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1964-03-17 第46回国会 参議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月十七日(火曜日)    午前十時二十五分開会     —————————————  委員の異動  三月十七日   辞任      補欠選任    阿具根 登君  藤原 道子君    基  政七君  赤松 常子君     —————————————   出席者は左のとおり。    委員長     太田 正孝君    理事            大谷藤之助君            斎藤  昇君            平島 敏夫君            村山 道雄君            藤田  進君            山本伊三郎君            鈴木 一弘君            高山 恒雄君            奥 むめお君    委員            井上 清一君            植垣弥一郎君            江藤  智君            木村篤太郎君            草葉 隆圓君            小林 英三君            小山邦太郎君            木暮武太夫君            後藤 義隆君            河野 謙三君            郡  祐一君            櫻井 志郎君            塩見 俊二君            杉原 荒太君            田中 啓一君            館  哲二君            鳥畠徳次郎君            山本  杉君            加瀬  完君            亀田 得治君            瀬谷 英行君            戸叶  武君            羽生 三七君            藤原 道子君            安田 敏雄君            米田  勲君            牛田  寛君            赤松 常子君            須藤 五郎君   国務大臣    外 務 大 臣 大平 正芳君    大 蔵 大 臣 田中 角榮君    厚 生 大 臣 小林 武治君    農 林 大 臣 赤城 宗徳君    通商産業大臣  福田  一君    運 輸 大 臣 綾部健太郎君    労 働 大 臣 大橋 武夫君    自 治 大 臣 早川  崇君    国 務 大 臣 宮澤 喜一君    国 務 大 臣 山村治郎君   政府委員    臨時行政調査会    事務局次長   井原 敏之君    経済企画庁総合    開発局長    鹿野 義夫君    大蔵大臣官房財    務調査官    松井 直行君    大蔵省主計局長 佐藤 一郎君    大蔵省理財局長 吉岡 英一君    厚生大臣官房会    計課長     戸澤 政方君    厚生省環境衛生    局長      舘林 宣夫君    厚生省保険局長 小山進次郎君    農林大臣官房長 中西 一郎君    農林省農林経済    局長      松岡  亮君    農林省農地局長 丹羽雅次郎君    農林省蚕糸局長 久宗  高君    食糧庁長官   齋藤  誠君    通商産業省通商    局長      山本 重信君    通商産業省繊維    局長      磯野 太郎君    自治大臣官房参    事官      宮澤  弘君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    臨時行政調査会    会長      佐藤喜一郎君    自治省財政局財    政課長     岡田 純夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十九年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十九年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十九年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 太田正孝

    委員長太田正孝君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和三十九年度一般会計予算特別会計予算政府関係機関予算、以上三案を一括議題とし、きのうに引き続き、質疑を行ないます。山本伊三郎
  3. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは最初に、実は御多忙のところ御出席願った佐藤臨時行政調査会会長に対しまして、若干質問したいと思います。  すでに臨時行政調査会が出発して二年になろうとしておりますが、いろいろと御苦労願いまして、九項目にのぼる一応の報告書も通覧さしていただきました。いろいろと内容を見ましても、非常に検討されていることにつきましては敬意を表します。ただ、冒頭にひとつ会長にただしておきたいのは、過去の経験から見ましても、行政組織改革ということは、きわめて抵抗のあるものでありまして、せっかくやがて答申が出されようとしておりまするが、この答申を出された後における政府がこれをどうとるかということは、非常に問題があると思いますが、すでに会長もたびたび声明されておるように、答申が出た以上、やはりそれを現実に実行しなければ、これは答申そのものの御苦労も水のあわでございまするが、それに対して、会長はどういう決意考えを持っておられるか、冒頭にこれをひとつお伺いしておきたいと思います。
  4. 佐藤喜一郎

    説明員佐藤喜一郎君) お答え申し上げますが、われわれが意見をこれから出す——間もなく出せる段階になるかと存じておりますが、これがわれわれの希望するように実施されるのにはどうしたらいいかということの一つの手段として、発足以来、この改革案内容が未定でありますにいたしましても、世間にその実情を訴えまして、世論の喚起につとめたということが一つでございます。それから政府のほうがどのようにこれを受けとめられるかということは、私のほうでとやかく申すことではないので、政府のお考え次第だろうと存じますけれども、あるいは御質問の中には、アメリカ委員会——終末になりまして市民委員会ができたというようなことをお考えの上で御質問があったのかと存じますが、アメリカ市民委員会というのは、これは少し事情が違いまして、あのままの姿でこれを日本でやれるかどうかということはちょっとわかりません。かつ、あれはやはりフーバー委員会とは直接関係のない市民有力者が自発的にそれを組織したという点に特色があるようでございます。したがいまして、万一そういうものができましたときには、われわれは双手をあげて喜ばしいことだと考えるわけでございますが、いま私がさしあたりお答えできますことは、世論の力でわれわれの意見なり答申なりを十分注目していただいて、その世論の力で政府がこれをできるだけたくさん取り上げていただくことを希望しておるという段階でございます。お答え申し上げます。
  5. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 会長の大体の考え方がわかりました。しかし、今度の報告書を見ましても、相当根本的な行政組織改革が盛られております。七人委員会と称する臨時行政調査会は、全会一致でとにかく答申案をきめるという原則があるようでありまするが、この七人委員会の中でも相当問題が最後の段階になると出てくると思うんですが、その際多数意見少数意見というような答申の形をとられるのか、全会一致を見たものだけを答申として出されるのか、これはもちろん七人委員会会長は相談されて決定されると思いますけれども会長考えがあればその点ひとつもう一回お聞きしたいと思います。
  6. 佐藤喜一郎

    説明員佐藤喜一郎君) ただいまの御質問でございますが、おっしゃりましたとおり全会一致制というものが附帯決議でついております。なぜこういうような附帯決議があったのかよく存じませんが、調査会といたしましては、この附帯決議の趣旨もありまして、発足当時委員間で打ち合わせを行なって、基本的の条項については、まあなるべく全会一致原則としてやることにきめておるわけでございます。したがって、いよいよ最終段階にまいってまいりますと、委員の会合をひんぱんに行ないまして、委員相互間の意見の調整に最善の努力を果たしたいといま考えており、またそれを実行しておるわけでありまして、何ぶんにも委員も他の仕事がありまして、なかなかひんぱんに開くのに骨が折れておる状態でございます。しかし、私個人の感じといたしましては、この全会一致というような原則につきましても、皆さん良識のある委員ばかりでございます。そう心配はないかと存じておるわけであります。まあ、この基本問題と申しますのは、すでにときどき発表しておりますんですが、行政がなるべくばらばらにならないように統一性を持ってもらいたいという点でどうしたらばいいかということ、それから現在の行政事務には不要不急に、あるいは時世の変化によって不要不急になったものがあると同時に、また大いに拡充しなきゃならない事務もございますので、この二つを振り分けまして、それからまた中央と地方で、どういう行政事務を、なるべく地方へ、住民に近いところでやったらよかろうという考えも入れております。さらにまた行政事務の運営の簡素化合理化、なるべくこういうものには民間のアイデアを入れたらどうか、また何を申しましても民主主義時代でありまするし、国民のため、あるいは国民に便利な行政というようなことを柱にして重要事項と申しますか、こういうような点についてはなるべく全会一致にいたしたいと、こう考えております。お答え申し上げます。
  7. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 せっかくですから、もう一点ひとつお聞きしておきたいと思うんですが、ごく最近第二専門部会だと思いますが、太田私案なるものが一応発表されまして、それがために各省庁と申しますか、方面では相当大きな抵抗といいますか、反対意見があったようでありますが、本日の新聞にも若干そういうものが載せられておりますが、こういうことで私案を発表されただけでも相当いまの官僚組織そのものは網の目を張るように実はかたいものでありますから、相当これは問題があると思うんですが、私は答申が出てから政府がどう取るかということを冒頭に聞きましたが、答申が出るまでに調査会に対していろいろと私は抵抗があると思うんですが、この点につきまして、会長としては勇断をもって答申をされると思うんですが、今後そういう抵抗が出てきた場合、会長としてはどういう措置をとられるか、勇断をもってやられるかということをもう一回その決意だけ聞いておきたいと思います。
  8. 佐藤喜一郎

    説明員佐藤喜一郎君) ただいまのお話でございますが、私ども委員会といたしましては、そういう抵抗があるとは考えておらないのでございます。事実意見を、現場の行政に携わっている向きにこういうふうな改革はどうだというふうに伺いますと、反対があるということは確かでございます。その場合に、理由があればわれわれは考え方を変えますし、理由がなければ、反対であることはわかっておりましても、答申はそのままわれわれの委員会できまった案で出したいと、まあ簡単に申しますと、その点それだけに尽きるのではないかと存じております。ただ、委員の中には専門の人もおりますが、私のようなしろうともおりますから、勢い事務当局ないし行政に直接携わっておる方々に、こういう考えではどうだろうかということは、時時意見を伺って、そうして、かつわれわれとしましては、この結論を出します前に、昨年の夏ごろ懇談会という形で全国七都市ばかり回りまして、そこでなるべく各方面の方に、約二十名足らず出ていただきました。そのときに皆御意見を伺っているわけであります。したがって、官庁の言うことも、われわれはウエートを置かないというわけではございませんが、そういう地方国民のなまの声を聞いてきたということも、われわれの結論を出します上に参考にしておるような次第でございます。お答え申し上げます。
  9. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ行管長官にひとつお聞きしておきたいと思いますが、これは一問だけでいいですが、いま佐藤会長が、冒頭私の質問に対していろいろ決意を述べられて、非常にまあ勇気を持ってその答申を出し、今後のそれの実施に対して相当注目をしておるという意見だったと思うのですが、行管本部長としての山村長官に、この調査会の何に対して、きょうは総理はおりませんけれども、あなたは政府を代表して、答申の出た後における政府考え方、それについてひとつ聞いておきたい。
  10. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) お答え申し上げます。政府行政改革につきましては、臨時行政調査会答申を尊重し、政府責任において積極的に推進する方針でありますが、私といたしましても、およそ行政改革は尋常の決意ではこれを行ない得ないものと覚悟しておりますので、本部長として勇断をもって政府部内において全力を尽くしてその実現に努力いたしまして、国民の期待にこたえる所存でございます。
  11. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 内閣委員会でも行管長官にぼくは言いましたので、もう本日はこの程度にしておきますが、しかし非常に、きょうの朝日だったと思いますが、朝刊を見まして、太田氏からまあいろいろと聞いておりまするが、全般的な情勢は知らなかったのですが、あの新聞記事を見まして、あの臨時行政調査会案を、私内閣委員会理事をしているときにあれを上げたものですから、しかも、わが党は賛成であれをあげております。いわゆる構成は挙党一致調査会だと私は思っておるのですが、それが答申が出た後に、これが竜頭蛇尾といいますか、これがから鉄砲に終わったということになると、今後国民に対してわれわれも責任をとらなくちゃならぬと思いますので、この点ひとつ十分政府としては考えていただきたいと思うのですが、もう一回それについて。
  12. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) お答え申し上げます。ただいま内閣委員会におきまして、臨調の六カ月延長の案の御審議の最中でございますが、おそらく前回同様全党の御賛成を得て通過させていただくものと考えておる次第でございます。しかる上は、この臨調答申というものは、国会全体の意思を反映した答申であるという見方も成り立つと思う次第でございますので、十分山本先生の御意見を尊重いたしまして、善処をするつもりでございます。
  13. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 次に、医療行政全般について厚生大臣に聞いておきたいと思います。自治大臣がまだ見えないので、順序をかえて、厚生大臣に開いておきたいと思います。  この前の補正予算のときの私の質問に答えて、大ざっぱに医療費増高について、対象人員がふえたからこうだという答弁だったと思いますが、私は実際はそうでないと思うのです。そこで昭和三十年あるいは三十年以降でもけっこうですが、昭和三十年から政府管掌あるいは組合管掌その他の医療費の一件当たり日数、一件当たり金額の上昇しておる推移をひとつ報告してもらいたい。
  14. 小林武治

    国務大臣小林武治君) まず一日当たり診療費、これを政府管掌健康保険だけについて申し上げますと、昭和三十年が二百十二円、三十一年が二百十五、三十二年が二百二十五、三十三年が二百四十四、三十四年が二百六十三、三十五年が二百七十五、三十六年が三百二十七、三十七年が三百七十五、こういうふうに逐年顕著な増加をいたしております。これが一日当たり診療費でありますが、一件当たりを申し上げますると、これが三十年が千三百四十三、三十一年が千二百八十六、三十二年が千三百四十五、三十三年が千五百二十九、三十四年が千五百七十三、三十五年が千五百八十三、三十六年が千八百二十二、三十七年が二千六十五、これが被保険者の一件当たり政府管掌健康保険状態であります。
  15. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 組合管掌とか、あるいは医療扶助その他を聞きたいのですが、時間もかかるから、一応大体それはそれでいいのですが、いまは一件当たりのを言われましたが、この増高する指数を見ましても、三十年を一〇〇といたしまして、三十八年には入院の場合が二一一、入院外の場合は二五二というきわめて高い指数を示しておるのです。これは一件当たり、一日当たりでございますから、その対象人員がふえたということにはのがれられないと思う。こういう一件当たり医療費増高する原因というものは、厚生省はどう把握されておるか、それをお聞きしたい。
  16. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 大量観察をいたしますれば、大体受診率増加したということ、それからいま申す一日当たり診療費増加、これが大きな原因でありまして、受診率増加は、国民健康保険に対して特別に顕著である。これは制度が普及した、また給付率が改善された、国民の健康に対する関心が高まった、こういうことでありまするし、また、一日当たり診療費増加は、医療内容進歩によるものでありまして、特別の問題は、医薬品の費用が大幅に伸びておる。すなわち現在では、全診療費の中の三〇%余にも医薬品費の占める割合がなっている、こういうことでありまして、この医薬品費増大そのものは、薬の価格が上がったためというのではなくて、新薬等の良質なものに移行したために、あるいは医薬品進歩によりまして医薬の使用が増大した、こういうことでありまして、このことは、結論的にいえば患者利益になっている、こういうふうになっております。
  17. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 厚生大臣は、患者利益になっている——ぶんか、なっている。厚生省は、きわめて現在医師会なんかに対して低姿勢だ。私は何も医者を責めるわけじゃない。病院診療状態は、開業医から見ると、きわめて顕著な差がある。こういう点を、私は厚生省は、そういう政治的に医師会との間に問題があるから、これはあまりここで追及することは、あなた困ると思いますが、要するに、財政的にいいという組合管掌でも、いまの状態では経済が持たぬようになっている。保険料率を上げる以外にないという。現在、共済組合グループ短期給付が、もう手を上げるような形になっている。一体、厚生省は、国民適正医療費というものを、国民所得から見て何%ぐらいに線を引いておられるのか、その点聞いておきたい。
  18. 小林武治

    国務大臣小林武治君) ただいまの前段のお話は、医薬品の占める割合が非常に大きくなったということは、これはわれわれいろいろ考えさせられる要素を含んでおります。たとえば注射とか投薬を重視している開業医関係が多く上がっているというようなことは、お話のとおりではないかと思います。それで、この問題は今後の医療費考える場合において、相当に大きな問題として考えなければならぬ、こういうふうに思っております。  なお、国民所得において医療費がどれだけ占めるべきか、あるいは占めているか、こういう問題でありますが、このことはなかなかむずかしい問題でありまして、どれだけが適正であるかというふうなことは、学問的にも定説はありませんし、また、これは簡単にきめられる問題ではないと思っておりますが、大体欧米諸国等の実態を見ますと、四%を多少こえている、こういうのが一応の結果的の基準になっております。それで、どこで適正な医療費割合をきめることが可能であるか、こういうことも非常にむずかしい問題でありますが、そういうことができるかどうか、こういう可能性の問題も含めまして、医療費基本問題研究員というものに対しまして、ただいま研究をお願いをいたしております。大体これらの実体、医学、医術の進歩とかあるいは制度の改善、診療費の改定、こういうことによって結果的には医療費が定まってくるというふうに思いますが、日本診療費が一体どれくらいになるか、こういうことも一応調べたのでは、だんだんそれに近づきつつある。すなわちここで申しますれば一九六二年に、日本でいえば四%余になっている、こういうふうな結果的の調べが一応出ております。
  19. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大体日本罹病率の高かったのは、いままで結核だったのです。これが世界各国と比較して非常に日本医療費が高かった原因である。それが、日本のいわゆる予防医学が進んで、結核罹病というものが非常に減ってきた。いま言われましたように、三十七年で世界並みの四・一六%を占めている。私はこの程度でとどまるような状態ではないと思うのです、いまの状態でいくと。それで私質問しているのです。現在、何ですか、昔は相当いろいろと医療監査というものをやられておった。これは医者をいじめるためのものではなく、適正医療をやっているかどうかということが問題である。今日それをやっておられますか。
  20. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 医療が適正に行なわれているかどうか、こういうことはやはり多少のうわさもありますし、われわれもこれは適正に行なわれるように何らかの手当てをしなければならぬ。ことに最近において医療扶助というものが非常にふえております。これらにつきましても、これは生活保護関係とも関係がありまするが、いまのままで、このままおいていいか、何らか監査とか、こういうふうな方法をとる必要がないかということも考え、まあ多少のことをいまやっておりますが、これは一般に申せば医道の問題、医師の道徳の問題に関係するわけでありまして、適正に行なわれていると私は思いまするが、しかし、必ずしも世間ではそればかりではないうわさもあるということを私ども知っております。いま申すように医療扶助というふうな問題についても、私どもはやはり適正な、適当な何かチェックする方法等についても考えなきゃならぬ、こういうふうに思っております。
  21. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 言いにくそうな答弁だと思いますが、私は医療というものは公共性の最も強いものだと思うのです。これはもう教育と医療というものは、どの国でも非常に重要な問題だとされておる。それに対して厚生省は、いろいろ過去においては問題はあります、私は厚生官僚のやっておること自体も、私は経験もありますけれども、今日は非常な逆な現象を生じておる。それは迷惑かかっておるというのは、いわゆる患者であり被保険者であり、あるいはそれの対象の人々である。そういうものに対して、ぼくはもう少し公正な立場——私は医療監査と言うことはやめましょう——医療指導という立場で積極的にやらなければならぬと思う。ひとつこれは私も聞いておるのですが、京都保険診療では三けた運動というものが展開されたために、京都診療費は、ずばぬけて高い、こういうことを厚生省知っておられますか。
  22. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 話を聞いております。非常に診療費増高するために、京都では、たとえば給付は自発的に相当法定より上へいっておる、それを引き下げるなどと、こういう事態も生じておるということを聞いております。
  23. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この点につきましては、厚生大臣もいまいろいろと中医協で問題にならんとしておるときでございますから、あまり追及することをこの機会に避けますが、このまま放置しておけば、一体どこまでいくかわかりませんよ。今日国保が非常に財政的に逼迫しておるというけれども政府がそれに対して交付税手当てをいたしましても、補助金を出しても、それはおそらくもう問題にならぬようになってきておると思うのですね。これはだれに及ぼしているかといえば、国の財政でこれを補てんすれば、一般国民がこれを負担していくことになるのですね。そういう点を考え、私は医療監査やるというような、そういう官僚的なことばは使わないから、医療指導ということで、適正な医療をやるように厚生省は今後やるかどうか、この点聞いておきたい。
  24. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これはお話のように適正な指導をしなきゃならぬ。それで、現に間々保険の指定を取り消される、こういう医師もあるのでございまして、これらは、やはりさような適正でないことが行なわれておる、こういうことの一つの証左でもありまするし、お話のように指導を強化する、そして医道の確立をはかる、これは当然われわれとしてしなければならぬことだと考えております。
  25. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それに関連して、この日本医療行政は、私はどうも考え違いしておると思う。先ほど例を言われましたが、欧米ではもう病院というものはほとんど公立というものが原則なんですね。それでなくてはならぬと思う。しかも最近何か十万以上の都市においては、公立病院のベッド数を制限する。一体どういうわけなんです。
  26. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これはベッドの適正配置と、こういうふうな考え方から出たものと思いまするが、もし個人の意見というものが許されるなら、私はあまり賛成でありません。しかし、とにかく議員立法で成立しておる。したがって、これを施行するということは私の責任でありますが、施行するにあたっては、要するに医療の確保、こういう点において欠けるところのないように、できるだけの配慮をいたしたい、かように考えておるのであります。まああれができるにつきましても、公立病院の偏在というようなこともあったと思いまするが、いまお話のようなこと、欧米の例もあり、私は法律によって医療の問題にそう大きな支障のないように配慮して実施をしたい、かように考えております。
  27. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私は、言い過ぎかしれませんが、いまの日本医療行政は、なっておらぬと思う。と申しますのは、いま言いました病院の問題もありますが、それ以外にいたしましても、大体現在病院の経営が成り立たぬ。特に公立病院においても独立採算制ということで非常に強化されてきておる。諸外国では、実際公立病院なんかの建設というものは、患者の負担でやっておるというのはほとんどない。これは社会資本のつぎ込み、いわゆる公共投資ということが重点にならなくては、病院というようなもの、医療というものはやれませんよ。商売ではやれませんよ。日本の国だけですよ、自由医療医者はたくさんおられて、医者が余って足らないというような状態ですよ。私、何を言っておるかわかりますか。山村僻地へ行ったらお医者さんおらない、診療所はあってもお医者さんおらない。都会周辺にはうんとおられる。これで日本医療行政、なっておるんですか。こういうことを厚生省は一体考えているのかどうか、この点お聞きしたい。
  28. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これは日本医療の沿革的な事情からそういうふうになってきております。いまいわゆる皆保険が布かれたのはまだ数年前、こういうことでありまして、皆保険によりまして医療というものが相当な公的な性格を帯びてきた。こういうことになりますので、これらの性質の変更に伴って、医療のあり方、医療行政のあり方、制度のあり方、そういうものは私は当然これから検討されねばならぬ、と思うのでありまして、いまは皆保険が始まったばかりの一つの過渡期にあるということであります。したがって、自由営業が従来どおりそのままある、こういうことでありますが、これらの問題につきましても、当然私は検討がされなければならぬ問題であると思うのであります。ことにいま申されるように、公立病院等が、たとえば起債等によって患者に費用が転嫁されるということは、私はなるべくこれから考えなければならぬ。しかし、いまでも公立病院が税金を負担しないとか、あるいは安い投資でやっておるとか、こういうことについても一方から非常な非難がありまするし、いまそういうふうな過渡期であって、いろいろな渦が巻いておる、こういう状態でありますが、ほんとうのいまの皆保険が徹底するに従って、私は、どうしてもこれらの問題を検討しなければならぬ、かように考えております。
  29. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私は、根本にはいろいろ問題がありますが、やはり日本政府が、逆に言うと医師に対する待遇というか、見方というものが、いまの自由営業だということで、非常に軽率にすぎておると思う。医師もやはり仁術といいますか、相当重要な社会的使命を持った方々ですね、それを自由営業だということで、商売のような形にしてやらして置くところに私は日本医療行政の間違いがあるということを言いたい。しかし私は時間もそうないので、この点については、いま小林厚生大臣の言われたように、今後それについて十分検討して、前向きでひとつ措置をしてもらいたいと思う。  それから公立病院だけに限らないんですが、そういうことから、それに働く方、これは医師も含めてでありますが、特に看護婦とかあるいは保健婦、助産婦という方々は、きわめて過酷というほどに労働強化がされておる。いまの医療法の施行規則の十九条で患者四人に対する一人の看護婦さんという、そういう基準が守られておりますか。
  30. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これは一応看護婦の定員をきめるものとして医療法できめておりますが、必ずしも守られておらない。これは結果的に申せば看護婦が足りないということも一つ原因であるし、経営上の問題もあるし、いろいろの理由で必ずしもこれは順守されておらないということは事実であります。
  31. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 看護婦が足らない。いわゆる希望者が少なくなってきておることは事実ですが、そういうものをやはり手当てをするのが医療行政、厚生行政じゃないんですか。今日の来ることはもう早くからわかっていますよ。実際私が直接調べたところでありますが、ほとんどの病院では看護婦さんらは月六十時間から百二十時間の超過勤務をやらぬと、それがつとまらないというような状態ですよ。そういうことはもう労働基準法からいっても、これは許すべきじゃない。ただ公立病院だということでやられておると思いますが、そういうことは私は、あってはいけないということは、もうはっきりしておるのに、厚生省はそういうはっきりした規則があるのに、なぜ積極的に指導できないのか。私立病院についてはいろいろ問題がありますけれども公立病院については私は積極的にやれると思う。その点どうですか。
  32. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これはお話のように、労働がある程度過酷であると、こういう事実がありますし、また低賃金である、こういうこともあります。国立病院等におきましては人事院等の関係もありまして、われわれもこれの格上げということについては強く要望しておりますので、少しずつ上がっておりますが、なかなかまいりません。したがって私どもとしましては、その前に相当——四年もやらなければならぬ、あるいは二年やらなければならぬということで、費用が非常にかかっております。それで看護婦の養成そのものが、いまではほとんど病院の付帯事業として行なわれる。しかも、その付帯事業でもって経営するについて、看護婦養成そのものの経費が病院の経費の中に計上されておる。すなわち患者診療利益からこれが出されている。こういうふうな事情にありますので、このあり方を私はよろしくないと、こういうふうに思いまして、ことしはできませんでしたが、これらの養成上の運営費というものを、ひとつ国からある程度出すということを、ぜひひとつ実現させたいと思っておりまするし、またその養成所の施設、こういうものにつきましても、従来施設者にまかしておったが、ようやくここ一、二年前から国からも施設費を補助する。こういう制度が出ております。まだ金は一億数百万円、わずかのものでありますが、これらもどうしてもしていかなければならぬ。また看護婦自体に対しても、いまのように自費でもってやらせるということが非常に無理でありますから、これはインターンなどと同じに考えまして、私は、いまは貸し付けをやっておりますが、この貸し付けがまだ五千万円ぐらいしか出ておらぬということでありますので、こういうものを相当程度ふやして、そうして養成そのものをひとつ援助しよう、こういうふうな考え方をいたしております。それから、これらのPR等も足りない。それからまた看護婦がいまのような制度でなくて、ある程度ひとつ文部省で看護婦学校というのをつくってやってもらいたいということで、こういうことで文部省とも話をし、文部省もその方面にひとつぜひ力を注ぐ、こういうお話になっておりますが、養成制度自体について相当私は根本的な改革をいたしたいと、かように考えております。
  33. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 もう一点だけ、私この点聞いておきたい。医療関係者としては医師の問題がありますが、看護婦の問題。これはもう欠かすことのできない一つの重要なものである、ものというか、人でありますからね。実は現実の例として、神奈川県の三浦市の国保病院でこういう例がある。看護婦が定員不足で休めないということから、妊娠しておったのに無理に出なくちゃならぬ、それがために流産した、人権問題なんです。これはここだけではない。方々にある。今日の看護婦が払底するというのは、いま厚生大臣が言われたように、いろいろ養成期間の問題もありましょう。しかし、国が積極的にこの医療関係者の一員である看護婦に対する政策といいますか、行政指導といいますか、そういうものが誤っておると思うのですね。最近聞きますと、養成期間さえ縮めたらたくさんできるのじゃないかといって、六カ月養成の何か速成看護婦さんの制度をつくろうというようなうわさを聞いておる。もってのほかです。これは昔の女中さんがわりの看護婦に堕してしまいます。そういうことをいわれておるのですが、やはりそれについては、政府としてははっきりした医療関係者の一人である、医師と同じような形で患者を守っておる、この看護婦に対して、厚生省考え方を最後にひとつ聞いておきたい。
  34. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これはもう私も病院等で自分でいろいろ経験しておりますが、看護の仕事が医師と並んで非常に大事な仕事であると。それに比べて待遇あるいは身分等においても看護婦は恵まれてないということを私自身も痛感しておりますし、大事な要員として十分な私は身分、待遇上のことを考えてあげなければならぬと、こういうふうに思っております。何ぶんにもたとえば私設の医療機関等においては、やはり安い——安いといっては語弊がありますが、者を使いたいと、こういうふうな考えもあるように思いますが、私はそれは適切でないと思って、お話のような趣旨でひとつ十分の努力をいたしたい。いま申すように、看護婦の問題あるいはインターンの問題というのは、厚生省のいままでの措置のしかたが非常におくれておる、また非常に不十分だったということを痛感いたしておりますので、善処いたしたいと、かように考えております。
  35. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは、きょうの本題の問題に入りたいと思う。昨日国税の問題でいろいろ論議されましたが、きょうはひとつ地方税の問題を聞いてみたいと思う。  その前に自治大臣に聞いておきますが、三十五年から来年度三十九年度までの国民所得に対する地方税の割合はどうなっていますか。
  36. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 三十四年度は六・一%、三十五年度六・二%、三十六年度六・四%、三十七年度六・七%、三十八年度六・五%、三十九年度の見込みは六・六%でございます。
  37. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それは少し間違っておるんじゃないですか。大蔵省から出しておる国民所得に対する租税負担率を調べて見ますと、三十五年度国税が一五・一%、地方——これを含めて二一・三%ですから、これはもう算術計算で引いたらそういう数字が出ると思うのですが、どうですか。
  38. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 先ほど申し上げたとおりで間違っておりません。
  39. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この大蔵省の資料で私は計算しておるのですが、どうなんですか、三十五年度は、国税、地方税合わせて二一・三%で、国税が一五・一%と出ているのですが、それから三十六年は全部で二二・一%で、国税が一五・七%、こういう数字になっておるのですが、六・七%というのは何年ですか。
  40. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 三十七年度でございます。
  41. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そこで聞きますが、国税が非常に上がっておるといういろいろの意見があるのですが、地方税も昨年から、まあずっと前から見ましても、相当これは上がっておるのですね。三十九年度は、前提に聞いておきますが、地方税の減税が全部で幾らになっておりますか。
  42. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 四百九十五億でございます。
  43. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この地方財政計画の道府県税と市町村税のトータルが出ておるのですが、それを合わせますと三百六十三億二千七百万円となっておるのですが、この数字はどうして合わないのですか。
  44. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 軽油引取税の増、たばこ消費税の増がありますので、差し引きましてそういうことになっております。
  45. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これは地方財政計画上どこに数字が入っておるのですか、いま言われた……。
  46. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 地方財政計画の地方税合計の最後の地方税の総計の中で、その内訳といたしまして入っておるわけであります。
  47. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いまの答弁地方財政計画のどこですか。政府委員でいいですよ。
  48. 岡田純夫

    説明員(岡田純夫君) 差し上げました資料の中に、内訳といたしまして、「税制改正による増減収額」というのがございます。それの一番下を見ていただきますと、カッコして、三百三十八億の減、増減でございますので、結果としては二百六十二億の減、そういうことになります。
  49. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすると、その増減を差し引いて、いま私が言った三百六十三億二千七百万円になるのと違いますか。それはどうなんですか。
  50. 岡田純夫

    説明員(岡田純夫君) 減税の総額の累計は、ただいま申し上げました三百三十八億、それが正しい数字でございまして、ただいま申し上げましたとおり増収分が百五十四億ございますので、減収としましては別に四百九十二億、それから増収は百五十四億、で、通算いたしまして三百三十八億の減税結果、こういうことになっております。
  51. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それで、さっき自治大臣は四百幾らと言われたから、私はちょっと問題があると思ったんですが、大体それで一応はわかりましたが、それでは、そういう資料の照らし合わせは一応終わりまして、それでは自治大臣に聞きますが、地方税はわれわれからみて三十七年にオプション・ツー、要するに課税方針第二方式をとられてから住民税が非常に上がってきたように思う。特に府県民税については、累進税から比例税をとられてから、非常に地方税の負担が多くなっているのですが、それに対しまして自治大臣は、昨日の答弁では、今後それに対してはっきりした、減税するとか、そういうことを考えるとかいう意見がなかったのですが、住民税について今後の自治大臣のひとつ所見を聞いておきたい。
  52. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 減税をするにこしたことはないのでありますが、われわれといたしましては、地方自治体の住民税というのは、おまわりさんの費用とか、あるいは学校とかあるいは消防とか、非常に自治体として身近な問題の分担をするという思想がございますので、昭和三十七年度の改正の場合に、国税の所得税の控除を引き上げるとかというものの影響を断ち切ったわけであります。しかし同時に、われわれといたしましては、住民税の市町村間のはなはだしいアンバランス、すなわちただし書き方式と本文方式というものの相違による二倍、三倍の住民税負担というものは、これは別の観点から不均衡を是正する必要があると考えまして、今回の法律改正によりまして、まずその面からただし書き方式を本文方式に統一するという画期的な減税措置をとったわけでございます。なお、それ以外に、国税に近づけるという御意見、また、基礎控除を引き上げるという御意見、いろいろございますが、これは自治体と国の税金との本質的な相違もございますので、将来の問題として、この住民税の本文への統一が完成した後において検討すべき問題と考えておる次第であります。     —————————————
  53. 太田正孝

    委員長太田正孝君) ただいま委員の変更がございました。  阿具根登君が辞任され、藤原道子君が選任されました。     —————————————
  54. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この住民税の推移だけ見ましても顕著なものがある。あなたのほうに言わせると、資料でいろいろ手間がとれる意地悪い質問をすると言われますから、私の調べたところで言いますが、住民税のこれは道府県あるいは市町村のやつを合わして、別々にありますけれども、合わしてみますと、三十五年度では個人では八百十八億のものが三十九年度では二千三百三十九億、市町村の分ではこれは法人ですが千三百四十六億、きわめて高い数字になっておるのですね。こういうことから見ると、国税の所得税の減税ということは非常にやかましく言われますが、やはり地方税における住民税の減税ということは、もうすでに自治省は考えなくちゃならぬと思う。いま、ただし書き方式を本文方式に変えたから減税になったと言われるのですが、それの対象人員は一体どれくらいなんですか。これは全般的に及ばないでしょう。
  55. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 対象人員は七百七十万人でございます。しかもただし書き方式を本文方式に統一し、準拠税率を標準税率に統一をいたしましたならば、もし現在の所得のままとするならば、約三百万人近い低所得者がいわゆる所得割りの住民税というものを納めなくてもいいようなほどの画期的な改正になるわけでございます。
  56. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それが間違いなんですよ。所得は年々増加しますから。そういう考え方でおられるから減税に対する熱意がないと思うのです。で、先ほど地方税に対していろいろと公益事業が多くなったからと言われますが、三十五年度から今日までの地方財政計画のうちの歳入構成あるいは歳出構成を見ますると、これは私は自治省としても考えなくちゃならぬ問題があると思う。これの数字を読むと時間がかかりますからどうも私もつらいのでございますが、三十五年度における投資的経費が四千七百三十六億であったのが、いわゆる高度経済成長ということで、先行投資なり、公共投資ということから、三十九年度には一躍一兆一千三百七十一億、これはすべて経済基盤の強化に使われておるとは言いませんけれども相当私はそういう経費に回されておる。しかもそういう経費が、国が負担すべき産業基盤強化の経費が住民の犠牲によってやられておるという現実がある。私はデータがあるから読んだらいいのでございますが、時間がないから読みませんが、そういう数字があらわれております。先日、公聴会の席上の公述人の中にもその点は顕著に言われておるのですが、こういう点は自治省、どう考えておるのですか。
  57. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 本来、国がやらんならぬものまでしわ寄せしておるという御意見でありますが、御承知のように、給与関係費は三十五年度は三九%だったのが、三十九年度は義務的経費の人件費におきまして三五%、他方、投資的経費がパーセンテージいたしますと、三十五年度の三三・八%が三十九年に三八・六%とふえ、金額もこれに伴ってふえておるわけであります。このことは、私はやはりその自治体の住民というものの福祉に大いに貢献しておると考えるわけでありまして、地方住民の犠牲においてと、こういうものではないのではなかろうか、かように考える次第であります。
  58. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは聞きますけれども、三十九年度のこれは地方財政との数字で言いますが、地方税総収入が一兆二千九百八億ですか。これは先ほど言われましたように、国民所得との割合を見ると六・六%、私はそれがなぜ高いかと申しますと、それだけではない。一体この地方税と国税とは、国税は応能主義、地方税はあなたらがいつも言う応益分任主義だと言われますが、そういう形でこれは使われておるかということなんです。それ以外にほんとうの応益分任主義で税の中に入っておる手数料、使用料というものは一体どれだけ取られておるか。簡単な例を申しますけれども、あの清掃法によるじんかい、し尿の収集はほとんど手数料を取っておるじゃないですか。あれは市民税の中に全部入っておるもんでしょう。それを別に取っておる。それを入れると一体六・六%ではおさまりませんよ。この点の考えをひとつ聞いておきたい。
  59. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 手数料を取っておるということは、法律で認められておりますので取っておるわけでありまして、これを住民の負担ということに換算すると、もっとパーセンテージが六・何%より多くなると、こういう御意見でありますが、私はこれはし尿を処理する人たちの応益負担とこういう面で、何といいますか、税そのものではない。しかし、御指摘のように、これは住民の負担になっておるからこれは撤廃して全部一般会計で埋めるようにするという御意見もありますけれども、現在のところは、まだ応益者に負担してもらうと、こういう措置をとっておるわけであります。
  60. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 あなたのその考え方というのは、法律できめておるから取るのだ——そういう簡単なものじゃない。地方税というものは一体何のためにあるのですか。国税と違うところはどういうところなんですか。地方自治体が独自に地方税を取るということを法律できめられておりますが、それは一体何のために取るのですか。
  61. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 基本的には先ほど申し上げましたように、自治体としていろいろな、何といいますか、費用が要るわけであります。そういった中には警察の費用もあれば消防の費用もあり、自治体の人たちがみずからこれを負担する均等割りなんかその思想でありますが、そういう意味で必要な地方税を徴収するということになっておるわけであります。
  62. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃこれは一つの例ですが、清掃とか、し尿とか、そういうものはこれは東京なり大阪なり、市町村に住んでおったらだれもすることですよ。こういうものを益するために地方税というものを取っておるのでしょう。警察の問題だけじゃないんでしょう。そういうものをなんで地方税でまかなえずに、県条例で独自に手数料で取らすというようなことは、地方税の機能というものが歪曲されていく。
  63. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 清掃事業、し尿処理につきましては、投資的経費、たとえばごみ処理施設とか、あるいは運搬施設その他のものは、これは起債とか、あるいは一般の会計の収入から処理をいたしておるわけでありまして、すでに自治省といたしましても、昭和三十五年度に比べまして、三十九年度は九十三億円にもこれに対する起債はふやしておるわけでございます。したがって、そういったものは全部自治体でやっておるわけです。投資的なそういったくみ取りの場合の手数料というものだけを現在取っておると、こういうわけでございます。一部分でございます。
  64. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 一部分と言われますが、それは一体年間どれくらい取っておりますか。
  65. 岡田純夫

    説明員(岡田純夫君) ごみで参りますると、消費的経費の一〇%前後、し尿で参りますと、消費的経費の七〇%前後を手数料として徴収しております。総額で六十億くらいになろうかと思っております。
  66. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 六十……。
  67. 岡田純夫

    説明員(岡田純夫君) 六十億でございます。
  68. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それがあなたの形式的な考え方なんです。なるほど直営でやっておる、条例できめたものだけ計算しておる。いまも大多数は業者がこれをやっておる。業者がやろうと直営であろうと市民の負担にしてしまう。そういうものを含めておりますか、全部。
  69. 岡田純夫

    説明員(岡田純夫君) 業者の分はその中には入っておりません。
  70. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 おりませんではいかぬじゃないですか。一体それはどれくらいになるのですか。
  71. 岡田純夫

    説明員(岡田純夫君) 自治体の会計に入っておりませんので、そういう調査まではいたしておりません。わかりません。
  72. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ぼくは意地悪いように聞こえますが、自治大臣熱心に考えてもらいたいと思う。このいろいろ予算書なんかの、財政計画なんかの数に出てくる以外に、相当市民生活をするための負担が必要。しかも、それは地方税という住民税を払っておるのですよ。そういうものをやってもらいましようじゃないかといって払っているのが地方税の住民税です。あるいは固定資産税も一部そこに入るかもわからぬが、そういうものを、私の調査でいくと、相当この産業基盤の強化のために使われている、投資的経費というものに食われておる。それがなけりゃまかない得るのです。そういうことをせずに業者にやらせて、そうして市民の負担を非常に多くしておる。それならその分だけ地方税の減税をしてもらいたいというのです、住民税を。そうでなけりゃ市民は税金を何のために払っておるか。国税についてはいろいろ関心がありましょう。これは問題は別です。言うことはありますけれども地方税についても相当私は問題があると思うのです。しかも国税と違って最低免税点というものはきわめて過酷です。府県民税になると、百五十万円を起点にいたしまして、これは比例になっておる。国税よりもはるかに零細な人まで、零細といいますか、低所得者までが納税対象になっておるのですね。私はこういうことを考えると、そういうものを払ってもらうために、いわゆる応益分任主義で地方税をとっておるのでしょう。そうしながら減税はできない。国税はやっても、これは遮断するのだという形では私は一般市民が承知しないと思うのです。自治大臣の所見をもう一回聞いておきます。
  73. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 御指摘の点はよくわかりますが、地方自治体としてはあらゆることをやっておるわけでありまして、清掃事業、し尿処理も、もちろんその仕事の一つに近時なってまいりました、数年来。住民の負担というものは、そういう意味で、その中に清掃事業も入ってまいりましたがゆえに、これの施設、あるいはその他のいろいろな経費につきまして、自治体が大きくこれを負担するということになってまいったわけであります。手数料の問題は今後の問題として十分検討してみたいと思います。
  74. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 自治省だけいじめておるようですが、大蔵大臣、笑っておったらだめですよ、これは地方財政から来るところの、私はいま自治大臣が言ったが、苦しまぎれの問題があるのです。したがって、これはもう税体系全般の問題になりますが、仕事を多く地方自治体に与えておって、国のほうの、いわゆる財源を地方に回さないというところに根本の問題がある。だから自治大臣は苦しい答弁をしているが、そのとおりなんです。そういうことは、やるべきでないことを取っておるということは、国の施策というものが、経済成長の線に沿った産業基盤の強化に、相当大きい公共投資、社会投資をされるがために地方財政が非常に逼迫している。この点、私は大蔵大臣に頼みませんけれども、十分肝に銘じてほしいと思うのです。一応この問題はこの程度にしておきます。  次に、固定資産税の問題に入りますが、これもまた、意地悪いことではないのですが、地方税収入見込み額のこの固定資産税の増税分はどこに入っているのですか。
  75. 宮澤弘

    政府委員宮澤弘君) 地方税及び地方譲与税収入見込み説明、これの資料でお尋ねだと思うのですが……。
  76. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 地方財政計画です。
  77. 宮澤弘

    政府委員宮澤弘君) 財政計画の資料でございますか、——今回の許価がえに伴いまして税負担の調整をいたしたわけでございますが、おそらく山本委員のおっしゃる、増税とおっしゃいますのは、調整の部分のことをおっしゃっているのだろうと思われます。で、この調整の部分をどう見るか、自然増と見るか見ないか、こういう御議論におそらくつながるだろうと思うのでございますが、御承知のように、今回新評価をいたしまして、新しい評価に基づきまして、そのまま税負担を求めますと、土地といたしましては、宅地にいたしますと、平均、たとえば五、六倍というような評価の増がございます。そのまま税負担が上がってくるわけでございますが、それを今回の調整で、御提案を申し上げておりますような、二割にとどめるわけでございますが、それを現に、一応減税という形で持ってまいりますのは、いかにも常識に相反する、こういうふうに思われるわけでございます。御承知のように、現在の評価制度は、昨年、すでにこれによって行なうという法律改正が行なわれまして進んでおることでございますので、これは現行法に基づく収入、こういうふうに計上をいたしてございます。税制改正に伴いまして、御承知のように、固定資産税について減税を行なうわけでございます。これを減に立てて、プラス、マイナスをいたしているわけでございます。おそらく御指摘になっているだろうと思われます増税とおっしゃいます部分は現行法による収入見込み、こういう中に入っているわけでございます。
  78. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それは入っているかどうかという問題じゃないのです。一体、今度の特例ですね、固定資産税の課税標準と並べて、額の特例の問題ですね。これは地方税の改正じゃないんですか。これはあなた言われたように、調整するということで、これは地方税の一部を改正する法律案として改正されているのでしょう。土地については、宅地については二〇%というのは、そうじゃないのですか。
  79. 宮澤弘

    政府委員宮澤弘君) お答えを申し上げますが、おっしゃいますように、法律の改正でございます。調整をいたしますから改正でございますが、しかし、そういう議論から申しますと、評価額が相当上がるわけでございます。それをそのまま税収にはねかえす。それに対する減税、今度はそれを減税に立てるということをまた考えなければならないわけでございます。それがあまり常識的でございませんので、それを本年度の自然増収というような考え方で、財政計画に計上いたしているような次第でございます。
  80. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それが間違いだというのですよ。この三十九年の地方財政計画を見ると、いつも大臣が言っている土地については一・二は法律も出ておりますが、二〇%アップになるということは、これで見ると六百万円の減税ですよ。これで見ると減税になっている土地が二〇%上がってくるのですよ。それは、私はこの地方財政計画はでたらめですよ、間違いですよ。訂正されなくては私は承知しないですよ。これが地方税法の一部改正でなければよろしいが、調整であろうと何であろうとも、一応改正案として出されているやつが、なぜ地方税改正に伴うところの増減というところに入ってこないのですか。六百万円の減税になっている、土地が。法律では二〇%程度のものが増税になっているのはこれはおかしいじゃないですか。
  81. 宮澤弘

    政府委員宮澤弘君) ただいま御指摘の六百万と申しますのは、今回、固定資産税に関しまして看護婦宿舎等の減税をいたしますその分でございます。先ほども申しましたように、今回の評価制度を改めましたことに伴いまして、評価額が非常に上がってまいりました。それをそのまま税収を求めるということを前提にいたしまして、しかし、調整をするからそれが減に立つのだということになりますと、おそらく減税額として、千数百億というような減税額を立てなければいけないような数字になるわけでございます。それはどうも常識的でなかろう、こういう判断のもとにこういう数字を計上いたした次第でございます。
  82. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 あなたは常識でものをやっておるのですか。われわれは一応法律に羈束されて法律でものを言っているのですよ。常識でこれで見ると間違いを起こすのですよ。先ほど冒頭にされましたが、減税幾らかと言ったのですが、この増税になる数字が全部、これは逆に減税としてここにあがってきているのです。自然増収というのは、これは内容はわかりませんよ。対象がどうなっているのか、自然増収というのは一応わからぬ。今度の一部改正、どれだけ土地の固定資産税が出たかということをこれで見たいのです。見られないじゃないですか。
  83. 宮澤弘

    政府委員宮澤弘君) 六十七億六千四百万円、昭和三十八年度当初見込み額に対して増になっております。これが土地に関する部分でございます。
  84. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それとなぜここに書かないのですか。これは、この一部改正——地方税法の改正によって六十七億幾らというものは増税になるのでしょう。これははっきりしておるのですね。なぜここに書かないのですか。
  85. 宮澤弘

    政府委員宮澤弘君) 昭和三十八年度の当初見込み額に対する増の欄に、六十七億という数字が出ているわけでございます。これがこの部分です。
  86. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それなら聞きますけれども、そうすると何ですか。土地の場合の自然増収というものは何もない、自然増収六十七億五千八百万円というのが、これが増税額ということですか。そういうことですか。
  87. 宮澤弘

    政府委員宮澤弘君) 六十七億の中に、今回の評価がえに伴いますものと、それからおっしゃる自然増——純粋の自然増、両方入っているわけであります。
  88. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そういう地方財政計画がありますか、実際問題で。私はあなたをいじめるわけではないのですが、国民はこれを見た場合、今度特例法によって土地が上がるのだと、こういうことでいっておるのが、これで見ると減税になっておるでしょう。自然増収の中に入っておるのは、一体幾ら入っておるのですか。それを一ぺん聞きたい。
  89. 宮澤弘

    政府委員宮澤弘君) 確かに、御指摘のような御議論もあろうかと思うのでありますが、従来評価がえの年度におきましても、そういう評価増はこういう形で掲記をいたしてきたわけであります。しかし、おっしゃるような、多少今回は調整をいたしておりますので、問題はあろうかと思うのでございます。
  90. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 あなた、これはここの答弁でのがれるわけにはいきませんよ、この問題は。というのは、この減税額が幾らか、実際増税になっておることは事実なんです。調整されておるのは事実です。この法律は調整することになっている。これはあとで私は言いますけれども、今度の実は固定資産税の評価がえというものは、課税標準の根本的の改正ですよ。これはもうあの地方税法によると、自治大臣に評価基準というものの指定権があるからと、こうなっておりますけれども、あの法律は、あの条項は、ほんとうの部分的な評価の変わったような場合を言うのであって、今度のような一般的な、要するに、評価がえの場合には、これは課税標準の改訂ですから、国会の議決を要すべき問題です。税の決定は、御存じのように、課税標準と税率ですよ。その一方の課税標準が根本的に変わってしまう。それがためにこの法律を出された、あまり上がり過ぎたら困るから。もしこの法律ができなかったら一体どうなるのですか。どれだけ農地が上がるのですか。それを一ぺん聞かせてもらいたい。
  91. 宮澤弘

    政府委員宮澤弘君) 各種の土地がございますが、土地全体といたしますと、大体現在の四倍程度上がるわけでございます。
  92. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 あなたのほうはいろいろ資料があるけれども、出さないのですが、宅地では最高十一倍上がる。田で三倍ですね。畑で三倍以上、山林で六倍、大体あなたのほうの資料を若干——私じゃないですが、もらってきたようでありますが、そういうものが出ておる。あなたらがこの法律をつくらなければ、これは税の根本を動かすような大きい問題が、単に評価がえだということで、自治大臣の評価基準の規定だけでやっておる。それがためにこういうようにもめてきておるのですよ。それで何とか押えようというので、四十一年までの三年間、この特例で押えていこうというのですから、一体この特例が済んだらどうなるのですか。それで、土地だけはこれはやむを得ないということで二〇%、一・二倍まではよろしいということになっておるのですね。こういう問題を私は自治省が簡単に考えており、しかも、地方財政計画では、それは増税でないのだ、自然増収である、こういう見方で入れておることは、私は、税に対する政府考え方があまりにもずさんであると思います。この点自治大臣どう思いますか。
  93. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 従来の固定資産というものの評価は、あまりにも時価というか、ほんとうの価値と離れ過ぎておることは御承知のとおりでありまして、相続税とかその他のあれは、大体時価でやっておる。固定資産税ははなはだしく時価とかけ離れたいわばフィクションというような額です。そこで、法律によりまして固定資産評価審議会というものの御審議をわずらわしまして出てまいったのが、時価というものにほぼ適当な、近づいた評価が出てまいったわけでありまして、そこで問題は、評価したままをそのままの率で税金を取るかどうかということになりますと、私はこれはまた別個の問題であって、急激なる税負担の増強というものは、租税政策から申しましても、いかがなものかと考えるわけであります。そういう関係で、今回法律によりまして、農地は前年度並み、それ以外も一・二倍以下にとどめるという特例を設けたわけであります。三年後の問題といたしましては、固定資産の税の根本的な問題をどうするか、また税率をどうするか、あるいはまた補正係数をどうするか、いろいろ問題があるわけでありまして、そういった問題も含めまして、税制審議会において客観的な、りっぱな結論を出してもらいたいとわれわれは考えております。その結果を待ちまして、税制改正、固定資産の税金をどうするかということを考えたいと、かように考えておるわけであります。
  94. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 僕の質問に実はもう全然合っておらないです。課税標準がこれほどはなはだしく変わったのですね。したがって、地方税法によるところの自治大臣の評価基準の指定権ということがありますが、こういうものをやる場合に、普通の場合であれば、自治大臣にああいう権限を与えているけれども、これほど根本的な課税標準が変わるようなものについては、私は国会の議決をすべきものではなかろうかと言っておるのです。法律でできたからこれだけ上がったのだ、上がったものを押えるのは当然だと、こういう言い方なんですね。それでは納得しない。しかも、それはごまかすためじゃないけれども地方財政計画にはそれは増税として入れておらない。私はそこに一連の何らかの意図があるのじゃないかということがきょうの追及したい一つの焦点なんです。その点どうなんですか。
  95. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 全然、別の意図は持っておりません。すなわち、固定資産税は固定資産の適正な時価を基礎として課税すべきもの、こう法定されておるのでありまして、この適正な時価を求めるために中央固定資産評価審議会というものを設けまして、これによって結論を得たわけでございます。したがって、それを相続税その他と同じように、特に法律によってこの再評価のやり方、課税標準の変わったこと等につきまして法定する必要はないものと考えております。
  96. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 その論争をしておると時間がなくなるから、一応その程度でおきますが、実際は、この地方税の一部改正案で土地は二〇%上がるということの現実は認めますね。地方税として上がる、調整するしないにかかわらず、そういうことは別として、上がることは事実なんでしょう。
  97. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 宅地についてはおおむね一・二倍限度までいくのが多いと思います。
  98. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 地方税法の改正によって上がった場合には財政計画に載せるということについては、私は載せなくてもいいということがあればあとで答弁してもらいたい。時間がないから、これについて言いますが、土地が二割上がる、二〇%上がるという事実は認めた。そうすると、これは経済企画庁長官に尋ねますが、公共料金を一年間押える、土地は上がるでしょう、税金が。上がった場合には、土地を持っている人は、土地に対する固定資産税が二割上がる。それに対して借家あるいは間借りの人のどうしても私は家賃、間借り賃というものは上がると思います。物価の基底である住居の費用が上がってくると、私は物価の抑制ということから見て、相当重要な問題だと思いますが、そういう点は検討されなかったのですか。
  99. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはこういうことになっておるわけでございます。地代家賃統制令というものがまだ残っておりまして、そのうち家賃についてはあまり問題がないわけでございますけれども、いま御指摘になりました地代について問題があるわけでございます。問題は、実はただいま山本委員が御指摘になりましたのより、このまま放置しておきますと、もう少しめんどうな問題がございまして、地代家賃統制令で統制価格を定めております土地につきましては、統制額は固定資産の評価額のたしか千分の三であったと思いますが、千分の三とするということが建設省の告示で出ております。これは法形式が非常に古いために、そういうかなり大切なことが告示に落とされておるわけでございますが、そこで、このまま告示を直しませんと、土地の評価額がかりに平均して六倍になりますと、統制地代が自然に六倍になるようになっております。それでは先ほど御指摘のような問題になりますので、固定資産の評価がえは、これはこれでいたすことにしまして、統制地代との関連においては、従来の評価額を当分の間使う。したがって、六倍ということでなしに、従来と統制地代を変えないというふうに建設大臣の告示を改める必要がございます。そこで土地評価の、固定資産再評価の法律が通りましたら、その時点において建設大臣の告示を改めるということで、建設大臣と私と御相談をいたしまして、そういうふうに意見の一致を見ております。したがって、地代等にはこのたびの固定資産の評価がえは影響がない、こういうことにいたしました。
  100. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私はそれを言っておるのではないのですよ。評価がえのそのままをとらないということは、この特例法でも一応四十一年まで押えるとなっているのですから、それはいいのです。現実に宅地の場合は二〇%、二割上がるということは自治大臣も認めておる。それに対して、私は土地を持っている人は自分の税金が上がる、土地を借りておる人は、これはどうしても借地料は上がると思う。また、これがはね返って家賃に影響する。こういうことになると、物価を押えるという政策に相反するのじゃないか、これを私は言っているのです。
  101. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはよくわかりますので、私がいま申し上げましたのは、放置しておきますと、実は税金のほうは一・二倍で押えるという特例がございますので、それで済んでおるわけでございますけれども、統制地代のほうがそれでは済みませんので、何倍にもなってしまうという、たまたまそういうことになっておりますので、そこをまず直すということ、それから、それはしかし統制令であるから、統制でない自由に形成されておる地代というものには影響しないかと仰せになれば、それはしないとは言い切れないと思います。ただ、よほど便乗を考えるのならともかくといたしまして、その程度の固定資産税の値上がりでございますから、これがすぐに地代の中に地代の値上げとして響かなければならないというふうには私ども考えませんけれども、何がしかの影響のあることは、これは否定しろとおっしゃってもそれは否定はできないと思います。
  102. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そういう形式的なことでは、もうすでにそれがために、間借りをいろいろ考えておる人でも、もう税金が上がったらこうなりますよという前提で貸しておるところがあるんですよ。私は、幾らでもいいですよ、こういう物価を押えるときに、無理してまで公共料金を押えておるときに、土地の要するに税金を上げるということは、これは大きい一つの物価対策、対策としてもマイナスであるし、政府は許すべきではないと思うんですがね。四十一年まではすべてが三十八年度の調定額で行くならば、課税標準で行くならば、宅地もやはりそういう方法で行くべきでないですか。四十一年に根本的に税率も考えると、こういうことでしょう、いまの自治大臣の説明では、税調会にはかって。土地だけ何で先に上げるんですか。
  103. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはお話はよくわかるわけでございますけれども、宅地、家賃等についてただいま政府が統制し得るのは、その統制価格のあるものだけでございまして、その他は御承知のように自由に形成されておるわけでございますから、それをどうこうしろとおっしゃいましても、自由に形成される価格を政府として左右するわけにいかないのがただいまの全体のたてまえでございます。統制分につきましては先ほど申し上げましたような処置をいたしますけれども、自由に形成されるものについてはどうすることもできない。そのたてまえそのものがいかぬではないかと仰せになれば、それは別の問題でございますけれども、税負担分が上がっただけ家賃、地代を上げよう、あるいは間代を上げようということは、まあ理屈としてはどうもそれはいかぬではないかという理屈は立たないように思います。
  104. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私は何かピントが合わないんですがね。物価に影響するということは、家賃あるいは土地代あるいはその他に影響することは明らかですよ、現実の問題として。土地を持っておる人が税金が上がったから自分で出そうというような奇特な地主はいまおりませんよ。たとえば税金が三百円上がったら、これを千円にも土地代を上げようというのは、これはいまの土地所有者の大部分ですよ。そういう際に、そういうことで政府としてはそういうことはあまりないだろうというような考え方では、物価抑制策の政府のやり方というものは、これはちぐはぐよりも、何といいますか、かごの中へ水を入れたようなものです。みずから政府が物価上昇、暴騰の先がけをやっておるとしか私は思えないんです、今度の措置については。もしやるのならば、ああいう暫定特例措置をやるならば、一切のもの、農地、あるいは宅地、家屋、あるいは償却資産、そういうものを一緒にやはりやって、四十一年度に根本的に考えるというならば理屈はわかる。宅地だけ上げようというのは、土地政策が出ておるのですか、ただ税制面からの話ですか。税制面からいうならば、ぼくはそういうことはやるべきでない、これを言いたいのですが、これは自治大臣と企画庁長官、両方に聞きたい。
  105. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 先ほど申しましたように、あまりにも現状と離れた安い評価でやってまいったわけであります。税金のアンバランス是正という税制上の観点からでございます。  また、家賃その他地代にはね返るという問題でございますが、そういう観点も考えまして、最小限二割まで押えまして、その結果、大体千分の二・八%の響きがあるわけでありまするが、その程度のものならば、経済企画庁長官の言われますように、直ちに家賃の大幅あるいは地代の大幅引き上げの理由にはならないのではないか。他方、新しい新築住宅につきましては、二階までは三年間、三階、四階は五年間、五階以上のアパートその他の住宅につきましては十年間固定資産税を二分の一にするわけであります。そういう面におきましては、むしろ負担は軽減される面もあるわけであります。われわれといたしましては、税の何といいますか適正化という問題とそういった問題を含めまして、今度の立法によりまして最高一・二倍にとどめる措置を講じたわけであります。
  106. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) どうも、それすらもなければないにこしたことはないということは、仰せのとおりだと思いますけれども地方財政の問題もございますし、まあここらの程度ならやむを得なかろうというのが私の実際の気持ちでございます。
  107. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 経済企画庁長官地方財政と言っても、いま言われたうちに五十億程度のものですよ、問題は。私は、物価の高騰のきっかけをつくるものが、こういうわずかなものをつくる必要はないというのですよ。その点が皆さんおわかりないのかと思うんです。それは自治大臣がいろいろ言われますが、政府がこの機会にそういう土地の税金を上げる、宅地の税金を上げるということは、相当物価に微妙に影響をするということを全然ないと思われますか。あったらどうしますか。責任をとりますか。私はあると思う。それで、地価政策というものは、こんなものの税の問題でこの地価政策というものは解決しませんよ。十一倍も十二倍も上がってくるこの地価というものは、税制だけでこれを押えようと思っても押えられない、別の対策をすべきなんです。いま一番肝心なのは物価をいかにして押えようかというのが政府の方針でしょう。そういうときに、そういう口実を与えるという、またそういう刺激を与えるという、こういうことは、政府としてとるべきでない。したがって、三年待つならばこれも一緒に三年待って、その上で根本的に対策を講ずべきであるというのが私の論理なんですが、それはわかりませんか。
  108. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはよくわかります。よくわかりますが、先ほど自治大臣が何回か申しておられますように、固定資産の公の評価額というものが実勢とあまり離れるということは、これは不自然なことでございましょうから、ある程度実勢を反映させる。その結果としてある程度租税負担が上がってくるということは、これは他の財産あるいは所得に対する課税などの権衡から申しましても、そういう面から言えばこれは当然権衡をとっていかなければならないわけでございますから、その結果、何べんも申しますように、地代なり家賃に対する影響というものはほとんどネグリジブルだというふうに私ども考えまして、この程度ならばこれはやむを得ないことであろうと、こういうふうに私は考えまして、しかし、何もしなくて済めば物価という見地からはさらによかったではないかとおっしゃることはわかります。ただ、その場合は、所得なり財産なりに対する租税負担の権衡という問題と、それからさらに地方財政の財源の問題、そんなこととどういうふうに軽重をつけて考えるかということになるのであろうと思います。
  109. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 もう一つだけ。それは、もう時間もないから、ここで何とか答弁しておけばそれで済むという考えかは知りませんが、真剣に皆さん方自身も——私もそう考えておるんですよ。それは全体から見て一・二倍ではそう大きい個人の地価は上がらないけれども、これを契機に物価に刺激すると私は大きく見ておるんですよ。この固定資産税の中における土地、農地、あるいは宅地あるいは家屋その他のアンバランス、これを是正するということはわかっておるですよ。ぼくはもう早くからこの点を主張しておるんです。それがたまたま今度の評価がえで現われてきたんですね。それをやるときに私はこの問題については、そのときは自治大臣は別の自治大臣であったけれども、私は指摘をしておいたですよ。で、三年後に根本的にやるというのでしょう。あれは四十一年まででしょう、あの特例は。そうなれば、そのときに土地価格政策まであわせてやはりやるべきだというんです。暫定的に一・二倍上げておいて、今度どうしますか。今度やるときに相当問題が起こりますよ。やるならば全部一緒にストップ令をかけておいて、税調会において検討をさせて、その上で合理的な固定資産税の体系を組むべきであるというのが私の持論なんですよ。何もあれだけを一つ宅地だけを取り上げて、非常に固定資産税のアンバランスがあるから宅地だけこうするのだというその理由自体は、ほかの時期ではいいけれども、いまの物価の問題が非常に刺激をしておるときに、そういう政府のやる施策は、私はほんとうに何を考えておるか、その理解に苦しむ。もうすでにこれを提案されておるんですから、いまさらこれを取り消すということはしないと思いますが、これは問題があります。今後の固定資産税の体系上も大きい問題がありますし、あの固定資産税の評価がえ自体にも一つの大きい問題があります。これは地方で実際事務に当たっておる人の声を聞いておられると思いますけれども、あの評価がえ自身がほんとうに実際の評価になっておるかどうか自体も問題ですよ。こういう問題を含んでこの国会であの法律案を通して、しかも強引に土地の値段を上げる、税金を上げるということについては、われわれはどうしても承服しがたい。どう言われてもこれは承服しがたい。それをしようということは無理だと思うんですよ。この点につきまして、総理大臣おらぬですから、今度はひとつ総括質問のときに尋ねますけれども自治大臣も慎重にひとつ考えてもらいたい。  最後に、これで終わりますが、地方財政計画ですね、地方財政計画のこれは誤りだと見ていいですか。訂正しますか。このまま出しますか。
  110. 岡田純夫

    説明員(岡田純夫君) 財政計画はこれで正しいと思っております。
  111. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 正しいと言っても、何でしょう、今度の地方税の改正によって二割程度の税金は上がるんでしょう。それは上がらないですか。その地方税の改正によって上がったやつを、地方税の改正によってこれが増税といいますか、分に入れるということは、これは正しいのじゃないですか。それは自然増収として見るんですか、将来とも。地方税の分で減税となった分だけ載せてあるんでしょう。地方税の改正で増税になった分は、これは増税と載せずに自然増収ということでいいんですか。そういう説明ができますか。大臣、正しいという根拠をひとつ言うてくださいよ。正しいだけでは、うそでも正しいと言えば正しいんです。
  112. 岡田純夫

    説明員(岡田純夫君) 従来から、固定資産の評価がえの問題は、ただいまの自然増収と合わせまして含めて考えております。総額を財政計画にも計上いたしておりますので、それで差しつかえないと考えております。
  113. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大臣、答弁をちょっと……。
  114. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 大体、自然増収程度は評価の基準年度が変わるときには一割程度従来とも上がっておりまするので、いま説明員が答えましたように考えておるわけであります。
  115. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 次にやるとこの問題は熱がさめてしまいますから、ここで申しますが、三年ごとに評価がえということをやっておりますよ。その場合は地方税の一部改正というものは通っておらないんでしょう。そこが私は問題があるというんですよ。いままではそういうようにされていることは知っておりますよ。自然増収としてやっておることは知っておる。今度の場合は特殊な事例であるから、それで一部改正案が出されておるのでしょう、地方税の改正案で。それが一部地方税の改正のための増収分であるということをなぜ地方財政計画に載せられないんですか、その理由をひとつ聞かしてほしいんです。改正案を出しておるでしょう。改正案を出さなければいい。それはどういうわけです。理由をひとつ……。
  116. 岡田純夫

    説明員(岡田純夫君) 評価がえないし地方税法の今回の改正そのものが従来からとってまいりました許価がえの一部であると、こう判断いたしておりますので、財政計画でもそのように従来どおりの増収分としての取り扱いをいたしております。
  117. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大臣、どうですか。地方税の改正をやったのや改正の分として入れられないというのはどういうわけですか。ふえたってかまわないんですよ。
  118. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) お答えいたします。  大体、先ほどお答えいたしましたように、今度の改正によりますと、農地は上がらない。家屋やあるいはその他償却資産は横ばいの見込みでございます。宅地は一・二倍ぐらい値上がるものも大部分だというようなことを勘案いたしまして、全体を見てみますと、まあ評価がえの年度に大体一割程度増加するという数字と見合うものでありますから、ただいま岡田説明員が答えましたように、評価年度の交代期における増収分ということで措置いたしたわけであります。
  119. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これでやめておきますが、自治省の人、ぼくはその点はどうしても納得できないんですよ。だから、それを今度のときまで十分納得するような説明を考えておいてください。  これだけで終わります。
  120. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 山本君の質疑は終了いたしました。  午後一時二十分から開会いたします。暫時休憩いたします。    午後零時十七分休憩      —————・—————    午後一時三十七分開会
  121. 太田正孝

    委員長太田正孝君) これより予算委員会を再開いたします。  委員の変更がございました。  基政七君が辞任され、赤松常子君が選任されました。     —————————————
  122. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 質疑を続けます。高山恒雄君。
  123. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 私は、蚕糸業に関する問題について質問してまいりたいと思います。  蚕糸業は昭和三十三年、生糸価格が非常に暴落をいたしまして、桑園の整理等による繭の生産の縮小という方針で政府はきたのでありますが、その後、皮肉にも経済の成長とともに、消費生活の向上をきたしまして、この生糸の需要が急増してまいりました。なお、ここ数年間というものは、その後安定的な貿易の拡大とともに、平均六万数千俵というものが、輸出の維持をしてきたのであります。ところが昨年の六月ごろより、御承知のように、相場は急激に暴騰いたしまして、四千五、六百円が七千六百円という倍近くの急騰をしたわけです。しかも、中には輸出をしたものをさらに輸入して逆さやをとるというような始末で混乱状態が起こってきたのです。そのために国際貿易上の信用を非常に日本は現在失っておるわけですが、なお、信用を失うと同時に、今日の輸出は半減してしまい、さらにヨーロッパ地域においては、中共製品が伸びてきておる、こういう事態になってきておるわけです。このことについては農林大臣はどういうふうに一体お考えになっておるのか、所見をお聞きしたいと思うんです。
  124. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 確かに御指摘のとおり、三十三年ごろ非常に繭が上がりまして、政府のほうでも買い入れ措置などをいたしてきたのであります。昨年来暴騰をし、また暴落する、こういう不安定な状況でございまして、私どもといたしましては対策を講じましたが、一つは、やはり需給関係といいますか、需要のほうは堅実に、国際的にも国内的にも、動いておりますが、供給面の、養蚕農家の方面が、人手不足等によりまして、十分供給が間に合わなかったと、こういう原因がありますので、そういう支障を除去していきたい。あるいは生糸の取引所等の投機的——投機をするような要素が少しありました。それで、異常時におきましての投機を抑制するような措置をとったわけでございます。なお、価格の問題で、最近、安定価格を変えまして、その結果、これが安定していく見通しを持ってきたわけです。そういう方法によって安定してきております。また中共、韓国もそうでございますが、ヨーロッパ方面相当輸出が伸びておるようでございます。一昨年ほどではございませんが、中共も昨年よりはふえております。日本のほうはそれほどじゃないと、こういうことでございますが、やはり日本の、何といいますか、市場も、相当堅実な市場を持っておりますので、国際的な競争にも負けないように、生産性におきましても、あるいは品質等におきましても、従来の成績を維持していきたい、こういうことで進めていくつもりでございます。
  125. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 政府は繭糸価格安定法に基づいて価格の安定をはからなければならない責任があると私は思うのです。ところが、統計的な資料を見ますと、三十七年以降は一つ政府在庫がなかった。そのために政府は打つべき手が何にもなかったと、こういう状態だったと思うのです。したがって、糸の変動に対して、蚕糸行政としては大きな誤りじゃないか。三十二年ごろの一番悪かった時代をせっかく数年の間に安定させて、国際競争にもある程度耐えられるという事態をつくっておきながら、政府の在庫が一つもなかった。それでつまり倍に上がってしまって、そうして国際信用を失っておるという事態は、これは何といっても、私は、行政上のやはり誤りではないか。ここに大きな問題があるのじゃないかと思いますが、大臣はその点はどうお考えになっておりますか。
  126. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 確かに三十六年ころから政府の手持ちはなかったわけでございます。したがって、昨年等においても手持ちがない。こういうことが暴落に影響したのじゃないかという見方でございますけれども、手の打ち方がそういう点でおそかったということは私ども考えますが、しかし、先ほども申し上げましたように、需給のアンバランスといいますか、そういう面、あるいは取引所の投機面の問題等によって、ああいう異常事態ができたというふうにも見ております。でありますので、そういう面を改めて、先ほど申し上げましたように、最低の安定価格も引き上げまして、それによって措置を講じていって正常化するというのですか、安定化していきたい、こういうふうに考えております。
  127. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 供給と需要面に対するアンバランスもあった、こういう大臣のお説でありますけれども、商社在庫その他から見て、私はそのバランスの点はなかったのではないかと思うのです。政府だけが在庫が足らなかったのではないかと思うんです。政府は三十三年にはこれは九万二千六百五十四持っておったわけですね。三十四年には二万八千七百十九俵、これだけ、それから三十五年には百二十俵、三十六年、七年は一つもないわけです、在庫が。だから供給面と需要面のあるいは輸出も含めて、アンバランスのために、そういう現象が起こったとは私は言えないと思うんです。だから輸出が伸びて、それでいわゆる需要がふえてきたために、そうして政府にはそれの安定をとる手持ち在庫が一つもなかった、打つ手もなかった、そのために、こうした事態が私は起こったのだと思うんです。したがって、三十三年から四年の日本の蚕糸業というものは、桑園の植えつけが変わったわけでもない。多少の繭の収穫は悪かったという点は、これは認めざるを得ないでしょうけれども、極端な例ではないわけですね。要するに、伸びる過程にあった、伸びる過程にあったものを、商社まかせにしておって、政府はそれに対する一つの在庫もなくして、何ら打つ手はなくて見ておったという形になるわけですよ。これではやはり行政上の私は大きな誤りだと、供給、需要の欠陥から出ているのじゃないか。伸びようとする貿易に対して、政府がやはり当然手持ちを持って、そういう場合には調整をとる、こういう方法が私はなされるのが至当じゃないか、こういうふうに考えるわけです。その点はやはり需要と供給の面のバランスに起こったとお考えになるのか。私が言っているように、そうじゃない。そういう場合は、伸びようとする五年間の経過を経てきたこの事態から見て、少なくともこれはやはり政府が手持ちを持って当然その安定をはかるべきであった、このことに私は間違いないと思うんですが、大臣はどうお考えですか。
  128. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 需給面もあるし、あるいはまた端境期の投機的な取引所の関係ございます。安定価格が適当でなかったといいますか、そういう関係で、手持ちもしていなかったというようなことも、それは相当に影響あったかとも思います。でありますので、そういう関係から、安定価格も改めまして、いつでも操作ができるような形にしてきましたのが現在でございます。そういうふうに考えております。
  129. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そこで蚕糸の振興審議会の建議を大臣がとられたということについても、十分承知をいたしておりますが、それで市場在庫が全体の約二万俵、さらに輸出の適格生糸の特別買い入れの限度を一万俵やる、こういうことでありますが、この緊急措置の実際の実情はいまどういうふうになっているのか、その点ひとつお聞きしたい。
  130. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) この間、蚕糸業振興審議会の建議がありまして、いまお説のとおりでございます。その対策については、養蚕業の安定した発展をはかりたい、そういう意味で、生産性の向上と国内生産の増産を目途といたしまして、農業構造改善事業等の推進によりまして、桑園の集団、それから協業の助長、養蚕規模の拡大、こういうことによりまして労力を省くことを一そう推進したい。それから三十九年度からは、こまかくなりますが、上簇時の労力を省くための技術、自然上簇の不備等について助成をいたします方針でございます。また、普及職員の資質とか待遇の改善をはかる、こういう面に力を入れております。それから、先ほどから話が出ました繭糸価格安定制度の強化対策につきましては、建議の趣旨に沿いまして、三十九年度に適用する生糸の最高、最低価格及び最低繭価につきましては、輸出の増進と農家の繭生産確保の見地に立ちまして、現実に適合するよう現行水準から大幅に引き上げたことは御承知のとおりであります。また、去年の十二月には、六月暴騰後の糸価の先行き不安を一掃いたしまして、輸出を確保するため、繭糸価格安定法に基づきまして、輸出適格生糸の特別買い入れ制度を発動いたしまして、糸価の安定につとめておるようなわけであります。なお、建議のうち、制度の改正を要するもの等については、その趣旨を尊重して検討していきたい、こう考えております。
  131. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 政府としてそうした手を打ってもらっておるということについては、非常にけっこうなことではないかと私は考えますが、ただ問題は、この繭糸価格の安定制度の運用についてですね。私は、繭糸価格のこの安定制度の効果を見ると、必ずしもこの時勢に沿うてないのじゃないかというような気がしておるのです。その機能が十分に出ていないんじゃないか。したがって私は、市場の実情からだいぶかけ離れた実情にあるのではないか。政府は、この生糸の需要増進をはかるために、一体安定制度の改善を行なう意思はないのかどうかですね、この点についてお尋ねします。
  132. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 問題は、この安定制度を機動的に発動するかしないか、こういうところに私はあると思います。そういう点におきまして、何しろ政府のやることですから、商売みたいに——少し機動性を欠く、こういう面がいままでもあったかと思います。でありますから、市場の状況とか、輸出の状況とか、そういうような事態に適応して、発動といいますか、機能を十分発揮するようにつとめたいと思います。制度そのものは悪い制度じゃない、けっこうな制度だというふうに私は思う次第であります。その運用面において、一そう注意していきたい、こう考えております。
  133. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 大臣は、よくその点は運用の面でおわかりのようですが、そうしますと、私もあとで、きょうは通産大臣も参りますので、そのときにお聞きしようかと思ったのですが、その点がやはり十分にいっていないんじゃないかというような私も気がするわけです。それはまああとでお聞きしたいと思いますが、次に、昭和三十七年度の農林省の生産費の調査によりますと、この繭糸の水準では困難ではないかというような気がするのです。その点、中におきましては、この水稲の一日当たりの労働報酬を見ますと、千三百九十円です。養蚕は、御承知のように、短期ではありますけれども、これは昼夜を分かたない労働だと私は思うのです。そういう報酬から考えるならば、上げたとおっしゃいますけれども、七百二十五円では、私はちょっと安いのではないか。同じ水稲の労働報酬を見る場合と、蚕糸の労働報酬を見る場合に、これだけかけ離れておるということは、これは養蚕家に対する増産計画をやろうとしても、経営者に魅力がないようになるんじゃないか、幸いにして、現在市場があれだけ拡張されて今日まではよかったにしても、今日のような暴落をした形がまたくるとするならば、これまた、その養蚕に対する魅力を失っていくんではないか、こういうふうに考えるわけですが、その点……。
  134. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) できるだけほかの農業関係との均衡がとれた収入ということが好ましいと思います。しかし御承知のように、これはひとつ消費面も拡大しなくてはならぬ、消費面の輸出等の価格の安定ということも考えなければなりませんが、そういう意味におきまして、一面においては、労働報酬が多いことは好ましいのでございますけれども、やはり労働力を省くといいますか、そういう面の技術の指導等によりまして——たとえば米の一時間当たりの収入に比べると相当差がありますけれども、できるだけ均衡がとれた形に持っていく、そういう方面に力を入れるほうが、養蚕としては適当じゃないか。繭の価格の問題ございますけれども、非常に高いということでして、需要、消費の面が減るということになりますと、やはりそれにはね返ってくる、でありますので、できるだけ労働報酬が多いことは望ましいんでありますけれども、同時に、繭を生産するための労力を省くほうの技術等を奨励いたしまして、生産性を上げていく、こういうふうに力を入れてできるだけ均衡をとれるようにしていきたいと思います。
  135. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そういうふうに、今日試験をしておられるという点については、私も十分理解をいたします。また、そうあるべきだと思います。しかし、蚕糸は、御承知のように、日本の長い伝統的な歴史の中に今日に至っておるわけです。しかも、一応斜陽産業的な事態がきたことも、大臣は御承知のとおり。しかし、生活が向上するに従って、何ぼか拡大しつつあるという現状です。それを、つまり労働報酬はそのままにしておいて、もっと養蚕方法によって改善しようとおっしゃいますけれども、それならば、一体流通機構の改善の必要はないのか、この点はどうです。
  136. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) お説のとおり、流通方面等も改めていきませんというと、生産者の手取りというものがわりあいに少ない、こういうことになりまするから、流通方面等においても、くふうをこらして改善していきたいと考えております。
  137. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 さらにこの問題で私は大臣にお願いしたいことは、一昨年の七万七千俵から昨年は五万七千に減っておるわけです。絹織物の輸出でも、五万六千が三万に落ちています。そうしますと、この昨年、一昨年の比較をとってみますと、四三%の減になっておるわけです。そうしますと、これは先ほど私が申し上げたように、中共その他の進出もかなりあろうかと思います。欧州あたりの市場では、かなり中共製品が進出するということになろうと思うのですが、今後の輸出の見通しに対して、政府はどういう手を打っておられるか、その点をお聞きしたい。
  138. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 確かに三十八年度上半期ごろには、前年の同期に比しまして、いま御指摘のように四三%減ということで、半減しております。しかし、七月以降、生糸が安値形勢になってからは、生糸輸出は順調に推移しております。七月から十二月までの生糸輸出量は、前年同期とほぼ同水準に回復いたしました。それから、ヨーロッパ市場におきましての中国の生糸輸出高、これは、三十八年が約一万三千俵で、前年に比べて八%増し、前々年に比べて二三%減、こうなっております。日本生糸のヨーロッパ向け輸出量は、これも、いま御指摘にありましたが、約二万八千俵、前年に比べて二四%減、前々年に比べて同水準、こういうふうに回復いたしてております。やはり何といたしましても、生産性が上がって、しかも糸価が安定すると、そういうことになりまするというと、輸出といいますか、も安定してきます。不安定でありましたので輸入国が買い控えする、上がるか下がるかわからぬというようなことで買い控えをしていた傾向がございます。でありますので、先決問題は、やはり生糸の糸価の安定をしていくと、こういうことであろうと思います。そういう面でそれぞれ手を打っておりますが、その点、及び日本の生糸の生産性をよくいたしまして、品質もよくしていく、いろいろまた宣伝等もございますし、PR等もございますが、要するに、日本の糸価が安定しているということでありまするならば、私は順調に伸びていく、そういうことに力を入れていったほうが現在としてはいいんじゃないかと、こういうふうに考えます。
  139. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 通産大臣が見えませんので、関連質問があるのですけれども、労働大臣と同様にあと回しにいたします。  農業問題を中心に、もう少しほかの問題で御質問申し上げたいと思います。  自由化に対する見通しと国内の需給との問題について、私は質問申し上げたいと思いますが、日本の農業は、国際競争力はあまり強靱なものではない、自由化のポイントは、何といっても、米、麦類が主体であって、さらにその上に畜産物、わが国もEEC諸国と同様に、自由化に対する段階としては、この競争的な目標を持つべきではないかと思うのです。農相は、こういう点について、どういうふうにお考えになっておるのか、お聞きしたい。
  140. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 先進国といいますか、ほかの国と比べまして、日本の農業は小規模、零細でございます。そういうような関係で、国際的に見まするならば、日本の農業生産物は、コスト高といいますか、国際競争力が非常に弱い現状でございます。でございますので、このままで開放経済体制に入る、自由化に入る、何の手も打たないで自由化に入っていくということになりまするというと、たいへん圧迫を受けるといいますか、日本の農業が荒い波にさらされるという状態だと思います。でございますので、農業基本法等にも書いてありますように、あるいは、いま対策をとっておりまするように、日本の農産物の生産性を向上するということが根本ではございますけれども、しかし、それには時日を要します。そう簡単に一、二年、二、三年のうちにというわけにまいりませんので、あるいは関税率の点においての調整とか、あるいは財政的に支持していく、価格面等において支持していく、こういうささえをしていきながら生産性を向上していく、こういうことにしていかなければならぬと、こう考えております。
  141. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そうしますと、大体自由化の問題は、あと残っておるのは百四十五種目ぐらいだと思うのです。そこで、農産物としては大体八十二種目ぐらいあるというふうに私は見るわけですが、大臣としては、直ちに自由化するというような考えはない、この八十二種目の中で、日本自体として自由化するような種目はないと、こういうふうにお考えになっていますか、その点……。
  142. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 農産物としては七十六ぐらいが自由化に残っておると思います。その中での米とか麦とか、あるいは酪農製品とか、でん粉、こういう重要農産物等につきましての自由化というものは、これはもう当分行なうべきものではないと思います。その他の農産物等がありますが、これはやはり日本も、いろいろな国際条約、あるいは国際会議等にも参加いたしておりますので、自由化の方向に進めていかざるを得ない面が現在強いのであります。でありますが、そういう個々の品目等につきまして、やはり先ほど申し上げましたように、関税率等で相当調整するとか、あるいはこれが日本の農業として、農産物として滅亡するといいますか、なくなってしまうような形にしては困りますので、維持できるような形にしながら、自由化のほうに持っていく、同時に、あるいはそういうほうを先にというような形で自由化は進めていかなければならぬと思いますが、いずれにいたしましても、農産物につきましては相当慎重な態度で進めなければならぬと、こういうふうに考えております。
  143. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 私がお聞きしたいのは、いま言われる構想は十分わかるわけです。ですが、農村は、自由化自由化ということで、最近自由化ムードがわいているわけです。政府の宣伝もあって、成長したから自由化するのだ、何もかにも自由化するように思うのです。そのうちで一番おくれているのは、農産物がおくれているわけです。だから、農産物はコスト高で、国際的な競争には耐えられぬのだから、当分やる必要はないのだ、やれないのだ、関税の処置をするとかしないとかという問題もありましょうけれども日本としては、現状もっと高度な成長をさせるまでは、やらぬという考え方なのか、場合によっては、やるという考え方なのか。農民は一番それが不安だと思う。その点をお聞きしたい。
  144. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 繰り返して申し上げますが、重要農産物については、当分やらない、七十六ほど残っていますが。しかし、その他のものについての自由化につきましては、これは慎重にやっていく、やらないと言い切るわけでもございません。しかし、これは慎重に扱っていきたい、こう思っています。
  145. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 次にお尋ねしますが、食糧自給についての質問がしたいのですが、日本は、食糧は今日の段階では完全自給をすることはまだ困難だ、こういうふうに思うわけです。そこで、政府は今後の食糧自給に関する一定の目安をどういうふうに基準を立てておられるのか、貿易自由化の問題とこれも関連して、国内生産と輸入——自由化のスケジュールをどういうふうに決定しておられるか、政府の食糧自給政策をこの際はっきりひとつお聞かせ願いたい。
  146. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 食糧といたしましても、何にいたせ米が一番日本の食糧の王座といいますか——でございます。この米につきましては、九九%近い自給度を持っていますけれども、しかし輸入というものも必要でございます。輸入なしでというわけにはまいらぬような状況でございます。でございますが、やはり米につきましては、選択的拡大というようなことで、何か米の生産を放てきしたような、あるいは無関心のような感じを国民に抱かせたというのは、私はまずかったと思いますけれども、何といたしましても食糧の自給が基本でございますので、米の自給度をなお増していく、米の生産も進めていく、こういうことで、その十分に足らぬ面につきましては、輸入等をしていくという形になると思います。飼料等につきましては、食糧としての大麦等がなくなってきていますので、麦類は相当減っておりますので、飼料としては、ある程度麦あるいはふすまの材料としての小麦、こういうものは輸入に相当依存する現状でございますが、この点等につきましても、もっと飼料自給度を高めていきたい、こう考えておるわけです。
  147. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 次に、国際連合が一九六六年までのエカフェ諸国の米の需給見通しを発表しておるわけですが、この点について政府はどうお考えになっておるのか。その発表の内容は、インド、パキスタンは米は自給ができて、日本と韓国は輸出国となる、ビルマ、南ベトナムは輸出量が増大して、台湾、タイは現状維持、マラヤ、インドネシア、フィリピンは輸入増となっておる。全体としては輸出入が均衡の状態から輸出余剰が残ると見る、こういうふうに専門家が発表しておるわけですが、日本は輸出国になるというような考え方をここに発表しておりますが、日本はこういう考え方で満足しておるのか——米まで輸出しようという考え方なのか。それとも、さっき大臣が言われたように、場合によっては輸入せざるを得ないだろうと。一方においてはこれは輸出をするように国際的には見られておるわけですが、そういう点は日本としてどういうふうにお考えになっておるのか。
  148. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) エカフェ諸国の、FAOの下部委員会で、一九六七年の生産量及び需要量等について推定した計算が、いまお話しのとおりでございます。輸出国とか、輸入国とか、いろいろそういう数字が出ておりますけれども、これは一つの計画といいますか、見通しを基礎にしての計算でございますので、それをそのままというわけにはまいりませんが、しかし、それにいたしましても、日本はどうするのだと、こういうお尋ねと思いますが、日本といたしましては、先ほど申し上げましたように、輸出国というわけにはまいりません。やはり自給度を高め、しかも輸入をある程度しなければならぬ、こういう需給の日本としては見通しでございます。また、食糧全体といたしまして、何か世界飢餓会議ですか、そういうところでは、食糧が非常に足らぬというようなことが出たようでございますが、私はやはり世界的に食糧全体としてはバランスがとれてくるのじゃないか。いまのFAO等におきましては、輸入国と輸出国との見通しをいろいろつけております。日本といたしましては、まあ輸入国というわけでもございませんけれども、自給をして、足らぬ分は輸入をすると、こういうことに相なる需給計画でございます。
  149. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そうすると、日本は米の不足を来たすというような問題はないと、こういうふうに考えてもいいわけですね。
  150. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 自給をいたしまして、不足の分を輸入するということでございますならば、日本の食糧に不安等はない、こういうことでございます。
  151. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それでは最後に、これはまあ参考的なことになるかもしれませんけれども、米が余るということなら、そんな心配はないのかもしれませんけれども日本でパン食をしようといっても、なかなか高いわけですね。御承知のように、最近変わった変わったといいますけれども、パン食に切りかえるということは非常に高くつく。したがって、やはり依然として米食にしなければならぬという問題があろうと思うのです。しかも、このパンは硬質の小麦でなければつくれないということになっているわけですね。大臣も御承知かもしれませんけれども、フランス等においては軟質の小麦を適用しているのですね。そうして安い価格でこれを市販している。そのために非常に国民生活にそれが大きく役立っているということを私たちは聞くわけです。わが国でも、何もその硬質だけのパンにたよらないで、軟質のパンを製造するということをやはり考えてみる必要があるのじゃないか、何も高いパンだけを食うようなことを考えないでですね。その点については、大臣どうお考えになっているのですか。
  152. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 軟質小麦でのパンということは、少し嗜好に合わない点もございます。しかし、フランス等においては、いまお話しのように、軟質の小麦でパンをつくっている。でありますので、実は研究所に委託いたしましていま研究さしております。軟質小麦でパンをつくる方面の、しかもいろいろなコストの面等がありますので、そういう点を研究さしております。そういう状況であります。
  153. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そうした研究をしていただいていることは非常にけっこうだと思いますが、ひいては、そのことがよければ、結果的には、農村としても、小麦の栽培等にも相当力を入れてくるのじゃないか、こういうような考え方を持つわけです。その点は、研究中でありますならば、非常に幸いだと私は考えております。  通産大臣が見えましたので、私はちょっとお聞きしたいのですが、先ほど農林大臣がおっしゃったように、今日のこの生糸の問題にまた返りますが、生糸段階までは農林省がこれを管轄する、第二次製品になると通産省が管轄するということになると、一体農林省は生糸段階ですから、最近の中小企業の二次製品、三次製品をやっている倒産等の実態も連絡がなければ……、先ほどのように、価格の安定を保持するためにも連絡の不十分な点があると、大臣もみずから言っておられるわけです。そういう点に対して、欠陥が私は大きくあると思う。したがって、これは両大臣に聞くわけですが、通産省が二次製品をあずかるというのじゃなくて、何か独立した形においてもっと二次製品、三次製品をつくる中小企業の実態を農林省がつかんでおる、それによって対策を立てるというようなことができないのかどうか、両大臣に一応聞きたいのです。できるならば統一する意思はないのか。
  154. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 農産物を原料として仕事をしておる業態がほかにたくさんございます。いまの繭、生糸等もそれであります。どういうふうにこれを扱うかということは、全体的な問題とも関連して、なかなかむずかしい問題だと思います。現在におきましては、通産省と非常に私のほうは事務的その他においては緊密な連絡をとっておりますので、それでやっていけると思っておりますけれども、いろいろまた検討してみる面もあろうかと思います。
  155. 福田一

    国務大臣(福田一君) ただいま農林大臣がお答えをいたしましたような実情にありますが、通産省としては、やはり農林省と十分連絡をとりながら、いま先生が御指摘になったようなことが価格の面の変動によって起きないように、できるだけ努力をいたしたいと考えております。
  156. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それじゃ最後にお聞きしたいのですが、御承知のように、これはもう私が言うまでもなく、通産大臣か、農林大臣は生糸までということになれば、問題になると思いますけれども、いろいろこの生糸の貿易に対して、あるいはまた二次製品の貿易に対して非常に努力をしておると、こうおっしゃいますけれども、やはりこの絹紡の関係と私は大きな関連があると思うのです。そういう立場から言えば、この日本がああいう暴騰した物価の中でいま信用を失っておる。これはいいチャンスじゃないかと思うのは、今度のオリンピックです。これを東京あたりで、日本の固有の織物の、あるいは絹製品以外もよろしいが、一体展示会でもやるという意思は政府はないのかどうか。業者にでもそれを何して大いにぼくは宣伝しておくべきだと思うのだが、両大臣、その点については非常に力を入れる意思はないのかどうか。外人に見せるべきだと思うのです。
  157. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 御意見もございますので、よく通産当局と相談してみたいと思います。
  158. 福田一

    国務大臣(福田一君) 農林省ともよく連絡をとり、業者ともよく連絡をとって、御趣旨を実現できるよう努力してみたいと思います。
  159. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 いまの点は、ひとつ実現方に努力をお願いしたいと思います。  私は通産大臣にお聞きしたいのですが、いま政府で立案されております今度の繊維設備調整法に基づく新法の問題についてお聞きしたいのです。この答申では、大体十に分けてこの答申書が審議会から出ておるわけです。その中で一番やっぱり問題になりますのは、この自由化に備えての体制を確立しなくちゃいかぬ。それには、三十一年に発足した設備調整法のこの結果は、あまり手ぎわのいい処置ではなかった。結果的に言えば、やみ紡機を温存させて、今日になればそれを廃棄しなくちゃならぬと、こういうことが簡単に言えばあるわけです。その中で私は区分の問題について聞きたいのですが、いままでこの村区分を十の種類に分けておられたわけです。それを今度は三つにしよう。したがって、三つの中には——一つの例を申し上げますならば、毛、あるいは化合繊、綿、一%の混紡のものに対しては、これを三つにしてしまう。したがって、一%以上の混紡をする場合にはだれが引いてもいい、こういう制限をゆるめて、いわゆる緩和して、自由に引けるような形になるわけです。ところが、現実は一%じゃなくて二%ないし三%という混紡があるのですから、合繊でも引くことができれば、スフでも引ける、あるいは綿紡でも引ける、こういう事態が来るのですが、こういう考え方政府は間違いないのか、伺っておきたい。
  160. 福田一

    国務大臣(福田一君) お説のとおりでございます。
  161. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それからもう一つお聞きしたいのは、一体登録してない無登録という紡機は何ぼあるのか、これは調査したことがあるのかどうか、確実な数字があるのかどうか。
  162. 福田一

    国務大臣(福田一君) 大体その数は八十五万くらいでございますが、そのうちで法律に違反して制限糸を引いておるのが三十万くらいあると調査をいたしております。
  163. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そうしますと、法律に違反するというのと、しないというのは、どういう区分があるのか、それをちょっと聞きたい。
  164. 磯野太郎

    政府委員(磯野太郎君) ただいまの現行措置法におきましては、御承知のとおり、一般的に糸の使用制限がございますけれども、スフ分が九〇%以上入っておりますものは、自由糸と申しまして、これは登録していない紡機でも引けるというかっこうになっております。これが違反をしておらないということでございます。
  165. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 したがって、規格外の糸を引いておるやつは違反しておる、規格内の生糸でない糸を引いておるのは認めておると、こういうわけですね——よくわかりました。そうなりますと、いま政府考えておられますこの廃棄しようという考え方は、五百万錘と言っておられますが、これも間違いないかどうか。
  166. 磯野太郎

    政府委員(磯野太郎君) 現在の時点におきまして、約四百万錘程度が格納されております。新法が施行ということに予定いたしております十月ごろには、それより若干少なくなろうかというように考えております。   〔委員長退席、理事平島敏夫君着   席〕
  167. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そうしますと、大体千六百万錘が日本の紡機としてあるわけですが、織物については幅出し機で制限しよう、この千六百万錘の中で四百万錘にしよう、もっとそれより減るかもしれぬ、こうあいまいなことを言っておられるのですが、その点は多少違っても問題はないと私は思いますから、先を続けますが、そうしますと、この廃棄する機械に対して、政府は二錘を供出した場合には一錘の新しい許可をする、しかも大臣の許可制にすると、こういうことも間違いなくこれに盛られておるのですが、それでいいのかどうか。
  168. 福田一

    国務大臣(福田一君) 二対一の割合で新しく認めていく、こういうことでございます。
  169. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それから、この問題を二対一で新しい機械を認めようとされるのでありますが、そうすると、適正錘数は、結局千三百万錘は残してもいい、こういう見方なのかどうか、その点ひとつ。
  170. 磯野太郎

    政府委員(磯野太郎君) 現在、操短格納いたしておりますが、綿紡、スフ紡、それから梳毛紡を通じまして約千三百万錘くらいございます。その中で約四百万錘くらいが格納されておりまして、これを将来の需要からいろいろ計算をいたしますと、大体現在に対しまして主としてその三業種間で約百二、三十万錘が将来必要だ、これは大体四十三年くらいをいま予定しております、ということでございます。
  171. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それから、二錘に対して一錘の新しい機械を認めていこうということですが、結果的には、四十年以降においては千百二十万錘くらいにしたいということですね。そうなりますと、いまの日本状態からいって、紡績産業の改革をしようというその目標ですね。どういう機械を求めておられるのか。たとえば、いろんな機械がございます。これはもう私が言うまでもなく、繊維局長がきょうは見えているので、繊維局長にお聞きしたいのだが、何ぼ種類があるのか。最近の機械で、目標にされる機械を一ぺんお聞きかせを下さい。どういう機械があるか。
  172. 磯野太郎

    政府委員(磯野太郎君) 新法のおもな対象は、紡績業でございまして、法律でとられておるのは精紡機でございます。この精紡機は、御承知のとおりいろいろ型式がございますが、最近の事例から言いまして、たとえばリング精紡機が一番近代的なものであろうと考えております。それから、御承知のとおり、ナスとかキャスとか、非常に自動的な精紡機を含みました一連のグループの装置がございます。こういうものも、近代化のためにできるだけ取り入れたいというふうに考えております。
  173. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 ナスとかパスとかキャスとかあるわけですが、これは見本的なものだと私は思うのです。ところが、四百万錘の廃棄をして、新しく二百万錘据えようというときに、私は、通産省に対して一つの希望がなければいかぬと思う。どういう機械を据えるかによって予算も違いましようし、それは前処置も違うだろうと思うのです。その希望が、かりにパスなりナスなりという機械に求めておられますならば、いま政府が予定しておられます開銀からの、六カ月の予算とは言いながら、十億の予算では、私は予算にならないと思うのだが、その点はどう考えるか。
  174. 磯野太郎

    政府委員(磯野太郎君) ざっくばらんに申し上げますと、ただいま各企業に対しまして新法の関連でアンケートを求めております。七百企業ばかりに対してアンケートを出しましたが、ただいま現在で約五百くらいの企業から答えが出ています。これの集計をいたしますと、その中で、いろいろ御指摘になりますような企業としての希望する機械等が浮かび上がってくるわけでございますが、目下それを集計しております。大体開発銀行の十億につきましては、一応私どもといたしましては、御承知のスクラップ・アンド・ビルドの方式によります合繊紡への転換等につきまして約六割ぐらいじゃなかろうか。それから紡績工程の自動化、連続化がございますので、これが二億弱ぐらい。それから、撚糸工程の自動化がございますので、これが二億ぐらいということで、大体以上申し上げたような点で約十億を考えております。
  175. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 私は、日本の繊維産業の設備数を見ますと、この対象に該当されるものは、少なくとも、これは綿紡績とスフ紡績とが中心だと思うのです。絹紡の九万二千錘やら麻紡の六万錘あるいはまた、その他のわずかの錘数のものがその対象になろうとは考えておりません。少なくとも、綿紡の九百二万錘と、このスフ紡が私は対象になる、それで、ゆくゆくは合繊に切りかえるということだと思うのですが、これに間違いないか、私の考え方に。
  176. 磯野太郎

    政府委員(磯野太郎君) 御指摘のとおり、日本の紡績の体質改善につきまして、そのおもな対象は綿紡、スフ紡あるいは梳毛紡であろうというふうに考えております。合繊につきましては、合繊がただいま二十五万トンぐらい出ておりますけれども、将来二、三年後には、これが四十万トン程度になると思います。合繊紡への転換が必要だというふうに考えております。
  177. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そうしますと、これは大臣に聞きたいのですが、大体自主的な希望によって、その届け出によって廃棄していこうと、こういう考え方ですが、しかも、日本の紡機は、精紡機というのは、昭和二十五年以後の朝鮮ブーム以降に増大しているわけです。それまでの錘数というのは私は少なかったと見ております。それを、新しい十年か、十二、三年しかたたない、減価償却も終わっていないものを対象にしてみたり、一体何を目標にして廃棄していこうとするのか、その区分が明らかでなくてこの問題を処理されるということについては、非常に大きな誤りがあるのじゃないか。せめて目標でも出すべきだと思うが、大臣はどう考えるか。
  178. 福田一

    国務大臣(福田一君) 具体的にどういうふうに措置するかということについては、ただいまいろいろ研究をいたしておりますが、少なくとも、中小企業が持っておるものについては、いま仰せになったような問題もございますので、格別の特別な配慮をいたしてまいりたいと、かように考えておる次第であります。
  179. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 私は、多少意見になりますけれども、年度区分をしないで、こういう四百万錘からのものを廃棄していく、しかも、新しいものを二百万錘認めていこうということ。そうしますと、二十五年以降の、朝鮮ブーム以降の日本の繊維産業というものは、大体中小企業中心に拡大してきた。そうしますと、対象になる機械というものをとらえてみますならば、明治時代、大正時代、昭和初期の問題の機械がこれは廃棄の対象になるべきだ。むろん、改造はしていますよ。改造はしていますけれども、新しい機械を、だれが十年や十三年で廃棄しますか。自分で考えてもわかるでしょう。自分が経営者の場合、まだ減価償却も済まない、十年もたたない機械をいま廃棄しようなんということは、私は経営者としてあり得ないと思う。  そうしますと、新しい紡績にしようと思うならば、相当の資本を持って、そうして政府の助成金を借りて、あるいは開銀から大きな金を借りてやろうとするならば、これは大企業です。そこにもってきて、さっき言われたようなナスやパスやキャスを日本に据えようとしますならば——いま試験段階で東洋紡がなるほど浜松に据えております。けれども、私は、こういうものを据えようとすると、一万錘に対して五億の金が要るのです。四億五千万から五億要るのです。中小企業でできるはずがありません。そうして、しかも、それをかりに三年ぐらいでやってしまったとしますならば、中小企業は四カ年間凍結されたまま、そのまま残していかなくちゃいけない。新しい設備の二百万はどんどん運転する。片や、それを四年間待たなくちゃいかぬという、こういう中小企業に対するみじめな政策はないと私は考えるのですが、大臣はどう考えますか。
  180. 福田一

    国務大臣(福田一君) 先ほども申し上げましたように、中小企業が朝鮮事変以来非常に伸びて、過剰設備になっております関係もありますが、この中小企業の問題は、いまあなたのお示しになったような問題等も考慮して、特別の配慮をいたしてまいらなければならないと考えておるわけであります。
  181. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 まあ、配慮だけでは私は納得いかないので、あとでもっと聞きますが、もう一つ大きな問題は、これは将来困りはせぬかと思うことを一つお尋ねしたいのですが、この考え方の中には、この化合繊については特定産業の法案で守っていこう、こういう線が出ておるわけです。それも、国際競争にたえられるためには、私も反対はいたしません。やむを得ない処置かと考えます。けれども、紡績に対して、これだけの余剰を持ち、しかもまた、今後合成繊維が伸びようとする過程の中で、もし、特定産業としての紡糸が、原料が高く安定しておれば、中小企業は村区分はなくなって、過当競争はどんどん多くなる。一%以外の混紡であれば何ぼでもひける、どの機械でもひける。そういうことになった場合には、何を秩序としてやっていかれようとするのか。私が心配いたしますことは、原料高の製品安ということが必ず起こる。これは起こらないという自信が大臣はあるかどうか、一ぺんお聞きしたい。
  182. 福田一

    国務大臣(福田一君) いずれの場合におきましても、この中小企業の場合には、いま御指摘になったような脆弱性を暴露するものでありますが、しかし、われわれとしては、全体としてやはり安定した一つの産業に育てていこう、こういうことでありますから、いま御指摘になったような、いわゆる脆弱性を、特に中小企業における弱さというものを、できるだけあらゆる面から政府指導するなり、援助するなり、その他いろいろの方法によってささえながら、業界全体がりっぱに立ち直っていけるように指導をいたしてまいりたい、かように考えておるわけであります。
  183. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 これは大蔵大臣に聞きたいのですが、先ほど私が質問いたしましたように、大体今度の法案でお考えになっておるのは、まあ開銀の窓口をおつくりになった、この点では私はよくわかります。したがって、金額は、来年の四月までとするならば、十一月から発足して半年後になるということですが、しかし、政府考えております中には、金融の処置、税制の処置をして、そうしてそうした中小企業もいわゆる見なくちゃならないということが答申案にも出ておるにもかかわらず、法案に入れることすらそれが無理じゃと言われるのですが、私は、当然法案に入れて、四年間の臨時処置でありまするので、これには特別の配慮をすべきだと思いますが、大蔵大臣、どうお考えになりますか。
  184. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 過当競争の結果の余剰設備としてできたものを整理しようというのでありますから、本来ならば自力でやることが正しいと思いますけれども、そうばかりもいきませんので、開銀に十億円のワクを新たに設定をしたわけでございます。また、中小企業金融公庫にも、この問題に関してワクをつくろうという考え方でおるわけでございます。まあ、金融機関、その他今後御審議を願う予定になっております法律の趣旨に沿って近代化ができるような方向に政府も努力をいたしてまいりたい、かように考えております。
  185. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 最後に通産大臣に確認しておきますが、私が先ほど申し上げたように、中小企業にそうした迷惑がかからないような、かりに新しい機械が二百万錘ふえなくても、五十万錘でも百万錘でもふえたとする時期において、通産大臣の権限において、いわゆる格納台といえども、それを運転することができるときには中小企業を優先的に取り扱う、そういう考え方をひとつ持ってもらうことが一つ。さらに、金融面の処置と税制の処置は、これは法案の中に入れるべきだ。臨時処置法の法案の中に入れるべきだ。  もう一つの問題は、労働大臣にお聞きしたいのですが、この答申案の中には、労働者に重大な影響があるというような場合には、あるいは影響の起こってくる問題等については、当然この問題は労働組合とも協議すべきだ、かからないようにすべきだ、こういうことを言っておるのですが、私は、この問題については、少なくとも、あらゆる問題が起こってきようと思います。工場移転の問題もありましょうし、あるいは職場の移動等の問題もありましょう。そういう場合に、日本はどうも、この労働組合に対する扱い方が軽視されたような形になっておる。労使関係は、経営者とし、あるいはまた政府として、非常に表面的には打ち出しますけれども、実際問題としてのこういう事態に対する処置が私は足らないと思うが、そういう意味から、こういう場合には、労使協議制、事前協議制というものを法案の中に入れるべきだ、こう私は考えますが、労働大臣はどうお考えになりますか。
  186. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 企業の整備、あるいは合理化等にあたりましては、お話のとおり、労使間にいろいろな問題が起こることはもちろんでございます。従来から、労働省といたしましては、この種の問題については、労使間の健全なる自主的な話し合いがスムーズに行なわれることを期待いたしておった次第でございます。今回の法案に、労使協議の関係については法律の規定の中に入れたらどうかという御質問でございまするが、これは当然、こうした問題については、問題の性質上、労使間で話し合いが行なわれるべき事柄だと存じまするので、ただいまの段階では、特に法律の規定を入れる必要はないのではないか、かように考えておる次第でございます。
  187. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 通産大臣はどうお考えになりますか。
  188. 福田一

    国務大臣(福田一君) 中小企業に対する影響について特に御質疑があったと思っておるのでありますが、中小企業に対しては、一定数量以上のものについて整理をする、しかも、その場合にも、何といいますか、税金のような漸増方式といいますか、何らかのそういう措置をとって、できるだけ小さいものに影響が少なくなるように処置をいたしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  189. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 いまの労働問題の慣行の意味からも、こういう労働者に影響のある場合は事前協議すべきだということを法案に盛ることについてはどうお考えになりますか。
  190. 福田一

    国務大臣(福田一君) そういうような問題が起きたときには、先ほども労働大臣からも御答弁があったと思いますが、労使双方間で当然協議が行なわれるということになると存じます。したがって、それに特に入れなくても、その点は十分配慮しながら措置をしていかれるようになるだろうと思う。また、特に今日のような非常に弱年労働者が足りないというような段階におきましては、私は経営者としては特にその点については注意をして処置をいたすことになると思いますので、大体労使間の話し合いで十分効果が上げ得るのではないかと考えておるわけであります。
  191. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 どうも通産大臣は、日本の企業の合理化という問題のピントがはずれておると私は思うんです。合理化は弱年労働者じゃありません。これは何ぼでも足らないから来ますけれども合理化で一番困るのは中高年齢層です。そういうものの身分をどこで保障するか。労使で考えよと、こうおっしゃるけれども、この法案は政府指導しようという法律なんです。政府指導しようという法律の中に、労働者を守るべき一項が入ってもいいじゃないか。労働者に重大な影響がある場合とか、何かの一項を明記すべきじゃないかという私は考えを持つ。なお、労働大臣にお聞きしたいんですが、口先では日本の労働慣行を確立しなくちゃいかぬと、こうおっしゃいますけれども、私はそういう点が日本は非常に誤りだと思う。先進諸国に見るごとく、たとえばILOの問題にいたしましても、あるいはアメリカの綿製品に対する規制の問題にいたしましても、これは労使一体でやっておるじゃありませんか。日本は何かというと、労働者は別に取り扱って、労働者が犠牲になることすら労働省が守らない。事前協議制が確立できないという考え方は、大臣、どうお考えになっておるのか。労使でやるべきだと言われるけれども政府が、法律をして政府合理化しようとするものに対して、政府がそれを一項置いて、労働者の立場を尊重して改正法案の中に一項盛るか、明記すべきだ。このことは私は労働大臣として言えることだと思いますが、どういうふうにお考えになっておるのか。   〔理事平島敏夫君退席、委員長着   席〕
  192. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 日本の従来の労使関係が、必ずしもこうした問題の処理にたえるような状態でないではないかというお話の意味もよくわかるのでございます。しかし、元来から、労使というものは、相手が成り立って初めてこちらも成り立つという、双方協力しなければならない関係にあるわけでございまして、戦後、今日までの労使間でそういった心持ちが必ずしも十分にあらわれておらなかったことは、私もまことに遺憾に存じておったのでございます。しかし、最近になりまして、こうした点についての労使間の認識は相当進んでまいったように思うのでございまして、ことは昨年春、日経連におきましては、労使連帯ということを打ち出してきておられるのであります。私は労使連帯というものは、これを単なる口先だけで解決すべき問題ではなく、労使連帯ということを唱える以上は、やはり労働者が、その自己の将来の生活の設計を企業の将来性にかけておるのだという事実を考えたならば、やはり企業の将来の経営方針というようなものについても、労使協議を通じまして労働者にも十分に理解させて、また、労働者の希望なり考えなりに経営者も十分に耳を傾け、そうして相ともに企業の発展を期するべきだ。そうした意味で、労使協議制というものは今後経営者におかれても真剣に考えてもらいたい、これによって初めて労使連帯ということの実際的な裏づけが可能になる、こういうふうに私としては考え、またそういう趣旨で、使用者の方々にも、その方面に進まれるよう希望をあらゆる機会に表明をいたしておる次第でございます。で、こうした考え方はもとより労働者側においても共鳴されるところでございます。私は現在の情勢がすなおに進んでくれるならば、そうした方向に必ずや労使間が進むという大きな期待を持っておるわけでございまして、そうした意味で、今日の段階において、この法律の中に特にその点をあらためて書くことがはたして絶対に必要かどうか、こういうふうに考えておるわけであります。今後の情勢によりまして、当然そういう規定が必要だという場合におきましては、通産大臣とも十分協議いたしまして、新しい労使のあり方、また本来あるべき労使のあり方という趣旨からいきまして、仰せのような規定についても十分検討をいたしたいと存じます。
  193. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 私は労働大臣の見解を聞いておるのじゃないのですよ。政府が新しい法案のもとに、日本の繊維産業の動きに対して、四百万錘を廃棄して二百万錘の新しい機械に変えようということをお考えになっている。これは政府がやろうとしておるのですよ。その政府がやるのに、四百万錘の中の高等な機械になれば人も減ってきます、そうでしょう、あるいはまた移転する人もいるでしょう、いろんな、労働者に影響することばかりなんです。そういう法律を政府がつくるのに、労働省は労働者に対するサービスをしなければならない省じゃありませんか、それが、労働者を守ることの一項を入れることに、観念的な考え方を聞いておるのじゃない、労働省としてはこれを入れるべきだという主張がどうしてできないのか。入れなくてもやれるとおっしゃるのか。組合があればやれるかもしれません。ないところもあるのですよ、これは。だから当然、労働者を守るべき措置を一項私は起こすべきである、明記すべきだということを主張しておるのであって、それをどうして経営者や労働者だけにまかすのか、これはおかしいじゃありませんか。私はその点をお聞きしているのですよ。
  194. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 当然、労働者の利益を守らなければならぬというようなことは、これは法律の中に入れることについて別に反対はございません。そのことはそれなりに意味があると思います。しかしながら、それによって直ちに具体的にいかなる法律上の権利義務が発生するかということになりますると、その点は、ただそれだけのことでは解決しない問題があろうと存じます。また、そういった法的な権利義務だけで解決するということがはたして実際的にいかがかという点もございます。したがいまして、労働省といたしましては、御趣旨のような点につきましては、御趣旨のような考えで、今後十分なる行政措置を通じて万全を期してまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  195. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 大臣、もう一つ聞きますが、時間もないから私困っているんだけれども。そういうことをお考えになりますと、この法律と別個に、労働大臣としては何かの指示、示達を出そうとお考えになっておられるのですか。これに対して、もしこの法案が通ったとするならば、いま大臣がお考えになったようなことを指示、示達を出して、当然そういう場合には事前協議をしなくちゃならぬよ。そうすべきだ。しなくちゃならぬという義務づけじゃなくても、そうすべきだという見解でも出そうと、こういうお考えなんですか。
  196. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) まだ具体的にそこまで考えたわけじゃございませんが、しかし、そういうふうに処理されるべきだということは、先ほど申し上げましたごとく、かねてから考えておるのでございます。その法律が施行される段階におきまして、その情勢によって十分検討したいと思います。
  197. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 通産大臣に聞きたいのですが、いま、労働大臣のお話を聞いていますと、当然あってもしかるべきだとも考える、しかし運営上でもやれるのじゃないかという二つの見解のようなことを言っておられるのですが、これは労働大臣として直接この法案には携わっておられるわけじゃないから、私はその回答しかできないと思うのですが、通産大臣としては、一体こうした問題、こういう法律をつくって多くの労働者に迷惑のかからないような一項目を明記するということについてはどうして反対されるのか、その理由を言っていただきたい。
  198. 福田一

    国務大臣(福田一君) ただいま労働大臣と先生との間でいろいろ問答がございましたが、われわれといたしましては、この法案によって業界全体の大きな意味での育成をはかっていく、こういうことでありまして、しかも中小企業に対しては特別な考慮を払いながら措置をしてまいりたい、こう思っておるわけであります。しかも、格納しておりますものを順次新しくしていくという場合において、それほどたくさんの人のいわゆる労働問題について、それほど多くの損害といいますか、労働者に対してマイナスのことが起きるかどうか、私はそういうようなことがあれば、労使間で双方話し合った上で十分解決できるものである、こう考えておりますので、この法律に明示するまでもなく、そういうことは順序よく話し合いの上で処理ができる、こう考えてこの法案を提案いたしておるところであります。
  199. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 これは通産大臣の非常な認識不足で、さっき通産省の局長が言われたように、キャス、パス、ナス、こういう機械にかえた場合に、九人に対して二人しか人が要らないんですよ。大臣、認識不足ですよ。それで労働問題が起こらぬという理由がどこにある。もしそういう機械が設備されたら、前紡行程で、九人の人が要るのに二人しか要らないのです。こういう重大な法案をつくって、労働者の要望処置が私は一行挿入されないということはおかしい。前の設備調整には附帯覚え書きがあったのですよ。当然私らはそれで協議をしてきた、事前協議を。事前協議をしなければこれをやってはいけないという、そういう何があったのです。そこまで進んでおるのですよ。それを今度の新しい法案だから、私はどうして入らぬのかということを主張しておるのであって、大臣の見解は非常におかしいと思うのだね。もう時間がないから私は多くは質問いたしませんけれども、もっと認識を新たにして、そしてこういう法案をつくるときには、労働者には影響ないように、中小企業にも影響ないように、国民全体の繊維産業の将来というものが国際競争にどうしてたえるか、こういう大きな観点からぼくは論じてもらわないと話にならないと思うね。
  200. 福田一

    国務大臣(福田一君) いままでの答申の中で、「労働者の利益が害されることのないように配慮する必要がある」、こういうふうに答申が出ております。で、「現行法において特に労働者の地位に影響を持つものであろうと思われる過剰設備の格納について、明文をもって従業員の地位を不当に害するものであってはならない旨」規定をいたしておりますので、この現行法のこの分は、やはり新法においても規定を踏襲してまいるつもりであります。
  201. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 よくわかりました。私はそれが聞きたかったのです。それがあるのにもかかわらず、依然としてお断わりになるから、どうしてそういうふうに大臣がかわられると御破算になるかということを私は心配したのですが、どうもありがとうございました。どうかひとつ、よろしくその点今後挿入していただくことをお願いしたいと思います。終わります。
  202. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 高山君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  203. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 次に須藤五郎君。
  204. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は日本共産党を代表して、日韓問題につき、数点質問をいたしたいと存じます。  大平外務大臣は、朝鮮の統一は国連が解決する、こうおっしゃっていらっしゃいますが、現在、韓国にいるアメリカ軍隊は国連軍の名を僣称していると思うが、これは一体朝鮮において何をしておるか、説明をしていただきたい。
  205. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 韓国におる国連軍としての平和維持の仕事をやっておると思います。
  206. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 アメリカ軍の駐屯は国連方式で駐屯しておるのだというならば、国連方式というものはどんなものか。なぜ核武装をした軍隊を置かなければならないのか。この軍隊が、このようなものが朝鮮の南北統一にいかなる役に立つのかという点を説明していただきたい。
  207. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 朝鮮の統一につきましては国連方式というのがございまして、国連監視下で統一政権をやるということがうたわれておるわけでございまするが、あなたが御質問の、国連軍が韓国におるということは、統一の問題と観念上別な問題でございまして、これは国連の平和維持の建前上、国連軍として韓国に駐屯しておると承知しております。
  208. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あなたのおっしゃるのは、アメリカ軍は国連方式において駐屯しておるのだ、こういう御意見なんでしょう。
  209. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 国連方式というのは、統一つにきまして国連に国連方式というのがあるということを私は申し上げたわけでございまして、そのことと、国連軍が韓国内に駐屯しておるということとは別問題であると先ほど申し上げたところです。
  210. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それじゃアメリカ軍が韓国に駐屯しておるのは、いかなる理由において駐屯しておるのですか。
  211. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 平和維持の必要を感じて、平和維持機関としての国連がそういう意思決定をして、韓国に駐屯しておると承知しております。
  212. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうじゃないでしょう。アメリカ軍が韓国に駐とんしているのは、いわゆるアジア大陸に対する侵略の前進基地として韓国に駐とんしておるので、ただ国連軍という名前を僣称しているにすぎない。だからこそ、核武装をしているのじゃありませんか。アメリカの核武装をしている兵隊はどれだけおりますか。
  213. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) そのことはアメリカのほうにお聞きいただきたいと思うのでございます。
  214. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そんなことを日本の外務大臣わからないのですか。わかっているはずです。答えてください。
  215. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) そういうことを調査もいたしておりませんし、そういうお答えを申し上げる立場にもありません。
  216. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 アメリカ軍は大田協定以来、韓国軍隊に対する公然たる指揮統帥権を握っておるのです。また、韓国政府アメリカの承認なしには、経済計画、国家予算の決定も運用も、何一つ自主的にできないのです。アメリカ軍は韓国の重要な国家の主権機能を実質上完全に握っている。全く韓国の政府というものはかいらいにすぎないのです。こんなアメリカ軍が、しかも国連軍を僣称するアメリカ軍が、何で南北統一に役立つのかどうか。
  217. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) アメリカと韓国との関係は、アメリカ政府と韓国政府のきめる問題でございまして、私どものほうからとやかく申し上げる問題ではございません。
  218. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私の質問は、こういうアメリカ軍が韓国におることは、何で南北統一に役立つのか、こういう質問です。
  219. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 半島の統一の問題は朝鮮民族の問題でございまして、韓国のほうも、北鮮のほうも、それぞれ統一について真剣に考慮し、検討しておる問題でございます。韓国がアメリカと協定を結んで現在のような状況にあることが、統一を阻害するものか、統一に益するものか、そういう判断は、これは韓国の国民がきめる問題でございまして、私はそういうものに判定を下す立場にはありません。
  220. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あなたはそれに対して何ら考えがないということですか。それから、あなたは、大田協定によるところの、韓国の軍隊の統帥権のないこと、また経済計画も国家予算の決定もないことを、あなたは認められますか。
  221. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 先ほど申し上げましたように、これは韓国と米国との関係でございまして、それぞれの主権国家が協定を結んでどのようにされるかは、それぞれの国の自由でございまして、私どもからとやかく申し上げる立場にありません。
  222. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そういうことを聞いているのではありません。あなたも日本の外務大臣として、この大田協定なるものの内容は御存じだろうと思うのです。そうして、その事実をあなたも認識していらっしゃるだろうと思う。あなたがそれをはっきり認識しておるのかどうかということを聞いているのです。
  223. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 詳細にわたっては承知いたしておりません。
  224. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 承知していないでは、はなはだ私は職務に不熱心だと思う。不勉強だと思うのです。日本の外務大臣ともあろうものが、韓国とアメリカとの間に取りかわした条約の内容を知らぬ。ぼくらでも知っておりますよ。それをあなたが知らぬというのは、詭弁もはなはだしいものだ。知らなければ勉強しなさい。勉強する必要がありますよ。そういうことを知らなくて日韓会談を結べますか。何もかも承知しているのでしょう。だから、私はあなたに聞いているのです。はっきりもう一ぺん答えてください。
  225. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私どもといたしまして、私が先ほど申し上げましたように、米韓の間でそれぞれの主権国家がきめることでございまして、そのことに対しましてとやかくコメントする立場にないということは御了承いただきたいと思います。ただ、あなたから御注意がございましたように、そういうことを勉強してよく知っておくようにという御注意でございますから、その点は心がけたいと思います。
  226. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あなたとあるものが、いま知らぬわけじゃないのです。それを知っていると言うことができない立場にある。日韓会談をいまやろうとしておるときに、それを認めることがあなたにとって不利だ、日韓会談にとって不利だという見解のもとに、あなたはそういうことを、詭弁を弄しておる。知っておることは確かに知っておると私は考えます。  そこで、大平外務大臣に、政府は、朝鮮人民自身の手による統一に協力することは内政干渉だ、こういう意味のことをおっしゃっていらっしたが、統一を破壊するアメリカ軍の行為こそ内政干渉ではないか、こう思いますが、どうですか。
  227. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 米国と韓国との間は、それぞれ協定を結びまして行動いたしておるわけでございまするから、これは内政干渉というわけのものではないと私は思います。  それから、統一の問題につきまして、統一を促進することが内政干渉であるというような趣旨のことを私が申し上げた記憶はありませんが、私が申し上げたのは、先般の外務委員会におきまして、野坂委員に対するお答えといたしまして、統一の問題は朝鮮民族の第一義的な問題じゃございませんかということでございまして、私どもがこれを促進するとか阻害するとかいうことは、朝鮮民族に対して非礼なことだと思うのでございます。第一義的には朝鮮民族の問題であると私は心得ておるという趣旨のことを申し上げたのです。
  228. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それならば、申し上げますが、一九四八年以来一貫して朝鮮民主主義人民共和国は統一を呼びかけておるのです。特に一九六一年、朝鮮民主主義人民共和国から南朝鮮人民に対して平和的統一の呼びかけがなされました。御存じでしょう。すなわち、物資の交換、人の往来、文書の交換等が呼びかけられました。これに対して南朝鮮の人民は大きな反応を示し、平和的統一機運が盛り上がったのです。これに驚いたのは一体だれか、国連軍を僣称するアメリカ軍であります。一九六一年五月十六日、いわゆる朴をそそのかし、張勉政権に対して軍事クーデターを行なわしめた。民族自主統一協議会という会、六十万人の野党各派の進歩人で組織した協議会ですが、この六十万人を弾圧したのは一体だれなんですか。
  229. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私がお答え申し上げましたとおり、韓国の方々も、また北鮮の方々も、統一について考慮もし、真剣に検討もしておるということでございまして、統一の問題はその方々の問題であるということでございまして、それについてとやかく申し上げる立場にないと私は思います。
  230. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 統一はまさに朝鮮民族の問題です。とやかくほかから言うべき筋合いのものじゃないのです。ところが、アメリカ軍は国連軍の名を僣称して韓国に駐とんして、そうして南北統一の機運が盛り上がるや、朴をおだててクーデターを起こして、この統一を妨害したのじゃありませんか。アメリカ軍、これこそが統一を妨害しておる元凶だ、こう言わなければならないと思います。  政府は、日韓会談は三十八度線以北について適用できない、以南に限ると言っておりますが、そのとおりでございますか。
  231. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 韓国の支配していない領域につきましては白紙の状態でおります。
  232. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 三十八度線以南に限るということをこれまで言っておったが、それを白紙に戻しているんですか。
  233. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私どもといたしましては、韓国が支配を及ぼしている領域の問題を対象としてやっておるということは、前々から申し上げておるわけでございまして、北に政権があるということも頭に置いておりまするし、北の問題は白紙であると繰り返し繰り返し申し上げておるところです。
  234. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 韓国側は、終始一貫して、全朝鮮を代表していると主張していますが、この点を認めますか。
  235. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) それは韓国政府にお聞きいただきたいことでありますが、日本政府としては、私どもこういう見解でおるということをお答えしておるわけです。
  236. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 これは単なる新聞報道ではなく、韓国側がたびたび言明していることではないでしょうか。あなたもよく御存じのはずです。現に日韓会談当事者であるところの金鍾泌は、去る十日午後、ソウルで日本人記者団と会見し、「両国の基本関係では、基本条約を結ぶことを希望している。共同宣言方式はとりたくない。韓国の管轄権も、国連は韓国をただ一つの合法政府と認めているし、韓国も北朝鮮を失地と思っておるのだから、当然朝鮮半島全般に及ぶものと主張する。正常な外交関係の設定は、実際には批准後になるのではなかろうか」と語っております。この見解不一致を政府はどういうふうに考えられるのか。この問題について、政府は正式見解として、全朝鮮を代表する交渉ではないということを、いつ、どこで韓国側のだれに対して、はっきりと言明されたか。それをそのけじめをつけて交渉しているのか、けじめもつけずだらだらと交渉しているのか、はっきりと答弁していただきたい。
  237. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 韓国側の御見解は、日韓の間に会談が持たれておるわけでございまするから、会談の場で提起されることと思うわけでございまして、提起された場合に、日本側としてそれに対して見解を申し述べることがあるだろうと思います。あなたが言われたように、新聞紙上で述べられた見解に対して私が国会で申し上げるなどということは、不見識きわまることだと思います。
  238. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それでは、韓国憲法にはどうなっているか。三十八度線以南となっておるか、どうですか。
  239. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 韓国の憲法の条章を私よく存じませんが、日韓会談に臨む私ども立場といたしましては、韓国が支配している領域を対象としてやっておるという態度で臨んでおります。
  240. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 日本の外務大臣が韓国の憲法を知らぬというようなことで、相手国の憲法も知らないということで、日韓会談が進められますか。外務省の関係者、資料を出しなさい。
  241. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 憲法では、あなたが御指摘のように半島全域、こういうことになっておるようでございます。
  242. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あなたは交渉相手の憲法を尊重するのですか、尊重しないのですか。
  243. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私は、誠意をもちまして、両国の間にある懸案の解決、そうして国交の正常化を打ち出していこうということで当たっておるわけでございます。最大の敬意と誠意をもって臨むという態度で臨んでおります。
  244. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それでは、ことばがだんだん変わってきたじゃないですか。前は、三十八度線以南との交渉だと、認めていないと、北の方は白紙だと。憲法を尊重するというならば、韓国の主張は全朝鮮にわたるものと考えなければならぬ。その矛盾をどうするのですか。
  245. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) そういう基本関係につきましては、会談の席上韓国側からそういう御提案がありました場合に、日本側としてこれに対処することになるわけでございまして、まだそういう具体的な論議に入っておりませんので、何とも申し上げられません。
  246. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 念のためにもう一度聞きますが、あなたは、韓国の憲法を尊重するという立場で日韓会談に臨み、そうして相手方と交渉するのですか。それとも、憲法を尊重しない立場に立って交渉しようというのですか。どちらですか。
  247. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 外交を取り運ぶ場合におきましては、相手国に対して最大の敬意をもって臨まなければならぬのは当然でございます。ただ、問題は、どういう案件を適正に処理すべきかという場合に、ただいまの日韓交渉に臨む私どもの態度といたしましては、韓国の支配する領域の問題として、そういう問題を対象として考えております、ということを申し上げておるわけでございます。
  248. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あなたは、相手国の憲法を尊重すると、こういまおっしゃった。また、南のほうは、全朝鮮を代表すると、こう言っております。それなら、三十八度線以南の交渉にはならないではないかと考えますが、どうですか。
  249. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) おっしゃる意味が私によく了解ができませんが、三十八度線以南の交渉にならないという意味は、須藤さんがおっしゃるのは、どういう意味でございましょう。それをもう一度お教えいただきたい。
  250. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 韓国は、全朝鮮を支配すると、こう言っておるのです。それが憲法です。あなたはその憲法を尊重すると言っていらっしゃる。その憲法を尊重すると言っておるあなたが、三十八度線以南だけの交渉だと言うことは、矛盾しているじゃないですか。それは交渉にならないじゃないですか。
  251. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私どもは、外交交渉に当たる場合に、問題の性質を吟味いたしまして、それぞれ適正な解決をもたらすように努力するわけでございまして、ただいまの日韓交渉というのは、たびたび申し上げておりますように、韓国の支配の及び範囲内の問題というものを取り扱う以外に交渉の道はございません。
  252. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それなら、はっきりと聞いておきますが、今回の取りきめは、いわゆる日韓会談が終わったら、条約に三十八度線に限るということを明文化するかどうか。政府は、日韓会談妥結前は、三十八度線以南に限ると、こういって国民をごまかしておきながら、妥結したあとは、朝鮮半島全域に適用すると、こういうつもりではなかろうか。私たちはそういうふうに理解しておるのです。この点、はっきり条約に三十八度線以南に限るということを明文化するかどうかということを、はっきり答えてもらいたい。
  253. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いろいろな問題を煮詰めまして、出そろったところで、どういうような形式のものにしてまいるかを考えようと思っておるわけでございまして、いま、どういう条約形式をとるか、そうして同時に、それにどういう文言で表示していくかというところまで、まだ考えが具体的に固まっていない状況でございます。ただ、私ども国民の前に本議会を通じて申し上げておりますことと背馳したことをしょうなんということは、毛頭考えておりません。
  254. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 しかし、これまでの政府答弁によると、三十八度線に限っての条約だと、こういうことを言っておるのでしょう、現在。三十八度線以北には及ばないということを言っておるのです。だから、今度条約が締結された場合に、その条約に三十八度線以南に限るということを明文化するかどうかということが、そういうことがきまらなくて、何の条約の相談ができるのですか、それは基本的な態度じゃないですか。
  255. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私どもは、いま申し上げました基本的な考え方で臨んでいるわけでございまして、懸案が煮詰まりまして具体的にきめて、幸いにして国会の御審議をわずらわすようになった場合見ていただきたいと思うわけでございまして、いまここであなたに申し上げるように具体的に表現形式等がきまっておるわけではございません。ただくれぐれも申し上げておきますが、国民を瞞着するとか、ごまかすとか、そんな意図は毛頭ございません。
  256. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 時間がありませんから、追及をこの程度にして次に進みますが、池田総理はかつて三十八度線以北については、日韓会談のいかんにかかわらず、ポツダム、カイロ宣言に即応する処理は全部残る、たとえば賠償請求権等も残るとこう言っておったのですが、そのとおりでしょうか。
  257. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私が先ほど申しましたように、北のほうにつきましては、白紙の状態で臨みますということでございます。
  258. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それならば条約ができたとき、三十八度線以南に限るということを書き込まなかったら、白紙ということがはっきり知らせられない、はっきり書くべきじゃないですか、もう一ぺん伺います。
  259. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いままで、幸いにしてまとまりますならば、国会でもお示し申し上げましたような基本の線に従って、条約の形式表現等を考えるわけでございます。そのできばえを見て御批判をいただきたいと思います。まだできていない状況でございます。
  260. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 その点につきまして、韓国代表はそのことを確認しているのかどうか、どういう交渉を、いつの交渉で認めたのか。
  261. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 日本側の考え方はどうだという御質問でございますが、日本側はこういう考えでおる、そしてそういう基本関係についての討議は、まだ具体的に煮詰まった段階ではないということをお答え申し上げておるのであります。
  262. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それでは韓国側はまだ何も承認をしていない、認めていないということなんですか。三十八度線以南に限るということは韓国側は認めていないのですか、どうですか。
  263. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 今後、基本関係委員会で討議されることと期待いたしております。
  264. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 赤城農林大臣に質問したいんですが、漁業問題の交渉はどういうふうにやるのか、三十八度線以南に限ってやるのか、以北に及ぶのか。
  265. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) いま折衝していますが、そこまでまだきめておりませんが、私の考えといたしましては、三十八度線以北へいってもどうかと思います。以南のほうできめたいということであります。
  266. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 農林大臣は正直に答えています。やっぱり外務大臣は三十八度線以南に限る、以北に及ばぬというような、そういう見解で韓国といま交渉中なんでしょう、そういうことを韓国に言っているでしょう、どうですか。まだ何も言っていないんですか。
  267. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 基本問題委員会で、そういう問題は、具体的な煮詰めにまだ入っていないわけでございまして、いろいろな議論は行なわれたと思いますけれども、まだかたまったところまできてない。私から申し上げられますことは、日本政府としての腹がまえはどうだということだけしかお答えようがないわけでございます。
  268. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 李ラインは三十八度線以北に及んでいると私は考えております。また、事実李ラインは三十八度線以北に及んでいるんです。これを一体どうするんですか、赤城農林大臣。三十八度線以南で片づけることは不可能ではなかろうか、どうです。
  269. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 私のほうでは、先ほど申し上げましたように、三十八度線以南において李ラインを撤回するということを要求しておるわけでございます。以北につきましては、私のほうではとやかく申しておりません。
  270. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 きょうの新聞によりますと、朝鮮との交渉が、漁業権の問題なんかで平行線をたどっている。韓国のほうでは、決裂してもかまわないというような意見新聞記事が出ていたのを私見ましたが、その三十八度線以北に李ラインがいくかいかぬかという問題でそういう状態になっているんですか、どうですか。
  271. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 三十八度線以北の李ラインの問題ではございません。専管区域、ジュネーブできめた国際慣行に従う専管区域のきめ方等について違い点がございます。
  272. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それでは、韓国側は李ラインは三十八度線以北に及ばないというふうに承知しているんですか。
  273. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 李ラインは及ぶか及ばないか、向こうの考え方私ただしてみませんけれども、私は及ぶつもりでいるんじゃないかと思います。韓国側としては。私のほうでは南のほうだけの問題で話をしておるわけでございます。
  274. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 朝鮮民主主義人民共和国十二月十三日の声明には、日本政府が韓日——いわゆる日韓会談で南朝鮮軍事ファシスト一味といかなる詐欺文書をでっち上げようとも、それは不法であり無効である、こういう声明を発しております。朝鮮民主主義人民共和国は、日韓会談の一切の交渉を認めない、こういう態度をとっているが、日韓会談が妥結するとすれば、一体これはどうなる。
  275. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 韓国は七十三の国と国交を持っております。いうところの北鮮政府は、十九の国と国交を持っておるわけでございます。北鮮政府は、七十三の国プラス一をいたしまして、日本の国と韓国が国交を持つことがそんなにいやなのか、私はちょっと理解に苦しむわけでございますが、北鮮政府の声明があったそうでございますから承っておきます。
  276. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 朝鮮民主主義人民共和国が日韓会談を無効だというのは、理由がありますよ。朝鮮人の一番希望しておるのは、南北の統一なんです。日韓会談ができたら、南北統一が非常な困難になる、民族の希望が遠のいていくんです。民族の願いに合致しないんです。だから日韓会談に反対するんです。アメリカ日本をあと押しして、日韓会談をやらそうというのは、南北統一を阻害するためじゃないですか、そのことは明らかじゃないですか。だから朝鮮民主主義人民共和国は日韓会談に反対するんですよ。当然のことと思いますが、日本はカイロ、ポツダム宣言受諾で朝鮮独立と統一、生活安定と向上を助けなければならぬ義務があると思います。それだけではありません。日本は三十六年間、あらん限りの侵略と収奪をやり、朝鮮人民に損害と限りなき苦痛を与えております。政府は一体これらの事実をどう考えているのか。大平外務大臣は一九一九年三月一日に起こったいわゆる万歳事件に際しての日本帝国主義の犯した数々の残虐行為を知っているかどうか。池田さんはかって不敏にして知らないというような意味の答えをされたことがありますが、まさか大平さんは知らないでは済まされないと思います。私をして共産主義者たらしめたのは、この万歳事件であります。私は、日本帝国主義の行為をあくまでも憎まざるを得ません。過ぎて大正十二年、一九二三年九月一日の関東大震災に際してなした朝鮮人に対する大虐殺、九月だけで六千人の朝鮮人を殺しております。朝になると赤羽川に首のない朝鮮人の死体がたくさん浮きました。私は事実自分で行って見てきました。こういう大虐殺をあえてやった、こういうことをあなたは知っておりますか。
  277. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 前段のほうの問題でございますが、韓国会談は統一をはばむという論拠でございますが、それでは韓国といままで国交を結びました七十三の国、北鮮政府と国交を結びました十九の国が統一を阻害しておるという、あなたの論理から言うとそういう理屈になるはずでございます。私はそれは理屈にならぬと思うのでございます。私どもとしては、きわめて謙虚な気持で懸案を解決いたしまして、隣りの国でございますから、国交を正常化しようという、きわめて自然なことを考えておるにすぎないことを、御了承せられたいと思います。  それから日本による韓国の統治の問題でございますが、私どもは戦前の数々のことを想起いたしまして、戦後、われわれが不退転の決意をもちまして平和愛好国としての重大な決断を選択をいたしたわけでございます。私ども、その日本国民の不退転の決意を背負いまして、平和愛好国の日本として内政に、外交に、精進してまいらなければならぬと思っております。数々の過去のあやまちにつきましては、須藤さんと同じように、私もよく承知しております。
  278. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ここに韓日会談に対する朝鮮民主主義人民共和国政府の声明というのがありますから、あなたこれを一ぺん読んでください。日韓会談をやるためにはそれを知らないで会談を進めることはできませんよ。それほどあなたが責任を感ずるならば、せいぜい最小限いわゆる朝鮮民主主義人民共和国の代表も交えて、三者会談でいろいろ問題を相談するのが、当然じゃないですか。それを朝鮮民主主義人民共和国をはねのけて、韓国側とアメリカのしり馬に乗って交渉する、朝鮮の民主的な、平和的な統一を阻害する、ということは、これはあなたの精神に反しやしませんか。
  279. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いま世界のどこの国においても、南北朝鮮いずれとも国交を持っておるという国は、今のところございません。これは国際情勢のしからしめるところでございます。私どもとしては、微力でどうにもできないことでございます。私どもといたしましては、韓国の政府ととりあえず国交の正常化をはかる、そしてそれは南北の朝鮮の統一とわれわれの希望する目標に対してこれを阻止するものとも考えられませんし、阻害するものとも考えておりません。このことはきわめてあたりまえの自然な道行きであると考えております。
  280. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あなたは阻害しないと言うが、事実阻害するのです。日韓会談が成立したら、朝鮮の統一というものが非常に困難になるのです。あなたはいま日本帝国主義が戦前犯したところの数々の罪悪を知っておられる、こう言いました。知っておられるならば、またカイロ、ポツダム宣言の義務を考えますならば、南北統一に協力して朝鮮人民の自由獲得、独立達成に協力すべきであるとこう考えます。ところで、今日南北朝鮮の統一は、事実上非常に困難になっております。この困難になっておる原因は、何だとあなたは考えられますか。
  281. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 国際情勢が統一まで、統一を取り運ぶにとりまして、まだ熟した状態になってきていないということが、最大の原因だと思います。われわれといたしましては、統一を心から希望していることは、たびたび申し上げているとおりでございます。統一を阻害するというような意図もなければ、私はそういうことにならぬと確信を持っております。
  282. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 統一が困難になっている原因は、はっきりしているんです。国連軍を僣称するアメリカ帝国主義の侵略と干渉であります。そうではありませんか。これさえなければ朝鮮人民は自分の手でりっぱに統一をやってのける意思と実力を持っているんです。政府は、アメリカ軍の不法な駐とんを一体支持するのか、支持しないのか、はっきり答えてもらいたい。
  283. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) アメリカ軍が駐とんするかしないかの問題は、米国と韓国との間で取りきめるべき性質のものでございまして、日本政府がとやかく言うべき性質のものではございません。
  284. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それじゃ支持もしなければ、反対もしない、こういう意味ですか。支持するんでしょう。
  285. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 韓国の国民が選んだ政府が取り結びました条約、そうしてその政策、それに対して敬意を表します。
  286. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 朝鮮においては、アメリカ軍が駐留している現状でさえ、人民の統一運動が盛んに進められているんです。これを政府は一体支持するのかどうか。あなたは、先ほど統一を心から願う、こう言った。アメリカ軍の駐留しているところでも、いま実際に南北人民は統一運動をやっているんです。あなたが統一を希望するというならば、当然これを支持しなければならぬ。あなたは支持するのか、支持しないのか。
  287. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) これは誤解のないようにお願いしたいのでございますが、たびたび私の申し上げておりますように、統一云々の問題は、朝鮮民族の問題でございまして、支持するとかしないとかいうことは、これは朝鮮民族に対して私は非礼だと思うのでございます。
  288. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あなたはさっき朝鮮民族の統一を心から願うと言ったじゃないか。心から願っている人が、朝鮮の統一運動を支持することがどうしてできないんですか。それはアメリカに気がねしてみな答弁しているんですか。はっきりと、もっと大胆に、率直に答えてください。
  289. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) われわれとして言えることは、統一を希望しているということでございまして、あなたの属する党みたいに、よそさまの国のある勢力に対し支持するとか、支持しないとかいう発言は、私は御遠慮申し上げたいと思います。
  290. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 はなはだ不可解なんです。希望するということは、支持することじゃないですか。ただ、ことばが違っているだけで、内容は一緒でしょう。希望しないと言うならば支持しないと言える。希望すると言うならば、支持するのが当然でしょう。なんで支持するとはっきり答えられないんですか。何も他国に対する干渉じゃありませんよ、支持するということは。韓国人の統一を希望している人間が、韓国人の統一を支持することなんで、それが内政干渉になるんですか。何でもないじゃないですか。はっきり答えなさい。
  291. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 韓国の方々が統一のために検討もし、考慮もし、思索を持たれることであると思うのでございます。私どもといたしましては、統一を心から希望しているということでございます。
  292. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 日韓会談は、アメリカ軍を撤退させ、朝鮮人民の統一運動を助けるものになるのか、それともじゃまになると思うか。もう一度はっきり伺っておきます。
  293. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 隣り合わせの国でまだ正常化が行なわれていないから正常化をしようというだけの話でございまして、あなたが言われるようなめんどうな問題になるというふうには私は思っておりません。
  294. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 日韓会談の本質は、中国封じ込めと同じだと、こう考えます。アメリカの中国封じ込めを政府は一体どう考えておるのか。
  295. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) アメリカ政府の政策の批判ということを私から申し上げるのもいかがかと思うのでございますが、私どもで理解するところでは、アメリカの言うところの封じ込め政策というのは、中国の周辺の国々に対しまして、共産政府に対する脅威が起こらないように、その周辺の国々を固めておく必要があるという政策であるというように理解をいたしております。
  296. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あなたは、外国のことに対してとやかく言うのは筋ではないと、こうおっしゃいますけれども、この前フランスと中国が国交を回復したときに、台湾政府がすぐ声明を出しましたよ。大陸侵攻は決して放棄しない、これは台湾の基本政策である、こういう声明を発しましたよ。そのとき日本外務省は、非公式ではあるけれども、台湾政府を支持するという声明を出したじゃありませんか。台湾政府のそれに対して、そういう支持する声明が出されて、朝鮮民族の統一に対して支持するとか支持しないとかいう意思表示がなぜできないのでしょうか。それはおかしいじゃないですか。
  297. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) わが外務省は、国府の大陸政策に対して支持したということを申し上げたことはございません。
  298. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私はここに資料を持っておりませんけれども、フランスが国交を回復して、即座に、台湾政府、台湾の蒋介石が声明を発しましたよ。それに対して外務省は、その声明を支持するという非公式の声明を外務省は出しましたよ。一ぺん読んでみてください。アメリカの中国封じ込め政策は、いまや全く失敗に終わっているのです。政治、経済、軍事面においても完全に行き詰まって、失敗に失敗を重ねているのではないですか。終戦以来、南朝鮮に対して巨額の、三十億ドルという金をつぎ込み、兵力をつぎ込み、あえて朝鮮戦争すらも敢行したのではありませんか。その結果は一体どうなったか、いま皆さんの知るとおりです。今日、日本アメリカのおかした誤まりを繰り返そうとしているのです。これは日韓両人民の犠牲なくしてはなし得ないことであるが、政府は、日韓会談成立によって、再び韓国の支配権を握ろうと考えているのか、これこそ日本帝国主義の歩まんとする道だと考えます。自民党の副総裁大野伴睦氏がソウルを訪問した際、日本と韓国は親子の関係だといいました。また、かつて朴と並んで国防長官をやった金東河は、日本帝国万歳、こう叫んだということを聞いております。朝鮮民主主義人民共和国が自主独立して産業を発展し、人民の生活は日ごとに向上しているにもかかわらず、韓国人の生活は貧困のどん底におちいり、政権も落ちつかず、クーデターに次ぐクーデターをもってするところではありませんか。南ベトナムにおいても同じことが言えます。アメリカのかいらい政権グエンカーンは、南ベトナム解放民族戦線との戦いにおいて大敗北を喫しております。南ベトナムの解放民族戦線による統一は必ず実現するものと確信をします。やがて、アメリカは南ベトナムからも撤退せざるを得ないだろう。かかる情勢を見抜いたフランスは、中国との国交回復に踏み切った、これはアメリカの封じ込め政策の完全な敗北といわなければならないと思います。政府は、このような政策をどこまでも支持し続けていくつもりかどうか、答弁を願いたい。
  299. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私どもといたしましては、まず第一に、あなたが御指摘されるように、日本帝国主義の復活などというものを、そういう亡霊に取りつかれておりません。もしそういうお考えが共産党にありとすれば、それは御払拭いただきたいと思います。  それから、第二点といたしまして、アジアはまず平和でなければなりませんし、安定し、そして繁栄を保ってまいらなければならぬと思うのでございます。私どもはそれが一番大事なことだと思うわけでございまして、そういう観点から、日本として、日本の力量に応じて応分の貢献をすることを念願といたしているわけでございます。列強がアジアに対してどのような政策を行なうかということにつきましては、それに対する批評は差し控えますが、私どもといたしましては、アジアが安定を維持し、繁栄を保っていくように、日本自身として応分の寄与をいたしたいというところに焦点を置いてわが国のアジア政策を進めてまいりたいと考えております。
  300. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 五億ドルの有償無償、これをてこにして日本の独占資本は韓国に進出しようとしている。それから、韓国にあり余った労働者を多数日本に連れてきて、独占資本のもとに安い賃金で働かそうとしている。かつて日本が朝鮮で犯した罪を再び犯そうとしている。これを私は指摘したいのです。  そこで、通産大臣にお尋ねしますが、アメリカ日本と中国との貿易を、ココムの制限品目云々、また、プラントの輸出に際しましては、台湾をおだててそれに妨害をさしたり、いろいろな悪らつな手段を弄している。ところが、アメリカ自身、ドル危機で非常に困ってきている。アメリカも中国との貿易をいまややらざるを得ないところに追い込まれている。最近私は中国へ行っていろいろな資料を持って帰りましたが、それによりますと、アメリカが執拗に中国に対して貿易をやってくれということを申し込んでいるのです。その事実があることをあなたは御存じですか、どうですか。
  301. 福田一

    国務大臣(福田一君) そういううわさは聞いておりますが、事実は確認いたしておりません。
  302. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 知らなければ、参考までに私がここで読み上げますから、よく聞いておいて下さい。  一、アメリカ対中国政策検討委員会は、いわゆる香港駐在代表、これは中国人、江蘇省の人です。この駐在代表は、昨年の七月二十日と二十三日の二回にわたって、この委員会の名義と身分で中国の北京国際貿易促進委員会に手紙をよこして、北京にきて中米貿易の問題について相談したいと要求した。  二、また、八月十日、彼は香港の居住民として親戚訪問に名を借りて入国、北京までやってきて、中肉の国際貿易促進委員会の実務に携わっている人と接触した。彼は、アメリカ対中国政策検討委員会の主席だが、すでに百三十名の代表団を組織した。十一月十三日に香港にきて、中国側と貿易について相談すると伝えた。また、この中国と接触を得るための活動はアメリカ政府から黙認されていると伝えた。  三、八月二十二日、彼は南漢宸氏、これは中国国際貿易促進委員会の主席ですが、南漢宸氏に手紙をよこし、十一月中旬に香港でその委員会と貿易商談を行なうことについてもう一度考慮するように要求した。  四、九月十八日、二十一日の二回にわたり南漢宸氏に手紙をよこした。十八日の手紙には、その委員会が十一月中旬香港で中国側と貿易問題につき相談するほか、金融問題についても話し合いたいと書いており、また、香港で中米貿易を専門に扱う会社をつくると書いてある。聞くところによりますと、もうこの会社はできているそうです。二十一日の手紙には、以上の活動はケネディの同意を得ており、アメリカ政府から言われて行なっているのであると書いてあった。  このように、アメリカは日中貿易を妨害しながら、裏では中米貿易を促進する運動を執拗にやっております。日本もいいかげんに政府間協定に踏み切るべきでないだろうかと私は考えます。一日も早く日中国交回復、これをやらなければならないと考えます。この日中国交回復ができたらば、アジアの平和を確立することは確実であります。また、いま問題になっておるところの朝鮮の平和的統一もすぐできる。日中国交回復をやるならば、何もかも簡単に解決していく。日本の完全独立も解決する、台湾問題も解決する、あらゆる問題が平和裏に解決するのです。なぜ日中国交回復を渋っておるのですか。外務大臣、通産大臣、両相の意見を聞きます。
  303. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 外交は、日本の基本的な利益というものを踏まえた上で慎重に対処しなければならぬわけでございます。ただいまそういうことを考えておりません。
  304. 福田一

    国務大臣(福田一君) 外務大臣がお答えをいたしましたが、私は、そうあなたがおっしゃるような簡単な問題ではないと思っております。慎重に対処してまいりたいと考えております。
  305. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 通産大臣は、アメリカの対中国政策に対して見解を述べる必要があると思います。アメリカは、中国が農作物の不作で困っているときに、アメリカの余剰農産物の小麦を売り込むためにたくさんの見本を中国に送った。しかし、中国はそれを拒否しました。そうして中国はカナダから三億ドルの小麦を買ったのです。それが実情なんです。アメリカがこういうあくどいことをやっておるのをあなたはどういうふうに考えますか。聞くところによると、アメリカは、日本の中国友好商社の手を通じて、アメリカの品物を売り込むために画策しているということを聞いております。通産大臣の所見を伺っておきたい。
  306. 福田一

    国務大臣(福田一君) アメリカがどういう方途を持って、どういう手段で何をしておるかというようなことについては、私は確聞いたしておりません。私たちは、アメリカはどういうことであろうとも、日本日本立場において中国との関係を見ておればいいと思っております。
  307. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 確認しなければ、香港へ電報を打って、香港の領事に、私がいま言ったことが事実かどうか、確認させたらどうでしょうか、それを私はおすすめします。  最後に、政府は、朴政権がいつまでもつと思っておるのか、伺っておきたい。
  308. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 安定した民主的な政府であると心得ております。
  309. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 関連をお願いします。須藤さんの質問に対して外務大臣から、南北朝鮮の統一を阻害する意思はない、あるいはこれを希望しているという旨の御答弁が何回か行なわれたわけでありますけれども、もしそうだとすれば、かりに日韓会談が何らかの形で今回妥結をしたという以後において、北朝鮮側に対する日本の国交の正常化の問題だとか、あるいは自由往来といった問題については、どのように、どう処理していかれる方針であるか、それを第一点としてお伺いしておきたい。  それから、第二点としては、先ほどの赤城農林大臣の御答弁でありますけれども、李承晩ラインについて、いま専管水域で対立をしているということでございますけれども、この前の予算委員会での御答弁によりますと、あくまでも李承晩ラインは撤廃するという方針と、国際慣行はこれを守っていくというのがたてまえであるというふうに言われましたけれども、もしその方針で、これまた、かりに交渉が妥結をするということがあるとすれば、そのことは李承晩ラインの無条件撤廃ということを意味しておるのか。もし李承晩ラインの撤廃ということに通ずるならば、三十八度線以北に引かれた李承晩ラインは自動的にこれが解消するものであるのか、あるいは自動的に解消せずに、三十八度線以北の問題として、北朝鮮との間に何らかの問題が残るのか、その辺農林大臣の見解を承りたいと思います。
  310. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 北朝鮮との問題につきましては、全く白紙の状態でございます。
  311. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 先ほど申し上げましたように、意見が一致しないのは専管区域の問題でございます、線の引き方で、それから、そういうことがきまれば、当然李承晩ライン等は撤廃されるということに相なるべく交渉を進めておるわけでございます。そのとおりにやりたいと思います。  それから、国際慣行に従ってすべての問題が妥結した場合に、三十八度線以北の李承晩ラインはどうなるか、こういうお尋ね。これは私どもこれについては撤廃せよとも、あるいはどうとも言うことは差し控えておりますから、当然向こうのほうに残るんじゃないか、こう思います。私のほうからその方面に口出しはいたしておりません。
  312. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 朴政権はそう長く持たないですよ。じき倒れますよ。じっと見ておってごらんなさい。共産党が言ったようになります。いま三月危機ということがいわれておりますが、これは皆さんも御存じのとおり、日韓会談がアメリカの肝いりで急速に進められている一つの面は、この三月危機を何とかして切り抜けたい、このためにいま日韓会談が非常に急がれておる最大の原因です。韓国の経済的な状態を見ますならば、実質外貨は一億三千万ドルの赤字になっております。それから、財政は赤字です。非常なインフレです。生産面を見ると、精糖業は、七企業中、二企業のみ細々と操業している。製粉業は製産能力の九五%が完全にストップしている、釜山市内の製粉業は。釜山日報一日十八日付けによると、釜山市内の中小企業の八百六十七のうち、食料品工場は一割しか操業していない。非鉄と染織工業の大半が休業している。物価騰貴は、軍政二年半の間に六〇%上昇し、生活必需品は平均七九%上昇している。農民の様子を見れば、営農資金の強制回収の結果、土地や牛を売り、離農する農民が各地に起こっている。また、労働者階級を見るならば、ソウルの勤労の家計赤字は、勤労者の平均賃金が月三千五百ウオンという低賃金であるのに、生活費は五人世帯の標準家計が月一万三千五百ウオン、すなわち最低生活の四分の一というひどい給金しかもらっていない。非常な赤字を出しておる。  かかる情勢下において、南朝鮮の労働者は昨年末以来、賃金引き上げ、労働法改悪反対、争議権確保の闘争を全国的規模で展開しております。一月九日現在すでに闘争参加人員数は南朝鮮の組織労働者二十三万名の過半数十二万五千名に達しております。さらにこれ以外の労働者も現在闘争参加準備中と伝えられております。このように戦後最大の規模で展開されておる闘争は、まさに、朴正熙政権の屋台骨をゆすぶっておるのです。かかる状態で朴政権がもちこたえられると思うかどうか。
  313. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 本来韓国が置かれた経済的環境というものはたいへん困難なものであるということは、私も認めます。しかし、この困難は韓国の政府国民が真剣に対処をいたしておるところでございます。私どもからとやかく申し上げるべき性質のものではないと思います。  断わっておきたいのは、日韓会談の成否にかかわらずそういう事態があるということでございます。私どもといたしましては、隣国がこういう困難から脱却いたしまして、隆々と発展するように希望いたしております。
  314. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 いま申しましたような国情で、朴政権がそういつまでももつということは期待できませんよ。日本政府は朴政権がいつまでももってほしいと思っておるかどうか知らぬけれども、こういう状態では朴政権はもたない。やがて倒れる。必ず倒れます。  その一方、朝鮮民主主義人民共和国の経済建設は一体どうなっておるか、御存じでございましょうか。七カ年計画の終わる一九六七年には、工業総生産高は三倍となります。生産手段生産は三・二倍、消費財生産は三・一倍、工業総生産高の年平均増加率は一八%を見込んでおります。しかも、いままでの実績はこの見込みを上回っておるのが事実です。北と南を比較してみればわかるごとく、差し迫った南朝鮮の経済的危機を朝鮮人民自身が解決するために南北が統一をすることは必至であると思うが、政府はどういうふうに考えられますか。北朝鮮は重化学工業が盛んである、南朝鮮は軽工業と農業が盛んである、これから推して考えてみましても、統一と交流なしには経済はやっていけない。統一は必至であります。空論ではないと思います。アメリカの干渉とそれに追従する日韓会談さえなければ、朝鮮人民だけで統一はすぐできると思いますが、政府はどういうふうに考えますか。
  315. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 経済的な困難の克服も、統一の達成の問題も、たびたび申し上げておりますように、先方の方々の問題でありまして、私どもといたしましては両方とも希望いたしております。
  316. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 統一が実現したら、今日結ぼうとしておる日韓条約、これは、一体どういうふうな扱いになるのですか。
  317. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私どもといたしましては、幸いにこれがまとまりました暁におきましては、現に韓国が支配しておる領域についての問題が片づくわけでございますから、半島と日本との関係はたいへんな前進になると思います。
  318. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 もう一ぺんはっきり答えてください、いま少し聞き取りにくかったから。統一が実現した暁は、いま北の朝鮮民主主義人民共和国を度外視して結んだところのこの日韓条約というものは、御破算になって効力をなくしてしまうのか、それともそれが生きるのか、そのときには一体どうしようというのか、という点を私ははっきり聞いておきたいのです。
  319. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 韓国が支配しておる領域に関する限り、問題は片づくわけでございますから、かりに統一が実現いたしましても、そのことは有効でありまして、これだけ問題が片づいたということは統一にとりましてプラスでこそあれマイナスは決してないと思います。
  320. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そういうことはないです。この日韓会談、日韓条約というものが非常なじゃまになってくるのです。統一は目の前に近づいているのです。だから、いま急いで日韓会談なんかやる必要はないのです。それよりも、あなたがおっしゃったように南北の統一を希望するならば、南北の統一を促進するように、実現が一日も早まるように、そういう日本政府は努力をするのです。これがカイロ、ポツダム宣言を受け入れた日本の義務である。また、三十六年間朝鮮をいじめ抜いてきた、搾取してきたこの日本がなすべき私は大きな義務と責任だ、こういうふうに考える。必ず日韓条約というものは今後非常なじゃまになる。いま日台条約というものは日中国交回復に大きな妨害になって支障を来たしておるような、そういう同じ結果が今後生まれてくるのです。だから、日韓会談なんか即時打ち切って、日韓条約なぞつくるべきじゃないのです。日台条約と同じ役割りを果たしますよ。必ずそうなりますよ。しかも、統一は近いのです。その点はよく政府考えて事に当たってもらいたいと思う。  日本政府はかかる事情を無視して、アメリカの指示に従い、日本国民反対を押し切って日韓会談の妥結を急いでおる。政府のこのようなやり方は、朝鮮人民の統一を破壊し、アジアの緊張激化と日本独占の収奪を強めるものである。また同時に、この体制は日本人民の弾圧なしには確立し得ないと考えます。アメリカ日本政府のやり方は日朝両人民の敵だと考えます。また、アジア人民の敵でもあります。われわれ日本共産党は日韓会談を認めるわけにはいかぬ。そのことをつけ加えて私の質問を終わることにいたします。
  321. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 須藤君の質疑は終了いたしました。  本日はこの程度にいたします。明日は午前十時より開会いたします。  これにて散会いたします。    午後四時十七分散会