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1964-03-28 第46回国会 参議院 予算委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月二十八日(土曜日)    午前十時二十一分開会   —————————————   委員の異動  三月二十八日   辞任      補欠選任    渡辺 勘吉君  米田  勲君    田中  一君  安田 敏雄君    藤原 道子君  矢山 有作君    浅井  亨君  小平 芳平君    鬼木 勝利君  中尾 辰義君   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     太田 正孝君    理事            大谷藤之助君            斎藤  昇君            平島 敏夫君            村山 道雄君            藤田  進君            山本伊三郎君            鈴木 一弘君            高山 恒雄君    委員            井上 清一君            植垣弥一郎君            江藤  智君            木村篤太郎君            草葉 隆圓君            小山邦太郎君            木暮武太夫君            後藤 義隆君            郡  祐一君            佐野  廣君            塩見 俊二君            杉原 荒太君            田中 啓一君            館  哲二君            加瀬  完君            木村禧八郎君            瀬谷 英行君            戸叶  武君            羽生 三七君            浅井  亨君            鬼木 勝利君            小平 芳平君            村尾 重雄君            須藤 五郎君            市川 房枝君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    法 務 大 臣 賀屋 興宣君    外 務 大 臣 大平 正芳君    大 蔵 大 臣 田中 角榮君    文 部 大 臣 灘尾 弘吉君    厚 生 大 臣 小林 武治君    農 林 大 臣 赤城 宗徳君    通商産業大臣  福田  一君    運 輸 大 臣 綾部健太郎君    郵 政 大 臣 古池 信三君    労 働 大 臣 大橋 武夫君    自 治 大 臣 赤澤 正道君    国 務 大 臣 佐藤 榮作君    国 務 大 臣 福田 篤泰君    国 務 大 臣 宮澤 喜一君    国 務 大 臣 山村新治郎君   政府委員    内閣官房長官  黒金 泰美君    内閣法制局長官 林  修三君    行政管理政務次    官       川上 為治君    北海道開発政務    次官      井川 伊平君    防衛庁長官官房    長       三輪 良雄君    経済企画政務次    官       倉成  正君    経済企画庁調整    局長      高島 節男君    経済企画庁総合    計画局長    向坂 正男君    経済企画庁総合    開発局長    鹿野 義夫君    経済企画庁水資    源局長     崎谷 武男君    外務省アジア局    長       後宮 虎郎君    外務省条約局長 藤崎 萬里君    大蔵大臣官房財    務調査官    松井 直行君    大蔵省主計局長 佐藤 一郎君    大蔵省理財局長 吉岡 英一君    文部省初等中等    教育局長    福田  繁君    厚生省公衆衛生    局長      若松 栄一君    厚生省環境衛生    局長      舘林 宣夫君    水産庁長官   庄野五一郎君    通商産業政務次    官       田中 榮一君    通商産業省企業    局参事官    馬郡  巖君    通商産業省重工    業局長     森崎 久壽君    運輸省海運局長 若狭 得治君    運輸省鉄道監督    局長      廣瀬 眞一君    労働政務次官  藏内 修治君    労働大臣官房長 和田 勝美君    労働省労政局長 三治 重信君    労働省労働基準    局賃金部長   辻  英雄君    建設政務次官  鴨田 宗一君    自治省行政局長 佐久間 彊君    自治省財政局長 柴田  護君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    日本国有鉄道総    裁       石田 礼助君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十九年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十九年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十九年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 太田正孝

    委員長太田正孝君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、委員の変更について御報告いたします。  本日、渡辺勘吉君、田中一君、藤原道子君が辞任され、その補欠として、米田勲君、安田敏雄君、矢山有作君が選任されました。   —————————————
  3. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 昭和三十九年度一般会計予算特別会計予算政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を行ないます。  本日から、締めくくり総括質疑に入ります。まず、木村禧八郎君。
  4. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 池田内閣所得倍増十カ年計画に基づきまして、三十六年度を初年度とする三カ年年率九%の高度の経済成長を達成するといういわゆる高度経済成長政策を打ち出しましてから、今月でいよいよ三年度目を終わるわけであります。そこで、池田内閣が公約しました三年間年率九%の高度経済成長政策の期間が終わるにあたりまして、この三年間に株は暴落して、成長率は急上昇し、あるいは急低下を演じました。消費者物価は急激に騰貴をいたしました。依然としてまだその騰貴はやんでおらないわけであります。国際収支は悪化し、わが国経済国民生活にきわめて大きな混乱と不安と不均衡をもたらしましただけに、その実績をこの際厳正に検討し、その締めくくりを行ない、けじめをつけまして、池田内閣をしてその政治的責任を明らかにせしめる必要があると思うわけであります。こうした重大な政治責任をあいまいにせしめてはならないと思います。また、かかる経済成長政策主張者であり推進者でありました池田首相は、公約いたしました高度経済成長政策の三年間が終わるこの機会に、高度経済成長政策によってもたらされた事態を謙虚に反省し、その失敗原因を探究し、その失敗から学ぶべきものを学びとって、これを生かして、今後の誤まりなき政策をこの国会を通じ、この際国民に明らかにする責任があると思いますし、私はこれを要求いたします。非常に大上段のかまえでございますが、私は以上の観点に立って、三十九年度予算と密接な関係のある具体的な問題をとらえて、もっぱら池田首相論戦をいどみまして、池田内閣政策の誤まりをただしたいと思うのであります。  まず第一は物価問題でございます。この物価問題に関連しまして、池田首相質問いたしますが、政府は現在、労働組合が行なっております春季賃上げ要求に対しまして賃上げ抑制についての政府見解発表することになっているといわれております。きのうも衆議院の本会議におきまして、問題として取り上げられましたが、池田首相はこの見解発表されるのでございますか。それともわれわれの要求のようにこれを取りやめるお考えがないかどうか、まずその点を伺いたいと思うのであります。
  5. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御質問の焦点がはっきりいたしませんが、政府は何か賃金問題について声明しておりますか、また、声明しようとしているのでありますか、ちょっと質問の要点がわかりません。
  6. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 賃上げ抑制に関する政府見解をまとめて発表するということが新聞に伝えられております。その点について政府賃上げ抑制に関する見解を取りまとめて発表をするのかどうか。
  7. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 賃上げ抑制ということについて政府意見発表するということは何もきまっておりません。私は閣議におきまして、いま八条国移行への大事なときなんだ、およそ労働賃金というものはその会社々々によって労使の間にいわゆるりっぱな労使関係の樹立につとめるという趣旨でお話し合いできめると同時に、やはり賃金というものはその国全体のたとえば農業、中小企業等に携わっている人たち所得等も勘案し、国の将来を思い、良識ある折衝によってきまるものだという発言をしました。そういう点について企画大蔵で各国の最近の経済情勢賃金情勢、そのもたらす結果について検討したらどうかということを言っておるのでありますが、賃金抑制とか何とかという問題でやっているわけじゃありません。正常な姿、望ましい姿がいかにあるべきかということについての検討を私は令じておるのであります。
  8. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 検討をお命じになったということでございますね。そうしますと、新聞がこれまで伝えられたところと非常に相違があるわけです。私は三月十三日に大蔵委員会で、大橋労働大臣にこういう質問をいたしたわけです。いま労働組合がいわゆる春闘ですね、賃金引き上げ要求をして、労使が自主的に賃金交渉をやっている際に、労使間で自主的にきめるべき賃金政府が何か干渉めいたことをやる、介入するような印象を与えるような見解発表することは好ましくないと思うが、この点について労働大臣どういうふうにお考えかと質問いたしましたところ、労働大臣は、私も全くその意見には同感でございまして、「ことにただいま春闘のまっ最中でございますので、労働省といたしましては、賃金問題について特別な発言を極力抑制することにいたしております。また、政府全般といたしましても、注意いたしている次第でございます。」こう答弁しているわけなんです。したがいまして、政府は、この労働大臣が私に答弁されたような態度で臨まれるのかどうか。先ほど総理は、政府はこの春闘のさなかに、はっきりと賃金物価とあるいは生産性等関係について、十分な科学的な根拠もないのに、賃上げ物価引き上げる、だから賃上げをすべきではない、すべきではないとは言いませんが、自粛を求めるような、労使自主的にきめるべき賃金について介入するような意見発表するのではない、検討ですね。私は言いましたように、この点については、まだまだ諸外国でもはっきりしてないわけですね。賃金生産性の問題、あるいは物価との問題、日本においては、かなり日本の現状について具体的な調査もあるようでございます。そういうものを見ますと、賃上げ消費者物価値上がり原因である、これをはっきり論証する根拠はないと思うのです。あるならば、政府のほうでお示し願いたいと思うのです。ですからそういうことが、まだ十分に具体的に、理論的にも、実際的にも論証されてない際でありますから、そういう不確かな、論拠も十分でない問題について、政府がそういう見解発表することは、これは政治的な介入であり、干渉であるという印象を与えるから、そういうことはすべきでないと思いますが、ただいま総理は、そういう政府見解発表しないと、ただ、大蔵大臣に諸外国事例等検討を命じたということでございますが、そういうふうに了解してよろしいか。政府は特にそういう春闘に当たって見解発表するのではない、検討を命じたのである、そういうことでございましようか、重ねてお伺いします。
  9. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 木村さんがいつも言っておられるように、政府はその国の経済国民生活、あるいはまた将来の経済あり方につきまして、政府は一応責任を持っております。望ましい姿はこうであるということは、あらゆる点において政府考えた上で発表する必要があるときには発表をする。発表を要しないときには発表いたしませんが、検討を続けていくことは当然のことではありますまいか。われわれは国民生活に対しまして一応の責任を持っているわけです。国の経済あり方について検討をし、必要があれば発表することは政府の当然の責任だ。ですから、一応の検討をいたしました上、そして、政府見解発表することがあるかもしれません。これはしかし、個々会社個々使用者労働者の問題ではございません。一般日本経済あり方として、物価にしても、賃金にしても、あるいは生産の要件にいたしましても、政府調査し、あるいはまた要すれば発表することは、これは適当な方法だと考えております。いま発表するかしないかはさまっておりません。検討の結果でございます。
  10. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでしたら、ある程度了承できますが、いま春闘のさなかに発表するということは、大橋労働大臣が言われたように、私は適当ではないと思います。また世論もこれを支持しておりません。総理もお読みになったかもしれませんが、二十七日の朝日新聞社説は、政府がこういう見解発表することは軽率に過ぎるきらいがある。こう労働組合を刺激して、春闘のさなかにそういう見解発表することは軽率に過ぎるきらいがある。また、賃金問題に限ったことではないけれども、政府が積極的にそういう問題に介入することは、労使ともまだ十分に身についていない経済的な民主主義態度成長をはばみ、権力依存官僚統制傾向を強める懸念がある。こういう社説発表しているわけであります。ですから、私は政府が十分に諸外国の例を検討し、また日本実態についても、私も多少そういう点研究しておりますが、また諸外国でも賃金物価との関係についてはなかなかむずかしい問題があるのでありまして、そう簡単に論断を下すことはできません。特に、個々に具体的にその国の実態等調査しませんと、誤った結論が出される危険がある。それで、これは私は宮澤長官にも申したのですが、たとえばアメリカでもそういう問題が起こっておりまして、それで総理承知と思うのですが、ハンセンなんかもこの書物の中にはっきり、たとえばインフレの問題についてウェージ・プッシュですね、コストインフレ、よく言われる賃金物価引き上げるという理論については、これは非常にトリッキイな議論である、非常に落し穴のある議論である、こういうことを言われておりまして、ハンセンアメリカの過去の賃金物価との関係について具体的に調査いたしまして、どうしても賃金物価値上げ原因であるということを論証することはなかなか困難なんですね。そういう点につきまして問題もございますので、十分に政府が諸外国の例あるいは日本人たちのを研究されること、これは当然であります。その結論が出てくれば、われわれはその結論に基づいて論戦をいたします。それで論戦によってもっと深める、これは前向きで、何も非難をするのじゃはいのです。コンデムネーションではなくてクリエティブな批判をしてお互いにいい結論を出していく、そういうことをわれわれも望むわけです。ですから、総理におかれても、この春闘のさなかにそういう見解発表されることは差し控えられまして、大体労働大臣が言われたような線でいかれることが適当ではないか。ですから、もちろん検討にも時間も要しましょうし、まあ春闘が過ぎてから、かなり学者あるいは学識経験者等にも十分にこの意見を徴し、具体的なそういう調査研究を経た上で十分にこの裏づけのある見解発表されるように私は願いたいと思うのです。春闘のときはまあ避けられるのが適当ではないかと思いますが、この点についてもう一度御意見を伺いたいと思います。
  11. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、新聞記者会見いたしませんから、真意が伝わっていないうらみがあるわけでございますが、少なくとも私は前提として春闘考えて言ったわけではございません。八条国移行という重大な画期的ないま状態にあるのであります。これが私の主眼でして、春闘があればどうこう——私はもう春闘には四回あっております。四回あっておりますが、そういうことを言ったことはないです、去年もおととしも、さきおととしも。いまあなた御承知のとおり、八条国移行といういわゆる日本がほんとうの一人前として立って、国際経済に立ち向かって、そしてこれからうんと伸びていこうというこの重大時局だから、しかもまた、国内的にも国際収支あるいは物価の問題等あるときだから十分考えなければいかぬ、こういうことで私は検討しておるのであります。こういう問題は春闘があろうがあるまいが当然のことじゃないかと思う。それをすぐ春闘に結びつけられることはいかがなことかと思います。ただ、私はここであなたの賃金物価とはいかにも関係はないのだというお話でございますが、これには相当私は異論がある。これは質問に対するお答えでないから申し上げませんが、あなたのあの前提でこれから議論されると、よほどまた二人の間がかけ離れてくるということを申し上げておきます。
  12. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それではこの問題について議論してまいりましょう。明らかにいたしたいと思います。  そこで、それではまず総理と、賃金物価との関係、それも抽象論ではなく、日本実態に基づいて、日本現実に基づいて、これを議論しなければならぬと思うのです。もちろん諸外国例等も参考にはなります。総理は、これは新聞記者との会見でございます、新聞に出ておったのですが、イタリアとかフランスの例をとられて、またスカンジナビア諸国、あるいはイギリス等においても、インカム・ポリシー所得政策というものを打ち出しております。しかし、諸外国の例を引用される場合には、日本と非常に違った事情があるわけです。政府所得政策というものを出そうとしておりますけれども、それはみんな国によって違うのです。たとえば、第一に違うところは、所得政策を打ち出して、労働者に協力を求めるという場合には、革新政党が政権を取っておって労働組合代表が閣僚を出しているそういう国とか、あるいはまた、労使双方から、あるいは政府も入って、総合的な経済企画機関をつくりまして、その中に労働組合代表が入っているというようなときとか、あるいはまた、非常な危機状態、戦争とか、あるいは恐慌とか、非常な危機経済が立ち入ったというような場合です。大体そういう場合でありまして、日本の場合とはその点が非常に違うわけです。ですから、諸外国の例を出すときには、よほどこれは日本と違うということを頭に入れて出さなければ私はいけないのじゃないかと思うのです。そこで、OECDに参加しますと、OECDは、そういう特に所得政策について特別の研究をしております。OECDは御承知と思いますが、これは日本経済調査会で取りまとめたものでありますが、非常に詳細な研究をしております。これによって見ましても、必ずしも成功してはおらないし、また、イギリスなんかでもTUCが拒否している例があるわけです。イギリスはあまり成功しておりませんようですね。ですから、非常に違うのでございますから、すぐ、OECDに参加するのだ、だから日本OECDのそういう諸国に歩調を合わしてインカム・ポリシー所得政策を打ち出すという態度は軽率ではないかと思います。そこで問題は、諸外国の例を引用する場合には、そういう点に注意しなければなりませんが、日本のいまの現実の問題としまして、賃金物価生産物関係について質問いたしますが、まず労働大臣に伺います。  日本の特に消費者物価は、昭和三十五年の末ごろから上がり出しまして、昭和三十六年断層的に急ピッチで上がりましたが、賃上げ物価値上がり原因になっているという根拠はあるかどうか、その点をまず伺いたい。
  13. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 御質問の点は、なかなか回答のむずかしい問題であると思います。しかし、大乗的に、ある種の結論が常識としていわれておることでございますが、それは、木村さんも御承知のとおり、現在の大企業におきましては、生産性向上は非常に顕著でございまして、これは最近数年間の統計によりましても、賃上げの幅以上に大企業生産性の幅が上回っておるということが言えると思います。しかし、その中にも例外がございまして、たとえば石炭産業のごとく、いわゆる斜陽産業にありましては生産が減退いたしておりますので、逆に賃上げが、他の産業に比して、幅は小さいのでありまするが、しかし、それでも生産性のほうは逆に低下しておるというので、生産性賃金値上がり方の幅は、一般の大企業とは逆になっておる、こう言えると思います。それから中小企業サービス業につきましては、全般的に趣が変わっておりまして、御承知のとおりサービス業並びに中小企業等におきましては、その性質上、現在までのところ、生産性向上一般的には非常に劣っておるのであります。しかもその一面におきまして、経済成長の進行に伴ないまして、労働需給関係が非常に逼迫をいたしてまいっておりまするので、従来比較的に賃金が安かったところの中小企業サービス業においては、逆に大幅な賃上げをいたしまして、大企業賃金に幾ぶんでもさや寄せをしていくという必要があるわけでございまして、したがって、この面におきましては、賃上げの幅が生産性上昇よりも上回るという結果に相なっておるわけでございます。統計の示すところによりますると、昭和三十五年を起点といたしまして、大、中、小すべての企業を平均いたしてみますると、ここ三十六年、三十七年、三十八年もほぼ同じ傾向だと存じますが、幾ぶんずつ賃金の上がるほうが生産性上がり工合よりも上回っているという結果に相なっておるのでございます。しかし、これについてはなおもう一つの事情を考慮する必要があるのであります。それは、たまたま三十六年、三十七年は日本経済調整期に入っております。したがって、経済全体といたしまして、生産性上昇がスロー・ダウンしておるというような時期でございまするので、この景気調整期においては、諸外国の実例を見ましても、賃金上昇生産性上昇より上回るのは種々見受けられるところでございます。これが直ちに日本の最近の状態である、したがってそこに賃金抑制しなければならぬという議論を生ずるというような性格のものではないと思っておるのでございます。したがって、物価についてかような賃金上昇がどういう影響を与えるかということでございまするが、最近におけるサービス業等のいろいろな料金の引き上げ、また中小企業におきまする一部製品価格引き上げ等は、明らかに賃上げ影響を受けておるというものもあるのでございまして、私は賃上げが絶対に価格影響しないということを断言する勇気は持ち合わしておらないのでございます。しかしながら、このことは、物価政策の見地から、賃金抑制の措置を政府としてとるべきだという結論と直ちにはつながらないのでございます。先ほど来申し上げましたるごとく、現在の賃上げの主たる原因は、何と申しましても労務の需給逼迫ということにあるのでございまするから、この問題を解決していくということがなければ、賃金をいかに抑制しようと思いましても、これは経済の原則からいって抑制ができないことなんでございます。労働省といたしましては、中小企業サービス業等における労務問題の解決が、これらの問題の根本であり、同時にまた、企業の立場から申しまするというと、中小企業サービス業等における生産性向上をはかっていく、ないしは過剰サービスの節約をはかっていくということは、賃上げに伴って当然企業の側で考えらるべき事柄ではなかろうか、こういうようなことを考えておる次第でございます。
  14. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 労働大臣、伺いますが、賃金インフレとか、あるいはコストインフレとかといいますね。ウェージ・プッシュとかいいます。いわゆる賃上げ物価値上がり原因になるという状態は、どういうことを意味するかですね。先ほど労働大臣は、日本の最近の賃金値上がりは、労働需給関係からきている、特に若年労働者の不足ということもあると思うのですね。賃金は、御承知のように生活費を中心として、労働需給関係によってきまるわけですね。いまの資本主義の、つまり商品が生産費を中心にして需給関係できまると同じように、労働という商品の販売価格賃金は、生活費を中心として労働需給関係によってきまると、そういうふうにして賃金がきまる場合は、これは賃金物価引き上げ原因であるとは言えないと思うのですね。ウェージ・プッシュとか、賃金インフレとか、コストインフレとかという場合は、労働組合の交渉力ですね、力が強くて、そうしてその力によって賃上げを獲得し、それが物価影響すると、こういう場合をいうのではないですか。
  15. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 私は、経済学的にコストインフレの定義を自信を持って御説明するだけの力はございませんで、先ほど来私の申し上げておる趣旨によりまして御理解を得たいと存ずるのでありますが、それは中小企業サービス業等においては、賃金引き上げによって価格、料金の引き上げがどうしても避けられなくなっておるという事実は、これはある程度認めざるを得ないと思います。しかし、それをもって経済全体のコストインフレの徴候であるかどうかということになりますると、先ほど申し上げましたるごとく、大企業等における生産性向上がございますので、現在の段階でコストインフレという結論を出すべき時期ではないと思いまするし、しかし、これが中小企業から、ひいては大企業にまで同じような状況が波及し、そしてまた、こういう状態が今後もなお長期にわたって継続するというような事態になりまするならば、これはいわゆるコストインフレとして考えざるを得なくなるのではなかろうか。労働省といたしましては、そういう事態を避けまするために、労務の需給の面について極力努力いたしまして、その方面から賃金が生活費の必要以上に不当に高くなるということは、できるだけ避けていく、こう思っておるのであります。
  16. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 政府コストインフレとか、あるいは賃金インフレを問題にし、あるいは今後の所得政策を打ち出そうとしているこういう際に、労働行政の担当の労働大臣が、賃金インフレとか、コストインフレ等について明確な理論的な把握をしていないということはおかしいと思うのです。総理大臣、こういう状態ですよ。あなたは、さっき私に大いに議論をしよう、意見があると言いましたけれども、勉強してないですよ。経済審議会の総合部会ですよ、分科会の報告に、ちゃんと書いてあるのですよ、いま言ったように。そういうことがコストインフレなんだ、あるいは賃金インフレなんだと。つまり賃金の自然的なきまり方、資本主義の自由競争の原理に基づいてのきまり方は、つまり生活費を中心として、要するに需給関係できまるのです。それ以外に、労働組合の力が強くて、経営者に実力を持って賃上げさせる。これはまあヨーロッパにあるわけですね、そういう場合に、それが物価にはね返るときにコストインフレ賃金インフレ、こういうことであるというふうに書かれているのですよ。そこで、日本はどうかというと、日本労働組合はまだ弱いのです。ヨーロッパの労働組合より非常に弱くて、常に消費者物価値上がりよりも賃上げのほうがおくれておるわけです。そういう調査があるのです、ちゃんと。日本実態ですよ。昭和三十年から昭和三十八年の毎月勤労統計——毎勤のあれによって、製造業について調査したところによれば、消費者物価が一%上がったときに賃金は〇・四%か〇・五%しか上がっていないのです。そういう調査があるのです、ちゃんと。それから失業が一%ふえるに従って三%くらい賃金上昇率が鈍っておるわけですね。これはイギリスアメリカでやった計算と大体非常に似た計算でやっておるわけです。ですから、日本労働組合はまだ非常に弱くて、物価が上がったけれども賃上げはまだそれに追いつかないという状態なんですよ。ですから、私は、賃上げ物価との関連について御質問しておるわけなんでありまして、政府春闘を控えて、そして開放経済体制に向かうのだから物価抑制しなければならぬ、あるいは国際収支の赤字を認めなければならぬ、そこで賃金問題を非常に利用しておる。そこでコストインフレとか賃金インフレを問題にしておる。そうしてインカム・ポリシー所得政策を打ち出そうとしておる。そういう際に、日本実態調査あるいはまた賃金インフレとは何であるかという理論的な把握が全然できていないじゃありませんか。  これは経済企画庁長官に伺います。経済企画庁でもそういう御調査があるはずですよ。これまで昭和三十年から三十八年までの毎月勤労統計によって調査したところによれば、消費者物価が一%上がるのに対して賃金は〇・四%しか上がっていない、追いついていない。日本労働組合はその交渉の力によって自然的に賃金がきまる。それ以上に賃金引き上げることができていないのですよ、力が弱いものですから。物価値上がりのあとを追っかけていっておる。これが実態なんです。そういう調査があるわけです。この点について経済企画庁長官、どういうふうにごらんになっておるか。
  17. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) コストインフレというものを木村委員のように御定義なさる、そういう定義は私はあると思います。それでよろしいと思いますが、そういうことが日本にあるかとおっしゃれば、私は、そういうものは日本にない、日本労働組合はそれほどの支配的な力を持っていない、それは認めてよろしいのだと思います。ただしかし、賃上げはやはり生産費を構成するコストでございますから、経済のいかなる断面でもそれが価格関係がないというようなことは、これは言えないだろと思います。
  18. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私も、賃金物価関係がある。そんなむちゃなことを言っておるわけじゃない。日本の、昭和三十五年末から昭和三十六年、七年にかけて著しい消費者物価値上がりをもたらした、その原因賃上げにあるのかといえば、むしろ逆なんです。物価が上がったから賃金が上がっておるのです。そういう実証的な研究があるのですよ。これは政府調査ですよ。ちっとも勉強してはいないじゃないですか、こんな重大な問題を扱うのに。さっき総理が十分に研究されて言われたらよろしいのでございますけれども、ちっとも研究も理論的把握もできていないで、それで開放経済に向かうのだ、重大な段階に立ち向かうのだから賃上げは自粛してくれ、こういうふうに言っても、これは私は筋が通らないから、だからそんなに十分な調査も理論的な把握もできていないのだから、もっと十分に研究されて、この春闘の機会にはやらないほうがいいんじゃないか、十分に調査されて発表されればわれわれもまたそれに基づいてまた研究を深めます。それで論戦もいたします。そうすれば労働者の納得のする、そういう結論が出てくるわけですよ。こういう具体的な、何か根拠もないのに、ただ開放経済に向かうんだから、重大だから、この物価値上がり原因は一体何であるかということをもっと具体的に検討して賃金物価値上がり関係を、あるいは生産性との関係ですね、生産性についてもこれまで昭和三十三年、四年、五年、これまではむしろ生産性のほうが賃上げより上回っているんですよ。昭和三十七年になって、さっきお話しありましたように、不況の段階に入って生産性が落ちて賃金上昇率が上がる、これは一時的な現象でございまして、全体を通じて見ると、やっぱり生産性向上のほうが賃金値上がりよりも大きいわけです。だから資本蓄積が十分にできて世界まれに見る高度の経済成長ができたわけですよ、だからこそですよ。このことは何も私が言うだけではなく、これはいろいろな学者が論証していますよ。たとえば下村理論を批判しましたエール大学の助教授のパトリックという人も、これは「東洋経済」に翻訳が載っていますが、はっきりとそういうことを言っております。日本がこれまで驚くべき経済成長をもたらした理由は「相対的に豊富な労働力の供給が労働生産性の急速な向上と相まって、そのために大規模製造業部門におけるコストが低下したからである。」こう言っているんですね。これは、もう豊富な労働力、これは豊富な安い労働力ということを、諸外国に比べて非常に賃金が低い、そういうふうな労働力にあったということなんですね。ですから、この事態が非常にはっきりしてきたと思う。そうでないというなら政府のほらで論証していただく。それからもう一つ、物価値上がり原因として生産性の低い中小企業と、サービス業のほうは、これは若年労働者の不足から初任給が上がる、賃金上がるから、どうしてもそういう面で賃上げせざるを得ない。それが料金や物価にはね返る。それが消費者物価値上がり原因であると、これまで政府は説明していますが、島の点はやはりそういうふうにお考えかどうかです。
  19. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ちょっと基本論を申し上げておきたいと思いますが、私どもは、いままで経済政策をやってまいりますときに国内の消費を高めて、いわゆる総需要を高めることによって経済基盤を拡大する、それによって国際競争力もついてくるので、それが国民福祉につながることはもちろんでございます。基本的にそういう政策をやってきておりますので、賃金というものは低ければいい、賃金が低いほうが国際競争力に役立つという考え方は今日までやってまいりませんでした。そのことは今日も変わっておりません。で、先ほど総理が言われましたように、開放体制に入りますし、この際は調整期を迎えておりますから、全体としては需要を引き締めぎみにやっいきたいということは総理の所信表明にも申し上げたとおりでございます。そういう時点において今年の賃金の決定についてどう考えるか、これについてやはり考えますことは、国民経済の大切な一要素でございますから、考えたり、ものを言ったりすることは私は差しつかえないと思いますが、それが具体的に今年の生産性がこうであるから、したがって、賃金水準がここでなければならないというようなことを申すつもりはございません。また、それだけの実証的な研究生産性賃金との関係で実際できておらないように思います。そういう意図はございません。ただ先ほど労働大臣が長く説明されましたことは、私は表現が違いますけれども、全体として大体事実であると思います。私もそのとおりだと思いますので、中小企業なりサービス業なりの一部には、確かに相当払いにくい賃金を払っておる。それが生産性で消せないために一部物価なりサービス料金なりにはね返ってきておることは確かであると思うのであります。で、一般に大企業労使の間で賃金交渉が行なわれますときに、それをそういう国民経済全体の立場から考えてくださいと申し上げてもなかなかそこまではお考えいただけるものではないので、したがって、それを国民経済全体から考えるのは、私どものまあ役目であるというふうに考えておるわけでございます。何か非常に鬼面人を驚かすようなことを私どもが申すのではないかとお考えかもしれませんが、決してそういうつもりはございませんので、そうかといって、お姫さまのようなことを申すわけでもございませんが、普通の顔をして普通のことを申したいと思っておるわけでございをす。
  20. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 宮澤長官は、かなり良心的に発言されていると思うのです、答弁されていると思うのですが、その点は私もわりあいに好意を持って拝聴をしているわけです。そこで、いままでこの問題はもう少しはっきりさしておかなければいけないと思うのですが、生産性の低い農業なりあるいは中小企業サービス業等において、若年層の労働不足から初任級が上がる、賃金が上がる、そのことが料金類の値上がりあるいは中小企業の製品の値上がり、農産物価値上がり原因であるという説明がずっとなされている。ところが、もっと実態調査してみますと、必ずしもそうでないという調査があるわけです。これは伊東光晴という助教授が、こういう調査発表しているわけです。御存じだと思うのです。東京外語大学の助教授であります。たとえば消費者物価上昇につきまして、これは三十五年と三十七年の比較です。一二八%消費者物価値上がりしたわけですが、これについてこの物価上昇の寄与率を見ますと、生産価格引き上げが六一・七%、うち賃金が一四・八%、運賃が三・一%、商業段階ではマージンが三五・二、それから賃金の寄与率は、卸においてはゼロ、小売においては〇・八と、こういうふうになっているのですね。ですから、もっと実態を私は調査してみる必要があると思うのです。そうして、大体この助教授の調査によれば、流通段階——卸、小売段階での賃金上昇価格上昇に響いているかというと、これはほとんどない、賃金上昇は売り上げ量の上昇などの能率上昇によって吸収されている。それでほとんどは利潤の上昇となっていると、こういう調査があるのです。これもちゃんと数字に基づいて調査されているわけですね。それから付加価値の、粗付加価値の内容から見ても、大企業中小企業に分けて調査できておりますが、人件費の分配率がずっと下がってきています、大企業中小企業もおしなべて下がってきております。上がってきているのは金融費用と減価償却なんです。金融費用と減価償却、これは利潤ですよ、利潤から払われるものなんですから、ですから利潤率がずうっと高まっているんですよ、人件費は下がってきているんですよ、こういう内容になっているんです。こういうやはり実態もよく調査されて、そうしてただもちろん賃上げ価格影響しないとは私は言っておらないのですけれども、そんな単純な議論をしているのじゃないのですけれども、昭和三十六年からずっと急速に物価が上がっているその原因として、若年労働者の不足から賃金が上がって、それが料金あるいは農産物価中小企業の商品の価格にはね返って、物価値上がりの重要な要素になっているという説明には、もっとこまかい検討が必要であるとこう思います。その点いかがですか。
  21. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 労働の分配率を問題といたします場合に、付加価値をどう考えるかということが一つあると思います。わが国の場合に付加価値を考えるときに、それを全体のいわゆる管理費用まで考えるか、あるいは物理的な付加価値を考えるかによって、第一答えは違ってまいりますし、一番極端な場合を申せば、ただいま金融費用、減価償却は利潤のうちだと言われましたが、国連の統計によりますと、労働の分配率が非常に高いのは、たとえばインドであります。これは思うに、推察でございますが、資本装備率が非常に低い。そうして労働の性格が単純であればあるほど労働の分配率は高いことになりますので、そういうこともあり得ると思います。  それから、中小企業について言われました、大部分が利潤になっておるとおっしゃいますと、それがいかにも何か企業主のポケットへまるまる入ったというように考えられやすいかと思いますが、実際はそれが資本装備に向けられる。したがって、金利のコストであったり、金利が高いことは、私認めるにやぶさかでありません。あるいは減価償却になったりしておる。これは労働を節約するために、中小企業なりサービス業が資本装備率を高くする、いわゆる生産性を高めていこうとする努力の過程にあることだと思います。
  22. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もっと、まあ時間がありませんから、この点についてはあまり議論することを避けますが、私が言わんとしたところは、賃上げが料金にはね返ってそれが物価値上がり原因であるということをかなり強調してきているのです。それが日本昭和三十六年以来の消費者物価値上がりを説明する場合の、非常に大きなウエートを持たしておるのです。しかし、その実態が、いまそれが資本のほうが、経営者がもうけてそれでほかのほうに投資をするということと、価格引き上げている問題とは、これは別問題ですよ。価格値上がり原因がどこにあるのかという問題とは別問題です、それは。ですから、これはまたゆっくり議論しようと思います。  それで総理大臣ずっとやりとりをごらんになっていかがですか。こういう状態なんでありますから、まだ日本の消費者物価値上がりについて、賃金物価影響があるということは否定するものじゃないんでありますけれども、特に昭和三十六年以後の断層的急速に消費者物価が上がったその原因として、賃上げ原因ではない、むしろ賃上げがおくれているんだという点については御認識がいただけたんじゃないかと思うのですね。ですから、この春闘に際して、そういう政府見解発表されることはお避けになって、十分にゆっくりと研究されて発表をしていただきたい、こういうことを主張いたしますが、その点いかがでございましょうか。
  23. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) だんだんの御議論を拝聴いたしております。賃上げのほうが消費者物価値上がりよりもおくれておる。あなたは三十年から三十八年を基準にしておっしゃっておる。じゃあ、私申し上げましょう。三十年を一〇〇にいたしまして、三十四年の賃金指数は何ぼでございます。一〇〇にいたしまして一二四でございます。お書き取り願ってもよろしゅうございます。(笑声)賃金指数を三十年を一〇〇にいたしまして、一二四でございます。消費者物価は三十年を一〇〇としまして一〇四です、一〇四。三十四年まではほとんど上がらなかった、消費者物価は。賃金は二割四分上がっておる。三十五年は賃金は相当上がりまして一三四。八%上がりましたから一三四であります。そうして消費者物価は一〇七です。間違いございません。そこで三十六年、七年、八年が賃金指数は一〇%以上上がっております、三年間。消費者物価は五、六、七と、こうなってきておる。そこで私はきのう申し上げたように、本会議で言ったように、賃金指数は一八〇になっておる。消費者物価は一三〇です。さあ、そこで賃金のほうが先に上がったかどうかということになりますと、あなたの基準の三十年をとりますと、きのう本会議で申し上げたとおりに一八〇になり、消費者物価は一三〇。そしてその消費者物価の上がり方の状況は、三十四年までは二四%で、消費者物価は四%。三十五年が端境期で、八%賃金が上がって一三四になって一〇七、それがもとをなしまして賃金指数が相当ふえてきて、国民所得がふえてまいりました。そこで所得がふえてきますとやはりそれが消費に向かわれます。最近におきましては全体のGNPのうちで一時五〇前後であった国民消費が、五五、六から六〇になんなんとしょうとしている。毎年一五%の三年間続けての消費の増加であります。この消費の増加ということは所得の増加。所得の増加というのは、もちろん賃金も相当部分で増加している。だから賃金物価という問題になると、賃金ということは国民全体の所得の増加ということをお考えになり、国民全体の所得の増加、賃金はその一部でございます。そうして所得の増加には中小企業もありましょうし、農業もありましょう。その所得の増加によって需給関係から消費者物価の増高——しかし日本の例というものは賃金が先へ上がってきております、三十年から。そうしてその賃金の上がり方は、過去三年間はまた急速です。それにつれられて所得が非常にふえてまいりましたから、消費がうんとふえている。昭和三十年、三十一年、三十二、三年ごろは消費の増加というものは、七、八%もいかなかった。それが一五%ずつ三年間続いている。三十九年は一一、二%にしてもらいたいと政府は言っている。これは物価増でございます。これが賃金上昇消費者物価上昇よりも先であるということを私は立証いたします。だから、あなたのお考え方とはまるで反対になります。
  24. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これはそう単純に、いま総理が言われたようなことではないのです。これは計算のしかたがあるのです。経済企画庁でちゃんとおやりになっているわけですよ。ですから、これは非常にめんどうな毎月勤労統計をもとにして調査した結果、こういういま総理が言われたようなことは、そういう結論にはならないのですよ。もっと何と言うかな、そう言っちゃ悪いんですけれども、学問的方法において、ちゃんと最近は電子計算機ができておりまして、非常にいい調査ができているのです。私があまり詳しく言うと差しさわりが出ますからしませんが、そういう調査がちゃんとあります。企画庁長官お調べになってごらんなさい。ちゃんとあなたのほうに研究所もあるのですから。経済研究所というのがあるのでしょう、ちゃんと。それだから、われわれちゃんと予算を出して、ああいう研究所があるのですから、その研究調査員に総理お聞きになってごらんなさい。いまそんな単純なことではないのです。はっきりと消費者物価が一%上がったときに、昭和三十年から三十八年においては賃金は〇・四%しか上がっていない。そういう私は高等数学を言いませんからあれですけども、そういうなにがあるのです。あとで必要なら具体的な計算方法を私は示します。  次にこの物価に対する総理のお考え方は、これまで何回も変わってきたのですが、いまはどういうふうにお考えか。前は、消費者物価が上がっても卸売り物価が下がっておれば心配ないとか、あるいはまた消費者物価が上がっても、それは所得分配効果があるのだ、むしろそれは望ましいのだというお考え方、あるいは経済成長の場合には、ある程度の物価値上がりは不可避なんだというお考え方、こういうようなお考え方、そういう考え方を持っておられて、そうして今度は消費者物価抑制というものを非常に強く打ち出してきているのです。ですから、物価の問題についてのお考え方は何回も変わってきているのです。この際、はっきり伺っておきたいことと、もう一つは、昭和三十五年末から昭和三十六年、七年、八年と急激に消費者物価値上がりになった原因は何であるか。そうして三十七年の不景気になってから、また物価がさらに上がっている原因は何であるか。この三点について伺います。
  25. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 物価に対する考え方は、あなたがいろいろ変わったとおっしゃいますが、変わっていない。あのとおりなんであります。質問の次第によってああいうように答えました。しかし、根本は一つも変わっておりません。それはやはり経済成長をして国民の生活水準を上げる、こういうことになれば、ある程度の消費者物価はやむを得ない。これはある程度ですよ。やむを得ない。急激な分はいかない。しかし消費者物価はやむを得ないが卸売り物価はなるべく上げたくない、国際競争力がありますから。ですからこれは一貫しておる。しかし世の中には、われわれの生活は先進国並み、物価は低開発国並み、こういう無理な希望がある。これは人情だからしかたがございません。だから、アメリカのように所得が五倍あるときには消費者物価日本の二倍以上しております、実質価格は。卸売りは違いますよ。これは人間の値打ちが上がっておる。ヨーロッパは日本の三倍あるいは三倍半、まあイタリアは少のうございます。それでやはり消費者物価的のものは五、六割、六、七割高うございます。だから、われわれが賃金が先進国、ヨーロッパ並みになろうというときには、消費者物価もある程度先進国並みになるのが普通なんです。そうでしょう。市民の生活を言っちゃあれですけれども、十年、十五年前にはパーマネント屋はなかったのです。それが雑費についてどれだけ参りますか。またいまのような、高等学校は非常に足らぬ。授業料なんか、大学の授業料なんかはどうなっておるか。これはみな消費者物価です。だから、所得がふえて先進国並みになろうとすれば、消費者物価は、生活水準が上がっておるのですから、パーマネント屋もふえてみんなが身だしなみをやり、学校教育もどんどんやっていくというのが私の考え方です。これは私は経済の前向きだと思います。ただ、それにはやはり度合いというものがある。だからいま消費者物価についてあまり急激に上がることは押えねばならぬ。だから、われわれは四・二%、実質は三%、三月——三月比べたら三%程度でいくといういわゆる望ましい姿に国民の御協力を得ようとしておる。物価対策はひとつも変わっておりません。物価に対する考え方は私は変わっていないのであります。
  26. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは非常に問題ですよ。総理ね、これは一ぺんお読みになってくださいね、パトリック氏の論文。下村理論の批判ですよ。そういう考え方は下村さんの考え方と同じですよ。卸売り物価は安定している。むしろ下村さんは卸売物価が下がると輸出ができすぎちゃって国際収支があまり黒字になり過ぎて、国際的な通貨の均衝を破ると、こういう議論をしておるのですよ。卸売り物価は下がらなければならないわけなんです、生産費が下がっているのですから。生産性向上しておるのですから。日本物価問題の一番重大な問題はここにあるのです。パトリック氏としても言っていますよ。日本は外貨を獲得し過ぎて困るという国じゃないじゃないかと言っておる。ところが、下村さんは、卸売り物価を下げるとこれは外貨が獲得でき過ちゃう。それでこの世界的なあれでそういう通貨機構に混乱を起こすからと、こういうことを言っているわけです。ところが、卸売り物価が下がらないから消費者物価も下がらない。ここに一番問題があるのです。総理は、卸売り物価が安定していればいいのだ。その場合、よその国の物価が上がればそれでいいけれども、上がらない場合——下がる場合どうするのか。最近の輸出物価指数は上がってきているのです。このままでいったら、よその国の、外国物価が上がらない以上は輸出は停頓してきますよ、こういう政策をとっていますと。これは物価問題はこれから重大な問題です。総理がいままで、卸売り物価が安定していればいいのだという考え方は間違いです。これから矛盾がもっとうんと出てきます。卸売り物価は下げなければならない。卸売り物価が下がれば消費者物価も下がるのですよ。こういう政策をちゃんと、所得倍増計画ではそういうことは経験しているのですよ、ちゃんと。所得倍増計画では、総需要と総供給が長期的に一致して、長期的には物価が安定している。その中間は何にもないわけですからね。そこでこういう失敗を招いたと思うのです。この点、総理一ぺん、この下村さんの考え方にいいところもある点、日本経済のポテンシャリティをかなりよく評価した点についてはわれわれも評価しておるのです。しかし、物価に関する限り下村さんの考え方は非常に危険です。このまま総理がそれをうのみにして、そして今後おやりになっていったら、これは非常な問題が起こります。ですから謙虚にここで一ぺんお読みになると非常に参考になりますよ。いかがですか。(笑声)
  27. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 質問ですか。
  28. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ええ、卸売り物価についてですね。
  29. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大体あなたの考え方は、この問題も私とは数字が違うようであります。輸出入価格で、輸出価格のほうは九三%、これは三十五年を一〇〇として輸出の価格、輸入は一〇一%。輸入は上がっておりますから。輸出の卸売り価格というものは上がっておりません。下がっております。そうして外国の話をなさいましたが、日本の卸売り物価は横ばいですが、外国はここ二、三年で三、四%ぐらい上がっておりましょう。ヨーロッパは逆でございます、あなたのお考えは。そこで日本の卸売り物価はどうかというと、どうでございます。大体大生産の分があれだから卸売り物価は安定しておるし、大工業のほうの分は幾分下がっております。医薬品から鉄あるいは織物、昭和二十七年を比較になりますと、そういう大産業の分が九二、三%、九〇%を割ったものもありますから、九四、五%。そういうことで数字のとり方が違うんでしょうか、あなたの数字とは私の数字は違っております。私は日本の輸出が世界のいわゆる年四、五%、五、六%に対して輸出が十何%、倍くらいの弾力値を持っているということは、日本の卸売り価格は安定で、世界の上がり方が強い。輸出力があるということであります。下村君をとやかく言っておられますが、私は彼が若いときからずっと自分の考え方を言って、勉強するようにすすめた。何も下村君の考え方をうのみにしておるわけではございません。私が指導していっておるということをはっきり申し上げておきます。
  30. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。昨年六月、当委員会で、やはり物価問題で私が質問した際、いま木村委員も触れたことですが、所得倍増計画の一番最初の出発点のときに、いまもお話があったように、農業、それから中小零細企業、サービス部門等は生産性関係物価上昇するかもしれぬと、ただし、卸売り物価生産性向上でこれが下がり得るので、プラス、マイナスで平均すれば、物価はおおむね横ばいに推移する、これが出発点です、所得倍増計画の。だから、私が去年の六月質問した際に、確かにそうであるから引き下げのために努力せにゃならぬ、そういう答弁を総理をはじめ各閣僚お話になった。いまの木村さんに対する御答弁とだいぶ違うのじゃないですか。総理いかがですか。
  31. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そのときも答えたとおり、経済成長十カ年倍増というときには大体そのつもりでおりました。しかるところ、この七%とか九%というのは名目二〇%に三年間も続いてまいりました。そこでこういうひずみが出てきましたから、片一方の消費者物価上昇——卸売りはよろしゅうございます、ある程度下がりましたから。下がり方も少ないということもございます。それから金利の問題等もあります。そこで消費者物価につきましては、そういう予想外のできごとで急激に上がるから、これを下げなければいかぬというので、いろいろの施策を講じて、それで長期的には農業、中小企業生産性向上のための近代化、合理化をやろうとしている。何も変わっておりません。
  32. 戸叶武

    戸叶武君 関連。先ほどあげた池田さんの数字というものが、ちょうど下村さんがあげた数字と同じように、賃金物価外国の例の数字というものがアメリカ経済学者が指摘している具体的な数字とずいぶん開きがあるのです。これはアメリカ実態に対する木村さんからあとで説明になるかと思いますが、その統計の数字のマジックと私たちは思うのですが、そういうマジックによってされると非常に迷惑するのじゃないかと思うのです。フランスなり、現在のイタリアなりにコストインフレのあれが出ているのは事実でありますが、労働者の分配に対する要求というものが諸外国において、いままでの不当な分配をはね返して、伸びてきておるのです。それと違って、日本においてはまだコストインフレ的なものがないということを、経済企画庁の長官も私は前に説明したと思うのですが、やはり具体的なデータを通じて、そうしてこの物価賃金の問題というものを明確化していないと、一種の政治的意図によってゆがめられていくと、非常な誤解が——日本ではそういうことが通用するかしれないけれども、外国では納得できないような、外国の良心的な学者が納得できないような私は答弁が国会でされるということは、非常に不明朗となると思いますので、もっと号の点は経済企画庁なり何なりが、下村さん的なあるいは池田さん的な数字の、非常な私はほかの人たちの誤解を招いている点は、もっと明確にしなければいけないと思います。
  33. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどから申し上げようかと思っておったのでありますが、木村委員が、賃金については毎月勤労統計を使っておられますし、消費者物価については総理府の統計局の数字を使っておられますので、おのおの昭和三十年を一〇〇といたしまして、昭和三十八年に賃金が一八三・一、消費者物価が一三〇・六と、これはもう、どうもこれ私どもが持っております権威のある数字でありまして、この事実はこれ以外に申しようがないのであります。
  34. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総理は、物価に対する考え変わってないと言われましたね。卸売り物価さえ安定していれば消費者物価上がってもよろしいと、そういう考え、変わってないということですね。
  35. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 経済の発展に、成長におきまして、日本が先進国並みになる場合におきまして、所得がふえれば、人の労賃が、人の労働に対する価値が上ってきますので、そういうふうなることは、経済の私は原則と思っております。だから、消費者物価は上がってもいいということは、やはり先進国並み、りっぱな生活水準の向上経済の安定成長ということを前提としての上がり方でございます。だから、消費者物価は絶対に上がらぬ、生活水準はうんと上げろ、労働はあまりふえない、これは無理でございます。だから、アメリカとヨーロッパとの関係を見ましても、アメリカの所得に対しまして、ヨーロッパは相当低い。六〇%程度でございます、あるいは七〇%。そうすると、やっぱり消費者物価についての差が出てくる。日本とヨーロッパとの差と同時に、また日本と東南アジア等の低開発国のいわゆる消費者物価を見ましても、おわかりになると思います。これは経済の原則でございいます。私は、卸売物価は下げろ、消費者物価は上がらぬようにしろ、そうしてわれわれの生活は先進国並みになれと、これはちょっと神さんでない私では無理じゃないかと思います。
  36. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その点は、あとで質問をいたします。高度成長もやり、物価も上がらない、国際収支も心配がない、完全雇用になる、そういうことができるかできないか、この点が一番問題でしょう。高度成長をやり、完全雇用にし、物価が上がらないようにし、国際収支も心配ない、これが政治じゃありませんか。これはあとで——社会党は長期経済計画というものを立てています。それは政府成長率よりも高く可能であるということを——これはあとで私は社会党の——何も批判、非難するだけではなく、社会党は社会党としての案を持っております。それで対決してまいりたいと思いますが、私は、物価の問題はこれは経済の一番の基本の問題で、部分的な問題じゃないですよ。貨幣価値に関する問題であって、これが、成長する場合にある程度上がっていいという考え方ね、このこと自体はやはり非常に間迷いだと思うのですよ。やはり、物価を安定させなければならぬという見地に立たなければならぬですよ。貨幣価値がどんどん下がっていく、そういうことになれば、物価は将来上がるのだというそういう見通しでやっていてごらんなさい。それは非常な混乱を起しますし、資本の蓄積にもだんだん関係が出てまいりますし、それから国民の貯蓄をそれだけ切り下げるわけですから、これはまあそういう点が私は非常に、物価問題は、経済成長していくから物価値上がりやむを得ないという考え方は不賛成です。成長はさせながら物価が上がらないように、——それじゃ昭和三十年から三十四年まではどうですか。あれだけの高度成長をしながら、物価が上がらなかったじゃないですか。国際収支は、アメリカに借金もありましたが、一応調整して、今日のような危機がなかったじゃありませんか。三十年から三十四年まで、なぜ物価が上がないで、あの高度成長が可能であったのか、その原因は一体何であったかですね。それで、三十六年からどうして今度は成長率が下がったのに物価が上がって国際収支が赤字になったのか。とにかく三十年から三十四年までは物価は上がる、国際収支はそんな危険もなかった。それで高度成長ができました。その原因は一体何であったか。それは何であったのですか、総理
  37. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日本の人口に対しての生産——GNPは非常に少のうございました。よろしゅございますか。九千百万の人口でGNPが十四、五兆億円でございました。九千五百万でGNPが二十兆円、二十一兆円、今度は二十四兆円ということになりますと、どうでございましょうか。やはりそこに人の値打ち、労働の価値が上がってまいます。生産が伸びて人口がふえる。もちろん設備投資によって償いますけれども、設備投資のいかない中小企業、農業のほうが、どうしても上がってくるじゃありませんか。三十年から三十四年までは、それはもちろん高度成長いたしました。労働賃金が上がらないでしょう。中学生は五千円以下で雇われた。そういう状態なんです。GNPが十四、五兆円のときでございます。十一、二兆円のときでしょう、三十年は。そういうとき、その問題がいわゆる経済の人の、労働力の問題、しかもその間におきまして、あなた三十三年は物価は下がったでしょう、消費者物価は〇・三%前年に比べて下がったでしょう。そうでしょう、〇・三%。GNP——国民所得の伸びが二・八%、物価が下がったから実質三%の上昇で、物価は〇・何ぼ下がったでしょう。そういう政策を私はとるべきじゃないと言うので、調整の、三十七年におきましても、三十八年におきましても、ある程度、三十三年のように生産——GNP、国民所得が二・八%上がって、実質が三%、実質のほうが、多いということは、物価が下がった。そうしてボーナスも減って、所得もふえないということになる。それよりも、やはり同じ調整期でも六%、七%の、いわゆる日本の、不景気と人は言いますが、世界の伸びの倍くらいにしていま調整しているのがそうなんですよ。ときが違いますよ。私の所得倍増を唱える前と、唱えてからの状態とが違ってきている。それがどっちがよかったか。あの程度で不景気があったり、物価が下がったりする三十二年、三年のときがよろしゅうございますか。これはやはり五、六%、六、七%の上昇国際収支も一応正常なかっこうで外国の信用がますます高まる。こういう経済政策が私はいいんじゃないかと思う。あなたのようなことをやったら、昭和三十二年、三十三年のような、いまの物価が下がって、名目賃金もごく上がらずに、実質所得が上がった。こういう経済日本人には向かないと私は思います。
  38. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 冗談じゃないですよ。私の考えによれば、私は高度成長で、完全雇用で、物価も上がらないで、国際収支も心配がない、そういう政策をやるのが政治であると言っているのですよ。社会党の長期経済計画はそういう構想になっているのですよ。だから、いま、三十年から三十四年まで、そういう物価が上がらず、それで神武景気だ、岩戸景気だといわれたのですよ。そういうあれが可能であった条件が、もっと具体的に言えば——私は時間がありませんから、これは賃金がヨーロッパより安かったということ、あるいは貿易為替管理という保護政策があったこと、アメリカから軍事援助、経済援助を受けてきたこと、いろいろな特殊的条件があるのですよ。ところが、池田内閣が三十六年から高度成長の段階に入る時期において、そういう条件がなくなってきているのですよ。そういう、いままで三十年から三十四年ごろまで高度成長をかなり安定的にもたらし得た原因がなくなっているときに、急激に三%、三カ年九%の高度成長というものを打ち出したから、むしろ経済を撹乱しているんです。この成長池田さんの政策のおかげじゃないんですよ。いまお話ししたような低賃金であったということ、封鎖経済であったということ、アメリカからいろいろな援助があったということ、防衛費が諸外国に比べて少なくなったということ、こういうような特殊的条件があったんです。それがなくなってきた段階において、むしろほうっておけばわりあいに健全に成長しているのを、三年間九%という線を打ち出したから、これが撹乱をしてしまった。逆なんですよ。池田さんの何も政策じゃない。池田さんの政策は、むしろ順調な発展をすべきものをここで撹乱してしまって、三十六年で急激に成長を高めて、またこれが急激に下がる、こういう方向に持っていったのは明らかに失敗ですよ。そこで、成長率が下がっても、消費者物価が上がる、国際収支が赤字になる。完全な失敗じゃありませんか。むしろそのまま放任しておいたほうが健全であった、そういうふうに私は思うわけです。これは議論になりますから、時間がなくなりましたから……。  そこで、今後の消費者物価値上がりをどういうふうに思いますか。四・二%に押えられますか。鉄道運賃を上げるとか、あるいは通勤定期を上げるとか、あるいは鉄道公債を発行せよとか、あるいは道路公債を発行せよとか、こういうことが、きょうの新聞を読みますと、交通基本問題調査会から答申を総理にされました。そうすると、鉄道運賃、あるいは通勤の割引、これをもっと少なくする、こういうことになると、また物価値上がりに拍車をかける。それから公債発行については、これは大蔵大臣いかがですか。これは分科会で羽生氏が河野建設大臣に質問しましたら、四兆一千億の道路費をまかなうにはこれはもう道路公債は発行するんだ、そして大蔵大臣に大体了解を得ているということを前のこの委員会でも言われております。その点について、今後の消費者物価値上がり見通しについて伺いたいと思います。
  39. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどのお話でございますが、昭和三十四年ごろ、封鎖経済であった、まだ労銀が低かった、アメリカの援助があった、いろいろな条件をおあげになりましたが、そのとおりだったと思います。そこで、そういう条件のあるうちにひとつ設備投資の更新をして開放経済の日に備えようではないか、そういう意識的な努力が民間も政府も一緒になって数年間なされて、それによってここで開放経済を迎えられるというのでございますから、私は政策の意思としては一貫しておったというふうに考えるわけでございます。  それから消費者物価でございますが、三月の東京都の消費者物価がはっきりいたしまして、結局一年間で、昨年の三月と今年の三月との対比が三・九%の上がりになりました。明年度間の平均を四・二に持っていこうとしているわけでございますが、ただいまの傾向から言うと、かなり実現の可能性があるというふうに考えております。  なお、公共料金につきましては、今年一ぱいはよほど特別の事情がない限りはとめておくということでございますので、まずここらで落ちつきぎみに行くのではなかろうかというふうに考えております。
  40. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 河野建設大臣も、公債に発行できるような状態になれば、という前提がございますから、現在のところ、公債を発行するような気持ちを持っておらないわけでございます。
  41. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総理から、答申の問題について、交通基本問題調査会の答申、あれについての御答弁を……。
  42. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) きのう島田委員長から答申をいただきました。十分前向きで答申の趣旨を検討いたしたい、実現いたしたいと、こう思っております。まだ内容を十分読んでおりません。もう昔から道路とかいうようなものについては公債はどうだという話がございますし、また、現に道路公団等につきましては出しておるわけでございます。一般会計からの問題は、いまの七、八%の実質の上昇でいけば大体まかなえるのではないか。いま公債を一般会計で出さなければならんほどのいわゆる見通しの低い日本経済ではないと思っております。
  43. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや、料金について伺っているんですよ。
  44. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) それは、いま企画庁長官から答えたように思っております。
  45. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 鉄道運賃です。答申の中にある鉄道運賃とか……。
  46. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 公共料金については、一年間、前に言っているとおり、できるだけ上げないということを答えております。
  47. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いえ、答申では上げろというんですよ。それは総理は……。
  48. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) それは答申につきましては、もらっただけで、まだ内容は読んでおりませんが、同じことでございます。いまの企画庁長官が答えましたのも。
  49. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 同じことじゃありませんよ。答申を前向きで尊重するということは、なるほど今年は鉄道料金一年ストップかもしれませんが、来年あるいは再来年あたり、鉄道運賃の引き上げ、あるいは通学定期の割引率をもっと引き下げると、こういうことを認めるということになるわけですよ。
  50. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 来年、一年以上たってからの先のことをいまどうこう言うときではございません。私は上げたくはないと申しましても、過去の実例が、昭和二十四年、昭和二十六年、昭和二十八年、九年、三十二年、そうして昭和三十六年と、鉄道運賃も上げているんじゃございませんか。しかもまた、いまの鉄道の状況を見まして、鉄道債も出しておりますが、あの借金をずっとふやすばかりでいいか、あるいは利用者が負担するがいいかということは大きな問題でございます。だから、委員会においてもそういうことを言っておられますから、前向きでできるだけ実行するように、実現するようにと言っております。少なくともしかし今年中は上げない、こう言っております。それは来年あるいは再来年の状況を見てから考えるべきことでございます。
  51. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それだから重要な問題なんですよね。できるだけ前向きという、できるだけ実現するように努力するということは、運賃引き上げも通学定期の割引率の引き下げも行なうということなんです。やるならやるではっきり国民に明らかにすべきだと思うんですね。そうしますと、今後の消費者物価の見通しは、私はもっと上がっていくのじゃないか。三十九年度だって、やみ米の問題もあるでしょう。それから四月から授業料が上がってきますし、なかなか楽観はやはり許さないと思うんですよ。公定歩合を二厘上げたからといって、消費者物価の騰勢はそれじゃすぐやまないじゃないかと、そういうふうに思われるんです。  そこで、政府国民生活白書をお出しになって、国民の生活がよくなったというふうに発表されました。そういう面もあるでしょう。しかし、いま国民生活消費者物価値上がりによってどういう状態にあるか、普通の標準世帯でどういう状態にあるか、総理はご存じかどうか。これは家計簿から計算したものですが、生協の婦人部の家計調査があるわけです。この家計調査によりますと、これは四人家族で消費支出が四万二千七百九十円、食費が一万六千八十円で、エンゲル係数は三七・六、政府発表しているような数字に似ているわけです。普通標準家庭の数字に似ているのです。この調査によりますと、副食については、基準栄養をとるための支出があるんですが、この計算ですと、基準栄養をとれないで、大体基準栄養の六八・五%しか買えないという調査があるんです、具体的に。そうすると、腹八分目ということをいいますけれども、腹八分目にならない。腹六八・五分目と言っているんです。ほんとうなんです。そうして、こういうふうに言っています。どうしてそうなるかというと、住宅費とか、光熱費とか、交通費、教育費、衛生費、次々とこれは払わなきゃならないので、どうしても副食のほうを節約せざるを得なくなってくるというんです。それでそういうことになるのだと。しかもかなり貯蓄をしなきゃならぬというんです。社会保障が不十分だから貯蓄をしなきゃならぬ。その貯蓄が、消費者物価値上がりによって、お金の値打ちが下がって、その貯蓄がまた減価してしまうというんです。こういう結論が出ているのです。こういう実態なんですよ。消費者物価値上がりの家計に及ぼす影響というのは、あの国民生活白書で表面上っつらだけ報告されたようなものじゃないんですよ。こういう点、総理は御存じでございますか。
  52. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 語るに落ちたということがございますが、いま鉄道運賃とかいろいろなものが今度は上げざるを得ないだろうというふうにお考えになるように、消費者物価というものは、授業料も上がってまいりますし、上がってくるものだ。ただそういう上がり方を少なくしていこうということが政府の方針でございます。で、国民生活白書も、私あの大きい大部は読みませんが、要約の分のあの数字なんか見ました。大体、われわれは、中流の生活をしているとお考えいただける家庭が七〇%でさたということは非常にうれしいことだと思います。そうしていまエンゲル係数三十七・何ぼ——これは都会地でございましょう。平均で三九%ぐらいに三年間、四二%が三九%、こういうことも私はあなたの質問に対する答えですが、人間の欲望でございますから、きりはございません。しかし、こういうものはそういうふうにやりましても、やっぱりカロリーから申しますと、先進国に対しまして一割五分ぐらい低いのでございます。まあ体質の関係もございましょう。だから、だんだん日本人が大きくなっていくように、カロリーもふやし、エンゲル係数ももう都会地では大体イギリス並みぐらいになっておりましょうから、もう近いと思います。そういうだんだん生活がよくなっていくということは、私は明るい状況であると思います。しかし、絶対的にこれでいいかといったら、まだまだでございますから、経済成長をやってそうして賃金も上がっていこうし、生活水準も豊かになり、身のまわりもよくなって、そうしてエンゲル係数も下がってくる、こういうことにいま持っていこうとしている。いま理想に向かっての大きい歩みを続けていっている状態でございます。これでいいかということになりますと、まだまだ足りません。
  53. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 エンゲル係数だけでは論じられない。エンゲル係数が三七・五%でさえ、六十八・五分目のものしか食べられないというその実態ですよ。これはもうみんな主婦の人たちに聞きますと、こういう状態なんですよ。ですから、こういう実態をもっとよく御認識なさる必要があると思う。  で、佐藤国務大臣、御用がおありのようで、たいへんお待たせいたしましたが、簡単に伺いますが、これは国務大臣としての立場で伺うわけです。  いまの物価の問題について国務大臣としてどういうふうにお考えになるか、これは私は今後の重大な問題だと思いますし、それから金利の問題について前にどこかで御発言があったようでございまして、この公定歩合の二厘引き上げですね、それから大体日本経済のいろいろな調整をやっていく場合に、金利の調整機能、金利というものをいままで軽く見ていたのではないかと思いますが、その以前について大局的な見地からひとつ御所見を伺いたい。
  54. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) あえて私の意見をお尋ねになられますので、お答えいたします。  先ほど来、物価の問題につきましては、総理並びに企画庁長官からお答えをいたしております。私も、経済閣僚ではございませんが、池田内閣のもとにおいて協力いたしておるのでございますので、別な考え方はございません。これが政府の統一見解だとお考えになってよいと思います。また、公定歩合そのものにつきましては、個人的にはいろいろの議論をいたしたことがございます。しかし、今日開放経済に向かうその処置として政府がとられたことは、たいへん賢明な策であったと、かように考えております。
  55. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう一つだけ簡単に、物価問題につきまして科学技術庁の立場で、今後のたとえば高度成長をやりながら物価を上げない、あるいは国際収支が赤字にならないようにするためには、科学技術というものは非常に重要なウエートを持つんですよ。そういうやはり立場からの科学技術の考え方、それについて。
  56. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来、経済の発展、また生産性を上げるということについていろいろ御意見がございました。今日は科学技術の時代だと、こういうことも表現し得るのではないか。そういう意味で、日進月歩の科学技術、外国におくれをとらないように、こういう意味で私どもも最善を尽くしております。しかし、遺憾ながらただいままでのところでは国産技術はまだまだ外国からおくれておりまして、外国の科学技術を導入する機会が多い。むしろ輸出するということは非常に少ない。こういうことではいけないので、私どものほうもさらに精を出すということでございます。しかして、ただいままでのところの科学技術の導入、これはわが国の経済発展に非常に効果をもたらしている。非常にばく大もない外貨も支払ってはおりますが、その支払いを償うだけの生産をあげている。経済の構造の改善に非常に役立っておる。かように私は考えております。
  57. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 次は、国際収支の問題について、時間がなくなってきましたから、簡単に伺います。  政府国際収支の見通しについて誤ったのではないか。それで、これは衆参両院の予算委員会を通じまして、政府は、日本銀行の公定歩合を一挙二厘引き上げる前の経済の見通しなり国際収支の見通しと、二厘引き上げてからの見通しについての御発言というものは非常に違うんですよね。私は、本会議で、池田総理に、外為あるいは外資法の改正案に関連してIMF八条国に移行するその場合の日本経済影響等について伺った。そうしたら、これは心配ない。それから関係閣僚にみんな聞きましたが、通産大臣も心配ない。あるいは大蔵大臣も心配ない。労働大臣も心配ない。それから特に大蔵大臣は、外貨保有につきましては心配ない心配ないでやってきて、一挙二厘引き上げてから、先ほどの賃金の問題にも関連して八条国移行について今後外貨の問題もそれから国際収支の問題についても心配があるような言い方をしてきております。それで、ですから、今後の国際収支の——前の見通しは誤ったと思うのですよ。二厘引き上げは誤ったことの証明であると思うのです。その前とあとでは、これは速記をずっととって見ますと、非常に違うんですよ、ニュアンスが。その点、総理は、いままで心配ない心配ない。今度は心配がある心配がある、だから賃金についても抑制しなきゃならんというように聞こえる発言をされるわけですね。その点をひとつ明らかにしていただきたい。国民をミス・リードしたのではないか。その責任があるのじゃないかと思います。
  58. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 前もうしろも同じでございます。私は、国際収支につきましては、いろいろな場合にいままで出てまいりました。今回も四回目でございますが、そのつど適正な措置をとっておりまして、まあ日銀の公定歩合は直接私に関係ございませんが、私は手放しの楽観はもちろんしておりません。国民とともに努力すれば十分自信があります。  そうしてまた、外国も私の自信にこたえて絶大な協力をするような態勢になっております。OECDへ入りますのも、また、今度IMF八条国になりまして日本の通貨がドルやマルクやポンドと同じ状態になってきたのでございます。これはもう百万の友を得た状況でございます。前よりも自信がございます。
  59. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 木村君、持ち時間が切れましたので、簡潔にひとつおおさめ願いたいと思います。
  60. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 簡潔に。だいぶ議論してしまいまして時間がなくなりましたので、それじゃ簡潔に質問いたします。  先ほど、物価も上げないようにし、国際収支も赤字にならないようにする。それでかなり高度の成長を保ちながら完全雇用を実現していくと。それから所得格差あるいは生活の格差を縮めていくと。こういうことが経済政策の目標ではないかと思うんです。これを実現することこそが政治であって、高度成長したから物価が上がってもしようがない、国際収支は赤字になってもしようがない、所得格差、いろんな経済の格差が拡大してもしょうがないでは、政治ではない。池田内閣が三十六年からやってきた高度経済成長政策は、成長は高くなった。ところが、格差は拡大したんでしょう。農業でも中小企業でも立ちおくれさした。国際収支は赤字。物価は上がった。これはどこに原因があったか。私は、池田さんの高度経済成長政策の運営の基本の原理にあったと思う。これは自由競争原理ですよ。自由企業原則でやった。そこで、民間の会社がシェアの拡大調整をやって、これを調整することができないんですよ。資金計画についもできないんでしょう。ここに根本の原因がある。したがって、これを直して、かなり高度成長をやって、完全雇用を行ない、物価も上げない、所得格差もなくさす、各農業、中小企業その他の格差もなくし、国際収支も均衡するという政策は、これはもっと計画的な原理ですよ、計画原理を導入しなければいかぬと思うんですね。自由企業原則ということでやってきた、ここに根本の原因があるんですよ。これは資本主義の矛盾でございましょう。だから、社会党の主張するように計画原理を——社会党は全部競争原理を否定しませんよ。全部否定するものではない。効率的なものはあるいは競争原理も認めます。しかし、基本的な線としては、計画原理というものをもっと入れていかなければならないのではないか。特に、今度は新しくまた長期計画をつくると。いまはまあアフター・ケアと言っておりますけれども、これは根本的につくり直さなきゃならんと思います。その場合に、計画原理というものをもっと強く導入しなければならないのではないか。それで、社会党は、前に、初年度九%、その後一〇%の成長率のものに作業をしたのですよ。それは基本になるものは、投資の計画化なんです。政府と民間を含めて設備投資が資金計画委員会によって計画されて、むだな二重投資、三重投資、過剰投資を防止すると、こういう点が基本なんですよ。これをやらなければ、私はいままでのような繰り返しになると思う。第二は、生産関係を社会化して労働生産性を自発的に高揚する。これには最賃制の確立とか社会保障の拡充等をやる。それから所得格差の解消によって有効需要を増大させるとか、産業構造の均衡化とか、貿易構造の是正、こういう線によって、もっと計画性、計画原理を導入しなければいけないのではないかと思うんですね。そういう点について、今後また新しく長期計画をおつくりになるようでございますから、そういう点について、もっと社会党の長期計画、いわゆる計画性の導入ですか、そういうものを十分私は参考にすべきじゃないかと、こう思うんです。時間がありませんから、この程度で終わります。  それから、最後に、所得倍増計画はもう死んでしまったのか、生きているのかどうか。それから高度経済成長政策は、さっきお話ししたように、この三月で終わるわけです。今月で終わるんです。三カ年三%は終わるんです。今後は総理はどうされますか。今後は何んでいくんですか。これで高度経済成長は終わりましたが、今後はこれを続けていくのか、やめるのか、高度経済成長政策は死んでしまったのか、生きているのか、この点を最後に伺います。もう時間がございませんから、これで質問を終わります。
  61. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 木村さんとは過去十四年いろいろ議論してまいりましたが、十四年のあとをごらんくださいまして、そしてわれわれの自由民主党の考え方が国民にアッピールしているかどうか、世界的にいかに評価されているか、あなたのおっしゃったことと現実がどう違ってきているかということをひとつお考え願えれば、私の答えになると思います。いまさら社会主義経済云々はいたしません。われわれはあくまで自由主義経済、民主的な自由主義経済で運営していこうとしております。したがいまして、十年以内の所得倍増という根本方針は堅持していきます。この根本方針の中におきましてこれから五カ年間の作業を、中間作業をしていく。計画経済というふうな考え方は持っておりません。ただ、政府としては、こういう姿が望ましい姿であるというたてまえで、計画ではなしに、たてまえでやっていっているのでございます。来年度の見込みなんかも、所得倍増計画の線に沿って大いにはつらつとして前進しているということを申し上げておきます。
  62. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 高度経済成長についての御答弁がないですよ。高度経済成長はもうこれで終わりですか。
  63. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 高度経済成長三年間九%というのは、いま言っている高度経済成長じゃない。十年計画のうちの当初の三年間は、社会党さんは十年ずっと九%と言っておられましたが、われわれは三年だけやろうと言ったのであります。これは大体先ほど言ったように望ましい姿でございますが、民間はこれと違って二〇%、平均一〇何%の成長をしたことは事実でございます。今後は、いま言ったように、七%、八%程度でやっていきたいという気持ちでございます。
  64. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 木村君の質疑は終了いたしました。  午後一時から再開いたします。暫時休憩いたします。    午後零時七分休憩    ————・————    午後一時十二分開会
  65. 太田正孝

    委員長太田正孝君) これより予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。瀬谷英行君。
  66. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 私はきょうは、外務大臣が本会議の都合で若干おくれるそうでありますので、外交問題については後半にし、前半に交通問題について質問をしたいと思います。  政府のいう所得倍増高度経済成長政策の成果と正確な評価については、いろいろ論議の分かれるところですが、池田総理物価指数その他いろいろと数字をおあげになりましたが、しかし、どの角度から見ても明らかに立ちおくれをしており、取り残されている問題は、特に大都市周辺の行き詰まった交通政策ではないか、こういうふうに思いますが、総理は一体どのようにお考えになるか、所信を承りたいと思います。
  67. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 経済成長によりまして、その結果、都市集中ということが予想以上に過大になっております。したがいまして、お話しの大都市周辺の交通問題は焦眉の問題となっておるのであります。こういう歴史にない成長をいたしますときには、やはりある程度ひずみがところどころに出てくる、これを是正するのはやはりまた高度成長によって是正する、この原因結果になると私は考えておるのであります。
  68. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 高度経済成長政策も決してつり合いのとれた成長をしてるんじゃないということを今日の交通問題は立証してると思います。大都市に対して無計画産業、人口が集中して、いま深刻な住宅問題あるいは地価の騰貴、交通麻痺、通勤地獄、公害等が毎日国民を苦しめているという事実については、運輸大臣としてもこれはどのように処置をされるか、対策が立たなければならないと思うのでありますが、所信を承りたいと思います。
  69. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 御承知のように、財政の許す範囲におきまして、私どもといたしましては、この御趣旨のような都市集中に対する周辺の交通問題につきましては心を痛めておりまして、できる限りの予算を今年度は組んでおるつもりでございます。なお、この問題につきましては、政府におきまして近々に、国鉄を中心にしまして、運輸全般につきましての基本的な問題を調査する組織を政府部内にこしらえまして、衆知を集めましてやってまいりたいと思います。その問題点は、国鉄の公共性に重きを置くか、あるいは企業性に重きを置くか、そこをどういうふうにすれば調和ができるかなど、いろいろ問題がありますので、これを根本的に解決いたしまして、そうして逐次実行に移したいと、かように考えております。
  70. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 この息詰まるような深刻な事態を、自由主義だからといって、自由に放任しておいていいのか、あるいはこの高度経済成長政策の中では、対策も計画も立てられないのかどうか、こういう疑念を国民は抱いていると思うのでありますが、いま運輸大臣が言われたようなことが、政府としての一つの対策というふうに考えてよろしいのかどうか、総理大臣の見解を承りたいと思います。
  71. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) すでに本委員会でも論議されましたごとく、におきましては五カ年計画を立ててやっているのであります。その五カ年計画がまだ年度割り程度にいっていないことは遺憾でございます。これがやはり予算その他財政上の理由が相当ありますし、また料金の引き上げにつきましても、かなり強い制限を受けております。また料金のうちなんかでも、都市の周辺の混雑の大きい原因である定期券の問題等々、財政並びに運賃規制によりまして十分できなかったのでございますが、今後こういう問題につきまして十分検討してゆき、都市周辺の交通の円滑、安全を期したいと思います。
  72. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 国鉄の過密ダイヤは——私鉄も例外ではなくなってきたのでありますが、つり合いのとれない高度経済成長政策のしわ寄せというふうに考えられるわけであります。しかし、過密ダイヤが三河島や鶴見の事故を招いて、数百人の犠牲者を生じたことは、何人も否定できないことであります。しかし、それにもかかわらず、今日依然として何百万の通勤着に塗炭の苦しみを味わわしており、事故の危険と紙一重の軽わざ芸をやっているというのが実態ではないかと思います。政府考えております方針は、だいぶまだ先があるような感じを持ったのでありますけれども、すぐに対策が講じられ、手が打たれるのかどうかという不安を抱きます。国鉄の三十九年度予算が、通勤、通学者の労苦と恐怖を解消することにどの程度役立つのか、過密ダイヤの解消に何がしかの期待を寄せられるのか、安全、正確、迅速というモットーが、三十九年度予算でどの程度保障できるのか、国鉄総裁からその見解を承りたいと思います。
  73. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) お答えいたします。この過密ダイヤの問題でございますが、これはかりに三十九年度においてわれわれが要求した予算をちょうだいしてみたところで、直ちに解決のつくような、そうたやすいものではないのであります。これは御承知のとおり、戦争において国鉄というものが相当に破壊された。で、進駐軍が鉄道は斜陽産業であるということで、一向熱を持ってくれぬ等々その他の事情によりまして、終戦後ろくすっぽ修理もせず、いわんや輸送力の増強もせぬ。これにかかったのがようやく三十二年。それも修理に主力を注ぎまして、輸送力の増強ということにはなかなか手が回らなかった。そのうちに日本経済というものがしんしんとして発展し、輸送需要というものが非常にふえた。国鉄はとてもこれに追いつけぬ。それでこの追いつけない輸送力をもって、路線力をもって、国鉄としては任務を尽くすにはどうしたらいいか。こういうことになれば、結局やはり過密ダイヤというものとスピード・アップということになるのでありまして、結局今日における過密ダイヤというものは過去における、戦争から三十一年までの過小投資の累積がここに出ている。これはどうしたってこの問題を解決するには、かすにやはり六、七年の年月が要るのであります。国鉄は、それじゃ手をこまねいて、六、七年じっとしているのか、そうじゃない。われわれがいまやっておりますことは、この窮屈な予算のもとにおいて火もとをつくらないようにする。ちょうどいまわれわれの置かれておる状態は非常に稠密した都市ですね、その中にある。そこに火が起こるというと、大火になる、それが過密ダイヤ、その火もとをつくらないようにするにはどうするか、その火もとをつくらないように全力を尽くしているのが、いまの国鉄のやっておる仕事であるのであります。
  74. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 火もとをつくらないような対策は講じなければならぬということはわかりますが、三十九年度予算でかなりこれは減額をされたわけでありますけれども、しかし、何がしかの色をつけてもらったという程度じゃないかというような気がするんです。それで一体どの程度のことができるのか、特に安全輸送、保安の面においてお聞きをしたいと思います。
  75. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 輸送の安全問題につきましては、幸いに大蔵省はわれわれが要求した二百数十億というものをそのまま受け入れてくれたんであります。これによってわれわれはまず踏切の問題をひとつ解決していこう。国鉄の事故の大部分というものは踏切からきているのでありますからして、この予算のうちにおいて踏切というものを四十年三月ごろまでには大体われわれの希望するようなところに持っていく、そうして事故の少なきを期する、そういうことであります。そのほかには信号の問題、それから人間の訓練の問題あるいは自動装置の問題というようなことで、火もとをつくらぬということについては、まず大体四十年三月ごろまでにはうまくいくんじゃないか、こういうことに考えております。過密ダイヤのほうは、これはまた四十年からひとつ大いにやらなければならぬということでございます。
  76. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 大蔵大臣としては、国鉄の要求に対してどの程度奮発をされたか、この程度ならば、相当要望を満たし得るというようにお考えになって、予算措置をされたものかどうか、大蔵大臣としての見解を承りたいと思います。
  77. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま国鉄総裁が述べましたとおり、保安施設に対しては七三%もできるようになっておりますので、あと百五十六億が後年度に残っておるというだけでございまして、国鉄が計画したものすべてが完了する予定でございます。なお、三十九年度に完了を必要とする電化、輸送力増強、そういうものに対しては全額認めておるわけでございます。ただ四十年以降に残りますものにつきましては、債務負担行為で四百億つけまして、来年度になりますと、六百四十三億程度の新幹線の工事額が浮くわけでございますので、十分対処できるという考え方で予算を編成したわけでございます。
  78. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 過密ダイヤのほうまでは、総裁の話を聞くと、手が回らないというふうに聞きとれたわけなんです。三十九年度予算というものは、現状の国鉄の行き詰まった状態を打開するのにははなはだ不十分だということがいえるわけですね、これはどうでありますか。
  79. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) さっき申しましたように、過密ダイヤの解消ということは、これはなかなか容易な仕事じゃない、これはやはりかすに六、七年の歳月を要し、また多大の予算を要するのであります。ただしかし、ことしちょうだいした予算のうちでも多少はできるんでありまして、できる範囲内においては過密ダイヤの解消というものに対して全力を尽くして努力しているのであります。
  80. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 まあ多少はできるということになると、二階から目薬程度のもの、こうなんですが、二階から目薬をさして神経痛をなおそうといったような予算じゃないかという感じがするわけでありますが、しかし、事が人の命にかかわる問題でありますから、四十年以降の話ばかりしておって、当面のさしあたっての問題に対して何かの保障がなければ、これは国鉄の利用者、毎日の通勤者にとってはやり切れないと思うのであります。そこで国庫債務負担額等の予算化については、大蔵大臣としてこれは責任をもって早急に実施がされる用意があるのかどうか承りたい。
  81. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほども述べましたとおり、四十年度には新幹線工事費が六百四十三億も浮くのでありますから、十分予算化をしようという考えであります。
  82. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 結局三十九年度予算では、国鉄のほらで譲られたが、約束としては優先補正、こういう約束が行なわれたそうであります。この優先補正については具体的にはどの程度かということはおわかりになっておりますか。
  83. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 補正をいたしますということではございません。いま三十九年度の予算案を審議していただいておるのでございますから、そういうことを前提としてきめれば、当然予算審議を拘束する次第でございますので、そういうことはいたしておりません。おりませんが、国鉄に対して予算を必要とするという事実は財政当局も認めておりますので、いまあなたが言われたことをそのままお聞きをすれば、三十九年度においても予算補正ができるような、状態になれば——事情もございますので、そういうものは優先的に考えなければいかぬだろうということはいえますが、現在の予算とは関係ないわけであります。
  84. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 これは約束にしても先のことでございますから、三十九年度予算の審議の際の問題とするのに適当でないということは、私も承知しているわけであります。しかし、三十九年度予算で十分でないということは大蔵大臣自身が感じられたから、このような話があったのじゃないかというふうに理解をされる。それでは三十九年度予算が、いま聞いたとおり、二階から目薬程度と、痛いところにばんそうこうを張った程度ということになると、危惧をされる事故がまた起きないとも限らない。   〔委員長退席、理事平島敏夫君着   席〕  総裁も、この点については保証できないということを言われておるわけなんです。もし事故が起きた場合には、これはやはり国鉄の責任というよりも、内閣責任を負わなければならないと思うのでありますが、総理としてはどのようにお考えでありましょうか。
  85. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ちょっと、総理からお答えする前に申し上げたいと思いますが、国鉄の予算が相当大幅に削られたというようなことになっておりまするけれども、そうではないのであります。御承知のとおり、国鉄の中で一番重要なものは保安対策費でございますが、保安対策費は、二百七億全額要求どおり計画をいたしてあるのでございます。でありますから、国鉄の要求六百二十一億のうち、累計は四百五十六億に達しておりまして、四十年度に残りますものは百六十五億でありますので、保安対策費に対しては、遺憾なきを期しておるわけでございます。そのほかに、なお三十九年度は、三十八年度当初予算千三百六十億に対しまして、三百九十四億円増しで千七百五十四億円を認めておるわけでございますが、三十八年度に対しまして二九%増という非常に大幅な増をいたしておるわけでございます。なお、国鉄が計画をいたしております工事の中で、保安踏切整備、車内警報装置等の保安対策費はもちろんのこと、三十九年度中に完成する予定であった通勤複線化、電化等の工事、また、長大隊道等の、後年度に一挙に工事を取り戻すことが困難である、また、その工事のおくれが全体の工事を完成させるのに影響があるというようなものに対しては、認めておるわけでございます。でありますから、国鉄がいま考えております輸送需要に対しての国鉄計画というものに対しては、これは全部完成できるように予算配分を行なっておるわけでございます。  なお、長大隊道その他に対しましては、要求を削減いたしましたが、これに対しては、四百億の債務負担行為をつけますことと、もう一つは、御承知の三十八年度に百億の補正をいたしておるわけでございまして、私たちの考えでは、国鉄の計画影響のないということを十分考えながら最大の努力をしたということでございます。
  86. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 事故の防止につきましては、全精力を傾けて当たりたいと思います。
  87. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 先ほど運輸大臣から、将来計画について交通問題の基本的な調査会を設置をして、四十年度以降の問題について当たりたいという答弁がありましたが、きょう新聞発表になっております交通基本問題調査会の答申というのが出ておりますが、これと、さっき運輸大臣が言われたいわゆる交通問題についての調査会とは、どういう関係になるのでありますか。
  88. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 交通基本問題調査会の本日の答申の趣旨をも考慮いたしまして、私どもといたしましては、政府にできますところの調査会で検討してまいりたいと思っております。
  89. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 「政府にできますところの」というのは、そうすると、運輸大臣が考えておられる調査会はまだできてない、これからつくる、その構想はできておるのかどうか、もしわかったらお知らせ願いたいと思います。
  90. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) その調査会ができまして、そこで私どもは全体、さっき申しましたような国鉄の公共性あるいは企業性あるいは運賃の問題等を研究いたすつもりでございます。それにつきましては、本日——昨日でしたか、新聞発表になりました政府の交通基本問題対策の意見をもよく考慮に入れまして検討いたしたいと、かよう考えております。
  91. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 交通基本問題調査会の答申の内容を見ますと、都市交通対策、資金の確保等で、利用者負担がやはり必要だから、運賃の値上げも、定期券の割引率の低減等の措置も考慮しなければならぬということが出ているわけでございます。この問題に対しては、運輸大臣としてはどのように対処されるつもりでありますか。
  92. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 先ほどお答えいたしましたように、そういうすべての問題を含めまして、今度政府にできますところの国鉄の基本問題調査の会において検討いたしたいと思っております。
  93. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 さしあたっては、そうすると、この答申の内容については、具体的な検討の段階には至っていないというふうに承知してよろしゅうございますか。
  94. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) さようでございます。
  95. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 もし、いま運輸大臣がお答えになったような調査会ができて計画が樹立をされても、それは政府計画として推進をされなければ、結局行き詰まりになってしまうのじゃないかと思うのでありますが、国鉄内部だけの問題になってしまうのか、それとも、政府計画として推進をするということなのか、いずれでありましょうか、国鉄総裁並びに運輸大臣のお考えを伺いたいと思います。
  96. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) もちろん交通問題が重要施策でありますからして、単に国鉄あるいは運輸省内のみの問題ではありません。政府全体の考えといたしまして、どうすれば、ただいま言ったような基本の問題の解決ができるかという最善の方途を、交通基本問題調査会の意見をも参酌いたしまして、大いにとるべきところはとり、研究してまいりたいと思っております。
  97. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 ただいまの運輸大臣のお答えでは、政府政策として、これは単なる運輸省とか国鉄だけの問題としてではなくて推進をする、このように理解をするわけであります。  次に、国鉄の機構なり形態なり経営方式なり、それをささえる法律等が今日の段階で妥当というふうに考えられるかどうか。特に総裁の権限なり、権能なりというものが、現状のままでよろしいと思われるのかどうか、これは国鉄総裁に端的にひとつお伺いしたいと思います。
  98. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 実は私は、そういう法律上の問題についての研究は十分にしてないのであります。しかし、現在の法律のワク内においてでも、国鉄総裁としては十分にやり得ると考えておるのでありまして、ことに、いま問題になりました過密ダイヤの問題なんかにつきましても、現在の法律で十分やり得ると思う。ただ、問題は、これは財源の問題と、そうして国鉄の工事量のキャパシティーの問題、この両方がからんでくるのでありまして、現在の法律で何ら私は支障はないということに考えております。
  99. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 輸送問題について新たに内閣に機関を設けて諸問題を検討するということになると、国鉄の機構なり経営方式なり形態というものも、この機会に再検討を迫られるということは出てくるのじゃないか、こういう気がしたのでありますが、さきに総裁は、総裁を引き受けるときには大石内蔵助となる覚悟で引き受けるのだということを言われているのでありますが、その意味がはたしてどういうことをおっしゃって、おるのか、制度的にも法律的にも改める必要を感じておられるから、そういうふうに言われたのじゃないかというふうに解釈したのでありますが、あらためて総裁の見解を承りたいと思います。
  100. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 私が大石内蔵助になるとか、あるいは佐倉宗五郎になるとかというようなことは、私のつまり気持ちで、どこまでもサービスと犠牲の精神においてやると、こういうことで申し上げたのでありまして、少なくとも、この過密ダイヤのもとにおいては、大きな事故が起こりやすい、その中に身を投ずるがゆえに、その気持ちからいえば、どこまでも犠牲、奉仕の精神でやる以外に進む道はないと、こういうことで申し上げたのでありまして、国鉄の機構をどうするかなんとかいうことについては、何らの関係はないのであります。
  101. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 しかし、国鉄の総裁の権限というものは、その責任と割合に比べるというと、どうも権限は十分じゃないと、こういう気がするのでありますが、現状では別に、特にそういう支障は感じておらないのでありますかどうか、総裁に承りたいと思います。
  102. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 御意見のとおり、現在のままで私は一向差しつかえないと存じております。要するに、問題は、運輸省とわれわれとの間がよく了解し合っていくということに努力すれば、それで事は円満にいくということに確信しておるのであります。
  103. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 現行の機構なり、あるいは法律なり等にも相当私は問題があるのじゃないかと考えましたから、総裁の大石内蔵助云々について聞いてみたのであります。そうすると、犠牲的精神ということで総裁は大石内蔵助を引用されたそうでありますけれども、御自分が犠牲的精神を発揮して、自分の部下に対しては心配をさせないようにすることであればいいのでありますけれども、それが順繰りに下のほうにワクをはめていって、そして予算が足りないということで、たとえばサプライズ・テストのようなことをやって、当面の合理化をやってのけようということになると、これは職員に対してはかなり過酷なこともやらなければならぬ。先ほどの予算委員会でも私は申し上げましたけれども、やり方としては吉良上野介的な意地の悪いやり方を部下にしいなければならぬ。御自分の心境は大石内蔵助でもやり口は吉良上野介ということになる。四十七士のほうが戸惑いをするということになる。今後の経営の面について、待遇の点について、要員の点について、現状を打開をするという決意がおありになるかどうか、最後に承りたいと思います。
  104. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 私が奉仕の精神、犠牲の精神を持ってやる以外に、国鉄職員の全体がやはりそういう気持ちでやらなければならぬということが、私の苦心しておるところであります。ということは、過密ダイヤを解消するまでは、やはり大きな事故が起こる可能性がある。それでこの過密ダイヤを解消するには、財政的に相当の大きな資金が要るのみならず、国鉄の技術的の力をもってしてもなかなかそう二年や三年でできる仕事じゃない。その間はやはり国鉄人としてはこういう奉仕すべく、または犠牲の精神をもって当たるべく運命づけられている。これはひとつ国家に対する国鉄人の義務として大いにやらなければいかぬと、こういうことで国鉄人の覚せいを促しておる次第であります。何もしいて、私が吉良上野介になって国鉄職員を犠牲にしようというような考えは毛頭ないのであります。
  105. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 国鉄総裁に対する質問は終わります。  外務大臣がお見えになったようでありますから、日韓問題についていろいろと承りたいと思います。  金鍾泌氏の召還という事態は、一体予測できたことなのかどうか、召還によって交渉が中断をされるというようなことはないのかどうか、外務大臣にお伺いしたいと思います。
  106. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) これは韓国国内の問題でございまして、私ども直接関知したことではないのでございまして、私ども、おいでになること、お帰りになること、そういうことを初めから予想いたしたことではないのでございまして、おいでになりまして、表敬訪問をすると申し入れてきましたので、お目にかかったというにすぎないわけでございます。初めから予想したことではございません。  それから交渉全体との関係でございまするが、先方がどのように措置されますか、これは韓国の問題でございます。わが国といたしましては、既定の方針に何ら変改を加える意図はございません。
  107. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 予想されたことではないということでありますが、来たことは事実なんですね。来たことは事実だが、思いがけないところで途中で帰ってしまったというのも事実なんですね。これが韓国の問題であってわが国とはかかわりのないことだというふうに表向きは言えるかもしれませんけれども、事実上これは相当な権限を持って来られたものというふうに見られておるわけであります。だから金氏が召還をされたということによって交渉は何ら中断されたのじゃないというふうにおっしゃるならば、懸案事項の日韓交渉は依然として続けられておるのかどうか、支障なく継続しているのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  108. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 継続いたしております。
  109. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それでは、継続をしていると言われるならば、漁業問題等については、問題は対立点なく進んでいるのかどうか、もし対立点があって引っかかっているとすれば、どこで引っかかっているのか、農林大臣に承りたいと思います。
  110. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 交渉でございますから対立いたしております。漁業交渉は、不法な李承晩ラインをやめて、人類共同の資源である漁業の維持、育成、分配、こういう問題を中心としてやっておるのでございます。それにつきましては、まずもって専管区域を国際慣行等に従って設けなくちゃなりません。その次に共同水域を設ける、こういう順序で進めていますが、専管水域をきめていく基線の点において相対立いたしております。  第二は、共同規制をするときに、日本の出漁する漁船と韓国の出漁する漁船の隻数等において対立いたしております。  第三は、民間の漁業協力ということにつきましての、これは民間でございますから、政府として金高を云々という責任は持つわけにはまいりませんけれども、どういうふうな方法で、民間で協力するとか、こういう点について対立いたしております。
  111. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 李承晩ラインは、いままでの国会の質疑の過程において、認められないということを政府がしばしば言明してまいりました。これが認められないということは、漁業交渉の場合にも前提となるというふうに考えられるのでありますけれども、韓国側としては、李承晩ラインというものは認められないというわがほうの主張をそのまま承認をしているのでありますか、その点はどうなっておりますか。
  112. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 折衝の過程におきましては、当然それはやめると、こういう前提で話を進めておるわけでございます。したがって、共同水域の線をつくってみたり、あるいは、その前提としての専管水域の線をつくっております。これはとりもなおさず、李承晩ラインというものはないものとしての話の進め方でございます。
  113. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 李承晩ラインはないものとして話を進めておるということでありますが、きょうの新聞を見ますと、「韓国の国会では二十七日の本会議で、日韓問題に対して政府の新しい姿勢を望む外務委員会の基本原則案を与野党満場一致で採択した。」と、こういうふうに書いてあります。その中で、「漁業問題では「李ラインを守護する」という文句を新たに入れ、武装した日本警備艇が沿岸まで侵犯し、非友好的な空気が続く限り、会談は即時中止する。」、こういう項目があるのでありますけれども、韓国では与野党一致で、満場一致できまったそれが、李承晩ラインを守るということなんでありますが、韓国というのは、与野党満場一致で国会できまっても、政府はその方針と別な方針で外国と折衝ができるようなしかけになっておりましょうか、外務大臣に承りたいと思います。   〔理事平島敏夫君退席、委員長着席〕
  114. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私どもは、漁業問題につきまして磯林大臣会談を両国の間で行なっておるわけでございます。それ以外に公式の場はないわけでございます。いま御指摘の問題は、韓国の問題でございますので、私からお答えする問題ではないと思います。
  115. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 韓国の問題であって、こっちには関係ないというふうにおっしゃいますけれども、韓国の国会でもって、李承晩ラインは譲らない、撤廃をしないんだと、守るのだということを満場一致で決議をしておるわけですね。にもかかわらず、出先機関がそれとは違った方針で交渉を進めるということは、われわれの常識では考えられないわけです。これは一体どういうことを意味するのか。韓国の出先機関は、もしそうだとすると、李承晩ラインというものは何か形を変えて、たとえば国防ラインとか何とか別の名前でもって形式を変えて日本政府と話し合いをしているということになるのか、日本政府はいかなる名目であろうとも李承晩ラインあるいは類似の規制ラインは認めないという方針を堅持するということに変わりがないのか、その点についていま一度お答え願いたいと思います。
  116. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 御指摘の問題は、韓国政府とその国会の問題でございまして、われわれの問題ではないと思います。  それから、国防ライン云々の問題でございまするが、これはせっかく新しい漁業協定をつくろうというわけで、鋭意折衝いたしておるわけでございまして、これがまとまりますれば——これ以外に漁業を規制する何らの権威が両国の間にないわけでございます。日本に関する限り、いまつくろうとしている協定以外に規制するものはないと御承知願いたいと思うのでございます。韓国と第三国との間につきましては、私の言及の限りではございません。
  117. 藤田進

    ○藤田進君 関連。外務大臣にお尋ねいたしますが、まず、いま瀬谷委員が指摘いたしました、韓国国会における若干の修正はあったけれども、本会議における議決というものは指摘された内容だと、報道を通じてわれわれは知るわけです。外務省におかれて、現在のところ、このことは、日韓交渉を進める上に、あなたがおっしゃるように、韓国の国会と政府関係だからということで、そういう事態認識というものをあいまいにして進められるということは、いかがなものであろうか。昨日の本会議におきましても、韓国の国内事情については十分これを見ながらという、若干含みのあることが言われていたと思います。幸か不幸か、かなり容易ならざる事態になり、その国内の国民の動向というものが反映されて、私は国会のかような決議に立ち至ったものではないだろうか。この報道の一われわれは外国の機関を持っておりませんので、真偽なり、またどういう状態で朴大統領のもとにおける与党絶対多数下における韓国国会が、事実かような議決をしたということになれば、私は、韓国の問題だけで、いま外務大臣が御答弁になっているようなこういうことでは、ならないと思うのです。まず順序として、あの真偽、経過という事実認識についての御答弁をいただきたいと思います。
  118. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 韓国政府からは何ら聞いておりませんが、そういう報道に接していることは事実でございます。藤田さん御指摘のように、私どもも、会談をやっております以上、相手国の政情の動向につきまして終始深甚なる関心を持ち、その解明につとめることは当然のことでございます。ただ、それについて日本政府がどうコメントするかということはまた別問題でございまして、いま瀬谷さんの御質問は、韓国の国会と政府との間の問題につきまして私の見解を求められたのでございます。私は、そういうことに対してお答えする責任はないということで申し上げているにすぎないのでございます。
  119. 藤田進

    ○藤田進君 おかしいじゃないですか。いま第一にお伺いしているのは、事実認識についてどうなのか。政府は何も聞いていない、何ら情報もないし、確認すべき問題ではないという認識に立って日韓交渉というものをこの上進めようとされているのか。その基礎をなす情勢の把握ということについて、各紙が今朝報じているというこの事実は、この日韓交渉には大きな影響を持つ、絶対多数を持つといわれている与党も含めて、李ラインの撤廃ということは、これは絶対にまかりならぬということをきめているじゃありませんか。憲法上韓国議会と政府関係から見られても、これは重要な問題です。したがって、私が手始めにこの情報の真偽をお伺いしている。そうして、報道と若干違うとすれば、違ったその実情の把握をお尋ねしているのです。これは国民も聞きたいところだと思う。日韓会談というものがどうなるかということは、これは大きな問題だと私は思うし、国民もそう思っていると思う。
  120. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) あなたが御指摘のような報通に接していることは事実でございますとお答えいたしたわけでございます。
  121. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 事実——報道に接しているということが事実であるということになれば、このとおりということになるでしょう。韓国の国会では、李承晩ラインの撤廃ということではなくて、こういうことは全然問題にならなくて、李承晩ラインはあくまで守れということが国会できまっているというこの事実——それならば、李承晩ラインはないものと見る、こういうものは頭から認められないという日本政府態度と妥協の余地なくぶつかることになるのではないか。いくら出先機関がどういうことを言ってみたところで、韓国の国会における議決というものを、これを新聞の誤報じゃなくて事実だというふうに大臣自身が認められるならば、交渉を継続すること自体が無意味になってくると、こういうふうに思うのであります。これは非常に大事な問題であり、大きな食い違いである。この点を明らかにしていただきたいと思います。
  122. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 先ほど申し上げたように、その問題は韓国の国会と韓国政府との間の問題でございまして、私ども韓国の政府との間に交渉をいたしているわけでございまして、私どものほうといたしまして、韓国の国会と政府との間の問題について申し上げるという立場にはないわけであります。
  123. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 韓国というのは、そうすると、国会の議決と政府の方針というのは全然別な方向を向いていると、こういうふうに理解してよろしいのですか。そういう国が一体あるのですか。
  124. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 何回も申し上げましたように、韓国の国会と政府との間の問題でございまして、日本政府はそれに対してとやかく申す立場に私はないと思います。
  125. 藤田進

    ○藤田進君 関連して。外務大臣ね、われわれも愚問と思ってお尋ねしているのではないのです。御答弁は、あまりにも無責任だと思う。条約が最終的に案文作成も終わってどういうものになるかということにもなりましょうが、その御発言をそのまますなおに受けて、一方においては日韓交渉は継続して、総理のおことばではないが、あせりはしないが、早期妥結を目ざして努力するということが取り消されていないわけです。だとすれば、韓国議会における批准を要しないような範囲のものであるかどうかさえ派生的に問題になってまいります。韓国議会では、日本と全く違う。李ラインの撤廃が前提である。従来も認めていなかった。韓国議会では、これは絶対に撤廃しないのだと、ほか触れているわけです。そうなると、いままでの日本の方針を変えられて、李ラインよろしいと、新しくこれを認定しながらということならいざ知らず、日本政府の方針が変わらない以上、相手方が譲歩して最終的妥結点に到達したところで、議会の批准というものは得られないことは明白です。また、わがほうが譲るということは、これは言われていないし、譲るべきでないと思います。とすれば、第二の点としては、この日韓交渉というものを、ただゼスチュアというか、続けて、お茶を飲んでがたがた言って別れるといったようなことならいざ知らず、実のある交渉と、当事者適格というか、そういったようなすべてを含めて、これから推進されようということ自体が無意味になりはしませんか。したがって、国内報道も、日韓会談については、その終結がきわめて憂慮されているというか、暗いものになっている。従来、三月一ばいとか、四月に入ってとか言われていた、このこと自体、根底から国内事情からこわれて、非観説が出てきている、こういうところになってきておると思うのです。ですから、相手方の批准を要しないようなものならばですが、繰り返しませんけれども、以上のような実情から、単に議会と韓国政府間の問題でございますと言われることは、時宜に適さないのです。現実とは全く離れたことを御答弁になっていると思うわけです。しかりとすれば、いまのような、もっと内容的にも触れ、そして日本態度の変更等にも触れて、もっと懇切に、しかも明快に、わかるように御答弁をいただきたい。
  126. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 相手国の政情の推移ということにつきましては、先ほどもあなたにお答え申し上げましたように、私ども、関心を持ち、この解明につとめるのは、当然な任務と心得ておるわけでございます。そのことは御指摘のとおり心得ております。問題は、韓国政府と国会との間の問題として起こっておることにつきましては、これは、藤田さんからどう言われましても、これは韓国の問題であると私は申し上げざるを得ないと思うのであります。あなたが私の立場であっても、同じだと思うのでございます。日本政府としては、既定方針によって続けてまいることに変わりはないということでございます。
  127. 藤田進

    ○藤田進君 批准の可能性はどうですか。
  128. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) それは韓国の問題でございます。
  129. 藤田進

    ○藤田進君 一方通行では交渉はないので……。赤城さんにお伺いしてみますが、あのような報道は、外務省、外務大臣も確認されているという御答弁です。その確認の上に立つ以上、相手方との交渉の中において、さっそく、国内事情は一大転換というか、突然変異があったと見ていいのです——そういう与野党一致して韓国議会が。まず、赤城農林大臣も中間報告その他で言われているように、本委員会においての答弁でも明らなかように、季ラインというものは従来認めていない。今後もこういうものは認めないのだ、こういう方針がある以上、韓国代表に対して、この国内事情との関連においてどうなのかということは当然ただされて、その上で、確信が持てれば、交渉は継続なさるなりということになるのが、これはもう、個人間であろうと、一国間であろうと、当然のことだと思うのであります。この点についてどのように措置されようとするのか、あるいはどう措置されてきたか、御答弁願いたい。
  130. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 韓国国会でそういう決議がされてからは、まだ折衝に入っておりませんけれども、先ほど外務大臣から御答弁申し上げましたように、韓国政府と韓国国会との間のことに対しまして、私どもは口を出したり何かする立場にはございません。しかし、交渉の相手方が、李承晩ラインは撤回しないのだ、こういう態度で臨むというふうになりますならば、私どものほうとまっこうから対立いたします。そういう対立状態になった場合には、この交渉は先が見えている、こういうことになろうと思います。まだその辺は確かめてみません。しかし、どういうふうか、政府としての立場あるいは代表としての立場は一応確かめなくちゃならぬと私も思っております。
  131. 藤田進

    ○藤田進君 じゃ、昨日までの交渉においては、李ラインは撤廃いたしますということなのか、いたしませんということなのか、何らかの変更があったのですか、ないのですか。
  132. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 昨日までにおきましては、李承晩ラインというものはないものとして、当然そういうことですから、言葉を変えて言えば、撤回したものとして、その次の段階でずっと交渉を続けてきておったわけでございます。
  133. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 先ほど金議長の召還の問題について質問をいたしましたが、その際に、交渉は変わりなく続けているんだという御答弁がございましたが、いま農林大臣から、この国会のニュースを聞いてから折衝に入っていない、こういう御答弁があったのです。さっきは変わりなく継続していると外務大臣がお答えになっている。農林大臣は折衝に入っていないとおっしゃっている。どっちがほんとうなのでしょうか。
  134. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) きょう午後三時から農林大臣会談が行なわれる予定です。
  135. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 変わりなく続いているという話は、実際にはまだ続いていないということなんですね。先ほど変わりなく続いているというのは、午後三時からまた変わりなく続ける、こういう意味だったのですか、どうなんですか。
  136. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) ただいま重ねて会談の継続をずっとやるということでございます。
  137. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 先ほど外務大臣は、金さんが帰っても交渉は既定方針どおりに続けられるのだというふうにおっしゃられましたが、農林大臣は、韓国国会の決議というものを聞いた今日の次元においては折衝に入っていないのだ、きのうまでは李ラインはないものと思って折衝してきた、こういうお答えがありましたが、じゃきょうからの折衝というものは、韓国の国会の決議というものに韓国出先代表部が従うということになると、まっこうから対立をするということになるのですね。ここでは話はとんざするというふうに考えざるを得ないのでありますが、総理大臣に以上の点についてお答えを願いたいと思います。
  138. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 官房長官とちょっと打ち合わせしておりまして、よく聞いておりませんので、もう一回。
  139. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 いま私が申し上げたことは、きのうまでは季ラインというものはないものとして交渉しておったということです。ところが、韓国の国会じゃ、季承晩ラインは譲らないんだということを与野党一致で決議しているということであります。韓国の国会の決議と政府の方針とが別々の方角を向くということは考えられないのですけれども、国会の決議のとおりの方針で韓国の代表部が、きょうからの日韓交渉に臨むとすれば、これはもう当然話はとんざするということになるのじゃないかと思うのでありますが、その点について総理大臣の見解を承りたい、こういうことであります。
  140. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういう問題は、いまここで議論するのは早過ぎると思います。どういう態度に向こうが出てくるかわからないのでございます。
  141. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 どういう態度に出てくるかわからないといっても、韓国の国会で決議されたことは、これは事実として承知しておりますというふうに外務大臣言われておる。それはたぶん誤報だろうと思いますというなら別ですよ。事実として承知しておりますということになれば、完全にこれは韓国の方針というものは予想されるわけなんです。金鍾泌氏の召還の問題も、このような韓国の国内事情と関連ありというふうに見るのが妥当じゃないかと思うのでありますが、なお、韓国の国内事情というものが安定をしているのだ、基本方針はいままでと変わりがないのだというふうに見てよろしいのかどうか。外務大臣は、どのようにお考えになりますか。
  142. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 先ほど申し上げましたように、相手国の政情につきましては、終始監視を怠らずに、注視を怠らずにまいりたいと思っております。
  143. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 監視を怠らずにまいった結果、どのように判断をされているかということを聞きたい。
  144. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 日本政府として、相手国の政情をどう判断しておるかというようなことを公の席上で申し上げるのは、外交儀礼に反すると私は思います。
  145. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 儀礼上の問題を言っているときじゃないと思うのです。日韓交渉というのは、日本にとっても非常に重要な問題をたくさんはらんでいるわけです。相手国によって承認されるかされないか、いままで話してきたものが御破算になるかもしれないような問題を、一生懸命交渉してみたところで始まらぬということになるのじゃないですか。韓国の政情については、この前の衆議院の本会議、日韓問題の中間報告で、総理は「少なくとも公正な選挙によりまして、百七十五名のうち百十名を持っていることは、ちょうど日本におけるわが自由民主党が三分の二近く持っておると同じ割合でございまして、安定勢力といって何ら差しつかえないと考えておるのであります。」、こういうふうに御答弁になっております。しかし、ここ二、三日来、反対運動というものが非常に激化をして、金鍾泌議長が帰国をした。これでも、なおかつ安定勢力として、われわれが安心をして、そして交渉を続けられるというふうにお考えになるのかどうか。これは重要な問題でありますから、これは忌憚のない意見を述べていただきたいと思うのであります。
  146. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 安定政府として私どもは交渉をいたしておるわけでございます。民主政治のもとにおきまして、いろいろな意見が表明され、いろいろな運動が展開されるということは当然あり得ることなんでございまして、いろいろな試練を経まして民主政治が国民生活の底に基盤を確立してまいると思うわけでございます。私どもといたしましては、そういう事件があったからといって、この政権の安定度がゆらいだというようには格別に考えておりません。
  147. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 総理から、いまの問題について、このまま交渉を続けていっても、いろいろ韓国でごたごたしているようだけれども、とにかく心配することはないんだ、安定勢力として交渉を継続していってよろしいのだというふうにお考えになっているのかどうか、お答え願いたいと思います。
  148. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 外務大臣が答えたとおりに考えております。
  149. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 しかし、相手国の状況というものは、われわれがよく観察をしてかからなければならぬと思うのであります。幾らいろんな問題を個々にきめてみたところで、大詰めにいって御破算になるという可能性があるならば、交渉を継続するということは意味がないというのは、だれが考えても常識じゃないかと思います。  そこで、これは島根県議会から決議がまいりましたので、この問題についてもお伺いしてみたいと思います。   竹島の領土権の確保についての決  議   標記のことについて本日別紙のと  おり決議いたしましたので、事情御’  賢察の上格別の御取り計いを御願い  申し上げます。要旨は、   竹島の領土権確保のため万全の措  置を講ぜられたい理由は、   昭和二十七年以来竹島が韓国の海  洋主権宣言により一方的に不法占拠  されていることは、本県民にとって  まことに遺憾である。   竹島が日本の領土であり、且つ島  根県の地域に属することはその沿革  及び歴史的事実に徴しても明らかな  ところである。   また、同島が隠岐島を中心とする  本県における最も有利な漁区で隠岐  諸島とともに是非とも開発しなけれ  ばならない重要な島であることは論  をまたないところである。   政府におかれては、竹島がわが国  の領土に属し、日本海水域における  重要水産資源地域であることを認識  せられ、韓国官憲による不法占拠を  即時解除せしめ、わが国領土権確保  のため万全の措置を講ぜられるよう  本県議会の決議により強く要望す  る。こういうのが来ております。  本委員会でも、しばしば竹島の問題が話題にのぼりましたけれども、どうも御答弁があいまいであります。この交渉に際して、どういう方針をとられるのか、はっきりした見解を承りたいと思います。
  150. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) たびたび申し上げておりますように、私どもといたしましては、竹島の領土権につきましての歴史的な考証を遂げまして、わが国の領土であるという確信につきましては、有力な根拠をいろいろ持っておるわけでございます。しかし、この問題は、日韓の間の領土的な紛争になっておることもまた事実でございます。それで、さらにこの問題は、領土紛争というようなものが日韓の間に未解決のままに放置されていい性質のものでないということもまた事実でございます。したがいまして、今回の交渉におきまして、諸案件の一括解決の場合に、この問題につきましても解決をしてまいりたいと考えておるわけでございます。ただいままでの交渉経過は、いろいろな機会にたびたび申し上げましたように、わが国といたしましては、国際司法裁判所にこれを提訴し、先方はこれに応訴するというように申し出たのでございますが、先方は、まだそれに応諾するに至っていないのでございます。しかしながら、一括解決という基本の方針に照らしまして、この問題につきましての処置をつけておかなければならないと考えておるわけでございます。
  151. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 竹島は、一体日本の領土、島根県の領土と認めるのかどうか。認めるということになるならば、これはもう交渉の余地はないというよりも、問題はないというふうに考えなきゃならないし、司法裁判所に提訴して、向こうが応訴しないといったようなことを繰り返すよりも、今度の交渉で、はっきりと日本の領土として不法占拠をやめるという確約を取らなきゃならぬと思うのでありますが、その点はどうなっておりますか。
  152. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 今度の交渉において結着をつけなければならぬ性質のものだと心得ております。
  153. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 結着をつけなきやならぬということはわかっておるのでありますが、結着がつく状態にあるのかどうか。向こうが、日本の主張に対して、あるいは島根県の県議会の決議の線に沿って、日本の領土として認めるのかどうか、不法占拠をやめるのかどうか、その点についての確約ができたかどうか、できる可能性があるのかどうかという点について、はっきりとしたお答えを願いたいと思います。
  154. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 交渉の経過として、ただいままだ両国の主張は平行線をたどっておるということを申し上げたのでございます。しかしながら、この日韓交渉妥結の際には、この問題についても結着をつけなければならぬと私は思っていますということが、ただいま申し上げられる精一ぱいのところです。
  155. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 そうすると、竹島問題も、これは未解決ということになるわけですね。それから李承晩ラインの問題も、これは何とも見当がつかないということになるのでありましょうか、漁業問題についてもあるいは竹島問題についても、全然これは見当がつかない、いまのところ問題が煮詰まらないというふうに理解してよろしゅうございますか。
  156. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 仰せのとおりでございまして、いませっかく交渉の途中でございまして、全部妥結しないと煮詰まらないことは当然でございます。
  157. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 どの問題も、竹島の問題もだめ、李承晩ラインの問題もわからない、それからいままで拿捕された漁船に対する損害補償の問題についても、これはめどがつかない、こういうことになるわけですね、それでどうやって早期妥結ができるのですか。いろいろな問題について十分にそしゃくができた上で、のみ込むというのが順序じゃないのですか。いろいろな問題について全然そしゃくができてないのでしょう、かめないままのみ下してしまう、こういうことになるのですかね。
  158. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) たいへん御理解いただけなくて恐縮に思うのですが、私どもといたしましては、各案件について合理的な煮詰めをやっておる段階なんでございます。
  159. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 瀬谷君、時間がまいりましたので簡潔にしてください。
  160. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 持ち時間がまいりましたから終わりますが、外務大臣の答弁は、何回聞いてみても中身はないわけなんですよ。ことばの数は何回も申し上げましたと、こう言いますが、しかし、答弁長きをもってとうとしとせず、山高きをもってとうとしとせずなんですが、あなたのは中身がないのです。いうなれば、山吹のてんぷらみたいなもので、衣ばかり厚くて、みの一つだになきぞ悲しき、こういうことになるのです。こういうふうに問題が全然わからない、中身がない、答弁の中身がない、しかも解決しないのに早期妥結ということは、これはお茶づけならばかまないでのみ込んでもいいかもしれない。しかし、これだけの懸案の事項が未解決であるということは、お茶づけでなくて、カビのはえたもちをかまずにのみ込むようなものです。そういう方針で早期妥結ができるとお考えになっておるのかどうか、なおかつ早期妥結の方針が変えられないのかどうか、交渉が打開される可能性がありとお考えになっておるのかどうか、最後に総理にお伺いしたいと思います。
  161. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 相手があることで、期限を切るわけにはまいりません。しかも、われわれは日本の国の将来のためを思ってやっておるのであります。実があるないはこれはあとおわかりでございます。実があり過ぎてあまり問題になさらないよう、御準備願っておきます。
  162. 藤田進

    ○藤田進君 関連。非常に示唆に富む総理の答弁がありまして、実があり過ぎてあとでというようなことでございますが、これは非常に総理の御答弁としては重要な内容を持ってると解さなければなりません。実のあり過ぎる状態を、あのままでは、どうもそうですかで下がるわけにはまいりません。重ねてひとつ具体的にさらに——関連ですからそう十回も立つわけにまいりませんでしょうから、赤城さんに要望しておきますが、所管事項について、本日の三時半から会合を持たれるということで、私の質問に対する御答弁で、相手国国会の季ライン等に関する実情については聞かなければなりますまい、聞きますというお約束をいただきましたので、本日ぜひこの点は、申し上げるまでもなく、これに対する、向こうが李ラインは撤廃しないなどといえば、その辺が最後でしょうなという趣旨のおことばもございましたので、事重要だと思います。引き続き予算委員会で、月曜日この点についてはあらためてその後の事情をお伺いいたしますので、ぜひそういった御答弁の線に沿って進めておいていただきたいということを念のために申し上げておきます。
  163. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 瀬谷君が、実がなくて、しかもまた、まるのみ込みだと言われるから、実が請求権の問題、漁業権の問題、漁業協力の問題、竹島問題、文化財の問題、いろいろ将来の親善関係を打ち立てるもとになる実が出てまいります、こういうことなんです。実がない、うのみにする——実が出てまいります。うのみにしておりません。十二年間やり、そうしていまが大体望み多き交渉になっておるということを言っておるのであります。
  164. 藤田進

    ○藤田進君 ちょっと重ねて恐縮ですが、そういたしますと、総理とされては、先のことは、相手国の非常に急激な変わり方もあると思われるし、御答弁無理だと思いますが、いまのところ実のあるような状態になりますという趣旨は、言いかえれば、本日、漁業関係交渉を持たれるようですが、現在のところ、交渉は全体として実がなるというふうに認識されまして進めようと本日のところ考えておられるのか。私どもは、多少将来の見通し等から見て違うのでございます。まあ従来どおりの御方針かつ見通しというか、間違いなく実がなる、つまり焦せりはしないにしても、日韓交渉というのは早期妥結する、またできるという御確信でございますか。ひとつ聞いておきたい。
  165. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先般の総選挙に国民に公約したことがらでございます。しこうしてまた、これをまとめることが日本の利益、韓国の利益になる、こう考えておりますから、実りを願いつつ努力を重ねていくといういままでの心境と変わりございません。
  166. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 要望がありましたから、お答え申し上げます。  私のほうでは、李承晩ラインを撤廃する、向こうは李承晩ラインがあるということで対立して、対立のままでずっと交渉がきておるわけでございます。でございますから、向こうの国会においてそれを確認したというようなことであろうと思います、これは対立のまま。しかし、いままでの交渉の段階におきましては、それはないという前提のもとに交渉を進めてきておるわけでございます。でございますから、私のほうとしましては、これをなくする方針において交渉を進めてきておりまするし、これからもそういう進め方をいたします。でございますから、いろいろそういう点で聞いてはみますけれども、私のほうの方針としては、これをなくしたい、交渉をやっている範囲内におきましては、これをなくする方針で進める、こういうことを重ねて申し上げます。
  167. 藤田進

    ○藤田進君 ひとつ重要な問題が残っている。それはどうなんですか。わざわざ要求しないのに答弁に立たれるのですから、重要なポインだと思います。思いますが、私どもの承知しておりますのは、御答弁を通じて、その李ラインの問題については、再三各所で、両院の質疑に対する応答の中では、李ラインは、専管水域、共同規制といったような問題に入る以上、李ラインというものは、これは交渉妥結した暁は撤廃されるということは既定の事実になって中に入っている、そうして基線の引き方、そういうことを言われてきたのですが、そこで、あらためてお聞きしますが、わがほうが主観的に李ラインというものは撤廃されるべきだという希望と、その決意で交渉に臨まれていたにすぎないのであって、従来、依然として、昨日まで李ラインというものは撤廃いたしませんよ。専管水域、共同規制水域その他きまりましても、李ラインというのは依然として、韓国はいわく、わがほうは残しますよということを言い続け、対立したまま今日まできて、その中味の問題に入られたかという疑問がここに新しく出てまいります。いずれでございますか。
  168. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) この問題が解決しても李ラインというものは残しておく、こういうようなことで向こうでは主張をいたしておりません。当然これはなくなるという前提でなければ、いまの共同規制とか、専管水域とか、こういう線を引くこと等において話が入るはずがありません。向こうでもこれは主張いたしませんし、私のほうでも撤廃を前提として話を進めております。こういうことでございます。
  169. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。そうしますと、これはなかなか非常に重大なことだと思います。だから、私たちは、基線の引き方が、いろいろな具体的な細目の中で、ある程度向こう側も李ラインの従来の線から若干の変更があってもやむを得ないという程度のことだと思っておりましたが、全然李ラインの日本は撤廃ということで、いま政府は、外務大臣は、それは向こうの政府と国会の問題だと言われましたが、もしきょう農相なり、あるいは外務大臣なりが向こうの政府と折衝して、その韓国の基本的な態度が、国会というのではなしに、政府の交渉の過程でもう李ラインの撤廃認めないということになれば、この会談終わりですね。そういうことでしょう。これさえ御返事いただければいい。だから、政府国会間の問題でなしに、韓国政府自体が、まあ李ラインの問題はこれ以上の譲歩はできない。従来のようなあいまいなことではなしに、基本的に李ラインの存在については譲歩することができないという政府見解が出た場合には、日韓会談はこれで破談でしょう。そう理解していいですか。
  170. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 韓国政府がそういうことを言うか、言わぬかわかりません。(「言ったらどうするか」と呼ぶ者あり)よろしゅうございますか。言ったらどうするのかというようなことを言うのは、われわれ日韓正常化を急いでやろう、あせらないけれども、早く正常化に向かおうという場合におきましての交渉のしかたは、われわれにおまかせ願いたい。いま向こうがどいう言うたら今度はどうするかというようなことは、私は政府におまかせ願いたい、交渉でございますから。そういうことでどうこう議論するということは、私はほんとうに正常化を望んでおられるための議論か、反対のための議論かわからない。そこで、われわれは交渉は全責任を持ってやりますから、こういうことを聞いてくれとか、ああいうことを聞いてくれとかというお約束はできません。
  171. 羽生三七

    ○羽生三七君 それでは政府としては、多年の長い懸案ですからまとめようとして努力されることはこれはよく理解できます。しかし、これほどの韓国の反対があって、そうして、しかも、これが批准になる場合なんか私は前途予測できないと思う。そういう混乱の中で、はたしてこれが日韓の親善に役立つかどうか、それを私は考えているのです。極東の平和につながるかどうか。日韓の基本的な親善に役立つかどうか。かえってそのことが非常な大きな将来に禍根を浅すようなことになりはしないか。そういう無理をしてまでどうしてやらなければならぬのかという疑問を持つわけです。その点についてお考えを承りたいと思います。
  172. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私、常に申し上げましたごとく、日韓両国の将来長きにわたる正常化を願っておるのであります。したがって、あせらない、こう言っているわけであります。私はきょうも第一回、第二回の学生デモを見てきた人、そうして、第三回目の分の報告を途中で受けた人の様子も聞いております。私があせらないと言うことは、これが批准してすぐできればいいというだけの問題ではない。将来未長く日韓が仲よくしていくというための礎石をつくるのでございますから、私はそういう意味におきまして、いろいろあらゆる情勢を注意しながらやっておるわけでございます。どうぞその点はひとつ政府におまかせ願いたいと思います。
  173. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 瀬谷君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  174. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 委員の変更がございます。  浅井亨君、鬼木勝利君が辞任され、小平芳平君、中尾義君が選任されました。   —————————————
  175. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 次に、鈴木一弘君。
  176. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 一番初めに、一年以上たったときのことは、まあいまからどうこうと言えないということをさっき総理は申されたわけでございますけれども、今度の予算委員会を通じまして、経済問題ではっきりわかってまいりましたことは、まあ明四十年度においては公共料金の一斉引き上げが行なわれるであろう、バスあたり。特に地方団体にまいりますと、来年の一月には値上げは必至だということを期待しているような空気さえございます。しかも午前中、総理は、いま一つ言われたことには、消費需要というのは相変わらず堅調の見込みであるということを言われておられる、こういうような状態でございますこと、先ほども午前中に論議がございましたが、二厘程度の公定歩合の引き上げなど行なっても消費の需要というものはそう影響受けないのではないだろうか。その上、財政支出のほうもかなり大きな規模になっております。一四・二%の増というような状態で、これも需要をかなり刺激するであろう、こういうふうに思われるわけでございますが、物価については四・二程度の伸びだと、こういうお話であったわけです。そこで、もはや三十九年の予算を組まれるについては、そのさきの四十年についてのビジョンといいますか、指向する方向というものがある程度できていなければならない。それは一体どういうような空気になっているだろうか。いままでの予算委員会を通じてわかることは、かなり物価は上がってくるのではないだろうか、こういうように考えられるわけでございますが、そういう点について非常に答えにくいことかもわかりませんが、初めにお願いしたいと思います。
  177. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 昭和四十年のことは、まあいま御質問、御発言にもございましたように、なかなか予測することはむずかしいと思いますが、昭和三十九年につきましては、名目成長率九・七%、実質七%という考えでございますし、また、そのように正常な発展をすべくあらゆる政策的努力を行なっているつもりでございます。  なお、先ほども午前中に総理からお答えございましたが、これからの中期五カ年計画経済指数をどうするかという問題は、これは慎重にやらなければならぬわけであります。総理は七%ないし八%というふうにお答えになられました。所得倍増計画では年率七・二%、こう言っておるわけでございますから、所得倍増計画の平均年率程度の正常な安定成長を続けてまいるということでございますので、その意味において税収も確保できますし、私は正常な状態において予算を組んでいけるという考え方でございます。またその財源も得られるような状態経済成長が行なわれるという考えを持つわけでございます。
  178. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そこで、これは大蔵大臣にちょっと伺いたいのですが、先ほどはまあ四・二程度の物価の伸びであろう、こういうような見込みだったわけですが、しかし、先日も申し上げましたように、実際問題として在庫率指数も変わってきておりますし、下がってきておりますし、そういうようなことがあって物価にはね返ると、こういうようなことが行なわれるようなときに、明年度の財政支出について、操作といいますか、そういうようなことを考えつつ行なっていくかどうか、その辺についての見解を伺いたい。
  179. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 財政は御承知のとおり個有な使命を持っておるわけでありまして、短期的な金融調節等には向かないものでございます。しかし、開放経済に向かってまいるわけでございますから、財政もただ野放しということは考えられないわけでありまして、財政金融の表裏一体となった政策を進めていくということは従来申し上げておるとおりでございます。しかし、まあ来年度の予算を、四月一日から施行するについて、引き締めをやるのか、また繰り延べ等もやるのかということを含めて御発言のようでございますが、そういう考え方は現在のところ持っておりません。公定歩合の二厘引き上げその他金融調節の機能がいま発揮せられておりますので、十分推移を見ながら、景気刺激にもならず、また国内経済が混乱しないように、非常にしさいな観察をしながら臨機応変にやってまいりたいという考えでございまして、いま直ちに予算の繰り延べ、その他を行なうという考えはありません。
  180. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これは総理にぜひお願いしたいのですが、三十九年度予算は、三十八年度の国民生産の伸びが一三・六、こういうことで自然増六千八百億円というようなことを見込んでおるわけでございます。そうすると、今度、三十九年度の成長率は名目で九・七、実質七%と見ておるわけでございますからして、明後年度については、自然増というのはこの限りでは五千億から六千億程度でやってくるんじゃないか。すでに一部には言われておりますけれども、大きな減税というものを行なうとすれば、これはもう三十九年というよりは、四十年にかなり見られるんじゃないか。ことしのような二千億程度の減税でなくて、さらに大きな減税というものの見込みをもはや立てていいんじゃないか、こういうような議論があるわけでありますけれども、その点についての見通しといいますか、見込みといいますか、こういうものがございましたら、お願いしたいと思います。
  181. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) えてして、そういう見つもり方をなさる人が多いので困るのでございます。だから、今年度の自然増収を見るときに、昭和三十八年度の当初予算と決算見込みがどうなったかということをまず考えなければいけない。まず、三十八年度において相当自然増収が出てきた場合には、去年に比べてどうこう、こういうのじゃない。去年の決算の状態、自然増収が出てしまってからあとの分と比較しなければできっこない。財政というものはそこがむずかしい。そこで景気が、今度また四十年度を見込みますときに、三十九年度の部分には三十八年度の下期の非常な生産、GNPが二〇%近く出た部分が入ってくるわけです。だから、三十九年度の上期と下期の景気はどうなるか。上期はわりによくて、下期に落ちた場合には、また違ってくるわけでございますから、昭和四十年度の自然増収をどう見るかという、一とはなかなかむずかしい問題で、私はそういういろいろなデータを知っておりますから、せっかくの御質問でございますが、いま答えられません。大蔵大臣がその衝に当たっておりますので、大蔵大臣が答えるかもしれませんが、総理大臣はそこまで計算しておりません。ただ、いろいろなむずかしい問題がございますということを申し上げておきます。
  182. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 鈴木さんの御質問は二つございます。一つは四十年度の見通しはどうか。一面において、大幅な減税をしろということと同時に、三十九年度に比べて経済成長率が低くなるから、税収は減るじゃないか、こういうことをお尋ねのようでございますが、今年度は六千八百二十六億の自然増収を見てございますけれども、三十八年度の第二、第三の補正予算財源二千億余の自然増収がありますので、実質四千八百億余の増収が財源に見込まれておるわけでございます。しかしその中で、御承知の今年度の特殊事情がございます。前年度剰余金が千八百億円減っております。しかし、来年度はことしの下期における経済成長率が高かったというための増収は見込まれないにしましても、千八百億余に上る剰余金の減というものが、特殊な事情がなくなりますし、それからもう一つは、御承知のとおり、三十八年度の予算で基礎が非常に大きくなっておりますので、そういう意味で、いま私は公債を発行しないでも、正常な財源は確保できるだろうというような考え方に立っております。が、減税規模そのものに対しては、ちょうど、ことし税制調査会で最終的に答申をするという時期でございますので、税制調査会の答申を待ちながら、政府も前向きで考えてまいりたい、こう考えます。
  183. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 次に、総理に知事四選の問題について伺いたいのですが、地方の発展を促進するためにも、同一人物が県知事、あるいは都知事として四選をしていく、こういうことについては好ましくない、こういうような意見もあるわけであります。まあいろんな理由として、発展を促進するためにも四選を避けたほうがいいであろうとか、同一人物が、同じように長期に地方の実権者となれば、一つの行政というものが片寄るという危険性がある。まあ私どもとしても、よい人物ならよいけれども、現在までという実情から考えると、弊害というものがかなり出てきておるように思われるわけであります。政府においては、知事四選の禁止の考え方がある、つまり法制化していこうというような話があるそうでありますし、また外国例等を見ても、大統領選挙あたり、まあ少し大き過ぎるかもしれませんが、一つの参考例になるだろうと、こういうことから考えていって、勇断をもととされておる総理のことでありますので、この四選についての法制化についても踏み切ったほうがよろしいのじゃないか、私どもはあまり好ましくないことだと思うので、そういうふうになさったらどうかと思うのでありますけれども、総理の意向を伺いたいと思います。
  184. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは昨年のいまごろ、ちょっと問題になったことがございます。そうして、また、政府としても検討に入っておりませんが、党のほうでそういう問題につきまして検討が始められ、ある議論があるやに聞いております。これは私個人のあれでいえば、まあ昔から十年一昔、こういつておりますが、いま、少し早くなっております。もう各国の例を見ましても、いわゆる八年程度、これは何選というのでなしに、四年一期としまして、八年程度がおおむねじゃございませんか、各国の状況は。しかし、日本のあれにいたしますと、四選五選というのもなきにしもあらず。で、知事がよかったら何選でもいいということは、これは一つの理屈をいっておりますが、他のもう一つ大きい理屈はいっていない。それは四選五選する人よりも、二選三選してやめたら、それ以上のまたりっぱな人物が出てくるということを忘れた議論であると思います。だから、私はやはり民主主義というものは、ある程度の限度で新しい者が出てやるということが考えられるのであって、自分個人としては、もう四選というと十六年、五選というと二十年でございます。昔の、これは例にとって悪いかもわかりませんが、昔の知事というものは、官選で、まあ二、三年ぐらいが普通じゃなかったかと思います。これも少し短か過ぎるかもわかりません。そうなってきますと、党において行なわれておる議論は、私は、結論はどちらにしても耳を傾けるべき議論じゃないかという個人的意見でございますが、考えております。
  185. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 次に、補助金の問題について、初めに総理に伺ってみたいのですが、現在まで、この委員会の質疑ではっきりしてきたことは、地方団体の超過負担というものがかなり地方財政の運営を硬直化さしている。まあ地方財政計画を見てみましても、三十八年度において二兆六千億程度の予算計画のうち、二八%が国庫支出金である。三十九年度においては、三兆一千億の二七%の八千五百億というものが国庫支出金ということになっている。そこで、それにつながっている補助事業費等の支出を見てみるというと、支出面では五割近いというようなことになっております。こういうような傾向では、地方団体としての、いわゆる三割自治ということがずいぶんと言われておるわけでありますけれども、身動きがとれない。今回は幾分自主財源ということにこの計画では強化をされておりまして、交付税、国庫支出金が歳入の構成で一%ずつ下がっているというような状態になっておりますけれども、この傾向、こういうような硬直されてくるという形で、この改善の方向を今後どういうようにいたしていこうか、積極的に打開していこうかとなさるか、その点について伺っておきたいと思います。
  186. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話のように、補助金が多いということは、地方自治としてはこれはあまりありがたくない。ありがたくないじゃない、よくないことなんです。そこで、私は補助金等整理に関する調査会を設けて、検討いたしております。しかし、補助金等の整理だけでは、地方自治に対しまして、これは、そうたいして効果はない。補助金の整理ということだけであって、地方自治団体の財源ということになりますと、やはり、根本的に税制の問題がくるわけです。そうして、仕事の配置の問題これがくるわけでございます。で、いま補助金等の整理に何しまして、補助費目の整理、金額を一緒にしてしまうというようなことを主としてやっておりますが、しかし、何と申しましても、自治の発展のためには、地方と国との仕事の配分、いま臨時行政調査会の結論を待って、私は相当変えなければいけない。  それからまた税制の問題が非常に関係いたします。で、交付税の動きを、交付税がどんどん上がっていくということは、私はいかがなものかと思います。交付税を云々する場合に、行政事務の配分と税制を考えることが主であって、いままでどうも見ておりますと、国と地方が対立して、分けあって、けんか取りするということが非常に多いようでございます。元のことを私はやっていかなければ、直していかなければいけない。ただ、問題は、いま言ったように、三割自治と言われますが、三割自治のところは数にしては少ないのでございます。二割自治、一割一五分自治が相当あるようでございます。だから、私は三割自治を言う前に、やはり行政事務の再配分、そして、税制のあり方ということを考えながら、補助金の整理なんかにつきまして、相当メスを入れなければ、私は臨時行政調査会に期待するものはそこであると思います。
  187. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これは大蔵大臣に伺いたいのですが、いま、総理が言われた補助金等合理化審議会の答申というものが、昨年の十二月に出ております。その昨年の十二月に出ているのですけれども、地方財政計画を見てみるというと、金額で国庫支出金の場合も一九%前年度費増であるというふうに、答申が生かされてないというような感じを受けるわけです。今回は間に合わなかったのかもしれませんけれども、この審議会の答申というものを加味されたものかどうかということです。
  188. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 補助金合理化につきましては、財政の効率運用という面から考えましても、当然、漸進的に対処しなければならない問題でございまして、答申の実現に対しては誠意を持ってこたえたいという気持でございます。しかし、今年度は、十一月に答申を受けまして十二力にもう予算ということで、百数件の合理化を行なったということでございますが、これはまだまだ問題になるようなことではないわけでございまして、これからも、いま、総理が申されたとおり、地方自治との税源配分の問題、その他いろいろな問題がございますが、そういうことも検討しながら、臨時行政調査会、地方制度調査会、税制調査会と、こういうところでいま、検討していただいておりますので、こういう結論を待ちながら、積極的に対処していきたいというのが、大蔵省の考えでございます。
  189. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 自治大臣に就任早々で恐縮でございますけれども、答申を具体化していくために、たとえば一例をあげて、実例をあげてみますというと、伝染病の予防費あたりは、一人当たり国の補助は二十二円五十銭である。どうしても一人当たり百三十円は必要であるのに、国からはわずか二十二円五十銭であるとか、あるいは家畜の伝染病の予防費についても一頭当たり三円十銭程度の国庫補助である。非常に零細化されているわけであります。こうような具体的な例を取り上げてみますというと、かなり、補助金は整理しなければならぬという、いまの総理大蔵大臣等の考え方に同意できるのでありますけれども、具体化のプランについては、この合理化審議会の答申等によって自治省としては作成方はなさっていらっしゃるのですか。
  190. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 私は、三日前に新任されまして、自治省と公安委員会を担当することになりました赤澤でございます、どうかよろしく。  ただいまの御質問でございますが、要旨はいま総理大臣並びに大蔵大臣が答えられたとおりでございまして、大体補助金はいま御指摘なような面があればこそ合理化審議会をつくりまして、そして結論も出ておりますし、それを尊重するかまえで、前大臣も予算の編成に当たったことと思いますが、どらやらお尋ねの問題について考えてみますと、大蔵省が担当なさる部分のように考えられるわけでございます。大体補助金につきましては、ちょっと聞きましたら、種類が何か九百八件ですか、千にも近い種類がある、こういうものが雑然としておりますことは、全く不合理なことでもありまするので、私どもは管轄的には金額を減らすということでなくして、やはりこういうものがありませんと地方財政はよけい苦しくなるばかりでございますので、その合理化の方向で着々進めたいと考えております。なお、数字の面は、自治省でも優秀な政府委員が参っておりますので、お聞き取りをお願いいたします。
  191. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 数字のほうはけっこうです。  先ほどの御答弁の中からでございますが、仕事の配分、費目の整理、あるいは、というようなことを言われたわけでありますが、これは総理大臣の下に補助金等合理化羅議会の会長の堀氏が答申をされたわけでありますが、そのときにこういうようなことを言われているわけです。根本的な合理化の方策というのは、いま総理が申されましたように補助金の側面からだけでは実施できない。そこで、いま申された事務の配分の問題、財源の調整の問題、こういうものもある、そこで、税制調査会や地方制度調査会と、これはばらばらにやるのではなくて総合的な機関を、全部まとめ上げた、これらの機関をまとめ上げた総合審議機関を早急に新設する必要があるであろう、こういうことを池田総理に要請するということを言われておるわけでありますけれども、これは新聞記事でありますから、どういうふうになったかわかりませんが、そういうような新たな総合審議機関というものをまとめて、補助金の整理に乗り出していこうとするか。先ほどお話しのように、ばらばらに、税制調査会、地方制度調査会というものと先ほどの補助金等合理化審議会、この三つの答申をまとめ上げて何とかやろうとなさるのか、その辺のところをお聞きしておきたいのですが。
  192. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) いまお話しのような点は、ずっと昔からございまして、税制調査会におきましても、私は地方と中央の税の問題について、根本的に検討して答申してもらいたいと思っておるのでございますが、なかなかむづかしい問題ですから、それが出ない、ばらばらになる。いまの交付税の問題に非常にからんでまいりまして、所得税を減税した場合に、地方の財源がそれだけ少なくなる、それを補完すべきやいなやという問題、これも当然のことなんですが、なかなか結論が出ない。住民税の問題も、住民税を減税することは税制調査会も大賛成です。所得税も減税することは大賛成なんです。その間の調整は答申に出ない、出ないのでございます。私の一番聞きたいところは出ない。軽くすることだけはするけれども。だからなかなかむつかしいのでございます。だからあなたのお話しのように、地方制度調査会、税制調査会そうして補助金等合理化に関する審議会、これをひとまとめにするとよろしいのでございますが、そうすると、今度は国の行政制度はどうなるか、国の税制はどうなるかということになるので、なかなかそれがむずかしいので、まあ私としては、地方制度調査会、税制調査会の前にやはり臨時行政調査会の答申を見まして、そうして結論を出したいと思っております。
  193. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 臨時行政調査会の答申をまず見てから——これは、この前もこの委員会において、勇気をもっておやりになるというようなことが言われておりますので、積極的に進めていただきたい。こういうように補助金、そのほかの問題が具体的には、まず行政事務の再配分という姿であらわれてくるだろうと思いますし、当然そういうときが参っておりますし、住民サービス、税の有効的使用、こういうような面から考えても進めていかなければならない問題でありますので、積極的にお願いしたいと思います。次に、今度は文部大臣にお願いしたいのですが、ことしの三月七日に、初等中等教育局長の名前で出た「補助教材の取り扱いについて」という通達がございますけれども、その趣旨でございます。それをひとつ伺わせていただきたい。
  194. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 先般の補助教材に関する局長通達の趣旨でございますが、御承知のように、学校では有益な、適切な補助教材を使用することができることになっておるわけであります。その使用にあたりましては、内容が教育上有益なものを選択いたしまして、またその取り扱いについても、学習指導を効果的に行なうために、教育的な配慮がなされなければならぬと思うのであります。ところが、最近使用されております学習帳、練習帳、問題帳等のうちには、その内容が必ずしも適切と言いがたいものがあり、またこれを購入します場合に、教職員や学校と業者との間におもしろくない現象もなきにしもあらずと、このようなことを聞きますので、このようなことでは教育の向上という観点からも、また教職員の服務の規律という観点からも、おもしろくないと考えられますので、そういうことのないように、こういう趣旨をもちまして各都道府県の教育委員会、都道府県知事に指導の徹底をはかるように通達を出しましたようなわけでございます。
  195. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いまの文部大臣の御答弁からわかることでありますけれども、補助教材と言われる小学校、中学校の生徒が教科書以外に使っている復習帳であるとか、夏・冬休み帳であるとか、ワーク・ブックであるとか、テスト・ブックであるとか、ドリルであるとか、ものすごく量はたくさんあるわけでありますが、それに対しての業者のリベートがかなり問題になっている。そのリベートの中止ということが、いまの大臣の答弁からもわかってくるわけでありますが、こういうようなリベートの中止であるとか、あるいはテスト、いわゆる試験を学校がテスト会社に引き受けさせて、そうして先生が採点しないで、問題もテスト会社でつくる、採点もテスト会社でやれば、順番もテスト会社でつける、こういうようなことをなくするという方向だということはわかるわけでありますが、その起きてくる原因というものについて、つまり、補助教材を使うのはけっこうでありますけれども、最小限度にしなければならぬ。アメリカあたりでは相当活用されているということでありますけれども、そのよってくる原因というものを除く必要があるのではないか。考えられることは、一つには教科書というものが、いまのように社会の変貌が激しい、こういう変貌が激しいときの時代に応じ切れないということから、たとえば国連の国の数にいたしましても、小学校、中学校の教科書を見ると八十七カ国になったりしていて、現実に合わないわけであります。こうなると、どうしても補助教材を使わなければならないということになってくる。そういう変転する社会情勢に即応していないという点が大きいと思います。父兄負担を減らすという点、変転する社会情勢に即応するということからも、教科書を何とか時代に即応できるようなものにどんどんしていかなければならないわけでありますが、これについて対策はございますか。
  196. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 補助教材の使用が盛んに行なわれておる、その原因は、いろいろあろうかと思います。ただいまお話しの教科書の内容が社会情勢の変遷に適応していない、そのためにこれが使われているというほどのことは、実は私はないかと思うのであります。しかし、教科書の内容を客観的な事情の変化に応じまして適時に改めていくということは、もとより必要なことと存じます。このために小部分の改定につきましては、発行者の申請を待って必要に応じて随時改定の実施を行なっているわけであります。数年ごとに一般的な改定検討を行なうということも必要ではないかと思いまして、いろいろ検討いたしておるところでございます。
  197. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 教科書の検討をなさっていらっしゃるということでありますけれども、積極的に進めていただかないと、実際に私も子供を持っておりますし、また声も聞くわけでありますけれども、絶えざるテストとドリルで苦しんでおります。こういう状態、前にもある新聞に出ておりましたけれども、現代っ子には七つの悩みがある。その七つの悩みの一つにテストがないといい、テストがなければいいのだ。私は馬になりたい、テストがないから楽しいだろう、というようなことが、いまの子供の悩みだそうであります。そういうことからも積極的に進めていただきたいと思う。  いま一つ私が考えられると思うことでありますことは、指導要録がございます。いわゆる通信簿の基礎になるようなものでありますけれども、この指導要録を見てみますというと、これは先生の力では非常に採点がしにくいということがわかるわけであります。たとえば社会についての生徒に試験をして採点をする場合にも、社会事象についての思考という欄と、それから知識と理解というのがあるわけです。思考というものと知識、理解とどう違うのですか。私どもにはちょっと普通の問題だけじゃ見当がつかないわけであります。すでに改定されましたけれども、高等学校の場合ですと、数学についての洞察力というのと知識、理解というものとその二つを見ろという……、知識、理解と洞察力とどう違うのですか、ほんとうにむずかしいわけであります。そういうところから現在の先生の力、これは十分か不十分かということは別として、非常に指導要録などもつけにくい。こんなところからも補助教材を使ったり、あるいは非常に多くのテストなども、モデル的なものも、ある機関で研究したものを使わなければやれないという状態になっているだろうと思う。この指導要録の複雑怪奇性というものの改正については、どのようにお考えになっておりますか。
  198. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 指導要録に記入いたします学習の評価は、教科の目標につきましてどの程度まで達しておるであろうかどうかということをやるわけであります。現在の方法が私も専門家でございませんので、どの程度に因難なものかということにつきましては、十分本知をいたしておりませんが、短大制度の新卒者にとりましてそれほど困難なものであろうかというふうにも思いません。もし、これが非常にむずかしいということでありますれば、やはりこれについてもわれわれも検討してみなければならぬと思います。現状がどの程度のものか、はっきりした認識も私は持たないわけであります。いずれにしても新卒者が直ちにうまいものが書けぬということになりますれば、これは問題があろうと思います。そういう場合には、校長なり先輩なり、あるいは地方の教育委員会の指事者なり、こういう人たちによりまして適切な指導を加えてもらいたいと思います。一般的に申しまして、非常に程度が高くてむずかしいということでありまするならば、これはわれわれとしまして検討しなければならぬと思います。
  199. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 再び補助教材に戻って恐縮でありますけれども、ここにいろいろな実情というものが私のところに来ております、あるこれは学校図書株式会社ですが、こういう会社が、もし自分のところの教科書を使ってくれるならばということで、代理店に圧力をかけておる。三十円のものを二十二円にサービスするというのが出ていたり、あるいは実情報告というものをちょっと見てみますというと、かなり悪どいことが行なわれている。定価三十円を十八円にして売りたい、こういうようなことで、補助教材のほうだけを文部省のほうでは見ておるようでありますけれども、教科書にからんで、こういうようなリベートの問題、汚職の問題等が行なわれておるような感じがする。業者同士の争いが、テストの批判なんという変なものにまでなっておりますけれども、そういうものが出版されているような状態でありますけれども、そのようなものすごく混乱している業者の争いについて、業界の再編であるとか、指導であるとかいうものをどのようにお考えになっていらっしゃるか。
  200. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 教科書、あるいはただいまお尋ねの補助教材等の販売につきまして、業者の間にかなり激しい競争が行なわれておる。またそれに伴いまして、いろいろおもしろからぬ現象もある。この事態を否定するわけにはまいらぬと思います。そういうことでありますので、先般の通達も出しましたわけであります。われわれといたしましては、各業者がそれぞれ公正な態度をもって販売をしてもらいたいものと念願いたしております。この業界の状態につきまして、直ちに政府がかれこれするということもいかがであろうかと存じますが、この種のものは、学習上きわめて大事な問題でありますので、内容の整理、内容の充実等につきましては、われわれとしても十分関心を持って指導をいたしてまいりたいと存じますし、また、おもしろからざる売り込み競争等につきましては、われわれの立場で、許される範囲で、できるだけの指導も加えてまいりたいと思います。再編するかどうかということは、ちょっといま考えておるわけではございません。また、みだりに政府が権限をもって臨むということもいかがであろうかと考える次第でございます。
  201. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 次に、非常に横行しておりますテスト屋というものがあるんだそうでありますけれども、進学研究会とか新教育研究協会、こういうところであります。私のところに、ジェンナーのような気持ちで私はこれを差し出すけれどもと言って、自分の子供の、テスト屋で受けた試験の個人成績表というものをくれた方があるのでありますが、こういうのを見ると、株式会社が試験を請け負って、そうして学校で試験をやらして、自分のところに持って帰って採点をして、順番から、組順位から、総順位から、評価点まできめている。しかも話によりますというと、これをやっているものが、だいぶ前でありますけれども、先年行なわれたときのレッド・パージのグループの人たちがやっておる、こういう話も聞いておるわけでありますけれども、この撲滅というか、こういうような好ましからざる行き方については、あの通達だけでもっておやりになるのか、さらにきめのこまかい方法を考えていらっしゃるか。
  202. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) テストということを通じまして、やはりこれを担任いたしております教師が、個々の指導の力というようなものをよく知る必要があろうかと思います。またテストそのものにつきましても、ただよそから借りてきたものをもってテストをして、それでよろしいというようなものではないと思います。そこにやはり教師としての考えというものが含まれていなければならないと思うのです。したがいまして、いまお話になりましたように、テスト屋からテスト・ブックを買って、そうして子供にやらして、また採点みたいなものは人に頼んでやっておる、こういうことは私は最も望ましからざることだと思うのです。先般の通達にもその趣旨のことは申しておりますから、そういうことにつきましては、われわれは各教育委員会、その他の機関を通じて十分指導もし、また学校の教師に自覚ある反省を願いたいものと考えております。
  203. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 補助教材についてですが、アメリカあたりはものすごく補助教材が発達している。一つの大きな会社でもってそれを扱っていて、それが中心となって動いているようでありますが、そういうように、教材の再編の問題については、私はまあ政府としては指導していくことは容易でないでありましょうけれども、そういうような専門的なものを望んでいくと、こういうような方向でいっていただきたいと思うのです。  いま一つは、学校教育法の問題でありますけれども、西ドイツあたりの状態を見ますというと、掛け算の九九をやるには、どのドリルは何回家庭でもってやれというようなことまでが、はっきりと示されている。したがって、どのくらいの補助教材を使えばいいかということが、はっきり出てきているということであります。全部じゃないでしょうけれども、わが国のように、必要とあればというような状態ではないわけであります。これはある程度のところまで基礎的な教育をしていくときには、教育法でこのくらいの教材を使えばいいと、余分な教材を使えばいいというようなことが、すべての課程にわたって出てくるわけだと思うのであります。かようにきちっと規定してやれば、このような混乱も起こらなかったのじゃないかと思うのでありますけれども、その学校教育法というものについて手を染めて、改正をしようと、こういうようなお考えはございませんか。
  204. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 補助教材は、最も有効適切に使ってもらわなければならぬわけだと思うのであります。その使用の方法は、各学校における教科等の指導計画に基づきまして、児童、生徒の学習の進行ぐあいなどの実情に応じて適当に行なわれなければならぬと思うのでありまして、みだりに、テスト、テストばかりが能じゃない、かように考えておるわけであります。  〔委員長退席、理事斎藤昇君着席〕  いまお尋ねの点でございますが、これも一つの考えであろう、また、そういうことで成績をあげておる国もあるということでありますが、私ども参考にいたしたいと存じますが、ただまあ、そういう実際の状況に応じてやってまいるものでございますから、その種類、階層などを一律にきめることが一体いかがであろうかと、このような疑問を持つものであります。したがいまして、現在の時点におきましては、その趣旨でもって学校教育法や学習指導要領の改定を行なうということは考えておりませんが、お話もございましたことでございますので、なおひとつ研究をさせていただきたいと思います。ただまあ先ほど申しましたように、無制限に補助教材を使うということは、私ども必ずしも適当でない、このように考えております。
  205. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 鋭意検討なさるということでありますから期待をしております。積極的に進めていただいて、世の多くの父兄、子供が一番悩んでおりますワーク・ブックであるとか、テストであるとか、ドリルであるとかいうものについても、ある程度の一貫したものを、政府の行き方というものを出していただくように心からお願いをしておきます。  次に、僻地の問題でございますけれども、先般もここで行なわれたわけでありますが、憲法二十六条では、能力に応じ、教育をひとしく受ける、こういう権利を持っている。その上に義務教育の責任というようなものを国が有しているということを言われておるわけであります。これについてでありますが、僻地教育ということになりますというと、どうしても僻地のきめ方について問題があるように思うのです。一つは経済的な状態から、山の中であると、あるいはそういうことで僻地をきめておりますけれども、実際見ていますというと、群馬県の平野部であっても、僻地みたいのようなところがあります。こういうところから僻地教育振興法をやり直しをしてといいますか、改正をして、教育上の僻地というものを考えることが必要ではないか、こういうふうに考えるわけでございますけれども、総理に、僻地教育の振興ということについてどういうふうにお考えになっているか、これを一つと、それから文部大臣に、いまのような僻地教育の振興法について改正をするような御意向はないかどうかを伺っておきたいと思います。
  206. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) すでに僻地教育振興法というのができまして、やはり僻地の指定につきましても、特別に他との非常な不権衡が起こらないよう是正していく方針で進めております。何ぶんにも、これには相当の財政的の問題、人的な問題等が加わりますので、一度に、どうこうやることはできませんが、徐々に、私は理想に向かって近づいていっておると考えます。
  207. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 僻地教育の振興につきましては、ただ単に教育面だけでなくて、他の諸施策が進んでまいりまして、いわゆる僻地性が解消されるということが、一番望ましいことと思います。その間に処して教育面においても、僻地教育の振興をはかっておるわけであります。現在も、御承知のように僻地につきましては、一つの基準をもってやっておるわけであります。その基準につきましては、改善の必要があろうかと考えまして、目下、その改定について、いろいろ検討いたしておるところでございます。
  208. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 その次に、これは教諭の問題でございますけれども、現在教諭の免許状交付者というのが年約十万人いる、こう言われております。そのうち教職についていくのが二万人程度である。本来ならば、いかなる僻地においても、教職員というものが、正式な免状を持った先生がいかなければならないわけでございますけれども、高校卒だけで臨時に免許状を出している臨免といいますか、これを持った者が、僻地教育にあたっているというのがおもなようである。東京都の例を見てみましても、東京都内の人は、なかなか東京都の中でも僻地へはいかないらしい。千葉県とか、その辺のところから来た人が東京へ就職するということで、こちらで免許状をもらったとたんに僻地へもっていかれた、こういうのが多いようでありますけれども、そういうように高校卒だけで臨免を出して補いをつけて、かえって僻地に先生を送っているようでございます。和歌山だけでも、六十名も僻地教育に向かった教員をとっている。一方では、十万人正式な免状を交付されたものがいて、教職につくのは二万人だということで、一方では、先生が足らなくて臨免で補っている、これでは、本気になって僻地教育をやっているのだろうかということを疑わざるを得ないわけでございますけれども、その対策について伺いたいと思います。
  209. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) いわゆる臨免——臨時免許状所有者でありますが、これが現在、教員全体で占める割合は、小学校で二%でございます。また、中学校で〇・七%となっております。数年前に比べますと、よほど減ってはまいったと思うのであります。ただ、僻地の小学校をとってみますというと、これも年々減ってまいっておりますが、小学校で六%、中学校で二%となっております。まあ他の諸地域に比べますというと、やや商い状況でございます。  御指摘のように、なかなか僻地に教員を求めるということが困難な事情がございますので、また、これが解消しない状態でありますが、極力僻地教育の振興、その意味におきまして教員に対する処遇でありますとか、諸施設等の整備をはかりましてできるだけ早く、このような事態の解消をはかりたいと考えております。
  210. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 文部大臣のほうは、それで終わりでございます。  次に、産業公害について、初め総理に伺いたいのでございますが、ここで新産業都市の開発が行なわれる、こういうことは二重構造の解消にもなることであり、非常にいいことだと思うのであります。  しかし、ここで考えなければならないことは、産業、あるいは工場、事業場、こういうことになるというと、必ず公害というものを伴っております。近年特に大気汚染の問題から、スモッグということを騒がれ、横浜ぜんそく、あるいは四日市の異常なまでの公害ということが言われているように、非常にひどい状態であります。  そこで、こういうようなばい煙とか、騒音であるとか、振動であるとかいうような公害についての政府考え方でございますが、産業の発展ということを第一に考え、多少汚れるのは、やむを得ないと考えていくのか、あるいは人体、生命財産の擁護ということを第一に考えていくのか、ここで公害対策ということに対しての重点のかけ方が変わってくるのでありますけれども、ほんとうに公害解消ということをお考えになって、おるのか、この点について、まず伺っておきたいと思います。
  211. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 以前は公害と申しますと、ずっと昔は非鉄金属のあれがあった、植物その他に及ぼす影響、それからのちには、汚水の問題がある。産業技術が発達をしてまいりますと、そういう非鉄金属の関係の精錬とか、あるいは汚水というのではなしに、お話のようにスモッグとかいろいろのものが急速に出てまいりました。これに対する認識は、五年前とあるいは三年前と、いまと全然違ってきております。私は、いまの公害が人体あるいはその他に及ぼす悪影響ということは、産業の発展より、もっと先に考えなければならない、そういう気持でやっていかなければならぬと、こう思っております。
  212. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 当然のことだと思いますけれども、人体、生命というものについての擁護、保護ということを先に考えなければならない。そういう御答弁であったわけです。  それではどうかといいますと、昨日でございますか、公害対策推進連終会というものを閣議で決定されたようでございますけれども、閣議決定で設置について決定したようでありますが、実際、本年度の予算書を見てまいりまするというと、通産関係では、ばい煙測定器具の整備費の補助金あたりは、百三十六万円減って、五百四十六万である。厚生関係でも、公害の実態調査費は五百五十五万円減って、千九百六十七万である、これは三十九年度でありますが、こういうふうになっておる。ふえたものもありますけれども、総体として見ると、減少の傾向にある。これでは一体、ほんとうにこれだけ大きく社会問題として騒がれている公害問題に対して、力を入れてないのじゃないかということを私は思わざるを得ないと思うのでありますが、総理に重ねて公害防止について、またこの除去については、積極的にこれをお進めになるという御決意がおありかどうか、伺っておきたいと思います。
  213. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は予算のことを詳しく存じませんが、決して政府が公害問題について後退しているということは全然ない。いろいろな試験研究につきましては、相当、研究費としては減っているかもわかりませんが、他の施策としては相当出しておるのではないかと思います。先ほどお答えしたように、これは産業の振興よりも前の問題だと考えております。
  214. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 積極的にお進めになっているというようなお考えでございますので、そこで次に伺いたいのでございますが、振動であるとか、あるいはばい煙であるとか、騒音であるとか、悪臭であるとか、がすであるとかこういうのが現在産業公害と言われております、この公害が人体等に及ぼす被害の調査研究というものは現在のところ、ほとんどなされていないというのがほとんどだと思うのでございますが、これについて、公害研究について、防止の面、あるいは人体に及ぼす面、この二つの考え方があるわけでございますが、この二つについて、ともに、公害研究所のようなものをつくって解決する。こういったことが、もはや望まれるのではないか、どの程度の振動であれば、人体に影響があるのか、どの程度の騒音ならばということが、はっきりしていないわけでございますが、この点について、研究所をつくって解決する、こういうようなお考えはないでありましょうか。
  215. 福田一

    国務大臣福田一君) 公害の問題につきましては、政府としては、いままでにも各試験所が、もうすでに問題を取り上げて研究を進めております。いろいろの面における、たとえば通産省関係の試験所にいたしましても、その他政府関係の試験所にしても、これが人体に及ぼす影響、あるいは生活に及ぼす影響ということは、非常に重要でざいますので、いままで、すでに始めておりますが、今後とも、ひとつ大いにこれは促進をいたしたいと考えております。
  216. 小林武治

    国務大臣(小林武治君) これは総理からもお話がありましたように、最近の産業が、急速に発達した、こういうことのために、公害というようなものが非常な緊急の問題になって課題として出てきたのでありますが、これは何ぶんにも産業と生活の調整と、こういう問題になるのでありまして、公害防除のために多額の費用を使えば、一方においては、産業が成り立たなくなる、採算がとれなくなる。また一方においては、生活を守る人体を守る、生活環境をよくする、こういうことと衝突をするのでありまして、この矛盾をどういうところで調整するかということが、全体としての大きな問題であります。  最近におきまして公害が非常にひどくなったということで、厚生省におきましては特に最近の公害が、人体、人の健康に直接影響する、生活環境を悪くするばかりでなく、直接人体に影響を及ぼす、こういうことで厚生省では、いわゆる被害者の立場において、これを検討する。そしてその防除を求める、こういう関係で、ことしは特に厚生省にも公害課という専門の課を設けて、この防除に当たる、あるいは予防をする。  〔理事斎藤昇君退席、委員長着席〕  それで、いまの人体に対する影響等につきましても研究を進めておりまするが、なお不十分である、こういうことで、私どもは総合的な公害衛生研究所というものをぜひ設けたい、こういうことで、ことしもいろいろ検討しましたが、実現はできません。しかし来年度においては、こういうものをぜひひとつ考えたい、こういうふうに思っております。研究費等におきましても相当ことしは進めておりまして、たとえば四日市、あるいは大阪等におきましては、大気圏の測定というものをいたしまして、そしていまの大気汚染の状態を調べると同時に、その汚染の状態が、人体にどういう影響を与えるか、ことに呼吸器に対して、どういう影響を与えるかということで、ことしの四月からは四日市と大阪には、人体の影響を専門に調査研究するための、そういう機械を備えつけた自動車をつくりまして、そしてことしは、これを徹底的に研究する、こういうことをいたしておりまして、そのための調査費も二千数百万円成立をいたしておるのでございます。現に東京、大阪等におきましても、測定地点を設けまして、いまは大気の汚染度を調査を進めておる、こういうことでございます。四日市等につきましては特別問題になって、最近ばい煙規制法の指定もすべし、こういうお話がありまして、四日市に対しましては、特にこれらの汚染の調査委員会というようなものを設けまして、その結論によりまして、いまの予定では四月一日から四日市も指定するというようなことで、いろいろの準備を進めております。
  217. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 公害の実際の状態、市民からの声というようなものが、扱っておる市町村には、まいってくるわけでございますけれども、ここに一つの統計がございまして、これは川崎市の統計だそうでございますが、これを見ますというと、公害が昭和二十九年から三十八年までの間届けられた伴数五百九十六件のうち、約六割が騒音ということになっております。隣の工場の騒音であるとか、あるいはそういうものがほとんどになっております。そのほかには振動というようなものが出ております。  ところが、これは通産大臣に伺いたいのですが、大気汚染であるとか、ばい煙については、いま厚生大臣からお話がありましたばい煙の排出の規制等に関する法律、こういう法律があって、工場、事業場から発生するばい煙を処理し、大気汚染の防止をはかっているわけでありますけれども、振動であるとか、音であるとか、あるいは騒音、臭気、こういったようなものについては、現在のところ法律もないわけであります。  そこで公害のひどい所においては、かなり強烈な条例などをつくって、思い思い取り締まっておるようでありますけれども、これは法律をこういうような振動であるとか、音であるとか、あるいは光であるとか、悪臭であるとか、ガスであるとか、こういうものについてつくる必要があるのではないか、このように考えられるわけであります。それについてのお考えを伺いたいと思います。
  218. 福田一

    国務大臣福田一君) 振動とか臭気とか、そういうものにつきましては、これはやはり、どの程度のものが、どの程度人体に影響を与えるかという、まず調査から始めなければならないと思うのでございまして、この点は、厚生省とも十分連絡をとりながら基準がきまり次第、処置をいたしてまいりたい、かように考えております。
  219. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 もう一度伺いたいのですが、いろいろ人体に及ぼす影響考えて、基準ができてから処理したいという、いまお考えなんですけれども、まあこれは基準というものは、なかなかできないのじゃないかという感じもするわけです。隣のうちの振動が少なくても、中を歩けば音がひどく聞こえるというような場合もございますし、実際に市民から被害の声が出てきたり何かしたときに、これを処理していく、これを防止していく、そういうような法律をつくる。基準をきめるよりも、まず、そのような苦情を処理して、公害というものを除去していくというような、制限していくというような法律をつくる必要がある、私どもはこう考えるわけなんであります。重ねてでありますが。
  220. 福田一

    国務大臣福田一君) そういうような問題は、社会生活をしていく上からいえば当然なことではありますが、しかし、それを取り上げた場合に、どの程度取り締まれるかということになると、やはり限度ということになるだろうと思います。度合いということになるだろうと思うのであります。だから私は、これは個人がそういうことをしている場合、あるいは産業、工場等がやる場合等によって、またこれはいろいろ違いがあると思うのでありますけれれも、やはりその度合いというもの、たとえば振動ならば、一日のうちに何時間、どれくらいのことがあれば、大体これ以上はいかぬとか、あるいは臭気ならば、それがどういう程度ならば、これはいけないとかというような大体の基準というものがないと、何か、そういう委員会か何かつくってやってみても、これは自分は自由に、こういう営業をしているのに、その営業ができないのは困ります、こういった場合に、話し合いをつける場が非常にむずかしくなるのじゃないか、こう私は考えておるのであります。今後もひとつ、十分研究をしてみたいと思います。
  221. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これ以上こまかく入ってもしようがないと思いますから、これは担当の委員会でやりたいと思いますが、実際問題としては、工場地域の中に大工場がありまして、その振動のために、住宅地域に指定されたところで、生活が困難であるというような場所が出てきているわけであります。これはそういう基準とか何とかいうことの前に、そういう騒音を何とか排除していこう、あるいは公害を排除していこう、こういう気持ちになられれば、できてくるのだと思うのであります。法律の制定はできると思うわけであります。  すでに各府県であるとか、そういうところへ参りますというと、新しい工場ができる場合にも、必ずこれを届け出て、そうして工場建設の場合に、公害が発生するかしないかを見る、こういうところまで、ほとんどのところはいっております。さらに公害のひどいところでは、新しい機械を新規に入れる場合にも、これが公害を発生するものであるかないかというところまで検討した上でなければ、新しい機械の購入設置についても規制をすると、こういうのが、各市であるとか県の条例に規定されているような時代なんです。それであるのに、いまのような御答弁だと、だいぶ不満なんでありますけれども、そういうような一地方的に処理すればいいというような問題ではないわけですから、もはや条例等にまかせるというよりは、国民の健康であるとか財産であるとか、こういうことを守るということになれば、本格的に研究をされて、現在条例をもって曲がりなりにもこれはやって、少しずつでも公害の除去をやっているわけです。工場があれば、移転させてまでも公害をなくすというような場所まで出てきているわけでありますから、この点について、積極的な法律化ということを考えるべきだ、このように思うわけです。  さらに通産大臣に、いまのことについての、もう一度御答弁をお願いしたいと思います。それとともに、振動であるとか音であるとか、こういうようなものになりますというと、中小企業の場合には、工場は小さい、そこで動いてしまえということで、移動させるわけです。移動してしまって、引っ越せば、これは振動の発生源とか、音の発生源がなくなりますので、住民に対する公害がなくなります。ところが大工場の場合には、大企業の場合には、これが移転不能である。何万トン、何十万トンというような一つの大きな機械が、夜中じゅうでもずしんずしんやられるというような状態で、これを規制するのが一番の困難のようであります。これが実際に、私どももその公害にあってきているから言うのでありますけども、工場から二町も三町も離れたところで、知らないうちに壁がくずれ落ちてしまうというような状態なんです。これは本格的に強い規制というものが必要であるわけでありますけれども、この対策はどうなっているのか。  さらに最後には、これは住宅地域に囲まれている工場地域というのがございます。こういうところが公害の発生源になって、住民の非難を買っているところが、ものすごく多いわけでありますが、そういうところを何とか解決して、工場地域を一カ所に集団化させる、引っ越させるというような積極的な政策をとらなければ、いつまでたっても、住民の不満というものが消えてこないわけであります。  それからもう一つ、これは最後に時間がございませんので、総理にお伺いしておきますが、この公害防止に関する行政監察結果に基づく勧告というのが、行政管理庁の行政監察局から出ております。これを拝見すると、昨年の十二月に出ておりますが、かなり丁寧に出ております。いまの通産大臣の答弁あたりを聞いていると、まだまだ積極的に取り組んでおられないようであります。この勧告をどのように実現しようとなさっていらっしゃるのか、それをお伺いして終わりたいと思います。
  222. 福田一

    国務大臣福田一君) そういう振動等の問題は、これはやはり地域的な問題でございまして、これが埋め立て地であるとか、ないしはそういう地盤の非常に弱いところと強いところではよほど違います。だから市条例等でも、その場所によって、また町によって、みんなそれは違っておると思うのであります。でありまするから、いろいの施設をしたり、いろいろまた考えております。これは住宅の面からいえば、私は住宅建築の問題も、そういうことを考えて当然やらなけばならないと思うのであります。しかしこれを一般的にやって、たとえばどの程度のあれがあれば、どういう、これはもう工場は移転しなければならないか、なかなか私は、そこに基準の問題が非常にむずかしい面があろうかと思うのであります。しかしながら、こういう点は、今後ひとつ研究をした上で処置をしてまいりたいと思います。
  223. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 行管の勧告によりまして、関係各省次官が集まって相談しております。また、民間の方々の調査団をあれしまして、たぶん初めが水上君の委員長をした隅田川の公害のあれですが、最近また、もう一つ始めたようでございます。あの勧告によりまして、政府並びに民間機関に委嘱いたしまして、いろいろ公害に関しての実地調査を始めて、対策を講じております。
  224. 藤田進

    ○藤田進君 関連。福田通産大臣に、ただいまの質疑に関連して申し上げたいと思うのですが、これは総理の御答弁は要りませんが、総理のところには、案外ささいな問題のようでお耳に入れておられないかもしれないが、最近、特に下請工業というか零細企業、住宅であったものが、二階に住まって、下は工場にして、板金をやるとか、あるいはポンス、シャリング・マシンといったようなものを一、二台据えまして、家内工業的にかなりふえてきております。したがって市街地として指定され、住宅地域となっている——都市計画といったような、東京あたりで、一応適用されるのは建築基準法の別表なんであります。これに例示してございますがね。しかし、もうこれでは間に合わなくなっています。近所の多数と、当該騒音発生源である工場といったところとの対立で相当紛争が出まして、われわれ議員のところにもかなりきているのであります。ですから、これから研究ということは、私非常に意外に思いましたのですが、心もとないことで、この問題が起きたのは、少なくともここ三年くらい、工場がだんだんふえるに従って、下請産業といったようなことがあって、大きいのもございましょうが小さいのもあって、本来住宅地域はいこいの場であるものが、法規その他発注の関係もございましょう、二交代ないし三交代といったようなものが出てきましたり、かなり社会問題になっておることは御承知かと思うのです。  したがって、いまここですぐということにはならないにしても、ひとつ真剣に取り上げて、検討のみならず、所要の立法ということにならざるを得ないのじゃないだろうかと思いますから、この点はひとつ、最後ですが、前向きの御答弁をいただいて、まあこの会期末までにお出し下さいとまで申し上げないといたしましても、すみやかな機会に結論を出していただきたいと思います。
  225. 福田一

    国務大臣福田一君) この問題はお説のとおり、なかなか重大な社会問題になっておることで、具体的にも私は例を知っております。それでしからば、それをどういうふうにして処理するかということになれば、法制的な問題もあるし、予算的な問題もあるかと私は思っておるわけであります。でありますから、前向きで処置をすることはけっこうでございますが、いますぐに、ここでどうするというまでには、まだ案を持っておりませんので、申し上げておらないわけであります。
  226. 加瀬完

    ○加瀬完君 関連。いまの問題で、特に市民生活に影響が大きいのは、騒音とばいじんだと思う。たとえば工場の周辺の騒音というものに対して、適切な保護の法的な方策というものは、具体的にはないでしょう。あるいは工場が赤いすすを出す、そのために付近の住宅は、一日じゅう戸を締めておらなければならない、こういう問題も諸所にあるわけであります。しかし、これも適切な法的な保護は何もない。これでは研究をこれからするという実際は事態ではないわけでありますから、早急に対策を立てていただかなければならないと思いますが、いまの二点に限って、ばいじんの問題あるいは騒音の問題について、具体的には、どういう方法で一般の市民生活を保護しようとなさっておりますか、御所見がございましたら伺いたいと思います。どなたでもけっこうです。
  227. 福田一

    国務大臣福田一君) 何といいますか、ちりの関係や特にそういう騒音の関係、これは確かに、そういう場合がしばしばございますが、これから飛行場、いわゆる運輸関係の発展あるいは進歩等に伴い、あるいはまた、先ほど御指摘がありましたが、やはり下請工場等をつくるというような、二、三台の機械を持ちながらやるというような場合は、しばしば出てくると思うのです。これは私は、社会構造が、産業構造に伴って社会生活の姿が、漸次変わりつつある姿でございますから、それに対処する措置は順次とっていかなければならないと思いますが、しかしその場合でも、音は、そういう場合どうするか、なかなか——もしお知恵があったら、私は逆に拝借したいと思うので、もし知恵がございますればお教えを願いたいと思います。われわれとしては処理はしていきたいというつもりで研究はいたしますが、なかなかいまここで、私は申し上げるまでの案ができておらないということを申し上げておるわけであります。
  228. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 公害の問題に対して、予算が非常に少ないというようなことで、予算だけで片づくというふうに考えられると悪いので、ちょっと申し上げておきたいと思います。  公害に対しては、予算も十分考えておりますし、新しい化学的な工業の発達によって、思わざるものがございますが、私は、現行法でも運用によってはできると思っておるのであります。御承知のとおり地域指定がございまして、工場地域、住宅地域というのがあって、住宅地における工場に対しては、動力制限その他があるわけでございます。確かに騒音とかばい煙とか、そういう問題に対しては、工場法の改正が必要だと思います。戦後特に、私は、この問題が大きくなったのは、工場法につきましては、工場法に相当強い規制があるわけであります。これは警察がやっておったわけでありますが、工場法の検査、監視、許可等は、通産省と労働省に移ったんです。そういうところにも問題があると私は思っておるのです。警察の場合は、工場の検査が非常にうるさかったんでして、工場危害予防法だけでなく、公害に対しても、非常に強い規制があったわけであります。条文にも、そのとおりあるのでありますから、こういうやはり法制上の問題も、十分検討しなければならないし、もう一つは、住宅地域内においては、制限があるのでありますから、この制限をうんと強くして、住宅地域の中に、いままで三馬力までのモーターを許可したものを一馬力に落とすか、十年以内には住宅地域から、これを排除するようにするか、これは新しい要請でありますので、法制の不備があれば、整備をすれば足ることでありまして、こういう問題も、政府の内部において、各省連絡をしながら検討したい、このように思っております。
  229. 加瀬完

    ○加瀬完君 厚生大臣に伺いますが、医学界では騒音病という名前で、このごろ浮かび出ているほど騒音の人体の被害というものは、もう明瞭になってきておる。しかしながら、法律的に騒音に対する具体的対策がない、こういう問題を何か特別に御研究なさっておりますか。
  230. 小林武治

    国務大臣(小林武治君) いまのはいじんの問題は、ばい煙規制法の指定地域になりますると、一定の基準がありますから、相当防げます。千葉県も、私どもはことしのうちには、千葉県のあの地域等は指定をしたいと、こういうふうに思っております。騒音は、飛行機の騒音等につきましては、基地周辺等が、政府でも、たとえば学校その他の公共のものにつきましては、ある程度騒音を防止するというふうな方法を講じておりますが、各家庭までは及んでおりません。  ただ、この問題につきまして、いまたとえばラジオが聞えない、テレビが見えないと、こういう問題につきましては、最近は、そういう騒音のあるところは、その費用を減免する、こういうふうな措置も最近とっております。  それから工場の騒音でございますが、これは騒音にも、いろいろの種類がありまして、いま検討いたしておりますが、小さい工場等は遮蔽する塀でもつくれば、大体騒音も相当に消えますが、大工場等においては、なかなかそういうことはできない、こういうことで、小工場等につきましては、私はある程度、住宅地から排除すると同時に、また、あるものについては、そういうふうな音を防止するような命令するといいますか、行政措置をとらせると、こういうふうな、これからまた法的の措置も考えたいと思っておりますが、いまのところ、一番めんどうな問題は、御指摘のとおり騒音の問題でありまして、これをどういうふうにするかということは、われわれもいま検討しておる、こういうことです。まあ生命身体に、どうこうということよりか、生活を非常におびやかすということで、非常に私は騒音をこれから問題にしなければならぬと、こういうふうに考えております。
  231. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 鈴木君の質疑は終了いたしました。  本日は、この程度にいたしまして、次会は、明後三十日午前十時に開会いたします。  これにて散会いたします。    午後三時五十三分散会