運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1964-03-04 第46回国会 参議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月四日(水曜日)    午前十時二十八分開会     —————————————   委員の異動  三月四日   辞任      補欠選任    高橋進太郎君  塩見 俊二君    向井 長年君  田畑 金光君     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     太田 正孝君    理事            大谷藤之助君            斎藤  昇君            平島 敏夫君            村山 道雄君            藤田  進君            山本伊三郎君            鈴木 一弘君    委員            井上 清一君            植垣弥一郎君            江藤  智君            加藤 武徳君            草葉 隆圓君            小林 英三君            小山邦太郎君            木暮武太夫君            後藤 義隆君            河野 謙三君            郡  祐一君            佐野  廣君            塩見 俊二君            杉原 荒太君            田中 啓一君            館  哲二君            鳥畠徳次郎君            山本  杉君            吉江 勝保君            阿具根 登君            加瀬  完君            亀田 得治君            木村禧八郎君            瀬谷 英行君            戸叶  武君            羽生 三七君            安田 敏雄君            米田  勲君            小平 芳平君            中尾 辰義君            田畑 金光君            高山 恒雄君            岩間 正男君            奥 むめお君            山高しげり君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    外 務 大 臣 大平 正芳君    大 蔵 大 臣 田中 角榮君    文 部 大 臣 灘尾 弘吉君    厚 生 大 臣 小林 武治君    農 林 大 臣 赤城 宗徳君    通商産業大臣  福田  一君    運 輸 大 臣 綾部健太郎君    郵 政 大 臣 古池 信三君    労 働 大 臣 大橋 武夫君    建 設 大 臣 河野 一郎君    自 治 大 臣 早川  崇君    国 務 大 臣 佐藤 榮作君    国 務 大 臣 福田 篤泰君    国 務 大 臣 宮澤 喜一君    国 務 大 臣 山村新治郎君   政府委員    内閣官房長官  黒金 泰美君    内閣法制局長官 林  修三君    人事院総裁   佐藤 達夫君    総理府総務長官 野田 武夫君    総理府特別地域    連絡局長    大竹 民陟君    中央青少年問題    協議会事務局長 西田  剛君    経済企画庁調整    局長      高島 節男君    経済企画庁総合    計画局長    向坂 正男君    科学技術政務次    官       鹿島 俊雄君    科学技術庁原子    力局長     島村 武久君    法務政務次官  天埜 良吉君    外務省アジア局    長       後宮 虎郎君    外務省経済協力    局長      西山  昭君    外務省条約局長 中川  融君    外務省国際連合    局長      齋藤 鎭男君    大蔵省主計局長 佐藤 一郎君    文部省初等中等    教育局長    福田  繁君    文部省社会教育    局長      齋藤  正君    厚生政務次官  砂原  格君    厚生省児童局長 黒木 利克君    農林政務次官  松野 孝一君    通商産業政務次    官       竹下  登君    通商産業省通商    局長      山本 重信君    運輸省海運局長 若狹 得治君    労働政務次官  藏内 修治君    労働省労政局長 三治 重信君    労働省労働基準    局長      村上 茂利君    労働省婦人少年    局長      谷野 せつ君    建設政務次官  鴨田 宗一君    建設大臣官房長 平井  學君    建設省計画局長 町田  充君    建設省都市局長 鶴海良一郎君    建設省河川局長 畑谷 正実君   建設省道路局長 尾之内由紀夫君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十九年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十九年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十九年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 太田正孝

    委員長太田正孝君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和三十九年度一般会計予算昭和三十九年度特別会計予算昭和三十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、昨日に引き続き質疑を行ないます。羽生三七君。(拍手)
  3. 羽生三七

    羽生三七君 三十九年度予算の審議にあたって、これと関係のある外交経済の両面にわたってお尋ねをいたします。  最初に、国際情勢の問題からお尋ねをしたいと思っておりますが、御承知のように、最近ベトナムあるいはキプロスその他若干の地域におけるいろいろな問題はあるにしても、昨日藤田委員も触れられましたように、米英ソ三国の部分的核停条約の締結、あるいはフランス中国承認等、今日の世界情勢が、従来のような力の均衡政策だけでは何もの解決できないという情勢になっていると思います。もちろん、そのよって来たる原因は、平和の愛好ということもあるでしょうが、核兵器の出現に伴う戦略体制の変化、あるいはその国の軍事力軍事費経済力との関係、あるいは民族の自覚というような、各種の条件は存在していると思いますが、いずれにしても、従来のような力の均衡武力政策だけでは何もの解決できないというのが、また、そういう意味で何らかの転換を迫られているのが今日の世界の大勢だろうと思います。しかし、それにもかかわらず、今日ベトナム等にああいう状況が存在していることは遺憾なことでありますが、とにかく、平和共存の路線をどうして定着さしていくか、ゆるぎなき平和というものをどうして確立していくかということは、今後の大きな課題になるだろうと思います。そういう角度から、私は大局的な立場外交問題をお尋ねしてみたいと思います。  そういう立場最初お尋ねしたいことは、総理は昨年の国会で、日米安保体制が存在するがゆえに日本は安全一であったと、こう述べておられますが、私は、問題はそうではなしに、安保条約発動を必要とするような客観的事実が存在しておらなかった、そう理解したいのであります。つまり、そういう安保発動を必要とするような客観的条件そのものがなかったのだ、そういう理解をしておりますが、その辺いかがでありますか、これは総理お尋ねいたします。総理はきょう御不快のようでありますので、そうしばしばということもできないと思いますが、大局的な点だけはひとつ総理からお聞かせ願いたいと思います。
  4. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは見方でございますが、私はいわゆる備えあれば憂いなしという気持ちで言っておるのであります。安保体制にありましてわが国の安全を確保しておりまするから、その脅かすような環境が生まれてこなかったとも言えると思います。だから、それは見方であると思いますが、私はとにかく備えあれば憂いなし、そういうことで言ったのであります。しかし、あなたのようなお考えで、日本の安全を脅かすような客観情勢がなかったということも一つの理由かもわかりません。これは見方の問題だと思います。客観情勢がないからといって安保体制は要らないというわけのものじゃないと思います。
  5. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、私は日本が、この点は重大な点ですが、他国から直接の攻撃侵略を受けるような危険な条件なり実態というものが、きょうただいまのところは存在しておらない、こう見ております。確かに今日、ベトナムとかラオスとかあるいは中国と台湾の問題、朝鮮問題、つまりアジアにおける不安定要素はたくさん数多く存在しております。しかし、これらの緊張要因は、日本に対する直接の攻撃侵略とは全くかかわりのないものであります。だから、もし日本に何らかの訪れる危機があるとすれば、これらのアジアにおける諸問題と、特にアメリカの戦力と日本が直接の相関関係を持つそのときに危機が来る、それはお考えになりませんか。だから、いま総理の言われたこともわかりますが、実際直接の攻撃を予見し得る実態日本にはほとんど存在しておらない。では間接的に来るといえば、アジアに来る危機、これに日本アメリカ相関関係を持ったときに日本がその危機の中に巻き込まれる、そうはお考えになりませんか。これは外務大臣でよろしい。
  6. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私ども認識は、国際情勢見方根本におきまして、若干羽生先生見解を異にするところがございます。と申しますのは、今日世界は依然として東西間の力の均衡というものが根底にあるからこそ大きな危機を招来することなく行っておると思うのでございます。日本日米安保体制のこの大きな意味における東西の力の均衡の一環をになっておるわけでございまして、この体制がゆるぎなく存在しておるということは、世界の平和の不可欠の要因であるという認識に立っておるわけでございます。すなわち、アメリカとの間の相関関係は初めからあるのでございまして、今後新しい環境が出てきて、それから危機が発生するというのでなくて、むしろ日米安保体制がそういう意味において厳存しておるということが、危機を生むことなく、あなたの言う日本を脅威するような客観的な情勢を生むことなく来ておるのであるというように私どもは見ておるわけでございます。将来もこの体制がしゃんといたしております限りにおきまして、私ども日本周辺をめぐって大きな危機はないだろう、またそのような用意と努力を終始重ねてまいらなければならないものと思います。
  7. 羽生三七

    羽生三七君 今日のアジアにおける各地域における紛争の主要な原因一つが、これらの地域における米軍の、アメリカ軍事介入だと思う。しかも、このことは問題の解決にならないのみか、かえって紛争を激化さして、結局、米国自身も際限のないどろ沼に入ってくる、これから抜け出す道の困難さをアメリカ自身が感じておるだろうと思います。それが現状だろうと思う。したがって、日本としては、いま外務大臣からお話がありましたが、そういうアメリカ軍事介入日本が何らかのかかわりを持つことをどうして避けるかということが一つ安全保障の道につながると思います。そういう意味で今日の日本考えるときに、こういう地域における早急な紛争解決が一番私は緊要な安全保障につながる道だと思う。だから、この地域における紛争が続く限り、いつアメリカといろいろな意味相関関係を持つことが起こるとも限らない。だから、アジアにおける日本を取り巻く周辺の諸地域紛争をどうして解決するか、これが実は日本の安全につながる非常に大きな道だと思う。ところが、アメリカは御承知のように、反共のチャンピオンであります。ところが、この場合、古い生活様式あるいは低い生活水準、これらの国々が実は共産主義が発展する素地になっておるという見解をとりながらも、他方アメリカは、この方針に反すると見ればその国の経済封鎖をする、あるいは援助を停止する、あるいは特定の政権を目ざして軍事介入をやる、こういうことで危機を拡大再生産するだけなんです。アメリカには、そういう意味で私は政治哲学がないと思う。アジアにおける紛争をいまのアメリカのようなやり方解決できるとお考えになりますか。だから、その解決をどうしたらいいかということに十分な関心を持たないというと、私はアジアの真の意味の平和の確立はできないと思う。よく政府は、アメリカ政策を批判する——他国のことは他国だとおっしゃいますが、そういうものではないと思う。そのために極東における地域の問題も安保条約の際には十分討議がされた。でありますから、私がここでお尋ねしたいことは、いまのような反共というイデオロギーは御自由です。私も共産主義者じゃない。それはそうですが、それを、武力介入援助停止やあるいは経済封鎖や、そういう形で問題の解決たり得るか。そういう意味哲学というものがアメリカにもないし、一体日本は何を持っておいでになるか。これをまずお伺いしたいと思います。
  8. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) アメリカ軍事介入というおことばでございましたが、これはアジアばかりでなく、世界四十数カ国の主権国家との間にアメリカ協定を結びまして、その協定に従いまして、軍事援助をやり、経済援助をやっておるわけでございます。アメリカのほうがしゃにむに一方的に介入いたしておるという性質のものでは私はないと思います。しかしながら、そういう関与のしかたが一体平和に寄与し安定に寄与するかどうかという評価の問題は、これまた別な問題であろうと思うのでございます。しかし、いま考えておかなきゃならぬことは、アメリカがそういう姿においてアジアの問題に関与いたしていないとかりにいたしたならば、今日のアジアの姿が、日本を含めて一体どういう状態になったであろうかということは、私ども一応考えておかなければならぬことだと思うのでございます。問題は、今日ある不安定要因というものが多いか少ないかということでございますが、今日この程度の状態においてあるということは、アメリカアジアに対する協定に基づく関与ということがあずかって大きな力になっておるものと、私は評価いたしておるわけでございます。さらに一歩進めて、あなたがおっしゃるように、いや、この状態は非常に不満足な状態であるし、不安定な状態であるし、さらにそれをもっとベターな状態に持っていくには、いまのような行き方がいいか悪いかと、アメリカやり方がいいか悪いかにつきまして、私は疑問の余地は十分あろうと思うのでございまするが、これは冒頭にも申し上げましたとおり、協定を結んだ当事国同士のことでございまして、私どもがとやかく申し上げる性質のものではないと思います。  ただ、最後に、あなたが御質問がございました、わが国としては一体それではどういう態度をもってこういう不安定なアジアに対処するかということが問題として残ると思うのでございます。これはたびたび申し上げておりまするように、わが国アジア一員でございまするし、アジアの発展がなく、アジアの安定がなくてわが国の安定も繁栄も期待できない立場に、運命的な関係にありますことは、あなたも私も十分これは承知しておるところでございます。したがいまして、欧米各国とは比べものにならないほどアジアについての関心が深く、かつ、深刻なものを感じておるのでございます。そこで、そういう立場に立ちまして、日本といたしましては、まず第一に、日本自身アジア一員として品位のある、すぐれた、豊かな民主国家として発展してまいって、アジアの道標になるということは、これは明らかに根本だろうと思うのでございます。これはもう申し上げるまでもない当然のことで、当然の前提であろうと思うのでございます。  第二は、私どもはこういうアジア国々とゆるぎない信頼関係を打ち立てなければいかぬと思うのでございます。何らかの政治的、軍事的な目的を持ってアジアに進出するというような性質のものではなくて、アジア国々のほんとうの友だちになって、互恵の喜びを分かち合う、苦しみも一緒にし合うという、そういう信頼関係をいかにしても打ち立てなければならないと思うのであります。  第三の問題といたしまして、しからば、それをどういう具体的な方法においてやるかということは、たびたび政府も申し上げておりますように、経済協力技術協力。広い意味におきましてわれわれはアジアにおける唯一の先進工業国でございまするから、われわれの能力の許す限りを尽しまして、アジア経済開発根底にございます行政にいたしましても、技術、衛生にいたしましても、あるいは教育にいたしましても、そういう方面にあらん限りの協力を申し上げるということで進んでまいる。そのことがわが国としてアジアの安定と平和に寄与し得る領域であり、また、それ以外にないというように私は思います。
  9. 羽生三七

    羽生三七君 これは言うまでもないことでありますが、このアジア問題で最大の比重を占めるものは中国問題だと思います。これはもうアジアというより、むしろ世界的な課題であることは言うまでもないことであります。極言すれば、中国問題の解決なしにアジア問題の解決はあり得ないと、私はこう判断しております。だから、日中問題は今国会でずいぶん衆参両院多くの角度から論ぜられましたが、私はきょうは少し大局的な立場お尋ねをしてみたいと思っております。これは特にアジアの平和という観点からであります。さきフランスドゴール大統領は、フランス中国との国交回復を進めるにあたって、アジア問題と関連さしてこの問題を取り扱ったことは事実だろうと思います。率直に言って、ドゴール大統領のそれが、フランス栄光回復という国家的目的にかなりウエートを置いていたということはあるにしても、とにかくドゴール構想というものは。  もう一つは、ドゴール構想というものは、まだ具的体に必ずしも特にベトナムの平和問題、中立問題等について、具体的に内容が明らかでないという事実があるにしても、とにかくアジア問題を意識して中国政策をとっておることは間違いないと思います。しかし、それにしても、フランスは遠い欧州の国であります。ところが、日本アジアにおいて重要な役割りを現に果たしておるし、また、今後も果たし得る立場にある。そういう意味で、日本外交長期的展望を持ったアジア政策があってしかるべきであると思うし、なければ、私はもっとそれを打ち立てなければならぬと思う。しかも、それがいま申し上げましたように、そういう意味から中国問題というものを、つまり日中間の日中問題の将来のあり方というものは考えなければならぬのではないか。あと順次お尋ねしていきますが、私はそういう立場で、何もドゴールがやったから日本がどうということじゃありませんが、とにかくドゴールフランスの自国のナショナル・インタレストを中心にして考えておるかもしれぬが、しかし、アジア問題をかなり意識して中国問題を扱っておる。そういう時期に、日本としてこの中国問題に対処するに、ただ、これはあとで申し上げますけれども、事実問題として逐次解決していくということでなしに、そういう広い意味の大局的な見地から中国問題を扱わなければ、アジア問題そのものもなかなか正当な解決ができないのじゃないか、そういうことを考えるが、いかがでありますか。
  10. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおりでありまして、私も先ほど申しましたように、欧州各国に比べまして、日本比べものにならないほどアジア問題については深刻な関心関係を持っておるわけでございます。中国問題も、そういう意味におきまして、日本が一番深い関係を持っておるわけでございます。したがって、この問題は長期にわたる展望において慎重に考えてまいらなければならぬことは当然のことと心得ております。
  11. 羽生三七

    羽生三七君 池田総理が今国会施政方針演説アジア諸国連帯強化を主唱されて、また、さきアジア諸国を歴訪されたり、さらにまた、このマレーシア問題について意欲的に取り組んだ事実、これは、たとえわれわれの意図するところと必ずしも同じでなかったにしても、その意欲というものを私どもは率直に認めます。問題は、率直に申し上げれば、同時に、それにもかかわらず、日本のとるべき、また、とらんとする政策が具体的であったかどうかということになると、その辺が必らずしも明確ではない。これは私の推測で、はなはだ恐縮ですが、おそらく総理はマレーシア問題と取り組まれた際に、その底にアメリカイギリスの存在を意識しなければならない場面にしばしばぶち当たられたのではないかと思います。そこで、またフランスのいわゆる今度のアジア問題への関連であります。そうでありますから、これらをよその国の動向がどうとかいう問題ではないと思う。マレーシア問題一つとってみても、そのようにアメリカ力関係イギリス力関係、あるいはまた旧インドシナについてはフランスとの関係、そういうものが次々と出てきている。しかも、日本はいま申し上げたアジアの中の中心に位する国で、今後多くの役割りを果たさなければならない。だから、そういう展望を持って今後アジアと接触しなければならないし、また、そうしない限り、私は根本的なアジア問題の解決はできないと思う。それにはやはり中国問題、これを解決しないと、もうどの問題を見てもみなこれに関連しておる。ですから、そういう意味でも私は重ねてお尋ねいたしますが、これは総理お尋ねいたしますけれども、そういう中国問題にそういう位置づけをして取り組むべきではないか、こう考えますが、いかがでありますか。
  12. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) マレーシア問題につきましてイギリスが相当の関係を持っておる。したがいまして、西太平洋におきまするオーストラリア、ニュージーランドもマレーシア問題については相当の関心を持っておりますことはお説のとおりでございます。しかも、またこの問題が熱い戦いになるならば、アメリカだって、やはりSEATO関係その他のいわゆる関係、豪州とアメリカ関係、いろいろ複雑しておるのであります。ことに、中共問題につきまして私はいろいろ考えていく場合に、中共問題を日本だけで片づけるのはなかなかむずかしい。中共に対しましてのフィリピンあるいはタイ、韓国、そうしてアメリカ合衆国、こういう非常な関心を持っておる、しかもわれわれと特別の友好関係にある国のことも考えなければならない。しこうして、また中共におきましては、いまにアメリカ帝国主義というものは、これはっきりいたしませんが、アメリカ帝国主義日中共同の敵だという強い主張をいたしておることは御承知のとおりでございます。こういう問題を日本ひとり解決しようとてもなかなか、日本中共どうこうといった、場合にこれが、そういう日本を取り巻く、日本と特別の関係のある国にいかに影響を及ぼすか、そしてまたアジアのこういう問題が世界にどういう関係を持つかということ等々を考えると、あなたのおっしゃるように、ドゴール大統領がこうやられたから日本もというわけにはとうていいかない。そこが非常にむずかしいことでございます。だから、隣国であり、歴史的、地理的あるいは文化的に関係の深い日本がこういうむずかしい立場をどうやって解決するかということは、まずやはりアメリカその他の国々と、そうしてまた特に中共お互い信頼感を深めていくような努力をすることも一つ方法ではないか、こう考えるのでございます。ひとりだけでどうこうというわけには、いまのアジア問題では、できないというのが実情であるのであります。私は、こういう意味において、どこの国はわれわれの共同の敵だとかなんとかいう考え方をやめてもらって、世界各国お互い信頼、交流の道を開くということが重要なことではないかと考えるのであります。そういう意味におきまして、私はマレーシア問題につきましても、頼まれたわけではございませんが、アジアの平和のために、そしてまたアジアの問題は原則としてアジア人の手によって解決する、これはマレーシア問題の三国もそういう気持ちでおるようであります。したがいまして、ケネディ長官が来られたときにも、スカルノ大統領がケネディ長官と会う前に、私がスカルノ大統領と会い、またケネディ長官と会うゆえんのものであります。また、この問題につきましてイギリス日本が特に重大な意見を交換し合うということも、やはりアジアの問題でもこういう他の国々とのいままでの関係を考慮しながら、やはりその間に立って日本としては現在の努力をしていくべきだと考えておるのであります。
  13. 羽生三七

    羽生三七君 いま私はアジア問題という立場中国問題をお尋ねしましたが、これはアジア問題に限らず、世界平和と完全軍縮の立場からも重要だと思います。中国を除外して完全軍縮が実現できるはずはないし、また、中国が核保有国になっても、今日の状態では、中国が独自の道を歩む権利を持っている、これをはばむことはできない。したがって、文字どおり世界的な規模で完全軍縮を達成しようとすれば、中国の国連加盟ということが不可欠の要件になってきます。ドゴールでしたか、フォールでしたかだれかが言っておりましたが、中国を教室のかどに立たしておくようなやり方、あるいは武力でこれに対抗するやり方は決して問題の解決にならない、こう言っておりますが、そのとおりだろうと思います。私はアジア問題、またあるいはひいて世界問題ですが、この解決には、むしろ国連の場の中ですみやかに中国の国連加盟を実現さして、国連の場の中で具体的な話し合いを一つずつやっていく。いまあるいろいろの政治的諸問題を国連の場の中で一つずつ中国と話し合いをやって解決していくほうが賢明じゃないか。そういたしますと、そうは判断はされませんか。ですから、日本だけが先走るということはできませんが、日本も、これはあとからだんだん申し上げますが、日本も積極的にそれと取り組んで、中国の国連加盟を実現させて、私はいまこの場では代表権云々の問題には触れませんが、そうして、その場の中で具体的に懸案を一つずつ解決していく。そういう方向でないと、ひいては世界の平和もなかなか確立できないのじゃないか、いかがでございますか。
  14. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) それは理想でございましょう。そういう考え方の人もおります。しかし、国連に入る資格の問題もあります。世界の平和を念願し、そうして、いたずらに紛争を起こさないりっぱな平和愛好国だとみんなが認める状態にあるかないかという問題だと思います。したがいまして、アメリカはそういうことを言っておるようでございます。好戦国だからだめだとか、そうして共産主義の宣伝でいろいろなトラブルを起こす国だということをアメリカ政府は言っております。片っ方は、アメリカ帝国主義日中共同の敵である、こういうことを言っておって、そうしたワクの中へ入れてもうまくいくかいかないかということは、これは懸念があります。だから、私は先ほど申し上げたように、どこの国はわれわれの共同の敵だと言うようなことをまずやめて、お互い信頼し合い、助け合い、世界の平和をはかっていこうということが前提じゃありますまいか。私はそう考えます。そこで、われわれとしては、中共あるいは日本の社会党さんが、アメリカ帝国主義はわれわれの共同の敵だと言うようなこともやめ、また、アメリカのほうも、やはりこういういわゆるお互いの意思の疎通等々を考え、いまのいわゆるワルシャワ百数十回の会談ではそこまでいっておらぬ。お互いにやはりそういう気持ちにならぬと、何でもかんでも、早く入ってしまえばそこでうまくいくのだということがはたして可能か。また、入る前にお互い信頼を持つような情勢をつくり上げることが必要だという説もあるのであります。われわれはそういう意味におきまして、世界各国お互いに心から信頼のかっこうをとる、そうして入って仲よくできるというふうな雰囲気をつくることが必要じゃないかと考えるのでございます。
  15. 羽生三七

    羽生三七君 あんまり議論はしたくありませんが、武力で立ちはだかっておって、そして相手の国に平和を多く言わせようと思っても、なかなかむずかしいから私がいまのようなことを申し上げたのですが、それはとにかく、この日中問題の解決に際して、政府の重要課題が台湾問題の処理のあり方、これにあることは言うまでもないと思います。それで今日日本では、国内に台湾の蒋総統に対する恩義とか、あるいは道義の問題、そういう立場から日中問題を論ぜられる方があります。私は、恩義は恩義として感謝していいと思います。しかし迷惑をかけたのは中国本土の六億数千万の人民大衆に対してであるということは、これは忘れちゃいかぬと思います。だから問題は、これは恩義は恩義としても、同時にこの中国本土に対する事実問題を事実問題として冷静に認識する外交上の理性だと思う。何か政府の統一見解というものを見ると、事実問題は事実問題として処理していくということを一応は言っておりますが、私の立場から見れば決して十分ではない。だから恩義は恩義として感謝してもいいが、現に存在しておる事実に対する冷静な外交上の理性である、その確立がいま要求されておる。ですから、そういう立場でこの問題を見た場合、この今国会でしばしば表明されたこの中国との国交回復、正常化は国連加盟が認められる時点、これは当然だろうと思う。こういう政府考え方は、国連中心主義を唱えておる日本政府が、国連が何をきめても知らぬというはずはないから、国連がきめればそうするのは当然だろうと思う。その場合に、賛成か反対か棄権か、いろいろありますが、きょうはそういう具体的な答弁を求めようとは私は思いません。ただそういう場合に、日本が、一部で心配されておるのは、中国との賠償問題だろうと思う。これは先日新聞社の問いに答えて、中国の趙安博氏が見解を示しております。かなり好意的な見解です。しかし私は、問題はそう簡単ではないと思う。問題の所在は、それが日本にとって望ましい形で解決されるかどうか、それをまた可能にする条件は何か、こういう問題であります。それは私は国連総会で日本がうしろ向きでなしに、積極的に前向きの姿勢で問題を処理することだと思う。これは何でもないことのようでありますが、非常に重要であります。そういう積極的な姿勢で取り組む、そういう姿勢が当面の日中問題の解決だけではなく、長い将来にわたる日中の、いま申し上げた問題も含めて、多くの困難を解決していく重要な条件であるばかりでなしに、アジアの多数の国々と今後日本が接触する場合に、非常な説得力を持つ、したがって、ただ単に国連の場できまったらおつき合い外交日本がおつき合い外交をやる、こういう姿勢では私はなかなか問題は解決されないと思う。そういう意味で私は、国連の場において日本がどういう態度をとるか、いまここでそんな具体的な——どうせ答弁はわかっていますから、そんな十一月の総会のところまでは腹はきまっておりませんと、わかっておるけれども、しかし姿勢だけは私は要求したい。賛成、反対、棄権、そのどちらか——そんなことは言いません。問題はそういう前向きの姿勢でのみ、いま申し上げた、一つの例ですが、賠償問題が日本にとって好ましい形で解決する条件にもなる、また近隣にも、近隣外交ということを言われておりますが、いろいろな各種のトラブルが起っておるこの近隣諸国を説得する場合の説得力が出てくる。そういうことはお考えになりませんか。そういう意味でも、より積極的に前向きの姿勢というものを私は求めたいと思います。いかがですか。
  16. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま御指摘の問題は、アジアの平和、世界の平和に甚大な影響を持っておるということは羽生先生も御指摘のとおりでございます。したがって、そういう観点からこの問題は根本的に処理の指針を立てなければならぬことは、当然だと思うのでございます。  第二といたしまして、私ども国連の光栄あるメンバーでございますから、国連における行動は公正でなければならぬと思うのでございます。国連が平和機構としてその機能を十全に果たしていくために、わが国もそのメンバーといたしまして、国連におけるわが国の行動は第三国が見まして、なるほど公正であるという態度をもって貫きたいと考えます。
  17. 羽生三七

    羽生三七君 一部新聞に、中国問題で統一見解政府がまとめたと言われておるが、これはそういう事実はあったのですか。
  18. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) きのう藤田委員の御質問にも答えましたが、統一見解というのは、施政方針演説で申し述べたのが、われわれのただいまの中国政策に対する統一見解でございます。統一見解をまとめるには最高の議決機関である閣議にかけなければなりません。私どもは、いま国会におきまして、先生を初め各先生方から、フランス中国承認問題を契機といたしまして若干の論議が出ておりますので、私が外務委員会で答弁し、総理予算委員会で答弁するという場面が展開されておりまするが、双方にそごがあってはならないので、私からこの間、このように外務委員会では申し述べておきましたということを御報告したまででございまして、一応の情報の交換程度のものでございます。統一見解というような大それたものでは決してありません。
  19. 羽生三七

    羽生三七君 そこで総理が、さきに衆議院段階で、中国が国連加盟を認められたような場合は当然日本も承認すると、こういう御答弁をなさっておる。ところが一部政府の中には、中共が将来国連に参加したことで直ちに日本中共を承認することを意味しない、こういう説もあるというのですが、これは一部の説であって、総理のお考えは、いま言われた国連加盟の時点で承認という、これに間違いないですか。
  20. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国連加盟と申しますか、いまは中国の代表権の問題で論議されておる中共が国連に入ること自体は、国連できまることでございます。で、私は衆議院の予算委員会で答えるときに——その前にずっと書いてあります。いまの外務大臣が「祝福される状態」ということを言っております。その前に中共が好戦国でなくて、自他ともにりっぱな国と認められる——平和愛好、世界の繁栄に貢献するりっぱな国であるという前提のもとに国連に加盟されるならばと、国連代表権が認められるならばと、こう言っておるのであります。したがいまして、論理的には国連に入ったから直ちに日本中共と国交を正常化しなければならぬという義務はありません。それはなぜかと申しますると、日本が他の友好国との意思に反しても、国連に入ったからやらなければならぬというわけのものではないのであります。だから私は、国連に入ったならば中共を承認するというその前提に、世界各国が非常なりっぱな友好国であり、これとみな手をつないでいこうという前提があるならば、ということを私は言っておるのであります。ですから大平君の「祝福される状態」、それから私が、横路君に答えたあの答えの前をずっとお読みくださればわかると思います。これははっきり申し上げておる。国連の代表権を持ったからといって、直ちに日本がやらなければならぬというわけのものではございません。これは世界情勢を見て考えるべきであります。  それからまた、さきのお話の中に賠償問題がございましたが、私はここで申し上げておきます。中華民国と争い、中華民国と平和条約を結び、そうしてその争った中華民国が賠償を放棄しております。これははっきりした事実でございますから、念のため申し上げておきます。
  21. 羽生三七

    羽生三七君 これは日華条約で賠償問題が解決したとは思っておりませんが、その問題にはこれ以上触れません。どうもわからないのですが、そうすると、国連加盟は祝福された状態ということは、要するに日本と、つまりアメリカを初め自由陣営諸国日本と特別の関係のあるそういうところも賛成した場合ということなんですか。多数の国が承認してです、承認したときには当然そうなるというのではなしに、その祝福された状態というのは、どういうことなんですか。これは外務大臣でよろしいですが、どういうことを意味するのですか。
  22. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) どういう態様において国連の審議が行なわれ、議決が行なわれるかということは、いまのところかいもくわかりません。したがって、祝福された状態というものの内容を規定する素材がまだ手元にないわけでありまするから、私どもといたしましては、その語感から出るように、いわば祝福されたような状態において加盟が実現したならば、そういうことを考慮しなければなるまいという、そういう一般的な感じ方を申し上げたのでございます。
  23. 羽生三七

    羽生三七君 これは非常に不明確で、少なくとも国会で答弁されたことで——自分で発言された祝福された状態ということを、具体的に言えばどういうことかということくらい、お答えになっていいじゃないですか。語感ではだめですよ。もうちょっと詳しく。
  24. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申しましたように、国連の場面に、どういう議題がどういうところから出まして、それがどういう処理になってまいり、どういう決議に化体してまいるかという過程は、いまの段階で実は読みかねるのでございます。したがいまして、私どもの感じとして、中共が祝福された状態において加盟されるような事態になれば、日本としては承認という問題を考慮せなければなるまい、こういうことを申し上げたのでございます。
  25. 羽生三七

    羽生三七君 それはやっぱし、もうちょっとはっきりさしていただかぬと、まずいと思う。私は大体あんまりえげつない人間でないつもりなんですが、その私どもでも、ちょっと了解しかねるのです。それは、はっきり祝福された状態ということを言われておるのですから、語感でなしに、具体的に言えばそれはどういうことかということを言っていただかぬと、どうもそれはちょっとまずいのじゃないですか。もうちょっとはっきり言われても差しつかえないと思います。
  26. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申しましたように、先のことでございますので、それがどういう状態であるかということを内容的に規定する材料がいまないのでございます。がしかしながら、いわば祝福された状態において加盟されるような状態、そういう状態がございますればという感じを申し上げたのでございまして、それ以上は、私ばかりでなくどなたにもできないと思います。
  27. 羽生三七

    羽生三七君 いや、どなたでもできないことはない。やろうと思えばできるのですよ。だから問題は、非常に票読みをやられて、票読みをやって、非常に私は不見識なことだと思いますが、それで、世界の様子をかれこれうかがいながら、日本の態度をきめようという要素が非常に多過ぎる。私はそう思う。ですから、いまの問題をいまここで態度をきめかねるということ。それから、松井大使がアフリカ各国の動向を探ったり、そういういわゆる世界の動向を探って、いい意味ならいいのですが、そうでなしに、そういう意味のいわゆる票読みをされて、そうして日本の態度を、かれこれ、どうしようかという、そういう時点に立っておる。ですから、いまの問題はほんとうはもっと突っ込んでいかぬといけませんが、そうすると、まあ結果的に言って、——この意味がおわかりいただけるかわかりませんが、一つの段階で、一段階で決着をつける場合もあるし、二段階で決着のつく場合もある、そういうことですか。おわかりになりますか、この意味。それは賛成、反対、棄権という問題もあるわけですね。だから一段階ですぱっと決着をつける場合もあるし、次の段階で最終的に、しんがりのほうから——世界の大勢がきまってから、しんがりから。第二段目のところですね。
  28. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) さようにテクニカルには考えておりませんでございます。
  29. 羽生三七

    羽生三七君 何にもきまっておらぬというのに、そういうテクニカルには考えておらぬということは、もう日本政府の腹が、つまり賛成とか、反対とか、棄権とか、そういうことである程度固まっているということを意味するのですか。
  30. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) つまりたびたび申し上げますように、十九回総会における国連対策を立てるには、まだきわめて材料が不足でございまして、政府として国連対策を立てるという状況にないことは、たびたび申し上げているとおりであります。したがって、賛成とか、反対とか、第一段階とか、第二段階とかいうようなことを想定することも、いまの私には材料がないわけでございます。私が申し上げているのは、この問題は、しかく票読みをやって云々というような、そういうテクニカルな気持でなくて、アジア政策の——冒頭にも申し上げましたとおり、この問題は日本にとって非常に深刻な、重大な問題でございまするから、そういう認識に立ちまして、慎重に対処しなければならぬ。テクニカルな、小手細工で処理できるような問題では決して私はないと思っております。
  31. 羽生三七

    羽生三七君 どうも、ほかにたくさんお尋ねしたいことがあるので、この問題、これ以上はどうかと思うが、ただ私が申し上げたいことは、ずっと先ほど来大局的な立場アジアの問題、ひいては世界の平和という問題との関連で、少なくとも国連の場における中国問題の処理が、積極的な前向きの姿勢でなければならぬ。それが将来の平和につながる重要な問題であるということを、重ねてここに強調をしておきます。  もう一つ、これは意見になりますが、中国の思想的脅威云々ということを言われておりますけれども、これは資本主義、自由主義の体制の優位性を信ずるなら経済競争をやったらいい。だから、そこに踏み切れぬところにアメリカの矛盾もあるし、それから日本自身だって、もしそれをはっきり政府が資本主義、自由主義の体制的な優位の確信をするならば、堂々と経済競争で勝利を獲得したらいいと思う。これは、それでこそ初めて平和共存路線が定着するわけです。しかしこれは意見になりますから、あえてこれ以上は申しません。  それからもう一つ、これもまあ注文みたいなことになって、意見がかなり入りますけれども外交の自主性の問題がしばしば言われております。衆議院でもだいぶやりとりがありました。総理もだいぶこれで反撃をされておりましたが、私もいま日本外交の自主性を論ずる場合に、日本政府が、アメリカの言うなりになっているなんて、そういうことは言いません。独立の外交をおやりになっているものと見て、その場合でも、この私の考えは、アメリカ世界政策、特にアジア政策、そういうものは結果的には結局危機の拡大再生産問題の解決にはならない。だからそういう立場で見るときに、単にアメリカの言うなりになる、ならぬというだけでなしに、率直にアメリカに直言する、そういう必要が生じているのじゃないでしょうか。それはアメリカ自身が、これはもうこうやっていけば際限のないどろ沼に入っていく。たとえば北ベトナムに進撃問題は、ジョンソン大統領は、そんなことは一部の説だと言われました。そんなことはないでしょう。しかし著名な評論家のリップマンは、結局朝鮮戦争並みの大規模な戦争に発展するか、そうでなければ屈辱的な撤退を余儀なくされるだろう、これがベトナム問題の結着であろうと言っております。これは評論家ですから、かなり評論的色彩が強いだろうと思うが、いずれにしても、このアメリカの武力で何か解決しようというような問題について、もっと日本が独自の立場で直言すべきではないか。だから、アメリカの言うなりになるとかならぬとかいうこれが自主外交というのではなしに、より積極性を持たせる、これが今の日本に要請されている問題ではないか。そうはお考えになりませんか。
  32. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) アメリカの力は正当に評価しなければなりませんし、アメリカ役割り役割りとして正当に評価しなければなりません。同時に、アメリカ外交について私どもが気づいたことでアメリカに忠告したらよかろうというような点につきましては、これは遠慮なく忠告するのがパートナーとしての当然の私は友情だろうと思うのでございまして、この点につきましては羽生さんと私は全然見解を同一にいたします。ただ、前段のアメリカ政策危機の拡大再生産をやっているというような御見解、これは、私もあなたとやりとりの最初に申し上げましたように、やや私は見解を異にいたしております。
  33. 羽生三七

    羽生三七君 農林大臣の御都合で農林大臣に対する質問を先にやれということでありますので、途中でありますけれども、農林大臣にお伺いいたします。これは、最初外務大臣で、次に農林大臣に。  日韓の場合ですが、日韓問題を専門家会議から政治会談に持っていくということは、純粋に専門的立場で検討されなければならない問題が十分合意されない場合でも政治会談で合意されることがあるのですか。どういう意味で政治会談に持っていかれるのですか。
  34. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私どもは、でき得べくんば専門家のレベルにおきまして問題を煮詰めて、それで全部が煮詰まれば、これが一番いいと思っているわけでございますが、そこで煮詰まらない問題につきましてはより高級の会談という用意でおったわけでございますが、先方からも申し出がございまして、より高級な会談を持ちたいという要請がございましたので、専門家会談がどちらかと言えばやや膠着状態にございますので、それを打開するためにも一つ方法であろうということで、これに応諾することにいたしました。ただ、申し上げておきますが、これは問題をより高級な会談に移しましても、問題をぞんざいにやっていこうということには一つもならぬわけでございます。問題は合理的に納得のいく内容のものにいたしたいということにはちっとも変わりはないわけでございます。
  35. 羽生三七

    羽生三七君 どうもそこのところが私はよく理解できない。専門家間で合意できないものがハイ・レベルのところにいけば打開の道が開けるというのはどういうことなんですか。それならば、専門家的立場で討議すべき条件が整わない場合でも、これを無視してでもハイ・レベルで解決することを意味するのではないかと思います。それはとにかく近く金氏が来日して今度は  トップ・レベルで局面打開というような説もあるようですが、そのことはお考えになっているのですか。
  36. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そのことは先方から聞いておりません。したがって、私はお答えすることもできません。
  37. 羽生三七

    羽生三七君 これはいつでも政府の御答弁はそうで、どうせあとからすぐわかることを国会ではそう言われるのですが、それと関連して、ちょっと中途はんぱになって恐縮ですが、日ソ漁業ですね。これは農林大臣。この問題はようやく会議が始まったばかりで、先の見通しもつまびらかでない際、とかくの質問をするのはいかがかと思いますので、原則問題だけをお尋ねしておきます。  この問題は年中行事で、毎年何十日もあるいは二、三カ月も要する。そこで、資源の科学的調査とか、あるいは豊漁年、あるいは不漁年、いろいろな問題がありますが、どうして両国間に基本調査で食い違いが起こるのか。何とか抜本的な解決方法はないか。当面二年決定方式を貫徹することもあると思いますが。そこで、私は、日ソ漁業交渉が今日までのような状態から脱却するためには、資源の共同調査等の完全なルールを確立する、この基本的な長期的な取りきめが必要だと思います。ですから、もし農林大臣が、いま訪ソはその時期でないというように言われておりますが、そういうことは、私は、数量等の折衝でなしに、そういう長期にわたる基礎的なルールをつくるために農林大臣が行ったらよかろうと思うし、大平外相もちょうどソ連から呼ばれているんですから、受けて、国会中忙しかったら、終わってから行ってもよろしいが、毎年こんなばかげたことを繰り返さないように、どこに問題があるか、それの基礎的なルールをつくるために政治会談で、個々の資源をどうするというような政治会談でなしに、そういうルールをつくる意思はありませんか。そうでなかったら、日ソ漁業交渉は、向こうに言わせれば平和条約がないからということもあるでしょうが、そういうことも裏にはあるかもしれませんけれども、とにかく何らかの基礎的なルールをつくらなければだめだ。長期的なしかも抜本的な対策が必要だと思う。いかがですか。
  38. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) お話のように、一昨年までたいへん長期間にわたって交渉を続けておりました。昨年は四十日でございました。一昨年に次年度のものもそのときに大体取りきめようということであったために、去年は四十日くらいできまったということでございます。しかし、その基礎は、いまお話がありましたように、資源の調査ができておるかおらないか、こういうことによって長くかかったり短かったりするのでございます。資源の調査につきましては、毎年の交渉のたびに共同で科学的に資源を調査するということを話し合って、私の前のときもそのことを話し合っているのでございますが、まだ全面的に共同資源調査というわけにはまいっておりません。大局といいますか一部といいますか、その点では資源の調査を通報し合ったり、また科学者が共同で調査をいたしている、こういうことでございます。でありますが、いまのお話のように、ルールをつくる、ルールをつくるについては資源の科学的調査をはっきりしておいてもらったらいい、そういうルールをつくったらいいんじゃないか。もちろん私もそう思います。昨年の暮れ向こうへ行きましたときにも、その資源の問題で両方今年のきめるやつがまだ延びているのでございますが、そのときにカムチャッカ方面の資料が集まっておらぬ、こういうことでございます。しかし、そういうことで会談が長引くということはまことに遺憾でございます。ルールといたしますならば、科学的な資源調査を共同でまとめておって、そうしてその上に立って会談を続けるということが私は適当であると思います。  なお、資源の共同調査につきましては、もし私が行くようなことがありますならば、なお強く要望いたしたいと思います。
  39. 羽生三七

    羽生三七君 要望ではなしに、そういうルールをつくるために積極的に農林大臣なり場合によったら外務大臣が訪ソして、それの取りきめをされるようなそういうお考えはないですか。
  40. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 前にも資源の共同調査ということを取りきめて、相当取りきめた分だけは進めておるわけでございます。しかし、いま申し上げましたように、全面的ではございません。向こうで入れないところもありますので、そういう点で全面的ではございませんが、そういう取りきめを積極的にするということを推進いたしたいと思います。
  41. 羽生三七

    羽生三七君 外交問題の質問の途中でちょっと農村関係に入ってまことに唐突ですが、これは農林大臣の御都合だそうですからお伺いいたしますが、昨日高橋委員の御質問で食糧問題が問題になりましたが、実は、二、三日前にいなかから新聞が来て、こういう記事が出ておりますので、ちょっと読んでみます。これは長野県の私の郷里の伊那谷で、長野県の穀倉地帯です。そこにこういう記事が出ております。  「二月から実施した配給米の実績配給により米不足を起こしていた上伊那地方へ二十六日県から四十五トン(七百五十俵)が送られ配給所へ配られた。これによって二月分の配給米はほぼ間に合うとみられ消費者をほっとさせた。配給米の割り当てを昨年の配給実績の五%減に押えるという国の措置で、米の生産地である上伊那地方は、どの配給所も配給実績が低く急に米不足を招いてヤミ米が値上がりするなど混乱を起こした。上伊那地事所や市町村当局は、県を通じて食糧庁へ配給割り当ても増すよう強力に働きかけていたところ、要求していた四十五トンの割り増しが決まった。」  これは、私の地方だけでない。このうしろにおられる安田委員に聞いたら、山梨でも同じだそうです。ですから、中には社会党あたりが故意に何か米が足りぬというようなことをそういうムードをあおっているのじゃないかという説もありますが、そんなばかなことはありません。こんな実情であるということは私どもはむしろ知らなかった。そこで、いまの実態を、きのう閣議で農林大臣がお話しになったそうですが、ひとつ詳しい数字を知らせていただきたい、それが一つ。  それからいままで何といいましても日本の農村は所得倍増計画に伴う農村政策ということで、やはり米麦中心の食糧政策というものが言わず語らずの間やはり選択的拡大ということで、ある意味の転換を迫られたと思う。ところが、むしろこんなことが食糧不足——食糧不足だって比較的の問題ですが、それがもし長期にわたって続くような情勢であるならば、食糧政策、つまり米麦偏重の食糧政策と言われてきたものをもう一度考え直して、米に相当の位置づけをしてちゃんとしたことをやらないというと、これはまずいのじゃないかという気がするのです。ですから、私は妙なムードをあおるために言っているのじゃない。まじめな意味で、心配がなければ心配がない、もしあれば当面五、六万トンの外米の輸入ということでなしに、それも一つの手でしょうが、もっと基本的な対策を考えるべきじゃないですか。この点について、きのう高橋委員にある程度の答えはありましたが、さらに詳しくお答えをいただきたい。
  42. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 昨日高橋委員に申し上げましたように、幾ぶん一昨年よりは窮屈でございますが、全体的に見て心配というほどじゃございません。生産量からいいましても、石数でいいますと、八千六百七十三万石であったものが八千五百四十二万石でございますから、百三十万石くらいの生産量が減でございます。政府の買い入れ米は、四千五百六万石に対して四千五百六十四万石でございますから、約五十万石ぐらい政府の買い入れはよけいであります。ただし、持ち越し米のときに、古米が少なくて新米に食い込んでいる、こういう点がございます。そういう点から申し上げて、生産量が減っておって政府の買い入れ量がふえているということは、農家の保有米とかあるいはやみと称しますか自由米、こういうものが少なくなっている。でありますので、生産地においても配給をいままで受けなかった者が配給を受けるというような状況があると思います。そういう面で窮屈な面がごさいますけれども、需給計画全体から申し上げますというと、三十九米穀年度の需給計画で、供給面では、これは内地米と輸入米を入れまして、三百七十一万二千トンが持ち越しでございます。買い入れが六百五十九万二千トン、供給の計が千三十万四千トン。需給の面では、主食が五百八十万三千トン、業務用が十四万五千トン、小計が五百九十四万八千トン、工業用が五十八万二千トン、その計が六百五十三万トン。差し引き持ち越しが三百七十七万四千トン。こういうふうに一応需給計画は立っております。先ほど申し上げましたような状況からいって、輸入等によって補っていきませんというと、端境期におきましてやはり新米の食い込みということに相なろうかと思いますので、需給操作によりまして、時期的あるいは地域的に非常に偏在しておった経過もありますので、それを是正いたしていきたい。同時に、配給面におきまして、十キロ配給ということはくずしておりませんけれども、実質上は六あるいは七キロというような配給しか受けておりません。しかし、これが十キロ全部配給を受ける権利があるというようなことで配給を受けることになりますと、非常に窮屈になる。こういう情勢でございます。需給状況はいま申し上げたような状況でございます。  それから米に対する生産面が、選択的拡大ということで米の生産をおろそかにしている傾向があるのじゃないか、こういうお尋ねでございます。これにつきましては、決して米の生産をおろそかにしているわけではございませんで、所得倍増計画等におきましても、米の生産に対しての年度別に生産を増していく計画が盛られているわけでございます。ただ、選択的拡大のほうに非常に力を入れましたので、何か米の生産のほうをおろそかにされたような感じを持たれている点は、私ども行き届かなかった点があろうと思います。米の生産はいま九九%需給率を持っていますけれども、これはやはり生産を進めていく。ことに米作地帯におきましては、選択的拡大といいましても、米の生産を他の方面に転換することが非常にむずかしい性質を持っております。でありますので、米の生産につきましては、土地改良等によりまして耕地の集団化あるいは機械化によって労力を省くというようなことによりまして、依然として米の生産は増していくように進める。そうして、長期にわたる需給計画を立てまして、食糧に不安のないようなことに一そう進めていきたい、こう考えております。
  43. 羽生三七

    羽生三七君 ちょうど農林大臣のおいでになるついでに、もう一問だけこの問題に触れさせていただきます。  所得倍増計画で、農業については十年後二・五ヘクタールの農家を百万戸創設、これが所得倍増計画の農業部面における一応のめどになっているわけです。しかし、ここに統計がありますが、統計によりますというと、北海道別の都府県では、三十六年、三十七年の年間増加率は一町五反歩以上で一万四千余尺それから二町歩以上では一万戸弱、こうなっております。ところが、これは言うまでもないことでありますが、農業人口は減って農家戸数は減りません。この趨勢でいくと、倍増期間、目標年次までに百万戸なんかできるどころではない。七、八分の一できればけっこう、こういうことになります。だから、そういうことから政府の、これは前に企画庁長官の本会議の答弁の中にもありましたが、つまり兼業を見込んだ農家収入で所得倍増を計算すれば別ですが、純然たる農業収入でいけば、これはどうしたって農業の場面では、純然たる農業部面では、所得倍増計画が目標年次には達成できない。だからそういう意味でいえば極端にいえば、これは農業部面においては所得倍増計画は破綻したといってもいいんじゃないでしようか。どんなことしたって百万戸できっこない。これは目標年次まであと六年、七、八分の一までできればけっこうです。したがって、政府は、今後はもう農家収入ということを考えるようになって——農業収入でなしに農家収入で所得倍増を考えれば、それでいえばある程度までいくでしょう。純然たる農業収入ではほとんど所得倍増は達成できない。ある意味においてはこれは破綻ではないかという感じがしますが——感じじゃない、私はそうだろうと思います。これは総理大臣か農林大臣か企画庁長官、どちらかに。
  44. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 御指摘のように、農業所得そのものだけをとってみますと、所得がふえておらないというわけではございませんけれども、他産業の所得のふえが多うございますので、格差は決して縮まっていないということは事実であります。そこで、ただいま趨勢を見ておりますと、大体一町五反あるいは最近は二町ぐらいに上がっておるようでございますが、それから上の層の農業は、農業として、ある意味で事業として成り立ち得るような——所得もふえておりますし、また、戸数もやや傾向としてはふえる傾向にある。しかし、それより下のほうはどうも従事員も減っておりますし、戸数はまあ御指摘のようにしかも減らない、こういうように分層点が、分界点が多少上のほうへ当初思ったよりも上っております。そのことは、おそらくは所得倍増計画で二町五反以上の農家が百万戸、四十五年にできるであろうという年率では、ただいまそのように動いておらないということまでは確かだと思います。そこで、その次に問題は、ただいまございます第一種あるいは二種の兼業というようなものが倍増計画で考えられておったような数年間の過渡的な現象であるのか、あるいはそうではなくて、やや二十年とかなんとかいうもう少し長い期間しばらくそういう姿でとどまるであろうか、そのどっちであろうかということが問題でございます。私どもは、少なくとも当初考えておりましたような、六、七年間の過渡的な現象でやがては田地を売っていくのだというような、一般的な想定は現在の趨勢からは必ずしも読み取れない、この点は所得倍増計画の検討及び収支計画を立てますときに、もう一ぺん根本から検討し直す必要が少なくともある問題である、そういうふうに考えております。
  45. 羽生三七

    羽生三七君 農林大臣、もう一つだけ。農林省で、農工間所得格差の是正のために不足払い制度を検討されておるといいますが、そういうことがあるのか、あるならその内容を承りたい。
  46. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 不足払い制度は、御承知のように、いま大豆とかなたね等についてとっている方法でございます。イギリスあたりではこの制度を強く採用しておるようでございます。日本におきまして、その他の農産物について不足払いのできそうなものもありまするし、これは非常に困難な、現実的に困難な面もあります。でありますけれども、いろいろこの自由化の問題で関税率の問題とかあるいは財政的な措置をとるという場合に、不足払い制度というものもひとつ検討してみたらどうか、できるものについてはやれるようなことを検討するように、事務当局に検討を命じておるということでございまして、いまどの面で不足払いをやるかというような結論は持っておりません。検討をしてみておる、こういう段階でございます。
  47. 羽生三七

    羽生三七君 それじゃ、農林大臣、よろしいです。  それでは、さっきのところへちょっと戻りまして、中国の周首相がアフリカ訪問のあと、引き続いてアジア諸国を訪問したようでありますが、また、それはそれなりの効果はある程度持ったように思います。そこで、この日本が近隣外交という場合に、ただ単なる親善だけではだめで、さっき申し上げたような具体的な平和への構想を持たなければいかぬと思いますが、それはとにかくとして、第二回バンドン会議の招集が伝えられておるのですが、そういう場合には政府としては、三十年の第一回と同様に参加されますか、どうですか。
  48. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いまインドシナ半島の問題とか、マレーシアの問題とかがおさまりがつかない段階でございますので、そういう会議をいま開催する時期がはたして適当かどうかという点につきましては、十分検討の要があると私ども考えておるわけでございまして、目下政府部内で検討中であると、こういうことで、まだ結論を出しておりません。
  49. 羽生三七

    羽生三七君 三十七年の十月にインドネシアからこのAA準備会議の参加を正式に要請してきております。本年一月、再度インドネシアから準備会議を開きたいという通報が来ております。そこで、政府としては、いまお話のように、情勢を見て必ずしも態度をいまきめかねておるということのようでありますが、そこで、さっきずっと私が触れてきたアジア、アフリカ諸国がみな集まるというときに、これは日本が参加しないというようなことになってきて、また、参加した場合でも、日本日本としてのアジア外交の基本的な路線を持たなければ、参加したって私は妙なことになると思います、これは実際に、いまのこのアジア、アフリカの情勢を見たときに。そういう意味でも、確固たるアジア政策、対中国政策というものが必要じゃないかということを私は重ねて申し上げたわけですが、しかし、この準備会議の参加なんか、正式要請ですが、どういう返事をされたか、まだいまお話をされたような返事ですか、未確定で……。もう一度検討されることはありませんか。
  50. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは仰せのように、各国いろいろこの問題につきましては検討中のようにうかがっておりまするし、私どももいろいろ内報を受けておるわけでございます。私どもといたしましては、タイミングとしていまが必ずしも適当ではないじゃないかという判断をもっておりまするが、なお、いろいろな角度から検討中であるということでございます。
  51. 羽生三七

    羽生三七君 これは私は、早急にひとつ対策を立てていただいて、これは実に私は、日本がいまのような態度でいくと、参加した場合に妙なことになると思います。必ずこれはそういうことは起こると思う。したがって、そういう意味でも早急にアジア外交の基本的な立場——姿勢というものを確立していただきたい。  一応これで外交問題は終わりまして、今度は経済外交で一、二お尋ねいたします。  先般、国連のあの貿易開発会議のプレビッシュ報告というものが出たわけです。これは低開発国援助に関する問題でありますが、これは結局この低開発国の経済開発に対する国際協力の新機構を樹立しようという、そういう要請だろうと思いますが、一方では、ガット総会で、この機構を改革するという形で、国連会議におけるこの低開発国援助のプロビッシュ報告をむしろ封鎖しようというような——これはアメリカ中心で。そういう動きもあると聞いておりますが、それはとにかくとして、日本としては低開発国援助に対して基本的にはどう取り組むのか、これはなかなか国連の場と、それから国連貿易開発会議と重なって、これは非常な大きな私は問題になると思う。それには特恵関税制度の問題等もからんでおるようでありますが、そういうこまかいことはきょうは一切触れません。要するに、それが直接援助方式であるかあるいは特恵関税制などいろいろあると思いますが、そういう内容はとにかくとして、基本的には日本としては、低開発国援助にどういう態度で対処しようとするのか、特に南北問題が世界の重要課題になっておる。でありますから、これは政府としても何らかの基本的な方針があってしかるべきだと思います。プレビッシュ報告に関連をして低開発国援助に関する日本の、これからいろいろな会議に臨まれますが、基本的な姿勢をひとつ伺わしていただきたい。
  52. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御案内のように、日本といたしましては、OECDのダックを通じて、あるいはガットを通じまして低開発国の開発に協力してきたわけでございます。で、問題は、貿易と援助と二つの大きなカテゴリーになるわけでございますが、貿易の問題が国連その他を通じまして大きく取り上げられる傾向は、これはむしろ健全な方向として私どもも歓迎いたしておるわけでございます。今度貿易会議が開かれるということでございますので、日本といたしましても、すぐれた代表団を送りまして、積極的に討議に参加いたしたいと考えております。プレビッシュ報告につきましては、きのう藤田委員の御質疑あるいは中尾委員の御質問に対しましてあらまし私から申し上げたとおりでございます。それからまた、いま御指摘の機構問題につきましてもきのう御報告をここで御答弁申し上げたとおりの気持ちでいまおるわけでございます。で問題は、第一回の会議でございまするし、この会議にあまり過大な期待を持ちますと、またその逆効果もおそれられますので、私どもといたしましては、低開発圏との貿易の拡大、それから経済の安定的な発展ということに寄与することに効果的な手段を漸進的に、じみちに講じていくような方向に日本としても応分の協力をいたしたいと思うわけでございます。ただ、御案内のように、今日までの援助実績の示しますように、先進工業国がいままでの援助におきましても決定的な力を持っておるわけでございまして、こういう国々との対立が先鋭化するような形で運営されるということになることは不幸なことと思うわけでございまして、したがって、もろもろの問題の解決につきましても、低開発圏のためにという観点から、問題も南北間の先鋭な対立というような状態を招来しないように運営に協力してまいるべきじゃないかということが一点と、それから先ほど申しましたように、漸進的な方法をとらないと、この間の報告書にもありましたように、非常に明快な提案でございますけれども、それがはたして実質的な効果を生むかと申しますと、これはもうやはり先進工業国がどれだけそれにコントリビューションをするかという問題も関連してまいりますので、したがって、関連いたしまするし、また、そういう政策をとる前に、現にガット等で計画いたしておりまする商品協定その他のじみちな接近をどこまで固めていくべきかという問題もあわせて考えながら、問題は低開発圏の利益のためにという観点に立ちまして、じみちな建設的な貢献をいたしたいということを念願といたしまして、応分の貢献をいたしたいと考えております。
  53. 羽生三七

    羽生三七君 戦後、先進国の側から低開発諸国に与えられた巨額の援助が、それがそれほどの実質的な効果をあげていないその最大の理由は、援助が各国によってばらばらであるということ、それからかつ援助国の軍事的、戦略的な利害関係で被援助国の国民の福祉より優先さしたということ、そういうことだと思うのです。そこで、こういう両側陣営だけの援助態勢では私はだめだと思う。また、実効もあがらない。そこで、国連の場で東西両陣営あるいは被援助国も含めた新しい機関をつくって援助の効果的な活用や運営を考えたらどうか。ここには南北問題は絶対持ち込まないという鉄則をつくったらどうか。だから日本中国問題を重要事項指定として国連で動くよりも、こういう問題で積極的な提案を持って日本が国連の場で活動したらどうかと思う。これは提案であります。これはいま国連にいろいろなそういう若干の機構はあるが、あとは大部分二国間協定でありますけれども、私は、そういう国連の場で国際協定をつくってひもをつけない。そしてばらばらでなしに統一をする。この東西の対立を南北に持ち込まない。東西の側には被援助国も含める何らかの新しい機関をつくって効果的な運用を考えたらどうか、これは提案であります。まあ、それは、いま時間がもうわずかになったようでありますからもうお答えは要りません。そこで、ただ単に要望にとどめまして、次の経済問題に移っていきます。  この三十九年度予算が膨張予算かあるいは景気刺激的な要因が強過ぎるかどうか、そういうことは別として、今日の問題の一つは、強まりつつある歳出の硬直性という問題があろうと思うのです。今日まで予算規模が年々拡大はしてきましたけれども、その背景には日本経済の数年間の異常な高度成長、それに伴う大幅な税の自然増収という裏づけがあったからだと思う。しかし、今後高度成長が安定成長ということになって、まあ、高度成長か安定成長かという論議は別として、いままでのような十何%というような過大な成長は期待できない。今回の政府想定にあるような大体七%前後と一応見ております。若干の高低はあるでしょうがそれが常識の線になると思います。したがいまして、税収がいままでの十何%のときのように出るわけはないのですから、当然税収も自然増が減ってくる。それが伸び悩めば予算規模の拡大にも限界が起こると思う。この場合、最近の各種の年次計画、ことに公共投資の比重の大きさ、また一方では、日本経済が先進国型への移行のための社会保障的な経費の増大というものが必要となってくる。そういう条件が二つ並行して進んでいくわけですね。その場合、経済成長率の鈍化、税の自然増収の関係、それから歳出の硬直性、そういう問題を総合してみて、一体今後どういう予算の型というものが想定されるのか。税をふやすことなしに、あるいは公債を発行することなしに、年々強まってくる歳出の硬直性で当然経費がふえてくる。新規事業はほとんどできない。どういう形の予算が予想されるか。もっぱらこれは根本的な問題だと思いますから、十分ひとつ大蔵大臣から見解を伺わしてもらいたいと思います。
  54. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 年々歳出需要が旺盛になってきますことは御承知のとおりであります。しかも、安定成長に入りますので、税収もいままでのように、過大な自然増収を見積もることはできなくなると思います。しかし、歳出はおのずから経常収入でまかなうというような面で、だんだん戦後の特殊な事情に基づく戦後処理等も済んでまいりますし、また、公共事業等につきましても一段落という——いわゆるオリンピックその他の問題等も出てまいりますし、私は、予算が過去のように五カ年計画その他ができておりますので、弾力性というものに対して、確かに硬直性をだんだん帯びつつあるということは認めますけれども経済が安定成長に参りますために、税収も正常な状態において確保できると思いますので、二〇%、二五%というような大きな前年対比の予算というのではなく、今年度組んだ予算は、対前年度比一四・二%という増加率でありますから、一〇%ないし一五%程度の予算を組んでいくということに対しては、そう問題はないのではないかというふうに考えておるわけであります。所得倍増計画による年率の成長率が七・二%平均ということを考えておりますし、それから現在まで基盤が大きくなっておりますので、安定成長の過程においても、税収は確保できるという考え方に立っておるわけであります。  また、五カ年計画に対しての御質問がございましたが、道路の五カ年計画、港湾の五カ年計画、また下水道等の新規五カ年計画、治水五カ年計画、治山五カ年計画というような五カ年計画が相当出ておりますことは御承知のとおりであります。今年度は単独事業を除きまして、大体六千八百億程度であり、これの国費の額は四千億をこしておるわけであります。このような五カ年計画ができるということは、ある意味において予算を拘束するということが言われるわけでありますが、しかし、重大な事項であり、しかも、緊急やむを得ざるものとして五カ年計画を立てることが必要だという重点施策に対して、五カ年計画を組まれておるのでありますから、予算というものがだんだんこういう性格を帯びてくるということは言い得るわけであります。  また、社会保障費に対しての御質問がございましたが、社会保障費に対しても、税収の伸びの中でまかなっていけるだろうという考え方であります。ただ、将来の産業投資というような問題は、できるだけ財政投融資のほうにだんだんと移行していくべきであろうというふうに、おおむね考えておるわけであります。
  55. 羽生三七

    羽生三七君 これは資料を要求しておきましたが、道路、港湾、鉄道をはじめ、各種のいわゆる年次計画の総計は幾らになって、それを年度割りにすると、一年の負担率はどのくらいになるか、これは資料を要求してあったわけですが……。
  56. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) あります。現在の長期五カ年計画には、治山治水緊急措置法に基づく治水長期計画、これは三十五年から三十九年度まででありまして、全体事業量は四千億円でございます。また、後期五カ年計画、四十年から四十四年度までのものが五千二百億でございます。それから治山の長期計画は、前期五カ年計画、これは三十五年から三十九年度までのものが五百五十億円、後期五カ年計画、これは四十年から四十四年度までに七百五十億円であります。道路整備緊急措置法に基づきまして策定を予定されております道路整備五カ年計画、これは三十九年から四十三年度までに四兆一千億ということでございます。なお、港湾整備緊急措置法に基づきます港湾整備五カ年計画がございます。これは三十六年から四十年度までに二千五百億円ということでございますが、これは三十九年度を起点とする新しい事態に対処した新五カ年計画に移行するという基本を決定いたしておるわけであります。なお、公営住宅法に基づく第五期の公営住宅三カ年計画というのがございます。三十九年から四十一年まででありまして、建設戸数が二十万でございます。なお、六に、漁港法に基づく漁港整備長期計画がございます。この港数は三百八十港であります。生活環境施設整備緊急措置法に基づきまして、三十八年度を初年度とする生活環境施設整備五カ年計画というものをいま立案中でございます。この長期五カ年計画に要します三十九年度のものにつきましては、先ほど申し上げましたとおり、地方単独分を除きまして約六千七百六十八億——六千八百億弱であります。これに対する国費は約四千十三億ということでございます。
  57. 羽生三七

    羽生三七君 年度割りにしてどれぐらいですか。それを要求しておきました。総体でいいです。各費目でなく、総計して年度割りにして幾らになるか。
  58. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 計算すればすぐできるわけでございますけれども、御承知のとおり、出発年度がみな違うものですから、ですから、その年度のものをただ集計して、年度割りはこういうふうでありますということを申し上げても意味がないと思いましたので、三十九年度の事業費を申し上げまして御理解をいただきたいと、こういうことで申し上げたわけであります。
  59. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、そういう長期計画が各年度において単年度で必要とする経費はうんとふえている。それから新規社会保障的な経費もうんとふえている。それから新規事業——本年度なんか自然増のほとんど半分以上というものを当然経費で食われてしまって、新規事業はほとんどできない。ですから、このままでいけば、公債の発行もなしに減税をしていくということになると、どういう形の予算になるのか、社会保障のほうが頭打ちになるのか、公共投資なんか、みな総体低めるといってしまえばそれまでですが、どういう形の予算というものになるか、予算のタイプというものを、あるのか、ないのか知りませんが、それを聞きたかったんです。
  60. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御承知のとおり、今年度の自然増収は六千八百億でございますが、前年度剰余金の減が千八百億ばかりございますので、歳入財源となったものは四千九百億円弱であります。この歳入財源のおおむぬ半分が、前年度の年次中期から始めました新しい施策の平年度化、それから人事院勧告等に基づく十月一日から行なわれました公務員のベースアップの平年度化、それから防衛庁等の債務負担行為によって後年度に支出を約束せられておりますものの支払い、こういうものがあるわけであります。こういうものでもって大体二分の一ということになるわけであります。あとの二分の一程度が新しい施策として盛られたわけでありまして、ことしの対前年度比が一四・二%であります。文部省の学校特別会計と自動車検査特別会計を入れましても、一五・一%であります。でありますから、まあ先ほど申しましたとおり、先進諸外国は年率、対前年度比四・五%ないし六%程度の予算を組んでおります。幾ら多くても一〇%というような状態でありますが、日本は戦後の荒廃した国土の中から立ち上がったわけでありまして、社会資本の不足もありますし、新しく戦後つくられた社会保障制度の拡充というような面から、いままで、各国がやってきたような六%、七%、それよりも低いような財政規模では、とてもうまくいかなかったわけであります。まあ、ちょうど経済の高度成長がありましたし、また、所得倍増政策の結果、急速にこれらの戦後の新しい施策が整備をせられてきたわけであります。これからだんだんと世間並みな正常な状態、しかも七・二%、ほかの国に比べると相当高い成長率が維持できるということであります。本年度は九・七%でも一二、三%になるのではないかというくらいにたくましい日本経済成長の状態であります。政府が当初企図いたしております七・二%の平均で進んでいくとしても、正常な歳入は十分確保できる、こういうことであります。一年間に十項目も二十項目も非常に大きな新施策をやるというわけではないわけであります。御承知のとおり、やっぱり年度間の新しい施策に対しては、平年度化は来年にしながら、今年度は十月一日から家族の給付を行なうとか、いろいろなものを、来年度の歳入は、当然五カ年、六カ年の長期を見通しながら、新政策を採用しているわけでありますから、現在組んでいる五カ年計画等の数字の中で、将来五カ年、十カ年をみますときに、どうしても予算が組めない、国債を発行しなければならないというような状態にはならないで、何とか組んでいけるだろうという見通しはつくわけであります。しかし、あまり何でもやりますという、こういう状態ではございません。
  61. 羽生三七

    羽生三七君 いまの国民所得に対する税負担率の二二・二%というこの負担率ですが、これは二〇%にとどめるという税制調査会の答申というものが一応昔あったわけです、五年前ですか、あったわけですが、政府は最近、いまのようなことから心ずしもそういう二%という三十五年の税制調査会の答申にこだわらないという方針をとりながら、一面においては減税、減税ということを盛んにいっておられる。  そこでお伺いしたいのは、ある意味において一応従来の二〇%という制約から離脱した、そういう立場をとっている、国会答弁から推察するとそういうふうに受け取られる。それで減税ということはどういうことをいわれるのか。内部調整のことをいわれるのか、全体の中の調整で減税になる部分がある、そういうことをいっておられるのか、その辺が不明確なので、その辺では一応二〇%の制約から脱却したということをいっておられるのか、単年度の見通しではなく今後の……。
  62. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 減税は調整ではなく減税です。明らかに現実的に調整されている面もあるわけでありますが、減税イコール調整ということではございません。減税はあくまでも減税いたしておるわけであります。これは所得税だけの考えではなく、住民税の減税、これも確実な減税であります。中小企業に対して七百億余にわたる減税、すなわちこれ減税であります。そういう意味で平年度で二千八十億余にのぼる平均の減税になっているわけであります。しかし、二、三年前に税制調査会から答申されました国民所得に対する税負担率は二二・二%、当時の状況においては二〇%を前後するのが好ましい、これは私たちもそうできればそのほうが好ましい、こういう考え方をもってきたわけであります。しかし、この二〇%を前後することが好ましいということは、当時の状況において考えられたことであります。その後、社会保障をうんとやらなければいかぬ、それだけではなく、これからのわが国民の生活基盤を確保するためには、社会資本の不足を補って公共投資を思い切ってしなければいかぬということで、やはり財政面からみる国民に対するサービスというものと減税というものは、常にどっちをやったほうがより国民的かということを考えているわけであります。でありますが、ある仕事をどうしても完成しなければならない場合には、何年間に限って減税は待ってもらうけれども、これだけの仕事はやります、こういうことをまま言うわけであります。また同時に、もう相当なものが大体国際水準になったので、ここらで減税をしましょう、絶えず減税と歳出による国民に対するサービスは、どっちをやったほうがいいのかということを十分考えながら、より効率的なほうにウエートをおいて施策を行なっているわけであります。でありますから、二〇%を前後するということだけにこだわるわけではないのでして、国民生活に対して歳出はもっと出したほうがいいという場合には、今年度のように現行税率を見ますと二二・八%にもなるのを二二・二%に押えた。二二・二%は、三十六年、三十七年——三十七年が大体二二・二%、この程度に押えているわけでありまして、まあ外国の例はもう申し上げるまでもなく、アメリカは一九六一年で二七・六であります。イギリスは三二・一であります。フランスは三〇・五であります。イタリアは二六・七であります。西ドイツは三一・一であります。でありますから、まあこれらの先進国ぐらいには——国民にサービスが終わってしまえば私のほうはだんだんと下げていこう、こういう考えでございますが、まだまだ歳出要求は非常に強い。国会においても、もうほとんど九〇%は金が足らぬ、中小企業に対して一体金を出したのか、農村に対して一体これで足りるのかというほど歳出要求が強いときにおいてさえも二二・二%に押えているのでありますから、国民の皆さんからは、大体しようがないというふうに理解をいただけると、このような考え方であります。
  63. 羽生三七

    羽生三七君 もうあと二、三分し九時間がないので、この問題にあまり時間を費やすことはできませんが、自然増収も減り、予算規模が年々拡大していくということで、その場合公債発行のことが問題になるわけですが、これはもう今までずいぶん御答弁を承りました。原則論は、何も公債発行して悪いことないじゃないかということは承りましたが、私も、きょうはそんなことを聞く意思は全然ない。しかし、そういういまの趨勢からして、公債発行しなければならないような条件にはならないか、たとえば明年度、ことしの補助地方債、あれもある意味においては私は公債政策のはしりだと思いますが、そういうことにならないものか、原則論ではないのです。それは前に承っております。
  64. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 三十九年度でありますから、四十年度の予算を組むときに公債を発行しないでも済むであろうという見通しはつくわけであります。今年度は先ほど申し上げましたように、前年度剰余金の減が千八百億もあるということで、これを自然増収から引いておりますので、このような条件が四十年度にないわけであります。でありますから、三十八年度から九年度にわたっての税収の伸びを経済成長率が高い三十九年度から四十年度の分の税収、三十九年後半は同じ論法でいうと、少なくとも九・七%、前半が高ければ九・七%というものを平均にしてとれば、もっと後半下がるから、四十年度の税収に対しては少なくなるのじゃないかといいますか、どう考えても前年度剰余金の減千八百六十六億も減るというふうには考えませんので、三十九年度程度の予算を組んでいくということであれば、公債を発行しないで十分組み得るという考え方をいま持っているわけであります。
  65. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連して。
  66. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 簡単でございますか。木村君。
  67. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 税の負担率につきまして簡単にお伺いしたいと思います。  私は、一般質問で十分質問いたしますけれども、大蔵大臣の御答弁は、ずっと以前に、以前から日本の税負担率について諸外国との比較が問題になったわけです。しかし、前にすでにいま大蔵大臣がいわれたような比較は、これは無条件に比較はできないことは、もう大蔵大臣十分御存じなんです。これは国民に対して私は誤解を与えると思うのです。国民所得に対する負担率は、イギリスが二〇何%とか、諸外国がどうだとか、もう少しこれは正確にいうべきですよ。だから日本がもっと負担率が高くていいというような議論にはならないわけです。これはもう前に、とっくにこういう問題は解決済みなんです。前は大蔵省はそういう説明をしたのです。したのですけれども、その後そういう説明はしなかったのです。だから間違いであるということをはっきり、それは国民の可処分所得で比較するべきものですよ。税引所得でどのくらい比べるか、それが問題であって、ただ、税負担率だけを諸外国は高いから、日本は税負担率二二・二%になっても諸外国より日本は高いのじゃない、こういう説明は子供だましですよ。もうおやめなさいよ。前にもうそういう説明のしかたははっきりと間違いだ。非常に不正確なものなんです。大蔵大臣がそういう説明をされるのは、これは私は不見識だと思います、国民所得が違うのですから。それからもう一つの問題は、社会保障のほうに振り向けるから、そこで税負担率が少し高くてもしかたがないのだ。社会保障と負担率の均衡関係考えるというお話です。しかし、それは日本の最低課税限に税金が食い込まないような状態にしてからの話ですよ。三十九年度減税したって、最低生活に所得税食い込むのですよ。こういう状態にしておいて、それで社会保障のほうに向けるから税負担率が少し高くてもいい、こういう議論は成り立たないと思うのです。どうもいままで衆議院段階でもそういう御説明していますが、これはどうも説明にならぬと思うのですが、また私の持ち時間のときにゆっくり質問いたしますが、いまあまりお粗末な御答弁だったので、もう少し正確に御答弁を得たいと思います。
  68. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) その道の大家でありますから、木村さんの御意見は非常に傾聴しておるのでございますが、しかし、この御発言に対しては私も一言なかるべからず、こういうことであります。これはきのうも御議論になっておりますが、日本の外貨準備率は一体幾らあればいいかと同じ議論なんであります。同じ議論をきょうやはり御質問になられておるわけでありますから、これは確かにあなたの言われるとおり、あなたのあらわされた本も読んでおりますし、大体わかるのですが、しかし税負担率をいまから三年も五年も前に二〇%前後がよろしいという答申をそのままそれから社会保障もやっておるし、いろいろの施策をやって国民サービスをしておる。——現段階も、将来も、引き続いてそれで縛らるべきだという議論には、私たちは賛成しないのであります。ある場合において減税だけではなく、増税もしなければならぬ場合もあります。この国会に御審議を願っておりますガソリン税は、目的税のようなものなるがゆえに、急を要する道路整備をすることが、より国民に対してサービスをするのだということであれば、ガソリン税に対しては増税を行なっておるのであります。こういう事実もお考えくだされば、税負担率だけで絶えず議論をしなければならないというような観点には、政府は立っておりません。でありますから減税をする場合には、減税と歳出というものを考えながら、国民サービスという面も考えながら考えていきますから、二〇%前後しなければならないということを金科玉条として、これでなければ政府の施策が悪いのだという議論には首肯できないということを申し上げたわけであります。
  69. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そんな質問をしておりませんよ。税負担のことを質問しているのじゃない。全然答弁が違うのですよ。税負担率について質問しているのじゃないのですよ。これはまたあとでしますけれども、二つ質問したのです。諸外国との比較の問題……
  70. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私が例に出しましたのは、このようなイギリスや、フランスや、イタリアなどはこんなに大きいのですから、私たちはまだそれよりも低い税負担率でございますからよろしいというような答弁をしておるのではありません。これはもう国会を通じても、この議論は去年から何回も繰り返されておる議論でありますから、総理も私も同じ答弁をしておるわけでありますが、そんな答弁はしておりません。これはあなたがいまお話しになられたとおり、確かに税負担率は高くとも、国民所得というものが、非常に個人の所得額が大きいから、日本人においても五千万円年収がある者と、五百万円の者と、五十万円の者との税負担率というものは、それは非常に影響が大きいということで、これはだれでも、議論をしなくても十分承知しておって申し上げたのであります。でありますから、ただ国際比較を申し上げたのは、比較でもってわれわれが低いというのではなく、アメリカイギリスも三〇何%になるためには、いろいろな歳出を行なって今日の段階を築いてきているのであります。でありますから、そういう過程において日本がいま歳出要求というのを十分こなしながら、減税も年々やっていることでありますから、現在の段階において、このような例に見ても、二〇%前後という答申にあまりこだわらないということの引例をいたしたわけでありまして、比較で申し上げているわけじゃございませんので、こんなことは何回もこの委員会で議論されていることでありますから、いままで国会で申し上げたことは全部前提にして、その上で羽生さんの御質問に対して短い時間で御答弁申し上げれば、大体私の言うような表現になると思います。
  71. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 違います。私の質問に対して答弁していないですよ。私は、この二〇%云々ということは、またあらためて質問いたします、自分の持ち時間で。それを言っているのじゃないのです。諸外国の比較を、ただ簡単に、諸外国が国民所得に対する負担率が高いから、まだ日本の二二・何%というのはそう大きな割合でないという印象を国民に与えるわけです。だからもっと税金を高くしてもいいのじゃないかというふうな誤解を与えるということであります。前にそういうことが問題になって、そういうことは、もう大蔵省は税負担率の説明のときには、しばらく言わなかった、しばらくそういうことは問題じゃないのだと。ところが今度の国会でまたむし返しているのです。それはやはりこういう国会の場で明らかにしておかなければいけないわけです。そういう引例は間違いである。もしそれを引用されるなら注をつけなければならない。こういう注を、断わい書きを書かなければならない、可処分所得——税引き所得——で比較すべきものだ、そういうふうに注をつけるならいいが、そういうふうに、ただばく然と言われると、国民に、まだ税金は高くないのだという印象を与える。戦前は一二・九%。日本はまだまだ高いのです。もう一つ答えておらぬのは、最低生活にも所得税がかかっているような状態ではないか、これを直してから社会保障と減税の問題を論議するならいいのだ。それを最低生活に所得税がかかっているような状態において、そうして社会保障かあるいは減税かを論議しても題問にならぬということです。もしそうでないと言うなら、最低生活に所得税がかかっていないというふうに立論していただきたい。
  72. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) だいぶむずかしくなったようでございますが、初めからのことを聞いておりますと、租税の負担率というのは、国民所得の何割がいいかという問題。それで、大蔵大臣が外国の例を引いておるわけです。これは外国の負担率が多いとすぐとられますが、それはそうじゃなくて、負担率というのは、あなたのおっしゃるとおり、国民所得一人当たりどれだけで、どういうふうにふえていっておるか、そのときに、たとえば昭和三十五年、六年の四百ドルに足りないときの二二%と、五百ドルをこえたときの二二%の負担率といったら、軽いでしょう、五百ドルをこえた二二%。これを大蔵大臣が言っておるのです。あなたと同じことを言っておる。それをすぐ外国がこうだからとおとりになるほうがどうか。国民はみな知っておる、そうでしょう。だから常に国民所得が、一人当たり四百ドル以下ぐらいのときの負担率と同じ割合からいったら、非常な減税になる。だからイギリスなんか三三%の負担をしておるということは、国民所得一人当たりが大きいから。こういうことなんです。だから大蔵大臣は、負担率を二二%ときめるということは、私は答申を受けておりますが、私はそういう考え方はほんとうに生きた財政を扱うべきものでない、一人当たりの国民所得がどうふえていっておるかという……。同じ率でいったら負担が割合に楽になっておる、それを大蔵大臣が言っているのでありまして、そうおとりにならぬといかぬ、誤解のないように。それから最低生活費と言っておられる、大蔵省の調べでは、最低生活費ではない、基準生活費でございます。夫婦子供三人、基準生活費が四十七万四、五千円、だから一応四十八万円程度にしようかと、こう言っておるのであります。最低生活費じゃないのです。百数十万人の人が生活保護を受けている、生活保護を受けて東京でも年に二十万足らずでやっておられるじゃございませんか。それを考えますと、最低生活費を、あなたのおっしゃるように、生活保護を受けている人が最低生活という考え方もあります。基準生活費でございますから、最低生活費とは違うのです。だから生活保護を受ける人は、一応所得税を納めなくてもいい程度というのが今後のあれでございますから、その点はひとつ誤解のないようにお願いいたします。(「進行」と呼ぶ者あり。)
  73. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 委員長ちょっと。
  74. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 簡単でございますか。
  75. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 質問じゃないのですよ。
  76. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 木村君簡潔にお願いします。
  77. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは重要な問題ですから、総理大臣がお答えしっぱなしで、それで終わっちゃえば、承認したように思われますから、私は持ち時間がございますから、そのときにまた十分質問いたします。ただいま総理大臣は、これは標準生活費だと言われましたが、私も十分承知しています。マーケット・バスケットで調査したのは私も資料を持っております。私があえて最低生活といったのは、この中身を詳細に国民栄養研究所で調査して、これを、食料費は一日に幾らという計算をしておられたのでは、これは標準といいますけれども、最低ですよ。これはあとは詳しく自分の持ち時間で質問いたしますが、私はそれを承知して最低生活と言っているんです。その免税点です。最低課税を一応引き上げましたけれども、また物価が上がって、それが、所得税がまた最低生活に食い込むような状態になっているんです。政府は、三十八年度の物価値上がりを調整しただけで、三十九年度の値上がりは調整していないんですよ。だから再び最低生活に所得税は食い込む、こういうことになっている。私はまた持ち時間に質問いたします。
  78. 羽生三七

    羽生三七君 時間がないので、次の問題に移ります。  二月二十七日に、この参議院の大蔵委員会で、ただいまの木村さんの質問に答えて、宮澤長官は、国際収支の改善のために一段の金融引き締めの政策努力が必要だと、こう述べておられますが、大蔵大臣は、長官のお考えと同じなんですか。その辺はどうなんですか。
  79. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 同一閣内におりますから十分意見の調整をしておりまして、大体同じ考えを持っております。しかし、経済企画庁長官は、金融引き締めということばを使っております。私は金融調整と、こう言っておるわけでありますが、内容は大体、少し引き締まりぎみでいかなければいかぬだろう、金融の正常化に向かって随時調整を行なわなければいかぬ段階だろうと思っております。
  80. 羽生三七

    羽生三七君 今日までのこの経常収支が赤字になった場合の政府の金融政策、これを振り返ってみると、三十二年、三十六年など、大体収支が悪くなってから三カ月ないし六カ月で金融政策の手を打っているんです。今度は、このいままでの答えにあったように、あいまいもことしておる、どうも純粋に経済政策上考慮されんならぬ問題が、政治的な配慮からタイミングを誤っているんじゃないかという気がするんですが、その点はいかがでしょうか。
  81. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 経常収支の赤字基調が続きますときには、確かに金融調整を行なっております。でありますから、このたびも、昨年の十二月から金融調節機能を発揮しまして、窓口規制、預金準備率の引き上げ等、各般の施策を行なっておるわけであります。
  82. 羽生三七

    羽生三七君 それは時間がないからしつこく申し上げませんが、窓口規制や準備率の引き上げより、さらに進んだ引き締め政策を宮澤長官は言っておられると思うのです。それを私聞いておるのです。そういうところまで及ぶのかどうか、その点では長官と同じかどうか。
  83. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 公定歩合等を含めての話であろうと思いますが、もちろん公定歩合等を含めまして、機に応じて適切なる施策を行なうということが政府考え方でもあり、また日銀当局もそのような考え方を持っており、現在日銀当局と大蔵省の間には意見の相違はありません。まあ十分事態に対処しながら適切な処置をとっていこうという考え方であります。時間がないようだということでありますから、私から申し上げますと、過去の例に徴すれば、もう公定歩合を引き上げてもいいじゃないか、こういう御気分のようでございますが、しかし、公定歩合は、これはもうここでお答えをすれば——日銀の政策委員会がやることでございまして、まあ私たちも日銀の意向も聞いておりますし、政府自体が考えておりますのは、この四月に約二十年ぶり、戦後二十年になるわけであります。しかも、戦前を入れれば相当長い間の鎖国経済的な状態から、八条国への移行、OECDへの正式加盟というような状態で、国民自体が国際競争力に対応しなければならないということで、非常に先を見ながら体質改善を急いでおるわけであります。こういう基調に立っていろいろな現象があらわれております。その一つとして、金融界も、企業間の信用が大きくなっておるとか、融通手形というような、今までは、かかることが正規の場で議論をされてはいけないというような問題までも議論をしなければならないような状態になっております。同時に、国会においても三月危機を一体回避できるのか、十二月はともかく二月、三月に繰り越したけれども政府は三月危機は回避できるのか。三月から六月にこれを切りかえるだけだ、そういうものが相当部分あるというような事実に目をおおうわけにはいかないわけであります。でありますから、画一、一律的な引き縮め政策をとれば、確かに簡単であろうと思いますけれども、しかし、やはり国内産業に与える影響ということも十分考慮しながら、できるだけ摩擦を少なくして目的を達成するということに対しては、私は、政治の上からも、金融政策の上からも、全くしさいな観察をしながら、慎重な配慮をしなければならぬことは、これは言うをまたないと思うのであります。そういう意味で、あなた方から見られると、過去の例に徴して少しまどろっこしい、遠回りをしているのじゃないか、遠回りし過ぎて、どうにもならなくなっては困る、こういう御親切なお気持ちはよくわかりますけれども、国際収支に対しましては、きのうも申し上げましたように、とにかく御心配はかけないような見通しでございます、こう申し上げておるのであります。そうなれば、この歴史的な事態に対処しては、金融政策もよほど慎重に考えなければならないという配慮をいたしておるわけであります。
  84. 羽生三七

    羽生三七君 この一般的な引き締めの場合、いまの物価上昇の主要な要因である中小企業、それから農業、サービス部門、そういう低生産性の部門のその生産性の拡大をしなければ、物価問題の一部の要因は解消できないという重大な案件をかかえている際でありますから、私は、それがまただめになってしまって、依然として問題を提起した条件が解消されないということは困りますから、一般的なことを言っておるのであります。大局的なことを言っておるのでありますが、これは時間的な関係で最後の一つ、二つだけお尋ねして質問を終わります。  大蔵省が三十九年度の一般会計予算と財政投融資計画の執行計画にあたって、引き縮め基調にある金融政策に歩調を合わせて、予算の繰り延べあるいは場合によったら削減ということを考えておるというような報道があるのですが、いまそういう状況ですか。
  85. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま予算を参議院で審議をいただいておるのであります。この時点において実行予算を組むとか大きな削減があるとかいうことを申し上げるべきじゃありませんし、また、さような気持ちはありません。しかし、これは非常に重大な時期でありますので、財政・金融一体として運営せらるべきであるということで、過去において配意すれば何とかなったものが、予算成立までは非常に議論はありますけれども、執行に対しては比較的に事務まかせである、窓口まかせであるというようなことで、物価等に対して配慮がかけた場合があります。これは、ちょうどいま三月年度でありますから、四月の一日に予算がようやく実行されるようになり、それから六月までには十分本省との間に検討し、六月県会でもってようやくその年度の事業がきまり、そうしてまた、新規のものに対しては九月県会できまる、十月ごろには工事を執行するような場合には雪が降る、同時に日が短くなる、農繁期になる、こういうものと公共事業がぶつかるために、四百円から八百円、八百円から千円ならば、千円に上がった労賃は下がらないのであります。そういう意味で四九%にのぼる降雪地帯、それから農村地帯等の公共事業等は繰り上げて、できるだけ春から夏にかけてやるということが好ましいと思います。そうして農村が手あきになって出かせぎに出られるような事態になったら、表日本に集中的に工事をするということが、材料の面からも、また労働力移動の面からも、私は当然考えらるべき問題であろう。特にオリンピックの問題は、どうしても八月までには片づけなければならぬということにあわせて、それから東京、大阪に集中的に工事をやれば、物価、労賃も上がることは当然の帰結であります。こういうこまかい歳出面の配慮は、新しい立場から勇気を持ってひとつ考えよう、こういう考え方を持っておるのでありまして、御審議を願っておるいまの予算を、いまから削ろうとかたな上げしようという考えは持っておりません。
  86. 羽生三七

    羽生三七君 三十九年度予算の審議の途中でいまのような質問をするのは、いささかやぼだけれども、しかしそういう方向へいく十分な基調が存在しておると思ったのでお尋ねしたのでありますが……。  企画庁長官にちょっとお尋ねいたしますが、今度の所得倍増計画のアフターケアかどうか知らぬが、中期計画、経済審議会でやっております中期計画は、一体所得倍増計画とどういう関連性を持つかどうか、それからアフターケアを今度は中期計画でどういう——いやアフターケアという立場でおやりになる場合に、今度の中期計画の性格はどこにあるのか、その一点だけ。これで質問時間終わるところでありますから、この一点だけお尋ねいたします。
  87. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 中間検討をいたしました結果、過去三年間の間に雇用が非常に増大した、所得格差が縮まったといういい成果があると同時に、御承知のようないろいろな問題が出てきておるわけであります。  そこで、これらの問題をもう一度再検討をいたしながら、昭和四十五年度に至りません昭和三十九年から五年間の間に、どういうことに重点を置いて施策をしていったらいいか。これはいわゆる低生産部門にどういう対策をするか、あるいは公共投資がおくれているのをどういうふうに処置したらいいか。先ほど御質問の経済長期計画も五カ年計画の中に入ってくるわけでありますが、そういったものをつくろうと思っております。つまり昭和三十六、七、八、年率九%で歩いてまいりましたが、これから五年間はどういう経済の歩き方をしていくか。これを計画として進めてみたいと思います。できれば年次計画も出してみたいと思っております。なお、それで四十五年までに残り二年が残るわけであります。最後の二年にはこれからの中期計画の結果を検討しながら最後の仕上げをしていこう、大体そういう性格のものであります。
  88. 羽生三七

    羽生三七君 もう一問だけ。
  89. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 時間がないから簡単に。
  90. 羽生三七

    羽生三七君 ごく簡単に、最後に総理一つわからぬことがあるのでお尋ねしたいのであります。  憲法調査会の結論の問題、これなんかに関連する問題ですが、よく総理の御答弁の中に、世論の動向を見てというお話がありますが、国会や国民投票というそういう形で世論の出る前の世論の動向をよく見きわめてということは、どういうことですか、ちょっとのみ込めぬ点があるので、これをお尋ねいたします。
  91. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私が憲法問題につきまして世論の動向というのは、国民投票をやってみるということでは全然ございません。やはりいろいろな意見が出ます。そのときに国民がどういうふうにこの問題をお考えになりますか。国会政府に報告がありました場合に、これを十分国民に検討してもらって、そして国民のおもむくところを見きわめたい、こういうふうに考えております。
  92. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 羽生君の質疑は終了いたしました。  これにて休憩し、一時五十分から再開いたします。    午後零時四十五分休憩      —————・—————    午後二時七分開会
  93. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 予算委員会を再開いたします。  委員の変更がございました。  高橋進太郎君及び向井長年君が辞任、塩見俊二君及び田畑金光君が選任されました。     —————————————
  94. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 質疑を始めます。山高しげり君。
  95. 山高しげり

    ○山高しげり君 人つくりは、政府政策の中でも大きな一つでありますが、私はその人つくりの基盤の一つ、それも大きな一つである家庭の問題を中心総理並びに各大臣に御質問を申し上げたいのでございます。  まず、総理大臣にお伺いをいたします。総理国会冒頭の所信表明において、経済の繁栄に対し、心の再建の必要を指摘する声が高まっていると言われました。そしてそれに対して民族の伝統に根ざす正しい価値観の確立は大切だとされて、道徳教育と並んで家庭教育の充実強化を進め、人間性の涵養をはかるよう配慮したいとお述べになりました。そこで、三十九年度予算案を見ますと、なるほど家庭対策らしいものがちらほら出てはまいっております。しかし、これらはまだ局部的の感を脱することができないようでございます。私は、この際、総理御自身から、青少年対策ときわめて有機的な関係を持つこの家庭対策について御所信を承りたい。家庭に関する総合的政策とでも申しましょうか、これを伺いたいのでございます。
  96. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 家庭の問題につきましては、精神的にまた物理的に両面から考えていかなければならぬ、あたたかい家庭はやはり住宅の快適から始めていかなければならぬと思います。その意味におきまして、時間はかかることでございますが、やはり一世帯一住宅、これが必要であろうと思います。また住宅を持つと同時に、やはり子供さんの気楽に運動し遊べる場を持つことも必要でありましょう。こういうために、いわゆる森林公園その他を今後確立していかなければならぬ。やはり環境の整備が必要であると思います。また精神的の方面では、やはり両親、兄弟お互いにそのつもりでやっていかなければならぬ。私は地方へ参りましたときに、この問題につきまして、われわれが子供のときに両親あるいは兄、姉から受けたあのしつけというものを思い出したときに、われわれ自身がわれわれの子供にそれだけのことをやっているだろうか反省する必要がある、こういうことをよく地方へ行って話しておるのでございます。やはり両親や、兄、姉の気持ちが私は家庭教育中心になっていくべきものだと考えておるわけでございます。
  97. 山高しげり

    ○山高しげり君 もう少し総理から総合的な政策らしい家庭の問題を伺うことができたらばと期待をしておりましたのですけれども、いささか期待はずれの感もございますけれども、だんだんまた承ってまいりたいと思います。  最近のある生活雑誌に載りました朝御飯を食べてこない子供たちという記事がございます。これはお忙しい総理大臣はじめ閣僚の諸君は、まだごらんになるおひまがないのかもしれませんから、ちょっとかいつまんで申し上げてみますと、東京のある小学校で、三時間目の体操の時間に倒れた子供がありました。先生が調べてみられたら、その子は病気ではなくて、朝御飯を食べてこなかったということがわかったのです。それからだんだんに調査をしました結果、都内の小学校二十四校で二万人余りの子供について調べましたところ、その中の千七人が朝御飯を食べてこない、または食べてきても、ミカンを二つとか、クラッカー二枚に紅茶を飲んできたというような程度で、食べたり食べなかったりした子供も入れますと、四人に一人はちゃんと朝御飯を食べてこない子供だったというのでございます。そしてなぜ食べてこなかったかという理由に至りますと、お寝坊というのが四一%です。これは子供が寝坊をしたのもあれば、親自身の寝坊もあるわけでございます。それから食べたくないというのが三二%、全く驚くべき数字といえるのではないかと思います。昔は家が貧しく朝御飯も食べられない、朝食抜きで登校をした子供がございました。いまでも全く皆無とはいえないと思いますが、この事実に明らかにされたところは、いわゆる経済成長の陰にひそむ家庭の変貌というのがあるのじゃないでしょうか。少し大げさにいえば、いまや日本の家庭は崩壊しつつあると見ることもできなくはないように思われます。こうした事実を申し上げまして、総理は一体どんなふうな感想をいまの実話に対してお持ちになられたでございましょうか。
  98. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 原因が寝坊とか、食べたくないとかいう問題につきましては、私は、やはり先ほど申し上げましたように、親のしつけということが大事だ、これが原因だと思います。どちらの寝坊かわかりませんが、いずれにしても、親自身並びに子供の責任だと私は考えます。食べたくないから食べなかったというのにつきましては、これもやはりおとな、年寄りなら朝めしを抜くこともございますが、働き、伸び盛りの子供にそういうことがあるということは、これはやっぱりしつけの問題だと考えております。
  99. 山高しげり

    ○山高しげり君 寝坊というのは、実は父親もあれば母親もありまして、ことに母親の寝坊が著しい原因のようでございます。でございますから、総理が御感想を持たれたように、結局はおとなに問題がある、子供に朝御飯も食べさせてやらなかったおとなが悪いということになるようでございますけれど、必ずしも親が堕落したと、こう簡単に言えない事情も、こまかく掘り下げて分析をすればあるのではないかと思われるのでございますけれど、結局、総理は、そういうまことに困った親が発生をしてきておりまして、総理がこいねがっておられる人つくりの妨げをしておるというような現状に対しては、政府としてはどういう方法でこういう親に対して人つくりの仕事に協力するようにもっていこうとお考えでございますか。
  100. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういうことがございますから、私は人つくり、国づくりが必要であると呼びかけて、そうしてできる限りの人つくりの方面についての予算その他行政機構をもっていこうとしておるのであります。
  101. 山高しげり

    ○山高しげり君 総理大臣が人つくり懇談会というあなたの諮問機関をお持ちと聞きましたけれど、その人つくり懇談会がきょうまでにどんなふうなお仕事をしてこられたか、この際承りたいと存じます。
  102. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) たぶん三回ぐらい開いたかと思います。しこうして、これは予算編成に相当の役割りをして下さったと考えております。
  103. 山高しげり

    ○山高しげり君 人つくり懇談会がお始まりになったのがたぶん一昨年ごろではなかったかと思いますが、私の記憶に誤りがなければ。三回お開きになったのは、御勉強があったかなかったか、その辺はよくわかりませんけれど、予算編成の上にたいへんにお役に立たれたというお言葉はまことにけっこうでございます。つきましては、次々に関係大臣にこまかいお話を承ってまいりたいと思います。  次に、文部大臣にお願いを申し上げたいと思います。ただいま総理といろいろとお話し合いをいたしまして、人つくりの問題でだんだん進めていらっしゃるということでございますが、文部省のことしの新規の予算には、いままでになかったような家庭教育学級とか、いま総理が感じられたような問題に対する対策、措置等も出てきておるようには思うのでございますが、総理がたびたびおっしゃる家庭教育の振興について、この際、文部大臣にその御抱負を承りたいと存じます。
  104. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 人つくりの問題が最も重要な問題として取り上げられておりますことは、いまさら申すまでもないことであります。文部省の行政は、どの部面におきましても、これに直接、間接関係を持つものでございますが、特にいまお話に出ました家庭教育の振興という問題につきましては、今後特別力を入れてまいりたいと思っておる次第でございます。これも行政の各般の部面においてその努力をしなければならぬと思うのでありますが、特に明年度からは家庭教育学級を新設いたしまして、家庭教育の改善、充実をはかってまいりたいと思っておる次第でございます。申すまでもなく、国民の育成につきましては、小さいときから青年期にわたりまして、家庭、学校、社会、それぞれの面において最も重要な問題として努力しなければならぬところであろうと思うのであります。特に幼児期の教育は人間形成の基礎をつちかうものでありますから、この時期に格別の努力をしてまいる必要があろうと思うのでありますが、そのためには、日常生活をともにしていわゆるしつけを行ない、また指導する両親がしっかりしてもらいませんというと思うような成果をあげるわけにまいりませんので、この両親の教育を充実したいという問題があるわけであります。  また、近来青少年の健全育成とか、あるいは非行対策というようなことがお互いの頭を悩ましておる問題でございますが、その観点からも、家族における子供の教育が実に重要であるということがいわれておるわけであります。学校教育、社会教育、どの面においても重要な課題でありますが、これと並んで家庭教育の振興の必要性が叫ばれておるわけでございますので、文部省といたしまして、かれこれ勘案いたしまして、家庭の教育的機能、親の教育役割りなどについて両親が学ぶ、また、考える機会を与えることが家庭教育の振興に役立つものと考えまして、新たに全国的に家庭教育学級の開設を助成いたしまして、いわゆる成人教育としての場の拡充をはかり、家庭教育の振興普及を推進したいと考えておる次第であります。
  105. 山高しげり

    ○山高しげり君 家庭教育振興についての文部大臣の御抱負を承ったわけでございますが、私どもは、家庭教育振興ということばが戦時中にも実にしばしば使われたことばでありますだけに、受ける側にも、何となくあつものにこりてなますを吹くというような心理が働いていないでもないように感じるわけでございます。何か「婦人よ家庭に帰れ」という風が吹き始めているように受け取っている婦人たちもいるのでございます。  で、ただいま家庭教育学級についていろいろお話がございましたけれども、なるほど両親教育というような目的で新設なさいますこの学級、その御趣旨はよくわかるのでございますが、私どもがまたこれを受け取ります場合には、現在行なわれております婦人学級、あるいはまた、PTAの現状というようなものを通して見ましたときに、せっかくよい思い立ちの家庭教育学級でありましても、これがはたして成果を簡単に生むであろうかどうであろうかという見通しにつきましては、いささか不安がないでもないように思うわけでございます。婦人学級は非常に成功をしたようにいわれておりますけれども、その内容を検討してまいりますときに、必ずしもその婦人の学習内容というものが妥当であるかどうか、民主的な時代だから、おかあさん方に選択をまかせるといったようなところから、結果には、お料理だとか、子供のしつけだとか——まあ子供のしつけ、けっこうでございますが、しつけしつけということばもずいぶん吟味をしてみないと、中身によってはほんとうに子供のしあわせにならないしつけもずいぶん横行しておるわけでございます。ともあれ、婦人学級の実情というものにもいろいろ問題点がございます。それからまた、PTAというもの、これは言うまでもなく、父母と教師の会と訳されたり、両親と先生の会と訳されたり、おとうさんとおかあさんと先生が三位一体になって子供を守っていく組織のように承っておりますけれども、現実はどこへ参りましても大体母の会でございます。おとうさんは出てくることができない。まあ都会であるならばおつとめに出て行っている。農村ではこのごろは兼業農家がふえておりますから、きのうも三ちゃん農業のお話がございましたけれども、やはり昼間のPTAの会合には、てて親は非常に出にくいような実情でございます。で、都市でも農村でも、いままでですらなかなかPTAにてて親が出てこなかった、こういう現状の上で家庭学級で両親を教育しようとお望みになりましても、はなはだそこにてて親の出てきにくい事情というものが解決をいたされませんと、実質的に成果があがりにくいのではないか。これらの点は、どんなふうにお考えでございましょうか。
  106. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 婦人学級あるいはPTAの会合というものに対するお話の、さような事実が私どもあろうとは考えます。PTAにつきましても、もっと内容の充実をはかってまいらなくちゃなりますまいし、また、婦人学級につきましても、改善を要する点も多々あろうかと思うのであります。この家庭学級につきましても、お話のような心配がないとは申し切れないのであります。婦人学級などの改善をはかりますと同時に、家庭学級につきましては、特にそのようなことにならないように御注意をいただいたわけでございますが、われわれとしましても、地域の実情に即して——年間毎日やるわけではもちろんございませんから、地域の実情に即しまして、できるだけ両親の出席できるような時期をとらえて学級において勉強してもらいたいと、こういうふうに努力してまいりたいと思います。ぜひこれをひとつ成功さしてもらいたいものと考える次第でございます。
  107. 山高しげり

    ○山高しげり君 やはりお考えのとおりに、私どもの不安も同じところにあるようでございますが、どうぞひとつ末端の実情というものに即して運営をしていただくということを特に希望をいたしたいと思います。  それから、この機会にもう一つ文部大臣にお尋ねをいたしたい事柄は、前の問題とはたいへんに違うのでございますが、夜間中学校の問題でございます。  これは、大都市にのみ存在をするたいへん特殊な施設でございますけれども、義務教育の今日に、その義務教育すらを昼間に受けられない子供たちがおりまして、それに対して文部省はあまりお好みではないらしいのですが、夜間中学校というものが一部の大都市に存在をいたしております。そこに学んでいる子供たちの声を直接に聞いた者でございましたならば、国としては、いつまでこういう問題をこのまま放置をなさるのだろうと思わないわけにまいりませんので、この際文部大臣から、夜間中学校についてのお考え、今後これをどうなさろうと思っておいでか、その点について承りたいと存じます。
  108. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 御指摘のような夜間の中学といわれるものが今日なお存在いたしておるわけであります。これは今日の義務教育制度のたてまえから申しますと、本来存在すべからざるものと私ども考えておる次第でありますが、実際上の必要から、そういうものがまだ存在しておるのであります。  多年この問題につきましては、いろいろ関係者の間において努力をしてまいったのでありますが、逐年この夜間中学と称せられるところの学校数ないしはこれに学んでおります子供の数も減ってまいっております。昭和三十八年度におきましては、全国で三十六校、八百二十名、こういう数字になっておるわけであります。われわれといたしましては、そのやむを得ない事情というものにつきましては、あたたかい心をもって見なければならぬと思いますが、しかし同時に、このようなことがいつまでも存続するということは、決して好ましいことではございませんので、これに対しまして、いろいろ調査も加え、また、具体的な指導もいたしまして、できるだけこのような現象のないように、みんな一緒にお昼の学校で学ぶことのできるようにいたしたい、その方向に向かって今後ともに大いに努力してまいりたいと存じております。
  109. 山高しげり

    ○山高しげり君 方向はわかりましたけれども、三十八年度において、全国で八百二十名。これを自然に減っていくのを待たないで、もちろん自然に減っていくのをお待ちとは思いませんけれども、積極的に何年後には夜間中学校は解消させるというような明確な御方針はないものでございましょうか。
  110. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) この問題につきましては、外部から考えますれば、そういうような事態にしなければならないというふうなものではないと思うのです。いろいろ説得し、いろいろ勧誘いたしましても、なかなかそのとおりにいかないのが現在の状況でございます。何年先というふうなことを明確に申し上げるわけにはまいりませんけれども、私どもは、それぞれの実情に即した、いわゆる個別的な指導も加え、また協力もいたしまして、すみやかにこのような現象の解消するように努力する、こういうことを申し上げざるを得ないわけでございます。
  111. 山高しげり

    ○山高しげり君 お話がはなはだ抽象的でございまして、残念に思います。もちろん機械的に八百二十名が昼の学校へ行くように簡単に片づくとは私も思っておりませんけれども、そのなかなかそうはいかないとおっしゃる原因の中には、分析してみますと、いろいろな問題があるように思われます。文部省当局のみのお仕事で片づかないのかもしれません。厚生省にもまたがっておる問題かと思います。ことに夜間中学校の存在というものは、長欠児童の問題にはっきりつながっているように思われます。総理が人つくり、人つくりとおっしゃるのに、その人つくりをさまたげる諸事情が一向緩和しないような感じもそこら辺で、私どもは持たざるを得ないのでございます。ひとつ、いま文部大臣がおっしゃいましたように、今後なるべく早くそれらの問題が根本的に解決をいたしますように希望をする次第でございます。  次に、厚生大臣にお願いをしたいと思います。  やはり家庭という面から、いろいろ厚生省のお仕事を見てまいるわけでございますが、まず第一に、従来、児童局と称せられた局を、明年度から児童家庭局に改称をなさるように承っております。改称ではないのかもしれません。新たなお役所ができるのかもしれませんけれども、「家庭」という二字が入りましたので、たいへん耳に立つわけでございます。あらかじめ、おそらく非常な新しい御抱負もあると存じますので、なぜ従来の児童局が児童家庭局に発展をするかということにつきまして、まず最初に厚生大臣に承りとうございます。
  112. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 従来、児童の福祉というものは、大体において心身に障害のある者、あるいは保育に欠ける児童、要するに要保護児童の対策を主にし、これとともに一般の健全な児童に対しましても、たとえば児童遊園をつくるとか、児童館を整備するとか、あるいは地域の子供会を育成するとか、こういうふうな方策をとってきたのでありまするが、これらの方策は、主として児童の家庭外における状態に対する育成指導であると、こういうことであったのでありまするが、最近における児童の問題は、児童の家庭外の問題よりも、さらに家庭に入っての問題が非常な大きな問題になってきた。すなわち、児童を健全に育成するためには、健全なる家庭が必要である。したがって、私どもの行政も、家庭外の児童だけを対象にしないで、家庭内の児童についても、十分にひとつ考えていかなければならぬ、こういうことで、私ども前から母子の相談員、こういうものを置きましたのでありますし、また、全国的に三歳児の一斉検診、こういうことを行なってきたのでありますが、その際において、児童の健康ということよりも、児童のしつけとか、あるいは育児とか、こういうふうな問題につきましての非常な強い要望が一般母親のほうからある、こういうことからいたしまして、いまのような状態でなくて、家庭にまで入り込むということばは少し語弊がありますが、家庭の問題を取り上げていく、こういうことで家庭の母親の相談にひとつ乗っていく、すなわち、育児に対する助言とか指導とか、こういうものを強化していきたい、こういうことで来年度からは、福祉事務所に家庭相談室、こういうふうなものを設けまして、一般の家庭の母親の相談に乗りその助言をする、こういうふうな方法をとってまいりたい。すなわち、健全な家庭において子供を育成することが大事だ。すなわち、子供というものできるだけ家庭で保育することが好ましい、こういうふうなたてまえからして、そういうふうな相談に乗る施設を全国的にひとつ広げてまいりたい、こういうことと同時に、子供の健全な育成ということのためには、乳幼児とか妊婦の登録管理等もして、そうして子供を健康に育てる、こういうふうに家庭内のいろいろの問題についての相談に乗る、こういうふうなたてまえにしたために、単なるまあ児童局だけでなくて、これと両方をひとつ組み合わせた指導をしたい、こういうことで児童局というものをまあこれは改称して、この児童を指導する仕事を家庭外から家庭内のものまですぐにでもお役に立つようにめんどうをお手伝いをしたいというようなことで、そのような名前に変え、また、仕事もその面に拡充していきたい、こういうことで変えたのでございます。
  113. 山高しげり

    ○山高しげり君 その新しいお仕事の中に、結婚前の指導と申しますか、婚前指導というものをお含みになっていると聞いておりますが、その点はいかがでございますか。
  114. 小林武治

    国務大臣小林武治君) いまのお話のほうは、従前家族計画というものがございまして、日本では非常に妊娠中絶が多い、こういう妊娠中絶などは母体を非常にそこなうということで、できるだけこれを避けるためには、妊娠を控える、こういうふうな避妊方法、こういうことを普及していきたいということで、従来母親を対象として、いまのような家族計画のいろいろの講習と申しますか、指導と申しますか、こういうものをいたしてきておりましたが、母親だけではなくて、未婚あるいは子供を持たない方まで、こういうことの指導とか助言とかの対象にしたい、こういうことで、未婚者もその範囲の中へ入れてそうして指導助言をする、こういうふうにしたい、こういうことでやっているのでございます。
  115. 山高しげり

    ○山高しげり君 未婚者を対象といたします場合には、女性ばかりでなく男性も含むのでございますか。
  116. 小林武治

    国務大臣小林武治君) いまのところ、厚生省は御婦人を対象にして考えております。
  117. 山高しげり

    ○山高しげり君 児童家庭局になぜなさったかという御説明はよくわかりました。  それで大臣のおことばの中に、家庭相談室のことが出てまいりましたけれども、たいへんにちょっと疑り深いようでございますが、この新しく設けられる施設につきましても、私どもは現実面から見まして、なかなかこれはお骨が折れるのでないかというふうに察知されるのでございます。それは福祉事務所単位におつくりになるというお話でございますけれど、大ぜいの大臣がお考えのような育児相談そのほかの要望を持って出向いてくる母親にとって、福祉事務所というものはそう多数あるわけでございませんので、一福祉事務所単位の住民の数などを考えてまいりますと、そこまで電車に乗ったりバスに乗ったりして小さな子供をかかえて育児相談にはたして何人の母親が行くであろうかというようなことも考えられるわけでございます。もちろん世上にはまたいろいろな立場から育児相談の窓口は開かれておりますから、必ずしも福祉事務所まで行かなくても用は足せるかもしれないのでございますけれど、せっかくお開きになるので、福祉事務所におそらく権威者の方が窓口におすわりにはなるでしょうけれど、相手方にここまでおいでと言ってすわり込んでいる形式が相談室というものではないか。ところが、同じく厚生大臣がお話の中でお触れになりました厚生省の施設の一つとして母子相談員というものがあることを私も存じておりまして、これは対象は母子家庭のように伺っておりますが、仕事のやり方は訪問指導のようでございます。こちらから足を運んでいく。母子家庭の実情が、かりに母親が昼間働いているから、行っても昼間は留守だという場合には、母子相談員は勤務時間以外の時間でも持ち出しで夜間訪問をしておるというような実情のように知っております。こうなりますと、足を運んでいくやり方とこっちまで出向いてもらうやり方とは、さっき総理がおっしゃったあたたかいということから言えば、出向いていくほうがあたたかいように私どもは感じるのでございますが、これはしろうとの感じでございましょうか。その辺、私家庭相談室が要らないと申すのではございませんけれども、かりに家庭相談室でお仕事をお始めになっても、一方母子相談員のようなこちらから出向いていくお仕事も厚生省はお持ちなのでございますから、そういうお仕事もやはりこの際ひとつ、相手が母子家庭でございますから、家庭の仕事を強化するという意味では、一段と母子相談員の処遇なども改善をしていただいて、ずいぶん多くの母子家庭に喜ばれている母子相談員制度というようなものもこの際確立をしていただけるのではないかしらんと実は期待を持って予算も見ておりましたのですけれど、まだ母子相談員は非常勤のままのようでございます。将来母子福祉法が制定の場合にはどうであろうかと見ておるようなわけでございますけれど、あたたかいという政治をやるためにはすわっているよりは出向くほうがよいという私の考え方については、大臣はどうお考えでございましょうか。
  118. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これは、お話のように御要望によって出向くというふうな方法もぜひ採用したい。何分にも初めての試みでありまして、来年度は全国でも二百十カ所、こういうふうなことでありますし、これから人数の点もございますので、十分ひとつ拡充をして、保健婦がたとえば巡回する、母子相談員が巡回する、こういうこともやっておりますので、いまの家庭相談員というようなものも、ひとつできるだけ出向くというふうな方法も併用したい、こういうふうに考えております。
  119. 山高しげり

    ○山高しげり君 私の考えに大臣も御賛成をいただいたようで、うれしゅうございますけれど、家庭相談室というものには、おそらくは、そこにすわってはいるけれども、出て歩く人よりはずっと専門的な人を置こうというようなお考えもあるのでないか、そんなことが考えられるわけでございます。この厚生行政でお働きになる方にも、私は、母子相談員というものは、率直に言って専門家であるようなないような、非常勤の形がずいぶん長く続いておりますけれど、そのほかのたとえば民生委員の問題にしても、いろいろと役所関係で専門家がなさるお仕事をお手伝いをしているような形のものも相当今日ございます。これは児童行政に限ったことではないと思うのでございますが、そういう専門家でない方がお手伝いしていらっしゃるやり方と、それから、それではいけないので、将来はやはり専門家に働いてもらわなければならないというお考えと、おそらく二つあるのでないか。現在の厚生省としては、その辺は、大臣は、将来のこれは問題でございますけれど、どちらをおとりでございましょうか。もちろん、専門職がたくさんできまして働いていただく場合にでも、奉仕者と申しますか、そういうソーシャル・サービスをなさる方は協力者として当然存在はすると思うのでございますが、現在の方々をもっと専門家に仕立て上げていくという、これについてはどうお考えでございましょうか。
  120. 小林武治

    国務大臣小林武治君) お話しのように、児童家庭相談室、これに勤める者は専門家をひとつ依嘱したい、こういうことを考えておりますし、また、現在児童委員というものが相当おって、その筋の仕事をされておりますので、これらの方も講習等の方法によって家庭相談室の補助者として機能を発揮できるようにいたしたいと、かように考えております。
  121. 山高しげり

    ○山高しげり君 こういうことはもうきょうは申し上げないつもりでおりましたのですけれども、大臣のほうから児童委員のお話が出ましたので、やはり一言申し上げずにはいられなくなりましたのは、現在児童委員は民生委員が兼任でおいでになります。民生委員が曲がりかどに来た云々というような声もある現段階におきまして、将来この児童行政を積極的に伸ばしていこうというお立場で、民生委員と児童委員の兼任の問題をもう解決をしなければならない段階にきているとはお考えにならないでございましょうか。
  122. 小林武治

    国務大臣小林武治君) いまのこの民生委員というものは、保護家庭と、こういうものを主として対象にされておりますが、児童委員というものはもう、要保護児童とか、そういう問題をこえて、一般児童の相談にも乗る、こういうことになりますので、民生委員のいまのような兼務と、こういう形はおいおいに改めて、ほんとうに児童委員らしいものをひとつ委嘱をしていく、こういう方法にいくべきものであると、かように考えております。
  123. 山高しげり

    ○山高しげり君 どうもありがとうございました。  厚生大臣に最後にもう一言だけ承りたいと思います。それは、さっき総理も、子供の問題について、家庭対策としても精神と物質と両面からあたたかい施策を行なわなければならないという中に、子供に対して遊び場の問題とか環境整備の面があると、こういうふうにお取り上げになったようでございますが、その子供の遊び場の御所管は厚生省のように存じます。もっとも建設省でも児童公園を建設しておいでになりますけれども、児童遊園等子供の遊び場というものは厚生省がお取り扱いのようでございますが、去年吉展ちゃん事件がございまして、あれが児童公園で遊んでいてそこから誘拐をされた。これは日本中のおかあさんの涙がまだかわかない問題でございますけれども、この児童遊園とか、あるいは児童公園、なかなか設備のよいものを建設省がいくらおつくりくださいましても、そこには人間の配置がございません。厚生省では、厚生員と申しますか、指導員と申しますか、その遊び場に人間がおって子供が正しく遊ぶような指導をするというお仕事を少しは手を染めておいでになるようでございますけれども、三十九年度予算案におきましては、この児童遊園における厚生員の予算というものが思うようにお取れにならないというようなことも漏れ聞いたわけでございます。私どもは施設だけではだめだと思います。吉展ちゃんがいなくなっただけじゃなくて、ついこの間も東京都内の児童公園で女の子がすべり台から落ちて死んだということもございました。けがをしたのもございます。そんなふうに、ほんとうに子供が喜んで遊ぶ遊び場にも、だれかおとなの目があって、人間がそこに配置をされて子供の命を守るということをしていかなければ、総理のおっしゃるあたたかいということにはどうもならないのではないでしょうか。その辺、予算の獲得につきまして御苦労もあったのだと思いますけれども、ちょっと伺わしていただきとうございます。
  124. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これは、お話のとおり、施設をつくれば、なるべく子供が危険でないように指導員を置くのは当然であります。これは私ども、施設、特に来年度は子供用のプールというようなものも全国に八カ所くらい国庫補助のもとに市町村でつくっていただこう、こういうふうな予算がいま出ておるのでありますが、これらについてはどうしても指導員が必要だと思うのでありまして、私どもも多少の国庫補助を取りたい、こういうふうに考えておりますが、しかし、施設ができれば、施設の管理者は市町村でありまして、当然第一次的には市町村が、いかにこれを管理するか、こういうことも考えていただくのがよい。私どもはむろんこれに対して助成もしてあげたいと存じますが、ことしは遺憾ながらそういうふうなものについて十分な措置ができなかった。しかしまあ、私どもとしては、施設ができたなら、施設を管理する市町村が責任を持ってそういうこともぜひしていただきたいものだ。私どももまた国庫補助等でお手伝いをしたい。さしむき来年度としては、プール等につきましては指導員等のあれは取れなんだ、したがってぜひひとつ町村等において責任を持ってこれを管理していただく、こういうことをわれわれは注文申し上げたいと思っております。
  125. 山高しげり

    ○山高しげり君 大臣のたいへん正直なお話でございます。お骨が折れたであろう、ごもっともとも思うのでございますが、結局市町村の責任ということになりますと、そういう荷物のついたお仕事は市町村はいやがってやらないという結果が生まれやすいようでございまして、国民はまあ一番下で待っておることでございますので、まあ市町村の力というものがあんまり強くはない、その現状をよく踏まえていろいろお仕事をしていただくように望みまして、厚生大臣への御質問終わらせていただきます。  次に、おそれ入りますが、労働大臣にお願いをいたします。労働大臣に承りたいことは、年少労働者の問題、しかも特に中小企業における年少者の問題でございます。伺う私の気持から申しますと、集団就職などで親のひざ元を離れてまいった年の若い少年、少女、都会に働きにまいりましても、承ればその定着率というものが案外低いようでございます。大きな職場に雇われた場合と違って、中小企業それ自身に問題があることでございますから、話に聞いたようにたいへんいい職場でもないとか、またいなかから出てきて言葉が違うとか、いろいろな事情もありまして、数カ月で家に帰ってしまう子供が非常に多い。これは中小企業の方々の一つの悩みになっているようでございますけれども、私が承りたいのは、そういう子供たちの環境整備というものを労働省としてはどんなふうにお考えをいただいているか。これは親元を離れてきた子供の問題でございます。私の承りたい気持は、母親の気持でこれを伺うものでございます。親はみな心配をしておりまして、ほんとうにお仕事に定着をしてほしいと思っているのに、案外早く帰ってくるし、帰ってきたあとの子供がやはりいなかにもなかなか落ちつかない。それで、勤労青少年対策と申しましょうか、中小企業における年少労働者の問題につきまして、どんなふうにお考えをいただき、どんな新しいお仕事を予定をしていただいておるのか、少々不勉強でございますから、教えていただきとうございます。
  126. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 特に中小企業等に働いております年少労働者の保護のために、労働省といたしましては年少労働者福祉員制度をかねてから設けておる次第でございます。大企業に比べまして何と申しましても中小企業は比較的環境においても恵まれておりませんので、これらの企業に働く年少者の福祉増進をはかりますため、三十三年以来中小企業団体に年少労働者福祉員制度の設置を進めてまいっております。幸いにこの制度は、中小企業者の理解を得まして、ことしの二月現在で約二万人の福祉員が全国に設置されておるのでありますが、福祉員は、中小企業団体傘下の事業所におきまする年少労働者の労働条件・労働環境の改善、人間関係教育訓練、生活相談、その他余暇の善用など、広い範囲にわたって活動を進めております。中小企業の現状から見まして、福祉員の活動は年少者の定着を高めまするためにも重要なことでございますので、労働省といたしましては今後ともその活動の充実活発化を期してまいりたいと思っております。研究講習会、地区連絡協議会の開催、参考資料の作成配付などを行ないますとともに、関係機関との連繋を密にいたしまして、福祉員活動が今後さらに一そう充実いたしまするよう施策を進めてまいりたいと思っております。
  127. 山高しげり

    ○山高しげり君 福祉員制度のことはいささか存じ上げておるのでございますけれども、全国で二万人というのでは、やはりまだ線まではいかない、点の程度かなと思われるのでございますが、それにいたしましても、その福祉員その人が中小企業の事業主の方が多いようでございますけれども、自分のことで精一ぱいのだんなさんたちが、自分のうちあるいは近くに働いているその若い人たちのためにだんだん時間が出せなくなってきた。熱意は持っていても思うようにはやれないという声も、私ども聞かないでもないのでございます。この点、先ほどの民生委員、指導員と共通の、一つのやはり民間の奉仕者制度というものにあるいは限界があるのではなかろうか。これはやはり、行政当局としては、皆さま方に大きく考えていただかなければならない問題でないかしら。末端へ行きますと、あの人と目ざされるような人は、どこからでも目をつけられておりまして、悪く言えば、名刺に印刷しきれないほど肩書きが並んでしまうとか、実際のお仕事はなかなか思うようにはやっていかれないとかというような現実もございます。福祉員の方はそれほどあれもこれもと名誉職のように名刺に書き立てている方ではないようでございますけれども、中小企業のその骨の折れることでありますだけに、その点、大臣もいまおっしゃいましたけれども、今後ともそれが伸びますようにひとつ御配慮が願いたいと思います。  それからもう一点、労働大臣にお伺いをいたしたいのは、ホームヘルプ制度というものを労働省で手がけておいでになりますが、これは勤労者の家庭対策というふうに私どもからは見えるのでございますけれども、これも、現状は、大企業においての利用度のほうが高いようでございますけれども、中小企業なんかにおきましても、家庭の中に家政婦さんが通ってくるようなホームヘルプの制度というものが、勤労者の家庭生活を向上させる意味からも、今後伸びていってほしい職種のように私ども見ておるわけでございます。その点に一言だけお答え願いたいと思います。ホームヘルプ制度につきまして将来どんなふうにお考えか。
  128. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 現在までのところ、ホームヘルパーを利用いたしておりますのは、主として大企業に偏しておるように存じております。しかし、お話のとおり、中小企業におきましても、その必要性は相当高いものと考えておりますので、今後この方面にも大いに奨励いたしてまいりたいと思っております。現に、最近のことでございまするが、京都の西陣を中心といたしまする中小の織物業者の団体が、この制度を組合の形で採用し運用をいたしておるようでございます。いままだ試験的にやっておる程度でございますが、相当好評を博しておるように聞いております。
  129. 山高しげり

    ○山高しげり君 それでは次に、おそれ入りますが、建設大臣にお願いをいたします。  私は、住宅について大臣に伺ってみたいことがあるのでございます。それは、いわゆる団地の生活でございますが、まあ団地というものは、これからますますふえていくことと存じますが、家の数だけがふえても、その団地の住宅の中に問題があれば、問題そのものが家がふえるに従って広がっていくのじゃないでしょうか。家という入れものの中の人間の生活まで十分に考えて家は建てていただかなければならない、これが当然の考え方でございます。先ほどの家庭の変貌、朝御飯を食べて来ない子供たち、これが実は団地に多いのでございます。つとめ先が遠ければ、てて親のほうも朝御飯はろくろく食べないで飛び出していくようでございます。そこへ、団地の住宅というものはかぎがかかる生活でございます。したがって、そこに住む人の個人主義も生まれてまいりますし、また、このごろいわゆる、かぎっ子というのが、キー・ボーイというのがおります。両親とも外に出ておりますために、子供は、首からかぎをぶら下げて、親が帰ってくるまで外で遊んでいなければならないといったような。それからまた、団地の主婦の生活が、いまはもう非常に内職が盛んでございまして、昔いった哀れな手内職ではないようでございます。これはもう、働けばもうかるということで、まあ経済成長のお手伝いをせっせとやっているような奥さま方もふえております。いろいろな問題が団地の住宅の中に起こっております。こういうような現象までおとらえを願って次々と新しい家をお建ていただいておるのかどうか、この点を伺いたいわけでございます。
  130. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お答えいたします。  実は、御承知のように、現在の住宅対策は、非常に住宅を要望されます方におこたえするということが、これが精一ぱいでございまして、いまお話しのような点は非常に大事な点であるということは承知いたしておりまするけれども、何ぶんそこまで手が回っておりませんので、実のところは。  御承知のように、団地は、主として住宅公団がつくりますものが多い。もしくは公営住宅でやっておりますものでございますが、いろいろな意味において、最近そういう御注文、御注意、非常に各界から多いのでございます。したがって、これまでは質よりも量に重点を置いておりましたものを、順次質に注意をしてまいらなければならぬような段階がまいりまして、ようやく、堅牢住宅を建てるとか、これまでは最低限度の坪数で間に合わしたものを、幾らかでも余裕を持った家を建てるというところまで来たのが現状と私は思います。しかし、これではいけませんので、別の委員会にもそういう御発言もございまして、御相談申し上げたのでございますが、うまく団地に電話が入るようにしなければいかぬとか、団地に集会場とか、そのようなものを置かなければいかぬというような点、それぞれ配慮しなければならぬと思っておるのでございまして、ことに、画一した住宅が現在のところではもうすべてでございますから、これらについても考慮する必要がある。  まあ、ここであまり述べますのもどうかと思いますけれども、できることなら、いまの住宅対策を、私は、将来は思い切って低利長期の金をお貸し付けいたしまして、そうしてそれぞれの方の好みに合ったものをつくっていただくとかいうふうにすることが住宅対策の終局ではないかと、こう思いまして、ぜひできるならば明年度あたりから思い切った低利、思い切った長期の相当まとまったお金を貸して差し上げて、そういう期待にこたえるということにすべきものだと思っておるのでございまして、ぜひそう努力いたしたいと考えております。
  131. 山高しげり

    ○山高しげり君 たいへんに明るい見通しのようなお話を伺いまして、この夢はぜひ実現させていただきたいと思うものでございますが、先ほど吉展ちゃん事件の話を申し上げましたが、あのような行き届いた児童公園が建設省のお手でできているところが、そのことはよろしいのですが、ある児童公園で調べましたらば、そこの団地には二万人の居住者があって、そうしてあの事件が起こった当座、そこのお母さん方がいろいろ話し合いをしてみたら、せいぜい二百人の母親きり手をつなぐことができなかったと、この事実は、結局、現在の団地の住宅が非常に個人主義的に傾いているという証拠の一つかとも思うのでございますけれども、いまおっしゃったように、なかなかよい家が建ちますまでにも、おそらくは数の上でふやしていらっしゃらなければならない現在の形の住宅、それに少しでもいい意味共同生活の面を御研究をいただきたいと、遊び場一つのみならず、みんなで一緒に暮らすという面がどうしても集団生活にはあるわけでございますから、その点よろしくと希望を申し上げておきたいと思います。  次に、国家公安委員長に一言簡単に申し上げますけれども、いま国会で審議中の風営法の改正につきまして、私ども、深夜喫茶が禁止されるということは、家庭の立場から、母親の立場から、喜ぶものでございます。ぜひ改正法が一日も早く通ってもらいたいと思っております。ただし、あの改正法案の内容は、ヌード・スタジオとか、トルコぶろとか、あるいはまたボーリング場、これは前の二者とボーリング場は少し性質は違うと思うのでございます。あるいはボーリングというものは健全なスポーツなのかもしれませんけれども、ただ、運営におきましては、現在深夜やっておられますので、まあ簡単に申せば、人間が寝静まる時間に起きていなくちゃならないということは、どう考えても健全とは言えないと思うのでございます。そういった意味で、不健全なものはぜひ子供のためにやめていただきたいと、これが世の中の母親の願いでございます。母親自体は、ヌード・スタジオに一度も行った母親はまずおりません。トルコぶろの利用者も母親にはおらないと思います。にもかかわらず、その母親たちが心から子供たちのためにそれをこいねがう——そう言うと、ヌードだってトルコだって、直接子供には関係がないとおっしゃるでございましょうけれども、父親がそういう所へあまりたびたび行くような結果は、やはり家庭の破壊にもなりやすいのでございますから、これらの点でひとつお考えを願って、だいぶ声が高まっておるようでございますが、この風営法の改正案の中にこれらのものが含まれたいと願う私も一人でございます。どうして原案に、これほど明らかなものが落ちたのでございましょうか。その点、ちょっと伺わしていただきたいのでございます。
  132. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 実は、警察庁で非行青少年対策懇話会というものを開きましたときに、非行少年の起こるいろいろな原因がその関係者から述べられまして、その中で、非行青少年の六割が深夜喫茶に出入りしているということがわかりまして、そのほかいろいろなことが言われるのでありまするが、そういう関係から、深夜喫茶というものを、非行青少年防止のために環境をよくするというので、必要最小限度の措置といたしまして今回これが規制の法律を出しておるわけでございます。  御指摘のボーリングでございまするが、これは全国で五十七カ所ぐらいしかございません。しかも、その大部分は深夜営業をいたしておりません。せいぜい数カ所東京でやっておるのがあるわけでございまして、国家公安委員会といたしましては、そういう数も少ないものでありますから、行政指導で深夜営業をやめてもらうようにいま指導しておりまして、この指導に業者も応じて、一、二カ所まだ新宿その他で営業をしておるのもございますけれども、できましたら行政指導で深夜営業をやめてもらうという措置をとりたいと思っておるわけであります。  それからヌード・スタジオとトルコぶろの問題でございますが、これもまあ、直接非行青少年ということではないと思います。あそこへ行っている人は、大体中年のおとなが多いわけであります。しかも青少年は行きません。ただ、間接的には風俗上の問題がございますので、われわれといたしましても、いろいろ検討いたしておるのでありまするが、現在といたしましては、公衆浴場法それから興行場法という法律がございます。また、売春行為みたいなものがありました場合には売春禁止法、児童を使っている場合には児童福祉法、労働基準法という法律があるわけであります。こういうものを活用いたしまして、いかがわしいものを取り締まっていきたいと考えておるわけでありまして、なお弊害がさらに非常にあるということになりますれば、十分別個の取り締まりを考慮いたしたいと思っておるわけであります。  今回は、そういう意味におきまして、非行青少年の最も悪い環境、たまり場である深夜喫茶の禁止という法律に最小限とどめたわけであります。
  133. 山高しげり

    ○山高しげり君 その声が上がらなかったからこれには及ばなかったという御説明は、ほかの場所でも二、三回承っておるのですが、そうすれば、必ず声を上げなければ取り上げないのだというようにもとれまして、そんなものではないようにも思うのでございまするけれども、もうきょうは時間がございませんから、まあ、そのボーリング場が東京でわずかな所だけ深夜営業をやっている、これは自粛をさせるとおっしゃいましたけれども、ぜひひとつ、その成果ができるだけすみやかにあがりますようにお骨折りが願いたいと思う次第でございます。  最後に、財政管理庁長官に御苦労願いたいと思います。  結局、方々のお役所にお願いをしましてもどうにもならない問題があなたさまのところに参るみたいでございますけれども、私ども国民として、末端の実情を考えますと、行政の縦のパイプというものが末端まで細く下までつながっておりまして、それが町村などへは何本も何本も、上からお役所のお仕事がおりてくる。太いのが二、三本で、あとのはもう要らないと言いたいぐらいだというのに、この間も、ある県でお調べになったお話を聞きましたら、十七本もそのパイプがあるのだよ、ということでございます。そこからたらたらと補助金でございますか、何かが落ちていくらしいのでございますが、結局、それはそのお役所のなわ張り根性のあらわれのように下のほうではやはり見るわけでございます。私は婦人の立場で申し上げて売るのでございますが、婦人会などという組織がそういう行政官庁の協力を求められることは、おそらく、ここにおいでになる大臣方には御想像もつかないような実情でございます。戦争中と全く似ております。で、各官庁でそれぞれ協力をお求めになる。お手伝いなんだから、いやならしなければいいじゃないかと、よく私ども申すわけでございますが、やはり女の人なんぞというものは義理がたいというか、封建性が残っているというか、そうもあこぎな断わりようはできないなんて思うらしゅうございます。その結果は、時間がないから結論を急げば、家庭が破壊をされるのじゃないか。現に破壊される寸前まで来ておる。こういう実情を申し上げて、もうちょっと臨時行政調査会でございますか、その辺のお力もぜひ借りていただいて、横の連絡をもう少しつけるようにしていただくなり、行政の簡素化ということでございましょうか、お骨折りが願いたいように思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  134. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) お答えいたします。  縦割り行政の弊害につきましての御指摘につきまして、確かに行政が複雑化してまいりましたがために、半面におきまして、いろいろと各省庁の権限の争いであるとか、あるいはまた半面におきまして、重複の行政であるとかいうことで、国民の皆さまに非常に御迷惑をおかけしておることは、まことに申しわけなく考えておる次第でありますので、政府といたしましては、特にこの問題の弊が起こらないように、各省庁の間におきまして、いま連絡をとりつつ善処いたしておるのでございますが、しかし、この問題を解決するために、行管といたしましては、二つの方針をとっておる次第であります。一つは、御存じの行政相談員、すなわち苦情相談を御利用願いまして、具体的な問題でもってこれを処理してまいるということ、並びに行政監察によりまして、そうして各省庁のそういう弊害を改めるようにいたしておりますのが当面の問題でございます。しかし、何と言いましても、根本的には、やはり機構の改善にあると思いますので、その機構の改善は、御指摘の臨調の答申が出ます、その臨調の答申の中には、やはり総合調整という問題も強く取り上げられておりますので、この答申をいただきました上で、抜本的な改正をいたしたいつもりでございます。
  135. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 山高君の質疑は終了いたしました。  次は……。
  136. 山高しげり

    ○山高しげり君 実は、総理が十五分間治療のために退場をしますという紙をいただいて、おそらくはお戻りにならないのかと思っておりましたが、せっかくお戻りになりましたので、一言だけ、よろしゅうございますか。
  137. 太田正孝

    委員長太田正孝君) よろしゅうございます。それでは簡単に願います。
  138. 山高しげり

    ○山高しげり君 先ほど総理にいろいろ申し上げましたが、結論的にお願いをした、ことは、私が家庭家庭と、この委員会の席にはあまり出ないようなことばを、乱発はしないつもりですけれども、ずいぶんたび重ねて申し上げましたけれども、それにつきまして、家庭対策審議会とでも申しますか、何かこういう総合的な機関をひとつお考え願いたい。これはここでお返事を承ろうとは申しませんけれども、青少協などもつくっていただいて、どれだけ力がその問題に出たかということには、いろいろの批評もあるかと思いますけれど、あんまり方々でこま切れになっておりますことも、これは問題の解決にはよくないことでございますので、何か総合的な施策という意味で審議会のようなものをお考えでも願ったら、もう少しまとまるのではなかろうか。人つくり政策のために、私が家庭対策と申すことは、青少年対策の裏返しみたいなものでございますので、その点ひとつ御考慮をわずらわしたいということを希望を申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。(「答弁を聞きなさいよ」と呼ぶ者あり)それではどうぞ一言お願いいたします。
  139. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、人間としては家庭が一番大切なんです。もう人生の半分以上、あるいは三分の二ぐらいは家庭で過ごしておるのでございます。この問題は、家庭審議会ということ、即、全部の問題でございます。しかし、せっかくのあれでございますから、人つくりの根本は家庭にあると私は考えます。十分、今後考慮していきたいと思います。
  140. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 山高君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  141. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 次は、田畑金光君。
  142. 田畑金光

    田畑金光君 私は、ILO、それから外交、さらに最後に若干経済問題についてお尋ねしたいと思いますが、最初にILO問題について、総理並びに労働大臣にお尋ねしたいと思います。  ILO案件が、法案提出後すでに二カ月を経ておる今日、一回の審議も行なわれない。放置されておる最大の原因は、政府、自民党内部の意見不統一にあるということは明らかでございますが、政府はどういう責任を感じておられるのか。ILO案件を審議の軌道に乗せるかぎを握るものは政府の腹一つです。政府は口を開けば、すでに原案を国会提出しておることを理由に、みずからの責任はないかのごときことばを弄しておるが、現在の政党政治のもとでそのような議論は全く言いのがれです。与党の総裁である池田総理は、ILOの審議については原案でいこうとするのか、それともその他の案でいこうとするのか、この際はっきり言明してもらいたいと思います。
  143. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 政府は、ILO八十七号条約批准並びに関係法案を政府案として出しておるのでございますから、これによっていこうとすることは当然でございます。
  144. 田畑金光

    田畑金光君 それで、総理お尋ねいたしますが、国会のあずかり知らない倉石修正案について、この際、白紙に戻すことがILO審議を軌道に乗せるためにも私は必要と考えるが、総理の所見はいかがですか。
  145. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) われわれは、党の——社会党さん、わが党でいろいろ話をして、国会の関知しないということばでございますが、国会を拘束するものではございますまい。しかし、党と党とのいろんな話し合いがあるということは聞いております。私はそれ以上のことはここで申し上げられません。
  146. 田畑金光

    田畑金光君 総理のそういう言いのがれのような態度が常に紛糾を起こしておる一番大きな種です。去る二月二十八日の衆議院の予算委員会で、大橋労相は、政府としては倉石修正案は関知しないと答弁しております。そのことが、倉石修正案については、政府はこれを無視する態度であると理解してもよろしいと、私はこう思うわけです。総理がこれを関知せぬということは、まことに無責任きわまる発言と言わなければなりません。労働大臣はこのような発言をなされておるが、この食い違いについて、総理の所見を伺いたい。
  147. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 食い違いがどこにあるか、もう一度ちょっとおっしゃっていただきたい。   〔委員長退席、理事斎藤昇君着席〕
  148. 田畑金光

    田畑金光君 労働大臣は衆議院の予算委員会で、ILOの倉石修正案については関知しない、政府としては関知しないと、こう言っておるわけです。総理も同じようにお認めになるかどうか、それを念を押しておるわけです。
  149. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 総理大臣としては、関知しておりません。党の総裁といたしましては、そういうことが、会談が行なわれたことは知っております。したがいまして、政府としてあれは関知していない、こういうことでございますから、何ら労働大臣と違いはない、食い違いございません。
  150. 田畑金光

    田畑金光君 そうしますと、総裁としては関知しておられる。さすれば、その修正案に基づいて与党の中をあなたは調整する努力をなさるべきじゃございませんか。その努力は何もなされていないじゃありませんか。
  151. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、関知という意味が、応諾したとか何とかいう意味じゃございません。どうお考えになっての御質問でございますか。総裁として関知しておるというのをどういうふうなウエートで判断されるか、私はそれによってお答えをいたしたいと思います。
  152. 田畑金光

    田畑金光君 少なくとも私は、倉石さんともあろう人物が話し合いをなされたわけでございますから、当然経過から見ましても、総理の十分意を含めて倉石氏が話しをなされたと、こう私は受け取っておりますが、その点はどうですか。
  153. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 倉石君から直接詳しくは聞いておりません。もう一人の斎藤君からは経過その他を聞いております。しかしこれは聞いたというだけで、これでいくんだと私は言っていない。だから、そういう問題がありますので、党の総裁といたしましては、早くこちらのほうの意向もきめ、そうして社会党その他と話し合って審議に入るようにしたらどうかという努力はいたしておるのでございます。
  154. 田畑金光

    田畑金光君 総理は、聞いたことは事実だがそれ以上ではない——そういうような話がありますか。いやしくも与党の、言うならば——正式の代表であるかどうかはしらない——総裁の総理の旨を受けて倉石さんはおそらく話しをしたのではなかろうかとわれわれ第三者は見るわけです。その話の経過と結果について総理が何ら関知しないというようなことでは、これは党をおさめろといってもおさめることはできないでしょう、やはり総理みずからが、この問題についてどういう見通しとどういう角度で取り組むかという、総理みずからの腹が固まらなければ、いまの与党の中のあの情勢はどうするんですか。
  155. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私の党の中のことにつきまして、とやこう批判を受けることは私はやめていただきたいと思います。
  156. 田畑金光

    田畑金光君 私は単に与党の中をかれこれ批判するつもりじゃありません。この重要な外交案件が、この国会で成立せぬかするかということが、大事な国の政治、外交の焦点に立っておるわけです。しかもこの条約並びに関連法案が成立するかしないかということが、内閣並びにその与党の重大なこれは責任だと私は考えるがゆえに、私はこの問題を解決するためには、総裁としてすみやかに党の調整をなされねばならぬと、こう考えますが、そういう角度から申し上げておるわけです。
  157. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御忠告ありがとうございますが、施政演説その他で、今国会はぜひ通していただきたいと、こう言っておるわけです。したがいまして、総理としてそう言っておる以上は、党内のほうも早くまとめて、そうして各派でひとつ審議を進めるよう、先ほど申し上げたように努力しておるのであります。
  158. 田畑金光

    田畑金光君 総理は先ほど私のお尋ねに対してお答えがありましたが、もう一度お尋ねします。倉石修正案なるものは院外における話し合いじゃございませんか。条約並びに法案は国会に提案されているはずです。修正の話し合いは国会の審議を通じてなすべきじゃありませんか。ましてや一労働団体にすぎない一部のものとの話し合いによって、倉石修正案という形で、しかもそれがそのまま国会の修正になるなどということになるならば、国会の冒涜もはなはだしい。どうでしょうか、この点。
  159. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) それは筋が違いませんか。私はこういういろいろな問題につきましては、野党の方々と、またそれと関係あるそういう専門家の方々と、いろいろ話し合いをしていくことは、私は何も国会を冒涜するゆえんのものじゃない。国会国会ではっきりおやりになったらいいじゃございませんか。もう法案その他はよそと下話はできない、もししたら、それは国会を冒涜するということは私は言えないと思います。
  160. 田畑金光

    田畑金光君 そうしますと、このように受け取ってよろしいですか。倉石修正案なるものは、単なる話し合いの過程でできた一つ考え方であって、国会は関知するところでない。また、国会はこういう話し合いに何ら拘束を受ける筋合いでもない。国会は審議の過程の中で、独自の立場において、この問題については取り組んでいくべきだ、こういうことに解釈してよろしいわけですね。
  161. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 当然のこっちゃございますまいか、そういう話し合いやあるいはいろいろ相談した、それをあなた方国会議員の表決に影響さすということは、これは憲法違反でございます。そんなことを問題にされるのは、私はたいへんなことだと思います。
  162. 田畑金光

    田畑金光君 まことにどうも総理のお話も筋が通っていて筋が通らぬようで、わかりませんがね。  それじゃその点はその程度にとどめまして、ILOにおける対日調査団派遣のための対日実情調査調停委員会発足の決定は、日本にとってこの上ない不名誉な事態だと考えております。その受け入れの諾否について、政府はいずれの方針をとるつもりか。
  163. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) ILOの結社の自由に関する実情調査調停委員会は、三名の小委員に、この日本に関する問題を付託されたわけでございます。これに対しまして、すでにILOの事務総長から日本政府に対しまして、これを応諾するようにという照会がまいっております。この小委員会は、五月の上旬にジュネーブで会合いたしまして、そうしてその後の調査のスケジュール等を相談されることに相なっておりますので、それに間に合うように諾否の回答を発する必要があるわけでございますが、政府といたしましては、この案件についての国会の審議の情勢その他十分検討いたしまして、それに間に合うように回答をいたしたいと、かように存じまして、目下検討中でございます。
  164. 田畑金光

    田畑金光君 労働大臣に率直にお尋ねしたいのは、回答を保留する場合があるのか、あるいは受け入れないという拒否の回答をする場合も考えられるのか、いずれですか。
  165. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 現在のところ、特に拒否しなければならぬという理由は見当たらないように思っているのであります。しかし、まだ回答の期限までに相当日時もございまするので、諸般の情勢を十分に検討いたしたいと思っております。
  166. 田畑金光

    田畑金光君 もし四月中ごろまでにILOの国会における審議の取り扱いが、今日のような事態でかりに経過したとすれば、当然受け入れられるものだと私は見ておりますが、その点どうでしょうか。
  167. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) そのときの情勢によりまして十分に検討して決定いたすつもりでございます。
  168. 田畑金光

    田畑金光君 総理お尋ねいたしますが、ILO八十七号条約をめぐるわが国の国際信用は大きく失墜されております。特に労働代表の対日不信感は、青木大使の過般の報告を聞くまでもなく非常なものだと言われております。ILO労働代表は、国際自由労連への影響が強く、国際自由労連が支配的なOECDへの影響も看過できません。政府としては、この際、国際的視野に立って、行きがかりにとらわれず一刻も早く条約を批准する態勢を整えるべきだと考えます。そのためには今日までこの批准を阻害してまいっておりまする全案一括審議の方針などということは取りやめて、自民党総裁である総理は、条約の早期批准、国際信用の維持という観点から、問題の多い公務員法の改正案等は個別審議に譲るというような方向で自民党内の意見を調整なされてはいかがでございましょうか。
  169. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国会運営のことは、いまわが党の執行部で十分検討しておると思います。これは、私は早く通していただけるよう努力すればいいと思います。
  170. 田畑金光

    田畑金光君 そういう態度だけで、総理、済まされましょうか。もっと私は深く考えてもらいたいと思うのです。総理大臣ですから、総理大臣の権威と名誉のためにも、もっとはっきり私はこういう問題については処していただきたいと思うのです。自社両党の妥協の産物である倉石修正案を決定するにあたって、倉石氏は、協約の締結権を含む団交権を公務員労働者に将来保証することを確約したといわれておりますが、総理はそれを関知しておられるのか。倉石氏は総理に一切を報告したといっておりますが、団交権賦与について総理はそれを了承しておられるかどうか。この件については、御承知のように、総評の岩井氏は文書で確約をとっておるとすら言っておるのでありますが、それの事実は自民党の窓口である倉石氏から総理にも逐一私は報告がなされておると考えておりますが、この点、総理はどのようにお考えでございましょうか。
  171. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 聞いておりません。
  172. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 団交権に関連いたしましては、団交権ばかりでなく、公務員制度全体について根本的な問題を検討するために審議会を設ける必要があるということを聞きましたけれども、その団交権そのものをどうするかということはこの審議会で検討される問題だとして聞いております。
  173. 田畑金光

    田畑金光君 池田総理は、公務員制度審議会設置についてはいかようにお考えでございましょうか。
  174. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 一つの考うべき点だと思っておりますが、結論を出しておりません。
  175. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 総理から申し上げたとおりでございます。
  176. 田畑金光

    田畑金光君 労働大臣は、先ほど審議会の中で団交権の問題を含む公務員制度については話をすべき問題だと思う、こういうお話ございましたが、私はその答弁は、当然審議会の設置等については政府は積極的に将来考えてみよう、そういう腹であると承ったわけでありまするが、それをすらもまだ政府部内の中では話がついていないわけですか。
  177. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) いわゆる倉石修正案というものは、政府といたしましては、これが将来ILO関係の議案が審議される際に、国会の審議の場を通じて何らかの形であらわれる可能性のある問題だ、こういうふうに了解をいたしておるのでございまして、これが現在において政府を拘束するとか、あるいは現在において政府の意見をきめなければならぬ問題である、そういうふうには考えておりません。
  178. 田畑金光

    田畑金光君 拘束するかしないかということは、わかり切ったことです。拘束しないはずです。一労働団体と話し合いをやったことがどうして国会の審議に拘束を持ちますか。それはあたりまえの話です。  私の聞いているのは、そうではなくして、公務員制度審議会などというのは、政府としてはどうお考えになっておるかということを聞いている。
  179. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 公務員制度につきましては、いろいろ検討すべき重要なる問題があると考えております。したがいまして、将来国会の御意思によりまして、かような審議会が設置されるということに相なりましたならば、政府といたしましても、それに協力するのは当然であると思います。
  180. 田畑金光

    田畑金光君 人事局の問題について一言だけお尋ねしますが、人事院を分割して人事局を設置し、公務員の人事行政について政府が全権を握ることが公務員に対する私は公益を阻害するものであって、私はきわめて不当な措置だと考えます。このことは人事院創設の意義を大半奪う措置であり、人事院当局がこれに反対しているのもそのためだと思います。人事院分割にあたっては、まず人事院当局の意見を最大限に尊重すべきであるにかかわらず、これを無視したのはいかなる理由か、これをまず承りたい。
  181. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 人事院の意見は、法案提出の前に照会をいたしました。しかしながら、政府と多少意見の一致しない点もあるわけでございまして、これらの点は昨年の通常国会におきまして、審議の際にも申し上げたところでございまして、国会において御検討いただくべき問題の一つであると考えます。
  182. 田畑金光

    田畑金光君 人事局の設置は、それらの諸問題を人事院にまかせることに大きな欠陥があることを前提としなければならぬはずでございますが、なぜ人事院にまかすことができないのか、その積極的な理由を労働大臣から明らかにしていただきたい。同時にまた、私は人事院の改組について、並びに総理府に人事局を設置するというこの問題について、過般人事院総裁は新聞等でいろいろ談話の発表あるいは人事院当局の考え方を拝見いたしましたが、この際人事院総裁の御意見を承っておきたい。
  183. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 政府といたしましては、公務員の権利を擁護いたしまするために、政府部内におきましても国家公務員全体の事務を統括する人事局の設置が必要である、かように考えますると同時に、従来からの公務員制度、また公務員の職員団体の実際の動き等から考えまして、公務員に対する政府の管理を統一的に行なうことが必要である、従来各省にばらばらになっておりましたので、政府部内においてこれを統一、統制するという必要がある、こういう理由で人事局を設置することにいたしたわけでございます。
  184. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) お答え申し上げます。理論から申しますと、ただいま労働大臣が申しましたように、狭い意味の、政府部内の仕事の調整のために人事局をおつくりになることが適当かどうか、これは人事院としては関係のないことでございます。問題は、現在国家公務員法で中立機関による公正な人事行政の保障というたてまえから、人事院に相当のいわゆる第三者的機能をお与えいただいておる、それが今度大幅に狭い意味政府のほうへ移される。これは公務員法のねらいから申しまして、相当根本に触れた公務員制度の大改革ではないか。それがいいか悪いか、それはもちろん国会の御判断にまつほかはございませんが、私どもはその点について深刻な心配と疑問を持っておるということでございます。
  185. 田畑金光

    田畑金光君 私は、池田総理並びに政府は、いま人事院総裁から国家公務員法の精神並びに人事院制度創設の精神がいかなるものであるかということをよくお聞きになったと思いますが、公務員の人事行政を政府が支配することは、公務員を文字どおり政府の雇用者とするものであります。このことは憲法第十五条に規定する「公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。」という規定に明らかに抵触するわけです。憲法が公務員に要求しているものは、時の政府に左右されない中立性の保持であり、人事行政を政府が握ることは公務員を時の権力の支配下に置くことであって、その中立性の保持は大きくゆがめられることは必至でございます。憲法の精神に明らかに私は違反するやり方だと考えますが、総理見解あわせて労働大臣の見解を承ります。
  186. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 憲法違反というお話でございますが、私はそうは考えておりません。七十三条ですか、政府が、もういわゆる官吏に関する事務も規定しております。憲法解釈の問題につきましては、専門の法制局長官からお答えいたさせます。
  187. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 私は、人事局の設置によりまして、国家公務員が公正な職務の執行を妨げられ、政府に隷属するというようなへんぱな関係になるものとは考えておりません。それに対しましては、依然として、人事院は別に存続いたしまして、第三者機関としての十分なる機能を持ち続けてくれることに制度上相なっているわけでございまして、必ずや人事院がその使命を全うし得るものと存じております。
  188. 林修三

    政府委員(林修三君) このいまの人事局をつくる、そして現在人事院がやっております仕事を、一部分を人事局に移すということについては、これは立法政策上の議論はいろいろあると思います。しかし、憲法に違反するといういまの田畑先生の御議論には、賛同いたしかねます。憲法は、まさに第十五条にもございますが、第七十三条で内閣の職務として、「法律の定める基準に従い、官吏に関する事務を掌理する。」という規定もございます。いわゆる内閣としてやる範囲、あるいは人事院のような中立機関がやる範囲、それをどうきめるかは、一つの立法政策の問題だと考えております。
  189. 田畑金光

    田畑金光君 人事院の給与勧告は、人事局の設置にかかわらず、人事院に残されることになっているが、私は効果の面でこれは半減されると考えるわけです。すなわち、給与法の実施事務が人事院にある現在は、勧告の結果改正された給与法の実施を通じ、勧告の趣旨を生かすよう運用されるし、各種手当制度はこれは補うものとして人事院により総合的に運用されています。しかるに、これらの事務をすべて人事院から取り上げるならば、勧告自体の効果も相当減殺することは必至であります。このことは公務員労働者にとりまして大きな損失であり、どういう保障を一体政府考えておられるのか、それを明確にひとつ労働大臣から、心配ないなら心配ない、どういう保障をやるのか明らかにしていただきたい。
  190. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 給与に関する問題は、人事院の現在の権限はそのまま新しい人事院にも存続することに相なっております。すなわち、給与につきましては、現在は人事院は勧告権があるわけでございまして、この勧告に基づきまして政府は給与関係の法案を国会提出して御審議を願う、こういうことに相なっております。これは何ら変更されるものではございません。
  191. 田畑金光

    田畑金光君 大臣、私の言うのは、勧告するが、その勧告に基づく給与法の実施その他につきまして、今日人事院の権限のもとにあるから勧告の精神が十分に生かされているかどうかを確かめることができるわけです。今度はあなたのほうに、人事局のほうに人事院の権限が移されることによって、そういう保障の措置はどうなるかということを私はお聞きしているわけです。
  192. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 人事院には、新しい法案におきましては、いわゆる苦情処理的な機能は引き続き存続いたします。これは、そうした問題についてのいろいろな紛争の処理、また問題の解決という権限でございまして、これによって公務員の権利は保障される仕組みに相なります。
  193. 田畑金光

    田畑金光君 大臣の答弁はすれ違い答弁で、まことに残念ですが、いま大臣の答弁の中にありました公平審理制度の最大の難点が事後の救済制度にあることは周知のとおりでありますが、人事局の設置によって従来人事院が持っていた分限、服務、懲戒の基準が使用者、すなわち政府当局により一方的に設定されては、公平審理制度の実質的な意義がなくなると私は考えるわけです。これまで人事院は、分限、服務、懲戒の基準設定権を持つことにより、その基準を離れた不公正な処分は審理の結果これを取り消し、処分者の恣意的な処分を予防する役割りを人事院は果たしてきているわけです。そうして、そこにこそ公平審理制度の最大の私は意義があると考えるわけですが、人事局の設置はこういう面におきましても大きな私は弊害をもたらす危険性があると見るわけです。こういう点について、給与の問題と公平審理制度との問題について、こういう不安が残るが、これはどういう保障をなされるのか、そこを私は先ほど来お聞きしておるわけです。
  194. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 公平審理につきましては、人事院はいままでどおりその権限を保有いたすわけでございまして、したがいまして、従来どおり公務員の地位、権利は法律によって保障されておるわけでございます。
  195. 田畑金光

    田畑金光君 私がいま質問いたしました点について、人事院総裁の御所見を承っておきたいと思います。
  196. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 公平審理については、いま労働大臣の答えたとおりでごさいますが、ただ、その手前の問題として、たとえば分限、すなわち任免についての基準の問題であります。それから、先ほどおことばにありました給与についての基準の問題、たとえば給与の問題で申しますというと、給与勧告の権能は今度も人事院にお残しいただいておりますけれども、現在の法制をごらんになりますと、御承知のとおりに、われわれが人事院といたしまして給与の勧告をいたしまして、その結果、給与法という法律が改正になります。ところが、この現在の給与法はごく根本のことだけを法律できめておりまして、その他のことは大幅に人事院規則に委任をいただいておるわけで、これはその委任の趣旨は、要するに人事院の中立性を御信頼いただいてのことである。内容からいえば、普通団交権の内容になってきめられるようなことだけれども、人事院がその代行的の機能の一環として中立的立場からきめるから、人事院規則にまかしてよかろうという御信頼のもとに、おそらくできている制度だと思います。ところが、今度改正になりますというと、その規則の面が人事院から政令に移ってしまうというような点において、私どもの心配の一つがそういうことにもあるというわけでございます。
  197. 田畑金光

    田畑金光君 これを要するに、私は池田総理お尋ねしますが、もし政府提案のおとり国家公務員法を大幅に改正して、人事院の権限を縮小し、人事局を設置するというのであるならば、当然将来にわたって、近い将来において、公務員には労働協約締結を含む団体交渉権を付与するということでなければ、いま人事院総裁の御答弁のとおり、つじつまの合わない公務員制度ということになってくるわけです。この点について、総理はいかようにお考えでございましょうか。
  198. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) つじつまが合わない結果になるというところが問題なんです。ただ先ほど申し上げましたように、立法政策上の問題でありますから、どれがいいか、いままでの人事院のままでこれが絶対いいんだ、動かすべからざるものだという考え方なら、つじつまが合わぬということに——つじつまが合わぬのじゃない、前と違うことになる。しかし、これは今後の人事行政のあり方について、われわれはかくすべきだという考えでいっておる。そうして、これは国会で十分論議を願いたい。
  199. 田畑金光

    田畑金光君 私は、この問題はこの程度におさめておきますが、問題のある点だけは、よく労働大臣も池田総理もおわかりになったと私は思います。  次に、私は沖繩問題についてお尋ねしますが、政府は現在の沖繩におけるアメリカの統治についてどう考えるか。現在のような統治形態の継続が長期的に見て、将来の日米関係にプラスになるとお考えであるか。ことに、最近におけるイギリス植民地に対するキプロス住民の抵抗や、パナマにおけるパナマ国民の運河地帯返還要求などを見るとき、沖繩がこういう動きの例外であると私は考えられません。政府の所見を承ります。
  200. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) サンフランシスコ平和条約が締結されまして、わが国が再び国際社会に復帰いたしたわけでございますが、このサンフランシスコ平和条約に盛られたものが満足すべきものであるかどうかということにつきましては、いろいろ御批判があろうかと思うのでございまするが、わが国といたしましては、あの当時の状況におきまして、こういう選択をすることが、わが国の国益に合するものという決断をいたして、これを受諾して、国際社会に復帰いたしたわけでございます。沖繩におきましてアメリカに施政権を認めるということも、その一環になっておるわけでございます。施政権がアメリカに移りました以上、私どもといたしましては、アメリカ協力いたしまして沖繩同胞の福祉の向上のために最善を尽くしてまいりますのが、いまの私ども立場であろうと存じております。
  201. 田畑金光

    田畑金光君 政府は口を開くと、常に平和条約第三条によってアメリカの統治を認めたと言っております。一般に条約というものは一たん締結されたら、これを誠実に順守することは、国際法の原則であることは、異論ございません。しかし、条約は守らるべしの原則が神聖不可変でないことも、国際法の認めでおるところでございます。たとえば事情変更の原則、あるいは一定の条件がある場合には、解約権も発動し得るのであります。したがって、平和条約第三条が、国連憲章または国民感情上不当であり、不適当であるということであれば、政府は当然しかるべき外交ルートに従い、アメリカと交渉しても差しつかえないではありませんか。ことに平和条約第三条が、国際法上また国連憲章の上からも、矛盾に満ちた規定であることは、世界公知の事実です。著名なる国際法学者オッペンハイムは、これを評して、かつて怪物であると言ったことは、有名でございますが、政府は、この際この怪物を除去する勇気と決断をお持ちにならぬかどうか、池田総理お尋ねいたします。
  202. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) あなたのお話のような点がありますので、われわれは従来から沖繩の施政権返還につきまして、強くアメリカに要請しておるのでございます。その結果といたしまして四、五年来だんだん変わってまいりました。ケネディ大統領の話にもあるように、いつかは日本に返るときを考えて、いろいろな施策を日米でやっていこうというところまで来ておるのであります。しかし、われわれといたしましては、できるだけ早く施政権の返還が実現できるよう、今後とも努力を続けていきたいと思います。
  203. 田畑金光

    田畑金光君 国連憲章第七十六条によれば、信託統治制度の目的は、住民の政治的、経済的、社会的、教育的水準の低いものを引き上げていくこと、ゆくゆくは独立にもっていくことが目的である。南洋群島や非自治地域のように未開発地域なるがゆえ、信託統治地域に置かれることがあるが、政治、経済、文化、教育等の高い水準にあり、しかも人口九十万に及ぶ沖繩のような地域が、信託地域にされたり、戦後二十年も本国から分離されたりするそういう事実が、一体世界の歴史にどこにあるのか。私は外務大臣からそういう事実があれば教えていただきたいと思います。
  204. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 沖繩は信託統治になっていないことは、御案内のとおりでございまして、ただアメリカが沖繩を信託統治にしようという場合に、日本は異議を差しはさまないという約束をいたしておるわけでございますが、ただいまのところ、まだそういう意思がないというように承知いたしております。
  205. 田畑金光

    田畑金光君 外務大臣、答弁をすれ違いにされぬで、私の質問の趣旨にお答えください。沖繩のようなこういう地域が本国から分離されたような事態が、第二次世界大戦後世界の歴史にあるのかないのか。
  206. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 信託統治地域がだんだん少なくなってまいりまして、ただいま若干の地域に残っておるように承知いたしておりますが、沖繩のような九十万にのぼるような人口を擁した信託地域があることは承知いたしておりません。
  207. 田畑金光

    田畑金光君 日米協議会は近く発足するようです。その日米協議会は、単なる日米両国の援助の話し合いをする機関にすぎないのかどうか。ことにわれわれといたしましては、当然政権返還問題等についても話し合いがなされる機関であると考えていたわけです。この公文書が近く取りかわされるやに聞いておりますが、その公文書の前段には、前文には施政権返還という日本政府の意思が入っておるのかいないのか。この点をひとつ明らかに説明してもらいたいと思います。
  208. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいま交換する段階まで至っておりませんので、ここでお話を申し上げる自由がございませんが、今回つくる協議委員会、技術委員会は、住民の福祉向上に関して日米の協力の機関でございます。そういうことが任務でございまして、施政権云々の問題を討議する機関でないことは、あなたの御理解のとおりでございます。この施政権返還という問題は、そういう技術問題を離れた高度の政治問題でございまして、そういう機関とかかわりなく、あらゆる機会を通じまして政治問題として日米間で話し合う問題があると心得ております。
  209. 田畑金光

    田畑金光君 この日米協議会の話し合いが出たのは、一昨年の十一月、ライシャワー大使からあなたにお話があって、話し合いが始まったはずです。あれから一年有半、単なる援助の話し合いの機関であるならば、なぜ今日の、このように長引いて話がまとまらなかったのか。そうでなくして、日本政府としては施政権返還の問題についても、議題にのせようという話し合いをもっていかれたが、結局はけられたと、こういういきさつだと聞いておりますが、まことに情けない態度ではありませんか。
  210. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 交換公文の起草にあたりましての意見の相違から、今日まで延引いたしましたこと、たいへん私どもも恐縮に存じておる次第でございます。
  211. 田畑金光

    田畑金光君 ちょっと大臣、今の答弁内容が、意味がわからなかったのですが、もう一度言ってくれませんか。
  212. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 交換公言の起草にあたりまして、双方の意見が早急に一致しなかったために、時間を費したということでございます。
  213. 田畑金光

    田畑金光君 最も私は残念に考えますことは、沖繩のための国会議席について、施政権者であるアメリカ側の了解が得られないからとの理由で、潜在議席の法文化を取りやめたといいますが、議席の法文化になぜアメリカの了解が必要なのか、私はそれがわかりません。
  214. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま御指摘の問題を、日本間で話し合ったことはございません。
  215. 田畑金光

    田畑金光君 話し合ったのですか、潜在主権のある沖繩のために、これに見合う潜在議席を法文化する、何のためにアメリカの了解を得なければならぬのか、これがわからぬわけです。これこそ純然たる国内事項であり、もしアメリカがこれに介入すれば、それこそ内政干渉ではございませんか。ただ、実際に沖繩で選挙を施行するような場合においては、アメリカの了解を取りつける必要はありましょう。単なる潜在議席を置くことすらも、アメリカの了解が得られないから、こういうわけでやめたというわけです。早川自治大臣は、当初選挙の改正の中にこれを盛ろうと努力をされたそうで、そちらにいらっしゃる総理府総務長官もそういう努力をされたと新聞は伝えておりますが、まことに遺憾にたえないのは、総理がそのような動きを封殺された、どういうわけで総理はそれを押えになられたわけですか。
  216. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私が押えたということを言われますが、私は押えたというのではございません。よく研究しなければいけない。あまりに何といいますか、理想に走り過ぎて、潜在議席なんかをいま設けるということはいかがなものかと、研究をしてみると、こう言ったのです。やめろと言ったわけではございません。研究を要する問題であるわけであります。
  217. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 関連質問。総理大臣にお聞きしたいのですが、潜在議席の問題を十分検討しなければいかぬということを申したと、こう総理大臣おっしゃる。しからば大臣自体は、研究した結果ですね、たいした問題はないのだと、これは独自の問題として置くべきだという結論が多数であれば、そのことはそのように取り計らいたい、こういう考えがあるのかないのか、この点をお聞きしたい。
  218. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 多数かどうか私は多数の意見だとも聞いておりません。単なる大臣の意見としてでありますから、私は研究しろと言っておるのであります。したがいまして、党ではどう結論を出しましたか、その後私は聞いておりません。
  219. 田畑金光

    田畑金光君 総理大臣はそのようにお話になりますが、私は時間の関係でなるべく問題点だけをお尋ねしておるわけです。与党の中に沖繩対策特別委員会というのがあって、その中で副会長をやっておられるのが床次徳二さんです。先般沖繩問題の再検討と題する論文を書かれて、これは沖繩の新聞に大きく取り上げられておるわけです。その中で当人ははっきりと、基地と施政権を切り離して、この際施政権返還を堂々と求めるべきであるというような主張もなされておるし、潜在議席等については当然これは考えてやるべきだ、こういうことを言っておるわけです。かつてドイツにおいてアルサス、ローレンの復活の前に同じような取り扱いをしたことがある。いま一応考えられることは、公職選挙法の中の各地区の別表に沖繩を加えて、実際の選挙はやらないでおく。もう一つの便法は、現制度のままで沖繩代表を参考人として国会に出席してもらう。また他の方法としては、国会法を改正して、議席を持たない代表者を国会に送り出すような制度も検討すべきであると思う。あなたの与党の沖繩対策特別委員会のりっぱな権威ある機関の中で、副会長がこういう意見を堂々と発表しておられるのです。なぜいまさらそんなことを研究しなければできないなんということを言われるのですか。潜在主権があるということは、はっきりと条約の中にも認めておるし、だれしもこれを認めたし、また一昨年のケネディ新政策の中には、将来これは日本に返すのだ、そういう前向きの精神も出ておるならば、これくらいのことは当然考えてもよろしいじゃございませんか。
  220. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私はそういう新聞を見たことはございません。床次君個人の意見かと思いますが、私は私の考えで、これはいろいろな点から考えて研究してみなければならぬ問題と思ったからでございます。
  221. 田畑金光

    田畑金光君 研究というのは、どういうところで研究なさるわけですか。
  222. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 潜在主権はございますが、現に施政権を持っていないときに、空席の議席を法律で設ける、いますぐ設けるということは、どういうことかということかと思います。
  223. 田畑金光

    田畑金光君 いや、総理のお考えはよくわかりましたが、この問題について、選挙制度審議会の答申もあったわけですから、どっかで検討してみて、その結論を尊重するとかどうとかいうことはお考えになりませんか。
  224. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 研究してみろといってあるので、研究の結果におきまして私は十分考えることは当然のことでございます。
  225. 田畑金光

    田畑金光君 沖繩立法院では一昨年、すなわち一九六二年までは施政権返還決議が超党派で採決されていたわけです。ところが、最近はできなくなっておるわけです。それは一九六二年二月一日の立法院における施政権返還決議が、その文書の中に、一九六〇年十二月、第十五回国連総会において採択された植民地の独立許容に関する宣言を引用したという、その理由で不穏当視され、以後日本政府並びに与党が沖繩市民等に圧力を加えて、それ以後施政権返還の決議すら、現地の立法院においては議がまとまらぬという姿です。言辞をわずか与えることによってすぐそのような圧力を加えるということは、これは政府としても与党としても、どんなものでしょうか。まことに残念な態度だと私は思います。その点総理はいかようにお考えでしょうか。
  226. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) わが党がそういう圧力を加えたとおっしゃるのでございますか。それには何か根拠がございますか。私は聞いておりませんです。わが党のどういう方が、どういう地位におられる方が圧力を加えられたか、それを聞きたいと思います。総裁は存じておりません。
  227. 田畑金光

    田畑金光君 私は沖繩問題について最も明かるく詳しい人方の話し合いを聞いて申し上げておるわけです。あなたは証拠を示せと、こうおっしゃるが、あるいは証人を呼んでもよろしいと、こう思うのです。なぜ一昨年までは立法院の中で満場一致施政権返還決議がなされたにかかわらず、与党と野党とが激しく対立して、この決議案すらもいま立法院で決議できないという、この姿をあなた方はまずどうお考えなさいますか。それはいいことだと思いますか。そのことをまずお尋ねいたします。
  228. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 前提がわからないのです。圧力を加えたとおっしゃるから、どういう人がどういう形式で圧力を加えたか、それがまず問題でございます。人から聞いておるというのでは、私はいま言ったように、総裁としては関知していない、こう言っておるのであります。  それから、その決議が行なわれないという理由がどこにあるかは、私はこれも聞いておりません。
  229. 田畑金光

    田畑金光君 外務大臣、御答弁。
  230. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 沖繩立法院の事情につきましては、よく承知いたしておりません。
  231. 田畑金光

    田畑金光君 政府は、この国会にOECD加盟について承認を求めております。政府も言うように、OECDは先進国のクラブ的性格だと言われておりますが、少なくとも、そういう先進国の領土の一部がいまなお外国によって統治されておるということは恥辱ではないでしょうか。私は、政府をはじめ、一部国民の中に、沖繩題問について、ともすれば最近不感症的な状態におちいりつつあるのじゃなかろうかということをおそれているわけです。私は、先ほど総理がお話になりましたように、ほんとうに施政権返還について、もっとえりを正してお話なされることを望みますが、総理の御見解をもう一度お尋ねいたします。
  232. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 施政権返還につきましては、機会あるごとに、また、いつの機会が一番有効かということを常に考えながらわれわれは努力しておるのであります。OECDへ加盟できるような日本が、その潜在主権を持っている国土の一部がそういう状態になっておるということは、あなたのお話のように、非常に遺憾である、残念なことである。だから、われわれはできるだけ日本の国際的地位を上げて、日本の発言が世界各国に非常に重要視されることを望み、OECDへ入ろうとしているのであります。
  233. 田畑金光

    田畑金光君 そういう気魄で池田総理に臨んでいただきたいと思います。少し従前のやり方がどうもいささか残念です。  去る二月の中旬、キャラウエイ高等弁務官が日本へやってまいりました。私は、沖繩問題に対する国民の希望や感情を率直に伝えるいい機会だと、こう考えていたのですけれども、こういういい機会がどうもうまく利用されかかったように私は聞いておるわけです。ことに大平外相は、キャラウエイとの会談の中で、沖繩についてはアメリカが主役であり、日本協力者にすぎない。施政権返還や自治権拡大という質問を受けるが、日本政府は筋道を間違えるような気持はございません。こんな議論が出ることであなたもお気にさわるでしょうというような話をなされたということを私は聞いておりますが、キャラウエイ高等弁務官は大統領の新政策を最も忠実に推進しなければならない立場の人であります。しかるに、この一両年来、ケネディ路線というものは、完全に現地においては固定化してしまっているではありませんか。自治権は拡大どころか、むしろ後退しているではありませんか。   〔理事斎藤昇君退席、委員長着席〕 こういうことで最近の世界史のいろいろの動きを見たときに、新興独立国家の姿を見たときに、私は、日本政府としても、もっとえりを正し、言うべきことは主張し、あくまで自主独立の立場に立って外交折衝は進められるべきだと、こう考えまするが、これに対して大平外務大臣考え方を承っておきます。
  234. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 施政権はアメリカが掌握するところになっておるということ、そのことが遺憾なことであり、残念なことであることは、あなたと私と全く同様、同感でございますし、また、それが一日も早く日本に復帰することを希求するほうにおきましても、田畑さんと私全く同感でございます。問題は、この施政権の返還という問題をどのようにして具現してまいるかということを考え、それに有効な手段をどう考えてまいるかということが私どもの任務なんでございます。平和条約の結果は施政権がアメリカに移った、移った以上は、アメリカの施政権を尊重すべきだと思うのです。そうして、その尊重の上に立って初めて私は日米のほんとうの協力ができると思うのでございますし、そうして、その理解と信用が高まってまいらなければ、施政権の返還という事態もなかなか生じてこないわけでございまして、私は、日米間に隔意のない理解と信頼が高まってまいることそのことが施政権返還への道の一番近道だと信じておるわけでございまして、施政権返還を叫ぶことだけが施政権の返還を招来する近道であるとは私は思いません。問題は、冷厳な事実の上に立ちまして、その問題を早期に実現するようにするにはどうしたらいいかということに腐心をいたしておるわけでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  235. 田畑金光

    田畑金光君 私、韓国の問題もありますので、時間があれば後ほどお尋ねすることといたしまして、中国問題について若干お尋ねしたいと思います。  一つの国に一つ政府というのは原則でありますが、ある特定の場合は、一国に複数の政府の並存する現象もあり得るのではないか、特に内乱や革命の過程においては、ままある現象のように思います。たとえばスペインにおける内乱の際、マドリッドの正統政府に対するフランコ革命政府が、ある時期事実上の政府として承認されていたわけです。外交史上これと反対の場合がなかったかどうか、すなわち、革命政府が正統政府と認められ、従来の正統政府は地方政権または事実上の政府として認められたという事例があったかなかったか、私はわからぬのでお尋ねするわけでありますが、外務大臣からか条約局長から教えていただきたい。
  236. 中川融

    政府委員(中川融君) 一般に、たとえば内乱の場合には、反乱側の政府がだんだん力を得てもとの正統政府を倒す、こういう過程があったわけでございまして、その過程におきまして、第三国は、初めの従来の正統政府をその国の政府として認めておるわけでございますが、反乱団体が力を得るに及びまして、これを交戦団体ということで、実際上の交戦の主体ということで認めてまいるわけでございます。それで、そちらの政府のほうがほんとうに全国を支配する、あるいは大部分を支配するということになりますと、今度はそちらの反乱政府のほうを正統政府として承認する、こういう過程になるわけでございまして、ただいま御指摘になりましたスペイン内乱の際におきましても、第三国はいろいろございますが、たとえばイギリス等は正統政府というものをずいぶん長く承認しておりましたが、ドイツ、あるいはイタリアというものは、むしろフランスの反乱政府のほうを早く正統政府として承認した、かような事実になっておるわけでございます。この場合、二つの政府が並存した、客観的に見ればそういうことでございますが、その一つ一つの第三国から見れば、まあその場合の正統政府一つしかないのでありまして、あとは交戦団体、実際上の政府、かような法律関係になるわけでございます。例はたくさん、いわゆる内乱の場合にはこういう例がいろいろ従来もあるわけでございます。
  237. 田畑金光

    田畑金光君 国際法では、戦後の領土処分の最終決定は講和条約によって決定されることになっております。そこで、私は、他の委員会でも取り上げられたわけでありますが、確認の意味において、台湾の法的地位について政府考え方をあらためてただしたいと思うわけです。次のような事実に基づいて、カイロ宣言で、台湾、膨湖島は中華民国に返還されることが宣言された。ポツダム宣言及び降伏文書の受諾により、日本はカイロ宣言の履行を約束した。一九四五年九月一日、国民政府は台湾省行政長官官公署を設置し、九月二十日、台湾省行政長官官公署組織条例を公布し、十月の二十五日、受降典礼により、国内法上台湾接収の手続を終わったわけです。なお、台湾は、一八九五年、下関条約日本に割譲されたが、中華民国の対日宣戦によってこの条約は無効となり、その帰結として、台湾の領有権はもとの領有国である中華民国に復帰した。一九五〇年一月五日、トルーマン大統領の声明も中国の台湾領有を承認しております。これらの事実に対して、今日までどの国も反対または抗議を表明せず、このことは、諸国が台湾の中国帰属を事実上承認した、あるいは黙示の承認を与えた、そういう意味にとられておりますが、こういう事実に照らしても、台湾の法的地位については政府見解はどうであるか、もう一度承っておきたいと思います。
  238. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 中華民国政府が台湾を事実上コントロールしておるということは私どもも認めておりますが、日本政府といたしましては、サンフランシスコ平和条約によりまして、台湾及び膨湖島に対する一切の権利、権原及び請求権を放棄したことを承認いたしましただけでありまして、これらの地域の法律上の最終的な帰属はまだきまっていないという立場に立っておるわけであります。したがって、いまあなたが御指摘のように、台湾及び膨湖島に対する領有権、あるいは領土権というものを法律上認める立場にないわけです。
  239. 田畑金光

    田畑金光君 政府は、これまでしばしば日華平和条約わが国に対して特殊の意味を持っていると言われておりますが、それはどういう具体的な内容なのか、お尋ねしたいわけです。御承知のように、中国もサンフランシスコ平和条約に署名すべきであったが、内部事情により、それが不可能となり、後日、対日平和条約を原型として日華平和条約が結ばれたわけです。特に対日平和条約二十六条は、日本は、対日平和条約署名国以外の国と平和条約を締結する際は、対日平和条約以上の利益を与えるときは、対日平和条約の署名国にもこれと同じ利益を与えねばならないと規定しております。したがって、両条約は同じ性質のものであって、日華平和条約だけがわが国との関係で特殊の地位を持っておるとは条約上出てまいりませんが、にもかかわらず、政府は、台湾とは特殊の関係があると言われますが、それは一体どういう根拠で言われておられるのか。
  240. 中川融

    政府委員(中川融君) 日華平和条約がサンフランシスコ平和条約と同じ性格の条約であるという点につきましては、御指摘のとおりであると思うのでございます。日華平和条約日本にとって特殊の条約であるということを政府が特にかつて申したことはないように思うわけでございますが、あるいはその意味は、日華平和条約の適用される地域が、現に国民政府が支配しておるところ、あるいは将来その支配に入るところに適用されるというのが付属の議定書にございますが、その点がほかの条約と違うと言えば違うわけでございます。これはいまの国民政府中国の正統政府でありながら、現に支配し、統治する地域が限定されておるということからくるその違いがあるだけでございます。特に他の条約と違うという点はないと考えております。
  241. 田畑金光

    田畑金光君 日華平和条約の適用範囲をあらためて確認したいと思っています。日華平和条約の効果が潜在的には全中国に適用されておるという認識なのか、それとも、台湾、膨湖島の地域的に限定されると見るべきなのか、政府の明確な解釈を示していただきたい。ことに日華平和条約第三条の請求権処理方式については、その地域を限定的に規定しているのに対し、交換公文では、今後入るすべての領域に適用があるということで、解釈上の疑義が出てきますが、この間はどのような解釈をとるべきなのか、条約上の解釈を教えていただきたい。
  242. 中川融

    政府委員(中川融君) 日華平和条約につきましては、付属交換公文で、この条約は、中華民国政府が現に支配しまたは将来支配する領域に適用されるという規定がございます。しかし、いま御指摘になりました、たとえば第三条の規定でございますが、これはいわゆる請求権の解決をやる、たとえば日韓間でいま交渉しておるあれと同じような性質の規定でございます。これはいままで日本の領土であったところが、台湾、膨湖島が日本の領土でなくなった、そうして違う政府の支配のもとに入ったということから生ずるいわば善後処理でございます。したがって、これは当然日本から離れた地域にだけ適用される条項であるわけでございまして、その意味ではこれは付属交換公文のいわゆる合意議事録とは直接関係がない。合意議事録が現実に適用されますものは、たとえば通商関係のことを規定いたしました条項であるとか、あるいは航空関係のことを規定いたしました条項であるとか、あるいは海運関係のことを規定いたしました条項であるとか、こういうものはどういう地域に適用されるかということははっきりしておかなければいけないわけでございまして、現に国民政府の統治の及んでいない地域にまで適用するということは、これは現実に合わないわけでございます。要するに、現に支配しているところ、あるいは将来支配するであろうところ、そこで初めて適用されるということを規定したわけでございます。なお、しかしながら、たとえば第一条の平和関係が回復したというような規定、あるいは賠償を放棄したというような規定、あるいは戦前の条約が失効したというような規定、こういうような規定は、これはそもそも地域で限定されるべき性質のものでないわけでございまして、これは国家と国家との約束でございます。したがって、これは国家としての中国、それを代表する正統政府としての中華民国政府との約束でございまして、これは適用地域という観念、概念がそもそも適用があり得ない条項でございます。これは全部——全部といいますか、国家全体に適用される、かような関係になると考えているわけでございます。
  243. 田畑金光

    田畑金光君 結局、解釈を承っておりますと、わが国の利益を中心に、まあ言うなれば、わが国の都合のいい立場に立って、そのいずれも適用範囲を広くするか、あるいは現に支配する地域にとどめるか、そういうことになるようにお聞きいたしましたが、国家利益を中心にということで解釈の基準が変わってくるやに私は受け取りましたが、どうでしょうか。
  244. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そうではなくて、条約といたしまして、客観的に正しく解釈いたしておる次第です。
  245. 田畑金光

    田畑金光君 台湾の法的地位については、まだ帰属未定である、そういう先ほど外務大臣の答弁がありましたが、一部の国際法学者の中には、共同主権説を主張する者もあるわけです。ロンドン大学のかっての国際法主任教授のゲオルグ・シュワルツェンバーガー氏等の見解がそうであります。要するに日本を除く他の当事国が、台湾の共同主権者になったというような、そういう学説等もありますが、こういう解釈については、政府としてはどのように見ておられましょうか、受け取っておられましょうか。
  246. 中川融

    政府委員(中川融君) サンフランシスコ平和条約で、はっきりいたしておりますことは、日本が台湾、膨湖島についてのあらゆる権利権原を放棄したという事実でございます。これだけが、いわばはっきりしておるところでございまして、そういうことを、そういう状態をどう表現するかという、いろいろな国際法学者で表現があり得るわけであります。共同主権説というのは、おそらくサンフランシスコ平和条約の相手国——連合国を相手に、日本が放棄しておりますので、それらの連合国全体が、いわば台湾、膨湖島ばかりでなく、日本が放棄いたしました地域について、共同で一種の権原を持っておる、こういう意味で、それを共同主権というような言葉であらわしたのではないかと思うのでございます。  しかし、これら連合国の間に、台湾について共同的に主権を持ったのだという観念が、はっきりあるかと言えば、そういう合意もないわけでありまして、はっきり言えますことは、先ほど申し上げましたように、日本が完全に権利権原を放棄しておる、これだけの事実でございます。
  247. 田畑金光

    田畑金光君 私はこの際、総理にひとつ見解お尋ねしたいと思いますが、政府中国問題に対する法的な解釈や、あるいはこれに対する政策等を見ますと、いろいろな矛盾や、あるいは撞着を感ずるわけでございます。やはりそれは私は、法と事実関係に即して中国問題を見ていない結果、こうなるのではなかろうかと考えますが、時間の関係で省略いたしますが、わが党が一つ中国、これは中共一つの台湾というのは、中国政府は、国民政府でなく中共であると認める点では国府に反対であり、しかし台湾の国府は、さしあたりその実際支配する台湾だけの政府として認め、台湾の最終的な帰属は、その住民の自由意思によって決定しようという含みで台湾を支配していない中共に、その領有を認めない点では中共に反対する立場であります。これはイギリス、スカンジナビア三国を初め、過般カナダの総理大臣も、そのような立場であることを話しておりましたが、こう見てきますると、こういう考え方は、世界諸国に相当あるわけであります。政治評論家のウォールター・リップマンも同じ見解であるということは御承知のとおりであります。  こういう方式は現実に即し、単なるフィクションにすぎない一つ中国論に比べ、世界の平和維持のためには、現状の急激な変更を絶対に避くべしとする建設的な平和のかまえであると私は考えておりますが、池田総理としては、こういう考え方について、どのように評価されるか、この際、承っておきたいと思います。
  248. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 外交上、重要な問題でございます。影響するところが非常に多いところでございます。われわれは中華民国と戦い、中華民国と平和条約を結び、中華民国と友好関係にあるだけでございます。ヨーロッパの国々あるいは特にEECの中で、いろいろな意見も聞いておりますが、日本国としては、この際、そういうことについて断定はいたしかねます。
  249. 田畑金光

    田畑金光君 私は池田総理が、広大な国土に六億余の民を擁しておることは厳然たる事実である、これが中国前向き政策池田総理考え方だと言われておりますが、国民の立場から見ると、このことばは何を意味するかわかりません。あたかも花は美しい、子供が寝ておるといったたぐいです。政経分離というが、政治のない国際通商が考えられましょうか。私は政経分離自体が一つの政治じゃないかと考えます。結局のところ、政経分離とは反共の代名詞であり、これこそ政治とイデオロギーを混同するものと見ておりますが、総理見解を承ります。
  250. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) あなたの批評に対しまして、ここで申し上げることはいかがと思います。われわれはいまの事実を事実として、それに善処していくことが、わが国のとるべき外交政策考えておるのであります。
  251. 田畑金光

    田畑金光君 私は総理に、いささか苦言を申し上げますが、池田内閣には外交がないと、世間では、こう言っております。  鳩山内閣は党内の反対を押し切り、日ソ共同宣言により、日ソの国交回復を実現した。石橋内閣は対中共政策に手を打つと期待されたが、短命に終わり挫折したわけです。岸内閣は新安保条約を強行し、内閣の寿命を縮めたが、それでも在任中、北鮮帰国問題は純然たる人道問題として、これを片づけておるわけです。  池田内閣は、前二代の内閣外交問題で短命に終わったことをよき教訓とされて、困難な問題は避けて通ることにきゅうきゅうとしておるのじゃなかろうか。ドゴール反共であることは周知の事実であるが、国際情勢に対処する態度は、さすがであると思います。中共を孤立させることからくる国際情勢の不安定について、賢明に洞察しておる。そこには政治があり、外交が生きおります。私は政権の長きをいさぎよしとせず、国民の期待してやまない国家利益を中心に大いなる政治をなされてはどうかと考えますが、池田総理の御所見を承ります。
  252. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御批判は、いかようにもなさってけっこうでございます。私は私なりに、ふえてな外交につきまして全力をあげて進み、相当程度の効果があることを私は自負しておるのであります。それは日本の地位が非常に国際的に高くなって、各国との不平等条約を急激になくした。そうして一流国に入って、いわゆる世界の繁栄その他につきまして、相当な発言権を持った。そうしてこれを土台にして、日華国交正常化をはかろう。これはやったことについての批判は、これは歴史家にまかせます。また国民に見ていただけばいい。自分としては国内の生活水準の引き上げ、国力の増加に伴って、外交におきましても努力を続けておる次第でございます。何が一番いいということを考えてやっておるわけでございます。しかし、これは自分が微力であるということは自分も認めておりますが、これはしかし、国民とともにいくことでありまして、何も荒立てて、一つの問題をやったということじゃなしに、全体をよくしていくことが、外交だと思います。
  253. 田畑金光

    田畑金光君 私は、対国府と仲よくすることは大賛成でありますが、最近の政府外交姿勢について、若干お尋ねしておるわけです。対中共ビニロン・プラント輸出や周鴻慶事件で、台湾は日本を非難し、国交を断絶するような圧力をかけてきたわけです。これは私は、見よう見方によっては内政干渉ではないか、釈然としないわけです。そうすると国府が、こういう態度に出ると、政府は大野副総裁を初め後宮アジア局長、先般は吉田元総理も派遣され、また、今度は外務政務次官、近くは大平外務大臣も台湾に行かれるそうです。何か陳謝に行かれるような感じを受けるわけですが、ビニロン・プラントの輸出の延べ払い、周鴻慶の中共送還というのは、これは日本政府の政治的な措置は誤っていない、正しかったと、こう思うわけです。にもかかわらず、こういうような問題で一々台湾政府に何か御意見を、ごきげんを伺わなければならないような、そういう姿勢をまことに残念に考えますが、この点は、どういうことでしょうか。
  254. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いい悪いの問題でなくて、現実に理解が十分でないうらみがございます。しかるによって私どもといたしましては、鋭意意思の疎通をはかり、理解が行き届くようにいたして国交を改善してまいりたいと考えております。
  255. 田畑金光

    田畑金光君 私は先ほど申し上げましたように、国府筋の最近の態度は、きわめて私は遺憾だと、こう思うんです。対中共政策についても、あたかも国府のお許しを得なければできないような、こういう姿勢は私は残念でなりません。自主外交の最も遺憾な点が、ここに私は出ておると考えますが、どうでしょう。
  256. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 外交は自主的でなければならぬのは当然のことでございまして、それは対国府外交も決して例外ではないわけでございます。先ほど申しましたように、理解が十分でないことは、手を尽くして理解が行き届くようにいたしますことは当然私どもの任務だと思っております。
  257. 田畑金光

    田畑金光君 その他の問題は時間の関係で省略いたしますが、最後に私は、中共はすでに対日三原則——その内容のよしあしは別といたしまし——をきめてわが国との国交正常化の大前提を打ち出しております。わが国もまた、当然国家利益を中心に、今後の起こり得べきあらゆる情勢に即し対中国問題の検討なり政策を急ぐべきだと私は考えますが、どうでしょうか。大平外相は二月二十日の毎日新聞社主催の座談会で「中共問題は私も勉強中なので、自信のあることを申し上げる用意がない」ということを前置きして話を進めております。また一月十三日号の大衆週刊誌「週刊新潮」の「掲示板」に外相は投稿されておりますが、「私も従来、アジア外交の進め方に苦心しているが、だれか具体的に建設的な意見があれば虚心に伺いたいものだ。」といわれておるわけです。講虚な言葉といえばそれまででありますが、しかし、従来の政府の対中国政策の無為無策ぶりからすれば、外相は単に謙遜されておるとだけも受けられないわけです。これでは国民は不安でなりません。外務省の大先輩である西春彦氏は、外交強化への二つの提言として——これはいいか悪いか議論がありましょう——外務大臣外交経験者から選ぶこと、また次官補を数名置いて、外交政策樹立に専念するような配置を考えるべきこと、こういうことを西さんがいっておられますが、私はやはり外交の大先輩のお話だと思って、傾聴すべき御意見だと、こう承ったわけです。総理のひとつ御所見を承っておきたいと思います。
  258. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 外交外交官出身にまかすべきだという考えが西君におありということをいま初めて聞いたんですが、西君の意見でございます。外交専門家は必ずしもいい外務大臣とは言えないことは各国の例でもわかることでございます。それはもちはもち屋で、そのほうがよりいいかもしれません。しかし、それでなければならぬということはございません。私は西君の外交政策は、必ずしもあの人の考え方には私は合わない点があるのであります。したがいまして、外交官でなければ外務大臣はいかぬということは、少し言い過ぎじゃないかと思います。
  259. 田畑金光

    田畑金光君 最後に、私は時間がございませんので、若干の時間ですが池田総理のひとつお得意とされる経済問題について承りたいと思います。  日本経済が、戦後の回復過程を経て景気変動の波を受けてから、今度で四度目であります。国際収支の赤字にぶつかり、急激にブレーキをかけられた点では、今回も同様でありますが、景気の循環の様相がいままでと違っております。すなわち三十二年、三十六年の国際収支の危機は、それぞれ在庫投資の増大、設備投資の増大が輸入にはね返り、国際収支の壁にぶつかったが、今回の赤字は、そんな単純なものでなく、景気循環的な要素に基づくよりも、むしろ経済の構造的な問題に出発するといわれております。いわゆる転形期経済への移行といわれておりますが、景気の局面について、政府はどのように考えておられるのか、今後の経済のあり方について政府は、どういう方策でいかれようとするのか、これを承っておきたいと思います。
  260. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 何年かの経済成長の結果、国民所得の格差が縮まるとともに、雇用が相当多くなって、また、国の経済力が強くなったということは、過去何年かの成果だと思います。そこで、ここで迎えました一つの景気の問題は、仰せられますように、構造的なものを含んでおると思います。つまりそれだけの具体の生産施設をわが国経済は持ちながら、一方において、急速な格差の縮小に従って、あるいは物価の問題が起こり、あるいは雇用の窮屈が生じてきておる。また他方で国際収支の天井が、これだけの設備を持っております国としては、必ずしも高くはない、そういった問題、他方で低産業部門が相当伸びてはおりますが、他の部門が伸びましたために、それとの間に生産性の格差が生じてくる、そのようなものとして認識しております。
  261. 田畑金光

    田畑金光君 いまお話しのように、もろもろの矛盾がここで出てきておるわけです。従来は景気の上昇に転じてから、少なくとも二年間は、国際収支が好調を続けてきたが、今回は一年で、早くも国際収支は壁にぶつかっておる。景気の過熱であるかといえば、そうでもなく、むしろ不況の様相もある、こういうことを見たとき、今後の経済のかじとりということが、最もわれわれとしては注目されるわけでありますが、今後、こういう景気の局面を迎えられて、どういう今後経済政策を進めていかれようとするのか、わが国の産業経済は、うちには過剰設備、いまお話しのように、あるいはまた労働力不足、物価の上昇、産業の再編成等、どの一つを取ってみても困難な問題です。さらに外部条件としては、IMF八条国への移行、OECDへの加盟、関税一括引き下げ等が現実化し、貿易為替管理や関税による保護に依存することは困難になってきたわけです。  以上の条件変化は、高度成長政策が生んだものであるが、換言すれば、高度成長政策を支えた条件が変化したのであり、池田内閣経済政策が八方ふさがりの袋小路に入ってしまった。こういう経済的な構造の危機、この問題をどう乗り切るかということが、これから国民としても、一番大きな問題であるわけです。私はこの点について、詳しくいろんな角度から承りたいと考えておりましたが、時間がまいりましたので、これ以上お尋ねできません。一体、こういう経済情勢のもとで、これから政府は、どういう経済のかじとりをなされようとするのか。昨年の十二月以来日銀は預金準備率の引き上げや、あるいはまた、日銀の窓口の規制を通じ、金融の量的な引き締めをやっておるけれども、国際収支の改善、あるいはまた、現在の高度生産のこの水準が落ちてこない、いろんな問題をかかえておるわけです。あまつさえ企業間には、十兆円をこえるといわれておる企業間信用という問題をかかえておるわけです。  従来の景気の調子であるならば、金融引き締め、あるいは公定歩合の引き上げ等によって、よき徴候が出てきたであろうが、今回の場合は、なかなかそうはいかない。もし今日、こういう事態において、さらに金融を引き締めるならば、いまですら中小企業の倒産が続出しておるこの時期に、ますます経済界の混乱を巻き起こすという危険性があるわけです。金融の面から見ても、どうも池田内閣政策は行き詰まってきた。先ほど申し上げた構造的な危機が、いろいろな面に出てきた、こういうことです。私はこの辺でやめますが、一体、この問題について、どのように考えておられるのか、どういう取り組み方をなされようというのか、これだけお聞きしておきたいと、こう思うのです。
  262. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 四月一日、八条国移行という歴史的な時期に遭遇しておるわけでありますから、あなたがいま述べられたように、確かに、そう楽な経済ではありません。もちろんこれだけの大きな仕事を戦後十八年間という短い期間になし遂げてきたのでありますから、各所に生じたひずみに対しては、これを直すように努力をしなければならぬことは、言うをまたないわけであります。国際収支の安定、物価の安定、なお産業については、国際競争力をつけながら、国内不均衡の是正にも意を用いて、健全な日本の将来を築くべく考えておるのであります。  その意味においては、具体的には財政と金融の一体化をはかりながら正常な金融環境をつくり、かつまた、財政の運用につきましても、十分配意をしながら、健全にして安定的な経済の運営をはかりたい、このように考えております。
  263. 太田正孝

    委員長太田正孝君) 田畑君の質疑は終了いたしました。  今日は、この程度にいたしまして、明日は午前十時から開会いたします。    午後五時一分散会