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1964-02-14 第46回国会 参議院 本会議 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月十四日(金曜日)    午前十時二十分開議   ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第六号   昭和三十九年二月十四日    午前十時開議  第一 昭和三十八年度一般会計補   正予算(第3号)  第二 昭和三十八年度特別会計補   正予算(特第3号)  第三 昭和三十八年度政府関係機   関補正予算(機第3号)  第四 経済協力開発機構条約の締   結について承認を求めるの件   (趣旨説明)  第五 外国為替及び外国貿易管理   法及び外資に関する法律の一部   を改正する法律案趣旨説明)  第六 消防組織法及び消防団員等   公務災害補償責任共済基金法の   一部を改正する法律案内閣提   出)   ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、請暇の件  一、日程第一 昭和三十八年度一般   会計補正予算(第3号)  一、日程第二 昭和三十八年度特別   会計補正予算(特第3号)  一、日程第三 昭和三十八年度政府   関係機関補正予算(機第3号)  一、日程第四 経済協力開発機構条   約の締結について承認を求めるの   件(趣旨説明)  一、日程第五 外国為替及び外国貿   易管理法及び外資に関する法律の   一部を改正する法律案趣旨説明)  一、日程第六 消防組織法及び消防   団員等公務災害補償費任共済基金   法の一部を改正する法律案   ━━━━━━━━━━━━━
  2. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。    ————————
  3. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。  この際、おはかりいたします。田中一君から海外旅行のため明日から十五日間請暇の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって、許可することに決しました。    ————————
  5. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第一、昭和三十八年度一般会計補正予算(第3号)、  日程第二、昭和三十八年度特別会計補正予算(特第3号)、  日程第三、昭和三十八年度政府関係機関補正予算(機第3号)、  以上三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。まず、委員長報告を求めます。予算委員長太田正孝君。   〔太田正孝登壇拍手
  7. 太田正孝

    太田正孝君 ただいま議題となりました補正予算三案の審議の経過及び結果を御報告申し上げます。  まず、一般会計につきましては、予算作成後生じた事由に基づきまして、特に緊要となった経費並びに義務的経費不足につきまして追加計上したものであります。合計八百二十六億余万円であります。  その歳出のおもなるものは、産業投資特別会計日本輸出入銀行への出資を六十億円追加するための財源として繰り入れる。また、産業投資特別会計資金への三百億円の繰り入れによりまして、経済基盤強化企業体質改善等今後増大する出資の需要に応じ、産業投資を円滑かつ弾力的に行ない得るようにするというのであります。そのほか義務的経費といたしまして、義務教育費国庫負担金生活保護費国民健康保険助成費結核医療費及び失業保険費負掛金などの三百二十三億六千七百余万円を計上しております。所得税及び法人税増収見込みに伴う地方交付税交付金増加といたしまして、百三十六億七千一百万円を計上しております。その他、大阪空港整備費、自衛隊の産炭地域への移駐経費オリンピック東京大会実施準備費等経費を計上し、また、老人福祉法施行遅延に伴いまして十億九千二百万円を修正減少したものであります。これらの歳出をまかないます財源は、所得税法人税相続税物品税及び関税自然増収を見込んでおるのであります。  以上申し上げました補正の結果、昭和三十八年度一般会計予算規模は大きくなりまして、歳入歳出とも三兆円を超過し、三兆五百六十八億七百十一万七千円となるのであります。  第二の特別会計補正予算は、右の一般会計補正予算に関連して関係特別会計をそれぞれ所要補正するものであります。  第三の政府関係機関補正予算は、日本国有鉄道におきまして、鉄道債券の発行による資金をもって改良工事費百億円を増額し、もって改良工事の進捗をはかることにいたしたものであります。  以上の補正三案は、二月十一日衆議院で可決いたしました。本委員会におきましては、一月二十五日、田中大蔵大臣から提案理由説明を聴取し、この十二日及び十三日に政府に対する質疑を行ないました。その質疑のおもなるものにつきまして、直接予算関係のありまするものと一般的のものとに分けて申し上げます。  今回の補正予算に対し、まして、「政府は安易な考え補正予算を提出しておるが、これは当初予算編成に問題があるのではないか」とのことでございます。また、産業投資特別会計資金への繰り入れにつきましては、「税収の自然増産業投資特別会計資金繰り入れ開放体制に備えるということであるが、困窮しておる産炭地救済等に使用すべきではないか」というのであります。また、「社会保障費関係経費不足補てんが多いが、補てんしなければならなかった原因は何であるか」、以上が質疑のおもなるものであります。これに対しまして、政府答弁は、「安易な考え補正予算作成しているのではない。前回の補正予算は、人事院勧告に基づく公務員給与引き上げ増が主であって、今回の補正予算は主として義務的経費不足補てんであるが、これは地方自治体を通じて行なうものについては、当初において正確なる数字が把握しがたい関係もあって、今回の補正を行なったものである。その他についても、予算作成後生じた真にやむを得ないものだけである」というのでございます。また、「産業投資特別会計資金への繰り入れば、財政法第二十九条によって行なうものであって、わが国産業基盤強化体質改善等のためにぜひとも必要なのである。産炭地に対しては、起債の承認の優遇、特別地方交付税等により、財政的に援助しており、さらに産炭地振興については種々の政策を実施しておって、三十九年度には従前にも増して拡充したい」というのであります。また、「生活保護費追加八十四億円については、産炭地人員増加医療扶助増加が大半であって、老人福祉法施行遅延により、それにかわり支出がふえたことによるものである。保険会計赤字については、医療の回数と医療内容向上原因であって、医療費増加傾向はここ一、二年の動向で、今年度のふえ方は特に異常であるので、医業の実態調査実情をよく調べてみることが必要である」、こういう政府答弁でありました。  一般的の問題の質疑は、ほかには外交問題、経済見通し及び物価問題、国際収支問題、中小金融対策住宅対策医療問題等、当面の重要諸問題に触れて行なわれました。  特に、フランス中国承認後のわが国の対中国関係につきまして、こういう質問がございました。「政府中国観は、一つ中国一つ台湾を認めようとしているのか、二つ中国を認めようとしているのか。国府を承認しておる国で北京政府政府間協定通商代表部の設置をしておる例もあるが、わが国はどうしてこれを認めないのか」などの質疑がございました。これに対しまして、総理大臣及び関係大臣から、「フランス中共承認の問題については、ドゴール大統領の独自の見解のもとに展開されたものと思うが、これが今後の世界に建設的な提案として実を結ぶかどうか、現段階で評価するのはむずかしい。日本は中華民国と平和条約を結んでおるので、二つ中国考えないし、一つ中国一つ台湾考えていない。中国問題は現実問題としてなかなか困難な問題であるので、国連の場での解決を待つとともに、でき得るだけ両国の和解が達成せられるよう努力したい。中共との政府間協定等については、日本西欧諸国の立場と違い、気軽にはできない事情にある」との答弁でございました。  また、医療保障に関しましては、国保と健保の格差の問題、医療費改訂問題、医療従業者不足の問題などが論議されましたが、「最近の看護婦不足は著しく、医療法規定数を下回っておる状況で、それには政府のこの問題に対する認識の不足が根本の原因をなしておると思うが、この問題に対してどう処理するつもりか」との質問がございました。これに対し、政府は、「看護婦不足若年労働者不足、待遇の不備等原因であるが、現在長期計画に基づき努力中であり、昭和四十五年までには二十五万人にしたい、また、看護婦養成所を、学校教育法による短大にすることも考慮しており、看護婦養成所運営費補助も近い将来に実現させたい。一方、看護婦労働条件向上にもつとめ、医療法施行規則第十九条等も実情に沿って改正したい」との答弁がございました。  このほか、質疑はILO八十七号、百二号、百三号条約の批准の問題、沖繩援助の問題、厚生年金改正問題、住宅建設の問題、国鉄五カ年計画運賃値上げ事故対策、土地の値上げ抑制方策憲法調査会行政調査会運営問題等にわたりましたが、その詳細は、会議録によって御承知を願いたいと存じます。  かくて質疑を終了いたしまして、討論に入りました。社会党を代表して藤田進委員反対、自由民主党を代表して村山委員賛成公明会を代表して中尾委員反対民主社会党を代表して天田委員反対、共産党を代表して須藤委員反対の旨、それぞれ意見を述べられました。  討論を終了いたしまして、採決の結果、予算委員会に付託されました昭和三十八年度補正予算三案は、多数をもって可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告を申し上げます。(拍手
  8. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 三案に対し討論通告がございます。発言を許します。藤田進君。   〔藤田進登壇拍手
  9. 藤田進

    藤田進君 私は日本社会党を代表いたしまして、昭和三十八年度補正予算三案に対しまして、反対討論をいたしたいと存じます。  初めに私の申し上げたいと思いますことは、補正予算のあり方についてであります。本補正予算内容は、産投繰り入れと、いわゆる義務的経費不足補てん地方交付税の増額その他雑件となっておるのであります。  政府は一昨年三十七年に、財政法改正を行なった際に、補正予算提出の要因として、「予算作成後に生じた事由に基づき、避くべからざる経費支出」と、在来こうありましたものを、次のように、すなわち、「特に緊急となった経費」、このように改めたのであります。その際、わが党は、補正をルーズにするのではないかとただしましたところ、その際、政府としてはいろいろ御答弁がございましたが、避くべからざるということと、それから改正いたしました特に緊急なるということは同じだと政府答弁をいたしているのであります。しかしながら、事実は、ああいう財政法改正以来、補正予算に対する政府態度は、きわめてルーズになってまいりました。総予算に計上すべき経費を過小に計上しておいて補正で要求いたしましたり、前年度剰余金となすべきものをかってに処分して、年度区分を乱るごとき措置を平然と行なっているのであります。  今回の補正に組まれました産投繰り入れ三百六十億円のうち、六十億円は輸銀の資金不足したというのでありますが、三百億円のほうは資金への繰り入れで、三十九年度以降の産投出資財源に充てようとするものであります。一体この財源は何でありましょうか。政府インフレ政策をとった結果生じた税の自然増収であります。租税は、国が総予算できめた経費負担するものであって、自然増収が出た場合、それは政府のもうけではなくして、納税者大衆のものであります。そこで、自然増収が出たならば、財源不足で、出初総予算に盛れなかった緊急な経費に回すとか、あるいは特に減税もされず、生活に苦しんでいる国民に対しての措置を講ずる、このような措置が当然で、あります。さらにいえば、年度内でも増収分減税に回す、これまた当然だと思うのであります。来年度以降の何にどれほど緊要性があるかわからぬ用途に基金として繰り込むという今回の措置は、財政法改正によりまして、形式上は合法であるといたしましても、単年度予算の原則に反するものでありますと同時に、納税国民に対する政府義務違反であると言わなければなりません。  さらに、いわゆる義務的経費不足補てんでありますが、十二件、三百二十三億円という額にのぼっておりまして、それがほとんど社会保障関係補助負担金に集中しております。たとえば結核医療費補助金、これは当初予算に比べまして十二%の増になっております。この額が二十六億円、これが追加要求されております。また、生活保護費補助金は、当初予算に比べて一一・六%の増の八十四億三千九百万円、これが追加要求されております。国民健康保険助成費においては、当初予算に比べまして十二・七%の増で八十五億二千万円、失業保険特別会計につきましては、保険給付増加をまかなう経費として五十三億八千万円、これが一般会計よりの繰り入れを要求されてるいのであります。この金額は、当初予算に比べまして、実に二七%に達する巨額なものであります。このような事態は、社会保障関係費のみならず、義務教育費国庫負担金公立養護学校教育費国庫負担金、これらにつきましても同様のことが指摘できるのであります。この問題は、単に政府見通しが甘かったと言って済まされる問題ではありません。もし財源に余裕が生じなかったという場合には、政府はいかなる方法をとりましてこの不足額を処理するつもりであったのでありましょうか。その結果は、地方団体負担がしわ寄せせられて、当然受けられる社会保障給付が金がないという理由をもって断わられるという危険な状態におちいるのであります。このような事態が発生するような当初予算の無責任な作成を私どもは追及せざるを得ないのであります。  次に、指摘いたしたいととは、第三次、今回の追加補正にあたりまして緊急を要する諸点についてでございます。  まず、その第一に、中小企業に対する措置であります。金融引き締めの始まります直前の昨年十一月に負債総額一千万円以上、こういう企業倒産がすでに二百九十件も出ていたのであります。引き締め後のことしの一月には負債総額一千万円以上の企業倒産が百九十八件で、負債総額は二百八十億円にも達しているというのであります。一月にこのような多数の倒産が出るということは、まさに異常であると言わなければなりません。また、不渡り手形届け出総数は六万枚に達しております。さらに、社会保障の面からも、医療保障年金生活保護、失対関係、いずれも緊急の予算措置を必要とするのであります。  第二に、農業漁業関係についてであります。今日の物価高騰最大被害者といわれている農漁民は、みずから生産いたしましたこれらのものに対する値段、売る物の値段は非常に安くして、しかも買う物は高い、現金収入は依然として乏しい、いわば政治から取り残された階層人々であります。最低生活を維持することさえ困難であるという状態の中で、子弟の教育をはじめ、医療費など現金支出は日々増加傾向をたどっているのであります。これら谷間にあえぐ人々への緊急予算措置を講ずべきであると考えるのであります。  第三に、物価対策についてであります。政府は、先般公共料金値上げを向こう一カ年間ストップするということを発表いたしましたが、それだけでは、物価抑制にはならないのであります。公共料金値上げストップから来るところの矛盾に対して、国は財政的裏づけを当然考えなければなりません。今日のわが国資本主義政策というものが、すでに実は行き詰まりの様相を示していると言わなければなりません。これについては、抜本的な企業構造の再編成とかいったような重要な施策を必要といたしますけれども、かかる事態に対しまして、過渡的な緊急予算措置を必要としているということは、だれしも否定できないのであります。  また第四に、国際収支輸出入貿易についてであります。昭和三十八年一月から昨年の末十二月までの間を見ましても、いずれの月も赤字となっているのであります。また、ことしの一月の貿易収支においても一億三千万ドル以上の赤字が見込まれている。またさらには、二、三月においても改善のきぎしは全くないと言われているところであります。政府はこの危機を外資借り入れ政策で糊塗してきたのでありますが、このことは、今後アメリカの利子平衡税影響のみならず、欧州諸国金融引き締め政策、あるいは今後の世界経済動向など考慮いたしますと、きわめて憂慮せざるを得ないのであります。このような状態に対しまして、政府が緊急な対策を講ずることが目下最大の課題と言わなければなりません。  以上、時間の都合上主要な諸点にとどめまして指摘いたしたわけでございますが、今回の補正予算は、かような緊急かつ重要な諸施策に欠くるところがあるばかりではなく、一貫して大企業本位のものでありまして、政策の犠牲となっている各階層に対して、救済的役割りを果たし得ない性格のものであります。したがいまして、私どもは、本補正予算三案に対して、強く反対をいたすものであります。  以上をもちまして討論を終わります。(拍手
  10. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これにて討論通告者発言は終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより採決をいたします。  三案全部を問題に供します。三案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立
  11. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって三案は可決せられました。    ————————
  12. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第四、経済協力開発機構条約締結について承認を求めるの件(趣旨説明)、  本件について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。大平外務大臣。   〔国務大臣大平正芳登壇拍手
  13. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 経済協力開発機構条約締結について国会承認を求めるの件につきまして、その趣旨を御説明いたします。  経済協力開発機構、すなわち、OECDは、戦後十三年にわたる活動を通じて貿易自由化、通貨の交換性の回復及び欧州経済復興に多大の貢献をした欧州経済協力機構、すなわち、OEECを改組し、新たに米国及びカナダを加えて、一九六一年九月、その規模においても、その活動分野においても全く新たな機構として発足したものであります。同機構は、高度の経済成長、低開発国援助及び貿易拡大を基本的な目標として掲げ、現在西欧の二十カ国を加盟国として、経済金融貿易科学技術農業漁業、海運、原子力、教育等きわめて多岐な分野にわたる活動を行なっておりますが、その活動加盟国相互協調的関係を基礎とし、主として情報の交換検討多角的協議及び勧告の形で進められている点に独自の意義を有するものであります。  わが国は、同機構下部機関のうち、三大委員会一つに数えられる開発援助委員会、すなわち、DACにはその発足当時から参加し、積極的に機構への加盟の態勢を整えてまいりました。ところが、昨年初頭からわが国加盟問題が次第に具体化し、同年五月から七月にかけ東京及びパリで行なわれた加盟交渉の結果、同年七月二十六日、機構理事会全会一致の決定をもって、わが国に対し正式に加盟を招請し、次いで前記交渉結果をまとめた了解覚え書きの署名が行なわれたのであります。  今次国会において加入の御承認を求める経済協力開発機構条約は、OECD目的目的を達成するための基本的方針主要活動組織等の大綱を定めたものであります。また、前述の了解覚え書きは、わが国がいかなる条件機構加盟国となるかを具体的に示すものでありまして、その主たる内容は、総計二百三十二にのぼる機構の文書のうち、そのいずれについてわが国が適用を免れるかを明らかにし、他方経常的貿易外取引及び資本移動自由化規約に関し、わが国が今後なお一そうの自由化を進めるが、総計八十二の自由化項目のうち、十七項目については一定の留保を付する旨を規定していることであります。かかる留保を通じて、自由化規約の受諾により、わが国経済、特に中小企業等に好ましからぬ影響が与えられぬよう、十分に配慮をしておるのであります。  現在わが国は、IMF八条国移行ガット関税一括引き下げ交渉への参加、貿易及び貿易外取引自由化促進等により、自由世界開放経済体制の確立に努力しつつありますが、さらに経済協力開発機構への加盟により欧州諸国米国及びカナダを包括する世界先進工業国協力の場に入ることとなり、このことは国際的協調による繁栄を助長し、真にわが国経済を利すると確信するものであります。他方自由世界開放経済体制の進展に伴い、重要国際経済問題の多角的解決に際してわが国利益をより積極的に反映せしめる必要があることは言をまたないのでありますが、経済協力開発機構における十分な協議、調整は、そのための好個の機会と考えられるのであります。  最後に、わが国経済協力開発機構への加盟に関し看過してならないのは、加盟を契機として従来日・米・欧間に存在した連帯性を一そう緊密化し得るということであり、かつ、かかる先進工業国のみにて構成される機構における唯一のアジアからの加盟国としてのわが国は、アジア諸国経済的利益機構活動に反映せしめ得ると考えております。  以上が、経済協力開発機構条約締結について御承認を求めるの件についての提案趣旨でございます。(拍手
  14. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑通告がございます。順次発言を許します。岡田宗司君。   〔岡田宗司登壇拍手
  15. 岡田宗司

    岡田宗司君 私は日本社会党を代表して、ただいま外務大臣より提案理由説明せられました「経済協力開発機構条約締結について承認を求めるの件」に関して、ここに政府に対し若干の質問をいたす次第であります。  わが国OECD加盟いたしますことは、貿易自由化IMF八条国への移行と相まって、いわゆる開放経済体制への移行を、一〇〇%とはいかないまでも、ほぼ完了することを意味するものであります。これは日本経済にとりまして一つのエポックを画するものと言わなければなりません。この条約目的である、(一)加盟諸国経済高度成長促進と、その国民経済的及び社会的福祉向上、これらの国の能力及び潜在力の一そうの効果的な利用、(二)経済的発展の途上にある国々に対する援助のための協力、(三)世界貿易拡大、これらはまことにりっぱな事柄でございまして、加盟国はもとより、何国といえどもこの点には同意しなければならないところでありますが、しかし、この機構加盟するにあたりまして、わが国が受諾しなければならない経常的貿易外取引自由化に関する規約資本移動自由化に関する規約は、日本経済構造発展に重大な影響を及ぼし、ひいては国民生活にも影響するところ大であります。そういう影響考えますとき、われわれは、OECDへの加盟には、多方面にわたって十分な検討を加え、慎重な態度をもって臨まなければならないと存ずるのであります。  総理は、OECDへの加盟に非常な執心を示されてまいりました。これによって、日本世界大国の仲間入りができると誇らかに言明されてきたのであります。総理の言われますように、日本OECD加盟して、大国として内外に認められたといたしましても、そのために、日本経済産業の将来にわたりまして不利な事態が起こるとするならば、それは虚名のために実を捨てることになるのでありまして、私どもといたしましては、いま十分な用意がなくてOECD加盟することは時期尚早ではないかと危惧の念を抱かざるを得ないのであります。この時期に急いで加盟しなければならないという積極的な理由はいかなるところにあるのか、また、不利な条項を受諾してまで加盟することによって、日本は実質的にいかなる利益を受けるのか、具体的に総理よりお示しを願いたいのであります。  次に、わが国は、加盟にあたりまして、経常的貿易外取引自由化に関する規約を受諾したのでありますが、たとえ若干の留保がつけられてありましょうと、それが実施されます場合、わが国国際収支中、貿易外収支の将来はどうなるでありましょう。すなわち、三十四年度までは貿易外収支は黒字だったのでありますが、三十五年には七千三百万ドル、三十六年には一億三千九百万ドル、三十七年度には二億二千五百万ドル、三十八年度には推定三億二千万ドルと、年々赤字が激増の一途をたどっているのであります。この年々の赤字の激増は、景気変動や他の偶発的要素によるものではなくて、貿易外収支の構造の変化に基づくものと言わなければなりません。  すでに、かような事態に立ち至っておるときに、いま貿易外取引自由化を一挙に押し進めることは、この赤字を将来一そう激増させ、日本国際収支の慢性的、悪化をもたらし、日本経済の今後の発展に重大な影響を及ぼすものと言わなければなりません。田中大蔵大臣は、この貿易外収支の赤字についてどうお考えになっておるのか。これが激増を食いとめ、国際収支改善をはかるために、いかなる恒久的対策あるいは応急的の対策を立てておられるのか、具体的にお示しを願いたいのであります。  また政府は、OECD加盟交渉におきまして、一年以上の長期用船契約について留保期間五年を強く要請してきたのでありますが、ついにいれられず、結局、日本側の譲歩によりまして、石油タンカー二年、鉄鉱石、石炭専用船各一年に限定されたのであります。貿易外収支の赤字の大きな部分を占める海運の赤字、これから一そう増加するこの赤字を、いま政府がとりつつある政策で、はたして見込みどおりに減少させることができるかどうか、はなはだ疑わしいのであります。この点につきまして、政府はいかなる対策を持っておられるか、お伺いしたいのであります。  また、映画フィルムも自由化されることになりますというと、日本の映画産業は外国の映画の激しい攻勢に押しまくられることは必至でありますが、特に、いままでも日本の青少年に害毒を流していましたギャング映画、エロ映画等が容易に輸入されることになり、その害は一そう甚大になるのであります。これは、総理の言う人つくりの方策をくつがえすものでありますが、総理はこれに対しましていかなる対策をもって臨まれるのか、お伺いしたいのであります。  次に、資本移動自由化につきましてお伺いしたい。IMF八条国への移行とこの規約の受諾によりまして、たとえ多少の留保はつけられておりましても、外国資本日本への流入は、短期資本も長期資本も、ともにきわめて自由になるのであります。外国資本が単独または合弁の形で日本に入りまして、日本の同種の企業をなぎ倒し、あるいはある種の産業部門、市場を支配し、日本の技術の開発を阻害し、また、ばく大な利潤を上げまして、それを本国にどんどん送金いたしますならば、外資の導入は、日本経済にとりましては利益になることよりもむしろ不利な事態をもたらすものといわなければなりません。かように外国資本日本産業のうちに深く根をおろしまして支配を確立してしまうならば、その産業は外国資本へ従属することになり、外国資本動向に一喜一憂せざるを得なくなるのであります。すでに、かかる例は日本の石油産業に見られるのであります。石油産業におきましては、外国資本が単独または合弁の形で原油の輸入、精製、販売のあらゆる部面をほとんど押えてしまっているのであります。かような例は、ひとり日本だけではございません。イギリスやドイツ、フランスのような国におきましても、アメリカの資本が入り込んでまいりまして、企業を乗っ取り、あるいは国内企業をおびやかして問題を起こしているのであります。今後資本移動自由化に伴いまして、外国資本、特に強大なアメリカ資本が、わが国にどんどん流入してまいりまして、石油産業のように食い込み、支配をしないとどうして保障されるでございましょう。しかも、日本資本家たちは、従来から競って外国資本と、技術の導入をはかってきたのでありまして、今後、かかる傾向は一そう助長されるでございましょう。総理OECD加盟を急がれましたのは、よもや外国資本日本への流入を促進することが日本経済発展利益であるから、無制限にどしどし入れてよいという方針から出ているのではございますまい。総理は、外国資本の導入ということに対してどういう方針をとられるのか。また、それが日本経済産業に与える損害に対しまして、どういう方針をもって臨まれるのか、お示し願いたいのであります。  また、福田通産大臣、田中大蔵大臣には、それぞれの所管の範囲におきまして、それに対する具体的な対策をお示し願いたいのであります。  ことに、この機に乗じまして外国資本のスーパーマーケットヘの進出が問題であります。さきにアメリカのセーフウェイが住友商事と提携いたしまして日本に進出しようとしたことは、日本の小売商に非常なショックを与えたのであります。激しい反対運動が起こり、その進出が押えられたのでありますが、資本移動自由化が実施されましたならば、この企てが再び行なわれるでありましょう。そればかりではなく、せきを切って落としたようにアメリカの大スーパーマーケット資本日本になぐり込みをかけてくるでありましょう。そういう場合に、日本の小売商たちは非常な被害を受けるでありましょう。かかる事態の起こることと、流通秩序の混乱を避けるために、通産大臣はいかなる対策を持っておられるか、お伺いしたいのであります。  総理OECDへの加盟によって大国への仲間入りができたと、大いに悦に入っておられるようでございますが、そんな虚名はどうでもよろしいのであります。OECD加盟二十カ国の国民一人当たりの所得と日本のそれとを比較してみますというと、一九六二年度におきまして、この二十カ国のうち、日本より国民一人当たりの所得の少ないのは、ギリシャ、スペイン、ポルトガル、トルコの四カ国にすぎず、日本は十七番目という、まことに低い地位に位するのであります。また、最低賃金制については、ILO二十六号条約を批准しておる国が十四カ国、批准しておらないでも実施しております国が、五カ国、計十九カ国でありまして、トルコのみが例外であります。問題のILO八十七号条約につきましては、十四カ国が批准をし、アメリカ、カナダ、スイスは未批准でありましても、労働者の団結権を十分に認めておるのでありまして、団結権を認めておらず、ILO八十七号条約を批准しておらないのは、ポルトガル、スペイン、トルコの三カ国のみであります。この例を見ましても、日本大国に肩を並べられるどころか、まことにお恥ずかしい状態にあるのであります。  昨年七月末、OECDと密接な関係を持つ国際自由労連のペグー書記長は、日本OECD加盟にあたりまして、「国際自由労連は、OECDが社会問題の分野において民主的水準を維持する組織であることにかんがみ、基本的な労働諸法規を無視する国の加盟は許されない」と声明しておるのであります。日本がいまのようなILO諸条約の未批准の状態OECD加盟いたしますれば、労働組合諮問委員会等におきまして問題にされ、肩身の狭い思いをすることは必至であります。この点は、よく政府においてもお考え願いたいのであります。日本OECD加盟をいたしますれば、日本経済産業体制も国際標準化され、ひいては国民生活水準もまた国際標準化を強く要請されるでございましょう。政府はこの際、すみやかにILO八十七号条約、二十六号条約その他の基本的な労働諸法規を直ちに批准して、その実施をはかり、また、国民一人当たりの所得も、せめて十番目くらいのところまですみやかに引き上げる方策を講ずべきであると思うが、総理の御所見を伺いたいのであります。(拍手)  OECD加盟は、日本経済産業生活水準に関係するところが大きく、なお政府にお尋ねしたい問題は非常にたくさんございますが、いずれ委員会におきまして、関係大臣から詳しくお伺いすることにいたしまして、私の質問をここに終わる次第でございます。以上。(拍手)   〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  16. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答えいたします。  国土狭隘で、人口が非常に多く、資源の少ないわが国といたしましては、世界各国と貿易拡大し、そうして協調していくところに国を立てる道があるのであります。われわれは、この意味におきまして、戦後、国内的にはできるだけ自由化をしてまいりました。しかし、日本の国力は、まだ国際的に自由化というとろこまで行っていなかったのでございまするが、国民の御努力によりまして、いまや世界の一流の先進工業国になることを得たのであります。したがいまして、私は、今後日本のこの経済拡大し、生活水準を上げるには、やはり世界を舞台として、自由化のたてまえで各国に協調していくよりほかに日本の生きる道はないと考えます。したがいまして、私は、先般来、日本の国力を増加すると同時に、各国の信用を博し、そうして相ともに世界の繁栄に協力をしようと努力したのでございまするが、各国も日本の立場を認めてくれまして、そして今後、重要な国際経済問題につきましては、十分協議し、協調していこうというたてまえになったのがこのOECDへの加盟であります。これは、日本の先進国であることを世界が認めたのでございます。私は、この加盟によりまして、唯一のアジアの先進国として、世界の繁栄、ことにアジア開発国の開発に十分な努力をいたしたいと考えているのであります。  なお、外資の導入につきましての御質問でございますが、資本の少ないわが国は、できるだけ優良な外資の導入をすることが経済発展に役立つと考えます。しかし、中小企業その他脆弱な産業外資の導入によって悪影響を及ぼす場合におきましては、政府留保をいたしまして、適正な措置を講ずるよう、いわゆる余裕を残しているのであります。  なお、映画につきまして、青少年対策の問題を御質問になりましたが、やはりこれは、公安あるいは風俗を害するようなものは、関税定率法によって禁止もできます。また、最近は映倫管理委員会等がございまして、外国映画につきまして十分な審査をし、そして、そういう弊害のないようにいたしたいと考えているのであります。  なお、日本国民一人当たりの所得がまだ十七番目とか、こうおっしゃいます。そのとおりでございます。しかし、一人当たりの所得ということよりも、世界の人は日本の国の力というものを至大に考えているのであります。一億の国民を持つ、そうして、これだけの産業の復興をなす日本に対しまして、ぜひとも世界協力してくれ、いまや日本の総生産は、世界の五番目に相なっているのであります。だから、この状態を進めていって、あなたのお話しになるように、十番目の所得になることは、これは私は、むつかしいことはない、それをやるのがいわゆる所得倍増でございまして、いまや先進国並みにだんだん近寄っていくそのためにも、OECDに入ることが適当な措置であるのであります。私は、いまに十番目になることは必定であるということを、ここではっきり申し上げておきたいと思います。  なお、ILO八十七号の問題、二十六号の問題につきましては、御承知のとおり、八十七号の批准は、今国会にぜひ御承認いただきたく努力をしておるのであります。また、二十六号の問題等につきましては、今後日本OECD加盟いたしまして、経済がだんだん上昇していくならば、二十六号の批准も近くにあると、私は確信しておるのであります。   〔国務大臣田中角榮君登壇拍手
  17. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) OECD加盟に対する利害に対しては、総理大臣からお答えがございましたけれども、財政当局者として一言申し上げますと、御承知のとおり、四月一日からIMF八条国に移行することをきめておるわけでございますが、財政、経済貿易、そのような問題に対して国連及びIMF等でいろいろ審議をせられるのでございますが、この事前にOECDにおいていろいろな問題が議論をせられるわけであります。でありますから、日本も、特に国際流動性の問題、国際金融問題等については、確定的な段階にならない前の、主要国間において十分意見の調整をする段階であるOECDにはぜひ参加をし、第三部会への加入に対しても実現を必要といたしておるわけであります。  第二点は、貿易外収支の将来の問題に対してでございます。昭和三十八年の一月から十二月までに、貿易外において約三億百万ドルの赤字が計上せられておりますが、これは自由化による影響だけではないわけであります。貿易量が非常に多くなったということに対して、日本の船腹量がこれに追いつかなかったという状態もあるわけであります。この貿易外収支の改善に対しましては現に意を用いておるのでありまして、三十九年度予算でも、御承知のとおり、日本の外航船腹の拡充というものに対して格段の意を用いておるわけであります。そのほか、なお、観光の問題等にも十分な施策を行ないつつ、貿易外収支の赤字はできるだけ少なくし、経常収支の黒字をはかるように努力をいたしておるわけであります。  第三点は、外資導入についての問題であります。この問題に対しては、総理が基本的な考え方をお述べになりましたが、無制限に外資を導入して日本資本市場、日本企業を破滅に追い込むなどという考えは全然持っておりませんし、特に自由化をしても、あるものに対しては留保をし、なお、スクリーン制を設けまして、無制限に導入をするというのではなく、良質、長期の必要やむを得ざる外資を導入することによって国際競争力を培養しながら、将来の道を開かんとしておるのでありますから、これによって国内混乱を起こすなどということは考えておりません。  第四点、映画フィルムの問題でも総理が申されましたが、本年の六月三十日の末まで、留保をいたしておることは御承知のとおりであります。自由化の準備段階につきましては、こまかい問題別に、これが自由化に対応できる体制整備の期間をはかって実施に移しておるわけでありますが、大体、まあ映画に対しては、ある程度の準備期間が必要だという考えで六月三十日までとしたわけでありますが、業界に及ぼす影響等については慎重に配慮したいと考えます。(拍手)   〔国務大臣福田一君登壇拍手
  18. 福田一

    国務大臣(福田一君) お答えをいたします。  外国資本によりますところのスーパー・マーケットの問題について特に御質問があったわけでありますが、外国資本によるスーパー・マーケットが出てくるやり方はどういうやり方があるかといえば、直接投資をしてくる場合、あるいはまた、日本の市場において株式を取得するというような形、あるいはまた、ローンによって入ってくるというようないろいろな姿があり得ると思うのであります。そこで今後OECDに入りました場合において資本自由化ということは、これは原則としてわれわれは肯定しておりますが、しかし、その場合においても、直接投資の場合においては、OECDのコード自体において、その国の経済に悪影響がある場合には、制限をしてもよいという例外規定がございますので、この規定を適用することによって、直接投資によって入ってくるものであっても、日本にとってそれが日本中小企業あるいはその他に重大な悪影響があると思えば、それによって押えることができるわけであります。また、市場の株式取得による場合、あるいはローン等によって入ってきます場合には、今度OECDに入ります場合に、ちゃんと留保をとっておりまして、必要があればそれを制限することができるということにいたしてございますから、この方法によって押えることができると思っておるわけでございます。  なお、IMFにも若干関係がありますが、御案内のように、IMFは何も資本の問題にまで制限を付しておりませんし、そういうことで今度米国資本がうんと入ってきて、スーパー・マーケットでもやりはしないか、あるいはまた、日本にうんと入ってきはしないかというお話でありますが、それについては、この間の日米貿易経済会議の席上におきまして、実はそういうようなことがあっては困る、そうしてそういう場合には、制限ができるのであるという意味のことを十分向こうの閣僚にも伝えてございますので、私は今度のOECD加盟によって、通産関係においてそれほどの悪影響が起きることはない、むしろ好影響のほうが多い、こういう観点で処理をいたしておるわけでございます。  なお、技術導入をするというと、日本技術の開発が阻害されはしないかというお話でございますが、技術導入をすることによって産業界が非常な刺激を受けたり、あるいはまた産業全般のレベルが上がったことは事実でありますが、それで日本の開発技術に対する意欲がなくなる、そういうようなことは、日本人というものは、それほど気魄のない、また前進力のない国民でもありませんし、われわれの関係するところでも、一生懸命そういう技術開発につとめておりますので、そういうような御心配は要らないのではないかと考えておるところであります。(拍手)   —————————————
  19. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 牛田寛君。   〔牛田寛君登壇拍手
  20. 牛田寛

    ○牛田寛君 私は公明会を代表して、ただいま議題となりました経済協力開発機構条約締結について承認を求めるの件につきまして、総理並びに関係閣僚に対して質問いたします。  いまわが国は、国際収支の悪化という問題に当面しておりますが、このため、金融引き締め等の調整措置影響を受けて、中小企業倒産を目立って増加するという結果を見るに至りました。また一方、九二%の貿易自由化を達成し、自由化は最後の仕上げの段階に差しかかっております。自動車、重機械、農産物など、最も国際競争の力のない品目が残されていることは、周知のとおりであります。  この時期において、完全なる自由化というものを前提とした経済協力開発機構条約締結を行なうことは、わが国産業経済に少なからぬ影響を及ぼすことは当然であると考えるのであります。この際、本条約締結が、自由な国際貿易拡大等についてどのような利益をもたらすかを明らかにされたいのであります。総理並びに外務大臣にお伺いいたしたいのであります。  次に、ただいま申し述べましたように、金融引き締め等の影響を受けて中小企業倒産増加しておりますが、国際競争力の弱い産業の比較的多い中小企業は、完全自由化影響を受けて、さらに一そうの苦境に立つことが予想されるのであります。また、外国大資本が自由に入ってくることによって、資本力にものをいわせた販売網により、市場の独占のおそれが十分考えられるところでありまして、すでにその傾向はあらわれております。国内経済の、圧迫の上に、さらに国際経済の圧迫を受けて、中小企業の振興という問題は、新たな困難が加わろうとしているのであります。総理は、中小企業対策を特に強力に推し進めることについて言明されておるのでありますから、今回のOECDの加温にあたって、政府はこの対策について十分の成算を持たれていると考えます。総理並びに通産大臣のお考えを伺いたいのであります。  第三に、本年初頭からの政府金融政策の推移を見ますと、明らかに金融引き締めの方向へと足取りを早めております。すでに、公定歩合の引き上げも必至として、大企業においてはその対策を急いでおる。その結果、万一の場合に備えて、担保の確保であるとか、弱体系列企業の整理であるとか、あるいは支払い条件の厳格化など、中小企業等の経営も急激に苦しさを増しつつあります。で、このような状況下にあって、いままで外資法に基づいて外資の占める比率を制限してきたわが国が、OECD加盟することによって外資導入制限の緩和が行なわれるならば、いままで資金が窮屈になっておる国内産業は、金利水準の低い、しかも国内金融引き締め影響を受けない外資導入の方向に向かうことは必至であると考えられます。その結果、外資導入の過当な競争を引き起こして、不利な契約条件のもとに企業が国内や輸出市場で不当な制限や義務を課せられるおそれがあると考えられますが、政府はこの点に対していかなる対策を講ずるのか、大蔵大臣の具体的な答弁をお願いいたします。  第四に、わが一国産業発展によって、鉄鋼、板ガラス、繊維製品、繊維機械、家庭用ミシン、あるいは電子機器、カメラ、船舶等々、その技術は国際的にも高水準を誇る状態まで成長しております。これは、わが国民の勤勉で優秀な素質によること、また、なみなみならぬ努力の積み重ねによってできたことであります。しかるに、最近の外資導入の活発化に伴いまして、技術導入の過当競争が至るところに見られます。先ほど問題として取り上げました点でございますが、これは、産業の秩序を混乱させるとともに、わが国技術の非常な不経済が起こる。同じ技術を幾つかの同じ系統の会社から日本へ取り入れるというような技術開発の不経済が行なわれている。また、同時に、そこから企業独自の技術開発意欲が鈍らされてくるということ、さらに、契約条件において輸出制限が加わるとかいうような好ましからぬ結果を招くおそれがある。わが国は今後も一そう輸出の振興をはかり、国際収支改善していかなければならぬことから考えても、優秀なわが国独自の技術の開発ということは重要な問題でありますが、OECD加盟した場合に、政府はこのような技術導入の過当競争についてどのような対策をお持ちであるか、総理大臣並びに通産大臣にお伺いしたいのであります。  第五に、昭和三十八年の一月から今年に至るまでの国際収支構造を分析してみますと、貿易外収支の赤字は、政府の再三にわたる貿易外収支改善対策検討と発表に反しまして、毎月その赤字を累積させ、何ら減少の気配が見られぬ実情でございます。政府貿易外収支の改善は長期的対策によらない限り困難であるとの見解をお持ちでありますが、もしOECD加盟した場合のことを考えますと、強固な改善対策を打ち出すことが急務であると言わざるを得ません。特に、貿易外収支の中で、観光収支の赤字が最近特に顕著になっております。海外旅行自由化を控えまして、一生のうちに一度は外国へ行かねばと多くの国民が夢に抱いておる。そういう人たちが金融機関等に海外旅行の積立貯金をする者が非常に多い。その数は三十万人をこえるというように言われております。これらの人々自由化と同時に海外旅行をした場合、貿易外収支はさらに、悪化の速度を速めることになるのではないかと思いますが、大蔵大臣はどのような対策をお持ちであるか、お伺いしたいのであります。  第六に、わが国は、OECDの下部機構である開発援助委員会のメンバーとして、すでに昭和三十六年から、低開発諸国援助のため、政府援助として三十六年に一億五千九百二十万ドル、三十七年に二億三千百六十万ドルと、次第にその額も増加させております。低開発諸国に対する援助は強力に推進していくべきであると考えますが、最近の国際収支の慢性的な悪化とその改善を考慮した場合において、これらの多額な外貨を援助資金として振り向けることは、日本の外貨事情をさらに悪化させることになると考えられます。政府が世銀からの借款によって支払った援助資金、これらによって日本の国際貿易の面にどのような成果をもたらしつつあるか、総理並びに通産大大臣に伺いたいのであります。また、あわせて、最近数千万ドルの年間貿易収支の黒字を生み出すことすら困難な状況にあるにもかかわらず、今回の加盟により、さらにこれらの援助強化されることになると予想されますが、政府は今後どのような方針でこの対外援助に臨まれるかをお伺いをしたいのであります。  第七に、アメリカは依然としてドル防衛政策の路線を改めてはおりません。過去における対日綿製品の輸入制限あるいは利子平衡税の問題というようなものはもとより、現存においても、なおわが国の対米主要輸出品である雑貨類等はすべて自主規制を余儀なくされている実情にあります。このような保護貿易体制に近いと言えるような貿易形態が存在するときに、わが国加盟の実現によって完全な開放経済体制移行することになるわけであります。このような情勢下において何ゆえこの加盟を急がなければならないのか、この理由国民の前に明らかにしていただきたいのであります。総理並びに外相の明確な御答弁をお願いしたいのであります。  最後に、加盟が実現した場合に、これらの差別待遇の解消について強力な主張を行なうべきであると思いますが、この点について、総理並びに外相の決意を伺いまして、私の質問を終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  21. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) OECDへの加盟利益につきましては、先ほど来申し上げましたごとく、やはり先進国が集まりまして、世界経済の重要問題について協議して、そうしていわゆる国連とか、あるいはガットとか、IMFの総会の前においていろいろ協議していくことは、やはり先進国としての当然の私は責務であると思うのであります。日本は、先ほど申し上げましたように、非常な経済発展をいたしておりますので、やはり世界経済をよりよくするためには、日本のような国が入って、お互いに事前協議することが必要であり、また利益であるのであります。また、われわれといたしましても、この世界の先進国のいわゆる経済情勢その他いろいろな資料を前もってとることも非常に必要であるので、私は日本が入るということは、世界の各国が、世界のためにいいと自他ともに認めておるところでございます。私は喜んで参加の決意をいたしたのであります。  なお、中小企業対策とか、あるいは技術の交流の問題につきましては、先ほどお答えしたように、わが国の技術あるいは中小企業発展に害になるようなことはいたさない留保規定を置いておりますから、御定心願いたいと思います。なお日本は、OECDのいわゆるDAC、経済開発、低開発国援助委員会には従来から入っております。そうして世界でも、大体、低開発国援助日本が五番目ぐらいの地位におるのであります。これは低開発国援助ということは、低開発国のためのみならず、日本産業発展に役立つのでございます。私はどの程度の援助をするかということは、日本経済発展国際収支の状況を見ながらやっていくべきだと考えておるのであります。日本世界的使命としては低開発国援助、これに力を入れることが、日本民族の使命であると私は考え、今後も十分やっていきたいと考えているのであります。  なお、ドル防衛につきましていろいろ御心配がございますが、われわれはドルが確実な国際通貨であることは、われわれも協力をしなければならぬ。ただ、ドル防衛のために日米貿易が非常に阻害されるというととは、これはわれわれとしてとらざるところでございます。常に米国ともドル防衛につきましても協調しながら、日本に不利にならないよう努力を続けていきたいと考えております。(拍手)   〔国務大臣大平正芳登壇拍手
  22. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) OECD加盟するということは、世界先進工業国と組織的にかつ機構的に協力の場に入るということでございまして、先ほど大蔵大臣がお触れになりましたように、たとえば国際収支の問題にいたしましても、短期資本移動によりまして撹乱的影響が出た場合にどうするかとか、あるいは各国の通貨の安定につきまして、各国の中央銀行がどのように協力してまいるかとかという問題につきまして、決定的な実力を持っておる主要国との協力の場を持つということは御理解をいただきたいと思うのでございます。そういたしますれば、あなたが御指摘の貿易の問題にいたしましても、たとえば輸入制限問題あるいは関税政策、あるいは後進国貿易の問題にいたしましても、これら決定的な実力を持った国々と協力の場に入り、討議の場に入っておくととは、日本にとりまして、日本の国内政策を立てる上におきましても、いろいろ経済外交を展開する上におきましても、不可欠のことになってくると思うのでございます。そういうことが、私どもOECD加盟ということに決意をいたしましたおもなる原因でございます。  それからドル防衛に言及されましたが、対日輸入制限につきまして、御指摘のように新しいアメリカ側の動きは、私は聞いておりません。輸入規制、対日自主規制が、最近新しい動きを見せておるというようなことは、私としては承知いたしておりません。(拍手)   〔国務大臣福田一君登壇拍手
  23. 福田一

    国務大臣(福田一君) 私に対する質問は、総理の御答弁で尽きておると思いますが、私は、あなたが非常に御心配いただいておりまする中小企業の問題あるいは技術導入の問題等については、十分御質問趣旨を体して、行政上誤りのないように努力をいたしてまいりたいと考えております。(拍手)   〔国務大臣田中角榮君登壇拍手
  24. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 貿易外収支の改善につきましては、先ほど来申し上げたとおりでございます。そのうち特に海外旅行につきましての御質問でございますが、来たる四月の一日を予定いたし、海外渡航の自由化をはかるつもりでございます。先ほどもお述べになりましたとおり、三十五年度は受け取りが五千九百万ドル、支払いが、五千九百万ドルでほぼ均衡いたしておりましたが、三十七年度は受け取りが五千九百万ドル、支払いが六千百万ドルで、計二百万ドルの赤字であります。今年度はもう少しふえて七、八百万ドルの支払い超過のようでございますが、何か海外旅行に対して積極的に積み立てをやったり、いろいろこれを促進しておるようなものもございます。こういうものに対しては、何かを飲んでハワイへ行こうとか、また、何々をしたら香港へというようなことに対しては、きつく金融機関等に対しましては指示をいたしまして、かかることによって、特に海外旅行促進するような考え方に対しては、強い是正と自重を求めているわけでございます。いずれにしましても、これから自由化をすれば、いつでも海外には行けるのでありますから、先を争ってまで海外に行くような風潮は、ぜひひとつ皆さんのお力でも、これを是正していただければ幸いだと考えているのであります。(拍手
  25. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これにて質疑通告者発言は、全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。    ————————
  26. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第五、外国為替及び外国貿易管理法及び外資に関する法律の一部を改正する法律案趣旨説明)、  本案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。田中大蔵大臣。   〔国務大臣田中角榮君登壇拍手
  27. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 外国為替及び外国貿易管理法及び外資に関する法律の一部を改正する法律案趣旨を御説明申し上げます。  わが国は、世界経済の趨勢に即応し、国際分業を通じて経済活動の効率を高め、わが国経済の一そうの繁栄をもたらすため、開放経済体制への移行を進めており、その一環といたしまして、来たる四月一日に、国際通貨基金協定第八条に規定する義務を受諾することとして、着々諸般の準備を進めているのでありますが、これに伴い外国為替外国貿易その他の対外経済取引に関する法制を整備することが必要となっているのでございます。  次に、今回提案いたしました法律案の概要を御説明申し上げたいと存じます。  まず第一は、外国為替及び外国貿易管理法の一部改正であります。現行の外国為替及び外国貿易管理法においては、貿易及び貿易外取引を通じ、外貨資金の使用は、すべて外国為替予算の範囲内で許されるものと規定しているのであります。ところで、わが国が国際通貨基金八条国へ移行するためには、輸入代金の支払いのような経常的国際取引のための支払いに対する為替制限を撤廃しておくことが必要となりますので、外国為替予算制度を廃止することとし、このための所要の改正を行なうことといたしたのであります。  また、外国為替予算制度の廃止に伴いまして、外国為替予算作成を主たる任務としております閣僚審議会は、その存在理由がなくなりますので、これを廃止することといたしたのであります。  さらに、現行の輸入貿易の管理は、外国為替予算を前提として行なわれておりますが、外国為替予算制度の廃止に伴いまして、今後の輸入貿易の管理は、為替制限によらない方法でこれを行ない得るように所要の改正を行なうことといたしたのであります。  第二は、外資に関する法律の一部改正であります。その第一は、外国為替予算制度の廃止に伴う規定の整理でありまして、外資に関する法律に基づいて対外送金が認められるものの支払い予定額を、外国為替予算に計上する制度を廃止することといたしました。  その第二は、届け出のみによる株式または持ち分取得制度の廃止であります。これは、従来、外資に関する法律では、外国投資家の株式取得には、原則として主務大臣の認可を要することとなし、例外として、新株の取得であって、果実または元本の回収金の送金を希望しないものについては外国為替及び外国貿易管理法の許可を要することとしていたのでありますが、今後は適用法律一つにするため、送金希望のない新株取得につきましても、原則として外資に関する法律の認可を要することとするよう改正しようとするものであります。  その第三は、契約期間または対価の支払い期間が一年をこえる技術援助契約の締結並びに受益証券、社債及び貸し付け金債権の取得に関する規制の一元化であります。従来、これらの外資につきましても、その対価、果実または元本の回収金の対外送金を希望する場合にのみ外資に関する法律の認可を要することとし、それ以外の場合は外国為替及び外国貿易管理法の規制を受けることとしておりましたが、適用法律を一にし、制度を簡素化するため、今後は送金希望の有無にかかわらず、原則として外資に関する法律の認可を要することとするよう改正しようとするものであります。  その第四は、外国為替公認銀行への事務の一部委任であります。これは従来、主務大臣の事務の一部を日本銀行に委任し得ることとなっておりましたのを、国際経済取引の自由化促進し、外資導入関係事務処理の円滑化をはかるため、さらに外国為替公認銀行にも委任し得るよう改正しようとするものであります。  以上、外国為替及び外国貿易管理法及び外資に関する法律の一部を改正する法律案趣旨につきまして御説明申し上げた次第であります。(拍手
  28. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑通告がございます。発言を許します。木村禧八郎君。   〔木村禧八郎君登壇拍手
  29. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されました対外取引に関する法律改正案につきまして、六点質問をいたしたいと思います。  その第一点は、日本IMFの十四条国から八条国に移行するということは、かつての金解禁にも比すべき重大な問題であるといわれております。このような八条国の義務を受諾するということが、事前に何ら国会にはかられることなく、政府の行政的な措置によりまして、一方的に取りきめられてしまうということは、これはどういうことでございましょう。その点にどうしても私は割り切れないものがございます。先ほどのOECD加盟の問題につきましては、これもIMFの八条国移行に劣らない重要な問題でございますが、しかし、IMFの十四条国から八条国に移るということは、OECDに参加以上の重大な問題、日本経済の将来に画期的な、池田さんの言葉を借りますれば、革命的な非常に大きな変動をもたらすものです。これはもちろん直接条約上の問題ではございませんが、事実問題といたしまして、今後の日本経済に重大な影響を及ぼすこういう措置が、事前に何ら国会にはかられることなく、政府の行政措置だけでまかなっていいものであるかどうか、まずこの点について池田総理大臣にお伺いいたしたい。  質問の第二点は、この提案理由説明を先ほど大蔵大臣が行ないましたが、これによりますと、わが国開放経済体制への移行を進めており、その一環として、四月一日を目途にIMF八条国に移行する、そのための法制の整備のために対外取引に関する二法の改正をするのである、これが提案理由であるといわれております。そこで、総理大臣にお伺いいたしたいのは、開放経済体制への移行ということは、どういう意味と内容を持っておるのでございますか。この点をはっきり伺いたい。何を、だれのために開放するのであるか、この点をはっきりしていただきたい。なぜ私はこういう質問をいたすかと申しますと、これまで池田内閣は、高度経済成長政策をやってまいりましたが、すでに池田さん自身が反省しておりますように、これまでの高度成長政策は、大資本に片寄って中小企業を犠牲にしてきた、立ちおくれさしてきたということをはっきり自己批判しております。ところが、またこの開放経済体制への移行におきましても、その端的なあらわれといたしましては、重油の自由化を前提とする炭鉱整理に典型的にあらわれております。中小企業や、あるいは農業や、あるいは一般勤労者の犠牲において、IMF八条国に移行、つまり自由化移行する、その場合に、大資本利益を守るように、そういう体制が着々と進められております。炭鉱の整理は、その端的なあらわれです。今後、それは業種によっていろいろ程度の差はあるかもしれませんが、今後の開放経済体制移行につれまして、炭鉱にあらわれたと同じような問題が、私は出てまいると思うのであります。  つまり、これまで日本は、池田内閣のもとで高度成長政策を遂行してまいりましたが、この高度経済成長を可能ならしめた条件は、一体何であったでありましょう。私は、それは第一は、世界まれに見る日本の低賃金、また世界まれに見る至れり尽くせりの大資本、独占資本に対する保護措置です。租税特別措置であるとか、あるいは産業基盤の強化であるとか、あるいは通産省指導によりまして勧告操短による独占管理価格の維持であるとか、そういうことが第一の可能の条件であったと思うのです。第二は、アメリカの経済軍事援助。第三は、いわゆる貿易為替管理体制であったと思うのです。  そういうことが、これまで高度成長を支えた主たる要因でありましたが、そういう条件がくずれつつある。特にこの貿易為替管理体制、いわゆる封鎖経済的な体制は、日本資本に非常に膨大な利益をもたらした、設備拡張を可能ならしめた一つの大きな条件であったと思うのです。これがくずれてくる、自由化になってこういう条件がくずれてくるので、そのままでは従来のような膨大な利潤を確保することができないから、そこで政府は、この新事態に対処するために、農業面においては農業基本法を中心にして農業構造改善事業を推進いたし、まして、農業の整理、合理化をやっておるのであります。あるいは中小企業基本法に基づいて、中小企業の整理、合理化、自由化になった場合に、海外の製品と自由競争ができない中小企業は整理をしていく、そうして投資育成会社をつくりまして、成長産業に見込みのあるものだけを育成していく、その他は整理していく、あるいは大企業につきましては、特定産業振興法によりまして、合併、集中、大コンビナート化によりまして、そうして大資本の独占集中を強化していこうとしております。あるいはまた、地域産業におきましては、産業都市計画、これは住民の負担におきまして大資本のための有利な立地条件をつくるための措置であると思うのであります。あるいはまた、人づくり政策によりまして、近代技術を身につけて、資本主義的道徳もまた身につけて、下から利潤に奉仕するような労働者をつくり上げる、そういう体制を着々進めております。これが開放経済体制への移行ということではないのでありましょうか。その一番の典型的な例が、先ほど申し上げました重油の自由化を前提とする炭鉱の整理であったと思うのです。そこで、池田総理に、一体この提案理由にいうところの開放経済体制への移行というその意味と具体的な内容を明らかにしていただきたい。  第三の質問は、もし、私が申しましたように、自由化に対処して大資本利益を擁護するような措置を進めることが開放経済体制でないとおっしゃるならば、今後開放経済体制を進めていく上におきまして、中小企業にどういう影響があらわれ、あるいはまた、労働者にどういう影響があらわれ、あるいは農業にどういう影響があらわれ、そうしてその影響等につきまして、政府はどういう見通し対策を用意しておりますか。この点について具体的に御答弁を願いたい。労働者に対する影響対策については、労働大臣、農業につきましては、農林大臣、中小企業につきましては、通産大臣から、通告してございますので、それぞれ御答弁を願いたいと思うのであります。  時間がございませんので——IMF八条国移行あるいはOECD参加によりまして、これまでの日本の対外取引につきまして、原則が変わってくるわけです。これまでは、対外取引については、全面的禁止・例外的自由というのが原則であったのが、今度は、全面的な自由・例外的な禁止ということにたてまえが変わってくるわけですね。その場合、これからは国際収支理由として為替制限をすることはできなくなるのでありますが、外国為替及び外国貿易に関する法律なり外資に関する法律は、大体国際収支理由として為替取引、資本取引を制限することができるというたてまえになっておるわけです。したがって、今後そういう国際収支理由として対外取引を制限することができないということになりますれば、単に二法案を改正するだけでよろしいのかどうか。国内産業の保護の立場から新しい立場に立って、今まで問題になっておりました、たとえば対外経済法とか、あるいはその他の国内産業を保護する立場に立った立法が必要ではないか。単にこの二法案の部分的改正だけでまかなっていけるかどうか。対外経済法その他の国内産業保護的な、そういう措置についてどうお考えになるか、この点について御答弁願いたい。  それから最後に、資本取引と関連しまして、日米通商航海条約との関係について、これは総理大臣に伺いたいと思うのです。日米通商航海条約第十二条によりますれば、日本IMF十四条国に加盟しておりますので、アメリカの資本導入については、外資法の適用等によって、これは制限することができるようになっております、十二条では。ところが、八条国に移行しますと、制限することができなくなります。国内産業保護を理由としても、国内の資本と同等の待遇を与えることになっておりますから、制限することができなくなってきます。国内産業を保護することを理由としても、制限することはできません。また、OECD参加にあたりまして、日本は直接投資につきましては、これは留保しておらない。先ほど答弁ございましたが、留保しておらないのです。そうしますと、アメリカの資本日本にどんどん入ってくるのをとめることができないわけであります。通商航海条約は一九五三年十月実施されて、十年間期限でございまして、昨年十月に一応期限が来ております。それを機会に国内産業保護の立場から、アメリカの日本に対する資本導入については、これは制限することができるように、通商航海条約改正する必要があると思う。日米通商航海条約は、諸外国の通商航海条約と比べまして、著しく日本資本あるいはその他の取引について不利になっております。これは対等ではございません。この点は、資本取引だけではなく、その他の点についても、日米通商航海条約は非常に不利になっております。対等ではないのであります。したがって、ただいまの点、特に資本の導入の点ですね、これまでは国際収支理由として制限することができたのですけれども、十四条国でございましたから。今度は八条国に移れば、国内産業保護を理由としても制限することができないのであります。この点について、もう期限がきて過ぎておるのであります。過ぎておるのですから、なぜこういう改正をやらないのか。アメリカに対しても、前向きの形で、日本利益のために要求すべきことは要求すると言っておったじゃありませんか。日米貿易経済委員会におきまして、なぜこういう問題を取り上げて主張しないんでございますか。(拍手)前向きでやってますよと、抽象論ばっかりじゃありませんか。何ら具体的な、実際に日本利益になったような成果の報告一つもないのであります。この資本取引の面だけではありません。全面的にもう期限がきておるのでありますから、日米通商航海条約日本利益のために改定する意思があるかどうか、最後にこの点をお伺いいたしまして終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  30. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 開放経済体制への移行という意味でございますが、これは諸外国との経済交流を緊密化して輸出市場を拡大し、そうして国際分業の利益を得ようとしておるのが、開放経済への移行の意味でございます。それで私は、戦後の日本経済の立て直しには、やはり統制でなくて、自由な姿でいくことが一番効果があがるというので、昭和二十四年から、いわゆる統制経済を自由経済、切符制度をなくして自由な姿の国内的経済を現出したのであります。これによりまして、われわれの生活や生産は非常にのぼってきた。自由主義経済というものをとってきたのであります。しかし、国内的には自由主義経済をとりましたが、国際的にはまだそれがとり得なかった。私が通産大臣になりました昭和三十四年のときには、国際貿易自由化されたものは三二%であったのであります。したがいまして、これから日本が海外に発展し、国内の生産を伸ばす、われわれの生活水準を上げるという場合におきましては、国内はもちろん、国際的な自由な姿に持っていかなければ、とうていわれわれの生活水準の向上はできないというので、昭和三十五年に貿易・為替の自由化大綱をきめまして、そして貿易・為替のうち、特に貿易につきまして自由化をどんどん進めていって、三二%が先般九二%の自由化までいったのでございます。これは貿易自由化貿易自由化とうらはらになる為替の自由化ということも、日本の今後の発展にはぜひ必要であるんだ、鎖国主義の経済はいかぬ、統制主義経済はだめだという基本方針によって、われわれ自由民主党はいままで努力してまいったのでございます。それで九二%まで貿易自由化が実現した。その間におけるいわゆるタイミングが非常によくて、国民協力を得まして、いろいろ御心配なすったような、中小企業がどうなるかという問題につきましては、この貿易・為替の自由化で、たいした問題は起こさずに今日まできておるのであります。これは、これからの問題ということでなしに、いままでやってきた問題をここで解決しようとするのでございます。したがいまして、条約を結ぶとかなんとかいう問題でなしに、これは行政措置でできると、事柄自体は金解禁に次ぐものだとおっしゃいますが、これはすでにもう三、四年前から準備して着々やってきたのであります。だから私は、これが日本の国内に大した影響があるとは考えません。今後発展するための必要な措置でございまして、いままでのような不自由なやり方、統制的なやり方はやめて、ほんとうに一人前として外国に雄飛できるような素地をつくってきたし、また、その仕上げが今度の貿易・為替自由化の法案の改正でございます。  なお、日米通商航海条約で、十四条国であったならばいいけれども、八条国に移行した場合については問題があるのじゃないか、これは、多年われわれが検討してまいりました。また、いま検討しておるのですが、ただいまのところ、別に支障はないと私は考えております。(拍手)   〔国務大臣大橋武夫君登壇拍手
  31. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 貿易自由化が労働者に与える影響といたしましては、貿易自由化は、長期的に見ますると、企業の体質改善産業の近代化を促進し、これによって、コスト低下に伴う価格の引き下げや、貿易拡大をもたらし、経済拡大、労働生産性の向上とともに、雇用の拡大や、賃金その他の労働条件の一そうの改善を可能にするものと考えるのであります。昭和三十五年以来現在までの自由化は、海外依存度の高い原材料部門、あるいは鉄鋼のごとき国際競争力の強い物資を中心にして進められてまいりましたので、自由化を直接の原因とする国内産業及び労働面への悪影響は、特殊なものを除きまして、あまり生じておりません。しかしながら、わが国産業の現状におきましては、国際競争力の不十分なものもありますので、今後、逐次一そうの自由化を進める過程におきましては、過渡的に一部衰退産業における失業の発生や、過当競争の激化に伴う労働面への影響考えなければならないのであります。政府といたしましては、従来どおり、自由化が雇用面等に与える摩擦を最小限にとどめるように努力し、かつ、国際競争力強化のために積極的な施策を講ずるとともに、他方、これらの影響が労働者に及ぶことを防ぎますため、労働基準法に基づく監督指導、最低賃金制度の活用等によりまして、適正な労働条件の維持、向上につとめてまいりたいと思います。また、自由化に伴う失業者の発生をみまする場合におきましては、広域職業紹介、転職訓練、就職促進指導等、一連の労働力流動化対策の推進によりまして、円滑に対処いたすつもりでございます。(拍手)   〔国務大臣赤城宗徳君登壇拍手
  32. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) お話のように、日本の農林水産は非常に脆弱な基盤に立っております。でありますので、まっぱだかで、何らの措置もとらずに、国際競争の中に投げ込まれるということになりまするならば、相当の影響があります。しかし、現在まで、ガット加盟国といたしまして貿易自由化を進めてまいったのでございますが、それにつきましては、関税定率の調整とか、あるいは国内的な保護といいますか、財政的な措置、あるいはまた農業政策として生産性を向上するというようなことで、逐次自由化をいたしてきたのでございますが、そういう悪影響を与えないような措置とあわせてやってまいったのでございます。今後とも、米麦あるいは酪農品、あるいはでん粉等、輸入制限をしておる品目七十六ばかり農林水産物にございますけれども、いま申し上げましたような米麦等につきましては、これは自由化ということが非常に困難である。その他のものにつきましても、いま申し上げましたような措置をとって悪影響を与えないように進めていきたい、こう考えております。(拍手)   〔国務大臣福田一君登壇拍手
  33. 福田一

    国務大臣(福田一君) お答えをいたします。  開放経済体制に向かい自由化をしていくと、中小企業に非常な悪影響が起こるおそれがある、これに対して具体的な対策はどうか、こういう御質問と存ずるのでありますが、私たちが中小企業といい、大企業といいましても、これは日本産業の一部でございまして、ただ、その間における均衡のある発展ができておればいいのでありますが、その均衡のある発展ができていないというところに今日の問題点があるのであります。したがって、私たちはそういう意味で国内体制整備等々は、どんどんこれからもやっていきまして、中小企業がりっぱに育っていくような措置はいたさなければならないと思いますが、具体的に自由化一つ一つやっていきます場合においては、それが中小企業にどんな影響があるかということをかなりこまかく調べた上でやっておりますので、直接の影響はそれほどいままでは大きくは出ておりません。しかし、今後これが出るであろうということは、もちろん考えのうちに入れて施策を進めていかなければならないのであります。  また、自由化をしておらない品目がまだ百八十九ございますが、こういうものを順次自由化していきます場合においては、一つ一つ産業について、それぞれしさいに検討をした上でやっていくわけでございまして、こういう意味合いからしまして、私たちはその産業に悪影響がない、あまりひどい影響がないというところで踏み切っていくというやり方をいたしてまいりたいと思うのでございます。  なお、もうOECDに入るとかIMF八条国移行というようなことをやれば、すぐに何か突然変異みたいな問題が起きてくるように世間の人は——木村さんはそういうことはよくわかっておいでで、これは失礼な申し分に相なると思うのでありますが、そういうものではないのでありまして、もうすでにそういうことは順次準備を進めながらやってきておるのでありまして、IMF八条国に移行しましても、OECDに入りましょうとも、もうそれに対する対策は順次やりながらやっております。すなわち、突然変異的なことは起こるのではないのでありますが、しかし、いま木村委員から御注意をいただきました点については、われわれも十分注意をいたしながら施策を進めてまいりたいと考えておるところでございます。(拍手)   〔国務大臣田中角榮君登壇拍手
  34. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) IMF八条国移行及びOECD加盟について法制上の整備の方法として外為法及び外資法の改正だけで足るのか、原則自由の対外経済法の制定を必要としないかという御質問であったと思います。  ただいま福田通産大臣がお答えいたしましたとおり、もうすでに九二%の自由化を完成いたしておりますので、IMF八条国移行及びOECD加盟の実質的要件はほとんど具備しておるわけでございます。でありますから、現在の制度の上では、外貨予算制度の廃止等、それに伴う関連条項の整備をすれば足るというふうに考えておるわけでございます。しかし、法律を全面的に基本から変えて、原則自由に立つ対外経済法の制定ということでございますが、このOECD加盟IMF八条国移行によって日本経済にどのような対応策が必要であるかというような問題は、これから十分、しさいに検討していかなければならない問題でありますし、特に、海外諸国の情勢とも対応しなければならない問題があります。同時に、原則自由にまでいますぐ法制を切りかえるというような事態は少し早すぎるというような考えで、現在御提案を申し上げておる二法の改正で足ると考えておるわけであります。しかし、原則自由の対外経済法のごときものの必要があるかどうかに対しては、慎重に、かつ、広範な立場で検討すべきだと存じます。(拍手
  35. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これにて質疑通告者発言は終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。    ————————
  36. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第六、消防組織法及び消防団員等公務災害補償責任共済基金法の一部を改正する法律案内閣提出)を議題といたします。  まず、委員長報告を求めます。地方行政委員長竹中恒夫君。   〔竹中恒夫君登壇拍手
  37. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 ただいま議題となりました消防組織法及び消防団員等公務災害補償責任共済基金法の一部を改正する法律案につきまして、地方行政委員会における審査の経過並びに結果を御報告いたします。まず、本法律案おもな内容について申し上げます。  改正の第一は、消防組織法改正し、非常勤消防団員が退職した場合においては、市町村は、条例で定めるところにより退職報償金を支給しなければならない旨規定したことであります。  第二は、共済制度により退職報償金の支給を的確に実施するため、消防団員等公務災害補償責任共済基金法改正し、退職報償金の支給に関する市町村の責任についても、基金をして従来の業務に付加してこれを行なわせるなど、所要の改正を行なおうとするものであります。  委員会におきましては、二月四日、早川自治大臣より提案理由説明を聞いた後、質疑を行ない、義勇消防のあり方、退職金支給機構、支給額等について活発な論議が行なわれましたが、詳細は会議録に譲ります。  かくして、二月十三日質疑を終局し、討論に入りましたところ、西田理事から、本法律案賛成し、なお、  消防団員等退職報償金制度については、支給事務機構及び支給額等改善の余地があると思われるので、将来十分検討して善処するよう要望する。旨の各会派共同の附帯決議案が提出されました。  次いで採決を行ないました結果、本法律案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。また附帯決議案も、全会一致をもって委員会の決議とすることに決定した次第であります。なお、右附帯決議について、早川自治大臣よりその趣旨に沿うよう善処する旨の発言がありました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  38. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立
  39. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。  次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十分散会    ————————