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1964-03-19 第46回国会 参議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月十九日(木曜日)    午前十時十六分開会   —————————————   委員の異動  三月十八日   辞任      補欠選任    林   塩君  市川 房枝君  三月十九日   辞任      補欠選任    米田  勲君  大森 創造君    渋谷 邦彦君  二宮 文造君   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     太田 正孝君    理事            大谷藤之助君            斎藤  昇君            村山 道雄君            藤田  進君            山本伊三郎君            鈴木 一弘君    委員            井上 清一君            植垣弥一郎君            江藤  智君            木村篤太郎君            草葉 隆圓君            小林 英三君            小山邦太郎君            後藤 義隆君            河野 謙三君            郡  祐一君            佐野  廣君            櫻井 志郎君            杉原 荒太君            田中 啓一君            館  哲二君            山本  杉君            吉江 勝保君            大森 創造君            加瀬  完君            亀田 得治君            木村禧八郎君            瀬谷 英行君            豊瀬 禎一君            羽生 三七君            藤原 道子君            安田 敏雄君            牛田  寛君            二宮 文造君            赤松 常子君            須藤 五郎君            市川 房枝君   国務大臣    法 務 大 臣 賀屋 興宣君    外 務 大 臣 大平 正芳君    大 蔵 大 臣 田中 角榮君    文 部 大 臣 灘尾 弘吉君    厚 生 大 臣 小林 武治君    通商産業大臣  福田  一君    運 輸 大 臣 綾部健太郎君    郵 政 大 臣 古池 信三君    労 働 大 臣 大橋 武夫君    自 治 大 臣 早川  崇君    国 務 大 臣 福田 篤泰君    国 務 大 臣 宮澤 喜一君   政府委員    内閣官房長官  黒金 泰美君    内閣法制次長  高辻 正巳君    内閣法制局第三    部長      吉國 一郎君    憲法調査会事務    局長      西澤哲四郎君    人事院総裁   佐藤 達夫君    人事院事務総局    給与局長    瀧本 忠男君    人事院事務総局    職員局長    大塚 基弘君    総理府総務長官 野田 武夫君    総理府総務副長    官       古屋  亨君    内閣総理大臣官    房賞勲部長   岩倉 規夫君    防衛庁長官官房    長       三輪 良雄君    防衛庁防衛局長 海原  治君    防衛庁経理局長 上田 克郎君    防衛庁装備局長 伊藤 三郎君    経済企画政務次    官       倉成  正君    法務省民事局長 平賀 健太君    法務省刑事局長 竹内 壽平君    大蔵省主計局長 佐藤 一郎君    文部省初等中等    教育局長    福田  繁君    文部省社会教育    局長      齋藤  正君    厚生省公衆衛生    局長      若松 栄一君    厚生省医務局次    長       大崎  康君    厚生省児童局長 黒木 利克君    厚生省保険局長 小山進次郎君    農林政務次官  松野 孝一君    農林大臣官房長 中西 一郎君    農林省農政局長 昌谷  孝君    農林省農地局長 丹羽雅次郎君    農林省畜産局長 檜垣徳太郎君    通商産業政務次    官       竹下  登君    通商産業省通商    局長      山本 重信君    中小企業庁長官 中野 正一君    電気通信監理官 畠山 一郎君    労働省労働基準    局長      村上 茂利君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    憲法調査会会長 高柳 賢三君   参考人    日本銀行総裁  山際 正道君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十九年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十九年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十九年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 太田正孝

    委員長太田正孝君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、委員の変更について御報告いたします。  昨日、林塩君が辞任され、その補欠として市川房枝君が選任されました。   —————————————
  3. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 昭和三十九年度一般会計予算特別会計予算政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、きのうに引き続き、質疑を行ないます。  この際、山際総裁出席時間は午前十時三十分までとなっておりますので、この点お含みの上、御質問をお願いいたします。藤原道子君。
  4. 藤原道子

    藤原道子君 ほかの大臣はどうなんですか、私は大蔵大臣関連して質問しなければ……。
  5. 太田正孝

    委員長太田正孝君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  6. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 速記をつけて。
  7. 藤原道子

    藤原道子君 私はこの際、三十九年度予算のうち、社会保障問題点にしぼって御質問したいと思っておりました。ところが、その背景となるところの経済的な見通しについて情勢が大きな変化をしてまいりました。したがって、きょうはその点をまず等一におただしいたしたいと思います。  従来池田総理大臣田中大蔵大臣も、しばしば公定歩合引き上げはしないということを、言明してこられました。ところが十七日に突如として日銀総裁から二厘の引き上げが言明され、それで十八日からこれが実施に入ったわけでございます。このことについてまず日銀総裁にお伺いしたいことは、しばしばくどいくらいに自信をもって引き上げはしないと断言されておりました政府当局、今回総裁が二厘引き上げに踏み切られましたことは政府との打ち合わせの上でやられたことであるか、あるいはまた総裁独自のお考えで踏み切られたのか、この点についてはまずお伺いしたいと思います。
  8. 山際正道

    参考人山際正道君) お答えを申し上げます。先般来の金融引き締めに関しまして日本銀行といたしましてその割引歩合を変更するかどうかということにつきましては、私は従来何らの実は公約を与えてまいっておりません。ひたすらに情勢判断し、それに適応する政策をとっていきたいという考えでまいったわけでございます。諸般情勢をたえず検討いたしました結果、この際において、いわゆる開放体制へ間もなく入ろうとする日本状態において、特に公定歩合までいじることが適切であるという考えに決定いたしましたので、直ちに私は政府とも十分御相談をいたしました。こういう重要な問題についていろいろ説はございますけれども、私といたしましては、政府とたえず緊密なる連絡のもとにお互いに情勢を分析し、それが必要だという意見一致をみて実行いたしますことが国民のしあわせだと考えますので、私は処置をとってまいりました。今回もやはり政府との完全な意見一致のもとに実行いたした次第でございます。
  9. 藤原道子

    藤原道子君 私は、この質問を展開する上において大蔵大臣がおられないことは非常に遺憾であります。大蔵大臣は当日の他の委員会——日銀から発表になられました当日の午前中の委員会で、金利引き上げはしないということを断言されております。ところがただいまお伺いいたしますと、日銀総裁政府と完全な意見一致の上に踏み切ったのだと、こういう御答弁なんです。ということになると、この点でまず私は大蔵大臣の所見を聞かなければならないと思うのです。いつごろおいでになりますか。
  10. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 間もなく、ということでございます。向こうからの情報では、実は閣議を開いておりまして、いま終わったところのようでございます。再三再四注意しておりますが、もう間もなくということです。
  11. 羽生三七

    羽生三七君 関連して。いま総裁の御答弁では政府打ち合わせの上、情勢を十分分析しておやりになったと、こういうお話でございますが、先に昭和三十二年、三十六年のとき、それぞれ国際収支が悪化して三カ月ないし六カ月の期間引き締めに踏み切られております。今回はそのタイミングを誤ったのではないか。本来ならばこんな情勢になる前にもっと早くおやりになるべきじゃないか、もしやるとすれば。私はそれがいい悪いの批判はいまはいたしません。内容のことには触れませんが、タイミングとしてはおそかったのではないか。今回の場合は非常にショックが大きいのではないか。だから事前にもっと手があったのではないかと思うのです。いま唐突としてこういう時期におやりになるということは、いま藤原委員が御指摘になったように、政府は十分お打ち合わせの士とは言われますけれども、私はやはり日銀として十分政府に対する意見の貫徹が達成されなくて、タイミングを非常に誤ったと判断いたしますが、その点についてお伺いいたします。
  12. 山際正道

    参考人山際正道君) 日本銀行といたしましては、当然その職務上、常に経済情勢推移を注目し、分析調査いたしております。で、昨年の秋以来、日本銀行といたしましては、諸般経済情勢推移から考えまして、金融引き締めがちに運営するほうがよろしいという結論で、昨年の秋、いわゆる公開市場操作と申しますか、債券売買方式による金融調整につきましては、十分引き締めぎみ推移いたしてまいったのであります。が、なお情勢は十分でございませんと判断いたしましたので、昨年の暮れ、預金、準備率引き上げをいたしまして、その機会に明らかに金融引き締め態度に入るということを実は宣明いたしまして、大方の決意を促したわけでございます。その当時、準備率引き上げだけでは足らぬのではないか、公定歩合も動かしたらどうだという説もございましたのは、御記憶のとおりでございますが、私自身判断といたしましては、金融界ばかりじゃなく、経済界一般といたしまして、やや脆弱な基盤の上に立っておる場面があるように思いましたので、あまり急カーブを切るということは無用の摩擦なり、犠牲なりを引き起こす懸念があると考えまして、仁川の膨張がやはりそういう事態を招いておる大きな原因だと考えましたので、逐次その引き締めから入ったわけでございます。自来注意深く推移を見ておりますと、なかなか国際収支の改善の問題が進みません。それにはやはり生産水準がなかなか落ちないというところに大きな原因があると私は考えております。そこでどうしても、これを鎮静させる必要がある。そのためには時あたかも八条国移行を目前にいたしまして、どうしても円の信用を確保し、またこの調整を進めていく上から申しまして、ここでさらに一段とその引き締めを強化する必要がある、それには昨年の末以来進めてまいりました引き締め態度ということに対しまして、経済界全体がある程度の覚悟を固め、またそれに順応する態勢を着々と遂げつつあったと思いますので、この際実施いたしましても、昨年の暮れ私が心配をいたしました急カーブによる過当な摩擦なり犠牲なりを避け得るということを私は考えますので、この機会においてそれを実行するという段取りにいたしました次第でございます。
  13. 羽生三七

    羽生三七君 もう一つだけ。そこで、新聞報道等を見ますと、これは必ずしも低金利政策が終わったわけではない、長期的政策としてはやはり低金利政策であるが、短期的な当面の処置としての今回の引き上げだ、こういうように語っておられるようでございますが、この場合、先に総裁引き締めは相当長期にわたるという談話を発表されておると思います。そういたしますと、経常収支赤字、特に貿易外収支赤字は別としても——これは簡単に解決いたしませんから別としても、短期的な引き締めが解除されて、いわゆる長期的な低金利政策に移行できるような条件が近いうちにあるのでしょうか、その時期はいつでございましょうか。そういう判断がないと、長期にわたる低金利政策というもの、そのものも放棄したことになると思う。したがって、その短期的なものは一応終結してもとに復し得る条件になるのは一体いつになる、いつと判断されてこういう処置をおとりになられたのか。この点をお伺いいたします。
  14. 山際正道

    参考人山際正道君) わが国の経済状態が、元来そう資本蓄積が豊富でない状況のもとにありましたので、敗戦によりましてさらにその蓄積が失われましたようなわけでありますので、この資本蓄積について非常に乏しい状況になっておりますることはもう御承知のとおりでございます。したがいまして、資金需給関係、よって生ずる金利状態におきましても、世界的に相当高水準経済状態にあるということはこれまた御承知のとおりだと思います。で、産業を振興し、経済の発達を促し、結局国民生活の福祉を増進するためには、蓄積の増加によって漸次金利水準を下げてまいるということが国際的に考えまして必要な状態にあるということについては、私どもその必要を認めておるわけであります。が、何しろしかし、その蓄積が大体需給均衡させる状態に持っていきますのには、一歩々々前進させることでなければなりませんので、相当これは長期間を要するだろうと実は思いますので、方向といたしましては、さように資本蓄積を増加し、需給関係を緩和することによって、漸次金利水準の低下をはかるということが望ましいことは国際的に考えまして疑いを入れないところと実は考えるのであります。が、ときに生ずるいろいろ経済上の不均衡金融手段によって調節するということは、この際自由な経済状態において進んでまいる上におきましては、やはりこれは財政金融に課せられました大きな責務であると考えます。その短期的調節をいたしまする上において、金利操作をいたしておるわけでございます。しからば、いつごろになったらこれを解除する状態になるという見通しであるかというお尋ねであると存じますが、その点は、実は計画的に経済を振興さしておるわけではございません。ことにただいま金利引き上げはようやく始まったばかりでありまして、なるべくすみやかにこれが浸透をいたしまして所期の効果をあげることを希望いたしまするけれども、いまの段階においては、まだそれがいつごろに解除し得る状態か、そうして蓄積をふやすことによって一歩々々いま申し上げましたような低金利経済方向に持っていく状態になり得るかということを予測することは、実は現在の段階においては非常にむずかしいことでございます。しかし、いま申し述べました理由によりまして、なるべく早く有効にその操作が効力を発揮いたしまして、一日もすみやかに常態に復し得ることに運んでいきたいというのが私どもの念願でございます。
  15. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 私から大蔵大臣にちょっといままでの経過をお話しいたします。  藤原委員山際総裁出席時間の都合で、大蔵大臣のいないにかかわらず進めるということもやむを得ざることを了解してくださいましたが、山際総裁に対して藤原君の第一の問題は、総裁引き上げのことを公約したことがあるかという問題でありましたが、公約はないということを言いました。  それから大蔵大臣引き上げの当日におきまして、なおかつ引き上げないと言ったにかかわらず引き上げたのはどういうことか、これが第二点でございます。  第三点に関連質問といたしまして、引き上げの時期は、期間はどうなるかということについて、金利引き下げ国際大勢であるが、いまのところそれを明言することはできない、これだけのことを申しましたから、大蔵大臣に、藤原委員に対して時期の問題について御答弁を願うことにいたします。
  16. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まだ日銀総裁の問題があるわけであります。
  17. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 先に何しまして……。
  18. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総裁の時間の都合がありますからね。
  19. 太田正孝

    委員長太田正孝君) あなたの来る前の藤原君の質問に対する答弁は当然でございます。
  20. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 政府日銀  の間に十分な意思の疎通をはかりながら慎重に大勢を見きわめてまいったわけでございます。  それから、私が三月の十七日ごろに公定歩合引き上げないということを委員会で言ったということでございますが、さようなことは言っておりません。私は公定歩合引き上げないなどということはいままで一ぺんも一言っておりません。衆参両院速記録を見ていただいてもおわかりになるとおり、公定歩合というものはその瞬間までわからないものでありますから、中央銀行でもって十分慎重に考えながら私のところに持ち込むものでありますから、公定歩合引き上げ引き下げなどということを私は国会の席上で言うはずはありませんし、そういうことを言うておりません。  また、私はいつでもお答えいたします。
  21. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 藤原委員関連質問なんでありますが、よろしゅうございますか。——それでは木村委員
  22. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 日銀総裁、時間をお急ぎのようですから先に御質問いたしますが、先ほど十七日に公定歩合二厘、一気に二厘引き上げ理由について、主といたしまして、開放経済体制に入っていく、四月一日から八条国に移ると、そういうことを重点に置きまして、円の価値を健全にしなければならぬということを重点に置いたお話がありました。しかし、実際はそれよりも当面の問題としまして、先ほどもちょっとお触れになりましたが、鉱工業生産が落ちない、それで輸入が非常にふえて国際収支見通しについて楽観を許さなくなった、したがって、政府との話し合いにおいて二厘引き上げの了解を得られた。この話し合いをすること自体われわれ悪いと言っているのではないのです。そこがいま焦点なんでございますから、その点について政府との間にどういう話し合いをされ、それで日本銀行としては国際収支見通しにつきましてどういう判断をされたか、もう少し具体的にその点を説明していただきたいのです。どういう判断をされ、政府は十七日の四時ごろに引き上げを決定されたというお話ですが、十七日の午前中、私は大蔵委員会池田総理国際収支見通しについて質問したのです。それで鉱工業生産政府の予定よりも上回って輸入がなかなか減らない、こういう情勢ではこのままではいけないのではないか、三十九年度予算前提となった国際収支見通しも六十二億ドル、輸出入とんとんではいけないのではないか、もっと輸入がふえるのではないか、国際収支の前途は決して楽観できないので、これに対して池田総理は、そういう心配はない、楽観もしていないが心配もしていない、それで大体このぐらいの程度で横ばいにいけば九%ぐらいの増の鉱工業生産で三十九年度はいけるのではないか、それで国際収支もとんとんいけると、かなり楽観的な答弁でありました。その前もずっと大蔵大臣池田総理大臣もこの委員会を通じ、あるいは衆議院委員会を通じて、ずっと国際収支心配ない、心配ないということを何回も言ってきているのですよ。そんなに心配ないならなぜ二厘引き上げる必要があるか。これは日本銀行国際収支見通し政府見通しとの間に非常な食い違いがあったと思うのであります。この際率直にこの点を御解明願いたい。これは単なる日本銀行の二厘引き上げという経済的な問題ではありません。重大な政治問題であります。所得倍増政策池田内閣政策につながる重大な修正の問題とわれわれ考える。この点について明確にしてもらいたいということ。  もう一つは、先ほど羽生委員が御質問いたしましたが、これは一時的なものである、金利引き上げは一時的なもので低金利政策修正ではない、こういうふうに言われました。しかし、今後金利をまた引き下げるような条件がございますかどうか、これは政府のこれまでの成長、金融、低金利政策の重大な私は転換であり修正と見なければいけないのではないか。総裁はお立場上、政府がもしもこの低金利政策転換ということになると重夫なこれは問題になるのです、所得倍増政策は根本的に間違っていた、ここで決定的に転換しなければならぬということになるので、総裁もデリケートな御発言していると思うのであります。それではいけない。せっかく新聞で伝えられるように、進退を考えて、総裁の座を犠牲にしてもかまわないというような決意で二厘引き上げに踏み切ったと言われるならば、今後の日本経済情勢は、政府所得倍増政策考え方ではだめなんだ、こういうことに対して、やはり総裁として、はっきりした御見解をお示し願いたい。私は低金利政策のこれは転換と見る。日本金利が高いのではなくて、資金の貸し出しがあまりに多過ぎるのであります。借金が多過ぎるから金利負担が全体が大きいのである。こういうように理解しなきゃいけないと思う。ただ金利水準だけじゃないと思う。そういう点につきましても、総裁の明快な、はっきりした、あまり立場にとらわれない、日本国民日本経済全体をほんとうによくしていくという立場で御見解をお示し願いたいと思う。
  23. 山際正道

    参考人山際正道君) お尋ねの第一点の、国際収支の先行きについてどういうふうに考えたかというお話でございます。この点は、もう先ほども申し上げましたとおり、自来、慎重に分析し、かつ調査を進めてまいりました。その結果といたしまして、このままの状態においては、なかなか国際収支早期均衡回復を庶幾することがむずかしかろうと考えましたので、ここでどうしても八条国移行を前にして、また、従来の引き締め政策を強化するような意味において、金利操作に訴えざるを得ないということを私は決意いたしましたのでございます。政府はいろいろお考えはございましょうけれども政府といえども、やはり国際収支均衡回復のためには、いろいろ防衛するための手段をとるということは、むろん前提になっておるであろうと思いますので、私自身は、当然そのためになすべき措置日本銀行としてはとるべきであるという考え方から実行をいたしました次第なのでございます。むろん、そういうあらゆる方策を尽くしまして国際収支均衡をはかっていくということの趣旨でございます。  それから第二点の低金利問題でございまするが、これは先ほど申し上げましたとおり、長期的な観点においてその問題はあり得ると実は考えております。私どもの任務といたしまする短期的な調節という機能は、そのことによっては妨げられないことであるし、あるいは考え方によりましては、種類を異にする操作でもあろうかと思うのでございます。その意味におきまして、これを実行してまいったわけでございます。  それから第三点の問題といたしましては、いわゆる借り入れ金依存度が高いということは、いわゆる金利水準が高いという結果にもなっておるのでありまして、この点はどうかというお尋ねでございましたが、この点は私は御指摘のとおりだと思います。でありまするから、いわゆる企業における自己資本他人資本との比重をできるだけ改善いたしまして、自己資本を充実することによって借り入れ資本を減らし、これによって企業利子負担を軽減するという方向は、まさに今後とるべき方向であろうと思います。あるいは資本市場の育成、あるいはその他の措置によりまして、漸次そういうことに持っていきたいと努力いたしております。
  24. 藤田進

    藤田進君 関連。第一点の御答弁については非常に不満でありますから、重ねてお伺いいたしたいと思います。政府との最終段階における折衝の内容について伺いたい。政府は、私の今月三日の国際収支に関する質疑に対する答弁で、総理は、結論的に言えば、幾らかかっても最後に一円残れば一番これが金持ちなんだ、国際収支については心配はないという表現の方法として使っている。大蔵大臣は引き続いて、国際収支心配はない、電話一本かければ外貨などというものはもう自由にこれが用意ができるのだ——忘れてもいないでしょう、電話一本。そういう具体例を示して、答弁方向性としては、公定歩合引き上げの必要なしということを、もう非常に強く例示して答弁しているのです。このことは、引き続き各委員の質疑に対しても同称の方向性を持っていた。これが十七日になって二厘の引き上げということに政府が同意したというその経緯は、もっと真相を聞きたいのであります。政府としては、日銀がかような引き上げ見解を持つけれども、しかし、この際、その措置は必要でないと言ったのかどうか。しかし、日銀総裁の言うことであればやむを得ないだろうといったようなかまえで、これに同意を与えたのかどうか、これは大きな問題だと思います。したがって、この点の実情と関連して、日銀総裁国際収支見通しについては、従来つまびらかではなかった。政府は、いまのように電話一本、最後に一円残ればいいということです。宮澤経済企画庁長官は、十六日の中国新聞社との座談会でも一、はっきりと国際収支楽観説を言っているし、これは文章になって世に明らかになっておる。こういう大きな食い違いがあるわけなんです。この点は、日銀総裁とされても、第二点として、国際収支見通し、二厘上げざればどうだということを具体的に言ってもらわなければ承知できません。
  25. 山際正道

    参考人山際正道君) 先ほど来申し上げておりまする昨年末以来の国際収支推移に対しまして、十分検討を加えてまいりました。私どもといたしましては、やはりこの際、もう少しいろいろ原因となっております点がございまするけれども金融引き締めることによって、国際収支均衡に近づける努力を払うことが必要な段階である、さもないと、八条国移行を前にいたしまして、かえって国際的な信用を失墜することにも一なりかねないというような判断をいたしましたので、この機会において、一段と従来とってまいりました金融引き締め措置による国際収支均衡への努力を、一段と強化いたしましたような次第でございます。私は、この立場から事情をるる開陳をいたしております。政府におかれましては、むろんそれらの資料に基づいての適切な御判断だったと思うのであります。
  26. 藤田進

    藤田進君 国際収支見通し答弁不足ですよ。
  27. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 山際総裁国際収支見通しについての御答弁を……。
  28. 山際正道

    参考人山際正道君) 的確に、いつの時期にどの程度の回復をするというようなことを測定いたしますことは、これは先ほども申し上げましたとおり、非常にむずかしいと思います。しかしながら、局面の展開に応じて、あらゆる努力を積み重ねていきまするならば、私は国際収支均衡を回復し得るものと考えております。したがって、その努力が払われつつあるということが認められまするならば、国際的な信用も保持できる、円の価値も安定に保持することができる、かように考えてやっております。
  29. 木村禧八郎

  30. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 簡単でございますか。
  31. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 はい。日銀総裁のおられる時間内にもう一つ伺っておきたいのです。日本銀行公定歩合引き上げ引き下げ等の決定は、日本銀行の自主性において行なうというこの原則は、これは曲げることはできないと思いますが、この点はどうかということ。  もう一つ、もしその自主性において、政府との話し合い等々については、私はこれを悪いというわけではありません。しかし、日本銀行の自主性において行なう、そういう原則になっていると思う。もしそうであるならば、これはあとで大蔵大臣に伺いますけれども日銀総裁のおられるときに伺っておかなければならぬと思います。この二厘引き上げ後の新聞記者会見で、田中大蔵大臣は、公定歩合引き上げはこれが最後だ、こういうふうに答弁をなさっておるんです。公定歩合引き上げはこれが最後だ。——そうしますと、これは大蔵省がまるできめるような形ですよ。最後だと言い切れるのですか。情勢によって、また日本銀行の自主性において、さらに引き上げる場合もあるでしょう、引き下げる場合もあるでしょう。しかし、大蔵大臣はこれが最後だということを言い切っているのです。これは日本銀行法の改正の問題とも関連してくるのです。この新聞記者会見の談話を読んで見ますと、大蔵大臣は、まるで大蔵省がこの金利引き上げをやったように、そういう印象の談話なんであります。低金利政策を進めていくわが内閣としては、公定歩合引き上げはこれが最後だ。こういうことを言ってよろしいのでありましょうか。こういうことについては、やはり十分日銀と話し合って、日銀の自主性を尊重してこれはきめるべきものであるというふうに答弁されるべきものです。私はそういうふうに判断します。そうでないと、これは今後、私は非常に重大な問題になると思います。日銀と大蔵省の関係ですね。日銀の自主性につきまして、この点について伺いたい。
  32. 山際正道

    参考人山際正道君) ただいまお尋ね公定歩合操作に関する問題につきましては、これは私どもは、法律が日本銀行に与えておる責任であり、義務であると判断いたしております。しかし、事柄の性質上、これは十分政府と完全なる情勢の分析の一致あるいは判断一致のもとに行なわれることが最も有効であり、そのことが結局諸般経済政策をして最も円滑に推移せしめるゆえんであると考えますので、従来といえども、そのことに努力をいたしてまいりましたし、今回といえども、その点は非常に大事と考えたわけでございます。私は、十分関連方面との協調連絡をとることが、それが自主性がないことではないと考えております。自主性を持ちまするがゆえに、自己の責任におきまして十分意を尽くしまして同調を求めるということは、これはもう当然のなすべきことと考えております。
  33. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私に対する質問にお答えします。
  34. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いま、日本銀行総裁に聞いているのです。
  35. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 新聞記者会見に対して御質問がありましたからお答えをいたします。
  36. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣質問していないのですよ。
  37. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 質問しておいて、答えないでいいというのはおかしいじゃないですか。
  38. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 時間がないのです。
  39. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 時間がなくたって。
  40. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 あとで質問しますと言っているじゃないですか。
  41. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 新聞記者会見について言ったじゃないですか。
  42. 太田正孝

    委員長太田正孝君) あなたの御質問は、実は私も聞いておりまして、大蔵大臣に対する質問のようにもとれます。大蔵大臣に対する質問のようですので……。
  43. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 委員長、あなたは変ですよ、きょうは。いつも公平なのに。
  44. 太田正孝

    委員長太田正孝君) あなたが御心配なすっている山際君の時間が少ないという意味のことはわかっておりますから……。(発言する者多し)
  45. 藤田進

    藤田進君 議事進行。大臣は、閣議とかでおくれられて、その間の事情がわからない。日銀総裁は十時半までということで、大臣は見えないけれども、議事進行上、日銀総裁に初めお聞きしよう。大蔵大臣その他についてはあらためて別途ということで、今回は、両者関連してでなく質問を進めているわけです。その質問の要旨をよくわかっていただくために、木村委員も、たとえば大蔵大臣の記者会見ではこうこうこう言っている。日銀の自主性はどうだ。そういう引例をしながら日銀総裁にこれは質問をしているわけです。福田さん、あまり事情わからずにごたごた言わないで、議事進行に協力してもらいたい。したがって、日銀総裁とされては、あなたもお急ぎのようですから、したがって、質問に対する適確な回答を与えていただかなければ、これはなかなか進みませんよ。
  46. 山際正道

    参考人山際正道君) 前段お尋ねの点に関しまして、日本銀行として、ないしは日本銀行総裁として考えました経過は申し上ましたとおりでございます。政府のほうでもいろいろ御検討を願ったかと思いますが、その経緯は私ども直接承知はいたしておりません。ただ協議において御了解を得て実行したということを申し上げるほかないと思います。
  47. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうじゃないですよ。これは大蔵大臣あと聞きますけれども、あとで大蔵大臣に聞きますけれども大蔵大臣新聞記者会見で、公定歩合引き上げはこれが最後だと断言されておるのですよ。そういうことが、先ほど日銀のこの公定歩合の決定についての自主性について総裁からお話ありましたね。ありました。これは自主性を否定するものじゃないですか。政府のほうから先にですよ、今後の金利のあり方について、低金利政策ではこれは最後だと、それ以上引き上げないと、こういうことを大蔵大臣が先走って言うことはいいのかどうかということを聞いているのですよ。矛盾しないかと、先ほど日銀の自主性とはですね。
  48. 山際正道

    参考人山際正道君) ただいまお話のございました点につきましては、私ども一といたしましては、直接経過の過程において感じましたことを申し上げておるのでございます。それ以外の場合のこと等につきましては私は承知をいたしておりませんので、何ともお答えをいたしかねる次第でございます。
  49. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 関連してちょっと一つだけ。実は本日の委員会については、いわゆる閣僚が出ない先にやったために若干誤解があると思いますから、これはあとで申しまするが、日銀総裁が十時半ということで、非常に時間が延びたことについては、これはわれわれとしては相済まぬと思うのですが、ただ最後に一問私は聞いておきたいのですが、今度の公定歩合引き上げについて、いろいろ本質的な問題が各同僚から質問がありましたが、今日中小企業の非常に膨張しておる際に、これは中小企業に及ぼす影響は大だと思うのですが、これは中央銀行総裁としてこれに対する何らかの手当てをしなけりゃならぬと思うのですが、その点一点だけひとつお聞きしておきたいと思います。
  50. 山際正道

    参考人山際正道君) 今回の金融引き締めに関しまして中小企業への波及ということにつきましては、当初から最もわれわれといたしまして関心を深くいたしておりました点でございます。すでに申し上げましたとおり、昨年の暮れ準備率引き上げました際におきましても、特にそのことに言及をいたしまして、中小企業金融がこれがために梗塞をし、健全なる中小企業が倒産等のことに巻き込まれるようなことのないように配慮いたしまして、具体的には政府とも一御連絡をいたしまして、政府のほうでもいろいろ政府資金等を動員して、それに対する政府、市中金融機関等の動員をされておりまするし、また、私どもといたしましても支店長等へ指令をいたしまして、個々のケースにつきましては一々労をいとわず拾いあげて相談にのって、巻き添えを食う者のないようにということについての十分の配慮を促しておりまするし、また、銀行等の金融機関に対しましても、特にそのことを私が申し入れまして、十全の配意をこいねがってまいったわけでございます。自後の経過におきましては、幸いにこの点は大体において不必要なる摩擦なりあるいは犠牲なりを生ずることなしに進行してまいっておったと思うのでございます。今回の引き上げ措置につきましても、この点は私は重ねて最も深く留意をいたした点でございまするので、特にその点を訴えまして、まあ金融機関にも訴え、全国の私どもの支店網等にもこれを訴えまして十全の配慮を一そう固めてもらうようにいたしておるのでございます。また、政府におかれましてもさらにその点を考慮されまして、あるいは中小オペと申しまするか、この資金の流出等についても配意をされておるわけでございます。私といたしましては、まず大体において必要以上にその摩擦なりあるいは犠牲なりを払うことなくして推移し得るのではないか、かように細心の注意を払いながら進行いたしておるような次第でございます。
  51. 藤田進

    藤田進君 日銀総裁、どうしてもはっきりしていただかないといけないのは、この際、大蔵大臣が談話を発表されて、公定歩合引き上げはこれが最後であるとか、公定歩合操作に関して決定的なその発言というものがあったことは事実です。で、承知しないということではなしに、そういうことがいま問題になっている日銀法の改正にこれは大きな影響を持つものである。したがって、日銀総裁とされて、その自主性等においてそのことが妥当であるのかないのかということだけははっきりしていただかなきゃなりません。
  52. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 大蔵大臣からこの問題について発言を求められております。時間の点は承知しております。
  53. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) どうも質問されたほうが私はおかしいと思います。私の発言に対して新聞記事だけをお読みになられて、そういうことを前提として第三者である日銀総裁意見を求めるという前に、私は国会の信義の上において、国会の尊厳のためにも、本人に対して真意をただして、しかる後に質問をすることがいいのじゃないかと私はそう思っているのです。(「時間がないから先に聞いている」と呼ぶ者あり)時間のこともありますでしょうが、いやしくも国務大臣に対して特定の名前を国会で出されて、そしてその真実を確かめないというのはおかしいんじゃないですか。
  54. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 あとであなたに聞けばいいじゃないですか。そのときにあなたははっきり答弁したらいいじゃないか。
  55. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それを前提として御質問になっておられるのじゃないですか、木村さん。私が言ったか言わないかの事実をお確かめにならないで、それを事実として第三者に答弁を求めるということはおかしいんじゃないですか。
  56. 藤田進

    藤田進君 日銀総裁のほうは帰るというから協力しているだけで、それはだめですよ。
  57. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 新聞記事にそのような記事がありましたことは私も読んで承知をいたしております。しかし、これらの問題に関しては国会においてまま申し上げておる政府考え方が正しいのであります。木村さんからも一御質問が何回かございました。公定歩合に対して政府考え方はどうかということでございますが、この件に対しては明らかに国会の議場を通じまして、日銀政策委員会で決定をして、大蔵大臣に届け出られるものでございますので、日銀の自主性を十分尊重してまいりますということはまま申し上げておる答弁が、国会を通じての政府の正しい考え方であります。  それから、新聞記事の問題を一々申し上げるのはどうかとは思いますけれども、非常に忙しい間において、長い記者会見ができる場合と、立ち話の場合もございますし、まあ新聞記事はいろいろな前提があったものの中で、ごく一部限られた活字で、限られた行で報道せられるものでありますから、新聞が報道したものをおとりになる木村さんのお気持ちも了解はできますけれども、少なくとも何回もあなたの質問に、この場所を通じまして、政府考え方は明らかになっておるのであります。本会議においても、委員会においても何回か、何回か繰り返して答弁をしておることに真実を置いて御判断をいただくのが正しいと、このように考えます。
  58. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 山際総裁、たいへんに時間の点も承知しておりますが、問題がここまできましたので、しばらく猶予を願いたいと思います。
  59. 山際正道

    参考人山際正道君) ただいま大蔵大臣の御発言についてのお尋ねがございましたが、私は常時の接触において何らその種のことは大蔵大臣から直接承っておりません。
  60. 藤田進

    藤田進君 承っているかいないかということを聞いているのじゃないのです。そういう談話が出ていることは、大蔵大臣もいろいろな前提はあったけれども、言ったということを言外にほのめかしているわけで、そういうことが日銀法に関連していま問題になっている焦点なんですよ、実際問題。このことに関する日銀総裁見解を一点だけただしているのです。
  61. 山際正道

    参考人山際正道君) 私はその点に関しましては、法律が日本銀行に与えておりますることにつきましては、当然大蔵大臣はさような趣旨においてお考えになっておることと思いまするので、疑いを別に持っておりませんから、特にその点をおただしいたしたことはございません。
  62. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 じゃ、大蔵大臣に伺います。いま大蔵大臣の御答弁は、何回も何回も日本銀行の自主性を尊重するということを言われているのだから、そういう質問をすること自体がおかしいじゃないか、こう言われるのでしょう。いままでそういうことを何回も一聞いているからこそ、朝日新聞のこれは見出しですよ。一番大きく、こんなに大きい活字で、「引上げこれが最後」だと、こういう見出しになっておりますから、いままで大蔵大臣があれほど自主性を尊重すると言われながら、なおかつ新聞記者諸君にこういうふうに言われた。しかも、いま大蔵大臣の御答弁では明らかになっておりませんよ。忙しいときであるから、あるいは言ったかもしれないというような印象にとれるのですよ。こういう不用意な発言が私は出てはいけない、いままで何回か自主性を尊重するというのに、にもかかわらず、私は単に不用意ということではないんじゃないかと思うのです。この新聞を読んだ限りにおきましては、これは大蔵大臣よくお読みになってください。私がそんな質問をするのはおかしいじゃないかとあなた言われた。しかし、大蔵大臣が自主性を尊重するのだと言われたからこそ、大蔵大臣がそれに反した行為で談話をもししたといたしましたならば、それこそおかしいと思うから質問するのでありまして、その点は誤解のないように、お互いにあまり大きい声を出してやる必要もない問題なんです。静かに話しても事情はわかるわけですから、そういう意味質問しているのです。ですから、いま大蔵大臣が、たのかもしれない、忙しいから不用意に話したかもしれないというような印象の御答弁もあったのですね。ですから、私は全然違ったことではないような印象を受けるのです。その点、もう少し。
  63. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私、正式に御質問であれば、機会を与えられましたから、この際明らかにいたしておきます。  まあ新聞記事等、国会における発言がいつでも問題になりますけれども、まあ私が政府として明らかにしておきたいことは、国会で正規な議場を通じて申し上げておることが政府の公式な見解であり、真意であるということは、ひとつ将来ともそのように御理解賜わりたい、このようにまず申し上げるわけであります。  新聞記事の問題に対しては、私も申さないなどということは申し上げません。これは、まあ当日は非常に忙しい日でございまして、御承知のとおり、参議院の予算委員会があり、外為法の、木村さんもおられましたが、参議院の大蔵委員会もありますし、なお、衆議院大蔵委員会もあり、それから決算委員会にも出席を求められておったという、非常に珍しいぐらいにほとんど時間がないときでありまして、まあ朝の新聞どもほとんど読めない。新聞は、夜おそくなって家に帰ってから読むというような状態が続いておるわけであります。そういうときに公定歩合の問題に対して記者会見を、四時三十分ごろ集まっていただいて、五時ごろ日銀と同時に発表したわけでありますが、そのときに、一厘もいいけれども、よく二厘に踏み切りましたなあというような話があったと思います。二厘——まあ二厘をやったということは、日銀がやりたいということであるし、政府も十分諸般情勢を勘案したが、日銀の自主性を認めて私もこれを了としたのですと、二厘も引き上げるということであると、また上げますかと、こういう話がありましたので、まあ二厘も上げたんだから当分上げるということはないだろう。これはだれでもそういうことを言うわけでありまして、いやしくも国務大臣としてそういうことを言っちゃいかぬと、こういうことに言われれば、それはそのとおりでありまして、私も以後気をつけますが、そういう忽々の間において、お互いに非常に親しい財研の諸君との砧の中でありますから、私もそのようなニュアンスの発言に対して記事が少しどぎついなという点、正直に感じました。感じましたけれども新聞を一々気にしているというほどひまもありませんの、で、まあ親しい間でもって書いたことであるが、しかし、まあ質問はいただくなあと、こういうことを瞬間感じたわけでありまして、まあ公定歩合に対しては何回も総理も私も申し上げているとおり、日銀の自主性、法律どおり日銀の御決定にゆだねてあるのでありますからと、こういうことを申し上げておるのでありますので、新聞に出ておる、新聞の報道にあらわれておるニュアンスよりも、政府が毎度申し上げている、公定歩合に対しては日銀の自主性を大いに尊重する。私も日銀尊重論者でありますので、木村さん、これもひとつ十分御理解いただいて、御了解賜われば幸いだと思います。
  64. 藤田進

    藤田進君 非常に長い御答弁でつかみどころがないようですけれども、しかし、記事として取り上げられたニュアンスから見るとどうも本意でなかったように受け取れるわけで、以後注意いたしますということのようですが、それはそれとして、私の先ほど指摘したように、大蔵大臣に御答弁をいただき、白銀総裁にはあとで質疑いたしますが、電話一本で外貨なんて問題ない、総理もたたみかけて、幾ら使っても最後に一円、残ればこれが一番お金持ちで、外貨などというものは諸君心配するなということなんですね。これはこの国会一貫してこられた、全閣僚はこられた。それと、今度の二厘引き上げの主要な要因である外貨事情ですね。ところが、政府はこれに対して全く抵抗もなしに了解を与え、事前の意思疎通は完全にあったということについては、私どもふに落ちない点がある。これは突然変異に、従来の答弁とは変わった事情が出たのかどうか、その辺の事情を聞きたいと思います。
  65. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 公定歩合引き上げの問題は、突然変異というようなものではありません。また、特に新聞記者諸君からの質問がございまして、八条国移行に対してIMFから要求があったのではないかというようなことがございましたが、国内的にも、国際的にも、そのような事実は全然ございません。しいて申し上げれば、日銀の自主的な判断を尊重したということでございます。  それから、外貨準備に対しましても、池田総理の御発言の中で、最後に一円残ればということを引用せられております。(藤田進君「電話一本」と述ぶ)私が電話一本と——まあ国際収支の問題に対してお互いにもう十分了解をしておるのでありまして、私が電話一本で、日本国際収支が安全だ、こう言っておるというふうには藤田さんもおとりになっておらぬと思うのです。電話をかければ必要な金もできるぐらいに日本の国際的地位も信用も上がっておるのでございますから、とにかく、昭和二十九年、三十二年、三十六年というような状態——十四億ドルを割ったというような状態ではなく、政府見通しどおり、この三月末の外貨準備は十七億六千四百万ドルということでありまして、大体政府が所期した数字程度の期末外貨を持つわけでありますし、なお、IMFのゴールド・トランシュもIMG統計には当然出ておりまして、国際的な統計には日本の外貨準備というものは一億八千万ドル加えたものが発表されているわけであります。しかし、いままであまりにも超健全性を固持したと言われるかもしれませんが、ゴールド・トランシュの一億八千万ドルさえも、外貨準備高は落としているわけであります。この機会でありますし、総理もいつか申し上げるつもりでおりましたから、申し上げてもいいと思います。私の責任で申し上げますが、日本の外貨準備の健全性というものは、世界的に非常に健全なのであります。東京銀行を初め、外国銀行に対して、当然こちらのほうに外貨準備高に入れておくべきものであっても、これを貨し付けておるものが約四億ドル近くもあるわけであります。こういう事態を明かにいたしますと、三十二年に三項借款、七項借款等をやりました三億二千五百万ドルの特別借款を全部返済をいたしまして現在の外貨準備高でございますから、私は世間でいわれておるように、八条国移行を前にした現在の状態で、つるべ落としに国際収支が悪くなるのだ、いつでも国際収支の先行き不安という、合いことばのようになっておる世間一般の考え方、実勢よりも日本経済が悪いんだというようなものの考え方に対しては、真実を述べて国民の理解を得ていくべきだというこことを考えてきたわけでありまして、私は国際収支が、八条国移行をした各国の例を見ましても、不安な状態であるというふうには考えておらないのであります。  なお、日銀政府との間に非常に意思の懸隔があったのではないかということでございますが、公定歩合に対して日本人は非常に過去からこれを大きく考えておりますけれども金融調節一つ手段であることは御承知のとおりであります。日本のようにこんなに大騒ぎをしないで、金融調節機能というものは、各国においては随時弾力的に運用せられているわけであります。十二月には御承知準備率引き上げを行ない、一月には窓口規制を行ない、その一環として、その一つ手段の中の公定歩合引き上げをやったのでございまして、私は、世界的な例から見ましても、金融操作というものはこれからなお弾力的に行なわるべき問題であって、政府が言っておりましたこと、総理、私の発言と今回の公定歩合二厘引き上げというものが、全く違うものである、青天のへきれきのものであるというようにおとりにならないでいただいて、公定歩合引き上げまでは、新聞にもいろいろなことも書いてありました。準備率引き上げを行ない、しかも窓口規制をやり、まだ余裕もこれくらいだから、公定歩合引き上げは時期の問題であるというふうにも報道せられているわけであります。ですから、国会において、公定歩合を上げるか、上げないかということを政府の私たちに御質問すること自体が、私としても答え得ないことを御質問いただいているわけでありますからして、公定歩合に対しては私たちはなるべく触れない——触れないというよりも、答えられないということで、いままで国会では政府の態度を明らかにいたしているわけでありまして、政府日銀との間に懸隔があるとは全然考えておりません。しかも、政府でも日銀でも申し上げているように、八条国移行という社会党の方が、この間本会議で言われたじゃありませんか。八条国移行とは金解禁にも匹敵する歴史的なときなんだ、それを国民も、もっとわれわれも八条国移行の事実をつかまえなければならん——私たちもその発言どおりに考えているわけであります。そういうときに、日本のより対外的な日の信用力を確保する、より国際収支の安定を早めるというために、昨年の十二月からやってまいりました幾つかの金融調節手段の中の一つである公定歩合引き上げが行なわれたという事実を、ひとつ高い立場で広くお考えになられて、政府自体、まあ政府国際収支の問題その他を契機にして公定歩合引き上げる意思があるのか、ないのかという質問をしても、なかなか答えられなかったろうなあというような、ひとつ事実を円満に、すなおにお聞きいただければ、私と日銀総裁との間に意思の疎通を欠いたり、大きな隔たりのある考え方を持っておったというようなことはないわけでありますし、政府自身も一日銀の二厘引き上げに対しては、全面的共同責任を負うという立場でこれを了としたわけであります。
  66. 藤田進

    藤田進君 大蔵大臣、そうすると端的に聞きますが、公定歩合二厘引き上げということについて、外貨事情からの要因はない、あるいはあるのか。今回の日銀総裁答弁によると、外貨事情が大きな理由になっている。外貨事情についてはいまも否定し、あるいは主張しているので、外貨事情心配ないない言いながら、日銀との意思のそごはないとも言うわけで、そこのところ端的に、この公定歩合引き上げというものはなくても、外貨事情、国際収支の問題について心配はないというのか。やはり日銀の言うように、公定歩合引き上げによって国際収支の改善を期待するというのか。従来は、公定歩合その他関係なしに、外貨事情の心配はないという主張を一貫して続けてこられたわけです。公定歩合引き上げというもののそのあなた方の期待というものは、国際収支ということとは全然関係ないのか。理由にやはりあるのか。
  67. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 公定歩合引き上げにつきまして、日銀さんの談話もさることながら、政府の責任者としての私も談話を発表いたしているわけであります。今度の公定歩合引き上げ一つの目的は、八条国移行に際して、国際通貨になる円の価値を、信用を維持確保することが一つの目的である。第二は、かかる措置をとることによって国際収支長期安定に資したい。第三点は、政府昭和三十九年度の予算審議に際しまして、三十九年度名目成長率九七%、実質成長率七%、いままでは、過去の実績によりまして、将来かくなるであろうことでございましたが、今度は物価の安定と国際収支長期安定をはかることを目的として、ある程度政策的な措置をすることによって九七%名目成長率に押えたいということを明らかにこの席から申し上げているわけであります。そういう意味で、第三点としては、国内の均衡ある正常な成長をはかることに資するため、こういう三点を明らかにいたしているわけであります。私は、そういう意味公定歩合操作が行なわれたと考えているのでありまして、現状の国際収支をつまびらかにいたしますときには、国際収支が非常に不安であってどうにもならないような状態であるというふうには理解いたしておらないのでありまして、いままで総理や私が議会を通じて申し上げておりますように、日本が正常な経済発展を続けていくために国際的な金融もできますし、現在持っておる外貨準備の状態も必ずしも不健全な状態ではないというひとを悶々申し上げておりますが、私はその考え方はいまでも持ち続けておるのであります。ただ、まあ率直に言えば、いままでの公定歩合というものはもうどん詰まりになってからやったのですが、今度は予防的な措置としてやっている。これが八条国移行への非常に槙重な配慮だと、こういうふうにお考えになっていただければ、最もすなおな見方じゃないかと思います。
  68. 木村禧八郎

  69. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 大蔵大臣山際総裁との問題についてのことでございますか。
  70. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうです。
  71. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 山際君の事情も御承知のとおりですから、その意味において関連質問を許します。
  72. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ちょっと申し上げます。間違いがあります。私のいまの発言の中で、なおこのほかに外貨準備に入れてもよい東京銀行や云々ということがございましたが、これは東京銀行と為銀十一行というふうに訂正をいたしておきます。
  73. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 日銀総裁は、私、一点だけ質問をして、あとはけっこうですから。それは、くどいようですけれども……。
  74. 太田正孝

    委員長太田正孝君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  75. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 速記をつけて。
  76. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 日銀総裁、もうけっこうです。ただ、関連がありますのでと思いましたけれども、けっこうです。  大蔵大臣、くどいようですけれども先ほど自主性につきまして御質問しましたが、だいぶ詳しく大蔵大臣が御答弁になりましたから、あまりあげ足取りみたいなことは私は申しません。ただ、一般国民は、新聞にこういうふうに大きく出ますと、これで判断するよりしかたがないわけなんですよね。そういう意味で、大蔵大臣先ほど、本人の意見も聞かないで、事実もはっきりさせないで質問するというのはおかしいと言われましたけれども、あなたの御答弁を聞きますと、新聞記者諸君にそういうことも言わないわけではないという御答弁があったわけですね。ですから、新聞にこういうふうに出ますと、一般国民はこれで判断するよりしようがない。そうすると、今後ももう金利は上げないんだと、こういうようなことが大蔵省の決定によってきまることになるんなら、波及するところは大きいのですよ。大蔵大臣一番よく御存じですよ。それが一つ。ですから、今後は、非常にデリケートな問題ですから、自主性を尊重する以上は、こういう点については十分にやはり細心の注意を払われたい。これは私の希望です。  それから第二は、先ほど金解禁にも比すべき重大な時期を迎えるのだ、IMFの八条国移行は。私は本会議でそういう意味質問したわけでしょう。ところが、御答弁は逆なんですよ。われわれの質問したことをいま逆に答えられている。私は非常におかしいと思うんです。矛盾していますよ。私が金解禁にも比すべき、あと戻りのできない重大な段階に入るのだと言いましたら、池田総理大蔵大臣も、いや、昭和三十五年ごろからだんだんにやってきているので、せきの水を一挙に切るような大きな影響はないのだ、外貨にも心配はないのだと、通産大臣もそう答えられている。心配ない心配ないといままで答弁されてきているのです。ですから、私はこういう外貨事情になれば、やはり国民に不必要な物の輸入、ぜいたく品の輸入、外国品であればよろしいというような浪費的な輸入がふえるわけでして、やはり非常にはっきりしたここで認識を与える必要があると思ったのです。ところが、あの当時はそうじゃないそうじゃないという答弁をしている。ところが、二厘引き上げた場合は、いや、今度は金解禁にも比すべきだと、全く逆なことを言われておる。これは二厘引き上げ理由づけに困られて、野党の質問をした立場を逆用して言われるのは私は全くおかしいと思うんですよ。  それから第三点は、政府金利に対する考え方が、これまで間違っていたと思うんです。というのは、高度成長の段階のときに金利操作で上げたって、会社は金利どころの騒ぎじゃない。金利おかまいなしに、少し高くてもどんどん設備を、先にお金を借りて拡張してしまったほうがいいということから、少しぐらい金利を上げても規制にならないので、量的規制に重点を置いておった。ところが、今度は量的規制では困難になって、やはり金利機能というものを重要視しなければならない段階に来た。非常に大きな変化だと思う。そういう点でさっきの御答弁は私は違うと思うんですよ、御答弁は。金利機能というものに対して、ここで政府はあらためて今度は取り組まなければならない。単なる量的規制ではだめだということがはっきりわかってきたでしょう。いままでの高度成長の段階とは違うんです。そういう意味で、はっきり認識をし改めなければならないじゃないかと、こういう点なんです。
  77. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 公定歩合に対して軽々にしゃべってはならないということは、これはそのとおりでございまして、私はこの前も、公定歩合等に対してはしゃべりませんと、こういうことを申し上げたわけでございますが、質問がどうも公定歩合公定歩合と、公定歩合重点を置かれて絶えずしゃべられたものですから、ちょっとひっかかったということで、今後これを機会に、公定歩合日銀総裁のことでございますから、私もひとつ厳重に考えたいと思います。同時に、お答えのできない私になるべく公定歩合について御質問なさらないようにひとつお願いを申し上げたいと、こう思います。  それから、国際収支の問題に対しましては、確かに木村さんの言われるように、事実をいろいろ国民に述べて、現在の状態においてはこの程度の外貨準備もありますし、なおなお明らかにしなければならない問題がありますけれども、再びあと戻りできない八条国移行という問題に対しては、事実のきびしさを十分に国民に理解をいただいて、政府もその姿勢でいくべきであるという考え方は、私はそのとおり理解いたしております。しかし、自主性よりも、実際において日本のいままでの議論というものは、もう悪いのだ、あらゆる意味でどん底なんだ、こういうことで終始をしておるわけであります。私にはわからない。この間イギリスの方々にお会いしたときに、私たちは日本のいろいろなどういう国際的な資料を見ても、日本の異常ともいうべき経済成長の根強さというものに対しては、初めは理解できなかった。「エコノミスト」が書いたころはほとんど理解できなかった。だんだんに見て、日本人のたくましさ、日本の根強さというものを理解しておるんです。ところが、ヨーロッパにおきましては、雑誌、新聞その他で、日本の相当商い地位にある、レベルの高い人たちが、日本経済をみずからあぶない、あぶない、こう言うものだから、ほんとうにあぶないのかということを、われわれもそういうふうに考えていた。ところが、国民というものはよく知っておって、日本転換社債その他を出しても、当日全部売れてしまう。御承知のとおり、アメリカやイギリスの経済成長率は三・五%を四・五%に上げなければならないという状態でありますが、それにもかかわらず、そういう市場の状態である。まあ私たちは、いままでの私たちの日本に対する認識や考え方は間違っておらないと思いますと、こういう私はことばをこの間聞きまして、私自身も非常に深刻な考え方をしたわけであります。確かにころばぬ先のつえでありますから、いわば将来のために万全の体制をとることはけっこうだと思いますが、もの知りは不幸なり、こうだろう、こうだろう、こういう考え方で、みずからどん底に落とし込ませてはいかぬ。政府はやはりあらゆる立場から、金融だけの面からではなく、やはり中小企業がいま開放経済に向かって鋭意努力をしている。この努力の芽をつんじゃいかぬ。また、こうすることによって、この間に中小企業が耐えていかれるような体制をとらなければいかぬ。こういういろいろな面に対して配慮をしております。純経済的な理論だけで、まあ心配はなくても、こういうことを言っているのが正しいのだということだけに徹することはできないわけであります。いろいろな情勢を見ながら摩擦もなるべく少ないような状態で、漸進態勢をとらなければならないということで、国際収支やその他に対して木村さんが専門的にお感じになっているものは、政府考え方、表明していることが少し甘いというふうにおとりになるかもわかりませんが、私は、いままで政府が言っておったことも深い配慮のもとにこういう姿勢をとっているのだ、またそれが誤りではないということを申し上げて、御理解をいただきたいと思います。しかし、これは政府だけの力でどうにもなるわけじゃありませんので、八条国移行という事実に対しては、皆さんも一、政府に対しての御質問だけではなくて、国民の側に立っても、こうすることによって将来より飛躍的な段階が迎えられるのだということを、ひとつPRしていただいて、施政のために御努力賜わりたい、このように考えます。
  78. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 金利の問題は。
  79. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 金利の問題につきましては、非常に重要であります。でありますから、いままでは金利に対しては少し政治的に考え過ぎておった、あまりにもこれを大きく取り扱い過ぎておったということもあると思います。大きく一取り扱うと、特に配慮にも慎重になるわけでありまして、こういう金利の弾力的な面、それから金融調節機能というものは、中央銀行が弾力的にやるべきだということは、開放経済に向かっては、特にそのように考えるべきだと思います。
  80. 藤原道子

    藤原道子君 私は大蔵大臣にひとつ、あなたのお話を伺っておりまして、非常に楽観的だという気持ちが抜けないのです。私は、先ほどの私の質問に対して、そういうことを言った覚えはないとあなたはおっしゃったけれども、そのことはをそのものずばりとつかわなくても、心配ない、ないで、きょうまでおいでになった。今度の引き上げ問題は、私はやはり一つの赤信号だと思うのです。私がきょうこの件る取り上げましたのは、結局、社会保障質問をする予定なんでございます。今度の問題について非常に経済見通しも変わってきた。国際収支の問題にも影響があると思うのです。ですから、社会保障の背景となる経済的事情をこの際明らかにしたい、こういう点から御質問をいたしたわけなんです。同僚議員の質問がだいぶ微に入っての御質問がございまして、私はいまなお、大蔵大臣のお考え方が非常に甘い、高度経済成長政策に対してやはり一つのブレーキといいましょうか、赤信号じゃなかろうかという気がいたします。これに対しての大臣のお考えをお伺いしたいと同時に、いまの御答弁の中にもございましたけれども、私はこの問題から中小企業の倒産が相次ぐであろう。いますでに倒産が続出しているのです。その悲惨な状態は見るにたえない。この間も二千人からの債権者の大会が東京で開かれましたけれども、そういうことを大臣はどう受けとめておいでになるか。これは通産大臣にもお伺いいたしたい。私はいま中小企業が非常に深刻な状態になっておりますのは、御案内のとおりだと思う。そうして、今回のこの措置によりまして、やはり一番影響を受けるのが中小企業、これに対しまして通産大臣といたしましてどのような対策をお立てになるつもりであるか。この中小企業の今後の問題についてどのようなお見通しをされておるのか。この点について両大臣にお伺いいたしたい。
  81. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 今度の公定歩合が赤信号ということでございますが、公定歩合というのは、いままでシグナルというふうにいわれておったわけでございます。でありますから、少なくともいまより金融調節を必要とするということは事実でございます。しかし、将来の経済見通しはどうかということでございますが、いままでが行き過ぎておったのでございまして、今年度六%というのが八・一%になり、八・一%が九%近くになる、こういう情勢であるので、国際収支の不安があったりして、物価が常に上昇するわけでございますので、政府は、三十九年度には名目九・七%、実質七%の成長を予定いたしているわけ、であります。私は、公定歩合引き上げ等を含めた金融調節手段を行なってまいって、三十九年度政府が所期している実質七%程度の成長が維持できるというふうに考えているわけでございます。でありますから、所得倍増政策の年率七二%程度の健全な成長が続けられるということを企図いたしておりますので、明年度予算が組めないというようなとんでもない不景気が来るというような考えは持っておらないわけでございます。いままでほかの国は、不景気が来るのでどうして一体景気をよくしようかということをやっている。日本はちょっと引き締めようとしても、なかなか景気が、先行き非常に高い成長率を続けるという全く逆な情勢にございますので、行き過ぎている成長を安定成長に戻したいということでございます。また、今年度の事情を見てもおわかりになるとおり、七%の実質成長を見込みながら、対前年度比一四・二%の一般会計の増でございますが、しかし、社会保障費は一九・何%という高い増額を示しているわけでございまして、正常な経済の発展のもとに財政収入の確保をはかりながら、社会保障の方面に対しましては、最も重点的な施策として予算を組んでおりますので、将来ともこの財源の確保をはかってまいりたい、またまいれるという考え方でございます。公定歩合引き上げによって中小企業にしわが寄るということに対しましては、私はこの問題がありましたからこそ、昭和三十八年十一月ごろから、公定歩合の問題がぼつぼつ出ておったときにもかかわらず、一律画一的な引き上げはできない、木を見て森を見ず、シカを追う者山を見ずということでいってはたいへんなことになるのだ、だから、慎重な上に慎重に、一人の犠牲者も出さないように万全の配慮をすべきだということをるる申し述べてきたのは、そこにあるのであります。でありますから、そういう配慮をしたにもかかわらず、中小企業の倒産が日に相次いでいるということでありますので、その上、公定歩合の二厘引き上げということでありますから、政府も万全の態勢をとらなければならぬことは言うを待たないわけであります。その意味で、異例ではございましたが、公定歩合引き上げをやった直後、日銀総裁大蔵大臣室に招致しまして、大蔵省も十分考えます、同時に政府日銀も上体となって、中小企業にしわの寄らないように万全の配慮を懇請したわけでございます。日銀もすべての機能をあげて中小企業の問題に対しては対処いたします、こう明らかにいたしているわけでございます。また、政府三機関に対しまして、何回か例年にない期末金融を行なったわけでございますけれども、四月期に対しては、二百億の買オペレーションを行ないますと同時に、四月に期日の来ております返済分百五十億も当分延期するというような措置もとっておりまするが、しかし、これだけでいいとは思いません。毎日々々個個のケースにも十分配慮しながら、中小企業が、少なくともこの金融調節手段を行なったために倒産をするようなことを避けるべく、あらゆる角度から努力をしてまいりたい、このように考えているのでございます。
  82. 福田一

    国務大臣福田一君) 中小企業の問題でございますが、高度成長のひずみとして中小企業にたいへんな影響があらわれているということは、経済白書においてもすでに皆さんの前に明らかにいたしているわけでございまして、そのひずみをどうして直そうかということで、われわれ大いに予算その他、あらゆる面で努力を傾けているわけでございます。そのときにあたって、今度公定歩合引き上げということが行なわれ、ますますそれが大きく影響するであろう。それに対してどういう考えを持っておるか、こういう御質問だと思うのでありますが、私たちといたしましては、今度の引き上げが大きな影響を与えると思っておりますので、例の買いオペをいま大蔵大臣がするということを申し上げましたが、これはまあ今後も弾力的に時期を見て順次やっていく。四月にきめただけではなくて、また必要があればやっていく、こういう考え方で対処してまいりたい。それから、政府系の三金融機関の四−六の貸し付けワクをひとつ大きく繰り上げて貸し付けをするようにいたしたい。いまこれは研究をいたしております。大蔵省と打ち合わせをいたすつもりでございます。  それから、今度公定歩合引き上げたということは、金利負担がかかるということに非常に大きな影響がある。もう一つは、それによって高度成長がサブサイドするということが必要だと思うのでありますが、金利負担の面でいえば、中小企業が一番大きいのは、これは何といっても歩積み、両建てでございます。この問題をこの際ぜひ解決をしなければいけない、こういうことで、実はきょうも閣議でその主張をいたしました。総理、大蔵大臣とも、それについては今度は特殊の措置考えるということでございました。近くこれが具体的にあらわれてまいると思います。査察制度等も行なわなければいかぬ、こういうことになっているわけでございます。きょうそういうこともきめております。   〔委員長退席、理事斎藤昇君着席〕  それから、三十九年度に一般会計できまりました高度化予算とか近代化予算資金等も、予算が通りましたらすぐに、いつも予算の執行というのはだんだんおそくなりまして、六月、七月、八月と、こう延びているのです。が、今度はできるだけそういう中小企業の分についてはすみやかにやられるようにいまから準備を進める、こういうことをいまやっておるわけでございます。  それからもう一つは、官公需の購入でございますが、役所が物を買うような場合、そういうときには、できるだけ中小企業の物を買わせるようにひとつ連絡懇談会をつくる等々の措置をいたしまして、そうして、そういうものにも中小企業にできるだけそういう機会を与える、こういうことをいたしたいと考えております。  ただいま考えておりますこういういうことは、きょう閣議で報告をいたしまして、その了承を得て、その実現に向かっておるところでございますが、今後も、われわれとしては、中小企業にできるだけこの問題が影響を与えないような措置を、細心の注意をもって実行いたしてまいりたいと思う次第でございます。
  83. 藤原道子

    藤原道子君 政府は、従来も中小企業に対してあたたかい手を差し伸べておる、中小企業の育成をするのだということはしばしば言っていらっしゃる。ところが、予算面にあらわれたところは、ごくわずかなんです。ですから、いまも大臣がおっしゃいましたが、歩積みだとか、両建ての問題も、早くから問題になっていたと思うのです。けれども、これが一向に実効をあらわしていない。そこへもってきて、手形その他につきましても、非常にだんだん日にちが長くなって、そこへ今度の金利引き上げ等になりますと、手形の割り引き等に対しましても非常に高くなってくるのじゃないかというようなことで、大企業は何とか私はうまく泳ぎ切るかもわからないけれども、しわ寄せは中小企業に来る。そういうときに、いまおっしゃった程度ではまだ安心はできないのでございますが、いつごろからそれが実行できるか、具体的にその点を伺わなければならない。もう相次ぐ中小企業の倒産は見るに忍びないものがある。これに対しての大臣答弁を願います。
  84. 福田一

    国務大臣福田一君) ただいまの手形割り引き等の問題でございますが、これはこの前にもすでに通牒を出しまして、公正取引委員会と連絡をして、これ以上長い手形が出ないように極力指導をしてまいることにいたしておりますが、具体的にはいろいろございますが、そういう措置をとっております。それから、いま御心配の、これによって金融が引き締まって、そうして中小企業に対する手形の割り引き等ができなくなるおそれがあるということでございますが、これについてはわれわれも非常に心配して、大蔵省、日銀に対して、そういうことのないようやってもらいたいということを言っております。日銀総裁も、この点については、各市中銀行に対して、十分そういうことがないようにひとつ措置をしなさい、こういうような措置をとっておられると思いますので、まあそうは言っても、実際を見なければいけませんから、毎日これをウォッチしながら、しかるべく事態に応じて手を打ってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  85. 藤原道子

    藤原道子君 私は、何をきめても実行されなければならないと思いますから、それが実行できるような強力な御指導を特に要望いたしまして、通産大臣先ほどからたいへんお急ぎのようでございますから、このことを強く要望して、あなたに対する質問は終わりたいと思います。   〔理事斎藤昇君退席、委員長着席〕  私は、この際、国の児童政策の基本についてお伺いをしたいと思います。私は順次お伺いをしたいのでございますが、文部大臣がたいへんお急ぎのようでございますので、特に最初に文部大臣に御質問をいたしたいと思います。  私は、いま非常に問題になっております非行少年の問題とか、児童の、幼児の教育とか、いろいろ問題になっておりますが、そのうちでも、私どもが一番心配しておりますのは、心身障害児の問題なんです。そこで、いま特殊学級の現状はどうなっているか。その施設とか、教育の内容、出欠の状況等について、まず第一にお伺いしたいと思います。
  86. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) お尋ねになりました精神薄弱者、あるいは肢体不自由者、あるいは病弱者、虚弱児、こういう気の毒な子供に対しまして、現在養護学級、及び小学校、中学校の特殊学級で教育を行なうことになっているわけでございますが、現在のところでは、まだ義務制度にはなっておらないのでありまして、政府としましては、この設置を助長いたしておる段階でございます。教育の内容につきましては、それぞれの障害の種別によりまして、おのずから変わってくると思うのでございますが、やはり一般の児童と同様なことをやるということは、たいへん困難でございます。それに準じた教育を、心身の状態に応じて教育をいたしておるところでございます。出欠の状況につきましては、特に変わった事象はないように存じております。
  87. 藤原道子

    藤原道子君 最近起こっております特殊学校児童が殺害された事件、あるいはバス等に乗ってもつい満員で出てこられないために終点まで行っちゃって、一日飲まず食わずで、その子供はただひたすらに学校学校ということを思って、一日歩き通して、学校に着いたのは夕方であったというようないろいろの事件が起きております。交通事故などが非常に激しい今日、この際、これら子供に対しまして、スクール・バスなどの御配慮はお考えはないのでございましょうか。
  88. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) お答えいたします。このような子供の通学という問題はいろいろな意味におきまして心配な問題でございます。最近起こりました事件を見ましても、やはり通学距離の問題がかなり関係があるのじゃないか、このようにも思うのでございます。その点につきましては、できるだけ通学距離の短いほうがいいことは当然のことであります。現在の場合といたしましては、まだ施設が不十分でありますために通学距離が相当長くなっておる、こういう事例も決してないとは申し上げられませんので、われわれとしましてはその施設の増設というようなことにさらに一そう努力をしなければならないと思います。  なお、スクール・バスのお話でございますが、ごもっとものお話と思うのでございます。これにつきましても決して十分とは申しませんけれども、養護学校等ではスクール・バスを用いておるものがかなりあるのでありますが、まだ特殊学級までは及んでいない、これが現状でございます。十分ひとつこういう問題につきましては考慮してまいりたいと思います。
  89. 藤原道子

    藤原道子君 私は、大切な問題でございますから、ぜひこの点は御考慮願いたいと思います。  それから大臣が幼稚園の義務制ということを打ち出されておりますが、それに対して具体的な準備が進んでおられるのでしょうか、それをお伺いしたい。その計画とか準備、実行の時期。
  90. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 幼稚園の義務制という問題につきましては、まだ結論を持っておるわけではございません。ただ、幼児教育のきわめて重要であるという点にかんがみまして、幼児教育をさらに普及いたしますために将来義務制にしたらどうであろうかというような考えをいたしておるわけでございますが、これをかりにやるにいたしましても、一体どういう形でやっていくか、幼稚園の問題として取り上げていくのがよろしいのか、あるいはまた、御承知のように今日では幼児の発達もかなり進んでおりますので、いまの義務教育年齢を一年下げる、こういう考え方でいくべきであるかどうか、結論は出ておりませんけれども、問題は幼児教育の重要性ということからいろいろ検討を進めておるわけでございます。いずれにしましても、幼稚園の形においてやっていくか、小学校の形においてやっていくか、何にいたしましても相当施設が整ってまいりませんというと、かりに義務制をしこうといたしましても実行困難である。したがって、現段階におきましては、文部省としましては幼稚園の普及整備をとにかく進めていこうというので、その方針でもって、来年度の予算も決して私満足はいたしておりませんけれども、幼稚園の普及整備の方向に向かって相当の予算を組んでいただいた、こういうふうな現状でございまして、もっともっといまの状態のもとに普及もはかり、内容の充実もはかり、適当な段階においてあるいは義務制よしとするならばこれを実施したらいかがであろうか、このような考えでいたしておる次第でございます。
  91. 藤原道子

    藤原道子君 幼児教育が大切だということを言われながら、結局幼稚園というものの使命を十分御認識かどうかということを疑いたいのですけれども、小学校の教室があいてきたからこれをちょっと手を入れて幼稚園にするというようなことが言われている、あるいは行なわれておるところもあるわけです。ところが、幼児が大きな子供と一緒に遊ぶということが非常に幼児の精神的にも悪影響があるというのがこれが児童心理学者の言われるところなんです。もし教室があいたならば、詰め込み教育になっておりますのをもっとその人員を減らすとかなんとかするべきであって、幼稚園をつくるならば、もっと根本的な問題、ほんとうに幼児教育を大切に思うという立場からお考えを願わなければ、便利主義であるというふうに考えられてなりませんが、それに対してはどういうお考えでありますか。
  92. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) お話のとおりだと私も思います。文部省としましても、幼稚園教育の内容を充実いたしますためにいろいろその指導要領等もきめまして、新しくこの四月から実施する予定にいたしております。従来以上に幼稚園の充実をはかってまいりたい、また指導の適正を期してまいりたいと思うのであります。その施設につきまして、幼稚園の子供と小学校の子供と同居させる、こういうようなやり方は決して適当なやり方とは思っておりません。御心配はその点は私も同感でございまして、さようなことのないように、ほんとうに幼稚園教育の目的を十分達成するような形において指導してまいりたいと思っております。
  93. 藤原道子

    藤原道子君 幼児教育が大切だというようなことをしきりに叫ばれますので、このごろ、幼稚園から入学準備をしておる、塾へ通わせる、こういうことが行なわれております。そこで、最近非常に心配になりますのは、学校ノイローゼ——神経症がずいぶんふえているということなんです。子供のときから勉強勉強でもって詰め込みなんです。その結果、一つ参考資料が百五十億も売れているとか、少し行き過ぎがあるのじゃないか。教科書に副読本でしょう。そこへ参考資料でしょう。それで塾でしょう。これでは児童木末の喜びというのでしょうか、それに対する教育ということが少し行き過ぎているのじゃないか、また親が費用の負担にたえられないで、結局子供との仲がうまくいかない、子供が学校ぎらいになっていく、転落していく、こういうようなケースが多いように考えられる。特に子供の神経症、これがふえておるということはゆゆしき問題だと思いますが、このあり方に対して大臣はどういうふうにお考えになっておりますか。
  94. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 専門的なことはよくわかりませんが、現在小さな子供のおっしゃったような神経症と申しますか、そういうふうな事例も少なからずあるように聞いておりまして、私ども心配をいたしておるところであります。この問題の原因は、これはいろいろあろうと思うのです。おっしゃるように、学校生活においていわばお金持ちの子供さんと貧乏なうちの子供さんとの間に貧乏のほうの子供が何となく妙な気持ちになってしまう、こういうようなことも決してないとは申せないと思うのでございます。しかし、必ずしもそれがすべての原因とは私は考えていないのです。もっといろいろな原因があるのではないか、かように考えておる次第であります。学校教育に必要なお話に出ました教科書あるいは副読本、参考書、そういったふうなものも実は私もやや出過ぎておるのじゃなかろうかと心配をいたしておるのでございます。学校で必要といたします教科書とか副読本とか参考書というふうなものにつきましては、御承知のように、生活の困難ないわゆる要保護者の家庭でありますとか、あるいはまたこれに準ずるような準要保護者の家庭でありますとか、そういうふうなものに対しましては公費でもって援助する。したがって、その面からはそれほどの格差は私はないだろうと思うのであります。しかし、余分なものをどんどん買い込まれる、こういうことになりますれば、自然そこに開きを生ずる、こういうことであろうかと思いますけれども、おかげさまでだんだんと要保護児童に対する教育補助、あるいはまた準要保護児童に対する援助も、予算も漸次増額してまいっております。この面からの格差というものはできるだけ解消するように努力いたしたいと考えております。同時に、現在の学校におきますいまのような問題もございますが、おっしゃるように、幼稚園からもう入学試験の準備をしておる、こういうふうな事態は最も好ましからざることではないかと思うのであります。今回新しく示すことになっております指導要領等におきましても、幼稚園の子供ができるだけ伸び伸びとして育て上げられていくように、こういうふうなことも言っているわけであります。この点についてはやはりわれわれも努力いたしまして、家庭のおかあさん方の考え方というものもひとつ直していただきたい、こういう意味で婦人学級なりあるいは家庭学級なりそういう施設を通じ、また、学校、幼稚園としましても家庭と十分連絡をとりまして、あまり無理なことを子供にさせないようにというお話し合いは、ぜひしたいと思うのであります。  いずれにしましても、現在の状況につきましては、私も藤原委員と同じように実は心配しておる一員でございまして、できるだけ努力いたしたいと思います。
  95. 藤原道子

    藤原道子君 家庭のおかあさん方もということでございましたが、いまの入学試験中心の教育、人づくりの教養、こういうことが結局家庭の母に不安を与えてくるということになると思うのです。したがって、いまのような行き過ぎに対しては文部省といたしましては適切な指導が好ましい。  時間がございませんので急ぎますが、長期欠席児童というようなもののいまの数、この原因などについてお伺いしたい。  それからボーリングその他の青少年を毒する施設があまりにも多過ぎると思う。ところが、一部には健全なスポーツだと言っております。ところが、明け方までやるボーリングが健全なスポーツとは考えられないのですが、これに対して大臣の御見解を伺いたい。  それから青少年の健全な健康なスポーツ、あるいはその指導と、レクリエーションなどに対して、大臣としてはどういうお考えを持っておるのか。青少年の非行化が非常に心配されておりますとき、文部大臣としての御所見を伺いたい。
  96. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) お答を申し上げます。  長期にわたって欠席する児童、生徒のことでございますが、私ども調査いたしましたものによりますると、これは年間を通算して五十日以上連続または断続して学校を欠席した者、こういうふうな範囲でございます。だんだんと毎年減少の傾向は見せております。十年間に約三分の一に減ったというような実績でございます。その原因もいろいろございますが、小学校の場合におきましては、疾病異常がその半数以上であります。それから家庭の無理解とか家庭の貧困等による者がこれに次いでおるようでございます。中学校のほうでは、男子のほうを見ますと、疾病異常それから学校ぎらいというのが半数以上になっております。続いて家庭の無理解とか家庭の貧困等であります。また、女子の場合には、疾病異常、家庭の無理解が半数以上、続いて家庭の貧困、学校ぎらい、こういうような数字になっております。心ずしもこれが正確なものとは申し上げかねると思いますけれども、大体そういうようなものが出ておるのでございます。おかげさまで漸次数は減ってまいっておりますけれども、われわれとしましては、関係の各省とも協力いたしまして、それぞれの関係の機関に対しまして指導を強化してまいりたいと思います。  また、要保護、準要保護の児童、生徒に対する就学の援助につきましては、先ほども申し上げましたが、漸次予算の増額をはかりまして、いわゆる貧困による長期欠席というようなことはこれは防止してまいりたい。来年度は約三十八億八千万ばかり計上いたしております。本年度よりは若干増額もいたしておるような状況であります。なお今後とも努力をいたしたいと思います。  なお、健全なスポーツ、あるいはボーリングというような点についてのお話でございます。ボーリングにつきましては、この国会におきましてもいろいろ御心配になっていらっしゃるわけであります。ボーリングそのものは別に問題はないと思いますけれども、ボーリングをやる場所の状況、あるいは経営のしかたというふうな点が問題があるのではないかと思うのであります。お話のように、夜おそくまで若い者がボーリング場で遊んでいる姿は、決して好ましい姿ではないと思います。私どもとしては健全な姿においてこれが行なわれるということなら格別のことはないと存じますが、現在弊害とされているような姿においてボーリングが営まれ、またこれが繁盛するということは、こういうことはぜひ是正したいものと思うので、特に深夜にわたってのボーリングの営業というふうなことは十分自粛もしてもらいたいと思っております。関係当局のほうにおきましても、この点については相当強力な指導をいたしているように私は承知いたしております。  なお、青少年のスポーツの問題、これは私は青少年の健全な育成のためには大いに健全なスポーツが普及し発展するということは非常に望ましいことと思います。そういう意味におきまして、学校におきましても、また国民生活の中におきましても、スポーツの普及奨励については一そう努力したいと思います。特に本年はオリンピックもある。ただ一時のお祭り騒ぎでなくて、これを契機として国民生活の中に健全なスポーツがさらに大きく発展するということにぜひ努力してまいりたい、かように考えております。
  97. 藤原道子

    藤原道子君 長欠児童の中に学校ぎらいということが入っておりましたが、この間私は夜間中学に行きましたが、一人女の子がおりまして、学校に行ってもみんなどんどん資料を持って行って参考資料で勉強している、家では買ってもらえない、だんだん成績が追いつかない、親には勉強が足りないのだといってしかられる、こういうことから学校に行くのがいやになった、けれども勉強したいから夜間に通っているのだといってその気持ちをるる述べられたのです。そういうことは、結局、進学中心のいまの学校の教育、そこに問題があるのじゃないかと思いますが、その点十分お考えおきを願います。
  98. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 夜間中学の問題は、先般もこの席で申し上げたことがございますが、文部省としましては、たてまえ上は夜間中学というものを認めてはおらないのです。ただしかし、その施設そのものが生まれてきた事情、ないしはそれに通っている子供さん方のことを考えれば、これはあたたかい気持ちでもって接しなければならないと存じますが、やはりどこまでもたてまえとしては夜間中学などを必要としないというところに持っていかなければならぬと思うのであります。それまでの扱いといたしましては、民間のそれぞれの諸施設等を通じまして、いまのお話のような場合には何かあたたかいようにしてやるというようなことを考えてまいりたいと思います。
  99. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 午後一時再開し、藤原君の質問を継続いたします。  暫時休憩いたします。   午後零時八分休憩    ————————   午後一時十三分開会
  100. 太田正孝

    委員長太田正孝君) これより予算委員会を再開いたします。  委員の変更がありました。米田勲君、渋谷邦彦君が辞任され、大森創造君、二宮文造君が選任されました。   —————————————
  101. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 藤原君の質疑を継続いたします。藤原君。
  102. 藤原道子

    藤原道子君 私がまず厚生大臣にお伺いしたいと思います。国としての児童政策の基本についてまずお伺いします。  児童は心身ともにすこやかに育成されなければならない、これに対しての国及び公共団体に対しての責任が規定されておりますけれども、はたして現実にそれがどうなっておるか、大臣としての児童に対する基本的なお考えを承らしていただきたいと思います。
  103. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これは午前中、文部大臣からもお話がありましたが、厚生省の関係としては一応学校に行くまでの子供の世話をする、こういうことになっておりまして、その児童の中にも健全な児童と健全でない児童、こういうふうに分かれておりまして、健全でない児童、たとえば精神薄弱児の問題とか、あるいは身体障害の問題、こういうようなものはそれぞれの施設あるいはまた対策を講じておるわけでございます。それから保育に欠ける問題が一番大きい問題でございます。これは保育所というものが、不足ながら、これに対応してできておるわけでございます。それから最近におきましては、また乳幼児の問題、幼稚園にしても保育所にしても従来三歳以上。三歳未満の乳幼児を預けたいと、こういう要望が全国的に相当強く要望されておりまして、乳幼児の問題とそれから三歳から学校に行くまでのもの、こういうものが一応私どもの対策で、それから学校に行くようになった年齢以上の者で、主としてマイナスを背負っておる子供の対策と、こういうふうになっておりまして、いずれも一応の柱を立ててやっておりますが、これは十分でないということはわれわれも自認をいたしております。幼稚園と保育所の問題でありますが、これは御案内のとおり、保育所というのは、病気、事故、就職等によって保育の欠けておるものが全国にいま百万以上おる。こういう子供をお預かりをしなければならないということで施設の拡充もしております。しかし、まだ施設は不十分でありまして、保育所等も全国で九百数十カ所もこれがないところがある。これを年次計画でもって施設をしてまいりたい、こういうことであります。大体のことを申しますれば、さような方策で対処しておりますが、いま申すように内容は必ずしも十分でない、こういうことをわれわれは認識をし、これを改善していきたい、かように存じております。
  104. 藤原道子

    藤原道子君 児童対策というと、とかく保育所にしても、すべての問題が問題児、措置に欠ける子供、こういうものの若干の対策はできておりますが、一般の子供たちに対しての国の施策がまことに貧弱だと思うのです。たとえて言えば、厚生福祉白書にもはっきり書かれておりますけれども、高度成長政策が児童の福祉を取り上げておる。まさに児童は危機的状態に放置されておる、こういうことが政府の発行されております児童福祉白書に明記され、まことに重大だと思います。したがいまして、いま経済成長に伴いまして、高層建築だ、やれ何だと、どんどんこれが建てられております。おとなの遊び場所は随所にあり余るほどできておる。ところが子供が心身ともにすこやかに伸び伸びと遊ぶような遊園地、公園その他がまことに不足いたしております。しかも、そこに若干の遊園地があっても、厚生省の基準では、厚生指導員を置かなければならないとなっておりますけれども、実際にはこれがいない。あるいは建設省の児童公園にも指導員がいない。こういうことが、あるいは児童の誘拐事件、吉展ちゃん事件等の起こる原因でございます。さらに今度、厚生大臣が主張されてお通しになったという児童プール、このプールにすら指導員がいない。これはまことに母の立場から不安でございます。こういう点について私は児童公園をふやし、遊園地をふやす。しかもそこには厚生指導員が義務的に施設されなければならない、こういうように思いますが、大臣の御所見を伺いたい。
  105. 小林武治

    国務大臣小林武治君) いまの問題は学齢前の児童についていろいろそういうことをやっております。おもにいま問題になるのは、学校に入ってからの放課後の子供、こういうふうな問題がこれから大きく出てきます。場合によると学童保育という問題も起きてきております。いずれにしましても、三歳以上の子供につきましては、いま申すように、日本では遊び場がない、こういうことが非常に大きな欠陥であります。地方等におきましては多少の余地がありまして、だんだんできてきますけれども、特に大都市でそういうものをつくる余地がないということで、私どもも児童遊園地あるいは児童広場というようなものをできるだけ奨励をいたしております。それでそのほかに児童館あるいは児童会館、こういうものを学齢児童を含めて利用させるために全国的に奨励しております。このほうには大体人がついて指導いたしておるから、いまのようなお話が起きませんが、児童遊園地あるいは広場、あるいは今度のプールというものにつきましては、当然厚生指導員と申しますか、そういうものを置くべきでありまして、私どももそれを国が補助できれば非常にけっこうだと思いますが、まだそこまでいっておらぬ。しかし、一応これらの遊園地等は市町村長が当然管理し、安全について第一次的の責任を持つべきでありまして、こういうものを、できれば私どもとしては、いま規定としては兼務でもいいから、とにかく厚生指導員を置け、こういうことになっておりますが、これがきわめて不完全な状態である。どうしてもやっぱりこれらについては国がある程度のめんどうを見なければなるまい。そうでなければ市町村もこれの設置にためらっておるということで、責任としては、私は市町村長が当然第一次の責任を負うべきものと思いまするが、いろいろの事情でそういうものがあまり置かれていない、そのためにせっかくの施設が、善用よりか場合によっては悪用されておる、こういう事情もあります。お話のプールも来年は学校のプールでなくて公営の市町村営のプールを全国で約百カ所ぐらいつくりたい。何としてましても子供には遊び場が大事だ、こういうことでプールを来年度からやりたい。これには当然、普通の児童遊園地以上に指導員が必要でありまして、私ども予算要求等におきましては、指導員をくっつけて補助したいと思いましたが、ことしは思うようにならぬ、しかし、こういうことであってはならぬのでありまして、とりあえず、私どもは市町村自体に設置をしてもらいたいと思いますが、これもおまかせしても十分な効果が上げられない。したがって、私どもは今後どうしてもこの指導員に対する考慮等のことも考えなきゃならぬ、こういうふうに思っておりまして、いまはお話のようにきわめて欠陥が多いということをわれわれも自認いたしております。
  106. 藤原道子

    藤原道子君 欠陥が多いということを認識されているというだけでは心配でございます。いま子供の事故死の中の最大の原因は溺死になっておる。子供はちょっとした水でも転落すれば死ぬのです。それだのに、プールができても児童用だから浅いから心配ない、このことをこの前お話ございましたけれども、浅くたって二十センチといえば児童が十分に死ねると思うのです、死ぬ公算が多いと思う。それをつくりながら、あったかい親心でプールはできるけれども、そこに指導員がいないプールということになると、母の立場といたしましては非常に心配です。こういう点はせっかくおつくりになる親心をさらに生かしていただきまして、ぜひプールの設置につきましては義務的に指導員を置く、地方公共団体とおっしゃいますが、いま地方の財政は非常に逼迫しております。やはり国から呼び水が出なければ、それはとても不可能でございます。これに対してさらにお考えを伺っておきます。
  107. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 来年度はさような、遺憾ながら予算措置ができなかった。しかし児童プールの設置を許可するなり補助をする場合には、とにかくとりあえず、そういうふうな問題についてひとつ自治団体は責任を持ってもらいたいということを強く指示もし、私は次の機会にはそういったものも国からして埋めていきたい、こういうふうに思って指導をして、そういう措置をしてもらいたい、かように考えております。
  108. 藤原道子

    藤原道子君 大臣は、これら施設に、特にプールに指導員が必要であるということはお認めになる。したがって、これは必ず早い日に実現されますよう強く要望いたします。  さらに、保母の待遇その他労働強化によって必要であるという保育所、特に欠けております乳児院等に対して、これが増設を強く要求いたしておりますが、いまや保母の希望者がなくなる。その原因は重労働と、それから待遇が非常に悪い。高校を出て二年も保母さんの学校へ行って、しかも一初任給が一万四千円、こういうことではなり手がないのはあたりまえだと思う。したがいまして、これら保母に対しまする待遇、とりわけ最近社会施設に働きます職員の待遇が非常に悪い。いろいろ資料をまとめてまいりましたけれども、私ながらにびっくりするくらい待遇が悪いのでございますから、これらの待遇を改善されて、幾ら施設をつくってもそこに働く人がいなければ大切な役割を果たすわけにはまいりませんので、この保母の待遇あるいは社会施設に働く職員の人たちに対してどのような案をお持ちになっておるのか、これもこの際お伺いしたいと思います。
  109. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 保母の待遇が悪いということは一つの定説のようになっておりまして、われわれもこの点反省しております。昭和三十九年度におきましては、本俸等の引き上げはあまり触れなかったが、超過勤務手当、通勤手当あるいは暫定手当、こういうようなものにつきましては相当な値上げをいたしまして、このために政府予算としましても七億六千万円、こういうものを計上しておりますし、また事業所の負担分を合わせまして、これらの関係に約十一億円使われる、こういうことになっておりまして、比率にいたしまして、いまの児童関係では約一〇%来年上げる。それから社会福祉関係で七%と、こういうふうに一応手当でもって来年はする。次の年度において本俸についても相当な改定を行ないたい、こういうふうに思っております。これがまあ保母の手当の問題でありますが、従来、労働強化等は職員が足らない、こういうことでありますので、その職員も来年度は、不十分でありますが、全般的に変えまして、たとえば、いまの精薄関係では七人について一人、こういうふうな保母を六人について一人、こういうふうにする。そのほかすべての施設につきまして、一人当たりに扱う児童の数をみな引き下げていく、こういうことによりまして、このために要る費用分も相当に出ております。こういうことで来年はまあ多少のゆとりと申しますよりか、従来の欠陥が多少補える。すなわち人員を相当に増加したということと、保母の人の手当を、いま申すように一〇%ばかり引き上げた、こういうことになっております。まあ保母の関係は、待遇とか労働が過重だとかいうことで志願者が少ない、こういうこともありまして、私どもはこれを相当にふやさなければならぬということで、来年は保母の資金の配慮、補助金、こういうものもつくりまして、人員は千二百人に、たいした人数ではありませんが、このための予算も計上しております。それから特に産休の代替保母費、こういうようなものもつくりまして、これも四千万円というふうなものを計上いたしまして、この関係の給料も、従来は日額が六百九十円だったのを七百四十円、こういうふうに引き上げる。十分とは申せませんが、来年度はこれらの面である程度の措置をいたしたい。しかしこれは、ことに保母方面は、手当もありがたいが、むしろ本俸を直してもらいたい、こういう強い要望がありますので、次の機会にはその面の改善をいたしたい、かように考えております。
  110. 藤原道子

    藤原道子君 手当の面で若干の考慮をしたいといわれますけれども、いまの保母の人員に対しまして四千万円なんていうことでは話にならない。とにかく保母さんが過重労働で、非常な病気で倒れている。そういうような傾向がございますし、とりわけ乳児院等におきましては、その御苦労というものは頭の下がるものがございます、私はこの点さらに資料をもって追及したいのでございますが、時間の関係でそれは省略いたしまして、いまの保育園の実情、乳児院の必要性、これらについてぜひ現地を大臣に視察してほしい。そうして来年度におきましては、足らないから過重労働になる、だからやめていく、病気で倒れる、だからよけい困る、悪循環をしておりますことをお考えいただきまして、抜本的な改正をひとつお考え願いたいと思います。  そこで、これらの一般の児童の問題も非常に重大ではございますが、さらに私は最近、整肢療護園、秩父学園、島田療育園ですか、それから世田谷の光明養護学校、これらを視察いたしまして非常に暗い心をいたしております。過日も全国の精薄愛護協会の大会が開かれまして、そのときにこういう声明を出されております。「近年精神薄弱の対策は前進していると言われているが、実際に約二万人を収容し、その指導と育成に当っている吾々は、現状では力の限界を超えて仕事をしている。現在の条件では、職員を希望する者は少く、職場を去っていく者が続出している有様である。しかるに社会には未だ多くの未収容児童が首を長くして待っており、更に殆んど手をつけられていない重症児の群がいる。これらの人たちの要求が満たされなければ施設は怨嗟の的となるであろう。今や施設はこの両挾にあって崩壊の危機に直面している。我々は速やかに当局に対し、又社会全体の人達に対して、次のことを訴え、その実現を要望するものである。」「一、施設の職員は児童に対し充分手がとどくように増員されなければならない。一、職員の待遇は安心して仕事に専念できるよう改善されなければならない。一、専門的な知識、技術を持った職員が必要数だけ養成され、施設に送られなければならない。一、重い症状の児童のための施設は、少くとも各県に一ケ所は設けられなければならない。一、精薄者が社会に適応して生産に参加出来るために、訓練授産施設が設けられ、猶社会の受け入れ態勢が整備されなければならない。」、こういうふうな声明を出されております。  しかも精神薄弱の問題は人口の四%を占め、しかも収容されておりますのはわずかに二万人くらい。これで問題の人が放置されている。これが家庭の悲劇となり本人の不幸と相なっておりますことは、いまさら私が申し上げるまでもございません。この精薄児に対しまする研究は世界各国が最近きそってやっております。そして世界各国の実情を見ますと、非常に明かるいのです。ところが、日本の実情を見まするときに、まことに心暗いものがございます。私は、この精神薄弱児、さらに肢体不自由児に対しての政府の対策、これをまずお伺いをして、これらのふしあわせな問題をぜひ解決していきたい、こう考えておりますので、これに対する大臣の御所見を伺いたいと思います。
  111. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これは施設の数が非常に足りない。すなわち、いまでも、全国で九十万人もあるのに、収容施設はせいぜい二万人足らず、こういうふうな状態でありまして、非常に欠けておるということはお話のとおりでありますが、こういうことが実は始められたことが非常に新しいことでありまして、いまのような重度の心身障害児というものもようやくここ二、三年来の問題で、それで、お話のように、島田療育園とか、整肢療護園とか、あるいは千葉の鹿島とか、三カ所設けられておりまして、約ベッドでも三百床足らず、来年度はまたこれを百五十床ふやすことにしておりますが、いずれにしても非常に不十分である。また、この一人の方を預かるのにも相当な金額が、一人で二十万円も年にかかる、こういうような状態でありまして、なかなか予算的の措置が不十分であるのでございます。  ただ、これらの中に収容されている方はまだ非常にしあわせでありまして、そうでなくて心身の自由を失っておるのは全国で相当たくさんの方があるのでございます。これらの方も急にいまできれば施設に入っていただきたいと思うのでございますが、それはまだ及ばないということで、御承知のように、来年度は精神薄弱の重い方々にわずかな手当でも、月に一千円の手当を出す、こういうようなことをいたしておるのでありまして、この方々が、いまここで対象が三万人というふうにありまして、施設に入れることが非常に必要でありますが、入れないで、なお家庭で非常な苦労をされている方を、初めて私はこの制度としてこれに手当を出す、金額も不十分でありますし、人数も不十分でありますが、おくればせながら、さようなこともようやく出発できる、こういうことでありまして、施設を拡充するということが非常に必要でありまして、ぜひ順次これを進めなければいけないと思っております。とにかく、お話のように、需要に対して実際の充足率がきわめて貧弱であるということは、世間の私どもは理解を得て、そうしてみんなのひとつ力でこういうものを進めなければならない、社会一般の同情とか理解とかということもぜひ必要である、こういうふうに考えておるのであります。  これらにつきまして、以下、数字的のことが必要でありますれば、政府委員から申し上げますが、いずれにいたしましても、出発がおそかって、またその歩みが非常にのろいということは、これはきわめて明らかなことでありまして、十分私どもも対処しなければならない、こういうふうに思っております。
  112. 藤原道子

    藤原道子君 まことに心細いことでありますが、私は、ただ予算が足りないから施設が十分にできないなんということで済ませておく問題ではないと思うのです。九十万とおっしゃいましたけれども、人口の約四%くらいといわれている。これは成人をも含めますけれども、これらの人がどれだけ不幸な現状にいるか、さらにまたこれをかかえた家庭の実情をお考えいただいて、さらに本人のふしあわせを考えますときに、そんなゆうちょうなことを言ってはいられない段階になっておると思うのであります。  しかも、過日島田療育園の方の話によりますと、重症心身障害児の施設の法律上の規定を必要とするが、これがないというのです。この施設が病院として設置基準をとりながら、一面、児童福祉施設としての最低基準によって運営されている。いろいろと問題を惹起している。今後児童福祉法の改正で進めるのか、それとも重症心身障害児の福祉法として単独立法でいくのか、厚生省としてもお考えがあろうと思いますが、これについてのお答えをいただきたい。  さらに、運営費が、いまでは奨励補助ということでもって一日一人当たりの単価は五十五円六十一銭の補助である。年間の赤字は、島田療育園では一千万円である。これを、やむにやまれない人間的な愛情から出発されておりますこれらの施設が一千万円からの赤字をかかえて、これを寄付に仰がなければならない。こうした苦労、それが父兄の負担となり、今日非常に運営に困難を来たしておるということになっておりますが、国としては、今後これをどういうふうに解決しておいでになるお考えでありますか、お伺いいたします。
  113. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 政府委員からお答えさせます。
  114. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 重症心身障害児の子供たちの取り扱いの法律上の御質問でございましたが、確かに現行法では重症障害児だけを収容いたしております施設の規定はないのであります。しかし、この問題は各国ともまだ研究中の段階でございまして、わが国ではとりあえず単独の重症心身障害児収容施設なるものの実験的な措置として、研究費補助というようなかっこうで従来やっておったのでありますが、三十八年度からはこれを正式に認めまして国の措置をしておるのであります。ただ、将来の問題として、単独のこういう施設だけで、はたして運営に永続性あるいは普及性あるものか、職員の確保等から疑問がありますので、現在のところでは肢体不自由児の施設のいわば重度加算としていくもの、あるいは精簿児施設の重症加算としていくものというような、現行法のそれぞれの施設の加算制度によって解決をしてまいりたいというようなことでおるのでございます。
  115. 藤原道子

    藤原道子君 私は、この問題はいつまでも研究的な過程でなく、早急を要する問題と思いますので、これらふしあわせな子供たちのために、もっと真剣にお取り組みを願いたいということを要望いたします。  さらにお伺いしたいのは、島田療育園に対してサリドマイドの子供を入所させないようにという指導がなされたそうでございます、行政指導ですか。ということは、どういう意味なんでしょうか。私は、あそこでもうすでにサリドマイドの赤ちゃんがよちよち歩いている。そしてふしあわせな子供がたくさんおりますけれども、現在十一名のサリドマイドの赤ちゃんがおります。ところが、この子がこの施設はいけない、入所させてはならぬというのでございますか。といって、どこへ入れるか。現在サリドマイドの子供をかかえている家庭は入所する施設がなくて困っているということを伺っております。で、国立の整肢療護園は六歳以上ですかということになると、結局この赤ちゃんは六歳まではどこへも行くところがないというのが今日の現状なんです。一体これをどうするか、どうしろとお考えになっておいでになるのか。特にこうした心身障害児は四歳くらいで大体八割くらいはなくなる。死ぬのを待っているのかと言われてもしかたがないと思う。これらの子供に対して、ひとつどういうふうに考えておいでになるかを伺いたい。
  116. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 御質問のサリドマイド・ベビー、アザラシ肢症といっておりますが、の処遇につきましては、これも各国ともまだ研究中でございますが、わが国でも産科、小児科、整形外科その他の学者の方たちにお集まりをいただきまして、いろいろ検討願いました結果、島田療育園的な、いわゆる一生そこで何らの手術なりその他の治療措置を講じないで介護しておるということでなしに、手術の可能なものは手術をして、社会復帰ができるようにしたらよろしいというようなことから、肢体不自由児施設で収容し処遇をしてしかるべきだという結論が出ました。それに基づきまして、とりあえず国立のいろいろな施設あるいは整肢療護園でそういうような受け入れの態勢を逐次整備いたしまして、ここにおいて処遇をするという方針を決定しまして、その準備をいたしておるのであります。とりあえずは島田療育園から手術可能な児童につきましては整肢療護園に移しまして、ここで現在手術その他についてどうしたらいいか検討中でございます。将来はそういう肢体不自由児施設でこういう子供は処遇してまいりたい。また、肢体不自由児施設でこういうような子供の処遇ができるような受け入れ態勢を整備してまいりたいというふうに存じております。
  117. 藤原道子

    藤原道子君 私は、将来はそういう方向かもわからないけれども、現在すでにいる子供、これをこの施設に入れることは好ましくないという指導がなされて、それで手術にたえる者は整肢療護園へ行く。手術にたえない者は、一体どうするか、こういう点非常に大きな問題があると思う。したがって、これらの子供に対しましてはコロニー施設というようなものが将来必要じゃないかというふうに考えますが、それはいかがでございますか。  さらに、ここに行ってみますと、看護が一対一なんですね。御飯食べさせるとか、あるいは両便の排せつも全部一人の手がかかるのです。ところが、病院的な基準でやっておりますから、看護基準も四対一なんですね。そこが何だかごちゃごちゃになっている。ところが、一対一で介護しなければならないのに、それが四対一で三交代ということになれば、とても手が足りないから、看護婦さんの勤続年限が非常に短い。これでは質の低下を来たすばかりだといって心配されております。こうした特殊な施設に対しましては、少なくとも常時二対一ぐらいの看護要員、介助者が必要だと思いますが、それはいかがでございましょうか。
  118. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 確かに御意見のとおりだと存じまして、三十九年度の予算措置で新たに、サリドマイドのベビーなり、あるいは内臓奇形の子供に対して育成医療の措置を適用することにつきまして、所要の予算措置を現在御審議願っているところでございます。
  119. 藤原道子

    藤原道子君 とにかく月額三万円ぐらいかかるというところに措置費は五十五円六十一銭では、どうも話にならないと思うのです。そういう点は早急にはっきりした基準を出して、こうしたとうとい施設が運営できまするように、そこに入っております子供たちがやはりしあわせに守られますように、このことを強く要望いたします。  さらに、私は秩父学園に行ってまいりました。あれは国立で御自慢の施設、私はもっとりっぱなものだと思って行ったのです。ところが、私の期待ははずれたわけなんです。しかも、施設の人は非常に御苦労しておいでになる。ところが、ここで現状を云々してもしかたがないけれども、私は安んじて子供たちが指導を受け、まあいろいろすることができるように守ってやってほしい。特に私気がつきましたのは、あそこは子供たちが、三五以下、IQ三五ですね、そういう重度の子供たちが粘子細工で焼きものをしておりますね。私も灰皿をもらってきましたけれども。ところが、いまあそこでは、子供が非常に楽しみにしているかまがこわれちゃって使えないのです。幾らかかるかと聞きましたら、わずかな予算のように伺いました。そういうところにも一やはり国としての愛情が欠けているのじゃないかということを強く指摘をいたしまして、これが解決等も早急にはかられたい。  しかも、ここで問題なのは、二重障害といわれるけれども、二重じゃないんですね。子供によれば五重も六重もの障害を受けている、目が見えない、言語障害がある、肢体が不自由で、頭が……。一つ一つ病名を申し上げる余裕がありませんけれども、五重、六重の障害を受けている。しかも、その原因が、いろいろ伺いまして、私はこれはたいへんだと思ったのです。結局、出産及びその周辺に原因するものが多い。脳性小児麻痺の場合は、七三%までがこの出産及びその周辺ということばを使っておられる、それに基因する。さらに早産、仮死産、異常産、未熟児等々が原因であるということもいわれております。それから、秩父学園へ参りましたら、やはりその率がほとんど同じでございます、結局、何と申しますか、生来不明児、生来原因がわからないという子供、これが百二十五の中に六十一人、そうしてやはり出産時を強く主張されておりますその生来性原因不明のものは、母体の栄養——胎生期ということばを使っておりますが、母体の栄養とか、心身の過労、精神的なショック、出産時におけるいろいろな障害、これらが大きく原因しているということが、専門の施設で明らかになっているのです。ということになれば、私は生まれた子供たちに苦労をかけるよりも、生まれないことに国は努力すべきではないか、こう考えるのであります。これに対して諸外国は競って精薄の原因の追及に取りかかっている。日本ではこれに対してどのような施策が行なわれておるか、どういう研究が行なわれておるかということをお伺いします。
  120. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 精薄の対策は予防にしくはないわけでありますが、わが国におきましても精神衛生研究所、その他におきまして、いろいろ原因の究明はいたしておるのでありますが、お説のようにまだ不十分でございます。将来は御意見のように国立秩父学園等、臨床をやっております施設において、さらに研究の施設を整備し、強化してまいりたいと存じております。
  121. 藤原道子

    藤原道子君 私は、大臣から御答弁が承りたい。結局、いま申し上げましたように胎生期感染症とか、先天性脳症とか、あるいは生来性不明原因による脳症、こういうのが多いですね。あるいはお産、異常産等による不幸な子供の出生を見ておるわけです。ところが、日本ではまだそれに対して一部の人が手をつけておる。日赤産院の三谷博士とか、あるいは名古屋の大学でもモンゴリズムの研究をしていらっしゃる。ここにまかせるべきでなくて、いまや非常な問題になっておりますところの、この精神薄弱児に対しまする国立の研究所、こういうものをもって真剣にお取り組みになる意思があるか、結局生まれてから不幸を見るのみならず、国の費用が非常にかかっておるということならば、生まれないように措置いたしますのが、私はほんとうの政治だろうと思う。そういう点において国立の精薄研究所というようなものが必要であると考えますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  122. 小林武治

    国務大臣小林武治君) お話しのような面の研究は、非常におくれておる。やはり精薄の事後対策よりか、それの出ないように、その原因を探求するということは、私は非常に必要だと、かように考えますので、お話しのような方向にしていくように私どもぜひ検討いたしたいと思っております。
  123. 藤原道子

    藤原道子君 それと同時に、私は最近都会におきましては施設で出産する婦人がふえてまいりました。それから農村に参りますと、まだ三〇%くらいですか、より施設で行なっておりません。そのために、いま世界的に見まして、日本の、それこそ先進国といわれる政府のもとにおきまして、出産による死亡率は世界一なんですね、世界一とは申しません、セイロンの次なんです。これがまことに私たちは納得がいかない。したがいまして、その出産がこうした不幸な子供たちの生まれる原因になる。さらに命を落とす母性の問題でもあるという立場から、出産は完備した施設、このごろ厚生省でやっておられます母子健康センター、これをもっともって数をふやす、その内容を充実していくということを要望したい。それと同時に、出産は健康保険あるいは国民健康保険が出て皆保険を保障をしておいでになるのでございますから、出産は全額国の手で、保険等によりまして、個人の負担ということでなく、そうした公の機関の責任で安心してお産ができるようにはかるべきではないか、これが一つ。  さらに、妊産婦の栄養が問題になっておりますために、政府は今度の予算でも母性に対する栄養補給のために予算要求されたはずなんです。これがだめになっております。けれども必要だから要求されたんだと思いますので、私はあくまでも一妊産婦と乳幼児に牛乳等栄養分の支給が必要である、こう考えますが、御所見はいかがでございますか。
  124. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 出産の費用の問題も、これは考えなければなりません。いままあ健全な出産を促すと、こういうことで入院出産というようなことを政府でも一奨励をしておりまして、都市部においてはほとんど六、七〇%まで施設でもってお産をすると、こういうことになってきておりますが、まだ地方では三〇%くらい、こういうことでやはりこの方面のことを普及させなければならぬと思っております。  それからいまの妊産婦の登録管理と、こういうようなこともやってまいりまして、これによりまして異常妊娠とか、あるいは妊娠中毒とか、こういうようなことの防止にもいろいろつとめております。これはこの方面のことをもっと徹底してやらなければならぬと、こういうふうに思っておるのでございます。  それからあとの問題も、もうこれはお話しのように、妊産婦の栄養あるいは乳幼児の栄養と、こういうふうなことにつきましても、ことし厚生省はやはりそういう異常出産を少なくするためにも栄養問題が非常に大事だと、こういう見地に立ちまして予算の要求もしたのでありますが、ことしは遺憾ながらできなかったと。しかし、これはあくまでも私どもは必要な問題であると思って、次の機会にぜひ解決をしたい。すなわちお話しのように、妊産婦の栄養ということが、いまのいろいろの異常出産の原因にも一なっているということを、私ども一も十分考慮に入れて考えております。
  125. 藤原道子

    藤原道子君 この問題につきましては、世界各国とももう非常な熱意で集中いたして研究されておることでございますから、あらゆる栄養の面、医療の面、経済的な面、こういう面においてもっと進んだ御検討を願い、さらに国立の研究所をぜひ出発させてほしいことを強く要望いたします。  私は過日光明養護学校に参りましたときに、そこの生徒の歌がある。「生前の友の言葉もわれと同じ、母より先に逝くがしあわせ。」「不自由のからだのあこの果てるまで、長らわんと励みます母」と、こういう歌を私は聞きまして、ほんとうに泣いてしまったんです。不自由な子供がお母さんより先に死ぬのがしあわせなんだと。自分のために、自分より長らえようとお母さんは励んでくれるのだと、こういうようなことを不自由な子供が歌に託しております。そしてまた、母はこの子さえいなければというので、つい子供を殺すような悲劇も起こると思う。私はこうした悲劇をなくしまするために、予算がないとか何とかいうのでなしに、もっと愛情のある政治、これを強く要望いたしまして、いろいろお伺いしたいこともございますけれども、時間がございませんので、いま申し上げました研究所の問題、施設の待遇問題、人員の問題、さらに出産等の問題につきまして、ぜひ確固たる施策が打ち出されますことを強く要望して、この問題に対する私の質問を終わりたいと思います。  児童にもいろいろございます。ことは私は最後にもう一つ、生まれたときにすぐ発見するなら、肢体不自由児の相当数は措置できると思う。股関節脱臼であるとか、いろんな問題も、生まれたときの手当てによって、一生かたわにならなくて済むにもかかわらず、いまの日本の医療の実態からまいりまして、そういうところへ手が届いていないから、結局そうした子供たちが大きな不幸に遭遇しております。したがって、この出産児における、いかにとおとい問題であるかということを、さらに再確認をしていただきたい。  最後に、ひとつ落としておりましたが、お母さん方の心配は、自分が死んだあとでどうなるだろうか、これが一番です。そこで二十になれば家庭へ帰される。その帰された後にどうなるか。ああした子供たちも職業訓練を受けているのです。したがってコロニーのような施設、一生安心して生きられる施設が私はほしいのです。この間光明養護学校では、こだま会という父兄の会で、毎月二百円づつ出して子供のために土地を買ったのです。将来子供にそこへ安住の地を残したい。ところが、それはまだ微々たる力で三百坪です。ところがその周辺が国有林だ。これらをぜひ折衝していただきまして、この親の祈りが実を結びますように、非常にあたたかい、いいところだそうでございますので、これらの子供に対してのコロニー施設、一生安心して生きられるコロニー施設をぜひ実現さしたいと考えて、最後に大臣にこういうことに対してのあなたの御決意を伺いまして、この問題の質問を終わります。
  126. 小林武治

    国務大臣小林武治君) お話しのような精薄でもからだがよく動く、あるいは身体障害者でも一相当の動作のできる者、こういう方々にコロニーというような問題は、私はどうしてもやらなければならぬ。これからの新しい問題としてこういうものは実現をせしめたいということを私どもいま考えております。
  127. 藤原道子

    藤原道子君 ちょっと、大蔵大臣が来たときに、私質問時間が加算されては困るから、あなたから私の質問したことを大臣に言って、それで大臣答弁をもらってください。
  128. 太田正孝

    委員長太田正孝君) しばらくお待ちください。
  129. 藤原道子

    藤原道子君 私は、まず労働大臣にお伺いいたします。  身体障害者の雇用の適用状況について一つと、第二点は、定時制高校の就職の状況、第三点は、年少労働者の就労後の労働の管理、保護、指導、そして最近集団就職をした少年が非常に離職率が高いと聞いておりますが、その理由とその対策を伺います。さらに、看護婦の夜勤、保母の労働強化、社会施設従事者の労働強化など、労働基準法違反が非常に行なわれておりますが、これらについてきょうまでどのような監督をしておいでになったか、女子の深夜業禁止の精神、これらも私はあわせてお伺いしたいと思います。
  130. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) まず第一に、身体障害者雇用促進法の施行の状況についてでございます。官公庁などの機関におきましては、現在約三万人の身体障害者が雇われております。その雇用率は一・三三%となっておるのでございまして、法律の定める雇用率一・五%よりもやや下回っております。また、官公庁等が作成いたしました身体障害者の採用計画によりまして、昭和三十九年三月末までに採用を予定されている身体障害者の数が約四千四百人でございますが、現在はこの計画達成につきまして努力中でございます。  次に、従業員百人以上の民間の事業所におきましては、現在四万九千人の身体障害者が雇われております。その雇用率は〇・八四%でございまして、法律の定める一・一%の雇用率をこれも一やや下回っております。公共職業安定所におきましては、身体障害者に対して特別の配慮をもって職業紹介につとめておるのでございまして、昭和三十五年に雇用促進法が施行されまして以後、昭和三十八年十月末までに新たに求職の申し込みを行ないました者は四万四千七百八十三人、これに対しまして、このうちで二万四千六百八十八人が就職いたしております。なお、同法により創設されました適応訓練につきましては、昭和三十五年度より実施いたしておりますが、年間中度の身体障害者五百人及び重度の身体障害者二十人について訓練を実施しておるところであります。この適応訓練は来年度も同じ規模でやるつもりでございます。昭和三十八年七月の職業安定法の一部改正によりまして、身体障害者雇用促進法の適用されております身体障害者である失業者は、年齢のいかんを問わず、手当の支給を受けつつ公共職業訓練、職場適応訓練、就職指導などの諸措置を組み合わせたきめのこまかい就職促進の措置を受けることができることになっておるのでありまして、これによって援護措置の充実をはかっていく次第であります。  次に、年少労働者の就職後の補導の状況について申し上げます。年少労働者につきましては、労働基準法におきましても、厳格な八時間労働制が要求されており、休日の付与、深夜業の禁止、危険有害業務への就業禁止など手広い保護が加えられておるのでございますが、監督の面におきましても、年少労働者の保護を監督事項としての最重点事項の一つにいたしておりまして、鋭意努力をいたしております。また、働く年少者の健全な育成のためには、労働条件、労働環境の改善、人間関係、教育訓練、生活相談、その他余暇の善用など、広範囲にわたる配慮が必要でありますから、労働省といたしましては、昭和三十三年以来、中小企業団体に対しまして、年少労働者福祉員制度の設置を進めてまいっており、これら年少労働者福祉員による福祉増進のための活動の充実、活発化を期しておるのであります。現在この福祉員は、全国を通じて約二万人が活動中でございます。なお、雇用の安定をはかりますために、公共職業安定所における定着指導を重点的に取り上げるととも一に、産業カウンセリング、すなわち相談制度でございますが、この普及にも力をいたしておる次第でございます。  それから、年少労働者の離職者の状況でございまするが、昭和三十二年を一〇〇といたしますと、おおよそ就職後の短期の間に離職いたしました者の状況は、三十三年には一四、三十四年二七、三十五年一六〇、三十六年まで調査いたしておりますが、二一四、わずか五年の間に年少者の離職率が約二倍に増加をいたしておるわけでございます。これらの理由につきましては、昨年の四月、東京都におきまして詳細なる調査をいたしたのでございますが、いろいろ個人的な理由、あるいはつとめ先の理由、あるいは同僚との理由というような、いろいろな理由があるのでございます。これにつきましては、相談員制度を充実することによって、年少労働者のホームシックとか、あるいは仕事上の煩悶とか、あるいは友だち関係の調整とか、こういった指導をすることが必要だと、かように考えまして、ただいま相談員の制度を明年度から拡充いたしたいと思っております。もちろん、先ほど申し上げました年少労働者福祉員の活動に待たなければならぬ面も多々あるわけでございます。同時に、御指摘になりましたように、労働基準法による監督、その他労働の適正をはかるための監督も強化いたしてまいる考えでございます。  次に、看護婦、保健婦、その他社会施設等に働いている人々の労働条件の問題でございます。病院、診療所、各種社会福祉施設等におきます看護婦その他の労働条件につきましては、労働時間について特に問題があるようでございます。従来から労働基準法に基づく監督の重点といたしまして、長時間労働、休日労働の排除、また、時間外労働に対する割り増し賃金の適正な支払い、これらの従業員に対する就業規則の整備などの点を特に取り上げまして、労働条件の改善につとめておるのでございますが、近来、次第にその実効があがりつつはございますが、いまだ十分満足すべき状態ではございませんので、今後とも努力をいたしたいと思います。  なお、これらの事業におきましては、人事とか、あるいは給与体系等につきましても、問題となる面が見受けられまするので、これらにつきましても、関係行政機関とも密接な連携を保ちながら、病院などの経営のあり方の一環として、労務管理のあるべき姿についても考えてもらうようにいたし、労働基準法に基づく監督とあわせて、この方面の指導をも行なってまいりたいと思っております。  もう一点、定時制高校の就職状況ということでございましたが、まことに恐縮でございまするが、ただいま手元に資料を持っておりませんので、適当なる機会にお答えさしていただきたいと思います。
  131. 藤原道子

    藤原道子君 聞いてくださいよ、さっきの。私がまた繰り返していると持ち時間がないから。大蔵大臣がいなかったんだから。——いいですか。計算しないで。
  132. 太田正孝

    委員長太田正孝君) その質問時間は時間に入れませんから。
  133. 藤原道子

    藤原道子君 大蔵大臣がおいでにならないので、質問がちぐはぐになっちゃって非常に迷惑をいたしております。  私は、特に社会保障の問題につきまして、昨日も大蔵大臣は、非常に社会保障費がふえてきたとおっしゃいましたけれども、もともとが低いわけでございまして、いまの状態で、はたしていいと思っておいでになるかどうかということが一つなんです。いま一番ここで問題になりましたのは、重度心身障害児の問題、いままことにみじめな状態におる。国が出しております措置費なども、いまのところ五十五円六十一銭というんですから、島田療育園で、それで一日三万円くらいかかる。ところが、それに対しての国の施設がはっきりできていない。法の規制も十分できていないというようなことで、こうした問題児を持っております両親の苦労というものは想像にあまりあるものだ。だから、この子を殺して——というようなことの悲劇が起こってくるわけです。ところが、これが生まれる原因が、施設で調査いたしましたところが、大体生来性の原因不明のものというのが相当ある。それから脳性小児麻痺が、ほとんど、島田療育園では七二%というんです。そういう実情なんです。したがって、私が大臣にお伺いしたいのは、生まれてから心身障害児の問題で社会にも親も子供も不幸をみるよりは、生まれる原因を私は断ちたい、探究したい、そして不幸をなるべく最小限に食いとめる。だから、生まれた子供にはもっと愛情のある施設が必要である。これは要するに、その子供たちの療育に力を入れますとともに、将来ともにわたってその子をみていくコロニー施設が必要ではないか。いまのところ、二十になれば帰されちゃうんです、家へ。ああした心身障害児を帰された家庭はどうなりますか。そういう意味で、その子が終生生きることのできる生活の場を考えてほしい、これには父兄の方が拠金をして若干の土地を買っておる、その周辺が国有林である。ここにひとつその子のための施設を思い切ってつくってやっていただきたい。これが一つ。  それから、そういう子供をなくしていくために、精薄の原因追求のために精神薄弱児の研究所を国立のものを私はつくるべきだ、これは諸外国でもいま競って研究いたしております。そういうときに、先進国という日本でそれにいまだ手がつかないということはおかしいじゃないか、これをひとつ考えてもらいたい。  それから、社会施設で働きます場合には、一対一の介護が必要なんです。ご飯を食べさせるのも一おさじで食べさせる、おしめも取りかえる、一人の手が要るのです。ところが、いまそれが見られないで、普通の病院などと同じように、四対一という基準でございますから、非常に過重になる。したがって、職員になり手がなくなって、いま非常に困難いたしておりますので、それらにつきましても、大蔵省がひとつお考えをいただいて、そういう面に対する予算、こういうものをお考えを願いたい、こういう点をお伺いしたいのです。大臣の御所信を——厚生大臣はぜひそれをやりたいという御答弁だったのです。それから、そういう子供の生まれる原因が母体にあるというのが非常にわかってまいりまして、出産時にあるということがわかりました。だから、これに対しましては、やはり出産費用は全額国の手で——生まれてから使う費用と不幸を考えるならば、私は、この費用は決して要求するほうが無理ではない、こう考えております。それから、胎児の母体の栄養の不足がそういう不幸を生むのでございますから、これに対しましては、妊産婦と、乳幼児に、せめて牛乳一本の栄養の補給を国の手でやっていただきたい、これに対しての大蔵大臣の御所見を伺いたい。厚生大臣は要求したけれども、切られたでしょう。
  134. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 社会保障の必要であるということに対しては御説のとおりでありまして、政府は、社会保障第一に考えておるわけでございます。先ほど申し上げましたが、昭和三十九年度の予算におきましても、対前年度比一四・二%のものを、社会保障に対しては一九・二%というふうに、できるだけ財政の許す範囲内におきまして積極的な施策をとっておるということはひとつ御理解いただきたいと思います。しかし、どうも非常に対前年度比の伸び率が大きくなってきておるというけれども、その基礎になる数字が小さいということでございますが、それはそういうことも確かに言い得ると思います。しかし、戦後先進国に追いつこうということで、社会保障を最重点的に考えて、池田総理がきのうも本会議で申し上げましたとおり、この七、八年間で社会保障を最重点施策といたしておりますために、急速に社会保障費が伸びつつあるという事実に対してもひとつお考えをいただきたいと思います。  それから、あなたがいま言われた重度心身障害児に対しましては、今年度厚生大臣の御要求で、万全なものとは言えませんけれども、制度上の歳出を認めて新しい道を開いたわけであります。一日千円とか、そういうものに対しては非常に少ないじゃないかという議論はありますけれども、私は、やはりこの制度を最後までがんばられた小林厚生大臣のお考え方というものに対しては、非常に敬意を払ったわけでありますし、また、戦後の日本社会保障史の中に大きく一ページをしるすものだ、だから、制度上新しく出発をしたものでありますから、万全なものではないにしても、こういうものに対して歳出要求を認めて新制度の道を開いたということは、確かに私は画期的なことだと考えております。  それからあなたのいま言われた、専門的に妊産婦の問題へ胎児の問題、その後の問題等に対しましては、これはいろいろ御説を十分拝承いたしておきますが、何でも国でやる、やれることは一番いいのでありますが、財政が許さないということで、そのまますぐ全部ができるとは思いませんけれども、そういう歳出が非常に重要なものだということはよく理解できるわけでありますし、厚生大臣とも各年度における予算編成の時点におきまして、十分お互いに検討をしながら、社会保障の向上の方向に進んでまいりたいというふうに考えます。  それから先ほど、一日五十五円ということを言われましたけれども、これは何かの間違いじゃないかと思います。予算では一日八百円見ておりまして、年間一人当たり二十八万円の予算を組んでおるわけであります。  以上、申し上げます。
  135. 藤原道子

    藤原道子君 間違いではございません。きのう島田療育園へ行って調べてきた。そうすると、そこの措置費が、一日の児童の措置費が五十五円六十一銭だか二銭です。私は、うその資料では御質問しない。(「大蔵大臣のがほんとうで、金を出してくれるのかもしれない」と呼ぶ者あり)それだけ出していただけばけっこうです、一日八百八十円ですね。  それからもう一つ、国立の精薄研究所、これは非常に大事だと思うのですが、この際、思い切ってつくってほしい、どうです。(「国有林の関係がある」と呼ぶ者あり)国有林の関係も一ある、それはコロニーの問題。
  136. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国立の精薄研究所ということが、これをつくるのがいいのか、それから、いま東大その他いろいろな大学のものを一つにすることがいいのか、そういう問題に対しては、厚生大臣が専門でありますので、十分厚生省の意向も聞きまして、将来、善処をしていきたいということを考えます。何か具体的な、国有林の払い下げその他のお話もあるようでありますが、また、具体的な問題であり、どういう組織で、国有林を払い下げをすれば、民間でやろうというのが、国有地があるので、そこに新しく予算措置をして国立研究所をつくれというのか、それからなお、現にあります療養所その他の特定なところを御存じであって、そこを研究所にせよというのか、現在、まだこまかい問題を承知いたしておりませんが、御指摘があれば、厚生大臣の意向を聞きながら、こういう問題に対しては、前向きに対処をいたしたいというように考えます。  それから、さっきの五十五円というのは、これはどういう意味でございますかわかりませんが、予算では一人当たり八百円、年間二十八万円、こういう予算を組んでおるわけでありまして、内訳をお入り用ならば申し上げたいと思います。
  137. 佐藤一郎

    政府委員佐藤一郎君) 数字のことでございますので、私から御説明申し上げます。ただいまのお話は、昨日おいでになってのお話だというので、その点についてはお間違いないのだと思いますが、何か話に行き違いがあるんじゃないのかと思います。予算で申しますと、年に二十七万円組んでおりまして、(「大臣は二十八万円と言った」と呼ぶ者あり)これは切り上げて二十八万円ですが、二十七万に端数が出ております。それで一人当たりが、いま申し上げましたように八百円ぐらいに当たる金額を組んでおります。  でありまするから、どういうお話でありますか、具体的に、また別の機会に調べたいと思っております。
  138. 藤原道子

    藤原道子君 入所児童一人の一日当たりの措置費が五十五円六十一銭、これはまた、あとで十分ただしたいと思います。  それから大事な問題です。大臣が混乱されてお聞き取りを願ったようでありますが、私が申し上げましたのは、二つなんです。一つは、生まれてから不幸を見るよりも、生まれる前に、その生まれ出る原因を研究するために、いまや世界の学問が、その方向へ動いているときに、日本でも一国立の精薄研究所をつくってほしい、つくるべきだ、これが一点です。  それから、いまの国有林の問題は、光明養護学校というのが世田谷にあるのです。これも三十年の歴史を持っておるわけですね。そこの父兄たちが、毎月二百円ずつ出してわが子のために、将来の安住の地を求めたいというので、千葉のほうに三百坪ばかり土地を買ったのです。ところが父兄の——子をかかえていると非常に金がかかるのですよ。重度精薄に千円出したなんといっても、ああした子供をかかえてごらんなさいよ、そういう中から二百円出して土地は買ったけれども、それが狭いのです。その周囲に国有林が幸い広大なものがあるので、この際、国が当然やるべき精薄に対しての施設としてのコロニー、それをひとつ、国有林を払い下げていただいて、そこで国がやるなり、あるいは法人でやるなりして、とにかくコロニー施設が必要ではないか、これに対して、大臣のあたたかい御配慮が願いたい、この二つ。
  139. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 研究所等が必要であるということはよくわかります。わかりますが、もう今年度の予算は、いま御審議を願っておるわけでございますし、まあどういうものをつくるか、そういうものが必要であるということは理解できます、私も賛成です、賛成ですが、新しくつくって、中途はんぱなもので、どうにもならないということでいいのか、そういうことよりも、実際に名実ともにというなら、大学でもって、こういう問題を専門的に検討しておる部局がたくさんあるのでありますから、そういうものと、総合的にどうするかというような問題も、十分検討しなければならぬわけでありますので、方向、思想には共鳴をいたしますが、実際問題としては、これは私は専門でありませんので、厚生大臣の意向も、ひとつよく聞きながら、将来前向きで対処すべきもあと、こう考えます。  それから第二の問題は、これは特定の問題でありますのでお話を承っておきます。厚生大臣が、どのようにお考えになっておるか、御相談があれば、私のほうでも一検討いたしますし、また、国有地の払い下げ等が必要である、また必要であるという状態が認められれば、一向払い下げることに対して田共議を言うものではないのであります。でありますから、このような問題は、具体的な問題でありますので、厚生大臣意見等も十分聞きまして対処したいと思います。
  140. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 藤原君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  141. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 次に、大森創造君。
  142. 大森創造

    大森創造君 まず外務大臣、通産大臣にお伺いいたします。  外務大臣、どうですか、訪台をされるのですか今度。台湾へ行かれるのですか。
  143. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私の訪台の問題も、目下検討中です。
  144. 大森創造

    大森創造君 次にお尋ねいたしますが、今度の十八回国連総会で、これは外務委員会予算委員会で、ずいぶん繰り返して述べられたことでございますが、私が納得しないところをスクラップ的に申し上げますから、お答え願いたいと思います。  国連総会で、日本はどういう態度をとるのですか、わかりやすくひとつお答え願います。
  145. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 目下、その点につきましては世界各加盟国の状況調査いたしたり、十分の資料を整えて対策を立てたいと思って、目下準備中でございまして、国連対策をまだ樹立するに至っておりません。
  146. 大森創造

    大森創造君 それならばお伺いしますが、衆参両院の関係委員会で、外務大臣や総理大臣は、口をそろえて、なかなかむずかしいことを言っておられる。どういうことかというと、中国承認は、国連に中国が加盟しても直ちにはしない。で、中国の国連加盟が認められて、そしてまた、各国の大勢が中共を認めるころに承認をする、こういうことでございますか、確認をいたします。
  147. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) この状態は、まだ現実の問題ではないのでございまして、政府として、その問題を申し上げまするには、まだ時期尚早の感がするのでございます。せっかくの御質問でございまするので、一般的な考え方といたしまして、国連を尊重する日本といたしましては、中共が国連に加盟するというような事態になりますれば、中共との国交正常化の問題を考えなければならないということを申し上げておるにすぎないのでございます。
  148. 大森創造

    大森創造君 とにかくいまのような問答を衆参両院の関係委員会で、意思統一をしながら外務大臣は言われておりますので、これはまあ、先のことでございますが、そういう条件がそろわない以上は、中国を承認しないということは、先の先のことでございますが、そういうことを言っておられるならば、ことしの秋の国連総会での態度は、おのずから明白ではありませんか。そのときにならなければわからないということと違うでしょう。どういう態度をとりますか。
  149. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) ことしの国連総会には、どういう議案がどのような国から出されて、どういう状況において審議されるかは、まだ見当がつきかねるのでございまして、私どもといたしましては、可能な限り資料を集めまして、慎重に対策を練らなければいかぬと思っているわけでございます。  前段の御質問は、大森さんの御指摘のように、いまの現実の問題ではない先の先のことでございますから、一般的な感じ方を申し上げたにすぎないわけでございます。
  150. 大森創造

    大森創造君 そこのところが、どうも一納得しかねる。先の先のことを、中国がこういう状態になっても、日本は承認しないと、こういう状態になって、初めて承認するということを言っているならば、ことしの秋の国連総会に日本のとるべき態度というのは、好意的でありませんね、前向きでありませんね、少なくとも。これは重要事項指定方式とかいうような議事運営の小手先のサル芝居みたいなことを、またやるということを前提にしないというと、これから何年先かわからない、そういう状態においても中国を承認しないということは、私は論理的に結びつきがないと思う。その点いかがですか。
  151. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 先ほど申し上げましたように、ことしの国連総会では、どういう議題が出るか、まだわかっていないわけでありまして、それに対する態度をどうするかというのは、いまから申し上げることはできないわけでございまして、私どもとしては、世界各国の状況を可能な限り集めまして、慎重に、あらゆる場合を想定して対策を練らなければならないという心がまえでいる段階でございます。
  152. 大森創造

    大森創造君 松井国連大使がブラザビル諸国やアフリカ十三カ国を回ってきたというようなこと、これは一体、ずいぶん質疑があるようでございますが、新聞やその他の報道によるというと、単なる票読みではなくて、フランスに同調しては困る、慎重にしてくれろというふうな工作をしに行ったんじゃありませんか。それと、ことしの秋の国連総会の日本の態度との関連
  153. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) これは外務委員会でも、たびたび御答弁申し上げておりますとおり、今回は松井大使をわずらわしまして、去年は岡崎大使をわずらわし、その前には鶴岡大使をわずらわしまして、AA圏の諸国と緊密な連絡を、国連問題につきまして理解を深めてまいることを目的といたしておるわけでございまして、別段、フランスの中共承認とは関係ございません。
  154. 大森創造

    大森創造君 どうも新聞報道やその他の情報を入れても、松井国連大使は、そういう意味の私は各国訪問でないような気がする。そこで、アフリカには大使館があるのだし、情報などはとれるだろうと思う。なぜこの際、こういう措置をするのか、これはどうしても、日本の態度というやつが浮かび上がってくるような気がするのですが、そういうことは関係ございませんか、ほんとうに。
  155. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私は、特別な措置考えていないわけでございまして、先ほどお答え申し上げましたように、おととしも去年もやったことで、ことしもやっておく必要があると考えてやったわけでございます。国連には、いろいろな問題が当面あるわけでございまして、そういう諸問題につきまして、AA圏の国々と十分話し合いを遂げることは、日本として必要だと考えて派遣いたしたわけでございます。
  156. 大森創造

    大森創造君 くどいようですが、中共を承認するのは、アメリカのあとになりますか、先になりますか。
  157. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) まだ現実の問題となっておりませんので、そういう問題についても、御答弁申し上げる段階ではないと思います。
  158. 大森創造

    大森創造君 それなら、世界の情勢が刻々と変化しておるときに、何年先かわからないときに、日本は、こういう態度をとるのだ、国連に加盟しても、直ちに承認しない、しかも一関係の各国の大勢が中共を認めるようになってから日本は認めるということを衆参両院委員会で、なぜ言われましたか。
  159. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 御質問がなければ、そういうことをお答えしたくないのでございますけれども、御質問があるわけでありましたので、そのような一般的な感じ方を申し上げたにすぎないわけでございます。そのようにお受け取りいただきたいと思います。
  160. 大森創造

    大森創造君 通産大臣にお答えを——おられませんか。じゃ、運輸大臣にひとつ。  運輸大臣にお答え願いますが、と日本の航空協定といいますか、そういうもの、韓国との民間航空協定ですか、それに認可を与えられたのですか、これは。
  161. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 与えました。
  162. 大森創造

    大森創造君 どういうわけでございますか。
  163. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 韓国は、サンフランシスコ条約によりまして、わが国が承認している国でございまして、近時、御承知のように日韓会談があり、非常にひんぱんに日韓の往復がございます。しかも、その韓国の飛行機は、ノースウエストと、もう一つ何とかいう飛行機会——外国の会社がやっているので、両国の経済上からいっても不合理でありますから、民間ベースにおきまして日本航空とそれから大韓航空との間のコマーシャル・ベースの話し合いをわがほうとしても了承して許した次第であります。
  164. 大森創造

    大森創造君 中国のほうからは、もう数年前から相互乗り入れということをいってきておるけれどもこれを許可しない。なぜ——そのときの理由としては、国交が樹立しない以上は、なかなか思うようにいかぬというようなことを言われましたが、国交も樹立しない、日韓会談もどうなるかわからない。許すならば、日本と韓国との関係ならば許したっていい。なぜこの際、こんなことを許して、数年前から申し入れのある中国のほうをけっているのですか。
  165. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) ただいまのような国際情勢のもとにおきましては、中共との乗り入れは、時期尚早と私は考えて許さないのであります。
  166. 大森創造

    大森創造君 時期尚早と言われますが、何だって時期尚早と言えば時期尚早なんで、そうでなくて日中間の相互乗り入れというものをはばんでいるのは、一体何ですか。どういう理由があるのですか。
  167. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 目下のわが国の国際的地位における状態でございます。
  168. 大森創造

    大森創造君 もっと抽象的でなく言ってくれませんか。あるでしょう、何か。アメリカの軍事基地がどうだとかこうだとか新聞に出ておるのですが、ほんとうのところあるでしょう、政経分離のたてまえからいって。黒金官房長官おいでになっておりまんか。これは相互乗り入れをしていいというようなことを言っておったのであります。これはどうなんですか、官房長官。
  169. 黒金泰美

    政府委員(黒金泰美君) あれは藤井藤志さんですか、行かれまして、向こうからそういう話があったという記事が新聞に出ておりました。記者会見で聞かれまして、まだ御本人から御報告がありませんが、政経分離の中で、政でしょうか経でしょうかよく検討してみましょうと、かように申しました。
  170. 大森創造

    大森創造君 どうも私はわからないのです。古田さんが訪台して以来、どうも何と弁解しようと、全体的に後退しているような気がするのです、中国関係については。で、いまのような優柔不断な態度で一体、衆参両院の本会議で、池田総理が言うておることは、六億の人民が厳存して、よってもって現実的な政策を慎重に検討して展開するつもりであるというようなことを言っておりますが、その連関はどうなんですか。何でもいいから断わっちゃうのですか、中国の問題については。こんなことは道義的にいかぬと思う、モラル的にいかぬと思う。もう一回外務大臣見解を伺いたい。なめられますよ。
  171. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 中国大陸に対する政策は、従来と少しも変わっていないわけでございます。前進とか後退とかいう性質のものではないので、既定の方針で、政経分離の原則にのっとりまして、民間ベースで貿易その他を現実的に進めておるわけでございます。
  172. 大森創造

    大森創造君 それでは通産大臣にお答え願いますが、ビニロン・プラント、大日本紡の、この問題はどういうふうな経緯になっておりますか。やるかやらぬか。
  173. 福田一

    国務大臣福田一君) まだ日本紡から何らの申請もございませんし、話もございません。したがって、何にもきめておりません。
  174. 大森創造

    大森創造君 申請があったらやると決断なさいますか。
  175. 福田一

    国務大臣福田一君) その業種あるいはその条件、そのときの輸銀の資金状況等々を勘案いたしまして判断をいたしたいと思います。
  176. 大森創造

    大森創造君 輸銀の資金状況という点から見て、大蔵大臣はどうですか。差しさわりございませんか。
  177. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まだ出てもこないものに対して、どうもお答えする、規制する段階ではないと思います。
  178. 大森創造

    大森創造君 出てきたらそのときどうしますか。
  179. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 出てきたら、その時点において検討いたします。
  180. 大森創造

    大森創造君 とにかく私は中国に対するいままでの関係からいうて、の面からいうて、それは現時点においてはあんた方の答弁はそれでいいでしょうが、三年、五年たったら、私は非常な危険な道を歩むような気がします、日本の外交は。私はそれを断言いたします。一体その責任は現政府がおとりになるのだろうと思うのだけれども、そういう各国の大勢に押されて、日本がいやいやながら承認するということになるのですから、現実に中国の受け取り方というものを私は考慮しなければいかぬ、将来の外交について。非常に私は重大な段階になると思います。  時間がないから、その次に移りますが、最後に運輸大臣にもう一回お聞きいたします。軍事基地の問題だと思うのです。問題は、隘路は。上海と大村間くらいの乗り入れを許したらどうですか。
  181. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) そのときの情勢を見まして私ども考えたいと思っております。
  182. 大森創造

    大森創造君 とにかく自民党内の党内情勢と、それからアメリカだの台湾だのと考えてみると、いい頭でしょうけれども、みんな何だかんだしちゃって、それ以上出ないから私はそれでやめておきます。  その次に、防衛庁長官おいでになりますか。防衛庁長官にお尋ねいたしますが、まず「防衛力整備に関する基本的見解」というものがこの間の参議院の予算委員会で問題になりました。この経過を簡単にひとつお述べをいただきます。   〔委員長退席、理事斎藤昇君着席〕
  183. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) わが国の防衛計画の基本構想でございますが、日米安保体制を基本的な構想といたしましてわが国の国力国情に応じて必要なる防衛力を整備する、これが基本的な構想であります。
  184. 大森創造

    大森創造君 この間のその文書というものは、私文書なんですか。
  185. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) この間の文書というのは、岩間委員の御質問の関係の文書と思いますが、それは一幕僚の私案でございます。
  186. 大森創造

    大森創造君 だれという幕僚が書いたんですか。
  187. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) ちょっといま聞き取れませんでしたが、御質問もう一ぺんお願いしたい。
  188. 大森創造

    大森創造君 この「防衛力整備に関する基本的見解」という文書、問題の文書はだれが書いたんですか。
  189. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 航空幕僚監部の一幕僚であります。
  190. 大森創造

    大森創造君 これは防備当局の部長なり責任者がはんこを押して、公文書としてその会議の席上配付したのと違いますか。
  191. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) これは一幕僚が、自分の私案を、航空幕僚監部という名前を付して配付いたしました。昨年八月の会議に出したことが判明いたしました。今後、自己の私案を正式の機関、あるいは局なり部の名前を付する場合には、正式の手続によるべきであると、この際明確に厳重に示達いたした次第でございます。
  192. 大森創造

    大森創造君 おそろしいでたらめな防衛庁ですね。そういう私文書が、この新聞記事によると、去年の八月二十三日に航空幕僚監部が主催した会議で、全国の作戦担当者が秘密会議を開いておる、そこで全部に渡っているんですよ。そのとき問題にならなかったのですかこれは、この文書は。
  193. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) そのときには問題にならなかったようで、まことにこれは手続上も、きわめて遺憾なことであると思います。
  194. 大森創造

    大森創造君 そうじゃないでしょう。これはもう、はんこを押して、あなたが知らないだけで、部下の人がちゃんとはんこを押して、これはもうだれかがあいさつをされて、説述をして、その内容的なものを配ったのと違いますか。そうとしか受け取れませんよ。そうでなければ、そんなでたらめな防衛庁の会議というのはないでしょう。
  195. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 厳重に調査しました結果、これは私案でございまして、手続上きわめて遺憾な点があったと判明いたしております。
  196. 大森創造

    大森創造君 国会で私案だと言ったってだれが証明しますか、これ。だれも証明する人ないですよ。私が言うのは、これは、御婦人の井戸ばた会議じゃないですよ、これは。井戸ばた会議じゃないですよ。作戦担当の責任者が集まった席上で、そうして航空幕僚監部というもので取り扱い注意という文書がずっと回った、去年の八月二十三日に。それは私案といったって、そのことを証明するものを出してください、防衛庁で。何か私に納得させるようなことを言っても、公文書じゃないですか、これ。それが常識的にとられておりますよ、防衛庁では。
  197. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 外部の者、あるいは客観的にそう判断されても、私はやむを得ない一つの印刷のしかたであると思います。しかし調査の結果、実は幕僚長の決裁も出ていない。見ておらぬということがわかったわけであります。あくまでこれは私案でございます。
  198. 大森創造

    大森創造君 あなたと幕僚長が見ていないということはわかったけれども、その他の人は見ているんでしょう、その他の人は。はんこを押しているんでしょう。
  199. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 防衛部長がこれを見ているのであります。
  200. 大森創造

    大森創造君 防衛部長が見ていて、そうして二十人の人、しかもそれは作戦担当者だ、各地の。そこでもって公然と配られたということが、いままでずっとそのままになってきたなんということは私考えられない。どうりで決算委員会における会計検査院の指摘事項が多いと思う。過般は小川二佐の問題があり、防衛庁は何をやっているのですが、一体。これは私文書ならよけい重大ですよ。ですから私文書であるか、公文書であるかということを、ちゃんと私に証明するようなひとつあかしを立てていただきたい。これは進行中の裁判と違いますよ。つまり、行政上の問題ですから、これを審査している予算委員会に何か客観的な証拠を出してください。
  201. 海原治

    政府委員(海原治君) ただいま問題になっております文書の性質でございますが、これは先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、昨年の八月の末に航空自衛隊の各部隊から大体二十三名ばかり防衛指揮者会同と申しておりますが、そういう会同がございまして、そういう際に空幕の幕僚が、今後の防衛力の整備について、自分としてはこういうようは問題点を感じているけれども、ひとつ君たち検討してくれ、こういう形でつくったものでございます。なぜそれが航空幕僚監部という名前になって出たか、この点はまことに申しわけないと思いますが、それが公文書的なものでないということにつきましては、この文書の中に、たとえば陸上自衛隊とかあるいは海上自衛隊とか、こういうほかの自衛隊の任務のことに関連しまして、率直に申しますというと、空だけあればいい、海や陸はどうでもいいのだと、こういうふうにとられるような文書もございます。こういう形のものが航空幕僚監部という、大臣のもと、で、ほかの自衛隊と一緒に日本を防衛する立場にありますところで、公につくられるはずはございません。あの文書そのものがあくまで一幕僚の私案であり、もっぱら日本の防空を担当しておりますものの立場から見れば、空に重点がある、日本の空は大事だということを強調するために、いろいろと筆の走っているところがございます。こういう点をお読みいただきますというと、航空幕僚監部という防衛庁の正式の機関がつくったものでないということは御推察いただける、このように考える次第でございます。
  202. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 関連して。この間の予算委員会のときに私お伺いしたのですが、手続上遺憾であるということを強調されておりますが、問題は手続上遺憾であるということだけで処理をされるつもりなのか。思想上の問題については何ら遺憾の点がないというふうにお考えになっておるのかどうか、その点について私はお伺いしたいと思います。あの書面の内容というのは非常に狭い視野で、いわば偏狭な見方をしております。労働運動あるいはその他の一般の国民大衆に関係のある問題についても、独善的な物の見方をしております。もし、思想上ああいうものが防衛庁において許容されておるとするならば、ここに私は非常に大きな問題があると思う。だから、防衛庁の教育方針というものが、おおむねああいう考え方で防衛庁の幹部はよろしいのだというふうに容認されておるのかどうか。あるいはそういう点について遺憾であった、だからもう一度教育のし直しをしなければならないというふうに感じておられるかどうか。それらの点についても長官の御意見を承りたいと思います。
  203. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 御指摘の点は、本委員会でもお答えしたと記憶いたしております。二つ問題があると思います。一つは、手続き上の問題並びに機密漏洩の問題、第二は内容の問題でございます。先般もお答えしましたとおり、大体内容的に見ましても行き過ぎの点あるいは誤った点があります。これは本人に幕僚長がさっそくただして、しさいに検討さしたのでありますが、字句が非常に足らない、あるいは表現についても非常にらんぼうであると本人も十分反省いたしております。この点厳重に注意いたしておる次第でございます。
  204. 大森創造

    大森創造君 どうも私はその点が重大だと思うのです。軽々しく済まされないと思うのです。まず、この内容を拝見してみますと、安保条約というものは日本を守るものではないのだとか、いざとなるというと、逃げて帰るというようなことは、どうもうなずけないようなことが書いてある。それから池田政策が失敗したらどうだこうだというようなことが書いてある。それは、いまの長官のお話によるというと、内容は若干不穏当だが、大体認めているんでしょう、こういうことを。
  205. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 御指摘の安保体制に対する見方、あるいは池田内閣経済政策の問題、これも実はいま具体的に本人に意思を確かめさせました。確かに自分として表現が非常にまずかった。安保体制としても、万一日本の予期するような完全な体制が満たされない場合であるという意味である。なおまた、経済政策の問題につきましても、万一そういうふうな場合にはという形容詞と申しますか、前提条件というか、そういうものに対して書き方が非常に自分としても足りないということも、本人が認めている次第であります。
  206. 大森創造

    大森創造君 私がわからないのは、その会議で堂々と配付をされ、そのまま紙くずかごにほうり込んだ形跡はないでしょうし、だからこういう思想が、考え方がふんだんに防衛庁内部に行なわれていて、あなたやおえら方のシビリアンの方はわからない。ちょうど下のほうの軍部の方が、そうしてこんなことではとてもまどろこしいから、こういうことでいこうじゃないかということで、あなたの下の段階では、ある程度常識的に通用しているのじゃないですか。
  207. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 自衛官の心がまえと申しますか、教育の基本方針は、日本の民主政治下における新しい日本の防衛体制の任につくことでありまして、先ほど指摘されましたような間違った考え方、あるいは独断的な考え方があります場合には、われわれは決してこれを公的には許されない、今後厳重に注意して外部から批判を受けないように私どもは戒飭するつもりであります。
  208. 大森創造

    大森創造君 どうも昭和初期の軍人の反乱がありまして、統制派と皇道派があって、青年将校が決起したというようなことをほうふつとさせる。こんなものは二葉のうちにつんでおかないと、とんでもないことになりますから、これはひとつ責任者とそのときのいきさつを、ふしぎでしょうがない。私はそういう文書が流されていて平然といままで問題にならなかったということ、そのいきさつをあなたのほうは、私なり本委員会に文書として配っていただけませんか、いかがです。納得しがたい、こういうことが行なわれることは。
  209. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 文書にしてお答えいたします。
  210. 大森創造

    大森創造君 それから第二次防衛力整備計画、これはどういう内容であるか、予算的にいま一兆一千八百億とか一兆一千五百億とかいうようなことをいいますが、いままでの推移から見ると、はたしてこれでできるかどうか、整備計画を変更するのかどうか。アメリカの予算削減ということもございますから、その関連について防衛庁長官と大蔵大臣にお伺いしたいと思います。
  211. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 第二次防衛計画の二つの柱は、御案内のとおり、陸上自衛隊十八万、航空自衛隊約一千機、海上自衛隊十万トン保有を目標にしております。大体計画は五カ年計画のうち三年度に入ったわけでありますが、おおむね順調に進行いたしております。なお、アメリカの対日援助削減につきましては、方向としては明確でありますが、内容につきましては、まだ具体性を欠いております。今後の折衝に待つ点もたくさんございまして、いまのところ第二次防計画を変更する考えはございません。
  212. 大森創造

    大森創造君 これはしかし、予算的に相当大幅に増額されるの、じゃないですか、この点が不安だから予算委員会で聞いておくのですが、一兆一千何百億じゃできないでしょう。どういう見通しになりますか。
  213. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) アメリカにMAPとして大体期待いたしたものが、初めは九百億、その後いろいろ数字的に煮詰まりまして、六百三十であります。そのうち二百三十がすでに承認済みでありまして、残り四百はこれからの対米折衝の努力目標であります。私ども一としましては、全部の予算の規模から申しまして、そうたいした大きな変更はない、こう考えております。
  214. 大森創造

    大森創造君 それから第三次防衛計画、三次防についてお伺いしますが、衆議、院の予算委員会での横路委員質問に答えて、あなたのほうはいわゆるナイキ・ハーキュリーズを採用するつもりはないと言われたけれども、防備局長のほうがハーキュリーズは入れないとおっしゃったのは、核弾頭を用いましたハーキュリーズはいけない、こう言っている。そうすると、三次防ではハーキュリーズ入れるということですか。
  215. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 第三次防は、まだ関係各部局で、基本的な問題についての研究を進めておる段階でございます。なお、御指摘のナイキ・ハーキュリーズ問題ですが、これは議事録をごらんになればおわかりいただけると思いますが、まだハーキュリーズを採用するかどうか決定いたしておりません。かりに決定した場合でも、核弾頭は絶体用いない、これは政府の一貫した方針でございます。
  216. 大森創造

    大森創造君 どうもそこらのところが、私は納得しがたい。というのは、第三次防になるというと、安保条約の改定の年以上になる、憲法調査会の報告が出てくるということになると。いまから二年前の問答によると、ナイキ・アジャックス採用のときに、発射台が同じだから将来ハーキュリーズを入れるのではないかという問答が、社会党委員との間になされて、そのとき防衛庁長官は、ナイキ・ハ一キュリーズは絶対入れないということを言っている。今度はハーキュリーズを入れるかもしれないという答弁をされているんですよ。その関連について、どういうふうにお考えになりますか。
  217. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 前の、いまの答弁につきましては、議事録を正確に私も調べておりませんが、二次計画計画中はハーキュリーズを採用しないと答弁しておるのであります。先ほど申したとおり、ハーキュリーズを採用するかいなかはまだ決定しておりません。今後の研究課題の対象であると思います。
  218. 大森創造

    大森創造君 私は一本くぎをさしておきますが、これは昭和四十五年か六年ごろになりますと、憲法改正のことが必ず出てきて、やっぱり日本の防備体制といっても、世界の中の防衛でございますから、これは必然的にナイキ・ハーキュリーズ、核と非核と両方備えるようなものに、そういう事能の必然性が出てくるように思う。そのときのことも含めて、核弾頭をつけたハーキュリーズは採用しないということは明言できますか、一九六四年のきょうの日において、あなた、できますか。
  219. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) たとえ合憲性があり、あるいは法理的にも許されるものであっても、核兵器は装備しない、これは岸内閣以来のわが党政府の一貫した政策でございます。
  220. 大森創造

    大森創造君 その点はどうもあやしいのでございますが、時間がないから先に進みます。  栄典制度の問題について関係の官房長官、政府委員にお伺いしますが、栄典制度というのは、昭和二十一年五月閣議決定によって、生存者に対する叙位叙勲を停止した、それが最初の措置です。これはあたりまえのことなんで、新憲法実施とともに、栄典制度も再検討されると考えたからであると思うのです。それで、その基本的方向に向かって片山、芦田、吉田、鳩山内閣の、多少内容は違っておりましたけれども、第二回国会以来十五回、 二十七回、三十回国会と四回も、憲法第七条に規定するところの栄典について法律をもって基本的事項を定めることにしている。ところが今度やめてしまって、去年の七月に閣議決定した。それはどういうわけですか、一体、なぜそれほど急いでやる必要があるのですか。
  221. 黒金泰美

    政府委員(黒金泰美君) あらかじめ大森さんに御了承得たいと思いますが、この栄典法のほうは実は総称長官の所管でございますが、何かやむを得ない用事がありまして、私代理いたしますので、こまかい点はあるいは法制局なり総理府のほうからお答え申し上げます。  栄典の法規でございますが、いまの新憲法のもとにおきましても有効と実は政府考えております。しかも、この制度というものが長い伝統、沿革を持っており、国民も親しみを持っておるものでございます。また戦後におきましても、一万数千人に及ぶ叙勲者がある。これは死没者も入れます。外国の元首、大統領その他千数百人の方方にも叙位叙勲をいたしております。こういう事情を考慮いたしまして、現行栄典制度をそのまま維持することが妥当と認めまして、昨年の七月の十二日に御承知のとおり、生存者叙勲を開始することを決定いたしました。栄典法案につきまして、いま御指摘がありましたように、芦田内閣が第二回の国会に提出いたしましてから、吉田内閣、鳩山内閣三回にわたってこれを国会に提出した経過等からいたしまして、栄典制度運用は法律の制定を待って行なうべきであるという意見も確かにございますが、何らか新しい栄典制度を作るものであればともかくといたしまして、現在の有効な栄典制度をそのまま運用しよう、こういう考えでおりますので、あえて法律を待たなくても差しつかえない、このような考えで閣議決定した次第であります。
  222. 大森創造

    大森創造君 防衛庁長官お急ぎのようですから一問だけ聞いて、——いないのですか。  それでは栄典制度、いまの説明はいいのですが、法律にするのが憲法上たてまえなのに、その手続を省いてやったというところが私は問題だと思うのです。これは法律論というか、法律論はともかくとして、政治論としてどうか、これはこそくではないかと思う、この点は。
  223. 黒金泰美

    政府委員(黒金泰美君) まあ新しい栄典制度を作るということでございますれば、これは法律でやるのが穏当かと思います。いまも申し上げましたように、いままでのものを、これまでの沿革もございますし、閣議決定で停止になっているものを再開しよう、私どもが新しい制度を意欲的に作らないという点ではこそくではないか、こういう御批判もあろうかと思いますが、率直に申し上げまして、かなりの長い間用いられており、国民から親しまれており、しかも外国にも一贈与贈呈をしておりますこういうものをいままでどおりいたしておくほうがいいのじゃないか、かように考えましたので、法律の制定によらないで閣議決定ですることにしたわけであります。
  224. 大森創造

    大森創造君 どうも私は納得できない。さっき申し上げたとおり、昭和二十一年の五月に閣議決定によって、生存者に対する叙位叙勲を停止した。もう一つ昭和三十年の十二月には臨時栄典制度審議会を設置して栄典制度の検討を依頼された。翌三月三十一日に答申が出て、現行の勲位勲等の制度は廃止するといわれている。そこで、新憲法下における栄典というものは、当然いま新しい立場からやらなければならぬ。いままでの栄典制度は一てきすべきなんです、これは。国民の精神的支柱というものがない栄典制度というものはどうも意味がないと私は思うのです。敗残後、新しい民主主義国家として生まれかわって、まだ戦争のきずあとが特に精神面にもなお存在している現在、どう考えても私は拙速に過ぎやしないか。もっと何というかみんなに喜ばれ、それこそみんなから祝福された栄典制度であっていいと思うのだけれども、どうですか。もっとみんなから祝福されるような栄典制度、そのためにはめんどうでも今国会へこれを通して、ILOしかり……
  225. 黒金泰美

    政府委員(黒金泰美君) いまの御趣旨、拙速ではないかというような御意見もございますが、まあ私どもいま申し上げたように、ずっと停止をしており、その間になくなられた方には、一万人にものぼる方に叙勲をいたしており、また外国からいらっしゃる方にも、あるいは外国の功労のある方にも差し上げている。こういう状態を十数年続けておりますので、やはりもうそういつまでも停止し、放置することはむしろ国民の気持ちから許されないのじゃないかと。まあ拙速とおっしゃいますが、むしろ私どもはおそくなってしまったというような感じを持っておる次第でございます。
  226. 大森創造

    大森創造君 これを要するに、国会で通すことはなかなかめんどうだから、ひとつこういうことをやろうということのほうが強いのじゃありませんか、ほんとうのところは。
  227. 黒金泰美

    政府委員(黒金泰美君) まあ国会の御審議の結果、御承知のとおりでありますが、私どもとしては、先ほど来申し上げておりますように、やはり先ほど大森さんがいみじくもおっしゃいましたように、国民の伝統なり、それから感情に基づいた勲章がほしい。いままで何十年かの伝統があり、親しまれております。またわりあいに評判がいいと思うのでございますが、こういう制度をまたいままでの閣議決定を解いて行なうのが、一番いまのところ穏当な考え方じゃないか。御意見と違ってはなはだ恐縮でございますが、そういう判断のもとで閣議決定をしたわけであります。
  228. 大森創造

    大森創造君 別に取っ違って恐縮でございませんで、取っ違ったやつが、どっちが正しいか、どうもこれ以上は——私は私の考えが正しいと思う。あなたはあなたの道を行ったらいい。  そこで、憲法調査会長見えておりますか。
  229. 斎藤昇

    ○理事(斎藤昇君) 見えております。
  230. 大森創造

    大森創造君 時間がないから、ひとつざっくばらんにお聞きいたしますが、どうも憲法調査会というものが御熱心に論議されて、やがて報告書を出されるということでございますが、報告書はいつごろ、これは国会と内閣提出する運びになりますか。
  231. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) 六月の末までに出す予定でおりますが、討議の次第によりまして、あるいは少し早く出すかもしれませんし、あるいは少しおくれるようになるかもしれません。
  232. 大森創造

    大森創造君 そこで、現実として社会党、民社党が入っておりません。加わっておりません。この調査会の構成員に入っている、入っていないという是非論はともかく、しかし現実に入っていない。そこで、公聴会などの意見を聞いてみると、婦人や、あるいは文化人や、評論家よりは年の若い人、こういう人は護憲というもの、非改憲という考え方が非常に強いと思うのです。ところが、いまの三十八人の委員の方を見ますと、どうも私は旧憲法をなつかしいがっている感覚の人が圧倒的に強いと思うのです。それから、当時社会党が指摘したように、旧憲法的な感覚でいままで生活されてこられた方々が圧倒的多数であるから、大体の報告の内容は、こうであろうということを予想したので、社会党は参加しなかった。参加しなかった是非はともかくとして、この事実はこれは私は重大だと思うのです。ですから、私は憲法調査会の報告というものは、何といいますか、新しい憲法がだんだん生活の中に定着してきた。婦人の地位とか、個人の権利とか、平和主義とか、こういうようようなものは定着してきた、そういうものをはだ身で感じているという人の意見というものが、反映されていないような気がするのですが、いかがでしょうか。
  233. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) おっしゃるとおり、憲法調査会の構成が少し片寄っているおもな原因は、社会党のほうでもって参加を拒まれたということが、おもな原因でありますが、とにかく片寄っているということは、憲法調査自身が当初から考えておったので、これは非常に遺憾なことでありまして、調査会といたしましても、社会党、民社党に対してもう入ったらどうかということを勧告したのですけれども、とうとう入られなかった。その結果として、やはり片寄っておるので、憲法調査会として、数でもってどちらが多いからということで、憲法調査会の意見をきめない。二つの意見が出た場合には、両方ともそれぞれの論拠を十分に示して、そうしてそのまま報告する。こういう方針をとっておるのでありまして、今度の最終報告書においても、その方針で起草されることになっております。したがって、お読みになるときも、二つの対立した論拠がある場合には、どちらが正しいのかということを、合理的に国民が十分判定してやるということがねらいでございます。  そこで、そういう片寄った構成でありますから、それをなるべくあらゆる国民の声をわれわれが知る一まあ委員だけで討議するだけでなく、国民全体を背景として討議するという意味で、参考人あるいは公聴会における公述人として、国民各層の意見を聞きました。婦人青年というお話がございましたが、たとえば、参考人としては大浜英子さん、田辺繁子さん、久保田きぬ子さん、公述人といたしましては、値村環さん、西清子さん、磯野冨士子さん等六十一名の意見を伺いました。青年層といたしましては百三十七名の意見を聞きました。それらの人の考え方に基づいた意見というものも、委員意見の中に反映しておる場合も相当あるのであります。多数、少数という数でもってきめれば、初めから大体は見当がついている。しかし、数は重要な問題でないので、やはり論拠が大切ですという根本方針というものは、動かないで現在もきておる次第であります。
  234. 大森創造

    大森創造君 片寄ったものであるということは高柳会長もお認めになっておる。青年や婦人の声を聞いたというけれども委員ではないのですね。現実に委員ではない。たとえば、当時十才であった人は二十年たって三十才になる。十五才の人は二十年たって三十五才になる。その層の人がほとんど委員になっておりませんから、その意見が反映されておりません。そうして今度は出てきた報告書を見ると、高柳さんの御意見もある、多数意見として八木さんや愛知揆一さんの十七名の共同意見書というものが出ている。そういうものが浮かび上がってくるというと、私は国民全体の総意というものを反映した憲法調査会の報告にならないような気がする、この点はどうお考えですか。
  235. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) 先ほども申し上げましたように、数を基礎としてものを考えれば、初めて構成もゆがんでいるから、報告書もそういう点を反映してくる、これはあたりまえのことです。しかし、問題は数じゃないのであって、論拠です。なぜ改正しないほうがいいのか、なぜ改正するほうがいいのか、そういう角度から国民判断していただきたいというのが憲法調査会の趣旨でございます。
  236. 大森創造

    大森創造君 憲法の問題は重大でありますから、もう一つだけお伺いいたしますが、やはり何というか、一定の限界といいますかね、調査会の限界性、一つのカテゴリーの中に入って、そうしていろいろ議論を投げ合っておりますけれども、やはりどうしても一つの限界が出てくるだろうと思う。婦人は坂西志保さん一人ですからね。青年と称するものはないのですからね。そこで、黒金さんにお尋ねいたしますが、そういう幅の少ない、限界性のある報告書を受けられた場合に、その点慎重に扱わなければいかんので、この点についていかがお考えですか。
  237. 黒金泰美

    政府委員(黒金泰美君) これは私は総理の代理だろうと思いますが、当時何回も申し上げておりますように、御意見を承って、十分にこれを尊重して、慎重に考えてまいりたい、かように申しておりますことをお伝えいたします。
  238. 大森創造

    大森創造君 たとえば例をあげますと、高柳会長に申し上げますが、御承知のように、第九条の自衛隊の違憲説ということを——学界では違憲だという憲法学者は、これは非常に強いと思うのですよ。ところが現実、今度三十八人の委員の中を見るというと、そういう憲法学者は少ないという事実、こういう点考えられて、政府においては、ことに報告書の内容についてはひとつ、その点は慎重に扱ってほしいと思うのです。いかがでしょう。
  239. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) 学者が、憲法九条をどういうふうに解釈しておるか、これは多数の説と少数の説と、いろいろ分かれております。しかし、旧憲法時代の感覚からいえば、多数説のほうが、これが圧倒的意見だと、有力だと、これは旧憲法の感覚なんで、現行憲法においては、学者の学説も、大いに尊重しなければならぬけれども、しかし、それをどちらが正しいかを判定する、最高の権限は最高裁判所が持っておる。学者の少数説をとるということは自由なんです。どちらが正しいかどうかということを判定する最高の権限、これが最高裁にある。この点で、学説というものの改正とかいうことは、明治憲法時代においては、最も重要な要素であったのですけれども、現在においては、さらにその上に最高裁判所の判定、これには、すべての人が服さなければいけない、そういう現行憲法の規定、感覚から見れば、多数、少数学説というようなことは、まあ第二次的な問題であるというふうに私は考えております。
  240. 大森創造

    大森創造君 私はしろうとですが、しろうとの意見が、憲法論については大事だと思う。われわれの憲法をどうするかという問題は、青年や婦人や、それからしろうとながら、多数のなまな意見というものを反映させるような報告書にならなければいかぬと、そういう調査会であってほしかったと思うのです。ですから、いま申し上げましたように、この幅には非常に狭い限界があるということを、黒金官房長官は持って帰って、総理に、ひとつお考え願いたいと、総理も六十過ぎですし、委員の方も、相当年配の人が多いようだから、そういう感覚ではちょっと割り切れないことを申し上げて、この問題については打ち切ります。  その次、郵政大臣に伺いますが、私は、昨年の三月二十日、あしたの日に質問したのでございますが、在日米軍の専用施設使用料金の未回収について、在日米軍が使用している専用設備のうち、終戦処理費及び安全保障諸費の支弁でつくられているものに対する使用料金、これで未回収の金額は幾らだと、こういうことを聞いたが、だいぶ金額はふえていますね。どういうことになっていますか。
  241. 古池信三

    国務大臣(古池信三君) お答えいたします。  昭和三十七年度末で六十億円になっております。
  242. 大森創造

    大森創造君 繰り返して聞くようでありますが、これは大問題でございます。アメリカの上院でも問題になっておるようでございますから、繰り返しますが、なぜ交渉は妥結しないのですか。日本の主張とアメリカの主張と、どんなことを言っているのですか、わかりやすく言って。
  243. 古池信三

    国務大臣(古池信三君) お答えいたします。  この問題につきましては、昨年の本委員会におきましても、あなたの御質問がありまして、当時の大臣から御答弁申し上げておるわけでございます。要するに、終戦処理費支弁によって建設した設備並びに安全保障諸費支弁のもの、これらの使用料金につきましては、現に、まだ日米間の地位協定の解釈の上において、基本的に意見が合っていない、これが根本原因でございます。前国会での御質問もありましたので、その後も引き続いて、これが解決のために、関係者が寄り寄り協議をいたして、努力をしておるのでありまするけれども、いまだに解決を見ないということは、まことに私も遺憾に存じております。しかし、今後も、この問題については、しんぼう強く、こちらの主張を繰り返しまして、ぜひ解決に持っていきたい、かように存じております。
  244. 大森創造

    大森創造君 これはどうも、米議会が、日本の電電公社は在日米軍から五千万ドル——百八十億円もの電話料金を、日本政府が不当請求していると非難して問題になっている、こう出ているのですね。問題の電話料金は、在日米軍が借りている長距離電話線に関するものである、対日平和条約の交渉中に、日本は、在日米軍の支払い率は、当時の警察予備隊並みとすることに同意したが、一九五二年、対日、平和条約が発効と同時に、同隊の支払い率が上がったために、在日米軍の使用料も上がり、予定の三倍も高い料金率になった、こういういきさつがある。これは百八十億円不当に米軍は日本に払っていると、こう言っている。法律的な解釈どうなんです、どっちが正しい。
  245. 古池信三

    国務大臣(古池信三君) お答えいたします。  ただいま御引用になりました金額そのものについては、私も確認することができませんが、アメリカ側の主張は、かようなことでございます。アメリカ軍の一般専用料金の払い過ぎである、こう言っておりまするが、その算定の根拠としておりますることは、警察料率を適用しておるのだけれども、その警察料率といいまするのは、御承知のように、昭和二十五年、その当時は電気通信省でありましたが、今日の日本電信電話公社、これに警察電話の施設が移管されました。そういうふうな特殊な事情によりまして、例外的に、この警察に関する料金は非常に低率なものになっておったわけであります。ところが、かような特殊の事情によらない米軍の料金は、これを警察並みに引き下げるということは、われわれとしては、不当である、こういう主張を言っております。そこで、現在の米軍の料金は、日米の正式の契約に基づいて支払いを受けておるものでありまして、かつ、わが国の自衛隊を含む一般官庁並みの料率を適用しているのであって、この意味において、アメリカの主張しておる、料金の払い過ぎという事実は、われわれとしては納得できない、こう考えております。
  246. 大森創造

    大森創造君 これは、あとで法制局長官おいでになれば御見解いただきたいと思いますが、いまの郵政大臣の説明によると、日本側の主張は正しいということですね。それならば、法律上の是非じゃなくて力関係であります。こっちが弱いのだな。お答え願います。
  247. 古池信三

    国務大臣(古池信三君) 強い、弱いという問題はともかくとしまして、やはり交渉の相手のある問題でありまするから、しかも、その根本において意見が対立している関係上、今日まで容易に解決できないこういう状態でございます。したがって、この問題は、やはり相手方の認識、理解というものを一そう深めさせることに努力して、そうして双方の主張が合致するように、われわれとしてもっとめる以外にはないだろうと思います。力の強い、弱いというような問題ではないのではなかろうか、こう考えております。
  248. 大森創造

    大森創造君 六十億の金、ひとつ来年また同じ日に質問いたしますから、それまでに解決しておいてもらいたい。  それから農地補償の問題について、これは田中さんがお得意だからお答えいただきたいと思うのだけれども、まず、農林省の次官来ていますか。農地報償と言うのですね、いまは補償じゃなくて、報償——報償というものをやるつもりなのか、やらないつもりなのか、どういうことなんですか。農林省は、なぜこの所管省になることを断わったのか、そのいきさつを説明してください。
  249. 黒金泰美

    政府委員(黒金泰美君) お呼び出しではございませんが、私が調整に当たっておりましたものですから、私からお答えいたします。  農地報償の問題は、実は三十八年度の予算でこの調査費をお認め願いまして、いま総理府で調査をいたしております。私ども考え方は、この調査が終了次第に、その調査の結果を全部持ち寄りまして、いかにしたらいいかという問題を解決をいたしたい、かようなことで、現在まだはっきり……、この年度末までに調査を急いでおるような次第でございます。  なお、かりにそういうことが、報償が行なわれるとした場合に、どういう役所で実施するのがいいかという研究課題をまず出しまして、いろいろ研究いたしまして、その過程におきまして、あるいは農林省が農地の関係でもありますから、農林省という話も出ましたし、また、非常にとっぴなことを申しますと、これは土地台帳だとか、あるいは戸籍の関係の証拠書類になるから、法務省でどうだろうというような意見もございました。しかし。現実の問題といたしまして、現在調査をやっております総理府にお願いするのが一番無難であろう、どこが出なければいけないということもございませんけれども、無難であろうということで、総理府に、かりに実行する場合にはお願いすることにしようということで意思統一した次第であります。   〔理事斎藤昇君退席、委員長着席〕
  250. 大森創造

    大森創造君 この問題は、大体農林省にやらせたかったのでしょう。で、農林省はどういう態度をとったのですか。
  251. 松野孝一

    政府委員(松野孝一君) お答えいたします。  この旧地主に対する問題につきましては、ただいまお話もありましたごとく、従来、総理府において調査を続行してまいってきており、現在もやっておる次第でございまして、したがいまして、これは総理府が関係事務をやるのが適当だと考えております。また、私どもといたしましては、いま調査がまだ終了しないのもありますので、終了した後に措置をするということは承っておりますが、特別それについてどういうふうにということについては、私からまだ申し上げる段階ではないと思います。
  252. 大森創造

    大森創造君 これは農林省が終始逃げ回ったのでしょう。これは、どっちかといったら、やはり「農」がつくだけ農林省が縁が深い。だれが考えても、法務省じゃなく農林省のほうだ。農林省のほうは筋を通して、とにかく前向きの農政をやろうというので、今度のやつは、農地改革というもののその手直し的な意味がありますから、だから農林省はこれは筋としては断わった。  そこで、黒金さんにお尋ねしますが、きのう私は総理に聞いたら、そうしたら、あなたと同じ答えだった。年末を待って態度をきめる、調査会の報告を待って、そうなんですか。
  253. 黒金泰美

    政府委員(黒金泰美君) いまのは大森さんのお聞き誤りだと思います。年度末までに調査を終わりたいということでございます。
  254. 大森創造

    大森創造君 年度末まで待って、調査報告を見て必要なら報償する、必要ないなら報償しないという結論になることも一あり得るわけですね。
  255. 黒金泰美

    政府委員(黒金泰美君) 御承知のように、昨年から調査をやっておりますことは、やはり報償という問題がこれだけ起こっておりますので、報償する必要があるのじゃないか。しかし、実態をずっと調査してみて、また、世論を調査し、いろいろ調査をしなければ、こういう結論を出すわけにまいりませんから、慎重にいろいろな調査をいたしまして、その上で結論を出したい、こういう考えでございます。
  256. 大森創造

    大森創造君 これは、報償をすることを前提にして所管省をきめたのじゃないのですか。
  257. 黒金泰美

    政府委員(黒金泰美君) 先ほどお答えしましたように、実施する場合においては、どこが適当であろうか、こういう意味で実施する場合の所管省を相談したわけであります。
  258. 大森創造

    大森創造君 そこらが、どうも私はごまかしだと思うのだな。これは国会用の答弁だろうと思う。そうじゃないのですよ、これは。もう実施することを前提にして、自民党の三役会、四役会できめてしまって、実施機関はどこだということで、それで農林省のほうに持っていったら、農林省は筋を通してお断わりになった、いたし方がないから総理府ということになって、それで人をどうするとか、機構をどうするかということに私はなったのだと思う。そうでしょう。もう一回くどいようですが、お答えを願いたいと思います。
  259. 黒金泰美

    政府委員(黒金泰美君) 再々の御質問でありますが、いま調査をやっておりまして、調査の結果を待って結論を出したい。で、もし実施するならば、どこが一番適当であろうか、これを相談したわけであります。
  260. 大森創造

    大森創造君 それがお話の筋というものです。政府はそういう態度をとったところが、自民党のほうは断然圧力をかけて、もう報償するということに先ばしってきめてしまった。その場合の所管省をきめた。新聞に出ているとおりだと思う。この問題は終始一貫政治的だね。そこで、総理府で扱うということについては、終戦処理的な意味があるのですか、報償というのは。
  261. 黒金泰美

    政府委員(黒金泰美君) いまのせっかくのお尋ねでございますが、大森さん、この問題は、終戦のとき起こった問題ではない、戦後の農地改革の問題でございますから、終戦処理とは考えておりません。
  262. 大森創造

    大森創造君 それでは、くどいようですが、お答え願いますが、農林政務次官でも、黒金さん、どちらでもけっこうですから。報償というものと補償というものは、私は実質的に変わらないと思う。田中大蔵大臣が、非常に頭のいい答弁をされているんだが、頭がいいだけに、私はよくわからない。どちらでもいいから、もう一回説明してもらいたい、報償と補償はどう違うか。
  263. 黒金泰美

    政府委員(黒金泰美君) 補償といいますときには、補償を受ける人に補償を受ける権利があり、補償を払うほうに義務があるのでございます。万一その間に話し合いがととのわないで裁判ざたになりましても、権利を持っている者が勝つというようなことに実は考えております。報償のほうは、そういう権利義務関係でなく、何らかお見舞いなり、ねぎらいなり、償いなり、そういうことをするという場合に、いま使っております。
  264. 藤田進

    藤田進君 関連して。官房長官、これは一般的にいま問題になっているのじゃなく、農地報償、農地補償に、これに限定されて質疑がかわされていると思うのです。そこで補償ということになれば、権利義務が生ずる、そういう意味で補償を報償に変えたとおっしゃるのですが、この問題については、すでに最高裁の確定判決もあるんじゃございませんか。その問題は解決している。補償という問題については、いかがですか。
  265. 黒金泰美

    政府委員(黒金泰美君) いま大森さんにお答えしましたように、補償は、補償を要求するほうに権利があり、それからまた、われわれ払うほうにも義務がある、こういう問題につきましては、いまおっしゃるように、最高裁の判決もあったと思います。そこで今度問題になっておりますのは報償でございまして、そういう権利義務に立脚しない、いわばお見舞いといいますか、ねぎらいといいますか、こういう問題と考えております。
  266. 大森創造

    大森創造君 報償なら、私は一反歩幾ら、反当幾らという計算基準をするのはおかしいと思う。なるほど上限は押えるのでしょう。だけれども、一反歩幾らという計算をするからには、実質的に補償じゃありませんか。
  267. 黒金泰美

    政府委員(黒金泰美君) 大森さんのお尋ねでございますが、まだ調査中で結論は出ておりません。一反歩幾らとなんとかというふうなことにまだ全然触れておりません。ちょっとそれはお答えしにくいと思います。
  268. 大森創造

    大森創造君 まあそのとおりでございますけれども、とにかく私はずっとこの問題は、いま藤田委員が言われましたように、最高裁の判決が出た、それまでは地主のほうでは補償しろ、補償しろというようなことで、憲法をたてにやってきた。昭和二十八年十二月判決が出てから方向転換をしまして、そのころから政府は報償ということに変わっているのです。問題なのは、調べてみると、昭和三十七年四月、自民党の両院議員総会で五項目の決議を突きつけられて、池田総理は、責任をもって善処するということに、事の起こりはあるのです。そういう事実が先行している。いつでもそうなのです。今度の場合でも、報償することを前提にして、いま黒金さんお答えのとおりなんです、事実は、行政的にこれを見れば。ところが、事実はぐんと先行していまって、報償することをきめてしまった。そして所管省をきめてしまったのですよ。農林省のほうは筋を通して突っぱねた、こういうことは私はどうもおかしいと思う。ここに終始一貫はっきり言えることは、プレッシャーですよ、はっきり言うと。これは自民党の圧力ですよ。そうだろうと言わざるを得ない。大蔵大臣さっきから黙っておるようですが、ひとつ独自の御見解があるようですからお聞かせ願いたい。
  269. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 内閣においては、官房長官がこれを取り扱うことになっております。私は、この総理府において調査が完了すれば、しかるべくそこでひとつ検討しようということを……、閣議全体、内閣全体にわたっておりますので、この問題の質問はひとつ官房長官にお願いします。
  270. 大森創造

    大森創造君 私はそれでは黒金さんにお尋ねしますけれども、こういうことをやるなら、強制の転廃業をしてみたり、疎開の家族の問題や、家屋の取りこわしだとか、原爆の死亡者の子弟の、家族の補償だとか、在外資産の問題とか、幾らでも一あると思うのです。ただ地主の問題がなぜ出たかというと、これはやはりプレッシャーですよ。圧力ですよ。池田総理並びに官房長官は、こういうものは断固たる——何というかな、これは考えてみますと不明朗で、力、政治、圧力、こういうものが私は浮かび上がってくるのだ、どうしても私の純真な頭には。だからひとつ、こういうところに断固たる腹をもって池田内閣姿勢を示さなきゃいかぬと思うのだな。自民党の多勢がいくら総裁選挙の前にあばれようと何をしようと、断固たる処置をもって、こういうものは調査の結果、困る者に、ほんとうに困る者にやるならいいけれども、困らない者にやらないという態度をとるのがほんとうじゃありませんか。もう一回答弁してください。
  271. 黒金泰美

    政府委員(黒金泰美君) いまお話がございましたが、困っているか困ってないか、そういうことも実は調査をいたしまして、その上で結論を出したいと、このような考えでおりますが、私どもは、まあいろいろな御要望が各方面からございます、それを一々圧力とも申せませんし、民意として承らなきゃならぬこと多々ございます。そういう各方面の御意見を十分に尊重しながら、善処をしていきたいと思っております。御意見としてまことにありがたく拝聴します。
  272. 加瀬完

    ○加瀬完君 関連。官房長官に伺いますが、補償をする義務がないということははっきりしておるわけですね。補償をする義務がないということがはっきりしておって、それで報償をしなければならないという根拠はどういうことなんですか。いまの御説明によりますと、困っているか困ってないか調査をするということですが、報償ということと、困っているか困っておらないかの関係というものは、非常に微弱なものじゃございませんか。その点を、何ゆえに補償の義務がないものを報償しなければならないのか、報償する理由を明らかにしていただきます。
  273. 黒金泰美

    政府委員(黒金泰美君) 再々お答えしますように、いま調査中でございまして、実態調査もあり、それから世論調査もあり、基本的な調査もあり、それからいま申し上げておる生計の調査もあり、鋭意いま調査をいたしております。そういう調査が全部そろったところで、十分慎重に考えまして結論を出したい、かように申し上げておって、まだすると申し上げておらぬものですから、いまの理由づけをいまここでしろとおっしゃっても、無理だろうと思います。
  274. 加瀬完

    ○加瀬完君 おかしいじゃありませんか。補償の義務がなくて報償するというならば、報償をしなければならない根拠というものがあって、そこで幾ら、どの程度報償したらいいかということが調査の内容ということになるでしょう。報償をするという考え方があるから調査という作業がいまの場合は成り立つことになるんじゃありませんか。補償ならば話はわかる。報償なんですから、報償の意思がなくて調査をするということはおかしい。
  275. 黒金泰美

    政府委員(黒金泰美君) 報償の問題が起こっていることは事実でございますから、その必要があるのかどうか、理論づけがどうなのか、各方面の調査をやりまして、その結果を見て結論を出したい、重ねてお答え申し上げます。
  276. 大森創造

    大森創造君 まあいろいろ理屈をつけられますが、どうも事実が先行しているので、私はこの問題についてはくどくは申し上げません。きょうの答弁の限りではそのとおりだと思うのだが、これはモラルの問題だと思うのだ。この問題についてどういうふうに処置をとるか。モラルの問題ですよ。  それから、法制局の部長がおいでになっておるそうでございますからお伺いしますが、さっきの米軍の施設を使っている問題について、これは米軍の主張とそれから日本側の主張とどっちが正しいのか、あなたの見解をお聞かせ願いたい。
  277. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) お答え申し上げます。  これは、公衆電気通信法が制定されました当時から、公衆電気通信法によりまして専用の設備について一定の低い料金によって提供し得るものの範囲が限定されておりまして、日本側といたしましては米軍に提供するのは通常の専用設備と同額であるという見解のもとに従来とも料金の請求をいたしておると私どもは聞いております。将来あるいは場合によってはまた料金の改定ということもございますかもしれませんが、ただいままでのところでは日本側としては従来きまっている料金を徴収するという立場で進んでおります。
  278. 大森創造

    大森創造君 ひとつ断固たる処置をとってやろうじゃありませんか、これは。米軍のほうの差し押えをするなり、使用を禁止するなり、そんな措置をとったらどうです。官房長官、総理にかわって答えてください。差し押えをやってください、差し押えを。
  279. 黒金泰美

    政府委員(黒金泰美君) 郵政省の主務でございますから、よく相談をいたします。
  280. 大森創造

    大森創造君 まことに不合理千万な話、こんなのは、これを差し押えなり、何か強硬手段をとったらいいでしょう。アメリカも強硬手段をとるのだから。茨城県の射爆場なんか返還してくれねえんだから、こっちも強硬な措置をひとつとってください。たまには痛い目にあわないとだめだ。ばたりと電話でもとめてやればいい。要望しておきます。  それから、賀屋法務大臣にお伺いしますが、今度予算を見るというと、相当公安調査官の増員がある。予算的にも一増額がある。どういう必要性があってこういうことをされましたか。
  281. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 公安調査庁で調査をいたします対象は団体及びその構成員等で、非常にふえておりまして、前から非常な手不足を感じておりました。それで増員することに相なった次第でございます。
  282. 大森創造

    大森創造君 増員も、二百名増員でしょう。二百名というと、相当公安調査官の大幅な増員だと思う。その内容はどういうことになっておりますか。
  283. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 総員二百名の増員でございまして、これは約現在員の一一%の増加でございます。二百人をどういうふうに配置しますかと申しますと、大体の配置は、左翼関係の調査に百二十名を配置いたします。右翼関係の調査に八十名を配置するのでございます。これは比較的従来よりは右翼関係にたくさんの配置をいたします。左翼関係は一〇%弱の増員でございますが、右翼関係は二七%の増員でございます。これは調査対象の状況が、最近右翼関係の方面からいろいろ事件が起こりまして、比較的そのほうに重点を置くという考え方から出た次第でございます。
  284. 大森創造

    大森創造君 最後に賀屋さんに要望しておきます。このことはくどく申し上げません、時間がありませんから。農業構造改善事業に伴って農地の登記事務ということが非常に地方でふえておりますのに、私から見るというと、公安調査官なんかをべらぼうにふやしていて、実際法務省というものは、サービス行政をする面はそういう登記所だろうと思うのです。そういう登記事務などを、これを農民がやろうとすると、不便にならないように御配慮願いたいと思うのです。一人、二人のところをばったりとめてしまったりやめてしまったりするようなことは、非常に私は困るので、この点については、ひとつサービス行政として、これはもうしっかり農民に迷惑にならないようにお願いしたいと思うのです。これは要望で、一言お答え願いたいと思います。
  285. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 登記所の廃合につきまして、いろいろ御意見を承っておるのでございますが、官庁側の事務の都合から申しますと、そこの配置人員が一人とか二人とかいうのは、きわめて非能率でございますし、いろいろ事務上不便も多いのでございます。その他の理由によりまして、これを統合したいという考え方は相当強く出ます。また一面、交通機関等が発達いたしまして、従来よりは統合しても不便が少ないという点もあるのでございます。しかし、一面考えますと、官庁側の都合ばかりでこれは考うべき問題じゃないので、登記しに来る人々、国民側と申しますか、そのほうが、統合されて遠くまで行かなきゃならぬ、交通費がよけいかかるようになる、場合によったら宿泊もしなければならないようになりますと、その国民側のマイナスを考えまして、両方のプラス、マイナスを総合的に考え判断する。十分地元の納得の得られないような統合は無理にしてはいけないという方針でただいま進んでおります。それから、なお、登記がおくれておるということにつきまして、いろいろそれでは困るというお話があり、また事実でございます。まあその中には、農村などは平生はあまり仕事がないので一人か二人しか配置してないような場所に、急に農地の転合などが起こりますと、一時的に殺到するというようなことで、非常に目立つ点も一ありますが、これは一時的な理由も相当にあるわけでございます。しかし、人員の配置を考えまして、今年も二百人の増員をいたしております。そうすると、公安調査庁二百人、登記所も二百人、それじゃバランスが失しているじゃないかという御議論もあると思います。これは両方とも仕事が大事でございますが、人間の増加というほうから考えたら、私も登記所のほうによけい増したい。ただ、これは御承知のように、昨年も二百人増しました。その前にも百人増すとか、少し年次的——年次計画と申し上げるにはまだそれほどの形はございませんが、大体そういうふうに逐年増しております。ところが、そのなにのほうは、ことしはオリンピックなどがございまして、非常に外来の人も多いし、急にことしいろいろな臨時の仕事がある関係上、いままであまり仕事がおくれておりますし、かたがた、比較的増したが、しかし二百人が、双方同じだから人員を増すのに同じに見ているというのじゃないんで、それは登記所のほうに人員の増を持っていく、大体こういう考え方をいたしております。
  286. 大森創造

    大森創造君 終わります。
  287. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 大森君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  288. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 次に、牛田寛君。
  289. 牛田寛

    ○牛田寛君 私は農業問題を中心にいたしまして政府見解をただしたいと思うのでありますが、残念ながら、きょうは農林大臣の御出席が急にできないことになって、思うように質問できないので、たいへん遺憾に思いますが、農林大臣答弁を必要とする問題につきましては、次の機会に留保したいと思いますから、よろしくお願いいたします。  で、農業の生産性の向上、農家の所得の向上が、必要性が感じられて、強力に推進されようというわけでございますが、この農業政策の中核をなしていると言われておりますものに、構造改善事業促進対策というのがあるわけでございます。その問題をまず取り上げてみたいと思います。  その前に、この所得倍増計画におきまして、農業の生産性を高めて、農家の所得を向上させるためには、平均耕地面積二・五ヘタクールの自立経営農家の百万戸をつくる、こういうことが目標になっておるのであります。で、現在におきましても、農業基本法においては、この自立経営農家の育成ということが構造改善事業の基本になっているように理解しておるわけでありますが、この所得倍増計画の目標が現在でも変わっていないかどうかということが問題になってくる。で、農林大臣お話では、この百万戸の育成が現状ではとうてい不可能である一これはだれが見ても不可能だ。農林大臣お話では、これはビジョンであるから、理想であるから、これはいつをめどにして実現するというふうにすべきものではないのだというお答えが委員会であったわけであります。その辺の食い違いを実は明らかにしておきたいのでありますが、で、もし所得倍増計画の目標が変わっていないのならば、一体これが実現できなければ、農業の体質改善なり生産性向上の目標を達成しないのではないか、その辺が私ども一つの不安点になるわけでありまして、農林大臣については、またこの辺に対してはっきりした御答弁を伺うことにいたしまして、経済企画庁長官からお伺いいたします。
  290. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) その問題は、過日たしか羽生委員が御質問になりまして、総理大臣もお答えをしておった問題と関連しておると思います。  御指摘のように、所得倍増計画では、目標年次に、ただいま御指摘になりましたような目標を現実に持っておるわけでございます。で、ただいままでの趨勢で見ますと、目標年次にそのことが達成できることは、これはおそらくきちんとそれに、目標年次にいきますか、いきませんか、おそらくはそれは困難ではないかというふうに私も思うわけでございます。そういう問題が起こりました一番の理由は、やはり所得倍増計画を考えましたときに、ある程度大規模経営というものが一方で可能になるような、いわゆる兼業農家というものが農地を手放すであろう、そうしてそれによって大規模経営が可能になるであろう——兼業という姿はごく何年間かの短期的な姿で、そうして大農家とそれからそうでないものとにはっきり比較的短時間に整理されるであろう、そういう想定を倍増計画でとっておったように思われるわけでございます。しかし、現実には、ごらんのように、兼業農家一種、二種の割合は非常にふえてまいりましたけれども、さりとて、これらが離農をするかといえば、離農をしないのが現実でございます。これにはいろいろな理由があると思いますが、ともかく農地というものを手放さない。したがって、兼業農家というものがいわゆるきわめて短時間の過渡的な現象であると考えておりました倍増計画の考え方に錯誤があったんではないかと思われるわけであります。しかし、それならば、そういう状態がいつまでも続いて、そうして自立経営の農家がなかなか百万戸ということにこのままではしょせん達成できないんではないかという御反問に対しては、これは先日総理大臣がお答えいたしましたように、やはり時のおくれはあるであろうけれども、しかし、何かの契機からそういうことが、ある程度いろいろな情勢蓄積しまして、そうしてある時点からそういうように急速に展開していくということは、先進諸国でもあることであるから、考えられないことではない、こういう趣旨の御答弁をいたしまして、私どもそれはそれであろうと思います。ただ、その時点がはたしていつであろうか。昭和四十五年までにそういう展開が一応あるとは考えにくいわけであります。いつであるのかという問題は、これはやはり、このたび所得倍増計画の中期計画をつくりますときに、もう一ぺん考え直してみなければならないと思います。と申しますのは、そういたしませんと、いわゆる自立経営の農家をつくることだけが現在の農業政策の目標であってはならない。その間に、現に存するところのそういう兼業農家というものについて、農業政策の面から何をどう考えていくかという政策が当然生まれなければならぬはずでございますので、そういう要請もございますから、これは中期計画でやはりいまの時点に立って考え方をもう一ぺん再検討してみる必要があるというふうに考えるわけでございます。
  291. 牛田寛

    ○牛田寛君 ただいまの基本的な考え方については、一応理解いたしましたが、もう一点でございます。二・五ヘクタールで年間総収益が百万円ということが一つの平均目標になっております。現在の農家経済の統計を見ますと、地域的には総収益が百万をこえているところは幾つかございます。平均にすれば六十万から七十万の間かと思いますが、そのような形になっておる。ですから、単純な考え方をすれば、もう少しの線で、あとは百万戸出ればいい、こういうことになるかもしれませんが、もう一つ問題がございますのは、現在食管法によりまして米の価格が強く支持されておる。そういう状況下にあって現在の農家の経済がささえられておる。ですから、所得倍増計画が最終目標としました一つの基準になっておるわけでございますが、百万円にこだわるわけではございませんが、そういう最終段階におきまして、現在の食管法のあり方、そういうものをどういうふうに予想されておったのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  292. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 現在の食管法によって主食、ことに米の統制が行なわれておるわけでございますが、この点は、御承知のように、昭和四十五年、ただいまから数年の間に米の統制が解除されるということは、私どもはないものというふうに考えております。で、その程度の長期にわたって考えます限り、生産費というものは上がっていくと考えるべきだと思いますから、したがって、米価というものは長期的にはやはり上がる方向にいくであろうと、で、政府としても現在のような管理制度をその間に改めることはおそらくはないであろうというふうに私には思われます。
  293. 牛田寛

    ○牛田寛君 農林省にお伺いいたします。構造改善事業促進対策が三十七年から出発して、今日に至っているわけでございますが、その進捗状況をお伺いいたしたい。
  294. 松野孝一

    政府委員(松野孝一君) お答え申し上げます。  構造改憲事業は、御承知のとおり、農業基本法が制定せられまして、三十六年度から実施しておるのでございます。で、大体の計画を申し上げますと、三千百町村にわたりまして十カ年計画でこれを実施する、こういう予定のもとに進行しております。三十六年度においては、パイロット地区九十二カ所、それから一般地区四百カ所、それから三十七年度構造改善、やはり三百カ所、それから三十八年度四百カ所、そういうぐあいに計画しておりますが、そのうちパイロットは、やはり実施当初でありますので、諸般の準備が整わないという関係で、実際は九十二カ所が三十カ所程度、それから一般地区においても、おおむね四百カ所というのが二百七、八十というような段階で、成績は必ずしも良好でないのでありますが、その後漸次、地方農政局もいよいよ機能が固まってまいりまして、指導監督もよくできるようになり、それから実際府県のほうにおいてもその仕事が軌道に乗ってきたと、そういう関係もございまして、三十八年度から三十九年度の最近の情勢においては、大体計画にかなり近いものができ上がってきておる状況になっております。
  295. 牛田寛

    ○牛田寛君 一般指定地域、指定の数、それから実施地区の関係を伺いたい。
  296. 松野孝一

    政府委員(松野孝一君) 三十七年度一般地域が百七十四、三十八年度は二百二十九地域が着工に相なっております。
  297. 牛田寛

    ○牛田寛君 指定の数はどうですか。
  298. 松野孝一

    政府委員(松野孝一君) 当初の指定ですね、三十七年度は三百、三十八年度は四百です。
  299. 牛田寛

    ○牛田寛君 三十六年度は。
  300. 松野孝一

    政府委員(松野孝一君) 三十六年度は、パイロット地区が九十が七十六でございます。私、先ほどあるいは間違ったとすれば、訂正します。七十六地区。それから、三十六年度の計画としては、パイロット地区だけで、計画地域としては五百指定しておるそうでありますけれども、実施が一年ずれておるわけでございます。
  301. 牛田寛

    ○牛田寛君 地区の指定地域の数と、それから認定を受けまして、実施地区となったその地区の差がたいへん開いているわけでございますが、その点はどういう理由によるか。また、この認定を受けたあとで、その認定を返上したと申しますか、取り消したといいますか、そういう地区があったということを聞いておりますが、その事実、それからその理由、それをお伺いしたいと思います。
  302. 松野孝一

    政府委員(松野孝一君) なかなか内容のこまかな点に入りますので、農政局長よりお答えさせます。
  303. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 私から補足して御説明申し上げます。  構造改善促進対策事業は、まず、計画地域を初めに設定をいたしまして、村の構造改善の全体について基本構想なり事業実施の準備をしていただくということになります。その計画地域が、先ほど政務次官がお答えになりましたように、三十六年度に五百地域を指定し、以下三百四百というふうに計画地域の設定をしてまいっておるのであります。この計画地域の中から、地元の事業についての計画が具体的に盛り上がってきて、いよいよ事業の実施ということになるわけですが、したがいまして、計画地域全部が直ちに事業に入るというふうには初めから予想はしておらないわけですけれども、その計画地域から事業実施ということに盛り上がってまいりました地域は、先ほどお答えにありましたように、三十七年度が百七十四地区、三十八年度が二百三十九地区、合計しますと四百三地区が従来までに一般地域として事業に着手した地域でございます。なお、そのほかに、初年度三十七年度には、他の模範とするというような意味でパイロット地区の事業実施に至りましたものが七十六地域でございます。  そこで現在、それをそれぞれ三カ年計画で事業の実施をやっておるわけでございますが、当初私ども考えましたときには、パイロット地区としては全国で九十二カ所くらい、それから三十七年度の実施につきましては二百程度予想したわけでございますが、やはり、なかなか土地基盤の整備といったようなことで、土地の交換分合とか、相当思い切った土地基盤の整備事業を伴いますししますので、そういう意味で、やりたい事業が地元の態勢が整わない。また、兼業農家がだんだんふえてきたりして、そういった事業の気持ちのそろいが十分でないといった事情もありまして、当初予定をいたしました事業実施個所と実際の認定をして事業に入りました個所とには、多少のズレがございます。そういう事情であります。
  304. 牛田寛

    ○牛田寛君 ちょっと、いまお答えの中で漏れたと思いますが、認定を受けたあとで、いわゆる実施地区の取り消しを申したというような事実がありますが、それはどういう理由になっておりますか。
  305. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 認定をいたしましてから事業がだめになってやめたという事例は、目下のところはございません。おそらく、認定に近い、あるいは認定を受けるつもりで計画を練っておられたのに認定を受けるに至らなくて、一応延ばしておる、事業の着手を翌年度に延ばしたというようなところは一部ございます。しかしながら、認定をいたしましたものにつきましては、おおむね順調にいっております。ただ、その間、三カ年の事業でございますから、年度計画をつくってやっておりますが、当初認定をいたしました年次計画が用地その他の事情によって若干年次的な事業の繰り延べがあったり、あるいはほかの事業が繰り上げになったり、そういったような事情で計画を変更したものはございます。そういったことであります。
  306. 牛田寛

    ○牛田寛君 ただいまの点については、またあとで触れたいと思います。で、一年間で地域指定を終わるとなっておりますが、指定地域の最終目標の数は幾らになりますか。
  307. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 指定事業によって着手いたしますときに、一応めどといたしましたのは、全国で三千百の地域を考えました。これは、全部の市町村のうちで都市化、工業化が特に進んでおりまして、こういった事業をやることが適当でないというようなところを除外するということで、各県から様子を聞きまして、一応三千百ということをめどにいたしております。これを、計画地域といたしましては、三十六年度以降七年間で計画地域として次々と構想を練っているのであります。その後、事業の認定もおおむねその程度のテンポでやってまいる。三年事業でございますから、事業の完了が、できますれば十年内に終えたいというのを目標にいたしております。
  308. 牛田寛

    ○牛田寛君 指定地域は市町村単位だと思いますが、その中で、実施地区がその市町村の中の一部だ、そういたしますと、実際に実施地区の認定を受けて、構造改善事業の利益を受ける農家の数は、全農家のごく一部である、その割合は大体どのような見当になりますか。
  309. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 全体の構想は、村で全部立てていただきますが、具体的な基盤整備事業あるいは近代化事業の規模といたしましては、なかなか村全体というわけにはまいりませんので、その中の数部落あるいは旧町村といったような程度にとどまる場合が多いのでございます。従来の実施した結果から見ますと、いわゆる地区外事業を含めまして、市町村内の四分の一程度の農家なり農地が直接一回の事業の受益範囲というようになっておるのが、従来まで手がけました四百地域についての実態でございます。
  310. 牛田寛

    ○牛田寛君 四分の一といいますと、農家戸数にして二五%というふうに考えてよろしゅうございますか。
  311. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) その間の事情は、それぞれの地区によって事情を異にしておりますので、一がいに申せません。私がただいま申しましたのは、三十七、三十八両年度に認定をいたしました四百三地域についての平均値の数字で申し上げたわけでございまして、おおむね農家戸数でそういう程度というのが一回にやります構造改善事業の受益範囲というようになっております。
  312. 牛田寛

    ○牛田寛君 私の伺っておりますのは、もう少し少なくて、一三%ぐらいということになっておりますが、いずれにしても、この数の問題はあとで明確にしていただくことにいたしまして、いずれにいたしましても、この構造改善促進対策でいわゆる構造改善事業がなし遂げられる農家の数というのは、全農家の中でごくわずかである、一こういうことになります。十年間で一〇%、あるいはせいぜい二〇%程度の農家が理想的にいって構造改善事業の一目標を達したといたしましても、これではたして農業体質改善ができるということは疑問だと思いますが、その点についてどんなお考えをお持ちですか。
  313. 松野孝一

    政府委員(松野孝一君) お答えいたします。  ただいまお話のように、パイロット地区は、御承知のとおり、パイロットの名前が出ておりますとおり、典型的なものでございます。一般地区においても、やはり四分の一あるいは五分の一になっております。そういう状況にありますので、十年かかっても一全部に行き渡っての構造改善事業というものは御承知のとおりできないわけでございます。それで、まあしかし、われわれといたしましては、そのほかには、構造改善地区以外においては、圃場整備事業、あるいはそのほか草地造成事業とか、各般の土地基盤の整備をやっております。そのほか、構造改善地区以外におきましても、近代化資金あるいは共同化資金等を提供して農業の発展に努力しておるのでありますが、いまのように、構造改善事業といたしましてはそのような状況でありますので、三十九年度からは、一町村一カ所と必ずしも一限らない、一町村で、なところがあれば、もう一カ所あるいは特別にやってもいい、こういうことになりまして、その地区数をふやすという措置も講じておる状況で、漸次こういう措置を講じて、できるだけ全般的に広げるように努力してまいりたい、こういうふうに考えております。
  314. 牛田寛

    ○牛田寛君 ちょっとお考えがはっきりしないのですが、指定地域は一これは市町村単位、その指定地域に対して、従来は一億一千万円のうち大体平均どれくらいで、その範囲内で実施地区をきめると、こういうふうに私は承知しておる。ですから、それで大体範囲がきまってまいりまして、一市町村内に二地区とか三地区とかこれが実施地区になる、これは金のほうできまる、これが一つあると思います。そのほかに、あとは、いわゆるいろいろなことで、できないとかいうように意見がまとまらない、あるいはその他の状況でできないというような問題があるかと私も想像いたしますけれども、そういうわけで、大体事業費のワクできまってくる、そのように私は考えます。  で、そういたしますと、同じ指定地域の中で、実施地区からはずされたところでございます。農家の人たちは、じゃおれたちはどうなるのだ、不公平ではないかという声も起こってまいります。実施地区からはずされた農家、その中にも、やはり当然援助すれば体質改善の可能性を持っております。また、やらなければならない農家は、これはいま言ったように二〇%以下の農家でありますから、たくさんあると思います。それらに対しては、一体構造改善促進対策としてはどう考えるか。ただいまのお話ですと、ほかにも農業近代化の考え方もあるし、どうというようなお話もございましたけれども、それは構造改善促進対策の考え方とはちょっと違うのではないかと私は思います。
  315. 松野孝一

    政府委員(松野孝一君) いままでは、一町村一カ所という方針のもとにやってきたのです。それを、三十九年度からは五十地区だけワクをとりまして、そうして二地区要請されるところがあれば、二地区も認めるような状況で進んでいるわけでございます。そうして、漸次進めていって、計画どおり十年の経過を経て、なお検討していきたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  316. 牛田寛

    ○牛田寛君 ちょっとお考えがわからないのですが、一市町村一地区であったということはどういうことですか。
  317. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) お答え申します。  市町村の中で基本計画を立てて実行するわけでございますが、基本計画を立てました町村の中で、いわゆる平均事業費、御承知のように、補助事業九千万円、融資事業二千万円、いわゆる一億一千万円の平均規模の事業をやってまいります際に、先ほど申しましたように、地区をしぼると申しますか、しぼらざるを得ない事情が村の実情から申しましてもありますし、また、事業の効果を発揮する上からいっても、そういうことになっているわけであります。  そこで、御指摘のような残ったところで、なお同じような事業を引き続いてやりたいという熱意に燃えておられる市町村があるわけでございますが、そこを、全国の市町村が全部一応やり終わってから及ぼすというのでは、それら熱心な農家の期待をあまりにも長くたな上げをする結果にもなります。そこで、来年度からは、新規の市町村について、従来どおりの規模による事業を執行いたしますと同時に、その一部をもちまして、同じ事業規模の事業をすでにやっております市町村の他の区域で、同じような規模の事業を繰り返してやるということについて、地元の御熱意なり、態勢が整ったところについては、そういう道を開いた次第でございます。そのことでございます。
  318. 牛田寛

    ○牛田寛君 その農業構造改善促進対策の仕事は、一つは、非常に学問的なひとつの形を描いて進められておるように私どもは理解をするわけです。それで、いま実施地区から除かれたところですね。それに対しても、農業構造改善対策で描かれたような方向で、時間的な問題もありましょうし、金の問題もありましょうが、そういう方向で仕上げていくというふうに進まれるのか、それとも一、現在のいわゆる十年間で実施地区をきめて、それが完成するそれで一応終わるという、そういう行き方があるのか、それを一応お伺いしたい。
  319. 松野孝一

    政府委員(松野孝一君) お答えします。  最初の計画は、三千百、全国にわたって農業を主としてやるような町村を選んで、一カ所ずつ選んで——ところが、それではいまお話しのように残るところが多いものですから、三十九年から二カ所もやり得る地区を選んでだんだん進めていくわけであります。それで、これはいろいろの事情も勘案しなければいかぬのでありますけれども、漸次、七年目とか、あるいは十年目に該当すれば、さらにこれを広げていくように私は検討していきたい、そういうふうに思っております。
  320. 牛田寛

    ○牛田寛君 いままでは、いわゆる一億一千万円、ことしから一億二十万になった。そのワクで各指定地域内で地区をきめてやる、こういうふうに理解いたしますが、それで、いままでの計画に漏れたところですね。これは逐次やっていく、その道を開くというお話ですが、今度は、いままでに漏れたところを仕上げて、最終段階の目標をどの辺に置くか、何年ぐらいかかって最終段階に持っていくか、その辺お聞きいたします。時間的な問題です。
  321. 松野孝一

    政府委員(松野孝一君) 最初の段階は十年——一地区三年かかるのでありますから、七年目にはとにかく終わるわけであります。着工が終わるのでありまするけれども、さらに何年ということは、いまはっきり私は申し上げかねますが、とにかく、構造改善をただ拠点的にしておくということをわれわれは考えていません。さらに全般にわたって広げていかなければいかぬというふうな考えで進めております。
  322. 牛田寛

    ○牛田寛君 先ほどお話がありましたが、一番大きく見積もって二〇%か二五%、これが大体いまの事業の範囲内でございます。それで、本年度の予算が百六十億ぐらいですか、それぐらいでやっておるわけですが、もしこれを市町村全区域に広げていくとなりますと、現在のようなペースでは、とてもいつ完成するか見込みがない、こういうことになりますから、第二次計画としてそれを広げていくとおっしゃるならば、今度はどの程度の規模でいくかということが問題になると思う。それを、逐次広げていくというだけでは、これはただ話だけで、国民としては信用できない、こういうことになりはしませんか。もしも徹底的にそれをやろうとするならば、今度は何千億ぐらいの金が必要になるかということも考えられてくるわけです。その辺のお考えを実は承りたかったわけです。見当がつかないとなれば、これはやむを得ません。また大臣にあらためてお伺いをいたします。
  323. 松野孝一

    政府委員(松野孝一君) 長期にわたるものでありますので、現在われわれがやっておるものでも、たとえば山間部のほうにおきましては、なかなか必ずしもそう進んでおるわけではありません。今年度の予算におきましては、山村地帯におきましては、特別に、別個に、調査するというので調査費を六百万円とって調査に従事する予定でございます。その後において山村地域をどうするかという検討を考えていきたい。それからまた、途中における新産都市という問題も出てきております。それと農業関係をどういうふうに調整していくかという問題があります。これについてももう少し調査してというので、これも三百万円か四百万円ばかりの予算をとって、そして今年度調査をする、そういういろいろの事態がありますので、その事態に対応した調査をやりながら進めていきたい。  そして、このテンポでいくと非常に長くかかるように思いますけれども、一面また、諸般の財政措置、制度金融とか、あるいは近代化資金とか、いろいろなものを増額をしておりますので、それぞれ長い経過では、相当土地改良あるいは基盤整備、広い意味の基盤整備もできてくるだろうとも思います。情勢もかなり変わってきますので、はっきりと何年度とは、このテンポではいかない。もっと早いテンポで進めていけるのではないかというように考えておりますが、具体的に何年計画でというようなものをいま立てておる段階ではないのであります。いずれ、この状況を見まして、また計画を考えていかなければならないと思っています。
  324. 牛田寛

    ○牛田寛君 私もその辺の見通しをお伺いしたかったわけでありますが、結局、構造改善対策の事業は、それだけでは完成できないことは当然のことだと思います。これは、私ども考えますと、結局、農家の経営の構造を変えていくという一番農家の末端に直接タッチしたところの事業で、それを完成させるには、今度は国全体として、あるいは広域的な生産対策なり、流通対策なり、あるいは河川を単位にした水利その他の大きな意味での基盤整備も必要でありまして、その上にこの構造改善対策事業が乗っていかなければならない。そういうわけでありますから、ただ、この対策事業に金を注ぎ込んだだけでは実現できないことは私もわかっているつもりでございますが、その辺の立場からの大きな見通しを実は伺いたかったわけであります。  大蔵大臣にお伺いしたいのですが、この構造改善対策事業、これは農業の体質を根本的に変えていくような形をいまとっております。最終的には、やはり全日本の農家の体質を改善するためにこの構造改善促進対策が大きく発展されなければならないという方向はただいま伺いました。そういたしますと、かなりこれはその方面に金がかかってくる問題だと思います。現在は百六十億ぐらい、これがさらに一千億ぐらいの方向に向かっていかないとも限りませんが、大蔵大臣としては、この方向についてはどう考えておりますか。
  325. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 農業改善事業は、御承知のとおり、十カ年三千百カ所ということで、こちらもその基本を認めているわけでありますから、これが予定期間内に完了して実効をあげるように財政的な面からも協力をするという考え方であります。しかし、その三千百カ所以上のものを、それを始めてきたら、今度は全部の農村に対してそういうことを及ぼしたいというようなお気持ちのようでありますが、そういう問題に対しては、農林省の要求等を待ちまして、時の財政事情も十分勘案をしながら考えていくべきものだと存じます。
  326. 牛田寛

    ○牛田寛君 次に、米作ですね、米作を基幹作物の中に含んでいる。いわゆる米作地帯で行なわれております構造改善事業指定地区について二、三お伺いしたいと思うのです。  ただいま申し上げましたように、この内容を拝見しますと、大型機械を導入することが基本的な方向になっていると考えられますが、大型機械の導入の状況、どういう機械が導入されて、どの程度いわゆる米作中心地帯にその大型機械の態勢が整ってきているか、その概要を伺いたい。
  327. 松野孝一

    政府委員(松野孝一君) お答えします。  今日まで着工しておる構造改善事業は、日本の農業の実態に即応しまして、やはり米作基幹作物というのがわりあいに多いのでございます。米が基幹の作物になっている。たとえば、パイロット地区七十数地区のうち二十七地区が米作ということになっております。それから一般地区につきましても、たとえば三十八年度におきましては、八十七地域が米作基幹地域ということになって、米作が中心になっておるところが多いのです。これに対しましては、ただいまお話しのごとく、これは基盤整備が中心となって、その基盤は三反歩区画という圃場制度をまずやる。それに対しては五割の補助を出すということ、それから交付金等をしまして府県段階におきまして二割の補助をやる。七割補助をやってやらせる。そうしてそれができましたらば、それに対しましてこの機械化の促進をはかるために、従来のような耕うん機でなく、トラクターの導入をやっていくということになっております。そうして、トラクターが入って、その次には、これを収穫し、乾燥するということ、いわゆるライスセンターの施設を導入してやる、こういうふうな形で米作のほうはやっているわけであります。そのほかに、これ以外に、養鶏をやるとか、養豚をやるとか、果樹をやるとかということもありますけれども、米作については、そういうふうな形でやっているわけであります。今日基幹作物として認められておるものは、それぞれ導入されているわけでございます。
  328. 牛田寛

    ○牛田寛君 大型トラクターを入れて耕作するということになりますと、もちろん一町のたんぼは百アールということになろうと思いますが、この一台のトラクターの耕作範囲ですね、これはかなり広い範囲でなければペイしないと思うのです。それはどのぐらいの範囲を見込んでおられるか。
  329. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) はいりますトラクターの型式なり、馬力数その他は地区によってまちまちでございます。したがいまして、一がいに何町歩というふうには申し上げかねますが、それぞれ小さいところでも二十馬力程度、大きいところでは三十数馬力といったものを中心にして、それぞれの経済効率で計画がきまっておるわけであります。
  330. 牛田寛

    ○牛田寛君 私が伺いますのは共同耕作の面積の範囲です。どのぐらいの面積をまとめたならばそういう大型機械の導入が可能であるか。また現在どの程度の面積をまとめて計画しているか。その実施地区があるはずです。その実施地区ではどのぐらいの面積をもってやっているか、それを伺いたい。
  331. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 三十七年度に認定をいたしましたものにつきまして実例で申し上げますと、戸数で百戸ないし百五、六十戸というのが、受益戸数として大型機械の関係の一つの集団になっておる場合が一番平均的な事情のようでございます。もちろん地区によって非常に千差万別でございますから、あまり硬直的な姿ではございません。一応そういうことが考えられます。
  332. 牛田寛

    ○牛田寛君 大型トラクターを入れただけでは実際に生産性の向上ははかれない。田植えの問題がありますし、刈り取りの問題、先ほどライス・センターのお話がございましたが、これは刈り取りに関連して乾燥の問題も起こってくる。ですからライス・センターを設ける場合は必ずコンバインの導入があるはずなんです。その上に田植え移植機あるいは直播機をお使いになるかもしれませんけれども、そういうものとコンバインと、あるいはライス・センターと一つに組み合わされた一貫性を持った機械体系ですね、こういうものが一体どの程度でき上がっておるのか、現在の実施地区にですね。それを伺いたいわけです。
  333. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 水田作の構造改善事業を行ないます場合、耕うん、整地、あるいは防除等いろいろございますが、一番技術的に急を要しまして、かつ一番困難な問題は田植えの問題と刈り取りの問題でございます。田植えにつきましては、機械化研究所におきまして田植えの機械化ということが数年来熱心に研究されておりまして、ある程度試作機の段階まできておりますが、むしろ最近の情勢といたしましては、大型機械がはいったこととも関連をいたしますが、直播に移行することを現地でも熱心に考え中でございます。パイロット地区の数地区におきましては、すでに一部でございますが直播に踏み切って、かなりの成績を上げたところがございます。  なお刈り取りにつきましては、在来の刈り取り機械による刈り取りを考える一方、大型のコンバインによる刈り取りを併用して考えておる地帯が多いようでございますが、遺憾ながらコンバインにつきましては、まだ土地基盤の整備が現在あります大型のコンバインによく対応した基盤整備というふうにはなかなかいきかねておりますので、日本独特のコンバインが逐次開発されると思いますが、現状では直ちに構造改善事業の一環として実用に供するというようなふうにするのにはいささか時期が早くはないかということで、当初三年目にコンバインを入れる計画をしておりました地区におきましても、なお慎重に御検討いただいて、事業の完了を四年度まで延ばすことで、場合によっては私のほうからおすすめしたりして慎重を期しておる状況であります。
  334. 牛田寛

    ○牛田寛君 そういたしますと、大型機械を導入する方向には向かっておるけれども、一部には大型トラクターが入っておるけれども、まだ機械化の態勢はできていない。そうすると、この構造改善促進対策で、いわゆる実施地区はどの程度まで構造改善の姿が実現できるのかという点なんです。そうしますと、私がいま伺ったところで想像いたしますと、たんぼを広げただけで終わってしまうのではないかという感じがあるわけです。言い方が極端でございましたけれども、農道を広げる、あるいは排水の問題もある。そういう問題、いわゆる基盤整備だけに終わってしまう。そうしてそのためにいわゆる労働力を減らす、労働力を節約するという点は次の段階に延ばされてしまうのではないか。こういうふうに考えますが、その点はどのように認識されていらっしゃいますか、伺いたいと思います。
  335. 松野孝一

    政府委員(松野孝一君) お話しの点でございますが、われわれとしても、とにかくいま機械化研究所に研究させておる、また各メーカーにも試作させておる、そうして毎年実験をやって、その成果を検討しておるものがコンバインであります。コンバインは、日本に適するような、推奨できて間違いないようなものが早くできることを希望しておるわけでありますけれども、まだわれわれの見るところでは、もう一年くらいかかるのじゃないかと思っております。しかしその間におきましても、トラクターを入れる、あるいは深耕をやっておるということもあります。また共同化によってその面で労力が省けておる。それからまた刈り取りの面においても、現在まだ幾らも刈り取りをやる機械があるのでありまして、コンバインはその刈り取りと脱穀を一緒にしたものでありまして、非常に能率的なものでありますけれども、刈り取りは刈り取り、それから脱穀は脱穀と分離してやっておる現状においても、かなりその労力節約というものはできておる。それからもう一歩進めて、われわれの理想とするコンバインをできるだけ早く導入するようにしたいというふうに考えて、ことしにおきましても——コンバインそれ自体はもう少し一、二年かかると思いますけれども、しかしながらオペレーターの養成というのは考えておく必要があるというので、今年度予算におきましても一、その費目は二十三府県においてとっておる次第であります。
  336. 牛田寛

    ○牛田寛君 これは何もいまの構造改善対策の仕事に限らず、いままで農家が小型耕うん機を購入いたしました。小型耕うん機を購入して、そのために能率が上がって、いわゆるたんぼを耕すほうは非常に時間が短くなって人手が余った。そのために今度は兼業がふえた、男は働きに出てしまうということで、農繁期に今度は婦人や老人の労働力が非常に加重されたということが起きたわけであります。今度もこういうような改善事業で大型トラクターが一番先に導入されておる。そうすると、大型トラクターが耕すほうは稼ぐ。あと田植えとかあるいは稲刈りというものは相変わらず手労働でやるということになりますと、そこに労働力のへんぱが起こってくるのじゃないか、中途半ばな構造改善事業ができ上がるのじゃないか、そのために兼業化が促進されるということも考えられるのじゃないかと思いますが、その辺についてはどうお考えでしょうか。
  337. 松野孝一

    政府委員(松野孝一君) お答えいたします。米作は一番労働のピークは何といっても田植えとそれから収穫にあるのでありまして、その労働のピークを下げない限りはうまくいかない。そして田植えにつきましては、直まき方法を理想と考えておるのでありまして、また収穫においてはコンバインというふうに考えていますけれども、いまだそこが十分農民になずむようにまで進んでいない実情です。いまのお話のように、トラクターでそこだけ進んで、その労力のみで立ちいくのじゃないかというふうには、まあそうも考えておりませんが、何といっても労働のピークは田植えとそれから収穫にあると私は見ておるのです。この山を崩していかなければ、全体的な労力の節約はできてこないというふうに考えておる次第であります。
  338. 牛田寛

    ○牛田寛君 この改善事業にあわせて、大型機械の生産計画はお持ちなんですか。
  339. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 大型機械につきましても、国内メーカーが現在逐次開発中でございまして、まだそういった生産計画といったような形では積み上げたものは持っておりません。
  340. 牛田寛

    ○牛田寛君 次の問題に移りたいと思いますが、現在地域を指定して、実施地区の認定等に入る段階で、農家の中でいわゆる自立経営をやっている農家、もう実際に専業農家として引き合う経営をやっている農家はあまり喜ばない。むしろ年寄りや婦人が過重労働をやっているような立場の農家のほうが、こういうまとめて、それで労働力を軽くして共同作業をやるということを喜んでいるということを私は聞いたことがあります。それで実は実施地区の内容を拝見してみましたが、秋田とか山形とか、そういう米どころは案外これが実施に慎重なんです。それで宮城県でも非常に反別の小さいやはり酪農とか畜産とか、あるいは鶏を飼っておかなければならないというような、いわゆる米だけではどうもやっていけないというようなところが、むしろこういうふうな構造改善の対策を希望するというような傾向があるように見受けられるわけです。その点。それからもう一つは、やはりこの実施をやるためには農家が何軒かまとまって、同意して共同耕作をやらなければなりません。いわゆる協業の意思がまとまらなければなりません。そのときにやはり自立経営農家がむしろそのブレーキになっておる、そういう声を聞きます。その点についてはどういうふうに認識なさって、それからこれに対してどういうふうな手を打たれるかという点について伺いたい。
  341. 昌谷孝

    政府委員昌谷孝君) 三十七年、三十八年と日程の推移を見てまいりますと、米を基幹作物とする地域の数は、率におきましても、絶対数におきましても、漸増をいたしております。したがいまして、御指摘のように、米作の大型機械化体系の完成した姿はまだ実用化しておりませんけれども、農家はそれなりに構造改善事業を米作地帯においてやるための積極的意義を十分評価をして、そのような結果があらわれておるものというふうに考えております。もちろん関東、東山、東海といったような比較的都市周辺の地域におきまする構造改善事業の場合には米以外の商品作物を算入するという計画も多く出ておりますが、それらは地帯の特質あるいはそこの農家の将来の商品作物を何に中心を持っていくかといったような、それぞれの事情によりまして一概には断定はできませんので、御指摘のような特に専業的あるいは自立経営的農家がこの事業に消極的であるというようなふうには、私どもは事業の成果を通じて、そういうふうには見ておりません。むしろそういう農家が推進力となってこの事業が成果をあげているというふうに評価をいたしております。
  342. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 衆議院の本会議に関係大臣出席しなければならぬ関係がございまして、牛田委員の御質問は、まことに残念でございますが、残り時間ただいま十五分残しております。中断をお願いいたしまして、山木君の質問に移りたいと思います。さよう御承知を願いたいと思います。   —————————————
  343. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 山本杉君。
  344. 山本杉

    山本杉君 文部大臣にお願いを申し上げます。  総理は、経済成長は手段で、人つくりは目的だと、こう言われております。そして総理府に青少年局をつくり、厚生省の児童局を家庭局に変えられました。このようなことは、歴代の総理の中で初めての業績だと私は思うのでございます。しかし、これだけではまだゼスチュアがうかがえるのみではないかと思います。西独ではすでに第二次大戦後家庭問題省というものをこしらえ、これに青少年問題を加えた省ができておるのでございます。またフランス、スエーデンなどもこれと同じものをつくったと聞きます。新興国家でも、家庭をポリシーの中にその重要性を認めて、独立省をつくろうとしている目ざめた国もございます。閣僚たちはみんなこのようなことは考えてお出でだろうと思うのでございますが、日本もどうもぐずぐずしていられないいろいろな事情をかかえていると私は考えます。それで、前々からこの家庭省というものをつくることが今日の急務ではないか、こういうふうに考えておるのでございますが、文部大臣のこれに対する御意見を伺いたいと思います。
  345. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 今日の国民生活状態から考えまして、また青少年問題の重要性というような点から考えまして、家庭という問題が大きく取り上げられるような情勢になってきておることは私もさように思うのであります。そのために政府としましては、各省協力して進んでまいらなければならぬと思うのでございますが、ただいまお尋ねの家庭省というような構想につきましては、まだ私どものほうでは結論を出しておりません。文部省としましては、まだ検討の段階と申し上げざるを得ない。しかし、家庭の重要性にかんがみまして、特に社会教育の面において婦人学級あるいは家庭教育、こういう点も上そう推進してまいりたい、さような心組みでおるわけでございまして、お尋ねの家庭省という構想につきましては、まだ申し上げる段階に至っておらない。ひとつ検討さしていただきたいと思います。
  346. 山本杉

    山本杉君 ただいま文部大臣のお答えの中に、社会教育の問題が出ましたから、これについていろいろと伺いたいと思いますが、その前に、もう一つだけ伺わせていただきます。  それは、あとで厚生大臣にも伺おうと思うのでございますが、どうもテレビとかラジオとか、あるいは婦人雑誌などで育児問題過剰というような状態が多いのでございます。それで、ある婦人雑誌の記者がある有名なお医者さまのところに来て、頭のよい赤ん坊を産むには妊娠中どうしたらいいか、こういう質問をしたというんです。それからまた、あるミルクを飲めば頭がよくなるというような広告をしていらっしゃるある大学の教授がいらっしゃる。で、どうも人つくりのビジョンというものが、このように、ともすればズレがちだと思われる面がございます。この、頭がよくなるということと人つくりということの本体について、文部大臣はどういうふうにお考えでいらっしゃいますか、聞かせていただきたい。
  347. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) なかなかむずかしいお尋ねでございますが、人つくりということばも、いろいろに用いられておるように思うのでありますが、私は、まあ文部省の立場から申し上げますれば、要するに、心身ともにすこやかな国民につくり上げたいということになろうかと思うのであります。頭のいいことも最も必要なことではありますけれども、ただ頭がいいだけでは困るのでありまして、そのいい頭が何に使われるかというところが大きな問題だと思っておるわけであります。結局、やはり精神的にもあるいは身体的にも、りっぱな日本人として、お互いが安心のできるような国民をつくり上げる——というのも語弊がございますが、そういうような国民をもって日本が充満されるようにいたしたいものと考えている次第でございます。
  348. 山本杉

    山本杉君 それでは次に、社会教育について伺わせていただきますが、戦後、日本の国づくり、人つくりあるいは村づくり、町づくり、こういう面で社会教育が果たしてきた役割りはたいへん大きいものでございます。それにもかかわらず、たいへん悪い言い方ですけれども、歴代の文部大臣は、この社会教育という問題についてあまり熱意をお示しくださらなかったように私は受け取っているんです。この社会教育の面で取り上げなければならない問題は、たくさんございますけれども、最も大きいのは社会教育主事の問題だと思いますので、きょうはそのことについて伺わせていただきますが、社会教育主事が不足しているというこの事実、これをどういうふうにお考えでございましょうか。
  349. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) おしかりをいただきまして……。確かに社会教育の面が、文部省の行政の上から申しますというと、その充実の程度においておくれておるということは、いなみ得ないと思うのであります。しかし、社会教育がきわめて大事な事柄であるということは、私ども認識いたしておるつもりであります。せっかく努力をいたしておるところでありますが、地方におきまして社会教育を担当するものとしましては、お話の社会教育主事の役割りというものが非常に大きいと思います。この社会教育主事につきましては、山本委員も御承知のように、今日では都道府県はもちろんのこと、人口一万以上の市町村においては、いわゆる義務設置ということになっているのであります。そういうふうに制度的には改善をされてまいりますし、また国としましては、この社会教育主事の資格を付与するために講習を実施いたしまして、社会教育主事の養成をはかってまいったのでございますが、現在までに約四千人程度の養成を行なったのであります。三十九年度も引き続いてこの講習は実施するつもりでおります。現実の設置率を申しますというと、都道府県におきましては、一応社会教育主事の設置を見ておるという意味におきまして、一〇〇%でございます。しかし、それだけで十分かということになれば、もちろん問題は、残ると思います。市町村の設置率は、昭和三十八年の四月一日現在で五六%余りでありますが、人口一二万以上の市町村の設置率は七九%であります。義務設置とは申しながら、まだ一〇〇%というところに到達しておらないというふうな状況でありますので、社会教育主事の不足という点の御指摘は、私どももこれを認めざるを得ない、できるだけ早くこの社会教育主事の充実をはかってまいりたいと存じております。やはり人の問題、同時に市町村の財政的な問題もあろうかと思いますので、それらの事情を勘案いたしまして、この普及のために一そう努力をして願いりたい、このように考えております。
  350. 山本杉

    山本杉君 ただいまの御説明で大体わかるのでございますけれども、その人口一万人以下の町に、なぜ置けないか、これはやっぱり足りないからじゃないかと私は思うのです。そして、それにはやっぱり社会教育主事に対する待遇の問題が出てまいると思います。私どもの知るところによりますと、いわゆる指導主事というものと社会教育主事というものに対して、ともどもに同じような重要な仕事をしていながら、待遇の面で少し違うところがございますが、その理由はどういうわけなんでございましょうか。
  351. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 特別な理由はないと私は思うのであります。現実そうなっておるということでございますが、やはり地方の町村になりますというと、人一人置くにもかなり苦労いたしております。そういう点について私どもが配慮しなければならないのではないかと、このように考えております。
  352. 山本杉

    山本杉君 局長何か御意見ございますか、これについて。
  353. 齋藤正

    政府委員(齋藤正君) 大臣もお答えいたしましたように、特別に異にする理由はございませんけれども、まあ給与の負担の関係というようなことで、指導主事の中には都道府県負担の教員で指導主事を充てるというような制度もございまするが、社会教育主事は市町村の吏員でございますので、市町村自体の給与のスケジュールで動くというようなことでございますので、その関係で弱小の町村におきましては、十分な待遇ができないということもあろうかと存じております。
  354. 山本杉

    山本杉君 いまお答えになったような面で、社会教育主事というものが安定して働けるような、そういうふうな抜本的な改革というような、いわゆるまあ行政的な方法とでも申しましょうか、そういうことはないのでございましょうか。また、重要性は、大臣局長も、いま御説明になったとおり、まことに重要であるということは言われるのですけれども、はたから見ておりますと、どうもそれが一歩も施策として踏み出せないというようなところにガンがあるのじゃないか。大臣は、今年度も講習を続けていきたい、研修もしていきたい、それで、これに対しては、小さい予算でも組まれていることでございますけれども、その本年度の積極的な施策をどういうふうにお打ち出しになりますつもりですか、その見通しをひとつ伺いたいと思います。
  355. 齋藤正

    政府委員(齋藤正君) 社会教育主事の普及充実のためにどういうことを考えるべきかということは、先ほどお答え申し上げましたことに関連して、給与という問題もございますし、また、それぞれの小さい町村の吏員でありまするから、その将来性で、どういう交流が可能かというようなこともひとつ検討すべきものだと思うのであります。昨年も、実は弱小の町村に対しましては、都道府県の社会教育主事をできるだけ数をふやしまして、それを助けていくという方策も一応考えたのでございまするが、これは、まだなお検討すべき問題がありますので、給与、人事交流、そういう面について、今後も検討してまいりたい。養成につきましては、大体現在の養成の人員の絶対数といたしましては、現在やっております講習で大体充足できると思いますが、問題は、末端の町村で指導をどういうふうに解決するかという問題であろうと思います。
  356. 山本杉

    山本杉君 私ども地方へ参りましても、その点非常に足りないなという感じを受けるのでございますが、どうかひとつ御努力を願いたいと思います。  次に、社会教育の学習施設の問題でございますが、これが非常に不足していることを痛感いたします。全国的に、公民館でございますが、まあ親公民館が二千あるとか、あるいはみんなひっくるめると二万もあるというふうで、たいへん行き渡っているようにも見られるのですけれども、まだまだ一般の人がこれを活用するというところまでには整備されていない。それで、公民館について考えますと、これは戦後、司令部の手でいち早く始められた仕事でございますだけに、何だかこうマンネリズムにおちいって、予算化が困難になっているんじゃないかというふうなことも思うのですが、いかがでございましょうか。
  357. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 公民館の役割りの重要性ということにつきましては、御指摘のとおりだと思うのであります。今日までの公民館の数でございますが、本館八千百四十、分館一万二千八百、ちょうどお話のように数でいえば二万、設置率から申すと九〇%ということになるのでございます。しかし、これはただ公民館の数を申し上げたのでございます。それぞれの公民館について考えますれば、必ずしも施設が十分でない、不完全なものも少なからずあろうかと思うのであります。これが整備充実については、まだまだ努力しなければなりません。予算のほうから申しますと、本年度は、公民館関係の経費が政府のほうで一億四千九百万円ばかりあるわけでございます。三十九年度予算が成立いたしますれば、予算の総額が一億七千七百六十九万、約三千万円ほどふえておるということであります。何としましても、日本としましては、もっともっと公民館の整備をはかっていかなければならぬということは申すまでもないことでございます。一そうの努力を続けたいと思います。同時に、公民館の職員の問題が、大きな要素をなすものではないかと思います。この公民館職員の資質の向上につきましては、検討し、努力をしてまいりたいと考えております。
  358. 山本杉

    山本杉君 たいへん御親切なお答えで、ありがたいのでございますが、私は、公民館をもうちょっと地域の文化センターみたいにしていただいたらいいのではないか、それには、ことしはずいぶんたくさんの補助をお出しのようでございますが、もう少しお考えを願いたい、まあこれは希望でございます。  次に、成人教育について伺いたいのでございますが、成人教育の中で婦人教育は、今日までに文部省の社会教育局の熱心な御努力で、たいへんに進んでまいったと思います。で、婦人学級というものも設置されまして、非常に進歩したと思いますが、成人男子の学習の機会、また、その方法は、それほど進んだとは思われないのです。男子の方を前にして、まことに悪いのでございますが……。それで、今年度、両親学級に新しい予算が九千万円も出たということは、非常に画期的なよいことであったと思いますけれども、この成人教育に対して、もっと抜本的な研究が必要ではないかと思いますが、文相はどういうふうにお考えでございましょうか。
  359. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 成人男子の社会教育という問題でございますが、現在まで一般成人を対象とした社会教育の機会としましては、大学あるいは高等学校等における開放講座、市町村が開設する成人学級、こういうものがありますが、そのほかまた、地方公共団体の行なう学級諸講座あるいはPTA等の両親学級、父親学級と成人学級、こういうふうなものが行なわれておるわけでございます。  その実際の状況を見ますると、少し統計が古くなって恐縮でございますが、いま申し上げましたような学習への男子成人の参加率は、昭和三十七年度におきましては、大学公開講座では女子が三三・二%、これに対しまして男子が六六・八%、、このほうは、男子のほうがだいぶ利用されておるようです。また、高等学校の開放講座では、男子が六九・八%参加いたしておるわけであります。成人学校について見ますと、男子が六二・八%を占めている、また、学級諸講座につきましても、だんだんと男子の利用率がふえてまいっておるような状況でございます。したがって、成人男子の社会教育の機会に参加する率というものは、次第に改善をせられてきておるということが申し上げられると思うのでありますが、来年度から新たに実施しようと思っております家庭教育学級につきましても、ぜひひとつ父親の参加も得たいものだ、こういうように期待いたしておるのであります。今日までやってまいっておりますのは、大体いま申し上げましたようなものでございますが、このほかに、私は、たとえば図書館でありますとか、あるいは博物館でありますとか、そういったような施設も必要ではないか。そういった施設も、始終利用し得る状態に持ってまいりたいと思うのであります。最初から御指摘のとおりに、この方面の施策は、ぼちぼち進んではおりますけれども、決して十分とは言えないのでございますから、一そうひとつ努力してまいりたい。何かまたいいお考えがございましたら、ぜひひとつお教えを願いたいと思います。
  360. 山本杉

    山本杉君 婦人学級につきましてひとつ伺いたいのでございますが、過日、この委員会で山高委員が、婦人学級の内容の非妥当性ということから、これは不成功であったように意見を述べられたのです。これに関連して、いま大臣からお話も出ましたが、家庭学級というものも不成功に終わるのではないかというような心配をしておられます。私は、この婦人学級に対しては、意見が違いまして、日本の婦人の意識や行動がここまで高まったということは、その陰の力として、婦人学級を万人が認めていると、はっきり言えると思うのです。しかし、一千万人以上のこの婦人学級の学級生のことを考えましたときに、そのこまかい面にまでわたっての指導体制が、これでいいかどうかということになりますと、まだまだ遺憾な点がたくさんあると思います。これに対して、もう一言文部大臣の御抱負を伺いたいと思います。
  361. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 婦人学級の内容につきましては、私はだんだん進んできておるように思うのでありまして、もっともっとこの方面のことも伸ばしてまいらなければなりません。婦人学級は婦人学級としてのやはり役割りがあろうかと思う。問題は、そういうふうなものに対して、そばにおって適切な指導を加える人がほしいわけであります。そういうふうな意味で、私は、社会教育主事の問題でありますとか、あるいは公民館等において、りっぱな指導力を持った人に仕事をしてもらう、こういう方向に進めたいものと考えております。
  362. 山本杉

    山本杉君 それでは、今度は宗教教育について伺いたいと思います。  家庭教育というものを重視いたします以上、わが国でも宗教教育というものが重要な課題になっていることは、だれもいなめないと思うのですが、教育基本法は、学校での宗教教育というものを否定しております。で、文部大臣はこれをどういう形で取り上げようとしていらっしゃるか、そこを伺いたいのでありますが、以前の安藤文部大臣おなくなりになりましたが——あの方はぜひやりたいということをはっきりとおっしゃったのでございます。それから仏教界では、全国のお寺に日曜学校をつくることによって幼時期の宗教教育というものによい効果をあげ、それを青少年の非行問題などの対策にもしたいということで、運動を始めているわけでございますが、ちょっといま質問申し上げたことから少しはずれますけれども、それに対して財界などが好意的な寄付をいたしますのにその寄付が課税の対象になるというので非常に悩んでおります。これは大蔵大臣に伺わなければならないのですが、こういう問題に対して、文部大臣一はだぬいでいただくわけにはまいりませんか。
  363. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 教育基本法には宗教教育に関する規定がありますことは御承知のとおりであります。これは宗教を尊重するとかあるいは宗教に関する各自の寛容の態度を求めておる。それからまた学校教育等における宗教教育、こういうふうな関係のことを規定いたしておると思うのでございます。もちろん教育基本法の趣旨に従って行なうことは当然のことであります。ただ私どもとしまして、またお尋ねの趣旨もその辺にあるのじゃなかろうかと思うのでございますが、学校教育におきまして、私立の学校を除いては、特定の宗教についての教育をするということは、これは許されておらないのでございますが、しかし、人間を形成していく上におきまして、道徳、宗教的情操というようなものは、非常に大きな苦心味を持っておるということは、みなさん言われるところであります。昨年の教育課程審議会の答申によりましても、私ども今日重視いたしております道徳教育におきまして、人間としての豊かな情操をつちかい、人間性を高めるということが道徳教育の基本である、そこで、今後宗教的あるいは芸術的な面からの情操教育を徹底する必要があるというふうなことを答申において述べられておるのであります。われわれとしましても、宗教的な情操というものが教育の中に含まれるということは、非常に意味のある大事なことだと、かように存じている次第であります。そういう考え方のもとに学校教育を進めてまいりたいと思っているような次第でございます。また同時に、いまお話の中に、日曜学校というようなお話もございました。私は、それぞれの宗教に関係のある方々、いわゆる宗教家の諸公が、そういうことについて大いに関心を持っていただきまして、若い小さな子供さん方のために働いていただくということは非常にけっこうなことじゃないか、このように存じております。そういうふうな活動をするのについて、資金の問題についてもお触れになったわけでございますが、これは具体的な御計画によりまして、私どもでできる御協力があれば、これは協力をいたすのにやぶさかではございません。
  364. 山本杉

    山本杉君 次に伺いますのは、毎日の新聞をにぎわしております中学生やあるいは高校生のあの犯罪の問題でございますが、西ドイツのハンブルグ大学のジーフェルト教授が、青少年の非行の原因を十項目ばかりあげております中に、義務教育のあり方というものをあげているのでございますが、私は、戦後の学校教育の指針というものが、ゆがんでいたというようなことはないかどうか、また日教組であるとか学校の先生方が、ああいう労働運動をなさったというようなことが、今日こういうかっこうであらわれてきたのではなかろうかというふうなことまで心配するのでございますが、文部大臣は、これに対してどうお考えでございますか。
  365. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 青少年の非行化の問題は、お互い一番心配の問題でございます。これについては、もう国会でずいぶん御意見も伺いました。なぜそうなったかということには、いろいろな原因が私はあろうと思います。学校の場においてその、原因がある場合もございましょう。あるいは家庭がその原因をなす場合もありましょう。さらにまた、一般社会がその原因をなす場合も少なからずあります。ということでありますから、原因の問題ということになりますれば、非常に広くかつ複雑であるということが言えると思います。学校のことを考えましたときには、やはり学校というところ、学園がきわめて平和で明朗で、なごやかで、そして教師、子弟互いにむつみ合っていくというふうなことが一番大切なことだと思います。それらの点につきましては、従来必らずしも遺憾な状態がなかったということは言い切れない。そういうふうな点につきましては、学校の教師諸君の、やはり子供を育てるという気持ちにおいて考え直してもらいたい点も多々あると思うのであります。その点も私ども努力しなけりゃいけませんし、しかしそれだけにとどまらず、幾多の原因がありますために、それらについて、国民全体がやはり協力して、そういうふうなものを除いていくということに真剣にならなければならない、こういうふうに考えております。
  366. 藤原道子

    藤原道子君 関連してひとつ。私も山本委員の御質問関連して、ひとつお伺いしておきたい。成人学級のことでございますが、特に婦人学級の問題でございます。どうも、何といいますか、講師の選定とか指導の内容において、いささか偏向してるんではないかというようなことを耳にいたします。また、実際にもそのように考えられる婦人団体も一幾つかございますけれども、特定の婦人団体が対象になるというようなことがいわれている。さらにまた、婦人団体育成ということで、毎年欧米諸国へ婦人の代表を派遣していらっしゃる、こういう人たちの人選等は、どの点を基準にしてお選びになっておいでになるか、さらに、海外を視察してお帰りになった婦人団体の代表が、帰ってから、海外の視察状況等からどういう指導をしておいでになるか、私、まあ社会学級と銘を打つ以上は、公平でなければならない、こういうふうに常々考えておりますが、この点について大臣の御意見を伺います。
  367. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 公平であるということが必要であることは申すまでもございません。公平でなければならぬと思いますが、同時に、その学級の内容等につきましては、やはり国民全般が納得するような姿において運営されなければならぬと思います。偏向ということばがございました、が、どういう意味における偏向であるか、ちょっとわかりかねるのでございますが、私どもは、いわゆる偏向した社会教育は望ましくない、このように考えておる次第でございます。  なお、地方における婦人の有力な、指導的な立場にある方々に、外国に出張していただいておるということは、確かにそのとおりでございます。それは、やはり地方におけるこれまで婦人の教育につきまして、経験の深い指導的な立場にある方々を選んで、そうして外国を見てもらっておる、帰られましたら、なお一そう御勉強願いたい、こういうようなつもりでやっておるのでございます。  その選考のしかた、あるいはその後の仕事の状況等につきましては、社会局長からお答え申し上げます。
  368. 齋藤正

    政府委員(齋藤正君) 婦人団体の、視察から帰ってきた方々は、それぞれ帰ってまいりましたあとにおきましても、みんなで打ち合わせをして、そしてその結果というものを取りまとめまして、これを冊子にして、いろいろな教育機関で読んでいただくような措置も講じますし、また、それぞれの方々が、それぞれの地域におきます婦人団体の活動なり、あるいは婦人教育の場、あるいは指導者講習の場で、外国の社会教育あるいは家庭教育の実際につきまして、その見聞を披露していただきまして、婦人教育の教材に資しているわけでございます。
  369. 藤原道子

    藤原道子君 もう一つ大臣の御答弁に、偏向ということはどう偏向しているのかわからないとおっしゃいましたが、具体的に申し上げたい。婦人はいま非常に政治の面に注目しております。そういう意味で、地方から、私ども社会保障など取り上げておりますと、婦人学級で講師として派遣してほしいというようなことを、県の教育課などへ申し出ます。あの人は社会党だから困る。こういうことで締め出したそうでございまして、こうしたことに対する地方の不満といいましょうか、そういう申し出がたくさんあるわけなんです。そうした意味から、社会教育が、私どものことばから言えば、保守的に偏向しているのではないか。いまの政府都合のいいような教育がなされておるということになれば、むしろいまでは自民党の婦人部活動というような面が露骨にあらわれておりますから、私はちょっとお伺いしたわけです。
  370. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 現在の地方の婦人活動が、自民党の線に沿ってやっているというふうなことにつきましては、私は、さようには存じません。地方の方々の健全なる常識に従ってこれをやられている、このように考えておる次第でございます。  いまの講師の問題、具体的なことは私も存じませんけれども、社会党だからとかなんとかということは問題にすべきでないと思います。問題は、教師自身の問題であろうかと思うのであります。地方のそういう問題を計画する向きにおきまして、これがその地方のために適当な人であるかないかということを、良識をもって判断してもらいたい、このように私は考えております。
  371. 藤原道子

    藤原道子君 問題は、中央からそういう指導がなされておるのか、地方の社会教育課の判断でやっておるのかは私は存じませんけれども、どうもそういう事例が多々ありますので、この際お伺いしたわけです。もし今後そういうことがございましたら、そういうことに対してはそういう門違った——もしあなたのことばを借りれば、間違った指導がなされている場合には、社会教育の面において指導していただきたい。
  372. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 私のほうで間違っておる、かように考えましたら、今後はそういうことのないようにという意味で指導いたしたいと存じております。
  373. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 山本委員の質疑は、次回に行なうことにいたします。残りの時間は十九分であります。  本日はこの程度にいたしまして、次会は来たる二十三日月曜日、午前十時から開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十四分散会