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1964-03-07 第46回国会 参議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月七日(土曜日)    午前十時二十二分開会     —————————————   委員の異動  三月七日   辞任      補欠選任    井上 清一君  横山 フク君    小山邦太郎君  吉武 恵市君    山本  杉君  佐藤 芳男君    吉江 勝保君  増原 恵吉君    河野 謙三君  安井  謙君    中尾 辰義君  北條 雋八君     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     太田 正孝君    理事            大谷藤之助君            斎藤  昇君            平島 敏夫君            村山 道雄君            藤田  進君            鈴木 一弘君            奥 むめお君    委員            植垣弥一郎君            江藤  智君            木村篤太郎君            草葉 隆圓君            小山邦太郎君            木暮武太夫君            後藤 義隆君            郡  祐一君            佐藤 芳男君            佐野  廣君            塩見 俊二君            杉原 荒太君            田中 啓一君            館  哲二君            増原 恵吉君            安井  謙君            横山 フク君            吉武 恵市君            加瀬  完君            木村禧八郎君            瀬谷 英行君            小平 芳平君            北條 雋八君            赤松 常子君            天田 勝正君            岩間 正男君            山高しげり君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    外 務 大 臣 大平 正芳君    大 蔵 大 臣 田中 角榮君    文 部 大 臣 灘尾 弘吉君    厚 生 大 臣 小林 武治君    農 林 大 臣 赤城 宗徳君    通商産業大臣  福田  一君    運 輸 大 臣 綾部健太郎君    郵 政 大 臣 古池 信三君    労 働 大 臣 大橋 武夫君    自 治 大 臣 早川  崇君    国 務 大 臣 福田 篤泰君    国 務 大 臣 宮澤 喜一君    国 務 大 臣 山村新治郎君   政府委員    内閣官房長官  黒金 泰美君    内閣法制局長官 林  修三君    公正取引委員会    委員長     渡邊喜久造君    防衛庁防衛局長 海原  治君    防衛庁装備局長 伊藤 三郎君    経済企画庁調整    局長      高島 節男君    経済企画庁総合    計画局長    向坂 正男君    外務省条約局長 中川  融君    大蔵省主計局長 佐藤 一郎君    大蔵省理財局長 吉岡 英一君    文部省初等中等    教育局長    福田  繁君    文部省社会教育    局長      齋藤  正君    文化財保護委員    会事務局長   宮地  茂君    厚生省公衆衛生    局長      若松 栄一君    厚生省社会局長 牛丸 義留君    厚生省児童局長 黒木 利克君    通商産業政務次    官       竹下  登君    運輸省港湾局長 比田  正君    運輸省鉄道監督    局長      廣瀬 眞一君    運輸省自動車局    長       木村 睦男君    自治政務次官  金子 岩三君    自治省財政局長 柴田  護君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十九年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十九年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十九年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 太田正孝

    委員長太田正孝君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  委員変更について御報告いたします。  昨日、田畑金光君及び高山恒雄君が辞任され、天田勝正君及び赤松常子君が選任されました。  また本日、中尾辰義君が辞任され、北條雋八君が選任されました。     —————————————
  3. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 昭和三十九年度一般会計予算昭和三十九年度特別会計予算昭和三十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、きのうに引き続いて質疑を行ないます。杉原荒太君。
  4. 杉原荒太

    杉原荒太君 防衛外交の問題について簡単に質問いたします。  まず第一に、わが自衛隊装備品国産化の問題についてであります。順序として事実問題から若干お尋ねいたします。  第一点は、現在保有の、現有の装備品を、国産のものとしからざるものとに分けてみますというと、金額に見積もってそれぞれどのくらいになっておるでしょうか。もちろんこの評価のしかたにもよりましょうけれども防衛庁で見ておられるところをお示し願いたいと思います。
  5. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 警察予備隊が発足しました昭和二十五年以来、装備品総額は、御案内のとおり、一兆二千億。そのうち国産関係が六千五百億、また、第二次防衛五カ年計画におきましては、装備に対する経費四千億、三対一の割合約三千億が国産という内訳になっております。
  6. 杉原荒太

    杉原荒太君 次に、アメリカ側のその政策変更の結果、昨年の七月一日以前に約束したと認められておるもの以外については、今後期待することができないようになったわけでありますが、第二次防衛計画作成当時マップ無償援助を期待しておるもので今後入手できなくなるというように見られるものについて、ものにもよりましょうが、国産に切りかえ得るものがある見込みでございましょうか。
  7. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 第二次防衛五カ年計画の初めにおきまして、アメリカに期待した額は約九百億であります。その後いろいろな要素が吟味されまして六百三十億にしぼられ、そのうち二百三十億はすでに承認済みのものであります。残りの四百億につきましては、今後の対米折衝の結果に待つわけでございます。ものによりましては開発研究費がきわめて多額にのぼる、あるいはいろいろな面で困難なものは有償、いわゆるマスに切りかえていく必要が出てまいります。ただ私ども方針といたしましては、無償援助、いわゆるマップ削減は必至でございます。見通しは非常にきびしいものがございますので、そのときにおきましては、どうしてもやむを得ないものは、有償援助マスに切りかえて、なるべく国産化のほうに持ってまいる、こういう考え方でございまして、そのためにはいろいろな日本経済また技術水準、こういう制約もございますが、方針としては、極力、国産化のほうに重点を指向いたしていきたい、と考えております。
  8. 杉原荒太

    杉原荒太君 陸海空自衛隊の主要な装備品のうち、国産で十分間に合うものと、技術上また経済性などの上から見て、どうしても国産を期待しがたいもの、そういうふうに分けてみますと、現在のところ、それぞれ大体どういう品目でありましょうか。おもなるものについてだけでけっこうであります。もちろん、これは何を装備するかというようなこと、その他いろいろな前提条件がありますから、私の質問自体が正確を欠いておりますけれども、大体、現在の日本実情から見てのところを基礎にしてのお答えでけっこうですが。
  9. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) ごく大ざっぱな、おもな品目考えますと、陸上自衛隊では戦車装甲車あるいは無反動砲小銃小銃弾砲弾の種別がございます。陸上自衛隊は大体機体のおもなもの並びに部品のうち国産化し得るものあるいはロイアルティーを払いまして日本技術水準で今後見通し得るものであります。  なお、海上自衛隊では、自衛艦は全部国産でまかない得るのでありますが、艦上登載品につきましては、アースロック・ダッシュ等特殊な技術のもの、短時日にとうてい日本ではなし得ないものがアメリカ側無償援助、最悪の場合は有償という考え方であります。
  10. 杉原荒太

    杉原荒太君 国産主要装備品で、防衛庁長期一括発注をとっておられるものがあるようでありますが、それは具体的にどういう種類のものでございましょうか。また、各契約量はどれくらいでございましょうか。主要なものだけでけっこうです。
  11. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 具体的な細部にわたりましては、政府委員から。
  12. 伊藤三郎

    政府委員伊藤三郎君) 数字にわたりますので、私からお答えいたします。  長期一括契約をいたしておりますのは、三十七年度で、戦車が百両、一部前年度分、三十六年度のものも入っております。装甲車が百二十両、無反動砲が四百二十門、このうち七十門が三十六年度、七年度のこれは単年度でございます。機関銃が九百丁、これが三十七年度のものでございますが、さらに、目下御審議を願っております三十九年度予算におきましては、小銃を二万五千丁、迫撃砲が百五十門、三十七年度のほうは五カ年の長期契約でございます。三十九年度のほうは三カ年の長期契約でございます。
  13. 杉原荒太

    杉原荒太君 ただいまお答えの中にありました新小銃ですね。これは前に日本がいままでアメリカから供与を受けておりました古いライフル銃国産の新小銃更新する、そういう計画の一部なんですね。そのいま言われたものは三カ年の、その長期というのは三カ年の一括契約、その対象にこの新小銃も、まあ予定といいますか、計画なんですね。そういうわけなんですね。
  14. 伊藤三郎

    政府委員伊藤三郎君) 先ほど申しました小銃二万五千丁は、三カ年間に年度ごとに取得をする計画でございまして、これは現在持っております小銃、これはほとんど米軍から供与を受けたものでございますが、これの更新を行なうわけでございます。
  15. 杉原荒太

    杉原荒太君 アメリカから供与を受けておりましたライフル銃は現在何万丁くらいございましょうか。
  16. 伊藤三郎

    政府委員伊藤三郎君) 約十八万丁弱でございます。
  17. 杉原荒太

    杉原荒太君 そういたしますと、先ほど申された数字割合でいくとしますれば、古いライフル銃国産の新小銃に全部更新するのには二十カ年ぐらいかかるわけですね。新小銃だけでなく、その他長期一括契約の場合でも、先ほどの御答弁によりますと、その発注数量というものはまあささやかなものですね。その程度数量を受注する企業の側の操業度は大体どんな程度になっておりますか。全部じゃなくて、若干の例をあげて言ってください。
  18. 伊藤三郎

    政府委員伊藤三郎君) 操業度がはっきりつかめますのは、小銃弾とか砲弾とか、そういう専用の設備を持っておる場合でございますが、小銃弾の場合には大体三〇%程度操業率であります。砲弾につきましては一〇%ないし二〇%、工場によって違いますが、大体そういうような操業度でございます。なお、戦車装甲車、こういうものにつきましては、操業度というものを計算するのは非常に設備関係上困難でございますが、大体西独で計画しております新型戦車については千両以上の単位であるということを聞いておりますので、まあそういうものから比べますと、防衛庁発注しております新型戦車百両というのは非常に少ない数字であることは事実でございます。
  19. 杉原荒太

    杉原荒太君 三十九年度のこの防衛庁予算のうちで、装備費ですね。この陸海空各幕通じての装備費総額は幾らになっておりましょうか。また、それは防衛庁予算総額の何%くらい。装備品開発研究費の三十九年度予算額とともにお示し願いたいと思います。
  20. 伊藤三郎

    政府委員伊藤三郎君) 三十九年度の額でございますが、これは国庫債務負担行為の三年分を一括出しておるものがありますし、また、前年度からのそういう国庫債務負担行為歳出額というようなものもございますので、そういう数字をトータルしたものをただいま持っておりません。大体装備品としまして歳出額で七百億から八百億見当のものでございます。それから研究開発費でございますが、三十億程度でございます。このうち人件費が入っておりますので、実際の研究開発等に使われますのは約二十億円強でございます。
  21. 杉原荒太

    杉原荒太君 御答弁を伺いましても、この自衛隊装備品のうちで、少なくとも技術的には国産に期待する範囲も相当あるようであります。しかし、それにもかかわらず、一方長期一括発注の場合でも、数量が小刻みのために、必然に単価なども割り高になることが推定されます。自衛隊、ことに陸上自衛隊装備更新がおくれているわけもわかります。また、装備費予算額を聞けば、その面からしてもそういった結果にならざるを得ないようであります。  次に、私がお尋ねいたしたいことは、この装備品国産化方針の問題についてであります。すなわち、自衛隊装備品調達源としては、国産に依存するということを本則とする。必要最小限度自主的国産体制を確立するということを目途にして、これがため必要な措置を積極的に推進するというお考え、御方針がおありかどうか、その点をお尋ねいたします。これはまず防衛庁長官、次いで国防会議の議員でもあられます経済企画庁長官並びに大蔵大臣から御答弁を願います。
  22. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) 御指摘の国産化の今後の計画性の問題でありますが、先ほどお答えいたしましたとおり、マップ削減はだいぶ問題がきびしい。またマスにつきましても、最小限度やむを得ないものに限るという一応の考えを持っておりますので、他のものは極力日本経済技術能力に応じて国産化に最重点を置きたい考えで断ります。三十九年度予算を見ましても、二千七百五十一億のうち、大体装備に回し得るものは、三割から三割五分というパーセンテージであります。問題は、予算規模全般の問題にかかると考えております。先ほどから局長から御報告申し上げました戦車だけ取り上げましても、二次防ではわずか私どもは百両しか考えない。西ドイツでは一千両以上という規模を見ますと、御案内のとおり、一九六三年度予算の三割、一兆六千億円を国防費として西ドイツとしては計上しておる。わが国ではまことにいろいろな事情からきわめて少額であります。全予算の八%台というこういう規模から考えましても、先ほどおっしゃいました発注量その他はきわめて軽少でございます。そういう点、難点はございます。質的には大きな問題でありますので、あくまで国産化を最重点自主防衛の大きな骨組みとして考えておるわけでございます。
  23. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 防衛装備国産化については、十分国産化重点を置いていくべきだというふうに考えます。ただ、それが防衛上必要であり、また、日本技術水準から見ましても大体間に合うわけでありますし、なお、国内防衛産業の発達によって他の産業技術水準の向上にも、技術開発にも役立つことでありますので、国産化重点を置いてやるべきだという考えであります。
  24. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 車両でありますとか、電気通信機械というようなものは国産化がかなり高度に可能なのではないかと思います。船舶、航空機などもどちらかといえば、そういうほうではないかと思います。武器、弾薬といったようなものが先ほど御質問にもございましたように、どの程度完全に国産企業として成り立ち得るかという問題はあるのではないかと思います。いずれにいたしましても、国内で調達し得るということであれば外貨の節約にもなりますし、また、国内産業自身が潤うということでございます。そういうふうに考えていくものと思っております。
  25. 杉原荒太

    杉原荒太君 自衛隊の現状を見ますというと、内容改善のうちで、その重点一つは、装備質的改善じゃないかと思います。また、それとともに、わが国防衛体制の基本的なあり方についての欠陥の一つは、何と申しましても、わが国自衛隊が必要とする装備品国産体制が不備であるということであろうと思います。一方、戦争抑制の目的を持つ安保体制は、日米双方がそれぞれ分に応じた努力をするということが前提をなすことは申すまでもありません。安保条約の運営において要求されるわがほうの自主性ということも、実はわがほうに応分の防衛努力の実績の裏づけがあってこそ成り立ち得るものだと考えます。国の防衛体制にも、本来の必要の上からしても、また、安保体制の正しいあり方を全うする上からいたしましても、所要の装備品必要最小限度国産体制が確立せられるに至ることを希望してやみません。実際上、財政上の隘路はむずかしい問題ではありますけれども、高度の政治的判断によって国防会議等においても、ひとつ解決の道を見出していただきますように、私は要望いたしておきます。  次に、外交問題に移ります。総理は、施政方針演説において、国民政府中共に対する方針をお述べになりました。客観的事態に即応する現実的の政策として、われわれの期待するところであります。この政府の御方針そのものについては、私自身としては、疑いをただす必要を認めませんけれども国民政府側政策と、中共側の最近の対日動向に関して、それに対応する当面の政府態度について簡単にお尋ねいたします。国民政府のいわゆる大陸の反攻政策というものは、これは単純なものじゃなくして、蒋介石総統の過去三十年にわたる共産党との闘争の経験、血と涙をもってつくり上げられている政治哲学に根底を持つ政戦両略の結晶したものだと存じます。国民政府自体として、そのような政策を持つに至っておる実情、また、その内容そのものについては、われわれも正しい認識を持つ必要があると思います。これに対し、わが国として、いかなる態度をもって臨むかは、わが国が自主的に決定するところであります。両者を混同すべきものでないことは申すまでもありません。そういった立場に立って私質問いたすのでありますが、蒋介石総統が心血を注いで書いた著書の中で、こういうことをいっております。すなわち、東洋の各反共民族自由陣営から物心両面の支持を受けて中共に対し共同して反撃すれば、西側諸国の直接の参戦を待たずして、反共民族革命が成就するであろう。東亜反共民族革命こそ、世界戦争なくして自由世界ソ連世界支配の野望を粉砕し、人類の自由を保障する唯一の方途である。東亜反共民族革命戦争に対しては、ソ連十分勝算のある態勢に準備を終わるまでは決して参戦することはないことを自分は断言する。東亜反共民族革命戦争西側諸国が直接参戦することは、不必要であるばかりでなく、東亜反共諸国にとってかえって不利である。西側諸国は、道義と物資並びに武器技術の上で援助してくれれば事足りるのである。こう申しております。私、この事実だけ、いまここであげるのでありますが、一方、去る二月二十一日、国民政府厳行政院長はこう語っている。吉田首相が二十三日、台湾を訪問されるが、日本側が今後国民政府と誠実に協力して、反共立場を積極的にとるならば、両国ともその恩恵を受けるであろう。こう言明いたしております。これもまた、私事実だけ述べます。また、さらに国民政府沈新聞局長が、二月の二十六日、記者会見で、吉田氏と蒋介石総統との会談では、日本国民政府共産主義に対して政治的に団結しなければならないということに意見が一致したと語っております。以上三点とも、私、単に事実を指摘しただけであります。政府国民政府との間に意思の疎通、相互理解を深めるため、いろいろと御努力に相なっておられますことは十分了解できますけれども、もし何らかの合意を、約束をされるようなことがあるとすれば、これは仮定をしてでございますが、その内容のきめ方については、よほど慎重を要するものがあると思う。たとえば、たとえばですよ、かりに共産主義に対して政治的に団結するとか、あるいは反共について協力するとかいうようなことを、合意または約束内容とするような考え方がありとすれば、それは考えものではないでしょうか。何となれば、第一に、一国が国内政策として——自分の国の国内政策として共産主義に対してどういう態度をとるかということと、共産主義に対して外国との間に約束をするということとは、その政治的、外交的意味が違う別個の事柄でありまして、両者は混同すべきではないと思う。ことに、約束の相手方のねらっている政策いかんを見ると、その点ははっきりすると思います。第二に、かりにですよ、かりに共産主義に関して約束する場合でも、たとえば、みんな私たとえで申すのですよ、たとえば、共産主義運動について情報を交換するというような約束をするとか、そういう場合は、政策上の適否の問題は別といたしまして、その約束内容それ自体ははっきりする。しかるに、共産主義に対して政治的に団結するとか、反共について協力するとかいうことであれば、政策としての適否の問題は別としても、その表現用語選択において、約束内容が明確を欠いて、その約束からどういう政治的義務が発生するのか、ばく然として、あとに禍根を残すおそれがないとは限らない。元来、これは申すまでもないことでありますけれども外交上の約束または合意をする場合、これを表現する用語選択については、その具体的内容が明確を欠いている、ばく然たる表現方法用語を用いることは禁物とされております。しかるに、実際には往々にして、このタブーに反したために、あとになって重大な結果を来たした実例外交史上少なくはございません。ことに、いわゆる政治家が、外交政策の策定だけでなく、その政策を実行に移す交渉にまで当たる、いわゆる政治家外交の場合には、今までの実例上その危険が多いのであります。すぐれた政治家であり、また世界的な外交のベテランである現在のカナダの首相のピアソン氏らも、特にこの点を戒めております。一見枝葉末節のごとくに見えるこの外交交渉における用語の選定にあたって、周到を欠いたために、あのミュンヘンの悲劇も起こっておるのであります。政府は、国民政府との関係調整について、いかなる基本的の態度をもって臨んでおるか、その点を外務大臣にお尋ねいたします。
  26. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま、いろいろな実例をあげて、外交折衝にあたっての戒めを御指示いただきましたことを、私全く同感に存じております。わが国といたしましては、わが国自体自由民主主義体制を不退転の決意をもって選択して、これによって民族の繁栄と平和を守っていこうという不動の決意を、わが国自体が国民的な総意としてきめておるわけでございまして、これを基盤にいたしまして、わが国といたしまして内政外交の施策に当たる立場におるわけでございます。したがって、いうところの共産主義に対して——共産主義運動に対して、どのように対処するかは、わが国自体が決定することでございまして、他国と折衝してきめるべき性質のものでは、私は絶対にないと思います。私どもが国府との間に国交の改善をもくろんでおります基本の精神は、そういう観点に立ちまして、相互立場というものをお互いに尊重し、相互に敬愛の念をもって理解を進めていくということを基調としてまいりたいと存じておるわけでございまして、わが国独自の立場から離れて、すべての交渉に、いかなる交渉にも当たるというようなことは、絶対に私も考えておりません。     —————————————
  27. 太田正孝

    委員長太田正孝君) ただいま委員変更がございました。  井上清一君及び小山邦太郎君が辞任され、横山フク君及び吉武恵市君が選任されました。     —————————————
  28. 杉原荒太

    杉原荒太君 ただいま外務大臣答弁を満足をもって伺いました。  次に、中共の対日政策につきまして、その表面にあらわれた一、二をとらえて質問いたします。周恩来首相は、過般アルバニア訪問の際に、シェーフ首相との共同コミュニケにおいてこう言っております。双方は、アメリカ帝国主義に対して闘争をしておる日本人民に心からの同情と断固たる支持を表明する。日本人民の日米安保条約反対、軍事基地の撤去の要求、原子力潜水艦の日本進駐反対の闘争は必ずより大きな勝利をおさめるものと確信する、とうたっております。また、最近中共の趙安博氏一行が日本に来て、日本のある団体との共同声明においてこう言っております。中国代表団は、日本人民の反米愛国の運動に敬意を表し、これを支持する。アメリカ帝国主義は日中両国人民の敵であると、こう表明いたしております。日本アメリカに対する態度は、日本国民自身が決定するところであります。外部からのけしかけやおせっかいを必要といたしません。中共のこのような対日働きかけは、日中関係をよくすることにはならないばかりか、かえって日本側の疑惑を招くのみであります。その効果は、日中関係に対して建設的ではなくして、かえって破壊的であるにすぎません。承認や外交関係設定だけが政治関係の全部ではありません。両国国民の抱いておるほんとうの、実際の心理的雰囲気のあり方それ自体が、承認問題の有無にかかわらず、政治的関係の上からしても実質的に重視さるべきものと思います。去る水曜日、この委員会において池田総理が言われましたように、相互信頼の空気をつくることこそが先決問題であります。国と国との間でも、少なくとも最小限度の信頼関係なくして承認や外交関係のあり得ようはずがありません。もし中共側が、日本を反米に持っていき、日本アメリカと敵対関係に立たしめることを目的としておるならば、中共は真に日本との友好関係を望んでいるのではないということを中共自身が自白し、証明しておることになります。また、中共側日本の反米運動者のみを日本の愛国者と見立てて、いわゆる反米愛国の線こそ日中関係打開の基本線だとほんとうに思っておるとすれば、中共の対日認識は明らかにゆがめられたものであります。そこには事実と認識との相違、すなわち錯誤が存在しております。そうではなくして、中共側日本実情は百も承知の上でやっているとすれば、それは謀略にすぎないということを中共側自身が認めておることになります。中共がほんとうに対日関係を正常化の方向に持っていくという誠意があるならば、以上のような行き方とは別の行き方があるべきはずであります。また、日本側でも、また政府でも、単に口げんかとか、非難の浴びせ合いとか、あるいは迎合とかいうような、そういう低い次元の立場からではなくして、大局の事態を建設の方向に持っていくという高い立場から、中共の対日動向に対しましても言うべきことは言うという態度でいくべきではないでしょうか。私は、このような見地から最近の中共の対日動向の問題を取り上げたのでありますが、政府の御所見をお尋ねいたします。
  29. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 一々私も同感に存じます。  平和共存ということは私どもの欲するところでございますが、それを前提といたしまして、相手国の国民が選んだ体制というものに対する尊重の念が前提になければならないと思うわけでございます。それがなければ、平和共存ということは私は成り立たぬと存ずるところでございまして、これはたびたび政府が内外に宣明いたしておるところでございまして、私どもは、わが国の国民が成規の手続で選んだ政府、そうしてその政府がとります政策に対しまして、他国の干渉は御遠慮いただきたいと思っております。
  30. 杉原荒太

    杉原荒太君 私は、でき得ればもう少し、ことに極東政策一般と太平洋政策についてお尋ねいたしたかったのでありますけれども、時間がありませんから、二つとも簡単に要望のみを申し上げます。  極東の平和は、申すまでもなく、わが国立場からいえば、わが国の安全にとって直接大事であるとともに、日本国民の悲願である領土問題の解決も、極東の緊張緩和との関連を離れては実際上至難であるばかりでなく、一般にこの極東の平和ということがわが国のナショナル・インタレスト全般に合致するものでありますから、わが国の極東政策は、極東の平和と緊張緩和を追求するということを最高方針として、しかも堅忍持久、ここにこそ寛容と忍耐の心がまえをもって当たっていただきたいのであります。そうして、極東の事態の把握については、もとより軍事的要素も過小評価できませんけれども、軍事的要素の過大評価によって、特に民族心理の洞察を見誤ることのないように善処していかれんことを希望してやみません。  ひるがえって太平洋方面を見ますと、さしあたりアメリカ、カナダ、豪州、ニュージーランドだけをとって見ましても、これらとわが国が加わった五カ国だけでEECをはるかに凌駕する大きな経済規模を持っております。この太平洋五カ国相互関係は、将来、施策よろしきを得れば、明るい展望があると判断されます。太平洋政策については、特に次元の高い経綸外交をどしどしひとつ進めていただきたいということを期待いたします。  時間が終了しますので、これで私の質問は終わることにいたしますが、あらゆる面から見て重大な時期を控えて、総理はいろいろお考えになっておられるに違いございません。御所信の一端をごく簡単でよろしゅうございますから、御開陳を願えれば、しあわせと存じます。
  31. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) ただいまの杉原委員の極東並びに太平洋政策に対しましての御見識、全く同感でございます。私は、先般西太平洋諸国を回りましたときに、やはり西太平洋の国々が、これ以上の政治、経済、文化の親密をはかりつつ、また、お示しのアメリカ、カナダ、豪州、ニュージーランド等は、先進国のそれとしてのまた別の機構も考え得る状況に相なってきておるという認識を持っておるのであります。そのお話全く同感でございますので、その方法でつとめていきたいと思います。  なお、私は特にここで申し上げておきたいことは、中華民国とわが国との親善関係を増進する上においてのあなたの心がまえ、外務大臣から答えたとおりでございます。また、中共わが国に対する最近の態度を見まして、あなたのお考えと同感でございます。わが国の一部の考え方の人と思想が同じだからといって、わが国の国是たる日米安保条約を非難しようとすることは、私は筋違いであると思います。今回ドゴール大統領の発意によりまして、フランスと中共が国交正常化に入ったときに、なぜアメリカとNATO協約を結んでおるフランスに対して、中共は米帝国主義に対して共同の敵だと言わずにおいて、日本のある一部の人にのみ、こういうことを趙安博氏その他が言っているということは、私は日本国民として大いに考えなければならない。もしそれ中共が世界の平和と極東の安全、平和を保つならば、なぜもう少しグローバルな考え方中共がなってくれないのだろうかということを、私はあなたのお話がありましたのに補足いたしまして、ここに政府考え方を宣明いたしたいと思います。
  32. 杉原荒太

    杉原荒太君 ありがとうございました。
  33. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 杉原君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  34. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 次に、鈴木一弘君。
  35. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 私は経済見通しそのほかのことについて伺いたいと思います。  初めに総理に伺いたいのですが、三十八年度の物価の問題でございますが、その物価がずっと上昇を続けてまいっております、昨年は。その原因は一体どういうように考えておられるか。今までの政府のほうの発表になっておるのを見てみますというと、いわゆる生産性を上回るところの賃金の上昇、そういうものによって、いわゆるコスト・プッシュによるものが大きいというような意味のことがある。特にことしの経済見通しについての中でも、「サービス料金そのほか中小企業性製品を中心に引き続いて著しい値上りを示し、その上昇基調は依然として衰えをみせていない。」と、まあ三十八年の終わりごろの様子でございますが、出ております。ということは、言いかえれば、「中小企業性製品を中心に」ということは、またサービス料金ということは、生産性を上回る賃金上昇による、いわゆるコスト・プッシュによる物価の上昇である、こういうようなものの見方をしているようでありますけれども、そういうような中小企業性製品が値上がりを示す——たとえ賃金コストが上がったためになったと言われても、需要というものがなければ、これはとうていそういう結果が出るわけはないわけであります。そこで私どもとしては、むしろ総需要のほうが総供給をはるかに上回った、こういうような形があったのではないか、それを基調としてなっていったのではないかということを思っているわけであります。経済企画庁の発行している経済月報を見てまいりましても、同じような意味のことが出ておりまして、この中にあるのを見てみましても、従来の設備投資というものが生産財中心に行なわれてきている。結局、消費の総需要というものに対して消費性向は堅調であるのに、消費財部門のほうが生産財部門におくれてきたということから、総供給が追いつけなくなってきている、これが一つの大きな原因になっているというような見通しが出ております。こういうような二つのものの考え方があるわけでありますが、一体政府のほうの考え方としては、コスト・プッシュによるものがおもであったか、それを基調とするものであったのか、いわゆる需要のほうの問題であったのか、どちらを基調に考えていたのか。もちろん二つが複雑にからみ合っておりますので、簡単に言うわけにはいかないと思いますけれども、この点についての総理考えを伺っておきたいと思います。
  36. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私がお答えしなくても、もうあなたは十分おわかりになっておるような御質問のように受け取れるのでございます。総需要が供給を上回るということもございます。毎年個人消費が前年に比べて一割五分も二年も三年も続いていくということは、これはもう異例な、歴史にあまりないことであります。そういう点もございましょう。また、ある一面では、非常に供給が多くて、そうして需要を満たし得る場合もあります。これはやはり卸売り物価であらわれることと思います。鉄とか、あるいは繊維とか、化学品、薬品その他につきましては、これは卸売り価格が下がっている。しかし、このところにおいて、そこで消費者物価が上がるということは、やはり経済の構造に欠陥がある。いわゆる中小企業のもとにおきまする若干層の賃金増加が生産性を越えていく。こういう場合、また需要が非常に多くて供給が足らぬ、流通機構に欠陥がある、これは農産物のほうで言えると思います。だから、両方がからみ合っておるのでございますから、いずれにしても生産は伸ばしていかなければならぬ。需要もある程度伸びていくでしょう。これは生活水準の引き上げ、その伸び方の間に関連性、調整が必要である。そこで、いま下がった品物の、いわゆる大規模生産のほうは、どちらかというと下がっておる。中小企業、農業のほうに欠陥がある。そこに力を入れていく。だから、片一方につきまして、消費需要を起こす賃金の問題につきましても相当考慮しなければならぬ問題があるんではないかということをわれわれは心配しているのであります。
  37. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 総理は、いわゆるコスト・プッシュという考え方ではないようなふうにも承れるわけですが、今年の予算書を見ておりましても、中小企業に対してかなり重点が入ったということは、言いかえれば、そういうコスト・プッシュ的な面をお考えになられてやったのではないかというふうに私ども考えるわけです。それを裏づけるというとおかしくなるかもしれませんけれども、先日の本予算委員会総理答弁の中に、公共料金であるとか物価について、特に物価についてでございましたが、春闘においての賃金の上昇がほかの物価に反映していく、そういうことを非常に憂慮されておられた。いまの答弁の中にも、賃金の問題についてこれからの先の姿というものを非常に心配された答弁でございましたのですが、そういうような賃金上昇ということを主体的に考えられていくのか。それとも、いまの政府の施策にある中小企業、農業というような低生産部門に対しての手の入れ方によって物価というものをきちんと見ていくというのか。むしろ、全体的から言えば、中小企業、農業について力をかけていかなきゃならないわけでありますけれども、中小企業で言えば金融面において、農業においてもなかなか農業構造改善事業というものは思うように進まない。そういうようになってきますと、必然的に国の行き方としては、押えられる公共料金であるとか、あるいはそうでなければ金融の操作であるとかいうことに力がかかってくる。また、あるいはそうでなければ賃金というものをストップさせていこうという面が非常に強くあらわれてくるわけです。  そこで、総理にもう一度このところで伺っておきたいことは、今後の物価対策として、日本経済の構造を直していく上からも、賃金というものから片づけようとしておるのか、コストというものに力を入れていこうとするのか、本格的に構造改善というもののほうに力を入れていこうとするのか、どちらに重点を置かれていくのかを伺っておきたいと思います。
  38. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) これは、両方に重点を置いていかなければなりません。日本経済全体の問題から申しますと、やはり中小企業あるいは農業の構造改善、近代化、合理化ということは、これはどうしてもやらなければならない。これはもう所得格差の問題から言っても、物価の問題から言っても、国の繁栄の問題から言っても、どこの点から言ってもこれは力を入れていかなければならない。片一方のほうでは、私は賃金の上がることに反対するのじゃありません。これは当然のことです。経済の進歩がある限りは人の労働力の価値が上がることは当然で、大いに喜ぶべきことです。しかし、それには程度がある。程度がございまして、生産性をこえない、国際競争力を維持し得る、そうして非常な物価高を及ぼさない、いわゆる実質賃金が上がってくるような状況で考えなければならない。名目賃金が幾ら上がっても、物価が上がって実質賃金が下がったら、それは労務者の損でございます。そういうことのないように、賃金の上がり方もいわゆる経済的妥当な線でなければならぬ、こういう考えで私はおります。
  39. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 昨年の十月以来、生産性のほうが賃金の上昇を上回ってきている。そういうことが影響したと思いますけれども、それ以外にいま一つここで総理とそれから経済企画庁長官に伺っておきたいのですが、一月に至りまして消費者物価というものがやっと落ちついてきております。発表によれば、一月の全都市で〇・二%の消費者物価の落ちつきを見せておりますが、これの原因についてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるか。
  40. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 一月の全都市の消費者物価指数は、昨年の三月に比較いたしまして二・四%の上がりでございます。つまり、九カ月間に二・四%の消費者物価の値上がりがあったということでございます。  そして、二月の東京がやはり下がっておりますので、おそらく二月の全都市も下がると考える公算が大きいのではないか。つまり、一番端的なことは、生活に一番直結いたします生鮮食料品でありますとか、あるいはいろいろの事情から肉類でありますとか、また、気候の関係から繊維製品でありますとか、そういうものが落ちついて下がってきているということでございます。この問題についての国民的な関心もここ一年間余需要供給双方でかなり高まったということもまた基本にあるのでございます。しかし、基本的にはそういう自然的条件に恵まれたということが、比較的一番、一つ取り出せといえば、一番大きな要素ではないか。ただ、従来そういう中でも教養娯楽費でありますとか被服費でありますとかというものが毎月上がりぎみであったのでありますが、どうやらそういうものが、どういう理由でありますか、十二月ごろからそういう要素もあまり動かないといったようなことがこの一、二カ月見えております。しかし、これはいつまではたしてそうであるかということは、もう少し様子を見ませんとはっきり申し上げられないと思います。
  41. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いまの長官の答弁からうかがえることは、一つは暖冬異変による野菜であるとかあるいは被服費などの減少、こういったことが安定の大きな原因というふうに答弁があったわけですけれども、御承知のように、現在農産物のほうはかなりの生産増になっている。逆に今度これらの反騰として、端境期のころにはその反動的に反騰するという心配はないだろうか。これは見込みでございますが、その要素等について十分私も検討したわけではありませんけれども、そういうような心配をまずしてしまうわけでありますが、その見込みについてはどういうふうに見ていらっしゃるか。
  42. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昨年の場合には、異常乾燥がありました上に、その次に長雨が御記憶のようにあったわけでございます。長雨のほうは何ともいまから予測できない要素でありますが、異常乾燥のほうは問題ないわけでありまして、かりに端境期六月になりまして、作付面積をみておりますと順調のように思いますが、心配しておりますのは、ことしいわゆる豊作貧乏がございましたので、これから一年先にその裏が出るのではないかということを心配ております。これはキャベツでありますとかそういったものについての一種の価格補償を相互扶助的に始めたわけでありますけれども、こういうものをやはりこの際しっかりいたしておきませんと、かなり先になって裏が出るということは考えられますが、ただいま端境期のことについてはそういうものについては心配をしなくてもいいのではないか、いま見通し得る限りではそう思っております。
  43. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 長官が一年後のことを心配されておりますけれども、そういうような農産物の異常な上昇というようなことが行なわれたときに、これは緊急輸入とかそういうような措置を考えなければならないと思いますけれども、そういうようなお考えはおありか。
  44. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 緊急物入とかそういう事態は私はいまのところ考えておりませんわけでございますが、御質問でございますから申し上げますと、比較的緊急輸入がしやすいものは、どちらかといえば、国内貯蔵の可能なものが多うございます。タマネギとかジャガイモとかというものでございます。それ以外では、緊急輸入と申しましても、肉類がございます。  豚肉は下がっておりますけれども、牛肉につきましては、昨年多少豪州の屠殺期がおくれましたので、思うとおり入りません。ことしは、屠殺期に間に合いますように明年度の初めから一定量の輸入を考えておきたいと思っております。
  45. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 次に、鉱工業生産についての見通しについて伺いたいのですが、今回の経済見通しの中に、三十八年度の見込みにつきましては、実績見込みとして鉱工業生産は前年度比一三・六%の増、それに対して輸入は二五・五%の増というように見ております。つまり、鉱工業生産の伸びの約倍近い数字をもって輸入がされるであろうと見ているわけです。ところが、三十九年度の三十八年度対比を見てみますというと、この経済見通しの中で、鉱工業生産は九%の増、それに対して輸入はそれを下回っているところの七・八%の増と見ております。  ところが、現在の状況を見てみますというと、輸入の素原材料指数というものが非常に下がってきている。この通産省の貿易統計から見ても、輸入分の在庫率というものが、六十三年十月で八一・七であり、十一月には七七・九というように下がってきております。こういうように輸入の在庫率が下がってきておるということは、特に素原材料においてそうなってきているということは、言いかえれば、これから先、鉱工業生産についてもそのような輸入というものを押えていくことが困難になってきているのではないか。この経済企画庁から出している経済月報によれば、輸入の問題について素原材料輸入についての硬直性を論じておりますけれども、もはや在庫圧縮による輸入減少の余地は大きくないとされております。そうして、輸入はかなり増加のテンポが高くなるだろうということを経済月報のほうでは言っておる。ところが、それに対して経済見通しのほうでは七・八%しかないというふうな増でないだろうかというような見方をしておりますけれども、原材料の輸入の減少の要因というものがすでになくなってきております。この在庫率指数というものが一〇〇をこえておるということならば、これが七〇に圧縮されるまでの輸入の増というものを押えるという見通しは間違いではなかろうかと思いますけれども、すでにものによってはかなり下回っている、少なくなってきている。企画庁の経済月報でも素原材料は八二に見ております。そうなると、どうしても輸入をしなければならないじゃないか、こういうように考えるわけでございますが、それについて総理並びに企画庁長官はどういうように考えていらっしゃるか。
  46. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) お尋ねの問題が、いま私どもの一番関心を持って事態を見ておるまさに焦点でございます。しかし、お尋ねに対して幾つかのことはお答えができると思います。  第一は、鉱工業生産指数というものと輸入との間には、過去十何年見ておりましても、函数関係がどうも発見しにくいということであります。これは、一つには、やはり経済が当然サイクルを描くわけでございますから、あるところまでいけば生産というものは在庫なんかの関係で一定の下降に転ずる。始まったものがいつまでも同じ傾向にいくわけではないということが一つ考えられることだろうと思います。  それから素原材料の在庫水準が現在決して高くないということは御指摘のとおりと思いますが、他方でほとんど自由化されたということは、原材料からいつでも買えるということでもございます。また、電子計算機等によって在庫管理技術がじょうずになったということもございますので、従来の自由化される以前の在庫水準からいまの在庫水準が非常に低いものであると一がいに断定できるかどうかという問題がございます。  それからもう一つ考えられますことは、そういったような生産活動がはたしていつまで続いていくであろうか、それが輸入の素原材料がどこまで需要がふえ続けるであろうかというその見当のところがこれは一番問題で、ことに生産品在庫、流通在庫がかなりふえておりますところから、そういうことが考えられるわけであります。でございますから、基本的にはやはり経済引き締め基調に運営をして、利潤以外の動機でやむを得ずとにかく生産をしているのだというような生産側の態勢というものを考えてもらわなければならないということがただいまの問題であると思うわけでございます。  それから昭和三十八年度の輸入が予想よりもかなりふえました一つの原因は、将来繰り返さないであろうと思われるような原因、すなわち、わが国の異常な天候でありますとか、世界的な寒波でありますとか、そういったようなものを直接間接の原因とする要素が五十七億五千万ドルの中に二億四千万ドルぐらいあるというふうに私ども見ているわけでございます。そのうち、一部は、たとえば砂糖の価格のように、三十九年度もある程度までは持ち越すであろうと思われるものもございますが、その他のものは繰り返さないであろうと推定される要素でございますから、そういう特殊な要素を引きますと、六十二億ドルというのは、大体三十八年度の輸入に比べてほぼ一割くらいの増加——これが鉱工業生産に直接関係がある部分でございます。そのくらいの増加に異常要因を引きますとなります。したがって、必ずしも低い水準と見ているわけではない。  まあいずれにしても、経済全体を引き締め基調に運営をして、生産が正常なところの水準に落ちつくということを政策努力としても考え、また、企業家にも考えていただくということがただいまのこれは政策上の一番大切な問題であると、こういうふうに見ております。
  47. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そこで、政策上の努力の問題を言われたわけでありますけれども、在庫率指数というものがどの程度あればいいかということは、これははっきりしておりません。大体いまの経企庁長官の話を聞いておりますというと、場合によれば在庫率ゼロでもいいような、すぐ輸入できれば間に合う、こう言うことは極端でありますけれども、そういうふうに聞こえるわけであります。ですが、企業としては、ある程度の在庫というものがなければ、生産は素原材料において間に合うものではございません。しかし、輸入の減少ということを政策考えていくとして、この経済見通しに合うように持っていかせようとすれば、どうしても在庫率指数を下げさせなければならない。そうなるというと、企業にとっては場合によれば企業倒産というようなことまで招かねばならないようになってくるわけでありますけれども、一体、総理大臣として、政策上どの程度まであるいは在庫圧縮を考え、あるいはやむを得なければこの輸入についての七・八というものにはこだわらずに、思う存分に動けるようにしていく気なのか、その辺のところについて総理のお考えを承っておきたいと思うわけです。
  48. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) この問題については、企画庁長官が詳しく述べたとおりであります。輸入素原材料の在庫率ということを見る場合には、生産者在庫、これを見ていただかないと説明がつかないわけでございます。政府といたしましてはおもなる輸入原材料、たとえば綿花、羊毛、くず鉄、鉄鉱石、石炭、燃料等につきましてはずっと在庫率を調べております。二カ月ぐらい要するもの、三ヵ月を要するもの等々を見まして、いま七八・幾らという輸入素原材料の在庫率というものにつきましては、大体いいんじゃないか。貿易自由化の行なわれなかったときには、三、四年九四、五とか一〇〇のときもあったわけでございます。いまの状態、輸送の関係からいえば、大体これでいいのではないか。しかもいまの日本の生産は、昨年の同月に比べて一六、七%の非常な高率で進んでおる。これが三十九年度はある程度落ちますので、一月、二月、三月が横ばいとしましても、年平均で一三・六ぐらい上がることになります。われわれは鉱工業生産は、三十九年度は九%程度の上昇を見ております。大体どれでやっていけると、そうすると結論として、輸入は六十二億ドルぐらいでいいと、こういう考え方であります。
  49. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 それでおさまればけっこうと思いますが、輸入の問題については、そのほかに非常に輸入を下げていくということの困難になっている原因が出ております。たとえば消費財輸入の問題も、消費支出そのほかを調べて見ますというと、かなり堅調な様子でございますし、そうなると、いまの原材料のほうはかなり企業は無理をしても、総理考えとしては何とか押えられそうだ、そういうことになりますと、今度はそれにプラスの消費財のほうの問題、これは御存じのように先日も予算委員会でかなり消費財の輸入の膨大になった点を述べられておりましたのですが、それを考えると七・八というのは私どもとしてはどう考えても無理じゃないか。企画庁の観測でも、輸入の下方硬直性の中の一つの原因としてあげている。金融引き締め程度ではとてもじゃないが下がりそうもないということも言われているのですが、その見通しと、この消費財問題については総理としてどういうふうにお考えか伺います。
  50. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 先般も述べましたように、二、三年前は六百万ドルであったものが今度は四千万ドルをこえる。百五、六十億のバナナを食べるということがいいか悪いか。国際収支の上から言ったら、なるべく少なくしてもらいたい。またインスタント・コーヒー千三百万——五十億近くになるわけであります。こういう点、ゴルフとか万年筆とか、いわゆる国産品で代替し得るようにひとつ国民も心がけていただきたいという強い希望を私は持っておるのであります。と同時に、国内産のくだものの増産をはかるとか、いろいろな方法があると思います。これは、われわれとしては今後一つ政策として国民に訴えたいという気持を持っておるのであります。
  51. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 委員変更がございました。  山本杉君が辞任され、その補欠として佐藤芳男君が選任されました。
  52. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先般来総理から申し上げておりますことは、そういう何と申しますか数字的にもかなり大きいものではございますが、無意味な一種の虚栄に基づくような消費財の輸入がおもしろくないということを申し上げておるわけであります。計数的に申し上げますと、そういう消費財にも二つの種類がございまして、一つは直接口に入るようなものと申しますか、肉とかくだもの、コーヒー、たばこ、飲みものなどのたぐい、ここらが大体三十八年一ぱいでほぼ二億五千万ドルくらいあったのではないかと見ております。それからそれ以外の、これがほんとうのいわば奢侈品と申しますか、時計とかゴルフ用具とか、そういったようなものであります。ここらがかれこれ三億台ちょっと割るくらいあったのではないかと見ておるわけであります。おのおのについて明年度は大体前者についてはなお一割くらいふえるのじゃないか、後者についてはそろそろとまってもらいたいとは思いますが、やはり二割や二割五分くらいの伸びは、これは感心したことではございませんけれども、見通しとしては見ておかなければいかぬのじゃないか、大体そんな積算はいたしております。
  53. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 ただいま総理は、消費財の問題については、政策としては、これの輸入の問題については国民に訴えたいということでございましたけれども、具体的な問題としてはどういうことでございましょうか。国産品の奨励とかそういうことで言われていくのか、あるいは金融引き締め政策というような方向でその窓口をある程度規制するということで消費財の輸入というものを押えていく方向に持っていくのか、その辺のところを伺っておきたいと思います。
  54. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 自由化したものをもとへ戻すということはいたしません。やはり国民に訴える。なるべく国産品を使ってもらう。そうしてまた片一方では全体としての金融の引き締めもありましょう。そうして先ほど話題になりました賃金の上昇につきましても、やはり賃金が上がるとそれに従って消費に向かう、賃金の上げ方もある程度、こういう点からもひとつ自粛してもらいたい、こういう考え方であります。
  55. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 ここで大蔵大臣に伺っておきたいのですが、現在行なわれておる窓口規制そのほかの金融引き締め政策について、さらに強硬にやっていくお考えなのか。この輸入の問題一つを見てみましても、非常に下方硬直性が強いので上がってくる見込みがありますが、そういうのに対して引き締め政策というのを強めていく、そういうことが起きたときにおやりになるお考えでいらっしゃるのかどうか。そういう点について大蔵大臣から。
  56. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 昨年十二月から預金準備率の引き上げ等、一月に及びまして金融調節をやっておるわけであります。また三月、四月というような面につきましても、他の買いオペレーション、売りオペレーションの額をどうするとかいうような、時に対処しまして摩擦のなるべく及ばないような方法で金融調節をしてまいりたいという考えであります。  それから御承知のとおりどうも現在まだ生産が非常に高いのでありまして、できるだけ輸入の抑制、安定的な成長率を保ちたいという考え方でおりますので、金融の正常化はどうしてもはかっていかなければならぬという考えであります。しかし過去のように一律画一的な引き締めを行なわない、調整を行なわないということは、御承知の三月の中小企業の状態を見てみましてもそう簡単な状態ではないのでありまして、また四月一日からの八条国移行というものに対して、設備改善その他国際競争力に対応すべく前向きの努力をしておられる国民各層がおられるわけでありますから、これらの努力が結実するような面も考え、しかも行き過ぎた成長は抑えて、できるだけ短い期間に金融の正常化をはかろうという目的でありますので、三月、四月金融調整は進めていくべきだという考え方に立っておるわけであります。
  57. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いまの大蔵大臣答弁わかるのですけれども、私はその先のことまで伺っておいたわけなんでございます。輸入の問題が見込みよりもあまりにも膨大になるようなときは引き締めるかどうか、さらに続けるかどうか、強くするかということを伺ったわけです。一方には全体的に国民のことも考えてあまり強硬なことはできないという仰せであったわけです。その言葉をつかまえて言うのはおかしいかもしれませんけれども、はっきり申してみればデフレ的な傾向、デフレ政策というものはとらないと、こういうように理解してよろしいかどうか。
  58. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) デフレ政策という表現そのものは非常にむずかしい表現でありますが、俗にいういままでいわれておるような感じの上におけるデフレ政策はとらないと、こういうことをとったならば、一体いまの状態で、ある時期相当こまかな配慮をしていかないで、一律、画一的な引き締めを行なうということになれば、黒字倒産は現在の状態では避けられないという事実がありますので、この事実を十分直視をしてまいるときに、国際収支改善というような目標を追うために性急のあまり国内産業を混乱せしむるというような施策はとりたくないという考えが基本的であります。
  59. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 次に、今度は公営公通の問題について初めに総理に伺いたいんですが、公共料金の一年間ストップ、この問題につきまして、総理大臣は衆議院の予算委員会の席で一年たったらストップしないんだと、こういうような言明をされ、そのときにさらに、もちろん情勢に応じては検討したいということを言っておられるわけでありますけれども、この答弁からはっきりしておきたいと思いますことは、はっきり言って一年たったらば現在のいわゆる公営バス等の公共料金については上げるということもやむを得ない、こういうように上げるのか上げないのかということが一つと、いま一つは情勢に応じて検討するということを申されておるわけでありますが、この情勢に応じるというのは、物価の情勢に応じていきたいというのか、それとも地方公営企業の経営内容、これは非常に悪いわけでありますけれども、その内容によって考えたいというのか、その点についてどういうものをおさしになっていらっしゃるのか伺いたいと思います。
  60. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) いまお話になったこと全部考えてきめるべきものだと思います。
  61. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 では一年たったらはっきり上げるわけでございますか。
  62. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 上げない場合もございます。
  63. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 非常にあまりにも簡単過ぎる答弁なのではっきりしないんでありますけれども、上げない場合もある、ものによっては経営内容によって上げなきゃならぬということになると、こういうように理解するわけでございますが、そこで、まず自治大臣に伺いたいんですが、地方公営企業の現在までの累積赤字というものはどのぐらいでございましょう。
  64. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 公営企業全体で二百五十億円ございまして、そのうち交通関係が百七十五億円でございます。
  65. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 その公営交通事業の今回一年間の運賃ストップということが行なわれたわけでございますけれども、ガソリン税の引き上げ、軽油引き取り税の引き上げ、あるいは人件費の増高ということで、この百七十五億円の赤字がさらに増大するということはわかりきっております。こういうようにどんどん赤字が増大する、この赤字については何とか処理しなければならなくなってくるわけでございますけれども、自治大臣としては一年後にはバス料金は上げるという考えかどうか、そういう方針なのかどうか。
  66. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 経営の赤字の原因は、人件費の割高その他経営の不合理性、いろいろございますので、特に東京都の交通局あたりは路面電車の回転率が悪い、自動車の混雑のために非常に無理であるとか、いろいろ事情がございます。そういったものを十分検討して公営企業合理化審議会というものを今回提案いたしております。根本的な御検討をこの一年間にお願いしまして、その結果判断いたしたいと、こういうふうに考えております。
  67. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 合理化審議会でもっていわゆる運賃の値上げについても考えると、こういうわけですか。
  68. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 公営企業合理化審議会でございますが、それでどうするかということの結論を待って、人件費やその他でどうしてもカバーできない、合理化してもできないというものが出てきますれば、料金改定もお願いすると、こういう段取りになろうかと思います。いまから予測できないわけであります。
  69. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 先ほどの御答弁で、赤字累計が一般地方公営企業全部で二百五十億円、交通企業で百七十五億円と、こういうふうに言われたわけでございますけれども、いまのこの赤字の補てんというものを真剣に考えていかなきゃならぬ。それについて大蔵大臣考え方はどういうものでしょうか。
  70. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 政府が一年間公共料金等をストップするというのは、物価の安定ということを主眼にしてやむにやまれずやっておることでありますから、私は公営企業の皆さんも政府に原則的には御協力賜わりたいという考え方に立っておるわけであります。公営企業の、特に六大都市の問題に対しては非常に大きな赤字だと言われますけれども、私は地方財政が相当大きくなっておりますし、当然ある時期には貧弱市町村や貧弱府県との間に財源調整等も行なわなければいけないということで、長いこと議論されてきておるのでありますけれども、なかなか地方分権の制度の上でかかることが合理化されないのであります。でありますから、私は一年間というものを政府の基本的方針に沿って公共料金がストップされてもまかない切れないものでもないと思うのであります。一例を申し上げれば、東京都のいわゆる全然どうにもならないような路線もあるわけであります。地下鉄等が開通をして、もうすでに廃止をしてもいい路線であってもなかなか廃止ができないという問題もありますし、やはりこの物価の抑制の問題は、政府だけでなく、国民各層があらゆる英知を傾けて物価の安定ということに御協力賜わりたいのでありますので、私は目先の数字だけにとらわれないで、こういう機会にじっくりひとつ腹を据えて、公営企業とはどうあるべきか、合理化というものはどうすべきかということに取り組んでいただきたい、それが私はまず第一策だと考えております。
  71. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 赤字の補てんについては御答弁もらえなかったわけでありますが、ここで昭和三十八年、昨年暮れの十二月二十一日に自治省のほうから事務次官名で運輸省の事務次官あてに、六大都市の公営バス料金の改正抑制に伴う措置についての公文書が出ておるそうでありますが、その公文書の内容について自治大臣御存じでございましょうか。
  72. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) そういう次官通達を出しておるわけでございまして、国の施策として公営料金をストップいたしました、それによる、一年間据え置きによる何らかの措置をしてまいりたいという内容のものであります。
  73. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 私の伺ったところでは、自治省のほうから運輸省に対しては、バス料金が、低物価政策のために上がらない、そこで、それについての赤字の補てんというものを国で全額考えろと、運輸省のほうで国庫補助金の交付なり、元利補給つきの融資なりの措置を考えろと、こういうような意味の文書らしいのでございますが、運輸大臣、これについてどういうお考えでしょうか。
  74. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 先ほど大蔵大臣答弁されたような状態でございまして、私どもといたしましては、国民の協力によりまして、何とかこの物価抑制の政府の根本方針に合致されるよう念願いたしております。自治省の次官から運輸省の事務次官にあてた通達の趣旨も、そこにあると思います。
  75. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 大蔵大臣にいま一度伺いますが、はっきりいって国庫補助の交付なりあるいは元利補給でもって赤字を補てんしてやると、こういうような考えはないでしょうか。
  76. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 遺憾ながらそういう考えは持っておりません。——あまりぶっきらぼうになっても悪いから御説明申し上げますと、同じ路線を六大都市の公営バスと民間バスが走っておるわけであります。でありますから、民間の私企業に対して補助金を出すというような場合、御承知のとおり国会で審議をされた私鉄等の助成法もありますけれども、非常に厳密な適用をしておるわけであります。でありますから、公営企業なるがゆえに民間よりも給与ベースもいいとか、赤字の路線などもそのまま廃止ができないとか、そういう状態で長いこと続けてきたものは、民間企業に対してめんどうも見ないでおって、公営企業なるがゆえに赤字補てんをするというような道を開くということは、将来財政上、また制度の上でどういう問題を起こすかということは、これは国会で絶えず議論をされた問題でありまして、私は、現在の段階で一年間くらいストップをしても、やっていけないなんという問題じゃないと思いますし、民間との均衡論から考えましても、政府が赤字補てんをするとか、財政支出によってこの問題を切り抜けるというような問題じゃない、こう思います。これはもっと積極的な気持ちで、もっと引き締まった気持ちで、公営企業あり方というものに対しては、政府でも公営企業に関する審議会をつくって検討しようというのでありますから、私は、合理化等によって何とかこれを一年間たえてもらう、またこれを機会に、将来に対する公営企業あり方、合理化というものに対して、積極的に善処をしてもらうということを願いたいと思います。
  77. 藤田進

    ○藤田進君 関連して。大蔵、自治、運輸の各大臣の御答弁を聞いておりますと、公営企業の経営が、企業努力が足りないといったふうにも、一面聞こえるわけであります。しかし、皆さんのような政府の最高の権力者のところにはわからない面もあるでしょうが、私は、具体的に例を出してみたいと思うのです。いまのような公営企業並びにその他の運賃等公共料金の一年間ストップということも大きな原因で、交通情勢というものが、いま非常に変わってきております。ひどいものです。私は、たとえば三軒茶屋から渋谷、青山、あの路線をひとつ考えていただきたいために出すのですが、先般も、しばしば交通事故があった。で、警察当局にも私は連絡をする。私自身も実はあそこを、自分で運転して毎日通っておりますが、これはひどいものですよ。あの線というのは、いわば東急専用路線の観を呈している、バスといい、玉電といい……。運輸大臣は東急と深い関係だということが、はしなくも、いろいろやっているうちにわかったのですけれども、都バスのほうと東急のバスでは、停留所間の運転時間、ハンドル時間というものが違う。どういう現象を呈しているか、あのラッシュのみならず、およそ三軒茶屋から渋谷上通り辺は、もうずっと続いていますね。にもかかわらず停留所間の時間が短いということで、運転手もたいへん苦労をしておると思いますが、いきなり無理して大きなバスが出てくれば、タクシーその他の自動車は、どうしても気負い負けて道を譲らざるを得ないように割り込んでくるんです。そうしてさらに、次の停留所は近い、御承知のように今度はまた、左の停留所に入ってくる。そのために非常な交通混雑と事故を起こす。そうしてお客さんが七、八割乗るか乗らないかで——次は、うしろに都バスが来ておる。これを追い越させまいとするしかみえない状況で——途中でいきなり発車するようなことが、ずっと連続して、全体の運転時間というものが、都バスより短い。あれではおそらく、あの区間は、少なくとも平均四十キロくらいは走らせなければ、ダイヤに合わないでしょう。都バスのほうは、大体、全体の交通の流れに沿って支障なく行っているような気がします。そうして割り込んできて、道路工事で右側に大きなポケットがあると、がたんと落ち込む、割り込んできているものですから、十センチか十五センチしか間隔がないでしょう、大きな車が割り込んでくる、落ちると傾く、相手の自動車の横っ腹をたたく、問題になって流れがとまる、なかなかバスをおりてきて悪かったとも言わない、次の停留所まで行く時間がきまっていますからね。これなどは、もう少し運輸省とされても、全体をにらんで……。これじゃ全く都バスとしては会計上、収入としてもやっていけないことになるでしょう。称して神風バスといわれておりますが、そうして路面のほうは、ああいったように玉電、それでどうにもならない。玉電については、なぜ早くこれを地下鉄にしないのだろうか。もう沿道怨嗟の的じゃありませんか。今度計画を発表しているけれども、相当これは先のことです。あれだけの道路の拡幅工事をやっているのに、なぜこの二、三年のうちに、オリンピックまでにやらなかったのか、あれは東急の既得権だということを主張しているということであります。こういうことは、何かの背景を持てば、私に言わせれば、横暴な経営というものができて、全体の交通というものに対して障害を起こしている。そうして片や都営公営バスというものがこれに押されてきているということではならぬのじゃないか。もっと行政の面、政策の面で、これらをアジャストすることができないのだろうか、どうだろうか。これは、いま鈴木委員が触れておられる根本の企業そのものにも影響を持つわけでございますから、ひとつ運輸大臣、自治大臣の御答弁をいただきたい。
  78. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 渋谷付近における交通事情の非常に逼迫しておる状況は、御趣旨のとおりでございます。私も、あのあたりを数回実地に見ましたが、一つは、現在における道路拡幅工事等のために、非常な混雑が起こっておると考えております。これにつきましては、私も細心の注意を払いまして、なるべくあなたの御趣旨の、事故のふくそうのないよう指示をいたしてやらしておりますが、何分にも、ただいま申しました非常な道路の工事中でございまして、あの工事が完了するならば、交通状態は通常に復するように期待をいたしておる次第でございます。
  79. 藤田進

    ○藤田進君 ちょっと答弁が漏れています。いま三軒茶屋−渋谷間を通うのに、たとえば十時に予算委員会が始まるなんということになれば、九時前には出発しなければいかぬわけでしょう。ときにサインを鳴らしたりしてきますし、大体一時間です。これはいま裏道を相当通っています、あの路線を通らないで。これは大体私は半分と見ています。裏道を通る。で、あれが完成すれば、流れはスムーズにいくし、問題ないように言われまずけれども、私は拡幅だけで問題は解決しないと思う。これは水も同様、電力も同様で、流れというものが必要だと思うんですね。かといって、立体交差の計画はあの線は二カ所しかない。したがって、かなり将来も混雑するでしょう。そういう場合に、ポイントは同じバスである東急——あの路線は東急が最大です。それに都バス、これらの停留所間の運転時間が違うということは、ますます流れを阻害しているんです。そうして一方都営のほうは、いわば交通道義を守った形の大体ダイヤと私は見ております。ところが東急のほうはそうでないから、先般ずいぶん文句言って、多少長くするということになっているのですが、依然としてどうもダイヤはそろってないように思います。これらはチェックすることはできないのですか、運輸省として。どうなんですか。
  80. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) お答えします。もちろん、チェックするように努力いたしております。
  81. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 運輸大臣のお答えで尽きていると思うんですが、東京都営バスのほうとしては、むしろ被害者であるというわけでありますから、よく運輸省と相談しまして、私営と公営の調整をはかっていきたいと思います。
  82. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 公営交通のことで一番最後にもう一度大蔵大臣に確かめておきたいのですが、企業努力によって体質改善がなされた場合には、差し水程度には——というとおかしいですが、いま一息で立ち上がれるというような、黒字になるような場合には——赤字補てんそのほかの措置については考慮の余地があるのかないのか伺っておきたいと思います。
  83. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 公営企業というものは、御承知のとおり独立会計でありまして、この中でやることになっているのです。ですからその特別会計の赤字があるから、まず政府からということを考えないで、その地方公共団体の内部でどうして補てんするかということを考え、そして最終的にやむを得ざるものであるということを考えたときに初めて金融とかいろいろなことが考えられる。このごろは、何でも全部国がやれ、こういう思想がびまんしておるようでありまして、一面においては国は減税をしなければならぬし、健全財政を堅持しなければならぬし、これはもう非常にむずかしい財政の状態でありますので、私は、少なくとも公営企業というものが国から赤字補てんをしてもらうというような思想になること自体がおかしいのじゃないかとさえ考えておる。私も、この問題でただやぶから棒にお答えしたわけじゃないのです。この問題について、各私鉄やいろいろそういった検査をしてみましたが、確かに私鉄等はもっと苦しい地方私鉄等がありますが、とにかく政府の一年間公共料金のストップに対して協力しよう、せざるを得ない、どうせいまのように出しても、運輸省で一年間ぐらいかからなければ料金の認可はできなかったというのが、ずっといままでの例ですから、一年間待てないことはない。これよりもうんと条件の悪い地方の業者ががまんしているのですから、私は、少なくとも六大都市などが国から赤字補てんをしてもらうという考え自体がおかしいと考えておりますから、これは考慮するつもりはありません。
  84. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 次に、地方財政計画について初めに総理に伺いたいのですが、今回、地方財政計画が発表になっておりますが、この地方財政の見通しを立てていくときに、政府の立てられた地方財政計画というものに依頼して考えていっていいのかどうか——なぜ私はこういうような意味のことを申し上げるかというと、地方財政計画の持っている意味というものがはっきりわからないからであります。たとえてみれば、地方財政計画を立てるのに国ではすでに五カ年計画、七カ年、あるいは治山十カ年というような計画が山のようにございます。それによって何ぼの事業をするということがきまってくる、それに対しての支出、国庫補助というものが出てまいります。それを裏返して計算して、地方財政計画というものができているわけじゃないだろうか、そうなっていくと、地方財政実情と、この計画というものが、大きな違いを生じてまいります。この点について、一体地方財政計画はどういう意味なんだろうか、   〔委員長退席、理事斎藤昇君着席〕 地方財政の見通しは、この財政計画で立てていいのだろうかどうか、あるいは財政計画どおりいかないとなれば、政府はどういうふうな責任というものをお持ちになっているのか、この点について総理にお伺いしたいと思います。
  85. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 地方財政計画は国会に出すということになっております。これは御承知のとおり府県、市町村、おのおの一応の見積もりをつくって出しております。それを自治省で集計するのでございます。これにいいとか悪いとかという特別な斧鉞を加えるつもりはございません。したがいまして、過去におきましても、まあ国の予算・決算でも、ある程度違うところがありますが、地方財政計画と地方の決算とは、多い県では六、七千億も違う場合があります。これは国の予算とは違うのであります。それがいまの実情であります。これを合わすようにすると申しますと、やはり自治の精神から申しまして、なかなかむずかしいと思います。一応予算ができて、補助事業その他の関係で、府県は独自の立場でつくることは御承知のとおりでございます。国の予算ができて、そうしてそれによって地方がつくりましても、これはまた地方には地方の考え方がありますので、もっとここのところは出してやろうとかということで変わってくることもあるのであります。
  86. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いまの総理答弁からすると、地方財政計画というものは見積もりである、したがって決算との相違がうんと出る、確かに決算と財政計画との間に大きな相違が出てきております。そのような相違が出てくる原因でありますけれども、いまの総理答弁のほうからすると、各府県、自治団体から吸い上げてきて財政計画ができているように言われているわけでありますが、そうじゃないのじゃないかと思うのですが、自治大臣、この財政計画の計数というのは、どういうふうにして出されておりますですか。
  87. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 国の予算の税収、それに対する交付税その他いろいろなデータを基礎にして計画を出しているわけでございます。決算と非常に違ってくるというのは、先ほど総理答弁されましたような事情がもとでありますが、   〔理事斎藤昇君退席、委員長着席〕 同時に、繰り越し事業とかあるいは剰余金とか、これは決算には入っておりますが、財政計画には入っておりませんし、財政計画は、たとえば超過税率をかけるというようなものを予測をいたしておりません。そういったものが計画よりもうんと上回って決算には出てくるわけでありますし、地方税の自然増収——国の予算にも自然増収がございますが——そういったものが年度内に出てくる、こういうような事情で、実際に決算と財政計画とはかなり大きな開きが出てくる、こういうことでございます。
  88. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 申し上げたいのは、先ほど申しましたように国の五カ年計画、十カ年計画という国策計画がございます。それが地方へおろされる、ところが実際には、この財政計画以上に、各地方団体は事業を施行するということがあります。そこで財政計画の上から見ても、決算との相違が出てきて、これは結局超過負担という形になってあらわれてきている、こういうふうにとれるわけでありますけれども、この問題について、すでに知事会など六団体が解消方をたびたび言っているわけであります。これについての大蔵大臣と自治大臣両方から、経過なりあるいはどういうふうな方向へ持っていこうとお考えか、伺いたいと思います。
  89. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 超過負担が多いのは二つ原因がございまして、財政計画なんかで考えておる単価でやらないで、余分に、例のいろんな希望なんかで学校単価を少し手直しする場合もあります。もう一つは、御承知のように、われわれとしては連年単価の是正につとめてまいっておりますけれども、いまなお公営住宅とか、あるいは学校建築におきましても、七%本年度引き上げましたけれども、なお、実情より低い場合も多いのであります。その結果、約三百億に近い税外負担というような形で決算で出てくる、こういうことになっておるわけでありまして、今後、単価の是正、また余分なことはなるべく慎んでもらって、ほんとうに切り詰めた事業をやっていくというように、自治体を指導していきたいと思っておるわけであります。
  90. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 大体同じです。また答えますから……。
  91. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 その次に、三十九年度についての地方交付税の傾斜配分というものを強くしたい、こういうふうにお考えだそうでありますけれども、府県分と市町村分に分けて、自治大臣から説明していただきたい。
  92. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 交付税の増額分に応じまして、われわれは地域格差の是正ということで、交付税の改正をやろうといたしております。その結果、都道府県分におきましては、農業行政費、林野行政費、小学校費の単位費用の増加、その他の面におきまして配慮いたしまして、二百八億円程度の傾斜配分をすることに計画をしております。市町村分におきましては、農業行政費や、あるいは小中学校費の単位費用の引き上げ、低種地市町村の態容、補正係数の引き上げ、基準税率の七五%への引き上げ等を通じまして、約二百十六億円の格差是正に役立てたいと、かような計画を持っております。
  93. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 三十九年度の基準財政需要額と収入額について、数字的におわかりだったら言っていただきたい。増加分だけでよろしいです。
  94. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 三十九年度の基準財政需要額と収入額は、実際に計算をしてみないと実は見当がつきません。ただ、私どものところで試算をいたしておりますのは、基準財政収入の増が二千億程度、それから基準財政需要額の増が二千七百億円程度、この程度の増加を期待いたしております。
  95. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 大臣に伺いたいのですが、基準財政収入額が二千億の増、基準財政需要額が二千七百億の増、結局七百億円というものが交付税で増加しなければならぬということになるわけです。この七百億円だけ傾斜配分は十分にできるのか。基準財政需要が二千七百億ふえて、この分が全部回るならわかりますけれども、そのうち二千億円というものは収入額でございます。七百億だけ交付税で見るということになるわけです。それについて十分な傾斜配分というものができますか。
  96. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 先ほどお答え申し上げましたように、六千億をこえる交付税、あるいは八百五十億の自然増収というもの全体を通じまして、先ほど申しましたような経過措置をとるわけでありますが、ある程度、今度わりあい豊かな県、あるいは財政力の強い市町村というものにかぶっているということはやむを得ないと思います。
  97. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 各都道府県におきましては、財政長期計画というものを立てております。あるいは行政の長期計画を立てておりますけれども、地方財政計画には長期計画というものがないわけです。一方には総合開発計画を都道府県単位、あるいはその他で立てていたり、長期財政計画というものを各府県が持っているのに対して、政府のほうが、地方財政計画長期計画がないというのは、地方行政というものを、日本の国の行き方、こういう方向に持っていこうかということが、はっきりうたわれていないということになるわけでありますけれども、これについては、どうしてそういう長期計画が立てられてないのか、その理由と、立てるというような意思はないかどうか。
  98. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 長期開発計画を伴う各府県自治体の長期財政計画の樹立は、府県で計画をいたしているところは多々ございますが、何ぶん地方財政あるいは税制改正というものが、中央の政府のいろんな立法その他で影響を受けるものでありますから、技術的になかなかむずかしいので、現在のところ困難でございますが、なお自治省といたしましては、そういった方向に指導していきたいと思っております。
  99. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そうすると、立てるというふうに理解してよろしゅうございますか。
  100. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) なかなか技術的にむずかしいので、検討をするというようにおとりいただきたいと思います。
  101. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 次は総理ですから……。
  102. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 総理、いまちょっと自然の要求で……。
  103. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 この問題は別です。
  104. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 先ほど地方財政計画について、長期計画はどうかと、こういうことについての鈴木君の質問でございました。総理大臣の御答弁を願います。
  105. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そうじゃないです。あれはよろしゅうございます。次の問題です。  総理大臣に文化の問題について、特に文化財問題について伺いたいのですが、日本の文化というものに対して総理はどういうふうにお考えになっているのですか、今国会の施政方針演説の中で、総理大臣は、「民族の伝統に根ざす正しい価値観を確立することがきわめて大切」である、こういうふうに言われてから、この観点に立って、文化、科学の振興を一段と進めて、人間性の涵養をはかるようにしていきたい、こういうことを言われたわけでありますけれども、世界の歴史を見ておりましても、すでにギリシア文化であるとか、ローマの文化というものはあれはギリシアの文化であった、これがローマの文化であったというように語り伝えられるようになってきております。そこで現在、日本にしかない日本の国固有の文化というものがございますけれども、この文化についての考え方総理大臣は、日本民族の財産であり、最高の固有文化と思われるものがたくさんあるわけであります。たくさんというか数が少なくなってきておりますけれども、それについてどういうふうにお考えか伺いたいと思います。
  106. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 文化財というものはその国の歴史と伝統、民族の能力をあらわすものであります。私は最も大切なものであると考えます。わが国の古代文化に対します認識は、鈴木さんも御承知と思いますが、非常に高く評価されております。相当の知識のある中流以上の人は、日本にまいりまして京都、奈良、これが非常にあこがれのあれであります。私は一昨年パリにまいりましたとき、日本の文人の展覧会をやっていました。マルロー文化相が、これは世界で有名な文化相でありますが、これだけの絵の南画自由画のわかる民族日本とフランス人くらいのものだろうと言っておりましたが、私はこのマルローのことばを聞き、私はまた、一週間ばかり前に洋画についての話を聞きまして、この日本の北斎あるいは日本字ですね、日本の文字、これが向こうの書画に影響した点、浮世絵の問題等々、日本人が評価している数倍外国人が評価していて非常に私はうれしく感じた。そういう意味におきまして、私自身も絵や工芸品が好きであります。非常に意を強くしているわけでありますと同時に、日本の古代文化を保存すると同時に、現代文化につきましても十分やっていきたい。たとえばイギリスにおいて日本の、名前をいうのはどうかと思いますが、最近の陶工でございますね、せともの、磁器、これが非常に評価されております。ニュージーランドの国立博物館に行ったら、イギリスで評価される益子焼きのようなものを玄関の前、まん中に置きまして、日本のいまの陶芸を称賛している、こういう状況でございまして、経済の発展と同時に日本の古代文化と、いまの現代文化の工芸に対して非常なあこがれを持っておる、これを私は大いに奨励する、保存していくことが大切だと思っております。
  107. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 大いに奨励していきたい、非常に前向きでけっこうだと思うのですが、次に、文化財については二色ございます。有形文化財であるとか、無形文化財とか、あるいは埋蔵文化財、いろいろありますが、有形文化財は保存のしようによっては、また手入れのいかんでは何万年も保存することは可能でございます。ところが無形文化財というものは、これは保持者が死んでしまえば終わってしまうわけであります。現在特に重要無形文化財について、その保持者を人間国宝として扱っておるわけでございますけれども、その重点総理としてはどっちのほうにいま置いておいたほうがいいとお考えか。有形文化財のほうに重点を置く、無形文化財のほうに重点を置く、どういうふうにお考えでありましょうか。
  108. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 有形文化財というものは無形文化財から出てくるものでございます。しかし、この有形文化財というものはかけがえのないもの、だからこれは保存しなければならない。無形文化財というものはこれは命だ、だからこれはかけがえのないものであるけれども、次の人により以上の人を養成していけばかけがえがある、だから片一方では有形文化財の保存にできるだけの努力をすると同時に、いままで、えてしておろそかにせられておった無形文化財のほうについては政府は格段の努力を払う、一昨年、文楽につきまして一千五百万円のあれを出したのもこの意味でございます。また、後継者の養成に力をそそぐと同時に、無形文化財の人間国宝自体の方につきましても、たぶん今年度から千五百万円くらいでしたか出しておると思います。これは両方とも必要であることは私は常日ごろから考え努力いたしておるのであります。
  109. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 無形文化財についても力をかけるということでありますので、次の人を養成していけば何とかなるというのは、これは確かにそうでございます。伝統的には継承者があればいいわけでございますが、実際には受け継いでいく人が少ないというのが現状でございます。それについて総理大臣が施政方針演説の中で、人つくりのことに関して青少年の能力と個性を生かし、進んで国家の繁栄とそれから人類の福祉に奉仕する、そういうような青少年を養っていかなければならない、そのために青少年がそういう努力をなし得るような環境を整備し、適切な指導を行ないたい、これが人つくり政策の根本であるということを施政方針演説の中で言われておるわけでありますけれども、実際実態を見てみますというと、日本文化の中の伝統工芸であるといわれる陶器であるとか、磁器であるとか、あるいは織物についてもそうでありますが、受け継ぐ者がなくてまさに絶滅をしようとしております。平均年齢をみても六十七歳とか六十八歳というような人々のみがこの日本の伝統を受け継いで、そうしてあとを継ぐ人々に対して何らかの経済的な援助というものが政府からなされておれば、これはいまの総理の言われたことがよくわかるのでありますけれども一つもなされていない。そこで奨学金か何かありますけれども、具体的にこのような伝統工芸を持っている人間国宝の人々が、自分たちの力で一年間に五万円でもいいから、あと受け継ぐ者に経済援助を与えようにも、金がなくて千四百円の日本工芸会の会費も払えなくて自殺をしなければならないような、人間国宝というものはみんな貧乏でありますけれども、そういう人が一年間五万円も出そうかと考えておる。ところが政府の補助は一つもこれについて出ていないのであります。これについて、施政方針演説でこれだけ言われたのでありますから、また、いまの答弁から考えていっても、本気になって考えていかなければ、先ほど申しましたように、これが日本の文化であったかという時代をつくってしまう、文化の破壊ということになっていくのでありますので、これについてほんとうに力をかけるその辺の所信を伺いたいと思います。
  110. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) いままでもそのつもりでいっておりますし、今後もますますそうしたいと思っております。
  111. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いままでもやっていらっしゃればいいのでありますけれども、いままでも伝統を受け継ぐ人に対してはほとんど経済的な援助もされていない、それを養っていくこともできない、こういう状態である。芸術大学の定員を見ましても、わずか六十七名程度しかない、あるいはその施設をつくるについても、大学の施設をつくるについても、その費用というものがほとんどが、人間国宝が自分のコネでもって金を集めてきて、大学の施設をしている、こういうような状態で、はたしてほんとうに文化財というものに対して本腰を入れ、日本文化というものを守っていこう、こういう情熱がおありかどうかということについて、疑問を抱かざるを得ないと思うのです。総理大臣は、先般の欧州へ行かれたときに、伝統工芸の方々から、幾らかずつ品物、文化財を、無形文化財の方々から持っていかれまして、相手の元首の方々に渡した。それほどに熱心に日本の固有文化というものを宣揚し、紹介もし、広げていきたいという気持もある、その努力はわかるのでありますけれども、同じ人物であります池田総理が、さらにどうしていま一そうの真剣な対策をしないかということについては、疑問を抱かざるを得ない、その点について総理大臣、お答えを願いたいと思います。
  112. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) なかなかこういうところには手の届きにくいものなんです。政治家というものは、えてしてああいうものについては関心を持たぬほうでございます。私は人一倍に好きで持っている。だから文楽の問題も話を聞きまして、すぐ千五百万円出しました。そして今度も、先ほど申し上げた無形文化財の人の養成費その他につきましても、ここ二、三年相当出ておるのであります。しかし、これはやっぱり世界のあれから申しまして、古代芸術もさることでございますが、やはり現代人の養成につきまして考えなきゃならぬ。文化勲章につきましても、えてして絵画のほうが多いのでございます。できるだけ工芸その他のほうにも持っていくように努力をしておるのは、そういうゆえんであるのであります。絵画をおろそかにするわけじゃございませんが、どうも芸術品というと、絵とか何とかにすぐ走りやすいのでありますが、やはり工芸品その他のものにも、もう少し力を入れるべきだと考えております。
  113. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 次に、文部大臣と大蔵大臣に伺いたいんですが、今回、予算書の中には特に重要無形文化財保存特別助成金一千五百万円、現在無形文化財保持者は五十一名おりますけれども、それに対してこれだけの助成金を出す。おおむね年金のような格好で三十万くらいということになるわけでありますけれども、芸術院や学士院の場合は、今後五十万に年金を上げようという空気であります。そこで、大蔵大臣には、この三十万円に対して課税をする意思があるのかないのか。また年金三十万というのは少な過ぎるのではないか。これは両方、文部大臣のほうにも伺いたいわけでありますが、この二つについて伺いたいと思います。
  114. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 無形文化財保持者に対して三十万円ずつ交付をするということにしましたことは、これは非常に積極的なやり方でありまして、総理が先ほども申されたように、文化財の保護ということに対して、前向きに積極的に対処するということであります。新しい制度でありますので、金額その他については、これ以上の御要望があるかもしれませんが、少なくとも財政当局としても、このようなことをやらなければいけないという意思に基づくものであるということは、理解いただきたいと思います。この三十万円の交付金でありますが、無形文化財保持者に対して交付される金銭は、無形文化財の保存に要する経費の一部を補助する、こういういわゆる経費補助の形式をとっておりますので、剰余を生ずるということはないわけであります。でありますから、所得税ないし交付税の課税関係は生じない、こう考えておるわけであります。
  115. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 重要無形文化財の保持者に対しまして、今度の予算でお願いしておるわけでありますが、明年度から特別の助成金を出すことになっております。その趣旨は、わざの練磨と後継者の養成等につきまして、若干の助成をしたいということから出ておるわけであります。金額につきましては、決して十分とも存じませんけれども、新たにこのような助成金が設けられたということは、相当な意義を持つものと存ずるのであります。われわれはさらにその充実に今後努めてまいりたいと思います。
  116. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 この伝統工芸を、三月五日まで、西ドイツあるいはそのほかの国、オランダで外務省のKBSの後援でもって会をやったわけであります。これに文部省のほうからどうしても二人の役人をつれて行ってほしい、ところが経費は一銭も出ない。伝統工芸の日本工芸界の人々が二百万というお金をくめんして、二人の役人を向こうに滞在させておるという事実があります。これでは、真剣に取り組んでいるのかどうか疑わざるを得ないわけでありますけれども総理はそういうこまかい点については十分に御存じないと思いますから、一そう綱紀の粛正をはかられるとともに、そういう前向きに本腰を入れて、日本文化というものをされていくようになさっていただきたいと思うわけです。それに対しての最後に総理の所信を承って終わりたいと思います。
  117. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) いままで聞いておりませんでした。もしそういう要求があったら、私はたぶん直ちに旅費その他を出したと思います。そういう気持ちでおります。
  118. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 鈴木君の質疑は、終了いたしました。     —————————————
  119. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 次に、奥むめお君。
  120. 奥むめお

    ○奥むめお君 総理にまずお伺いしたいことは、決算の批難事項のことでございます。  綱紀粛正の問題で、総理は三十七年度予算が出たときも、三十八年度予算をお出しになったときも、こういう批難事項の絶滅を期してしっかりやるとおっしゃっておりましたが、絶滅どころか、一年一年多くなっております。十九億円から三十七年度は二十五億円と金額がふえております。それで、これは私どもは納税者としての意識に立って、国が最も大きい消費者である、国の仕事のやり方が非常に不明朗になる、このことは一番国民としては気になることなのです。また国民は、納税者としての意識を持ち、また生活がたいへん物価値上げで苦くなって、それがよけいに税金も高いじゃないか、こう思いながらいますと、とても困ることなんです。それで、こういうようなものは絶滅を期するとおっしゃりますけれども、絶滅できなかった、これをどういうふうに考えていらっしゃいますか、伺いたいのでございます。
  121. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 予算の執行にあたりまして、不法不当なことがあることは、まことに遺憾でございます。私は常に予算の執行につきまして、細心の注意を払うべきことを要求しておるのであります。これは金額ばかりで非常にふえたとか何とかいう——私はずっと過去十年くらい前から比べますると、この弊害は、だんだん全体として、傾向として少なくなっていっていると考えておるのであります。予算が多くなりますと、やはり金額の面においても、件数の面においても多くなる。ただ、内容によって非常に悪性なものがあってはいかぬということを特に注意をいたしておるのであります。
  122. 奥むめお

    ○奥むめお君 常時探究して、数字的に調べていく機関がほしいということは、しょっちゅう言われていたことでございますが、それを一つの専門機関として置くということに対して、総理はいかがでございますか。
  123. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 全体としては、会計検査院でやる筋合いのものでございますが、会計検査院の検査を待つまでもなく、やはり各省で、そういうことを常に日ごろから、注意してやらなければならないことは当然でございます。
  124. 奥むめお

    ○奥むめお君 臨時行政調査会が先ごろまとめましたものに、消費者行政のあり方という、これはまだ新聞で出ている程度のことで、ほんとうのものが出たわけじゃないのですけれども、消費局を内閣総理府に設ける一方、その付属機関として、学識経験者その他の専門家で、消費者行政評議会を設置して、消費者の意見を反映させようとしておる。さしあたり経済企画庁に消費者局を設けて、いずれ消費者省の設立まで持っていきたい、こういうふうなことが答申の原案として出ております。  この原案に記されている消費者行政機構というのは、各省にまたがって、同じ省でも、いろんな窓口に分かれて、実効を上げていないことでございますから、こういう考え方は、私はなるのがあたりまえであるし、政府もその方針で進んでいらっしゃるものと思うのでございますが、窓口の一本化、消費経済、あるいは消費者経済の推進というふうなもので、どのようなお考えを持っていらっしゃいますか。
  125. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 消費者行政と申しますか、消費行政と申しますか、なかなか議論のあるところと思いますが、少なくともいまの段階におきまして、生産も大事でございますが、消費面におきましての行政も私は必要だと思います。  したがいまして、今回御審議願っておりますように、国民生活局というものを企画庁に設けまして、消費行政についての、いろいろな施策を考えると同時に、各省に持っておりまするいわゆる消費面での施策について、総合調整をしていきたいと考えております。これを消費省というふうなものにするかどうかにつきましては、私はなかなか、まだ踏み切り得ない。まず国民生活局を設けて、そして各省が生産と消費の両面を持っておりますが、その消費面での総合調整を進めていきたい。いまのところは、その考えでございます。
  126. 奥むめお

    ○奥むめお君 いまは、消費者行政と、いろいろおっしゃっていますけれども、実際には、生産者のための行政の、まあ第二次的なものとして取り上げられているにすぎないと思います。でも私は、政治というものは、まず国民の暮らしを豊かにして、国民が楽しく働けるようにするための予算執行が政治だと思いますので、いずれをそういうふうに、だんだんに進んでいくと思いますから非常に喜んでおりますが、せっかく消費者局、国民生活局を設けましても、それが各業界の、いろいろななわ張り争いやら、あるいは利害関係やらで寸断しておるのが、今日の情勢でございますから、ぜひともその方面にたくさんの予算をとって、多くの窓口を置いていきたい、これが私の願いでございます。国民としても、このごろしょっちゅう消費者行政という名前が出ておりますので、たいへん力強く喜んでおるわけでございます。  総理が物価問題について、しきりにおっしゃいますのは、物価騰貴の原因は、賃金が上がったことや、あるいは消費構造の高度化による原因が大きいと言われるのでございますが、私はそれとは反対の、ちょっと違った観点から申し上げたいと思います。  消費構造の高度化による原因が大きいとしても、私はもっと過剰設備投資による利子の負担や、また独占、寡占価格カルテルの横行、これはもう目に余るものがたくさんございますが、こういうような問題を調べたり、あるいは指導したりしてやめさせるのは、公正取引委員会の役目だと思います。公正取引委員会は、たくさんの役目を持ちながら、まあ協定価格あるいは寡占価格というふうなものは、公取がもっときびしく出れば、早く直ったものが多かったと思うのですけれども、公取に、これだけの予算とか人員がございませんから、しわ寄せが消費者にかかってきておるわけであります。総理は、そのようにお考えになりますかしら、伺いたいと思います。
  127. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私は、公正取引委員会の機構とか人員の問題のために、そうなったものではない。もちろんやはり経済の進歩によりまして、消費行政というものが非常にウエートが大きくなっており、そこで、そういうことが問題になってきておる。今後におきましては、活動の万全を期することはもちろんでございますが、やはり政治の問題として、いままであまりそれが出なかった、そういう点がありましょうが、最近では公取の動きは、かなり活発になってきております。われわれもこれに応じながら、人員とか予算上のある程度の措置はいたしておるつもりでございます。
  128. 奥むめお

    ○奥むめお君 調べたところによりますと、寡占価格あるいは管理価格というふうなものは、二千種類以上あるというのでございますね、これだけたくさんのものが、そういうふうなやり方をして自分の商売を守っておるということになると、それはもう、物価を下げたいと思ったって、下がりっこないと思うのです。私はですから、たとえば非常に問題になるのは、たくさん物をつくりながら、つくったことによって物価が下がらない、上がる、寡占価格の問題でございますが、そうしますと、幾らでも例を持っていますが、バターでも、生産は三十年から三十七年までの間に二倍半にふえたのに、従業員一人当たりの生産性も三割も上がっているのに小売価格は、かえって四割も上回っております。これはバターの話です。また、ナイロンの生産が、長繊維で九倍、短繊維で二倍半もふえているのに、生産性も二倍半ふえているのに値段は、一割程度しか下がっていない。写真フィルムも、生産が全体で二・六倍になっている、生産性が一・四倍上がっているのに価格は下がっていない。並み板ガラスが、生産が二倍になっているのに価格は、ほとんど動いていない。これは政府が、生産性が大きくなるのだから、値を下げるべきだということを、ときどき発表していらっしゃいますが、それを下げさせることができないというのが、これは公正取引委員会の問題でもありますけれども政府として、いかがお考えでございますか。
  129. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) これは利潤の分配をどうするか、生産性の向上がなった場合、それをいかに分けるかという問題は、大きい問題でございます。労賃も加わりましょう、要りましょう、また、配当その他資本に対する利潤分配もありましょう。そして、また、最もいままで日本で大きい問題は、今後の生産性上昇のためにその金を使うということに非常に追われたわけです。だから生産性が伸びてきた。だが、今後は、生産性を向上さすためにというウエートが、だんだん設備投資というものが横ばいになってきたから、少なくなる、今後は消費者のほうに向けていくべきだろう、こういうことに相なっておると思うのであります。
  130. 奥むめお

    ○奥むめお君 こういう問題でも物価が上がる最も近い原因になっておりますので、早く生産性を向上し、コスト安によって物価を下げられるように指導しなければならないと私も考えておりますが、公正取引委員長おいでになりますか。
  131. 太田正孝

    委員長太田正孝君) おります。
  132. 奥むめお

    ○奥むめお君 管理価格、協定値上げというふうなものを調べるように政府から要望があったんじゃございませんか、また、お調べになりましたですか、その間の事情をちょっと聞かしていただきたい。
  133. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 協定価格の中で法的に認められているものは、これはおおむね所管大臣の認可、あるいはその際における私のほうの協議といったものと結びついておりまして、こういう場合におきましては、大体中小企業関係が中心でございますが、私のほうとして、十分そのよって来たるゆえん及びそのやむを得ざるゆえんというものを検討しました上で、われわれのほうとしては協議に応じております。それ以外の協定価格につきましては、これは独禁法の執行機関としての公正取引委員会としまして、厳に取り締まりをして、われわれとしましても、十分従来もやってまいったつもりでございますが、今後とも、この面については厳重な措置を講じてまいりたい。  それから、いわゆる管理価格という名前の中には、かなりの分がその裏に隠れた協定といったようなものがあるんじゃないかと疑われます。これはなかなか陰に隠れている分をわれわれのほうとしてどういうふうにつかむか、むずかしい問題であります。この隠れたカルテルというものについての調査につきましては、今後ともやっていきたいと考えます。それから、いわゆる広い意味の管理価格の中には、その中にプライス・リーダーシップによるものもございます。これは独禁法の外の問題とは思いますが、こういうものについてどうするかというものについては、これは公取以外の分野においていろいろ措置されるものと思っております。
  134. 奥むめお

    ○奥むめお君 もうアメリカでは、独禁法を強化するためには十分思い切ったことをしていますが、日本は、独禁法の番人である公取が非常にお手やわらかで、消費生活を守るところまではなかなかほど遠しという感じがございますが、それは予算が足りないからですか、人が足らないからだとお思いなるか、委員長に。
  135. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 過去における公取の活動につきまして、いろいろ御批判があろうかと思いますが、今後の問題としまして、公取としましては、十分その職責を果たしていくように考えてまいりたいと思っております。もちろん私どもの仕事としましては、人員の問題なども多々ますます弁ずるわけでございますが、われわれとしまして、本年度予算において、一応十五名の定員増加が認められましたので、与えられた予算の範囲内において、これを有効に使って職責を果たすことに万全を尽くしたい、かように覚悟しております。
  136. 奥むめお

    ○奥むめお君 そういう問題が出てきているときに、いままで二回も引っ込めてきました特定産業振興法を、今度また三度目にお出しになっていらっしゃる。よほどこれは出したいもののようでございますけれども、これは企画庁長官ですかね、特振法は。あるいは通産か、どういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  137. 福田一

    国務大臣福田一君) 特定産業振興法を出します理由は、日本産業が、いわゆる輸出産業として伸びていく場合において、自由化をいたしますと、海外からどんどん安い品物が入ってくる、それ自体日本経済、消費者にとっては非常にプラスでございます。が、しかし、そのために日本産業がつぶれるというようなことになりまするというと、そうすると、そこに失業問題を起こし、日本経済が壊滅するというような悪い事態も生じてくるわけであります。特にこれから日本経済で一番大平なのは重化学工業で、この重化学工業が伸びていって国民に安い品物を与え、また、海外へどんどん輸出ができるようになるというためには、やはり企業の利益を追求するとか、あるいは、また、そこに合理化をやっていくという、いろいろの措置が必要になるわけであります。そこで、そういうことをやっていく場合において、業界も、それから、また、政府も、あるいは、また、銀行関係も、みんなが協力して、そうしてその仕事をりっぱに育てていくような仕組みをつくろう、こういうわけでありますが、しかし、その場合においても、あくまでも業界が自分の発意によってそういうことをやりましょうというふうにやるわけでありますが、いま先生の仰せになっております消費者の問題とにらみ合わせて、消費者行政といいますか、消費者物価の問題とにらみ合わしてみますというと、これはそういうことをすることによって安くていい品物ができるわけでございますから、私は、非常に消費者行政というような面から考えてみても、大きなプラスがあるだろう、こういうふうに考えておるわけでございまして、消費者のためにもなることである。同時に、また、海外へ輸出もできるようになる、こういうふうな意味合いにおいて、十分特定産業振興法の意味があるものだ、こう存じておる次第でございます。
  138. 奥むめお

    ○奥むめお君 私は、ここで議論をしようと思いませんけれども、特振法の問題は非常に大きな影響を消費生活に与えるものだと思って心配しております。  企画庁の長官にお伺いいたしますが、一月の閣議のときに了解された「当面の物価安定の具体策」についてというのを見ますと、これには公共料金の一年ストップをはじめ、財政、金融政策や、輸入関税政策、さらには各種管理価格の取り締まり強化、流通機構の近代化促進とか、中小企業の近代化や税の軽減、家賃、地価対策、賃金対策などのけっこうずくめの政策が羅列してあるのですが、また、三月四日の経済閣僚懇談会では、これをもとにして予算に盛り込まれた物価安定の具体策を四月中にきめるとしてあります。食料品の総合小売市場を今月一ぱいに設ける、中小企業近代化助成の重点を、輸出面だけでなくて、物価面にも置く、つまり消費者のためにもこれを置く方針を定めたと伝えられていますが、これらの点について関係各省で実現させることになるのでありましょうが、関係各省の受け取り方はどうであったかしら。
  139. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 総理大臣をはじめ、各閣僚とも、この一年有半、問題の非常に大切なことをよく認識をせられるに至っておりまして、したがって、昨年ああいう閣議了解がなされ、で、ただいまおっしゃいました、数日前に報告いたしましたのは、それ以後そのときまでの進捗状況を申しますとともに、これから各省でさらに第二段でどういうことをやっていくかということを報告いたしましたので、これは関係各省がみんな了解をいたしておるものでございます。で、各省ともいろいろむずかしい問題はありますが、この問題については、幸いにして十分協力を得ておると、こういうふうに考えております。
  140. 奥むめお

    ○奥むめお君 どうも企画庁は、非常に意気にはやってどんどんお進めなさいますけれども、各省がそれに歩調を合わせてくれるかどうか。あるいはそちらが上げられてしまって、企画庁はいい意見をおっしゃってもむずかしいようになりはせぬかと思って、私は案じておりますが、どうぞ浮き上がらないように、しっかりと関係各省をつかんでやっていただかなきやならぬと思います。  それから、企画庁が今度国民生活局をお置きになるにつきまして、消費者の権利、消費者の生活を守るという方面の配慮が私まだ足りないと思われる。これをもっと強く行政に打ち出してくださって、そうして、消費生活が守られないと、今日の情勢で見ますと、たとえば食糧でも足りないから、買う分量を減らして魚も肉も食べるけれども、また、牛乳も飲むけれども、それを分量で減らして栄養失調になっているということは、いろいろな家計簿調査で私ども見ているのですが、そうすると、こういうことは企画庁あたりが一番早く知ってもらって、そうして指導していただきたい。いかがでございますか、そういう面で。
  141. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 総理大臣の所信表明の一番最後の部分に、国民所得倍増計画を国民生活に定着させるということが述べられております。その点を非常に私ども大事に考えておりまして、かりに国民生活局ができることを国会で御可決いただきましたならば、一つには、消費者としての国民生活の問題をやっていきたいと思いますが、もう一つは、冒頭に奥委員が言われました豊かな生活といいますか、貨幣的な表現での生活水準は確かに上がってきておるわけですが、それがほんとうに豊かな福祉につながっておるかどうか、そういったようなことを少し掘り下げて仕事をしてみたい、両面から仕事をしてみたいと思っておるわけでございます。先ほど申しましたように、物価は企画庁がやればいいのだというような事態になりますことが一番悪い事態でございまして、過去一年余り、そうでなく、なるべくこれは各省共通の問題である、各省がみんな一緒に背負わなければならない問題であるというふうになっていなければならないというふうに考えてまいりました。幸いにして、そういうふうに各省とも思ってもらっておるように現在感じております。ただいまのような、生活の内容についての、何と申しますか、指導ということばはよくございませんけれども内容についてのいろいろな実質の検討といったようなことは、今度かりに局ができますと、そこで一番大切な仕事の一つとしてやっていきたいと思いますし、そのためには、何ぶんにも私ども役人でございますから、そういう実地の経験を持っておられる方々からいろいろなデータをいただいたり御注意を受けたりするような、そういう仕組みを考えていきたいと思っているわけでございます。
  142. 奥むめお

    ○奥むめお君 企画庁長官は、いまから始めていくその消費者行政についてどのような構想を持っていらっしゃるのか、それを聞かしていただきたい。
  143. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 一つの仕事は、先刻申しましたように、貨幣的な表現でない国民の生活の豊かさというものをどうやって実現すればいいかということについて、国の持っております経済的ないろいろな力をどういうふうに組み合わせたらそういう社会の実現に近づけるか、そういう仕事を一方でいたそうとしております。他方で、消費者としての今度は国民生活というものがどうあるべきか、それは量と質と、いろいろな問題があると思いますが、具体的な生活の内容をパターンでつくろうというようなことは決して考えておりませんけれども、そういう実質的な幸福の増進というものでございます。そういうものを目途に消費者行政というものをやっていこう、こう抽象的に申し上げるしかないかと思いますが、そういうふうな考え方をしております。
  144. 奥むめお

    ○奥むめお君 今度おっしゃっている国民生活局は、たくさんの仕事をする予定になっているのですね。これに物価政策、所得と消費水準の均衡、住宅の生活環境、社会保障と教育、生活水準の探求など、たくさんのやる仕事を書き出していらっしゃいますね。しかも、与えられている国民生活局の人員というものは少ないし、また、予算も少ないし、それで、一つの省でそんなことをたくさんできるかしらと心配しておりますが、いかがでございますか。
  145. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、それだけの仕事を具体的に私どもの役所だけでやるという考えは全く持っておらないわけでして、それで、生活局をつくりますことも、実は前の通常国会のときにも問題がありましたが、私はちゅうちょをいたしたわけでございます。そういうものをつくりますと、仕事はそこにまかせておけばいいというふうに各官庁の間で非常になりやすうございますので、そうなってはいけないということで、ちゅうちょもいたしましたし、また、消費者省というようなものが、かりにできるといたしますと、そういうことに非常になりやすい、それをむしろ心配いたします。したがって、私どものいたそうと思いますことは、そういう所得、国民の経済生活がここまでとにかく増進してまいりましたから、今度はその質の問題、あるいはその福祉につながるような観点からそれを見なければならない、こういうものの考え方を、各省共通のものとして研究してつくり上げていきたい。むろん物価の問題などは具体的な現業になるわけでございますが、それ以外に、そういう基本的な各省に共通したものの考え方政策の立て方を考えていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  146. 奥むめお

    ○奥むめお君 通産大臣にもう一度伺いますが、通産省は、どこから見ても、産業界の代弁者、それから、生産の取り扱いをしていく役所であると見られていますし、また、事実そうであったと思います。しかし、今度は消費者行政を通産省でも行なう、こういうわけでございますが、それはあくまでも第二義的なものとして受け取っていらっしゃるのであって、第一義はやはり生産行政、私はこのように考えますが、そういろ中で消費者行政の問題の一部を通産省がお持ちになる、そうしますと、またいままでずっと産業のための役所であったところが、通産、消費者のためにもはかるということになりますと、それまでは産業のためだけにこうずっと長い間働いてきた係の人たちが、消費者のためにもはかる仕事をしなくちゃならぬ、ここが私はそんなにうまく切りかえられるかしら、そこを案じております。いかがでございますか。
  147. 福田一

    国務大臣福田一君) 通産省は、生産担当省というおことばでありますが、従来も通産省はずっと生産と消費ということを受け持ってきておるのでありまして、消費行政についても力を入れておるのであります。ただ、御案内のように、終戦後は物が非常に足りませんでしたから、そこで物を早くつくらにゃいかぬということから、通産省は物を生産するほうに力を入れておるじゃないか。もっとも物がよけいできれば物が安くなりますから、そういう意味では、やはり消費面にも力を入れたということになるかもしれませんが、一面において、奥さんの言われるような生産面のほうに力を入れ過ぎて、そうして消費行政のほうは忘れがちではなかったか、こういうようなおことばであれば、あるいはそういう面がいささかあったかと思います。しかし、私は常に申しておりますことは、大体政治の目的というのは、国民の生活を豊かにして、国民が文化生活ができるようにするのが目的である。奥先生が言われるとおりであります。それが本来の目的なんです。だから、その目的を達成するというための生産を考えるべきものでもあるのでありますから、私はこれは生産と消費というものはもう全く車の両輪のごときものである。行政的に見ましても、最終的目的である国民の幸福ということを考えながら、生産行政をやっていかなくちゃならぬ、こう考えております。したがいまして、今後も通産省といたしましては、消費問題ということに特に力を入れ、また一そう今後はそういう方面に重点を置きつつ、この通産省の行政を運営をいたしてまいりたい、かように考えております。また最近は、先生の言われるような点を、十分役人といいますか、官吏のほうでも考えて、そしていろいろ措置をいたしておりますし、通産省にはそういうような法律、関係法律も、先生御存じのように、たくさんございまして、これを運営しつつ消費行政に力をいたしたい、かように考えているわけでございます。
  148. 奥むめお

    ○奥むめお君 通産省はさっきおっしゃるように、いろいろたくさんのものを持っていらっしゃいますから、これを消費者物資については、中小企業の近代化についての要請をなさったと、各業界に。その具体的な内容と、通産大臣のこれに対する施策の方向は、わかると思いますが、流通機構の近代化については、三月の閣議で差し当たり卸商団地の造成やスーパー・マーケット、寄り合い百貨店の設立などの助成をすることになっているようでありますが、通産省所管の法律だけを見ましても、流通機構の不合理な点は、非常に根が深いと思います。通産省の調査した十四の消費財の流通路のうち、繊維二次製品をとっても、紡績メーカー、糸商、卸加工メーカーを経て二次製品となり、その二次製品が元卸売り商から地方問屋や、中間卸商を経て小売り商にたどりつくと言われております。これぐらいにいろいろな、たくさんの中間を持っていて、マージンをとられるわけですから、どうしても消費者は高いものを買わなければならない。もちろん百貨店や大口小売、スーパー・マーケット等は卸商から直接受け取っているようでございますから、零細な小売り商保護という意味を含めて考えると、思い切った政府の指貫が必要である、私はこのように考えます。この点について懇談会の決定事項もあることでありますから、通産大臣はどのように進めていくお考えでございますか。
  149. 福田一

    国務大臣福田一君) 日本の物価の問題を論じますとき、日本においては、特に流通機構の問題というのは非常に重要な問題でございます。通産省で調べておる——先生がいま言われますように、通産省でも調べておりますが、大体製造されたものが最終消費者までに行った場合に二倍ないし二倍半ぐらいの値段、百円のものが消費者の手に入るときには三百円くらいになるのも相当ありますが、これは流通段階における問題が一番大きいのでありますが、したがって、流通機構をどういうふうにして改善していくかということは、物価問題の解決の一番大きなテーマの一つにもなっているわけであります。これは、したがって、政府としていろいろそういう施策をやっているわけでありますが、通産省といたしましても、その関係の部門については、順次これの合理化といいますか、なるべく生産者から消費者へあまり多くの手を経ないで渡るような方向に持っていくべきである、こう考えております。ただ、経済というのは、御案内のように、すべていろいろのいままでの経緯があったり、あるいはまたいままでの慣習等がございまして、それを一挙に改めるという場合においては、そこに従事している人たちの失業問題あるいはまた転業問題等々も考えていかなければなりません。でありますから、いま先生の言われるような気持ちを体して、そのように、消費者に安い品物が渡っていくような措置を順次進めていく、そうして流通機構を改善していく、こういうふうにいたしたいと思っております。こういうふうにいたしました場合においては、特に目につきますことは、流通過程における業種の、先ほど申し上げたことが大きな点として浮かび上がりますが、一方またそういうことをいたしました場合、たとえばスーパー・マーケット等が一方において出てくるというような場合には、小売商の問題も出てまいりますが、それらについても、いま先生がおっしゃったようなことをいろいろ考えて進めてまいりたいと考えている次第でございます。
  150. 奥むめお

    ○奥むめお君 公取の委員長にもう一度伺いたいと思いますが、いらっしゃいますか。
  151. 太田正孝

    委員長太田正孝君) おります。
  152. 奥むめお

    ○奥むめお君 消費者物価引き下げのために、公取の役割はたいん重大だと思うのでございます。特に私どもの目にあまるのは、理容、美容、クリーニング、浴場等のサービス料金の高騰ぶりは、ずいぶん強いものだと思います。こういうふうなものに対して、それぞれ環衛法その他で価格協調を行なえというふうにはなっていますが、所管省の厚生省あたりと、実際の運用に当たる都道府県が、たとえ法目的を逸脱したような不当な協定価格でも、みすみす許可してきている。ですから、これは公取が独禁法の精神に基づいてどしどし行き過ぎを是正するように指導することが閣議了解でもあったはずだと思いますが、どうですか。なさいましたですか。あるいはまたなさってできなかった点もございますか。
  153. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 環衛法の問題につきましては、御承知のように、厚生省のほうと私のほうと協議があったわけですが、中央基準というものが出ていまして、それに準拠しまして各知事が中央基準等の最低等級をきめております。その際におきまして、一応私のほうと協議がございます。私のほうとしましては、その最低基準をきめる場合におきまして、中央基準を考慮し、同時にそれぞれの地方の具体的な事情あるいはその後の、中央基準がきまりました以後における状況をずっと考えまして、協議に応ずることにし、あるいは私のほうの意見も言っております。ところが間々そうしたいわゆる最低料金の知事認可の料金のほかに、もっと高いところでもってカルテル的な協定料金を作ろうとしているものが確かに目につきます。こういうものにつきましては、私のほうで目についた限りにおいては直ちに排除措置を講じて、そういうことのないように従来もやっておりますし、今後もやるつもりでおります。
  154. 奥むめお

    ○奥むめお君 重ねて伺いますが、公取が協定価格などを調べて、悪かったらそれを問題にしたとおっしゃるんですね。最低料金——環衛法の最低料金というものは、もうなくてもいいんじゃございませんか。むしろやるのだったら最高料金をきめたほうが国民には納得がいくと思いますが、だれも行なっておりませんね、最低料金については。いかがですか。
  155. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 環衛法の趣旨は、料金があまりにも安くなりまして、したがって、衛生設備その他において十分にいかない、安かろう、悪かろうということに——おのずから悪かろうにも限度がある。あまりそれが度が過ぎましたらいかぬからというところが基準で最低料金がきまっておるわけでございますから、したがって、この観点に立てば、やはり最低料金をきめるというのが環衛法のねらいであろうと思っております。したがって、現実に行なわれております料金が、かなりの分が最低料金より高いということは、環衛法の面としてねらっているその目的からすれば、そういうこともあり得るのじゃないか。ただ、重ねて申しますが、最低料金は、これは環衛法で認められて、知事認可で一応協定ができるわけです。それ以上の値段をいわば最低料金として協定する、あるいは一本価格として協定するということは環衛法で認められておりませんから、独禁法として取り締まる。われわれも過去において何件か、そういった意味の取り締まりはいたしております。
  156. 奥むめお

    ○奥むめお君 もう一度重ねて伺いますが、最低料金といいましても、ほとんどそれは何も使われておりません。高いところで競争をしているわけです。ですから環衛法の最低料金のとりきめというものは、私は役に立っていないし、また必要もなくなっている、こう思いますが、それに対していかがでございましょうか。
  157. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 環衛法の目的は、少なくともこういう程度の衛生設備をしろとか、こういう程度のサービスはしろということをきめるのがまず第一の目的であろうと思うのであります。それに基づきまして、今度は料金として、やはりそのためには、この程度の最低料金があるということが一応きめられているわけでございます。したがいまして、私は一応それなりの意味は持っているので、法の目的がそこにあるのですから、それなりの目的は持っている、こう解釈いたします。
  158. 奥むめお

    ○奥むめお君 もっと伺いたいけれども、それはそれじゃまた別の機会にいたします。  農林大臣と大蔵大臣に伺いたいと思うのですが、消費者米価は生産者米価にスライドさせるというふうなことが出ておりますね。これはほんとうでございましょうか。そうしたら生産者米価が上がれば勢い消費者米価も上がるものと言わなければなりませんが、私が前に質問しましたときに、上げない、公共料金並みに上げないと言われたのでありますが、いかがでございますか。
  159. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 考え方といたしまして、生産者米価と消費者米価のつながりをつける意味においては、政府で持つ金、消費者が背負ってもいい金というものが米価の中に含まれているという考え方は持っておるので、そういう面で検討してみたらどうかというように、検討はいたしております。しかしながら、消費者米価を上げるか上げないかという問題からいいますというと、本年度は物価の抑制策からも消費者米価を上げないということははっきりいたしております。ただ米価の問題で、よけいなことを言いますならば、ほかのものと比較して非常に米というものは安いと思います。比較して。それからもう一つは、非常に生活水準の低いものには当然政府が負担していくべきものでございますけれども、生活水準の高いものに対しても、政府が金を出して消費者米価をいつまで低くしていくかということには問題があろうかと思います。そういういろいろな問題がありますけれども、本年は消費者米価というものは上げない、こういうことではっきりきめております。
  160. 奥むめお

    ○奥むめお君 それから、大蔵大臣もだいじょうぶでございますか。消費者米価を上げて、赤字を幾らか補わなければいけないとお考えですか。
  161. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 消費者米価につきましては、農林大臣がいま答弁したとおりでありまして、本年は値上げをしないという方針でございます。  ただ、消費者米価と生産者米価とが全く無関係に決定されるということは好ましくなく、両者の間に関係を持たせ、生産者米価が上がれば消費者米価も上がるというのが至当であると考えており、このような見地から、目下農林省において両者関係について検討をいたしているということでございまして、今年度上げないということは別なことでございます。
  162. 奥むめお

    ○奥むめお君 今年度上げないということが、これはきまっているのだけれども、そのあとの問題ですが、それじゃ上げるというのは——生産者米価と消費者米価をつながりのあるものとして見ますと、どうしても上げなければなりませんね。そうでございますね。
  163. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 今年度上げないというのは、農林大臣が御答弁したとおりでありまして、これは政府の決定でございます。が、しかし——がつきますわけです。消費者米価というものと生産者米価というものについては関連性があるものだということで、その関連はどうあるべきかというようなことを農林省がいま検討しているようでございます。しかし、後段の問題は将来の問題であって、いま申し上げることは、今年度は上げないということでございます。
  164. 奥むめお

    ○奥むめお君 なかなか微妙な考え方で、そういうことをいわれることは困ったことです。  それから租税特別措置法の一部改正が出ておりますが、これは農協、漁協、生協がもう少し税金のほうから保護を受ける案でございますね。ところが、今度きまったものを見ますと、いままで一緒にきたのに、今度は生協だけが恩典からはずされております。これはどういうわけでしょう。私ども、生活協同組合が一番目ざめた消費者の集まりだと思っております。そこをまた助けて下さらなければやっていけませんですね。助けるのがおいやなんでしょうか。それとも、何か特別扱いをしなければならん理由がほかにあるのでしょうか。
  165. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 現在の消費生活協同組合につきましては、一般法人に比して、次のような税制上の措置をいたしているわけであります。  一つは、消費生活協同組合の所得に対する法人税率二八%、これは一般法人につきましては、二百万円以下の金額に対しては三三、二百万円をこえる金額に対しては三八ということに対して、軽減特例を行なっているわけであります。なお、消費生活協同組合が取り扱いました物の数量、価額、その他事業の分量に応じて組合員に分配した金額は、協同組合の所得の計算上損金に算入され、組合員個人に対して課税することとされております。それから消費生活協同組合が組合法に基づいて設立した場合の設立登記の登録税等については、非課税とされているわけでございます。以上の点について、御承知のとおり農協、中小企業協同組合と全く同等の取り扱いをいたしているわけであります。この以上の税制上の優遇措置という問題につきましては、一般の中小企業者との問題があるわけであります。消費生活協同組合と中小企業とは対立関係のような状態にございますので、これらの権衡等がありますので、十分検討を要する問題であるわけであります。
  166. 奥むめお

    ○奥むめお君 私、その問題で、政府が生協だけをなぜ扱いを別にするか。前に法律で恩典を一度消されたのです、三、四年間ほど。今度また、戻してくれるのは農協と漁協と中小企業協同組合で、生協はその中に入っていないと聞いておりますが、なぜ入らないか、私は、それは同じ仕事をしていて、しかも税金を出して、現金を自分で出して生協から物を買っているのでございますから、出資金として出していて、そうして原価でまたそれをお金を出して買っているのですね。で、消費生活協同組合というのは、私からいえば、一番目ざめた消費者の集団だと思います。それが物価が高くなって、みんなが栄養もとりかねているようなときに、なぜ、せめて同じ待遇を与えないか、いかがでございますか。
  167. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほどもちょっと申し上げたわけでございますが、農協等と消費生活協同組合との均衡を考えて毛、同じような特例を設けるべきであるというお説でございますが、一般の中小商工業者との競争関係にあるあなたのお立場で、物価を下げろと、また、新しい行き方ということからの御質問でございますが、一部におきましては、競争関係にあるので、現在の二八%の軽減税率を適用しておるのも好ましくないと、こういう御意見もあるわけであります。これをも廃して、一般の普通法人並みにすべきであるという意見も中小企業団体にはございます。同時に、御承知のとおりの、農業協同組合とそれから中小企業協同組合につきましては、農業基本法、中小企業基本法の中で、農業協同組合、中小企業協同組合等については、その整備をはかるため、国の施策を講ずべし、との方向が明らかに明示をされております。でありますから、本年度、この二つについては特例を認めたわけでありますが、いろいろ議論のあるところでありますので、消費生活協同組合との間には、このように差が出ておることは御承知のとおりでございます。
  168. 奥むめお

    ○奥むめお君 それで引き下がるわけにいかない問題でございますけれども、時間がございませんから、あとぜひ善処してもらいたい。これが私どものたくさんの組合員の願いでございます。  農林大臣がおいでになりますから、今度流通機構改善事業の一環として、農林省所管による総合小売市場を建てると、立案されておりますが、最近の物価高は、家計費の膨張  食肉をはじめ食料品の値上がりが多くのウエートを占めておりますので、その解決策として流通機構の合理化の必要性が各界で議論されながら、まだ見るべき具体策が見られておりません。この際、政府の助成による総合小売市場が設立されることは、従来とかく不明朗であった流通機構合理化のモデル・ケースとして、私はこれを期待したいと思っております。で、業界の利害にわずらわされないで、すみやかに実施してほしいと思いますが、いまどうなっておりますか、あの問題。
  169. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) これは、都と政府と出資いたしましてつくることになります。でありますので、その準備はいたしておりますが、二十ほどつくるわけであります。予算が通り次第、すぐに着手できるように準備を進めております。
  170. 奥むめお

    ○奥むめお君 それでは、今度は厚生大臣にお伺いしたいのですが、社会保障関係予算はふえていますけれども予算全体のふくらみ方から見てまだ足りない。これは社会保障関係にはもっともっと出すべきだと私は見ております。で、特に健康保険制度でも、再診料や——家族負担増を計画していると聞きますが、被保険者の自前の負担がふえる方向でございますが、これはわが国としては、どうしてそういうふうに自前で負担させることを多くなさいますか。それは、国民は物価値上げと同じような考え方を持つわけでございますね。厚生大臣は、それについてどういうようにお考えになっていらっしゃいますか、聞かしていただきたい。
  171. 小林武治

    国務大臣(小林武治君) 国民健康保険は、昨年十月から、世帯主は七割の給付をする、しかし、この二割増加した分につきましては、国が四分の三の補助をすると、こういうことで、わずか四分の一しか被保険者の負担にならないと、こういうふうな方法を講じておりますし、また、ことしの予算では、家族も五カ年計画で七割給付をしよう、そのやはり二割増加分については、同様四分の三は国の補助でやろうということで、これらの負担がそう重くならないようにと、こういうふうな方法を講じております。したがいまして、なお三十八年度におきましては、低所得者の健康保険料の増加が大きい、負担が重いと、こういうことで、これらも数十億円を出しまして、これらの負担の軽減の措置を講じておる、こういうことでございます。
  172. 奥むめお

    ○奥むめお君 四分の三を国家が負担して四分の一だけ出せばいいということでございますね。私どもから見ますと、予算全体が非常にふくらんでおりますけれども、特別に大きく出したい社会保障制度には、あまり出ておりません、ないよりはいいでしょうけれどもね。これは政治の貧困だといわれてもしようがないと思います。ですから、もうこのごろは、おかあさん農業がたいへん盛んで、無理をしておりますし、また、かせがなければ実際食べていけない世の中になっていますわね。すべての面でお金がよけいかかります。ですから、その間に私はみんなの健康を守るということが一番大事だと思います。ところが、守られない。お金がないと食べたいものも食べられないし、ですから、特に社会保障関係が、健康で働いているおかあさん方にも行き届きますように、栄養の面やら、あるいは健康増進の面で御苦心を払ってもらいたいと思うのでございますね。  このごろの世の中の広告を見ておりましても、たいへん病気を見出させる、肝臓が弱いんじゃないか、心臓が悪いんじゃないかということを思わせるような広告がたくさんありますね。新聞の広告そのほかの、三百三十億円広告に使われているというのでございますね。そんなのは、病気のない人にまで心配させる広告で薬を買わせるんですね、こういうことは、政府がもう少しお考えいただいて、そして消費者が賢くなって、自分の健康に対しては、必要な薬なら飲むし、必要でないものは、ムードで飲むんじゃないというふうな私は指導をしなければならないと思うのでございますが、いままでの厚生省行政の中では、指導はされておりませんでしょう。それがたいへん困ると思って見ています。いかがでございますか。
  173. 小林武治

    国務大臣(小林武治君) 社会保障関係の経費は、それぞれ見方がございますが、ことしの全部の予算の伸びが一三%幾らと、こういうことでありますが、私ども厚生省の予算は二〇%も増加いたしておるのでありまして、全体から見ましても、相当の伸びを来たしておると、こういうふうにひとつ御了承願いたいのであります。  なお、健康保持の問題につきましては、私ども考えておりますのは、主として母子対策、こういうもので、現在もすでに母子、いまの妊産婦の問題、あるいは三歳児の一斉健康診断の問題等もいたしておりますし、特に来年度は、乳幼児の一せい登録、こういうことをいたしまして、まず子供からの健康増進を、こういうふうなことについていたしますし、また、山村等におきましては、母子健康センター、こういうものも新しい制度として発足をさせて、お話のような健康増進に資したい、かように考えて、いろいろ努力をいたしております。  なお、医薬品の問題でありますが、これはお話のような傾向がないわけではございませんが、このごろ医薬品の製造が年に三千億余にものぼっておるということで、非常に大きな躍進であるのでございまして、中にはお話のような誇大広告というようなものがないわけではありません。しかし、これらは、薬事法という法律がありまして、虚偽の広告をしたりあるいは誇大の広告をしたりしたものは取り締まることにしておりまして、ここ一、二年の間にも千数百件の警告をするというようなことをいたしております。われわれも十分注意して、お話のようなことがないようにひとつ気をつけたい、こういうふうに考えております。
  174. 奥むめお

    ○奥むめお君 重ねて伺いたいのは、生活協同組合の問題でございますが、厚生省の所管、私ども消費者が出資をして、そしてそこから買うということを約束している生活協同組合、今日物価値上げで一番困っている人たちが、困るからこそそういう組織をこしらえて仕事を始めるのですね。ところが、農協にも、中小企業にも、いろいろ予算はたくさん与えられているんだけれども、生活協同組合だけは何にも恩典にあずかることができないのです、同じ仕事をしていて。しかも、自覚した人が消費者として物を買う約束をして利用していますのを、なぜそれをじゃまだてなさるのか、政府の助けをお出しにならないのか、私これは何としてもわかりませんのです。日本全体で一千百ぐらい組合がございまして、売り上げも小売り商全体の百分の一は売れておりますけれども、非常にやりにくい問題でございます。これは厚生大臣はどうなさるか、どうしたらいいとお考えになりますか、私伺いたいと思います。
  175. 小林武治

    国務大臣(小林武治君) この生活協同組合で一番問題にされておるのは、組合員以外の者に販売することについて制限を受けておる——農協、漁協等は二割まではよいということを法律できめてある、生活協同組合にはそれがいけない、これが大きな区別になっておりますが、しかし、これは農協とか漁協とかの組合員についてもおのずから限定されておるし、またその配置もおのずから必然的に制限される、生活協同組合はどこにでも置ける、また職域にしても地域にしてもどなたでも入れる、そしてまた入ることはきわめて簡単であるということで、これを利用せんとする方は、ごく簡易に組合に入れるから、特別の員外利用の道を開かぬでもよいのではないか、また、員外利用を多く認めることによっては、先ほど大蔵大臣がお答えになったように、同じ品物を扱う中小企業等の間にいろいろの紛争もある、こういうことで、入ることその他についても十分な自由を認めておるからして、これでおやりになれるんじゃないか、こういう考え方があって、さような区別があるのでございますが、しかし、奥さんのような考え方もあるし、われわれもこれを再検討することにしたい、こういうふうに思っております。しかして、生活協同組合を政府がじゃまをしたり、あるいは全然かまわない、こういうことは、よく御存じのように、政府予算にも、いまわずか千三百万円の貸し付け金が毎年出ておる、最近におきましては特に厚生年金の還元融資がすでに十一億円も融資されておる、三十八年度においては五億円も住宅その他について貸し付けが行なわれておる、こういうことで、この方面からも相当な援助と申しますか、お手伝いをしておる、こういうことで、じゃまをするとか、ちっともかまってくれないとか、こういうようなたてまえではないということをひとつ御了承願いたいのでありますし、また、貸し付けの問題等につきましても、これらの増額等も私ども考えていきたい、こういうふうに存じております。そのほか、生活組合は、単に物資の販売、こういうことばかりでなくて、家庭生活の合理化とか、いろいろな研究もされておりますから、そういう方面にも若干の助成を申し上げていきたいし、またそれもいま多少行なわれておる、こういうことでありまして、まあ注意をしてまいりたいと思います。
  176. 奥むめお

    ○奥むめお君 生活協同組合、農協の組合、また漁協の組合、これは同じ立場に立っておりまして、戦争前からずっと同じ扱いを受けてきましたのです。今度、どういうものか、生活協同組合だけが一緒に足並みをそろえられないということは、非常に困ったことだし、合点がいかない。どうしてそういうふうになったか。ですから、まともにこういう物価高に自分自分の生活を守るという人たちが、生活協同組合を組織されて、そして家計簿の数字を調べるといえば、みなさっと同調してくれるし、あるいは見学に行くといえば、またみんな喜んで出てきてくれるし、非常に協力ぶりもよろしいですね。生活協同組合が厚生省の中にあって、農業協同組合は農林省の管轄に入っていて、なかなかむずかしい差別を受けておりますが、私は、生活協同組合は政府の平等な扱いをしてもらいたい、こういうことを考えておりまして、きょうもその問題でお話したいと思っておりました。厚生大臣いかがでございますか。そういうことは、だれが聞いてもなぜだろうといってわからないのですよ。どうぞ御意見を伺いたいと思います。
  177. 小林武治

    国務大臣(小林武治君) いまの税制の問題等も、他の法人等に比べて、特別法人として相当にいままで優遇されておる。ことし改正のことでどういうふうな差別をつけたか、私いま存じておりません。これは税制関係で自治省、大蔵大臣その他から話があったのでございますが、その他の問題については政府の助成もとにかく相当行なわれておる。それで、いま申し上げたたとえば貸し付けなども政府の貸し付けが三億円ぐらいある、こういうことでありまして、一番問題にされるのは、員外利用の問題だろうと思います。外国には、員外利用を許しておる、こういう例もあるようでありますが、これは、生活協同組合そのものは、各国とも、それぞれ伝統もあり、社会経済事情も違う、こういうことで、そういうのもあります。また、外国では、安売りはしない、市価と同じに売って、利益があったら組合員に分配する、こういうような方法も行なわれておるようでありまして、いろいろの運営のしかたがあると思うのでありますが、まあなるべく差別のないようにしたいということを考えておりますし、   〔委員長退席、理事平島敏夫君着席〕 ただ、ただいま申すように、中小企業等の関連というようなものも、やはり中小企業というものは日本は外国に比べて非常に多いというようなことも、多少事情の違うところもあるのでありまして、いま申したように、私ども、この問題は再検討いたしたいと、こういうふうに考えております。
  178. 奥むめお

    ○奥むめお君 この四月に、アジア地区の協同組合会議日本で行なわれることになっております。  それは、生活協同組合、農業協同組合、漁業協同組合、みな一緒でもって主催をするわけです。私も外国の各地の生協を見てまいりましたけれども日本だけですね、こういう特別な扱いをしているのは。その中で、とにかくも助け合って事業を継続しているということは、たいした力だと思って感心しているのです。  で、あちらの、アジアからこっちへ来ます人たちの中には、大臣が何人か入っております。日本の協同組合担当大臣に会えるということを非常に喜んでいらっした。ところが、日本にそういうものがないから、私どもほんとうに困った。そのときにいろいろ質問をされたら、どういう答弁をしようかということでわれわれは困っております。何とか差別待遇がないようにできたら非常にいいのですけれども、できません。向こうは、むしろ、よその国は、自分の生活協同組合をみんなで、政府が一番バックアップして応援しております。国民も、それで物の配給を受けて暮らしを立てております。ですから、事情は違いますけれども、そういう仕事をみんなで一生懸命助けて、そうして伸ばしているわけです。たいへんうらやましい姿だと思います。  ですから、そういうことを、またいずれ総理にもごあいさつに行くし、皆さんにごあいさつに行って、ぜひ日本としてのあり方をただして理解をして帰ってもらいたいと、こう思うのでございます。よろしくどうぞお願いいたします。
  179. 小林武治

    国務大臣(小林武治君) 来月せっかくそういう機会もあるそうでございますから、私も出まして、いろいろひとつ皆さんの意見を参考に聞いて、勉強いたしたいと、かように考えております。
  180. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) 奥君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  181. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) 委員変更がございました。  吉江勝保君及び河野謙三君が辞任され、増原恵吉君及び安井謙君が選任されました。  本日はこの程度にいたしまして、明後九日午前十時に委員会を開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後二時二分散会