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1964-03-11 第46回国会 参議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月十一日(水曜日)    午前十時三十分開会     —————————————   委員の異動  三月十一日   辞任      補欠選任    天田 勝正君  高山 恒雄君    中尾 辰義君  鬼木 勝利君     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     太田 正孝君    理事            大谷藤之助君            斎藤  昇君            平島 敏夫君            村山 道雄君            藤田  進君            山本伊三郎君            鈴木 一弘君            高山 恒雄君            奥 むめお君    委員            井上 清一君            植垣弥一郎君            木村篤太郎君            草葉 隆圓君            小山邦太郎君            木暮武太夫君            後藤 義隆君            河野 謙三君            郡  祐一君            佐野  廣君            杉原 荒太君            田中 啓一君            館  哲二君            鳥畠徳次郎君            山本  杉君            吉江 勝保君            加瀬  完君            木村禧八郎君            瀬谷 英行君            戸叶  武君            羽生 三七君            米田  勲君            浅井  亨君            鬼木 勝利君            中尾 辰義君            基  政七君            須藤 五郎君            林   塩君   国務大臣    法 務 大 臣 賀屋 興宣君    外 務 大 臣 大平 正芳君    大 蔵 大 臣 田中 角榮君    厚 生 大 臣 小林 武治君    農 林 大 臣 赤城 宗徳君    通商産業大臣  福田  一君    運 輸 大 臣 綾部健太郎君    労 働 大 臣 大橋 武夫君    建 設 大 臣 河野 一郎君    自 治 大 臣 早川  崇君    国 務 大 臣 福田 篤泰君    国 務 大 臣 宮澤 喜一君   政府委員    内閣法制局長官 林  修三君    防衛庁長官官房    長       三輪 良雄君    防衛庁防衛局長 海原  治君    防衛庁教育局長 堀田 政孝君    防衛庁人事局長 小幡 久男君    防衛庁装備局長 伊藤 三郎君    防衛庁参事官  麻生  茂君    経済企画庁総合    開発局長    鹿野 義夫君    法務政務次官  天埜 良吉君    法務省刑事局長 竹内 壽平君    外務省アジア局    長       後宮 虎郎君    外務省条約局長 中川  融君    大蔵大臣官房財    務調査官    松井 直行君    大蔵省主計局長 佐藤 一郎君    水産庁長官   庄野五一郎君    通商産業省企業    局参事官    馬郡  巖君    運輸省鉄道監督    局長      廣瀬 眞一君    労働省労政局長 三治 重信君    労働省労働基準    局長      村上 茂利君    建設省計画局長 町田  充君   建設省道路局長 尾之内由紀夫君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    日本国有鉄道総    裁       石田 礼助君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○昭和三十九年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十九年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十九年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 予算委員会を開会いたします。  昭和三十九年度一般会計予算特別会計予算政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、きのうに引き続いて質疑を行ないます。  去る六日及び九日の理事会におきまして、一般質疑質疑期間会派別割り当て時間、順位分科会審査日及び締めくくり総括質問の総時間等の取り扱いについて協議いたしましたが、その内容につきましては、お手元にお配りいたしました印刷物のとおりでございます。  ただいま御報告のとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 御異議ないと認めます。  なお、分科会所管事項担当委員数及び締めくくり総括質疑の各会派別割り当て時間、順位につきましては、後日理事会で各位と協議いたすことにいたしております。  これより一般質疑に入ります。瀬谷英行君。
  4. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 私は昨日まで行なわれました予算委員会総括質疑の中から、さらに掘り下げた幾つかの問題点について政府の見解をただしたいと思います。  最初に日韓漁業交渉の問題についてお伺いをしたいと思います。  社会党の立場からするならば、日韓農相会談日韓会談妥結する前提として進められていること自体に論議のあるところでございますが、すでに今日これを論じているときではないと思いますので、この問題が国民から非常に関心を持たれているということにかんがみまして、単に政府与党内部、自民党の総裁公選の思惑とか取引のために妥結を急いだり、節操のない譲歩をされるということがあっては悔いを千載に残すということになると思います。その意味で私は民族的な良心に立って誠意ある答弁を期待をしたいと思います。  きょうから実質的な討議に入ったということでありますが、日韓農相会談の一応の目安あるいは考え方というものを、ここでお述べ願える範囲内において農林大臣からお答え願いたいと思います。
  5. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) お答え申し上げますが、きょうから韓国側農務長官会談に入るわけでございます。私のほうといたしましては、第一は李ラインの問題でございます。李ライン国際法及び国際慣習上不当なものであると、私どもはこれを認めておりませんが、向こうではこういうものを設けておりますので、これが撤廃前提として交渉を進めていく。こういうことが第一の問題でございます。第二の問題といたしましては、漁業専管水域というものが世界的にも認められているわけでございます。そこで漁業専管水域の幅をどういうふうにするかということでございますが、韓国側はこれを四十海里とか、こういうことを主張しておるのでございますが、わがほうといたしましては、国際先例に従って十二海里以上とすることは絶対に認めがたい、こういう方針で進めていこうという考え方でございます。  第三番目には、漁業専管区域基線でございますが、どこからはかるかということでございます。韓国側は、専門家会議等におきましても直線基線の採用を主張しておったのでございますが、わが日本側といたしましては、原則としては沿岸潮線をとるべきものと、こういうふうに考えておるわけでございます。ただ韓国西海岸及び南海岸におきましては、海岸線の屈曲が非常に激しく、また海岸に一連の島嶼がありますので、低潮線からはかるということが非常に困難でございます。そういう関係で一九五八年の領海及び接続水域に関する条約、こういうものがありますので、これは日本は入っておりませんけれども、この会議及び六〇年の会議日本韓国も出席いたしまして、条約には入っておりませんが、この条約趣旨に賛成いたしておるものがございます。それによりますというと、合理的範囲内では低潮線からはからないで、こういうふうに湾が入り組んでおって、島がたくさんあるというところは、島としてはあるいは岬と岬をつないだ直線基線、それから十二海里なら十二海里をはかるということが国際慣例になって、すでに国際間でそういう条約もできているところもございます。そういうのもありますので、西海岸及び南海岸におきましては、例外的な直線基線を採用するということもやむを得ないと考えております。ただその線の引き方等につきまして、専門家会議等におきまして、非常に議論が多かったのでございます。すなわち向こう側からいいますならば、なるだけ遠くのほうへその基線を持っていこうとする、私のほうから見れば、島の本土の形に沿うてそうして十二海里なんですから、できるだけ向こう側に沿うて線を引くべきだということにつきまして、議論が分かれておりますけれども直線基線でやるという例外は認めてもよろしいという態度でございます。  第四番目に、漁業専管区域が設けられたその外側の領域でございますが、これはもちろん公海でございます。公海でございますけれども、魚族の持続的に資源を維持していく、こういうような関係から公海でありますが、お互いの話し合いによりましては、何らかの措置をとってもよろしい、しかしその措置をとるといたしましても、両国の間に公平に適用されなくちゃならない、あるいは合理的でなくちゃならない、あるいは実施可能でなくちゃならない、こういうことで規制措置をとるとしますならば、そういう原則といいますか、そういう方針のもとに規制措置をとるべきであると、こういうような態度交渉を進めるつもりでございますが、いままでも専門家会議等におきまして進めておりました点がそういう点でございます。きまらなかった点が相当多いので、農相会談、そういう会談解決をはかっていきたいが、私のほうは、主張主張として筋を通していく、こういう考え方でございます。
  6. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 李承晩ラインは、国際法的に見て不当であるということは、何ら疑う余地がないというふうにわれわれは思うのでありますけれども、この点については諸外国にも例がなく、法律的にも全く不当であるということは、断定をして差しつかえないかどうか、法制局長官にお聞きしたい。
  7. 林修三

    政府委員林修三君) まあ大体従来の国際慣例から申しまして、領海においてその国が、沿岸国が専属的の管轄権を持つというのがたてまえでございます。領海の幅についてはいろいろ議論があるところでございますが、その領海外におきます公海に対して一つの線を引いてそこに対して沿岸の国が管轄権主張するということは、従来の国際慣例上は認められていなかったところだと考えます。
  8. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 そうすると、国際慣例からいっても李承晩ラインというようなものは認めがたいということははっきりしておるわけであります。そうすると、この撤廃を要求するというのは、少しも無理なことでもなければ相手方譲歩を要求する性格のものでもない、当然のことであるというふうに思われるわけであります。ところが日韓農相会談韓国農林部長あいさつ要旨を、新聞に載っておりますのを見ると、「この時期に政治的な巨視的観点に立って両国漁民共同利益のために話し合うことは喜ばしい。」「一般国際慣行を強く主張せんとする貴国の立場は十分理解するが、歴史的現実である両国間の特殊性を深く考慮に入れ、」云々と、こういうことを言っております。つまり国際慣行を強調しようとする気持ちはわかるけれども、そこのところは多少曲げてくれというか、譲ってくれというふうなニュアンスが、韓国側農林部長官あいさつ要旨には見受けられるわけであります。一体韓国側としては、この大事な問題、李ラインの問題についてその不当性を認めて、これを無条件に撤廃をするという意思があるのかどうか、その点を外務大臣にお伺いしたいと思います。
  9. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国際慣行を尊重いたしますことは、日韓両国の名誉において順守してまいることが大切であると考えます。私どもといたしましては、日韓関係正常化をはかるということが目的でございますので、その目的を達するために、両国国際慣行を尊重するという精神に立ちまして妥結をはかるということを、心から期待いたしておるわけでございまして、そういう方向漸次理解が深まっていきつつあると思います。
  10. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 外務大臣の御答弁によりますと、李ライン撤廃方向理解が深まっていきつつあると、こういうお話でございました。農林大臣が昨日の農相会談でもってそのような印象をお受けになったのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  11. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 私は、まだ本格的な話し合いをしませんから、その意向をいま申し上げるのはどうかと思いますけれども、私の考え方というか、私の主観的な感じ方からすれば、私は、李承晩ラインは当然撤廃しなくちゃならぬ問題だと向こうでも考えているんじゃないか。これは条約の問題ですが、ソ連との漁業交渉等におきましても、初めソ連ブルガーニン・ラインというものを一方的に引いておった。しかし漁業条約がきまると同時に、ブルガーニン・ラインというものを撤廃をいたした例がございます。そういうことからいいましても、話が、先ほど申し上げましたように、専管区域とか、そういうものから入っていくということにいたしまするならば、これは李承晩ラインは当然向こうでも撤廃すべきものだというふうに私は考えております。また、向こうもそう考えておるのではないかと思いますけれども、まだ本格的に入って言質は取っておりませんから申し上げられません。
  12. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 私は、本格的な話し合い段階に入っていないということであり、また話し合い段階に入っていたとしても、交渉上の問題について根掘り葉掘りその中間報告を求めても、それはやぼだと思いますから、担当大臣として国民の前に約束できることだけははっきりしておいていただきたい、こう思います。いままで農林大臣答弁の中で、李承晩ライン撤廃ということは、もうこれはどうしても堅持しなければならないところだ、われわれのほうで譲れないところだということを言明されましたから、このことは国民の前に約束されたものというふうに判断をいたします。  それから専管水域であるとか、あるいはこの基線をどういうふうに引くか、こういうような問題については、国際先例等に基づいて行なっていくのだ、こういう御答弁がございました。韓国側が、いままで主張しておりましたことは、国際法とか、あるいは国際慣行からはずれたことを主張してきておるというふうに理解をいたしますが、国際先例としては十二海里ぐらいが領海区域としても最も長い線であるというのが国際慣行になっているわけでありますから、この線もやはりわが国としては堅持をしていくものであるというふうに理解をしてよろしいかどうか、農林大臣にお伺いしたいと思います。
  13. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) わが国は、御承知のように漁業問題では国際的に交渉をする国々が、ソ連とか、あるいはアメリカ、カナダ等あるのであります。そういう関係もございますので、国際慣例とか、国際条約等に沿うた線で日韓間の漁業の問題を解決していきませんと、非常に日本立場というものはまずくなりまするし、また、国際的にも信用をなくするというようなことでございますので、国際慣例を守っていきたい。  専管区域等におきましても、いまお話のように、ジュネーヴの会議等におきましても十二海里が最大限で、四十海里というようなことは、これは非常に例のない問題でございますので、そういうことは認めるわけには私たちはまいりません。あるいは線の引き方等におきましても、いままでのほかの国でやっておった、イギリスノルウェーとか、イギリスとアイスランド、あるいはソ連ノルウェーとか、こういう先例もございます。また、条約趣旨もございますので、国際慣例に従った線の引き方を主張する、こういう立場で進めたいと思います。
  14. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 けさの新聞に出ておるところでありまするが、「外務省筋によると韓国側にはこの交渉妥結させようとの誠意が見られた」こういうふうに述べております。しかし、先ほど私が申し上げましたように、韓国農林部長官あいさつの中には、李承晩ライン撤廃しますという約束は述べていない。それからさらに一般国際慣行を強く主張しようとする日本気持ちはわかるが、そこのところは少しは曲げてもらいたいというニュアンスのことを言っておるわけです。そうなってまいりますと、農林大臣が先ほど申し述べられたような立場に立って話を進める以上は、韓国側が従来の国際慣行と飛び離れた主張を撤回をし、譲歩をするということでなければ、これは話し合いがまとまる可能性がなくなってくるわけです。日本のほうで譲歩をする、これらの基本線をくずしてしまうということであれば別でありますが、私は農林大臣の言明からは、そのようなことはないというふうに感じられましたので、そうなってくると、相手方あいさついかんにかかわらず、向こう譲歩をするということが可能であるというふうに外務大臣としてはお考えになっておられるかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  15. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私どもは、赤城農林大臣を御信頼いたしまして、農林大臣の御判断でこの会談をお進めいただきたいと考えておるわけでございます。農林大臣のお考えは、先ほど大臣自身からお述べになったわけでございます。
  16. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 これは三月の四日、本予算委員会羽生委員質問でありますが、「純粋に専門的立場で検討されなければならない問題が十分合意されない場合でも政治会談で合意されることがあるのかどうか」、つまり「専門家間で合意できないものがハイレベルのところにいけば打開の道が開けるというのはどういうことか。それならば専門家的立場で討議すべき条件が整わない場合でも、これを無視してでもハイレベル解決することを意味するのではないかと思う。」という意味質問が、羽生さんからあったわけです。ところがそれに対する回答がどうもはっきりしないようなんでありますので、この点について専門家の間で合意できなくとも、できるのだというその根拠等について、もう少し詳細にお述べを願いたいと思います。
  17. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 羽生先生の御質問に対して私がお答え申し上げたのは、専門家会談であろうと閣僚会談であろうと、私どもは筋を通した納得のいく解決をいたすという基本方針に変わりはないということを申し上げたわけでございます。高級レベル会談でございますから、ぞんざいでやっていいなんということでは決してございませんということを申し上げたわけです。
  18. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 この議事録では、ぞんざいにやっていこうということは一つもございませんということと、それから金氏が来日してトップ・レベル局面打開という説もあるのだが、どうかという点については、先方から聞いていないからお答えすることはできませんという程度の御答弁になっておるわけであります。そこで、これは押し問答してもしようがありませんから、いま農林大臣答弁をされました内容、つまり農林大臣答弁の線に沿って外務大臣としても話を進めるのであって、そこで向こう譲歩しない場合には、会談がまとまらないということがあっても、これはやむを得ない、このようなことに帰着すると思うのでありますが、そう解釈してよろしゅうございますか。
  19. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 農林大臣を御信頼して御一任申し上げております。
  20. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 今日まで韓国側によって、日本漁船拿捕されたことがたくさんありましたが、最近における日本漁船に対する圧迫、妨害の事実あるいは漁船拿捕状況といったようなものがわかりましたならば、ここでお述べを願いたいと思います。
  21. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 拿捕状況を第一に申し上げます。昭和二十二年このかた、韓国拿捕された漁船の数は三百十八隻、乗り組み員数が三千八百十七人になっております。このうちで未帰還のものが百八十一隻、沈没したものが二隻、抑留中死亡したものが八人となっておりまして、現在一人も抑留されている漁船員はございません。最近に至りまして、三十九年の一月二十九日、一隻、乗り組み員十二名が拿捕されましたが、三月九日に船、乗組員とも釈放されております。  それから日本漁船に対する韓国側圧迫状況がどうなっておるかという御質問に対してお答えいたします。いま申し上げましたように、昭和二十二年以来、日本漁船拿捕されていましたが、特に二十七年一月、先ほどから話がありました公海上に李ラインを設定いたしまして、これはマッカーサー・ラインの延長でございますが、それ以来李ライン侵犯ということの理由で、わが国漁船を追跡したり拿捕を行なってきております。私のほうではこれを認めておりませんので、その中にも入っている船があるわけであります。韓国側では、警備状況は大体警備船十二隻、これが李ライン警備に当たっている模様でございます。釜山を本拠とし、木浦ほか六つの港に前進基地を持っていて、常に四隻から六隻が出動している、こういう状況で、二、三隻が共同動作をとっておるというふうに思われます。私のほうではどういう方策をとっておるかということでありますが、そこまで申し上げますと、この李ライン撤廃を申し入れておるのでありますが、韓国によるわが国漁船拿捕を防ぐため巡視船等を増強いたしまして、重点的配船を行なってその性能の向上をはかっておる。私ども警備状況は、海上保安庁巡視艇が五隻常に季ライン周辺海域に配置しておりまして、韓国警備船の動向をキャッチしては出漁船に警報し、拿捕を未然に防止するとともに、追跡を受けておる漁船保護誘導につとめておる。また水産庁取り締まり船二隻を常時李ライン周辺に配置いたしまして、海上保安庁と協力して拿捕の防止につとめており、必要に応じては、いまの二隻以上の取り締まり船の増強をお願いしたい、こういう状況であります。
  22. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 いままでこういうふうに公海上でもって操業している漁船拿捕するなどということは、あまりよその国には例がないことじゃないかという気がいたしますし、当然このことも国際法に触れることではないかと思いますが、国際慣行並びに国際法の点から見て、外国漁船の操業に対して勝手に圧迫を加えたり拿捕したり、乗り組み員を拉致するというようなことは、はたしてどういうものであるか、これは法律的立場から法制局長官に述べていただきたいと思います。
  23. 林修三

    政府委員林修三君) 外国における例があったかなかったか、ちょっと私は実はよく覚えておりません。あるいは外務当局からお答えしたほうがいいかもわかりません。しかし、一般公海はいわゆる公海自由の原則というものが国際的に認められておるわけでございますから、何らの条約上の根拠がなくて、ある国が公海にある漁船等に対して一方的に権限を及ぼすあるいは逮捕するというようなことは、国際慣例からは認められていないところだと、かように考えます。
  24. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 こういう場合の賠償請求というものはどういったことになるのですか。これは外務大臣として、いままで拿捕されたたびに抗議はしていたと思うのでありますが、人間の釈放を要求するだけではなくて、持っていかれた船に対しては、当然のことでありますけれども賠償請求ということが行なわれていなければならないと思いますが、それは行なってきたのかどうか、先方態度はどうであったのか、また、法律的に見て賠償請求といったものは一体どういう形で行なわれるべきものであるか、外務大臣にお伺いいたします。
  25. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 拿捕がありましたつど、日本といたしましては賠償請求権を留保いたしてございます。この問題は、その未解決のまま今日に至っておるという状況であります。
  26. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 それでは日韓会談を特に農相会談範囲で進めていく中で、このいままで留保をしてまいりました賠償請求は、この機会に当然行なうものと解釈をしてよろしいかどうか、農林大臣にお伺いいたします。
  27. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 賠償請求権は留保しておりますので、これは賠償請求を、会談のある段階においては留保を要求すると、こういうふうにしたいと、こう思っております。
  28. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 現実に損害を受けた漁民に対して、あるいは船主に対しては、どのような措置を講じてきておりますか。
  29. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) これは国内の措置といたしまして、漁船の保険に入っておるものには漁船の保険金を払っております。あるいは抑留されたもので、保険に入ってないもの等につきましては、昨年の予算におきまして見舞金という形で——漁船保険に入ってない、ずっと前に抑留された漁船に対して見舞金を、政府から予備費支出いたしております。あるいはまた、抑留された人々に対しての差し入れの費用とか、家族に対しての、いろいろかかった費用がございます。こういう費用に対しましては、毎年、見舞金という名前で日本政府として金を出しておると、こういうことになっております。
  30. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 見舞金の金額等につきまして、わかりましたら、事務局でけっこうでございますから、お教え願いたいと思います。
  31. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 政府委員からお答えいたします。
  32. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) ただいま、農林大臣からお答え申し上げたところでございますが、船舶につきましては、漁船保険で、拿捕を事故とする特殊保険ということで支払ってございます。それから保険に入ってないものには、代船建造ということで見舞金の形で出してございます。それから抑留されました船員に対する救済措置でございますが、これは昭和三十二年に、朝鮮半島周辺海域における漁船の安全操業の確保並びに抑留漁船乗組員に対する救援措置に関する閣議決定によりまして、予備費から見舞金の交付、あるいは差し入れ品の購入費等の補助を行なっております。それで、現在まで支出いたしました見舞金の金額は一億五千三百五十万円程度でございますし、また差し入れ品の購入費補助といたしまして、九千万円を少し上回る程度支出いたしてございます。なお、遺族等への交付金といたしまして一千二百七十万円、こういうもので、合計いたしまして二億五千六百八十六万円、そういうものが支出してございます。なお、その他、乗り組み員の給与保険というものを制度として設けまして、その抑留されました船員に対しまする船主の給与の支払いを保険事項といたしまして保険金を払ってございます。そういった点、それからなお、拿捕防止というようなことで、小型の漁船に対しましては、一千隻につきましてラジオの設置補助をいたして、それによりまして、情報のキャッチということで、巡視艇あるいは水産庁取り締まり船から、向こう巡視艇の活動状況等を随時流して、それをキャッチして待避をする、そういった便に資するためのラジオの補助、そういうものを交付してございます。以上でございます。
  33. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 アメリカのラスク長官が、日韓会談を促進する要望をしたということでありますけれども、このことは、日韓両国双方に対して要望をされたとすれば、わが国外務大臣も当然何らかの申し入れを受けたということになるかと思うのでありますが、ラスク長官から、そのような希望を表明されたというような事実はございますか。
  34. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) アメリカといたしましては、日韓交渉妥結を希望していることは事実でございまして、たびたびお目にかかりますが、そのたびごとに、そういう希望の表明はございます。しかし調停とか、介入とか、そういう意思もなければ、そういう事実もございません。
  35. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 考えようによれば、ずいぶんよけいなおせっかいだというふうに私ども感ずるのでありますけれども日韓問題が今日まで十何年もかかって話がまとまっておらないということは、国際法を尊重するというたてまえをとる以上、李承晩ラインなどというものはとうてい認めがたい、こういう大前提があるわけであります。それから竹島の領有問題にいたしましても、やはりわれわれが国際法をあくまで本尊重するというたてまえをとっていく以上、また歴史的な経緯から見ましても、その領有を譲らなければならないという理由は少しもないと思うのでありますが、ラスク長官がそういう要望をしているということは、日本に対してあくまでも、これらの当然の国際慣例なり、国際法というものを尊重していけというのか、多少その線をくずせというのか、そういったような意味でのこまかな注文はなかったものというふうに解釈してよろしいのか、それともあったのか、どちらでございますか。
  36. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そういう注文は一切ございません。
  37. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 それでは、それだけの話というふうに聞いておきまして、あくまでも先ほど農林大臣が述べられた基本線はくずさないでいくのだというふうに確認をしてよろしいものかと思われますが、一方先ごろの予算委員会質疑の中でも、これは多少あいまいな点が多かったのでありますが、竹島の領有については一体どのような方針をもって臨むのか、この点について外務大臣から御答弁を願いたいと思います。
  38. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 竹島問題につきましては、たびたび御答弁申し上げておるとおり、こういう領土紛争、領土にかかわる問題でございますので、日本側といたしましては、先方に対して国際司法裁判所に提訴し、先方が応訴するということで解決をはかりたいという申し入れをいたしてございます。ただいままでのところ、先方は私どものほうの申し入れに対しましては、一応第三国の調停を頼む、そうしてその調停が不調に終わった場合に国際司法裁判所に提訴の問題についてあらためて協議をしようと、こういう意味のことをいってきておりまして、両者の主張は並行線をたどっておるのが現在の状況でございます。ただ瀬谷委員も御承知のとおり、私どもは国交正常化前提といたしまして、各種の懸案の一括解決を目ざしておりますので、竹島問題につきましてもこれを解決するか、あるいは最終的解決に至らなくても、解決の方法につきましては合意を見ておく必要が最少限度あると考えておるわけでございます。日韓交渉妥結段階におきましては、この問題につきましてもそういう結着はつけておかなければならないと考えております。ただ現状は双方の主張は並行線をたどっておるという状況です。
  39. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 竹島の問題について、いま外務大臣からたびたび答弁をしているというふうに御返事がございましたが、三月三日の予算委員会で、藤田委員質問に対して、やはりお答えになっておりますが、たびたび答弁はしていらっしゃるのですが、何回答弁してもらってもどうも要領を得ないわけです。一体これはわが国の領土であるとはっきりと規定して、信念を持ってよろしいのかどうかという意味質問があるのに対して、そうだというふうにはっきりおっしゃらないで、双方合意を取りつけておく必要があるということでありまして、先の先の話になっております。これは解釈のしようによると、場合によっては竹島問題等については譲るということがあるかもしれないというふうな受け取り方ができるような節が、この前の会議録を読んでみますとあるんでありますけれども、そのようなことは一体ないのかどうか。あくまでもこれはわが国の領土である、これの譲歩はしがたいという点は貫き通すというふうに確認をしてよろしいのかどうか、お伺いしたいと思います。
  40. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) わが国の領土であると主張すべき根拠はいろいろございます。ただ、この問題は、御承知のように、双方の意見が違っておるわけでございます。したがって、領土にからまる紛争として解決せにゃならぬことは現実の問題でございます。したがって、私が先ほど申し上げましたように、わがほうの態度はこうだ、先方態度はこうだと、いま平行線をたどっている、しかし、一括解決というたてまえから申しまして、この問題につきましても決着をつけにゃならぬと考えておりますと申し上げておるわけでございます。
  41. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 決着をつけなきゃならぬということは、外務大臣に言われるまでもなく、もう前からだれも考えておるところじゃないかと思うんでありますが、李承晩ラインというものはあくまでも撤廃するんだと、これは国際法上も疑問の余地なく、こういうものは撤廃されなきゃならぬ、こういう主張を通していく場合には、やはり竹島の問題についても同じようにわれわれが譲ることのできない線として主張していっていいんじゃないか。先方国際司法裁判所に対する応訴をがえんじないということも、やはり領土権について確信を持ってない証拠というふうにみなしていいんじゃないかと思うんでありますが、その辺はどうでありますか。
  42. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私の申し上げているのは、この帰属につきましてもんちゃくがあると、したがって、わがほうといたしましては国際司法裁判所において処理していただくという方針先方に申し入れてある。先方はまだそれに応諾してないという段階でございますということを正直に申し上げておるわけでございます。しかし、一括解決しなけりゃならぬたてまえがございますので、私のほうといたしましては、この問題を未解決のまま放置しておくというようなことは許されないと思いますので、何らかの決着はつけなければならぬと考えております。
  43. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 竹島を放棄するような形での日韓会談妥結ということはあり得ないと、このように理解をしてよろしゅうございますか。
  44. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 正当な解決をやりたいと思っておるわけでございます。すなわち、私ども態度といたしましては、国際司法裁判所に提訴して、その判決を待つということが一番公正じゃないかということで、先方に申し入れてあるということが今日の段階でございます。先方はまだ応訴いたしますというところまで来ていないという実情を申し上げておるわけでございます。
  45. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 それじゃ、応訴をしないという態度向こうが変えない限りは解決のめどもつかぬということになるかと思うんでありますが、どうですか。
  46. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そこがむずかしいところでございまして、私の申し上げておりますのは、この問題を未解決のままに放置して正常化を急ぐというようなことはいたさない、何らかの解決をせにゃならぬと思っておりますが、わがほうの提案に対して、先方がまだ応諾してない段階であるということでございます。
  47. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 どうもこの辺は何回言っても同じ問答を行ったり来たりするだけであります。時間が損ですから一応やめておきます。  島の問題が出ましたから、もう一つ、事のついでに、これは方角がだいぶ違ってきますが、伊豆の御蔵島の問題についてお伺いしたいのであります。米軍の射爆場として御蔵島に白羽の矢が立ったという報道がありましたが、御蔵島の現地の村民はあくまでも反対である。こういうことを主張しているということでありますが、一体この御蔵島を米軍の射爆場として日本があっせんするというような形をとっているのでありましょうか。米軍側の意向がどのようなものであるか、御蔵島が反対しているということなんでありますが、どのように処置するつもりでありましょうか。御答弁を願いたいと思います。
  48. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 御蔵島の件でありますが、これは御案内のとおり水戸射爆場がいろいろな観点から不適当である。代替地が見つかり次第、あそこを返還し、撤退すべきであるという私ども考えを閣議に報告したわけでございます。そこで代替地の一つの候補地であったのでありますが、報道関係で少し行き過ぎがございまして、あたかも内定したがごとく伝えられた。決して内定はいたしておりません。三、四カ所の候補地の一つであったのであります。その後、地元から助役さんやその他、代表の方が二人来られまして、非公式に施設庁と話し合いされました。私どもとしては地元の東京都と目下打ち合わせをいたしまして、一応現地の視察をいたすという考えでもって、目下都側並びに現地側と交渉中であります。いろいろな観点から必ずしも適地であるかどうか、実はむずかしい条件が出てきそうであります。専門的なあらゆる角度から、距離、気象状況あるいは工事の見通しを——一応現地視察の上で適地であるかどうか、また有力な候補地になるかどうか、これを考えていきたいと思っている次第であります。
  49. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 この水戸の射爆場の返還要求については、茨城の県会でも決議されておりますし、衆参両院の科学技術振興対策特別委員会でも取り上げられて超党派的の決議がされているわけなんです。だから、この返還を要求しなければならないのは当然のことと思いますが、なぜ代替地を見つけなければならないのか。これは無条件で射爆場を撤収してもらう、こういうわけにいかないのかどうか。この点、米軍側との折衝は一体今日までどのように行なわれてきているのか、外務大臣にお伺いしたいと思います。
  50. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) わが国といたしましては、日米安保条約に基づきまして、施設区域を提供いたしているわけでございまして、日米間に合同委員会が設けられまして、そこで協議いたしまして解除すべきものは解除し、新しく施設として提供すべきものは提供いたしているわけでございます。今日御案内のように件数にいたしまして、すでにもう四分の一程度になりましたし、面積も非常に少なくなっておりますことは御案内のとおりでございます。これは現実に代替地が要るか要らないかの問題は、施設を使っておりまする米軍当局といたしましての要否の判断に待たなければなりませんので、私どもといたしましては、返還を求められている事情につきましては、この委員会を通じまして先方に解明につとめておるわけでございますが、ただいままでのところ、代替地があればという条件はまだ先方において、はずすまでに至っていないのでございます。私どもといたしましては、適当な代替地があればという希望は依然としてまだ捨てていないわけでございます。
  51. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 この射爆場のようなものは、えてして住民に迷惑をかけるわけであります。まごまごすると死傷者が出るということなんでありますから、こういうものは住民に迷惑のかからないようなところに持っていくというのが私は常識でなければならぬと思う。その意味からすると、この東海村の隣の射爆場を御蔵島へ持ってきても、やはり住民がいることは間違いないのですから、ここの住民が迷惑をするという点では同じだということになります。そうすると、住民のいないような、だれにも迷惑のかからないような候補地というものがあれば、これは話は別。たとえばいま問題になっておりました竹島のようなところですね、この辺ならばあまり迷惑がかからないと思うのでありますけれども、現に住民が住んでいるところをかわりの候補地というようなことは、そこの住民が納得しないのは私当然だと思うのです。どこへ行っても、私は住民のいる限りは反対が出てくると思うのでありますが、防衛庁長官はどのように処置をする考えでありますか。あるいはまた、外務大臣はこれらの点について米軍と折衝をして、代替地ということを抜きにして撤収をしてもらうというような交渉ができるのかできないのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  52. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 御指摘のとおり、無人の島でありますとか、いわゆる反対が予想される条件のないところがあれば一番いいわけでありますが、残念ながら国土狭小でございまして、なかなかそういう適地がございません。しかも日米安保体制というものが日本の平和を守っている今日の現実から言いまして、必要な演習場はどうしてもこれは認めることは当然でございます。ただ、東海村は御指摘のとおり、特別委員会の決議もあり、また原子力の問題さらに将来予想される原子産業の集中の問題で、どうしてもあすこは返還すべきであると私ども考えて、方針は決定いたしまして、一日も早くこれにかわるべき適地をさがしておる現状でありまして、ある程度の住民の方々の御迷惑はやむを得ない——そういうところがあれば非常にけっこうでございますが、いま三、四カ所予定し、それもすでに実は二、三年前から各地を調査し、また、非公式にいろいろ打診もしているところがあるわけであります。残念ながら、いまのところ、まだ適確な、しかも地元の納得を、同意を得られる適地は見つからないのが現状であります。
  53. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 外務大臣はいいんですか。
  54. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 外務大臣に聞く前に、ついでだからもう一つ言っておきますが、国土が狭小であるということをいま防衛庁長官言われたんでありますが、国土が狭小であればなおさらこういったような射爆場を持ってこられるのは迷惑な話なんです。そうすると、ある程度の迷惑はやむを得ないというふうに達観をしてしまうのじゃなくて、国土が狭小でどこへいっても迷惑するのだから、ひとつ日本の国内にはこの射爆場のような場所はやめてもらいたいという方向で折衝するというのが日本国民立場から望ましいことではないかと思うのでありますが、外務大臣はそのような意向を体してアメリカ側と折衝をする用意がないのかどうか、あわせてお伺いしたいと思います。
  55. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 平和を守りたいが義務は履行したくないというのは、私は日本国民の正しいとるべき姿勢ではないと思うのでございます。厳粛に締結いたしました条約にはあくまでも忠実でなければならぬと思います。ただ、現実の問題といたしまして、水戸の射爆場の問題に限って問題を考えた場合に、ただいままでの折衝の過程は、先ほど申しましたように、あそこを全然移転しちゃならないというようにも考えていないのでございまして、適当な代替地があれば返還するにやぶさかでないという態度でございます。したがって、瀬谷さんのおっしゃる住民の迷惑さかげんでございますが、全然迷惑がかからないところをどこかさがせとおっしゃっても、これは福田さんがいまおっしゃったように、なかなかそういうかっこうなところは見当たらないとすれば、より少ない迷惑で済むところ、そういうところをさがすことはやぶさかでないと思うのでございまして、防衛庁当局におきましても、そういう方針で鋭意苦心されておると存ずるのでございます。  日本以外にどこか求めるというようなこと、しかも日本の安全はあなたの国の協力を得て保障していただくんですよと、そういう大胆な要求は私は申し上げる勇気はありません。
  56. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 ちっとも大胆なことはないと思うんです。この射爆場なんというのは、水戸でなければならぬというものじゃない。代替地があればいいというんですから、そうすれば何も日本人が住んでいて迷惑をかける場所でないところに求めたって一向差しつかえないわけです。これはむしろ私はアメリカ側のわがままであるというふうに見ているわけです。そういうわがままに反省を求めるのは、一国の外務大臣としては少しも遠慮する必要はないというふうに私は思うんです。  がしかし、それを議論していても同じ返事の繰り返しであると思いますから、先に進みますが、防衛庁長官にお伺いをしますが、いままでこの日韓問題で一番特徴的な問題は、日本漁船公海の上でかってに拿捕して拉致をする、こういうことだったわけです。「自衛隊の行動」の中における「海上における警備行動」として、「海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合には、」「海上において必要な行動をとる」と、こういうふうに書いてあるのであります。先ほどの農林大臣のお答えによりますと、この漁船の保護はどのようにしておるかというと、巡視船五隻でもってやっておったということなんです。狭いところならともかく、不忍池ぐらいの狭いところなら別ですけれども、あの広い海で巡視船五隻でもってどうやって保護ができるか、こういう問題になってまいるわけであります。海上自衛隊が、「海上における人命若しくは財産の保護」、こういう場合には「必要な行動をとる」ということになっているんでありますが、こういう場合に、海上自衛隊としてはただ手をこまねいてながめているというだけであって、海上保安庁の手伝いなんかはおれの所管外だといって知らぬ顔しておってよろしいものかどうか。なぜ適切な措置、保護というものが——私は自衛隊の性格上うかつなことはできませんから、事は慎重を要すると思いますが、保護のようなことができなかった理由、やらなかった理由というものについて防衛庁長官からお伺いしたいと思います。
  57. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 自衛隊法によりまして、海上における人命並びに財産の保護の任務を規定され、また、権限を与えられていることも御指摘のとおりであります。ただ、問題は、漁船の問題につきまして先方韓国側では御存じのとおり、沿岸警備隊——コースト・ガードを使っているわけであります。そうなりますと、ただ権限があり、またできるからといって、はたして海上自衛隊の自衛艦が出動するのが適当であるかどうか。私はここに慎重な考慮が必要であろうと思います。向こう沿岸警備隊、いわゆる内務部の所管ですが、を出して警備に当たっている以上、わがほうもこれに相応する海上保安庁警備艦が出る、これが政治的にも適切ではないか、こう考えているわけであります。
  58. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 私は海上自衛隊なりあるいは航空自衛隊なりに事をかまえろということを言うつもりは毛頭ございません。しかし、私の特につきたい点は、じゃあ一体何のためにばく大な予算をかけて海上自衛隊というものが存在をしているかという疑問が出てくるからであります。海上における人命もしくは財産の保護ということを書いてある以上は、典型的な問題である漁船の保護すらできないで一体どういう仕事があるのか、どんな役割りが海上自衛隊にはあるのか。それでは何かほかに仕事があるのかという疑問が出てくるのでありますけれども、その点について防衛庁長官にお伺いしたいと思います。
  59. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 海上自衛隊にはもちろんあらゆる任務並びに訓練を行なっておるわけでありますが、いま申し上げたとおり、先方沿岸警備隊を使っているときに、わがほうが直ちに海上自衛隊の勢力を発動して自衛艦を派遣する、防衛に当たる、こうなればまず常識的に考えられることは、向こうも対抗的に向こうの海軍なり軍艦が出るということが予想されるわけでありますが、そういう場合に、はたして適切な解決になり、また適当なわがほうの警備方法になるか、これは私ども防衛庁以外の政府全般、高い次元から考慮さるべき問題でありまして、やはり今日のように、先方警備の態様に応じまして、海上保安庁がこれに任ずることが適切であろう、こう考えております。
  60. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 結論的に言うと、日本漁船の保護は海上自衛隊にはできないということになってしまう。そうすると、自衛隊は何を目的にして存在をしているかという疑問がまた出てくるわけなんでありますが、三月五日の亀田さんの質問の際に、自衛隊志願者が激減をして、素質がたいへんに低下をしているという意味の御答弁がございました。この素質の低下ということは、志願者が激減をすれば当然の現象だと思うのでありますが、素質が低下をした場合に、一体どのような教育訓練をやっていったらよろしいのか。今日の自衛隊の隊員に対する訓練の指導要項というものはどのようにされており、また、どういう経歴の人たちが担当しているのか、これも大事なことであると思うので、お伺いしたいと思います。
  61. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) ただいま充足率、欠員の問題並びに素質の低下という御指摘がございましたが、確かに自衛隊全般から見ますと、そういう充足については問題がございます。ただ、海上自衛隊並びに航空自衛隊におきましては、常に九割以上のりっぱな充足率を示しておりまして、何ら支障を来たしておりません。また、陸上自衛隊につきましても、曹以上の幹部クラスはこれまた支障を来たしておらない。ただ、二士だけが常に募集につきましてもいろいろとむずかしい困難があって、思ったほどの充足ができないことはこれは事実であります。ただ、質を幾ら低下さしてもかまわないということでありますれば、充足率は容易にこれは引き上げられます。大体四倍ぐらいの応募の関係でありますが、体格検査だけで大体三分の一を落としておるという現状から見ますると、質のよい、しかも永年勤続のできるような質のいいものを維持したいという立場を募集においてとっておりますので、どうしても二士の方面では充足率がなかなか思うようにいかないわけでございます。こういう観点から申しますと、あらゆる募集に対する研究、それから幅の広い、いわば隊内生活の改善まで含めましたいろいろな意味の広範な職業教育その他の施策を総合的に強力に実施いたしまして、二士における問題は二士だけでありますが、二士における充足——欠員を少なくすることに全力を今後あげてまいりたいと考えております。  なお、教育につきましては、御存じの自衛隊法五十二条の教育に関する基本原則が明記されております。これを基本とし、また、内容的には五つの点を力説しました三十六年につくりました「自衛官の心がまえ」、これを内容として教育いたしております。
  62. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 三月五日の予算委員会で岩間委員質問をした際に、「防衛力整備に関する基本的見解」という航空幕僚監部の作成した印刷物が問題になった。これは新聞に出ておるのでありますが、当時防衛庁長官並びに池田総理は関知しないというふうにおっしゃっているが、新聞の記事によると、防衛庁は同日夕刻幹部会議を開いて、この文書について検討した結果、秘密漏洩の問題を重視し、厳重な調査を行なうことになった。当局の言明によれば、その内容もほぼ原文に間違いないものと見られ、どういう経路を経て岩間氏の手に入ったかという点も問題だが、内容日本の政治の方向政府の国防政策に対する不満など不穏当な個所が少なくない点で、長官はじめ最高首脳部の知らない間に空幕から自衛隊の少壮幹部にこのような文書が配付されていたという点だということになっております。そうすると、知らぬ存ぜぬで一応先般の予算委員会は通りましたけれども、この新聞によると、幹部会議で問題になったということなんです。問題になったというのは知らないわけじゃなかったということになります。しかも内容がほぼ原文に間違いないということになると、このようなことをもし幹部が知らないでいたということについてもずいぶん私は問題があると思う。知っておったということになれば、こういう指導をしていたということになるのですから、これまた問題になります。一体防衛庁長官としてはどのようにこの問題をお考えになるか。見解を承りたいと思います。
  63. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 岩間委員の本委員会における御質問がございまして、当時私も全然関知しておらなかった。帰りましてさっそく調べましたところが、いまお読みになりました大体内容のものが判明いたしました。これは御指摘のとおり、内容におきましても行き過ぎないしは不適当なところも確かにございました。同時にまた、一幕僚が昨年の八月の航空幹部の中における会議で、これを配付したということも判明いたしました。しかもそれが幕僚長その他幹部の決裁を経ないうちに自分の私案を幕僚監部という銘を打ちまして配付したことが、またこれは確かに問題になります、事実がそこまでわかりましたので、その後もしさいに検討しておりますが、とりあえず会議における配付書類の今後の基準ないし規律を厳守する。さらにたとえ私案でありましても配付する場合には、十分国内その他の法規につきましても慎重なる検討を加えて、厳重な戒告をとりあえずいたしました。それが実際のいままでの事実でございます。
  64. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 あの文書が事実だったということは非常に私は問題だと思うのです。しかも閣僚がそれを知らなかった。閣僚が知らない間に非常にかってなことをやっていたということがはしなくも暴露されたのでありまして、これは自衛隊の秩序を維持する上にもゆゆしい問題だと思う。これはまごまごすると、何をされるかわからぬということになるのです。まあ南ベトナムみたいなことはないでしょうけれども、あなたの部下がかってな熱を吹いていた。しかも文書を配付しておったということだけは事実として判明したわけなんです。これは厳重な私は処分をしなければならないと思うのでありますが、自衛隊法の中でその懲戒の規則がありますが、こういう場合には秘密を漏洩したということについての責任に重点を置くのか。あるいはまた、上司の知らない間にこのような一方的な偏見、セクト主義、あるいはエリート意識に基づいた考え方を流布したという点について重点を置くのか。どのような方法でもって処罰をされたのか。あるいはされようとしておられるのか。長官の御意見を承りたいと思います。
  65. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 機密の漏洩につきましては、目下あらゆる角度から慎重に検討中であります。徹底的にいい機会でありますから調査をする決意であります。  なお、上司の正規の手続を経ずしてみずからの私案を、しかも内容的に問題のある私案を航空幕僚監部という名前を付し配ったこと自体が機密違反である。この点につきましては機密漏洩のコースあるいはその他だいぶわかってきました。もう一息で全貌が相当はっきりつかめる。これらとあわせましてどういう処分をするか、責任ある処置をとりたいと考えております。
  66. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 私は、機密が漏洩したということ、その漏洩のルートよりも、こういうふうな偏見に基づいて幹部が指導訓練をやっておったというところに問題があるかと思います。やはりこれは三月三日の予算委員会でありますか、藤田委員質問をしまして、その自衛隊の訓練の中に、総評の組合を対象にして、いろいろと間接侵略に対する戦術を練っておったということがやはり質問されました。不穏当であるから注意をするという答弁がございました。これについては一体どのような処置をとられたか、あわせて防衛庁長官にお伺いしたいと思います。
  67. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 藤田委員の御質問趣旨、直ちにやはり役所に帰りまして各幕を集め、外局の幹部も集めまして、そういう事実を調べることにし、並びに、もしあったような場合には適当でないから、今後そういうことは一切注意するように命令いたしました。その後の報告によりますと、いささか事実に反する点もあるようでございますが、いずれにいたしましても特定の団体、特定の政治結社、そういうものを対象とすることは先般お断わりしたとおり適切でございません。教育方針につきましても、今後そういう誤解を招かざるように十分注意いたすつもりでございます。
  68. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 私は、いまの御答弁によりますと、事実に反する点もあったというふうに言われますけれども、藤田さんは現実に部隊に行って、その目で確かめたというふうに言っておられるわけです。また、岩間委員質問の際に出された文書は事実だったということもいま長官からはっきり御答弁願えたわけであります。そうすると、これらの問題は、あながちうわさ程度にはとどまらない。幹部の思想なり教養ということが私は問題になってくると思う。どうも思想的に片寄ったというか、非常に視野の狭い幹部がおって、かってにいろいろな指導をしたり訓練をしたりしておるということは、いままでの委員会におけるやりとりの中から判明してきたわけでありますから、今後の教育については、私はなまぬるいことではいけないと思うのであります。やはり少なくとも教養なり良識を備えた幹部でないと、特に自衛隊というのは労働組合をつくったり何かできないようになっています。一般の下部の人たちは、上司から言いなりになって命令は実行しなければならぬというきまりになっておるのでありますから、そういう中で教育が進められていくということになると、思想的なかたわが出てきてしまうというおそれがあると思うのであります。特にその点での今後の指導方針について、長官の見解を明らかにしていただきたいと思います。
  69. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 先ほどお答えしましたとおり、自衛隊法の五十二条の基本原則並びに自衛官の心がまえというものを下の分まで、下部の組織まで十分徹底いたしたいと考えます。  なお、御指摘の点につきましては、幹部会を開きまして、私からも御質問趣旨を実はそのまま厳重に徹底するように命令いたしました。見ようによっては、これは若葉のうちに、そういうことがたとえ局部的にありましても、本来の自衛隊の精神、また基本的な構造からいって、われわれは厳重に注意していきたい、強く徹底方を命令した次第でございます。御趣旨の点は十分教育方面に留意いたしたいと考えます。
  70. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 それでは自衛隊の問題についてはこの程度にしておきます。  次に、交通政策について国鉄総裁並びに運輸大臣に若干の質問を行ないたいと思います。  これも総括質疑の中で明らかにされたことでありますが、国鉄には世界一が三つほどあります。過密ダイヤが一つ、通勤地獄が一つ、踏切事故が一つ、こういうことになっておりますが、先般の米田委員質問の際に、国鉄総裁がサプライズ・テストに触れられまして、私は安全運転の根本的な解決は、やはり人を充実をすることであり、過小投資をこれから改めていくことでなければならないと思うのでありますが、あのサプライズ・テストのようなちょっと末梢的なやり方を重点的に取り上げられるということについては若干の疑義がございますが、総裁の見解をあらためてお伺いしたいと思います。
  71. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) お答えいたします。サプライズ・テストの問題でありますが、これは終戦前においては全然問題になってなかったんだが、終戦後においてだいぶ問題になってきた。一体このサプライズ・テストということをいかにも残酷のように考えますが、だれが一体こういうことばを発明したか知らぬが、アメリカあたりではこれをシグナル・テストといっております。それで御承知のとおり、国鉄のいま非常な過密ダイヤ、それに対してはいろいろの施設を行なって事故の起こらないようにやっておるのでありまするが、やはり人の訓練と、やはり事業は人なりで、人だ。何をやったって人がもうしっかりしていなければだめだと、こういうことで訓練ということに非常に重きを置いてやっているのでございまして、その一つがいわゆるサプライズ・テスト、私はこれをシグナル・テストと言っております。これはずいぶんきつい私はテストだと思いますが、しかし、いまの状態においては、どうもまことにやむを得ぬ。これは国鉄職員に忍んで受けてもらわなければならぬ、こういうことに考えております。もしも今後過密ダイヤというものが解消いたしまして、そこまでいく必要がないようになったら、さっそくこれはやめなければならぬということに考えます。
  72. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 戦前にやっておったと言いますけれども、戦前は今日のようなぎりぎり一ぱいの無理をした過密ダイヤではなかったわけです。作業に余裕のある時代だった、いわばよき時代だったわけです。そういうときにやっておったことを、今日のように限界点を越えた無理をしているときにやることがはたして当を得ているかどうかという点に私は疑問がある。いうならば、これは落とし穴をつくって、注意力を喚起、テストしてみるというようなやり方なんでしょう。まあ非常に意地の悪いやり方ですね。吉良上野介がちょっとやったようなやり方をやっているのじゃないか。何か総裁が吉良上野介に似てきたような気がするのですけれども、こういうことをやっていって、繰り返していって、浅野内匠頭のような犠牲者が出てこないとは限らぬわけです。そういう問題を私は強行するということについて、総裁はむごいようだがというふうに言っておられるのですけれども、むごいようだというふうに考えられたならば、別な方向考えるのが私は妥当じゃないかと思うのでありますが、どうでしょうか。
  73. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 御承知のとおり、戦前におけるダイヤというものは現在のダイヤとはまるで違うわけであります。余裕しゃくしゃくのダイヤと申してさしつかえない。今日のごとく過密ダイヤになったゆえに、少なくとも戦前におけるこのサプライズ・テストというものは一体やるべきものじゃないだろう。これはもう理屈の問題じゃなくて、必要上、訓練上どうしてもやらにゃならぬという、つまり必要の法則から出ておるものだと私は考えておるのでありまして、決して国鉄はこういうきつい訓練を好き好んでやっておる次第じゃない。どうぞその点は御了承願いたいと思います。
  74. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 簡単に御了承はできないのです。それはこの間も踏切事故の際に、やはり試験の準備で本を読んでおった、勉強しておった踏切警手が、遮断機をおろすのを忘れて事故を起こしてしまったということがある。へたまごつけばこういうことはノイローゼになる人間が出てきて、そのために事故を起こすということになりかねないと思うのですよ。先ほど申し上げたように、やり方としては吉良上野介のような意地の悪いやり方なんですよ。だから、たまにはこれは浅野内匠頭みたいに犠牲者が出てくるかもしれない。それが出てきた場合に、今度は四十七士が出てきて寝首をかかれるということになると、総裁のためにもならぬような気がするのですよ。そこで、私は、根本的な問題の解決策というのは国鉄だけで一体できるのかどうかという疑問が当然出てこなければならぬと思うのです。ゆうべのテレビで総裁が過密ダイヤについて話をしておられました。国鉄に対する過小投資がいかぬと、こういうふうに総裁言っておられましたけれども、すでに今日では、国鉄だけではどうにもならないようになってきているのじゃないか。人口が都市に集中をしてきておる。過密ダイヤのもとがここにある。しかも、住宅対策等が行き届かないために非常に東京周辺には人口が集まってきて、通勤者が多くなってきた。にもかかわらず設備がそれに伴わない。この辺に私は問題があるのじゃないかと思うのであります。そうすると、国鉄総裁が国鉄の総裁の権限において考えていく範囲においてはおのずから限度がある。やることも、やり得ることも限度があると思うのです。むしろ横との連係をとって、問題の抜本的な解決に乗り出すのが至当ではないかというふうに思うのでありますが、どうでありましょうか。
  75. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 抜本的の対策ということは、これは国鉄総裁の権限においてはとてもできない。これは国がやるべきことであります。それで、サプライズ・テストの問題について一育つけ加えたいと思いますが、例の三河島の事故が起こりましてから、ぜひとも訓練というものは十分にやらにゃいかぬということで、いろいろなことをやってきたのでありますが、大体サプライズ・テストというものは、そういうときから、もうやらにゃならぬ、やろうということになったんだが、ある局ではやり、ある局ではやらなかった。たとえば東京管理局なんというものは、なかなか組合が承知しなくてやらなかった。ところが、大阪管理局というものは、ずっとこれはもう昔からやっておる。それで、国鉄の輸送人キロの一割を占めておるあの大阪の過密ダイヤのもとにおいて、事故の点からいくと、大阪の成績が一番よろしいということで、やはりこれは理屈はとにかくとして、サプライズ・テストというものの値打ちをやはりわれわれは認めざるを得ないのです。そこで、これはひとつぜひ全国でやろうじゃないかということで、最近におきましては、東京の組合も大体承知するようになりまして、全国的にやるようになったのでありまして、幸いにして過密ダイヤというものがある程度まで解消して、それまでにやらなくてもいいということになれば、さっそくこれはやめる、こういうことに考えております。   〔委員長退席、理事斎藤昇君着席〕 大体サプライズ・テストというものは、非常に名前はいけないんだが、要するに教育訓練の程度というものがどのくらいに一体あがったかということを調べるのがまずサプライズ・テストの目的でありまして、そう御心配になるほどのことは私はないと思う。
  76. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 まあ私はサプライズ・テストそのものについての心配よりも、こういうようなやり方でもって肝心かなめの大事なことをおろそかにしやせぬかということを心配しておるわけです。衆議院の予算委員会で——これはだいぶ前でありますが、自民党の濱野議員が質問をして、労働者をふやさないで資本の導入だけでもって仕事量をふやしていこうということは、これは事業を経営している者としてみても疑問だということを言ったことがあるのでありますが、その際に前の総裁が、一トンのクレーンは一トンしか上げられないけれども、人間は、精神がこもれば二人前でも三人前でも働けるということを十河さんが言っておるわけです。それは火事になれば、ふだん持てないものも持てるという理屈はありますよ、それは。しかし、年がら年じゅう火事だ、火事だと言っていれば、本物の火事のときは腰が抜けちまうですよ。私はこういうやり方は間違いだと思うのです。やせ馬にむちを打つようなやり方よりも、もし馬が馬車を引っぱり切れない状態にきたならば、その馬に対してむちでもって動かすということをやるよりも、馬にスタミナをつけるとか、一頭の馬を二頭にするとか、こういうことをやるのが私は順序じゃないかと思うのです。その順序を間違えて、むちでもってたたく人間だけふやすということは、これはあべこべじゃないか。この肝心かなめのことを忘れていやしませんかということを私は心配したから、その点について総裁の意見を聞きたかったわけであります。
  77. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 国鉄は昭和二十七年以来今日まで、ほとんど従業員というものはふやしていないのですね。一方に、輸送量というものは非常にふえておる。それだけに、つまりいま申されたように、人を酷使していやせぬかというようなことに考えられるのでありまするが、決して酷使はしていない。要するに、合理化によって、たとえばスチーム・ロコを電気ロコにするとかあるいはディーゼルにするとかいうような、要するに科学的の合理化によって、いままで十人でやっておったものは五人にし、六人にするというような、つまり合理化による人力の節約でもって、決していま火事のときに起こるような、人力を無理にスクイズするというような、そういうことは絶対にやっておらぬのでありまして、この点はどうぞ御心配のないようにお願いしたいと思います。
  78. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 これは前の総裁のときは、その衆議院の議事録でもはっきりしているのですから……。つまり、一人の人間に二人前、三人前の力を発揮させて、そうして人間を節約をする、割りの合わない投資をしない、人間は補充しないというのが経営の方針だったわけなんですよ。その方針が、結局三河島事故を生み、鶴見事故を生んでしまったのです。私はそれは否定できないと思うのです。これはまさに——まあ明治と言っちゃ、悪いけれども、明治の思想なんでありまして、   〔理事斎藤昇君退席、委員長着席〕 総裁もまあ昭和の生まれじゃないから、これを言ってもあれですけれども、少なくとも感覚的には明治の思想というものは脱却をしてもらわなければ、これからの新しい経営というものはやっていけないという気がするのであります。だから、その意味で、私はこの機会に、このいろいろな問題について、関連のある問題について、関係大臣の見解を明らかにしていただきたいと思うのでありますが、この過密ダイヤの根本になっておるのは、人口の過度の集中ということになってきているわけです。人口の過度の集中が住宅難を生んでおり、それがまた土地価格の異常な騰貴、こういうことになってきておるのであります。で、この物価の中で土地価格の占める割合が一番多いのでありますけれども、これは数字の上からも否定できないと思うのであります。経済企画庁長官にまずお伺いしますが、土地価格を抑制をするためにどうしたらよろしいと思うか、関係各省としてはどのような方向で努力をすべきであるかという点についてお伺いしたいと思います。
  79. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) いかにも、この問題は長いこと適切な施策が行なわれないで今日に及んでおる問題でございます。先般も申し上げましたが、やはり基本的には需給関係を改善するということであろうと思います。すなわち、政府機関、あるいは地方公共団体その他によるところの土地の造成ということが、どうしてもこれがなければ問題の解決はいたさない。あるいは土地の開発ということもあるだろうと思います。いずれも相当コストのかかることでございますけれども、これが基本であろうと思います。開発の場合には、未開発地域を開発するという場合もございましょうし、道路等の整備によってその地方が今度は新しく開発地として利用し得る。道路そのものはコストがかかりますけれども、それによって、従来、ただとは申しませんが、利用しがたかった土地が新しく利用し得る、供給側に立ってくる。こういったようなことが行なわれなければならない。そのためには、場合によって、国あるいは自治団体の権力を正当に発動しなければならない場合が当然にあるであろうと思います。それは、従来土地収用関係の法規そのものはかなりよくできておったと思いますけれども、その具体的な発動、行政は必ずしも戦後理想的に行なわれておらない。また、制度そのものの中にも、先買い権でありますとか、あるいは評価の方法でありますとか、いろいろ新しく整理すべき問題もあると思います。また、海面の使用については、漁業補償等をいかにして適正に行なうかという問題もあると思います。基本的には、そういう需給関係を改善をしていくということがやはり一番先に行なわれなければならない。もちろん今度は、与えられました土地をいかにして効率的に利用するかということは、いわゆる高層建築の問題とか、いろいろあると思いますが、基本的にはそういうことだと思います。
  80. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 従来ならば、道路なり住宅の問題は建設大臣が、それから輸送の問題は運輸大臣なり国鉄総裁が答えるというのがたてまえでありました。しかし私は、この角度を変えてお答えを願ってみたいと思うのであります。ということは、鉄道の輸送が逼迫をしてきたということは、国鉄に対する過少投資もあるでありましょうが、その周囲の条件が変わってきたということが言えるわけなんです。つまり、東京なり大阪に人口が集中をし、それから住宅が不足をし、通勤距離が長くなった。これらの点がすべて関連をしているわけなんです。ところが、住宅をつくる場合に、住宅公団は、鉄道の輸送とは関係なしに、安い土地を見つけちゃそこに行って団地をつくってしまう。団地をつくって、その団地の住民がどっと国鉄に集中する。国鉄のほうでは間に合わなくなっている。定員の三倍も運んでもなおかつさばき切れないような状態になってきておる。こういう現象を呈してきておる。そういう現象を呈してきているのだから、一貫した問題なのでありますけれども、国鉄のほうは国鉄の輸送力をふやすことだけ考えて、建設省のほうは道路と住宅のことだけ考えている。そこに私は問題があろうかと思うのです。それらの点は関連をしているのだから、総合的に計画を立てて、お互いに連絡をとって、相談しながらやっていかなければならないにもかかわらず、今日までそれが行なわれなかった。私は非常に不思議だと思うのです。だから、建設大臣から、本来ならば住宅対策、土地価格の抑止政策、道路計画等についてお聞きするところでありますが、建設大臣立場から、国鉄輸送の問題は過密ダイヤの解消はどうしたらよろしいと思うか、こういう機会に考えてもらいたいと思いますので、その点を建設大臣に私はお伺いしたい。それから、運輸大臣には、住宅あるいは道路、これらと輸送との関連を考えたならば、都市計画なりあるいは新産業都市なり、これらの問題をどのように今後解決をしていったらよろしいか、それぞれ相手方立場に立って御答弁をしていただきたいと思います。
  81. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 国鉄の立場から、いまの過密ダイヤの問題について答弁いたしますが、私は、東京近郊における過密ダイヤで一番ひどいのは、通勤、通学のラッシュの場合の問題でありますが、これについては運賃の問題が非常な要素をなしている。運賃の問題といえば、つまり、通勤、通学の割引問題です。御承知のとおり、鉄道法によれば、五割までは通勤、通学者に対しては割引をするというやつが、国会の議決によって、通勤者に対しては八割三分までの割引をしろ、通学者に対しては九割二分までの割引をしろ、こういうことなのだから、だんだんだんだん遠くに行ってしまう。それだけやはり輸送距離が長くなる。私は、中央線における例なんか全くそうだと思う。これはだから、政府の責任か国会の責任か知らないが、ああいう割引をきめたところに大きな責任があるのじゃないかと、こういうことを考えております。これを是正する方法は、やはり割引率を是正することにあるのじゃないか、こういう考え方ですが、この点は少し御考慮願いたいと思うのです。
  82. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お答えいたします。  御承知のように、都市の周辺に特に最近急激に人口が増加いたしました。この原因は、おそらく私は経済情勢の変化、つまり、公開経済、国際経済にすみやかに日本経済が入ってまいります、また、必然的にそういうふうなことになってきた関係が、そういうふうに大きくあるのじゃないかと思います。そういうことのために、住宅問題にしましても、道路の問題にしても、一連のものを、さしあたり間に合わないものを間に合わせるというので、しいて申せば、企画性、計画性に乏しく、追われ追われて、すべての仕事が後手、後手に回ったために、遺憾の点が各所にあらわれておるということだと思います。しかし、最初に至りまして、だんだんこれらに対する計画性も立てるようになり、余裕も幾らか、たとえば住宅問題にいたしましても、幾らか余裕も出てまいって、住宅の質を改善するとか、それから計画的に団地をつくるとかというようなことに至ってまいっておりますので、徐々に改善されてまいると考えております。いまわれわれの考えておりますことは、先ほど来お話しのような線に沿って、いずれも、たとえて申しますれば、住宅団地をつくるにいたしましても、新しい道路に関連して住宅の団地を考えてまいるというふうにいたしております。ただ、しいて申せば、鉄道との関係について考えなければいかぬじゃないかと、ごもっともに考えます。これはいま申し上げましたように、急激に無計画に住宅がふえたというようなことが一番大きな原因だと思いますけれども、ただ、日本の場合には鉄道は大都市周辺全部、しいて申せば、有利適切な線はいずれも民営である。われわれが知る限りにおいては、東京、大阪には新しい国鉄の線が、計画は古くから行なわれておりますけれども、これが実行に入っていない。たとえば東京の周辺に、外環状の国鉄の線が、計画は聞いておりますけれども、まだ実施されていないというようなことで、そういう面に、国鉄と道路との関係等において、新しいものが、道路のほうは都市計画その他を相当に進めてやる計画を持って、また除々にやっておりますけれども、大規模な輸送のできる国鉄の新線というものは大都市の周辺に計画されないうらみがあるのじゃないかと考えております。いずれにいたしましても、いま申し上げますように、計画的にこれらのものをやる段階に今日まで至っていなかった。たとえば首都圏の整備にいたしましても、ようやくその緒につこうとする段階であり、おくれましたから、大阪を中心とする近畿圏につきましても、ようやく案をいまつくっておるという段階でございまして、これがいずれも数年後に計画が実行に入るということになりますれば、多少御期待に沿えるようなことになるのではないかと、こう考えております。
  83. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) お答えいたします。  都市の膨張ということが私はやはりおもな原因になりまして、すべての問題——物価の問題も、交通の問題も起こってくると思います。御指摘のように、計画がそれに合わなくて、私ども考えている以上の経済の発展、あるいは何と申しますか、文化生活を欲する要求等々がございまして、私どもの計画がこれに追いつかないでいっているということは、御指摘のとおりでありますが、今後十分、先ほど建設大臣が言われたように、私どもも建設省とよく相談をいたしまして、いまよりはよりよくするように努力いたしたいと考えます。
  84. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 最後にもう一問。  国鉄総裁に最後にお伺いしますが、総裁がいま答弁されましたことは、割引率の問題でありますが、これは非常に事務的な話なのです。通勤輸送は、だれも好んでやっておるものはないのであります。ほんとうならば、電車に乗って通わないで済めば一番いいわけです。それを、都市計画なりあるいは社会構造というものがいびつになってきたから、やむを得ず通勤輸送でもまれているわけなのです。その点を考えるならば、私は、今日の通勤客に対しては、もっとあたたかい気持ちでもって接していかなければならないというふうに考えます。総裁に、この通勤輸送緩和についての考え方をひとつお伺いしたい。  それから、事故対策並びに国鉄の経営方針等について、大事なことは、いままでは上層幹部の都合のいい話だけしか聞いていなかったのじゃないかと思いますが、一番身近に苦労している現場職員の声というものをもっと尊重する必要があるのじゃないかと思う。その現場の声というものを取り入れて、それを尊重して今後運営をやっていくという考え方があるかどうかということ。それから、もっと視野を広げて、建設行政等についても、あるいはほかの分野についても、連携をとっていかなければ、今日国鉄だけでは問題が解決つかないということなんでありますから、今後のやり方としては、総合的な交通政策というものを確立をして、その総合的な交通政策の上に国鉄の運営のあり方というものを考えていく必要があるのじゃないかと思うのでありますが、以上の点について最後にお伺いをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  85. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) この通勤、通学の問題、ことにこの東京を中心とした通勤、通学の問題に対しましては、瀬谷さんがいま仰せになりましたとおり、実にひどい状態である。百二十人ぐらいの定員に対して三倍も乗ってもらうというようなことでありまして、これは国鉄としては何とも申しわけない。実際これは私は監査委員長をしておる時分からの、私にも非常に責任がある。なぜならば、国鉄はとにかくこの輸送を、幹線における輸送というものにひとつ大いに主力を注いだらいいじゃないか、東京近郊における通勤、通学というのは主として東京都の問題じゃないかというようなことを主張してきたのでありますが、いまにして考えれば、これは実に間違っておる。私が総裁に就任すると同時に、実際の実情を見ると、これは国鉄としても何とかしにゃいかぬと、こういうことでやっておるのでありますが、時すでにおそし、なかなかうまくいかぬ。で、東京都といたしましては、地下鉄というものを盛んに方々へ引きまして、東京都とそれから高速、両方でありまするが、これが完成すれば、通勤、通学というものはある程度解決つくのじゃないか。実は私は総裁に就任すると同時に、新宿の駅へ行きました。実にそれはもうあぶない状態である。瀬谷さんは現状をごらんになったか知らぬが、私は大きな事故が必ず起こるのじゃないかということを非常に心配したのであります。それは例のプラットホームにおける人込みの問題。それで、現在では列車を時間どおりにとにかく運転させるということが、これがもう第一の必要条件。たとえば中央線なんというものは二分間隔で発車しておりますが、あれをおくらせないで走らせる。それがためにはプラットホームにおける人間の制限をする。その制限をするためには、必要に応じて、プラットホームにおける人の状態を見て、出札口でもってシャット・アウトして入れないようにするということ。それから、もういままでのいろいろな、みっともないしり押しなんというものをやめて、むしろはぎ取りでもって、二十人や三十人、一車に乗る人間減らしてもいいから、とにかく二分間隔で早く出すというようなことで、最近は新宿の駅へラッシュ時に行って見ればわかりますが、一日のうちたいてい五へんか六ぺんはあそこで通行どめやっております。その結果すこぶるよろしい。ただ問題はですね、問題は、これからの問題なんです。お客さんはふえこそすれ、予算の関係その他についてこの輸送力というものはなかなかふえぬ。これをどうするかということで、実はこれはもう文句を言われましてね。あとでもって弁解するのもはなはだ気がきかぬので、実は先手を打って、旅客はますますふえるのに通勤力はふえぬ。したがって、今後はシャット・アウトする回数がふえ、時間もふえるだろう、どうぞ御了承ください、こういう張り紙を張ってありまするが、これを救う道は、やっぱり地下鉄だと思うのです。ところが、地下鉄もですね、現在のものがこれは完成いたしましたところで、瀬谷さんが理想とするような状態になるかどうかということは、私はすこぶる疑問だと思う。とにかく、たった六両編成でやっておる。これは問題にならぬのです。国鉄が四両から六両になり八両になり十両にしておるときに、六両編成でしょう。これはどうも問題ですよ。しかし、まあまあ多少の助けになるだろうと思いますが、国鉄としてはですね、この過密ダイヤの解決ということについては、何といったって、やっぱり一番大きな問題は、東京を中心にした問題、旅客の輸送キロからいえば、三割というものが東京を中心にしたものだ。ここにわれわれは第三次計画の中心を置いて、何とかこれが問題の解決をはかりたい、こういうことでいま一生懸命努力しておる次第であります。
  86. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 ちょっと答弁がまだ残っております。現場の声、それから横との連携。
  87. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 現場の人の声でありまするが、これはごもっとも千万、どうも上と下とのパイプがときどき詰まるので、なかなか下の声が上に通らないということがたびたびあるのでありまして、これは最近は多少は私は直ってきたと思うのでありますが、これは御注意もありますので、今後ともよく注意いたしまして、現場の下の声が上に通ずる、上の声がまた下に通ずる、こういう上下の通信がスムーズにいくようにできるだけの努力をしてまいりたいと思います。
  88. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 総合的交通政策について……。
  89. 石田礼助

    説明員(石田礼助君) 交通政策の問題は、これは私は国鉄の問題よりは、むしろ運輸省の問題じゃないかと思います。その一番いい例が地下鉄の問題です。幾ら地下鉄ができて輸送力がふえてみたところで、いまのように、国鉄の割引に比べて地下鉄の割引が非常に少ないということになるというと、お客さんは向こうにいかない。(笑声)これはやはり同じ度合いに置かなければならない。それにはどうするかというと、地下鉄の賃率等を下げるか、あるいは国鉄の賃率を上げるか、どっちかであります。これをしかしきめるのは国会です。結局、私は国会だと思います。その点は運輸大臣にお願いしておるのでありますが、もしも国会に参りましたら、最善と考えられる方法で平均化をひとつ実現するようにお願いしたいと思います。
  90. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連して。企画庁長官に伺いたいのですが、いま瀬谷君から非常に具体的に、国鉄の輸送問題ひとつをとらえても非常に総合性が欠けているという御指摘があったわけです。これは根本をさかのぼれば、所得倍増計画そのものに問題があったんではないかと思うのです。現在企画庁で中期計画というものをいま作業をしていると聞いておりますが、その作業の際に、やはりいま瀬谷君が言われたような総合性のないという点は、これは根本的にいままでの施策の総合性のないということを再検討しまして、これを反映させなければいけないと思うのです。いままで所得倍増計画は、計画とは言うけれども、単なる目標であると言われておりましたが、単なる目標であったからこうなったのではないでしょうか。所得倍増計画は、太平洋沿岸のベルト地帯の開発を重点に置いて、そのことから東京都とか大阪、ああいうところに設備投資が集中して、そこに人口が集中し、それから、住宅難からひいては過密ダイヤ、国鉄の第三次の事故、こういう一連の関係になっておると思うのです。それから、公共事業道路だって、設備投資のほうがどんどん行き過ぎて、あとを追っかけている。公共事業費が予算の一八%を占める国なんてありません。ものすごい公共事業費を使っている。それでもなお追っつかない。建設大臣はまだ追っつかないと言う。そのもとは無計画的に設備投資をどんどんやるからです。そうして鉄鋼なんか設備過剰です。現在こんな無計画はございません。ですから、いま中期計画をお立てになっておりますが、単なる目標々々、そうして自由企業原則で設備投資を無計画にやるから、こういうことになる。これが私は根本だと思います。ですから、所得倍増計画については、そういう点について根本的に姿勢を直さなきゃ、いつまでたったってこの問題繰り返すだけですよ。農業の問題でも、あるいは中小企業の問題、みんな立ちおくれ、そうして各委員が入れかわり立ちかわり質問して、政府が入れかわり立ちかわり答弁していますが、こういうことは何ら一つ解決策が出されていないですよ。これでは何回やったって繰り返しですよ。こういうことは根本の所得倍増計画の姿勢を直さなければ、私は直らぬと思うのです。この点についていま中期計画をお立てになっていますから、その根本について自由企業原則をもととする設備投資に根本の問題があるのですから、その点についてやはり再検討を深刻に加える必要があると思う。そうしなければ、何回も繰り返しですよ。その点について長官に御意見を伺いたい。
  91. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 経済が停滞しておれば、こういう事態は起こらなかったと思います。したがって、経済発展、あるいはそのもとにあります所得倍増計画という考え方も、このできごとと無関係だとは私はむろん思いません。それから、公共投資と民間設備投資のバランスがはずれているということも事実でありますが、それは民間設備投資が多かったということに責めを負わせるべきではなくて、公共事業投資には、ただいま御指摘のように、非常に多額の予算を毎年さいている。世界でもまれなぐらい多額をさいておりますけれども、やはり過去の蓄積が公共投資ではものを言うわけでございますから、蓄積のゼロのところにいま投資を積み重ねておると、こういう状況であると思います。そこで民間設備投資がさらに予定を上回りましたから、両者のバランスがよけいにはずれてきたと、これはやがて公共投資というものは、蓄積がある程度までいきますならば、毎年、これだけの世界でも例のない金をつかっていったその成果があらわれるというふうには考えられるわけでございます。しかし、より根本的には、おそらくは所得倍増計画というものの考え方が、これを国土の中にどういうふうに経済力を配分するかという地理的な配分について考えておらない。企業別、あるいは経済のセクター別の計数はございますけれども、それを地理的に配分するという考え方は、御承知のように、とっておりませんわけで、その後に国土総合開発計画なるものができてきましたが、これと所得倍増計画とがどのような相関関係を持つかということは、抽象的に申せとおっしゃれば申しますが、実は具体的には、はなはだ極端に申せば、ほとんど連関らしいものはないというのが実情だと思います。そこで中期計画においては、ただいま、最初に御指摘になりましたような、民間設備投資と公共投資とのバランスを直していく問題等は、当然検討せられるわけでございますし、まあできますれば、その段階である程度地域的な、経済成長を地域的にどういうふうに配分するかということをやってみたいと思っておりますが、これはしかし、現実には非常に困難な作業であろうと思われます。それからさらに、それを具体的な行政の面で、経済発展というものと、その地域的な分布等を具体的に連関づけるということは、さらにさらにむずかしい問題だと思いますので、これは一つの官庁が企画をするよりは、先ほど関係大臣から答弁のありましたように、おのずから各省が施策を考える上でお互いに関連を持たせて考えてもらう、その基本的なプログラムができれば、経済企画庁が書く役目であろう、そういうふうに認識をいたします。
  92. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 瀬谷君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  93. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 委員の変更がございました。天田勝正君が辞任され、高山恒雄君が選任されました。  そのようにいたしまして、高山君が再び委員になられましたので、理事の補欠に指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  94. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 御異議ないと認めます。     —————————————
  95. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 次に、村山道雄君。
  96. 村山道雄

    ○村山道雄君 私は未開発地域開発の問題特に私の住んでおりまする東北地方の開発の問題につきまして、関係大臣質問を申し上げたいと存じます。  最初に建設、運輸、農林の各大臣に、具体的な事案について質問を申し上げます。  まず、河野建設大臣に、国土開発東北縦貫自動車道についてお伺いを申し上げます。東北開発促進計画の中で、東北住民の最も大きな期待をかけておりますのは、東北開発自動車道の建設でございます。東京−青森間六百六十キロメートルを時速百キロで六時間半のトラックの走る道路ができるということになりますれば、いままで、消費地までの輸送時間がかかり品物が腐敗いたしたりして悩んでおりました酪農も、また果樹生産も、蔬菜の栽培も、非常な発展を見るのであります。また、東北地方におくれておりました第二次産業も、起こってくることは必然でございます。新しい道路五ヵ年計画の中で検討されていると聞いておりまするが、建設大臣からその見通しをお聞きかせいただきたいのでございます。
  97. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お話しのように、国土開発が道路の開設、特にお話しの高速自動車道路の建設と重大な関係があることは、そのとおりでございまして、建設省におきましても、詳細これを申し上げますと、昭和三十九年度を初年度といたしまする新道路五ヵ年計画におきまして、現在、検討中でございまする全国各自動車道路につきまして着手いたしたい、こう考えておりますが、大体東北自動車道路につきましては、三十九年度におきまして、なお詳細に調査をする必要がございますから、一応三十九年度は四千五百万円の調査費をもちまして、詳細に調査を進めてまいるということにいたしております。それで、これが調査を終えました上で、いまお話しの、どういう路線を通ってまいればよろしいか、実際どの程度の道路をつくるかということの検討を終わり、そして、可能な予算、つまり全線開通するだけの予算は、いわゆる四兆一千億の予算の中には十分にありませんので、可能な限り東京からこれをやってまいりたい、こう現在は考えております。しかし、それとも、過日私が申し上げておりますとおりに、なるべく早い機会に、この五ヵ年計画を改定いたしまして、そして、さらに道路公債の発行とかその他の方法によって財源を増大いたしまして、そして、これら国内の高速自動車道路の完成は一日も早くする必要があるということで、鋭意そのように努力いたしたい。実はこの四兆一千億の五ヵ年計画の決定にあたりましても、大蔵大臣、大蔵当局とはこの点についても話い合いをいたしまして、なるべく早い機会に、財政事情もしくは公債発行の可能な時期に立ち至りましたならば、道路公債の発行等によって改定をしようということにいたしておりますので、私といたしましては、なるべく、早く事業の完成を期したいと、このように考えております。
  98. 村山道雄

    ○村山道雄君 明快な御答弁をいただきまして、非常に心強く存ずる次第でございます。  さらに建設大臣にお伺いを申し上げます。日本海と太平洋の両地域を横断するところの道路の整備は、現状においても非常に必要でございまするが、この必要性は、東北縦貫自動車道の開設とともに一段とその度を増すのでございます。太平洋側に東京——青森間を六時間半で自動車が走る高速道路ができまする際に、それと奥羽山脈をもって隔てられ、冬の間は積雪量の多い日本海側との交通路が現在のまま放置されておりましたのでは、せっかく東北の東半分は開発をされ、日本の他の地域との所得格差が是正されましても、西半分がはなはだしい未開発の状態に残されるおそれがあるのでございます。この際建設大臣にお尋ねを申し上げたいのでございまするが、第一に、現在この問題の解決の第一着手といたしまして、福島 米沢間の一級国道第十三号線を、現在栗子峠を越えてまいりました道路を改めて、板谷を越える道路につけかえるところの大改修工事が行なわれておりますることは、東北全住民、特に日本海側の住民にとりましては非常な福音でございます。今年度着工されまして、現在建設中の板谷峠付近の大トンネルは二本連続いたしまして、延長五キロをこえると聞いておるのでございます。雲によって閉ざされておりました奥羽山脈に大きな窓があこうとしておるのでございます。この大道路工事は、昭和四十年度に完成されると聞いておりまするが、そのとおりでございましょうか、大臣の御答弁をいただきたいのでございます。
  99. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) ただいまお話しの栗子峠の第一、第二のトンネルは、お話しのとおり、昭和三十八年度から三ヵ年計画で着手いたしております。工事も比較的順調に進んでおりますので、予定どおり四十年度には必ず完成するということでございます。
  100. 村山道雄

    ○村山道雄君 いま一つお尋ね申し上げたいのは、ただいまの、国道十三号線の福島−米沢間の大きな道路が昭和四十年度に完成をするのでございまして、非常に安心をいたしたのでございまするが、将来太平洋側と日本海側とを結びまする幹線道路はさらに強化される必要があると存じます。たとえて申しますれば、仙台−山形、そして山形県の海岸地帯である庄内とを結びまする路線等につきましては、将来は山間部はりっぱなトンネルでつないだところの道路に改良していく必要があると痛感されるのでございます。これは一例でごさいまするが、こういった東北縦貫自動車道路を背骨といたしました場合に、いわば肋骨に相当する道路を将来強化していただきたい。これが雪に埋もれておりまする裏日本東北の非常に熱心なるところの念願でございまするが、これに対する建設大臣のお考えをお聞かせいただきたいのでございます。
  101. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 先ほどもお話し申し上げました縦貫道路に関連いたしまして、五ヵ年計画にはまだ調査の段階でございますけれども、本土を、表と裏をどういうふうに結ぶか。たとえば東北ではどこからどこに結ぶか。たとえば関東、信越でありましたらば、東京から新潟へどういうふうに通っていくかというような、路線が一応想定されておるのはあるわけでございます。で、これも縦貫道路に関連して当然考えなければならぬことと考えておりますが、それとは別に、いまお話しのございましたとおりに、山形—鶴岡方面をどういうふうに開発してまいるかということが非常に重大なことでございます。政府におきましては、一級国道四十八号線仙台−山形間、これが改良舗装等は、かねて申し上げておりますとおりに、予定どおりに、まずこれを十分に自動車道路として、雪の際にも、またこれが十分利用できるようにいたさなければなるまいというので、これが開設、改良をはかっておりますることはもちろんのこと、さらに二級国道で山形−鶴岡間というものにつきましても、同時に引き続きこれを開設、改良してまいるという予定でおるわけでございまして、これらいずれも五ヵ年計画の中で全部完了するという予定になっておるわけでございます。     —————————————
  102. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 委員の変更がございました。  中尾辰義君が辞任れ、鬼木勝利君が選任されました。     —————————————
  103. 村山道雄

    ○村山道雄君 次に、綾部運輸大臣に津軽海峡の連絡隧道についてお尋ねを申し上げます。  東北開発促進計画の中で、ただいま河野建設大臣にお尋ねをいたしました東北縦貫自動車道と並んで、まさに双壁ともいうべき大事業は、国鉄の津軽海峡連絡隧道でございます。その調査の進行状況——すでに起工式が行なわれたと聞いておるのでございまするが、工事着手の時期、完成の年次の見通し等につきまして、大臣の御説明を聴取いたしたいのでございます。
  104. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) お答えいたします。  北海道と本土を結ぶいわゆる青函隧道ということにつきましては、非常な両側の——北海道側はもちろんのこと、青森側でも、もう今日では鉄道をかけずに船で連絡しておるのでは輸送力、その他限界に達しておりまして、これにつきまして何とか早く隧道をやりたいということは、われわれとしても特に考えておることでございまして、今日まで調査費といたしまして三億一千四百万円ばかり三十七年度に使っております。そうしてまた、三十八年度には約四億円の調査費がこれに計上してありまして、津軽海峡の青函の隧道につきましては、もう昭和二十一年から累年三十七年度までやりまして三億一千万円、さらにその結果に基づきまして、調査をさらに進めるために三十八年に約四億円計上して現在やっております。その状況は、地表面及び海上面よりする地形測量と、それから地質調査をおおむね完了いたしたのでありますが、さらに詳細な地質調査あるいは施工法上の調査を実施するため調査坑を掘さくすることになりまして、すでに現地において調査事務所を設置いたしまして、調査掘さくに着手いたしておるのでございます。その本州側は三厩竜飛崎、それから北海道側におきましては渡島福島のルートについて掘さくの調査をしております。この調査の結果ができますというと、設計にかかりまして、とにかくこれは世紀の大事業でございまして、外国なんかでも非常に注目しているやに聞いておりますので、慎重な設計を必要とするので、その基礎調査が済み次第直ちに設計をいたしまして、設計のでき次第に、このたび御承認を得ました鉄道新設公団といたしましては早急にやりたいというような考えを持っておりますが、ただいま申しましたように、基本の掘さくがいまだ完成いたしておりません。それが完成いたしましてから、実施設計に移され、実施設計が済んで本工事に着手してからは、今日における日本の土木事業といたしましては、従来十年かかるだろうと言われておったものが、六年ぐらいの時日でできる見込みでおるのが現状でございます。
  105. 村山道雄

    ○村山道雄君 非常に調査が進捗いたしており、またその着工も近いであろうということを伺いまして、心強く存ずる次第でございます。  次に国有林の開放の問題につきまして赤城農林大臣にお伺いを申し上げます。東北地方は明治維新当時からの歴史的な事情に基づきまして、国有林の占める割合が特に大きく、住民の所得格差を生ずる大きな原因ともなっておるのでございます。その開放につきましては、いまはなくなられました松岡俊三代議士などが長年にわたって心血をそそいで主張してまいったところでございます。昨年、青森市での一日内閣のときに、池田総理大臣が一住民の意見陳述に答えて、東北地方における国有林開放の方針を明らかにされましたことは、東北住民一同の心から歓迎いたしておるところでございます。現在、農業構造改善事業のための国有林開放が行なわれつつあると聞いております。将来は林業の振興、また草地の造成等を主軸とするところの地方産業開発のため、東北の住民に国有林の開放をしていただきたいと思いまするが、これらの点に関しまして農林大臣の御所見を承りたいのでございます。
  106. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) お答え申し上げます。  国有林野の民間利用につきましては、これは積極的に推進する方針でございます。いまお話もありましたが、いまのところでは主として次のような方法で地元農林業の振興のため国有林の活用を推進したいと思っております。第一は、いまお話の農業構造改善のための活用といたしまして、最近、農業構造改善事業、開拓、パイロット事業あるいは草地造成事業等による農林業用地の造成、特に草地及び樹園地、果樹園地の造成のための活用措置を引き続いてとっていることに対応いたしまして、昨年の六月に農林省の方針を決定して、現在その線に沿って推進をはかっておる次第でございます。なお、構造改善事業等の進展に対応しまして、一そう所要の措置をも検討いたしております。第二には、これはいまお話がありましたが、林業構造の改善のための活用といたしましては、公有林野及び私有林野の利用の高度化のみによっては林業構造の改善が実施を得られない地域につきましても、国土保全その他国有林野の使命達成との調整をはかりつつ、部分林の設定、売り払い等の方法によりまして小規模林業経営の育成を旨といたしまして、積極的活用をはかる方向で検討を進めております。さらに右の処置のほか、一般の地元農山村民の福祉の増進のため必要な地元施設整備につきましても、制度の円滑な運営をはかるべく最善の検討をいたします。
  107. 村山道雄

    ○村山道雄君 国有林の開放につきまして、赤城農林大臣の非常に御懇切な、しかも熱意のある御説明を伺いまして非常に満足に存ずる次第でございます。今後、国有林の開放がますますその実をあげまするようにお願いを申し上げまして次に移ります。  次に、私は通産省のいわゆる工業配置構想の修正の問題につきまして、福田通産大臣及び宮澤経済企画庁長官にお伺いをいたしたいのでございます。去る二月十四日の朝日新聞に、通産省、工業配置構想を修正、地方分散おくれる。開放体制迎え既存地大集中の傾向という見出しの記事が出ておったのでございます。その記事には詳しい計数までついておるのでございまして、地域別工業出荷額の割合が、全国を一〇〇といたしまして、東北を例にとりますと、基準年次の三十五年が四・五でありましたのを、前回には、四十五年の目標年次には六・〇になる見通しになっておりましたものを、今回は五・三まで引き下げて修正されておるのでございます。そこで通産大臣にお尋ねいたすのでございまするが、第一に、どういう理由、または原因で工業配置の構想が、このように未開発地域の開発がおくれる形で修正されなければならないようになったかということでございます。
  108. 福田一

    国務大臣福田一君) お答えをいたします。新聞に何かそういうような記事が出ておったというお話でございますが、通産省では昭和三十六年に、昭和四十五年における全国地域別、業種別の工業適性配置構想を策定いたしまして、今日までこれを改定した事実はございません。で、同構想では、既成工業地域への工業集中をできるだけ低目に見積もるとともに、後進地域の工業開発を積極的に促進することといたしております。すなわち昭和四十五年の地域別工業出荷額において、関東、近畿、東海等の既成工業地帯の工業生産の全国出荷額の占める割合は、昭和三十五年の七五%から、昭和四十五年には六八%に低下するものと見込んでおりまして、これに対して、たとえば東北地方は、昭和三十五年の四%から六%にその構成比が高まるものと見込んでおります。また三十五年の工業出荷額に対する四十五年の出荷額の伸び率について見ましても、全国の平均が二・八倍でございますが、関東では二・四倍、近畿では二・五倍、いずれも全国平均を下回っております。ところが東北地方では三・二倍、全国平均を上回るものと見込んでおるのでございます。なお、昭和三十五年の十月に閣議決定されました全国総合開発計画におきましても、工業開発に関してこの基本的な考え方が織り込まれておりまして、これに基づいて新産業都市工業整備特別地域、低開発地域、工業開発地区等の整備開発を中心に、重点的に工業の地方分散が進められることになっております。昭和三十六年の工業適性配置構想策定後の企業の立地動向を見てみますと、関東、近畿、東海等、既成工業地帯への工業の立地が相当盛んであり、また鉄鋼、石油化学等の臨海性装置工業については単位工場規模が大型化してきましたために、小規模なコンビナートが各地に立地することは困難になっております。しかし他方において道路網の整備等に伴いまして、企業の地方進出が相当進みつつあり、また最近の労働力事情の逼迫によりまして、労働力を求めて企業が地方に進出する動きもかなり盛んでございます。通産省といたしましては、今後とも後進地域の開発を強力に推進する所存でございまして、全体として見まして、三十六年の配置構想の基本的な考え方を修正する必要があるとは考えておりません。なお、東北地方の新産業都市の工業開発につきましては、すでに八戸、仙台湾、常磐郡山及び新潟の四地区について建設基本方針の指示を行なっておりますが、この指示におきましては、四十五年のこれらの地区における工業生産目標を三十五年の出荷額総額二千三百億円に対しまして、おおむね九千億円ないし一兆一千億円といたしております。これは三十五年の出荷総額の三・九倍ないし四・八倍に当たっております。全国平均の二・八倍を大きく上回っておるのでありまして、これらの新産業都市の建設にあたっては、地域の特性に応じた開発を進めて、地域開発の中核となることを政府としても期待をいたしておる次第でございます。
  109. 村山道雄

    ○村山道雄君 通産大臣の御答弁を伺いまして非常に安心をいたしたのでございます。ただいままで地方分散がおくれておりましたので、原案でありまする、今きまっておりまする六・〇を五・三まで下げようというような議がどこかにあったのかと思うのでございますけれども、それをそうでなくされまして、四十五年までに原案のとおりに地方分散もやっていこうということで、大臣方針がはっきりしておられまするので、私は非常に安心をいたしたのでございます。どうか今後、最初の目標どおりに工業配置が行なわれますように、このおくれを取り戻すために大臣の一段の御努力をお願い申し上げたいと存じます。  これに関連をいたしまして、私は経済企画庁長官にお尋ねをいたしたいのでございまするが、先ほども所得倍増計画の改定でございまするか、そういうお話がございましたが、その際におきましても、地域格差是正のために未開発地域を開発しようという、その方針を軽視するような目標の変更がありますことを私は非常におそれておるのでございまするが、さようなことのありませんように、当初に所得倍増計画ができましたときにも、経済効率のみを重んずるか、それとも未開発地域の開発をも取り入れていこうということで、いろいろな論議が行なわれまして、未開発地域の開発も、国家全体から見て非常に重要であるからやろうということになっておるのでございます。これをただいままでの実績に基づいて目標を変更する、未開発地域開発の目標を軽視するというような改定がされないということを私どもは念願をいたしておるのでございまするが、この点につきまして宮澤長官の御意見をお伺いいたしたいのでございます。
  110. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 御指摘のように、所得倍増計画は、ただ所得を二倍にするというのではございませんで、その間に地域格差及び企業間その他の賃金格差、生産性格差をなくするということを目的にしております。これは最も大切な目標の一つでございます。したがって、これを変更する考えはもちろんございませんし、のみならず、経済原則から申しましても、これ以上過度に密集した地帯に投資をいたしますことがいろいろな意味ですでに経済性を失っておる、自然の成り行きとして地方に投資が過密地帯から移っていくということが自然の趨勢でもあると思います。したがって、目的論といたしましても、また客観的な事態の動きからいたしましても、前々から考えておりますことをこの際変更する意思はないのみならず、むしろその格差の是正に向かってさらに進まなければならないものというふうに認識をいたしております。
  111. 村山道雄

    ○村山道雄君 次に、私は、東北開発促進計画における行政投資目標の設定につきまして、宮澤経済企画庁長官にお伺いをいたしたいのでございます。  最初にできておりました昭和三十三年度から四十二年度に至る東北開発促進計画は、公共、公益事業の投資額を閣議決定をもちまして一兆二千二百八十億ないし一兆二千四百八十億円と設定をいたしたのでございます。また、その前期五年間の投資額を五千四百八十億円ないし五千六百十億円と決定をいたしたのでございます。前期五ヵ年は昭和三十七年度に終了いたしたのでございまするが、その実績は、経済企画庁のお調べによりますると、五千五百九十八億円でございました。目標に対して九九・八%ないし一〇二・二%という成績を示しておるのでございます。今回の計画改定にあたりましても、私どもは、東北開発審議会等の場におきまして、行政投資目標を改定して掲げるべきであるということを強く主張いたしたのでございまするが、ついに政府当局のいれられるところとならなかったのでございます。理由は、現在所得倍増計画の改定について検討中であるので、ただいま決定をすることは困難であるということでございました。  そこで、私は長官にお伺いいたしたいのでございまするが、東北開発促進計画の改定に際しましてきめてしまいましたところの行政投資目標額を、所得倍増計画改定後の適当な時期にあらためて御検討願いたいと存ずるのでございまするが、御所見をお伺いいたしたいのでございます。
  112. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 終戦後間もなくの時点で、いわゆる特定地域として東北開発を考えましたときに、そういう計数を相当具体的に示しましたことは確かでございます。その後に、地方開発の要請という目的もだいぶん変わってまいりました。また、最近では、各地方の開発促進計画というものがようやく具体的な関心として地方の人々にも持たれるようになったと思います。したがって、各地方の開発促進計画に計数的な裏づけがないのはおかしいではないかと仰せられるのは、私は筋としてはそのとおりだと思います。そこで、そういうことが具体的に行なわれますためには幾つかの前提が必要だと考えております。それは、地方の開発促進計画をつくりますと、どうしても従来の経験によりますと総花的になりやすいわけでございまして、御承知のように、ごらんいただきますと、どこで何をやるのか明確にわからないような、非常にむずかしい文章になっておる場合が多うございます。で、このようなことでは、これに全部数字を割り振っていくわけにはなかなか参らないわけでございますから、具体的な数字の裏づけができますためには、かなり計画が総花的でない、重点的なものになってこなければならない、このことが一つございます。これはしかし、その地域の中で利害の調整をするという非常にむずかしい問題が、もうよく御存じのようにあるわけでございますが、その前提がやはり一つ満たされることが必要ではないか。それから、地方の開発は地域格差の是正が主たる目的でございますけれども、国全体の利益というものと全く無関係には行ない得ないものでございますから、今度はその地方と国全体の利益とのやはり調整というものが具体的に必要になってまいると思います。これらのことができてまいりますと、今度はそれにその上で数字的な裏づけを当然これは行なわなければならないのが本筋でございましょうと思います。  政府部内でただいま意思統一ができません主たる理由は、やはり各省の持っておりますいわゆる五ヵ年計画とか申します、そういう長期計画が相当しぼった形で考えられておりますのに対しまして、地方の地域開発計画がまだかなり総花的である。その間に考え方の開きがあるというところから政府部内の意見が一致いたしませんので、それらの前提が満たされますと当然そういう問題が出てまいりまして、そうなりますと、これは開発審議会で御検討いただくことになるであろうと考えております。
  113. 村山道雄

    ○村山道雄君 御趣旨はよくわかりましたので、なおこの問題につきましては開発審議会の場その他におきまして、あらためて御相談を申し上げたいと存じます。  次にいわゆる大規模地方開発都市、中規模地方開発都市等の拠点都市の機能を整備することに対する国の施策について、長官にお伺いをいたしたいのでございます。閣議で決定されました全国総合開発計画の中に、大規模地方開発都市と中規模地方開発都市の構想を掲げられて、その選定の基準を示しております。そうしてこれを積極的に整備すると規定しておるのでございます。これはいわゆる拠点方式による地域開発の構想といたしまして、まことに当を得たものであると考えるのでございます。そこで、各地域の開発促進計画の策定または改定が終了をいたしまして、大規模開発都市、中規模開発都市はそれぞれ選定を終わったのでございます。政府はこれを積極的に整備するということのためにどういう方策を講ぜられるつもりでございますか。法的な措置、あるいは財政的な施策、金融的な施策等いろいろお考えであると存じまするが、その御構想を承りたいのでございます。
  114. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 各地方にはおのずから、沿革的に見ましてその開発の中心になるべき都市があるわけでございますが、このたび大規模開発あるいは中規模開発の都市を指定いたしましたのは、そのような沿革の上に立ってそれをさらに政策的にはっきり意識の問題として出していこう、こういう考え方でございます。したがって、これらの都市に対しては開発の拠点となりますような公共投資、通信、交通等の施設、あるいはさらにもう一つ広いところまで考えなければならないかもしれませんが、それらの機能を与えていきますために、関係各省が協調をいたしまして、重点的にそれらの施策をしていこう、基本的にはそういう考え方で進みたいと思っておりますが、なお具体的な御意見がございましたら、承りまして参考にいたしたいと思います。
  115. 村山道雄

    ○村山道雄君 地方開発都市をただいまのように重点的な中核都市として整備をしていくという御方針、これは各省それぞれの持ち場におきまして、経済企画庁において連携をとってやっていかれるという御趣旨はよくわかったのでございまするが、しかし、これを一そう明確にいたしますために、何らかの法的の措置をとっていただきたいということを、この新たに指定されました地方都市の間でも熱心に希望いたしておるのでございまするが、そういう点につきまして長官の御意向を伺いたいのでございます。
  116. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それらの都市の選定につきまして、実はかなり地方的な困難な問題がございますので、ただいまの段階としては一応そういうものとして認識をして施策をそこに集めていくということを申しておるのが、ただいまの現状でございますけれども、なお今後それらの地方が発展をいたしていくに従いまして、ただいま御指摘のようなことが起こり得るかもしれないと思います。関係各省とよく慎重に協議をいたしてみたいと思います。
  117. 村山道雄

    ○村山道雄君 なお、われわれも今後熱心に希望いたしますので、十分の御検討をお進めを願いたいと存ずる次第でございます。  次に、私は東北開発株式会社の問題につきまして経済企画庁長官にお伺いをいたします。東北開発が他の地域開発と比べまして沿革的にも特殊性を持っておりますことのあらわれの一つが、東北開発株式会社法による会社を持っておるということにあると存ずるのでございます。民間事業が立地条件の不利から容易に行なわれない地域に、政府の財政的、金融的援助のもとに先駆的な事業を行なう会社の持つ意義は、きわめて大きいと存ずるのでございます。この会社がしばしば事業不振におちいりまして赤字に悩むのでございます。現在も政府においてその赤字対策を検討中であると承っております。私は、その赤字ないし整理方針内容をここで伺おうとするものではございません。二つの基本的な問題につきまして、経済企画庁長官の御意見を承知いたしたいのでございます。  第一点は、本質的に開発会社の採算は相当長期にわたる採算であるべきであると存ずるのでございます。二、三年ですぐ黒字になるというような仕事であるならば、民間企業で着手する人が出てくるわけでございます。立地条件の不利、当面の採算の困難を乗り越えまして、地方の開発と将来の採算を見通してやるのが開発会社の仕事でございます。開発会社の赤字を論ずる場合には、こういう長い目で採算を見るという立場に立つべきであると存ずるのでございまするが、いかがでありましょうか。
  118. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 東北開発株式会社では、ただいま御指摘のとおり、相当の赤字を累積いたしまして、今年度末で三十何億円かの赤字になると見ております。大体、ただいまのところ、毎日三百万円ぐらいずつの赤字が出ておるわけでございます。これにはいろいろの事情がございます。沿革的な事情もございますし、いろいろでございます。ただの株式会社ではございませんから、御指摘のように、短期に利益をあげるということを当然考えるべきではございません。また、ここで利益をそもそも得なければならないとも考えておりません。ただ、いかにも、現状を分析いたしますと、人件費がきわめて平均して高いということ、金利負担がまたきわめて高いということ、人員の割合に会社の総売り上げが非常に少ないというようなこと、いろいろ経営上——経営上と申しますのは普通の営利会社の経営ということではございませんけれども、再検討しなければならない問題があると考えまして、したがって、ただいま御審議を願っております三十九年度予算の中で、再建資金の計上をお願いをいたしております。これは今後数年間にわたって継続して再建資金を国会からお認めを願いたいと思っておるところでございますが、その目的はもちろん短期的に赤字を黒字に転ずるといったようなことをもとより考えてもおりませんし、望むべくもないところでございます。一定の期間には、少なくとも毎日何百万円というような赤字が出るような、そういう出血的な経営でない経営にだけはもっていきたい。会社の設立の目的があのようなものでございますから、本来これが営利会社であればとっくに破産をいたしておる会社でございましょう。そういうことは設立の目的から許せませんので、再建資金を計上いたしまして、とにかく長期的には少なくとも赤字がとまるような経営にもっていきたい、こう考えております。
  119. 村山道雄

    ○村山道雄君 非常に適切な御意見でございまして、そのようなお考えのもとに東北開発株式会社の再建が早急に実現いたしますように期待をいたす次第でございます。  第二に、現在の開発会社の運営上から申しまして、総裁が十分に手腕を発揮できないような事情があるように思われるのでございます。一つは、官庁が事業の非常に細部に至るまで立ち入って監督をすることがございます。二つは、総裁の部下でありまする副総裁や理事政府任命でありますので、関係各官庁それぞれの代表者のような立場に立っております。総裁がこれを総括していく上に非常に困難を伴っておることでございます。これらの点につきましても再検討をいただきたいと考えるのでございまするが、そういうお考えがありますかどうか、お伺い申し上げます。
  120. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) このたびの再建の必要が生じましてほぼ一年たっております。その間、総裁とも何度かお話もいたしましたし、また民間の学識経験者数名に数ヵ月にわたって現地調査を含めて検討していただいたわけでございますが、その中にただいま村山委員の御指摘になりましたような事実が確かにあるように思います。会社側にもむろん至らないところがいろいろあったと思いますけれども、役所の側においても、いかにも経営が悪いために、それを矯正するのに急なあまりというような動機もあったと思いますが、会社の経営に関与、かかわりますかかわり方が、必ずしもかえって角をためて牛を殺すというようなことがあったのではないか、過去においてそういう場合があったのではないかという印象も私は実は持っております。  そこで、昨年の末に実は伊藤総裁以下全理事の進退伺いが出たわけでございますが、私としましては、少なくとも伊藤総裁だけには、御迷惑なことであるかもしれませんが、任にとどまられてこの再建を完遂をしていただきたい、こういうことを申し上げました。なお、その際、副総裁以下理事の任命は内閣の任命ではございますけれども、何としてもトップマネージメントが総裁の手足となって自由に動かなければ再建の仕事はできませんので、副総裁以下理事の選任については事実上総裁の御自由にひとつおまかせをいたしますと、総理大臣の了承を得ましてそういうことを口頭で申し上げたのみならず、文書で実は総裁にお渡しをしてございます。法規的に申せば、ただいま仰せになりましたように、一人一人の理事内閣が任命するという、はなはだ動かしにくい法規になっておりますけれども、この際、あえて法規は改正いたしませんが、事実上具体的な人選は、総裁が最善と思われる人間をお選びになって、最善のマネージメントをつくっていただきたい、こういうことをお伝えをしてございますし、また、現実にそういう考えで総裁がすでに人選をかなり具体的に進めておられるようでございます。
  121. 村山道雄

    ○村山道雄君 非常に御理解のある御答弁に満足をいたしたのでございます。どうか長官のお力によりまして、りっぱな開発会社が再建されまするように要望を申し上げる次第でございます。  次に、未開発地の貧困の結果としてあらわれておりまする東北地方における市町村直営医療施設の累積いたしておりまする赤字の対策について、小林厚生大臣及び早川自治大臣にお伺いをいたしたいのでございます。例を山形県にとりますと、山形県の市町村経営病院は、国民健康保険病院が十二、普通病院が七つ、計十九でありまするが、昭和三十七年度末の赤字が三億五千八百七十万円に及んでおります。これらの病院は、いずれも僻地の医師不足または無医地区の医療機関として経営されておりまするが、例年不可避の赤字の累積に苦しんでおるのでございます。もちろんこれを経営する市町村は、苦しい一般会計から多額の繰り入れを行なっております。これを加算いたしますると、ただいま申し上げました赤字は四億六千五百五十九万円になるのでございます。何とか政府におきましても御配慮を願いたいのでございます。たとえば政府資金によりまするところの長期の低利の融資でございまするとか、あるいは医療機関の人件費に対する国庫補助でございますとか、あるいは医療施設に対しまする国庫の補助でございまするとか、またはこれらの市町村に対しまする特別交付税の交付でございまするとか、何とかお助けをいただきたいのでございまするが、これらにつきまして厚生大臣、自治大臣の御意見を承りたいのでございます。
  122. 小林武治

    国務大臣(小林武治君) ただいまのお話でございますが、私ども医療行政として一番大きな問題は、山村僻地における医療が十分に普及しない、こういうことでありまして、その根本的な原因は、いま医師というものが自由業である、したがって、ある程度の採算を考えなきゃならぬということで、山村僻地にはいまのところ参りません。やむなくこれらは公の施設として、ある程度の措置をしなければならぬ、こういうことを考えておりまして、お話のような国民健康保険の直営診療所というものがどうしても僻地においては必要でありまして、現在でもすでに約二千八百の診療所があるのでありますが、これらの診療所におきましても医師の配置ができないということで、現に診療の休止をしておるものが二百数十もあると、こういう状態でありまして、医師が山間僻地に定着するということはきわめて困難な事情にあるのであります。御承知のように、診療所の設備につきましては、いま国庫補助も行なわれておりまするし、また、厚生年金事業団等からも低利資金の融通、こういうことが行なわれておるのであります。また、運営費につきましては、まあ診療が少ないということで、当然お話しのような赤字が出ておるのでありまして、この方面につきましては、国民健康保険の調整交付金というものがいま全体の八分五厘になっておるのでありまして、この中から現在約二億五、六千万円の金を運営費として補助をしておると、こういうことでありまして、この補助は、主として僻村に対する診療所に交付しておると、こういうことであります。しかし、これでもなお赤字が出るという現状でありまして、私どもは、山村における医師の配置というものは、現在の状態ではやはり充足することができない、こういうことを考えておるのでございます。多少の給料を出しても、いろいろの関係で、いつかないということで、いまでは私どもは、主として公的の親病院から診療所に医師を一ヵ月、二ヵ月交代で派遣をする、こういうような方法をとっておるのでございます。  今後の方針としましては、いまの調整交付金をもっとふやす、こういうことをする。特に山村に対してこれを重く見るということをしなければなりませんし、また、場合によっては、お話のような医師に対する手当と申しますか、給料の補助と申しますか、そういうものもどうしても必要になってくるのじゃないかと、こういうことで、国民皆保険の立場から申しましても、山村の者もあまねく医療の機会が均等するように、こういうことを医療行政の大きな問題として考えていかなければならぬ、こういうふうに思っております。  また、赤字問題につきましては、これはいま国民健康保険は起債をするということはできません。いまの町村からこれらを埋める、あるいはこれを特交でみてもらうというふうなことも考えなければなりませんが、これらについても自治大臣のほうに私どもはお願いをいたしておるのでございます。
  123. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 御指摘の国保病院、国保診療所の赤字の問題は、単に山形県だけの問題ではございません。全国的にすでに五十億をはるかにこえる赤字が出つつあるわけでございます。これは根本的に考えなければならない段階に立ち至っておりまして、たとえば医療費が妥当であるか、また、健保と国保の格差をどう一本化していくかというような大きい問題がございます。したがって、こういった根本問題につきましては、自治省といたしましては、地方公営企業制度調査会のいま法律案を提案いたしております。四月から発足いたしまして、こういった国保病院、診療所に対してどうするかという結論を待たなければならない問題かと思うのでございます。さしあたっての問題といたしましては、特に山間僻地の診療所の赤字につきましては、ただいま厚生大臣がお答えをされましたように、国民健康保険特別調整交付金の制度がございますので、これを一そう来年もふやして活用していくということでございます。  なお、市町村に対する特別交付税云々という問題がございまするが、たてまえとしては、これをあくまでも独立会計でございますので、一般会計からこれに対して交付税でやるということはなかなかむずかしい問題でございます。そのものずばりの特別交付金ではなくて、その市町村全体のいろいろな財政というものを考える場合に十分な配慮をしてまいりたいと思っておるわけであります。
  124. 村山道雄

    ○村山道雄君 何ぶん非常に困っておる問題でございます。両大臣の非常に御理解のある御答弁をいただいたのでございまするが、この問題を解決いたしますために、今後とも御尽力をお願い申し上げたいと存じます。  地域所得水準の低いということは、地域担税力が低いということの意味でございます。そこでは自力によって公共事業を起こすことができないのでございます。地域所得水準の低いということは、地域の資本蓄積力が低いということを意味するのでございます。そこには自力によるところの投資は起こらないのでございます。また、地域所得水準の低いということは、地域購買力が低いということを意味するのでございまして、そこには目ぼしい製造工業は興こらないのであります。公共事業が興こらない、新しい投資も行なわれない、工業も興こらないから地域所得水準はいつまでも低いのでございまして、すべて貧困の悪循環を繰り返しております。この悪循環を断ち切る唯一の手段が、未開発地域に基づく政府の財政投資でございます。それによりまして地域の所得、すなわち担税力、また、資本蓄積力、購買力が同時に一挙に増加いたしまして悪循環が断ち切られるのでございます。政府がますます熱意を持って未開発地域開発の事業を達成されんことを要望いたして私の質疑を終わるのでございまするが、これらの基本的な問題に対しまして、大蔵大臣のお考えをお伺いいたしたいのでございます。
  125. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 狭い日本でございますし、財政の投資効率をあまりにも追及し過ぎた結果、東京、大阪というような大都会に産業、人口、文化までが過度に集中いたしておるわけでありまして、この都市の構造を改造してまいるということになりますと、もう非常に単位単価が高くて、効率投資というわけにはまいらない状態にまできておるわけであります。その意味において、交通網の整備によって各地域をつないで、各地域の開発によって国内均衡をはからなければならないという段階に至っておりまして、一つの地域を開発するとか、地域格差をなくするとかということではなく、そうすることによってのみ将来の発展があるという方向が明らかになっておるのでありますので、地域開発に対しましては、特別な配慮をいたすべく考えて去ります。  なお、道路の五ヵ年計画、港湾の五ヵ年計画、また、鉄道の新しい計画、その他公共投資の面につきましては、目先の混雑を緩和するということだけに目を奪われることによって、より混雑を招来するというような立場ではたく、将来に目をはせながら先行投資を行ない、地域格差の解消、地域の発展に資したいというふうに考えておるわけでございます。
  126. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 村山君の質疑は終了いたしました。本日はこの程度にいたします。明十二日は午前十時から公聴会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十三分散会