事件がまだあとを断たぬとか、いろいろな点はございましょうが、経済運営の実態から申しまして、長い目で見て総体的に私は誤りがないと確信しております。
  187. 米田勲

    ○米田勲君 主張の違いがありますので、次に進みます。私は納得できません。  池田総理は、新大阪ホテルの記者会見の際の藤山総務会長の発言について、衆議院におけるわが党議員、先ほどの亀田議員の質問した中にもありましたが、その答弁には、「民主主義でありますから批判は自由でありましょう」というような言い方や、「わが党の中にもいろいろな意見はありますさ、それは当然なことでないですか、むしろ望ましいことでないか」というような表現によってあっさり黙殺しているのであります。しかし、私は、国民はそういろあっさりした黙殺する総理の答弁では納得できないのであります。なぜなら、日本の議会政治は政党政治であります。現在の条件では、自民党総裁に選ばれるということは即内閣の首班に指名されることになるのであります。ですから、政府の政治的な責任は、与党もまたこれを負わなければならないという立場であると私は思うのであります。藤山氏は自民党総務会長という党の最高幹部の要職にある人です。したがって、この人が公の場において発言をしたことを、われわれとしては軽々しく看過することができないのでないか、こう考えます。ましてや、その発言内容が池田内閣の政策の基本に触れているにおいておやであります。自民党総裁である池田総理は、藤山総務会長の発言といえども国民に対しては責任を負うという姿勢が私は要求されると思うのであります。それが政治の倫理というものであります。池田総理の御意見をお伺いします。
  188. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) あなたは、政党政治、議院内閣制というたてまえからいろいろ御質問なさるが、そういうたてまえからいえば、そういう質問は起こってこないのじゃないか。私は自民党の支持によりまして池田内閣をこしらえ、そして閣議決定、党議決定によって政治を運用しておるのであります。私は、党の意見に反したり、また党員からできておる内閣の閣議の決定に反したりなんかいたしておりません。党議並びに閣議の線に沿ってやっておるのであります。だから、それに批判する人は、批判する人にお聞きになったらいいです。私は議院内閣制をはっきりやっておるのであります。
  189. 米田勲

    ○米田勲君 私は、いまのような池田総理の答弁を、国民立場としては納得できないと言うのです。藤山総務会長の発言のうち、「池田内閣は経済、外交両面にわたって基本的な考えなく、いわばその日暮らしの政策である、これでは日本政治は進展しない、」こう言っておるのであります。私の立場から言わせると、このことばは、池田内閣の政策の最も基本的な姿勢に触れている痛烈な批判だと思うのであります。  そこで、「言った人に聞いたらよかろう、私は閣議の決定に基づいて政策を進めておる」と言う総理でありますが、しかし、総務会長の発言、そしてそれが池田内閣の政策の基本に触れているこのような発言を、率直に認めるのか認めないのかだけは国民の前に明らかにしてほしいと思うのであります。
  190. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私の姿勢は、機会あるごとに、あるいは施政演説をし、あるいは所信表明として、国民の代表であるあなた方に、毎年一回、実を言ったら二、三回やっておるのであります。しかも、私の政治、外交に対しましての信念は、もう半年前の総選挙国民に十分訴えておるのであります。その日暮らしとかなんとかいう気持ちは持っておりません。総務会長として言ったのか、あるいは一個人として言われたのか知りませんが、あの人に対して、藤山君の言論に対して、私は認める認めぬという問題ではないと思います。個人として言ったことばについて、総理大臣なり総裁が認めるか認めぬかという問題じゃない。そういう意見もあるということは聞いております。しかし、その意見がいいとか悪いとかというのじゃない。そういうのは、われわれは民主主義だから、参考にはします。しかし、それをいいとか悪いとか、認めるとか認めぬとかという問題としては私は考えておりません。
  191. 米田勲

    ○米田勲君 認める認めないという聞き方をしたので、うまく逃げられてしまいましたが、それでは私は結論的にあなたにもう一度お聞きしたい。  藤山氏のこの発言は妥当なものとは考えられないというふうにいま考えておられると判断して差しつかえないか、政策の基本に触れた発言については妥当な批判ではないと総理は判断をしておられるのかどうかだけはお聞かせ願いたい。
  192. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 党員の一々の言論に対して批判を加えることはよします。
  193. 米田勲

    ○米田勲君 私は、いくら総裁選挙に出馬するからといって、藤山氏が全く虚偽の発言をしておる、かってな発言をしておるというふうには考えられないのであります。池田内閣の政治経済、外交の両面にわたって基本的な考え方がない、こういうのが私は真相ではあるまいかと思うのであります。いや、基本的な考えがないというよりは、財界や独占資本に牛耳られているという表現が妥当なのではあるまいか。だから、財界の要求のまにまに動くその日暮らしの政策にならざるを得なかったのではないか。もしこの藤山発言を否定できないなら、総理はこの際国民の前に自分立場を少なくとも簡明に明らかにしておくべきだと、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  194. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) たびたび申しておるとおりに、池田内閣において二回も総選挙をやっております。まだ二回目の分は半年程度しかたっておりません。国民はよく私の考え方を知っておられると思います。あらためて言わなくても、ことしの一月施政方針演説、そうして予算の編成、また国会での答弁で、国民は十分おわかりいただいておると思います。
  195. 米田勲

    ○米田勲君 それでは次に、私は、池田内閣の経済政策についてはわが党の立場から多くの批判を持っておりますが、その問題に直接触れることは、きょうは時間の関係上避けます。  私は、池田さんの進める経済政策のその施策の進め方に大きな問題があるのでないかということをきょうは指摘したい。所得倍増だという宣伝でかね、太鼓をたたき、設備投資をあおり、徹底的にこれを援助してまいったのであります。確かに、池田さんの言うように、大資本は近代化し、生産は伸び、経済は成長したでありましょう。だが、国内に消費ブームの風潮をびまんさせ、国民は欲望を満足させようとあせったのであります。しかし、拡大する企業格差、所得格差、地域格差に、国民は不満と苦痛を深めてきておるのであります。結果は、国際収支を悪化させ、物価は野方図もなく高騰し、日本経済に赤信号がともったではありませんか。あわてて金融引き締めを強行する。まさに池田内閣の政策の進め方は、悪気流に突っ込んだ飛行機さながらに、上下左右に激動をしているのであります。これでは、体質の弱い、栄養補給の乏しい者のはのびてしまうしか手がない。それを、あたかもスピード違反をして飛ばしていた車が赤信号を見るやあわてて急ブレーキを踏むに似ておって、乗っている国民は予期しないショックで、よほどじょぶな者でもない限り、死傷者が続出するのはあたりまえであります。ところが、池田内閣の大蔵大臣である田中さんは、新聞の伝うるところによると、こういうことを言っております。「中小企業が金詰まりで倒産をしているという話は、実際には当たっていない、その大部分は、よく調べてみると、金融引き締めがなくても当然例産すべくして倒産したものが圧倒的に多いのではないか」と、こう言っておるのであります。操縦者が悪いんじゃない、乗っている国民がしっかりしていないからだ、急停車しなくても、寿命がきて死ぬべき人だったんだ、こう言っているのではないか。私は、このような無責任で非情なことばが、実は池田内閣の本性なのではないかと疑うのであります。政府の政策の進め方にこの際慎重な再検討をしてみるお考えはないのか、池田総理お尋ねをいたします。
  196. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 経済政策はあくまで慎重にやっております。しこうして、その根本は、予算あるいは金融につきまして国会の承認を得てやっておるのであります。そしてまた、私の経済政策は、国民大多数がこれを支持してくれていると考えております。
  197. 米田勲

    ○米田勲君 私は、何ら自分の施策の進め方に反省を持たない総理の態度を、きわめて不満に思います。  次に、最近自由民主党の内部に、公債発行の意見が盛んに起こってきております。藤山総務会長はこう言っております。「企業の自己資本の比率を高め、基盤を強化するため、積極的に企業減税を進めるべきである、しかし、減税と公共投資の拡大などの財政要求を両立させるためには、道路用地買収費などを公債でまかなうことを考えなければならぬ」と、公債発行論を主張しておるのであります。また佐藤国務大臣は、国民所得に対する税負担率が高いことに対する批判から出発して、「税金を取って健全財政という考え方よりも、公債を発行して政府が借金をする、そのときに公債の金利が自然の金利であれば、国民は進んで協力してくれるだろう、政府が仕事をするためには、税金を取れるだけ取るというよりも、民間資金の導入を考えるべきである」、これまた公債発行論であります。そこで、私は、この際あらためて総理にお伺いしますが、池田総理としてはこの公債発行論をどういうふうにお考えになっておるのか。もし、従来の答弁どおり、公債は発行すべきでないという御見解であるなら、その理由をこの際お聞かせ願いたいのであります。
  198. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 一般的に公債と言っておりますが、あなたのお話しの公債発行論は、外債を含めております。私は、佐藤君、藤山君の公債がどういう公債か、内容を聞いておりません。で、いまでも、いわゆる広い意味の公債は発行しておるのであります。あるいは、中央地方を一体として考えるということもありますが、地方債は御承知のとおり千数百億円出しております。それから政府保証債も何百億と出しております。最近ドイツで発行いたしました二億マルク——五千万ドルも、これは開銀債であり、政府保証債である。だいぶん公債を出しております。戦後におきましても、交付公債は出しております。そうしてまた、要すれば短期のいわゆる政府証券も出しております。何を言っておるか——たぶん一般会計での歳入不足に充てるための一般会計の赤字公債を言っておるとすれば、私はその説はとりません。いま、あなた方の言っておられる、日本経済が、国際収支が赤になり、将来なかなかむずかしい問題があるというときに、これは民間の需要が多過ぎるんじゃないでしょうか。民間の需要が多過ぎるというときに、また政府が公債を発行して、もしそれが全部民間の消費ならばよろしゅうございますけれども、いま政府保証債を発行することでも相当困難である、しかも需要が多過ぎるというときに、赤字公債を出して、これを日銀が引き受けなきゃならぬような状態になってきたら、どうするんです。また、政府保証債の発行の上に一般の赤字公債を出すといったら、インフレ気がまえということを国民は言うでしょう。しかもまた、その公債を発行したときに、一般会計の公債を消化し得るだけの公社債市場ができておりますか。また、もしそれ歳入不足で赤字公債を出すというときには、いままで世界の人が、日本は健全財政を戦後十数年間とって超均衡予算をやっているという、日本に対する信用はどうなりましょうか。いま五、六億ドルのいわゆる外債を発行しておる日本が、それでもなおかつ足らぬから、日銀引き受けの内国債を一般会計歳入不足のために出すといったら、これはたいへんなことになるのじゃありますまいか。私はそういうことを考えるので、やはり経済の成長によりまして、片一方では減税をする、片一方では減税の後の増収部分で重点的に施策をやっていく、いままでの政策をいま改めるという考えはございません。私は安易につくことはよしまして、日本の現状、あるいは世界における日本立場を十分考えるならば一般会計の赤字のために公債を発行するよりも、経済を成長さして、いままで私がやってきた政策を続けていくことがいいと考えます。かかるがゆえに、私の基本政策は誤っていない、こう言っておるのであります。
  199. 米田勲

    ○米田勲君 池田さんはどうもぼくが何か公債発行論を主張しておるように錯覚を起こしておるのじゃありませんか、私がお聞きしておるのは、あなたはいままでの国会答弁で、公債発行、赤字公債の発行はしないという態度を明確にしておるのに、あなたの党の主要幹部が公債発行論を公に発表しておるから、ここで私はそういう考えがあるのかどうか総理にお尋ねしたのです。総理のいまのような見解が自信がおありなら、今度の七月の総裁公選をやる大会に、あなたの党の人たちに、そういう国民に疑問を持たせるような発言をなさらないようによく教育をなさったほうがいいと思うのであります。  次に私ほお尋ねしたいのは、本年度の輸出目標は為替ベースで六十三億五千万ドルときめたのであります。これは昨年度に比べると一四・一%の増を見込んでおるのであります。また、政府の当初発表していたものに比べても一億五千万ドルの増であります。そこでお聞きしたいのは、この輸出目標は過大ではないのか、過大な見込みじゃないのか。お答えが、過大ではありません、達成は確実ですというなら、その確実ですという結論の出る条件をお聞かせ願いたい、こういうのが私の質問であります。
  200. 福田一

    国務大臣福田一君) お答えをいたします。輸出会議でそういうことがきまったわけでありましたが、その基礎はどういうところから出てきておるかといいますと、七十三の実は各品目の部会がございます。この部会が、一つ一つが、毎年どれだけの輸出をしておるかということを基礎にいたしまして、そうして景気の動向あるいは需要の動向等をよく見定めました上で、物品別に数字を積み重ねてまいりまして、それが通関で六十五億二千万ドル、為替ベースで六十二億五千万ドル、こういう数字を出したわけでございます。そうして、これはただいまお話がございましたとおり、三十八年度に比べますというと一四・五%の増になっておりますが、一つは、いま世界の貿易は年間千三百三十億ドルでございまして、大体年間に六%ずつ伸びております。過去十年間のずっと数字をとってみましても、日本の輸出の伸びは常に世界の伸びの二倍を記録いたしておるのでございますから、いわゆる一二%は当然伸びるはずであります、過去の数字に徴すれば。こういうデータがあり、一方におきまして、私たちは輸出振興ということには最重点を置いておりまして、いわゆる輸出秩序の確立という問題や、あるいはまた、この延べ払いの問題その他におきましても、輸出については特に力を入れております。それから、世界の動きといっては恐縮でございますが、アメリカその他の景気の動向等を見ましても、アメリカの景気は今年じゅうは下がるようなことはない。また、その他の国の動きを見ましても、特に日本の輸出が今年においてチェックされるような、いわゆる非常に下がるような動向はございませんので、われわれは十分この目的は達し得るものである、かように考えておるところであります。
  201. 米田勲

    ○米田勲君 問題点はあるのですが、時間の関係上次に進ませていただきます。  政府の金融引き締め政策は、結局金詰まりの状態に追い込むことに何としてもなるのであります。金詰まりになれば生産も輸入も落ちてくること当然であります。これはのっぴきならなくなった国際収支の悪化を防ぐためにはよい効果はあらわすであろうけれども、国内の、たとえば中小企業に加えられる打撃というものは非常に深刻なのであります。  そこで大蔵大臣にお尋ねします。先ほどもあなたの言われたことを私は取り上げましたが、このごろの中小企業の倒産は、大部分が金融引き締め政策とは無関係なんだ、倒れるべくして倒れているんだ、という発言がございますが、このことについてあなたの見解をもう少し詳しくお聞かせを願いたいと思います。
  202. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 中小企業は倒れるべくして倒れておるなんという表現で私は答弁をしたことはございません。たぶん少し私の国会における発言等を意地悪くおとりになって表現すればそういうことになるかもわかりませんが、そういうことを言っておるのではありません。昨年の十月当時の企業間信用を見ますと、生産は非常に高い状態でございまして、過去三カ年間に約倍になっておるのであります。この状態で直ちに金融引き締めをやると中小企業に対してどういう状態になるかということは、もうおのずからわかるわけであります。あの当時御説明を申し上げましたが、画一、一律的の引き締めをやると、中小企業にどうしてもしわが寄るので、回り道であっても十分配慮をしなければならない、こういうことを申し上げておったわけでございます。そういう前提に立ちまして下請代金支払い遅延防止法の適用とか、また、買いオペレーションの対象を中小企業に手厚くするとか、中小三公庫の資金量をふやすとか、財政資金による買いオペレーションを行なうとか、各金融機関に対して金融調整が行なわれても、中小企業が前向きで努力をしておるときに引き締め等の影響で黒字倒産を起こしてはならないという、十分な配慮を二カ月間も行なって、その上十二月に、御承知のとおり預金準備率の引き上げを行ない、一月に窓口規制を行ない、三月になってようやく公定歩合の引き上げに踏み切ったわけでございますから、中小企業に対していかにこまかく配慮をしてきたかということは、御承知いただけると思います。その意味でいま一部においては、公定歩合の引き上げの時期がおそかったとさえ言われるほど、十分な配慮をしてきたわけでございますから、私が、当然中小企業は倒れるんだなどという甘い考えでおらないということは、御理解いただけると思います。  金融引き締め等によって中小企業の倒産が非常に多いということに対しましての衆議院その他で御質問がございましたが、まあ四月は三百三十二件、負債総額でもって三百六十四億、非常に大きい金額でございますが、五月はもっと大きいというようなことを考えておりましたけれども、五月は、三百三十二件が二百八十二件に減り、三百六十四億が百億円余減りまして二百五十二億円、こういう状態になったわけでございます。しかも、倒産をいたしました内容につきましては、通産省も大蔵省も個別に検査をいたしておりまして、倒産をしない前に、しそうな場合救済できることに対して最大の努力をいたしておりますし、救済ができなかった面に対しましても、相当こまかく調査をいたしております。私が申し上げましたのは、これを申し上げたのです。東京興信所の調べによりますと、今年四月に倒産をしましたものの内訳は、放漫経営が二二・六%、過小資本が五・四%、既往——在来からのしわ寄せが二四・七%、売り掛け金回収難が一五・一%、在庫状態の悪化が三〇・四%、設備投資の過大が一〇・八%。この中で、昨年の十月から統計にとっているのでございますが、昨年の十月と今年の四月と非常に違うのは、昨年の十月の在庫状態の悪化によるものが一四・五%であったのが、約倍の三〇%になっておる。これは先ほど私が申し上げたとおり、企業間信用が非常に大きくなっているにもかかわらず、だんだん調整段階に入りましたので、結局製品在庫の増大という面になってきておるわけであります。あのくらい、半年に近い間、あらゆる配慮をしても、三〇%に製品在庫率がふえておるのであります。  私は時間があれば幾らでも内容に対して御説明を申し上げ得るのでありますが、この一つずつのケースをずっと見まして、金融調整というものが直接の原因で倒産をしたというような例は、いまのところ見当たらない、大体いままでのいろいろな事情の累積ということが、倒産となっておる実態のように考えられますと、こう申し上げておるのでございますから、私が申し上げておることを、私の発言全部をひとつ御理解いただきたい、こう思うわけであります。
  203. 米田勲

    ○米田勲君 大蔵大臣としては、十分なそれぞれの手当てをしたんだと、こういう御答弁ですが、現実としては、とにかく倒産が計数を高めているわけであります。となりますと、これは私は、あなた方の施策は相当程度やられたのであるが、まだその施策に手落ちがあるのか不十分なのか、いずれかではないかと思うのですが、そういう自己批判はないのですか。
  204. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 中小企業が一軒でもつぶれるということは、たいへんなことであります。私たち中小企業の出身者でございますから、そういうことに対しては非常に深刻にものを考えております。私は、一件ずつずっと調査をしてみますと、救済できがたいものもあります。これはどういうことかといいますと、五百万円ぐらいの資本金で、年商約三億から五億やっておる。そうして倒産をしたときの負債総額が、六億も七億もある。どういうふうにして営業してきたか私にはわからない。こういう状態のものであれば、これはもういつの日にかつぶれる、いままでもっていたのがおかしいというぐらいに、非常に強い信用でつないできたということであります。この過小自己資本というものを、いまの東京興信所ではあまり取り上げておりませんが、私が見ますと、少なくとも資本金の十倍以上というのではなく、二十倍以上、三十倍以上、五十倍以上という年商をやっておる。しかも、回転を三回か四回に考えておる。倒産をした当時における負債総額、手形の状態を見ますと、年商を上回るものを持っている。一体融通手形がどのくらい出ているのか、何かそういう商行為以外のものが入っておらないと、そういう数字にはならないわけであります。年商が四億ないし五億でございまして、三回転すれば、金融でつないでいるものは、資本金がただでも、一億ないし一億五千万円でつなげるものが、年商をはるかに上回るような手形を持ち、負債を持っている。こういうものが一体どういうふうになってこうなったのかということを、私もこまかく調べておるわけでございまして、私たちも、中小企業の実態をできるだけ救済をするという考え方、金融その他万般の施策を行なっておるわけでございますので、やはりお互いに中小企業がこれから国際競争に耐えながら自由化に対処していくのでありますから、やはり自分の信用の限度ということをまず考えて、一年間に何倍も事業を大きくするということではなく、政府が考えておるのは、年間九%平均でございます。この年間に二倍にし三倍にし五倍にする、こういう状態であると、なかなか金融もつないでいけないということでありますので、われわれも中小企業の実態に対してはしさいに検討して、きめこまかい手を打っていくつもりでございますが、やはり事業の責任者も、自分の事業に対するまず責任体制を確立するということで、お互いが努力することによって難局を切り抜けてまいりたいというふうに考えております。
  205. 米田勲

    ○米田勲君 先ほど大蔵大臣が言われたように、四月の倒産というのは、件数と総額において戦後最高だ。五月は、あなたの言うように、確かにそれから下がっておる、低くなってきた。しかし、この五月倒産の傾向、特色を見ますと、前月までは倒産の主因であった設備投資の過大など、産業構造上の理由から起こってきたものが比較的多いのに、売り掛け金の回収難だとか在庫増加が結局資金を圧迫して、金融面の事情で倒れてきておるものが、五月になって非常に目立ってきておる、こういう分析をしておる。なるほど、いま大蔵大臣が言われたように、極端ないまのようなものは確かにあります。しかし、やはり私は、金融面の事情から倒産が起こってきておるというものが、特に五月になって目立ってきておるのじゃないか、これはやはり金融引き締め政策に伴う政府の施策の不十分さに基因するところがあるのじゃないか、こういうふうに思うので、もう一度お答えを願いたい。
  206. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほど申し上げましたように、売り掛け金の回収難は、昨年十月は一三・二%でありましたものが、十二月に一四・四%になり、四月に一五・一でございますから、これはそんなに変わっておらない。問題は、先ほど申し上げたとおり、在庫状態の悪化、いわゆる製品在庫が一四・何%から三〇%にのぼっておるということでございます。これはまあ引き締めになったからこういうのかというふうにすぐ御発言になると思いますが、これを、実情を見てみますと、二月、三月当時は、思惑というような、いわゆる暖冬異変という、繊維関係が非常に多かった。今度の中小企業の倒産の中には、だんだんと業態が広がってまいりまして、金属とか化学工業とか、そういうものに広がりつつあるということは事実でございます。しかし、これはなぜそういうことになったのかと思いまして、一件ずつ調べてみますと、親会社が倒産をして、一〇〇%から八〇%くらい、ほとんどまるがかえに近い企業が親会社の倒産でもって将棋倒しになっておるということがございます。この親会社がなぜ救済できなかったか、こう思って見ますと、先ほど申し上げましたとおり、親会社の内容は、これはどうして一体やっておったのかというようなくらいな数字が出ております。親会社に対する率が六〇%以下くらいのものは、親会社がつぶれても子会社がつぶれない、こういうことになっておるのです。ですから、私自身もいまこまかくやっておりますが、この状態がどんどん続いていくということで、四月−六月ごろは非常にたいへんだ、こういうふうなことであって、私たちは、六月に買いオペレーション二百億というようなことをきめたり、四月に百五十億の売り戻しをやめたり、いろいろな処置をしたわけですが、先ほど申し上げたとおり、四月になったら三百数十件が二百何十件に減り、それから負債総額においても三百六十億が二百五十億に、百十億以上減っておるということで、心配しておるよりも倒産件数や内容というものが減ってきておる。どうも私たちが金融その他配慮しておることがきいておるのだなあ、こういうふうに考えておるわけでございます。
  207. 米田勲

    ○米田勲君 通産大臣にお尋ねしますが、六月、七月と、今後の中小企業の倒産の趨勢はどうなるとあなたのほうでは見通しておられますか、それをお答え願います。
  208. 福田一

    国務大臣福田一君) ただいま大蔵大臣がお答えをいたしましたとおり、四月をピークにして五月はちょっと減っております。私は、六月から七月、八月へかけて急によくなる、いわゆる倒産件数が非常に減ってくるであろうという見通しはいたしておりません。やはり高原的な状態においてまだ続くのではないか、こう考えてこれに対する対策、すなわち政府関係三機関に対する融資とか、あるいは買いオペというような問題は、適宜、適当なときに処置をいたしていかなければならない、かように考えております。
  209. 米田勲

    ○米田勲君 今後の見通しについて、通産大臣も大蔵大臣も案外楽観をしておられるようですが、これは一月の予算の総括の問題のときにもいろいろ問題にして、だいぶ楽観したお話で十分な手が打たれるとわれわれは信頼をしておったのですが、その後の倒産状況というものは、決してあのときの答弁にあるようなものではなかった、こういうことから、いまの答弁ではあるけれども、総理にお伺いしますが、今後六月、七月となお相当の倒産の件数は、楽観するものではないというふうに考えられるので、この点十分な施策を加えてもらえるのかどうか、最後にこの問題についてお答え願います。
  210. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど大蔵大臣が言っておりまするごとく、金融調整によりまして中小企業にしわが寄ることが予想されるので、買いオぺ、その他の施策を講じております。六月になりまして二百億また買いオペをやると言っておりますが、二百億をもっと三百億ぐらいにできないかということで、先般の閣議でも、大蔵大臣に通産大臣や私から要求したような状況でございます。これからお盆にかけまして、やはり金融のある程度の逼迫はございましょう。しかし、金融情勢といたしましては、これからはそう引き締まる時期じゃございません、六、七月というものは。あらゆる方法を講じまして、できるだけ倒産件数の少ないように努力していかなければならぬと思います。
  211. 米田勲

    ○米田勲君 大蔵大臣に、この際、簡単にお答えをいただきますが、これは、当初予算の総括のときにもいろいろお聞きをしたのですが、金融政策上のガンになっている歩積み、両建ての問題ですが、新聞の報ずるところによると、政府もようやくこの問題について本格的に何とかしなくちゃならぬというふうに手を染めておられるようですが、この対策、そしてこの問題の解消のためにどんな具体的な方法を進められようとしておるのか、お聞かせ願います。
  212. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 過当な歩積み、両建ての排除ということは、政府も非常に熱心にやっておるわけでございまして、四月には日銀及び大蔵省で共同して特別検査をいたしました。その結果、相互銀行等は非常に自粛がよくいっておりますが、都市銀行を含めた銀行があまりよくいっておらぬということで、何回も、通達を出すだけではなく歩積み、両建ての解消という面に対して具体的な計画を出させるようにいたしております。なお検査を続けてまいりたいと思いますし、なお、八日の銀行大会には、歩積み、両建ての排除ということは、もう私自身からもひとつ強くこれを求めたい、こういう態勢でございます。
  213. 米田勲

    ○米田勲君 これは宮澤さんにお尋ねをいたしますが、一月以降五月までの国内における消費者物価指数の趨勢はどのようなことになってきておるのか、ひとつ簡単にお聞かせを願いたいと思います。
  214. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 昨年の秋口ごろから消費者物価が、いろいろの条件に恵まれまして落ちついておるわけでございます。それで、ただいまお尋ねの期間でございますが、五月につきましては、全国の統計が今月の末でございませんとわかりませんので、四月までにさせていただきますが、一月から四月までの期間をとってみますと、ただいま昨年の同じ一月から四月までに比べて三・六五%でございます。昨年の同期は、その一年前に比べまして七・一%アップでございましたから、今年の上がり方は、昨年の上がり方のほぼ半分ということになっております。で、四月に野菜などを中心にした部分と、それから、むしろこれから問題になるかと思われますのは、やはり教育費でありますとか、教養娯楽費でありますとか、これは授業料の関係が大きかったわけでございますが、東京及び全国でちょっと大きな上がりがございました。一%ちょっとぐらいな上がりがあったわけでございます。しかし、五月を見ておりますと、東京では〇・二の上がりになっておりまして、四月には毎年そういう授業料などの問題がございます。あらかじめほぼ覚悟はしておりましたのです。五月にはまた平静に戻っております。それで、大勢から申しますならば、前年同期で、私どもは今年度を通じて四・二ということを申し上げておるわけでございますが、ただいまの三・六あたりのベースでまいりますと、所期の目標を——これはまだずいぶん先が長いことでございますけれども、達し得る、かなり公算の高いところに、その範囲内に問題がきておるのではないかというような観察をいたしております。
  215. 米田勲

    ○米田勲君 経企長官の御答弁は、ずいぶん楽観をした見通しを立てておられるようですが、総理府の統計局の調べによると、四月の全都市の消費者物価指数というのは、前月比で一・四%上昇しておるのです。この上昇率が一%をこえたというのは、昨年の九月以来初めて起こったことであります。となりますと、これは今後、いまのような楽観したものではなくて、またぞろ消費者物価の値上がり傾向に入ってきたのではないか、もっと急角度になるおそれは出てこないのかということをわれわれは見るのでありますが、いかがでしょう。
  216. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 四月という月が、先ほどちょっと申し上げましたように、毎年特別な月でございまして、昨年の場合にも、四月にはやはり一%がらみの上がりがございました。その前のときもそうであったと記憶をいたします。そこで、これが特殊要因によるものであるか、そうでないかということを考えておりましたが、五月になりまして、東京の消費者物価は五月の分まで出ておるわけでございますが、前月の一〇〇に対して一〇〇・二でございます。〇・二ということに落ちついてきております。また、分析をしてみましても、やはり四月の上がりの寄与率の一番大きかったものは雑費、その中で教育費でございます。私立中学、高校、大学の授業料及び幼稚園の保育料、これは毎年やはりあることでございますが、大体そういう原因の結果ではなかったか、こう思っておりますので、こういうことがこれから繰り返されるというふうには考えなくてもいいのじゃないか、そういうふうに考えます。
  217. 米田勲

    ○米田勲君 将来の見通しの問題をここで重ねてお互いに論じ合ってもらちのあかないことでございます。事実はいまに具体的にあらわれてくると思いますので、そのときに譲ります。  政府は、さきに物価値上げ抑制政策の一環として、公共料金の一カ年値上げをストップするという政策をきめてやってきたわけです。その後の経過を検討をして、一体この公共料金一カ年値上げストップ政策ほどのような功罪を見せておるのか、その点をひとつ率直にお聞かせ願いたい。
  218. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) いわゆる公共料金と言われておりますものの消費者物価におけるウエートは、これは米を除きまして、主食を除きまして七百幾つでございます。主食が、米の場合に千幾つであるわけでございます。一万分の数字でございます。そこで、これが動かないということは、数字の上ではそれだけのものを動かさずにおくということでございますが、それよりもむしろ、やはり政府の政治的なそういう決断が多少とも消費者物価値上がりのムードに水をさしてきた、そういう効果は今日まであったであろうというふうに考えております。  それから、功罪と仰せられましたから、罪のほうは何であるかということになりますと、これはかなり時間がたってから総合的に判断いたしませんとわかりませんが、何ぶんにも、自由経済の本則と違うことを政治的な決断でやるわけでございますから、いろいろな各方面に御難儀をかけておりますし、また、それなりに無理が、これは顕在しているものもございますし、また潜在しているものもあると思うのでございますが、これはいろいろ各方面にあるであろうということは、想像にかたくございません。
  219. 米田勲

    ○米田勲君 そこで、私は国鉄の問題について運輸大臣にお伺いしますが、国鉄は最近第三次長期計画を立てて、その資金の調達の問題について検討をして、石田総裁が、五月二十九日の記者会見でこういうことを言っております。資金調達のため、運賃値上げは避けられない、一度に大幅に値上げするのでは国民が困るから、二度に分けて値上げをしたい、つまり相当の大幅な値上げを考えているわけであります。もちろん国鉄の輸送力の増強ということは大切なことではありますけれども、それをやるために、その資金の相当部分を国鉄運賃の大幅な値上げによって確保しようという考えは、われわれは納得できないのであります。いま政府は物価政策に力を入れているはずであります。無理をして公共料金のストップを強行しているときであります。そのときにこの第三次計画、そうして国鉄運賃の大幅な値上げを国民に対して発表するということは、われわれは何としても納得ができない。運輸大臣はどういう立場で監督をし、行政指導しているのか、お尋ねをいたします。
  220. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) お答えいたします。  日本経済の発展に伴いまして、国鉄の輸送力の増強ということはどうしてもやらねばならぬ施策と考えております。これをどうすることによってその目的を達するかと申しますというと、結局、社会投資、すなわち国鉄の設備投資を十分にいたしまして、保安それから輸送力の増強、ことに過密ダイヤの改定等にばく大な金が要るということは、想像にかたくないのであります。それが、その資金をどういうようにするかということは、結局その交通の利便を受ける一般大衆に負担してもらうのがいいか、あるいは政府出資をもってやるのがいいか——政府出資と申しましてもこれまた税金でございますから、国民の負担でございますから、それでやるのがいいか、それからそういう交通の利便というものは、現在の国民のみならず、将来の国民もその恩恵に浴するものですからして、公債でやるがいいか、この三つよりやり方は私はないと考えております。  そこで、いずれの計画をどういう方法によって資金を調達するかということにつきましては、国鉄に対するいろいろな基本の考え方がございます。あるいは公共的使命といい、あるいは資本主義の本則に従い営利主義でいくか、いろいろな問題がございますから、政府といたしましては、去る五月の何日かでございましたが、関係の次官を主たる構成メンバーといたしまして、国鉄の基本の問題について懇談会を総理府に設けまして、私がただいま申しましたその設備の増強の程度、それに要する資金獲得の方法等につきまして、目下研究いたしているのでございます。そこで、その研究の結果、これがいいということがきまりました場合に初めて問題が起こるのでございまして、国鉄総裁が、運賃を値上げせにゃいかぬということは、おそらくその懇談会へ行きましてその説明する資料に、ただいま言ったようないろいろな方法があるが、運賃の改定もその一つ方法であると言ったように感じておりまして、まだ、いつ幾らやるかというようなことは、その方法論は、この懇談会の結論を待たなければ申し上げられないと考えておるのでございまして、現内閣がいまとっておりますところの物価抑制政策、ことに公共料金の抑制のこともございますからして、いますぐの問題ではなく、その検討の結果、いろいろな方法があるうちの運賃改定ということについて、意見をその説明の途上で申されたうちの運賃改定部分のみが取り上げられたものと私は確信いたしております。
  221. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 関連。ただいま運輸大臣が、運賃値上げの問題については、国鉄問題の懇談会の結論を待って、というふうに言われましたが、先ほど輸送力の増強はどうでもやらなければならぬ、しかし、方法としてはこの資金をどこに求めるかということになると、運賃値上げか政府出資か公債か、こういったようなところしかないのだが、結論を求める場合に、その懇談会でもし運賃値上げが最上であるという結論が出たならば、運賃値上げを行なうというふうな方針を政府としてとるのかどうか。こういったような懇談会に国の重要な政策である運賃値上げといったような結論を求めてよろしいものかどうか。その点、運輸大臣の今後の方針についての考え方を明らかにしていただきたいと思います。
  222. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 運賃を改定することがいいという結論が出た場合にどうするかというお話でございますが、それは、ただいま申しましたように、あらゆる当局者の間で検討をいたしまして、その結論を待ってみなければ、私は運賃の値上げがいいとか、ほかの方法によるのがいいとかということの結論をここで申し上げることは差し控えたいと思います。
  223. 米田勲

    ○米田勲君 運輸大臣のいまの答弁ですと、この第三次計画は、基本問題懇談会に諮問をするということになっておるので、国鉄総裁が、記者会見に応じて、運賃値上げを大幅にやるのだという発表は、勇み足だと判断をしていいのですか。
  224. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) ただいまお答え申しましたように、勇み足か勇み足でないか存じませんが、いま私は、必ず運賃を値上げするということを申すことは、私としてはいかがかと考えております。
  225. 米田勲

    ○米田勲君 いま、運輸大臣の答弁を聞いておりますと、国鉄の輸送力増強の事業はやらなければならぬ、その金は、政府出資か運賃値上げか公債かしかない、こういう話ですが、あなたのそのおことばの中に、政府出資も税金じゃないか、国民にかかる負担は同じじゃないかと言うが、ちょっと認識不足じゃないかと私は見るのです。運賃の大幅な値上げをやるということは、いかに国内の物価に影響してくるかということを十分判断をしなければならぬのであって、軽々にいま国鉄総裁がそういうことを発表することは、私はきわめて軽率だと思う。いかがですか。   〔委員長退席、理事斎藤昇君着席〕 勇み足であるのかないのか、わからぬということよりも、むしろ軽率だ、そういうことをいまごろ発表するのは。こう思うのですが、どうですか。
  226. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 私は、さきにたびたび申しましたように、その結論を待って判断すべきものであって、国鉄総裁がいかなる意図で申したかは私は存じませんが、軽率とか勇み足ということは、あなたの御判断にまかすよりしかたがないと思います。
  227. 米田勲

    ○米田勲君 運輸大臣、あなたは国鉄の監督庁の責任者でしょう。その責任者である人が、国鉄総裁がこの時期に運賃値上げなどということを、記者会見で発表するということが、軽率か軽率でないかの判断ができないんですか。私はどうもあなたの感覚を疑うのであります。なおまた、この中でこういうことをいっておる、国鉄の当局が。日本のキロ当たりの運賃は約二円で、これはアメリカに比べると、アメリカは七円、イタリアは三円五十銭だ、諸外国に比べてきわめて安いんだから運賃の値上げをしてもいいんだと、こういうことを主張している。これも私は認識不足じゃないか。その国の経済事情や国民の生活の水準や、そういった問題を総合的にいわないでおいて、キロ当たりの運賃だけをいって、日本の運賃の値上げは当然だというようなことでは、これは根本的に考え方が間違っていませんか、そういう主張は。
  228. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 国鉄の総裁は、いま直ちに上げるというのじゃないのでございます。そこで私は、いろいろなことを考えた結果、国鉄の総裁意見を言うことは、私はちっとも差しつかえないと思います。ただし、それを実行に移す場合には、私、運輸行政をあずかるものとしての考え方がございます。しかし、その運賃を改定するかせぬかは、さき申しましたように、この懇談会で財政当局、通産当局、企画庁の当局、いろいろ寄りまして、現時点における日本財政と日本経済の状態とを勘案して、いずれによるがいいかをきめて、そのきめたことによってそういう方法考えて、あるいは運賃改定の要があるかわからない。しかし、それをいまここで直ちに運賃を値上げするべきだというようなことは、言ってもおらぬし、おそらくは国鉄の総裁考えておらぬと思います。
  229. 米田勲

    ○米田勲君 それでは、この問題を総理にお尋ねします。国鉄の輸送力増強で、いま第三次計画を立てております。立てて、これからその事業内容を検討しようというやさきに、国鉄の首脳部はこぞって運賃値上げの問題を考えておるのですよ、運輸大臣はあんなことを言っておるけれども。一体総理の、全体の経済政策なり物価政策を責任を負うておる立場から見て、この運賃値上げによる——それは全部じゃありませんけれども、資金の、運賃値上げによる国鉄の輸送力増強第三次計画の立案というものは妥当だと判断をするかどうか、ちょっとお聞かせを願いたい。
  230. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) いろいろな問題があると思います。一昨日でしたか、昨日でしたか、電電公社のほうで電話料の引き上げというのが出ておりました。内容を読んでみますと、一応もっとものように感じます。で、私は、いますぐ電電公社が料金を上げなければならぬという問題につきましては、よほど検討を要する。それは相当設備投資をやってまいりました。新聞によりますと三十七年度で百何ぼか、たいへんな赤字だというが、三十五年度、六年度は非常な黒字だ、と考えますと、一時の状態を見ると、それをやることがいいかどうかよほど考えなければならない。たぶん電電公社の総裁も、来年上げるときめたわけじゃないと思いますが、相談を受けてはおりませんが。そういうことは、えてして早く出るわけなんです。だから、いまお話しのように、国鉄が輸送力の増強という場合にどうするかという問題につきましては、それは一番原則的にいえば、これは運賃の引き上げが理論的に正しいでしょう。理論的に正しい。利用者がその負担をするということが理論的には一番正しい。しかし、財政経済いろんな点から運賃値上げというのは各般の状態から考えていかなきゃならぬ、それをいますぐやるんだというのならば、これは勇み足だろうと思いますけれども、これがまだいつやるかはまだ言っていない。しかも理論的の部分を言っておるというだけです。それとまたあなたが、運賃値上げをしたならば、すぐ物価が上がるんだということ、これはちょっと勇み足だと思います。それは昭和二十九年の鉄道運賃の引き上げ、最近だと、三十二年のときは運賃を引き上げましたが消費者物価は下がっております。そういう点をずっと考えると、一がいに結論を出すのはお互いに勇み足になると思います。いまの電信電話料のお話が出ましたが、日本は一通話七円でございますが、アメリカは二十円程度になる、郵便でもはがきは五円ですが、イギリスは九円でございます、あの小さいのが。それがやはり郵政関係の賃金にも関係するわけです。だからこういうものはやはり合理的な方法でいかなければいかぬ、合理的なあれから考えれば、鉄道で非常に出費が要れば一応は運賃を上げるということが先です。また上げるにしても定期を上げるか、あるいは貨物を上げるか、どうするかによって、また物価にも非常に影響があるのですから、私はこういう問題は、新聞に出たからといってすぐどうこうじゃなしに、やはり政府が十分考えて御審議願ってからにいたしまするから、それまでひとつ御心配にならずにいていただきたいと思っております。
  231. 米田勲

    ○米田勲君 御心配なさらないでくださいと言っても、政府の言う一言一言は国民にとってはぴんとくるのですよ。いまの総理のお答えでは、まあ運賃の値上げ問題は経済政策全体に及ぼす影響も大きいから慎重に考えたいというお答えなので納得します。ただし、事業計画を立てた、それはやらなきゃならぬ、だから直接国民の負担が重くなると、こういうような方式はこの計画の立て方自体に問題があると、それをもう一度再検討する必要があるということもあわせて慎重に考えてもらいたいということを要望しておきます。  次に、これは行政管理庁が、五月二十三日に運輸省に対して八項目の勧告を行なっておる。その中で、国鉄バスの定期運賃は値上げして、民間並みの水準にすることを検討すべきであると言っております。どうもこの勧告の内容は納得ができないのですが、お聞きしたいのは、政府の統一見解なのか、行政管理庁単独の見解なのか、それをひとつお聞かせ願いたい。
  232. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 公共料金は一年間ストップすると、こう言っておるのが政府の統一見解でございます。しかし、公共料金にもいろいろございます。たとえばバスなんかにしても、六大都市の分は非常に影響するところが多いが、地方のバスでごく県内の一部とかというものは、これは運輸大臣の認可を受けますけれども、そういうあまり影響のない分については、これは中小企業が倒産のような場合には、これは例外的に認めるということも政府の統一見解でございます。しこうして、いまお話の点によりますと、国鉄のいわゆるバスが、地方において民間のバスと非常に不均衡に安い場合におきましては、やはり原則として検討するということは、私は政府の方針にさからっていない、政府の公共料金を上げないという線に沿いながら、地方的に非常に安くて、民間のバスに迷惑をかけるような場合におきましては、国鉄の経理の上からいっても、検討をするということは必要なことだと思います。私は相談を受けておりませんが、しかし考え方は、そういう考え方なら大体いけるのじゃないか、これが国鉄のバス全部についてどうこういうものなら、これは認めるわけにはいきません。地方的に小さい短い路線というような場合については検討ということは必要だと思います。
  233. 米田勲

    ○米田勲君 いまの総理の御答弁の中に、民間のほうに迷惑をかけちゃ困るから、あまり安いのは上げるほうがいいのだというお考えですが、それはほんとうですか。私は、国鉄というのは公企体ですから、そのためにいろいろなまた特別な施策が国としてあるわけです。だから私は民間が迷惑を受けるから、国鉄のほうはそれに合わせて上げていかないとうまくないのだという考えは、これはさか立ちしていませんか、いかがですか。
  234. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私はさか立ちしていないと思います。それが経済の原則であります。しかし、不当な利益というわけに——だから、その民間の不当な利益を上げているというふうな場合には、それは下げさせることも必要であります。今後の上げることが実は——国鉄と民営部分は、国鉄のほうが常に非常に安いということが普通の状態であるとは考えません。やはり調整はとる必要があるというのでございます。
  235. 米田勲

    ○米田勲君 私の言いたいのは、民間と国鉄の運賃の差が非常に開いているから、民間のほうに迷惑をかけるので、それを上げていきたいという考え方を否定しているのです。そういうことでは困るということです。これはまた論議をすると長くなりますから次に移ります。  次は、あなたの党の中で、最近政調会の交通部会でバス、タクシー業者の要望にこたえて、このバス、タクシーの料金は現在政府がとっておる公共料金の一年間ストップ政策の例外として値上げを認めさせようという結論を出して政府に働きかけておる、こう新聞は伝えておるのです。これは一体事実なのかどうか、またその要請を受けておる政府側の態度としては、いま公共料金のストップをまあわれわれに言わすと強行しておるときなんです。だから、これは一体政府側としてはどう受けとめて処置しようとしておるのか、この際お聞きします。
  236. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私はまだ聞いておりません。公式にも非公式にも……。
  237. 米田勲

    ○米田勲君 運輸大臣はいかがですか。
  238. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 公共バスの値上げにつきましては、去る十二月の政府の方針に従いまして、非常に困っておるところもあるが、大体抑制してまいって今日まで至っております。現在におきましてもそれを上げる意思はございません。
  239. 米田勲

    ○米田勲君 次は、現在全国的に水道料金の値上げ問題がしきりに論ぜられておるわけです。政府はこの水道料金の値上げ問題をどう受けとめて処置しようとするような行政指導をしておるのか、それをこの際お聞かせ願います。これは自治大臣をお呼びしておらないので、政府側のだれでもよろしいですからお答えを願いたい。
  240. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これは自治大臣あるいは厚生大臣から、地方に対して、ひとつできるだけ国の方針に協力をしてもらいたいということを通達いたしまして、大体そのようにかなえてもらっておるわけであります。ただ実際問題といたしまして、その結果、地方で金繰りが相当苦しくなるところがあるのではないかと思います。で、金繰りの問題でございましたら、水道のための起債が、既発行債がございますが、やはりその償還期限を延ばすとか何とか、そういう国との金融の関係で、ともかくこの公共料金ストップの期間、国としてもその程度のごめんどうを見ることによって方針に協力をしてもらいたい、具体的に償還期限をどうするかということをまだ最終的にはきめてはおりませんけれども、方向としてはそういうふうに問題の処理をいたしたいと思っておるわけでございます。
  241. 米田勲

    ○米田勲君 次は、私ども総理が触れられた電電公社の問題ですが、これは郵政大臣にお聞きいたします。  第三次の電信電話拡充五カ年計画は昨年からもう実施に移っておる。私に言わせると、いまごろになってから経営全体の内容が苦しくなってきたから電信電話料金を上げなければならぬというようなことを、大橋総裁が記者会見でいまごろ発表するというようなことはけしからぬと思う。なぜ当初拡充計画を立てるときに、その資金の問題についても確たる方針を見通してやらないのか、いまごろになって国民の驚くような電報、電話料を上げなければやれない、四十二年よりもよほど早めて上げるのだというようなことを言い出すことは納得ができないのですが、あなたはどういう監督指導をしておられますか。
  242. 古池信三

    国務大臣(古池信三君) 公社の総裁からは私には何らの意思表示がございません。また私としましても、今日電信電話の料金を引き上げようという考えは持っておりません。なお、三十八年度から第三次の拡充計画を行なっていることは御指摘のとおりでありますが、これの実行につきましては、さらに十分に検討をいたしまして、できる限り料金の値上げというようなことはしないように済ませるようにくふうをしていきたい、こう考えております。
  243. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 関連。ちょっと気にかかることがございますので、宮澤経企長官に簡単にお尋ねします。  ただいまの米田氏に対する答弁で、水道事業の既発公債に対するいわゆる償還期間の延長の問題ですか、私聞くところによると、もうすでに閣議で一応延長を認められたという理解をしておるのですが、その点どうなんですか。それとこれは相当重要な問題で、水道事業が非常に地方財政を苦しめておる問題で、もしそうでなければ大蔵大臣、主管大臣として所見をひとつ聞きたいと思います。
  244. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 水道料金の抑制につきまして、金繰りがつかないということで、地方債の償還年限を、現在二十年、二十五年くらいにしてくれないかとか、二十五年でもまだ短い、水道は四十年くらい持つのだからと、こういう話がございました。総理からも特別発言がございまして、二十年では短いから大蔵大臣考えろと、こういう御発言がございましたが、何ぶんにも他に影響することもございますので、両省の事務当局でまずひとつ詰めなさい、それでいよいよ話がきまらなければ、厚生、大蔵両大臣の間で話をきめようとこういうことになっておりまして、現在両省の事務当局で折衝中でございます。
  245. 米田勲

    ○米田勲君 農林大臣にお尋ねします。  あなたは消費者米価を生産者米価にスライドさせる方式を、近く米審に諮問をするということを発表しておられます。これは事実かどうか、どういうお考えでこういうことを立案されて諮問されるのか、お聞かせ願います。
  246. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 御承知のように、生産者米価の決定につきましては、生産費及び所得補償方式ということできめることになっていて、その決定の方法につきましても、相当詳しい方程式のようなものができておるわけです。消費者米価につきましては、家計をそこなわないように、家計の安定というようなことだけで、消費者米価をどういうふうにきめていくかということについての具体的方程式的なものはないのであります。米価審議会等におきましても、再々消費者米価を決定する場合に、決定の方式等について検討をしろと、こういう答申を受けておるわけであります。そういうような関係で、念のために申し上げますが、ことし消費者米価を上げるという前提でそういうことを考えておるのではございません。そういうふうに生産者米価の決定と消費者米価の決定との間には、別個のたてまえで、何ら関連がございません。私は生産者と消費者米価の決定方式の中に、生産者米価を決定した場合に、生産者米価との関連で消費者米価を決定する場合に、何かその要素というものを消費者米価決定の中に取り入れられるものがあるのではないか。もちろん家計をそこなわないという原則であるけれども、もっと生産者米価と消費者米価の間に関連をつけるべき方途がなかろうかと。スライドという言葉がいろいろ誤解を受けているようでございますが、生産者米価を上げたらそのまま消費者米価へ持っていくと、その上がった分だけを持っていって消費者米価を上げていく、こういうことを考えているわけではございませんが、生産者米価と消費者米価との間に、消費者米価の決定を家計の安定を保つという意味におきまして、原則の上に立って、関連というものをつけ得られるものならばつけたほうがよろしいという見解を私は持っているのでございます。もっとも消費者米価をいつも上げてはいかぬ、全然上げてはいかぬということならば、まあこの問題はそのままでございますけれども、消費者米価を上げる時期もあるわけでございます。ことし上げるということは絶対にございませんけれども、そういう場合にいまのような方式よりも、もっと方程式的にきまったような生産者米価との間に何か関連を持つような方式がなかろうか、そういう意味におきまして、消費者米価の決定について米価審議会からも答申がありますから、その方法をどういうふうにしてきめるかということを検討しろというようなこともありますので、三十九年度生産者米価、あるいは消費者米価と関連はございませんが、そういう消費者米価の決定方法についての諮問をしてみたい、こういうふうに考えております。
  247. 米田勲

    ○米田勲君 農林大臣の考えはわかりましたが、一体生産者米価の問題は、食管会計を今日まで堅持しておる政府の方針からいっても、これは私はそれにスライドさせるとか、関連させて消費者米価を引き上げるようなことを、一米審にかけて軽々に結論を出すべきものではないのじゃないか。私は池田内閣の経済政策全般の立場から、むしろこの経済政策の柱として米価問題、消費者米価問題といったような問題は重要視されているはずであります。ですから、農林大臣が軽々に一米審にこの問題をかけるというようなことは、私は軽率ではないのか。もっと大がかりな立場、大きな立場、そういうところからこれは根本的に経済政策の根幹として検討をすべきものではないかと思うが、総理のお考えはいかがですか。
  248. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 実は消費者米価のスライド制というものを、いまここで聞いたような状況でございます。こういう問題はお話のとおり、米価審議会にかけるにいたしましても、その前十分政府としても検討しなければならぬ重要なことだと思います。
  249. 米田勲

    ○米田勲君 そうすると、総理のいまの御答弁では、そういうことを米審にそういう内容を諮問するということは、閣議の決定や何かに基づいて行なわれているのではないのですね。
  250. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 閣議の決定で諮問するか、あるいは経済閣僚懇談会で相談の上で出すか、いずれにしても農林大臣だけでどうこういうわけの問題ではありません。十分農林大臣と連絡をして、閣議決定ということよりも、経済閣僚懇談会で十分論議すべき問題だと思います。
  251. 米田勲

    ○米田勲君 しかし、これはそういう経済閣僚懇談会にかかったものではないでしょう。総理はいま初めて聞いたと言っているのだから、これはまさに農林大臣の独断で米審に諮問するということをきめたのです。そういうことになりませんか。
  252. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そうはならないので、農林大臣としての研究課題としてお考えになった。研究の結果は閣僚懇談会でお話しになる。で、米価審議会に出す案も実は閣議決定で持っていくわけではない。米価に対する問題は、答申が出まして閣議決定をやる。従来の例は、閣僚懇談会で一応下打ち合わせはばする。だからこういう問題もスライドの問題も閣僚懇談会で農林大臣の申し出があれば検討することになると思います。
  253. 米田勲

    ○米田勲君 農林大臣はこれを経済閣僚懇談会にかけましたか、了承を求めましたか。
  254. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) まだ諮問案ができておるわけじゃございませんので、経済閣僚懇談会にはかけません。それから米価審議会にかけることは、御承知のように、食管法の第一条に米価の決定に関連する事項、こういう形になっておりますから、消費者米価の決定方法をもっと具体的にきめるのにはどういう方法にしたらいいか、こういうことは私ははかっても差しつかえないと思います。経済閣僚懇談会の問題とは別です。それが軽率だということではなくて、私は慎重だと思います。これがいいか悪いか、いろいろな結論があろうと思いますが、これで強行しようという私の考えではございませんで・意見を聞こうということでございますから、いまのお話のように、軽率だということではなくて、私は慎重だということに御了解を願ったほうが私の考えとしては適当じゃないかと、こう思っております。
  255. 米田勲

    ○米田勲君 農林大臣、あなたの米審に諮問するということは、公に発表する前に、総理の言うように経済閣僚懇談会に少なくも了承を求めて、そういう内容を諮問するという手続もとるし、公にも発表するというのが正しいんじゃないですか。私は生産者米価を米審にかけるというならまだわかるが、それとスライドさせる形で消費者米価の問題をかけるということはちょっとこの場合軽率だと言っているのです。これはもう経済政策全般にかかわる重要な問題だから、米審などにかけて軽々に結論を出すのでは困る、こう言っておるのですが、いかがですか。
  256. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 先ほど総理が言われましたように、研究のテーマとして、そういうことは私の就任の当時からそういう案がないものだろうかということを言っていますが、公式の席で言っているわけではございません。新聞記者会見等において、私の前から言っているスライド制とはどういうことだと言うから、先ほど申し上げましたように、こういう問題で事務当局に検討を命じておるのでありますが、こういう問題を消費者米価の決定方式としてかけたらいいのではないかという考えを持っているのだ、こういうことで、これは正式にかけるというふうなことは実は言っておるわけではございません。研究テーマとしてずっと考え続けておる、あるいは記者会見等におきまして、こういうふうにしたというように言っているわけであります。
  257. 米田勲

    ○米田勲君 農林大臣、国民は物価の問題では神経質になっているくらい、ノイローゼになっているくらい問題にしておるのです。経済閣僚懇談会にもかけないようなことを何のために公に発表するのですか。これはもう慎重にしてもらわなければならぬ。これ以上追及しませんが、十分に考えていただきたい。  それからこの機会にお伺いしておきますが、天候異変による東北、関東、長野等に襲った凍霜害が作物に対して非常に大きな被害を与えておる。これは緊急質問の際もわが党からお聞きし、対策を要求しておるわけですが、その緊急質問後にまたさらに激しい凍霜害が起こっているわけです。農民は非常に苦悩をしているわけですが、大臣の手元で、現在その被害の状況がどうなっているかという状態をお聞かせ願いたいことと、もう一つは、それに対する対策はどういうふうにお立てになっておるのか。
  258. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 前段の、物価に影響するから軽々しく発言するなということでございますが、私はその点も十分承知しておりますので、消費者米価等につきましては、いつでも記者会見その他で、これは上げないのだ、しかし研究テーマとしてこういうことはあるということを言っておるのでありますから、その点御了承を願いたいと思います。  凍霜害、長雨及び干ばつ、この状況、四月下旬からその後も災害が続いております。その状況を申し上げます。四月末の凍霜害でございますが、これは四月二十八日から三十日にかけまして、日本海へ南下してきた大陸高気圧の中心が三陸沖に移動したために、東北地方及び関東地方において気温が極度に低下して霜がおりたのでございます。果樹、桑、麦類、野菜等に被害が発生し、この被害見込み総額は農林省の統計調査部の調査でございますが、約八十二億円でございます。被害の大きかった作物は、果樹類が約四十四億円、桑が約三十三億円、野菜が約二億円、麦類が約一億七千万円でございます。被害が大きかった県、これは福島県が約五十億円、山形県が約二十一億円、宮城県が約七億円であります。  その次に、五月中旬に凍霜害がありました。これは関東、東海、近畿、中国の一部に霜がおりたのであります。この被害見込み総額は約五億九千万円でございます。被害の多い作物は、桑約三億円、茶が約一億円、被害の大きい県は長野県で、約四億円であります。  五月下旬の凍霜害におきまして、これは長野県、群馬県、山梨県等でございます。この被害状況につきましては統計調査部で目下調査中でございますが、五月二十九日までに、長野県ほか六県からの報告及び統計調査事務所との電話連絡によりますと、十億円はこえる見通しであります。被害の大きいのは桑、野菜で、被害の大きい県は長野県。  次に、長雨等の災害でありますが、九州及び中国、四国地方におきまして、四月に入りまして高温多雨、寡照に経過し、県によって四月の降水日数が平年の一・五倍から二倍、降水量は五〇から六〇%多かった。こういう結果、稲につきましては穂が出たのがある。麦につきまして不稔障害、実らないのがある、湿害、赤カビ病、   〔理事斎藤昇君退席、委員長着席〕 なたねにつきましては、湿害、菌核病等が異常に多く発生しました。この中間調査における被害は約百五十億円であります。被害の大きいのは、麦類約百五億円、なたね約二十億円、野菜、果樹等約二十四億円であります。被害の大きい県は長崎県、鹿児島県で二十億円をこえる模様であります。  その次に干ばつがあります。干ばつによる用水不足のための植えつけ不能、または遅延の状況を呈した地域は、東北、北陸を主とする二十二県、その面積は最高時で十二万六千町歩に及びましたが、その後の応急対策及び降雨によりまして、六月三日現在では、関東、東海、近畿地方が約六万町歩になっております。  対策の見通しでございますが、四月末の凍霜害に対しまして、五月八日に天災融資法を適用することにつきまして閣議の了解を得ております。農林省としましては、これに基づきまして所要の準備を進めるほか、激甚災害法を適用する方向で関係省と折衝を進めております。申し上げるまでもなく、激甚法が適用されまするならば、貸し付け限度額は一般的に十五万円でありますが、それが二十万円に引き上げられることとなり、特にその果樹災害の場合には五十万円となるので、今次凍霜害による資金需要には対処し得ると考えられます。それから自作農維持資金、これにつきましては天災融資法の発動と相まって融資措置を講ずることにいたしたいと思います。それから各金融機関に対しまして、五月八日付でつなぎ融資に万全を期するよう要請いたしております。それからまた農業災害補償法に基づきまして、共済金の支払いにつきましては国の再保険金の概算払いの早期実施、農業共済基金からの融資などの措置によりまして農家に早期に仮払いできるよう、五月十一日付で関係知事、共済連会長あて準備方を通達いたしております。各県におきましてそれぞれ準備しておりますが、各県からの書類の提出があり次第、国の再保険金の概算払いを実施することにいたしております。それから蚕繭共済事業にかかる国の再保険金の概算払いの限度額の引き上げを行なうことにいたしております。その他、果樹、桑に対する樹勢回復、技術指導、災害防止のための施設等に対する助成措置につきましては、融資措置等を含め、災害対策全体として罹災農家の経営安定をはかることを目途として財政当局と折衝中でございます。なお、五月中下旬の凍霜害、これにつきましても、四月下旬の凍霜害に準じて措置いたしたいと考えております。  長雨に対する災害対策につきましては、実態の把握を待って、昨年の長雨災害の対策措置の例をも参考として、天災融資法、自作農維持資金などの融資措置その他必要な助成措置を講じたいと考えております。  干ばつの対策といたしましては、関東、東海、近畿等の被害地域におきましては、移動揚水ポンプの動員、上流ダムの放流等の応急措置を強力に実施しております。また一方、気象状況の好転によりまして解消の見通しは明るくなっております。その他、利根川下流部の異常渇水等につきましても、それぞれの措置をとっております。  大体、以上のような次第でございます。
  259. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連して。ただいまの農林大臣のお答えでもわかりますように、この凍霜害に対する政府の助成策というものはほとんど金融だけであります。それから農業共済はほとんど適用対象にならない。ところが、六分か六分五厘で金を借りても、この緊急の凍霜害で因っている農民がいますぐ何かできるということじゃないらしい。ですから、凍霜害に対する対策は、農業災害の一つの盲点だろうと思います。これは大蔵大臣もひとつお考えおきいだきたい。そこで農林大臣、大蔵大臣、凍霜害対策というものを何か別個にお考えいただけるようなものがないものか、きょうには間に合いませんが、いつでも融資だけではとても問題解決にはならぬような気がしますので、ひとつ根本的に御検討をいただきたいと思うのでありますが、いかがでございますか。
  260. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 農業の多角的経営と申しますか、米、麦、繭だけでは農村の発展は期せられない。選択的拡大の方針に基づきまして、こういう果樹園その他の災害につきましても、今後お話のとおり検討を加えなければならぬ問題だと考えております。
  261. 米田勲

    ○米田勲君 いまのお答えにもありましたが、十分にこれの対策を御検討願いたいと思います。  次に、農林大臣にお尋ねしますが、牛乳の問題です。この牛乳の値上げ問題は、農林大臣が五月六日、値上げはやむを得ないという発言をしたことが発展をして、五月十九日には、値上げを認める、ただし、上げ幅は二円に押えるべきだという閣議の決定が出て、これは通達が発せられたわけです。そこで、簡単にお聞きいたしますが、牛乳の値上げはどうしてもやむを得ないんだという結論になった農林大臣の考えの根拠をひとつお聞かせ願いたい。
  262. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 閣議で牛乳の値上げを決定する権限もございませんし、そういうことではございません。いささかちょっと経過と違っております。それから、通達したから牛乳の値上がりになったと、これもお間違いでございます。牛乳の値上げにつきまして、実は管理価格でございませんし、これをとめる権限も実は持っておりません。しかし、消費食糧として重大なものでございますから、極力この値上げを押えるという行政指導は常にいたしております。原因になりましたのは、御承知のように、九州で生産者がすわり込みをして消費者牛乳を値上げしろ、こういうことに端を発しまして、全国的に消費者の牛乳価格を上げるということが、生産者の側からも、あるいは特に都会のほうでは小売り側からも、メーカーのほうはそれほどではなかったのでございますが、この三つの方面から一斉に上げたいと、こういう要請が出てきたわけでございます。私どもといたしましては、先ほどからここで米田さんからお話がありまするように、政府管理の価格によりまして、あるいは米等につきましても、物価の抑制対策をとっている現在でございますから、牛乳等におきましては管理価格でもございませんし、政府が関与をできるような立場にはなってはおりませんけれども、これは上げるのは極力押えるということで各方面を呼んで、そうして上げることを押えに押えてきたのであります。しかし、その中途におきまして、ことしの夏における需給状況、こういうのが逼迫する傾向があります。それから生産者にとりましては、いまの生産者の売り渡し価格ではこれはもうやっていけない、上げろ、それについて、消費者価格を上げた分の半分だけは生産者のほうの価格を上げるほうに回せ、そういう意味において価格を上げたらいいじゃないか、こういう要請も強くきたわけであります。そういうことでございますので、牛乳の生産状況、需給状況、これが逼迫する傾向にありまするから、その生産を増すという意味におきまして、生産者のほうへ価格の値上がりの大きな部分が回って、生産意欲が上がるということであるならば、これはいたし方ないんじゃないか。もう一つは、小売りのほうにおきまして、非常に人件費その他費用がかかるので、小売りのほうで非常に強い要請をいたしております。これら諸般の事情を勘案いたしまして、政府が直接関与する問題、権限はございませんけれども、極力値上げを押え、また押え得なくて、どうしてもというところまでいきましたときにおきましては、私どもは生産者のほうに回って、そうして牛乳の増産ができるようなことになるならば、二円程度の値上げはやむを得ないのじゃないか、こういう結論といいますか、そういうことに相なってきた状況でございます。
  263. 米田勲

    ○米田勲君 農林大臣の話を聞いておりますと、もちろん私は価格統制ができる牛乳じゃない、法的に押える権限はないわけでありますので、その点はわかっておる。あなたの話を聞いていると、わしは一生懸命押えようと思ったがどうにもならなかった、上がったことはわしと関係ないんだと、こういうふうにおっしゃるが、あなたは閣議に了解を求められたでしょう、二円の上げ幅はやむを得ないと、いかがですか。
  264. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 冒頭申し上げましたように、閣議で了解を求める問題でもございません。
  265. 米田勲

    ○米田勲君 求めなかったか。
  266. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 求めません。牛乳の値上げ問題についての経過を私は報告しただけであります。閣議で決定する問題でもございませんし、了解を求める問題でもございません。ただ経過を報告しただけであります。
  267. 米田勲

    ○米田勲君 経過を報告し、やむを得ないという結論に達したと報道されたでしょう。そこで、私は農林大臣に端的にお聞きしますが、こういう牛乳の値上げに、直接的ではないが間接的にあなた方協力した。どうも今度のこの牛乳の値上げについては、各メーカーが協議をして値上げを一斉にやろうとした形跡がある、独禁法違反の疑いがあるわけです。それから農林省が通達を出して、二円の上げ幅はやむを得ないから、その分配についてはこうしろ、こういう行政指導を始めた。北海道の事情を言うと、住民の要望が強いために上げられないでストップした地域がある。知事が外遊から帰ってくるまで待つということがあった。それが閣議の了解を求めるという報道が流れると、だたっといままで留保されたところが一斉に上がった、こういう事実があるのですよ。これをどう見ますか、責任がないのですか。
  268. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 去年でしたか、去年はメーカーが協議をして一斉に乳価を上げるというようなことがあったということで、いろいろ調査等もいたしたわけでございます。このたびの値上げにつきまして、私どもはメーカーが集まってどうということは、私どものほうの管轄でそれをどうこうということもございませんが、私は聞いておりません。小売りのほうでこれが集まって一斉に上げるという協議をした、これは独禁法違反だ、こういうようなことは聞きまして、その方面で調べるというようなことは、私も連絡を受けて聞いておりますが、メーカーのほうで集まって独禁法違反のおそれあるようなことをしたということは、私は連絡は受けておらなかったわけでございます。
  269. 米田勲

    ○米田勲君 宮澤長官にお尋ねしますが、今日国民の食生活が相当変化して、パン食が相当行なわれておるわけですが、そういう意味から言いますと、牛乳という問題は、消費者の生活に相当大きな影響を与えるわけです、値上げが。物価に対して、あるいは消費者物価に対して、あるいは国民生活に対して、今回の牛乳の値上げは、どんな影響を与えるとあなたは判断しておりますか。
  270. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これはやはり牛乳が、かりに二円でも上がったということは、心理的には決していい影響を与えないと思います。計数的に申しますと、牛乳の持っておりますウエートは、一万分の百十ぐらいでございます。そこで十六円のものが十八円になりますと、計数的には一%の十分の一くらい、〇・一%くらいでございます。しかし、問題は、計数的なものよりは、むしろ心理的なものじゃなかろうかと思っております。
  271. 米田勲

    ○米田勲君 精神的な影響のほうを強調しておられるようですが、実際は国民の生活に相当打撃を与える、影響を与えるから、国民は相当反対運動をやっておる実情でもおわかりでしょう。  農林大臣にお尋ねします。あなたは業者との間の行政指導で話をして、メーカーには今度の牛乳の値上げについて、学校給食用の牛乳については現行価格に据え置くということの約束をさせた、こういうふうに伝えられておりますが、事実ですか。
  272. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 事務当局をして、メーカーにおきましても、あるいは生産者におきましても、学校給食の牛乳だけは、いままでどおりで値上げをしないように、こういう話し合いをさして、大体そういう了解というか、話し合いができておるというように承知しております。
  273. 米田勲

    ○米田勲君 もう一つお尋ねしますが、それは価格だけであって、数量については、従来どおり供給をするような約束は取りつけられなかったのですか。
  274. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 数量は三十九年度では全体で四十万石でございますが、この春からもうやっております。数量はそれを確保するように、そういう了解をしております。
  275. 米田勲

    ○米田勲君 私の心配は牛乳の値段が、市乳の値段が上がった。学校給食用の牛乳は押える。こうなると、今日脱脂粉乳が不評判で生乳に切りかえることがどんどん行なわれておるときに、価格のところで押え込んで数尾の問題は責任を負うという態勢をとらないと、これは学校給食用の牛乳がほとんど入手できなくなるような状態になってくる。それをおそれているのですが、そういう結果にならないという行政指導がしてもらえますか。
  276. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 学校給食につきましては、それぞれ機関がございます。そういう機関とも話し、あるいはメーカーあるいは生産者とも話して、その量を減らさないような行政指導をやります。それを確保いたします。
  277. 米田勲

    ○米田勲君 もう一つお尋ねしますが、二円の上げ幅について、生産者、小売り、それからメーカー、この間に分配、上げ幅の分配について行政指導をなさっているようですが、どんな行政指導をしておられますか。
  278. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) これは話し合いで、まだ決定はいたしておりません。中間においてこういう話がありました。すなわち、二円の中で、小売りのほうが九十銭、生産者のほうへ八十銭、メーカーのほうが三十銭、こういうような割り振りでどうだろうかというようなことを言ってきた面もありましたが、それを別にのんだわけではございません。できるだけ生産者のほうへ多くというようなことで、話し合いの指導をやっておりますが、まだきまったところ、地区的にもいろいろありまして、きまったところ、きまらないところ、いろいろございますが、方針といたしましては、生産者に一番優先、それから小売り、それからメーカーのほうはごく少額、こういうふうな方針でやりたいと思っております。
  279. 米田勲

    ○米田勲君 時間が来ましたが、もう少し、総理にお伺いをいたします。  いままで個々にいろいろな問題を私は取り上げて事情をただし、見解をただしてまいったのですが、政府は、いま公共料金の一年間ストップ政策を進めている最中であります。衆議院の予算委員会の答弁でも、政府側の答弁では、今年じゆうは、とにかくこの政策は続行する、こういうことなんですが、どうも各省ごとの状況をいまお聞きのとおりみますと、来年になると、一斉にせきを切ったように値上げの傾向が出てくるという心配が出てきているのですが、もしそういうことにでもなれば、これは私はたいへんなことになると判断をするわけです。ことし一ぱいは料金の値上げストップは続ける、こういうのであれば、来年はどうなるかということなのですが、もしこの抑制策を撤廃をする場合には、どんな配慮と準備をする考えであるか、私としては、物価に大きな影響を与えたり、国民の生活に極端な圧迫を加えないような方策が準備的に行なわれる施策が行なわれる、そういう態勢のもとで、この政策の廃止をするのでなければ、むやみに、各省の動きを見ていると、一斉に値上げの傾向に向かっているので、総理の御見解をこの際お聞きしておきたいと思う。
  280. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 消費者物価の問題は、一番重要な問題でございます。こういうものは一年限り、あとは知らぬというふうな問題ではない。やはり国民の生活に非常に影響することでございますから、政府はあらゆる手段、あらゆる施策を講じて、上がるにしても、徐々に上がるように考えなければならぬ。ただ、私が一番心配いたしているのは、何と申しましても、給料の上がり方が非常に大きゅうございます。各国の例をみましても、四年も続いて春闘で一割以上上がるというふうなことは、ほかの国にはございません。そこで三年間、ようやくまあここまできた、消費者物価も上がりましたが、この上また一割から一割二分平均に上がるということになりますと、物価対策というものは、従来よりも一そう重要な問題となってくることを私は覚悟しております。
  281. 米田勲

    ○米田勲君 ちょっと触れられませんでしたが、公共料金の抑制政策は、ことし一ぱいでやめる考えですか、その点お聞かせ願います。
  282. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 公共料金ばかりではございません。消費者物価全体の問題で考えているのであります。御承知のとおり、消費者物価のうちに占める公共料金というものは、一万分の千六、七百でございます。しこうして、主食が千あまりになっておりますから、公共料金という、主食を除きましては、これはもう何と申しますか、六、七%程度の問題でございます。だからこれは、実際の問題としてはムードを押えるということが非常な力であるのであります。したがいまして、私はそういう面から公共料金というものを考え、また全体の物価についての施策が必要であると思います。
  283. 米田勲

    ○米田勲君 影響するところ甚大でありますので、各省の内部に起こっているこの一斉値上げに向かおうとする情勢は、これは責任を持って食いとめてもらいたいというのが、われわれの主張です。国民の生活に圧迫を加えないような、そういう政策をいまから準備をしてもらいたいということを強く要望しておきます。  委員長、労働大臣に長くすわっておってもらったんですが、ちょっと一言二言、質問をしないと義理が悪いんですが、いかがでしょうか。
  284. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 簡単にやってください。
  285. 米田勲

    ○米田勲君 それでは労働大臣に一、二、予定しておったものが相当あったんですが、お伺いをします。  当初予算の総括質問の中でもお尋ねしておきましたが、労働力の需給問題は、非常に重要な問題になってきておりますが、その後どういう行政指導が行なわれ、情勢がどうなってきておるか、今後の見通しについてはどうかということと、中央の労働需給センターの状況はどうなっておるかということと、もう一つは、炭鉱離職者のその後の趨勢はどうなってきておるか、それからこの離職者の再就職の対策はどのように進められておるのか。聞くところによると、炭鉱離職者の相当部分について再就職をさせることは、とうてい不可能になってきたと労働省の内部で言っておる向きがあると言われておりますが、それはほんとうなのかどうか、そういう点でお答えを願います。  それからもう一つは、最後にもう一つつけ加えて、炭鉱における労働力の確保ということが非常に重大化していることは、御承知のとおりですが、この問題は一月の本会議でも、私、取り上げたのですが、労働条件や保安条件の改善、あるいは福利厚生面の改善をやると同時に、現在の炭鉱労働者の待遇改善が労働力の確保に最も大切な要件だとわれわれは考えておるのでありますが、その後、行政指導をどのように加えられて、現状はどうなっているか、こういう点についてまとめてひとつ御答弁をお願いします。
  286. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) お答えを申し上げます。  最近におきまする労働力の需給の状況は、全般的には大体均衡を保ちながらも、特に若年労働者については、新規学校卒業者を中心にしまして求人は大幅に増加をしつつございまするので、求人難の傾向がますます顕著になりつつあるのでございます。この傾向は、特に中小企業の分野において著しくあらわれておりまするし、また、地域的に見ますると、関東、中部、関西等の大工業地帯及びその周辺地域で著しく見られておるのであります。  このような労働力不足基調は今後とも持続され、特に昭和四十二年以降は、新規学校卒業者が減少いたしてまいる見込みでございまするので、この傾向は一段と強まってまいるものと予想されるのでございます。このような情勢に対処いたしまするためには、労働力の流動性を高めることによってその移動を円滑にし、労働力を最も有効に活用いたしまするよう地域的、産業的に適正な配置をはかる必要があることはもちろんでございます。このたび労働市場センターの構想を立てまして、大型電子計算機、ユニバック・スリーを中心とするデーター電送システムを導入することになりまして、全国的規模で労働市場情報の迅速的確な把握とその提供、求人求職の照合、照らし合わせを行ないまして、この流動化の要請にこたえ、需給の結合を適正化するということを考えておるのであります。ただこのことは、求人求職を全国的に突き合わせていくということでございまするが、他面におきまして、若年労働力の不足に応じまするため、中高年齢者の労働力をもって、できるだけ若年労働に代替せしめることも考えていく必要があると存じます。このために、引き続き中庸年齢者をもって代替できるような職種を、専門的立場から研究をいたしまするとともに、職業安定所の職業紹介に際しましては、積極的に使用者に対しまして、この中高年齢者による代替を勧奨するというような態度を、積極的にとるように指示をいたしておる次第でございます。同時に、中高年齢者の就職ということに相なりますると、賃金の問題あるいは住宅の問題等、中高年齢者特有の困難なる問題が発生いたすのでございます。これに対しましても、着々と政策を講じつつある次第でございます。  次に、石炭離職者の問題でございまするが、本年度の合理化によりまする炭鉱離職者の発生は、昨年度に比較いたしまして大幅に減少する見込みでございます。ただ、その多くは中高年齢者でありまするために、再就職は必ずしも楽観を許されないというような状況でございます。政府といたしましては、このために住宅の確保、移住資金、雇用奨励金などの支給等につきまして、昨年度を上回る離職者政策関係費を予算に計上いたすことができまして、従来の離職者政策を一段と強化いたしまするとともに、新しく再就職奨励金制度を設けましたので、これら離職者の再就職促進につとめる考えでございます。  その再就職の目標数について申し上げますると、国、地方公共団体等の採用、二千二百人を含めまして、公共職業安定所の紹介就業者を一万九千人、石炭各会社のあっせんによる就職者を二千六百五十人、その他産業地域振興事業等を合わせまして、総計今年度内の就職予定を二万七千名というふうに目標を定め、その再就職を可能ならしめるよう、あらゆる努力を払っているところでございます。で、ただいまのところこの目標数は、大体において到達し得るという確信を持って行動いたしておりまするし、また、現在までの周囲の情勢から見まして、この見込みにそうたいした狂いはなかろう、こういうふうに思っております。しかし、これらの就職を確保いたしましても、今年度は前年度からの繰り越し人員が約二万人、それから今年度において新規に発生する離職者が約二万人近くございまするので、やはり一万数千名は明年度まで持ち越さなければ解決できないだろう、こういうふうに考えております。  最後に、最近人不足に悩んでおりまする石炭業における労務確保の問題でございまするが、これにつきましては、もとより御指摘になりましたごとく、石炭労働者の労働条件の引き上げということが必要であることはもちろんでございまするが、同時にこの石炭業そのものの将来についての見込みというものが、相当労務充足の困難な事情に相なっておるのでございまして、これにつきましては通産省等々と常時連絡をいたしまして、業界の合理化の進展に伴うその後の見通し等を参考にして鋭意努力をいたしておる次第であります。
  287. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 米田君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  288. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 次に、小平芳平君。
  289. 小平芳平

    ○小平芳平君 初めにILO八十七号条約の批准について総理にお尋ねします。  本条約の批准は、けさの委員会でもちょっとお話がありましたが、関係国内法の改正案とともに、衆議院の特別委員会で審議中のこともよく承知しております。延長国会の会期も、だんだんに迫ってきている今日、なお参議院へいつ回ってくるか見通しが立たない状況であります。三月の予算委員会の席上で、総理も労働大臣も、衆議院の審議が始まったならば、機会を見て政府の統一見解を発表することにもなろうというふうに答弁されておられましたが、私たちとしましては、衆議院に足場がないのでここでお尋ねするわけですが、総理としていっそのような見解なりあるいは与党内のお考えをまとめて御発表なさるおつもりか。また、積極的に審議を推進なさろうとなさるかお尋ねしたい。
  290. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 衆議院の特別委員会ILO条約並びに関係国内法につきましていま審議の途中でございます。できるだけ早く衆議院を通過して、参議院に回ることをわれわれは熱望しております。
  291. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、できるだけ早く参議院に回ることを、われわれも期待しております。しかし現状においては、新聞の報道を見ましても、またいろいろな動きから見ましても、なかなか回って来そうにないのでお尋ねしておるのです。
  292. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 早く回ってくるように、党並びに関係委員は、非常に熱心に審議せられていると思います。
  293. 小平芳平

    ○小平芳平君 それは党のほうでも熱心におやりになっているでしょうし、委員会でも熱心におやりになっていると思いますが、総理としてのお考えを聞いているのです。
  294. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 総理としての考えは、いま申し上げたとおりであります、御審議願っておるのですから。
  295. 小平芳平

    ○小平芳平君 何か、いまおっしゃったこと、よくわからなかったんですが。
  296. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 総理としての見解は、いま申し上げたとおり、国会で審議中だから、どうぞ早くやってください、これだけです。
  297. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、三月の委員会のときには、内部がまとまってないような、そのうちに統一見解を発表なさるようにおっしゃったのは間違いですか。
  298. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 統一見解とは何でございましょうか。政府は政府案を出しておりますから、それの説明は、もう関係大臣からいたしております。
  299. 小平芳平

    ○小平芳平君 じゃ労働大臣にお尋ねしますが、労働大臣が統一的な見解をそのうちに発表する機会もあろうと、労働大臣がおっしゃった。それに対して総理もそのとおりだとおっしゃった。
  300. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) いわゆる統一見解を発表する機会もあろうと申し上げましたのは、当時いわゆる倉石問題点なるものが論議されております。それについて政府といたしましては、各省間にわたる事項でございまするので、各省で相談しなければ、これに対する政府の考え方をまとめることができない状況でございましたから、それで各省の間でいろいろ見解を調整中であったのでございまして、そのことを申し上げたわけでございます。その政府としての見解は各省を通じて統一されておりまするので、ただいま衆議院における特別委員会の審議に際しましては、御質問に対しまして、政府としてはその統一見解をもとにして、各省それぞれ答弁をいたしております。
  301. 小平芳平

    ○小平芳平君 自民党内において、与党内においてはいかがですか。
  302. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) ただいま、与党の特別委員の皆様におかれましても、この法案を仕上げるために、いかなる修正が必要であるかというようなことを、いろいろ御相談中と承っております。
  303. 小平芳平

    ○小平芳平君 総理は、総理としての考えは、国会で審議してもらっているんだというふうに言われますが、それは普通の状態ならそのとおりであると思いますが、今度の条約批准のように、何回も何回も過去において流れている。そういう過去の経過からして、あるいはたとえば政治家のどの方にお聞きしても、結社の自由を認めますかとか、団結権の保障をどう考えますかと言われて、そういう結社の自由は反対とか、団結権は反対とかと言う政治家は、おそらくいらっしゃらないはずだと思うにもかかわらず、そのことが、批准が延びるために客観的に見られた場合には、いかにも日本の国では結社の自由を認めてないか、団結権の保障をしてないかみたようにとられているという、こうした事実を総理はどのようにお考えか、責任はお感じにならないか。
  304. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 結社の自由とか団結権が認められていないと思う人は、外国人にあまりございません。また日本においてもそうでございます。いま問題になっているのは、日本の労働法というのはもう世界でまれに見るほど進んだものでございます。ただ問題になっているのは国家公務員、地方公務員の問題なのでございます。だから外国の人は大体わかっていると思います。もう日本でも、当初はILOというものはたいへんなことだと思っておられた財界の人もおられるやに聞いております。今度の問題は、一般の団結権とか交渉権の問題でない、国家公務員の問題でございます。私はそれが国家公務員だから簡単だとは申しません、いままでの慣行その他がありますから。そういう点につきましては、十分特別委員会委員の方々が議論されていると承っております。
  305. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、団結権やそういうことを認めないというふうに思ってないのだから、当然早く批准を済ませて、そういう批准が済ませられるはずなのにおくれているということで質問をしているわけです。でもう一つILOから調査団が来る、その調査団の来日について、むしろ調査団に来てもらって実情を見てもらったほうがいいとか、調査団が来てから国内法の整備をすればいいとか、そういうような意見もあるように伺いますが、そういうようなことは非常に乱暴な意見ではないかと思うのですが、労働大臣はそうした調査団が来た場合にどのようなマイナスがあるか、影響があるか、あるいはむしろ来たほうがいいという意見にも一理あるかどうか、どのようにお考えお尋ねしたい。
  306. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) ILOの問題は、先ほど総理からも申されましたように、日本の民間労働関係においては、すでにILO八十七号条約が要求しておる事項が実現しておるにもかかわらず、ただ公務員の問題についてだけ問題が残っておるわけなのであります。したがって、それはいま国内法の調整で検討中、国会において検討しておられるのでございまするが、ほとんど日本の結社の自由の保障は、大体でき上がっておるのでございまするから、いまさらILOから調査団に来てもらって、そしてその調査の結果に基づかなければ、この問題の整備ができないというような段階ではないと思います。したがって、私はすみやかに批准をいたしまして、できるだけILO調査団が来ずに済むようにするべきである、こう思うのでございます。
  307. 小平芳平

    ○小平芳平君 調査団の問題については、総理も同じお考えでしょうか。
  308. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 調査団の来る、来ないの問題のみならず、労働関係につきましては労働大臣と同じ意見でございます。
  309. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、文部大臣がきょうは来ておられませんので総理にお尋ねしますが、文部大臣のいわゆる中央交渉というような問題で非常に難航しているようにも伺いますが、こういうような点は、むしろ派生的な問題ではないかと私たちは感ずるのです。そうした派生的な問題で本筋の条約批准がおくれるということは、決してプラスではないように考えますが、いかがですか。
  310. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 委員会で御検討中のことにつきましての批判は、私は差し控えたいと思います。
  311. 小平芳平

    ○小平芳平君 別に批判ではないですが、ここがILO特別委員会であればお尋ねする問題なんですが、特別委員会でないけれどもお尋ねしているのですが、そうした交渉について、中央交渉云々で暗礁に乗り上げるとか、批准がおくれるということはどうお考えですか。
  312. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) それは特別委員会内の問題で、委員の方々の御議論でございます。だから、政府がどうこうということは、私はここで申し上げかねます。
  313. 小平芳平

    ○小平芳平君 労働大臣は。
  314. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 中央交渉の問題というのは、総理も言われましたごとく、政府案では問題に初めから取り上げていなかったものでございまするので、審議の過程においてそうしたことに関連しての御質問があるわけでございまして、これに対しては政府といたしましては、いわゆる中央交渉と称せられておる事柄については、文部大臣も、団体交渉として認めるわけにはいかぬが、しかし実情についていろいろ話を聞くことは当然である、こういう答えてしておるわけでございます。
  315. 小平芳平

    ○小平芳平君 ほかにも問題点もあろうかと思いますが、この問題については、まあいろいろな困難があっても、そうした困難を排除して早期批准をすべてにおいて待望しているということを特に申し上げたいのです。  次に経済問題についてですが、先ほど来いろいろ御答弁がございましたので重復は避けたいのでありますが、仲裁裁定の金額が、午前中の質疑を通じて非常に低いという不満がある。そういう印象をわれわれは非常に受けたわけですが、今度は先ほどの消費者物価の問題について、総理は消費者物価は安定させていく、そう言われながらも、ただ心配になるのは賃金の上昇であるというふうにも言われましたが、そこに相反する考え、片方では賃金の上昇が低過ぎるという、ところが、政府のお考えとしては、これでも相当高いのであって、むしろ消費者物価の問題がこの賃金引き上げによって影響を受けるという、そういうふうにお考えか、その点についてお伺いしたい。
  316. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 消費者物価の最近数カ月の上昇ぶりは、先ほど企画庁長官が申し上げましたごとく、昨年のいまごろが前々年に対しまして上がり方は七・二%、ことしはそれが三・六%、こういうふうに一応上がっておりますが、上がり方が半分程度に落ちついたと見ております。落ちつきつつあると考えております。ただ私が申しますのは、賃金が非常に上がってきておる、四年続けて一〇%をこえることになりますと、上がったものが貯蓄せられたりすればいいのでありますが、消費ブームによって供給をこえる需要ということになりますと、一般物価の上がり、あるいはサービス料金の上昇ということになってまいります。そういう方面にあらわれることを心配しているのであります。したがいまして、そういうことを押えるためには、一般財政金融政策であらゆる措置をとらなければならないのではないか、こういうことを考え、また過度の消費の調整もしてもらうようにPRしなければならぬのじゃないかと思っておるのであります。
  317. 小平芳平

    ○小平芳平君 この問題については心配ないというふうに総理は言われますが、そうこう言っているうちに、いつの間にかあれが上がった、これが上がったというようなことが過去の経緯だったと思うのです。非常に生活に直接響く問題ですから、ただ心配ないでは済まされないと思います。  それで、中小企業の問題ですが、先ほどいろいろ中小企業についてもお話がありましたが、一つお尋ねしたいのは、中小企業の倒産について、繊維が多かったときには、これは暖冬が原因であったというふうにも、一つの原因を説明されたのですが、大蔵大臣から先ほど金属もずいぶん最近はふえてきているというふうなお話もありました。それで、金属はどういう原因で倒産がふえるか、そういう点についてお尋ねしたい。
  318. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほど申し上げましたように、四月よりも五月は倒産件数がずっと減っております、三百件台か二百件台に。また負債総額も百十億ばかり減っております。ただ内容を見ますと、一、二月、三月ごろのように暖冬異変によるものというようなものだけでなく、金属工業とか、それから化学工業とか、そういうものも出ておりますということを申し上げたのですが、倒産の内容そのものを見ますと、金融引き締めが直接の原因で倒産をしたというようなケースは非常に少なく、先ほど申し上げましたように、興信所の調べでも、過小資本であるとか、また思惑をやったとか、それから経営態度が放漫だったとかというような累積で、倒産をしておるものが非常に多い。ただ一部に、親企業が倒れましたために、その親企業に八〇%、九〇%、一〇〇%依存しておったような下請が、連鎖的に倒産した例も見られますと、こう申し上げたわけでございます。
  319. 小平芳平

    ○小平芳平君 通産大臣にお尋ねしますが、確かに大蔵大臣が言われるように、全体の件数は減っております。減っておりますが、産業によってはふえているようにも思うのですが、いかがですか。
  320. 福田一

    国務大臣福田一君) 産業によっては、それは幾ぶんふえておるものもございます。
  321. 小平芳平

    ○小平芳平君 その原因と対策についてお尋ねしたい。
  322. 福田一

    国務大臣福田一君) その原因は、先ほど来大蔵大臣からも申し上げておるように、新規事業に手を出して、それがうまくいかなかったとか、あるいはまた、自分の力以上の信用を活用して仕事をしておるというようなこと、あるいはまた、少ない例ではありますが、連鎖的な反応で倒産したものもないとは言えません。そういうようないろいろのことがございますが、われわれとしては、まじめに仕事をしておって、しかもその人が倒産をするというような場合には、これは極力助けてあげなければならない、こう思っておるのであります。したがって、そういう場合に対しては、通産局等をして金融の面、その他についてもできるだけの措置をとるように、窓口を開きまして、私たちは努力をいたしております。また、金融面においては、先ほど大蔵大臣が言われたように、買いオペの問題でありますとか、あるいは政府関係の機関について、そのワクをできるだけふやすというような措置もとっておりますが、私たちとしては、いずれにしても、できるだけそういうような問題についても、親切に問題の処理にあたる、こういうふうな考えでやっておるわけであります。
  323. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうした表面の、あるいは原因とか、対策だけでは済まされないと思うのです。たとえばこの通産大臣の発言要旨として、中小企業の官公需確保についてというものもありますが、いま通産大臣は、官公需についても親切に世話するというふうにおっしゃったのですが、具体的にどのような実際の効果をあげておりますか。
  324. 福田一

    国務大臣福田一君) 官公需の問題につきましては、関係の者が、両三回にわたって役所関係で会議をいたし、それからまた納めるほうの側の人たちも呼びまして、これまた数次にわたって会議をいたしながら、どういうことがネックになっておるかということを、いろいろ調べまして、できるだけそのネックを取り去るような措置をとっておるわけでありまして、しかし、それが具体的にどういう効果をあげたかということになりますと、きまりましてからしばらくであり、いま実施の段階に入っておるときでありますから、詳しい調査はまだできておりません。
  325. 小平芳平

    ○小平芳平君 詳しい調査でなくて、そういうふうに熱意を入れて需要の、官公需の増大もはかっていくと、それからその結果、どのようにふえていくというような見通しが立つかどうか、お聞きしているのです。
  326. 福田一

    国務大臣福田一君) これは努力をいたしておるのでございますから、われわれとしては、順次これが効果をあげていくと存じております。
  327. 小平芳平

    ○小平芳平君 なかなか効果があがらないのを、これからあげていこうと、大いに努力していただきたいと思うのです。  もう一つ中小企業関係で、香港の中小企業が、たとえば綿製品について見ますと、アメリカ市場で、昭和二十八年に五四%の市場占拠率であったのが、三〇%に落ちた。それに反して、香港製品が〇・四%であったものが、二十数%に上がってきている。このように、安い香港製品に海外市場を圧迫されている。綿製品のほかにも、プラスチック製品とか、そういうようなものがあるのではないか。そういうような実情については、どのように把握していらっしゃるのか。
  328. 福田一

    国務大臣福田一君) 綿製品の問題につきましては、確かにあなたのおっしゃったような問題がございまして、これについては、日米経済閣僚会議等におきましても、あるいはまた向こうとの、いわゆる綿製品交渉においても、非常に不合理である点を、われわれは強く主張いたしまして、向こうもその点はだんだん認識してきておるようであります。トランジスター・ラジオ、プラスチック等についても、そういうことはございますが、トランジスターのときも、こっちが部品を出して、それで、向こうで組みかえて、どんどん向こうへ行くようになった、そこでわれわれは、トランジスター・ラジオの部品を出さぬようにいたしましたら、今度はアメリカから部品を香港が入れて、向こうに出している。  それからこのプラスチックの問題は、国内の部分がわりあいに高くて、そうして国外へ売っておるほうが安いという場合等がございますので、こういうことがないように、いま措置をとっておるわけでございます。
  329. 小平芳平

    ○小平芳平君 最後におっしゃったのは原料の話ですが、国内の生産者は高い原料でなければ手に入らない、香港の生産者ならば、日本の輸出振興の対策によって、安い原料が手に入る、そういうような実情にある、そういうわけですか。
  330. 福田一

    国務大臣福田一君) プラスチックの問題は、それを国内で買う人の信用力とか、いろいろな買う時期とかによりまして、値段がときどき違うのであります。ところが、香港あたりで買うときには、たくさん買うとか、あるいはその他の事情で、たまに安いときがあった、そういうたまに安いときがあったものでつくりますというと、アメリカへ出すときにはやはり安くなる、こういう問題がありますので、われわれとしては、国内に売る場合にも、できるだけ安く売るように、こういうように指導いたしておると、申し上げておるのであります。
  331. 小平芳平

    ○小平芳平君 その国内に売る場合、なるべく安く売るように、というだけで、ただ、それだけのことで、この問題は解決できるのか、それとも根本的にいって、輸出する場合は、そういうふうに安く輸出されていくのか、そういう点もう少しはっきりお尋ねしたい。
  332. 福田一

    国務大臣福田一君) 海外へ出す場合におきましても、プラスチック業界、いわゆるこの輸出組合のようなものを完全につくってやれば、うまくいくのでありますが、こういうこともいま順次指導いたしておりますが、こういう輸出の問題、あるいはものを買う場合に、自由な貿易でございます。自由な販売でございます。これをわれわれが統制してやっておるわけではないのでありますから、やはり業者の良心とか、あるいはまた業者ができるだけそういうふうに努力してもらうように、われわれとしては行政指導をやっている、こういう意味でございます。
  333. 小平芳平

    ○小平芳平君 統制するように、私も言っているわけではないのですが、国内生産者が高い物を買わなければ——買わざるを得ない、国外の生産者が安く手に入る、こういう矛盾はおかしいではないですか、こういう矛盾は、通産省として相当力を入れて解決していかなければならないんじゃないか、このように申し上げているわけです。
  334. 福田一

    国務大臣福田一君) これは、実際問題をあなたはどういうふうに御認識賜っておるかしりませんが、物をつくってこれを売る場合に、たとえば鉄鋼の場合でも、国内よりは、あるいはアメリカにおいて安く売った、工場価格あるいは原価で売っている、こういう場合もあり得るのであります。輸出の場合に、そういうことは間々あることでございます。でありますから、これを全部やめるという、そういうことはできるものではありません。しかし、国内のものには高く売って、国際的には安く売るというようなことはおもしろくない。特に原料の場合におもしろくないから、できるだけそういうことはやらないようにしてもらいたい、こういうことを指導しております。
  335. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 関連。いまの香港の問題ですけれども、プラスチックの業者の関係を見ても、おもちゃ、人形を見ても、いま大臣が話されたように、原料が香港へ日本から入るときは安い。しかもそれが過当競争から起きている。ゴム板にしても、同じように業者問で統制をとっていながら、それを破って、安いゴム板を出している。長靴なども、向こうのほうがはるかに安く製品ができている、そういうことになっております。だから、香港から出されている品物を見てみると、プラスチック製品についても、一九六一年から現在までの間に、数量にして四倍、五倍という数量になっておる。アメリカの市場におけるシェアを見ても、輸出製品のシェアの中でも相当大きい、四倍、五倍というふうな量を占めておる。このままでいけば、かなり窮屈になってくるんじゃないか。それが、日本中小企業に対してかなりの影響があるわけです。ところが、アメリカの例を見ると、綿花法などつくって、国内価格と同じように、日本の業者にも売るというような立法措置がとられておる。わが国でも、そういうような低賃金でやっているような香港などを規制していくためにも、防衛措置として、アメリカの綿花法をつくっていくような、そういうような立法措置あるいはもっと業者間を指導していくというようななまぬるいことではなくて、強力ないわゆる防衛対策をとるべきじゃないか。この点については、考えはどうですか。
  336. 福田一

    国務大臣福田一君) これは、いろいろの製品についても、あなたのおっしゃるとおり考えられるところであります。しかし、それならば、その業種について、一つ一つの、たとえば輸出入組合のようなものをつくらせるとか、あるいは何か統制的なものの考え方でやっていくかどうかということになると、私は、いろいろの困難なといいますか、具体的にやっていく場合において、どういうふうにそれを措置するかというときに、なかなか問題があるわけなんです。実際は、業界ではそんなことをしてもらっちゃ困る、こういう意見、そうしておいて、裏のほうでは安く売ってしまっておると、こういうこともあるのですから、それはやはりいわゆる商業道徳の問題になるわけです。それからまた過当競争であるということは事実でございますから、まあできるだけこれは過当競争等を避けさせるように、たとえば資金面等の問題で出てきても、そういう面を押えていく、こういうことはいたしますけれども、これは絶対に売っちゃいけない、こういうことにはなかなかできないのであります。しかし、御趣旨はよくわかっておりますから、われわれとしては強力な行政指導をしてまいりたい、こう申し上げておるのであります。
  337. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、農業問題について農林大臣にお尋ねします。所得倍増計画でも、農業基本法でも、農業の近代化あるいは構造改善あるいは経営規模の拡大、いろいろそのような目標を立ててやっているわけですが、その結果、自立経営農家として、二町五反でありますか、そうした目標を立てていらっしゃるわけですか。
  338. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) そのとおりで、自立経営としては、そういう規模が望ましいということで進めております。
  339. 小平芳平

    ○小平芳平君 それで、所得倍増政策の結果、そういうように経営規模が拡大しつつありますかどうか。倍増政策を打ち出されてからもう数年になりますが、経営規模はどのように推移してこられたか、お尋ねしたい。
  340. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 二町五反を、四十五年までに百万戸というような目標の遂行等はあまり進んでおりません。一町五反というのは相当進んでおります。ただ、念のために申し上げますが、これは、私の考えでは、稲作農業とか、そういう方面に、どうしても経営面積面で広げなければならぬというふうに考えておりますが、その他果樹とか、いわゆる成長農業方面におきましては、必ずしもその面積だけにとらわれずに、成長していくという面もございます。そうしてまあ自立経営ができるというような面に進んでいるのもございます。しかし、一般的に考えまするならば、やはり経営面積が広くなければならぬ、日本の農業の零細性を脱却させなければならぬというふうに考えて、その目標に進めておりますが、いま申し上げましたように、その目標どおりに進んではおりません。
  341. 小平芳平

    ○小平芳平君 目標どおり進んでない上に、私が聞いた範囲では、たとえば干拓地とか開拓地、そういうところへ入植する農家は、まるきりわずかな耕地しかない、むしろ零細農民を農林省が製造しているみたいな結果に終わっているように思うのですが、いかがです。
  342. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) いまの二町五反というような目標を立てる前に、干拓等まで行きましたときに、大体一町くらいの割り当てをしておりました。それからまた漁業者の漁業権を失わしたので、漁民等に割り当てたものが、一町程度のものがございます。最近におきましては、二町以上を割り当てるというようなことで改めております。少し前の割り当ては、いまお話のような模様で割り当てをいたしております。
  343. 小平芳平

    ○小平芳平君 現在、農林省から私がいただいた資料の範囲では、たとえば干拓地の場合には、少ないところで九反、多いところで二町、二町というのは一カ所しかないですが、そういうような状態にありますが、それでは、このような干拓地の、過去に入植した農家の経営規模を拡大させる、そういう方策はありませんか。またもう一つ、今後八郎潟、その他大規模な干拓が行なわれておりますが、そういうところに対しては、二戸当たりどのくらいの耕地面積を予定しておられるか。
  344. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 従来割り当てたのは非常に少ない、これはまあ大きくするというわけにはまいりませんが、経営面におきまして自立できるような指導をいたしたいと思います。これから割り当てるのには、どれくらいのものにするかということでございますが、少なくとも私は二町以上にしなければならぬ。できるだけ大きい面積で割り当てをしていきたい、こういう方針を持って進めたいと思います。
  345. 小平芳平

    ○小平芳平君 できるだけ大きい面積と言われましても、やはり所得倍増政策その他で、二町五反という目標を掲げていらっしゃるわけですから、それ以下の農家をつくること自体が無理じゃないですか。で、たとえば、したがって、収入にそれが関係してくるわけですが、年間百万円以上の粗収入というふうに、倍増政策はうたってありますが、このような一町足らずの干拓地の農家の粗収入は、それこそ二十数万円、このような現状にあるのです。そういうようなところから見て、とても、こうした農家は倍増政策どころじゃないというような結果になっておるじゃありませんか。
  346. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 倍増計画は、面積ばかりによりませんけれども、先ほど申し上げましたように、大きい経営面積が望ましいのでございますから、割り当ても少なくとも二町以上、こう申しましたが、私は二町五反、あるいはもっと上と、そして営農が十分できるような方法において割り当てをしていきたい、こういうことを申し上げる次第でございます。
  347. 小平芳平

    ○小平芳平君 総理大臣はどのようにお考えでしょうか。いま農林大臣がおっしゃっているように、実際には耕地の面積はふえていない、また、政府がおやりになる干拓地の何百世帯というふうにつくられていくその農家すら、とても二町五反の目標にはほど遠い、一町もないようなところが相当ある、こういうような現状をどのようにお考えでしょうか。
  348. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 農家の耕地面積の拡大は、われわれも強く希望するところでございます。しかし、何分にも保守的な農家の状況から申しまして、急速にやるということは困難でございます。これは世界の各国の歴史が示しておるとおりであります。しかし、だといって、放っておくわけにはいきませんので、既定方針どおり、いわゆる耕地面積の拡大、作物の多角経営に進むように努力いたしております。また干拓の問題につきましては、八郎潟等におきましては、お話しよりもうんと広うございます。ただ小さい干拓地におきましては、従来の農家の耕地面積に加わるというふうなことがある場合におきましては、必ずしも二町、三町というわけにいっていないかもわかりません。しかし、それは既存の農家の、従来の耕作面積の上に加わるものでございますから、これは別に考えなければならぬと思います。
  349. 小平芳平

    ○小平芳平君 総理も、別に考えなければならないとおっしゃって、何ら具体的な方策はお示しにならないのですが、農林大臣にお尋ねしますが、その干拓地の場合に、初めの入植者がそういうような零細農民になっているのです。そこで、あとで完成した、増反分と呼んでいるようですが、その増反分ができ上がっても、それすら、先ほど大臣もおっしゃったように、地元の漁業者その他に割り当てがあったりして、最初の入植者に割り当てがない。しかも地元の人たちに配分された増反分には、非常な不正が行なわれている。増反分をもともともらう資格のない人がもらっているというような話も出ているところもあるわけですが、それで、ただ大臣としても、総理としても、経営規模は拡大していこうと思うと、耕地の面積の拡大は願うところであるというだけじゃ、いつまでたったって、このような零細農家は救われないのですが、何らか、もう少し具体的な方策はありませんですか。
  350. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 新しくできたところに割り当てるのは、相当、二町以上の広い面積を割り当ていたしたい、こういうことを申し上げたわけであります。従来、少ない面積、一町ぐらいしか割り当てなかった、こういう人に対して、増反といいますか、増反した分の割り当て等ができるかできないかという問題だろうと思いますが、これは漁業者等において——不正というわけじゃございませんが、漁業者等におきまして、漁業権を剥奪してといいますか、捨てさせて、ほかに業態がないという場合に、それの見返りとして割り当てたという例はあります。でございますから、増反につきましては、既農家の経営面積を拡げるという必要のあるというものに対しましては、それも考慮したらいいと思います。しかし、全然離れているところじゃ困りますけれども、埋め立てをした、干拓をした、その干拓がまたふえてきた、そのふえてきた場合の割り当て等につきましては、新規の入植もありましょうし、あるいはすでに入植して、経営面積が少ない、それに対して希望が非常に強いというものに、増反割り当てというようなことも考えられます。でございますから、その場所に応じて、適宜な措置はとらしたいと、こう思っております。
  351. 小平芳平

    ○小平芳平君 もちろんその場所場所に応じて増反するなり、あるいは新しくまあ漁業権も、その魚はとれるかどうか、場所によると思いますが、漁業権とかあるいは畜産といわれましても、なかなかそこまでいかないような状況が多いのですが、とにかく農林省の政策によって、政府の政策によってできた農家の部落が、最も零細の現状にあるというような結果になっては、まことにこれはいけないと思うのです。  次に、ほかの農家もそうですが、相当借金が多い。特に開拓地や干拓地の農家は借金が多いのです。これについて農林大臣、何かお持ちですか。
  352. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 負債につきましては、借りかえして長期にするとか、また低利のものにするとか、あるいは半面におきまして生産を増すような方法をとる。これも個別診断といいますか、その事情をよく調査の上、それに適当なる方法を講じていくということにいたしたいと思いますが、まあ概括的にいえば、先ほど申し上げたとおりでございます。
  353. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは一例を申し上げますと、愛知県、三重県で、これは伊勢湾台風を受けたところですが、碧南あるいは鍋田、こういう干拓地がありますが、この辺の農家では、百万円ぐらいの借金を持っておるのがほとんどです。その内訳は、住宅金融公庫五十万円、営転資金、自作農創設資金、天災法資金などで五十万円、このように借金ができているわけです。個人的な病気とか、そうした不幸によってできた借金、あるいは個人的に親戚で借りた借金、そういうのは別にして、こういうような金融公庫や天災法資金などで百万円近い借金をかかえ、利息を払いながら、今後相当長年にわたって元金を返していかなければならない、こういうような現状は、どうお考えですか。
  354. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) そういうような状況につきましては、先ほど申し上げましたように、事情によっては年賦償還の期間を延長するようなあっせんをいたしたい。あるいは生産面によりまして、鍋田等におきましては、工業化しているようなところでございますし、いろいろあろうかと思いますが、生産面の指導によっていくとか、一律にどうこうということはちょっと申し上げかねるのでございますが、事情をよく調査の上、低利に借りかえる、あるいは償還期限を延長するとか、そういうあっせん指導、そういうものをしていきたいと、こう思っております。
  355. 小平芳平

    ○小平芳平君 むしろ、そうした借金は一時たな上げするとか、あるいは利子を免除するとか、そういうような思い切った施策をとるのがいいと思いますが、いかがですか。
  356. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) それは、やれれば悪いことじゃないと思いますけれども、関係方面が非常に多いのでございますので、どの面だけをそういうふうにするかということには、非常にむずかしいことがあろうかと思います。開拓者の離農等につきましても、いろいろくふうをいたしまして、離農資金を出していくとかいうようなことはいたしましたが、いままでの負債を徳政みたいなことにしていくというようなことは、一般的にいろいろ問題があろうと思います。一つ考え方でございますが、それに踏み切るというのには、相当検討の上でなければできないことだと、こういうふうに思います。
  357. 小平芳平

    ○小平芳平君 大蔵大臣はいかがですか。
  358. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま農林大臣がお答えしたとおりでございます。災害等で資金を借りたんだが、返済ができないものにつきましては、自作農資金等、農林公庫の資金を使っておるようなものにつきましては、個々のケースによって、延納を認めましたり、また利息の延べ払いを認めたり、やっておるわけでございます。また重複災害の場合は、御承知のとおり、書きかえをやっておると、こういうことでありまして、いままで住宅金融公庫その他から金を借りて住宅をつくり、また自作農維持資金から借りて農業をやっておる。これの利息を一ぺんにたな上げするか、切り捨てにするかということは、農業金融全体としてのバランスや、いろいろな問題がありまして、やはり個々のケース別に、いろいろ救済をしておりますので、それから一歩進めるということになると、慎重に検討を必要とすると思います。
  359. 小平芳平

    ○小平芳平君 もう一歩進めるように御検討願いたいと思います。  それから本年度の農家の災害については、先ほど、詳しい御説明がありましたのでお尋ねはいたしませんが、先ほどの農林大臣の御説明で、全部で、被害総額はどれくらいになりますか。
  360. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 関東とか東北とか九州とかの被害総額を、それぞれ申し上げたのでございますが、いま、総額を計算したものは持っていませんが、さっきのを合わせれば、どれくらいになりますか、あまり責任あることを、ここで答弁すると、あとでひっかかって……あとで御報告いたしたいと思います。  ちょっと委員長、いま調べさしましたところでは、二百五十億程度と、こういうことでございます。
  361. 小平芳平

    ○小平芳平君 それで、お尋ねしたいことは、こうした二百五十億という被害を受けた、その災害に対して、全体的に天災法を適用なさる方針かどうか、それをお尋ねしたい。
  362. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 東北及び北関東、その中には長野も入っていますが、九州、中国、四国、東北のほうは、天災融資法の適用ははっきりしています。九州方面の長雨にも、大体私は適用されることだろうと思っていますが、これは損害の程度と、やり方等について、まだ財政当局と結論が出ていませんが、私の見通しでは、天災融資法の適用に持っていけるものだというふうに思っています。ですから、全部というと、いろいろありますが、大体におきまして、被害の甚大なところは、調査を待って、天災融資法の適用をするという方向に持っていきたいと思います。
  363. 小平芳平

    ○小平芳平君 全部と申し上げた意味は、地域的にもいろいろありますが、先ほど大臣から、何回かにわたって凍霜害を受けたという御説明がありましたが、その何回かにわたった被害の全体について、適用があるかということもお尋ねしたい。
  364. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 全部といっても、損害との兼ね合いでございます。私が先ほど申し上げましたように、損害を受けたところ、どこからどこまでということにはまいりませんが、被害が甚大なところは、大体において天災融資法の適用の方向へ持っていきたい、こういうふうにお答え申し上げたいと思います。
  365. 小平芳平

    ○小平芳平君 大蔵大臣、よろしいですか、全体について、何回か凍霜害がありましたが、相当の被害が毎回出ておりますので、天災法の適用をお考えかどうか。
  366. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 閣議で決定をいたしましたのは、北関東及び東北は決定いたしております。つなぎ融資もいたしております。その他の問題につきましては、いま農林大臣のところで、調査を取りまとめ中でございますので、その被害規模がわかって、適法のものであれば、当然天災融資法を発動するということでございます。
  367. 小平芳平

    ○小平芳平君 およそ見通しは立ててあるんじゃないでしょうか。
  368. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 北関東と東北はもうきめましたが、他のものについては、まだ最終的な決定に至っておりません。
  369. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから、次に、先ほどの農家の借金とも関係するのですが、こうした天災融資法といわれましても、実際上借りにきますかどうか。実際問題として農家がどの程度金を借りるか。そういうような点についてはいかがですか。
  370. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 私のほうの調べによりまするというと、天災融資法の融資の実績を見ますというと、大体六〇%程度実際に借り入れているようでございます。
  371. 小平芳平

    ○小平芳平君 この点についても、実際に六〇%程度の人が借金したとしますと、去年も借りて、またことしも借りなければならない農家が相当数現にできてきている。ですから、そうした累年災害に対する特別の配慮というものがなされなければ、いよいよもって農家は借金で動きがとれない、そういう結果になるではありませんか。
  372. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 昨年も天災融資法による融資を受けたが、ことしも天災融資法の融資を受けた、こういう場合には、ことしと一緒にしまして、去年の分を借りかえという形で同じにいたしますから、そういう方法で延期するような形になります。
  373. 小平芳平

    ○小平芳平君 以上のように、非常に農家の借金、それから災害、こういう問題が切実な問題でありますので、特に御考慮を願いたいと思うのです。  次に、総理にお尋ねしますが、公職選挙法についてですが、公職選挙法についても、政府の選挙法の一部改正案が提案されておりますし、現に衆議院で審議中であることも承知しておりますが、総理として、この選挙法について、衆議院で審議中であるとか、あるいは選挙制度審議会が近く設けられるんじゃないかと思いますが、そのほうにおまかせするとか、そういう以外に、何か選挙法についての総理の基本的なお考えをお聞きいたしたい。
  374. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ただいま国会で御審議を願っているのは、東京、大阪等の地区の定数是正によりまする問題と、また、内容に入りまして、中選挙区制のたてまえから、区割りの問題が審議されていることと思います。また、選挙制度審議会の問題につきましては一年限りになっておりますが、やはり重要な問題でございますから、今後におきましても委員を任命いたしまして、選挙制度審議会の発足を見たいと考えております。
  375. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、そういう点については私も承知しておりますが、総理にお尋ねしたいことは、現在のような金のかかる選挙とか、あるいはこまかい制限規定のたくさんあるようなそういう選挙法をもっと改めて、金のかからない選挙ができるような、自由な選挙ができるような、そういう方向へ持っていきたいというお考えがありませんか。
  376. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話のような点がございますので、選挙制度審議会に新たに委員を任命いたしまして、検討を加えてもらおうとしておるのであります。
  377. 小平芳平

    ○小平芳平君 自治大臣にお尋ねしますが、第三次選挙制度審議会はいつごろ発足される御予定ですか。
  378. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 先般の答申に基づいていまの法案を提出しておるわけでございますので、これが終わりましたら、すぐに第三次の審議会を出発できるようにいたしたい、かように考えております。
  379. 小平芳平

    ○小平芳平君 終わりましたらということは、国会が終わったならばという意味ですか。
  380. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 法案が通過いたしたらという意味でございます。
  381. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから、自治大臣にお尋ねしたいのですが、大臣が衆議院の公選法特別委員会で答弁された内容について、大臣のお考えをちょっとお尋ねしたいのですが、それは衆議院の特別委員会で、島上議員その他の方から、創価学会の会員がアパートの一つの部屋へ百人も二百人も住居を移動させて選挙権を得ているとか、それから、一つ選挙区へほかの選挙区に住んでいる信者を全部移動させて、三千人も五千人も移動させているという具体的に数字をあげているのですが、そういうことがあるというような質問に対して、大臣はそういう点についていろいろ答弁なさっていらっしゃったのですが、その点について、そういうような、常識で考えても、アパートの一部屋へ二百人も住んでいるわけはないし、それから、どういう登録をするか知りませんけれども、一つのアパートに二百人も登録できるわけはないと私どもは常識で考えるのですが、また、一つの市なり一つの区なりの人たちを三千人も五千人も移動させられるものかどうか、常識で考えてそんなことがあり得ないと思うのですが、いかがでしょうか。
  382. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 速記録をよく読んでいただけば私の答弁はわかりますが、そういううわさは耳にいたしました。最近も聞きましたし、また、衆議院で委員の諸君からこれに関して質問があったわけでございまして、私は、やはり詐欺登録、不正登録は法で禁止されてありますから、そういう事実があるということはよくないことです。罰則もついております。ですから、全国一般にこういうことが行なわれないように、また、事実の調査をする責任もあるわけでございますけれども、そのときにお答えいたしましたとおりに、私は事実調査したわけでもありませんので、ただ、そういううわさがあるということを仮定いたしまして若干のことを申し上げたかもしれませんけれども、よく速記録をお読みいただきたいと思います。
  383. 小平芳平

    ○小平芳平君 大臣の御答弁が、そういうようなことを肯定していらっしゃるわけでもないのですが、うわさがあるということを仮定したとすればというふうにもなっていないのですが、要するに、アパートの一室に二百人も入るとか、そういう非常識なことがあり得るわけはないと、しかも、国会において発言されたことでありますので、速記録にも載っていることでもありますので、そういうことによっていかにもそういうことがあり得るかのような印象を与えるのは、われわれとしても心外でありますのでお尋ねしたわけですが、要するに、大臣としては、そういうようなことは事実あるとは考えていない、そういう意味でよろしゅうございますか。
  384. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) そのときの質問を一々覚えておりませんが、かりに四畳半の部屋に何百人も住んでおるということはあり得ようはずはございません。ただ、うわさと申し上げましたのは、質問に出るくらいですから、委員会の部屋でも、あるいは廊下でもいろいろ耳に入ったということを申し上げたわけでございます。こういうようなことがあり得ようはずはないと思いますが、今後ともないことを願っておる次第でございます。
  385. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 関連して。いまの問題で自治大臣に伺いたいのですが、島上氏があのような発言をしたそのあとで聞いたところが、事実を確認しない。事実ではなくて、そういうことの実例があるというふうに自分が質問しておるのは速記録の誤りであるというようなことを言われておるわけでありますが、私の前で言ったわけでありますけれども、大臣としては、そういうような事実を確認はしていない、はっきり事実というものは知らない、このようにとっていいのですね。
  386. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 登録申請します際に、何党、何団体に属しておる、信念はどうだというようなことは書くはずはございませんので、ただ、選挙が告示になりましたあとに、補充選挙人名簿に登録してほしいという申請が殺到するわけでございます。それを一々これはどうだ、これはどうだということをいたすひまがあろうわけはございませんし、このことについては、私どものほうで的確に調査したわけではないのでありまして、そのことをお答えしたわけでございます。
  387. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 関連。自治大臣にお伺いしますが、あなたの答弁をいま速記録を読みますというと、「御指摘のようなことは、私は個人では知らなかったわけでありますが、自治大臣になってからひんぱんに聞きます。これは明らかに違法行為と申しますか、間違ったことには違いないのであります。こういうことはあくまでも正さなければならない」、こういう答弁でありますので、私はあなたの答弁というものが、明らかに創価学会というものが集団移動しておるやに、それを認めた上の答弁のように私どもは聞くわけであります。したがって、今回質問しておるわけでありますが、そこで、そういううわさ程度のものであったにいたしましても、この権威ある国会におきまして軽々なる答弁はつつしむべきである、非常に影響は甚大であります。それで私がお伺いしたいのは、大臣はそういう事実というものを確認しておるのか、その事実を認めるのか認めないのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  388. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) ただいま申しましたとおりに、確認はいたしておりません。ただいま申しましたように、補充選挙人名簿に登録を申請した人が、一々思想はどう、あるいは何政党、何党に属しておるという調査はもちろんいたしておりませんので、私は確認はしておりません。
  389. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それで一応了解いたしました。あなたが自治大臣を早川自治大臣とおかわりになられまして早々の委員会であったと思います。したがって、もしかそういう意向であるならば、大臣答弁というものを慎重にお考えになりまして、まだそういう事実は、私といたしまして、大臣としては確認はしておりませんがと、こういったような前提のことばがあればよかったのではないか、こういうふうに私は思うわけです。そこで、ただいまの答弁を聞きまして了解をいたします。
  390. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、私も先ほどで了解いたしましたが、要するに、補充選挙人名簿登録というようにいま大臣おっしゃいましたが、この問題についても、確かに補充登録をした、申請した場合に、一気に来ますから、一々こまかいことはできないにしても、相当市によっては、選管によっては綿密な調査をしておられます。書類も相当審査して受け付けておられます。また、受け付けた中から、実際に何人かを呼び出して調査したりしておられますので、そのような一部屋に二百人とか、そういうばかげたことはないということで了解いたします。  最後に、先ほどの公明選挙の問題について総理にお伺いしたいのですが、公明選挙公明政治といわれますが、政界もそういうふうにしていかなければならないのと、また、先ほどもちょっとお話が出ましたが、官公庁にも汚職がひんぴんと起きている。かつて自民党政府が、汚職、貧乏、暴力を三悪追放といって宣伝されたこともありましたが、総理として、いまはそういう三悪追放というようなことはおっしゃいませんけれども、やはりこうした汚職の追放には力を入れなければならないと思うのですが、それで、ただ綱紀の粛正というような訓示だけでなくて、もっと具体的に範を示す、たとえばこのようにして政治の上でも金に汚れた政治はなくなったとか、あるいは金で当選するような金のかかる選挙はこういうふうになくなったとか、そういうような範を示して、ともにそうした汚職を根絶していかなければならないというふうに考えますが、いかがですか。
  391. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話のとおりで、従来も努力してまいりましたし、今後も一そう努力を続けたいと思います。
  392. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 小平君の質疑は終了いたしました。
  393. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 次に、田畑金光君。
  394. 田畑金光

    田畑金光君 私は、本日は沖繩問題その他について質問をする予定でございますが、その前に、総理並びに外務大臣にお伺いしておきたいことは、先ほどのニュースによりますと、韓国においては、朴政権の片腕といわれ、また、先般成立いたしました新内閣の陰の実力者といわれ、また、日韓交渉における韓国側の事実上の推進者と目されてまいりました金鍾泌氏が辞表を提出し、朴大統領がこれを受理したというニュースを聞いたわけでございます。このことは、今後の日韓交渉に及ぼす影響もさることながら、韓国の今日の事態を見ましたときに、その影響するところ非常に大きいものがあると考えるわけでありまするが、このニュースについて、その真相を御報告いただくとともに、この影響が今後どういう反響があるかということを、まず外務大臣から承っておきたいと思います。
  395. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 金鍾泌氏が党の要職を辞任するというニュースは先ほど私も受けました。韓国の一連の政局の推移の中でこの問題をどのように考えるべきかということにつきましては、ただいまそういうニュースを受けたばかりでございますので、ここでお答えするという用意はございません。私どもといたしましては、この事態の推移というものをとにかく見守ってまいりたいと思います。
  396. 田畑金光

    田畑金光君 今日韓国に戒厳令がしかれたというのは、申すまでもなく、学生デモを中心とする国内の反政府的な活動というものが原因をなしておるわけでございますが、さらにその原因をさかのぼってみますと、金鍾泌氏個人に対する政治責任の追及、あるいは下野の要求、退陣要求というのが源をなしておることは御承知のとおりであります。したがいまして、金鍾泌与党の議長が政界から引退をしたということは、今後の韓国の政界にも大きな反響があるし、あるいは、また、これが原因となって戒厳令を解除し得るような平穏な事態に進むかもしれない。しかし、それは未知数であるわけであります。わが党といたしましても、両国の国交正常化については、可能な条件をできるだけ築きながら前向きに進めることを期待し、支持してまいったわけでありまするが、今日相手国の政治情勢があまりにも複雑怪奇であるということを見ましたときに、政府といたしましては、事態の推移を見られるという外務大臣の見解でございまするが、このことは、当分の間、したがって日韓交渉正常化については静観をする、せざるを得ない、こういう意味であると見てよろしいかどうかを承っておきたいと思います。
  397. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 会談のパイプは堅持してまいりたいと思いまするが、韓国の政情が会談にどのように具体化してまいりますか、そのことについては十分慎重に注意し、対処してまいりたいと思います。
  398. 田畑金光

    田畑金光君 国交の正常化ということは、単に両政府間で協定を締結することによって終われりとすべきものではないと考えるわけです。当然、国交の正常化は、正常化の条約締結を通じ、両国民の友好関係を増進するというのが眼目であり、目標でなければならないと考えているわけです。しかるに、今日、韓国の政治情勢における推移をながめて見ますならば、個人的な人物に対する批判が中心となって発展したのかもしれない、あるいは、また、その中心人物が日韓正常化促進の大立て者であるという理由で、個人に対する攻撃が中心となったのかもしれぬ、とにかく学生をはじめ、野党、あるいは国民の中に、日韓国交正常化について大きな批判勢力があるということも事実であるわけであります。わが国においても、もちろん国内にも反対の勢力もあるわけでございます。こういうことを見ましたときに、やはり国交正常化の話し合いの前提は、当然、両国国民の将来の友好のために、相手国の国情、国民世論の動向等を見ながら、慎重な態度で臨むということが同時にまた必要であろうと私は考えまするが、この点について、そういう面の配慮が今日までの日韓交渉の過程の中でどうなされてきたかということを承っておきたいと思います。
  399. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 田畑さんのおっしゃるとおりでございまして、単に協定を結んでいくことで国交の正常化ができ上がるという性質のものじゃないと思います。これをささえる両国民の間の深い理解と信頼というものがなければならないと思うのでございまして、これは日韓関係ばかりじゃなく、外交関係全体に通する真理であると思います。そういう根気をつちかうということに私は日夜苦労いたしているところでございまして、日韓交渉におきましても、終始この原則に立ちまして対処してまいった次第でございます。
  400. 田畑金光

    田畑金光君 私は、総理に、日韓交渉の今日までの経緯にかんがみてお尋ねいたしたいわけでありますが、日韓交渉というこの重大問題に取り組むには、やはり私は、あくまでも両国の正規の機関を通じて話し合いを進めることこそ、それぞれの国民の世論の支持を受ける一番大事な要素であると考えるわけです。しかるに、今日までの経緯を振り返って見ますならば、日韓交渉の中に、ともすれば両国の特定の人を通じ、あるいは、いわゆる実力者間の話し合いを通じ、進められてきたということは、かえってこれが両国の国民の中に大きな誤解、あるいは、また、感情の刺激を生み出していることも事実だと考えております。私がいまやなき大野伴睦氏の名前を出すことは遠慮したいとは思いますが、ただ、これはあくまでも故人には敬意を表しながら申し上げるわけでありますが、いまから何年か前に、時の朴軍事政権のもとで、たしか総裁の特使という形で大野伴睦氏が韓国に渡られて、朴議長とは親子の関係であるということばを使われたわけです。われわれ日本人の立場から言うならば親密の情をあらわしたことばであると、すなおに受け取れるわけでありますが、自尊心の高い韓国民族から見るならば、あるいは、また、三十有余年にわたって日本の植民地的な支配を受けてきた屈辱感を強く持っている韓国の民衆から見るならば、一国の議長を子供と呼ぶということは聞き捨てならぬという民族的な感情の刺激を起こしたことは御記憶のとおりであるわけであります。こういうことを振り返ってみますならば、韓国においては、こういう金鍾泌氏個人が日韓会談の陰の推進者であったということ、正規の外交機関を経ずして、陰の実力者の日韓交渉の推進が、かえって韓国におけるあのような混乱を巻き起こしているという事実を見ましたときに、われわれといたしましては、今後の日韓国交の正常化という問題は、もっと機関と機関、政府間の話し合いを通じ、両国世論の支持のもとに進めることが肝要であると考えているわけでございまして、この点について池田総理のひとつ所信を承っておきたいと考えているわけです。
  401. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日韓国交正常化につきましては、正規の機関でやっているのであります。大野前副総裁の韓国訪問は、朴大統領の就任式の祝賀会に行かれたわけでありまして、これは親善関係でございまして、直接日韓交渉に当たられたのではないのでございます。
  402. 田畑金光

    田畑金光君 私は念を押したいのでありますが、今後の国交正常化については、あくまでも従前のような誤解を受けた実力者相互の陰の、あるいは側面的な推進という形ではなくして、あくまでも政府間の話し合い、外交機関の話し合いを通じて正常化をはかるのが政府の基本的な方針であるということを、もう一度総理の口から確認をいただきたいと考えております。同時に私は、この際、念を押しておきたいことは、今日までの日韓両国の話し合いの中でいろいろな問題が起きていることは事実でございます。御承知のとおりであります。話し会いを一方に行ないながら、一方においては、李ラインにおいてわが国の漁船が拿捕され、先般は韓国の領海を侵犯したというので海上保安庁の船が連行され、また、近くは、わが国の領海において、あやしい船だというので臨検に行くと、かえって銃剣を突きつけられて、海上保安庁の職員が退却してしまったというふうな、こういう筋の通らない不愉快な問題も多々あるわけです。こういうことを考えたときに、日韓国交正常化を進めることはわれわれは強く支持いたしまするが、しかし、その進めるにあたっては、あくまでもお互い自主対等の立場において、また、両国間の権威をそれぞれ尊重しながら進めることこそ外交折衝の正しい姿であると考えておりまするが、この点について池田総理の所見を承っておきたいと考えます。
  403. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 従来もそうでございましたし、今後あなたのおっしゃるとおりの方針でいくことが当然のことだと思います。
  404. 田畑金光

    田畑金光君 私は、韓国問題については、時間の関係もございますので、以上で終わりたいと思いますが、次に、私は沖繩問題について若干お尋ねしたいと思います。実は、去る二十五日から二十八日の間、私は民社党の調査団長として沖繩に行ってまいったわけであります。したがいまして、私がこの目で見てきた沖繩の問題について二、三総理並びに関係大臣にお尋ねしたい。  私は二十五日に沖繩にまいりますると、たまたま立法院の予算総括質問が行なわれておりました。そのとき野党の人方が、行政主席の責任を追及するならばとにかくでございまするが、沖繩自民党、すなわち行政主席の与党の人方が、過半数野党とともに行政主席の政治責任を追及しているわけです。すなわち、最近の沖繩における自治の後退は、万事事なかれ主義、イエスマン式の行政主席の責任であるというふうなことで、行政主席の政治責任の追及が取り上げられております。こういう状態について政府は御存じであるかどうか、また、どういう原因によってこのような混乱が起きているかをお答え願いたい。
  405. 野田武夫

    政府委員(野田武夫君) ただいま自治権の後退という問題のお尋ねでございましたが、田畑さんは現地においでになりましていろいろお聞きになりましたが、ただ、政府といたしましては直接これに関連がないのでございまして、情報はとっております。そうして沖繩における新聞記事においては、田畑さんのおっしゃるようなことがだいぶ伝えられておりますが、実は実態をまだ私どもはつかみ得ないでおります。しかも、この問題につきましていろいろの例証をあげた情報もありますが、政府といたしましては、ただいま南連の事務所を通じ、その他の機関を通じまして、この問題は沖繩といたしましてもちろん重大な問題でございますから、いまその情報収集をいたしておりまして、さらに検討したい、こう思っております。
  406. 田畑金光

    田畑金光君 総務長官の答弁はなっていませんよ。何日になりますか、今日までの経過。私は、総理あるいは外務大臣にお答え願いたい。施政権返還の問題、あるいは自治の後退の問題が、施政権者のひざ元で行政主席の責任追及という形で行なわれている。しかし、今日の沖繩は、平和条約第三条によって特殊な地位に置かれているわけです。したがいまして、自治の後退という問題は、一行政主席の責任というより、むしろこういうような姿に追い込んだ日本政府、日本外交の責任であって、自治の拡大等の問題については、当然日本政府の責任において、この問題はもっと前向きに取り上げるべき問題だと考えまするが、池田総理並びに外務大臣の所見を承りたい。
  407. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 仰せのように、平和条約締結にあたりまして、沖繩の施政権を手放すという苦杯をなめなければならなかったということは、われわれにとりまして、たいへん遺憾なことでございます。しかしながら、施政権をアメリカに認めました以上は、その施政権の所在というものについて、これを施政権の所在を尊重いたしまして、沖繩の本土復帰ということに鋭意じみちに施策を進めてまいるのが私どもの立場であろうと思うのでございます。施政権者であるアメリカが、すでに沖繩は日本の領土である、そして日本に復帰の日に備えて、日米共同の上で沖繩の民生の向上に努力して、復帰の日の場合の困難を減殺することに努力しようという大きな方針を示しているわけでございます。根本の態度といたしましては、日米協力の上に立ちまして、この筋道を追求してまいりまして、一日も早く沖繩がわが国の主権のもとに復帰してまいるという日を招来いたしたいものと思うのでございます。  それで、今日私どもは、沖繩政策といたしまして協議委員会、技術委員会を設け、あるいは国会の御承認を得まして沖繩援助というものを多額にちょうだいいたしておるわけでございまするが、いまあなたが御指摘の施政権の問題というものは、そういった技術問題ではなくて、非常に高度の政治問題だと思います。また、同時に、あなたも現地で御体得されたとおり、この問題は、沖繩の県民にとりましても、また、われわれ本土の同胞にとりましても、非常に深刻な問題でございます。したがいまして、非常に高度な問題であるという観点に立ちまして、日本政府といたしましては、単なる技術問題でなくてこの問題に対処してまいる必要があると存じておりまして、あらゆる機会、機関を活用いたしまして、所期の目的達成のために、懸命の努力を進めてまいる所存でございます。
  408. 田畑金光

    田畑金光君 私は、いま直ちに施政権の問題をどうしろということを議論したくはありません。問題は、ケネディ新政策に基づき、自治の伸展ということが新政策の大きな骨子になっておるわけです。しかるに、沖繩における最近の情勢は、非礼乱発、あるいは高等弁務官の直接統治という形で住民自治が著しく後退しておるということは、立法院における瀬良主席の答弁で明らかになっておるわけです。こういう事態に対して政府はどう考えておられるか。
  409. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) アメリカの基本的政策は、施政権者が保持する必要のない行政分野はできるだけ自治にゆだねようという基本方針がいま御指摘のように宣明されておるわけでございます。ところが、現実には、これまた御指摘のように、沖繩民政当局の施政に対する不満がいろいろな形で出てまいって、相当深刻な様相を呈しておるということも承知いたしておるわけでございます。で、これは実は制度の問題と運用の問題があると思うのでございます。自治権の拡大の問題につきましての制度的な接近といたしましては、漸次自治権が拡大する方向にいっておるわけでございまするが、現実の施政の運用におきましては、そういう問題が起こっておるわけでございます。これは施政権者たるアメリカにとくとお考え願いまするし、内外の世論に照らして、公正な運営というものの注意を喚起してまいらなければなりませんし、そういう方向への改善を求めてまいらなければなりませんし、そういう方向にわれわれとしましても努力してまいりたい所存でございます。
  410. 田畑金光

    田畑金光君 私は現地でワーナー民政官その他の民政当局の諸君とも話し合ってみましたが、率直に申しまして、住民福祉のためにはある程度の自治権の制約もやむなしという態度でいるわけです。それが最近の布令の乱発あるいは銀行、農協に対する軍の直接手入れ、こういう形になっておりますが、現地においては、住民福祉の向上と自治の問題が二律背反的に扱われておる。こういう問題についてはどう考えておられるか。
  411. 野田武夫

    政府委員(野田武夫君) ちょっとお尋ねいたしますが、いまの自治と……。
  412. 田畑金光

    田畑金光君 住民福祉。
  413. 野田武夫

    政府委員(野田武夫君) 自治の問題は、外務大臣からも仰せられましたとおり、現在起こっている事態はまことにやはり遺憾と思っております。ただケネディ政策以後、漸次自治権がいわゆる制約を受けておるということでございますが、たてまえといたしましては、新政策以来、アメリカの沖繩に対する施政の内容は、実は御承知のとおり、文官の民政府をつくる、あるいは主席の任命も変わってまいりました。その他あります。しかし、現実におきまして、いま外務大臣が申しましたとおり、運営上いろいろのいきさつがあったようでございます。しかし、住民の福祉の問題につきましては、もとより自治権を尊重するということが最も基本的に大事でございます。同時に、やはり経済の交流と申しますか、住民の経済力の培養と申しますか、そういう問題につきましては、これは相当アメリカも力を入れておりますし、日本政府といたしましても、御承知のとおり、年々援助額を増額する、また福祉の一面であります文化の面におきましても、教育その他につきましても、それらの措置はアメリカも日本政府も、漸次援助を高めております。また、社会政策的な問題につきましては、これは実は相当アメリカはこれに力を入れておるということで、私もいろいろと先般キャラウエイ高等弁務官が参りましたときにも、アメリカの真意をただしてみましたが、まだ私どもから見ますと、遺憾の点が残されておることは事実でございます。しかし、いわゆる沖繩住民の福祉という問題につきまして、いまお示しのありました自治権の問題、これはおそらく、私は現実にまだ見ておりませんから、わかりませんが、運営上相当、何と申しますか、沖繩の住民と民政府のやり方の間におきまして、いろいろのいきさつができておるということは、私現実だろうと思っておりますが、一面、経済の援助その他につきましては、相当年々積極的な態度を持っておるということは事実でございます。
  414. 田畑金光

    田畑金光君 総務長官はかつて沖繩に行かれたと新聞で見ておりますが、あなたの答弁を聞いておると、所管長官として何を見てこられたかということを私は疑わしくなります。大体ケネディ新政策で自治の進展と目されたのが二つあります。その一つは、文民の民政官を置いたということ。しかし、現実の沖繩における民政官は単なる高等弁務官の事務取り次ぎ機関にすぎない。これが一つ。第二の問題として、琉琉行政府の主席は立法院の推薦に基づき高等弁務官が任命するということになったということ。しかし、現実にきょうの新聞を見てもおわかりのとおり、立法院はあげて行政府の責任を追及する。これに対して高等弁務官は、私の任命による行政主席であるから、立法院の権限でリコールすることはできないということをはっきり言っておるわけです。これが自治の実態という姿です。これが直接統治の姿というものです。こういう姿に対して、自治権というのは明らかに侵害されておるという、この現実に照らして、ケネディ新政策の線が非常に後退しているという、この現実に照らして、政府はどうしようとするのかということを私は尋ねておる。
  415. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 先ほども申し上げましたように、いまも御指摘のように、自治権拡大の制度の問題といたしましては、そういう方向に施策がとられつつあるわけでございますが、総務長官も御指摘のように、運営の問題で、沖繩の住民と民政府の間にはもろもろのもんちゃくがあるということでございます。これは制度の問題と申しますよりかは運営の問題でございまして、お互いの理解と信頼を回復してまいるよりほかに道がないと思うのでございます。実態をよく調査の上、アメリカ側に考慮を求むべきものは求めなければなりませんし、琉球政府側にも考慮を求めなければならぬものがございますれば、またそれも求めてまいるというふうにいたしてまいらなければならないかと思います。
  416. 田畑金光

    田畑金光君 私は住民自治、それから住民の福祉は両立するものであり、同時並行的に前進させようというのがケネディ新政策の精神であったと思う。しかし、高等弁務官みずから、私の会ったワーナー民政富みずから、住民福祉のためにはある程度の自治の制約はやむを得ぬということで、布令の乱発をやり、立法権を制限をしている、こういう事実はあなた方はどう評価されるか。
  417. 野田武夫

    政府委員(野田武夫君) 高等弁務官から布令が相当出ているということも承知しております。これは全体的に見まして、全部が自治権の侵害だと、形におきましては私もそういう解釈ができると思いますが、実態をいろいろ聞いてみますと、やむを得ない場合があったのじゃないかということも聞いております。しかし、少なくとも沖繩住民が好まざる布令を出した、こういうことにつきましては、それがどこに基本的なアメリカ政府の考えがあるか、これは私まだきわめておりませんが、一つ例を申し上げますと、睡眠剤、麻薬の問題の布令が出ております。これはアメリカの兵隊の睡眠剤を用いることが非常に多くなって、これには相当劇薬が入っている、麻薬類が入っているということで、もう一年前からこの問題について琉球政府に勧告してこの取り締まりを要求しておったということを聞いております。この睡眠剤の問題は、また一面アメリカの兵士だけでなくて、沖繩住民の青年層も睡眠剤遊びみたいなことをやる傾向があるということで、沖繩の大田主席のほうでもいろいろとこちらにもそういう状態であることを報告が来ております。しかし、そうだからといって、布令を出したということを、もっともと言うのじゃありませんが、なかなかその間にいろいろいきさつがございまして、私も一つ一つ真相はまだ把握しておりませんし、また、その布令を出すことはいいことでないことはわかっております。これらに対しまして、今後ひとつできるだけ真相をきわめまして、また政府は政府の考え方、大体の態度をきめまして、あるいは当然アメリカに対してこちらからいろいろのことを申し出ることがあれば、外務省を通じて、外交の正式ルートによってこれらの問題の処理に当たらねばならぬ、こう思っております。
  418. 田畑金光

    田畑金光君 いまお聞きのとおり、睡眠薬の取り締まりの法律ができるといって一年半もできない、そこで布令を出したというのは事実です。そういう姿が立法権に対する制限、これです。池田内閣のように、ILO条約を出して何年もたなざらしをするような内閣ならば、何度首になったか知れぬ、キャラウエイ高等弁務官の施政のもとにおいては。そういう実情ですが、そういう点についてはどうお考えになりますか。
  419. 野田武夫

    政府委員(野田武夫君) いまの睡眠薬の問題からのお話でございますから、私から続けてお答えいたしますが、これは御承知のとおりこの布令を出しまして、今後はそういう睡眠薬、麻薬のような問題は、必要ならば医師の処方箋をもって買う、こういうような制度に改めるようでございます。そこで、一年半もこの勧告をしたのに立法院で取り上げなかったというようなことも聞いておりますが、しかし、先ほど申しましたキャラウエイ高等弁務官がこの布令を出しました真意というものは、私は実際直接知りませんが、この布令を出したことはいかぬと思いますけれども、この高等弁務官の態度に対して、ほかのいろいろな問題、政治問題に対してこれがどうですこうですと言うのは、私の立場といたしましては、また言うべきことではないし、また、言えないことだと思っております。
  420. 田畑金光

    田畑金光君 そういう態度であるからして、現地においては立法院の人方、沖繩住民の人方が、施政権著に対してこういう政治は間違っておるということをまっこうから言っておるということを皆さん御記憶願いたいと思う。私は池田総理お尋ねいたしますが、住民自治と福祉は両立すべき問題だと思う。ケネディ新政策の精神もそこにあると思う。しかし、現地においてはそれが二律背反的に扱われておる。そこに立法院の問題、施政権の問題が取り上げられておる、こういうことについて、真相がわかったならば、池田総理としては内閣の姿勢としてこれを是正する御努力をなされますか、どうか。
  421. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 最近の沖繩の事情につきましては、衆議院でも質問があったのでございます。いろいろな事例を十分調査いたしまして、われわれとしてできるだけのことはいたしたいと考えております。
  422. 田畑金光

    田畑金光君 非常に問題が大きいわけでございますが、私の時間がわずか二十分でございますので、問題点だけお尋ねしておるわけです。  それで、池田総理お尋ねしますが、これは沖繩自民党を含め沖繩社会党あげて、人民党は別です、人民党とは合っておりません。立法院全体の意向として、もっと沖繩問題については日本政府、日本国会あるいは国民全体が取り組む姿勢を示してもらいたい、そういう意味において日本国会に超党派的な沖繩対策委員会を設置するなど、とにかく沖繩問題に取り組む姿勢を示してもらいたい、これが強い要望でございます。自民党総裁として、池田総理はこういう考え方についてどうお考えになられるか。
  423. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、内閣組織以来、沖繩問題を非常に重要な問題として関心を持ち、また一昨々年アメリカへ参りましてケネディ大統領との話しも、この問題が相当重要な問題の一つであったのであります。幸いにケネディ大統領もいまお話のとおり、よほど進んだ考えでやってくれていたということは非常に多としておるのであります。ただ、中央政府の気持ちがどれだけ沖繩の現地行政等に反映しておるかどうかということは、常に監視しなければならぬ問題でございます。したがいまして、最近の事情等を十分調べまして、そうして合衆国政府に申し出るべき筋合いのものならば申し出ますし、また、それが施政権のあるアメリカ政府に対してどういう程度、どういうたてまえでということは、外交上の問題でございますので、十分検討しなければならぬと思います。ただ、そういう委員会を設ける設けないにかかわらず、政府といたしましては沖繩問題に重大な関心を持っているし、今後もその方向で進めていきたいと思います。
  424. 田畑金光

    田畑金光君 確かに総理のお答えのとおり、一九五七年の岸・アイク声明、あるいは一九六一年六月の池田・ケネディ声明によって、沖繩政策が大きく、あるいは大きくというよりも、相当前進したことも事実でありましょう。私は、やはり沖繩問題は日米両国のトップレベルの話し合いで進めなければならぬということを痛感したわけで、そういう意味において、これはどうなるか知りませんが、七月総裁選挙で三選された暁には、いまのジョンソン大統領とは政治的な話し合いをなされておりませんが、渡米されて、その暁には、そういう話し合いをなされる用意があるかどうか、ひとつ承っておきたい。
  425. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) まだ先のことはいまからお約束できません。
  426. 田畑金光

    田畑金光君 総理 もっと自信を持ってお答え願いたいと思いますね。私は、そういう暁には、ひとつ行ってもらいたいと思うがどうですかということ。  それからさらに、国会にやはり超党派的な機関をつくるという姿が、沖繩の人方にとっては非常な激励になるわけで、これは先ほどのような答弁では済まされないと思いますが、もう一度御答弁願いたい。
  427. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国会委員会を設けるとか、あるいはいたずらに声のみを大にして、向こうの大衆の気持ちを疎外するということは、私は施政権を放棄した日本としては、よほど考えなければならぬ。この問題は重要な問題で、アメリカに総理大臣が行く行かぬにかかわらず、常に私はあらゆる措置を講ずべきだと思います。したがいまして、私は政府関係でいろいろこの問題を話しますと同時に、向こうのジャーナリスト等に会いますたびに、常に私は相当言っておるのであります。最近その効果があらわれて、あるアメリカの有力新聞におきましては、沖繩問題につきまして相当の意見を社説に述べているような状況でございます。私は、いたずらに委員会を設けるとかなんとかということよりも、政府間におきまして、また民間におきまして、マスコミ等におきまして、あらゆる努力をすることが効果があることだと考えております。
  428. 田畑金光

    田畑金光君 時間がございませんので次に移りますが、これも結論だけ申します。  沖繩の経済は、完全な基地経済、住民の生活も基地に依存しております。確かに最近の事情は、住民の生活も相当よくなっておりますが、内地のそれに比べますと、まだまだ著しく低いわけです。ことに、たとえば琉球銀行、あるいはまた開発金融公社、水道公社、電力公社、海外移住公社、いずれも布令によって高等弁務官の支配のもとに行なわれている。基幹産業、住民生活につながる諸産業すべてそうです。私は、将来沖繩の日本返還を円滑にできるようにするためには、もっと沖繩の経済について、基地経済から自立経済の方向に、日本政府としても財政援助、技術援助その他の中において、当然そのような構想で進めてしかるべきだと存じますが、この点についてひとつ御所見を承りたい。
  429. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話にありますとおりな方向でいっておるのであります。したがいまして、アメリカのほうにおきましても行政に対する負担を多くしております。日本におきましても年に二十億円近い金を昨年度、本年度に出そうとしておるのであります。基地経済というところからできるだけ早く脱皮するようにわれわれはアメリカと十分話し、それが最近でき上がりました日米合同の審議会あるいは日米琉の技術会議ということによってあらわれてくると思います。
  430. 田畑金光

    田畑金光君 いま総理のお答えのとおり、確かに日本政府の援助予算もこの二、三年来急速に伸びております。しかし、三十八年度と三十九年度と比べますと、ほとんど伸びておりません、頭打ちです。その一番困難な事情は、一つ日本政府の援助予算が即施政権につながるという、そういう民政府の考え方が壁をなしておることも私は現地で見てまいりました。この壁をどう破るかという問題が今後残されておりますが、この点についてはどうお考えでしょうか。
  431. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私はあまり相手のことを勘ぐることは外交上よくないと思います。だからそういうことを勘ぐらずに、私はそう思っておりません。できるだけ日本の援助もふやし、また、それにも増してアメリカの経済投資をふやしていくべきだと思います。ただ問題は、いろいろの誤解と申しまするか、話し合いが十分進んでいないために事務が進捗しないことはマイクロ・ウエーブ等でもわかっておるとおりであります。私はこのテレビの問題等も早急に片づけるようにもっと強力に話を進めていかなきゃならぬというので、いま指示しておる状況でございます。
  432. 田畑金光

    田畑金光君 いま総理のおことばの中にありましたが、そのマイクロ・ウエーブの問題です。昨年十一月にでき上がっております。当然これは分収率、料金の問題で両電電公社間の話し合いがつかぬということで、こうなっておるようですが、私は池田総理政治的判断で処理されて、受像、そして沖繩住民の人方にテレビが見られるようにすべきじゃないかと考えますが、御意見を承りたいと思います。
  433. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話のとおりでございまして、三千万円でしたか、この負担の問題があるわけです。そこで私は、電電公社はどちらかというと政府の機関、公共企業体、その公共企業体が三千万円負担するのがいやだと言って五、六ヵ月も延ばすということにつきましては、われわれとしてずいぶん検討も足りなかったのではないかということを知りまして、この点を検討するように、一週間ばかり前に私は聞きまして指示いたしました。何とか早く片づけぬことには沖繩住民の方々非常な熱意を持って待っていることでございますので、私はこの点につきましては、琉球政府の問題ということもさることながら、日本政府と公社間においても十分検討すべき問題だと私は考えております。
  434. 田畑金光

    田畑金光君 時間がまいりましたが、あと二点だけ簡潔にお尋ねをいたしますので、ひとつお許しを願いたいと思いますが、もう一つは、私は教育問題についてお尋ねしたいと思うのです。  主権の概念をまあ領土主権あるいは領民主権と申しますか、あるいは統治主権と申しますと、少なくとも沖繩の住民は日本人であるとするならば、人つくり、教育問題をもっと私は日本政府として積極的に援助を通じ取り上げるべきだ。私はある小学校に行ってみましたが、校長さんに会ってきたのです。琉球におきましても教育基本法によって日本国民として教育するということになっております。しかし、一銭の日本政府の援助予算もない、そういうところで、しかも国旗は祝祭日以外は自由に立てることができないという環境のもとで、日本人として教育するということは非常に困難が伴うということを学校の校長さん方が申しておりました。こういう点についてはもっと教育面について、日本の援助予算等については積極的に前向きの姿勢で考えるべきだと思うが、この点はどうでしょう。本年度の予算は一億三千何百万あることを承知しておりますが、また、沖繩における公務員や学校の先生や、あらゆる指導者をつくっているのは琉球大学です。この琉球大学の教授の不足、あるいは付属図書館の図書の不足、設備の不十分ということを見たときに、こういうもっと教育面に日本政府は手を貸すべきじゃないかと痛感いたしましたが、この点どうでしょう。
  435. 野田武夫

    政府委員(野田武夫君) 教育の問題は、お説のとおり、日本国民でございますから、できるだけ内地の子供と同様にやりたいという考えを持っております。そこで、いま教育の問題は予算が少ないということでございますが、大体今日までやっておりますことは、すでに御承知と思いますが、たとえば沖繩における教師を内地に招致しまして教育をしているとか、あるいは沖繩の教師の再教育のために日本から派遣している、あるいは沖繩の学生を日本に招きまして、今日大学院と大学だけでも約三百八十名ぐらいの方がおいでになっております。それからもう一つは、向こうの沖繩の高校生、中学生なんかに対する育英の仕事も日本の援助でやっております。それから御承知のとおり、小学校の教科書の無料配付というのを三十八年度から実施しておりますし、中学は、四十年度から中学もやはり教科書の無料配付をやっていくということで、教育がいかに大事なものであるかはお説のとおりでございます。教育の施策、また、内容その他につきまして、できるだけの援助をしたいという方針で、今後もさらに一そう積極的にこの教育の問題を取り上げていきたいと考えております。
  436. 田畑金光

    田畑金光君 最後に一点だけお尋ねしておきますが、これはむしろ私は外務大臣にお答え願ったほうがいいと思いまするが、沖繩に奄美大島の出身者が約一万おるわけです。この人方は御承知のように、奄美大島が昭和二十八年の十二月返還されるまでは南西諸島ということで、同じアメリカの支配を受けていたわけです。奄美大島返還と同時に数万の人方は大島あるいは内地に引き揚げてきた、なお、一万近くの人が現地に残っておる。しかるにこの人方は、布令一二五号「琉球列島出入管理令」によって、非琉球人ということで政治的な社会的な経済的ないろいろ不平等な取り扱いを受けているわけです。また、指令第五号「永住許可について」及び指令第六号「琉球列島への転籍」、こういう指令に基づいて転籍はできるが、なかなか高等弁務官の審査の条件がきびしくて転籍ができない。そこで選挙権も被選挙権もない。あるいは銀行から金を借りるにも非琉球人ということで政府金融機関からの金も借りられないし、学校を出ても公務員に、民間に、軍に就職することも困難で、なかなか就職できぬ。こういう深刻な矛盾があるわけです。私、今回初めて承知したわけでありますが、すでにいまから二年前、日本政府の南連事務所長あてに問題を陳情しておるわけで、あるいは行政主席、立法院議長、高等弁務官にこの問題を陳情しておる、この点御存じであるかどうか。御存じであるとすれば、どういう御努力を払ってこられたか、あるいはまた、今後この問題の処理にどう当たられんとせられるのか承って、私の質問を終わりたいと思います。
  437. 野田武夫

    政府委員(野田武夫君) 奄美大島の方々が沖繩に一万人おられることも承知しております。それからいまお示しになった内容は、大体こちらにわかっておりますので、これは何らかの方法によってアメリカ側に対して奄美大島の方々の問題に対して折衝したい、こう思っております。
  438. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 田畑君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  439. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 次に、佐藤尚武君。
  440. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 私はごく短い時間内に日本をめぐる国際情勢、ことに南方インドシナ方面の時局につきまして政府のお考えをただしたいと思うのであります。  日本経済的にだいぶ大きな力をたくわえてまいりまして、何か非常な安心感を持っておるかのように見えるのでありますけれども、国際情勢は、きわめて危険な状態にありますことは私から強調するまでもございません。韓国は国内的にああいう大きな混乱を来たしておりますし、国府と中共との間は周知のとおり。インドシナ方面におきましては、ゲリラ活動が非常に盛んになってまいりまして、南ベトナムないしはラオスの情勢もきわめて重大な危機に見舞われておるというようなわけであります。ところが、日本国内のこの世論から見まするというと、政財界ともにこういう形勢に対して非常に関心が薄いように見えるのであります。これは私は非常に危険な情勢であると思うのであります。ことに南ベトナムないしはラオスの問題、これはベトコン、北ベトナム、それに中共というように関連して見てまいりまするというと、非常に大きな脅威にさらされておるわけであります。もしベトナムないしはラオスにおいて共産勢力が勝ちを占めるということになりましたならば、これは直接に日本に対して非常な大きな影響を及ぼす問題になることは火を見るよりも明らかであります。そういうようにこの二国が赤化されるということになりましたならば、その隣接国は当然同じ運命におちいるでありましょうし、そうなりました場合、日本立場というものはどういうことに相なるか、かれこれ申すまでもないことと思うのであります。しかるに日本の態度は、いま申し上げましたとおり、そういう危険にさらされておるにかかわらず、関心が薄い。ところが、ときあたかもアジア太平洋地域の公館長会議が二、三日前に開かれまして、そうしてそれが昨日閉会した模様であります。新聞によりましても、これらの地域に駐在しておる館長たちも、いま私が述べましたようなことと同じような大きな関心を示しており、そうして日本のたとえば南ベトナムに対する援助というものが一向積極的でないということを指摘しておるようであります。これは私ども東京に住まっておる者に比べまして、これらの地域に駐在しておる公館長たちは一そう身にしみて日本の態度というものをふがいなく思っておることと思うのであります。もし日本がほんとうにこの問題を真剣に考えてまいりまするならば、よしんばアメリカの要請がなくてもみずから進んで積極的に援助の手を伸ばさなければならぬ問題であろうと私は思うのであります。現在におきましては、アメリカ一ヵ国が大きな責任をしょって、そして赤化防止に踏み込んでおるというようなわけでありますが、日本はいつまでもアメリカにおんぶして、そして安閑としておる、身に迫っている危険を忘れておるというようなことであってはならないのでありまして、つまり私は、アメリカの要請がある今日、その要請がなくても自分のできるだけのことをする、援助の手を伸ばすということが当然のことだと思うのでありますが、そういう点に関しまして政府の見解はどういうことに相なっておりまするか。これは政府の見解として総理大臣からお示しを願えれば幸いだと思います。
  441. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話のとおり、韓国あるいは中国、中共の問題はさておきまして、ラオス、ベトナムにつきましては、非常な関心を従来から持っておる。ことに最近の状況から申しまして、出先官憲あるいはその他のルートからのいろんな情報を持って見ております。南ベトナムに対しまする援助につきましては、お話にもありましたごとく、アメリカの要請のいかんにかかわらず、われわれとしては、アジア人として、隣邦として、あの塗炭の苦しみにおちいっている南ベトナム人の救済につきましては、当然考えなけりゃならぬことであると思うのであります。われわれといたしましては、もちろん諸外国のこれに対する感触を聞くの要はないのでございますけれども、しかし、世界の大勢が、各国はどうかということまで私はとりまして、そうして日本の態度をきめるということよりも、具体的にどういう措置をとるかということにつきまして、いま外務省で検討を命じておる次第でございます。なお、先般の公館長会議につきましても、私は特にベトナム、ラオスの大使より直接に情報をとっておる次第でございます。
  442. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 ただいま総理大臣のお考えを伺いまして、私自身大きな満足を感じ、かつまた安心感を得たことを率直に申し上げなければなりません。政府としてそういうようにかたい決意を持っておられるということは、まことにこれは日本のために幸いなことであり、ぜひそういうようなお考えをもって進んでいただかなければならぬと思っておったものでございますが、この総理大臣のいま述べられました見解につきましては、外務大臣ももちろん御同感とは思いますけれども、何か補足的にお考えをお示しくださるならば幸いだと思います。
  443. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いま総理がお話がありました線に沿いまして、せっかく外務省で具体的に検討中でございます。
  444. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 この問題は、日本政府が積極的にこれらの地方に対する援助と取り組まれるということに相なりまするならば、いずれは予算の問題と相なりましょうし、   〔委員長退席、理事斎藤昇君着席〕 また、その援助の内容であるとか、時期、方法等については適当な時期に再び御説明を願うというようなことに相なろうかと思うのでありますが、とにかく日本といたしましては、それらの地域に対して日本の態度が冷淡であるというような印象をいま現に南方諸国に与えておるように公館長会議の話として新聞にも掲載されておるのでありますが、そういったような印象をアジア地域の国々に与えるということは、これは非常な大きな影響を及ぼす問題であろうと思いまするので、ぜひこれらの諸国にそういった印象を与えないように、政府として積極的な態度に出られるように切に期待申し上げる次第でございます。  私の質問はこれで終わります。
  445. 斎藤昇

    理事(斎藤昇君) 佐藤君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  446. 斎藤昇

    理事(斎藤昇君) 次に、須藤五郎君。
  447. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 時間がありませんので、私は次に四、五点まとめて質問いたしますから、総理並びに外務大臣から御答弁を願いたいと思います。  政府は、アメリカ政府の南ベトナム援助要請を承諾しましたが、これは援助の大小が問題ではありません。日本が南ベトナムでアメリカ帝国主義に協力し、植民地主義犯罪者の一員となることであると思います。また北ベトナム、中国大陸まで戦争を広げていこうとしているアメリカ政府に協力することであります。これは日本人民にとってたいへんなことだと思います。アメリカの軍隊並びに南ベトナム政府軍は、過去十年間、南ベトナムにおいて野獣にも劣る残虐行為をやってきましたことは世界周知のことです。アメリカ帝国主義者はジュネーブ協定が調印されたその年に、早くもアイク・ゴジンジエム軍事経済協定を結び、協定を公然とじゅうりんし、軍隊、兵器を持ち込み、南ベトナムの至るところで毎日何千人もの人民を逮捕し、協定前の、すなわち内戦中の抗戦運動参加者あるいは支持者ということだけで拷問し、石灰水を飲ませ、腹を踏みつけ、婦人を暴行し、これを殺しました。強制収容所の鉄条網の中に何万人もの愛国者、民主主義者を追い込み、一九五九年初めのフーロイ収容所では、一挙に六千人の人間を青酸化合毒物で殺したのであります。一九五九年十月には、悪名高い十号軍事法令を施行し、国家安全に対する罪の意図を持っているという容疑、   〔理事斎藤昇君退席、委員長着席〕 すなわち、かってな判断だけで無差別に人民をとらえ、この容疑者はただ二つの刑、すなわち死刑か無期かという刑を科し、公衆の面前で即決で首を切り、ギロチンにかけて殺したのであります。これ以後、解放のため武装抵抗に立ち上がったのであります。また、アメリカ帝国主義者とジエムかいらい軍隊は、一九六〇年には大小二千百八十五回の掃討を行ない、平和な村を砲弾とナパーム爆弾で焼き払い、老若男女を問わず殺害し、人民の財産を略奪しました。たとえば、一九六〇年八月カオライン地区でジエム部隊のトウン大尉の大隊は四名の青年を逮捕し、木につるし、耳を切り落とし、腹をさき、内臓を引き出し、首を切り落としました。こういう記録は他に幾らでもあります。これはすべて事実なのです。一九六一年四月、南ベトナム民族解放戦線が全世界に示した訴えの中にはっきりと示されているのであります。これはかつてナチスのやったアウシュビッツと全く同じことではありませんか。日本軍国主義者が中国大陸でやった「焼き尽くす、殺し尽くす、奪い尽くす」、あの三光作戦と全く同じではありませんか。昨年十一月ジエム政権に抗議して焼身自殺した仏僧たちに対し、みごとなバーベキューと言ったジエム夫人の気持ちは、同時にジエム政権の気持ちであり、現在のグエンカーンの本質であり、アメリカ帝国主義者の気持ちであります。かかる残虐なる行為をやっているアメリカ帝国主義者とカーン政権に日本政府は援助の手を差し伸べることが許されるでありましょうか。かつて日本は、アジアの一員でありながら、中国大陸においてこれに類する残虐行為をやって全世界の非難を受けました。その日本を再び南ベトナムで共犯者にしようと総理は考えておられるかどうか。こういう援助が日本人民の利益になると総理は考えていられるかどうか。明確に答えていただきたいと思います。  第二に、ジュネーブ協定について伺います。いままでジュネーブ協定について一言も言ったことのないラスク長官が、最近ジュネーブ協定を口にせざるを得なくなりました。これは、アメリカ政府が国際政治の面でも追い詰められている明らかな証拠であります。ラスク長官は北ベトナム政府が協定をじゅうりんしたと言っておりますが、これはまっかなうそであります。一九五四年七月二十一日、ジュネーブ協定調印後わずか十日後の八月一日、サイゴンで協定祝賀と協定で保証した政治犯釈放を要求して集まった人々に銃撃、弾圧を加えたものは、アメリカ軍とジェムかいらい軍ではありませんか、ジュネーブ会議においてウォルター・ベデル・スミス米首席代表は、アメリカ政府を代表し、単独宣言の中で、協定を武力と暴力によって脅迫しないと誘いました。だが、わずか五カ月もたたないのに、アイク・ゴジンジエム軍事経済協定を結んだのはアメリカ政府ではありませんか。ジュネーブ協定第十四条には、差別、報復禁止、十六条、軍隊、軍事顧問増強禁止、十七条、戦闘兵器持ち込み禁止、十八条、軍事基地建設禁止を全部じゅうりんしているではありませんか。政府はアメリカ政府がジュネーブ協定を破壊している事実を認めているかどうか答えていただきたい。  第三、アメリカ政府の北ベトナム爆撃計画は世界周知の事実であります。ワシントン五月二十四日ロイター共同電によりますと、アメリカ共和党大統領候補として有力なゴールドウォーター上院議員は、二十四日ラジオ・テレビ放送で、南ベトナムのベトコン補給線を発見しやすくするため、ジャングル地帯で小型原子爆弾を使用するよう提唱いたしました。もしこのようなことをやれば、全面戦争になることは明らかであります。政府はアメリカの北ベトナム爆撃を支持するかどうか、御答弁を願いたい。  第四に、ホーチミンは四月二十五日オーストラリアのウィルフレッド・バーチェット記者との対談で、アメリカが戦争を北ベトナムに拡大しようとおどかしても、アメリカとグエンカーン一派はわなにかかったキツネである、両足をすでにとらえられながら逃げようともがいている、彼らはサイゴン地区すら支配することができないのに、どうして北ベトナムまで手を伸ばすことができようと言っております。もしアメリカが北ベトナムの爆撃をやったら、アメリカは全アジアから一挙に追い出されるでありましょう。平和的に南ベトナム問題を解決する道はただ一つしかありません。南ベトナムは、民族独立、民主、平和、中立の基礎の上に南ベトナム人民自身によって解決されなければなりません。その先決条件は、アメリカ軍とその兵器を完全に南ベトナムから撤去し、一九五四年のジュネーブ協定を守ることであります。これはアジアの平和を守り、さらに日本の独立と平和、安全にも有利であると考えますが、総理の御見解を伺いたいと存じます。
  448. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 南ベトナムに対しての人民の苦痛を緩和することは、アジアに国を立てているわれわれとして当然のつとめと考えておるのであります。アメリカの要請によってやるのではございません。  また、ラオスにおけるジュネーブ協定が守られていないことは事実でございます。だれが守っていないということはあなたが一番よく御存じでございましょう。  なお、北ベトナムに対しましての爆撃その他は仮定の事実でございまして、これに対しての答弁はいたしません。
  449. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 アメリカの大統領候補がそういう発言をしておるのです。だから、非常に重要な発言だと思うのです。それをやったらたいへんなことになる。世界大戦にまた発展するおそれがある。だから、日本政府の見解を私はただしておる。こういうことをあなたは支持するかどうかという点を私は質問しておる。
  450. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど答えたとおりです。
  451. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 こういうことで、日本の平和、独立、安全が保たれるとあなたは思っておりますか。口では、部分核停を承認しました、平和のために努力しますと、こう言いながら、実際にはアメリカの中国封じ込め政策に追従し、恥ずべき植民地主義犯罪者の一員となろうとしております。これが政府の態度ではありませんか。このようなことは絶対許されるものではないということを私はここではっきりと申し上げまして、私は質問を終わります。
  452. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 須藤君の質問は終わりました。   —————————————
  453. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 市川房枝君。
  454. 市川房枝

    ○市川房枝君 最初に、この総理府設置法で新設を予定されております国民生活局、それから青少年局が削除されそうだということについて、宮澤経済企画庁長官と総理に伺いたいと思います。  この二つの新しい局は、予算もすでに成立しております。で、生活局のほうは局長まですでに発表されておりますのに、最近の新聞によりますと、削除されることになったと報じておりますが、これは事実でありますかどうか。なお、その理由は一体どういうわけか。これは長官から御説明を伺いたいと思います。
  455. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 局長について発表云々ということはなかったわけでございます。新聞などに取りざたされたことは承知をいたしております。ただいまこの法案が衆議院の所管の委員会にかかっておるわけでございます。で、私がこれは非公式でございますが、非公式に聞きましたところでは、同委員会の与党及び野党理事の打ち合わせの際に、今回は国民生活局の設置は認めないことにするというお話し合いがあった由であります。聞くところによりますと、その理由とされるところは、臨時行政制度調査会の答申が出るまでは新しく局を新設するというようなことは適当でない、こういうことが理由であった由でございます。で、これは私非公式に聞いておるだけでございますが、事実といたしますと非常に残念なことだと思っておりますが、しかし、最終的にそれが国権の最高機関の御意思でありますれば、残念なことでありますが、やむを得ない。私としては、もしこの通常国会においてそういう結末になりますならば、次の国会においてさらに重ねて国会側の御再考をわずらわしたいと、かように思ってはおりますが、正式にまだどういう結末になるということは予知いたしておりません。
  456. 市川房枝

    ○市川房枝君 いま長官から理由を伺ったのですが、私が調査しましたところによると、反対は何か与党の中にあるらしく、それも長官の物価の値上げ反対に対する強い態度に対する反発みたいなものらしいと伝えられておりますが、そんな事実があるかどうか。それを新聞等では、社会党が、臨時行政調査会からその答申が出るまでは新しい局は反対だと、こう言っているというのでこれは今度は削ることになったんだと、こう伝えておりますけれども、調査会からは実は二つとも中間報告が出ており、大体それに沿っておるのでこの理由はちょっと私はおかしいと思う。これは社会党に聞くべきことであるかもしれませんけれども、私はもう一ぺん長官から、どうもその理由は私には納得できないのですけれども、臨時国会でもあればはたしてこれが復活できるかどうか、そのときの内閣あるいはそのときの長官がはたしてお続けになるのかどうか、そういう問題にもよるかもしれませんけれども、そういう点もはなはだ心もとない気がするのですが、いかがでしょう。もう一ぺん伺わしていただきたいと思います。
  457. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 具体的にどういういきさつがあってと申しますことは、私は確認いたしたわけでもございませんし、また、かりに多少知っておりましても、あまり申し上げるべき筋合いのことではないように思います。ただ、この公共料金値上げ一年停止ということは、行政としてやはりなかなかいろいろむずかしい点がございまして、私自身のやはり足らざるところがあってあちこちにいろいろな摩擦を起こしておるということは、考えるにかたくないわけでございます。ただ、そのこととこのことと別に関係があるかどうかということにつきましては、私にもわかりませんし、また、ここで申し上げるべきことでもないように思うわけでございます。  で、この局の設置の問題は、閣議で正式に決定をいたし、政府の意思として国会に御審議を願っておるわけでございますから、人的な変更その他によってこの方針が変わるというふうには考えておりません。
  458. 市川房枝

    ○市川房枝君 総理にお伺いをしたいのですが、この二つの局は実は物価局の巻き添えを食っているかっこうらしいのですが、二つの局の内容については必ずしも満足をしてはおりませんが、しかし、目ざしておるところは、あなたのいわゆる所得倍増計画によって生じたひずみ、それを物心両面から是正しようとするもので、あなたの内閣の私は新しい政策の芽だと、こう見ていたわけです。それが予算も通っているのに、ここではなはだ明朗でない理由によって消えるということは、まことに残念でございます。いや、まだそうきめるのは早いかもわかりませんけれども、いま衆議院の内閣委員会にかかっておるわけでありますが、総理、いかがですか、これは何とかしてそれこそ総理の政治力でもってこれは予定どおりに成立させるということはできないものでしょうか。非常に残念な気がいたします。
  459. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、内閣で予算案などに行政措置をいたしたのでございます。無事通過することを念願しておるのであります。通る通らぬという仮定の問題につきましてどうこう申し上げるわけにいきません。
  460. 市川房枝

    ○市川房枝君 次は、地方議会議員の報酬及び国会議員の歳費等について、自治大臣と総理にお伺いしたいと思うのです。  自治大臣は、地方自治法の改正によらずに、次官通知で審議会をつくるよう知事に通牒をお出しになりましたが、どうして変更されたのか、また、各都道府県や市、区は、この通牒によって必ず設置するかどうか国民はそれを心配しております。どうしてそうなったのか、あるいはまた今後の見通しを聞かしていただきたいと思います。
  461. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 御案内のとおりに、地方議会で報酬をお手盛りできめるという非難が高くて、また、東京都の特別区等におきましても、署名運動など起こっておりまする実態にかんがみまして、政府といたしましては、やはり第三者機関にはかってきめていただくような仕組みをつくりたいというふうに決意をいたしまして、当初は、自治法一部改正をいたしまして、知事あるいは市長が報酬を提案いたします段階で審議会の議を経る、こういうことに考えておりました。ところが、新聞で御案内のとおりに、全国の都道府県の議長会の方々が緊急に総会をお開きになりまして、一つの申し入れがあったわけでございます。決議もお持ちになりました。その内容は、自主的にやらしてほしいということで、文面をここに持ってはおりませんけれども、内容は、第三者にはかることを推進するという意味のことでございます。そこで、文面がいかようにも解釈をされますので、代表の方、つまり会長、副会長の方と、自治大臣として私が公式に会見をいたしましたが、第三者機関とは何であるか。これは、参考人、あるいは議案審議の段階で公聴会、こういうものを意味するのじゃないか。私たちは、そういうことでは了承できません。やはり知事が提案する段階で、審議会にはかるというのでしょうねということをだめを押しましたところ、正副会長ともそうでございますと、こういうことでした。なお、推進する云々ということは、やはりこれもすぐ六月の定例会でやりなさいとは申しませんけれども、しかしながら、真剣にお考えいただかぬと因るのだ、これは確約をするという意味ですかと申しましたところ、確約いたしますと、こういう明確なお話でございました。そこで、私といたしましては、これを法律で処理するよりは、やはり自治省といたしましては、こういう地方行政を担当なさる方々とお互いに不快な感じを持ち合うということは一番戒めなければなりませんので、事実そういうふうに自分たちで自治省の指導いたしまするとおり審議会を条例でおきめになるのならそれでいいのじゃないか、そのほうがむしろ法律で割り切るよりはいいと考えまして、総理ともはかりまして、実はその措置をとったわけでございます。いまの段階では、新聞で御案内のとおりに、東京都がお手本を示すということで、すでに決議をしております。また、千葉県、愛媛県その他で点々とつくると、こういうことを申されているわけでありますが、ただ、若干の県では、まだいろいろ御議論の段階もあるようでございます。しかしながら、ほうはいとこういう空気が盛り上がってまいりましたので、私どもは、早晩、全国の皆さんの良識によって、この問題をやはり自治省が指導する形において審議会をつくって、そうしてこれに諮問し、第三者の意見を聞いていただいた上でおきめ願うようになる。また、これは、知事にお願いをいたしまして、市町村にもまた適切に御指導願うことにいたしておりまするので、これで私は目的が達成できるものと確信いたしております。
  462. 市川房枝

    ○市川房枝君 とにかく審議会の設置によりまして、一応、いままでのように三分か五分間くらいでこそこそと決議することはできなくなりましたから、まあその点はいいと思いますが、ただ、金額の点は勝手次第といいますか——ということですね。自治省としては、この際大体の標準というものをお示しいただくとよかったのではないか。で、審議会ができて諮問されても、審議会のメンバーの人たちは、ちょっとそのどれが妥当なのか困るのではないかと思うのですが、交付税の積算の単位費用というものは一応きまっておりますね。都道府県会議員及び市会議員なんかが大体幾らぐらいということを自治省のほうで大体お出しになっておりますね。それは必ずしも標準にはならないかもしれませんけれども、ことし三十九年度は、八年度より少し上がっているわけなんですけれども、都道府県会議員のはことしは幾らになっておりますか。それから市会議員のは幾らになっておりますか。
  463. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 実は、各都道府県に当たって調査をいたしておりますが、国会と同じでありまして、やはり報酬のほかにいろんな諸費用が加算されてありますので、なかなかここで一口には申し上げられませんが、また、そういう資料が御必要ならば、先生のところまで提出をいたしたいと思います。大体、自治省といたしましては、以前から、指導といたしましては、行政局長の通達で、都道府県会の議員の報酬は部長クラスの中くらいなところでという指導をしたようでございます。しかしながら、議員諸君にしてみれば、あんな苦しい選挙を戦って出てきた者が役人のまん中のところであるとは何事かという非常に激しい御意見もありますし、そういう指導をすることすらけしからぬといったような空気でもって無視されておったのが今日に及んだわけでございます。お手盛りお手盛りと言われますことは、やはり政治の威信に関すると思いますので、これだけお考え願いたい。金額は第二段に考えております。審議会ができればやはり各都道府県あるいは市町村等もお互いの特殊事情がそれぞれありますので、だんだんいい線が出てくると考えておりますし、その上で指導するということは容易ですけれども、私どもはやはり地方議員の方々の良識にまちたい、かように考えておる次第でございます。
  464. 市川房枝

    ○市川房枝君 自民党総裁としての総理に伺いますが、五月二十六日の各新聞の夕刊に、この日はちょうど都道府県会議長会が、さっき自治大臣がおっしゃいましたが、審議会をつくることをしぶしぶ——と私は思うのですが、しぶしぶ承諾したその日ですが、自民党の定例役員会で前尾幹事長などが、「国会議員歳費のあり方、税法上の取り扱いなどは、各国の例も検討して国民も十分納得のいく内容に改善する必要がある。そこで学識経験者などにそういう立場でそれらを検討してもらう第三者機関を作り、その機関に諮問して検討したら、と考えている」と発言、「国会自体も議運委が中心となり」「検討するという態度をきめた。」と、こうありますが、これは事実でありましょうか。これは読売の記事でございます。総理から伺いたい。
  465. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、前尾君から、直接また間接にそういうことを聞いておりません。ただ、問題は、地方議会の議員の御質問のあったあと国会議員の御質問をなさると、いかにも関連しているように思われると困る。本質的に違うものでございます。国会議員は地方議会の議員とは全然違う立場でございますから、地方議会が第三者機関をこしらえると国会も当然だというふうにお考えになることは誤解が生じやすい。国会議員の歳費その他につきましては、これは地方の議会と別個です。国権の最高機関である国会議員ということから考えていかなければならぬ。したがいまして、幹事長からそういうことを直接間接に聞いておりませんから、国会議員の俸給その他の手当のあり方につきましては、これは世論もある程度出ておりますので、検討する必要があるかと思います。ただ、外国の例その他も見なければならぬし、また、外国の例を見なくても、いろいろな手当についての税法上の問題、しょっちゅうあなた御質問なさいますが、このことにつきましても検討する必要があると思います。
  466. 市川房枝

    ○市川房枝君 いま総理が、地方議会の議員と国会議員のそれは違うとおっしゃいました。私も違うと思いますし、歳費と報酬というふうに名称も違いますし、考え方もある程度違っていいと思います。ただ、しかし、地方議会の議員が、今度の値上げの問題のやり方——十月にさかのぼるとか、あるいは短い時間に簡単にきめてしまうとか、いろいろなやり方が、やはり国会にならっていると申しますか、そうしてならってやったのに、地方議会の議員だけ非難されるという法はない。そうしてこの間の審議会をつくることについても、新聞にも出ておりましたし、自治大臣もよく御存じなんですが、国会がまずつくらなければ自分たちはつくらぬというような意見もたくさん出てきているのです。これは私はやはり国会が議員というもののあり方を示すといいますか、違う点は違うということをはっきりして、しかしながら議員としての姿勢はやっぱり手本を示すべきだ、こういう意味でいま総理は、国会議員の税金のあり方とか、国会議員は国会議員として検討するとおっしゃってくださったから、それをひとつぜひ実行をお願い申したいということを申し上げておきます。  次には、総理に売春に対する審議会の要望書について伺いたいと思います。  去る四月三十日付で、売春対策審議会会長の菅原通済氏から、売春対策強化に関する要望書が総理に提出されましたが、ごらんになったでありましょうか、これに対して何らかの対策を講ぜられましたか、また、今度どんなふうになさろうとしておいでになりますか、ちょっと伺います。
  467. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) やはり誤解があってはいけませんので申し上げておきますが、あなたのいま地方議員と国会議員とはある程度違うと。ある程度ではないのです、根本的に違うんだと考えていただきたいと思います。立場が違うんだ。憲法上その他の点から申しまして、同じ議員だとか、議会だとか、ある程度違うぐらいでは認識が足りないと思います。どうぞそのおつもりでおやりいただきたい。  なお、菅原通済先生から、売春禁止につきまして、オリンピックを控え、また、いまの現状から見ての意見書は、拝見いたしました。しこうして、深夜喫茶とか深夜ボーリング等、あるいはトルコぶろの問題につきましても、閣議である程度出ました。取り締まりにつきまして十分検討する必要があるんじゃないかということを関係大臣から話を私も聞いております。
  468. 市川房枝

    ○市川房枝君 いまの総理の、国会議員と地方議会の議員は根本的に違うとおっしゃいました。その議論は別の機会にします。いまは、時間がありませんから、省いておきます。  最後に、職安法及び職業訓練法による婦人の職業訓練について、労働大臣にちょっと簡単に伺いたいと思います。  四十三国会で成立しました職安法及び緊急失対法の対象となりました婦人の日雇い労務者は、当時約十六万人と称されておりましたが、その大部分は中高年齢層の未亡人であります。ところが、これらの婦人を対象としての職業訓練の唯一のものは家事サービスで、これは労働省の婦人少年局が担当しておりますが、昨年の十月からこの六月までに、全国六カ所の訓練所でやっておりますが、その対象者としては百二十名、中高年齢層の失業者二百四十九名を収容しただけであります。東京について言いますと、第二回の定員が九十名でありましたのに、対象者はたった一名、中高年齢者が二十名入所して、卒業した者はたった十一名、建物も教室も職員も遊んでいるようなわけで、税金のむだづかいといいますか、ということになっておりますし、一体、現在十四万一千人あります婦人の日雇い労務者は、いつになったら、どういうふうにしてこういう人たちを就職させるか、こういうことに対する労働大臣の対策を伺いたいと思います。
  469. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 家事サービス訓練実施の状況については、大体お話しのとおり、設備の規模に比しまして利用者がまだ十分でございません。その理由につきましては、まだこの訓練の趣旨が徹底していない点も多少ありはしないか。特に訓練修了者の就職率は非常に良好でございますので、ある程度ねらいとしてはこの訓練はよかったと思っております。しかし、せっかくの設備でございまするので、今後もう少し失対適格者の間に趣旨を徹底さして、利用者をふやすように努力をし、その上でなお設備に余裕があるということがはっきりいたしましたら、今後の転換方法考え、有効に利用するようにいたしたいと思います。  なお、現在婦人の失対適格者につきましては、その住居などの関係上、移動することが非常に困難な状況もございまするし、また、家事等に従事する必要上、他の職業につくことについて、まだ思い切りのつかない点もあるようでございます。いろいろ今後とも長い問題でございますので、実情を十分調べまして、今後の対策を立てたいと思います。
  470. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 市川君の質疑は終了いたしました。  本日はこの程度にいたします。明日は、午前十時から委員会を開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後七時三十六分散会