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1964-03-18 第46回国会 参議院 本会議 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月十八日(水曜日)   午前十時四十四分開議     —————————————  議事日程 第十号  昭和三十九年三月十八日   午前十時三十分開議  第一 鉄道建設審議会委員任命  に関する件  第二 国務大臣報告に関する件  (中小企業基本法に基づく昭和  三十八年度年次報告及び昭和三  十九年度中小企業施策につい  て)  第三 国民年金法及び児童扶養手  当法の一部を改正する法律案  (趣旨説明)  第四 北太平洋のおつとせいの保  存に関する暫定条約改正する  議定書締結について承認を求  めるの件(衆議院送付)  第五 臨時行政調査会設置法の一  部を改正する法律案内閣提出)  第六 旅行あっ旋業法の一部を改  正する法律案内閣提出)  第七 国際観光ホテル整備法の一  部を改正する法律案内閣提出)  第八 簡易生命保険法の一部を改   正する法律案内閣提出)  第九 外国為替及び外国貿易管理   法及び外資に関する法律の一部   を改正する法律案内閣提出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  一、裁判官訴追委員辞任の件  一、裁判官訴追委員選挙  一、日程第一 鉄道建設審議会委員   の任命に関する件  一、社会保険審査会委員任命に関   する件  一、日程第二 国務大臣報告に関   する件(中小企業基本法に基づく   昭和三十八年度年次報告及び昭和   三十九年度中小企業施策につい   て)  一、日程第三 国民年金法及び児童   扶養手当法の一部を改正する法律   案(趣旨説明)  一、日程第四 北太平洋のおつとせ   いの保存に関する暫定条約改正   する議定書締結について承認を   求めるの件  一、日程第五 臨時行政調査会設置   法の一部を改正する法律案  一、日程第六 旅行あっ旋業法の一   部を改正する法律案  一、日程第七 国際観光ホテル整備   法の一部を改正する法律案  一、日程第八 簡易生命保険法の一   部を改正する法律案  一、日程第九 外国為替及び外国貿   易管理法及び外資に関する法律の   一部を改正する法律案     —————————————
  2. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。  この際、おはかりいたします。下村定君から、裁判官訴追委員を辞任いたしたいとの申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって、許可することに決しました。      ——————————
  5. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) つきましては、この際、日程に追加して、  裁判官訴追委員選挙を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
  7. 村上春藏

    村上春藏君 裁判官訴追委員選挙は、その手続を省略し、議長において、指名することの動議を提出いたします。
  8. 永岡光治

    永岡光治君 私は、ただいまの村上君の動議賛成をいたします。
  9. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 村上君の動議に御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって、議長は、裁判官訴追委員谷口慶吉君を指名いたします。      ——————————
  11. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第一、鉄道建設審議会委員任命に関する件を議題といたします。  内閣から、鉄道敷設法第六条第二項の規定により、鈴木清秀君、根津嘉一郎君、稲山嘉寛君、佐々部晩穂君、西村健次郎君、柳満珠雄君、今野源八郎君、加藤閲男君鉄道建設審議会委員任命することについて、本院の同意を求めてまいりました。  本件同意することに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  12. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 総員起立と認めます。よって、本件全会一致をもって同意することに決しました。      ——————————
  13. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) この際、日程に追加して、  社会保険審査会委員任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。  内閣から、社会保険審査官及び社会保険審査会法第二十二条第一項の規定により、小田原登志郎君を社会保険審査会委員任命することについて、本院の同意を求めてまいりました。  本件同意することに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  15. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 総員起立と認めます。よって、本件全会一致をもって同意することに決しました。      ——————————
  16. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第二、国務大臣報告に関する件(中小企業基本法に基づく昭和三十八年度年次報告及び昭和三十九年度中小企業施策について)、  通商産業大臣から発言を求められております。発言を許します。福田通商産業大臣。   〔国務大臣福田一登壇拍手
  17. 福田一

    国務大臣福田一君) 中小企業基本法に基づきまして、先般政府が国会に提出いたしました「昭和三十八年度中小企業に関する年次報告」及び「昭和三十九年度において講じようとする中小企業施策」について、その概要を御説明いたします。  まず、中小企業動向問題点について申し述べます。  わが国中小企業は、企業数三百二十万で全企業の九九%に当たり、また就業者数は千七百二十万で、農林水産業を除く民間産業就業者二千六百二十万の六六%に当たり、国民経済の中できわめて大きな地位を占めておるのであります。  昭和三十年以降わが国経済は著しい発展を遂げたのでありますが、その間に、技術の革新的な発展貿易為替自由化中心とする国際経済環境変化所得水準上昇による消費内容変化などの理由によりまして、全般的な需給構造変化があらわれ、また労働力需給面におきましても若年層中心に著しい不足傾向が出てきたのであります。中小企業は、このような経済条件変化により大きな影響を受けましたが、これに対応する努力を重ねまして、全体としては相応の発展を示し、その従業者所得かなり向上を見たのであります。  しかし、このような経済条件変化は、これまで豊富低廉な労働力に依存して低い生産性を補いながら、狭い限られた市場事業活動を行なってきた中小企業の歴史的伝統的な存立の基盤を大きくゆるがすものでありますだけに、条件変化に対する中小企業適応度合いは、大企業に比べ、はるかに立ちおくれているのであります。そのため、現在までの段階におきましては、中小企業と大企業との間の生産性企業所得賃金などにおける格差は、まだかなり大きく開いておりますとともに、中小企業内部におきましても、業種、業態に応じ、成長する企業と停滞する企業とが見られるのであります。  まず、中小企業と大企業との格差について見ますと、付加価値生産性格差は、三十年以降三十六年まで拡大傾向が続いておりましたが、三十七年には、かなり縮小を見せておるのであります。  三十七年におきましては、全産業における法人中小企業付加価値生産性は、大企業の四六%程度であり、従業者一人当たりの企業所得及び企業内部資本蓄積額は、大企業に比べ、さらに低い水準にあります。  中小企業と大企業との間の従業者賃金格差は、三十四、五年ごろから縮小傾向を見せておりますが、三十七年において全産業における法人中小企業賃金水準は、大企業の五七%程度で、まだかなり低い水準にあります。また、新規学卒者を含め、若年層におきましては、賃金格差はほとんど解消いたしましたが、中高年齢層においては、格差縮小する傾向はまだあまり見られません。  次に、中小企業内部動同について見ますと、産業別には製造業中心として第二次産業部門に属する中小企業成長が高く、その中でも、重工業部門成長が軽工業部門を上回っておるのであります。  また、一般的に企業模規拡大傾向が見られますが、特に中規模層以上の中小企業は、零細規模層に比べ、規模拡大が進んでおるのであります。  このように、成長性の高い中小企業におきましては比較的に近代化が進んでおるのでありますが、商業下請企業産地企業など、小規模ないし零細企業の多い部門では、近代化のおくれと経営不安定性が見られるのであります。さらに、若年層技能者層労働力不足は、中小企業にきわめて大きな影響を与えており、中小企業においては生産性向上がおくれているため、人件費資本費上昇生産性向上によって吸収し切れない情勢が出てきております。  以上のように、中小企業において、大企業との格差がまだかなり大きいことや、経済条件変化に対応するための近代化がおくれていることは、資金調達力が弱く、自己資本蓄積が低いことが大きな原因になっているのでありますが、同時に、この中小企業近代化のおくれが、産業国際競争力強化をおくらせたり、消費者物価上昇一つの要因となるなど、国民経済発展にも影響を及ぼす情勢になってきておるのであります。  最近における中小企業動向問題点は、ただいま御説明したとおりでありますが、このような情勢に対応いたしまして、中小企業近代化を促進することは、わが国経済の均衡のとれた発展をはかる上で、きわめて重要な課題であります。  政府といたしましては、中小企業基本法の定めるところに従い、同法の定める諸施策を着実に具体化することを基本的な態度として、三十八年度において所要の施策を講じてまいりましたが、三十九年度におきましても、さらにこれらの施策拡充強化する所存であります。  三十九年度における中小企業施策重点といたしましては、  まず第一に、中小企業業種別実態に即応した近代化を推進してまいることであります。  すなわち、近代化促進法に基づく近代化計画を早急に策定し、指定業種近代化を強力に推進いたしますとともに、中小企業設備近代化工場店舗等集団化事業共同化等中小企業構造高度化を一そう促進することといたしております。特に、立ちおくれの著しい流通機構近代化をはかるため、卸し商業団地の造成、共同施設設置等流通経路合理化をはかりますとともに、寄り合い百貨店共同スーパー等小売商業店舗の協業化を強力に推進し、末端配給機構である小売業経営近代化を促進するほか、商店街を町ぐるみ改造し、近代的商店街に脱皮させるため、新たに商店街近代化資金を設けることといたしております。  第二は、中小企業技術向上経営合理化を推進することであります。このため、診断指導事業管理者技術者研修事業を引き続き実施いたしますとともに、開放試験室設置巡回技術指導事業実施等技術指導事業拡充日本中小企業指導センター事業内容強化拡充をはかることといたしております。  第三に、中小企業の需要の増進と取引条件向上をはかるため、官公需受注機会の増大、中小企業者事業活動機会の適正な確保下請取引における取引条件向上等施策につきまして検討を進めるとともに、あわせて必要な措置を講ずることといたしております。  第四に、中小企業における従業員福祉向上をはかるため、労働条件改善労働環境整備を促進し、あわせて技能者教育等充実をはかるなど、中小企業における労働力確保をはかることといたしております。  第五に、中小企業のうち大きな比重を占める小規模企業については、一般的な近代化施策に加え、特にその経営改善発展をはかるため、経営改善普及事業強化いたしますと同時に、小規模企業従事者生活水準向上に資するよう、金融上、税制上特別な配慮を加えることといたしております。  第六に、以上の諸施策を推進してまいるためには、中小企業金融の一そうの適正円滑化租税負担適正化をはかることが必要であります。すなわち、政府関係中小企業金融機関に対する財政投融資を増額いたしますとともに、いわゆる歩積み、両建ての解消を強力に推進し、一方、中小企業者の信用力不足を補うため、中小企業信用保険保険限度引き上げ保険料率の引き下げ、中小企業関係手形割引円滑化をはかるための制度改善等信用補完事業充実することとし、あわせて、民間金融機関に対して中小企業金融適正円滑化をはかるよう指導強化することといたしております。  また、税制面におきましても、中小企業企業資本充実設備近代化及び国際競争力強化をはかるため、同族会社留保金課税軽減中小企業海外市場開拓準備金創設等措置を講じますとともに、家族専従者控除事業主控除引き上げ等小規模事業者税負担軽減をはかり、中小企業向けに大幅な減税を行なうことといたしております。  以上、年次報告及び三十九年度中小企業施策について、その概要を御説明した次第であります。(拍手
  18. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。近藤信一君。   〔近藤信一登壇拍手
  19. 近藤信一

    近藤信一君 私は、日本社会党を代表して、ただいま御報告になりました三十八年度年次報告、いわゆる中小企業白書、並びに三十九年度施策に関し、若干の質問をいたしたいと思うものであります。  中小企業基本法により、政府は毎年この報告を行なわねばなりませんが、それにより、政府中小企業施策の全貌が国民の前に明らかにされ、批判の機会を与えられることは、中小企業対策の進展に寄与するものとして私どもの大きく期待していたところであります。しかしながら、せっかく努力された報告にもかかわらず、期待はずれに終わった点もまた決して少なくないのであります。  その一つは、中小企業のあるべき姿について政府はいかに考えているかが、少しも明らかにされていないということであります。所得倍増計画では、中小企業わが国産業に占める地位はほとんど変わらないだろうと想定していますが、この報告で見ると、その地位は若干ながら年々縮小してきている。中小企業のあるものは大企業にまで成長し、あるものは不幸にして没落し、そして一方に新しい中小企業が芽ばえてくるでしょうが、そういう変転の過程を通じて、一体、中小企業の占める地位はどうなるであろうか、その見通しは考えていない。それから、そういう中小企業政府考えている自由経済の中でどういう形で存在すれば理想的な姿であるのか。報告書を見ると、どの中小企業でも成長し、大きくなればよいというようにも読みとられるし、また、どの規模のものでも同じように機械化合理化組織化高度化近代化等をすればよい、こういうふうにも読める。千態万様の中小企業に対して、報告書は一律に見ているように見えるのであるが、これら中小企業は、総理の言う高度福祉国家の中でどんな役割りを演ずればよいのか。大企業中心であって、中小企業は補完的な役割りにすぎないのか。大企業と並んで自由経済をささえていく重要な分子と見るのか。こういう位置づけについて、総理はおそらく十分考えておられるのであろうから、白書を補足する意味で、この際、総理中小企業にいだくビジョンを明らかにされたいのであります。  次に、このような位置づけがはっきりしないために、いままでの施策も、またこれからの施策も、その場その場の、びほう的対策の羅列に終わった感があるのであります。基本法は、対策がばらばらにならないように、総合的に施策することが目的であったはずであります。総合的とは、基本線中心に体系的に統合されることだと思います。幸いに池田総理は、先般の総選挙に、革命的とか革新的とか、中小企業対策を唱えていました。これはいままでの施策を継続し、やや大きくし、強くするというだけでなく、中小企業対策に新味を加えるのではないかと期待していたのであります。ところが、報告書を拝見しますると、来年度施策にも依然として新しいものはない。ある程度予算はほかの部門と比較して増加した、財政投融資も少し多くなった。公庫債を発行するとか、手形割引保証信用保険の基金を出資するということもあります。しかし、中小企業のための債券は商工中金ですでに実施しており、手形割引保証もいままでやっていたことである。ただ、それを若干大きくするというにすぎないのであります。もっとも、量を積み重ねて大きくしていけば、それが質の変化を起こすということは、私どもよく知っているところであります。しかし、今回の予算の増加その他が革命的とか革新的と称するほど大きなものとは思えない。池田総理ともあろう人が、革新的な施策と言うからには、中小企業事業分野確保してやるとか、中小企業省設置に踏み切るということであると思いますが、総理の唱える革新的な対策とはいかなることか、承りたいのであります。  次に、通産大臣にお尋ねしたいことは、白書では、三十七年に大企業中小企業格差が是正されているように書いてありますが、はたして格差は是正されているのでありましょうかということであります。なるほど、中小企業を平均的に見たときには、大企業との格差が是正されたと見えるかもしれない。しかし、中小企業というものは各種各様のものがあって、それがいま大きな階層分化の試練を受けています。ある部分では確かに格差が是正されて大企業に近づいているが、他の部分では逆に格差が拡大しているところも多い。平均で見ることも、もちろん必要ではあるが、もっと、きめこまかく観察する必要がありはしないかと思うのであります。  賃金格差は最近においてだいぶ縮小したというが、これとても白書で言っているように、中小企業へ若い者が来なくなって、比較的賃金の高い中高年齢者割合が多くなったにすぎない。その中高年齢者といえども、大企業に比較すれば格段に低いことは白書にも述べているとおりで、分析してみれば、結局若干の中小企業において新規学卒者賃金改善されたというにとどまり、格差は依然として大きいのであります。この格差是正は、三十九年度の施策程度ではとうていおぼつかないと思いますが、労働大臣通産大臣はいかにお考えであるか。  また、そういう状態で、しかも、福利施設において格段に劣る中小企業に若い労働者を吸引することができるかどうか。職業紹介所管大臣として大橋労働大臣の御所見を承りたいと存じます。  中小企業基本法は、一時、弱小企業切り捨ての法案ではないかと心配されたことがあります。それだけに、格差の拡大していくような企業をとらえて、その実態をよく把握し、これを能率化するようにしなければならないのであって、そういう業種企業にあたたかい目を注ぐことこそ政治の要諦だと思うからであります。たとえば、白書には企業倒産のことはあまり書いていない。いわんや、なぜ倒産したかというようなことまでは、調査そのものがむずかしいからでもあるが、全く調べていない。また、倒産企業に対する施策など全然考慮されていない。これは、自書が用意されたそのときには、現在目の前に見るように、こんなひんぴんとして倒産が起ころうとは思いも及ばなかったからだとは思いますが、昨日はまた公定歩合を一挙に二厘も引き上げました。全く池田経済政策破産と言うべきですが、池田内閣破産はかまわないとしても、今年は中小企業破産倒産がいよいよ多くなることは、目に見えてきました。三十九年度の施策には書いてなくとも、大々的にその対策を講じなければならないと思いますが、通産大臣大蔵大臣の御所見をお伺いいたします。  次に、規模別格差がなかなか是正されないのは、中小企業に対する大企業の圧迫が激しいからでありますが、白書はこの点の説明がすこぶる乏しいように思います。下請関係だけは取り上げて下請取引適正化に努力するというが、その適正化意味は、これまたすこぶるあいまいであります。最近には大企業中小企業分野に進出してきているが、その姿には全く触れていません。ただ対策だけでは、中小企業団体法改正によって善処するというけれども、それも微温的に過ぎるきらいがあり、むしろ事業分野中小企業のために確保するまでに対策を進めるべきであると思いますが、通産大臣のお考えはどうか。  中小企業対策というとき、対策重点が、いつしか中企業に向かい、零細企業が無視されるのでありますが、今回の白書も、またその例外ではないのであります。三十九年度予算を見ましても、零細企業対策としては、経営改善普及事業を若干拡充し、小口融資税改正が少し考慮されているにすぎない。従業員四人以下の生業的企業が、中小企業全体の七八%も占めると称しながら、それらヘの配慮はまことにスズメの涙ほどで、政府はまさに零細切り捨て政策をとっているかの感が深いのであります。第三次産業たる小売業サービス業では、新規開業も相当にあって、零細の世界では、いつも過当競争が繰り返されているのであります。しかし白書は、なぜ零細企業がそんなに過当競争をしているかということは掘り下げて見ていない。わが国中高年齢者失業が多く、最低賃金制が完備せず、社会保障制度が発達していないから、潜在的失業者零細企業に入っていかねばならない。こういう点に白書思いをいたすべきだったと思うのであります。これは厚生省や労働省の応援がなかったからでもありましょうが、そういう意味におきましては、零細企業対策も単に経済政策だけに割り切ることは無理であって、日本特有の問題として社会政策的な考慮を加味すべきだと思いますが、通産大臣のお考えはどうでしょうか。  零細企業白書で冷遇されているいま一つの例をあげてみますと、中小企業金融のことは詳細に書いてありますが、高利貸し金融のことは全く書いてありません。中小企業金融対策の重要問題の一つは、零細企業が常に泣かされている高利貸し金融から救うことにあると思うのですが、大蔵大臣の御所見を伺いたい。  中小企業税負担が重過ぎるということは常々言われていることでありますが、大企業などと比較した税負担割合の分析が乏しいように思われます。大蔵省としては、当然公平なる課税をしていると、言われるでしょうが、実際には、中小企業の中には負担力の乏しい者が多いことは事実であります。中小企業資本充実には、税負担軽減が最も近道であります。三十九年度施策所得税基礎控除引き上げその他を並べてはありますが、最近の物価等値上がりから見れば、引き上げられた後でも、なお控除部分購買力は前年より低いかもしれないのであって、税制における中小企業への配慮は、依然として少ないと見るのでありますが、大蔵大臣のお考えについてお尋ねいたします。  中小企業対策重点には、いつも金融があげられています。今回の公定歩合引き上げに際して大蔵大臣は、中小企業に対し万全の措置をとると言うが、万全の措置とはいかなる構想であるか、明らかにしてほしいのであります。また、中小企業が金を借りる場合、歩積み、両建てにより、高利になることは、白書も指摘しているところでありますが、これに対して三十九年度施策では、各金融団体自粛措置の厳格なる実施を推進するというが、これは長年の悪習慣でありまして、大蔵大臣は、はたしてこれをやめさせる用意ありやいなや。公正取引委員長は、先般この問題に関し、特殊指定に踏み切ると言明した由であるが、これはいつ実施するのか、明確なる御答弁をお願いします。  下請代金支払い遅延中小企業の金繰りを著しく悪化させており、この悪習も是正されない問題であります。しかも金融引き締めのしわはここに寄せられて、手形払いは多くなり、手形サイトは長くなっている。三十九年度施策では、これが防止のために金融機関の協力が要望されているが、その方法はどういう形で考えられるか、大蔵大臣の御答弁をわずらわしたいと存じます。  同時に、この防止法を所管しておる公正取引委員会として、防止法ざる法とせず厳格に施行するか、抜本的に改正する意思ありやいなや、お伺いいたします。  このように考えてまいりますと、公正取引委員会中小企業問題に関し関与する場面はすこぶる大きいのでありまして、自由主義経済下における中小企業事業活動の不利を補正する役目は、一にかかって公取の活動いかんということになります。しかるに、ややもすれば政府は独禁法を骨抜きにし、公取の活動を押えようとしている。したがいまして、池田総理中小企業対策を重視するならば、独禁法を強化し、公取の機構を拡充すべきであると思うのでありますが、総理考えはどうか。また、公取委員長の中小企業対策に処する心がまえについてお尋ねいたします。  最後に、中小企業対策には、内閣全体の施策の方向を中小企業の面から見直すという姿勢の転換が必要ではなかろうかと思うのでありますが、総理の御所見についてお伺いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  20. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 近藤議員の御質問は、まことに建設的で、われわれの考えておるところを十分御存じの上、その考え方をもっと推進しろというお考えのもとでの適切な質問だと考えます。ほんとうに私は、国民経済の均衡ある発展をしていきます場合におきましては、たびたび申し上げておりますごとく、農業、中小企業発展重点を置くことであるのであります。社会主義経済、統制経済のもとで、農業をコルホーズにしたりあるいは賃金生活者にするような経済政策は、われわれはとらない。したがいまして、農業と中小企業発展あってこそ、ほんとうにりっぱな東洋的国家ができると私は考えておるのであります。この意味におきまして、今後中小企業近代化、すなわち、中小企業近代化には、設備技術・人が三位一体となって、総合経営がどんどんでき、これを金融によって推し進める、そうして高い生産性と豊かな所得水準、また恵まれた労働環境をつくり上げることが、中小企業対策の根本であると考えます。  したがいまして、御質問にもありましたごとく、私は中小企業に対して革新的な施策を講じたいと国民に公約いたしました。しからば革新的施策とは何ぞや。これはお話にもありましたごとく、予算において、また金融面において、税制面において、いままでやった措置とは、かなり心がまえが違ってきております。すなわち、いままでは一割か一割五分程度の一般会計予算の増加を四割程度に上げておる。また金融面につきましても非常な方法を講じておる。いまお話のごとく、商工中金は債券を発行しておる。これを拡大する。このことにつきましても、商工中金の金利の引き下げとかあるいは——私は今年はできませんでしたが、商工中金の金融をもっと力強くするために、いままでの商工債券が、いわゆる割興、割長——興業債券、長期信用債券と同じ利率であることは、実情に沿いません。四、五年前は、商工中金の債券、割高は、他の大銀行の債券よりも金利を高くして金が集まりいいようにしてあった。二、三年前の税制の問題のとき、これを同じようにしたから、商工中金の債券では、あまり他の大銀行のごとく集まらない。私は、こういうことにつきまして今後も改善していかなければならない。また、中小企業金融公庫に対しまして、資金運用部の金や政府の余裕財源で仕事をするということでは、中小企業のいわゆる対策に、もの足りない。中小企業金融公庫は、すべからく一般市中から、すなわち相互銀行あるいは信用金庫の余裕金を中小企業金融公庫に引き上げていく。いまの大銀行や大投資機関のものは零細なお金を大企業のほうに持っていって、中小企業に持ってくる道が開けてないところに、中小企業金融の足りないところがある。したがいまして、今年から中小企業金融公庫に債券の発行を認めました。政府保証債でなしに、今後は直接に、政府保証債のみに限らず、中小企業金融公庫が債券を発行いたしまして、いわゆる相互銀行、信用金庫あるいは地方銀行の金をどんどん集める方向に行ったということは、中小企業金融に対する革新的措置と言い得るのであります。  また、お話にありました税制につきましても、三十八年度は、いろいろの減税をいたしましたが、中小企業に対する減税は、百五十億とか百六十億にすぎなかった。三十九年度には、一躍四倍の、六百億円以上の中小企業に対する減税をしたということは、革新的減税ではございますまいか。私はこういうことをもって十分とは思いませんが、この心がまえで今後中小企業考える。そうしなければ、日本の産業が大経営者と雇用人というふうになることは私は好まない。やはり自由な姿で、自分の創意工夫で仕事をやっていく農業、中小企業、こういうものを発展さそうというのが私の経済政策であります。したがいまして、いま申し上げましたいろいろな措置を今度拡大していくと同時に、大企業中小企業事業分野につきましても今後十分検討し、そうして内閣全体としての強い考え方を、中小企業、農業に進めていきたいと思うのであります。この意味におきまして、公正取引委員会事業拡充等も、予算でごらんのとおり、事務所の増設、人員の増あるいは事務費の増加を主としておることは、御承知のとおりであるのであります。(拍手)   〔国務大臣福田一登壇拍手
  21. 福田一

    国務大臣福田一君) お答えをいたします。  近藤議員が指摘をされましたように、生産性格差については、業態によっていろいろ違いが生じておることは事実であります。すなわち、機械、鉄鋼、化学等では、中小企業との格差がむしろ開いておる傾向がある。繊維、雑貨等では、格差がだいぶ縮小をいたしておりますが、おしなべて見ますというと、是正の方向に向かっておることは事実でございます。しかし、われわれとしては、今後これの是正にもっと努力をいたすべきであると考えております。  次に、賃金格差の問題でありますが、これまた近藤議員の御指摘があり、また白書にも申し述べておきましたが、若い者のほうは若干大体平均化してきたけれども、高年齢層におきましては、これは、まだそれほど格差が縮まっておりません。そこでわれわれは、労働省あるいは厚生省等とも連絡をとりながら、賃金とか福祉施設の問題とか、社会保険等の問題を、一そう推進してまいらねばならないと考えておるところであります。  なおまた、企業倒産の問題について御指摘がございましたが、今回公定歩合引き上げ等のことも行なわれまして、これが中小企業に与える影響は、われわれは非常に心配をいたしておりますので、大蔵省とも連絡をとりまして、今後とも、中小企業金融については、買いオペ等を弾力的に実施してまいりますと同時に、歩積み、両建てについては、今後一そう強力な措置を講じまして、形式的な金利が上がっても、実質金利のほうで、これが中小企業影響を与えないように努力をいたしてまいりたいと思っております。  次に、中小企業分野に大企業が進出してくることについての御質問でございますが、これにつきましては、中小企業政策審議会においていろいろ検討を願いまして、そしてただいま答申が出ておりますので、そこで、中小企業団体法改正して、この適当な措置をとってまいりたいと考えております。  次に、零細企業に対する対策でございますが、社会政策的見地でこれを実施せよという御希望でございます。私たちとしては、金融税制その他、白書でもいろいろ書いておりますが、そういうような施策を強力に充実をいたしてまいりまして、そうしてこの零細企業に対する手をもっと強く税制あるいは予算面で推進をしていく所存でございまして、その上で、社会政策的な措置が必要であるかどうか。御存じのように、中小企業基本法は昨年制定されまして、私たちは、いまこれに積極的に取り組んだ一年目でございます。したがって、今後大いにこの努力を続けてまいりまして、実効をあげてまいりたいと思うのでございます。  なお、中小企業のために役所を設ける、いわゆる中小企業省を設けてはどうかということでございますが、これは、この業態から考えまして、いろいろの、いわゆる鉄鋼などを見ましても下請の関係、あるいは自動車を見てもそういう関係、こういうことは、通商産業省がその業種全体についての施策をやっておるのでございますす。そこで、その半分を取り出しまして、そうして中小企業省というようなものをつくった場合に、その連絡調整がはたしてうまくいくかどうかということを考えてみますというと、むしろ現在の制度のほうが適当であると考えておりますので、私たちとしては、中小企業省を設ける考え方は持っておりません。(拍手)   〔国務大臣大橋武夫君登壇拍手
  22. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 中学、高等学校卒業の新規若年労働者の充足は、企業規模の大小を問わず困難となっておりますが、中でも、中小企業において一段と困難を加えておる事実は否定できません。そこで、労働省といたしましては、中小企業労働条件等の改善に努力する要があると考えておるのでありますが、すでに初級賃金格差はおおむね解消されておりますが、その他の点はいまだ不十分でございます。今後、大いに努力の必要がございます。すなわち、賃金格差の全般的な是正、労働基準法に定める労働条件確保、特に労働時間の短縮、最低賃金制拡充、また、中小企業退職金共済制度の改正失業保険の五人未満の事業所への適用の準備等、いろいろな施策を講じておるところでございますが、労務管理がおくれておりまする企業につきましては、労務管理近代化のための指導援助を行ない、また、中小企業における労働福祉の充実につきましても、雇用促進融資による労働者用住宅その他福祉施設の建設など、各般の施策を講じている次第でございます。労働省といたしましては、今後とも、以上の諸対策によりまして、受け入れ態勢の整備をはかりつつ、職業紹介面におきましては、集団求人方式の採用につとめ、労務充足の促進をはかってまいりたいと存じております。(拍手)   〔国務大臣田中角榮君登壇拍手
  23. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 第一は、中小企業の不渡り手形や倒産の発生状況は高水準にある、これらの問題に対してはどう対処するかということでございます。確かに御指摘のとおり、十二月、一月、二月と、相当の倒産等もございますけれども、これらの問題に対しては、大蔵省といたしましても十分その内容を調査いたしまして、金融の状態において倒産等が起こらないように各般の措置をとっておるわけでございます。なお、中小企業につきましては、政府関係機関の資金を、御承知のとおり三十九年に二一%の大幅増加をはかりますとともに、四月には中小企業向け買いオペレーションの二百億、四月中に売り戻しの予定でございましたもののうち百五十億は暫時延期をするという措置をとっておるわけでございます。  第二点は、零細企業政府関係機関から冷遇されておる、市中の高利金融等にたよっておるということでございますが、これら零細企業につきましては、政府は、つとに意を用いておるところでございまして、国民金融公庫に対する財政投融資を大幅に増大をいたすことといたしましたほかに、中小企業信用保険公庫を通ずる小口保証保険の付保限度額を引き上げる等の措置を講じました。なお、民間の中小企業専門金融機関の協力にも待ちまして、今後とも零細企業に対しては万全の対策をとってまいりたいと考えます。  第三点は、中小企業資本充実をはかるために、税の軽減等を行なってはどうかということでございます。お説のとおり、政府重点的に考慮をいたしてきておるところでございまして、法人税における軽減税率、中小企業者の機械設備等の特別償却、所得税における専従者控除等の各制度を通じて、税負担軽減をはかっておることは御承知のとおりでございます。三十九年度におきましても、所得税の専従者控除の引き上げ、法人税の軽減税率の適用限度額の引き上げ、同族会社の留保金課税軽減中小企業海外市場開拓準備金制度の創設等、各般の措置を講じ、中小企業税負担軽減に、鋭意、意を用いておるところでございます。  第四点は、歩積み、両建ての解消につきましては、前々申し上げておりますとおり、業界の自粛を待ちながら、大蔵省としましても随時特別検査等も行ないながら、この過当な歩積み、両建ての排除に努力をいたしておるわけでございます。なお、特殊指定をいつやるかということでございますが、この問題に対しては公取側で考えておるようでございます。特殊指定のいかんにかかわらず、大蔵省といたしましては、過当な歩積み、両建てを排除して、中小企業等の実質金利負担の軽減をはかるために適切な効果をあげたい所存でございます。  なお、昨日引き上げられました公定歩合につきまして、中小企業にどのように配慮をしておるかということでございますが、きのう、直後に日銀総裁を大蔵省に招致をいたしまして、金融調整段階において、中小企業にしわが寄らないように格別の配慮を求めたわけであります。政府も、日銀も、また市中金融機関も一体となって、いやしくも金融調整の段階において、それのみの、そのことを理由にして中小企業倒産等を招かないように、格段の配慮を行なうつもりでございます。  第五点は、下請代金支払遅延等防止法の問題でございます。通産大臣からもお話がございましたが、この下請企業に対する支払いは、申すまでもなく、親企業自身の決定するものでございまして、金融行政のみでは直接的にいかんともなしがたい面もあるわけでありますが、大蔵省としましては、各金融機関に対しまして、先般通達を発しまして、親企業に融資をいたしますときに、その資金が中小企業に必ず流れるようにということを、注意をいたしておるわけでございますし、なお、銀行検査等もやって、かかる措置が実行に移されることを十分配意をいたしておるわけでございます。なお、下請代金支払遅延等防止法の運用によって実効をあげてまいりたい。このように考えております。(拍手)   〔政府委員渡邊喜久造君登壇拍手
  24. 渡邊喜久造

    政府委員(渡邊喜久造君) お答えいたします。  第一の歩積み、両建ての問題でございますが、不当な歩積み、両建てにつきましては、業界から、歩積み、両建ての自粛基準が出されまして、この基準による自粛の結果について、過日報告がありましたが、その報告については公正取引委員会は満足しておりません。したがいまして、要すれば特殊指定を行なう考えで、現在業界の基準の具体的内容について説明を求めるとともに、歩積み、両建ての実情について独自の調査を進めております。現状から判断いたしまして、いつ特殊指定を行なうかどうかということは申し上げかねますが、そう遠くない将来において、特殊指定に踏み切らざるを得ないのではないかという考えのもとに、現存準備を進めております。  第二に、下請け代金支払い遅延防止対策でございますが、公正取引委員会は、下請代金支払遅延防止法に基づきまして、親事業者の下請け代金の支払い状況を絶えず調査し、不良な親事業者に対して支払い改善を勧告するなど、必要な措置をとっておりますが、遺憾ながら現在まで見るべき改善の実があがっていないのが実情であります。したがいまして、今後は、中小企業庁ともさらに話し合いまして、両者の監督を一そう緊密にし、今後親企業者の監督を強化するとともに、これと並行して、親事業者側の下請け代金支払い遅延の原因についても調査を進める等、改善の実をあげるために、多面的な措置を講じたいと考えております。  なお、法の改正につきましても、別途検討を重ねてはおりますが、この法律がその効果をあげ得ないのは、従来監督の手が十分行き渡らなかったという点に大きな原因があると思われますので、まずこの面からの推進を考えております。  最後に、公取の機構の問題でありますが、公取の機構につきましては、明年度において新しく取引部及び札幌地方事務所の新設等、十五名の定員増が予定されております。委員会としましては、これらの機構、人員の拡充をもってもちろん十分とは考えておりませんが、しかし、委員会は、この与えられた機構及び人員を十分活用することによりまして、その機能を最大限に発揮するよう努力していきたいと思っております。(拍手
  25. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。      ——————————
  26. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第三、国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正する法律案趣旨説明)、  本案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。小林厚生大臣。   〔国務大臣小林武治君登壇拍手
  27. 小林武治

    国務大臣(小林武治君) 国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  国民年金法は、昭和三十四年の第三十一国会で成立以来、今日まで数回の改正が行なわれ、現在では、拠出年金の被保険者は二千万人、福祉年金の受給権者は三百万人を擁する制度に成長しているのであります。しかしながら、本制度の発展と内容の充実をはかるためには、なお一そう努力しなければならないところであります。  また、児童扶養手当法につきましても、昭和三十六年の第三十九国会において成立して以来、手当額の引き上げ、支給制限の緩和等の改善が行なわれてきたのでありますが、国民年金制度と同様に、なお一そうの内容の充実を必要とするところであります。  今回の改正法案は以上の趣旨のもとに、国民年金制度及び児童扶養手当制度につきまして、年金及び手当の支給の対象となる障害者の範囲を結核、精神病等の内科的疾患に基づく障害者にまで拡大するとともに、支給制限を緩和することによりまして、両制度の改善をはかることとしたものであります。  以下、改正法案のおもな内容につきまして、国民年金に関する事項から御説明申し上げます。  第一に、障害年金等の支給範囲の拡大についてでありますが、これには二点ございまして、第一点は、障害年金及び障害福祉年金の支給の対象となる者は、現行法では四肢の欠損等の外部的障害者に限られておりますが、これを拡大し、結核性疾患、非結核性の呼吸器疾患及び精神病に基づく障害者についても支給の対象とすることにいたしたいのであります。  第二点といたしましては、母子年金及び母子福祉年金の支給の対象となる障害の子の範囲を障害年金と両様に内科的疾患に基づく障害者にまで拡げることといたしております。  なお、準母子年金、準母子福祉年金及び遺児年金の支給の対象となる障害の子等の範囲の拡大も母子年金と同様であります。  第二に、福祉年金の支給制限の緩和について申し上げます。これにつきましても二点ございます。まず第一点は、受給権者の扶養義務者の所得による福祉年金の支給停止の基準額を扶養義務者に扶養親族がない場合の四十万円を基礎とし、以下その扶養親族数に応じて緩和することといたしました。その結果、扶養親族が五人である場合は従前の六十万円が六十五万円に緩和されることとなるわけであります。  第二点といたしまして、福祉年金の受給権者が、戦争公務により廃疾となったこと等に基づき公的年金を受給している場合は、福祉年金の併給の限度となる額を七万円から八万円に引き上げることといたしております。  次に、児童扶養手当に関する事項について、御説明申し上げます。  第一に、手当の支給対象となる障害の児童の範囲につきましては、国民年金と同様に結核性疾患、非結核性の呼吸器疾患及び精神病による障害児童にまで拡大し、手当を支給することができることといたしたのであります。  第二に、支給制限の緩和についてでありますが、国民年金と同様受給者の扶養義務者の所得による支給制限の基準額を六十万円から六十五万円に引き上げることといたしております。  最後に、障害を理由とする年金及び手当の支給範囲の拡大に関する事項につきましては、昭和三十九年八月一日から施行し、公的年金と福祉年金の併給の緩和に関する事項につきましては同年一月一日から適用し、その他につきましては、公布の日から施行することといたしております。  以上をもって、改正法律案の趣旨の説明を終わります。(拍手
  28. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。柳岡秋夫君。   〔柳岡秋夫君登壇拍手
  29. 柳岡秋夫

    ○柳岡秋夫君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正する法律案につきまして、総理並びに関係大臣に質問をいたすものであります。  今回の改正案を通読いたしまして、まず、だれもが感じますことは、その内容があまりにも貧弱なことであります。総理は、常に福祉国家の建設を唱え、特に今国会の施政演説の中では、「豊かで平和な生活を営み得る社会をつくるために、疾病、失業、老齢を原因とする貧困と不幸に対し、社会保障を確立していくことは、単に一内閣の目標たるにとどまらず、私は信念のもとに精進する」と強調されておりますが、しかし、その内容のいかに空虚なものであるかということは、この案一つを見ても明らかとなるわけであります。したがいまして、私は、本案の改正点について質問を進める前に、社会保障制度全般に関しての政府の姿勢についてただしたいと思うのであります。  まず、池田総理にお伺いいたします。社会保障の目的が、日本国憲法第二十五条に規定する健康にして文化的な最低限度の生活をすべての国民に保障することにあることは、言うまでもありません。そうして、このことは、当然の社会的権利として認識をされ、先進諸国の国民の生活からは、社会保障制度の存在を無視して考えられないほど密着しているのであります。政府は、毎年毎年重要施策一つとして社会保障の拡充を掲げておりますが、それは著しく計画性に欠け、場当たり的であります。皆年金、皆保険といいましても、単に全国民をいずれかの制度に加入させるということにとどまっておりまして、その制度を通じまして全国民に公平にその生活を十分に保障するという本来の使命を忘れた、名ばかりの社会保障制度と言っても過言ではないのであります。昭和三十七年八月、社会保障制度審議会は、社会保障制度の総合調整に関する基本方策についての答申、並びに社会保障制度の推進に関する勧告を総理にいたしております。この答申は、約三カ年、延べ数百時間の熱心な調査討議の結果できたものでございますが、この答申、勧告を、総理はどう受けとめ、そうしていかなる見解をお持ちでございましょうか。社会保障費の国家予算の中に占める割合を見ましても、三十八年度失業対策費まで入れて一三%、三十九年度一三・四%であります。また、国民所得との割合は五・三%で、それがいかに後進的であり、低位な水準にあるかということは、政府みずからが、厚生白書その他で認めておるところであります。口先だけでない具体的な社会保障に対する御所見をお伺いいたします。  次に、総理並びに大蔵大臣に御質問いたします。  大蔵省が、毎年の予算案をつくられる際に、最初の要求総額を前年度各省の予算の五割増しにとどめるようにしたいとの方針をきめまして、閣議に提議し、決定をいたしておりますけれども、このような方法は非常な誤りがあると思うのであります。最初の要求額の前年度比の率を一律に定めるということは、実際の査定が多少の凹凸があろうとも、各省の伸び率が比較的平均化するもとをつくるのであります。制度の名前だけがほぼ完成し、その貧弱な内容を急速に高めなければならない社会保障制度改善が、遅々として進まない原因の一つが、ここにあると存じます。このようなワクがなければ、本年度の国民年金法改正案も、もう少しは、ましなものになったのではないかと思うのであります。比較的完成したことを管理する省と、現在大いに発展をしなければならない制度を管理する省とを、一律に考えるような弊を改めまして、形式的な死んだ政治ではなく、生きた政治を進める方向をとる必要があると思うのでございますが、総理の御所見をお伺いいたします。  また、大蔵大臣からは、社会保障費は他のものよりは伸び率がよい、そういうお答えではなくて、そういう一律の線をつくらなくてもやっていける自信、また、来年度からはそのようなことをしないというお答えをいただきたいと思うのでございますが、お伺いをいたします。  次に、国民年金制度についてお伺いいたします。  その第一は、その基本方針と年次計画についてであります。国民年金法昭和三十四年に制定をされましてから、わずか四年有余の間に、三次にわたって大幅な改正が行なわれ、さらに他の法律の中において、国民年金法の一部を改正し、今回の改正案を加えますと、実に十三次の改正に及ぶわけであります。これはわが国の法制上におきましても驚くべき記録でございます。朝令暮改のよき事例であります。そうしてこのことは、国民年金法を立案するにあたって、政府にその十分なる準備と確固たる方針のなかったことを物語るものであります。当時の年金局長は、「今回の国民年金制度の発足について特に忘れがたいことは、その発足が、政治の発意に基づいていただけでなく、その根幹が、政治によって事実上も定められたという点である」と述べていることからもうかがわれるのであります。糊塗的改正ではなくして、確固たる方針に基づいた抜本的改正がいまこそ必要であると思うのでありますが、総理からお答えをお願いいたします。  その第二に、国会の議決に対する措置についてであります。御承知のとおり、国会は、国民年金法改正のつど、衆参両院におきまして与野党一致の附帯決議を十数項目にわたって承認をされております。しかも政府は、その決議に対しまして、十分尊重することを公約いたしておるのであります。しかるに政府は、今次改正にあたってもほとんどこれを無視し、わずかの、しかも申しわけ的改正にとどまっていることは、きわめて遺憾であります。国の最高議決機関としての国会の意思を軽視し、国民を欺瞞する政府の態度は、絶対に許されないと思うのでありますが、総理の御所見をお伺いいたします。また、厚生大臣からは、これらの決議事項が、今次改正案をつくるにあたりましてどのように論議をされ、どうして取り入れられなかったのか、明確にお答え願います。  その第三は、年金額についてであります。現行拠出制では、六十五歳より最高月額三千五百円となっております。本年度予算で、生活保護費は一級地四人世帯で二万六千百四十七円、一人当たり平均にしてみますと、四千円をこすことになります。計算方式の相違はございますけれども、少なくとも現行の拠出制年金額が、まだまだ不十分だといわれる生活保護の基準以下であることは明らかであります。四十年間保険料を払って、はじめて支給を受ける年金がこのような程度では、国民年金制度と称するのはあまりにもおこがましいと言わなくてはなりません。  次に、福祉年金額についてでありますが、発足当時の老齢福祉年金額は、月額千円でありました。昨年十月から月額千百円に改訂されましたが、発足当時の物価を一〇〇としますと、現在の物価指数は一二五になります。したがいまして、ただいまの老齢福祉年金の値打ちは、発足当時の約八百八十円にしか当たりません。池田内閣の手によって、裕福でない老人に対する社会保障は、岸内閣当時より悪くなっているわけであります。池田総理は、このことを国民に対して申しわけがないと考えておられるでしょうか。社会保障拡充の看板は偽りであったと率直に反省をされまして、直ちに福祉年金の改善を実行する意思がおありかどうか、承りたいと存じます。  次に、スライドに関してであります。現行第四条の規定は、実にあいまいであります。年金額は、制度発足当時の未完成の状態を改善をいたしまして十分な金額にして、制度を完成することが大切でありますが、完成後は、生活水準と物価の変動に比例して改訂していかなければなりません。ところが、この条文には生活水準ということばはございますが、物価に比例して改訂をするという明確な文言がなく、しかも、「著しい変動」という文言で金額改訂の義務化をはばんでおります。現在年金制度について国民がその必要性を痛感しながら、なかなか信頼を置かないのは、戦後の激しいインフレではなはだしい被害をこうむっているからであります。したがって、この際、年金制度が真に国民の信頼を得るために、法文上明確に規定し、政府の怠慢が許されないようにすべきであると考えますけれども、総理並びに厚生大臣の御見解をお伺いいたします。  次に、社会保険主義の弊害についてであります。現在の拠出制年金制度は、社会保険主義で組み立てられ、保険料を払った割合に応じて給付が受けられるようになっております。保険料を支払いがたい人が老齢になった場合、一番年金を必要とするのでありますが、その人の年金が他の人に比べ激減するのは、ほんとうの社会保障ではないのであります。わが党の激しい追及の結果、免除者に対する国庫負担が三分の一だけ実現し、この弊害は幾ぶんはなくなったのでありますが、まだまだ道遠しであります。免除制度を拡大し、全期間免除の人も、全期間納入者と同様の年金が支給されるようにしなければ、真の社会保障とは言えないのであります。さらに拠出制年金制度に障害年金の制度があり、最高月額四千円まで支給されることとなっておりますが、実際に支給を受ける人は、きわめて少ないのであります。と申しますのは、加入年齢二十歳前に、たとえば両眼失明をした人は、どうしても金額の多い拠出制の障害年金が支給されないことになっております。理由は、保険事故でないということであります。保険料を払い込む前の障害については責任は負えないという、民間の保険会社の考え方があるからであります。両眼失明というような重度の障害者に対する所得保障が、社会保険システムという、人為的につくった誤った考え方によって無視されていいものかどうか。憲法第二十五条には社会保障を規定し、社会保障ということばはないのであります。総理の御見解をお伺いいたします。  次に、改正案に関連して、厚生大臣に御質問いたします。  まず第一に、わが党の年来の主張を理解され、障害年金、障害福祉年金及び児童扶養、手当の支給対象となる範囲を、結核、精神病等の内科的疾患に基づく障害者にまで拡大したことは前進でありますが、しかし、心臓疾患とか、あるいは精神薄弱者をその範囲に入れなかったのはなぜか、その理由をお伺いいたします。  第二は、所得制限の緩和の際、配偶者所得制限というような、不合理、無意味なものをなぜ撤廃しなかったのか、明確にお答え願いたい。  第三は、受給制限の緩和について、長年の懸案でございます老齢福祉年金の年齢制限の緩和をなぜ怠っているのか。政治の貧困から苦労多い人生を送り、他の比較的しあわせな人よりも早く老衰した人が、六十九歳で、年金受給を前にしてなくなった場合を思い起こし、開始年齢の低下を促進すべきであると思うが、お伺いをいたします。  第四は、児童の扶養についてであります。子供は次の世界をになうものであり、子供は社会が育成するという思想は、いまや世界の常識でございます。すでに六十カ国において児童手当金制度が実施され、児童の健全な育成とともに、多子による貧困化を防止しているのでありますが、政府は、再三にわたる国会の決議、社会保障制度審議会の勧告を無視いたしまして、いまだに発足に至っておりません。したがいまして、ILO百二号条約の批准もできずにいるということは、明らかに政府の社会保障に対する怠慢であります。厚生省が実施した児童養育費調査によれば、月収二万円以下の勤労家庭における養育費は、子供一人平均月額五千五百八十七円かかるとされております。しかも、子供が多ければ多いほど、一人当たりの養育費は多くなっておりまして、国民生活に大きな負担となっているのであります。政府は、四十二年度から児童手当制度の実施考えているようでありますが、このような国民生活の実態、さらには中高年齢層の雇用促進など、労働力の流動化をはかるためにも、即時実施に踏み切るべきであります。また、その手当額は、真にその趣旨を実現するものであるとともに、すでに実施している国の八六%が、同一額かまたは逓増方式をとっている例からしましても、実態に即した方式をとるべきであります。総理並びに厚生大臣の御見解をお伺いいたします。  最後に、積立金の運用について、大蔵大臣並びに厚生大臣にお伺いいたします。  国民年金の積立金は、現在資金運用部に預託されまして、財政投融資の原資とされておりますが、この積立金は被保険者のものでございまして、当然、被保険者の意見をいれまして、その生活内容の充実向上に寄与する住宅、病院、厚生福祉施設等に運用さるべきであります。したがいまして、国民年金審議会の答申のごとく、特別勘定として、他の資金と厳密に区別するとともに、被保険者代表の参加する積立金運用審議会を設置して、管理運用すべきであると思うのでございますが、お伺いをいたします。また、現在の二五%という融資ワクを引き上げ考えはないか、あわせてお伺いいたします。  政府、自民党は、しばしばわが党のりっぱな政策をまねをして、同じ名前の看板を掲げておりますが、わが党の政策を参考にされることはけっこうでありますけれども、その場合、その内容まで参考にされることが必要だと思うのであります。国民年金制度においても、わが党案の内容を、急速に、十分に実施されるならば、われわれもその努力に対し称賛することができるでありましょう。国民主権の憲法の規定に基づきまして、抜本的な制度の改善をされますことを強く要求いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  30. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答えいたします。  ほとんどの問題で池田総理大臣並びに何々大臣と、こういうことで、なかなかこまかい問題もあるようでございます。もし答弁漏れがございましたら、関係閣僚から答弁いたします。  社会保障制度拡充というのは、高度福祉国家建設を目ざすわれわれといたしまして、最も重要な点でございます。で、今年におきましても、生活保護基準は二三%上げました。池田内閣ができまして三十六年から生活保護基準はどれだけ上がったかというと、この二年半の間に八割上がっております。物価が上がったとおっしゃるが、物価は四年間に消費者物価は三割も上がっていないが、保護基準は八割上がっております。それから国民健康保険につきましても家族の七割、厚生年金につきましても大幅改善を計画しております。私はここで思い出すのですが、いまから十三、四年前、初めて私が大蔵大臣としてつくりました予算の中には、七千四百億円の総予算の中で社会保障関係は二百七十三億円といま記憶しております。二百七十三億円が十四年後の今日四千三百億円になり、しかも、軍人遺家族、準社会保障のものが千三百、合わせて五千六百億になっておる。こういう状態は、これは世界の歴史にありますまい。ヨーロッパでは過去数十年来やっておった社会保障に対して、日本は戦後二十五年にしてこれに追いつこうという計画で行っておるのであります。これを見たら、わが自由民主党、保守党が、いかに社会保障制度に熱心かということがおわかりになると思います。(拍手)よく日本の社会保障制度発展の歴史をお考えになったら、さすがに自民党はよくやったとおっしゃると思うのであります。  なお、国民年金につきましての御質問でございますがわれわれは老後の保護につきまして内容を充実すべくいろいろ計画いたしております。いろいろ努力してやっております。いま過去の実績を申し上げたゆえんは、十四、五年の間に何十倍という社会保障費がふえた。この実績をごらんになれば、四十五年までには西欧諸国に匹敵する社会保障制度の確立は、はっきりとお約束いたします。したがいまして、年金制度につきましては、これは財政の問題あるいは他の年金とも非常に関係がございますので、内容を充実しながら四十一年を期しまして年金の引き上げ等考えておるのであります。  また、附帯決議につきましていろいろ御質問がございまするが、いまの年金の引き上げは、いまお答えしたとおり。スライド制の問題にしましても、これは国民年金ばかりじゃございません。他の公的年金に非常に影響があるので慎重に考えなきゃならぬということは、柳岡さんもよくおわかりだと思います。他の公的年金のことも考えなきゃなりません。  また、社会保障制度と社会保険ということについては、いまさららしく御質問でございますが、社会保険というものは社会保障制度の重要な柱であるということでお答えを申し上げます。  なお、ほかに児童手当の問題でございますが、この問題は、中央児童福祉審議会で、全国の世帯を対象といたしまして、父母の所得、世帯員の所得、あるいは児童の栄養、就学状況等、十分検討いたしまして、私はできるだけ早い機会にやっていきたい。これは単に福祉問題ではございません。給与制度、いわゆる家族給の問題にも関係するのでございまして、一がいに児童手当、児童手当とおっしゃっても、他の経済関係、租税関係を十分考えなきゃならぬのが政府の立場でございますので、ひとつ御監視して政府措置をごらんいただきたいと思います。(拍手)   〔国務大臣小林武治君登壇拍手
  31. 小林武治

    国務大臣(小林武治君) 総理から大体お答え申し上げましたが、若干補足いたしておきます。  いまの年金の引き上げの問題は、ただいまお話のありましたように、これは制度の全体にかかる問題であり、しかして、現在私ども厚生年金の金額の引き下げをお願いしようとしておる、これに関連して当然問題になるのでありまして、お話のように、昭和四十一年が国民年金の再計算期に当たりますので、その際に、他の事項と一諸にして、ひとつぜひ私どもは解決をいたしたい。すなわち、あくまでも年金というものは老後を保障するもの、所得を保障するものでなければならぬ、こういう原則に立って進めたいと考えておるのであります。  なお、スライド制の問題も、ただいまお話がありましたが、これも現在厚生年金にも同様問題になっておるのでありますが、その他公的年金にも当然この問題は起きてくるのでありまして、全体を総合的に考えなければならぬということで、この際は一応これを保留しておるものでございます。  また、社会保険の問題でありますが、これもお答えになりましたが、わが国としては社会保険を中心にして社会保障制度を進めていきたいと、こういうふうに考えておるのでございます。  それから、児童の障害の対象から心臓とかあるいは精薄問題を除いたのはどうか。これらも私どもは何らかの形において当然考慮しなければならぬ問題であると思いまして、心臓の問題については、続いてひとつ検討をして適当な措置をとりたい。精薄問題につきましては、私どもこれも何とか対象にいたしたいと存じますが、何ぶんにも精薄児自体というものが年金の年齢前に生ずると、こういうふうな関係から、これに入れにくいということでありますが、来年度といたしましては、御承知のように、重度精神障害児に対する扶養手当という制度を創設いたしまして、未成年者に対するこれらの問題は一応形をつけたい、かように考えておるものであります。  次の児童手当の問題でありますが、いまお話がありましたが、これは非常に大事な事項であるのでございまして、私ども昭和三十六年からこの調査もいたしておるし、また、特に三十九年度には、一千万円の予算承認を得まして、そして全国の十一万の世帯、これらにつきまして、世帯の所得、あるいは父母の所得、あるいは父母の就業状態、これによる児童の扶養状態等につきましても精細な調査をして資料を得たい、事業所につきましては、全国一万八千カ所の事業所を選びまして、産業別規模別に、家族給の制度、また、その支給の状態等も検討いたしたいと、こういうふうに考えておりますし、一方、中央児童福祉審議会の児童手当部会におきましても、いま、これらの目的、意義、方法等について検討いたしておりますので、両方の資料がそろいました際に、これらの問題について、実施の時期、あるいは方法、内容等について検討をし、できるだけ早い機会にこれを実現せしめたい、かように考えておるものでございます。  最後に、積み立て金の運用の問題がありますが、これは、御意見のようなことが出ることは当然でありますが、従来でも、これを、あるいは社会福祉施設、あるいは生活環境の整備と、こういう方面に主としてこれを流しますとともに、融資のワクとか、あるいは特別ワクとか、いろいろなことを考えておるのでございまして、これらは直接間接に被保険者の生活の向上、福祉の向上と、こういうことに役立っておることは御承知のとおりであります。しかして、いま申されるような特別勘定の問題等、いろいろ問題があります。また、還元融資のワクも増大いたしたい、これも私どもは考えておるのでありますが、政府部内においてよくひとつ協議をいたしまして、何ぶんの結論を得たいと、かように考えておる次第であります。  答弁漏れがありましたのでお答え申し上げますが、配偶者の所得制限撤廃、こういう御希望が多いのでありますが、これは他のいろいろな関係もありまして、これだけを解決するわけにはいかぬ。ただいまのところは、この所得は、所得税の免税の点を精進してやっておりますので、これらが上がれば当然自動的に上がる、こういうふうな関係になっております。  それから福祉年金の年齢の引き下げの問題でありますが、実は、現在福祉年金を受けておる者が二百六、七十万人おりまして、金額にして約四百億程度にものぼっておるのでありまして、この年齢引き下げの希望がありまするが、これらは他の年金との関係もある、また同時に国家財政に及ぼす影響等も考慮しなければならぬので、この際はその運びにならなかった、こういう次第でございます。(拍手)   〔国務大臣田中角榮君登壇拍手
  32. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) お答えをいたします。  第一点は、予算概算要求の時期に前年度の五〇%にアップ制限ということを一律にやっておって、社会保障等に重点が置けなくなるじゃないかということでありますが、限られた財源の中で最も合理的、効率的な予算を組むために、このようなことをやっておるわけでございますが、前年の編成後の状態を見ていただけば、前年度五〇%も上がるということはないわけでございますので、この中で社会保障に重点を置いて予算を組んでおるわけでございます。  第二点は、積み立て金運用の二五%の問題でございますが、厚生大臣の御答弁のとおり、政府部内で十分慎重に検討をしてまいりたい、かように考えます。(拍手
  33. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。      ——————————
  34. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第四、北太平洋のおっとせいの保存に関する暫定条約改正する議定書締結について承認を求めるの件(衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。外務委員会理事井上清一君。   〔井上清一君登壇拍手
  35. 井上清一

    ○井上清一君 ただいま議題となりました条約につきまして、外務委員会における審議の経過と結果を御報告申し上げます。  この議定書は、北太平洋におけるおっとせい資源の確保のため、商業的海上猟獲を禁止した日加米ソ四カ国間の現行条約の期限満了に伴い、これを六カ年延長することとし、その間、従来からわが国の主張であります海上猟獲の問題を研究するほか、陸上猟獲による獣皮を、米国のみならず、ソ連も日加両国に配分することなどをきめたものであります。  質疑の詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。  委員会は、三月十七日質疑を終え、採決の結果、本件全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  36. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本件を問題に供します。本件承認することに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  37. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって承認することに決しました。      ——————————
  38. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第五、臨時行政調査会設置法の一部を改正する法律案内閣提出)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長三木與吉郎君。   〔三木與吉郎君登壇拍手
  39. 三木與吉郎

    ○三木與吉郎君 ただいま議題となりました臨時行政調査会設置法の一部を改正する法律案について、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本法律案は、臨時行政調査会設置法の効力を本年九月三十日まで六カ月延長しようとするものであります。  臨時行政調査会は、行政を改善し、行政の国民に対する奉仕の向上をはかることを目的として、行政の実態に全般的な検討を加え、行政制度及び行政運営の改善に関する基本的事項を調査審議するため、昭和三十六年十一月、臨時行政調査会設置法によって総理府の付属機関として臨時に設けられたものでありますが、調査審議の対象が広範多岐にわたり、存続期限である本年の三月三十一日までには、現在審議中の事項全部について審議を終了することは時間的に困難であることが明らかとなったので、その存続期限を六カ月延長し、審議事項すべてについて十分検討し、本調査会設置の趣旨を全うしようとするものであります。  本委員会におきましては、山村行政管理庁長官、関係政府委員のほか、佐藤臨時行政調査会会長の出席を求めて審議に当たり、臨時行政調査会の答申並びに行政改革に対する政府の決意、臨時行政調査会設置法の成立にあたり、両院の内閣委員会で付せられた附帯決議に対する政府並びに臨時行政調査会の態度、臨時行政調査会と行政審議会との関係、行政改革について臨時行政調査会で審議中であるにもかかわらず、多くの部局等を新設しようとする理由、会長声明に対する国民の反響、答申後における答申の実現を促進するための構想、専門委員の選考基準、いわゆる参与の性格、臨時行政調査会の期限の延長に関連して、その運営に欠陥があったのではないか、また調査の範囲を広げ過ぎたのではないか等のほか、苦情相談委員制度の法制化、審議会、調査会等に関連する諸問題等についても、きわめて熱心な質疑応答が行なわれましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。  質疑を終わり、別に討論もなく、採決の結果、本法律案全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  40. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案に賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  41. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。      ——————————
  42. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第六、旅行あっ旋業法の一部を改正する法律案、  日程第七、国際観光ホテル整備法の一部を改正する法律案、  (いずれも内閣提出)  以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  43. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長の報告を求めます。運輸委員長米田正文君。   〔議長退席、副議長着席〕   〔米田正文君登壇拍手
  44. 米田正文

    ○米田正文君 ただいま議題となりました観光関係二法案について、運輸委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、旅行あっ旋業法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本法案は、近く予定される日本人の海外渡航の自由化を控え、また最近における旅行あっせん業の実情及び経済情勢の推移にかんがみ、旅行あっせん業の適正な運営をはかるため、所要の改正をしようとするものであります。  すなわち、第一は、日本人の海外旅行のあっせんは、もっぱら一般旅行あっせん業者をして行なわせることとし、これに伴い、邦人旅行あっせん業の事業の範囲を日本人の本邦内の旅行のみを対象とするものとしたこと。第二は、経済情勢の推移に応じて営業保証金の額を引き上げることとし、旅行あっせん業者の損害担保力の強化をはかったこと。第三は、旅行あっせんに関する不正行為の禁止規定等を整備したことであります。     —————————————  次に、国際観光ホテル整備法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本法案は、最近、外客宿泊施設としての登録ホテル業及び登録旅館業が急速に増加し、またそれらの施設水準向上しつつある現状にかんがみ、外客の接遇をさらに一そう充実させるために、これらの業務の適正化水準向上をはかろうとするものであります。  改正案のおもなる点を申し上げますと、第一は、登録ホテル業者及び登録旅館業者に対し、新たに宿泊約款の届け出義務及び公示義務を課したこと。第二は、登録ホテル業者及び登録旅館業者の順守すべき事項に関する規定を設け、その励行をはかるため、業者に対し主務大臣が所要の措置を講ずるよう指示することができることとしたこと。第三は、主務大臣は、特に必要があると認めるときは、その職員に登録を受けたホテルまたは旅館等への立ち入り検査をさせることができることとしたこと。第四は、ホテルまたは旅館の施設に関する登録基準を整備したこと等であります。  委員会の審議におきましては、両法律を一括して質疑を行ない、特に三月十日には、ホテル、旅館業及び旅行あっせん業関係者の意見をも聴取する等、慎重な審議を重ねました。その詳細は会議録により御承知願いたいと存じますが、質疑のおもな点を申し上げますと、二法案と観光基本法との関連、登録ホテル、旅館及び旅行あっせん業者に対する指導並びに育成の方針、修学旅行に関する旅行関係施設の整備、登録旅館に対する税制上の優遇措置、並びに客用昇降機等の登録基準の整備等について行なわれたのであります。  かくて質疑を終え、二法案を一括して討論に入りましたところ、別に発言もなく、採決の結果、二法案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  45. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  両案全部を問題に供します。両案に賛成諸君起立を求めます。  〔賛成者起立
  46. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 過半数と認めます。よって両案は可決せられました。      ——————————
  47. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 日程第八、簡易生命保険法の一部を改正する法律案内閣提出)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。逓信委員長光村甚助君。   〔光村甚助君登壇拍手
  48. 光村甚助

    ○光村甚助君 ただいま議題となりました簡易生命保険法の一部を改正する法律案につきまして、逓信委員会における審議の経過並びに結果を御報告いたします。  本法律案は、保険金の最高制限額及び最低制限額を引き上げるとともに、新たに特別養老保険の制度を創設しようとするものでありまして、改正の要点を申し上げますと、  第一点は、最近における社会経済事情の推移にかんがみますとき、現在の五十万円では、国民経済生活の安定をはかり、その福祉の増進を目的とする制度本来の機能を十分発揮することが困難であり、また、事業自体といたしましても、終戦直後に大量に募集した契約がここ数年のうちに集中満期となりますので、満期による事業規模縮小防止し、さらに事業発展をはかるため、最高制限額を百万円に引き上げようとするものであります。  第二点は、現在保険金の最低制限額は一万円となっておりますが、最近の経済事情下におきましてはあまりにも低額で、保険的価値に乏しく、また最近の新規契約について見ましても五万円未満の契約はきわめて少ないので、最低制限額を五万円に引き上げようとするものであります。  第三点は、最近における保険思想の普及に伴い、死亡保障に重点を置いた生命保険に対する需要が次第に高まってきておりますので、従来の養老保険の性格を保有させながら、安い保険料により死亡保障を強化した生命保険を提供しようというのでありまして、加入者が死亡した場合に支払う保険金額を、期間が満了した場合に支払う保険金額の二倍の額としようとするものであります。  逓信委員会におきましては、数回にわたり委員会を開き、慎重審議をいたしたのでありますが、質疑のおもなるものは、最高制限額百万円に引き上げの根拠、簡保積み立て金及び余裕金の運用、事業経営の体質改善、新種保険の発売目標、簡易保険関係の福祉施設等でありましたが、その詳細は会議録によって御了承を願いたいと存じます。  かくて質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して野上委員より、   簡保積立金は、既に一兆円を突破し、これが運用の如何は事業の消長に重大な影響を及ぼし且つ国民経済生活の安定と福祉の増進に至大の関係を持つに至った。しかも国の社会保障制度のいまだ不備な現状から、契約者はその運用の是非について大きな関心を持って見守っている。   かくのごとき状況にかんがみ、郵政当局は本積立金の運用に当っては関係法律の解釈を適正にし、いやしくも誤解を招くことのないよう配意するは勿論、契約者の保護に今後一層の努力を払うべきである。   右決議する。 との附帯決議を付して本案に賛成、自由民主党を代表して鈴木委員より本案に賛成する旨の発言があり、討論を終え、採決の結果、全会一致をもって附帯決議を付して原案のとおり可決すべきものと決定した次第であります。  以上御報告申し上げます。(拍手
  49. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案に賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  50. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。      ——————————
  51. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 日程第九、外国為替及び外国貿易管理法及び外資に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長新谷寅三郎君。   〔新谷寅三郎君登壇拍手
  52. 新谷寅三郎

    ○新谷寅三郎君 ただいま議題となりました外国為替及び外国貿易管理法及び外資に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、委員会における審査の経過及び結果を御報告いたします。  本案は、わが国が開放経済体制移行への一環として、本年四月一日より国際通貨基金協定第八条に規定する義務を受諾することに伴い、外国為替外国貿易その他の対外経済取引に関する体制を整備しようとするものであります。  その概要を申し上げますと、第一は、外国為替及び外国貿易管理法の一部改正でありまして、わが国が国際通貨基金八条国へ移行するためには、経常的支払いに対する為替制限を撤廃しておく必要がありますので、外国為替予算制度を廃止するとともに、外国為替予算の作成を主たる任務としております閣僚審議会も同時に廃止し、また今後の輸入貿易の管理は、為替制限によらない方法、すなわち数量規制を行ない得るようにいたそうとするものであります。  第二は、外資に関する法律の一部改正でありまして、外国為替予算制度の廃止に伴い、導入外資の対価、果実等の支払い予定額を外国為替予算に計上する制度を廃止し、また、契約期間もしくは支払い期間が一年をこえる技術援助契約の締結、または株式の持ち分、受益証券、社債もしくは貸し付け金債権の取得について、対外送金の希望の有無にかかわらず外資法の認可を受けさせる等、所要の改正を行なおうとするものであります。  本案の審査におきましては、池田総理をはじめ、外務、大蔵、農林、通産、運輸、労働、経済企画の各大臣の出席を求め、開放経済体制移行の意義、移行後の国際収支、外貨準備高の見通しと貿易外収支改善策としての海運対策の具体的内容、貿易自由化の今後の段取りと、わが国産業界、特に農業、中小企業、労働の各部門に及ぼす影響とその対策、今後の経済外交の基本的態度と低開発国に対する援助方針の大要、開放体制下における財政金融政策のあり方と、関連事項としての公債発行及び日銀法改正問題、IMF八条国移行と日米友好通商航海条約との関連、OECD加盟と労働組合諮問委員会との関連等について、熱心な質疑応答が行なわれたのでありますが、その詳細は、会議録によって御承知おき願いたいと存じます。  質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して野々山委員より、「金解禁にも比すべき画期的な措置を国会審議に付す以前に政府のみで処理したこと、一つの国家群に加担することは、日中問題等の進展に支障を来たすこととなり、時期尚早と思われること、また、今後慢性的赤字基調を克服しがたい国際収支の面、あるいは金融引き締め強化によって、今後労働条件を悪化させることを予想されるので、現在のような不十分な体制のまま開放経済体制へ突入することは反対である」との意見が述べられ、次いで、自由民主党を代表して日高委員より、「開放経済への移行は、日本経済の将来の発展を期するために、多少の犠牲を払っても強行されなければならない必然的な措置であること、すでに十分な準備体制がとられているので、産業界の混乱を招来する懸念は考えられないこと、また、国際収支の見通しについても、海運対策や輸出振興策の効果が期待せられ、特に憂慮する必要はないと認めるので賛成する」との意見が述べられ、最後に、日本共産党を代表して鈴木委員より、「本案は、わが国経済を自由主義諸国の閉鎖的経済ブロックへ加入せしめて破局に導くものであり、中小企業及び農業の困窮、労働者への収奪をさらに強めるものであるから反対する」との意見が述べられました。  かくて討論を終わり、採決の結果、多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告いたします。(拍手
  53. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 本案に対し、討論の通告がございます。発言を許します。野々山一三君。   〔野々山一三君登壇拍手
  54. 野々山一三

    ○野々山一三君 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されました外国為替及び外国貿易管理法及び外資に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、反対の討論を行なおうとするものであります。  本法律案は、開放経済体制への移行を進める一環として、四月一日からIMF八条国に移行する、そのための法制整備を行なおうとし、対外取引関係二法を改正しようとするものであります。  ところが、私は本法律案改正を、単に四月一日からIMF八条国に移行するための準備として見るには、あまりに大きく、かつ重大な、国際経済社会における、また日本経済の進路にとって影響を持っているという点を、見逃がすわけにまいらぬと思うのであります。  その第一は、政府本件に対する事態認識と、その法改正に対する手続について、きわめて軽く、ものをながめておるということであります。日本がIMFの十四条国から八条国に移行するということ、このことは、日本経済にとって、かつて日本経済を危殆のどん底におとしいれた金解禁に次ぐ、決定的な、しかも再びあと戻りすることの許されない国際的義務を負うということであります。  この事実は、総理の言をもってするならば、「日本経済にとって画期的なことであり、革命的な大きな変動をもたらすことである」というのであります。かかる重要な、しかも国際的には日本の信用をかけた課題であり、国内的には最終的に開放経済体制へ移行するという事実について、また、日本の経済にとっても、産業にとっても、決定的な影響を持ち、問題点を指摘されている行為について、十分なる準備もなく、国会の審議を得る前の二月上旬に、田中大蔵大臣の名において、日本は四月一日からIMF八条国に移行することをIMF当局に通告し、国際的に期限を切って国会に準備法案を提出するという態度や、まさに国会軽視もはなはだしいのでありまして、このことを行政行為をもってなし得るとする考え方こそ、最も強く非難さるべき政治的態度と言わなければならぬのであります。ちなみに、昭和二十七年にIMFに加入したとき、このことはすでに予期されたことであるかのごとき態度を示しましたけれども、その昭和二十七年の五月の議会における審議を詳細に当時の記録を調べてみまするに、かかる事態は、寸分だも論議の対象にされず、また時の岡崎外務大臣は、さようなことは今後十分検討されるとしても、いま話題になるべきことではないと、すらりと逃げておるのであります。また、こういったことは、日本経済にとって決定的な変化と重大な事態をもたらすのでありますが、これからこの事態を乗り切っていくためには、何としても国民の心配を取り除き、協力を得ていくということがなければならぬのでありますが、政府のかようなものの見方、態度をもってするならば、まさに真摯にこの事態を乗り切ろうという真剣味の寸分さえ見ることができないのであります。私は、かかる観点から、第一に反対をするのであります。  その第二は、OECD加盟、IMF八条国移行という事実の持っている政治的意義についてであります。申し上げるまでもなく、OECDは、そのおい立ちにおいてマーシャル・プランに源を持ち、戦後の世界体制における新しい世界的経済ブロックの体制をとったのであります。ことばをかえて言うならば、自由主義陣営における国際資本主義体制の温存のための封鎖的経済体制であるということであります。日本が、今日この非常な経済的危機に直面しながら、なおそれに目をおおってOECDに加盟し、IMF八条国に移行するということは、まさに名実ともに日本が国際経済社会の一員として自由主義陣営にその旗色を明らかにし、加担し、世界に向かって事新しく、あらためてその立場を宣言しようとするものであると見ないわけにはまいらぬのであります。池田総理の言をもってするならば、「日本は、いまにしてその戸籍を明らかにすることこそ必要である」というのであります。このことばこそは、まさに日本を永久に資本主義国家群の一員としての立場に位置づけ、対米依存の経済体制をも強化する何ものでもないと断ぜざるを得ないのであります。急速に変動しつつある世界の動きに目を向けて見るとき、近くは日中国交回復をはじめ、大きくは平和共存の態勢が進みつつあるときに、かかる自由主義陣営への加担のための宣言をこそなすということは、まさに日本の将来にとって、きわめて重大な影響と障害になるということを考えるとき、まさに、いま時にあらずと断ぜざるを得ないのであります。  その反対の第三の根拠は、まだ十分な体質を持っていない日本経済が、激しい国際競争の荒波の中にたたき込まれ、その舞台において日本経済が埋没するという、きわめて危険な路線にいま踏み出そうという結果に相なることを指摘しないわけにはいかぬのであります。総理並びに田中大蔵大臣の言をもってするならば、IMF八条国に移行するということ、それは日本が国際経済社会において成人に達したことを示すものであるというのであります。ところが、一体、今日の日本経済の体質は、政府当局の指摘するような成人に達したのだということが当たるような事態であるでありましょうか。私は断じてノーと言わなければならんと思うのであります。  その一つは、欧米諸国の経済及びその体質と日本のそれを比較して、この点からその実情を論断するととができると思うのであります。百歩譲って、OECD加盟とIMF八条国に移行するということが、新しい軍事的、経済的ブロック体制への加担であるという論はさておくといたしまして、アメリカや西欧諸国の今日のそれは、資本力、産業経済、労働の諸点において、日本のそれに比べて、相当以上に高い基礎条件を持っており、しかも、なおその諸施策は国家独占資本の利益防衛のための輸入制限を数多く持ち、保護策を持っておるのであります。さらに、今日なおその傾向を強めようとしておる節さえ十分に見受けられるのであります。このような事態に比べて、日本の現状は一体どうなっているでありましょうか。自由化の波は、石炭産業とその労働者を塗炭のどん底におとしいれたことをはじめ、池田内閣があおり立てた高度成長政策は、ついに構造上どうにもならない袋小路に追い詰められ、国際収支は、構造的、慢性的赤字体制に転落し、物価は騰貴し、産業間の格差は拡大し、中小企業は戦後最大の倒産を示すという結果に相なっていることは、だれしも目をおおうことはできない事実と相なっているのであります。政府は、今日あること、つまり開放経済体制に入るということを予期して、中小企業基本法や農業基本法、あるいは金属工業基本法やをはじめとして、地域的には新産都市法の制定であるとか、あるいは、また、特振法の制定ということなど、そのための準備をしてきたというのでありましよう。しかし、一体これらの諸法律が日本経済の今日にどれだけの役割りを果たしたというのでありましょう。つまり日本経済の体質はあまりにも脆弱なまま放置されているということであります。さらに問題なのは、政府は、開放経済に備えるということで、国際競争強化の必要や農産物の自由化を目ざして、農業、中小企業近代化を唱えてはおりますが、これはいずれも、ていのいい切り捨て政策にすぎないのであります。農業や中小企業は、まさに裸のままで開放体制の荒波にほうり込まれるのであります。政府の農業政策の中心は、国内農業保護政策の後退、外国食糧の輸入、食管制度の廃止の方向であります。中小企業近代化は、中小企業を大資本の下請として再編成するか、あるいは近代化の規格にはずれる中小企業は容赦なく切り捨てるというものであります。また、一方、大資本擁護の政策は、たとえば税制金融面の措置、特振法による合併、集中の促進、新産都市計画による地方自治体の独占への組み込み、他方における金融引き締め公定歩合引き上げ政策などは、その犠牲を中小企業に押しつけているといわなければならぬのであります。中小企業や農業の問題が放置されたまま貿易為替の管理体制を廃止することは、危険きわまりないといわなければなりません。  その二つは、国際収支の現状から見て、さらに日本経済を危機におとしいれる結果になるということであります。三月末の国際収支じりは、大幅に当初見込まれたものを上回ることは確実であります。一月末の外貨準備高は十八億五千五百万ドルでありますから、一−三月の貿易収支が二億ドル以上の赤字となりますと、それだけで三月末の外貨準備高は一挙に十六億ドル台を割ってしまうことになるのであります。しかも、実際に自由に処分できる外貨は、そのうち、おそらく六億ドル、あとは短資などの借金なのでありますから、返せといわれればいつでも返さなければならぬ金なのであります。その上、金融引き締めにかかわらず、生産は依然として高水準にあり、しかも、輸入は九〇%自由化の現状では、これを抑制することは困難になっているのであります。さらに、OECDの加盟に伴い、外国資本の国内流入は避けられないのであります。体質の弱い日本経済を外国資本の前にどう太刀打ちしていけるようにするのでありましょうか。特にアメリカの直接投資を排除し得ないのでありますから、今後外資の日本支配は決定的な危険性をますます増大するといわなければなりません。私は、特にこうした将来の国際収支面における不安は、ひとり私ども日本社会党だけの心配ではなく、池田内閣が最も信頼しているはずの日本における第一線の経営者群の心配であることを指摘しておきたいのであります。ちなみに、第一線における経営者群五十名の諸君が述べておる意見を、ここに御披露いたしたいのであります。  その開放経済体制への移行に伴う最悪の問題点とは、一、輸入フラッドによる国内市場の撹乱。その二、長期外資による産業の支配。その三、前に指摘したような二つの点からする物と資本の流入による国内産業秩序の乱れ。その四、短期外資の激しい移動による国内金融市場の撹乱。その五、先進国というメンツに課せられる国際的負担の増大と加重であります。  この開放経済体制への最悪の問題点、それは、高々とかなでる池田内閣の高度経済成長政策と開放経済体制移行の曲の音であり、弱い体力におもねられた日本経済の苦しみの声であり、まさに天の声であると言わなければならぬと思うのであります。  さればこそ、私ども日本社会党は、本法案の審議にあたりまして、この問題点を解明することにこそ全力を尽くして、政府所見をただしたのでありますが、何ら確固たる回答を得るに至らず、わけても、国際収支の不安定性の拡大に伴うその打開策に至っては、全く見るべきものを得ず、わが国の将来を憂えるわれわれをして、失望その極に達せしめたと言わなければならぬのであります。  ちなみに、私は、この際、国際収支の最大のガンになっている貿易外収支の赤字打開策、なかんずく海運収支の赤字対策について、政府から明らかにされたその態度の一例を指摘をしたいのであります。  海運収支のみにおいて、かりに運輸省の試案によって、昭和四十二年までに収支相償うような船舶建造は、これから四百七十三万総トンを昭和四十二年までになさねばならぬので、そのための財政資金は、二千二百四十億円要るというのであります。ところが、一体ことしの予算はどれだけそれを組んだでありましょうか。わずかに、建造計画にして八十四万二千総トン、資金にしてわずかに一〇%、二百四十七億円しか組んでいないのであります。運輸省の試案どおりそのままやったといたしましても、昭和四十二年以降、まだなお、積み取り比率が改善をされたといたしましても、二億五千二百万ドルの赤字は依然として残るということが証明されたわけであります。しかも、この事実に対して、政府当局にわれわれがただした結果は、「いや、事実はそうであります。困っております。だから、これから、今月の中旬以降、閣僚懇談会を開いて、長期の対策を立てる段階にございます」と言うだけであります。一体、今後の恒常的な対策がどこにあるでありましょう。金解禁にもふさわしい、匹敵する、これほどの画期的、革命的開放経済体制への移行というこれに対して、これから閣僚懇談会を開いて検討するというがごとき、こういった態度をもってして、何として、国民と日本を愛する至情が、本案に賛成するということばなどを見つけ出すことができるでありましょうか。  その第三は、開放経済体制への移行と、その結果に伴う影響は……。
  55. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 野々山君、時間がまいりましたので、結論をお急ぎください。
  56. 野々山一三

    ○野々山一三君(続) 未熟な日本経済を一そう押しつぶすのであります。その結果は金融政策に見ることができるのであります。  われわれはこの討議の過程を通して、政府の高官が言ったその金融引き締め政策に対する認識について、あらためて私はここで訴えたいのであります。「今日の不健康な国際収支を改善するための金融財政上の引き締め政策は、本質的には、企業合理化、合併はもとより、企業の支払い能力のいかんにかかわらず、賃金水準労働条件を押えるほどの引き締め政策をとらなければ、国際水準のさやに寄せることはできない」というのであります。まさに、きょうその日からその事態が起こると言っているのであろうと思うのであります。  私は最後に、日本の経済基盤がきわめて弱いとき、国際水準に劣っている労働、産業経済の現状を見るとき、ILOの各般の条約は、一個だもこれが批准の態勢にないのであります。これに対して何の政府の誠意ある態度が示されたでありましょうか。  私は結論として申し上げたいのであります。かかる事態にあるとき、政府はまさに、いま日本経済がなさねばならぬことは、形の上での開放経済体制への移行ではなく、日本経済と日本の将来を案ずるためにこそ、日本の経済の体質を強め、国際競争力にたえ得る基盤をつくるこそ、今日求められなければならぬ絶対的課題であると指摘をいたしたいのであります。決意を新たに、いま直ちに開放経済体制への移行の方策をすぐ中止すべきである危殆の時期に直面していることを、最後に指摘いたしまして、日本社会党を代表して、本案の内容をつぶさに検討するに、得るところなしの論断に立ち、反対の意見を表明する次第であります。(拍手
  57. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) これにて討論の通告者の発言は終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案に賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  58. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。  次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後零時五十七分散会