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1964-03-30 第46回国会 参議院 予算委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月三十日(月曜日)   午前十時十九分開会   —————————————  委員の異動  三月三十日   辞任      補欠選任    野本 品吉君  谷口 慶吉君    塩見 俊二君  西田 信一君    木村篤太郎君  柴田  栄君    吉江 勝保君  日高 広為君    亀田 得治君  久保  等君    高山 恒雄君  曾祢  益君   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     太田 正孝君    理事            大谷藤之助君            斎藤  昇君            平島 敏夫君            村山 道雄君            藤田  進君            山本伊三郎君            鈴木 一弘君            高山 恒雄君            奥 むめお君    委員            井上 清一君            植垣弥一郎君            江藤  智君            木村篤太郎君            草葉 隆圓君            小林 英三君            小山邦太郎君            木暮武太夫君            後藤 義隆君            河野 謙三君            郡  祐一君            佐野  廣君            櫻井 志郎君            柴田  栄君            杉原 荒太君            田中 啓一君            館  哲二君            谷口 慶吉君            西田 信一君            日高 広為君            山本  杉君            吉江 勝保君            加瀬  完君            木村禧八郎君            久保  等君            瀬谷 英行君            戸叶  武君            豊瀬 禎一君            羽生 三七君            矢山 有作君            安田 敏雄君            米田  勲君            小平 芳平君            中尾 辰義君            曾祢  益君            村尾 重雄君            須藤 五郎君            市川 房枝君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    法 務 大 臣 賀屋 興宣君    外 務 大 臣 大平 正芳君    大 蔵 大 臣 田中 角榮君    文 部 大 臣 灘尾 弘吉君    厚 生 大 臣 小林 武治君    農 林 大 臣 赤城 宗徳君    通商産業大臣  福田  一君    運 輸 大 臣 綾部健太郎君    郵 政 大 臣 古池 信三君    労 働 大 臣 大橋 武夫君    建 設 大 臣 河野 一郎君    自 治 大 臣 赤澤 正道君    国 務 大 臣 佐藤 榮作君    国 務 大 臣 福田 篤泰君    国 務 大 臣 山村新治郎君   政府委員    内閣官房長官  黒金 泰美君    内閣法制局長官 林  修三君    総理府総務長官 野田 武夫君    行政管理政務次    官       川上 為治君    防衛庁長官官房    長       三輪 良雄君    経済企画政務次    官       倉成  正君    経済企画庁調整    局長      高島 節男君    経済企画庁総合    開発局長    鹿野 義夫君    科学技術庁長官    官房長     江上 龍彦君    科学技術庁資源    局長      橘  恭一君    法務省入国管理    局長      小川清四郎君    外務省アジア局    長       後宮 虎郎君    外務省条約局長 藤崎 萬里君    大蔵大臣官房長 谷村  裕君    大蔵大臣官房財    務調査官    松井 直行君    大蔵省主計局長 佐藤 一郎君    大蔵省主税局長 泉 美之松君    大蔵省銀行局長 高橋 俊英君    国税庁長官   木村 秀弘君    農林政務次官  松野 孝一君    農林大臣官房長 中西 一郎君    通商産業政務次    官       竹下  登君    通商産業省通商    局長      山本 重信君    運輸省鉄道監督    局長      廣瀬 眞一君    運輸省自動車局    長       木村 睦男君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十九年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十九年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十九年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 太田正孝

    委員長太田正孝君) ただいまから予算委員会開会いたします。  昭和三十九年度一般会計予算特別会計予算政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、前回に引き続き質疑を行ないます。山本伊三郎君。
  3. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 予算審議衆参を通じてすでに二カ月にわたっております。その間、池田総理田中大蔵各閣僚にはたいへん御苦労だったと思っております。私は、過去二カ月間における衆参両院論議をされました事柄につきまして、三つの大きい新聞並びにそれを裏づけするために会議録を克明に実は調べたのでありまするが、そこで政府答弁あるいは新聞論調等を集約いたしますと、次の二つの問題がいまの池田内閣としては当面解決をしなければならない問題だと集約をしたのであります。  その第一は、やはりその論議をされた回数その他から見ましても、日韓問題が一番重要な池田内閣に課せられた問題だと私は見たのであります。第二の問題としては、池田内閣の成立以来問題になりました所得倍増経済政策に対するゆがみを是正するためのいわゆる国際収支の改善、それに伴う消費者物価の抑制、これが第二の問題として上がってきております。第三は、ILO八十七号の批准の問題が大きくクローズアップしておるのであります。時間がそう許されませんので、要点だけかいつまんで締めくくりという意味において質問をいたしますので、誠意ある御答弁をまずお願いしておきたいと存じます。  日韓会談の問題でございまするが、突然、最終段階だといわれる状態にあって、韓国内部事情からこれが非常に大きい問題となったのでありまするが、一昨日の本委員会におけるわが党の瀬谷君の質問に対しまして、若干私も疑問を持つ点がありますので、再度ひとつ質問を試みたいと存じます。一昨日の藤田理事からの約束がございますので、まず農林大臣にちょっとお伺いしておきたいんですが、一昨日の午後三時半だと思いまするが、これは新聞で知ったのでございまするが、農相会談で日韓問題で協議された際に、いわゆる韓国事情についてつまびらかにひとつ聞いてもらいたいということを言っておりまするが、その際に農林大臣がどういう事情をお聞きになったか、この点をまず最初に聞いておきたいと存じます。
  4. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 韓国学生デモ状況等、あるいは新しい何か交渉についての指令とか訓令とか、そういうものがあったろうかどうかというようなことを聞きました。
  5. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そういう程度のものを期待しておらないんですが、相当われわれはあの問題で日韓会談が行き詰まっていくだろうという想定のもとでお聞き願いたいと言ったのでございまするが、そういう新聞で見ても常識でわかるようなことでなくして、もう少し突き進んで韓国内部事情というものはお聞きにならなかったんですかどうか。
  6. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 別に前の状況と変わらない交渉を続けておりますので、交渉をしている事態が非常に変化でもしてくるならば、いかなる理由なりやと、こういうふうに聞くことでございますが、依然として同じような調子で交渉を続けておりましたので、そう深く何といいますか、突っ込んで別に聞く必要もないと思いましたので、そう突っ込んだ聞きようはいたしません。
  7. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 日韓問題につきましては、立場は反対であるかどうかは別として、重要な問題として冒頭に申したとおりであります。せっかく農相会談でお会いになっておるのですから、この場所で言えないならば別であります。少なくとも日韓会談解決しようという、そういう解決するという公約のもとに進められておるのにかかわらず、ただその程度で普通にやったということでは、国民が納得しないのです。韓国事情というものは一体どうなっておるのか。われわれ新聞で見るだけでありますから、少なくとも交渉の衝に当たる者は日本の国を代表した交渉委員であるから、もっとその点は私は聞いておくべきである、またそうするのが大臣の役目であると思うのですが、その点どうですか。
  8. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 御承知のとおり、相手方向こうへ行ってきたわけじゃない、こっちにおるわけでございます。こっちにおるわけでございますから、相手方は電報や何かによって向こう情勢を聞いておると、こういう程度ですから、先ほど申し上げましたように、韓国デモ状況、あるいは何か新しい事態でも、話し合いとして訓令指令でもあるようなことになっておるか、こういうことを聞いたという程度でございます。  なお、折衝がこっちでして、こっちに来ておる人ですから、そうしてまた前の折衝とだいぶ変化を来たしておるならば、なお、先ほど申し上げましたように、何がゆえにそういうふうに態度が変わったかということでございますが、変わらない態度で話を進めておりますから、どうもおしかりを受けてもそれはちょっと困るのです。そういう向こうの様子ですから、私もその程度のことしか聞かない。また向こうもその程度のことしか話さなかった、こういうことです。
  9. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは外務大臣に聞きますが、こういう事態の中で、政府がいままで言われておりましたように、日本一括解決、この基本的な態度は依然として変らなく進むという基本方針政府として堅持するかどうか。
  10. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 基本方針は変えておりませんし、変えるつもりはございません。
  11. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは池田総理にお聞きいたします。まあ外務農林両相から御答弁がありましたが、池田内閣としては、日韓問題は少なくとも国会開会中、四月、五月に早期解決だというめどで進められたとわれわれ了解をしておりまするが、この事態になれば、そう簡単に、向こうさんの都合もありましようから、できないだろうという推測でありまするが、この点池田総理の所見を聞いておきたいと思います。
  12. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、今国会中に調印批准をするとは一言も言っておりません。両国民の願うことでありますから、なるべく早く妥結をしたいということは言っております。しかし、その都度、決してあせりはしないのだ、こういうことを言っておるのであります。一度も——相手のあることでありますから、いままで一度も言ったことはございません。
  13. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私は大体新聞とかあるいは議事録で見た答弁の中から五月解決がひとつのめどであると了解したのですが、そうすると、政府としては、そういうめどはない、言いかえれば、われわれの主張が通る、了解されるということがあるまではやはり根強く、しんぼう強く交渉を今後続けていく、こういう理解でいいですね。
  14. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 初めからそのとおりやっております。
  15. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それで、もう一回農林大臣に聞いておきますが、一昨日の会議で普通のとおりの交渉であったと言われますが、やはり依然として基線引き方が問題になっておったのかどうか。その間の話の中でそれもあいまいになってきておらないのかどうか、依然としてやはりいままでどおりの経過交渉を進められておるのかどうか、この点をもう一度お聞きしておきたいと思います。
  16. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) いままでの経過どおり基線引き方等につきましても話を進めております。こういう状況でございます。
  17. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 しつこいようでございまするが、あと議事録を見たときに、もう少し鮮明にしておきたいと思いますので、いままでどおりの話というのは、どういう問題で、どうなっておるかということをひとつ御説明願いたい。
  18. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 再々申し上げておりますように、漁業資源保存上から共同規制区域を一定のところに設けて、そして資源の分配について検討してまいっておるわけです。そのためには専管水域を設ける必要がある。専管水域を設けるのには基線をどう引くか、こういう問題、ですからその問題と、両方の隻数の問題、及び漁業協力の民間の協力部面、資金の出し方をどういうふうにして出すのだろうかという向こう質問等があります。そういう面で話を進めております。
  19. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 事柄だけ言われたのでございますが、問題になっておった基線引き方が、最初韓国側の原案では、済州島を越えた基線引き方をしておったと聞いておりましたが、そういう問題はどうなっておりますか。
  20. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 対立のままでございます。
  21. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすると、そのことを言われたのはもう相当前のことでありますから、それが対立のままだということになると、李ラインの問題がどうあろうとも、その問題だけで、どうなんですか農林大臣解決めどといいますか、あなたが衝に当たっておられますが、話の中でやはり向こう態度がうかがえると思うのですが、もし向こうの案だとすると、ほとんど李ラインと変わらないようないわゆる基線専管水域になると思うのですが、この点の向こう側態度あるいは今後の向こうの譲歩するような気配、そういうものについて、あなたの見通しとしてはどうなんですか。
  22. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 専管水域李ラインと同じだなんということは全然ございません。御承知のように専管水域は低潮地区から十二海里、あるいは直線線から十二海里であります。それからそのほかに共同規制区域を設けるといたしましても、李ラインよりずっと内側でございます。でございますから、そういう対立でございません。基線引き方等につきまして、私のほうは低潮線、島がたくさんあって錯線しておるところは直線基線、こういう点での初め対立がありましたが、その後だんだん対立が解けてきた、そういうことでありますけれども、引き方等につきましてまだ対立している、こういうことでございます。
  23. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 今後まあこの問題は相当こじれてくるという見方から、しつこいようでありますが、基線引き方で、日本主張というものは大体新聞では見ましたけれども、対立しておる、基線引き方の相いれないという点はどの点であるか。地図はここにありませんが、口頭でひとつその基線引き方の相違のラインを御説明願いたいと思います。
  24. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 基線引き方の具体的な問題は、いま交渉中でありますから申し上げかねますけれども、考え方といたしましては、向こう側としては、なるたけ広い範囲向こうから広い範囲基線を引いていこう、こういう考え方でございます。私のほうは、国際条約あるいは国際慣例に従っていくべきで、そう広い範囲に線を引くというのは国際慣例等に反するのじゃないか、こういう点で対立いたしておるのでございますが、具体的にはいろいろの線がございますから、それはひとつ交渉中でございますので差し控えさしてもらいたいと思いますが、考え方はいま申し上げたような考え方対立いたしておるわけであります。
  25. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 新聞で見ますと、問題は済州島が入るかどうかということでいろいろ問題になっているやに覚えておるのですが、その点はどういう線になるのですか。ちょっと理解のいくように御説明願いたいと思うのです。
  26. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) まだ話し中ですから、どういう線にもなっておりません。ただ先ほど申し上げましたように、向こうはなるたけ広い範囲でかき込もうということでございますし、私のほうでは非常に狭い範囲でやろうということでございますから、いまきまっている線ではございませんから、どういう線だ、ああいう線だと言われましても、いろいろな考え方もございますので、それは申し上げかねますが、考え方としてはいま申し上げましたように、向こうでは広くとろう、こっちはそれは間違っているじゃないか、国際慣例に沿った線でいくべきだ、こういう考え方でございます。
  27. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 こちらの主張する線と向こう主張する線が、いま交渉中だからそれは言えない、こういうことですか。きまってから知ったって、それはもう国民は批判のしかたもないが、それではまた国内の問題になるという憂いがあるので、向こう主張はこの線である、こちらの主張はこの線であるということぐらい言えないのですか。
  28. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) そういう線も、あるいは変わるかもしれませんし……。
  29. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 変わってもよろしい。
  30. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) そういう関係から言いますと、これは交渉事でございますから、向こうにとっては私のほうの主張を通すと不利だと、こう言うでしょうし、日本は当然向こう主張は通せない、こういうことになって、もう少し煮詰まりませんと、それを一般に申し上げるまでには私はいっていないような気がいたしますので、いま経過中、過程でございますので申し上げかねる、こういうことを申し上げたわけでございます。
  31. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 だいぶ農林大臣も口がかたくなっておるようであります。そういう漁業上に非常に関係のある線がどういう程度話し合いがいっているかということぐらいは、外交上のことであるから言えないということでは、相当われわれも納得ができないのですがね。もちろんこれは最後の案だということを何も言っておらない。わがほうはこの線を主張しておるのだが、韓国側はこの線を主張している、どちらが正しいのであるかということを、一般日本国民韓国民のみならず、世界に示すということが当然私は交渉常識じゃなかろうか。それすらも言えない、きまってからそれはわかるのだ、これではわれわれとしては納得できない。その点はどうしても言えないのですか。非常にわれわれ疑心暗鬼を持ちますがね。言わないとなると。秘密裏にそれをきめてしまってから、それで秘密協約ということでやられては困ると思うのですが、その点はどうなんですか。
  32. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 再々申し上げまするように、もう少し歩み寄ってくるというようなことであれば、こういう点で違っているのだからこういう点で歩み寄りたいのだということで申し上げる機会もあるかと思うのですが、いまのところ少し離れ過ぎています。でありますから、考え方として、先ほど申し上げましたように、向こうは非常に広くとろうと言っておりまするし、私のほうでは国際慣例に沿うたものだ、こういうことになれば、大体御想像もつくだろうと思います。しかし、それがそのままでいくわけじゃない。向こうに折れてもらえるなら折れてもらうというようなことでやっておりますから、向こう国内情勢等もありますので、あんまり初めな案を出して刺激させるというようなことも、交渉過程でございますからいかがかと思います。ですから、全然申し上げないというわけじゃございませんが、いまのところ相離れたままで、その離れたままを出してみたところで、それが歩み寄ることにといいますか、歩み寄るといったって筋の通らない歩み寄りじゃできません。そういう点からして歩み寄るというようなことにもっとなってくれば、これはまたお話を申し上げる機会もあろうかと思います。しかし、いまのところ離れ過ぎているのを、両方対立のままでこうだということをこういう公の機会に申し上げるのはどうかと思いますから、もう少しお待ち願いたい、こういうわけです。
  33. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは、公の場所で言えないといえば、ほかの場所だったら言えるんですか。
  34. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) ほかの場所ではなお言えないわけでございますけれども、公の場所で言うと、すべてこれは向こうへはね返って、そんなことがあとで折れたというようなことになると、向こう立場も困ることになるんじゃないかという気もいたします。しかし、これは交渉ですから向こうが折れるかどうかわかりませんが……。そういうことも考えて申し上げたわけであります。
  35. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 じゃ、どこでも言えないということなんですね。——それで、われわれこういうことまで聞こうと思っておらなかったんです。しかし、ああいうぐあいに韓国事情がきわめて険悪と申しますか、変わった情勢になったので、われわれは韓国民には韓国民としての言い分はあるだろうと思う。これは当然だと私は思うが、李承晩大統領のあの統治期間というものはきわめて小学校、中学校通じて反日的な教育をされたということを聞いておる。やはり学生は正当なことであるかどうか別として、きわめて日本に対する一つの感情から李ラインに対してそういうものを持っておるという想定をしておる。私は韓国へ行ったことがないからわからないが、したがって私はやはり韓国の人民の方々の幸福ということも、繁栄ということも考えてやらなくちゃならぬと思う。これは北朝も同様なんです、わが社会党の言うとおり。したがって、強引にわが国の主張を押しつけいということは言っておらない。しかし、一体どうなるんだろう、これをわれわれが心配するから丁寧に誠意を込めて尋ねておる。それが言えないとなれば、一体何をたよりに私はそれを判断するんですか、国政を審議する場合に。どこでも言えない……、一体きまったときにどうするんだ、それから国会でやりなさい、これでは私はやはり日本外交がともすると自主性を失うもとであると思うんです。どうしても言えないのか……。
  36. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 交渉過程においてそういうことをしいられても、御無理と申し上げるほかないと思います。言える時期が来れば私も申しましょう。何もきまってからとばかり言ってません。少しお待ち願いたい、こういうわけなんですから、あまりどうもいまからそれを言えというのは御無理だと思います。そういうふうに思います。
  37. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大体どの問題でも外交問題は交渉中は言えない、で、きまったときにはすでにそれがもう一つ基準案として決定したときです、それがいままでずっとわれわれが経験した実態がそうなんです。いまは交渉中だから言えない——もちろん外交問題はそう簡単に言えないものがありますけれども、それではわれわれとしては、国民としては非常に不安だと思う。しかし私は言える限度があると思って尋ねているが、それも言えない。外務大臣に聞きますけれども、李ラインの問題でいま聞きましたが、今後具体的に請求権の問題、それから文化財の返還の問題、竹島の問題、そういう問題についてもいままでどおりだということでなくして、政府方針というものをもう一回ここで言っていただきたい、今後のために。予算審議もそう長くありませんので、それだけ私はお願いしておきたいと思います。
  38. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 請求権問題につきましては、大綱において一応の合意を見ましたので、両院を通じて御報告申し上げた次第でございます。その他の問題につきましても、大綱において合意を見たら、逐次御報告申し上げるべきだと考えております。漁業問題につきましては、再三の御質問でございましたが、私どもは漁業問題につきまして最高の御責任を持たれている農林大臣同士でお話しいただくことが、交渉信頼度から申しまして、一番高いと判断いたしまして、両国の農林大臣同士のお話しをいただいているわけでございます。農林大臣にすべて御一任申し上げて、鋭意御折衝いただくのが、外交交渉として一番筋の通ったやり方だと判断いたしております。
  39. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 文化財、それから竹島の問題は。
  40. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申しましたように、大綱におきまして、ほぼ両者の見解が帰一してまいります段階におきましては、御質問に応じて御報告申し上げる時期があるだろうと思っております。
  41. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 日韓問題につきましては、いままでは中間報告もやり、わりあいに国会ではすなおな御答弁もあったのですが、韓国の問題があってから、きわめて政府は口が重くなった、これはわかります。外交の衝に当たる人の立場はよくわかるのですが、それだけにまた日本国民としても、いろいろ想像というものが出てまいります。したがって、やはり適当な機会にこれをはっきりさせなければ、別な意味で日韓問題は行き詰まってくると私は思うのですが、その点について、外務大臣は依然としてこの問題について、国民にその実態、いまの状態を報告する時期という——ああいう問題があった後の問題について、外務大臣としてはどういうお考えですか。やはりいい時期まで待てということで押し通されるつもりですか。
  42. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) たびたび申し上げておりますように、両国民が日韓交渉につきまして、日韓関係につきまして理解を持ち、双方の国民の間に信頼の度が高まってまいるのが一番大事だと思うのでございます。したがいまして、私どもも口を緘して隠すわけじゃなくて、できることはできるだけ広く国民にお知らせして、一緒に考えていただき、御理解いただくように努めるつもりでございます。したがいまして、そういういつどういう段階で御報告申し上げて、一緒に考えていただくかということにつきましては、常に考えているわけでございまして、ただいま漁業問題につきましては交渉のさなかでございますので、いまの段階におきましては御遠慮いただきたいと考えているわけでございまして、いずれ時期を見まして、私ども適当と判断いたしました時期におきましては、御報告申し上げるにやぶさかではございません。   —————————————
  43. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 委員の変更がございました。高山恒雄君、野本品吉君が辞任され、曾祢益君、谷口慶吉君が選任されました。   —————————————
  44. 藤田進

    藤田進君 関連。外務大臣にお伺いいたしますが、従来私どもの認識では、日韓問題はいろいろ問題があるけれども、同時一括解決だという御答弁をいただいてきたわけであります。そこで同時に一括解決といいましても、竹島のごときは最終的解決ではなくて、解決のための方法といったようなことが解決になるのじゃないかと思われるわけです。それから先般分科会で承りますと、釜山−下関間の電話ケーブル等については、わがほうは対馬から向こうを半々、向こうでは下関−釜山間全体の半々という管轄権、所有権といった主張のようだ。しかし郵政大臣としては、この問題は、日韓交渉からはずして、将来別に交渉を持ったほうが得策であるような御答弁があったわけです。このように、かなり各省庁に関連して多面的問題があるわけですが、その解決は将来に残して解決をはかろというのも一つ解決だというような解釈になってまいりますと、この辺、同時一括解決として私どもがすなおに受け取っていたものとかなり違う印象を受けまして、分科会においては内閣の統一見解と若干違うのじゃないだろうかということを指摘したわけであります。これらについて、同時一括解決という中には、こういうものはこうなる、こういうものはこうなるという、わがほうの——まだ妥結しておりませんから、わがほうの方針としてどういうふうにお進めになるのか、この際、お伺いいたしたいと思います。
  45. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 本院を通じて国民に公約をいたしたことでございまして、私どもといたしましては、すべての懸案を同時に一括解決するという基本方針は全然曲げるつもりはございません。
  46. 藤田進

    藤田進君 そういうふうに承ったにもかかわらず、郵政省所管の問題は、この際あと解決ということを言われておるわけで、これは分科会の速記録を見れば明らかなとおりで、これは単なる郵政大臣の希望として閣内に持ち込んでいるのかいないのかわかりませんが、あるいは竹島にいたしましても、個々の問題の最終的な解決、これを全体の数ある中で一括して解決するというふうにわれわれは取っておったのですが、個々的には、最終的解決というよりも、解決の方法をきめたということが、これが一括解決の範疇というふうに、どうもだんだんくずれてきておるような気がいたします。これは郵政大臣所管の問題で、はしなくもこの問題になりました。竹島問題では、わがほうではじゃ確定しようというのじゃなくて、将来国際司法裁判所に応訴するとか、その間に第三者のあっせんを入れるとか、そういった問題を本質的には残して、方法論だけで一括解決だというふうにも見えるので、御答弁ではございますが、個々についてはどうも例外があるように思われるので承りたいのであります。
  47. 古池信三

    国務大臣(古池信三君) いま私の名前をおあげになりましたのでお答え申し上げますが、予算分科会において私から御答弁申し上げましたことを、少し思い違いなさっているのじゃないかと思います。といいますのは、あの際問題になりましたことは、日韓の海底ケーブルの所有権の問題と、もう一つ電波の問題がございまして、私は、その日韓間の海底ケーブルの問題は今回の日韓会談に含めて解決をしたいということをはっきりお答え申し上げました。ただ、電波の問題は、これはITUの関係があるから、今回の会談で直ちに妥結することはむずかしい。やはりITUの国際会議に持ち出して解決すべきものであるということをお答えしたのでありますが、これは議事録にはっきりいたしておりますから、誤解のないようにお願いいたしたいと思います。
  48. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃもう一問だけ確認して日韓問題を終わりたいと思いますが、いま藤田委員に答えられた外務大臣の答えですが、やはり一括解決——もろもろの問題が一つでも話し合いがつかない限りは日韓交渉の最後の妥結をしない、この方針は、これはもう最後まで堅持されるということをもう一ぺんひとつ……。
  49. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおり心得ております。
  50. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ日韓問題は以上で終わりまして、次に、池田さんの高度成長政策によるゆがみと申しますか、最もいま問題として政府解決しなければならぬ国際収支の問題と物価の問題について、ひとつ要点だけ聞いてみたいと思いますが、まず消費者物価でありまするが、三十九年度予算の作成にあたりましての経済見通しは、三十九年度は四・二%、こういうことで想定されて予算が編成されておりますが、すでに三十九年に入りまして、一月、二月を見ましても、若干消費者物価が上がりつつあるのでございますが、三十九年に入って一月、二月の消費者物価の上昇率、前年同月比較、十二月から上がった比率、これをちょっと知らせていただきたい。
  51. 倉成正

    政府委員(倉成正君) お答えいたします。消費者物価は東京都の三月が出ておりますが、これは一二三・八、対前月比一・一%のアップでございます。対前年同月に比較しますと、三・九%ということになっております。それから全国の消費者物価はまだ三月は出ておりませんが、二月が一二二・三、前月比が〇・一アップでございまして、対前年同月比較いたしますと、三・三%の上昇、こういうことになっております。
  52. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 三十八年における消費者物価の上昇の傾向と、本年、三十九年度における上昇の傾向から見ると、私は企画庁がつくられた四・二%のいわゆる消費者物価の上昇率というものは、これにとどまらないという私の計算になるんですが、政府としては、この点についての見通しは、はっきりとこの四・二%になるかどうか、この点をひとつ……。
  53. 倉成正

    政府委員(倉成正君) お答えいたします。確かに消費者物価の上昇する要因はいろいろあるかと思いますけれども、政府といたしましては、公共料金を一年間ストップする、いわば消費者物価に水をかけるいろいろな施策をいたしております。その他、財政、金融政策等で総合的な物価鎮静の役割りを果たすような施策を進めてまいりますれば、四・二%程度消費者物価の上昇でとどまり得ると思っております。
  54. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大臣はきょうはおられないようでありますが、昨年の予算審議の場合でも、三%余りで押えるということであったが、いまのような状態では、公共料金の消費者物価の上昇に対するウエートの加重から見ると、公共料金はきわめて微々たるものです。これは経済企画庁が出されておるいろいろなデータから見ましても、公共料金を選ぶということは、一つのムードをつくるかもしれませんが、消費者物価全般から見ると、ウエートはきわめて軽いものです。それを押えつつも、三十九年に入ってもまだ上がりつつある、こういうんですね。この事態から、いま政務次官ですか、言われましたが、ただいろいろの物価抑圧の方法をとるからいけるだろうと言われますけれども、私は、まだ過ぎてみぬとわかりませんが、はたしてこれ以上上がったら政府はどうしますか。昨年も私は追及したんですが、事実はそうなったんだという説明ですが、私はあの経済見通しはきわめて安易な考え方で書いておると思う、私はあえて書いておると言う。これがもう年度中ごろになって相当上がってくるという傾向が出てきた場合には、どうするんですか。
  55. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 今年度は、御承知のとおり経済成長率名目九・七%に押えようということで、諸般の政策を進めておるのであります。御承知のとおり十二月から一月にかけて、日銀の窓口規制、準備率の引き上げ等も行なわれましたし、また、先般公定歩合の引き上げ等も行なっております。この種のものも前々から申し上げておりますように、物価の抑制、国際収支の安定、経済成長率九・七%、こういうことでは、従来のようにただ見通しという数字ではなく、政策を行なったその結果得られる状態を想定しておるわけでございますので、諸般の政策を進めて、四・二%程度に押えたいという考えでございます。
  56. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この国民総生産、あるいは経済成長を九・七%に押える、そういう、経済成長を押えるだけで、私は消費者物価が自然に押えられるとは思っておらない。十二月の国民消費需要というものは、きわめて上がることはわかっておるのですが、その後、一月、二月に入っても相当私は国民消費というものは上がりつつあるものと思っておるのですが、この点の統計数字がありましたら、まず先に知らせていただきたいと思います。
  57. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 消費者物価の問題でございますが、御承知のとおり昨年の十一月、十二月、今年一−二月は横ばい、あるいは〇・二、三%の下落という状態でございます。三月はちょっと野菜、くだものの関係で、先ほど言われたように、前月に対比して一%上がった。しかし、前年同月に対しては三・九%。私は、大体この情勢ならば四・二%上ぐらいで、それより下がってくるのじゃないかという気持ちを持っておる。それで進んでおります。で、ことしの三月と来年の三月とを比べた場合、大体三%くらいの上がりで、年平均で四・二%ぐらいの上がりでございます。それで、国民の消費の状況は、生産が相当伸びてきておりますが、生産の伸びとつり合う割合、それ以上にやっぱり前年対比で一五%くらいの伸びになる。これはたいへんな伸びでございまして、この一五%、三年間の伸びを一一、二%に押えたい、こういう気持ちで進んでおるのであります。大体その方向でいけるのじゃないか、こういう見通しで、いまの公共料金のストップ、あるいはまた財政、金融政策に対して弾力的に運用したいと、こういう考え方でございます。
  58. 倉成正

    政府委員(倉成正君) 総理からお答えがございましたが、消費の量の統計があるかという意味の御質問だと思いますが、ただいまのところ、さような統計はございません。
  59. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 なるほど生産を押えるということは、財政金融政策の引き締めによって、私はある程度これは押えられると思うのですが、国民消費のこの上昇ということは、なかなか政策的にむずかしいと思うのですが、いま池田総理みずからお答えになりましたが、この点の押える方法は、やはり財政、金融引き締めということで達成でき得るかどうか、この点、ひとつもう一ぺん聞いておきたいと思います。
  60. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 財政、金融の引き締めだけで片づく問題ではございません。ございませんが、開放経済に向かって、いままでのように高度の行き過ぎた経済成長を行なったり、また、それに伴って輸入が幾らでもできるというような考えではなく、全般的に引き締め傾向にあらねばならないわけでありますので、それに続きまして国民消費を抑制ぎみにしていただくように、政府としても各般の施策を行なうつもりでございます。  なお、公共料金の一年間ストップもやっておりますし、また四月その他の授業料の値上げその他の問題もございましたが、こういうものに対しても、消費者物価の抑制という立場から、十分慎重に抑制的な態度で終始してもらうというような状態を、これからいろいろな施策によってとっていきたいという考えでありますので、消費者物価の上昇は、三十八年に比べては相当低く押え得る、また押えなければならないという考えに立っておるわけであります。
  61. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 こまかい専門的になるかもしれませんが、私は、国民消費の正当な伸びというものはこれは歓迎すべきだ、国民の生活程度の上がるということは、これはわれわれとして大いに歓迎すべきだと思う。ところが、きわめて私はへんぱないわゆる国民消費の形成をしていると思う。経済企画庁でそういうものがないと言われましたが、所得の五位分類表による高額所得、上位に位する人の消費と、以下の低所得者の消費の伸びというものを比較するような資料はないのですか。
  62. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) その問題は、内閣統計局でやっております五位分類表で大体わかると思います。その傾向を見ますと、やはり所得の増加は、下のほう、一番下が一番多いということになるわけでございます。そうしてまた零細所得者につきましては、そう貯蓄への余力はございません。収入の相当部分は消費にと、こういうことになっておると思います。
  63. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 今日の消費者物価の上がっている傾向というものは、先ほど総理自身も言われましたが、食料品あるいは食料加工品が相当大きいウエートを持っている。したがって、あるいはぜいたく品とかそういうものが伸びるということについては、これはまた自然に規制できる部分もあるかと思いますが、これもしかし問題です。そういうことでありますので、いま総理が言われましたが、下のほう、低所得者のほうで相当伸びておると言われるが、そう聞いたのですが、私はそうでないと思うのですが、この点ちょっと聞き直しておきます。
  64. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 内閣統計局のほうの分類ではそういうふうに出ております。詳しくは、国民生活白書をお読みになりますれば、これにははっきり出ております。
  65. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 一々ここで白書をお読みなさいと教えていただかなくてもいいと思うのです。質問の関連で聞いておるのでございますから、そういう数字がわかっておればこうなっておるのだと……。  もう一ぺん聞きますが、国民消費との関係で、貯蓄性向は一体どうなっておるか。この点、大蔵省でわかっておりますか。
  66. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 各国に比べますと、依然として日本は非常に高うございます。そうして、貯蓄性向も、所得がふえましても、その割合はあまり動きません。ほとんど横ばい程度——昭和三十八年度くらいが少し落ちましたが、あまり——とても一割とは違ったわけではございません。前年に比べてごく少のうございます。
  67. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 二〇%程度でございますが、少しずつ上がっておるという状態でございます。
  68. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 五位分類表ではどうなんですか。五位分類表でいって、もちろん所得の多い人が大きくふえることはわかるのですが、下と上との伸びを……。
  69. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 主税局でわかるそうですから、調べてあとで申し上げます。
  70. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 池田総理はじめ——経済企画庁長官はおりませんが——大蔵大臣その他、やはり四・二%で抑え得るという考え方であるようであります。そこで関連して一つ聞いておきますが、いまの都市交通その他いわゆる一連の公共料金を押えておるのでございますが、物価抑圧の一つの手段として、私はそれはいいと思いますが、しかし、押えられておる交通事業は、そのそばづえというわけでもございませんが、きわめて経営困難だということを聞いておるのでございますが、物価抑圧政策の一環としてやったこのいわゆる赤字の補てんというものは、政府は、やはりある程度考えなくちゃならぬ。この点について、公共料金は、政府の支配下にあるから、お前らは黙っておれ、こういうことでは、私は非常に不公平だと思うのですが、その点どうですか。
  71. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 政府が物価抑制のために公共料金の一年間ストップをやっておるのでありますから、原則的には政府の施策に協力をいただきたい、こういう考えでございます。が、しかし、現実の問題として、あなたがいま指摘せられるように、どうにもならないものがあるということもありますので、経済閣僚会議の決定も、地域的にやむを得ざるものについては、またあらためて考えようということでございます。しかし、それは収入の非常に少ないへんぴな地域と地方のことを考えておるのでありまして、六大都市などを考えておるわけではございません。六大都市などは、御承知のとおり非常に財政が大きいのでございますから、私は、やはり政策に協力という基本的な立場から、その中で何とかしていけるものだと考えますけれども、御要求もありますし、経済企画庁を中心としまして、運輸省、自治省等で検討をいたしております。六大都市は四十八億の要求がありますけれども、これらのものよりも、私の考えでは、より財政的には困難なもののほうが問題だと考えておりますけれども、どうすればいいかという問題、検討だけはいたしております。ただ、政府が押えたのだから、元利補給とか、当然政府が負担するのだというような考え方は、これは基本的なものの考え方が誤りだというふうに考えておるわけでありまして、私のほうでは、そのような措置をとる考えは毛頭ございません。いずれにしましても、企業の合理化その他お互いが努力することによってカバーし得る面もたくさんあるのでありますから、そういう問題に対しても十分検討をしておるわけであります。
  72. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それは大蔵大臣、実態を十分把握しておらないからそういう答弁になると私は思うのですが、それはその程度にしておきましょう。大蔵大臣は、私は、誠意をもってやるべき責任があると思いますから……。  ただここで、物価の問題で一つ念を押しておきたいのですが、一年間はストップする、それはいいでしょう。しかし、一年たった後に一体どうなるか。このあおりを食って、三十九年度はなるほど政府の四・二%に押えられたとしても、このせきを切った大きな流れというものは、また前に倍した問題が私は出てくると思う。一年それは待て、これに対するやはり施策というものを政府は持っておらなければ、言った手前、三十九年度だけ無理やりに押えておいて、あとはもう成り行きにまかすのだということでは、私は、きわめて無責任な政治だと思うのです。この点についてどう政府は考えますか。
  73. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 今年度だけ押えるだけではなく、できるだけ明年も明後年も値上げをしないでいいような状態をつくるということが望ましいことでございます。でありますから、その前提として、一年間公共料金のストップをやっておるわけであります。でありますから、来年、九年度押えたものを全部上げるのだということではございません。同時にまた、来年は絶対上げないのだということも言い切れないわけでありまして、今年度のこの施策の結果を見まして、消費者物価も落ちつき、また卸売り物価も下降ぎみをたどるようになれば、来年、定期的に値上げをするというようなものはなくなるわけでありますから、そういう事態こそ望ましいという一環として施策を行なっているのであります。
  74. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ次に、国際収支の問題を一つ念を押しておきたいと思います。国際収支の推移の見通し、経済企画庁から資料をもらっているのでございますが、在来は、貿易収支あるいは貿易外の経常収支の赤字を、資本収支で補っておったのでございますが、資本収支がだんだんといわゆる黒字の額が減ってきているのでございますが、IMFのいわゆる八条国移行もいよいよ迫っているのでございますが、この国際収支の改善についての政府の基本的な態度をまず聞いておきたい。
  75. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御承知のとおり経常収支の赤字を資本収支でまかなっているわけでございますが、いつまでもそのようなことをやっていることだけがいいことではありません。でありますので、基本的には経常収支のバランスをとるように、各般の施策を行なうわけであります。同時にまた、国内の資本市場の育成等をはかりまして、国内資本の充実もあわせて行なうということで国際収支の改善対策を考えております。しかし、いままでも優良外資というものが日本経済発展に多大の寄与をいたしていることは御承知のとおりでございまして、当分良質な外資の導入はこれを受け入れていくという基本的な考えでございます。経常収支の対策としましては、中期経済施策を考えますときに、五年間のうち、一体経常収支が四十五年でバランスするようになるのか、四十三年でなるのかという想定は、いまできないわけでありますけれども、できるだけ早い機会に経常収支をバランスせしめる、その一つとしては、貿易を伸長せしめるということ、輸出振興が第一であります。もう一つは、貿易外の海運収支等を好転せしめるために、外航船舶等の建造を急ごうということであります。もう一つは、今度の国会で御審議願っておりますとん税、特別とん税と港湾経費は、国内においては外国よりも非常に低い水準にありますので、これを引き上げるとともに、貿易外収支の合理的改善をはかろうということでございます。それから御承知の観光対策としては、このたびお願いをしました衆議院で修正は受けましたが、外人旅客の誘致その他各般の施策を行なうということを検討しております。
  76. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 三十八年度、まだ三月が終わりません。あしたで終わるのでございますが、三十八年度における輸出・輸入、いわゆる貿易収支についての数字はまだできておりませんか。
  77. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 数字はまだできておらぬと思いますが、総合収支で九千九百万ドルの赤字になるということであります。しかし、もうそれは特別借款を支払った後のしりの数字でございますが、貿易収支及び経常では、当初政府が考えましたよりも多少大くなって、一億四、五千万ドル多くなっていると思います。しかし資本収支の面でそれをカバーするだけの順調な導入はございますので、総合収支のしりは当初十七億六千四百万ドルと試算をしたのでございますが、大体十八億ドル程度になると思います。三月の期末はそれにゴールド・トランシュの一億八千万ドルを加え十九億九千七、八百万ドル、ないし二十億ドルになります。
  78. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この輸出・輸入のバランスが年々くずれが多くなりつつあると私は見ているんでございますが、きょうの新聞では、最高輸出会議ですか、池田総理が会長をしているようでありますが、やるようでありますが、通産大臣に聞きますが、論出振興ということをいつも政府から聞くのですが、具体的に日本としてどういう方向でやるか、この会議で決定するまで待つのですか。通産省としては輸出振興について、いまの世界の経済の実情から見て、日本はどうあるべきであるというような基本的な考え方をひとつお聞かせ願いたい。
  79. 福田一

    国務大臣福田一君) 輸出振興については、いままでも御案内のように税とか、あるいは国内的に見ますというと、重化学工業化と、いろいろの政策をとっておるのでありますが、私たちとしてはいままでいろいろ処置はいたしておりますが、今度新しく輸出貢献企業というような制度もつくり、四月の一日から実施することにいたしております。それから同時にまた六月の二十八日を貿易記念日にする。要するに国内的に見ますと、もっと輸出に対する認識、英国あたりでは輸出か死かというようなPRフレーズをつくって、輸出に全国的な努力を傾けた時代もあるのでありますが、今日もそのやり方を続けております。日本もやはりそういうことをまず考えなければいけない、これを国内の問題でございます。国際的に見ますと、日本は軽工業品と重化学工業品がいま半々くらいになっておりますが、これをどうしても重工業化していかなければならない。先進工業国は大体において軽工業品との比率が三〇%と七〇%くらいになっている。重化学工業のほうが多いのであります。日本も三十七年から三十八年までの輸出構造の変化を見てみますというと、相当重化学工業の品目もふえてまいりました。特に機械であるとかあるいはまた鉄鋼類のような重化学工業品が二十何%ふえておるという姿でありますが、これをますます助長していくことが必要であると考えております。  それからもう一つは、かねがね申し上げておることでありますが、ジェトロ等を通じてわれわれは海外に対する進出をやっておりますが、しかし各品目ごと、それから各地において——地というのは、アメリカとかイギリスとかいうのじゃなくて、アメリカの中でもそれを東西南北に割るとか、あるいはまた各市別に考える、町別に考えるというやり方——もっとこまかいやり方を考えていかなければならないと私たちは思っておりまして、そういう施策を進めております。これを要するに、輸出振興といっても、奇想天外の方法があるわけではないので、結局は、やはりよい品物を安くつくって海外へ出す。その企業努力をしていく、こういうことが一番の大事なことである。続いてやらなければならないのは、海外においてそれが受け入れられるような経済外交をうまく処理していくということでありまして、もう一つは、その品物がりっぱな物であるというPRをするということであります。この三点に、大きく言えばしぼって、そうして国内的に日本の産業を力強く成長させるという意味では、税制とか金融の面等を特に重視してまいりたいと、かように考えておるのであります。
  80. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 日本の貿易の構造を見ると、いわゆる南北貿易といいますか、垂直貿易というか、低開発国に対しての輸出というものが比較的有望視されておったのでありますが、それらは延べ払いその他で隘路もあると思いますが、こういう垂直貿易に対して今後とも政府としてはやはり積極的なひとつ低開発国に対する開発と申しますか、貿易開発、そういうものを進める考えはあるのですか。
  81. 福田一

    国務大臣福田一君) 低開発国の貿易でありますが、お説のとおりアフリカとか南アメリカに対する貿易量というものは、この三十七年、三十八年と、ぐんとパーセンテージがふえております。そうしてイギリスとかあるいはEECとかアメリカに対するほうは、低開発国に比較すれば、それほど伸びておらないというような現状でありますが、低開発国問題は、これは何としてもわれわれとしては重点を置いて処理をいたしていかなければならないわけでありまして、そのためには低開発国の一次産品をできるだけ買いつける、いわゆる原料輸入の転換をはかる。こういうことが私は大事でないかと思うのであります。先進国から買っておるものの一部をそういうような低開発国に振りかえていくという考え方で処理をいたしていきたいと、こういう考え方を持っておりますが、同時にまた、低開発国自体の経済が伸びるように、またそこの貿易構造も改善され、生活も向上していくようにして、低開発国に需要が起きるくふうを今後いたしていかなければならないと思っております。
  82. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 通産大臣は、一応答弁でうまく——うまくといいますか、抽象的に言われますが、なかなかこの国際経済と申しますか、貿易は各国とも競っておるのですからね、もとは、やはりわが国の産業の形態というものがやはり一つの重点であると思う。重化学工業を重点に置いて今後やると言われまするが、各国ともそれはねらっておる。この点はやはり相当やらなければ輸出の振興、伸びというものは、私は輸入を上回わるということはなかなかむずかしいと思うのです。  そこで、時間がないので国際収支にかえりますが、先ほど大蔵大臣は良質な外資であれば、これは受け入れていいのだ。私は、それも一つは言えると思うのですが、やはり資本収支で考えていくと、やはり利子支払い、これが私はやはり年々重なってくると思うのです。したがって、ほんとうの国際収支の健全化というものは、やはり貿易収支によらなくちゃいけない、貿易外収支によらなくちゃならぬ、これは常識であります。ところがいま通産大臣の説明によると、今後はそういう努力をするけれども、なかなかそう貿易収支の改善もはかれない。貿易外においてはなおさらであります。それで海運問題についてはいつも言っておりまするが、特許料の支払い、利子支払い、観光収支というものについて数字的にどうなっておるか、ちょっとお示し願いたい。
  83. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 現在は三十八年分だけしか持っていないわけでございますが、貨物運賃で八千五百万ドルの三角、港湾経費で八千九百万ドルの三角、それから、その他で七千七百万ドル三角、その他の内訳は旅客運賃千六百万、三角、用船料が五千三百万三角、——保険関係で二千万、三角、海外旅行で千二百万、三角、投資収益で五千七百万、三角、政府取引で三千七百万、三角、その他の役務が、手数料の一億五百万ドル、特許料の一二九、それから交互計算勘定の一〇九、その他事務所経費等が八千六百万ドルというような数字をずっと合わせて三十八年度は四億一千八百万ドルでございます。三十九年度は見通しとしましては五億五千万ドルと、こういうふうに三角をつけて占めるわけでございます。
  84. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 三十八年度の話がありましたのですが、数字は要りませんから、利子支払い勘定、それから特許料、これについてずっと二、三年間の状態を、赤字傾向であるか、それが減りつつあって黒字傾向に移行しつつあるのか、利子と特許料を。
  85. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 数字が必要であれば、また後ほどつくって申し上げますが、今年度は元本果実、それから利子の支払い、それから特許料その他を合わせまして二億五千万程度の支払いということになっております。
  86. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 支払い超過ですね。
  87. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) だんだんと上がってくるということでございます。
  88. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そういうことを聞きますと、国際収支の各項目を通じて、私は相当努力をしなければ改善の見通しはきわめて暗いと思うのです。それにつけ加えて、今度IMFの八条国移行ということで、やはりひとつの問題が含んでおると思うのです。新聞紙を見ると、政府はそれに対する万全の対策をとって国際収支がそれほど悪化しないような対策を持っておるように覚えておりますが、やはりこれに関心を持つものは日本経済全般を左右するような一つの基本的な問題ですから、やはり心配なのですが、大蔵大臣はその点についてどういう見通しと、いわゆる方策を持っておられるのか、この点をひとつ聞いておきたい。
  89. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 確かに、元本果実、利子、特許料の支払いがだんだんと伸びておるわけでございます。こういうことは好ましいことではないとも言い得るわけでございますが、しかし、こういうことがあったからこそ、戦後の日本の経済は無資本の状態から短い間にここまで産業が復活し、輸出も伸びてきたわけでございます。でありますから、これからはひとつ輸出を十分伸ばして、また外航船舶等の建造、港湾経費その他の合理化をはかりながら、貿易外の赤字幅のほうもできるだけ押さえながら、経常収収でバランスをするように考えていくべきであるということは、先ほど申し上げましたとおりでございます。良質な外資を入れるということ、これもいいことでありますが、西ドイツのように、戦後、自国資本でやったという例もありますから、できるだけそういう貯蓄増強、資本蓄積等も国内で十分はかりながら、外資の導入と言っても、ただ外資オンリーという考え方よりも、長期の見通しを立てて国内政策を行なうという方向を打ち出して着々進めておるわけであります。私はこの問題についてまっこうから取り組んでおるのでございますが、この際申し上げておきますと、戦前は一体どうであったかというと、戦前は、われわれも経常収支は非常に大きな黒字だという考え方で聞かされておったし、われわれもそのような考えで戦前に戻らなければならぬという考えでおったわけでありますが、なかなか戦前の数字がないわけでございます、各省に。いろいろひっくり返してみましたら、大蔵省の倉庫の中に戦前の数字がありましたので、そういう数字を検討してみたら、必ずしも戦前も黒字であったというわけではないようでございます。どういうことであったかというと、輸入の運賃等は全部輸入ワクの中に入れておったと、こういうことで、計算上はわれわれが考えておったよりも違うことが実態のようであります。まあIMF統計のように、すべてをぶち込んでやっておるということよりも、いま政府がやっておりますように、こまかく項目別に計算をして合理化をはかるということが、私は適切なやり方だというふうに思っておりますので、戦前のことはともかく、将来の国際収支の安定拡大という面に対しては、できるだけあらゆる施策を行なうということでございまして、先ほど経済閣僚会議できめた、検討いたしました外航船舶建造という面もその一つの施策として推進を考えているのであります。
  90. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 もう一つ、いま大蔵大臣が言われましたが、船腹の増強ということですね。年間百万トン計画というものを出されたようですが、運輸大臣、その具体的な計画をひとつお示しいただきたいと思います。
  91. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) お答えいたします。計画造船におきまして、明年三十九年度の予想は六十四万数千トンでございますが、そのほかに、鉱石船その他自家用船が二十万トンございまして、約八十何万トンの手当ては済んでおります。そこで、あと百万トンにするための資金の手当てその他につきまして、数次の経済閣僚懇談会で、各省とも協力して、本年三十九年度には、どうしても百万トンをやろう、こういうことにきまって、鋭意その施策を進めております。
  92. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 その年間百万トン増強ができて、日本のいわゆる外航船舶による海運収支の状態が何年くらいで好転するような見通しで計画されておりますか。
  93. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 運賃収入のみの見通しは、運輸省といたしましては四十二年度までにやりたい、それにつきましては、少なくとも年間百六十万トンづつ四十二年度までにやりたい。そのうち本年度、すなわち三十九年度におきましては、とりあえず、百万トンをどうしてもやろう、現在も両方に割って八十万トンに近くありますので、船体能力、その他もありますからして、資金の面について各省の協力を求めまして、とりあえず、本年三十九年度は百万トン、それ以後は、ただいま申しましたように、四十二年度に収支が償えますように、運賃収支について、とんとんにいくような施策をいま鋭意関係各省と協議中でございます。
  94. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この問題で、最後に一つ政府に確認をしておきたいんですが、貿易収支で六十二億ドルとんとんというところでバランスを取ろう、こういう計画でありますが、いまの状態、いわゆるこの経済成長の引き締めその他から考えて、この計画どおり、最初この予算編成の際には、そういうものは一応見積っておらなかったと思うんです、金融引き締めその他のやり方が。その後のこういう情勢変化によって、やはり輸出入が六十二億ドルというものは確保できて、いわゆる貿易収支はとんとん、見合うという考え方は、このとおりで考えていいんですか。
  95. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 三十九年、御承知のとおり、輸出入六十二億ドルということでございます。それで総合収支じりで一億五千万ドルの三角、こういうことでございますが、十二月、一月、三月と金融調節手段も行なっておりますが、輸出の六十二億ドルは私は確保できると思います。輸入の六十二億とおおむねバランスを取るということに対しては、特にこの公定歩合の引き上げ等を勘案しますと、達成できるのではないかというふうに考えられるわけであります。  それからさっきの貯蓄性向の問題ちょっと申し上げますが、三十四年が一三・九、三十五年が一四・九、三十六年が一六・五、三十七年が一六・二、三十八年は一五・七、ちょっと横ばいのようなかっこうでございます。それから五分位表による一番下は、三十七年が二八・二、第一分位は三十七年も八年もゼロです。第二が三十七年が七%、三十八年が六・四、第三が三十七年が一二・八、三十八年が一二・六、四が三十七年が一七・四、三十八年が一六・九、それから五が三十七年が二八・二、三十八年が二七・八、大体横ばいであります。
  96. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ時間もだいぶたってしまったのですが、国際収支については一応この程度にしておきますが、最後に、この前の十七日に、私ILOの問題で質問いたしましたときに、総理並びに大橋労働大臣は、現在、政府部内のいわゆる調整をしているのだ、意見の調整をしているのだ、こういう答弁があったと思います。その調整がはたしてどういう経過をたどっているか、もうすでにできているのか、その点をまず最初にお聞きしておきます。
  97. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) ILO問題についてのお尋ねでございまするが、私どもが調整が終わっていると申し上げましたのは、ILOの問題に関連いたしまして、いわゆる倉石問題点というものが伝えられております。この問題は国会の御審議の段階におきまして、委員会に何らかの形であらわれるものと考えまするので、政府といたしましては、これらの問題点につきまして、各省間の意向をあらかじめ調整いたしておく必要ありと考えまして、すでに今年の一月中に各省間で大よそ意見の調整をみている状況でございます。したがいまして、政府といたしましては、この御審議が衆議院において急速に進められることをお待ちいたしておる次第でございます。
  98. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 労働大臣、すでに調整を終わったということでありまするが、その調整は、先ほどあなた、倉石修正案なるものが流されているとか何とか言われましたが、これはあなたも御存じのように、自社両党の責任ある機関で確認されておるということですから、そういうものがあるんじゃないかというような、そういうあいまいなことでは困る。それはそれでいいですが、調整されているならば、どういうことで結論が出ているか、それを一つ
  99. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これらの問題点は、国会におきまして政府案の修正案という形になってあらわれた場合においては、これに対する政府の意見を申し上げなければならぬ時期があろうと存じます。したがいまして、その際において、いろいろいままでいきさつのある問題でございます。政府間の、各省の間におきましても、いろいろ打ち合わせをいたしませんと答弁が統一できない面もありはしないか。したがって、そうした場合に備えまして、政府といたしましては、これらの点についての各省の考え方を調整いたしたわけでございます。
  100. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 関連。いまのILOの問題ですが、倉石修正案が国会審議に何らかの形であらわれるということは、まず政府としては期待をしているというか、覚悟しているというふうに第一に考えてよろしいのかどうか。その場合に、これに対する各省の調整というものは、一応、政府方針としてまとまったものができているのかどうか。そのできているという方向は、倉石修正案に対してどういうような形で調整するというのか。その辺のところは突っ込んだ話がきまっているのかどうか。それらの点についてもっと具体的に御説明を願いたいと思います。
  101. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 修正案が出る場合もあろうと考えまして、その場合にまごつかないように準備をいたしておるということでございます。したがいまして、それがどういうものであるかということを、まだ修正案が出ていない現在の段階におきまして申し上げるということはいかがなものかと存じます。
  102. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 あの修正案が、そうすると、出たときにまごつかないようにということでありますが、倉石修正案が出た場合には、そうすると、政府はまごつくようなことになっておったのでありますか。これはそういうふうにも考えられる。まごつかなくてもいいはずだと思うのです。倉石修正案が出ても。これは大よそ今までわからないことじゃないじゃないか、わかっておることだと思うのであります。だとすると、修正案が出ても、いまさらまごつく必要はなかろうと思う。だから、こういう問題は修正案が出ても、これをすんなりと受け入れられるような態勢こそ政府にとって必要じゃないか、また、ILOの仕上げのために必要じゃないかと思うのでありますが、その点についての労働大臣の所見を伺います。
  103. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 実は昨年暮れまでの状態では、各省間でいろいろこれらの問題点についての解釈なり、また意見なり、必ずしも一致をしていないように私には判断をされたわけでございます。したがいまして、そのときになってまごつきませんように、事前に十分に備えておく必要があると、かように考えまして、各省の事務当局の間で倉石案に対する解釈及びこれに対する各省の見解、取り扱い方、こういったものを話し合い、調整をいたしたというわけでございます。
  104. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 答弁聞いておりますと、どうも私はこの段階に来て政府としては何だかたいへんはっきりしないと思うのです。言われることはわかるのです。しからば、その内容ですね。われわれは、もうたびたび言っておるように、倉石修正案ですら不満であるけれども、あの状態において、まあこれでひとつ手を握ろうじゃないかということで、倉石・河野修正案というものは生まれた。したがって、いま了解をされたということは、調整をされたということは、倉石修正案なるものが一応前提としていわゆる了解された、調整されたと受け取っていいですか。
  105. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これはちょうど国会が始まりまするというと、各省それぞれ委員会、本会議等においてかような質問があるらしい一いわゆる予想質問に対する応答を準備することは多うございます。また、その際におきまして、関係省の間で意見を打ち合わせる必要のあるものは、やはり意見を打ち合わせて、いざという場合に各省間の意見がそごしないように、あらかじめ準備をいたしておくことが通例でございます。私の申し上げました調整というものも、大体さような性質のものでございます。
  106. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ、総理にお聞きしますが、問題は、まあ政府部内よりも、いわゆる与党内部——自民党内部の問題が、これがまあ動きが重点だと思って、まず最初、大橋大臣に聞いたのでございますが、総理は総裁として、この前のような、政府案は出しておるのだ、それで審議してくださいというのでなくて、事もここまでくれば、これが一つの大きい国会の重要課題となってきておる段階でありますので、与党の総裁として責任を持ってこの問題についてのイエス——要するに妥結——国会の審議を進める方向に向いておるという、そういうところの意見をひとつ聞いておきたいと思う。
  107. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) たびたび申し上げておるとおり、国会へ提案しておるのでありますが、どうぞひとつ社会党さんも、民社党さんも、各党がひとつ一斉に御審議願いたい、こう思います。
  108. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それは一つの法律的な立場からいえば、あなたは総理という立場答弁しかできないか知りませんが、いわゆる問題は一にかかって自民党内部の問題で今日まできておるのですよ。社会党も、あるいはその他の会派の人も、あなたのほうの与党の態度さえはっきりすれば、もちろん審議はどしどし進めようという態度は何べんも表明しているわけです。したがって、一にかかってあなたの与党の問題である。それがいままでこじれてこうなっておるのですから、内容をどうこうということは私はここで言えません。また、あなたも言われないと思うのでありますが、少なくとも審議を進められる程度に、与党内部の調整なり、そういうものが、要するに筋が通っているのだ、道ができているのだ、こういうことの判断をする意味の答弁を私はいただきたい。
  109. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 党の総裁といたしましては、執行部並びに国会対策委員長で善処しておると思います。何どきでもお始めいただきたいと、こういう考えであります。
  110. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それで、私はあまり、政治責任と申しますか、今日までこの問題がここまでこじれておる。しかも、ILO本部からは査察委員が来るというような前提になっておるのですから、やはり国民もこれに対し非常に関心を持っております。この問題でまた国会が非常にもめるのじゃないかという心配もしておるときでありますから、予算審議もきょうかあしたで終わるという段階でありますから。党三役がやるといって、あなたも党三役の一番頂点にある人じゃないですか。それくらいのことを国民に言うことは、決してあなたの責任を追及されることでもなし、政治を安定さす一つの道であると思うのですが、与党内部の意見がすでに調整ができておるのかどうか、この点をひとつぜひお聞きしたいと思います。
  111. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど来申してあるとおりでございまして、政府は提案しております。どうぞ御審議をお願いいたします。
  112. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 関連。山本さんの質問していることは、先ほど労働大臣質問したけれども、調整というようなことば、はっきりしなかった。再度、総理として最後的にどういう断を下すかという決意を聞きたいから、質問しているのだと思うのです。どうぞ御自由に御審議願いたい、御自由に御審議願いたいと言われなくたって、国会に出てくれば審議するのはわかり切っておる。問題は、修正案というものが出てくる。このことはわかっておる。そこに対してまごつかないように調整を考えておる、こういう労働大臣答弁があったわけであります。与党があり、野党があり、修正案が出てくる、それが調整される、どういう形で最後の仕上げにいくかというどん詰まりのところまで来ておるのですから、この辺でその方向を明らかにして、円満にこの問題を解決するという気持ちが総理にあるかどうかということをわれわれとしても聞きたいところです。これは日韓会談と違ってそんなにかけ離れた問題じゃないし、むずかしい問題じゃないと思いますから、この辺でやはり最後的な決意を披瀝してもらって、やはり政府としても熱意を持って、与党、野党との話し合いに対しても耳を傾けるという気があるのかどうか、最後の調整というものはどういう形でもって仕上げをしようとするのかという程度のことは、御存じであるならば言っていただきたいし、これは全然労働大臣にまかしておいて総理としては関知しないのなら、それでよろしい。どちらかということをはっきり答えていただきたいと思うのであります。
  113. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ずっと過去の経過を御存じであろうと思って、先ほどのように答えたのでございますが、問題は、内容よりも、私は党の総裁としてはILO関係五法案を一括審議願いたい、これがわれわれの方向であるのであります。その審議の前提として条件がつくということはいかがなものかと思います、民主主義の国会において。私は内容につきましても自分の考えがございますが、いま申し上げることは、審議のなにを、特別委員会をもって五法案をやるかやらぬかが各党の話し合いの内容ではございますまいか。私はそう心得る。そこに審議に、委員会を設ける前に、こういう条件でやらなければ委員会を設けないというのがあなた方のお考えじゃございませんか。私はそれを言っておる。われわれは、特別委員会を、五法案の特別委員会を設けて審議していただきたい。内容につきましては、審議してからの後。政府案というものができておりますから。国民もそういうふうに考えておるし、われわれもそう考えておるのであります。
  114. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 われわれは、内容をどうこうしようと言っておるのじゃないのです。先ほどからたびたび言っておりますが、先ほど大橋大臣は、一応政府の調整はできている、しかしここでは言えない、出たときにその答弁にまごつかないようにするのだ、こういうきわめて含蓄のある答弁をされたのです。そこで、われわれはできるだけ早く審議をやらなくちゃならぬということは考えております。いま総理も、出せば、五法案一括審議、これは特別委員会設置のことを言われると思います。そういうものをやる前提にいま問題が横たわっておる。したがって、そういう特別委員会がやる状態にあるのかどうか、これは一にかかって与党内部の問題であり、また政府部内の問題であるので、私は先ほどから尋ねておるのであります。内容を言わなくてもいい。そういう特別委員会をつくってもやり得る状態にきておるのだという見通しにあるのかどうか、この点を私は聞きたかった。大橋大臣は、やや具体的に、そういう方向に進むのでもいいのじゃないかという、そういう含蓄のある答弁があったのです。あらためて総理にその点を聞いたのですが、大橋大臣の先ほど言われた、政府部内の調整はできておるのだ、修正案が出ても、それに対して応ずるだけの、答弁ができるだけのものはできておるのだ、こう言われたことは、特別委員会をつくっても、与党、野党の間で問題の起らないような関係にあるのだというわれわれの了解でいいのかどうか、この点をひとつ聞いておきます。
  115. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大橋君の言明に対して、私は、とやこう言うのではなくて、私がいま聞いておるところは、特別委員会ができましていろいろな質疑応答があった場合に、政府としては、やはり公務員の関係がございますので、各省まちまちではいかぬから、討議における答弁のしかた、考え方をあらかじめ相談しているというのでありまして、修正案ができて、修正案に対する態度というふうには、私は大橋大臣答弁からは出てこないと思います。そういうようにお考えになりますと、これは速記録を見なければいかぬ。私はそう思っておるが、もう一ぺん大橋君に確かめてみたらどうですか。私は質疑応答に対しての意見の調整をはかったり、修正案に対しての態度をきめたとは聞いておりません。総理としてこれは聞いておりませんから、そういう打ち合わせだったらやめてもらいたいと、労働大臣に。
  116. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 微妙な問題だから、大橋労働大臣に。
  117. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 私の先ほど申し上げましたことは、御審議の途中におきまして、倉石問題点についての政府の見解を申し上げなければならない段階があるであろう、そのときにまごつかないように各省あらかじめ打ち合わせをして、答弁がそごしないような準備をいたしている、こういうふうに申し上げた次第であります。
  118. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 やはりこれは私が聞くだけではなしに、やはり大橋労働大臣の言われるところには含みがあるし、やはり一歩進んだ要するに問題を提起されておると思います。いわゆる倉石修正案に対しては、いろいろ答弁を調整するのだということは、やはりそこに一つの前提が私はあると思う。しかし、ここで池田総理にどうこうと言うことは、池田総理はきわめてかたいといいますか、非常に注意深い人ですから、それ以上言わないと思いますが、私はもうすでに四回も国会でこれが流産をしておる問題でありますし、しかもこの国会ではこれが相当大きい政治的問題になるので、この機会にやはり解決すべきではないかという、きわめて誠意のある私は質問をしておると思う。そういうことであればけっこうで、とにかく政府としては、倉石修正案というものは、これは正式に決議されたかどうかは別といたしまして、一応その案というものはあるのでございますから、その線に沿った形で今後進めていかくちゃ解決めどがないと思うんですが、それだったら答弁できるでしょう。それでも、いや、国会のほうで審議してくださいということで答弁されるか。それでなければ国会ではなかなか審議が進まないであろうと私は思うんですが、これについてもノーコメントですか。
  119. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、社会党さんの考え方、総評の考え方、また河野さんと倉石さんの話し合いのこと、政府原案につきまして、逐一知っております。検討いたしました。しかし、それはあくまで私の意見を言うことは委員会において質疑に答えることによって意見を述べることであって、いますぐ内容につきましてどうこう言うことではない。私は、私の意見も述べられるように早く特別委員会を開いてもらいたい、こういうことであるのであります。だから、河野、倉石両君の話し合いについていまここで意見をどうこう言うわけのものではございません。これはやはり審議の過程の上で申し上げるべき筋合いのものだと思います。  要は、施政方針演説で言っておりますように、もう二回にわたって、ぜひとも今国会で通過さしてもらいたい。ことにいまお話しのように、ILOの問題はジュネーブで相当の問題になっております。各国もこれに対しまして非常に期待している状況でございますから、あまり小さいことにこだわらず、とにかく大局的に早く審議していただきたいというのが私の念願でございます。
  120. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 山本君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  121. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 次に、曾祢益君。
  122. 曾禰益

    曾祢益君 私は、日韓問題に関しまして若干御質問したいと思います。最初に、私どもの日韓問題に対する基本的な態度を申し上げて、それから質問をしたいと思います。  われわれは、日韓会談は南北朝鮮の統一を妨げる、あるいはNEATOに通ずるとか、いろいろな理由をあげて韓国との交渉そのものに反対したり、あるいは南北の統一まで待てというような議論は、実際上共産側の立場に立ち、あるいはこれを支援するものでありまするので、われわれは、真に自主的なものでない、そういう意味で賛同はできません。私どもは、南北朝鮮の統一を待つまでもなく、独立した朝鮮の唯一の合法政権として国連が認め、かつ世界の多くの国が国交を持っておりまする韓国との間に、日本韓国との間にわだかまっておりますいろいろな焦眉の懸案を解決し、よって正式に国交を樹立するために交渉することはわが国の当然の権利であるという見地に立ちまして、かねてから政府に対し国民の要望にこたえる責務があることを申し上げてまいったのであります。  また、私どもは、交渉にあたっての日本側の心がまえとしては、われわれは多くの日本国民とともに日本と朝鮮との間のほんとうに永続的な友好を願うがゆえに、またわが国としては過去に対する反省に立ち、ともすれば感情に激する韓国の人心に対しても寛容な気持ちで事に処すべきことはもちろんであるけれども、だといって、どうでもこうでも、内容はどうでもいいから、ただ妥結すればいいという態度は非常に誤っている、かように考えまして、私どもが政府に対しまする第一の心配は、この無原則的な妥協のための妥協をあせってもらいたくない。たとえば難問題は全部たな上げにしておこう、あるいは国際法や国際慣例に反した決定で妥結する、あるいは筋を通さずに、ただ足して二で割るような方式で解決を試みる、さらには国民の良識に反するような重大な譲歩をあえてするなどということがあってはならないと思うのです。このことは単にわれわれの杞憂ではなくて、かつて大野副総裁の竹島共有論が出てみたり、またあとでも申し上げるような、大平・金会談において、まず請求権問題を片づけるというようなところから、最近の李承晩ライン解決についていろいろなトラブルが起こっている。さらには、最近の農相会談における、伝えられる赤城試案などの問題があります。したがって、これらの問題についてはあとで私は重要な点に対する国民的要望をひっさげて政府の所信をただしたいと思います。  その前に、もう一つ私の心配する点は、御承知の最近の韓国の政情、特に日韓交渉をまるで日韓併合のような、日本の一方的な押しつけであるかのごとき反発をしておる韓国の一部の風潮についてであります。で、韓国の野党あるいは学生運動のこの交渉反対なり中止論というものは、日本を相手とする国交調整そのものの反対という性質のものでは私はないのではないか。むしろ、われわれから見れば、度を越えた日本に対する不信感に出発した強硬な条件闘争的なものではないか。この点においては、わが国の多くの絶対反対論と生格が違うと思うのであります。私は、したがって、この韓国内の最近の反対運動をとらえて日本国内における会談粉砕闘争に利用するがごときは、はしたないやり方と思います。しかして、韓国の困難な状態に対して理解を持っていくのが私は当然だと思いますが、しかし、かく至った経緯については池田内閣としても私は反省すべき点があろうと、以下そういう意味で政府に御質問したいのであります。  どういう点が反省すべきことかというと、第一に、先ほどもちょっと申し上げましたが、大平・金会談においては、いろいろな事情はあったとは思いまするが、まず先方の最大のいわば利益ともいうべき請求権問題で相当大幅に譲歩してしまった。それに続いて、もう一つの山がある漁業交渉等に移るのが、おそらく政府として予定されておったと思うのです。しかし、韓国のクーデターその他の事情によってそれが延びて、いよいよ最近における会談のいわゆる山というときになると、あたかも日本側だけが一方的に季ライン撤廃等の、今度は韓国側に合理的に譲ってもらわなければならない問題を、日本側だけが韓国に要求して、これを一方的に押し通すと、こういう印象を与えていることは否定できない。そういう見方が正しいというのではなくて、そういう意味からの反発というものがあろう。したがって、こういう点、さらには、韓国のこれまたいろいろ事情があろうけれども、正式の会談とほとんど並行して金鍾泌氏なる人がやってきて、そうして政治会談をやる。したがって、秘密交渉でないかという、正式のルートを通ぜざる不正規会談なるものと、正規のルートを通ずる会談とがごちゃごちゃになっている。こういう点については、今後もあることと思うので、当然に私は政府は反省すべきだと、こう思うのでありまするが、まずこの点について総理並びに外相の御所見を伺います。
  123. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日韓会談に関しまする根本的の御意見は、われわれと全く同感でございます。  お話のとおり、いま日本に対しての過度の不信感ということでありますが、私もそのことは認めるのであります。したがいまして、われわれといたしましては、よほど交渉におきまして注意を要する問題と思います。お話しになりました金鍾泌共和民主党の議長、私は国会でも会う予定はないと言っておりました。しかし、むこうの要求で、総理大臣としてでなしに、韓国の最大の政党の議長でございますから、総裁としてなら会いましょう、そうして日韓会談の問題には触れないというあれで、二十分余り会ったのでございます。よほど注意はいたしております。しかし、これも外交として、また、隣国の大政党の議長でございますから、そうむげにやるわけにはいかない。私は自民党の総裁として、総裁室で会うということは、これは私はいわゆる表敬——コーティシィ・コールなら差しつかえない、こういうような注意はいたしていっておるわけでございます。
  124. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 外交交渉にあたりまして、相互の根深い不信というものを埋めてかかることが何より大事でございまして、不信感をあおるような外交交渉は極力警戒し、慎まなければならぬことはおさとしのとおりでございます。で、私どもといたしましては、第一に、正規の外交交渉のルートを踏みはずさないようにつとめておるわけでございます。金鍾泌氏と私も会いましたことは、これはまあ表敬訪問に過ぎないわけでございまして、交渉とは関係がないという立場を堅持いたしておるわけでございます。  それから、外交交渉にあたりまして、たくさんの懸案がございますので、その懸案をどういう順序で取り上げていくかということでございますが、たまたま請求権問題が先に取り上げられて大筋の合意をみたということでございまするが、先ほども申し上げましたように、一括解決の本旨にのっとりまして、すべての案件は同時に解決することでございまするから、その前提、前の段階におきましていろいろ一応の合意をみたことも、すべての懸案の解決にかかっておるわけでございます。一つの案件だけを解決して、ほかを捨てるというようなことは絶対いたさない方針を堅持して当たっておるわけでございます。
  125. 曾禰益

    曾祢益君 まあ外交上、あるいは国際儀礼上の点で言っておられるのですが、そういうこともあろうけれども、実際は、金氏が常に重要な段階において政治交渉する、これは韓国側のいろいろな事情があって、一がいにそれを否定できない韓国側事情はあるにかりにしても、われわれのほうとしては、そういうものは現に交渉ではない、今後交渉については、やはり正式のルートだけでやるという確然たるお答えを私はいただきたいのであります。もう一ぺん御答弁を願います。  それから、いま一つは、これは特に大平外相に対して申し上げたいのですけれども、われわれは、韓国事情がああだという、韓国だけに責任をかぶせてはいけないのではないか、いろいろな交渉のやり方のあれがあるだろうけれども、何といっても、向こうの一番ほしいものを先にくれてやって、今度はこっちへもらうものだけが最後に残ったということのまずさということは、これはやはり反省するのが当然だと思うのであります。その二点について外務大臣のお答えを願います。
  126. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 正規の外交ルートを堅持してやる、また、正規の外交ルート以外で交渉を一切やらないという方針に変わりはございません。  それから、一つ一つの案件につきましては、全力をあげて対処するのが当然でございます。一方で譲って、一方で譲ってもらうというような、そういうぞんざいな交渉は今日までやっていないつもりでございますが、今後もそういうつもりはございません。
  127. 曾禰益

    曾祢益君 これは結局は批判になりまするから、意見の食い違いを残しながら次に質問を進めます。  そこで、韓国の政情をどういうふうに見られて、そして、今後の交渉の見通しをどうつけておられるか、多くの同僚委員からもお話があったと思いますが、あらためて基本的な問題として総理大臣の御所見を伺います。
  128. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 韓国の政情につきましては、私がここでとやこう言うことはいかがなものかと思います。しかし、新聞、あるいはその他の情報によりますと、これが政党とつながった学生運動でないということも感じられます。また、いまの大統領に対しての非難も聞かれないという報告も受けておるのであります。したがいまして、私は、こういう大きい国をあげての外交交渉におきましては、えてしてよくある例でございます。先ほど申されたように、われわれが日本に対しての不信感があるということを頭に入れながら、誠実に私は交渉を続けていけばまとまるべきものじゃないか。たびたび申し上げておりますように、日韓両国国民大多数がこれを望んでおることでございますから、いろいろな大問題、ことに外交問題のときには、えてしてありがちな問題で、われわれがそのつもりで理解を深める、誠意をもってやっていくならば正常化がまとまるものと私は確信しておるのであります。その方向で努力を続けたいと思っております。
  129. 曾禰益

    曾祢益君 総理のお考えはわかりましたが、言いかえれば、わがほうから、こういう事態が起きたからというので、それを理由に直ちに交渉を打ち切れというようなことは筋違いだ。しかし、一方において、現実の問題としては、先ほど申しましたような、これは私は交渉のやっぱり拙劣な結果をあらわしていると思うのですが、最後になって日本側がぜひ通さなきゃならない李ライン問題、公海の漁業の安全問題等をこちらからいただくということで、形においては、いかにもわれわれ日本側がごり押ししているような印象を与えている。それに対する反発というような面も考えたときに、おおらかな気持ちで理解をし、交渉を続けるべき態度をとるのは、基本的には正しいと思うけれども、しかし、同時に、政府において考えなければならないのは、伝えられた三月中に——これはスケジュールが延びてしまったから、現実には問題にならないと思いますが、たとえば三月中に漁業問題を解決し、四月にその他の懸案の条約化をはかり、五月に調印というような、あまりにも何といいますか、事務的といいますか、あまりにもある意味では国内政治的な考慮があるやに誤解もされるようなスケジュールを組んで、それでとにかく無理やりに押していくというような意味の促進は、これは私はよほど考えて、むしろそういう印象を与えないように、交渉は閉じるべきじゃない、ないが、しかし、実際問題としてのスロー・ダウンというようなことを考えて、そしてやはり交渉の潮を見て、いまのところはしばらく慎重に先方の出方を見るというようなのが正しいんじゃないか、こういうふうに考えまするが、この点についてもう一ぺん総理の御意見を伺います。
  130. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話のとおりでございまして、曾祢さんよく御存じのとおり、いいことでございますので、早いにこしたことはございませんが、スケジュールなんかきめてやるべき問題じゃないと私は初めから言っておるわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、誠意をもってほんとうにこれはでっち上げればいいというわけものじゃないのです。何十年、何百年後まで続く問題でございますから、両方とも十分理解し合って、そうして両国のために、両国民のためにという盛り上がる気持ちでいくべきだと私は考えております。
  131. 曾禰益

    曾祢益君 外務大臣
  132. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 総理が申したとおりの心境でございます。
  133. 曾禰益

    曾祢益君 そこで、私は、第二段に、最初に申し上げました第一のむしろ交渉の内容に関連する心配であります。この点に関連いたしまして、ひとつ重要点についてだけ、こまかいことは一々申し上げませんが、交渉の内容点について、私どもの考えでは、これだけは日本側の国民的な最低限度の要求だろうということを踏まえてお尋ねしたいと思います。  まず、交渉にあたっては、国交の調整、あるいは経済援助の実施、これは懸案を解決して行なう。また、特に諸懸案については、難問題だけをたな上げするということはやらずに、諸懸案は一括解決する。懸案一括解決、よって、国交調整、さらには経済援助、こういう順序はどうしても守っていかなければならない、かように思うのでありまするが、特に向こう側が今後いやがってくる李ライン撤廃、漁業の安定というものはいまクローズアップされているがゆえに、この段階においてもう一ぺんこの政府基本方針を総理並びに外務大臣から伺います。
  134. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 全くお話のように考え、それを実行にいままでも移してきておるのであります。
  135. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 当初から一括解決方式で、いま曾祢さんがおっしゃったとおりの考え方で進んでおるわけでございまして、全然そのペースを変えておりません。
  136. 曾禰益

    曾祢益君 いま私が申し上げた国交調整、経済援助の実施は懸案解決後行なう、諸懸案は一括解決する、よって国交を調整する、こういうことだとはっきりしておきます。  第二には、請求権問題でありまするが、請求権問題の解決と有慣無償の援助との関係については、これは外務大臣両院に対する報告でも触れておられますが、非常に重要点なので、なお念のために伺います。これは援助の結果として請求権解決した、こういう趣旨をやはり協定の明文に明らかにすることが必要である。そうすることによって、この間外務大臣の本会議における森委員の御質問に対する答弁が、やや私は心配だったのは、個人請求権の問題はそういうふうにすれば残らない、請求権解決した、有償援助、無償援助等によって請求権解決した、これが協定に明らかにすれば、国内的の補償をどうするかは、これは両国とも残ると思いまするが、日本に対する請求権は個人でも残らないはずである。が、いま一つは、こういう書き方をすれば、北鮮に対して将来これは残ることを政府も認められる、北鮮側の請求権があろうが、いわゆる援助問題と切り離した形でこれがきまっていくべきである。そこをあいまいにして、韓国側の言っているように、むしろ請求権を充足する方法として援助をもらったのだという書き方になると、これはとんでもないことになると思うので、このくらいの点についてははっきりした腹をきめておられるかどうか、これを伺いたいのであります。
  137. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) たびたび申し上げておりますように、経済協力と請求権問題は、直接には無関係と心得ております。で、平和条約第四条に言うところの請求権韓国日本に対する請求権問題は、経済協力をやることによって随伴的な結果としてなくなるということを両国で合意しよう、そういう基本的な考え方で進んでおるわけでございます。森さんが御指摘になりました個人の請求権というのは、いろいろ突きとめてみますと、理論的な問題としてあり得るわけでございますが、これはあなたのお示しのように、それぞれ両国におきまして、国内的な措置を必要とするのではないかと私はいま考えております。問題は、一切のもんちゃくが将来にわたってないようにいたすつもりでございます。  それから、表現の問題はきわめて微妙な問題でございますが、先ほど私が申し上げましたような考え方によりまして、いろいろなその他の案件の妥結をみました段階におきまして、とくと慎重に対処いたしたいと思っております。
  138. 曾禰益

    曾祢益君 次に、李ライン問題、漁業問題について伺います。これは農林大臣からもお答えをいただきたいと思います。私どもは、この李ライン、あるいは国防ライン、その他いかなる名称を問わず、公海の上において一方的に排他的な権限を行使するようなことは断じて認められない、これをはっきり撤廃させるということが、今度の漁業交渉、あるいは日韓交渉日本側から見た一番大きな山だ、こう考えておるのであります。むろん先方側の熾烈ないろいろな感情もからんでいることはわかりますが、結果として一点の疑いもないように、そういうような李ライン的なものが完全に撤廃される、これはもう断じて譲ってはならない最低の線だと思います。この問題に対する総理大臣の御所信を伺います。
  139. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 本会議での答弁で申し上げておりますごとく、私はそういう考えで進んでいっております。また、それが国際的に見ても当然のことであるのであります。これを問題にすることがいかがなものかと思うのであります。
  140. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま総理から御答弁があったとおりでございます。わが国と韓国に関する限り、いませっかく苦心をいたしております漁業協定というものができますれば、それによってのみ日韓の間の漁業の操業についての規制があるわけであります。それ以外に何らの権威がないと思います。  それから、国防ライン云々の問題につきましては、韓国側からの説明を聞いておりませんが、わが国とわが国の国民が、公海上において韓国が引きました排他的な権力によって規制を受けるというようなことは絶対に許せない、許すことができないことであります。わが国と韓国の間におきましては、そういうことは一切認められないと思います。
  141. 曾禰益

    曾祢益君 交渉の衝に当たっておられる農林大臣の御所信を伺います。
  142. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 総理及び外務大臣が申し上げたとおり、いかなることがありましても、そういうものが残るということであっては、私どもこの交渉は成立し得ないものだし、そういうものは残してはならないと、こういうような態度でおるわけであります。
  143. 曾禰益

    曾祢益君 ついでに、これはこまかい問題ですから、農林大臣に伺いますが、わが国の漁船が非常にたくさん拿捕されて、二隻が沈没した、まだ帰らざるものがあるわけでありますが、漁船拿捕に伴う物的その他の補償ですね、返還及びその他の補償については、どこまでがんばっていただけるのか、これも伺っておきたいのであります。
  144. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 拿捕されました漁船、あるいはその人々に対する損害、これにつきまして、そのつど損害賠償請求権を利用して要求いたしておりますが、今度の交渉におきましても強く要求いたしております。でございますので、漁業の問題のときに解決をみるか、全体のときに解決をみるか、これは交渉過程でございます。いずれにいたしましても、この解決をみなければならぬ、こういうことで私のほうでは要求しつつ、ほかの方面と一緒に交渉を進めておるわけであります。
  145. 曾禰益

    曾祢益君 漁業の問題のもう一つのやっかいな点が漁業専管区域でありまするが、これはお互いに承知のことでありまするけれども、政府にもう一ぺん確かめておきたいのでありますが、国際法または慣例に従って、低潮線から十二海里、この原則はあくまで貫いていただきたい。むろん国際法、慣例に従って直線基線を引く場合もございます。しかし、それはきわめて例外中の例外であって、済州島をそっくりその中に入れるというような、そういうべらぼうな直線基線引き方はないわけです。また、別に飛び出した島との間に公の海が残ります。そういう場合も、韓国側は、それは内水だというような、これはどうしても認められないような主張をしておるやに伝えられております。こういう点については、やはり筋は通す、あくまで筋は通す、十二海里で押す、そして直線基線引き方については、あくまでも例外中の例外とする。むずかしい問題をたな上げにして、伝えられる赤城試案といわれますけれども、こういうふうに漁業規制のほうだけはきめておくけれども、これは共同規制ですね、公海というつもりで。しかし、専管区域のほうは残しておく、そういうことをしたならば、それこそ将来にトラブルを残すだけであるから、断じてそういう懸案たな上げ式の筋の立たない解決はしない、その点をひとつ明確に総理の決意を伺いたいのであります。
  146. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 基本的にそういうふうに考えて交渉さしております。
  147. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 専管区域は十二海里、専管区域の基線となるべきものは、低潮線を原則とし、例外としましては直線基線で引く。その直線基線引き方等につきましても、国際条約国際慣例、そういうものに準拠して引くべきである、こういう態度でやっております。  なお、懸案をうやむやのうちにたな上げにして、そしてこの解決をはかるという態度は持しておりません。そういう態度ではございません。
  148. 曾禰益

    曾祢益君 赤城試案というのはどういうのですか。
  149. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 赤城試案といって世上伝えられておりますけれども、それは専管区域の引き方等につきまして、幾ぶんそういう点を言われておるようでございますけれども、専管水域のきめ方等につきましては、国際慣例等を守って引いておるということでございますから、特に何か目立って変わった案ということではございません。
  150. 曾禰益

    曾祢益君 原則はそうであっても、現実にぶつかったときに、この原則をどう適用するかということで非常に意見の食い違いがあるのですから、その点についてはもっと明確に、総理の言われたことを私は一応この際了承しておきますけれども、こういう点でへんてこりんな譲歩をやって、済州島付近の大きな専管区域なり内水区域を除くということは断じてあってはならぬ、われわれは断固としてそういうことに反対しますので、これは記録にとどめておきたいと思います。  それから公海における共同規制でありますが、これもわかり切ったことでありまするが、実績を尊重する、これはもう一からキリまでということは言えないかもしれない。実績尊重ということと日本側だけが何らかの規則、隻数その他で規制を受けるということで、韓国側のほうは野放しだというようなことは断じてあってはならない。これはあくまで共同規制、韓国側はまだそこまで実績は持っておらなくても、協定のきめ方としては両国を拘束するというきめ方にすべきである。実績尊重と共同規制というこのたてまえはあくまで守ると、こういうことになろうと思いますが、この点はどうですか、外務大臣
  151. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 共同規制区域の共同規制方法等につきましては、私の報告にも申し上げましたとおり、また本委員会におきましてもたびたび申し上げておりますとおり、資源保存という点に焦点を合わせまして、実行可能でかつ公平な規制方法を考えてまいるという方針を堅持してまいるつもりでございます。
  152. 曾禰益

    曾祢益君 そうじゃなくて、両方を縛ると、こうはっきりした協定をつくるべきだということを言っているわけです。日本だけが協定によって縛られるのでなくて、韓国漁業も同様なんだと……。
  153. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 当然と心得ております。
  154. 曾禰益

    曾祢益君 これらの問題については、当然民間側の意見も聞いておられると思いますが、農林大臣、日韓漁業協議会等を通じて業界というか、これはむろん労働者、海員組合等も含めてですけれども、船員それから漁船漁夫これらの人々の意見を十分に聞いてそれを参酌し、それを反映するように交渉していただけるものかどうか、もう一ぺん伺います。
  155. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 私のほうでは各方面の意見を聞いております。聞いておりますが、私のほうは私のほうとしての考えがございます。その考え方は、いま御質問、御指摘にもありましたように、実績を尊重して漁獲する船などを考えて交渉していく、それからその場合には、日本だけを拘束するということであってはいけませんので、向こうにそれだけの実績がなくても日本と公平に、また実施可能な形で隻数等を含めて解決する、両方を拘束する、こういう進め方で交渉を進めております。
  156. 曾禰益

    曾祢益君 漁業問題の最後のいわゆる漁業借款なるものですが、われわれもけっこうだと思うのですが、しかし何か政府借款、あるいはもう頭ごなしに何億ドルというようなものを取ろうとしているような傾向があって、これはいかぬと思うのです。やはりこれは現実に民間ベースで漁業協力する、民間ベースの借款ということは守る、この点は誤りないと思うのですが、これは農林大臣
  157. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) そのとおりでございます。民間ベースでいくということでございますから、額とか条件とかは、実際は私ども提示する必要はない。こういうことでございますけれども、前の例等はどうだ、条件等について一般に行なっている例等はどうだと、こういうことでございますが、そういう例を向こうに通じておるだけでございまして、あくまで民間ベースで、それからは一歩も出ません。民間ベースでやるということでございます。
  158. 曾禰益

    曾祢益君 主として法務大臣に伺います。次には、いわゆる日本における南北朝鮮の国籍を持っている人の法的地位の問題ですが、この点については基本的には従来日本国民であった人でございまするから、一方においては人道的に日本の内国民にやや近いような永住権、その他の教育についても、あるいは社会保障等についても相当厚い取り扱いをやっても私は差しつかえない、私はそうすべきだと思う。同時に、だれまでが永住権等を受ける権利がある人かということの線は、はっきり明確にしなければならない。同時にまた、かりに永住権が与えられてても、日本の国法等を犯した者については、やはり法律によって強制退去の道がはっきりと開かれなければならない。これが実際野放しになっているというのが現状だと思う。そういうふうに一面において人道的態度、他方における取り締まり、両々相まって、日本社会と日本における朝鮮人社会との間のトラブルの種を除くということが、日韓会談一つの大きな目的でなければならぬと、こう思うのでありますが、法務大臣のお考えを伺います。
  159. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) お答えを申し上げます。在日鮮人の法的地位につきましては、ただいまお述べになりましたように、日本人と信じて、日本人として終戦時までずっとおりました在留鮮人が、自分の意思にかかわらず日本人たる国籍を失ったわけでございます。これは従来の沿革、生活の実情その他を考えまして、お話しのように今後日本に永住権を認めるということは、重要な問題になっております。永住権を認めるにつきましては、いかなる在留鮮人に認めるか、認める人の範囲、それから永住権の内容と申しますか、それにつきましてどういうほかの場合より利益があるかという問題、なおその内容、法律的には内容になるかもしれませんが、退去命令などをされます場合に、どういう場合に退去命令をするか。一般の場合をどう違うか。まあ端的に申せば寛大と申しますか、有利な条件をつけるわけであります。これらの点につきまして交渉いたしておりまして、まあ大体のところは話が一致しているように存じます。同時に、それがいま曾祢委員のお話がございましたように、外国人が日本の社会に定着するような状態になりますから、それからくるまた日本の大きな国家としての利益、それに反するような弊害は、防がなければなりません。その点を留意いたしまして退去の条件であるとか、在留資格であるとか、これをきめるようにいたしております。大体申し上げますと、終戦までに日本に来ておる人で、条約の発効まで引き続いて在留した、これが大体資格を得る者、またその人の子供でございます。それからまたその子と先になりますと、これは永住権ということそのままではむずかしいので、成年に達するまでということに大体なるのじゃないかと思います。  それから永住権の内容といたしましては、これはまだ明白に、法律上の権利とするか、あるいは違った形でいくか、まだはっきりいたさんことでございますが、現状のごとく生活保護であるとか、あるいは小学校、中学校、あるいは日本人の義務教育の学校に入学する一つの特典と申しますか、そういうものも認めるという考えでございます。退去の場合には、普通には一定の限度以上の犯罪を犯しますと退去命令になる、あるいは独立の生計を維持する見込みのない貧困の場合などは、退去命令の範疇に入るのでございますが、これらは犯罪を犯しましたら、その科刑の年限、そういう点で相当の加減を認めていく、こういうふうな考え方でございます。  それから委員長、ちょっと、本月二十三日の委員会における私どもの政府委員答弁にやや不備な点がございました。関連いたしますから、ちょっと発言をさしていただきたいと思いますが、それは戸叶委員の御質問でございました在留朝鮮人の法的地位に関連しまして、在留中国人の法的地位はどうか、簡単に申せば、中華民国の国民、中華人民共和国の国民、率直に、俗にいえば、台湾と本土のほうとどう区別があるかというお話でございました。区分がないように申し上げましたが、ことばが少し足りませんで、それは中国人とその法の上に書くことに区分がないということでございまして、扱いの上には区分がございます。と申しますのは、在来日本人としておりました台湾の人は、これはいまの在留朝鮮人と同じく、昭和二十七年の法律によりまして、百二十六号でございましたか、号数ははっきり記憶しませんが、従来日本人としておったということで、これは在留朝鮮人も在留中華国民も同じわけでございますが、同じ待遇をいたしております。事実上いま永住権を享受しておるという状況でございます。それ以外の中国人は、これは元来もとから外国人でございますから、外国人として一切取り扱いをする、永住権を得た者もむろんございますが、それは一般の外国人が永住権を得る場合と同じ取り扱いで永住権を得ている、こういう次第でございます。少し説明が足りなかったかと思います、補足させていただきます。
  160. 曾禰益

    曾祢益君 もう一つ、この韓国とのこれらの問題が協定されましても、現実には日本にはいわゆる北鮮系がおるわけです。そういうものに対して、韓国の法令に従い、あるいは韓国の管轄に従うことを強制することは適当でない。それらのことについて、なかなかデリケートな問題があると思いますが、韓国とやった協定上の実際の効果あるいは便益は、北鮮系にもくれてやる、しかし韓国側の管轄権をそのために無理に及ぼすということについては、よほど慎重に考えなければならん、こう考えますが、この点についても伺います。
  161. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) いまの在留朝鮮人で、韓国との合意ができまして実行されます場合には、やはり個々の人に、そういう永住権が適用される人かどうかという認定が要るわけでございます。それは、在留朝鮮人のほうから、自分は韓国人としてそういう永住権を得たいと申し出るわけでございます。まあ同時に、これは韓国政府が証明をすることが必要でございます。そういう場合に、大かた一定の期間、何年か限りまして、その期間に申請をするということになると思います。そうすると向こうの問題は、韓国籍を選択する意思の人でも、何かの事由によりまして申請がおくれて、その一定の期間に永住権を取得しない人もできます。これは北鮮系を支持するのか、韓国側の人であるか不明で残るわけでございます。同時に、韓国国籍を選択しない北鮮系の人はやはり残るわけでございます。これらにつきましては、そういう時期に至りまして、今後どうしたら一番適当であるかということを考慮してまいることになろうと思います。実際は、扱いとしましては、現在でも法的地位が確定はしませんが、昭和二十七年の法律によりまして、あたかも永住権があるのごとき実質的な取り扱いをいたしております。この取り扱いが大体相当の期間続くのではないか。そうして将来何らかの機会に確定をすることが起こるかもしれない、かように一応考えておる次第でございます。
  162. 戸叶武

    戸叶武君 関連して。先ほどの法務大臣答弁でも釈然としないのでありますが、韓国人で永住権を得たいという手続を、日韓会談によって今度とるようになるということですが、これは韓国側からの要請に基づいてのものと思いますが、中国人に対して、中国は一つだと言いながらも、日本政府が日華条約を通じて一つの条約がつくられているにもかかわらず、実際には中国人に対してそういう処置をしないでおりながら、朝鮮人の人に対して韓国人としての永住権を与えるような取り扱いをするということには、そこに非常に何か取り扱い上差別的なものが感ぜられるのだが、この点はどうかという点が骨子だったと思います。そのときに政府側の答弁といたしましては、いろいろな先方の申し出もあるし、また歴史的な因縁もあるというようなお話だったので、台湾及び澎湖島は日清戦争以後において日本の帰属になり、朝鮮は明治四十二年に日韓合併によって日本に加わったのでありますが、古いほうの台湾、澎湖島の人たちが日本籍から分離していく場合と、それよりも少し新しい朝鮮の人たちが日本から分離していった場合に、なぜそういう異なった処置が行なわれるか、どうもその点が疑問なんです。そういう点をもっと明快に解明してもらいたいと思うのです。
  163. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 仰せのごとく、いわゆる台湾人が朝鮮の人よりも日本国民として早くなりまして、在留しておる者も長く日本人としてはおったわけでございます。それでもちろんいま申し上げましたように、昭和二十七年講和条約が発効いたしましたときから、そのときの法律によりまして、永住権を事実上法的地位が確立するまで認められました。今日までもまで法的地位が確立していないのでありまして、日華条約ではそういうこまかいことがきまっていないようでございます。それでずっと事実上永住権を認めて今日まできておるわけでございます。別に何ら差別をいたしておるわけでも何でもございません。当然の処置をいたしておる次第でございます。それ以外のいわゆる中国人、これはもとから外国人でございます。外国人としていろいろ一般にほかの外国人と区別なく処置をいたしております。かような次第でございます。
  164. 戸叶武

    戸叶武君 その説明を聞きましても、日華条約のほうが古く締結されたのに、そのほうでは何かこまかい問題とか何とかという答弁でしたが、そういう問題を明確にしないでおって、急に今度は日本韓国との日韓会談においてそういうものを設けるというところに、何か一つの奇異な感じがするし、そういうことになると、したがって、今度は中国人の人に対しても国民政府国籍の者が登録しようというようなことを言い出さなくちゃならぬようなかっこうになってくるんじゃないか。そうなると、中国問題も非常にデリケートなとき、また朝鮮の問題も、一番朝鮮民族として私は大きな悲願は南北の統一だと思うのです。中国人だってそうです。そういうときに、朝鮮民族として一番いやな問題に対して、日韓会談ということによってことさらに痛いところをつくような、刺激するような民族感情をことさら無視して刺激するようなつくりあげ方が、なぜいま必要なのか。その点がこれは私はどうも奇異に感じられてならないのです。民族感情を無視して、外交なんというものはあり得ないのですが、これは日韓会談をぶちこわすために、そういうところでテンションをつくり上げようというあるいは御配慮の上によって、そういうことをするのかどうか。私どもとしてはほんとうにこれは奇異なことであります。それによってそれが必ず私は中国の日本に在留している人たちにも刺激を与える。それによって何を得るところがあるのか。政府の意図がわからなくなるのですが、どこをそういうふうに、どういう点をねらってそういうような処置を講じようとしているのですか。
  165. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 日華条約ができましたときに、在留中華民国人の法的地位をきめるべかりしであったかどうか、その適否の批判は私はむろん避けますが、実際の問題としまして、いま台湾の方二万人ぐらいしかいないのでございます。そうして在留朝鮮人は、これはほとんどが韓国人のようでございますが、そのほうは別といたしまして、六十万人近くもいる。だからやはりこれは非常に法的な地位の確立なんという問題に、事実上の重要性が違うと考えるのでございます。  なお、南北両側に分かれて刺激するというお話でございますが、こういう問題は、総理かあるいは外務大臣がお答えになるのが私は適当と思いますが、われわれは日韓交渉をしますことは、当然のことでございまして、だんだんに、韓国と申しますか、朝鮮と申しますか、そういう間の問題が解決するのだから、北鮮の人も日韓交渉できれば喜んでもらえるんじゃないかと思っている次第でございます。
  166. 戸叶武

    戸叶武君 これは非常に重要なことです。国際条約を結ぶのに台湾の人は二万人で少ないのだから、朝鮮の人は六十万で多いのだから、数の少ない多いで、そういうふうに法律、条約の区別がされるということは一つの問題です。  それからいま法務大臣は不用意な発言をされたと思いますが、朝鮮人六十万、そのほとんどは韓国人だというような失言をしておりますけれども、いま日本に在留している朝鮮人の大部分の人が、韓国政権というものを否定して、北鮮を支持しているような状態というものは、これはやはり朝鮮を分離するのでなく、統一の朝鮮をつくりたいという悲願の上に立っているのだと私は思うのです。そういう民族感情というものを無視して、日本政府の一方的な一つの見解によって、朝鮮人の感情というものをなぜそういうふうに荒立ててまでそういう処置をするのか。私はそういう点全く奇異です。私はやはりこういう会談なり、条約というものは相互の同意というものが中心です。相互の同意というのは、政府間におけるところの協定であって、そういう民族感情というものを無視した政府間の協定というものは、そこに不自然があって、何らかそこに問題があとで起きる禍根をそこにつくり上げると思うのでありまして、これは法務大臣並びに大蔵大臣から重大でありますから、やはり答弁をしておいてもらいたいと思います。
  167. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 在日朝鮮人の法的地位が確立しないで、いつまでも放置しておくことはよろしくない。この際、法的地位を確立しておきたい、これは私どもにとりましても、大切な仕事だと思うのでございます。で、これが確立いたしますると、国籍の選択という問題が起こってまいりましょう。そうしてその場合に韓国籍をお選びにならない方、そういう方々に対しては、どのような措置を講ずるかということは、その次の問題になってまいると思うのでございます。私どもとしては、そういうことによって、政治的ないしは社会的な禍根が生じないようにできるだけ配慮してまいりたいと思いまするが、法的地位が確立しないまま、じんぜん日をむなしくするということは、政府として自分の任務を懈怠するゆえんであると思います。はなはだどうも御所見には賛成いたしかねます。
  168. 太田正孝

    委員長太田正孝君) もう時間が来ましたので、簡単にお願いいたします。
  169. 曾禰益

    曾祢益君 きわめて簡単に。三問だけ残っておりますので、これはほとんど一問一答的にお答え願えればけっこうであります。  第一に、竹島問題でございますが、これはいろいろな先方の意向もあるでありましょうが、協定の中で、最終的には国際司法裁判所の判定を求める、こういうようなことを確保していただけるかどうか。この点は外務大臣から伺います。
  170. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そのように先方と話をいたしておりますが、まだ合意するに至っておりません。私どもといたしまして、精一ぱい努力してみたいと思います。
  171. 曾禰益

    曾祢益君 次に、文化財のいわゆる返還問題でありますが、これも外務大臣から、こまかいことじゃありませんから、趣旨ですから、お答え願ってけっこうです。私は、文化財の返還ということは、実は成り立たない。これはわがほうからの好意的な贈与ということはあり得ても、むろん好意的な贈与でありますから、そう大きな量には達しないと思います。こういう意味に文化財いわゆる返還問題を考えているのですが、そういうふうに取りはからって考えてよろしいか。これも外務大臣から伺います。
  172. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) わがほうとしては、そういう考え方で臨んでおります。
  173. 曾禰益

    曾祢益君 最後に、この基本条約もしくは共同宣言になるか、いろいろな個々の諸懸案、協定を包むような外交文書ができると思いますが、その際に、いまも国内における北鮮系の人の取り扱いとも非常に関連した問題であります。やはり韓国が唯一合法の政権であるけれども、実際に支配する地域というものが、いわゆるまあ大体三十八度線以北には及ばない、この点を踏まえて韓国側のいろいろな主張はありましょうけれども、協定の中で、わが国のその線をこわして北鮮にも支配権の及ぶような表現は、これは断じて使っては、かえって両国のためにならない、この点もはっきり貫徹していただきたいのでありまするが、これも外務大臣から伺いたいと思います。
  174. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いろいろの懸案の固まりを見まして、いま御指摘の問題につきましては、慎重に処理いたすつもりでございますが、ただいまその問題につきまして、煮詰まった討議をするまでに至っておりません。しかし、わがほうの交渉態勢というものは、従来、国会を通じてたびたび申し上げたとおりでございまして、そういう方針でその場合に対処いたしたいと思っております。
  175. 曾禰益

    曾祢益君 最後に一音。以上、私が申し上げました諸懸案に対する基本的な考えは、これは私どもの国民の最低限度の要求だと思うのであります。特に今度の交渉にあたりまして、一方においては有償無償の援助が行なわれる。もうこれを先がけ的に、それらのことをめぐっていろいろな大資本の活動、暗躍等が伝えられているのであります。一方において、日韓間の懸案のために、こういう状態のために、一番被害を受けているのは、直接には少なくともいわゆる漁民、漁船員の人たち並びに家族だと思うのであります。そういう人たちは、この会談のいわゆる最終時期にあたって、非常に大きな不安と危惧の念を持っておられるのは、私は当然だと思います。そういうようなしいたげられた人たち、恵まれない人たち、これらの意見を十分に交渉において反映していただく、そうこれからできなければ、われわれとしてはこの交渉の結果である協定には、国民の名において賛成できません。そういう意味において政府は十分に国民の正しい要望、特に零細な関係者の切なる要望を十分に踏まえて、これが実現のため努力をするという力強い御発言を総理大臣からいただきたいと思いますが、御所信を伺います。
  176. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日韓交渉に関しますいろいろな問題につきまして、御質問なり御意見なりの開陳がございまして、全くわれわれもそういうふうに考えております。あくまでも国全体の、両国全体の利益そうしてまた最も苦痛の多い制限……あるいは十分でない方々に意を用いることは、外交交渉において当然のことであります。
  177. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 曾祢君の質疑は終了いたしました。  午後一時四十分から再開いたします。暫時休憩いたします。    午後一時一分休憩    ————————    午後一時五十四分開会   〔理事斎藤昇君委員長席に着く〕
  178. 斎藤昇

    理事(斎藤昇君) これより委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行ないます。須藤五郎君。
  179. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は、日本共産党を代表して、日韓問題について、総理並びに外務大臣質問いたします。  まず第一に、昨年の通常国会におきまして、わが党の野坂議員が、三十六年間にわたる日本帝国主義者が犯した朝鮮人民に対する数々の犯罪を知っているかと、こういう質問に対しまして、総理は、寡聞にして知らないと答えております。現在、よもや知らないとは答えられないだろうと思いますが、現在、いかなる反省をしていらっしゃるか、総理の所信を伺いたいと思います。
  180. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、三十六年間にわたって犯罪を犯しておるとは思っておりません。
  181. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 この前の当委員会において、大平外務大臣は、遺憾の意を表された。しかるに総理は、犯罪を犯したと思っていない、何という答えですか。そういう考え方日韓会談がやれると思いますか。朝鮮人民との平和的な友好が保たれると思いますか。それは、いまの発言は重大な発言だと思うのです。日本の総理が、再びそういう答えをしないように、深く反省することを私は要求します。重大な発言ですよ。外交は、国民の支持なくしてはあり得ないと思います。あえて国民の意思を無視して、何で国交正常化ができますか。
  182. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日韓双方の国民が、お互いの理解と信頼の上に立って、悠久の未来にわたって醇厚な国交を維持されてまいることが、私どもの念願でございます。日韓交渉もまたその一環でございます。
  183. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 総理は、いま答弁で、三十六年間にわたる日本帝国主義の犯罪を犯罪と思わない、反省することはないと言っている。そういう考えだから、朝鮮との間はうまくいかないのです、朝鮮人民が、日本帝国主義の進出に対して大きな怒りを持っているのは当然ではないですか。朝鮮の学生や労働者、人民のデモを見てごらんなさい。スローガンには、日本帝国主義打倒、日本独占資本に再び踏みにじられるな、ゴー・ホーム・ジャパ二一ズ、日本の商社帰れ、屈辱外交反対、売国奴金鍾泌の召還、アメリカは日韓交渉に口を出すな、これをスローガンに掲げております。朝鮮人民は、日韓会談日本の軍国主義の再侵略と見て反対しているではありませんか、この事実をあなたは認めるかどうか、返答してもらいたい。
  184. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) あなたのおっしゃることは、何と申しますか、最近の日本帰れとか、帝国主義何とか言っておられる、この事実を認める認めぬの問題ではない。向こうの言っていることであります。だが私は、三十六年間における犯罪と、こういう御質問でありますが、犯罪の点はございません。ただ、あの当時の情勢からいって、日韓併合ということが、両方の民族のためによかったか悪かったか。結果から言えば、これは、われわれがサンフランシスコ条約で独立を認め、そして両国おのおの独立国としてお互いに尊重し合い、助け合っていくことがいいということで、前の日韓併合の問題は、これはやめるべきだと、こういうことであります。日本人の犯した犯罪を一々どうこう言うことは、これは私は、ここで言うべき問題ではないと思います。
  185. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あなたは、帝国主義が朝鮮で犯した万歳事件のときの虐殺事件、それを知らないのですか。大正十二年の大震災におけるあの九月一カ月で七千人の人を殺した。あの虐殺事件を知らないのですか。これをもってしても、犯罪を犯したと言わないのですか、犯罪じゃないですか、それに対して総理のもう一ぺん所信を伺います。
  186. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 韓国においてのことは存じません。関東大震災のとき、いろいろいきさつのあったことは知っておりますが、当時、それを犯罪としては国内では取り扱わなかったと思います。
  187. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 日本帝国主義は犯罪として取り扱わないけれども、しかし、世界では犯罪だと言っております。現在の総理は犯罪と思わないかどうか。あなたは犯罪と思わないですか。犯罪と思うのですか。日本の大震災のときの虐殺事件を、日本の帝国主義の犯した犯罪と思わないですか。
  188. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国法に照らして、犯罪ときめておりませんから、日本国民としては、犯罪と思っておりません。
  189. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうじゃないでしょう。地震のあと、ああいうことはひた隠しに隠して、犯罪であったから隠したんじゃないですか。問題になりましたよ。それじゃはっきり確認しておきますが、日本の総理は、あの大正十二年の大虐殺に対しても、何ら良心的な反省をしていない、朝鮮の万歳事件に対しても反省していない、これは朝鮮人民に対する大きな侮辱ですよ。日本の総理大臣がそういう大きな侮辱を朝鮮人に与えて、それでいいというんですか。そういうことでは先が案じられますよ。もう一ぺんはっきり聞いておきましょう。
  190. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) あなたは、関東大震災のときのあの状況を、日本人全体の犯罪とおっしゃるのですか。私はそうは見ておりません。ただ個々の事実で犯罪行為に該当したものは、個々の人に対する処置としてとったでしょうが、日本民族の犯罪だということは、だれも否定している。私はそう思っている。個々の人についての犯罪は、それはあったでございましょう。しかし、国全体として私はそう考えていないのです。
  191. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は、日本人民の犯罪などと言いませんよ。日本帝国主義の犯した犯罪だと言うんです。日本帝国主義の犯した犯罪を認めるかどうか。
  192. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日本帝国主義とは何ですか。
  193. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 日本帝国主義がわからない、それはとんでもないことですよ。日本帝国主義というのは、これまでやってきた天皇制における日本のやり方じゃないですか。侵略主義じゃないですか。それを帝国主義というんですよ。
  194. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国内で起こったことに対しては、帝国主義は当たらぬと思います。
  195. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は、時間がありませんので、この問題を追及することができない。しかし、日本国内で起こったことはそのときの政府が責任をとらなければならないんですよ。そのときの政府、それがあなた何も罪がない、責任がないということが言えるんですか。政府が当然責任をとるべきじゃないですか。そのときの政府日本帝国主義的な政府なんです。だから、そう言っているんです。  総理は三月二十七日朝鮮民主主義人民共和国最高人民会議が訴えた南朝鮮人民・諸政党・社会団体人士・国会議員に送ったアピールを知っていらっしゃるかどうか。
  196. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 存じません。
  197. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それでは私が少し読んでみましょう。このアピールにはこう書いてあります。これは抜粋でございますが、われわれは全民族の反米反日救国の統一戦線を結成し、救国対策を立てるために早急な時日内に南北朝鮮の諸政党、社会団体連席会議を招集するかまたは南北朝鮮の各界代表間の相互接触と意思の交換を通じて民族的団結をはかることを提案する。南朝鮮の経済的破局を収拾し、塗炭にまみれた民生問題を解決する道は外国勢力に依存するのではなく、外来侵略者をはねのけて自主自立することにあり、南北合作を実現し民族の力を合わせることにある。われわれは北半分に築かれた自立的民族経済のしっかりした土台に依拠していまの事情のもとでまず毎年二百万石——三十万トンの米、十万トンの鋼材、十億キロワット・アワーの電力、一万トンの化学繊維を初めセメント、木材、機械類などを南朝鮮に提供しようと思う、南北の合作が実現されれば南朝鮮の現難局を克服することは決して困難な問題ではない、民族内部にこのようなりっぱな元手を持っていながら何のためにアメリカ帝国主義者と日本軍国主義者の前にひざを屈して物ごいをし、侵略者に従属しなければならないのだろうか、こう述べておるのです。このアピールでわかるように、朝鮮民族の独立と幸福は南北統一以外にあり得ないことはわかるではありませんか。いまや南北統一かあるいは日韓会談かというせとぎわへ来ておると思うんです。統一は正しいと思います。また必要であります。だから、統一を阻止するためにやっきになっているのではないですか。
  198. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そういうアピールに対しまして韓国がどのように反応いたしますか、これは朝鮮半島の問題でございまして、日本政府としてとやかく申すべき性質のものじゃないと思います。
  199. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 総理の所信を私は聞きたい。
  200. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 外務大臣の答えたとおりでございます。
  201. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 南朝鮮の人たちがいま何のために戦いをやっているか。それは先ほども私がくどく申し上げましたように、日本軍国主義の進出を怒って、日本独占資本の進出を怒って、そうしていま反対運動をやっておるのではないですか。なぜこの期に及んでも日韓会談を無理やりに強行しなければならないのか、どこにそういう理由があるのか、相手国の人民の反対を押し切ってまでなぜ日韓会談を強行しなければならないのか、その理由を聞かしてください。
  202. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) たびたび申し上げますとおり、日韓の間に正常な国交がない状態は不自然でございますから、正常な国交を持というということを考えておるにすぎない。無理やりにそういうことをしなければならないという性質のものじゃない。本来そうあるべきことをやろうというにすぎないわけでございます。
  203. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 日本の総理大臣が、先ほどのような考え方を持って朝鮮人民に対して大きな侮辱を与えておりながら、何で正常化ができますか。そんなことは絶対あり得ないんです。昨年一月中央公論の賀屋論文の終わりのほうにこういうことが書いてあります。「万一、三十八度線が崩れて韓国が共産化するようなことがあれば、日本も防衛費を余儀なく大膨張させ、米軍の軍事基地を激増させなければならなくなるばかりでなく、そのような防衛態勢を備えたところで、もはや十分の安全感は感じられなくなるであろう。」。さらにこう言っておるんです。「またこうした考え方は、われわれが安保条約を締結した精神と一貫しているのである。」。これはとんでもないことです。朝鮮人民がどのような政府をつくろうと朝鮮人民の自由であります。たとえ共産主義政権を全朝鮮人民がみずから決定したとしても、それは朝鮮人民の権利です。この権利をどこの国もいかなる理由によっても干渉し抑圧することは許されない、こう私は考えます。賀屋法相たちの考え方は、朝鮮人民の要求や利益に一顧だに与えようとせず、日米軍事態勢に従属させ利己的目的を追及することしか考えていないと言わなければなりません。しかも、経済的、政治的進出、帝国主義的進出をやろうとしております。だからこそ朝鮮人民が反対するのは当然ではないでしょうか。今日学生たちの反対しているスローガンを見れば、みなこういうためのスローガンを掲げているではありませんか。こういうことをやって何で正常化ということが言えますか。三十六年の深い反省もなく、こういう日韓会談をやって友好などは絶対あり得ませんよ。よく心得ておいてください。逆に恨みをさらに残し、みぞを深めるだけだと言わなければなりません。たとえ日韓会談が成立しましても、おそらく必ず朝鮮人民はやがてこの日韓会談を粉砕する、日韓条約を粉砕する、そういうことを私は申し上げて私の質問を終わります。
  204. 斎藤昇

    理事(斎藤昇君) 須藤君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  205. 斎藤昇

    理事(斎藤昇君) 次は、奥むめお君。
  206. 奥むめお

    ○奥むめお君 私は長い間、消費者保護行政についてあまりにしばしば発言してきたと思います。ちょっときまりが悪いほどそのことに集中してきたと思います。で、私から言いますと、国会にたくさんの議員がいられますが、消費者行政について語る人がほとんどない。私だけでも一生懸命語らなかったら、貿易自由化になってから困るぞと、みんな国民一つの心になって、いい品物を見分ける力、間違ったものを摘発する力を持たなくちゃいけない、このように考えてきたわけでございます。で、国政の基盤に消費者保護という大きな眼目を置いて、人々の暮らしを照らしたいと願ってきたわけでございます。長い間の商習慣によってごまかしがしばしば行なわれてきたので、これから外国との競争場裏に入ってそのような安易な心でできるものか、商売になるかしらと、たいへん案じてきたのでございます。  物価値上げも国民にとっては非常につらいことでございました。今も上がっておりますから苦しんでおりますが、政府はこれに関心を持って対策をやらなければならないと思うんです。しかし、なかなかむずかしい問題をはらんでいるといわなければなりません。日銀の貯蓄増強中央委員会が物価値上げが家計にどう響いたかという調査をしておりますが、これは総数四千八百三十の調べの中で、家計がふくらんで因るというのが九一%、副食物費がふえたというのが六五%、副食費を切り詰めているというのが二二%に及んでいると発表されております。このようにして、栄養も必要な量だけはとれなくて案じている主婦が多いし、またそのほかにもいろいろ問題が出てきているのでございますが、総理はこういう問題に対してどういうふうにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
  207. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は家計がふくらむこと自体は決して悪くない。ただ、そのふくらんだ原因が、所得が非常にふえ、生活水準が上がったためにくふらむことは非常に喜ばしい。しかし、それが逆、ふくらんでも、借金その他で所得がふえずにふくらむということは、これは厳に慎まなければなりません。そういう意味におきまして、私は所得十年倍増、そして物価は、その所得が上がっていく何分の一かにとどめたい、こういうのでやっておるわけでございます。幸いにいたしまして、過去十年間の様子を見ましても、また私が公約してから後を見ましても、収入の増加は物価の値上りよりも非常に、倍以上、あるいは三倍ぐらいになっております。私は今後消費者物価が上がらないようにする。上がっても、できるだけ少なくするようにする努力はいたします。片方の収入はできるだけ上げるようにしたい、こういうふうに考えております。
  208. 奥むめお

    ○奥むめお君 いまおっしゃいました物価が上がっていない、それ以上に収入がふえているじゃないかという議論になりますと、いつも総理はそうおっしゃいます。しかし、家計の責任者としての婦人はこれを納得しておりません。非常につらい。ことしの三月の、庶民金融のあるところで調べますと、もう金を借りたいといって申し入れてきた人はみんな子供の教育費に使わなければならないので、授業料や、あるいは入学料や、あるいは被服費や、いろいろなことで金を借りに来ている人ばかりだったと、こういうわけでございます。教育費もずいぶんかかるようになりましたから、政府は、いろいろお聞きになっておると思いますけれども、こういうふうにまじめな主婦を苦しめるということは、私はどうしても為政者としては納得できないのでございます。そういう点で総理のお考えを伺いたいと思います。
  209. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先般出ました生活白書をごらんくださいましても、国民全体としては、生活はよほどよくなっておると私は見られると思います。ただお話しのように、国民金融公庫にお金を借りに行かれる方々は、教育費に非常に困っておる。私はその点は認めます。いつもよく引く例でございますが、アメリカ、ヨーロッパのイギリス・ドイツ、フランスの国々におきまして、日本の三倍の所得のあるこの国々が、九年なり十年なり義務教育をして高等学校に行く割合は、所得の三分の一の日本のほうが、イギリス、ドイツ、フランスの高等学校の入学率よりもうんと多い。また、したがって大学への入学も非常に多い。これは一方において国民の教育が進んでおりますから、非常に喜ばしいことでございます。しかし喜ばしいことでありますと同時に、所得の少ないことは、そういう高等学校教育、大学教育ということになると非常な苦しみがあることは、これはやむを得ない。これは喜ばしい苦しみだと思います。私は、そのために高等学校に入るのをやめなさいというわけじゃない。それはだんだん所得がふえていって、子供が高等学校、大学に行くのもそう苦しくないというふうにしたいというのが、これが私の所得倍増計画でございます。
  210. 奥むめお

    ○奥むめお君 こういう問題は議論のやりとりに終わりますから、またゆっくりした機会に申しますことにしまして、行政の責任者としての総理が消費者保護の問題点を十分把握してくだすって、行政の方向づけを確立しなければならないときが来ておると思われるのでございます。それで、まあ日本の国にはいろいろな意見が——また反対意見も非常にこんがらかって言われております。しかし大局としては、消費者としての婦人の願いは、日本丸という船の中で——その船は東へ東へと走っておるのですが、船の中のある人はあべこべの西のほうに走っておる。日本の国が進もうとするのと、進ませまいとするのとがごっちゃになっておる、こういうふうに考えます。これを一本にして指導するということが、国の大方針であろうと思うのですが、いかがでございますか。
  211. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういうことを願ってやっておるのでございます。ことに外交問題とかあるいは教育問題につきまして、その東に行こうとするのに、西のほうに行くのは非常に遺憾に思っております。しかし民主主義でございますから、それはいかぬと言って昔のようなことはできない。やはり多数決によって国民大多数の念願することを実現することが、政治のあり方だろうと思います。
  212. 奥むめお

    ○奥むめお君 国民が願っておることは暮らしの安定、物価の安定でございます。政府は、安定だ安定だとは言いますけれども、国民に訴えるのは、収入も上がるのだから、物価も上がっていいじゃないか、そうつらいはずはないというふうなごあいさつだけでございます。こういう問題は、私は総理が消費者行政のほんとうに必要な点を把握してくだすって、そして国民の苦しみを少しでも軽減させるという行政のあり方が必要だと思います。いかがでございますか。
  213. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 昔のことを言って恐縮でございますが、あなたはずっと前から委員をやっておられますが、実は昭和三十二年、三十三年は物価が下がったのでございます。そうすると所得もやはり下がっておる。それで失業者もふえたわけです。そういうことがよろしゅうございましょうか。私は、物価はある程度上がっても、それに倍する、三倍する所得が上がってきて生活水準が引き上がることが望ましいのであります。ただそれならば極限において幾らでもふえて、幾らでも上がっていいかというと、そういうわけにはいかない。やはり国際収支の長期的な安定を保ちながらできるだけ先進国並みにしていこう、こういうことでございます。だから私は、物価が上がらないことが一番の政治だというのだったら、それはそうはいきません。上がらなかったり下がらなかったりしなかったら進歩がとまってしまう。だから過去の実例を見ましても、やはり適当な方法で先進国並みにしていこうというのがほんとうでありますが、いま教育問題も出ましたが、最近の消費者物価の上がりようというものは、やはり生鮮食料品と加工食品、雑費のうち教育費が多い。そして身なりなんかもよくなってまいっておる、こういうことが消費者物価の上昇でございますから、これは何も無理して食べるわけではないのでございまして、だんだん生鮮食料品もいいものが手に入るようになります。そして身なりなんかもよほどよくなってまいる、こういうことはやはり生活水準の引き上げである程度消費者物価が上がることはやむを得ないのじゃないかという気がしておるのであります。
  214. 奥むめお

    ○奥むめお君 私は消費者の生活ぶりを見ておりまして、長い間の商習慣でずいぶんインチキやら、あるいはごまかしが大目に見られてきたと思います。これが一番困る問題でございまして、近い例を申し上げましても、このごろ魚屋の店頭にいろんな変わった魚が出ておる。しかも安い魚が出ております。これはもう日本の漁場がだんだん少なくなりまして、南洋あるいは北洋までとりにいかなければ持って帰るものがない。ちょっと見たところタラのように見えるものが——タラの二十きれくらいに切られるような中ダラでもたいへん安く卸売りされている。またマグロやブリというふうなものに見える魚が全然違う名前で南洋産のものが出回っておる。これをみそづけにしたり、あるいはかすづけにしたりしますと、非常に安いものなんですけれども、実際にはそう安いものは売られていない。これは明らかにインチキ商品でございますね。非常に困ったことで、これは食べちゃならぬという危険品ではないけれども、日本に見られている魚と——われわれが見たこともない、見た魚と違うのですけれども、国民のほうからいえばそれを食べている。そしてみそづけにして一きれ二十円なり十五円なりで売っているとしたら、ブリや、あるいはカツオあるいはサワラなどがみそにつけたとか、色をつけたとかだけでもう高く売れるのですね。こういうふうなものを日本人は名前を知らないから、そのままに西洋の名前を使って、メルルーサとかあるいは何々ダラとかいうふうにして売っておりますのが去年あたりから非常に多くなっている。こういうことも平気で通れる世の中であることは残念だと思います。それから東京都の計量検査所でいろいろ売りますものの目方をはかりましたけれども、それによりますと、ずいぶんごまかしがある。それは計量器——タクシーの値上がりになりましてから、はかりましたところがガソリンの計量が七割狂っている。器械が狂っておったり、それからみそ、しょうゆ、味の素、お米、もう一つ一つ計量のごまかしがないのはなくて、家庭の生活から考えますと、非常にごまかしが多いのですね。こういうふうなことはもう初歩のことでございますが、そういうものを、新しいこういう魚が南洋から入るのだぞ、あるいは計量がずいぶんごまかされておったよというふうなことを、大いに知らせる必要があると思います。監視させなければならないと思うのでございます。政府は予算は取っておってもその教育的なPRはしていない、私はこれに対して非常に不満を持ちます。消費者が賢くなればそれでいいわけでありますけれども、いままで消費者を賢くするPR運動というものは行なわれておりません。ですから、そういう場合に総理としてはもっと消費者を賢くするためのPR運動をしなければならないというふうにはお考えになっていないんでしょうか。
  215. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話の点は聞いております。いまのブリとか、サワラに対します新しい品種の魚が入る、これは品種が違うときにはあなたのようなお話が出ますが、品種が同じで、たとえばタイなんか瀬戸内海のタイと比べまして、いまは大西洋のタイでございます。そればかりではございません。相当北洋とか南洋ならまだなれておりますが、大西洋のほうのタイというふうになりますと、浜焼きにしましてもちょっと似ておりますけれども、われわれ昔のタイとはだいぶ変わってきております。こちらではとれぬ、そうなってくると、これは自然に知らされることです。牛肉と鯨のかん詰めが、二、三年前に問題になりましたが、消費者もだんだんえらくなりました。そういうふうなことはだんだん教育をしていかなければなりませんが、いまのような計量器の問題とか、品種の問題につきましては、消費者モニターの、こういうものの活動をわれわれは期待しております。今度国民生活局をこしらえるゆえんもそういうふうな方向で進めたいというので、予算と法の改正をお願いした次第でございます。
  216. 斎藤昇

    理事(斎藤昇君) もう時間がまいりましたから、簡単に。
  217. 奥むめお

    ○奥むめお君 その業界の道徳的な反省と、あるいは良心と申しますか、この問題がいままで池田内閣では取り上げていなかった。ですから最終の需要者である消費者が金を出して、必要と思うものを買いましても、それによって損を与えられる。あるいは非常に困った結果が出てきた、あるいはすぐこわれてしまった。いろんな弊害について消費者はほとんど訴えることなしに泣き寝入りしてしまった。これもやはり行政の大事な点が良心的に目ざめるということがほんとうに足りないと思います。いままで生産増強、成長経済の発展を一生懸命なさっていらして、その間に良心的な問題を考えることを忘れさしてきたんじゃないか、何でも生産増強だ、経済発展だというふうにみんなをかけ足で走らしてしまった。ですから一歩退いて、自分たちはお客さんに対してこんなことしていいのか、これはお客としてはずいぶん損を受けているんじゃないか、これはすまないことだというふうな良心の目ざめを政府がしてこなかったということはたいへん残念なことでございまして、もうすぐオリンピックも参りますし、そういう問題を官民ともにあらためて考え、あらためて対策を講ずるということが必要だと思うのですけれども、何かいままでしておいでになったことございましたかしら。   〔理事斎藤昇君退席、委員長着席〕
  218. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは生産官庁あるいは警察の取締官庁あるいは独占禁止法を扱っておる公取委員会等等でやっておりますが、それだけでも十分でございませんので、先ほど来申し上げましたそういう方向にもっと力を入れていこうというので、今度スタートしたわけでございます。
  219. 奥むめお

    ○奥むめお君 もう時間がないそうでございますけれども、もう一つ言わせてもらいます。それは日本国民生活局ができますにつきまして、私どもは一るの不安を持っている。というのは、みんなが消費者行政だと言ってかけ出しまして、そのあと国民生活局が大きな窓口を広げて、そしてあれもするこれもする、これもするあれもすると言うておりますが、これはよほど現状をつかんで、そして消費者にとっくりと腹の底へ落ちるようなPR活動が伴いませんことには、せっかくの予算もうまく使われないんじゃないかしら、所期の目的が遂げられるのであろうか、非常に案じております。私といたしましては、消費者行政についての総理の信念を伺っておきたい。
  220. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 非常な大事な仕事でございまして、そしてまた窓口が非常に広うございます。だからいま御心配のような点をわれわれも心配しておるわけでございます。やはり問題を一つ一つ片づけていくかっこうで進むのがいいんじゃないかと考えております。初めての仕事でございますので、十分注意して進めていきたいと思います。
  221. 奥むめお

    ○奥むめお君 どうもありがとうございました。
  222. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 奥君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  223. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 次に市川房枝君。
  224. 市川房枝

    ○市川房枝君 まず総理にお伺いしたいのですが、総理は来たる七月の自民党総裁の選挙にお立ちになると思いますが、自民党の総裁が総理におなりになるのでありますから、国民は非常に関心を持っております。買収供応かって次第、何億という金をばらまいて、金のある方あるいは財界から金を集め得る方が当選されるというのでは、総理として尊敬もできませんし、また、国民のためのよい政治も行なわれないと思います。公職選挙法の適用はないのでございますけれども、それに準じた公明選挙でやっていただきたいと思います。総理のお考えを伺います。
  225. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は七月の公選に立つか立たぬかきめておりません。そういうことは全然考えずに、その日その日全力を尽くしていきたいと思っております。公明選挙、選挙法の適用はないからといって不正なことやりほうだいということは絶対によくない、私はあくまで公明にしなければならぬと思っております。
  226. 市川房枝

    ○市川房枝君 立候補されるかもしれないといううわさにおのぼりになっておられます佐藤長官、立候補なさらなくても、その問題は別といたしまして、とにかく実力者でおいでになりますから、総裁選挙についての私のいまの希望についての御感想がありましたら伺っておきたい。
  227. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま総理が答えられたと同一の考え方を持っております。
  228. 市川房枝

    ○市川房枝君 公明選挙でやっていただけるということを伺いましてたいへんけっこうだと思います。そういうふうにやっていただけるかどうか注目して拝見をしております。  次には大蔵大臣にお伺いしたいのですが、去る二月二十九日の産経、三月五日の毎日、三月六日の読売、三月七日の朝日等の各新聞に、国税庁は現在無税となっておりまする国会議員の諸手当に課税をするように申し入れた、とございました。私どもはそれは当然だと前から考えておりましたので、三月の十一日に二院クラブ三名で重宗議長にその税金を払うようにしていただきたいと申し入れ、また、国税庁長官に激励の手紙を実は差し上げたわけでございます。ところが、その後その問題どうなりましたのか一向あらわれてこないのでありますが、大蔵大臣からその経過をひとつ御報告を願いたい。
  229. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 大体税は徴税強化をするなという議論が多いのでございますが、今度の問題につきましては、市川先生等から税金を取るべしという御激励を賜わってまことにありがとうございました。国会議員の諸手当につきましては、世界の国々でもいろいろございまして、西ドイツのように歳費に税をかけてはならないというような国もございますし、アメリカのように議員の経費に対しては実費弁償を議院が行なっておる国もございますし、いろいろございます。日本は通信費その他実費弁償の精神で出しておるわけでございますが、実費で清算をするというような道もいままで開いておりませんので、これら諸手当に対して徴税上の不公平があってはならないということで、国会に対しましてこの諸手当に対して税制上どうあるべきかという問題に対して、これは立法府でございますので、国税庁当局といま御討議をしていただいておるということでございます。
  230. 市川房枝

    ○市川房枝君 あの新聞記事に対する国民の反響といいますか、あるいはまあ国会議員の歳費、手当なんかについて国民から国税庁のほうへだいぶいろいろ投書とか、電話とかかかってくると伺っているのですが、国税庁長官、御遠慮なくひとつその模様をここで御報告を願いたいと思います。
  231. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 私一々の投書等につきましてただいま持っておりませんが、しかし、一般新聞、雑誌紙上でかなりこの問題についての議論が激しく行なわれておる、また、私たちのところへもかなりの数にのぼる投書が来ておることは事実でございます。
  232. 市川房枝

    ○市川房枝君 もう一つ長官にちょっと伺いたいのですが、国会議員の手当に対して無税だということに対して、私は前から実は疑問に思い、参議院の会計課について伺ったのですが、そうしますると、これは実費弁償だと、だから無税なんだという説明を受けたのですが、どうも少し納得できないのですが、民間で一体渡し切りで何も報告も出す必要もないと、そういう手当について一体この民間で、公務といいますか、ここに国会、公務員の方もおいでになりますし、新聞記者の方もおいでになりますが、そういう方々のもし給料が別な手当という形でもし無税で給与されるのだったらずいぶん税金助かるわけなんですが、それは民間では私は行なわれていないのじゃないかと思うのです。その法的な解釈といいますか、実費弁償といいますか、法的な根拠、それをちょっと伺いたい。
  233. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 一般の民間におきましては、給与所得につきましては御承知のとおり、一定の控除がございます。それ以外の、定額で支給されておりまする分につきまして、やはりこれを給与とみなして課税をいたしております。ただし、旅費のように、法律上明文のございますものは、これは給与とはいたしておりません。
  234. 市川房枝

    ○市川房枝君 私調べたのでは、この所得税法基本通達というものの一一六で、「旅費等の名義で支給されるものであっても、年額又は月額により支給されるものは、給与所得として課税する。」と、こういうのがあるようでございますから、そうすれば、当然私は該当すると、税金を払わなければいかぬとこう思うのですが、いま大蔵大臣から伺いましたように、いままだ考慮中である、こういうことでございますので、まあその結果を待ちたいと思うのですが、私はこの問題は、一度新聞に出てそして国民の間で問題になっておりますので、これをうやむやにしてはいけない。そうすると、いかにも国会が大蔵省に圧力を加えたという対象を国民に与えることは、国会として非常に私は遺憾だと思いますので、ひとつその点納得のいくようなあれをしていただきたい。  それからなお、歳費とか手当とかいうものがいろいろな名目でいま分かれておりますけれども、これを一本にして、そうして国民と同じように税金を払うと、こういうことになりますと、私、国民はすっきりすると思います。でその額はどのくらいが適当かということいろいろ問題がありましょうが、国民の納得する方法できめていくということであればいいと思うのですが、それについて総理並びに大蔵大臣の御意見を伺いたいと思います。
  235. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほども申し上げましたとおり、西ドイツ等は歳費は無税であります。それからアメリカなどは議員が実費でもって払うものに対しては議院が支出をしておるわけであります。でありますが、日本におきましては法制上明文規定がございませんので、いろいろ両院当局の意向を聞きながら、立法府でございますから立法府の御意見等も聞きながら、租税公平の原則にもとならないように万全の措置をいたしたいということで、いま検討をいたしておるわけでございます。まあこれを、諸手当その他に対して一本にしたほうがいいということは議論の一つとしては存在いたします。戦前は、歳費三千円ということで一本でございました。戦後いろいろな名目でいろいろな手当が支給せられるわけでありますが、まあ国会議員という特別な職務でありますので、唯一無二の職務でございますし、また、国権の最高機関と新憲法は規定しておるのでございますから、できれば法律で明定をして、取らない、議員の歳費は課税の対象にしないということも可能だと思います。これは憲法上議員が国政調査のために必要な場合には国有鉄道に無賃乗車もございますし、また、憲法の規定によって不逮捕特権もございますから、唯一無二の議員に対して法律が規定するなら非常に明確になるわけでございます。そこまで明文がありませんので、いま調査をしているわけでございますので、これが必ずしも非常に不公平だという議論にもならないわけでございますし、非常に慎重にやらなければならない問題でございますし、いろいろな、また国民の誤解、わずかなもので誤解をされるようなことは、国会の権威に関する問題でもありますので、慎重にかつ敏速に、かつ合理的にという考え方で考えているわけでございます。
  236. 市川房枝

    ○市川房枝君 この問題は国会のほうでも御研究願わなければならぬ問題でありまするけれども、大蔵省のほうとしても、ひとつこの機会に全般について御研究を願いたいと存じます。ただ私が申し上げたいのは、いま大臣が国権の最高機関であるからということをおっしゃいましたが、なるほどそれはそうなんだけれども、税その他において私はやはり国民と特別な扱いをするということはいけない。それはもう政治家として恥ずべきことだという観点で、そうして額が必要になれば私はそれを多くすることはかまわないと思いますし、あるいは免税にすることもかまわないと思いますが、そうしてそれを明瞭にして、そうして国民に納得させるという手段をとっていただきたいと思います。  次に、三月三十日付の「週刊サンケイ」に、三十七年の政治家、作家、芸能家の人々の国税庁に申告した所得額の一覧表が載っております。それによりますと、政治家は非常に低い。田中大蔵大臣は、これは三十七年度でありますが九百八万円、池田総理大臣が四百九十五万円、佐藤長官は三百六十万円、岸前首相は二百四十五万円、そういう数字になっております。これに対して六百万円の申告をしておられる作家の山田風太郎氏は、政治家は一種の脱税をしている、こう憤慨しておられます。私の所得は、国会の歳費とわずかばかりの原稿料なんですが、三十七年度は百九十九万九百四十円でありまして、岸さんが私より少し多い程度でございます。一体それが信じられるでございましょうか。だからどうも私も疑問を持つわけですけれども、大蔵大臣はそのことをいかがお考えですか。
  237. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 政治家の方々も、申告納税制度のもとに正常な——あなたも含めて、御申告をなさっていると、このように考えております。
  238. 市川房枝

    ○市川房枝君 どうも、一応はそうおっしゃるでしょうけれども、ちょっと、どうも問題があると思うのですが……。  もう一つそれと関連しますけれども、選挙のときに受け取った寄付は、選管へ届け出ることになっている。収支報告書に記入すれば、たとえば一千万円でも無税になります。ところが、派閥の、政治団体等からは寄付したと届け出ているのに、御本人の収入には入っていない。その場合には、当然これは所得として課税されるのだと、これはまあ昨年の私の質問に対して、大蔵省の局長さんがちゃんとお答えくだすったのですが、ところが、そういう金が入っていない。どうも財界と政治家、政治家との間においての金の動きというものについては、全く税金なしではないか、こういうふうに私も感ぜざるを得ないのですけれども、その点はいかがですか。
  239. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 申告納税をした申告当時の発表されている数字だけでお考えになっておられるから、そういう議論が出ると思いますが、しかし、その後修正申告もされておりますし、また、確定申告までには、こちらから申し上げることもございます。でありますから、徴税当局として捕捉できれば、当然税の対象にしているわけでございますので、——お忘れになったこともきっとあるでしょう。申告をされたときの発表数字だけでは実際の徴税額はないわけでございますので、不公平のないように、捕捉できるものに対してはできるだけこれを捕捉、把握して、適正な課税の対象として考えているわけでございます。で、先ほども御発言がございましたように、公職選挙法に基づくものは無税でございますが、他の政治団体、また一般財界その他組合からの献金も同じことでございますが、そういうものに対して一体申告をしておるか。申告をしておる方もございます。またその帰属が、そのときに一人の代議士の方の名前で出されましても、その内容を調べてみますと、事実はその人の名義だけであって、実際にいろいろなものに支払われておるということもありますので、そういう事情がわかるものに対しては、できるだけ公平な立場でやっておるわけでございまして、この種のものはなかなか捕捉しがたいということもございますので、捕捉できるものに対しては適正妥当な課税を行なっておるというのが実情でございます。
  240. 市川房枝

    ○市川房枝君 その問題は時間がかかりますから、また適当な機会に伺うことにいたしまして、次にこのごろの地方議会議員の全国にわたっての大幅な報酬の値上げは国民のひんしゅくを買っておりますが、総理はこれをどうお考えになりますか。それから、公共料金の一年間ストップとの関係は一体どうお考えになりますか。
  241. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 地方議会で俸給の引き上げがいろいろ論議されておるようでございますが、これは自治省より自粛するよう通達を出したはずでございます。で、上げたところも、また上げないところもあるようでございます。私の考えとしては、やはり特殊の地位にあるものでございますから、よほど世論の状況等を見て考えるべきだと思います。それから、何でございましたか。——それだけでよろしゅうございますか。
  242. 市川房枝

    ○市川房枝君 いま自治省から自粛の通牒を出したはずだとおっしゃいましたが、この間分科会で伺ったときも、それから加瀬委員がこの席において伺ったときにも、自治省としては何もしていない、野放しだということだったのです、三十七年にはちょっと出しているのですけれども。私はこういうのを現状のままで放置するということは、国民の地方議会議員に対しての不信の念を強くする。そして民主政治の一番の基盤である地方の自治政治のために私は非常にゆゆしいことだと考えております。総理はよく政治の姿勢を正すと言われますが、第一歩は、先に申し上げました国会議員の課税問題や歳費の問題、報酬の問題、こういうことで私は国民の同感を得るといいますか、疑惑を持たれないようにすることが政治の姿勢を正す第一歩ではないかと思いますが、総理いかがでございますか。
  243. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この問題はむずかしい問題でございまして、私は一がいに言えない。また中央がこれに特別な干渉を加えるということは、これは自治精神にもとることでございます。われわれとしては、なるべく自粛してもらいたいという程度にとどめることが適当だと思います。
  244. 市川房枝

    ○市川房枝君 時間が参りましたので、一つだけ質問を申し上げてやめたいと思いますが、この三月二十四日に内閣で売春対策審議会が開かれました。そしてオリンピックを迎えるに際しての国内——特に東京の風紀が問題となったそうでありますが、同時に、海外から見物人にまじっていわゆる売春婦が日本に入ってくるといううわさがあるということを、これは法務省の出入国管理局の方がそうおっしゃったそうでございます。そしてこれは外務省の出先で、公館でビザを与えるときに少し注意してもらいたいという話がありまして、容易ならぬことだということで、この審議会から総理に対して、政府としてこういう問題について万全の対策を講じてほしいという意見書を出すことになっているそうです。まだ、参っていないようでございますけれども、二、三日のうちに参ると思うのでございますが、私は、競技場、道路の準備はだいぶできたようでありますけれども、この精神的な面、こういうほうの問題が十分でないと、せっかくのオリンピックがむしろ日本にとってマイナスになるのではないかということを心配をしているものの一人でございます。政府としてこういう問題についてまだはっきりと意思表示をなすったことがないのでございます。警察にも伺ったことがあるのでございますが、まだそのとこについて何も考えていないということでございましたけれども、この間赤松委員が法務大臣にお聞きになりましたけれども、それもちょっとはっきりしなかったのですけれども、これはやはり内閣として、政府全体としてこの問題をひとつ重要にお考えいただき、それに対する対策をお立ていただきたいと思いますが、いかがですか。
  245. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) オリンピックをわが国で開催するにあたりまして、競技場の設備あるいは道路、あるいは選手の宿舎等、直接の設備、施設につきまして意を用いることはもちろんでございます。私は、それにも増して、日本が初めてこういう世界的なあれによって評価されるのでございますから、設備にも増して国民の心がまえということが非常に大切だろうと思う。心がまえいかんによりまして、たとえその設備が十分でなくても、やはり日本はよかったということになり、設備がいかによくても、日本国民の迎える気持ちが悪かったならば、これはもう何にもならぬ。かえってマイナスになると思う。この点にきましては、従来から、特に今後におきまして、いろいろな私はPRをしていかなければならぬ問題だと思っております。
  246. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 市川君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  247. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 次に、藤田進君。
  248. 藤田進

    藤田進君 私は、いよいよ最後でございますので、若干食い違ってきている点、あるいはあまり触れていない点等について、時間の範囲内でお伺いしたいと思います。  漁業関係につきましては、事の重大性から日韓漁業に勢い長く時間を各委員とも取ってまいりましたが、日本の沿岸並びに内海漁業振興等についてあまり触れておりませんので議論はしませんが、農林大臣に、いろいろ今度の農林関係重点施策等を見ましても書かれていますが、この裏づけとなる政策、特に財政的裏づけといったものが沿岸並びに内海漁業についてきわめて乏しいものがある。現内閣の重点施策として、特に農民、中小企業といわれる範疇には、当然漁民の生活改善、所得の引き上げというものが考えられてこなければなりませんですが、この際具体的に、昭和三十九年度以降どういう沿岸並びに内海漁業について施策を講じられようとするか、お伺いしておきます。
  249. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 御承知のように、昨年度沿岸漁業振興法ができまして、本年実施した点やら実施すべき事項を国会に御報告申し上げましたが、それで十分に行き届いているとは思いません。漁族保護の対策として、本年度及び将来に対してどういうふうに進むかということでありますので、お答え申し上げたいと存じます。沿岸漁業の振興をはかるためには水産資源の積極的な保護をはかる必要がありますので、沿岸の所要区域、操業の禁止区域または規制区域を設けるなど、漁族の規制をはかるとともに、次のような積極的措置を講じております。また続いて講じていくつもりでございます。一つは、漁族の積極的な増殖をはかるため、沿岸漁業構造改善事業を行なっておりますが、その一環として、漁場の改良造成事業に対しまして助成をいたしております。  次には、浅海性具類の種苗発生地及び稚魚の生育場となっておりますモ場を保護水面に指定いたしまして、その保護をはかっていく。サケ・マス資源につきましては、北海道におきまして国営のサケ・マスふ化放流事業を行なっております。内地におきましては、その事業の整備強化のための助成を行なっております。  内海、特に瀬戸内海におきましては、栽培漁業センター四カ所を設けまして、同海域の重要な資源の育成放流事業を実施しているわけでございます。  なお、昭和三十八年度に、官民協力して日本水産資源保護協会というものをつくりまして、水産資源の保護培養に必要な調査研究に着手し、啓蒙普及活動等を行なっておりますが、それに対して一部助成をしております。  なお、非常に問題になっております漁場における水質汚濁等につきましては、水質二法等がありますので、そういう関係法令によりまして防止及び改善をはかっております。  なお、沿岸重要水面の適正な利用と管理のための調査研究につきましては、いろいろ重点的に実施いたしております。大体こういうふうな方針で進めております。
  250. 藤田進

    藤田進君 従来ややもいたしますと、第二次産業振興、高度成長という形で浅海の埋め立てというようなことがかなり大規模に行なわれてまいりました。例をあげます時間がございませんが、一つをあげますと、たとえば東京湾の場合も、えさイワシがついに漁場を失う。これがかわるべきところがない。あるいは内海、瀬戸内海にいたしましても、カキその他浅海養殖が埋め立てのために追われて、かなり沖合いに出ていかなければならぬ。要するに、漁業採算というものがとれないために、離農が多いと同様、それ以上に漸次船から離れていくという傾向が強いわけです。このような埋め立て、あるいは河川改修等による沿岸の漁業支障という場合には、かなり長期にわたる計画を持たなければならぬのじゃないか。非常に急激に計画がきまり、埋め立てが開始されますので、漁民は、NHKがやっております「日本の素顔」でも私見ましたが、まことに気の毒であるし、日本の水産資源という面から見ても、えさイワシが他ではこれをまかなうべき代替するところがないと言われている状況。瀬戸内海においても同様な事例がたくさんございます。こういう場合は、農林省、農林大臣におかれても、そういった日本の水産たん白の確保といったようないろんな政策の面から調整をとられる必要があるのじゃないか。工業団地埋め立てということをあまりにも優先し過ぎるために、勢い沿岸、内海の漁業というものが追われていくということに相なっているのではないだろうか。今後そういった面は、各省庁間の調整という面においては、農林大臣はかなりの発言力を持たれていいんではないだろうか。従来どうもそのような点が少し無気力であったという感じがしてなりません。御所信を伺います。
  251. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 産業、特に工業方面の伸展に伴いまして埋め立て等があり、漁場を失う漁民がふえてまいりました。それに対する対策につきましては、十分補償等が得られるようなことにつきましては、ずいぶん苦心をいたして折衝を続けております。あるいはまたそのため職を失うということでございますから、漁法をかえるとかあるいは漁場を新しく見つける、こういうことが必要でありますので、そういう方面の配慮をいたしております。しかし、おっしゃるように急激な埋め立て、あるいは工業方面の伸展に伴って打撃も漁民に対して大きいのでございます。計画的になお一そうそういう点を強化するとともに、御指摘のように他省との関係、関連等も非常に多いのでございますから、一そう積極的漁民にの立場を擁護することによりまして進めていきたいと、こう考えております。
  252. 藤田進

    藤田進君 従来漁船は、わが国の特徴でもございましたが、小型でありかつ木船といったようなことで、最近は、生産性の問題等からもこれを漸次鉄船にしていく。それから、政府の方向性としても大型化していきたいということがあるにかかわらず、依然としてこれらについてのセクションとしては、わずかに漁船課を置いている。これを機構上もっと強化してもらいたいという声は、業界かねての強い希望でございます。行政制度の調査も進められておりますが、農林大臣とされて、船舶については、主眼としては大きな一つの問題であります。みずからの農林省における、いま申し上げた単なる漁船課といったところでは、どうも話が前に進んでいかないといったような問題があるのであります。今度政府は予算がきまりますれば、従来の計画を変えて、外航船については、貿易外収支の改善をといったようなことをてことして、百万トンに計画をやり直す——総理の指示でもあったと伝えられているときであります。こういう方面にはかなり財政資金も回り、施策としても重点が注がれますが、沿岸なり内海等における船舶の改善ということについては、かなり立ちおくれていると見なければなりません。機構上の問題を含めてお答えをいただきたい。
  253. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 農業でもそうでございますが、漁業におきましても、沿岸の小さい漁業がなかなか苦しい状態でございます。その生産手段であるところの船、これが全部鉄鋼船というわけにはまいらんと思いますけれども、大きい船、あるいはそれを鉄鋼船にかえていく。これは漁業を近代化する上におきましても、あるいは漁民の安定上からも必要だと思います。そういう意味におきまして、木造船を鉄鋼船にかえていくことを進めておりますが、それにつきましては、農林漁業金融公庫等の融資ワクを相当拡大いたしております。あるいは貸し付け条件等をよくいたしております。あるいは中小漁業の信用保証制度、こういうものの活用もはかっておりますが、これはどうしても近代化あるいは安定のためにそういう方面を強化して鉄鋼船にかえていくということに一そう力を注いでいきたい、こう考えております。  それから機構の問題につきましては、十分検討をいたしてからでないと、ちょっと御答弁申し上げかねますが、御指摘の点はよく検討いたしてみたいと思います。
  254. 藤田進

    藤田進君 それから現在、麦のいわゆる間接統制といいますか、これについて赤城農相は、これが撤廃をしないという御答弁がございました。高橋進太郎委員の質疑に対してでございます。その後安田委員の質疑に対しまして、総理は、将来これをはずしていきたいということを申されているわけであります。これは、現時点における問題としてのとらえ方、あるいは将来のが、いずれが真であるか、この際、御両者からお伺いしておきたいと思います。
  255. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 麦の問題は、間接統制で、しかも価格その他につきましていろいろ従来から問題があったわけでございます。三年前ぐらいだったかと思いますが、麦の行政につきましていろいろ変革が考えられたことがあるのであります。私は、日本の状態から申しまして、従来のように大麦——小麦はあまり適当でございませんが、大麦、裸麦をこのままでやっていって農家の所得が十分上がるのかどうか、こういうことを考えてみまして、いまはこれをはずす気持ちはもちろんございませんが、将来考えなきゃならぬ重大な問題だと私は思っておるのであります。御承知の段々畑でつくっておる麦と、それから広い耕地面積の麦とは違いますが、私は、将来よほど考えていかなければならぬ問題だと思っております。
  256. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 麦の問題につきましては、いま総理からお話しのありましたように、米と違いまして、直接統制から間接統制に移っておるのでございます。間接統制に移っておりましても、価格の方式等によりましては、パリティ計算方式をとって支持をいたしております。しかし、食生活がだいぶ変わって、いまのお話のように、大麦等につきましてはあまり食べなくなりましたが、飼料としては、これをなお現在でも奨励しなければならぬと思っております。小麦は小麦として、これは食糧にも相当に使われております。こういうことでございますけれども、将来はいざ知らず、現在におきましてやはり食糧を国内で自給していく、こういう観点は依然として進めていかなければなりません。そういう面から考えまするならば、麦等につきましても、現状を維持して食糧管理の対象にしていきたいというふうに考えております。
  257. 藤田進

    藤田進君 次に、通産大臣にお伺いいたします。  私ども、世界の産業の伸び方あるいはその生産の伸び率、これに対する消費市場等を勘案いたしてみますと、もうすでに世界の設備というものはかなり過剰、言いかえれば生産過剰期に入ったという感じもいたすのであります。さらに、域内関税の撤廃等、いわゆるブロック経済が進んでいくといったような一方に問題もありまして、高度経済成長の中期的作業が進んでいるとのことでありますが、少なくとも、従来並びに将来にわたっても、日本の経済の伸び率を考えるときに、金融の引き締めその他の調整はおやりになりつつありますけれども、はたして今日——もうすでに今日ですが、並びに将来にわたって、わが国の生産というものに対応するそれぞれの輸出貿易の振興、ひいては各国の従来の貿易、輸出のシェアというものが格段と置きかわるということはむずかしいという感じがしてなりません。ジェトロの報告その他を克明に調べてみましても、非常に楽観を許さない事情にあるかと思います。これらについて今年度はとんとんということで出されておりますが、産業政策に関する限り、当年度では不十分でございます。さらに長期の見通しを立てて、これに対応する産業の設備と、その設備のうちでもどういうものを取り上げていくかということは、かなり問題になってくると思います。今日、学者間でも、近い将来に各国はそれぞれ専業化していくだろうということさえ言われております。各国の天然資源状況であるとか、技術の状態であるとかいったような面から、やがては総花的産業では太刀打ちできなくなる、特徴のある専業ということが国家間においても必ず進んでいくという議論が、かなり真剣にいま議論をされ検討されつつあるときであります。このような状態から関連して、わが国の産業政策として、その中心が一方貿易の面、片や専業化時代に入ろうとするという議論のあるときに、どういうことが一番望ましいのか、また、貿易の実態については、どういう見通しが立て得るのか、この点をひとつ詳しくお述べいただきたいと思います。
  258. 福田一

    国務大臣福田一君) お説のように、順次、産業構造が世界的に見ても専業化されるだろうということは、自由化というものがそもそも世界の分業というものをたてまえにしてやっておるわけでもありますし、また、お互いに貿易をする場合には、その各地各地の特徴を生かすということが一番、良質でしかも安価な製品を得るゆえんということになりますから、自由化を強力に推し進めていく限りにおいては、だんだん専業化の方向に向かっていくことは、これは当然の帰結であろうかと私は思っておるわけであります。ただしかし、世界的に見ますと、いわゆる自由化というものがだんだん進んでまいりまして、そうして一歩進んで、もう一ぺん関税を一括引き下げして、ほんとうに自由な貿易が行なわれるようにしよう、いま、こういう動きがまた世界的に一方に起きておるわけでありますが、ただ、私はここでひとつ日本として考えなければならないと思っておりますことは、確かに自由化は進み、また一方において関税一括引き下げというようなこともあるけれども、世界の国々はもうすでに自由化の域に早く達しておるのでありまして、日本はやっといま、息せき切って自由化のところへ追いついた段階である。むしろ世界的に見るというと、場合によっては、今度はターンして、むしろある意味では、各国が保護政策的な面を若干考慮するような点も見出せないわけではないのであります。たとえば、それは毛製品の国際協定を結ぼうというような動きがあったり、あるいはEECが日本との間でいろいろの動きをする場合等においても、若干そういう傾向も見られるというわけであります。こういうことをやはり念頭に置いてわれわれとしては考えていかなければならないと思うのでありますが、しかしながら、大きな意味でいって、すでにもう欧米諸国が自由化を日本よりはかなり前に達成しておる、日本はやっといまそこに追いついた、こういう段階ではありますが、それじゃそういう自由化の段階において、また関税一括引き下げが行なわれようとする段階において、一体全体、日本の貿易がいまのような状態で、はたして輸出入のベースを順次上げながら、しかも、輸出をどんどんふやすような方法がとれるかどうか、ここに御質問の点があるかと思うのでございますが、それはまあ一つの数字でございますけれども、いままで世界的に貿易の額というものは、大体年々六ないし七%前後伸びております。全部の国の輸出入のトータルというものは伸びております。これはどういうところに原因があるかといえば、一つは世界的に人口が増加しておる、一つは生活がだんだん高度化しつつある、この二つの原因が私はおもな理由になっておると思うのでありますが、そういうような、いわゆる人口とか生活の高度化というような原因から、今後もまだその傾向は続いていくものと私たちは考えるのでありますし、考えることは決して無理ではないと思うのであります。そういう場合において日本はどれだけくらい輸出を伸ばしてきておるかといいますと、その六−七%に対して、その倍、倍率はずっと平均に伸びてきております、いままで。倍率以上に最近は伸びておりまして、世界的に見ると貿易の量の伸び方は六−七%であるが、日本の場合は、輸出は一一−一二%伸びておる。こういうようなわけでありますから、今後とも日本の貿易を世界貿易の中で大きな目で見て伸ばすことは、十分この理由といいますか、われわれとして自信を持っていいのではないかと考えておるのであります。  そこで、それじゃどういう方向に伸ばしたらいいのかということがここで問題になるのでありますが、日本は、しばしば私ここで申し上げておりますように、軽工業品と重化学工業品との比率が約半々になっております。五〇%ずつくらいになっているのがいまの貿易の姿でございますが、特に輸出の姿でありますが、しからば、それをやった場合にこのままの姿でいいかというと、そうはいかない。やはりどうしてもこれを重化学工業化していくということが必要であります。一方において、低開発国のほうは、やはり軽工業品も順次つくってまいるという段階になっておる。そうしてまた、重化学工業にも手を出そうということにもなるわけでありますから、そこで軽工業品の部門については、やっぱり高度化をするとか、多種、もっと別のものを考えるとか、あるいはもっと高級なものをつくる、こういう方面へ努力をどうしても傾けていかなければならないだろうと思うのでございます。一方、そういうふうにいたしますと同時に、今度は重化学工業の部門もこれは伸ばしていかなければならないのでありますが、先生がいま言われるように、公定歩合の引き上げ等々の問題もございますが、顧みますというと、昨年の七月ごろまではかなり設備は全般的に見て高度に伸びてきておったのでありますが、昨年の八月ごろからだいぶん警戒気分が起きてまいりまして、自動車産業とか、あるいはまた船舶に関係のあるような設備投資は相当まだ伸びつつありますが、一般的に見ますというと、重化学工業の部門でかなりその面はスロー・ダウンしております。それでもなおかつ、やはり相当な、八%とか九%というような伸び率は示しておるのであります。私は、この傾向は、これからもやはりある程度は続けていかなければ、輸出を伸ばしていくということは困難になろうと思いますから、産業の部門におきましては、たとえ公定歩合の引き上げ等がありましても、いわゆる輸出関係の設備投資、産業に力をつける金融というものについては、これはひとつぜひ認めてもらわねばならない。この点は大蔵大臣もよくわかっておられまして、われわれと協力していただいておりますが、そういうやり方でどうしても産業の強化ということに一そう力を入れていく必要があるかと考えておるわけであります。このように重化学工業化をはかり、一方において軽工業品の多様化あるいは高度化というものをはかってまいりすまれば、私はまだまだ日本の貿易の額は伸ばし得る。特に輸出を伸ばすことはまだまだできる。いままでのずうっとの見通しを見てみましても、ことしあたりも輸出は五十五億ドルと考えておりましたが、これはまあ数字のことでありますから、四月の半ば過ぎになりませんとはっきりした数字は申し上げられませんが、いまの計算ではかなり五十六億ドルに近い輸出ができるのではないかと思っております。もっとも、一方におきまして、輸入のほうも相当予定よりはふえておりまして、五十九億ドルを上回ることにはなりますが、かなり輸出の伸びがあるわけでございまして、この場合において、輸出のほうは今後も一一%とか一二%伸ばす。一方において、今度は輸入のほうは、いまの公定歩合の引き上げ等に、いわゆる景気をだんだんスロー・ダウンするというような形によって処理をしてまいりますれば、私は輸入のほうはある程度押えられる。こういうことになりますから、これは前々総理や大蔵大臣からもお答えをいたしておるところでありますが、私は来年度のといいますか、もうすでに四月からこの年度に入るのでありますが、その輸出入の関係というものは、大体六十二億ドル前後で押え得るものである。私は輸出のほうは場合によってもう少し伸ばせるのではないか、六十三億ドルくらいまでも伸ばせるのじゃないかというような感じもしておるわけであります。いずれにいたしましても、このような考え方で将来に希望を持ちながらひとつ大いに努力をいたしてまいりたいと思います。
  259. 藤田進

    藤田進君 そこで私がお伺いしますのは、一連の国土総合開発の一環として、あるいは首都圏整備、近畿圏整備、これに新座業都市の指定、鉱工業地域の整備指定、加えて東北、あるいは北陸、中国、四国、九州地域開発促進法に基づくこれらの開発という一連のものがあり、この中心をなしているのは、産業開発、工場誘致が中心になり、地域もそのつもりでおります。こういう一連の各地域とも希望し推進しつつある経済、産業の基盤整備をやり、かつ設備投資をしていくということ、しかもこれが昭和三十八年を起点として昭和四十五年度を完成目標としているのであります。このことが、後ほどお伺いいたします財政上の事情もあるが、産業、貿易等の関係からも手放しにこれが進むということは、投資家としても国際貿易関係を考えないでやるとは思いませんけれども、しかし、かなり需給のアンバランスを生じて、経済というものがかなり恐慌を来たすというか、といったことを私どもは心配をいたしているところであります。  そこで、経済企画庁長官代理大蔵大臣だそうですが、適当であるかどうかわかりませんが、いま進められている地域開発というものは、私の見るところでは、戦後大体三つの段階を踏んできたように思います。いわゆる戦後の第一期としては、資源開発といったようなものが出てまいりました。また、第二段階としては、人口問題であるとか、あるいは第三段階、現在においては、地域格差といったような、これは人口動態も加わってまいってきておるわけであります。これが推進をされるについて、先ほども指摘いたしましたように、すでに今月の三日、冒頭に池田総理にお伺いいたしましたところ、まだ読んでいないのでということでありましたので、私もそれ以上の質疑を行ないませんでしたが、新産都については十三カ所すでに指定され、これが実施についてもすでに追加指令が出されておるわけであります。これに加えて二月の二十五日に閣議は決定されて、東北、北陸、それから中国、九州と。四国ももうすでに出たかもしれません。このように閣議決定せられている何々地方開発促進計画、この中にはかなりこまかく触れられておりますが、おおむねその地名等固有名詞が変わる以外は、その目次において内容においてほとんど変わっていないここに四つの答申案が出て、これを閣議決定を二月二十五日にされているわけであります。この中には、資金調達はむろんする。先ほど言ったように、四十五年度にこれが完成をはかるということのようでございます。ただ、私、他の関係委員会でもいろいろただしてまいりましたが、結局、時間のないいまのときに要約いたしますと、どうも地上最大の欺瞞であるようにしか思えない。こんなことが四十五年度までにできっこないと初めから私は断定してかかりますから、こんなにうそはない。四十五年度までに、ここに書かれ、閣議で決定されているものが、こんなぐあいにできるはずがないと思いますので、これが絵にかいたもちでないとおっしゃるならば、昭和三十八年度は過ぎましたが、三十九年度もいま予算が出されておりますので、いままでに三十八、三十九はたいした問題でない、財政的にも。ほとんどついていない。調査費程度です。これが四十年度以降について各年度どうということはいまの段階で言えないと思うけれども、四十五年度までにはこれは絵にかいたもちではない、こういうふうにやるのだということがない限り、これは問題であろうかと思うのです。そうしてそれぞれの答申案——新産都、鉱工業整備地域指定、いまのところほとんど全国的に指定がなされていて、まあ時間があれば詳しく申し上げたいところですけれども、すでに昭和三十二年十月三日の最後を含めまして合計二十二地域が指定されることになっている。これはもう特定地域の開発計画というものはもうないにひとしいのです。日本全体だと言ったほうがいいような状態なんですね。これは議員立法等でやったというようなことにも問題があったかもしれません。  したがいまして、第一問としては、以上申し上げたこれが昭和四十五年度までに実現をはかる——広範なものです、これは。これのプロセスをひとつお聞かせいただきたいことと、第二問としては、この実施の主体というものは一体どこなのであるか。
  260. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御承知のとおり、東京、大阪を除きました各地はほとんどみな低開発地域といわれるような状態でございます。でありますから、各地域別、北海道、東北、北陸、四国、九州というような特別開発法、また新産業都市建設促進法、また、地域開発法、低開発地開発促進法、産炭地振興法、あらゆる地域開発の法律ができておるわけでございます。御承知昭和二十五年に国土開発法ができましてから、ようやくここで地方開発の各種の法案が勢ぞろいをしたということになるわけでございます。その過程において、先ほども御指摘にあったように、電源開発促進法とか、水資源開発法とか、いわゆる地下資源開発法とか、そういうようなものができて、だんだんと今日に対する体制整備が行なわれてまいったわけでございます。現在の段階では、地域格差の解消とか、地方開発を行なうということよりも、日本の経済の将来の発展基盤をつくるために、東京や大阪のような二大拠点に産業、人口、文化等が過度に集中してしまいまして、もうこれからは効率投資というような面になりませんので、狭い国土を開発し、しかもそれを交通によって連絡をとることによって、国土全体が開発をせられ、将来の産業基盤の長期確保ができるという考えに立って政府は諸般の施策を行なっているわけでございます。でありますから、いまの新産業都市の問題も、絵にかいたもちであってできないと、こう言われますが、できなくては困るのであります。できないということは、地域格差の解消というよりも、日本の長期安定的拡大経済基盤が確保されないということになるわけでありまして、東京、大阪に対しましては都市改造、各地域に対しましては地域改造に重点を置かれるわけであります。  予算の問題等いろいろ言われますけれども、今年度の地方財政計画を見ていただくとわかるとおり、前年対比約二〇%増で、もうすでに三兆円をこしておるわけであります。いままでのように大きな伸び方はないといたしましても、地方財政も画期的に拡充されておりますし、これを七年、八年とすればどの程度の資金が確保せられるかということは十分御承知できるはずであります。いま新産業都市の指定を行ない、その地域の特性を生かしながら事業計画を策定いたしておりますし、また、紛淆ある場合には、当然国土開発法の調整を行なうわけでございますので、私はこれからの政策の重点として政府がとり上げるつもりであります新産業都市、鉱工業地帯整備、地方開発というものは、その目標に沿って政府、地方が一体になって進められるべきものである、このように考えます。  事業主体は、言うまでもなく地方公共団体ということでございます。これに対して開発銀行の融資のワクとか、あらゆるこの事業遂行に必要な施策は、いままでも各般の施策は大体出そろっておるわけであります。
  261. 藤田進

    藤田進君 それじゃお伺いします。絵にかいたもちではない。そうあってほしいし、思うし、ただ、まあこのままでき上がって工場誘致も完全にできて、生産開始いたしますと、通産大臣はだいじょうぶだとおっしゃいますが、これはたいへんなものだろうと思う。できないところに案外いいところがあるかもしれません。しかし、各地域ではこれはできるものとして真剣に素朴に受け取っています。この答申案いずれを見ても、大体六〇ぺ−ジあたりにかけて同じ文句で書かれているんです、この地域開発のほうはですね。資金の確保、これは私も審議会の委員の一人ですが、総理大臣の原案として出されて、これを審議いたしたわけでございます、企画庁担当でございましたが。ところが、この答申されているもう港湾から学校からすべてありますからね、道路もむろんのこと。これを一体このとおりやっていくために資金を確保すると、こう諮問してきているが、一体資金量はどれだけなのかと聞いたわけですが、その当時はまだ積算ができていないということで、いま大臣が確信を持ってこれは実施できると数字的にもおっしゃったわけですから、全部でもいいし、いま閣議決定せられました四つの地域それぞれで、あるいはそのうち一つでもいいです、中国なら中国総合開発で、閣議決定のこの促進計画を四十五年度までに実施するとすれば、物価は現状にとどまるとかりにして、どれだけの資金量があるのか。それさえわからずに、これは完成できるできないということは、とうていこれはもう不可能な議論だと思います。
  262. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあいままでの所得倍増計画の前四カ年間の実績ほど超高度の経済成長をやっては、物価、国際収支に大いに影響ありということで、中期経済計画をいま諮問いたしておるわけでございます。でありますから、この諮問を待って地方開発等に対しても十分配慮をいたすつもりでございます。  ただ、産業の状態だけを見ておられますけれども、東京や大阪を中心にして過去四カ年間五カ年間で経済成長を遂げてきたこの熱意とこの考え方を地方開発にそのまま移しかえるということになれば、私は政府の施策及び地方公共団体との調整をしながら進めば、この計画はなし遂げられる、また、なし遂げなければならないのだという考えに立っているわけであります。でありますから、五カ年計画の中期において二兆一千億の道路計画を四兆一千億に直したわけであります。また、三十九年度を起点にしてという港湾五カ年計画の直しも改定をする予定でございますし、治水五カ年計画、治山五カ年計画、港湾五カ年計画、こういうものをいま中期経済見通しとあわせて検討いたしておるのでございます。でありますから、水の問題、土地の問題、鉄道の問題、港湾の問題、道路の問題等、総合的にすでに準備段階に入っておるわけであります。しかし、この目的を達成するためにあまりに急であってまた一五%も二〇%も高い成長率を続けるということになると、物価の問題等にも影響がありますので、物価は三十九年度四・二%程度国際収支は長期拡大安定に、しかも地域間格差の解消をはかりながら、去年中にやった東京や大阪の別に、各地方を均衡ある発展をし、人口、産業、文化等のあまねき開発をはかろうと、こういうことでございますから、たいへんなことだなあという気持ちはわかりますけれども、たいへんなことをやるというのが政治でありまして、わが党内閣はそういう大きな目標に向かっていま着々整備を行なっているわけでございます。
  263. 藤田進

    藤田進君 閣議で決定した以上、資金量くらいは、くらいじゃない、これがもう前提条件になるでしょう、財政需要として。幾らかかるんですか。
  264. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま順次指定中でございまして、これが計画に対しましては一応の策定をいたしまして、地方から出てきたものでありますので、これを再検討し、しかも、先ほど申し上げたとおり、紛淆ある場合には国土開発法による調整を行ないつつ、今度、過度に経済が進んだり、またそれがより他の地域との不均衡を来たすということのないように、慎重かつ細心な注意をしながら決定をいたしていくのでございますから、いま四十五年を目標にして北海道に幾ら、それから東北に幾ら、九州、四国に幾らということは言えないと思いますが、あなたの御発言のように、こういう審議等を通じながら、しかも慎重な態勢で地方開発の最終的計画まで持っていきたいという考えでございます。
  265. 藤田進

    藤田進君 だから絵にかいたもちだと言うんですよ。これは積算も何もないんです、金はね。ですから、答えられもしないんです。そういうものなんです、この閣議決定そのものが。いま新規道路五カ年計画を進めて四兆一千億にしたと。建設省は四兆七千億か五兆円ぐらい言っていたんですよ。うしろにおられて恐縮ですが、河野建設大臣、この答申でありかつ閣議決定の中にはいろいろなものが具体的にあります。国土縦貫自動車道路、これは東北にも入っているし、それから中央はむろんのこと、それから中国縦貫道路、九州、北陸、皆入っているんです。これが大蔵大臣の説明では、四兆一千億にしたのだからそのようにできるとおっしゃいますが、私の聞いている限りでは、これではできない。道路公債を発行するなり、今後の財政措置をまたなければ、この答申、閣議決定のとおりには縦貫道路一つ取り上げてみてもできないというふうに聞いているわけですが、大蔵大臣はできるとおっしゃるわけで、相当の食い違いがありますから、できるならできる、できないならできない、はっきり聞いておきたい。
  266. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お答えいたします。  四兆一千億に五カ年間の計画をいたしますと、いまお述べになりました東北、中国、九州、これらの自動車縦貫道路は一部手をつけることはございますけれども、それによって完成するわけにはまいりません。
  267. 藤田進

    藤田進君 大蔵大臣、いかがですか。
  268. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私も全部できると申し上げておるのではなく、そういう最終的な地方開発の案をつくるべく前提として道路も二兆一千億を四兆一千億にしてございますし、また、鉄道、港湾、治水、治山等の計画も練り直しておりますしと、こういうことを申し上げたわけでありまして、新産業都市だけではなく、水資源開発法とか、治水の五カ年計画とか、道路法の改正とか、重要港湾の指定とか、こういうことであらゆる面から施策を行なっておるわけでありまして、準備段階をこのようにして整えておりますと、こういうことでございます。でありますから、これが最終段階について四十五年までに総計がきちんとできて、公共投資のワクはこうであると、これはまあ中期経済計画から出てくるわけでありますから、そういうときになれば、四兆一千億でできるのか、また追加をしなければならないのか、追加をする場合においてどういう財源があるのか、というような問題もあわせて検討しておくわけでありまして、その閣議決定をするときに何にもきめないでそれをぽんときめたのじゃなく、二十五年の国土開発法制定以来、政府は遅々ではございましたが、最終段階においてもうスピードを上げて、あらゆる施策をいま準備いたしておりますと、こういうことを申し上げておるわけであります。
  269. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連して。
  270. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 藤田君の時間がきておりますが、関連質問を許しますか、認めますか。
  271. 藤田進

    藤田進君 若干ずれてもいいという場内交渉だったんですから、そのように……。
  272. 羽生三七

    ○羽生三七君 ただいまの藤田委員の御質問は、相当重要な問題を含んでおると思います。特に私今度の予算審議を通じて感じたことは、最初の総括質問の際にちょっとお尋ねして、大蔵大臣から御答弁がありましたが、総理からは御答弁いただけなかったことですけれども、こうやって予算がこのように大規模なものになり、しかも、前回申し上げましたように、経済成長率の鈍化、それから税の関係、歳出の硬直性の問題、あるいは国民所得と税の比率の関係等々から見て、新規事業というものが一体今後どれだけやれるかということは、きわめて疑問なきを得ないわけです。そこで、一般会計においては、せいぜいのところ、たとえば先ごろの農業や中小企業における総理の言われる革命的とか革新的というようなことは、なかなか盛り込むに困難である。かなりきめのこまかい編成方針とかあるいは若干の出入りはありましても、そう根本的な変化というものは今後しばらく一般会計においてはないのじゃないか、そういう感じがいたします。出入りはあっても、その差はきわめて弾力性に乏しいものになる。そういう条件の上に、さらに先ほど来指摘された新産都市、あるいは地域開発の問題、あるいは道路整備新五カ年計画の問題、あるいはそのほか治山の問題、鉄道の問題、こういうように考えてくると、一般会計の弾力性というものはないし、一応の制約があるのですから、勢い財政投融資にその役割を求めざるを得ない。この前、大蔵大臣は、財政投融資ということにウエートを置くと言われましたが、確かに厚生年金だけでも弔う、当該年度は別でありますが、一兆一千何がしになる。国民年金を加えれば一兆二千億以上になります。そのほか、郵便貯金、簡保、いろいろありますが、そういうものをうんと使って、あるいは道路公債——これはいいか悪いか、私はきょうここで言うことはいいとか悪いとかいうことは全部別であります。趨勢としてどうなるのだろうか。そういうことから考えてきますと、今後の政府がそういういま藤田委員が指摘されたような仕事その他多くの仕事をやっていく場合に、特にこの一般会計においては先進国型への移行といわれている社会保障費なんか、むしろ増額しなければならない。そういう方向でいくと、新たなる事業というような場合には、どうしても財政投融資なんかにウエートがかかってきて、本年度でも一般会計と財政投融資との増加率を見れば、はるかに財政投融資のほうが多い。したがって、今後は、予算予算といっても、ほとんど財政投融資を含める総体的な観点でないと、もう何ごともできないし、また判断できないような状況になってきておるのじゃないか。だから、そういう意味で、今後は一般会計で一応の制約があるので、いまおやりになっておる事業の大部分はそういう方向へ進むのではないかと思われますが、今後の予算の——予算といいますか、そういう事業の計画を盛り込むにどういうことが考えられるかという点を、いいとか悪いとか、それから基本的な点は別としまして、この前一応のお考えは大蔵大臣に承りましたから、きょうは総理から承りたいと思います。
  273. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 新産業都市とか、地域開発等は、これは民間と協力してやる。民間の仕事が相当多いのでございます。したがいまして、一般の会計、財政投融資だけからお考えになりますと、規模が非常に少なくなると思います。民間のほうの投資というものも相当ありますので、それとタイ・アップして、それが行きいいように政府としてやろうとしておるのであります。だから、でき上がったものを見ますと、一般会計があまりふえない、あるいは財政投融資がどうこうという問題で解決できるものじゃございません。先ほどもちょっと大蔵大臣から答弁したように、二兆一千億の道路計画をつくったときに、もう三年たつかたたぬうちに四兆何千億の計画を立てるとだれが想像したでしょうか。そうしてまた、この前の二兆一千億のその前の一兆円の道路というときに相当問題があった。日本国民のエネルギーというものは、非常なものなんでございます。私は、将来、厚生年金云々といわず、やはり適度な伸びによって——その適度とは、外国の伸びの、まあ外国もちょっと伸びてきましたが、大体五割増し、あるいは倍ぐらいの伸びで行っていって日本は大体できるのではないか。それだけ国民のエネルギーがある。ただ、問題は、労働の流動性——問題は労働にあると思います。お金の問題よりも労働関係のほうが非常に重要になってくると思います。私は、いま新産業都市と申しましても、十三の指定のうちで、もう非常に進んだところと、おくれたところがございます。中国地方なんかはかなり進んでおります、岡山県にしろ。そうしてまた、今度の指定も、大体早く効果のあがるところを選んでおるのでございます。いま金がどれだけ要るとか、どういう年次計画でいくかということは、所得倍増計画の中期の五カ年計画と見合いながら、私は日本のいままで歩いてきた実績と、そうして日本人のエネルギー、これを見計らいながら、財政投融資あるいは一般会計の運営をしていくべきだと思っております。
  274. 藤田進

    藤田進君 これは総理、言われますが、二兆一千億で驚いて事情想定しなかったというように、いますでに私は、建設大臣も答えているように、四兆一千億というのは四十五年度までにやるという閣議決定が実行できないことは明らかになっておるわけです。四兆一千億で一部かかれるけれども、縦貫道路については。そのほか、中央、地方道についても同様です。時間がないから一例を申し上げたのです。ですから、問題は、全然予算の裏づけがないわけです。これを何とかしてもらいたいという立場でやっておるわけです。  もう一つは、総理には最近憲法上その他ウエートがかかるので、国会においての議論も、総理の出席がないと、なかなか問題がきまらなかったりする傾向がありますが、したがって、私は、今度の全体的地域開発の乱立といったことを見ますと、総理とされても、この上十分ひとつ全体の勘案をとられなければならないのじゃないだろうか。いま地域総合開発といっておるその根本の問題としては、地域格差の問題とか、人口流動の問題とか、いろいろ要素があるわけです。これをつくっていこう。ところが、これも時間がないので、一例だけ申し上げると、首都圏基本計画を見ますと、わが国の人口の自然増を昭和四十五年度までに七百二十五万人となると推定しているのであります、四十五年度までの自然増。ところが、これに対して、首都圏の人口包容の基準計画というものは、同じく昭和四十五年度の基準年度までに四百五十万人ふえてくるという計画で進められておりますね。もう一方、十三カ所指定されました新産業都市ですね。これに対して、四十五年度までに三百八十九万人の人口が新産業都市の中に吸収される、こうなっておる。これを寄せますと、四十五年度までのわが国の人口の自然増というものは、ちょうど新産業都市と首都圏の中に入ってしまう。このほかに、今度六カ所指定されます工業整備特別地域ですね、これがあるし、さらに地域的には、いま答申、閣議決定でも、四カ所が閣議決定されて、これまた産業開発をしていくということになれば、根本問題の人口の流動性というものについては、過密過大都市の解消をし、地域格差をなくしてやるといいながら、計画そのものは、以上申し上げたようなことになってしまっている。これではならないのじゃないか。  私は、これは一例にすぎません。したがって、予算の問題等も、これに付随して偏重することになります。また、触れませんでしたが、近畿圏整備がこのほかに出てきますね。こうなってくると、この総合性、一貫性というものについて非常に問題があると思うのです。この点、時間がないので詳しく申し上げることができませんが、総理とされて、もっとこういう面も、忙しいでしょうけれども、全体的にひとつ勘案される時期に来ているのじゃないか。それぞれの地域が自分のところだけの開発を願うことも、これも人情としてわかりますが、国全体として、これではどうにもならないのじゃないかと思います。
  275. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話のとおりで、いま縦貫道路の問題がありましたが、これはでき上がるかという質問でございますから、いろいろ問題が起こるのであります。だから、閣議決定その他の場合におきましても、こういうことを推進する、実行する——この実行というのは、着手という意味で言っておる。だから、その点を、そういうふうに、実行するということを、でき上がると、こういうふうにごらんになってはいけない。だから、いついつまでに縦貫道路ができ上がるのだということは言っておりません。推進するとか、実行するということを言っておる。  いまの、四十五年を単位としての人口の増加並びに移動でございますが、大体そういうふうになっていくのではありますまいか。ふえた分が、みな、片一方の首都圏、あるいは十三の新産業都市、ふえた分がいきますと、また移動があります。農村その他からの移動がございます。そして、そこは、人口が昼働く分の人口を見ております。道路の整備をすれば人口が相当移動することは、大体私はそういう方向で進み得るのではないかと思っております。
  276. 藤田進

    藤田進君 いや、そうなっていないのです。この首都圏について見ますと、昭和五十年には約二千六百六十万人と想定してものを進めているわけです。そのうちで、人口増加した分が、先ほど申し上げたように、四百五十万人を収容する、またせざるを得ないだろう。こうなってくると、工業整備地域なりといったようなところに産業基盤を整備されて工場誘致ということになれば、勢い農漁村から出ていくという勘定になるわけです。農漁村の出て行き方というものが、この趨勢から見ると、農村に一体幾ら残っていくのだ、いまでも心配されているにかかわらず、国の計画自体がそうなっているということは、そういう計画を持たないでも、自然にそうなるものに対して、これに拍車をかけるという基本計画を持つことがいかがなものだろう。それから縦貨道路についても、これを推進するなんということでしょうが、しかし、一貫して流れているものは、四十五年度までに資金量を確保しつつ——これを最後に、資金の関係が答申され、決定されているのであります。したがって、絵にかいたもちということになってしまうのであります。ですから、特に人口等についても、もっと広範に考えておやりいただきませんと、ことに東北地域あたりには、人口がこの計画どおりいけば、まことに希薄なものになるでございましょう。東京を中心とする首都圏に吸収されるわけでございます。こういう点は、もう少し御検討をいただきたいと思います。いますぐと申し上げても、それほどの御答弁もないように見受けますから。
  277. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 昭和五十年の問題につきましては、これはなかなか私としてもはっきり申し上げられませんが、四十五年の状態におきましても、過去三年間の急速の伸びによって中間的の操作をしようと言っておるのであります。五十年の分につきましては、一応の政府の決定でも何でもございません。そういうなにができておるのでございましょうが、そこまでいくのはたいへんでございます。だから私は、いま新産業都市なんかにつきましても、もう御承知のとおり、中国、四国、九州で人口のふえた県といっては広島県だけであります。あとまあ減っていく、こういう状態はよくない。だから、九州に三カ所設けるというふうな方向で、四国に二カ所設ける、こうやっていくこと自体が、あなたの御心配を少なくするゆえんであると私は考えるのであります。
  278. 藤田進

    藤田進君 一つだけ……。わかったようなわからないことなんで、中国については、御承知の岡山水島地域が今度新産業都市に指定されているわけですね。だから、島根、鳥取、おそらくそうなってまいりますと、広島県がいま若干の増加を示しておりますけれども、これが減っていくことになってしまうでしょう、おそらく。そういうことはなりませんので、今後の具体的実施にあたりましては、もっと抜本的総合的な御検討をいただきたいことを要望して、時間となりましたようですから終わります。
  279. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 藤田君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、質疑通告者の発言は全部終了いたしました。よって三案の質疑は終了したものと認めます。  十五分間休憩して再開いたし、討論に入ることにいたします。  暫時休憩いたします。    午後四時休憩    ————————    午後四時三十八分開会
  280. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 予算委員会を再開いたします。  これより直ちに討論に入りたいと思います。通告がございますので、順次発言を許します。賛否を明らかにしてお述べを願います。  まず、山本伊三郎
  281. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっております昭和三十九年度予算関係三案に対しまして反対の立場から討論をしたいと存じます。  反対の第一の理由は、池田内閣は、流動する世界の情勢の中にあって、わが国の果たし得る役割りをみずから縛り、あまりにも自主外交を捨て、アメリカに追随しているのでないかと思われるのであります。現在、米国のアジア外交は八方手詰まりになっているのであります。そのやさきに、ドゴール仏大統領の投げた一石は、アジアの国際局面を一変せしめた観があります。フランスの中共承認の意義は、固定した軍事優先外交の視野から離れ、現実に発展しつつある事態に直面し、アジア諸国の平和と繁栄を築く現実的、合理的前提をつくり出したのであります。  かかる情勢におかれながら、日本外交自主性がなく、いたずらにアメリカ外交の失敗のしりぬぐいをしているとしか考えられないのであります。朝鮮民族統一の悲願を閉ざす日韓会談にしても、米国の韓国に対する軍事上の負担、経済上の負担を日本がかぶること以外に何ものもないのであります。隣国朝鮮との友好関係を樹立することは、われわれも望ましいことでありまするが、日本漁業権益、竹島の領土権、文化財の返還、筋の通らない請求権解決等、わが国の譲歩により朴政権の崩壊を防ごうというのが日韓交渉の実体であります。また、中国との関係につきましても、フランスの中国承認直後、衆議院の予算審議過程では、政府は一時は前向きの姿勢が示されたのでありまするが、その後、どういう理由があったのかわかりませんが、中共の国連加盟が認められても、わが国が中共を承認するかどうかは、国際世論を見てきめたいというように態度が豹変したのは、理解に苦しむところであります。アジアの安定と繁栄なくして日本の平和と繁栄はあり得ないことは明白な公理にかかわらず、アジア諸国間の対立、不信を深めるようなアメリカ外交の路線に追随する、独自性を完全に喪失した池田外交には、断じて承服できないのであります。  第二の反対理由は、今日の経済的諸問題の行き詰まりは、池田内閣の高度成長政策の帰結であって、政府はその責任をとるべきであります。自由主義経済において、高度成長をあおれば、投資競争が、ひいては過剰投資、二重投資を誘発し、国際収支が悪化し、物価は騰貴することは当然であります。  また、農業や、中小企業の二重構造、地域格差は、高度成長の過程解決されるのではなく、それらが一そう激化するのであることは、所得倍増計画が発表された当時、わが党が指摘しできたところであります。不幸にして、これが的中して、消費者物価は三年連続高騰し、国際収支は慢性的に赤字となり、中小企業の倒産、農業生産力の減退に起因する食糧供給の不安、生産力の不均等発展のために基づく地方財政の不均衡がますます顕著になる等、憂うべき事態が続出しているのであります。しかるに政府は、この経済政策の失敗の責任をとらずに、かえって、このことは民間が設備投資等に暴走した結果であると、責任をひたすらに民間に押しつけようとしているのであります。しかも、実際は、これら経済的諸矛盾は、政府の倍増計画自体に内包していた欠陥であって、池田内閣の責任は断じて免れるものではありません。当面最大の問題である国際収支の構造的赤字化にしても、倍増計画の予想する貿易量に対し、造船計画の規模が過小であり、海運収支の赤字の増大することは以前からわれわれが指摘したところであります。最近に至って、政府は年間百万トンの造船が必要であるといって騒いでいるが、現実にどうして百万トンの造船が可能であるか、政府の現実的な施策を聞きたいくらいであります。  また、利子、特許料の支払増加は、大企業が無計画に外国技術を入れ、外資を借りあさって投資競争に狂奔したからであります。為替の自由化となる今後であればともかく、これまでは、外国技術の導入も外資の借り入れも、すべて政府の統制下にあったのであります。一般の民間企業が暴走して超高度成長になったのでなくして、政府こそ暴走せしめた責任をとらなければならないのであります。  物価の問題も同様であって、連続三年物価の高騰を招来した原因は、政府が率先して運賃、電話料、米価等の値上げを行なったこと、独占企業の管理価格を放任したこと、農業、漁業または中小企業等がその生産基盤を脅かされ、供給力の減退したことを察知し得ず、それを補強する諸施策を行なったことに物価騰貴の重大なる原因が存在するのであります。政府は、このような自己の責任をも考えず、生計費の高騰に伴う労働者の正当な賃上げ要求に対しても、あたかも賃上げが物価騰貴の原因であるがごとき見解を流しているのであります。  政府の施策の失敗から、一年ほど操短を余儀なくされた結果、生産性の上昇の落ちたことを理由に、生産性向上よりも賃金上昇が上回ったとして、それを根拠として、コスト・インフレと称して賃金抑制をねらっているがごときは、長期に見れば、わが国の生産向上は著しいもので、賃金の上昇率ははるかに低いのであります。したがって、賃金の上昇が物価の騰貴を招くと宣伝することは、経済理論を無視して、ひたすらに労働者の賃金を低賃金に押えようとする悪意に満ちた宣伝にすぎないと言わざるを得ないのであります。それよりもむしろ、不必要な国内消費を刺激する肥大した企業利潤の削減こそ物価引き下げのかぎであると言わなければならないのであります。  第四の反対理由は、今回の予算は、政府の言う物価の安定、国際収支の改善を企図した、景気を刺激しない健全的均衡予算であると言うに反して、実質的にはきわめて大型な刺激的予算だということであります。  一般会計規模は、当初、一〇%増にとどめたいというのが財政当局の目標であったが、与党や圧力団体の力に押され、前年度比一四・二%増の三兆二千五百五十四億となったのであります。しかも、これは国立大学経費を特別会計に移すというからくりもひそんでいるのでありまして、したがって、歳出の実質的膨張は一五・二%で、その予想経済成長率の二倍にも及んでいるのであります。なお、一般会計から漏れたものは無理に財政投融資になだれ込んで、その結果、財政計画規模は一般会計の四〇数%にも当たる一兆三千四百二億円に達し、その伸び率は二〇・一%となり、なおこのほかに、国鉄に対する国庫債務負担行為四百億円も加えると、財投の伸び率は近年の最高の伸び率を示しているのであります。  このような積極刺激的予算を編成したのであるが、しかし、その後の経済事情は、必ずしもこの膨大な予算を消化するにふさわしくない傾向があらわれてきたのであります。したがって、金融引き締めの圧力を一そう加重せねばならない結果となり、そのしわ寄せが労働者や中小企業にくることは明らかであります。事態は、昭和三十二年度の予算と、はなはだしく酷似しているのであります。  反対の第五としては、今回の国税、地方税の減税が公約を下回っているということであります。  政府自民党は、かつての総選挙で二千億円減税を公約したのであります。その後、予算編成の過程で、この公約を上回る二千二百五十億を減税するのだとして、三十九年度予算案とともに減税案を出してきたのであります。ところが、一方には、揮発油税、軽油引取税、とん税等、増税となる分は全くこれを無視し、計算に入れておらないのであります。これは、きわめて国民を欺瞞するものであって、この増税分を差し引くと、さきに公約した二千億円という減税よりもはるかに低い千七百八十余億円にすぎないのであります。しかも、このうち、所得税の減税は六百四十九億であります。この程度の減税では、物価騰貴による名目所得の増に伴う税負担の加重を調整すると、結局、勤労者にとっては実質的に増税となる結果を見るのであります。  政府は、今回も税制調査会の答申を尊重すると称しながら、諸控除を値切って、その分を不労所得である配当金、投信分配金の課税軽減に回したのであります。これらの措置は、租税理論を無視したものであり、この勤労者には冷たく資本には暖かい政府の減税政策には、断じて反対するものであります。  反対の第六といたしましては、この予算の組み方では、国の財政の弾力性がますます失われる危険性を感ずることであります。  国と地方財政との関係は、いつも予算編成の途上で大きな問題になるのでありまするが、今回の場合、地方の市町村民税の減税による税収減の補てんのために、国庫が元本、利子を補給する地方債の発行という方法をとったのであります。これは、当面の一般会計の歳出増加を防ぐためのごまかしであって、問題は、このような便法をとることは、なるほど三十九年度については、国の財政負担としては金利支払い分だけで済むかもしれませんが、元本の支払いは当然後年度に持ち越すことになり、国の財政がますます弾力性が失われてくると同時に、この市町村民税の減税補てん債は結局地方債といわれているが、国の公債政策への転換がきわめて強くうかがわれるのであります。  以上、おもなる反対理由を述べましたが、このほかに、社会保険費についても、また庶民住宅建設費についても、環境衛生費についても、政府公約に反すると同時に、国民に背を向けた不健全予算と断ぜざるを得ないのであります。  以上、私の反対討論を終わります。
  282. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 次に、大谷藤之助君。
  283. 大谷藤之助

    大谷藤之助君 私は、自由民主党を代表して、昭和三十九年度予算三案に対し、賛成の意を表明せんとするものであります。  申すまでもなく、本年は、わが国がOECD加盟、IMF八条国移行に伴い、名実ともに国際経済社会の有力な一員となる画期的な年であります。かかる情勢に対処し、昭和三十九年度においてわが国経済に負わされた課題は、国際収支の改善と物価の安定をはかりつつ過去数年間の経済成長の基盤の上に経済各分野の質的強化につとめ、もってわが国経済の長期にわたる安定的成長と均衡ある発展の基礎を固めることであります。私は、政府提出にかかる予算三案が、この課題に十分こたえるものと思うのであります。この予算案に対し、野党の諸君から、あるいは本委員会の審議を通じ、あるいはただいまの反対討論を通じて、的はずれとも思われるような批判なり、あるいは誤解に基づくと思われるような意見なり、特に誇張的と見られるような意見が行なわれましたことは、まここに遺憾であり、私は、この機会に、そのおもなるものに対し反論を加えることにより、政府原案に対する賛成の趣旨をさらに明らかにしたいと思うものであります。  その第一は、所得倍増計画が物価と格差を倍増し、国際収支の悪化をもたらし、結局破綻と失敗に終わったという野党諸君の言であります。過去十数年にわたるわが国経済の急速な発展成長ぶりについては、いまさら繰り返すまでもありませんが、特に所得倍増計画の発足以後の目ざましい成長の成果は、まことに驚くべきものがあると言わざるを得ません。一人当たり国民所得の増大と国民生活の向上、所得格差の縮小、完全雇用への接近、産業構造の高度化と産業の国際競争力の強化等の高度成長による著しい進歩の実績は、世界各国によって高く評価されているところであります。  このようなわが国経済の高度成長は、もとより国民の勤勉と努力の結晶でありますが、所得倍増計画は国民の力強い希望と目標を与え、民族の若々しい創造力と活力を十二分に引き出すのに大いにあずかっており、また、わが国経済に拡大と近代化をもたらし、経済社会の発展の推進力としてきわめて大きな役割を果たしつつあるのであります。したがいまして、野党諸君のような議論は、世界が認めているわが国の高度経済成長の実績から故意に目をそらすものであって、すなおに国民各位とともに所得倍増計画の意義と成果を認めることが妥当であり至当であると信ずるものであります。  ただ、近年、以上のような急速な成長の過程を通じて、農業、中小企業等、相対的に立ちおくれた部門の近代化が必要となる等、若干のいわゆるひずみを生じているのを看過することはできません。これらのひずみは、もとより所得倍増計画の全体としてのたてまえなり、その光を打ち消すものではなく、当然直面し、解決しなければならぬ課題が早目に顕在化して、その解決を促しているのにすぎないのであります。これらのひずみをすみやかに解消し、所得倍増計画の基本線に沿って高度安定成長をはかり、高度福祉国家の建設を一日も早く達成したい。また達成することは十分可能であると考えておる次第であります。  第二は、物価政策が完全に失敗し、物価倍増をもたらしたという攻撃であります。もちろん、わが国経済が高度の成長を遂げた反面、卸売り物価の安定にもかかわらず、消費者物価がひとり上昇基調を示してきたことはゆるがせにできない問題であります。このため、政府において、三十九年度中に安定基調を回復することを目途に、公共料金の値上げ抑制、財政金融政策の適切な運用、農業、中小企業、サービス業の近代化、流通機構の改善、公正な価格決定を阻害する要因の排除、輸入政策の弾力的な運用、供給不足物資の増産等あらゆる施策を結集してまいり、また今後も実施していくとしておる点に、特に賛意を表するものであります。  しかして、最近の消費者物価の動向を見ますと、三十八年四月以降落ちついた動きとなっており、おおむね安定基調が確保されておると見ることができるのであります。すなわち、全都市で三十九年二月の対前年同月比は三・三%の上昇にとどまっており、特に三十八年度中の推移は四月の一二〇・二に対し、三十九年二月の実績は一二二・三と、この間わずかに一・七%の上昇にすぎず、物価安定は早目に効を奏しつつあると言えるのであります。これは政府の強力な消費者物価対策のたまものであることは申すまでもないところであって、私どもまことに御同慶にたえないところであります。  もとより、物価水準を長期にわたって安定させていくためには、今後においても適切な物価対策を推進していくことが必要であることは、論を待ちません。政府が今後さらに物価安定のための施策を強力に実行することを期待するものでありますが、この際特に一言しておかなければならないのは、せっかく安定しつつある物価の基調を破壊せんとする動きであります。すなわち、春季闘争においては全国画一的な賃金引き上げをねらい、スケジュール闘争を予定しているようでありますが、生産性向上以上の賃金の引き上げが長期にわたって継続するならば、消費者物価の上昇、さらにそれを理由とする賃金引き上げが行なわれ、結局いわゆる賃金——物価の悪循環が招来されることは自明の理であります。そのような賃金——物価の悪循環は、実質的な所得の向上を阻害するのみならず、さらに賃金コストの上昇から卸売物価の上昇を招き、国際競争力に悪影響を及ぼし、国際収支の悪化をもたらすことにもなると考えられるのであります。開放体制への移行を控え、わが国経済の当面の最大の緊急課題である物価の安定と国際収支の均衡回復を妨げるような不合理な賃上げ要求には、国民経済的見地に立った十分な反省が必要であると信ずるものであります。  その第三は、政府国際収支の見通しを甘く見過ぎて誤っていたといういわれなき批判であります。  国際収支の均衡は、開放体制下にあって最も重要な課題であり、これについていたずらな楽観が許されないことは申すまでもありませんが、さりとて悲観にのみ走って現下の情勢について危機感をあおり立てるがごとき所論もまた断じて許されないものであります。  最近の国際収支の推移を見ますと、輸出はわが国産業の国際競争力強化等により順調な伸びをしているのでありますが、輸入が、国際商品価格の高騰等一時的要因のほかに、生産の大幅な上昇から、顕著な増加を見せ、貿易外収支の赤字幅の拡大と相まって、経常収支はかなりの逆調を呈するに至ったのでありますが、この間総合収支は資本収支の黒字によって均衡を維持してまいりました。当面の国際収支の対策といたしましては、貿易収支の均衡回復と貿易外収支の赤字基調是正が基本的に肝要であることは当然であります。今後、国際競争力の強化等により輸出の振興を強力に推進するとともに、外航船腹の増強、観光事業の振興等長期的視野に立った貿易外収支の改善を積極的にはかるならば、国際収支の均衡を逐次実現されるものと確信いたすものであります。  なお、先ごろ行なわれた日銀公定歩合の引き上げは、開放体制への移行に際して、わが国経済の調整をはかり、国際収支の基調を強固ならしめ、戦後初めて国際通貨としての交換性を持つ日本円の国際的価値を確保するとともに、経済の一そう堅実な発展を期するために行なわれたものであって、まことに時宜を得た措置であると考えます。  その第四は、三十九年度予算及び財政投融資計画が大型予算、積極財政であって、現下のきびしい経済情勢に対する配慮が欠けておるという誤れる非難であります。  三十九年度一般会計予算は、御案内のように、三兆二千五百五十四億円であって、前年度当初予算に対し四千五十四億円、一四・二%の増となっておりますが、これは、三十六年度の二四・四%、三十七年度の二四・三%をはるかに下回っていることはもちろん、前三十八年度の一七・四%をもかなり下回っているのでありまして、これが景気に対して刺激的であるとはとうてい考えられないのであります。  また、これを国民総生産との関連において見ますと、三十九年度の国民総生産の見込み額は二十四兆七百億円でありまして、三十八年度当初見込みの二十兆三千九百億円に比し一八%の伸びを示しておりますが、一般会計予算の伸び率一四・二%はこれを相当下回っておるわけであります。一般会計予算の伸びが国民総生産の伸びを下回るということは、昭和三十五年度以来のことでありまして、この点から見ても、三十九年度予算は積極予算どころか、むしろ引き締まりぎみの予算と言うべきものであります。  財政投融資計画一兆三千四百二億円も、当年度に見込まれる原資をもって運用計画を立てており、また、その対前年度増加率二〇・八%は、三十八年度の二二・六%を下回るものでありまして、一般会計予算と同じく、健全性が維持されており、景気に対して刺激的であるとは認めがたいのであります。  その第五は、租税の自然増収に比較して減税額が少な過ぎるとか、あるいは租税負担率が前年度より高くなったから実質的には増税になっておるという野党諸君の主張であります。  わが党は、昨年行なわれました総選挙におきまして、二千億円にのぼる画期的な大幅減税を唱えましたが、政府においては三十九年度予算におきましてこの公約を実現した次第であります。この減税額が、歳入総予算額の前年度に対する増加財源中に占める比率で見ますと一七・一%に当たり、昭和三十二年度以降最大の比率を示しており、この点からもこの減税が大幅な減税であることは明瞭であります。  また、国民所得に対する租税負担率は、国民の租税負担の程度をはかる一つの尺度ではありますが、租税負担の軽重は、国民一人当たり所得水準、財政支出を通じて国民に還元される公共サービスとの関連など、広範囲にわたる視野において総合的に判断すべきものであります。開放体制への移行を控えて、旺盛なる財政需要の中で、政府がかかる大幅な減税を断行した英断こそ、称賛されるべきものでありまして、その結果においてもなお租税負担率に若干の増加が示されたことをもって増税と称することが当を得ないことは、過ぐる衆議院の審議段階において社会党より提出された組みかえ動議にかかる予算案においては、租税負担率が政府案よりもさらに上回っていることを見ても、明らかであります。  最後に、政府が重点施策として取り上げた農業、中小企業の近代化施策について、内容が乏しく、一向に革新的ではないという批判に対し、反論を加えたいと存じます。  まず、農林漁業に対する施策について見ますと、御承知のように、三十八年産米の生産者価格の大幅な引き上げ等により、三十九年度においては、一般会計から食糧管理勘定への繰り入れが巨額にのぼりますため、他の諸施策に向け得べき財源の捻出は困難な事情にありましたにもかかわらず、農林漁業の近代化を推進することは広く国民経済の均衡ある発展をはかるためにも緊要であるとの観点から、物に重点が置かれているのでありまして、農林関係予算としては、三十八年度当初予算を実に三二・八%も上回る総額三千三百六十億円を計上されているのであります。しかして、施策が革新的であるかどうかは、一般会計予算に計上された経費のワクだけで判断すべきものではありません。ワクよりも、むしろその経費配分の重点がどこに置かれるかということを、財政投融費等を含めた総体について、内容に即しつつ考察すベきであります。すなわち、一般会計予算については、農業基盤整備事業と農業構造改善事業を中核とする近代化事業の強力な推進が期待されるのでありますが、さらにこれを金融面からバック・アップするため、農林漁業金融公庫の新規貸し付け計画額の大幅な拡充、金利等融資条件の簡素合理化、農業近代化資金及び無利子の農業改良資金の融資ワクの大幅な拡大等、革新的な措置が講ぜられることとなっておるのであります。  次に、中小企業対策費といたしましては、百六十六億円が計上されております。これは、三十八年度予算額に対し、三九・八%の増加に相当いたします。  その内容を見まするに、中小企業高度化資金融通特別会計への繰り入れ額の倍増をはじめ、中小企業近代化のための経費が大幅に増額されておりまして、中小企業の集団化、協業化等、近代化のための諸施策の充実がはかられております。  中小企業対策といたしましては、ただいま申し述べました一般会計予算もさることながら、財政投融資計画及び減税におきましてより一そう深い配慮が払われているのであります。すなわち、まず財政投融資計画におきましては、中小企業金融公庫等の三機関の貸し付け額を大幅に拡充するほか、新たに中小企業金融公庫につき債券発行による資金調達の方途が講ぜられ、また商工組合中央金庫については、貸し出し金利引き下げの措置が講ぜられることと相なっております。  次に、税制面におきましては、中小企業者に対し平年度六百億円をこえる減税が行なわれることとなっておりまして、これら歳出予算、財政投融資計画並びに税制各面での諸施策により、中小企業の近代化は画期的な総合的展開を期待し得るものと信ずるのであります。  なお、今回の日銀公定歩合の引き上げに関連して、これら引き締め措置のしわが中小企業に寄せられることを未然に防止するため、中小企業金融について敏速にして手厚い措置がとられることになりましたのは、まことに時宜を得た英断でありまして、政府の決意に特に賛意を表するものであります。  このほか、社会保障の充実、住宅・生活環境施設の整備、文教の刷新、輸出の振興、社会資本の整備強化、地方財政の確立等の各種の重要施策につきましても、昭和三十九年度の予算及び財政投融資を通じて周到な配慮が払われていることを認めるものでありますが、この際、特に触れている余裕がありませんので、省略させていただきます。ただ、このように種々の旺盛な財政需要を、大幅減税と並行させつつ、対前年度比一四・二%増の予算規模の中に適切に盛り込み、健全均衡財政の方針を堅持した政府の努力と熱意に対し、あらためて敬意を表するものであります。  しかしながら、本年の経済環境は、内外ともに微妙な動きを示すとも考えられますので、今後の財政執行にあたっては、適切にして機敏な金融政策と相まって、よく時宜に適した弾力的な運営が行なわれ、本予算案に包含されている各種の政策効果が十二分に発揮されますことを心から期待して、私の賛成討論を終わります。   —————————————
  284. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 委員の変更がございました。亀田得治君、塩見俊二君が辞任され、久保等君、西田信一君が選任されました。   —————————————
  285. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 次に中尾辰義君。
  286. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 私は、公明会を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和三十九年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算の三案に対しまして、反対の討論をするものであります。  日本経済にとって大きな試練といわれる開放経済の初年度を迎えるにあたり、新年度経済の前途はまさしく赤信号を呈しているのであります。すなわち、池田内閣は、わが国を自由陣営の三本の柱の一つと自負し、所得倍増の旗じるしのもとに、IMF八条国への移行、OECD加盟等、かけ声勇ましく日本経済の成長を宣伝しながら、その準備をしてきたのでありますが、開放経済の何たるかを洞察して、そのきびしさに十分順応できる国内経済の正常化を着実に進めてきたとは言えないのであります。安易に、外国からの借金による資金と技術に大きく依存し、国内市場中心主義ともいえる高度成長一本やりで拡大してきたのが、池田内閣の手による今日の偽らざる日本経済の姿であります。したがって、その行き過ぎは、物価上昇と国際収支の悪化のため、拡大のテンポにブレーキをかけざるを得なくなったのであります。すなわち、構造的といわれる貿易外収支の赤字は、海運赤字と、特許料や利子配当等の外資対価の支払い増加で、三十八年度では約四億ドルの赤字と推定され、一方輸入はますます増勢をたどり、五十九億ドル台に迫り、貿易収支も三十八年度においては四億ドル前後の赤字になりかねないのであります。しこうして、経常収支全体で八億ドルの赤字が予想され、これを資本収支で補っても、なお二億ドル程度の赤字が見込まれ、国民の不安のままに、まさに外貨危機が到来しているのであります。したがって、政府は、昨年十二月以来、預金準備率の引き上げ、新窓口規制、さらに売りオペによる引き締め等、一連の金融調整の措置をとらざるを得なくなったのであります。そして最後に、抜き打ち的に、公定歩合の日歩二厘引き上げと同時に、輸入担保率の引き上げとなったのでありますが、その間戦後最高ともいうべき中小企業の倒産を招き、その金融不安は、連鎖的に今後多数の倒産を予想されるのであります。さらに、消費者物価は過去三年間連続六ないし八%の上昇を見、その物価対策も何ら見るべき成果はあがっておらないのであります。  このような国際収支の悪化にしても、消費者物価の騰貴にしても、それは単純な景気循環的な現象として生じたものでなく、日本経済の構造的なゆがみのあらわれであり、単に金融引き締め政策だけではどうにもならないものが存在しておるのであります。これは明らかに池田経済政策による日本経済のジレンマであり、失政であります。したがって、政府は、船腹増強を主とする強力な海運政策、中小企業や農業の近代化、積極的な輸出の増強等の一連の施策と、物価安定策等を強力に推進していくことが、この際肝要と思われるのであります。  さて、このような経済情勢を背景にでき上がった新年度予算の財政規模は、一般会計三兆二千五百五十四億円、財政投融資で一兆三千四百二億円、前年度に比し、伸び率は一四・二%及び二〇・八%となっております。さらに、一般会計では、国立学校特別会計、自動車検査登録特別会計の新設によって約二百五十億円の規模が減少しておりますが、これは財政規模を過小に見せかける財政操作のトリックと思われるのでありまして、これを含めると実質一五%の伸び率となっているのであります。また財政投融資も、本年度補正に回した、国鉄、輸銀への資本追加分各百億円や、国鉄への国庫債務負担行為ないし財政補正四百億円は、実質的には新年度規模に加算すべきものであり、これらを加えると財政投融資の伸び率は二七%にも達するのであります。一方、三十九年度における政府推定の経済成長率は九・七%となっております。このように経済成長率以上に財政が膨張することは、国民所得に対する予算額の割合が増加しつつあることを示すものであり、国民所得に対する予算の割合が伸びることは、国民の租税負担を重くすることであります。また、自然増収六千五百億円は、成長率九・七%とすれば、大体目一ぱいの数字と思われるのでありますが、政府は、一千億ないし一千五百億円程度の補正財源を当然予想しての見積もりと思われますので、実質には、予算編成作業の当初、名目一二%を前提にして編成されているように思われるのであります。  国際収支の改善と物価の安定が叫ばれている今日、このような膨張予算を組むことは、当然政府需要を増大させ、生産増加による輸入を増大させるばかりでなく、政府には物価安定の意図がないと言わざるを得ないのであります。そして、毎年連続の消費者物価の高騰は、人件費、予算単価の引き上げなどを通じて財政膨張の要因となり、特に財政支出の中でも、公共投資は、その基礎をなす道路、港湾、治山治水等の各長期計画について一連の改定が行なわれましたが、それは計画自体を補正する意味もありますが、主として労務費、資材費、用地費等の建設コストの高騰によって既定計画の実施が不可能になってきたことによるのでありまして、必ずしも事業量の増大をはかっていると言えないのであります。  また、三十九年度予算の矛盾は、特に財政投融資において顕著な形であらわれていると言えるのであります。まず、原資の面におきまして、資金運用部八千五十四億円、公募債借り入れ金二千五百億円、外貨債等は五百三十六億円となっております。また、一般財源より産投資金へ八百十二億円を繰り入れておるのでありますが、これは一般会計で行なわれてきた一般行政を財政投融資に移し、金融的ベースに乗せて収益事業化していく行政の事業化であり、公募債借り入れ金の中で政府保証債が、本年度に比べ、五百七十一億円増の一千八百十億円に達しており、そしてまた、住民税の減税に伴う地方減収分六百億円の元利補給債の発行は、現行国債発行制度の抜け道であり、五年間による一種の延べ払い方式による事実上の赤字公債であり、警戒をしなければならない問題であります。  こうした三十九年度の財政規模の膨張は、所得倍増計画による日本経済のジレンマであり、膨大な財政支出と、一方において金融引き締めという矛盾をはらんだ予算と言えるのでありまして、われわれといたしましては賛成しかねるのであります。  次に、税制について申し上げます。  三十九年度の税制改正によりまして、国税、地方税を合わせまして、平年度は二千百五十二億円という、一応二千億減税の形は成立いたしておりまするが、国民の一番聞きたいのは、初年度の、つまり新年度のことであります、六千八百億円という史上最大の自然増を見込み、そのうち、初年度分は千四百二十五億円の減税であり、国税のみでは千三億円にすぎないのであります。これからガソリン税の一〇%引き上げ分百八十二億を差し引くと、八百二十一億円が正味減税額ということになり、自然増収のたった一二%を減税にしたにすぎないのであります。また、地方税減税は、地方道路税の一〇%、軽油引取税の三〇%の各引き上げ分を差し引くと、三百五十億円程度となるのであります。シャウプ勧告以来の十四年ぶりの大減税といわれながら、国民の税負担率は、逆に二二・五%とはね上がり、まことに奇妙と言わざるを得ないのでありまして、減税というより、むしろ物価上昇による税負担額の調整にすぎないのであります。  また、所得税減税は、物価高に対する事後的調整ともいうべきものであり、給与所得者の標準五人世帯の課税最低限は、三十九年度分四十七万千百四十五円となり、一応五万円程度の引き上げとなっておりまするが、かりに、この世帯の年収が七十万円だとすれば、年間の減税額は三千五百五十八円、一月当たり三百円弱の減税にすぎないのであり、三十九年度の物価高には何らの対応措置がされておらないのであります。  また、開放経済体制を迎えて、大蔵大臣の御得意である資本蓄積、内部保留ということも大事でありますが、耐用年数の短縮による企業減税等は、大企業に傾斜する傾向があり、また、税制調査会の反対を押し切り、証券投信の源泉分離を取り上げ、給与所得控除の引き上げ幅の削減と引きかえたのは、はなはだ納得がいかないのであります。  以上、税制に対して若干の批判をいたしましたが、まだまだ減税の余地があり、勤労所得者等の大幅減税を断行すべきであります。また、政府の中小企業対策、住宅対策等の予算措置を見ましても、まだまだ貧弱であり、われわれといたしましては、賛成をいたしかねるのであります。  以上をもって私の反対討論を終わります。
  287. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 次に奥むめお君。
  288. 奥むめお

    ○奥むめお君 私は、ただいま議題となっております昭和三十九年度一般会計予算外二案について、希望条件を申し上げ、賛成いたすのであります。  いまさら申すまでもなく、昭和三一九年度一般会計予算は、前年度当初予算よりも四千五十四億円増の三兆二千五百五十四億円でございます。また、財政投融資計画額は、前年度より二〇・八%の増加でございます。予算の歳出も、財政投融資も、年々ふえてまいりますのは、経済社会の進歩発展に伴いまして、国の施策の拡大、充実のために支出のふえることももちろんございましょうが、諸物価の高騰や、圧力団体によります予算のぶんどり競争等によって、必要以上にふくれ上がっていることも見のがせません。しかも、これらの歳出をささえるべき歳入は、ほとんどが国民の税金であることは言うまでもなく、そのうち自然増収にたよる部分の多いことは、まだまだ国民の税負担が、政府の減税の呼び声にもかかわらず、きわめて大きいことを物語っているのであります。それだけに、予算にしろ、財政投融資にしろ、そうしてむだなく、国家国民に役立つように使われるべきです。特に、予算や財政投融資の執行に当たりましては、次の諸点に留意していただかなければなりません。  第一点は、物価の引き下げについてであります。これは経済の高度成長一辺倒である池田内閣が、物価の騰貴は成長政策に当然起こってくるものだと言わぬばかりの楽観論のもとに予算案を編成し、財政投融資計画をつくり、物価問題に真剣に取り組まないからではないでしょうか。物価問題に対する世論のきびしさの前に、政府としても、物価引き下げ対策について、公共料金の一年引き上げ禁止や、労働賃金の抑制措置を実施しようとはしておりますが、それらの措置で、はたして物価、特に消費者物価を抑制することができるか、はなはだ不安です。この予算案がほんとうにインフレ予算であるかどうかは、今後の経済政策、特に財政金融政策にかかっているわけでありますが、物価を下げる施策を、いまこそ強硬に推進すべきであります。  第二点は、事業者の社会的責任と消費者の権利についてであります。  生産業者、販売業者、サービス業者、大企業、中小企業を問わず、いやしくも事業の経営者であるものは社会的責任を持ち、つくる者、売る者、サービスを供与する者、安くてよいものが、正しく消費者の手に渡るようにすベきです。消費者は、まだまだ高い商品や、サービスの選択の目が肥えていません。粗悪な品物をごまかして消費者に売ろうとする悪徳業者がまだまだはびこっているのは、社会的責任を感じない業者が多く、消費者の弱みにつけ込んで自分の利益を不当に得ようとしているからであります。その上こういう有形無形の損害に対して、消費者には何の補償も救済措置もなく、ただ泣き寝入りしている現状であります。  政府自体が独禁法を骨抜きにしてまで独占価格を維持させることをやり、流通機構の整備にはなかなか手をつけないありさまですし、一般消費者教育には至って冷淡である限り、これらの業者の悪徳行為は根を断たないと思います。政府は進んで頭を切りかえ、事業者の社会的責任を自覚するよう指導するとともに、消費者の権利を守るための措置を講じてもらいたいと思うのであります。そういう意味でも、私は生活協同組合などは、もっと政府の手によって育成、拡充するのも物価値下げの一つの道と思うのであります。  第三は、消費者行政確立についてでございます。消費者行政確立のためには、欧米先進国のように、消費者省あるいはこれに準ずる強力な行政機関が必要であります。いまの政府にすぐ消費者省をつくれということは無理かと思いますが、幸い消費者行政の推進について、ようやく重い腰を上げようとしているのですから、この機会に各行政官庁、特に商品やサービスを所管している官庁は、従来からのなわ張り根性を捨て、いままでの生産第一主義の考え方を切りかえて、消費者の利益を守るために、公取や経済企画庁を中心にお互いに協力してもらいたいと思います。  第四点は、婦人問題でございます。男女同権は民主国家の最大の条件であります。しかし、婦人の社会的地位については、わが国の長い間の風習なり慣習から、まだまだ男性と同等の取り扱いまでいかない点があると思います。特に未亡人問題と婦人労働については、一般の人たちの関心と理解が足りないのではないでしょうか。未亡人で生活に因っている人には優先的に仕事を与えるとともに、その生活を積極的に擁護し、また、婦人を職場に置いて、その能力と婦人なるがゆえの特性を生かして、管理的職能の分野をたくさん与えることはもちろん、程度の高い頭脳労働につかせるようにすべきであります。また、働く母を持つ子供のためには、特に留意してほしいことがたくさんあります。そのために政府は、職業訓練、職業紹介、企業者へのPR等について、積極的な努力をすべきであると思います。  以上希望をつけまして、政府の特段の配慮を期待し、賛成の意を表明し、私の討論を終わることにいたします。   —————————————
  289. 太田正孝

    委員長太田正孝君) ただいま委員の変更がございました。木村篤太郎君が辞任され、柴田栄君が選任されました。   —————————————
  290. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 次に村尾重雄君。
  291. 村尾重雄

    ○村尾重雄君 私は、民主社会党を代表いたしまして、政府提案の昭和三十九年度予算三案に対し、反対の趣旨を明らかにいたしたいと思います。  まず、政府予算の基礎に重大な欠陥を持っていることを、ごく簡潔に数点指摘いたしたいのであります。  第一に、現在わが国の国際収支が次第に悪化に向かっている事実、過去三年間続いた消費者物価の上昇が依然として政府の無策から抑制されていない事実に対して、何らの有効なる具体策を準備していないので、政府案は単なる膨張予算として財政支出をなし、国際収支と物価の不安定さらに招来するおそれを内蔵していること。  第二に、政府案は、前年度よりも租税自然増収を約六千八百億円の多額を見積もりながら、国税の減税は千三億円の規模にすぎない。また、所得税の免税点の引き上げは、五人世帯の給与所得者にあっても、年収約四十七万一千円であって、政府想定する明年度の標準家計規模を下回るものであって、大衆減税は軽視されている。  また第三に、歳出面では、大幅増額されたのは、公共事業、社会保障、文教、食管会計繰り入れ、防衛各予算の当然増であって、経済格差是正、住宅と環境衛生など国民福祉の増進のための歳出は依然としてあと回しにされている。いまや歳出予算は、既定方針の踏襲のみを続けていては、経費の当然増加がまず大型化して、新規政策のための財源が過小になることは必至となっている。この意味において、政府の歳出予算は明らかに行き詰まっている。  第四に、財政投融資計画の規模は、前年度より二千三百五億円増となったが、その融資先が依然として民間大企業に帰着しており、これは財政投融資の性格が大企業奉仕に固定していることを意味するものであって、財政投融資のあり方を根本的に再編成する必要があることをわれわれは再々申し入れたが、依然として取り上げられておらないこと。  第五に、政府は、住民税減税の財源として減収補てんのための特例地方債の発行を許容して、その元利の三分の二を国の負担としているが、自主財源増強がきわめて困難なる市町村にとって、かかるこそくなる措置は、地方住民に対する行政水準の引き上げに役立たず、単なる減収補てんにすぎない。特例債の発行は、市町村の赤字団体への転落の道を開くものである。政府は、地方自治の存立を保障するよう積極的な財政措置を講ずるべきであり、政府はその道を講じておらない。  第六に、いまや年度予算の編成は、その年度の経費充足をもって足れりとするのではなく、相当の長期間にわたっての計画的な支出継続をもって、計画的に経済格差の是正、国民福祉の向上等を実現するための長期見通しに立つべきである。この点において、政府予算案は、場当たり、無責任、公約不履行のきわみを尽くしている。  われわれは、政府予算案を批判するとともに、次のごとき五つの基本方針主張してまいったのであります。  一、国の予算は、国民福祉の増進を予算編成の鉄則とすべきである。明年度の国税、地方税の減税は、給与所得者が五人世帯で平均月収五万円の家計支出を行ない得るよう所得税減税を行なうことを軸として実施すべきである。  二、医療保険、国民の老後保障の諸制度、公営住宅の建設、住宅環境施設と文教施設の整備拡充等の国民福祉増進のための歳出については、少なくとも最低三カ年継続の改善計画を立て、その計画に基づく歳出予算として編成すべきである。政府案は、任意の政策に余剰財源を総花式に配分しているだけであって、政策増強の計画性が保障されておらない。  三、政府は、中小企業、農業等の格差是正について革命的前進をはかる政策実施を公約したにもかかわらず、政府案は、特に中小企業対策予算の計上において、きわめて消極的である。中小企業経営の過当競争と大企業圧迫を排除しつつ、経営近代化をすみやかに促進するよう、さらに近代化対策費を増額すべきである。  四、現在の地方財政は、地方公共団体ごとの格差がはなはだしくなっているので、地方税減税により、行政水準向上のための必要経費の確保が困難になっているものが多くなっている。したがって、政府は、地方税減税による地方財源の減収に対しては、過渡的な赤字補てん措置のみならず、自主財源増強のための特別措置を講ずべきである。  五、政府は当面する消費者物価高を抑制するため、価格調整に必要なる物価対策費を積極的に計上すべきである。  以上、わが党の主張と、あまりにもかけ離れた政府予算に対して、遺憾ながら賛成することができません。  以上、政府案に反対するわれわれの立場を申し述べまして、私の反対討論といたします。
  292. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 須藤五郎君。
  293. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は日本共産党を代表して、三十九年度政府提出の予算案に反対し、その撤回を要求するものであります。  反対する第一の理由は、この予算案は、日本の経済をアメリカに一そう金融的に従属させ、日本経済を一そう困難におとしいれ、日本国民に耐えがたい苦悩を強い、ひとり独占資本の資本蓄積のために奉仕しようとしているからであります。  池田内閣は、過去三年間、日米経済協力に基づいて高度経済成長政策を強行してきましたが、それがいまや至るところで解決しがたい基本的矛盾を拡大し、開放経済のもとで国際収支の構造的赤字を露呈させ、その処理を通じて本格的な過剰生産恐慌を顕在化させざるを得なくしているのであります。これは明らかに池田内閣経済政策の失敗であり、責任はあげて池田内閣にあります。ところが、政府は自己の政策の失敗をおおい隠し、その原因があたかも勤労大衆の賃金引き上げや国民の消費水準にあるかのように偽り、金融引き締めを口実にして、中小企業の倒産、整理、合理化、賃金ストップ、首切りなど、すべての犠牲を人民大衆に押しつける一方、独占資本に対しては一そう集中合併を促進し、スクラップ・アンド・ビルドを強行させ、国家財政と金融の総力をあげて独占資本の補強、強化に奉仕しようとしているのであります。そのためにも政府は、アメリカ独占資本の直接投資や、ひもつき融資に依存し、独占資本への不況の打撃を最小限に防ごうとしているのであります。加えて、ことし池田内閣は、IMF八条国移行、OECD加盟によって、日本経済の完全自由化を余儀なくさせたのであります。これは日本の経済を、世界資本主義市場における激しい市場争奪戦のまっただ中に投げ込み、わが国の産業、農業を外国商品と外国資本の進出のもとに野放しにすることを意味するものであり、わが国の産業、農業に破壊的影響を与えるものであります。また同時に、わが国は、これによって自国の貿易、農業、産業、経済政策を自主的に決定する権利さえ失なおうとしているのであります。こうして池田内閣は、日本経済へのアメリカ資本の進出と支配を強め、わが国の産業と国民生活を重大なる危険にさらそうとしているのであります。私は池田内閣のこのような政策を押し進める三十九年度予算に強く反対するものであります。  本予算案に反対する第二の理由は、政府がこの予算の実行によって、わが国をますます危険な軍国主義復活の道に追いやろうとしているからであります。この予算案には、二千七百五十二億円に及ぶ防衛関係費をはじめ、膨大な軍事予算が組まれております。さらに、現在政府の手で立案されつつある第三次防衛計画によれば、アメリカの要求する肩がわり自主防衛の名のもとに、現在の倍をこえる軍事費が計上されることは必至であります。すでに大独占の手によって軍需生産の基盤は確立されつつあり、その技術水準をもってするなら、いつでも軍事経済に全面的に移行することは可能な状態になっているのであります。  これにあわせて、防衛庁の強化と省への昇格、平和部隊の名による謀略ゲリラ工作の予算計上など、池田内閣の軍国主義海外侵略を目ざす諸政策が着着と進められております。教科書の国家統制、金鵄勲章や紀元節の復活の動きなど、新暴力法、労働法の改悪、憲法改悪を目ざして一連の軍国主義政治、反動の強化に一そうの拍車がかけられております。以上は、アメリカ帝国主義の侵略政策が特にアジアについて破綻しつつある今日、池田内閣がアメリカの新しい核戦略に対応して自衛隊の核武装化を急ぎ、中国封じ込め政策、日韓会談を中心とするアジア諸民族抑圧の下請を買って出ようとするものであって、私は断じてこれを許すことはできないのであります。  反対する第三の理由は、この予算案が国民に対する大収奪予算であるからであります。本予算案の中で最大の支出を占める公共投資のほとんどは、重化学工業、独占資本のために国民の血税で需要を保証し、さらに、彼らの産業基盤をつくるために道路、港湾、鉄道、用地用水などをつくってやるものであります。そのために池田内閣は従来の任意主義を放てきし、土地収用法では強権をもって、国民の土地、財産を収奪し、地方自治体からは河川の管理権を取り上げ、補助金を打ち切り、地方債の増発、受益者負担の増大など、地方自治を破壊し、国民の負担を一そう耐えがたいものにしております。  池田内閣の高度福祉国家のかけ声にもかかわらず、社会保障費の増額は物価値上がりにさえ追いつくものではありません。また一世帯一住宅の公約は全く捨てて顧みようともされておりません。ところが独占資本のための支出の財源は、大増税と厚生年金など掛け金を引き上げ、事実上の赤字公債の発行などによって大量にまかなわれようとしておるのであります。明らかに池田内閣が唱える高度福祉国家は、国民の福祉とは縁もゆかりもなく、いわば強制貯蓄と増税、インフレ政策によって一国の社会的資本と国民の零細な預金を財政金融政策を通じて独占資本の資本の蓄積に役立つように再分配するものにほかならないのであります。  また、政府は二千億円の減税を公約しました。しかし、実際には減税どころか、六千八百億円に達する自然増収という名のもとに大増税が強行されることになっております。一方、独占資本に対しては、自由化対策、輸出振興などを口実にして、露骨な税の減免が公然と行なわれようとしています。加えて政府保証債の増発、地方税減税補給債などは、事実上の赤字公債の発行であって、インフレをあおり、一そう物価を高騰させ、国民の生活をさらに苦しくさせるものであります。かかる予算案に反対することは、国民のための当然の義務と考えるものであります。  最後に、私は、本予算案に織り込まれた池田内閣の政策は、わが国の現状と将来にとってきわめて危険なものであることを指摘せざるを得ないのであります。池田内閣は、本予算の実施によってアメリカの中国封じ込め政策に一そう協力し、アメリカの指図に基づいて日韓会談を強行しようとしています。だが、現在の内外情勢は、このような池田内閣の政策がやすやす実行できるものではありません。中国封じ込め政策は破綻しつつあり、日韓会談も朝鮮人民の戦いで大きな困難に直面しています。わが国民は、必ずや団結して、この民族を破壊に導くような池田内閣の政策を打ち破り、アメリカの従属を断ち切り、独立、平和、民主の新しい日本への道を進むでありましょう。私は、かかる反民族的、反人民的予算に国民とともに強く反対するものであります。   —————————————
  294. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 委員の変更がございました。  吉江勝保君が辞任され、日高広為君が選任されました。   —————————————
  295. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 以上をもちまして、討論通告者の発言は全部終了いたしました。よって三案の討論は終了したものと認めます。  これより三案の採決を行ないます。昭和三十九年度一般会計予算昭和三十九年度特別会計予算昭和三十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して問題に供します。  三案を衆議院送付どおり可決することに賛成の方の御起立を願います。   〔賛成者起立〕
  296. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 起立多数と認めます。よって三案は多数をもって衆議院送付どおり可決すべきものと決定しました。  なお、三案の議長に提出する審査報告書の作成につきましては、慣例によりこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  297. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時四十二分散会