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1964-03-13 第46回国会 参議院 本会議 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月十三日(金曜日)    午前十時十九分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第九号   昭和三十九年三月十三日    午前十時開議  第一 国会法第三十九条但書の規   定による議決に関する件(海外   移住審議会委員)  第二 国会法第三十九条但書の規   定による議決に関する件(売春   対策審議会委員)  第三 国会法第三十九条但書の規   定による議決に関する件(肥料   審議会委員)  第四 国会法第三十九条但書の規   定による議決に関する件(国立   近代美術館評議員会評議員)  第五 国会法第三十九条但書の規   定による議決に関する件(蚕糸   業振興審議会委員)  第六 国会法第三十九条但書の規   定による議決に関する件(畜産   物価格審議会委員)  第七 国会法第三十九条但書の規   定による議決に関する件(米価   審議会委員)  第八 緊急質問の件  第九 所得税法の一部を改正する   法律案及び租税特別措置法の一   部を改正する法律案趣旨説明)  第一〇 地方税法等の一部を改正   する法律案趣旨説明)  第一一 遺書の方式に関する法律   の抵触に関する条約締結につ   いて承認を求めるの件  第一二 風俗営業等取締法の一部   を改正する法律案内閣提出)  第二三 昭和三十八年度分として   交付すべき地方交付税総額の   特例に関する法律案内閣提   出、衆議院送付)  第一四 警察法の一部を改正する   法律案内閣提出衆議院送付)  第一五 中小漁業融資保証法の一   部を改正する法律案内閣提出)  第一六 林業信用基金法の一部を   改正する法律案内閣提出)  第一七 アジア経済研究所法の一   部を改正する法律案内閣提出)  第一八 電源開発促進法の一部を   改正する法律案衆議院提出)  第一九 首都高速道路公団法の一   部を改正する法律案内閣提出、   衆議院送付)  第二〇 印紙税法の一部を改正す   る法律案内閣提出)  第二一 日本輸出入銀行法の一部   を改正する法律案内閣提出、   衆議院送付)  第二二 不動産登記法の一部を改   正する法律案内閣提出)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、請暇の件  一、議員派遣の件  一、日程第一 国会法第三十九条但   書の規定による議決に関する件   (海外移住審議会委員)  一、日程第二 国会法第三十九条但   書の規定による議決に関する件   (売春対策審議会委員)  一、日程第三 国会法第三十九条但   書の規定による議決に関する件   (肥料審議会委員)  一、日程第四 国会法第三十九条但   書の規定による議決に関する件   (国立近代美術館評議員会評議員)  一、日程第五 国会法第三十九条但   書の規定による議決に関する件   (蚕糸業振興審議会委員)  一、日程第六 国会法第三十九条但   書の規定による議決に関する件   (畜産物価格審議会委員)  一、日程第七 国会法第三十九条但   書の規定による議決に関する件   (米価審議会委員)  一、日程第八 緊急質問の件  一、日程第九 所得税法の一部を改   正する法律案及び租税特別措置法   の一部を改正する法律案趣旨説   明)  一、日程第十 地方税法等の一部を   改正する法律案趣旨説明)  一、日程第二十 印紙税法の一部を   改正する法律案  一、日程第二十一 日本輸出入銀行   法の一部を改正する法律案  一、日程第十一 遺言の方式に関す   る法律抵触に関する条約締結   について承認を求めるの件  一、日程第十二 風俗営業等取締法   の一部を改正する法律案  一、日程第十三 昭和三十八年度分   として交付すべき地方交付税の総   額の特例に関する法律案  一、日程第十四 警察法の一部を改   正する法律案  一、日程第十五 中小漁業融資保証   法の一部を改正する法律案  一、日程第十六 林業信用基金法の   一部を改正する法律案  一、日程第十七 アジア経済研究所   法の一部を改正する法律案  一、日程第十八 電源開発促進法の   一部を改正する法律案  一、日程第十九 首都高速道路公団   法の一部を改正する法律案  一、日程第二十二 不動産登記法の   一部を改正する法律案     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      ―――――・―――――
  3. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。  この際、おはかりいたします。上林忠次君、村上義一君から、それぞれ病気のため十九日間請暇申し出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって、いずれも許可することに決しました。      ―――――・―――――
  5. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) この際、おはかりいたします。  三月三十日から四月五日まで、スイスのルッツェルンにおいて開催される列国議会同盟本年度春季会議に、本院から鳥畠徳次郎君、加藤シヅエ君を派遣いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。      ─────・─────
  7. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第一より第七までの「国会法第三十九条但書規定による議決に関する件」を一括して議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。  内閣から、海外移住審議会委員衆議院議員田中龍夫君、田原春次君、永田亮一君を、  売春対策審議会委員衆議院議員井村重雄君、小林進君、田中龍夫君、中野四郎君、本島百合子君、山口シヅエ君を、  肥料審議会委員策議院議員足鹿覺君、小川平二君、始関伊平君を、  国立近代美術館評議員会評議員衆議院議員長谷川峻君、長谷川保君、本院議貫林屋亀次郎君を、  蚕糸業振興審議会委員衆議院議員吉川久衛君、高田富之君、谷垣專一君中澤茂一君、長谷川四郎君、本院議員木暮武太夫君、小山邦太郎君、中田吉雄君を、  畜産物価格審議会委員衆議院議員谷垣專一君芳賀貢君、長谷川四郎君、本院議員仲原善一君、矢山有作君を、  米価審議会委員衆議院議員淡谷悠藏君、舘林三喜男君、根本龍太郎君、湯山勇君を任命することについて、本院の議決を求めてまいりました。  いずれも内閣申し出のとおり、各議員がこれらの委員または評議員につくことができると議決することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。      ―――――・―――――
  10. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第八、緊急質問の件、  稲葉誠一君から、日韓会談に関する緊急質問が提出されております。稲葉君の緊急質問を行なうことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。発言を許します。稲葉誠一君。   〔稲葉誠一登壇拍手
  12. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私は、日本社会党を代表し、目下急激な進展を見せている日韓会談に関し、主として池田総理緊急質問を行なうものであります。  わが党は、日韓会談朝鮮統一を妨げ、かつ、アジアの平和を乱し、アメリカ極東戦略に奉仕する軍事目的を露骨に持っていること、また日本資本主義の進出により旧植民地支配を再現すること等、高い次元に立って反対していることは、再三国会の質疑を通じ明らかにしておるところであります。この反対は、わが党を中心とし、国民各層に非常な勢いで高まっておりますが、総理は、かかる院内外反対を押し切り、今国会において、会期を延長してまでこの会談妥結批准せんとする意思であるかどうか。昨日、佐藤国務相に対し、いま行なわれている政治会談で大筋を解決し、今国会会期中に妥結調印したいと述べたと伝えられておりまするが、これは事実でありましょうか。専門家会議でいまだ十分審議していないのに、急ぎ政治会談を開くのはどんな理由によるのか。韓国要請によるものでありますか。また、金鍾泌氏の来日は、本会談に関しいかなる関連があり、同氏はどのような役割りを本会談に対し持っておるのでありますか。日韓会談わが国にどんな具体的利益、抽象的でない、具体的、現実的利益を与えるものであるか。マイナスの点はないか。日本の場合、アジア外交としてまず取り上ぐべきは中国問題であり、日韓より先に中国問題に取り組むのがアジアの中の日本として正しい政治姿勢ではないでしょうか。これをこそ国民は望んでいると考えるのであります。なぜ中国問題をあと回しにし、あわてふためき、日韓妥結をあせるのでありますか。日韓妥結さすことは中国の敵視に通じ、中国に前向きの姿勢をとると主張する池田内閣外交政策と、根本的に矛盾するものではないでしょうか。分裂せるアジア政策といわれてもいたし方がないと考えるのであります。総理は、この際、謙虚に反省の上、平和を求める歴史の進展に逆行し百害あって一利なき本会談を打ち切るつもりはないか。これらの点につき総理所見をお聞きしたい。これが第一の質問であります。  第二は、今次会談が当初よりアメリカ要請によって、すなわちアメリカ極東戦略必要性によって開始され、その終結もまた東南アジアで失敗し中国封じ込めに狂奔するアメリカ軍事経済上の要請、主導のもとに行なわれた点についてであります。この交渉は、日本アメリカ韓国、三国交渉というも言い過ぎでないことは、経過が雄弁に物語っています。そこで、  一、サンフランシスコ条約日米安保条約の調印後で発効前、朝鮮戦争勃発後一年半、休戦会談の見通しがつかないときの一九五一年十月二十日、GHQの要請により開始されたのは事実であるか。その間の経緯。  二、その後、第一次会談中断後、五三年一月、クラーク国連軍司令官のあっせんで李大統領来日、同大統領吉田首相との会談で復活したこと、またいわゆる久保田発言のため中断後、アリソン米大使の調停、ダレス国務長官の訪日、訪韓により、久保田発言の撤回となって再開したこと、及び本年一月二十九日、ラスク長官朴大統領共同声明を発しておりますが、その中で「両人は、韓日会談交渉妥結は、韓日両国のみならず全世界利益に大きく貢献するものであることに全く意見を同じゅうした」と言っているのを御承知でありますか。日韓の問題は、日本韓国の問題でありますのに、なぜアメリカがかかる共同声明をするのでありますか。これは日本に対する不当な介入ではないかと思うのでありますが、この点について所見をお伺いしたいのであります。また、この共同声明から見ましても、当然、常識的に、ラスク長官総理または外務大臣との間に、日韓会談促進に関し話し合いなり希望の表明なりが行なわれたと思われるのでありますが、この間の経緯を明らかにされたいのであります。また、UPIが伝えるところによりますと、ラスク長官は、二月末、アメリカ駐在大使武内大使を呼び、促進要請をしたとありますが、事実かどうか。  三は、アメリカ韓国間には現在米韓相互防衛条約があり、日米間には安保条約があります。日本アメリカ韓国三角形の二辺に軍事同盟があり、この強化が必然である以上、他の一辺である日韓にもさらに強く軍事的色彩が加わる危険性があることは、十分考えられるのであります。朴大統領は一月十日の年頭教書で、アメリカとの軍事紐帯強化集団安全保障体制強化軍装備現代化をうたっております。  現在、国連軍アメリカの指揮する軍隊であり、韓国全軍の作戦指揮権は、国連軍司令官である米軍の手に握られております。しかも、日米安保吉田アチソン交換公文によりまして、日本は、国連軍に今後も引き続きあらゆる援助を与える義務を負担しております。韓国にある国連軍――事実はアメリカ軍からの協力要請があった場合、これをどの程度まで受け入れるのか。拒否はできないのか。考えられる場合を想定し、答えていただきたいと思います。  三十八年八月二十三日、自衛隊航空幕僚監部作成の「防衛力整備に関する基本的見解」において、「わが国をめぐる武力戦の契機と様相」の項で、次のように言っております。「極東特に朝鮮武力紛争等が起るとき、その規模によっては、後方支援遮断のため海空輸送路を攻撃し、更に状況によっては支援発起点等攻撃に拡大することがあり得る」――これは明らかに朝鮮国内紛争に対する武力介入意味しているのであります。こんなことを総理は認めるのでありますか。かかることは憲法違反ではないか、はっきりさせていただきたいと思います。国連軍からの要請協力は、日韓会談韓国軍事力を増強するに比例して強まるのではないか。韓国の言う集団安全保障体制強化は、とりあえず国連軍という媒介を通じ日本を仲間に引き入れんとする発言ではないか、米韓相互防衛条約は、前文で、「太平洋地域における地域的安全保障の一そう包括的かつ有効な制度が発達するまでの間」とあります。米華条約も同様であります。いずれも暫定的にかかる形をとり、さらにこれを深め、広げて、日本を当事者とすることを予定されているのであります。この点に関し、かかるおそれ絶対なしというなら、国民の疑惑を解くため、総理見解を明らかにしていただきたいと思います。  四、次に外相にお尋ねしますが、エコノミスト二月四日号、「アジアの中の日本大平外相にきく」という中で、「日韓交渉も、アメリカの意向にかなりひかれているんではないかという声が。」との問いに対しまして、外相は、「それはぼくにもわからない。アメリカがそんなに日韓関係に関心があるなら、平和条約のときに、朝鮮を独立させるときに、なぜちゃんとしておかなかったのか」と述べておりますが、この意味、特に、「ちゃんとしておかなかった」というのは、いかなる事実をさして言うのですか。親米反日李承晩政権成立させ、日本と争わせ、いまにしてあわてふためくアメリカに対する、外相精一ぱいの悲しき抵抗を派したものではありませんか。また、「両国反対意見が強いが。」との問いに対し、「だから、十二、三年もかかっている。-つまり国間交渉で片付けるには事柄自体非常にむずかしい。三十六年間の日本統治評価も、両国でぜんぜん違う。一階と二階で相撲をとるようなものだ。」と述べておりますが、これは、日韓間ではむずかしいので、アメリカ要請ないし介入したことを、暗に認めているのではないか。日本統治評価がどの点でどのように食い違うのか。外相自身は、日本統治朝鮮日本統治をどのように評価しているのか。  質問の第三点は請求権に関してであります。このくらい国民が理解に苦しむものはございません。そこで  一、この協力は、韓国に対する経済援助性格を持つか。韓国後進国であり、後進国援助であるか。また、明治以来の植民地支配に対する慰謝料的なものを含むのか。自民党PR雑誌では、「独立国に対する援助朝鮮動乱の被害に対する道徳的な協力共産主義を防ぐための保険料的意味を持つ」とあるが、かかる意味を持つのか。  二、総理は本年二月二十五日、わが党山本幸一氏の質問に対し、「もちろん、われわれは、北鮮におきます朝鮮民主主義人民共和国の、いわゆる一つの政権としての存在は認めております。その政権が存在することを頭に入れて日韓交渉をしておるのでございまして、」云々と答弁しておりますが、その具体的意味総理は、韓国憲法第四条において、その主権朝鮮半島全部に及ぶと書いてありまするが、この韓国憲法を否定するのであるか。韓国の.主権をどの範囲まで認めるのか。また韓国請求権を認める以上、朝鮮民主主義人民共和国にも請求権を認めるのかどうか。  三、日本からの無償有償協力は、具体的にいかなる形をとるか。朴大統領年頭教書外貨対策の項では、こうあります。「軍納用原資材輸入一般輸入より優先的に配定する」とあります。しかれば、日本経済協力は当然韓国軍事力増強を主目的とし、これに奉仕するものではないか。ここに日韓会談成立を待望する日本アメリカ韓国三国のねらいがあり、われわれの反対する大きな根拠がございます。特に、外貨が極度に不足し、ドルの援助が減少している韓国としては、日本外貨によりこれを軍事力増強に使用するのは目に見えております。政府は、経済協力を純経済援助だけに限るつもりか。あるいは軍事力増強に資することを認めているのか。あるいは先方が何に使用しようがかまわないのか。この点を明らかにしていただきたいと思います。  質問の第四点は、漁業問題に関してであります。これは本来、日韓会談と切り離しても論ずべきものでございますが、目下、閣僚会談が進行中でありますから、赤城農林大臣から、これに臨む基本的な態度、特に日本として譲歩し得る限界線の内容と、これを越えてまでまとめたいのかどうかを、最初にお伺いしたいと思うのであります。  細目にわたりますると、一、専管水域をきめる基線の引き方、二、専管水域範囲、三、共同規制区域範囲共同規制方法――これには規制違反漁船裁判管轄権や、日韓漁業共同委員会の権限を含みます。四、韓国に対する漁業協力費等経過問題点を詳細にお聞きしたいのであります。  日韓漁業協定については、李ラインの撤廃が前提であると考えるのでありまするが、この点の主張は通ったのか。通る見込みか。李ライン設定以来のこれにより不法な拿捕が行われましたその損害の数字の内訳、これに対する損害賠償請求がどうなっているか。総額七十余億円といわれる損害が、単なる特殊保険予備費からの救済措置で解決できるものではありません。この損害をどうするのか、うやむやにするのか。この点の経過をはっきりさしていただきたい。  また、専管水域領海とは違うのではないか。韓国領海はどこまでと考えるのか。専管水域への入会権主張は十分心得てやると、井手さんの質問農林大臣は答えておりましたが、一体どうなったのか。これらの点についてお尋ねしたいのであります。  第五点は、法的地位の問題であります。法的地位の問題は、在日朝鮮人にとって非常に重要でありますが、永住権許可範囲強制退去問題等、現在どの点に意見の一致または相違があるのか。特に国籍の問題について、日韓会談に伴い在日朝鮮人六十万の国籍をいかなる方法で決定するのか。また、これら全部に協定を適用しようとするのか。当然のことながら、韓国人朝鮮人との間に、各種の処遇に関し一切の差別をしないと約束できますか。また、この機会韓国籍を強要することはないか。  また、北朝鮮との往来が問題になり、自民党の諸君をも含め、大きな国民運動となり、現在、二十の都道府県、八百八十九の市町村がその往来を認めよとの決議を行なっております。これは決して政府の言うがごとき政治運動ではありません。在日朝鮮人が、北朝鮮に居住する肉親の病気見舞いや墓参のために往来することすらできないのは、大きな人道上の問題であり、人権に関する世界宣言趣旨にも反することであります。政府は、北朝鮮に郷里を持つ者は一万三千人しかいないと言っておりますが、これは形式的な本籍を言っているのにすぎず、現実北鮮に帰った者は八万以上いるのに、事実を曲げるもはなはだしいものがあります。政府は、憲法第二十二条、「外国への移住の自由」の中に、外国人外国旅行の自由、したがって、在日朝鮮人の一時的滞在旅行も含まれると解すべきではないか。しからば、これが申請書受理すら認めていないのは、全く違法と言わざるを得ないのであります。申請書受理を認めない法律的根拠を、条文に照らし、明らかにされたいと思います。また、外務大臣は、この運動について、事実を正確に踏まえた上で静かなる話し合いをしたいと答弁しておりますが、この趣旨は、ケースによっては往来を認めてもよいとの趣旨と解してよいか。  以上、日韓会談に関連する諸問題の質問を行なったのでありまするが、総理は、南北朝鮮統一を望むことは社会党より私のほうが強いと言い切っております。では、具体的にいかなる方法を持ち、これに寄与せんとしているのか……。
  13. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 稲葉君、時間がきました。
  14. 稲葉誠一

    稲葉誠一君(続) 日韓会談統一を妨げる最も大きなものではないか。総理は、一九四八年十二月十二日の国連決議を金科玉条としておりますが、その後の国連内における変化や、韓国内における統一の機運を、どう把握しているか、この点を明確にしていただきたいのであります。  わが党は、国民大多数とともに、アジアの平和と朝鮮南北統一を阻害し、日本資本主義植民地支配の再現で、軍事的性格を持つ日韓会談に、断固反対をいたします。(拍手)いまわれわれのしなければならないことは、アジア緊張を激化することではございません。アジア緊張を緩和することであり、まっ先に前向きに中国問題と取り組むことだと思います。これに反する日韓会談は、院内外の全勢力をあげて、これが成立を阻止する決意であります。平和に逆行し、韓国軍事力増強に狂奔する……。
  15. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 稲葉君、時間です。
  16. 稲葉誠一

    稲葉誠一君(続) 池田総理の猛反省と、日韓会談即時打ち切りを要求し、私の質問を終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  17. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答えいたします。  日本韓国とは、地理的に、歴史的に、民族的に、文化的に、最も親しく交わらなければならない国柄であるのであります。しこうして、両国民とも、その大多数が、できるだけ早く国交を正常化しようと熱望しておるのであります。私は、この両国民の熱望を達成すべく、できるだけ早い機会にその実をあげたいと努力いたしておるのであります。決してあせってはおりません。将来永久に両国民ほんとうに手を握り合い、アジアの繁栄と世界の平和に貢献するよう、その実績をあげるべきだと考えております。相手のあることでございますから、いつどうするということは、いまのところ申し上げられませんが、できるだけ早いほうがよいのであります。  なお、日韓国交正常化は何の利益をもたらすか、こういうことでございますが、隣り合わせの両国が仲よくすることは、万事利益があるのであります。万事利益があるのであります。また、中国問題が重要だからといって、日韓会談を延ばせという理屈は、理論的には出てきません。日韓会談も早くやるし、また、中国問題も重要な問題だから、国連において世界の世論を背景として解決しようとしておるのであります。いま中国問題を解決しなければ、日韓正常化はだめだ、よくないということは、十二、三年前の、全面講和でなければだめだといったあのやり方をいまもなお続けていく、その何と申しますか、考え方には、国民はついていかないことを、はっきり申し上げておきます。したがって、いま日韓会談を打ち切るどころか、ほんとう誠心誠意これを進めていくことをはっきり申し上げておきます。  なお、ラスク朴大統領との共同声明は、これに対しての批判は加えません。私は、韓国、また、台湾政府軍事同盟を結ぶつもりは全然ございません。また、韓国は三十八度線以南を支配していることを頭に置いてわれわれは交渉を続けておるのであります。  なお、また、最後に、 (稲葉誠一君「主権のことを言っているのですよ。領土権じゃなくて、韓国主権ですよ。」と述ぶ)北鮮韓国との統一は、お話のとおり、私は最も望むものでございまするが、この統一をじゃましているものは、国連決議を聞かない北鮮にその原因があることを、はっきり申し上げます。しこうして、一九四八年の決議ばかりではございません。昨年の第十八回の国連総会におきましても、韓国朝鮮正式機関として朝鮮問題の審議に昨年も当たらしておるのであります。われわれは、この意味におきまして、統一を望みますが、願わくば、北鮮国連監視のもとに自由選挙に基づく投票を一することを、北鮮国連決議を認めたら統一ができることを、ここに申し上げたいのでございます。  その他の点につきましては外務大臣よりお答えすることにいたします。(拍手)   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍   手〕
  18. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 日韓会談アメリカとの関係でございますが、従来、私どもアメリカの要人としょっちゅう会っておりますが、アメリカ側が日韓会談の成功を希望しておることは事実でございますが、これを調停するとか、あるいはこれに介入するとかいう意思もなければ、また、そういう事実もございません。武内大使ラスク長官との会談におきまして日韓交渉問題が出たということの報告は受けておりません。  それから、朝鮮における国連軍に対する協力の問題でございますが、国際連合の軍隊が日本におる場合、これに対する支持は、一九五一年、御指摘のように、吉田アチソン交換公文で約束されておりますが、これは安保条約改定後もそのまま維持されておりますことは御承知のとおりでございますが、国連軍に対するわが国の約束はこれだけでございまして、わが国以外におる国連軍に対する協力の約束は何らいたしておりません。  それから、エコノミスト誌上の私の談話に関しての御質問でございましたが、二国間の交渉、これは稲葉さんと全然同感でございまして、日韓交渉は純然たる日韓の間の二国間交渉であると思っております。そうしてこれが十二年間もかかっておってなおまだ終結を見ていないということは、これがいかにむずかしい問題であるか、したがって、三十六年間の統治の評価ということについて両国の間に相違があることを実証しておると思うのでございまして、この一事をもちましても御理解いただけると思うのでございます。そうでなければ早く片づいておるはずでございますが、非常にむずかしい問題である。つまり、三十六年間の日本の統治の間に設定された実定法、これを認める立場に向こうは立っていないという事情でございまするから、この会談がいかにむずかしいものであるかということは、法律の専門家のあなたはよく御承知のことと私は思うのでございます。  それから請求権の問題と経済協力の関係でございますが、私どもがいま大筋の合意を見ておりますのは、純然たる経済の協力でございまして、請求権の問題とは直接の関連はございません。われわれが目ざす有償無償の経済協力を将来にわたってやるということを約束することによりまして、その随伴的な結果として、平和条約にいうところの請求権の問題が解決したことを双方認め合うと、こういう考え方に立っておるわけでございまして、経済協力は一〇〇%経済協力でございまして、請求権とは何らの関係がないわけでございます。  それから北鮮との関係でございますが、北鮮につきましては全く白紙の状態でおるということは、たびたび本院でも御答弁申し上げているとおりでございます。また、この経済協力の具体的細目につきましては先方とまだ交渉に入っておりません。  それから法的地位の問題でございますが、これは終戦の日以前に日本人として来日し、引き続き在住いたしておった者と日本で生まれたその子孫でございまして、日本の言語、慣習に同化しておられる方々が、平和条約発効時まで日本に居住しておって、そして平和条約発効とともに自分の意思によらないで国籍を失ったと、こういう事情は十分考えまして、私どもといたしましては、一般の外国人と違った処遇を考えなければならないという考え方に立ちまして、永住権という概念でこの処遇の問題を考えつつあるわけでございます。で、いまの問題は、この永住権をどの範囲まで認めるか、そして処遇の具体的な内容はどうかという点につきまして、せっかく交渉いたしておるわけでございまして、こういう特殊事情は十分考慮に入れて交渉にあたっておる次第でございます。  最後に、自由往来の問題でございまするが、この問題はたいへん大規模の運動が全国的に展開されたのでございますが、私といたしましては、やや理解に苦しむわけでございます。北鮮との間に御親類関係がある方々の規模と今度展開された運動とが、あまりにバランスを失しておると思うのでございまして、私が静かな話し合いをいたしたいと言うのは、そういう組織的な運動を起こされなくても、問題は静かにお話し合いができるのではないかということを御注意申し上げたわけでございます。なお、お考えいただきたいのは、私どもといたしましてはこれが、いま現在日本がとっておる立場が国際法上違反であるなんてちっとも考えておりません。外国人の出国は自由でございますが、その再入国の許可を含めて外国人に対する入国許可は、当該国の全く自由裁量によってなされる処分でありますことは、稲葉さんも御承知のとおりでございまして、これは国際法上当然の日本に与えられた権能であると思っております。人権に関する世界宣言におきましても、「何人も、自国を含むいずれの国をも去り及び自国に帰る権利を有する。」、これは自国民の帰国の権利については言及いたしておりますけれども、外国人のそれには言及されていないことは、御案内のとおりであります。私どもはこういう立場に立ちまして、わが国の国益を判断しながら、この問題について検討をいまいたしているわけでございまして、私どもは、在日朝鮮人ばかりでなく、在日外国人に対して、世界各国から見て、十分評価に値するだけの処遇を与えている民主国家であると自負いたしているわけでございまして、この問題につきましても公正に考えて検討してまいりたい、こいねがわくは、あのような組織的な運動を展開される必要は毛頭ないのではないかというように私は考えております。(拍手)   〔国務大臣赤城宗徳君登壇拍手
  19. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 日本韓国との間の漁業問題で交渉している経過あるいはわが国の態度等についてのお尋ねでございますので、御答弁申し上げます。  第一は、李承晩ラインを撤廃させるのだろうか――李承晩ラインは、御承知のように、国際法上も不法の問題でありますので、これがもちろん前提でございます。日ソの漁業交渉等におきましても、御承知のように、ブルガーニン・ライン等がありましたが、条約ができまして、ブルガーニン・ラインは撤廃さしたと、こういうこともあります。特に李承晩ラインは、前提として、撤廃しなければ、漁業交渉の中に入っていけないわけでございます。そこで、それを前提として、しからばどういうふうにしたらいいかということでございますが、魚類の持続的な維持をしてゆくというために漁業問題で条約を結んでいる例は、いま申し上げましたように、ソ連ともやっておりまするし、あるいは日本アメリカ、カナダの関係もあります。あるいは中共との間では、国交が回復しておりませんから、民間の漁業協定ができております。そういう意味におきまして、魚類の持続的維持をするということから、この問題も解決していかなくちゃならぬと思っております。そこで、そういう両方が公平で合理的で、そうして実施可能な方法で、魚類の維持保存をしてゆくということになりますが、その前提として、これまた、どういう場所にそういうところを設けるか、そのためには、第一に、いまお話がありましたような専管区域をきめていかなくちゃなりませんし、専管区域をきめるのには、その前に基線を引く必要がございます。その基線の引き方等につきまして、私どもは、国際条約あるいは国際慣例に従って、その国の低潮線を基点として線を引くべきだ、こういう主張でございますけれども、国際条約あるいは国際慣例等にありまするように、島が非常にたくさんある、こういうところ等におきましては、例外として直線基線で引いてもいいということがありますので、この韓国との関係におきましても、西海岸及び南海岸――非常に入り組んでおりまして島が多いところは、直線基線を引いて、それから専管区域をはかってゆくということも、これはやむを得ない問題じゃないかと、こういうふうに考えております。で、その基線から十二海里を専管水域とするということが、これはもう国際法上、国際慣例上も大体それできまっておりますが、韓国側は四十海里ということを主張いたしておりまして、私のほうといたしましては、十二海里以上を出るということは絶対承服し得ない、こういう態度で進めておりますが、大体まあ、そういう線を押し通すことができるのではないかと思いますが、しかし、その線の引き方等につきまして一致しない面がございます。その十二海里の外側に共同規制の――これは公海でございますけれども、そこへ共同規制区域を設ける必要があろうか、こういうことで進めておりますが、それにつきましては、船の数とか、その他によりまして、魚類の維持保存ができるような、公平な、合理的な、実施可能な線でこれを進めていこうという進め方をいたしております。  それから、取り締まり及び裁判管轄権はどうなるかということでございますけれども、専管水域内におきましては、沿岸国がこれを持っておる。専管水域外におきましては、漁船の旗国、つまり旗をつけておる国がそれぞれこれを持っておるというのが国際先例でございます。専管区域内に入会権を認めた場合、そういう点等もあります。これは国際先例を十分考慮の上、その線をはずれないように措置していきたいと、こういうふうに考えております。  それから、漁業協力についてはどうかということでございますが、これは、先ほど外務大臣から、前々大体話し合いができておる無償三億ドル、有償二億ドル、そのほかに民間の信用供与ということで、その他相当額の民間信用供与ということに話がなっていますが、その一部として漁業協力を行なうということで、その額等につきましては、まだ詰め合っておりませんが、そういう方法でやっていきたいと思っております。  それから、李ラインができましてから、非常に拿捕されたり、損害日本で受けております。どれくらいかということでございますが、現在までに、総計三百十八隻拿捕されて、そのうち、未帰還のものが百八十三隻あります。また、乗り組み負の合計は、三千八百十七人が抑留されておりましたが、現在抑留中の者はございません。そこで政府といたしましては、従来から、拿捕のつど、これに伴う損害賠償請求権を留保してきておるのでございますが、現在継続中の日韓交渉におきまして、この拿捕船の損害賠償請求権の問題も、漁業問題の一環として解決していきたい、こういうふうに考えております。(拍手)   〔稲葉誠一発言の許可を求む〕
  20. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 稲葉君、何ですか。
  21. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 答弁漏れが山のようにあります。答弁漏れが非常に多いんです。   〔「委員会でやれ」「議長、議事進行」と呼ぶ者あり〕      ―――――・―――――
  22. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第九、所得税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案趣旨説明)、  両案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。田中大蔵大臣。   〔国務大臣田中角榮君登壇拍手
  23. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 所得税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  政府は、今後におけるわが国の社会、経済の進展に即応する基本的な租税制度を確立するため、一昨年税制調査会を設け、鋭意検討を加えてまいりましたが、昨年末、同調査会から、最近における経済情勢の推移に応じて、現行税制につき、さしあたって改正を必要とする事項について、昭和三十九年度の税制改正に関する臨時答申を得たのであります。その後、政府におきましては、同答申を中心にさらに検討を重ねた結果、昭和三十九年度におきましては、中小所得者に重点を置いて所得税の負担を軽減するとともに、当面要請される企業資本の充実と設備の更新を促進し、産業の国際競争力の強化に資する等のための措置を講ずることとし、国税において平年度千三百七十億円程度の減税を行なうことといたしたのであります。これらの税制改正諸法案のうち、今回、ここに、所得税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案を提出した次第であります。  まず、所得税法の一部を改正する法律案の内容について、その大要を御説明申し上げます。  所得税については、まず、中小所得者を中心とする所得税負担の軽減をはかることとしております。すなわち、基礎控除を現在の十一万円から十二万円に、配偶者控除を現在の十万五千円から十一万円に、それぞれ引き上げることとするほか、五万円の扶養控除額が適用される年齢区分を、現在の十五歳以上から十三歳以上に引き下げてその範囲の拡大をはかるとともに、十三歳未満の扶養親族の扶養控除額についても、現在の三万五千円を四万円に引き上げることとしております。また、最近における給与支給額の上昇等を考慮して、専従者控除について、青色申告者の場合は、年齢二十歳以上の専従者の控除限度額を現在の十二万五千円から十五万円に、二十歳未満の専従春の控除限度額を現在の九万五千円から十二万円に、白色申告者の場合は、その専従者の控除額を現在の七万五千円から九万円に、それぞれ引き上げることとするほか、特に給与所得者の負担の現状に顧み、給与所得控除について、定額控除を現在の一万円から二万円に、控除限度額を現在の十二万円から十四万円に、それぞれ引き上げることとしております。  以上申し述べました諸控除の引き上げにより、夫婦子三人の計五人家族の標準世帯を例にとりますと、所得税が課されない所得の限度は、給与所得者では現在の約四十三万円までが約四十八万円までに、事業所得者のうち、青色申告者については現在の約三十九万円までが約四十三万円までに、白色申告者については現在の約三十三万円までが約三十七万円までに、それぞれ引き上げられることになるのであります。  次に、退職所得の特別控除額について、現在、在職期間の年齢区分に応じて控除額に差が設けられているのを、年齢区分を廃止して一律に勤務一年につき五万円に引き上げるほか、住宅または家財について支払った損害保険料について、保険期閥等が十五年未満の短期の火災保険の場合は二千円を、保険期間等が十五年以上の長期の建物更生共済等の場合は五千円を、それぞれ限度としてこれを課税所得から控除する損害保険料控除制度を創設することとし、なお、生命保険料控除の限度額、譲渡所得等の特別控除額、寄附金控除の控除対象限度額等についても、それぞれその引き上げをはかることといたしております。     ―――――――――――――  その他、所得税制の整備合理化措置の一環として、短期保有の資産の投機的な譲渡による所得に対する課税について、半額課税等の方式をとらないこととする等、所要の規定の整備をはかることといたしております。  次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案の内容について、その大要を御説明申し上げます。  第一は、輸出所得の特別控除制度は、本年三月末にその適用期限到来と同時に廃止するわけでありますが、国際収支の安定改善をはかることが緊要でありますので、この際、企業の国際競争力の強化等に資するため、次の措置を講ずることとしております。  その一は、輸出割り増し償却制度について、その適用期限を三年間延長するとともに、普通償却範囲額に輸出割合を乗じた額の八〇%相当額を割り増し償却の範囲額とすることとし、制度の拡充と簡素合理化をはかることであります。  その二は、技術輸出所得控除制度につき、その適用期限を五年間延長するとともに、取引基準にかかる控除割合を海外への技術提供による収入金額の五〇%から七〇%に引き上げ、さらにその適用対象に対外支払い手段を対価とするコンサルティング業務の収入及び輸出貨物の運送その他対外支払い手段を対価とする運送業務の収入を含め、この場合の取引基準にかかる控除割合を、それぞれ収入金額の二〇%または三〇%とすることであります。  その三は、海外市場の開拓に必要な特別の支出に備えるため、昭和三十九年四月一日から五年の間、商社については輸出取引額の〇・五%、製造業者については一・五%相当額の損金算入を認める海外市場開拓準備金制度を創設することであります。なお、この準備金にかえ、中小企業が共同して行なう市場調査費用等に充てるため、特定の商工組合についても中小企業海外市場開拓準備金制度を創設することといたしております。  その四は、新開発地域に対する投資を促進するため、昭和三十九年四月一日から五年の間に行なわれる新開発地域に対する特定の投資について、その取得価額の二分の一相当額以下の金額の損金算入を認める海外投資損失準備金制度を創設することであります。  第二は、企業の資本充実に資する見地から、支払い配当に対する法人税率を二八%から二六%に引き下げるとともに、年所得三百万円以下の部分に対応する支払い配当及び特別法人の支払い配当に対する法人税率も、これに準じ、それぞれ引き下げることとしております。なお、配当受け取り株主の益金不算人割合及び配当控除割合は現行どおり据え置くことといたしております。  第三は、資本市場の育成に資するため、新たに次の措置を講ずることといたしております。  その一は、証券投資信託の収益分配金について、昭和四十年三月三十一日までに支払われるものに対し、五%の税率による源泉分離課税方式を採用することであります。  その二は、証券取引において生ずる事故についての証券業者の補償責任の明確化をはかる措置の一環として、昭和三十九年四月一日から五年の間、株式数を基準として一定割合で計算した金額の損金算入を認める証券取引責任準備金制度を創設することであります。  第四は、科学技術の振興に資するため、従来から設けられている試験研究用機械設備等の特別償却制度を統合して、昭和三十九年四月一日から三年の間に取得した開発研究機械等については、初年度において取得価額の九五%相当額を償却できることとするほか、鉱工業技術研究組合に対する支出金の特別償却制度について、その償却割合を初年度七〇%、自後二年間にそれぞれ一五%とする現行制度を初年度一〇〇%とする制度に改め、さらに、重要国産技術の開発に資するため、国産一号機の取得につき初年度三分の一の特別償却制度を創設することといたしております。  第五は、以上述べましたもののほかに、特別償却制度について次のような措置を講ずることとしております。  その一は、住宅建設の促進に資するため、現行の新築貸家住宅の割り増し償却制度について、その適用期限を昭和四十二年三月三十一日まで延長するとともに、昭和三十九年四月一日から三年の間に新築したものについては、その割り増し率を現行に比しそれぞれ十割ずつ増加することといたしております。  その二は、工業用水法に規定する井戸から工業用水道への強制転換施設につき、初年度三分の一の特別償却制度を創設することであります。  その三は、現行の重要産業川合理化機械の特別償却制度につき、その償却割合を初年度三分の一から四分の一に縮減することであります。  第六は、海運業再建整備に伴う措置の一環として、船舶の減価償却に関し、運輸大臣の承認を受けた整備計画の実施中は、船舶についての償却不足額の打ち切りを行なわないこととするほか、その整備計画に基づく合併等に際しては、償却不足額の引き継ぎを認めることといたしたのであります。  第七は、協同組合に対する課税の特例といたしまして、農業協同組合、漁業協同組合、事業協同組合、現業協同小組合及び商工組合等のうち、一定の要件に該当するものに対しては、留保金が出資の四分の一に達するまでは、昭和三十九年四月一日から五年の間に終了する各事業年度における留保所得の二分の一について、法人税を課さないこととする制度を創設することといたしております。  第八は、医療法人に対する課税の特例として、医療法人のうち、その事業が公益の増進に著しく寄与し、かつ、公的な運営がなされるものとして大蔵大臣の承認するものについては、その所得に対する法人税率を、現行年二百万円超三八%、年二百万円以下三三%から、一律に二八%に軽減することといたしております。  第九は、法人の交際費の損金不算入制度の改正であります。  すなわち、この制度の適用期限をさらに三年間延長するとともに、最近における交際費支出の状況にかえりみ、その控除額を、現在の年三百万円と資本金額等の千分の一との合計額から年四百万円と資本金額等の千分の二・五との合計額に引き上げるとともに、損金不算入割合を二〇%から三〇%に引き上げることといたしております。  第十は、贈与税の課税の特例でありますが、農業を経営する個人が推定相続人に農地を贈与して、その農業経営を行なわせる場合には、一定の条件のもとに、贈与税の納期限の延長を認めるとともに、その後相続があったときは、その農地を相続財産に含めて相続税を課することとし、贈与税との調整をはかることといたしておるのであります。  最後は、昭和三十八年度末に期限の到来する特別措置のうち、特定のものについての期限の延長であります。すなわち、航空機の通行税の軽減措置については一年、増資登記に対する登録税の軽減措置等については三年と、それぞれその適用期限を延長することといたしております。  以上、これらの法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第でございます。(拍手
  24. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。柴谷要君。   〔柴谷要君登壇拍手
  25. 柴谷要

    ○柴谷要君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されました租税二法に対し、総理大臣並びに大蔵大臣に対し質問をいたさんとするものであります。  まず最初にお伺いいたします点は、このたびの減税案は公約の違反ではないかということであります。  政府は、さきの総選挙で、特に物価問題と並んで減税を重点施策に取り上げ、所得、地方、企業の減税を重点に、二千億円減税のスローガンを掲げました。ところが、ふたをあけてみると、表面的には、国税で平年度千三百七十六億円、初年度千三億円、地方税と合計いたしますと、平年度二千百五十二億円、初年度千四百二十五億円と、公約を果たしたかのようにつじつまを合わせておりますが、現実は、ガソリン税及び軽油引取税の増徴等により、実質減税規模は、来年度国税で七百八十八億円、地方税と合わせても千二百十億円にすぎないのであります。しかも、これは、一方では、税制調査会の答申には全然あらわれていない十三件の大企業優遇の租税特別措置を含めての話であります。二千億減税に拍手を送った勤労者に対する所得税減税は、初年度わずかに六百四十九億円に削られたのであります。この結果、国民所得に対する租税負担率は、三十八年度の二一・五%かつ一挙に二二・二%にはね上がったのであります。減税どころか、逆に増税ではありませんか。これは明らかに公約の違反であると同時に、税の不公平をますます拡大するものであると思うのでありまするが、総理大臣の御所見を承りたいのであります。  第二に、今回の税制改正案は一体どのような方針で行なわれたのでありましょうか。何ら一貫性がないのであります。このことは、改正案が作成される過程を見ていきますと明らかでございます。すなわち、政府は、当初、企業減税を中心に一千億円減税の方向をとっていたのでありますが、その後、所得減税を主張する税制調査会との意見の対立をおそれて、所得税、地方税の減税を中心とするよう変わってまいったのであります。臨時国会では、選挙対策上の見地から二千億円減税を打ち出し、今回の改正案は、その実質的切り下げを行なうなど、二転三転しているのでございます。そこには、政府として何ら一貫した財政政策を発見することができないのであります。そこにあるものは、開放経済体制に備えて企業の国際競争力を増すためには、税の不公平などの理論は言っておられないということだけでありましょう。  申すまでもなく、現在、国民が減税を希望しておりますのは、何より国民の税負担が、大衆所得について見る限り、戦前に比べても外国に比べても絶対的に重い。国税、地方税、さらには、所得間、地域間を通じて、負担が著しく不均衡であることでございます。物価高に伴う名目的所得増による実質増税が放置されているという現実に根ざしているのであります。このような観点から、今回の減税は何より所得税を中心に置くべきではないかと思うのであります。  さらに、来年度は、前年の当初予算に対し、六千八百二十六億円という史上最大の自然増収を見込んでいることであります。これは、予算の自然増、選挙政策のあと始末などのための財源難から、ぎりぎり一ぱいに歳入を見積った結果でありましょう。この自然増収というのは、真に国民の所得が向上したから生じた増収ではなく、物価高騰に伴う名目所得の増加に基づく税金の取り過ぎ分であります。国民生活の実態からは遊離した増収であります。これを限度一ぱいまで見込み、減税に回す分を極力抑え、残りを全額歳入増に細み込むことは、さなきだに、これまでの積極財政、オーバー・ローン政策の行き過ぎから経済危機を招いているときだけに、ますますインフレ的傾向を助長するものであると言わなければなりません。自然増収は、これを全部国民に返すのが当然であり、この際思い切って所租税減税を実施すべきであると思うが、大蔵大臣の御所見を承りたいのでございます。  さらに、税制調査会の答申を政府はどのように受けとめているか、お伺いいたしたいのであります。単なる目安にすぎないのかどうか、お答えをいただきたいのであります。  第三に、所得税の課税最低限についてお伺いをいたします。  本改正案によりますと、夫婦子供三人の標準世帯のサラリーマンの課税最低限は、三十九年度四十七万一千三百七十七円、独身者では十七万二千九百三十五円となっているのでありますが、これは、三十五年に比べまして約三〇%減税になっております。しかしこれは、昨年度において税制調査会から、特に物価値上がりによる実質増税の調整の必要性が強調され、三十八年度は約三〇%の実質増税になるので、この分だけは調整すべきだと、わざわざ「調整」と断わって答申したにもかかわらず、政府は、財源難を理由に、これを半分に削り、かえってその分を利子配当課税の軽減に回して、批判を浴びたことも、記憶に新しいところであります。そのため、昨年来の物価高騰、そしてさらに三十八年度において実績見込み七・二%、三十九年度四・二%の上昇が見込まれ、勤労者の税負担が増加の一途をたどっていることを考え合わせますと、今回の政府の減税は、単に、昨年改正すべき分の穴埋めとしての税法上の減税にすぎないのであります。国民負担は一向に下がらないのであります。しかも、今回の課税最低限の基礎となっております計算は、税制調査会の資料によりますと、成年男子一日当たりの食費百五十円四銭を基礎としたマーケット・バスケット方式により計算されているのであります。一体、一日百五十円で生活できるというのでありましょうか。この結果、最低生計費には課税すべからずという税制上の大原則は無視され、継続的物価上昇に伴い、税金が最低生活費に食い込んでいるのであります。  そこでお伺いしたい点は、所得税における課税最低限は、税金をかけてもいいぎりぎりの線ではなく、税金をかけてはならない絶対の線であり、少しぐらい物価上昇にも耐えられるものでなければならないと思うのでありまするが、大蔵大臣はいかようにお考えでございましょうか、お伺いいたしたいのであります。  また、三十九年度における課税最低限は、アメリカの百二十万円、西ドイツの八十三万円などを考え合わせても、標準世帯最低六十万円までは無税とすべきではないかと思うのでありますが、この御見解についても承りたいのであります。戦前の課税最低限が八十万円程度になっていたことを考え合わせますと、それよりもなおはるかに低い水準なのであります。  さらにお伺いしておきたいことは、物価上昇に伴って生ずるいわゆる税法上の調整減税は、当然、実質減税と区別して取り扱うべき性質のものでありまするが、三十九年度の場合、調整減税すら行なわれていないのではないか。一体、所得税における減税は、物価値上がり調整のための減税がどのくらいで、実質減税がどのくらいか、その割合だけでも示していただきたいのであります。  さらに、今回の課税最低限は、税調の答申を下回るものとなった理由として、給与所得控除の切り下げが行なわれているのでありますが、切り下げの根拠をお示し願いたいのであります。  第四に、租税特別措置につきましては、これまでたびたび整理改廃が論議され、税制調査会でもこれまで整理を主張しているのであります。昨年十月四日に出された基礎問題小委員会中間報告におきましても、この問題を取り上げ、「租税特別措置は、負担公平原則や、租税の中立性を阻害をし、総合累進税率構造を弱め、納税者のモラルに悪影響を及ぼすなど、多くの欠点があるから縮小すべきである」と述べ、さらに「現行特別措置のうち最も弊害が大きいものは、利子配当課税の特例、有価証券譲渡所得の非課税等、資産所得に対するものであり、これらの特別措置が貯蓄性向に及ぼした有効性も実証しがたいから廃止すべきである」と述べているのであります。しかるに、政府は、この方向と逆行し、輸出所得控除の廃止にかわる輸出振興のための政策減税など、税制調査会の答申にはない新しい措置をも加えて十六項目に及んでいるのであります。ここで特に問題にしなければならない点は、配当軽課と投資信託分配金の源泉分離課税化であります。配当分離課税につきましては、証券業界の強い突き上げによって、政府の態度は動揺し続けてまいりましたが、大蔵大臣は、今後配当分離課税は行なわないと言明されておられますが、なお一歩前進して、利子配当などの優遇措置をもあわせて改廃に力を注ぐべきではないかと思うのでありますが、御所見を伺いたいのであります。  これらの大企業資産所得偏重の特別措置による減税は、三十八年度国税で千九百九十六億円、三十九年度二千九十八億円とふくれ上がり、二十五年以降の累計は、国税だけでも一兆四千億円をこえているのであります。しかも、これらの措置により、独占企業の実効税率は二〇%ないし二五%程度にも低くなっているのであります。これらの特別措置につきまして重要なことは、その政策効果そのものよりも、その制度自体が固定化し、既得権化し、拡大の一途をたどっているということであります。さらには、このことが総合累進税制を後退させ、税体系をずたずたにしてしまっておるのであります。格差をますます拡大させる結果となっている事実を見のがすことはできません。特別措置は、シャウプ勧告以後の激動期の日本経済を強めるために、臨時的性格をもってスタートしたものであります。期限がくれば当然廃止させねばならないものであります。しかも、このように不合理きわまる特別措置はこれを廃止するという原則に立って、大胆に整理すべきが当然でありましょう。特に投資信託配当分離課税などを改め、負担公平の原則に立って、総合課税の確立をはかるお考えがあるかどうか、明らかにしていただきたいのであります。資産所得に厚く、勤労所得に薄い減税というアンバランスは、きっぱりやめていただきたいのであります。  第五に、今回の改正は、物価高の中で逆進的傾向の強い間接税の減税は全く無視されているという点であります。政府は公共料金値上げ一年ストップをきめながら、かえってバス料金など公共料金の引き上げにはね返ることが必至と見られるガソリン税や軽油引取税の引き上げによる増税の方向をとっていることであります。これでは政府みずからが物価上昇ムードをあおる結果となることは明らかでありましょう。物価値上がりを押えて、政府は進んで値下げに先鞭をつけるとともに、減税から取り残された広範な低所得者層に対する減税効果を期待するならば、大衆生活必需物資の間接税の引き下げを強力に推進をし、その結果を末端消費者価格の引き下げに反映させることが必要でありましょう。このような立場から、いまこそ政府は大衆生活必需品には税金をかけないという原則に立って、酒、たばこ、砂糖を初め、物品税、入場税などの大衆減税を行なう意思があるかどうか、お尋ねをいたしたいのであります。  最後に、私は、政府の税制改正に対する根本的方針及び税制調査会に対する政府の態度につきましてお尋ねをいたしたいのであります。  現在の税制は申すまでもなく所得再分配の機能を期待しているということであります。特に、現在のように大企業中心の高度成長政策の結果、重大なるひずみが生じておりますときは、とりわけ社会的観点からの税制改正が最も重要と思われるのであります。しかるに政府は、相変わらず不労所得、資産所得優遇の税制をとり続け、むしろ格差を拡大させているという事実を見のがすことはできないのであります。単に小手先だけの改正では、大衆課税の解消は困難なところに追い込まれており、逆にかえって格差の拡大、税体系の混乱を導く結果となっていると思うのであります。政府はこうした事実にかんがみ、「大衆に安く、公平に、わかりやすく」の三原則に立って、税体系をこの際抜本的に再編成する意思がおありかどうか、お伺いをいたします。また、税制調査会はこうした意味合いから設置されてきたにもかかわらず、政府は、税制調査会の答申のうち、都合の悪いものは削り、新たなものを加えるなど、税調を隠れみのとしているきらいがないでありましょうか。政府は、税制調査会をどのような認識をもって臨んでいかれるのか、明らかにしていただきたいのであります。  私の質問の要旨は、総理大臣に対し三点の御回答をいただきたい。大蔵大臣には以上十一点についての御質問を申し上げまして、私の質問を終わる次第でございます。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  26. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答えいたします。今回の減税は公約に違反しているというお話でございます。私は、公約違反していない、あるいは当初の公約以上に減税していると考えております。御承知のとおり、前の臨時国会では千七、八百億円、まあ二千億近い減税と言ったのでございます。その後、選挙中に二千億円、そして結果は二千億円をこえる平年度の減税でございますから、公約よりも、もっと多いと言っても支障ないくらいの減税でございます。  なお、次の税負担でございますが、これは予算委員会で申し上げましたごとく、私は税負担が国民所得の二二・一とか、二二・八と限るべきではない。やはり一人当たりの国民所得がどうふえていったか。そして今後どういうふうなふえ方をし、そして社会保障その他、社会資本、財政的サービスを政府がどれだけやっているかということを考えてきめるべきものだ。いま税制調査会で二一%程度が適当だ、あるいは二〇%が適当だと言ったときの、一人当たり国民所得は何ぼでございましたか、四百ドルを割っておった。十三、四万円のときじゃございますまいか。それがいまや十八、九万円、五百二十ドルになったときには、二〇%とか二一%とかに限るべきじゃない。イギリスやドイツは三十何%の負担じゃございませんか。フランスは二九%、そういうことを考えますと、国民所得がだんだん上がってくると、その割合は、社会保障あるいは社会資本のための政府の施策によりまして、ある程度上がってくることも、これは当然のことなんで、いつまでも二〇%とか二一%とかに限ろうとする考え方は、私はとらないのであります。  また、次のお話の、減税が少ないとかなんとか言われますが、過去十二、三年間に、日本ほど減税した国がどこにございますか。減税をしながら社会保障をどんどんしている国が世界のどこにございますか。世界の人は日本の奇跡、ことに毎年減税をやるのは、どこに日本のいわゆる奇術があるのかと、ふしぎがっているぐらい。しかし、私は今後もできるだけの減税をしてまいりたいと思っております。いま四十八万円の免税点ということにつきまして六十万円というお話がございますが、東京に住んでおられる五人家族の方々に、社会保障――生活保護費として二十万円足らずしか出しておりませんじゃございませんか。私はこれを考えると、四十八万円の免税点というものは、いまのところ適当でございます。今後はふやしてまいりますが、ほんとうにお気の毒な方のことをお考えになって税制を論じてもらいたいと思います。  なお、税制調査会に対する考え方でございますが、お話にもありましたごとく、税制調査会には、租税制度の基本的なあり方につきまして諮問しておるのであります。わが国の租税制度の基本的なあり方について諮問しております。しかし、その基本的なあり方のまだ答申が出ません。検討中でございます。したがいまして、随時政府が毎年やりまする減税案について御審議願っております。で、初めの税制調査会の意向は、二千億円近い、いや、それ以下の減税でございましたから、一応税制調査会案を考えておるわけであります。しかし、それが二千億円になり、二千二百五十億円ぐらいになりますと、税制調査会は初めの案からどんどん上げてこられた。その上げ方が、大体七十万円以上の人がより多く減税になるような案でございますので、私は、それよりも社会保障のほうへ向けまして、二千二百億円ぐらいの減税ならば、これでけっこうじゃないか。そして私は税制調査会の意見は尊重いたします。尊重いたしますが、それによってのみやるわけにはいきません。政府は、あらゆる社会的、経済的、政治的のことを考えながら、税制調査会の答申を尊重しながら、万全の税制改正案を出した次第でございます。(拍手)   〔国務大臣田中角榮君登壇拍手
  27. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 今回の税制改正の基本方針といたしましては、第一には、中小所得者の負担の軽減、第二は、開放経済体制の移行への企業資本の充実、設備の更新、それから第三は、御承知のとおり、地方税におきまして住民税負担の不均衡の是正という、三点を重点にいたしたわけでございます。  第二の問題は、今回の減税で、調整減税と実質減税との割合はどうなっておるか。これは、夫婦子供三人の、三十八年度分で申し上げますと、五十万円所得の方で、調整減税額が四二・七%、実質減税額が五七・三%、それから百万円の方で、調整減税額が五八・一%、実質減税が四一・九%、調整だけでなく、実質的減税も行なっておるわけでございます。  それから、租税特別措置は、時期が来たものに対しては廃止しなさいということでございますが、御承知のとおり、この特別措置はシャウプ税制というお話でございましたけれども、二十八年の法改正からこの制度を設けましたわけでございまして、シャウプ勧告によって設けられたものではありません。政府としましても、常にその政策上の効果と必要性に対しては十分検討いたしておるのでございまして、租税特別措置のような必要性を認めて特別措置を行なうわけであります。でありますから、あるものは廃止しておるものもございますけれども、効果のあるものに対しては、税制調査会の答申等を持ちながら、これを続けていくということになるわけでございます。  それから、国際競争力強化の名において大企業有利の租税特別措置というようなお話でございましたが、そのようなことのないことは御承知のとおりでございます。  それから、特例的な利子課税、配当課税、有価証券譲渡所得の非課税を廃止するつもりはないかということでございますけれども、これも、御承知のとおり、利子所得等につきましても、利子所得と配当所得に対する課税の特例及び有価証券の譲渡所得に対する非課税措置というようなものは異例の措置であるというふうにも見られるわけでありますが、開放経済体制に向かう現実に徴して考えていただければ、十分御理解賜われるわけでありまして、貯蓄状況、資本蓄積というようなものは、ただ一部の国民利益を守るということではなく、そうすることによってわれわれの生活の基盤ができるのだということをお考えいただければ、このような措置も必要であるということに対しては御理解いただけると思います。  生活必需品に課税すべからずというような原則を、物品税や入場税の廃止ということに対して、もっと積極的に考えないかということでございますが、御承知の昭和三十七年の税制改正で、これら間接税に対しましては大幅に減税をいたしたわけでございます。まあこの問題につきましても、将来できるだけ、考えられる場合には前向きに考えたいと思っておるわけでございますが、いずれにしましても、税制調査会の答申を待ちながら、三十七年に大幅に減税をいたしておりますし、諸外国と比べても高いという事実はないのでございますので、三十九年度の税制改正では、これを取り上げることはできなかったというわけでございます。  それから、最終的には、これから将来間接税を一体どうするのか、大衆課税となっておるような間接税の減税をどう考えるかということでございます。これは、御承知の、ヨーロッパ諸国等では売り上げ税と、日本でもかつてやりました取引高税というような制度から行なわれておりますが、日本では、一般的な消費税というような立場で行なっておるわけでございます。しかも、先ほど申し上げたとおり、三十七年に大きな間接税の減税をやっておりますので、先ほど申し上げたとおりでございますが、最終的には、将来も減税の中の一つとして十分考慮をしていかなければならないだろうというふうには考えられるわけでございます。  税制調査会に対する政府の基本的態度につきましては、総理大臣から申されたとおり、これを利用して隠れみのにするなどということは全然考えておりません。税制調査会の答申は十分尊重いたしまして、なおその上に、政府として、より高い立場から、広範に配慮いたすということでございます。(拍手)     ―――――――――――――
  28. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 渋谷邦彦君。   〔渋谷邦彦君登壇拍手
  29. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 私は、公明会を代表して、ただいま議題となりました所得税法の一部を改正する法律案に対して、総理大臣並びに大蔵大臣に若干の質問をいたさんとするものであります。  質問の第一は、給与所得者に対する課税についてであります。給与所得者の中で、低所得者と見られる人たちが納税人員全体の五七・二%という多きに達しております。低所得者の最低限度の生活を確保するという意味からも、これらの人たちに対する課税は、生活面に実に大きな影響を持つものでありますことは、今日までもしばしば論議の焦点になってまいりました。いま、給与所得者の標準を五人家族に例をとってみますと、この家族の課税最低限は、三十九年度分において四十七万千百四十五円、平年度分においては四十八万五手生百六十九円となっております。現行は四十二万八千四百七十二円でありますから、五万円前後の引き上げとなりますが、かりに、この家族の年収が七十万円だといたしますと、年間の減税額は、三十九年度分において三千五百五十八円となり、一ヵ月当たりがわずか三百円弱の減税となるにすぎないのであります。こうして考えてみますと、今後の物価上昇につれて、最低生計費に食い込むおそれが十分にあるのであります。したがって、支出の余地のない最低生計費の中から税金を払わされるということになりますことは、特に勤労大衆の生活の安定という面から考えてみましても、まことに不合理と言わざるを得ないのであります。物価上昇を十分考慮しながら、最低生計費に食い込まないような減税策をこの際ぜひとも確立すべきではないかと思いますが、政府の決意のほどを伺うものでございます。  第二に、専従者控除についてであります。法人事業においては、家族従業員に対する報酬は損金とされているのに対しまして、個人事業では、一定限度の専従者控除または配偶者控除しか認められていないのであります。今回の改正案を見ましても、専従者控除は、青色申告の場合、二十歳以上が十五万円、二十歳未満が十二万円となっております。この立場から考えますと、かりに、三十前後の家族構成を持つ家族従業員に対しましても、月額一万二千五百円程度の報酬しか認めないという計算になると思うのでございます。特に、中小企業の多いわが国にとりましては、個人経営の形態をとっているものがほとんどであります。所得税も、法人税の場合と同じように、負担公平の見地から改正し、個人形態の中小企業を保護する必要があると思うのでございます。私どもは、個人事業所得に対する課税方式を二分二乗方式として、従来の配偶者控除の方式をやめ、課税所得を事業主と配偶者とに二分し、それぞれに税率をかけて税額を算出し、その合計をもって所得税額とするのが合理的ではないかと考えるのでありますが、政府見解を伺いたいと思うのであります。  第三に、政府は、三十九年度の税制改正にあたりまして、消費者物価は四・二%の上昇になるという経済見通しを立てておられるようであります。ところが、過去の実績を振り返ってみましても、たとえば三十八年度においては、経済成長率は八・一%、消費者物価は二・八%の増となるという見通しを立てながら税制改正を行ないましたが、現実には、成長率は一三・六%、物価上昇は七・二%と、大きな見込み違いを生じております。これらのことを考え合わせますと、三十九年度の経済見通しも、はなはだ信用のおけないものになるのであります。もし、物価上昇が四・二%をこえるようなことになりますと、実質的にはせっかくの減税の効果がなくなり、むしろ、課税最低限が量低生計費に食い込み、重い税負担になると考えられるのであります。物価の上昇に伴う名目賃金の上昇によって課税対象が拡大され、免税されていた低所所得にも課税されるという、いわゆる大衆課税の強化となり、国民にとっては、まことにおもしろくない重税と言わざるを得ないのでございます。また政府が、強硬な金融引き締め政策をとるならば、国内景気は不況になり、中小企業の倒産は続出して、国民生活を圧迫し、この面から税負担が国民に重くのしかかってくるのではないかという心配をいだくのであります。この点について、政府はどのように考えられているか、見解をお伺いいたします。  第四に、ただいまも柴谷議員から質問がございましたが、税負担率について、かなりの議論があるようでございます。従来、政府が基本的な方針として、大体二〇%程度に押えるというものでございましたが、最近では、ただいまの総理の御答弁にもございましたように、必ずしも二〇%の負担率にはこだわらない、つまり、ある程度の上昇はやむを得ないという意見も出されております。しかし、わが国では、この負担率というものが、国民の税負担の軽重を示す重要な指標として使われております。総理大臣の諮問機関でございます税制調査会の答申にも、二〇%程度が適正であるとしております。先般、衆議院の大蔵委員会におきましても、中山会長がこの点を強調しているようでございます。三十八年度においては二一・五%と上昇いたしました。また、三十九年度では、平年度二千億円という戦後最大の減税をうたっておりますが、租税負担率は、先ほど申し上げましたように、二二。二%にはね上がっております。これらを考えますときに、政府としては、一体どの程度の租税負担率が現在時点において適正であると考えられておるのか、その見解を伺いたいのでございます。  第五に、自然増収との関係についてお伺いいたします。従来の傾向は、自然増収をかなり低目に見てきております。そのために減税幅も国民の期待にそぐわない面が多々あったわけであります。特に三十八年度におきましては、税制調査会の答申を無視して、企業中心の減税を行ない、実質的な増税であるとの非難を受けたのであります。政府はこれに対して、三十九年度こそは所得税中心の大幅減税を行なうと約束されたことに対して、国民大衆は多大の期待を持っていたのであります。しかしながら、現実には初年度では一千三百億円の減税にしかすぎないのでありまして、国民の期待が大きかっただけに、また失望もはなはだしいのであります。三十九年度の自然増収は六千八百億円と予想されているのでありますから、その三分の一の二千二、三百億円の減税は、初年度においても可能なのではないか、このように思うのであります。今後のこともございますので、政府としては、自然増収分のうち、どの程度まで減税することができるか、その点についての見解をお示しいただきたいと思うのでございます。  第六に、現行の税制はきわめて複雑であり、かつ難解であります。租税負担公平の原則が、現行税制のもとでは全く空文化してしまっている感を深くするのであります。したがって、税制の簡素化、合理化を迫られている各種企業などにおきましては、徴税行政に明るい税理士などの代理人に依頼して、租税対策に奔走し、多くのエネルギーを消費しているのは、まことに遺憾とするところでありまして、現行税制の根本的な改革について――これらの点にどのような今後の方針をお持ちになっていらっしゃるのかお伺いしたいのでございます。  最後に、昭和四十年度においては所得税を中心とした大幅な減税をおやりになる覚悟があるのかどうか。その決意のほどをお伺いいたしまして、私の質問を終わるものでございます。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  30. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申し上げます。  給与所得者に対する課税の問題でございますが、先ほど申し上げましたごとく、大蔵省で調べました基準生計費というものを標準にして考えておるのでございます。その基準生計費を最低生計費とお考えになると、全般に非常な影響を及ぼす。やっぱり生活保護費は五人家族で二十万円以下でございます。先ほど申し上げたとおりいろいろな点を考えてやらなきゃならぬと思います。  また、家族従業員の控除の問題、法人と個人との問題をお話になりましたが、法人の所得と個人の所得は根本的に違っておる。法人は総収入金から総損金を引くと、こういうことでございます。個人のほうは、その経営主、事業主の収入金による、いわゆる所得による。こうなっておりますから、根本が違っております。したがいまして、昔は個人の家族専従者を控除しておりません。戦後におきましてこういう制度を設けて、だんだん適正な方向になった。したがって、個人からの法人成りが非常に多かったが、専従者控除その他、税率の関係で、いまは法人成りが少ない。私はだんだん専従者の控除をふやしていくことが適当だ。まあ二分二乗というお考えでございますが、山林所得のような、ときどき入ってくるものは五分五乗でやっておりますが、経常の所得を二分二乗というようなことは、世界のどこの国でもやっておりません。これはよくないことで、所得税の本質に反します。  なお、物価の点でございますが、御承知のとおり、卸売り物価は横ばいだが、消費者物価は上がってきております。しかし、幸いに去年の十二月、一月、二月は、前年に比べまして横ばいか下がりかで、私は四・二%の消費者物価の上界は実現できると期待しております。したがいまして、今年の終わりから来年にかけては、消費者物価の上昇ということはあまり話題にならぬのじゃないか。ただ問題は、春闘の賃金値上げによって、これが非常に影響することを私は心配しておるのであります。  それから、適正な租税の負担ということは、先ほど申し上げましたとおりに、その国の経済事情、国民生活――国民一人当たりの所得、財政のあり方等によってきまるものでございますから、低いに越したことはございません。  それから、自然増収の何割を減税するか。これもまた、むずかしい問題でございまして、やはり前年度剰余金のあり方――本年は六千八百億円の自然増収でございますが、二千億円近い前年度剰余金の減少がございます。それをとって見ますと、今度の減税は、大体一六、七%で、いまだかつてない自然増収のうちの減税と言われましょう。  それから、税が非常にむずかしい、まあどこでもそう言われておるのであります。どこの国でも、できるだけ簡単にしようと思っております。しかし、なかなか非常にこれはむずかしいもので、公平の原則を立てようとすれば、いまの税法よりももっとむずかしくなります。そこで、やはり公平を頭に置きながら、できるだけわかりやすくやっておるのがいまの状態でございます。まあ、あまり税金を取らない、公平のことも言わぬとすれば、いまの条文が半分から三分の一くらいになりましょう。しかし、公平の原則をはずすわけにはいきません。したがって、ああいうふうになるのでございますが、できるだけ、いわゆる税法を民間に知ってもらうように、今回の所得税の申告につきましても、納税者のところに「わかりやすい税」というので、国税庁長官が納税者みんなに配っておるようでございます。私もちょっと見ましたが、非常によくできておりますが、納税者があれをお読みくださいまして、よく理解をしていただくようお願いいたしたいと思います。(拍手)   〔国務大臣田中角榮君登壇拍手
  31. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 御質問に対しましておおむね総理大臣からお答えがございましたので、あと二点だけ私からお答えいたします。  その第一点は、金融引き締め政策をとった場合には、税負担が国民生活を圧迫するのではないかということでございますが、御承知のとおり、なだらかな正常な経済成長にしてまいりたいという考え方で金融調整を行なっておりますが、減税とも相まちまして、このようななだらかな調整をやることが、国民生活の圧迫になって、非常に税負担で困るというようなことはないと思いますけれども、中には中小企業の倒産その他の面も見られますので、税負担が非常に生活を圧迫するというような状態に対しましては、御承知のとおり、前年度末の徴税その他に対しましても、できるだけの措置をするように指示をいたしておりますので、御心配のようなことのないように考えていきたいと思います。  第二点は、昭和四十年以降の減税の方針ということでございますが、いま三十九年度の減税案を御審議いただいておるのでありまして、四十年以降のことを申し上げることはむずかしいと思いますけれども、御承知のとおり、この内閣は減税を年々やってまいっておるのでございますので、税制調査会の答申等を待ちまして善処の方向で参りたいと思っております。(拍手
  32. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。      ―――――・―――――
  33. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第十、地方税法等の一部を改正する法律案趣旨説明)、  本案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。早川自治大臣。   〔国務大臣早川崇君登壇拍手
  34. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 地方税法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  地方税につきましては、累次にわたる改正により、住民負担の軽減合理化をはかってまいったのでありますが、明年度におきましても地方財政の実情を考慮し、国において所要の財源措置を講ずることとして、市町村民税所得割の負担の不均衡是正、電気ガス税の税率引き下げ等住民負担の軽減合理化をはかりますほか、中小企業者の負担の軽減合理化を行ない、住宅建設の促進に資するための措置を講じ、あわせて道路整備計画の推進に伴う道路目的財源の充実をはかるため、所要の改正を行なうこととしたのであります。  なお、市町村民税所得割の不均衡是正に伴う減収額を補てんするため、地方債の発行を認めることとし、地方財政法について所要の改正を行なうことといたしております。  以下順を追って、地方税制の改正の概要について御説明申し上げます。  第一は市町村民税についてであります。市町村民税につきましては、低所得者の負担を軽減するとともに、市町村間の負担の不均衡を是正するため、昭和三十九年度及び四十年度の両年度にわたって所要の改正を行なうこととしたのであります。すなわち、昭和三十九年度におきましては、現行のただし書方式を本文方式に近づけるため、経過的に、所得控除として基礎控除のほか扶養控除を行ない、かつ、事業専従者について青色申告者千六百円以上、白色申告者千円以上の税額控除をする課税方式をとることとし、昭和四十年度におきましては、課税方式を完全に本文方式統一し、税率につきまして準拠税率制度を標準税率制度に改めるとともに、市町村は、標準税率の一・五倍をこえて市町村民税の所得割を課することができないことに改正することといたしております。   〔議長退席、副議長着席〕  第二は事業税についてであります。事業税におきましては、中小企業者の負担の軽減をはかるため、個人事業税の事業主控除額を二十二万円に引き上げるとともに、法人事業税の軽減税率の適用範囲を拡大し、普通法人については所得年百五十万円以下六%、所有年百五十万円超三百万円以下九%に、特別法人については所得年百五十万円以下六%にそれぞれ改めました。  第三は固定資産税についてであります。固定資産税につきましては、新評価制度の実施に伴い、次の評価改訂の時期までの暫定措置として税負担の調整を行なうことといたしました。すなわち、新評価制度の実施によりまして一般に土地の評価額は増加いたしますが、その税負担については、農地は昭和三十八年度の税負担をこえないようにし、農地以外の土地は昭和三十八年度の税負担に比し二割をこえないよう税負担の調整措置を講ずることといたしております。  また、住宅建設の促進に資するため、不動産取得税において新築住宅にかかる基礎控除額を引き上げるほか、固定資産税においては、今後五年間に新築される住宅で一定の条件に該当するものについては、一定期間、税額を二分の一の額に軽減することといたしております。  第四は電気ガス税及び市町村たばこ消費税についてであります。  電気ガス税につきましては、住民負担の軽減をはかる趣旨から、その税率を一%引き下げて七%とすることとし、これに伴う減収を補てんするため、国からたばこ専売納付金の一部の移譲を受けて、市町村たばこ消費税の税率を一・六%引き上げ、一五%にいたしました。  第五は軽油引取税についてであります。道路整備計画の改訂に伴い、国、地方を通じて大幅な財源措置を講ずる必要がありますが、これを一般財源のみでまかなうことは、地方財政の現状にかんがみて、至難の状況にありますので、揮発油課税における税率の引き上げが予定されていることでもあり、軽油引取税の税率を一キロリットルにつき、一万五千円といたしました。  第六は料理飲食等消費税についてであります。今秋のオリンピック開催を機として、当分の間、外人客の飲食と旅館における宿泊に対しては、料理飲食等消費税を課税しないことといたしました。  以上のほか、税制の合理化その他規定の整備を行なうことといたしております。  以上地方税制の改正につきまして概要を御説明申し上げましたが、これに伴う地方税の減税額は、初年度であります昭和三十九年度におきましては、五百九十五億円となるのでありますが、反面、市町村たばこ消費税及び軽油引取税の税率の引き上げによる増収百五十三億円があります。また、平年度におきましては、減税額は八百八十億円になりますが、別に市町村たばこ消費税及び軽油引取税の増収百七十億円があるのであります。  最後に、市町村民税所得割の減収補てんに関する地方財政法の改正について御説明申し上げます。  市町村民税の負担の不均衡是正にあたっては、市町村の行政水準が急激に低下することのないよう経過的に財源措置を講ずることが必要と考え、課税方式統一及び標準税率制度の設定に伴う減収額について、市町村に地方債を起こすことを認め、昭和三十九、四十の両年度から五年間にわたり、初年度においては減税額の全額、以下これを基準として漸次二割を逓減した額の地方債を起こす方式をとるものといたしました。  以上が地方税法等の一部を改正する法律案趣旨でございます。(拍手
  35. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。松本賢一君。   〔松本賢一君登壇拍手
  36. 松本賢一

    ○松本賢一君 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま御説明を承りました地方税改正法案につきまして、去る二月二十七日の衆議院本会議における本法案に対する質疑応答を参照しながら、池田首相並びに関係閣僚に対し御質問申し上げたいと存じます。  池田首相は、私にとりましては郷土の大先輩でございますが、この演壇に上がりました以上、御遠慮申し上げるわけにまいりませんので、御了解をいただきたいと存じます。  まず法案そのものに対する質問から入りたいと思います。  最初に、市町村民税の減税とその減収補てんについてでありますが、今度の改正で、財政力が弱いためやむを得ず高い税金をかけている市町村が大幅に減税となって、住む土地によって住民の税負担がたいへん違うという不合理が除かれることは、まことにけっこうなことであり、長年地方自治体をあずかって苦労いたしました私としては、むしろ今日の改正がおそきに失したとの感が深いのであります。ただし、その減税のやり方について、二年間でおやりになるのが悪いとは申しませんが、いま自治大臣が説明されたような、中途はんぱなややこしいやり方でなく、一年目には、ただし書き方式を廃止して、二年目に準拠税率を標準税率に改めるというような、すっきりしたやり方のほうがもっといいと思うんですが、いかがでございましょうか。このことについて、二月二十七日の衆議院本会議において、わが党の安井議員がいま私が申しましたのと同じ質問をした際に、自治大臣はどうしたことか、まるで見当違いの答弁をなさっておるのであります。すなわち、「住民税の減税をなぜ一挙にやらなかったかということでありますが、画期的な改革でございますので、一年間でやりますと三百億円という大きい負担になるわけであります。したがって、これを二年間に分けまして、」云々と、こういう答弁をしておられる。安井さんは、一挙にやれなどと言っちゃいないんです。ですから、これじゃまるで的がはずれておると申す以外にありません。いま私が同じ質問を繰り返しているんですから、きょうは的はずれでない答弁をお願いいたしたいと存じます。(拍手)  それから、御提案のような、中途はんぱなややこしい方式をとるに至ったいきさつについて私は聞いておるのですが、間違っておったらあやまりますが、初め自治省は、いま私が主張したとおりの方式を考えて、その補てんのための助成金ですか、交付金ですかを、二百三十億円ほどたしか要求をされたのに対し、大蔵省が、そんな金は一文も出せない、市町村の自前でやるべきだというような考え方に立って、ゼロ回答を与えられたそうであります。結局、大臣折衝によって百五十億だけ出そう、それも起債でというわけで、御提案のような内容になったと聞いております。そこで、大蔵大臣にお尋ねしたいのですが、貧弱な自治体に対し、自前でやれというゼロ回答を与えるような冷たいことをあなたはなぜお考えになるのですか。あとで早川さんががんばって、曲がりなりにも、全然自前でない、起債でやるという法案ができたから、まあ半分ほどよかったようなものの、もしゼロ回答のままで、自前でやれという形でこの法案が出されたとしたら、あなたは全国津々浦々の市町村長さはじめ、多くの人々の怨嗟の的になったであろうと想像されるのであります。あとで百五十億お出しになったところを見ますと、確固たる根拠もないと思える。もしちゃんとした根拠があるんなら、最後まで出さなくてもいいだろうと思えるんですが、一体どうなんですか。大蔵大臣の、これも的はずれでない御答弁をお願いしたいと存じます。いま私は半分よかったと言いましたが、全く半分しかよくなっていないので、この法案では減税補てんは年々減っていって、五年たったらゼロになるんです。これじゃ非常にやりにくくなる市町村がたくさんできると思いますので、もう一ぺん考え直して、弱い地方自治体を困らせないようにする御意思がおありかどうか、自治大臣にお尋ねいたします。大蔵大臣も、これ以上のことは絶対にやれないとお考えになるんですか。あなたはただ、地方税が伸びているからいいじゃないかというお考えの上に立っておられるようですが、地方自治体にはそれぞれに現実の事情があるんです。紙の上に書かれた数字じゃなく、現実を見詰めることが政治というものだと思うのですが、いかがでございましょうか。苦労人であり、人情大臣であると言われる田中さんの心あたたまるような御答弁を期待いたします。(拍手)  次に、固定資産税についてお尋ねいたします。まず税の総額でありますが、自治大臣は、三十九年度は固定資産税の総額はふやしませんと何回かおっしゃっております。また池田総理も、たしか予算委員会だったと思いますが、そう言われたと記憶しております。三十九年度の地方財政計画によりますと、あにはからんや二百五億円の増、つまり九・二%の増額となっております。「たんか」は切ったものの、世の中はとかくこういうことになりがちなものですから、私はそれを責めようなどとは思いませんし、今後もいい「たんか」は大いに切っていただきたいと思います。ただ増額しないための努力が不十分であったことはいなめないと思うんです。農地は三十八年度を越えないとか、あるいは宅地は三割増しにとどめるとか伺っただけでは、どうも納得できません。この際、農地あるいは農業用資産のごときについてはもっと思い切った措置をして、三十八年度よりも総額においてむしろ減るような、けっこうな案は出せなかったものでありましょうか。総理あるいは自治大臣の御所見を伺いたいと思います。  電気ガス税について、やはり先般の衆議院で、民社党の栗山議員が千円の基礎控除を主張されたのに対し、大蔵大臣は、そんなことをすると農村地帯の税収が大幅に減るから、そういうわけにいかないと答えておられるのです。この考え方は、貧弱な農村の財政を農民への重い税金で補おうとする考え方で、人情大臣のおことばとも思えません。私は、このような農民の負担をこそ軽減して、財源を他に求めることを考えるのが政治というものだと思うのですが、大蔵大臣のお考えはいかがでございましょうか。  料飲税について総理大臣は、自治省の原案を閣議で修正するというような珍しい場面まで現出されまして、外客誘致の熱意を示すんだとおっしゃっておりますが、その気持ちはわからぬでもないのですが、どうもぴったりまいりません。先日の大蔵委員会で、衆議院の大蔵委員会だったと思いますが、税制調査会長の中山さんがいみじくも述べられたように、観光客を集めるには、免税よりも物価値下げに努力すべきだと。私も全く同感する次第です。ホテルの部屋代も、食事代も、日本名物のすきやきも、てんぷらも、ビーフステーキも、大幅に高くなって、安くなったのは人間の命だけだというのでは、外国人にしたところで、一割ぐらいの税金をまけてもらっても、たいしてうれしくもなかろうと思うのであります。なお、総理は、衆議院での御答弁で、料飲税の免税点は五百円でいいように述べられておるんですが、五百円というのは三年前の昭和三十六年にきめられたもので、何もかも値上がりした今日では実態に即しません。また、宿泊費の免税点一千円というのも、今日の実態に即しません。これらの免税点を実態に合うように引き上げて日本の大衆を喜ばせることのほうが、外国人へみみっちいサービスをするよりは大切じゃないかと考えるんですが、総理の御意見はいかがでございましょうか。(拍手)  その他、法案の内容につきましてお尋ねしたいことはたくさんございますが、時間もあまりございませんので、それは委員会においていろいろお尋ねすることにいたしまして、私は、この機会に、この法案の背景をなすところの地方自治そのもののあり方について池田総理大臣の御所見を承りたいと思うのであります。  地方自治は民主主義のとりでであるといわれていることは、池田首相もよく御存じのことと思います。ところが、日本の現状を見ますと、地方自治は、はたしてその本来の趣旨に基づいて運営されていると言えるでありましょうか。私は、今日、日本の地方自治体は、はなはだしく自主性をそこなっていると考えます。今日の自治体は、行政面においても、財政においても、ことごとく中央の政治に支配されて、一人歩きのできぬ状態に置かれ、ひたすら陳情政治に没頭しておりますあの姿は、全く哀れであります。そうして、その陳情政治は、もろもろの政治のゆがみと腐敗、つまり政治の悪を招いており、それが常に言論機関等の批判の的となり、心ある人々のひとしく憂慮するところとなっております。これは日本における民主主義の危機であると言っても過言ではありません。池田首相は、この現状をこれでいいとお考えになっておられるのでございましょうか。よくないとすれば、それが何に原因し、そしてそれをいかにして是正しようと考えておられるのか、お伺いいたしたいと思うのであります。  これも先日の衆議院本会議のことでありますが、われわれと憂いをひとしくする民社党の栗山さんから同様の趣旨質問がありましたが、その際の池田首相の答弁は次のごときものでありました。すなわち、「地方自治の伸長をはかりまして地方団体の自主性を強化することは、われわれのつとに努力しておるところでございます。」と、こういう答弁であります。まことにりっぱな文章ではありますが、何と抽象的で、空疎な響きを持った言葉でありましょうか。そして総理は、何々調査会、何々審議会等々の答申を待って慎重に考慮しましょうとおっしゃっているんです。そこには陳情政治の現状を憂える何の苦悩もなければ、それを打破する何の情熱もうかがうことができません。(拍手質問した人も、また、陳情政治を憂える多くの国民も、そのようなおざなりの答弁を総理大臣の口から聞きたくはないと思うのであります。私も聞きたくはございません。池田さんは、事、経済の問題となると、常に積極的な論議を展開され、自信満々、経済のことは池田にまかせろという気魄を示されるのであります。まことに力強い限りでありまして、私も、主義や主張、政策の相違は別として、いつも敵ながらあっぱれの感を抱いておるのであります。しかるに、事、地方自治の問題となると、あなたはまるで消極的で逃げ腰になってしまわれるのです。あなたが通産大臣か大蔵大臣なら、それでいいかもしれません。しかし、幸か不幸か、いまのあなたは一国の総理大臣であります。国民は、あなたに経済のことだけをまかせているのではありません。およそ日本の国にとって重要な問題には、みずから陣頭に立っていただくことを期待しているんです。地方自治の問題は、その重要な問題の中のも重要な一つであります。決して経済の問題にまさるとも劣るものではありません。今日、その地方自治が陳情政治に転落して、民主主義の危機とまで言われるとき、総理大臣たるあなたが、何の情熱も気魄もお持ちにならぬとすれば、それは国民の不幸と言わねばなりません。どうか、この私のことばを率直に受け入れて、陳情政治の打破、地方自治の再建は池田にまかせろという気魄をもって、私の質問に対し、力強い御答弁をお願いする次第であります。あなたがここで少々放言をなさろうと、ハッタリをおっしゃろうと、それをとがめだてするような、やぼな私ではありませんことをお約束申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  37. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御質問の第一点は固定資産税の点でございますが、私は固定資産税は増税増額しないと言ったのは、農地の問題でございます。農地に対しましての問題でございます。これは予算委員会ではっきり言っておりますように、もう宅地は二割上げるということはわかっている。もう全体の関連から見ても、それは私はあげ足とりだと思う。農地の問題について増税しないと、こう言っているのであります。だから、誤りのないように……。  それから農地については、増税しないじゃない、減税したらどうかというお話でございます。私は、それはいかがなものかと思います。方向としてはそうだ。明治から昭和五年までは、宅地のほうが農地より安かった。山林原野は農地よりも高かった。今は同じようになった。しかし、今後の方向としては、私は逆に農地のほうを昔よりも反対に安くする方面は考えられないか――いわゆる宅地や家屋税がうんと上がってくる場合においては、農地のほうについて考える余地があるのじゃないかということは申し上げられますが、私は前の税の沿革から言うとなかなかむずかしいと思います。  次に、料飲税について、中山君が税を免税するよりも物価を下げろ。――物価を下げることは必要でございましょう。それはどこにお泊まりになっても、最近の日本のホテルは、いわゆる償却――いまの高いときに建ったので、償却が非常になにだから、部屋代が高い。これを安くしなければならぬが、すぐ安くできませんから、世界でやっていないような料飲税をかけるということをやめるほうがまだ先だと考えております。こういう料飲税というものは、あまり世界の国にないのです。私は、そういうものはやめたほうがいい。したがって、日本におきましても、あの戦争前の臨戦体制のときにつくった料飲税、戦争中につくった料飲税も、税の性質としてはいい税じゃございません。私は、だんだんこれを軽くしていくことがほんとうだと思います。しかし、そのときに、この安くしたものを全部国から出すということは、あまりに地方が政府に頼り過ぎるのではありますまいか。今の地方財政の状況――あなたもずいぶん陳情なさったでしょう。しかし、陳情の効果はどうか。陳情しなくても同じことなんです。陳情のむだを感じられておるから陳情のない政治ということを言われる。私は陳情に一切耳を傾けてはおりません。民主主義政治はやっぱり自治体自体でやっていく、与えられた行政のもと、与えられた法制のもと、与えられた財源のもとに正々堂々とやっていくのが自治体の民主主義であるのであります。したがって、与えられた財源、与えられた法制につきましての検討を要する点があれば国会でおやりになったらいいと思う。政府もそれをやるべく、先ほど、衆議院で申し上げましたごとく、いわゆる地方自治法の税制の問題、あるいはまた地方制度の問題、あるいは臨時行政調査会で調査している問題や補助金の問題等々、政府としては格段の努力をはかっております。国会におかれましても、ほんとうに民主主義の自治体がこの上とも発展するように、陳情のかわりに御研究願いたいと思います。(拍手)   〔国務大臣早川崇君登壇拍手
  38. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 住民税の減税を本文方式で直ちに三十九年度からやれということでありますが、これによりますと、最初は二百四十億円の減収で、あと標準税率にすることにより六十億円の減収ということになります。当初におきましては、こういう計画もございましたが、これによって生ずるただし書き市町村の大幅な財源の穴と国家財政のこれに対する補てんの措置を考えあわせまして、さしあたり昭和三十九年度は百五十億円限度の住民税の減税を行なうことにしたのであります。そうなりますと、低所得者を重点に考えなければならない。そこで三十九年度は扶養控除とか専従者の税額控除を中心にいたしまして、二年間で逐次市町村の財政に影響を与えないようにする、こういうことに決定をいたしたわけであります。なお、ただし書き市町村に対する財源補てんを二割ずつ減らしていくと五カ年間で補てんがなくなるわけでありますが、明四十年度から八割になり、次に六制になると、その補てんがなくなる部分につきましては、私は地方財政全体として、自主財源の増強や六千億をこえる交付税によって、さらにこれらの自然増収を見込みまして液化していけるものと考えているわけであります。また、固定資産税を、早川は何か増税しないということを言われたということでありますが、私は固定資産税全体といたしましても、一割というのは、評価年度のかわるごとに、大体一割程度は、全体としていわば自然増収のような形で、一割程度は三十六年度におきましても増収になったわけであります。そういう意味におきまして、全体としても固定資産税というものは、まあ自然増収の一割程度という意味でございますので、誤解のないように願いたいと思います。(拍手)   〔国務大臣田中角榮君登壇拍手
  39. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 第一の問題は、地方税の減税の補てんについてでございます。なぜ一体ゼロ回答したかと、こういうことでございますが、私も松本さんのお説はわからぬわけではございませんが、やはり筋を立てるときは筋を立てなきゃいかぬと、こういうことであります。この機会に申し上げておきますが、今度の住民税の減税をやるということにつきましては、これは、すでに現在までの財源措置につきましては、御承知のとおり超過税率というものは別にしましても、財源補てんをしておるのであります。財源を与えておるのであります。また、税金をまけるために、自分の自主努力でもって標準税率まで下げておる市町村もあるわけでございます。でありますが、政府としましても、不均衡の是正をやりたいという考え方で、二カ年間で一挙にこういうことをやろうというのでありますから、地方税の減税でありますから、地方税自体の考え方でやってもらいたい、また、やるのが正しいという考え方だけでいくわけにはいきませんので、まあ財源調整といいますか、激変緩和といいますか、そういう意味で三分の二の元利補給をいたすというふうになったわけでございます。初めは、当然御自分でもって減税をするのでありますから、政府の力だけにたよらないで、政府が補てんをしなければ地方税の減税ができない、やってはならないということであれば、何をか言わんやであります。減税というのは、国税も減税をやらなければなりませんし、地方税自身もできるだけ減税をやるということは、これは国民が望んでおるのであります。私はそういう意味で、地方税でありますし、超過税率は、みずから特別の税をとっておるのでありますから、私は地方自体が処置すべきだという筋論でゼロ回答をいたしたわけでございます。ゼロ回答はいたしておりましたけれども、私も新潟県の出身でございますし、早川自治大臣も、まあ相当に貧弱市町村をかかえておる和歌山県の出身でありますので、二人がいろいろ話をしておるときに、筋は筋だが、やはり激変緩和の措置はとるべきだと、こういうことで三分の二の元利補給を行なったわけでございます。三分の二をやったならば全部をやれと、こういう御議論もございますが、これ以上はとても現在の状態で考えられないという立場でございます。  それから、電気ガス税のうち、確かに衆議院の本会議でお答えをいたしました非課税限度を千円に上げたらどうかという議論は与党の中にもございますし、常に議論されている問題でございますが、これも電気ガス税に対しては、年々一%ずつは減税をするという与党の党議もきまっておりますので、政府もそのような方向で減税をしておるわけであります。千円以下は全部免税にしますと、農村地帯にある地方団体というものは、非常に大きく一ぺんに税収が減るわけであります。でありますから、現在の状態では、じゃ減っても政府が出せばいいじゃないかと、こういう御議論かもわかりませんが、(「そのとおり」と呼ぶ者あり)そのとおりというおことばもございますけれども、やはり地方分権の制度の上から考えても、私はやはりもっと地方自治体も、政府にだけたよるという考えではなく、もっとお互いが相助け合いながら両立をしていくべきであるという考えに立っておるわけでありまして、現在千円まで免税にするという考えは事実不可能であると考えておるのであります。(拍手
  40. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 辻武寿君。   〔辻武寿君登壇拍手
  41. 辻武寿

    ○辻武寿君 私は、公明会を代表して、ただいま議題となりました地方税法等の一部改正法案について、総理並びに自治、大蔵の各大臣に質問をいたすものであります。  質問の第一点は住民税であります。住民税につきましては、ただし書き方式から本文方式への統一と、準拠税率から標準税率への改正という基本方式が決定されたわけでありますが、これは、かねてから国民に強く要望されてきたところであり、このような住民税の改正は、住民税負担の公平という立場からすれば当然のことであり、むしろおそきに過ぎているのであります。ところが、現在までこうした改正が強く要望されていながら今日まで実現されなかった理由、並びにその実施にあたって経過措置をとった理由を、まず総理及び自治大臣に再度明らかにしていただきたいと思います。また、地方住民の税負担の軽減をはかるためには、基礎控除等の諸控除を引き上げることが必要であります。所得税の場合には、毎年、基礎控除や配偶者控除等の諸控除を引き上げて、その税負担の軽減をはかっておりますが、住民税の場合にはこれが数年間据え置きのままであります。これは物価の値上がり等を考えれば、実質的には増税であります。住民税の減税効果をより高めるためには、すみやかに諸控除の引き上げを行なうべきであると思いますが、政府はその用意があるかどうか、将来の見通しについて、総理及び自治大臣の明確なる答弁をお願いいたします。  質問の第二点は、地方債による減収補てんについてであります。住民税の減税額の補てんのために、政府は地方公共団体に国が元利金額を補給する地方債の発行を認めたのでありますが、これは将来、国が財政難を理由とする赤字公債につながる危険がきわめて大きいといわなければなりません。政府は減収補てん債は普通の地方債と意味は変わらないというが、実際はそうではない。なぜかならば、地方公共団体が地方債で財源を調達するのは、もっぱら公営企業及び災害復旧等を目的とする場合で、今度のような例は含まれていないのであります。地方税の大幅減税が常に国のうしろだてがなければ行なえないという例を残したのは、将来、国が財政難を口実に赤字公債の道を開く原因にならないと確かに断言できるのかどうか、池田総理並びに田中大蔵大臣の確信のほどを重ねてお伺いいたします。  なお、これに関連いたしまして、住民税の減収が地方公共団体の財政的基盤を弱くするという懸念があるならば、それは国と地方自治体との行政事務の再配分の徹底、あるいは交付税率の引き上げ等によることによって解決すべきであります。したがって、減収補てん債の発行などの方法を認めるべきではなく、地方貞治体の行政事務担当の現状を再検討して、財政的裏づけのある行政事務の再配分を強力に実施すべきであると思いますが、自治大臣のお考えをお伺いいたします。  質問の第三点は固定資産税であります。固定資産の評価がえにより、固定資産税の増収が見込まれております。政府は、宅地などについてはそれを二〇%以内にとどめ、農地については、据え置き期間として三カ年を定めておりますが、三カ年の据え置き期間が過ぎた後は大増税となり、農民を苦しめるおそれが十分考えられるのでありますが、早川自治大臣は、三年後の結論は、税率も固定資産税のあり方も、一切税制調査会まかせのように見受けられるのであります。また、宅地などの再評価により二〇%の固定資産税が増税されるとすれば、直ちに地価や地代、家賃の高騰を招き、物価値上げの原因となるおそれがきわめて大きいのであります。特に、物価の安定を常に考慮されている政府にとりまして、固定資産税の増税により値上げムードを惹起するという心理的な影響を無視することは許されないと思いますが、これが対策について総理と自治大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。  質問の第四点は、外人客の料飲課税についてであります。政府は、今秋のオリンピック開催を機として、当分の間、外国人の飲食と旅館における宿泊に対しては免税にしようとしておりますが、このような特別措置は国民のとうてい納得できないところであります。私はいまだ、諸外国がオリンピックのために、このような外国人に対する免税措置をとった事実を聞きません。当初、自治省原案は、期限も七月一日から十二月一ぱいに限り、適用場所も指定され、宿泊とこれに伴う飲食という制限が規定されていたのでありますが、閣議で、期間は「当分」と改め、飲食物は、いつ、どこへ行っても免税にしてしまったのであります。これによって、一体どのような効果があるのか。第一に、免税してみても、外人客にはほとんど影響がないと思います。税金を計算して日本へ来る外国人は、まずないのであります。免税してもしなくても、日本へ来る人は来るし、来ない者は来ないのであります。観光日本の実をあげる方法は、環境を整備し、清潔な住みいい日本にすることであって、免税の特例を設けて、国民の負担を重くすることではないと思います。また、外国人だけに免税するときは、業者において、うちのお客はほとんど外国の人ばかりだと言われても、その区別はつかなくなるでしょう。そうした間隙をついて脱税行為が行なわれることも、十分考えられるのであります。さらにまた、政府は、このような外人客への免税措置による減収は、初年度十五億円くらいにしか見込んでいないようでありますが、こんな政府の見込みではとてもおさまらないと私は思うのであります。  総理並びに自治大臣にお伺いいたしますが、かかる国民にマイナスになり、外国にもさして喜ばれない法案を、なぜ提案しなければならないのか。最初の自治省の原案であるオリンピックの行なわれることし一ぱいというのを、「当分」と改めた理由は何か。また、パスポート一つで外国人だけが免税に浴することは、業者がこれを悪用して、今後免税適用の乱用となるおそれが強いのであるが、これが対策はいかにするつもりでありますか。総理並びに自治大臣の明確な答弁をお願いいたします。  最後に、税外負担について質問いたしますが、地方住民は、国税、地方税を負担するばかりでなく、消防寄付、PTA会費、部落協議費などの公課を負担し、さらに学校施設、道路工事、下水工事などの地元負担があり、いわゆる税外負担が非常に重い現状であります。毎年数百億にのぼるこれらの税外負担は、本来、公費をもってまかなうべきであって、住民の寄付金などに依存することは全く不合理であります。ことに、低所得者層の多いところにおいてはなおさらであります。政府は、国民の税外負担の解消をはかるため、これを禁止する法的措置を考えるべきではないか。また、地方公共団体は、財源難の緩和策として、それぞれ独自に条例を設けて、犬税、立木伐採税等のいわゆる法定外課税を実施しているところがありますが、地方住民の負担を軽減し、地域的な負担の格差をなくすために、法定外課税の撤廃を実施すべきであると思いますが、これに対する総理及び自治大臣の明確な御答弁を期待いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  42. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 住民税の軽減の理由は何か。これはいままで住民税が高過ぎて、地方によって非常に不権衡であったから、軽減することにしたのであります。財源補てんの方法につきましては、先ほど来申し上げておりますとおり、中央、地方の財源を考えまして、そうしてああいうふうにきめたのであります。  赤字公債につきまして、将来発行しないか。これは五年先、十年先のことはわかりませんが、いまは、ここ一、二年のうちに赤字公債を一般会計で発行する気持ちはございません。  なお、固定資産税で物価の値上がりに影響しないか。宅地につきましては、二割程度でございます。いま、千分の十四を二割上げても、私はたいした影響はないと、こう考えております。  それから、料飲税につきましては、先ほどお話ししたとおりで、外国にはほとんどない、絶対にないといっていいくらい、変な、あまりいい税金じゃないと思いますから、私は、日本の税制のために、日本人のとにかく名誉のためにも、こういうものを外国人に課税すべきじゃない。そうして、課税しますというと、やはり観光に影響がある、こういうことで、将来やめたいという気持ちを持っておるのであります。(拍手)   〔国務大臣早川崇君登壇拍手
  43. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 住民税の減税の場合に基礎控除をどうして引き上げないのか、こういう御質問でございまするが、今回の住民税減税にあたりましては、本文方式への統一、扶養控除とか専従者控除を重点に考えましたので、この課税方式統一ができたあと、あらためてこの問題を検討いたしたいと考えております。  二番目には、こういった減税補てんという措置じゃなくて、思い切って行政事務の再配分ということを行なって、地方自治体の財源を充実すべきではないかという御質問でございまするが、この問題につきましては、第九次の地方行政制度審議会におきまして、相当思い切った行政事務の再配分の案が出ておるわけであります。しかし、それはまだ基本的な答申でありまして、さらにこれの具体的な答申は、今後に具体案は待つところでございます。そういった答申の線に沿いまして、この問題とも取り組んでまいりたいと思っておるわけでございます。  三年たったときの新しい評価の年の固定資産税は、非常な増税になるのではないかという御質問でございまするが、この問題は、現在税制調査会で、固定資産税の根本的なあり方、またその他いろんな角度から御検討願っておるわけでございまして、これは三年後の問題でございまするが、評価が現在上がったから、直ちに三年後大幅に上がるというようには、私は考えておらないわけであります。税制調査会の総合的な結論を待って措置すべき問題であろうと考えておるわけであります。  四番目は、料飲税の十五億の減少に伴いまして、徴税技術上の御質問がございました。最初の原案と違って、当分の間といたしました理由につきましては、すでに総理がお答えになったとおりであります。徴税の面の御心配に対しましては、パスポートを提示さすとか、受け取りにサインさすとか、いろいろ現在事務的に検討いたしておるわけでありまして、脱税を助長することのないように、自治省としては十分配慮をいたしてまいりたいと思っております。  税外負担につきましては、御承知のように、基準単価、建築その他の単価が、非常に学校その他は高いものですから、勢い父兄が税外負担をしておるというのが実情でございまして、しかしこの問題につきましては、三十九年度におきましては、学校建築でも七%の単価引き上げとか、いろいろな措置を講じておるわけでありますし、また地方財政法におきましては、県立高校等につきまして、地元負担をさしてはならないという法律改正をいたしまして、そういった面で税外負担が非常に大きくならないように、自治大臣といたしましても、父兄あるいは市町村自治体を十分指導していきたいと思っております。  法定外の普通税を自治体がつくるのは、市町村間のアンバランスになるのではないか、こういう御指摘でございまするが、この法定外の普通税を自治体が起こすにつきましては、いろいろな制限の規定があるわけでございます。国の税制政策全般から見ても制限がございまするので、われわれといたしましては、市町村間の非常な税負担の不均衡にならないように、法定外普通税を許可するにあたりまして、十分配意してまいりたいと思っておる次第でございます。(拍手)   〔国務大臣田中角榮君登壇拍手
  44. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 住民税減税による減収補てん債は、赤字公債ではないか。――ありません。それから将来、赤字公債等の道を開かないかということでございますが、減収には市町村に起債は認める、激変緩和の措置として、国がその元利償還金の三分の二を補給するということでございますので、赤字公債でもなく、また赤字公債の道を開くものでもありません。また、将来とも健全財政方針を堅持するつもりでありますので、赤字公債等の発行は、現在考えておりません。(拍手
  45. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。      ―――――・―――――
  46. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) この際、日程の順序を変更して、  日程第二十、印紙税法の一部を改正する法律案内閣提出)、  日程第二十一、日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)、  以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 御異議ないと認めます。まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長新谷寅三郎君。   〔新谷寅三郎君登壇拍手
  48. 新谷寅三郎

    ○新谷寅三郎君 ただいま議題となりました二法律案につきまして、委員会における審査の経過及び結果を御報告いたします。  まず、印紙税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  昭和三十七年四月以降、印紙貼用にかえて、印紙税現金納付表示器による印紙税納税制度が設けられておりますが、本案は、この制度の普及に伴い、納付手続等の規定の整備をはかろうとするものでありまして、すなわち、印紙税現金納付計器により納付印を押捺して、納税する制度を法律上明定すること、また計器の設置及び納付印の製造等についての承認制度を設け、計器の販売業者等について、その開廃業申告、記帳の義務及び検査受認義務の規定を設けるとともに、これらの違反行為に対する罰則規定を整備することにいたしております。  委員会の審議におきましては、計器による印紙税納付制度を法律上明定する理由、計器の使用状況及び印紙税法の全面改正に対する政府の方針等について質疑が行なわれましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。  質疑を終了し、採決の結果、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。     ―――――――――――――  次に、日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案について申し上げます。  改正点の第一は、同行に対する追加出資の規定の整備であります。現在同行に対する出資の追加は、そのつど資本金額の改正を必要としておりまするが、今後は、政府が必要と認めたときには、予算の定める範囲内で出資の追加を行なおうとするものであります。  第二は、業務の追加であります。本法第十八条第三号による外国政府等に対する円借款は、同行及び甲種為替銀行十二行による協調融資方式によって行なわれておりますが、この貸し付けは長期無担保であり、債権確保上必ずしも十分とは言えない状況でありますので、市中銀行の協調融資分については、同行がその債務の保証を行ない、また、わが国から設備等の輸入または技術の受け入れを行なった者が、その国の国際収支上の理由から債務の履行ができない場合には、一定の条件のもとに、当該国の政府等に対し必要資金の貸し付けを行なおうとするものであります。  第三は、最近における同行の業務量の増大に対処するため、理事の定数を一名増加しようとするものであります。  委員会におきましては、追加出資の方式の改正と、同行の融資に対する国会審議権との関係、わが国の輸出、特に社会主義諸国への輸出における同行の役割り昭和三十九年度における同行の事業計画、船舶輸出と今後の長期的見通し、国際収支上の理由から債務の繰り延べを行なう場合の諸問題、同行の業務と、海外経済協力基金の業務との調整等について、熱心なる質疑が行なわれましたが、この詳細は、会議録によって御承知を願いたいと存じます。  かくて質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して成瀬委員から、「本案のように日本輸出入銀行の業務を追加することは、輸出振興上妥当な措置と認めるが、ただ、追加出資の方式を改めて、今後は法律改正を要しないものとすることは、同行の、公正にして、かつ適切な事業計画に基づく融資の確保に対する国会の審査の場を、実質的に排除しようとするもので賛成することはできない。したがって、出資の追加は現行どおり資本金額の改正によって行なうべき」旨の修正案を提出し、この修正を条件として本案に賛成するとの意見が述べられ、日本共産党を代表して鈴木委員から、「本案は、日本の独占資本の海外市場進出のため、不当不要な延べ払い輸出を行ない、その焦げつき債権の肩がわりを行なおうとするものであり、また、追加出資の規定の改正は国会審議権を奪うものであるから反対である」旨の意見が述べられました。  討論を終了し、採決に入りましたところ、成瀬委員提出の修正案は多数をもって否決せられ、次いで本案について採決を行ないました結果、多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告いたします。(拍手
  49. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  まず、印紙税法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  50. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。      ―――――・―――――
  51. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 次に、日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  52. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。      ―――――・―――――
  53. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 日程第十一、遺言の方式に関する法律抵触に関する条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。外務委員会理事井上清一君。   〔井上清一君登壇拍手
  54. 井上清一

    ○井上清一君 ただいま議題となりました条約につきまして、外務委員会における審議経過と結果を御報告いたします。  この条約は、一九六〇年のヘーグ国際私法会議の結果成立したものでございまして、国際的性質を持つ遺言が、ある国では方式上有効とされ、ある国では無効とされる不合理を除き、ある国でされた造言が、関係国のいずれにおいても方式上有効と認められるよう、遺言の方式の準拠法に関し、各国共通の規則を定めたものであります。  質疑の詳細は会議録によって御承知願いたいと存じますが、委員会は、三月五日質疑を終え、採決の結果、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  55. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本件を問題に供します。本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  56. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって承認することに決しました。      ―――――・―――――
  57. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 日程第十二、風俗営業等取締法の一部を改正する法律案内閣提出)、  日程第十三、昭和三十八年度分として交付すべき地方交付税総額特例に関する法律案、  日程第十四、警察法の一部を改正する法律案、  (いずれも内閣提出衆議院送付)、  以上三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 御異議ないと認めます。まず、委員長の報告を求めます。地方行政委員長竹中恒夫君。   〔竹中恒夫君登壇拍手
  59. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 ただいま議題となりました三法律案について、地方行政委員会における審査の経過と結果を御報告いたします。  まず、風俗営業等取締法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本法律案は、最近における飲食店営業の実情にかんがみ、善良な風俗の保持と年少者の福祉を守ろうとするもので、その要旨は、一、設備を設けた飲食店の深夜営業についての規制の範囲を明確にするため、営業場所、営業時間、営業所の構造設備等について条例で必要な制限を定め得ることとし、この改正によって、たとえば最近問題となっているいわゆる深夜喫茶等は、条例指定地域に限って廃止されることになります。  二、風俗営業や設備を設けた飲食店の深夜営業における年少者の福祉を守るため、風俗営業者に対しては、営業所で十八歳未満の者に客の接待をさせ、または客の相手となってダンスをさせること、営業所に客として立ち入らせること及び営業所で二十歳未満の客に酒類を提供することを禁止し、また、設備を設けた飲食店営業者に対しては、深夜営業で十八歳未満の者を接客業務に従事させ、もしくは営業所に客として立ち入らせること及び営業所で二十歳未満の客に酒類を提供することを禁止すること。  三、客に飲食をさせる風俗営業を営む者または代理人等が法令等に違反し、その許可を取り消し、もしくは営業停止の処分を受けたとき、または飲食店営業者が無許可で風俗営業を営んだとき、または設備を設けて飲食店を営む者あるいは代理人等が深夜営業で法令等に違反したときは、当該営業を営む者に対して、当該施設を用いて営む飲食店営業についても、それぞれ六カ月をこえない範囲内で営業停止等ができること。  四、設備を設けた飲食店営業の深夜営業における順守事項違反についての罰則を整備するとともに、年少者に関する禁止行為違反についての罰則を新設すること等であります。  本委員会におきましては、二月四日、早川国務大臣から提案理由の説明を聞いた後、参考人の意見聴取、実地視察をするほか、政府当局との間に熱心に質疑応答を重ねましたが、中でも風紀上問題の多いトルコぶろ、ヌード・スタジオ等の営業及び深夜の営業を認めがたいボーリング場、深夜映画等の営業についても規制すべきではないか、深夜喫茶等については条例にゆだねることなく、法律で規制して全国的に斉一を期すべきではないか等のほか、多くの問題点について論議されたのでありますが、その詳細については会議録によって御承知願いたいのであります。  三月三日、質疑を終局し、同五日、社会党、民主社会党、第二院クラブ共同の修正案が提出され、社会党の千葉委員よりその趣旨説明がありました。  修正案の内容は、  一、第一条五号に規定する喫茶店、バー等の営業の要件である客席における照度十ルクスを二十ルクスとして、条例による特例は認めないこととし、また、同条六号のこれらの営業の設備の広さについても、条例による特例を削除して、法律のみに限定すること。  二、第四条の二に一項を加えて、設備を設けた飲食店営業で、主として食事を提供するもの以外のものの深夜における営業を営むことはできないこととし、ただし、公衆の日常生活の利便のためやむを得ないもので、かつ、善良の風俗を害するおそれがないと認められる営業で、条例で定めるものについては、許可を受けた場合に認めることとする。すなわち、飲食店営業の深夜の営業の規制を直接法律規定して、全国的に規制の画一をはかること。  というものであります。  かくて討論に入りましたところ、第二院クラブ市川委員、民主社会党赤松委員社会党藤原委員の三委員は修正案に賛成、原案に反対意見をそれぞれ開陳され、また、自由民主党西田委員、公明会辻委員の二委員からは、それぞれ修正案に反対、原案に賛成の意見が表明されました。西田委員は、その際、各派共同にかかる次の附帯決議案を提出されました。    附帯決議案   政府は、最近の世相にかんがみ、善良な風俗の保持および青少年の健全な育成をはかるため、風俗営業等の取締りの徹底を期するとともに、さらに、風紀上問題の多いトルコブロ、ヌードスタジオ等の営業または青少年の非行を誘発するなど弊害が著しい深夜におけるボーリング場等の営業の規制についても、すみやかに対策を検討し、その万全を期すべきである。   右決議する。  次いで採決いたしましたところ、修正案は賛成少数をもって否決され、本法律案は賛成多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、附帯決議案については、採決の結果、全会一致をもって、これを委員会の決議とすることに決定した次第であります。  なお、この附帯決議に対し、早川国務大臣から、決議趣旨を尊重して善処したい旨の発言がありました。     ―――――――――――――  次に、昭和三十八年度分として交付すべき地方交付税総額特例に関する法律案について申し上げます。  本法律案は、昭和三十八年度第三次補正予算に伴って本年度分の地方交付税総額に追加されることになった約百三十七億円について、明年度における地方財政の変動に対処する必要を考慮し、新たに災害等緊急の財政需要を生じない限り、その全額を昭和三十九年度に繰り越し、明年度の地方交付税総額に加算することができることとするものであります。  本委員会におきましては、二月四日、早川国務大臣より提案理由の説明を聞いた後、慎重審査を行ないましたが、その詳細は会議録によってごらん願いたいと存じます。  かくて三月五日、質疑を終局し、討論に入りましたところ、別に発言もなく、採決の結果、本法律案は賛成多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。     ―――――――――――――  次に、警察法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本法律案は、警察庁の職員の定員を十名増員して七千七百九十五名とするとともに、都道府県の境界付近における警察事案の処理を円滑かつ能率的に行なうため、管轄区域が隣接する都道府県警察は、政令で定める距離以内の区域において、相互に協議して定めたところにより、当該関係都道府県警察の管轄区域内にも権限を及ぼすことができることとしようとするものであります。  本委員会におきましては、二月十三日、早川国務大臣より提案理由の説明を聞いた後、慎重審査を行ないましたが、その詳細は会議録によってごらん願いたいと存じます。  かくて三月十日、質疑を終局し、討論に入りましたところ、別に発言もなく、採決の結果、賛成多数をもって本法律案は原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告を終わります。(拍手
  60. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  まず、風俗営業等取締法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  61. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。      ―――――・―――――
  62. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 次に、昭和三十八年度分として交付すべき地方交付税総額特例に関する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  63. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。      ―――――・―――――
  64. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 次に、警察法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  65. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。      ―――――・―――――
  66. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 日程第十五、中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案、  日程第十六、林業信用基金法の一部を改正する法律案、  (いずれも内閣提出)、  以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  67. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 御異議ないと認めます。まず、委員長の報告を求めます。農林水産委員長青田源太郎君。   〔青田源太郎君登壇拍手
  68. 青田源太郎

    ○青田源太郎君 ただいま議題となりました両法律案について、委員会における審査の経過と結果を報告いたします。  まず、中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案は、中小漁業融資保証制度について、信用事業を行なう漁業協同組合をこの制度の対象である金融機関に加え、漁業信用基金協会は、その会員である漁業協同組合の組合員並びに会員である水産加工業協同組合及びその組合等の金融機関に対する債務をも保証することができることとするとともに、協会の管理に関する規定等を整備しようとするものであります。  委員会におきましては、水産業、漁家及び協同組合の現況と動向並びにその対策、保証制度の運用状況とその実績及びこれがあり方、この改正法案の趣旨と具体的実施方法及びその影響等が問題となりました。  質疑を終わり、討論に入り、別に発言もなく、採決の結果、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。     ―――――――――――――  次に、林業信用基金法の一部を改正する法律案は、林業信用基金に対し、政府が必要と認めるときは、予算の範囲内で追加出資することができることとするとともに、基金の常勤の理事の定数を一人増加しようとするものであります。  委員会におきましては、林業の見通し及びその振興、林業の基本的法制、林業信用基金の出資、運営、経理及び役職員とその構成、森林組合の整備強化、森林資源、木材の流通、木炭事情、国有林野事業特別会計のあり方等が問題になりました。  質疑を終わり、討論に入り、別に発言もなく、採決の結果、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  右御報告申し上げます。(拍手
  69. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  70. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 過半数と認めます。よって両案は可決せられました。      ―――――・―――――
  71. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 日程第十七、アジア経済研究所法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第十八、電源開発促進法の一部を改正する法律案衆議院提出)  以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕、
  72. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長の報告を求めます。商工委員長前田久吉君。   〔前田久吉君登壇拍手
  73. 前田久吉

    ○前田久吉君 ただいま議題となりました二法案について、商工委員会における審査の経過と結果を御報告いたします。  まず、アジア経済研究所法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本法案は、アジア経済研究所の理事増員に関するものでありまして、同研究所は、御承知のとおり、昭和三十五年四月に制定された同研究所法によって設立された特殊法人であり、アジア地域などの経済に関して基本的かつ総合的な調査研究と資料の収集とを行なってまいりましたが、昨今その業務量は発足当時の二倍となり、またさらに充実させる必要がありますので、本改正法案によって、現在、同研究所の理事の定数が二名以内となっているのを、新たに一名増加して三名以内に改めようとするものであります。  本委員会では、慎重に審査いたしましたが、質疑のおもなるものは、まず、理事増員の必要性と、その担当業務並びに研究所の運営状況に関して行なわれ、その他、本法成立当時の附帯決議である、貿易振興と経済協力に直接寄与すること等の実績、事業費予算や会員組織の内容、作製した資料の配付方法、年度別の主要な研究テーマ、海外派遣員事業や研究員の養成方法及び中共地区の調査などに関するものでありましたが、詳細は、会議録に譲りたいと存じます。  質疑を終わって討論に入りましたが、別に発言もなく、次いで採決いたしましたところ、本法案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。     ―――――――――――――  次に、電源開発促進法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本法案は、衆議院提出にかかるもので、その内容は、電源開発株式会社の理事を三名増加しようとするものであります。電源開発株式会社は、創立以来すでに十年余り経過いたしました現在では、水火力合わせて約二百五十万キロワットの設備を保有運営いたしておりますが、電力業界における広域運営の強化拡充、海外技術協力の本格化、補償問題の複雑化、さらには石炭火力の建設等のため、その業務が、発足当時に比べて著しく増大してきておりますので、業務量の増大に対処するため、この際、同社の理事を三名増加して八名以内としようとするものであります。  本委員会におきましては、特に参考人として藤井電発総裁の出席を求めるなど、慎重に審査を行ない、本法案を政府提案にしないで議員提案とした理由、増員される理事の人選の問題、石炭専焼火力の建設の問題、電発の将来のあり方等について、質疑応答が重ねられましたが、その詳細は、会議録によって御承知願いたいと存じます。  質疑を終わり、討論に入りましたが、別に発言もなく、次いで採決いたしましたところ、本法案は、多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上で二法案についての報告を終わります。(拍手
  74. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  まず、アジア経済研究所法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  75. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。      ―――――・―――――
  76. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 次に、電源開発促進法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  77. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。      ―――――・―――――
  78. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 日程第十九、首都高速道路公団法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。建設委員長北村暢君。   〔北村暢君登壇拍手
  79. 北村暢

    ○北村暢君 ただいま議題となりました首都高速道路公団法の一部を改正する法律案について、建設委員会における審議経過並びに結果を御報告申し上げます。  本案は、首都高速道路公団が国際復興開発銀行から外貨資金を借り入れる道を開き、この場合における同銀行の債権者としての地位の保護その他について規定を整備するとともに、同公団の管理委員会の委員の定数の増加、監事の職務権限に関する規定等の整備をはかろうとするものであります。  当委員会の審議にあたりましては、参考人として首都高速道路公団理事長ほか役職員を招致するほか、内閣法制局及び行政管理庁並びに衆議院建設委員会における修正案提出者、衆議院議員瀬戸山三男君の出席を求め、慎重なる審議を行なってきたのであります。  質疑のおもなる点は、監事の職務権限の明確化と各省所管の同種公団等の取り扱いについての政府統一見解、首部高速道路公団と日本道路公団との業務区域に関する基本方針、羽田-横浜線の計画の内容並びに同路線に導入を予定される国際復興開発銀行からの借款の額等に関するものでありますが、詳細は、会議録によって御承知を願いたいと存じます。  かくて質疑を終了、討論を省略して採決の結果、全会一致をもって衆議院送付案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告いたします。(拍手
  80. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  81. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。      ―――――・―――――
  82. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 日程第二十二、不動産登記法の一部を改正する法律案内閣提出)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。法務委員長中山福藏君。   〔中山福藏君登壇拍手
  83. 中山福藏

    ○中山福藏君 ただいま議題となりました不動産登記法の一部を改正する法律案につきまして、法務委員会における審議経過及び結果を御報告申し上げます。  この法律案は、抵当権その他の担保権の登記における登記事項を合理的に削減するとともに、共同担保目録の制度を改善し、不動産の合併の場合の所有権の登記を簡明化する等、不動産登記手続の合理化及び簡素化をはかり、もって登記事務の適正迅速な処理を可能にしようとするものであります。  法務委員会におきましては、二月十三日以来、審議に入り、担保権の登記事項、保証書の提出にかかる登記申請手続等の各改正点のほか、激増しつつある登記事務処理の態勢等に関しましても、熱心な質疑が重ねられたのでありますが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。  かくて三月十二日、質疑を終了し、討論に入りましたが、別に発言もなく、直ちに採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって政府原案のとおり可決いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  84. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  85. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 総員起立と認めます。よって本案は全会一致をもって可決せられました。  次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時四十分散会      ―――――・―――――