○柳岡秋夫君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま
議題となりました
国民年金法及び
児童扶養手当法の一部を
改正する
法律案につきまして、
総理並びに関係大臣に質問をいたすものであります。
今回の
改正案を通読いたしまして、まず、だれもが感じますことは、その内容があまりにも貧弱なことであります。
総理は、常に福祉国家の建設を唱え、特に今国会の施政演説の中では、「豊かで平和な生活を営み得る社会をつくるために、疾病、
失業、老齢を原因とする貧困と不幸に対し、社会保障を確立していくことは、単に一
内閣の目標たるにとどまらず、私は信念のもとに精進する」と強調されておりますが、しかし、その内容のいかに空虚なものであるかということは、この案
一つを見ても明らかとなるわけであります。したがいまして、私は、本案の
改正点について質問を進める前に、
社会保障制度全般に関しての
政府の姿勢についてただしたいと思うのであります。
まず、
池田総理にお伺いいたします。社会保障の目的が、日本国憲法第二十五条に
規定する健康にして文化的な最低限度の生活をすべての
国民に保障することにあることは、言うまでもありません。そうして、このことは、当然の社会的権利として認識をされ、先進諸国の
国民の生活からは、
社会保障制度の存在を無視して
考えられないほど密着しているのであります。
政府は、毎年毎年重要
施策の
一つとして社会保障の
拡充を掲げておりますが、それは著しく計画性に欠け、場当たり的であります。皆年金、皆保険といいましても、単に全
国民をいずれかの制度に加入させるということにとどまっておりまして、その制度を通じまして全
国民に公平にその生活を十分に保障するという本来の使命を忘れた、名ばかりの
社会保障制度と言っても過言ではないのであります。
昭和三十七年八月、
社会保障制度審議会は、
社会保障制度の総合調整に関する基本方策についての答申、並びに
社会保障制度の推進に関する勧告を
総理にいたしております。この答申は、約三カ年、延べ数百時間の熱心な調査討議の結果できたものでございますが、この答申、勧告を、
総理はどう受けとめ、そうしていかなる見解をお持ちでございましょうか。社会保障費の国家
予算の中に占める
割合を見ましても、三十八年度
失業対策費まで入れて一三%、三十九年度一三・四%であります。また、
国民所得との
割合は五・三%で、それがいかに後進的であり、低位な
水準にあるかということは、
政府みずからが、厚生
白書その他で認めておるところであります。口先だけでない具体的な社会保障に対する御
所見をお伺いいたします。
次に、
総理並びに
大蔵大臣に御質問いたします。
大蔵省が、毎年の
予算案をつくられる際に、最初の要求総額を前年度各省の
予算の五割増しにとどめるようにしたいとの方針をきめまして、閣議に提議し、決定をいたしておりますけれども、このような方法は非常な誤りがあると思うのであります。最初の要求額の前年度比の率を一律に定めるということは、実際の査定が多少の凹凸があろうとも、各省の伸び率が比較的平均化するもとをつくるのであります。制度の名前だけがほぼ完成し、その貧弱な内容を急速に高めなければならない
社会保障制度の
改善が、遅々として進まない原因の
一つが、ここにあると存じます。このようなワクがなければ、本年度の
国民年金法の
改正案も、もう少しは、ましなものになったのではないかと思うのであります。比較的完成したことを管理する省と、現在大いに
発展をしなければならない制度を管理する省とを、一律に
考えるような弊を改めまして、形式的な死んだ政治ではなく、生きた政治を進める方向をとる必要があると思うのでございますが、
総理の御
所見をお伺いいたします。
また、
大蔵大臣からは、社会保障費は他のものよりは伸び率がよい、そういうお答えではなくて、そういう一律の線をつくらなくてもやっていける自信、また、来年度からはそのようなことをしないというお答えをいただきたいと思うのでございますが、お伺いをいたします。
次に、
国民年金制度についてお伺いいたします。
その第一は、その基本方針と年次計画についてであります。
国民年金法が
昭和三十四年に制定をされましてから、わずか四年有余の間に、三次にわたって大幅な
改正が行なわれ、さらに他の
法律の中において、
国民年金法の一部を
改正し、今回の
改正案を加えますと、実に十三次の
改正に及ぶわけであります。これは
わが国の法制上におきましても驚くべき記録でございます。朝令暮改のよき事例であります。そうしてこのことは、
国民年金法を立案するにあたって、
政府にその十分なる準備と確固たる方針のなかったことを物語るものであります。当時の年金局長は、「今回の
国民年金制度の発足について特に忘れがたいことは、その発足が、政治の発意に基づいていただけでなく、その根幹が、政治によって事実上も定められたという点である」と述べていることからもうかがわれるのであります。糊塗的
改正ではなくして、確固たる方針に基づいた抜本的
改正がいまこそ必要であると思うのでありますが、
総理からお答えをお願いいたします。
その第二に、国会の議決に対する
措置についてであります。御承知のとおり、国会は、
国民年金法の
改正のつど、衆参両院におきまして与野党一致の附帯決議を十数項目にわたって
承認をされております。しかも
政府は、その決議に対しまして、十分尊重することを公約いたしておるのであります。しかるに
政府は、今次
改正にあたってもほとんどこれを無視し、わずかの、しかも申しわけ的
改正にとどまっていることは、きわめて遺憾であります。国の最高議決機関としての国会の意思を軽視し、
国民を欺瞞する
政府の態度は、絶対に許されないと思うのでありますが、
総理の御
所見をお伺いいたします。また、厚生大臣からは、これらの決議事項が、今次
改正案をつくるにあたりましてどのように論議をされ、どうして取り入れられなかったのか、明確にお答え願います。
その第三は、年金額についてであります。現行拠出制では、六十五歳より最高月額三千五百円となっております。本年度
予算で、生活保護費は一級地四人世帯で二万六千百四十七円、一人当たり平均にしてみますと、四千円をこすことになります。計算方式の相違はございますけれども、少なくとも現行の拠出制年金額が、まだまだ不十分だといわれる生活保護の基準以下であることは明らかであります。四十年間保険料を払って、はじめて支給を受ける年金がこのような
程度では、
国民年金制度と称するのはあまりにもおこがましいと言わなくてはなりません。
次に、福祉年金額についてでありますが、発足当時の老齢福祉年金額は、月額千円でありました。昨年十月から月額千百円に改訂されましたが、発足当時の物価を一〇〇としますと、現在の物価指数は一二五になります。したがいまして、ただいまの老齢福祉年金の値打ちは、発足当時の約八百八十円にしか当たりません。
池田内閣の手によって、裕福でない老人に対する社会保障は、岸
内閣当時より悪くなっているわけであります。
池田総理は、このことを
国民に対して申しわけがないと
考えておられるでしょうか。社会保障
拡充の看板は偽りであったと率直に反省をされまして、直ちに福祉年金の
改善を実行する意思がおありかどうか、承りたいと存じます。
次に、スライドに関してであります。現行第四条の
規定は、実にあいまいであります。年金額は、制度発足当時の未完成の状態を
改善をいたしまして十分な金額にして、制度を完成することが大切でありますが、完成後は、
生活水準と物価の変動に比例して改訂していかなければなりません。ところが、この条文には
生活水準ということばはございますが、物価に比例して改訂をするという明確な文言がなく、しかも、「著しい変動」という文言で金額改訂の義務化をはばんでおります。現在年金制度について
国民がその必要性を痛感しながら、なかなか信頼を置かないのは、戦後の激しいインフレではなはだしい被害をこうむっているからであります。したがって、この際、年金制度が真に
国民の信頼を得るために、法文上明確に
規定し、
政府の怠慢が許されないようにすべきであると
考えますけれども、
総理並びに厚生大臣の御見解をお伺いいたします。
次に、社会保険主義の弊害についてであります。現在の拠出制年金制度は、社会保険主義で組み立てられ、保険料を払った
割合に応じて給付が受けられるようになっております。保険料を支払いがたい人が老齢になった場合、一番年金を必要とするのでありますが、その人の年金が他の人に比べ激減するのは、ほんとうの社会保障ではないのであります。わが党の激しい追及の結果、免除者に対する国庫負担が三分の一だけ実現し、この弊害は幾ぶんはなくなったのでありますが、まだまだ道遠しであります。免除制度を拡大し、全期間免除の人も、全期間納入者と同様の年金が支給されるようにしなければ、真の社会保障とは言えないのであります。さらに拠出制年金制度に障害年金の制度があり、最高月額四千円まで支給されることとなっておりますが、実際に支給を受ける人は、きわめて少ないのであります。と申しますのは、加入年齢二十歳前に、たとえば両眼失明をした人は、どうしても金額の多い拠出制の障害年金が支給されないことになっております。理由は、保険事故でないということであります。保険料を払い込む前の障害については責任は負えないという、民間の保険会社の
考え方があるからであります。両眼失明というような重度の障害者に対する
所得保障が、社会保険システムという、人為的につくった誤った
考え方によって無視されていいものかどうか。憲法第二十五条には社会保障を
規定し、社会保障ということばはないのであります。
総理の御見解をお伺いいたします。
次に、
改正案に関連して、厚生大臣に御質問いたします。
まず第一に、わが党の年来の主張を理解され、障害年金、障害福祉年金及び
児童扶養、手当の支給対象となる範囲を、結核、精神病等の内科的疾患に基づく障害者にまで拡大したことは前進でありますが、しかし、心臓疾患とか、あるいは精神薄弱者をその範囲に入れなかったのはなぜか、その理由をお伺いいたします。
第二は、
所得制限の緩和の際、配偶者
所得制限というような、不合理、無
意味なものをなぜ撤廃しなかったのか、明確にお答え願いたい。
第三は、受給制限の緩和について、長年の懸案でございます老齢福祉年金の年齢制限の緩和をなぜ怠っているのか。政治の貧困から苦労多い人生を送り、他の比較的しあわせな人よりも早く老衰した人が、六十九歳で、年金受給を前にしてなくなった場合を
思い起こし、開始年齢の低下を促進すべきであると思うが、お伺いをいたします。
第四は、
児童の扶養についてであります。子供は次の世界をになうものであり、子供は社会が育成するという思想は、いまや世界の常識でございます。すでに六十カ国において
児童手当金制度が
実施され、
児童の健全な育成とともに、多子による貧困化を
防止しているのでありますが、
政府は、再三にわたる国会の決議、
社会保障制度審議会の勧告を無視いたしまして、いまだに発足に至っておりません。したがいまして、ILO百二号条約の批准もできずにいるということは、明らかに
政府の社会保障に対する怠慢であります。厚生省が
実施した
児童養育費調査によれば、月収二万円以下の勤労家庭における養育費は、子供一人平均月額五千五百八十七円かかるとされております。しかも、子供が多ければ多いほど、一人当たりの養育費は多くなっておりまして、
国民生活に大きな負担となっているのであります。
政府は、四十二年度から
児童手当制度の
実施を
考えているようでありますが、このような
国民生活の
実態、さらには
中高年齢層の雇用促進など、
労働力の流動化をはかるためにも、即時
実施に踏み切るべきであります。また、その手当額は、真にその趣旨を実現するものであるとともに、すでに
実施している国の八六%が、同一額かまたは逓増方式をとっている例からしましても、
実態に即した方式をとるべきであります。
総理並びに厚生大臣の御見解をお伺いいたします。
最後に、積立金の運用について、
大蔵大臣並びに厚生大臣にお伺いいたします。
国民年金の積立金は、現在資金運用部に預託されまして、
財政投融資の原資とされておりますが、この積立金は被保険者のものでございまして、当然、被保険者の意見をいれまして、その生活内容の
充実向上に寄与する住宅、病院、厚生福祉施設等に運用さるべきであります。したがいまして、
国民年金審議会の答申のごとく、特別勘定として、他の資金と厳密に区別するとともに、被保険者代表の参加する積立金運用審議会を
設置して、管理運用すべきであると思うのでございますが、お伺いをいたします。また、現在の二五%という融資ワクを
引き上げる
考えはないか、あわせてお伺いいたします。
政府、自民党は、しばしばわが党のりっぱな政策をまねをして、同じ名前の看板を掲げておりますが、わが党の政策を参考にされることはけっこうでありますけれども、その場合、その内容まで参考にされることが必要だと思うのであります。
国民年金制度においても、わが党案の内容を、急速に、十分に
実施されるならば、われわれもその努力に対し称賛することができるでありましょう。
国民主権の憲法の
規定に基づきまして、抜本的な制度の
改善をされますことを強く要求いたしまして、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君
登壇、
拍手〕