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1964-05-13 第46回国会 参議院 本会議 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月十三日(水曜日)    午前十時二十五分開議   ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第二十二号   昭和三十九年五月十三日    午前十時開議  第一 漁港審議会委員任命に関   する件  第二 厚生年金保険法の一部を改   正する法律案趣旨説明)  第三 関税協力理事会を設立する   条約締結について承認を求め   るの件(衆議院送付)  第四 大規模公有水面埋立て   に伴う村の設置に係る地方自治   法等特例に関する法律案(内   閣提出)  第五 水先法の一部を改正する法   律案内閣提出衆議院送付)  第六 国事行為臨時代行に関す   る法律案内閣提出衆議院送   付)   ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、故議員野村吉三郎君に対する追   悼の辞  一、故議員野村吉三郎君に対し弔詞   贈呈の件  一、日程第一 漁港審議会委員の任   命に関する件  一、日程第二 厚生年金保険法の一   部を改正する法律案趣旨説明)  一、日程第三 関税協力理事会を設   立する条約締結について承認を   求めるの件  一、日程第四 大規模公有水面の   埋立てに伴う村の設置に係る地方   自治法等特例に関する法律案  一、日程第五 水先法の一部を改正   する法律案  一、日程第六 国事行為臨時代行   に関する法律案   ━━━━━━━━━━━━━
  2. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。    ————————
  3. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。  議員野村吉三郎君は、去る八日逝去せられました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。  草葉隆圓君から発言を求められております。この際、発言を許します。草葉隆圓君。   〔草葉隆圓登壇拍手
  4. 草葉隆圓

    草葉隆圓君 議員野村吉三郎君の御逝去は、まことに痛恨にたえません。巨星墜つの感慨を深くいたすものでございまして、同僚議員といたしまして、つつしんで深く哀悼の意を表します。  顧みますれば、野村君は、昭和二十九年六月参議院議員に御当選以来、終始外務委員として重きをなし、また、自由民主党の参議院議員会長外交調査会会長等をつとめられましたが、同君の円熟した人柄、広い視野、高邁なる識見は、接する者の敬慕を集め、参議院をして真に国民の信頼にこたえる良識の府たらしめる上に、常に大きな力でありましたことは、私どものひとしく忘れ得ないところでございます。  野村君は、明治十年和歌山市に生まれられ、幼にして海軍に志し、再三生死の間をへめぐりながら常に勇名をはせ、累進して海軍大将となり、幾多の要職を歴任されましたことは、御承知のとおりでございます。  しかも野村君は、一介の武弁に終わることなく、海軍武官として、あるいは軍縮会議の随員として、しばしば外国に使いしては、広く世界情勢に通暁する機会に恵まれ、さらに、生来、広く書を愛読され、進んで内外の識者と交わりを深くし、日本の国力、国際的地位に対して、常に正しい認識を持つことにつとめられたのであります。  かくて、同君は、つとにわが国の安全や国民の繁栄は、広く世界の平和と人類の福祉とを離れては望み得られないものであるとの強い信念を固められ、しかも、この信念こそ、終生変わることがなかったところであると存ずるのでございます。戦前、学習院長として子弟の教育に当たられましたが、国際関係緊迫を加うるに及びまして、請われて外務大臣に就任し、また、百難を知りながら、あえて駐米大使の重責を受諾して、いわゆる野村ハル交渉文字どおり粉身の努力と苦心を重ねられたのであります。交渉は、不幸にして失敗に終わりましたが、世界平和への同君の熱情と強い愛国心とは、必ずや後の世の人々の長く記憶するところであろうと存じます。さらに、戦後、参議院選挙への出馬を決意されましたのも、同じく、世界の平和と日本民族の将来に対する同君の強い信念に基づくものであったと存じます。  同君は、両三年来、健康を害され、国立東京第一病院に入院、もっぱら療養につとめられてまいったのでありまして、一時は快方に向かわれつつありと承り、私ども一同、御登院の日を楽しみにお待ちしておったのでありますが、ついに去る五月八日幽明境を異にされるに至ったのであります。  いまや、世界冷戦緩和の方向に進みつつあるとは申しながら、内外情勢はますます同君のような高潔達識の士を必要とすること切なるものがあるときであると存じます。このときにあたり、君を失いますることは、ひとり参議院のみではなく、国家全体の損失であり、さらに、平和を念願する世界人々の惜しんでやまないところであると存じます。  ここに野村君の霊に対し、つつしんで敬弔の誠をささげ、心から御冥福をお祈り申し上げる次第であります。(拍手)    ————————
  5. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) おはかりいたします。野村吉三郎君に対し、院議をもって弔詞贈呈することとし、その弔詞議長に一任せられたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。  議長において起草いたしました弔詞を朗読いたします。   〔総員起立〕  参議院議員従二位勲一等野村吉三郎君の長逝に対しましてつつしんで哀悼の意を表しうやうやしく弔詞をささげます   —————————————  弔詞贈呈方議長において取り計らいます。    ————————
  7. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第一、漁港審議会委員任命に関する件を議題といたします。  内閣から、漁港法第九条第一項の規定により、井出正孝君、黒田静夫君、林真治君、向瀬貫三郎君、秋山皐二郎君、西上重弌君鈴木覚君、高橋重博君、小林小一郎君を漁港審議会委員任命することについて、本院の同意を求めてまいりました。本件同意することに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立
  8. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって同意することに決しました。    ————————
  9. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第二、厚生年金保険法の一部を改正する法律案趣旨説明)、  本案について、国家法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。小林厚生大臣。   〔国務大臣小林武治登壇拍手
  10. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 厚生年金保険法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  厚生年金保険は、昭和十七年に発足して以来、今日まで二十有余年を経過し、千七百万人にのぼる民間被用者を包含する年金制度でありますが、現行給付体系、すなわち定額部分報酬比例部分の二本立てによる年金給付体系が整えられたのは、昭和二十九年の改正によるものであります。その後昭和三十五年には、給付及び保険料について若干の手直しを加えたのでありますが、この改正がきわめて幅の小さいものであったため、厚生年金保険給付水準は、昭和二十九年以後の著しい経済成長、これに伴う生活水準の大幅な上昇に取り残され、労働者老後生活保障するものとしては、はなはだ不十分な状態に置かれているのであります。また、年金財政をまかなうため労使負担する保険料率も、他に例を見ない低い水準のまま推移しているのであります。  以上のような事情にかんがみ、本年は保険料率計算の時期でもあるところから、政府としてはこの機会に、今日までの経済成長生活水準向上の実態に則して、厚生年金保険の大幅な改正をはかることが適当と考え、一昨年以来準備を進めてまいったのであります。  今回の改正趣旨とするところは、まず、何よりも、人口老齢化の趨勢がいよいよ明確化し、年金受給者も増加して厚生年金保険成熟期を迎えようとする時期において、労働者老後生活保障するに足る老齢年金として平均月額一万円年金を実現することを中心として、制度内容を大幅に改善し、これに伴う所要の調整を加えるとともに、給付引き上げ賃金水準上昇に応じて、保険料負担についても適正な水準にまで引き上げようとするものであります。同時に、最近普及しつつある企業年金と、改正後の厚生年金との機能や負担の競合を調整し、老後生活保障企業協力により一そう充実強化し得るよう、両者の調整労使の合意によって行なう道を開くこととしたのであります。  以下、改正法案のおもな内容につきまして、逐次御説明申し上げます。  第一に、基本年金額引き上げについてであります。  まず、定額部分につきましては、現行月額二千円を五千円に引き上げ、さらに被保険者期間二十年以降三十年までは一年につき二百五十円を加算することとし、これによって三十年では月額七千五百円となるようにいたしております。  また、報酬比例部分については、現行平均標準報酬月額に被保険者期間一月当たり乗ずる率千分の六を千分の十に引き上げることといたしております。  第二に、老齢年金支給につきまして、現行では退職しない以上は年金支給されない仕組みとなっておりますのを、高齢労働者生活安定の趣旨に沿って若干緩和することとし、六十五歳に達したときは在職中でも老齢年金の八割相当額支給することとしております。  第三に、障害年金及び障害手当金の額の引き上げについてであります。一級障害年金につきましては、現行基本金額月額千円を加算する方式を改め、基本年金額の百分の百二十五相当額引き上げ、三級障害年金につきましては、現行基本年金額の百分の七十を、百分の七十五に引き上げるほか、さらに月額五千円の最低保障を設けることとし、また、障害手当金につきましては、現行基本年金額の百分の百四十を百分の百五十に引き上げることといたしております。  第四に、遺族年金につきましては、妻についての年齢制限及び若年停止を撤廃し、さらに年金額については月額五千円の最低保障を設けたことであります。  第五に、任意継続保険者について、新たに被保険者期間中の事故に基づく障害年金障害手当金及び遺族年金支給することとしたことであります。  第六に、年金額調整についてであります。年金の額は、国民生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、すみやかに変動後の諸事情に応ずるための調整が加えられるべきものとしたことであります。  第七に、標準報酬につきましては、最近の賃金水準上昇等の実情に則し、現行の三千円から三万六千円までの二十等級を、七千円から六万円までの二十三等級に改めたことであります。  第八に、保険料率の引上げについてであります。今回の給付大幅改善に伴い、保険料負担につきましても、相応に増加すべきことはやむを得ないところでありますが、厚生年金保険におきましては、従来いわゆる修正積み立て方式のたてまえをとっており、五年ごとに再計算することとして暫定的な料率を採用しておりますが、今回もこの方式を踏襲いたし、急激な負担の増大を避けるため、とりあえず第一種被保険者一般男子)については、現行の千分の三十五を千分の五十八に、第二種被保険者(女子)については、現行の千分の三十を千分の四十四に、第三種被保険者坑内夫)については、現行の千分の四十二を千分の七十二に、第四種被保険者任意継続保険者)については、現行の千分の三十五を千分の五十八にそれぞれ引き上げ、さらに、これらの料率については、将来にわたって段階的に引き上げていくこととしたのであります。  第九に、既裁定年金引き上げについてであります。現に支給中の年金が、所得保障趣旨から見て著しく低水準にあるところから、既裁定年金につきましても今回の改正方式を適用いたし、改正後の計算例によってこれらの年金額を大幅に引き上げることといたしております。  第十に、旧陸海軍工廠の工員などの旧令共済組合員であった期間厚生年金の被保険者期間に算入し、通算老齢年金に準じた特例老齢年金支給することとしたことであります。  第十一に、厚生年金老齢年金及び通算老齢年金のうち、報酬比例部分につきましては、民間職域において設立されたいわゆる企業年金一定要件を備えるものについては、申請により、厚生年金基金を設けてその代行給付を行なう道を開いたことであります。  厚生年金基金は、事業主及び被保険者で組織される特別法人とし、一定数の被保険者を使用する事業主がその被保険者の二分の一以上の同意を得て規約をつくり、厚生大臣の認可を受けて設立することとなりますが、その行なう事業は、厚生年金給付のうち、老齢年金及び通算老齢年金報酬比例部分代行として、少なくともそれを上回る額の年金給付を行なうほか、任意給付として、死亡または脱退に関して一時金の支給を行なうことができるものとしております。  また、厚生年金基金は、信託会社または生命保険会社給付支給を目的として信託または保険の契約を締結しなければならないほか、その事業に要する費用に充てるため、掛け金を徴収することとしたのであります。  なお、国庫は、年金給付に要する費用のうち、老齢年金及び通算老齢年金報酬比例部分相当額に要する費用の一五%、坑内夫たる加入員期間に対応する部分については二〇%をそれぞれ負担することといたしております。  第十二に、厚生年金基金は、厚生年金基金中途脱退者にかかる年金給付を共同して行なうため、厚生年金基金連合会を設立することができることといたしております。  最後に、実施の時期につきましては、諸般準備等もあり、主たる部分については、昭和四十年五月一日からといたしております。  以上をもって改正法律案趣旨説明を終わります。(拍手
  11. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。柳岡秋夫君。   〔柳岡秋夫登壇拍手
  12. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました厚生年金保険法の一部を改正する法律案につきまして、総理並びに関係大臣質問をいたすものであります。  まず、総理にお伺いをいたします。厚生年金制度根本的改善は、単に被保険者たる千六百万労働者の要求であるばかりでなく、社会保障の確立を念願する全国民の久しく待望してまいったところであります。しかるに、今回の改正案は、この国民の期待を裏切る改悪案となっていることは、まことに遺憾であります。政府は、みずから社会保険審議会に諮問しながら、原案を固執してその答申を無視し、一部大企業の主張に迎合いたしまして、社会保障のベールをもって労務管理政策にこれを活用せしむるがごとき、社会保障の精神を踏みにじるとともに、社会保障に対する政府みずからの責務を回避せんとする態度は、絶対に許されないところであります。労働者から強制的に保険料を取り立てる本制度改正にあたりましては、十分に労働者の納得を得て行なうべきであります。かかる問題の多い重要法案を、今国会のあと四日といわれる末期になってあわてて提出をした意図は那辺にあるのか、趣旨説明では明確になっておりませんので、明らかにしていただきたいのであります。  質問の第二は、年金制度に対する基本方針長期計画についてであります。昭和三十七年八月、社会保障制度審議会は、「社会保障制度総合調整に関する基本方策についての答申、並びに、社会保障制度推進に関する勧告」を総理大臣提出しており、この中で、年金制度のあり方について明確に方向づけが示されていることは、御承知のとおりであります。しかしながら、今国会においても各種公的年金制度についての改正案提出されておりますが、これを見ますと、相互的に年金制度についての総合調整が計画的に行なわれていないのではないかと思うのであります。具体的に一、二の例を申し上げるならば、厚生年金が今回の改正案で一万円年金といわれ、給付改善を行なうとしておりますが、国民年金は二千万人に及ぶ公的年金の中で最大対象者を有しながら、給付支給要件等は、公的年金の中では一番劣悪であります。四十年間掛け、五年据え置いて、わずかに三千五百円の年金額という、年金というには値しないにもかかわらず、今国会改正案では、何ら給付額引き上げが行なわれていないのであります。また、厚生年金国家公務員共済組合を比較してみますと、厚生年金の場合は、保険料引き上げのみを行ない、国庫負担の増額はいたしておりません。しかるに、比較的給付のよい国家公務員共済組合国庫負担引き上げを行なっているのであります。給付額のよい年金制度ほど、国庫負担給付内容等がよくなっており、社会保障の完全を最も必要とする国民年金厚生年金は、取り残されているといっても過言ではありません。一体、政府は、年金制度について、いかなる基本方針をもってその統合調整をはかろうとするのか、総理の御見解をお伺いいたします。  質問の第三は、基本年金額引き上げについてであります。厚生年金制度老齢年金が、依然、定額部分報酬比例部分の二つから構成されている限りでは、問題のあるところであります。また、調整年金を持たない中小企業労働者老齢保障を考える場合、厚生年金制度の充実の焦点は、どうしても定額部分完全年金たる意義を有することが、所得保障としてのあるべき姿であると思うのであります。したがって、少なくとも定額部分を、老齢保障のための最低生活保障する年金額として確立すべきであります。今回の改正案におきまして、定額部分報酬比例部分のバランスを現行のままにしていることは、社会保障に積極的な意欲をもって公約している池田内閣政策としては、理解に苦しむのでありますが、厚生大臣の御見解をお伺いいたします。  質問の第四は、本改正案内容について、さきに申し上げた社会保障制度審議会が示した年金制度関係の重要な事項が見送られた点の多いことであります。  その第一は、スライド制であります。国民年金法におけるスライド規定と同様に、名目のみを掲げまして骨抜きにしているのであります。社会保障制度審議会答申は、スライド制について次のように述べております。「戦後における激しいインフレーション厚生年金給付をほとんど無意味にし、そのになっている生活保障役割りを果たせないようにしてしまった苦い経験もあり、国の責任年金の実質的な価値の維持をはかる原則は、この際どうしても確立する必要がある。この意味からいって、年金額国民生活水準の伸びに応じて引き上げていく場合にも、インフレーションに対して実質的な価値を維持する場合にも、少なくとも年金最低保障額は、現に支給を受けているものの年金額の改定を含めて国の負担とすべきである。この部分こそ国が積極的にその責任を負うべきものであり、国をおいては、その費用負担すべきものはない。これがなければ社会保障が確立されたことにはならないものである。」といたしまして、強くその実施を求めているのであります。また、今回の改正案を諮問した社会保険審議会並びに社会保障制度審議会におきましても、スライド制につきまして明確な基準を定めるように答申をいたしているのでありますが、なぜ今回の改正案に取り入れられなかったのか。厚生大臣さき衆議院におけるわが党議員質問に対しまして、スライドによる追加費用をだれが負担するかなど、いろいろの問題があると答弁されておりますけれども、いま申し上げました答申の中に明確にされているではありませんか。昭和三十七年に答申が出されているにもかかわらず、いまだに検討中とは承服できないところであります。厚生大臣の御答弁を願います。  その第二は、積み立て金管理運用についてであります。現在、厚生年金積み立て金は、資金運用部資金にプールされ、財政投融資の重要な原資とされまして、その大部分が、大企業独占資本に投資され、中小企業はこれら巨大な積み立て金の過半を徴収されながら、還元的に融資を受けている金額積み立て金の一割にも達しないのであります。この積み立て金は、昭和四十年には一兆円にも達するといわれ、本改正案によっていよいよ急膨張していくことは明らかであります。本来、厚生年金国民年金積み立て金は、被保険者還元をいたしまして、社会保障発展に役立たせるべき性質を持っているのであります。その運用にあたって、郵便貯金積み立て金など全く性質の異なる積み立て金と一緒にいたしまして使われていることは、適当ではございません。また、還元融資回収金は再び資金運用部資金に繰り入れられまして、その使途がはっきりしておらないことも不合理であります。大蔵大臣諮問機関である資金運用審議会は、すでに昭和三十五年に、「年金積み立て金は、他の原資と異なり、国民から強制的に取り立てるものであるから、有利な運用をすべきであること」、「預託者意見を大幅に取り入れる」、「国民生活部門への有効な活用を行なうこと、」などの答申を行なっております。さらに、社会保障制度審議会及び国民年金審議会におきましても同様の答申を行なっていることは、よもや大蔵大臣はお忘れではないと思うのであります。これらの答申に基づいて「年金特別勘定」を設け、その使途を明確にするとともに、被保険者代表の参加する「積み立て金運用審議会」を設置して管理をすべきであると思うのであります。さきに、本院において、国民年金法の一部を改正する法案に対する私の質問に対し、厚生大蔵大臣は、政府部内において十分協議をして結論を得たいと答弁されておりますけれども、どうなっておりますか。また、答申を受けてからいままでこれを無視してきたこの怠慢は責めらるべきでありますが、両大臣から明確に御答弁を願います。  その第三は、五人未満事業所労働者及び日雇い労働者強制適用についてであります。これら労働者被用者保険を適用し、一般被用者と同様の保障を行なうことは、今後の社会保障の総合的な発展のために絶対に必要であります。政府は、厚生省、労働省、社会保険庁の三者をもって適用調査会設置したが、その進捗状況はどうなっているか。また、いつごろ結論が出るのか。厚生大臣にお伺いいたします。  質問の第五は、厚生年金企業年金調整についてであります。調整年金が本法案における重要な中心問題であり、本改正案改悪案と言われる最大のゆえんも、この点にあるのであります。  以下総理にお伺いいたします。本改正案を諮問した社会保険審議会は、三者三様の意見を併記するという異例の答申を行なったことは、御承知のとおりであります。社会保険審議会が、かような並列答申をいたしましたことは、厚生年金企業年金との調整のため、報酬比例部分についての適用除外とするいわゆる調整年金部分に、労働者側使用者側にかなり意見の対立があって、最後まで意見一致を見られなかったためであります。しかしながら、公益側意見といえども、「調整給付改善前提条件とすることは、企業年金を持ち得る企業だけを中心とする考え方であって、了承しがたいものがある」と述べていることは、注目すべき点であります。また、社会保障制度審議会は、満場一致をもって、「調整年金制度については、問題の経緯にかんがみ慎重に取り扱う」と明確に答申いたしております。政府は、これら答申を尊重して今回の改正案には含めず、引き続き十分研究すべきであると思うのでありますが、かくも提出を急いだのはいかなる考えか、はなはだ不可解に感ずるものであります。その辺の意のあるところをお伺いしたいのであります。  厚生年金の一部適用除外などによる企業年金推進は、社会保障私的経営化であり、時代錯誤もはなはだしいといわなければなりません。しかも、これまでの退職金企業年金化するようなことは、労使交渉できめられるべきものであり、社会保障としての厚生年金改正などに関連して取り上げるべき筋合いのものではないのであります。換言するならば、老後生活保障は国の社会保障でなさるべきであります。従来の退職一時金を廃止する目的でつくられた私的な企業年金を公的な厚生年金制度に導入して、調整年金制度を発足させることは、公的年金制度の確立をおくらせるばかりでなく、事実上、厚生年金制度を私的年金に従属させることになるのであります。調整によって、労務管理退職金企業年金のような異質のものを社会保障に持ち込むことは、本来の社会保障を逆行させることになるのではないか。この点について明確なる御見解を承りたいと思います。もし、今回の調整年金制度が発足することになれば、調整することができるのは大企業だけであり、中小企業企業年金実施できないところが多数でありますから、その結果、老後保障企業別格差が一段と拡大することになり、かえって公的年金制度の後退を招くのであります。今日必要なことは、社会保障確立の見地から、国が中心となって年金制度の基礎を固め、名実ともに基本的な被用者年金制度として改善充実することでなければなりません。この際、総理は思い切って調整年金制度を見送る考えはないか、御所見をお伺いいたします。  質問の第六は、保険料国庫負担並びに財政方式についてであります。給付水準現行の二倍以上となることに伴い、国庫負担の額もまたこれに見合って増加することは当然であります。しかるに、政府は千六百万人にのぼる多数の被保険者事業主の大幅な保険料引き上げによって給付改善をはかろうとしております。しかも保険料率五八%と増率となって、総額千五百億円以上となり、これは増税と同じ結果になるのであります。それに加えて、五年目ごとに少なくとも〇・五%当てさらに引き上げる予定といわれます。給付改善にあたっては、わが党が、保険料によらず、国の責任により、国庫負担現行一五%から三〇%と引き上げることを主張しているのと比較をいたしまして、池田内閣の減税と社会保障の公約は、それがかかる欺瞞的な政策によって行なわれているのだということを如実に物語るものであります。大蔵大臣は、当然の国庫負担増をなぜ認めないのか、明らかにしていただきたいと思います。一面、年金保険に対する積み立て金による財政方式を認めている以上は、年金給付を増額するためには、保険料引き上げは当然の宿命であり、財政方式の根本的な欠陥であります。この際、欧米各国が採用している新しい賦課方式、わが国におきましても、国会議員互助年金法に見られるごとき賦課方式に基づいた年金制度の根本的改革をはかることが考えられなければならないと思いますけれども厚生大蔵大臣の御見解を承りたいと存じます。  最後に、私は、政府が誇らしげに宣伝をする一万円年金も、それは保険料率引き上げ標準報酬の改定に伴う大幅な保険料引き上げに裏づけられた単なる手直しにすぎないものであり、退職金をなくし、社会保障を後退させ、労働者積み立て金独占資本本位に使おうとする収奪政策にほかならないということを、強く指摘をしたいのであります。本改正案を撤回をして、真に所得再配分の社会保障の精神にのっとった抜本的改正案提出されるよう要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  13. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答えいたします。  労働者老後生活保障するために、従来の年金額を大幅に増額する、すなわち平均一万円を目途としての改正は、非常に重大であります。したがいまして、社会保障制度審議会社会保険審議会等の慎重な審議をする必要がございましたので、そしてその審議の結果によりまして法案を修正いたしましたので、提案がおくれたのでございます。しかし、もうすでに十分従来お考えいただておるところでございますので、慎重に御検討をお願いしたいと思います。  なお、年金制度調整の問題でございますが、この年金制度被用者年金国民年金がございます。また、被用者年金につきましても、厚生年金と各種共済組合年金がございます。これは、その沿革から申しまして、いろいろ違っておるのであります。これを総合調整するということは必要なことでございます。われわれは、厚生年金改正をするにあたりまして、その他のいわゆる被用者年金につきましても、今後検討し、また、お話の国民年金につきましても内容充実に努力していきたい。そうして四十五年度を期しまして全体の調整がつくようにいたしたいと考えておるのであります。  なお、調整年金につきましての御意見でございますが、私は、最近民間企業におきまして企業年金が相当普及発達をしております。したがいまして、公的年金引き上げに対して、この普及発達しておりまする企業年金とどうやったらいいかということでございます。私は、やはり政府事業の一部を民間に代行さして、そして実情に即して弾力的に給付を増額する、こういうことが必要であると考えまして、調整年金を置くことにしたのであります。もちろんいろいろ利害関係がございますので、調整年金の施行につきましては、やはり二分の一以上の賛成がないとできないという規定を設けまして、実情に即しつつ、いわゆる労働者年金の増額につきましてあらゆる手を尽くしたい、こういう考えで設けておる次第でございます。(拍手)   〔国務大臣小林武治登壇拍手
  14. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 厚生年金基本年金額引き上げの問題であります。これはいろいろ問題がありまして、定額部分に重点を置け、あるいは報酬比例部分に重点を置けというふうな、保険のたてまえからいけば、拠出による報酬比例部分に重点を置くという、こういうふうな御意見もあるのでありますが、今回は、定額部分報酬比例部分と大体同額を見合ってこの案ができておるのでありまして、御承知のように、私ども厚生省の案といたしましては、定額部分を四千円にする、こういう案を諮問したのでありますが、社会保障制度審議会、あるいは保険審議会において、いろいろの御議論がありましたので、あえてこの額を修正をいたしまして、国会には定額部分五千円、こういうことにいたしておるのであります。定額部分を五千円にしたということは、非常にこれは大きな意味があるのでありまして、これが他にも非常に大きな影響を及ぼしておる。すなわち、報酬比例部分を重くするということは、いまのように企業の賃金格差が非常に多いようなときにおきましては、これを多くするということは妥当でない、こういう考え方があるのでありまして、この点、御了承願いたいと存じます。  なお、スライド制の問題につきましては、先般国民年金の場合にもお答え申し上げたのでありまするが、私ども、原則としては、当然これは認めなければならぬ問題であると思うのでありますが、しかし、まだこのスライド制を、賃金とか、物価とかを重く見るか、あるいは生活水準を重く見るか、いろいろの問題があり、他にいま幾つか年金制度がある、これらに共通の問題もありますので、今回は基本的な原則を定めたのでありますが、ぜひ近い将来において具体的にこれがなるように、こういうふうな考え方でいま検討を進めておるのでございます。  次の積み立て金運用は、大蔵大臣からお答えがあると思いますが、これは私どもとしても、いまお話のような意見を強く持っておるのでありまして、この問題につきまして、政府部内で検討を加えておるのでありまするし、また私どもは、この厚生年金法の成立を機会として、資金運用審議会の中で特別委員会等を設けて、この問題を真剣に検討してもらいたいと、かように考えております。  次の五人未満、あるいは日雇い労務者に対する強制適用の問題でありますが、これは前回も申し上げたように、私ども、これには厚生年金ばかりでなく、健康保険、労災保険、失業保険のこの四つの問題がありますので、これらも、もはやこれらの事業所に強制適用してもいい時期が近づいておる、こういうふうな考え方からして、いま実態を調査をして、そう遠くない時期に結論を得たいと、こういうふうに思っております。  日雇い労務者につきましては、現在、御案内のように、国民年金に加入しておるのでありますが、これらも、私どもは五人未満と同様な観点からして、ひとつこれを考えていきたいと、かように思っておるのでございます。  それから保険料の問題でありますが、これはよく御案内のように、厚生年金が始まった際には、完全積み立て方式をとりまして、ある時期においては千分の九十とか、千分の百までいったのでありますが、これは負担に耐えがたい問題でもありますので、これを改めまして、いまの修正積み立て方式にいたしておるのでございます。賦課方式にしろとか、いろいろな議論がありますが、いまの状態においては賦課方式は適当でない、こういうふうな考え方を持っておりまして、保険料につきましても、私ども社会保険審議会にかけた場合には千分の六十、こういうふうになったのでありますが、これも審議会の御意見等によりまして、千分の五十八まで引き下げた、こういういきさつもあるのでありまして、これらの問題につきましては、続いてひとつ御審議を願いたいと、かように考えておるのであります。(拍手)   〔国務大臣田中角榮君登壇拍手
  15. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 私からお答えいたしますのは三点であります。  その一点は、いま厚生大臣が申し述べましたとおり、積み立て金管理運用の問題であります。本件につきましては、資金運用審議会に特別委員会を設けまして、慎重に審議検討をいたしたいと存じております。来年度までには結論を得たいと考えます。  第二点は、厚生年金給付費に対する国庫負担率一五%の問題でございますが、御承知のとおり、他の被用者年金との権衡を考慮する必要があるわけでございます。現在、公務員、公共企業体の職員、私学、農林団体職員等の共済年金における国庫負担率の最高が一五%でございますことは、御承知のとおりでございます。なお、厚生年金給付水準が二倍以上になることに伴いまして、国庫負担の額も当然増加をするわけでありますので、今回は現行据え置きといたしたわけでございます。  第三点は、今回の改正にあたって、修正積み立て方式よりも賦課方式をなぜ採用しないのかという問題でございます。賦課方式を採用する場合におきましては、年金受給権者が比較的に少ない現段階におきまして、保険料がきわめて少額で足りる反面、受給権者が増加をし、制度のいわゆる成熟期に入った段階では、積み立て金運用益がないために保険料負担が巨大なものとなるのでありまして、年金制度の財政運営がはなはだ困難となるのであります。第二は、保険料率が年を追って上昇をいたしますことは世代間の負担の公平に反する、こういうことで、思い切った給付改善実施するに際しまして、できる限り各世代の負担を平均的なものとするよう、こういう意味で積み立て方式をとることが妥当であると考えておるのでございます。(拍手)   —————————————
  16. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 基政七君。   〔基政七君登壇拍手
  17. 基政七

    ○基政七君 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま提案になりました厚生年金保険法の一部を改正する法律案について質問をいたすものであります。  国民老後生活に対する保障としての年金制度は、昭和三十六年より国民年金となりましたが、各種公的年金制度は、依然としてその支給内容要件がばらばらのまま乱立しており、その水準もきわめて低いまま放置されているのであります。こうした中にあって、いま老後保障の中核である厚生年金保険法の抜本的改正が行なわれることは、今後のわが国の社会保障制度水準とその方向を指示するものであり、きわめて重要な問題を含んでいると言わねばなりません。この意味において、私はまず改正の時期と年金額の関連についてお伺いいたしたいのであります。  政府は、今回の改正について、本年が保険料率計算の時期でもあるから、この機会に二十九年以来の大幅改正をはかることが適当であると説明されているが、まさにそのとおりであると思います。しかし、同時に、年金は、その性格にかんがみ、いま直ちに実効を発するというよりも、将来にわたる年金支給に、より大きなウエートがあるわけであります。したがって、年金額については、今日の経済的、社会的諸条件を勘案するのみならず、今後の見通しについても十二分の配慮を必要とするわけでありますが、御承知のように、最近は物価は高騰を続け、国民生活はきわめて不安定であり、今日の百円はあすの百円として通用しがたい状態にあるわけであります。こうした中にあって将来の国民生活の基準を定めるという場合、政府原案の年金額は、はなはだ低きに失すると言わねばなりません。この点について総理はどのようにお考えになりますか、お伺いいたしたいのであります。  第二点は、年金額に関する技術的な面についてであります。政府は一万円年金を公言しておりますが、原案によりますれば、一万円年金を受給するためには、平均標準報酬月額が二万五千円であることが必要であります。しかるに、昭和十九年以来今日まで二十年間の標準報酬月額の最高の報酬額を例にとったといたしましても、平均標準報酬月額は二万円に満たないのであります。これが平均二万五千円の水準に達するまでには、非常な長時日を要します。したがいまして、一万円年金を受けることは、今日の段階では法律上の空文であって、ほとんどの被保険者にとっておよそ不可能なことであると言わねばなりません。一万円年金が額面どおり通用するのは、今日現在支給されるときにおいて初めて言えるのであって、十年先、十五年先においては、およそナンセンスと言わねばなりません。したがって、一万円年金を額面どおり保障するためには、年金額算出方法の合理的な設定とともに、経済情勢国民所得の伸びに対応するスライド制を確立することが絶対に必要な要件であると思いますが、政府案はその点についてはなはだあいまいであります。政府年金額の算出方法とスライド制についてどう考えておられるか、お伺いしたいのであります。  また、一万円年金政府が公に宣伝する以上、本年支給される受給権者にも、これまでの保険料標準報酬のいかんを問わず一万円年金支給する考えがあるのかどうかお伺いいたしたいのであります。  次は、今後の経済情勢の変化に対応させながら年金制度をどう維持していくかという問題についてであります。十五年、あるいは二十年、三十年の長期にわたる被保険者期間において、特に底の浅いわが国経済においては、インフレ等の事態も予想しなければなりません。政府はこの対応策としてどのように考えておられるか、お聞かせ願いたいのであります。私たちが年金制度の確立をこいねがうゆえんは、急増する老齢人口の中にあって、一人一人の老人が安心して老後生活を営むことができる年金額支給されるということであります。このためには、保険料負担の増額もある程度はやむを得ないことでありましょうが、修正積み立て方式をとっている政府案のもとで、膨大な積み立て金をかかえていても、一たん経済変動の嵐に直面すれば、積み立て金をもって所要の年金原資をまかなうことは、とうていできない相談であると言わねばなりません。したがって、この際、修正積み立て方式に固執することは、保険料負担給付額とをアンバランスにする危険をはらんでおりますし、それをもとにした保険料計算をもってしては、今日手にする年金に比していたずらに保険料が高率となり、国民の納得を得がたいわけであります。このような点について、政府はどんな対応策をお考えになっておるのか、明らかにしていただきたいのであります。また、修正賦課方式を採用する考えはないのか、政府見解をお伺いいたしたいのであります。  第四点としては、女子の脱退手当金についてであります。女子の被保険者については、現在の厚生年金法では、資格期間、開始年齢、保険料等、いろいろその条件が男子よりも優遇されているかに見えるのでありますが、被保険者期間がきわめて短いという女子労働者にとっては、現行制度の優遇措置は空文にひとしくなっているのであります。年金は五十五歳あるいは六十歳にならなければ支給されないのでありますが、五十五歳まで勤務するという女子労働者はきわめて少ないし、保険料を低額にしたからといっても、それは永年勤務して初めて効果が出るということであります。被保険者期間が短期間である一般女子労働者には通用しないものであると言わねばなりません。もちろん、国民年金制度で厚年の被保険者期間が通算されることにはなるのでありますが、二十年あるいは三十数年の被保険者期間の中で、わずか二、三年の厚生年金保険料がどれだけ老後保障額として生かされるかは、きわめて疑問であると言わねばなりません。特に、女子労働者の厚年からの脱退は、その多くが結婚という不可避の理由によるものであります。いかに皆年金といっても、現在の国民年金法では、妻としての年金加入は任意制度になっているのでありまするから、年金の適用を受けない者も数多くいるわけであります。こうした女子労働者の実情を見るときに、現在の厚生年金制度では何ら救われていないのであります。したがって、もう少し実態に即した年金制度をつくる必要があります。それは、女子労働者に対する脱退手当金制度を適切に定めることであります。国民年金にも一時金の支給が認められているのでありまするが、厚生年金についても、実情に即した女子脱退一時金制度を設け、希望者に対してこれを支給すべきであると思いますが、政府の所信をお伺いいたしたいのであります。  最後に、企業年金との調整についてお尋ねいたします。  今回の改正案中心の一つは、企業年金との調整にあると言われているのであります。これは厚生年金の一部を企業年金に肩がわりさせ、これを退職一時金制度等と関連させようというところに問題があるようでありますが、厚生年金公的年金であり、企業年金は私的年金であります。両者の混合は、厚生年金、いわゆる公的年金制度の基本に触れる問題であって、単に労使のいずれが損か得かの問題ではありません。この意味において、社会保険審議会における労働者側答申は、「調整年金に関しては、厚年法の制度の基本に触れる問題であって、今後さらに慎重に検討することとする」と言っているのであります。これはまことに当を得たものと言わねばなりません。企業年金との調整問題は、本法案にも規定しているように、労働者側承認がなければ調整を行なうことができないことになっているのでありまするが、いま申しましたように、当の労働者を代表する組合は、全部が一致して、今後さらに慎重に検討することという態度をとっているのであります。政府は、このような情勢の中において、なぜ、こういう重大な問題を検討不十分のまま急がねばならないのか、お伺いいたしたいのであります。公的年金制度において、その一部であろうと、使用者の承認を受けなければならないとか、あるいは労働者承認を得なければならないとか、複雑な手続を設けてまで、私的年金に肩がわりさせねばならない理由と政府の腹づもりは、一体どこにあるのか。しかも、それが今回の本改正案の一番大きな問題点とされているところに、まことに奇怪なものを感ずるのであります。この点について、政府の偽りない所信をお聞かせ願いたい。  公的年金制度は、わが国の今後の社会保障の中核であります。医療保険等と異なり、長期保障制度でありまして、短期にたびたび改正を伴うものではありません。したがって、その基本方針制度は、大地にしっかりと根をおろしたものでなければなりません。特に急増する老齢人口と急激な老齢化現象は、国際水準以上のりっぱな年金制度を必要としているのであります。今回の改正は、わが国年金制度の基準を示すものとして、実に大きな意義を有するものと思うのでありますが、この際、改正実施される新厚年法を軸として、各種年金制度総合調整はすみやかに行なわれなければならないと思うのでありますが、政府改正案に示された内容には多くの疑問がありまするので、以上、どのように考えておられるか政府の所信をお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  18. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答えいたします。  今回の厚生年金法の改正によりまして、月一万円の支給も低きに失するというお話でございますが、これはただいまの状況から申しまして、平均標準報酬二万五千円、被保険期間二十年としての一応の計算でございます。したがいまして、報酬が上がり、また保険年数がふえれば、一万円をこえ、一万五千円、一万八千円ということもあり得るのであります。これはいまお話のように、将来を見て考えろとおっしゃいますが、将来を見ると同時に、現実の状態がどうかということも考えなければなりません。われわれは、現在の状態と将来を見ながら、いまのところ、一万円という標準報酬のあれでいったほうがいいというので、いっておるのであります。  なお、スライド制につきましても、ただいま厚生大臣が答えましたごとく、基本的にスライド制というものを採用しなければならぬという観念は、今回、条文をあげております。しかし、いかなる方法でやるかということにつきますと、いろいろな問題がありますので、今後、スライド制を採用するというたてまえのもとに検討していこうといたしておるのであります。  なお、調整年金の問題、あるいは総合調整の問題につきましては、先ほど答えたとおりでございますが、私が二度答えるよりも、この問題は厚生大臣から答えさしたほうがけっこうだと思います。(拍手)   〔国務大臣小林武治登壇拍手
  19. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 一万円の問題については、いま総理からお答えになりましたが、二十年勤続、二万五千円標準報酬、こういうことになりますので、必ずしも全部の方がなるわけではありません。しかし、もう坑内夫などは、すぐにその適用が受けられる。また、他におきましても、一両年中にはこの年金に達する者が非常に多くなるのでございます。なお、将来スライドの問題などが実施された場合には、既裁定の者にも及ぶというふうに私どもは考えておるのでございます。  スライドの問題は、ただいまいろいろお答え申し上げましたが、私どもは、やはり年金等につきましては、どうしてもこの考え方は必要であると思うのでありまして、お答え申し上げましたように、ぜひ近い機会に具体的な案をつくらなければならぬというふうに考えております。  それから、いまの保険料の問題でありますが、先ほどお答え申し上げましたように、賦課方式をとるということは、いまはできまするが、これをとれば、将来非常に保険料負担が増してくる、こういうことが起きるのでありまして、財政上の理由もあって、これをいま導入するということはなかなか困難であろう、こういうふうに考えております。  次の、女子脱退一時金の問題でありますが、これは、お考えのようなことは、私は妥当な御意見でもあろうと存ずるのでありますが、これは御承知のように、昭和三十六年の十一月に通算年金通則法ができた際に、通算年金を認める、この考え方からして、脱退一時金というものを、五年の猶予をもって打ち切る、こういうことになっておりますが、この期間がまだ昭和四十一年十月まであるのでございまして、お話のようなことは、やはり今後の問題として十分検討いたしたい。私は、脱退一時金については、お話のような理由も十分あるということを考えております。  次の調整年金の問題でありますが、これはいろいろ御議論がありますが、すでに企業年金が相当大幅に実施をされているのでありまして、これの負担調整とか、あるいはまた、考え方によれば、調整年金そのものは、政府から出る報酬比例部分よりも金額が多くなければならぬ、こういう考え方もありまするし、また、一方から申せば、いまは会社の賃金等にも相当な格差がある、こういうことで、企業としても、労働者そのものについては相当に多い利益がある制度ではないか、こういうふうな考え方もあるのでございまして、この問題につきましては、いろいろ御議論があるのでありますが、私どもとしましては、調整年金というものは、お話のような、あるいは公的年金を一部代行させる、こういうふうな御非難はあるとは存じますが、しかし、この制度そのものに非常な弾力性と申しますか、色彩と申しまするか、あるいは各会社に多少の色合いがあって、非常に私はいいんではないか、こういう考えを持っておるのでありまして、これらにつきましては、また委員会等においても十分御意見を承りたいと、かように考えております。(拍手
  20. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。    ————————
  21. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第三、関税協力理事会を設立する条約締結について承認を求めるの件(衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。外務委員会理事草葉隆圓君。   〔草葉隆圓登壇拍手
  22. 草葉隆圓

    草葉隆圓君 ただいま議題となりました条約は、関税行政及び関税技術の諸問題に関し国際的に調和統一をはかる目的から、関税協力理事会の設立を定めたものであります。  一九五二年、条約発効により、同理事会は発足いたしましたが、現在、西欧諸国を中心とする三十三カ国が加盟しております。同理事会は、すでに、関税率表における物品分類条約、税関における物品評価条約の適用上の解釈の統一をはかるほか、税関手続簡素化のための諸条約案の作成、勧告の採択等の実績をあげております。  委員会における審議の詳細は、会議録で御承知を願いたいと存じます。  五月十二日、質疑を終え、採決の結果、本件全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  右御報告申し上げます。(拍手
  23. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本件を問題に供します。本件承認することに賛成の諸君の起立を求めま す。   〔賛成者起立
  24. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって本件承認することに決しました。    ————————
  25. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第四、大規模公有水面埋立てに伴う村の設置に係る地方自治法等特例に関する法律案内閣提出)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。地方行政委員長竹中恒夫君。   〔竹中恒夫君登壇拍手
  26. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 ただいま議題となりました「大規模公有水面埋立てに伴う村の設置に係る地方自治法等特例に関する法律案」について、委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。  この法律案のおもな内容は、近く完成が予定されている八郎潟の中央干拓地のように、大規模公有水面の埋め立てが行わなれる場合、適当と認めるときは、内閣が、関係地方公共団体の意見を聞いて、新しい村を設置することができることとし、新村の議員及び長の設置選挙は、自治大臣が指定する日まで延期し、それまでの間は、知事の任命する職務執行者が村長の職務を行ない、条例の制定及び議決事項の決定の手続、行政委員会の運営等について経過措置を定め、その他、一定期間に限り、議員、長等の任期を短縮する特例を設けようとするものであります。  委員会におきましては、三月十七日、政府当局から提案理由の説明を聞き、慎重審査を行ないましたが、五月十二日質疑を終局し、討論に入りましたところ、西田委員より、自由民主党を代表して本法律案賛成し、あわせて各派共同提案にかかる附帯決議案を提出されました。  その内容は、   本法の施行にあたり、政府は次の諸点につき、遺憾のないよう措置すべきである。  一、自治大臣が指定する新村の設置選挙の日は、住民意思を尊重する趣旨から、可及的速やかに指定すること。  一、新村の議会が成立するまでの間、条例の制定及び議会の議決事項の決定については、住民の意思にそうよう配意すること。  というものであります。  次いで採決いたしましたところ、本法律案全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  また、右の附帯決議案は、全会一致をもってこれを委員会の決議とすることに決定した次第であります。  なお、附帯決議に対し、赤澤自治大臣より、決議の趣旨に沿い善処いたしたい旨の発言がありました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  27. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立
  28. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。    ————————
  29. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第五、水先法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。運輸委員長米田正文君。   〔米田正文君登壇拍手
  30. 米田正文

    ○米田正文君 ただいま議題となりました水先法の一部を改正する法律案について、運輸委員会における審議の経過及び結果を御報告申し上げます。  本法案は、最近の主要港湾等における船舶交通の実情にかんがみ、これらの水域における船舶交通の安全を確保するとともに、運航能率の増進をはかるため、水先業務の一そう円滑な遂行を確保することを目的として、所要の改正を行なおうとするものであります。  本法案の要旨について申し上げますと、  第一は、水先人の技術水準の向上をはかるため、水先人の免許要件として定められている船長履歴について、乗船期間を三年以上に、乗り組み船舶を三千総トン以上に、それぞれ引き上げたこと。  第二は、水先区を同一にする水先人は、水先業務の円滑な遂行をはかるため、その水先区につき一個の水先人会を設立しなければならないこととし、水先人会は、会員の水先の引き受けに関する事務を統合して行なう合同事務所を運営するほか、水先人の養成等に関する事務を行なうことと定められたこと。  第三は、水先人に対し、水先船等の業務用施設の確保及び水先約款の事前届け出を義務づけるとともに、水先人に対する業務改善命令、水先人会に対する勧告、及び事業場への立ち入り検査等、運輸大臣の監督に関する規定を整備したことであります。  委員会の審議におきましては、わが国水先制度の当面する問題の各般にわたり、終始熱心な質疑が行なわれたのでありますが、詳細は会議録により御承知願いたいと存じます。  かくて質疑を終了し、討論に入りましたところ、別に発言もなく、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  31. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立
  32. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。    ————————
  33. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第六、国事行為臨時代行に関する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長三木與吉郎君。   〔三木與吉郎君登壇拍手
  34. 三木與吉郎

    ○三木與吉郎君 ただいま議題となりました国事行為臨時代行に関する法律案内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本法律案は、日本国憲法第四条第二項の規定に基づき、天皇に精神もしくは身体の疾患または事故があるときは、摂政を置くべき場合を除き、内閣の助言と承認により、国事に関する行為を、摂政となる順序に従って、成年に達し、かつ、故障がない皇族に委任して、臨時代行させることができるようにしようとするものであります。  本委員会におきましては、臨時代行設置する場合に、皇室会議の議を経ない理由、国事行為の範囲並びに委任の範囲、内閣の行なう助言と承認の意義、生存者叙勲の復活に関連する諸問題等について質疑が行なわれましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。  質疑を終わり、別に討論もなく、採決の結果、本法律案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  35. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立
  36. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。  次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時四十三分散会