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1964-04-08 第46回国会 参議院 本会議 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月八日(水曜日)    午後一時十四分開議   ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第十六号   昭和三十九年四月八日    午後一時開議 第一 緊急質問の件 第二 国務大臣報告に関する件   (地方財政法第三十条の二の規定   に基づく地方財政状況につい   て) 第三 電気事業法案趣旨説明) 第四 遺言の方式準拠法に関する法   律案内閣提出) 第五 麻薬取締法の一部を改正する法   律案内閣提出衆議院送付) 第六 中小企業近代化資金助成法の一   部を改正する法律案内閣提出、   衆議院送付) 第七 中小企業金融公庫法の一部を改   正する法律案内閣提出衆議院   送付) 第八 中小企業近代化促進法の一部を   改正する法律案内閣提出、衆議   院送付) 第九 石炭鉱害賠償担保等臨時措置法   の一部を改正する法律案内閣提   出、衆議院送付)   ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、日程第二 国務大臣報告に関   する件(地方財政法第三十条の二   の規定に基づく地方財政状況に   ついて)  一、日程第三 電気事業法案趣旨   説明)  一、日程第一 緊急質問の件  一、日程第四 遺書の方式準拠法   に関する法律案  一、日程第五 麻薬取締法の一部を   改正する法律案  一、日程第六 中小企業近代化資金   助成法の一部を改正する法律案  一、日程第七 中小企業金融公庫法   の一部を改正する法律案  一、日程第八 中小企業近代化促進   法の一部を改正する法律案  一、日程第九 石炭鉱害賠償担保等   臨時措置法の一部を改正する法律   案   ━━━━━━━━━━━━━
  2. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。    ————————
  3. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。  この際、日程第一をあとに回したいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。    ————————
  5. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第二、国務大臣報告に関する件(地方財政法第三十条の二の規定に基づく地方財政状況について)、  自治大臣から発言を求められております。発言を許します。赤澤自治大臣。   〔国務大臣赤澤正道登壇拍手
  6. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 地方財政法第三十条の二の規定に基づきまして、昭和三十七年度決算中心とした地方財政状況を御報告申し上げます。  昭和三十七年度地方財政の純計決算額は、歳入二兆九千八百二十九億円、歳出二兆八千八百七十四億円でありまして、前年度と比べますと、歳入において四千七百十三億円、歳出において四千九百六十三億円増加しております。  次に、昭和三十七年度決算における実質収支は、五百三十六億円の黒字であります。この実質収支黒字団体赤字団体とに分けますと、地方団体の八八・四%に相当する三千百団体黒字で、その黒字額は六百九十五億円、一一・六%に相当する四百六団体赤字で、その赤字額は百五十九億円であります。  歳入のおもなものについて述べますと、地方税一兆五百六十七億円、国庫支出金七千八十一億円、地方交付税四千八百七十四億円の順でありますが、地方税地方譲与税及び地方交付税を含めた一般財源総額は一兆五千七百四十九億円で、その構成比は五二・八%となっており、前年度より若干低下しております。  次に、歳出のおもなものについて述べますと、教育費七千七百六十七億円、土木費五千六百五十九億円、庁費三千九百七十億円の順となっております。これを性質別に分類しますと、人件費は九千九百六十九億円、普通建設事業費は八千六百八十億円で、この両者で歳出総額の約三分の二を占めている状況であります。  昭和三十七年度地方財政は、前年及び年度前半における景気調整影響を強く受けて、地方税収入などが伸び悩み、財政規模増勢基調は鈍化しましたが、一方、経済高度成長により、著しく立ちおくれることとなりました社会資本充実中心とする旺盛な公共需要に追われまして、歳出増加率は、前年度に引き続き、歳入増加率を上回ることとなりました。  この決算から見ますと、昭和三十七年度地方財政には、次のような特徴が見受けられます。  まず第一は、財政規模増加率が鈍化したことであります。財政規模増加率は、歳入において一八・八%、歳出において二〇・八%となり、前年度に比べますと、その増勢が鈍化しております。  第二に、投資的経費は引き続き増大していることであります。道路橋梁などの産業基盤施設高等学校等文教施設、及び住宅、清掃事業等生活環境施設等公共施設整備充実が推進されており、普通建設事業増加率は、前年度に引き続き著しい伸長を示しております。  第三に、公営企業等特別会計に対する繰り出し金は引き続き増大する傾向にあることであります。  第四には、税収入が伸び悩んだことであります。歳入の柱である地方税及び地方交付税につきましては、景気調整及び税制改正影響を受けたため、その増加率はいずれも前年度を大きく下回っているのであります。  第五には、財政収支悪化していることであります。地方財政収支面につきましては、さきに述べましたように、前年度に比べ歳出増加率歳入増加率を著しく上回ったことによりまして、昭和三十七年度決算の単年度収支は百二十八億円の赤字となっておることであります。  最後に、財政構造弾力性は、前年度に比べ減少していることであります。これは地方税等の伸び悩みにより、一般財源の比重は前年度より低下しました反面、人件費扶助費等義務的経費に充当された増加一般財源の比率は、前年度を著しく上回ったことによるものであります。  次に、公営企業等につきましては、事業実施要望が逐年強くなってまいっており、その事業数は急速に増加いたしておりますが、コストの上昇その他の原因により、経営状況は遺憾ながら悪化傾向を強めております。昭和三十八年度財政事情は、まだ、つまびらかではありませんが、最近の地方財政は、国民福祉の向上のために逐年増大する行政需要を充足しつつ、国及び地方財政健全化努力経済高度成長に支えられて、おおむねその収支均衡を保持してまいりましたが、今後におきましても、行政水準引き上げ地域開発促進地域格差是正等要請は、引き続き高まっていくものと考えられ、さらに公営企業等普通会計に対する財源依存度が強まっている等によりまして、地方財政全体としての健全均衡の保持につきましては、国、地方を通じましてさらに一そうの努力が必要であると考えられます。  以上、簡単でございますが、御報告の要旨にかえさせていただきます。(拍手
  7. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。占部秀男君。   〔占部秀男登壇拍手
  8. 占部秀男

    占部秀男君 私は日本社会党を代表して、地方財政状況に関する年次報告、いわゆる三十九年度地方財政白書について、池田総理大臣をはじめ、関係大臣質問をいたします。  まず第一にお尋ねしたいことは、地方財政収支が最近特に悪化しつつある動向についてであります。この白書によって、地方公共団体全体の三十七年度一般会計決算状況を見ますと、実質収支では黒字でございますけれども、収支の推移を生きた実態で示す単年度収支は、百二十八億円の赤字となったのであります。言うまでもなく、地方財政は一時の赤字状態から立ち直って、ようやくここ数年間、実質収支も単年度収支もそれぞれ黒字を続けてまいりました。しかし、この黒字増加も三十五年度を頂点として伸び悩みの状態となっております。三十四年度は百三十一億円、三十五年度は二百七十八億円と上昇しておりました単年度黒字は、三十六年度に至って激減し、わずかに十五億円の黒字にとどまったのであります。そして、三十七年度は、この白書が示しますように、歳入は伸びているにもかかわらず、逆に百二十八億円の赤字という決算状況になっております。すなわち、黒字から赤字へのこの転落は、三十七年度に偶然的に起こった問題ではなくて、連年にわたる収支悪化累積が生んだ結果であるといえると思うのであります。  次に、この白書以後の地方財政動向はどうであるかといえば、同じような収支悪化が引き続き強化されておりますことは、三十八年度決算見込みに対する政府側答弁で明らかなところでありますし、現に今日、地方団体の多くが、新年度予算編成に際して、いままでにない編成難に苦慮したことは、事実をもってこのことを証明したものと思います。再び下降線をたどってきた地方財政は、いま赤字財政への危機に立たされていると考えなければなりません。したがって、一時赤字状態を脱出した地方団体の間に、またまた赤字団体に転落するものが増加してまいりました。先ほども自治大臣の御報告の中にもありましたが、この白書が示す三十七年度状況だけでも、実質収支黒字団体赤字団体に分けますと、全団体数の約一二%の四百六団体がすでに赤字となっているのであります。こうした地方財政危険信号を前にして、われわれは十年前を思い起こしてみる必要があると考えるのであります。当時、地方財政は七百億円をこえる赤字のために、多くの地方団体に法による再建整備が強行され、行政水準は全く低下をいたしました。その結果は、今日、都市といわず農村といわず、国民生活環境開発が諸外国に比べて著しく立ちおくれていることは、政府みずからの数字が具体的に示しているとおりであります。再びこの轍を踏んではならぬと考えます。そこで、池田総理大臣赤澤自治大臣にお伺いをいたしますが、一体この収支悪化は、一時的なものとお考えになるか、持続的なものと思われるか、見通しをまず明らかにしていただきたいと思います。  第二にお尋ねすることは、収支悪化を生んだ原因についてであります。この白書は、確かに収支の下降しつつある現象的な姿については一応説明しておりますが、一たん立ち直った地方財政状況が、なぜ再び悪化したか、なぜ単年度収支黒字から赤字へ転落したか、その真因については、遺憾ながら解答しておりません。むしろこの点については、故意に避けているとしか思えないのであります。また委員会での答弁におきましても、政府は、収支悪化をもたらしたおもな原因として、投資的経費が激増したこと、人件費増加したこと、繰り出し金がふえたこと、潜在赤字が顕在化したこと等をあげておりますが、これまた収支悪化せしめている現象面を単に羅列したにすぎないのであります。  一体、政府があげている四つの原因でありますが、公営企業に対する繰り出し金潜在赤字の問題は、この白書数字が示しておりますとおり、収支動向をきめるほど大きな金額ではないのであります。また、人件費増加というも、物価の上昇に伴って起こる当然のベースアップの分であります。今日、地方団体は、仕事の増加人員不足状態であり、一人々々の給与額も、国家公務員平均より低くとも決して高くはないのであります。しかもこの白書は、決算規模に占める人件費割合が、ここ数年間、地方団体では年ごとに下がっている事実を報告しているのであります。にもかかわらず、義務的経費としての人件費増加が、かりに赤字を生むとするならば、そうした不適合な財政構成あり方にこそ問題があると言わなければなりません。  最後に、投資的経費増加についてでありますが、ここでは特にその大宗をなす普通建設事業費が問題となります。従来この事業費が全歳出規模に占める割合は二〇%前後でございましたが、高度成長政策を控えた三十五年ごろから毎年激増し続け、三十七年度には三〇%をこえるに至っております。したがって、この事業費歳出規模増加のうちに占める割合も毎年ウナギ登りにふえており、この白書が示す三十七年度状況では、全歳出増加分四千九百六十三億円のうち、ほぼその半ばに近い二千百六十七億円は、実に普通建設事業費だけの増加分であります。三十年度を基準にした八年間に、地方財政の全歳出規模は二・五倍に増大をいたしましたが、そのうちこの建設事業費は三・九倍という、四倍近くにふくれ上がっているのであります。これが地方財政に大きな重圧とならないはずはありませんし、収支悪化せしめている一番大きな原因であることは申すまでもございません。しかし、問題は、単にこの事業費増加したということだけにあるのではないのであります。収支悪化にかまわず建設事業費を激増させている地方行財政あり方に、より本質的な問題があると思うのであります。なぜならば、この専業費増加分検討してみますと、地方団体が独自に事業をやり過ぎて生んだというようなものはほとんど少ないのであります。その大半は、第一に、国の補助事業増加と、これに伴う地方負担分増加や、実態を無視した補助単価算定等からくる地方超過負担分累積などでありますし、第二には、単独事業の名のもとに施行される国の事業に対する継ぎ足し分や、国の事業に付随して補強しなければならないようにさせられている地方事業分増大等から生まれたものでありまして、国と地方の間の、現行の、制度的な、財政的な関係のもとでは、地方団体の力だけではどうにも押えることのできない増加分が大部分であるからであります。しかも、この白書に従って、この事業費増加内容目的別に見ますと、道路港湾橋梁工業用水、用地など、産業基盤開発のための建設費増加が、国民生活環境開発に直結する社会関係建設費増加よりは、比較にならぬほど大きいのでありまして、結局、地方財政を再び悪化させている最終の原因は、高度成長政策の一環として、産業基盤開発建設事業を優先的に地方団体に押しつけている池田内閣政策そのものにあると言わざるを得ないのであります。  以上の検討の上に立って言えることは、再び地方財政悪化させている原因は、いずれも地方団体限りで押えることのできないものであって、地方行財政現行制度にこびりついた体質的なものであり、池田内閣政策責任を負うべき性質のものであると考えるのでありますが、総理並びに自治大臣の御所見を承りたいと思います。  第三に、田中大蔵大臣並びに赤澤自治大臣にお伺いをしたいことは、このような地方財政危機に際し、政府はどんな対策をとられるか、その方針についてであります。問題の本質が地方行財政あり方に関連する以上、財政構造そのものを改善する根本的な対策を立てない限り、危機を脱出させることはできません。何よりもまず必要なことは、財政構造の改革に関連をして、国と地方との間の行政責任を明確にした、事務事業の再配分をするとともに、自主財源を大幅にふやすよう地方行財政制度を抜本的に改革することであります。これに加えて、地方超過負担分累積を解消するために、補助金制度改正し、さらに、地方債利率引き下げ償還年限の延長などで、将来の負担増加を防ぐなどの諸対策を、早急に立てる必要があると考えるのでありますが、いかがでございますか。  第四に、これからの地方財政に決定的な影響のある新産業都市関係についてであります。すでに十三地区の本指定を終えて、各地区では建設基本計画に取り組んでおりますが、地方負担分の過重なことに苦慮しております。財政援助についての国の特例措置法案を今国会に出すのか出さないのか、はっきりしていただきたいとともに、この際、政府は、事の性格上、主要産業の分散を財政的にも国が全責任で行なうたてまえをとり、地方財政にしわ寄せがないような法の改正を行なう考え方はないか、田中大蔵大臣並びに赤澤自治大臣にお伺いをいたします。  最後に、最近目立って経営悪化している地方公営企業についてであります。この白書によりますと、法適用事業の三十七年度経営状況は、百十九億円の純損失を出し、累積赤字は二百五十億円となっており、交通事業は七割、病院は五割、水道は三割、それぞれ赤字経営に落ち込んでいるのであります。このような赤字増大は、社会経済の発展に伴う要請による事業新設拡張をはじめ、元利償還重圧物件費の値上がりなど、主として経営の外部的な条件によるものが多いのでありまして、したがって、事業経済性よりは公共性を優先させた抜本的な対策が必要でございます。当面緊急の措置としては、公共料金抑制によって生じたと見られる都市交通欠損金四十八億円を補給する考え方はないか。水道病院等も含めての赤字対策として、企業債利率引き下げ償還年限公営企業にふさわしく三十年以上に延長する考え方はないか。この際、これらの事業公共性を安定させるために、政府資金公庫資金を原資とするいわゆる永久公債発行を断行する意図はないか。  以上の三点につきまして、田中大蔵大臣赤澤自治大臣お尋ねをして、私の質問を終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  9. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答えいたします。  地方財政は、最近若干の悪化を示しております。その悪化が一時的なりやいなやというのが御質問の第一点。私は、地方財政基盤は、七、八年前、また数年前に比べて、非常に強固でございます。したがいまして、今後地方財政の運営が健全に行なわれるならば、私はいまの若干の悪化は一時的でございます。私があえて若干と申しますのは、全体といたしましては、昭和三十五年は五百数十億円の全体の赤字であったのが、三十七年度は逆に五百数十億円の黒字になっておる。これは地方財政がよほど健全化しておる。しこうして、若干の一時的悪化原因につきましては、もうすでにお述べになったように、これは給与の大幅な引き上げ財政上は悪化原因でございます。その給与引き上げ原因というものは地方財政の表面には出てこない。給与引き上げ地方財政の一時的悪化の重大なる原因でございます。第二番目は、最近のいわゆる道路港湾増設社会資本に必要な経費が要ることであります。また、第三番目には、三十六年度、三十七年度新設高等学校の新増築影響であるのであります。  こう考えてみますと、私は、今後給与の改定がそう大幅に増加せず、また、高等学校の新増築がございませんから、今後は地方財政は当分健全方針でいけば、悪化傾向は考えられないと思っておるのであります。  そうしてまた、特に地方財政におきましては、国との負担関係もさることながら、単独事業が相当ふえております。地方単独普通事業がふえておる。三十六年度に比べて三十七年度は、府県市町村を通じまして、前年に比べて四割五分近く、これがやはり悪化赤字原因でございます。しかし、こういうことは、やはり国とまたその地方財政を考えながら適度にいくならば、この悪化原因は除去せられまして、過去数年来たどってきた地方財政健全の一途をたどっていくと考えておるのであります。  他の点につきましては、特に私に御質問がございませんので、関係閣僚からお答えさせます。(拍手)   〔国務大臣赤澤正道登壇拍手
  10. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) お答えいたします。  だだいま総理大臣が述べましたとおりでございまして、地方団体赤字が一時的なものか、あるいは今後持続するものかということにつきましては、先ほど私が御報告を申し上げたとおりでございますし、いま総理大臣が強調をいたしましたが、結論的には、やはり地方財政基盤そのものは、数年前に比較して著しく強固なものとなっており、地方財政における単年度赤字は持続的なものではないと判断をいたしております。  なお、投資的な経費増大していくのに、それに対して今後は一体どうするのかということでございますが、これまた、総理大臣答弁いたしましたとおりに、今後においては、高等学校増設だとか、あるいはいろいろな経費が特に増大しておりましたのが、一応終わりますので、今後においては、地方税増加等収入も期待されまするので、地方財政健全性基調は変わっておらないものと思います。  それから地方財政あり方につきまして、これを改善するのには根本的な政策を立てるべきであるという御見解でございますが、御指摘のとおりに、地方財政を根本的に安定させますためには、事務の再配分財源の再配分を行なうことが必要でございますが、国、府県市町村間における行政事務の再配分につきましては、現在、地方制度調査会で御審議をいただいております。その答申が得られますならば、行政事務の合理的な再配分を行ないたいものと考えております。で、この行政事務配分に見合って、当然、財源についても合理的な再配分を行なわなければなりませんが、同時に、補助金制度地方債制度につきましても、補助金等合理化審議会答申等も十分勘案して、その合理化をはかってまいりたいと考えております。  地方公営企業赤字のために地方団体が非常に困っていることもまた御指摘のとおりでございます。特に、交通事業につきましては、昭和三十八年度決算見込みにおいて、累積赤字額は二百七十億円、年間料金収入の四割に及ぶ、また八割の事業赤字となっております。このため各都市においては赤字解消経営合理化を目下進めつつありますが、公共料金抑制に伴う赤字については、国においても何らかの措置を講ずる必要があると考えられますので、目下、関係省庁においてその方法を検討中であります。  なお、お尋ね永久公債につきましては、地方公営企業法によりまして認められておる制度ではありますが、現在までのところ、ほとんど実効を見ていない現状にあります。しかしながら、今後、各都市において、永久公債発行が可能なところについては政府としても認めてまいりたい、かように考えております。(拍手)   〔国務大臣田中角榮登壇拍手
  11. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私に対する御質問につきましては、大体、総理大臣及び赤澤自治大臣からお答えがありましたが、せっかくの御指名でありますから申し上げます。地方財政あり方、及び、事務事業財源の再配分、それから補助金制度地方債制度の問題、こういう問題につきましては、かねがね申し上げておりますとおり、地方債計画策定地方交付税配分地方税源強化等をはかっておるわけでございます。三十九年度におきましても、地方税負担の軽減の趣旨から、電気ガス税税率引き下げや、市町村民税本文方式への統一というふうな政策を行なっておりますが、減税による減収額につきましては、たばこ消費税率引き上げ及び三分の二の減収補てん債発行等によりまして、十分の措置を講じておりますことは御承知のとおりでございます。  なお、基本的な問題につきましては、臨時行政調査会税制調査会及び地方制度調査会等におきまして、慎重に御審議を願っておるのでありますから、答申を待ちながら考えてまいりたいと思います。  新産業都市地方財政の問題でございますが、予算委員会等でも御質問がございましたが、この新産業都市につきましては、新産業都市建設促進法に基づきまして、各地方状態を十分勘案しながら、経済力が現在も豊かであるものが、この新産業都市指定を受け、計画を遂行することによって、より将来に豊かな財政力が得られるということをたてまえにいたしておりますので、現在の状態におきまして、財政負担を別にしなければならないような法律をつくる必要があるかどうかという判断はいたしておらないわけであります。しかし、これらの問題につきましては、将来、計画策定をせられて、必要があれば、地方債、特に特別交付税制度等によって十分考慮をしていかなければならない問題だと思います。  地方公営企業赤字の問題でございますが、四十八億を何とか補てんをする必要がないかということでございますが、この問題につきましては、独立採算制のたてまえである地方公営企業に対して、政府が最近の社会経済情勢のために一年間公共料金をストップしておるということをもって直ちに財源補てんをするというような考え方は、持っておらないわけであります。しかし、先ほども自治大臣が申されたとおりに、運行その他に支障があってはなりませんので、起債その他に対してどのような措置をすればいいかという問題に対しては、経済企画庁、大蔵省、自治省等でいま検討をいたしておるわけでございます。  なお、永久公債の問題、水道料金その他の問題につきましては、自治大臣が御答弁を申し上げたとおりでございます。(拍手
  12. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。    ————————
  13. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第三、電気事業法案趣旨説明)、  本案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。福田通商産業大臣。   〔国務大臣福田一君登壇拍手
  14. 福田一

    国務大臣(福田一君) 電気事業法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  電気事業は、国民生活及び産業活動に欠くことができず、しかも代替性の著しく乏しい基礎エネルギーを供給するものであり、国民経済の発展と密接不可分の関連を有するきわめて公益性の高い基幹産業であります。近時、国民生活の高度化、近代化と産業活動の目ざましい進展に伴って、電力の需要は著しく伸長し、総エネルギー需要に占める電力の比重は非常に高まってきております。これに伴い電気事業には、豊富、低廉、良質な電気を供給することによって、日本経済の成長をエネルギーの面からささえていかなければならない重大な使命を課せられているのであります。  また、電気事業は、その生産する電力が直ちに消費され、この間に通常の商品のような在庫調整ができず、このため、常にピーク時の需要に応じ得るだけの設備を開発しておかねばなりません。一方、その送配電の技術的特質から、重複設備によるむだを排除する意味で、地域独占の産業になっております。  このような特質を持つ電気事業をして、前述の国家的要請に応じて常に適正なる電気の供給を行なわせるためには、電気事業の運営を適正かつ合理的ならしめることによって、電気の使用者の利益を保護し、電気事業健全な発達をはかることが必要であり、このためにはいわゆる公益事業規制の措置がとられねばなりません。世界各国においても、その方法において若干の相違はあれ、いずれも政府による法的な規制を行なっているのであります。  さらに、電気はその物理的性質上、その取り扱いいかんによっては相当の危険ないしは障害を伴うものでありますので、保安面から電気工作物の規制を必要といたします。  このような電気事業に関する法的規制は、明治四十四年電気事業法が制定されて以来、事業規制、保安規制の両面にわたって続けられてきたのであります。ところが、戦後、占領終了時における特殊事情のため、昭和二十七年にいわゆるポツダム勅令である旧公益事業令が失効し、一時的に無法律状態となり、これを救済するため、電気及びガスに関する臨時措置に関する法律が制定され、これによってすでに失効した旧公益事業令の規定の例によって法規制を行ない、また、電気工作物に関しては、さらに昭和六年制定の旧電気事業法の規定の例によって規制するという、法形式的には全く類例を見ない特異なものとなっております。しかも、その後十余年を経た今日に至っては、その内容においても目ざましい発展を遂げた電気事業実態に適合しない多くの点が生ずるに至っております。  すなわち、電力の需給は、かつての不均衡からくる混乱状態から脱却し、国民経済の発展の正常化とともに相当の供給予備力を持つまでに安定し、電気事業に対する要請も電気の量を確保することから、電気の質を向上すること、あるいは電気の使用者に対するサービスを改善することへと大きく変わってきております。また、電気事業内部においても、発送変電技術の著しい進歩に伴う設備の大容量化、新鋭大容量火力を開発による火主水従への転換、企業間における格差の発生などの変化が生じ、設備を広域的な運用する必要性が非常に高まってきております。  このような電気事業の内外の情勢の変化に対応して、現状に適合するよう、その法制を整備する必要性が生じたのであります。政府といたしましては、現行法制が前に申し上げたとおり特異な法形式をとっている関係上、その一部を改正することは、立法技術的に非常に困難でありますので、現在の暫定的な法律を廃止し、新しい電気事業法を制定することが最も適切であると考えた次第であります。  なお、政府におきましては、電気事業法案の作成について昭和二十八年より検討を進めてまいったのでありますが、戦前に統合した公私営の電気設備の復元問題をはじめとする諸般の事情のため、成案を得て国会で御審議をお願いするまでに至らなかったのであります。これらの問題もようやく解決しましたので、昭和三十七年五月に、電気事業法案策定に関する基本方針検討するため、電気事業審議会を設置し、広く各界の有識者によって一年半にわたる審議を行なった結果、昨年十月にその答申を得たのであります。政府といたしましては、その答申を尊重して、事業許可、供給義務、料金規制、保安規制等の従来の法的規制に対し、第一には、企業経営の能率化と行政の合理化、簡素化の見地から事業規制及び保安規制を合理化するとともに、公益的の立場から必要とされる監督権限を整備すること、第二には、設備の建設、運用における合理性の確保、企業間における格差の是正等の電気事業の課題を解決する方途として、広域運営を推進するとともに、これに関する国の監督権限を整備すること、第三には、電気の使用者の利益を保護し、サービス水準を向上させる規定を整備することの三つの見地を加味してこの電気事業法案を作成いたしたのであります。  次に、法案の概要を説明させていただきます。  第一は、電気事業について、その事業の開始から廃止に至るまでの間、所要の事業規制を行なうことであります。これらの規制につきましては、旧公益事業令の規制とほぼ同様といたしておりますが、それと異なる点は、事業の地域独占規定を削除し、電気事業の許可基準に、一般電気事業に関する過剰設備防止のための基準、電気事業の総合的立場からする合理性確保のための基準等を加えたこと、兼業規則の対象を一般電気事業者に限定したこと、特定供給について規制を加えたことであります。  第二は、電気の供給業務の規制に関することであります。旧公益事業令と同業に電気事業者に対し、供給義務を課し、料金その他の供給条件を認可制といたしておりますが、新たにその認可基準において電気料金の原価主義を明らかにしております。  また、電気の使用者のサービス向上をはかるため、電圧、周波数の維持義務、その改善命令、業務方法の改善命令、電気事業に対する苦情処理等の規定を整備しております。  第三は、電気事業の今後進むべき方向である広域的運営に関することであります。これにつきましては、電気事業者に対し協調運営の義務を規定するとともに、施設計画及び供給計画の提出義務を課し、これらの計画について変更勧告権を設け、計画の段階から広域的運営の見地が取り入れられるよう配慮いたしております。さらに、この変更勧告によっては、広域的運営による公共の利益が確保されない場合、または非常の場合において、電気の供給等について公益命令が発動できることとしております。  このほか、広域的運営の円滑化をはかるため、一般電気事業者間の電気の融通料金については、原価主義をとりながらも弾力的に料金決定ができるようにいたしております。  第四は、会計及び財務規制についてでありますが、電気事業の現状に即してその規制を簡素化するとともに、電気事業経営健全化をはかるため、減価償却、引き当て金及び積立金に関する命令権を設けております。  第五は、公益事業の見地から、電気事業者に対し、他人の土地の一時使用等についていわゆる公益事業特権を与えていることであります。  第六は、電気工作物の保安に関することであります。この点につきましては、電気工作物を電気事業用、自家用、一般用の三つに分け、それぞれその実態に即した保安規制を加えることとしております。すなわち、電気事業用と自家用の電気工作物につきましては、工事、維持、運用に関して保安を確保するため、旧公益事業令とほぼ同様に工事計画等についての認可を必要とすることとし、また検査に関する規定を整備するほか、自主保安体制を確立するため保安規程及び主任技術者に関する規定を設けております。なお、これらの規制に関しましては、保安確保上支障のない限り、認可対象の大幅な整理等により簡素化、合理化をはかることとしております。  一般用電気工作物につきましては、設置者に対する改善命令の規定を設けるとともに、設置者が電気的知識に乏しいことを考慮し、電気の供給者に対し、一般用電気工作物に関する保安上の調査義務を課することとしております。また、この調査業務の能率的な実施を確保するための措置として、この調査業務についての専門的受託機関に関する規定を設けております。  その他、公益事業である電気事業の特殊性にかんがみ、監査、公聴会等の規定を整備するとともに、電気事業に関する重要事項を調査審議するため、附則において通商産業省に電気事業審議会を設けることとしております。  以上をもちまして、電気事業法案趣旨説明といたす次第でございます。(拍手
  15. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。藤田進君。   〔藤田進君登壇拍手
  16. 藤田進

    ○藤田進君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま御説明のございました電気事業法案に対しまして、総理ほか関係大臣に、二十点にわたってたださんとするものであります。  わが党は、このような非常に重要であり、内容も百九ヵ条、さらに附則を入れますと、非常に膨大であり、条文の中には幾多の引用条文があって、かなり複雑多岐にわたっている、しかも、提案説明にございましたように、それぞれ国民一人々々の生活に関係の深い、しかも、また、産業活動にも密接な関係を持つこの法律案でございますから、いきなり、所信をたださずに、賛成だとか反対だとか、この国会で成立させるのだとか、そういった、かたくなな考えを持っておりません。この種問題については、真剣にお互いが十分なる審議を経て、公益性の高いこの産業については、当然意見の一致が見られるものと私は確信をいたします。かかるがゆえに、今後のこの法案に対するそれぞれの関係大臣における所信なり、今後の法執行なり、行政指導の態度なりということを、本議場並びに委員会を通じて、十分確かめた上で、ただすべきはこれをただすという態度で臨みたいと思っております。その意味において、以下、総理大臣並びに通産大臣に対しまして、五点をお伺いをいたします。総理、通産大臣は、電気事業にはおくわしいと考えられますので、要点だけ指摘をいたしますから、詳しく御説明をいただきたいと思います。  その問題の第一点は、総合エネルギー対策であります。すでに石炭政策が問題になって、過去に当院におきましても諸般の政策が立てられました。あるいは、また、引き続く石油対策がございました。あるいは、また、最近では原子力関係が出てまいりました。そして、水力、火力といった形の電力の問題が出てきたわけであります。こういう状態の中における政府の総合的エネルギー政策の根本というものがどうも見当たらない。行き当たりばったり、出たとこ勝負という感が深いのであります。かつて総理は、本議場を通じて、もう日本のエネルギー・ベースは、これは石炭であると、言い切ってまいられましたが、過般の予算委員会では、必ずしも石炭に拘泥しないという趣旨の御答弁があったわけであります。そのように、かなり変わってきているのであります。したがいまして、今後のエネルギーのベースとして一体何を考えるのかという点が一つ。そして、また、将来にわたって、エネルギーの総合開発、総合対策を立てるという意味において、これにふさわしい審議会なり、現状はいろいろございますが、いずれもどうも適切ではございません。そういった対策を立てるための方策をお伺いしたいと思います。  第二点は、電気事業は、従来、特に昭和三十二年以来、広域運営を事業者はやってまいりました。これは一面、再々編成論が出てまいりました前後に、ある人は、これが再々編成の防波堤としての役割りだという評価もございました。いずれにしても、今度の法案では、広域運営というものを一部法制化する、いま御説明のあったとおりであります。しかし、問題は、この広域運営を法制化いたしました場合と、過去五ヵ年、法制化なきときにおける広域運営との実効について、法制化によってどういう期待をされる実効をもたらそうとされているのか。私どもの考えでは、いずれにいたしましても、私企業であり、それぞれの企業の採算性、利益を無視して他社に奉仕するということは、これは実際問題としてむずかしい。ここにおいて、結局は限界性がある。衆議院答弁でもそのことは肯定されております。このような点につきまして、もっと詳しく御答弁をいただきたいと思います。  その第三点は、電気事業の企業形態であります。現在、電源開発株式会社並びに九つの地域独占による電気事業の株式会社がございます。先ほど申し上げた広域運営によりましても、結局限界性があるし、閣内でもいろいろ御議論がありましたように、結局はイギリスかあるいはドイツ、イタリアあるいはフランス、アメリカでも、御承知のようにTVAといって、膨大な地域、また大きな出力を持つ発電所は、公社形式、これでやっている。資本主義の政策であろうとも時代の要請というものはここまできているのであります。また、歴史的にこれを考察しても、そういったところにまで、すでにきているのであります。にもかかわらず、広域運営ということで、企業形態についてはこの際触れないで、現状を維持するということに相なっていると思います。しかし、これは一面、広域運営をやり、そしてこれがうまくいかない、さらにこれでは十分でないというときには、企業形態といったようなものも含めて検討はする時期がくるだろうという、衆議院における本会議の御答弁もございましたが、この点はそうなのかどうかという点であります。  第四点は、電気事業中心に総合エネルギー対策を立てますために、先ほども申し上げましたが、内閣のもとに、総理大臣のもとに、この際、会のようなものを設けられたらどうだろうか、政府の所信を伺います。  第五点は、電気事業に従事しております電気事業労働者についてであります。これは大体、昭和二十八、九年ごろから漸次労働条件が下がってまいりました。御承知のように、かつては高度の公益事業であり、家族構成、年齢、勤務年数、学歴等々から見て、大体民間産業のトップクラスが電気労働者の待遇でございました。ところが、漸次低下いたしまして、現在では全産業に占める順位は、トップから数えてみると二十七番目ぐらいに落ちている。これは要するに、いまILO条約を批准せんとする時期において、依然としてスト規制法が残されております。これが大きな制約であります。このスト規制法を撤廃すべき時期がきていると思いますが、政府の御所信を伺いたい。  続いて、通産大臣並びに大蔵大臣兼企画庁長官にお伺いいたします。国家財政への依存度というものが、財投その他で出ておりますけれども、かなり地域的なアンバランスがあります。特定な地域に集中しております。このことは適当でないので、将来に対する対策も含めてお伺いいたします。  それから第七は、石炭政策による重油ボイラー規制法等によりまして、結局、石炭対策は必要であると肯定いたしましたが、これが直ちに石炭をたけばコストが高くなって、重油ならば安くなるという電力において、需用者がその政策を引き受けなければならぬという結果になっている。これが国策として電気需用者にしわ寄せのない政策が必要であると思いますが、いかがでしょう。  次に、電源開発株式会社による今年度三ヵ所の火力発電所の開発ということであります。三ヵ所三基、これは引き続きさらに一基当て、三ヵ所を二基ずつにするのか、将来に対する開発方針を承っておきます。  次は、通産大臣並びに建設大臣にお伺いいたします。治山治水、あるいは工業用水、あるいは電力と、多目的ダムというものを進められてまいりましたが、私は、石炭火力を維持していく以上、大容量を持つ貯水池、これは当然必要だと思います。そのためにも、治山治水等々相当膨大になっている時期でありますから、この際、特に水力開発ということを加味して、所管各省の協調のもとに、電気事業者を含めた協議のもとに積極的に進める必要があると思いますが、今後の方針をお伺いいたします。  次には電源開発に伴う補償問題であります。特に公共補償は目に余るものがあります。これらは結局、水力その他の開発のための建設費、つまりコストを非常に高めているのであります。これは政府の指導対策というものを待つ以外に方法はないと思います。これに対する対策をお伺いいたします。  次に、原子力発電についてですが、世上いろいろ言われております。その単価において商業ベースに乗るとか乗らないとか、これらについて詳しい事情を御説明いただきます。  次に、戦後今日まで十数年間、この電気事業法という、まともなものは出てこなかったわけであります。いま説明を聞きましたが、もっと具体的に、なぜ今日までこの法案の上程がおくれたのか、お伺いをいたします。  さらに第十三として、電気料金問題であります。これはもう各社間の料金の格差というものは是正困難です。広域運営では困難であります。したがって、少なくとも一般の家庭における電灯、あるいは小口の電力といったようなものは、全国的に均一化される、米価と同じようにされる、この必要があるのではないだろうか、このように思うわけでありまして、この点をお伺いいたします。  第十四番目は、電気料金の改定は、法文によりますと、原価主義をとっております。そうすれば、原価に合致するという申請があれば、当然これを認可しなきゃならない。ところが、一年間公共料金のストップといったようなものもありまして、この間の措置はどのようになるのか、お伺いをいたします。  以下、若干の点が残されておりますが、時間がまいりましたので、まことに残念です。文書をもって事前に通告をいたしておりますから、その事前通告を参考に御答弁いただければ幸いだと思います。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  17. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御質問の第一点は、エネルギーのベースをどこに置くかという御質問でございます。これはエネルギーは国民経済の発展の主柱でございます。したがいまして、国民経済の置かれた状況によってエネルギーのベースをどこに置くかということはおのずから出てくるのであります。十年も二十年も前のわが国におきましては、お話のとおり、石炭がエネルギーのベースでございました。しかし、経済の発展、そして経済事情の変化によりまして、いまや何と考えても石炭にエネルギーのベースを置くことは、これは私は適当でないと思います。だから、ベースというものは、その供給が安定的である、そういう意味から申しますると、石炭や石油はよろしゅうございます。しかし、低廉でなければならぬということになると、石油のほうが重きをなしてくるのであります。そしてまた、将来におきましては、原子力は低廉でかつ安定ということが期待できますので、われわれは、原子力発電というものに対しましては、いままで以上の関心を持たなければならぬと思うのであります。こういうことから考えますと、われわれは、低廉にして安定、これを考えながら、そのときに応じてエネルギーの総合対策を考えていくべきであろうと思うのであります。  なお、広域運営につきまして、藤田さんはすでに御承知のとおり、いろいろ規定はなかったのだが、九電力会社でいろいろ相談の上でやっておる。一番広域運営の効果をあげたのは、一年半ほど前、関東と東北の電力についての供給の相談でございます。これは非常な効果をあげまして、これによりまして東北電力の料金の引き上げをチェックできた、こういう非常に効果がありますので、われわれは、今後も経営の格差を是正し、料金の高騰を防止するためには、広域運営を、今度新たに規定を設けまして、そうして強化改善をし、この目的を達したいと考えておるのであります。  また、電力企業の形態をどうするか。イギリス、フランスあるいはイタリアの例をとって言われましたが、やはり企業形態は、その個の国情また歴史的背景によって考えるのが適当だと思います。私は、いまの私企業の長所を生かしつつ、広域運営の規定を強化改善いたしまして、そうして電気事業の万全を期したいと考えておるのであります。もちろん、ただいまのところ、昔の日本発送電のようなことは全然考えておりません。あるいは、巷間、九電力会社の一、二につきまして、合併したらどうかという議論をする、いわゆる長老の方々もあります。聞くべき点もございまするが、この電力会社の合併その他につきましては、いろいろ沿革があり、人的条件等がありますので、私は、直ちにこれを実行することは困難だ、やはり広域運営によりまして全体の電力事業がうまくいくことに頭を使うことが先だと考えておるのであります。  なお、スト規制につきましてのお話でございまするが、電力事業は、その国民経済国民生活に及ぼす重大な関係を考えまして、ただいま私はスト規制法を廃止する考えはございません。(拍手)   〔国務大臣福田一君登壇拍手
  18. 福田一

    国務大臣(福田一君) お答えをいたします。五つの項目につきましては、総理からお答えがございましたとおりでございますが、続いて、財政資金が地域的に不均衡配分されておるではないか、そういう心配がないかということでございますが、いままで、その計画等を十分に検査、調査をいたしました上で、またその電力会社の能力に応じて仕事をしておりますので、そのような、そういう意味において不均衡な事態は起きておらないと考えております。  それから、石炭を消費することによって——いわゆる油を使ったほうが安いのに石炭火力をやるのはおかしい、石炭火力をやるのはどういう意味かと、こういうことでございますが、これはもう皆さん方も御承知のとおり、総合エネルギー対策という意味からいって、特にまたこの電力というものが石炭の大きい需用者でございますから、これにある程度公益性を持っている電気事業者が値段の高い石炭を使っていくということは、いわゆる総合エネルギー対策の一環とわれわれは心得ておるわけでございます。  その次に、電発の石炭火力の問題でございますが、これは大蔵大臣からお答えをいただくことにいたします。  次に、多目的ダムをつくってはどうかということでございますが、非常にけっこうなことでございまして、そういう趣旨に基づいて今後も処理をいたしてまいりたいと思います。  それから、公共事業者の補償の適正化ということでありますが、これは、電気事業のみならず、公益事業全般について言えることでございまして、今後大いにその措置については政府においても研究をいたし、具体化をいたしてまいりたいと考えておるところでございます。  次に、原子力発電の現状その他でございますが、これは、御案内のように、東海村における発電が十七万キロ前後のものを計画いたしておりますが、引き続きまして、敦賀において三十万キロ前後の原子力発電を計画しております。また、東京、中部、関西等の火力発電所においても、原子力発電の計画をいたしておりますが、原子力というものがやはり将来においてエネルギーの重要な柱の一つでございますので、ただいまのところはまだ相当原価が高うございますが、将来、四十五年前後になれば、もう火力発電と同じくらいになる見通しでございますので、これをやはり推進してまいらなければならないと考えております。  なお、事業法の提出がおくれた理由でございますが、これは先ほども提案理由の内容で御説明をいたしましたが、復元問題等が非常にいろいろございまして、これがおいおい、一つ一つ、府県と電気事業者の間で片がついてまいりまして、大体かっこうがついてきたので、今回この提案に踏み切ったわけでございます。  それから、公共料金ストップ、そのあとは御質問がないのでありますが、特にもう、全部こういうふうに文書による御質問がありますから、お答えを申し上げたほうがいいと思いますので、お答えをさしていただきます。  公共料金ストップ政策との関係でございますが、これはわれわれとしては、合理化を順次推し進めていきますことによって、できるだけこの電気料金の値上げは押えるように、行政指導をいたしてまいりたいと考えております。  また、料金の地域差の解消問題でございますが、九分割いたしました直後におきましては、電気が一番安かったのは北陸でございますが、北陸と中国との関係を見ますというと、北陸一に対して中国が二・二であったわけでございますが、いま一番安いのはやはり北陸であります。一番高いのは九州でございますが、北陸と中国との関係は、一に対して一・五になっております。したがって、順次このさや寄せが行なわれておりますが、今後もだんだんと油を使う火力が多くなるに従って、料金の格差は順次解消するものと考えております。  なお、電灯料金等につきましては、これは順次、全国的に、なるべく一緒になるというか、同じような料金になることが好ましいわけであり、そういう方向に現に向かっております。  次に、電気ガス税撤廃の問題でございますが、これはわれわれも、できるだけそういうふうに努力をいたしたいと考えております。  なお、復元問題については、先ほどお答えをいたしましたとおりでありますが、今後の電気の問題その他について、総合的な調査機関をつくってはどうかというお話でございます。いままで廃業構造調査会におきまして、いろいろエネルギー部会で研究をいたしましたが、ほかにも、石炭、電気、石油については、それぞれ審議会を設けましていろいろ専門的な研究を願い、それを総合的に合わせて処理をいたしてまいっておるわけでございますが、今後もそのような方法で、電気事業審議会を今回設けることにいたしておりますので、その中で十分調査をいたしてまいりたいと考えております。  それから、この法律の中には、たいへんたくさんの許認可事項のようなものがあるのでありますが、御案内のように、電気というのは、保安が非常に大事でございます。で、保安の施設をいたしますときには、特に厳重な制度をつくっておいて、いわゆる人体に危険のないようにいたさなければなりません。したがって、非常に許認可事項がそういう意味で多いのでございますが、それもまた、しかし、むだなものもございましたので、これを省いたり、また新たに加えたりして調整をいたしておりますが、こういうものは、法律に全部書くわけにいかないので、許認可は省令等に譲っておるものもございます。しかし、それはやはり時宜に応じてうまく制定するというか、事態に応じてこれを適用するような意味において、法律には載せなかったわけでございます。  なお、法文が非常にむずかしいがというお話でございますが、確かに法文がむずかしい面もございますが、これは電気の特殊性にもよるわけでございまして、この点は御了解を願いたいと思うのでございます。(拍手)   〔国務大臣田中角榮登壇拍手
  19. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 通産大臣から半分お答えをいたしましたが、電源開発に関する国家財政の寄与は、地域的に不均衡じゃないかということでございます。御承知のとおり、電源開発に関する財政資金の供給につきましては、電源開発基本計画に基づいておるわけでございます。その趣旨といたしますところは、大規模または実施困難な電源開発、それから国土の総合的開発利用及び保全に関しまして特に考慮を要する河川の電源開発、電力の地域的需給を調整する等のため特に必要な火力というようになっております。  なお、開発銀行におきましては、石炭対策に関連し、特に石炭火力発電所の建設資金の補完、なお、貿易自由化に対処するための国産重電機の設備金融、また、将来のエネルギー政策の一環としての原子力発電所の建設並びに設備資金の調達困難な離島及びその他の電力に対する資金の補完を行なっておるわけであります。例から申しますと、過去五年間における電力会社に対する開発銀行からの融資は、中国電力で五十三億円、これは総工事費の八百六億に対して六・六%であります。関西電力が百四十二億円、二千七百二十五億円に対して五・二%、中部電力が百三十九億円でありまして、二千百六十億円の総工事費に対して六・四%であります。東京電力は二百七十一億円でありまして、四千五百三十五億円の総工事費に対し六%であります。九州電力は百九億円でありまして、千二百三十億円の総工事費に対して八・九%であります。このように、財政資金の供給が地域的に不権衡であるという議論に対しては、十分配慮もいたしておるわけであります。  なお、電源開発会社による石炭火力の開発についてでございますが、御承知のとおり、政府は、石炭合理化対策の一環といたしまして、石炭の需要確保対策を推進するために、三十九年度において、電源開発会社により揚げ地石炭火力の三基の建設に着手をいたすことにいたしたわけでございます。この問題につきましては、磯子、高砂、竹原の三地点につきまして、通産省当局から協議を受けておりまして、これらの問題をいま検討をいたしておるのでございます。なお、電源開発株式会社における揚げ地石炭火力建設費は、三基分で五十五億円でございます。なお、開発銀行の三十九年度電力融資分の揚げ地石炭火力が九十億円、産炭地発電が十六億円、計百六億円でございます。重電機の延べ払いが五十三億円、原子力発電その他が三十一億円、計百九十億円でございます。(拍手)   〔国務大臣河野一郎君登壇拍手
  20. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えいたします。  公共補償につきましては、できるだけ適正に行なうために、建設省において今年度中に公共用地審議会をつくりまして、これにはかって、公共補償の基準を策定することといたしております。これによって適正な公共補償をすべく、予算においても考慮いたしておる次第であります。  なお、多目的ダムのことについてお話でございましたが、これは御趣旨のとおりで、建設省におきましては、これまでに大体四十四のダムをやっております。なおまた、現に調査中のものは十四あるというようなことでございます。で、これらのものを今後十分調査をいたしまして、やってまいるわけでございますが、これが電源開発等との関係につきましては、多目的ダム法によりまして、関係者の間において十分調整をはかって、事業を推進してまいるという所存でございます。(拍手)   〔藤田進君発言の許可を求む〕
  21. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 藤田君。   〔藤田進君登壇
  22. 藤田進

    ○藤田進君 御答弁をいただきましたが、若干漏れている点もあり、あるいは不徹底な点もございますので、まず最初に総理大臣にお伺いいたします。  数字をもってすれば御納得がいくと思いますが、このスト規制法そのものだけでとは私断定いたしません。これは労使間のあり方もございましょうが、電気事業におきましては、昭和二十六年に十三万四千七百二人の従業員、それが三十七年には十三万四百十七人、すなわち、約四千三百人従業員は減っている。で、設備関係は、もう御承知のとおりです。飛躍的に伸びて、一人当たりの生産性、これは、増加率を見ると、昭和二十六年が一〇〇で、十一年後の三十七年では三六〇・二です。三倍六分の生産性をあげている。これに対して、昭和三十八年の基準賃金を見ると、三万二百七十五円と、こういうことなんです。このことは、ただ名目賃金だけ申し上げるまでもなく、家族の構成、勤務年数、先ほど申し上げた諸般のデータから見て、非常に低いのです。今日、公務員給与が非常に低いけれども、これよりまだ低い。これが現状なんであります。ですから、ILO条約も批准するという時期にきていることだし、これ自体、スト規制法が違憲立法で、私は、あんなものは問題はないと思うけれども、しかし、そうもまいりませんので、撤廃するか、撤廃しないとおっしゃるならば、じゃ、どういう——政府としては、これは労使間の問題だと言って逃げるわけにいかない。スト規制法があるし、いたしますので、どういう措置をおとりになるのか。公益性が高いんだから、うんと安くてもいいんだ、がまんするのがあたりまえだ、いやならやめて帰れ、ということならいざ知らず、そうでないとすれば、もう少しあたたかい配慮があってしかるべきじゃないかと思うわけでありまして、具体的にお伺いいたします。  それから通産大臣にお伺いしますが、法案中に、保安関係について、特に屋内保安については、今度、事業者がこれを調査する義務があって、事業者のほうでは、これを適当な調査機関に委託するということになります。ところが、まあ六十ヵ所からある——政令、省令すべてそうですが、この点については、実際問題として、この法律が成立すれば、公布されて、一年を過ぎない範囲で施行するとおっしゃるわけで、そうすれば、もうはっきりとした調査機関、あるいは公益法人にするのか。組織、機構、区域、あるいは財政負担、こういうものが確立していなければ、法案審議について、ここで停滞すると思います。御方針があると思いますので、お伺いいたしたいと思います。  それからもう一つは、この法案を見ますと、申請する側については、供給規程、工作物規程等々、すべて期間を付してあります。あるいは罰則もついております。ところが、どうも一方的だと思うのは、これらの申請をした場合に、政府、通産省当局としては、これを何ヵ月以内とか、何日以内に許可しなければならないといったような、てまえのほうの期限はつけていない。非常にかってな話です。過去に事例がたくさんある。申請をしても、なかなか、一年も半年も、認可も何もしないで、たなざらし、これは、公益事業の遂行上非常に支障を来たすと思うので、この点、今後の指導なり、あるいは法執行にあたっての態度、所見を伺いたいと思います。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  23. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 電気事業関係の労務者の賃金が生産性の上昇と一致しないというお話でございますが、これが近代産業の実態でございます。非常に産業が合理化すれば、生産性は伸びますが、賃金は必ずしも伸びない業種がある。たとえば、自動車工業のごときは、そうでございます。だから、いまお話のような状態であったならば、これは消費者物価の上昇なんか押えることはできません。それは、その上昇原因は、主として資本の投下によるものでございますから、これをすぐ労働賃金のほうに持っていけるということは、労働専門家の藤田さんの意見としてはいかがかと思います。しかし、電気事業関係の方々は、お話のとおりに、昔は相当高うございましたが、いまも、名目賃金は他の産業よりも相当高うございましょう。あなたが二十七番目とおっしゃるのは、名目賃金でなしに、いろいろな方法で、勤続年数とか家族数とか、年齢とかいうものを加味した、あなたの計算だと思います。私は、ずっと見るところ、いまの賃金の状況は、これは原則として労使の間できめていただくのが適当だと思います。私は、最近の生産性の向上につれまして、電気事業関係者の賃金も適当な範囲内で労使の間できめられておると思うのでございます。私がいまその賃金に対しまして介入する考え方はございません。(拍手)   〔国務大臣福田一君登壇拍手
  24. 福田一

    国務大臣(福田一君) お答えをいたします。  確かに今度の法律では、屋内の保安は事業者に調査をさせることにいたしておりまして、それについては特別な機関をつくることにいたしておりますが、その経費は電気事業者が出すことにいたしておりますし、またこれを一ぺんにつくるのではなくて、順次つくるようにいたしたいと考えておるところでございます。詳しいことはまた委員会の席上その他で御説明をさせていただきたいと思います。  さらにまた、供給規程、工作物規程等について、たくさんいろいろ規程があるが、非常に認可がおくれておるというお話でございます。そして認可に期限を付すべきであるというお話でありますが、いままででも確かに料金の場合は非常におくれた場合もございますが、保安等の問題については相当早く処理をいたしております。しかし、これは今後も、もっともっと早く処理ができるように努力をいたしたいと考えます。(拍手
  25. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 向井長年君。   〔向井長年君登壇拍手
  26. 向井長年

    ○向井長年君 ただいま趣旨説明がありました電気事業法案に対しまして、私は民主社会党を代表して、総理並びに関係大臣質問をいたしたいと思いますが、どうかひとつ懇切丁寧に御回答をお願いいたしたいと存じます。  いまや、電気事業は、産業活動の主要なるエネルギー源並びに国民の日常生活の光熱源を供給する基礎産業である。ゆえに、電気事業国民の福祉に直接影響を持つ事業として、国民の信託にこたえなければならないのであります。したがって、健全経営のできるよう、国としての法的規制、法的保護の必要があるのであります。ところで、現行の電気事業に関する法体系といたしましては、電気に関する臨時措置法、電源開発促進法等によって、実体的にはポツダム政令、旧電気事業法、旧公益事業令等三法であって、いずれも昭和二十七年末に、当時の占領終了時の異常事態に対する応急措置として立法化されたものであります。内容的にも、現在の電気事業実態に適合しない点が多くなっているのであります。よってわが党は、電気事業の今後の方向を明示する基本法を新たに制定する必要を認め、今回上程された政府案の審議を通じて、同案の足らざる点を、あるいは疑わしき点をただし、修正すべき点を修正いたしまして、必ず本国会中に同案の成立をはからんとするものであります。  以上の基本的態度を明らかにいたしまして、本案に対し総括的な質問を若干いたしたいと存じます。  まず、第一の質問は、総理並びに通産大臣にお伺いいたしますが、電気事業の矛盾、問題点の要因の一つに、常に事業の性格があげられるのでありまして、現状は、公共、公益、私企業、それぞれ混然化されているのが実体であります。膨大な供給源の開発、そのための資金規模の飛躍的増大、料金問題、経営上の問題等、いずれも私企業規模にしては限界を越えつつあるところに、企業形態論の中心があるのであります。  私は、エネルギー源としての電力は、それが産業用電力であれ、電灯であれ、工業用水や家庭用水と同じく、国の産業、国民の生活にとって一日も欠くことのできない基礎物資であります。しかも、総需要は毎年一一%内外の増加を見ており、産業設備投資としても年間約四千億円で、第二位の鉄鋼投資を一千億円以上も引き離しているのであります。したがって、産業公益性から見ても産業規模から見ても、その事業公共性は強く付与されなければならないのであります。公共性の強化とは、企業が必ずしも、原価主義、平均利潤確保第一主義で経営するのではなく、経営方針を強力に国の政策と協調せしめるよう、そのレールを法制化するところに最大のポイントがあると思います。この見地に立って、本案にいう電気事業の広域運営を余儀なくされた理由、料金の地域格差が生じている点、電力、電灯の高度な利用について、全国的なる完全な機会均等の実現し得る理想形態は、何といっても全国一社化あるいは公社化というものが目ざされるわけであります。もちろん、私は、現在、即時に一社化せよとか、あるいは公社化せよという、現実不可能な方針を要求するものではございませんが、一社化は公共性強化の手段であって、それ自体が政策目標でないからであります。池田内閣の閣僚の中には、再編成すべきであるという意見を持っておられた大臣もおるようでございますが、総理並びに通産大臣は、電気事業の将来のあり方について、将来の構想について、いかなる考え方を持っておられるか、この点を詳細にお伺いいたしたいと存じます。  第二の質問は、本案の二十八条、二十九条にいう広域運営についてでありますが、本案は、電気事業者相互の協調を義務づけておりますけれども、法第一条の「使用者の利益保護、電気事業健全なる発達」、これは各社相互の企業利益の防衛手段あるいは各社の助け合い運動ではないはずであります。この協調ができ得る限り、地域格差をなくし、良質、豊富、低廉なる電力を供給するところに重点を置かなければならないと考えますが、通産大臣はいかに考えられるか、この点をお伺いいたします。  なお、協調の土台となる各事業者が原価主義で拘束されている以上、九社間の格差は依然として圧縮されることなく、第十九条第二項の原価主義のこの制度は、広域運営の最大の障害となると考えられるが、通産大臣の見解をお聞きしたいと思います。広域運営をやらなければならないということは、現在の事業形態のいわゆる矛盾あるいは隘路を露呈していると私は考えるのでございますが、この点もあわせてお伺いいたします。  次に第三の質問は、電気料金制度の問題でございますが、電気料金の長期安定が、電気事業独占利潤の追求を排し、国民大衆の利益を確保し、あわせて電気事業健全なる発展に資するため、原価主義及び適正報酬の原則と、需用家に対する公正の原則によるものでなければならないことは当然といえると思いますけれども、終戦後、現在に至るまで、電気料金改訂の理由は、そのほとんどが物価高騰による原価高に対応するものであった。しかし最近に至りましては、電力供給の余力がようやく生ずるに至っているのであります。電気事業は、若干安定の方向に向かっていると言えると思うのでありますが、この好機に電力料金に再検討を加えて、現行の地域差を調整する方針のもとに、新料金制度を制定すべきであると思います。今後の電気料金は、国民の生活必需物資である電灯使用料金並びに中小企業や農家等の小口電力料金は、全国を一律化いたしまして、大口電力料金については、現行のような大幅な料金割引制度を、個別契約によって原価主義本位の料金制度に改定し、この二本建ての原則を制定すべきであると考えられますけれども、経済企画庁長官あるいは通産大臣のお考えをお聞きいたしたいと存じます。経企長官はおられませんので、総理大臣からひとつ御答弁を願います。次いで、今後の政府の料金構想をこれもあわせてお聞きいたしたいと存じます。  第四点は、電気事業は、従来、水力が主で火力が従でありましたけれども、最近の需給の実態は、火力が主になり、水力が従の方向に向かっているのであります。このことは、将来の供給体制は、火力をベース・ロードに、水力をピーク・ロードの調整という形になるであろうと考えられるのであります。したがって、火力発電の増大により燃料消費量は画期的に増加し、石炭、石油の問題は、その経済性と関連して、政府の適切なる方策を必要としているのであります。この燃料資源問題は、近く本格的に実施に移されるところの原子力発電の開発に伴って、さらに複雑化することでありましょう。このような観点から、電気事業と、国内資源である石炭、国外資源である石油、なお、将来にわたる原子力燃料等、それぞれ安定的需給、価格、運営等、総合エネルギー政策を抜本的に検討をいたすべき時期と考えるが、総理、通産大臣はいかなる構想を持っておられるか、お聞きいたしたいと存じます。  なお、わが国の産業活動の主要なエネルギー政策は今後一そう重要と言わなければなりません。したがって、総合エネルギー政策を企画統一し、円滑な行政を行なうためには、独立した行政機関が必要ではないかと存じます。たとえば動力省のような一つの政府機関を持つべきであろうと考えますが、総理の見解をお尋ねいたしたいと思います。おそらくこの質問に対しまして、総理は、臨時行政調査会にゆだねたいと言われると私は思いますけれども、しからば、いま政府部内で問題となっているところの防衛庁昇格問題は臨時行政調査会答申を待ってやられるのか、この点がこれに関係する問題になってくるわけでございまして、私はそういうことを直ちにいま聞くのではなくて、いわゆる総合エネルギー行政を今後総理がどういういわゆる政府機関において、どういう意欲を持って行なおうとするのか、この点を明確にお聞きいたしたいのであります。  第五点は、本案に伴い、通商産業省設置法に電気事業審議会の設置をするとあるが、電気事業が高度の公共性を持つ産業であるがゆえに、産業の民主的運営は必須の条件であります。したがって、審議会は単に調査審議するだけでなく、必要に応じて自主的に政府に対し意見具申も行なうべきであり、かつまた、政府政策決定については、まず必ず審議会の議を経るべきであります。したがって、開発、需給、料金、広域運営等の重要政策は、審議会の議を経るよう明記すべきであると思いますが、この点、通産大臣はいかに考えますか、お伺いいたします。  最後に、本案の立法に際して、公益性の高い電気事業に従事する労使は、常に需用者に対しサービス精神に徹して努力いたすべきであって、事業運営にあたっては、労使協議制の樹立が最も肝要であると思いますけれども、この点につきまして労働大臣はいかに考えられますか、お聞きをいたしたいと思います。なお、賃金をはじめとする経済的な労使の紛争は、あくまでも平和解決が望ましいのであります。いまや電気に従事する労働者は、良識を持って問題の解決に当たっておるのでございまして、憲法で保障された労働基本権に反するスト規制法は、昭和二十八年に労使の混乱期に三ヵ年の時限立法として成立し、その後だらだらと恒久化されたスト規則法は、特に今回のILO八十七号批准に伴い、国内法整備の一環として当然に廃止されるべきであります。労働関係調整法で十分であるのでございまして、労働大臣は、これをILO八十七号条約批准に伴う国内法改正の中で廃止する方針をとるべきであると考えますけれども、この点につきまして労働大臣はいかに考えられるか、お伺いいたします。  以上で電気事業政策の大綱について質問を申し上げ、詳細につきましては委員会でただしたいと存じます。以上の質問に対しまして、政府の抽象的でなく具体的で誠意ある答弁を期待いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  27. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御質問の第一点の電気事業あり方、いわゆる企業形態がどうあるべきか、一元化すべきか、いまの私企業でいくべきかという問題につきましては、先ほどお答えしたとおりでございます。私は、その国の産業の状況、歴史的背景等から考えまして、わが国におきましては、ただいまの私企業を中心として合理化し、広域運営によってその私企業の欠点を補うことが、一番効果的だと考えております。  電気料金の問題につきましては、企画庁長官を大蔵大臣が兼務しておりますので、大蔵大臣が企画庁長官としてお答えを申し上げますが、大体、電気事業は徐々にいわゆる水力から火力に向かいつつありますので、しかもまた、最近の電力需用が非常な急速な進歩でございますので、同じ条件に近寄りつつあるというのがいまの情勢でございます。私は、電気料金は大体いまのところ満足すべき状況だと思います。  また、このエネルギー政策につきましてどうするか。これはもう、たびたび申し上げておるのでございまするが、エネルギーにおきましても、電気もありますし、石炭、石油、原子力等いろいろな行政があるのであります。そういう行政を一つの部局でやることがいいかどうかということは、私の経験から申しますると、また、一般の産業界の人とやっております通産省の産業構造審議会のエネルギー部会の意見を聞きますと、われわれと大体同じような考え方——いまの状態が是認されるのであります。しかし、だんだん情勢が変わってまいりますので、いろいろな変化に応じまして、適当な行政機構を考えていきたいと思います。何も臨時行政調査会の意見どおりにやるとは申し上げておりません。(拍手)   〔国務大臣福田一君登壇拍手
  28. 福田一

    国務大臣(福田一君) お答えをいたします。企業形態の問題につきましては、総理からお答えがあったとおりでございますが、広域運営の問題につきまして、原価主義をとっておることとの矛盾が出るではないか、こういうお話でございます。確かに一部そういうことは出てまいるわけでありますが、しかし、今度は融通料金、融通電力につきましては、これは必ず原価主義をとりながら、かなり幅を持たせることによって、一歩大きく前進をすることは、お認めを願えると思うのであります。向井先生も、現実的な姿で問題を処理していかなければいけないということを言っておられるのでございまして、私たちは、いわゆる現実的に、いまのような非常に変態的な法制を、とにかく大きくいまの時勢に合って前進をさしていきたい、こういう考え方でおるわけでございます。  なお、料金制度の問題でございますが、この料金の問題も、先ほど総理からもお答えがございましたし、私が先ほど藤田議員にもお答えを申し上げたところでありますが、だんだんとこれはこの差が縮まってまいります。また、将来は、電灯料金等はできるだけそういうような方向で配慮してまいりたい、かように考えておるのでありますが、これはもう向井議員も御案内のとおり、こういうことをお話しいたしておりますというと、もう非常にこれは長い問題にもなりますので、委員会で詳しく御説明をさしていただきたいと思うのでございます。  なお、総合エネルギー政策についての御質問でございますが、これはもう毎々この本会議場でも申し上げておりますけれども、私たちとしては、石炭、電気、油、原子力というようなものを、十分総合的にうまく利用をしてまいる方途を考えておるわけでございまして、これもひとつこの際は省略をさしていただきたいと思います。  なお、動力省設置の問題でございますが、総理からもお答えがありましたが、私たちとしては、ただいまエネルギー関係の部門で通産省に属しておりませんのは、原子力の原子炉の問題について一部が科学技術庁にあるわけで、残り全部は、実を言いますと通産省にあるわけであります。したがって、総合エネルギー対策を樹立するという意味においては、また、行政的に処理していくという意味においては、不便は直接感じておりませんが、総理がお答え申し上げましたとおり、事態の推移に応じて考慮をいたしてまいりたいと思う次第であります。  なお、電気事業審議会には、諮問だけでなくて建議するような権限を与えてはどうか、こういう御質問でございますが、私は、そのように建議等もできるように法制をいたしてまいりたいと考えているところでございます。(拍手)   〔国務大臣田中角榮登壇拍手
  29. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 料金等の今後の問題につきましては、総理大臣及び通商産業大臣からお答えしたとおりでございます。(拍手)   〔国務大臣大橋武夫君登壇拍手
  30. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) いわゆるスト規制法は、昭和二十八年に三年間の時限立法として制定され、その後国会の議決により恒久立法となったものであります。その趣旨は、電気事業、石炭事業が、国民経済国民生活に対してきわめて重要なものでありますから、これに回復すべからざる打撃を与えることは、争議行為としても許されないということを定めたものであります。本法は、制定以来今日まで、明白な違反の事例を見たことはありません。しこうして、本法につきましては、先刻総理大臣から明確に申し上げましたとおり、政府は、現在廃止するという考えはありませんが、憲法の保障する労働基本権に関する重大なる制限を定めたものでありますから、この点に関連する取り扱い上の問題としては、将来、なお慎重に検討いたしたいと存じます。  次に、労使協議制に関して御質問がございましたが、労使間の関係は、根本的には相互に協力すべきものであり、産業の社会的使命は、その協力によってはじめてよく達成せられるべきものでありますから、協力の一方式として労使協議制というものは、その構成並びに運用さえよろしきを得れば、きわめて好ましい方式の一つであると考えております。(拍手
  31. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。    ————————
  32. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第一、緊急質問の件、  岡田宗司君から、米軍機墜落事故に関する緊急質問が提出されております。岡田君の緊急質問を行なうことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。発言を許します。岡田宗司君。   〔岡田宗司君登壇拍手
  34. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私は日本社会党を代表して、去る五日、町田市において起こりました米軍飛行機の墜落事故の件について、ここに政府に対しまして質問する次第でございますが、質問に先き立ちまして、不慮の災害にあい、尊い生命を一瞬のうちに奪われました四名の方々に、つつしんで哀悼の意を表するとともに、重軽傷を負われまして、いまなお病院にて治療を受けつつある二十六名の方々に、心からお見舞いを申し上げ、一日も早く全快されることをお祈りする次第でございます。(拍手)  今回の町田市繁華街への米軍機の墜落事故は、非常な椿事として社会の耳目を聳動させたのでございますが、かような事件は今回初めてのことではなく、三十八年五月には、埼玉県毛呂山町の病院にB57戦術軽爆撃機が墜落、爆発、炎上いたしまして、病院を焼き、多くの死傷者を出しましたことは、記憶に新たなところでありますが、この三ヵ年間だけでも、基地周辺において、米軍機の墜落により民家が燃え、死傷者を出しました事例は、実に八件を数える次第であります。   〔議長退席、副議長着席〕 特に、厚木付近では、ここ三年間のうちに三十件近くの米軍機の墜落、不時着があり、基地周辺の住民はこれに非常な不安を感じているのであります。今回の墜落事故も、墜落機のガソリン積載量がすでに尽きておりましたから、火災を最小限に食いとめることができたのでありますが、もしガソリンが満載されているような事態でございましたならば、火災はあの密集地をなめ尽くし、人命及び財産に対する損害はもっともっと大きくなったであろうと想像いたしますというと、実にりつ然とせざるを得ないのであります。しかも、米軍機が日本上空を飛び回る限り、今後もかような惨事が起こらないと保障することは何人もできないのであります。われわれは、かかる事故の続発する根本の原因は、日米安全保障条約に基づき米軍の基地が日本国内に散在し、米軍機が日本側の規制を受けることなく、自由自在に日本の上空を飛び回ることから起こっていると考えるのでありますが、総理大臣は、今回の事故だけでなく、かかる事故の続発することの原因がどこにあるとお考えになりますか、まずこの点をお伺いしたいのであります。  われわれは、今後かかる惨事を発生させないためには、米軍基地を廃止し、米軍に引き揚げてもらうことが、根本的解決策であると考えるのでありますが、それはともかく、当面かかる事故発生の防止策として、政府は、近く開かれる日米合同委員会に次の諸点を要求し、これを確約実行させるつもりがあるかどうか、お伺いをしたいのであります。  第一は、米軍機が、ひとり町田市の上空のみならず、人口、住宅の密集している市街地の上空を飛ぶことをやめてもらうことでございます。  第二は、緊急時にパイロットが脱出する際にも、墜落機が市街地に突っ込まないように、ふだん厳重に指導訓練し、それを義務づけること。このことは決してできないことではなく、現に米空軍パイロットでも、日本の航空自衛隊のパイロットでも、みずからそういう処置をとって災害を防止した賞賛すべき行為をしている人があるのでございます。  第三点は、事故発生の原因責任を明らかにし、その責任に応じて米軍側にパイロットその他関係者に処罰を含む措置をとらしめることでございます。総理は、今後の事故発生の防止策として、かような点を米側に要求し、実施させる方針を持たれるかどうか、お伺いしたいのであります。  ところで、今回の米軍機の墜落がいかなる原因によるものか。全く不可避のことであったのか。パイロットの過失か。さらに墜落機が市街地に突っ込むのを避けられなかったのかどうか。われわれは、事故発生の責任の所在と今後の事故発生の防止に関連して、重大な関心を持つものでありますが、はたして日本側がそれらの事情を十分に納得できるように把握できているのかどうか疑わしいのであります。従来、事故が起こりました場合も、アメリカ側の調査報告を受けるだけで、事故発生の責任は、いつも、うやむやにされてしまい、責任者がどう処置されたか全くわからずじまいになってしまっているのであります。日本国民の生命財産を傷つけるかような事故は、補償金だけで片づけられてはならないのであります。日本国民の生命財産に重大なる損害を与えるかかる事故の原因責任の究明は、たとえそれが米軍によってなされたからといって、日本側で黙って引き下がっていていいものではありません。われわれは、日本政府が米側に対して、当然その原因責任の究明のための合同調査を要求すべきであると思うのであります。  アメリカ側は、事故の原因について日本側に簡単に報告するだけで、日本側が原因並びに責任を究明することができなかったことは、明らかに、アメリカ側が日本国民の生命財産を傷つけたことに対して責任をとらないことを意味するものであり、日本国民を軽視し、ばかにしているものと言わなければなりません。日本側も、その原因責任の究明を求めず、補償だけで、しかもわずかな金額で事件を片づけてしまおうという態度をとってきたことは、やはり国民を軽視し、アメリカに対し主張すべきことも主張できない卑屈な態度であると申さなければならぬのであります。(拍手)  と申しますのは、今回の事故において、パイロットが飛行機を脱出してパラシュートで降下しつつありますとき、すでに厚木基地から米軍のヘリコプターが飛んでまいりまして、パラシュートの回りを飛び回り、パラシュートが町田市の都営住宅団地内に着地するやいなや、間髪を入れず団地のさくのすぐ外の畑地に着陸いたしまして、数分の間にパイロットを収容し、厚木基地に飛び去ったのであります。これは、私が事故発生の翌日の朝、社会党調査団として現地に調査に参りましたとき、目撃者二名から聞いたところであります。これから推察いたしますと、脱出する前に基地に向かって無電で連絡する余裕があったことは明らかであります。とするならば、町田市から直線距離でわずかに八キロ、マッハ二以上の速度のジェット機ならば数秒で達することのできる厚木基地に、なぜ機首を向けて脱出することができなかったかどうか。この点は、はなはだ不可解であります。飛行機が市街地に墜落してあの惨事を惹起しながら、パイロットが悠々と脱出していることについて、町田市民は非常に憤っているのであります。さらに、事故の原因を解く重要な「かぎ」となるF8U機のエンジンは、埋まってしまったまま、これは掘り出さないで、そのままにしてしまっておりますことや、ごく微小な破片までも急いで持ち出しましたことは、何か隠すべきことがあると、黒い疑惑が抱かされるのでございます。かかる事故の原因責任を明らかにし、事故のあと始末を国民の納得のいくようにするため、日米合同調査を行ない、早急に結論を出すことが必要だと考えますが、外務大臣は、日米合同委員会に対して、事件の日米合同調査を要求するつもりがあるかどうか、お伺いしたいのであります。  この際、ついでに賀屋法務大臣に対しまして、パイロットの過失、判断措置の誤りによって、飛行機が墜落して人間を殺傷した場合、これは過失致死罪に該当すると思われますが、法務大臣の見解を承りたいのであります。もし、パイロットに何らかの責任があり、過失致死罪に該当する場合、日米行政協定によって、このパイロットに対して日本側に裁判権がないといたしましても、米側に対しまして、彼を裁判に付することを要求することができるものかどうか、外務大臣の見解を承りたいのであります。  次に、この事故による死亡者、負傷者並びに物的損害に対する補償の問題についてであります。従来の例から見まして、支払われました補償金額は非常に少なく、被害者は、防衛庁によって押しつけられた金額によって泣き寝入りをさせられた形になっているのであります。たとえば、死亡者の場合、最高百五十万円といわれておりますが、それだけ支払われましたものは、ごくわずかしかないのであります。もしアメリカでかかる事故が起きました場合、アメリカ政府は死者に対して幾らの補償金を支払っておりますか。おそらく十倍以上でございましょう。国鉄事故、飛行機事故の場合でも、これに比べますならばはるかに多額なのであります。たとえ幾ら補償金を出しましても、死者に対して償い切れるものではございませんが、遺族のことを考えるならば、当然もっと合理的な補償金額の算定がなされなければなりません。そうして一方的にきめるのではなくて、被害者側の要求もいれなければならないのでございますが、防衛庁長官は、この点どういうふうにお考えになりますか。この際、合理的な算定方法をとること、そして十分に補償するために至急措置をとられるかどうか。また、そのうちの一部を、直ちに被害者に先渡しされるかどうか、お伺いしたいのであります。  またこの際、アメリカ側はどの程度補償の責任を負っているのか、お伺いしたいのであります。私どもは、これはアメリカ側が全部責任を負うべきものと考えているのでございますが、この点はどうお考えになっておりますか。  今回の事故は、日本全国の米軍航空基地周辺の住民に非常な不安と恐怖を引き起こしているのでありますが、ことに、同じ三多摩にある横田基地周辺の住民は、F105戦闘機の横田への配置に非常な不安の念を高めているのであります。地元の市町村は、それぞれの市町村議会において、自民党をも含めましてF105の横田基地配備に反対決議をするなど、強く反対しているのでありますが、防衛庁長官は、この反対運動を、ジェット機の騒音防止に、政府から金を出させることで、何とかなだめようとされてこられたのであります。しかし、住民は今回の事件を見て、あらためて、何どき、かかる惨事がふりかかってくるかわからないということを思い知らされ、りつ然としているのであります。この際、政府は、アメリカに対してF105戦闘機の横田配備を中止するように交渉するつもりはないか。総理並びに防衛庁長官にお伺いしたいのであります。  また、わが国の原子力センターであります東海村に隣接する地域に、米空軍の試爆場があり、従来しばしば事故を起こしていることにつきましても、あらためてその危険の大きなることについて考えさせられるのであります。もし、東海村の原子力センターに今回の事故のようなことが起こったら、その災害は、はかり知れないものがあります。原子力村付近で、ひんぱんに米空軍の飛行機が飛来し、しかも爆弾投下の訓練が行なわれるがごときことは、今回の事件にかんがみ、直ちに中止させなければなりません。総理並びに防衛庁長官は、この問題につきましてどうお考えになっているかお伺いしたいのであります。  これをもって私の質問を終りますが、政府は、この事件の原因責任を究明して、国民に明らかにするとともに、被害者に対する補償その他十分なる指摘を、すみやかに、かつ、積極的に講ずること、また、かかる事故発生を防止するために、すみやかに具体的な方策を講ずることを、強くアメリカ側に要求し、それを実現させることを要望する次第でございます。  これをもって私の質問を終わりたいと思います。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  35. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今回の原町田事件は、まことに遺憾かつ残念なことでございます。私は、死傷者の方々に、弔意または御同情を心から申し上げたいと存じます。  お話のとおり、かかることが再発することは、絶対にわれわれは防止するべく努力いたさなければなりません。したがいまして、今回の事件の原因究明と、そうして次に再発の防止につとめたいと考えております。したがいまして、日米合同委員会を通じまして、私は、いまお示しになりました四点、すなわち、都市上空の演習規制とか、あるいはパイロットの脱出のこと等々を、御趣旨に沿いまして交渉を進めていきたいと考えております。  なお、横田基地撤廃の問題につきましては、事故があったからこれを撤廃しろ、こう申されましても、私は必ずしもそれには同意いたしません。やはり、日米安保条約によりまして、わが国の防衛上必要なことでございますから、横田以外に適当な土地があるとして、同意すれば別でございますが、事故が起こったからこれをすぐやめろということは、私は同意はできない、賛成しがたいのでございます。ただ、私は重ねて申し上げますが、原因を究明して、再度起こらないように、また、国民に納得していただけるよう最善の努力を払っていきたいと考えております。(拍手)   〔国務大臣大平正芳君登壇拍手
  36. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) ただいま総理からお話がありましたように、日米合同委員会の事故分科委員会をきのうから開きまして、事故の原因の究明、事故の再発防止対策検討にすでに入っております。  それから裁判の問題でございますが、この事故は、公務執行中のことでございますので、裁判の管轄権は明らかに米掌側にあります。しかしながら、この原因をよく究明いたしまして、今後の再発防止対策を立てる上におきまして、岡田議員が御指摘のように、H本政府といたしましても、十分実情を把握する必要がございますので、その点については、十分留意いたしたいと考えます。(「合同調書はどうする」と呼ぶ者あり)  いまお答え申し上げましたとおり、日米合同委員会の事故分科委員会で合同調査に入っております。(拍手)   〔国務大臣賀屋興宜君登壇拍手
  37. 賀屋興宣

    国務大臣(賀屋興宣君) お答え申し上げます。今回の事件はまことに遺憾千万でございましたが、事故発生の報告を受けますや、直ちに東京地方検察庁の検事正は、検察官二名を現場に急行させることを命じまして、引き続き、目下現場の検証等、でき得る限りの証拠収集につとめておる次第でございます。  なお、エンジンを掘り出すことなく整地をしたがどうかという意味の御質問があったようでございますが、これは報告によりますと、エンジンは地下十メートル以上の深い所に落ち込んでおりまして、非常な湧水を生じ、また、付近の家屋にもそのために倒壊の危険が起こるというような状況でございまして、そこで、当局関係者は、専門の技術者の意見も聞きまして、このままに放置することは危険であり、また、真相の究明にもほとんど役立たないであろうという判断から、埋没整地をしたということの報告を受けておる次第でございます。  なお、裁判権執行につきましては、ただいま外務大臣よりお答えいたしましたように、できるだけの事態の究明は検察当局でもいたしておりますが、裁判の管轄権等は、条約及び法律の定めるところによりまして、これに従って決定される次第でございます。(拍手)   〔国務大臣福田篤泰君登壇拍手
  38. 福田篤泰

    国務大臣(福田篤泰君) お答えいたします。御指摘の補償基準の問題でありますが、これは岡田議員よく御存じのとおり、ここ三、四年来の懸案でございまして、これを機会に、ぜひとも、独立採算制をとっております公社その他とのアンバランスを除きたい。ホフマン方式も取り入れまして、この際、年来の懸案であります低い百五十万という壁を破りたい。関係官庁とすでに交渉に入っております。従来の最高の例は百八十一万でありますが、私どもは何とかして公社並みの補償基準をとりたいと考えているわけであります。  なお、本日すでに被害者の方々には前金をお渡し申し上げました。なお、アメリカ側の負担は、日米間取りきめによりまして七五%負担ということに相なっております。  なお、横田基地のF105の移駐中止申し入れの件につきましては、総理のお答えしたとおりであります。  なお、東海村の試爆場の問題につきましては、すでに閣議におきまして返還の原則が取りきめられました。目下、代替地を調査中でございますが、演習は必要でありますので、中止を要請する考えは持っておりません。    ————————
  39. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 日程第四、遺言の方式準拠法に関する法律案内閣提出)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。法務委員長中山福藏君。   —————————————   〔中山福藏君登壇拍手
  40. 中山福藏

    ○中山福藏君 ただいま議題となりました遺書の方式準拠法に関する法律案について、委員会における審議の経過及び結果につき御報告いたします。  本法律案は、渉外的遺言、すなわち、外国と何らかの関係を有する遺言について、その方式に関していずれの国の法律が適用されるべきかを定めるものでございまして、「遺言の方式に関する法律の抵触に関する条約」の批准に伴う国内法上の措置として提出されたものであります。  法務委員会におきましては、三月三日審議に入り、熱心な質疑が行なわれたのでありますが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。  四月七日質疑を終わり、討論に入りましたところ、別に発言もなく、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  41. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  42. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。    ————————
  43. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 日程第五、麻薬取締法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。社会労働委員長鈴木強君。    〔鈴木強君登壇拍手
  44. 鈴木強

    ○鈴木強君 ただいま議題となりました麻薬取締法の一部を改正する法律案について、社会労働委員会における審議の経過と結果を報告いたします。  政府原案の要旨は、麻薬取締官を十名、都道府県における麻薬取締員を十五名それぞれ増加し、施行期日を本年四月一日とするものであります。  本法律案は、衆議院において修正を加えられ、麻薬の小売り業者、施用者、管理者、または研究者に対する麻薬取り扱い免許の有効期間を一年延長して、免許の日からその日の属する年の翌年の十二月三十一日までに改められました。  委員会においては、小林厚生大臣政府委員及び衆議院修正案の提出者である衆議院議員小宮山重四郎君に対し、衆議院修正によって延長された麻薬取り扱い免許の有効期間の基準、右有効期間を業態によって区別した理由、免許手数料と取り扱い者の収入との関係、昨年の法律改正による取り締まり強化後の麻薬事犯の推移、これに対する取り締まり状況等について、熱心な質疑で行なわれました。また高野委員から、本法律案の施行期日に関し、『附則第一項中「昭和三十九年四月一日」を「公布の日」に改める』との修正案が提出されましたが、詳細は会議録によって御承知を願います。  質疑を終わり、討論に入りましたが、別に発言もなく、次いで高野委員提出の修正案及び右修正部分を除く衆議院送付案について順次採決の結果、いずれも多数をもって可決せられ、衆議院送付案を修正議決すべきものと決定いたしました。  以上御報告いたします。(拍手
  45. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本案の委員長報告は修正議決報告でございます。本案全部を問題に供します。委員長報告のとおり修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  46. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 過半数と認めます。よって本案は、委員会修正どおり議決せられました。    ————————
  47. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 日程第六、中小企業近代化資金助成法の一部を改正する法律案、  日程第七、中小企業金融公庫法の一部を改正する法律案、  日程第八、中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案、  (いずれも内閣提出衆議院送付)、  以上三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長の報告を求めます。商工委員長前田久吉君。   〔前田久吉君登壇拍手
  49. 前田久吉

    ○前田久吉君 ただいま議題となりました三法案について、商工委員会における審査の経過及び結果について御報告申し上げます。  三法案の内容を簡単に申し上げますと、  第一の中小企業近代化資金助成法の一部を改正する法律案は、本法における中小企業者の定義を、中小企業基本法に対応させつつ、法律の本文に、工業においては資本金五千万円以下の会社並びに従業員三百人以下の会社及び個人というごとく明定するとともに、小売り商業の近代化をはかるために、商店街振興組合等が設置する諸施設等に対しても、中小企業高度化資金を貸し付け得る等の改正をしようとするものであります。   —————————————  第二の中小企業金融公庫法の一部を改正する法律案は、同公庫がその貸し付け資金を調達するため、資本金の二十倍まで中小企業債券を発行できるようにするとともに、監事の権限を拡大しようとするものであります。なお、この監事の権限については、衆議院において、監事は総裁を通じないで直接主務大臣に意見を提出できるよう修正がなされました。   —————————————  第三の中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案は、近代化資金助成法の場合と同様に、基本法に即応させて中小企業者の定義を本文の中に明定しようとするものであります。  以上が三法案の要旨でありますが、当委員会におきましては、便宜これを一括して質疑を行ない、問題の重要性にかんがみ、参考人として中小企業金融公庫総裁を呼んで意見を聴取するなど、慎重に審査いたしました。  質疑は、中小企業対策全般にわたり、特に、近代化、合理化、高度化の意義、生産性向上と賃金との関係、中小企業債券の資金コストヘの影響、公庫代理貸しにおける農業金融との比較対照並びにそれが両建て預金との関係、零細企業対策、商店街振興対策等につき、活発な論議が展開されましたのでありますが、詳しくは会議録によって御承知願いたいと存じます。  質疑を終わり、三法案を一括して討論に入りましたところ、近藤委員より、「近代化二法の改正案において中小企業の定義をする場合、基本法の線をほとんどそのまま踏襲するがごときは、比較的規模の上位の企業に重点を置き、零細企業を顧みなくなる危険があり、公庫法の改正案で債券発行を巨額にまで許すことは、政府財政投融資を民間資金に肩がわりさせ、資金コストを高める危険があり、三法案いずれにも反対する」との発言がありました。次いで、赤間委員、鈴木委員、田畑委員より、それぞれ三法案に賛成する旨の発言があり、討論を終わって三法案を順次採決いたしましたるところ、これら三法案は、いずれも多数をもって衆議院送付案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上報告を終わります。(拍手
  50. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  三案全部を問題に供します。三案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  51. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 過半数と認めます。よって、三案は可決せられました。    ————————
  52. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 日程第九、石炭鉱害賠償担保等臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。石炭対策特別委員長岸田幸雄君。   〔岸田幸雄君登壇拍手
  53. 岸田幸雄

    ○岸田幸雄君 ただいま議題となりました石炭鉱害賠償担保等臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、石炭対策特別委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本法律案は、昨年七月、三億円全額政府出資の特殊法人として設けられた鉱害賠償基金に対する政府の出資を一億円増額するに際し、今後は追加出資のつどに法律改正を要しないよう、その規定を整備しようとするものであります。  当委員会におきましては、賠償義務者が負担すべき資金の調達の見通し、累積鉱害の復旧計画、上水道施設の移管に伴う市町村負担の軽減策、鉱害復旧と産炭地域振興計画との関連等、鉱害復旧の実態と施策について広範な質疑が行なわれましたが、その詳細は会議録に譲ることといたします。  質疑を終わり、討論に入りましたところ、大矢委員から、日本社会党を代表して、「今回の改正により、資本金増加法案審議なくして行なわれるようになることは、国会の審議権軽視で、将来の影響もあり、反対する」との反対意見が述べられました。  討論を終わり、採決しましたところ、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上報告を終わります。(拍手
  54. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  55. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。  次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十四分散会